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1977-10-27 第82回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十七日(木曜日)    午前十時十四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 原 文兵衛君                 戸叶  武君     委 員                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 阿具根 登君                 小野  明君                 福間 知之君                 渋谷 邦彦君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 江田 五月君    国務大臣        外 務 大 臣  鳩山威一郎君    政府委員        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    加賀美秀夫君        外務省経済協力        局長       菊地 清明君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務大臣官房審        議官       内藤  武君        外務大臣官房移        住課長      角田 勝彦君        外務省経済局国        際経済第一課長  賀来 弓月君        外務省国際連合        局経済課長    八木 真幸君        大蔵省主税局国        際租税課長    宮本 英利君        国税庁調査査察        部調査課長    五味 雄治君        農林省畜産局流        通飼料課長    鈴木 一郎君        通商産業省産業        政策局総務課長  原田  稔君        郵政大臣官房国        際協力課長    中山  一君        郵政大臣官房郵        政参事官     三浦 一郎君        郵政省電波監理        局航空海上課長  吉川 久三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ルーマニア社会主義共和国との間  の条約締結について承認を求めるの件(第八  十回国会内閣提出、第八十二回国会衆議院送  付) ○所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ブラジル合衆国との間の条約を修  正補足する議定書締結について承認を求める  の件(第八十回国会内閣提出、第八十二回国会  衆議院送付) ○投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジ  プト・アラブ共和国との間の協定締結につい  て承認を求めるの件(第八十回国会内閣提出、  第八十二回国会衆議院送付) ○国際海事衛星機構(インマルサット)に関する  条約締結について承認を求めるの件(第八十  回国会内閣提出、第八十二回国会衆議院送付) ○アジア太平洋電気通信共同体憲章締結につ  いて承認を求めるの件(第八十回国会内閣提  出、第八十二回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ルーマニア社会主義共和国との間の条約締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件  投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件  国際海事衛星機構に関する条約締結について承認を求めるの件  及び、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結について承認を求めるの件  以上五件を便宜一括して議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 戸叶武

    ○戸叶武君 五件の審議に入る前に、私は、福田総理大臣が二十六日の午後、官邸で来日中のグジェンコソ連海洋船舶相と会談し、同相に対して、日ソ間には障害は何もなく展望は明るい。しかし、平和条約がないのが問題だ。ソ連がなぜ小さな島にこだわるのか、返せばいいというふうに単刀直入に北方領土四島の返還を強く迫ったとのことです。これに対して同海洋船舶相は、ソ連の立場はかたくなではない、問題になることにこだわるより問題にならないことを片づけたらどうかと、北方領土返還には直接答えなかったということであります。  ここで福田首相北方領土返還要求の問題をざっくばらんにお話ししたということは、やはり福田さんとしては一歩前進かと思うのでありますが、鳩山外務大臣はこの福田首相ソ連グジェンコ海洋船舶相との言葉のやりとりに対してどういう御感想をお持ちでございますか。
  4. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 福田総理ソ連グジェンコ海運相との会談におきまして、いまお述べになりましたような応答がございましたこと、私ども承知をいたしております。私どもといたしまして、ソ連側指導者とお目にかかる際には常にこの北方領土を含む平和条約締結必要性というものを先方に申してきておりまして、先方からは経済関係を進めようという意図の話がずっといまお述べになりましたように行われてきておるのが現状でございまして、わが方といたしまして平和条約締結を進めることによって日ソ間の長きにわたる経済協力関係、こういったものも軌道に乗せ得るのではないか、このような考え方を貫いてきておるわけでございまして、今後とも、そのような方向で努力をいたすべきものと考えております。
  5. 戸叶武

    ○戸叶武君 ここで問題になっているのは領土の問題ですが、平和条約締結に当たっての領土問題の取り扱いというものはきわめて慎重を要するのであります。野党よりも、外交権を持っている内閣及び与党の言動というものはそういう意味において慎重であるべきでありますが、問題は、日中平和友好条約にしろ日ソ平和条約にしろ、具体的に前進する姿勢政府につくられていないということは、政府に確たる一つのみずからの外交に対する主体性が確立していないところに欠除している面があるんじゃないかと思いますが、北方領土返還に対しては、政府基本的な政治姿勢はいかなるもんであるか、たびたび言っておりますが、ぼやけているような面もあるので、それが国民世論の、ある意味においては、一部に分裂をも誘発しているのでありまして、責任政府にあると思うのですが、鳩山さんから領土問題に対する明快な姿勢を承りたい。
  6. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 北方領土問題につきましては、これは衆参両院でもはっきりした御決議をいただいているわけでございまして、政府姿勢は全く変わっておらない、不動の考え方を持って臨んでおると申し上げられると思います。
  7. 戸叶武

    ○戸叶武君 四島返還という点で、国民的合意国会においてはほぼ成り立っておると思うのであります。しかしながら、その後の動きにおいて衆議院代表質問等におきましても、また他党におけるところの見解の披瀝においても、それぞれいろいろな模索がなされてもしかるべきでありますが、再びもとに戻って歯舞色丹の線で早期平和条約を結んだらいいじゃないかというソ連ベース発言が再び盛り返したということは、これは政府態度が一貫して前進みの姿勢を示してないところにそういう動揺があらわれたとも見られるのであって、外務大臣は、それを国際情勢の変化として見るか、それとも政府外交方針に対しての毅然たる態度が欠けているところにあるというふうに認識されるか、その点はどういう見方ですか。
  8. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) もう御承知のように、政府態度というものは全然変わっておりませんし、一貫してきておると思います。ただ、共同宣言が発せられてから二十一年になるという事実があって、そして二百海里時代を迎えて現実に北方四島周辺の漁業者の間にいろんな意見が出ておると、これは歴史のしからしめるところと申しますか、二十一年間未解決であるということとともに、現実漁船拿捕等が行われておる、こういうところからくる現地の御意見が出ている、こういうふうに私ども考えております。しかし、これは政府態度がそれによって変えられるとか、あるいは政府態度動揺しているから、そのような意見が出ているということでは全くないと考えております。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 領土問題というものを私たちが神経質なほど重視しているのは、ソ連と違って日本の国は主権者人民です。平和条約を結ぶのには、最終的には人民の同意を得なければこれが成立しないのであります。そういう意味において、国民の圧倒的多数の世論というものを見ても、四島返還という日本固有領土北方領土返還を求めているが、しかし、国後、択捉、歯舞色丹の四島の返還なしには平和条約は結べないというのが常識的な国民見解だと思うのであります。漁船拿捕があったからといって、それに対して政府の対処の仕方がなまぬるいからそういう点においていろいろな動揺面も起きると思うのでありますが、領土問題は、中国がこだわっているだけでなく、世界のどこの国でも、領土問題をおろそかにしての平和条約を結んでそれによってよかったという結果は生まれていないのであります。  レーニンが一九一七年の革命を断行した際においても、革命外交原則としては、他国領土を侵犯しない、自国の領土を譲らない、この精神でもって革命外交の骨格をつくったのであります。あれほど混乱の中にありながらも、レーニンは祖国に対してルッシーという愛称で呼び、あるいはソビエトロシアにおけるパトリオットである、愛国者であるという信念のもとに国民的な支持をも受けてきたのであります。政権を取った国の共産主義たりと社会主義たりとを問わず、国家が、その国の政府国民の願望に対して責任を持たなければならないいろいろな諸事情というものはわかりまするが、これがソビエトロシア外交基本的な革命路線であって、また、第二次世界戦争に入ったときにも、米英がアトランチックチャーターにおいて発表したように、たとえ戦争に勝っても他国領土を取らないというのが少なくとも原則であり、近代的な国際法理念からするならば、平和条約というものは勝った国が他国主権を無視して領土を奪い取るというような戦時中の軍事秘密協定で制約することなく、平和条約は過去による裁きでなく、未来に対して平和を保障し得べき条件を具備して後に平和条約というものは当然締結さるべきであります。  この原則、この理念が新しい国際法理念でなければならないのにもかかわらず、戦争間際におけるアメリカにおいては、ヨーロッパの司令官マーシャルアジアにおけるマッカーサーの情報に基づいて、ドイツが敗れた後、日本を降伏させるのには少なくともいまのような状態では二年間はかかる、百万人の壮丁を犠牲に供するようなこともあり得る、そういうことによっては戦争をこれ以上継続させることができないアメリカ状態がある。ベルサイユ講和会議の際においても、国連の創設者であるウッドロー・ウィルソンが敗れたのは、平和を望む婦人の力によって、海を越えてデモクラシーを擁護すると言いながら、あえてわれわれの子弟を犠牲に供した者はだれかという反対党のスローガンによって惨めにも敗れたのであります。この事実に基づいて、結局、一九四五年二月十一日のクリミアにおけるヤルタ秘密協定となったのです。  日本政府も、終戦後幾たびか、われわれが吉田内閣にも質問をしたが、戦時中の軍事謀略秘密協定ということを非常に遠慮していやがったですが、事実は戦時中における軍事謀略協定です。他国主権を無視して他国領土を取る約束をしてソ連を参戦に導いた行為というものは、やはり戦時中だからやむを得ないという形において黙認すべきものでなく、戦争中にそういうことがあったとしても、戦後における平和条約締結の際には、そういうものを解消していくというのが外交原則でなければならないのでございます。  吉田さんはサンフランシスコ講和条約において、負けた国としての劣等感を浴びせられながらやむなく調印したのかもしれませんが、やはりウッドロー・ウィルソンがベルサイユ講和会議において、連合国がイタリアとの間に結んだ一九一五年のロンドン秘密協定というものを破棄したがごとく、決然たる態度でもって、後でねじ伏せられたとしても、主張すべきものを主張できなかった吉田にしても、なおかつ宮廷外交的な流れをくむものであって、民族悲願を代表する外交をやらなかったところに、今日ヤルタ協定解消を自発的にソ連アメリカイギリス等においてなされるべきものがなされないで、それが米ソ両国における外交上の駆け引きとなって暗影を落としているのが今日における両国世界戦略へと発展しているんではないかと思うのであります。  その意味において、このことを他に波及する必要はないが、日本態度毅然としているならば、おのずからどういう道を選んだことが日本国民の心をかち取り得るかと、唯物論的な基盤の上に立つのでなく、民族悲願に報いるだけの真心を持って対処しなければ、日本領土的に小国なりといえども、武器を持たざりといえども、やはりアメリカに対してもソ連に対しても心の抵抗ということは絶対に消えないのであります。そういうことを毅然として申し述べながら外交は進むべきであって、相手の顔色を見ながら外交をおどおどやっているところのいまの日本政府態度というものがすべて日本外交の卑屈さにつながるものであり、どんなことをやっても日本はがまんするだろうというふうに軽べつされるところにもなるのです。  われわれはソ連を愛し、アメリカを愛するがゆえに、戦争暴力革命は、もはや二十一世紀に手が届くところに来て、原爆が開発され、それのまだ絶滅がなされない状態のもとに、絶対にできないという信念のもとに、平和外交こそわれわれが推し進める唯一無二の道であるという信念で対処してもらいたいと思うんですが、北方領土返還に対してはいろいろな事情もあるにしても、少なくとも四島返還なしに平和条約締結できぬということをなぜソ連側にもっと理解できるように説得しないのか。  アメリカとの安保条約は、おのずからその出方いかんによって当然解消さるべきものであり、それとは別に、混同の取引でなく、おのずからアジアにおける緊張というものは、日本ソ連との外交展開日本中国とのまず平和友好条約、次にソ連との平和条約、それと並行して日米安保条約解消というものも可能だと信ずるのでありますが、外務大臣はどうお考えですか。
  10. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま戸叶先生がお述べになりましたこと、これは日本外交政策基本に触れる問題を含んでおると思います。特に、日本アメリカとの安全保障条約の問題になりますと、これは日本防衛——日本陸海軍を持たない、こういう憲法下にありまして、日本の国を守っていくために日米安保条約というものはいま防衛の大きな柱になっているわけでありますから、ただいま最後にお触れになりました安保条約解消を含む御意見をいただいたわけでありますけれども、この問題につきましては、これは外交基本に触れる問題でございまして、この点は、日本政府といたしまして、日米安保条約を国防の大きな柱と考えるということは変えることができない太い線であるというふうに考えるわけであります。  なお、外交基本として国民の広い支持のもとに断固とした決意を持って臨むという点につきましては、まさしくそのとおりであると思っておりまして、日本国民の本当の意思を私どもは的確につかんで、そうして毅然とした態度外交に臨む、このような態度でまいりたいと思います。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 次に、五件の審議に入ります。  二重課税防止条約社会主義諸国締結されるのは、このルーマニアとの間が最初の例で、本条約OECDモデル条約ベースとして交渉したものであり、従来の租税条約と異なるものではなく、わが国としては、異なる体制をとっているルーマニアにおける外国税額控除に際し、ルーマニア国営企業国家納付金ルーマニア租税とみなす旨の特徴ある規定がこれによってなされているんですが、この条約にはほかに何か特筆すべきものがありますか。
  12. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答え申し上げます。  いま先生から御指摘のありました納付金租税とみなすということのほかに、もう二点ほど非常に大きな特徴がございます。  その一つは、先方国営企業日本の法人とが先方合弁企業といったものをつくりましたときに、合弁企業でございますから株式会社でございませんで配当を行わないわけでございますが、しかし、その利益をそれぞれに出資者に分配いたしますときに、それは配当ではございませんが、配当とみなして、配当と同じような扱いを日本サイドでも行うというふうなことが定められております。  それから、もう一つ、他の条約に比べまして非常に大きな特徴は、両国間の文化的な交流、こういったものに非常に重きを置いて規定をいたしておるということでございまして、たとえば文学上、美術上の使用料パテントみたいなものがございますが、こういうパテントが生じましたときに、そのパテントに対します源泉徴収税というものの率を一般的な使用料よりも低く抑えておる、一般のが一五%といたしますならばこの文化的なものは一〇%に抑えておるというふうなことが一つ特徴でございますし、もう一つ両国政府の間でいろいろな企画をいたしまして文化交流、いろいろな行事の交流をいたしましたときに、その交流に参加したような芸能人に対する所得、こういったものに対します源泉課税をゼロにしておる、徴収しないというふうな形で、文化交流の面に非常に力点を置いておるという面で、かなり他のこれまで結びました条約に比べまして特徴があるものだと言えると思います。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 ルーマニア国わが国関係は、一九五九年に外交関係が正式に回復して以来、現在は、輸出入合計一億八千万ドル、東欧ではポーランドに次ぐ第二位を占めております。一九七四年には輸出入合計二億三千七百万ドルにも達したことがあるのですが、こういう背景のもとに、それでは企業の進出はというと、いまのところ目立ったものはさきに言われたように一つしかないようですが、昭和四十八年にルーマニア政府と大日本インキとの間に合弁事業が成立した石油たん白のロニプロットの合弁企業成立の際に、国内消費者運動では、石油たん白製造技術海外に輸出されることにも反対であり、国会でもこれはひとつもめた問題でありますが、その点は海外投資認可については大蔵省であり、窓口は日銀かと思いますが、これに関係のある農林、厚生、通産の合意をどのようにして得たか、その経緯を簡単にお話し願いたいと思います。
  14. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 本件につきましては、昭和四十八年の第七十一国会におきまして参議院大蔵委員会においてこれが取り上げられたわけでございますが、そこで政府統一見解を出しまして、新たな石油たん白製造技術輸出は認めないけれども、すでに仮契約が結ばれていたルーマニア、イタリーにつきましては、わが国における安全性審査の状況、企業化中止の実情、世論動向等相手国に説明いたしまして、相手国政府が慎重にこれを検討するように要請いたしまして、それでも相手国当該技術の導入を欲します場合にも、相手国政府の了承が得られました場合以外にはこれを認めないという方針統一見解として定められたわけでございます。  これに従いまして、通産省の方では、昭和四十八年の四月に在京ルーマニア大使館通商参事官を招きまして、ただいま申し上げましたような趣旨に基づいてルーマニア政府の慎重な検討を要請いたしましたところ、その年の九月にルーマニア側化学工業省から通産省局長あての書簡をもちまして、ルーマニア政府は大日本インキ技術による石油たん白生産を慎重に審査した結果この生産承認したということを通報しました。このようなルーマニア側の決定とその通報によりまして、政府は、七三年十二月に技術輸出認可を与えたわけでございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 一九七二年十二月十五日に、厚生省食品衛生調査会から、安全であり、飼料に使用することは差し支えないとの結論が発表され、厚生省はこの結論を公表するとともに、主管官庁である農林省にその旨を通達した。これをもって炭化水素酵母安全性政府によって確認せられたと認められるという意味ですか、安全性の確認。
  16. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 実験段階におきましては安全性が確認されたと、そういう意味でございます。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 安全性が確認されて、国内的には消費者運動抵抗等があっていろいろな点で進められなかったが、前からすでに約束ができているんで、ルーマニアとのことは、これを承認してやったというふうに聞こえるんですが、世界各国でもたん白資源の不足は深刻であり、たん白資源開発はあくまでも科学的に行うべきであるという観点から、いろいろな食品開発がなされておりますが、それに対して日本政府ルーマニアとの条約締結には責任を前向きに持っているようですが、日本国内向けにはどういう姿勢を示しているんですか。
  18. 鈴木一郎

    説明員鈴木一郎君) お答えいたします。  飼料安全性につきましては、当時、石油たん白を初めとして種々その安全性につき議論があったわけでございます。その結果、現在、その石油たん白技術輸出につきましては、当時の経緯にかんがみまして仮契約が成立しているものについて承認を与えたほかは、今後、内外の諸条件が整備されるまで、つまり安全性が確認されるまではその技術輸出を認めないというふうな方針を立てたわけでございます。  また、当時の国会における議論等も踏まえまして、新しく飼料安全性に関する法制を整備することといたしまして、国会で御審議をいただいた結果、昭和五十年に飼料品質改善法が改正いたされまして、いわゆる飼料安全性に関する法律飼料安全法が成立したわけでございます。私どもは、こういう石油たん白の問題を含めまして、飼料安全性についてはこの法律の諸規定に照らして今後対処してまいる考えでございます。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 食品開発に対してはいろいろな角度から今後も行われておりますが、いままで素人が知らないようなところから、石油からとれるところの菌によってそれが食品飼料として使われますが、それで一向差し支えないという実験がなされても、一般の頭の中には石油を食わされるのかという一つの通念がこびりついていると思いますが、そういうものを振り切って、そうして前進するのには、科学的な成果による安全性というものをよく一般にも説得して、消費者運動抵抗があったからたじろいでいるというのでなく、国際的にすでにソ連においてもあるいはイギリスにおいてもその他においてもこのことは開発されているんですから、この問題に対してもっと政府は積極的な姿勢で取り組む必要が今後あるのじゃなかいと思いますが、外務大臣から一言このことをお聞きしたいと思います。
  20. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 石油たん白技術輸出につきましては、昭和四十八年のときの共通統一見解が示されたわけでございまして、これに従いまして、この技術輸出につきましても自粛をしておるというのが現状であろうと思います。  実験段階では一応成功といいますか、被害がないと言われましても、企業化されて大規模にそれが用いられた場合にはどうなるかという点につきましては、これはまだ確認をされていないという段階ではなかろうかと、こう考えるわけで、日本国内においてやはり消費者側に多大な不安がある、そういった状況でありますから、その不安のあるものをまた諸外国に、日本の中では認めないけれども、外国では企業化は進めてしかるべきであるという考え方は、また外交上からもいかがかと思われるわけであります。したがいまして現在までのところ、当時輸出成約のあったものにつきまして認めたというのが現状ではなかろうか、その点につきましてもいろいろ議論のあったところと思いますが、統一見解の結果このようなことになっておるということで、私どももこの統一見解を尊重してまいりたいと考えます。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定の問題で、わが国としては、投資低水準にあるエジプトに対して、アラブ地域におけるリーダー格のエジプトの現実主義的な路線というものに対して積極的な協力の道を開こうという形でこういう協定を結ぼうとしているのだと思いますが、この中で第四次中東戦争によってスエズ運河一帯の住宅建物等が破壊され、その復興再建のために援助を行うに当たって、わが国は住宅事業を最恵国待遇とすることに同意したというようなことも説かれているのですが、その内容はどのようなものですか。
  22. 村田良平

