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政府委員(
大倉眞隆君) 計数につきましては、ただいま受取配当総額はすぐ出ると思いますので、調べました上でお答えいたします。
ただその前に、
税制調査会での御論議を通じまして、受取配当を益金に算入しないといういまの仕組み、これがいわゆる不公平
税制として扱うかどうかということは五十年八月以降取り上げていただきまして、かなり長時間御討議をいただきました。五十一年度答申の際に、いわゆる不公平
税制として今後精力的に整理合理化すべきものを
政策税制というところで整理されました。
政策税制について整理合理化を推進しようと、今回の中期答申でもその
考え方が引き続き答申の中に示されております。何が
政策税制であるか、何をそれ以外として扱うかということは、五十一年度答申で詳細に触れられておりまして、これは資料としましてすでに国会にもお出しいたしてございますが、その中では、ただいまの御指摘とは違いまして、受取配当を益金にしないといういまの仕組みは、
政策税制としては考えないんだということになっております。
その理由の
一つは、やはり受取配当を益金にしないというのは、
法人税の性格につきましてよく御論議が出ます、必ずしも適当な言葉だと思いませんけれ
ども、擬制説とか独立説とかいう論議とかかわりなく、どの国でも大体原則としては課税対象から外しているわけでございまして、最大の理由の
一つは、やはり
法人収益を課税いたしますときに、
企業経営の形態に対して中立的でありたいという点があるのだろうと思います。と申しますのは、支店で経営いたしておりますと、当然に支店の
利益は本店にまとめまして課税が行われます。子
会社で経営いたしておりますと子
会社の収益として課税がされ、親
会社は別の課税をされているわけでございます。両者を通算いたしますれば、それでいわば支店形態と同じ
負担になりまして、
企業経営の形態いかんによって税が介入することがないであろう。その
意味で申せば、子
会社の収益を一たび課税して、さらに子
会社から親
会社が受け取る配当をもう一度親
会社の収益として課税いたしますと、税が介入するためにむしろ子
会社をつくらない方がいい、支店でやった方がいいということになるんではなかろうか。そういう
考え方があって、擬制説とか独立説とかいう以前に、どの国でも原則として受取配当には課税をしないという仕組みの方が多いわけでございます。したがって、これは
政策税制として扱うのではなくて、
法人税の課税の仕組みとして考えるべき問題であろうという整理がされています。
もう
一つの問題は、
法人が
法人の株を持っているのが非常に多いのだから、それについて
負担を求めてもいいではないかという別の角度の御議論もございますが、これにつきましては、
法人が非常に株主と切り離された独自の存在であると考える場合には、受取配当を課税する反面で支払い配当を損金にするという
考え方は
一つあるわけでございます。私
どもも
税制調査会でことしの七月でございましたか、
委員以外の各方面の有識者の方にお越しいただいて御意見を伺いたいという機会を持ったことがございまして、そのときに、御
承知の東京都新
財源構想研究会の座長でございます山本教授に来ていただいたんでございますが、山本教授は、かねてから支払い配当を益金で課税すべきだということを強く主張しておられます。そのときに、なぜそういう御主張かという御質問が
委員の方から出まして、もし課税するとすれば支払い配当は損金にするのですかという御質問がございましたところ、山本座長はそれはそうなんですと、こうお答えになったわけです。したがいまして、これはやはり仕組みの問題としてお考えになっておるので、課税しないことが不公平だというとらえ方ではないのだというふうに
委員の皆さんも御了解になったようでございます。
ところで、
数字は、
法人株主の比率というのは実は申しわけございません、証券局で聞きまして後刻御報告できると思いますが、私
どもにわかっておりますのは、受取配当の総額がわかっております。これは五十年度の税務統計でございますが、総額が四千八百五十三億円でございます。そのうち現在のシステムで課税対象から除かれますいわゆる益金不算入額と申しますのは二千四十七億円でございます。なぜ差額があるかと申しますと、これ非常に技術的なのでごく簡単に申しますと、負債利子控除というものがございますので、受取配当全額が益金不算入になるわけではない。したがって、現在受取配当益金不算入
制度の結果、課税対象から外されている配当額というのは四千八百の方ではなくて二千四十七億円の方である、そのように御了承いただき、なおこれに対しまして先ほど御紹介しましたような御議論で申しますれば、支払配当が全部損金になっているわけでございましょうが、支払い配当総額は同じ年度で同様に税務統計の方で申しますと一兆五千二百億円でございます。