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1977-10-06 第82回国会 衆議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月六日(木曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和五十二年十月六日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑  裁判官訴追委員辞職の件  裁判官訴追委員選挙     午後一時三分開議
  2. 保利茂

    議長保利茂君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 保利茂

    議長保利茂君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。高沢寅男君。     〔高沢寅男君登壇〕
  4. 高沢寅男

    高沢寅男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、福田総理所信表明演説に対して質問し、総理所信国民の前に明らかにされることを求めるものであります。  質問に入るに先立ちまして、私は、この壇上をおかりして、最近の横浜市における米軍機墜落によって犠牲となられた方々に対し、また、クアラルンプールにおける日航機墜落によって亡くなられた方々に対して、謹んで心からの哀悼の意を表明する次第であります。(拍手)あわせて、日航機ハイジャック事件で人質となられた方々の筆舌に尽くしがたい御心痛に対してお見舞いを申し上げるとともに、全員無事に解放されたことを心よりお喜び申し上げる次第であります。  私は、政府ハイジャック事件に対し、人命尊重を旨として慎重に対処された立場を理解しつつ、しかし、今回の苦い経験を厳しく再検討されて、今後再びこのような犯罪を起こさせないために、国内的にも国際的にも格段の対策をとられることを御要望申し上げる次第であります。  さて、福田総理、昨年年末にあなたを首班とする福田内閣が発足してから九カ月になります。あなたは、日本丸の船長として、わが国経済危機を乗り切ってみせるという強い意気込みで総理に就任されましたが、現在の日本経済はいかがでしょうか。依然として構造不況の暗いトンネルの中にあります。あなたは、この不況を、もっぱらオイルショックの結果とお考えのようでありますが、それは、本当はスタグフレーションという現代の資本主義の重い病気から来ているものであります。あなた方自民党は、口を開けば自由主義経済と言われますが、もし本当に自由主義であるならば、現在の過剰生産不況の中で物価は大幅に下がるべきはずであります。ところが、不況であっても物価は下がらない。下がらないどころか、大幅に上昇していく。これがスタグフレーションであります。あなたがどんなに公共事業費をふやしても、また三回にわたって日銀公定歩合引き下げをしても、こうしたいままでの型にはまったやり方では少しも景気が回復しないのは、このためであります。  最近のわが国経済を見ると、一方では鉄鋼、自動車、電機などの国際競争力の非常に強い産業が、国の経済先頭に立って物すごい勢いで輸出を伸ばしています。これらの産業は、今後ますますその強さを増していくのではないでしょうか。その結果は、日本に対する円の切り上げを求める国際的な圧力が強まる一方であります。  しかし、わが国経済には、国際競争に太刀打ちできない、非常に立ちおくれた膨大な産業分野があります。この分野にこそ、ほとんどの中小企業が集中し、そしてまた、ほとんどの国民生活がかけられているのであります。もし万一、一ドル二百五十円あるいは二百四十円の時代が訪れ、この為替レート合理化のローラーがかけられたとするならば、日本経済はどうなるでしょうか。まさに死屍累々たる倒産、破産のあらしに見舞われることを私は憂えるものであります。  福田総理スタグフレーションという観点から見ても、また、日本経済の二重構造矛盾に対処するという観点から見ても、もはやいままでの経済政策の通用できる時代は終わったのであります。あなたは、経済政策発想を大きく転換されるべきであります。  財政金融政策を総動員して、まず大企業経済活動を高め、それからその波及効果国民経済の各部門へ及ぼしていくという、いままでの上から下へのやり方ではだめであります。これを逆転させて、まず社会保障の水準を高め、中小企業農林漁業の立ちおくれを思い切って立て直し、一般庶民経済力、特に消費購買力を下から上へ向けてつくり出していくことが必要であります。  私は、まず冒頭に、以上に申し上げたような経済政策発想の大転換をおやりになるのかどうか、この根本問題について、総理所信お尋ねをいたします。  あわせて、本年度の六・七%経済成長は国際的にも総理の公約となっていますが、これが果たして達成できるのかどうか、総理所信お尋ねいたします。  さらにまた、一部の伝えるところによれば、あなたは年内にも訪米してカーター大統領と会談し、ロンドン首脳会議の結果を見直しされるお考えだということでありますが、本当に訪米されるのかどうか、総理の御予定をお尋ねをいたします。  次に私は、雇用問題についてお尋ねいたしますが、この問題についても、日本経済の循環の型が大きく変わったことをまず指摘しなければなりません。  いままでの日本経済は、まず輸出の伸びが引き金となり、そして在庫の調整が進み、続いて設備投資が活発になり、こうして好景気が訪れたのであります。雇用の動きを見ても、不況のときは雇用が縮小し、好景気になると雇用が拡大いたしました。景気動向雇用動向は同じ曲線を描いていたのであります。  ところが、減速経済時代を迎えた今日、過剰な設備と過剰な在庫の圧迫のために、あれほど国際的非難を浴びて輸出を伸ばしながら、いまだに民間設備投資は動かず、構造不況トンネルは出口も見えません。雇用動向もまた、不況によって縮小した雇用は、景気が回復してもなおかつ雇用縮小傾向が続くという時代になりました。政府の統計で現在百万人を超えている完全失業者は、今後もなおふえ続けていくものと憂慮せざるを得ません。  これに拍車をかけるように、最近は銀行が企業融資をする場合、人員の削減を融資の条件とする傾向が目立っております。企業の側でも、景気の回復に伴う生産増加を、雇用増加ではなく残業の増加で対応しようとする傾向が目立っています。  こうした状況から見るならば、いままでの政府雇用政策土台にあった、経済成長すれば完全雇用ができるという考えは、その基礎が崩れたと言わざるを得ないのであります。  今後の失業対策は、単に手当をふやすという政策だけでは対応できません。仕事そのものをつくり出す政策が必要であり、それは第一義的に政府責任であります。  私は、この雇用政策大前提をまず総理が確認されて、雇用機会をつくり出すプランを政府責任で作成されることを求めるものであります。  わが党は、今国会に当面の雇用対策に関する雇用対策臨時措置法案を提出いたしますが、構造不況産業離職者中心に、雇用保険給付率の引き上げ、給付期間延長、また雇用基本法制定による解雇の制限、定年の延長労働時間短縮などの措置をとられるよう総理に要望する次第であります。  福田総理、いま国民が大きな不安を感じているのは、恐るべき大増税の時代がやってくるのではないかという心配であります。税制調査会は、中期税制中心の柱に一般消費税新設を答申いたしました。一般会計予算の三〇%を占める公債依存から脱却するには、国の税収をふやさなければならないことは自明の理であります。問題は、だれに対して、どこに対して増税するかということであります。これ以上一般国民勤労庶民に対して税負担を重くすることは許されません。したがいまして、一般国民税負担を重くし、しかも低所得者ほど高負担になるという逆累進性を持ち、また、物価の騰貴を招くところの一般消費税新設には、私は絶対に反対であります。  政府日銀は、今次の不況対策の一環として、三回にわたって公定歩合引き下げ、これに連動して、貸出金利預貯金金利引き下げも進めました。この措置によって、企業が借入金の金利負担の軽減で得をする分が約一兆二千億円、それに対し、一般庶民預貯金金利の減少で損をする分が二兆円以上と言われております。福田総理、あなたはこの不公平を何とごらんになりますか。同じ政府政策によって、一方には得をするものがあり、他方には損をするものがあるとすれば、得をするものにこそ税をかけるべきではないでしょうか。しかも、これらの企業租税特別措置によって、いままでにも莫大な減税、免税の恩恵をこうむってきたのであります。さらに、海外に設立したぺ−パーカンパニーを利用して何百億円の脱税をしているのもこれらの企業であります。  福田総理、アダム・スミスの昔から、租税基本原理負担公平の原則であります。あなたは、大企業優遇租税特別措置整理法人税への累進制導入を断行すべきであります。大企業投機的に抱えている莫大な土地資産への増価税を断行すべきであります。利子配当所得総合課税にするとともに、年収一千万円以上の高額所得者に対する所得税付加税を断行すべきであり、さらには、社会保険診療報酬の体系の抜本改正と見合って、医師優遇税制を廃止すべきであります。そして中小企業庶民を泣かせる一般消費税は断じてやるべきではありません。こうした税制改正基本方向について、総理所信お尋ねいたします。  経済高度成長時代には、成長に伴う矛盾しわ寄せを受け、不況になればなったで、いまや構造不況しわ寄せをまともに受けて、絶体絶命の立場に置かれているのが中小企業であります。日本経済における中小企業重要性を認めるならば、今後のわが国産業構造の中に中小企業の存立と発展の分野をはっきりと確立しなければなりません。その上に立って中小企業近代化共同化を進め、また親企業に対する下請業者立場を強める団結強化法律制度も確立すべきであります。国民の税金によって行われている官公庁の仕事については、官公需の五〇%までは中小企業に確保すべきであります。当面、緊急に求められているものとしては、中小企業倒産防止基金制度を思い切って推進し、あわせて、すでに目の前に迫った年末の金融対策についても機敏な措置をとるべきであり、これらについて総理所信お尋ねする次第であります。  わが国産業構造の中で、最も根本的な再建策を求められているのは農業であります。カロリー換算で現在わずかに四〇%に落ち込んだ食糧自給率を、五年ないし十年の間に少なくも七〇%まで回復させること、このためには、日本農業の最も得意の分野である稲作農業をみずから切り捨てるような愚かな政策はやめるべきであります。そして既耕地裏作利用二百万ヘクタールを含む農業基盤整備を進め、畜産振興土台である飼料の自給体制を確立すべきであります。総理所信はいかがでしょうか。  また、生鮮食料品対策でありますが、生産者である農漁民人たちにとっても、消費者にとっても、需給の変動によって、絶えず、しかも極端に価格が変動し、そこに不当な投機業者のつけ入るすきを与えています。