    政府委員(村田良平君) この件につきまして簡単に御説明申し上げますと、議定書の第四項におきまして住宅事業に関しましては、協定第二条の二項、すなわち投資の許可に関しては最恵国待遇を与えるという条項の例外が設けられておるわけでございます。  本件協定につきましてエジプトと交渉しました際に、先方から、第四次中東戦争の後でできた法律でございますが、一九七四年のエジプト外資法という法律がございまして、その中でエジプトにおきます住宅事業に関しましては、アラブ連盟の構成国の国民あるいはその資本の過半数が一ないしは二以上のアラブ連盟の構成国の国民によって保有されている会社」のみに認めるという規定があるわけでございまして、先方といたしましては、本件は非常に特殊な問題であって、いわばアラブの連帯からそういうふうな話し合いがアラブ連盟の他の諸国とできておるので、これだけをぜひ例外にしてもらいたいということを言ったわけでございます。  で、その先方の制限の内容は、参考資料として御提出しております合意議事録の第三項(1)、(2)というところにやや詳細に規定されておりますけれども、問題になります「住宅事業」とは「共同住宅及び個別住宅のような居住の用に供される建築物の所有を伴う住宅のための事業」と、簡単に申しますとアパートであるとかあるいは一戸建ての住宅をつくりまして、それを所有して賃貸しをするという住宅をつくる場合には、たとえばサウジアラビアであるとかあるいはクウェートであるとかといった国々の投資家が行う投資のみを認めるということでございまして、ホテルあるいは事務所用のビルを建てるという場合には、このような制限はないわけでございます。  そこで、わが方といたしましては、先方のその主張を検討いたしました結果、中東戦争の後のアラブ世界の連帯という政治的な背景というものもございますし、また現実日本企業がエジプトに進出いたします場合には、建築の分野におきましては、ホテルの建設であるとか、あるいは事務所用のビルの建設という分野が考えられるところでありまして、通常の賃貸し住宅を日本企業が進出して大量に建設するというふうな事態は余り予想されませんので、先方の申し入れを了承して、このような例外規定を置いたという次第でございます。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 所得に対する祖税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書締結について承認を求めるの件では、日本人が海外において七十万人から移住している国はブラジルが筆頭でありまして、その労働力というものが日本技術、資本投資等においてこれを活用するのに大きな推進力となっているのは明らかなことであります。そういう意味で、ブラジル国における事情からしていままでの税のあり方を改めて、そうしてブラジルに有利にしようというのがこの税のねらいだと思いますが、これによってブラジル側において、また日本側においてどのような利益を得られるか、そのことを簡単に承りたいと思います。  課税率については、現行の一〇%を一二%に改めたのですが、ブラジルとドイツなりアメリカ、カナダなりの関係はどんな比率になっておりますか。
  24. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答え申し上げます。  改正しました一番大きな点は、御指摘のとおり投資所得に対します源泉税率を一〇%から一二・五%に上げたということでございますが、ほかの国の事例を見てまいりますと、たとえば配当に対する制限税率は、たとえばノルウェーの場合には二五%というふうな率で行っておりますし、ポルトガルは一五%、フランスは一五%、フィンランドは二五%、ベルギーは一五%、デンマークは二五%、スペイン一五%というふうな形になっております。  それからさらに、その利子に対します制限税率はわが国の場合一二・五%でございますが、これはブラジルとノルウェーの間におきましては二五%、ポルトガルの場合は一五%、フランス一五%、フィンランド一五%、ベルキー一五%と、こういうふうな状況でございます。  それから、最後に、その使用料について見てまいりますと、ブラジルとノルウェーの間は一五%、それからポルトガル及びスペインは一五%でございます。フランスとは一五%、フィンランド、ベルギー、オーストリアはフランスと同じく一五%というふうな、こういう状況にございます。
  25. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、最後に、いまこのように日本が発展途上国に対して積極的な協力を具体的に展開しようという意図はよくわかるんですが、いま当面している世界の動きの中で、ハイジャックの問題も一つ大きな問題でありますけれども、中心になっているのは貿易のアンバランスの是正の問題と、やはり日本の円をつり上げることにアメリカ等も専念しているようですが、逆にドルが落ち込んできたということで、あわててまた経済政策を変えようとしておりますけれども、この間、外務大臣質問したように、アメリカの貿易のアンバランスの最大なるものは、アメリカ石油を自国においてずいぶん保有しているのにもかかわらず、外国から大量に買って、それによって自分の国の石油資源というものを温存させようというねらい、これはアメリカとしては石油を戦略物資として取り扱っているのだから自国の政策に容喙する必要はないと言われるかもしれないけれども日本自体は福田さんがずいぶん骨折っても大衆購買力というものが盛り上がってこないで、日本政府の政策も間違っているからでありますが、結局、景気が回復したところのアメリカにおいて自動車なりあるいは家庭電器なりが日本の製品はよいから売れる、日本の鉄鋼もアメリカやECの国々に遜色はない、むしろすぐれているから売れる、こういう現実がそれを決定しているにもかかわらず、そういうアメリカのメジャーあたりの揺すぶりによって、日韓大陸だなの問題もそうです、アメリカのメジャーがやはり握ってしまっているところに、日本と韓国並びに中国との間のいろいろな潜在的なトラブルが内向しているというのもそれであります。  もう少し、日本政府は、やはり日本現実アメリカ側にも知らせて、そうしてアメリカから思い切って、ドル減らしのために、軍需品なんかや飛行機なんか買うことに狂奔しないで、アメリカ石油でも買ってやってみたらどうですか。食糧の貯蔵より、日本にとって重要なのは、かつて血の一滴と言われたように石油じゃないですか。そういうことを具体的に政府は大胆に提案したことはないんですか。いつでもアメリカの言うなりにアメリカの後塵を拝して、この貿易のアンバランスの是正の問題でも、あるいはエネルギー資源の問題でも、食糧の問題でも、円の通貨の安定の問題でも考えておったのでは問題が具体的に展開できないと思うんですが、どうでしょうか。これは外務大臣にお尋ねします。
  26. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いまアメリカから石油を買うというお話のようでございましたが、これはもう御承知のように、日本は終戦直後からしばらくの間はアメリカから油をずいぶん輸入をしておりまして、そのころは、対米、日本はずっと赤字であったわけでありまして、それが油はアメリカは輸入国に変わってきたというときから、日米間の貿易の赤字・黒字の関係が逆になってきたという経緯がございまして、今日では、日本といたしまして、たとえばノーススロープの油というようなものを日本が輸入できれば——当然できるわけでありますけれどもアメリカアメリカ国内で油の自給率を高めたい、こういうことで努力をしておりますので、この点につきましても実現はむずかしい見通しでございます。そういう次第で、アメリカ自体はエネルギーの独立計画ということに努力をしておったのにもかかわりませず、油の輸入が急増せざるを得ない、これがアメリカの赤字の大きな原因になっておるということは御承知のとおりでございます。  日本といたしまして、ただいま総理の直接の御指示のもとに、目下、備蓄も含めた輸入をふやす努力中でございまして、それは近々に決まるであろうと思います。輸出をふやす努力につきましては、いま経済企画庁が中心になりまして努力をしております。しかし、要は、対米関係考えますと、やはり鉄鋼等の問題もございますが、一つは、貿易の赤字、黒字ということよりも、日本の貿易のあり方という点にもずいぶん先方の要望があるわけでありまして、そういう意味で、これから貿易面におきます日本側の誠意というものを私は示すべきときである、このように考えております。
  27. 福間知之

    ○福間知之君 所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国ブラジル合衆国との間の条約を修正補足する議定書、並びに、ルーマニア社会主義共和国との間の同様の条約について、一括して最初に二、三点お聞きをしたいと思います。  この両条約相手国に対する現在のわが国からの投資の状況等、この条約締結を踏まえて、さらに将来にわたる展望というものについて概略お聞かせを願いたいと思います。
  28. 内藤武

    説明員(内藤武君) まず、第一に、ブラジルに対する投資現状と展望についてお答えいたします。  ブラジルは非常に広大な面積を有し、非常に資源にも恵まれておりますし、工業国として最近非常に進歩的な政策をとっておりまして、外資を非常に歓迎いたしておりますし、その他現地におきましては八十万に及ぶ日系人が存在する、そのような非常に有利な条件に幸いされまして、ブラジルに対する投資活動というものは非常に近年急速に進んでまいりまして、現在におきましては、五百数十の私企業が進出し、それぞれにおいて大きな業績を上げておるというような状況でございます。特に、その中において特筆すべきはウジミナスであり、あるいは石川島、そういった成功した例もございます。  最近におきましては、ブラジルの経済がやや停滞ぎみでございますので、その意味におきまして投資活動は少し沈滞しておりますけれども、ブラジルの将来性を考えますれば、非常に大きく伸びていくということで展望されますし、今後におきましても、その意味のブラジルとの協力関係は大いに望むべくもあると考える次第でございます。
  29. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ルーマニアに対しますわが国投資現状及び将来の展望でございますが、現在、ルーマニアに対して行われております投資は、先ほど戸叶委員の御指摘になりましたロニプロットという会社一件でございます。  これは一九七四年四月一日に設立されたものでございまして、出資者は大日本インキ、これが四二%余を持っておりまして、残余がルーマニア側でございます。投資総額は二千八百五十五万七千マルク。これはいわゆる石油たん白の製造、販売を行うものでございます。  これが合弁事業といたしましてただ一件でございますが、ルーマニアは国際的にも一九六四年以降自主路線を標榜いたしましたのに伴いまして、経済も国際化に努めておりまして、一九七二年に合弁事業法を公布いたしまして、西側との合弁事業に積極的な姿勢を示しております。その理由といたしましては、ルーマニアは工業化を進めておりますその過程で西側諸国からの機械を必要といたしますが、逆に西側諸国はルーマニアの機械は必要といたしませんので、その結果、農産物というようなものをわずかに輸入する。その結果、非常に貿易がルーマニア側にとって逆調になりまして、ことに日本のような場合は距離もございますので、ルーマニア側から農産物を輸入するというようなこともなかなか困難でございますので、逆調の度が激しい。こういうことからルーマニア側日本との合弁事業を欲しておるような次第でございまして、この租税条約ができますと、さらに投資家の不安も解消いたしますので、ルーマニア側投資に対する希望と相まちまして、今後とも、進出企業が向こうからも歓迎され、こちら側もその意欲が生ずるものと考えております。
  30. 福間知之

    ○福間知之君 ブラジルは、いま、四年前のオイルショック以降かなり大幅なインフレーションが見られるという事態の中で、七五年、七六年はある程度の、あるいはある種の輸入規制というものを行って、ことしも実施されているようなんですけれども、そのことと投資とが直接相関関係があるかどうか別にいたしまして、やはりまだ今後かなりの見通しがあると、こういうことですか。
  31. 内藤武

    説明員(内藤武君) まず、輸入制限の点につきましては、先生御指摘のとおりに、ブラジルにおきましては、オイルショック後に貿易バランスが非常に悪化するとか、そういった事態がございますので、やむを得ませずかなり広範な輸入制限の措置をとっておりまして、これは最近におきまして一部、十品目ほどについて解除はいたしましたけれども、まだ相当多くの品目が残っておりまして、現在の見通しといたしましては、ブラジルのそのような国際収支が改善されることが条件で次第に解除されるということでありますので、まだ二年、三年あるいはそのような状況が続くことを予測しなければならないと存じます。  その点につきましては、ブラジルはこの輸入制限を全世界的に無差別に適用しておるということでございまして、当然に日本もその意味においては影響を受けるわけでございますけれども、そのような条件にかかわらず、ブラジル側としましては一般的に日本企業の進出や日本との提携については十分に積極的な姿勢を常に示してきておるということで、その意味においては特にこの際にそれが非常に急激なインパクトとなって悪影響を及ぼすというほどには至らないと期待しております。
  32. 福間知之

    ○福間知之君 ルーマニアの場合、ただいまの宮澤さんの御説明で、わが国においても特に輸入をする、したいというふうな第二次製品というふうなものは少ないかと思うんですね。やっぱり西側諸国が共通して農産物程度の輸入ということのようですけれども、そういう問題をこれからわが国としてはどういうふうに対処していくのか、また、向こうへ進出する場合、民間だけにゆだねておきましても、なかなかこの条約の趣旨というものが効果を上げるのかどうか、それもちょっと私疑問があるわけなんですけれども、その二点はいかがですか。  どこか政府機関の外務省なら外務省、海外経済協力機関などが何か誘導するとか、一定のアクションをとるというふうなことが必要になってくるんじゃないかと思うんですが、その可否を含めまして御所見を伺いたいと思います。
  33. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 貿易の逆調、日本の輸出超過はルーマニアに限りません。各国大変多いわけでございますが、ルーマニア等につきましても、ただいま申し上げましたように、先方におきましても片貿易を是正するためにわが国よりの投資合弁事業等によってこの逆調を回復しようと考えておるわけでございます。したがいまして、わが国といたしましては、こういう見地からもルーマニアとの貿易の促進を果たしますために、このような租税条約を結ぶことがその一助になるわけでございます。  また、いわゆる信用供与によりまして先方の産業の開発を助けるということ。これの目的といたしまして、わが国よりすでに民間借款、枠といたしまして二会計四億五千万ドルを供与しておりますほかに、輸銀のバンクローンといたしましてコンスタンツァの港を拡張して貿易を促進する、このような目的といたしまして二百三十二億円のバンクローン、輸銀でございますが、これの供与を決定いたしております。それから、そのほかに、わが国といたしましては非常にたくさんのプラントを輸出いたしておりますが、そのほかにさらにルーマニア日本との貿易を促進いたしますためにジェトロを含めまして民間の商社が十六社駐在いたしておりまして、引き合いその他貿易の促進に努めておりますので、ことにジェトロは公的な色彩もございますので、そういう意味で片貿易の是正に少しでも寄与したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  34. 福間知之

    ○福間知之君 ルーマニアに関しましては、いまの御説明でかなり鮮明になってきたんですけれども、結局、具体的な成果を着々上げておると、こういうふうに理解していいわけですね。
  35. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 速度は比較的緩慢でございますが、ただいまおっしゃいましたように、着々成果は上がっておるものと考えております。
  36. 福間知之

    ○福間知之君 それで、大日本インキが合弁会社として進出して、石油たん白を製造する、こういうことになったいきさつ、これは先ほども少し御説明があったようでございますが、今後、その種の国内で製造はしないけれども海外で製造するというふうなケースというのが多分に考えられるわけなんですね。だから、大日本インキの場合は、これは必ずしも前例としてはいけないと、こういうように思うわけですけれども、ここで一言承りたいのは、逆輸入されてくるというふうなことはありませんか、この石油たん白に関して。
  37. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 逆輸入の心配があるではないかというような御指摘も四十八年の三月のときに野々山委員から御指摘がありまして、それに対しまして当時の中曽根通産大臣がその輸入は行わないように指導をする所存であるという答弁をされております。そういう意味で、日本に対する輸入はしないと、こういうふうに私どもは理解をいたしております。
  38. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ただいまの件につきましては、ルーマニア側から日本に対しまして正式にこの製品を日本に輸出しない、こういう意味の文書が入っておりますので、この件に関しましては、ただいま御指摘のような心配はないものと考えております。
  39. 福間知之

    ○福間知之君 ルーマニアはいまのところ大日本インキ一社の進出ということでございますし、今後については先ほどのお話もありましたのでそれといたしまして、ブラジルの場合、先ほどのお話で五百数十社がすでに進出をしていると、こういうお話でございました。  サンパウロのジャパン・トレード・センターの調査によりますと、七三年以降、日系の企業の撤退とか操業の中止などが二十三件余りあったという報告が出ているようですが、その原因、背景というものはどういうことなんですか。
  40. 内藤武

    説明員(内藤武君) 御指摘のようなケースもございまして、ブラジルに対する企業進出には二つの時期におきまして一種の対ブラジル投資のブームというものがございまして、その時期に、言うなれば、やや過早な計画のもとに事を進めた企業があったというようなこともあったかというふうに聞いておりますし、そのような計画でブームに乗って進んだところが、ブラジル経済のオイルショック後におけるところの一種の停滞があったことによって必ずしも企業の採算であり、あるいは企業を遂行していくために十分な資金が得られない、そのような事情があったように聞いております。そのようなことで、いま御指摘のようなケースが出たかと考えます。
  41. 福間知之

    ○福間知之君 昨年、ガイゼル大統領が訪日されました際に、例のアマゾンのアルミ製錬大型プロジェクトに関しての経済協力要請というものがあったわけです。この成否は今後両国間にかなりの影響がある、こういうふうに見ているんですが、人的な交流企業の進出、先ほど来説明がありました。特にこのアルミ製錬の進展状況というものについていかがでしょう。
  42. 内藤武

    説明員(内藤武君) 御指摘のように、アマゾンアルミ製錬計画は、昨年九月のブラジル大統領訪日の際におけるほとんど目玉のうちの最大の目玉の一つというほどの大きな日伯間の協力関係でございまして、この実施に関しましては、わが方といたしましても非常に大きな関心と協力の姿勢でずっと臨んでまいったわけでございます。一時、これにつきましては、双方の最後の詰めの段階におきまして、いろいろ細かい問題が生じてくるということで、その点について十分なる調整を行わなければならないという事態がガイゼル大統領の帰伯後に起こりまして、そのための詰めが随時行われてきておったわけでございますけれども、そのような事態を経まして、本年一月には、本計画の日本側の当事者となる日本アマゾン・アルミ会社というものが設立されたわけでございます。そして、その後、両国の当事者間でしきりに行き来いたしまして協議を進めまして、幸いにして両国当事者間で開発会社の運営に伴うさまざまな問題を協議を進めまして、現在のところにおきましては、そのための現地の開発会社の発足は一応今年末に行われるように諸般の準備が整えられておるということで、当初の予定よりは若干おくれた次第でございますけれども、一応の方向に前向きに進んでおるというのが現状でございます。
  43. 福間知之

    ○福間知之君 わが国の法人企業、特に多国籍的企業わが国にも大分ふえているわけですけれども、それらがブラジルなどへ進出をして相手側における課税の優遇措置というようなものを受けるわけですけれども、それとの関連で、あるいはそれを悪用してと言うと適切かどうかわかりませんが、租税回避というふうなことをやる、利益の還流というようなことをやるという要素は考えればなきにしもあらずと私は思うわけです。これはすでにマルチナショナルカンパニーの最たる国はアメリカにおける企業でございまするが、すでにその種の問題はアメリカではかなりクローズアップしているわけなんです。  したがって、これは外務省当局の直接管掌事務とは思いませんが、大蔵省当局などとの連携プレーによって、今後進出企業がふえていくという場合に、当然、留意をしておかなければならない問題だと思うんですね。その課税回避という問題に対するチェック、監視機能というようなものを整える必要があるとお思いですか、いかがですか。
  44. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答え申し上げます。  ブラジルとの協定の中にございます御指摘のみなし外国税額控除といいますか、向こうの先方の特別措置を条約上認めてその企業に税を控除してあげるというそういう措置についてでございますが、協定を行いますときは、先方の要望がある場合に、先方のそういう減免措置の効果を無にしないというふうなことを非常に重視いたしまして行っておるわけで、その場合の審査の場合には、当然のことながらその先方が要求しております特別措置そのものが相手国経済開発の促進に実質的に寄与しておるものであるかどうか、寄与するものであるかどうかということを当方でも厳格に審査した上で認められるものについて、そういうものを条約に盛り込んでいくということを厳しくやっておりますことでもございますし、また先方の方でも、その措置というものは先方政府にとりまして減収につながるものでございますから、先方政府自身も非常にそれを厳格に審査してやっておるというふうなことでございまして、この租税条約上のみなし税額控除を使っての租税回避というものはないと申し上げて間違いないと思うんでございます。  万一そういうものが出ましたといたしましても、情報交換というふうな条約の中の条項がございまして、そういうものによりまして更正処分というふうなことが先方でのみならずわが国の方においても行われるということで、非常にそういうことは生じ得ないというふうに思っているわけでございます。  しかし、先生の御指摘のものは、恐らくこういう二国間のものでなくして、たとえばいわゆるタックスヘーブンと言われるような税のない国に、まあ第三国に企業の子会社を設置して行うような、そういう回避行為だと思われるのでございますが、これは数年来この国会におきましてもいろいろ御議論があり、そういうふうな御議論からの御指示に従いまして、大蔵当局におきましてもそういうタックスヘーブンを利用した多国籍企業租税回避というものをどのようにすれば抑えられるか、どのようにすれば法律的に間違いなく抑えられるかということを、現在、鋭意研究いたしておりまして、早い機会にそういう制度の整備というものを図ってまいりたい、このように考えている次第でございます。
  45. 福間知之

