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1977-10-26 第82回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)    午前十時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         片岡 勝治君     理 事                久次米健太郎君                 原 文兵衛君                 粕谷 照美君                 小平 芳平君     委 員                 佐々木 満君                 田代由紀男君                 田原 武雄君                 林  寛子君                 藤井 丙午君                 山内 一郎君                 勝又 武一君                 野口 忠夫君                 藤田  進君                 内田 善利君                 沓脱タケ子君                 円山 雅也君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  石原慎太郎君    政府委員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁企画調整        局環境保健部長  山本 宜正君        環境庁自然保護        局長       出原 孝夫君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        通商産業大臣官        房審議官     松村 克之君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        文化庁文化財保        護部記念物課長  横瀬 庄次君        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  七野  護君        厚生省薬務局安        全課長      代田久米雄君        林野庁指導部森        林保全課長    小田島輝夫君        通商産業省立地        公害局公害防止        指導課長     滝沢 宏夫君        通商産業省基礎        産業局化学品安        全課長      鈴木  晃君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (石原環境庁長官発言問題に関する件)  (カネミ油症に関する件)  (カモシカによる森林被害に関する件)  (化学物質に対するアセスメントに関する件)  (窒素酸化物呼吸器に与える影響に関する  件)     —————————————
  2. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 原文兵衛

    原文兵衛君 短い時間で端的に石原長官質問したいと思います。  二十三日の日曜日の福田恆存さんとのテレビ対談長官が述べられた、例の、昭和四十五年の公害対策基本法経済との調和条項削除に関する発言ですね。基本法の中から経済との調和条項を取ったのはやや魔女狩り的だという発言をしたように私は聞きましたが、これは環境行政基本にかかわる問題です。非常に重要だと思います、この発言は。  そこで長官、どういう意図で、どういう気持ちで言われたのか、その真意をここではっきり述べていただきたいと思います。
  4. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私の発言によりましていろいろ大きな誤解を生じましたこと、大変恐縮に存じます。  私は、もとより公害対策基本法を尊重、遵守する姿勢にはもういささかも変わりはございません。それに、四十二年に旧法ができまして、調和条項というものが一種の隠れみのになりまして、依然として経済優先で非常に大きな恐ろしい公害事件が起こったこともよく存じておりますし、現に水俣はその解決を見ないままに、まだ非常に悲惨な状態にあるわけでございますが、すでにあのころから、七〇年代は産業時代が終わって資源有限で非常に困難な時代だろうということも予想されておりました。そういうときにあの改正があったわけでございますけれども、まあ環境問題というのは社会的経済的側面を他の行政と同じように持っております。そしてまた、問題によりましては、社会的あるいは経済的な問題と環境問題というものが非常にこう対立することも往々でございます。そういう意味で、私たちはやはりその社会的経済的側面というものを環境行政の中で十分勘案していかなくてはならぬと思いますが、これはもう原先生の方がはるかに環境問題で先輩でいらっしゃいますのでよく御存じと思いますけれども、人間の健康に関しましては、これはもうこれにまさるものはございませんし、経済云々ということを考える余地はございません。ただ、生活環境ということに関しますと、社会的経済的側面の勘案というものを慎重にしなければならない、そういうケースが間々出てくると思いますし、現にそういうケースがたくさんございます。  で、私があそこで申しましたのは、まあ魔女狩り的というのは大変誤解を招きやすい言葉で、予算委員会でも取り消させていただきましたが、行政姿勢、その中に良識を込めて行えば、調和条項というものがあっても、やはり公害の元凶というものをちゃんと把握して正当な解決あるいは正当な施策というのは行われ得たのではないかと思います。しかし、とにかくあそこでそれを取ったわけでございますけれども、非常に大きな論議の末に入れたものをまたあそこで取ったということで、やや新しい誤解のようなものを生じたうらみがないとは言えないと思うわけでございます。  そういう意味で私申しましたので、それじゃ一体新しい誤解とは何かと申しますと、たとえば産業界の一部には、あれを取ったおかげで公害健康被害補償の今日の扱い方が決まってしまったと、あるいはカネミ扱いなども今日のようになったという、これ非常に筋違いの誤解でございますけど、そういう非難もございます。これはもう人間の健康にかかわることでございますから、論のないところでございますけれども、あり得ないところでございますけれども、そういう誤解もございますし、また一方では、あの調和条項というものを外したということを論拠にして、開発はとにかく一切いかぬのだというような論もあっちこっちにございます。そういう意味で私は、新しい誤解を生じたうらみがあるということで、まあああいう表現をしたわけでございまして、いささか、まあ限られた時間でございまして、他の問題との文脈のつながりで、あれだけを論じたものでございませんから、言葉が足りずに誤解を生じましたことを大変恐縮に存ずる次第でございます。  繰り返して申しますが、私は、現行の公害基本法というものを遵守し、尊重し、それを行政の中に反映していくことにはいささかも変わりない姿勢で進むつもりでございます。
  5. 原文兵衛

    原文兵衛君 あれは四十五年の暮れの国会だったと思いますが、私、当時まだ参議院に籍がございませんでしたけれども、たまたま公害防止事業団理事長などをやっていた関係もあって、公害問題については非常に関心を持っていたわけでございますが、私もちょっと速記録を調べたんですが、たしかあの審議のときに、当時の佐藤総理は、この条項はやはり誤解を招くおそれがあるので、この条項を削除するということを言われておったと思います。それで、これはたしか与野党一致でもってこの改正案が成立したと思うわけでございますが、そういうような意味で、いま長官はもちろん基本法精神にのっとってやるんだということを言われたけれども、そうしますと、現在この経済との調和条項の復活が必要だというふうには考えてはいないんでしょうね。この点をもう一回はっきり。
  6. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) そのようには決して考えておりません。また、その必要もないと思います。
  7. 原文兵衛

    原文兵衛君 それではひとつ、この公害対策環境行政基本にかかわる問題で、国民にいろいろな不安とか誤解を与えるということは、非常にやはり私は気をつけなければならぬ問題だと思いますので、私が言うのもおかしいですけれども、長官言動というものはずいぶんこれやっぱり国民にも不安を与えたりする危険性もありますので、ひとつ十分御注意いただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  8. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまの原理事の御意見あるいは質問に関連をするわけですけれども、長官公害対策基本法を遵守し、尊重し、行政に反映をさせていくと、こう言明をされましたので、一応安心をしましたけれども、ずっとこの新聞記事を見ておりますと、やっぱり不安が出てくるわけです。こういうふうなところで御答弁をなさっていらっしゃることが、心の底からそう思っていらっしゃるのか。この国会を切り抜けるためにそういうふうにおっしゃっているのかという、この辺の不安もあるわけですから、もう一度きちんとお話しをいただきたいと思います。
  9. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 心の底からそう思っております。  それで、佐藤総理が、いたずらな誤解を招くために、ということを答弁でおっしゃっておりますが、私は、あの調和条項というものがあっても、これを冷静に理性的に読めば、決して、その調和という形の言葉の中に経済を優先するというものはみじんも含まれていないと思います。そしてまた、現代になれば、社会全体の、あるいは世界全体の経済状況が今日のていたらくでございまして、いろいろその社会性経済性というものと環境、特に生活環境の問題が二律背反する、あるいは対立するという状況が非常にふえてまいりました。私は、調和条項があってもなくても、とにかくこの生活環境の問題の中で開発は一切いけないのだというようなことは、これはやはりちょっと極端な論でありまして、やはり社会的な側面経済的な側面というものを十分勘案することは決して間違いじゃないと思いますし、それを十分勘案しながら生活環境に関する行政をしていくべきだと心得ております。そういう意味で私は、その姿勢公害基本法というものを遵守し尊重することができると思っておる次第でございます。
  10. 粕谷照美

    粕谷照美君 たしか三木首相のときだったと思いますけれども、憲法記念の日に、憲法を変えていこうという集会法務大臣出席をされた。憲法を守っていかなきゃならない法務大臣が、番人である法務大臣憲法を変えようという集会に、幾らお客で物を言わないからといって、出席していたことは何だ。というのは、やっぱり法務大臣そのもの憲法を変えようという気持ちがあるからではないかということで、国会の中で大論議になり、ずいぶん混乱をしたということを私は思い出しているわけですけれども、やっぱりこの環境行政最高責任者である長官がそのような言葉を、天下の大ぜいの人たちが見ている前で、テレビの中でお話をなされたということは、私は非常にもう軽はずみだったというふうに思うわけで、以後本当にやめていただきたいと思うわけです。なぜなれば、長官自身もその目でもって熊本における水俣方々にお会いしていらっしゃるわけですから、いかに経済優先人間の命や環境というものに偉大な大きな影響を与えるかということを見ていらっしゃると思うわけです。私もまた新潟の出身ですから、新潟水俣病の患者方々にもお会いしておりますし、つい先日はカネミ判決があったということで、カネミ方々がいらっしゃっております。それから、教師をしておりましたから、子供たち大気汚染の中でぜんそくに苦しみながら勉強をしている、そういう姿を見ておりますと、やっぱり人間の命というものが優先しなきゃならないと、こういう気持ちを持っているから、そういう憤りを持っているから、長官のあの発言は私は許せないというふうに思ったわけです。  けれども、まあきょうは取り消されたわけですし、真意の方もお話しになったわけですから、それはそれといたしまして、ちょっと長官発言そのものにいろいろ問題があるんじゃないかというのは、先日からもテレビに出ておりましたけれども、環境庁記者クラブ方々が私のところに資料を持ってまいりましてね、それで、「壮絶なたたかい」をやっていらっしゃるという話に触れました。私は長官環境庁記者クラブ方々と「壮絶なたたかい」をやっていらっしゃるということを知りませんでしたけれども、しかし、この資料を見まして、なかなか壮絶なものだというふうに思ったわけです。大変なものですね。で、「週刊現代」にいろいろ載っているわけですが、週刊誌そのものには、私も載ったことがあるんですけれども、自分発言したことがそのまま載らないでちょっと考え方が違ったりして載るわけですから、週刊誌記事そのものをそのとおりだというふうに私も読まないつもりです、大変それは大人げないというふうに思いますけれども。けれども、大体の意図は、ちょっと問題があるんじゃないかなと思う部分があるんですよね。たとえば、「大臣なんてこれは下らない仕事だね。」と、こういうのですね。予算委員会における長官説明を聞けば、まあいろいろあって「大臣は下らない仕事だね。」と、こうおっしゃったんだという そんな一つ一つ説明をつけなければならないようなことであっては非常に困るわけですが、私が問題にしたいのはその次なんですよ。「男のやる仕事じゃないね。」と、こうあるわけですね。そうすると、大臣は女がやる仕事ですから、私なり沓脱さんなりがその席に座っていれば(笑声)これでよろしいということになろうかと思うわけですけれども、しかし、男のやる仕事と女のやる仕事というのは一体どのように区別をしていらっしゃるのかですね。特に、この国際婦人年から以後男と女の差別というのか偏見をなくしていこうというときに、大臣が女のやる仕事……。私、大臣の票というのは婦人の票が物すごく入っていたと思うんですよ。(笑声)それなのにあなた、こんなことをおっしゃっていいんですか。
  11. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私がそういうことを申しましたことで、きのうも衆議院の公環特上田委員から抗議というか、質問をいただいたんですけれども、ここでそういう表現をした前後の私の考え方をくどくど申しませんが、まあとにかく中身をよく見ないで黙ってぽんと——きのう盲判という言葉を使っておしかりを受けましたので、何と申しましょうか、とにかく唯々諾々判こを押すのが名大臣であるとか、それから他の省庁とのことを考えずに、一部のジャーナリズムに喝采されるようなことを、ある意味では国益など考えずに一気かせいでやってしまえと、その方が摩擦が起こらずにいいじゃないかと、それが名大臣なんだということを言われれば、これは私はどうもそういう政治家、そういう大臣になりたいと思いませんし、それが世評で言われるところの名政治家であるならば、私はそれは非常にくだらない存在であるというようなことで申したわけでございますが、その「男」という表現に関しましては、これはどうも確かにそういう誤解を招きかねないので申しわけないと思いますけれども、まあ男の中にも男らしい男と男らしくない男——と言いますと、それじゃ男らしくない男は、日本の場合には女々しいなんという言葉がありまして、これもまた非常に誤解を招きやすいのでございますけれども、きのうも申しましたが、これぞ男の生きる道という、人口に膾炙した、歌の文句にあるような男の道というのは、何も女が歩んでいけない道ではございませんで、私は男でございますから、つまり自分なりの所信なり決心なりを持っているわけでございまして、それを自分責任においてとにかく堂々と披瀝するという意味で、それをしないことが名大臣と言われるならば、それがまたよき政治家と言いましょうか、すぐれた政治家と言われるならば、どうも私は自分男子としての本懐にそぐわないものであるという意味で「男」という言葉を使いましたので、決して男と女を区別したわけではございません。それはひとつ御理解いただきたいと思います。
  12. 粕谷照美

    粕谷照美君 ちっとも御理解できないわけですよ。そういう大体男子本懐これに過ぐるものなしなんてね、お若い大臣がそんなことをおっしゃるということ自体が私は不思議だという気持ちがするわけです。まあしかし、この点についてはそう簡単に直るわけではありませんからね、以後十分に監視をしながら私も運動を続けていきたいというふうに思っております。  それで、問題なのは、「大臣なんてこれは下らない仕事だ」と、「政治家なんて下らない」と、こうおっしゃいますけれどもね、小中学校の生徒にアンケートをとっているんですね、日教組が。それで、政治家というものにどんなイメージを持っているかということでやってみましたら、ちょうど田中元首相のあの事件の後だったんでね、やっぱり政治家というのは大体こっそりお金をもらう人だとか、あるいは悪いことをする人だとかという、こういうアンケートがずっとこう出てきているわけですね。そうしますと、私自身政治家の端くれとして、人がそういう目で私たちを見ているのではないかと、大変な被害感を持っているわけですね。だから、長官がそういうことをおっしゃるのはやっぱり——文筆家石原慎太郎ならよろしいでしょう。それから何ですか、藤原弘達さんなんか、ああいう方々がおっしゃるのはね、それはそうだというふうにみんなが思っておりますけれども、しかし、長官でありますあなたがそういうことをおっしゃるということは、非常に大きな影響を与えるという意味で、やっぱり慎重な発言をしていただきたいという気持ちを持っております。  で、「現代」の中でこういうのがあるんですね。「新聞記者もひどいが、ボクの身のまわりにいた部下とかブレーンもひどいのばかりでねえ……」、こういうのを本当におっしゃったんですか。それで、あなたの身の回りにいた部下——部下ということになれば、やっぱり上下の関係ですから、物を書いていた時代石原慎太郎さんとは違う。つまり、政治家になられたときの、つまり環境庁とかそういう関係方々部下とかブレーンになるんだろうというふうに思いますけれども、「ひどいのばかりでねえ……」という発言、これされたんですか。こういうことをおっしゃるということは、私は人の上に立つ者として全くもうあきれ返った発言だというふうに思うんですが、環境庁人たち、こんなもの読んで喜んでいらっしゃるんでしょうかね。環境庁の方の御意見をお伺いしたいというふうに思いますし、さらにまた、その下の方のあれでは、「ボクの選挙事務所の連中なども、ロクでもない人間ばかりで」と、こうおっしゃっているわけです。私は自分選挙をしていただきましたけどもね、選挙事務所にいる方々が本当に夜の夜中も、それから雨の日も雪の日も大変な苦労をしていらっしゃるのを見まして、それは自分自身の気に沿わないことはあるかもしれません。けれども、こんな思いをして皆さんががんばってくださると思うから、どんなに厳しくたって自分自身ががんばるわけですよ。あなたがこんなことをおっしゃるというのはね、人間を愛する心なんて持たない長官じゃないのだろうか、そういうふうに思うんですけれども、その点についての御見解いかがですか。
  13. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 断わっておきますけれども、そこで私が評価をしないというのは、環境庁のお役人のことではこれはございません。  一時間半ほどのインタビューで、詳細は覚えておりませんけれども、たしか日本アメリカ議員活動の違いのようなことを話したと思いますし、それからまた、私の選挙運動の話をしまして、私は選挙区における私の支持者には非常に感謝しておりますが、どうも私の選挙の、私が給料を払っている私自身事務所人間たちには、何かやはり非常に私の選挙に対して楽観があって、どうも責任を果たしていないし、そういうことが非常にもどかしくて、何かいつも私は一人で戦っているような焦燥感があるというようなことを話したと思います。そういう意味で申しましたし、またこれは私の場合だけならば幸いでございますけれども、アメリカ議員のように、すべての法案というものが役所からほとんどが上がってくるということではなしに、みんな議員の秘書とかそういうスタッフが、学者を集め、それを司会して新しい法律を議員提案として出してくる。私はその方が望ましいと思いますし、そういうようなよもやま話をした中での表現でございまして、それをそういうふうな形で出されることは非常に誤解を得かねないと思いますし、紙数ということの制限もあったんでしょうけれども、そういう誤解を得ましたことは私自身も心外でございます。  断わっておきますけれども、環境庁スタッフについて言及したわけでは一切ございません。
  14. 粕谷照美

    粕谷照美君 これはこれでやめますけれども、この「現代」にも、「だいたいこの人「放言魔」としては日本一、二の名声をほこる」と、こういうふうにあるわけですから、放言魔だから構わないかもしれませんけれども、やっぱりこういう週刊紙というのはこのような取材をされるんだということは十分御存じのはずですから、やはり御注意をいただいた方がいいんじゃないかというふうに思います。あなたの下で働く方々が勇気を持って、長官を慕って一緒に働くような条件というものをつくり出していただきたいと思います。  その後、この記者クラブ方々との何か手紙のやりとりですね。これなんかもずいぶん不思議な感じがするんですね。「私の言葉が些か足らなかった為にご迷惑をかけたとするなら申し訳けないし、恐縮に存じます。」というけれども、迷惑をかけているわけでしょう。新聞記者方々も大変な痛手を受けておられるわけですし、その辺のところもありますので、ぜひ長官言動は御注意をいただきたいという私は要望を申し上げて、次に移ります。  基本法を大事にされるという長官ですから、具体的に本当に基本法精神にのっとって環境行政をやられるかどうかという意味質問をしていきたいと思います。  一番最初に、カネミの問題に入ります。どちらが主かといえば、環境庁よりは厚生省の方が主体的な質問になるというふうに思いますけれども。十月五日の福岡地裁におけるカネミ油症事件判決は、ほぼ原告の主張を認めた形で出されていると私は考えています。世界で初めてのPCBの経口摂取による人体被害で、発生後八年有余、患者方々にとっては実に苦しい年月であったと思います。しかし、これから長い先も、治療方法さえも解明されていない油症と闘わなければなりませんし、また生活を守っていかなければならないわけですが、この判決の中にこう書いてあるわけですね。「本件のような大量かつ重篤な被害を惹起しながら、これまでの公害訴訟におけると同様、加害者である被告らは今日までその実質的救済に立ち上がっていないし、その気配すらない。このことは原告らを含む油症患者の心に大きな痛手として刻まれており、その無念さは看過さるべきでない。」、「看過さるべきでない。」ということは、看過している人たちがいるからこのような判決があったんだというふうに思うわけですけれども、政府としてはこの判決そのものを一体どのように見られているのかお伺いいたします。
  15. 七野護

    説明員七野護君) この福岡判決につきましては、国が被告になっておりませんので、この判決についての厚生省としての感想を申し述べるのは差し控えたいと、かように考えております。
  16. 粕谷照美

    粕谷照美君 国が被告になっていれば、判決が出ればもう文句も言えないではいはいと言わなきゃならないわけでしょう。これは国は関係ないけれども、行政の中で全然責任を認めてないようないまのあなたの答弁というのは、非常におかしいというふうに思いますよ。現に国民が大変な状況の中に陥ってどうにもならないから、ないお金を出し合って裁判をやって、ずいぶん長いことかかってようやく裁判の判決が出たわけでしょう。物も言わないなんていうような、そんな政府なんて必要ないじゃないですか。
  17. 七野護

    説明員七野護君) 言葉が足りずに失礼いたしました。  国の責任につきましては、現在小倉支部で係属中でございます。これは先ほど申し述べましたように、先ほど出しました判決は国が被告になっておらず、カネミ倉庫、それからカネミ倉庫の社長、それから鐘淵化学が被告になった判決でございます。それに引き続きまして、現在国が被告として民事訴訟が提訴されておりまして、これが先ほど述べましたような小倉裁判、これは小倉裁判と言われておる裁判でございますので、国の責任の問題につきましては司法機関にゆだねられておると、かように私たちは考えております。  しかし、本事件の特殊性と言いましょうか、重大性にかんがみまして、現在国では事件発生後直ちに油症研究班を設置いたしたわけでございます。現班長は九大の第三内科の教授でございますが、井林博教授のもとに油症治療研究班を設けまして、油症に関する疫学的研究、診断、治療に関する研究、さらに患者の追跡調査等を実施しておりまして、昭和四十三年度から五十一年度まで、総額約三億円の研究費を支出してきております。さらに、生活に困窮しておりますカネミ油症患者の援助をするために世帯更生資金の特例措置を講じておりますし、主要県におきましても、県単独で生活資金等を貸し付けているというのが現在の現状でございます。
  18. 粕谷照美

    粕谷照美君 国がそのような対策をした、県がそのような対策をしたということは、国や県にやっぱり責任があったからだというふうに理解をしてよろしいですか。
  19. 七野護

    説明員七野護君) 先ほども申し上げましたように、本件につきましてはいわゆる食中毒ということで私たちは対処してきたわけでございます。ところが通常起こります食中毒との違いは、PCBによる中毒ということで、非常に特異的な中毒事件ということもございますので、普通の中毒事件では実施してございませんが、本中毒事件につきましては、先ほど申し述べましたような患者に対する疫学的研究であるとか診断、治療に関する研究であるとか、そういうことを現在まで実施してきたというふうに考えております。
  20. 粕谷照美

    粕谷照美君 あなたのおっしゃっていることは何を言っているのかわかりませんよ。まあいずれ次々と質問をし、最終的にはこれは環境庁にも関連がありますから、御意見をいただきたいと思いますけれども。  それでは、この八年間にわたる被害者の実態というものをどのようにあなたの方では把握をしていますか。数の問題もあるでしょう。病状の問題もあるでしょう。それから遺伝の問題もあるでしょうし、さらに生活実態もあるというふうに思いますが。
  21. 七野護

    説明員七野護君) 患者の実態につきましては、厚生省といたしましては、これまで患者代表と過去七回の話し合いをしてきております。まあ四十九年の二月からでございますが、最後の話し合いは、この判決後の五十二年の去る十月二十日かと思いますが、十月二十日に行っております。  そこで、まあ患者代表から患者の実態等の事情はいろいろ聞いているわけでございます。現在の患者さんの総数、これは油症研究班で診定し認定されている患者さんでございますが、総数は千六百二十九名という、これは昨年の十二月三十一日現在の集計でございます。千六百二十九名ということになっております。
  22. 粕谷照美

