運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-10-27 第82回国会 参議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十七日(木曜日)    午後一時四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉田  実君     理 事                 世耕 政隆君                 宮之原貞光君                 小巻 敏雄君     委 員                 塩見 俊二君                 長谷川 信君                 藤井 丙午君                 二木 謙吾君                 秋山 長造君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 松前 達郎君                 柏原 ヤス君                 白木義一郎君                 田渕 哲也君                 有田 一寿君        発  議  者  粕谷 照美君    委員以外の議員        発  議  者  久保  亘君    国務大臣        文 部 大 臣  海部 俊樹君    政府委員        文部政務次官   唐沢俊二郎君        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省初等中等        教育局長     諸沢 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省学術国際        局長       井内慶次郎君        文部省社会教育        局長       望月哲太郎君        文部省管理局長  三角 哲生君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        外務大臣官房領        事移住部領事第        一課長      高瀬 秀一君        外務省国際連合        局社会課長    丸山 俊二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育文化及び学術に関する調査  (教育大学附属学校入試改善等に関する件)  (大学共通一次テスト問題に関する件)  (私立大学医・歯学部における経営問題等に関  する件)  (私学助成に関する件)  (医系大学院設置問題に関する件)  (海外及び帰国子女教育問題に関する件)  (海外派遣教員等の処遇改善問題に関する件)  (中高校生の覚醒剤乱用問題に関する件)  (国連大学問題等に関する件) ○女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の  確保に関する法律の一部を改正する法律案(久  保亘君外六名発議)     —————————————
  2. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  教育文化及び学術に関する調査を議題として、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いします。
  3. 白木義一郎

    白木義一郎君 初めに大臣にお伺いしますが、御承知のとおり、現在の教育界は、受験地獄塾通い、落ちこぼれ、無気力、無責任、無関心、無感動といった高校生の四無主義、また年々の教育費の高騰など、実に憂慮すべき問題が山積しております。国民、われわれも、教育行政に対して抱いている不満、不信はつのる一方と思われますが、そのような現在の教育の荒廃の現状について大臣はどのように把握をし、またその対策をどのように考えられているか、まず最初にお伺いしておきたいと思います。
  4. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御指摘のようないろいろな状況が現在、社会的な問題になっておることは私どもも厳しく受けとめておりますし、私は、何よりも公教育責任を果たすことによってそういう世の批判にこたえていかなければならないと、こう考えております。具体的には、先生真っ先受験地獄とおっしゃいましたけれども受験制度というものがいまのままではよくない、したがって、これをどこから手をつけてどう改善をしていくかということに先人たちのいろいろな努力や議論がございましたが、ただいま大学入学試験共通一次試験改革というところに手をつけまして、そこから受験制度というものを何とか改善していきたいと考えておりますし、またそれに連なりますいろいろな学校教育の中において、これは余りいい言葉ではありませんが、落ちこぼれとか、あるいは詰め込み主義教育とか、いろんなことが言われております。これはやはり教える内容とか量が多過ぎるのではないか、むずかし過ぎるのではないか、また、これは受験制度とも絡んでくる問題でありますが、もう少しやはり知育、徳育、体育という調和のとれた人間教育が行われなければならないのではないか、こう考えまして、その一面の御批判にこたえるためにも、昨年の暮れ教育課程審議会から答申をいただきました線に従って学習指導要領の改定をすると、いろいろ当面改革をしなければならないと感じ、また意見のまとまりましたものにつきましては全力を挙げてこれに取り組みまして、公教育責任を果たすことによっていろいろな世の批判にこたえながら教育が前進していくように、全力を挙げて取り組んでおるところでございます。
  5. 白木義一郎

    白木義一郎君 いま大臣が述べられたことは、当然今後さらに深く実施面においても対策を進めていかなければなりませんが、永井前文部大臣の四頭立ての馬車論、これを海部大臣も受け継いで今後奮闘されると、このように承っておりますが、それはあくまでも対症療法で、どうしても後手後手にならざるを得ないと、そういう心配をしているんです。  そこで、きょう私がお尋ねしたいのは、このいろいろな心配すべき風潮の中で学校先生のいろいろな問題が起きているわけです。われわれがショックを受けるような事件を起こす先生が間々ある。あるいは校長先生PTA会費を飲んでしまった、で、インチキな報告をしているとかなんとかという、そういったような問題もこれも大きな今後是正していかなければならない問題。その先生の、教師の資質を向上するという意味からも設けられている国立大学付属学校の問題について、きょうは若干お尋ねをしておきたいと思います。  ここ数年来、国立大学付属学校エリート校になっている、あるいは進学予備校化しているというような批判が最近ではなくて数年前からこれが続いているわけです。そこで、まず最初文部省に、この国立大学付属学校設立趣旨、そういう点からお尋ねをしたいと思います。
  6. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 付属学校はそれぞれ幼稚園から高等学校までの教育実施する場であることはもとよりでございますけれども、それに加えまして、大学学部における教育研究と関連を持ちながらその大学における教育研究協力をするということと、さらに学部教員養成の重要な部分である教育実習生徒を受け入れる、学生を受け入れる、そういった任務を持ったものでございます。
  7. 白木義一郎

    白木義一郎君 その付属学校一般公立学校と特に異なる特色のある点をもう少し具体的にお聞かせ願いたいんですが。
  8. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 付属学校の場合には、いま申しましたような本来の設立趣旨に従いまして、学部教育研究連絡をとりながら、たとえば東京大学付属中学における双子教育の問題についての取り組みであるとか、あるいは千葉大学付属幼稚園における性格に問題のある子供教育への取り組みであるとか、あるいは僻地における複式学級、あるいは特殊学級、あるいは海外子女教育、そういったさまざまなプロジェクトを組んで、そしてそれに積極的に取り組んでいるという学校がもちろんたくさんあるわけでございます。しかし、付属学校の中には、いわゆる学力の高い生徒を集めて、そして世の中からいわゆるエリート校としての批判を受けるようなものがないわけではないという点を非常に遺憾に存じているわけでございます。
  9. 白木義一郎

    白木義一郎君 この付属学校というのは、教育大学あるいは学部等教育者を心得る、将来先生になられる方々実習あるいは研究した問題について、それらの付属学校で大いに研さんをし、実習をする。またその研究成果大学あるいはその地域の各学校へ大きく反映し、貢献することによって教育の推進あるいは発展が望まれると、こういうように思いますが、であるならば、現在までどういう点にこの付属学校を設けることによってその成果教育界に反映されたか、実績といいますか、そういったような点を御説明願いたいと思います。
  10. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほど申し上げましたように、それぞれの県における教育養成大学付属学校におきましては、それぞれ研究課題を設定をして教材研究その他の授業研究を進めたり、あるいは研究発表会の開催や研究論文の刊行というふうなことを行いましてその研究結果を提供し、それぞれの地域における教育向上に寄与をしているわけでございます。たとえば文部省教育研究開発委嘱によって研究実施しているところは、五十一年度におきましては七つの付属学校がこれを受けております。それからまた、先ほど申しました複式学級研究についても十二の付属小学校で三十二の学級が設けられて研究をいたしておりますし、また海外帰国子女教育研究も東京学芸大学あるいは京都教育大学、神戸大学付属学校海外子女教育学級等において鋭意進められているわけでございますし、また特別の研究としては、先ほど申しました東大の双子研究であるとか、あるいは千葉大学の例だとか、そういったものが数多くあるわけでございます。これらはいずれも関係の方面におきましては高い評価を受けていることであると承知をしております。
  11. 白木義一郎

    白木義一郎君 二、三具体的な成果をお聞かせいただくとわかりやすいんですが、この性格上そのような研究を今後もさらに深く続けて成果を上げていくということと、それから、われわれも実は付属高校なんというと相当レベルの高い、いわゆるエリート校であると、進学率も非常にいいというような批判があるし、私たちもそう思っているわけですけれども、それはこの付属学校設立趣旨から出発して、そうして非常に成果を上げて、その結果いわゆる劣等生も非常にできがよくなって進学率がよくなったというならば、これ何も心配する必要ないわけですが、どうもそうでもなさそうなんですね。それについて、もういまから八年前に教育職員養成審議会答申が当時の坂田文部大臣に出されているわけです。これを拝見しますと、大いに改善し、進歩の跡も著しいけれども、あとこういう点を改善し、改革していかなければならないという点がずいぶんあるわけです。その中に、付属高校がエリート化しているという問題も非常に重視して、こうあってはならないと、そのためにはかくあるべきだという答申建議が四十四年に出されているわけです。これらをもとにして検討改善が加えられてきているならば、現在付属学校付属高校の問題は社会批判を浴びる必要ない現状になっているはずなわけですね。ところが、その面については改善どころではなく、ますます批判を激しく受けるような現状になっている。そうしますと、一体、その付属高校は、いま局長から御説明あった、普通の公立学校と違うんだと、この付属学校を設けることによって大きくわが国の教育が充実し、発展し、改善されていく、そのための学校なんだという点と、現実のあり方と、まあ心配になるわけです。それで特にその中で、一般公立学校と、それからこの付属学校費用が同じであるか、あるいは差があるのかという点について、最近の資料がありましたら御報告を願いたいと思います。
  12. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 昭和五十度の数字を申し上げることでお許しをいただきたいと思いますが、小学校におきましては、付属の場合には学校納付金PTA等納付金を含めまして年間四万七千四百二十一円、公立の場合にはこれが五万六百八十円、中学校の場合には付属が四万一千三百九十二円、公立が六万七千六百八十五円、高等学校付属が四万九千百八十七円、公立が七万三千五百四十九円ということになっております。ただ、この数字は若干問題がありますが、公立数字はいわゆる父兄が支出した教育費調査に基づいた数字でございまして、たとえば父兄児童生徒にお金を持たせて、そして買った学用品の代金というふうなものが入っているわけでございますけれども付属の場合にはそれぞれの付属学校について文部省の方で調査をしておりまして、この金額の中には学校が徴収をし、支出をしたものが入っているわけで、そこのところで多少経費の性質が違い、直ちに両者を比較できない点があるわけでございます。しかし、私ども承知をしております数字では以上のようになっておるわけでございます。
  13. 白木義一郎

    白木義一郎君 付属学校はそういう設立趣旨で設けられておりますから、設備その他普通の公立学校と同じ教育もしなければならない、さらにそれに加えて特殊性を活用しなければならないという点について、まあ公立よりも教育費が安いと、これはわかるんですが、今度PTA会費なんかになると、これは文部省からの資料ですが、逆に付属学校の方がはるかに高いと。で、いま報告していただきましたように、通算すれば付属学校の方が若干安いと。しかし、父兄負担となると、これは付属学校の方がはるかに多いわけです。で、小学校では付属PTA等納付金は一万一千五百四十七円、公立では千五百九十二円、中学では付属の方は納付金PTA等納付金は一万六千八十七円、公立の方は千七百十六円、高校付属が一万九千百七十九円、普通公立高校が五千百九十八円と、こういう大きな、ほとんど比較にならないほど父兄負担が多いわけです。そうして、幼稚園あるいは小中学校を終えて高校へ入ると、もう一般公立高校と同じような進学率を目指すといいますか、非常に激しい入学試験の姿があるわけです。そうしますと、四十四年の答申を見ますと、この答申の中では、付属学校というのは普通の公立学校とは違うんだということを父兄によく徹底すべきであると、こういう答申が出ているんですが、果たして大学あるいは文部省でこの答申を受けて、そして、この答申どおり一般父兄にその趣旨を徹底しているならば、何年前に答申をされている問題がそのまま現在に至って非常に入試地獄の先頭を切っていると、エリート校と世間から目されている。次第に付属学校としての特殊性が失われていくと。その失われていくということは、これから学校先生になるべき教育関係学生たち実習には不適当な場になっていくんじゃないかと、そういう心配をするわけですが、そこで、答申にありました趣旨を周知徹底せしめるという点については、いままで各大学で具体的にどういう方法、方策をとられてきているかということをおわかりでしたら御説明願いたいと思います。
  14. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 答申趣旨あるいは付属学校のあるべき姿というようなものにつきましては、もちろん文部省としては、教育大学協会あるいは付属学校連盟等機関を通じ、あるいは個々の大学付属学校に対しまして常に指摘をし、また指導をしているわけでございます。各大学ももとよりこの行政審議会建議趣旨は十分に承知をしておりますから、そのことについてたとえば毎年度の学生募集のための要項の中に掲げて、それを学生、入ってくる生徒に対して徹底をするというふうなことはいたしているわけでございます。
  15. 白木義一郎

    白木義一郎君 それは学校できたときからもう始められていることだろうと思いますが、それが結果的にぼやけたり、無視されて、そして、その目的と方向が大変ずれてきていると、そして、ここの答申でも、付属学校公立学校に比して費用も高く、家庭環境のよい子弟しか入学できないと批判をされていると、それにはこういったような原因があるんだと、こう言われておりますけれども、確かに審議会方々のおっしゃるとおりですね、エリート校になってしまっているわけです。進学のための学校、しかもまあ費用一般公立から見ると安いと、で、しかも受験生が非常に殺到する、選抜が非常に厳しくなるということで、いわゆる環境のいい、頭のいい、優秀な子供しか入学できないとすると——まあ頭のいい子供を勉強させるなら学校先生じゃなくても私でもできます。学校先生というのはできの悪いのを落ちこぼれさせないためにそこに先生の生きがいと情熱があるんじゃないかと思うのですよ、できのいいのはもうほうっておいても大丈夫。それが、付属学校がもういわゆるエリートコースへ乗るような子供ばっかり集めて、それで進学率がいいとかなんとか言い出したんじゃ、これはもう性格を変えた方がいいと思うのですね。で、この設立設置趣旨から言うと、むしろ非常に悪い環境とか、あるいはできの悪い子、あるいはできは悪いけれども、何か一つ非常に輝きを持っているような子供とか、そういったような、いわゆるここに載っております多様化した子供たちを集めて、それに一般教育を施しながら、大学学生あるいは教授、先生方付属学校で大いにうんちくを傾け、研究し、検討し、あるいは実態を把握して、そして教育に大きく貢献する、そういう学校でなければならないのじゃないかと、こう素人の私は思うんですが、局長いかがですか。
  16. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、付属学校というものが設置をされている趣旨というのが、やはり大学における教育研究と連携、協力をして、付属学校としてのしっかりした方針というものを持って、そして、それにふさわしい教育を展開をしていく、また、それにふさわしい児童生徒を入れるということでなければ、付属学校設置趣旨がなかろうかと思います。もちろんそういうことで、学部協力をしながら実践的、実証的な教育に取り組んでいる付属が多いことはもとよりでございますけれども、特に高等学校の場合に、一般的には、付属高校の場合に競争倍率が高く、したがってどうしても学力の高い者が入ってくるということから、特に受験勉強ということをさせているわけではないけれども、結果としては、世の中から強く指摘をされ、批判をされるような状況になっている点が見られるわけでございます。これについては、付属学校側も特にこの数年積極的に問題に取り組もうという姿勢をとっておりますし、今年度は関係特別委員会をみずから設置をして、その中で高等学校入学者選抜方法等についても改善方法をみずからの問題として探っている状況でございますので、私どももそういった各大学なり付属学校努力というものをさらに支援をする形で指導を続けてまいりたいと思っております。
  17. 白木義一郎

    白木義一郎君 それで、まだ試験期日には大分日がありますけれども受験する方あるいは受け入れる方としてはすでに万端の準備、心構えをしつつある時期じゃないかと思います。そこで、殺到する激烈な試験入試状況になる——付属学校が、その一つに、ほかの普通の公立学校試験期日が別だと、で、付属学校の方が早く試験をやると、それでだめだった子は一般公立入学試験を受けなさいと、こういうふうに現況はなっているそうですが、この点もこの答申では、真剣かつ積極的に検討し、改善をしなければならないと、このように答申が出ておりますけれども、来年の二月、三月の試験期に向かって現況はどのようになっておりますか、あるいはその入学試験の問題について体制がどう改善方向へ進んでいるかを御説明願いたいと思います。
  18. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、ことしの八月十六日に教育大学協会附属学校入学者選抜方法改善特別委員会が取りまとめた入学者選抜方法改善報告の中で、付属高等学校入学試験期日につきまして、これを公立高等学校と同一の日に実施をすることが考えられるということを指摘をし、さらにそのことを通じて入試の問題についても、公立高等学校共通にすることもできるのであるから、そういった方向地域関係行政機関とも連絡をとりながら進めなさいということを述べております。また、選抜期日を再検討してもなお選抜期日公立高等学校よりも先にやるという場合には、「その根拠を明確にすることが望ましい。」というようなこともあわせて指摘をしているわけでございます。現在それぞれの付属高校においてこの点についての検討が取り進められているわけでございますが、その結果が具体的にどうなるかということについてはまだ私どものところには数字が取りまとめられる状況までには至っていないわけでございます。いずれにしても高等学校につきましては、それぞれの事情に即しながら何らかの改善の方途が講ぜられるものということを期待をしております。
  19. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、それではことしは結局どういう試験をするかという問題ですが、これから期日を一緒にするかしないかと、これが一つの大きな問題点になると思うんです。  それから選抜方法ですね、一般普通公立高等学校と同じ日にやるということと、それから同じ試験問題でやるか。それから、もう一つは、答申にもありますように、抽せん制を積極的に取り入れるかという問題が残されておりますが、この春の入学試験、各大学付属学校試験の模様はどんなようなぐあいでしたか、あるいはどの程度この四十四年の答申に基づいて抽せん制が採用されているか。
  20. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 四十四年の教養審建議におきまして抽せん制導入指摘をされておりますのは、御案内のように、幼稚園小学校中学校のところまででございます。これは当時は非常に抽せん実施状況が低かったわけでございますが、その後逐年改善をされまして、現在では幼稚園は一〇〇%、小学校で九五.八%、中学校で七五%はすでに抽せんを何らかの形で行っているわけでございます。高等学校の場合には、これは事柄の性質からいたしまして、中学校以下のように抽せん制導入をすることが直ちに望ましいとは言い切れないものがあるわけでございます。建議の中におきましても、高等学校についてはむしろ地域公立高等学校選抜というものを例にとって、そしてそれとの関係改善を考えるようにという御指摘をいただいているわけでございます。ただ、先ほどの八月の特別委員会報告の中では抽せん制の採用について触れておりまして、大学学部の特別な教育研究計画に基づいて実験学級を編制するための方法として抽せん制を採用するということは、これは付属学校役割りを果たす上で相応の意義を持つ、その必要性を持つと考えられるけれども抽せん制の採用等具体的な方法等についてはやはりそれぞれの大学学部でその教育研究計画と関連させて、さらに今後の検討に待つべきだというような慎重な物の言い方をいたしております。高等学校抽せん制を現在採用しているのは一校だけでございますが、来年の春の入学試験の場合に付属高校で大幅に抽せん制導入されるというような事態はいずれにしても起こることはないと思います。
  21. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、試験は、付属高校進学試験の日は一般公立学校より早い、それから、教育費はやっぱり普通の公立学校よりも安い、ただし、PTAははるかに会費は高いですよというようなことは付属学校でも言わないと思うんです。そうすると、一般は安いわ、しかも試験は早くやる、そこで入れなくても次の普通の公立学校試験を受けられるというようなことであれば、幾らその趣旨はこうでございますとかなんとか言っても、これは普通の学校と同じだということになる。そうなればいっそ一思いに設立趣旨なんか大幅に変えて、とっちゃって、それで幾つか高校がふえたと、足りないんですから——というようなことにできるわけですけれども、しかし将来の教育改善あるいは教師の質の向上等を考えれば、どうしてもそういうものが必要だということで設けられた付属学校ですから、何とかこれを生かしていかなければならない。あるいはいまこれからもだんだん問題になってまいりますけれども養護学校等の問題も出てきます。あるいは身障者とそれからそうでない子供とをまぜて、そして勉強さして、その成果あるいは研究なんということも必要だろうと思いますし、あるいはいま問題になっている落ちこぼれの子供たちをどう拾い上げていくかという点は普通の学校じゃできないわけです。で、この付属学校で真剣になって、大学学長を先頭に文部省文部大臣大学局長も真剣に取り組んでこの制度をあるいは学校を利用し、活用していかなければならない、そういうことを心配しているわけですが、そこで局長さん、もう少し具体的に、これならまあまああれだけれども、逐次改良の方、改善方向へいくんだなというような答弁をしていただけませんかね。漠たる抽象的な……
  22. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十二年度の具体的な改善の内容というのは先ほどもお答え申し上げましたように、まだわが方は把握をしていないわけではございますけれども、これまでの付属学校関係者の検討の経過から見まして、中学校以下の学校の場合には倍率のきわめて低いものを除いてはおおむね抽せん制を採用するという形になるであろうと思います。現在まだ小学校中学校におきましては抽せん制実施をしていないところはありますが、それはおおむね来年の春からは抽せん制導入するという形で改善を加え、また現在抽せんを行っているところでございましても、その抽せんの行い方についてそれぞれ学校によって工夫、改善を加えてくれるというふうに考えております。  高等学校の場合に入試期日の問題、それから入学試験の問題についてどのような改善が加えられるのか、あるいは調査書の活用ということを従来から言っておりますし、またそれは活用はいたしておりますけれども、具体的にそれについてどのような前進が見られるか、あるいは特別委員会報告一つの課題として掲げている先ほど御指摘のございました抽せん制の問題であるとか、あるいは推薦入学の問題であるとか、そういったことについて各高等学校がどのような形で対応してくれるかということについて、これはやはりもう少し経緯を見ないとお答えができないわけでございます。ただ、ことしの春の特別委員会報告の内容というのは、基本的な趣旨というのは先生指摘のように、四十四年の建議の延長線上にあるわけでございますけれども、しかしいろいろな御批判にこたえて大学あるいは付属学校側がみずからの問題として事柄を提起して自分たちの問題として提言をしてきたというのは今回が初めてでございますから、そういった意味で付属高校の場合におきましてもそれぞれ何らかの改善措置がことしの春はとられるということを期待しているわけでございます。
  23. 白木義一郎

