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1977-11-11 第82回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十一日(金曜日)    午後一時四分開会     —————————————    委員異動  十一月四日     辞任         補欠選任      森田 重郎君     柿沢 弘治君  十一月十日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     田代由紀男君  十一月十一日     辞任         補欠選任      山崎 竜男君     成相 善十君      望月 邦夫君     下条進一郎君      安田 隆明君     鈴木 正一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 房雄君     理 事                 藤川 一秋君                 森下 昭司君                 塩出 啓典君                 佐藤 昭夫君     委 員                 亀井 久興君                 後藤 正夫君                 下条進一郎君                 鈴木 正一君                 田代由紀男君                 玉置 和郎君                 永野 嚴雄君                 成相 善十君                 栗原 俊夫君                 松前 達郎君                 吉田 正雄君                 中村 利次君                 柿沢 弘治君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       宇野 宗佑君    政府委員        科学技術政務次        官        大島 友治君        科学技術庁長官        官房長      半澤 治雄君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        科学技術庁原子        力安全局次長   佐藤 兼二君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        科学技術庁原子        力安全局原子炉        規制課長     松田  泰君        運輸省船舶局首        席船舶検査官   赤岩 昭滋君    参考人        日本原子力船開        発事業団理事長  島居辰次郎君        日本原子力船開        発事業団専務理        事        倉本 昌昭君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案(第八十回国会内閣提出、第八十二回国会  衆議院送付) ○核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関  する法律の一部を改正する法律案(第八十回国  会内閣提出、第八十二回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十一月四日、森田重郎君が、昨十日、中山太郎君が、本日、山崎竜男君、望月邦夫君及び安田隆明君がそれぞれ委員辞任され、その補欠として柿沢弘治君、田代由紀男君、成相善十君、下条進一郎君及び鈴木正一君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案並びに核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。     —————————————
  4. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となりました法案審議のため、必要に応じ、日本原子力船開発事業団役職員参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) これより両案の質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 森下昭司

    森下昭司君 それでは、両法案の一部改正案について質問をいたしたいと存ずるわけであります。  まず第一に、私は本会議でも御質問申し上げたわけでありますが、その際にもカーターアメリカ大統領の新しい核政策によりまして、いろいろと日本核燃料サイクル確立を初めといたしまして、ただいま計画をされて実験をされておりまする高速増殖炉あるいは新型転換炉等に対する影響の問題並びに再処理施設等見通し問題等についていろいろとお尋ねをいたしたわけであります。最近アメリカ上下両院におきまして、高速増殖炉建設費八千万ドル授権法というものが通過したのに際しまして、カーター大統領拒否権発動したというようなことが実は新聞で報道されているわけであります。発動の理由といたしまして、FBR授権法案を承認すれば、米国は巨額で不必要なプロジェクトを背負うことになり、また核兵器、核爆発能力世界中に拡散するのを防ぐという米国努力をこれを損なうというような点を強調されたようでありますが、私はまたいわゆる新しい波紋を投げかけたのではないだろうかという懸念が実はいたすわけであります。このいわゆるカーター大統領拒否権発動という事態は国際的に再びあつれきを生む結果になると思うのでありますが、この拒否権発動について、まず最初長官のひとつ御見解を伺いたいと思います。
  9. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) カーターさんは、就任のときから核の不拡散一つ信条として世界に宣言をしてこられました。そうした信条に基づく政策の一環から申すのならば、高速増殖炉というものはその燃料としてプルトニウムを必要とするわけでありますから、したがって、高速増殖炉を認めることはすなわちプルトニウムの生産を認めることになる、ということになれば、みずからの核不拡散というその政策にもいろいろな意味影響があるであろう、したがいまして、さようなことから高速増殖炉に関しましてもいろいろと新しい政策を発表なさったわけであります。しかし、私も非常にこのことはわが国といたしましても重大なことでございますから、あらゆる機会にあらゆる米国人に出会いましていろいろと真相を探求してまいりました。またみずからも、御承知のとおり渡米いたしまして、その際にもこの問題に関しましてはいろいろ研究も重ねてまいりました。  その結論を申し上げますと、やはり現在はカーター大統領の核不拡散という一つの問題を中軸といたしまして、御承知のとおりINFCEという国際再評価会議が開かれておりまするから、やはりそれとの関連も私はカーターさんは考えておられるのじゃないだろうかと思います。しかしながら、議会の方は御承知のとおり、あのように建設に関しましては予算を修正してでもその主張を貫いていこうという姿勢でございますから、言うならば政府議会も私は高速増殖炉を将来においても全く否定するという立場には立っておらない、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私たち高速増殖炉実用化は一九九〇年代ということをわれわれは夢見、またその実現を図らんと努力をいたしておりますが、アメリカもその年代における高速増殖炉必要性ということに関しましては、だれ一人否定はいたしておりません。だから、私はここ数年間の一つ政策とした場合に、大統領としては当然あのような措置をとらなければならなかったのではなかろうかと、こういうふうに解釈いたしております。
  10. 森下昭司

    森下昭司君 私は、この拒否権発動というものはカーター大統領がやはり核拡散を防止するという信念に基づいて行ったのではないだろうかと思うのでございますけれども、わが国の先般の協力協定が二カ年という限定された期間であるということなどなどから考えてまいりますと、日本における高速増殖炉あるいは新型転換炉への影響ということは免れることができ得ないのではないだろうか、私どもは実はそんな感じを持つわけであります。  そこで、協力協定の二年間の期間が到達をいたしましたときに、一体再処理施設の今後の見通しというものはどういうことを御想定になっているのか。たとえば、いまお話がございましたように、INFCE等評価会議の結果、いろいろと試験の結果を得て、混合抽出方法というようなことも言われておるわけでありまして、私は、このような拒否権発動等のかたい決意等から判断をいたしますと、東海村の再処理施設はやはり混合抽出方法に変わらざるを得ないのではないだろうかというような実は感じがいたすわけでありますが、この二年後の東海村の再処理施設の展望についてはどうお考えになっているのか、お尋ねいたしたいと思います。
  11. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 二年というのは、先般も御説明を申し上げましたが、INFCEがちょうど二年でございますから、そこで核の不拡散をテーマとして米国大統領がそういう世界会議を提唱されました以上、われわれもやはり核の不拡散には賛成でございます。だから、さような意味で、私たちといたしましては自粛をしたいというので、三年間という期限をみずから設けたわけであります。しかし、私たちには、核不拡散と同様に、もっと重いのは、やはり核の平和利用であると、こういう見地がございますから、したがいまして二年間の間に九十九トンという数字を設けたわけでございます。これは九月の二十二日に再処理施設テープカットをして動き出しましたから、それを起点としての二年間と、こういうふうに考えていただきたいと存じます。すると、わが国会計年度では三会計年度にまたがるということでございまして、当初、私たちはその三会計年度というものを通じまして、どれだけのプルトニウムが生産されるかということを計算いたしますと、ちょうど九十七トンぐらいであるというふうな私たちは計算をいたしております。だから率直に言って百トン要求いたしました。アメリカは百トン——三けたではちょっと殺生だから、ひとつ二けたにしてくれというので九十九トンというふうな味わいのある数字になったわけでございまして、この点におきましても、私たちの再処理施設を動かすスケジュールにはいささかの支障も来しておらないというわけでございます。最終的には御承知のとおり二百十トン、これを年間抽出するような施設でございます。  私たちは、混合抽出を実はアメリカがやかましく言いました。はっきり申し上げますと、現在の施設にたった五万ドルだよ、五万ドルの改良を加えるのならばこれはまあ混合抽出できるのじゃないかと、こんな話すら実はあったのでございます。また、それぐらいするならば将来認めてもいいよというような話もあったのでございますが、しかしながら、はっきり申し上げますと、混合抽出をせんがために、先般の日米合同調査会調査をいたしました結果に基づけば、そのような費用では済むはずがなく、少なくとも二億ドルはかかるわけでございます。そういたしますると、ちょうど二百五十円という相場で勘定いたしましても五百億円でございますから、いままで再処理施設に注入してまいりました建設費と同様の金が要ると。しかも、混合抽出法というのは、御承知のとおりに、たとえば私たちは、プルトニウムウランを三対七、プルトニウムを三、ウランを七、そのような燃料をつくってこれを高速増殖炉燃料にしたいと考えておりますが、言うならば、混合抽出はそのような率で三対七のものを混合して抽出するという方法を言うわけでありまして、そのように果たしてうまくいくかどうか、いまだ世界におきましてはこれは完全に未確立技術でございます。だから、この未確立技術日本納税者の多額の税金を注ぎ込むということは私としては断固できないし、また、アメリカはそれを強要するような、アメリカには力というよりも権利はないはずだというふうなことを申し述べまして、今回単体抽出ということで、この七日に単体抽出も成功いたし、昨日の分析結果におきましては、相当優秀なるプルトニウムを抽出することに成功いたしたというような次第でございますので、われわれといたしましては、このプルトニウムを今後どのように完全に保障措置のもとに置くのか、あるいはまたPPシステムを強化することにおいてこれを核拡散につながらない方式を求めるのか、そういうことを今後はひとつINFCEにおきましていろいろと議論をしてみようと、こういうふうに考えておりますので、INFCEの結果は各国それぞれに拘束されることはないということになっておりまするし、われわれといたしましてはあくまでも混合抽出ではなくして単体抽出で今後も臨みたいと、かように思うのでございます。  したがいまして、二年先になりましても、私はやはりさような意味において、INFCEは終わるでございましょうが、日米間には現在の原子力協定がございますと、八条C項がありまして、やはりアメリカのイエスという声を聞かないことには共同決定するわけにはまいりませんので、したがいまして、われわれといたしましては今後も努力は必要であろう、努力は必要であろうけれども、今回さような経緯において、日米親善という大きな柱というものにはいささかもひびを入れることなく両国が理解し合ったのだから、今後も私たちはそういう努力は続けていかなくちゃなりませんが、今日ただいまいわゆる単体抽出、それによるプルトニウムサイクル確立並びに高速増殖炉研究開発、これは実のところ日本だけではなくして、欧州の諸国もこれにはもうほとんど双手を挙げて賛成をいたしておりますので、世界的にわれわれといたしましても大きな責任感じながら平和利用と核不拡散の両立を図る、こういうことで臨んでいきたいと、かように存じておる次第であります。
  12. 森下昭司

    森下昭司君 私は、この間の日米共同声明の中に、「当初の運転期間が終了した時点において、もし運転試験設備での実験作業の結果として、及びINFCEPの結果に照らして、混合抽出法技術的に実行可能であり、かつ効果的であると両国政府が合意するならば、本施設運転方式は、在来の再処理法から全面的な混合抽出法に速やかに変更される。」と、これは共同声明で明らかになっているわけですね。長官はあくまでも単体抽出だと。たとえば混合抽出なんというものは三対七という比率で出されるけれども、技術的にまだ確立されてない、こういう現状だということをいま強調されたわけでありますが、共同声明では、「両国政府が合意するならば」という前提はありますけれども、一応日本政府混合抽出方法が可能ならば結構ですよという趣旨共同声明調印しているんですよ。ですから私は、長官の言う、あくまでも単体だと言われますと、この共同声明趣旨と矛盾はしないのかというふうに感ずるわけなんでありまして、その点ちょっとお尋ねいたします。
  13. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現状として私たち考えておることをいま申し述べましたし、また、この間のINFCEにおきましてもそのとおりの発言を、いま私の言ったとおりの発言をいたしております。ただし、共同声明にも書いておりまするとおり、われわれといたしましては、いわゆるOTLという一つの小さな実験試験装置がございますから、これ等を利用いたしまして、混合抽出が可能なりや否や、あるいはまた共沈法というものも可能なりや否や、そういうことを十二分に研究して、その結果は、単に日本だけで温存するのではなくして、INFCEにも報告をいたしましょう、またIAEAにもその情報をお渡しいたしましょうと、そうした結果、やはりそれは多少たとえば国民の費用がかかっても、その方がより安全だということを世界じゅうが認めた場合、あるいは日本も本当にその方がいいんだということを全部が認めた場合、そうした場合におきましてはお互いにそういう方向へ転換することはわれわれとしてはやぶさかではございませんと、これがあの条項でございます。  ここで先生に一言、ああいうふうな条項ができた経緯だけを一言聞いていただきたいと思いますが、最初アメリカの方のドラフトによりますと、アンレスという言葉を用いまして、いわゆる共同混合抽出法が不可能だということに関して、不可能だということについて日米両国が合意せざる限り、日本は二年先には現在の施設混合抽出方向へ改造すると、こういうふうに書かれておったわけであります。これでございますと、二年たって、日本混合抽出なんてまだまだ未確立技術でございますと日本だけが言いましても、アメリカは、いや、もうそれは、そんなものできるんだと、そんなことは何を言っているかというふうなことでアメリカの同意を得ない、つまりアメリカの方がかえってわれわれの首の根っこを押さえるようなことになりますので、したがいまして、われわれといたしましては、アンレスでは困ると、つまりそのような方法が可能であるということを両国が理解した場合、その場合には混合抽出に切りかえましょうと、こういうふうに言っておるわけでございますので、アメリカドラフトだと、一方的な私たちは義務を負うような仕儀に相なるわけですが、これには徹底してわれわれも反対をしたという経緯があったということをひとつお考え賜りたいと存じます。しかし、両国がせっかく共同声明に私も責任を持って調印をいたしたわけでございますから、日本といたしましては、先ほどの主張主張として、現在そういう主張でいっておりまするが、今後二カ年の間に懸命の努力をして、そういうような方法もあらゆる方法を見出していきたいと、かように考えておることは少しもその当時と変わりはございません。
  14. 森下昭司

    森下昭司君 そういたしますと、結論的にいけば、二年後のいわゆる共同声明から発しました協力協定期限が切れまして、東海村の再処理施設についてはわが国としては単体処理、つまり混合抽出技術がいまだ明確でないというような状態であるならば、二年を経過しても単体抽出で再処理施設を稼働することは可能であるというような見通しを持って今後進んでいきたいということに尽きるかどうか、その点最後にちょっとお伺いしておきます。
  15. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 仰せのとおりであろうと考えております。
  16. 森下昭司

    森下昭司君 そこで、実はけさの新聞に載っておったんですが、きのう何かソ連民間原子力の代表の方とお会いになったようでありますが、その中でソ連側から、ソ連高速増殖炉については安全性もあって、これは大いに研究、発展させるべきものであるという前提に立って、日本との協力関係を強調された。宇野長官もその協力関係については日本協力するにやぶさかではないという趣旨を述べられ、そして濃縮ウランソ連から日本が買うことによって、またソ連日本原子力プラントを輸入しようではないかという点については検討を約すと、こういうようなお答えをなさったようでありますが、私は、仮に濃縮ウランなり原子力プラントの輸出をするにいたしましても、これはやはり日米両国間の協定の問題もありますし、それから今日、このように再処理問題をめぐりましてアメリカ側政策が明らかになっておりまするときに、仮に検討を約すにいたしましても、将来の日米間の原子力問題の間において懸念すべき事態というのが出ないのかどうかという点は多少杞憂するんです。そういう点については、ソ連とのこの問題についてはどういう考えをお持ちになっているのか。  さらにまた、ソ連との協力と申しますか、あるいは濃縮ウランの輸入が果たして実現するかどうかは別にいたしまして、そのことが日本アメリカとの関係においてひびを入れることになりはしないかという点について、ちょっとお伺いいたします。
  17. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ソ連との間におきましては、ちょっと経緯を申し述べますと、政府間では日ソ科学技術協力協定というのがございます。これはまだ実は動いておりません。そしてその内容は、専門家交換、あるいはまた共同研究、そしていろんな三つばかり重要なことが並んでおるわけですが、来年の一月にひとつそういう会合を開いて、今後の問題を検討しようじゃないかという段取りになっております。その間に、民間におきましては、ソ連との間におきまして、いろいろシベリア開発等々の話があったときに、ソ連の方から、ひとつあなたの方に濃縮ウランを提供するからバーターでプラントなんかをソ連に送ってくれないかというような話があったことは事実でございますが、しかし、これまた民間だけが余り急ぎ過ぎましてもというふうなことで、やはりウランの問題、原子力平和利用の問題に関しましては、今日政府民間は一体となって常に意見を交換して、そしていろいろと事を進めておりますから、だから今回は、そういうふうなことがございましても、民間協力協定民間同士と、——ソ連民間はございませんから、国家原子力委員会でありますが、これとの協力は、実は原子力協定という一つの決まった枠内での協力協定が間もなく調印される予定になっております。この中におきましては、いま私が申し上げましたように、政府との間の科学技術協力協定と同じように、専門家交換であるとか、あるいは情報交換であるとか、さらには共同研究と、この三つ議題をしぼって、そうして間もなく調印をするということになっております。  そこで、ソ連の方からは、すでにアメリカそのほか三十三カ国と原子力協定を結んでおるので、日本ともどうだというふうな話があったのでございますが、いま確かに、先生がおっしゃるとおり、われわれといたしましては、日米原子力協定という一つの大きな協力協定のもとに今日まで過ごしてまいりましたので、いま直ちにそうしたところに踏み切ることが果たしていいかどうかというふうなこともわれわれといたしましては考慮をしなければなりませんので、昨日、相手の国家原子力委員長に対しましては、政府間にはすでに科学技術協力協定があるから、その範囲内において民間原子力協定をわれわれも大いに支援をしようと、そういう姿で今後進んでまいりましょう、こういうふうに実はお話をしておるわけでございます。  ただ、日本資源小国でございますから、したがいまして、ウランをあらゆるところから入手をすることを今後も怠ってはならないと存じますし、また、濃縮液に関しましても、われわれが核燃料サイクル確立するまではその技術がないわけで、役立たないわけでありますから、その間はあらゆるところからやはり入手し得るようなことが、すなわち日本一つのセキュリティーであるとこれは私は考えておりますので、そういう面におきましては民間でひとつお話を願って、その動向を見きわめながらわれわれとしても考えていきたいものだと、こう思っております。  ただし、ソ連に対しましては、あなたの国とひとつ今回は原子力協定を直ちに結んで、それによって、あなたの方から濃縮ウランをちょうだいして、プラントを出そうというふうな話まで向こうはしたのですが、われわれといたしましては、それはいまのところは考えておきましょうということでございます。しかしながら、ソ連といわずどこといわず、日本といたしましては、今後、いわゆる核燃料物質入手に関しましては、多角化方向をわれわれとしても真剣に検討する必要があるのではないだろうかと、こういうふうに存じております。
  18. 森下昭司

    森下昭司君 いま私の手元に、六月三十日現在の、「昭和五十二年上期核燃料物質等保有量一覧表」というのをいただいたわけでありますが、この中でも、いわゆる濃縮ウランは圧倒的にアメリカさんが多いわけでありまして、ほとんどと言っていいのではないかと思います。  そのことは別にいたしまして、プルトニウムが八百六十六キログラム存在をいたしておりまして、その使用は、原子炉に六百三十七キログラム、現在燃料棒等に使用されているものが二百二十九キログラムと申し上げますと、この八百六十六キログラムのプルトニウムというものは、すべて貯蔵保管ではなく、現に原子炉に装荷され、あるいは燃料棒として使用されている、こういう理解をしていいのかどうか、そのことをお尋ねいたします。
  19. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 原子炉の六百三十七キロにつきましては、先生おっしゃいますように、原子炉の中、あるいは原子炉のカテゴリーの中に臨界実験装置というのも含めました原子炉に使用されておるものでございます。  それから使用の二百二十九キロ、これは大部分が動燃事業団のプルトニウム研究室、ここでATRとかあるいは高速増殖炉実験炉、そのために現在燃料として加工するために貯蔵しておるもの、が大部分でございます。
  20. 森下昭司

    森下昭司君 そういたしますと、先般の日米協力協定の中にありました若干の実験用のプルトニウムの、言うならば、使用と申しますか、そういったものについてはアメリカは認めていくという一項目があるのでありますが、今後、この「常陽」から、先ほど本会議でも申し上げた「もんじゅ」、それから新型転換炉で「ふげん」等があるわけでありますが、こういった原子炉等新しく必要とするプルトニウムというものは、どの程度の量が想定されるわけですか。
  21. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず、日米間の関係から申し上げますが、先生御指摘のように、この共同声明の冒頭に、高速炉の研究開発を含めたわが国原子力開発といったふうなものについて、アメリカは理解を示しました後に、今後新しい型の原子炉を開発するに必要なプルトニウムにつきましては、これを日本国の計画に不必要な遅延を及ぼさないように保証する方法日米双方で探求するということがうたわれておるわけでございまして、そういう意味で、私どもは今後とも動燃の再処理施設からいずれ出てまいるでございましょう酸化プルトニウムというものに合わせまして、こういった外からの供給というものによって、研究開発用のプルトニウムというものは十分に確保されるというふうに考えております。  で、今後どの程度のプルトニウムが必要であるかという点でございますが、これは若干訂正的になりますが、今後、研究開発用に必要なプルトニウムということになりますと、これは現在の年間二百十トンの能力を持っております東海の再処理工場でできますプルトニウムというものが大体研究開発に見合う量でございます。で、私の記憶で申し上げますと、大体今後十年間に——後ほど間違えておりましたら訂正させていただきますが——大体二十トン弱程度ではなかったかというふうに考えております。
  22. 森下昭司

    森下昭司君 これは局長重ねてお尋ねいたしますが、先ほどから長官お答えになりましたように、二年間で九十九トンですか、九十九トンの再処理で一応いまこの二年間の見通しとして賄うことができますか。
  23. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 九十九トンと申しますのは使用済み燃料の重さでございまして、この中にプルトニウムが幾ら入っているかということでございますが、大体百分の一程度がプルトニウムというふうに考えられるわけでございますので、九十九トンの中には大体一トン程度のものが含まれているというふうに理解していいかと存じます。
  24. 森下昭司

    森下昭司君 それでは、私、質問を原子力船開発事業団の管理いたしておりまする原子力船「むつ」の問題に関しましてお尋ねをいたしておきたいと思うわけであります。  まず最初に、私は原子力船「むつ」が昭和四十九年九月二十六日の深夜、強硬に地元の反対を押し切って試験のために出港された。しかも、出力一・四%で事故を起こしまして、定係港への帰港がままにならなかった、これはなぜ帰港が認められなかったかと言えば、むつ市における定係港を決めて、そのほか出港に至るまでの諸段階、諸手続にいろんな問題点がありました。このことは時間が長くかかりますので触れませんけれども、結果におきましては、自民党の当時の鈴木総務会長が出かけられて、いわゆる四者協定というものが結ばれて、その結果定係港への帰港がやっと認められたという問題が一つあるわけでありまして、結果論から物を見ますと、原子力行政に対しまする国民の不信をつのらしたということに私は尽きるのではなかったかと思うのであります。この事故につきまして、いろいろ当時からも反省でありますとかいろいろのことが述べられているわけでありますが、現時点に立ちまして、そして新しい四者協定が実行されないまま修理港なり、新定係港も見つかっていないというような状況の中におきまして、この事故についてどういうような反省と、それからこの事故を生かし、今後どうしていこうというお考え方があるのか、その点について政府側として長官原子力船開発事業団として理事長からそれぞれ所信の披瀝をひとつお願いいたしたいと思っております。
  25. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 「むつ」のああしたトラブルは、非常に政府といたしましても残念なことでございまして、やはり反省をすべき点が非常に多くあったわけでございます。したがいまして、直ちに「むつ」の修理等々に関しまして、また事故に関しまして幾多の委員会を内閣あるいは原子力委員会に持ちまして、そこで十二分に検討をしていただいたと思うのでございます。その結果、やはり原子力行政というものは、安全ということを大きな柱として進まなければならない、こういう結論を得ましたので、特に内閣総理大臣の諮問機関として設置されておりましたいわゆる行政懇談会、ここの答申に基づきまして、原子力委員会はいままでは開発、安全両者を一手に引き受けていたが、今後は安全に関してはやはり専門の委員会を設置すべきであるというので、去る通常国会におきましても出しておりまする安全委員会設置に関する基本法の改正、こうしたことでわれわれといたしましても「むつ」のああしたトラブルを大きな一つの反省材料として今後も開発と安全は両輪のごとく進まなければならない、こういうことで進んでまいりたいというのが現在の私たち考え方でございます。  なおかつ、四者協定は四月十四日が期限でございましたが、これが守り切れておらないということに対しまして、私は現在も責任を痛感いたしております。それはこの間本会議場におきましても、先生にみずから、私からも御答弁申し上げたような経緯がございますが、しかし何といたしましてもやはり現在四者協定は生きており、また、私はそれを尊重しなければならない、こういうふうな気持ちで今日臨んでおります。一応むつの市長さんも新しい市長さんが誕生されたことでもありますので、したがって、そうしたことを県としてどういうふうにとらまえておられるか、また、漁連としてそれをどういうふうにとらまえておられるかという問題もございますので、今後四者のうちの三者が青森におられるわけですので、十二分に連絡をとりまして、そうして今後の問題を速やかに解決を図らんものである、これが今日の政府考え方であります。
  26. 島居辰次郎

    参考人島居辰次郎君) 御指摘の話でございますが、あの一つの事件がございまして、われわれの幹部、つまり役員は全員交代をさせられました。私もその後に引き受けてまいったわけであります。そうしてまずちょうどそのころ「むつ」放射線漏れ調査の報告書がございました。いわゆる大山報告書でございますが、それをよく検討いたしますと、なるほどその中に盛ってあります一字一句まことにわれわれの胸を打つものがございますので、われわれ新しく引き受けた者といたしましては、その本当の精神にのっとってこれからわれわれは何とかやっていかんければならぬじゃなかろうか、こういうのを、その精神を指針としてやっておる次第でございます。  それからそういうものに基づきまして、早速、一番問題は技術陣でございますが、その技術につきまして、私は事務屋でございますが、あとの理事四人は全部技術屋になりまして、そうしてそれぞれの、たとえば原子力あるいは原子炉、造船、運航その他の経験豊かな人材を採用していただきまして、その幹部についてもらった次第でございます。なお、技術の方をごく重視しまして、その方も強化してまいっておるわけでございます。  それからこの中にも盛っておられます大きな問題でございますが、私の方の団内にも遮蔽専門部会及び安全性専門部会というものを設けまして、それぞれ十二人あるいは十六人のそれぞれの経験者、学者その他を集めまして、これを研究してまいっておる次第でございます。
  27. 森下昭司

