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1977-11-16 第82回国会 参議院 交通安全対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十六日(水曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小野  明君     理 事                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 安恒 良一君                 阿部 憲一君                 田渕 哲也君     委 員                 加藤 武徳君                 高橋 圭三君                 土屋 義彦君                 野呂田芳成君                 平井 卓志君                 福岡日出麿君                 二木 謙吾君                 降矢 敬雄君                 穐山  篤君                 広田 幸一君                 上林繁次郎君                 山中 郁子君                 森田 重郎君    国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       藤田 正明君    政府委員        内閣総理大臣官        房交通安全対策        室長       室城 庸之君        警察庁交通局長  杉原  正君        運輸省自動車局        整備部長     犬丸 令門君    説明員        内閣審議官    田中 和夫君        警察庁警備局公        安第三課長    福井 与明君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        運輸省自動車局        業務部長     梶原  清君        労働省労働基準        局監督課長    小粥 義朗君        建設省道路局道        路交通管理課長  浪岡 洋一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○交通安全対策樹立に関する調査  (飲酒運転過労運転及び過積載等による事故  防止対策に関する件)  (交通遺族対策に関する件)  (自転車利用者等安全対策に関する件)  (欠陥車問題に関する件)  (ハイジャック防止対策に関する件)     —————————————
  2. 小野明

    委員長小野明君) 交通安全対策特別委員会開会いたします。  まず、連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案について、法務委員会に対し連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小野明

    委員長小野明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小野明

    委員長小野明君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  5. 小野明

    委員長小野明君) 次に、交通安全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 広田幸一

    広田幸一君 私は三点にわたりましてそれぞれ質問をいたしますが、まず最初に最近の交通事故実態の概要について、これは警察庁でございますか、そちらの方からの御報告をお願いします。
  7. 杉原正

    政府委員杉原正君) ことしに入りましてからも、昨年に引き続きまして事故は比較的順調に減少傾向にございまして、特に死者につきましては昨年の同期に比べて約八%程度減少ということで推移をいたしております。
  8. 広田幸一

    広田幸一君 いまの報告を聞きますと、最近交通事故減少しておると、特に死傷者の場合が八%減っておるということで、まことに結構な傾向でございますが、特に私はきょう問題にしたいと思いますことは、いわゆる交通三悪と言われております飲酒運転それから無免許運転スピード違反、特にこの中でも飲酒運転の問題について質問をしたいと思うのでありますが、その中に事故はだんだんと減少しておるのでありますけれども、私の手元にある数字によりますと、遺憾ながらいま申し上げました三悪が依然として減少しないのは一体どういうところにあるのか、その分析をどういうふうに警察庁はやられて、それに対する対策はどのようにとっておられるのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  9. 杉原正

    政府委員杉原正君) 先生の御指摘のとおりでございまして、私ども交通事故に非常にかかわりが出てまいります危険な運転上の違反行為といたしまして三悪というとらえ方をいたしておりますが、酒酔い運転それから過度のスピード違反それから無免許運転、これを三悪と言っておりますが、ことしの十月末現在でこのいわゆる三つの違反によりまして起こした死亡事故件数をかいつまんで申し上げますと、十月末までで二千百十四件、全体の死亡事故の中の関与した違反行為構成比で見ますと、この三悪によります死亡事故が三〇・五%という非常に高い率になっておるわけでございます。ただ、先ほどお話がございました酒酔い運転につきましては、御案内のようにかなり街頭での取り締まりを強化いたしておりまして、ことしこの酒酔い運転によりますのが七百八件死亡事故を起こしておりますが、昨年同期に比べまして百四十九件、パーセントにいたしまして一七・四%まだ減少しております。これは、特に酒酔い運転の問題につきましては、酒を飲ませる業態それから飲む者、また酒を飲んでいるにもかかわらず運転することを下命したり容認をしたりというふうなものを道路交通法の領域でとらえて、これを違反の対象として措置をするようにいたしておりますが、この酒酔い運転というのは普通の他の違反と違いまして、過失などと言っておれるようなものでございませんので、そういう意味で、私ども、この酒酔い運転に対する取り締まりについては今後さらに徹底をしていきたいと思いますし、法体制等の面につきましても、十分現場措置との関係等を考慮しながら今後さらに検討を続けていきたいというふうに考えております。
  10. 広田幸一

    広田幸一君 いま三悪の中の特に飲酒運転についての死亡件数について御報告をいただきましたが、全国で一年間——一年間になるか、半年になるか、この飲酒運転検挙されておる件数が集約されておると思いますけれども、わかっておれば御報告願いたいと思います。——傾向がわかっておれば一緒に報告してください。
  11. 杉原正

    政府委員杉原正君) 数字を申し上げます。  昨年の一月から九月までと、ことしの一月から九月までの数字が出ておりますので申し上げますと、酒酔いと酒気帯びというのがございますが、酒酔いと酒気帯びを合わせまして大ざっぱな数字で申し上げますと、昨年の九カ月間が二十一万件、ことしは二十七万件余の検挙をいたしております。酔っぱらいだけについて申し上げますと、五万一千件というのが、ことしは五万四千件ということになっております。
  12. 広田幸一

    広田幸一君 ここに問題があるわけでございまして、私も地方におりまして交通安全協会の一役員をしておったのですけれども検挙数がいま御報告になったわけですけれども検挙数は、警察が、取り締まり当局が非常に厳しくやれば幾らでも出てくるというような現象があるわけですね。ですから、いま全国で集約されました数字でありますけれども、もっと厳しく取り締まりをすればこの数がうんとふえてくる、そういうふうな傾向にあると私は思っておるわけです。  そこで問題は、いまおっしゃいましたように、ちょっとほかの事故と違いまして、飲酒運転というのはすぐ死亡事故につながる非常に重要な内容事故でございますね。そこで、私も何とか交通事故による死亡飲酒運転による事故がなくならないものかというふうに、実は私ながらも非常に考えてきたわけでありますけれども、問題はいままでは何か情状酌量したような処分の仕方にあったように思うわけでありますが、もうそういうことは今日許されない。何の罪のない、何の関係のない人たちが、無謀な飲酒運転によって年間いま報告になったような数字人たちが死んでおるわけです。もうそういうことは私は許されない、こういうふうな実感を持っておるわけでありますが、警察当局としてはその点どういうふうに責任的にお感じになっておりますか、正直なところをひとつ御報告願いたいと思うんです。
  13. 杉原正

    政府委員杉原正君) この酔っぱらい運転というのが、御指摘のように大変大きな事故につながるという実態を私ども毎日のように目の当たりにしておるわけでございますが、これの処置の問題につきまして、実は、御案内のように、一つ刑事罰の方の関係一つ行政処分の方の関係があるわけでございます。このいわゆる酔っぱらい運転に対します刑事罰の問題につきましては、四十五年に法改正がございまして、従来酒気帯び運転というのはそれ自身では処罰になりませんでしたけれども、四十五年にこの酒気帯び運転というのが三カ月以下の懲役、三万円以下の罰金ということに改正をされました。なおその時点でその酔っぱらい運転そのものも、従来一年以下の懲役、五万円以下というのを、二年以下ということで引き上げまして、なおそういった酔っぱらい運転というものを下命したり容認をする、見て見ぬふりをするというふうな者につきましては運転者と同じ処罰ができるようになったわけでございます。  それから行政処分関係でございますが、これは御案内のように十五点になりますと免許取り消しになるわけでございますが、この酔っぱらい運転は十二点一発でつくわけでございます。酔っぱらい運転はもう一発で取り消しにしたらどうかというふうな意見も私ども耳にいたしておりますし、それなりにいろいろ考えなければならない面もあろうと思いますが、ちなみに、この酔っぱらい運転でどういう行政処分状況になっておるかというのを、ことしの六月、十八県ばかり一カ月間サンプル調査をやってみますと、酔っぱらい運転で二千四百人ばかりの者が取り締まりを受けておりますが、その十二点をつける前に三回違反があるというふうなことで、三点前に違反がありますと取り消しになってしまうというふうなことで、実態調査をしてみますと、この二千四百人のうちの約二七%がその時点取り消しになっておる。残りがまだいわゆる停止処分というふうなことでございます。  ただ、いまのこういった行政処分あるいは刑事処分というふうなものが酔っぱらい運転について適正なものであるかどうかというふうなことにつきましては、実態等々見比べながら、全体を比較考量しながら今後さらに検討を続けていきたいというふうに考えております。
  14. 広田幸一

    広田幸一君 いまの御説明によりますと、いわゆる点数制で十五点の減点になるとすぐ免許停止になるわけですね。ところが、飲酒運転の場合は十二点ということですね。十二点だけしか減点にならぬわけですね。まだあと三点残っているわけです。ですから、その人の持っておる免許証有効期限内において、あと事故を起こしても、十五点に満たない場合はまだ運転ができるということでございますね。そういうことになるわけですね。
  15. 杉原正

    政府委員杉原正君) 若干説明が十分でなかったかと思いますが、六点以上になりますと免許停止になります。ですから六点になりますと三十日の免許停止になる。十五点になると、取り消しになってしまって、これはもう運転ができなくなるということでございます。
  16. 広田幸一

    広田幸一君 結局、取り消しになっても、また数カ月間すれば、どこかの講習所に行けばまた免許が取れるという仕組みになっておるわけですね。私そこに問題があると思うんです。たまたま検挙されたけれども、その時点で十二点減点になったとしても、仮に検挙されなくて、その人が、その運転手がずっと行った場合に、どういう事故を起こすかわからないわけですね。未遂ですね、言えば。そういう者を、このわずか十二点によって停止にして、しかも十五点になっても数カ月どこかに行けばまた免許がもらえるというような仕組み制度に問題がある。そういうことを緩やかに野放しにしておったところに、飲酒運転をやったって、また数カ月してどこかの講習所に行けばまた免許証が復活されると、そういう安易な考え方が潜在的にあること、飲酒運転が減らないのはそういうところに私はあると思うのでありますが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  17. 杉原正

    政府委員杉原正君) 過去、車社会というものを考えてみました際に、酒を飲んで車を運転するということの悪性に対する一般の世の中の評価というものがだんだんに変わってきたと思います。一ころは、地方に参りますと、何か酒を飲んで運転しても余り一般の人がそれについてとやかく言わないというふうな風潮があったことがございますが、だんだんに、やっぱり酔っぱらい運転というのは非常に悪いものである、危険なものであるということが一般評価になってまいっております。私どももいまのやり方が決して十分であるとは思っておりません。そういうふうなものを前提にしながら、これを今後どのように改善をしていくかというふうなことは、先ほど申しましたように、これから十分取り組んでいかなければいかぬ問題であるというふうに考えております。
  18. 広田幸一

    広田幸一君 いまの御説明を聞いておりますと、何か運転手のモラルに期待をするというような感じがあるわけですね。それから、社会的な通念といいますか、そういうものに期待するような感じがあるわけですけれども、前段私が申し上げましたように、検挙すれば幾らでも、きょう一日飲酒運転取り締まりをやろうと言ったら、必ず出てくるわけですね。ですから、いまおっしゃるそういうものに期待したいわけでありますけれども、現実には私はそういう飲酒運転不心得者は減らない。しかも、それだけで済まない。私が先ほど申し上げたように、何の関係のない、罪のない人たちが死んでおるわけですね。そういう実態は私はもうこ時点で許されないと、こういうふうに思うわけであります。  そこで、同じことを繰り返しても仕方がありませんが、日本交通安全ということは無謀な運転から命を守るということでありますが、それの大元締めをやっていらっしゃる総理府長官として、私がいま申し上げたようなことに対する御見解をお受けいたしたいと思います。
  19. 藤田正明

    国務大臣藤田正明君) ただいま警察庁の方からお答えしましたように、刑事罰なり行政罰を大変厳しく強化するということももちろんこれは必要でございますし、それから広報活動飲酒運転が直ちに交通死者に通ずる、社会的な敵であると、こういうふうな広報運動全国的に展開することも必要なことであろうと思います。  何せ、いまから年末年始にかかることでございますので、早速にも、広田委員のこのような御質疑を受けたことを契機といたしまして、なおこの活動の強化を図ってまいりたいと思います。
  20. 広田幸一

    広田幸一君 私はこの委員会に出て初めてこういったことについていろいろ意見を申し上げ、質問するわけですけれども、恐らくこういったことは、この特別委員会が、目的からして、このことは何回となく論議をされてきたことであろうと私は思うわけです。そこで、いまの警察庁答弁にしましても、長官お話にしましても、やりますと、広報活動等を進めてこれからやりますということでありますけれども、そういうことは、もうこの十何年間——二十年になりますか、三十年になりますか、そのような運動活動というものは行われてきたわけです。もう時期はもっと厳しい。昔から、人を憎まず罪を憎むということがあります。私はその思想でありますけれども、しかし、何回も言いますように、相手を殺すというこういう罪悪ですわ。罪悪は許されないと、もうそういう時期に来ておるではないかという私の考え方に対して、まだ、広報活動をやりますと、いろいろな協力を求めますと、そういうふうな余裕があるかどうか。私は、人命尊重という立場から考えますと、処分内容をどういうようにするかという問題は別にしまして、考え方としては、まあ飲酒運転をしたって数カ月すればまたもとの免許証がもらえるという、そういう安易な気持ちがあるわけですね。その安易な気持ちを規制をする、除去する、そういう範囲だけでも何とかなるような私は処分でもいいと思っている。  たとえば、仮定の問題でありますけれども飲酒運転をしたならば二年間は絶対に免許証を渡さないと言ったら、たとえばその人がどこかの業者の人であった場合には、二年間運転停止されますと、自分生活につながるわけです、そういうことでございますね。それから、一般サラリーマンにしましても同じようなことが言えるわけです。そうしますと、ちょっとした飲酒運転でも、ひっかかったならば自分の生計に重大な影響がある。そうなってくると、安易な飲酒運転というものは減ってくるだろうと。私は、その程度のことだったら、やってみたところで、別に国民的に、そんなに処分が激しくなったというような抵抗はない、このように思うわけです。その点どうでしょう。
  21. 杉原正

    政府委員杉原正君) 私は広田先生と認識は全く同じでございます。いま私ども内部的にいろいろ検討しておりますのは、そういうふうな方向で物事を処理する場合にどういう具体的な措置の仕方を考えたらいいのかということをいま検討しておりまして、そういう御指摘方向で目下検討しておるのが実情でございます。
  22. 広田幸一

    広田幸一君 いま答弁で、私が言ったとおりの内容になるかどうかは別として、いまよりももっと厳しい取り締まりをすることによって、罰則ですか、そういうものを制度化することによって事故をなくしようという前向きな答弁については私もそれでよろしいと思いますが、ついでに聞いておきますけれども、いまいろんなことをお考えになっておられる、そういう場合に何が障害になるのか、そのことを教えてください。
  23. 杉原正

    政府委員杉原正君) 特にそういうものを検討することについて、障害という意味はちょっとあれなんですけれども、別に検討することについては特段の障害というものを考えておるわけではございません。
  24. 広田幸一