    白木義一郎君 期待することはわれわれが期待するのであって、われわれから局長さんに、答申建議もこれあり、何とかその方向へ持っていくべきじゃないかと、こう思ってお話もし、お伺いもしているわけですが、現時点で大学局長として、この付属学校の問題、答申を含めて、それは各大学でいずれは相談して何とかするだろうから、いまの時点では何とも言えないということじゃなくて、そうしますと、また四十四年のあれがさっぱり生かされないと、そういうことになってしまうおそれがあるわけですね、その点もう一度ひとつ。
  24. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほどもお答え申し上げましたように、日本教育大学協会あるいは附属学校連盟の会合等を通じまして、私どももこれまで御指摘をいただいておりますような事柄について大学あるいは付属学校側の真剣な対応を求め、指導をしてきておるわけでございます。募集要項が決定をされる時期になってきているわけでございますから、さらに私どもとしてはそういった指導付属学校あるいは大学に対して強めてまいりたいと思っております。
  25. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうすると、局長さんとしては教養審ですか、教養審答申に沿って今後さらに推進をしていきたいと、こういうお考えをお持ちだと、こういうわけですね。
  26. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教養審建議にもちろん沿って努力をするわけでございますし、また教育大学協会の方の特別委員会入学者選抜方法改善について報告をことしの夏に出しているわけでございますから、その報告方向に沿って具体の改善が進むように努力をしてまいりたいと思います。
  27. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、現状ではこの付属学校趣旨に沿ってないと残念ながら思わざるを得ないわけですが、そうしますと、いま社会問題になっている落ちこぼれの子供たちをどうこれをこぼさないで拾い上げていくかということがこれからの大きな課題にもなっていくと思うんです。これの元凶であると、進学のための付属高校という状態であるならば、この落ちこぼれの研究はここではできないと、また教育学部先生を目指す学生たちもその問題にどう対処し、研究をしていくかという場が恐らくないし、なくなってしまう、そういう問題が心配があるわけですけれども、この点はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  28. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 中学校以下の付属学校の場合にはもちろん問題のあるところが絶無だとは申し上げませんけれども、先ほど来お答え申し上げておりますように、それぞれ大学側とも連絡をとりながら特別の研究テーマを掲げて、そして積極的な付属学校としてのそれにふさわしい教育研究に取り組んでいるわけでございます。そういう意味でいま先生指摘のような事柄につきましても、付属学校はそれぞれ現在の体制で十分に取り組んでいけるというふうに考えます。  やはり問題は、付属高等学校、特に普通高校にあるわけでございますが、そのあり方が付属学校設置趣旨に沿ったものとなるような努力というのは、先ほど来申し上げておりますように、付属学校側もようやくにしてみずからその努力をしようという気構えを具体的に見せているわけでございますから、それを助けながら私たち指導をいたしてまいりたいということでございます。
  29. 白木義一郎

    白木義一郎君 このままだとこれから卒業して先生になっていく先生も相変わらず落ちこぼれの問題については研究も十分できなかったと、あるいはその経験も薄いというふうなことになると、いまでさえ進学進学に気を奪われている付属高校が何の使命も果たせなくなっていくと、そういう心配がある。そんなことは私が申し上げなくてももう局長さんの方は十分おわかりでしょうが、いろいろとお忙しいでしょうからね、いつも端っこへ、片すみへ押し寄せられて、ああそういうこともあったなあと、きょうは少し付属高校の方もめんどう見なくちゃというような気持ちにおなりでしょうけれども、そこでその点もひとつ大いに推進改善のために努力を払っていただきたいと思いますが、今回教育課程の改善がされましたけれども、この教育課程の改善にどれだけこの付属学校が寄与されているかということについて若干心配をしておりますが、付属学校があるために今回の教育課程の改善に大いに寄与した、こういう点があるというようなことを具体的にひとつ紹介をしていただきたい。
  30. 諸沢正道

    政府委員(諸沢正道君) 学習指導要領改善いたします場合には、それに先立ちまして、現行の指導要領の問題点というような点についてそれぞれの教科なり、領域ごとに公立学校先生を含めて関係先生方研究会を開くというようなことは御承知のようにやっておるわけであります。そこに付属学校先生も参加していただいて、そして日ごろの教育実績をそこで発表していただくというようなことはもちろんやっております。そして、現実に昨年の暮れ教育課程の改善の方針について教育課程審議会より答申がなされますと、具体的に学習指導要領をつくります作業をします場合には、これは文部省だけではできませんので、それぞれの教科ごとに十数名の協力者というのをお願いいたしておるわけでございますが、その協力者の中に公立学校先生のほかにもちろん付属学校先生のそれぞれの経験の豊かな方をお願いして作成に協力していただく、こういうような実績があるわけでございます。
  31. 白木義一郎

    白木義一郎君 幼稚園でも抽せん小学校でも抽せん選抜、それから中学でも選抜抽せんで、幅広くいろいろな階層、いろいろなクラスの子供を集めて、そして一定の普通の学校と同じ教育を施しながらも教育のための実験に大いに寄与させる学校であると。そういう点ではあるいは中学から高校へ行く場合にはそのまま無試験付属高校へ出すべき状態の子供もいるでしょうし、あるいはさらに新たに付属高校で必要な子供を入れて、そして大学先生も教官もあるいは学生も、その学級をどういう研究実習の場にしていくかということは、非常に大事なことだろうと思います。先ほどもちょっと触れましたけれども、やはり障害児とそれから健常児を、普通の子供ですね、と一緒の場で勉強さした方がいいか悪いかというような問題も、この付属学校から研究成果が出てこなければならないと思います。われわれは現場じゃありませんけれども、やっぱり一緒に学校で遊ばせ、学ばせていくことが必要じゃないかと。そういうことになると、教育方法研究しなければなりませんし、施設あるいは設備、あるいは教育課程など、どんどんこれから研究して、それを具体的に全国の学校へ、教育界へ反映をしていってもらわなければならないと、こういうように思いますが、その点大学局長、御意見がありましたら伺っておきたいと思います。
  32. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 付属の小中学校につきましては、それぞれ特殊学級の整備を進めているわけでございます。特殊教育の点で付属学校がそういう実証的、実験的な教育研究役割りを分担をするということはきわめて望ましいことでございますから、初中局とも十分に連絡をとりまして、現在でも付属学校で行われているところであろうというふうに私は考えますけれども、さらに御指摘の点については付属学校側と話を進めてみたいと思います。
  33. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは、今度職業教育という点が非常に進められております。そこで、付属学校でこの発展していく職業学校に対処する研究、あるいは何といいますか、教育課程というような、職業科に対する、それに資する研究をするためには、いまの職業教育は全国で四つあると伺ってますが、これをさらに大幅に増設あるいは新設して、そして将来の職業教育のあり方に大いに学校先生方学生研究をしていただきたい、そのように思いますが、その点は何か文部省で考慮をされておりますか。
  34. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、いま付属の職業高校は四校あるだけでございます。しかし、付属の職業高校をさらに増設をするという計画は、私どもはいま持っておりません。むしろ先ほど来御指摘のように、付属高等学校における付属学校としての教育研究の対応ということを考える場合に、多様化している高等学校段階におけるカリキュラムの問題として、いろいろ多様な構成の対応というふうなことも付属学校としての教育研究ということで進めていってほしいというふうに考えます。
  35. 白木義一郎

    白木義一郎君 局長さんは考えてないとおっしゃいますけれども、現在、国立大学——東京工業大学付属高校ですね、それから愛媛に農学部の農業高校がある。それから、やはり教育大の付属の坂戸高校、これ農業のあれだし、それから芸術大学音楽部の音楽高等学校、こういう現実に設けられているということは、その必要性が大いにありというんでこの付属高校設置されたんじゃないかと思います。ぜひひとつ、考えていないとおっしゃらずに、大臣も皆さん含めて、この点これからますます大事な問題になっていくんじゃないかと、こう思いますので申し上げるわけですが、局長はこの現状でそっちの方はいいと思っているとお思いでしょうか。
  36. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘の四つの職業高校につきまして、それぞれその充実にさらに力を尽くしていかなければならないということは考えておりますけれども、この四校のほかにさらに付属の職業高校設置をするという計画は持っていないわけでございます。
  37. 白木義一郎

    白木義一郎君 計画じゃなくて、お考えはありませんかと、考えてないと。しかし、現況から言うと、もっと前向きに研究され、取り組まれる必要があると私は思うわけです。計画があるとかないとかじゃない。ないのはわかりましたけれども、そんなの必要ないんだということであれば、また私を納得をさしてくださればいいわけです。
  38. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在、各地方の大学で、さらに付属高等学校をつくりたいという希望のあるところがあることは承知をしておりますが、これはそれぞれやはり普通科の高等学校をつくりたいという希望であろうと思います。これに対しては、私どもはもうこれ以上普通科の高等学校はふやさないということをきつく各大学には申し上げております。付属の農業の高等学校その他職業の系統の付属高校をつくりたいという要望は、大学からは出てきておりません。私ども付属高校につきましては、先ほど来御指摘のようなさまざまな問題を現在の付属高校が抱えているわけでございますから、その改善に当面全力を挙げるということで対応してまいりたいと考えているわけでございます。
  39. 白木義一郎

    白木義一郎君 じゃ、くどいようですが、とても現在は手が回らないと、付属高校の整備・充実で手いっぱいだけれども、それを早急に整備してあるいは改善して、その上でゆっくり職業教育の面も研究したいと、まあそういうお考えだと承っておきますが、大臣、この職業高校ですね、付属の。いま言ったようなこれからどんどん発展していく職業学校先生となるべきあるいはまたそれを指導していくいろいろな研究問題を実習し、研修する場としての職業教育のための付属高校というものがもっとあった方がいいと思うんですが、大臣、どう思われますか。
  40. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) これは御指摘のように、職業教育というものは大切にしなければならぬという御指摘も受けておりますし、また付属高校のみならず普通の職業高校におきましても、どのようなカリキュラムで、どのような方法に持っていったらいいかということは、常に研究をし、検討を繰り返しておると思いますので、それでもなおかつ、これで完全ではない、前向きにいろいろとふやすような努力をしてみろという先生の御指摘でございますが、御意見十分拝聴いたしましたので、これからまたいろいろそういった問題を取り組みますときに研究の課題にさせていただきたいと思います。
  41. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは最後に、先ほどからも入試の問題が局長からも私からも出ましたが、共通一次テストの期日の繰り下げという問題が大きくいま取り上げられていると報じられておりますが、この共通テストの期日については、当委員会で各党の先生方から、委員から、繰り返し繰り返し、十二月という期日は、もういつやるわけにもいかないけれども、これでベストじゃないにしても、もうどう検討してもこの十二月の中旬にやるしかないという審議が繰り返され、あるいはまた文部省の方からも再三そういうお答えがあったわけです。しかも、参考人として高校の代表、大学先生方もお呼びして繰り返し審議された問題で、という気持ちに私たちはなっていたわけですけれども、最近になりまして各高等学校から、これはとても迷惑だと、十二月に共通テストをやられたんでは高等学校側では非常に迷惑だ、一口に言えば、そういう声がまた上がってきたので、文部省ではこの問題を改善会議にかける、もう一回検討してもらうというような報道がされておりますけれども文部省の腹構えとしては、従来の委員会においてはもう確定的な、まあ決意に近いものであったわけですが、やはりこれは真剣に、そう言えばそうだと、あのときはああいうふうに委員会では言ったけれども、もう一回よく考えてみると十二月にはいろいろ問題あるなと、高校側の言うのももっともだというようなことでまたもとへ戻ったのですか。それとも、いわゆる政治的に、一応はそういう声が強くなったら取り上げて、そのうちわあわあわあわあ言っているうちに何とかなるだろうというようなことでこれが表立ってきたのかどうなのか。一体この点について、これは学生受験生にしてみると、非常に注目すべき文部省の態度だと、こういうように思いますので、その点最後にお伺いしておきます。
  42. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先生指摘のように、前国会におきまして入試センターについての御審議を賜りました際に、共通一次の時期としては三月三日を二次の試験期日というふうに考え、三月二十日をその発表の時期というふうに予定をしたいと、そうだとすると、やはりそれから逆算をしてぎりぎり五十三日程度の準備期間というものは追試験等を含めてとっておかないとぐあいが悪い、さらに雪の状況もあるし、どうしてもそういった点から考えて初年度万全を期するためには十二月の二十三、二十四という日にならざるを得ないということを申し上げたわけでございます。この点はその後の入試改善会議でもいろいろと御議論がありましたけれども、やはり初年度の準備の万全を期するために十二月の末ということで実施要項が決まっていったわけでございます。しかし、この十二月の末に共通一次を予定をするということについては、両院の委員会での御議論の際にも、何とかそれはもっと繰り下げられないかという御指摘は当時からも強くいただいたわけでございますし、また法案成立の際の附帯決議の中でも実施期日の問題については、繰り下げ方の御指摘があったわけでございます。  で、入試センターの方でその後全国において高等学校関係者に共通入試のやり方の趣旨、内容を説明もし、また高等学校関係者側の意見を聞いているわけでございますが、その中で、やはり各地とも一様して十二月の実施期日というのは高等学校の二学期のカリキュラムの問題を考えても何とか繰り下げられないかという御要望が非常に強く出てきているわけでございます。もちろん実施要項をすでに入試改善会議の議を経て私どもは決めて通知をいたしておりますから、そういった立場で申し上げれば、十二月二十三日、二十四日というこの期日につきましては、それを初年度については維持をしたいという気持ちがあることはそのとおりでございますけれども、反面これだけ強く試験を受ける側の方から、それにしてももう少し再検討できないかという御要望がある以上は、やはりそれを真剣に受けとめて誠実に検討をするというのが行政のとるべき姿勢ではなかろうかと考えるわけでございます。私どもはこの時点で十二月二十三、二十四日の期日の繰り下げが可能であるという見通しを持って申し上げているわけではございません。これについては、どうしても繰り下げるということになれば、三月三日の期日あるいは三月二十日の発表の期日というもの自体を繰り下げるということを前提にいたしませんと、円滑に十二月二十三、二十四の共通一次の期日を繰り下げるというわけにはまいらないだろうと思います。そういった点について国立大学あるいは私立大学の側がこれを了としてくれるのかどうか、そういったことについて、さらに私ども関係方面と接触をいたしまして、その上で改めて入試改善会議にお諮りをして決めていくことでございます。少なくとも現在の時点では、これだけやはり試験を受ける側からの要望が改めて出てきている以上はそれに真剣に対応をして、可能性を検討してみるというのがとるべき態度ではなかろうかというのが現在の時点での私どもの考え方でございます。
  43. 白木義一郎

