○国務
大臣(
鈴木善幸君) 私に
答弁を求められましたので、いままで
川村先生から御指摘になりました点を一括して私の考えを
お答えをしたいと思います。
先ほど
停船命令違反から
許可証不
所持等まで、これはもう初歩的なことであって当然のことをやってないと、これは
政府の
指導が十分でなかったというおしかりでございます。私
どもおしかりを受けまして、これをとやかく言うものではございませんが、
川村先生もおっしゃるように、これらはきわめて二百海里時代、向こうがその
海域に対する主権的
権利を行使する管轄権を持っているわけでありますから、こういうものは当然のことでございます。二百海里時代の厳しさというものを私
どもは業界にも十分話をしておるわけでありますが、その厳しさというものが、この実施後まだ日が浅いという点もあろうかと思いますが、確かに甘く考えておる点もあるのではないかと、このように思うわけでございます。今後とも、この点につきましては、さらに
指導の徹底を加えたい。
ちなみに、
ソ連の場合どうなっているかと申しますと、今回モスクワへ参りまして、後段で申し上げるような、基準を明確にせよとかいろんなこちらから注文をしたわけでありますが、その際明らかになったことでありますけれ
ども、
ソ連側においては、この
違反事故を起こした船長は直ちに下船をさしておるようでございます。そしてその
罰金、
日本では
担保金でございますが、その
担保金につきましては、船長等の月給からこれを棒引きをして、これは国で払うべきものではない、おまえたちの不注意等によって起きたこれは事件であるから当然みずからの
責任でこれを支弁すべきであると、こういう巌しいやり方をやっておるようでございます。
こういう点を見ましても、
ソ連のやり方につきましては、いろいろ不満もございますけれ
ども、
ソ連側としてはこの二百海里時代の
違反事故を起こさないように、また、それに対してはみずから巌しく律しておる、こういう姿勢であるわけでありますが、わが方としても、そこまではなかなか民間の
漁船に対してはできませんけれ
ども、そういう巌しいものであるということは十分やはり心得て、二百海里時代に対処して
操業していかなければいけない。これがまず第一点でございます。
それから、基準が不明確である。確かに不明確でございますが、この点は、基準をどの国もこれを公表して明らかにしないたてまえになっております。でありますから、その基準がどの辺にあるかということは詳細に把握することができません。ただ問題は、同じような事犯が起こった場合に同じような処分を受けておるということであればこれは納得がいくわけでございます。しかるところ、どうも同じようなことであるのに
罰金の額も大分違うというようなことで、取り締まり官なり、あるいは監督官なりのある程度の幅を持ってといいながらもどうもその辺が納得がいかない、こういう点がございます。この点は、今回長期交渉でモスクワへ参りましたわが方の代表から、もう少し基準に照らして納得のいけるようなやり方をやってほしいということを、改善方を強く要請をいたしておるところでございます。
それから、これに関連をいたしましてもう一点申し上げておかなければならぬのでありますが、この
違反を摘発をし取り調べをして
罰金を賦課したその調書を、ひとつ漏れなくわが方の
漁船に渡してもらいたいという要求をしております。と申しますことは、どうもその調書がありませんと、
政府の方でこれは不当であるというようなことで正式に抗議をすることがなかなかできない。とかく
漁船員の方は、まあこの程度のことだったけれ
どもこれだけの
罰金を取られたと、こうなるわけでございますけれ
ども、それにはやはり調書というものをわが方でそれを受け取る、そういうことを励行してもらいたいということを申し入れをしております。これは向こう側でも、ぜひ第一線の取り締まり官に対して徹底をして、今後は調書はその当該
漁船に必ずその写しを渡してやるということを約束をいたしておるようなことでございます。どうもいろいろやっておりますと、私
どもがその
違反漁船から聞いておりますことと向こうの調書、これとの間に若干の
内容の食い違いがあるような点もあるわけでございまして、そういうようなことで調書をぜひ渡してもらいたいと、こういうことでございます。
それから、制度的な問題は、
日本は
担保金を取りますけれ
ども、これは刑事手続の進行を担保すると、こういうことで、基本は裁判ですべては決すると、こういうことにたてまえがなっております。その出頭命令を受けた日までに来ない場合に
担保金は国庫に収納される、こういう仕組みになっておりますが、向こうは、ちょうど交通
違反のようなぐあいに行政罰的な処分がなされる。それに対して不服があって不服の申し立てをした場合に裁判になると、こういう仕組みになっておりまして、制度的にも違う面がございます。
そういうようなことで、第一線の取り締まり官、監督官の与えられた裁量というものがあるようでございまして、この点は余りに大きな
——それには感情的な問題あるいは取り締まりに対して非協力であったとか、態度が悪いとか、そういうようなこと等で
罰金の額が違うというようなこともあるようでございますから、この点は
ソ連政府に対しまして強く申し入れをいたしておるところでございます。