    広田幸一君 ちょっと私聞いたんですけれども、これは警察庁の方のそういう考え方があるかどうか知りませんが、たとえば飲酒運転になると、私が言ったように二年間はもう免許停止だということになると、私がさっき言いましたように、その人の生活につながる問題ですわね。そうなってくると気の毒だと、そちらの方から抵抗があるではなかろうかというようなことが何か心配されると、そういうようなことを私は障害と言っておるわけですわ。そういうことがあるかないか。——私は、まあ時間がありませんから言いますけれども、そういうこともあるでしょう。あるけれども、私が何回も言いますように、もうその時期は過ぎたと。いま国民が、小さい三歳の児童に至るまで飲酒運転がいかにいけないかということは知っておるわけです。だれも知っておるわけです。そのことは依然として検挙すれば、幾らでもそういう飲酒運転をしておる者が出てくるという事態に問題があるわけですから、私はそういう意味でしつこく言っておるわけですから、ただいま答弁がありましたので、それで結構というわけではありませんが、私はもう少し前向きな答弁がいただきたかったんですけれども、まあこれも結局人間の命を大事にすると、こういうところに私は視点を向けておりますので、いずれ委員会等でまたこの問題については、その後の警察庁の動きについて、考え方について質問をいたしますので、ひとつよろしくお願いいたします。  それから次は、これはまあついでにですが、ついでというのは失礼でございますが、なぜそういうことを言いますかというと、交通事故によりまして、いわゆる被害を受けた家庭でございますね、これは本当に悲惨な状態です。私もここにいろいろ資料を持っておりますが、総理府はこの交通遺児家庭実態調査をおやりになっておると思うんです。これは交通遺児育英会資料でございますけれども、これなんかによりますと、全く大黒柱を失った遺児家庭というのは、お母さんが五〇%、六〇%もう病気になってしまっておると。子供さんは学校をやめると。それから生活保護家庭に入っとおると。こういうようなことがずっとたくさん書いてあるわけですが、総理府はそういう統計を、調査をやっておられるわけでありますが、目的があってやっておられると思うんですが、交通安全対策元締めでもあるわけでありますが、このような交通遺児家庭実態調査と、それからそういう交通安全対策の問題に関連をして、連動して、どのようにお考えになっておられるか、これも聞いておきたいと思います。
  25. 室城庸之

    政府委員室城庸之君) ただいまお話のございました実態調査でございますが、私ども昭和四十七年に交通遺児実態調査をいたしました。しかし、その時点大分状況が変わってきておりますので、もう一度現時点での実態を把握したいということで、昨年交通事故被害者の援護に関する総合調査というものと並行しまして、交通遺児等実態調査、二つを五十一年度事業として計画いたしまして、いずれも今年三月にその調査結果をまとめてございます。  いま先生から御指摘がございました交通遺児育英会での実態調査等につきましても、これはもちろん私ども所管法人でございますので、調査結果については当然報告も受けておりまして、彼此比べまして、いろいろ交通事故遺族、特に遺児の就学問題、こういったことについて今後どういうふうに配慮すべきかというような点について、私どもの方はもちろんでございますが、関係の各機関にこの実態調査の結果なども照会しながら、総合的な対策を進めてまいりたいということで図っておるところでございます。  で、大づかみに申し上げまして、一般交通事故以外にも遺児がたくさんございます。いま申し上げました、最近行いました交通遺児実態調査の際に全般遺児についても調べたわけでございますけれども数字で申し上げますと、いわゆる遺児ということで学校に行っております者、高等学校から幼稚園、保育所に至るまでの者を総合いたしますと総数で六十七万四千七百七十一名、そのうち交通遺児が五万七千六百二十人、それからいわゆる災害遺児、これが二万五千二百九十五人、その他病気とかそういうことで遺児になっております者五十九万一千八百五十六人ということでございまして、全体の生徒の在籍者のうち千人当たり二・六人というのが交通遺児数字になっておるわけでございます。  そこで、その遺族実態等につきましても、いろいろ実例について面接調査で、どういうような事故に遭ったか、その後どういうような救援措置を受けたか、補償の問題はどうなっておるか、その後家庭生活の問題並びに子供の学業の問題というようなことについて、事細かに調査をいたしました。お話がございましたように、各家庭とも必ずしも楽ではございません。もちろん交通遺児のみならず、災害の場合あるいはそれ以外の原因による遺児につきましても、母子家庭というのは一般に非常に気の毒な境遇に置かれております。したがいまして、政府といたしましては、この母子家庭全般につきましては、児童扶養手当母子福祉年金支給母子福祉資金の資金貸し付け、寡婦雇用奨励金支給就学奨励援助日本育英会による奨学金の貸与というような制度に乗せまして、できるだけ困窮の状態を救援していきたいということで進めておりますが、そのほかに、特に自動車交通関係のあるいわゆる自動車損害賠償責任再保険、こういったものの運用益財源といたしました救援措置につきましては、特に交通遺児に特別の財源を用意いたしまして手当てをいたしております。  たとえば自動車事故対策センターというのが運輸省所管の特殊法人としてございますが、そこでは義務教育の終了前、したがって小学校、中学校、こういった時期における学童の約一万一千人に対しまして九万円以内の一時金を差し上げる、また毎月八千円の育成資金を無利息で貸し付けるというような措置を行っております。また、五十二年度、今年度から、新規事業といたしまして約千七百人を対象に、小中学校入学者の支度金というものを二万五千円差し上げるというような措置も始めております。また、総理府と文部省が共管いたしております交通遺児育英会につきましては、大学に在学する交通遺児、また高校に在学する者、これに大学では二万円、高校は公立一万円、私立一万五千円、こういった毎月の学資の貸し付けをこれも無利息で行っておりまして、こういったもののほかに、さらに五十一年度から、高校在学中の交通遺児につきましては授業料の減免措置を講ずるということで、公立学校につきましては全額免除の措置を、また私立学校につきましては一定額でございますけれども、月々一万二千円の半額について補助をするというふうな、授業料の減免措置も講じております。  こういうことで、まあ大変お気の毒な環境におられます方々に対して金の面で援助を申し上げる。同時に、まあいろいろな同じ境遇にあります方を一堂に会しまして激励をするというような催しをやりましたり、機関紙を発行したり、あるいは、ただいま交通遺児のための学生寮を日野市の方に建築中でございまして、これも同じような境遇の交通遺児が集まりまして、生活をともにして励まし合っていこうというような施策を進めつつあるところでございます。
  26. 広田幸一

    広田幸一君 いま詳細にわたりまして遺児対策についての措置が御報告ありました。私は当然なことであろうと思いますし、もっと手厚いやはり対策をこれからもやってもらいたいと思います。  ただ、私聞いておりまして、私の知っておる内容もありますし、不勉強もございますけれども、国民の皆さんがいまそういったような遺児対策を国がやっているということを知らない人がかなりおるのじゃないかと思うのでありますがね。そういう点で、もっと広報活動等通してそういったことをやっておると同時に、交通事故になるとこういうような悲惨な状態になるのだということも、これは交通事故防止対策として将来もそういう広報活動を積極的にやってもらいたい、こういうことをひとつ希望として述べておきます。  飲酒運転関係のことは終わりまして、次は過労運転につきましてどのような進行状況になっておるかということであります。  恐らく、この問題もこの委員会で論議のあったことであろうと思いますけれども、いわゆる無理な運転をして事故を起こす、そのことが先ほどから申し上げておるような悲惨な事故にもつながるわけでありますが、この過労運転事故件数というようなものがわかっておれば、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  27. 杉原正

    政府委員杉原正君) 済みません。ちょっと手元に過労運転取り締まり件数、持ち合わせておりません。
  28. 広田幸一

    広田幸一君 傾向でも結構でございます。
  29. 杉原正

    政府委員杉原正君) 傾向といたしまして見ますのは、やはり運行管理者との関係で、特に過積あるいは長距離トラック等の取り締まりを通じて見ますと、かなり過酷な業務を強いているのではなかろうかと思われるようなケースはかなり見受けられます。
  30. 広田幸一

    広田幸一君 これは運輸省の方にお尋ねをするんですけれども、これについては労働省の方も災害防止の面でそれぞれ通達が出ておるわけでありますが、私どもの知る範囲ではなかない通達どおりに守られていないと、こういう実態にあるわけでありますが、運輸省として、この過労運転に対する業界の取り組み方、そういうものについて掌握されておる範囲についてお答えを願いたいと思います。
  31. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 過労運転の防止という点につきましては、特に大型自動車等の長距離運行等が問題でございまして、これらに対しましては、運行管理者制度を通じましてその適正な運用によって事故防止の徹底を図っておるところでございます。そして、この場合におきまして具体的な基準といたしましては、過労の防止のための労働省のいわゆる二・九通達というのがございまして、そのほかに長距離運行に関する指導基準もございます。こういったものを基準といたしまして指導いたしておりますわけでございまして、運送事業者において点呼等に当たって、もしくは運行管理者が交番の決定等に当たりまして、この辺のところを十分尊重して指導していくようにいたしておるわけでございます。そして、これは労働省でもおやりになりますけれども、運輸省におきまして運送事業者に立入監査をいたしますが、そういった場合において、こういったような労働省関係の通達に違反するような、もしくはそのおそれのあるようなケースにつきましては労働省の方に通報すると、また道路運送法、車両法関係違反がございましたならば、労働省から陸運局に通報があるということで相互通報制度もとっておりますわけでございます。このようにいたしておりますわけでございますが、昨年の秋に北海道から九州へ長距離運行を行っとトラックが運転者の過労のために重大事故を起こすといったようなことがございまして、五十一年の十月に自動車局長から重ねて通達を出しまして、運送事業者におけるところの運行管理、その中で特に二日以上の運行に際しての過労防止対策、それから運行中、過労等、安全運行に支障が生じたときの連絡体制、さらには泊まり仕業におけるところの点呼の実施体制、こういったことについて運行管理の徹底を指示したわけでございます。今後とも運行管理者の研修もしくは年末年始の安全総点検、こういったものを通じまして適切な運行計画の作成、交代運転者の乗務等の徹底を図りまして、関係機関とも十分連絡をとって、過労によりますところの事故防止の指導を徹底してまいりたいと考えておりますところでございます。
  32. 広田幸一

    広田幸一君 いまこうしておる、ああしておるという報告でありまして、実態はなかなかそうなっていない。実は私は鳥取でございますが、鳥取県の恥をさらすようでまことに悪いんですけれども実態として私は申し上げたいと思うんです。  ことしの、数カ月前に過労運転、それから過積みによって十四トンのものが二十八トン、倍積まれておりまして、過労によって大きな事故を起こしているわけです。それが問題になりまして、かなり調べたわけです。ところが全くそういうような内容になっていない。いまおっしゃったような、そういうふうな指導の仕方がされておるかもしれませんけれども、実際は本当にそうなっていないわけです。私も、労働組合の諸君がこれをかなり調べておりまして、そちらの方からも報告を聞いておりますが、もっと突っ込んで私はこの場で本当にお互いが考えてみたいと思いますことは、厳しくそういう罰則を決め、あるいは運輸省の方が厳しくやってみましても、実態はそうならないところの大きな原因があるわけですよ。その原因を運輸省の方は掌握されておりますか。——時間の関係があるから言いましょう。  いまこういう不況でありましょう、業者はダンピングをやっておるわけです。運輸省の認可料金を取っておるというのはほとんどありません、わずか六〇%ぐらい。しかも荷がないから競争するわけです。荷主の方はできるだけ安い運賃でやっていこうと言って運輸会社に圧力をかける。社長も、会社の経営者も、何とか荷を取らなければならないから、無理をしてそういうものを受ける。運転手はやはり荷がなければいけないから過積みをするわけです。倍積んでようやく認可料金を取ろうとするわけですね。そういうふうな実態があるわけです。私もかなり現場に行って調べてみました、この問題について。私はそういう問題からあわせて考えていかないと、上の方からああせい、こうせい言ったところでこの問題が解決をしない。いずれ後で総理府の方にもダンプカーの問題について私は質問したいと思っておりますが、しかしながら、私はきょう一貫をして皆さんに質問をし、意見を申し上げたいのは、いろいろな事情があろうとも、人命を尊重するという起点に立ってわれわれは一切の施策を優先的に考えていかなければならない、そういう思想で私は言っておるわけでございますが、いま私が申し上げたような実態はどうなのか、うそなのか、本当なのか。そうなんだと、しかしそれにはこうしなければならない、そういうふうな私は行政指導の面から来た運輸省としての考え方を素直にひとつ答弁願いたいと思います。
  33. 梶原清

    説明員(梶原清君) 過積載の防止につきましては、先ほど整備部長から御答弁申し上げましたとおり、あらゆる機会を通じまして営業トラックの過積載の防止についてトラック業界を強く指導をしてまいっておるわけでございますが、本年度新しく貨物輸送監理官という制度を設けまして、各陸運局と主な陸運事務所に貨物輸送監理官というものを配置をいたしまして、各都道府県のトラック協会で行っております自主的な監視体制の整備と相まちまして、いま問題になっております過積載の防止、適正な運賃収受、白トラック問題、こうした各般にわたります輸送秩序の改善につきまして努力をし、今後とも一生懸命やってまいりたいと、かように考えておるわけでございます。  いま御指摘のとおり、過積載という現象が起きますのも、先生指摘のようなトラック業界の体質と申しましょうか、トラック事業者が荷主に対して経済的に弱い立場にあるということが一つの原因として考えられるわけでございます。私どもとしましては、従来からこの構造改善事業等を推進してまいっておるわけでございますが、なお一層こうした面につきまして努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  34. 広田幸一

    広田幸一君 今度視点を変えまして——労働省の方の関係の方お見えになっておりますか——質問をしたいと思うんですが、いまおっしゃいました二・九通達、四十二年の二月九日に出した「長距離貨物運送に従事する自動車運転者運転時間に関する指導基準について」、いわゆる連続の時間が五時間だと、それ以上走ると事故が起こるからというようなことを規制をした、こういう法律というか通達です。  そこで、私は労働省の方に質問をしたいと思うんでありますが、私もさっき厳しい処分だけでは問題解決をしないと言ったのですけれども、それはまあ別のサイドなことでございまして、通達というようなことではなくて、もっときちっとした法制化をしていくという、労働基準法にもあるわけですから、そういうふうなかっこうで、もうちょっと厳しいというか、きちっとしたやはり規制をするということはいいんじゃないかと、こういうふうに思いますが、この点いかがでございましょうか。
  35. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 昭和四十二年に出しました通達は、自動車運転者の労働時間等の改善基準でございまして、その後五十年になりまして、長距離運送業務についての指導基準を出しております。  で、四十二年のいわゆる二・九通達につきましては、これに違反する事案が労働基準法違反という形になります場合、これは他の業種での違反以上に厳しい司法処分に付するという形でやっているわけでございます。で、五十年に出しました長距離輸送についての指導基準、これは御指摘のとおりあくまで指導基準という形をとっております。といいますのは、現在の労働基準法の労働時間に関する規制の態様があくまで拘束時間的な考え方で労働時間をとらえて規制しておりますので、その全体の拘束時間の中で、作業時間について取り上げて、これの上限を決めるという形の時間規制は現在の基準法の体系ではできないわけでございます。  で、ただ国際的にはそういうような規制の動きもございます。現実に、来年度はILOでもこの路面運送の労働時間等の問題が討議されることになっておりますので、そうした国際的な動きも見ながら、当然この問題は関係労使のコンセンサスも得なければなりませんので、そういう面のコンセンサスを得る努力、それを精力的に続けてまいりたいと思います。
  36. 広田幸一

    広田幸一君 いま国際的なというお話がありましたが、ILOなんかではそういうふうになっておるわけですか、これは。
  37. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 現在ILO条約の中では、六十七号条約で路面運送に関する労働時間のことが決めてございます。それとは別に来年度新たにその路面運送の労働時間問題をILOの場で取り上げようという動きが出ておりますので、それを申し上げたわけでございます。
  38. 広田幸一

    広田幸一君 いま答弁がありましたように、ひとつ前向きに、そういう事故が起きないために、法律の規則の規制について要望しておきます。  それから、これは道交法によりますところの罰則でございますが、六十六条でございますか、これ。これもまた厳しく処分をせいということになるわけですけれども、五万円以下の罰金というようなことでは、やっぱり業者が五万円払っておけばいいんだからというような安易なことで、やっぱりこういう決められたことが守られないというようなことになっておるんじゃないかと思うんですが、もっと厳しく罰則を決めるというようなことについてどうお考えになっておるかということが一つと。  それから、まあ時間がないので急ぎますが、この罰則——罰をするときに、運転手の方だけ罰するというような傾向が強いように思うわけですが、実態はそうではなくて、先ほどもちょっと触れましたけれども、荷主が積んでくれと、積んでくれなければよその運送会社にやらせると、こういう圧力をかけますし、また経営者もやはりやむを得ない面もあるわけですね。そういうようなことですから、その取り調べを受けた、ひっかかった運転手だけを処分するということは片手落ちだと思うんですね。そういう点が私は問題があると思うんでありますが、そのことも含めてひとつ御答弁願いたいと思います。
  39. 杉原正