    白木義一郎君 慎重に対処しなきゃならないというのは、これはもう言うまでもないことですが、いまおっしゃったようなことはさんざ繰り返されたわけです、この委員会でもですね。そこで改めてそういう受験側の方から強い要望があった、その要望の中にいままで研究されなかった新しい問題が出てきたために、これは再検討しなきゃならないと、文部省がそういう慎重な態度をおとりになったのか。それともこれはああは言ったものの、あれはひとつ法案を早く成立させるためのあれであって、実際のことを考えればやっぱりこれはもう一回練り直さなきゃならないというようなことでこういうことになったのか。いずれにしても慎重に事を運ばなきゃならぬ問題ですけれども、やはり受験生の立場、社会的影響も考えていかなきゃならないと思うんです。で、できるだけ早く、踏み切った以上は納得をするような、せざるを得ないような方向で踏み切っていただきたいと、こう思いますので、その点を十分考慮して、ああは言ったものの、ちょっと高校から強く言えば文部省は態度を変えるんじゃないかというようなふうにとられかねない面もあるんじゃないかと思いまして、まあこれも無理なことでしょうけれども、何しろ日を切られた問題ですから、大体最初共通テストの日をいつごろに確定をしていこうというお考えで進められているか。それをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  44. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) すでに共通入試実施の時期は十二月二十三、二十四ということで決定をいたしまして、それが現在走っているわけでございます。ただ私どもが現在入試改善会議の方の御了解を得まして、その期日の再検討についてと申しますか、その期日を繰り下げることができるかどうか、その可能性の検討について関係国立大学や私立大学とも協議をしながら検討を進めようというわけでございます。その結果、最終的に期日をどのように措置をするかというのをどの時点までに決めることができるかというのは、これは現在の時点では具体的にはなかなか申し上げかねるわけでございます。国大協の総会もございますし、あるいは私立大学側の関係団体との協議の進捗状況もございますが、いずれにしましてもできるだけ早く事柄を決めたいと考えております。
  45. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣、それでよろしいですか。大幅後退ということなんですがね。
  46. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) できる限り大学入試改善がみんなの努力によって文字どおり改善に向かって一歩前進するように最後まで努力を続けたいと思っております。
  47. 白木義一郎

    白木義一郎君 じゃ、終わります。
  48. 松前達郎

    ○松前達郎君 私立大学の問題、最近非常に世間をにぎわしておるわけなんですが、この問題について若干の質問をさしていただきたい、かように思うわけですが、最近の状況を見てみますと、私立学校というのはどうも将来このまま存続していけるのかどうか、非常に重要な時期に差しかかっているんじゃないかと私は思っておるわけなんです。  まあわが国においての私立学校役割りというもの、これは非常に重要な役割りを演じておるわけでありますけれども、私立学校はこれはもう言うまでもなく、独自の教育目標、まあ建学の精神と言ったらいいかと思いますが、そういうものを持って教育に当たっておるわけですけれども、これがある意味で言いますと、民主国家の健全な発展にとって非常に重要な役割りを演じておるのではないか、私はそういうふうに考えておるわけです。で、すべての教育が画一化されて、しかもその内容が一定のものに決められてしまう、こういうことがもしかあるとすると、民主主義の将来について考えても非常に大きな危険をはらむことになりはしないか、こういうふうに私思っております。  特に私学の中で最近問題となっているのが高等教育の分野、とりわけその中で大学教育が非常に問題となっておるんですけれども、現在の大学教育の内容を分析してみると、私学のシェアというのは学校の数で約七四%ぐらい、学生数で言いますと約八〇%ぐらい分担をしているんだ、こういうふうに言われておるわけでありまして、その中で特に最近問題とされているものは学費の問題であろうと思います。この学費がしかも国公立大学と私立大学、これは短大も含めて考えていいんじゃないかと思うんですが、非常に大きな格差がある、学生一人当たりの経常経費や教職員一人当たりの学生数、これらについても大体三対一ぐらいの大きな格差が生じているという点も指摘されておるわけです。  そこで、私立大学まあ大学に限って言いますと、私立大学の学費は高いんだ、こういうことがいま一般的に考えられている、世間での通念になっているようですがこの点をいろいろ言う前に、高くなる基本的な原因というのが一体どこにあるかということ、これは一番基本問題だと思うんです。これをやはりえぐり出してみなければいけないのではないか、そしてその原因に対して何らかの手だてをしませんと、この問題は基本的な解決ができないんじゃないか、こういうふうに私は考えております。特に医歯系大学、最近非常に問題になっておりますけれども、全部が全部、私立大学がいろいろ問題になるようなことをやっているというわけじゃないんですが、この医歯系大学については、国立とあるいは公立、さらにそれと私立の格差が非常に大きい。またそれだからといってそれじゃ学費を大幅に規制してしまえば一体どうなるだろうか、経営の危機が予側されてくる。こういうことなんですから、非常にこの問題、緊急な問題であって非常に重要な問題であろうと思うわけであります。  それと同時に入学金とかいろんな問題が問題にされる。しかも医師養成に当たって大体どのぐらい経費がかかるかとか、いろんな問題があるんですが、それと一緒になって考えなければならないのは、やはり大学の使命という問題だと思うんです。これは医学の発展のために、ただ単に医師を養成するというだけではなくて、その基本的な学問、医学そのものの発展に対して何らかの寄与をするのがやはり大学役割りである。ですから研究の問題ですとか、そういう方面でも大いに活発化していかなきゃならないんじゃないか、かように思っておるわけでございます。それと同時に、私学には建学の精神があるとさっき申し上げましたけれども、こういった問題に基づいてこういった方向教育が進められる。これについても十分考えなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに私は考えておるわけなんですが、ここでこれらの諸問題についてお伺いするわけですが、その前に基本的な姿勢について二、三の質問をさしていただきたいと思うんです。  まず最初に、私立学校教育、特に大学教育、この大学教育におきます私学の役割りにかんがみて、文部省の私学に対する考え方、これは基本的な問題なんですが、あるいは今後の方針、これ大きな問題ですから、これらについてお答えをいただきたいと、かように思います。
  49. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 御指摘がございました私立の大学に限って申し上げましても、現在、生徒数、学校数ともに圧倒的多数の教育を担当しておるのが私学でございますし、また私学はそれぞれ建学の精神や独特の伝統や学風のもとに教育を行ってまいりまして、世のために幾多の人材を輩出したりあるいる研究成果を発表したり、私は社会的にも大きな役割りを果たしてきたものであると、このように基本的には理解しております。なお、この私立大学関係教育条件の維持向上、充実あるいは学生にかかる修学上の負担を軽減するために、文部省としましては、昭和四十五年から私立大学等経常費補助金を創設しまして、また近年は私学振興助成法も国会で成立を見、その趣旨に従って、私学がますます充実、発展していくようにできるだけの御協力あるいは政策的な努力あるいは指導、助言、そういったことを通じて発展をしていかなければならないものだ。結論を申し上げますと、きわめて大切な役割りを果たしてきてもらったものである、こういうふうに基本的には理解をいたしております。
  50. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまのお答えで私学に対する認識といいますか、これについて拝聴したわけですけれども、これ大分前のことですが、ある新聞で、これは恐らく大蔵省の主計官が言ったことが新聞に出ていたのだと思うんですが、経営できない私学はつぶれればいい、こういうふうなことを書いた記事があったんですね、これは週刊誌だったと思うんです。この記事をわざわざコピーをして、私学の予算関係の会議のときにそれを配ったという、これを見てそのときの新聞記者の方々もびっくりしたんだと、こういう記事を私見たことがあるんですけれども、どうもこういう態度を見ていますと、私学教育に対する認識を欠くこともはなはだしいんじゃなかろうかと、こういうふうに私は思うわけであります。恐らくいまのお答えによって明らかになったんですが、文部省にあってまさかこのようなことはないと私は確信をいたしますけれども文部省が私学に対して今後何を期待されるのか、それをひとつ簡単にお願いいたしたいと思います。
  51. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 先生の御指摘にもありましたように、全く画一的な教育ではなくて、それぞれの私学がやはり建学の精神とか独特の校風といいますか、気質を皆が持ってそれぞれ教育を行われるわけでありますから、そしてそれが結果的に社会に大いに至るところで貢献をしてもらうわけでありますから、私ども文部省としましては、私学に期待するものは、どうかその建学の精神に立脚をして有為な人材を世に送り出すために充実した学校運営を行い、教育研究を続けていただきたい、これが率直に言って期待であり、お願いでございます。
  52. 松前達郎

    ○松前達郎君 これは外国の例なんですが、英国の場合ですけれども、たしか英国には大学補助委員会というのが設立をされているはずです。この補助委員会は私立大学に関する補助を取り扱っておるのですけれども、その精神というのが、支援はするけれども支配はしないんだと、こういう精神でこの委員会が運営されている、こういうことを聞いておるのですけれども、このような観点に立っての文部省私学助成に対する考え方、これについてお伺いしたいと思います。
  53. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 先ほどちょっとお話が出ましたように、文部省は、私学というものが健全に前進を続けていってもらいたい、こういう賄いがございますから、その経営の苦しい学校はつぶれるなんというようなことは毛頭考えておりませんし、考えておらない証拠に、私学振興助成法の精神に基づいて私学の経常費の助成等も行いながら、いろいろと教育界に果たしてもらう大きな役割りというもの、それがスムーズに行われるように期待もし、協力もしておるわけであります。肝心なところは、学校の自主性とかあるいは学校の独自性とか、大学というものは、やっぱり一番世の中で自主性もあり、自浄能力もあり、そして健全な経営がしてもらえるものだと、われわれは期待をし、願っておるわけでありますから、最大限に学校の自主性を尊重しながらできる限りの御協力はしなければならぬというので、私学振興助成法に基づく補助金のみならず、あるいは学生個々に対する奨学金の制度とか、あるいは学校そのものに対する融資の制度とかいろいろなことに努力は続けてまいりますが、学校そのものが内容を充実し、健全に発展していただくためには、学校みずからの自覚と申しますか、御努力と申しますか、そういったものに大いに期待をしておるわけでございます。
  54. 松前達郎

    ○松前達郎君 それでは、国立大学と私立大学の格差の問題に入っていきたいと思うのですが、最近その格差が非常に問題になっておるんですが、これはたしか前々回であったと思うのですけれども、田渕委員から医師一人当たりの養成費用というものの質問があったと思います。そこで、国立大学全体として、これは医学部だけの問題ではなくて全体の問題として、関連する諸機関を含めて学生一人当たりの教育関係費用というのは一体どのぐらいに当たっているのか、これについてお伺いします。
  55. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国立大学の場合について申し上げますが、学生一人当たりの教育費は、五十年度の学校基本調査に基づいて試算をいたしますと百三十四万一千円でございます。これにはただ付置研究所とかあるいは付属病院の関係の経費を含まない、学部関係の経費でございます。
  56. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、いまの百三十四万一千円ですか、これにはたとえば東大あたりの、東京大学の例でいきますと、二十九ほど教育用の施設があると思いますけれども、低温センターとかあるいはその他、原子力工学研究施設とかいろいろあるわけですね。これは含まれていないわけですか。
  57. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおり付置研究所、付属病院の経費あるいは付属学校の経費を含まないで計算をしたものでございます。
  58. 吉田実

    委員長吉田実君) 三角局長——いいですか。
  59. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 結構でございます。
  60. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、今度はその中で医学部について抜き出してみたいと思うんです、医学部の問題非常に問題になっておりますから。医学部について抜き出してみますと、医師一人当たりの養成費というのは一体幾らぐらいになるのか、これは前々回の田渕委員の質問に対する答弁の中の費用と私は違うんじゃないかと思うんです。というのは、病院関係とかあるいは研究所とかそういった付帯した設備あるいは機関があるわけですから、これもやはり病院といったって教育病院なわけですから、そういうものも含めて考えていかなきゃいけないんじゃないか、教育用の費用として考えていかなければならないと私は思うんで、その辺を含めて考えた場合に一体幾らぐらいになるのかお伺いしたいと思います。
  61. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国立大学の医学部の場合について申し上げます。  やはり昭和五十年度の学校基本調査を基礎といたしまして試算をいたしますと、いま申しました学部関係の経費が約二百七十二万円になります。これに付属病院の経費を加えるわけでございますが、加え方がきわめてむずかしいので、仮に付属病院の収支差額、これを含めますと全体で約五百七万円に相なります。
  62. 松前達郎

    ○松前達郎君 医師系の大学で高額の入学寄付金を取るということが問題になっておるわけなんですが、医師一人当たりの養成費というのが相当大きな金額がかかるんじゃないか。いまございましたように、五百七万円はこれは国立の場合ですけれども、五百七万円ほどの経費がかかっている。これには付属病院の経費が加算されているということなんですけれども付属病院の施設とかそういうものについてこれは加算されていないわけですね、施設とかそういったような関係費です。
  63. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 付属病院の関係の経費の中にはもちろん経常的な経費も臨時的な経費も全部入れまして、そして、その所要の経費と病院収入との差額というものを学生一人で割り戻してみたものを加えてあるわけでございます。
  64. 松前達郎

    ○松前達郎君 それでは、自治医大が発足しているわけなんですけれども、この自治医大が地方行政機関、自治体から学生を受け入れるそのときに要求している教育費、これはどういうふうに呼んでいるかはっきりわかりませんけれども、これらの金額がわかっているんじゃないかと思うんですが、それについてお答え願いたいと思います。
  65. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 自治医科大学は、昭和五十一年度で申しますと、各都道府県から一律に七千八百四十万円の負担金の交付を受けてございまして、総額で三十六億八千万円余りの収入が計上されております。これを在学者総数で除して一人当たりの額を出してみますと約六百八十万円程度となりまして、先ほどの数字より多い数字が出るわけでございますが、そしてこの経費の算定方法の詳細については私どもつまびらかにいたしておりませんが、学部が必要ないわゆる経常的経費以外の施設費、債務償還費等の臨時費、あるいは学生の修学費、それから付属病院の経費など、こういった経費もすべて含まれていると考えられますので、先ほど来の数字よりは大分大きな数字になっておると思われます。
  66. 松前達郎

    ○松前達郎君 これも新聞なんですけれども、四千三百万円一人当たり自治医大について経費がかかっている、そういう記事がかつて出ていたのですけれども、いまのですと七千八百四十万ですか。これは七千八百四十万と言いますが、一県当たりですね、いまの。一人当たり四千三百万という記事がかつて出ていたんだと思うのですが、どうもその辺がはっきりしないのですけれども、これは何年度——年度が恐らく違って、たしかいまのおっしゃった年度より前の年度はもうちょっと高かったのじゃないかと、そういうふうに私思うんですけれども、その点いかがでしょう。
  67. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) ただいまの御質問ちょっと正確にお答えするだけの材料をいま手元に持っておりませんが、先ほど御説明申し上げました五十一年度の数字でも一人当たりの額が約六百八十万円でございますから、これを六倍すると先生いまおっしゃいました数字とほぼ近い額であろうと思います。
  68. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、これはこういう計算が果たして正しい結果を出すかどうかわかりませんけれども、私が妙な計算をしてみたのですけれども、自治医大が一人当たり四千三百万、これ新聞に出ていた数字ですけれども、こういう数字をもとにしてこれを一年当たりの経費に直しますと七百十六万というのが出てくるのですね。その七百十六万に、かつて答弁の中にあった私学と国公立の格差の問題、九三%という数字が出ております。この数字を掛けますと、ちょうどこれが六百六十六万という数字が出てくるのです。この数字と、私立大学の場合の経常支出の一年間の学生一人当たり三百二十八万一千円、これも答弁の中にあったわけですが、この金額とそれからさらに寄付金ですね、五十二年度に集めた寄付金の平均額二千飛び二十九万という数字が出ておりますけれども、この数字を六年間に分けて金利とは別にして分けて考えてみますと、これが三百三十八万円という数字が出てきます。その三百三十八万という数字を足してみますと、これが何とちょうど六百六十六万ぴっしゃりと一致すると、こういうふうな結果が、これは私の計算で、これが正しいかどうか別ですけれども出てくるわけなんで、どうもその辺から見てみますと、この医者の養成に対する費用というもので大きな影響を持っているものが何かほかにあるのじゃなかろうか、この辺が私非常に問題だと思っておるわけなんです。  そこで、医者養成に関する費用の中で算出根拠ですね、これはいろんな計算の仕方があるのじゃないかと思うのですが、この算出根拠がどうもその辺がはっきりしてないのじゃなかろうか、おかしいのじゃなかろうかという感じも持つわけでありますけれども、私立医科大学協会、これが学生納付金について来年度から既設大学について平均一千万円、新設大学について八百万円、これ自治医大は別なんですが、そういうガイドラインを決めているということ、これは九月九日の新聞に出ておるわけなんです。その中で資本的支出ですね、これについては任意の寄付金とかあるいは学債などでやりくりするのだ、こういうことを考えているということを述べておるわけなんですが、経常経費というものの考え方ですね、これがどうも現実にマッチしていないんじゃないか、そんなような気がしてならないわけなんです。その点についてどういうふうにお考えになっているか、御意見を伺いたいと思います。
  69. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) いまお話にございました私立医科大学協会がガイドラインといったものを出しておりますが、これは医科大学のうちの既設校並びに新設校につきまして、それぞれ一校当たりのいわば不足額といったものを示したものでございますが、その内容はそれぞれ昭和五十一年度の額を基礎といたしまして五十三年度の額を推計いたしておりますが、その推計といたしましては、まず一つにはいわゆる消費支出でございます。それからさらに資本的支出も出しまして、その合計から予測される学生納付金、手数料、補助金といったものを推定しまして、それを差し引いたものというふうになっておるわけでございます。その結果として一校当たりの五十三年度の収支差額を既設校で十五億八千二百万円、新設校といたしましては二十億三百万円というふうになっておりますが、ちょっと御指摘のございましたように、この不足額を全部納付金にして徴収するというのではございませんで、経常的経費の不足額の範囲にとどめたい、こういうふうにしているわけでございます。それで経常的経費の範囲という問題でございますが、これにつきましては私ども文部省側の考え方と医科大学協会側の考え方でほぼ共通の理解に立っていると見ておりますが、たとえば借入金の利子をどう扱うかといったような点について、なお若干協議、お互いに詰める余地が残っておる状況でございますが、これはいずれ協議の結果、共通の立場に立てるというふうに私どもは考えております。
  70. 松前達郎

    ○松前達郎君 またさっきの私立医科大学協会の中にある文章なんですけれども、どうも文部省の言うとおりに経常経費の範囲を余り狭く限定してしまうと、経営が成り立たないんだなんていうことをその中に言われておるわけなんです。この点が非常に不明確なものですから、それぞれの解釈が違っていて基本的な数字がなかなか出てこない、こういう点についてまた今後ひとつ最大の努力を払っていただいて、はっきりした内容のものを基本として打ち出していただきたい、かように要望しておきたいと思います。  そこで、今度、大学設置基準についてお伺いしたいと思うんですけれども、どうもいろいろ問題になっている大学、これは名前挙げてみますと、これ全部じゃないかもしれませんが、川崎医大、杏林、愛知、金沢あるいは東北歯科大、松本歯科大、これらをずっと見ますと、これははっきりしていることは、四十五年以降四十七年までに設立をされている大学であって、しかも単科大学なんですね。これが共通した一つの問題なわけです。で、どうもそれが、その問題をいろいろ考えているうちに設置基準の問題が一体どうなっているか、その関連がどうなっているのかという問題に入ってきたわけなんですが、医大の設置基準について、現在そういった設置基準そのものがはっきりと明示されているのかどうか、それについてお伺いしたい。
  71. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学設置基準の中で規定されていることはもちろん明らかになっておりますし、さらに、その基準を適用をして大学を認可していく場合の医学部設置審査の基準につきましても、これまたこれは大学設置審議会の取り決めたところでございますけれども、かねて公表をし、明らかにしております。
  72. 松前達郎