    粕谷照美君 私が質問をしたのは、数だけ教えてくださいと言ったわけじゃないですよ。病気の状況はどうか、生活状況はどうかということも含めて言ってくださいと言ったんです。
  23. 七野護

    説明員七野護君) 生活状況につきましては、先ほど申し上げましたように、生活に困窮している患者さんがおみえになることも事実でございます。それにつきましては、先ほど申し上げましたように世帯更生資金の特例措置を講じて対処してきておりますし、また生活保護家庭につきましては、福祉資金という形で対処してきておるわけでございます。現在まで世帯更生資金として貸付状況の総枠は約八千万円に上っているというふうになっております。
  24. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、健康状態というのはよくなってきているんでしょうか、どうですか。
  25. 七野護

    説明員七野護君) このカネミ油症研究班の研究その他から見ますと、現在はすでに事件発生後約八年の年月がたっているわけでございます。発生当時、いわゆる急性症状を呈した場合は非常に重篤な皮膚症状その他を呈したわけでございますが、現在は大半がいわゆるこの皮膚症状は軽快に向かっていると、さように伺っております。
  26. 粕谷照美

    粕谷照美君 表から見ると軽快になっているということは言えるかと思いますけれども、私は、あなたはそういう意味では大変実情を知らないんじゃないかなという気持ちがします。本当に患者方々と会っているんですか、七回も。
  27. 七野護

    説明員七野護君) 私が食品衛生課長に着任して以来——七月に着任したわけでございますが、先ほども申し上げましたように、去る十月に患者の代表——これはカネミ油症事件全国連絡会議の代表でございますが、そこにカネミ患者さんも二名患者代表としてお見えになりました。そこで患者さんの口からいろいろの話を伺っております。
  28. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですから、この委員会の中でそのことを明確にあなたから発言をしていただきたかったわけですよね。  私もその方につい先日お会いしましたけれども、その方々がおっしゃるには、小中学生の歯がもうぼろぼろ折れている。お金のある人は入れ歯をするけれども、お金のない子供はだめだというようなことで、非常に親が心を痛めているわけですね。いまの子供たちが大体歯質が弱いというのは全国的にも言われておりますけれども、しかし、そんなに入れ歯をしなきゃならないように子供たちの歯が悪くなっていくというのは、カネミと全然関係がないというふうには思えないので、一体そのような点についての研究はどのようになっているかわからない。  それから、おいでになった方は、自分は働いていても職場で倒れると言うんです。倒れるから危なくて、周りの人たちがその人に仕事をさせることができなくて休ませておく。すると、人が働いているのに自分が休んでいるから、非常に心が痛んで——労働者というのはそういうものなんですよね、平気で休んでなんかいられないわけです。だんだんだんだん心が痛んで、そして職場をついに去ってしまった。こういう報告もされておりましたし、そこに来られた婦人の代表は、お嬢さんが二人おらるわけですが、あのころ子供だった子供がいまちょうど適齢期を迎えた。上の子供は就職をしたんですけれども、やっぱり働くことができないという。体がどうしても仕事についていけなくてついにやめたんだけれども、これじゃ結婚もできないだろう。いま妹は高校生だけれども、高校を卒業したってやっぱり姉と同じような運命をたどるだろうかと思うと、親としてもいても立ってもいたたまれない気持ちだ、眠れない毎日だと、こういうことを言っていらっしゃるわけですから、外から見て何でもなくても、ちょうどあの原爆被爆者と同じような状況というものがやっぱりいまここに出ているというふうに私は判断をいたします。  そして、栄養剤中毒というのがあるというお話ですから、栄養剤中毒って何だって聞きましたら、もう極度の疲労感からいままでにいろんな栄養剤を飲んでいて、その栄養剤を飲まないと落ちついて仕事ができないんだと、こういうことを言っておりました。これなんかも非常に大変な問題だというふうに思いますし、偏頭痛がもう大変で狂い死にしそうだと、こういうことを言っておられますね。特に油の中にそういうものが出てきて、こぶが体のあちこちに吹き出してくるんだ。特におしりの部分に吹き出してくると座っていることもできないし、腰をかけていることもできない。それがいつの間にかこぶがすうっと引っ込んでいったなと思って、やれよかったと思うと、またそれが別な場所に出てくるという、こういう状況が出ておりまして、もうとてもじゃないけれども、この先どうなるんだろうかという不安感を持っていらっしゃる。  そういうのがあなたのおっしゃる快方に向かったということでよろしいのか。その患者の言うことが、それは何もカネミのせいじゃない、ほかの病気のせいだというふうにあなたはおっしゃるのかということもお伺いしたいし、さらに膵臓だの肝臓だの糖尿だのがもううんと出ているわけでしょう。よそと比べてそういうようなものが本当によけいではないんだということが言い切れますか、いかがですか。
  29. 七野護

    説明員七野護君) この患者さんの現在の症状につきましては、油症研究班の方で追跡調査その他でいろいろ研究をしていただいておるわけでございますが、当初このカネミ油症事件が起こったときの患者さんの症状は、いわゆる皮膚症状が主な症状であったというふうに私聞いておりますが、その後年月がたつに従って、いわゆる皮膚症状についてはかなり軽快の徴が見られるということもまた事実であろうと、さように考えております。ただし、カネミ油症の非常な大きな特徴は、PCBが人体に摂取されまして、いわゆる脂肪と非常に親和性があるわけで、まあ、全身の脂肪に沈着をしていると、それがなかなか排せつされないということに大きな問題があると、かように考えております。  そこで、先ほど言いましたこの油症治療研究班の方でも、現在いわゆるこのPCBを外へ出す抜本的な治療法と申しましょうか、この根治療法の開発ということを主翼に研究を続けておるわけでございます。ただ、このPCBという物質は非常に安定性がある物質であるがために、なかなか外へ出ないということもまた事実であろうと思っております。ただ、最近のこの研究班の追跡その他によりますと、いわゆる血中PCBの濃度も以前に比べましてはかなりの低下が見られるというような報告もございますが、まだ完全に、何と言いましょうか、全治していくというその治療法が開発されているわけではございません。  そこで、現在考えられます治療法といたしましては、この全身に分布しておる脂肪に親和性のあるPCBを外へ出すために、いわゆるこの脂肪を移動させる方法が考えられるわけであります。その方法として一つ断食療法があるわけです。断食療法——絶食療法を行うことによりまして、もちろん体の中の皮下脂肪が消費され、皮下脂肪が移動するわけでございますが、それに伴いまして全身の脂肪の移動が行われる。言葉をかえますと、代謝排せつが行われるわけで、その際にPCBの排せつを促進しようという理屈でございますが、この断食療法が非常に効果があるというふうに、治療研究班の方でもそういうふうな評価がなされておるというふうに聞いております。  次に、いま現在研究班の方で、これは治療指針の中にも示されてございますが、いわゆる酵素誘導法という方法がございます。この酵素誘導法と申しますのは、いわゆる薬物その他が人体の中に入った場合に肝臓がそれを処理するわけでございますが、肝臓中にこの薬物を処理するための酵素が発生するわけです。そこで、それをさらにこの酵素を誘発いたしましてこの吸収、排せつを促進しようという内面からのことでございます。そこで、これにはいま現在肝臓の酵素を誘発する薬物としてはフェノバルビタールがございます。フェノバルビタールは、何といいましょうか、普通に使われるいわゆる睡眠剤でございますが、このフェノバルビタールがいま申しました酵素の誘発に非常にいいということでございますが、ただし問題がございまして、PCBそのものがこの酵素を誘発する作用があるわけで、そもそもこの酵素がすでに誘発されているところにさらに強力に酵素の誘発をいたしますと、また慎重にこの治療をしなければいけないという問題が一つあるようで、これも非常に医学的な管理のもとにやらないとなかなかうまくいかないという点もあるようでございます。さらにもう一つは、このPCBの吸着剤が開発されれば一番よろしいわけでございますが、現在のところ非常に有効なPCBの吸着剤の発見ということについてはまだ報告がないというふうに理解しております。  まあいま申し上げましたように、いかにして脂肪に沈着をしておりますPCBを体外に排出するかということで、治療研究班の方でも鋭意治療研究を進めているわけでございますが、治療法についての現在の知見はいま私が申し上げましたとおりと理解しております。
  30. 粕谷照美

    粕谷照美君 油症研究班の方々が非常に努力をされていろいろな研究をされているということについては私は心から感謝をしたいと思いますが、それであるだけにまた全然暗たんたる状況だということがいま判明してわかったわけですね、御説明をいただいて。そうすると、そういう状況であるだけに、私はなおさらこの被害者の救済というものは大事にしなければならないというふうに考えるときに、この判決の持つ意味というのは非常に大きいと思うわけです。その実質的救済に立ち上がっていない、このことは原告らを含む油症患者の心に大きな痛手として刻まれておるという、これは何とも言いようのない重い言葉として受け取らざるを得ないわけですけれども、この判決が出て、カネミは控訴をあきらめているわけですね。カネミの社長というか、カネミ倉庫がとっているこの被害者に対する措置というものはどのようなことをやっておられるわけでしょうか。
  31. 七野護

    説明員七野護君) いま御指摘のようにカネミ倉庫はこの判決を、判決のとおり、控訴をしないということでこの判決が決定したというふうにわれわれは理解しております。
  32. 粕谷照美

    粕谷照美君 聞いているだけというふうなお言葉ですからね、何かこう客観的にだけしか見ておられないような気持ちがいたします。  それでは、鐘化は控訴をするわけですね。控訴をするということは、一体被害者にとってどのようなことになるんでしょうか。
  33. 七野護

    説明員七野護君) 鐘化は、いま御指摘のようにさらに上級審の判断を仰ぎたいというわけで控訴をいたしたわけでございますが、この鐘化が控訴したことにつきましては、この控訴するか否かは、これは原告並びに被告の持つ裁判上の基本的な権利であるというふうにわれわれ考えておりまして、厚生省はこれに対し意見を述べるのは適当でないというふうに考えております。  ただし、控訴はいたしましたが、福岡高等裁判所は鐘化の執行停止の申し入れに対しまして、原告一人につきまして三百万円を超える部分の停止を認める決定を下しております。それによりまして原告側は被告に対しまして総額一億三千二百万円の強制執行をすでにしております。さらにカネミ倉庫からは、総額千五百万円の賠償金の一時支払いを受けたというふうに聞いております。
  34. 粕谷照美

    粕谷照美君 私どもは、この判決は、化学物質の製造、販売、使用業に携わる者の責任を明確にしたと、そして利潤追求を第一とした技術開発の中で、命と健康が何よりもとうといことを示したものとして評価をしているわけです。その意味では厚生省の判断とは全然違う解釈をしているわけですが、たとえばカネミにしても、食品は絶対安全でなければならない、PCBの毒性は金属腐食性の情報はある程度されていた、しかし、調査研究、装置の保守管理不十分であると、こう言って過失責任を厳しく問うておられるわけですから、カネミが控訴しないというのもこれは当然のことだというふうに判断をいたします。  さて、そこで鐘化の責任に今度は入りますけれども、鐘化の責任をこういうふうに言っているわけですね。「被告鐘化はその販売にあたり食品製造業者に対し、カネクロールの毒性についてその有する情報を正確に提供し、食品の安全確保に必要な注意を十分警告したかが問題とされねばならないが、さきに述べたとおりその情報提供は甚だ不十分であった」、こういうふうに言っておりますし、さらにまた、「被告カネミの過失は、やはり被告鐘化がカネクロールの毒性・金属腐食性につき不当に安心感をそそるような表現をして積極的に推奨販売」していたと、これが判決の理由になるわけですけれども、したがって鐘化は損害賠償の責を免れないというふうに私どもは考えているわけです。政府は鐘化自身考え方だと、こういうふうに言っておりますけれども、私たちはやっぱり鐘化が早くこの損害賠償をするという態度に立たない限り、いますぐでも分配できる現金だとかあるいは有価証券以外の差し押さえは無意味になるわけです。これから被害者の方々は年金支給や治療費負担などの闘争に進むということは当然だというふうに思いますけれども、これはずいぶん長い闘いになるわけですね。本当に大変なことだというふうに思います。  さて、その鐘化の問題なんですけれども、あなたの方では基本的に鐘化は控訴する権利があるというふうに言われますけれども、では一体その鐘化の責任はなかったかという点について質問をします。  鐘化が、水産庁がPCB汚染魚の実態を公表した昭和四十八年以降、兵庫県の漁連に対して十九億六千万円の補償金のうち十七億円をこっそりと支払っていたということが新聞に載っております。これは一体なぜ漁連に十七億円ものお金を補償したんでしょうか。
  35. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 兵庫県におきまして、四十八年の六月にPCBの汚染状況をまとめまして、兵庫県に関係がございます姫路、高砂西、神戸沖の三水域につきまして、魚獲の自主規制に入ったわけでございます。そのために非常に魚価が暴落をいたしまして混乱が生じたわけでございます。そのために兵庫県におきましては兵庫県水産公害救済対策協議会というものをつくりまして、これは会長が県知事でございますけれども、製造業者であります鐘淵化学とそれから使用会社、これは七十数社ございますけれども、そういうもので構成をいたしております協議会を設けまして、漁獲規制あるいは魚価暴落に伴います補償なり見舞い金の措置が講ぜられたわけでございます。その際に、ただいま先生からお話ございましたように、総額十九億六千万円、これが漁業補償なりあるいは見舞い金というようなことで関係企業から支払われたわけでございます。このうちで鐘化の方が支出をいたしましたものは約十七億円ということでございます。  ただ、この支払い関係につきましては、鐘化の支払いのこの十七億円のうち九億六千万円、これは立てかえ支払いということで、一応協議会の会長の方からの要請もございまして、いわゆる立てかえ払いということで払ったと、したがって、いずれ精算の時点でその辺の負担関係がはっきりするのだと、こういうことでございます。この九億六千万以外の部分につきましてはどういう支払いの名目になっておるかということは、これは県にも聞いておりますが、不明でございます。  以上でございます。
  36. 粕谷照美

    粕谷照美君 鐘化は二回にわたってお金を払ったわけでしょう。最初は十億円のうちの七億五千万円ですよね。そして、二回目が九億六千万円全額鐘化が出した。とすると、最初の分についてはこれは立てかえ払いじゃなくて、鐘化が責任を認めて出した、あとの分についてはよくわからないけれども立てかえておきますと、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  37. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 四十八年の六月、十億円支払いがあったわけでございますが、その際に、七億五千万円が鐘化、それから一億五千万円を他の七十数社が払いました。なお残る一億円、これは鐘化と三菱製紙が前に入金をしておったものから出したということで合計十億、これが四十八年六月の分。それから、四十八年の七月から四十九年の三月、これにつきまして九億六千万円鐘化が支払ったわけでございますが、これが先ほど私が申し上げました協議会の会長からの要請で鐘化が立てかえて払ったと、こういうことになっておるものでございます。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですから、私はその事実経過を聞くと同時に、なぜ鐘化がお金を払ったんですか、そのことを環境庁としてはどのように見ているのですかという質問をしているわけです。
  39. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 事実関係はただいま申し上げたとおりでございます。  ただ、鐘化がこのような金額を支払ったということが、PCBを製造いたしました同社の法律的責任ということとどういうような関係があるかということにつきましては、これは本来民事的な問題でもございますし、さらに現在カネミ油症問題に関連いたしまして訴訟が行われているということでもございますので、現段階のところ、環境庁として特にこの面の法律的な責任というような関係につきまして意見を申し上げる立場には現在はないと、かように考えております。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 裁判にかかっているから意見申し上げるべきでないなんということ自体おかしいじゃないですか、それ。このお金は公表するなということで——何か新聞見ますとね、公表するなというのがちゃんと判を押して出ていますからね。こっそりやられたんだというふうに思いますけれども。そのこっそりやったということ自体にもやっぱり意味があるわけですよね。しかし、いまの環境庁説明はどうしても私納得がいかないわけです。海を汚しました、そしてそのことによって魚の中にもPCBが見られて、魚を買う人たちがいなくなって、そして魚価がうんと下がって漁民が大変困りますと、だから漁連に対して補償金を出しますということは、それは自分のところでつくったPCBが原因だからお金を出しましょうといってこう補償しているわけでしょう。自分の製造責任を認めたわけでしょう。そういうふうに理解しませんか。
  41. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 先ほども申し上げましたように、これ、漁獲規制をやっておりますのとそれから魚価の暴落ということですが、この魚価の暴落は、県の方のお話を聞きますと、風評によりましての暴落ということでございます。したがいまして、まあそういう意味で若干漁業補償的な面も、漁獲規制に伴う補償の面もございますし、風評によります魚価暴落ということに対する見舞い金的な要素もあると、こういうようなことで、そこは厳密に詰めたわけではなしに、そういう問題がございますので、協議会の場でいろいろ相談をした上で一応支払いをしたと、こういうことを聞いておるわけでございます。したがいまして、PCBの製造責任という角度での問題につきましては、この段階でどうということは申しかねます。  なお、極秘でどうというお話がございますけれども、この支払いの関係につきましては漁協関係者等も十分知っておることであると、かように県からは聞いています。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 「公表等行わないこと。」というのが極秘でないなんということ自体もおかしいわけですね。ちゃんと書いてあるわけですから、判押して。公表するなということは極秘だということでしょう。違うんですか。  それと、いまあなたがおっしゃった、風評によって魚の値段が下がったと、こう言うけれども、そうすると、どうでしょうね、今後鐘化は、デマでもいいけれども、そういううわさがわっとこう出ていくと、鐘化はしょっちゅうお金を出すというふうに理解をしていいわけですね。
  43. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) まあずっと出すかどうかは別にいたしまして、そういうことで……(「顔を見てしゃべりなさいよ」「声が低くて聞こえないんですよ」と呼ぶ者あり)まあ、あのPCB汚染の問題が四十八年に出まして、それでいろいろ漁獲の自主規制なりがございましたし、またそのことに関連いたしまして魚価の低落という事態が現実に出たわけでございます。そこで、この問題をどう処理するかということで鐘淵化学以下使用会社七十数社で協議会というものをつくり、県の知事さんがその会長ということになりまして、ここでこれの対策を考えた。その際に、ただいま申し上げました自主規制に対する補償なりあるいは魚価暴落に対する見舞い金等々の考え方で、先ほど来お話のございます総額十九億六千万円の金が払われたと、こういうことでございます。そういうことでございまして、現在のところでは自主規制はそのまま全魚種について継続はされております。したがいまして、魚価の暴落というような問題は、いまのところないわけでございます。
  44. 粕谷照美

    粕谷照美君 幾らあなたが丁寧懇切に説明をされても、私にはよく納得ができないんですよね。話は聞きました。聞いて、そのおっしゃっていることはわかるんですけれども、本質がやっぱりわからないわけですよ。鐘淵がPCBつくって、そしてそれを使った企業がいろいろな排水でどんどんどんどん海へ流していったと、そういうことが原因で魚価が下がったから補償したということになるわけですから、やっぱり製造責任を鐘化が認めてお金を出しましたということ以外には考えられないんですけれども、おたくでそういう理解をしているということは非常に不思議なことだというふうに思っています。  では、先ほどあなたが触れました次の点について質問しますと、カネミ油症の訴訟の中で、なるほど確かに三菱製紙がことしの二月に大阪簡易裁判所に調停を申し立てておりますね。その理由はやっぱり四十七年から四十八年のPCBによる環境汚染で漁業補償やヘドロの除去費など約十億円を支払ったけれども、それは鐘化の責任なんだから、鐘化が、おれのところで払った十億円を払ってもらいたい、つまり返してもらいたいと、こういうことだろうというふうに思いますが、これ間違いないでしょうか。
  45. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 三菱製紙と鐘化との民事調停の関連でございますが、この民事調停の関係は、いわゆる高砂西港、これがPCBによって汚染をされたと、その汚染をされましたヘドロ、汚泥、これを除去するということに相なりまして、除去はすでに完了をいたしておるわけでございます。ただ、この除去をいたしまして事業が完了したんですが、この事業費の負担の問題、これにつきまして企業間におきまして、いわゆる三菱製紙と鐘化との面でこの負担割合をめぐる争いが前からあったわけでございます。この点につきましては、この話し合いがつくようにということで、県等も通じまして大分両社の間の打開を図ったわけですけれども、両社がどうしてもお互いに主張を譲りませんで、それで、ただいま先生からお話がございましたように、ことしの二月十五日に大阪簡易裁判所に三菱製紙の方が調停申し込みをいたしまして、現在調停が係続中でございます。  その際の三菱製紙の言い分は、いわゆるメーカー責任論といいますかそういう角度に立ちまして、PCBというそういう化学物質、この有害な化学物質をつくった鐘化に責任ありという物の言い方で、鐘淵化学の不法行為に対する損害賠償ということで約十億円、これを要求をいたしておるわけでございます。で、この面につきましてはただいま申し上げましたように、現在も大阪簡易裁判所で両社の調停に努力をいたしておるところでございますので、環境庁といたしましてはこの辺の推移を見守っていきたいということでございます。
  46. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますと、この三菱製紙の問題は、十二月の小倉判決と非常に深い関係があるというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
  47. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 小倉判決がいずれ出るという話は耳にはいたしておりますが、これは簡易裁判所における調停でもございますし、この案件と必ずしも直につながるといいますか、そういう話ではないと、かように思います。
  48. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、たとえば三菱はメーカー責任論でやっていると、こういうふうに言われますけれども、大体公害防止事業費事業者負担法で言えば、直接出した人がお金を払うということになっておりますね。汚染者負担でしょう。直接その汚染物を出したところがやるということになっているわけでしょう。ところが、そういうふうになるということであれば、たとえば三菱製紙だとか三菱重工だとかあるいは武田薬品だとか、その他いろいろな企業が出せばいいんであって、直接出したわけでもない鐘化がやっぱり費用負担委員会において一〇・二%から一五・四%ぐらいですか、それを了解をして出したということは、製造責任を認めたというふうに私は理解しますけれども、あなたの方では理解できませんか。
  49. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この高砂西港の汚染ヘドロの除去工事につきましては、これはPPPの原則ということに基づきまして企業者が、ただいま先生のお話のあった法律の適用を受けることなく、企業者同士で金を出し合ってヘドロを除去しようということで、県の要請もあって、そういうことで除去をいたしたわけでございます。  で、その際の企業の負担をどうするかということにつきましては、県の方でその負担割合をどうしたらいいか、いろんな公正な学者の方々とかいう人々の意見等も聞いた上で、大体大ざっぱな負担割合というようなものを協議会といいますか、そういう話し合いの段階で一応この辺が妥当であろうという線は出したわけでございます。たとえば、その話では、三菱製紙の負担割合は八〇・一から八五・九ということ、それから鐘化の方は大体一〇・二から一五・四、この辺が鐘化の負担ではないかということでございます。そのほかもちろん三菱重工、武田薬品もございます。しかし、大どころは三菱製紙のただいま申しました八〇・一から八五・九、鐘化が一〇・二から一五・四と、この辺だろうと、こういうことでございますが、三菱製紙はこの八〇・一から八五・九という負担割合につきまして非常に不満を持ったわけでございます。そこで、話し合いをいろいろ県が入ってやったんですが、つかなくて調停に持ち込んでおる、こういうことでございまして、鐘化の方が軽過ぎると、こういうような主張を大分メーカー責任論的な物の言い方で三菱は主張をしておったということを私は聞いております。
  50. 粕谷照美