    森下昭司君 そこで私は重ねて長官にお尋ねいたしておきますが、昭和二十八年ごろだったと記憶をいたしておりますけれども、当時は原子力船の問題が原子力発電よりも先に来るのではないかというような非常な関心があった時代であったと私は思うわけであります。もともと発電用の原子炉は、いわば日本原子力研究所の英国型のものを除きましてあとはすべてアメリカの軽水炉を輸入して、それぞれ現実に発電が行われておる。言うならばアメリカ技術をそのまま受け入れて若干の改良をしたというような経過があるわけであります。ところが舶用原子炉につきましては、当時はアメリカソ連等を中心にいたしまして、いわば軍事用が優先をいたしておりまして、特に潜水艦等で広く活用されていたわけであります。ために軍事的機密と申しますか、そういうものが前面に押し出されましたために、この「むつ」の原子炉を設計する段階でいわば純国産という立場でいわゆる設計に取り組んだという経緯が実はあるわけであります。私はそこに一つ問題点があったのではないか。たとえば長官が言われました開発と安全性の両輪という中で開発だけが優先をいたしまして、安全という面がないがしろにされた結果になったのではないだろうかというような点が言えるのではないかと思うのであります。したがって、後ほどいろんな点について御質問いたしたいと思っているのでありますが、当時の状況からいきますと、原子力船「むつ」の建造を急ぎ、舶用原子炉の製作を急いだということは、言葉をかえて言えば、原子力発電等が現実に起きてきた、いわば経済大国としての日本の面目、あるいはいわゆる世界の趨勢から見て、米国ソ連原子力船が動いた、わが国も、というような面目的意識というものが先に立って「むつ」がつくられたのではないだろうかという杞憂を私はいまでも持っているわけであります。そういう点について、私は、当時のわが国原子力船に対する開発の基本的な考え方というものがやや基礎的に——学問的にと申しますか、基礎的に安全性等について十分な配慮がなされなかった、また技術的には、原子炉自体に対する技術がまだ完全な事態に立ち至らなかった点に問題があったのではないだろうかと思うのでありますが、長官はその当時は長官ではおみえになっていないわけでありますが、当時をいまから振り返られまして、このような原子力船「むつ」の建造が今日の時点から見て果たして妥当なものであったかどうか、そういう点について所感があればひとつお聞きいたしたいと思います。
  28. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は今日この問題に対する最高の責任者といたしまして、やはり海運国日本、島国日本ということを考えますと、しかも資源小国日本でございますから、やはり石油が間もなく枯渇するであろう。われわれのデスクプランどおり来ればいいのですが、来ないであろうという立場に立ちますと、その石油は極力国民の欲する、また代替エネルギーとしてかえられないところへ回すのがやはり政治であって、その石油をまた代替エネルギーにかえられる場所、つまり船とか発電とか、そういうところには新エネルギーを使う、原子力を使うということがわれわれとしての生きる道でなかろうか、こういうふうな信念を今日も抱いておる次第でございます。  特に、一般の方々には、角砂糖一個の原子力は二十グラムだが、それはちょうど三百万倍の石油のエネルギーに相当するから三トン車二十台分ですよと、こういうふうに申し上げますと、なるほどということが一般にわかるわけでございます。だから、角砂糖一個で石油を運ぶために石油を使わないような方式を今後求めていかないと、せっかくこれだけたくさん自動車を持ったが自動車が動かない、冷蔵庫に電力が回らないというようなことであっては、やはり国民の産業、経済、生活、文化も侵されるわけでございますので、さような意味原子力船は原子力発電と同様な意味を持って、わが国としては研究開発を推進すべきであるという信念には、私はいささかも変わりはございませんが、恐らく先任者もそういうお気持ちで原子力船の建造に乗り出されたのではないだろうかと思います。特にこれは長期のスケジュールを必要といたします。つまり建造から、さらには出力テストから、あるいは実験航海から等々を勘定いたしますと、修繕なんかを入れますと、もう十年今後かかるわけでございますので、一十年先の日本世界のエネルギーということを考えますと、私は先任者がお考えになった当時、決してそれは余りにも早過ぎたんだということではなくして、やはり真剣に事態を認識されての上での措置ではなかったろうかと、こういうふうに考えておる次第であります。
  29. 森下昭司

    森下昭司君 信念はそれなりに一つ考えのもとに行われることでありますから結構だと思うのでありますが、それでは具体的にお尋ねいたしますが、いわゆる世間で言う原子力船時代と言われるような時代はいつごろ到来するとお考えになっているのですか。いまの時点で、いつごろ原子力船時代と言われるような時代が来るかという点について、もしも明言できたら明言していただきたいのです。
  30. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在の時点におきましては、たとえば造船不況であるとか、いろんなことでいろいろと将来だめじゃないかというふうな、あるいはお考えが中にあるかもしれませんが、しかし過般来、造船工業会、あるいは船主協会、さらに原子力に関する産業会がございますが、そうした団体の方々がお越しになられまして、やはりこの「むつ」の事業団法、これに対して速やかに生命を与えていただいて、そして実験船として十二分に貴重な体験を「むつ」に積んでもらって、その結果を引き受けて、われわれとしても原子力船時代を迎えなければならない、こういうふうに表明をなさっておられますので、私たちといたしましても、民間政府も、いまそのような気持ちでいるということを考えておるような次第でございまして、特に、これは先年来御説明を申し上げておりまするとおり、もう一九八五年、昭和六十年でございますが、そのときの想定を私たちはいたしながら、今日エネルギー問題に対処いたしておりますけれども、恐らくもうその時分になれば、世界といたしましても、この原子力船時代というものを迎えなければならない時代であろう、こういうふうに考えております。
  31. 森下昭司

    森下昭司君 私、いま長官の言われたことは、いろいろな見通し問題等でございますから、若干の根拠でありますとか、あるいは事情の変化と申しますか、いろいろなものがあるかとも思いますが、たとえばおたくの方が出されました「原子力年報」の四十九年、五十年版を読んでみますると、「原子力船時代の到来の時期を現時点で予測することは必ずしも容易ではない。」ということを書いているわけであります。  私はやはり、いま長官は昭和六十年、一九八五年というお番葉がございましたけれども、予想としては一九八〇年代の後半に原子力船時代が来るのではないだろうかというのは、いわば海運関係者の希望的観測ではないかと私は実は思うのであります。私はやはり、原子力船時代の到来というものは、この年報に書いてありまするように、現時点ではなかなかむずかしい問題ではないかと思うのであります。  でありまするから、私はそういういわゆる見通しの誤りを指摘するわけではございませんけれども、先ほど申し上げたように、結果からまいりますれば、事故を起こしたことは否定できない事実でありまするから、そこに技術的な不足、あるいはまた安全性に対する配意——これは後ほど大山報告でも指摘をされているわけでありまするから、問題的な表現は別にいたしまして、そういう大筋の指摘が実はあるわけであります。このことは、私がいま申し上げたように、経済大国でありまするとか、海運国だとか、あるいはまた世界の趨勢におくれるなといった立場からの開発面に対する点だけが重視された結果になっているのではないだろうかという点を実は申し上げたわけであります。  この原子炉をおつくりになりました三菱原子力工業の藤永一という人が、日本造船学会誌の五百二十一号、昭和四十七年十一月号でございますが、その雑誌に「原子力船「むつ」の原子炉工事について」と題する報告を寄せておみえになります。この報告の中で、藤永さんは、「炉心の設計の改良について「むつ」の基礎設計が行われて、いよいよ建造が確定するまでには種々な事情で相当な日時を要し、その間陸上炉においては大きな技術革新が行われ、建造着手決定時には「むつ」炉心は非常に旧式なものとなっていた」ということをまず指摘しておみえになるのであります。「主としてソフトウエアが高価なために改良設計は断念した」と述べている。この藤永さんは続けて、「もしこの改良を行っておれば、「むつ」の原子炉は原寸で少なくとも二、三割の出力上昇は容易であると述べ、出力性能の改善が見送られたことを残念そうに述べているわけであります。  この報告から私どもが思うには、原子力設計は、出力性能より安全性能の万全の確保が重要であるということを私どもは指摘をいたしておるわけでありますが、安全性能が十分でなかったではないかという逆に私は疑念を持たざるを得ないと実は思うのであります。  この点について、長官はもしもこの学会誌をお読みになっておみえになりますれば、また現在この人が指摘した旧式の炉であるという点と、それから安全性についての点がないという点について、どういうお気持ちをお持ちになっているのかお答えいただけば幸いであります。
  32. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は残念ながらその論文そのものは読んでおりません。ただ、その後行われました各種の審査会、委員会等におきまして、やはり安全性に欠くるところなかりしやという問題が一番多く議論され、しかしながら、「むつ」そのものは技術的にも相当な水準に達しておることは事実だ、こういうふうな報告を政府調査機関なり委員会から受けておりますので、それを読んでそのような認識をいたしておるわけでございます。
  33. 森下昭司

    森下昭司君 もしも原子力局長から何かあれば……。
  34. 山野正登

    政府委員(山野正登君) この論文にも書いてございますように、当時、確かにこの炉心設計というものが陸上炉の研究開発の進展に応じまして旧式なものになったということに加えまして、これをもし改良します場合には、時間的な問題あるいは経費の問題といったふうなものも、もちろんあるわけでございまして、その辺を総合判断されまして、従来どおりの方針でいくということが当時決心されたと思うのでございます。「むつ」で船用炉を実験することの意味と申しますのは、これはもちろん、先生御指摘のように、舶用炉が新しい設計のものであればあるほどよろしいことは間違いない事実ではございますが、それとはまた別に、陸上炉では実験のできない動揺等に対する原子炉の性能の確認という別の使命もあるわけでございますので、そういったものは、この炉が新しいか、古いかといったことにさほど大きく影響されることでもないといったふうなこともあわせて判断されたものだというふうに私は理解いたしております。
  35. 森下昭司

    森下昭司君 そこで、私は、藤永さん自身が事実「むつ」の原子炉の何らか技術の中に参画をされた立場からお書きになっているわけでありまして、このこと自体はやはり一応真実を物語っているのではないだろうかというような感じがいたします。これは極論すれば、炉心は非常な旧式なものになったと昭和四十七年に言っておみえになります。もう五年たったんですから、原子炉発電のいわゆる舶用原子炉といたしますれば、たとえ「むつ」が修理、回復なったといたしましても、旧式なものだということを技術者自身が御指摘になっていることは、私は否定でき得ないようなことではないだろうかと思うのであります。  そのことは別にいたしまして、昭和五十年六月の十日の原子力委員会におきまして、「むつ」の改修に当たっては、開発主体である日本原子力船開発事業団技術水準の向上を図ること、それから国の責任において十分な審査を行うこと等の前提条件を満たすことが必要であるということが実は指摘をされているわけであります。このことから私は考えましても、事業団の技術水準——先ほど理事長から、その後、造船でありまするとか、いろんな各分野の専門経験の深い方がそれぞれ御就任していただきましたと、技術陣も充実いたしましたという実はお話があったわけでありますが、そういう原子力委員会の指摘やあるいは大山報告の中に書かれた事項、そして、いま理事長がお答えになったこと等を考えてまいりますと、当時の原子力船開発事業団が果たして技術水準の上において十分な体制のものがあったのかどうかという点が一つの疑点になってくるのではないかと思うのであります。したがって、国の審査が行われる段階におきまして、安全審査の面でありまするとか、あるいは船体の構造の問題でありまするとか、原子炉そのものの機能の問題でありまするとか、そういう審査面について十分ではなかったのではないだろうかというような実は感じがいたすわけであります。したがって、こういった問題について、一体、原子力委員会の言う技術水準の向上を図ることというのは、具体的には何をすることだというふうに開発事業団としてはお考えになっているのか。先ほどお述べになりましたように、ただ単に経験豊かな専門家に就任していただいて、技術陣を刷新したことがそれに該当するという趣旨なのか。それから、国の責任において十分な審査を行う等々ということは、一体具体的にはどういうことを指すのか。これは前提といたしまして、私は繰り返して申し上げまするが、昭和四十七年だったですか、いわゆる原子炉設置の申請がなされまして、原子力委員会は意見を出して、最後は総理大臣が許可をしたわけでありまするから、その審査がもう行われているんです。その審査が行われて、実際に船の出力試験をしたときに先ほど申し上げたような事故が出た。その上に立って原子力委員会なり大山報告はいま申し上げたようなことを指摘しているわけであります。そういう前提の上に立ちまして、政府が国の責任において十分な審査を行うことなどと指摘をされていることは具体的には何を指しているのか、あるいは開発事業団が技術水準の向上を図ることと原子力委員会なり大山報告が指摘をしていることは、具体的に何をしようと言っておるのか。それはどういうことだというふうに理解をしているのか、言葉をかえて。それぞれ長官及び理事長にお尋ねいたします。
  36. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず、この大山委員会の御指摘になっておることがベースになりましてこの原子力委員会の指摘もあるわけでございまして、私どもといたしましては、基本的には大山委員会並びにこの原子力委員会の御指摘というものは謙虚な気持ちで受けとめまして、できるだけこれを改善するべく努力してまいったつもりでおるわけでございます。  まず第一点のこの事業団の技術水準の向上を図るという趣旨は、当時、これは大山委員会の指摘にもございますが、事業団が体質的に事務処理機関的な性格を持ってしまっておったのではないかという御指摘もあるわけでございまして、そういう意味から、できるだけ技術的に経験豊かな人を事業団に持ち込み、かつ一貫した責任体制のもとで仕事を行い、しかも、できるだけ技術を事業団の中に蓄積できるように配慮をすると、こういったふうなことを私ども考えてまいったわけでございまして、具体的には、先ほど理事長がお答え申し上げましたように、理事長初め理事を一新するとか、あるいは技術部の中を改組いたしまして、技術的なデータ等も一元的に管理、保管できるような専門の課を設けるとか、あるいは格段に技術陣の陣容の一新を図る、経験豊かな人を持ってくる。さらにまた、私どもとしましては、財政当局とも話をいたしまして、技術部の人員の増強といったことも予算上は手当て済みでございます。ただ、本件はただいま国会で延長法案の御審議を願っておりますので、実員の増員はただいま自粛いたしておりますけれども、これも法案が上がりました暁にはぜひ一日も早く増強したいと考えております。それに加えまして、事業団にできるだけ内外の衆知を結集するという意味におきまして各種の専門委員会等を設けるといったこともいたしております。  それから、一方、国の機関といたしましては、これは私どもと運輸省が監督をする衝にあるわけでございますが、十分にその責めを果たし得ますように、いわゆる安藤委員会というものを設けまして、事業団がただいま進めております遮蔽改修あるいは総点検といった作業の各段階につきまして、できるだけ過ちのないように監督を続けていくという工夫をいたしますとともに、安全審査の体制につきましては、昨年の一月に原子力安全局というものを創設いたしまして、行政上の体制の整備をしたのでございますが、あわせて、原子力委員会を二分しまして新原子力委員会と原子力安全委員会というものにいたすべく、原子力基本法等の改正法案をただいま衆議院において御審議願っておるという状況でございまして、こういうふうにいたしまして、私ども、委員会並びに大山委員会の御指摘というものはできるだけ率直に受けとめて、これを施策に反映すべく努力をいたしておるつもりでおります。
  37. 森下昭司

    森下昭司君 私は、審査をする技術がなければ安全な審査が果たして可能であったかどうかというような疑問は持つわけでありますが、昭和五十一年七月三十日に原子力行政懇談会が「原子力行政体制の改革、強化に関する意見」というものを実は出しているわけであります。この中では、国民の健康と安全が確保されなければならないという前提のもとに、行政及び施策の実施に当たってはその責任体制を明確にしようということを強調しているわけであります。そして、法律案としては原子力基本法の改正案が出ているわけでありますけれども、その中で、原子力安全委員会というものを原子力委員会とは別個の形で設けるということ。したがって、責任分担というものをまず明確にするということを述べ、そして、その委員長については——現在、原子力委員会の委員長宇野長官が御兼任でありますが、原子力安全委員会の使命と、いわゆる設置した目的から考えますれば、その構成、特に委員長については「専門知識を要し、長期間にわたって在職することが好ましく、かつ、行政庁と一線を画した姿勢の明示が望ましい」ということを実は述べているわけであります。  そうだといたしますならば、「むつ」の改修に当たりましては、原子炉規制法二十六条で改めて設置変更の申請が出されまするし、その変更申請が出れば安全審査をしなければならぬということになるわけでありまして、私は、事故を起こしたという結果論だけを強調するようで恐縮でございますけれども、起きたことは否定できないという事実があるといたしまするならば、「むつ」の改修に当たっては、安全審査は、この原子力行政懇談会が指摘をした原子力安全委員会という制度が設けられた後に、その原子力安全委員会が安全審査をチェックするということが望ましいのではないか。そのことの方がより事故を起こした結果国民から不信をつのらせた原子力行政に対する信頼を回復する一つの道に通ずるのではないだろうかという感じがいたすわけでありますが、この点についてはどうお考えですか。
  38. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 新しい原子力安全委員会ができてから審査したらいいではないかという先生の御指摘ではございますが、原子力委員会におきましては、この新しい法案が通るまでの経過といたしまして、安全審査につきまして種々の強化のための改正を行っております。たとえば原子力船につきましては、すでに原子力船部会というのを原子力委員会の下部機構につくっておりまして、いろいろな御指摘がございました安全審査と運輸省が行います施行認とのギャップをできるだけ埋めるための措置をその専門部会にお願いするというようなことを行っておりますし、審査の先生方の増員を行うなど、安全委員会ができるまでの間におきましても種々の強化策を講じておるわけでございます。  それからもう一点といたしましては、「むつ」の改修計画ができ上がりますと、その遮蔽の基本設計につきましては安全審査を行うべく現在準備中でございます。したがいまして、その申請を受けてから十分なる安全審査を行った上で改修工事を始めていただくというふうなことで、原子力委員会では準備をしておるところでございます。
  39. 森下昭司

    森下昭司君 これは長官にお答え願いたいのでありますが、この行政懇談会の指摘しているのは、私はいま委員長のことだけを申し上げましたが、事務局は、具体的に言えば公正取引委員会事務局のように、独立の事務局を設けることが望ましいということが原則として述べられているんです。だから、いま安全局長がお答えになりましたように、たとえば原子力安全局ができた、そして原子力安全局の中で十分な審査をするということだけでは、私は、この原子力行政懇談会の希望と申しますか、望ましいという形と違ったものを感ぜざるを得ないわけであります。ただ、「望ましいが、その体制整備には期間を要すること等の事情を考慮し、当面は、各省庁から中立的な立場を保障(庶務の協力処理など)して、科学技術庁原子力安全局に」とりあえず事務局を置く、原子力安全局に仮に当面やらせるにいたしましても、言うならば、一応の前提として中立的立場を保障するということがやっぱり出ているわけであります。何も安全局を信頼しないという意味ではありませんが、原子力行政懇談会の指摘した希望からいけば、局長の答弁ではいささか私は満足できないのでありまして、新しい——新しいと言うと語弊があるのでありますが、五十一年の七月の指摘事項でありまするから、期間的にいけば一年以上たっている。その趣旨に沿って原子力基本法等の改正案が出されているわけでありますけれども、現実には改正案がまだ審議されていませんので、そういうことも含みつつ審査に当たって、私は、できるならば新しいそういう基本法が通って安全委員会ができた後に行うべきだという主張でありますが、新しいこういった提言のある中で、原子力船「むつ」の改修の安全審査についての心構えと申しますか、基本的な考え方と申しますか、そういうものを重ねてお尋ねいたします。
  40. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 何分にも原子力事業団には多くの人たちがおりまして、しかも、先ほど理事長が答えましたとおり、首の入れかえまでして今後に備えたというふうな体制もとっておるわけでございます。私といたしましては、こういう方々が懸命になってあすの新しい第一ページを開きたいと、こういう意欲で皆いておりまするし、現に「むつ」にも三十数名の船員が毎日乗船をしているわけであります。そうしたことを考えますと、やはり各委員会から、相当なレベルに達した原子力船であり、なおかつ、総点検、さらには遮蔽改修を施せばりっぱにこれは実験船としての使命を果たすであろう、そういうふうな各専門家の御指示を仰いでおりまするから、したがいまして、さような意味からも、やはり事業団の職員たちをしてあすに備えて活気あふるる仕事をせしめたい、こういう気持ちでございます。  だから、安全という点だけをとれば、先生が御承知のとおり、行懇ですでにこういうふうな話をしておるのだから、安全に安全を重ねる上についてはその方がいいんじゃないかとおっしゃるお気持ちはよくわかるのでございますが、やはり政治をお預かりいたしておりまする内閣といたしましては、そうした方々のことをも考え、また一日も速やかに原子力船時代に備えたいという気持ちもございますので、先ほど安全局長がお答えいたしましたように、決して安全を無視しておるのではなくして、各委員会のそうした答申に基づいて十二分に私はその点に関しましては努力をしてまいったと、こういうふうに思っておりますので、その辺も御理解を賜りたいと存じます。
  41. 森下昭司

    森下昭司君 私は、やはり念には念を入れてという言葉がよく使われますが、やはり開発と安全という両輪で行こうという最初長官の御答弁からいたしますれば、私は、現場で働いておみえになる方のお気持ちを理解することにやぶさかではございませんが、事一たん事故につながれば今度は国民大多数に大きな被害と損害を与えるというようなこと等を考えてまいりますると、念には念を入れてということになりまするから、やはり安全審査の点については十分私は考慮をすべきではないだろうかというようなことで申し上げた次第であります。しかし、いまお話がございましたが、私は、そういった観点の上に立ちまして、変更の申請については十分なひとつ安全審査を希望いたしたいと存ずるわけであります。  そこで、私は、原子炉規制法の二十四条の許可の問題に関しまして若干見解を伺って、おきたいのでありますが、この原子炉等を設置しようとする者に許可を与える際には、二十四条の第一項三号に次のようなことがあるわけであります。「その者に原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること。」と実は定められているわけであります。「むつ」の許可申請は日本原子力船開発事業団が行ったわけであります。私は、先ほどの山野原子力局長の御答弁ではございませんが、大山報告なり、その大山報告を基礎にした昭和五十年六月十日の原子力委員会の開発事業団に対する技術水準の向上という指摘について質問をいたしました際に、事務処理機関的な性格が強かったために、そういうような大山報告になり、指摘を受けたのではないだろうかというようなお話が実はあったわけであります。そのことを重点にして、前面に出して、それをすぐだからということではございませんけれども、仮にそういうような性格がやはり一つの問題点として大山報告なり原子力委員会が指摘をするようなことになったとすれば、私は、この原子炉規制法二十四条で言う「必要な技術的能力」が果たして日本原子力船開発事業団にあったのかどうか、非常に疑念を持たざるを得ないわけでありまするし、同時にまた、「原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力」があったかどうかという点も、私は同様な考え方を持たざるを得ないわけであります。そこで、この原子炉規制法第二十四条の二項で、内閣総理大臣は「許可をする場合においては、前項各号に規定する基準の適用について、あらかじめ原子力委員会の意見をきき、これを尊重してしなければならない。」ということが実は書いてあるわけであります。言うならば、原子炉の設置許可に当たりまして、許可を与えまする権限は内閣総理大臣にある。しかし、原子力行政の元締めでありまする原子力委員会の意見を聞いて、これを尊重して許可を与えるかどうか判断をせなければいけませんよということに私はなるのではないかと思うのであります。  そこで、いま申し上げたような経緯等を踏まえましたときに、果たして二十四条に基づいて的確な判断があって原子炉、つまり「むつ」の舶用原子炉の設置が認められたのか、若干、私、いま申し上げたように、疑念を持たざるを得ないのでありまして、当時の原子力委員会の意見とは、具体的にどういう意見が出されておったのか。また、内閣総理大臣——この場合は、まあ形式では内閣総理大臣でありますけれども、科技庁の皆さんが御判断をなさるべきことだと思うのでありますが、いま申し上げた二十四条一項三号の「技術的能力」というのは、どういう基礎の上に立って御判断なさったのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  42. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 「技術的能力」につきましては、原子力委員会の安全専門審査会で審査をいたしました結果に基づきまして、そのような——この場合は原子力船でございますが、原子力船を建設し、でき上がってからは運航するに足る能力があるかということを調べるものでございます。当時、申請書に提出されておる技術陣の陣容等を参考にいたして審査したものでございます。一応そういう点を審査いたしまして、これであれば十分原子力船を建造し、建造する場合の監督を行い、建造後は試験運航をする、そういうような技術開発をやっていく能力があるものと判断して、技術的能力ありと判断したものでございます。
  43. 森下昭司

    森下昭司君 いや、そういうような抽象的なことでなくて、やはり理事長から御答弁のありましたように、技術陣が非常に不足しておったということは、最初に私がお尋ねいたしましたときも、理事長からお答えがあったわけであります。また、山野局長からも、事務処理機関的な性格が強かったという点もあったと、それだけがすべてではございません。ございませんが、そういう性格もあったという、それは第三者から見れば、そういうようにも見えるということにも通ずるわけであります。私は、率直に申し上げまして、法律どおり解釈をすれば、技術的能力なり、いま局長が言われましたような運転能力なり、あるといたしまするならば、何も原子力委員会や大山報告が開発事業団の技術水準の向上を図れなんということは言う必要がないわけなんですよ。しかも、その開発事業団の技術水準の向上を図るということは、今後「むつ」の改修に当たる開発主体である原子力船事業団がそういう条件を満たすことが必要であるということが前提条件ですから、技術的水準がもしも図られなければ「むつ」の改修の主体たり得ることになり得ないと、つまり、日本原子力船開発事業団技術的水準の向上を図られなければ「むつ」の改修に当たってはいけませんよというのがこれは原子力委員会の決定じゃないですか、言葉をそのまま解釈すれば。だから、三段論法的で申しわけございませんけれども、これをさかのぼっていけば、四十九年当時というか、もっと言うならば、これは申請は四十七年だったかと思いますが、とにかく、原子炉設置を申請したときには、原子力船開発事業団はこの原子炉規制法の言う条件に適格性を欠いておったということが言えるんじゃないですか、これ。それをいまのような局長のただ抽象的な答弁で、能力ありました、運転能力もありますよだけじゃ満足できないんですよ。だから、私は、原子力委員会が意見書を出したというなら、その意見書にはどういうことが書いてあったかというんだよ。その意見を尊重しなければならないと法律に書いてあるから、その意見を尊重してかくかくの判断をしましたよという、そういう答弁がなけりゃ、その二十四条によって適確に日本原子力船開発事業団が能力があったと判断できるかどうかわからないじゃないですか。
  44. 松田泰