    ○松前達郎君 先ほどの大学の例から見ますと、どうもその当時設置基準が明確でなかったんじゃなかろうか。いまのうちだからつくってしまえと、ちょうどたまたま高度経済成長の時代でもあり、医師が不足しているんだと、こういうふうに言われた時代だったんで、それに便乗して何とかいまのうちつくってしまった方がいいんだと、いずれこれ厳しくなるんだと、そういったような考え方がどうもその底流にあったんじゃないか。私は実を言うとそういう話も聞いたことあるんです。そういうふうなことで、こういった大学がつくられて、しかも、その大学のつくる原因——原因といいますか、集団ですね、大学をつくろうと言い出した集団というのはお医者の集団、医師の集団である。したがいまして、ある意味でいいますと、大学の運営そのものに対してもベテランではない、どっちかというと素人、こういう人たちが寄ってたかってつくり上げたというふうな、大学運営の基本的な方法を知らないようなグループがつくったんじゃなかろうか。ですから、当然その大学性格としてあらわれてくるのは、お医者さんさえ養成すればいいんだ、こういうふうなことに流れがちであって、大学そのものが教育の場であり、しかも研究の場であって、医学の向上のために大きく役立つんだということはどうもその中に入っていないんじゃないか、私はそういうふうに思っておるわけなんですけれども、その点についていかがでしょうか。
  73. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘の点で私どもが具体的に反省をし、改善を加えた点が一つございます。それは付属病院の審査基準における取り扱いでございます。四十五年から四十七年度に設置された医科大学の審査の際の審査基準におきましては、付属病院の規模自体は現行と同じように、たとえば定員六十人であれば六百床、百二十人であれば九百床というようなことは定められていたわけでありますし、原則としてそれは開学のときに必要とするということにはなっていたわけでございますけれども付属病院が大学教育に要する施設としては非常に大規模なものであるということもございまして、当時相当規模の整備された病院が別にあって、その病院において教育研究を行うということができる、支障なくできるというような状況であれば、付属病院については学部学生の臨床教育が始まる時点、つまり第五年次の始まるまではこれをいわゆる暫定病院として付属病院にかえて使ってよろしいということを認めていたわけでございます。四十七年までの設置校は、いわゆるこの暫定病院の制度によって付属病院を設置していったものがほとんどでございます。  この暫定病院の取り扱いにつきましては、四十七年度に四十七年度申請校以降の認可の場合の審査のやり方を再検討をし、いわゆる単年度審査から二年度審査、二年にわたる審査に審査方法を変えて、より厳重な取り扱いといたしましたときに、あわせて暫定病院が必ずしも当初の期待どおり十分に機能していないというような点の反省がございまして、この暫定病院の制度をやめたわけでございます。それ以降はしたがいまして、付属病院は大学の開設年度中に開設をすることを必要とするということになったわけでございます。  ただ、御案内のように六百床を超える部分についてはいわゆる教育関連病院の制度を積極的に導入をするという別途の措置がとられておりますけれども、これはいわゆる暫定病院の制度とは全くその趣旨を異にするものでございまして、付属病院の取り扱いについては、御指摘のように、四十七年までは、それ以降に比べますと暫定病院という特例措置があったという点において、やや緩和された取り扱いであったということが言えようかと思います。
  74. 松前達郎

    ○松前達郎君 まだ付属病院のことについてはお伺いしていないんですけれども、いまさっき申し上げたように、そういった緩和された条件の中でできた、そういう時代であったということなんですけども、そういう緩和された中でできるということは、この緩和されたうちに、その時間帯の中でつくってしまえ、そういうふうなどうも考え方がどこかにあるんじゃないかと、こういうことでお伺いをしたわけなんですが、いまのうちにつくってしまえと、それでしかも、お医者さんが医者のニーズにこたえるべくやるんだと、そういうことだけでこういう大学設置が行われたんではなかろうかと私は考えておるわけですが、それについていかがでしょうか。
  75. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 医科大学設置状況を見ますと、私立の医科大学は四十五年度に三校、四十六年度に二校、四十七年度には七校設置をされております。そういう点からいたしまして、四十七年度に非常に多数の大学が新設をされているということはございますけれども、このことは必ずしもいわゆる暫定病院の制度があるうちにというような形でここに申請が殺到してきたということではなくて、やはり医科大学を新設したいという希望が全国各地に一斉に出てきたということではなかったのかと考えております。
  76. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、これらの大学ですね、これは現在の大学設置基準を十分満足しているわけでしょうか。
  77. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これらの大学はもとよりそれぞれ自己の固有の付属病院はその後設置をいたしておりますし、当時暫定病院として使っておりましたものも第二の付属病院としてさらに追加をして使っているというようなところが大半でございます。一部暫定病院を取りやめておるものもございますけれども、大半は付属病院として転用をいたしております。これらは現在の段階でそれぞれ設置基準は満たしております。
  78. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、現在の大学設置基準、これは恐らくおっしゃっておられるのは中間報告という形で出されているものになるんじゃないかと思うんですけれども、この中間報告を見ますと、その中でその大学設置基準について基本的な事項は定められているけれども、専門課程の専任教員数とか授業科目とか設備の基準だとか付属施設の基準——これは病院も含むんじゃないかと思うんです、こういったようなものについては「別に定める。」というふうになっておって、しかもいまだに制定されていないんだというのがこの中間報告にあるわけなんですが、ちょうどその当時の設置基準というのには、そういった専任教員ですとか設備とかそういったものを含めてはっきりした取り決めがなかったんじゃないかと思うんですが、それについてお伺いいたします。
  79. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) いま御指摘の教員組織——専門課程の専任教員あるいは助手の数といったものにつきましては、医学部設置審査基準という形で大学設置審議会の医学専門委員会が四十三年に決定をしたものがあるわけでございます。これはもちろんその後一部改正を加えておりますけれども、当時はこれが公表をされ、それによって動いていたわけでございます。
  80. 松前達郎

    ○松前達郎君 その中には、先ほど申し上げました専任教員数、授業科目、設備の基準、付属施設の基準というのが含まれておったんでしょうか。はっきりと限定されておったんでしょうか。
  81. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) この審査基準の中には、いま御指摘のような、専門課程の専任教員数であるとかあるいは図書及び学術雑誌の基準であるとかあるいは機械、器具、標本等につきましても基準を示していたわけでございます。
  82. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、この中間報告にある「いまだ制定されていない」と、こうはっきり書いてあるのは、これは間違っているんですね。
  83. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは大学設置審議会がみずから審査をしていく場合の審査基準として定めて公表をしているものでございます。いわゆる大学設置基準の系統で法令化されているものではございません。そういう意味で定められていないという御指摘であろうと思います。
  84. 松前達郎

    ○松前達郎君 大学設置基準として定められていないと、こういうことですね。学校教育法の第三条を見てみますと、大学設置しようとする者は、大学設置基準に従って、大学設置しなければならない、こういうふうに書いてあったと思うんですけれども、医科大学設置に当たっての設置基準、これがどうもいまのあれでは余り明確でない、設置基準として定められていなかったんだ、こういうことなんで、この辺一体どうなんでしょうか。
  85. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学設置基準を定めます場合にはもちろんその設置基準が各大学の具体的なさまざまの改善努力や工夫というものを縛るようなものであってはなりませんし、できるだけ大綱的なもの、弾力的なものにしなければならないということはもとよりでございますけれども、同時にやはりその中で規定をしなければならないことについてははっきり基準を持たなければならないというのは御指摘のとおりでございます。いま問題となっておりますことについては当面審査基準ということで具体の対応はいたしているわけでございますが、これは大学を新たに認可をする場合の審査の基準であって、既設の大学までをカバーする全体の設置基準ではもちろんないわけでございます。設置基準はいわば大学設置している場合の最低の基準としてさらにそれを上回る努力というものが各大学で行われることを期待して定められるものでございますから、いま懸案となっているようなものにつきましても、できる限り早く適切なものを定める必要があると考えて努力をいたしております。
  86. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、結論としてはこういうふうに解釈していいんでしょうか。その当時いま問題になっている大学設置基準については正式に制定されていなかったんだと、ですから、正式に制定されていなかったにもかかわらず医科大学設置というものについては認可をしたんだというふうに解釈してよろしゅうございますか。さっきの大学設置しようとする者は、大学設置基準に従って、大学設置しなければならないという問題との絡み合いなんですけれども
  87. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 確かに設置基準の上では「別に定める。」ということに医学部の場合にはなっていたわけでございます。ただ、設置を具体的にする場合のそのスタンダードというものについては医学部設置審査基準という形で具体に示されていたわけでございますし、それに従って十分な審査が行われて認可をされていったものでございます。
  88. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、審査基準で審査をしたと、医学部設置審査基準ですね、これで審査をした、こういうことになるわけなんですね。  また設置基準の話になりますけれども文部省大学学術局が作成した「大学設置基準の解説」によりますと、大学設置基準というのは、大学設置に対する最低の基準を示すものである。各大学は、専任教員だとか、あるいは施設・設備等を、これを上回るようになるべく努力をしなければいけないんだということで指導方針を打ち出しておると思うんですけれども、しかし一方では、大学設置基準を遵守すると、これまたおかしな話で、私立大学の経営は成り立たないんだと、そういうことすら言われているのもこれまた事実なんであります。ですから、設置基準を遵守する、これは言いかえますと、たとえば水増しなしの学生募集ですとか、あるいは一般的な学生納付金からの収入、また同時に、これらの収入に対してこれによって大学専任教員に対する人件費支出、これも余り非常識な額じゃなくてもっと一般的な人件費支出、こういう面も照らし合わせて考えますと、どうもまともな給与支払いが設置基準そのものを遵守するとできないんだと、こういうふうなことをよく言われておるわけであります。この点についてはいかがでしょうか。
  89. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) やはり大学設置基準というのは、標準的な基準であるのかあるいは最低の基準を示しているのかということであるならば、私は最低の基準を示しているものだと考えるべきだと思います。したがって、各大学がその基準を守り、あるいはその基準を超えて大学の教員組織なりあるいは施設・設備を充実していくということは望ましいことではございますけれども、ただそのことは必ずしも、たとえば施設が大きければ大きいほどいいということでは決してない、やはり必要にして十分なものというものを私学の経営の見地から整えていっていただくということもあわせて考えなければならないことではなかろうかと思います。現在の大学設置基準に従った教員組織なりあるいは施設・設備の整備というものが、私学の経営を危うくするように基準が高いものというふうには私たちは考えておりません。
  90. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで重要な問題が一つ出てくるんですけれども大学設置基準と現在の大学の運営の問題なんですけれども、現在の大学設置基準では非常に先ほど申し上げたようなことが言われているということなんですが、財政的な面からこの設置基準に基づいた検討を行ったことがございますか。
  91. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私立大学設置認可に当たりまして、どの程度の財源が設置経費として必要であろうかという標準については、設置基準に照らしまして計算を出しまして、これを認可の際の一つの目安と申しますか、標準にいたすことにしておりますから、そういう見地からは学部別に設置基準に照らした金額というものをその都度算定はいたしております。
  92. 松前達郎

    ○松前達郎君 余り設置基準ばかりやっても時間も経過いたしていきますので……。  先ほどからいろいろと質問を申し上げたんですが、どうも基本的な問題が一つあるんじゃないかというのは、最初に戻りまして、医科大学等の問題なんですが、実際に教育に、医者の養成、それだけじゃなくてやはり医学教育全部を含めてなんですが、これに相当の金がかかるんだという事実ですね、これがどうもいろんなデータを総合してみると、だんだんと明確になってくるわけなんです。ですから、相当の金がかかるんだというその相当の金は一体何が原因でかかるんだろうかという問題をやはりここで解明して、それからそれに対する手当てをしなければいけないんだと思うんですが、私自身その問題について、どうもさっきの設置基準等の問題も含めて考えていくと、病院そのもの、いわゆる教育病院ですね、これが診療科も非常に多いし、そういった病院の施設等も相当高度の施設が要求される、しかもこれはただ単に診療するだけじゃなくて、研究の場でもあるわけですから、そういった病院の経費そのものが非常に大きな原因となっているんじゃないだろうかと。これはいろいろな意見があると思うんですが、その病院の経費についての算出基準についてもいろいろと算出の仕方あると思いますが、私はどうもその辺が新設の大学にとっては非常に高い寄付金等を生み出す原因になっているんじゃなかろうか、そういうふうに考えるんですが、その点についてはいかがでございましょうか。
  93. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) さきに先生数字的におっしゃいましたときに出ておりますように、五十一年度の私立大学の医学部のいわゆる経常的経費、学生一人当たり三百二十八万円という数字が、いろんな数字が出ましたけれども、まずその数字がございました。それで同様の計算方式を、まあなかなか単純にはいきませんのですが、あてがいまして、国立大学学部学生一人当たり経常的経費を推算いたしますと、三百五十一万円というふうになっていたわけでございます。それで、私立大学の医学部につきまして付属病院経費の、まあ病院でございますから収入がございますので、その収支差と、それから病院のいわゆる臨時費を含めて計算いたしますと、先ほどの三百二十八万円にそういうものがプラスされまして、昭和五十一年度においては学生一人当たりに換算して五百六万円になるわけでございます。で、先ほど大学局長から御説明申し上げました、国立大学学部で経常費、臨時費、それから病院の収支差を加えた一人当たり五百七万円とほぼ同額の数字になっておるわけでございます。ただ、病院の経費につきましては、昭和五十年度の国立大学で見ますると、学生一人当たり二百三十五万円の支出になっておりますが、私立大学の医学部におきましては、先ほど数字が経常費に比べまして五百六万円というふうにふえましたのは、主として臨時的経費の方が多うございまして、病院につきましては、私どもが経常費助成の対象としております本務教員の給与費を差し引きますと収支はほぼ均衡したものというふうに数字の上でなっておる次第でございます。
  94. 松前達郎

    ○松前達郎君 それは国立大学の場合——私立大学の場合ですね。
  95. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) はい。
  96. 松前達郎

    ○松前達郎君 ほぼ均衡をしておるということは、結局病院そのものが大きな赤字を生んでいないということだろうと私は思うんですけれども、もっともこれは恐らく全医学部付属病院、私学のですね、これを全部集めて積算し、計算した金額ですから、たとえば既設の大学で非常に歴史のある大学の持っておる付属の病院というものは、これはもうすでに投資そのものももう終わってしまって、完成した状態の中で、まあ元金といいますか、投資した金額まで十分戻してからの現状であろうと思うんですが、ですから相当大きな利益を生み出しているんだと。これは実を言いますと、ある大学等ではもう非常に大きな黒字を生み出していて、それが医学部の運営に非常にプラスになっているんだと、こういうデータも出ておりますけれども、新設の場合は恐らくそういうことはないんじゃないか、非常に厳しい状態であるんじゃなかろうかと私は思うんで、この新設だけに限ってデータを出していただけるかどうか。
  97. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) ただいま既設と新設別に病院の収支状況をまとめた資料が手元にございませんが、私が理解しておりますところでは、先生が御指摘のように、やはり既設の方はいろいろな意味の償却が済んでおるというようなこともございますし、それから病院の立地条件もどちらかと申しまするといい場所にございますので、それに比べますと新設大学の医学部はいずれの面におきましても条件が悪うございますので、収支状況はやはり新設の方が苦しいと申しますか、そういった例が多かろうというふうに理解しております。
  98. 松前達郎

    ○松前達郎君 私もそういうふうに理解をしているんですけれども、特に新設の場合ですね、大体患者が何人来て、一体どれだけ収益があるかなんというのはやってみなきやなかなか正確な数字は出てこないわけなんで、恐らく申請時にはそういったもくろみまで入れて申請の中にぶち込んであるんだと思うんです。それがまあもくろみがはずれたということにすぎないことかもしれませんけれども、それが非常に大きな問題として、大きな影響を私学の医大について与えているんだと、こういうふうに私は解釈したわけなんですが、その点等も今後十分調査された上で、ひとつ基本的な対策という問題を考えていただきたいと思うんです。これはここで文部省の皆さん方に申し上げるべきかどうかわかりませんが、たとえば病院の収支に関する助成ですね、特にこれは教育病院の場合についての助成等、これは厚生省の範囲かもしれませんが、そういう問題等も考えられないではないんで、そういった問題も含めてひとつ今後連絡をとりながら努力をしていただきたいと、かように思っておるわけでございます。  まあ医科大学の問題、これは非常に最近いろいろと問題を起こしているわけで、こういった問題の根源等についていろいろと検討しながら、どこに一体その原因があるのか。人為的に何かこううまいことをやろうというんならこれは話は別なんです。そうじゃなくて、普通にまともにつくられて、しかもまともに運営しようとしているところが一体どのぐらい教育経費、医者養成費用が要るのかという問題についても、いろんな仕分けはあるかもしれませんけれども、そういった問題、十分仕分け等も踏まえてひとつ検討をしていただきたい。そうしませんと、それじゃ今後予算の問題に入ったときに、一体どれだけ補助の予算を要求するかという問題も出てこないでしょうし、またそれが出てきませんと、今度は医科大学の方では学費を決めるわけにもいかない。たとえば文部省の方で指導されている中では、学費の決定を早くして募集要項の中に繰り込んで、入れていって募集をしなさいと、こういうこともおっしゃっておると思います。ところが、それ補助する金額が決まらぬ、そういう中で学費を決定するということが果たしてできるものかどうか。そういった問題もあるわけですから、それらについてもっと積極的にひとつ御配慮いただきたい、御考慮いただきたいと、かように思っておるわけでございます。  では、次の問題に移るんですが、補助金の問題なんですが、これについて御質問したいと思います。  私学に対する補助金、これは大学高等教育大学だけに限って結構なんですが、これは補助金というと全部同じような意思でもって補助されていると思いますが、補助金の性格というのは一体基本的な問題としてどういうものであるか。たとえば大学そのものに補助するんであるか、あるいは学生そのものに補助するのか、あるいはそこで教育を担当する教員に対して補助している人件費補助なのか、その辺ちょっとお伺いしたいと思います。
  99. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 昭和四十五年度から実施いたしております私立大学等経常費補助金は、これは学校法人に対する補助金でございますが、しかしながら、その補助の目的は私立学校教育の充実と向上ということがまず第一点でございまして、そうして、これを学校法人に補助することによりまして、同時に、そのことによりまして在学する生徒学生等の就学上の負担の軽減を図るということになりまして、そして、全体的には健全な私学の経営を期待し、私立学校生徒全般の健全な発達を願うと、こういうことでございます。
  100. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、その補助金の算出根拠ですね、この算出根拠は何に基づいて算出されているんでしょうか。
  101. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 算出根拠の基本はやはり私立学校振興助成法でございますが、その助成法に基づきまして定められました私立学校振興助成法施行令に一番の基本が定められておるわけでございます。で、これに基づきまして、日本私学振興財団におきまして補助金の交付要綱をつくりまして、そこでかなり細かい点にまで算出の基準を定めておりまして、これはまあ法令集等において示されておるわけでございます、内容につきましては。
  102. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、恐らく教員ですね。
  103. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 算出の一番の基本的な要素になりますものは、仰せのとおり教員数でございます。
  104. 松前達郎