    粕谷照美君 大変客観点な物の見方をしておられますけれども、何と言うんですか、その争いの中で三菱製紙がいろいろ調べているわけですね。そうしたら、その調べた中で、PCBの生産量が一万トン食い違っているではないか、通産省報告と鐘化の帳簿の間に。こういうことが発見されて問題になっている。しかも、ドラムかんにしたならば四万本だというわけですからこれは大変なことになるわけですね。特にPCBをつくらないという点から考えても、その事後処理なんかはどんなふうになっているのだろうか、心配になるわけですね。通産省の方でこれは調べますというふうなことが新聞記事には載っておりますけれども、通産省が調べるということと同時に、やっぱり環境庁としてもそのことをきちっと確かめて、事後処理がどのようになっているのかというふうなことも確認をしておく必要があるというふうに思いますがいかがでしょうか。
  51. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 鐘化におきましてのPCBの生産量の面につきまして、鐘化が発表している面と現実の面で相当の食い違いがあるというようなお話でございますが、この面につきましては生産所管の通産省の方におきまして、この食い違いがどうかということを現在詰めておるところでございます。  それから、その後どうなっているのかという問題でございますが、PCBの原液、これが埋め立てもできませんし投棄もできない、こういうことに現在しておりますので、鐘化におきましては工場の敷地内にこれを保管をいたしております。それから、この鐘化以外にもう一つは三菱モンサントが生産をしておりますが、こちらも同様な状況で保管をしておるということでございます。  なお、この保管いたしておりますものにつきまして、現在通産省の方におきましては、このままほっておけば地震の場合困るとかあるいは保管しておる容器が腐食をして漏れ出しても困るというようなこともございまして、いずれ洋上焼却と、海の上で焼却するという手だてはどうであろうかというようなことを具体的に現在検討をしておるということを聞き及んでおります。
  52. 粕谷照美

    粕谷照美君 こういう廃棄物の考え方というのは通産省が考えるんですか。環境庁はこういうことを考えないものなんですか。  それとあわせましてね、そういう努力をしていらっしゃるということはわかりましたけれども、要はドラムかんで四万本も食い違いが出ているということになりますと、それが一体どこへ捨てられているのか。廃棄物処理の問題があるわけでしょう。その辺の指導というものを環境庁としてはどのようにされるかということをさっき聞いたわけなんです。
  53. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この生産量の食い違いが相当量あるという面につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、現在所管省の通産省の方におきまして、この食い違いが現実に物量としてあるのか、あるいは概念の見方によって違うのか、その辺ですね。たとえばカネクロールという商品だけで見るのか、もっと広い意味でのPCBというのはまだよそにあるのか、その辺の、要するに概念の基底をどう見るかによっての差異が相当あるのか、そういう面につきましてもあわせていま詰めておるところでございます。その辺の結果を見て、ただいま先生も御心配のように、そればどこに捨てられておるか。これは環境を破壊するという話になりますと確かに大きな問題でございますので、私の方も通産の方にその面の調査結果を早く知らしてほしいということで要請をしている段階でございます。
  54. 粕谷照美

    粕谷照美君 もう何年も何年もそうやっているわけですからね。地震が来る、地震が来るといって大騒ぎしているときに、本当にいつまでもそういうふうにしておくわけにいきませんから、早くその辺の点については対策をとるように、環境庁としても通産省にきちんとお話をしていただきたいというふうに思うわけです。  それとあわせて、大変しつこいようですけれども、さっきからお話を聞きますと、出した金は立てかえ金だと。九億六千万円は立てかえでいずれ後で精算するんだということを言っていらっしゃるようですけれども、カネミ油症患者の方たがおいでになって、やっぱりその点非常に心配しているわけですよね。本当に立てかえなんだろうかどうなんだろうか、おれのところではだまされているんじゃないだろうか。それで会計上の処理は一体どうなっているんだと、こう聞いているわけですね、鐘化の九億六千万円は。年度年度に決算するでしょう。そのときに会計上の処理は、九億六千万円は立てかえとして決算されているのか、欠損金として入れられているのかということを非常に心配をしているわけですが、その辺は御調査されましたでしょうか。——質問通告をしていたんですが、環境庁の担当というわけでもなさそうですけれども、わかればそれでよろしいですが。
  55. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 鐘化がこの立てかえ払いの面を帳簿上といいますか、決算とか、その面でどういう扱いにしておるか、この面につきましては、環境庁としては実は調査をいたしておりません。
  56. 粕谷照美

    粕谷照美君 この立てかえ払い——後で私も調査をしてみますけれども、立てかえ払いだということであればきちんと報告がされているわけですね。欠損金だということであればこれは返金を求めていないわけですから。そういうことでしょう。欠損金として支払われているとすれば、ほかの企業の分をおれのところで立てかえたんですよということではないわけですからね。やっぱり私たちはこれをみずから責任を認めたものだというふうに考えておりますので、一つの論拠としていきたいというふうに思っております。  さて、私どもは、この鐘化というのは、そういう判決が出ているわけですから、責任を認めて控訴をやめて被害者の救済に即刻立ち上がるべきだというふうに考えているわけです。鐘化にしてみれば、予想もしなかったと、こう言って控訴をしておりますけれども、予想していなかったんじゃなくて、もともとそういうふうに予想していたわけですね。だから、あらかじめ控訴並びに強制執行停止申し立ての意向を表明しているということからもそのことは言えるのではないかというふうに思いますが、いたずらにこの被害者賠償義務の履行を引き延ばすと、そのことは被害者を見殺しにするんだというふうに考えます。だから、そういう行為というものはやっぱり企業としても考えてもらいたいという意味であなたの方では鐘化と話し合う気持ちはありませんですか。環境庁としてはどうですか。
  57. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) このカネミ油症事件、これに伴います問題、これにつきましては、先ほど来厚生省の担当課長さんが答弁を申し上げておりますように、厚生省がこの問題を担当をいたしておるわけでございます。したがいまして、この件についての面で環境庁がどうこうという感じは持っておりません。ただ、先ほど来申し上げておりますように、高砂西港の汚泥のしゅんせつとかいうような問題、これはまさに環境庁の所管といいますか守備分野で指導をいたしたことは事実でございますので、こちらの面につきましては、かねてからも極力その辺の費用負担分担関係もはっきりするようにということで、いろいろ指導をやってきた経緯がございます。
  58. 粕谷照美

    粕谷照美君 いずれ小倉判決が出たときには、私は、国だとかあるいは北九州市、自治体そのものの責任についてもきちんとした結論が出されるというふうに思いますけれども、その予想というのは私どもでもつかないけれども、しかし、これを大幅に下回るということは考えられないわけですね。国の責任だって私は当然あるというふうに思います。それはなぜかと言えば、カネミがつくっていました飼料を食べた鶏二百万羽のうちのしかも七十万羽が死んだと、そのときに農林省から調査に行っているわけですけれども、えさを食べて鶏が死んだということは、当然やがては人類の生命に影響するんだというふうなことに思いも至らなかったという国の責任というものは、私はやっぱり大きいというふうに思いますので、その判決については、一切国なんかも控訴しないできちんと守っていただきたいというふうに思うわけです。  さて、そういうようないろんな問題点を起こしましたPCBなどを初めとしてたくさんな化学物質があるわけですけれども、その化学物質の点検を環境庁がやるというふうに報告がなされているわけですけれども、これは一体いまどのような日程で行われ、どのような最終的な詰めをしていきたいというふうな考え方に立ってやられるのか、伺いたいと思います。
  59. 信澤清

    政府委員信澤清君) 現在、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律というものがあることは先生御存じのとおりでございます。これは通産省それから厚生省環境庁それぞれ分担いたしまして、この種の化学物質についての新しいものについてのいろいろな判定をやるというのがこの法律の主なる中身でございますが、同時に、環境庁といたしましては、従来製造されました化学物質につきましても、その挙動と申しますか、環境の中における挙動状況というものを調べることにいたしておりまして、先般いわゆるケミカルアセスメントと言っておりますが、その結果を公表いたした次第でございます。したがいまして、この法律に基づく措置は今後も続けてまいりまするし、いま申し上げたようなすでに環境中にございますいろいろな化学物質の挙動、こういったものについても絶えず監視を続けていきたいと、このように考えているわけでございます。
  60. 粕谷照美

    粕谷照美君 法律があるというのもわかるのですよ。法律があるけれどもその法律ではとてももう、何と言うのですか、間に合わないという考え方に立って、その見直しも考えながらやるということになるんですか、どうでしょう。
  61. 信澤清

    政府委員信澤清君) 基本は法律に即してやるということになると思いますが、いま先生お話しのようにあの法律は新しい事態を想定いたしておりますので、やはり問題は過去に使われたこの種の物質が環境上どうなっているかと、こういうことに当面は重点があろうかと思います。で、この点についての調査がきわめて乏しいということでございますので、先ほど申し上げたような調査をいたしたわけでございます。  なお、この点につきましては、わが国のみならずたとえばOECD加盟各国では私どもがやっておりますと同じような方法を使いまして、いま申し上げたケミカルアセスメントをやっておると、こういう状況でございます。
  62. 粕谷照美

    粕谷照美君 大体の環境庁姿勢というものがわかりましたけれども、カネミの問題についてはぜひ精力的な取り組みを厚生省としてもやっていただきたいという要望をいたしまして次に移ります。  昭和五十一年度の公害状況に関する年次報告及び公害等調整委員会の年次報告書を見せていただきました。なかなか精力的にがんばっているなあというふうに思いますけれども、そのうちで幾つか気になったことがあります。たとえば、福岡市における水質汚濁による健康被害仲裁申請という部分なんですけれども、これ簡単に説明していただけますか。
  63. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ただいま先生から、公害等調整委員会年次報告書に載っております福岡県の案件でございますが、これにつきましてはどうもいろんな経緯があるようでございます。私が一応承知をいたしておる点を申し上げますと、まず発端を申し上げますと、四十六年の五月に、国鉄の竹下客車区に近接いたします松村さんのおたくの井戸水の調査を保健所の方で実施をいたしましたところ、飲用不適というふうになった。松村氏はこの井戸水を昭和四十五年十一月十六日から四十六年の四月四日まで飲用をしておりまして、このため四十六年の二月ごろから健康を害しまして、吐き気、胸やけ、下痢、脱毛などの状症を呈した後に、四十六年の五月の二十七日に、慢性肝炎、慢性胃腸炎の診断を受けたわけでございます。そして四十七年の九月に、この松村氏は、国鉄に対しまして治療費等二百三十八万九千円の支払いを求めて福岡県の公害審査会、これに申請を出したということでございます。  で、その後の経緯を申し上げますと、この福岡県の公害審査会、これは三年間にわたりまして審査をいたしました結果、申請を棄却をいたしたわけでございます。そこで申請人は、昭和五十年の十二月に公害等調整委員会に今度は仲裁申請をいたしたわけでございます。  で、その申請の中では、国鉄におきまして使用していた車両の洗浄、清掃、消毒剤、これが井戸水を汚染をいたしまして、その結果結腸がんになったということで、四千二百万円の支払いを求めたわけでございます。これに対しまして、五十一年の四月に仲裁委員会は、当時国鉄で使用していた薬剤等では結腸がんにはならないということで、棄却をしたということでございます。  で、その後申請人は五十一年の五月に福岡地方裁判所に対して仲裁判断取り消しの訴えを起こしまして、同年十二月に棄却をされた。で、さらに福岡高裁に控訴をやりましたがやはり棄却になったということで.五十二年八月に最高裁に上告といいますか、いたしておるということで、現在最高裁で争っておるという状況であるということを聞いております。  で、ただいま先生からお話しございましたのは、この公害等調整委員会に五十年の十二月に仲裁申請があったものですから、それに対して公害等調整委員会が審査をしてどうしたというくだりのことが年次報告書に掲載になっておると、こういうふうに理解をいたしております。
  64. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、この結論についてどうのこうのということではないんです。大変努力をされて委員会ががんばっておられるということ、それは認めるわけですよね。しかし、問題だなと思いますのは、一つには、飲料水の検査をこの原告の人が出したときに、この水は飲めますよという結論を最初に出しているわけですね、四十六年に。四十六年の一月二十五日と四月十二日の検査で。その飲めますよと言って結論を出したのが門司鉄総務部にあります衛生試験室ですから、訴えられているところの国鉄さんがこの飲料水を検査して、飲めますよとこう言っているわけでしょう。そしてその後、一ヵ月後の五月の二十日及び五月の二十七日に、今度は、国鉄の検査じゃおかしいというわけで、その原告の方が福岡の南保健所というところへ出して検査してもらったら、一ヵ月後にはもう飲めませんよと、こういう結論が保健所から出ているわけですね。まあ国鉄の姿勢だと思うんですけれどね、自分が訴えられているのに、自分のところの試験機関で検査したから大丈夫ですよなんという、それ一つ問題に感じました。  それからまた、国鉄が車を洗うときに大変な軽油だとか潤滑油だとか流している。それから洗剤なんかでも物すごいんですね。いろんなものが入っているわけです。特に殺虫剤だとか殺鼠剤なんかでもずいぶん入っているわけですけれども、そこの車を洗って、しかもトイレなんかもあるわけですから、そういうところの汚物なんかも全部出てきたその排水を、ずっと排水溝を通じていって、床屋さんだとか何か、あの辺の食堂なんかの汚水と一緒に那珂川という川の中にストレートに流しているんですね。そのストレートに流している中からこの事件が起きてきた、起きてきたからあわてて何か装置をつくったという形になっているのではないかと思いますが、北は北海道から南は鹿児島のところまでずっと鉄道があるわけですけれども、国有鉄道の車両のときのそういう汚水というものは一体どのような形で処理をされているものでしょうか、御調査になったことがありますでしょうか。
  65. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 国鉄の車両整備工場につきましては、詳細は、運輸省なり国鉄当局が詳細に把握をしておると思いますが、一応私たちが聞き及んでおるところでは、車両整備工場、これが全国に約二百四十ヵ所あると、かように聞いております。で、これらにつきましては、国鉄当局におきまして、排水処理施設の整備等によりまして水質汚染を防止する措置を講じてきておるというふうに聞いております。  そこで、具体的に見ますというと、この二百四十の車両整備工場がございますが、そのうち約百七十ヵ所が何らかの排水処理施設を設置をしたり、あるいは現在工事をやっておるという状況でございまして、その他も必要に応じて整備を進めていくというふうに国鉄当局からは聞いております。  で、この百七十ヵ所のうちで約四十五ヵ所がいわゆる水質汚濁防止法によります規制対象の整備工場になります。これは自動式車両洗浄施設といいますものが水質汚濁防止法上の特定施設ということになっております。で、これを備えております車両整備工場が約四十五ヵ所あるということでございます。まあその他の簡易な排水処理施設をつくったところ、これはホースで水を流してそれをさらに沈でんして油なりそういう浮遊物質を取り除くというようなことをやっておるわけですけれども、そういうことで処理をやっておるというふうに聞いております。
  66. 粕谷照美

    粕谷照美君 天下の国鉄なんですからね、それは経済第一——こんな大変な赤字ですから、考えるなということ自体は無理だというふうに思いますけれども、汚い水をどんどんどんどん川に流して、川の魚が死んだだとか、うちの井戸水に入ってきて最終的にはがんになったなんて、そういう訴えをされるようなことだけはやっぱりやめていただきたい。だから、環境庁にお願いをしたいことは、こういう報告書を出すからには、まとまりましたよということではなくて、そういう問題点についてやっぱり正しくそれらのところに指摘をするという任務があるんではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  67. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 指摘をするということでございますが、ただいま先生のお話しありましたのは、いわゆる公害等調整委員会の方の案件として、この調整委員会が取り上げてそのいろんな審査状況等、その他これを年次報告という形で天下に公表をしておるということでございまして、まあ公害等調整委員会というその立場で、所要のこういう措置をとっておるというふうに理解をしておるわけでございます。
  68. 粕谷照美

    粕谷照美君 どうもすれ違って困るんですけれども、公害等調整委員会というのは一体どこの省庁のこれは管理下に入るわけですか。
  69. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 総理府でございます。
  70. 粕谷照美

    粕谷照美君 総理府ですか。そうすると、環境庁はこれは関係なくて……これは私は環境庁の方から資料が届いたものだというふうに思いますけれども、どうなんですか。
  71. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 少なくとも環境庁長官は指揮、監督いたしておりません。
  72. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、非常に不思議な感じがいたしますね。そういう水を流しっ放しでもよろしいなんというのは総理府の管轄で、そうすると、総理府はこれは、何というんですか、まとめて出したというにすぎないわけですね。そうすると、争いの起きたそこのところには因果関係がありませんでしたよという結論をこの委員会が下してしまう。そうすると、国鉄については何らの注意を与えるところもないということになるわけですね。そういう理解でよろしいわけですか。ばらばら行政だというふうな感じがするんですけれども。
  73. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 私がお答えすることは適当かどうか存じませんが、便宜お答えいたしますと、公害等調整委員会は、国会に一年間の活動を報告することを義務づけられておりまして、その報告を国会にお送りしたと、こういうことかと思います。  なお、この委員会が取り上げた案件を私どもがよく検討し勉強して、その中で環境庁行政に反映させるべきものがあれば反映させていくのは当然だと思います。その点につきましては、先生の御意見と別に変わったところはございません。
  74. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、公害状況に関する年次報告、これは一体どこから出されたものですか。
  75. 信澤清

    政府委員信澤清君) これは、公害対策基本法の規定に基づきまして、毎年度実施いたしました公害対策あるいは将来実施しようとする施策、これについて国会に御報告することになっておりますので、その御報告でございます。(「どこから」と呼ぶ者あり)当然のことながら、環境庁でございます。
  76. 粕谷照美

    粕谷照美君 この内容も、いろいろ拝見をしますとね、非常によくわかるんです。わかるんですけれども、やっぱりわからぬところがあるんですね。要は、環境は前進をしたんだというふうに、これは最終的に判断をしているんですか。いいところもできたけれども悪いところもあったんだ。けれども、全体的には前進したんだという結論になっているんですか、どういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。
  77. 信澤清

    政府委員信澤清君) これ手元に持っておりませんので、間違っておりましたらまた訂正さしていただきたいと思いますが、ことしの年次報告書で申し上げておりますのは、従来問題になっておりました工場等による汚染、たとえばSOその他、こういうものについては漸次改善の兆しがある。ただし、窒素酸化物についてはなお問題が残っている。反面、そういういわゆる産業活動以外の分野における問題、たとえば自動車の騒音でございますとか、こういうものについての改善につきましてはかなりおくれている、こういうトーンで書いてあるつもりでございます。
  78. 粕谷照美

    粕谷照美君 大体そういうことでよろしいかというふうに思いますけれども、その中で一、二お伺いしたいのは、窒素酸化物対策についても相当の進展が見られるというふうに書いているんですよ。それで、その中で自動車や固定発生源等における防止技術の進展が挙げられているわけですが、そこで乗用車の五十三年度規制というものは完全に目標を達成できたというふうに理解してよろしいですか。
  79. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 乗用車の五十三年度規制は完全に達成されております。
  80. 粕谷照美

    粕谷照美君 内燃機関技術の限界にいどむ非常に高度な目標と言われ、さまざまな反対意見もあった中で〇・二五グラム以下というものを達成した力というものは私は非常にすばらしいというふうに思うわけですが、その達成できたという原因はどういうふうに判断しておられますか。
  81. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) これは非常にいろいろな努力が複合してでき上がったものでございまして、要求するという住民の姿勢と、それからそれに対していろいろな角度からの評価、批判が加わり、政府で技術評価委員会をつくりましてそのデータをすべて公表している、それに対して企業は合意をしたということと、そのデータによりまして企業の中に非常な競争を生じたということで、その競争によって技術が非常な進歩を見た、そういうぐあいに解しています。
  82. 粕谷照美

    粕谷照美君 初めのうちは、ずいぶんこれについても抵抗の声が上がっていたわけですけれども、最終的にこの目標が達せられた、その原因というものはいま局長がおっしゃったようなものだというふうに私も考えております。けれども、私はその中でもやっぱり環境庁が毅然としてその姿勢をもっていった、そして企業には話をした、企業も最終的に受けた、その環境庁姿勢をやっぱり国民が支持したというところに原因があったんだというふうに思うんです。だから、企業の技術もすばらしいかったし、努力も大変だったというふうに思いますけれども、何としても問題は基本になる環境庁姿勢だ、こういうふうに思いますから、私はやっぱりこの一連の、ここ数日間の環境庁長官発言というものは非常に気になるわけですよね。まあこれからは後退するようなことはないだろうというふうに思うんですけれども、それでは、そのときに一緒に審議をされましたバスやトラックについてはどのような状況になっておりますでしょうか。
  83. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま御質問ありましたバスやトラックについてでございますが、これは大型のガソリン車あるいはディーゼル車、こういうカテゴリーに入りまして、重量ガソリン車等につきましては四十八年規制を前やっていまして、ディーゼル車につきましては四十九年規制をやっておりました。ことしの、五十二年八月の中ごろに五十二年規制をいたしました。これはその当時、新聞にも載りませんでしたが、とにかく世界的には最も厳しい規制をいたしておりまして、重量ガソリン車では大体現在は四一%の排出をカットをしておる。ですから、五十二年八月以降出てくる大型バス、トラックの重量ガソリン車はそれだけカットされております。それから、ディーゼル車につきましては現在三二%のカットをされておるという状態でございます。ただ非常にまだ不十分でございます。そういうことで、これにつきましては現在約二年間にわたりまして中公審の自動車公害専門委員会で御審議をいただいておりまして、この秋の暮れには答申が出ることになっておりますが、長期目標、長期の達成目標を出していただくということになっております。この次の規制は五十四年に騒音と同時に規制をするということで、現在審議会の答申を待っているところでございます。
  84. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、長期目標は今秋中と、こういうことですし、それからバス、トラックの騒音規制の告示もやっぱり今秋だというふうに言われておりますけれども、秋もいろいろ長いわけですからね。いつごろ——暮れというふうに言えばこれ冬ですよ。いつ出されるんですか。
  85. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま非常にかっちりしたお約束をすることはできませんが、まあ秋の暮れと(笑声)申し上げておきます。秋の暮れには出していただくということでございます。
  86. 粕谷照美