    ○福間知之君 ルーマニアとの場合、先ほども御説明がありましたが、文化的な行事等を通じた交流はいままでの経験でも耳にしたり目にするんですけれども、それ以外に余りぱっとしたあちら方からの働きかけというものは余り感じない。ちょっとした物産展なんかはあるようですけれども。そう考えてみますと、いわゆる貿易上のアンバランス、国際収支のアンバランス等が二国間で起こってくる。あるいは結果としてルーマニア側に一方的に収入減というふうなことが強まるというようなことの心配は果たして必要ないものかどうか。
  46. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ただいま御質問の点は、確かにある程度避けられないことかと思いますが、そういう点を十分に見越した上でルーマニア側がこのような取り決めをいたしたいという希望を表明したものと考えられますが、元来、この件はルーマニア側から日本に対しまして締結してほしいと申し入れてきたことでございますので、それを見越しまして、このような取り決めができることによってさらに交流が活発になるということを先方が判断したものと考えております。
  47. 福間知之

    ○福間知之君 人的な往来というものは、最近、どうなっていますか。
  48. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) 最近の両国の要人の往来につきましては、ルーマニア側から参りました者は、一九六九年にブルチカ当時の外国貿易大臣が参りまして、さらに七四年には大国民議会の代表団がこちらへ見えております。それから七五年は、御記憶も新しいと思いますが、チャウシェスク大統領夫妻が国賓として見えております。  一方、日本側からは、六九年に日本政府経済使節団、植村経団連の会長さんが団長として行かれまして、また七二年には美濃部都知事、同じく七二年には長谷川峻衆議院議員を団長とします国会議員団が訪問されまして、七三年には同じく秋田衆議院副議長が団長となられてやはり国会議員団が訪問されております。それから七四年には齋藤厚生大臣が訪問されましたほか、列国議会同盟派遣議員団福永健司団長のもとに訪問されておるというような状態でございます。  それから、文化交流、先ほどちょっとおっしゃいましたが、本年にはルーマニアから少年少女合唱団が参りましたほかに、仮面劇団が参っております。それから、わが国からは、四十九年に生け花の使節団が参りました。五十一年には版画の展覧会を開いております。というようなことでございまして、何分体制の違う国でございますのでまだ小ぶりでございますが、このような交流は行われております。  それから、民間人の往来は、日本からルーマニアに参ります者は、最近、商業を含めまして三千人程度、ルーマニアから日本に参りますのは、これもやはり国柄のせいでございますかずっと少のうございますが、数百人程度でございます。
  49. 福間知之

    ○福間知之君 これでこの条約は終わりたいと思うんですけれども、東欧社会主義国としてルーマニアと今回初めて条約を結ぶということでございます。その推移によっては、他の周辺東欧社会主義国との関係も改めて条約締結という事態が発生してくると思うんですけれどもソ連とか中国などとの関係においては、これはどういうふうに考えておられますか。
  50. 宮澤泰

    政府委員宮澤泰君) ソ連中国につきまして、私中国主管でございませんけれどもソ連につきまして、まあ中国につきましてもほぼ同じように解しておりますが、企業活動の自由というものを認めておりませんし、外国の投資を認めておりませんので、現在、こういうものを結ぶという動きはございませんが、やはりこの両国企業活動の自由を認めるような動きが出ました場合には、それに対応してまた日本政府としても考えてまいりたい。当座はそのような動きがございませんので、目下、考えておりません。
  51. 福間知之

    ○福間知之君 次に、投資奨励及び相互保護に関する日本国とエジプト・アラブ共和国との間の協定に関しまして、御質問申します。  この協定締結によりまして日本の民間企業投資が促進されるというふうな、いま動きがあるんでしょうか。また、相手国から、これは余りないと思うんですが、具体的にわが国への投資の動向というのはあるんでしょうか。
  52. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 御承知のように、エジプトの門戸開放政策、自由化傾向ということがございまして、エジプトは大いに外国からの資本の導入を望んでおるわけでございまして、このために日本とも投資保護協定締結を希望したわけでございます。  現在のところ、日本からのエジプトに対する投資総額は余り多くございませんで、投資総額十九万一千ドルという状況でございますが、この協定締結によりまして投資の保護が確保されるということになりますれば、これからエジプトの国内情勢の安定等も待ちまして、これからの投資の増加が期待し得るであろうと存じます。それからエジプトといたしましては、外資の導入ということによりまして国内経済の安定、開発の促進ということを大いに期待しておるところであると考えております。
  53. 福間知之

    ○福間知之君 わが国の方のメリットといいますか、協定締結以降、特段にはかばかしく事態が展開するということはないにしても、わが国の側における一つのメリットというようなものをどのように想定されていますか。また、そのためにどういうアクションをとるべきだと、こうお考えになっていますか。
  54. 加賀美秀夫

    政府委員加賀美秀夫君) 先生御指摘のとおり、これによってわが国の対エジプト投資が格段に飛躍的に増大するということは、当面、そう期待できないであろうということは事実であると存じます。ただ、今後、わが国投資に対する保護がこの条約によって確保されるということによりまして投資意欲が促進されるということは、長期的に見れば、期待できるのではないかと思います。  それから、御承知のように、エジプトは中東におきまして政治的経済的に重要な国でございます。先般のエジプトに対する援助国会議もございましたし、各国、西欧諸国も含めまして、エジプトの経済を安定させ、それがひいては中東の安全にも寄与するということで、多くの国が、エジプトの重要性にかんがみまして、エジプトを支援していくという態勢にございます。わが国といたしましても、エジプトに対しまして従来経済協力、技術協力等も与えておりますし、エジプトの重要性ということにかんがみまして、エジプトの国内経済開発に寄与していきたいという政策方針を持っておるわけでございますが、この投資保護協定もその大きな枠の中で日本のエジプトに対する一つの協力の一環と考えていいのではないかと思っております。
  55. 福間知之

    ○福間知之君 わかりました。  それで、協定の中で、国有化された場合あるいは戦争などにより被害を受けた場合の補償措置、あるいは投資保証に基づく政府代位、投資紛争解決条約への付託、仲裁委員会などについての協定がありますけれども、これで特にこれ以外にそう心配することはないということですか。
  56. 村田良平

    政府委員(村田良平君) この協定はエジプト側からぜひ締結をしたいと申し込んできたものでございますが、したがいまして、その内容に関しましては、エジプトが従来西ドイツであるとかスイスであるとか、その他の西欧諸国等と結んでおります協定をもお互いに参考にしながらつくったものでございまして、基本的には国際法の伝統的な考え方というものにのっとりまして、それぞれの事項に関して内国民待遇あるいは最恵国待遇を与えておるというものでございます。そういった意味におきまして、この協定は、非常に従来の国際法のルールから変わった規定というものは、先ほど戸叶先生に御説明申し上げました住宅問題に関する特例を除きましては、ないわけでございます。  で、この投資保証協定は、いずれにいたしましても、投資を受け入れる側、これは主として開発途上国が多いわけでございますが、これと投資する側との両方の利害が一致するという点におきまして結ばれるものでございまして、投資する方にしますと、妥当な保護がなければ投資しないということでございますし、また、受け入れる方にいたしますと、それぞれの国の体制というものを尊重した資本の導入ということが必要なわけでありまして、わが国が結びます投資保証協定としてはこれが最初のものでございますけれども、今後、わが国他国と結びます同種の協定のモデルになるものというふうに考えております。
  57. 福間知之

    ○福間知之君 次に、国際海事衛星機構(インマルサット)に関する条約締結についてお伺いします。  この通信衛星の利用目的というのは、あくまでも平和利用ということだと信ずるわけですが、万が一軍事目的に利用されるという場合、どういう保障措置炉あるのか、お伺いしたいと思います。
  58. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) このインマルサットは海事通信を改善するために必要な宇宙部分を提供するということを目的とする機構でございまして、アメリカソ連、ヨーロッパ諸国を含めまして、この条約採択会議に参加いたしました国々はこのインマルサットを平和的に利用することで合意しておりますので、まずこのインマルサット衛星が軍事目的に用いられるおそれはないと考えておりますけれども、したがいまして、この条約自体には、万が一軍事利用された場合を想定してのいわゆる制裁規定と申しますか、制裁措置は条約上はございません。万が一そういった事態が生ずるおそれがあります場合には、これは全締約国の参加いたします総会におきまして、しかるべき措置を講ずることになるであろうと考えます。
  59. 福間知之

    ○福間知之君 まあ余り取り越し苦労的に考える必要もこの際はないかと思いますので、十分関係国がそういうことに留意をしていると、また必要によっては総会で対処していく、こういうことだろうと思いますけれども、さしあたっては、まあやむを得ないと思います。  で、この機構の必要資本金額というのは二億ドルということになっているようですが、このうち、わが国はその八・四五%を分担すると、こういうことでございまして、しかし、将来この比率は変更することがあると考えられますが、その点はいかがですか。
  60. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) お答えいたします。  このインマルサットはまだ発足いたしておりませんので、とりあえず従来の通信量を基礎といたしまして一応八・四五%ということで決めておるわけでございます。しかし、実際発足いたしまして、各国の使用量がおいおい明確になってまいりますれば、それに従ってこのパーセンテージは変更されるものと、そのようになっております。
  61. 福間知之

    ○福間知之君 次に、この衛星を利用するために、各国の船舶がどの程度の装備費を今後必要とするだろうか。これはなかなか興味がある問題なんですが、いわゆる船舶の装備率を高める上でかなり負担がかかるんじゃないかと思うんですが、どのように見ておられますか。
  62. 吉川久三

    説明員(吉川久三君) お答え申し上げます。  インマルサットがスタートした場合の船舶地球局の装備率でございますが、現在、その装備率というものを予測することは非常に困難に感じております。で、これに関連いたしまして政府間海事協議機関におきまして、この海事衛星の専門家パネル、ここで一応の予測をしております。  これを参考的に申し上げますと、当面、タンカーだとかあるいはコンテナ、カーゴ等の大型船舶の利用が始まるだろう。で将来的には船舶の種類あるいは規模を問わずに広く普及していくだろう。スタート初年度は約二百隻。で七年度に至りまして約二千六百隻程度つくであろう、こういう予想をしております。  で、この金額でございますが、現在やっておりますマリサットシステムの船舶地球局の価格で一応推定いたしますと、機械の価格は約一千七百万円程度になっております。  以上でございます。
  63. 福間知之

    ○福間知之君 わが国は、この締結によりまして、どういう義務なり利益が得られると考えたらいいんでしょうか。
  64. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 申し上げるまでもございませんが、このインマルサットと申しますのは、衛星を使って海上通信を行うための機構でありますので、これに加盟いたしますことによりまして、それで可能になります海事衛星通信を利用することによって今後ふえてまいります海事通信の需要に対応していけることになりますし、その海事通信の品質を改善したり、海事通信業務の提供区域を広げていくようなことも図ることができるかと思います。それから海事通信の自動化、それから高速度データの伝送といったようなことも可能になってまいります。さらに緊急時の通信の改善、それから船舶及び人命の安全の確保に役立つことは当然でございますし、将来、無線測位業務が提供される場合には、海上における船舶の位置のより正確な把握が可能になろうかと思います。  それから、この衛星打ち上げ計画の決定など、インマルサットの業務の運営におきまして、日本は、アメリカイギリス等と並んで大きな発言権を持って参画することができますので、その意味でも、わが国の利益を反映することができるかと思います。なお、インマルサットによります衛星あるいは関連機器の調達にわが国の製造業者が参加できる可能性もありましょうし、インマルサットで開発されていく衛星通信技術に関する発明データをわが国としても利用する機会があろうかと思います。したがいまして、わが国の衛星通信技・術の開発の面からも利益があろうかと思います。以上がわが国が受ける利益の面だろうと思います。  それに対しまして、義務の面でございますけれども、これは条約自体に書いてございますが、条約の第二条に事業体を指定することが一つの義務として書いてございます。それから、地域海事衛星を打ち上げる場合、これはインド洋、太平洋、大西洋という地域が想定されておりますけれども、その打ち上げの場合の技術情報を提供する義務がございます。それは第八条に書いてございます。それから、二十五条に、このインマルサットという国際機関の法人格を認める義務がございます。最後に、二十六条に、インマルサットに対して特権及び免除を認めるといったようなことが書いてございます。そういった例がわが国の負います義務の方でございます。
  65. 福間知之

    ○福間知之君 いまアメリカ地域で利用されているマリサットとの調整とかなんとかということは特に考える必要はないわけですね。
  66. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) いま現在マリサットがやっておりますけれども、このインマルサットが発足いたしまして、このシステムの運用開始をやるというのは約五年後と見込まれております。それで、現在、いま先生御指摘のマリサットシステム、あるいは西欧諸国でマロッツ衛星というものを開発いたしておりますけれども、それらを一元化するという方向で、現在、アメリカとそれから西欧諸国の間で協議が行われておりまして、さらにそれとの関連性でインマルサットの関連も考えるということがインマルサットの準備委員会のところで議論されているところでございますので、一応、これについては将来一つにいくものと思っておりますけれども、なお、現在のこの西欧諸国あるいはアメリカ等の動向も見てまいりたいと、そのように存じております。
  67. 福間知之

    ○福間知之君 最後に、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結についてお伺いします。  これは基本的に大変私は結構だと、こういうふうに感じておるわけですけれども、いままでにわが国がこのESCAP地域への技術協力というものを進めてきたわけなんですけれども相手国わが国に対する要望というものに対してどの程度こたえてきたのかなあとふっと感じているんですが、いかがでしょう。
  68. 中山一

    説明員(中山一君) お答え申し上げます。  私ども、通信関係、放送関係などの国際協力をESCAP地域を含めた開発途上国に供与してきたわけでございます。で、その数は大変膨大な数になるわけでございますが、ただいま先生からお尋ねのございました件について申し上げますと、ESCAP地域を対象といたしまして、この五十一年度末までに、たとえば研修員の受け入れ——日本へ来ていただいて研修を受けていただく、技術的な訓練を身につけていただくという一つのやり方、それがおよそ千百七十名弱。それから日本技術者がそれらの国々へ参りまして、現地で技術移転をする、技術開発のお手伝いをするという仕事がございます。それが約七百名弱。そのほか、具体的なそれぞれの国の開発に協力するという開発調査といった仕事、それがおよそ四十件強などなど、いわゆる政府ベース技術協力を推進してきているところでございます。
  69. 福間知之

    ○福間知之君 時間が切迫してきましたので、二つ最後にお聞きしたいと思うんです。  一つは、わが国の分担金の比率、この場合は三〇%二千百万円ということですが、他の国の負担はどうなっているのかということと、それからもう一つは、いわゆるITU、国際電気通信条約わが国との関係上、この取り決め、共同体憲章を結ぶ場合には支障はないのかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
  70. 中山一

    説明員(中山一君) お答え申し上げます。御説明が順序が逆になろうかと思いますが、お許しください。  この共同体とITU国際電気通信連合との関係でございますが、ただいま御審議いただいております共同体憲章の一条に、この共同体は、国際電気通信条約三十二条に定める地域的機関だという趣旨の規定がございます。で、もとの方のITU条約でございますが、それには、それぞれの地域あるいは国はその種の地域機関を設けてよろしいということになってございます。つまりは、ITUが世界全体のこの種の電気通信関係の親機関、こちらの方はアジア太平洋地域の子機関、上部機関・下部機関といったような関係の位置づけになってございまして、ITUの場では、世界全体のレベルでの共通的なテーマを取り扱いますが、この機関では、地域の特性を反映した要素を盛り込んで、より現実的なものにしていきたいということになってございます。  ただし、そうは申しましても、世界的な基準を乱すということは好ましくないので、そういうことがないようにするというぐあいに、もとの方のITU条約三十二条の方にそのように定めてございますので、その枠の中で、つまり世界的な基準の枠の中で、しかしながら、より地域の問題を取り込んだ具体化方策を出していこうというのがこの共同体とITU国際電気通信連合との関係だと理解しております。  それから分担金の関係でございますが、分担金の負担の方法は、これもITU条約のパターンと同じパターンの方式をとっております。つまり、加盟国が、自分が任意に希望する、この程度負担するのがその国の立場として最も適当な貢献であるという単位を選ぼうという考えからでき上がってございまして、これもITU条約に定められておりますものと類似の方式でございます。任意分担方式、しかも適当な単位数を分担するという方式をとってございます。  さて、そういうことでございますので、この憲章の場合、これから私ども日本国としてこの憲章に参加できるような、つまりは国会で御承認いただいて参加できるような状態になった段階におきまして、関係各国が創立会合に寄り集いまして、その段階でそれぞれ意見を出し合いながら分担を決めていくということになるわけでござさますが、他方、予算面におきましては、すでに成立いたしておりまする五十二年度予算におきまして、考え方としまして全体の三〇%以内を負担するのが日本としては適当であろうという考え方でございまして、その三〇%以内を、ただいま積算に使っておりまする準備母体——これはESCAP事務局でございますが、準備母体からの情報によりまして積算したものが二千数百万円ということになってございます。  以上でございます。
  71. 福間知之

    ○福間知之君 最後の最後ですが、この憲章を具体化するためには、わが国が単に出資の面だけじゃなくて、技術あるいは機材等において中心的なやっぱり役割りを担わなきゃならぬと思いますし、そのこと自体は大変結構だと思うんです。しかし、それぞれの加盟国が、現状国内における通信網の抜本的な整備改革ということをやらなきゃならぬという、そういう面での負担がかなりあると思います。また、常々言われていますように、アジア地域との経済的な活動の一層の拡充ということが進捗すればするほど相互に通信網の利用度というものは高まると思うんですね。現在はやはりかなりわが国の方が金額的にも頻度においても高いと思いまするし、あるいは人工衛星を通じようとマイクロウエーブを利用しようと、一方通行的な面が多いんじゃないかと思うんですけれども、今後、この共同体が動き出した場合の見通しとしてどういうふうに展望し、したがってどの程度の規模を考えていくかということがすでに構想としてあると思うんですけれども、概略御説明をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  72. 中山一