    政府委員杉原正君) 特に過積のお話でございますけれども、一応、昨年約十二万六千件の過積の取り締まりをしておりまして、非常にこう感じますのは、いわゆるドライバーもさることながら、実はそういう実態で運送せざるを得ないようにしむけている背後の問題というのがむしろ非常に重要だという感じでございまして、この背後責任の追及につきましては、この十二万六千件のうちの五千件余につきましては、背後のそういう雇用主あるいは荷主というふうなものを捜査の対象にして処理をいたしておるわけでございます。  なお、まあ過労運転の問題あるいは過積の問題等につきましては、御指摘のありましたように、ドライバーだけを違反処罰を強化すれば足りるというものではございません。実際はむしろその背後にあるものを追及をしておく必要があるということでございまして、いまやっておりますのは、むしろその過積等につきましても、それをやらした者を四十五年の改正で非常に強く違反の対象として責任を追及するようにいたしておりますが、このドライバーに対する違反の処理の仕方がいまのままでいいかどうか。それから、むしろ背後責任との絡みをどう考えるのかというふうなことは、いまの道交の実態を十分考えた上でじっくり検討しなければいかぬ問題であるというふうに考えております。
  40. 穐山篤

    ○穐山篤君 ちょっと関連。  過労運転あるいは過積みの問題で関連してお伺いしますが、先ほどの答弁は、ほとんどまあ青ナンバーを対象にした見解の表明のような気がします。現実に国内を走っておりますトラックの両数から考えてみましても、あるいは大型自動車の両数から考えてみまして、青ナンバー対策というのと、それから白ナンバー対策というのを別々に行わなければ実態に即さないというふうに思います。  御存じのように、青ナンバーというのは、事業者として認可がされて、運行管理者もいるわけです。ある程度のことは行政指導通達などで体系的には筋が通る仕組みになっております。ところが、白ナンバーの場合には個人が事業者になっている。あるいはリースなどの形態もとっておりまして、ある意味で言うと、行政指導がほとんど行き渡らない分野になっていると思うわけです。したがって、過積みによる、あるいは過労運転によります事故あるいはその件数というのは当然白ナンバーの大型トラック、大型自動車の方が多いと思うわけです。その件について、特に白ナンバー対策というのを十分に行わなければ、事故の絶滅は不可能だというふうに判断をします。その点についての具体的な指導あるいはこれからの対策というものをあわせてお伺いしたいと思います。
  41. 杉原正

    政府委員杉原正君) 私どもが昨年取り扱いました道路運送法違反の中、特にこれ白トラあるいは白タクと言われるものでございます。これは非常に業態から見ましても管理が不徹底なものでございますので、非常な関心を持って現場で見ておるわけでございますが、昨年、この白トラ関係検挙いたしましたものが三百九十件、約四百件でございます。それから白タク関係のが約百件というのを現場で業態として把握をしておりまして、これらにつきましては、いずれも運輸行政当局の方に通報して措置をいただくようにお願いをいたしておる状況でございます。
  42. 広田幸一

    広田幸一君 さっき警察庁の方で答弁がありましたそういう点を十分に区分をして、背景についてのやはり調査をしてもらいたいと思いますし、さらにそれに関連をしまして、いま同じことですけれども、いわゆる教唆と幇助ですか、そういうことがあった場合には、これはやっぱり刑法として取り調べを受けることになるんですか。
  43. 杉原正

    政府委員杉原正君) これは私ども、この道交法の領域、それ以外の道路運送法の領域等につきましても、教唆、幇助につきましては当然やっております。ただ、いまの道交法の領域では、それに至らない下命、容認というのを特別に引っ張り出しまして、現在、雇用者並びに安全運転管理者とか運行管理者、こういう酔っぱらいとか過積とか、そういうものを下命をしたり容認をしたりという、教唆、幇助のところまで至らないその領域もとらえようというふうな形で処理をいたしておるわけでございます。
  44. 広田幸一

    広田幸一君 そういった件数が現実にあるわけですか。
  45. 杉原正

    政府委員杉原正君) 現実にかなりの数に上っております。
  46. 広田幸一

    広田幸一君 いまここに資料がございますが、過積違反件数が四十八年、四十九年、五十年、五十一年と、四年間のがございますけれども、ほかの事故は減っておるのに、過積違反事故——検挙数だと思いますけれども、非常にふえているわけですね。私は、こういうところに問題があるし、その原因というものは、これは労働省も運輸省も警察庁も聞いてもらいたいと思うんです。一般的に事故が減っておるのに過積がふえておると。そういうことは本当にこれは事故につながる問題でございますから、それなりにそれぞれのサイドで厳重な——厳重なといいますか、適切なひとつ監督、取り締まり指導をしてもらいたい、こういうふうに要望しておきます。  次は、それでは防止対策でありますが、これはどこの担当になりますか、運輸省の方になりましょうか、二、三お尋ねをします。  各県で重量を検査をする機械がありますね、何という機械か知りませんが。それは全国で、重量計が一体どれくらいあるのか。そして計算をする機械、重量計がどのくらいなければいけぬのか、整備をしなければならぬのかというような一つの計画といいますか、施策というものが当然あると私は思うのでありますが、そういうことについて、まずひとつお尋ねをしたいと思います。  それから、これは従来から問題になっておるようでございますけれども、各車につける自重計でございます。これはまだまだうまくいっていないということでありますが、その後どうなっておるかということをお知らせを願いたいと思います。まず、二つについてお尋ねをします。
  47. 杉原正

    政府委員杉原正君) 自重計の関係でございますが、交通警察で持ちまして運用しているのが約一千台で、これは街頭で過積の調べをやります際に使うものでございます。これが約一千台ございます。
  48. 広田幸一

    広田幸一君 全国で一千台。
  49. 杉原正

    政府委員杉原正君) そうでございます。
  50. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 過積載防止のために自重計を現在ダンプに取りつけることを義務づけておるわけでございますが、ダンプ以外の普通トラックにも過積載防止対策として自重計を開発してはどうかという考え方があるわけでございまして、運輸省といたしましても、関係省庁、自動車メーカー、自動車使用者、運転者等をメンバーといたしますところの委員会をつくりまして、その開発を進めてまいったわけでございます。しかしながら、現実の問題といたしましては、ダンプは荷台を油圧で持ち上げる仕掛けになっておりますので、その本質を持ち上げる圧力、油圧をはかることによって、人為的には比較的合理的に、正確にはかれるという性質のものでございますが、普通トラックにおきましては、荷台は車体と一体でございますので、その荷台と車体との間にはかりを入れるということはできませんので、現時点におきましては、バネ式、バネのたわみ式の方式、もしくはストレーンゲージと申しまして、荷重を電気抵抗に変えまして測定するといったような方式について実際に製作をいたしまして検討を進めてきたのでございますが、バネ式のものにつきましては、走行キロが伸びていくに従いましてバネそのものが弱くなってくる、たわみが違ってくる、そういったことによって精度が狂ってまいります。そうしてまた、ストレーンゲージのものにつきましては、車体の車軸そのものにひずみが出てまいりまして、この場合においても正確な精度が得られないといったようなことでございまして、現在完了いたしておるわけではございませんけれども、普通トラックにおけるところの自重計の開発という点につきましては非常に困難な状況になっております。  それから、ダンプの自重計についてでございますが、現在におきましては、その精度はプラス二五%、マイナス一五%という範囲内でございますけれども警察庁の見解では、これをもって取り締まることは不可能であるという見解でございまして、そういった意味で精度をさらに上げていくという必要があるわけでございますが、その辺の問題につきましても、使用実態、現在のメーカーの精度等から見まして非常に困難な現状でございます。しかしながら、われわれといたしましては、今後とも継続してその開発に努力をしてまいりたいと考えておりますところでございます。
  51. 広田幸一

    広田幸一君 警察庁の方からの答弁によりますと、いま約千台あるということですが、これは千台が全部機能しておるかどうかという問題と、それから大体千台あれば不十分ながらも一応検査はできる体制になっておると、そういうふうに理解していいかどうかという問題が一つ。  それから、運輸省の方ですか、そちらの方はいまの自重計の問題ですが、非常にまだ完成というところまでいってないということでございますが、いつごろを目標にできるのかどうなのかということですね。その点をあわせて答弁願いたいと思います。
  52. 杉原正

    政府委員杉原正君) 私どもいま全国で約一千台のものを持っておりますが、大体私どもこれから先整備をしたいと思いますのは、少なくとも各警察署に一台は置きたいということでいま整備を進めておりますが、あわせまして、これは私どもだけでは一千台でございますが、道路管理者と共同して、いわゆる道路管理者がお持ちになっている重量計ならかなりございますので、その辺も十分活用していただきながら実態はやっているということでございます。
  53. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 自重計の開発状況でございますが、実は自動車に自重計を装着させることを義務づけておりますのはわが国だけでございます。世界各国を見ましても自重計を装着させているという国はないのでございまして、その開発は非常に、何と申しますか、困難な状況である。そして、われわれが開発過程におきまして、イギリスが一部にそういったような自重計を開発して使っているという実例がございましたので、それを輸入いたしまして使用してみたのでございますけれども、この場合におきましても満足な結果が得られなかったわけでございます。で、われわれといたしましては、いつまでに開発するという約束を申し上げるわけには現在まいらないのが非常に残念でございますけれども、今後とも努力してまいりたいと考えております。
  54. 広田幸一

    広田幸一君 さらに、いまの問題でございますが、警察庁答弁では全国に約一千台、できれば各警察署に設けたいということでありますが、あわせて、いま道路管理者の問題がございましたが、国の高速道路とか主要国道とか、それからフェリーですね、ああいったところにも必要なようなことを聞いておるわけでありますが、そこらのところはだれがやるのか、国がやるのか、国でも建設省がやるのか、運輸省がやるのか、各自治体がやるのか、そこらのところも明確にしながら、どういうふうになっておるのか、これもあわせてひとつお聞きしておきます。
  55. 浪岡洋一

    説明員(浪岡洋一君) ただいまの道路管理者が保有しております重量計につきましては全国で約五百台ございます。これは国道につきましては建設省の施設でございますし、都道府県道につきましては当該都道府県が設置しております。高速自動車国道等につきましては日本道路公団が設置しております。  なお、現在フェリーの入り口、出口にというお話がございますが、私どもの方でも国道が接しているフェリーの荷揚げ場等につきましては今後設置を検討してまいりたいと、かように考えております。
  56. 広田幸一

    広田幸一君 次は、同じ過積、過労につながるかと思うんですけれども、ダンプカーの指導取り締まりですか、そういうことで、これは総理府の方が全体をまとめてやっておられるようでございますからお尋ねをするわけでありますが、ここの資料にも過積の場合がダンプカーの占める割合というものが非常に多いわけです。で、特別にこのダンプカーに対する指導をどのようにおやりになっておられるかということをまずお聞きしたいと思います。
  57. 室城庸之

    政府委員室城庸之君) いわゆるダンプカー規制法が制定されました以来、ダンプカーの協業化ということを中心に、いわゆる白ナンバーの一匹オオカミとも言いますが、一人一車で土砂を運んでおります、こういったものに対する指導をよりやりやすいような方向に持っていきたいということで努力をしてまいっておるわけでございますが、御承知のように現在昭和五十一年末の時点でダンプカーの保有台数は十八万八千台強ということになっております。したがいまして、これ全部がもちろん一匹オオカミというわけじゃございませんで、いわゆる青ナンバーのダンプもございますし、またしかるべき雇用形態のもとで稼働しておるというものもあるわけでございます。ただ、いわゆる一人一車と言われるような形になっております零細なものがかなり多うございまして、一台だけで使われておるという形のものが統計上は七万八千台ほどございます。もちろんほかのトラックと合わせて、ダンプカーを一台だけ持っておるというものもこの統計に入っておりますので、全部がいわゆる一匹オオカミというわけじゃございませんが、このうちの約五万台強ぐらいのものがいわゆる一匹オオカミと言われるものに当たるのではないかというふうに推定されます。   〔委員長退席、理事安恒良一君着席〕  そこで、私どもといたしましては、ダンプカーをできるだけ一台ごとに放置しておくということでなくて、これをできるだけまとめまして、そこでダンプカーとしての機能も万全に果たす、同時に個々のダンプカーの運転者に対しても安全教育が行き届きやすいようにするというようなことのために、各都道府県にダンプカー協会というものを組織するように働きかけてまいりました。昭和四十九年以来、これに対して総理府あるいは運輸省の方から補助金も出すというような形でその助成につとめておるわけでございますが、現在時点全国に二十四道府県にこのダンプカー協会というものがつくられております。ただその中に加入しております台数は、いまの二十四道府県で登録台数が十万台強でございます中で、約四万台ぐらいでございまして、加入率といいますか、これは約三七%。ダンプカー協会をつくっておる県でありましても、必ずしもすべてのダンプカーがその協会のメンバーになっておるということではございません。  したがいまして、できるだけこのダンプカー協会というものを各県に設置するように今後とも努力を続けますと同時に、加盟ダンプカーをできるだけふやしていくということによりまして、ダンプカーに対する一つの地位保全のためのいろいろな団体としての活動ができるようにすると同時に、交通安全教育を加入メンバーについては徹底的に行っていくというようなことで指導をしてまいりたいと思います。そういったことに対する指導のための経費について、国も都道府県に補助をするというような形をとってまいっている次第でございます。
  58. 広田幸一

    広田幸一君 特に私がダンプカーの問題を取り上げますのは、ダンプカーは   〔理事安恒良一君退席、委員長着席〕 ダンプカーなりのこれは経済の上に大きに役立っておると思うのですけれども、いまおっしゃったように個人個人というのが多いわけです。それを協業化して、この地位の保全のためにやっていこうという総理府考え方はそれでいいわけですけれども、実際問題として過積があるわ、いろいろな事故につながっておるというのが特に地方では見えるわけですね。ですからダンプカーに対して、もっと取り締まりというものを厳しくやってもらいたいというのが住民の声です、これは。あの戦車のような大きなものがびゅっと走りますと歩行者はびっくりするわけです。そういうことで、私も総理府としても非常に苦慮されておると思うのでありますけれども、どこに一体問題があるのか、その問題を解消するためにはどうしたらいいのか。完全なものはないと思いますけれども、努力されておる目標があると思うんでありますが、そういうことについて答弁を願いたいと思います。時間がありませんから簡単で結構です。
  59. 室城庸之

    政府委員室城庸之君) かいつまんで申し上げますと、ダンプカー対策につきましては、従来もいろいろ政府各機関が集まりまして交通対策本部という組織の中でいろいろ検討も進めてまいり、対策も進めておるわけでございますが、いまだに十分な成果が上がっておるとは言えない状況でございます。ただ、これにつきましては、ダンプカーの過積載というものを生み出しますいろいろな背景がございまして、御承知のように重層下請構造というものを特色とするダンプカーの稼働実態そのものにメスを加えませんと、なかなか根本的な解決にならないのではないかということで、総理府及び関係省庁によりまして、昭和五十一年度並びに五十二年度、いろいろなダンプカーの実態を把握するための調査を進めております。今年度の予算にも総理府に約三千万円のダンプカーの実態調査費をつけていただきましたので、これは十一月に大体総理府分の関係調査を実施することにいたしておりますが、そのほかに労働省あるいは通産省こういったところでも、それぞれの立場からの実態調査を現在進めております。  したがいまして、五十二年度のそういった各種の調査を総合しました上で、むしろいままでやりました問題のほかに——ほかにといいますか、もう一つ本質に迫るような抜本的な対策を講ずる努力を五十三年度以降にやりたいというふうに考えておるわけでございまして、一部、たとえばいまお話ございました自重計というようなものを義務づけておりますいまのダンプカー規制法、こういったもので果たして実効が上がるのかどうかというようなことから、ダンプカー規制法についての内容的な再検討を迫られておるんじゃないかというようなお話も承っておりますが、私どもとしましては、この実態調査を踏まえた上でその問題もあわせて、要するに過積載をしてダンピングをやらなければ食っていけないと、こういう実態そのものに何らかの手当てをいたしません限りは、結果としてのその過積載の取り締まりだけではこの問題に対処し得えないというふうな角度から進めております。
  60. 広田幸一