    粕谷照美君 そのときの告示ですけれども、先ほどの乗用車の五十三年規制がきちっとでき上がったような、環境庁の毅然たる姿勢があるかどうか。いろんな騒音対策やりますとまた経済の方に問題がはね返ってくる。車の値段が上がる。そうすれば運賃が上がるなんという、こういう雑音に惑わされないで、まず国民生活環境をきちんとしていくという、そういう考え方に立ってやられるかという決意をお伺いしたい。
  87. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの御指摘のごとく、私どもは毅然たる決意でこれに臨んでおるわけでございますが、乗用車の場合とは違って非常なむずかしさがあるということは、これは前もって冷静に申し上げておいた方がよいと思います。重量といたしまして、乗用車の約五、六倍の重量がかかっております。それから、ディーゼルにつきましては、エンジンの原理そのものが乗用車の問題とは非常に違うものでございます。  もう一点申し上げますと、このNOを抑えることと、それから黒い煙を吐くことと、それから騒音を抑えることの三つが三つどもえに格闘をしておるわけでございます。その中で私どもが最も重点を置いておりますのは、騒音を抑えることに重点を置いております。これは沿道の影響調査の結果を見ますと、この沿道のNOだけの汚染のひどいところでは、確かによくはないが、補償とかそういう議論ではないが対策を要する。しかし、音の方の影響のデータを見ますと、いままでは得られなかったデータとして、人口集団として聴力の差が明らかにあらわれておる。しかも夜遅くまであるいは深夜、早朝冒されておる者はきわめて深刻な事態であるということで、私どもは五十四年規制につきましては音に再重点を置くということにいたしておりまして、五十四年は五十四年時点で開発できる程度のNOの規制ということになると思います。それから、その先の規制につきましてはなかなかむずかしい問題がありますが、これは毅然とした姿勢でやっていくということで貫きたいと思っております。
  88. 粕谷照美

    粕谷照美君 大変力強い御答弁をいただいたわけですけれども、本当に騒音の問題についてはもうやっていただきたいわけですよね。私も新潟の家がいままで堀端に面しておりましたが、その堀端がいつの間にか下水道になりまして、そして国道になっちゃった。もう家へ帰ると眠れないわけですね。特に夏なんかになりまして一週間も泊まっていると頭の中が割れそうになるわけでね。ところが、環境庁のこの報告を見ますとね、住民からの不服が少なくなったからというふうなことでこう押さえているわけですけれども、不服が少なくなったんじゃないんですよ。もう何言ったってどうにもならないと思うから住民は泣き寝入りしてあきらめているわけでありましてね。今回の環境庁のあの騒音対策なんかについては大変素早い、非常にりっぱな態度だというふうに思いますから、ぜひがんばっていただきたいというふうに思います。そういう意味も込めまして、長官、最終的に御答弁を下さい。本当に断固としてやられるかどうかということですね。
  89. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 基本的にはいま局長がお答えしたとおりでございます。私自身もこの問題、非常に関心を持ちまして、技術的な面での視察もいたしましたが、局長答弁にありましたように、非常に技術的に困難であり、またこれは何も企業側のただの言い逃れだけとは思いませんけれども、なまじなことでやりますと、そのバスなり大型のトラックというものに出力がないと、坂道などで非常に人身の上に及ぼす危険もあるといういまの技術レベルのようでございます。  騒音の問題も、これはやはり東京に限らず通行量の多い道路の周辺ではいろいろな問題が起こっておりますが、やはりこれは自動車業界の技術的な協力と同時に、建設省の方にも、道路五ヵ年計画の中で道路の構造そのものというものを過去の体験に照らし合わせて考え直す必要があるという申し入れをするつもりでおります。
  90. 粕谷照美

    粕谷照美君 私の質問は、これで終わります。
  91. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) 補足答弁があります。
  92. 信澤清

    政府委員信澤清君) 先ほど私が、いわゆる公害についての年次報告書につきまして申し上げた事項について、やや正確さを欠いている点がございますのではっきり申し上げたいと思いますが、公害対策基本法の第七条に、年次報告書の国会への提出が政府に対して義務づけられておるわけでございます。したがいまして、原案をつくりますのは環境庁でございますが、政府として国会に提出したものであると、このように御承知願いたいと存じます。  なお、関連して申し上げますが、先ほど官房長が答弁いたしました公害等調整委員会につきましても、その設置法の第十七条に同様の趣旨の規定がございますが、こちらの方は、「毎年、内閣総理大臣を経由して国会に」「報告する」と、こういうふうになっておりますので、法文的にはさようなことだと御承知置きいただきたいと存じます。
  93. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十七分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  94. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに、石原長官基本的なお考えを伺いたいのですが、公害対策基本法は十分尊重して行政を進めるという態度を先ほど伺いました。第一に伺いたいと思いますことは、魔女狩りということを言われますが、まあそれは適当でなければ削除するというような御発言もあったように伺っておりますが、魔女狩りということと公害闘争と何か関係がおありなんでしょうか。
  96. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 直接は全く関係ございません。ただ、あのときに、高度成長のさなかに、経済優先ということで実質的にやってまいりまして、私たちがかつて経験したことのないような、人命を明らかに棄損する、多くの死者まで出した公害事件が次々に起こりまして、一種のパニック状況にあったような気がいたします。そういうところで、それなりの討論をしたのでございましょうけれども、何といいましょうか、やや冷静さを欠いたといいましょうか、ムードといいましょうか、そういう状況があったのではないかということで、それをああいう表現をしたわけでございます。これはいささか誤解を招きやすい言葉なので、予算委員会でもこれは取り消さしていただきましたが、あのときに、七〇年代も非常に困難な時代になるだろうということが言われていながら、なお高度成長を信じる人あるいはそれを疑い出した人いろいろあった中で、とにかく起こってきた事件が非常に過激な恐ろしい大惨状でありましたので、特に行政の当事者は周章ろうばいした感じがいたします。その中で、そういう雰囲気に、何といいましょうか、流されたといいましょうか、そういう一種のムードの中でああいうことが行われたのではないかという気がいたしましたので、そういう表現をしたわけでございます。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官は、いまでもこの経済との調和条項が削除されたことは、そうしたムードとかパニック状態に流されてそういうふうになったんだというふうにお考えなんでしょうか。
  98. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) いえ、決してそれだけだとは私思っておりません。四十五年のいわゆる公害国会の前に、実際にまあ人殺しに近いような、そう言われても仕方ないような、四日市にしろ水俣にしろそういうものがございました。それでもなおそういうものは解決されずに、四十二年に旧法ができ、四十五年の改正までそういう状況が続いていたわけでございまして、そういう状況というものを、もちろん行政の当事者も、それからその被害たちはもちろんでございますが、周囲も見届けておったと思いますし、しかし、それは私はあの調和という条項——しかもあの調和条項は健康の保護ではなしに、それにつながる生活環境の方にだけ入っているわけでございまして、私は、先ほどから申しておりますけれども、人間の健康にまさるものは何もございません。ですから、健康の保護に関して経済というものの側面を考える云々ということはもうこれは論外でございまして、とにかくそれが最優先するものでございますけれども、それに付随した生活環境という次元になりますと、やはり経済的な社会的な側面というものをやはり考慮する余地があるような気がいたしますので、あの非常に劇的な形で起こりました公害に関しましてはこれはもう議論の余地がないことでございますので、そういう意味で、行政がそれに新しい理念なり発想をもって対処すれば、まあ調和という条項を削らなくても、人間の健康にかかわる公害問題は、経済というものよりはるかに優先した形で解決の対策ができたんではないかという気がいたします。そういう意味で申したわけでございます。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう一点、これは新聞の表現ですが、経済開発公害行政との関係につき選択すべき時代だと、いまは。そういうふうに理解していらっしゃるというふうに了解してよろしいでしょうか。
  100. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 経済の問題と公害の問題ではございません。私はつまり環境問題ということで申しまして、環境問題の中にも公害の問題ございましょうけれども、人間の健康にかかわる環境問題と申しましょうか、公害問題という、これはもう論をまたない、人命、健康というものが最優先でございます。ただ、生活環境にかかわる社会的、経済的な問題は、やはり時代時代でございますし、冷静に取捨選択するといいましょうか、その兼ね合いというものを考えるような時期に来ているのではないかという気がするわけでございます。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 私も、生命、健康尊重を第一とするという点、これはそのとおり私も信じております。で、その生命、健康を守るために環境を守っていくんじゃないでしょうか。したがいまして、環境庁環境を保全していくと、そこに環境庁があるんじゃないでしょうか。したがいまして、これは経済環境——経済開発とそれから環境保全とは選択すべき時期だと。それはいろんな意味で選択する必要が出てまいりましょう。まいりましょうが、環境庁はその環境を守るという、そのためにこそ環境庁ができたのであって、環境庁が選択のためにできたんじゃないんじゃないですか。
  102. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) おっしゃるとおりだと思います。しかし、環境行政をしてまいりますと、人命、健康にかかわる環境問題、まあ公害と呼ばれる問題は、これはもう健康最優先でございますが、その他の直接それが人間の健康、生命というものに致命的な形を及ぼさない種類の生活環境にかかわる、たとえば新しい開発であるとか埋め立てであるとか、そういった問題の中には、とにかくもう自分たち生活環境、目に見える自然というものを全く手つかずにそのままにしておいてほしいという論と、いや、それに手を加えてでも何かそこに、たとえば汚水の処理場をつくれとか、あるいはもうすでに川から出るヘドロで汚れてしまった海を、もう一回埋め立てをすることで、ヘドロを回収してきれいにすることで水産というような一種の経済性というものが確保されるのでやってほしいと、そういう論がいろいろ対立してございます。そういう場合に、やはり冷静に話し合いをし取捨選択をしなければ結論が出ないようなケースが多々あるわけでございまして、私はそういう点について申しているわけで、人間の健康、生命にかかわる種類の環境問題、つまり公害と呼ばれる問題については、これはもう私はあくまでも人間の生命、健康というものが最優先であるということは、この発言をいたして物議を醸す前にもすでに何度もほかの場所でも申し上げてきたつもりでございます。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 どうも、その辺がどうしても食い違うんですが、環境庁には企画調整局、自然保護局、大気保全局、水質保全局と、それぞれ局長さんがいま出席していらっしゃるわけですが、その局長さん方も、生命、健康にかかわることなら大気を保全する、水質を保全する。しかし、生命、健康に直接影響がなければ、大気を保全する、水質を保全するということは外されるんですか。
  104. 信澤清

    政府委員信澤清君) 私の局の名前も出ましたので私から申し上げたいと思いますが、私が理解しております限りにおきまして、大臣の御発言は必ずしも法律的には正確でない点があると思います。  ただいま大臣がおっしゃっております、生活環境公害というものを分けて考えておられますが、公害の中には、これはもう御承知のように、当然のことながら国民の健康の方にかかわるもの、それから生活環境にかかわるもの、この二つのものがあるわけでございます。したがいまして、基本法にもわざわざ「この法律にいう「生活環境」には、人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境」を言うと、こういうふうに定義をしているわけでございます。その場合、従来経済との調和条項がかぶっておりましたのは、この「生活環境」の部分だけかかっておったということを先ほどから大臣申しておられるわけで、そこで具体的な話として、私どもいまこれが大臣のおっしゃる例に当たるというふうなことをすぐ思い出せません。思い出せませんが、私が自然保護局長をついこの間までやっておりましたから、自然保護の関係等ではややそういう面の問題が多くございます。たとえば日光にバイパスを通すことをことしの初めに認めたわけでございます。これはたまたま大臣になられてからやりましたので、いろいろ大臣のことに関連して引用されることが多うございますので御承知だと思いますが、あの場合、その問題の対処の仕方が、観光か自然保護かとこういうふうにおっしゃるわけでございます。ところが、実際はあそこは御承知のように太郎杉問題がございまして、国道の拡幅ができなかったわけでございます。したがって、年がら年じゅうではございません、もちろん観光シーズンが中心でございますが、相当の渋滞現象が市内で起きている。そのために、たとえば排気ガスで市民の方が悩んでいるとかあるいは子供の通学に支障が起きるとか、こういう問題が起きているわけでございます。ですから、私どもはやっぱり観光か自然保護ではなくて、どちらかといえば、そういう市民の生活にかかわる、あるいは健康にかかわる問題との対比という面でやはり自然保護の問題も考える必要があるのではないか。そういう三つの問題を取捨選択した結果、自然保護に支障のないような、たとえばトンネルで通すとかいうようなことで、そういう工法を条件にして、そうしてあれを認めてきた経緯があるわけで、そういう議論の過程を通じて、ややもすれば自然保護だけがそういうものにも優先してしまうんだという議論がなされがちであるという経験を持っております。  ですから、まあ大臣がそのことをおっしゃっているかどうかわかりませんが、私自身の経験から申し上げれば、一つの例としてはそういうものがあるのではないかというふうに考えます。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、大気保全局長、もうずいぶん長い間ずっとこの委員会に出席しておられますが、大体四日市ぜんそく等のそうした大気汚染による健康被害は、突発的に健康がばっとやられたんじゃないわけでしょう。それは、まず空気が汚れてきたと、住民は、汚れてきた、おかしいぞおかしいぞと言いながらも、それは農作物や木や、水で言えば魚や、そういうものに影響があらわれる、被害があらわれる。それをほうっておくから、ついには取り返しのつかない生命、健康に及んだということを踏まえて環境庁ができたんじゃないですか。いかがですか。どう思われますか。
  106. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘のございましたのは、公害問題の始まりが確かに農林被害あるいは水産被害というような被害に発端があったということは事実でございます。そういうことで、まず生活環境が汚されておったということは事実でございますが、ここで一つ御説明をいたしたいと思いますのは、現在の法律、現在の基準でいきますと、SOとかあるいはNOとかばいじんとか決めております環境基準というものは、日本環境基準は非常に厳しい基準でございます。ですから、大気の面だけで申しますと、SOx、NOx、ばいじんというような、人間の健康を保護するだけの水準をやっていると、植物の方はまずほとんど問題はないという状態になっております。ただオキシダントの方でいきますと、恐らく植物の方が敏感でございます。それで人間の健康の方がもう少し強靱でございます。そういう相違がございますので、まず初めに弱い方が先にやられるという事実はありますが、現在の基準問題でいきますと、健康の保持の基準を守っておれば、植物の方には問題がないという形のことがあることは事実でございます。  それからもう一点、私どもの局の関係で騒音がございますが、騒音の問題で、ここにございます「生活環境」の定義に当たる、「人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含むものとする。」というこの「生活環境」と騒音が一体どう当たるのかという御議論になりますと、騒音の方は人間の健康な生活を損なうということでございまして、騒音規制法の条文の中にも、「健康の保護に資する」という形になっております。これは、騒音がストレートに人間の健康を、水俣病やあるいは慢性気管支炎のごとく冒すのかということにつきましては、ひどい騒音では確かにございますが、われわれが通常暴露されているような音の場合ですとそこまでにはいかない。しかし、非常な生活妨害現象が起こってくるということと、それから集団的に見ると聴力障害が少し出るのではないかと、それは病気であるかどうかという御議論はあろうかと思いますが、病気という議論になりますとこれは労働省の認定のような議論になってきまして、そういうところまでにはとうてい及びはしないということになりますので、騒音の問題を扱った場合にはこの生活環境の保全という、ここで言う「生活環境」にはストレートに当たらないものがございますが、かといってストレートに健康の障害ということを対象として防ぐものではございませんので、なるべく快適な生活環境を防ぐという立場に立っておるわけでございます。  振動の場合には財産問題がございます。  以上でございます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 何かもめているようですか、いいですか。——話つきましたか。  そういうわけで、石原長官環境庁長官でなくて、別の立場で、この環境問題と経済問題は選択の時代だとおっしゃる点について、だれも異議を差しはさまないと思うんです。しかし、環境庁行政は、いまお二人の局長から御説明があったように、直接これで健康がすぐやられるとか直接生命が危険だとか、それは厚生省の医務局とか薬務局とか、そうなればそれこそもう直接の生命、健康の問題になりましょうが、環境庁の場合は、直接そう生命、健康に影響がなくても、生活環境を保全していく、快適な環境をつくっていく、そのための環境庁の使命ですか、環境庁の設置法にもそういう趣旨のことが載っているわけでありますから。で、経済開発あるいは経済の運営開発、それはそれで別の法律があり、そういうそれを担当する省があり、そうしてまたそれを推進する企業もあるわけですから、それはそれぞれのところでやっておるわけですから、現実に。ですから、大気保全のために、水質保全のために、そういうことは生命、健康に影響があれば環境庁がしっかりやるけれども、生命、健康に影響が直接なければ選択だということが、環境庁長官としては、環境庁の任務と食い違ってくるんじゃないか、こういうことを指摘されているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  108. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私の申しましたことがちょっと言葉が足りないようで補足させていただきますが、実際に、たとえばアセスメント法を残念ながら前国会に提出することができませんでしたけれども、いま次の通常国会に出すべく努力をしているわけでございますけれども、しかし、その以前に、やはり個々の開発等につきまして環境庁なりの指針を出し、とにかくその範囲で環境庁として是認ができるということならばまあ一応、これをやりなさいということは言っておりませんけれども、いたし方なかろうという形で、関係省庁からすれば、環境庁からゴーのサインが出たからそれではという形で実際に開発等が行われるわけでございます。で、その限りでは、私たちは確かに環境の保全ということだけから考えれば、開発はないに越したことはないわけで、そこで上がってくるいろいろな社会的な利益というものは別にあるかもしれませんけれども、少なくとも周りの人たちにしてみれば、要するに工事をすることで騒音とかいろいろな問題がありますし、できればできたで、そこに乗る上物によっては大気が幾分いままでよりは汚れるとか、水も問題が起きてくるとか、そういうこともございます。しかし、結局他の省庁との絡みの中で私たちもアセスメントというものをしていただいて、これはしかし、そういう形で言えば、開発が行われる限り、自然の環境というものはもう要するにプラスの要因というものはある意味で考えられないわけでございますけれども、しかし、そのマイナスの要因も、アセスメントをした限りでまあここまでならば、開発の目的もあることだから、環境庁としてはとにかくよろしかろうという判断をせざるを得ないわけでございます。そういう意味で申し上げましたもので、常に開発の問題に関しましては、私たちも結局環境庁意見を求められ、指針を出し、それにかなっている限り、この限りではいたし方なかろうという形の選択を強いられているわけでございますので、それを申したわけでございます。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、この何日来発言していらっしゃるような、生命、健康に直接響くなら、それはもうあらゆるものに優先してというふうにおっしゃるのですが、しかし、そこを切り離して、環境問題は選択だというふうにおっしゃるわけですが、その選択は、環境庁環境保全のあるいは快適な環境をつくっていくということを主眼にした選択でなくてはならないと、こういうわけでしょう。
  110. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 当然でございます。しかし、それでもなおその開発というものの社会的なニードと申しましょうか、経済的なニードというものがあるからこそ他の省庁がそれを要求してくるわけでございまして、いま先生がおっしゃったみたいに、それを主眼として私たちの業務があるわけでございますけれども、それでもなお、つまり生活環境に係る問題の中の社会的あるいは経済側面というものを、私たちの省庁も他の省庁から求められれば勘案せざるを得ない。その意味で、マイナスの要因というものをどこまで許すかという形で要するに選択を強いられているわけでございまして、しかし、やはりその取捨選択の主眼というものは、とにかく生活環境というものをできるだけ守るということにおいて選択をしていることはもう要するに間違いございません。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 騒音の場合などは、すでに開発が行われた、あるいはすでに騒音で悩まされているというそういう場合もあるのでありまして、ではほかの省庁が全く生命、健康、環境を無視して計画をし、何でも開発をするかというと、そうじゃないわけですよ。同じ日本人としまして、同じ政府行政機関として、そんなに生命、健康を無視するなんという省庁があろうはずはない。しかし、にもかかわらずこうした開発経済活動が必要だという要求が出る。その要求に対し環境庁は、生命、健康はもとより、いかにして環境破壊を食いとめるか、あるいはすでに騒音に悩まされている、騒音をいかに減らしていくか、そのためにこそ環境庁があると、そのためにこそ各局があり、環境庁長官がいらっしゃると、これでよろしいのじゃないでしょうか。
  112. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) そのとおりでございます。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、私はカモシカの食害と地元では言っておりますが、特にヒノキの苗を植えましても、ある程度成長しますと、カモシカがヒノキのてっぺんをちょん切って食べてしまうというんですね。こういうような被害が特に長野県、岐阜県で訴えられております。ほかにもありますが。で、石原長官が岐阜へ行かれまして、現地もごらんになり、これはこういうふうにしなきゃいけないというふうにおっしゃったということを地元の人から伺いましたが、長官のお考えはどういうお考えでしょうか。
  114. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私が参りましたところは小坂という私有林がほとんどの、しかも林業だけでたつきを立てている非常に小さな町でございまして、そこへ参りまして見ましたところ、もう業者が植えても植えても、カモシカがおりてきて一年生、二年生ぐらいの木を野放図に食べてしまう。で、先端だけ食べて、非常に木が発育が悪くてどうしようもない。もう町の財政そのものが非常に逼迫しております。私は、カモシカは特別天然記念物ということで、絶滅を防ぐために指定されて、その後非常にそれが功を奏して数もふえたようでございますが、何か、聞きますところカモシカの天敵というのは人間だそうで、つまり人間が処置をしない限り全く他に恐れるものがなくて、私、横道まで入りましたけれども、とにかくここまで、さっきもカモシカが通ったとか、きのうも見たというぐらい人里までおりて来て、本当に林業、農業に被害を与えているわけでございます。  私は、カモシカか人間かということになれば、これはやはり人間生活が破壊されてまでカモシカを保護し切るということもいろいろの問題があると思いますし、これに対する防除策というものもなかなか効果を上げてないようで、特に何かやはり非常に矛盾のようなものを感じましたので、帰ってきまして、環境閣僚懇談会のようなものを開いていただきまして、そのときに、とにかく積極的に何らかの対処をしないことには、動物愛護も結構ですけれども人間の方が大きな損害を受けるということで、私有林に関してはたしか何らかの処置をとったと思いますけれども、何と申しましても面積の多い公有林の被害報告というものを林野庁からできるだけ早く出してほしいということでお願いいたしました。自然保護局長にも聞きましたが、いままだ調査中でございますが、そういった公有林の被害状況を一回確かめ、しかも頭数なとも確かめました上で何らかの規制——捕獲してどこか自然公園に移すとか何らかの措置を講じないと、林業でたつきを立てている方々はやはり割り切れない、救われないというのが現況だと思います。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 被害については私も岐阜県あるいは長野県で現地を見ましてよく存じておりますが、おりますがというのは局地的にしか見れませんけれども、そこで、実際被害を受けていらっしゃる皆さんが困っていらっしゃるその一つは、環境庁、林野庁、文化庁という三庁にまたがっているために、どこが本気になってやってくれるか——本気になってというのは変ですけれども、一体どこが本当に責任を持ってやってくれるのかということが一つあります。で、それはあれでしょうか、いま閣僚会議とおっしゃったですが、閣僚会議ができているんでしょうか。
  116. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 閣僚会議と申しますか、閣僚懇談会のようなものを一回持ちまして、その後局長、次長レベルでの三庁の会議を持ったようでございます。必要でございましたら政府委員の方からその件につきまして答弁させていただきます。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 三庁それぞれ、被害はどういう状況にあるということを発言していただきたいことと、それから、九月十二日の三庁合同会議というのがありましたでしょうか。その結論がどうなっているかということを、これは環境庁からか、どこかの庁から御説明をいただきたい。
  118. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 先ほど大臣から申し上げましたように、この行政は御指摘のように環境庁、林野庁、文化庁にまたがっております。それで、私どもも大臣からの御指示のとおり、これら縦割り行政の弊をお互いになくする必要があるということで、環境庁は私、それから林野庁は指導部長、文化庁は次長と、それぞれ私のところに集まっていただきまして、今後も必要があるたびに会合を重ねてまいりたいというように考えておるわけでございます。  で、カモシカにつきましては、実はカモシカの生態が十分よくわかっておりません。それから、カモシカが現在どのくらいの頭数が全国的におるのかという頭数も十分にわかっておりません。それから、被害状況につきましても、これはなかなか調査のむずかしいことでございまして、相当程度推測を入れてのことになります。したがいまして、それぞれ分担をいたしておりまして、カモシカの頭数につきましては環境庁が、それから生態につきましては文化庁が、それから被害及びその防除の方法等につきましては林野庁が、五十二、三年度にかけましてそれぞれ調査をして、その上でまた各省庁持ち寄りましてさらに恒久的な対策を打ち立てるようにいたしたいというようにしておるわけでございます。したがいまして、カモシカの被害状況につきましては、私どもは林野庁から教えていただいたものが中心でございます。詳しいことは林野庁からと思いますが、面積にいたしまして大体千九百五十ヘクタールばかりのカモシカによる被害昭和五十年度であるようでございます。  そういうような状況でございまして、それぞれ三庁で相談をいたしておりますが、恒久的な対策を立てる前にもすでに被害が出つつございます。しかも、かなりなものであるということを私ども承知をいたしておりますので、緊急の対策といたしまして、三庁合意をいたしまして、一つは、防護さくその他で相当程度効果の期待できるものはできるだけ防護さくをさらに設置をするように、それぞれ施策を進めていきたいということが第一点でございます。しかしながら、一部の地域におきましては、積雪その他の状況で防護さくが効果的につくることができないというようなところもあるようでございますので、そういったところにつきましては、カモシカを撃ち殺すことはこれはやめていただきたい、しかし、カモシカを捕獲して保護するということで、捕獲をするということを頭数を限ってお認めをしようという方針を三庁で打ち合わせたわけでございます。
  119. 小田島輝夫