    説明員(中山一君) お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘のとおりの方向で私ども考えておる次第でございますが、具体的に申し上げますと、もともとこの通信と申しますのは、それぞれの国がその国の主権一つの発現、あらわれ方といたしまして運用している次第でございますし、そのために可能な限りみずからの回線、施設等を建設していくという方向にございます。それを尊重しつつも、この種の共同体をつくりまして、相互に技術的側面などから話し合いをすることによって調整して、よりりっぱなネットワーク、よりすぐれた施設を全体として形成していくことが地域全体のためになるという現地の皆さんの発想がありまして、で、いま先生から御指摘がありましたように、そうは申しましてもアジア太平洋地域で日本が電気通信の分野におまましては最大のかっ最良の先進技術を持っている国でございますので、いままでも技術の移転のために技術協力を進めてまいっておりますが、今後とも、この共同体をも通じまして進めていこうという考え方でございます。  ただいま、これはもう先生承知のとおりでございまするが、やや専門の話になって恐縮でございますが、わが国の電話の普及率は人口百人当たりおよそ三十八台ぐらいの電話が普及いたしておりますが、ESCAP地域の国々は、ごく特定の国を除きましては、百人当たり一に満たないというところが多うございます。それらの国々におきましては、まずは市内あるいは農村の面としての電話を普及せしめる、電気通信を普及せしめる。それからその面と面とを線でつなぐ——ネットワークと申しておりますが、つなぐ準幹線網をつくっていくという考え方で進めております。で、当面、この共同体を通じて各国が共通のものとして考えておりますのは、その国内幹線網を国境でつなぎまして、全体としてアジア地域の地域幹線網をつくろうということでございます。先ほど申し上げましたように、基本的には主権の分野に属することでございまするから、市内電話はみずからやる。さらに、その国内幹線もみずからやる。しかし国境ではやっぱりつないでいかなきゃいけない。そして全体として面としてもすぐれたもの、それからネットワークとしてもすぐれたものをつくり上げようという考え方がございます。その結果といたしまして、当然のことながら経済活動あるいは社会活動の発展向上に寄与するでしょうし、民生の向上に寄与するだろうと思います。  ただいま計量的に申し上げることは非常に困難でございますけれども、これから共同体ができ上がりましたら、そういう地域の要請にこたえましてあらゆる協力をしていくことが進んだわが国のこの分野でのある意味での責務であろうかということでございまして、先生の御指摘の点を踏まえまして、十分効果的に運用してまいりたいと存じております。ありがとうございました。
  73. 福間知之

    ○福間知之君 終わります。
  74. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午前の審議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  75. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  76. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これからお尋ねしたいと思いますことは、ただいま審議されております租税二つの条約、これに直接のかかわりあいはないとは思いますけれども、それに関連する問題として若干お尋ねをしたいと思っております。  先ほど午前中のやりとりの中でも、大蔵省宮本課長さんの方からもちょっとお触れになりました多国籍企業の問題についてでございます。確かにこれ数年来にわかに世界じゅうの問題として脚光を浴びたわけでございますが、当時、鳩山さんは大蔵省の中枢におられてこうした問題についての取り組み方、今後の御方針というものを十分御検討もされ、また国連であるとかOECD等におきましても前の宮澤さんから恐らく引き継がれて、さらに推進の役割りも果たされておられるんではないだろうか。いわゆる多国籍企業の規制という問題でございます。  この多国籍企業という名称自体が非常にいろんな解釈の仕方があるようでございますね。衆議院でも私どもの渡部一郎議員がこの問題を通じまして大変時間をかけながらやった経過があるようでございます。この種のやはり問題は時間の経過とともに忘れられがちであるというふうなこともありますので、私は、私なりにこの機会にこの問題をやはりただしておく必要があるであろうと思う。これは申すまでもなく日本の今後の経済の趨勢ひいては雇用問題にまで及ぶという、非常にさまざまな影響力を持っておりますだけに捨てておけない。しかも、脱法行為ということになりますと、これはまさしく経済の混乱に結びつく可能性もあるであろう。ときにはその国の運命すらも左右するという問題に発展しかねないという事実関係が幾つかあったわけでございます。そういったことを背景に置きながら、まず、政府としては、この多国籍企業についての定義というものをどういうふうにお持ちになっておられるのか。伝え聞くところによりますと、もう何百も何千もその見方があるということも言われておりますね。しかし、それらはいずれにしてもどこかの場所できわめてオーソライズされた形において整理をしなければならないであろうし、また、それに伴って政府としても取り組む姿勢というものはおのずからその方向性というものが決まっていくんではあるまいか。まず、そうした原点的な問題からひとつお尋ねをしてまいりたいと思うわけでございます。
  77. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまの多国籍企業の定義の点でございますが、これは専門的にいろんな定義がたくさんございます。後ほど国連局長の方からでも補足させたいと思います。  しかし、日本といたしまして、日本企業海外に進出をした場合に、その海外に進出した企業に一定の行動基準を設けてそれを守らしたい、こういう観点から申しますと、これは日本企業がどういう大きさになったならば多国籍企業に入るか何とかということよりは、むしろやはり日本海外に出た企業が皆ひとしく一定の行動基準を守ってもらいたいと思うわけでございまして、そういう観点からたとえばOECDの行動基準が一応できておりますので、これらは日本の貿易業界あるいは経済団体に周知徹底を図って、日本企業海外で事業活動をするというような場合にはやはりこの行動基準でやってもらいたい。そういう意味から申せば、これが果たして進出した場合にすべてが多国籍企業であるかどうかという定義の問題はございましょうが、日本政府としても、日本海外におきます行動というもの、これを正しい行動にしたい、そういう意味であらゆる進出企業にこの行動基準というものは守ってもらいたい、そういう気持ちでおります。  なお、多国籍企業自体の定義につきましては、専門の機関の方からお答え申し上げます。
  78. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) お答えいたします。  多国籍企業の定義につきましては、多国籍企業という言葉は一般によく使用されておりますが、多国籍企業の定義をどういうふうにとらえるかについては人によってかなり差がある、多くの場合その定義づけを断念するという考え方の方が非常に多いんでございますが、一般的に申しまして多くの国に子会社、事務所等の企業施設を有し、国際規模で事業を行っている企業集団を多国籍企業と言うという定義がいばわ普通の、かつ最も広い意味の定義かと存じます。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま事務当局からの御答弁を伺っておりますと、先ほど鳩山さんがおっしゃったことよりも相当幅の広い企業についての判断があるようでございますね。国連の多国籍企業委員会ですか、あたりでの報告を見ましても、一応二つ以上の国にまたがるとか、あるいは何億ドル以上の規模の仕事をしているとか、いろんな金額で、あるいは何カ国かにまたがるそういう国の数、そういったものを一応その前提に置きながらこの企業活動のあり方についての決め方をしているようでございますが、いまのお話ですと、何か非常にこう抽象的な幾らでも広がりを持つようなそういう感じを受けるんでございますけれども
  80. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) 先ほども申し上げましたように、定義は非常にたくさんございますけれども、たとえば国連事務局の報告「多国籍企業と国際開発」という報告書がございますが、この中においては多国籍企業を次のように定義しております。工場、鉱山、販売事務所などを二カ国以上において支配しているすべての企業と。  それから、昨年六月、OECDの閣僚理事会において採択されましたいわゆる多国籍企業の行動指針において多国籍企業が理解されておりますのは、やはり先ほど私が申し上げましたように、複数の国において企業施設を有し、国際的規模で事業を行っている企業集団と、そして多くの場合に資本ないしは技術、ノーハウ等によって一元的支配を受けている企業集団と、こういった考え方でその定義を考えているようでございます。
  81. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうした外務省当局の判断に基づいて、現在日本から海外に進出している多国籍企業の実態はおわかりでございましょうか。
  82. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) 近年、わが国の在外企業を含めまして、多国籍企業の国際的な経済活動に対して非常に関心が集められておりまして、特にこれらの多国籍企業の行動倫理といったものに対する要請も非常に高まっている。こういう中にありまして、わが国において最も狭い意味の、要するに、先進アメリカ型の多国籍企業日本において存在するのかどうか、これも議論のあるところでございますが、できるだけわが国の在外事業の実態というものを日本政府の中においても把握するよう努力しております。
  83. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この点で、大蔵省はどのように把握をされていらっしゃいますか。
  84. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答え申し上げます。  私ども、税制の方の面から多国籍企業一般に言われておるものに対しまして認識を持っておるわけでございますが、一応、国際的にはOECDのような、OECDの租税委員会というのがございますが、そういう場で議論を行っております場合にはOECDのその定義に従っておりますが、しかし、国内的にそういう企業に対する税制を考えます場合におきましては、やはり海外に親子関係あるいは姉妹関係というふうな形で国籍の違ったそういう企業を有しておるものを対象に考えてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  85. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 特に多国籍企業が脚光を浴びたのはロッキード事件だろうと私思うんです。それまでは、日本としては、いままでも弊害があったかもしれませんし、相手の国にあるいは損害を与えたかもしれない。それがチェックされないまま実は今日まで経過してきている。  あの最も際立った印象として思い起こしますことは、昭和四十八年のオイルショック後における狂乱物価、ここで莫大な利益をおさめたであろう。そういったことからこの多国籍企業というものが見直しをされなければならない。そうしてさらにいま申し上げたこのロッキード事件が絡んでくる、これはもう捨てておけない重大な問題だと。ちょうど昭和四十九年、オイルショック直後の通常国会の予算委員会で、わが党の矢野書記長がその事実に基づいた経過を通しまして、それで議論をしたわけでございます。これは恐らく考えようによっては氷山の一角ではあるまいかというふうに受けとめられるわけですね。その後いろんな問題が最近においてもあったようです。ついこの間は、三菱商事が追徴金を取られて、藤野会長がようやくまあ脱税を渋々認めざるを得ないというような問題もあったようでございます。いまわれわれが考えなければならないことは、いわゆるそういう不当な所得によっていろんな価格操作が行われる問題であるとか、あるいは税金のごまかしと、これは社会的に大変大きな犯罪行為につながるというふうなことをおそれるわけでございますね。  午前中にも宮本課長さんがちょっとお触れになりましたように、この多国籍企業が将来やはり考えられるであろう、また、それが回避できないといういろんな問題を想定したときに、私は、二つに集約できるんじゃないかと思うんですね。一つはタックスヘーブンですね。それからもう一つは、トランスファープライスですか、そういうようなやり方によって巧みに脱法行為が行われる。また、そうした面について、なるほど海外法人が中心になっていろんな企業活動を行う場合には、日本大蔵省あるいは国税庁の捜査の手も伸びませんし調査の手も伸びない、いろんなそういう絡みがこれからも考えられるだろう。そういう問題もう一遍ここで整理をしていただきまして、いままでの経過を踏まえて、今後、どのような対応の仕方をいま大蔵省大蔵省としてお考えになっていらっしゃるのか。
  86. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答え申し上げます。  先生がまさに御指摘のような問題というのは確かにあるわけでございまして、国会におきましても、数年前から、この問題は非常に重大視して取り上げられておりまして、私ども国会におけるそういう審議というものを踏まえまして、たとえばOECDの先ほど申しました租税委員会のような場でこういうことを審議してまいった次第でございます。それでOECDの租税委員会では数年かけてこれを審議してまいったわけでございますが、このほど、具体的には五十二年の九月二十一日に「租税回避及び脱税に関する理事会勧告」というものをまとめて、これを加盟国に義務づけたわけでございます。  その勧告の中でかなり重要なものを一つ読み上げさしていただきますと、「租税回避及び脱税の発見及び防止のための法令上又は行政上の規定並びに調査権限を国内的、国際的見地から必要に応じて強化し、かつ、かかる措置に関する経験を交換すること」というふうなことを非常に大きな柱として掲げておるわけでございまして、これによりましてその議論の中に積極的に参加してまいったわが国にも国内的にそういうものを防止していく必要性、措置、そういうものが義務づけられたわけでございます。これはそういう国会審議というものからリードされた非常に貴重なものだと思われるわけでございますが、こういう審議を通じて、また、こういう勧告を通じまして、われわれも主税局の内部で先生が御指摘のような点をいかに改めるかということをいま鋭意検討いたしております。  で、ただいまタックスヘーブンを利用するもの——タックスヘーブンというのは、御承知のように、税が全くないか、非常に税負担の低い国、バミューダだとかバハマだとか言われておるものでございますが、そういうところへ名目的な会社を建てて、そこで利益を留保しておるというふうなもの、そういうものをいかに効率的にとらえていくかというふうなことをいまいろいろ研究しておる段階でございます。いろんな業界によって業態、業種が違うものでございますから、そういうものの話を聞いたり研究したり、それからまた外国のいろんな事情あるいは制度、そういうようなものも係員を派遣——調査をし終わった段階でございますが、しましたり、そういうふうなことでその実態をいまきわめておる。余りそういう海外の子会社に負担をかけることによって、かえってわが国にとって必要な海外投資、正常な投資といいますか、そういうものであるとか、向こうの方で現実にやっておられる生業のようなものまでも阻害するというふうなことになってはいけませんので、その辺の実態をいま鋭意研究いたしておりまして、早い機会にまとめてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一点の、トランスファープライシングということをおっしゃったわけでございますが、これはそういう海外の税金の安いところにある会社に、たとえば低い値で物を売りまして、向こうに利益をたくさん上げさせるというふうなことでございますから、先ほどのような向こうの会社にたまっている所得に対して課税できるようになれば、この問題はかなり解決される問題であろうかと思うんでございますが、わが国の税法におきましても、このトランスファープライシングをある程度規制し得る条項がございまして、その実行方についてはやはりこれも内部であわせて検討しておるというふうな段階でございます。
  87. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま御答弁がございましたように、ようやくOECDが中心になって加盟国の合意を取りつける段階までいった、これはまことに結構だと思うんですね。それで行動基準というものが一応方向づけができたと私思うんです。  そのことはあるいは国内法の整備ということにもつながるんでありましょうけれども、ただ、法的な拘束力を持たない、たしか宮澤さんが外務大臣のころにも衆議院外務委員会で御答弁があった経過を思い起こしてみますと、これはあくまでも道徳的な一つの規範である、ただし実効性のあるものであると、この辺が非常に抽象的な言い方で終始されたような印象を私持っているわけでございますけれども、そうした法的な拘束性がない、そうした点について今後十分なチェックができていくんであろうか、経済の秩序というものがそれによって混乱を引き起こしたり、また相手国に迷惑をかけない、そういうふうな一つのルールというものが明確に確立されるものであろうかということ、まだやっぱり若干気持ちの中でしこりが残るようなそういう感じがあるわけです。その辺はどのように大蔵省として分析もされ、将来展望をお考えになっていらっしゃるのか。
  88. 宮本英利

    説明員宮本英利君) 租税条約というものを通じまして、多国籍企業のそういう条約相手国以外の国を通じて行われるものに対します規制というのは、条約そのものではやはり非常に限界があろうかと思われますので、やはりそういう国内的な法制の整備というふうなことによりまして、日本の親企業が非常に支配力を持っておる海外の子会社に対しては税制面で、大蔵省といたしましては、少なくとも税制の面でやはりちゃんとしたことをしていく必要があろうかと、こういうふうに存じております。
  89. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに、私、いまおっしゃるとおりだと思うのでございますけれども、これも大蔵省の当時国税庁長官をやられた方ですかね、この数年間における日本海外進出の企業の不正所得、これを御答弁なさっていらっしゃるんです。それがもう相当多額な金額なんですね。四十五年以来、たしか四十八年ぐらいまでの法人数と、それから不正所得したと思われる金額、これが大蔵省の方の御調査によっても明らかに実はされているわけです。それがわずかの間において激増しているんですね。当初はたしか五億円ぐらいであったものがわずかの期間に八十億円を超え、それから法人数も非常に多くなっている。果たしてそういうような行動基準というようなものが設けられても、企業はやはり利益を上げなきゃならぬという問題もございますので、あるいはペーパーカンパニーみたいなものをつくりながら一つの脱法行為を試みる。その辺の歯どめが一体きくかなと、こういう心配を私抱くわけですね。  将来において、これは絶対ないという保障があるんだろうか。国連でもいま作業部会か何かで進められているわけでしょう、この問題。国連ではまだ結論は出ていませんね、OECDの方が早く合意に達しているわけです。国連でも鋭意努力をされていることはわかっておるんですけれども、そういうものができ上がっても、世の中には法を犯すものがおりますと同じように、企業はやはり死活問題ということになりますと、どんなところに一体活路を開いて企業活動するか、これはわれわれの想像を超えるものがあるんではないだろうかというふうに感じられますだけに、非常にその点やはり心配がぬぐい切れない。ふえる見込みがあるんではないかという心配、その中に非常に非合法的な企業活動が行われる。まあ恐らく一番やりやすい場所は、私はアメリカではないかと思うんですね、日本企業海外法人がやり得るという可能性があるとするならば。発展途上国のことについてはこの次にまたお尋ねをしたいと思うんですけれども、その点重ねて、これは鳩山さんに、いまの答弁を受けられて、かつてやはり大蔵省で御担当いただいたお立場からも、これは日本の将来というものにとって非常に大事な経済活動の基本をなす問題でありますだけに、お尋ねをしておきたいというふうに思うんです。
  90. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) OECDの多国籍企業の行動指針、多分、昨年の六月の第十六回閣僚理事会において採択されましたので、そのころの宮澤大臣が御説明になったのかと存じます。そしてこの行動指針自体は、これは強制的な性格のものでない、申し合わせのようなものであると思いますが、しかし、わが国が、わが国関係しておる企業につきまして、たとえばいまお話しのありました税制としていかに対処するかということになれば、これはわが国の税制できっぱり制度を決めてかからなきゃならない問題であろうかと思いますので、OECDの行動指針は強制的なものでありませんけれども主税局の方で何らかこれらにつきまして規制を加えるということは、そういう恐らく必要なものは立法をお願いをいたして規制をいたすのであろうと思いますので、その点は、いまその点まで任意的なものであるとは考えないので、大蔵省の方の検討を待っておるということでございます。
  91. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 じゃ、大蔵省では、いま山鳩さん御答弁なさったことを踏まえてどんなことがいま考えられますか、この歯どめをする、これから予想される問題といたしまして。
  92. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答えいたします。  先ほどちょっと触れたんでございますが、トランスファープライシングだとか、いろんな手段を使って税金のほとんどない国につくった子会社にその利益を移して、そういうところで利益をためるわけでございますが、その結果、その税の納付が延期されるというふうなことになるわけでございますが、それをなくするということが一番効果的な方法であろうというふうに私ども考えておりまして、で、そういう日本の親会社が支配的な力を持っておる、そういう税金のない国にあります子会社が持つその利益、留保所得というふうなものを、その親会社の所得というふうにくっつけて、その親会社に課税するというふうな方法、たとえばこういう方法が非常に効果的ではあるまいかというふうなことを、いままだ理論的な段階ではあるんでございますが、考えておりまして、そういうふうなことが、いろんな国内のその他の法規であるとか、いわゆる正規の、あるいは開発途上国の経済開発を援助するようなそういう投資を傷つけないような形である限りにおいて、実は、そういう方法がとれれば一番効果的なものではなかろうかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  93. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この点については、なかなかむずかしいこれから技術的な操作が必要になってくるんだろうと思います。アメリカのような先進国家、あるいはいまお触れになりました特にタックスヘーブンを適用している国柄ですね、こういったおのずからやはり国柄も違いますし、また置かれた立場も違いますし、特に発展途上国においては、申すまでもございませんけれども日本からの海外投資というものを非常に期待しているわけですね、その期待する一環として、できるだけ税金は無税にするというよな、そういう条件をつけてきているというのが恐らく発展途上国のそう大差のない趨勢ではなかろうか。昨年でございましたか、五月ごろには、特に東欧諸国のハンガリーまでタックスヘーブンを表明したということが伝えられております。したがってその辺の国の事情によっても違いますし、いまおっしゃったような方法で、果たして——万全ということになりますとはなかなか御答弁しにくいだろうと私は思うんですけれども、より善処できるという可能性をそこに踏まえて、もっと考えられないかなあという感じがするわけですね。検討の段階ですから、いま結論を急ぐようなことは私求めようとはしません。  しかし、いずれにしても、これはもう差し迫った、場合によりますと不況克服という問題にまで連動するという背景がありますだけに、これは捨てておけない私は問題だろうと。今後の海外投資についてのあり方というものも当然この辺で整理されていく必要があるのではないかというようなことも考えられます。そうしたことを考えた場合に、そういうような矛盾というようなものを、いま申し上げたように発展途上国だとか先進国家というように大きく分けた場合ですね、そういう場合に十分歯どめができるような国内法の整備というものが考えられるのかなというやはり疑問が残るわけですが、いかがでしょう。
  94. 宮本英利

