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政府委員(
鈴木貞敏君) いま御
質疑の欧米型犯罪への移行、あるいはこれからのいろいろの問題点の御
指摘がございましたが、実は法務省で出しておりまする犯罪白書、これに対応するといいましょうか、
警察も御承知のとおり
警察白書というのをずっと出しておりまして、実は四十八年版あるいは五十年版、これでやはり欧米諸都市とのいろいろの比較、あるいはニューヨーク、ロサンゼルスあるいはモントリオール、ロンドン、パリ、こういった大都市と東京との犯罪の比較、こういったものも実は
警察の段階でもいろいろやった経緯がございます。今回の法務省で出しました犯罪白書も、そういう
意味でわれわれが
理解しておったものと大差ない。それをある
意味においては集大成して非常に詳細なる推敲を加えいろいろやったというふうに
理解しております。
そこで、こういう中で率直に言いますれば、
日本の犯罪情勢というのは、先出先ほど言われましたとおり、年間約百二十万件、まあ大体この十年間、年百二十万件、もちろん交通
関係の事犯は除きまして、いわゆる刑法犯、これが百二十万件ぐらいで年々推移しております。この両三年ぐらいの間若干ずつふえておったわけでございますが、ことしに入りましてから、それがちょっとダウンの傾向を示してきておりまして、これが那辺に事由があるのか、ちょっと私たちも決め手といいましょうか、決定的な要因がわかりません。しかし九月末現在の統計等を見ましても、七十九万件ぐらいで昨年より若干減っておるということでございます。しかし中身を見ますと、やはり決して安閑とできない。やはり欧米型といいましょうか、そういうものも含めて、まあ
日本の社会構造というものは大変いま変化しておるということでございまして、特に先ほど来の御
質疑にもありました人口の流動化に伴う、何といいましょうか、その辺の都市化、それに伴う連帯感の欠如というふうな問題もあるでしょうし、さらにまた広域化ということで、まあモータリゼーションの中で非常に足が速くなっておる。あるいは知能化しておる。いろいろの要素が山積しておるわけでございますが、そういう中で数は数として、やはり内容的に質的にきわめて危険なものがあるというふうに私たちも判断いたしております。
それで、そういう件数に対しまして検挙でございますけれ
ども、大体昨年は五九%ぐらいの検挙でございます。ところが、ことしに入りましてから残念ながらその検挙率がダウンしておりまして、特に強窃盗
——殺人、強盗、強姦、放火ですね、これを凶悪犯と言っておりますが、こういった凶悪犯が起こりますと、それぞれの府県
警察では捜査本部を設置いたしまして、全力を挙げて早期
解決に当たるわけですが、こういう凶悪犯の検挙率が残念ながら五割を割らんとしておるというふうなことでございます。それだけわれわれ
警察をめぐる捜査環境というのは年々悪化しておるということを痛感しております。
また、御
指摘になりましたような暴力団の問題、あるいはまだ麻薬の問題、覚せい剤の問題あるいは銃砲の問題、こういった問題を抱えまして犯罪情勢は決して楽観を許さない。私としまして、年々五九%の検挙率が、悪くすれば五割を割るようなことになるんじゃないかということを危惧しておりますが、もし五割でも割るとなりますと、やはりこれは相乗的な効果があろうと思うわけでございまして、大変なことだということで、実は各種
会議その他を通じまして、まあ数を、必ずしも数だけを言うわけじゃございませんが、一応のメルクマールとして五割は絶対に切らない、ひとつの
努力といいましょうか、検挙率といいますか、そういった面でも実は配意しておるというふうなことでございます。したがいまして、そういういろいろの問題点、特に暴力団、これがいろいろ焦点を当ててわれわれも取り締まりをやっているわけでございますが、約二千五百団体、十一万人という暴力団が全国におるわけでございますが、この暴力団の根絶、これがやはり当面の一番大きな問題であろうと思っております。しかし、これもわれわれのたび重なる根気強い取り締まりにもかかわらず、残念ながら非常に大きな組織の暴力団の寡占化を非常に強めており、しかも対立抗争事件が起き、白昼拳銃で
一般の市民の人を巻き込み、さらにまた
警察官も負傷する、こういった事犯が沖繩松山あるいは福井あるいは長崎あるいは東京というふうなところでそれぞれ起こっておるような
状況でございますので、これは何とかひとつ国民の暴力を排除するというふうな機運のもとに
警察の取り締まりを中心にし、かつまた
関係各庁の協力を得まして、この根絶に向かって、ひとついきたいというのが一つ。
それから、問題の麻薬、覚せい剤、これにつきましてもやはり犯罪と非常に密着しておりまして大変ふえております。
数字は省略いたしますけれ
ども、やはり農村の婦人にまでこれが浸透しておるというふうな
状況でございまして、そういう中でやはりこの覚せい剤、麻薬というものを徹底してひとつ摘発していく、これがまた暴力団の大きな資金源になっておりまして、大変なウエートを占めておるわけでございます。暴力団の壊滅のためにも麻薬、覚せい剤の取り締まりは必須の問題であると、こういうふうに認識しております。
さらにまた、御
指摘の銃砲の問題、特に拳銃、猟銃の問題でございますけれ
ども、これはやはり
日本の治安がまあ諸外国と比べて一応非常にいいと言われている一つの大きな要素として、やはり銃砲の取り締まりが非常に厳しいということと、麻薬等の取り締まりが厳しい、この
二つが大きなエレメントであろう、こう万人が認めるところだと思いますが、その銃砲
関係、昨年一年間で約千三百余丁の拳銃を押収いたしております、暴力団から押収しておるというふうなことでございまして、やはり外国からの密輸入というようなものも相当あるようでございます。幸い先
国会におきまして、
国会で銃刀法を改正していただきまして、罰則の強化その他が図られたわけでございますが、この機、
警察といたしましてもふんどしを締め直してさらにこの銃刀
——各種の銃器を徹底して一丁でも多く摘発するというふうなことで全国スクラムを組んでやっておるというふうな
状況でございます。
簡単でございますが、一応概観しましてそういう
状況でございます。