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1977-11-22 第82回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月二十二日(火曜日)    午前十時五分開会     ―――――――――――――    委員異動  十一月十七日     辞任         補欠選任      田  英夫君     秦   豊君  十一月二十一日     辞任         補欠選任      小野  明君     久保  亘君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 原 文兵衛君                 戸叶  武君     委 員                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 阿具根 登君                 久保  亘君                 渋谷 邦彦君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  鳩山威一郎君    政府委員        外務大臣官房長  松永 信雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    加賀美秀夫君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務大臣官房人        事課長      栗山 尚一君        大蔵省主税局国        際租税課長    宮本 英利君        文部省学術国際        局企画連絡課長  七田 基弘君        農林省畜産局食        肉鶏卵課長    甕   滋君        通商産業省貿易        局輸出課長    柏木 正彦君        通商産業省貿易        局輸入課長    斎藤 成雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国チェッコスロヴァキア社会主義共  和国との間の条約締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○金大中氏の原状回復決議に関する請願(第四一  八号外一二件) ○日中平和友好条約早期締結に関する請願(第  六九四号) ○金大中事件の真の解決に関する請願(第一〇三  九号外一六件) ○北朝鮮帰還日本人妻安否調査員派遣及び里  帰り実現に関する請願(第二二二五号) ○国際情勢等に関する調査  (サダト・エジプト大統領イスラエル訪問に  関する件)  (日中平和友好条約締結問題に関する件)  (農産物輸入問題に関する件)  (外務省の組織及び人員の充実強化に関する  件)  (韓国の防衛産業と同国に対する経済協力問題  に関する件)  (日米防衛協力小委員会に関する件)  (日米貿易問題に関する件) ○継続調査要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十一月十七日、田英夫君が委員辞任され、その補欠として秦豊君が選任されました。  また、昨十一月二十一日、小野明君が委員辞任され、その補欠として久保亘君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国チェッコスロヴァキア社会主義共和国との間の条約締結について承認を求める件を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。鳩山外務大臣
  4. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国チェッコスロヴァキア社会主義共和国との間の条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、チェコスロバキアとの間に所得に対する租税に関する二重課税回避のための条約締結するため、昭和五十年以来交渉を行いました結果、昭和五十二年十月十一日にこの条約に署名を行った次第であります。  この条約は、わが国社会主義国との間で署名した租税条約といたしましては、ルーマニアに続く二番目のものでありますが、基本的にはOECDモデル条約案に沿ったものであり、また、若干の部分を除きルーマニアとの租税条約と同一の内容となっております。  この条約の主な内容は、次のとおりであります。事業利得につきましては、一方の国の企業相手国において支店等恒久的施設を通じて事業を営む場合に限り、かつ、当該恒久的施設に帰属する利得に対してのみ相手国課税できるものとし、船舶または航空機を国際運輸に運用することによって生ずる利得につきましては、相互全額免税としております。投資所得に対する源泉地国での課税率につきましては、配当に関しては、親子会社間の配当については一〇%、その他の場合は一五%、利子に関しては一〇%、工業的使用料については一〇%をそれぞれ超えないものとしております。また、文化的使用料については、源泉地国において免税としております。  両国間の経済関係は、外国企業の活動に関するチェコスロバキアの法令が最近整備されたこともありまして、その発展が期待されておりますまた、従来より活発であった文化的交流は、一層の促進が望まれるところであります。このような機会に、この条約締結することによりまして、両国間の経済的及び文化的交流は、一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。  以上でございます。
  5. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 以上で説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 久保亘

    久保亘君 最初に、この条約締結に当たって国内でどの省庁がこの協議に参加をされたのか、それをひとつ教えてください。
  7. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 日本政府からは大蔵省外務省及び自治省の三省が参加いたしました。
  8. 久保亘

    久保亘君 「文化的使用料」ということがいまの趣旨説明でもあったのですが、この、「文化的使用料」などについての取り決めを行う場合に、文部省とか文化庁はその協議対象にならないのはどういうわけですか。
  9. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答え申し上げます。  最初事務局の段階におきましては、私ども、五十一年の一月二十日にチェコとの間で交わされております文化交流取り決めというふうな基本的な文化交流方針があるわけでございますが、こういうものにのっとりまして、文化的な面につきましてチェコスロバキアのそういう強い御要望もあって税制面で配慮するということを大蔵省の方では感じまして、そういうことを受けた形で、これを税制面の方で取り決めておるわけでございます。
  10. 久保亘

    久保亘君 これはやっぱり文化的な交流をこの条約取り決める前提にしているわけですから、当然に、文部省とか文言化庁とこういう取り決めをされる場合には、事前協議をすることは、これは私ども常識的に考えて必要なことだと思うんですが、全然文部省文化庁を無視して、単に租税の面だけで検討されるということでよいのでしょうかね、大臣、どうですか。
  11. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御指摘文化的使用料につきまして文部省関係することは当然であろうと思いますが、先方に対する交渉といたしまして文部省は参加していないということで、実体的にはあるいは次官会議等の部面で連絡はとってあったはずであると私は理解をいたしております。
  12. 久保亘

    久保亘君 文部省文化庁見えておりますか。――文部省としては、この条約締結に当たって、事前大蔵省外務省、特に外務省から協議を受けておるんですか。
  13. 七田基弘

    説明員(七田基弘君) お答え申し上げます。  文部省といたしましては、外務省から、この次官会議にかかります前に、連絡を受けまして、緊急にそれに対しましてのわが方の考え方をまとめたわけでございます。
  14. 久保亘

    久保亘君 文化的使用料免税にするというのは、私は、条約の精神としては非常に好ましいことであろうと考えておりますが、これは、しかし、日本の他国との間の租税に関する条約ではほかにどれぐらい例がありますか。
  15. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 文化的使用料というものに対しまして免税措置をとりましたのは、これまで締結いたしました二十九の条約の中では、この対チェコスロバキア、現在国会でいま御審議願っておりますこれが初めてでございまして、今回こういうものを御承認いただいたといたしますれば、それが新しいものになってくる、このように思います。
  16. 久保亘

    久保亘君 初めての試みとして締結される条約、しかも、それが両国間の文化交流を促進するという目的を果たすためにということであれば、私はもうこれは当然に文部省とか文化庁あたりとは事前にいろいろ協議があって、そして文化交流などについての将来の見通しなどについても検討した上で結論が出されるべきものであって、文化的交流に関しても外務省大蔵省だけで結論が出されるという問題ではないのじゃないかと思うんですがね。  で、私、具体的に聞きますが、そうするとチェコフィルハーモニーみたいなのがこちらへ来て、日本で演奏しますとこれは得た収入税金がかからないわけですね。
  17. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 先生がお尋ねのようなチェコスロバキア交響楽団が来たような場合は、それが政府間の文化取り決めというような行事によって行われました場合には、無税ということが今回の協定趣旨でございます。しかしながら、その政府間の取り決めに基づかないような場合は、無税にはならないで、日本課税できるというふうな形になっておるわけでございます。
  18. 久保亘

    久保亘君 そうすると、日本から文化的な使節団などが行って向こうで興行をして収入を上げるという場合にも、これは政府間の取り決めによったものでないと、民間のルートで行って向こう演奏会を開いたとかいうような場合には、やっぱりこれは課税されるわけですね。
  19. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 先生仰せのとおりでございます。
  20. 久保亘

    久保亘君 そういうことであれば、なおさらその両国間の文化的取り決めなどともこの条約は深くかかわってくるわけでしょう。やっぱり私は文部省文化庁が、この条約を検討する際に、協議の単位となっていないということは非常に不思議なことだと思うのですよ。  次官会議の前に文部省はそういう報告を聞きましたということですが、そうではなくて、こういう文化的な交流目的として行われる租税取り決めの場合には、やはりその担当の省や庁とは事前協議をやるというのを原則とすべきものじゃないでしょうかね。これ、大臣、できましたらその考え方として聞かしていただきたいんです。
  21. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御指摘のとおり、私ども、こういうことはやはり官庁間といたしましては、関係のある官庁には事前十分理解を求め、了承をとるべきものであろうと思っておりまして、これは三年前から交渉したものでありますから、その期間につきましてどのような連絡をしておったかということは私自身は聞いておらなかったのでございますが、もし御指摘のようなことであるとすれば、これは今後留意しなければならないの考えます。
  22. 久保亘

    久保亘君 この国家間の文化的取り決めによるものだけが文化的使用料として免税対象になるということであれば、そうすると大学教授などがチェコに行って向こう大学で講義をするというような場合にも、これは国家間の取り決め交換教授として行ったようなものでなければいけないのですね。こちらの場合にはそういうことでおいでになった方でないと対象にならないのですね。
  23. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 大学交換教授免税になるという規定は、別途、この中に設けてあるんでございまして、いま御指摘のような大学交換教授規定につきましては、第二十条におきまして「二年を超えない期間一時的に滞在する教授又は教員」のような場合には、先方で取得した所得に対しては免税措置が与えられるという別の規定が第二十条に設けられておるわけでございます。
  24. 久保亘

    久保亘君 そうすると初めての試みとして行われるこの文化的使用料免税取り決めを、将来は、やっぱり他の二国間条約にも拡大をしていこうという方針をお持ちになっておりますか。
  25. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 一般的に申しまして、わが国がとっております租税条約パターンは、OECDと申します国際的な機関で相互に共通したものを取り決めていった方がいろいろ利益が多いんではないかというふうなことで相談いたしまして、一つモデルのようなものをつくって、基本的にはそれにのっとって行っておるわけでございます。日本も、そういうOECDモデルを基本にいたしまして、日本方針というようなものをそれに加味したもので一般的に一つパターンをつくりまして、相手国にそういうことを申し入れておりますわけで、使用料等につきましては、源泉制限税率を一〇%ということで、一般的には交渉のときに相手国に申し入れておるという方針をとっておるわけでございます。  ところで、このチェコスロバキアに対しましてそういう申し入れをいたしましたわけでございますが、チェコの方からは、文化的な面を重視したいという非常に強い御要望がございまして、わが国としても、それを受けて立つことは非常に結構なことであろうし、特に税制面から見まして、そういう税制面交流障害をなくするということは、とりもなおさずチェコとの文化的交流に非常に役立つのではないかというふうな考え方で、これは直前にはなりましたが、文部省の方にも御連絡申し上げて、こういう取り決めをしたわけでございまして、チェコ国会で御承認いただけましたような場合には、今後とも、そういう方針は踏襲していっていいということを御承認いただけたというふうに理解されるんじゃないかというふうに思っておる次第でございます。
  26. 久保亘

    久保亘君 相手国の非常に強い文化交流意欲、それから文化交流妨げ――税金妨げとなると言っちゃ悪いのかもしれませんけれども、より交流をしやすくする条件として免税措置をとるということが好ましいことであると言うならば、相手国の強い意欲があったらそうするということではなくて、わが国からもそういうことを他の国家に対しても求めるという姿勢をお持ちになるのですか。それともやっぱりこれは相手国からそういう意欲が示された場合に、検討するという種類のものなのですか。
  27. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 体制の異なります国との間にも、経済文化面等交流を深めますことは、双方の国民の利益でもあり、平和的な関係に寄与すると思いますので、こういうことは進んで、その土壌がございます限り、今後とも結んでいきたいと思いますので、これは双方の息がそこで合いました場合に初めて結ぶということになるわけでございまして、従来のこの種のものは皆そのようにしております。
  28. 久保亘

    久保亘君 チェコスロバキアは、いま、そういう文化的使用料についての免税措置取り決めている二国間条約をどれぐらいの国とやってるんですか。
  29. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 今回御提案いたしておりますのと同じような形で、一般的な使用料課税いたしますが、文化的使用料免税といたしておりますのは、フランス、フィンランド、それにベルギー、この三ヵ国でございます。
  30. 久保亘

    久保亘君 そうすると、チェコ日本が今度もしそれを締結いたしますと、四ヵ国の間にそういう条約ができてくるわけですが、他の――いま私が言ったのは違いますか。
  31. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 四ヵ国相互間ではございませんで、チェコと四ヵ国ということです。
  32. 久保亘

    久保亘君 私もそう言っているんですよ、チェコとの二国間条約が四つあるということでしょう。  そういうかっこうになっているということなんですがね、いまそういう傾向は世界的に広まってきているのですか。それとも、やっぱりまだ非常にまれなる例ですか。
  33. 宮本英利

    説明員宮本英利君) こういう傾向は、主といたしまして、先日御承認いただきましたルーマニア、あるいは今回のチェコといった社会主義圏東欧諸国が結んでおります条約に例を多く見るものでございまして、ヨーロッパ、アメリカ、その他発展途上国等条約につきましては、余りないようでございます。
  34. 久保亘

    久保亘君 あれですか、チェコ免税を非常に強く意欲的に求めたと。いまあなたが言われたルーマニア文化的使用料については一〇%の課税になりますね、ルーマニアは一〇%課税の方が好ましいという意思ルーマニアとしても持っていたわけですか。
  35. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 御指摘のとおりでございます。
  36. 久保亘

    久保亘君 そうすると、ルーマニアは、日本に対して二国間条約を結ぶ際に、文化的使用料を一〇%と取り決めた方がよろしい、チェコはゼロ%、つまり免税にした方がよろしい、そういう意思を持つというのはどういう理由ですか。それぞれの国が自分の国の利益というものを考えて日本側に求めるのだと思うのですが、その差が出てくる理由はどこにありますか。
  37. 宮本英利

    説明員宮本英利君) それはそれぞれの国のそういう租税協定締結する一つ方針、そういうものの違いにあるんだろうと思われるのでございまして、ルーマニアの場合には、先方の方は一般的に使用料に対します制限税率を一五%ということを主張してまいったわけでございます。それで、日本の方は、先ほどお答え申し上げましたように、一〇%ということで、最初双方のそういう提案が食い違ったわけでございますが、そこのところを交渉を重ねていきます過程で、ルーマニアの方から、しからば文化的なものを重視して、文化的なものは一〇にしよう、それ以外のものは一五にしようという妥協案的なものが出されまして、日本もそういう考え方を受けて立ったというかっこうでございますし、それから、チェコスロバキアの場合には、先方の方も大体日本の主張を受け入れてくれまして、一般的な使用料につきまして一〇%ということで合意に達したのでございますが、さらに、それに加えて、文化的な面を重視しようということで、それをゼロにした、こういうふうないきさつがあるわけでございます。
  38. 久保亘

    久保亘君 そうすると、チェコの場合には、二国間条約をもう何ヵ国か免税ということで取り決めていっているのだからわかるのですが、日本の場合は初めておやりになるわけですね。そうすると、いまあなたの方で、今度は、租税上の立場から見た場合に、この取り決めによって日本ルーマニア文化的交流に伴う文化的使用料相互出入りはどうなりますか、ルーマニアの場合とチェコの場合、それぞれ。
  39. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 今回、こういった措置によりまして、文化的なそういう交流がふえてまいるのだろうというふうに思われるのでございますが、現在までのところ、それによりましてどれぐらいの量があるかということにつきましては、把握いたしておりません。
  40. 久保亘

    久保亘君 あなたの場合には、その文化的交流というのは題目であって、別に文部省文化庁あたりとも文化的交流そのものの意義や内容について深く話し合ったわけでもない。そうすると、あなたの場合にやられる問題は、この二国間条約によって両国間にどういう租税上の出入りがあるのかということについて全然試算なしに、こういう条約を結ばれるのですか。そうすると、チェコの方はこれ零にした方がいい、免税にした方がいいと思うのは、文化交流という立場に合わせてチェコスロバキアにとってはそのことが望ましいと思うから要求するわけでしょう。ルーマニアは一〇%にした方が望ましいと思うから要求するわけでしょう。ところが、日本政府の方は、相手をどう見ておられるのか知らぬけれども、まあ大したことじゃないから、向こうがそんなに希望するならそれでよかろうと、そういうことでおやりになっておるというふうにしか聞こえないのですがね。それはやっぱり租税上の条約ならば、租税上のこの条約によってどういう結果を生ずるのかということについては、当然、試算されなければいけないでしょう。
  41. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 文化的な従来の交流につきましては、その実績を外務省の方でお持ちであると思うんでございますが、税金が従来かかっておりましたのを免税にいたしますことによりまして、それは今後もっと交流の度合いはふえてくるであろうという、そういうことで無税にしたわけでございまして、特にチェコスロバキアとの間におきましては文化交流取り決めというものを五十一年に結ばれておるわけでございまして、ここでうたわれておりますこういう方針をさらに進める観点から、そういう税制面障害を除去したというのが今回の措置でございます。
  42. 久保亘

    久保亘君 外務省文部省がいまあなたが言われたような答弁をするのであって、あなたは、租税担当者としては、こういう条約の場合には――それじゃ外務省文部省租税上こういう措置をとった方が文化交流文化の向上のために望ましいと思ったら、あなたの立場では、そのことについて計数上の計算は度外視して、それは応ぜられるのを今後通例とされるのですか。
  43. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 経済交流につきましては、それぞれそういう個別の事情もあろうかと思うんでございますが、租税条約には一つの大きなパターンがあるわけでございまして、そういうものに基づいて取り決めておる、そういうものの交渉過程でそういうよかれと思うものを個別に調整していくというふうな形をとっておるわけでございます。
  44. 久保亘

    久保亘君 一種の条約ではありますが、租税に関する制度が変わるわけです。租税に関する制度が変わるときに、文化的な政策として好ましいものであれば、そのことのもたらす租税上の影響というものについては、あなたの方では別に試算もなく、それは結構だということでお認めになるという方針をとっていかれるわけですねとお聞きしているんです、それは大変いいこだからな。  チェコとの条約についても、ルーマニアとの条約についても一〇%や零%という、同じ東欧圏の国と結ぶ条約について、なぜ一方の国は一〇%を主張し、一方の国はゼロ%を主張するのか、それはそれぞれの国に理由があるからだと思うのですよ。自分の国に損するような条約を結ぼうとする者はまあ余りない。そうすると、当然に、こういうような条約を結んでいく場合には、大蔵省的な感覚によれば、どういう結果をもたらすのかというぐらいのことは検討されているはずだと私は思うておったものだから聞いたんですが、いやそんなことはないんですと、外務省文部省がこれは大変いい政策だからと言われれば、そういうふうにして変えていくんですと言われるならば、それは非常にいいことだから、今後、私たちもそういうことで理解させていただきたいと思うて聞いているわけです。
  45. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 確かに先生仰せのとおり、そのボリュームを明確に過去のものを試算していくということは大事なことでございまして、そういうふうに心がけていくべきだと存ずるわけでございますが、まだチェコとの場合には、そういう交流そのものが絶対量として従来まだ大きくないようなこと、それからやはりチェコがほかの国との間でそういう形で行っておりますチェコ自身のそういう一つのバランス、そういったことも考慮し、かつ文化的交流はなお積極的にいくべきだというふうな、こういう文化取り決めの精神にありますような、こういうものに基づいて、このような措置をとったというふうなことでございます。
  46. 久保亘

    久保亘君 これ、あなたね、チェコスロバキアとかルーマニアとか、大体、政府取り決め文化取り決めによる交流が主になっているようなところだから、そしてそのボリュームが余り大きくないからそういうことで言っておられるが、もしこれが世界的な傾向で大変望ましいことだということになって、それでアメリカとかフランスとか、こういうところを免税でやりましょう、こういうことになってきたら、あなたの方だってそう簡単にはいかれぬでしょう。そのときはやっぱりちゃんと計算機でやられるんじゃないのですか。そういう場合でも、外務省文部省あたりがこれは大変結構なことであるから二国間で取り決めてやりたいと、こういうふうに持ってきたら、それをあなたの方は別に異議なく了承していただけますか。
  47. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 今回のチェコスロバキアにおきましても、最初の段階では、もちろん外務省、自治省と三省で主として詰めまして、かなり詰まった段階ではありましたが、文部省の方にもそういう形で御相談申し上げてまいったわけでございまして、基本的に関係省との連絡は欠かすことはすべきでないというふうに考えておりまして、今後とも、そうしてまいりたいと思います。
  48. 久保亘

    久保亘君 いや、ぼくが聞いているのは、そうじゃないんです。これは大変いいことだから、今後、アメリカともフランスとも、相手国との協議が整えば、文化的使用料については免税にして、そして相互文化的交流をこれ以上に活発にしていこうと、こういうような考え方に立てば、それはあなた方の立場でも好ましいことだといって進められる立場をとっていただけるんですかと聞いているんです。
  49. 宮本英利

    説明員宮本英利君) そういう新たな申し出は、当然のことながら、外務省を通じて関係各省に申し込まれるわけでございまして、わが方も、大蔵省もその一員として、そういう御相談があった場合には、当然、関係各省で相談してまいるべきであろうと、このように存ずる次第でございます。
  50. 久保亘

    久保亘君 外務大臣ね、あなたは大蔵大臣の資格もおありになる方だから、私がいま言っているようなことについてはどういうふうにお考えですか。
  51. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 本件の場合は、文化的な使用料――著作権等の使用料と、それから実際の催し物をした十七条ですか、この二つの性格の違ったものがあると思います。後段の十七条の方の、たとえば芸能家あるいは運動家が相手国に行きまして、そこで催し物をやる場合でございますが、いままで日本といたしましては、国際交流基金かそういった――運動についてはいまやっておりませんけれども、そういう文化的な催し物につきましては補助をいたしておるわけでございます。歌舞伎が行きましたりする場合には、相当なこれは多額の補助を国家がしております。そういったなかなか経済的にペイしないことをお互いにやらなきゃなりませんから、こういったものは課税権が仮にお互いありましても、なかなか課税の実績というものは上がらないはずのものであろうと思うんです。そういうものは、ですから、そういう意味で、お互いにはっきり免税だということにすれば、きわめてはっきりするだろう、調査もしないで済むということで、これは私は非常に結構な制度だろうと思うのでございます。  著作権の場合は、大概は著作権の支払いの際に源泉徴収制度をみんなわが国もとっておりますから、したがいまして、どこへ払おうが、もとで源泉徴収してしまうという制度でありますから、これを免税措置にするには特別な払い戻しかなんかをしなきゃならぬわけであって、かえって逆に手間がかかる面も出ようかと思います。そういう意味で、著作権の場合には、まあ一般に税を取った方が簡便なのではなかろうかという私自身はそういう気がいたしますが、あえてこの面でも免税措置をお互いにやろうということで、たとえばフランスとチェコの間はどうかしれませんが、仮にフランスの映画が非常によけい出て、チェコの映画はフランスに余り行っていないということになれば、お互いの免税措置による利益が均等ではないと思うのでございますが、日本チェコスロバキアの場合は、それほどお互いに、映画などはわりかた金額的には金が張るものであろうと思いますが、それほど日本の映画がチェコに行き、チェコの映画が日本に来ているということでもないとすれば、そういう面でも、これは特別な両国間の関係という意味で、例外的な意味で、これをつくったと、こういうことになるのではなかろうか。これは私はいま税の方を詳しく勉強したわけではありませんけれども、著作権、文化的使用料の場合は一つの新例であるということでありまして、今後、ほかの国に対してもやるべきかどうかということは、私はやはり慎重にその国との関係を検討した上で決定すべきものではなかろうか、このように考えております。
  52. 久保亘

    久保亘君 いま著作権の問題をお話しになったんですが、著作権の場合には、東側の国との場合にはいろいろ問題の生ずることはありませんか。たとえばチェコの劇作家のハヴェルなどがありますね。この人たちの著作権の問題などについては、そうすると、この条約との関係はどうなってくるんですか。
  53. 村田良平

    政府委員(村田良平君) いま詳細な手持ちの資料がございませんけれども、万国著作権条約あるいはベルヌ条約等に加盟しております国につきましては、この多数国間条約規定に従いまして、相互に著作権を保護し合うというシステムでございます。ただ、それに入っておらない国に関しましては、そういった国際的なわが国との間の約束事というのはないという事情でございます。
  54. 久保亘

    久保亘君 たとえばチェコの場合に、反対制作家の場合には取り扱いが違っている面がありますでしょう。だから、そういう場合でもこういう文化的使用料ということについては、この条約は完全に満たされていくのかということなんです。
  55. 宮本英利

    説明員宮本英利君) それが著作権というものに該当する限り、やはりこの免税の適用になるということになろうかと思います。
  56. 久保亘

    久保亘君 それは免税の適用ということでは、たとえ相手国家がどういう特別な制度や法律をつくっておろうとも、そういうものと関係ありませんと、こういうことですね。
  57. 宮本英利

    説明員宮本英利君) いま先生が挙げられましたような具体例でいきますならば、その作家の著作権が日本の法律上その著作権と認められれば免税になる、こういうことになります。
  58. 久保亘

    久保亘君 時間が来ましたので、最後に、もう一つ聞いておきたいのは、一般的使用料文化的使用料の区別の問題ですが、これはなかなか区別しにくいものがあるんじゃないでしょうか。  たとえばチェコのクリスタルグラスというのかな、あそこはガラス細工がありますね、こういうものはかなり文化的なものがありますね。そういうようなものについては、これは文化的な使用料として認められるのか。そういうものの場合、どこまでを文化的な使用料とし、どこまでを一般的な使用料としていくんですか。
  59. 宮本英利

    説明員宮本英利君) そのチェコのグラスの製作技術のようなものについてお話しかと思うのでございますが、それが工業的なものであります限り、やはりこれは工業的な面に入るんではなかろうか、このように思います。ただ、その使用料そのものの性格というものがどういうものかによって、確かに限界的なものでは判断のむずかしいものがあるかもしれませんが、一般的に商業的なものである限りはやはり工業的なものというふうに判断されるのではなかろうかと思うわけでございます。
  60. 久保亘