    説明員(松田泰君) 最初に「むつ」の原子炉設置許可をいたしましたときの原子力委員会の意見は、公式の文書で残っておりますものは、技術的能力に関しましては——まあ文書として残っておりますものは非常に抽象的に書いてございまして、安全審査専門委員会の審査結果のとおり適確に運転をするだけの技術的能力があるという結論だけが書いてあるものでございます。ただ、このベースになりました審査の内容は、原子力船事業団が申請書に添付いたしまして、技術的能力に関する説明書というのを出してございます。それに基づいて具体的に審査をしておりますが、この説明書には、当時の技術管理職の人的構成あるいは技術者の今後の養成計画、それから、たとえば主任技術者というふうな、法律上要求されますような有資格者の数、それから技術者としてそろえております者の専門分野、学歴等の構成というようなことがいろいろ書いてございまして、何分、事業団というふうな団体は発足の時点で全員そろうということが困難な面も、特殊性もございますので、いろいろ養成計画の方に比重のある点もございますが、そういうものから見まして、これがこのとおり行われるならば技術的能力があるというふうにその当時は判断したものでございます。
  45. 森下昭司

    森下昭司君 いま課長の御答弁は、要約して言えば、いまから考えてみれば、設立当時においてはなかなか有能な人材を集めることもむずかしいことがあったと、したがって、厳密な意味でですよ、厳密な意味で解釈をすれば、若干の問題が残った点もあったかもしれないと、そういう私は理解の仕方をするのが正しいじゃないだろうかというふうに思うわけであります。私は、人的構成だとか養成計画だとか、法律上の有資格者である主任技術者の問題だとかというような、いま具体的なお答えがありましたが、やはり最初に申し上げたとおり、舶用原子炉の設計そのものが純国産であって、まあいわば手探りの中から出発をしたという経緯がありまするから、もちろん、原子力船開発事業団をつくりました当時は、いま御指摘になりましたように、すべてが万全な人的構成や、あるいはまた研究体制でありますとか、あるいは運営管理体制でありますとかに若干欠けるものがあったのではないだろうかということは思うわけであります。そのことはともかくといたしまして、私は、こういうようなことを考えましたときに、繰り返すようで申しわけございませんが、開発と安全の両輪というたてまえをとるならば、原子炉規制法の第二十四条の設置許可に当たっては十分な検討と安全面に対する審査というものが行われていかなければならぬのではないだろうかというふうに実は思うわけであります。だからこそ、私は、原子力行政懇談会の提言を素直に受け入れてやっていただきたいという希望を重ねて申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで、次の問題といたしまして、この「むつ」の原子炉の設置許可というものは、これは原子炉の設置を行う場所は、いわば私は船ではないかと思う、船。もっと広義に解釈をすれば、措置場所は船であるが、同時に船舶法に基づきまして船籍所在地というものが明確になるわけでありまするから、この場合、現実には「むつ」の定係港がいわば原子炉の設置場所になるのではないかと思うのでありますが、その点はどうですか。
  46. 松田泰

    説明員(松田泰君) 原子炉の定係港と言いますのは、原子炉規制法上は特に決められたものではございません。現在われわれが定係港と言っておりますところは、いわゆる陸上付帯設備、つまり、原子炉の廃棄物の処理であるとか、あるいは燃料の貯蔵庫であるとか、そういうものが置かれている場所、つまり陸上付帯設備が置かれている場所を俗に定係港と言っておるものでございます。原子炉の設置場所というのは、厳密に解釈しますと、船の場合には船になるわけでございます。
  47. 森下昭司

    森下昭司君 そうしますと、この原子炉規制法の第二十三条「(設置の許可)」の第二項第四号は「原子炉の設置の工事を行なう際の船舶の所在地」ということになっている。四号は「原子炉を設置する工場又は事業所の名称及び所在地」となっている。括弧して「原子炉を船舶に設置する場合にあっては、」云々と、こう書いてある。したがって、「工事を行なう際の船舶の所在地」ということは、いまお話があったように、船が設置場所ではなくて、その船を係留する場所を指摘しているのではないだろうか、ほかにちょっと適当な語源が見つかりません。私は私なりの解釈を申し上げているんですが、したがって、いま船が設置場所だと言われますが、船の設置場所とは、やはり定係港の場合は定係港を含めたものを設置場所と理解する方が妥当ではないか、こう私は思うのであります。
  48. 松田泰

    説明員(松田泰君) ここにもわざわざ断り書きがしてありますように、原子炉の設置の工事を行う場所といいますのは、船の場合には、原子炉は一応メーカーで準備してつくるわけですが、それを船に積み込む、船の中に据えつける、そういう場所があるわけでございます。したがいまして、原子炉を船に据えつける工事を行う場所、これが特に申請の対象になっているわけでございまして、これは定係港でやることもあれば、そうでない別の港、そういう設備のあるところでやって、しかる後、定係港に回航していくということがあるわけでございます。
  49. 森下昭司

    森下昭司君 私は、時間がありませんから、その法律論争は避けたいと思いますが、やはり船が一つの設置場所だという規定になりますると、この原子炉規制法の中にやはりそういったものに対する明確な位置づけ、そして、それが許可の基準とどういう関連性を帯びるのか、私は率直に申し上げて若干疑義がございます。そのことは、きょうは時間がありませんからやりません。  そこで、私は、次の問題に移らさしていただきますが、四者協定というものができました際に——これは、本会議でも、先ほど冒頭に長官からも一応の釈明がございましたが、寄港後六カ月以内に新定係港というものを決めますよ、新定係港が決まって回航できるまで現在の定係港に係留さしてくださいよというのが四者協定の内容であったと思います。そういうようなことになったといたしまして、今度は協定以外の修理港ということが出てきたわけです。私は、やはり修理港を選定をしなければならぬということになったのは、厳しく言えば、四者協定を尊重する気魄は政府になかったのではないか。逆に言えば、今度新しい定係港を決めまして、付属施設をつくって本当の定係港の機能を発揮させるような状態になろうとすれば、これは三年や五年は十分かかってしまう話なんです。だから、私は、やはり修理港という問題よりも、まず新定係港というものを選定して、新定係港の付属施設建設を始めながら、一面において修理港を選定して修理をさせるというようなことが四者協定趣旨を尊重した施策でなければならぬと思うのであります。そのことが実は逆になりまして、若干、新定係港等も政府側は意向打診等を内々行った個所は数カ所あるようでございますが、事実上は修理港の佐世保がクローズアップされてしまいました。何だか目がそっちへいってしまったという感じが私あるわけであります。  まず一つは、なぜこの四者協定趣旨を尊重して新定係港の選定作業を第一に行わなかったのか。そして、なぜ修理港というような問題が提起をされるに至ったのか、その事情をちょっと最初にお聞かせいただきます。
  50. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 四者協定を守るという熱意につきましては、政府もいささかも欠くるところはないと思っているわけではございますが、四者協定ができました後、昭和五十年当初、科学技術庁の中に新定係港の推進本部というものを設けまして、政務次官を長といたしまして鋭意新定係港の選定作業に入ったわけでございます。同年の四月に至りまして、長崎県下の一地点を新定係港の候補地に内定いたしたのでございますが、その後、長崎県知事の方から、いま決めるのは早急ではないか、白紙還元してほしいという強い申し入れがございましたので、この候補地点を白紙還元いたしまして、その後、政府部内におきまして、科学技術庁長官、運輸大臣、内閣官房長官のお三方が中心になってつくられております原子力関係の閣僚懇談会におきまして種々御協議いただきました末に、新定係港を決めるに先立ちまして、まず現在の「むつ」を修理をして、修理をされた形において新定係港を探すという方がよりベターではあるまいかという結論に達しまして、急遽修理港を選定するという作業に移ったわけでございます。もちろん、その当時も修理港をできるだけ早く選定いたしまして、修理港選定が終了次第新定係港の選定に入るという方針には変わりはなかったわけでございますが、残念ながら修理港の選定、決定というものがかなり時間的におくれたということのために新定係港の選定もおくれておるという実情にあるわけでございます。
  51. 森下昭司

    森下昭司君 仮に新定係港があるところに決まりまして、いわゆる現在の定係港——「むつ」の大湊の母港ですね、あのような設備をするためには、たとえば土地の埋め立てをするようなところ、できているところと若干違いはありますけれども、付属設備を含めまして、いわゆる完成したという段階ですね、そういう完成した段階までにはどのくらいの年月が必要なんですか。
  52. 山野正登

    政府委員(山野正登君) これは新定係港の立地条件等によりまして大幅に異なるものだと考えておりますけれども、ただいまございます「むつ」の定係港の建設作業というものは、やはり二年ないし三年かかっておるわけでございまして、新定係港の建設が完了するのはやはりその程度がめどじゃなかろうかと思います。ただ、その時間が経過しないと、新定係港は全く使えないかと申しますと、そうではございませんで、これは陸上付帯施設等を含めて全設備が完成し、機能を持つに至るまでの期間ということを申し上げているわけでございます。
  53. 森下昭司

    森下昭司君 いま二年か三年というお話がありましたが、おたくの出されました「原子力年報」の原子力船第一船開発スケジュールからまいりますと、四十二年、四十三年、四十四年、四十五年で、平たい言葉で言えば、足かけ四年、実質的には三年というような計画になっているのでありますが、これはたまたま立地条件は、埋め立てて、むつ製鉄の予定地をそのまま横すべりでお買いになったというような、立地条件が恵まれてもこんなような計画になっているわけでありまして、相当長期間かかるのではないだろうか。そうだといたしますと、一体この修理港で——修理港というよりも、いわゆる衆議院の実質三年間延長と言われておりますが、三年間の延長期間の中で果たして修理港から、仮に三年間で修理が完成したという段階で、新定係港に回そうと思いましても、新定係港——いま途中でも使えるというお話でありますが、使えるような状態まで必ずつくり得るという御意思があるのですか、自信というか確信ございますか。
  54. 山野正登

    政府委員(山野正登君) これはまずただいまの「むつ」の場合は、年間、工事のできます期間というのは、降雪等の関係もございまして、かなり限られておるわけでございまして、そういう意味で、御指摘のように、三年ないし四年という若干長期に工事期間がかかっておるわけでございますが、今後つくります新定係港というものが、いま先生御質問のように、三年のうちに必ずできると明言できるかという御質問につきましては、これは具体的な地点が確定しないままに、各種の条件もないままに、私がここでできますとか、できませんと申し上げるのは、これは不可能な話でございますので、その点はひとつ御了解賜りたいと存じます。
  55. 森下昭司

    森下昭司君 長官はどうですか。
  56. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先国会以来、私といたしましては、経緯はいま局長が御報告いたしたとおりでございますので、修繕に三年かかる、その間に新定係港を見つけたい、そしてそこへ十二分な、回航し得るような施設を早急につくりたい、こういうふうに考えております。また、恐らく私は、三年もあれば、当然それぐらいの措置はできるであろう、こういう気持ちで現在おります。
  57. 森下昭司

    森下昭司君 まあ、できるであろうという一つの期待が入っているわけでありますが、私はやはり実質三年延長の修正ということを念頭に置いていただきたいと思うのであります。つまり、本会議でやりましたので、私これでやりませんが、「廃止するものとする」という、このいわゆる附則で、事実上期限が来ても息だけはしているというようなことになるわけであります。私は、この「廃止するものとする」という附則に甘えて、いわば三年で修理が完成しても、新定係港を見つけることはでき得なかった——極端な場合はです——そういうようなことになりかねないのではないだろうかという心配も一つあります。  それから、仮に新定係港が決まりましても、付属施設なり、あるいは「むつ」自体が入港できるような条件にはまだなってないと。とすると、三年という日にちを過ぎても佐世保に「むつ」が係留をされなければならぬというような事態もなしとは言えないと私は思うのであります。私はやはり、行政者としての政府の熱意、「むつ」問題の経過を、詳しく言えば、いろんな本が出ております、これはたくさんの方が書いてございます。その根底に流れておりまするものは、政府の行政に対する不信感がすべてだと言っても私過言ではないと思うんです。現に、強行出港いたしましたときの青森県の竹内知事と当時の森山科学技術庁長官とのやりとりを見ましても、地方自治体と政府の間にも相互不信さえ最後には起きているわけであります。ましてや、関係住民と政府の不信というものは、ぬぐい去ることができ得なかったと私は思うのであります。そのことが、結果におきましては、四者協定協定に至るまで難航せざるを得なかったことに象徴的にあらわれているのではないだろうかと思うわけであります。  私はやはり、「廃止するものとする」という法律趣旨に従って、何とか佐世保の係留をそのまま継続することができるんじゃないだろうかという安易さがもしもあったといたしますならば、私はこの責任は重大だと言わざるを得ないと思うのであります。ですから、私は、できるならば、期待感ではなく、確たる、たとえば原子力局長がお述べになりましたように、かつては長崎県のある一地点を一つの対象にして県知事とも話し合ったことがあるというようなお話がありましたように、私はやはりこの四者協定が要するに四十九年の十月十四日につくられて、今日では事実上三年経過しているわけですね。その三年経過の中に、さっきも言ったように、何だか修理港だけがずっと主目標のように脚光を浴びて、新定係港は影も形も見えないというような姿勢は、私は行政の熱意が欠けておるのではないだろうかというような——これが錯覚であれば幸いでありますが、感じなきにしもあらずであります。そういう点が私はやはり、三年という限られた修正案の通った、研究法案に変わるという一つの内容もございますが、仮に研究所になりましても、定係港の問題は相当、どこに置くかということで問題が出てくるのではないだろうかと思うのでありまして、私はもう少し、三年間たったんですから、科学技術庁は、具体的なやはり一つの私は交渉経過か、何らかあるんじゃないかと思うのでありますけれども、そのこと自体をどうこうとは申しませんが、ある程度の確信と申しますか、見通しというものは、期待感ではなくて、私は述べていただく必要があるのではないだろうか。そのことが、逆に言えば、佐世保の修理港に対する反対住民の間の行政に対する不信感を取り除くきっかけになるかもしれませんし、あるいはまた、原子力行政に対する不信を一掃するための一つのきずなにもなるかもしれません。そういう点、私は、行政の信頼感を取り戻すという立場からもこの問題は重要ではないかと思うのでありまして、重ねて長官にひとつ御所見を伺いたいと思います。
  58. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在はまず修繕ということで、その修繕のための入口、これが佐世保であると。だから、それについての県会並びに市会の御意向を承ったところであり、さらばいろいろ問題がそこにも新しく出ましたので、出口である青森県の御意向を伺いたいと、こういうような段階でございます。  だから、私としては、もちろん、いま御指摘のとおりに、一日も速やかに定係港を定めたいのでありますが、お互いに修繕港、定係港との間はどうなるのであろうかというふうなこと等もございまして、現在、出口、入口だけでいろいろ問題が起こっておるときに、またこの問題で新しい地点に反対、賛成と、あらざるそういうふうな住民の方々に万一いろいろな御迷惑をおかけするようなことがあってはいかがであろうか、こういうふうな感じもございますから、はっきり修繕に入った時点で私は定係港の問題は政府としても言明すべきであると。  そして、幸いにも最近は、あちらこちらからも手を挙げていただいております。もちろん、これに対しましては、現在ではそれに対してわれわれは、どうぞよろしくというお話もまだいたしておらない、全く白紙の状態ではございますが、修繕が決まった、もうその瞬間からでもはっきりいたしますから、定係港の問題に取り組みたい。そして、私はこれは複数だということを申し上げておるわけでございますので、さような意味合いにおきまして、衆議院の修正の趣旨を十分尊重して、その期間内にこのことも政府責任としてやっていきたい、かように存じております。
  59. 森下昭司

    森下昭司君 それでは私、時間の関係で、ちょっとまた飛ばしますが、この四者協定によりまして、一応むつにおきまする付属施設というものはほとんど撤去され、貯蔵プールは埋められ、クレーンのキーは青森県知事に預けられているということになっているわけであります。  そこで、最初にちょっと長官も触れられましたが、市長がかわった。具体的に言えば、反対派の菊池市長から、従来原子力船の誘致をしておりました河野さんが再び市長に返り咲いた。しかも、「むつ原子力船母港を守る会」というものが現地で結成をされまして、先日六千名の署名が集まったというふうにも新聞で報道されている。私は、下北半島における地元住民の地域経済開発にかける一つの私はあらわれではないだろうかというふうにも見るわけであります。そういうような観点からまいりましたときに、このむつ市にございまする現在の母港が再び定係港に復帰をすると言うと語弊がありますけれども、定係港になり得る心配もあるのではないかと思うんであります。で、現在の母港というものが再び定係港になり得ないというふうに断言することができるかどうか、科学技術庁として、そのことをちょっとお尋ねいたします。
  60. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 菊池さんにかわって河野さんが、母港存置という公約のもとに当選されたということは、私は、これは厳粛な一つの事実であると、それはやはりわれわれといたしましても、そのとおり受けとめなくちゃならないと、かように存ずる次第でございます。しかし、定係港、母港という問題になりますと、これはおのずから一市だけではなくして、隣接町村なり隣接産業なり、あるいは県民との関連なり、私はいろいろな問題があろうかと、こういうふうにも思いますので、したがいまして、現在といたしましては、先ほど簡単に申し述べておきましたけれども、やはり知事、これがどのような意向をそれについて持っておられるのであろうか、また漁連、これもどのようにお考えであろうかということ等につきましては、やはり青森県は青森県として意見を調節なさるのではなかろうかと私は考えますが、しかし、といって、じゃ意見が調節されるまで政府は手をこまねいて待っていましょうというようなことであってもいけませんので、私といたしましては、極力そうした事実があったということを中心といたしまして、漁連、それぞれお話をしたり、あるいはまた知事さんとお話をする、そういうふうな機会をきわめて近い機会に持ちたいと、こういうふうに思っておるのでございます。しかし、それに先立ちましては、やはり国会という場所もございますし、特にそれについての青森県選出の国会議員さんの御意向もございましょうから、まずわれわれ与党の国会議員の方々の御意見も承らなくちゃならぬと、こういうことで、現在わが党には根本先生委員長とする特別委員会がございますから、この根本先生が中心となって各国会議員の御意見もいま聞いておられるというところでございますので、政府といたしましても、そうしたことを踏まえて今後考えていきたいと、かように存ずる次第でございまして、母港の問題に関しましては、私は現在は四者協定は生きておるのである、そして政府はそれを尊重するのだと、これが現在の政府の立場であると、こういうふうにお考え賜りたいと存ずる次第であります。
  61. 森下昭司

    森下昭司君 そういたしますと、市長がそういう公約で当選をされた、あるいは市民の間からいろんな世論が出てくる、関係の市町村なり県の意見も聞く、また当然漁業団体等の意見も聞く、そういうようないろんな要素がございますが、そういう要素は、一口にして言えば、住民の世論の動向によって決せられるということにもなりかねないと思うのであります。いま長官の科学技術庁としての現在の考え方はこうだという言い方が、四者協定を尊重し、それを実行するんだという言明がございますが、一面において、現実の動きはそういったまた別の動きも出ているということになりますと、極論をいたしますと、住民の世論の動向いかんによっては、原子力船「むつ」の定係港は現定係港がそのまま利用されると、そのまま継続して修理後使用されるという可能性もあるということは言明できますか。
  62. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 経緯から考えますと、われわれとしては、やはり四者協定を重要視しなくちゃなりません。しかし、たとえば今回、下北の将来の繁栄のために住民の方々が河野さんを支援したということ等を考え、なおかつ、それが全青森県についても同じような考え方であり、また魚連もそれに対しまして理解を示されたというふうな段階があれば、これはまた私は一つの新しい段階ではないだろうかと、こういうふうに思いますが、いまそうしたことがあるだろうとか、ないだろうとかいうことを見越しまして、私がここでコメントすることはいささか行き過ぎだと存じますので、そのような程度で御理解を賜りたいと存じます。
  63. 森下昭司

    森下昭司君 くどいようでありますが、いま新しい段階が出てきたらということがございましたが、新しい段階が出てくればといいますか、新しい段階があれば、政府としてはそれに対応をする用意はあるという考え方ですか。
  64. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在といたしましては、私はこの問題は非常に慎重に取り組んでおりまするから、まず党の御意見を聞いて動いてきたものであります。でございませんと、やはり政府だけで従来処しておるその責任もやはり当然忘れちゃいけないわけでありますが、こうした問題は地方住民との関連もございます。しかし、政府はやはり全日本を対象とした考え方もございます。そうしたことの調和ということもやはり図っていかなくちゃならぬということになりますと、私がここでそういうような対応があると、また党の態度も、また党の見解も示されておらないときに言い切ることは、私といたしましてもいささかどうかと存じます。したがいまして、先ほどのようなお答えになったわけであります。
  65. 森下昭司

    森下昭司君 いろいろお立場もございますので、それ以上お聞きいたそうとも思いませんが、それで私、今度は佐世保の問題を中心にいたしまして若干お尋ねをいたしておきたいと思います。  まず第一にお尋ねをいたしたいのは、県が核燃料棒抜き、市は核燃料棒装荷でも結構だと、議決の仕方は違いますけれども、一応原子力船「むつ」を受け入れるという原則については県市双方同じような態度ではないかというふうに私考えているのでありますが、ことしの四月の一日の佐世保市議会で、核燃料棒装荷のまま修理港を受け入れるという決議が行われましたときに、長官の談話といたしまして、「事態の進展に機敏に対処する」というようなことが実は新聞で流されているわけであります。私、この「機敏に対処する」というのは具体的に何を指すのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  66. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 佐世保市会のままでございましたら、もうとうの昔に「むつ」は佐世保に入港いたしまして修繕をされておるだろうと、そういう願いを込めまして、佐世保市会が政府のそうした気持ちをくんで装荷のまま来てもよろしいと言ってくれましたので、それについては機敏におこたえしたいと、こう申したんであります。ただし、その当時まだ県会の方の見解が示されておりませんので、そこで県会も同様の見解を示してほしいと、さすれば私は機敏に動くであろうと、こういうふうな気持ちでございます。
  67. 森下昭司

    森下昭司君 私は、実は、機敏に対処するというのを即刻だろうと思いましたことは、言うならば、私は、核燃料棒装荷のまま入港させたいという政府の期待のあらわれではないかというふうに思うわけであります。現に、その佐世保市議会の議決前に、一月の二十六日でありますが、石渡科学技術庁参事官を代表とする政府関係者が辻市長なりあるいは金氏市会議長と会談をいたしましたときに、同参事官は、一部で論議されている修理のことで、核燃料棒を引き抜く必要はないということを強調したという新聞報道があるわけでありまして、私は、核燃料棒つきで入港させたいというのが政府の態度だというふうに理解しておるわけでありますが、長崎県議会で四月の下旬にあのような決議がなされまして、核燃料棒抜きだという事態に相なったわけでありますが、この長崎県議会の決議を行われた時点から、政府といたしましては、核燃料棒つきであるとか、核燃料棒抜きであるとかという点については、積極的に核燃料棒つきで入港をさせてくれというふうにお考えになっているのか、その点については県と市の個別会談の結果によって決められた側に従うという態度をおとりになっているのか、現在はどういう方針でおられるのか、お尋ねいたします。
  68. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 政府といたしましては、当初から申し上げておりまするとおり、核燃料をつけたままで大丈夫なんですと、現にあれからいろいろ事件もありましたが、それに対処して十分私たちもその後の善後策を講じてまいり、現に核燃料体そのものは、冷態停止状態、そういう状態にあって、私が手で触れても大丈夫なんだと、ここまで私は言い切っておるわけでございます。したがいまして、そのまま入れてもらっても大丈夫なんだから、どうかよろしくお願いしますというのが相も変わらぬ政府考え方でございます。  しかしながら、やはり広島と並んで唯一の原爆被爆県である長崎の県民の方々の感情というものは、簡単にそういうふうに割り切って申し上げておる私たちとはまた別のものがあろうかと存じますが、そうしたことを考えながら、長崎県知事が、抜いてきた方がいいじゃないかというふうな諮問機関の答えに対して、ではそうしてほしいと、県会もそのことを了解したということになりますと、私の気持ちはいまだ変わっておりませんけれども、それにもかかわらず私は、いや大丈夫なんだと言っていいものだろうかどうだろうか、またトラブルを大きくしてしまって、せっかくもう少しく冷静にいろんな判断をするのならば「むつ」は生き返ってそしてりっぱに将来働いてくれるであろうやつを、それをここでまたむざむざと討ち死にさせてしまってはどうであろうかと、こういうことも当然政治家としては考えなくちゃならぬ問題でございますが、しかし、そのためには、やはり権威ある筋がそうしたことを十二分に吟味することが必要だ、こういうふうに考えましたので、したがいまして、佐世保市会の議決、長崎県会の議決、こうしたことであったということをもう一度念のために安藤委員会に諮ったわけでございます。その諮るときには私は白紙の状態で諮りまして、長崎県会に重きを置くとか、あるいは佐世保市会に重きを置くとかというのじゃなくて、全く白紙の状態で一応諮った次第でございます。  その結果も、御承知のとおり、抜かなくても大丈夫ですよということがございましたし、また、抜くとしても、洋上でぐらぐら揺れておるところはいろいろトラブルもあろうけれども、そうでなかったならばどこで抜かれても、もちろん大丈夫ですよというふうな答えが返ってまいりました。したがいまして、先ほど来申し上げておりまするとおり、わが党に特別委員会がございますから、安藤さんの委員会ではこういうふうな答えが再度出てまいりましたが、これについていかが取り計らったらよろしゅうございましょうかということを相諮っておるところでございます。その間に、御承知のとおり、むつの市長選もございましたし、はっきり申し上げますと、青森の国体もございましたですね。そういうときに、私が、さあどうだ、どうだというふうなことをまたまた申し上げることが市長選に対してあらざる介入をしたと言われましても、われわれといたしましては本意でございませんし、また、せっかくの青森の国体というものも順調に動いておるときに、また「むつ」で何か騒動が一方において起こったということになれば、肝心かなめの知事さんとしてもきわめて行政上いろいろと正当な判断をしていただくのに誤りを来しては大変だと、こういう配慮も、実は私もひそかに思っておりましたが、党の方からも、やはり地元の国会議員さんの方からそういうふうな声が返ってまいりまして、もう少しく、安藤委員会の答えに対して党がどのような結論を出すか、いましばらく見ておろうじゃないか——決して拱手傍観しておったというのではございません。  そういうふうなやはり政治的な配慮をしなくちゃなりませんが、しかし、そうしたことも、先ほどの、すべてが終わりましたので、われわれといたしましては、この問題に関しては、党にお願いをいたしまして、速やかにひとつ答えも出していただきたいと、こういうふうにお願いをしておるところであります。
  69. 森下昭司