    説明員宮本英利君) お答え申し上げます。  租税条約を結びます場合に、その開発途上国の方が経済開発を促進するという意味でいろんな税制の特別措置というものを持っておるわけでございまして、そういうものの効果をできるだけ実現できるような形で条約の中身を定めてほしいというふうな要望がございました場合に、先方が申しておりますそういう租税の特別措置というふうなものが一体どういうふうなものであるかということは当方も非常にその辺は克明に研究いたしまして、そういうものが真に実質的にその開発途上国の経済開発に寄与するものである、日本のそういう開発途上国への援助政策の上にも合致するものであるというふうに認められるような特別措置につきましては、日本合意いたしまして、そういうものの効果が実現できるような形で条約を定めていくということをやっておるわけでございまして、開発途上国と租税条約を結びます場合に、そういういわゆる大企業が利益を向こうに留保するというふうな形の、いわゆる世上言われておりますような租税回避といいますか、そういうもののないようなものを非常に厳格に審査して条約の中身に組み込んでいくということをとっておりますので、開発途上国に対します場合には、そういうことは万が一にも生じないだろうというふうに考えております。  で、そういうアメリカのようなさらに先進国におきましては、御承知のように、アメリカの法人税と申しますのは日本の法人税よりもやや上回るぐらい、いわば日本から見て高課税国でございますが、向こうの税務当局が正規に徴収をしておる限りにおきましては、先方でそういう租税回避というふうな事態が生ずることはないというふうに考えておりまして、やはり租税の全くないような国、こういうところが一番問題になろうかと考えております。
  95. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおりだと思いますね。発展途上国の問題については、今後、新しい国際的なルールの取り決めというものも恐らく相当活発に論議がなされて、そういう方向へまとまっていくような状況にもなっていくであろうと推測もされます。  ただ、問題は、むしろ先進国における日本海外における企業進出、ここにいろいろなごまかしがあるんではないかという、いまおっしゃったアメリカの場合の例が出ましたけれども、確かに法人税率にしても日本と比較をいたしますと高いかもしれません。ただ、向こうの調査というものはどういうものであるかわれわれは知りません。先ほど途中で私ちょっと触れましたけれども、例のオイルショック直後におけるべらぼうな利益を占めることによって巧みな価格操作が行われて、それが一般消費者に対して甚大な影響を与えたという経過があったわけでございますね。で、たしか、あの当時、国税庁から調査官が二人米国の承認を求めて派遣されてその実態が明るみにされたということもわれわれ知っておるわけでございます。そのような問題がいろんな経過を経て、つまり不正行為があったということがわかったんだろうと思うんですけれども、ただ、そういう実際向こうで取引されたその取引の内容であるとか、そういう問題については的確にこちら側が調査をする権限もなければチェックもできない、そういうところに抜け穴があったということも反省があるわけですね。  じゃ、今後、そういうことが起きないか。やっぱりこういう深刻な経済情勢であるならば、これはむしろある方に、別に期待するわけじゃございませんけれども考えられる。たとえば実際には十億もうかっているんだけれども帳簿には五億しかもうかってないと、こんなことは簡単にやれる操作の一つではないか、売上高のごまかし。あるいはいろんな名目についていろんな支出が行われた、架空の支出が行われたというようなことで、いろんな操作が行われて、できるだけ課税の対象にならない、課税の対象になっても大変軽減された税金で済むというようなことも今後は考えられる一つの問題点ではあるまいか。  こういったことを捨てておけないということで、国連もようやく動き出さざるを得ない。まあアメリカのやり方については、別に他国のことですから、どうこうという必要はないかもしれませんけれども、一番われわれ印象に残る問題としては、あのアジェンデ政権が倒れるといういきさつなんかを考えましても、あれは大変な力を持っているわけですからね、多国籍企業というのは。それを持っておりますだけに、その辺の本当に経済秩序というものを守ってやっていただきたいのがわれわれの願いでありますけれども、なかなか最近はそういうような経済慣行というものが守られていない。そういうところにいろんな問題点を残しているということが考えられるわけです。そうした、特に、むしろ税金を免除してくれるとか、税金回避国ということじゃなくて、税金は正当に取るけれども、そこの中にごまかしが起きないかという点がむしろ多国籍企業の今日までのきわめて際立った特徴的な現象ではなかったかというふうに思うわけです。むしろそういう面について大蔵省として取り組む厳しさというもの、姿勢を厳しくしていただきたい。むしろその辺にウエートを置いていただきたいなという感じすらもするわけです。
  96. 五味雄治

    説明員(五味雄治君) 国税庁の調査課長でございますけれども、ただいま先生御指摘の点は非常に重要な、しかも困難なむずかしい点だというふうに認識しております。  ただいま宮本課長から答弁がございましたように、理論的に言えば、むしろ高税率国、たとえば米国のようなところに移転価格の操作によりまして所得をシフトするというようなことは理論的にはあり得ないということでございますけれども先生が御指摘のように、そういった問題ではなくて、調査の体制がどうかというところに結びつくと思いますけれども、執行面の問題ということで、われわれがやっていることをちょっと御報告いたします。  確かに国内取引であれば反面調査など簡単にできるわけでございますけれども海外取引ということになりますとこの反面調査がなかなかできない。国家主権の問題がございまして、日本から調査官が行って調査をするということはなかなかむずかしいという問題がございます。それにいたしましても、各国がいろいろとそういった問題点を認識しまして、現在、国税庁におきましては、子会社を海外に持って大きな規模で取引をやっているような大法人、そういったものに対しましては特別国税調査官という調査のベテランを充てまして、毎年、調査をしている、しかもじっくりと調査をしているという姿勢でやっております。で、そのほかにアメリカとの主権の調整もございますけれども、年に三回程度でございますけれどもアメリカにその調査官を派遣いたしまして先方の実態を調べてくるというようなことを続けております。もちろん、これも予算の制約がございますし、それから先ほどの国家主権の問題がございますので、なかなか十分には行われていると断言することはむずかしいかもしれませんけれども、そういった方法で、いま先生御指摘の問題に対しては対処していきたいというふうに考えております。  で、特に海外の取引というのは非常にむずかしいもんですから、いろいろ事例を集めて、OECDの事例研究会からも資料を取り寄せたりいたしまして、そういった事例も勉強して研修をする。さらに外国語も非常に必要になりますので、そういった研修も調査官に対して行っているというようなことでやっておりますが、今後も、こういった点に力を入れてやっていきたいというふうに考えております。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから、先ほどのOECDの合意に達した点についてはお伺いしましたけれども、いま国連での作業はどんなふうに進んでおるかということが一つと、それから、日本としては、その作業部門においてどれだけの推進の役割りを果たしているのか、また、現在検討されている内容について、どういった希望条項というものを織り込んでもらいたいという要請もされているのか、そういった点をまとめてひとつお聞かせいただければありがたいと思いますね。そしていつごろその結論が出るのか、どういう形になって出るのか、大体いままでの経過を考えると、ある程度の予測はできるんではないだろうかというふうに考えられますけれども、いかがでしょうか。
  98. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 国連におきましては、先ほど先生も言われました多国籍企業委員会というのが経済社会理事会のいわば諮問機関として一昨年から活動を開始しています。わが国ももちろんその多国籍企業委員会のメンバーでございます。その多国籍企業委員会のもとで多国籍企業の行動規範を策定するための作業グループができています。これはOECDの行動指針とは違いまして、OECDの場合は、御承知のとおり、先進国ばかりでつくった指針で、しかも勧告的なものでございますが、国連でやろうとしておりますのは、開発途上国やそれから東側の国々も全部網羅した作業でございます。当然ながらいわゆる南北問題的な色彩もおのずから出てまいるわけでございます。それから、大きな論点としましては、国連でつくる行動規範は、条約的な拘束力を持つべきではないという開発途上国側の意見と、いやなかなかそういうことじゃ実際にはむずかしいんだという立場をとっております先進諸国との意見が対立している面もございまして、いつになりましたらこの作業が完結するか、いまのところまだ必ずしもはっきりしためどがついておりません。  それとは別に、一昨年の国連総会で、実は開発途上国二カ国、イランとリビアとが多国籍企業の腐敗行為の面についてメスを入れるべきじゃないかということで提案いたしまして、多国籍企業の腐敗行為を非難し、今後、それに対して対処をしていく方法を検討すべきだという決議が採択されたわけです。その結果、今度は多国籍企業委員会のもとではなくて、経済社会理事会の直属の別の作業部会が昨年できまして、そこにおきまして多国籍企業を含む企業のいわゆる腐敗行為を防ぐための国際協定をつくろうという作業が始まっています。これにも日本は積極的に参加いたしております。これはいままでに三回会合を開きまして、まだいろいろ問題が煮詰まっていない点もございますので、これもまだいつ作業が終了するかということになりますと、正確に申し上げられないと思います。  日本態度といたしましては、これは国連の場での話でございますけれども、多国籍企業開発途上国の経済開発に対していわばその資金とか技術等を移転させるための一つのパイプとしてそれなりに役割りを果たしている面もあるし、また同時に、腐敗行為その他の面、あるいはその開発途上国におけるいろいろな活躍の面でマイナス面もある、その両方の面があるんで、そこら辺の点は十分検討して、なるべく多国籍企業の積極的な面を生かしていくような方法で対処をしていくという見地から、そういった作業に参加しているわけでございます。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 恐らくそうだと思います。ただ、いろんないままでの討論の経過の中で特に問題になったのは、国連でできれば法的拘束というものも加えた方がいいのではないかという主張もあったやに伝え聞いておるわけです。ただし、アメリカとしては、その法的な拘束を設けるということになると主権侵害に関連が出てくるということで、大変厳しい難色を示したということも聞いております。  そういう法的な拘束までいま考えられるような方向で行っているのか、いま御説明のあった点ではまだ結論が出ない段階ですから、これからもいろいろな議論が恐らく出るであろう。しかし、法的な拘束という主張が展開されたというその裏には、それなりに被害を受けた、あるいは被害を受けるであろうというおそれ、いろいろそういうようなことも絡み合ってそういう意見が恐らく出たんではあるまいか。日本の場合、一体、そういう意見が出た場合——これからも出ると思うんですね。ただ、いまおっしゃったお考えだけを伺っていると、それでいいのかなという感じもいたしますしね。まだ漠として、どういう方向で行くんだ、国連ではこういうことを提唱して、せめてこれだけのくさびは打ち込んで合意を得るために努力をするんだというみたいな基本的な姿勢というものが欠けておられるんではないだろうかな。それをまだ政府部内で、外務省部内で検討の段階なのか、その点、鳩山さんにもひとつ御見解を承っておきたいと思うんです。
  100. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) その点につきましては、実は、政府部内におきまして関係庁間でも何度も何度もいわゆる勉強会をいたしまして、あらゆる角度からどういうふうにこの問題を解決したらいいかということを研究しております。先ほど行動規範はいつごろでき上がるかちょっと見当がつかないということを申し上げましたけれども、あの委員会の作業部会の目標としては、来年中に何とか案をまとめようという方向で努力しております。  それから、日本政府の立場をもう一度要約いたしますと、要するに多国籍企業の積極面はできるだけ活用していくと同時に、マイナス面については、でき得れば何らかの規制を加えて、たとえば腐敗行為の問題については、国際的な規制を加えられる方向で、国際協力という観点からほかの国々と一緒にいろいろ意見を交換しているわけでございます。  なお、先ほど多国籍企業の定義という話が出ましたので、ちょっと補足させていただきますけれども、多国籍企業委員会の付託事項の中にも、実は、多国籍企業の定義というのは何であるのかという問題が一つ入っているくらいで、それほど国際的にも全く現在のところ合意が達成されていない。それだけになおさら行動規範の策定あるいは腐敗行為防止のための協定づくりも、大体、対象そのものがはっきりしていないという点から、非常に困難を伴っているということを補足的に申し上げます。
  101. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、この多国籍企業の持つこれからの役割りというのはいい方向へ向かってくだされば、大変これは国家的な利益にもつながるでしょうし、あえて国民にとっても非常に恩恵を与えていくという、そういう関連があると私思います。  ただ、先ほど来から申し上げておりますように、残念ながら今日までの時間的な経過の中にはいろんな忌まわしい問題が起きましただけに、これは日本としても恐らく海外投資の面ではアメリカイギリスに次いで第三番目じゃないですか、いま。それだけ非常に巨大な海外投資がなされている。と同時に、海外における企業活動というものも相当数に上りますね、これは。したがって、むしろ外国の企業云々という問題よりも日本企業海外においてた果すいろんな行動というもの、これが適正に行われて、たとえば一番きょうの問題で一つの視点になりましたのは、脱税行為なんかが行われないという、そういう正確さはやはり期していってもらいたい。これはもう社会秩序を安定させる上からもどうしても必要な事柄であるし、と同時に、これからどんどんどんどん海外に向けられた場合に、一体、国内日本企業はどうなるんだろうと、相当制約を受けてくるだろうと、それはひいては雇用問題にまで波及してこないかという実はおそれも出てくるわけですよ。その辺は政府部内でも十分検討され、あるべき姿というものを描いていらっしゃるだろうと思うのです。  非常に限られた時間で、この問題はまだまだ、やはり後日にさらに新しい展開を示す段階において問題にしなければならない事柄で私はあろうかと思います。もっともっと本当は細かいところにまで触れて、現在行われている実際のありさまというものを浮き彫りにしながら、日本として考え、取り組んでいくその姿勢というものを決めていく必要があるのじゃないかというふうに、私はいまずっと御答弁を伺いながら、全体的には非常に御努力なさっていることは評価するといたしましても、もう経済活動も毎日のように生き物ですから動いているわけでございます。その間にどういう不正行為が行われないというこれも保証がない。われわれはもう、くどいようですけれども、過去において大変国辱的な恥ずかしい思いをした事件も味わっておるわけです。そういうことの絶滅を期する上からも、正しい経済あるいは企業活動のあり方というものを確立する上からも、この多国籍企業の今後のあり方というものは非常にやはり重要な面を持ってくるのではあるまいか。それについて最後に一応きょうの締めくくりとして鳩山さんの今後の展望に立っての御見解というものを伺っておきたいと思います。
  102. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) わが国企業が大変な勢いで海外進出をしておるわけでありまして、この企業の行動のいかんがこれまたわが国に対する評価に直接つながってくると思います。そういう意味で、わが国として、特に東南アジア地帯に対しまして先般福田総理の御訪問等もありまして非常に緊密な関係になってきつつありますが、やはり一番大きな影響を与えるものは、わが国の進出した企業の行動いかんにあろうと思います。そういう意味で、この行動の規範というものが守られていくような環境をぜひつくらなければならない。それにはOECDの場面、また国連の場面を通じまして、そういった規範がはっきりしたものができることが本当に望ましいわけで、外務省といたしましても、これらのりっぱな規範ができること、そのために最大の努力をいたしたいと思います。  また、現実問題として、それぞれの国の商慣習というようなものもずいぶんそれぞれまちまちであろうかと思いますし、また、端的に申して、日本国内でそれでは本当に正しい取引ばっかりが行われているのかということになりますと、日本国内でもリベートとかいろんな問題があって国税庁もずいぶん苦労しておるわけでございます。そういうこともあり、わが国自身の商取引というものもやはり正しい方向に進んでもらいたいし、それがまたひいて国際的にも評価されるようになる必要があろう、そういう意味でりっぱな規範ができるということがまず必要でありますが、それ以上に経済関係におきます倫理というものが高まっていくことがまず何より大事ではなかろうかというふうに考えておりますし、今後とも努力をいたしたいと思います。
  103. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 どうかその方向でこれからも絶えざる御努力をお願いしたいと思います。衆議院においては、御承知のとおり、外務委員会の中に多国籍企業小委員会というものを設置されるというそういうこともございまして、これから重要な一つの政治的課題として取り組んでいこうという意気込みもございます。その辺も十分踏まえていらっしゃると思いますので、きょうのところは、一応、多国籍企業についてはこの程度にしておきたいと思います。  きょうは、このほかに中南米あるいは中近東についての経済協力の問題をお尋ねしたかったわけですけれども、あと持ち時間がわずかでございますので、これに及びますとまたさらに相当長時間食いますので、ただ、最後に、移住関係の問題についてちょっと触れさしていただきたいと思うわけでございます。  戦前、戦後というふうに分けてみましても、特に北米から南米等にかけての移住というものは、現在、百五十万人に達しているそうでございます。今後、移住という問題についてどういうふうな考え方をお持ちになっていらっしゃるのか、本来ならば、きょう、国際協力事業団ですか、法眼さんに来ていただいて、その見解をお尋ねしたかったんですけれども、きょうのところは、まず外務省の方から、今後の基本的な考え方というものをお尋ねしておきたいと思います。
  104. 角田勝彦

    説明員(角田勝彦君) 海外移住は、移住者が主体性を持ってみずからその運命を開拓する行為でございますけれども国民に新天地におきまして創造的な活動を行う機会を与えることによりまして、日本人のフロンティアスピリットの醸成に役立つのみならず、開発能力の現地移動といたしまして受け入れ先国の開発に貢献し、ひいては日本及び日本人の声価を国際的に高めるとともに、世界の発展に役立つものであると、かかる見地に立ちまして私ども移住行政に携わっているわけでございます。特に開発途上国への移住は、結果的には、技術移転ともなり地域開発にも貢献する、このように考えております。  最近におきまして、移住に関連いたしまして、受け入れ先国の拡大または新しい移住形態の発生など移住の発展の兆しも見えておるわけでございますが、国内におきまして移住希望者の要請というものが増大いたしますならば、私どもも、それに対応いたしまして、きめ細かくかつ現実に即応した努力というものを払っていきたいと、このように考えております。
  105. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 御承知のとおり、狭い日本のような山岳列島に一億一千万、後二十年を超えますと一億五千万というふうに人口統計学では言われている現状を踏まえた場合に、これから日本の国土には何人一体住めるのかという許容量の問題についてもまだまだ検討されてない段階でもありましょう。食糧の問題、エネルギーの問題、これは日本が抱える宿命的な課題だろうと私思いますね。  特に、中南米については非常に歴史も古く、明治四十年ぐらいからブラジルを中心として海外進出が試みられて現在に至っているわけでありますけれども、いま基本的な考え方としてお述べになりましたように、日本のすぐれた技術の提供、農業からあるいは工業へというその発展を願っている国、いろいろその国によっても、特に中南米の場合は差があるだろうとは思いますけれども、まだまだそういう面における平和と繁栄ということを大前提として考えた場合に、日本人の果たす役割りというものは非常に大きいものがあるんではなかろうか。単なる資金面の海外援助ということだけではなくて、実質的にそういう人の定住ということを図りながら、その国の発展のために寄与する、これがやはり物のない日本がとるべき本来のあり方ではないかというようなことから、きょうはもう余り時間がないものですから、鳩山さんもひとつ、後日に譲りたいと思いますけれども、ぜひその辺の御方針と、それから今後のそうした問題についての日本としてのきめ細かい対策というものをどう考えているのか、どういうふうにこれから推進をしていくのか、とかくこの問題は忘れがちになるんです。いままでもずいぶん棄民だなんだということで大変国際的にもあるいは日本国内における社会問題としても提起された事実もございます。そういうようなことを全部整理をしながら、今後の方向というものをぜひお聞かせをいただきたいということを最後の締めくくりとして御要望だけ申し上げまして、きょうは、一応、終わっておきたいと思います。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 投資保護協定についてお尋ねしたいんですが、今回のエジプトとの相互保護協定に関してはエジプトの側からの積極的な申し入れがあって結ばれたというふうに聞いているわけですが、エジプトが一九七三年以来積極的に外資導入の政策に踏み出して、国内における外資保護法も改正したというふうに聞いているわけですけれども、エジプトがそういうふうな政策を取り出した背景といいますか、エジプトの状況について日本としてはどういうふうにお考えになっておられるのか、まず、その点からお尋ねしたいと思います。
  107. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) お答えいたします。  御承知のとおり、エジプトの一九七一年制定の憲法によりますと、エジプトは社会主義ベースにした管理経済体制をとっております。ところが、これは四次にわたる中東戦争に有効に対処するための必要な条件であったわけでございますが、四次中東戦争以降、エジプトは政策を百八十度転換いたしまして、国内経済の開放体制というものを大いに推進していった。そのために欧米諸国それからアラブ産油国からの対エジプト援助、それから民間企業投資というものを誘致するという方向を打ち出しました。  このような背景もございまして、昭和四十九年エジプト側がわが方に対して民間経済協力の促進を要請するとともに、この協定締結について打診があって、わが方としても、当時、日本の対外投資が非常に将来ふえるという見通しのもとにおいて、わが国の在外企業資産の保護ということに大きな認識を抱いておりましたものですから、この協定締結交渉に踏み切ったと、そういう次第でございます。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 エジプトの歴史的な経過、さらには、あそこの外貨事情国内的な経済事情というのが非常に大変になっておるというのはわかるわけですけれどもわが国としては、いままでこの種の問題に関しては、たとえば既存の国内における投資保険による保護だとか、あるいは国際的な仲裁裁判ですか、などによって十分だというふうに考えられてきていたんではないかと思うんですけれども、今回、こういう投資保護協定を結ぶということにわが国としても積極的に踏み出した必要性といいますか、背景というか、そういう考え方がどこにあるのかということを次にお尋ねしておきたいんです。
  109. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) お答えいたします。  わが国は伝統的に貿易を中心として発展してきた国でございますが、近年、後発的ではございますが、わが国の対外直接投資も非常なペースでふえておりまして、七六年度末現在で百九十四億ドルになっておる。こういったわが国海外投資の増加が一つの大きな背景になっておりますし、他方、国際投資をめぐる国際環境というものも必ずしもよくない。特に、開発途上国におきましては資源ナショナリズムという風潮が非常に高まっておりまして、そういった意味からも、要するに海外投資を促進する環境の整備を行う必要がある、そういう認識に立って、それで条約締結に踏み切った次第でございます。今後も、そういった方針わが国投資環境を整備するという努力の一環として、投資保証協定締結には大いに努力をしていきたいと思っております。
  110. 立木洋