    久保亘君 たとえばその製品に非常に文化的な価値の高いものがあった場合、そういうものについては、これはやっぱり一般的な使用料として判定されるわけですね。
  61. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 文化的な使用料といいますものは、十二条に定義してあるわけでございますが、ここは「文学上、美術上又は学術上の著作物」、そういったものの著作権、こういうものを挙げておるわけでございまして、仮にそれがいま先生がおっしゃったようなものであっても、やはり商業的なそういう物品の対象になっておるものでありますれば、やはり工業的なものというふうになってまいるんであろうと思われるわけであります。
  62. 久保亘

    久保亘君 時間が来ましたので、最後に、大臣、やっぱりこの種の二国間の取り決めというのは、今後、拡大をしていく傾向が世界的にも見られるのではないか、こう考えております。  それで特に文化的な使用料に関する取り決めなどの場合には、先ほどもお答えいただきましたけれども、その前提に両国間の文化的交流の拡大促進という課題が存在をしているわけですから、当然に、今後は、こういう取り決め協議に入るに先立って、あるいはその協議が続けられている過程においても、必要な省庁との協議を密接に綿密にやっていかれるということが非常に大切ではなかろうかと考えておりますので、そのような方向でお進めいただけるかどうか。先ほども少しお答えいただきましたけれども、重ねてお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 先ほど来、御指摘のございました関係省庁との連絡余りよくなかったんではないかというようなお話でございます。私どもは、そのようなことがないようにふだんから努力をいたしておるつもりでございますが、もう当然、文化的使用料、著作権に関する問題につきましては、文部当局とよく連絡をとって処理をいたすべきものである、このように考えて、今後、そのような連絡協議には万全の努力をいたしたいと思います。
  64. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 租税条約に入ります前に、チェコ東欧圏に属しておりますので、欧州安保・協力会議についてお伺いしたいと思います。  まず、現在、ベオグラードでフォローアップ会議が行われておりますが、これの現在までの状況について御報告いただきたいと思います。
  65. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ベオグラードの本件見直し会議でございますが、これは十月四日から一応十二月二十二日までを目途といたしまして審議を続けておるわけでございまして、三十五ヵ国、これはアメリカを含めまして欧州の三十五ヵ国がこの会議に出ております。  ただいまのところ、まず各国代表の冒頭演説が行われましたのに引き続きまして、非公開でこの条約の最終文書の実施状況に関する検討が行われているというふうに聞いております。それから、現在では、各国が提出いたしました提案を具体的に検討しておる、このように承知しております。  なお、ただいままでに各国から出されました諸提案といたしましては、核兵器の不先制使用――先制的な使用はしない。それから軍事ブロック不拡大等を内容とする安全保障にかかわる提案、これがソ連から出されましたり、また、紛争の平和処理に関する専門家会議の開催提案、スイス等がなされたように承知いたしております。  この会議の前提条件といたしまして、五つの作業部会を設けまして、必ず結論文書を作成して、それと同時に、また、次の会合の時期と場所を定めるというようなことが最初のこの文書ができましたときに合意されております。先ほど申し上げましたように、十二月二十二日までを一応作業の目途としておりますが、これがもしできませんでした場合には、また来年の一月半ばから二月半ばまで続けてこれを行う、このように予定されております。
  66. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 特に、冒頭の演説の中で、代表的な米ソでございますけれども、この米ソの演説についてはどのようにお考えになりますか。
  67. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) この会議あるいはこの文書につきましては、米国及びソ連の合意でございますから、両側がもちろん合意してできたものでございますが、重点の置かれております場所がそれぞれ異なっておりまして、西側の諸国は、特に第三バスケットと申します人と情報の交換、こういうところに重点が置かれております。ソ連の方は、第一バスケットと言われております国境の不可侵、内政不干渉、核兵器の先制不使用、こういうようなことに重点が置かれておりまして、それぞれそういう自己の最も重視する方面に重点を置いてこの会議の成果をねらっておるわけでございますが、私どもといたしましては、これは欧州のことでございますけれども、いずれも世界の平和と人類の幸福のために結ばれたものでございますので、ここに合意された点がまんべんなく十分に実施されることが最も好ましいと考えております。
  68. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 特にチェコの今年問題になったいわゆる憲章七七、この人権問題について恐らく議論が行われておると思いますけれども、これが今回のフォローアップ会議一つ対象としてかなり議論されておると見ておられるのか、これが今後どのように進展していくのか、その点はどう把握されておりますか。
  69. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ただいま御指摘のように、私どもといたしましては、この会議の成果を非常な関心と注意を持って見守っておりますが、いわゆる東側と西側と重点の置き方が違うわけでございますが、この文書が採択されたことによりまして人権の尊重というような問題は、程度の差はございましても、やはり東欧社会主義諸国の間に徐々に浸透していくものと思いますので、この会議の成果も踏まえまして、その速度はたとえ緩慢でございましても、やはりその方向に進んでいくものと考えております。
  70. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま私が言った、ことし問題になったこれはどうですか、いわゆる憲章七七と言われるもの。
  71. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) これは体制を異にいたします他国のことでございますので、私どもが軽々に論評することは差し控えるべきものと考えておりますが、元来、チェコスロバキアという国民は、六八年のいわゆる人間の顔をした社会主義、こういう方向に一度向いたこともございますように、人権とか自由とかいう点につきましてはなかなか強い欲求を持っておる国民と思います。七七宣言につきましては、その後、政府の方でこれを必ずしも推し進めない、むしろ抑止する方向に向いておりますけれども、そういう萌芽があるということは私ども外国人としても十分に認識できるところでございます。この将来につきましては、私ども、先ほど申し上げましたように、軽々しく論評することは避けたいと考えております。
  72. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この欧州安保会議わが国に対する影響、まあヨーロッパだから余り影響がないというふうに言われておりますが、日本に対する影響として考えるのは、アジア集団安保構想、ソ連が非常に前から言っておりますが、これがソ連の出方いかんによってはかなり日本一つの影響を与えると思いますが、まず、このソ連のアジア集団安保構想、これが今回のフォローアップ会議のまとまりいかんによってはまた強い姿勢で出てくるというふうに見ておられますか、その点はいかがですか。
  73. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ちょっと最初に御訂正申し上げますが、この会議がヨーロッパなのでわれわれに余り関係がないと、もし私がそういう印象をお与えいたしましたら、これは訂正いたします。これは欧州、アメリカを含めまして三十五ヵ国もの国が参加しております非常に重要な文書でございますので、この動向は世界の非常に大きな部分の今後の将来にかかわるわけでございますので、私どもといたしましても、至大の関心を持っておるということをまず最初に申し上げておきます。  それから、ソ連の申しますアジア集団安保構想、これは昔ブレジネフ書記長が一度述べたものでございますが、その内容としては必ずしも明らかにされておりません。ソ連側がここで言っておりますものを私どもが理解しておりますものは、いわゆる第二次大戦後の秩序、第二次大戦によってもたらされた秩序をそのまま固定する、いわば現状維持の精神がその底流にあるように私ども解釈しておりますので、集団安保構想というものが具体的にどのような内容を持ったものか具体的な提案としてはございませんが、その内容をまだ十分に見得る立場にないわけでございますが、私どもといたしましては、そのような集団安保構想、この中で国境の不可侵云々という点がもしやはり非常に重視されるのでございましたならば、ソ連との間には、御承知のように未解決の領土問題がございますので、まず、それが解決されることが先決であろうと私は考えております。
  74. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その北方領土の問題ですけれども、依然として、かたい姿勢であることには変わりがないんですが、いままで解決済みと言い、また日本の場合は田中総理が前に行かれて、懸案事項という点の共同声明等が出ていろいろ問題を醸したことになっておりますが、ここで日ソ平和友好条約の問題になりますけれども、いま日中には非常に熱心にやっておられる、まあ私は結構だと思いますが、日ソ間の交渉はこれからどういうスケジュールでおやりになりますか、大臣からこれ一言。
  75. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ソ連との年次外相協議が、実は、ことし開かれる見込みがなくなりまして、来年早々、モスクワに赴きまして行いたいということで先方に申し入れをしておるところでございます。先方は、まだ具体的な日取りというものを決めてこないのでございますが、わが方といたしましては、年を越したならば、なるべく早い機会に行いたい。  定期協議を行い、その際に、懸案の問題につきまして平和条約交渉を行いたいわけでございまして、この点につきましては、ある一定時期は未解決の問題はないんだと、こういうことを言っておりますし、早く言えば領土問題は解決済みであるという表現をとっておりましたが、最近のブレジネフ書記長の表現といたしまして、日本が北方領土問題は未解決の問題だと、こう言っているのは一方的で不正確であるというような表現を使っておるわけでございまして、その間に、解決済みということとどのような関係にあるのかは、これははっきりはいたさないわけでありますが、依然としてソ連側の方針というものは大変厳しいと考えております。この点につきましては、いままでの従来の日本側の努力をさらに一歩でも二歩でも推し進めるということがぜひとも必要であると考えておるところでございまして、粘り強く交渉をいたしたいと考えているのでございます。
  76. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの大臣の御答弁のニュアンスからうかがいますと、もちろんかたい姿勢ではあるが、少しは、まあ軟化とまでいかなくても、やや前のように壁と交渉しておるような状況ではないというふうな感じを受けるんですが、私自身もいろいろソ連の方ともお会いをしておりますけれども、私もちょっとそういう感じが最近しないでもないわけなんです。前のような突っぱねた表現というのは少しやわらいでおるような感じですが、これは私の間違いかもしれませんが、私のつき合っている範囲というのは知れておりますから、大臣なんかはもっとたくさんの人とおつき合いになっておると思いますけれども、その点はいかがですか。
  77. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 問題が領土の問題になりますと、これは先方といたしましても軽々な発言はいたしません。そしてたびたびいろいろな機会に、領土問題を解決して平和条約を結ばなければ、日ソ間のこれからの経済交流をさらに拡大をしていく、シベリアの開発にも取り組んでいくというためには、日本側といたしましては平和条約を結ばなければ限界があるではないかということを指摘をいたしておるわけであります。そういうたびごとに、ブレジネフ書記長の、ことし、たしかあれは六月ごろだったと思いますが、朝日新聞の記者に書面をもって回答したもの、あれがソ連の態度である、こういうことを繰り返しております。  それ以上に出ないわけで、いま御指摘のようなことは、私は、日ソ間の友好の関係を全体的に見まして、一時、たとえば通商協定などは調印をしなかったのが、ことしになりまして、ことしの夏には調印をしたというようなことから、日ソ間の国交につきまして、昨年末のころから比べますと、先方も特に経済面におきます接触を強めてきているという感じを持っておるわけであります。
  78. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 日中条約との関連で伺いますけれども、この日中条約を早々にも締結ということで、来年一月なんというような話まで出ておるような状況ですが、いまの現状から言うと、客観的には日中平和友好条約の方が日ソ平和条約より先に締結されることは間違いないと思います。まず、その点はお認めになるかどうか。  もしその日中平和条約内容いかんによっては、いままでソ連側も覇権問題についてはいろいろな論評をしてきておりますので、平和条約締結後、外務大臣なりあるいは総理がソ連に行かれるか、あるいはソ連の代表を呼んで、そういった説明はされるのかどうか。あくまでも二国間であるから無視をしたままで日中の間が合意すればそれでよいと、その点はいかがですか。
  79. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまの点でございますが、ただいま日中平和友好条約交渉がいつごろ再開をし、そしていつごろ仕上げるかというような、そういう手順につきまして目下検討の段階でございます。その一環として、当然、日本と中国だけの平和友好条約でございますけれども、その他の国々に対しましてどのような連絡をすべきかということも、これもあわせて検討をすべきものと思う次第でございます。
  80. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、チェコについてですが、チェコの対外貿易、特に日本との経済関係について、現在までの経過、また現状について御報告願いたいと思います。
  81. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) チェコわが国との貿易は、日本と東欧の社会主義諸国の貿易の中では、比較的なお低い水準にとどまっております。ちなみに、チェコから見まして、わが国は、西側先進国中で輸出で十五番目、輸入で十一番目でございます。これはチェコが伝統的に、御承知のように、かなり高い工業水準を持っておりますために、他の諸国のように、わが国との貿易の態様が相互補完の関係にない。すなわち原料を私どもが入れまして製品を輸出するというような補完関係にございませんためでございます。  ただいままでのチェコとの貿易の実績を申しますと、七五年では、わが国の輸出が四千四百六十万ドルでございます。それから輸入が二千五百九十万ドル、総額は七千五十万ドル。それから七六年、昨年でございますが、これはわが国の輸出が三千十万ドル、輸入が三千八十万ドル、総計六千九十万ドル、こんなようなことでございます。ただ、われわれといたしましては、かなり幾つかのプラントを輸出したりいたしております。  このような状況のもとに、チェコはただいま第六次五ヵ年計画を推進中でございますが、従来の機械設備等が古くなりました状況下で、今後の五ヵ年、現在進行中でありますが、その五ヵ年には対外貿易を三〇%力ふやす、こういう計画を持っております。最近、チェコがその法制を改正いたしまして、外国商社の駐在を認めるというような措置をとりましたために、今後、日本の商社が合法的にそこに駐在して活動することができるようになる、こういうことでございまして、ここに租税相互課税免税条約ができますと、このような経済面、貿易面の交流がさらに活発化するものと考えております。
  82. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 今後の方向として、チェコは、いま言われたように、確かに日本と競争関係にある面もかなり多いために水準は低いと言われております。しかし、それだけに他の国のように、日本の輸出が大変伸びておるからということで日本に対する風当たりもそう私は強くない、むしろ日本の方がたくさん輸入をしておるぐらいですから。こういったバランスがとれておるわけでありますので、今後としては、こういったバランスを崩さないで経済交流をした方が私はベターだと思いますが、その点についてはどのようにお考えになりますか。これは大臣
  83. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 外国との経済交流関係は、やはり貿易面で輸出入がバランスすることが望ましいことは申すまでもないことでございまして、今後とも、そのような努力をいたすべきものと思います。
  84. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 チェコとの技術協力はかなり工業水準が高いものですから、現在でもされてはおりますが、現在されておる技術協力ですね、技術導入がどういった部門でされておって、これは今後どの程度まで拡大できるのかどうか、その点はどのようにお考えですか。
  85. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 私どもの承知しております限り、ただいままでに日本が入れましたチェコの技術は、鉄と鉛の合金技術、空気ジェット織機、繊維の染色技術、薬品の調製技術、それから空気精紡機、これもやはり紡ぐ機械でございますが、このほか日本側といたしましてはチェコの開発いたしました銅の加工技術のライセンスもとりまして、すでに生産を始めております。  それから日本側からの産業協力といたしましては、日本側の井関農機という会社でございますが、チェコの会社とトラクターの設計技術をやっております。それから民間の技術協力協定といたしましては三井グループがチェコの技術投資省との間に科学技術協力協定締結しており、特に東芝と向こうの会社との間の交流が活発になっております。
  86. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 今後の見通しですが、これからまだなおチェコの技術で日本へ導入できるものはございますか、大体、現状これぐらいが限界ですか、その点はいかがですか。
  87. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) これは私どもちょっと素人でございますので責任を持ってはっきりしたお答えを申し得ませんけれども、伝統的に水準の高い国でございますし、日本もそういう日進月歩の技術を持っておりますので、今後とも、拡大する方向に進むであろうと考えております。
  88. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ぜひこういったバランスのとれたひとつ経済協力といいますか、貿易の関係でやってもらいたいと思いますが、日本は大体そうでない方が多いわけで、最近、アメリカを初め大変円問題が問題になってまいりまして、これはちょっと本論からそれますけれども、昨日もとうとう二百四十一円台になってしまいまして、いよいよ二百四十円割れというふうな状況になってきておりますが、これは予算委員会でもしばしば私も議論してまいりましたが、大臣は財政にも明るうございますので、これからの経済外交ですね。特に、わが党の書記長もきのう帰ってまいりまして、大変厳しい状況であるという報告がございましたが、これからもなお依然としてアメリカ日本に対してこの円を上げる方向にくると、こう見られますか。いま通商代表の方が来ておられますけれども、非常に厳しい態度で、これを余り甘く見るとちょっとまずいと思いますんで、その点、まず見通しはいかがですか。
  89. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 昨日まで行われました非公式の事務レベルの日米の折衝におきまして、日本側といたしまして、これは倉成経済企画庁長官が一応窓口に、責任者になられまして折衝が行われたわけでございます。アメリカ側の態度は、これはなかなか厳しいという表現がいいのか、やはり世界全体の経済のことも考えた上での態度であろうということがありますが、また、アメリカの国内におきまして保護貿易主義と申しますか、そういった勢力が特に議会内に強まっておるということで、この議会のそのような主張に対しまして行政府といたしまして自由貿易体制を維持していこう、こういうことで、そのためには日本といたしまして世界経済を考えた上で異常な黒字の累積ということについて何とか処置をしてもらいたいとこういう考え方でございます。  私どもといたしまして、異常な黒字の累積傾向というものは、どうしてもいまの変動相場制のもとにおきましては円の値打ちが高まる傾向を持つことは確かであるということで、国内経済を考えましても、円のこれ以上の高騰は望ましくないという考え方を持っております。そのためには、やはり貿易黒字の累積を経常収支あるいは基礎収支いずれをとりましても、まあ基礎収支で均衡を図るということが必要であろうと思っておるわけであります。わが国の国内経済のためにも世界経済のためにも、日本としては格段の努力をしなければならない、このように考えて、わが国といたしましても積極的に施策を講じていかなきゃならないという考え方で努力をいたしておるというのが現実のところでございます。  しかし、この貿易の流れというものはなかなか急激には変わらない。円がこれだけ高くなりますと、どうしても自然調節作用が起こって貿易の流れもある程度変わってくるはずでありますけれども、その効果というものはどうしても時間がかかって、円が高くなったことに応じてドル表示におきましての黒字というものが当面なかなか減らないというのが過去の切り上げ時の示しておる傾向であります。しかし、これは必ず時の経過とともに自然調節作用があるわけでありますけれども、それに対して時間がかかって、その時間の間に必要以上に円が高くなってしまうということは日本経済にとりまして大変なマイナスであるということで、日銀、大蔵省でも投機資金の抑制に乗り出したという段階であるわけで、実体の貿易面につきまして、政府といたしましてやはりあらゆる努力を尽くすことこれが緊急時である、そういう考え方で臨んでおるわけでございます。
  90. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いろいろこれ議論すると長くなりますから、簡単にいたしますけれども、外務大臣として一番折衝の相手になるのはアメリカだと思いますけれども、アメリカにいまある程度言われっ放しですよね。確かにアメリカはいま世界経済のことも考えているとか言いますけれども、現実は、一番の向こうの赤字の原因は石油の輸入でしょう。石油をどうしてこのようにたくさん輸入しておるのか、しかも、かなりな備蓄をされておる。しかし、アメリカは、たとえばアラスカの石油だって日本には売らないですね、原油は。  こういうある程度アメリカ自身のいまとっている政策が、一つは、ドルのたれ流しを結局招いてきたわけですが、これに対しては余り日本政府としては言われていないんです。どこかでおっしゃっているのかもしれませんけれども、この間、総理にも、私は、もっと抗議すべきだと主張しましたが、総理は、いやちゃんと話し合いをしているから抗議なんというものはしなくていいと言われていますが、あれだけアメリカが強硬に来ているんですから、私はアメリカに対して言うべきことは言うと、そのかわり日本もそれだけを言うからには、いま大臣が言われたような国内的な処置をやることはやむを得ないと思います。その点でやっぱり積極外交をやるためにはある程度はっきり物を言った方がいいと思うんです、アメリカだってもう本当にはっきり言ってきているわけですから。石油買い込んでいることはもうはっきりしているわけですから、これは次に何を考えているのか、私自身は前々から言っていますように、値上げを考えてやっておるのではないかというような、そういう疑いがある。その次には、中東の雲行きもどうなるかわからない、その点はいかがですか。
  91. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御指摘の石油の輸入につきまして、アメリカがエネルギーの独立の計画がうまくいかない。で、エネルギー法案は国会に出しておるけれども、国会では下院と上院でそれぞれいろいろな議論があるということで、なかなか政府のエネルギー法案に対しましてはいろんな修正が加えられようとしているのが実情であろうと思います。アメリカが意図的に油の備蓄をふやしておるということが全くないとは私ここで申し上げることはできないのでございます。しかし、アメリカがエネルギー政策がうまくいかなくて、特に国内生産をふやそうとしていたところが逆に非常に国内生産が落ち込んでおるということも確かであって、昨年の冬には油の不足によって異常な寒波が来たときに非常に困ったというようなこともあったりいたしましたのでありまして、日本といたしまして、油の輸入がこんなにふえているのがアメリカの赤字の最大の要因ではないかということはもう常時指摘をしておるところであります。そういう意味で、言うべきことははっきり言うということ、これも総理の御指示もあり、もう今回の折衝におきまして、その点はよく当方からも主張すべきことは大いに主張をしておるわけであります。  ただ、日本が異常な黒字を出しているということも、これもまた事実であるというので、アメリカに対してドルの価格の維持、油の輸入量をできる限り減らすべきである、こういうことを強く申し述べるとともに、日本といたしましても行うべきことは行う、こういうことで進むべきであると考えております。
  92. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この黒字対策ですが、これは非常に遅い、やり方が大変緩慢である、だからよけいアメリカも感情的にまでなってきておる。こういった点についても、これまたやり出すと時間がかかりますからやめますけれども、きちんとしていただきたい。  それより大事なことは、日本が国際会議の場で言ったことはやはりきちんとやっていかないと、そういった点から不信感というのが出てくると思うんです。だからロンドンの首脳会議で総理はどう言われたか、それは実際できていないわけですね。またIMFで大蔵大臣が演説をされた。これも内需は拡大されると言いながら、景気回復は依然として遅い。だから、そういった点で、少なくも国際会議の場でしゃべったことについては、国内の国民に対してもきちんとした合意を得ながら、もっと積極的な対策をやっていかなければいけないと思う。そうしないと、ますます不信感で、結局、日本は話だけはするけれども、実際ドルは減らぬじゃないか、黒字が減らぬじゃないかと、そしていろんな関税とか非関税障壁、もういろんなものがあると、こういうことで突っ込まれてくるわけですから、少なくも国際会議で言ったことをきちんとやる。これがもしできなかったら、これはもう内閣の大変な私は責任だと思うんですけれども、いまの政府、特に外務大臣は対外折衝の責任者ですから、いまの政府のやっていることは大変私は緩慢だし、極端に言えば国際信義さえ裏切っておる状況だと、こう言われてもしようがないと思うんですけれども、その点はどうお感じになっておりますか。
  93. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ロンドンのサミットにおきまして、日本はとにかく六・七%の成長、これをやり遂げるということを申しました。ことしの経済見通しにおきまして経常収支が七億ドルの赤字というような計画が立てられておったわけであります。しかし、この国際収支の点につきましては、これはなかなか見通しが立てがたいということで、この点、七億ドルの赤字ということははっきり約束をしたということには私どもは考えておらなかったわけでありますけれども、そのような数字が日本政策として、目標として出ておったという事実はあるわけで、その点につきましては、余りにも数字が違うではないかという指摘が強いわけでございます。この点はなかなか経済見通しのむずかしいところであったわけでございますが、これがいま世界で日本に対する非難の大きなよりどころにされておるのであって、その点は、大変政府としてはつらい立場に立っている。  したがいまして、これから六・七%の成長におきまして、それがやはり輸出にいままで向かったものが内需の拡大で吸収をされるというような形が望ましいので、これがなかなかできないというのは御指摘のとおりで、これにつきまして政府といたしましてとにかく例年考えるよりも早いスピードで、九月の段階からこの政策を打ち出して国会の御審議をいただくことになったわけで、これはふだんよりよほど早い時期を選んでやったわけでありますが、その効果が出るにはまだ時間がかかる。いまはこのつなぎの間の大変苦しい時期である。そのつなぎの時期に円の急騰ということになって起こっておるということでありまして、これは政府の施策が遅いではないかと、こういう御指摘は私は謙虚に耳を傾けるべき御意見であろうと思っております。今後、一層、来年度予算の編成にかかるわけでありますが、これらを通じまして、国際経済の観点から、また国内の不況対策という観点から、やはりやるべきことは果敢に実行しなければならない、そういう段階であろうと考えているわけであります。
  94. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間が終わりですから、一言だけ。  いまの大臣の答弁はちょっと私は不満なんですよ。そういうことを言っておられるから、よけいやられるんです。  というのは、当初見通しで赤字を立てていた、しかし、見通しはなかなかむずかしいんだと。確かにそれは日本社会主義国のような計画経済ではないから、ある程度の見通しはできないかもしれません。そのとおりいかない点は認めますけれども、私は、本年の当初予算の予算委員会で、この見積もりはおかしい、こんな赤字が出るわけないと、余りにも下目に見積もっているのではないかという点は指摘をしてあるんです。私のような素人でも、素人といいますか、余り勉強していないのでもある程度の見通しはできたわけです。しかし、政府の方は誤った。この赤字の見通しを出されたのは、いろんな計算の根拠はあると思いますけれども、私は、相当外に対することを考えてやられたのではないか、要するに日本に対する風圧を避けるためにわざと低く見られたんじゃないか、だから、こういうのが出てきたのかなと私自身最初は率直にそう感じたんです、これは感じです。で実際に結果としては大変な誤りになった。いま、それで見通しがだめだったからしようがなかったんだなんと言ったって、私は、いまの答弁をもしアメリカの代表にされたら、これは黙っていないと思うんですよね。  そういう点で、もう少し深刻に受けとめていただいて、確かに見通しは誤ったと、だからこれだけやるんだと、国民の皆さんもそういった点はひとつつらいことがあっても協力願いたいと政府が本気になってやっていただければ、国民だって私は協力すると思うんですよ。ところが、何か対外的にはふらふらやっておいて、それで国内的には処置は遅い。しかも救済策だって大変おくれている。融資だって大変遅い。現実に本当にまだ緊急融資制度だって動いていないんですよね。  そういった点、ひとつ外務大臣は対外折衝という立場から、やはり国内の政策も進めながら、言うべきことも言い、そのかわり約束したことはきちんとやる、そういうふうにしてやっていただきたい。これは最後に要望ですから答弁は要りませんけれども、ひとつよろしくお願いします。以上です。
  95. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国チェッコスロヴァキア社会主義共和国との間の条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手をお願いします。   〔賛成者挙手〕
  96. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ―――――――――――――
  98. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) これより請願の審査を行います。  第四一八号金大中氏の原状回復決議に関する請願外三十一件を議題といたします。  まず、専門員から説明を聴取いたします。
  99. 服部比左治