    森下昭司君 党の結論待ちだというお話でありますが、私はやはりこれ、考えてまいりますれば、地方自治の問題とも深刻な関係があるわけでありますし、現実に県民なり市民に接するのは予ての当該地方自治体でありますから、むしろ、安藤委員会の結論がそういう形で出ておるということも現実でありまするから、それを踏まえながら、県と市の自主的な話し合いというものに任した方が、そしてその話し合いに任して、その結果出た結論に科学技術庁は従っていくというのがやはり正しいんではないでしょうか。余り、いま党だ党だと言われますと、それは何といいますか、地方住民の声も十分くみ上げた上の御判断をなさると思うのでありまするけれども、やはり従来の経緯からまいりますれば、入港問題についてはそれぞれ市議会なり県議会なりの決議があると、若干の食い違いはあるというような事態等を踏まえますると、私はやはり、いま申し上げた自治という立場で物を言えば、地方自治体である県と市の話し合いに待つということの方が結果としては正しいのではないだろうかというふうに思うのでありまして、私はやはり、党の結論待ちであると同時に、県、市の双方の意見一致というものがどうしてもそれは前提にならなくちゃいかぬと思うのであります。やっぱり手続上、党が結論を出す前には、事実上、形式はともかくとして、県市間の意見の一致が必要だと私は思うのであります。そういう点については長官はどう思われますか。
  70. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) その点はまさに仰せのとおりだと私も考えます。したがいまして、われわれも決して傍観はいたしておりませんが、党がこの際は地元の方々の意見の一致を得たいと、そのためにはいろいろ地元とも接触したいというふうなお気持ちであるということも事実でございますから、私は、そういうふうなことで、党がやはり国会議員を中心にいろいろと話をなさいまして、そして、地元の意見が出てきた、その意見に従ってひとつ科学技術庁こういうふうに対処せよというふうな筋が、現在といたしましても最も望ましいと、こう思うのであります。ただし、地元から、そんなことじゃなくして、もう一度科学技術庁がやってきていろいろと話をしてみろと、こういうふうなお話があれば、私たちはもちろん参りまして、四者協定に基づくいろんなお話もしてみたいとは思っておりますが、いずれにいたしましても、やはり地元三者がやはり円満に話をしていただくということが一番望ましいことではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  71. 森下昭司

    森下昭司君 そこで、若干運輸省に、お見えになっていただいておると思いますので、ちょっと船のことについてお尋ねいたしておきます。  まず最初に、原子力船「むつ」というのは、船舶法に基づく登録がいつ行われたか、お尋ねいたします。
  72. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 「むつ」の船舶法におきます登録は、昭和四十八年六月十九日、東北海運局の青森支局において行われております。その際、船籍港はむつ市になっております。
  73. 森下昭司

    森下昭司君 次に、船舶安全法に基づく検査証書は受け取っておりますか。
  74. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 「むつ」は、現在、船舶安全法に基づきます製造検査、それから第一回の定期検査の検査を受検している最中でございまして、まだ海上試運転等が済んでおりませんので、検査は終了しておりません。したがいまして、船舶検査証書は発給さしておりません。
  75. 森下昭司

    森下昭司君 船舶安全法の目的の第一条に、人命の安全を保持する必要のある施設をなすにあらざればこれを航行の用に供することを得ずということが書いてある。そこで、科学技術庁長官にお尋ねいたしますが、いわゆる船舶安全法で、検査の済んでない、つまり、安全だと、安全な施設がしてある船であるかどうか、検査最中の船が、どうして試験航行に出るのですか。
  76. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 船舶安全法に基づく臨時航行検査というものを受けて、安全を確認した後に航行に移されるというふうに私は理解しておりますが、権威ある御答弁は運輸省の方にお願いしたいと思います。
  77. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 船舶の検査におきましては、最終的には海上におきます試運転ということをやる必要がございますので、それは最終的に船舶の完成の状況を判断するということでございます。したがいまして、検査証書発給前に、試運転のために航行の用に供するということはございます。  それから、もう一つお話は、修理港に回航するということでございますけれども、これも、船舶を検査あるいは修理のためにその港に回航する場合には、臨時航行検査を受けて、それに合格すれば回航することができると、そういうことになっております。
  78. 森下昭司

    森下昭司君 しかし、お尋ねいたしておきますが、船舶安全法ができましたのは、たしかこれは昭和九年ごろでありまして、その後数回改定はされているのです。原子力船、つまり舶用原子炉を対象にして、想定して船舶安全法はできていますか。
  79. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 船舶安全法はいろいろな関連の規則がございまして、船舶につきましては、それぞれの船舶に応じましていろんな規則が適用になるわけでございますが、原子力船につきましては、一般の船舶に適用されます規則のほかに、原子力船特殊規則というのがございまして、それが適用になっております。
  80. 森下昭司

    森下昭司君 そこで、具体的にお尋ねいたしますが、船舶安全法第二条で、「船舶ハ左ニ掲グル事項ニ付命令ノ定ムル所ニ依リ施設スルコトヲ要ス」と書いて、一に「船体」、二に「機関」とあります。その「機関」について、命令に当たる船舶機関規則、これは四百条項くらいあるそうですね、チェックすることが。この規則の第二百十二条には、「蒸気タービン及び減速歯車装置は、製造工場において過速度調速機試験を行い、蒸気タービンの毎分回転数が連続最大回転数の一・一五倍をこえないことを確認しなければならない。」とあるのであります。これは、いま言ったように、「むつ」についてはこれをおやりになった経緯はございますか。
  81. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) これは、ただいまのお話条項は蒸気タービンでございます。タービン部分については陸上でそういう試験をやっております。
  82. 森下昭司

    森下昭司君 原子炉というのは、ただあんた、燃料が石炭か石油か原子炉かが違うだけで、蒸気タービンを回してやっているんじゃないですか。じゃ、このいわゆる原子炉関係についての規則について、いままでに「むつ」に対しまして行った検査の実態をひとつ御報告願いたい。
  83. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 船舶安全法におきます機関の検査につきましては、内燃機関につきましては、陸上で負荷試験と逆転試験、それから調速試験、始動試験ということをやることになっております。  それから蒸気タービンにつきましては、ただいまお話がございましたように、過速度調速試験ということが行われておりまして、その他蒸気往復動式とかボイラー等につきましては陸上の試験というものは必ずしもやっておりません。  原子炉につきます船舶安全法によります検査につきましては、原子力船特殊規則、それから船舶機関規則、それから船舶設備規程等の規則に適合しているかどうかについて、建造の進捗状況に応じまして、材料、溶接とか、工作等の検査、それから効力試験と、それから仕上がり検査ということを行うことになっております。総合的な性能と安全性の確認は、船舶に搭載した状態で行うということになっております。
  84. 森下昭司

    森下昭司君 私は、いま、原子力の船の問題については、法律によりますれば、船体の構造でありますとか、原子炉の位置でありますとか、それから冷却装置でありますとか、いろんな船体構造関係の問題が多く書かれておりまして、試験の点につきましては、すべて私はこの船舶安全法に基づいて行われているというふうに実は理解をいたしているわけであります。  原子力関係につきましては陸上試験は行わなくてもいいというお話でありますが、もう私、あとちょっとしか時間がありませんので、そのことをここで論争できませんので、原子炉関係については試験を省略してもいいという点については説明を後でいただきたいと思います。  そこで、私は重ねてお尋ねをいたしておきますが、いわゆる検査済証ですね、いいですか、船舶安全法に基づく検査証ですね、これは、率直に申し上げまして、現実に「むつ」が出力一・四%で、舶用原子炉が要するに〇・二ミリレントゲンの放射能を発生した。要するに、欠陥原子炉であるということが、これは明らかになっているんです。そうだといたしますと、検査済証は、今後「むつ」が改修をされまして、完成をし、その後試験航行等をいたしまして、出力一〇〇%の段階で、放射能漏れあるいはその他の事故はないというふうに認定をされなければ原子力船「むつ」に対する検査済証は発行されないというふうに理解していいですか。
  85. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 先ほど申し上げましたように、現在「むつ」は、製造検査、それから第一回の定期検査の受検の最中でございまして、その途中の段階で放射線漏れを生じたわけでございます。これからそれに対します改修ということが行われますと、改めてその部分も含めて全体の検査を行いまして、さらに海上試運転等を行って、全体の検査を終わった段階で検査証書が発給されるということになります。
  86. 森下昭司

    森下昭司君 じゃ、具体的に私がいま聞いているのは、舶用原子炉というのは、さっきもずっと経過報告を聞いておってわかりますが、日本で初めての、ただ一つの舶用原子炉です。ですから、その舶用原子炉が安全かどうかという技術というものは、まあそんなことを言ったら失礼でありますけれども、運輸省にその御経験者がないと私は思うんですが、その御経験者のない運輸省の方々が舶用原子炉安全性を確かめなくちゃならぬのです。ですから、言葉をかえて言えば、出力一〇〇%まであって、そして放射能も出ないし、その他の事故も出ない、正常に作動して蒸気が発生されてタービンが回って船が進行したと、あるいは大波がぶつかった場合の防御装置も十分だというような各種の結果が判定をされなければ検査済証というものは出されないでしょうと、こう聞いているんです。
  87. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 仰せのとおり、そういう試験が全部済まなければ検査証書は発給いたしません。
  88. 森下昭司

    森下昭司君 もう時間が来ましたので、私最後に長官にひとつ要望を申し上げておきたいと思います。  いまお聞きのように、原子力船「むつ」は、船舶安全法に基づく検査済証さえもらっていない船なんです。事故を起こしましたから、いまはもらえない船なんです。率直に言って、もらえない船なんです。これが改修されましても、いまお聞きになりましたように、相当長期間、要するに、原子炉を出力一〇〇%まで上げて安全であるということが確認されなければ検査済証は出ないことは、これは明らかなんです。私は相当長期間という言葉を使わさしていただきましたが、事実上三年という修正にされ、しかも研究所法ということになりますれば、原子力船「むつ」は、船籍登録なり、いわゆる国籍証明書はいただいたけれども、船であるという検査済証はいただけないような事態が来るのではないだろうか。残念ながら、そういう事態が来る可能性が強いと私は思うわけであります。  そこで、当時の鈴木自民党総務会長は、四者協定を結んだ段階で、次のようなことを実は述べているわけであります。「地域住民の真の理解と協力があってこそ物事は達成できるのだ、という大原則に立ち、代償を振り回すようなやり方は避けなければ、とつくづく思う。」と、この四者協定が結ばれた朝、朝日新聞に語った談話があります。私は、今回の佐世保修理港の問題を通じましても、辻市長が、本会議で述べたように、中小企業団体に三十億円の融資だとか自衛艦艦船の一手修理引き受けだとか、あわよくば原子力船の第二船、第三船の建造基地として佐世保にてこ入れをするとか、いろいろなことが実は言われております。私は、この鈴木総務会長の言葉からいけば、そういう代価を振り回すことなく、地域住民との真の理解と協力があってこそ物事が達成できるということを前提にして、今後の修理港問題については科学技術は当たっていただきたいというのが第一の希望であります。第二の希望は、これは質問の中で明らかにしようと思いましたが、時間がございませんのでやめますが、一応佐世保重工は修理を歓迎するということを述べているようでありまするけれども、私自身が日本原子炉関係の、これはもう発電用も含めまして、あらゆる関係する会社と一覧表をながめてみましたけれども、佐世保重工の佐の字も見えないわけであります。私は、やはり炉心をおつくりになりました三菱原子力工業なり、あるいは炉壁をおつくりになりました石川島播磨重工などがこの修理の主体に当たらなければ、本当の意味の、大山報告なり安藤委員会の提言どおり、これを改修することは不可能だと思うのであります。  そういう点について、修理の責任体制の責任は国なり開発事業団が負われるわけでありまするけれども、実際の改修の責任体制というものはいまだ明確でない。一体佐世保重工を主契約者にするのか、石川島播磨重工なり三菱原子力工業を主契約者にし、佐世保重工を、悪い言葉ではありまするけれども、下請にするのか、あるいは三社を主体契約者にするのか、こういった点についてもいまだ明確になっていないのであります。そういう点について、技術的問題でありますので、私は、過去の製造された経緯等を踏まえて、十分ひとつ遺漏のないように御考慮を願いたいというのが第二点。  第三点は、読売新聞の世論調査にもあらわれておりましたように、いわゆる、原子力船「むつ」の、言うならば、無条件入港を賛成するという者は非常に少ないわけであります。賛成するという人の中では条件つき賛成者が多いわけでありますが、その条件つき賛成者も、すべて、安全性について疑念があるから安全性を確かにして入港してもらいたいという希望が圧倒的であります。ということを考えてまいりますと、長官最初にお述べになりました開発と安全の両輪のもとに行うのだという原則を今回の修理港問題についても当てはめていただきまして、その原則の上に立って問題の処置を誤らないようにしていただきたい。  三つを希望いたしまして、私は時間が参りましたので質問を終わります。
  89. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 先ほど答弁申し上げました今後のプルトニウムの需給バランスにつきまして補足さしていただきます。  今後十年間で約二十トンのプルトニウムが精製されると申し上げましたが、これは使用済み燃料の中に計算上精製されるプルトニウムの量でございまして、実際に動燃再処理工場で今後の十年間に分離されます。プルトニウムは約十トンでございます。それに対しまして、研究開発に所要のプルトニウムというのも約十トンで、大体見合っております。  これらはいずれもきわめてマクロな試算でございますので、そういう数字であるということをぜひ御了承いただきたいと存じます。
  90. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、きょうは原子力船事業団を主体にして二、三質問したいと思うわけでありますが、まず最初に伺っておきたいことは、「むつ」をめぐる一連の出来事、そういうものを振り返って、いわゆる大山委員会と申しますか、大山先生を中心とする委員会が、なぜこのような事件が起きたのか、そういうことについて報告書を発表しておるわけであります。この報告書についての感想と申しますか、率直に、簡単に言って、どう感じておるのか。この報告書全体を通してどういう感想を持たれておるのかということについて、科学技術庁長官、それから事業団理事長の御見解を承っておきたいと思います。
  91. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 率直に申しまして、やはりもう少しく設計に慎重なる配慮あらばかかるトラブルもなかりしものをというふうに書かれておると存じます。もちろん、そうしたことがやはり原子力船につきましては一番大切なところでございまして、出ました放射線そのものにつきましては、これはもう科学的に申し上げれば、先生も御承知のとおり、さしたる数値ではなかったかもしれませんが、しかしながら、初歩的なところにおいて大きなミスを犯したということが、私はやはりこれは政治的な責任につながる、こういうふうに考えておるものでございます。したがいまして、そういうふうな反省に立ちまして、私たちといたしましては、それらの意見にもありましたように、今後「むつ」を初めとする原子力行政に対しましては、安全と開発というものは車の両輪でなくちゃならない、そういう姿勢を今日固めておるところであります。
  92. 島居辰次郎

    参考人島居辰次郎君) 私は就任いたしまして後にあれがすぐ出ましたものですから、それを篤と拝見しまして、物事の一つの事件というものは、ただ末梢的なそこだけではなくて、それが起こるにはいろいろな方面からいろんなことが作用して起こったんだなと、これはもう当然でございますが、そういうことが非常によく調査してございまして、後から引き受けましたわれわれといたしましては非常に参考になりまして、たださっき申しました技術陣だけがやればいいというんではなくて、さっき森下先生から御指摘がございました、やっぱり地域住民と十分よく話をしなければいけないというようなことから、いろいろな方面に、参考になりますそれを、今度は心新たにして実行に移しておる次第であります。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私たちも、やはりこの報告書全体を通して非常に傾聴に値する内容のものであると、こういう感じを持ったわけでありますが、恐らく、ただいまの答弁からして、科学技術庁としても、また事業団としても、この報告書の内容は謙虚に聞いていきたい、こういう姿勢と判断をいたします。それでよろしいですね。  そこで、この事業団は、今回私たちが審議をしておりますもとの法律は、昭和三十八年に事業団ができまして、そうして四十六年で期限が切れ、それをさらに五十一年まで延長をし、そしてさらに今回再々延長をされようとしておるわけであります。今日までの原子力船「むつ」の歩みを見てまいりますと、最初は海洋観測船であったものが、特殊貨物の輸送船に変更しておる。あるいはまた、船と炉というものを一括発注という政府あるいは事業団の意向であったものが、ついには、船は石川島播磨重工業、炉は三菱原子力工業と、こういうように分離発注をしなければならなくなった。私は、なぜこのように予定どおりいかなかったかということをやっぱり深く反省をしなければならないと思うわけでありますが、私はそういうものを通して感ずることは、お金の面でやはりいろいろ変更を余儀なくされてきたんではないか、そういうような感じがするわけでありますが、この点は、長官のお考えはどうですか。
  94. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 確かに、先生御指摘のように、本件は一括発注方式になっておりませんで、船体と原子炉とが分離されて発注されておるわけでございまして、当初この船の予算が計上されましたときには三十数億円という予算が計上されておりまして、これに対して競争入札の際に応札者がなかったというのは、この予算見積もりが若干甘かったということだと思います。その後、各方面の資料等によりまして、これを訂正いたしまして、予算を増額いたしまして再度応札者を募ったわけでございますが、この際にも不調に終わったわけでございまして、一つには、先生御指摘のように、まだわが国にとって初めての分野であるということによりまして、正確な見積もりがきわめてむずかしいということに加えまして、やはり開発の危険というものも考えまして、そういうふうな状況で分離発注にならざるを得なかったといったふうな経緯ではないかと存じます。確かに、予算の面というのが分離発注に非常に微妙な影響があったかと存じますが、   〔委員長退席、理事森下昭司君着席〕 予算が足りなかっただけでこうなったというふうにも考えてはいない次第でございます。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 しかし、海洋観測船が特殊貨物船に変更になったという理由はやっぱり予算の関係ではなかったんじゃないかと、私はそのような印象を持っておるわけでありますが、その点はどうなんですか。
  96. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 確かに、海洋観測船が特殊貨物船に変わりました際には、できるだけ予算の増を来さないようにという配慮で変わったという背景も私あったと承知しておりますので、そういう意味においては先生御指摘のとおりであろうかと存じます。ただ、この「むつ」というものは、海洋観測船にしろ、特殊貨物船にしろ、いずれにしましても、実験船という本来の性格は変わっていないわけでございまして、この実験船をその後いかように活用するかという場合に、一つは海洋観測船という活用の仕方があり、一つは特殊貨物船という活用の仕方があるということであろうかと存じまして、そういう二次的な活用の方法の段階におきまして、御指摘のように、予算において若干の難点があったといったふうなことも否み得ないというふうに考えております。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最初の予算が総経費六十億円というような予算、計画であったのが、最終的には、業者もそういう安い値段では入札ができない、こういうようなことで、結果的には大分変わってきたわけですね。そういう点は、もちろん年月がたてばいろいろな、賃金等も社会情勢、経済情勢の変化もあるわけで、きちっとはいかないとは思うんですけどね。これはいまも非常に見通しが甘かったというお話でございましたけれども、なぜこのような食い違い、計画どおりいかなかったのか、ただ見通しが甘かったということだけなのか、何かそこに特別な理由があるんですか、いま反省してみて。
  98. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 当時、科学技術庁庁内、また原子力委員会等におきましても、各分野の専門家を集めて、本件につきましていろいろ調査をされたわけでございますし、また、この見積もり自体につきましても、そういう専門の委員会等で十分当時としましては審議を尽くしたというふうに私どもは承っておりますけれども、何分にも、わが国にとって全く新しい分野であった、特に舶用炉の開発、あるいは遮蔽といったふうなものにつきましては余りわが国は経験がなかったわけでございまして、そういう点におきまして見積もりが不正確になってしまったといったふうな事情にあったと思います。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この大山委員会の報告書を見ますと、当初、陸上で同型炉をペアで建造すべし、こういう意見もあった。それからまた、実験炉あるいは原型炉を経て開発を段階的に進める計画も示された。まあ、私たちもいまにして考えれば、当然慎重を期していく上から、ただいまの提案は非常にすぐれた提案ではないか、こういう感じがするわけでありますが、その当時は結果的にそれが見送られたわけですね。このあたりは、どういう理由で見送られたのか、この点を御説明いただきたいと思います。
  100. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず、動力炉を開発するに際しましては、これを、御指摘のように、実験炉、原型炉、実証炉といったふうな段階を経て開発をしていくか、あるいは途中の段階からいきなり実用炉に入っていくかといったふうなことは、この動力炉の開発の技術的な難易さによって決定されるものだと考えておるわけでございます。で、当時の判断としましては、この「むつ」に搭載いたします動力炉と申しますのは軽水炉でございまして、この軽水炉というのは世界的にかなりの経験の積まれた原子炉でございますので、実験炉、原型炉といったふうな手順を踏まなくともできるであろうという判断によって、直ちに実用炉の建造に入ったといったふうな事情にあるのではないかというふうに考えております。
  101. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いまはどう考えていますか。
  102. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 私は、この軽水炉のつくり方について、その判断自体は現在でも間違っていないのじゃないかというふうに考えるわけでございまして、ただ一つ問題でございますのは、この炉自体よりもむしろ遮蔽にあったわけでございます。当時、遮蔽につきまして、まだまだ日本には専門家も乏しかったわけでございますし、また、当時行いました実験あるいはその実験についての理解なり検討といったふうなものが不十分であったということは、これは大山委員会でも指摘されておりますし、私どももその辺は率直に認めておるところでございますが、原子炉自体について実験炉から着手する手順を踏むべきであったというふうには現在も考えておりません。
  103. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは、陸上で同型炉をペアで建造すべしという意見も、いまもそういう考えはないと。
  104. 山野正登

    政府委員(山野正登君) この陸上でペアでやったらどうかというのは、恐らく主として遮蔽等についての問題点を解明するためであろうかと存じますが、私どもは、その点につきましては、同じ炉をつくり、同じ遮蔽構造をつくるということにかえまして、実験によってこれを補うという方法でやっておるわけでございまして、大山委員会等の指摘の後、過去のトラブルを教訓にいたしまして、十分に実験によってこれにかえ得るようにいま最大限の努力をしておるということだと存じております。
  105. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ私は、もちろんこういう方面のことに関しては素人でございますので、率直に申しまして、われわれの感想ですけれども、ただ、原子力船「むつ」というものは将来の一つ試験でございますので、やはり軽水炉というものも、現在日本はほとんど大半が軽水炉でございますが、非常に現実には稼働率がまだ低いわけでありまして、したがって、この原子力船「むつ」の原子炉の問題点がただ遮蔽だけであるということは——いまの段階ではまだ遮蔽だけなんですけれども、これがしかし、大体軽水炉を見ましても一年、二年、三年目ぐらいから非常に稼働率が下がってきておるわけですね。まあ陸上の原子炉であれば、ただとめればいいわけですけれども、船が洋上で放射線漏れが出てきた、あるいはクラックが出てきた、そこでとめるということになりますと、恐らく補助エンジン等にしても台風が来たときどうするかという、こういうような点を考えれば、やはり急がば回れで、まあ陸上で同型炉をつくってやるぐらいの慎重さがあった方が、結果的には私は物事を早く進めるんではないか、こういう感じがいたします。この点は、長官あるいは事業団理事長の御意見はどうか、それだけ簡単に伺っておきます。
  106. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 先生御指摘のとおり、陸上炉におきましても、新しい安全性考え方とか、あるいは新しい安全設計基準といったふうなものができておるわけでございますので、今回安全性の総点検、遮蔽改修を行うに際しましては、こういったふうなことも十分に参考にいたしまして、新しい安全性考え方あるいは新しい設計基準といったふうなものに基づきまして再評価を行いたいというふうに考えておるわけでございまして、その点、まあその後の技術開発の進展というものを全く無視するという姿勢にはないわけでございますので、その点はぜひ御理解賜りたいと存じます。
  107. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) こういうトラブルが起こった、それを静かに反省するといったときには、確かにそういうふうなアドバイスがあれば、なお一層当時慎重を期しておってペアでやっておいた方がよかったじゃないかというお説につきましては、なるほどそうしたこともわれわれとしては手抜かりであったという感想を私は抱きます。そうしたことも含めまして、今後やはり現在の「むつ」そのものは速やかに修理をすればいろいろと機能を発揮してくれましょうが、それプラスなお一層今後の原子力船時代に備えるために研究所をつくったらどうであろうかというのがいわば衆議院の御修正の趣旨であろう、こういうふうに考えますので、広い意味におきまして、さようなことでいろいろと今後に備えるということも私は必要なことであろうと考えております。
  108. 島居辰次郎

    参考人島居辰次郎君) 私の方といたしましても、その後を引き受けまして、遮蔽改修につきましては、いわゆるモックアップ試験、炉の実物大のものをつくりまして、そして陸上でもって試験をしてやっておるようなわけであります。  余談になりますが、御存じのように、初めて開発していく場合においては、まあ事故というよりも、いろいろな蹉跌が起こるわけでございますので、実はきのう、ちょうどいまソ連から来ておられます原子力利用国家委員会の議長のペトロシャンツさんに、私は、日本では最初のこの「むつ」で放射線漏れが起きたというようなことがあったんだが、あなたの方は「レーニン」でもあったと聞くが本当かということを聞いたら、いろいろと打ち合わせをしておったんでありますが、私の方は、いわゆる大きな事故は起こらなかったけれども、いろいろ蹉跌はあったんだと。開発していく上においては、私も、一番最初の船は同じようなことがあるんだなあと思ったのであります。そこで、だからいいというわけではございませんが、慎重の上にも慎重を期して、ソ連のように、二船、三船がうまく円満にできていくようにいまわれわれの技術を動員いたしましてやっておる次第でございます。
  109. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大山委員会の報告の中には、外国の情報の収集をしていろいろな設計なり実験に生かす、そういう体制が不十分であった、あるいはまた「現実には基礎的な研究実験についてはその業務に含め得なかったきらいがある。」と。今回この「むつ」の試験を通して一番大事なことは、そういう基礎的な研究実験ではなかったかと思うのでありますが、そういうものが「業務に含め得なかったきらいがある。」、こういう点が指摘をされておるわけでありますが、どういう点に欠陥があったのか。人員が足りないということであったのか、それはその後どのように改善されてきておるのか、これを事業団からお伺いしたいと思います。
  110. 倉本昌昭