    説明員小田島輝夫君) 造林木に対する被害の推移でございますが、近年非常に増加しておりまして、昭和四十六年度は民有林と国有林を合わせまして二百三十九ヘクタールでございましたけれども、昭和五十年度には、ただいまお話ございましたように国有林、民有林合わせまして千九百五十ヘクタールでございます。指数にしますと、四十六年を一〇〇としまして八一六というふうな異常な伸びを示しております。で、昭和五十年度の県別の被害面積でございますが、一番多いのが長野県でございまして四百九十九ヘクタール、それから岐阜県が四百六十七ヘクタール、これは民有林でございます。それから国有林につきましては、長野の営林局が三百十二ヘクタール、名古屋の営林局が九十四ヘクタールというふうでございまして、おおむね長野県、岐阜県が被害の中心地でございます。  それから、被害樹種でございますが、お話にございましたように、ヒノキがほとんどを占めておりまして、国有林、民有林を通じまして八四・四%の比率を占めております。次が杉でございまして、杉が九・八%でございます。  なお、嗜好性から申し上げますと、イチイに対しましては非常に嗜好を示しまして、イチイの造林地がまる坊主になるというような被害が出ておるようでございます。イチイが構成比で言いますと〇・五%ということでございます。  金額につきましては、都道府県からの報告ございませんので、きわめて大ざっぱな推計ならばおおよその見当がつくというわけでございます。
  120. 横瀬庄次

    説明員(横瀬庄次君) 文化庁といたしましては、食害の被害の実態につきましては、自分の手を持っておりませんので、林野庁からの造林木に関する被害を御報告をいただいたり、あるいは青森県の脇野沢の方では農産物について被害が出ております。そういった面については農林省の方から報告をいただいたりいたしまして対処しておる次第でございます。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 昭和三十年に特別天然記念物に指定したと、これは文化庁ですね。しかし、その生態とか頭数が全くわかっていないという。それはどこがやるべきだったのですか。
  122. 横瀬庄次

    説明員(横瀬庄次君) カモシカは、まあ大変古いことでございますが、昭和九年に天然記念物に指定されました。この当時もうすでに、指定の理由書等を見ますと、著しくその数を減じており、生息する地方においても山岳地帯など局地的に分布しているだけにすぎないというような状況が報告されておりまして、そうした生息実態というのはその当時すでにあったんだというふうに思います。そういった生息実態があって指定されたんだというふうに考えます。  で、いまお話ございましたように、戦後その数の減少がますます憂慮されるようになりまして、昭和三十年に特別天然記念物と、特別ということに昇格したわけでございます。したがいまして、当時は全国のカモシカ分布の把握を行うということは技術的にも非常に困難な点もあったと思いますけれども、むしろその時代の要請としてはカモシカが生息している地域を調べまして、その地域について保護するという方法をとることの方によりその要請があったのだというふうに考えます。  たとえば、具体的に文化庁あるいは文化庁の前身でございます文化財保護委員会がいろいろな調査をしておりますが、その跡を例で申し上げますと、昭和三十一年の九月には黒部峡谷、これはカモシカがかなり生息しているところでございます。この黒部峡谷を天然記念物に指定するということでその調査をやっておりますし、それから昭和四十一年には丹沢山塊の生息調査というのをやっております。昭和四十二年には新潟県の笠堀ダムというところで、これも当時カモシカの生息密度が非常に高いということで注目された地域でございますが、そこの調査をやりまして、ここは生息地として天然記念物に指定しております。それから、昭和四十九年には九州の祖母・傾山系の特別調査をやっておるというふうに、幾つかのその生息地域を限っての調査というのは行われているわけでございますが、全国的な規模においてその生息状況の把握のための調査は、そういう個々の地域についての保護ということが先行したために、特には行われなかったというふうに考えるわけでございます。  ところが、昭和四十年代の後半になりまして、カモシカの目撃報告というものが非常にたくさんふえてまいりまして、同時に食害が出始めまして、急速に社会問題化したわけでございます。その対策として全国にわたる生態調査が必要とされるということになったというふうに思います。今回の三庁の分担し合っての調査の中で、初めて全国的な規模の調査ということが行われるわけでございますが、そういった状況であったということを御理解いただきたいと思います。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 大変長い詳しい御説明をしてくださるのですが、結論は、最初に環境庁自然保護局長がおっしゃるように、生態調査あるいは頭数すらわかっていないと、現実は。現状においてはわかっていない。しかし、被害は次から次へ発生していくという。そこで保護した、そうしたらふえた。ふえたら今度は少しつかまえてどこかに持っていけという、取り組むやり方が人間本位というか、何本位というか、場当たりというかですね、いかにも場当たりじゃないか。とにかくもう被害が発生しまして……これは長野県の上郷町というところの町有林に植林されたものですが(実物を示す)これちょっと専門的に説明してください。
  124. 小田島輝夫

    説明員小田島輝夫君) 御説明申し上げます。  これはヒノキの造林木でありまして、おおむね五年生ぐらいのものではないかと思われます。なお、通常の形態とかなり異っておりまして、再三にわたるカモシカの食害が繰り返された痕跡があります。こういうふうに枝の部分が出ておりますけれども、本来ここに頂芽が立っておりまして、五年生ぐらいですともっと背が高くなるわけでございますが、頂芽、頂の部分が食害によって棄損されておりますので、わき枝が立ってきたのをさらに食害を受けて枯損、枯れておるという状態で、いわば私どもの言葉で言うとほうき状の、正常木でない状態を示しておりまして、もし成林した場合には材質的あるいは形状的に非常に経済価値が劣るものになるのではないかというふうに考えます。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 ヒノキの苗を植えるということは、これが成長して木にならなくては意味がないのであって、こういうほうき状ですか、いまおっしゃるほうき状のものをこれから何年置いても、幹ができないことには使い道がないわけでしょうから、しかも、これを植えるについても大変な経費もかかるし、それから重労働でもあるし、それがせっかく植えたところをこういうぐあいになってしまったんじゃ全く経済的にも成り立たないし、植林の意欲も減退するし、後継者もなくなるというような現状だと思います。  そこで結局、先ほどお尋ねをいたしました九月十二日の三庁合同会議では、防護さくをつくること、場所によっては捕獲して保護すること、これだけが決まったわけでしょうか。防護さくは、実際問題、まあ私がいま示した場合は町有林ですので、何ヘクタールというものを囲って防護していくということは可能ですが、実際は、個々の民有林においては非常に問題がありまして、思うようにいっていないわけですよね。特に、岐阜県などでは防護さくはどうも問題があり過ぎるとおっしゃっているようです。それから、捕獲するにはその経費はどうするか、保護するにはどこで保護するか、経費はどうするか、そういう点は相談なさいましだか。
  126. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 防護さくの問題につきましては、御指摘のように、民有林が多いところでは防護さくを設ける場所等もなかなかむずかしいわけでございます。それから、非常に積雪の多い地帯では、せっかく設けましても、雪によって壊れたりあるいは壊れなくても自由に飛び越えられるというようなことから、効果が期待できないというものもございます。で、カモシカの生息を国有林の地域を限ってそちらの方に追いやるということも一つの方法ではあろうと思いますけれども、その辺のところは恒久的な対策としてやはり頭数等を把握した上で考えるべきことであろう。当面はできるだけ防護さくを設置できるような場所をそれぞれの地域について御協議を申し上げて、防護さくについての補助金、これは二分の一の補助でございますけれども、それでできるだけしのいでいただく。それから、またそれでもなおむずかしいところにつきましては、特別なところについてはある程度の捕獲も、これは当面の臨時措置としてやむを得なかろうというように考えておるわけでございます。  なお、それらのことにつきまして協議をいたしましたのは九月九日でございまして、御指摘の十二日は、地元の小坂の方が上京して陳情に見えました日であったかと存じます。
  127. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはわかりました。九月九日だったということですね。  それで、捕獲する、保護する、一体どのくらいの期間にどのくらい捕獲し、その経費はどうするかということはどうなんでしょう。
  128. 横瀬庄次

    説明員(横瀬庄次君) いまのこれは、岐阜県の益田郡小坂町の周辺の数町村でございますが、具体的にその捕獲の問題について問題になっているわけでございますが、現在は、地元の県あるいは町村と具体的に実際のやり方について詰めているところでございます。これについてはかなり詰まってまいりまして、補助金を文化庁の方から、ことしについては私の方でやりくりができましたので、私の方から流しまして、それを受けて実施していただくというような構想で事務的に現在詰めているところでございます。  期間とかあるいは頭数につきましては、これはこの捕獲の許可を行う際の一つの条件として、それに先行いたしましてこの地区の生息状況、これを至急に調査いたしまして、その上で結論を出していこうということで進めておりますので、この辺の林の葉が落ちます十一月くらいになりませんと具体的なその実態調査というのはできませんものですから、現在それを待って検討したいというふうに考えております。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 わかりました。  それで、長野県の方は、岐阜県だけ捕獲が許可されたということが伝わってきたが、長野県はどうなんだと、被害面積は長野県の方が広いというふうに先ほど報告もありましたが、それはどうなんでしょう。
  130. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 長野県にも岐阜県と似たような状況があるということは私どもも伺っております。ただ、岐阜県の場合にも、先ほどから申し上げましたように、防護さくをまず第一に考えてできるだけ防護さくで当面はしのいでいただくということを基本の方針にいたしております。  なお、数的に明確に——この調査は五十二、三年度でということでございますが、岐阜、長野等につきましては、できるだけ早くに、私どももできれば五十二年度内にでも調査を終えるようにしたいというように考えておりますが、そういった結果を踏まえて恒久的な施策を考える必要がある。したがいまして、いま文化庁から申し上げましたように、捕獲を具体的に御相談申し上げておるのは岐阜県の小坂町を中心にする地域でございますが、これは特に防護さくの設置が、先ほど申し上げました雪その他によってなかなかむずかしいという事情があると承知をいたしておりますので、とりあえずの措置としまして御協議を申し上げていると、こういうことでございます。
  131. 小平芳平

    ○小平芳平君 被害が発生したということですね。被害が発生して激しくなってきているということ。で、それに対して、初めは保護した、ふえた、ふえ過ぎた、じゃつかまえろと、これは石原長官、やはりもう少し考え方をそれこそ変えなくちゃいけないんじゃないでしょうか、これは。で、特にこの被害を受けていらっしゃる方は、保護するなら保護頭数とかあるいは保護区域を設定するとか、あるいは治山治水、環境保全、そういうことから考えても、とにかく植林してもさっきのような状態では森林というものがなくなっちゃうという、山が荒れほうだいということでは困るわけです。その辺の兼ね合いを総合的に対策を立ててほしいということが地元からの、被害を受けていらっしゃる方の願いであるわけなんですが、いかがでしょうか。
  132. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 先に政府委員から答弁させていただきます。
  133. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 御指摘のような問題が特にあるわけでございます。この面につきましては、けさほどからも長官がいろいろ申し上げておりました自然の保護、特にカモシカが特別天然記念物になっておるということで、自然の保護につきましても私ども並びに文化庁にとりましては最も重い意味において保護すべき性質のものでございます。それと経済問題との調和ということでの非常にむずかしい問題でございます。で、これを、私どもとしましては特にそこに住んでおられる方の生活にかかわる問題でもございますので、できるだけ早くに結論を出したいということで、三庁協議を進めておるわけでございます。
  134. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 先生御指摘のとおりでございまして、たとえば特別天然記念物に指定したら、その後、したことによって一年目、二年目、三年目、全体と言いませんけれども、要するに一つモデル地域を仕切って、そこでどういう生態でどれぐらいのスピードでふえていっているかということも当然調べているんじゃないかと思ったんですが、どうもそういう研究もないようで、とにかくやたらにふえてきたと、その推測頭数も要するに万単位で違うようでございまして、そういうところはやはり行政の上で足りなかったところがずいぶんあるような気がいたします。  そして、また、この実害というものがこれだけ顕著になり、一つの地方公共団体が滅びるか滅びないかというような深刻な問題まで起こっておりますので、関係閣僚懇談会を開いていただきまして、その後それを受けて局長レベルでの、実務レベルの話し合いがあったようでございますが、さらにまた、それを受けましてもう少し閣僚次元で何かやはり抜本的な指針を打ち出し、さらにそれを具現化するように督励したいと思っております。たとえば小坂などで言われましたことは、人間に対して非常に敏感に反応する動物であるから、高度規制をして、植林をしているその高度ぐらいまでおりてきたものは拿捕する、それを何回か繰り返すうちに、ある高さからはおりてこないんではないかというような意見もございました。そういうものを勘案し、またその地域に応じた幾つかの要するに施策というものを決めて、その地域性に合った形でこの被害を食いとめる努力をするよう再度閣僚のレベルで話し合いをしたいと思っております。
  135. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ三庁にまたがるということで、環境庁の一存でいかない面もあろうかと思いますが、とにかく場当たり主義でないような対策をぜひ環境庁長官に、いま出席していらっしゃるのは環境庁長官お一人ですので、要望いたしたいと思います。  それから、すでに環境庁か林野庁では、保護区域を全国に何ヵ所くらいか設けて保護するようなことを検討しているというふうなことも聞きましたが、これはおやりになっていますか。
  136. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) まだ具体的な協議をしておるわけではございません。ただ、この五十二、三年度にわたる調査の結果、恒久的な対策を私どもは立てたいと考えております。で、その際に検討すべき問題としていま私どもの頭の中にある、こういうことでございます。
  137. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わります。
  138. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  139. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) 速記を起こしてください。
  140. 内田善利

    ○内田善利君 環境庁長官の種々の発言問題が起こって、長官としても、長官としての発言の重みを痛感しておられると、このように思います。発言されたことが訂正されたり弁明があったりしないように、はっきりした姿勢環境行政に臨んでいただきたい。こういう立場から現在環境行政を見ておりますと、いろんな面で、経済に押し切られておるような、あるいはその圧力のもとに、なかなか思うように行政が施行できないんじゃないかと、そういう面が多々受けとめられますので、具体的に私は例を挙げながら長官行政に対する姿勢をお聞きしたいと、このように思います。  まず、環境アセスメント法でございます。もう三回、国会に提出されようとしながら見合わせてこられた。今度の臨時国会も、私も期待しておりました。中身はまだ納得はできない面もありますけれども、環境庁として環境アセスメント法案を出すことは、これはもう当然のことだと私は思います。環境庁が出さないで一体どこが出すんだと、そう思うんですが、残念ながら今国会も提出を見送られたと、このように聞いております。先ほどの国会でも、建設省や通産省の反対あるいは経済界の圧力等でとうとう、所信表明では出すと長官は表明されておりましたけれども、最終段階ではとうとう出てこなかった。そして、私は大気保全局に対してもあるいはどの局長さんに対しても平等な立場でございますが、あの元の柳瀬局長環境アセスメントの推進については非常に積極的であったと私は見ております。この局長さんならば、きっと今回は環境アセスメント法案が日の目を見るに違いないと、そう思っておりましたが、局長の更迭が突然行われた。そういったことなど考えてみますと、環境庁環境アセスメント法案を出す御意向があるのかどうか、なぜ今国会も出なかったのか、まずこの点をお聞きしたいと思います。
  141. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 御指摘のように、過去何度かの国会でアセスメント法が話題に上りましたが、実際にその法律としての案文ができましたのはことしの正月でございます。その時点から、その原案をもちまして各省庁との間の事務レベルでの折衝が始まったわけでございますが、何分いままでの行政原理に存在しない、まあ一種の手続法でございまして、その折衝でいろんな問題が次々に出てまいりまして、結局時間切れになりました。  また、環境庁の中の人事のことにいま付言されましたが、柳瀬さんは確かにアセスメント法のために努力をされましたけれども、これは柳瀬さん個人の他と比べての姿勢というよりも、環境庁全体の姿勢を反映されて、柳瀬さんは柳瀬さんなりにベストを尽くされたと思いますが、いずれにしても、それに対する評価はいろいろございましょうけれども、しかし、この人事が環境庁のアセスメント法に対する後退であるとかあるいは外部の圧力云々の所産であるということは、これは決してございません。そしてまた現在も、ボトルネックと申しましょうか、とにかく事務レベルで折衝を仕切って、閣僚レベルでの話し合いに持ってくる前の大きな障害を幾つか克服すべく現在新しい企画調整局長が努力をしているわけでございまして、何としてでも次の国会までには提出したいと、そういう意味でみずから一つのタイムリミットも切りまして、実現するように努力をしているわけでございます。
  142. 内田善利

    ○内田善利君 詳しく環境アセスメント法案に触れるつもりはございませんが……。  次に、公害健康被害等に関して、硫黄酸化物はその数値が示されて大気の汚染原因物質ということで規定されて地域指定がされておるわけですが、窒素酸化物がまだ事実上無視されておると、なかなか窒素酸化物までに入らないと、これはどういうことでしょうか。
  143. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 従来の補償法の第一種地域の指定におきましては、硫黄酸化物窒素酸化物というふうに、こういったいわゆる大気の汚染によって起こる健康被害というものに着目いたしまして指定をしておるわけでございまして、その中で硫黄酸化物を一つの指標といたしまして指定の要件といたしておったわけでございますが、その考え方の中には、窒素酸化物というものの測定も含めて考えておるわけでございます。数値的にはございませんが考え方としては含めているということでございます。
  144. 内田善利

    ○内田善利君 数値的にはまだ指定できませんか。
  145. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 窒素酸化物の健康影響ということに関しまする各種の疫学的な調査というものは、余り世界にもその類例がないのでございまして、私どもも先般来そういった窒素酸化物というものを取り上げた健康影響というものにつきまして調査データの発表をさせていただいたわけでございますが、これまでの調査の結果から見た限りにおきましては、調査対象地域におきまする程度の濃度によって、窒素酸化物によるこの補償法に取り組むべき健康被害が多発しているかどうかということにつきましては、まだ明確な証明が得られていないと考えております。したがいまして、直ちに窒素酸化物につきまして地域指定要件の具体的指標として明確化することにつきましては、現在困難だと考えておるわけでございます。  しかしながら、沿道調査におきましても、また複合大気汚染調査におきましても、明らかな不健康な状態があるということが考えられますし、また動物実験等も現在並行して進めておるわけでございますが、それらの今後の調査の手法あるいは研究の開発ということを進めまして、その問題につきまして取り組んでまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  146. 内田善利

    ○内田善利君 大気汚染防止法の中でも窒素酸化物は有害物質の中に入っているわけですね。そして健康に悪影響を与えるものであると明記されておるわけです。また、現に東京の杉並とか中野、練馬、そういった地域等では硫黄酸化物の濃度は低いんですね。低いが、呼吸器の障害が非常に多い。その原因はやはり酸化窒素にあるんじゃないかということで、健康被害補償の地域指定にするような強い要望もあっているようですが、こういうことを考えますと、大気汚染防止法にもちゃんと明記してありますしね、そういうことであるならば、これは地域指定要件として窒素も入れるべきであると、こう思うんですけれども、なかなかこれができない。もう長年にわたってできない。長官、どうでしょう。
  147. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 詳しくは政府委員から答弁さしていただきますけれども、先生に御理解いただきたいのは、日本でやっておりますNOxに関します汚染調査もそれからその技術も、もうこれは世界で一番進んだものでございます。世界からその結果についてのいろいろ問い合わせがあるようでございますが、しかし、その限りでも、なおいま部長が答弁しましたように、科学的な因果関係を明示する資料というものが得られないところにもどかしさがあるわけでございまして、環境行政はやはり科学的な知見というものをあくまでももとにしてというたてまえでございますので、なお少し時間がかかるかもしれませんが、しかし、それでもなお国立公害研究所などでも低濃度の暴露実験などこの半年来やっておりますし、また必ず近い将来新しい知見というのが得られると思いますし、それを得られた段階でこの問題に対処する次の姿勢というものを積極的につくっていきたいと思っている次第でございます。
  148. 内田善利

    ○内田善利君 硫黄酸化物は、地域指定に際して調査発動要件の中に入っておりますが、この調査発動要件の中には入れないかどうか。局長
  149. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 先ほどのお答えにつきまして、もうちょっと敷衍させていただきますと、諸外国の文献あるいは動物実験あるいは職業病の経験からいたしまして、相当濃度の窒素酸化物による健康影響というのは明らかにあるわけでございます。ただ、私ども、今日日本の中で、窒素酸化物単独での汚染という地域はなかなかないわけでございますので、比較的硫黄酸化物の汚染の低い、窒素酸他物の汚染の高いと思われるところを選びまして調査をしてみたわけでございますが、現在の汚染濃度ということに関連した有意の健康被害といいますか、そういったようなものが認められなかったということでございまして、ただ手法等の問題もあったかと思いますので、そういったことの開発を進めて調査に取り組みたい、かように思っているわけでございます。
  150. 内田善利