    ○専門員(服部比左治君) 今国会中、外務委員会に付託されました請願は、お手元の表のとおり、全部で三十二件でございます。  まず、四一八号は、金大中事件がKCIAの犯行であることは明白であるのに、政府はほおかむりをしているので、事件の根本解決を求め、日韓関係の不正腐敗を正すために、国会金大中氏の原状回復を要求する決議をしてほしいというものであります。  次の一〇三九号も、同趣旨でありまして、国会が決議をするほか、金大中事件調査委員会を設置してほしいというものであります。  次に、六九四号は、日中間の国交が回復して満五年を迎えた現在、平和友好条約がいまだ締結されていないのは遺憾であるので、日中共同声明に基づいて平和友好条約を速やかに締結されたいというものであります。  最後の二二二五号は、一九五九年以来北朝鮮に帰国した人々の中に約六千名の日本人女性が含まれているが、その大半は行方不明であり、便りのある者でもまだ一人も里帰りをしていないので、早期に北朝鮮へ安否調査員を派遣し、里帰りの実現を願う家族たちの悲願にこたえてほしいというものであります。  以上でございます。
  100. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  101. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 速記を起こしてください。  第六九四号日中平和友好条約早期締結に関する請願は、議院の会議に付することを要するものにして、内閣に送付するを要するものとし、第四一八号金大中氏の原状回復決議に関する請願外三十件は保留と決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認めます。よって、きょう決定をいたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  午後一時まで休憩をいたします。    午前十一時三十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時五分開会
  104. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告をいたします。  本日、久保亘君が委員辞任され、その補欠として小野明君が選任されました。     ―――――――――――――
  105. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 国際情勢等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  106. 戸叶武

    戸叶武君 エジプトのサダト大統領がイスラエルを訪問して、ベギン首相との会談を行ったというこの歴史的な会談に対して、世界各国からの注意の眼が向けられてまいりましたのは、対立から話し合いによる難問題の解決の方向へ、世界で一番難問題を持っているところの中東においてそれが始まったということであります。  私たちが回顧すると、一九一七年十月にバルフォア宣言がなされて、シオニストのパレスチナ入植が国際連盟に承認されるに至ったあの歴史的な事実から六十年を経過して、この間には、第一次中東戦争、第二次中東戦争、第三次中東戦争、第四次中東戦争というような悲劇が繰り返されたのにもかかわらず、それを乗り越えて、今回のようなサダト大統領の決断がなされたという背景には、サダト大統領一人のスタンドプレーでなくて、それを支えるアラブ諸国の良識と並びにアメリカその他の根回しもあったことと思いますが、外務大臣は、この動きのもたらす影響をどのように受けとめておられますか。
  107. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 今回のサダト・エジプト大統領イスラエル訪問につきまして、このことが中東の和平につきまして本当に効果的な結果が出ますように、私どもは心から祈っておるものでございます。  サダト大統領のイスラエル訪問につきましては、アラブ内でこれを阻止しよう、あるいはこれを強く非難している国々が相当あるわけでございまして、これらの反対を押し切ってサダト大統領が決意をされて、平和のために一身をかけて努力をされたことにつきましては、高く評価をいたすものでございます。しかし、このことは、アラブのいわゆる過激派と言われているグループにつきまして、このサダト大統領の真意というものが理解をされて、支持をされることが何より必要なことであろうと思います。  サダト大統領の演説自体も、イスラエルの議会で行われたわけでありますけれども、イスラエルの国民に対してなされたとともに、私は、全アラブの国々に向けても述べられた演説であると聞いておったわけでありまして、このことがぜひ成功するように私どもは強く期待をいたしておるところでございます。
  108. 戸叶武

    戸叶武君 これに至るまでのアメリカの根回しと思われるのは、米国のブルメンソール財務長官の中東諸国訪問、特にイラン、サウジアラビア等とも接触し、そうして産油国のオイルダラーは今後もアメリカに還流してくるし、世界経済を混乱に陥れかねない石油価格の大幅引き上げはあり得ないという観察は、見通しとして正しいでしょうか。このことに対してはバンス国務長官も同様な見解を示しておりますが、これはアメリカとしては、中東和平というものと、やはりオイルショックによって受けたような衝撃を世界に与えないための配慮というものを十分考えた上での一つの外交政策の展開かと思うのですが、鳩山外務大臣は、このアメリカの中東政策の変化というものをどういうふうに見ておりますか。
  109. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 中東の和平といいますか、中東に戦闘状態がなくなるということが油の安定的な供給と結びついておるということは私どももそのとおりであろうと考えます。そういうことがあって、他方で、中東和平問題がアラブ側からも強く期待をされるようになってまいりまして、また、その平和をつくり上げていくことがなかなか成功いたしませんと、また危険な状態に逆戻りをするというふうに見られておる。  そういう意味で、本年中に何とかジュネーブ会議のテーブルに着き得るようにという努力が重ねられておるわけで、その期限ももうあと一ヵ月ちょっとしかないということになってきたわけで、現実な心配としては、このジュネーブ会議に着くことができなかった場合に、また危険な方向に行って、中東に次の戦闘と申しますか、混乱状態が起こるということになっては、これはいよいよ大変なことになる。また世界経済に与える影響もどんな障害が起こってくるかわからない、こういう事態になってまいったのではないか。そういう危機感のもとにサダト大統領の行動というものが必要になったと、このように私自身は考えております。
  110. 戸叶武

    戸叶武君 エジプトのナセルがスエズ運河の問題をめぐってソ連の援助を受けて、そうして米英と対立したこともあります。しかしながら、その後、徐々にエジプトはソ連離れをしてアメリカの方に接近し、また、ソ連は、ソ連と非常に長い間ダーダネルス海峡の問題をめぐって歴史的に対立関係にあったトルコに対して、あの近代化のおくれたトルコに対して大量の経済援助を行い、さらに、転じては、インドにおけるナショナルコングレスが伝統的に共産主義ぎらいであった、特にイギリスからの解放運動の途中において、インド共産党がソ連のナチスとの闘いを契機としてソ連協力を強く打ち出して、かえってナショナルコングレスの幹部は投獄されたというような歴史的な経過もあって、そうしてネルーの時代からネルーが中立政策を打ち出したが、ソ連に対しては若干批判的な面があった。それにもかかわらず、どろ沼のようなインドに対してトルコ以上に経済援助を行って、インドの危機を打開し、ガンジーまで抱き込もうというような形で国民党の中に分裂が生じるというようなことはあったが、しかし、これによってだけでは中東あるいは南方アジア政策というものが功を奏しないので、オイルのショック以後においては、イランに対して積極的な外交、貿易の展開をやってきた。今度は、アメリカがイランの欲するところの武器を大量に輸出するというような形において、アメリカ側に引き寄せるというような虚々実々の闘いがいままで中近東を通じて展開されてきた。  今度のエジプトとイスラエルの接近、これはアラブ諸国にも、大臣が言われたように、いろいろな反応が生じてくると思いますが、基本的にはやはりアメリカとソ連との若干の相違はあるが、ソ連としてもナセルを援助したときのような状態と違って、しばらく様子を見守ろうという形が出てきて、世界が対立からやはり平和共存の方向へあるところまで踏み込まないと、国際世論から孤立するという一つの方向へ方向づけられてきたのじゃないかと思うのは、ソ連に駐在しているアメリカ大使が、このエジプトの政治的なかけと言ってもいい踏み切りに対して、ソ連側がこれに真っ向から反対するような意向はないということをアメリカに報告しているのを見ても、それがうかがえるのでありますが、日本外務省としては、今後における中東問題をめぐっての背後にあるアメリカやソ連の動きをどういうふうに見守っておりますか。
  111. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 今回のサダト大統領のイスラエル訪問に関しましては、ソ連のマスコミは大きなスペースを割きながらも、当初は、アラブ諸国等の批判的な反響を事実報道の形で紹介するというかっこうでございまして、ソ連政府自身が自分の意見を強く表明するということは避ける慎重な態度を当初見せておりました。ただし、その後、だんだんと批判的になってまいりまして、ソ連として最も心配しておるのは、今次訪問がエジプト、イスラエルの間の直接取引を成立させて、これによってアラブ世界の団結を崩すおそれがあるのではないか、それからジュネーブ会議を通じての中東問題の包括的な解決を阻害するのではないか、ひいては中東問題からソ連が除外されるのではないかという懸念を持っておるようでございます。  それで、御承知のように、ソ連は、中東におきましてはアメリカに比しますとやはりプレゼンスが少のうございまして、エジプトが昨年春にソ連との友好協力条約を破棄いたしましたのが一つの大きな例でございますけれども、そういうわけで、ソ連といたしましてはアメリカ中心の和平の動きというものには取り残されたくないというところがかなりあるようでございます。で、十月一日に、米ソ共同声明が出まして、これでアメリカはソ連をも引き込んで和平を推進するというかっこうを示したわけでございますが、御承知のように、ジュネーブ会議は米ソ共同議長ということでございまして、ジュネーブ会議が開かれる場合には、当然、米ソが共同議長になる。そういうことでございますので、現在開催に向かって努力が行われておりますジュネーブ会議の実現のためには、やはりアメリカといたしましてもソ連の協力が必要である、ソ連といたしましても、このアメリカの和平の努力に一枚加わっておく必要があるというところではないかと思います。  したがいまして、今後、いろいろの動き、特にサダト大統領のイスラエル訪問によりまして、先ほど大臣が答弁されましたように、ジュネーブ会議に向かってさらに努力が行われるであろうということでございますが、その際、アメリカといたしましても、ソ連を全く排除するということでは進まない。ソ連といたしましても、世界的な重要性を持つ中東和平の問題にはそれなりの参加をしていくというかっこうで、国際的な動きが展開されていくのではないかと思っております。
  112. 戸叶武

    戸叶武君 そこで、このエジプト、イスラエルの動きと、アラブ諸国におけるいわゆる急進派の動きとは微妙な関係にありますが、日本の赤軍、西ドイツの赤軍等もおのおのマルクス・レーニン主義を奉じながらも、いわゆるマルクス・レーニン主義というよりは新左翼といいますか、もっと極端な形におけるテロリズムを中心として世界革命を企図するような方向へ走りつつありますが、これの温床は中東の激化に基盤があったとも見られておりますが、今後、その動きをどのように偵察しておりますか。
  113. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 今回のサダト大統領のイスラエル訪問に関して、直ちにどういう動きがあるかということにつきましては、まだその徴候がございません。しかし、御指摘のように、サダト大統領のきわめて画期的な行動、決断によってイスラエル訪問が実現いたしました結果、アラブ諸国の中におきましては、この賛否をめぐりましてかなり分裂が現在見られるところでございます。特にイスラエルとの交渉並びに和平というものを拒否する立場にあります国々におきまして、サダト大統領に対する批判が非常に高まっておるという状況でございまして、このアラブ諸国内における意見の相違、分裂というものは、あるいはこの過激派、過激行動に訴える分子の活動を活発化する可能性はあるのではないか。ただ、現在のところ、まだその動きはあらわれておりません。
  114. 戸叶武

    戸叶武君 このアメリカとソ連との世界政策の中において、一面においては、世界戦争を食いとめようとするような話し合いの場、パイプが通じており、一面においては、勢力拡大のためにはいろいろな権媒術策が行われているのがよかれあしかれ事実だと思います。しかし、戦争への道と平和への道、いずれを選ぶかというぎりぎりの段階に徐々に世界から回答を求められてきておりますので、やはり今後において核兵器の削減なり、核兵器を絶対に使わないというような協定なり、さらに軍備縮小なりというようなことを前進させないと、世界各国がアメリカに対してもソ連に対しても素直にはついていけないというところまではきたと思うんです。  この国際世論の形成というものが大きく今後アメリカなりソ連なりを、極端な孤立化された形においては世界に働きかける基盤がなくなるというような形で変化が生まれると思うのですが、そういう意味において、東西南北からの風圧を受けつつある日本は、発展途上国の中において唯一の武器を持たないで平和共存の悲願を持っている外交政策を基調としている国でありまして、日本の動向というものが世界に非常に注目されてきていると思います。  そういうわけで、私は具体的な例を挙げると、最近における日中平和友好条約に前向きの姿勢で鳩山さんなり福田さんが向かおうとしながらも、自民党の中においてはこの潮流に抗することはできないと思っていながらも、中国への往来の中において、国際政治の感覚においていろんなナンセンスと思われるような質問や意見を北京あたりで展開し、廖承志君のような温厚な人からもきめつけられているようであります。たとえば日中平和友好条約を結ぶに対しても日本が不信感を持っているのは、中ソ友好条約の中における軍事条項、いわゆる中ソ同盟のようなものがあるのにもかかわらず、それが完全に解消されていないのはというような質問を堂々とやっている。しかしながら、中国は、一九五九年以来、ソ連側とのいざこざからソ連を兄弟国として認められない、信義を裏切るものである、やはり中国の主権を侵害して領土獲得に走ったものであるというふうな中国一流の見解でソ連と仲たがいをしており、条約はあっても、事実上、その条約が生きていないのであって、問題にしなくともそれはそれとして片づけられる問題で、これは外交といいながらも、中国自身の主体的な見解によって問題は決するものだと思いますが、そういうさわらなくてもいいところにさわって、そして中国側をいら立てさせたり、あるいは不必要な摩擦を起こさせるようなこの感覚は、まあ政府でなくて、自民党の古いタイプの政治家たちのやっている行動だと言えばそれまでですが、これに対して外務省外務省として独自な見解を持っているかどうか、その見解を持っていれば、どういうふうな対処の仕方をしているか、それを承りたい。
  115. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 中ソ同盟条約についてのわが方の見解でございますけれども、これは一九五〇年の条約であり、また、この条約の中にも、第二条におきまして、両締約国は相互の同意を得て第三次世界大戦中のその他の同盟国とともにできるだけ短期間のうちに日本との平和条約締結することを保障すると、こういう条文もあるわけでございます。両締約国は、中国もソ連も、日本との平和条約を結ぶことを考えておると。したがいまして、私どもは、日ソの関係におきましては平和条約はまだ結ばれておらない、しかし、一九五六年の共同宣言によりまして事実上の平和回復はできたわけでありますし、また、中国との間は共同声明が発せられておる。そういうことがあり、また、平和友好条約というものが結ばれれば、当然、敵国性はなくなるというふうに私どもは条約として考えております。  しかし、そのことは、私ども、期限がまいります一九八〇年、このときにそういった条約が形式的にもなくなることが好ましい、そういう考えを持っておるわけであります。この問題につきましては、従来からも議論がされておるところではございまするけれども、平和友好条約締結とともに、私は、実質的に問題は解決できるものというふうに考えております。
  116. 戸叶武

    戸叶武君 この日中平和友好条約はもう幾らせき立ててもことしというわけにはいかぬでしょうが、来年の一月には鳩山さんも行くでしょうし、また福田さんも三月ぐらいまでにはこの問題を解決しなきゃならぬというふうに大体踏み切ったと見られておりますが、自民党の中にいろいろな見解があることは好むと好まざるとを問わずに事実でありますが、やはり私は今回のサダトの見識と大胆なる行動を見て、国の安危に関するような大きな問題に対しては、政治家は体を張らなけりゃだめだということをしみじみ感ずるんです。  鳩山さんでも、あなたのお父さんの方だが、やはりあなたよりは勇気があって、ソ連に乗り込んで、そうしてソ連との調整をやった。その前には後藤新平があり、日露戦争前後においては伊藤博文のペテルブルグに対する潜入によって、日英同盟が締結されないときには自分の体を張ってそして日本とロシアとの関係を悪化させないというような、こういう国のために命を張ってやるような政治家がいたが、このごろは情報集めだけでもって、決然として日本の運命をみずから開拓するという気構えがない。武器がない、腹ができていない、これじゃ祖国を本当に安泰に導くだけの外交が躍動しっこないと思うんですが、鳩山さんはやはり親の血を受けているんだろうし、ソ連に問題が起きたときに行こうかというあの気持ちはわかるが、アジアの将来を考えるならば、ソ連も大切であるが、日本なくしてアジアの進歩なく、中国を除いてアジア問題の解決はあり得ないので、いろんな立場立場の相違はあるけれども、その相違を理解しながら、日本と中国が手を結んで平和共存のモデルを、イデオロギーや民族や国家性格を異にしても、このグローバルな時代にわれわれはこの地域にこのような体制をつくり上げることが可能だということを示すことがいま非常に重要な段階だと思いますが、鳩山さんは、それに対してはどういう御見解をお持ちですか。
  117. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日本が置かれております国際的な環境といたしまして、ソ連並びに中国が非常な隣国として大事な地位にあることは申すまでもないことで、この両国と正常な関係発展させるということは日本として大変大事なことであると考えております。ソ連との間には平和条約がなかなか締結できない、領土の問題が絡む、こういうことでありまして、この点につきましては国民的な課題として取り組まなければならない。しかし、残念ながら、この問題の解決の見通しというのはなかなか容易でないというのが現実のところでございまして、中国との間の平和友好条約締結問題は、これはもう政府も真剣に取り組んでおるということで、内容につきましても双方が満足できるような内容をつくり上げたい、こういうことでございます。  そういう意味で、日本の外交も、中国とソ連との問題が解決できれば、これは国家百年のために大変いいことであり、そのためには身命を賭して取り組まなければならない、これが外交当局者の決意でなければならないと考える次第でございます。
  118. 戸叶武

    戸叶武君 日露戦争に敗れたときに、帝政ロシアは非常に動揺して、野に下っていたウイッテを起用してポーツマス条約の全権たらしめたのですが、そのときにウイッテの偉さというものは、アジアの人々の外交的な考え方はどういう点に特徴があるかというのを、馬関条約や日清戦争の時代を通じて日本との折衝に当たった李鴻章の研究というものを彼はしさいに行っています。その敗戦外交がポーツマス条約において日本を支持していると思ったアメリカにおいてもウイッテに対する同情を誘発させて、外交的成果においては敗戦国としては相当の有利な条件を確保したんです。  日本が敗れたときに、いまでは吉田さんを偶像化して保利さんなんか何かこの間も文章を発表しておりますが、吉田さんも偉かったかもしれないが、しかしながら、日本が今日においてまで日ソ関係の大きな暗礁となっているのはやっぱり北方領土の問題です。北方領土の問題がサンフランシスコ講和条約の際に手をつけられなかったということ。あすこで、ねじ伏せられるであろうが、日本の全権から日本固有の領土を返してもらいたいということを言い切れなかったのは、要するに、アメリカのルーズベルトとイギリスのチャーチルとが組んで、スターリンを利用して、一九四五年二月十一日のヤルタ秘密協定、戦時中の軍事謀略協定においてソ連を加わらすのに領土を与える、他国の主権を無視し、アトランチックチャーターの精神も無視して、戦事中の軍事謀略協定をやった。そのヤルタ協定の共犯者として、結局、その問題にアメリカも触れられないで北方領土の問題をいいかげんにし、日本も敗戦国の代表として宮廷外交官であった吉田さんにそれだけの抵抗の気魄がなくて、あの段階から日本一つの重い荷をしょわされてきたんです。  しかし、いまわれわれが世界の動きを見ればわかるように、バルフォア宣言以後における中東の苦悩というものは想像以上のものだと思います。そういう問題も、難問題と取っ組んでそれを解決しなけりゃならぬという一つの時期が到来してきているときに、われわれが北方領土を返せと言う前に、ソ連がアメリカを、アメリカがソ連を警戒しつつある谷間に置かれているこの日本の北方領土というものに対して、ヤルタ協定、戦時中の軍事秘密協定というものは、国際法の理念からするならば、次の平和条約において、当然、前提条件として解消さるべきものであります。これからの平和条約というものは、勝った国が負けた国の主権を無視して固有の領土を奪い取るというのでなくて、次の平和を保障すべき条件を具備した上で平和条約締結するということが明日の平和を約束する平和条約の基本的な理念でなけりゃならないので、日本もそれでがんばっているのでしょうが、これはあのバルフォァ宣言以来、苦悩に苦悩を重ねてきたアラブとイスラエルの人々が民族とか宗教とかいろいろな抗争を乗り越えて、そうして平和共存の体制をここにつくり上げようという意欲から見るならば、日本の北方領土の解決の問題はそうむずかしいことではない。日本を使って軍事的にソ連を敵視したり、あるいは日本をかき込んでソ連の優位な勢力圏に入れようとするような考え方もソ連でもあきらめなくちゃならないんだし、それをさせるのは日本の自主的な外交の気魄がない限りにおいてはできない。  しかしながら、日本の悲しむべきことは、いまのアラブ陣営におけるさまざまな現象がある以上に、きょうは廖承志君がはっきり物を言っている。中国を敵視する勢力が日本に、自民党内の台湾ロビー、日本共産党、社会党の社会主義協会、こういう連中があるということを、わりあいに発言に注意深い廖承志すらもいら立ってそういうことを具体的に言っている。それには誤解している面もあるでしょうが、明らかに日本外交というものが国内において平和共存をつくり上げるという基本理念の上に立って一本に貫かれていない。ソ連のごきげんをうかがい、第五列的な物の考え方、あるいは無条件に中国に迎合する考え方、あるいは唯々諾々としてアメリカにひざまずく考え方、あるいは台湾や韓国に何か利権でも落ちていないかといってもさもさ歩いている連中、こういうものが事実上の日本外交に大きな影響力を持つということは、多少持ってもいいが、福田内閣なり鳩山外相なりはそういうものに揺すぶられて苦悩していると思うが、やはりみずから毅然とした姿勢で日中平和友好条約をつくり、日本が独自な見解で、ソ連を敵視するのでなく、日本の責任において再び戦争はしない、警戒は勝手であるが、日本に対してもっと信義を持ってもらいたいというだけのことを言うならば、私は北方領土の返還なんかはなし得ると思うのであります。  私は、クレムリンの宮殿の最高幹部の部屋で、ミコヤンと大げんかをした。それはソ連のために日本のために真実を言って民族の憂いを訴える者がいないということが、民族が違い、言葉が違い、イデオロギーが違う国においては最大の不幸だと思うから、ここに日本人ありと、日本人は本当にこう考えているんだというのをぶっつけたものでありました。しかし、そのときには、成田さんでも歯舞、色丹だけで早期平和条約締結するなどと言っておったから私の意見とは対立しましたが、成田さんも聡明な人だから後で変わって、中国に行って私の意見と同じようなものを吐いたので、今度はプラウダで名指しで罵倒されましたが、しかし、そのとき、やはりソ連側で私のところへ聞いてきたのは、戸叶さんは日本人だから本当のことを言ってくれいと、プラウダの批判が間違っているかどうか。いや一党の指導者の成田さんを呼び捨てで罵倒することはどうかと思うけれども、言うことはソ連の理屈は合う。しかし、ソ連が漁業の問題、領土の問題、一つとして日本民族の心を打つような外交をやっているか、一つの威喝外交じゃないか。心を得なければ、日本の人民が最終的には主権者であって、国民の合意なしには平和条約などというものは締結できないんだ。われわれは微力ではあるが、やはりゆがんだ平和条約を結めば子孫代々に至るまでこの屈辱の中に恨みをのんでいかなければならない。そういうことはレーニンが敗戦ロシアの焦土の中に立って、他国の領土は侵さない、寸土も譲らないという形において、ナポレオンが敗れた後のウィンナ会議におけるタレーラン以上の外交を展開したあの外交を、われわれはやはり敗戦外交として学んでいるのだということを言ってやったのです。  あなたは、いま孤立化しつつあるソ連としては、ソ連を最も理解してくれた人のお子さんであるし、私は大切にすると思うが、しかし、その鳩山さんですらも、踏み切って日中平和友好条約を結び、その上で日ソとの懸案を解決するために、さっきあなたが言ったように、体を捨てようというまでの考え方を持って外交はやるというこの気魄が私は非常に大切だと思うのです。うまいことを言うのじゃなくて、相手の胸ぐらをとってもこれが日本のためになり、これがソ連のためになるんだという気魄を相手に感じさせなければ、日本民族は本当に信頼できる民族だという認識を他国の人は持ってくれないと思います。  いま中国との問題を早くというのは一中国だけの問題じゃない。中国だけにおいても私は過大評価をしていない。しかし、廖承志君のお父さんだって国民党右翼によって殺されているのです。あのとき以来、頭山満さんでも、あるいはその後、われわれでも、この廖仲愷の孤児として早稲田を去って新四軍に投じて陳毅とともに戦った若き日の廖承志及び先輩の周恩来が生きている間に、日中平和条約は、あの人の信義を通じて、中国にいろんな変化はあるにしても、つくり上げたかった。せめて廖承志がいる間に、私は、日中平和友好条約をつくらないと、お互いに国家間の信義は人です、特に中国においては信義です。ソ連からあれだけ屈辱を受けながらも、朝鮮事変のときの借金は歯をくいしばりながらも中国はソ連に返していったじゃないですか、外交における信義を保つためです。そういう意味において、やはりわれわれは人間の魂のお互いの心の尊重がなし得るような人を人柱としてでなければ、真の平和条約なり友好条約というものが生きてこないと思うんです。  そういう意味において、鳩山さんのいままでの生涯は順調な生涯過ぎるけれども、今度は、あらしの中に立って決然として一番むずかしい日中、日ソの問題を前向きで片づける。  大体、来年の一月にあなたは行きますか。余り説教しているより、そのことを聞きたかったんだけれども……。
  119. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま戸叶先生から本当に情熱あふれるような御意見をいただきまして恐縮に存じております。  中国あるいはソ連との国交が大変大事な問題である、また、日本人のこれは子孫に至るまで関係してくる大変な大きな問題でございますし、この問題につきましては、先ほども申し上げましたけれども、懸命の努力をさしていただきたい。  なお、具体的なスケジュールにつきまして、ソ連に対しましては、年がかわりましてなるべく早い時期に年次協議をいたしたい、平和条約交渉をいたしたいということを申し入れをしておりますが、まだ確定はしておらないのでございます。中国との問題につきましては、まだ具体的なスケジュールは決まっておらないのでございます。
  120. 戸叶武