    広田幸一君 最後に、これは運輸省の関係になると思いますけれども、運輸事業振興助成交付金、こういう交付金制度が五十一年と五十二年の時限立法として出ておるわけでございますが、これに関連をして質問をいたしますが、五十一年と五十二年で、大体どこがもらうのですか。これはトラック協会でございますか、総額で二年間で幾らになりますか、まずそれをお聞かせいただきます。
  61. 梶原清

    説明員(梶原清君) 五十一年度につきましては、バス、トラック合わせまして約八十四億円でございます。これは東京都が除かれておりますが八十四億円。本年度につきましても、ほぼ同程度の額が交付されるものと見込まれております。
  62. 広田幸一

    広田幸一君 八十四億ですからざっと二倍の百七十億ほどでございますね。大体百七十億程度でいま運輸省が考えておられる事業がやれるかどうか、これでは足りないとこういうことになりますか。いま二年間に計画をして実施されておるものがあると思うのでありますが、そういう内容を含めて今後の問題としてどういうふうにしたらよろしいか、運輸省としての考え方、方針をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  63. 梶原清

    説明員(梶原清君) 運輸事業振興助成交付金の制度は、先生案内のとおり五十一年度の税制改正におきまして軽油引取税が約三割引き上げられましたことに伴って、自動車税制について営業車と自家用車の区分をつけるという考え方に基づいて設けられた制度でございます。この税制改正は、御案内のとおり五十一年度と五十二年度の暫定措置として行われておりまして、税制改正措置が今後とられます場合に軽油引取税の引き上げが行われ、交付金制度が引き続いて継続して行えるように運輸省としても希望しておるわけでございますが、その際、この交付金によりまして各般の事業をやっておるわけでございます。各都道府県ごとに事業をやっておるわけでございますが、中央におきまして特に私ども力を入れておりますのはトラックステーションの建設計画でございまして、五十一年度と五十二年度の計画といたしましては、国道四号線——これは福島の飯坂でございますが、国道一号線浜松市、それから国道二号線のおよそ中間地点にトラックステーションを建設をいたしたいというふうに考えております。  今後も、先ほど申しましたように、この運輸事業振興助成交付金が継続されます場合に、引き続いてこういう事業を積極的にしてまいりたいと考えておるわけでございます。トラックステーションの建設につきましては、幅広い強い要望がございますので、これに積極的に取り組んでまいる覚悟でございます。
  64. 広田幸一

    広田幸一君 いまおっしゃった福島、浜松ですか、大体この三つあればいいというふうに思っていらっしゃるのか。  それからもう一つは、これは中央の段階で全国の視野に立ってこういうことが考えられておるわけでありますが、いまありましたように、各都道府県にそういった金もおりるわけですね、幾らかおりるわけですね。そこにも大体同じようなものを設置させるという考え方であるわけですね。  時間がありませんので、そこで実態をどういうふうに中央として、運輸省として掌握されておるか。といいますのは、小さい県、大きい県あるわけでございますが、これは軽油引取税の還元される額が都道府県によって非常に違うわけですね。ですから、いま一つの施設をつくろうと思いましても一定の金がかかるわけです。もちろんいいものをしようとすれば何億というものもかかるでしょうし、しかし小さいものをしましても一定の限度があると思うのです。小さい県でしたら金が集まらないために何にもできないということになってくるわけですね。私はそういう意味で、全国実態を、運輸省としてはどこには大体どのくらいの金が入ってくる、これではこの規模の程度のものしかできない。しかし、つくるならば一定のこの程度のものはつくっていかなきゃならぬというそういう試案があると思うのでありますが、そういうものをひっくるめて各都道府県の実態をどのように把握しておられるのか。いまおっしゃったように来年度以降ももっと予算を、交付金を要求していくという、そういう姿勢のようでありますが、そのことはまことに結構ですし、またそうあらねばならぬと思うんでありますが、そういうような全国的な情勢を見て、さらに中央が助成をしていくとか、そういうようなことについてどうお考えになっておりますか。
  65. 梶原清

    説明員(梶原清君) 交付金制度につきましては、その県ごとの交付金、バスにつきましてはそれの約四割、トラックにつきましては三割を中央に供出していただきまして、そこで、中央でできる仕事、たとえばいま申しましたトラックでございましたら、全国的な視野でトラックステーションというものをつくらなければいけませんから、そういう中央の事業として事業をやるわけでございます。  で、各県におきましても、それぞれトラック協会から陸運局なり県に申請を出しまして、事業計画のチェックを受けて適切に運用をしていくというやり方をいたしております。地方につきましても同様でございまして、この交付金によりまして、この交付金制度の所期しております目的が完全に遂行できるように、関係地方公共団体あるいは中央官庁などにおきましてチェックをいたしておるわけでございます。今後とも適正な運営ができますように努力をしてまいりたいと、かように考えております。
  66. 広田幸一

    広田幸一君 もう時間がありませんので、もう  一遍確認をしますが、五十一年、五十二年であるわけですけれども、いま中央が考えておるような構想ではまだ金が足りないから来年度も将来に向かっても要求していくと、こういうことでありますね。
  67. 梶原清

    説明員(梶原清君) この交付金制度につきましては、運輸省としましては継続をしてもらうように強く希望をしておるわけでございます。
  68. 広田幸一

    広田幸一君 私の質問は時間が来ましたのでこれで終わるわけでありますが、きょうは総元締めの総務長官もおられるわけですから、私最後に、総務長官に御答弁願ったのは一回でございますが、まとめとして私は申し上げておきたいと思うわけであります。  私がきょう申し上げましたのは、交通事故から本当に何の罪のない、何の関係のない人たちをいかにして守っていくか、そういうところに私たちの視点を向けていかなければならない、こういうふうな意味で私は御質問申し上げたわけでありますが、考えてみまして、確かに日本人は長い歴史的な慣習もございますし、複雑な人間関係もありましょう。また最近の経済の不況というような業界に対するいろいろな影響もあると思いますけれども人命尊重こそわれわれの終局の私は目的であると思っておるわけです、この委員会はですね。ですから、全く無関係な人間が毎日無謀な自動車運転によって命を奪われるということは、もうこれ以上放置できない。何にも優先をして国民の皆さんが交通事故の心配から解放されて安心して生活ができる状態をつくってもらうように、困難な問題もあろうと思いますけれども、私は緊急な課題として総務長官に一層の努力をお願いをして私の質問を終わります。
  69. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 私は、主として道路交通上の安全対策について、いろいろな点から主として警察庁にお伺いしたいと思います。  第二次交通安全施設等整備事業五ヵ年計画、これが昨年度、五十一年度からスタートして本年はちょうど二年目になりますが、交通事故による死者の数を対前年比で五%減少させることを目標に掲げておられたと思いますが、現時点事故発生状況はどのようになっておりますか、お伺いいたします。あわせて、目標達成のめどについての御説明を願いたいと思います。
  70. 杉原正

    政府委員杉原正君) 一昨日、十四日現在の全国におきます交通事故による死者数でございますが、七千七百五十五人ということでございまして、前年対比、前年同期に比べまして六百八十八人、パーセントにいたしまして八・一%の減少ということで、年間五%は減らしたいと、こういう目標を立ててやっておる事柄につきまして、現在までの状況から見ますと、やっとそれを上回った減少率になっております。  ただ、今月から来月にかけまして、かなりまた年末を控えてのいろいろな車の動きが活発になってまいりますが、さらに街頭指導その他を徹底をいたしまして、何とか現状を維持して五%の目標の達成をしたいと思っておりますし、またそれはいまのところ可能ではないだろうかというふうに考えております。
  71. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 手元に六月末までの上半期の事故発生状況をまとめた警察庁資料をもらっておりますけれども、これによりますと、ことしの上半期だけで見ますと、発生件数で前年度に比べて四%の減少死者数で一一・九%、負傷者が五・七%の減と、いずれも効果は上がった数字になっております。それだけに結構だと思いまするけれども、ところがこの反面に、死者の数で長崎県では四〇%と非常に著しい増加が認められるわけでございますけれども、この原因についてはどのようにお考えになりますか。
  72. 杉原正

    政府委員杉原正君) 長崎の場合でございますが、これは基本的にこの長崎は過去五十一年まで四年連続してずっと減少してまいりまして、昨年の全国の人口十万人当たりのいわゆる事故率は八・七人ということでございますが、長崎は十万人当たり五・九人という、ほかの県に比べて長崎の事故率というのは非常に低いという前提があるわけでございますが、それにしましても、ことしの上半期について見ますと四〇%ということで、昨年に比べて非常にふえたということでございましたが、この原因は、先ほど広田先生から御指摘ありました、実は酔っぱらい運転に起因するものが非常に多かったわけでございます。そこで、長崎におきましては、酔っぱらい運転を中心にいたしました県民総めぐるみの安全運動をやり、片方で街頭の指導取り締まりを強力に実施をいたしました結果、昨日現在につきましては死者が八十八人で、一ころ四〇%ふえておったものが、前年対比四人の増、パーセントにしまして四・八%の増というところまで食いとめてきておるわけでございまして、ふえました原因は、非常に顕著に酔っぱらい運転による死亡事故が上半期ふえたというのが実態のように思います。
  73. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 つかぬことを伺いますが、そうすると長崎県で祭りとか何とかという特別な行事か何かがあったためにこういった特異な現象が起きたのでしょうか。そういうことは警察庁ではおわかりになりませんか。
  74. 杉原正

    政府委員杉原正君) これ、先ほども指摘ございましたけれども、酔ぱらい運転というのはかなり倍数もありますので、これは各県について言えることでございますが、やはり酔っぱらい運転というものを街頭で取り締まりを強化するということが、これはもう単に酔っぱらい運転に限らずいろんなものの交通秩序をつくり上げる上に大変な効果があるようでございまして、そういう意味でたまたまこの酔っぱらい運転の大きな事故というのが続いた、それに関連してこの酔っぱらいに県ぐるみで総力を挙げてやるということが非常に結果的に効果があった。特にお祭りがあったとか何とかということではなくて、そういう一般的な事故実態に県民が皆さん反省をなさったということが実態ではなかろうかというふうに思います。
  75. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この上半期までの死者の数が、構成比から見ますると、自転車の乗車中のものと、それから歩行者のいわゆる交通弱者ですね、これが依然として全体の六〇%と非常に高い率になっております。この点で、まだ非常に残念でありますが、大いに努力しなければならないのではないかと感ずるものですけれども、こうした交通弱者を事故から守るということについてどのようなところにむずかしさがあると考えられるのか。またさらには、どのような対策を講じていかれるつももりか。当局者としてのいままでの御苦心、それからこれからの対策というようなものについてお考えを承りたいと思います。
  76. 杉原正

    政府委員杉原正君) 御指摘のとおり、交通弱者の事故の比率が、事故が減った減ったと言いながら依然として高いわけでございますが、非常にむずかしさがありますのは、この歩行者の場合にはドライバーと違いまして、よちよち歩きから老人に至るまでの安全教育の対象が非常に広いということ、それから、それに反しましてドライバーのように何か法令講習なんかでやるという組織的な機会というものが余りないというふうなことでございますが、やはり家庭学校、社会、そういった面についてのもっと組織的、体系的な交通安全教育についてのとらえ方というものがもっと推進されなければならないだろうというふうに思います。ただ、私どもこの対策としていろいろやっておりますのは、例のスクールゾーンでありますとか、生活ゾーンでありますとかと、ああいうふうな歩行者とか自転車利用者の安全確保対策とか、あるいは幼児につきまして、幼児の交通安全クラブあるいは交通少年団というふうなものの結成をする。あるいは警察官とか交通巡視員等が、これは若干細かいような話になりますが、子供がいる家庭とか老人の宅などにお伺いしたときに事故実態等お話をして注意を喚起さしてもらうというふうな事柄をやっております半面、やはり具体的な交通規制等の面につきまして、たとえば住宅街から大型自動車の通り抜けなどを禁止するような措置、あるいは車が通ります際に、両方通ると、相互交通をすると歩行者がもうほとんど通れないというふうな状況であれば、もう思い切って一方通行にして両側に路側帯をうんと広くとるというふうな措置、あるいは自転車等につきましては、やはり自転車用の横断帯というふうなものを設けていくというふうなことを積極的にこれからも取り上げていきたいと思いますし、それからまた街頭の指導取り締まり等につきましても道路交通法の上で歩行者妨害行為というものがあるわけでございますが、この取り締まりを強化をするということで、昨年約十万件の歩行者妨害事案というものを検挙をいたしておりますが、そういう安全教育とか規制とか街頭取り締まりというふうなものを総合的に強化をしていくというふうなことで、できるだけこの交通弱者の犠牲というものを食いとめるように努力を積み重ねたいというふうに考えております。
  77. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、自転車の安全に関してお尋ねしたいと思いますけれども、四十五年の道路交通法改正によりまして自転車も歩道を走行することができるようになりました。まあ車からの安全措置がとられたわけでございますけれども、それはそれだけに効果があったわけでございますが、これは自転車は歩行者との共存が可能であるという認識だったわけですけれども、最近のサイクリング車などはかなりのスピードを出せるような構造になっております。ですから心ずしも対人殺傷力が微弱だとは言えないではないか、こういうふうな気がするんですけれども、その点はいかがですか。
  78. 杉原正

    政府委員杉原正君) 確かに御指摘のとおりでございまして、最近自転車で多いのは十段式ぐらいの多段式の変速機つきの自転車がはやっております。これは登坂——坂を登るときには非常に効果的でありますが、逆を考えますと、これはもう自動車よりもはるかに早いスピードが出てまいりまして、これ正確な全国統計でございませんが、私ども現実に知っておるものだけでも、自転車が歩行者にぶつかって歩行者が死亡したという事故がことし二件、それから自転車同士がぶつかって死んだというのが二件というふうにあるわけでございまして、そういう意味で、自転車はけがを与える際に微弱なものだという必ずしも認識ではございません。やはり自転車につきましても、道路条件あるいは交通実態あるいは当該その自転車に乗る人の年齢の問題、あるいは講習みたいな問題というふうなものもこれから逐次体系的に考えていかなければいかぬのではなかろうかという感じがいたしております。
  79. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまのお話で、そういった事故が起きてくる。非常に残念ですけれども、自転車同士で二件あったというようなお話ですけれども、自転車とそれから歩行者との間の事故件数というのは何か統計的におとりになったものありますか。
  80. 杉原正

    政府委員杉原正君) 先ほど申しましたのは自転車同士がぶつかって死んだのが二件、それから自転車が歩行者にぶつかって歩行者が死んだというのが二件あるわけでございます。
  81. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 それだけですね。
  82. 杉原正

    政府委員杉原正君) いまのところ把握しているのはそれだけでございます。死亡事故でございますから、けがしているのはまだたくさんあるわけでございますが、死亡事故だけでございます。
  83. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 自転車にとっては安全の措置でありますけれども、歩行者の側から見ればかえってその安全を犠牲にされるものであって、やはり何らかの配慮をしていかなきゃならない問題ではないかと思います。もちろん件数はいまのように非常にもうごくまれなことになってますけれども、これらについて何か当局で対策をお考えになっておられますか。
  84. 杉原正

    政府委員杉原正君) いま確かにこれだけ車がふえまして、片方で道路の整備というものがまだ十分でないという実態で、道交法改正をいたしまして自転車が歩道を通行することができるようになっておりますが、自転車がどうしても車道を通行することが危険である、しかも歩道を見て、歩行者の交通量から見て歩行者の通行にも支障がないという道路を選定をいたしまして、歩道の通行可ということをやっておるわけでございます。  しかも、単に歩道を走っていいということではなくて、また、歩道の上に線を引きまして車道側を自転車は走ってください、内側を歩行者は歩いてくださいと、こういうふうな指導をいたしておりますが、逆にまた、私ども聞きますのは、歩行者の方の側からすると、歩道の上に自転車が通って危険だと、こういうふうな声もあるわけでございますので、具体的な道路選別、道路条件、交通量、歩行者量、そういうものをよく見きわめながら、具体的な自転車の安全対策、歩行者の安全対策というふうな観点から措置を進めていきたいというふうに考えております。
  85. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま自転車の中で三輪自転車というのが出てきましたですね。これは非常に主婦などの買い物に便利なものですから、出現してきて、はやってきておると思いますけれども、これなどの数だとか、そういうものはまだお調べになっておりませんですか。
  86. 杉原正