    ○立木洋君 通産省の方お見えになっておると思いますが、いまのお話によれば、エジプト側から問題が提起されてきたと、日本側としても要請されたから受け身の形で結んだということじゃなくて、日本側としてもそれなりに結ぶ必要性があったという趣旨の説明だと思いますが、この投資保護協定について、今後、どういうふうに海外投資等々の問題——これはただ単にエジプトだけの問題ではなくして、さらにこれを、先ほどのお話にもありましたが、モデルとするというふうな発言もあったわけですが、こういう投資保護協定を今後他国との関係においても拡大していく考えがあるのかどうなのか、その点についての見通しや可能性についてはどういうふうに考えておられるのか。
  111. 原田稔

    説明員(原田稔君) 何と申しますか、国際的に投資を活発化するということは、これは開発途上国の開発効果あるいは国際的な分業を進めていくというような観点からも非常に必要なことだと基本的に考えております。したがいまして投資保証協定につきましても、先方からの御提案があれば、先方の実情等も踏まえまして、これは積極的に取り組んでいきたい、かように考えております。
  112. 立木洋

    ○立木洋君 外務省、いままでそういう点で相手側から、エジプト以外の国で、そういうふうな意向の打診だとか、あるいはまた日本側からもそういう問題を話をするとか、というふうなことはほかの国ともあったんでしょうか。
  113. 賀来弓月

    説明員(賀来弓月君) 現在のところ、近い将来に正式な条約締結交渉を予定している国はございませんが、過去、非公式あるいは内々の打診あるいは照会という形で、若干の国からこういった条約締結の可能性について打診は受けたことはありますし、また、私どもの方でも、そのような打診を非行式にやったことはございます。たとえばブラジルとかアルゼンチン等がございます。
  114. 立木洋

    ○立木洋君 この間、大臣、インドの方にお回りになったときも、大臣がその種、その種といいますか、インドの投資環境が改善されない限り、わが国の民間企業の進出は困難であるという話をしたところ、まあ相手の外相は改善を検討しているという趣旨の話があったというふうに見たんですけれども、この点はさらに進むというふうな状況にあるんですか、どういう状況だったんでしょうか。
  115. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) インドへ訪問いたしましたときに、バジパイ外務大臣との間で、いまお話のあったような応答がございました。インドは、特にわが国に対しまして、各分野におきます投資の希望の表明がございました。鉄鋼、造船あるいは銅の製錬、そのような事業につきまして日本の参加を希望するというような話がございました。  それに対しまして、日本企業の進出につきましては、やはり投資がある程度保護されなければならないということで、それにつきまして、先方が、先方の方で外資に対する、何といいますか、従来からの政策を改めるという方針であると、こういう表明がございました。先方国内法におきましていかなる措置がとられるか、まだ結果は参っておらないのが実情でございます。
  116. 立木洋

    ○立木洋君 これはなかなかむずかしい判断かもしれませんけれども、そういう幾つかの国を回られた感想といいますか、あるいはその他外国にもおいでになっているわけですから、こういう投資保護協定を積極的に今後ほかの国ともどんどんつくられていく状態にあるというふうにお考えになるのか、あるいは、なかなかそういう困難な点もあるというふうにお考えになっておられるのか、その点の将来のこの問題に関する見通しについては、大臣、いかがでしょうか。
  117. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) このエジプトのような投資保護協定というような形で行われますのか、まあ先方国内法としていろいろ整備をしてされるということになるのか、いろいろな形があろうと思いますが、これから特に日本に対して資本並びに技術の要請が非常に世界的に強まっておるというふうに感じました。そういう意味で、この投資の保護という、そういう必要性が高まっておるというふうな感じを持っております。
  118. 立木洋

    ○立木洋君 通産省の方、この間、今月ですか、通産省で検討されて、外貨減らしに途上国の援助や投資をふやしていくという問題が検討されておるというふうに新聞で報道されているわけですけれども、この点については、今後、どういうふうにしてこの外国に対する投資を広げていくというふうな考えなんでしょうか。
  119. 原田稔

    説明員(原田稔君) 最近は、全体として景気が余りいまよくないものでございますから、比較的海外投資もやや落ち込みと申しますか、そういう状況にございますが、基本的には、先ほど私がざっと申し上げましたとおり、国際分業あるいは資源の確保、あるいは望ましい通商関係の維持、発展といったような観点から、適当な海外投資は進めていく必要があると思っております。そういった意味で、主体はやはり民間でございますから、いろいろな情報の提供あるいは適当な指導、こういったものをベースにいたしまして進めてまいりたい、かように考えております。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 で、いま先ほど大臣が言われました点ですね、確かに幾つかの国では、外国の資本の導入を求めるというのが発展途上国の経済開発を願う状態から生まれてきているということは、私はそのとおりだろうと思うんです。もちろん、私たちも、経済的にそういう民間資本が外国に進出するっていうことがすべて悪いなどというふうなことを考えるつもりは毛頭ありませんけれども、ただ、問題は、従来のようなやり方ではやはりだめだろう。少なくとも開発途上国がどういうことを求めていまいわゆる外資の導入を考えているのかという、外資の導入の投資の仕方やあるいはやり方の問題というのは相当検討しなければ、かつてのようないろいろな形での反発をかえって受ける状態も再び起ってこざるを得ないというふうに考えるわけですが、この点について、開発途上国といいますか、発展途上国がこの外国の民間資本の導入、投資する側から言えば投資ですが、これについてどういうふうな基本的な考え方を持っておるというふうに考えられておられますか。
  121. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日本企業が進出する場合の相手先は、やはり国によってそれぞれ考え方を非常に異にしておると思います。日本企業進出とともに、たとえば機械とか設備を日本でつくる、あとのことは適当に指導して帰ってもらいたいというような考え方を持つ国もありましょうし、必要なことはあとの運営まで日本責任を持って、やはり企業の経営にまで立ち入って管理をしてもらいたいという考え方のところもございましょう。  従来、日本としては設備を先方に出す、日本から言えば輸出面に重点を置いたような投資が多かったのではあるまいかと思います。しかし、これから技術面、技術の移転というようなことを中心に考えてみますと、やはり経営まである程度日本責任を持っていく必要があるという、そういう形がふえていくのではないかというような漠然とした考え方でおりますけれども先方の国によりまして、それは大変違いがあると思います。
  122. 立木洋

    ○立木洋君 前にも、大臣にこの点で質問申し上げたことがあるわけですけれども、非同盟諸国が先般首脳会議を行って経済宣言を出しているわけですね。もちろん大臣お読みになっておられるだろうと思いますけれども、この経済宣言、つまりこれは八十六カ国が正式な加盟国として、外国との経済関係についての基本的な考え方、いま大臣おっしゃったように、個々の国においてはそれぞれの条件の違いから要望の違いというのは具体的にはあらわれてくるでしょうけれども基本的には、そういう外国との経済関係、たとえば外国の資本をその国に受け入れる場合にどういうふうな基本的な立場でなければならないかという点については明確に述べているわけですね。  特に、その点で主張しているのは、あくまで自分たちの国の経済の自立、それから自分たちの主権を侵されないようにするということ、それから植民地主義的な経済の進出には反対をするというふうな点が非常に強く述べられていると思うんですよ。こういう点から、日本側が、先ほど来渋谷委員の方からも指摘がありましたけれども、ただ単に日本企業が莫大な利潤を、外国に資本を投資して、そこから吸い上げてくるということだけでやられると、これは外国との経済関係というのはうまくいかないというのはもう御承知のとおりで、その点で改めなければならない問題点が私は多々あるだろうと思うんですね。  それで、日本政府が先般の国連で採択されました経済権利義務憲章について棄権をした。あの中では、特に第二条の問題、この点に反対がある、二条、五条、六条、十九条、二十八条に日本政府としては反対であるために、全体的にこの経済権利義務憲章に棄権をしたと。この中には発展途上国の要求というのも相当盛り込まれた憲章になっているわけで、日本政府としては、この二条にどういう点で反対をされたのか、どういう意味からこの二条については特に反対したのか、投資の問題に関連していますから、その二条の点について反対された内容をまずお聞きしておきたいと思うんです。
  123. 八木真幸

    説明員(八木真幸君) お答え申し上げます。  第二条は、天然資源恒久主権の問題でございます。天然資源恒久主権と申しますのは、開発途上国が有しておりますそれぞれの天然資源、これに対して自分たちは一〇〇%それを自由にする権限がある、こういうことでございます。たとえばOPECはこういう考え方で一九六〇年に結成されたものでございます。ところが、天然資源恒久主権ということで、そこにたとえば多国籍企業が進出いたしておるといたしますと、その企業に対して何らかの制限を加えることになるかと思われます。特に接収、没収、こういった形で紛争が生じました場合に、その紛争をいかなる形で調停するかということに関しまして、これも、いや受け入れ国の方が全般的な権限を持っているので受け入れ国の裁判によって全部を決するんだと、こういう考え方も一部の急進的な開発途上国の中ではあるわけでございます。そういたしますと、公正な裁判が果たして期待できるのかどうか、この辺が若干問題になる点があるかと思われるわけでございます。  そこで、一体、天然資源恒久主権、その主権そのものに対しましては、わが国としてはこれはもう問題なく認めましょう、こういう姿勢でございますが、今度はじゃ紛争が生じた場合、それは国際的な調停機関、こういったところで十分なる話し合い、あるいは第三者の公平なる、たとえば国際司法裁判所というのがございます。この国連の権威ある司法裁判所の判定に従うといったような形で判定が下されますことをわれわれは希望しておりまして、受け入れ国の一方的な決断あるいは裁判の結果に縛られることに関しましては私どもは若干の疑義を有しておる、それがゆえにこの条項に関しましては、私どもとしては賛成できなかった次第でございます。
  124. 立木洋

    ○立木洋君 それぞれの国に存在しておるいわゆる資源はその国自身が主権を持って自由にすることができるというのは、これは当然の権利だと思うんですね。日本にある資源が外国から来て勝手に持っていかれたら困るというのは、これはどこの国でも同じだろう。しかし、問題は、いままで実際に続いておるそういう多国籍企業等々がいわゆる国有化やその他の収用がなされた場合の補償諸題で、それをどういうふうにして解決するかという問題だけだというふうにお述べになったならば、この第二項で言われておる「自国の国家管轄権及び範囲内で、外国投資を規制し、それに対し権限を行使すること。いかなる国家も外国投資に対し特権的待遇を与えることを強制されない。」という「いかなる国家も次の権利を有する。」という(a)項については、特に異存はなかったわけですか。
  125. 八木真幸

    説明員(八木真幸君) 御指摘のとおりでございます。
  126. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、現在の時点で——国連でこの憲章が採択されたその時点では、日本政府としては幾つかの条項について疑義があり反対があって棄権をしたと言いますが、現在の時点では、この経済権利義務憲章に関しては、日本政府としてはこれを尊重する立場なのか、こういうものはわれわれは棄権したから守る必要がないという立場なのか、その点について、大臣、どのような日本政府としては態度をとっておられるんでしょうか。
  127. 八木真幸

    説明員(八木真幸君) ただいまの御質問でございますが、経済権利義務憲章、これは一九七四年十二月十二日、国連総会において採択されたものでございます。この憲章を審議するに当たりまして、わが国は、本憲章の作成自体が開発途上国の利益の保護と国際経済上の国家間の公平な権利義務関係の実現を目的としているものと確信いたしまして、これに賛同をし、かつ、普遍的に受諾可能な文章の採択に全力を挙げてまいった次第でございます。ところが、開発途上国側から一方的なと申しても差し支えない主張が若干出てまいりまして、そのために、これらの条項を含んだ部分に関しまして全般的にわが国としてはこれは賛成することは困難であると考えて、当時の状況から、わが国は、これが投票に付された場合にはどうするか、政府部内でも懸命に検討した次第でございます。その結果、反対の国もあったわけでございますが、わが国としては棄権に回った次第でございます。
  128. 立木洋

    ○立木洋君 いや、そのときの政府考え方はわかっているんですよ、なぜ棄権をしたかというのはね。だけど、いまの時点で、すでに採択されているわけですから、それについて、この権利義務憲章を日本政府としては尊重して、やっぱりこの内容に盛られた点については遵守していくというふうな立場なのか、われわれは棄権したんだから守らなくてもいいというふうな考え方なのかどうかという現時点のことを聞いているんです。
  129. 八木真幸

    説明員(八木真幸君) 現時点での御質問でございますが、実は、わが国を含めまして棄権もしくは反対された、いわゆる合意されてない部分に関しましては、それぞれが現在いろいろなフォーラムにおきまして検討中でございます。たとえば、先般終わりました国際経済協力会議——CIECと申しておりますが、このパリ会議におきましても大半の争点の部分がこういった関連部分でございます。私どもといたしましては、できる限りそういうフォーラムにおきまして一つ一つ合意可能な形で解決できるように全般的な努力を重ねております。
  130. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、いまお話がありましたように、いわゆる発展途上国に対する投資の問題ですね。これはいわゆる投資する側から言えば、当然、投資家は自分たちの投資が完全に安全でなければ困るわけですし、そしてそれが何とかして保護されていないと安心して投資できない。今度、受け入れ側からするならば、投資家の利益の保障が強過ぎるために、その国の権利が一部分侵されるだとか、あるいは、そこの国の主権といいますかね、大きく言えば、それが侵害されるということに対する懸念がまた受け入れ側では起こってくる。自分たちの経済の自立、自分たちの国の資源に対する恒久主権の要求、そうして自分たち自身が、外国資本がどんどん入ってきて膨大な利益をどんどん収奪して外国に持って帰られるというふうなことでは大変困る、そういうふうにならないように、少なくとも自国の経済自立に役立つようなあり方にしてもらわないと困るということが常に問題になってきます。  この間の民間の太平洋経済委員会の議論でも、そういうことが議論されているというふうに聞いているわけですが、この問題の解決というのは非常に私は重要な問題だと思うんですよ。今後の外国に対する経済協力のあり方として、日本がどういう立場で臨んでいくかという非常に基本的な問題にかかわるだろうと思うんです。その点で太平洋経済委員会が一九七二年、第五回総会で採択した「国際投資に関する太平洋地域憲章」の再検討を決めているわけですが、これがその後どういうふうな議論がなされ、現在、どういう段階まで来ているのか、通産省にお尋ねしたいと思いますけれども
  131. 原田稔

    説明員(原田稔君) 主として民間の業界ベースで話が進んでおるもんでございますから、私ども、実は余り詳しく存じ上げていないわけでございますが……
  132. 立木洋

    ○立木洋君 これは民間といいましても、私は重要な一つ会議だと思うんですよ。ここでは金融問題それから環境問題、その他いろいろあって、いわゆる外国に対する投資の問題がどうなければならないかということが議論されている。最近では、この委員会の中に発展途上国の国々も幾つか参加していて、この中での議論をやはり正しくつかまえておらないと、通産省として、民間が外国に投資をやっていく場合にどう指導するかという問題に私はかかわってくるだろうと思うんですよ。その点については知らないと言うのですから、聞こうとしても聞けないわけですが、もっとその点はよく検討していただきたい。  この中でも、最近、議論されている点で言いますと、いわゆる投資側の国とそれから受け入れ側の国との矛盾といいますか、問題点というのが非常に大きな問題になりつつあるというふうに言えるだろうと思うんです。つまり外国の資本が入ってきて環境に対するいろいろなよくない影響を与える問題、その他いろいろな問題が議論されていると思うんですね。ですから、この点は特に事情をよくつかんで今後のあれに生かしていただきたいと思うんです。  それで「発展途上国に対する投資行動の指針」というのが、経団連を初め五つの日本経済団体で決められて、九項目にわたって、これは自主規制ですか、お互いにこういうことは守ろうではないかというふうなことが約束された文書が、昭和四十八年の六月ですか、出されておりますけれども、この九項目にわたる内容が実際によく守られているのかどうなのか、あるいはどういう状況になっているのか、以前の状態と比べて改善された点があるのかどうなのか、その点については通産省はどのように把握しておられますか。
  133. 原田稔

    説明員(原田稔君) 四十八年に、民間の関係五団体でいま先生が例示なさいましたガイドラインをつくったわけでございます。これは私どもの勧奨等によってつくったわけでございますが、その後、四十九年に日本在外企業協会という、民間の海外投資をしている主要な会社で団体をつくりまして、シンガポール等々に相談所を設置いたしまして、その民間のガイドラインの普及と申しますか、あるいは現地におけるいろいろな相談といったようなものに当たっておるわけでございますが、そのガイドラインに書いてあるようなことの実施の状況がどうなっているかということでございますが、一、二事例をちょっと申し上げますす。  たとえば、なるべく現地の人を登用するとか、現地の雇用を推進する、あるいは現地の方々をなるべく管理職につける、こういったようなことも中に書いてございますが、私ども、こういった海外投資の状況につきましては、ここ数年、フォローして調査しておりますが、当然のことながら、全体として海外投資が増加しておりますから、したがいまして発展途上国等でそういう工場等で働いている人員数は相当ふえておりますが、その中での日本人の割合は相当に低下しております。それから管理職ですとか、そういった幹部の人数の中で日本人の占める割合、これも相当程度低下しております。そんなようなことで数字的にはそういった点にもある程度出ていると思われますが、大体の方向としては、何と申しますか、好ましい方向で事態は推移しているのではないかという感じを持っております。
  134. 立木洋