    ○松前達郎君 その補助金についてなんですが、特に補助金というのが、大学の運営に当たってそれを健全に行えるようと、そういうふうなことで、教員の数を基礎として補助金が算出され、それが交付されていると、こういうふうに理解していいと思うんですけれども、特に、新設の大学において、さっきの設置基準の問題と関連するんですけれども、いまの設置基準、これは中間報告では、開設時に要求されるもの、これはもうもちろん付属病院等は開設年度中に開院しなければならないと、そういうことですとか、あるいは教員の就任の問題ですね、これは三年次までに全員就任しなければいけない、こういうことになっておると思うんです。ですから、もっと極端なことを言えば、はっきり言えば、三年後にはまだ学生の数は十分いないにもかかわらず、大学そのものの形態としてはもう完成年度を迎えたと同じことである、最終的な姿に設置基準上はなるんだと、こういうふうなことであるんですけれども、その時期というのが学生の数が少ないですから非常に苦しい時期じゃないかと思うのですよ、私学にとっては。ところが、その苦しい反面、補助金はその間はゼロであると、そして、三年後になって完成したときに、基準等に従った内容を持ったときに、徐々にその補助金をふやしていって、完成をしたときに全額にすると、完成するというのは六年後ですね、全額にすると、こういうことなんで、どうもこの辺が先ほどの補助の一つの考え方からいいますと矛盾しているような気がするんですが、これについてはいかがでしょうか。
  105. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 確かに先生いまおっしゃいましたような、完成途上において実例として非常に苦しいところを切り抜けていくという実情と申しますか、実態はあるであろうかと存じます。ただ、私立大学経常費補助金につきましては、私立大学というものが、先ほど冒頭に大臣から申されましたように、やはり国の国民として有為の人材を育成していただくと、そういう機関でありまして、まあ税金を負担する側といたしましては、半数以上の大学に行かない人々も入っておるわけでございます。そういったことから、非常にまあ国庫補助金の支出の基準を決めるに当たっては、いろいろな観点からある面では非常に厳しく慎重にしなければならないということもございまして、当初やはり一般的には在学生世の中に送り出したという実績が出ましたことによって当該機関大学として完成した一つ社会的意義が確認されるというような考え方があったわけでございます。  なお、あわせてちょっと言葉は悪うございますが、大学をつくりたいという場合にも、これはやはり相当学年進行によって完成年度に達するぐらいまでのところは自力でがんばれるぐらいの基盤がほしいと、言いかえますと、言葉は悪うございますが、補助金を当てにして学校設置を計画するようなことはいわば正道ではないんじゃないかという意見が私学関係者の中にも、先生御案内かと存じますが、ないことはなかったわけでございます。それで、そういう見地から経常費補助金は、四十五年に創設されました当初から未完成の学部ないし学科についてはこれを補助の対象からはずしまして、その学部ないしは短大の学科等が完成後に補助を開始することといたしまして、それを受けまして私立学校振興助成法の六条のような規定ができたというふうに理解しております。しかしながら、先生御案内のとおり、医学部、歯学部等につきましては医師養成に対する社会的要請が非常に強い。それからまた、ほかの学部に比べましていろいろな意味での教育費研究費等が非常に高額となっていることにかんがみまして、昭和四十九年度から入学時寄付金の抑制策の通知が出されましたが、その抑制策の一環としまして、それ以降、医学部、歯学部については特別に設置後三年目から経常費補助の対象とするというふうに措置されておるという状況でございます。
  106. 松前達郎

    ○松前達郎君 補助金を当てにして大学をつくるというのは、これは最初から寄付行為の中ではっきりとするわけなんで、これは設置審査のときにこういう問題すぐわかるだろうと私は思うんで、そういうことはないと思うんですけれども、いずれにしても精神からいってやはり認可した以上はその大学そのものの学生が税金からの負担を、ある程度の補助を受けるわけなんですから、そういうのを踏まえてひとつその点十分配慮していただきたいと思います。  余り時間がないわけですが、大学院の問題一つだけお伺いして終わりにしようと思うんですが、このいまの設置基準とのまた関連があるんですが、四十九年以降の新設の医学部の場合、完成年次と同じ内容で発足しているにもかかわらず、大学院の設置を認めないようなそういう筋があるわけなんですが、これについていかがでしょうか。
  107. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、現在大学院、ことに医学部の博士課程でございますが、これについてはやはり基礎となる学部教育研究の充実の状況あるいは付属病院の整備・充実の状況というものを総合的に判断をして認可をするということになっておりまして、学部が未完成の間に大学院をつくるということは進めておりません。  なお、先ほどの私、設置基準の御返事の中で、四十七年当時と現在の時点とを若干混同して御答弁をしているんではないかと、ちょっと心配になりますので補足をいたしますが、御指摘の四十五年から四十七年当時の審査の場合には審査に当たっての設置審議会の基準に従って実施をしており、設置基準の上では医学部関係、歯学部関係は別に定めるということになっていたわけでございますが、その別の定めは、今日の時点では五十一年四月に大学設置の基準を改正をいたしまして設置の基準の中に取り込んでおりますので、そのことは補足をさせていただきます。  なお、大学院の基準の中で医学、歯学に係る部分について現在答申を受けて基準化の検討中で、これはまだ別に定められておりません。
  108. 松前達郎

    ○松前達郎君 それじゃ最後に要望を一つしておきたいと思うんですが、先ほどの大学院の問題ですけれども、これも経常の問題として非常に大きな関連があると私思ったもんですから、それで質問させていただいたんですが、インターンの制度がなくなって研修医の制度がいま適用されておるんですが、この研修医というのがこれは非常に大きな戦力になるんだと私は聞いているんです。古い大学になりますと無料でもって働くお医者さんがたくさんいる。これが非常に大きな大学病院の増収の基礎をなしておるのだと、こういうふうに言われておるので、ですからこれはデータに出てこない問題なんですね。そういう面から考えても、大学未完成とおっしゃいましたけれども、完成年次を求められて最初から計画し、三年後に完成しているわけですから、そういった施設・設備、教員等あるいはその教員の内容についても十分経歴を持った、研究成果を持つ教員がいるわけなんで、そういう点を十分配慮していただいて、研修制度ですね、研修医そういう者と同じような、大学学生がいわゆるティーチングアシスタントといいますか、そういう面での役に立つようなそういう方向を考えながらひとつ十分配慮していただきたい、かように思うわけなんです。  もう時間ありませんので最後に、いまいろいろと申し上げていろいろ質問さしていただいたんですが、これらの件について、今後文部省としてこの医科大学等の問題について何らかの調査機関なり調査室ですか、こういうのを設けられて十分検討するという話をお伺いしたんですが、その中で特に先ほど来申し上げております高い寄付金等を現出するような基本ですね、基本的な問題があるのかないのか、その点をはっきり調査されるように希望いたしたいと思います。この調査室の件についてひとつ文部省の考え方なりをお伺いして質問を終わらしていただきます。
  109. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私どもは明年度の要求と申しますか、計画といたしまして、学校法人調査室というものを新設をお願いしたいと思っておるのでございます。ここでは文部省といたしましても、やはり私立学校が私立学校御自身で自主的にいろいろ改善充実に努めるということが基本でございますけれども文部省としても、これをそういった自主的な御努力に御協力申し上げるという立場から、学校経営的な面でやはり私立学校の長期的な財政計画の樹立でございますとか、あるいは学内の経営組織と申しますか、いろいろな意味での運営組織の整備、そういった面に対する指導・助言が行えますように、さっき申し上げましたような自主的努力を側面から援助するための一つのスタッフを整備いたしたいというものでございまして、これによりまして、たとえばただいまいろいろ私立学校からも財務関係の書類等もちょうだいしておるわけでございますけれども、こういったものにつきましても、より私どもはこれをただいただくということだけではなくて、たとえばいま御指摘のありましたような医科大学のような問題につきましては、これをもう少しじっくり内容も分析したり、研究をしたりというようなことをやれるような体制を持ちたいと、こういう考えでお願いをしたいと思っているものでございます。
  110. 松前達郎

    ○松前達郎君 これで質問終わります。
  111. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、最近わが国の国際的な諸活動が進展するに伴いまして長期間海外に勤務する人がふえております。それに伴って義務教育相当年齢の子女もこの六年間に二倍にふえるという、こういう状態があるわけであります。同時に、長期間の海外勤務から帰国する子女というものも急増しておる、こういう情勢の中で早急に解決すべき問題点というものがたくさんあると思うのであります。  まず第一は、海外派遣教員の身分並びに処遇の改善の問題についてお伺いをしたいと思います。現在は各都道府県から希望者を募って海外に派遣させる、こういうことでありますから、各都道府県によってその扱いがばらばらである。さらに、給与においても半分は国庫負担ですけれども半分は地方公共団体負担だと、こういうことで地方公共団体としてもたくさん出すということについて非常に抵抗がある、こういうことがあるわけであります。文部省は来年度予算の概算要求に際しまして、この給与の全額国庫負担並びに派遣教員の身分は出張扱いということで統一する、こういうことを要求しておられるようでありますけれども、まずこの見通しはどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  112. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 派遣教員の問題は先生指摘のように、私どもはきわめて重要な教育問題の一環であると、こう受けとめておりますので、できるだけ派遣教員の方々の安定した身分、それからやはり現地で心置きなく教育に従事してほしい、こういう願いを込めてこのたびの概算要求を固め、文部省としての現状における改善策と申しますか、そういったものを立てておるわけであります。見通しはどうかと仰せられますと、まだ相手のあることでありますから何とも言えませんが、私ども全力を挙げて文部省が考えております政策努力が報われるように大いにがんばりたいと、こう決意をしておるところでございますので、よろしくお願いいたします。
  113. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この身分の問題ですが、これも出張扱いで統一させるといいましても、教員は地方公務員でありまして、人事権は各都道府県の教育委員会が持っておるわけであります。したがって、統一させるといいましても、これは各都道府県に属する問題ですからそう簡単にいくのかどうか、この点はいかがですか。
  114. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 派遣教員の身分を研修出張ということでただいま概算要求をいたしておるわけですが、先ほど御指摘になりましたように、現在、研修出張で派遣をしておりますのが二十九件、それから職務専念義務免除十五件、休職三件という区々になっております。明年度の概算要求に当たりまして、御案内の都道府県教育委員長の協議会、都道府県の教育長の協議会の方と私ども御相談もいろいろやってまいりまして、都道府県側の方の意見と私どもの意見と一致させまして、ただいま申し上げましたように研修出張ということで予算要求をいたした次第でございます。したがいまして、各都道府県におかれましても、海外子女教育に対する理解を深めていただいてぜひ御協力をいただきたいと思っておりますし、各都道府県とも御協力願えるものと確信しております。  なおまた、先ほど研修出張が二十九件と申しましたが、この数年間でこの数は増加いたしまして現在二十九件になっておりまして、傾向といたしましてはやはり研修出張という方向に私ども動いておると、かように考えております。
  115. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 大体各都道府県ともこれに対して協力されるであろうという見通しでありますけれども、もしこの取り扱いが統一された場合には、すでに海外に派遣されておる教員についてもこれは適用されるわけですか。
  116. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 基本的には、すでに派遣されている教員も含めまして全員を研修出張に統一したいと考えて概算要求をいたしております。しかし、御指摘のように、この点の具体の扱いにつきましては、今後の予算編成の状況をにらみまして、各都道府県と個別に御相談をしなければならない要素があるであろう、かように考えております。
  117. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この海外にいる子女に対する教育責任は、これは本来どこにあるべきものですか。国が責任を負うべきものか、都道府県が負うべきものか、この点はいかがでしょうか。
  118. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 海外に出て活躍しておられまする邦人の子女の教育の問題につきましては、父兄の方、それから外務省の方の領事事務の関係、それから文部省、相互にやはり協力し合いながらやっていかなければならない性格を持っておるんじゃないかと、かように私どもは考えておる次第でございます。
  119. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これは当然そうですけれども、基本的に教育、特に義務教育の場合は国がそれをやる責任がある。それを地方においても、地方に分担さしておるということもあるわけですけれども海外に住んでおる人たち教育責任は行政の面ではどこが持つべきものか。
  120. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 教育の問題の基本をなしまする教師、教員の確保の問題、あるいは教育の内容の問題等につきましては、義務教育に準じまして学習指導要領に準拠したりっぱな教育が行われるように、また教材の整備でございますとか、これは文部省が全責任を負うべきものと考えております。  なお、先ほども申し上げたところでございますが、現在派遣されておる教員につきましても、海外子女教育の一面としまして、邦人の福祉を守るという意味の領事事務の性格が現にあるわけでございまして、そういう意味で、現在派遣されておりまする教員に対しましては、当該派遣期間中外務大臣が日本人学校の校長または教員の業務を委嘱するということを行いまして、その旅費でございますとか、あるいは在勤俸に相当する謝金でございますとか、そういう点は外務省の方でお願いをいたしておると、こういうことでございます。
  121. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 つまり文部省責任を持つべき部分と外務省で持つべき部分とあると。しかし、いずれにしても海外の場合は国が責任を持つべきだと、そういうことは言えるわけですね。間違いありませんか。
  122. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 責任と申しますか、先生御案内のように、現在海外に出ておりまする子供が義務教育相当約二万人おるわけでございますが、その中で開発途上国を中心としましてはやはり日本人学校がどうしても必要だろうと。それから先進国では、補習学校的なものが基本になっておると。両方に、日本人学校にも補習学校にも通ってない子供さんもおられる。この方にはやはり義務教育に相当した教育をということで、通信教育の仕事を実は実施いたしておるわけでございます。  そのようなわけでございますが、日本人学校で申しますと、その設置主体は一体どこなのかということになりますと、国内法が及ぶわけでありませんから、やはり父兄方々を中心とし、現地の日本人会等が中心となって設置を願っておる。ただ、文部省としましては、義務教育相当のお子さん方に対しましては国内における義務教育に準ずる、あるいは同等の教育を何とか確保しなきゃならぬという責任を持っておると、かように考えております。
  123. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 もちろん、海外でありまして、日本の主権が及んでおりませんから国内の場合とは同一にはいかないと思いますが、とにかく国か都道府県かどちらかが責任を持つとすると、やっぱりこれは国だということは間違いないと思いますね、都道府県は責任の持ちようはないわけでありますから。  そうしますと、ことしの八月十六日に、福田総理がバンコクにおきまして日本人会、それから商工会議所共催の昼食会で、海外に出ておる教員は国家公務員に切りかえるよう検討する、こういう発言をされておるわけです。これはその後文部省並びに外務省に対して何らかの指示が総理からあったかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  124. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 総理が国家公務員に切りかえると述べられたということではないようで、バンコックの日本人学校の校長がそのような趣旨の要望をした折に総理が、派遣教員の処遇の改善の重要性について基本的な理解を示されたと。総理からこの点について特段の指示は受けておりませんが、ただいま御指摘のようなこともありましたので、文部省としましては、派遣教員の処遇の改善を第一義としておりますので、国家公務員に身分を切りかえるということにつきましても、これは実は昨年来検討を続けておるところでございます。でございますが、最も現実的な対処の方法としまして私どもが、地方公務員のままで研修出張ということで出かけてもらうということでどうだろうということで概算要求を取りまとめていま努力しておるわけですが、その基本の考え方は、やはり日本人学校に派遣します教員の大部分が地方公務員が主たる供給源でありまして、そしておおむね三年間、さっき申しましたように外務大臣から委嘱をいたしまして、三年してまた地方の教育公務員として職場に復帰をなさるわけでございます。その意味では、やはり派遣教員の身分というものの継続性と申しましょうか、地方公務員ということで何か国家公務員に切りかえてほしいという要望はずいぶんあるわけでございますが、国家公務員に切りかえてほしいとされる要望の趣旨を、地方公務員の身分を継続しながら何か実現する方法論はないだろうかという考え方を持ちまして、最初先生から御指摘になりましたように、やはり今日の地方財政の状況からいたしまして、給与の負担関係一つと、それと派遣します方式の問題、この二点を当面の問題としては改善することによって前進を図りたいと、こういう考え方で概算要求を八月末にいたした次第でございます。
  125. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、派遣教師だけでは必ずしも全部満たされるわけでありませんから、現地採用教師というのがありますね。現地採用教師というものの取り扱い、これは派遣教師との間で非常に差があるわけです。これはできるだけやはり均衡を図るべきだと思いますけれども、この点はいかがですか。
  126. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ただいま申しましたように、文部省としては、日本人学校それから補習学校等において必要な教員をどう確保するかということが最大の責務と考えておるわけですが、やはり基本的には派遣いたしまする教員の数もふやしていくということが第一次かと思っておるわけでございます。ですが、日本人学校性格上、派遣教員のほか、これを補う形で現地採用の教員がおることはそれなりのメリットがあるようでございます。現地の生活が長くて、現地の言葉にも通じ、現地の事情に明るい教員もおってほしい。それから、ところによりますと、現地のたとえば英語を使うところでございますと、非常勤講師のような形で英国人を非常勤講師に採用するというところも現にあるようでございますし、そういうメリットは認めるべきかと思いますが、ただ現地採用教員の場合は、それぞれの地域によりまして教師の免許状を持っている人がほとんどいない場合もありますし、相当数お持ちの方がおられる場合もございますので、一律になかなか断定できない問題かと思うのございます。日本人学校で申しますと、二割前後が現地採用教師ということになっております。そこで、ただいま御指摘のように、派遣教員の場合の処遇とそれから現地採用教員の場合の処遇に相当の差があることは事実でございます。この点でございますが、現地採用教員の場合には、派遣教員との均衡の問題と同時に、現地の労働社会事情等々も総合的に判断しなければならないという要因が個々の日本人学校の事情を承りますとあるようでございまして、その給与費につきましては、日本人学校等の教育において果たす役割りはやはり重要なものがございますので、国としても相当程度の援助をすることがこれは必要と私ども考えております。この点につきましては、現在外務省においてそのために必要な経費を計上願っておるところでございます。今後の問題としましては、やはり派遣教員に対しまする処遇の安定ということを文部省もいま全力を挙げつつあるわけですが、その均衡というのがやはり大きな問題だろうと思いまして、御指摘のように、現地採用教員の質の問題、その処遇の問題等、今後外務省とも協議を積極的にやってまいらなければならぬだろうと、かように考えております。
  127. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これは処遇の均衡ということも重要ですが、もう一つはやはり費用負担ということですね。現在国からのこれに対する助成はどれぐらいあるか、あるいは今後これはどうなるのか、その点はいかがですか。
  128. 高瀬秀一