    政府委員杉原正君) 私どもの調べですと、大体二十五万台から三十万台ぐらいではなかろうかと……
  87. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 全国で。
  88. 杉原正

    政府委員杉原正君) 全国でございます。
  89. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この例の三輪自転車というんですか、正式に何という名前か知りませんが、これはいまお話ししましたように、買い物などに便利なものですから非常に数がふえてきたわけですけれども、これを歩道を通行できるようにしたいという要望がしたがって強いわけでございますが、これはまた、いろいろと事故の問題にもつながりますし、一般交通に妨害になるという懸念もございまするけれども、これについてどのようなお考えをお持ちですか。
  90. 杉原正

    政府委員杉原正君) 御指摘のように、いま自転車の歩道通行の可能なのは法律上二輪だけでございまして、三輪は車道を通行せざるを得ない法令上の規定になっておるわけでございますが、御指摘のように非常に最近三輪がふえております。この三輪自転車にどこを通っていただいたら一番いいんだろうかということで頭をいま悩ましておるわけでございますが、この問題につきましては、歩道の幅員の問題、それから逆に、またそれを通すことの歩行者の安全の問題、それから三輪の大きさ、構造、それから操縦性の問題というふうなものを総合的に検討する必要がありますので、今後さらに実態を見きわめた上で対策をとるようにしていきたいというふうに考えております。
  91. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次に、五十二年度の上半期までの死者状態別数を見ますと、上半期の統計では二輪車乗車中の事故が一四・九%と非常に高い減少率になっていますけれども、この成果についてはどのような結果からこんなことになったか、おわかりでございますか。
  92. 杉原正

    政府委員杉原正君) 二輪が確かに御指摘のように減っております。  ただ、交通事故の要因というのは非常に複雑でございますので、一概に結論づけることはできませんが、大体こういうものがある程度事故減少にあずかっているんじゃないだろうかと思いますのは、五十年、おととしの十月一日から、二輪免許というのが四百ccを超える大型と、それから百二十五から四百ccまでの中型と、五十以下の小型というものに分けられまして、運転者が身体条件とか技能に見合った車を使用するようになったと。特に従来ですと、下の方で受けましてもナナハンが乗れるというふうなことで、かなりいまの暴走族に使われたわけでございますが、試験車そのものを、ナナハンに乗るには、もうナナハンの車でしか運転させないというふうなことになりましたので、そういう意味で、かなり小さい人が大きなナナハンに乗って運転するというふうな事柄がほとんでなくなりまして、そういうことも一つの原因だと思います。  それから二輪の運転者に対します技能を含む安全講習がかなり充実をいたしまして、受講者というのが昨年は一昨年に比べて五〇%ぐらいふえているというふうなこと、そういうものがかなり効果を上げていると思います。  ただ、これは上半期が約一五%という減少でございますが、十月末現在でありますと、これはまた八%ぐらいに落ちておりますので、一概にまた安心ばかりもしておれないというふうなことでございますが、いろんなやっぱり総合対策を進めていかなければいかぬというふうに考えております。
  93. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この二輪車に関連しまして暴走族の取り締まりについてですけれども、最近二、三の暴走族が解散したと、このようなことを新聞紙上なんかにも報道されておりますが、最近の暴走族の現状とそれから取り締まり対策について御説明を願いたいと思います。
  94. 杉原正

    政府委員杉原正君) 暴走族につきましては非常に先生方に御心配をかけておるわけでございますが、大体いま私ども暴走族につきまして把握をしておりますのは、これはことしの夏の時点でございますが、大体全国でグループ数として三百五十三グループ、大体対象が二万一千人程度のこういうグループがあるんではなかろうかということでございます。最近の傾向を見ておりますと、成人よりも少年、少年でもだんだん年齢がいわゆる低年齢化しているといいますか、そういう状況が出ておるわけでございます。これ、毎土、日、全国で約一万人ぐらいの警察官を街頭に出して処理をしておるわけでございまして、もう最近では、若干通常の子供の遊びという形のものから、グループ同士が対立抗争事案を引き起こすと、現場的には鉄パイプとかああいうものをトラックに積んで出かけていくというふうな、事案によりますと凶器準備集合罪で措置をしなければならないようなそういう事案に発展するようなケースが非常にふえてきておるわけでございます。  こういう情勢に対しまして、私どもおととしの六月、中央に暴走族対策委員会といえものを設置をして、これは単に交通面であらわれた現象を処置しておれば済むというものではなくて、非常に根の深い、背景の広いものでございますので、関係機関等と協議をしながら措置をするようにいたしておるわけでございます。  なお、現場での通常こういう違反行為につきましては、よほどのことがありませんと逮捕などということはいたしませんけれども、こういう暴走族、車をひっくり返して火をつけるとかというふうな、若干傍若無人のような振る舞いがございましたので、昨年に比べて約六割方多い逮捕者等を処置しておりますが、同時に実態を最近見ておりますと、ほとんど、ヘルメットを脱ぎますと本当にかわいい顔をした少年たちでございますが、やはりその中にリーダーがおりまして、これがやはり全体に対して大変な影響力を持っております。  そういうことで、特に今回そういう暴走族のリーダーとか、あるいは全部が集団で信号無視で走るような、そういうことを扇情したような、そういう暴走行為のリーダーにつきましては、そもそもそういう集団に対するそういう役割りを果たした行為者については二カ月の運転免許停止をするというふうな措置を今回とることにいたしたわけでございますが、今後関係法令をいろいろ駆使をしながら、一般のドライバーあるいは一般の住民に対する迷惑というものを最小限に食いとめるように、教育機関、職場あらゆる方面と連携をとりながら措置をしていこうというふうに考えておるわけでございます。
  95. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いまのいわゆる暴走族のリーダーですね、このリーダーになる者はやはり一般の大人の社会といいましょうか、暴力団なんかとの関連というものはないわけでしょうか。その辺はいかがでしょうか。
  96. 杉原正

    政府委員杉原正君) 若干その中に暴力団の準構成員であるというふうなことで措置をしたケースもありますが、大半はいわゆる暴力団との面接的なつながりというふうなものはいまのところ把握をいたしておりません。
  97. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 それからもう一つは、やはりこういった集団的な暴力行為が行われるということ、それでまあ一般の市民に非常な迷惑を与えるということについての警察取り締まりですね、これなんか、何かこう、いま局長のお話の中にも非常にかわいい顔をした云々というふうな愛情をお持ちのようなことで、何か非常に手ぬるいような感じも若干するんですけれども、この辺についていかがですか。
  98. 杉原正

    政府委員杉原正君) 非常にこれ、将来の少年の措置の問題、先のある少年でございますので、そういう基本というものは私どもはあくまでも捨ててかかっては間違うという認識のもとに措置をしておりますが、たとえば昨年とことしどういう状況になっておるかと、こうちょっとかいつまんで取り締まり状況を申し上げますと、大体ことしの一月−九月、同じ期間を去年と対比をいたしてみますと、道交法が約一万四千件で去年に比べて二四%増、刑法犯、これはもう火をつけるとかいろんなものがございますが、これがことし五百件、昨年に比べて約五七%増、それから暴力行為処罰に関する法律違反、こういうふうなものが約百五十件。で、こういう形で特に逮捕をいたした者がことしの一月から九月で千四百人、昨年に比べて約六一%の増という形で処理をいたしておりますが、ただ少年の問題につきましては、成人と違いまして、送りましても後の処分というのが、少年法の適用を受けますために成人で措置をするようなわけにはなかなかまいらないという実態は確かにございます。  ただ、子供、少年自身についての将来の問題を片方でじっくり腹の中に入れながら、やっている行為というものが市民に対してやはりこれだけの影響を与えているということになりますと、単に処罰の問題だけでなくて、その人が運転免許を持って生活をすることの可否の問題をやはりとらざるを得ない。むしろそちらの方からのアプローチを中心に考えていった方がいいのではなかろうかというふうな考え方を持っておるわけでございます。
  99. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 最近原動機つきの自転車が非常なブームでもって、ここ一年間でもって保有台数も非常にふえていると聞いておりますが、何台ぐらいいまありますか。
  100. 杉原正

    政府委員杉原正君) ちょっと私、いま正確な数字あれしておりませんが、たしか原つきは保有台数が八百万台くらいになっておるんじゃなかろうかと思います。
  101. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 八百万台というのは相当な数だと思いまするけれども、こうしたブームが起こっているということは、利用者が非常にふえているということは結局どういうことかというと、事故の増加ということが懸念されるわけですけれども、この原動機つきの自転車によります最近の事故発生状況、それから事故のタイプですか、類型、こんなことについては何か統計できてますか。
  102. 杉原正

    政府委員杉原正君) 十月末の現在で見ますと、原動機つき自転車乗車中の死亡事故死者数は五百八十人になります。前年同期に比べまして十八人、三%の減少ということになっておるわけでございます。  この原つき自転車乗車中の死亡事故の類型について見ますと、原つきと自動車、これが四百六十五、六五・六%、それから何かにぶっかって単独によります死亡事故、これが二百十七人の三〇・六%、踏切で亡くなられた人、踏切事故というのが二十七人というふうな状況でございます。
  103. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 これは傾向としてはやはりどんどんこれからふえていくように思われますか。それとも、いまの事故件数も何かちょっととまったような状況のようですから、この程度のものでこれ以上の急激なブームはないというふうにお見通しでございますか。
  104. 杉原正

    政府委員杉原正君) むしろいまいろいろな経済情勢その他に関連をいたしますので一概には言えないと思いますが、いま御婦人方の原つきの利用という、免許を取って運転するという傾向が非常に顕著に出ておりまして、これはまあ将来のエネルギー、ガソリンの節約というふうなもの等々考え合わせますと、これから特に女性の方たちの利用というものがかなりふえるのではなかろうかというふうに考えておりますので、そういうふえた車という——これは裸だもんですから、これがやはりこれだけふえ続けます自動車交通の場の中というものを考えますと、絶対数としては決して減少するという状況には必ずしもない、かなりのこれから力を入れていかなければいかぬ面であろうというふうに考えております。
  105. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 おっしゃるとおり、何か原動機つき自転車につきましては女性のインタレストが非常に強い、半数近くは女性だというようなことも言われておりますけれども、それだけに性能そのものもだんだんと優秀なものといいましょうか、高性能のものになってくるということになりますと、いまおっしゃったように、非常に事故ということについて懸念もふえてくるわけでございます。今後原動機つき自転車の安全対策考えなければならないということは相当重要なことだと思いますので、これにつきまして特別に、ことに女性も含めて、どういうふうにしたならば安全対策の上に効果があるかどうか、もう一度お考えを承りたいと思います。
  106. 杉原正

    政府委員杉原正君) いまの原つきにつきましては、御案内のように、いわゆる試験の中で学科はあるのですけれども、技能試験というものは原つきにはやられておりません。事実上技能講習という形でやっておるわけでございますが、二輪車の安全運転推進委員会というふうなものが関係機関団体にございます。そういったところと協力をいたしまして技能講習を中心にしました原つきに対する安全運転講習の内容の充実強化というものを今後積極的に取り上げていかなければならないというふうに思います。それから同時に、いま自動二輪、同じ二輪でも五〇cc以上の自動二輪につきましてはヘルメットの着用義務が課されておりますが、原つきについてこのヘルメット着用というものをどのように考えるかという問題が一つございます。  ただ、女性ドライバーにつきましてのヘルメットというのが守りいいのかにくいのかという、その辺のところは非常に私どもも頭を悩ましておるところでございますが、これだけ普及をしてきますと、やはりおかぶりいただいた方が本当はよろしいのですが、それは指導としては私どもいまもやっておりますが、法令上の問題としてどう考えるかというのも、これからの大きな検討課題の一つであろうというふうに思っております。
  107. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 話題を変えまして、都内の警視庁管内で、ことしから交通事故や騒音のない町づくりを目指して、いわゆるマイタウン計画というものが進められるということですけれども、このマイタウン計画の実施それから規模などについて御説明願いたいと思います。同時にこの計画の効果についてどのようなことをお考えになっているか。
  108. 杉原正

    政府委員杉原正君) いまマイタウン計画という若干こうしゃれた名前でやっておりますが、これは四十九年に昭島を対象にいたしました計画から始まりまして、それの実績を踏まえまして五十一年から多摩地区を中心にして実施をしたものでございます。基本は、これはまあ警察はもちろんですが、自治体とか学校とか、もういろいろな機関を総ぐるみにしまして、一体この町で車というものをどう考えるのだということからスタートした計画でございます。  一番の問題は、やはり住宅街とか、そういう生活に非常に密接している場から、いわゆる通過交通あるいは通り抜けのトラック、そういうふうなものをとにかく一遍締め出す。——締め出すといいますか、それはもう幹線道路の方しか通れない。やたらと従来のように裏通りなどに入らないような措置を講ずるというふうなことを基本に据えまして、買い物道路とか、あるいはスクールゾーンとか歩行者専用道路とか、あるいは歩行者の路側帯、あるいは二トン以上の貨物の生活道路の通行禁止、そういう自転車対策とかいろいろなものをワンセットにしまして、それをこう網の目のようにしまして、網をその地域にかぶせていくというふうなやり方でございます。  これで、昭島で実施前、実施後効果を測定したあれによりますと、実施前に二カ月で五十九件、八十一人の交通事故が、実施後二カ月では三十七件、四十四人になった。それから、交通騒音につきましてもいろいろなデータがございますが、昼と夜を例にとりますと、規制前七十三ホンの測定が同じ測定地点で六十七ホンになる、夜は六十九ホンが五十三ホンになるというふうな、そういう状況でございます。こういうこの成果というふうなものを三多摩からいまだんだんに都内の全域に広げていくという計画で、現在警視庁の方を中心に仕事を進めておるという状況でございます。
  109. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 時間が来たので、うっかりしてました。最後に一つだけ。  このいま奨励していますシートベルトの着用のことですけれども、この春の交通安全運動期間中の調査によりますと、着用率は高速道路で一二・八%、少しずつはふえているようですけれども、まだまだ全般的には十分とは言えません。警察としてはこのキャンペーンなどに非常に力を入れておられるようですけれども、なかなか効果が上がらないのはどのような点に問題があるのか、これらについての対策をお伺いして私の質問を終わらさせていただきます。
  110. 杉原正

    政府委員杉原正君) まだ、いろいろやっておりますが、実態としてなかなか定着するところまでいかない。いまの法令上の扱いとしましては、道路交通法で高速自動車道と専用自動車道についてはシートベルトが訓示規定として着用するように努めなければならないと、こういう形になっておるわけでございます。でも、本当の義務規定、諸外国で一部やっておりますので、こういうシートベルトの着用というものを義務づける必要があるのではなかろうかというふうな一部に強い意見もございます。その際に、どの範囲を義務づけるのか、ドライバーだけにするのか、あるいは同乗者も全部——まあ、いまは訓示規定は同乗者も全部着用させるように努めなければいかぬと、こういうぐあいになっておりますが、そういう義務づける必要性がいまの段階としてどの程度あるのか、それをどのように脅えたらいいのかという問題がございます。ただ、車について正確なその割合はわかりませんが、旧式の車につきましてシートベルトがまだその車についてないという実態等がございます。それから、バス等につきましては、まだこのシートベルトの問題というのがないというふうなこともございます。  ただ、これが守られにくいという、なぜかという点でございますけれども、まあやはり人間本来、こう体の自由というものを余り束縛するというのは好まないあれがございます点と、それからもう一つは、同乗者の場合に、これは同僚とか家族の場合は言いやすいですけれども、上司の場合、目上の人などになりますと、なかなかドライバーも言いにくいとかいうふうなそういう面等もあろうかと思います。確かにこれはもうシートベルトを締めておっていただけば、こういう死んだり大けがをしなくて済んだという事故というのはもう非常に多いわけでございますので、励行をしていただきたいという非常に強い気持ちはございますが、これを対策として今後どうしていくかというふうなことになりますと、総理府初め関係機関の方ともこの着用の実態等を提示をいたしまして、総合的にこれから検討してみたいというふうに考えております。
  111. 山中郁子