    ○立木洋君 それはどういう方法で調査されたのか、あるいはそれを調査するのにどれだけの予算が組まれているのか、その点はどうですか。
  135. 原田稔

    説明員(原田稔君) これは日本企業海外に子会社を持っている企業等がございます。これは約三千社ございますが、それに全部アンケート表を配りまして、それでいろいろな経営状況ですとか、その他のいろんな項目につきまして数字的にあるいはアンケート的に調査をしておるわけでございますす回答は約半分ぐらいでございますが、日本から出ている海外投資の金額のウエートでいきますと七、八割を占めておりまして、大体の傾向はそれでつかめるのではないかと思っております。  予算は、ちょっといま手元にございませんが、大体三、四百万ぐらいの予算で毎年やっております。
  136. 立木洋

    ○立木洋君 予算は二百二十万ですよ、年間。二百二十万といったら一人分の給料でなくなってしまうわけで、これは調査するといったって、三千の会社があってアンケートを出して、それは書いたのがそのとおりそのままごもっともでございますという集計ですよね、通産省としては。ほかに具体的に調べるということ、もちろん外国に行って調べるとなれば、いろいろこれは問題がありますでしょうけれども、しかし、十分に実態を把握しているとは言えない。  私はバンコクで何人かの人に聞いたわけですけれども、ほかの外国の企業というのはどんどん現地の人を幹部に登用しておる。日本人というのは、大体幹部というのは全部いわゆる出向社員、日本人で占めてしまって、あとは下部の現場で働いている労働者というのは現地人を採用する。だから、なかなか折り合いがうまくいかなくて、いろいろ矛盾が起こるとかいう問題も聞きましたし、賃金の格差というのが非常にひどいという問題、それから保障制度等々については、その雇用条件というのが他の外国の企業に比べると好ましくない、あるいは公害等の問題、いろいろなことを私も聞いたことがあるわけですけれども、これは先ほど言いました、その国のいわゆる経済的な自立、本当にその国の働いている人々が技術を身につけて経済の自立に役立つような方向になり得るかどうかということから考えるならば、当然、下働きではなくて、やはり幹部に登用して、実際に現地の人々が技術を身につけて工場なんかを運営していけるようなことなんかも私は必要になるだろうと思う。そういう細かい問題に入ればそうですけれども、これは、先ほど言った、本当に日本のそういう外国に対する投資がその国の経済の自立、主権等々を尊重しながらやっていく立場に立つかどうかという点から考えるならば、私は、非常に重要な問題だろうと思うんです。  ですから、これはもちろん経済五団体が決めたのは自主的にこういうことは守り合っていきましょうという趣旨で決めただけであって、それはもちろん拘束力もないし、これに対して行政的に処罰の規定はもちろんあるわけでないわけですよ。しかし、その点の指導を強めていただくことが非常に大切だろう。  それから、もう一点は、大臣、開発途上国の経済のあり方に対する要求、それから主張という問題については、今後、経済外交を正しく発展さしていくために私は欠かすことのできない点だろうと思うんですよ。大臣はお読みになっているだろうと思ったけれども、どうも読んでおられないようで、横に一生懸命聞いておられたから。ですけれども、これはやはり大臣お読みになっていただくと同時に、外務省の経済関係の幹部の方々はぜひ私は読んでいただきたい、通産省の方々もそうですけれども。  本当に外国との経済の正しい協力関係がなければ——いま外国から投資してほしいという状況が一時出てきている。これに便乗してどんどんどんどん投資をして、いわゆる好ましくないやり方で、もしかそれが進められるとするならば、再び日本経済進出に対する海外からの批判の声が高まるというのは私は目に見えているだろうと思うんです。企業家というのは利益がなければ外国に資本を投資しませんから、当然、利益がなければならない。しかし、そのことが行き過ぎて、外国に対する主権の侵害や、その他好ましくない事態が発生すれば、これは決して日本にとってよりいい状態をつくり出さないということもいままでの経緯から見て私ははっきりしていると思うんですね。この点を私は今度の問題に関してはぜひとも大臣にもお願いしておきたいし、その点のあり方というのをぜひ検討していただきたいということを申し述べておきたいわけですが、この点に関する大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  137. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいまのお話は「諸国家経済権利義務憲章」に絡んだお話だと思います。私ども、この憲章がとにかく賛成が圧倒的多数で採択されたという事実がございます。この内容は発展途上国の立場を非常に強調したような点がありまして、その点につきまして、私どもといたしまして、途上国の多くの人の主張というものがこういった面にあるということを十分心にとめて、これから臨まなければなるまい、かように思います。  ただ、きわめて残念なことに、過去におきまして進出した資本がほとんど没収に近い形で国有化されたり、そういう例が非常に多かったわけで、過去においてそれらのことが適正に扱われてきたのであれば、ここに主張されているような点につきましても、これはそれなりに私は通っただろうと思う点もあろうかと思うのです。しかし、現実にそのような歴史上いろんなそういった事実があったということも忘れ得ないことでありますので、そのようなことが今後ともまたどんどん起こるということであれば、これはとても海外投資などできないということになってしまうわけでありまして、そういう点はやはり発展途上国との協調関係で進めていくことが望ましいわけであって、途上国の立場というものもよく認識しながら進めてまいるべきであるというふうに考えております。なお、今後、よく検討してまいりたいと思います。
  138. 立木洋

    ○立木洋君 次に、電気通信条約なんですが、電気通信の開発が第一次国連開発十年計画に従ってエカフェの二十九総会で検討され、その後なされてきておる。この問題に日本政府が加盟する。先ほどのお話にもありましたけれども日本としては電気通信の技術は非常に発達した状態にあるわけですし、また、これに参加することによって果たす役割りも大きいでしょうし、また、その期待も一面では非常に大きいんではないかというふうに考えるわけですが、日本政府がこれに参加する場合の基本的な姿勢といいますか、その点を最初に伺っておきたいと思います。
  139. 中山一

    説明員(中山一君) お答えいたします。  ただいま先生から御指摘の点でございますが、基本的にはこれから設立されようとしておりまするアジア=太平洋電気通信共同体は、アジア太平洋地域の国々の電気通信関係行政及び事業に従事する人々の自発的意思といたしまして、みずから国内の電気通信の開発を行い、かつ、それをつないで地域電気通信網をつくっていこうとする機運に沿うものでございます。  そこで、これから私ども承認をいただいた後でこれに参加していく場合の基本的マインドといたしましては、そういう地域の要請に沿ってそれに協力していくという国際協力マインドから対処する所存でございます。
  140. 立木洋

    ○立木洋君 最近、電気通信産業連盟がプラント輸出振興に関する提言というのをまとめて発表されていますけれども、これについては政府はどういうふうな評価といいますか、対応をしているんでしょうか。
  141. 菊地清明

    政府委員(菊地清明君) いまお話しの点は「電気通信プラント輸出振興について(提言)」ということに関する御質問だと思いますけれども、私たちもこれを拝見さしていただきまして、全体としてこういった方向は非常に結構だと思っております。ただ、これは輸出振興的な面から主として書いてございますが、私の方としては、このほかに発展途上国のいわゆるインフラストラクチュアに相当する電気通信というものは政府開発援助等を通じても側面的に援助していきたいということをつけ加えさしていただきます。
  142. 立木洋

    ○立木洋君 外務省からいただいたこれの第一回目の説明書ですね、説明書の第一項の一番最後のところに——地域内の大半の国がわが国技術、機器を導入している現状をも勘案すれば、本共同体への参加及び積極的協力が今後のわが国電気通信産業振興上大なる効果をもたらすものと考えられる、というのが一番最初いただいた資料には載っているわけですが、今度の提案理由の説明にはこの部分が入ってないんですけれども、これはどういう意味合いでしょうか。
  143. 中山一

    説明員(中山一君) 先ほど、私の方から、この共同体に私どもが参加します基本マインドはもっぱら国際協力マインドから参加するんだということでございました。で提案理由説明なども同様のトーンですべてでき上がっておろうかと思います。  これはもう先生すでに御承知のことでございまするが、実体からいたしますると、この地域の電気通信の開発、いま目途といたしておりますのは、当面は、イランからインドネシアまでのネットワークをマイクロウエーブ網で進めようとしている計画であろうかと存じております。そのマイクロウェーブの分野でございますが、実は、日本技術がソフトウエアの分野でもハードウエアの分野でも非常に進んでいる分野であろうかと思います。これはもう途上国どこへ行かれてもおわかりのとおりでございまするが、パラボラアンテナが各地に見られますが、それの恐らく五割以上——これは具体的な計数としては恐らく通産省がお持ちだろうと思いまするけれども、私ども通信行政のサイドから承知しておるのがおよそ半分以上わが国のハードウエアが出ているだろう。そういう点からいたしますと、結果的にわが国のそういう機器の輸出に結びついていくだろうというトーンから書かれたものであろうかと思います。
  144. 立木洋

    ○立木洋君 これも私はさっきのあれと関連があると思うんですけどね、だから国際的な連帯、協力ということがただ単なるお題目になっちゃって、実際には日本のそういう電気産業、通信のそういう大企業のもうけが主体になるような考え方で加盟をするということになれば、これはやはり主客転倒になるだろうと思うんですね。その結果として、いわゆる日本の産業の発展ということになれば、これはそのこと自体が悪いというものではもちろんないが、しかし、何しろいまプラント輸出振興提言が出されてきて、政府も一体となってこれをどんどんやってくれという要求が出されてきている。だから私ははしなくも最初の資料にはそれが出ておったと思うんですよ。  後で考えてみると、この部分は適切ではないというふうに考えたのかどうかは知りませんけれども、実際には提案理由の説明には除いてあるんですよ。ここらあたりは、これは外務省としては政治家だから最終的には除いたんだろうと私は思うんだけれども、いわゆるこういう考え方、外国との経済協力だとか、そういう国際企業に加盟する場合の日本基本的な姿勢のあり方、それが本当に正しい形で経済協力を打ち立て、その結果として日本の産業が発展していくということになるのであって、日本の利益を、日本の産業がどんどんどんどん何しろ金もうけがいいんだということでやるんならば、これはやはり主客転倒になって、ある意味ではまた批判を受けるということになるので、この問題も関連してその点は指摘をしておきたいと思うんです。  それで、インドシナ三国は加盟するという見通しにはなっているだろうと思いますけれども、それは別として、電気通信に関してインドシナ三国との協力だとか、あるいは援助だとかいうふうな問題が話し合いになっているのかどうなのか、その点について政府としての考え方があれば、聞かしていただきたいと思うんです。
  145. 菊地清明

    政府委員(菊地清明君) ただいま現在の時点において、そういうお話はございませんけれども、ベトナムにつきましては、昔のサイゴン、いまのホーチミンシティー、サイゴン市時代に、あそこの市内の電話網に対して援助をしたということはございます。それで、ただ、その分が完全に支出をされないで中途で終わっている。そこへ七五年の四月の問題が起きたわけでございまして、実績としてはそういうことでございます。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がありませんから、最後に一つですが、インマルサットのことなんですけれども、この条約の発効ですね、これをお尋ねしますと、この出資率の合計が九五%以上になることが必要だということが要件に挙げられておるというふうに聞いているわけですけれども、一方では、そういう要件を満たすというのはなかなかむずかしいんではないかという話もあるんですが、その見通し等についてはどうなんですか。実際にこれがそういう要件を満たして、いわゆる期日どおりちゃんと発効できるのかどうなのか、その点の見通しについてお尋ねしておきたいと思うんです。
  147. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) インマルサット条約の発効条件は、協定の三十三条にございますとおりで、いかにも「当初出資率の九十五パーセントを代表する国が締約国となった日の後六十日で効力を生ずる。」となっております。九五%というのは確かにかなり高い数字でございまして、なかなかきょうあすと早く達成できない可能性があると思いますけれども、現在のところ、イギリスソ連それからノルウェー、日本といった大口出資国として予定されている国々が条約に署名しておりますし、それからインマルサットの本格的発足までの間の準備をするために準備委員会ができておりますけれども、その委員会には、いま申し上げました国々のほかに、アメリカ、フランス、西独等、大口出資国となる予定の国々も加わっておりますので、まず第三十三条の第二項に規定されています署名のために開放された日から三十六カ月以内にという以内に発効するということは十分可能かと思っております。  なお、その九五%の出資率ということを発効条件にした理由は、小さい出資率の国をたくさん頭数だけそろえても、なかなかその実効が上がらないという配慮があってのことだろうと思います。
  148. 和田春生

    ○和田春生君 最初に、インマルサットについてお伺いいたします。  このインマルサットに関する条約そのものについては、私どもも賛成でありますし、しさいに検討すれば意見がありましても、苦労の末つくられたものでございますから、特に条約そのものを問題にしようとは思わないんです。しかし、これは条約をつくることが大事なのではなくて、実際の実施運用面が非常に大切なんです。  そこで、最初に、このインマルサット条約が効力を発生して、最初の海事衛星が打ち上げられて運用が開始をされるのは、大体、いつごろになるというふうに見込んでおるか、日本政府の見通しをお伺いしたいと思います。
  149. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) この時期は、おおむね、先ほど国連局長からも申し上げた準備委員会というのがございますけれども、それで一応五年後と考えられております。
  150. 和田春生

    ○和田春生君 日本政府として、五年後には大体発足する、そういう的確な見通しを持っているんですか、日本政府の見通しを聞いているんですよ。
  151. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) 各国において設置された準備委員会というもので一応五年後の推測をやりましたので、私ども日本といたしましても、できるだけこの会合に参画いたしておりますし、それに合わせて発足に努力したいと考えております。
  152. 和田春生

    ○和田春生君 それじゃ五年後に発足をするということを日本政府としても期待をし、努力をしているということを前提にしてお伺いしますが、インマルサットの宇宙部分については、大西洋、太平洋、インド洋と条約の中では三つの地域が定められているわけですね、一番最初に、どの地域で打ち上げられて運用開始になると考えておりますか。
  153. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) 目下、まだそれについては議論はございませんでございます。  ただ、私どもといたしましては、こういうインマルサットシステムは太平洋、大西洋、インド洋、この三つの衛星で初めて完結するグローバルな施設として開始されるものと考えておりますが、その具体的な打ち上げ時期につきましては、先ほどの準備委員会において検討が行われるということになっております。私どもといたしましては、わが国の主要な航路である太平洋と、それからインド洋海域、これでできるだけインマルサット衛星を早く利用できるようにしたいということで、この各海域同時期に衛星を打ち上げることを主張して、その実現に努めたいと考えております。
  154. 和田春生

    ○和田春生君 いま各海域同時期に打ち上げることを主張したいと言っておられますが、そのするつもりだということを聞いているんじゃないんです。どうなると見通しているかということを聞いているんですよ。そういう質問すると言って、あらかじめ言ってあるわけなんです。
  155. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) 私どもといたしましては、一応の見通しはまだ立っていないわけでございまして、当然議題になるであろうというところから、そういったものに対する対処の方針を決めておるという段階でございます。
  156. 和田春生

    ○和田春生君 これは非常にわが国の利害関係に重大な影響がある問題なんで、できるだけ早くこれが運用が開始される、特に日本の船舶、日本の海運にとって一番密接な関係がある太平洋地域ですね、これはもう海面としても一番広いわけですから、そういうところでこれが速やかに実施されることを期待をしているわけですね。  ところが、なぜこういう質問をしているかというと、このインマルサットの条約並びに運用協定によりますと、そういう実施を決めるのは理事会ですね。理事会の表決権というのは各代表の出資率に従って決められることになっておりますね。もちろん、各国とも、太平洋にいろいろな利害関係を持っており、インド洋に利害関係を持っておりますけれども、もっぱらそこに重点のある国、これは一々聞かずに、私の方でわかっておりますから申し上げますけれども、これは日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、インドネシア、チリ、ペルー、タイランド、大体、こういうところですね。もちろんアメリカもカナダもソ連も太平洋にいっていますけれども、非常に重点地域があるところです。これの出資率を合計すると一二、三九%ですね。これはアメリカの一七%に及ばぬし、英国の一二%にほぼ匹敵するものですね。  さて、同時打ち上げを主張すると言ってかっこうのいいことを言っていますけれども、実際に理事会の表決という場合になってきたときに、うまいぐあいに話し合いが決まればいいけれども、決まらぬときには表決をすると、どうも追い込まれて、何となくいままでの交渉ないしはいろいろな国際的な動きの中で、ぼくは順序は太平洋、大西洋、インド洋じゃなくて、大西洋、インド洋、太平洋なんていう順序になるようなコースが暗々裏に引かれているんじゃないかという懸念を持っているんですよ、そこで聞いているわけです。どうですか、この点。これはもう交渉に当たった外務省にひとつ、あるいは外務大臣はそういう点についてどういう決意を持っているか。
  157. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) この条約の第三条の「目的」のところに、機構は「宇宙部分を提供し、これにより、海上における遭難及び人命の安全に係る通信、」……
  158. 和田春生

    ○和田春生君 いや目的の講釈は要らないんです。
  159. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 「必要とするすべての地域に業務を提供するよう努める。」という基本的な趣旨がございまして、初めから、いま言われましたように、大西洋、インド洋、太平洋というような順序になるということがあらかじめ設定されているとか、そういう仕組みになっているということでは必ずしもないんではないかと思います。
  160. 和田春生

    ○和田春生君 そういうことが決められているって聞いているんじゃないんですね。同時に三個の海事衛星が打ち上げられる、そして同時に運用開始になるということなら問題がないけれども、費用の点とか準備とか技術的な面とか、いろんなこともありますから順次やっていく、まず最初に一つ打ち上げる、さらに様子を見て次に行くというような場合に、そういうような打ち上げ順位、運用開始の地域というものがやはりそれぞれの国の利害関係に大変結びついているわけです。  さらに、日本の船舶ないしは世界の船舶の運航状況とかいろんな点を見ますと、やはり安全とかいろんな面で、あるいは位置の測定とか、その他に関しましても、太平洋というのは一番海域が広いわけですし、利用価値が高いわけですね。そういう面でどうもそういうふうにしたいとか、つもりだというんではなくて、私どもの聞いているのは、このまま、どちらかというと日本はお人よしのところがありますから、したいしたいと言ってずるずる引っ張られると、いままでのあらゆる交渉がそうですね。最後になると追い込まれて、ああしまったと言って後から気がついてあわてふためいているということを繰り返しているわけでしょう。この間、漁業関係についてもそういう質問をしましたけれども、一体、こういう形でいいのかということで、まあ腹のほどを聞いているわけですね。そうなることがいいと思ってない、そうなっては困るから、よほどがんばって取り組んでほしいということを聞いているわけです。  そこで、もう一つ、私が聞いていることについて懸念があるのでお伺いするんですが、当初の出資率はこれで決まっていますね。ところが、第一回の出資率を決めるというのは、この条約、運用協定に決められているように、運用開始後二年以降、それから一年以内ですね、二年経過後三年経過までですから、その間に決める。それは決めるときの過去一年間のこのインマルサットの宇宙部分の使用量の料金の比率によって決めるということになっていますね、これで。そうすると、最初の出資率から言っても、何と言ってもアメリカイギリスあるいはロシア、ノルウェーというようなところが圧倒的な表決権になるような出資率を持っている。もしこれが大西洋から先に出発をしていくということになると、日本の使用比率というものは大西洋にないわけですから、なお落ちていく。そしてそれがずっとずれていくという形になると、今度は、運用開始後の第一回の理事会における表決権を決めるという場合に、事実上、非常に日本の使用量というのは落ちるわけです。使用の頻度が低くなるわけです、向こうの方がうんと使うわけだから。さらにこの比率が不利になっていくという懸念はないんですか、そこまで考えて交渉しましたか。
  161. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) 交渉の詳しい過程は存じておらないわけでございますけれども、いま先生のおっしゃいましたことにつきまして、やはりこのインマルサット機構は確かに通信量に応じて決めていくわけでございますけれども、それは最初にとにかく打ち上げたところでそれが不利になるのではないかという御指摘でございまけすれども、やはり一応この機構は収支相償でやろうというたてまえになっておりますので、やはりこういう利用の見込みのあるところも含めての、打ち上げの場合については、検討がなされるであろうと、そのように考えております。
  162. 和田春生