特に許しがたいのは、せっかくの冷凍冷蔵施設が大商社や投機業者の買い占め、投機の手段に利用されていることであります。私は、生鮮食品安定供給流通機構整備総理の格別なる御努力を要望するものであります。  一生涯をまじめに働き通し、子供たち社会へ送り出した後のお年寄りにとって、年金こそ命の綱であります。食える年金、暮らせる年金という言葉を文字どおり実現するために、政府は蛮勇をふるって被用者年金の一元化を図り、また、全産業平均賃金を基準として、老齢福祉年金は三〇%に、拠出制国民年金は四〇%に、共済、厚生年金最低保障額は四五%となるようにすべきであります。  なお、本年度の一兆円減税の際、福祉年金受給者だけは他に比べて政策恩恵を受けることが薄かったのでありますが、この落ち込み対策として、明年一月から三月まで福祉年金に三千円の上積みを行うべきであります。  お年寄りに対する大きな善政として喜ばれている老人医療無料化制度を改悪して、一部有料化することを政府は検討されているとのことでありますが、私は福祉見直しの名による福祉後退を断じて許してはならないと考えます。総理所信はいかがでしょうか。  お年寄り人たちを暮らしにくくしている大きな要因は、住宅問題であります。政府は、不況打開のための公共投資住宅生活関連施設建設に重点的に振り向け、この際、公営、公団、公社、公庫の公的資金住宅建設戸数を大幅にふやすと同時に、部屋数をふやすなど、三つの世代が同居できるよう住宅の質の向上を図るべきであります。  また、民間金融機関資金を大きく住宅ローンに回し、その金利住宅金融公庫並み引き下げて必要な利子補給を行うことも、この際断行すべきであります。  さらに、住宅政策の前提は土地政策であります。住宅の欲しい人が土地を得られるようにするためにも、また公共事業に必要な土地の確保を進めるためにも、いまこそ地方自治体土地先買い権を確立し、用途に応じた適正な地価が形成されるよう、地方自治体を通じて誘導すべきであります。総理所信はいかがでしょうか。  次は、外交の問題であります。  日中共同声明によって日中の国交が回復されて五年になります。日中共同声明第七項をそのまま日中平和友好条約の本文に入れて条約を結ぶべきであるということは、すでに日本国民の成熟した世論となっております。中国指導者もまた繰り返して同じ見解を表明し、あとは福田総理決断を待つのみだと言っております。  そもそも日中共同声明第七項は、日本中国もともに覇権を求めないことを誓い合い、あわせて、アジアにおいていかなる第三国が覇権を求めることにも反対することを明記しております。いかなる国の覇権主義にも反対するということは、主権平等の上に立つ国際法の大原則であります。しかも、かつて第二次世界大戦におい中国を初めとするアジアの諸民族を征服しようとした日本に対し、いま再びアジア民族の鋭い警戒の目が向けられていることを思えば、日中平和友好条約締結は、日本アジアにおいていかなる覇権をも求めないことを誓約することであり、アジアの一員としての日本の位置づけを確定するためにも絶対に必要であります。(拍手総理決断国民に示していただきたいと思うのであります。  その総理決断表明として、今国会におい日中平和友好条約締結促進決議全会一致で成立できますように、自民党総裁としての指導性を発揮されることを要望して、総理所信をお伺いをいたします。(拍手)  日中と並んでもう一つの重要な外交案件日ソ平和条約締結であります。日ソ漁業交渉で明らかになったように、いまや、千島の領土問題が未解決であることが日ソ間のすべての問題に重大な障害となっています。  振り返ってみれば、サンフランシスコ平和条約によって、歴史的に日本の固有の領土である全千島を放棄し、同時に、中ソを敵視する日米安保条約締結した自民党政府は、その後、日ソ間の友好相互信頼の環境をつくるために一体いかなる努力を払ったでしょうか。昨年のミグ25の事件がその答えを出しております。「北風と太陽」の物語が教えているように、ソ連との友好信頼関係を強めることこそ北方領土問題解決大前提であります。その上に立って政府は、一九五六年に鳩山内閣の結んだ日ソ共同宣言に基づき、まず歯舞、色丹の返還を実現する際、日米安保条約を解消して、日本の平和と中立国際的地位を確立する中で、択捉、国後を含む全千島返還を実現することを確認して、日ソ平和条約締結すべきであります。総理所信はいかがでしょうか。  なお、この機会に特に申し上げたいことがあります。  総理も御承知のとおり、わが国は発達した工業国であるとともに、しかもまた資源の少ない国であります。したがいまして、将来に向かって日本国民の生存と繁栄を確保していくには、わが国を取り巻くすべての国、中でもアメリカソ連中国を含め、すべての国との友好、協力、不可侵の関係を確保しなければなりません。これらの国のどれかを味方にし、どれかを敵とするような、かつての日独伊防共協定の誤りを断じて繰り返してはなりません。  いま私は、ある特定の国と結んで、他の特定の国を敵視するような政策をとってはならないと指摘いたしましたが、日米安保条約がそれであることは国民周知のところであります。最近、アメリカ中国関係は著しい改善を見ていますが、それにもかかわらず、日米安保体制危険性に変わりないことは、横浜市に墜落した米軍機の事故と、その恐るべき被害を見れば明らかであります。  そればかりではありません。ニクソン、フォード、カーターの三代の大統領を通じて、アジアにおける反共戦略体制アメリカ指導権を確保しつつ、その危険負担責任日本に肩がわりさせる政策が着々と進められております。一方、これに呼応するかのように、自衛隊は、対潜哨戒機P3Cの導入を初め、いわゆる基盤防衛力質的強化後方支援体制強化を進めています。  こうしたこちら側における軍事体制強化は、また相手側軍事体制強化を招かざるを得ません。こうしたアジアにおける軍事的対抗関係をエスカレートさせるのでなく、逆にこれを緩和させる重要な糸口として、非核原則を持つわが国こそが先頭に立って、アジア太平洋地域非核武装地帯設置を提唱すべきではないでしょうか。  また、今回、アメリカカーター大統領は、防衛の目的以外には最初に核兵器を使用しないとの立場を明らかにいたしましたが、すでにソ連中国も、自分から先に核兵器を使わないとの態度を繰り返して表明していることを思えば、いまこそ日本が、すべての核保有国に向かって、核兵器使用協定締結を呼びかける絶好の機会であります。総理所信お尋ねいたすものであります。  さて、日米安保体制強化という背景の中で日朝日韓関係を見るとき、私はなおさら声を大にして、朝鮮南北対立を激化させ、南北の分断を固定化させる政策はやめなさいと叫ぶものであります。  朝鮮にいる外国軍隊アメリカ軍だけであります。これを韓国から撤退させ、南北朝鮮民族同士自主的話し合い平和的統一を実現する、それを促進するために、南とも北とも、ともに日本政府外交関係を結ぶべきであります。  それに加えて、韓国日本及びアメリカの間の政財界の黒い癒着がいまやだれの目にも明らかになりつつあります。日韓癒着について、福田総理はかつて記者団に対し、においもしないと言明されたことがありますが、あなたはそのにおいがわからないのではないでしょうか。(発言する者あり)アメリカ国会で進められている調査と協力しつつ、わが国会でも日韓問題調査特別委員会を設置して、徹底的に日韓癒着調査を進め、その結果に基づいて、処理すべきことはきちんと処理しなければなりません。  その処理すべきことの中で一番大きい、一番緊急な問題は、金大中氏を韓国の獄中から日本へ原状回復させることであります。いまでは、東京のホテルからソウルまで金大中氏を連れていった者はだれか、その経路はどうだったか、国民にはほとんどわかっているのであります。国際的にも知れ渡っております。福田総理、あなたさえ決断すればこの問題は一挙に解決できるのであります。私は総理決断を切に要望してやみません。  福田総理、あなたはこの八月のASEAN諸国訪問が非常な成功であったとお考えのようであります。あなたがマニラで発表されたいわゆる福田ドクトリンには、その言葉の限りでは私も賛成であります。だが、あなたとASEAN諸国指導者の間に、さらにはあなたとASEAN諸国国民の間に、果たして心と心の触れ合いができたでしょうか。あなたは四千億円にも上る経済援助の約束を振りまいてこられましたが、帰国の後に自民党幹部に報告されたところでは、確定した援助は千三百十五億円という話であります。宣伝と実体の間に三対一の開きがあります。これではかえってASEAN諸国から日本に対する不信感をかきたてることにならないでしょうか。また、ASHANという地域同盟が、非同盟中立政治路線をとるのか、アメリカアジア戦略の中でSEATOにかわって新しい軍事同盟政治路線をとるのか、いまのところ流動的であります。インドシナ三国とASEAN関係にも微妙な対抗姿勢が見られます。こうした中でASEAN外交基本方針をどのように進めていかれるか、総理所信お尋ねいたします。  最後に、私は福田総理政治姿勢に関連して四つの点をお尋ねをいたします。  第一は、国際人権規約批准の問題であります。  御承知のとおり、世界人権宣言が採択されたのは一九四八年の第三回国連総会でありますが、この宣言はあくまで道義的な宣言であったのであります。これを受けて、一九六六年の第二十一回国連総会におい国際人権規約が採択されました。この国際人権規約は、その後数十カ国の参加を受けて昨年の国連総会で正式に効力が発生いたしました。国際人権規約世界人権宣言と決定的に違うところは、参加国に対して法的拘束力を持つ点であります。わが国はまだ国際人権規約参加していませんが、速やかにこれに参加して批准の手続をとるべきであります。そして、わが国憲法の柱である基本的人権尊重の大原則を一層強固なものとすべきであります。総理のお考えはいかがでしょうか。  第二は、行政における思いやりの問題であります。  最近のニュースによれば、政府メートル法に基づく計量法運用を改善して、鯨尺かね尺製造販売を認めることになりました。この問題は、日本の伝統的な職業や芸能に携わる人たちから長い間要望されてきたのでありますが、メートル法を盾にとる行政のかたく冷たい壁によってはね返されてきたものであります。ところが、この行政の冷淡さに憤慨した永六輔氏がこの問題を天下に訴え、またこれと歩調を合わせた建設労働組合の運動も盛り上がり、ついに今回の政府の決定となったものであります。  つまり、いままでは、政府役人計量法があるからだめだと言っていたのでありますが、今度は、同じ役人計量法があるにもかかわらず鯨尺かね尺を認めたのであります。このことは、役人がその気になれば法律制度弾力的運用がかなりに幅広くできることを物語っております。これを悪用することはもちろん許されませんが、国民が切実に要望している問題に対しては、こうした行政弾力性を大いに前向きに活用していただきたいのであります。それでこそ法律制度は生きているということになるのであります。  これは行政における思いやりの問題でありますが、総理は、こうした問題をどのようにお考えでしょうか。  