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吉田正雄君 「むつ」の問題たくさんありますが、一応きょうはこれでやめておきます。
次に、例の
核原料物質、
核燃料物質及び
原子炉の
規制に関する
法律の一部を改正する
法律案についてお尋ねをいたします。
これもずいぶんお聞きをしたい点があるんです。実は逐条的にやはり聞いておかないと全体とのかかわりの中で十分把握し得ないということになりますので、逐条的に聞いてまいりますが、時間がありませんので、お答えをいただく方は簡潔にひとつ答えていただきたいと思うんですが、まず六十一条の十ですね。そこの中で国際約束の
内容というのがありますけれ
ども、この国際約束の
内容はどんなものなのか。それからどの機関、国家との条約、協定を指しておるのか。それは一体国内法との
関係で、
皆さん方はIAEAとの間にいままで事前の話し合いというものをずっと進められてきたわけですけれ
ども、一体どの
程度国内法で盛るという拘束的な約束、こういうものをされたのか、こういうことをまずお聞きをしたいと思いますし、それから「保障措置」の
内容、一体「保障」というのは何を、どういう
程度保障をしていくのか、その
内容、それから「適切な実施」とは何か、それから「
処理業務」の
内容、「指定する者」の定め方などについては「政令で定めるところ」となっておりますけれ
ども、いま
皆さん方が想定をされておる
内容は何か、どういう
内容であり、どういう範囲のものかということですね。これが六十一条の十です。
それから六十一条の十二。第一号について、まず「適確に遂行するに足りる
技術的能力」とは、これは形式的な
判断基準では困るわけですから、そこで言っている「
技術的能力」とは一体どういうものを指しておるのか、それから「経理的基礎」というのは何を求めておるのか。
それから第二号に関して、「役員又は職員の構成」というのがありますけれ
ども、その「構成」の
内容というのは、人数を言うのか、能力を指すのか、あるいはその他、一体何を指しておるのかということです。
それから六十一条の十三第二号、「命令の規定に違反し、」のこの「規定」、それから六十一条の十六の二項、総理府令で定める業務規定の事項の
内容とは一体どういうものを
考えておいでになるのか。
それから六十一条の十七第一項では、「総理大臣の認可を受けなければならない。」のに、つまり、年度事業だとか予算ですね、こういうものについてあらかじめ「総理大臣の認可を受けなければならない。」となっておるのに、第二項では、その事業報告なり決算については提出をすれば足りるとなっているわけですね。ということになると、当初の
計画どおりに行われなかったというふうなことがあっても、単に提出だけで済むということになるんですが、不適当なものがあったら一体その点はどうなるのか。そこだけを単に提出すればよいということにしたその根拠といいますか、
考え方ですね。
それから六十一条の十八、ここが一番問題のところなんです。実は、担当者の方から懇切な説明も受けましたけれ
ども、なかなか私の頭がかたいせいか、理解する能力に欠けておるのか、なかなかどうもすとんと落ちない。落ちないというよりも、むしろこの条項については、現行
日本国憲法やあるいはこの
法律を制定する根拠となる
核兵器不
拡散のこの核防条約の精神やそれに伴うIAEAとの協定、それらの精神にも実は合致をしない、むしろ合致をしない、精神に反する、そういう私はこれは条文ではないか。しかも、それに罰則規定がついてくるということになると、単純に国家公務員法百条や百九条との比較においてこれが必要だという論理は成立をしない。そういう点で秘密の範囲というのは一体何なのか。「情報
処理業務に関して知ることのできた秘密」の範囲というのは一体何を指しているのか。そういう秘密が一体あるのかどうなのか。
原子力基本法によって自主、民主、公開という、特にこの不
拡散という、そういう
方針からするならば、これらの
核燃料なり、それらの情報というものは明らかにしておくことが、むしろより望ましいというふうに
考えるんですね。その「秘密」の範囲。その漏れた場合の措置は簡単に一年以内の懲役あるいは三十万円以下の罰金となっておるんですけれ
ども、この点については一体だれが告訴をし、あるいは告発をし、だれが
責任を持って漏れたと
判断するのか、その辺がきわめてあいまいですね。それは主務官庁である通産省なりあるいは運輸省なり科学
技術庁なりそういうところが
判断をしていくのか。
それからもう
一つ、これは取り締まる側としての警察庁になりますか、お聞きをしたいと思うんですけれ
ども、こういう
法律ができますと、これは単に通産、運輸、科学
技術庁という直接
関連する職員のみならず、これ刑事罰ですから、したがって秘密が漏れたというふうな