    ○内田善利君 それから、もう一つお聞きしたいと思いますが、環境庁ではことしの三月の二十八日に中公審に対して、NOの環境基準の設定に関する判定条件の再評価を諮問しておられますが、これはどういう意味でなされたのか。環境基準の再評価の判定についてですね。
  151. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御質問のございました中公審への諮問でございますが、現在の環境基準は四十七年六月までの科学的なデータで、それに基づきまして四十八年に決めたものでございます。ですから、データはそのときまでに限られておりまして、正直に申し上げまして非常に乏しいデータでございます。特に、疫学の面におきましてはきわめて乏しく、WHOのレポートの中でも、国際的に利用できる疫学のレポートはきわめて乏しいということを言っております。ただ、動物実験につきましてはかなりなものがその時点までにはあったということは事実でございます。そういうことで、私はずっとこういうことを見てきまして、その当時おりませんでしたが、よくこれだけの乏しいデータで決断をしたという、その勇気に感心するぐらいな決断でございまして、これは大気汚染の基準に動物実験のデータを一番重んじてやった、世界で最初の事例でございます。いままでのは全部もう実際の被害がたくさん起こってから、何十年たってからやったわけでございますが、窒素酸化物の方は防止をするという角度で決めたものでございまして、非常に不確かさが高いもとにおいて、非常に大きな安全率をとって決めたということでございます。そういう点で十分な安全性をとっておりますから、これはそういう点では十分なわけでございますが、一体それから五年間もたっておるがどうなっておるかということは、これは公害基本法第九条第三項にもございますように、定期的に科学的に点検をしてみる、そして必要ならば改定を加えるというのがございます。私どもは、当初から、環境庁としまして改定を加えるという必要性を感じておりませんでしたので、環境基準を諮問するという形態をとっておりません。ただ、その根底になる判定条件ということにつきましては、五年間の間により多くの、より豊かな、より確かな資料が集まったということでございますので、専門委員会に、環境基準を設定する場合の根底となる判断条件をいまの時点で新しく示してほしいということと、それからもう一点は、二つの点を指針値といたしまして、いまの時点で、いまの所見を全部集めた上で、維持されることが望ましいという観点からは専門家としてはいかに判断されるか、それからもう一つは、この程度ならば大丈夫だろう、非常に理想的に望ましいとまではいかぬが、こんな程度ならまず受け入れることができるという水準は一体どこであるかという、その二つの点につきまして専門委員会に諮問をしたところでございます。そういうことでございますので、基準そのものではございませんで、九条三項に基づいた科学的な再検討を行うためにいたした諮問でございます。
  152. 内田善利

    ○内田善利君 厳しいがゆえに、その厳しい環境基準を緩和しようとする意図はないんですね。長官、どうですか。長官に聞きたい。
  153. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 非常に専門的なことでございまして、その経過、私詳細に聞いておりませんから、局長から答弁さしていただきます。
  154. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 緩和するというような意図をもっていたしたものではございません。ただ、NO2の問題というのは世界で最初のケースでございますし、世界日本がいま一番厳しい規制を、どこもやっていないことをやっているわけでございます。しかもその影響というのも、非常に大きな広範な複雑な影響を及ぼすということはこれは間違いない事実でございまして、それだけの重大なことをやるにはやはりもう少し多くの人の合意を固める必要がある。そのためには五年間の科学的なデータでどの辺までもう少し確かに言えるだろうかということを固めるためにいたしたわけでございまして、答申が出ましたならば、これは現時点における科学的な最良のものでございますから、いままでどおりの条件でいくのか、あるいは新しい条件が加わるのか、あるいは厳しくなるのか、あるいは緩い条件になるのか、全くその点は白紙の状態でございます。
  155. 内田善利

    ○内田善利君 中公審の答申の要請に当たって、二つのガイドラインを検討するように要請してあるわけですが、一つは、人の健康保護にとって望ましいレベル、もう一つは、いかなる手段を講じてもクリアしなければならないレベル、この二つのガイドラインの検討を要請されておるわけですが、この人の健康保護のレベルを判定するクライテリアを、複数のガイドラインを検討させるということと、いまの発言と少し矛盾するように思うんですが。
  156. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの御疑念はごもっともなことだと存じますが、これは、実際の問題を正直にお話しをいたしたいと思います。  〇・〇二に間違いなく落とすということを東京、横浜でやりますと、九十数%のカットでございます。これでは私は多くの企業はつぶれると思います。それから、自動車を九十何%カットすることは、乗用車はできましたが、トラック、バス、ディーゼルを入れるとそれはできません。そういうことで、環境白書の中に、明らかに不可能な点は不可能であるということと、もう一つは現在どのような汚染レベルのところではどれだけのカット率を要するかという粗い見当をつけるための表を出して、国民方々にお考えをいただくようにいたしました。その場合に、どう考えてみてもこの程度なら健康は大丈夫だというところまでには、どんなことがあろうがしゃにむに下げなければならないというのは、これは基本的な健康保護絶対の立場からの問題でございます。そういうことで、現在の中間目標値といいますのがWHOが言っている下限にほぼ当たるわけでございますが、それだけをやるとしましても大体七〇%前後のカットでございまして、これも相当——相当どころかきわめてすごいものになることは間違いございませんで、これは横浜市が試案をつくりました数字を見ても明白であります。そのような問題を抱えておりますときに、やはり統計的に簡単に中間目標値ということだけを言うことでは、とうていそれだけの大きなドラスチックな策をとるコンセンサスを得ることはむずかしいということを考えまして、これは、非常に正直に申しますと、最後の突っかい棒として、絶対これだけはクリアしなければならないというところで出すために、受け入れることのできる健康を守る水準ということを諮問しているわけでございます。
  157. 内田善利

    ○内田善利君 またこの問題は次の機会に譲ります。  次に、国土庁がことしの八月二十四日三全総の試案を公表しておりますが、来月の八日ごろには閣議決定されるという状況のようでございますが、この試案づくりに際して、環境庁長官は国土庁に対し何か要望したり意見を述べられたことがありますか、どうですか。
  158. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 政府委員から答弁させていただきます。
  159. 信澤清

    政府委員信澤清君) いま先生おっしゃったように、国土庁の試案として現在国土総合開発審議会で御審議中でございます。したがいまして、まだ決定を見たわけではございませんので、それにつきましてとかく申すのはいかがと思いますが、ただいまのお尋ねは、その国土庁の試案をつくるについて環境庁はどのように対応したかと、こういうことだと理解いたしております。  その点から申しますれば、一つは、国土庁がこの試案をつくるに先立ちまして、新全総の見直しといいますか、各般の問題についての見直し作業をいたしております。その結果については、私どもも十分御相談を受け、またその結果を踏まえて私どもの意見も言っておるわけでございます。特に私どもが今回この試案をつくります際にいろいろ申し上げましたことは、やはり限られた国土の中で、いかにその地域の特性を生かしながら人間と自然との調和の上に立った安定感のあるそういう人間居住と申しますか、そういう生活環境を計画的に整備すると、こういうことが必要ではないか。そのためいろいろな方法があるわけでございますが、中でも私どもが特に強調いたしておりますのは、当然のことながら公害の防止と自然環境の保全でございまして、これにつきましては、その保全に当たりましての心組みはもちろんでございますが、いろいろな地域開発の問題等につきましても常に住民の意向を反映させる、あるいは環境影響評価をやっていただく、こういうことをかなり、ある意味ではくどいほど申しておりまして、この案の中でも随所にそのことに触れてあるはずでございます。さようなことを中心にいままで意見を申してまいっております。
  160. 内田善利

    ○内田善利君 私がお聞きしたいことは、この三全総の試案の中に、鹿児島の大隅開発計画が入っておるわけですね。大体一ページにわたってできておりますが、「西日本においては志布志湾地区等について環境影響評価を含め調査検討を進め、その結果をふまえ、相当規模の工業基地を数地区建設するものとする。これらの新工業基地の建設は、地域の自主的な選択を前提として十分な立地条件調査環境影響評価などを行いつつ、今後の経済社会の発展に即して総合的判断を行い慎重に進めなければならない。」、こういうふうになっておるわけですが、これは、環境庁はこれに賛成されたのかどうかということをお聞きしたかったわけですね。長官は志布志には行かれたことございますか。あそこの志布志湾は非常に名勝の地であり、当然現在国定公園になっているわけですね。その国定公園の解除を前提としてこの三全総の試案に賛成されたのかどうか、この辺をお聞きしたいと思います。
  161. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 全くそのようなことはございません。これはただそういう予定地とされているところが幾つかございまして、その一つの例として名前が出ているだけでございまして、環境庁はこの問題について現在全く白紙でございます。
  162. 内田善利

    ○内田善利君 白紙ということでございますが、三全総の試案にはこうして出てきているわけですね。ですから、この計画についてどういう程度話し合いがなされたのか、これ出てきておりますからね、長官いま白紙だとおっしゃいましたが、これは国定公園の解除について白紙だとおっしゃったのか、この計画についてはどうなのか。
  163. 信澤清

    政府委員信澤清君) 志布志地区その他につきまして、いま先生お読み上げいただきましたのは、そのとおりの案になっておるわけでございまして、実はここらあたりが私どもがいろいろ注文をつけた個所の一つというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。で、お読みいただきましたように、ここに書いてありますのは、西日本に相当規模の工業地区を数地区つくると、いわばその前提となる調査をやる地区のまあいわば例示として志布志湾を掲げておるわけでございます。したがって、ここらあたりにいろいろ問題があるかもしれませんが、私どもはあくまでこれは例示であると、つまり調査をするための幾つかの候補地があるはずなんで、その候補地の一つであると、こう考えているわけでございます。したがって、お読みいただいたように、「環境影響評価を含め調査検討を進め、その結果をふまえ」云々と、こういうことにいたしておるわけで、さらに「地域の自主的な選択を前提」とするとか、こういう点をすべて織り込んで、いわばそういう意味では、環境庁としてこの計画で志布志湾について工業基地の建設を認めたものではないということを明らかにしたつもりでございます。これは関係各省庁との話し合いの中でも、そのことは大変重要な問題でございますので、またかねがね先生方からいろいろお話があったことでもありますので、そういう慎重な手続を経て、一応この文言で国土庁の試案をまとめていただいたと、こういうことでございます。
  164. 内田善利

    ○内田善利君 これにも出てまいりますように、「環境影響評価などを行いつつ」と、こういうふうに出ておりますし、また地方によりましては環境影響評価条例をつくっているところもありますし、こういうふうに「環境影響評価を行いつつ」とありますと、一体だれがこれを行うのかということを考えてまいりますと、どうしても、いままでの経験上、施行者が環境影響評価を自分でやって、そして報告は安全だと、こう言ってやってきていろんな障害が、公害問題も起こっておりますし、鹿島にしてもあるいはどこの場合も、いままでの環境影響評価をやったその報告は安全だと言いながら大気汚染被害が起こったり水質の被害が起こったりしているわけですが、こういうことを見ましても、やっぱり環境影響評価法案を早くつくるべきだということを痛切に感ずるわけです。この点はいかがでしょう。
  165. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) おっしゃるとおりでございます。この志布志湾の開発の問題がアセスメントの対象になってくる時点がいつごろかわかりませんけれども、しかし、その前にきちっとしたアセスメント法というものをぜひともつくりたいと思っております。
  166. 内田善利

    ○内田善利君 また、この問題につきましては後刻に譲りたいと思います。  次に、長官はことしの四月水俣市に行かれて、おくれにおくれている被害者救済を、さびた機関車を少しでも進めたいと、こういう決意を述べておられましたが、その後検診体制ですね、あるいは審査委員会の問題、この点はどのようにされておるのか、この点をお聞きしたいと思います。——長官が行かれたんですからね、長官質問しているわけですよね。
  167. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 詳しくは保健部長の方から御報告さしていただきますが、おかげさまで、月間百五十人の検診、百二十人認定審査という路線だけは何とかお医者さんの確保等たいたしまして滑り出しました。そういう意味では最初の一つの問題はこれで越えられたと思いますけれども、その後、いまも先生の時間をちょっと拝借して会いましたが、チッソの問題等々次々にまだ難関が残っておると思っております。
  168. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 現在まで約四千人の認定申請者がございまして、これにつきまして月々百五十人の検診、従来は大体五十人程度の検診しかできておらなかったわけでございますが、これを一挙に百五十人の体制を組むようにいたしまして、この十月に入りましてから現在までの状況を見ておりますと、その方向で進められておるわけでございますし、今月の月末にも百二十人の審査に持ち込めるというふうに県の方からも聞いております。  以上でございます。
  169. 内田善利

    ○内田善利君 また、この問題も後刻に譲りますが、いま長官姿勢をずっと一連の質問をしながら聞いているわけです。  慢性砒素中毒症について——土呂久鉱山の砒素中毒ですね。砒素中毒症について、この指定疾病の診断基準として、内臓疾患を含む全身的障害状況を加えるべきであると、従来この認定について被害者の皆さんの要望があっているわけですが、この内臓疾患も含めるということについては、何回も何回も小平委員等からも質問がありまして今日に至っておりますが、未だに内臓疾患を含む全身的障害症状を加えるということになっておりませんが、これを拡大すべきじゃないかとこう思いますが、いかがですか。
  170. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 現在砒素中毒におきます認定といたしましては、皮膚の症状等を取り上げていたしておるわけでございますけれども、内臓に及ぼす影響ということにつきましては、まだはっきりしたことが学問的にわからない点がございますので、動物実験というようなこともいたしましたりして、専門の先生方に御検討を願っておるところでございます。
  171. 内田善利

    ○内田善利君 私も幾らか例を挙げながら長官にお聞きしたわけですけれども、やはりここに人がおるんだと、ここに自然があるんだとという立場を基本にしていかなければならないと、開発するにしてもそういうことをまず基本に入れていくのが公害対策基本法を踏まえた環境行政をつかさどる長官としての姿勢ではないかとこのように思うんですが、この点どのようにお考えでしょうか。きょうの委員会の最初で公害対策基本法精神を守っていくと、こういう発言をなさったと聞いておりますが、やっぱり人の健康を守る、生活環境を守るということから環境行政は出発していると、こう思うんですね。その点いかがでしょう。
  172. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 全くおっしゃるとおりだと心得ております。
  173. 内田善利

    ○内田善利君 それでは、ケミカルアセスメントを環境庁でつくられて、これを拝見いたしましていろいろ勉強したわけですが、このケミカルアセスメントの中身についてお伺いしたいと思うんですが、四十九年度から始まりまして五十年度、五十一年度、ことしのこの報告を見まして、非常に私は画期的な、今後の環境汚染を是正していく上では一番基本になることだったと、そう思います。ことしも七十八のうちの四十の化学物質日本列島の周辺を汚染していると、こういう事実がわかったわけですけれども、このケミカルアセスメントについて環境庁はどのようにこれを把握されて、今後どう対策を講じていかれるつもりか、まずお伺いしたいと思います。
  174. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 先般、十月になりまして、五十一年度の化学性物質環境調査ということで報告を発表したわけでございますけれども、この化学物質環境調査は四十九年度から行っております。  四十九年度におきましては水質、底質及び魚、こういったものを対象にいたしておりまして、フタル酸エステル——プラスチック等の固さをやわらげていくといいますか、軟化剤と申しますが、プラスチックの軟化剤に使われておりますフタル酸エステル類を中心といたしまして各種の重金属などにつきまして調査をいたしました。フタル酸エステル類が、大変低濃度ではございますが、大都市あるいは工業都市を主としていずれからも検出されたというような内容になっております。  五十年度につきましては、塩素系の有機溶剤、塩素化ベンゼン類、有機燐系可塑剤などを中心にいたしまして調査が行われました。有機溶剤類はその使用形態を反映して広く検出されたと、こういう内容になっております。  五十一年度につきましては、PCBが使用中止になったわけでございますが、その代替品としての各種の物質、それからアニリンあるいはニトロベンゼンというような大変微量に使われる、何といいますか、原材料でございますが、ファインケミカル原料、こういったものも行ったわけでございまして、底質あるいは水質あるいは魚類または大気の中、こういったような、それぞれの物質によりましてねらいをつけまして調査をしたわけでございます。その結果といたしまして、PCBの代替品あるいはファインケミカルの原料及びジブチルヒドロキシトルエンというような物質——BHTと申しますが、検出されております。これは化学物質によりまして環境汚染が起こったことによる、たとえばPCBのような苦い経験があるわけでございまして、これは化学物質環境中におきまして健康の上に影響を及ぼさないように変化していってくれればよろしいわけでございますが、いわゆる難分解性と申しますか、その性質をとどめたままに環境中に蓄積される、あるいは長い間残っているというようなことにつきまして、その態様を調べたいということでございます。  五十一年度につきましては、人体に対する影響の強い化学物質という立場から、暫定的に有害物質のリスト六百品目を選びました。その中から、生産量、使用形態、こういったものを念頭に置きまして、百五十品目をプライオリティーをつけて選びました。優先順位をつけて選びました。さらに、こういった一億分の一あるいは十億分の一というような大変微量な濃度での物質の検査でございますので、分析技術につきましても、各種の方法についてはその物差しを一致させないと比較ができないわけでございまするので、分析技術の手法につきましても開発と検討を行いまして、七十八品目につきまして環境調査を行ったわけでございますが、そのうち四十品目が見受けられたということでございます。  ただ、この四十品目が見出されたわけでございますが、それぞれの品目につきましていろいろといまの時点でながめてみますと、特に環境中にこういったものがあることから直ちに健康にゆゆしい影響がくる、あるいは健康にいささかでも影響がくるというような状態ではないように評価しているわけでございます。
  175. 内田善利

    ○内田善利君 まあそういうことはこれ見ればちゃんとわかるわけですが、私が聞きたかったのは、これをどのように承知してどのように対策を講じていったかということを聞きたかったんですが、四十九年に化学物質規制法が発足しましてこれが施行されたわけですけれども、まず四十九年度にはフタル酸エステルが発見されたと、またことしはPCBの代替品が、低濃度であっても発見されておるということは、PCBの代替品が存在していたということは、これはまだ生産量は少ないわけですから、生産量が少ないにもかかわらずもうすでにPCBの代替品が、同じような物質が、PCBとは化学構造式は違いますが、大体同じような物質があるんじゃないかと言って私は何回も何回も予算委員会あるいは当委員会において質問しましたが、結局今度の調査で出てきたということは、やはりPCBと同じように難分解性であるし、蓄積性があるし、低濃度でいまは心配ないとこういう答弁でございましたが、私は、生産量は低いが、またPCBと同じような構造式を持っているし、塩素化合物でありますし、こういう物質が、いまは低濃度であっても発見されたということを踏まえて、これに対して対策を講じていかなければならない。その対策を聞きたかったんですけれども、ただ報告に終わったわけですが、その点はどうなんでしょう。
  176. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) お答えが足りなかった点まことに申しわけございませんでした。  私ども、この調査を踏まえまして今後どのように対処していこうかということにつきまして申し上げますと、こういった難分解性の物質が今後どういったような態様で、環境中にどのような態度を示すかというような、長期的な汚染の観察をひとつしていく必要があろうと思います。  第二番目には、これらの物質が動植物あるいは人間というような生態系へどのような影響を及ぼすかということにつきましての影響テストの技術開発を進め、それの手法を用いた試験によってこの問題の調査をしてまいりたい、こういうぐあいに考えているわけでございまして、御承知のように、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律にのっとりまして、出てきた品物についての関係省庁の間での通報あるいは今後の規制についての取り扱いというようなことの検討もさらに進めていくことによって、PCBのような過ちをまた繰り返さないようにしたいと、かように思っているわけでございます。
  177. 内田善利

    ○内田善利君 化学物質規制法の中で、主務大臣あるいは環境庁長官の役割りがはっきり明示されているわけですが、フタル酸エステルが四十九年度で出たわけですが、これについてどのように対策を講じられたのか。特定化学物質に指定はされなかったのか。また既存の化学物質でも特定化学物質に指定できるわけですが、この点はなさらなかったのか、この点をお伺いしたいと思います。
  178. 鈴木晃

    説明員(鈴木晃君) ただいまフタル酸エステルについての御質問でございますけれども、現在のところ特定化学物質に指定しておりません。といいますのは、環境中で確かに広く検出されたわけでございますけれども、その濃度等につきましては、先ほど環境庁の方からもお答えがあったんですが、現在直ちに人体に障害を及ぼすおそれはないという判断でございます。  一方、通産省におきましては、別途分解性なり蓄積性のテストをやっておりますが、フタル酸エステルにつきましては、どちらかと言えば分解性もよくかつ魚介の中でも濃縮しにくいものでございますので、PCBのように長期間にわたって環境中に高濃度に蓄積していくことはないというふうに判断しております。
  179. 内田善利

    ○内田善利君 それでは、特定化学物質はPCB以外にはまだ指定されていないということですね。
  180. 鈴木晃

    説明員(鈴木晃君) 現在はそうでございます。
  181. 内田善利

    ○内田善利君 主務大臣が措置命令を出されたことはありますか。
  182. 鈴木晃

    説明員(鈴木晃君) 措置命令でございますか。——現在はございません。
  183. 内田善利

    ○内田善利君 PCBの代替品が今度たくさん、PCTとかPCNとか出てきたわけですが、環境庁は、新聞によりますと、「同庁では今後長期監視の必要な「要注意物質群」と位置付けている。」ということですが、そうでしょうか。
  184. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 今後長期にわたりまして、これの環境中の態様をながめていかなければならない物質だと考えております。
  185. 内田善利

    ○内田善利君 どのようにながめていかれるのかわかりませんが、難分解性、そして蓄積性のあるPCBの代替品を、低濃度であるからといって——生産量が低いわけですから低濃度であるからといって、ただ観察していくのでは、私は、どこまでそれじゃ濃度が上がってきたら本当に危険だといって指定されるのか、その辺の限界はまだわからないんじゃないかと思うんですね。またそうなったら大変ですから、やはりこういった、PCBと同じような難分解性、蓄積性のある、慢性毒性なんかもまだ調べてないわけですから、こういうものが出てきたということは、いち早く通産省あるいは厚生省と連絡の上、こういったものについては検討をして、まあ大体化学工場周辺のところを検査して出てきたので、排水口を検査したわけじゃないんですから、この環境庁調査はですね。排水口からずっと離れたところを——近くでありますけれども調査しているわけですから、できればクローズドシステムにするとかなんとかしないと、低濃度であるからいまは心配ないと言ってはおれないんじゃないかと、こう思うんですね、生産をする以上は。この点はいかがでしょう。
  186. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 先ほどもちょっと触れましたように、この物質の生物的な影響ということの研究調査というのをいたしますと同時に、現在、生物を指標としたネットワークをつくりまして、それによってどういうぐあいにモニタリングしていこうかと、そういった構想もいま考えておるわけでございまして、暫定的な構想をその黒い報告書の中にちょっと書いてあるわけでございますけれども、まあ私ども、時系列で開発することによりましてある程度将来の量の推計もできようかと思いますし、そういったことを進めながら監視を続けていきたいと、こういうぐあいに考えているわけでございます。
  187. 信澤清