第三は、今次参議院選挙における伊江議員派の大規模な選挙違反事件であります。  この事件でいままでに逮捕された者二十六名、起訴されて公判に付される者三名、略式処分の者十八名、これらはいずれも国鉄の現職の幹部であります。そのほかに多数の国鉄退職者も連座し、さらに痛ましいことには、自殺した人すら出ているのであります。  これは、まさに国鉄の全組織を挙げた大がかりな地位利用公職選挙法違反事件であり、その頂点に立っている最高責任者天坂総裁と断定せざるを得ません。  いま国鉄では、財政再建のためという名目で、貨物の大合理化中心に約五万名の整理が行われようとしております。国鉄労働組合動力車労働組合は、この合理化に反対しつつ、しかし国民の足である国鉄を守ろうとの積極的な意欲を込めて、労働者みずからの手で職場の規律を確立しようとしております。そうであるからこそ、なおさら天坂総裁を初めとする国鉄管理者層規律責任が厳しく問われるのであります。  福田総理は、この重大なる責任問題をどのように処置されるお考えか、総理のお考えお尋ねいたします。  第四は、今国会重要法案の扱いであります。  健康保険法国鉄運賃法の一部改正法案は、国民負担をさらに増加させる法案であり、今国会では強行すべきではありません。むしろ健康保険制度国鉄のあり方についてまず根本的な議論と対話をすべきであります。日韓大陸棚協定に伴う特別措置法案も、日韓癒着の疑惑が解明されていない現在、国会審議の条件は熟しておりません。  私は、これらの法案に反対の立場表明しつつ、総理所信お尋ねいたします。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手
  5. 保利茂

    議長保利茂君) ただいまの高沢寅男君の発言中、不穏当の言辞があるとの申し出があります。議長は、速記録を取り調べの上、適当の処置をとることといたします。     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
  6. 福田赳夫

    ○内閣総理大臣(福田赳夫君) 高沢さんにお答え申し上げます。  高沢さんは、今日の経済、これは私どもの考え方の基本が悪いのだからもとからこれを直せ、こうおっしゃいますが、具体的にどうするのだというお考えは示されておりません。  しかし、私は、いまどなたがどうやりましても、この混乱した世界情勢のもとでの一つ一つの国々の経済運営というものは容易ならざるものがある。しかし、そういう中で、わが国経済は、申し上げるまでもありませんけれども、世界先進国の中で際立った回復基調を示しておるのであります。もう昨年度すでに五・八%成長というものを実現しておるのです。世界最高の水準です。物価はどうかといいますれば、もう卸売物価を初め、消費者物価にいたしましても、鎮静化、鎮静化への方向を示しておる。国際収支はどうかといえば、あの百三十億ドルも出した石油ショックのその翌年に比べまして、今日は黒字責任論というのがわが国に向けられるような状態にまでなってきておるのです。  私は、ことしを展望してみますと、どうしてもこれは六・七%、この成長を実現してみなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。この成長は世界最高です。  しかし、それだからといって、わが国のすべての経済問題が解決するというわけではない。このことは、はっきりと所信表明で申し上げておるはずであります。つまり、あの石油ショックの結果、いろいろな環境変化があったわけであります。直接的な影響を受ける産業もあります。あるいは間接的に受ける産業もあるわけであります。その石油ショックというものは、ただ単なる石油ショックじゃないのです。世界が非常に大きな転換期に来ておるのです。もうちょっと先を見ると、資源があるいは窮屈になるかもしらぬ。エネルギー問題も非常に深刻な状態も出てくるかもしらぬ。その展望の中でのいま世界的な大きな混乱の時代なんです。その中での日本経済の問題だというとらえ方をしなければ、この問題は私は解決できないのじゃないか。そういうことを考えるときに、私は、国民各界各層が、政府も、地方公共団体も、企業も、国民までもが、この世界の変わった状況に思いをいたしまして、その姿勢の転換というものをやらなければ、この問題の解決というものにはならぬ、そのように申し上げておるのであります。  特に経済の問題が問題なんです。そういう中では何といっても企業です。企業がこの変わった環境に対応ができる、そういうことになれば、私はそのときが経済が安定したそういう時期だと思う。その対応、それが非常に困難だという産業がある。何であるかというと、これがいわゆる不況産業であります。また、とにかく三年半、もう四年越しの不況というか低成長でありまするから、もう大企業もくたびれておる。特に中小企業の方は大変くたびれておるのです。そういうことを考えますと、特にまた中小企業の問題、私は、そういう大きな構想のもとにこの構造不況問題を解決する、中小企業倒産、破産、経営という問題に対しまして最善を尽くす。これで推移し、ことし六・七%成長を実現する。そして、それは私はそれらの対応の変化にいい影響を与えるであろう、こういうふうに考えておりまするけれども、そういう中で、全産業にわたってこの対応ということが完成されていくということになって初めてわが国経済は安定するのだ、私はそうずうっと皆さんに申し上げてきておるのです。この道を進んでいきたい、かように考えておるのであります。  そういう中で、いま高沢さんは、私がアメリカへ行ってカーター大統領と会談して、首脳会談で申し合わせたことの結果を確認し合う、調査し合うという話を聞くがそうかと言うから、そういう考えは持っておりません、私の補佐官をいたしまして、大統領の補佐官とそれらの調整はさせておるというのが現状でございます。それで十分でございます。  それから、円高の問題に触れられました。いま為替は変動為替制にあるわけでありまして、わが国といたしましては、この変動為替制のもとにおきまして円の相場、これに政府は介入することがない、こういう基本方針を持っておるのであります。しかし、時によってその為替が乱高下をすることがある。そういうときには、これは臨時、非常の手段として介入することもありますが、原則はあくまでも不介入の方針なんです。そういう方針の中では、どうしても円が上がったり下がったりする、その際に企業、特に輸出関連業界は影響を受けるわけであります。特に円が上がる、急激に上がるというようなことになりますれば、これは中小企業輸出業者というものは相当の打撃を受けるということになるだろうと思う。そういうことを配慮いたしまして、この円高による中小輸出業者の事業が円滑に行われるように、このためには金融等の措置を講じましてできる限りの配慮をいたしたい、かように考えておるのであります。  それから、日本経済の中で雇用対策、これが非常に重要であると総理も指摘しておるではあるまいか、それに対しまして有効な手を打たなければならぬという御説、これは私が申し上げているとおり、全く私も同感なんです。しかし、この雇用問題を考えましても、大事なことは国の経済をよくするということですよ。特にその産業の状態をよくしなければならぬということである。  そのためには一体どうするかということを考えまするときに、これは私がただいま申し上げましたように、日本経済全体のスケールのかさ上げを行う、六・七%成長が実現をする。同時に、そのかさ上げしたことを踏まえまして、また構造不況産業等の立ち上がり、これを政府が助成をする。こういうような形によって、私は、まず基本的に就業問題という問題への対策考えなければならぬ、こういうふうに考えております。総合経済対策というものを強力に進めていきたい、かように考えておるのであります。  たとえば、そういう二兆円の事業費、その追加対策を行う、これは雇用に非常に影響があるんですよ。それからまた、同時に、日本銀行が公定歩合引き下げを行った、それに連動いたしまして金融機関が貸出金利引き下げをやる。そういうことになれば、いま金利負担であえいでおる企業、それは一体どうなるかというと、もしそのことがなかりせば、人員の整理だとか、あるいは新しい雇用をやめるとか、そういうことになってくる。そうじゃない、これはそうしてはならない。そこで、これは事業量をふやしましょう、また金利負担も軽減いたしましょう。ですから、無理なところではありまするけれども、この雇用の問題につきましては慎重にしてもらいたい、そういうことも願ってやっておるのです。これも私は企業対策への非常に大きな配慮である、このように御理解を願いたいのであります。  しかし、今回の経済総合対策でどのくらいの雇用が増進するかということになりますと、これは非常に計算がむずかしいのは、つまり、企業がいま過剰労働を抱えておる、その過剰労働を解雇しようというような動きもなきにしもあらずという状態なんです。今度こういう施策ができた結果、そういう解雇はやめましょうとか、そういうようなことへの効果、そういうことが非常に大きいと思うのです。そういうことを考えますと、数字的にこの二兆円事業費、これがどういう数字となって雇用にあらわれてくるかということは申し上げることはできませんけれども、事務当局におきましてはいろいろな試算をしておりまするけれども、これは私がここで申し上げることは妥当ではない、こういうように考えておるのであります。  なお、そういう背景を前提といたしまして、雇用安定資金制度を積極的に活用いたしますとか、職業訓練、これも機動的に実施いたしますとか、あらゆる雇用のための努力をいたさなければならない、かように考えておるのであります。  なお、高沢さんは、雇用保険制度、これなどについての改定の御意見がありまするけれども、これらにつきましては、なお慎重に検討しなければならないと考えております。まだここでお約束をするわけにはまいりません。  次に、税制の問題であります。かねて、これからのわが国財政、またさらに、わが国経済ということを考えてみますと、もう国民負担は、これは増加せざるを得ない。つまり、歳出の需要というものは、社会保障だとかなんとか、そういうことを考えまするときに、老齢化社会になるのですから、どうしても増高せざるを得ない。一方におきまして、経済はいままでのような高度成長は期待できない、こういうことになりますれば、税収の方はそう伸びというものが考えられないわけであります。そうすると、その間のギャップを一体どうするか。やはりある程度の国民負担増加というものにこれを求めざるを得ないのじゃないか。これがとにかく大勢だ、大きな傾向であるというふうな見方を私はしておるのです。そういう見方は、各界各層においても圧倒的に多いわけであります。  そういう流れを受けまして、税制調査会は一昨日、その検討の結果を政府に対して答申をした。そして、なかなか財政がむずかしい、そこで政府においても、歳出面においても冗費の節約、合理化行政合理化というものに注意してもらいたい、同時に、新税というものも考えざるを得ないでしょう。