○
武藤(山)
委員 私は、先ほど申し上げましたのは、いまは熱冷ましだ、そして円対策を緊急にやるというミクロの問題と、今後
——総理はいま、やがて
国際収支は楽観できる状態ではなくなる、この楽観できるか楽観できないかという基準がまた問題なんですよ。
国際収支というのは
黒字であればいいというだけでは国際協調、連帯と協調にならない。内外均衡が維持されたときに国際的な信用といまのアンバランスが解消するわけですからね。だから、とんとんでいいんです。
経常収支とんとんというところに常に持っていくということがいいことなのであって、とんとんにいくためには
——来年一年たってもとんとんにいきませんよ。もうすでに
日本の銀行や研究機関では、来年の
経常収支もこのままいったら八十億ドルになるだろうと言っておるのです。そしてことしは七十五億ドルの
経常収支に改定をしたけれど、恐らくことしもこの七十五億ドルじゃきかぬね。大体私の
感じでは、
経常収支八十億ドルから九十億ドルにいく。ひょっとすると百億ドルになりますよ、
日本のいまの
経常収支。
〔
委員長退席、細田
委員長代理着席〕
そうすると来年も、いま各
大臣にずっと
輸入品目を言ってもらったけれ
ども、日銀統計からいろいろ
品目別、地域別の貿易の
金額をずっと一わたり当たってみても、どれが
輸入ががくっとふえるかというものがなかなかない。そうすると来年の
経常収支もまた八十億ドルぐらいになる可能性がある。だとすると円に対する風圧はまた起こってくる。円はどこまで上がるか、まだこれ、大問題が残るね。私は、円がどの辺まで風圧で上げられるかということについて、後でまたその問題は専門にひとつ質問をしてみたいのでありますが、
考えられるいろいろな中長期的対策は、
輸入を増加させる、あるいは輸出の自粛をいかにうまく誘導するか。
総理はこの前、秩序ある輸出と言った。しかし、秩序ある輸出と、言葉は非常に体裁はいいが、実現しないから世界じゅうが信用しない。秩序ある輸出が実現しないのです。だから風圧がかかる。たとえば、秩序ある貿易をやるというのなら、あなたが
総理大臣になってからでも、たとえばヨーロッパの
関係だけ見ても、ことしの七月、ヨーロッパヘの輸出は月に十五億九千七百万ドル、それに対して
輸入は六億二千万ドル、輸出の半分。六月も、ヨーロッパに十二億七千六百万ドル輸出に対して、
輸入は六億一千二百万ドル。そういう比率
関係が、ヨーロッパはこの三月からずうっと同じような趨勢をたどっている。また、
アメリカとの
関係を見ても、
アメリカとの八月の輸出
輸入の
関係は、輸出が十六億五千百万ドル、
輸入は九億六千二百万ドル。ここだけでもう一カ月で七億ドルも
日本の方が黒なんですよ。その前の月を見ても、十七億六千二百万ドルの輸出に対して十億二千九百万ドルの
輸入、これも七億ドルの差がある、
アメリカと
日本の
関係だけで。ヨーロッパとの
関係も、さっき申し上げたように一カ月で九億ドルも差がある。その趨勢は三月からずっと変わっていないのですよ。これだからヨーロッパと
アメリカから
日本だけが孤立をさせられる。いま
日本は世界の孤児になってしまっている。円をめぐって世界の孤児だ。ドルに責任をかぶせようとして何とか協議をしようとしても、だれも
日本との共同歩調をとって
協力してくれる国はない。そういう状態にいま
日本は孤立化しちゃった。この責任は大きいですね。
福田内閣が誕生して今月で約一年になる。会社ならここで貸借対照表と損益計算書を出さなくてはならない。
福田内閣のこの一カ年間の損益計算書、貸借対照表をながめると、大変いびつであります。健全な決算と言えない。何をやったのか、国民のためにどんな安心されるいい経済政策を実行したのか。外交的にも、
福田内閣はこの一年間に日中平和友好条約も決断つかない。内外ともにこの一年間の貸借対照表は余り好ましい状況でないような気がするのですね。この前の二月の
予算委員会のときはまだ
福田内閣はできたばかりです。野球で言うならば二回の表ぐらいです。いま
福田内閣の評価をすることは酷である、だから差し控えましょう、そういうことで私は深く追及しなかった。しかし、いよいよ一年たつのですからね、