判断というのは警察独自あるいは検察庁独自でも行い得るわけですね、こういう
法律ができますと。そういう
判断というものが行い得る権限を持つようになるわけなんですね。したがって、警察庁にお聞きをいたしたいと思いますのは、そういう
判断は何を基準として行われるのか、
関係省庁の告訴、告発をもって捜査に踏み切っていくのか、そういうものがなくても独自に状況というものを
判断をして、そのような事実が発生をした、生じたと認めた場合に、その捜査に入っていくのか、そういう点を明らかにしてもらいたいと思うんです。
まだ意見は私いろいろ意見あるんですが、この点についてはまだ後で述べることにして……。
それから、六十一条の二十三の第三項、情報
処理機関が不当に、仮に情報を捏造したり、内部告発があってその実態を
調査する場合、犯罪捜査というふうな観点でその内部検査するんじゃないですよと言っておりますけれ
ども、情報が漏れたとか、そういうことになってくるならば、当然罰則規定との
関係でまず一時的には主務官庁がそれらの
調査というものを行わなければならないと、こういうふうになってくるんで、犯罪捜査の性格を持つものではないと言ってみても、現実に秘密が漏れるということになれば、罰則規定に基づいて、それは
一つのもう犯罪というものが構成をされることになっていくわけですね。だから、主務官庁が行政処分――刑事処分はもちろんないわけですけれ
ども、そういう点で犯罪捜査と密接に
関連をした
調査というものが当然そこには出てくるわけですね、警察とはまあ別に。こういう点でその点をどういうふうに
考えておいでになるのか。
それから、六十一条の八、「国際
規制物資使用者等」のこの範囲ですね。これはまあ従来からのいろいろな総理府令だとか、いろんなもので書かれてはおると思うんですが、改めてお聞きをしていきたいと思う。それから「計量管理規定」のおよその
内容。
それから――これやっておりますとあれですね、まだ大分時間がたつようですね。それから六十八条ですね。「国際
原子力機関の指定する者」の範囲、第六項、「国際約束で定める範囲内」とは……。
それで、
質問だけやっておったんでは時間もありませんから、私は、特にこの法案の中で最大のやはり問題を持っておるというのは、いま申し上げました六十一条の十八の、俗にいう守秘義務、それに違反をした場合の罰則規定、この点はこれはとうてい認めることのできない
内容なんですね。その理由はいろいろあります。いろいろありますけれ
ども、まず私は、憲法との
関連でまず第一に申し上げてみたいんですが、まず何よりも、
日本の憲法というのは、皆さんも御
承知のように、フランスの人権宣言や、あるいは
アメリカの独立戦争等のいわゆる
アメリカの憲法、こういうものとほぼ性格的には同じ基本的人権というものを
日本国憲法はその中心に置いておるわけですね。そして国家というものは、まさに個人の生存権というものを保障していく上においてこそ国家の存立、形成というものが
意味があるんであって、それが最大限尊重されなきゃならない。ところが、個人のそういう基本的人権というものを、国益やあるいは国家あるいは公共の福祉という名のもとにおいて重大な制限や制約を加え、あるいは侵害をするということになると、これはとうていわが国の憲法の立法の趣旨からして認めることができないわけですね。そういう点で、そうまでして守らなければならない守秘義務というものが、原力力基本法の精神からしても一体この秘密という中に存在するのかどうかというのがまず基本的な大きな疑問なんですね。疑問というよりも、それは許されるべきものではないということです。これを軽々に、国家公務員法の百条の秘密を守る義務などと同列に並べて
論議をすること自体が、もうすでに私は基本的な誤りだと思うんですね。
で、これは先ほ
ども申し上げましたように、
核兵器の不
拡散に関する条約第三条第一項の規定にその源を持っているわけですね。したがって、この条約の目的というのは、
原子力が
核兵器など軍事的用途に転用されるのを防止することにあるんですよね。また、わが国は、この右条約第三条第一項に基づいて、まず、
核兵器の不
拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する
日本国政府と国際
原子力機関との間の協定を締結して、国際
原子力機関との間に
原子力が
核兵器その他の軍事目的に転用されないことを
確認することのみを目的としてこの保障措置というものが協定の中に盛られているんですね。そこが一番大事なことなんですよ、これは。批准をしたその精神も、IAEAとの協定も、そこが基本になっておるわけなんですね。そうですから右協定というものを国内で実施するために本法の改正が必要となったわけですから、この改正法は右の条約及び協定の目的を遂行するために必要なものに限られるべきなんですね。