    説明員(高瀬秀一君) ただいまの現地採用教員に対しましては、井内局長が御指摘になりましたように、いろいろ現地の社会条件その他がございますので、一挙にその派遣教員並みの待遇をするということは、なかなかそれが適当かどうかということについてまだ検討の余地があるんではないか、そう思うわけではございます。しかしながら、まあ政府といたしましても、これ現地採用教員というのはあくまで現地の日本人会が、というか、日本人学校設置者が雇っている先生でございますが、国といたしましても、その設置者が過剰な負担というものを負うことがないように援助をいたしておりまして、具体的にはいま一人に対しまして月二百七十七ドルの支度金を与えているということでございます。この点につきましては、今後ふやしたいとは思いますけれども、いろいろ予算の制約等もございますので、なるべくふやしたい、なるべく過剰な負担にならないように援助したい、こういう基本姿勢だというふうに御理解いただきたいと思います。
  129. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在、基本的にこの日本人学校が少ないと思うんですね。特に全日制の学校というのは非常に少ない。大体海外にいる子女の三分の一ぐらいしか入れないというのが現状ではないかと思うんです。来年度の予算では、ウィーンとかワルシャワ、シカゴ等七都市に全日制の学校を増設する要求をされておるようでありますけれども、したがって、どうしてもこの補習学校というものに頼らざるを得ない地域もある。特にこの補習学校の場合は、教師は現地採用教師が圧倒的に多いわけです。こういうものに対して給与でも国が全面的にめんどうを見なければ、その分はやはり父兄負担になる。だから、非常に不公平になるわけですね。だから私は、思い切ってこの給与というものも国庫負担にする方向検討すべきではないかと思いますけれども、いかがですか。
  130. 高瀬秀一

    説明員(高瀬秀一君) 先ほど申し上げました現地採用教員と申しますのは、日本人学校におきまして、何というか、常勤として、あるいは非常動でも、要するに労働時間のほとんどをその学校で働いているというような形のほぼ常勤に近いような形の現地採用教員がございまして、そういうような者につきましては、先生指摘のように、かなり国としても本腰を入れて援助をしなければならぬと申しますか、補助しなければならぬと、こういうふうに考えておりますが、補習校というのは何ぶん週一回、土曜日半日ぐらいでございますかやります。パートタイム、アルバイト的な性格が非常に強うございますので、これにつきましても国は一人につき月百ドルの補助を与えておりますが、それにつきまして全額国が持つというような措置が果たして他の均衡上適当かどうかということについては、なお検討させていただきたいと思っております。
  131. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 しかし、いずれにしてもこの全日制の学校が足りないことは事実だと思うんです。今後やはりこの全日制の日本人学校をふやす、これは非常に重要だと思うんですけれども、来年度は七校の概算要求ですけれども海外勤務者がどんどんふえておる、これからもまたふえていくであろう、そうすると、七校ぐらいじゃとても追っつかないんじゃないか、もっと思い切って日本人学校を増設すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  132. 高瀬秀一

    説明員(高瀬秀一君) 御指摘のように、七校がいいのか、五校がいいのか、十校がいいのかという数の問題はございますけれども、日本人学校をなるべく、要するに現地の要望が非常に強いところにはなるべく日本人学校設立されるようにということで努力してまいりたいと思います。
  133. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、日本人学校の事務員の給与は現在どうなっておりますか。
  134. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ことし五月一日現在で日本人学校等の事務職員などの数は約三百六人というふうに一応把握させていただいておりますが、この事務職員の人件費につきましては、現在財団法人の海外子女教育振興財団というのがございまして、海外子女教育振興財団の事業としてその約一割弱に対して援助を行っております。
  135. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これについてもやはり援助をふやすべきだと思うんですけれども、いかがですか。
  136. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 文部省としましては、最初お尋ねいただきました派遣教員のやはり確保ということに全力を挙げておりまして、そのための教員派遣制度改善を当面の最大課題として取り組んでおりまして、現地採用の事務職員の人件費のところまでなかなか手が伸びないというのが現状でございますが、ただ、日本人学校のいろんな仕組みなり、あるいは経費の負担の仕方なり、教員の派遣の仕方の問題もその重要な一つでございますが、こういった問題につきましては先生も御指摘のように、この五、六年間で海外におる義務教育相当の子供の数が二倍にもなったという、非常に事実がどんどん先行しているという点がございまして、海外子女教育制度全体、また施策全体をどう整えていくかということは、少し時間をかげながら検討していかなきゃならぬ課題ではないだろうか。そのような意味におきましては事務職員の問題も真剣に検討すべき課題とは心得ております。
  137. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、帰国子女の問題についてお伺いをしたいと思いますが、この帰国子女の日本の学校の受け入れ体制はどうなっておりますか。これは義務教育高校大学、それぞれについて現状をまずお伺いしたいと思います。
  138. 諸沢正道

    政府委員(諸沢正道君) まず帰国子女の数でございますが、ここ数年のうちに急激にふえてまいりまして、昭和四十六年度で小・中・高等学校該当児童生徒総数千五百四十三でありましたものが、昭和五十一年度では四千五百九十八という数に上っておるわけであります。内訳は、小学生三千二百二十五、中学生一千、高校生三百七十三、こういうことでありますが、一方、この帰国子女を受け入れておりますところの学校の数でございますが、これを五十一年度の調べによりますと、小・中・高等学校合わせまして全国で約四万強の学校があるわけでございますが、その学校のうち帰国児童生徒が一人でも在学している学校は何校あるかと調べますと、三千四百二十四ということで、全学校総数に対しましてはこれが八・四%になっておるわけであります。ただ、それらの学校は御承知のように、東京とか神奈川とか大阪とか千葉、兵庫といったようないわゆる過密県に主として集中しておるわけでございます。  そこで、それらに対しましてまずどういう手順で学校へ帰ってきて入るかということでございますが、これは小・中学校の義務教育段階につきましては、十五歳までは義務教育でございますから、それぞれ該当年齢相当の小・中学校に入っていただくと、高等学校につきましては入学選抜がございますが、この選抜につきましては、現在の制度では外国におけるいわば正規の学校教育としての教育を九年受けてこられた、あるいは外地におけるいまの日本人学校文部大臣の指定するものに九年間おって勉強してきたと、こういう子供は日本の高等学校を受ける資格があるということで選抜を経て高等学校に入ると、こういうたてまえになっておるわけでございます。
  139. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから海外の日本人学校、もちろん外国の学校も同じでありますけれども、この日本の学校とその学期の、学年の始まる時期が違うわけですね。このずれというものが非常に問題です。これは海外子女教育推進の基本的施策に対する研究協議会、ここにおいてもこの点についての要望が出されておるわけですけれども、この点についてはどういう対策をされておりますか。
  140. 諸沢正道

    政府委員(諸沢正道君) これは外国の場合、その新学期が九月に始まるという例が相当あるわけでございます。日本は四月ですから、その間の教育期間のずれというものは全くなくそうと思えばそのどちらかに合わせなければこれはできないわけでございますけれどもできるだけ実際の取り扱いにおいて、その間に子供にとってロスのないようにしようというのがまあいわば指導の考え方でありまして、そういうことから申しますと、先ほど申しました十五歳までの義務教育期間は、親も子供を日本に帰ってきました段階において小・中学校へ在学させる義務を生ずるわけでございますから、年度途中でありましてもそれぞれの学校へ入れさせる、こういうことをしておるわけでおりまして、ただまあ実際問題として、これはいまの始期の問題とは直接関係ございませんけれども、言葉の問題等ですぐ日本の教育に対応できないという子供につきましては、一年下げて下の段階のクラスへ入れるとかあるいは若干就学を猶予して、その間特別の日本の生活になれるための施設でトレーニングをしてもらうと、そういうようなことをやっておるわけでございます。
  141. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学関係でございますが、大学の場合には外国で学校教育における十二年の課程を終了した者については入学資格があるわけでございます。各大学がそれぞれ工夫をこらしまして入学者選抜を行っているわけでございますが、ただいまの学年の始期の問題でございますけれども大学の場合には学期の区分が外国と日本で違うということを考えまして、帰国後の受け入れを円滑にいたしますために、昨年五十一年に学校教育法施行規則を改正をいたしまして、学年の途中におきましても学期の区分に従って入学をさして差し支えないということにいたしております。これに従って特別の定員を設けて入学させているものに国際基督教大学がございます。百五十名の入学定員をもって九月から入学をさせておりますが、実際に入っている者は五十二年で七十九名でございます。
  142. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、海外からの子女の受け入れについて五十三年度の予算の概算要求では、特別学級をつくるところが三校、それから混合受け入れ方式のところが五校の増設をこの概算要求で要求されております。この程度で果たして十分なのかどうか、これはいかがでございますか。
  143. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) ただいま御指摘の数は国立大学付属学校におきまする帰国子女受け入れで概算要求をしておる数かと存じます。現在、現状を申しますと、帰国子女教育学級といたしまして六校六つの付属の小・中・高におきまして帰国子女学級を現に持っておりますし、また特別の学級をつくらないで普通の学級に混合して入れて適応させるという形をとっておりますのが二校現にあるわけでございます。ただいま申されました数字は明年度、ただいまの帰国子女教育学級の増を図りたいということと、それから混合受け入れの数もふやしたいということでございますが、国立大学付属学校につきましては、専門的教育課題の実践的研究に取り組むという付属学校の使命にもかんがみまして、その研究を行い、いろんな貴重な資料等もつくってもらうというものとして設置をいたしておるわけでございます。  受け入れの総数の問題につきましては、先ほど初中局長からお答えいたしましたように、公立小学校中学校研究協力校を委嘱いたしまして若干の経費をつけておりますが、そこで数はこなしてもらうと。付属学校で特にこのような特別な学級を設けてやっておりますゆえんは先ほど申し上げたとおりでございますが、この学級だけは一学級十五人の少人数編成を行いまして、実際の教育内容及び教育方法につきましては帰国子女一人一人の、特に日本語能力の到達度等が異なっておりますので、それらの実情に応じました弾力的な教育課程をそういう学級で試みまして、教育機器の導入でありますとか個別指導のこと等にも努力をさしておるところでございます。
  144. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私立学校ですね、私学においてもこのような帰国子女に対する教育を行っておるところがあるわけですけれども、こういうものに対する助成というものはどうなっておりますか。
  145. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 私学において帰国子女を多数受け入れていただいて教育指導を行っておられる小・中・高等学校帰国子女研究指定校に文部省の方で指定をいたしまして、格別な教育指導及びそのための研究を委嘱し、若干の経費を配分をいたしておるわけでございます。現在のところ、そのようなことで御協力を願っておりますのは小学校四校、中学校八校、高等学校九校でございます。また、私立大学のうちに、当該大学の建学の精神にもよることかとも存じますけれども帰国子女を積極的に受け入れていただいておりまする私立大学が国際基督教大学、上智大学、聖心女子大学等でございまして、この私学に対しまして金額は多くないんですが、私大の経常費補助金におきまして特別な若干の補助をしておると、大体そのようなことでございます。
  146. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 やはり最近の情勢が変わりまして、海外在住の子女が急激にふえておると、それに伴って今度帰国子女も急激にふえておる。だから、やっぱりその教育に対応する体制というものを早急につくっていただくべきだと思うんです。一つは、先ほど言いましたように、日本人学校の増設をやってもらうこと。それから、帰国子女の受け入れ体制というものを急速に整えること。その一つとしてやはり私学においてもこの受け入れということを十分やってもらわなくてはならない。金額わずかな補助じゃなくて、もう少し思い切ってこういうものを助成して、どこの私学でも受け入れ体制をつくってもらうようにしてもらわないと、特に帰ってくる子女は東京周辺が圧倒的に多いということを聞いておるわけですから、この地域に重点的にそういう施策をとってもらうように要望したいと思いますが、この点についての御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
  147. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 御指摘のように、帰国子女の非常に多くの子供が首都圏に常時帰ってきております。文部省でも帰国子女の受け入れにつきまして関係者等による研究等もいたしたのでございますが、小学校中学校の段階におきまする受け入れ方と、高等学校の受け入れ体制ということを比較して考えますと、高等学校の受け入れ体制を特に早急に整備する必要があるのではないかということが指摘をされております。幸い国際基督教大学帰国子女受け入れのための高等学校を創設すると、これは入学定員の三分の二は帰国子女を入れるんだという方針で打ち出されまして、本年度から施設費に対しまする特別な助成も行っておるところでございますが、ただいまの御意見にもございましたように、帰国子女の受け入れと海外の派遣と表裏一体のものでございますし、一層いろいろと努力をしてまいりたい、かように考えております。
  148. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  149. 有田一寿

    ○有田一寿君 私は、一つは麻薬、覚せい剤乱用からくる社会的な害毒が云々されておりますが、それと学校教育との関係、早く言えばどういうふうにして生徒を守るかということ、これが第一で、もう一つは国連大学のことについて、三番目に参議院改革が今後いろいろ検討されるわけですけれども、その場合における文教の位置づけと申しますか、そういうことについてお伺いと、二、三の提言をさしていただきたいと思うわけでございます。  第一の麻薬並びに覚せい剤の乱用がもたらす害毒、これは一個人の健康上の問題にとどまりませず、社会秩序を乱したり、あるいは各種の犯罪の要因ともなっておるのが現状でございます。これ、大体は厚生省の方に来ていただいてということも考えたんですけれども、ちょうど担当の人がきょうだけはいないそうでございますので、文部省の方にお伺いするわけです。  戦後を振り返って見まして、第一回、これは昭和二十年代の後半に、覚せい剤つまりヒロポンと呼ばれておるものですが、これの全盛時代、それから、これが多少おさまって、第二回が三十年代の後半になって、これは麻薬、言いかえればヘロインですけれども、これの横行の時代、で、現在は第三回目に入っているというふうに私は理解しておりますが、これは昭和四十五年の後半から悪化の一途をたどっている。その中心をなすものは覚せい剤の急激な増加、それに伴ってそれは世界的風潮としてわが国にも入り、包み込んでいるというのが現状であります。それと並んで大麻の乱用ということでございます。この一般的な社会風潮の中で高校生あるいは中学生がその害毒に染まっている面はないだろうかというようなことを心配しているわけでございます。まあこれについて資料もおありだと思いますので、どういうふうに——昭和四十七年ぐらいから今日までで結構ですけれども、わかっている限りを教えていただきたいと思います。
  150. 諸沢正道

    政府委員(諸沢正道君) 中学生高校生の麻薬、覚せい剤等にかかわる事件として家庭裁判所に送致された人数の調査がございますが、それを見ますと、昭和四十七年におきまして麻薬取締法関係高校生三、高校生以外の十九歳未満の少年六十五、計六十八と、それから大麻取締法関係が中学生二、高校生三十七、それ以外の十九歳以下の少年百十六名、計百五十五名、覚せい剤取締法対象、高校生五、その他十九歳未満の少年七十一、計七十六ということでありましたが、昭和五十一年度になりますと、いま御指摘のように、麻薬取締法関係は全体で十人とむしろ減っておるわけでありますが、大麻取締法関係で二百二、覚せい剤取締法関係では中学生十三、高校生四十七、その他十九歳未満の少年三百九十八、計四百五十八と非常にふえておるわけでございます。  そこで、現在の学校におきましては、こういうことに対処しまして、麻薬あるいは覚せい剤といったようなことについての教育といいますか、そういうものは、心身の健康保持、健全な精神の発達というような見地から、保健体育あるいは道徳あるいは特別活動といったような教育領域において取り上げておるということでありますが、そうした一般的な教育と同時に、やはりこういう問題は、一人一人の子供についてそういうものに誘惑されていくおそれがないかどうかという、子供一人一人に対する指導的な配慮といいますか、こういうものに十分目を届かせる必要があるわけでありまして、そういう意味で生徒指導の綿密な実施あるいは徹底というような見地から、関係生徒指導教官の各種の研修であるとか、指導資料の作成というようなことをやってきておると、こういうことでございます。
  151. 有田一寿

    ○有田一寿君 取り締まりの法律は四つあるようでございますが、その中で大麻取締法と覚せい剤取締法の二つで送致された者が圧倒的に多いということであります。その中でも特に覚せい剤というものに対する認識を深めていなければこれは危険だというふうに私は理解しておるわけでございますが、と申しますのは、これは犯罪につながる率が、これの方がはるかに多いと。それから、若年層に入る率は大麻よりもはるかに覚せい剤の方が多いということであります。これは、この覚せい剤の場合は禁断症状はないけれども、つまり肉体的依存度は少ないが、精神的依存度があると。言いかえれば精神的習慣性が強いと。で、特にいろいろ動機を私も二、三聞いてみたんですけれども、あれは頭がよくなるぞというようなことで最初飲まされて飲んだという例が多いようですね。最初はただでもらっていると。そうすると精神的習慣性があるから、肉体的習慣性はないけれども一だから禁断症状はないけれども、それを二、三回やるうちにどうしてもやっぱり引き込まれていくということで、これ、女の子の場合ならばそれを材料にして売春強要というようなことにつながっていっている。  これが危ないと私が考えますもう一つの理由は、暴力団の資金源になるのはその他の麻薬よりもこの覚せい剤の方が多いんではないか。ということは、粉末の、少量で高価ですから、密輸する場合もこれの方が資金源になる。  それともう一つ考えたのは、これは厚生省の方もそういうことを考えておるらしいんですけれども、覚せい剤は言いかえれば暴力団が好況のときならば、高度成長時代ならばいろいろ資金源がある。ところが不況になってくるとそうやたらに資金源がない。それで一番確実で、一番利益の得られるものに飛びつく、これが覚せい剤だと。ところが、これを普及しなければ何もならない。普及するためには若年層にこれを飲ませるのが一番いいということで、これは非常に日本でもふえてきたということであります。普及といいますけれども、若年層の場合、これを受け入れてしまう。そうなるとどうしてもなかなか抜けにくいということがいろんな犯罪につながるということを非常に私は憂えているわけです。  それで、生徒指導の場合ですけれども、いま局長おっしゃいました保健体育でやると言っていますが、教科書に入っていますか。
  152. 諸沢正道