    戸叶武君 私は、きょうも国連大学の学長の人のテレビの放送を聞きましたが、国連大学ではエネルギーの問題や公害の問題や飢餓を救う食糧の問題や、そういう問題を研究して、世界の人々に貢献したいという意見を聞いて、非常に感銘を受けたのであります。日本が思い切って国連大学にでも、日本に誘致したんですから、金を積極的に出すとアメリカもやはり出さざるを得なくなると思うんです。アメリカが出すのを待って日本がやるといういつも待ちの姿勢でなくて、みずからが世界の今日の課題であるエネルギーの問題、あるいは飢餓によって苦しんで死亡者を出しているというような、そういう人たちに対してどうやって――アメリカなり日本なりにはどうやってこれを始末したらいいかと思うような米なり小麦なりその他の食糧が余っている。これをどういうふうに世界に配分するかということも重要でありますが、いま円高ドル安、しかも、アメリカなりヨーロッパ諸国からも、日本の貿易が怒濤のようにアメリカやヨーロッパを襲うているという警戒心から、日本も早く景気回復策をやって内需を盛んにし、黒字を減らしてもらいたいという要求があるんです。  そこで通産省の方に承りますが、最近、われわれはアジア太平洋時代が来たのじゃないかと感じておりましても、イギリスのEC加盟によって経済的に孤立化された豪州なりニュージーランドの苦悩というものは想像に余りあるものであるんです。豪州とニュージーランドから、今日、ある程度の肉なりあるいはその他のものを買っていますが、向こう側の願いは、もっと安定した形において日本の輸入を定着させてもらいたい、その上に立って国の計画、経済が成り立つんだからというような要望が、単に物を買ってくれというだけでなく、ひそんでいるんじゃないかと思います。特に、最近、気の毒だったのは、マッカイ海外貿易省次官とか、ニュージーランドのトルボーイズ副首相らが来まして、大分政府・与党の若い人たちが大量に取り巻いてこれを歓迎したが、成果はそれほど上がっていませんでした。五万トンの肉の輸入、ことし下半期ということになっておりますが、ニュージーランドから、このくらい買ってくれとか、あるいはこういうふうにしてもらいたいというような要望はどの程度に出されたんでしょうか。
  121. 斎藤成雄

    説明員(斎藤成雄君) ニュージーランドからは、いろいろ具体的な要望があったわけでございますが、特に、牛肉につきまして、先ほど御指摘のように、安定した輸入の方式であるとか、あるいは数量について相当額の要望がございました。これにつきましては、御存じのとおり、ニュージーランド側は不満として帰っておるわけでございます。  ただ、当方といたしましても、できるだけの協力の意味でやり方などについては検討をいたしておりまして、それからまた、数量につきましても精いっぱいの努力をした数字を提示しておるような状況でございます。
  122. 戸叶武

    戸叶武君 オーストラリアからの輸入が牛肉その他八〇%、ニュージーランドから一五%とありますが、あと米国その他からどのようなぐあいに輸入しているんでしょうか。
  123. 斎藤成雄

    説明員(斎藤成雄君) 牛肉の割り当てにつきましては、グローバルと申しまして、別に特に地域を限って輸入をしているわけではございません。一般的に、たとえば三万五千トンであるとか、あるいは四万トンであるとか、そういう数字でもって枠をつくりまして、それからあとは競争入札というかっこうで数量が決まっていくわけでございます。結果的に、ただいま先生指摘になりましたように、八割以上のものがオーストラリア、それからニュージーランドに五%のもの、それからあとアメリカというようなかっこうに結果的に配分されたような状況でございます。
  124. 戸叶武

    戸叶武君 これによって畜産その他が圧迫されるというような見解を農林省の方では懸念しているようですが、農林省の方では、これに対してはどういう見解をお持ちですか。
  125. 甕滋

    説明員(甕滋君) ただいま御指摘のように、オセアニアを主体に牛肉の輸入を行っております。年々ふえております牛肉の需要に対しまして長期的に安定した供給を図るということが大事なことだと考えておりまして、そのためには需要の七割から八割を占めております国内生産の育成を図りながら、しかしながら、足りない分は足りないわけでございますから、必要量を安定的に輸入したいということが基本的な考え方でございます。  その考え方に立ちまして、今年度下期の割り当てにつきましても、需給調整上必要な数量は三万五千トンでございましたけれども、畜産振興事業団の在庫積み増しといたしまして五千トンを加え、一般枠ベースで四万トン、それから特別枠といたしまして実質一万トン、合計五万トンの割り当てを行ったわけでございます。そういったように輸入のペースもこの二、三年、上期下期ごとに数量には多少の変動はございますけれども、安定した割り当てを行っておるつもりでございまして、今回の割り当てにつきましてもオーストラリアサイドからはこれを歓迎すると、喜ばしいという意思表示がなされておるような次第でございまして、生産と輸入双方によって安定供給を図るという私どもの基本的な線は、今後とも、その線で努力していきたいと考えておる次第でございます。
  126. 戸叶武

    戸叶武君 国内で八割ですか、国内需要の八割は国内ので賄っているわけですか。
  127. 甕滋

    説明員(甕滋君) この数年を通じますと、大体八割に相なりますが、昨年度、五十一年度は畜産危機の影響で生産が大幅に減少した年でございまして、七割が国内生産になっております。
  128. 戸叶武

    戸叶武君 問題は、肉の価格が高いというので、さきに挙げられたような畜産振興事業団というものをめぐって世間ではいろいろな取りざたが行われておりますが、流通面において日本は非常に複雑な仕組みになっているといって外国の人が驚いているんですが、そういう流通過程において三倍なり何なりに原料が入ってきても値上げされていくというようなところに対しては、通産省なり、農林省は、どういうふうにしてそれを改善しようと努力しておりますか、具体的な事例を挙げて述べてもらいたいと思います。
  129. 甕滋

    説明員(甕滋君) 牛肉につきましては、それぞれの国によりまして生産条件が違いまして、豪州と日本を比べました場合には、その品質によってさまざまでございますけれども、大体似たような品質をとりまして比べますと、五倍程度の価格の差があろうかと思っております。したがいまして輸入されたものが国内に来て高くなるという御指摘があるわけでございますけれども、畜産振興事業団の運用といたしましては、海外におきまして海外の国際相場でこれを買い、国内においては国内においてその輸入牛肉が評価される実勢価格、すなわち時価で売るという方式をとっております。したがいまして安いものが高くなるということは、その限りではございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、国内生産を育てながら、あわせて輸入牛肉を入れまして全体的な需給調整を図るという考え方から、そのような運用をとっておるわけでございます。  で、流通過程において問題があるのではないかという御指摘につきましては、現在、事業団の売り方、一般市中への放出の仕方を一言御説明申し上げたいと思います。  これは畜産物価格安定法に基づきまして、卸売市場において競りで売るというのが原則でございます。ただ、立地条件その他、全国の需要に卸売市場だけでは対応し切れないという面がございますので、一定の需要者団体に入札で売るという方法もあわせて行っております。また、チルドビーフと言いまして、冷蔵状態で入ってくる牛肉につきましては、これはなまものでございまして、事業団が一たん買って在庫とした上で売り出すという手間をかけることができませんので、輸入するものから国内で取り扱いするものをあらかじめ決めまして、ストレートで随意契約で流しているというやり方をとっております。いずれにしましても、売り渡しの目的あるいは商品の特性に応じまして適切なルートを選び、適正な流通を行わせているというふうに思っております。  ただ、チルドビーフにつきまして、そのように随意契約で団体を決めて流しております関係上、内外価格差として定めております調整金と実際のそのものの流通価格の間にずれが生じまして、何倍かになるというような御指摘があったことも事実でございまして、そういった点は、取り扱う民間業者に不当な利得が生じないように調整金を改定いたしまして、この九月にそれを決めて、十一月分から実施をしているという状況でございます。  いずれにしても、流通過程をもっと合理化することによってより小売価格を安くすることができるのではないかというような御指摘については、私どもも、まだまだ合理化を図る余地はあるというように考えておりまして、いろいろ流通改善対策等についても努力をしておるところでございます。
  130. 戸叶武

    戸叶武君 今後、肉の問題をめぐっては、やはり一般消費者が関心を持っておりますから、へまをやると、農林省や通産省が肉の恨みで憎まれることは必至であります、そういういま説明されたようなものを数字を挙げて、もっと具体的にどういうふうな仕組みになっているかということを文書化して、資料として私たちに提出してもらいたい。その上で、一つのいかにあるべきかということを大衆の討議に移さなければいけないと思います。  やはりロシアでもドイツでもポーランドでも、いろんな暴動が起きるのは、革命的扇動ということよりはやっぱり一つの食糧暴動です、革命のきっかけは。これはホンゼクトなんかもそれを指摘しておりますが、ソビエトロシアでも戦時共産制からNEP政策へ転換したのは、やはり流通面における潤滑油がなければ、単純な経済法則だけでは物は動かないというので、レーニンがNEP政策をやったのですが、あのときだってブハーリン、ジノビエフと富農を利用しなければならない、あるいは貧農のどうのというイデオロギーを包んでの抗争となって以来、レーニンも弱ったんですが、いまユーゴスラビアの実験等においても、あるところまで、かじ屋さん上がりのチトーの苦労人的な処理方式として、朝市なんかにおいては私有地からのものを持ってきて、そうして売れる、いいものを安く売るというような形で大変な繁盛です。私はトマトやなんかを見ましても、なかなかりっぱだなと思ったら、名前もパラダイスという、なるほど理想郷からできてきたような名前でパラダイスとはうまくつけたものだなと思いました。  そういうふうに、私は、団地なんかできてくるならば、これから主婦も消費者として訓練されてくるし、なかなかうちのおやじよりは経済は女房の方が明るい、そういう人たちを通じて日曜だけでも消費者の管理によって肉なら肉を朝市でもって売るというようになると非常に大衆との密着はあるが、そうでないと、何か販売店みたいなのがあるが、どこまでが本当でどこまでが隠されているのか、みんな何かそこにからくりがあるんじゃないかという疑惑がわくから、もっとおてんとうさまの下で朝市でも何でも出して、食べものにうるさい主婦の人たちの管理下に置いて、肉でも何でもさばけるような方式、日本では地域消費組合がまだ完全に発達しませんが、その力がやがて生活協同組合の基盤となっていくと思うんですが、ただ業者だけにゆだねていくんでは、何といっても商人というのはもうけるということに主眼を置く習性を持っているものですから、そううまく表面にお役所に報告されたようには物は動いていないと一般はにらんでいるんです。  そういう意味において、その点は、今後のわれわれの消費者運動、生活協同組合運動、あるいは台所経済を守る主婦の積極的な肉に対する取り組み方、そういうものの一つの実験台になると思うので、とりあえず農林省と通産省で、どちらかでもいいですけれども、われわれのたたき台となるような資料をひとつ、いますぐというんじゃないですから、ゆっくり考えて、なるたけ早く、日本の外交よりは速度を速くして、報告書を提出願いたいと思います。
  131. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 速記をとめてください。   〔午後二時十七分速記中止〕   〔午後二時三十分速記開始〕
  132. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 速記を始めてください。
  133. 戸叶武

    戸叶武君 けさのテレビの中心課題は、やはりサダト大統領のイスラエル訪問をめぐるニュースと、もう一つは福田内閣の改造問題が取り上げられておりました。  外務大臣に次の福田内閣の動向ということを聞いてみても始まりませんが、私は、この激動変革の時代であると同時に、きわめてスピーディーに世界が動いているときに、いまのような内閣制度、いまのような国際外交、経済に対処する姿勢では、これは外務大臣でも何でも愛知君のようにやっぱり死んでしまうと思うんですよ。もっとゆとりを持って考える時期も与えなければならないと思って、ずいぶん外務委員会でも遠慮しているんですが、それで能率化もしなければならない。恐らくは福田さんも外交、経済、国際的な流れに対応する姿勢で内閣を今度は最後の勝負としてつくり上げることを私たちも期待しているんですが、日本のいまの円高、貿易面における黒字の累積、貿易のアンバランス、そういうことが世界じゅうで問題になり、その背景にはやはりエネルギー問題があると思います。  中近東の問題も、戦争を食いとめると同時に、南北問題をただ石油を上げるということだけで片づけないで、どうやって国際的な共同の責任においてこれに対処していくかということが今後議せられなくちゃならないので、日本の黒字減らしも目先だけの黒字減らしでなくて、発展途上国にプラスになるようなことを考えて、いますぐそれが効果があると言えないにしても、してやらなくちゃならない。そういう意味において、私は、日本は石油の出る国の方にもそれ相応なことをやらなくちゃならないが、近間の中国なり南北朝鮮なり、それからミクロネシアなりオセアニアなり、東南アジアにも力を注ぐべきであって、国際協力事業団のようなものができていても、事実上、金がその方に注がれていない傾きがあるんですが、外務大臣は、今後、黒字減らしに便乗するというわけじゃありませんが、これは恒久的対策として考えなければならないものだと思いますが、これをどういうふうにやっていくつもりですか。
  134. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 黒字減らしと申しますか、国際収支の均衡を図るという観点から、日本といたしまして、海外経済協力、政府開発援助をふやしていくという必要性がますます顕著になってきておる次第でございます。  この問題に対処するには、私どもは二つの点が必要であろう。一つは、絶対額を伸ばし、質を改善をするということと、また、二番目には、日本の開発援助が日本からの輸出を伴う、こういう形になっておりますのをアンタイ化するという二つの問題が必要となってきております。双方につきまして努力をいたしていきたいと考えております。  もう一つは、手続面と申しますか、諸外国に開発援助を日本がプレッジいたしましても、実際に資金が出るのが非常におくれてしまうということで、プレッジをするときには、やはり予算で設けられました大きな枠というものを頭に置いてプレッジをするわけでございますが、その金が出ないということで、決算的に見てみますと、これがGNPの〇・二%というような結果でございます。これは申すまでもなく、OECD国の中では一番低い率である、こういうことになっておるわけで、国際的に見て非難されるようなことがありまして、片方で黒字が累積しておるということがまた諸外国から批判を受ける、一つのいら立ちを与える大きな要因になっておるということは否定できないところで、したがいまして、私どもといたしまして、諸外国に対してもっと積極的に開発援助費についてのプレッジを進めていくということが一つであります。そういうことで来年度予算の編成に臨みまして、この面につきましては、私どもから言えば、特段の財政当局の配慮を望むものでございます。
  135. 戸叶武

    戸叶武君 いま日本が暮らしにくくなったので、東南アジアの留学生が大変減ったと言いますけれども、こういうのに対処するためには、ただ援助するというだけじゃなくて、短い期間において日本大学で全部学ぶという人は少数であってもいいんだから、祖国の産業建設にすぐ役に立つような人物を養成するような特殊な専門学校みたいなものをつくってもよいのじゃないかと思いますが、海外の技術協力といっても、まず、こういう教育面から力を入れていくことが百年の計になるのじゃないかと思いますが、大臣はどう思われますか。
  136. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) わが国の技術を学びたいという意向は特に東南アジア方面に強いわけでございます。一つの方法は、日本に留学生の形あるいは研修生等の形で日本に来て学ぶという方式がありますが、また、具体化しているものとして、現地におきましてそのような職業指導の施設をつくるというようなことも現に計画されておるわけでございます。さらに進んで、インドネシアにおきましては総合大学をつくるべきだというような意見も、日本で留学生であった方でもうインドネシアに帰っておられる方からそういう案もいま出ておるわけでございます。  大学の建設になりますと、相当な準備と資金を要する問題でございますので、慎重に検討しておるという段階でございますが、従来の産業面と申しますか、経済面のみならず、教育面におきまして、また、病院等の医療施設に対する要望も強い、こういうことで、今後は、これらの部面におきましても日本の協力が期待をされ、また、日本も逐次、できる限り、これに応じていくということが必要になってきつつある、このように考えております。
  137. 戸叶武

    戸叶武君 シンガポールは東南アジアにおける華僑の目玉のようなところでありまして、千七百万の南方華僑のうち二百万人ほどシンガポールにおって、その七、八割までは華僑と言わず、みずから漢人と言っていますが、非常に高度な文化と経済活動をやっておりますし、総理大臣もイギリスの大学時代から秀才の誉れの高い人であり、私も、私の教わった蕭慶成博士に東大で国際法の博士号をとらせると同時に、シンガポールの南洋大学へ行かせたんですが、今度は、シンガポール大学と、イギリスがつくり上げた、華僑がつくり上げた南洋大学が合体することになっておりますが、東南アジアの目玉とも言うべきシンガポールにおけるこの両大学の合併を通じて、私はあそこに大きな文化的なセンターがつくり上げられると思うんです。  そういう機会に、日本は、一つ大学をつくるということは大変であるが、そういうことを記念して図書館なり何なりを寄付するというぐらいなことをしていったら、すぐ目に見えるようなことじゃなくて、あるいは科学博物館をつくる。アメリカが中国に根を下ろし、朝鮮にも根を下ろしたのは教会並びにそのブランチでした。日本では、大使館に行っても何かつっけんどんだし、やっぱりその土地の人と結びつく面が非常に少ないんですが、そういう点において私は新しい一つの発想を大臣にも考えてもらいたい。ブラジルにおいてはブラジルの政治的な指導者が、日本人は大変ブラジルのために貢献するというので、サッカーの運動場を提供したりしている。運動の施設でも科学施設でも、そういうことが必要だと思いますが、鳩山さんは、やはり教育者の流れもくんでいるんだが、そういうことをどういうふうに考えておりますか。
  138. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) シンガポールの大学のお話は私もいま初めて伺いましたので、具体的な要望があるのかどうか検討さしていただきたいと思いますが、いままで日本が諸外国と協力をいたす場合には、何より外国の方の希望に応じて、強い希望のあったものをやっておるというような形で、したがいまして余りはっきりした重点というようなものは特になかったわけでございます。  しかし、これはこれからの援助のあり方の問題でございますけれども、先般OECD等におきます議論もありまして、これからは、従来の産業面ということよりも、むしろ一人の人間として必要なことに重点を置くというような方向に向かいつつある。そういう意味で、教育でありますとか医療・衛生というような問題が国際的にも取り上げられてくるに違いない、かように思っておるところでございます。それと農業問題は基本的な人間生活の上に必要であるというようなことから重視をされる方向ではないか、こういうふうな感じを持っているわけでありまして、日本といたしまして、特に御指摘のありました教育面につきまして、これから重点を置くべきであるというふうに考えておるところでございます。
  139. 戸叶武

    戸叶武君 社会主義インターの会合が日本で開かれるというときにおいても、アジアにおいて非常に悲しい出来事は、社会主義政権がビルマで樹立されているときに、第一回アジア社会党大会の代表で招かれて私たち夫婦はラングーンに行きましたけれども、あのときには至るところに社会主義政党が政権を握っていたが、いろんなアジアの多様性から見てインドネシアにおいても挫折し、あるいはその他においても非常にラディカルな考え方と現実的な路線との抗争で、みずから社会主義を名のるシンガポールの行き方に対しても批判的だとかというので、事実上、社会党らしいものは日本以外にほとんどなくなってしまったというほど、非常なラディカルなマルクス・レーニン主義的な影響と、プリミティブなナショナリズムと、その激しさの抵抗の中に現実路線というものが埋没してしまったのが事実です。新しくやはりアジアに、もっと地についた、その土地にふさわしいそれぞれの反省と模索が、これは日本だけでなく、私は出てくるんじゃないかと思います。  問題は、いままでの経済技術援助においても、先ほど大臣が言いましたが、それぞれの国の立場を配慮してやらないと、やはりタイ国に石油精製所をつくるとか、何か一定の日本企業の先取り戦術で突っ込むというような行き方をやると、必ずそれにインドネシアにおいてもタイにおいてもその反発が、田中さんが行ったらひどいつるし上げをやられるようなことになるんだと思いますが、そういう点は非常に私は今後は心してやってもらいたいと思うんです。  そこで、具体的な問題として、日本アメリカの間に横たわっているミクロネシアの問題ですが、ミクロネシアは小さな島々でありますけれども、支倉がローマの方へ使いしたときにも停泊したところで、ドイツから日本に国際連盟で委任統治されたときからのいわれもあるし、アメリカも愛知君の時代にいろいろ困って、十六億の金を半分ずつ折半して日本と一緒に援助しようじゃないかというようなこともあったんですが、この豪州からニュージーランド、それからミクロネシアに至る太平洋のいろいろな問題に対しては、日本もやはり心して、よけいなおせっかいと言われる必要はないが、発展途上国、特に島々に対しての配慮が今後必要だと思いますが、外務大臣は、ミクロネシアの将来あるいはパプアの問題、そういう問題に対してどういう配慮を行っていますか。
  140. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) パプア・ニューギニアからはソマレ首相が来月の六日に来日されるわけでございます。これを機会に日本とパプア・ニューギニアとの間の交流を一層深めたいと、このように考えて準備もいたしておるところでございます。  ミクロネシアにつきまして、日本といたしましても、これは日本の委任統治下にあった時代が長かったわけでございまして、その地域の発展のためには、日本として今後とも努力をいたすべきものと思います。
  141. 戸叶武

    戸叶武君 また別な機会にしますから、これでよろしいです。
  142. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最初に、最近の国際情勢の激変、変化というものはかつてないほどの目まぐるしい様相を呈しているんではあるまいかと判断されます。したがいまして、それに対応できるような取り組みというものが外務省当局にとっても喫緊のことではなかろうかと思えてなりません。  つい先ごろも、外務省から機能的な働きを推進する一環として、できるだけ書類上の合理化であるとかを図っていきたいという御要請がございました。ごもっともだと思います、ただ、非常に危惧されますことは、特に先進国家と比較をした場合のわが国外務省の現在の体制が非常に脆弱ではあるまいか。この委員会におきましても、しばしば対応の仕方が遅過ぎる、また慎重も時によっては結構だけれども、度がちょっと外れていやしまいかというような問題もございました。私も、かつて当委員会におきまして、この点について触れたことがございます。しかし、その後改善されたということを聞いておりません。もっとも、かつては行政改革の一環として局が減らされたということも知ってはおりますけれども、私は外務省の場合はこれは別だと思うんですね。  確かに行政改革は、私、必要だと思います。しかし、いま福田さん自身が先頭に立ってこれから資源外交の展開あるいは経済交流の推進等々、いま日本政府としてもこれから積極的に取り組もうとしている課題があるわけでございます。また、一方、国連を中心とした世界の交流、こうした問題も必要になることは言うまでもございませんし、その的確な情報の収集、それに基づく判断、そしてそれに対応する日本政府考え方、これはこれからももっと速度を速めて、そういったことの要求というものが出てくるんではあるまいかというふうに思えてなりません。したがって外務省の場合は特例でもいいくらいで、日本の将来というものを決める最も重要なセクションにあるわけでございますので、その辺をまず基本的にどのようにお考えになっていらっしゃるのか。
  143. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 外務省の機構でありますとか定員の点につきましては、毎年、最大の努力を続けてきたわけでございます。定員で申し上げますと、ただいまのところは三千二百三十五名という総定員でありまして、インドの四千名、オーストラリアの四千名というようなところにも及ばない。西ドイツは六千二百名、フランスは七千八百名、イギリスが一万五百、アメリカに至っては一万一千四百名、こういうような陣容を擁しておるところでございます。私どもといたしまして、最小限度、西ドイツ並みくらいの陣容を急いで整備する必要があるという考え方を持って努力をいたしてきておるわけでございますが、毎年やはり政府の機構はできる限り簡素にすべきであると、定員法という総枠をつくって、その中で定員のやりくりをするんだと、こういう制度ができ上がっておりまして、その中でふやしていくということは大変苦しい立場に置かれておるわけでございます。  外務省は、特に、戦後、占領時代が長かったということもありまして、自主外交を進める体制が整備されたのはその後でございます。そういったこともありまして、人員機構の整備を図ってきた、しかし、まだまだ大変不十分である。特に資源外交でございますとか、あるいは中東問題に取り組むべき中東関係の在外公館は皆もう一館当たりきわめて小人数の陣容でやっておるということで、十分な情報がとれないではないかというような御指摘もしょっちゅういただいておるわけであります。そういうことから、国といたしましても国政上必要なことで、どうしても私どもは機構を整備することが私どもの大事な義務であると考えて努力をいたしておるところでございます。しかし、これはいたずらに人数だけふやしても能力が伴わなければ何にもならないわけでありますが、そういった能力を高める面におきましても、鋭意努力をしなければならないという考えで、来年度も、できる限りの努力をいたしたいと考えております。
  144. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 なるほどおっしゃるとおり定員法の枠の中で操作をしなければならない、そういう点もございましょう。しかし、いま御指摘になりましたように、国の将来の運命を決定するというそのキーポイントを握っている外務省であるとするならば、その改正すらやぶさかではないという私自身は印象を持つくらいでございます。  言うまでもなく、それはのべつに人員をふやせなんていうことを申し上げておりません。少なくとも一人の外交官が育つまでには五年、十年という月日がかかることは常識でございましょう。したがって、これから五年先、十年先あるいは二十年先という短期、中期、長期の展望に立って、外務省の機能が十二分に発揮できるという体制に持っていくためには、やはりそういう展望に立ったビジョンというものの策定が必要ではなかろうかというふうに思えるわけなんです。少なくとも、戦後、今日に至るまで、こうした問題がときに触れ衆参の委員会においても指摘があった問題ではなかろうかと思うんですね。しかし、依然として硬直したままで、果たしてこれから対応できるんだろうか、非常に人ごとではない心配が出てまいります。伺いますと、毎年、二十名前後ぐらいの人を採用して、若干の穴埋めをするなり増員をしているということに至っては、もう先々が思いやられるというふうに感ずるわけでございます。  そういう観点に立ちまして、いまおっしゃった、ただ努力をするという抽象的な言い方じゃなくて、五年十年後にはどうするんだと。いま願望としてはせめて西ドイツ並みにというお話もございました。まあ当面の課題としては、その辺までレベルアップすることは必要でございましょう。しかも日本を取り巻く国際情勢は、私からあえて申し上げるまでもなく、きわめて変化が激しいという情勢でありますだけに、時間を待てないといったくらいに緊急を要するんではあるまいか。そうした観点に立って、五年後にはどうする、十年後にはどうするという御計画はおありになるんでしょうか。
  145. 栗山尚一