    参考人(倉本昌昭君) 大山委員会の御報告を私どももっとに反省をいたしていますが、過去経験あるいは経緯等いろいろ反省、検討をいたしてみますと、やはりこの事業団自身のあり方と申しますか、当初設計から建設と申しますか、建造、さらに試験というように、だんだん移行をしてまいったわけでございますが、その各段階ごとにやはり技術者といいますのが定員との関係もございまして大分入れかわってきております。設計をやっておりました人間はこの建造の段階には一部帰っている、また、建造が終わりまして、試験の段階になったときには試験の要員という形になっておりまして、ちょうど「むつ」が放射線漏れを起こしました時点におきましても、いわゆる試験要員というのが技術部の大半を占めておりました。ああいう問題が起こりまして、すぐその原因究明を行う、またそれに対してどういう対策を講じていったらいいかということを行うための技術者というのはその時点においておらなかったというようなことがございまして、確かにこの研究開発を進めてまいります時点におきましては、やはり設計の段階から建造、試験と、各段階におきまして、設計をした技術者の人は常に建造段階においても自分の設計について配慮をし、あそこはどうもちょっと気になっておったというような点があれば、これは建造の点で直していくというようなことは当然出てまいりますし、また建造から試験の段階に移行しまして、試験で何かトラブルが出てくれば、やはり建造、設計に携わった者がおれば、あそこはちょっと気になったなというようなことで、それに対してのまた試験とか実験というようなこともすぐやってみるというようなことがこの開発には当然ついていかなければならないのではなかろうか。そういった点につきましては、確かに大山委員会の御指摘もございました。この点については、この技術の開発の継続性、連続性というもの、また、将来への発展ということを踏まえまして、やはり「むつ」の設計をやった者は、「むつ」の設計が終われば次の第二船あるいは第三船の設計研究をやっておる。また舶用炉の方につきましても、一つの設計研究が終われば次の型の炉の設計研究に移っていく。それをいたしておりますと、その時点でさらに新しい技術が生み出されていくというようなことになってまいるわけでございます。   〔理事森下昭司君退席、委員長着席〕 この点につきましては私どもも大いに反省をいたしておりまして、この技術の継続性と申しますか、大半が出向職員によって現在構成されておるわけでございますが、これらの者につきましても、できるだけ事業団に長く勤めてもらう。また交代する場合には、これらの技術が継続をするために相当の重複期間を次の者と持っていくというようなことの配慮をいたしていかなければならない、こういうぐあいに考えております。  また、研究開発につきましては、従来とも主として外部の研究機関あるいは民間企業等にお願いをしてやっていただいておったわけでございます。放射線漏れが起こりました後におきましても、私どもは、現在遮蔽改修あるいは総点検、設計の見直し等を行っておりますが、これらにつきましても研究体制というものがございませんので、現在の時点では、原子力研究所あるいは運輸省の船舶技術研究所、また民間企業等の御協力を得ましてこの解析等を進めておるわけでございますけれども、やはり外部にお願いをいたしますと、これは金では解決いたしますが、やはり契約のために相当の期間なり時間なりがかかる。何かちょっとこう計算をしてみたいなとか、何かちょっと実験をしてみたいなということはなかなか簡単に行えないというようなこともございますので、そういった点で、今後、私どもとしては、「むつ」の遮蔽改修、総点検等の段階におきましても、そういう体制をでき得れば組んでまいりたいということで、現在、それらにつきましては、外部の機関と非常に密接な関連を保ちつつ進めておるということでございます。
  111. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私がお聞きしたかったのは「基礎的な研究実験についてはその業務に含め得なかったきらいがある。」、要は事業団としてそういう体制が非常に弱かった。また海外の情報を収集するような点が非常に不足であったというその原因については、私はこれから後御質問しようと思ったわけですけれどもね。そういう組織の問題、責任がしょっちゅう変わったとか、寄り合い世帯であったとか、そういうような点ももちろんあるわけですけれども、本質的には人員が足りないとか、実際予算が足りないとか、そういうようなことが根本的にはあるんじゃないかなと、実はそういう感じがしたわけですね。この大山委員会の報告書にもこう書いておるのですよ。「科学技術振興とは縁遠いこのような異なった価値体系によって、」——これは価格高騰という問題ですね。それによって「問題が優先的に審議されたとすれば、開発にとって核心となるべき技術開発を中心に据えた総合的な体系としての原子力船開発の審議は、不十分のまま終わったと思われる。確たる原子力船開発政策を樹立するよりも建造費の高騰に目を奪われたとあれば、そのこと自体に大きな問題がある。」、だから、時間もございませんので、長官に私がお尋ねしたいことは、それは過ぎてみれば事業団の組織のいろいろ問題はあったと思うんですね。しかし、ぼくらの感じとしては、本当に数少ない人員の中で恐らく関係者は一生懸命やって、そしてそこに手抜かりもあったわけで、どうしても科学技術研究というものは予算というものを惜しんではいけない。そうは言っても、いまは国の予算も三年続きで三割の国債に依存しなければならないという中で、それは大蔵省として予算をできるだけ減らそうというその気持ちはわかりますけれども、それならばやはり開発をずっとおくらせると。本当にこの研究開発を急ぐんであるならば、これだけの予算をつけなければ安心して進めるわけにはいかないんだと、こういう確固たる姿勢でいかなければ、また同じことを繰り返すんじゃないかと私は思うんですね。  先ほど森下委員の質問に答えて、佐世保における市議会と県議会の食い違い、あるいはまた、むつ市をめぐる情勢の変化、そういうものに対する政府の対応については、私は、長官の答弁でいいんじゃないかと、やはり慎重にやっていかないといけない。それと同じような気持ちから、やはりこの原子力船の研究開発という未知の分野を開拓するためには、もっとそういう姿勢で長官ががんばっていかなければ、ただ予算が少ないのに成果だけ焦るようなことがあってはならない、私はそういう感じがするんですけれども、その点はどうですか。
  112. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 科学技術に対する本当に温かい御意見を拝聴いたしまして、私といたしましても感銘いたしております。  私も、しばしばいろんな会合におきまして、科学技術は今日までの日本を支えてきた大きな柱で、今後も民族の生命を支えてくれるものでなければならぬ、したがって、その研究開発においては相当な費用を覚悟しなければできないものであって、いたずらに費用をちびるというようなことでは、かえってその効果を半減するということを申し上げておるわけであります。われわれ政府といたしましては、常にチープガバメントということは念頭に置いておかなくちゃなりませんが、さりとて、科学技術の振興ということに関しましては、いま仰せのとおり、やはり大胆率直に、必要とする予算は必要として、将来それを実らすという方向でわれわれは考えていかなくちゃならぬと、かように存じますので、したがいまして、「むつ」の事業団におきましても、確かに御指摘のとおり、もっともっと世界情報を収集して、そうした中においてさらにいろんな対処をすべきじゃないかということも私は当然であろうと、こういうふうに考えております。いずれにいたしましても、事業団が存在するからには、その機能をやはり十二分に発揮し得るような環境に置くということが私は一番必要だと思いますので、その面におきましては、予算等に関しましても、科学技術庁長官として財政当局には今後もそういう趣旨で折衝を重ねていきたいと、かように存じております。
  113. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 組織の問題につきましては、もう時間もございませんので、これは細かくはやめようと思いますが、大山委員会の報告書でも「組織は人なり」と、やっぱり組織と、そしてどういう人を配置していくかということが非常に大事ではないかと思います。そういう点は、先ほどの御答弁で、かなり事業団としても優秀な技術者を集め、さらにはこの法案が成立の暁にはさらにそれを充実していくと、そういうお話でございますので、ぜひそういう方向でがんばっていただきたい。それで果たして十分であるかどうかということは、ここで論議をしてもなかなか結論の出ない問題でございますので、これはひとつ要望としてとどめておきたいと思います。  そこで、これは大山委員会も指摘をしておるわけでありますが、「むしろ時限立法では、国家事業として推進してきた開発が技術的な完結に達しないまま挫折してしまう恐れが大きい点であろう。」と。当然、期限のある程度の目標はあったにしても、そういう期限つきの法律では技術者の身分も安定をしない、そういうようなことを言っておるんじゃないかと思うわけでありますが、したがって、そういうような意向を受けて、衆議院においても、この原子力船事業団を恒久的なものにしていこうと、しかも、研究を主体にした機関にしていこうと、そういう趣旨のもとから衆議院における修正が行われたように私たちは思っておるわけでありますが、これについて科学技術庁長官としてはどう考えておるのか。  さらに、私に言わせるならば、なぜ恒久的なものにするように——これは衆議院における修正ではなしに、政府の方から提案すべきではないかと。大山委員会のその結果を踏まえてですね、そうすべきではなかったんじゃないか、この点はどうですか。
  114. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 確かに仰せのとおりだと私も個人的には考えます。  ただ、従来の政府提案の法案がいわゆる限時法になっておりましたゆえんは、やはり今日特殊法人が非常に多い。まあ、百十三あるわけで、私も党におりましたときに、これの整理係を仰せつかりまして、極力やはりぜい肉は切り取ろうというふうな作業を進めたものでございますから、そうした枠組みの中においてこの問題が考えられておったということも一つはございました。そうしたことで、私も就任直後に、通常国会が始まりましたので、やはり先任者、前任者等々のお考えを中心として、去る通常国会には限時法のまま提案をしたという経緯がございます。しかし、今日考えてみれば、確かに技術者を養成し、その技術を継承さすという点においてそれがいかに幾多の問題を抱えておるかということがおいおい明らかになっておることは事実でございます。  また、それに対しまして先ほども森下先生にお答えいたしましたが、いわゆる造船工業会とか船主協会とかといったような関係者からも、そのような限時法ではなくして、やはり恒久法としてやっていただきたいと。そうでなけれど原子力船時代を迎えるのにふさわしくないというような陳情も直接受けておるわけでございます。そうしたことを恐らく衆議院は踏まえられまして、そして今回衣がえをするのための措置としての三年間というふうに修正をしていただいたと思いますが、私も個人といたしましては十二分にその辺に今後留意をしなくちゃならぬと思いますが、やはりこういう重大な修正を与えられた直後でもございますし、また参議院の御審議を煩わしておる過程でございますので、政府といたしましては、やはり原案で出したときの気持ちを今日忘れておるものでもございませんので、したがいまして、十二分にその点はこの法案が成立いたしましたならば衆参両院の御意向も伺いつつ、それに政府といたしましての考え方もより一層効果的なものにしていくのが当然であろうと、こう思いますので、さような気持ちで今後臨みたいと思います。したがいまして、今日ただいま私が恒久法の方が望ましいと、ここで断言してしまうことはいかがであろうかと、やはり修正の趣旨を十二分に重んじながらそれに対処していくべきであろうと、こういうふうに考えております。
  115. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 しかし、この衆議院における修正は、当然この提案理由にもありますように、まあ研究所、研究機関ですね。性格は、いままでのような研究開発よりもむしろ研究を主体に置く、しかも恒久的な機関を目指すべきであると、私たちもそう考えておるわけでありますが、そういうような方向で修正をされておるわけですね。これは期限が来てもそこまで物事が進まないと、そういうことになると、結局、あの「むつ」における四者協定のように、非常に日本の国の原子力行政というものは行き当たりばったりじゃないか、そういう批判を受け、それがまた住民の不信にもつながっていくのではないか、私はそういうことを心配するわけであります。そういう点で、この問題については、国会もまたその責任があるわけですけれども、しかし、政府としても、それは国会が勝手にやったんだからと言うんじゃなしに、本当にこの趣旨を踏まえで、もうこの期限内に速やかに新しい体制に移ることができるように努力をしてもらいたい。先ほどお話しのように、行政管理庁あるいは大蔵省等それぞれの立場からの反対等もあるのではないかと思うんですけれども、そういう点をひとつどんなことがあってもがんばってもらいたい。その点、長官の決意を伺っておきたいと思います。
  116. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 当然、私といたしましても、院の修正の趣旨を体しまして、それにおこたえいたすべく全力を挙げたいと、かように存じます。
  117. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから次に、いままで論議のあったことは省略いたしまして、大山委員会の報告書の中には、原子力船事業団が社会情勢の変化への対応が非常におくれておったと、こういう点を指摘しておるわけであります。地元との意思疎通の努力が欠如しておったんじゃないか、こういうことも言っておるわけでありますが、そういう点については、事業団としてはこれをその後どのように改めてきておるのか、この点を伺いたいと思います。
  118. 島居辰次郎

    参考人島居辰次郎君) 先ほどもお答えいたしましたように、あの報告書の中にはいろいろいいことも書いてございます。また、きょう諸先生方から、われわれ新しく引き受けた者につきましていろいろいいサゼスチョンもいただきまして、まことにありがとうございます。  そこで、事業団といたしましては、あれを拳々服膺いたしまして、いまの具体的な問題といたしまして、現地に対する、つまり話し合いでございますが、まず、昨年、修理港の問題につきまして佐世保が問題になりましたので、去年の三月下旬から佐世保の地に私の方の連絡事務所というものを設けまして、それこそ雨の降る日も風の吹く日も、毎晩佐世保の町に説明会を開いたのであります。佐世保の町の数が二百一町ございますが、そのうちで本日までに説明会を毎晩、二十人あるいは三十人、少ないときは本当に五、六人であります。そこへも私の方の者が出かけまして、百五十町ばかり説明会をやりまして、約七五%の説明会を開いております。その回数を申しますと、本日までで四百四十六回になっておりまして、集まった人たちも、先ほど申しますように、多いときは五、六十人でありますが、少ないときは本当の十人足らずであります。それで、一万三千六百三十七人の方々と接して懇談いたしております。それは原子力あるいは原子力船のこと、あるいはどういう修理をやるかということ、あるいはスライドをもちまして懇切丁寧に話をし、またその質問も受けておるようなわけであります。  そのほかに、去年は海の記念日を中心にいたしまして、七月十八日に現地で原子力船の講演会を開きました。それからなお、原子力の日が十月二十六日でございましたので、その前後におきまして約五日間、佐世保の市に「海と船と原子力」というので、原子力船の展示会をやりまして、これは大変成功いたしまして、約七千名が五日間に入場して、いろいろ具体的に説明しております。この日はもちろん私も参りましたが、非常に熱心に、まじめに懇談いたしておるようなわけでございます。というようなわけで、きょうは青森の方も雪が降ったそうでございますが、北の方も南の方も、まあ非常に地域の方々と懇談の機会を持ちましてやっておるようなわけでございます。
  119. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 答弁はひとつ簡単で結構ですから……。  そこで、科学技術庁にお尋ねしたいわけでありますが、この社会情勢の変化への対応ということは非常に大事な問題じゃないかと思うんですね。「むつ」の放射線漏れが起きたときに、中には、これは大したことないじゃないかと、これはもう一つ実験の過程において何でも起こる一つの事柄であって、それは騒ぐマスコミがおかしいんだと、こういうような意見の人もいたわけですけれども、私は、日本の現在の社会情勢というものを考えたときに、そういうような考えは間違いじゃないかと思うんですね。したがって、この社会情勢の変化への対応、地元との意思の疎通という問題について、ただいま事業団の方から、事業団の方が本当に毎日毎日歩いていろいろ懇談をしておると、こういう御努力を承ったわけでありますが、私は、もっと根本的に、まあ一つのシステムと申しますかね、これは公聴会のあり方等の検討、そういうような問題もあるんじゃないかと思うんですけれども、もっと制度的にやっぱりそういうシステムをつくっていかなければいけないんじゃないかと、こういう感じを持っておるわけでありますが、そういう点について科学技術庁としての何かお考えがあるのかどうか、それを伺っておきたいと思います。
  120. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 国民一般、また狭くは地域住民と十分に意思の疎通を図る必要があるというのは、まさに先生御指摘のとおりだと存じておるわけでございまして、先般の放射線漏れのごときものが試行錯誤の段階で起こるのは当然だといったふうな態度は私どもみじんもとる意思はもちろんないわけでございます。事業団同様、私どもも、現地におきます各種の説明会、各種の連絡会といったふうなことは鋭意やっておりますが、これに加えまして、制度的にことしから原子力モニター制度というものを設けまして、全国で五百人ばかりのモニターをお願いいたしまして、原子力についての、特に原子力行政についての各種の御意見なり建議といったふうなものをちょうだいするように努めておるわけでございまして、今後、こういったふうなチャンネルを通じまして、できるだけ国民との意思の疎通を図ってまいりたいというふうに考えております。
  121. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあひとつ、そういう点は今後の大きな課題であると思いますし、本当のやはり国民の世論というものをも参考にしていかなくちゃいけない、そういう声なき声も聞いていかなけりゃいけないわけですし、そういう点で、これは個々の努力というよりも、やはり全体のシステムというものをそういうように変えていかなければいけないんじゃないかと、こういう点を要望しておきたいと思います。  そこで、遮蔽の問題につきましては、これはまた次の機会に譲りたいと思いますが、軽水炉の問題ですね。わが国は、御存じのように、一番最初はコールダーホール改良型の国産化路線、それが軽水炉へ変わっていったわけでありますが、その後日本の国に建設される炉は、もうすべて加圧水型、沸騰水型の軽水炉になっておるわけであります。しかし、現実にはその軽水炉というものが非常に稼働率が低いわけですね。最初の私いただいた通産省の資料を見ても、コールダーホール改良型というものは非常に稼働率が高いわけでありまして、特にこの原子力船のような一たび海へ出てしまえばずっと航海を続けていくと、そういうような点を考えれば、当然これは稼働率の高い炉でなければならないと思うわけでありますが、そういう点、私は、コールダーホール型の路線から軽水炉へ変わってきたという、そういう行き方にはいろいろ反省すべき点があるのではないか、こういう感じがするんですけれども、その点はどうなんですか。
  122. 山野正登

    政府委員(山野正登君) わが国におきます動力炉の炉型のあり方というものにつきましては、これは大変重要な問題でございまして、実は原子力委員会におきましても、新型動力炉開発専門部会というものを設けまして、昨年の夏に結論が出ておるわけでございますが、この検討の結果に従いますれば、わが国の基本的な炉型のあり方と申しますものは、まず、とりあえず現在の軽水型というものの定着を図る。この定着を図ると申しますのは、ただいま御指摘のように、稼働率が現在非常に低いわけでございますので、この信頼性の向上を図る、あるいはまた改良標準化といったふうな努力によりまして、鋭意稼働率を上げるという努力をするわけでございますが、そういったふうなことによって定着化を図りまして、その後は、できるだけウラン燃料を効率的に活用するという趣旨におきまして、高速増殖炉の路線に結んでいくというのがこの動力炉専門部会の決定しました基本的な路線でございます。これに加えまして、高速増殖炉の出現の時期によりましては、バックアップとしまして新型転換炉実用化検討するというふうなことになっております。今後、私どもはこの基本路線に沿ってやっていこうというふうに考えておりまして、御指摘のこのコールダーホール型というものを否定するものではございませんが、現在の世界の大勢というふうなものをあわせ考えましても、大体この専門部会の結論というものは妥当なものではないかというふうに考えておるわけでございまして、鋭意今後はこの信頼性の向上、稼働率の向上といったふうなことに向かいまして努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  123. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 非常に稼働率が低いと、しかも、同じような事故が繰り返されておると、こういうような点については、また後日の機会に譲りたいと思いますが、何といっても国民が安全であるか安全でないか、そういうようなことは、安全委員会が安全だからと言って、じゃ素直に信じられるか、そういうものでもないと思うんですね。やはり安全委員会が安全だと言ったものは本当に結果において非常に安全である、稼働率が非常に高くて放射線漏れもない、こういう実績を示していくことが一番の国民の皆さんに理解をいただくことになるんじゃないかと思うんですね。だから、政府が軽水炉路線はいいんだ、いいんだと言っても、現実に稼働率がよくない。一方、カナダ等のCANDU炉ですね、こういうものは、私もいろいろデータを見ましたけれども、非常に稼働率が高いわけであります。しかも、これは濃縮ウランではなしに、直接のウラン鉱石を使うことができる。しかも、かなり世界の各国がこのカナダのCANDU炉を採用しておる。そういう点から考えて、やはりわが国は、今後のエネルギー資源確保の上からも、燃料の多様化と申しますか、やっぱりアメリカだけに大半、すべてを頼るのではなくして、やっぱりそういう安全性の面、あるいはそういう燃料のルートの多様化という点からも、これは当然CANDU炉についても研究をすべきではないか。電源開発等においてはそういうようなことも進めておるようでありますが、これについての政府の見解を簡単に承っておきたいと思います。
  124. 山野正登