そういう際の構想といたしまして、有力な柱とも考えられるものは一般消費税であるということでございますが、しかし、税制調査会の方でも言っておるのです。この答申はそのときの情勢——私は、そのときの情勢というものは、あるいは景気という問題が大きな要因になっておる時期もあろうと思う、あるいは財政という角度の問題が大きな要因となっておるときもあろうと思いまするけれども、とにかくそのときの情勢、これを見て、政府においてその実施のタイミング並びに内容を詰めてもらいたい、こういうふうに申しておりますので、その答申のとおり、その実施の時期並びにその内容、これは慎重に対処してまいりたい、かように考えておるのでありまして、いま直ちに、いつどういう内容の新税を持とうというような結論は持っておりません。  次に、中小企業問題に触れられましたが、私は、これも所信表明で申し述べたとおり、構造不況問題と並んで非常に大きな問題だというふうにとらえておるところであります。この中小企業問題につきましては、これは本当に政府としては総力をしぼるというか、考えられるあの手、この手、とにかく中小企業問題を、この際は深刻な最大の関心事であるという取り組み方をいたしておりますので、そのように御理解願いたいのであります。  具体的に高沢さんからは、中小企業近代化合理化というようなことを挙げられておりますが、考え方は私は賛成です。協同組合の結成等が大いに進められるということは、今後に対しましても有効なことであるというふうに考えます。  それから、親企業に対する下請の団結の強化の法制化、そういうようなことを言われておりまするけれども、法強化、そういうことが一体できるかどうか、これは別として、考え方としては、私もそのようなことにつきましては理解が持てる次第でございます。  また、官公需五〇%の中小企業への発注、こういう御提案でございますが、五〇%というパーセントは私は約束はできない。できませんけれども、今後ともこの割合は伸ばしていきたいというふうに、全力を尽くしてみたいと考えております。  中小企業倒産防止基金制度を推進せよ、こういうお話でございますが、これは十分検討してみたい、また各党にも御相談をいたしてみたい、かように考えておる次第でございます。  それから、農業政策について、食糧の自給率を引き上げろという話ですが、その自給率を引き上げろという抽象的な考え方、これは私は賛成でございます。しかし、それを何か七〇%までとかなんとかというようなことになりますると、これはなかなかそう簡単にはいかぬことでございます。たとえば、高沢さんは米の減産政策、これをやめろ、こうおっしゃっておる。これはそういう政策を再検討しよう、あるいはやめる、こういうわけにはまいりません。ところが逆に、飼料、私どもは、飼料だとかあるいは大豆だとか麦でありますとか、そういうもの、これは大いにこれを転作を進めたい、こういうふうにいま考えておるわけでありまして、米の方を抑えて、そうして余力をつくってそういう方向に持っていくという素直な考え方の方がいいんじゃないか、そのように考えております。  それから、年金、老人医療制度等についてのいろいろなお話がございましたが、これらの問題は、これはただいま政府といたしましては年金制度基本構想懇談会、また老人保健医療問題懇談会において検討中でございます。私ども政府といたしましては、これらの社会保障の問題は充実したい、こういう考えでございます。ございまするけれども、その一つ一つを一体どうするか、こういう問題につきましては、全体のスケールの中の一つとして論ずべきであって、一つを取り上げてそうして論ずるという考え方は妥当ではない、私はさように考えております。  次に、住宅政策また土地政策についてのお話でございますが、高沢さんのお話では、これは公的資金住宅、つまり公団、公営、この住宅を重点とすべしというお話でございまするが、案外世の中ではいわゆる公庫住宅、これへの要請が強いのです。そういうようなことを考えて、それは公庫住宅に重点を置くんだとかあるいは公営、公団住宅に重点を置くんだとか、そういう偏った考え方をとらないで、双方ともバランスのとれた形でこれをやっていくという考え方が妥当じゃあるまいか、そのように考えておるのであります。  なお、住宅ローン金利問題にも触れられましたが、これはせっかく努力をいたし、またいたしておるところであるということを申し上げます。  また、地方公共団体の先買い権、これについてのお話がありましたが、これは国土利用計画法によりまして遊休土地の買い取り制というものがあるわけなんです。これを積極的に活用すれば、これは簡単にできることなんです。ただ、そうは申し上げましても、地方公共団体の方に一体それだけの遊休地を買い取る財政力があるかというと、なかなかそういう状態ではないのだということもまたつけ加えて申し上げておきます。  次に、日中関係についてのお話でございますが、この基本的な考え方につきましては所信表明において申し上げておるとおりであります。去る三十日におきましては、鳩山外務大臣と黄華外交部長がニューヨークにおいて会談をいたしております。その会談において、とにかく早く平和条約締結しましょうやという両者の意見は一致しておるわけであります。しばらくこの政府の動きを見守っていただきたい。かように考える次第でございます。  それから、これに関連いたしまして、国会の決議をしたらどうかというお話でありますが、これは国会において御論議、御協議を願いたい、かように考えます。  次に、ソ連との関係につきましても、基本的な考え方は私が所信表明演説において申し上げたとおりでございます。ただ、高沢さんから、歯舞、色丹だけ返してあとは継続審議というか、安保条約の問題と絡めて交渉したらどうかというような御提案でございまするけれども、わが国は歯舞、色丹だけの要求をしておるわけじゃないんです。国後、択捉まで要求しているんですよ。(拍手)歯舞、色丹だけ返してもらって、あとは後のことだというようなことになれば、現実の問題として、択捉、国後を返してくれという要請、これに大きな障害が来る、かように考えておるということを申し上げておきたいのであります。  それからさらに、高沢さんは、日米安全保障体制はアメリカの反共世界体制の一環である、これは廃棄すべきである、こういう御議論でございまするけれども、私は前から申し上げておるのです。日本は平和国家でなければならぬ、そして世界じゅうが、もう軍備なんか要らぬような状態になってくれることが望ましいんだ、こういうことなんです。しかし、現実はそういう状態ではないのであります。世界の各国で、いま方々で紛乱が起きる、こういうような状態を見ても明らかでございまするけれども、世界じゅうの国が釈迦やキリストだ、そういうような聖人君子の国でありますれば、それはどこの国だって軍備を持つ必要はないのです。同盟条約というか、安全保障条約とか、そういうものの必要はないのです。  ところが、そういう現実の世界情勢でない今日におきましては、国際連合でも言っておるじゃありませんか、集団的にみずからの国の安全を保障せよ、こう言っておるじゃありませんか。わが日本は、その国際連合の精神にのっとりまして、わが国の安全を日米間の条約によって保障するという態度をとっておりますので、これはどこの国を敵とし、どこの国を友好国というような関係じゃないのです。どこの国もわが国と善隣友好の国であるというたてまえのもとの、最小限のわが国の安全を守ろうという趣旨でございまして、その辺は素直に御理解のほどをお願いしたい、かように思うのであります。(拍手)  また、なお、これに関連いたしまして、アジア・太平洋地域に非核武装地帯を設定したらどうだというようなお話でございますが、これはまた同時に、世界的に核保有国が核不使用の条約を結んだらどうだ、こういうような御提案でございますが、こういうものは幾ら条約を結んだって、しかし、一朝有事の際ということになればどういうことになるかわかりませんよ。これはもうかつてわが国も苦い教訓があるじゃありませんか。(発言する者あり)そうじゃない、私は、そうじゃなくて、問題は、核というものがこの地球上から廃絶されなければならぬというところにある。廃絶されなければならぬ、そのためへの努力がなされなければならぬ、こういうふうにいま考えておるのであります。(拍手)高沢さんの御議論は、一つの意見としてはこれは私も理解はできまするけれども、これは現実的な考え方ではない、私はそのように考えるのであります。  それよりも、むしろもっと徹底的に、全世界の核を保有している国々が、核廃絶をしようじゃないか、その方向に進むべきですよ。(拍手)その一歩として包括的な核実験禁止、これをひとつ呼びかけるなどということは非常に現実的で、またわが日本がそれを呼びかけるということは、わが国の置かれている立場、つまり初めて原子爆弾の洗礼を受けた国であり、また非核原則を持っておる国としてまことに有意義のことである、かように考え、そういう考え方を進めていきたい、かように考えておるのであります。(拍手)  また、さらに朝鮮半島の問題に触れられましたが、お話のように私は、南北朝鮮というものが終局的には平和的な話し合いによって統一される、これが一番望ましいと考えておるのです。しかし、現実の問題としてそれがすぐ簡単にできますか。そういうことを考えると、これが成立するまでの過渡的段階におきましては、南北の間に安全保障についての均衡状態が存在するということが必要である、私はこのように考えておるのであります。しかし、最終的に南北が平和的に統一される、それは私は賛成でございます。その環境づくりにつきましては努力をしなければならぬ。  それから、朝鮮民主主義人民共和国と国交を回復せよというお話でありますが、私はこれも現実的な考え方でないと思うのですよ。ソビエトにいたしましても、中国にいたしましても、韓国を承認しておらぬじゃありませんか。そういう状態下において、わが日本朝鮮民主主義人民共和国——これはちょっと言うのが長過ぎて困るのですが、そう言え言えと言われるものですからそう言うのですけれども、……(発言する者多し)それとの間に平和条約締結せよということは、私は妥当ではない、かように考えておる次第でございます。  それから、日韓癒着国会で徹底調査せよというお話でございますけれども、私、政府の者といたしましては日韓癒着——私はしばしば言っておるのです。日韓というものは本当に一衣帯水の国である、非常に関係の深い国である、これに癒着というか、深い関係があることは当然なんです。しかし、その関係というものはいい関係でなければならぬ、悪い関係じゃ困るのだ。悪い関係がもしありとすれば、徹底的にこれを究明するにやぶさかではありません。  なお、金大中事件にお触れになりましたが、これはもうすでに外交的に決着済みの問題でありまして、その身柄をわが国に引き渡せということを要請する考えは持っておりません。  それから、ASEANの問題につきましては高沢さんは一応の評価をされながらも、さらに首脳者間の理解と協調、この考え方、心と心との触れ合い、その上さらにこれを国民次元まで持っていけというような趣旨のお話でございますが、私はそれは全く同感なんです。