    政府委員信澤清君) ただいまの段階では、部長が答弁いたしましたようにモニタリングに主体を置いております。しかし、ただいま先生からお話がございましたように、PCBの一部、まあクローズドで使わざるを得ない場合があるわけでございますが、そういうようなクローズド化のことにつきましては、今後通産省とお話ししまして、そういう方向を考えていただくということにいたしたいと思います。
  188. 内田善利

    ○内田善利君 この報告書を見まして、まだちょっと見ただけですが、いろいろあるわけですね。まあ対策を講じておられると思いますけれども。  もう一つお聞きしたいことは、洞海湾の水質ですね、それから底質の検査の中に、発がん性物質である三・四ベンツピレン、まあベンツピレンもありますがこれも最終的には発がん性物質になるわけですから、それが底質のあるいは水質の中にも検出されておるということなんですが、これは石炭華やかな洞海湾地域でございますから、そういった石炭が燃えたその後できたものと思いますが、これと符合するように北九州では肺がんが非常に多いわけですね。そういったことから、こういう発がん性物質が発見されたということについてはどのように対策を講じていかれるつもりか、これはまあ厚生省にお聞きした方がいいと思いますけれども……。
  189. 代田久米雄

    説明員代田久米雄君) 私どもは、このベンツピレンの問題につきましては、こういうものがどういう理由でこういうところに入ってきたかということについては慎重に考える必要があるだろうと思います。といいますのは、やはりベンツピレンと申しますのは、天然のタールの中にも入っておりますし、あるいはわれわれの毎日吸っておりますたばこにも入っておりますし、大気中にもすでに存在しているというようなものでもございますものですから、そういう意味で、こういうものがどういう経路で入ってきたかということについては、よく研究をいたしまして必要な対策を立てる必要があるだろうというふうに考えております。
  190. 内田善利

    ○内田善利君 まあちょっとこの問題から外れますが、確かに発がん性物質が最近非常にあっちこっちから発見されておるようですけれども、三・四ベンツピレンというのは非常にひどい発がん性物質なわけですが、これ大気保全局長かもしれませんが、自動車のオクタン価を上げるために四エチル鉛を使っていたわけですが、その四エチル鉛を使用禁止いたしましたね。で、その後何を使っているかという問題で環境庁にお聞きしましたら、多環系の芳香族炭化水素を使っているということですが、そういう芳香族の炭化水素をガソリンの中へ入れて使っているということになれば、排気ガスの中からたくさん出てくるわけですね。そうしますとやはりこの発がん性物質が出ておるということになるわけですが、この辺の研究とかそういった面はなさっているわけですか。
  191. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの御指摘のございました件は、今後も発がん性物質が問題になるという意識を持っておりますが、発がん性物質というのは非常に広範にわたっておりまして、その対応の仕方をいかにするかということはきわめて世界的に問題になっているわけであります。そういう点で、インターナショナル・キャンサー・リサーチ・エージェンシーというのがWHOの機関でございまして、この国際がん研究センターの化学物質の評価資料を全部集めております。それから、大気中に現存している発がん物質、ベンツピレンの賦存量というのを測ったデータはわれわれはございます。  それから、もう一つは、燃料が変わったときに出てくるガスがどう違うのかということは、毎年調査費を取りまして調べておるわけでございますが、一点明るいことで申し上げますと、排気ガス規制で触媒をつける車がふえてきましたが、あの触媒をつける車ですと発がん物質は九八・九%はなくなってしまうということは事実でございまして、そういう点で現在の方向は、注意はして、これからどう対応するかは落ち着いて判断する必要がありますけれども、これは環境基準を決めるとかそういう議論ではございませんで、もうできるだけ抑えるということで対応していく。また、もしも排出形態が、たとえば塩ビモノマーというような形で放出されるという議論のあるときにはこれを抑える基準を設けるということで、これはもう現在調査を私ども終わりまして、あとアメリカの規制基準の問題もちょっとございますので、その調査をしておりますが、そういうものと合わせまして規制措置はとる、そのような形で進んでおります。
  192. 内田善利

    ○内田善利君 今度のこの調査にまた返りますが、この調査で特定化学物質に指定するような物質があるのかどうか。  それから、この存在しているこういった難分解性、蓄積性の化学物質の中に、発がん性の物質は三・四ベンツピレンのほかにあるのかないのかお伺いしたいと思います。
  193. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 発がん性の物質につきましては、三・四ベンツピレンというもののほかには特に見当たらないように思います。今年発表いたしましたところの中からはないわけでございます。  特定物質に指定しようと思うものはございません。今後は出てくるかもしれません。
  194. 内田善利

    ○内田善利君 最後に、通産省にお聞きしますが、PCBの洋上処理の問題ですが、六千トンを専用船で焼却するという問題ですが、この計画はどのようになっているのかお聞きしたいと思います。
  195. 滝沢宏夫

    説明員(滝沢宏夫君) 御説明申し上げます。  先生御案内のとおり、液状PCBにつきましては、四十七年に特に熱媒体に使われておりますPCBにつきまして回収を命じたわけでございます。その後通産省としまして、PCB汚染対策推進会議の決定に基づきまして、工業技術院でその処理方法についていろいろ検討したわけでございますが、一応一定の条件で燃焼すれば十分燃焼できるということが確認されまして、この結果をもとにいたしまして、関係企業にそういった処理施設を設けまして燃焼処理するように指示したわけでございますが、諸般の情勢によりまして、そういった処理ができないで今日まで至っておるわけでございます。  一方、その後、水島の油の流出事故といったような地区もございまして、できるだけ早くこういった問題を解決をしてほしいという地元の強い要望もございまして、通産省といたしまして何か効果的な処理の方法はないかということでいろいろ文献調査等もいたしておったわけでございますが、たまたまPCBに非常に似た有機塩素化合物の廃棄物の処理につきまして、専用船で洋上焼却をしているという例がヨーロッパ及びアメリカでございました。したがいまして、これが処理の仕方の一つというふうなものに考えられるということで、昨年の秋以来担当者を現地に派遣する等、勉強してまいりまして、相当程度見込みがあるのではないかという判断をいたしたわけでございます。したがいまして、そういったものをベースにいたしまして、関係の地元市町村、県あるいは企業に一つの技術として紹介いたしたわけでございます。その後、地元あるいは関係の企業で鋭意検討をいたしまして、ほぼこういった方向で今後研究していってはどうかということが固まりました。したがいまして、それを受けまして、通産省といたしましても中央の環境庁あるいは厚生省等々ともいろいろ御相談いたしまして、非常に問題が重要でございますので、いろいろ専門家の意見を聞きながら、こういった海上燃焼、洋上燃焼といったものが適正かどうかということを専門家によりまして判断していただくということを考えまして、予算化をいたしまして、たまたま一昨日そういった委員会が発足いたしております。したがいまして、今回の委員会によりまして、これは当然船の現地調査あるいはそういった専門の先生方の海外への派遣といった問題も含めまして、海上焼却が一つの処理として可能であるということができますれば、そういった方向に踏み出していきたいというふうな段階でございます。
  196. 内田善利

    ○内田善利君 予算が幾らぐらいか、そしてめどはいつまでにこれを焼却する計画なのか。  それから、洋上でやるとすればまさか瀬戸内海ではやれないと思いますが、どの辺を検討されておるのか。  それから、PCBについてはまだオランダ船はやってないそうですが、これの試験的な焼却はいつやるのか、その辺はどのようになっておりますか。
  197. 滝沢宏夫