    ○和田春生君 ちょっとぼくの質問に対してピント外れの答えなんですよね。  これでいくと、とにかく当初出資率で言ったって、国の名前を、頭に並んでいるところをごらんなさい。もう大変なものでしょう、アメリカが一七%、英国が一二%、ソ連が一一%、ノルウェーが九・五%、あとイタリー、フランス、ドイツ、ギリシャ、これは四%、三・五%になっていますね、圧倒的な比率を持っているわけです。これ全部大西洋重点の国ですよ、はっきり言って。そうすれば、そういう使用の多いところ、また当初出資の多いところというのは、まず大西洋からいこうと。結局、そこでインマルサットの宇宙部分の使用というのはそちらの方に重点がいって、太平洋にはまだ打ち上がっていなければ、日本使用料金の支払いというものはそれだけ落ちるわけですから、そういう形でスタートしていけば、その次に、今度は実際に運用開始後の出資比率を決めるというときに、さらにこれが向こうの方にウエートがかかっていくというかっこうになっていきはしないか。  で、国際協力によってこういう形でサービスをするんだからというのは大義名分で、そのとおりだと思うんです。しかし、どこにだってみんな国益がかかっているんですから、ただで銭出すところはないわけですから。そういう中でやはり駆け引きがあるわけでしょう。特に日本のような国の場合には、そういうことも見通しながら、それに対応する対策なり、今後これが効力を発生して実際に機構が動き出したという場合に、それに対する戦略、戦術とか見通しぐらい考えておかなくちゃ、ぼくらもその辺のことを考えて、どうなるんだろうかと言っているのに、余り人のいいことを言っておったんでは利用されっ放しで、出した銭の割合には利益にならないなんてことになりゃしないんですか、そこを聞いているんですよ。
  163. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) 先ほどの出資の見直しでございますね、これは実はインマルサット宇宙部分の大西洋、太平洋、それからインド洋と、全地域の運用の開始後、二年をやってから見直すということになっておりますので、それについては、ある一カ所で先に打ち上げられたからといって関係はなかろうかと存じます。したがいまして、むしろ打ち上げの順序ということになりますと、これは準備委員会での折衝にかかるというわけでございまして、私ども先生の御意思を体しまして、できるだけ努力をしたいと考えておる次第でございます。
  164. 和田春生

    ○和田春生君 これは衛星が打ち上がっただけで利用できるんじゃなくて、先ほども質問がありましたけれども、船舶の方にもそれを利用する通信施設というものが整備されなくちゃいかぬわけです。あるいは船舶以外に地球局の方でも必要なわけでしょう。やっぱり先に上がってしまえば、そこのところはそういうものが全般的にずうっと運用の経験を踏まえながら発達していくわけですし、あるいは利用するソフトウエアの方の技術も発達していく。やっぱり後になったところはそういう面の対応というのがおくれていくわけですから、全部が打ち上がったときから全部三つが運用開始したと、だから用意ドンで同時スタートなんて考えたら、こんな考え方はおよそ技術的にもおかしいですよ。ぼくは、こういう船の通信とか、そういう関係の方は、御承知のとおり、わりに専門の方なんだから考えているわけだけれども、そういうことまで考えてよっぽど態勢をとっていかないといかないんじゃないかということを聞いているわけですよ。
  165. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、確かに出発がおくれれば、おくれをとることになろうかという点の懸念があろうかと思います。そのため、私ども、これの署名当事者でございます国際電電、これは現在インテルサットで非常に経験を有しておりますけれども、インマルサットに際しましても、地球局の設置などいち早く建設いたしまして、あるいは国内の宇宙通信技術全部を動員いたしまして、できるだけそれに追いつくように努力したい。一方、現在、マリサットシステムというのがございますけれども、これの利用を現在から開始いたしておりまして、おくれをとらないようにその準備をいたす、こういう努力をいたしておるところでございます。
  166. 和田春生

    ○和田春生君 特に、この条約、運用協定の中でも触れられておりますけれども、通信だけじゃなくて、将来の利用としては船舶の位置の測定ということが非常に重要な問題になってくる。それがさらに発展して無線誘導という形までいくと、やはりできるだけ長い距離の大圏コースのとれるところが有利なわけですから、太平洋というのは一番そういう面については利用価値のあるところなんですね。そこまで見通していきますと、やはりこれに対応する姿勢というものを、政府あるいは国際電電だけではなしに、海事関係者も含めまして積極的に取り組んでいく。そしてせっかくこういうものができるなら、一〇〇%利用していくというだけの決意と方策が必要じゃないか。  同時に、そうしたいということではなくて、同時といっても、もちろん何月何日の何時何分まで言うわけじゃないけれども、ほとんど同時に打ち上げられて、運用開始というのは太平洋、大西洋、インド洋、三地域について同じように全世界をネットワークできるように運用が開始できるという点で、政府は最善の努力をしてもらいたい。できれば、そういう形で努力せいという附帯決議ぐらい承認に当たってつけたいぐらいな気持ちがあるわけで、そうでないと、どうもおくれをとるような懸念があって仕方がないんですが、ひとつその点しっかり頼みたいと思いますけれども、やると言って約束しておいてください。
  167. 三浦一郎

    説明員(三浦一郎君) 先生のおっしゃるとおりにいたしたいと存ずる次第でございます。
  168. 和田春生

    ○和田春生君 それではインマルサットは時間の関係もございますからその程度にいたしまして、実は、当初質問は見送ろうかと思っておったんですが、投資奨励相互保護に関する日本とエジプトとの協定についてちょっとお伺いしたいのです。  で、それをお伺いすることにいたしましたのは、きょう午前中、同僚委員の方たちの質問に対します外務省当局の答弁を聞いていますと、どうもこの協定を結んだということについて私たちが感じておったこととずれがあるような気がして仕方がない。一口で言うと大変消極的でありまして、たとえばエジプトの方が大変やりたいと言って積極的に結んだんだ、しかし、これを結んだからといってすぐその投資がふえたりメリットがあるというようなことは余り考えていない、長期的に見ればぼちぼちいくだろう——そういうつもりでおっしゃったんじゃないかもわからぬけれども、そういう印象に受け取れる説明が繰り返し行われておったわけですね。確かに投資奨励相互保護というふうになっておりますけれども、エジプトが日本に来て投資をしたり何かをしてやる、そういうチャンスやそういう条件というものは大変乏しい、これはやはりもっぱら日本がエジプトの方に出ていくということだと思います。この点について向こう側は大変積極的な意欲を持っていると思うんですね。そういう点について、これはもちろん政府が全部日本でやるわけじゃなくて、民間企業その他がやるわけですけれども、この協定を結んだことによって、日本政府としてはエジプトとの経済協力、エジプトの産業、企業開発、こういうものに対して日本としても積極的にアプローチしていくと、そういう政策的な方向を持って臨んでいくのかどうかということを、まず最初に、基本的にお伺いしたいと思うんです。
  169. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 日本とエジプトとの関係は、三木特使が行かれましたりしていままでの関係は主として経済協力面に重点があったと思います。スエズのしゅんせつ等、それから円借款の供与等によって行われてきておりまして、民間ベースの直接投資と申しますか、本当の意味の資本投資という形を余りとっておりません。そういう意味で、現在のところは、まだ投資額がきわめて少ないわけでございますけれども政府ベース投資関係が進むに従いまして、やはり民間ペースの投資というものもこれから逐次期待できるのではないかというのが実際のところでございます。
  170. 和田春生

    ○和田春生君 実は、私たちは、党の中近東調査団で、先月九月初め、サウジアラビアあるいはイラク、エジプト、イランを回ってきたわけですが、九月の十日からカイロでサレム首相とかフォワード・エジプト党書記長あるいはそのほかの幹部の方々と会っていろいろと話をしてきたわけですね。で野党の代表ですし、政府との直接外交交渉ではないという点もあったと思うんですけれども、大変向こうもいろんな面で濶達にいろんな問題をしゃべってくれました。  その中で、サレム首相あるいはいまのフォワード、これは議会担当国務相で、いま政権を握っているエジプト党の書記長ですが、それからハテム統括官——大統領府と政府との連絡をやっている、こういう人たちの発言というものを見ますと、こういうことがあるわけです。一々はもう読みませんが、これは記録を私たちつくってきているわけですけれども、盛んに言っておったのが、オープン・ドア・ポリシーということを言っているわけです。一口で言えばサダト大統領になってから前のナセル方式というものの修正をしている。右寄りでもない、左寄りでもない、われわれはいわば中道政党で、すべての国と仲よくすると同時に、国内経済開発というものを積極的に進めたい。そこで、サダト大統領が進め、いまのエジプト政府が取り組んでいるオープン・ドア・ポリシーというのは具体的に中身はどんなことかということもいろいろ聞いたわけですが、特に私企業との関係を聞きました。  それについては、私企業の位置づけは、いままでのエジプトのようなやり方はしないと。その状況にもよるけれども、できるだけ私企業の自由な活動を認める方向なんだ。現在までも外国私企業の参加を得るためにいろんな立法措置をとってきた。対外的には、日本とのこの協定もその一つですね。そういう中でどういう点について期待をしているかということについても答えがあったんですが、それはここでは省略いたしますけれども、特に日本の協力について、スエズに対する協力等については繰り返し感謝をしておりましたけれども、こういうことを言っているんですね。日本はもっと積極的にやってもらいたいと、日本の協力は決定までに時間がかかり過ぎるんだ、アメリカなどが早い反応を示してくれるのと対象的である、こうした協力の際にプロジェクトローンが非常に必要になってくると、こういうことを言っておりますし、これは特に、サレム首相も、他の外国企業が入ってくる前に日本企業の進出や協力が行われるように特別にひとつ考えてほしいということを非常に言っておりました。そこで、その中の一つとしてプロジェクトローンが非常に重要だと言うけれども、それはどんなことを考えているのかということに対して、たとえば日本とエジプトの合弁による銀行を設立をするというようなことになれば、そういう日本の進出、エジプトの協力というものも大変やりやすくなるし、いいだろう、そういう意味のことを言っておったわけです。  そこで、全般的な経済協力のあれがどうのこうのといって、ここは外務委員会の席上でありますし、お尋ねしようとは思いませんけれども、向こうは特にそういうふうに早く出てきてくれ、もっと積極的にやってくれと、外国が来るよりも先に来いと、そういうことに対して有効な手段としては日本とエジプトの合弁による銀行の設立、こういうようなことが考えられるということを、提案といいますか、向こうの意見として述べておったんですが、それについてどういうふうに考えておられますか。そういう話が政府ベースであったのか、あるいはそういうものも日本政府の協力の中の検討の一環に入っているのか、あるいは日本の金融機関においてその種の問題について何らかの検討をやっているということについて政府も関知している面があるのか、そういう点についてお伺いしたいと思います。
  171. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 銀行に関する合弁事業というお話が、直接、政府間の話し合いの対象となったことはないと存じます。ただ、わが国から、たとえば外務省といたしましても、これは二年ぐらい前のことになるかと思いますが、日本電気の小林社長を団長とした、民間の経済についての話し合いの代表団を出したことがありますけれども、そのときに、そういう金融分野においてももう少し日本とエジプトの間で具体的な協力ができるんじゃないかという話が出たというふうに承知しております。
  172. 和田春生

    ○和田春生君 それ以上具体的な話は政府の方としてはタッチしていない、あるいは検討中か、あるいは研究の対象になったということはありませんか。
  173. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 承知しておる限り、そういうことはございません。
  174. 和田春生

    ○和田春生君 この点について、これは特に質問の終わりの方は外務大臣にお尋ねしたいんですけれども、本会議の代表質問でも、産油国との協力についてお尋ねをいたしました。率直に言って、総理も外務大臣も答弁の言葉は大変御丁寧でありましたけれども、中身はさっぱりなかったわけですね。  向こうの方の感じというものを見れば、産油国はさておいて、エジプトの場合には、産油国としての地位は非常に低いわけですし、大変膨大な人口を抱えている。国内開発国民の生活水準向上を何とかしたいということを政府考えている。特にナセル大統領時代の政策路線を修正して、自由諸国とも経済的な面で積極的に協力して私企業のそういう活力というものも大いに利用していきたい、そして建設を進めたいということを考えているわけです。産油国としての地位は低いかもしらぬけれども、御承知のとおり、エジプトというのは中近東における政治的な面ではきわめて重要な立場にありますから、大使館員等も他に比べて大変充実をさしているということは御承知のとおりなんですね。  そういう面で、私企業に任しておけば、どうしても、先ほどの同僚委員の御質問にもありましたけれども、利益ということが頭にくる、企業のリスクという問題もある、あるいはいろんな面の条件考えた場合に、果たしてそこに進出していいかどうか、そういう条件をいろいろ考えてやる。そうすると、研究、検討に時間がかかり過ぎていって、向こうが期待していることになかなかアプローチしてくれないという形に対するいら立ちというものがかなり感ぜられました。いままでにやってくれた協力については日本はよくやってくれたと、きちんとやってくれている、決まったことはよくやってくれるということは一様に評価していますよ。ところが、新しいいろいろなそういう経済計画、ないしは向こうの要望するものに対する日本側のアプローチというものは非常にもどかしいという感じが強いわけですね。  そこで、日本の国際関係というものを見ると、企業の思惑、利潤、動機とかそういうことだけではなしに、国全体として、この中近東地域に対しての積極的な対応策というものがなければ、油の問題でも私は大変なことになってくる可能性があると思うんですよ。そうなったときに、日本でも大分売れた小説の「油断」ではありませんけれども、あわてふためいたってこれは手おくれなんで、そういう場面に至ってひざまづいて、やれ特使だ、やれお願いだなんて言っても仕方がない。  ですから、もちろん企業のそういう活力を大いに利用するということが必要ですし、日本は統制経済の国ではありませんけれども、そういう面をカバーして積極的にいくという日本政府姿勢が必要なんじゃないか。しかも、そういうような合弁による銀行というような話が現に向こうの首相の口からも出ているわけですね、統括官あるいはエジプト党書記長の口からも。そういうようなプロジェクトローンの面については、合弁の金融機関ということがやりやすくするんじゃないか。積極的にそういうものは取り上げて、ある程度のリスクを冒しても突っ込んでいくということが今後の日本経済外交に非常に必要じゃないかと思う。そういうことに対して外務大臣あるいは担当者のお考えを伺っておきたいと思うんです。
  175. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いま和田先生のおっしゃいました点でございますが、企業が進出する、少なくとも自己の責任において企業経営をする、あるいは合弁の場合もございましょう、その場合には、やはりその判断というものはフィージビリティーがあるかどうかということが非常に問題になるわけでございまして、政府開発援助を行うということでありますと、インフラストラクチュアのようなものは政府が決意をいたしますれば、これはできるわけで、これは企業採算という問題は二の次でございますから、それでできるわけでございますけれども企業採算が伴う問題につきまして、特にたとえば製油所でありますとか石油化学というような問題になりますと、ただでさえオーバープロダクションであるというような事態があるもんですから、非常に民間ベースの話がなかなか進展しない。私どもも、外交上の観点からいたしますと、大変いらいらしておる実態でございます。この点につきまして、しかし、経済界の方でも鋭意努力をしておるわけでございますが、側面からでも私どもは協力をいたしたいと思っております。  なお、担当者がいまちょっと実はおりませんでしたもので、いま呼んでおりますが、大ざっぱな点は、日本に対するいろんな批判が高まっているということも身にしみておるわけでございます。いま先方が特に要望しております日本からの技術を非常に期待を強くしているわけで、この技術に対する要望にこたえます何らか促進する方法がないかということで悩んでいるわけでございます。現在までのところ、近代的な日本の産業技術というものがやはり私企業であるということ、この私企業としての進出の可否という問題でございますので、なおできる限りの協力をいたしたいと思っております。
  176. 和田春生

    ○和田春生君 もう大体割り当ての時間が来ましたので、これ以上いろんなことは申し上げませんけれども、まだ私の言っていることをよく外務大臣は理解していないんじゃないかと思うんです。  個々の企業については、それぞれの企業の立場というものが中心になるわけですよ。また、日本でも、通商産業政策と通産省の立場という形になれば、日本国内企業というものが対象になっていくわけでしょう。ところが、向こうの国が日本を見るのは、個々の企業がどうこうというのはそれぞれの企業の業績を見るけれども、総合したものを日本という対象で見ているわけでしょう。それが個々の企業で足踏みをしたり、危険があったり、あるいはマーケットがどうとか、いろんなことを考えながら慎重に慎重にとやっているのが総合されると、まあ総理大臣が来たりいろんな人が来て、口先ではうまいことを言って帰っていくけれども、実際はちっとも進まないじゃないか、もう少し積極的に出てきてくれていいじゃないかという日本に対する総合した見方になる。それが不信感になっていく、日本に対する批判が非常に強まる。  そうなれば、やっぱり日本では、外交として積極的にやるんだという方針を決めていく。そういう方針のもとに、政府の影響力を使い、あるいは企業を促進し、企業のリスクだけでは取り組めないような問題については政府が後ろ盾になってやる、そういうような形でやらなくちゃいかぬのじゃないか、そこが欠けているんじゃないか。その日本姿勢というものがリップサービスだけで、実際になると、ほとんど企業ベースに任してしまって、結果的に見ると、いら立ちを促進しているという面が余りにも多いし、いま重なっているんじゃないか。そういう点をぶち破っていくという日本政府としてのまず外交姿勢というものが先になくちゃいかぬ。それをにらみながらそれぞれが活動してもらうという形にいま切りかえていかないと、特に中近東諸国、開発途上国、政治的に非常に困難な立場に立っているところについては、今後、日本の国際関係はうまくいかないんじゃないですか、それをひとつしっかり取り組んでください。そういう点に対して的確なお答えがないものだから、言葉は丁寧だけれども中身がありませんねと、こう言っているわけなんですから、鳩山外務大臣、総理大臣にかわったぐらいのつもりで、ひとつ何とか言ってください。
  177. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いま企業の進出の場合には、やはりそれに伴う危険があるわけで、これは申すまでもないことでございまして、その点につきまして、やはり企業として成り立つかどうかということが何よりも基礎になってしまうわけで、特にサウジアラビアの場合のように、自国の市場というものが非常に狭い、人口も少ないところである、エジプトはまた人口は非常に多い、しかし経済的にはなかなか厳しい状況にある、こういうことで、私ども、サウジの経済力とそれからエジプトの消費市場と申しますか、これらを関連づけたあの地域に対しますフィージブルな事業というものを考えていくべきだろうと思います。  現在、進出する場合に、やはりいろんな条件があるものですから、たとえばその製品の販売まで責任を持たされるという場合には大変な日本として危険をしょい込むことになるわけで、そういう点は、進出する企業とのやはり企業ベースの話の詰めというものが必要になってくるというので、まあ政府が何でも危険を引き受けてやるということも、これも政府としてはできないことでございますので、ただ、外交姿勢といたしまして、中東諸国に対しますこれからの——いま特に日本に期待をしておるその期待に日本が応じるのが非常に時間がかかっておるということ、これは確かに御指摘のように大変な日本に対する不満の声になっております。そういうことの十分な理解の上に立ちまして、これからできる限りの努力をいたしたいというのが率直なところでございます。
  178. 和田春生

    ○和田春生君 まあさっぱりはっきりしないので、もう大変不満でありますが、本日のところは、これにてとどめておきます。
  179. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十六分散会