    ○山中郁子君 欠陥バス問題と、それに関しまして政府の行政指導姿勢についてただしたいと思います。  最近、十月三十一日ですけれども、いすゞのBU型路線バスがいわゆるリコール届けを運輸省に出したということがありました。この欠陥車ですけれども、いつからいつまでの製造の物で、対象台数が何台になっているかお答えいただきたい。
  112. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 十月三十一日付でいすゞ自動車から運輸大臣にリコールの届け出がございました。  その内容は、フライホイールに取りつけられておりますクラッチカバー、これが特に路線バスについてでございますが、非常に長期間使用しておりますと疲労限度に対する余裕が少ないために、路線バスで長期間にわたってクラッチを使用した場合にはクラッチカバーに亀裂が生じて、そのままの状態で使用を続けるとクラッチカバーが割れて破損に至る恐れがあるというものでございます。  このパスの製作対象期間は昭和三十八年の三月三十日から同四十六年の五月十八日までの間に製作されたものでございまして、対象台数は六千六百四十七台でございます。これにつきましては、すべて乗り合いバスでございまして、乗り合いバスの安全の重要度にかんがみまして、私ども特にバス事業車に点検を指示いたしまして、十二日までに六千六百四十七台金車両についてその点検を終わっております。
  113. 山中郁子

    ○山中郁子君 六千六百四十七台というのは、そうしますと路線バス全体の何割ぐらいになりますか。つまり、路線バスは全部で何台ということになりましょうか。
  114. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 正確な数字をただいまここに持っておりませんが、路線バス約十万台ぐらいであろうと考えております。
  115. 山中郁子

    ○山中郁子君 かなりの分量になるわけで、これが先ほどからずっと議論になっております交通問題での人身事故の問題、大変重要な危険をはらんで現在六千台以上のバスが走っていると、こういうことになるわけで、大変重大な問題だと思いますが、この欠陥が、今度いすゞがリコール届けを出しました理由に基づいて事故が起こったと思われるものが何件あって、負傷者がどういう状態になっているか、これは警察庁にお伺いをいたします。
  116. 杉原正

    政府委員杉原正君) 私どもがこの単の欠陥によるものではないかという、一応のまだ結論を出したわけではございませんが、状況から見ましてそういう推定がある程度可能な事故として三件把握をいたしております。  一つは、四十七年の十一月に神戸市でありました。いずれもいすゞのBU型バスの事故でございますが、四十七年の十一月神戸、ことしの一月浜松市、それからことしの九月の東京江戸川区、この三件でございます。それぞれにつきまして概略御説明をいたします。  四十七年の十一月に発生いたしましたのは、日にちは二十七日の午後七時、約八時前でございますが、神戸市の市営バスでございます。これは、発生いたしました場所は長田区の国道二号線の上でございまして、市営バスが乗客三十五人ぐらいを乗せまして、ギアをセカンドに入れて発進をして、十メートルから十五メートル進んだところでギアをサードに入れようとしてクラッチを切ったところ、後方でガリガリとこういう音がした。同所より約二十メートル進んで停車をしたわけでございますが、運転手がおりてみますと、バスのフライホイールやクラッチ、ディスク等が脱落、散乱をして、歩道上に被害者が倒れていた、こういう事故でございます。これは被害者は五十九歳になられる方で全治二週間ということでございます。  それから、ことしの一月に浜松で発生いたしました事故でございますが、午前九時二十分ごろ、発生場所は静岡県の浜松市の市道上でございまして、これも浜松市の市営バスでございます。これは、発生の状況は、バスに乗客十人を乗せて進行中、交差点で一時停止した後に、先ほどと同じように、セカンドギアで発進して、サードギアに変速をした瞬間に突然車両の後部で爆発音がしたので、急停車してエンジンを点検したところ、クラッチハウジング、カバー等の部品が破壊して道路に飛散をするというふうな状況で、この部分の機材の破裂によりまして乗客二人、それから近くを走っておりました歩行者の一人——乗客は破片が床から飛び出してきた。三名がそれぞれ全治四十二日から五日にかける事故であります。  それから、第三番目のが先般の江戸川の事故でございまして、これは九月の十二日午後五時二十五分ごろ江戸川区の南小岩で発生したものでございますが、京成バスでございます。いずれも三件ともいすゞBU型でございますが、これはバスが先ほどの道路を千葉街道方向に進行中、バスの車体の後部に装着されているエンジンのフライホイール、クラッチカバー、トランスミッション等の部品が何らかの原因で破損し、飛散をし、道路にぱあっと落ちたわけでございます。歩道上を歩行中の女子高校生二人にこの破片が当たりまして負傷をしたものでございまして、いずれも十六歳の女子高校生で、全治三週間、一人が全治十日間の事故になったということでございます。
  117. 山中郁子

    ○山中郁子君 欠陥車で人身事故というのはなかなか余りないケースで、しかもこれがバスでしょう。いま警察庁の御答弁にもありましたように、市営バスとかそうしたあれで、大変重要な問題だというふうに思います。もちろんそのように認識されていると思いますけれども、この欠陥車問題でいままでも国会でも幾つかいろいろ取り上げられました。そして、そのときに共通して指摘されているのは、運輸省がやはりどうしても事業者サイドに立っているのではないか、欠陥車隠しに手をかしているのではないか、こういう疑い——疑いというか、疑念ですね、これがやはりどうしても払拭できないというのが委員会、国会での質疑の中でも一貫していたものだというふうに私も考えます。  それで、この問題がやはりそうであってはならないし、しかしいろいろ事情を伺いますと、その点についてさらにもう一度はっきりさせておきたいし、今後の運輸省の行政姿勢ですね、その上ではっきり確立をしていただかなきゃならない問題だというふうに思いますが、このバスは四十六年に、いま問題になっておりますクラッチカバーの厚さを十ミリから十三ミリに厚くしたと、つまり変更したということがありますが、これはもちろん事実だと思いますけれども、なぜ厚くしたのか、運輸省はこれを知っていたのかということについてお答えをいただきたい。
  118. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) いすゞのクラッチカバーの設計変更をしたという点についてお答えを申し上げます。  ただいま問題になりましたBU型バス、これは昭和三十八年から生産されておりまして、その時点におけるところのフランジの厚さは十ミリメーターでございました。で、昭和四十六年の一月からBUのK型という別の型式のバスが新たに製作されたわけでございますが、これはBU型バスが出力が百九十馬力でございましたのに対しまして、このK型につきましては二百五十馬力ということで、出力を三〇%上げておりますわけでございます。したがいまして、動力伝達トルクも大きくなりますので、クラッチについての強度も要求されるわけでございまして、この時点におきましてのクラッチカバーのフランジの厚さは十二ミリということで設計がなされたわけでございます。で、この時点において部品の共通化のためにBU型のバスと共通部品として、このBUのK型のバス、K型と同じクラッチカバーを使用したわけでございます。したがって、その意味におきましては、BU型につきましても、この時点から十二ミリのものが採用されることになったわけでございます。さらに、昭和四十八年の一月にクラッチカバーのコストダウンを図るために、クラッチカバーの材質を変更いたしまして、これに伴ってクラッチカバーのフランジの厚さを十三ミリメーターに変更いたしましたわけでございます。したがいまして、四十八年一月以降のものにつきましては、すべて十三ミリが使用されておるという実情でございます。  で、実は私どもに、これを設計変更した時点において届け出があったかどうかという点についてでございますが、私どもに届け出になりますのは、型式指定規則の十条、十一条によりまして、諸元表の記載事項につきましては届け出で承認をすることにいたしております。諸元表の記載事項にクラッチカバーの厚さというのはなっておりませんので、その意味におきまして、この時点においての届け出はございませんでした。
  119. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうすると、いつそれは御承知になったわけですか、運輸省は。
  120. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 今回の事故及びリコールを行うべく調査並びにリコールの説明を受けております段階でわれわれが知り得たことでございます。
  121. 山中郁子

    ○山中郁子君 これは私は、一つは、それが事実ならば業者の怠慢であるというふうに判断しなきゃならないことだと思うのですよ。いまおっしゃったけれども、実際問題としてこのクラッチカバーが原因で事故が起こって、そして業者がみずからリコール届を出しているわけでしょう。それでしかも、それは四十六年までの生産の分と。だから四十六年に何らかの変更をしたことがその欠陥の理由と関係あることは事実ですよね、そのクラッチカバーの問題が。それじゃ、どういう欠陥があって四十六年にそれを変更したのかということが把握されてなきゃいけないはずですね。  で、逆に、ですからあなたがおっしゃるように、ただ馬力アップということだけでなくて、そういうことじゃなくて、この保安基準の中で、動力伝達装置は運行に十分耐えるものと規定している。さらに、型式指定規則の十三条は、保安基準に適合しないもの、また適合しなくなるおそれがあると、そして原因がメーカーにあるものは運輸大臣に届けなければならないと、こうなっていますね。私は、当然この中に入る問題だと思います。その時点であなた方がそういうふうに認識しなかったとしても、いまその後の推移でもって、結果的に見て、それが原因で事故が起こって、しかも三回も事故が起こって、そして欠陥車の問題では比較的まれな人身事故まで起こって、そしてリコール届を出してきているという事態ですから、私は、この点に関しては業者の責任を運輸省としては厳しく追及をして反省を迫るということをおやりになる必要があると、いまの段階では明らかにそうだと思いますけれども、いかがですか。
  122. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) メーカーが設計変更をいたします理由が幾つかあるわけでございまして、もちろん欠陥のおそれがあって、そのために設計変更するというケースもございます。それから、技術の改善、技術の進歩によって設計変更するというケースがございます。もしくは、今回のケースのように、他の似た大きさの車、エンジンが開発された場合に、それと部品の共通化のために、二つの部品を生産するよりは、寸法が同じならば一つの部品を生産して、それで生産量を上げて一個当たりの単価を安しくていくというための設計変更という点はあるわけでございます。  で、四十六年の時点において、果たしてそういう欠陥状況がわかっていたかどうかという点につきましては、私どもはまあその後四十七年の事故の後におきまして、いすゞ自動車に対しまして調査の指示をいたしまして、いすゞが繰り返し試験による耐久試験をやり、その時点においては欠陥の状況は呈していなかったわけでございますが、本年一月の事故を起こしましたときに、さらに調査を命じまして、で、この時点において、いすゞ自動車は、従来このBU型バスを開発した時点、この時点におきましての設計の考え方と、それよりも非常に長期間使用されるようになっておる、まあそういったような観点を考慮いたしまして、この時点でやはりクラッチカバーが亀裂を生ずることがあり得ると判断して、リコールを進めようとしておったやさきに第三の事故が起きたということでございまして、早急にその対策をとったということでございます。  しかしながら、三回の事故を経なければその原因がわからなかったこと、このことは非常に重要であると私ども考えておりまして、いすゞ自動車に対しまして、自動車局長から厳重に警告をいたしますとともに、今後こういったことを繰り返さないように厳重に警告によって指示したところでございます。
  123. 山中郁子

    ○山中郁子君 率直にもう少し言っていただきたいのです。というのは、少なくとも四十六年のこれをあなた方がもし改善だと、馬力アップだというふうに強弁なすっても、その後すぐ四十七年にもう事故が起こっているんですよね。そしてこれがクラッチカバーの問題だということははっきりしているんです。そうしたら、そこにやっぱり問題がある。そしていろいろ調査をした、一カ月か半年くらい調査をしたというなら話はわかります。四十七年から現在までもう五年もたっているんですよ。五年でその欠陥車であるいすゞバスが六千台も走っているわけですわ、日本じゅうをね。そして引き続き事故が起こってきた。そして五年もたって三回も人身事故が起きなければ、それが欠陥車だという認定ができないという業者が言うことを、あなた方がまるのみにして、ここでそういうふうに答弁なさるというのは、あなた方の姿勢が全く業者のサイドに立っているという以外私は言いようがないと思います。そこのところをはっきりさせてほしい。  だから、結局そうでなければ、四十六年のときに何でいすゞは変更したのか、そしてなおかつ今度四十六年までの製造の車を欠陥車としてリコール届をしたのか、何にも合理的な理由がそこからは見つからないでしょう。どうして四十六年までの製造のバスが今度のリコール届の対象にそれではなっているのか、それをあなた方どういうふうに把握されていますか。
  124. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 四十六年に設計変更なされたという点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、別の型式の自動車が開発された、で、その型式の車のクラッチカバーとサイズが同じであったので、それを使うことができた。したがって、その時点で十ミリから十二ミリにクラッチカバーの厚さが変わって、厚さがふえた分だけ強度が増したと、こういう考え方でございますが、そのことは私どもといたしましては、そうではないという科学的な根拠を持たないわけでございますので、それはやむを得ない、あり得るケースだと考えております。
  125. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ関連してもう一つ聞きます。  じゃ、今度いすゞが四十六年までの製造車両をリコール届を出したということは、それは四十六年までの製造と四十六年以降の製造と、いまのこのクラッチカバーの変更を除いて、ほかにどういう違いがあったのですか。それがなければ理由が成り立たないですよ。
  126. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) その他の点については十分検討いたしておりませんが、クラッチカバーにつきましては、そんなことで部品の共通化という観点で設計変更がなされたというふうに考えております。
  127. 山中郁子

    ○山中郁子君 時間の関係でこれだけにとるわけにいきませんけれども、それでしたら、あなた方はそのリコール届を受けて、それを調査を命じて、そしていずれにしても取りかえするわけでしょう。そういう措置をするという理由をどこに求められているのか、何にも合理的な答弁はないですよ。業者がそういうふうに出してくれば、ああそうですかと言う。そして業者がその四十六年のときまでのクラッチカバーをかえたのを、欠陥とは関係ないんだと言えば、ああそうですかと言う。それじゃあなたたち業者の言いなりじゃないですか。
  128. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 四十六年にクラッチカバーを変えたことによって実質的に強度は改善されておるわけでございますので、それ以降のものについては問題はないと。それ以前のものについては、強度が弱いわけでございますので問題があると。それをリコールすることについて、もしわれわれが不審に思う点があれば、私ども運輸省の交通安全公審研究所もしくはその他の第三者機関を使ってチェックすることもできるわけでございますが、今回の場合にはそれは妥当なリコールであると判断したわけでございます。
  129. 山中郁子

    ○山中郁子君 最初に申し上げました運輸省の姿勢というのは、そこに私は重大な問題があると思います。しかし、いずれにしてもあなたは矛盾をしたことを言っていらして、このクラッチカバーの問題が、四十六年当時、もう一つ譲って、百歩譲って、四十七年の神戸の事故からは、ここに問題があるというのは業者も知っていた、あなた方も知っていた、実際に事故が起こったんだから。それをその後五年間放置しておいたということの事実というものは、あなたのいまの答弁の中でも私ははっきりしているというふうに思います。そのことについて明確に今後の姿勢としてしていただきたい。いまの答弁の繰り返しは要りませんけれども、今後絶対にそういうことのないように、いささかでもそうした問題で事故が起こる前にしなきゃいけない問題でしょう。だけれども五年間も放置して、そして業者の言いなりになるというような姿勢は、もう徹底的に改めて、きちんとした姿勢に立っていただきたい。このことについてだけはかたくお約束をしていただきたいと思います。
  130. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) リコール問題の推進のために、私どもは、メーカーの情報によるだけではなくて、運輸省といたしましても車両検査をやっておりますし、またユーザー等からのクレームの情報等も集めております。そういったもので、メーカーが適切にリコールをやっているかどうかということをチェックしてまいりたいと考えているわけでございます。  で、過去におきましても、私どものそういった、ただいま申し上げましたようなメーカー以外のルートの情報によってリコールを行わした例は数件ございます。今後とも、リコール問題については厳しく対処してまいりたいと考えております。
  131. 山中郁子