    政府委員(山野正登君) カナダのCANDU炉は、御指摘のように、すでに実用化に至っておると私どもも判断いたしておりますし、天然ウラン燃料として使用できるという意味におきまして、もしわが国においてこれを採用いたしますれば、燃料の多様化という面において大きなプラス面があろうということも、そのとおりだと存ずるのでございますが、一方、このCANDU炉と非常に似た型の炉といたしまして、重水減速の新型転換炉というのも国内において開発いたしておるわけでございますので、これとの関連でございますとか、あるいはCANDU炉自体につきましても、わが国の安全審査基準に適合し得るや否や、特に耐震設計の面はどうなっておるかといったふうな問題点も別途またあるわけでございますので、この問題点並びに先ほど申し上げたプラスの面、両方あわせ考えながら検討を進めていきたいというふうに考えております。
  125. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、大山委員会は特にこの安全審査体制についていろいろな提案をしておるわけでありますが、安全専門審査会の委員が非常勤である、パートタイマーである、また申請者側の計算を再計算することは不可能である、もう申請者側の出した資料をそのまま信ずる以外にはない、あるいはいままでに許可した炉がいろいろ稼働しておる、そういう設置した炉の運転の結果に注意し、その運転の結果をどんどん次の安全審査に反映させていくような体制が不足しておる、一貫した技術システムに欠けるということを指摘しておるわけでありますが、こういう点は、先ほどかなり安全審査部門の人員もふやしたというようなお話でありますが、いま大山委員会の指摘しているような、そういう体制まで来ておるのかどうか、この点はどうなんですか。簡単にひとつお願いしますね。
  126. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 審査委員が。パートタイムであるということは現状においても変わっておりませんけれども、先ほど御説明いたしましたように、審査委員を補助する調査員を含めまして、その人員の増強に努めておるところでございます。  それから、従来の審査が設置者等から出てきますデータを再チェックできないというような点の御指摘がございましたが、これは現状におきましてすでに改善いたしまして、原子力研究所の理論解析をいたしますところと協力いたしまして、審査会側がこういうことを計算してほしい、あるいは解析してほしいというようなことにつきまして、原研がそれを引き受けて、その結果を審査会に出すというふうな制度をつくりまして、すでに審査に活用しております。  それから、設置許可後許認可等の間に空間が出てしまっておる、一貫性に欠けるという点でございますが、これにつきましては、すでに原子炉安全技術専門部会を設けるということ、それから発電炉あるいは原子力船につきまして、それぞれの発電用事業炉部会あるいは舶用炉部会等を設置しておりまして、運転あるいは施行につきまして問題が起きました点について報告を受け、また適当な指示を通産省等にいたします。そういうような連絡する部会もすでに設置して、大山委員会で御指摘いただいた点については、可能な限りその実現方に努力しておるところでございます。
  127. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に長官にお尋ねしておきたいんでありますが、「むつ」の意義をどこに置くかと、こういう認識が非常に大事であるということを大山委員会の報告書は書いております。そうして、原子力を船舶に取り入れるべきかどうか判断するその根拠、これが「むつ」である。確かにそうだと思うんですね、私はその意見に賛成なんです。したがって、長官も同じような認識であるのかどうか、それを承っておきたい。そうして、それだけに、日本は今日まで海運王国、造船王国として推進をしてきたわけでありますが、そういう意味で本当に果たして原子力が舶用炉としてできるかどうか、こういう判断というものは日本の将来に対する非常に大きな影響力を持つと思うんですね。だから、この研究がもしいいかげんなことで、間違った判断のもとに日本が出発をしたならば、いずれにしても、世界の大勢において大きなおくれをとっていく。それだけに本当に原子力船の実用がいいのか悪いのかというこの判断をする大事な事業団でございますので、そういう点でひとつ慎重に取り組んでもらいたい。このことを要望したいんでありますが、その点についての長官の御見解を承って質問を終わります。
  128. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 「むつ」の意義でございますが、ただいま申されたとおりの意義、私もそのとおりであると心得ております。本当に日本といたしましては、石油、ガスも易々として手に入るかということを考えますと、非常にむずかしい。しからば、できるだけ代替性を伴う個所において代替エネルギーを使うべきであるという考え方、これは私たち持っておるわけでございますが、その中の一つ原子力船があるわけでございます。したがいまして、「むつ」は将来そうしたものを取り入れて十二分に国益に合うや否や、それをひとつ「むつ」において実験をしてもらおうと、こういう趣旨で私たちも今日臨んでおるわけでございますので、どうかその点におきましては今後とも深い御理解を賜りますようにお願いをいたす次第でございます。  もちろん、事業団そのものに関しましても、すでに修正が出ましたので、そうした方向におきまして国会のお考え方を私たちといたしましても尊重して、それに対応し得るようにやっていきたい。そして、事業団に働く人たちが将来研究機関の一員として本当に活力あふれる活躍をしてくれる、それを私はひたすら望む者でございます。  以上であります。
  129. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は、限られた時間でもありますし、本会議で行いました質問の長官の答弁でなお不明の点を少しただしたいということと、当委員会として、できれば参考人も呼びたいという意見も持っていますので、そういうこととのかかわりで両法案にわたって概論的に幾つかの質問をいたしたいと思います。  まず、原子炉規制法の改正案関係でありますが、第一にお尋ねをいたしたいのは、御存じのように、当初の原案には再処理工場を民間に移行をする部分が入っておりましたのが、衆議院審議の段階で削除修正になりました。この端的な理由は何かという点はどうでしょう。
  130. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 衆議院の修正は、民間の再処理施設は不必要だという判断に基づくものでは決してございません。率直に申し上げますと、去る国会から三本の法案を出しておりましたので、言うならば再処理施設に関しましては、衆議院におきましてはほとんど審議の時間がなかった。しかしながら、片一方、NPT、それに絡むところの協定国会における審議、それには一つの時限もございますので、したがって、それと重大な関連がある。そうしたことを考えると、やはり日本としても、国際的な信義を貫いていくべきであり、約束を貫くべきである。そのためには、この再処理はそうしたことで万やむを得ないからこの際は切り離す、これが衆議院における修正の大意であると私は心得ております。
  131. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまの御説明ですと、再処理工場民間移行にかかわる部分については、いわば十分審議を尽くす時間が不足をしたという御説明のように受け取るわけでありますが、私の理解をするところでは、現在の東海において行われておる再処理をめぐっても、たとえば今後出される廃棄物の処理について、これは国際的にもいろんな不安が出されておる。そういう状況で、なおさら民間に移行をするということについては、もっとよくいろいろ学問的にも技術的にも研究を加える必要があるのではないかという意見が多くあるということではないかと思うのですが、その点については、政府側としてはどういうふうに受けとめておられますか。
  132. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 確かに短い時間ではございますが、やはりそうしたことも一つの審議の過程においてはいろいろ御意見が出たことは事実でございます。しかし、この点に関しましては、過般も本会議でお答えいたしましたように、いわゆる電力会社の経営形態がどうなっておるか、わが国におきましては私企業でございます。また、外国におきましても、私企業に対してはやはり再処理は、言うならばその会社そのものが責任を持って本来はしなければならないことであるというふうなたてまえにおいて、私企業の再処理というふうな態様をなしております。また、電力会社が国家の場合には、それについては国営の再処理と、こういうふうにいたしておりまするから、われわれといたしましては、この再処理施設というものは、わが国の電力会社の形態が私企業である以上は、それに対応すべく民間に任す、しかも、そのいろいろのことに関しましては十二分に諸外国におきましてもりっぱに業績を上げておるわけでございまするから、そうしたことでお願いをいたしたというのが私たちのこの問題に関しての考え方でございます。
  133. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまもちょっと長官がお触れになりましたが、もちろん、諸外国の再処理工場の様態についてはいろいろさまざまではありますけれども、いわゆる原子力発電所に比べて、再処理工場については特にそこでのプルトニウムの生産というそのことにも深くかかわって、一層高度の安全性が必要とされるというのは論をまたないところだと思いますけれども、そういう点で、諸外国の動向として、再処理工場の様態については一層厳格な安全性が確保される、単なる民間施設にするという、そういう方向では十分な安全が保障できないのではないかという傾向が強まっているというふうに私は理解をするわけですけれども、そこでひとつ確かめたいと思うんですけれども、今期国会ではああいう修正が行われたわけでありますが、いわゆる第二次再処理工場にかかわる問題について、いつごろの時期に政府側としては再度国会に提案をしようというお考えなのか。私としては、今期国会でも、結果がああいう形の結果になりましたことにあらわれているように、もっと学問的、技術的に民間に移した場合の安全が十分確保できるかどうかということについての慎重な検討を加えて、政府としてもいま一度この再処理工場についての方針問題を練り直す、そういう意思があるのかどうか。これはわが国自体の安全上の問題としてもそうでありますし、同時に、きょうも森下委員の質問の中で議論も出ていましたように、ことしの春から夏にかけての東海の再処理工場をめぐる日米交渉の中で露呈をしてきておりますように、二年後のわが国の再処理工場の姿、そこの技術方式がどういうことになるのかということ、そこのめどをつけないままいろいろな準備を進行するということは、ある意味では非常にむだになるということも十分言えるわけでありますし、そういう点で、政府側として再処理工場にかかわる法制化の問題をいま一度よくいろんな角度から練り直す、そういう意思がありやなしや、その点をお尋ねをしたい。
  134. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) すでに去る国会に提出いたしましたときに、われわれといたしましても、十二分にこの問題に関しましては練りに練って国会の御審議を仰いでおるわけでございます。しかし、いま申しましたような理由で、修正で排除されておりまするから、私は、次期国会にこの問題は提案をいたしたい、そして速やかなる御審議をお願い申し上げたいと、かように存じております。  その理由は、いま御指摘のとおりに、日米原子力交渉におきましても、これは一つの話題になりました。私の方からむしろ、二年間のINFCEという世界的にも核不拡散の問題を再評価しようというふうな問題がございますから、そういう重大な世界会議があるんだから、ただ日本だけよければいいという問題ではございますまい、だから、われわれといたしましても再処理施設というのは重大な問題ではございますけれども、一応この問題に関しては、私たちといたしましては自粛をいたしましょうというふうなことをこちらから提案いたしたのでございます。もちろん米国の方は、実はそれに対しまして、もっともっと強い態度で臨みたいというふうな意向がありありと見えておりました。ということは、この第二次再処理施設を設けるその立法手続にすら米国は口を入れようとしたんです。来ているデリゲーションの方々は、これは技術屋さんばかりですから、いわゆる立法府の関係者は一人もおられませんから、そのような誤った考えをお持ちになったんじゃないかと私は考えましたので、いまあなた方がそういうことを強硬に言うことは、言うならば日本の主権に関する問題ですから、お慎しみなさい、慎しんでいただきたいということを私は申し上げまして、この再処理問題は、われわれの方から今日ただいまとしては一応会社を設立すること、並びにその会社によってその場所を取得すること、これぐらいのことは私はやりたいと思うんだと、そして直ちにカンカンとコンクリートを打って建設しようという考えは現在の日本にはございませんよと、立法問題に関しては、それと全く別の次元で、何ら米国の了解あるいは米国のイエスを得なくちゃならない問題ではないんだから、そのようなことは、頭から、この会議からはもう払拭していただきたいということを言いまして、私はそれを貫いたわけでございます。  したがいまして、二年間の間にりっぱに立法措置ができまして、そしてその間に設立されましたところの民間の会社がサイトを選定し取得をするということは、私は、当然将来の日本核燃料サイクル確立のためにも必要なことではないかと、かように考えておる次第でございます。しかも、再処理施設そのものの安全性に関しましては、もちろん、これは安全委員会が適時チェックをしていく問題でもございましょうし、また、最も重大な核不拡散の問題に関しましても、これは二年間のINFCEでいろいろと各国が議論をすることでございましょうから、そうした国際的な意見も私たちは十二分に尊重し得る、それがこの二年間ではないだろうかと、こう考えておりますので御了解賜りたいと思います。
  135. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いま長々の御説明ありましたけれども、ただいまの長官の御答弁によると、次期国会にもう一回出しますと、政府の方針の練り直しの必要も認めませんと、こういう御答弁であったと思うんですけれども、もちろん、私ども共産党としては、御存じのように、別途の理由によってこの削除修正が行われたゆえをもって今回の規制法改正に賛成をするという態度はとりませんでしたが、衆議院の段階で多数会派の意見でこの再処理工場の民間移行を法制化をするというこの問題について、それを国会で決めるという、こういうやり方はよくない。次の国会といえば、もうきわめてわずかだと思いますけれども、そういう明確な国会の意思が表明をされたにもかかわらず、何の再検討、練り直しもしないのだという、そういう政府の態度というのは、私、決して穏当な態度ではないと思いますが、これは意見ですから、そういうふうに言うておきます。よく国会の意思を体して政府側の方針の練り直しをやっていただく必要があろうと思います。  次の問題へ進みますが、いまの再処理問題にかかわっての日米交渉に関する問題でありますが、いわゆるカーター主張といいますか、アメリカの新政策といいますか、これは一面では核拡散防止ということを旗印にして、今日のような、もうるる議論をされておる、そういう問題を惹起をしてきているわけですけれども、果たしてアメリカが今日とってきております原子力政策、これが単純に核散防止という平和目的といいますか、政治的目的といいますか、そういう目的だけであろうか。世界における原子力市場において、たとえば高速増殖炉の開発においてアメリカが非常におくれをとっている。あるいはまた原子炉の近年の外国への輸出状況なんかを見た場合に、むしろ一時のアメリカの優位の状況が劣勢の状況を来している。これを挽回するために歯どめをかけてもう一回アメリカの優位を回復をしようという、いわば経済的要因、こういうものがいま一つ強く働いているんではないかというふうに思うんですけれども、ここらの問題について長官の御見解を問いたいと思います。
  136. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) カーターさんの核不拡散、これは選挙中の一つの公約で、あの方の宗教的な信念から出た、私はこういうふうに思います。その信念をいかに世界的な一つ政策としてこなしていくかというのが現在の大統領の心境だろうと思います。しかし、私が言うんじゃなくして、私の耳に入ってくるいろいろなルーモアならルーモアといたしましょうか、そうしたものによりますれば、中にはそういう大統領一つ政策に便乗しようという政略もあったのではないだろうかというふうなことも言われております。しかし、われわれ日本政府といたしましては、そういうことには一切耳を傾けずに従来日本アメリカとの原子力関係等々を重要視しながら、しかも、二十年にわたるところの友好のきずなを傷つけないという、そうした判断に基づいて私たちは今回の原子力交渉を行ったわけでございます。したがいまして、そういう見方があるということは、私は、一つのうわさとして耳にはいたしておりまするが、私自身はそうだと決め込んで今回の交渉をやったわけではございません。
  137. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 長官はルーモアだという言い方をされますけれども、もう私から逐一数字を挙げる必要はないと思いますが、厳粛な事実として、たとえば原子炉の輸出状況、一九七一年の段階では、アメリカが八基、アメリカ以外の外国の国々の輸出実績というのはゼロ。これがアメリカがずっと年々低下をしてきて、その他の国々がずっと向上をしてくる。一九七六年は、アメリカ一、その他の国で九。こういう数字に逆転をしてきているという問題やら、あるいは高速増殖炉の開発状況を見ましても、すでにソ連、フランス、イギリス、西ドイツ、いずれも運転を開始をしておる、増殖炉が始まっているということでありますが、一方、アメリカについて言えば、着工一九七七年、臨界の時期一九八三年という予定で計画を進めたんだけれども、今度の商業炉の開発中止云々という問題が出てきておるわけです。私が言いたいのは、カーターは、確かに核兵器不拡散という、そういう一つの旗を掲げながら、同時に、このままの趨勢、テンポでいけば、一時期優位を占めておったアメリカ世界市場における原子力優位、これがおくれを来す、これを挽回するためにいまここで一つの歯どめをかけて、もう一回アメリカ主導の原子力国際市場をつくろうという経済的思惑が働いているというのは、私は明白だと思うんです。このことをしっかり認識をした上で、いま日本原子力行政がいわばアメリカに振り回されることがないように、明確で賢明な対処をわが国はしていく必要があるだろうという問題だと思うんです。  別の角度からお聞きをしますが、ウラン、濃縮のアメリカとの契約条件ですね、私は、常識的に見ても大変不当な条件になっていると思うんですけれども、どなたか説明してください。
  138. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) アメリカが、現在ウラン濃縮に関しまして原子力協定を結んでいる国家は、約三十ほどございますが、その中で日本もごく初期に結んだ国でございます。ヨーロッパはどうかということになりますと、ヨーロッパは、御承知のとおりに、ユーラトムという一つの組織の中でやっておりますので、アメリカとはそのような協定は持っておりません。だから、ヨーロッパと日本を比べますと、確かに日本アメリカに首の根っこを押さえられていると申し上げても過言じゃないんです。他の協定を結んでいる国はどうかといいますと、今日ただいまはまだ再処理施設を持たず、またその意図がないとするのならば、今日——いわゆる八条C項という原子力協定の中の条項によりまして、日本アメリカから受け取った核燃料を再処理する際には共同決定をしなくちゃならぬ、その保障措置に関しての。これがあるのは言うならば日本だけである。この点はアメリカに対しましても、いまこのような原子力交渉をやっておるのは日本とあんたの国だけで、しかも、言うならば、アメリカが八条C項に対していろいろ条件をいま日本に言おうとしておるのは世界でたった一つなんである、果たしてこれでいいんだろうかということに関しましては、私は十二分にアメリカに交渉いたしまして、そして、はっきり申し上げますと、わが方の主張を一〇〇%貫いたと、こういうふうな考え方でございます。したがいまして、確かにおっしゃるとおり、八条C項というものは、世界から考えれば、日本が今日再処理施設を持った国家のうちでただ一つそういう特殊なものがあるということは事実でございます。これは今後われわれといたしましても十二分に考えていかなくちゃならぬじゃないだろうかと、こういうふうに思っておりまするけれども、しかし、やはり日米間の十二分な外交的な理解を深めるのならば、アメリカもこの点に関しましては決してむちゃなことをしなかったというのが今回の結論でございますから、したがいまして、二年先にも当然八条C項はこれは動いてまいります。だから、われわれといたしましては、それに対しましてさらにアメリカの理解を深めるべく努力をしていく必要が当然ございます。片一方におきましては、一日も速やかに、やはりアメリカさんの御厄介にもならず、どこさんの御厄介にもならず、みずから燃料、エネルギーを確保し得るという、原子力に関しましては核燃料サイクル確立、これをやはり日本といたしましては急がなければならないということもそこにあるわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  139. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ただいまの長官の御説明によりますと、   〔委員長退席、理事森下昭司君着席〕 近年はウラン濃縮についてアメリカに依存をする比重がずっと低下をしてきている、だから契約条件をめぐる問題というのは、いわば余り大した問題でないというふうに言われんとする、そういう答弁であったかと思うんですけれども、一つは、いま日本ウラン濃縮についてアメリカに依存をしておる度合いですね、これはどれくらいか。  それから、具体的に私が問題にしていますのは契約の条件です。たとえば私が調べたところでは、濃縮を日本の電力会社がアメリカに依頼をするという場合の依頼者、この濃縮の依頼者は、必要とする量を十年分をセットにして契約をしなければならないと。そうして、契約を解除した場合には契約料の四五%をいわば解約料として払わなければならない。アメリカ側の都合で向こうが計画変更した場合には何の違約金もアメリカは払わなくてもよいという、非常に偏った不平等な契約の条件になっているというふうに調べているわけですけれども、こんな点についてはどうか。二つお尋ねします。
  140. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず、わが国濃縮ウランの対米依存度でございますが、これは結論的に申し上げれば、まず一〇〇%と言ってよろしいかと存じます。と申しますのは、現在約五千百万キロワット分のものを六十年代初めまでわが国米国に依存しておるわけでございますが、これとは別に九百万キロワット程度に相当するものをEURODIFに昭和五十五年以降依存しておりますので、完全に一〇〇%というわけではございませんが、ほとんどの部分を米国に依存しておるというのが現状でございます。  それから契約条件でございますが、これは政府間契約ではございませんで、民間の契約条件になっておるわけでございますが、御指摘のように、売り手買い手の関係におきまして、売り手市場になっておるといったふうな関係はあろうかと存じます。
  141. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私の質問している内容に対して、契約内容にかかわっては明確な御答弁がないわけですけれども、とにかく、非常に不平等な契約条件になっているということははっきりしていると思うんです。  そういった点で、先ほど宇野長官みずからのお言葉の中に、いわばアメリカに首根っこを押さえられていると言っていい状態だと、しかし、先日来の日米交渉の中でその手かせ足かせを取り払うために力いっぱいの努力をしたんだというお話があったわけですけれども、しかし、これはいよいよ問題が煮詰まってまいりますと、一つの節が二年後にも来ましょうし、今後また、いま日本でも開発を予定をしております増殖炉の問題とか、あるいは日本独自で濃縮工場をつくるという、こういう方針もあるわけですけれども、そういった点でやはり今日の日米原子力協定、中でも、たびたびお話にも出ています八条C項を初めとするこういう内容を改定をするために政府として努力をする意思はないのか。これは単に日本アメリカとの政治的関係がどうかという問題よりは、本当に国民の利益の立場に立って日本原子力行政をどう進めるかという問題として、直ちにと言ったって何もあしたからと、こういうわけじゃないんですけれども、将来に向けてこういう不平等な原子力協定は改定をすべきではないかというふうに私は思うんですけれども、長官の御意見を伺いたいと思います。
  142. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) このことは、日米交渉の中におきましても、相手のジェラード・スミスさんという人に率直に私の感想を語りました。先ほど申し上げたとおり、日本だけが現在くくられているんだねという感想を申しましたところ、いや、アメリカは将来はやはり核不拡散ということが一番大切だとカーター大統領は思っているので、日本と同様のこうした協定を諸外国とも結びたいのである、こういうふうに言っておりました。したがいまして、私としましては、それは諸外国もそういうような条件ならば何をか言わんやであろうけれども、そうしたことはこの二年間のINFCEで恐らくいろいろ議論になるだろうから、まあINFCEのその結論を待ちましょうと、そこでわが国としてどういうふうな主張をするのか、また諸外国もそうしたことについてアメリカにどのような反応を示すのか、そうしたことも私はINFCEでいろんな場面に一つの話題となって出てくるのではなかろうかと思います。  したがいまして、現在、おっしゃるとおりに、非常に不平等であるから、これを直ちに改定するんだというふうなことは、ついこの間私がこの協定に基づいて共同決定の調印をいたしました以上口が裂けても言えません。現在はやはりそういう協定に基づいて日米間がお互いに信頼し合うということは事実でございます。しかしながら、八条C項は、まことにもって日本にとりましてもやはり首の根っこを押さえられていることは事実でございます。それというのも日本資源小国であったと、しかも、原子力に関しましては日本は後進国であったと、いろんなそうした成立の過程における諸条件があったと私は考えるのでございまするけれども、将来におきましては、やはりこうした問題はお互いに核不拡散原子力平和利用を両立し得るという日本主張が通った暁、これを世界がどういうふうに思うであろうかと、私はそうした面においてひそかなる期待を抱いておるものでございます。特にアメリカに対しましてもさようなことでございますから、御承知のとおりに、共同声明の中におきましては、日本原子力平和利用のそうしたスケジュールを妨げない、同時にまた、日本のそうした平和利用に差別をしない、こういうふうな表現があることも、実はこの問題に関しまして私たちの現在の考え方を率直にアメリカに述べ、アメリカもそうした面について非常に理解を示してくれた結果の文言であろうと、こういうふうにわれわれは理解をし、どうかその点も御理解を賜りたいと存ずるのであります。
  143. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 時間がありませんので次へ進みたいと思いますが、いま提示をされておりますこの法案にかかわって、いわゆる核物質の保障措置といいますか、核物質が軍事転用されないように厳格な保障措置を行っていくという問題は、いわばアメリカがどう言おうと、あるいはまた核防条約との関係がどうだこうだという問題を抜きにして、わが国の国の行政独自として国民の不安を来さないよう核物質の厳格な管理を行っていくというのは、これはもう当然な問題でありますし、いわば今回提案をされておる幾つかの内容というのは遅きに失した問題でもあるというふうに私は思うわけですけれども、しかしながら、今回出されております内容、その背景となっております協定あるいは議定書、これをいろいろ調べてみたわけですけれども、基本的には今後わが国のいわゆる自主査察にゆだねていくというのを基本方向にしながら、IAEAが上限を定めるというその範囲内において通常査察を行うと、日本政府側の同意のもとに立ち入りを行うという部分を依然として残しておりますし、さらに特定査察という名称で、協定発効後一定の期間は特にこの部分について、通常査察については上限の定めをしているわけですけれども、特段の定めなく、協定発効後はIAEAの査察がやられていくと、介入がやられていくと、こういう点で幾つかの問題を依然として残していると思うんです。ただ、もう時間がありませんので、その点をただしておる時間はありませんが、それ以上に重大な問題は、今回提案をされておりますその背景になっておる協定並びに今次法案、これの仕組みを全体としてながめてみました場合、日本の国内の核物質のいろんな動きについては上限を定めるとは言いながら、依然としてIAEAのいろんな査察がやられると。ところが肝心のアメリカに対してはどうかと言えば、アメリカの場合にはいわば治外法権になっている。こういう問題というのは、どう見たって合点のいかぬ問題だと思います。そういう点でここらの問題についても、もうきょうは時間がありませんから、あえて答弁は求めませんけれども、先ほどの日米原子力協定を改善をしていく問題とあわせて一定の時期にお尋ねをしますので、これをどういうふうに改善をしていくか、改革をしていくかという問題について政府の方でよく御検討をいただきたいと思います。  法案自身の問題についてお尋ねをいたしますが、いまも申しましたように、国民の不安を来すことのないよう核物質の情報処理や計量管理について厳格なひとつ実施を行っていくということが国の当然の責任であろうと思いますが、私は、今度の法案で一番の問題点は、そういう重大な、国が責任を負うべき業務を民間機関に委託をするというここの問題だと思います。  長官の先日の本会議の御説明では、わが国の場合民間機関もかなり技術水準は高くなってきました、しかも、この業務はかなり簡単な業務だから、こういう御説明でありますけれども、一つお尋ねをしたいのは、これらの情報処理なり計量管理なり、これらの仕事のそれぞれの主な業務内容はどういう内容になるのか。それから、このことによって日本現状でどれくらいの人員がこの業務に携わる——大まかに言って二種類の業務になるわけですけれども、これに携わる人数はどれぐらい要るのか。そして民間機関に委託をという法案になっているわけですけれども、どういう民間機関を予定をしておるか、まずここら辺の問題についてお尋ねをいたします。
  144. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 情報処理業務を民間に委託するその業務の内容でございますけれども、これは規制法によりまして政府が各施設から聴取いたしましたデータにつきましてその集計業務をまず行います。これを計算機によりまして集計する。それからもう一点は、その報告をIAEAにいたすわけでございますけれども、IAEAに報告する様式と政府がとる様式が異なりますために、これを同じように計算機にかけてIAEA様式に変換する業務。それからもう一点は、最初に申し上げましたデータ等を使いまして各施設の行方不明になる量と申しますか、MUFと言っておりますが、物質不明量、こういうものを解析することが協定上求められておりますが、それの解析の計算をしてもらうということを委託する予定にいたしております。したがいまして、これらはすべて計算機を使った定型的な業務でございますので、先生おっしゃいますように、核燃料の管理というのは当然国の責任ではございますけれども、先ほど申し上げましたような部分的な仕事につきまして、計算機業務につきまして民間の指定する機関に委託して、それをまた政府が受け取りまして、政府として決定してIAEAに報告する、あるいは政府として発表するというふうなことで、国際的な保障措置体制に対応するものといたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、現在保障措置関係の人間の数がどのぐらいかという御質問でございますが、現在十八名おりまして、査察関係は十四名でございます。なお、この法律がお認めいただけますと、私どもの方の保障措置課の人間と、それから通産省あるいは運輸省の検査関係の業務をなさっておられる方に内閣総理大臣が業務をお願いしまして査察の業務をお手伝いいただける制度を新設するつもりにしておりますので、飛躍的に検査官の増員は図られるように相なっております。
  145. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや、発足した場合どれくらいの規模になるのかというのをお尋ねしております。
  146. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) これは指定機関のあれでございますが、これは法律が通りまして、一定基準のもとに申請を受けて、これから指定するわけでございますが、確かに現在計量管理等のいろいろな調査研究を実施している機関——核物質センターというものがございますが、そこの規模は、現在調査研究に携わっている人等も含めまして十八人がございます。
  147. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと後の方がよくわからなかったんですけれども、大まかにいって、二つの業務——情報処理と計量管理、この業務のためにそれぞれどれくらいの規模が要るのかという問題をもう一遍ちょっと明確にしてほしいということと、ついでに、もしもこれを民間機関ではなくて国の直轄機関にした場合にどれくらいの経費が要るのか。
  148. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 当面十名でございます。予算的には、たしか本年度あるいは来年度の予算は数千万円であったかと思います。
  149. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまお尋ねした限りでは、人数的には十人程度、そして予算にしても数千万円ということで、私は、それほどびっくりするほどの大変な予算が要るというわけではないというふうにいまの御説明を理解をするわけです。  そこで、重ねてお尋ねをするわけですけれども、かつて分析化研のデータ摸造事件というのがありまして、衆参両院のこの科技特の委員会でも再々いろいろ議論になってきた、そういう問題はお互いに記憶にあるところだと思いますけれども、   〔理事森下昭司君退席、委員長着席〕 あの問題の教訓をどう科技庁としては今日つかんでおられるのか。やはりデータ捏造したそういう悪者の犯人は確かにいるわけですけれども、そういうことを未然に防止をする国の管理監督が十分貫徹をしなかったという、ここにこの問題があるんではないかというふうに思うわけです。そういった点、あの事件の反省の上にも立って、さほど膨大な予算が要るわけではない、そして国民の不安に答えていくためにも責任を持って国が管理をきちっとやっていきますと、しかも、さっき業務内容をお尋ねをしたんですけれども、全く計算機業務だけか、そういうふうにいまの時点で断定し切れるのか。たとえば核種分析とか、そういう業務なんかも出てくるんじゃないか、そうなった場合には相当の高度の技術力も要るわけですし、また業務の内容に厳密さも要る。  そういう点で長官一つお尋ねをいたしたいと思うんですけれども、それほどびっくりする国の予算が必要となるわけでもないこの問題、そして分析化研のあの事件の教訓の上にも立って、なぜ民間移管、民間委託ということにしなければならないのか。国の管理監督が貫徹をする、そういう機関にすべきではないかという、この問題についての御見解を願いたいと思います。
  150. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先ほども申し上げましたように、作業内容がそれだけに限られることでございますが、これらの仕事は計算機の処理業務が中心でございますので、効率的にこれを行う民間機関、行い得る機関があれば、これに任せるということが最も望ましいと考えたわけでございます。  なお、この機関につきましては、先ほど分析化研のお話もございましたが、それに必要な監督につきまして十分な措置を講じてまいりたいと考えておりますが、指定に当たりましても、一定の資質を有するものに指定をするというようなこと、あるいは業務を行います場合に業務規定を定め許可をし、また変更するときも変更をさせるというふうなことで、十分な監督をもって対処していきたいと、かように考えております。
  151. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 なお、いまの御説明ではちょっと納得できませんけれども、時間の関係がありますし、次へ進みますが、そういう民間機関に委託をする、しかし、そういうかつての分析化研の事件、ああいう不安もある。したがって、管理監督を民間機関といえども十分徹底をしていきたいんだと、こういう見地から今度の法案に、この委託をされる機関の職員について、またその職を退いた後に至るまでそれらの人々に対してこの守秘義務を課する、そういう条項があると思うんです。政府として、事、国民の不安が大きくつのっておりますこの核問題、この問題について片一方では安上がりを理由に民間に委託をする、しかし、それでは国民のいろんな不安、それに十分こたえ切れないということもおもんぱかってか、守秘義務というのを一方法律上課する、私は、こういうやり方というのは、これは本当にオーソドックスな行政の方針ではないと思うんです。片一方、原子力の問題については、つとに基本法の論議以来、原子力に関するさまざまな諸情報の公開性の問題が絶えず強調されてきておるという経過でありますけれども、たとえばこの守秘義務と公開性とをどういう関係として位置づけをされるのか。たとえば私ども国会議員が、いまわが国でこういう核物質がどういうふうに流動をしているのかということについてしっかり握って、これからのわが国原子力政策をどうしていくかという正確な国の施策を樹立をしようという、そういう場合に、この守秘義務との関係で公開性の問題が制限を受けるということになったら、これは事は大変だと思います。そういう意味からこの問題についての見解をお尋ねしたい。
  152. 佐藤兼二