    説明員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  ただいま先生の大変御理解ある御指摘をいただきまして、私ども大変心強いわけでございますが、長期的な計画といたしましては、先ほど大臣から御答弁がありましたように、一応、西独並みということを外務省としては目標といたしまして、昭和五十年度から定員その他の要求をいたしてまいっておる状況でございます。  ただ、西独並みと申しましても、先ほど大臣が数字を具体的に挙げて御説明になりましたけれども、すでに六千名という規模でございまして、外務省の現在の定員が約三千二百名で、この六千名に外務省の定員の規模が到達するにはまだ非常な期間が現実の問題としてはかかるというふうに考えておる次第でございますけれども、先生方の御支援もいただきまして、できるだけ早期に外務省の定員というものを大幅にふやしていきたい、われわれとしてはそういうふうに考えております。
  146. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま人事課長さんの御説明の限りでは、ただ願望としてお述べになったという点にすぎないと私は思うんですね。具体的にこうしようと、これはもう積極的に与党なりあるいは政府に働きかけて、その枠を何としても確保していくという決意までおありになるような口ぶりではないみたいな、これは自然の趨勢に、流れに任せる以外ないんじゃないかというふうに、意地悪く申し上げますと、そういう受けとめ方すらもできるんですよね。  国によっては五、六名なんという大使館があるんですね、大使以下。しかも、その国をずっと選別してみますと、日本経済交流において非常に重要な国柄というようなところもあるんですね。どうでしょうかね、これはもう人間の知恵というものには限度がございましょうし、五人や六人の中には通信士も入っているというようなことを考えますと、果たして実際に外交折衝に当たれるのは何人いるんだと。病気になった場合にだれが代替できるんだということをわれわれ素人が考えましても、きわめて背筋の寒い思いがしてならないわけですね。そういった場合もそれはやむを得ないとして今日まで来たんだろうと思います。それは急激にふやす必要のない国もございましょう。ただ、少なくともアメリカであるとか、あるいはヨーロッパの主要な国々におきましては、やはりいろんな外国の情報というものが入りまじる、その国柄というものについては。いまのとりあえずの次善の策として、何名は最小限度ふやすことができるんだと、またふやさなければならないんだと、それすらも計画の中にはお考えがないんでしょうか。
  147. 栗山尚一

    説明員(栗山尚一君) 御指摘のとおり、在外公館の規模につきましては確かにきわめて不十分な状況でございます。定員という側面だけから見ましても、私ども、在外公館の規模といたしまして、大蔵省、行政管理庁といった査定当局に対してもいろいろ理解を得るべく説明、努力をいたしてきておりますが、その関連でも、最小限、大使館あるいは在外公館として機能をしていくためには、どんなに少なくても八名程度の館員は必要であるということを言っておるわけでございますけれども、現状といたしましては、中南米でございますとか、あるいはアフリカでございますとか、あるいは中近東でも四名、五名という実員しかおらない在外公館がまだ数十存在しておるわけでございまして、私どもの方といたしましては、こういうことでは在外公館として十分に機能し得ないということで、在外公館の定員をもっとふやしてほしいということで強く要望しておるわけでございます。  さしあたり明年度につきましては、現在、本省、在外含めまして二百六十六名の定員要求をいたしております。このうちで約百七十名ほどは在外定員でございますが、こういうものが実現いたしてまいりますれば、先ほど申し上げましたような事態は逐次改善していくだろうというふうに思っておりまして、これは全力を挙げてわれわれとしてはその実現に努力したいというふうに考えております。
  148. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 鳩山さん、これは大変重大な問題じゃございませんでしょうか。恐らく福田さん自身の決断にまたざるを得ないのかもしれません、あるいは。  いま、ふえる内訳をおっしゃられましたけれども、いまざっと均等割りにして四名ないし五名という国が五十数ヵ国あると、それを割ってみましても、そこを充足するにしても一人ないし二人ですわ。それではもうとてもいまおっしゃられた最小限度八名の線までは一体何年かかることやらということになりますね。恐らく現在の情勢というものは、これからももっと激しく目が回るような変化が出てくるんではあるまいかということはわれわれですらも想定できるんですよ。現状では非常にこう背筋の寒い思いがいたしますね。この辺はいかがですか、よほど思い切った推進をなさいませんと、これは実現が全く不可能じゃないかという心配があるんですがね。
  149. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 現在まで毎年たどってきておる経過というものは、片方で新しい増員を仮に百何十名、二百名以内だったでしょうか、そこへ一律削減定率がかかりまして、名目では仮に百何十名認められても片方で節減というのがかかりまして、差し引き増加というものはまた減ってしまうということを繰り返しておるわけで、このようなしきたりでいきますと、なかなか定員がふやせない。  そこで、外交のための定員というのは、一般の定員法の規制の外にしてもらえないかというようなこともたびたびお願いをしておるわけでありますけれども、なかなか政府部内では一致をいたさないということでございます。しかし、いまのままでいきますと、仮に二百人ずつふやしたといたしましても十年かかって五千人くらいの定員になるということで、ぜひその程度のことは実現をいたしたいと考えておるのでございます。  なお、御指摘趣旨は私どもこれはもう本当に身にしみておるわけでございますが、また、来年度の問題といたしまして、在外公館があるいは赤軍派等の攻撃対象になりはしないかというおそれも出てきたわけであります。国家機関でありますから、大使館が襲われるというようなことは大変なことで、その警備をどうするかということもしなきゃならないわけでありますけれども、この定員の枠というものがございますと、とてもそういうことに手が回りかねる状態でございまして、実のところ、苦慮いたしておるというのが実際のところでございます。
  150. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 恐らくいままでの経過を踏まえて、その点を整理されて、いまお答えをいただいたんだろうと思うんですけれども、もう一遍その辺をまとめていただいて、政府部内でも意見を統一されて、やはり将来展望に立った今後の外務省のあり方というものにぜひ強力に取り組む必要があるんではないか、こう思いますね。  いままでのずっとお答えの中で非常に痛感しますことは、機能的な働きというものはもう限界を越えている、率直に申し上げますと。先ほどおっしゃったように、八名ぐらいがもう関の山だと、ここでもうようやく維持できるという状況であるといたしますと、特に、今回の中東問題なんていうことはもう最重要外交課題としてこれからも日本としても考えなきゃならぬ事柄であろうと思うんです。対応できませんよ、はっきり申し上げて。したがって、いままでは報道機関を通じ、あるいは海外に駐在しております貿易商社だとか、そういったような人たちから情報を収集する以外にない。それの確認を急ぐまでにまた時間がかかるということになって、結局、打つ手というものが後手になるというのがいままでの日本外交の一貫した軌跡ではなかったろうかということなんですね。現状をいますぐどうこうしろと言っても大変むずかしい問題だろうと私は思うんですね。じゃいま足りないところをどういうようなことで補っていらっしゃるのか。
  151. 栗山尚一

    説明員(栗山尚一君) 御説明させていただきます。  現在のところ、外務省本来の職員のほかに、一つの方法といたしましては、国内の関係省庁それぞれに専門知識を持っておられまして、そういう専門知識を在外において活用をしていただくことによって在外公館の機能というものがそれだけ強化される、こういう観点からいわゆる先生も御存じのアタッシェ制度というものに基づきまして各省庁から出向していただいて、その人たちを在外公館に配置しております。アタッシェ制度以外にも、外務省の定員の一環として各省庁から出向していただいておる、そういう方々もおられます。  そのほかに、民間の企業でございますとか、あるいは報道界でありますとか、あるいはその他民間部門の方々を途中採用いたしまして、これを在外公館に配置する、あるいは本省の事務に従事させる、こういう方法で、いわゆる外務省国家試験に合格した者以外にも広く人材を求めて、そういう方々の能力、経験というものを生かしていく、こういうことをやっております。
  152. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃったことは私も心得ております。通産省であるとか警察庁であるとか、そういうところから出向してそれで足りないところを補う、それは当然だろうと思うんですね。私はそれでもなおかつ現状としては外交機能を十二分に発揮できる状態ではあるまい、こういう判断に基づいて申し上げているわけです。  特に、申すまでもないことですが、情報化社会の時代において大変情報量も多いわけですね。それをセレクションしながら、正確な本省に対する報告なり、またそれに基づく訓令なりというものが飛び交うわけでございますので、どうしても外務省出身のメンバーでもってそれを充足するというのが本来の行き方じゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  153. 栗山尚一

    説明員(栗山尚一君) そのとおりであろうと思います。
  154. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ぜひこの点については、くどいようですけれども、今後の日本の置かれた立場を考えるだけでも、本当に私ならずとも大変深刻な問題だと思うのですね。今後の日本の外国との交流というものは、何も政府・与党だけではなくて、あるいは野党外交という側面もあるでしょう、民間外交という側面もあるでしょう、ますますその激しさの度を加えるという中で、やはりその辺のイニシアチブをとっていくのは外務省ということになりましょうから、その点十分留意されているとはいうものの、もっと積極的にやっていただきたいなと、こう思うのですね。  これを拝見しますと、これはいつでしたか、十年ぐらい前だったと思うのですが、中南米局というのがたしかあったように記憶しているんですが、これがばっさりやられちゃっているんですよ。もういまは完全にその必要度はないのですかね。本省の中の機構自体についても問題がありはしまいかということを私なりに感ずるんですけれどもね。
  155. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 全省庁の一局削減によりまして、昔は、中南米・移住局というものがございました、それがなくなったわけでございまして、いまここに来ておりますが、中南米審議官が仕事の面では統括をいたしておりますが、局がなくなっているわけでございます。  外務省といたしましても、この中南米局の設置につきましては、ここ数年、努力をいたしておるわけでございます。昨年も、予算折衝の際には、最終段階といいますか、党の役員の入った調整の場まで持ち出していただいたわけでございますが、昨年は、いずれ行政改革があるのでそれまで待てというような話で終わってしまったわけでございます。そういう経過でございまして、来年度予算には、ぜひとも実現を図りたいと考えております。  行政改革との絡みでございますが、行管当局の方針といたしまして、純増は認めない、スクラップ・アンド・ビルドである、ほかの局をつぶしてくれば中南米局を認めてやると、こういう態度であるわけで、そういうつぶす局を持っているのであれば私どももそう苦労はしないところでございますが、外務省といたしまして、いまそれぞれの局が大事な仕事を持っており、つぶす局がないということで、ほかの省の局でもつぶして外務省の局をつくってくれる、そういうのが本当のいわゆるスクラップ・アンド・ビルドじゃないかと思うのですけれども、そうじゃありませんで、外務省一つ局を振りかえろと、こういう話でございます。私どもは、局はありませんけれども、その他のことなら何とか、たとえば大阪に駐在事務所があります。関西方面での仕事を担当しておりますが、これは機構上設置法に載っておる機構でありますから、その機構をつぶし、大阪には必要がある都度出張させますからということで、そういうことを申したりしておりますが、それは局をつくるなら本省の局をつぶしてこいと、こういうことで、これもまた非常に難航いたしておるということでございます。外務省のほかにやはり局の設置を要求しておる省が数省ありまして、外務省に認めるなら、ほかの省にも認めざるを得ないからだめである、こういうような論法であります。そういうことで、去年の予算のときには行政改革まで待てと言い、行政改革のときはほかの局をつぶしてこいと言われて、これもまた非常に苦況にあるというのが実情でございます。
  156. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 お気持ちはわかるのですが、福田さんも最初のころはずいぶん威勢よく行政改革は何としてもやるんだということで華々しくアドバルーンをお上げになったんですけれども、その後、いろんな反対や抵抗があって、いまどこへどういうふうに結論が吹っ飛んでいったのか皆目われわれもその見当がつかないわけです。しかし、これは一般にわれわれが考えましても、必要度に応じて要らないものは要らない、これはやるべきでしょう、当然。それはもうぼくらも賛成です。ぜひ推進してもらいたい。  鳩山さんが冒頭におっしゃられましたように、やっぱり外務省だけは枠外に置かれた考え方に立って、これは国内だけの問題じゃございませんので、余り消極的にならずにこの突破口をぜひ開いていただきたいと思うんですね。これは大変失礼な言い方かもしれません。いま内閣改造の声もちらほらしているさなかで、また鳩山さんもどっかへいらっしゃるかどうかわかりませんけれども、だれがおかわりになろうとも、この鳩山さんの時代に一遍決めたことはもう外務省の基本的な方針だということで貫いていただくような、そういう強硬な意見というものはやはり通していただきたいもんだなと、こう思いますね。いかがでしょう、ぜひやってもらいたい。
  157. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) おっしゃるとおりでありますし、また、そのように激励を賜りまして本当に恐縮に存じます。いつの日にかこれを本当に確立した方針として、外務省の機構、定員の問題ははっきりした方針にのっとって充実をしなければならない。特に、この点につきましては、どなたもごもっともだとおっしゃっていただくわけで、大変激励していただくんでありますが、どうも最終的にはいつも実現できない、こういうことを繰り返しているわけで大変残念であります。しかし、来年度は、ぜひともこれを実現をいたしたいと、努力をいたします。
  158. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 重ねて恐縮ですが、従来からもわれわれが耳にもし、実際そうだなと思っておりますことは、予算の確保にいたしましても際立って外務省と法務省というのは下手だという評価があるんですね。この辺にも考えていただかなければならない問題があるんではないだろうかというふうに思いますし、来年度どういう予算編成をいまお考えになっているか私わかりませんけれども、ともあれ、激動するこの国際情勢に十二分に日本が対応できるような体制だけは何としても近い将来に確立をしていただきたい、そのことを強く私御要望申し上げておきたいと思うんであります。  次に、申し上げたいことは、先ほども戸叶さんがちょっとお触れになったようでありますが、今回のサダト旋風はさまざまな波紋を世界各国に招いたろうと私は思うんです。この点については、どのような評価をなさっておいででございましょうか。
  159. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 後ほど加賀美局長の方から補足をさしていただきたいと思いますが、私ども、サダト大統領のイスラエル訪問につきましては、担当のファーミ外務大臣あるいは外務担当国務相が連続して辞職をするというようなことがあり、これは容易ならぬことであるというふうに考えましたが、それも押し切って大統領がイスラエルを訪問され、そして中東和平のために一身をなげうって働いたということにつきまして、私どもはこれを高く評価をするべきであるというふうに思います。  このイスラエル訪問に反対し、これを阻止するために、一部過激な国におきましては、エジプト大使館に対しましていろんな暴力行為を行うというようなことが報ぜられて、大変残念なことに思うわけでありますが、私は、サダト大統領は、エジプト自体の問題もあろうと思いますけれども、アラブとイスラエルとの間に本当に和平の、少なくともジュネーブ会議のテーブルに着かせるためには、これはもう後残された期限が幾ばくもないという感じで最終決意をして乗り込まれたのではないか。  もし、ある程度の期間内に、ジュネーブ会議というものが開かれないというような事態になりますと、またこれは次の武力衝突というようなものが必然的に起こってくるんではないか。いま和平に対する願望というものがアラブ側にも高まっておる。しかし、この高まりというものは、これが期待外れになった場合には、これまた大変危険な事態になるんではないか。そして他方では、依然として軍備に対する充実を行わなければならないというようなことになってまいりますと、軍事衝突が起こる、こういうこともあり、そういう意味で平和への追求ということでイスラエル訪問を行い、そこで全アラブ諸国に対しまして、従来から言われていた線でありますけれども、それを明らかにした。そして決してこれはエジプトとイスラエルの単独の取引ではないんだと、アラブとしての立場をエジプトが主張をしたという点について、私はこのことが本当に和平に対する大きな一つの原動力になれば非常にいいことだと思うわけであります。しかし、実際の情勢がそこまで、他のこれに反対する国々に理解されるかどうかという点に一抹の不安があるというのが実際のところであろうと思います。
  160. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回のショッキングな、まあいい意味でのショッキングなと言った方があるいは正確かもしれません。いまおっしゃるとおり、これが多くの支持を受けない、またジュネーブ会議の開催もできなかったというような結末になりますと、第五次中東紛争ということも予測されるようなことが伝えられているようであります。こうなりますと、日本の置かれた立場というのは非常に微妙でございまして、日本といえども決してこれはもう対岸の火事ではない、直接的に響いてくる大変影響力の強い、そういういま立場に立たされているんではないかという感じがいたしますが、今後の推移を見なければもちろんわかりません、わかりませんけれども、そういった危倶というものをわれわれは持っているわけですが、その辺の受けとめ方はいかがでございましょうか。
  161. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) エジプトのサダト大統領が主張されておりますこと、これは私どもが国連総会でも主張いたしました日本の主張と軌を一にすることであるというふうに私どもは考えております。したがいまして、私どもといたしましては、このサダト大統領の提案というものを心からサポートいたしたいという気分でございます。  なお、加賀美局長からちょっと補足をさせていただきます。
  162. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) いま大臣から御答弁がございましたように、公正でかつ永続的な平和を望むというのは、わが国が国連の演説あるいは外交演説等におきまして、強調しているところでございます。  サダト大統領がイスラエルの国会において演説いたしまして、その一つの中心と申しますのは、イスラエルによる全占領地からの撤退と、それからパレスチナ人の国連憲章に基づく権利の実現ということでございまして、わが国は、かねてから、イスラエル軍の全占領地からの撤退と、それからイスラエルを含む中東地域すべての諸国の存立、それからパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利の実現ということが中東紛争の解決のために必要であるということを言ってまいったわけでございます。  したがいまして、サダト大統領が、今回、交戦状態にある国であるイスラエルにみずから乗り込んでいって、官民に直接和平を訴え、不戦の動きを強く印象づけたということでございまして、これは先ほど大臣も答弁されましたように、ジュネーブ和平会議への大きな突破口になり得るのではないか。また、そのための国際努力がアメリカ等多くの国によってなされると思いますので、わが国といたしましても、これを国連等その他の場におきまして支持してまいりたい、そういうふうに考えておるところでございます。
  163. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回のサダト大統領、ベギン首相の演説を聞いての印象でありますが、サダト大統領の場合は、いまおっしゃったように、大変厳しい口調で、後段のところなんかは一九六七年の原状回復まで持っていってくれということを強く提唱しているようでございますし、また、パレスチナの自決権というものも与えるべきであると。それに対してベギン首相からは何らの応答がなかった、具体的な示唆がなかった。今後の対話の継続によってその道を開き、さらにはジュネーブ会議において決着をつけようという試みのようであります。  ただ、十ヵ国前後ですか、他のアラブ諸国で今回の訪問に対してはさまざまな反応があったようでありますけれども、果たしてその辺の反応というものが今後和平への足がかりとして円滑に道が開けるものか、もちろん曲折はあるでしょう、単純ではないと思います。三千年来のユダヤとアラブの闘いでございますから、それに決着をつけるということは並み大抵ではないでしょうけれども、いま一角に突破口ができたという、ただし、その突破口はできたにしても、その展望というものは予断しがたいものがあるであろう。日本としても、その辺の情勢の変化というものは敏感に受けとめながら、しかるべき場所、たとえば国連なら国連の場において、どういう側面的な提言をしていくのか、また提言をしなければならないのか、その辺のこれからの流れですね、どのように受けとめていらっしゃるか。
  164. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 先生指摘のとおり、このサダト大統領の演説、それからベギン首相の演説、サダト、ベギン会談の内容、それから合意されましたコミュニケ等を見てみますと、従来のイスラエル、アラブ間の実質問題についてはまだ解決が図られていないということでございます。  これは、今後、ジュネーブ会議等、あるいはそれに先立つ合意されました対話の継続ということによって解決が図られ、さらにこれに対するアメリカ等の国際的努力によって解決への道を進むものと期待いたしておりますけれども、先生指摘のように、アラブ諸国内の意見は非常に分かれておりますし、今後、サダト大統領がこのイニシアチブに続きましてアラブ諸国内の意見をどういうふうにして固めていくか、また、これに対応いたしましてイスラエルがどれほどの柔軟な態度を打ち出していくか、さらに、それを仲介いたしますアメリカ等がどれだけの指導力を発揮していくかという点がこれからの焦点であろうと思います。  こういう重要な、かつ微妙な段階でございますので、わが国といたしましては、国連等の場において、ジュネーブ会議に至るべき努力に対してはこれを支持するという基本ラインに立ちまして、行動していくということであろうかと存じます。  で、わが国がどういうような提言をするかということでございますけれども、これはそのときどきにおきますアメリカ等の努力、あるいはエジプト、イスラエル、あるいはその他のアラブ諸国の努力を注意深くフォローいたしまして、日本として求められることがあれば、また、日本としてできることがあれば、できるだけの支援をしていくというふうに考えております。
  165. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま局長は特にアメリカにしぼった考え方をおっしゃったようですが、たしかジュネーブの会議においては共同議長国にソビエトも入っているはずですね。このアメリカの出方、ソビエトの出方というものはこれからのジュネーブの和平会議に微妙な影響力を与えずにはおかない、このようにやはり常識的にも判断されると思うのですね。  その辺の感触というものは、今日までの外交折衝等を通して、何かしら外務省としても得ているものがあるであろう。少なくとも今回のサダト大統領のエルサレム入りというものは、もう伝え聞くところによりますと、カーター大統領がすでに三ヵ月前にこの介入を図って推進をしたとすらも伝えられておりますし、当然、友好国である立場に置かれる日本として見るならば、その辺の動きというものは敏感にあるいはワシントンを通じてありはしなかったか、その辺の経過はいかがであったんでしょうか。
  166. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) まず、御質問のソ連の動きでございますが、ソ連の動きに関しましては、御承知のように、十月一日、米ソ共同声明というのが発せられまして、ジュネーブ会議への動きにソ連もこれに協力するということがうたわれたわけでございます。  ソ連は、御承知のように、アメリカの前政権のキッシンジャー国務長官のいわゆるステップ・バイ・ステップに対しましては批判的でございまして、部分的な解決というのは結局中東問題の解決に資さない、包括的な解決をジュネーブ会議の再開によって図るべきであるということを言っておったわけでございますが、カーター新政権が誕生いたしましてから、このジュネーブ会議による包括的解決への努力が行われ、かなりの進展も見たわけでございます。アメリカといたしましても、ステップ・バイ・ステップ交渉、これは確かにシナイ第二次協定等の成果がございましたけれども、その後の発展はステップ・バイ・ステップの限界を若干示すようなものがあった。したがいまして、今後は、やはり包括的な解決をジュネーブ会議再開によって図るという方向をとりまして、その一つ発展といたしまして米ソ間のこの共同声明が発せられたわけでございます。そういうことで、今後、ソ連も米国との協調によってジュネーブ会議への道を推進する努力はいたすことであろうと存じます。  ただ、今回のサダト大統領のイスラエル訪問に関しましては、ソ連は慎重でございますけれども、批判的な論調をプラウダ等も出しておりますし、一つには、ソ連は、イスラエルとエジプトが二国間の取引をやるのではないか、これによってジュネーブ会議への方向が阻害され、あるいは、その結果、ソ連が中東和平への過程から除外されるおそれがあるのではないかという懸念を有しているやに見受けられるところでございます。しかし、イスラエルとエジプトとの二国間の取引というのはサダト大統領もはっきりこれを否定しておりますし、そういうことをすればアラブの分裂というのはますますひどくなるわけでございますから、サダト大統領もイスラエル訪問の終わりごろに記者会見等で申しておりますように、やはりこれはジュネーブ会議に向かっての努力をさらに推し進める突破口であるというふうに考えていいのであろうと存じます。  それから、今回のサダト大統領のイスラエル訪問アメリカがどういう役割りを果たしたかということでございますが、これは私どもも大いに関心を持っておるわけでございます。  サダト大統領はいままでのところアメリカ事前に相談はしていないというようなことを言っておりますし、新聞に報ぜられておりますカーター大統領の言葉でも、事前に相談を受けなかったということでございます。ただ、ベギン首相からサダト大統領にあてられた招待状が、在イスラエルアメリカ大使館、それから在カイロアメリカ大使館を通じて伝達されたということはございます。仲介はむしろルーマニアのチャウシェスク大統領がやったというような情報でございまして、いままでのところ、もちろん日本アメリカから、アメリカが仲介したというような情報は受けておりませんし、サダト大統領はアラブ諸国とも協議しなかったということでございます。あるいは今後時間がたつにつれて、裏の情報が出てくるかもしれませんが、現在のところ、どうもアメリカも、事前には、事前と申しますのはサダト大統領がイスラエルを訪問するということを決定する前には、協議を受けていなかったというのが一般の情報でございます。
  167. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回、中東地域に駐在しております日本の在外公館から、事前に、そういう訪問があるかもしれないというふうなことが伝えられたかどうかということが一つと、それから、その後、ここ二、三日来大変激しく動いているわけですけれども、アラブ諸国の反応というものについての的確な報告というものが入っておるんでしょうか。ありましたならば、その内容を一、二御披露いただければいいと思います。
  168. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) サダト大統領のイスラエル訪問につきましては、十一月九日に、サダト大統領が議会で中東和平達成のためなら、イスラエル議会での講演を含めて、いかなる土地へも行く用意があるということを発言して、続いて十四日のテレビとのインタビューで、イスラエルの正式招待があれば一週間以内に同国を訪問する用意があるということで、それに引き続いて発展があったわけでございますが、サダト大統領がイスラエルを訪問するということが事前にわが在外公館にわかっていたかということは、この十一月九日の大統領演説まではわかっておりませんでした。これは恐らくわが外務省だけでなくて、非常に多くの国にとって全く寝耳に水であったということであろうかと存じます。  それから、第二点の、いろいろな国におきます反響につきましては、逐次、情報が入っております。  各国の反響でございますが、まず、訪問に反対しておりますアラブ諸国から申しますと、シリアが政府当局の二十日の発表といたしまして、何の見返りもなく現在の状況でイスラエルを承認したことは犯罪行為であるということを発表しております。それからPLOにつきまして、PLOの情報局長が二十日に、これはサダト、ベギンの陰謀だというような批判をしておる。それからレバノンにつきまして、レバノンの回教徒左派が批判を言っておる。それからアルジェリアは、アルジェリア政府が、二十日に、エジプトの指導者がアラブ世界を代表する権利はない。この訪問はアラブ首脳会議の決定を逸脱するものだという批判をしております。それからチュニジアのシャティ外相が批判の言葉を述べております。それからサウジアラビアの方は、これは間接的でございますが、批判的な論調の政府声明を出しております。それからアラブ首長国連邦、これは政府声明でアラブ諸国間の分裂を憂慮しておるということを言っております。それからクウェートは政府としての公式見解は出しておりませんけれども、新聞の論調として政府が批判的であるということを書いております。それからイラクにつきましては、イラクの国営放送がサダト大統領を非難する放送をしております。それからリビア、これは最も強烈でございまして、サダト大統領のイスラエル訪問は犯罪だという全国人民大会の非難声明を出しておる、抗議行動の一つとしていろいろ意思表示をしております。  それから、中立または賛成の国といたしましては、ヨルダンの政府声明がエジプトの行動について慎重な考慮を呼びかけ、しかし、他方で、二十日、ヨルダンの政府当局筋はアラブの要求がイスラエル国内で行われたということは重要だという評価を出しております。それからスーダンは、十八日には、直接論評を避けておりまするけれども、訪問後これを支持する論調を出しております。それからカタールは、これは政府声明等公式見解は一切表明しておりません。モロッコは、国王が電話でサダト大統領に賛意を表明しておるということでございます。それから……。
  169. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 結構です。  いまの御報告にもございましたように、在外公館からの正式な報告にまつまでもなく、非常に微妙に揺れ動いているということは否めない事実だろうと思いますね。これからどういうふうに一体発展するのか、それこそ予測もつかない問題であろうと思います。  冒頭に申し上げましたように、また、お答えをいただきましたように、中東の在外公館の職員の方が非常に手薄である。そういったところから情報の収集というものも、恐らく獅子奮迅の思いというようなことでおやりになっておるのが何か目に浮かぶような気もしないではありません。そうした、これからも非常に速度を速めた動きというものがあるでしょうし、われわれとしては願わくは第五次中東紛争なんということの事態が引き起こらないような提言を積極的に、求められればということになるかもしれませんけれども、あるいはタイミングに応じてはこちらから積極的に提言もする。何かそこに和平への模索というものが日本政府を通じての提言を踏まえてできないものかどうか。やはり油という日本にとってはもう生命線にかかわる問題がございますものですから、これは常に頭の中に入れてのこれからの外交折衝というものが持たれるであろうというふうには十分うかがえますけれども、その辺、今後、敏感に即応できる対応のあり方というものの決意を最後に鳩山さんにお伺いをして、私の質問を終わります。
  170. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま御指摘になりましたように、中東問題が、世界平和、また油に関する大きな意味の資源問題の推移に対しまして、大変大事な関係にあるわけでございまして、これらの中東地域におきます的確なる情報を把握するということが、これはまた国民的な利益として要請されておる、こういうときでございますので、先ほど来御指摘のように、これらの中東地域の在外公館の陣容を本当にできる限り強化をいたしたい、そういったことで、今後、情報の的確な把握に努力をいたしたい。  また、日本といたしまして、大変むずかしい中東問題の微妙な段階に差しかかったわけでございます。これらの点につきまして的確な行動が日本として要請をされておる、こう思います。そういった意味で努力をいたしたいと思う次第でございます。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 いままでも何回か問題になってきましたけれども、いわゆる韓国の防衛産業の問題についてお尋ねしたいと思うんです。  御承知のように、一九六九年、七〇年、韓国では軍の近代化、防衛産業の育成ということが取り組み始められて、二年前にその事態が再検討され、七六年から五年間にわたる戦力増強五ヵ年計画というものが発足をして、外国からの兵器の輸入等と同時に、国内では自力による軍需産業の育成というふうなものが進められておると思うんですね。  で、ことしの一月十八日に、全国治安・予備軍関係会議というのが開かれたその席上で、朴大統領が「今年は、われわれの当面の目標である自主国防を強力に推進するため国軍の精鋭化と防衛産業育成にいっそう拍車を加え、来年までに必ず基本事業を完成すべき重要な年である」ということが述べられておりますし、同時に、一月の十八日、国防省において、同じく大統領が「五年後には、北朝鮮が中ソの援助なしに攻撃してきた場合、米軍の参戦なしに撃退する能力を持つ」というふうなことが言われて、韓国の国防能力というのは最近二、三年で驚くほど急速に伸びたというふうなことや、国防産業の基本的部分は来年末までに整備されるという趣旨のことが述べられております。また、六月の十七日には、防衛産業振興拡大会議で、同じく大統領が「防衛産業をくりあげて進め、八〇年末までにはほぼ完ぺきな段階にひきあげ、航空機と高度電子武器の一部以外は完全に自給を実現するのがわれわれの課題である」ということが述べられているわけです。  このような事態に対して、外務大臣としては、どのようにお考えになっておるのか、まず最初に御所見を賜っておきたいと思います。
  172. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 韓国が自衛のために防衛力を整備する、他方におきまして米地上軍の撤退が行われる、こういった事態のもとに韓国軍のとにかく装備を近代化しなければならない、また広い意味で国防力を維持するために防衛産業も整備しなければならない、このような考え方は韓国の必要性に応じて出てきておることであろう、このように考えております。  しかし、御指摘のような韓国の防衛産業に対しましてわが国が協力をするというようなことは、これはたびたび申し上げておるように、考えたことはないわけでございます。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 まだ最後の部分まではお尋ねしていないんです、後でやりますから。  七六年の六月十八日に発表されたいわゆる韓国の第四次経済五ヵ年計画を見てみますと、重化学工業化を重点に置いている。ことしの日本から参りました使節団の報告を見てみましても、引き続き重化学工業を推進していると、この第四次五ヵ年計画においてはですね。その中で機械工業の育成を最重点課題としているという報告、これは外務省からいただいた資料に述べられてあるわけですが、この機械工業の育成という問題の中で、韓国の商工部では、この機械工業の育成を国家安保と連結した防衛産業と結びつけながら育成していくということを明確に指摘しているわけです。  こういう中で、たびたび問題になりました昌原工業団地というのが大規模にいますでに操業され、さらに拡大、拡張されつつあるわけですが、この昌原工業団地というのは機械工業、つまり防衛産業と関連をした機械工業の中で、どういう位置づけを韓国でしているのか、その点について。
  174. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 昌原工業団地というものを韓国の広い意味での産業政策といいますか、そういうものの中でどう位置づけるかというのは、これは韓国は韓国のいろいろの考慮に基づいて行われているものと思いますけれども、私どもがこれをどう受けとめているかという点では、それはやはり近代産業の中でも特に技術的な依存度の高いもの、それから労働集約的な機械工業を伸ばさなければならないという韓国の期待のもとに、各種の業種を並べまして、これに近代的工場を誘致するという目的で行われているものだと。  で、その投資規模で見ますと、私どもの承知しておりますところでは、一九八一年までに約十億ドルをこの昌原工業団地に投下いたしまして、約五百万坪の用地を造成して百余りの専門工場を建設しよう、こういうもので、これによって韓国自身の産業開発に資するばかりでなくて、また韓国の一番大事な目標としております輸出の面でもこれによって貢献することを期待している、そういうものであるというふうに受けとめております。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 私、資料をちょっと見てみたんですけれども、それによりますと、この昌原工業団地がどういうふうな位置を南で占めておるのか。七六年十月末現在では、南においては工業団地の数が全部で二十七ある。団地造成面積が総坪数で一千三百六十三万六千坪。ところが、この昌原工業団地が南で一番最初に告示されたときの面積というのが一千三百十一万四千坪というわけですから、相当なものであるということがわかったわけですし、同時に、いま言いました総投資額十億ドルを八一年には目指しておるということですけれども、その事態になれば、南における機械類生産額の約四〇%を同団地が占めるし、機械類の輸出の約五〇%以上を同団地が占めるというわけですから、非常に大規模な南においても相当重視され、その中で機械工業というのがきわめて重要な位置を持っておるということが理解されるわけです。  この団地において、一体、韓国は何をつくろうとしておるのか、その点については、中江さん、どうですか。
  176. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま私どもの手元にある資料では、ここで対象業種としておりますものは、素材、要素部品、産業機械、精密機械、電気機械、輸送機械、船舶用機械、こういったものだというふうに承知しております。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど言いました韓国商工部の機械育成総合支援対策の発表によりますと、「昌原基地の早期建設で機械工業の構造革新と早期の土着化を期しながら、すべての機械工業を防衛産業に活用する」というふうに対策では発表されております。また、七六年の秋、外国人記者が同団地を神察して、その後外国人記者からここには軍需工場はないのかという質問をされたときには、全く存在しないというふうに答えていた。ところが、御承知のように、ことしの四月の中旬に、先ほど言いました朴大統領がこの昌原機械工業団地の中にまさに兵器製造工場が存在しているということを公にしたことは局長も御存じだと思うんですが、このいわゆる軍需産業として大きな役割りを同団地に持たしておる点について、どのようにお考えになっておるのか。そういう兵器産業が同団地にはないというふうに言われるのか、あるいは、あるということをお認めになっているのかどうなのか、その点はどうですか。
  178. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは冒頭に私が申し上げましたように、韓国がこの工業団地をどういうふうに認識し続けているかというのは韓国側の問題ですが、その中に軍需産業が全くないかというと、それはないわけではないわけで、それを予定はしておりますけれども、その軍需指定工場になるものとそうでないものとはっきり分けて、そういうことを韓国では計画しているということで私どもは受けとめておるわけで、その軍需指定工場になるものが韓国の防衛産業上どうであるかというのは韓国側の問題だと、日本としては、これはまたそこまで聞いていないとおっしゃるかもしれませんけれども、軍需指定工場のようなものに日本が協力するということは考えていないということでございます。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 これは知っていればお答えいただきたいんですけれども、同じ工業団地の中で、韓国の商工部では、すべての機械工業を防衛産業と結びつけて活用するというふうに言われているけれども、いわゆる防衛産業というのがどれぐらいの比率に同団地ではなっているのか、その点についてはどうですか。
  180. 中江要介