ですから、私は、この間の所信表明におきましても、まだ新しい一本の苗木を植えたにすぎないのだ、こういうふうに申し上げておるわけです。さらにこの苗木を育てなければならぬ。育てるということの一番大きな問題は、いま首脳者間において心と心の触れ合いというものができたら、さらに進めてこれを国民次元のものに持っていきたい、このことをも含めてあのように申し上げておるわけであります。  なお、この問題に関連いたしまして高沢さんから、ASEAN軍事同盟的な、SEATO的なものになっては困る、こういうような御注意がありましたが、私は、ただいまのところそのような傾向は認めておりません。おりませんけれども、十分注意してまいりたい、このように考えておる次第でございます。  それからさらに、最後の問題といたしまして四つの点について触れられましたが、一つは、国際人権規約批准せよ、こういうお話でございます。これには私は趣旨として大賛成でございます。そのためには、わが国として締約国になるための検討作業を詰めていくことにいたしております。  それから、鯨尺かね尺の例を引かれまして、国民の気持ちにぴったりした政治をやれというお話でございますが、私もそのとおりに心得ておりますから、またお気づきの点があったら、御注意のほどをお願い申し上げます。  また、国鉄管理職などの地位利用に関する公職選挙法違反事件、これは私も全く残念至極に思っておるところでございます。この事件はもう刑事事件化いたしまして、もう司直の手にあるわけでございますから、その裁きを待つほかはないのでありますが、一般的に申しまして、このようなことが再びあってはならぬ、さように考えまして厳重な措置をとっておるところでございます。  最後に、いま提案をされておりますところの諸法案につきましての政府の見解いかん、こういうことでありまするが、この補正予算案、これはもう景気対策にかかわる大問題でありますので、なるべく速やかに上げてもらいたい。また継続諸案件、これにつきましてもいろいろ御所見はありましょうけれども、ひとつまげて御議了のほどを切にお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 保利茂

    議長保利茂君) 久保田円次君。     〔久保田円次君登壇〕
  8. 久保田円次

    ○久保田円次君 私は、自由民主党を代表し、福田内閣の当面の経済財政政策中心に、若干の質問を行うものであります。  総理所信表明演説において冒頭に述べられたように、去る九月二十八日に突発した日本赤軍による日航機ハイジャック事件は、まことに遺憾至極な不祥事件であります。  幸いに、政府及び日航当局の人命尊重を第一とする万全の努力及び関係各国政府の好意ある措置によって、乗客、乗員全員が無事に救出されたことは、不幸中の幸いであります。私は、日本関係当局及び関係政府に対し、国民とともに深く感謝の意を表するものであります。  しかし、私は、今回の措置人命尊重のための超法規的緊急避難措置としてやむを得ざることであったとはいえ、今後このような悪質なハイジャック事件政府の変則的な措置を心から憂えるものであります。これを防止するには、国際的には、海外空港における日航当局の乗客に対する自主的事前の安全確認ができるような国際取り決めや、ハイジャック犯人の受け入れ、または引き渡し協定等の措置が必要であり、国内的には、ハイジャック犯人に対する刑罰の強化等の措置が必要ではないかと思うのであります。(拍手政府はどのような再発防止対策考えておられるか、明らかにされたいのであります。福田総理の御答弁をお願いいたします。  さて、わが国経済の現状を見まするのに、政府のあらゆる努力にもかかわらず、景気はなお低迷の域を脱せず、失業は毎月百万人の大台を超え、企業倒産件数も千数百件という高水準で推移しているのであります。現下のわが国政治の緊急課題が、景気の速やかな回復と雇用不安の解消にあることは言うまでもなく、福田内閣の当面の最大の責務もこれにありと総理所信表明演説で述べられたとおりであります。  政府は、その具体対策といたしまして、去る八月三日の六項目にわたる当面の景気対策に引き続いて、九月三日には、公共投資の大幅追加と金利の再引き下げ等七項目に及ぶ総合経済対策を決定し、今回それを裏づけるために、総事業費約二兆円の公共投資追加を内容とする大型補正予算案と関連法案をこの国会に提出されたのであります。これらの措置は、まことに時宜に適したものであり、わが党は全面的に賛意を表するものであります。  私は、これらの経済財政対策がよく所期の実効を上げるようにするため、まず第一に、四つの点につき要望を申し上げるとともに、政府の御見解を確かめておきたいと存ずるのであります。  第一点は、一般的な景気対策とともに、多くの分野にわたる構造不況業種に対する行き届いた再建安定対策が特に重要ということであります。  全般的に実質経済成長率六・七%を達成できても、個別的には広範にわたる構造不況業種が存在するという経済構造では、国民経済全体として設備投資意欲は盛り上がらず、雇用不安は解消せず、不況感は決して緩和されないのであります。  そこで、この際、私が確かめておきたいことは、不況業種の中でも特に深刻な構造不況に悩む繊維産業、平電炉鉄鋼業等を初めとする十数業種に対しまして、具体的にはどのような再建安定対策を講じているのか、または講じようとするのか。それらの業種の中でも特に経営の苦しい中小企業に対し、わが党は、緊急金融対策、連鎖倒産防止対策等九項目の緊急対策を決定し、政府に要望しましたが、これらにつきどのような具体的対策を講じておるものか、でき得る限り詳細に明らかにされたいのであります。(拍手)  第二点は、景気対策の重要な柱の一つである住宅建設と宅地対策についてであります。  公共投資の中でも、住宅建設が最も波及効果が大きく、即効性のあることは議論の余地はありません。(拍手)今回の公共投資の追加においてもこれを最重点に位置づけ、住宅金融公庫の融資計画を十万戸分、事業費規模で約九千億円も追加したことは勇断であり、私はこれに敬意を表するものであります。(拍手)今後も住宅建設の促進が景気対策の一つの柱となるべきことは当然であります。  その場合の最大の支障は宅地難であります。これを打開するためには、公的資金による大規模宅地造成と、宅地関連公共施設等の整備促進とともに、民間の宅地造成の助長と流通の円滑を図ることが、より効果的であると私は信じます。そのためには、金融上と税制上特別の配慮が必要と思うのであります。  第三点は、五十二年度に引き続く五十三年度公共投資の拡充であります。  現下のわが国経済の停滞は、四十八年秋の石油ショックによる世界的不況現象に起因する構造的なものであり、その根本的克服には長期対策が最も大切であります。その中心対策を、公共投資の拡充による総需要の持続的増大に置くべきことも議論の余地はありません。したがって、五十二年度に引き続く五十三年度も、公共投資を大幅に拡充する必要があります。それには、当然として公債政策の積極的活用を図らなければなりません。幸いに、わが国国民は貯蓄性にきわめて高く、国民所得のおよそ四分の一以上が貯蓄に回されているのが現状であります。この国民貯蓄を、住宅建設その他の公共投資民間設備投資に活用するならば、景気の回復と経済の安定成長を促進するとともに、立ちおくれている住宅建設社会資本の整備を促進する、一石二鳥の効果を上げることができると私は信じます。(拍手)  一方、財政の節度を守ることの必要性は、議論の余地はございません。また、公債政策の積極的活用と財政の節度を守るということを調和させるためには、一般行政費を徹底的に節減効率化して、赤字公債の発行額を減らし、建設公債を積極的に活用するほかにないのであります。  行政費の節減効率化には、政府が毎年度の予算編成方針で強調するところの補助金の整理合理化と、現在福田内閣が強い決意をもって取り組んでいるところの行政の簡素化、効率化を、勇気を持って実現することが最も必要であります。(拍手)  また、今後高齢化社会が急速に進むにつれ、当然必要となるところの高福祉社会の実現のためには、まず景気を回復して、経済を安定成長路線に定着させ、財政の基盤を拡大するとともに、現行の複雑な医療保障、各種年金制度等の社会保障制度を合理的、効率的に体系化し、給付と費用負担を公平にする必要があります。  当面の経済政策について申し上げたい第四点は、わが国の国際的責任についてであります。  特に、わが国の内需の増大による世界の景気回復への寄与と、貿易収支の大幅黒字是正は、今春以来の一連の首脳会議において、福田総理が各国首脳に確約したものであり、その後の各種国際経済会議においても再確認した国際的約束であります。これを達成する前提として、本年度の実質経済成長率六・七%の目標を達成することは、福田内閣の国際的責任であります。  ところが、最近のわが国貿易収支の実情は、依然として大幅黒字基調で推移しておるのであります。特に対米貿易は空前の大幅黒字を続けており、現状では、史上最大の黒字であった五十一年の実績をさらに大きく上回り、七十六億ドル程度という大幅黒字になるものと推定されておるのであります。鉄鋼や家電類の輸出の自主規制等の措置にもかかわらず、わが国の貿易の大幅黒字基調が一向に是正されないため、わが国に対する貿易赤字国の風当たりはいよいよ強くなりつつあると私には思われます。このような傾向は何としても避けなければなりません。それにはわが国が内需の増大による輸入の増進を図ることが前提であり、それとあわせて、近年低調に推移しておる対外経済協力を拡充促進することが、国際収支の黒字減らしの一翼であると私は思います。(拍手)  福田内閣は、貿易収支の大幅黒字基調の是正と国際経済におけるわが国責任の分担につき、具体的にはどのような手を打たれておるのか、お聞きしたいのであります。  以上、当面の経済財政政策につき、福田総理の具体的な御見解を承りたいのであります。  私の質問の第二は、当面最も深刻な社会問題となっている雇用不安の解消についてであります。  最近の雇用状況は、最初にも申し上げたように、きわめて厳しいものがあります。職業安定所の職業安定業務統計にあらわれた完全失業者数だけでも毎月百万人の大台を超え、失業率は二%以上で推移しております。この失業率は、欧米先進国のそれよりはるかにはるかに低い率ではありますが、わが国には職業安定所に申し込まない潜在失業者及び不況企業の過剰労働者が多数あると推定され、これを総計すると、事実上の失業者と不安定労働者を合わせた実際の失業率は相当高いものになっております。  それに加えて、来春卒業する大学卒の就職見込みはきわめて暗く、各種の民間機関の調査によれば、上場大企業の相当数は、五十三年度の大学卒採用計画を五十二年度の採用実績よりも減らしている現状であります。