    政府委員佐藤兼二君) 先ほどこの保障措置問題は国民の不安に答える問題だという点を強く御指摘いただいたわけでございますが、この保障措置協定そのものは、御案内のように、NPTの条約下における保障措置協定の実施ということになりまして、きわめて国際的メカニズムの一環としてこれを実施するということでございまして、事の内容を考えますと、単に国内的な信頼問題のみならず国際的な信頼問題も期待される、そういう信頼性の確保ということが大きなベースにおいて期待されておる問題だろうと思います。したがいまして、今回の法案改正に当たりましても、指、定機関等に対して委託した場合、所属役職員に対する守秘義務を課して、いる趣旨も、単にその関係の秘密を保護するというだけを超えまして、むしろこの制度全体の体系の信頼性を確保するというような意味からこの条項も一設けているのでございます。  なお、先ほど御指摘の基本法における公開の原則ということの問題でございますが、基本法そのものは確かに原子力関係します成果の公開を求めているわけでございますが、いま申しましたように、この制度においても、信頼性というものを確保する上から特定の場合において秘密の保持というものを義務づけることは、決して公開性の原則に反するものではないんだというふうに私どもは考えておるわけでございます。なお、公開そのものはあくまでも国の行政責任において行われるべきだというのが原則的な考え方だと思います。現に、私どもはそういう考え方に立って、具体的に保障措置に関する情報につきましても、年に二回ほどそれにかかわるような情報を一般に公開しております。なお今後ともそういう方針で公開の問題に関しては対処していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  153. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 原子力情報にかかわる公開性は、国の責任の範囲に限って行うんだといういまの言い方は非常に重大な問題でありますけれども、ちょっともう時間がありませんので、その点はさらに次回もう少しいろいろ質疑をしたいと思いますが、次に移ります。  次は、原船事業団法の改正の問題についてお尋ねをいたしますが、一つは、これも衆議院で、当初政府原案の十一年延長を三年延長に修正をしたという形でいま参議院に付託をされてきているわけですけれども、それの付加的な説明として、三年の暁、事業団を研究所に切りかえていくんだということが付加的に説明をされているわけですけれども、この内容の具体的構想はどういうことになるのかということが一つと、事業団と研究所とどこで区別をしているのか、どういう違いが出てくるのかどいう問題、いままで薄々例がありましたから重ねてお尋ねをしておくのですけれども、三年後また事業団法の再延長というのを提案をするということは、もう絶対こんりんざいいたしませんというふうに約束できますからという、この三つを伺いたい。
  154. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず、衆議院で修正くださいました事情につきましては、私どもはこういうふうに理解しております。  従来、わが国原子力関係研究開発と申しますのは、第一船「むつ」の開発を原子力船開発事業団で行い、基礎的な研究原子力研究所あるいは運輸省の船舶技術研究所で行っておるわけでございますけれども、今後はこれらを一体としまして、従来の原子力船事業団というものが行っておりました第一船の開発に付加的に基礎的研究——もちろん、舶用炉あるいは関連機器の研究開発を含むわけでございますが、そういったふうなものを含めてやるべきではないかというのが、この研究所と申しますか、原子力研究開発機関への移行ということの御趣旨ではないかと考えております。したがいまして、私ども、衆議院でお決めになりました方向並びに今後参議院に一おきましても同様の方向で本法案が処理されますならば、その国会の御意思に沿いまして、今後鋭意この研究開発所への衣がえというものについて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。したがって、この事業団と研究所との区別という点は、事業団の方は第一船の「むつ」についての開発機関であったものが、研究所におきましてはこれに付加されて基礎的な研究も行う機関になるという点であろうかと存じます。  それから、事業団法の再延長の問題でございますが、これは先ほど申し上げましたように、この国会の御趣旨を尊重して、研究法案を提出するという方向努力をするということでお答えになっているかと存じます。
  155. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや、最後の質問の、三年後再び事業団法の再延長というのは断じて行わないというふうに約束できるかという点と、それから、先ほどの説明では、私はこういうふうに理解をしたんですけれども、事業団のやってきた仕事を継承をしながら看板は研究所と、こう看板を変えて、そして原子力研究の業務をあわせて行う、こういうことですというふうな説明であったのかということを再度確認します。
  156. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず、新しく将来つくられますでございましょう研究開発機関と申しますのは、おっしゃるとおりだと思っております。  それから三年後に再び事業団法の再延長を絶対提案しないかどうかという点でございますが、これは私どもは現在事業団法といういまの形におきますものを再度延長することをお願いしようとは思っておりません。国会の御意思を尊重しまして、研究開発機関に移行する形での法案提出というものについて今後努力をしてまいりたいというふうにお答えするわけでございます。
  157. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまの御説明の限りでは、従来とも原子力事業団の場合でも研究的内容はやっていたわけですから、そういう意味では、結局、言葉だけ変わって中身は同じだというふうな感を私は深くするわけですけれども、きょう、これも時間ありませんので、次の問題へ移ります。  四者協定の問題で、森下委員あるいは塩出委員から、もういろいろありましたが、私は再度お尋ねをしておきたいのですが、私も本会議で質問いたしましたが、再々長官の方からは、四者協定はいまも生きている、今後ともこれを極力尊重してやってまいりますということが繰り返し表明をされているわけですけれども、ところで、一方、少とデリケートだなと思いましたのは、森下委員のいろんな質問の中で、むつ市で市長選挙がああいう結果になったということで今後青森の状況がどうなりますか、いろいろ打診もしたり接触もしたりなにをしておるさなかということでありますが、端的にお尋ねをいたしますが、実はこれは東京新聞と毎日新聞の青森版に出ているわけですけれども、十月の二十一日、「宇野科学技術庁長官が閣議後の記者会見で「河野市長の公約を実現できるよう協力する」と母港存置の方針を明らかにするなど」云々というふうに書いておるわけです。すなわち、河野市長が当選をした、これに協力をして、結局「むつ」があそこに居座ると、こういう方向を気持ちとしてはどんどん進めていくんだという表明がここでやられておるんじゃないかというふうに私は見るわけです。これは明らかに、四者協定はいまも生きておるし、これからも尊重していきますという、この態度と二枚舌ではないか。本当の気持ちはどっちなんだということを重ねて尋ねます。
  158. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 四者協定は、私がもう何回も申し上げておりまするとおり、現在生きておるし、政府としては尊重いたします。その四者協定の中には速やかに定係港を撤去せよということもあるわけでございまして、これに関しましては、むつの市長さんが、いや下北の住民の御意向はやはり母港があった方がよいと思うし、私もそう思うという公約を掲げて選挙をなさって勝たれた。この事態に関しましては、私は、厳粛な事実として、当然選挙の結果ですから、政府も受けとめなければならないと、こういうふうに申しておるわけであります。その市長さんだけで果たして事が決まるかと言えば、決して市長さんだけで決まるものではなく、いわゆる四者の中の他の二者、青森の知事さんがどう思うか、漁連がどう思うかという重大な問題もあるんだということを私は解説をいたしたものでございまするから、したがいまして、直ちに——市長さんが勝たれたということは、いわゆる広い意味原子力行政というものの推進の上におきましては、まあ原子力に対する理解者がふえたと、私としては、これはうれしいことだと、もう率直に申し上げておるわけでございまして、しかしながら、母港そのものにつきましては、いま申し上げたような感じ方で、やはり政府一存で、市長さんが当選したからおれもその調子だというわけにはまいらない、これはしばしば申し上げておるわけでございます。したがいまして、そこら辺のややニュアンスが異なった報道になったと私は存じますが、市長が掲げられたそうしたお話は、原子力を理解するという上について大変私はうれしい事柄であったということは申しております。しかし、定係港という具体的な話になって、四者協定との結びつきになれば、これはわれわれといたしまして、市長さんだけで事は済まないということは十分お話をしておるわけでございますので、そのところはこの委員会におきましてもしばしばお答えいたしておりますので、さように御理解を賜りたいと存じます。
  159. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 何ぼ説明をされましても、いまの言い方というのは、これは一つの内容を言っているということではだれも理解はできませんよ。四者協定というのは、明らかにこのむつ港を引き揚げていくんだと、期限まで切ってそれを明確に四者が約束をしたという内容であるわけですから。それをこの十月の二十一日という段階で、現象としては二つしかないわけでしょう。あそこから取りのけるか、それともあそこに居座らせるか、存置するか、その片一方に加担をする発言協定の当事者である長官がやるというというのは、これはもう明らかに二枚舌であるし、私は不届きだと思う。そういうやり方が何遍も繰り返されてきたから、これだけ「むつ」問題が紛糾をしてきた歴史があるんじゃないですか。ここではこう約束をしながら、実際にやっておることは違う。「むつ」問題の教訓をあなたはちっとも反省をしてない。しかも、いまになれば青森の情勢が——確かに市長選挙というのは一つの厳粛な事実、しかし四者でしょう。たとえば青森の知事はどういう態度をとっておられるのか、漁協はどういう態度なのか、特に一番住民と最も深い関係にある漁協、漁連について一体今日どういう態度なのかという認識なんですか。そこの認識が非常に間違っているからこういう発言も生まれるんじゃないかと思うのですが、あえてお尋ねをしておきます。
  160. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いま申しましたとおり、青森のむつの市長が母港存置で、それが選挙で決まったから、私もその母港存置をいたしましょうと一言も言っておりません、そういうことは。いわゆる広い意味で、母港ではなくして、そうしたものを含んだ原子力行政というものについて、率直に申しますと、東海の村長さんも推進派が勝ちましたし、人形峠の村長さんも推進派が勝ちましたし、敦賀におきましても、参議院選では推進派が勝った、こういうふうないろんな経緯等々踏まえまして、また、むつにおいても、いわゆる原子力に対して深い理解を持っていただいている方が当選なさったことは、これは率直に申し上げまして、われわれといたしましてもうれしい話だと、ただしかし、なさっても母港をどうするかという問題については四者協定があるんだから、これに関しては、うかつに私がオーケーだと一言も言うておりません。やはりこれに関しましては現在も生きておるし、このことを私は尊重しなければならない立場にいるんだから、あにただ一人の市長が当選されただけで母港問題が解決し、急転回をするわけじゃないと、知事さんの御意向も、漁連の御意向も承らなくちゃならぬ、こういうふうに申しておるわけでございまして、現在、漁連もこの間、報道されておりまするとおり、私がしばしば国会で四者協定は尊重し、またこれは生きておりますと、こういうふうに申しておりまするから、漁連といたしましても四者協定は生きておる、また政府が尊重しておると言っておるから、それをわれわれとしてもそのとおり認めましょうということでございます。また、知事さんも現在としては同様のお考え方ではないだろうか、こういうふうに思っております。私は、市長には非公式でございましたが、お目にかかりました。そして選挙の経緯等々も十分承りました。しかしながら、まだ知事さんだとか、そうした方々にお目にかかっておりません。極力近い機会にお目にかかって、そしていろいろお話を承りたいと存じていますが、私よりも先に、先ほど森下先生なり塩出先生にお答えいたしましたとおりに、党には特別委員会がございますから、党に地元の代議士さんもおるわけですから、そうした方々を通じまして、知事なり漁連がどのようにお考えか、非常にこれは慎重を期さなければならないんじゃないか、それで結構ですからそのようにしてくださいと、こう言っておりますので、決して二枚舌を使った覚えはございませんし、そういう事実もございませんので、その点は御理解賜りたいと存じます。
  161. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう時間がないので、最後の質問ですけれども、ただ、ただいまの御答弁を何ぼ繰り返されましても、私は、本会議で再々にわたって長官が答弁をされておる言い方と、それからさっきの森下委員の質問に対する御説明とも結びつけて考えれば、なおさらこの東京新聞並びに毎日新聞の記事、この点ではどうしても承服することができません。  次回さらに別の角度からいろいろお尋ねをしたいと思いますが、最後にお尋ねをしておきたいと思いますのは、森下さん、塩出さんの質問の中で出ていなかった点で一つだけ聞いておきたいと思いますが、いわゆる欠陥原子炉をつくった企業責任の問題ですね。本会議の答弁では、今後精神的責任は追及をしますというような意味発言があったと思うんですけれども、しかし、これはあの「むつ」の建造契約の第二条だと思いますけれども、今後「信義、誠実の原則にのっとって、この契約の完全かつ円滑な履行を図るものとする。」と、こういう条項が出てくると思うんです。確かに三十六カ月だとか十二カ月だとか、これが経過をすればそれでもうこの契約は果たしたものとみなすというこの契約条件自身、ほかには例を見ないような非常にずさんさの問題があるわけですけれども、しかし、第二条という、いわば契約の冒頭に出てくるここの部分で、完全かつ円滑なる履行を行うんだと、こういう契約を結んでおる状況のもとでああいう欠陥原子炉というのを惹起をしたわけですけれども、この点で、確かに事業団は責任をお感じになって人事一新をされたが、一つは監督官庁の責任はどういうふうに果たされてきたのか、この点。それからもう一つは、今後、いままでやられていないわけですからあれですけれども、これから欠陥原子炉をつくった企業側に対してはどういうふうに責任をとらせるか、精神的責任ということだけでは済まない問題だと思います。その点をひとつ明確に最後にお尋ねしておきたい。
  162. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず、この原子炉の製作に当たりました三菱原子力工業の責任でございますが、これは大山委員会でも指摘されておりますとおり、三菱原子力工業に責任があることは御指摘のとおりでございます。ただ、これは契約によりまして、欠陥の補償責任期限というものは、これは契約更改によりまして延長いたしておりますけれども、昭和四十三年の三月十二日をもって切れておりますので、契約上、同社に補償を求めるということは不可能なわけでございまして、そういう意味で、三菱の責任と申しますのは、言うなれば社会的あるいは道義的責任というふうに言えるものかと存じます。もちろん、御指摘のように、この第二条に「信義、誠実の原則」というのはうたわれておるわけでございまして、これにのっとりまして、三菱原子力工業というものは今後とも事業団に誠実な協力をしていくものと考えておりまして、この協力の具体的な態様につきましては、事業団と原子力工業とが話し合いをしながら進めていくというふうに考えております。  それから政府におきますこの原子力船問題——「むつ」問題についての反省でございますが、私ども主としてこの監督のあり方、規制行政のあり方といったふうなことにつきまして、端的に申し上げれば、昨年は原子力局を二分しまして、安全規制を専門に担当いたします原子力安全局というものを行政上つくりましたし、またその後のいわゆる有沢委員会の結論に従いまして、さらに原子力委員会というものも二分いたしまして、安全規制をダブルチェックいたすことに専念できる安全委員会というものを創設すべく法の改正をお願いする段階でございまして、そういう形におきまして私ども十分に反省の上に今後の改善を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  163. 中村利次

    ○中村利次君 原子力船の問題については、これは「むつ」の放射線漏れを契機として本委員会でもかなり議論を尽くした問題でありますし、まあ、そこら辺からこの事業団法の改正等も絡んできたわけですね。私はきわめて遺憾ながら、においてもあるいは国民世論でも核不拡散という点では一致をするんだけれども、原子力平和利用という点ではどうも一致をしないでいろいろな議論が起きておるんですけれども、これは、私はやっぱり国民の意識、認識が十分でないというのはある意味では当然だと思うんですね、非常にこれは原子力というのはむずかしいですから。しかし、それだけではなくって、行政の側でも私はかなりこれは責任を感ずべきものがあると思うんですね。原子力船「むつ」にしてもそうです。あるいはその修理港にしようとする佐世保あるいは長崎県にしても、修理は受け入れるけれども、佐世保の市議会燃料つきでいいと、長崎県はこれはやっぱり燃料を抜いてこい、理由は何だと言ったら、これはもう繰り返すようですけれども、抜いても抜かなくってもあれは安全上は全く関係ない、燃料棒つきでは安全上問題があるという者はだれもいないのに、長崎県が被爆県であるということで県民感情を配慮した措置としてやっぱり県側は抜いてこいということになった。これは県民感情を配慮したんだとおっしゃるかもしれないけれども、私に言わせると、かえってそのことによって、やっぱり燃料棒を抜いてこないと危険ではないかという印象を——そんなあんた細かいことは県民なんかわかりませんから、むしろ県民感情を配慮したことがかえって原子力に対する正しい認識を誤らせることになりはしないのか、この間も言ったですが。あるいはこの「むつ」の問題についてもそうでしょう。これもおさらいになりますけれども、何回も私は言ってきましたが、もう大分何年もたったことですから、私が記憶違いがあるといけませんから、あれは「むつ」が出力テストをやって、何%の出力で何ミリレムの放射能漏れがあったんでしたか。
  164. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 一・四%の出力上昇試験をいたしまして、〇・二ミリレントゲンの漏洩があったわけでございます。
  165. 中村利次

    ○中村利次君 これは、あのテストは文字どおりテストですよ。それは、たとえば種子島から打ち上げるロケットにしても初めから成功してやしませんよ。いろんな試行錯誤をしながらやっぱり研究開発をして、そして現在曲がりなりにも日本もこの世界の仲間入りをするに至った。あるいは飛行機にしろ、自動車にしろ、新幹線にしろいろんなテストを重ねていま実用化されておる。それから、この事故率にしても、これはまたよけいなあれになりますけれども、原子炉の重大事故というのは、これももう本委員会ではおくびが出るほど議論をしてまいりましたけれども、百万年に一回、一炉について、あるいは一千万年に一回という、そういうのが、たとえてみれば隕石に当たって死ぬぐらいの確率で、日本に百基、二百基ぐらいの原子炉が仮に設置されたとしても、それくらいの確率であるというのが、いま目の先に国民の健康と生命を奪うかのような議論が展開されている。これは、この「むつ」の問題にしても一・四%の出力試験で〇・二ミリレントゲンの放射線漏れがあった。そんなのがまあ人体や健康につめのあかほども影響はないとはいいながらですよ、やっぱり遮蔽物による放射線漏れという事実は、これは言いわけのできないほどお粗末なことでありまして、責任を感ずべきである。これは私はそう前々から言っておる。しかし、そのことに対して責任を感ずべきであるということと、〇・二ミリレントゲンの放射線漏れによって大騒ぎをしなきゃならないかということとは、これはまるで次元の違う問題でして、それをあんた、政府じゃなくて、失礼ながら何にもおわかりにならない自民党の総務会長が現地に飛んで行って、科学的な根拠も何も全くなくって、四者協定によって母港の撤去までお決めになった。それは、出港の際に対する漁連等の何というんですかね、何とも言えないやっぱり憤激もあったでしょう。それで〇・二ミリレントゲンの放射線漏れがあったというんで目の色を変えて、それ見たことか、そういうことになったじゃないか、人体の影響、科学的な根拠も何にもなくって、とにかく出ていけということになった。それに妥協したんですよ、妥協を。政府がやらしたんです、それで。だから、私は何回も言ったが、そういう責任政府が痛感するところから問題はやっぱりスタートをしませんと、安全と開発は並行をしてやりますと言って、国民にとっても安全は保障しますよと言っても、長崎においては県民感情と称するものでそういうへだらなことをやる。あるいは原子力船「むつ」の放射線漏れについては、政府みずからがそういうへだらなことをやって、国民に責任持ちます、あるいは信用してくださいと言ったってこれはどだい無理だということを言ってきたんですが、どうですか、まず、非常に答えにくいかもしれませんがね、ひとつ答えてくださいよ。
  166. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) まあ、本当にずばずばおっしゃっていただきまして、われわれといたしましても深く感銘するところも多いわけでございます。しかし、私はやはり、まあ「むつ」の経緯考えてみますると、確かに千五百ミリレムというのはわれわれが胃のレントゲンを一回受ける数値でございますから、その意味においては何のこともなかったであろうと言われましょうけれども、しかし、やはり遮蔽等々に関しましていろんなミスもあり、またその当時の政府がそれならそれだけの地元に対するPRをしたかと申せば、それもまたやや欠くるところあり等々、いろんなことでわれわれは謙虚に反省をしなくちゃならぬと、そういう立場で今日臨んでおるわけでございます。また、地元との折衝に際しましても四者協定というものがあると、いろいろこれも鈴木総務会長がおやりになったわけでございますが、やはり鈴木総務会長に伺いますと、会長は会長として政府代表として行かれて、そして地元の要請ではなかったんだ、私がそう考えたんだと、こういうふうにおっしゃってそのことを結ばれたわけでございますので、当然政府は継承性がございますから、やはりいろいろそういう経緯はあったにいたしましても、私といたしましては四者協定は今日厳然として存在するんだという立場には何ら変わりはないわけでございますので、したがって、あとは、先生おっしゃるとおりに、政府がもっと原子力行政に関して、言うならば深い自信のもとにもっと積極的に国民にPRをなすべきでないかという、私はその点に関しましては就任以来全力を挙げて、実は機会あるごとに各地、ブロックごとにエネルギー遊説なるものを展開いたしておりまするし、また原子力に関しましても、事実私自身が畑違いの人間でありましたけれども、率直に考えますと、やはり自然科学だけが尊重されて何か人文科学がそうした面においては忘れられたような面が国民との間において大きな隔たりを今日なおかつ来しておるんじゃなかろうかと、こういうふうな反省もいたしておりますので、そうしたもろもろのことをわれわれも考えまして、従来の姿であっては決してだめであると、超然と高いところに座って、国民よついてこいではだめである、われわれみずからむしろ国民の中に入り込んでいくべきであると、こういう思いでやっておりますので、いま率直な御意見伺いまして、私も非常に参考にさしていただいた次第でございます。
  167. 中村利次

    ○中村利次君 これは、長官が当時まあ関係大臣であったわけじゃないんですから、こういうことを質問するのはあるいは酷かもしれません。しかし、やっぱり私は、原子力の安全と開発——安全に開発を進めていくというんだったら、政府が、あるいは地方自治体も含めて、行政がまずはっきりした姿勢を示すということがなければ、何か——国民感情だか県民感情だか、そんなのを正しい認識にしていくのが政府の役割りでしょう。私は、もうそういうものに瞬間的に妥協をして、何かトラブル、紛争を瞬間的におさめることが行政の役割りだとは断じて思いませんよ。ですから、そういう意味では、長官原子力平和利用について積極的な努力をしていらっしゃることは認めます、評価しますよ。ですけれども、やっぱりこの原子力船「むつ」の問題については、経過として政府が、私に言わせると決定的な誤りを犯したという反省を——まあ現職の長官は、それはおれはそんなことを言われたって当時はいなかったんだとおっしゃればそれまでですが、これは継承責任ですから、大いにひとつそういうことを前提として御努力を願いたいと思いますよ。  それからなお、私は、〇・二ミリレントゲンだから全くこういうのは関係ないんだが、だからと言って責任は重大ですぞということをやっぱり言っていますから、これは特にあの出力テストのときに、船に遮蔽物の専門家が乗ってなかったなんというごときは、私はもう本当にお粗末の一語に尽きるのであって、テストの場合にはあらゆる可能性、そういうものを考えて、専門家が乗っておれば、調査委員会によって精密な調査をすることは必要だったでしょうが、もう適確な、機敏な措置もできて——この調査委員会のあんた調査報告が出てからもう二年以上、二年半ぐらいになるんじゃないですか。そして、なおかついまもって、この「むつ」の放射漏れについて、ああであるこうであるという議論が延々として続いている。この佐世保の修理の受け入れについてすら、甲論乙駁が激しかった。だから、この原因だって、私は政府がつくっていると思うんですよ、そういう意味ではね。だから、そういう責任は、これはもう甚大でありますから、そういうのは感じてもらわなきゃ困るんです。  ただ、私が言っているのは、この〇・二ミリであろうと、一ミリであろうと、五ミリであろうと、とにかく私は、これは何もそれくらいはいいんだというわけじゃないけれども、とにかくあれでしょう、たとえば皮膚炎を起こす可能性があると言われておるのは、これは何ですか、単位はミリレムにすると五十万ミリレムぐらいですか、原子力局長か安全局長。——まあ結構です。五十万ミリレントゲンぐらいのはずですよ。それも、皮膚炎にかかるというんじゃないんだ、これは。皮膚炎になる可能性があるのが、単位から言ったらそうなんですから、〇・二だとか、一ミリだとか、五ミリなんてのは、まるでこれは関係ない。もう、インドのケララ地方なんか自然界の中に五百ミリ、千ミリの放射能があるし、ブラジルなんかでは二千ミリ、三千ミリある。そういうのを、国民に何か不安感を与えるようなことで、大変だ、大変だと言って騒ぎ回ることが、私はやっぱりこれは後ろ向き議論だということを言っているんです。だから、放射能が漏れたことは、それがもう〇・〇〇〇幾らであろうとね、この遮蔽物のふぐあいによって漏れたという、設計上、あるいは予算上、何かネグったんだか知りませんけれども、そんな責任というのは甚大ですから、これは調査委員会の調査報告によってもね、かなりの技術水準に達してることは専門家調査結果によって明らかですから、したがって、原子力船を開発していくことが時期尚早とか、あるいは誤りであったという議論は私はこれは通用しないと思う。そういうものに対して通用するようなことをおやりになるから——これはえらいまた繰り返しになるけれども、やっぱりそういう意味責任をお感じを願いたいと思うんです。  そのほか原子力船については、これは衆議院の意思によって、まあ簡単なように見えたってこれは決定的な修正をしてきたわけでありますからね、私は特にそういういろんな議論をしたいきさつから言っても、衆議院の意思によって修正をしてきたという意味から言っても、そのほか特にただしておかなきゃならないことは少ないんですが、同じように、規制法の問題でも、これはまあ片方ぶった切っちゃった、再処理のやつはですね。これは国際的な関連もあるんで、片方をぶった切ってこのことは衆議院としては処理をしたんですがね。だから、再処理の方はこれは衆議院で廃案になっちゃった。で、これに対して長官はどうお考えですか。片方は、再処理工場の問題は国際的な関連はありませんか。これは私は長官アメリカへ乗り込んで行ってね、カーター大統領の核不拡散政策と称するものによって——われわれだって不拡散政策賛成ですから、そういうものによって日本の男処理に対して、これを抑えようとしたものに対して乗り込んで行って、あんた、成果を上げたんでしょう。これを評価するがゆえに、そういう国際的な関連があるのにこれはぶった切られちゃったんだが、それに対して何か御所見ありますか。
  168. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は、衆議院の修正の際に、理事会におきましては、その修正を提案されましたわが党の理事から十二分にいま御指摘の面は説明がなされておると、こういうふうに存ずる次第であります。また、私自身も質疑の中におきまして次のようなことを明らかにいたしました。これは国際的にも関連ございます。  第一点は、今回批准をしようとするNPTに基づく協力協定——保障措置、これを批准することにおいてわが国が国際的な責務を果たすわけですが、そのNPTの第四条に、この加盟国差別待遇しませんよと、こう書いてあるわけですから、したがいまして、そうした精神に照らせば、日本だけに再処理に対してアメリカのオーケーが必要だというふうなことを余りアメリカが強調なさると、これはNPTの精神にも一とりますよと、このこともはっきりアメリカにも主張した次第でございます。そういう関係におきまして、今回の規制法に再処理もひとつ入れたいということで、入れて先国会において提案をしたという、そういうことがあったわけでございます。  第二番目には、先ほどもお答えいたした次第でございますが、結論は、アメリカがこの第二再処理施設のプラン全部に関しまして、ひとつ日本は自粛せよ、いや私たちはそんなわけにまいらぬ、こういう押し問答があったわけですが、そのプランの中におきましても、立法することもまかりならぬと言わんばかりの実はいきさつがあったわけであります。これに対しまして、私は、先ほどもお答えいたしましたように、猛然とその非をなじって内政干渉するのかというところまでやった一幕がございまして、アメリカのデリゲーションが政治家でないためにそういうようなことを安易に考えたのかもしれません。したがいまして、その考え方を是正しておきました。だから、さような意味合いにおいて私は必死になって、この問題に関しましてはサイトをひとつ取得するということ、もちろん、その先には、法案が成立したならば直ちに民間の会社を設立するということ、これはもう当然日本としてやっていかなくちゃならぬのだから、INFCEまではそれくらいのことはやるよ、INFCEという重大な国際的な行事があるから、それをにらみながらわれわれとしてもアメリカ協力をするつもりなんだ、INFCEの結果もわれわれは尊重したいのだからと、こういうことで、言うならば、法案は当然現在出しておる。これは日本の主権として出しておって、国会の御承認を仰いだならばそれだけの手続をしたい。言うならば、これが後二年先におきまして当然一つの対象になる話でございますから、当然それまでに国会の御承認を仰ぎまして、そしてりっぱにこの二年間には民間の会社がサイトを取得した、会社も設立されたという段取りまでは私は進めておきたいものである。言うならば、それが一つの、二年先におきましても八条C項を中心とした日米交渉の切り札であるかもしれない、また切り札にしたい、こういうような気持ちでやっておりますので、今回これが修正されましたことは、私といたしましては非常に残念でございましたが、しかし、やはりNPTの関連法案は、これは国際的な信義でございますから、したがいまして、衆議院において、この問題をもう少しく時間をかして審議をしたいんだと、こういうふうなお気持ちが院にあったものでございますので、院の修正というものに対しましても今日はそれを尊重するという立場にあるわけでございます。
  169. 中村利次