    政府委員(中江要介君) その点は、韓国政府に、私どもも関心がないわけでございませんので、照会してみたわけですけれども、軍需産業に指定されているものがどういうものであるか、また、どういう比率であるかというような軍需産業関係の資料といいますか統計といいますか、そういったものは一切不公表だということになっておりますので、確認ができないと、こういうことでございます。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 先ほども申し上げましたように、輸出においては機械工業の五〇%以上を占めるそういう団地を今後育成して、八一年に全面的な操業を目指すという点から言いますと、いわゆる投資を外国に依存する、あるいは技術協力を依存する、協力を頼むというふうなことは、当然、あり得ることだと思うんですね。  いまの南の経済状態で、すべて自力でそれができるというふうな状態でなくて、それはアメリカに対しても積極的な要請をやっているわけですから、そういう防衛産業と言えばかたくなになってお答えが非常に狭まるが、そういう意味ではなくて、いわゆるこういう工業団地をつくっていく上で、日本に対してはどういうふうな協力要請が韓国からあったのか、あるいはこれは政府レベルではどういう形であるのか、あるいは民間レベルではどういう形であるのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  182. 菊地清明

    政府委員(菊地清明君) まず、御質問のこの工業団地との関係でございますけれども、工業団地と日本とのかかわり合い、ことに経済協力の面におけるかかわり合いは、第一義的には、そういった団地に対して日本側の民間企業がどういった投資をするかということだと思います。これが一〇〇%の投資か、向こうとのジョイントベンチャーか、いろいろあるわけですけれども、韓国の場合、原則としてジョイントベンチャーということを言っております。  それから、その団地以外の、一般に第四次五ヵ年計画全体に対する日本とのかかわり合いというものでございますが、その前にちょっと御参考までに全世界的に韓国がどういうふうな経済協力の期待をしているかという点を申し上げますと、大体、この五ヵ年間を通じて百億ドルぐらいのオーダーの海外からの資金の流入を期待している。その半分がいわゆる政府ベースといいますか、これには国際金融機関も入っているわけですが、そのあとの半分が民間ベースということになっております。ですから、五十億ドルと五十億ドルぐらい。  それから、今度は、日本に対しては、実は、まだ正式な要請はないわけでございますけれども、去年の十二月に、日本政府が第四次五ヵ年計画の視察団といいますか調査団を派遣しまして、この視察団に対して先方の責任者が申しましたことは、この五年間に十八億五千万ドルという数字を非公式に言っております。その彼らの期待額としては五億ドルが政府レベルといいますか、政府間の援助で、それからあとの十三億五千万ドルは民間。この民間のあれには商業借款と投資と全部入るわけでございます。そういったものが大体のオーダーでございまして、この団地に対してどのぐらいのかかわり合いかということについては、ちょっと資料はございません。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、ことしの九月の六日に、第九回日韓定期閣僚会議が開かれて、そのコミュニケの九項目ですね、「両国の閣僚は、両国間の経済協力に関して意見を交換した。」ということで、今後、一層経済協力関係が推進されることが述べられていますし、また、十一項目では「両国の閣僚は、両国間の民間経済交流について意見を交換した。」、これも相手方の「第四次経済開発五ヵ年計画の期間を通じ、一層増大されることが望ましい」という内容になっておりますけれども、具体的には、これはどういうことになったんでしょうか。
  184. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 経済協力の関係につきましては、実務者の協議をいたすことになっておりまして、これはすでに最近終わった段階と聞いております。  なお、もし具体的なことでございますと、菊地経済協力局長からお話し申し上げます。
  185. 菊地清明

    政府委員(菊地清明君) まず、閣僚会議の方でございますけれども、これでは、この最後の共同声明に書いてありますとおり、政府ベースの協力の態様と民間ベースの態様とを一応説明してございます。  政府ベースの協力というのは、農業開発を含む韓国の経済社会基盤の施設の整備拡充ということを中心にしまして、その均衡ある経済発展のため開発が必要とされる分野を中心に政府間の実務者レベルの協議を通じて検討の上適切な案件について具体化していくということでございます。  それから、民間の経済交流につきましては、御指摘の第十一項でございますが、「最近の韓国経済の着実な成長に伴う民間経済交流の順調な発展に留意しつつ、」今後とも、この分野の交流が一層拡大されるということが望ましいということに意見の一致を見ております。ここに、韓国経済の発展段階に応じまして、やはり民間経済協力が主体であるというふうな感じを出しておるわけでございます。  次に、いま申し上げました実務者会議でございますが、実は、五十二年度の対韓経済協力、これは政府ベースのものでございますが、これの実務者会議のまた予備会議というものを、十一月、今月の八日と九日、ソウルで開催いたしました。その結果、向こうから三つのプロジェクトに対する要請がございまして、項目だけ申し上げますと、農業総合開発事業、それから病院建設及び医療施設拡充事業、それから済州島の外港――済州島の港があるんですが、さらに港の外側の外港の開発事業政府援助をしてもらいたいということで、金額にしまして一億六千万ドル程度の要請がございました。で、この実務者会議の予備会議では、先方のこの要請案件について説明を聴取したわけですけれども、それだけでは不十分ですので、持って帰ってきた資料をただいま検討しているという段階でございます。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 それと関連するわけですけれども、ことしの三月ですね、第九回日韓民間合同経済委員会が開かれて、そこで第四次経済五ヵ年計画について日本側は必要な外資調達に積極的に協力するということを約束した共同声明が発表されているわけですが、この内容についてちょっと説明していただきたいんですが。
  187. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ちょっと手元にその共同声明は持っておりませんけれども、これはかつて国会でも答弁があったと思いますけれども、民間レベルでのいろいろのそういう会合あるいは意見交換、そういったものはそういったものとして日韓の政府間の関係を補足するものとしていろいろございますけれども、政府レベルでの話がそれによって事前に準備されるとか、それによって拘束されるとか、そういうことは全く考えておりませんので、政府レベルで話が出ますときは、正式のそれこそ政府間の要請に基づいて改めて検討し直す、こういう姿勢で臨んでおるわけでございます。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 それは後で私の方から説明します、内容は。  それでは、もう一点、韓国側から韓国の自主防衛といいますか、自主国防というか、そういうふうな問題について説明を受けたことがありますか。
  189. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 私の承知する限りございません。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 一切なし。
  191. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ございません。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 この第四次経済開発五ヵ年計画に対する協力の要請という点で、先ほど言いました中安さんが団長として行かれたとき、向こう側が非公式に述べたという十八億五千万ドルですかの要請があると。これも見てみますと、この問題について、新聞記者の方が、いま韓国では新五ヵ年計画で機械工業の振興に重点を置いておる、これによって軍需兵器産業を育成しようとしているとも言われている。これへの協力はわが国としてまずいのではないかというふうに質問したのに対して、中安団長が「在韓米軍撤退問題もあって韓国側が兵器産業の育成、武器国産化に熱心なのは十分承知している。だが、私のみるところ、米軍撤退は相当遅れるだろう。また、韓国の意気込みはともかく、工業化の歴史がたかだか十数年にすぎず、新鋭の兵器産業を早急につくり出せるとは思えない。心配することはないよ。」という対応の仕方、これは私は大分問題があると思うんです。  それから、先ほどお尋ねしたんですが、お手元に共同声明がないということを言われたんですけれども、日韓民間合同経済委員会、ことしの三月のあれを見てみますと、韓国側が特に要望しているのは、「韓国は機械、電子、精密化学開発を特に重視し、この部門で日韓の水平分業を誘導するため、長期低利の商業借款と直接投資を要請、日本はその妥当性を認め、積極協力すると確認した」ということになっておるわけですね。機械工業というのは、先ほど言いましたけれども、これを防衛産業にすべて結びつけてやるということは韓国の方針として明確にされているわけですし、私はこれも問題があるだろうというふうに、まず、とりあえず指摘をしておきたいと思うんです。  この韓国からの米軍の撤退に伴って、アメリカから日本に対して韓国への協力を要請してきた事実はありませんか。もしかあったとしたら、どういう時期に、どういう要請があったのかということについてお答えいただきたいと思います。
  193. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ただいま御指摘のような形で、アメリカから日本に要請があったという事実はございません。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 だけど、二年前の八月ですね、米韓安保協議会での米韓共同声明を見てみましても、これについてはアメリカとしては積極的に協力するということが述べられていますが、その後の記者会見で、当時のシュレジンジャー米国防長官は、日本は軍事的、経済的、その軍需産業の面でも、韓国に大きな影響を及ぼすのは当然なことであるというふうに述べておりますし、それからこれは繰り返し否定しているわけですけれども、ことしの八月四日、防衛庁の関係者が述べたところによると、対韓経済協力の増強要請があったという旨、新聞でも報道されましたし、また、先週の十一月十八日の新聞を見てみても、そこではいまアメリカの議会で問題になっておる対韓援助の問題と関連して、アメリカの国防総省が述べたところによれば、「議会が結局は政府提案通りに対韓軍事援助を認めるとの確信はなお持っているが、もし議会がいまのまま難色を示し、補完措置が撤退のペースについていかない場合には、日本の側面からの支援を大いに期待している。韓国への経済援助の増大によって、この補完措置を埋め合わせることができる」という趣旨のことが述べてありますけれども、これは公式、非公式を問わず、一切そういうふうな問題はないというふうに断定できますか。
  195. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 一切ないと断定できます。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 通産省おいでになっていますか。――いわゆる武器輸出三原則ですね、これはもう御承知ですから繰り返しませんけれども、韓国に対しては、これは前回の質問のときに、「私どもの運用におきましては、韓国は武器輸出三原則の対象国であるとは考えておりません。」というふうに述べておられる。このこと自体について私はまたいろいろ異論があるんですけれども、そのことをやり出すと長くなるのでそれはそれとして、しかし、韓国に対するこういう武器の輸出等々の問題についてはやらないという点については、「私どもは、韓国に関連をいたしましては紛争のおそれがあるとは理解いたしておりませんが、現に緊張状態が存在をしておるということに着目をいたしまして、これに対する武器の輸出を認めることは国民経済及び輸出貿易の健全な発展に問題ありというふうに考えておるわけでございます。」というふうに、当時、通産省は述べておられましたけれども、現在でも、これは変わりありませんか。
  197. 柏木正彦

    説明員(柏木正彦君) お答えいたします。  現在でも、変わりございません。  若干敷衍いたしますと、韓国はいわゆる武器輸出三原則の対象国ではございませんけれども、紛争の起こる可能性が高いというほどではございませんが、一種の緊張状態が存在していると考えているわけでございます。したがいまして、かかる状態にある国に武器を輸出し、それによって武力紛争のおそれが生ずるのも、国際的な平和協調を願いとするわが国にとりまして、好ましくないわけでございますので、武器輸出につきましては行わないという方針で、従来から臨んでいる次第でございます。
  198. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどの昌原工業団地に戻りますけれども、あそこでは、現在稼働中の日本が合弁しているのが三社、建設中四社、七社ということになっていますが、先般も、これは武器の製造とは一切関係ございませんということですが、ここではそれぞれ何を生産しておりますか。
  199. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま出ております七社について申し上げますと、製造している業種といたしましては、一つは蓄電池、一つは金型鍛造、一つは鋳物、一つは化学機械、一つは車両計器、一つは各種プラント設備、もう一つは自動車キャブレター、こういうふうに把握しております。
  200. 立木洋

    ○立木洋君 ここでは、これは直接武器の生産ではないというふうに断定されているわけですから、もうそれ以上その点は言いませんけれども、しかし、ここでつくられておる製品というのが一切軍用に供されていないということは断定できますか、どうですか。それはわからないと言いますか。
  201. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 軍需指定工場でないということははっきりしております。後、つくられたものがどういうふうに利用されているかというのは、これは把握しにくい問題だと、こういうふうに思います。
  202. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、そこでつくられているのは、たとえば一般の機械かもしれない、部品かもしれないけれども、そのうちの何十%かがもし軍用に供されておるということがあり得るかもしれないという点については、いかがですか。
  203. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは定義の仕方がいろいろございましょうけれども、なかなか最後までエンドユースをチェックするということはむずかしい問題だと、こう思います。
  204. 立木洋

    ○立木洋君 だから、行われていないとは断定できないと、そう言うと問題がありますか。
  205. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 少なくとも、韓国の責任ある閣僚が、日本が参加しております合弁企業が軍需産業あるいは軍需品の製造に関与していることはないと、こう言っておりますから、そういうことはないというふうに私どもは思っておるわけでございます。
  206. 立木洋