    説明員(滝沢宏夫君) まず予算でございますが、これはモニタリングを中心といたします予算でございまして、船そのものの用船等は当然のことながら企業がみずから負担すべきものというふうに考えておりまして、中央の専門家なり、私ども関係省庁の者がモニタリングに立ち会いますとか、あるいはまた先ほど申し上げました専門家の海外派遣といったものの予算を中心といたしまして、約七百五十万円でございます。  それから、水域につきましては、これはまだ全く白紙の状態でございますが、水産問題といった大きな問題との絡みもございますので、その辺は水産庁等とも十分連絡をとりながら問題のない水域を選んでいきたいというふうに考えております。  それから、試験燃焼は、現段階では十一月の初めからアメリカ等の現地調査を終えて、ほぼ間違いないという結論が出ました段階で、来年の二月から三月にかけてやっていくようなことになろうかというふうに現段階では考えております。
  198. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 それでは、初めに石原長官にお聞きをしたいと思います。  長官は過日、二十三日のフジテレビでの対談の発言以後、予算委員会、また昨日は衆議院の公環特、またきょうも朝から次々といろいろと質疑の中で、弁明をされたりあるいは訂正をされたりしておられるわけでございますし、公害対策基本法を守りますということをお答えになっていただいたわけでございます。しかし、私は、あえて長官にお伺いをしておきたいと思いますことは、単に言葉だけではなくて、国民が、今日環境行政の後退というのが次々起こっていっているという認識のもとにさらに長官発言があったという点で、非常に問題がきわめて大きい、重大だというふうに思いますので、そういう点で見解をただしておきたいと思うわけでございます。  私も実は驚いたわけですが、経済との調和ということが日本ではタブーだと、あるいは魔女狩り的だとかあるいは私にとっては非常に不思議な現象としか思えないという言葉を聞いて、私は、まさにあきれて物が言えないというのはこういうことだと思うんですが、あきれたわけでございます。といいますのは、公害基本法の第一条には、これはもう先ほどからもいろいろと質疑応答がされておりますように、「国民の健康で文化的な生活を確保するうえにおいて公害の防止がきわめて重要」、と、しかも、「事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、」、さらに「国民の健康を保護」し、「生活環境を保全することを目的とする。」ということで、基本法の目的が明確にうたわれているし、四条では国の責務というのがうたわれている。私ども、そういった点では長官というのはその公害対策基本法の目的、そして国の責務を遂行していく最高責任者、この大臣がこの公害対策基本法の目的に、国民から見ればまあ敵意を燃やすというのですかね、真っ向から対立をするような発言をされるというふうなことについては、これは私、環境庁長官としては不適格だとしか言いようがないと思うんです。といいますのは——私はそう思うんです。といいますのは、公害基本法改正をされてから環境庁できているんですよね。だから、大臣自身自分の所管省庁を否定するような発言というようなことを、これはどないいろいろ言われてもいただけないわけです。その点は、いろいろ弁明をされておるのを新聞紙上でも拝見をし、きょうも各委員の質疑に対するお答えは承りましたけれども、非常に理解しにくい。そういう点で、基本的な立場をひとつ明確にしていただきたいと思うんです。
  199. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 先ほど来申してまいりましたが、私は現在の公害基本法を尊重、遵守するという姿勢はいささかも変わりはございません。ですが、これはもうすでに御案内と思いますけれども、いわゆる生活環境——公害に関しましても健康の項目と生活環境の項目がございますが、その生活環境の項目の中に調和という言葉があったわけでございます。私は、いずれにしましても、先ほどもお答えしましたように、人間の健康、生命というものはいかなるものにも優先されるべきだと思っておりますが、しかし、その生活環境の項目の中に、先ほども政府委員が一、二例を引いて申しましたが、あるいはまた、きのうの衆議院の公環特でも私も例を申しましたけれども、たとえばある種の埋め立てでありますとか、スーパー林道でありますとか、つまり、自然環境というものをそのまま保つかそれともそこに林道を通すということで林業の経済性というものを開発するか、あるいは、たとえばある埋め立てのように、そこがもう要するにたれ流しヘドロで埋まってしまって、そのヘドロを回収し埋め立てることで漁民が再びその海を生きた海として使うことができるから埋め立てをしてほしい。しかし、周囲に住んでいらっしゃる一般の市民の方々は、もうその海岸をいじってもらいたくないし、その工事の間もいろいろ交通などが繁雑になったり、ほこりも立ったりするから、それだけでも煩わしいからやめてほしい。いろいろ意見の対立があるわけでございます。その種の問題について、私たちはやはりその経済との調和ということの中にはいろいろな意味が含まれていると思いますけれども、その種の要するに環境問題に関しての社会的経済的側面というものを十分そんたくしてどちらをとるかということを考える。もちろん環境庁はそれは生活環境というものが一番理想的に維持されることを望みますけれども、しかし、たとえばある埋め立てのような場合には、もうすでに生活環境そのものが非常に周囲の都市化で悪化してしまっている、むしろこれをいい形に転ずることでの開発というものも生活環境の上からあるわけでございます。同時にそれに経済性が加わる。しかしこれは主観の問題で、もういまのままの海でいいんだという市民もいらっしゃる。そういうことの取捨選択を、つまり私たちは、今日の社会情勢下、経済情勢下、もっともっといままで以上に詰めてしなくていけない、そういう問題を幾種類か抱えているわけでございまして、そういう問題に直面しているときに、あの年にあれを取ってしまったために、とにかくもう生活環境を絶対変えちゃいかぬのだと、すべてもう開発はいかぬのだというふうな意見が出てきがちだと、そういう意味で私は、あの調和条項というものを削除したことに一つのまあ私なりの疑念というものを申し上げたわけでございます。  しかし、お断りしておきますけれども、再三申してきたことですが、人間の健康、生命にかかわる、つまり、要するに公害問題などでは、これはもうどちらが優先するかということは論外だということは、この問題が起こる前から繰り返して申してきているところです。
  200. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 私は、御見解は聞きましたけれども、長官発言というのが環境庁の存立自身を否定するような発言になるほど重大な発言なんだということをまず自覚してもらいたいと思って申し上げたんですよ。あれこれ開発の問題についてお聞きをしているわけではないわけです。特に、私にとっては不思議に思えてならない、などという発言ね。  で、先ほどのどなたかの先生の質疑の中でも言われておりましたけれども、四十二年に公害対策基本法が制定をされてそして四十五年に改正をされるまでの間、非常にたくさんひどい被害が出て、パニック状態になったりあるいは人殺しだと言われてもやむを得ぬような状況になったというふうなことで、情感的なと言ったですかね、ムードや情感で改正をされたかのごとく発言をされておりましたけれども、私、改めて聞きたいと思うんですが、四十五年に公害対策基本法ですね、これが改正をされ、経済との調和条項が削除をされたといういきさつをご存じでしょうか。私ども共産党は、昭和四十二年の初めからこれは経済との調和論、こんなものを入れちゃ大変だということは、これはわが党だけは主張してきた。しかし、その後の変化で、本当に国民が命と健康を守るために必死になって運動し、闘い、そういうことが国民的なコンセンサスになって四十五年には改正をされたと、まさにこれはその限りでは国民的な合意の所産と言っても過言ではない、そういう点ででき上がったというこの過去の経緯があるわけですね。まあこれはムードだとか情感で法律が改正をされたなどという御認識を持っていただいておってはこれは事だというふうに思うのでございます。しかも、今日情勢が変わった変わったと盛んにおっしゃいますよ。しかし、現実はどうです。健康被害——公害患者被害者ですね、これは補償法で認定をされている各種の患者さんだって五万五千を超えているわけでしょう。毎年二万以上の人たちが認定患者としてはふえている。死亡者だって二千名を超すという状態になっているわけですよ。認定をされているという人だからこれはまさに公害被害者の氷山の一角だと私は思います。先ほどもお話がありましたけれども、水俣病に至っては認定されている方が九百十人でしょう、ことしの三月で。それで四千人以上の方が救済を待ちわびているわけでしょう。こういうときに、長官発言というのは本当に被害者や国民が切実に求めていることと全くうらはらで、一昨年来国会内外を通じていわゆる公害巻き返しと言われているようなもろもろの諸論議、これに全く符合するような発言だという点ではこれはもう本当にがまんがならないですよ、国民の立場で見ても。だから、この際その点をしっかりとやっぱり踏まえていただきたい。言葉では公害対策基本法は守りますとおっしゃられるわけですが、守るという立場のお答えは、これは行政の方針にも生かされて実証されるというふうなことが何よりもいまのいろいろと弁明をされていることの立証になろうかと思いますので、その点を含めてお伺いをしたい。
  201. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) お断りしておきますけれども、いま挙げられました水俣病の患者にしろあるいは公害健康被害患者の問題にしましても、これは要するに公害の健康項目に属する問題でございまして、これは、私はもう再三申し上げておりますように、大体公害基本法そのものにも調和というものは含まれておりません。私が申し上げておりますのは生活項目の、要するに環境に関する調和条項についての疑義を申し上げましたので、ですから私が申し上げているのは、公害認定患者云々の問題はこれはもう論外でございまして、私はそれについて経済との調和云々を申しているわけじゃないんです。私が申し上げておりますのは、公害の中の生活項目について、たとえば林道でありますとか先ほど申しました埋め立てでありますとか、そういう問題について、経済的なあるいは社会的な側面というものを一切無視して、つまり環境だけを維持するということでは、これは要するに環境庁はその立場をとるにしても、一つ林道を通すにしてもいろいろな省庁が絡んでくるわけで、それぞれの省庁がそれぞれの立場で主張をする、そこで私たちは私たちの主張をしながらやはりどこかで折れ合って、この林道を通す、あるいはこの林道は通さない、この埋め立てはする、これはしないという形の結論を出さざるを得ないわけです。でございますから、私は認定患者あるいは水俣患者さんについて経済を云々するなんということは毛頭考えておるわけじゃございません。あくまでも生活項目についてそういう疑義を持ったということだけをひとつ御認識いただきたいと思います。
  202. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 これで余り時間をとりたくないんですがね。長官ね、生活環境とおっしゃるんですがね、私は念のために申し上げておきたいのは、スーパー林道のことだけが生活環境ではなくて、私ども国民生活をしている大気に含まれている汚染物質等も生活環境にかかわる重大な問題なんですよ。だからこそそのことが大事だということで申し上げているのです。  で、前回の九月十四日の本院の公環特でも、私はその生活環境にかかわる窒素酸化物の、特に二酸化窒素と住民の有症率との関係の問題について御質問を申し上げましたよね。私はあのときに、まあ私がたまたま一つのやり方、手法でもってしても環境庁がおっしゃっておられる見解との違いが出ると、だからこれはぜひ検討してもらいたいということをお尋ねをいたしましたよね。あのときに長官は、そういうふうに異論がある以上は、環境庁としても解析をし直してみたいというふうな御答弁があったんですが、その後どのように対応しておられるのか、まずそれをお伺いしておきたいと憩うんです。
  203. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 私ども、部内では必ずしも専門家だけおりませんので、専門の先生方に御検討をお願いすることといたしておりまして、まだお答えをちょうだいしておりません。
  204. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 長官、いいんですか。何もしていないんですよ。
  205. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) その一つのデータについて両者の食い違いというものをどう見るかということをさらに専門家に依頼をしているわけで、まだその回答がないという意味で部長は申し上げたわけでございます。ですから、決して何もしていないんではなしに、つまりいまだその回答を得ていないということで、それは何らかの時点でその回答があると思いますし、またその時点で、一つのデータの解析の仕方にどうして両者に誤謬が出たかという問題について、討論なりお話し合いをさしていただきたいと思います。
  206. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 私は、あのときにも冒頭に申し上げておいたように、私もそれの専門家でもないし、統計学の専門家でもないのでわからないけれども、しかし、私どもがやった段階、やった一つの手法でもそういう問題があるんだから、これは検討してもらいたいということを申し上げておるんです。私は特に人体に及ぼす影響が非常に窒素酸化物が重大だというふうに思っておりますし、特に、先ほども御質問がありましたけれども、健康被害補償法には、発足当時、初めは硫黄酸化物でいくけれども、窒素酸化物については測定が明確になっていないので二年程度待ってほしいと、何とかその間に測定値もはっきりさせて、そして窒素酸化物も当然その対象物質にするんだというのは、あの法律が発足するときのお話であったわけですよ。しかし、あの法案審議の際にも私ども強くそのことを要請しておりましたし、その後四年近くなるわけなので——まあ実際には三年ですね、実施されましてからまる三年を越したところですね。で、ちょっと遅過ぎるし……いや、そうじゃなくて、複合大気汚染健康影響調査ということで、環境庁がやった知見ではそんなに有意な関係が出てこないと、だからそう急ぐことはないんだ、あるいは健康被害補償法の対象物質には入れないんだと、こういうふうにおっしゃっておられたので、これは大変だというふうに私どもは思ってたまたま一石を投じた、実際は。で、私は、心配をしておりますことがいろいろな形になってあらわれてくるのを、これは私どもよりも環境庁の方がずっと人手も多いんだし、勉強家もたくさんそろっておられるんだし、研究家も専門家も抱えていらっしゃるんだから、私どもの一人や二人が申し上げたことというようなことがそんな大きな問題だと思ってないんですよ、そういうことを指摘するということを指摘をされたら、それをやっぱり受け入れて多くの調査資料だとかあるいは研究資料だとか、そういったものを総括して総合的に積み上げていくというふうなやはり科学的な態度というものを望みたいわけですよ。そういう意味で申し上げておるわけですよ。その点はお間違いのないようにしていただきたいんです。決して私統計的な専門家でも何でもありません。前にも申し上げたし今回もそのことをはっきりお断りをしておきますけれども、しかし、そういう素人が見てでもこうしたらこういうものが出てくるじゃないかということが見つかれば、これは大変だと思うのはあたりまえなんですよ。そういう立場でやはりお取り組みをいただきませんと、論議国民のきわめて重大な健康にかかわる問題でございますから、やはり総力を上げて改善をさせていく。またせっかくある法律は実現をさせていくということが何よりも大事だからそのことを申し上げているわけです。  そういう点でさらに私はショッキングだなと思いましたのは、きょうは大気保全局長おいでだから多分御承知だと思いますけれども、これは千葉県の調査資料で、千葉大学の医学部公衆衛生学教室の五十一年度報告の呼吸器疾患基礎調査御存じですね、これを拝見いたしますと、大気汚染と肺がん死亡率との関係という恐るべき提起があるわけですね、これについては御承知でしょうね。
  207. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま御指摘になりましたのは、むしろわれわれNOとの関係で見ておりましたが、肺がんのデータにつきましては、大阪でもそういう議論ございますし各地でいろいろ肺がんにつきましての疫学データが議論されていることは承知をしております。
  208. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 委員長、これ一遍ちょっと資料を見てもらった方が論議しやすいと思いますので。(資料配付)  で、ごらんになっておられるそれの十五、十六です。で、私はこの点につきましてその大事だと思うところだけちょっと抜き出してみたんですけれども、これによりますと、千葉市における中央保健所管区というのは千葉の中心街ですね。そこでは女子の肺がんの死亡率というのが統計的に有意だと。それから男子もこれは中央保健所管区内では統計的に有意だというふうに——これは十五ページですね。黒いチョボが打ってあるのがその有意のところなんですね。千葉市の中央、大体真ん中で、これは指定地域ですね。それから、その次の十六ページを見てみますと、これは女の方では千葉市の市街地区で統計的に有意。それから千葉市の指定地域では有意ではないが高い。それから男子は、千葉の指定地域、市街地ともに統計的に両方とも有意だというふうなことが述べられているわけです。  で、私はそのことについて直ちにそれを結びつけようというのではないんです。すでにいろいろ御苦労いただいておりますから十分大気保全局長は御承知いただいていると思いますけれども、非常に大事だなと思うのは、男女とも千葉市街地区で統計的に有意に高く、特に女子でも市街地区で有意で高値であったというふうなことというのは、これは一つの注目するべき点ではないかというふうに思うのです。というのは、それですぐにそれじゃ肺がんと結びつくかというとそういうものではないと思いますけれども、窒素酸化物——NO2ですね、NO2〇・五PPmを六ヵ月間の暴露で動物実験やったときには、いわゆる単なる刺激性ガスによる所見というかそういうものではなくて、いわゆる反応性の増殖、一口で言うたら増殖性の腺腫瘍の増殖、とにかく細胞に増殖ができるということが言われましたけれども、これは人間のがんが発生するときに必ず通る道筋だという点を明らかにされているわけですね。ですから、そういう点で非常にこれは重大だというふうに思うのです。  しかも、それじゃ、NCの〇・五PPmというのはそれは異常に高いからというふうなことをおっしゃるかもしれませんけれども、この資料によりますとそうではなくて、千葉市では、いわゆるNOの高濃度汚染地域ですね、これ年平均と時間最高値というのを出して見ておられるのですね。で、千葉市では、年平均値ではNO2は〇・〇二二から〇・〇四一PPmですが、時間最高値というのが〇・二四ないし〇・三五PPmというのが出てくる。そうしますと、動物実験の〇・五PPmと幾らも変わらない数値になっている。そうすると、動物実験で指摘をされている危険性と符合するような状況というのはあり得るんではないか。その点できわめて重要だ。  で、このめんどくさいことを言うているのは、これは長官に聞こう思うて言うているんじゃないですよ。そういうデータが、これは千葉県自身が千葉の医科大学に委託をされた調査研究基礎資料なんですね。そういうことが提起をされている。これは窒素酸化物が問題になっているときに、この一番新しいデータですからね、こういうことが提起をされているということはこれは大変な問題だというふうに思いますので、こういったものもひとつ御検討をいただいて、これはがんとの関係という点ではぜひこういった資料ももとにされて調査をする必要があるのではないか。従来からおやりになっておられるでしょうけれども、さらにそういったものをもとにして少なくとも調査をやられる必要があるんではないかと、具体的に具体化される必要があるんではないかというふうに思いますので、まずそれについてお聞きをしたいんです。
  209. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 大変問題を指摘しているデータをお示しいただいたわけでございます。私ども努めてこういうものを収集しながら検討していこうと、こういう姿勢をとっておるわけでございますが、何せ人手が足りないとか不勉強な点がございまして、ひとつこういったことを機会に、こういった肺がん問題と、またそれから大気汚染の問題と肺がん問題の因果づけというのは大変むずかしい手法の問題があろうと思います。その辺は先生もよく御存じだと思いますが、一つの問題提起ということで取り上げさしていただいて、検討さしていただきたいと、かように思います。
  210. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 それからちょっとお聞きをしておきたいんですが、先ほども冒頭に、前回の質問の後どうなさっていますかと、どういうふうに対処されましたかいうてお聞きしたら、まあそれは研究者に御相談をしているというふうに言っておられたんですけれども、私はやっぱりせっかく五年間もかけて調査をされたこの解析、複合大気汚染健康影響調査、せっかくこれは膨大な労力をかけておやりになったものなんですね。これはやっぱりあらゆる形で、私も前回も指摘をいたしました全年度解析をいろいろな形でおやりになってみるということは必要ではないか。せっかくある材料死にますよ、そうでないと。たまたまあのときには一つの手法を申し上げましたけれども、先ほども大気保全局長環境基準のことでお話しになっておられた、四十五年というのが不安定さがあるというんなら、それを除いて、四十七年、四十八年、四十九年というのを全年度解析をやってみたらどうだと、私がこの前指摘しましたような四十五年も含めての全年度解析してみたらどうだと、これはデータをどのように有効に活用するかという使い方ではもっと知恵を働かしてほしいと思うんですよ。これは私どもも全く素人ですけれども、学者、研究者の皆さんの中でもいろいろと御意見があるところでございますから、そんなことは百も御承知だと思いますから、ぜひその点はお取り上げをいただきたい。  特に、前回申し上げました岡山県のデータなどについては、これは部長は知らないとおっしゃったですね。こんなことは私申し上げたくないですけれども、各府県が公害で大変悩んでおるからこそいろいろと大学にも依頼をしながら調査をし、あるいはこれを資料としてつくり上げ、大学の学者、専門家の皆さん方の英知を集めておられる資料を、やっぱりその関係する資料というのは、知らないというようなことをぬけぬけ言うんではなくて、ぜひ御検討してくださるというふうな態度というのはなければならないと思うんですよ。そういう点では、この前申し上げました岡山県のデータや先ほど申し上げた千葉県の——これは先ほど申し上げたのは五十一年度のデータですが、千葉県では五十年度の呼吸器疾患基礎調査というのも出ておりますが、これも非常に重大なことがいろいろと指摘されているようでございます。そういう点をぜひ検討の資料として、これは環境庁としてもあるいは専門委員会の方へも多くの資料が出されていると思いますが、私ども指摘をしたような資料はぜひ御採用いただくようにしていただきたいと思うのです。  これは、細かいことを申し上げていけばきりはないんですけれども、中身はいろいろ重要なことが書かれています。特にNO2については、これは確かにSO2等と比べますと、どのデータを見ましても、これはいわゆる被害者との関係、有症率の関係、置きかわってきているということは事実ですよ。いろいろむずかしいむずかしいと言われますけれども、それぞれの資料によりますと、これは具体的にもうあれは線引きだってできるほどのいろいろな調査資料も出てきているわけですよ、調査だとか研究資料というのは。そんなのを十分活用されて、やはり少なくとも健康被害補償法の対象物質には早く入れるというふうな点で線引きをやるというふうなことのふん切りというのはおつけをいただかなきゃならないのじゃないかというふうに思うことが一つです。これ、その二つについてお伺いをしたいと思います。
  211. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 最初からいろいろお話しになった中に、私の局の関係のこと、それから私が保健部長時代に申したことと関係のあることがございましたので——現在の時点の問題は保健部長からお答えしますが、それにつきまして申し上げたいと思います。  まず初めに、NO2を二年か三年のうちにと確かに申しました。あの時点におきまして、NOはもっと本当は有害であろうというぐあいの期待を持っておりました。ですから、先入観的にNO2は大したことはないという考えは全然持っておりませんでした。その理由は、先生の御指摘のあった動物実験のデータを環境庁は一番重視をしたわけでございます。そういうことで、私は例の六都市五年のデータで最も態度を決するポイントはどこかという議論としては、ばいじんやSOxが下がったときにNO2があの程度にちょっと高まってキープした場合に、果たして有症率上がるか下がるかということが、実はあの調査で非常に関心を持っておりました。そういうことで、この二月に発表いたしましたのをごらんになりますとおわかりのように、下がっております。あれがもしも同じかむしろ上がる傾向を持ちましたならば非常な議論になったと思います。ですから、それが科学的に新しいデータが出てきてそのようなものがあれば、やはりそれに基づいてできるだけより確かな判断の方向を持つと。  それから、もう一つは、沿道調査のデザインにしましても、従来のS02やばいじんの汚染の歴史のないところとして選んで、当面のデータは余り使いものになりませんが、四十三号線の横のデータは確かにそれにはまります。で、あれは大体年平均〇・〇二にはまりまして、一日平均値が〇・一何がしが出る場所でございます。そこのところでどれぐらい有症率が出てくるかと思っていましたが、あれでは、まあちょっと悪いがとうてい補償の議論をするに足るだけの確かさと悪さというのはない。確かに悪いことは悪い、だから、対策は打つが、ということでございまして、そこが保健部の補償と私どもの防止をする立場との違いでございます。そういう立場になっておりますので、あのとき言っているのに何をしておるのかという御議論につきましては、現在の時点につきましては保健部長がお答えいたしますが、移行の時点で最も関心を持って立てた仮説がそのような形になっておったということであります。  それから、次の問題といたしまして、千葉の本は私も拝見しております。その問題は、むしろ私どもはNO2の問題で非常にこれは注目をいたしておったわけであります。で、一時間値との関係がよく出ているデータもございます。ただ、よくよく微細にそのデータを調べていきますと、汚染データの取り方のところにかなりの問題があったという点が実はございまして、一つの手がかりとしては私どもも尊重しております。手がかりとしては尊重しておりますけれども、あのデータを基礎にして、ここに先生も御紹介になっておられますが、その汚染のレベルと有症率のレベルの定量的な解析に余りに大きな信頼を置いて入っていくということには少しわれわれはためらいがあるということでございまして、あれも一つの手がかりではあるが、そこまではまだ断定的にはいけない。ただ、確かさを少し加えてくるのに役に立ったというように考えておるわけでございます。  がんの方の問題につきましては、いま保健部長から話がございましたが、これはやはり統計の問題としまして、人口集団の患者の数も少のうございますし、また病院が集中しておりますところで起こった問題とか、住居地の補正とかあるいは職業歴の補正とか、いろんなものがやはり入らざるを得ない。そういう点で、これは非常に大事な資料で、点検をこれからずっと落ちついてしていくということであると思いますが、ただ、すぐこれはもうがんで大変だというところにはいかない。それと動物実験とを結びつけられましたが、動物実験の方は、四十七年の上皮の増殖ということにつきましては、病理学者の間では、これはがんの問題であるかそれとも単なる反応の問題であるかはどちらとも何とも言えないという形でございまして、いままでNO2そのものが動物実験でがんに結びついたというデータはございません。ただ、非常に疑いを持たれておりますのは、ニトロソアミンに変わってきてそして発がん性があるのではないかという議論がございますので、ニトロソアミンの資料を集めてきております。そういう観点から見てきますと、ニトロソアミンというのは外に出てきますとすぐがたっとこう減ってくるというデータが国際がんセンターのデータで出てきております。そういう点から見まして、研究の課題としては、保健部長の申しましたようにこれは注意して対応していくということでやってまいりますが、いまNO2の問題をがんの危険性に結びつけて対応していくということはこれは適切な方向ではないと、やはりがんの研究の、がん統計の中でNO2の汚染との関係を次第に整理していくことは必要だと思います。  ただ、濃度の議論になりますとたばこの濃度というのははるかに高うございます。数百PPmの瞬間濃度があるわけでございますし、あるいは瞬間湯わかし器にしましても、あるいは開放性の、換気のしないストーブという場合の一時間値あるいは瞬間の高さを議論しますと、その方がはるかに問題がありますから、そこらのファクターをどう分けるのかということが非常に問題になりまして、それがSOとは全然違う問題であります。そこのところが、保健部長が先ほどもちょっと申しましたが、調査検討の仕方をどういうぐあいにするかというところにかかっているところでございます。先生の御指摘の点は私どもも十分頭に置いて注意深く入っていくということは私どもも最善の努力をいたしますが、すぐがんの問題に結びつけていくということには無理があるというぐあいに考えておるわけでございます。
  212. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 先ほどいろいろ御意見の中で、私ちょっと異論もあるんですが、時間の関係がありますから……。  先ほどNO2の環境基準の見直しの問題で御質疑がありましたが、その際に言われておりました、率直な御意見ということで大気保全局長がおっしゃっておられましたが、その点について、これは確かに私どもも疫学調査ではいろいろ異論もあるし頼りない点もあるだろう。しかし、動物実験では、おっしゃったように確かな根拠、頼りになる根拠だと思うわけですね。そういう点が非常に重要だったと思うんですが、そういう中で、根拠として使って固めていける資料というふうなものですね、そういう点についてこれは大事だというふうに考えておるわけです。前回のときにも、これは大気保全局長おいででございませんでしたけれども、その点が大切だと思って実は問題を出したわけです。  で、そういう点で考えていきますと、このせっかくの環境庁調査資料ですね、複合大気汚染の。環境庁も言っておられる四十九年のデータ、それから私先ほど申し上げましたけれども、四十五年度を除いて四十七、八、九という三年間の全年度解析の調査だとか、あるいは前回申し上げたすべての年度——四年間ですね、四十五年も含めた全年度解析というふうなものをずっと見ていきますと、あの当時には疫学調査は不十分であったかあるいは異論のあるものでしかなかったかもわからないけれども、その後の五年間の調査では、むしろあのときに勇断をふるったと言われた環境基準値ですね、〇・〇二PPmというのがまさにその後の調査では実証されているというふうに見られますので、これはもう細かく申し上げませんけれども、その点をぜひ十分御検討をいただきたい。  それから、もう一つは先ほど申し上げた千葉の五十年度調査ですね。この五十年度調査では、自然有症率を三%に抑え込むためにはどうしたらいいかというふうなことの検討がなされておりますが、これはまあ非常に大事なことだと思うんですが、しかもその場合に、従来安全率を掛けたりしておりましたよね。しかし、この有症率を三%に抑えるために、千葉では安全率どころではなくてストレートで〇・〇二PPmというのが実証されるというふうなことが述べられておりますが、そういうふうな点だとか、あるいは一つ一つの汚染物質ではなくて、複合大気汚染を同時レベルで見ることの重要性、そういった点の指摘、こういうもの等が出ておるわけです。  私どもも非常に限られた能力で、限られた範囲でしかつかんでおりませんが、そういった調査研究というふうなこれらの資料ですね、こういうものを窒素酸化物環境基準専門委員会ですか、そういうところにどんどん結集して検討してもらうという必要があるのではないかというふうに思うんですよ。その点についてはどうですか。
  213. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘ございましたように、もうできるだけ多くの調査を見るという方針につきましては先生の御指摘のとおりでございます。  それからもう一つは、専門委員のメンバーをごらんになっていただきますと、どこにも偏っていないということでございまして、それらの方々がみんなこの資料を出してくるわけでございます。岡山の資料は、私、これは持っております。全部拝見しております。これはこれでやはり専門委員会の人にもこれはみんな渡しています。ただ、どういうぐあいにそのデータを価値あるものとして取捨選択するかは、全く専門委員会に任しております。私どもは、行政をやる者の立場からは、やはりそのときそのときの判断が要るということで、こういうものは一応の目安にして参考にさしていただいております。けれども、専門委員会としては、これがどれを採用できるか採用できないかということは先生方が御議論になってやられるということでございまして、もうできるだけ広いデータを集めて見ていただきたいということにつきましては、先生の御指摘の原則と全く私ども同じ気持ちでやっておるということを専門委員会の先生方もしていただいておるということを申し上げておきます。
  214. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 時間の関係がありますので一つ具体的にお聞きをしたいんですけれども、最近、これはいつでしたか、先月の二十一日でしたか、新聞等で報道されておりましたが、現在の指定地域の段階的解除というんですか、見直しという問題が報道されました。その点では五十一年度の白書によりますと、確かに全国の測定局の八〇%が、いわゆる一日平均値の九八%値が〇・〇四PPmという環境基準値を達成している。だから、こういうふうにSO2は著しく改善が見られて、もう新たな健康被害者の発生はなくなったはずだというふうに、確かに白書には述べられておるわけです。  で、こういう点で、私はこの点が非常に重要だと思いますのでお伺いをしていきたいと思うんですが、現時点で新しい被害者の発生が起こらないというふうなお考えがあるようですけれども、本当にそうなんだろうかと、その点にも不安を感じているわけです。たまたまそれについては、これは千葉のデータでは単に平均値だけが問題ではなくて、時間最高値というんですか、ある時点の高濃度汚染というふうなものが何回も繰り返し暴露されるということによって、人間の健康というのはずいぶん被害を受けるという点もこれは出ております。これはお読みいただいておるんでしょうから十分おわかりだと思いますが。そういう点で一つは問題があるというふうに思います。  で、私は一番大きく問題にしたいと思いますのは、この環境庁資料の複合大気汚染の解析で見ましても、六十歳の男子ではこれはSO2との間に非常に強い相関が認められるという数値が出てきているわけです。そういう点から見ましても、千葉県の研究結果で言われておりますような時間最高値の変化と有症率との関係などの調査、こういうものから見ていきますと、現時点でSO2の健康被害に及ぼす状態というのは無視できないんじゃないかというふうに思うんです。その点どうですか。
  215. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 白書に、いま私、正確な文面を覚えておりませんが、発生がなくなったという表現はしていないはずだと思います。積極的に増加をさすような程度に悪いとは思わないと、このような形でございまして、病気そのものが非特異的な疾患でございますから、全部きれいになっても患者はふえてきます。ですから、そこのところの問題を解析をしていかなければならないというところでございます。その一つの手がかりに六都市五年のデータを見ると、あれだけのレンジのところで見るとダウンに向かっているということでございますね。そういうことを中心にして考えたわけでございまして、それではいまの状態は全部いいのかとおっしゃいますと、私は別にいいとは思っておりません。望ましいとも思っておりません。まだ改善を要すると思っております。しかし、全体としてながめてみると、そういう状態が言えるのではないかということを申しておるわけでございます。  また、指定地域にしたときの資料等も、私の担当しましたときは大体四十六年ごろまでのデータがほとんどすべてであります。それから以降のものはちょっとはまってまいりません。で、十年ぐらいさかのぼってその辺のデータを探しておるわけでございまして、現在では非常に下がってきておる。  ただ、御指摘がございませんでしたが、ばいじんの問題は重視すべきだというように、私どもはもうすべての話をNOxに結びつけて議論するのは非常におかしいというぐあいに考えて、ばいじんの規制はさらに今度は五十四、五年ごろにはもう一つ厳しくしようということをいま考えております。  その中で時間値の問題を御指摘になりましたが、四十八年の専門委員会の報告の中に、四日市のデータで一時間値が〇・一を超える時間数が前年の一〇%以上の地域では、一時間値の超える回数と患者の発生の回数の間に相関があるというのがございます。そういう問題でございますが、いま時間値は確かに先生のおっしゃるように、私どもも非常にこれは決して軽く見てはいけないということを中で申しております。参考までに申しますと、四十八年度では一時間値〇・一を超えた割合の一番高いところが、年間総時間数に対して九・四%が一番高い。それから、四十九年度はそれが五・八%に下がってきております。それから、五十年度は三・七%に下がってきております。しかし、まだこれは高いというように私どもは思っております。これは一〇%は下回っており、また改善はされてきておりますけれども、問題はあるということで見ておりまして、これは御指摘のように、時間最高値はこれは押さえていく必要はもう十分あると思いますし、環境基準としても設定をしておりますので、これはケース・バイ・ケースに判断をしませんと、一つは現在置いておりますモニターが、ある形式のものは高く出るというのがございます。それからもう一つは、モニタリングサイトの場所が、ちょうど隣の煙突からするする煙が入ってくるというようなサイトの場所もございます。そういうものを全部排除した上で判断をしなければならない。で、現在の総量規制が、一時間値もなるべく出ない、実際には出ない確率の一番高いところで押さえておりますが、何分局地的にくせのあるところがございます。そういう点は地点地点に応じて、先ほど申し上げました発生源とその測定ステーションの関係等を見まして、そうして目つぶしと言っておりますが、特殊な目のところに特殊な高濃度となられるものを皆つぶす、特定の地域の特定発生源の対策としてやっていくという形にしておりますので、先生の御指摘のように、時間値は決してこれは見逃すべきではない。  NOにつきましても、私どもは非常にこれ重視をいたしておりますが、ただSOxとNOxとは非常に相違がありまして、SOの場合の一時間値コントロールはできます。しかし、NOの場合には、遠くに行ってNOがNOxになりますので、一時間値は判断条件としてはきわめて大事でございますが、防止をやっていく場合に、一時間値をきれいになくすような手法をどういうぐあいにするかにはなかなかむずかしさがあるということで、NO、NOの一時間値でございますが、NO全体の発生を押さえてきて、全体の平均を下げてくるということと、一時間値の移動がどうなるかということをあわせながら対応しようというようなぐあいでいま検討しておるところでございます。
  216. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 それで保健部長、段階的解除とか、見直しとかいうふうなことが新聞でも報道されましたが、これは中公審にはそういう諮問をしたのですか。
  217. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 先生御指摘のような報道がある新聞になされましたが、私どもいまの時点で段階的解除などという行政的な決断はいたしておりません。はっきり申し上げておきます。  それから、いま一つ、また別の報道で、中公審の部会の中でその問題を検討、諮問しているというような記事があったようでございますけれども、六月ごろの時点から、中公審の環境保健部会におきまして懇談会という形式でいろいろな御意見のフリーディスカッションをしていただいておりますが、現在、環境保健部会といたしまして、各方面から、いろいろな患者さんのサイドからもあるいは行政、地方自治体のサイドからもあるいはまた経済界のサイドからも、いろいろな御意見がいま出ておるわけでございまして、私ども法律を担当している向きといたしましては、そのいろいろな御意見につきまして中公審の中でのディスカッションをしていただこうという形でございまして、特に何らかの行政方針を出すための諮問はいたしておりません。そういうぐあい御理解いただきたいと思います。
  218. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 そうすると、段階的解除とかいうふうなことはおやりにならないですね。その点はっきりしていますな。
  219. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) まさにいま申し上げましたように、現時点におきましてはそういった行政的な決断はしておりません。
  220. 沓脱タケ子

    沓脱タケ子君 時間がありませんので最後に。  私その点、非常に大事だと思います。まあいまごろ段階的解除などの論議が出てくるというのは、これは実態から見ても、また患者自身生活体験から見ても、これはもう大変だということはだれでも思いますよね。そういうときにそういう論議が出てくる、そういう報道がなされる、それで長官のああいう話が出てくる、これは大変だというふうに思うわけですよ。だから、長官発言というのはきわめて重大だということを冒頭に申し上げたのはそこなんですね。  それで、そういうことはやらないのだという点を確認をいたしますが、私は現時点で、大気汚染ではやはりまだ未指定地域がずいぶんあって、しかし、かなりの有症率の高さを持っているというふうな地点というのがありますが、そういう点、ことしも三地点ほど調査をしておられるようですが、来年度それを新たに対象地域などを何らかお考えになっておられるのかどうか。で、何ヵ所ぐらい考えておられるのか、その点をちょっとお聞きしたい。
  221. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 私ども、従来から指定をする場合に基礎調査をいたした上で指定をしているわけでございまして、明年につきましても幾つかの調査はいたしたいというぐあいに考えておりまして、現在予算要求中でございます。
  222. 片岡勝治

    委員長片岡勝治君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時散会