    ○中村利次君 これはもう当然政府としては、国会の修正に対してはそれを尊重するという立場をとるのは当然だと思います。ただ、それに関連して、東海の再処理工場の処理能力は二百十トンですね。そうすると昭和六十年——一九八五年、六千万キロワットから四千九百万、あるいは三千三百万から二千六百万というぐあいにダウンをしてまいりましたが、この間私の質問に対して、何とか三千三百万キロワットは実現をしたいという、かなり強い御希望が政府にあるわけですよ。まあ三千三百万になった場合あるいは二千六百万になった場合どれほどの処理能力を持たなければならぬのか、これは核燃料サイクルの問題については、もうみんながどうなんだ、どうなんだという議論があります。ですから、核燃料サイクルは大丈夫かと言いながら、再処理についてやらなくってもいいんだと言うんではこれは首尾一貫しないわけですけれども、大体どういうことになりますか。
  170. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 再処理の将来の需給バランスでございますが、ただいま御指摘の昭和六十年度三千三百万キロワットという例で申し上げますと、需要の方が累積で申し上げまして三千八百トン所要でございます。これに対しまして供給が三千二百トンでございまして、六十年時点で約六百トン不足しております。これはどういうことかと申しますと、現在の供給の中身と申しますのは、動燃の東海処理施設は年間二百十トンの能力を持っておるわけでございますが、これの供給と、従来ヨーロッパに契約いたしておりますものの処理量が約千八百トンございますが、この双方を合計したものが三千二百トンということでございまして、差し引き六百トン不足になるわけでございます。これが昭和六十五年になりまして大体六千万キロワット程度まで伸びたという時点を想定いたしますと、需要が八千二百トン、供給が四千三百トン、差し引き三千九百トンのマイナスになっております。したがいまして、この不足分を補いますために先般フランスと約千六百トンの再処理契約を結びましたし、また恐らく年明けになると存じますが、イギリスとも同量の再処理契約を結ぼうといたしておるわけでございまして、これで大体昭和六十五年度時点でもまあ若干不足ではございますが、とんとんになるという見通しでございます。しかしながら、私どもはこういう海外委託だけに頼って需給のバランスをとるというのは全く本意ではないわけでございまして、できるだけ自主的な自前の再処理工場、いわゆる第二再処理工場以降のものをつくっていくということを一日も早く促進してまいりたいというふうに考えております。
  171. 中村利次

    ○中村利次君 いまお答えになったとおりですね、これは大変な問題ですよ。この核燃料サイクルの問題にしても、そういう契約は成り立ったとおっしゃっても、たとえば対米、対カナダ、対オーストラリア、こういうやっぱりウランの問題にしても、いろんな国際情勢の変化なりあるいはアメリカやオーストラリアだとかカナダの変化によって変わってくるんですよね、ウランは売らぬなんという話が起きてくるんですから。それは英国にしろ、フランスにしろ、再処理問題はやっぱり見通しとして確保できますと、こうおっしゃっても、そんならたとえば原子力平和利用にしても自主開発をやれという、そういう議論はおかしくなるんです。アメリカに依存してやります、英国に依存してやりますで通るかもしれない。あるいは、資源外交を一生懸命やれと、石油問題等を含めて中東等に対してどういう資源外交をやるんだ、こういうのが国会のかまびすしい議論なんです。ところが、核燃料サイクルについてはいまお答えをいただいたようなまことにお寒い状態であるのに、第二再処理の問題はこれはまあしようがないんだでは、私は、これは政府の姿勢としては、原子力の自主開発だとか資源外交を重要視すべきであるという主張と同じように、やっぱりそれではお粗末じゃないかと思うのですが、まあ国会でぶった切られたから国会の意思を尊重してあきらめなきゃなりませんと、いまの瞬間はそうでしょうが、今後どうなさるんですか。
  172. 山野正登

    政府委員(山野正登君) この第二再処理工場の建設につきましてはどの程度の期間が所要かと申しますと、大体計画に着手しまして十三年ないし十四年というきわめて長期の期間が必要でございます。そういう意味におきましても、私どもは今次国会でぜひこの法案を成立さしていただきたいという強い希望を持っておったわけでございますので、今回、先ほど大臣から御答弁申し上げましたような事情で割愛されましたけれども、そういうリードタイムの長さというものを考えまして、今後におきましても私どもはできるだけ早い機会、できれば次期通常国会にこの再処理民営化法案というものを提案したいというふうに考えております。
  173. 中村利次

    ○中村利次君 エネルギー問題で資源外交をしっかりやれという議論なんていうものは、これは日本にやっぱり石油がないからですよね。ところが、再処理の問題なんかは核燃料サイクルはどうなんだということになれば、日本でもこれはできますよということですから、そいつがやっぱりやらないんだということになっちゃったら、資源外交論を展開するのもおかしな話だし、核燃料サイクルについて議論を闘わすのも無意味になっちゃうんです。ですから、そういう意味では私はやっぱり国会の意向がどうあろうとも、政府としてはぎりぎりの努力をするのがこれは当然だと思いますよ。確かに十三年も十四年もかかる。ところが、いまこの八年ぐらいですんなりいけば運転開始ができる原子力発電所が十年以上たってもあんたどうにもならぬという状態ですからね。特に再処理工場の問題なんかは原子炉の設置以上にこれはいろいろな議論を醸すのは、いまの現状からすると私は想定できる。ということになれば、これはもたもたしていれば十三、四年もかかるんだから、まだのんびりいけばいいというような、そういう姿勢ではとても核燃料サイクルの確保を、ヨーロッパの厄介になる英国だとかフランスとかとの外交交渉と並行をして、みずからの力でそういうものをやはり確立する努力を寸時も怠らないようにしませんと私はえらいことになると思う。それから首尾一貫しない、そういうものが確立されなければ。  そういう意味で、これはいろいろ質疑をすれば切りがありませんけれども、もう大分遅くなりましたから最後に、御答弁次第ではまだ時間はたっぷりありますから続けますがね、やっぱり同じことが言えますのは、エネルギー問題がこれほど深刻になって政府としてはいろいろな閣僚協議会等を設けて対応していらっしゃる。私はいつも看板だけで中身はないじゃないですかと言ってきましたけれども、しかしまあ重要地点として政府が指定をされた。ところが、私の承知するところでは——これは通産省もいていただけばいいんですが、原子力の立地点だってあるわけですから。私がその後承知したところでは、重要地点としてお決めになったけれども、何もおやりになってない。こういう認識しか私はできない。何かおやりになっているんでしたら、大臣でも局長でも、どなたでも結構ですから、こういうことをやった、進めておるのだ、やっぱり重要地点に指定しただけのことはやっておるというお答えが私は本当は聞きたい。いかがでしょう。
  174. 山野正登

    政府委員(山野正登君) この原子力立地の促進につきましては、通産省、私ども関係省庁相協力してやっておるわけでございます。で、これはおのずから省庁間の分担がございまして、科学技術庁といたしましては、できるだけ——新しい、社会的にまだなじんでいない技術でございまする原子力というものを、できるだけ国民の理解と協力を得まして、かつ国民の新技術に対する漠然たる不安を払拭するという方向で鋭意普及啓発活動に努める。これも、従来行っております説明会とか見学会といったふうな月並みなものに加えまして、大臣の発想でお茶の間懇談会といったふうな全く新しいアイデア等も取り入れまして、鋭意普及啓発に努めておるわけでございます。一方、いま先生御指摘の具体的な各立地点につきましての推進と申しますのは、これは通産省がやっておるわけでございますが、私どもも連絡調整機関、事務所等を通じましてこれを鋭意バックアップしておるという状況にございます。それから、具体的な施策面で申し上げますれば、先ほどの普及啓発活動に加えまして、やはり電源立地地点におきます利益の還元と申しますか、受電地域のみが利益をこうむるということでは電源の立地地点の地域住民の方々というのはやはり御不満であろうと存じますので、そういう利益還元という趣旨から、電源三法を現在活用しておるわけですが、この運用を格段に改善するという方向でこの下半期にも改善の努力をいたしましたし、次年度の予算におきましても、この辺、格段の改善を図りたいというふうに考えております。
  175. 中村利次

    ○中村利次君 やっぱり何もおやりになっていないから、お気の毒ですけれどもそういう答弁にならざるを得ないと思うんですが、私が申し上げているのは、とにかくこれはもう前にも申し上げましたからね。六千万キロから三千三百万あるいは二千六百万にダウンをしてきておる。現状のままではそれすら非常にむずかしいんではないかと、これはこの前申し上げた。そこで、エネルギー危機の問題を含めて重要地点というものを決められた、六月ですか、これは。だったら、これは政府責任においてエネルギー危機に対応するためには、重要地点を決めて対処をしなきゃならぬ、動かしていかにゃならぬ、間に合わないんだ、こういうことですから、何もおやりになってない、ただPR活動をやっておる、そんなの間に合いませんよ。重要地点として指定をした意味なんというのは全くない。ですから、先ほども申し上げたように、通産省がいらっしゃらないと、科技庁だけにこういうことを申し上げるのはあるいは何か酷かもしれませんが、やっぱり何か重要地点らしいそういう具体的なことをやられなければ、重要地点の指定というものは無意味になります。よろしいですね。大臣よろしいですね。ですからこれは、私は、何もおやりになってないわけですからこれから要望しますよ。通産省ともよく連携をとりながら具体的にひとつ進めてくださいよ。  以上、終わります。
  176. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 私も、両法案について幾つか質問を用意してまいりましたけれども、もうすでに皆さんからいろいろと御質問があり、御答弁もいただきました。また、いま中村委員からも大所高所論も出てしまいまして、大体聞くことがなくなってしまう感じなんですけれども、幾つか私もお尋ねをしたいと思います。事前に申し上げていなかったことも入っているかもしれませんが、その当座の御判断でお答えいただければ結構です。  先ほどから、原子力船「むつ」については、放射能漏れを起こした場合の政府の対応策ということが問題になっております。私も中村委員と同じように、あの「むつ」での解決の方法というのは決して適切ではなかったと考えている一人です。たとえを申し上げてしまいますと、これは後でおしかりを受けるかもしれませんので、不適切であれば訂正をいたしますが、いわば海上に出てしまった原子力船が帰ってきてはいかぬというのがむつの現地の皆さんの御主張でございます。しかし、船の中には多くの船員の方も乗っていらっしゃる。女子船員もいたはずでございます。そうした人たちが何日も帰れない状態になる。これはいわば日本航空の飛行機がハイジャックをされたような、着陸不可能になったような状態の中で問題の解決を迫られるということでございますから、まあ政府の解決の仕方がまずかったというのを責めると同時に、やはり現地の皆さんの手法といいますか、それについても私は適切ではなかったという気がしてならないわけでございます。いろいろと原子力については問題がありますけれども、安全に問題があればあるほどやはりその議論は冷静でなければいけない。この大山委員会なり報告書を見てみますと大変しっかりした議論がされ、そして放射線漏れに伴う問題、これ自身は小さな問題であっても、それを引き起こした組織上の問題その他が非常にクリアに分析をされている。国会も本来は大山委員会レベルの議論が行われなければいけないんじゃないだろうか。当時放射能漏れが起こったときに国会での議論が漁民の議論と同じレベルでかなりエキサイトした議論になっていたんじゃないだろうか。私はそのころ後ろの方の政府委員席で聞いておりましたけれども、それが率直な感想でございました。それでは科学技術振興、振興でございますが、科学技術を振興する国会として必ずしも十分責任を果たしていない、その意味で私たちはもっと冷静な議論をしなければいけないんじゃないだろうかというふうに考えているわけでございます。  そこで、むつでいろいろな、この四者協定が先ほど話題になっておりますが、私も見てみましたら、ホタテガイの補償だとか、やれ漁港の整備だとかということで十数億円の金が使われております。これは一体どこから支出をされているのか。原子力船事業団の研究開発費として、必要経費として支出をされているんでしょうか、それともどこかわからないところから、予備費とか農林対策費から出されているんでしょうか。
  177. 山野正登

    政府委員(山野正登君) この十三億円の対策費の予算上の出所でございますが、体育館の建設への補助と有線放送施設への補助、これは事業団が予算を組んで、事業団から出ております。しかしながら、それ以外の漁業対策費、地元対策費は、これは科学技術庁が一般会計予算で取りまして、これを農林省に移管して、農林省が予算を執行したという実情ではなかったかと存じます。
  178. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 私は、これはやはり研究開発のためのコストとしてコスト化をしなければいけないんじゃないだろうか。まあ予算をどこから出すかという問題は技術論でございますが、やはりわが国原子力開発のために支出した費用である、そういうふうに考えますと、決して安易に支出をされていい金額ではなかったというふうに思うわけでございます。すでに二百億円、何百億円の金が、税金が使われているわけですから、その使い道についてはもっと厳しく監視をするというのが私ども国会の役割りではないだろうか。もっと出せ出せということでは済まない問題だという気がしてなりません。そういう意味で、むつの市長選挙の後、もう一度むつが定係港になる可能性がある、もしくはそうした問題が検討されるように伝えられておりますが、私はむしろ四者協定科学技術庁長官にぜひ守っていただきたい。撤去をすると決めた以上断固撤去をするという姿勢でいただかなければいけないんじゃないだろうか。むしろ先ほど佐藤委員がおっしゃったのと逆の理由で妥協的になってはいけないような気がいたしますけれども、そこはいかがでございましょうか。
  179. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど来お答えいたしておりますが、私としては四者協定を現在尊重し、また、それは厳然として存在するという認識を抱いております。ただ、その当時四者協定の当事者でなかった方が市長になられた。しかも、四者協定の中にある母港問題に関しましては存続だということを公約として掲げられて、それを市民の方々が支援されたというのも、これもまた厳然たる事実でございますから、したがいまして、民意尊重ということになれば、その民意が果たして漁連の方に御理解賜るのか、あるいはまた知事さんがそれを了解されて、そして四者協定に対してどういうような御感想を抱かれるのか、これまた私は別な問題だと思います。したがいまして、私としては四者協定そのものも尊重いたしたい、こう思っておりますが、やはり住民との問題もございますから、そうした面におきましては、地元の国会議員さんの御意見も聞きながら、他の三者がどういうふうな意見の一致を見られるか、これを私としても黙ってながめていなくちゃならない、こういうことは先ほどお答えしたとおりでございますので、慎重に事を運んでいきたいと、こういうふうに存じております。
  180. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 もしも住民の意向がもう一度存置ということに傾いてきた場合、これは結局原子力船「むつ」について言われたほどの危険がなかったんだということを多くの地元の方が認識をされる結果だろうと思います。その場合にはここで支出された資金は当然お返しをいただきたい、こういうことを科学技術庁長官としてはおっしゃるわけでございますか。そうでなければ、「むつ」だけは戻ってきていい、支出したものはいただきっ放し、これではやはり、私どもの税金を使っているわけですから、正しい処理の仕方とは思えませんが、その場合にはむしろ四者協定のこの部分は破棄をするといいますか、改定をして、実施した事業の資金を地元から取り立てるというふうなお考えでなければ筋が通らないと思いますが、いかがなものでしょうか。
  181. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私の理解では、四者協定に基づいてそうしたものがすでに支出されたということでございますから、したがいまして四者協定を忠実に実行するならば、それはそれで終わりであったということであります。
  182. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 ですから、四者協定の中の一番大事な部分である定係港の撤去というものが行われずに済んだ場合、ほかのものだけ実行されるわけでございますか。
  183. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在の私といたしましては、これはまあ住民の感情もいろいろあり、選挙でたとえ河野さんがお勝ちになられましても、やはり敗者の方もおられるわけでありまして、この方々は「むつ」の存在に対し、あるいはまた母港に対しまして言うならば反対の立場の方が多い、こういうことを考えますと、ここで単に選挙結果だけに基づいて「むつ」の母港がこうなった場合という、たとえそれが仮定の問題でございましてもお答えすることはいささか合理性を欠くんじゃないだろうか、こういうふうに存じます。
  184. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 まあお答えいただけない、また答えにくいということはよく理解できますので、その問題については長官に伺うことはやめますけれども、つまりそこにやはり一つの甘えの論理があるのじゃないだろうか、それが日本の科学技術の開発なり振興なりにとっていろんな形で足かせになってくる。まあお金で解決できる問題なら金で片づけてしまった方がいいということが、いろんな問題の解決のときの常套手段になってきている。ハイジャックの対策にまでそれが適用されているということにはやっぱり納得できないと考えている国民がだんだんふえているという事実を御認識をいただきたい。ですから、技術開発のためなら少しぐらい無理を聞いてもというような姿勢ではなくて、やっぱり筋道の通った金なら出す、そうでないものは妥協はできないという姿勢を貫いていきませんと、これからの原子力の開発の問題その他エネルギーの問題、いろいろと壁に突き当たってしまうのじゃないだろうかという気がしてならないわけでございます。  それから、この法案が五十一年に提出されましてから廃案になったりして、すでに二年間を空費しているわけでございますが、これは参議院の責任ではない、衆議院でずっととまっていたわけですけれども、この法案がいままで参議院へ回ってこなかった一つの理由は、やはり放射線漏れの問題に対する国会としてのアレルギーもあったんじゃないだろうか。そういう意味ではやはり冷静さを必ずしも十分持っていたと言えないように思うわけですが、これが延びることによっていろいろな意味でこの原子力船の開発が遅延をしてきたという事実があるように思いますが、どうでしょう。
  185. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 日本原子力船開発事業団法の改正法案が不成立な状況というのがかなり長い間続いたわけでございますが、その間、私どもといたしまして最も困りましたのは、事業団の職員の士気が上がらないという点でございます。これはやはり法律的にこの事業団というものの存続というものが確認されていない段階におきまして、事業団職員として士気阻喪するのはある程度やむを得ないということかもしれませんが、これによりまして「むつ」の開発が遅延したとは思っておりませんけれども、しかし、これは非常に大きな問題であったと存じます。  それから二つ目には、これも国会で存続されるかどうか、御意思を決定されますまでの間は、私ども技術部の要員の増員を図りたいと考えておったわけでございますが、これもいまのところ国会の御意思を決定されるまでは自粛をいたしておるわけでございまして、この面では明らかに仕事がおくれております。  それからいま一つ、先ほど来問題になっております地元の理解と協力をいただきますに際しましても、事業団の法的な性格があいまいなままではなかなかこの理解を得にくいという実情もありますので、これも大きなマイナスの一つかと存じております。
  186. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 そのほかに原子力船懇談会の報告——原子力委員会の原子力船懇談会でございますが、その中で、今後の原子力船の開発に当たって幾つかのことをやらなければいけないという提示がございます。遮蔽の改修とか総点検、出力上昇試験、この辺についてもいろいろと障害が出てきているんじゃないかというふうに思いますと、いろいろな意味で私どものやはり税金を注ぎ込んでスタートさせたこの原子力船開発の事業というものが、法案の成立の遅延によっていろいろと障害が出てきていると。国会は少しでも法案の成立を延ばせばそれで点数が上がったというふうに考えられがち——一般論といいますか——でございますけれども、そうではなくて、やはり必要なものは早く上げていくというのが税金の節約のため、もしくは私どもの税金の有効利用のために必要だということもやはりこれから私たちの役割りとして考えていかなきゃいけないんじゃないだろうかというふうに思っておりますので、つけ加えたわけでございますが、今度この修正案で法案が成立をいたしましたときには、それに伴って原子力船の開発事業計画もお変えになるわけでございますか。
  187. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 今後名目五年、実質三年間の延長法案が成立しました暁には、まず一つ国会の御意思を尊重しまして研究開発機関に衣がえをいたしますための準備というものを鋭意進めます。それから事業団といたしましては、これはその三年間の延長というのは事業団を廃止してしまうというわけではございませんで、あくまでも新機関への衣がえでございますので、従来続けておりました「むつ」の開発業務というものは三年間といえども休止することなく続けていくというふうに考えております。
  188. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 そうしますと、いままで事業団法の改正のたびに修正をされてきた計画では、事業団法の終期には全部の計画が終わって取りまとめをするという形になっておりますですね。昭和四十六年の改正、それから前回廃案になった法案についての改正案、今回もそうですが、六十一年には実験航海を終わって取りまとめをして完成をする。今度はそうした意味では実質三年では終わらないということになりますと、この計画と事業団法、その後研究機関に改組されるんだということでございますが、それは明文上は何も出ていない、そうすると、やはりいま明文上出ているのは五年間の延長ということだけだ、この五年間の中で原子力船を中途半端なところでほうり出すという形になってしまうわけですが、その点についてはどうも整合性を欠く計画になりそうだと思うんですが、いかがでしょうか。
  189. 山野正登

    政府委員(山野正登君) これまで貴重な国民の税金を使って開発してまいりました船でございますので、今後三年間所要の改修業務等行うわけでございますが、これが済みましたら後もし仮に事業団というものがなくなるにいたしましても、これまでの開発の成果というものは必ずやしかるべき機関に引き継がれて、この開発というものは続けられていくというふうに考えております。それが、従来の投入した開発資金を活用する道でもあると考えておるわけでございますが、幸いにしまして国会におかれまして現在の形の事業団の後の形として研究開発機関に衣がえするというはっきりした方向が示されておるわけでございますので、私どもは安心してこの三年間の事業というものを継続してまいれるというふうに考えております。
  190. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それでは確認ですが、その場合のやはり完成の時期は六十一年、原子力船としての実験航海を一応終えて完成の時期は六十一年という形で計画の改定をされる予定でございますか。
  191. 山野正登

    政府委員(山野正登君) これは今後新しい機関の性格、機関における研究と開発の……
  192. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 いや、今度法案が通った後の段階でです。
  193. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 法案が通りました後、私どもは早速新しい研究開発機関に移行する準備にかかるわけですが、その新しい機関の研究と開発のウエート等によりまして、再度この「むつ」自体の開発計画というものを見直すことになろうかと存じますけれども、大筋としては、従来私どもの考えておりました線に従って今後も開発は進められる、つまり御指摘のように、大体六十年代の初めごろには成果の確認を終わるといったふうな線ではないかと考えております。
  194. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それでは、そうした形でできるだけ早い機会に完成までの計画を見直し、そしてそれに対応した事業団になるか、研究機関になるか、そうした受け入れ体制といいますか、実施体制の整備を一日も早く確立されることを私どもも期待します。いまのままですと、三年後には、事業団法は廃止した、しかしそこでは何もでき上がらないという整合性のない形になってしまいますので、その後の存続についてこれからまあ三年間の猶予期間みたいなものがあるわけですけれども、できるだけ早くやはりその後の体制の確保を科学技術庁なり事業団として打ち立てられて、働いている人たち研究に従事している人たちにその後の不安を起させないように全力を発揮していただくということが大事ではないかという気がいたしますので、それをお願いを申し上げておきます。  それから、原子炉規制法の方ですが、修正——残った分については技術的な問題が多うございますので質問は差し控えますが、先ほど中村委員もおっしゃったように、切り離しをされた再処理の問題は私も大変重要な問題だという気がいたします。民間で再処理、国内でできないという場合には、当面の計画として、先ほど局長はすぐにでも法案を提出するというふうにおっしゃいましたが、それでも半年、一年のおくれが出るわけでございますが、海外へ委託をするというような必要性が起こってくることになるんでしょうか。
  195. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 今後の再処理の需給でございますが、私ども、ただいま東海再処理工場でようやく試運転に入ったわけでございますが、これに引き続きまして、できるだけ早い機会に民営による第二再処理工場というものを運転開始に持っていきたいと思っております。で、それまでの間、東海実験工場だけではとても需要量を賄い切れませんので、その間は海外に委託いたしまして、この再処理を消化するという以外に手はないわけでございますが、その間の需給関係を申し上げますと、昭和六十年度におきまして原子力発電規模三千三百万キロワットと仮定いたしましたときに、再処理需要としましては累積で三千八百トン必要でございます。これに対しまして供給面では、ただいまの東海実験工場の供給するものに加えまして、すでにヨーロッパに委託しておりますものを含めまして三千二百トンの供給ができます。したがいまして、差し引き六百トンの不足ということに相なります。このものは、実は九月でございましたか、フランスと新しい再処理契約を結びましたし、また、恐らく来年の当初になろうと存じますが、イギリスとも約千六百トンの再処理契約を結ぶ予定にいたしておりますので、この新しい新規契約によって不足分をカバーしてまいるといったふうなことになろうかと存じます。
  196. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ほかに御発言もなければ、両案についての本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後六時二十二分散会      —————・—————