総理。この一年間に国民の前に示す貸借対照表はもうちょっとすかっとしたものにしないと、
福田内閣は最終的には野たれ死に。来年もまた
経常収支がかなり
黒字で、世界的な反撃を食って袋小路に追い込まれて、あれやあれやと言っている間に、なす手がなく
福田内閣が混迷をする時代が来ると私は思う。いまその熱冷ましを適切に行い、中期的な、根本的な治療策を提言しないと、そういう結果になるのではないか。したがって、
輸入の増加をどう図るか、輸出の自粛をどうするか。資本主義経済で輸出の自粛、秩序ある輸出というのは一体どうしたらできるのか。いま申し上げた日銀統計によると、さっぱり秩序ある貿易になっていない。これを一体どうするのか。関税率の引き下げも、東京ラウンド前に
総理は踏み切るというようなことが
新聞にちらっと出ていた。しかし、またそんなこと言った覚えはないと逃げるかもしれない。そういうものをいつ決断するのか、そういう問題もかかって大きな重大課題だと私は思うのであります。
さらに、
日本の国内需要
拡大をする、そして内外均衡を維持する。しからば、国内需要の
拡大策、名案があるのか。個人消費の
拡大、
民間設備投資、財政支出、どれこれをとってみてもみんな大きな制約と壁がある。三〇%の国債
発行歯どめも、この
段階になると、これをこのまま置いたら内需
拡大の財政政策はとれない。しかし、それをとっ外すことは、国債
発行を四十一年に踏み切った当時の蔵相
福田赳夫さんとしては、この歯どめを取っ払ってと
めどもない
日本の赤字財政の道は後世に大変禍根を残して名を汚すので、これもできない。だとしたら、内需
拡大は一体いかなる手法で何を具体的にやるのか、まさに頭が痛くなるようなむずかしい問題であります。私にも名案はありません。もし私にその名案を聞かせよと言っても、私は個人消費をふやす
方法は、減税か、あるいは各企業の社長が
福田さんに同情して、この十二月の年末賞与を思い切って去年より二、三〇%よけいくれれば個人消費はふえる。しかし、企業家はそんな状態でないと反論するかもしれない。もう
一つの手は、幸い
日本の貯蓄性向は世界一だ。二四%という貯蓄性向がある。これは世界の倍の高い貯蓄水準であります。この貯蓄を、国民に、半分やめてくれ、半分減らしてもっと需要に回す
方法はないか、そういうことを訴えるか。個人消費の
拡大、内需の
拡大と一言に簡単に言うけれ
ども、その具体的中身はわれわれの知恵をしぼった限りその
程度のことしかなかなか見当たらない。恐らく
福田さんの脳みその中もその
程度じゃないかと思うのであります。こういうもろもろのことを
考え、さらに
アメリカの
国際収支改善を求める、節度あるドルの信認を守れるような
アメリカの経済財政政策を強く求める、これもなかなか国際
関係でむずかしい。年間四百億ドルないし四百五十億ドルのOPECの
黒字が世界不均等発展の最大の要因であるから、これと話し合いをつけることも長期的には重要でありますが、なかなか困難である。
アメリカとヨーロッパと
日本だけの個々の国々の
関係で
黒字だ赤字だではんかしていたのでは際限がない、貿易構造を変えろという議論になる。どう変えるか、大変むずかしい。むずかしいけれ
ども、もっとわれわれは探求する問題があると思う。
たとえば中国との貿易も、早く平和条約を結んで、中国が売ってもいいという
原油を買って、中国と
日本の間では
日本が赤字になる、しかし
日本と
アメリカの間では
日本が
黒字になる、
アメリカの赤字は中国との
関係で消してもらう、そういう三国間なり四国間の全体を見て貿易じりというものを論じてもらわない限り、
日本のような構造の国家は私は世界の中で協調していけない体質になってしまうと思うのであります。いま私が申し上げた幾つかの中期長期的な政策を具体的に取り組む以外に、私は、
日本が世界に向かって
日本の経済は真剣に連帯と協調のための世界づくりに
協力をしているということは言えないと思う。
総理はそれらの問題について、少々今度は中期的な論点で
日本の
円高問題をどのように対処するか。私はいま幾つか提言を交えて意見を述べました。
総理の見解をお聞かせいただきたいと思います。