長年にわたって多額の学費をつぎ込み、苦労を重ねてせっかく大学を出たのに、働くに職場がなく、数多くの有為の青年が社会の暗い谷間で無為に過ごさねばならないという現実は、まさに社会の悲劇であり、やがて社会不安にまで発展するおそれもあります。これは一日も放置しておくわけにはいきません。重大な政治問題であります。社会問題であります。  政府は、今回の総合経済対策においても雇用対策を重視し、雇用問題閣僚懇談会、臨時雇用対策本部を設置するとともに、雇用安定資金制度特定離職者雇用促進給付金制度の活用、公共職業安定所によるところの求人開拓の推進等、緊急対策を決定したのであります。  私はこのような緊急対策の必要なことは認めますが、現下の深刻な雇用不安は、この程度の対策で緩和されるとはとうてい思われないのであります。雇用対策の根本は、もちろん景気の早期回復による企業活動の拡大にあり、これに全力を傾けることが常道であります。  さらに根本的対策としては、大学教育のあり方を社会的要請に即応するよう改革する必要があります。これまでのように、社会的要請から遊離して、年々大学の入学定員を増員するようなやり方は、多くの教育費を投入していたずらに学士浪人、修士浪人、オーバードクターをふやすばかりであります。文部当局は、五十三年度も二千六百名の国立大学入学定員の増員を要求しておるのでありますが、それよりも、現在ある国立大学の質を充実向上させ、特に実社会の役に立つ専門教育を振興し、社会が進んで受け入れるような人材の育成に努力すべきものであると思います。総理の明快な御答弁をお願いいたします。  第三にお伺いしたいことは、資源有限時代における今後のわが国経済成長速度を制約する総合エネルギー政策についてであります。  昭和五十年代に平均実質経済成長率六%を維持するには、エネルギー消費において一〇・八%以上の節減を行うとともに、供給面においては、石油換算で六十年度に七億四千万キロリットル相当分の供給を確保する必要があります。そのうち、出力三千三百万キロワットを原子力発電に期待しているのであります。  まず、将来のわが国エネルギー供給源の一翼を担う原子力の平和利用開発の画期的発展を可能とする使用済み核燃料再処理問題が、政府の並み並みならぬ努力アメリカ側の理解ある配慮により決着を見たことを心から喜ぶとともに、敬意を表するものであります。(拍手)  しかし、使用済み核燃料再処理問題は、高速増殖炉の開発建設及びウラン濃縮工場の建設を一貫する核燃料サイクルの確立によって初めて解決するものであります。  これらの対策を含めたエネルギー総合対策の推進には、今後十年間に、五十一年価格で六十八兆円という多額の投資が必要とされておるのであります。その資金をどうして調達するのかということが総合エネルギー対策の成否を決するかぎであります。政府は、これに対しどのような具体的な資金対策を用意しておられるのか。  さらに、エネルギー政策についてこの際触れておきたいことは、人類究極の新エネルギー源の開発のため、核融合研究とサンシャイン計画の推進についてであります。  五十二年度はこれらの研究が相当前進しておりますが、今後一層これを促進する必要があると思うのであります。また、資源のきわめて乏しいわが国においては、科学技術全体の振興発展こそ経済の安定成長国民生活の充実向上の基本的条件であります。わが国のこれまでの科学技術政策は、この国家的要請に十分応ずるものとは思われず、今後政府政策の飛躍的な発展を図るべきであります。  以上、エネルギー対策と科学技術対策について福田総理の御見解を承りたいと思うのであります。  第四の質問は、この臨時国会の重要議案である国鉄運賃法健康保険法の改正案、第三次教員給与改善実施を含めた一般職の給与改正法案及びわが国エネルギー政策に大きな役割りを持つ大陸棚石油天然ガス共同開発特別措置法案並びに防衛二法案についてであります。  これらの重要法案は、いずれも一部野党の強い反対によりまして成立を見ておらないのであります。国鉄運賃法健康保険法及び一般職の給与法の改正案は、いずれも予算関係法案であります。これらの法案がこの国会で成立しないと、五十二年度予算の執行に支障を来すだけでなく、国鉄運賃法健康保険法の改正案が不成立になると、両者の累積赤字はいよいよ増大し、五十三年度予算の編成が困難になるのであります。また、大陸棚石油天然ガス共同開発法案は、昭和四十九年一月条約調印以来五回にわたって国会審議を重ねた上、さきの八十国会で承認された日韓大陸棚共同開発協定と一体不可分の法案であります。これがこの国会で成立しないと、国際信義に反するだけでなく、わが国のエネルギー対策上にも大きな悪影響をもたらすことになるのであります。  したがって、これらの重要法案の成立は、国会の問題ではありまするが、これらを提出した内閣とそれを推進したわが党が一体となり、ぜひとも成立を図らなければならないと思うのであります。福田総理の御所見を承りたいのであります。  最後に、当面の重要外交懸案である日中平和友好条約の早期締結について一言お伺いいたします。  四十七年九月の日中国交正常化共同宣言発表以来満五カ年を過ぎました。今日、日中平和友好条約を早期に成立せよとの国内及び中国側の強い要請がありますが、この点についてどのようにお考えですか、総理の御見解を承りたいと思うのであります。  いまやわが国をめぐる内外の諸情勢はきわめて厳しいものがあります。国民は一日も速やかな景気の回復と雇用不安の解消を心から求めているのであります。この重大なときに当たり、福田内閣は強い強い信念と勇気を持って大胆な経済財政政策を展開せられ、国民の切実な要望にこたえなければならないと存じます。  福田総理の御決意のほどを重ねてお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
  9. 福田赳夫

    ○内閣総理大臣(福田赳夫君) 久保田さんにお答えするに先立ちまして、先ほど高沢さんに対するお答えでちょっと発言させていただきます。  一つは、朝鮮民主主義人民共和国と国交を回復せよ、こういうような質問のところで、私は、正確に朝鮮民主主義人民共和国と申し上げまして、ちょっとそこで、「これはちょっと言うのが長過ぎて困るのですが、そう言え言えと言われるものですからそう言うのですけれども」と、こう言いましたが、これはほかの国でもいろいろ略語があるんです。そういうこともありながらそう申し上げたんだけれども、決して朝鮮民主主義人民共和国というその名前が長過ぎるということじゃないんです。それをそういうふうに正確にお答えするのが長過ぎて困るんだ、こういうことを申し上げておるわけなんです。  それから、アジア・太平洋地域に非核武装地域を設定したらどうかという御質問でありました。それに対しまして、「幾ら条約を結んだって、しかし、一朝有事の際ということになればどういうことになるかわかりませんよ。」と、こういうお答えをしたわけですが、ちょっと私の舌足らずでありまして、補足させていただきます。  「しかし、具体的な裏づけがないときは、一朝有事の際ということになればどういうことになるかわかりませんよ。」と、この「具体的裏づけがないときは、」ということが漏れておったという趣旨に御理解のほどをお願い申し上げます。(拍手)  次に、久保田さんにお答え申し上げます。  まず、ハイジャック再発防止問題でございますが、ハイジャック問題が一応とにかく一人の人命も傷つくことなく解決したことは、皆様の御協力のおかげであると厚く御礼を申し上げます。  しかし、問題はそれだけで解決しないので、ハイジャックの再発防止をどうするかということこそがこれからの問題であるというふうにとらえておりまして、政府におきましては、一昨日、ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部を閣議決定をもって設定いたしました。  昨日、その最初の会議がありまして、私はその席で、こういう問題は時がたつと同時に忘れられがちだ、そうあってはならない、鉄は熱いうちに打たなければならぬということがあるが、本当にのど元過ぎて忘れてはならない問題だ、さようなことで、今月いっぱいに結論は出すということにするようにということをお願い申し上げておいたわけでありますが、とにかく早急に具体案を策定いたしまして、実施に逐次移っていきたい、かように考えております。  久保田さんは大変経済の状態を心配されておる。私も心配しておりますが、その中で特に久保田さんは、構造不況業種問題が大事であるという御指摘であり、私もそのように考えておるところであります。この問題は、先ほど申し上げましたように、これは構造不況というのがなぜ起こってきたか。それはやはり世の中というか、経済を取り巻く環境が変化してきた。その変化の対応ができないで今日苦しんでおる、これが構造不況業種である。  その対策を一体どうするのだ、こういうことでありますが、何といいましても一番大事なことは生産と価格の調整問題である、このようにいま考えておりまして、独占禁止法に基づくところの不況カルテル、また中小企業団体法に基づくところのカルテル、これらをいま大いに活用いたしております。また、合繊産業に対しましては政府におきまして減産指導をいたしておる。そういうふうに生産、価格調整ということが非常に大きな問題になっておるわけであります。これに関係いたしまして、過剰設備対策、これをやっていかなければならぬ。平電炉だとか綿紡、毛紡などの紡績業、絹織物などにそういう問題が多々あるわけでございまするけれども、これをやっていく。そのためには、これは金融対策がどうしても必要になってくるわけでありまするが、これもできる限りの金融措置、また信用補完措置、これを進めていく考えであります。  それから、そういうことをやりますと、どうしても雇用問題これが深刻になってこざるを得ないのでありまして、これには雇用安定資金制度などをフルに活用いたしまして、この雇用問題で雇用不安を起こすというようなことがないようにいたしたい、こういうふうに考えております。  当面、そういうふうにてきぱきやっていきます。いきますが、しかし、先々のこともまた考えなければならぬ。いま御指摘がありましたけれども、構造改善計画、これは少し中期、長期の観点から立てまして、そういう対策をとりながら、そういう中長期の軌道に乗せていきたい、このように考えておるわけであります。  それから、中小企業対策につきまして非常に御熱心な御提言がありました。私は、自由民主党から、中小企業対策に関する要望九項目という案件をつぶさに検討いたしたわけでございますが、大方その線にのっとりまして対策を実施しておる、このように御承知を願いたいのであります。とにかく手厚い対策をとっておるという考えでございます。  それから、住宅問題に触れられました。そうして特に公的資金による大規模宅地造成、それから宅地関連公共施設の整備促進、そういうような御提言でございまするけれども、これはその方向で従来からも引き続いてやっておりますが、今後ともその方向を強化してまいりたい、かように考えておるのであります。  