ところが、右の秘密保護の条文というのは、右の条約及び協定の目的遂行に必要でないばかりか、逆に有害である。なぜか。条約も協定も本法も、その目的は、いま申し上げましたように、
原子力の軍事的利用の防止にあるから、この条約に加盟している国にあっては、国内の
核原料物質の種類や量や所在などを常に明らかにしておくとともに、それを加工したり再
処理を行う事業体やその設備の状況、
原子炉の設置などに関しては許可制度の採用を初めとする各般の
規制を行い、その事業の状態を
政府においても常に的確に把握しておかねばならない。そして
政府は、それらをIAEAに通報をすればよろしいわけですね。使用済み
核燃料の再
処理を行う事業体についてはその必要は最も大きいわけですよ、これは。したがって、本法が核物質の計量のための記録の保持と
政府に対する報告を各事業体に義務づけるとともに、その事業体に対する立入検査を含む査察を行い、職員に試料の収去の権限をも付与したのは、そうした趣旨から出ているというふうに解すのが正しいわけですね。したがって、
政府がその実態を把握せんとする各事業体の設備やその所持する
核原料物質ないし使用済み
核燃料物質等については、その設備の所在や構造、物質の種類や量などを
政府はもちろん国民の前にできるだけ明らかにしておく必要があるわけですね。これを秘密として国民に秘匿せんとすることは、かえって本法やその源である条約や協定の目的に反するものと言わなければならぬわけです。すなわち、これらすべてできるだけ国民の前に明らかにしておくことこそ核物質の軍事的転用を防止する最も効果的な手段であるわけですね。
政府は、核物質に関する実態把握のため、
原子炉の設置、
運転等に関する規則――これは昭和三十二年、総理府令第八十三号であるわけですが――を初めとする一連の規則により、各事業体に命じて設備や核物質に関する一連の報告をなさしめるとともに、その届け出された書類をすべて本改正法によって設けられる指定情報
処理機関に渡してコンピューターに入れ込み、これを整理解析をさせて、その結果を
政府に報告をさせるということになっているわけですね。改正法は、この情報
処理機関の役職員が右の業務によって知り得た秘密を漏らしてはならないとし、これに違反した場合には一年以下の懲役もしくは三十万円以下の罰金に処するものとしておるわけですね。しかし、前述のように、この機関の把握する各種事業体の設備の種類、構造、その所持する核物質の種類や量等については、むしろできるだけこれを明らかにしておく必要があり、これを秘密ならしめることこそ、かえって法やその淵源たる条約や協定の目的達成に有害になるだけです。
科学
技術庁当局者は、この第六十一条の十八の立法趣旨についての説明を、至るところでと申しますか、まあ
関係議員に対して、私も何回か聞きましたけれ
ども、その趣旨が転々として変わってきておる。私に対する説明、他の
委員に対する説明、その同じ
委員に対する説明においても、逆
質問によって、その
答弁というものが当初の趣旨説明から二転三転をしておるということなんですね。この点についても申し上げたいと思うんですけれ
ども、まあ説明者の説明がどう変わったなどということをここで一々申し上げても仕方がないと思うんですが、私は、いずれにしても、基本的に、いま申し上げましたように、この国際条約との
関係で、その趣旨に合う範囲、そういう範囲内においてこの
法律というものが改正をされるべきであって、国際機関との約束を盾に基本的人権を侵害するような、不必要な、しかもむしろそれによって、たとえば今日までいい例としては、美浜一号炉のあの
核燃料棒の大破損という、あれだけの大きな
事故というものが約三年半にわたって報告がなされなかった、こういう例からもわかるように、こういう秘密を漏らしてはならぬという守秘義務を設置することによって、
原子力行政というものが全く秘密のベールの中に包まれて、それこそむしろ憂慮する状況というものが発生するんではないか。仮に意図的な人がおったとして、捏造した資料、そういうものを
政府に報告する、あるいは間違いがあっても、それを守秘義務の名のもとにおいて、その間違いを訂正をしない、いろんなことが私は生じてくると思うんですね。そういう点で、私はこの守秘義務並びにそれに伴う罰則については反対なんです。
時間がそろそろ参ったんですが、これらの点については、さらに次の
質問でまたわが方の
委員からも、私が先ほど申し上げた点についての回答も、これは時間の
関係もありますから、次の
委員会までに、いまの点については簡単でいいんですが、文書にしていただきたいと思うんです。次の
委員会でまたこれをるると口頭で説明されたんでは……(「守秘義務だけ」と呼ぶ者あり)それだけ聞きましょうか。守秘義務について私がいま申し上げたような点に
関連して、回答をいただきたいと思います。