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政府委員(
大川美雄君) カナダがこういうことを言い出しましたそもそもの遠因と申しますか、動機は、御存じのとおり、一九七四年にインドが核爆発を行った。その核爆発を行ったのは、カナダがインドに売却いたしました原子炉でつくられた原料をもとにしてやったんだということで、カナダとしては恐らく非常な衝撃を受けたであろうかと思います。したがいまして、その年の暮れにカナダ
政府が
原子力協力についての新しい
政策を発表したわけでございまして、それに基づきましてカナダと二国間の
原子力協力
協定をつくっている国々に対して、その協力
協定の保障措置面を強化することを申し入れてまいったわけであります。で、そのための
交渉を
日本とも昨年来ずっとやっておりますけれ
ども、いろいろの面でかなり
話し合いが進んだのでございますけれ
ども、なお幾つか問題が残っております。
で、そのカナダとの
交渉の進展がなかなかカナダ側として思うように進捗しないということであったんだろうと思いますけれ
ども、ことしに入りまして、ことしの一月から、突如、
日本、それから先ほどのユーラトム諸国、それからスイス等に対しまして、カナダの天然ウランの輸出を停止するような措置を一方的にとってまいったわけでございます。これはとにかく原料供給国でございますから非常にその点では相手国に対して強い
立場にあるわけでございまして、そういう一方的な燃料差しとめというようなことで
交渉に圧力をかけてくるというようなやり方は
国際的にもいろいろ問題があろうかと思いますけれ
ども、私
ども、
日本政府としましては誠心誠意カナダと
話し合いを続けてまいったわけでございます。
ただ
一つ、大きな問題として残っておりますのは、カナダから買います天然ウランが直接
日本に入らずに、
アメリカで濃縮されて濃縮ウランという形で
日本に入ってまいるわけです。その濃縮ウランにつきまして
日本が再処理をする、あるいは第三国に移転するとか、いろいろのことをやりますときに、日米
原子力協定に基づく規制に服するものだと私
どもは考えていたわけです。それで、現に、東海村の再処理工場で
アメリカから入ってきた濃縮ウランの
使用済み燃料を再処理する場合には、日米
協定に基づく手続として
アメリカとの間に共同決定をつくらなければならぬという事情でございますけれ
ども、カナダの言い分でございますと、その分については、
アメリカのほかに、カナダとの間にも事前の
交渉をして事前に同意を取りつけなければいけないんだというような主張になってまいるわけでございまして、輸入する側といたしますれば、二ヵ国から事前に同意を取りつけなければならない。これが二ヵ国だけにとどまらないかもしれないわけです。将来、輸入いたします場合に、ある国でその天然ウランを転換して、次の国で濃縮して、それがさらにまた
日本に入ってくる。ですから、その供給国が二つにも
三つにも四つにもなり得る、そうなれば買う方の国といたしましては非常に複雑なことになりまして、
国際的にも問題があるんではないか。
そこで、これがカナダとの間にいま起こっている問題でございますけれ
ども、
日本としては、
日本とカナダの問題、
日本とカナダと米国の問題だけにとどまらず、むしろすべての原料供給国とすべての輸入国との間で
国際的に話し合って、こういういわゆる二重規制あるいは多重規制の問題をみんなが納得するような形で解決する
方向を考えようではないか、私
どもはそういうような形でこの問題をできれば解決いたしたいということで、現に、そういった問題を検討するための
国際的な作業グループを
日本が提案いたしまして、それが近く作業を開始することになっております。それとは別に、もちろんカナダとの間には引き続き誠心誠意
話し合いを続けて、できるだけ早くカナダとの
話し合いに決着をつけたい、こういうふうに考えております。