同時に、御提言のように民間の活動、これが非常に大事なわけでありまして、民間の宅地造成の助長、円滑化、そういうことにつきましても、政府といたしましては、あらゆる機関を使いまして、その方向で対処しておるところでございます。  そういう中で土地税制——後で税制問題には触れますが、土地の問題が御質問がありましたが、私は、土地税制につきましては、枠組みといたしましては、これを崩したくないのです。あの税制の体系というものは崩したくない。やはり長きにわたってあの仕組みというものは必要だ、こういうふうに考えております。ただ、具体的適用の細目になりますと、今日の宅地供給、そういう面から、あるいは税制上も問題がある点があるかもしらぬ、そういうふうに考えまして、そういうあの枠組みは崩さないんだという中で考えていきたい、こういうように考えておるのであります。  それからさらに、もう来年のことまで言及されまして、五十三年度予算でも公共投資を大幅にふやせ、また公債政策を積極的に活用せよ、こういうお話でございますが、いままだ来年のととまで頭が及ばないのです。及ばないのでございますけれども、今日この時点から考えまして、来年もやはり政府がかなり積極的な景気支持の役割りを尽くさなければならぬじゃないかというように考えております。  そういう際に、やはり財政全体をどうするかという問題があるのです。いまわが国は、世界各国の中で基礎構えはかなりいい状態になっておるんだけれども、そのしわ寄せがいま財政に行っているのです。公債がとにかく歳出の三〇%を占めるというような状態なんです。そういうようなことを考えまするときに、公債依存ということを野方図に考えるということ、これはもう絶対に私はできないことであるというふうには思いますけれども、しかし、公共投資が来年の段階において依然として大きな景気サイドの役割りを持つであろうということは想像されますので、そのような頭組みで来年度の予算に取り組んでみたい、かように考えております。  それから、高福祉社会実現のためには、社会保障制度全体の見直しをしなければならぬじゃないか、こういうお話でございますが、それはもう御所見を私もそのとおりに考えます。今後の人口老齢化に即応した、そういう状態の中で高福祉社会を実現するということになると、社会保障財政、これは相当むずかしい問題になってくるのです。そのむずかしい財政の中で効率よく社会保障政策をやっていかなければならぬということでありまするから、これはかなりの見直しが必要である、このように考えておるので、そのようにいま努力をいたしておるところでございます。  そういうような状況でございますが、とにかくいま世界が非常な転換期の中にある。そして今日、日本経済が非常に混乱しておる。そういうことは何だと言えば、その転換しつつある世界経済にいかにわが国経済が、わが国企業が対応するか、そういうことで大変な苦心惨たんの対応への努力をしておる、そういうさなかでありますのに、政府が一体いままでのような高度成長下で当たってきておる行政の仕組みでいいのであろうか、こういう問題があるわけであります。そういうことで、政府は、その環境の変化に対応した行政の構え、また同時に、環境が違ってきたその結果、これは税収等もそう多くは期待できない、他方におい社会施設等には金がかかる、そういう中で、とにかくいわゆる冗費節約というか、行政財政合理化というか、これを徹底的にやらなければならぬ時期に来ておる。民間の企業が一生懸命やっておるというさなかで、政府だけが高度成長態勢でのほほんとしていることは許されない。そういう観点に立ちまして、私は行財政の改革の必要性を強調いたしておるわけでありまして、その基本的な考え方につきましては、すでに先月初めにこれを策定し、閣議でもその方針並びに要綱を決定いたしておりますので、これを強力に、精力的に進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それからさらに一転いたしまして、久保田さんは、貿易収支の大幅黒字基調を是正しなければならぬがどうやってやるのだと、こういうお話でございますが、これは、非常に世界じゅうからこのことを迫られておるのです。わが国といたしましてもこの政策をとらなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、その考え方につきましては、数日前にその考え方、全容を発表してありますからここで詳細には申し上げませんけれども、要するに、これは一番大事なことは内需を振興することなんです。つまり景気上昇ということにあるわけでありますが、そのための政策をとっておるということは御承知のとおりであります。そうなりますれば輸入はふえる傾向になってくる。国内市場で売れるものですから、そう海外へあせって売らなくなる、こういうようなことになり、逐次収支均衡という方向へ動いていくことになろう。こういうふうに考えておると同時に、具体的にいろいろ施策をとらなければなりませんけれども、特に東京ラウンド、つまりガットの、関税、非関税障壁、これを全面的に低減を、あるいは撤廃をしようと、こういう交渉でありますね、これはどうしてもわが日本としては積極的にこれを進める立場に立ち、これを成功させなければならぬというふうに考えておりまするし、いろいろ工夫をいたしまして、原材料等の輸入、備蓄のための輸入ということも進めてまいりたい、こういうふうに考えております。しかし、幾ら施策をとりましても、黒字幅がかなりの大幅になることを急にとめることはなかなかむずかしゅうございます。少し時間がかかる。しかし、だんだんそういう方向に動いていくなあという傾向だけは速やかに出していきたい、このように考えておるのであります。  わが国は、いまとにかくアメリカに次いで自由社会では第二の経済力を持つような国になってきた。そのような立場にある日本といたしますと、いま世界が非常に混乱しておる。世界政治の最大のかなめは何だと言いますれば、いろいろありまするけれども、この混乱した政治、経済情勢を早く回復の軌道に乗せる、この一点にあると言っても支障はないくらいな状態であります。  わが日本責任は非常に大きい。その大きな責任を尽くしていかなければならぬと思いまするけれども、その責任を尽くす方途というものは、やはり成長政策というか、国際的公約ともいうべき六・七%を実現する、それからそれに伴いましていろいろな構造不況業種なんかの問題を解決する。そして早く日本景気の安定を図るということ。同時に物価の問題です。いま私は、物価はいい基調で動いておる、ことに下半期になると計数的にもいい状態になってくる、こういうふうに思っておりまするけれども、インフレを海外に輸出するというような、そういう批判を受ける国になっては断じて相ならぬ、このように考えておると同時に、先ほどから御指摘のありまするところの国際収支の問題、これにつきまして、逐次これがそう大きな黒字でないという状態を出現すること、これが国際社会に対する責任を果たすゆえんである、かように考えております。  それから、現下の深刻な雇用不安という問題につきましてのお尋ねでございまするけれども、これも先ほども申し上げましたが、やはり結局は景気の着実な回復、これも雇用の安定というところにねらいがあるわけなんです。公共投資を増額いたしましたということもそれだし、また金利引き下げをやるということもせんじ結めればそこに問題があるのでありまするが、さらにいろいろな制度がありまするから、この雇用対策につきましては、諸制度を積極的に動員いたしまして誤りなきを期してまいりたい、かように考えます。  国立大学の問題につきまして御提言、御所見が述べられましたが、私も御所見を伺いまして、ああ、やっぱり久保田先生はなかなか深く広く考えておられるなあという感を深ういたしたわけでございます。(拍手)ただ、地域社会の問題があるわけであります。過密過疎とか、いろいろ問題がありまするから、そういうような配意もしなければなりませんけれども、久保田さんのお話のあったような精神を基本として、教育は量よりは質である、これを忘れないで対処してまいりたい、かように考える次第でございます。  なお、エネルギー総合対策の問題につきまして種々お話がありました。  第一は資金の問題でありまするが、これは実に頭の痛い問題です。これからいよいよ本格的にこの問題に取りかからなければならぬという段階でございます。  なお、サンシャイン計画でありますとか核融合の問題でありますとか、お触れになりましたけれども、私はこの問題はかなりわが国としても進んでおる。とにかく世界の先端を行くその一つの国であるという立場にあるわけでございます。二十一世紀時代になるとこの問題が非常に深刻な問題になってくるのでありまするが、そのころになってあわててもどうしようもないのです。いまからもう手をつけておかなければならぬ問題である。  私は、こういう角度の問題で、軍事力を持たないわが日本とすると、何かほかの面で世界の平和に貢献しなければならぬ。その貢献するゆえんのものは、とにかくおくれた国々、開発途上国、これへの奉仕、貢献ということもありまするけれども、こういう社会、人類のこれからの生死を決めるというような大きな問題に日本が一役を買うということは、私は、軍事力を持つにかわる大きな貢献であろう、このようにも考える次第でございまして、そのようにいたしたい、かように考えます。(拍手)  それから、国鉄運賃法改正案、健康保険法改正案、一般職給与法改正案、日韓大陸棚協定の実施に伴う国内関連法案についてどういうふうに考えるかというわけでございますが、これらは、何が何でもこの国会において通過、成立させていただきたいということをお願いいたす次第でございます。(拍手)  最後に、いま非常に経済情勢が混乱の内外の情勢下において、福田内閣責任を持ってこれに対処せいというお話でありますが、私は、組閣の当時から申し上げているのです。五十二年という年は、これは内外ともに経済の年である、こういうふうに申し上げておるのです。私は、いろいろの課題を抱えておりまするけれども、この五十二年という年、これはどうしても経済が非常にむずかしい年である、これにもう本当に有効に、賢明に対処することが私の内閣の使命である、こういうふうに申し上げてきておるわけでありますので、困難な世界情勢の中で、この日本経済をどういうふうに安全に運営するか、責任を持って対処をいたします。(拍手)     —————————————
  10. 保利茂

    議長保利茂君) 細谷治嘉君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔細谷治嘉君登壇〕
  11. 細谷治嘉