    ○山中郁子君 警察庁にこれは確認をしたいんですけれども、この神戸の事故、これは明らかに、先ほどお話もありましたけれども、クラッチカバーの、そこが原因で事故が起こっているということははっきりしていますでしょう。いま運輸省の答弁は、その時点ではそういうふうに断じがたいということから調査をしてきたと、こういうことでしょう。そんなことはないはずなんです。御答弁をお願いします。
  132. 杉原正

    政府委員杉原正君) 神戸の事件につきまして、具体的に何が原因であったかという事柄についてはまだ結果が判明をいたしておりません。
  133. 山中郁子

    ○山中郁子君 現実はクラッチカバーの問題であったということは、さっきの御答弁は確認できますね。
  134. 杉原正

    政府委員杉原正君) これは、そういうクラッチカバーなりホイールなりというものが破裂をして下に落ちたというそういう実態というものは掌握をいたしておりますが、原因についての結論は出ておりません。
  135. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで、運輸省は自動車運送事業用自動車事故統計年報というものをお出しになっている。そして、この中で、この事故については、「事故「推定」原因」として、「クラッチ・カバーに三ケ所の亀裂が生じたため当該部位が破損したものと思われる。」と、こういうふうにちゃんと書かれているんですよ。だから、いまさら、あの事故がクラッチカバーが原因であって事故が起こったのであるかどうかについてはわからぬなどということは成り立たない話です。これは繰り返しになりますから、そのことの指摘だけをしておきます。  それから、いま私はたまたま、いすゞのバスを取り上げていますけれども、最近でも、日産とか東洋工業など、いろいろな欠陥自動車の問題が出ております。こういうのがいままでもずっと一貫して国会で議論になった場合も、そしてきょうの運輸省の答弁もそうですけれども、実際上政府が、運輸省が業者のサイドに立って、事業者のサイドに立って、それによって被害を受ける国民の安全というものが二の次になっているということについては、私は本当に遺憾に思います。  それで、交通安全対策基本法でも、いわゆる国の責任として国民の生命、身体及び財産の保護について明記していますし、それから車両等の安全性の確保の国の責任というものも同じく条文で明記をしているわけです。こういうことについて行政責任が運輸省にあるわけなんだけれども、こうした法律自身も不備が多いし、私は本当に歩行者を、国民を守るという立場で法律自身もいろいろもっと整備されなければならないというふうには思いますけれども、それにしても、現行のこの法律自体、ここにある交通安全対策基本法の三条とか六条とか三十二条とか、そうしたところで明らかに国の責任として明記されているものについて、もっと積極的に、少なくともあなた方が、推定であっても、事故原因がクラッチカバーだということを御自分のところでちゃんとこういうふうに取りまとめているならば、その時点で直ちにそうしたことについて解決を図るという姿勢、つまりこうした法律の積極的運用、そのことをあわせて意を新たにして取り組んでいただかなければならないと考えておりますけれども、所見を伺います。
  136. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 運輸省といたしましては、自動車の安全対策につきまして、車両そのものの構造、装置の安全、これを確保いたしますために、道路運送車両法の保安基準によってその基準を決め、そしてまた、それに適合した車が生産され、使用されるために型式審査もしくは車両検査を全国においてやっておりますわけでございます。  また、事故が起こりました場合に、その事故の原因究明を行いまして、それが車両欠陥に起因する場合には、それが使用上の問題なのか、さらには整備上の問題なのか、そしてこれが生産上、設計製作上に起因する問題なのかという点を究明いたしまして、それぞれ適切な対策をとっていかなければならないと考えておるところでございます。今後とも、その線に沿いまして、より一層安全度の向上を図るべく業務を推進してまいりたいと考えております。
  137. 山中郁子

    ○山中郁子君 答弁はそう言う以外にないのかもしれませんけれども、実際上のいま運輸省がこの問題についてやっていることを見ますと、どうもそれが逆行している。  先ほど指摘したこともそうですけれども、私がさっき取り上げました事故統計年報、これについても、この「まえがき」にはちゃんと、「本書も、その意味において、」——いまあなたが言われたような意味ですね、「意味において、つとめて今後の事故防止対策に活用されるよう切望するものであります。」ということでもって、こうしたものをつくるけれども、ぜひこれを事故防止のために活用してくださいと、そういうことをおっしゃっているんですわ。それにもかかわらず、この「本書」、つまり統計年報、これが、一つは、「車両欠陥事故の明細」という項が、これは四十三年からだと思うのですけれども、「欠陥」という用語が消えてしまって「車両故障事故」というふうになっていて——法律用語でもさまざまな条文では「欠陥」という言葉が使われているわけですよね。それにもかかわらず、この「欠陥」という言葉を消してしまっている。欠陥と故障じゃ大分違うんですよね。欠陥というのは業者の責任です。故障だって、それは欠陥のための故障ということはありますけれども、業者の、つまり全くの業者の責任でない故障ということだってあり得ると。だけれども、なぜ、いままで「欠陥」ということで明記しておいたものを「車両故障事故」というふうに変えてしまうのか。そういうことから、そうした欠陥車による、業者の責任による被害をなくしていかなければならないちゃんとした立場に立つという、あなたが先ほど言われた姿勢と明らかに逆行する一つのあらわれだというふうに思いますが、この点についてはなぜこういうことになりましたのでしょうか。
  138. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 特に他意があったわけでございませんが、先生指摘のように、欠陥という言葉はそういった意味では非常に、より狭くて、そしてたとえば事両欠陥と、メーカーの責任であると、欠陥車といったふうにはっきりしておると。で、われわれが集めておりますのは、そういったようなメーカーの欠陥によるかどうかはそれは調査してみなければわからないわけでございますが、整備不良もしくは使用上の不注意、そういったケースも含めてデータ、情報を集め、それを分析していくことによって、最終的に、使用段階、整備段階もしくは生産段階にそれをフィードバックして安全対策を進めていこうという意図によるものであると考えます。
  139. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういう理屈だと業者にフィードバックできないんですよ。業者の責任を回避するという役割りをあなた方がこういうことによって果たしているというぐらいにしかならないでしょう。そこは重ねては言いませんけれども、それと同じような面ですけれども一つはいまこの事故統計年報、これは私の方で調べるので資料として要求いたしましたら、どうしても何か下さらないんですよね、五十年版。どうして資料としてそれはお出しにならないんですか、前はくれていたのですよ。
  140. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) いま申し上げましたように、整備不良もしくは使用上の不注意もしくは車両欠陥等の原因を十分に解明いたしまして、それぞれ対策を講じなければならないと考えておりますが、従来収録いたしておりましたのは事故報告、それは事業者が報告してきたものでございますが、そのままを記録しておった経緯がございまして、そういったようなものが十分な、正確な判断でないままに外に公表されるということは、必ずしも結果として好ましくないのではないか、運輸省の責任においてその時点において使用面、整備面もしくは生産面に必要な指示をするとともに、調査をすべきものについては、その時点から調査を始めるということといたしたわけでございまして、そういったような観点から収録時期の問題がまあまとめにくくなったというふうに考えます。
  141. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、とにかくちゃんとできれば下さるんですか。五十年版、私の方要求したんですけれども下さらなかったのだけれども、それはいただけますね。お約束を下さい。
  142. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 余部がないそうでございますが、内容については……
  143. 山中郁子

    ○山中郁子君 そんなばかな話ないじゃないの。
  144. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 内容につきましては、これは要求があれば提出いたしたいと思います。
  145. 山中郁子

    ○山中郁子君 余部がないなんてとんでもないですよ。こんな一部ぐらい余部がないなんてことあり得ないでしょう。第一あなた方「本書も、その意味において、つとめて今後の事故防止対策に活用されるよう切望するものであります。」と書いているのよ。だれに活用してもらうんですか。国会議員に提出しないでいてだれに提出するんですか。だれに活用してもらうんですか。
  146. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) これは主として内部業務参考資料として作成しておりますものでございまして、表にそう多くを出しておる性格のものではございませんので、そういった意味で申し上げたわけでございます。
  147. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、それはいただくことにいたしまして、この中でやはり故障事故の項がなくなっちゃっているんですね。私どうしてもおたくの方で下さらないからいろいろ駆けずり回って探しまして五十年版をちょっと見ました。でも後で下さいよ、これは返さなきゃいけませんから。そうしましたら、その中で、車両の事故の項目がなくなっちゃっているんですね。この中見出しのところには、「第一編第一部 交通事故の現状」、「第二部 事業用自動車の重大事故」とあるんですけれども、実際の中からは、その四十九年版までは入っていたその部分が入っていないんです。このことも私は欠陥車隠し、業者サイドに立った運輸省の姿勢ではないか。しかも、それを外へ出さないと。とんでもない話だというふうに思います。そのことについての見解をお伺いします。
  148. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) ただいま申し上げましたように、その時点において適正に対応し分析調査を進めていくために、その原因等についてその時点においては明記できないというために、年度ごとにまとめるということが都合が悪くなったというふうに考えております。
  149. 山中郁子

    ○山中郁子君 四十九年まではできて、五十年からはできなくなったんですか。
  150. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 取り扱い方針を、その時点、その都度対処していくという方針を、より積極的な安全向上姿勢をという観点から変えたわけでございまして、そういう意味でまとめにくくなったと申し上げたわけでございます。
  151. 山中郁子

    ○山中郁子君 何にも私は合理的な根拠のない御答弁だというふうに思います。  それで、実際にこうした車両の事故が起こって、そしてそのことをこういうところに出さないでおいて、そうして何でそれが今後の交通安全の対策資料になるんですか。それは結局車両の故障、つまり欠陥車の問題に関連するその部分をあなた方が業者サイドに立って隠しているというふうに思われたってしようがないじゃないですか。
  152. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 今後十分その辺のところについて検討して対処してまいりたいと思います。
  153. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで、五十年の自動車事故関係について、この五十年版には載っていないので私はこれを運輸省に要求をいたしました。そうしてそれによって資料もいただいたんですが、それによりますと、自動車事故の概要の車両関係では十三件が出ているんですね。これあなた方から、そちらからいただいた資料によりますと十三件出ているんですけれども、これは間違いがないでしょうか。もう少しあるのじゃないですか。十三件、もっとあるのじゃないかと思うんですけれども
  154. 犬丸令門

    政府委員(犬丸令門君) 具体的に先生の要求があって急いで取りまとめたようでございまして、それが必ずしも全部でないかもしれません。
  155. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしましたら、私は五十年版のを見ましたら、これはこの報告の中では五十年は二十二件というふうに書かれてありました。だから十三件、あなたの方はこれ出して下さいましたけれども、それはいまの部長の御答弁を了といたしましょう。時間がなくて急におつくりになったので抜けているというふうに考えます。しかし、そういうことも先ほどからのいろいろな問題とあわせて考えますと、依然としてやはり運輸省が事業者サイドに立って、そして国民の安全ということが二の次にされているという疑いはますます濃くならざるを得ません。  それで、私は何回かお約束をいただきましたけれども、でも最初のいすゞのこの四十六年までの問題とそれから四十六年にクラッチカバーを変えた問題をあなた方が積極的に事故と結びつけて考えようとしないという姿勢も含めて重ねて猛省を促して、今後絶対その姿勢をはっきり国民の立場に立って、そして事業者とのそうしたくされ縁というものが国民から疑惑を持たれないような姿勢を堅持すべきであるということを強く要求いたしまして質問を終わります。
  156. 森田重郎

    ○森田重郎君 私は、時間の関係もございますので、問題をハイジャック防止の点にしぼりまして二、三お尋ねを申し上げたいと思います。  ハイジャック防止問題につきましては、すでにこれまで各種の委員会におきまして相当突っ込んだ論議がなされておりますので、私はむしろこの問題をハイジャックに関連しまして国際関係と申しましょうか、外交関係というような視点からながめてみたいと、かように考えておるわけでございます。  そこで外務省、それから官房関係警察関係の方々にひとつお尋ねを申し上げたいと思います。  実は、まず最初に外務御当局にお尋ねをしたいのでございますけれども、何日になりますか、実は私もまだ余りはっきり存じておりませんけれども、国連におきましてワルトハイム事務総長がこのハイジャック防止の対策につきましてある種の提言をされた、その提言内容と、同時にまたそれをいつごろなさったのか、その辺の事情、経過等につきまして御説明を賜りたいと思います。
  157. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) お答え申し上げます。  今回の日航ハイジャック事件の起こりました直後——当時はもちろん今次国連総会開会中でございましたが、この総会におきましてわが国として何らか積極的な策を講じたい、提案をいたしたいという考えを持っておりました。そして、その機会をうかがっておりましたところ、十月の二十日に至りまして、国連事務総長が関心を有する主要国に対しまして、このハイジャック防止という問題を緊急に総会において討議してはどうかという非公式の提案をしてまいったわけでございます。わが国の代表部は、この機会をとらえまして、それらの国々と公式の話し合いを進めました。その結果、緊急議題を今回の総会の議題に追加上程することに決定いたしまして、そのための下工作に走り回ったわけでございます。そして、その結果得られました合意に基づきまして、総会におきまして緊急議題の上程ということが決定されたわけでございます。同時に日本は、決議の日本案を作成する方針を決定いたしまして、それを急遽作成して関係国と諮りまして共同提案国を募った結果、日本を含めまして五十カ国の共同提案国の参加を得まして、決議案を総会へ提出したということでございます。したがって、先生の御質問になりましたワルトハイム事務総長の提案と申しますのは、このハイジャック防止の問題をこの総会におきまして緊急に討議して、そのための国際的な合意をつくり上げるということでございました。
  158. 森田重郎

    ○森田重郎君 ただいまのお話ですと、提案をされたのがワルトハイム事務総長で、その提案に基づいて日本サイド、わが国がそれなりの提案事項をまたつくったということでございますか、どちらが先に提案をされて、日本がそれを受けておやりになったか、その点をもう一度お伺いしたいと思います。
  159. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 実は今回の第三十二回国連総会におきましては、関係していると言うことができる議題が二つございました。一つは、国際テロリズムという非常に広い範棚の問題を取り扱う議題でございまして、もう一つは、人質防止という問題でございました。  この二つの議題はすでに総会で当時採択されておりまして、第六委員会という委員会で討議が進められる手はずになっておりましたけれども、いずれも中東問題をめぐるイスラエルとアラブ諸国との間の争いの問題に巻き込まれまして非常に審議が停滞しておるという現況にございました。そのため、実は事務総長が、この問題——ハイジャック防止の問題を取り上げて議論してはどうかという提案をされたときに、その第六委員会でそのいずれかの議題のもとで討議してはどうかという示唆があったようでございますけれども、第六委員会は、いま申し上げたような政治的な背景のために問題が進んでいなかったということもありまして、その委員会でこの問題を取り上げることを拒否したわけでございます。したがって、事務総長の提案はそこで一とんざを来しかかったのでございますが、しかしながら私どもがその関心国の間を走り回りまして、その結果、特別に別の議題をそれでは追加して、このハイジャック防止の問題に限って国際的な合意のための討議に持っていこうではないかという努力をした結果、特別政治委員会という別の委員会に新しい議題としての付託を行うということに、持ち込むことに成功したということでございます。
  160. 森田重郎

    ○森田重郎君 実は私どもがこの新聞各紙で承知しております限りにおきましては、新聞記事が誤っておるということであればこれは別ですけれども、いずれにしてもワルトハイム事務総長がハイジャック防止の国際的合意の必要性を指摘したと、それに対して、結局わが国が幾つかの提案事項を出されたと、こういうようなことで、私はその前か後かという前後の問題を実はお伺いしているわけでございます。前後の問題ですね、お伺いしているわけでございます。
  161. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 実は私どもが日航事故直後に、この問題について国連総会で何らかの措置をとりたいと、行動をとりたいと考えたときには、すでに総会は開会後でございまして、議題も一括して採択後でございました。したがって、このハイジャック問題を討議するというための場は必ずしもはっきりしていなかったわけでございます。したがって、そのための新しい行動に出る必要がございました。その機会を、ワルトハイム事務総長の非公式な提案という機会をとらえてそういう行動に出たと、その結果、総長の提案とは若干違ったかっこうだったけれども、むしろもっとすっきりしたかっこうで提案が討議される場をつくることができたということでございます。したがって、時間的には総長の提案がきっかけになっているということは言えると思います。
  162. 森田重郎