    政府委員(諸沢正道君) 保健体育のうちの保健の領域になるわけですけれども、いま正確に覚えておりませんが、現在の中学校高等学校学習指導要領の中に、中学校でいいますと麻薬とか覚せい剤とか抗生物質等について、それと健康との関係について理解させる。酒、たばことその健康の関係について理解させると、こういうような指導事項が載っておりますから、それを受けて教科書にはこういうものは医学上一つの効果はあるけれども、使い方を誤れば非常に大変なことになるというような記事は載っております、これは。ただ問題は、それを適切に指導していただいておるかどうかという点にあろうかと思います。
  153. 有田一寿

    ○有田一寿君 これを文化祭でクブラ活動の延長として扱うという事例があるようですけれども、うっかりしていると、これをまともに扱うのではなくて、幻覚症状を起こした場合のおもしろい行動、発言、そういうものを扱うという危険性が非常に多いと思われるわけです。で、保健体育で指導するという場合に私は、指導要領といまおっしゃいましたけれども指導要領は早く言えば教科書を作成するための手引きだと思うんですよ。だから、将来私は教科書にまでこれは入れておく必要がないのかどうかということが一つと、それからもう一つは、覚せい剤というのは、私もよく知らないんですけれども、にわか勉強でこの前から少し勉強をしてみたということだけですが、メタンフェタミンというのとアンフェタミンというのとたった二種類だと、そのうちの前者をヒロポンと俗称しているということ。ところが、これがどういういわゆる薬物公害というものが影響を出してくるんだということを私は理科で教えるというか、取り扱うというのも一つ方法ではないか。それと、保健体育並びに公害指導というもので包み込んでいかなければ本当のいわゆる水際作戦といいますか、本当にやはり害悪をしみ込ませるということにならないのじゃないか、これを中途半端に教えると、ちょうど性教育を中途半端にやることによって逆効果があらわれると似たような現象がありはしないかというふうに考えるわけです。ということは、覚せい剤ですから中枢神経興奮剤ですね。麻薬はその反対に中枢神経抑制剤。抑制剤の方は抑制してしまうわけですから、まあまあ私はいいとは思いませんけれども覚せい剤ほどの悪影響はないだろうと、この覚せい剤についてはよほどの覚悟を持って防御を考えておかないと、ますますこれから他国から入ってきた場合に生徒に深くしみ込んでしまうんではないかということをおそれているわけでございます。  したがって、そういうことが可能かどうか、そして子供のときにそういうことが頭にきっちり入っておれば、学校を卒業して社会に出たときも幾らか染まる率が少ないのではないか。現在、厚生省と警察でこれは御承知のように、取り締まりをやっておりますけれども、これはもう全国八カ所に麻薬調査官のようなものを置いて、これは百数十人のようですけれども、厚生省は。これではとても及ばないし、やっぱりだんだん蔓延する。そうではなくて、結果論じゃなくて、最初学校時代にそこら辺のところを頭にしみ込ませると、そうしてこれは飲んだら大変なことになるぞということをよく教えておく必要がある。これはぜひあるのじゃないか。その方法として教科書に入れることはできないのかなあという考えですけれども、可能でしょうかね。
  154. 諸沢正道

    政府委員(諸沢正道君) いま、先ほどの私の説明で申し上げましたが、現在の保健の指導要領に載せてあって、それを受けて保健の教科書に載っておると、こういうことでございますが、先生の御提案は理科の教科書にそういうことを載せた方がより効果的ではないかという、こういうふうに拝聴いたしました。確かに教育活動として理科にそれを一つ指導内容として位置づけるということは、一層その趣旨を徹底させる効果はあろうかと思います。そういうことはございますが、ただ、それぞれの教科の指導内容をどう構成するかということも専門の関係者の意見を聞きながらやってまいりましたものでございますから、御提言をひとつ検討させていただきまして、将来そういうことが可能かどうかをひとつ十分調べさしていただきたい、かように思うのでございます。
  155. 有田一寿

    ○有田一寿君 先ほど教えていただいた人数なんですけれども、これやはりこの九月で締め切った数字があるんです、まだ発表はしてないようですけれども。これを見ますと、いわゆる覚せい剤取締法で送致した者が九カ月間で一万八百人になっているわけですね。そうすると、あと三カ月残っていますから、明年の、明年のというか、十二月末までで締め切った場合は、やっぱり一万三千人ということなんですよ。そうしますと、覚せい剤取締法で十八歳未満と、それから十八、九歳と、その数字が八百人になりますね、この一年間で。そうすると、これはずっと私計算してみたんですが、覚せい剤取締法のいま申し上げた十九歳未満ですね、それだけの数字でいきますと、四十七年が七十五人、四十八年が百五十一人、四十九年が百二十八人、五十年が二百五十九人、五十一年が四百五十四人、それに対して、いま申し上げたことしは八百人であろう、多分間違いないと思います。  そういうことになりますと、いまはっきり高校生ということで数字を全部のについて四十七年と五十一年のをお聞きしたわけですけれども、いまは大体高校生が九三%も同世代人口の中で占めているということから見ますと、私はやっぱりこの八百人の中で相当部分は中高生ではなかろうかというふうに類推するわけです。それで大変恐れているわけで、まあいま申し上げましたように、何とかしてこれを学校教育時代から害毒を防ぐと同時に、社会に出た場合これに対して警戒心を持つという観念をもっと強めていきたいということであります。ソ連、中国などは具体的な材料がないからわからないけれども、まあ多分私は余りないのではないかと思うのですよ。全体主義国家ですから、一遍でひっくくってしまうことができる。ところが、自由主義国家でこういうものを押えるということは、しかも教育面で押えるということは、大変至難な面があるとは思いますけれども、この道を日本は行かなければいけないんじゃないかという感じがいたしますので、そういうことを申し上げて第一の質疑は終わらしていただきたいと思います。  それから次に、国連大学のことについてお伺いいたします。これは、一昨日秋山委員質疑をいたしまして、適切なる御提言と質疑でありましたので、私はそれをさらに補足する意味でここでお聞きしておきたいと思います。  アメリカは、この国連大学の基金の総額の四分の一までを出すというのが基本方針ですね。それが、一昨年の下院の決議は三百三十六対四十で可決された。ところが、九月の上院では五十九対二十八で否決された。この否決された、可決されたと申しておりますのは、日本と違ってもちろん授権法案ですから、国務省が支出する権限を認める法案を可決した、否決したということでありますが、その後で協議会でまあ支出が決まったというふうに私は理解したんですけれども、その後否決されていますが、いわゆるその後のことをまずお聞きしたいと思います。これは外務省の方でもいいし、どちら……
  156. 井内慶次郎

    政府委員井内慶次郎君) 国連大学への米国の拠出につきましては、これまで二回にわたって法案が提出され、審議が行われましたが、いずれも拠出を決定するに至らず、否決されております。  第一回目の審議につきましては議員の間から法案が提出されまして、一九七七会計年度において一千万ドルを拠出するとの権限法案が、ただいま有田先生指摘のように、上下両院協議会で可決されたのでございますが、実際の支出に必要な歳出法案は政府から提出されないで、結局拠出は行われなかったというのが第一回目でございます。どうもその事情といたしましては、一九七六年の大統領選挙を控えてフォード大統領が二百八十億ドルの予算削減政策を打ち出したこと等が背景にあるようでございます。  二回目は一九七八会計年度、ことしの十月から来年の九月にかけましてでございますが、この第二日回につきましても、同じく一千万ドルを拠出するという権限法案が本年二月行政府から提出されまして、下院を通過後上院で否決されたのですが、上下両院協議会におきまして可決をこれは見ました。しかし歳出法案につきましては、上院で再度否決され、去る九月二十三日に上下両院協議会が開かれましたが、そこで否決をされまして、少なくとも来年の九月までは米国からの拠出の望みは断たれたというふうに伺っております。
  157. 有田一寿

    ○有田一寿君 その国連大学の拠出金をアメリカが否決したという意味ですけれども、これは国連総会で決議されて、そしてユネスコと共同管理のもとにこの国連大学を発足させる、日本もそのとき大変運動したわけです。それで、日本にそのいわゆる本部の設置が決定して、今日に至っているわけでございますが、これはもう私が申し上げるまでもなく、先般も井内局長から説明がありましたように、大きな理想を持って各ナショナリズムの壁を越えて、世界人類の未来のために、飢餓その他共通の問題を検討していこうということで、これは何十年、何百年後を見通しての一つの大きな理想であったと思います。しかるがゆえに日本でもこれは熱心に誘致に乗り出した。ところが、そのとき四億ドルであったと思います、これは外務省の方に重ねてそれもチェックしたいと思いますけれども、四億ドルで私は最初あったんじゃないか。日本が一億ドル、アメリカが一億ドル、それからヨーロッパが一億ドル、その他が一億ドルということであったようですが、その後五億ドルという数字も私は見ましたけれども、アメリカが一億ドルを出すということを決めた根拠は、四億ドルの四分の一を超えざる金額ということで予算にのったわけですから、大体四億ドルが正しい金額ではなかったかと思うんです。ところが、このアメリカも約束した、日本も約束した。そして日本は五年間で一億ドルを出すということで、日本は忠実に履行しました。したがって、二千万ドル、二千万ドル、二千万ドル、合計六千万ドルを出し、五十三年度予算に一千万ドルが計上されております。ところが、アメリカはゼロだ。そうすると、ヨーロッパの一億ドルが出るのかといえば、アメリカが出さない限り私はヨーロッパは出ないというふうに思っているわけです。その他小さな中近東の国が幾らか出していますけれども、それはありがたいけれども、金額としてはそれは微々たるものなんですよ。  ですから、なぜアメリカが拒否したかということ、これはアメリカの国政介入にならない限り、ここで検討したって構わないだろう、それほどこの問題は重要な意味を持っているというふうに私は思いますので、そのまず対策を考える前に、その背景にある、いま井内局長指摘された一つの理由のほかにあるのではなかろうかというふうに考えますが、そこら辺についてここで御説明できる点は外務省の方からもお聞きをしたいと思います。
  158. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 事実関係の御説明を申し上げます前に、国連大学議員懇話会からの力強い御支援に御礼を申し上げたいと思います。  まず、アメリカが四分の一を出す意向であるかどうかということでございますが、アメリカ政府が正式にそのような約束をしたということは私ども承知していない次第でございます。恐らく国連大学側として、まあ日本が一億ドルを約束している関係上、アメリカには一億ドルぐらい出してもらえないだろうかと、そういう希望を有しているのではないかと、このように承知いたします。
  159. 有田一寿

    ○有田一寿君 いまのお話は、そういう説もあるようですね。決して間違いとは思わないのです。ただ、事務総長がそういう話をしたと、それでヘスター学長もそういうふうに受け取って行動しているということは間違いがないようですね。で、もちろん拠金ですから、約束を盾にとるということはどうかと思いますが、ただ、アメリカがなぜ出さなかったということについて、この前秋山委員も御質問をされておったようですが、明確にならなかったが、まあ私が考えるところ、これ違いましょうかね。  第一、アメリカに国連アレルギーがある、言いかえれば、イスラエル排除決議案等第三世界が一票一票の決議権を持って臨めば、アメリカは国連の総経費の四分の一を負担しておりながら、権利というものはわずかであるということに対する背中をかく思い、それからアメリカの大学の中につぶれかかっているのがある、それなのにあえて国連大学に金を出すことはできないという国内事情。それからこれはジャパンユニバーシティーではないか、日本の大学ではないかという認識、それから納税者の立場を考えて、国連大学などに出す余裕はない、あるいはフォード前大統領の胸の中にもそういうのがあったのかもわかりませんが。それからある人の言っている——名前は申しませんけれども、議員が言っている、しかも有力な議員が言っている言葉をちょっと見てみますと、人類の問題は、概念は崇高でも現実には多くの米国人にとってばかげたものに思えてくるものである、安全と福祉を最優先すべきである。それと日米貿易関係というものが多少の影響を与えておることはなきやという、以上のようなことが頭に浮かぶわけでございます。それについて外務省の方の感触はいかがでしょうか。
  160. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 非常に重要、かつ、広範な御質問でございます。私限りでどの程度お答えできるかどうかわからないんでございますが、とりあえず気がついた範囲のことだけ御説明さしていただきたいと思います。  まず、アメリカといたしましては、近ごろ国連機構が非常に巨大化しておると、したがって予算も非常にふえる。で、御指摘のとおり、国連分担金の四分の一を負担しているアメリカでございます。でございますから、国連機構の新設、そして新しく設けられた機構への新たな拠出金というものにつきましては、かなり厳しい審査をしているのではないかというのが一つでございます。  それからもう一つの点として、日本としては国際機関としての国連大学をいわば側面から大いに援助してやるんだという姿勢でいままで働きかけているのでございますが、何となく国連大学は日本の機関ではないかとか、あるいはそこまでいかなくても、日本のためにしかならないのではないかという残念ながら誤解が一部にはあるんではないかと、そういうような感じがとりあえずいたします、全く私限りのとりあえずの感じで恐縮でございますが。
  161. 有田一寿

    ○有田一寿君 わが国に国連大学が設けられた意味なんですけど、私はここでやっぱり一遍これ考えてみる必要があると思います。  第一に、国連大学は本格的な国際機関であるということ、これがわが国にあることによって、研究教育を通じて、わが国の国際協力の姿を世界に示し、平和国家、文化国家としてのわが国の実を世界の人々に理解してもらうよい機会になるだろう。  それから次に、国連大学には、各国からすぐれた研究者が集まるから、地球上の頭脳がわが国に結集され、ここから人類の新しい知恵や示唆が打ち出されることになる。これはわが国にとっては光栄なことであり、わが国社会への大きな刺激となると思われる。  それから第三番目に、国連大学研究教育センターがわが国に設置されれば、世界各地から若い研究者を招き、研究協力をともにして、将来の知的協力の拡充に資することになるだろう。  それから四番目に、わが国の学界、教育界が、国連大学協力することによって、閉鎖的といわれるわが国の大学研究所が国際的に開かれたものになって、わが国の研究教育活動の振興に資することができるだろう。  それから最後に五番目に、国連大学がわが国に設けられることにより、一般の人が国連大学に関心を持ち、その活動を知り、国際的視野を広め、国際理解を深めることになると思われる。  こういうことで日本は一生懸命になったはずであります。  ただ、ここで恐れることは、これは後に私は文部大臣にも伺いたいと思いますが、この四億ドルというものの処置に関係してくることでありますが、余りに日本だけが出してよその国が出さない場合は、それこそジャパンユニバーシティーになってしまうだろう。だから、数多くの国によってこれを拠出してもらうことそのものに意義があるということですね、分に応じて。多少の累進課税的な考えはこれはもう当然としても、数多くの国々に参加してもらいたいと。ただ、数多くの国に参加してもらう場合に、アメリカが出すか出さないかということは重大な私はポイントだと思います。だから、今度アメリカが出さないということは、今後出さないということにつながるのかどうかですね、それも伺いたいと思います。それを伺った上で次の質疑をいたします。どういうふうに受け取っていらっしゃいますか、その感触を伺いたい。
  162. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) このたびのアメリカの議会における否決と申しますのは、この十月から明年の九月までの予算案についての否決でございます。その先のことはどうなるかと申せば、もちろん私ども何とも申せないわけでございますが、私どもとして努力を続けていかなければならない、そのことは変わっておりません。
  163. 有田一寿

    ○有田一寿君 いまおっしゃられた努力という意味なんです。ここで私が気がついたことを、当たる当たらないはわかりませんが、申し上げてみたいと思いますけれども、その前に私は多少の不満を交えて申し上げさしていただくならば、私は、この国連大学について外務省としての取り組む姿勢は不十分ではないかということを考えているんですよ。それから文部省も同様ではないかということを考えている。で、これはなぜそうなるかといえば、やはり外務省と文部省に両方これがわたっておりまして、予算は外務省で計上されるということですね。で、これは日本だけでもないですね。アメリカに行ってみても国務省は非常に消極的なんですよ。だから議会に反映しないんだということを有力議員は口々に言うわけです。だから、国務省にも今後の努力を要請をしなければならないと思います。それから保険教育厚生省にも要請しなければならないと思います。  で、外国のことよりも日本のことですけれども、これをどういうふうにしてアメリカに拠出をしてもらうかという具体的な足取りですね。これは私はやはり議会の有力な筋にそれぞれ働きかけ、この法案に賛成してくれた議員には感謝を述べると同時に、反対した議員には執拗に理解を求めるという行動を起こす必要があるだろう。そのためには超党派の議員団も日本にはあります。これは自民党から共産党まで入ってもらっておるわけです。しかも、二百数十名ですから、これが動かないのは私はおかしいという気持ちがいたします。  それから、アメリカは世論の国ですから、有力なる文化人あるいは作家、あるいは経済界の指導者でもよろしいんですけれども、それが国連大学必要性についてアピールすると、マスコミで。これはどうも決め手になるように私は考えているわけです。それも要請されたけれども、私どもは日にちが足らないためにできずに帰ってきたということもあります。その後やっていないようです。これも大事なことではなかろうか。  それから、次に、日本国内のPRが足らないんだと。これは会社でも本当に外部に宣伝して効果あらしめようとしますと、社内宣伝と申しまして、内部の者が運転手に至るまでがそれを理解して、よしこうだぞという姿勢にならなければなかなか外部を動かすことはできない。個人でも、自分が納得していないで人を説得することはむずかしい。そういうことから考えますと、日本の国内で果たしてPRが十分できておるであろうか。しかも、これは日常のことではなくて、三十年、五十年、百年先の理想の旗を掲げてのことをいま文部省も外務省もやろうとしているわけですから、毎日日常のことに追われたり、陳情に追われておる限り、絶対にこの国連大学はこなせない。これはこれで別に私はプロジェクトチームでもつくって、これで執拗に押していかなければ、これは結局日本が世界に恥じをさらすことにならないか。恥をさらす、さらさぬは別として、この不信感が充満している国連の中で、これに十二分の期待がいま残念ながら持てないとすれば、せめてこの国連大学一つのポイントになって、そこから世界の者が手を握るという一つのよりどころになるであろうという、これは悲観的な、消極的な見方を私はするわけで、石は落ちてきたものをせめてここで受けとめておきたい、国連大学で、というような気さえするわけです。  それから、国連と大学関係をさらに密接にする必要があると思うんです、ヘスター学長以下。国連の首脳部と学長との関係を密接にする必要がある。まだ不十分と思います。  それから、やはりこういうことは理屈ではありませんので、一つの陳情にもなりますから、政治的な面が多い。だから、日本の政界が、それから政府も動く必要があるということであります。  それで、これに対する御意見をいただく前に外務省にもう一つお伺いしておきたいんですが、二千万ドルが一千万ドルに五十二年度予算で落とされた、落とした、その根拠はどういうことですか。
  164. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 二千万ドル、それまでの二千万ドルの拠出というのが、本年度予算から一千万ドル計上にとどまったということについての御質問でございますが、これはやはり全体の拠出動向を見ておりまして、日本のいわば拠出比率というものは極端に高くなっておると。これはもともと国際機関であるから、その財政基盤もまた真に国際的でなければならないと。それがわれわれが各国に対して拠出のための働きかけを行うという一つの論処になっております。かかる見地から、まあいわばちょっと。ペースを落としたという面はございますが、基本的な協力の姿勢については何ら変わりがないことでございます。
  165. 有田一寿