    ○立木洋君 先日の衆議院の予算委員会で、福田総理が、わが国は武器三原則――韓国の問題に関連してですけれども、「武器三原則、これを持っておるわけですから、海外に投資をするというような際におきまして、武器三原則の考え方にのっとりまして、投資先の企業が武器を生産するというような目的のものでありますれば、これは許可いたしません。」というふうに答弁しているわけですね。これはそのとおりだと思うんですが、これは輸出の問題で武器三原則というのがあるわけですから、投資の問題に関しても、そういう精神を生かして、やらないと。  技術提携の問題については、大臣、どうでしょうか。
  207. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) この投資の問題につきましては、これは大蔵省が所管しておりまして、この点につきましては、その後、関係各省で思想統一をしたと聞いております。  一般的に海外投資につきましてはほとんど自由化しておる現在、むしろ投資を奨励するような時代になっておりまして、自由化をしておるわけでありますけれども、そういった中で、もし御指摘のような兵器産業に投資するというようなことが行われないようにするには、どうしたらいいかという点につきまして調整をしておると聞いております。
  208. 立木洋

    ○立木洋君 総理大臣が、十月十三日に、そういうことはいたしませんと言っているのだから、そのことはいいんですよ、これは武器三原則のあれを適用をして、そういうふうにしないというふうなことを総理大臣が述べているわけですから。  技術提携の場合に、武器三原則の精神を適用して、技術提携なんかの問題についても、しないようにするというのか、技術提携は何ぼ武器産業であっても結構だからやっていただくというのか、その考え方を聞いているんです。
  209. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 韓国側と技術提携をしている会社は、いまのところ、六社ございますが、これについても、民間投資の場合と同じ思想が当然適用されるといいますか、そういう考えで臨むべきものだと私どもは思っております。
  210. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、結局、武器を生産しておる工場に対する技術提携というふうなことは、武器輸出三原則の精神にのっとって、そういうことは差し控えるようにするということですね。
  211. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 直接の所管官庁ではございませんけれども、外務省といたしましては、そういう姿勢で臨むべきものだと思います。
  212. 立木洋

    ○立木洋君 さっき、六社技術提携されているというふうに言われましたけれども、たとえば大韓重機ですね、大韓重機というのは日立製作所と東芝電機、これが技術提携して、つくられているのはミーリングミシンとボーリングミシンがつくられておる。ところが、この大韓重機というのは、ことしの五月、韓国の国会防衛産業視察が行われたときの一つの工場なんですね。これはどういうふうに正確に読むかわかりませんけれども、豊山金属、大韓重機、起亜産業、韓国総合特殊鋼、これらのところを防衛産業視察ということで、韓国の国会議員が視察をしております。防衛産業というふうに明確に韓国の国会で認めて視察をしておるこの大韓重機に、日立製作所と東芝が技術提携を行っておるというのは、いまの外務省考え方からするならば、これは当然よろしくないことだということにならざるを得ないと思うのですが、その点はどうですか。
  213. 中江要介

    政府委員(中江要介君) そういう次第でございますので、いま大韓重機の実情といいますか、実態について確認を急いでいるところでございます。
  214. 立木洋

    ○立木洋君 確認の仕方というのは、どういうふうにしてやるわけですか。
  215. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 韓国の商工部、日本で言いますと通産省に当たりますか、商工部に照会して、その説明回答を待っていると、こういうことでございます。
  216. 立木洋

    ○立木洋君 韓国では、たとえば国際電光というのは防衛産業体として軍需指定を受けておるということが公にされておりますけれども、新聞報道によって。ところが、この国際電光というのは、ジェトロのあの明細を見てみますと、どういうふうに書いてあるかというと「小型精密工作機械」としか書いてないんですよ。さっき中江さんに七社は何をつくっているかと聞いたら、直接武器の産業とは関係ないような名称が出てきましたけれども、これは明確に指定されている防衛産業であっても、国際電光の場合には「小型精密工作機械」としか書いてない。これは韓国の商工部の言うことだけ聞いておいて、先ほど言われたように実際に歯どめができているのかどうなのかというのは全く私は信頼できないと思うんですが、その点はいかがですか。
  217. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 私どもといたしましては、まず第一義的には、当然、相手国の権限ある官庁説明というものを聴取して、それをまず信頼するということでないと、二国間の関係というのはなかなか進まないと思います。しかし、それにもかかわらず、何らか問題があるということであれば、またさらに調べる必要もあろうかと思いますが、いまのところは、先ほど御指摘のございました大韓重機についてまず商工部の説明を求めている、こういうことでございます。  それからもう一つ、先ほど来先生のおっしゃいます防衛産業というのと軍需指定工場というのとは、これは恐らく違うと思いますので、その点は私どもも使い分けといいますか、観念の違いというものは認識しておるわけでございます。
  218. 立木洋

    ○立木洋君 その大韓重機の問題ですね、これを調査して回答を求めるということは、当然、そうしていただきたいんですけれども、先ほどの七社、それから技術提携が行われている六社ですね、これについても明確に相手に問いただして、調査をした結果を報告していただきたいと思いますが、委員長、お願いしたいのですが、いかがですか、いいですか。
  219. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 委員会としての御要望でございますれば、できるだけのことはいたすつもりでございます。
  220. 立木洋

    ○立木洋君 委員長、お願いしたいんですが、いいですか。
  221. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 実態がどうかということでしょう。実態がどうであるかということを報告してもらいたいと、こういうことでしょう。後で理事会に諮ります。
  222. 立木洋

    ○立木洋君 それから、もう時間がないので最後を少しはしょりますけれども、つまり兵器をつくるというのは、大体、組み立てですよ、最終的には。ですから、問題は、つくられた部品、それから原資材、それがいろいろなものがつくられておる。それ自身がどういう武器の部品になるかというようなことは、組み立てられてみないと実際にはわからないという状態なんです。  昌原工業団地というのは、全体的には機械工業として、全体を防衛産業に役立つような形で工業団地の開発というのがやられていっている。ですから、たとえば最終的に戦車を組み立てるだとか、あるいは大砲を組み立てるだとかいうふうな場合にしても、大韓重機の先ほど申し上げました旋盤、ミーリングミシンやボーリングミシン等々の問題についても、これは工作機械ですけれども、しかし、ミーリングミシンなんかにすればこれは鋼板を伸ばす、とすると、戦車の装甲板をつくるという部品にもこれはなり得ますし、あるいはボーリングミシン等々の工作機械であるならば、これは大砲の穴をあけるというふうなものにも当然使えるんですよ。ですから、私は、問題はただ単に兵器を組み立てておる工場に対してどうかという問題よりも、先ほど言われたように、そのつくられた部品や原資材がどういう形でその兵器産業につながっておるのかというところまでは後追いができませんというふうに言われたけれども、私はその点が大切だろうと思うんですよ。その点で、次の点についてはどのようにお考えになっているのか。  一つは、武器だけにしか使われない原資材や部品の生産が行われる場合についてのいわゆる投資だとか技術提携というものをどう判断されるのか。  二番目には、武器だけにしか使われない部品をつくる工作機械を生産しておる工場に対する対応というのはどうなるのか。  第三点は、一般的な原資材や部品、工作機械の生産の中で、その生産されたもののうちの何割かが明らかに兵器産業の部品なり素材として使用される実態のあるものについては、どういうふうに考えておられるのか。  これらの問題については、武器輸出三原則の精神とは全くかかわりなくて結構であるというのか、こういう問題についてもきちっと対応すると言われるのか、その点についての御見解を、大臣ちょっと。
  223. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 先般も、実は、浦項製鉄所につきまして、この鉄が兵器に使われるんじゃないかというような御指摘があって、それは製鉄所は鉄をつくるので、製鉄所が兵器産業であるということはどこの国でも常識的に言わないんじゃないかということをお答えした記憶がございます。  それで、鉄のような場合には――兵器は大体鉄でできるのが多うございますが、それは言いませんが、いま御指摘のように、兵器だけにしか使われないような工作機械をつくるのはどうかというような御指摘でございますが、そこまでいきますと、これは技術的な問題でございますので、どう判断していいか私も即座にはわからないわけでございますけれども、旋盤であるとか、あるいは工作機械につきましては、これは工作機械を使えばまた何でもつくれるということで、兵器を直接つくるということであればこれははっきり兵器産業ということはわかるわけでございますけれども、そうでないものにつきまして、これはなかなか判定はむずかしかろうという気がいたします。しかし、その点は通産当局に別にうまい割り切り方がありますれば、それに従うと思います。
  224. 立木洋

    ○立木洋君 通産省で何かあるんですか。
  225. 柏木正彦

    説明員(柏木正彦君) お答えいたします。  海外投資につきましては、大蔵省が主務官庁でございますので、私どもはお答えする立場にはございませんので、お答えいたしません。  先ほどの一般的な機械、たとえば大臣のお答えになりました旋盤というようなものでございますが、これらは、現在、武器輸出三原則上の武器ということにはなっておりません。  御存じだと思いますが、武器とは何かと、武器の定義につきまして簡単にお答えいたしますと、武器輸出三原則における武器とは、昨年二月の政府方針にありますとおり、軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるものをいいまして、具体的には輸出貿易管理令別表第一の一九七から二〇五に掲げる品目をいうということになっております。一般機械、たとえば旋盤は、仮にそれによりまして武器関連的なものがつくられるおそれはありますけれども、武器輸出三原則の定義には該当いたしませんから武器ではないということで、輸出は認めるということになると思います。  以上でございます。
  226. 立木洋

    ○立木洋君 経過しておりますけれども、最後に一言。  一番最初申し上げましたけれども、韓国がそういう防衛産業の育成、つまり機械工業をすべて防衛産業と結びつけるという方針でやられている状態があるということは先ほど述べたとおりですけれども、そういう状態を考えた場合に、少なくとも技術提携の問題に関しても武器輸出三原則の精神にのっとって考えるということであるならば、これは私はいまの韓国との経済協力の問題については全面的にやはり検討し直す必要があるだろうと思う。そして言いましたように、結局、つくられた物が最後的に何に使われるかという、最後までめどがつかないというふうなことでは、事実上、私はしり抜けになるだろうと思うんですね。  さらには、それが先般も何回か問題になりましたけれども、経団連の防衛生産委員長の発言等々もありますし、あるいは先ほど引用しました現地へ行って視察してきた中安団長の発言等々によっても、いわゆる金でもうけられるならば武器を輸出したって構わぬではないかという考え方すら公然と言われている状態ですし、それが政府考え方としてはまずいというふうに言われておるわけですから、その点についてはけじめがきちっとつくような対応を外務省として特に私は要求したいと思うんです。  そのことについて最後に大臣のお考えをお聞きして、私の質問を終わります。
  227. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 総理も予算委員会ではっきりお答えになったことでございますから、私どもも総理答弁の趣旨に沿いまして、それが確保されるように努力をいたします。
  228. 秦豊

    秦豊君 きょうは、実は、田英夫との差しかえでありまして、この委員会での質問は私にとっては初めてになります。第一、いままでは内閣委員会ですから立ったり座ったりして質問をしたが、朝から拝見していると、座ったままでやるというのもなかなか落ちつくものですね。だから緩やかにお尋ねをしたいと思います。  きょうは、大臣、私は日米の経済問題が主題なんですけれども、その前に幾つか小さな質問をしておきたいと思います。  各委員から日中問題や中東問題はかなりフォローがあったと思いますので、重複は避けます。ただ、佐藤大使はいつこちらへ帰ってくるんですか。
  229. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 十二月の中旬というと十日から始まるわけでございますが、そのころじゃなかろうかと思っております。
  230. 秦豊

    秦豊君 そうするとストラウス氏とダブるかもしれませんけれども、佐藤さんを迎えてというのは福田総理のかねがねの答弁でもある。福田さん自身が日中の問題は考えるいとまがないから、最近の例の水は低きに流れると、かなり時間はかかったが、ようやくたどり着きつつあるという印象なんですが、佐藤さんを迎えて練り上げて、それでやっぱり正式の訓令を発して交渉開始と。相手がありますからね、全人大会は十二月じゃないかという観測が強まりつつある中で、具体的な交渉の再開は年をまたぎますか、明けますか。七八年ぐらいからになるわけですか。いまの大臣の政治的な目標としてはどうなんですか。
  231. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 具体的なスケジュールというものはまだ何も決めたものはございません。したがって、その点につきましても、しかとお答えはちょっとできないのでございます。
  232. 秦豊

    秦豊君 それから関連しますけれども、普通、出先大使がかなりデテールを詰める、しかし、だめ押しの一点のように時の外務大臣が訪問をする、こういうパターンが一般化されていると思いますけれども――私はもちろん鳩山外務大臣という前提で言っているんですよ、これは、言っているんですがね、とにかく佐藤さんが詰める、その後あなたが北京を訪問する。これはかねがねちらついてはいたけれども、そういうことは当然あり得るわけでしょう。
  233. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) まだそういった手順をどうするかというところも決めたものはないわけでございます。  しかし、条約問題になりますと、やはり本省の要員というものも、そういう段階になれば、仮に北京で行われるということになれば、本省からのある程度の応援も必要でありましょうし、また、必要があれば、私も行くということも必要になろうかと思っております。
  234. 秦豊

    秦豊君 私、いつも思うんですがね、中国との問題を考える場合に、たとえば、いつごろだったか、日中平和友好条約がもし結ばれる場合は東京だというふうな説がちらっと流れたことがあるやに記憶しますが、やはりこの日中問題の傷の深い経緯を考えれば、日中平和友好条約の詰めというか調印は北京で行うべきだという私はかなり牢固とした考えを持っているんですよ。外務大臣としての考え方はどうですか。
  235. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) まだそこまでしかと決めたことはございませんが、御趣旨は承っておきます。
  236. 秦豊

    秦豊君 やっぱりエチケットとしても、そうすべきではないかという私の見解を申し添えておきたいと思います。  それから、日中平和友好条約の調印の際に、ソビエトがどう出るかということは、これはマスコミのトピックスにもなっているぐらいだから、外務省としてはかなり感触の吸い上げをやって、もうすでに終わっていると思うんだが、たとえば駐モスクワ大使館あたりからの公電に類するものの中に、つまり正式なリポートの中に、平和友好条約調印の際には、たとえば現在のポリャンスキー大使を召還する、連れ帰すというふうな意味の公電は大臣の手元に届いたことがありますか。
  237. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) そのようなことは一切ございません。
  238. 秦豊

    秦豊君 中東問題を一つだけ伺っておきたいんですが、評価とか分析に類するものは恐らく各党の皆さんがなすったと思いますが、ちょっと鳩山さんに伺っておきたいんだが、今度初めて中東問題の解決の場合のイニシアがサダト氏に移った、移りつつあると、ベギン氏と。だから米ソは初めてかやの外であるという卑近な言い方もありますけれども、私どもの印象では、やっぱりジュネーブ会議というものが本舞台であって、これは一応両国の間に直接交渉がどうであろうとも、やはりジュネーブ会議そのものの舞台の開幕は十二月なら十二月に、下旬なら下旬にやっておいて、そうしてイスラエル、エジプト両国の直接交渉とか、あるいはアラブ周辺諸国の反応などを見ながら、実際の交渉というのは四月ごろジュネーブで開かれるんだという私は予見を持っているんですが、外務大臣としては、どんなふうに見ていらっしゃいますか。
  239. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 私といたしましては、年内にジュネーブ会議が開かれるということを強く期待をしているものでございます。しかし、その先がどういうことになるかということは、これはちょっと予測が立たないというのが実際のところでございます。しかし、米ソは共同議長国として、先ほど申し上げましたように、この問題につきましてはある程度の連絡をとりながら、私は、ある程度の指導力を持つであろうと思います。
  240. 秦豊

    秦豊君 日米防衛協力小委員会のことはお答えになれますね。一番最近に開かれたのは九月何日でしたか。
  241. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 九月の二十九日でございます。
  242. 秦豊

    秦豊君 この次の開催予定はいつですか。
  243. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいまのところ、何ら計画はつくっておりません。大体において、従来のところ、できれば二ヵ月に一遍ぐらいずつは会合を開きたいという気持ちを持っておりましたが、何と申しましても初めての作業でございますし、少しずつおくれてまいります。次がいつごろやれるかという点につきましては、米側とも特に話し合っておりませんし、当面、計画を持っておらない、こういう状況でございます。
  244. 秦豊

    秦豊君 たとえばFXの問題に関連してF15イーグルの空中給油問題というのは、すでに国会のピークを過ぎたかもしれないが、これからまだ根が残る問題です。防衛庁当局があんな答弁をするからには、日米防衛協力小委員会で日米双方のスタッフが当然そのような問題についてもすでに話し合ったと見るのがむしろ常識だと、これは私の意見ですが、局長はいかがですか。
  245. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) この防衛協力小委員会は、先生御案内のように、安保条約に基づく日米間の軍事的な面を含めた協力のあり方を研究協議しようということでございまして、日本自身の防衛力の整備の問題というのはこの小委員会では扱わないと、これは日米間の協力のあり方という問題ではないというのがわれわれの基本的な認識でございまして、従来からも、そのような話は全くこの小委員会で出ているということはございません。
  246. 秦豊

    秦豊君 それは、局長、あなたの答え方の方が足りないんですよ。  つまり空中給油というのはKC135を使わなきゃいけない。いま嘉手納基地に常駐しているわけだ、そうでしょう。そうしますと、CAP一つ、空中待機一つ考えましても、やはり列島の長さを考え作戦範囲を考えると、日本が新たに空中給油機は買わないというのが政府の答弁なんだけれども、なければ、あるところから借りる、あたりまえじゃないですか。こういうふうな問題について防衛側があそこまで確信に満ちた答弁をするからには、日本の防衛というより日米の協力に関する問題だから、まさにあなた方が正式メンバーである防衛協力小委員会の議題になってしかるべきであって、そんなサウンドもとらないで、あんなに慎重一点張りの防衛官僚がああいう答弁をするはずないでしょう。それはあなたの答弁の方が足りない、私はそう思う。重ねて聞きたいと思う。
  247. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま申し上げましたように、この小委員会の作業の性質そのものからして、そのような問題は議題に上らないということを申し上げたのでございますが、先生の御納得をいただけないという事態において、もう一つ別のアングルから御説明を申し上げますと、そもそもこの防衛協力小委員会は去年から発足したわけでございますが、何分にも従来安保条約下においていまだかつてやったことのないような研究協議という作業をやるということで、現実にいかなることをどういうふうにして進めていくかという点につきましては、相当予想外の時間を食ってきておるわけでございます。で、現実に現在の実際の問題といたしまして、この防衛協力小委員会は、その委員会の研究協議の前提条件とか対象事項とか、そういうことを討議をいたしまして、そしてその下部機構として三部会を設立した。そして現在の状況は、実際上の問題として、これら三部会がそれぞれの専門的な立場からみずからに与えられた任務の研究協議を、その運営の仕方も含めまして、作業を始めたばかりという事態でございます。したがいまして、時間的な経過からいたしましても、いまのようなスペシフィックな問題がこれらの小委員会なり部会なりで取り上げられるということはないという時間的な関係になっております。
  248. 秦豊

    秦豊君 念のために伺っておきますけれども、三部会でどういうふうにやっているのかな、会議を。つまり後方支援を含めましてね、三つの部会で、いつも毎回三つの部会にまたがったテーマを包括的にやっているんですか、それとも毎回日米双方の申し出によって一つなら一つに集中してやっているのか、その辺を知っておきたいと思いますがね。
  249. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お尋ねの点につきましては、これらの三部会はそれぞれの決定に従って会合を開いておる。従来までに恐らく各部会とも数回程度の会合を持ったという程度でございます。したがいましてこれらの部会の結論らしきものが出てくれば、これが小委員会の本会議自身に上がってくるわけでございますが、いまだまだ三部会でその研究協議のそれぞれの作業を開始したばかりと、こういう状況になっております。
  250. 秦豊

    秦豊君 いま大体局長言われましたね、二ヵ月に一度くらいの頻度だと。いろいろ緊迫したテーマもラッシュで入ってきているから、七八年以降は、防衛協力小委員会はマンスリーでやるというふうな問題提起がアメリカ側からなされたことがありますか。
  251. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) そのような事態は全くございません。
  252. 秦豊

    秦豊君 そうすると、いままでの作業で、三部会同時並行で日米防衛協力小委員会としての充実した論議をやるという準備は十全にはできていない、まだ未完であるという段階ですか。
  253. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ほぼおっしゃられるとおりの状況でございます。
  254. 秦豊

    秦豊君 外務大臣ね、あなたの日程をちょっと伺っておきたいんですけれども、福田総理は、たしか十一月二十六日、つまり閉会の翌日ですね、内閣記者会とたしか会見が予定されているはずです、官邸の会見が。ここでの目玉は内閣改造問題なんです。これはもう常識中の常識である。  そこで、念のために、鳩山外務大臣の公的日程を伺っておきたいんだが、その前に、けさの朝日の朝刊がちらっと何行か書いていた、今月の二十日の夜は福田総理にお会いになったんですか。
  255. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日曜日の夕刻お目にかかりました。
  256. 秦豊

    秦豊君 大変卒爾ながら、あえて伺いたいんですが、大事な日本の外交行政の重大にかかわりますから伺っておきたいんですが、外務大臣は東ヨーロッパ――つまりロンドンの日英協議がたしか二十八、二十九の両日でしょう、終わって、本当ならば、あなたは十二月五日に東京に帰ればよかったんですよね、違いますか。
  257. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) この日程は、これはやはり閣議の決定を経なければなりません。まだ本日の閣議では決定を見るに至りませんで、残されたのは今度の金曜日の閣議、二十五日出発の予定日で、その閣議で決められるであろうと思っております。
  258. 秦豊

    秦豊君 少し調べてみましたら、あなたはハンガリーのビザが十一月十九日にとれていますね。それで朝日の報道は、いやしくも権威のある報道と思うんだが、もっとも真正面から書いたニュースじゃありませんけれども、あの改造風そよぐ中にあったんだけれども、福田さんは、あれですか、東ヨーロッパの日程は鳩山君詰めるなよというニュアンスで書かれておったが、あのとおりですか。
  259. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) そのような会話はございません。
  260. 秦豊

    秦豊君 しかし、いやしくも朝日新聞は一面のいいところにルーモアは書きませんよ。やはりかなり裏をとった取材があそこではなされている。  ぼくが調べてみると、ハンガリーの大使館で聞いてみると、大臣のビザはおとりになっていますと、だから先後いずれかというやつですね。福田さんが東ヨーロッパを詰めるなよとおっしゃったのが後なのか、あなたのビザが先んじたのか、それは知りませんけれども、しかし、本来ならばこれは国際信義に関しますからね。日英定期協議が終わった後、ハンガリー、ルーマニア、オーストラリア、普通ならば変える必要はありませんよね、変えちゃ大変失礼ですよね、エクスキューズの余地はないですね。だから、あなた自身は、予定どおり、十二月五日にパプア・ニューギニアのマイケル・ソマレ首相が来るそうだが、その福田総理との会談にはあなたも同席されるというのが私の印象でね、だから念のために伺ったんですが、福田さんとそういうお話がなかったとしても、あなた自身は東ヨーロッパへいらっしゃるおつもりでしょう。
  261. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) これは先方も強く希望をいたしておりますので、実現をいたしたいと考えております。
  262. 秦豊

    秦豊君 やはり朝日は朝日の報道、それからいろんな政治観測は観測としまして、いまちらっとおっしゃった中にあなたのひそやかな自信があるし、こう何か留任確実というふうな感触をすでにあなたが得ておられるということを私感じましたですね。大変結構だと思いますよ。それはお答え要りません、よくわかりました。  主題に入りたいと思いますけれども、日米の経済問題です。問題というと何か実感がなくて、一種の経済戦争だという声もあるし、もっとどぎつく言えば宣戦布告なき日米戦争というふうなややジャーナリスティックな表現もありますけれども、私自身の見方をまず申し上げでおきたいと思います。  私自身は、今度のこの円高つまりドル安というのは、この仕掛け人は、アメリカ政府アメリカ多国籍企業ないしアメリカ系多国籍企業、協力は、産油国つまりOPEC諸国、国内的には来年の中間選挙を控えた、特にアメリカ下院の勇ましい議員たち、それぞれの業界を選挙母体にする議員たち、そうして実質は保護貿易寸前のきわめておくめんもない対日攻勢である、こういうふうに私自身は思っているわけですよ。  そのお話をこれから大臣局長としたいんですけれども、ただ、気をつけなきゃならないと思うのは、いまは表面にさまざまなことが出ていますけれども、アメリカから突きつけられている要求とか、あるいは表面的な動きのもっと奥深いところに、アメリカが本当に隠している油断のならない世界経済戦略というか、ねらいというか、そういうものが私はどうもひそんでいるという印象がぬぐえません。ところが、非常に根は深いにもかかわらず、あなた方の、失礼ながら対応は、これは大蔵も通産も、それから経済企画庁も、もちろん総理大臣も含めてのことなんだけれども、あなた方の対応は、ずばっと言えば鈍い、遅い、甘い、こういうきめつけをせざるを得ないぐらいです。で外務省、外務大臣としては、この円高即ドル安、ドル不安、この全体的な現象、動きをどうとらえていらっしゃいますか。
  263. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまは、何といいますか、なるほど同じ事象でもいろいろな見方があるものだなあというふうに非常に感心して拝聴をしたわけでございますが、私どもは、円高ドル安問題、これは現在の変動相場制のもとにおきまして、仮に日銀が非常な勢いで介入をするとかいうようなこと、こういうことがないといたしますと、これはどうしても黒字が累積をするということは円が高くなる、変動相場制というものはそういう仕組みになっておると思うのでございます。そして円が非常に高くなる、極端にことしになってから三割を超すというようなことになった場合には、これは国内の経済問題として非常な問題が出てくるのは御承知のとおりで、この問題は、まさに通貨問題ということを通して日本自体の問題であるということがはっきり示されたというところにあります。  円を意識的に高めたのではないかという御指摘がございました。これにつきまして、私どもも、投機が介在をしていないということは言えない。その投機の裏に何があるかということも、それはいろいろ問題があるかもしれません。ただ、私どもはこれをつまびらかにし得ないわけであります。しかし、そういう投機が起こるということは、やはり黒字の累積ということから起こっておるということで、黒字がないと、そのような円のアタックというものは起こらないわけでありますから、したがってこの黒字問題、黒字を何とかなるべく早い機会に解消することが日本としてもとるべき施策なんだということで、先方日本に対していろんな要求を突きつけてきたというふうに言われますけれども、向こう日本に対して、言い方によっちゃ日本に対して、何といいますか、アドバイスをするというような表現も使っておる。  これは日本自体として解決を迫られている問題だということで、私どもは、これは経済政策のあり方、まさに国際問題であるとともに、国内経済問題であるというふうに考えて、先方につきましては、たとえば石油をどうしてあれだけ買い込んだというような御指摘がございます。その点につきましても、私どもは、日本立場といたしまして、アメリカのドル自体がしっかりした価値を持ってもらわなければ、これはまた石油の値上げ等の口実にもなるし、いろんな問題が起こってくる。そういうことで主張すべきことは主張しておるわけでございます。
  264. 秦豊