    ○森田重郎君 私がこの前後というふうな問題をここで申し上げますそもそものゆえんは、この大きなハイジャック問題が九月の二十八日に起きているんですね。で、ハイジャック発祥国と言われておるようなわが国がまたまたああいう大きな事故を出された。したがいまして、一つの外交交渉の姿勢という考え方からすれば、あらゆる手を使ってもむしろ日本側の方からそういう姿勢を打ち出すぐらいの外交姿勢がほしかったということを申し上げているわけでございます。  そこで、ちょっと実はこの順序、話題が変わりますが、きょうは官房長官お見えじゃございませんけれども、ハイジャックの防止対策本部、略称で呼ばしていただきますが、この防止対策本部が設けられましたのは大体いつごろになるのでございましょうか。
  163. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) 正式に申しますとハイジャック等非人道的暴力防止対策本部、これが設けられましたのが十月四日でございます。
  164. 森田重郎

    ○森田重郎君 昭和四十八年に設けられましたのは、それとの関連はどういうことになるのでございましょうか。
  165. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) 昭和四十八年にドバイのハイジャック事件が起こりまして、その後、今回の対策本部と同じような性格でございますけれども、各省の連絡会議ということで対策本部を設置しておりました。そして、それは一応対策要綱というものをまとめまして自然消滅というかっこうになっておると、私はそのように承知しております。
  166. 森田重郎

    ○森田重郎君 自然消滅ということは、自然消滅をされたのか、その対策本部が引き続いて現在の対策本部にかわっておるのか、その辺の関連をもうちょっと詳しく御説明願いたいと思います。
  167. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) お答えいたします。  前回の連絡本部は、四十八年につくりました——今回の事件とちょっと名前も同じようなのですけれども、ハイジャック等の防止対策要綱というものをつくりまして、この要綱が、対策本部自体ではなくて、むしろこの要綱の細目につきましては、各省庁にその実行方を、あるいは推進方をお願いしておると、こういう性格のものでございましたので、これは一応各省庁にお任せいたすと、こういうことでもって自然消滅いたしまして、今回の対策本部につきましては、新しく閣僚レベルを中心といたしまして設置したものでございます。
  168. 森田重郎

    ○森田重郎君 前回の要綱と今回の要綱の中で大きなやはり違いがございますか。
  169. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) 私どもはかなり違ったところがあると、かように考えております。  抽象的に申しますと、やはり四十八年の要綱は、当時の情勢といたしましては、確かに当時まあまあそれで十分な対策であったろうと、かように考えておりますけれども、何せ世界情勢も変化いたしました、あるいは日本赤軍を中心といたします赤軍の活動状況、こういうものも変化してきました。したがいまして、こういう面から申しますと、四十八年につくりました対策要綱というものが若干陳腐なものになり、あるいは不備な点も見受けられるようになったわけでございます。したがいまして、こういうことを私どもとして反省しておるわけでございますけれども、今度の反省の上に立ちましてそういう点を今度の対策に入れたわけでございます。したがいまして、こういう点が違っておると、こういうことでございます。
  170. 森田重郎

    ○森田重郎君 対策要綱を私もちょっと拝見したのですけれども、少なくともこのハイジャック問題に関連しまして、ハイジャックが起きた場合の国際的な意味での外国の協力要請をお願いするというような項目は含まれておるように私、考えておるんですが、その辺はいかがでしょうか。
  171. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) 確かに先生指摘のとおり、四十八年の要綱でも、あるいは今回の要綱でも、同じように海外との協力ということを進めてまいりたいと、このように両方とも出ております。しかし、前回のものにつきましては、何と申しますか、若干弱いところがあったというふうに私ども考えております。  今度の要綱を見ますと、これがかなり強く打ち出されておりまして、たとえばハイジャック防止関連条約と申します三条約——東京条約、ヘーグ条約、モントリオール条約がございますけれども、このような条約に未加盟の国につきましては、たとえば航空協定等の改定の場合には、加盟した国でなければ航空協定を結びませんと、こういうような強い態度も示しておるわけでございます。したがいまして、かなり前の要綱と比べて進歩しているんじゃなかろうかと、かように考えております。
  172. 森田重郎

    ○森田重郎君 少なくとも海外に対して協力要請を強力に推進していく、そういう趣旨が要綱に盛り込まれておるということ自体は前の要綱とほとんど変わりないと思うのです。私、先ほど冒頭申し上げましたように、あれだけの大事件でございますから、こういう一つの大きなハイジャック、世界的な不評、不信を買うこういう事件が起きたような場合には、その要綱の趣旨を生かして、先ほども申し上げましたように、事務総長の方から提案があってそれにこたえるという姿勢でなしに、こちらの方からむしろ積極的に各国に対して、対策等につきまして、まあ言うなれば協力要請をするというような姿勢が、やはり生かされた、活性化された外務省の姿勢じゃなかろうかと、こういうことを申し上げたいと思います。  次に、今回八日に防止対策本部が警視庁の中に専従組織をつくられた、その設置が決まったというふうな新聞報道を実は拝見したわけでございますが、従来の国際警察機構と、同時にまた今回できましたこの専従組織との関連、と同時にまた、その機能と言いましょうか、役割りと言いましょうか、組織全般、その辺につきまして警察当局からちょっと説明願います。
  173. 福井与明

    説明員(福井与明君) 今回の構想が出ましたもとにつきましてちょっと御説明を申し上げたいと思いますが、今回の事件が発生しまして、まだ事態が進行中でありました九月三十日に京都大学の構内で、一九八〇行動委員会という名前で日本赤軍の今回の犯行を積極的に支持する旨の立て看板が出されました。同じ口に同じような趣旨のビラ等も出ております。それから今回の釈放犯の一人であります奥平純三が昨年の十月の十三日にわが国に送還されてまいりました際にも、直後の十月十七日に、同じ京都大学構内に五・三〇Fという名称で奥平らの送還を糾弾をして、奪還を呼びかける旨の立て看板が出されております。それから、日本赤軍のものと思われることしに入ってからの文章でございますが、自分たちのことを「日本革命の担い手たるみずから」というような言い方をしておりますが、そこで彼らが「日本革命を目指す」という言い方をして、彼らを支援するグループが国内で動いておる実態があることは間違いないと、こういうふうに見ております。  しかも、そういう支援組織づくりを現在鋭意進めておりまして、拡大に懸命に取り組んでおる、こういうふうに見ておるわけでございます。そこで、警察次元で日本赤軍対策に取り組む以上は、まずこの日本国内にある日本赤軍の支援組織づくり、支援組織網と申しますか、そういうものを解明することに大いに力を尽くす必要があると、こういう認識であります。  それから日本赤軍は、国内の支援組織と密接に連絡をとりながらも、当面は海外に本拠を置いて海外で活動をしておるわけでございます。日本国内のそのときどきの情勢に合わせて海外でできることをやるというのが当面の彼らの構えでございます。そこで、関係各国と連絡をして、日本赤軍の海外における動向について情報交換をする必要がございますし、捜査共助の必要があるわけでございます。こういう認識に立ちましてこれまでも実は努力をしてまいりました。それらの成果も上がってきておると見ておりますが、ただ、それにもかかわらず今回このような大きな事件が発生いたしましたので、これを契機に、ただいま申し上げましたような国内の支援組織網の解明と海外の動向に関する情報交換ないし捜査共助についての専従の組織をつくる必要があるということで、現在関係当局と検討を続けている段階でございます。
  174. 森田重郎

    ○森田重郎君 専従組織ができるというようなお話は大変私ども結構なことだと思うのです。せいぜいひとつ今後の局面打開のために大いに御奮闘願いたいと思います。  ただ、ちょっと話が前に戻るようでございますが、ハイジャック防止対策本部の組織と申しましょうか、これは私ちょっと、資料といいましょうか、簡単な図式のようなものを拝見したのでございますけれども対策本部というのは、本部長がいらっしゃって、それから本部員がおられる。それから幹事の方がおられるというような、ごく簡単な図表をちょうだいしたわけでございますが、私ども、ハイジャックの対策本部組織というふうなものを、まあ言うなればライン、スタッフ、そういった組織論の中から見ますと、どうもスタッフ部門が多くて、ライン部門がそれにどういうふうに作用、作動しているか、その辺がよくわからないのです。反面考えますと、頭の方はぐっとそろっておるようだけれども、どうも下へくるに従ってその辺が兼務関係が多いような感じもしますし、大変機能的にハイジャックあたりに対して即時即応に適切に対応していくというような意味では、対策本部自体の組織機構と申しましょうか、これがどうも実は釈然としないのですけれども、今後またまた、予想はしたくございませんが、あるいは起こり得るかもしらぬ、そうい不祥事に対する一つの組織論として、その辺についてのお考えをちょっとお聞かせいただければというふうに思います。
  175. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) お答えいたします。  対策本部は、十月四日先ほど申し上げましたように設置されまして、その組織は内閣官房長官を本部長といたしまして、法務大臣、外務大臣、大蔵大臣、運輸大臣、総理府総務長官、それから国家公安委員長、法制局長官、内閣官房の政務、事務の両副長官、それに警察庁長官と海上保安庁長官、これが正式のメンバーでございますけれども、そのほかにオブザーバーといたしまして、日航の職員、それから全日空の職員各一名ずつにオブザーバーとして参加していただいております。これが本部の組織でございます。そしてその下に、関連する各省庁の局長クラスを中心にいたしまして幹事会というものを設けております。そして、そこにも日本航空の職員の方、そして全日空の職員の方、これにもオブザーバーとして参加していただいて会議を開き、そして対策検討を進めておるわけでございます。  そこで、先生の御指摘でスタッフのような感じが強くなって、むしろラインというのが少なくなるというような感じ、そしてまた再び不幸にして事件が起こったら、それに即応できないんじゃなかろうかと、こういうような御指摘でございまして、確かにいまあります対策本部、構成全部を見ますと、直ちに事件に対処するというような体制ではございません。これは対策本部といたしまして、まず対策を決め、そしてその中では法律もございまして、そういうものも仕上げて、その後からひとつ至急に事件処理のための対策本部と、こういうものをつくろうということで、いまこれ検討中でございますので、いま先生指摘のありましたような即応体制のできる対策本部というのはこれから間もなくできると、このように承っております。
  176. 森田重郎

    ○森田重郎君 大変結構なことでございます。  私どもも、ハイジャックというような非常に大きな問題に対処するその組織としては、何かその辺に釈然としない、割り切れないものがあったわけです。考えてみれば、こういう問題に対しては、本当に兼務関係というようなことは余り考えないで、行政の枠を尽くしたそういう方々がやはり直接に担当してこそ、やはり対策本部本来の趣旨が生かせるのではなかろうかというようなことでございますが、ただいまお話のございますように、検討されておるというようなことで大変結構なことだと思っております。  次に、実は先ほどの話にちょっと戻るわけでございますが、重ねて申し上げるようでございますけれども、とにかく西独とともにわが国日本は、残念ながらハイジャックの標本というような形で世界各国から大変云々をされておるわけでございますが、一つのやはり考え方といたしまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、こういったような問題が起きました際に、これは関連各省いろいろございましょうけれども、そういうふうな問題に対応する外交的な姿勢、その辺の基本的なあり方というふうな問題につきまして、たとえば特使を派遣する、これも結構でしょう。先ほどお話が出ましたですね、東京、ヘーグ、モントリオールですか、こういう条約に加盟を促進する。いろいろな経緯はございましょうけれども、こういったいわゆる外交交渉といいましょうか、折衝といいましょうか、それらに対しますこの対応の姿勢が私はどうもちょっと甘いような感じがするんですけれども、その辺につきまして何かお考えがございましたら、ちょっとお聞かせを賜りたいと思います。
  177. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 今回の国連におきます一連の動き、それからそれに引き続いて現に行われております国際民間航空機関——モントリオールに本部を置きますICAOという機関でございますが、これは国連の専門機関でございます——におけるさまざまの討議を通じて、私どもが非常に心強く感じております一つのことは、少なくともハイジャックというような暴力行為を表立って擁護する議論が国連では聞かれなくなったということでございます。  実は総会におきましても、いまから八年前に、当時はまだ東京条約しかございませんでしたが、それに加入を慫慂するといったような、要するにハイジャック反対のための、防止のための決議案が上程されております。このときには、しかし今回のような全会一致という形に持っていくことはできませんで、投票に付した結果、多数で採択されたという経緯がございます。当時、アラブ諸国はこの決議案に棄権いたしました。反対した国も二カ国ございます。そういうことで採択されたということでございました。ところが、問題になります国はそれに積極的には賛成しなかったという経緯がございます。  ところが、それに引きかえまして今回は、私ども当初は非常に成り行きを危ぶんだのでございます。必ずしも初めから自信を持って、確信を持ってこの決議案の採択ということに当たっていたわけじゃないのでございますけれども、ともかく表立った反対議論はなしにこれをコンセンサスという形で、投票に付することなく採択できたということは、やはり国際的な雰囲気、この問題に対する見方の一つの微妙な変化を示していると言うことができると思うのです。私どもとしては、そうした意味で、もちろん決議案そのものは法律的な拘束力を持ちませんけれども、今後この三条約への加入を二国間で働きかける上についても、それを助ける非常に有力な舞台装置と申しますか、背景ができ上がったというふうに考えております。  そういう意味で、今度の決議の採択ということは非常に大きな意味があると私ども評価しておるわけでございます。その後の先ほど申しました国際民間航空機関におけるもっと具体的な防止措置の討議におきましても、そうした総会決議の後を受けてということが非常に助けになっておる。今後二国間で働きかけるにしても、その上で非常に大きな助けになるということも言えると思います。
  178. 森田重郎

    ○森田重郎君 お話の趣旨はわかるんでございますけれども、私は結局、九月の二十八日にハイジャックが起きましてから、それにあながち国連のみじゃございませんけれども、先ほども三条約の話がちょっと出ましたけれども、こういうふうなものに対応する姿勢づくりというのが、基本的に一つの外交姿勢として、そのあり方が弱いんじゃなかろうかというようなことを申し上げたわけでございます。  実は今月号を拝見しますと、中央公論あるいは文藝春秋ですか、まあ言うなればハイジャックの巻頭論文集というような形でいろいろな論文が提起されておるわけでございますね。ああいうふうなものを私どもが見ましても、現在の要するにハイジャッカーと申しましょうか、彼らは要するに自分たちが死んだ場合の祖国というのは赤軍国家しかないんだというような反体制運動といいましょうか、反体制哲学というか、そういう言うなればやからでございましょうか、そういう連中のことですから、今後二度ある、あるいは三度あるというようなことは、これはもう私ども予測したくはないけれども、どうしても起こり得ることじゃないかというような実は気持ちなんです。われわれがこうしていま若干の討議をさせていただいているこの間にも、どこでどう起きやせぬかというふうに非常に切実な問題だというふうにわれわれ痛感している。だからそういうふうな問題に対して、日本なら日本が受けて立つという外交姿勢から飛び出して積極的に説得すると、仮にアルジェならアルジェに逃げ込んだ十一人を、それはいまの状態においてそれを解放してもらうというような形で話を持ち出すことがいいか悪いか、いろいろな問題がございましょうけれども、言うなれば各国を歴訪しても、今後起きた場合にはこうしてほしい、ああしてほしいというふうな意味での意欲的な、積極的な外交姿勢がなくちゃならぬと、私はこう思うんですね。もしこれは二度、三度こういうふうな問題が起きますと、いま御承知のように通商戦争という言葉が使われているんです、経済戦争と。戦争に突入しているんですよ。これがハイジャック戦争というようなことに相なった場合、それだけの手を日本側が打っておったんだから戦争には突入しない。まあ紛争の段階ぐらいでとめておいてやろうと、こういう一つの理解と同情を得るのが、やはり先ほども申し上げましたように生きた外交の姿勢ではなかろうかと、こういうようなことを申し上げまして、時間がもうすでに参ったようでございますので、私の質疑を終わらせていただきます。
  179. 小野明

    委員長小野明君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十分散会      —————・—————