    ○有田一寿君 私がさらに予算面で残念だと思いますのは、二千万ドルを三回出された場合、具体的な支出は何月に出されましたか。
  166. 丸山俊二

    説明員(丸山俊二君) 昭和四十九年度のいわば年度末でございますか、五十年に入りまして一月に最初出しました。その次の年がたしか一月、それからことしの二月の初めにやはり出しております。
  167. 有田一寿

    ○有田一寿君 実はこの国連大学の四億ドルというのは基金でありまして、それを使って大学を運営するというものじゃなくて、その果実をもって運営するということですから、一カ月早いか遅いかということは大変な影響があるわけです。したがいまして、私はこれはこの席でのお願いになりますけれども、一カ月でも早く支出して大学に渡してやってもらいたい。それはいまの為替ベースで二十五億円とすれば、何千万かの差になりましょう。これは大学にとっては大変貴重なものではないか。したがいまして、いままでのように一月、二月に出すというんじゃなくて、予算は決まっているわけですから、願わくば少しでも早く支出をしていただけないかという、これはお願いです。  それから、いまおっしゃいましたベースを落としたと、これは諸外国を見ながらということでありましょうが、これはいま申し上げました今後の対アメリカとの関係でどういうふうになっていくかわかりませんけれども、どんなことがあってもやはり日本とアメリカで一億ドルは私は出すべきだろうと思うんですよ。ほかはそれにつながって出てくるものだから、いろいろな事情があるにしても、日本も出す、アメリカも出す。  そして、もう一つ、これは文部大臣にお伺いしておきたいんですが、これは事務の話じゃございませんが、仮にアメリカがいろいろな事情で一億ドルを出さなかったとした場合、日本としてはどういうふうに対処したらいいと思われますでしょうか。
  168. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 基本的には、日本政府が国連大学を誘致いたしましたときに、その四分の一を五年間にわたって負担して、本部を誘致して大きな責任を果たそうと、こう決意をし、また世界にそれを表明したわけでありますから、当面はその実現に向かってただいま全力を挙げておるわけでございますし、また文部省といたしましても、アメリカの最高機関であのような否決という、私たちにとってみれば情報不足だったかもしれませんが、どんでん返しのような結果を見て大変残念に思っておりますけれども、それがすべての終わりではなくて、やはり先生おっしゃるように、いろいろな立場から働きかけ、いろいろな説得を続けて、一日も早くその協力が軌道に乗ってくるようにせねばならぬと、こう考えておりますので、私もヘスター学長に直接お目にかかったときにもいろいろそういうことを申し上げましたし、また直接国連大学関係ない方でも、たとえばつい最近も、全米科学財団というところのアトキンスという長官が日本へ来られましたときには、このお話も私の方から十分いたしました。アトキンス長官もそれは理解を示して、アメリカへ帰ってそういう話もしようということでございますし、また過日ユネスコの総会、教育関係の総会でございましたが、そこにム・ボー総長も来ておりましたときは、ユネスコ関係でもやはり国際世論といいますか、また拠出する国がたくさんふえるということは、逆にアメリカに対していろいろこちらから説得をしたり、働きかけするにも有効であろうと、こう考えてできるだけの努力をしておりますので、アメリカがこれをもう協力しなかったらというようなことはいまは想定しないで、やっぱりそういった当初の路線に従って協力してくれるものと期待をし、確信をしながら今後も行動していかなければなりませんし、文部省の基本的な考えはそういうことでございますが、議員懇話会の皆様方のきょうまでの御努力に敬意を表しますとともに、これからもまたどうぞお力添えを賜りたいと心からお願いを申し上げます。
  169. 有田一寿

    ○有田一寿君 アメリカがもし出さなかった場合ということは想定しない方が現在はいいかと思いますけれども、もしアメリカが出さなかった場合は、やはり残ったものは全部日本が出すという私は内々の決意は必要ではないか。仮に諸外国で一億ドル出たとした場合に、日本がいままで一億ドル——いままでというか、予定の一億ドルを出すとしたら、あとさらに不足する二億ドルは、五百億円は日本が出すんだというぐらいの、これはぜひ文部大臣としては頭の奥にその理想を持っておって、諸外国を私は口説いていただきたい。われわれもそういう決意で臨みたいと思うわけでありまして、対外経済協力のいろんな援助費は何千億とそれは出ますけれども、これはたった一つの、国際機関のたった一つが日本にあるわけでして、ほかにあるわけじゃない。これを守り育てるということ、しかもこれのためにサービスするということは、やはり日本がちょうど東南アその他にサービスすると変わらざる、あるいはもっとそれ以上の私は人類に対するサービスとしてこれは大変有効適切なものである。  ただ、最初に申し上げた、余りに出し過ぎるからジャパンユニバーシティーだろうと言われると言うけれども、さらばといって、出さなければ仕方がないんですから、そのときは私は日本でこれは育てるんだ、いつの日か大統領も次々変わるでしょうから、わかるようになってくるだろうという気もしないではありません。だからどうかこの対策について、先ほど申し上げた対策が適切かどうかは知りませんけども、ひとつここは大きな決意を持って臨みたいというふうに思いますので、外務省に対しては、私はぜひともこれは一千万ドルが次の五十三年度は三千万ドルを予算計上してもらいたいということを考えるわけですよ。それでも予定どおりですよ。横を見れば別ですよ。ちよっとベースを落としたとおっしゃいますけれども、それは大平さんも大臣のときにそうおっしゃっていました。諸外国の模様も見ながらいきましょうということで、それはアメリカが出していないから一千万ドルに削ったと思う。私はそういう考え方ではなくて、やはり一億ドルを五年間に出すと日本が考えた限りは、よそにお願いしながら日本は日本としてそのベースで出していくべきだと思うんです。それについて御返事といっても御返事はちょっと無理でしょう。ですから、この問題については海部大臣のいまの決定も伺いましたからこれ以上は申し上げずに、これに関する質疑は一応終わりたいと思います。外務省の方ありがとうございました。  次に、これは文部大臣にお伺いしてみたいと思っている参議院改革の問題であります。もちろんこれは立法府自体で検討する問題でありまして、行政府の長官に何も伺うという種類のものではありませんけれども、ただ、私どもにちょっとした夢がありまして、参議院というものが現在衆議院と余り変わらない動きをしている、したがって、参議院改革という声が上がってきておると思います。その場合にアメリカの上院は外交の大権を持っている。大権という言葉は適切ではないかもわかりませんが、外交に関してはオーソリティーを持っている。しかし、日本の参議院は、これは憲法からくる考え方もありまして、予算、条約等は衆議院で議決すれば参議院は議決しなくたって日にちがたてば成立するというのが御承知のとおりの現状であります。私はこの日本の上院いわば参議院で教育に関してはある程度参議院に比重を持たせるという、そういう制度改革が将来できないかなあということを実は考える。と申しますのは、教育の問題、特に教育の六・三・三その他制度改革、それから教育基本法を改正するとかしないとか、するとすればどこを改革するというような議論もときどきなされております。そういう長期にわたる問題が教育には多いわけです。したがって、いまのように法案が来たからやる、それから予算が来たからやる、その間できょうのような一般質疑という機会が与えられてはおりますけれども、これはもうわずかなことです。だから参議院はそのために議員の任期も六年ありますし、将来これを十年にするのも一つの案でしょう。そして外部の審議会に諮問したようなこと等もここに持ってきて、そして徹底的にこの問題を審議研究するというような場を参議院に与えるべきではなかろうかということを考えるんです。具体的な制度上のどうこうということは別として、海部大臣のそこら辺に関する一つの考えをお伺いしてみたいと思います。
  170. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) これは大変むずかしい問題でございまして、私も衆議院の議院運営委員長のときに衆議院改革のための制度協議会の座長も勤めて、各党の皆さんと衆議院の改革について議論を重ねた時期がございました。したがいまして、参議院の改革は参議院においでになる各党代表の諸先生方がこれはまさにみずからの問題としてお考えになるべきことで、政府の一員として意見を述べることはこれは適当ではないと考えますので、御答弁は慎ませていただきたいと思いますが、一つだけ申し上げますと、教育はわが国の将来を左右する大きな問題でありますし、まさにこれは先生おっしゃるように、国の将来に大きな影響を与える問題でありますから、参議院においていろんな角度から十分御論議、御審議をいただくということは大変望ましいことであり、ありがたいことであると、こう考えております。
  171. 有田一寿

    ○有田一寿君 行政府の長官であると同時に閣僚であり、自民党の有力な幹部でもあるが、もちろん参議院改革の問題ですから参議院内部でわれわれの方が真剣にこれは今後検討してまいることではありますけれども、いまの教育の問題の処理の仕方を考えた場合にやはり背中をかく思いがしますので、参議院改革のときにこれを何らかの位置づけをしたいものだなあという考えが頭を去来するわけです。したがって、そのときに文教の府の長である文部大臣としてというか、教育に深い関心を持つお一人として、この教育をさらによくするために参議院改革のときにこの中に何とか織り込める部面はないだろうかということをお考えくださるのは、私はそれは決して悪いことではないと思うんですよ。ただ、具体的に私がどうしますというような御返事を立法府が承るのはそれはおかしいけれども教育問題についていままでのやり方その他について私は御不満もあるのではなかろうかと、こう思うんですがね。もっと前進してこういうことをしたらいいという問題もあるのじゃないかという考えがするからお伺いをしたわけです。  まあ御返事をいただくとしてもなかなかそれ以上のことはむずかしいかもわかりませんが、私は不満を申し上げれば、やはり現在参議院においてもフリートーキングということはなされると言いながら現実にはなされない。一、二経験はしてみたがスムーズに運営しない。だから、ここですべてこちらの席に向かって、文部省に向かって質疑、詰問、まあよく言って提言、それでありまして、大体は議員同士で私は甲論乙駁しながら一つの一致点を求めていくという姿でなければならないと思うんですよ、国会は。ところが、すべて行政府に向かって、まあ私もそうですね、そういうふうにやる慣習になっているから、これ以外ができません。  私がここに出てきたときに一回、社会党の安永議員が質疑をしましたそのときに私は、委員長に了解を得て安永議員のところに行って、私は関連質問をしたいから認めてくれと言いました。そうしたら結構だと、こう言いました。それで、私は向こうに座っておって安永委員の質問に関連質問をしたわけです。そして安永議員にかみついたわけです、私は。恐らく二度と、私にもうそういう野党というか、私も野党だけれども社会党の皆さんは関連質問は許されないと思うんですけれども、まあ、私は一回でもいいと思ってやったんですけれども。でないと大して意味がないわけですよ。  だから、これも改革したいということになると、もとから改革してこなきゃならぬと、そうなると審議日数のこと、制度の組み方、それから参議院も何か権威を持ちたい。まさか外交の権威は参議院じゃ日本では絶対持てませんわ。文教の何かここに一つの重さを参議院は持つように改革したいと、私どもは願っているわけです。それが果たしてどういうふうに、憲法、国会法との関係であらわれてきますかわかりませんけれども、これはどうかひとつお願いを申し上げますが、文部大臣文部大臣の地位を離れられても、やはり文部大臣としておられたわけですから、私どもの味方だと思いますから、そういう閣議の際、その他で、機会あるときにはひとつお考えくださって、そういう面で少しでも前進するようにひとつお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  それからついでに、これ文部大臣にお伺いをいたします。教育問題閣僚懇談会というのがございましたね。あれはどうなっておりますか。現在。何回開かれましたでしょうか。
  172. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) 教育問題の閣僚懇談会は、実は閣議の席に学習指導要領の改定の問題、それから塾の調査をしました実態報告、それをいたしましたときに、各閣僚から意見がたくさん出ましたけれども、御承知のように閣議は委員会のある日なんかは朝の九時から始めてということでありますから、時間がございませんでしたので、教育問題について各閣僚が言い足りないところをもう一回聞こうということで、全く閣議と関係なしに全閣僚を集めましたので、教育問題の閣僚懇談会というように報じられておりますけれども、あのとき一回相当時間かけて議論をいたしまして、また必要があったらやろうと、こういうことになっておりますが、二度目の集合はまだかかっていないということでありまして、閣僚間で個別に非公式にいろんな意見は交換しておりますが、まとまってやったのはあのとき一回だったということでございます。
  173. 有田一寿

    ○有田一寿君 これはたしか三月であったと思いますけれども、私は非常によかったなあという感じを受けたわけです。口では、教育は国の大本だとか基本だとか大事だということを申しますけれども、実際はなかなかそうはまいっていない。だから、教育問題について閣僚懇談会のようなものを設置して、当座は塾の問題なりそういう受験地獄過熱の問題で食いついてもそれはいいと。しかしながら、願わくはこれは三カ月に一回程度、あるいは二カ月に一回程度できれば開いて、やっぱり文相がその当時の大きな問題を報告するなり、あるいは意見があればあれするなり、それは閣議があると言えばありますけれども、閣議はいろんな問題があるから私は不十分だと思いますので、教育を重視すると福田総理も言っておられるようですけれども、それならば、この教育問題閣僚懇談会は殺さずに、願わくは生かしておいてもらいたいと、そしてこれを少しでも活用していただきたいという気持ちですが、そういうことは可能でしょうか。
  174. 海部俊樹

    国務大臣海部俊樹君) その後残念ながら聞かれなかったわけでありますが、それは懇談会をやめたということでもございませんし、それからやっぱりみんなが共通に時間をとって集まってという機会が持てなかったことだろうと思います。必要があればまたこれは開くことになろうと、私はそう理解しております。
  175. 有田一寿

    ○有田一寿君 以上で質疑は終わります。
  176. 吉田実

    委員長吉田実君) 御苦労さまでした。  本調査に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  177. 吉田実

    委員長吉田実君) 次に、女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、発議者粕谷照美君から趣旨説明を聴取いたします。粕谷照美君。
  178. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、第二院クラブ並びに無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました女子教育職員の出産に際しての補助教育職員の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  学校教育がその目的を達成するためには、児童生徒に対する指導活動のほか、財務・管理・環境整備や子供の安全福祉にかかわる活動が一体として機能しなければなりません。そのため、学校内に教諭のほか養護教諭、栄養職員、寮母等いろいろな職種が法律に基づいて配置されております。事務職員につきましても、学校教育法第二十八条に原則として置かなければならないと定められておるのであります。現在、学校事務職員が担当している職務にはまず一般的な事務として文書・統計・給与・経理事務などがあり、また直接子供にかかわる事務としては、教材教具、施設設備および就学奨励などの事務、さらには地域の父母にかかわるPTA諸活動への援助など、きわめて多方面にわたっております。  さらに、これらの複雑多様な学校事務を適正に行うためには学校教育の理念、教育内容、教育行政の仕組み及び子供の学習環境の把握など学校教育に関する深い知識・教養が要請されており、一般行政事務とは別の意味での専門性を持たなければならないのであります。  以上のように学校事務は、教員の教育活動と相まって学校運営を有機的・一体的に進めるためにきわめて重要な役割りを果たしていると言わなければなりません。  しかるに去る第四十六回国会における本法の一部改正によって女子の実習助手が法の適用対象に加えられ、国立及び公立小学校中学校高等学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園に勤務する女子教育職員のすべてが、この法律の適用を受けるに至りました。にもかかわらず、学校教育の現場に勤務する教職員のうち、ひとり学校事務職員のみが本法の適用の対象外に置かれることになりました。  したがいまして、たとえば女子の学校事務職員が一人のみという学校で、本人が出産のための休暇に入った場合、その仕事はすべて教員に肩がわりされることになります。ところが教員は、元来そのような事務にふなれなため、病院あるいは自宅で休んでいる学校事務職員のまくら元へ仕事のことでいろいろと聞きにいくこととなり、本人は事実上安心して産休を完全にとれない状態であります。  また、教員が学校事務を分担させられることにより、教育活動に手不足が生じ、教育の正常な実施が阻害されているのであります。  また、一部の県では、学校事務職員が産休をとった場合、学校内の事情に通じている当該学校の教員を学校事務に当たらせ、その結果学級担任、または教科担当の穴埋めには、産休補助教員を充てるという措置をとっているのであります。  このようなやり方は、いずれも学校事務職員に対する産休補助職員制度が認められていないため生じた苦肉の策であり、これでは専門的な学校事務の遂行に円滑を欠くばかりか、子供教育にも支障を来たし、学校内に二重の不正常な事態を引き起こすものであり、看過できない問題であると思います。  ところで、学校事務職員の男女別割合を見ますと、女子事務職員の占める割合は、幼稚園で八六%、小学校で六九%、中学校で六〇%、高等学校で四〇%、特殊教育学校で三九%という高率であり、国公立のこれらの学校に勤務する女子事務職員の総数は約三万一千名に達しております。これら多数の女子事務職員は、先に申しましたように、その出産に際して代替職員の臨時任用制度がないために、その大半が労働基準法で保障された産前六週間・産後六週間の休暇もとりにくい状況であります。  このような不合理な実情を改め、かつ母体及び生児の保護と教育の正常な実施を確保するために、多くの県または市町村においては、それぞれ独自な形で代替事務職員を置くことを認めざるを得なくなってきているというのが今日の実態であります。これは、当然速やかに国の制度として確立すべきであると考え、ここに本改正案を提出した次第であります。  次に改正の内容としては、第一に、法第二条第二項に新たに「事務職員」を加えております。これによって、女子の事務職員の出産の場合も補助職員の任用が可能になります。  第二に、法の題名及び本則中の「女子教育職員」を「女子教職員」に改め、「補助教育職員」を「補助教職員」に改めております。これは、従前、本法の適用対象とされていた者が、教育に直接的に携わる「教育職員」に限られていたのに対して、今回、学校事務職員を加えるために、その字句を教育職員と学校事務職員の総称である「教職員」に改めるものであります。  なお、この法律は、実施のための準備期間の必要性を考慮して、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することといたしております。  なお、本法施行に要する国の経費は年間約一億九千七百万円であります。  本法案は、過去第四十八回、第五十一回、第五十五回、第五十八回、第六十五回、第六十八回、第七十一回の各国会に提出され、とくに第七十二回国会では参議院において全会一致をもって可決されました。その後第七十五回、第七十七回及び第八十回国会にも提出され、この法案が最初に提案されて以来十年以上の歴史を持ちながら、いまだにその実現を見るに至らないのであります。  以上の経緯にかんがみ、今回はぜひとも本法案が成立するよう、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  179. 吉田実

    委員長吉田実君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会      —————・—————