    秦豊君 やっぱり大臣のパーソナリティーそのままでね、いまのお答えは。善意過剰、内省過剰だと思います。もっとそんなものじゃないと思います。  ことしの一月の終わりに、モンデール副大統領が来ましたね。多少私のこれは偏見かもしれないが、あれ以来、一連のしたたかなスケジュール闘争を日本側にいどんでいるという見方が私消えないんですよ。  私の意見の方がどうやらクールで客観的だということを立証したいと思うんだけれども、それでまた外務省がどの程度情報をフォローしてきたかも同時に確認したいと思うが、たとえば九月の終わりに、東部の方では名門中の名門というふうに「フォーチュン」あたりからも言われているモルガン・ギャランティー・トラスト、これが調査月報を出しています。非常に権威があるから日本官庁エコノミストも恐らく必須のものじゃありませんでしょうか。そこで円レートは一〇%以上も過小評価されていると、こういうことを大きな見出しで報道した。これは当然外務省側はつかんでいらっしゃいましょうね。
  265. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 拝見しております。
  266. 秦豊

    秦豊君 経過を追ってみると、十月十二日に、今度はブルメンソール財務長官が、ドイツマルク、日本円は米ドルに対しての評価が過小であり、まだ切り上げ幅が足りないと、こういう発言を公的な場でいたしておりますけれども、これも御存じでしょうね。
  267. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) それも広くそのような報道があったんでございますが、ブルメンソール本人は、何か、これは報道が若干オーバーに報道されたんで、自分が言ったのは、このところの変化ぐらいでは余り実際の貿易あるいは経常収支に影響がないんじゃないかというふうに言ったのが、新聞がやや……
  268. 秦豊

    秦豊君 どうぞ正確にさえおっしゃっていただければいいから。
  269. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 本人はそういうふうに言っておるんでございますが、それはその報道が出てからで、結局、事実上は、その報道が広くかなり為替市場に心理的な影響を与えたのではないかと思います。
  270. 秦豊

    秦豊君 どこの国の閣僚も政治家もよく似てるんですよ。真意が伝わっていないとか、報道が見出しが走ったとかなんとか、これは常套手段だから、そういうものの方は私は信用しません。  それじゃ、たとえばですよ、やがて総理や鳩山外務大臣や大蔵大臣と来月向かい合うであろうストラウス代表は何と言っているか。ストラウス氏は、ごく最近にワシントン駐在の経団連の駐在員――駐在員と訳していいかどうかわからないけれども、に対して、もしこの二、三ヵ月で日本が対米貿易問題で明確な姿勢を示さない限り、アメリカ政府としては重大な決意をせざるを得ないと通告をしたと。これ全部一連のことなんですよ、突発じゃないんですよ、一連なんですよ。そのことは御存じですわね。
  271. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) あそこの経団連の駐在している方がストラウスに会われたときに、そういうことの話があったと。これは先般の公明党のミッションでもそうでございますし、一連の今度のリバーズの訪日のときもそうでございますが、アメリカの国内の空気は非常に緊迫しておりまして、このままいくと、議会を中心にして保護主義的なたとえば輸入制限法案などがどんどん出てくるので、アメリカは行政府としても非常に苦慮をしているんだと、大変なことになるんだという、むしろ危機感を、非常にアメリカ政府の苦衷を述べているというふうにわれわれは受け取っております。
  272. 秦豊

    秦豊君 だから、苦衷、苦いような顔、追い詰められたような顔、これも演技という面で把握しないと、日本の対応が甘くなり過ぎるんですよ。  そんなことをやっていてもしようがないから、具体的に伺いますけれども、これは十一月一日だと思いますが、アメリカ通商交渉特別代表部の方がガットの事務局に対しまして、いわゆる東京ラウンドに対するアメリカ案を出したと私たちは思っているんですが、内容を把握されていますか。
  273. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 十一月一日に、主要国がガットに出しましたのは、東京ラウンドのコンテクストの中で、農産物とそれから非関税障壁の問題についての相手国に対する要望事項を文書にして出せということになっておりましたので、アメリカもそのときにジュネーブに出したというふうに理解しております。
  274. 秦豊

    秦豊君 内容は、じゃ全部把握されておりますね。
  275. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 日本は受け取っております。
  276. 秦豊

    秦豊君 そんなものがだんだん小出しにじゃなくて、一斉に出てくると思っているんですけれども、ガットに出した同じ一日に、アメリカ政府としては、対日経済問題特別委員会、これは各省の次官補代理クラスで構成、日本で言うと何とか関係閣僚省庁の連絡会議の幹事会に似ていますわな、ランクは。それじゃ足りないんで、さらに次官補クラスで構成している上級委員会、二つ一緒につくっちゃった。一方ではガットに出した。ずうっと一連のことをやってるわけですよ。そうして、今度ば、さまざまなチャンネルを通じて、われわれは重大な決意を持ってるんですよと、あなた方のもし出方によっては、こう言っているわけ。だから内省過剰の鳩山外相の思惑を超えて、もっとしたたかなスケジュールで日本側に肉薄してきているわけですよ。  大臣に伺っておきたいんだけれども、仮に十二月中旬ですね、ストラウス氏が東京にやってくると。そのときに、もしストラウス氏か――あれは党内的には全国委員長までやっていますからね、実力者ですね。下院の連中は騒いでいる、上院にも火がついた。ストラウス氏が何のみやげも持って帰らない、あるいはみやげらしく一見見えたが、よく調べたらろくなものじゃない、日本の誠意ついになしと見きわめた場合は、もう中間選挙の選挙運動になっちゃうんです、これは。AFL・CIOももちろんコーラスに加わっているんだから、旗振ってるんだから、そうなったら手がつかない。いたずらに杞憂じゃなくて、いたずらにオーバーな見通しではなくて、それぐらいの異常な決意を持ってやってくるストラウス来日の意義とウェートを、まず、外務大臣はどの程度に考えていらっしゃいますか。
  277. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 私どもの理解しているところでは、やはりストラウス特別代表が来る前に、何とかアメリカ側としては一つの成案を得たい。成案というのは、日本側の回答と申しましょうか、日本側政策、態度を確認したいと、こういうことを言ってきております。したがいましてリバーズ代表団が昨日帰りましたけれども、そしてその帰りましたところで先方日本の態度を検討し、そしてそれについてどういう評価をするか、その評価によって、これではなお不満であるということになった場合には、また、もう一度折衝が行われるんではないか。そういうことで、ストラウス氏の来日ということは、恐らくそれは最終の目標として、それまでにもつと話を詰める、こういうことになるのではないかというふうに考えております。
  278. 秦豊

    秦豊君 いまいろいろ言っておりますけれども、大臣ね、実は十一月四日の福田総理それからマンスフィールド駐日大使、この両者の会談でもかなり率直な要望、注文、注文ですね、まるで、これが率直にもう具体的に、しかも対日要求があのときにすでに出ていたんじゃないですか、違いますか。
  279. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 先方からの具体的な要望というようなものは、ただいまおっしゃいましたマンスフィールド大使と総理との間のときには出ておりません。  いまちょっとその会談のは手元にございませんけれども、先方がある程度の内容を持ったことを申しましたのは、リバーズ代表が来てからでございます。
  280. 秦豊

    秦豊君 これは私自身の分析じゃないんですけれども、口の悪いエコノミストはこう言っているんですね。いまアメリカの痛烈な対日攻勢、インパクトを受けて、日本の霞が関を中心にして霞が関高級エリート群の中に国際派と国内派というのがあるそうですよ、ぼくはどこで分けるのか、どこに境界があるのか知らないけれども。それでたとえば大蔵省のハト派と日本銀行、そして鳩山大臣を頂点にした外務省が国際派で、大蔵省のタカ派と通産省と農林省をワンセットにしたグループが国内派だと。まるで尊王攘夷と開港みたいなもんだけれども、とにかくそんなことさえ言われているわけです。  もう皆さんはいろいろおっしゃる。特に鳩山さんは善意に満ち満ちていらっしゃるが、アメリカはもう非常にしたたかで、突き放して、さめた、冷たいまでの、しかもぎらぎらした肉薄をしてきているのに、いかにも何かこれは日本が悪うございました、日本の産業構造ですと。そうじゃないですよ。あのオイルショックを考えてみてもわかる。あらゆる国際的な大きなショッキングな出来事のときに、日本の対応というのは余りにも善人サムだと、善人過ぎると、コクがない、粘りがない、だからぼきっと折れると思うんだけれども、まあそれはいま言ってみてもしようがないし、そこに福田総理がいるわけじゃないですからね、それは言ってみてもせん方ないが、結局は、各省庁で幾らやったって、休日返上して御苦労だと思うけれども、アメリカのあの構えからすれば、やはり各省庁は省庁、MITIはMITIだけれども、農林は農林だが、声を抑えなさいと、もっと下げなさいと、オクターブを、と言って福田総理の声が聞こえなきゃ、ガバナビリティという声が。それがないから、いたずらに福田さん以下、各省大臣以下が周章ろうばいする。結果はうんと押されて土俵を割ると、こういうことになりかねないと思う。  そういうふうなコンセンサスがないから、鳩山さんが、たしか十一月十八日に、自動車の輸出自己規制問題を何か、あれは進言されたのですか、それともつぶやかれたんですか。どうなんですか、あれは。総理に対する進言ですか、あれは。
  281. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 私の進言というにはちょっと、そのようなことではありませんで、いままでの外貨減らしの対策が輸入をふやせ、輸入をふやすことによって行おうということでございます。そしてアメリカ側の要求もまさにそういう形できておるわけであります。  私の感じておりますことは、アメリカは自由貿易主義というものを守らなきゃいかぬ。そのためには日本が工業製品に重点を置いた輸入をふやせと、こういう要求になっているわけであります。しかし、外貨減らしの問題として、日本が仮に輸入をもっとふやそうとしても、それ以上に輸出がふえる場合には問題は解決をしないわけでありまして、そういう意味で輸出面の節度ある輸出という点につきまして、やはり花形的な輸出産業も協力をしてもらわなければ問題は解決しない、こう言って、その日本の輸出面につきましての節度のある輸出という面におきましてほとんど議論がされておらないというのが実際のところである。そして産業構造からいきますと、黒字が減らない場合に円が高くなり、困るのは中小企業であり、繊維、雑貨、その他の日本では非常に雇用量の多い産業部面である。したがいまして、そういうところから日本自体の問題といたしまして、これは政策として考えるべきであると、私はそのようにいまでも考えております。  しかし、具体的にどのようなことをすべきかということを申し上げたのではなくて、輸出面におきましての節度のある輸出ということにつきまして、これは大事なことだということで、特定の業界の製品をどうしよう、こういう趣旨ではないのでございます。
  282. 秦豊

    秦豊君 鳩山外務大臣のその判断というかな、これは正しかったんですよ。実は、ストラウス氏が来日する際に、日本政府に対してずばっと出るのは、自動車の対米輸出規制問題が一気に出るんです。それをワシントンに自動車工業連盟が駐在員を持っていますから、その情報はすでに日本の車業界に入っているんです。通産ともだから躍起になってあわただしく往来しているんです。だから、あなたがまるで情報を先取りしたように十一月十八日にそういうことになったもんだから、なおさらパンチが浴びせられたのですよ。そこまで来ますよ、ストラウス来日の際には。だからストラウス来日というのは非常にぼくは重いと思うんですよね。向こうももう絶対に何か持ち帰るというので意気込んで、意気込み過ぎるぐらいにやってくるだろう、すでにその情報はワシントンから流れているんですよ。だから鳩山さんの言われたのは、まさに的確な情報を吸い上げたということになる。  このままでいきますと、時間がないからこれははしょらなければならないんだけれども、下手をしたら、国内的には十二月にも公定歩合の大幅な再引き下げ、ここまで追い込まれますよ。もうみんな後手後手だからいまさらしようがないんですよ、中途半端は。恐らくアメリカは来年の一月十五日までに工業製品の関税引き下げについてアメリカのオーソライズされた案をまたガットに出しますよ。この前出したのは農産物だったでしょう、今度は工業製品ですよ。だから粛々として整然ときているわけですよ。それに対しては、あなた方がいかにも粗漏だと言わざるを得ません。そういう感触はございませんか、外務省には。
  283. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) まあ先ほど国内派、国際派といういやな表現があったわけでございますけれども、これはやはり現状に対しまして何らかの政策を行う場合には、国内的な抵抗というものは非常に強いわけであります。そういう意味で、この問題につきましては、やはり先ほど仰せになりましたように、高い立場からの調整が必要である、申すまでもないことであります。  しかし、日本の機構として、どうしても各省が権限を持っておる、こういうふうにできておりまして、これはいつもそういう同じような事態の場合には大変悩むわけでございますけれども、日本の官僚制度のいいところでもあり悪いところでもあるんだろうと思うんですよ。大統領制度のように、大統領がみんな政策決定して、ほかの省は大統領の命令で動く、こういうことではなしに、日本では各省大臣が責任を持っておる。通産大臣、農林大臣がそれぞれ所管物資については責任を持っておりますから、全責任を持ってその行政に当たらなければならない。したがいまして、いまこのような総体に影響するような施策をとるときには大変むずかしい、やりにくいということは事実でございます。  しかし、今回、リバーズ代表が見えまして、日本の実情について、日本立場としてこれは主張すべきことを主張し、率直な意見を申し上げ、また、外務、通産、農林、大蔵各省それぞれと折衝することによりまして、私は、ずいぶん日本の実情というものは理解されただろうと思います。しかし、それだからといって安心をしていいわけでもありません。私どもは、決して日本が反省してやるということじゃなしに、日本の経済を考えてどうしたら一番いいかという道を選ぶべきである。アメリカから言われたからそうするということではなしに、日本として最善の道を見出さなければならない。それには各部面、分野でそれぞれやはり譲ってもらわなければならないことも出てまいりましょう。しかし、全体として、日本国民の本当に総体的な利益をこの際追求するということが必要だと思っておるのでございます。
  284. 秦豊

    秦豊君 ときに、アメリカの対日輸入超過はいまの時点でどのくらいありますか。私どもの調査では、今年の上半期一月から六月期が三十四億ドルくらいと推定しているんですが、どうなんでしょう、そちらのお手元の資料では。また、このまま放置すれば、今年度末にはどれくらいになりそうなんでしょう、参考のために。
  285. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 統計で、日本の通関ベースで申し上げますと 日米貿易の七七年一月-九月で日本側の出超幅が四十六億ドルでございます。それから九ヵ月を十二ヵ月に単純に計算して延ばしますと、六十億ドル前後に計算上はそういうふうになります。
  286. 秦豊

    秦豊君 向こうはどうですか。
  287. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) それからアメリカの統計でございますと、これは通関統計とちょっと取り方は違いますが、アメリカの統計では七七年一月-九月で日本の出超幅は五十八億ドルになりまして、これを単純に年間に計算いたしますと七十七億ドル程度になります。アメリカ側も七十億ドルを超える出超幅が出そうだと言っております。
  288. 秦豊

    秦豊君 これちょっとこういう計算というのは合理的ですか。七六年のアメリカの対日貿易赤字はたしか五十六億三千万ドル、ことしは見通しはいま次長がおっしゃったとおりになりそうですね、これは三井物産のデータなんですけれども、ところが、アメリカ系多国籍企業による対日輸出は七五年は百八十九億ドル、昨年の七六年が二百十五億ドルあるわけですが、この中でアメリカ系でなくて、純粋なアメリカ資本として計算できますのは、七五年が八十九億ドル、七六年が百億ドルとされているんですよ。そうしますとこれが正しいとしますと、七六年のアメリカの対日輸出は百億三千万ドルですから、やっぱり計算としてはグロスでいえば多国籍企業のものも含めなければおかしいでしょう、日米間で考えれば。そうすると何と二百億ドルを超える。七六年の日本からアメリカに輸出をした対米輸出は百五十四億ドルのはずですから、そうしたら逆に日本が全体としては大幅な入超なんですよ。そういう視野、観点を持つということは非現実ですか、あるいは論理的に整合性がありませんか。
  289. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 多国籍企業の問題は非常に複雑でございまして、確かにアメリカの対海外の多国籍企業もございますし、それから日本の海外の商社あるいは進出企業等の行っております貿易や三国間の貿易もございますし、それが日本アメリカに持ってきたり、輸出したり輸入したりしているのもございまして、なかなかその数字の把握はむずかしゅうございますが、三井物産あたりでは確かにそういういろいろの数字を出して、日本の商社が三国間、たとえばアメリカの第三国向けの輸出を取り扱っているからそういうものも考慮に入れるべきだとか、これは投資の問題と貿易の問題で複雑に関連しておりまして、明確な数字はなかなかつかみがたいのでございますが、確かに御指摘のような直接の貿易取引のみならず、そういう第三国で行われる取引も考えるべきではないかとか、あるいは貿易外の旅行者の問題とか、銀行、保険の収益とか、そういうものを取り入れていわゆる経常取引で見るべきではないかとか、いろいろ見方があることば確かでございます。  ただ、アメリカは、現在、失業問題が非常に悪化しておりますので、やはりまず第一義的には、日米貿易のインバランスというものは国内的に非常に注目されているので、その点をやっぱり一番問題にしているようでございます。
  290. 秦豊

    秦豊君 大変窮屈な時間なんで、用意した質問が半分もいってないんですけれども、仕方がありませんから、ちょっとフラッシュのように申し上げますから、その二つか三つ答えていただきたい。  一つは、アメリカの石油備蓄なんだが、七六年がたしか私どもの調査では二百三十億ドル、今年は推定で四百五十億ドルを超えるのではないかと、そうするとベトナム戦当時の四倍になるわけですよ。この輸入量は。一体、このアメリカの真の意図は何だという、外務省の情報分析ではどうなっているんですか。いろんな観測はありますよ、それは世上。あなた方はどうなんですか。
  291. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) ただいま先生のおっしゃったのはアメリカの石油の輸入量かと存じますが、輸入量が非常に増加しているのは事実でございまして、これは米国の景気がいいために石油の実需が伸びているために輸入がふえていることと、石油の国内生産が伸び悩んでいる、むしろ減りぎみであるということから石油の輸入がふえている。  備蓄の関係では、ごくわずかでございまして、民間備蓄あるいは政府備蓄ともに、特に政府備蓄はごくわずかでございまして、これが大きな要因にはなっていないと考えられます。こういう理由で石油の輸入は非常にふえているのでございますが、カーター政権としましては、これは現下の米国の当面する最大の課題であるということで、エネルギー法案を至急成立させて石油の輸入依存度を減らそうという政策に出ていると見えまして、わが国もその法案の早期成立を期待するという考え方でございます。
  292. 秦豊

    秦豊君 それでは、去る十月二十九日に、アメリカの上下両院が成立さしたヘルムズ法、つまりこれは原油とか食糧などの長期取引に金約款を裏づけるという法律なんですよ。これは御存じですね、念のために。
  293. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 存じております。
  294. 秦豊

    秦豊君 これは日本での評価が定まっていないみたいに思うんですけれども、一九三三年以来、停止していたことを復活したんでしょう。単純にそんなことをするはずはないんですよね。  しかも、アメリカは、三年前に、民間の金保有を解禁している。それからソ連と最近穀物の長期取引についてソ連産金の処理問題も話し合っている。符節は合うんですよ。それからフランス、イタリア、西ドイツ、イギリス等で金の問題をめぐる動きがけたたましい。でロンドンの「エコノミスト」とか、アメリカの「ヘラルド・トリビューン」とか、いろんなマスメディアもそれを早速報道している。いわゆる金本位制の復活かという観測ですね。観測の間はいいけど、しかもいきなりドラスチックな転換をいまの弱体カーター政権ができるとは思わないけれども、こういう動きがあることは事実ですね。そういうことを外務省としてはそういう感触はもちろんつかんでいらっしゃる。これ、だけど、将来、かなり大きな問題の根になりかねないという印象はお持ちなのか、お持ちでないのか、この辺だけ伺っておきたいんです。
  295. 溝口道郎

    政府委員(溝口道郎君) 御指摘のとおり、これは、今度、金約款づきの債務契約を三三年に禁止する上下両院決議が出たんですけれども、その効力を停止する法律が今回できました。  米国政府の見方でございますれば、これは先生の御指摘のように、数年前に、米国で民間人の金の保有を再び許可するという措置がとられましたが、それに引き続く措置として、そういう取引もできるということでございまして、米国政府といたしましては、これは商品としての金の役割りに対する制限を解除したものである。今後、どの程度そういう実際の取引が出るかどうかは予測はむずかしいけれども、米国の見るところでは、金価格は現在非常に激しく変動しておりますので、必ずしも広くそういう金約款づき契約は行われないのではないかというのが米国政府の見方でございます。そして、これはいわゆる通貨としての金の役割りの復活をねらいとしたものではなくて、商品としての金の取引を認めていくものであるという見方でございまして、わが国といたしましても、基本的にこういう米国の見方をとっております。
  296. 秦豊

    秦豊君 時間が間もなく参るようですから、ちょっと申し上げて、最後に大臣の見解を伺っておきたい。よくもああいう見方ができるものだななんということはおっしゃらないでいただきたい、私の見方ですから。  つまり、アメリカは、ドルのたれ流し、過剰ドルを処理する方法として、申し上げた金約款の復活、それから一種の管理通貨体制、それから各国から保護貿易と言われないような擬装をした上での一種の管理貿易、この方向にすでに踏み出していると私は思っているし、その具体的な案というのは、来年三月二十一日のIMFの委員会の方にいろいろ積み上げてアメリカ政府は出すと思う。  結局、私の結論的な見方は、今回の日米の経済戦争と言われている膨大な事象の本当に奥深いところにあるのは、アメリカがねらっているのは、紙くずではない強いドルの復権だということじゃないか。そうしてそれを裏づけるのは、まず膨大な原油備蓄ではないかと私は思っているんです。だから、いまの日米間の摩擦というのは、かつて鋭く対立をしたロッキードスキャンダルじゃないけれども、構造的な対立と矛盾が日米間に起こっている。過剰生産とか過剰ドルとか輸出ドライブとか、それからもちろん産業構造、おっしゃったようにありますが、多重多層に絡み合っているんだと。単純にアメリカが百要求したからせいぜい七十でがまんしてストラウスを追い返そうというふうな黒字減らし対策だけでは、とてもとてもそれは短絡的で、アメリカを納得させない。させたかったら、またかさにかかった要求が上乗せにな、きわめて深刻な事態だ。だから公定歩合だろうが円の再切り上げだろうが、私はあながち憶測ではないとさえ言いたいんです。  もちろん、あなたの見方と、私の見方はこんなに隔たりがあるかもしれないが、時間が来たようなので、重ねて大臣のトータルな御見解を伺っておいて、一応終わりたいと思います。
  297. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) アメリカの主張の裏に、特にアメリカの議会方面におきます保護貿易といいますか、アメリカは保護貿易の議論が非常に強いということがあることはこれは確かだろうと思いますし、いままで鉄に対してとられたようなアンチダンピングの問題、こういうようなことがほかの商品についてもとられる危険度が非常に高いのではないかと私は思っております。そういうものが果たして公正な自由な貿易であるのかどうか、これすら私は疑問であり、アメリカの関税法、アメリカだけが持っている国内法がとにかくガットの原則というようなものをも顧みられないで国内で実施されておりますから、そのアメリカの関税法を活用をするという危険が非常に高いのじゃないかと思います。  私どもは、それに対して十分な対処をしなければならぬ。また、そういう点について、いま御指摘の点はいろいろ傾聴すべき点も多いと思うのでございますけれども、こういうときでありますから、日本といたしまして、本当に日本の国益を守る、そういう立場から真の意味の国益を守らなきゃいけない。個別企業立場、個別業界の立場ということもございましょう、国内でできることとできないことがございます。しかし、これらも、総じて、日本といたしまして可能なことは、この際、何とかコンセンサスを取りつけて対策を打ち出すべきであろう、このように思っておるわけでございます。
  298. 秦豊

    秦豊君 終わります。
  299. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 本件に関する本日の質疑はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  300. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りをいたします。  国際情勢等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  301. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  なお、要求書の作成及び提出の日につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  302. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  本日はこれにて散会をいたします。    午後五時三十五分散会      ―――――・―――――