    ○細谷治嘉君 いま、国民は、不況とインフレから一日も早く抜け出したいと熱望しております。  福田総理は、かつて石油ショックと狂乱物価日本国じゅうを覆っていたとき、日本経済は全治三年の重病であると診断したのでありますが、あれから三年以上過ぎたにもかかわらず、いまだにその出口を見出すことができず、八甲田山の雪中行軍のごとくさまよい続けております。(拍手)他方、国際経済の場では、世界の三つのエンジンの一つと自認しながら、経常収支の大幅黒字などから、失業輸出日本と、厳しい批判と追及を諸外国から受けているのであります。総理所信表明演説で述べたように、確かにわが国の目指すべきものは生きがいのある日本経済建設と世界人類への貢献であり、そのため斬新な構想のもとに、新しい創造と取り組むべき重要なときであります。  私は、この認識と視点に立って、日本社会党を代表いたしまして、五十三年度予算編成を展望しつつ、補正予算を中心に内政問題に重点を置いて、以下、若干の質問を展開してみたいと思います。(拍手)  まず第一の問題点は、五十二年度予算とその背景となった経済の見通しが、現実との間に大きな乖離を生んでいることであります。  総理は、本年一月三十一日の施政方針演説において、「五十二年度予算においても、需要喚起の効果もあり、国民生活の充実向上と経済社会の基盤整備に役立つ公共事業等に重点を置くと同時に、雇用安定のための施策を充実することにいたしました。これによりわが国経済には六・七%前後の成長が期待されますが、この目標は先進工業国の中でも最も高い水準であり、国際社会におけるわが国経済への期待にこたえるものと考えます。」と述べたのであります。それから今日まで満八カ月以上が経過いたしましたが、現実は大きく食い違っております。だからこそ九月三日の総合経済対策の閣議決定を生み、今回の補正予算となったことは明白であります。  私が特に指摘いたしたい点は、実質成長率六・七%を守るため、従来同様の公共事業重点、地方財政、個人負担強化の手法を取り続け、何ら斬新な構想も新しい創造も見られない点と、国際社会への貢献という美名のもとで輸出に重点を置き、当初の経常収支七億ドルの赤字を今回六十五億ドルの黒字と驚くべき修正を行ったことであります。  本年度の国際経済を見ますと、OPEC諸国の黒字四百億ドル、日本の黒字約八十億ドルと見積もられ、経済的混乱はやがて政治的混乱に発展し、世界の安定と平和そのものを脅かす事態となることが憂慮されているのであります。  現に、過般のIMF、世界銀行の総会でブルメンソール米財務長官は、ことしの日本の経常収支の黒字は九十ないし百億ドル、貿易収支は百五十億ドルに上ると見通すとともに、「こうした膨大な黒字は国際的な調整過程を困難にするものであり、重大な懸念を抱いており、日本の黒字が早急に減らない限り、対米輸出に対する圧力は高まり、保護主義を正当化することになる」と強い調子で警告を発しており、また、ヒーリー英蔵相は、「日独の景気刺激策を歓迎するが、遅きに失した。黒字国は輸入を拡大し、輸出依存をやめてほしい。強い国の黒字縮小が進まないと弱い国は輸入制限措置をとりかねない」と強く批判しておるではありませんか。とりわけ私たちは、西ドイツに比し対日批判がはるかに強かった点に注目しなければなりません。  経済企画庁は、昨年度成長率五・八%のうち、内需四・一%、輸出一・七%で、輸出重点であったが、今年度の六・七%は、内需六%、輸出〇・七%で、国内主導型拡大になるはずと言っていますが、総理所信表明では「国際社会の一員として対外調整を図るための努力が必要と考えられる情勢にあります。」と述べただけで、春以来の見通しの誤りについては一片の反省の弁すらないことは、無責任の一語に尽きると思うのであります。(拍手)  さらに、総理が述べているように、果たしてわが国経済は緩やかな拡大基調にあるのでしょうか。企画庁発表の景気動向指数は、五月以降五〇%ラインを下回り、七月には二〇%に落ち込み、GNPの四—六月は前期比一・九%と全く逆の方向を示しております。GNP重点主義の誤りを示し、景気の深刻さを証明するものと考えなければなりません。総理の確たる答弁を願いたいのであります。  第二は雇用の問題であります。この点に関してはすでに高沢君の質問がありましたので、私は、別の側面から論及してみたいと思います。  総理は、経済対策の中でも特に重視しているものは雇用問題であるとし、「若年労働者にその能力を発揮せしめ、中高年齢層に対し、再就職の機会を与え、いやしくも雇用不安を生ずることがないよう雇用安定資金制度を積極的に活用し、職業訓練を機動的に実施します。とりわけ構造的な問題を抱えた不況業種の離職者に対し、周到な対策を講じます。」と結構な言葉でつづっているのでありますが、実態は安易なものでなく、総理の認識不足を物語っております。一体全体、今度の補正でどれほどの雇用機会が確保されるのか、まず具体的に明らかにしていただきたいのであります。  政府公共事業の上期七三%の前倒しを推進した結果、八月末の契約率は前年同月の五八・八%を上回り六五・三%、また地方執行の公共事業は五八・五%と順調に推移してきた模様でありますが、全体としてなお停滞色に覆われており、地方経済に暗い影を落としておるのであります。  八月の有効求人倍率は〇・五三と前月をわずか上回っておりますが、たとえば神戸市のそれは〇・三五まで下がり、京都府では、来春中卒予定者に対する求人者数は、七月末現在で前年同月比二六・九%の減少で、かつての金の卵ではないのであり、特に中高年齢者の場合は深刻であります。加えて、繊維、平電炉、造船など、不況業種を抱えた地区は景気回復の足取りは見られないのであります。しかも、新幹線型と言われる景気情勢で、公共事業の発注額は、四—六月、全国で一二・一%、近畿〇・八%、九州ではマイナスの伸びであり、追加公共事業は、全国各地域の景気実態に即応し、財源措置も含めた配分、執行が要望されておるのであります。加えて、深刻な雇用情勢に対応し、政府は、責任ある政策を進め、必要に応じ雇用対策臨時立法をも考慮すべきであります。  九月二十八日、通産省は、危機に直面する石油化学業界を救済のため、ナフサ輸入枠を当初計画より百五十万キロリッター拡大し、九百万キロリッターとする方針を固め、また息切れ倒産防止の緊急策として、水産かん詰め、ゴム製履物など二十三業種の追加指定をし、中小企業連鎖倒産防止共済制度の立法化等の対策を進めているようでありますが、果たしてこれで総理の言う周到な対応ができるでありましょうか。御所見を伺いたいのであります。  申すまでもなく、雇用機会を継続的に創出していくためには、新しい需要を掘り起こし、国民のニーズに即応し、国際関係などを考慮した新しい産業構造と深い関係があることは申し上げるまでもありません。  産業構造考える場合、わが国にとってきわめて重要な基本問題が資源エネルギーであることは言をまちません。エネルギーは、長期的課題であると同時に、当面の問題でもあります。政府は、石油代替エネルギーの重要な柱として原子力発電に力点を置き、核燃料サイクルの確立などを推進していますが、安全性、稼働率の極端な低下によるコスト高など、技術的、経済的に多くの難問題を残しております。したがいまして、当面は省エネルギー、サンシャイン計画を推進するとともに、国内唯一のエネルギー資源である石炭の確保を前提に、外国炭の活用等、強力な政策が大切だと信ずる次第でありますが、総理所信を伺いたいのであります。  第三は、行政改革であります。  今年二月、総理は、内閣記者会との懇談で、夏までには行政改革の成案を得て来年度予算に盛り込みたいとの決意を表明し、八月二十日には、「省庁統廃合を中心行政改革を断行したい」と言明いたしましたが、八月末に閣議決定を見た行政改革大綱を見ますと、初めの積極姿勢は完全に消えうせ、具体性のないものに後退してしまいました。総理の決意と指導力が問われているゆえんであります。  総理は、「新しい時代への転換期に当たって、政府みずからも率先して各機関における冗費節約と能率的な行政の遂行に努め、中央、地方を通じ行財政の積極的な改革を行うことは当然で、今後、関係法律案を逐次国会に提出する考えだ」と言明しておりますが、大山鳴動ネズミ一匹の感がいたすのであります。  過般の政府主催の全国知事会議で、奥田知事会会長が、「今回の行革に際しては、国の地方出先機関の整理、許認可事務の合理化、補助金制度の改善、地方事務官制度の廃止などについても抜本的改革を断行してほしい」と要望したのに対し、政府答弁は何ら具体性がなかったと報ぜられております。  かつて、私は、総理が行管長官の職にあったとき、「地方事務官制度の改廃なくして行政改革はない」と断言されたことを思い出し、「別途検討する」と述べられたことに対し、さびしさを感じたのであります。  私は、総理行政改革に対する基本認識に重大な欠陥があると思うのであります。そもそも行政国民生活と不即不離のものであり、わが国経済社会の発展に即応して、機能的に対応できる組織と運営でなければなりません。三十年代以降、国の経済は寡占化、独占化の傾向を進め、行政もまた中央集権化を進めてきたのでありますが、いまや、福祉国家建設を国是とする以上、中央と地方との任務、責任を明確にすべきときであります。行政改革は、単なる機構いじり、安上がり、省庁間のなわ張り争い、いわんや権力者の政治宣伝では断じて済ますことができないのであります。(拍手)  以上について、総理の決意を承りたいのであります。  第四は、来年度税制改正中心に、あわせて地方財政の問題について質問をいたします。  すでに一般消費税については高沢君の質問がありましたが、私もまた、税制改正の方向は当面不公平税制の抜本的改革がすべてであり、逆進性の著しく高い一般消費税には絶対に反対するものであります。(拍手)  ところで、新聞の報ずるところによれば、坊大蔵大臣は二十七日、ワシントンでの記者会見で、一、中期税制の答申を受け、経済情勢と突き合わせて、来年度の税制計画について考えてみたい、二、健全財政を打ち立てるために増税を避けることはできない、三、直接税だけでは税率引き上げが高過ぎる、消費税だけでは新税のウエートがかかり過ぎる、どう配分していくかは、国会の場で国民の選択を願いたいと述べ、来年度一般消費税の創設を示唆したと伝えられております。  一方、福田首相は、三十日の国民生活審議会総会において、景気物価の現状を見れば、すぐやるということではなく、慎重に対処したいと述べ、両者の間に意見の差があるようであります。問題が重要なだけに、まず真意を伺っておく次第であります。  次に、この一般消費税と地方財政との関連であります。  一昨四日、税制調査会の答申は、具体的対処の方向として、(イ)国税において新税を創設するに際し、その一部を売上高、従業員割その他適切な基準により都道府県に配分する方向、(ロ)地方財源として配分される新税のうち地方税とされる部分については、事業税の一部にこれを加えることとし、現行の所得課税方式と併用する方法の二案が併記され、市町村の税源充実の必要性などを含めて、新税導入時までに最終的な結論を得ることとされております。  そこで、お伺いいたしたい点は、仮に一般消費税が創設された場合、いずれをとるべきかであります。私は、地方自主財源充実の観点から、後者を採用すべきであり、また、現行制度のたてまえから、国税部分は地方交付税の算定基礎に加えるべきであると思うものであります。総理初め関係大臣の率直な考えを伺いたいのであります。  さらに、全国知事会は、財政収入の安定化を図るため、法人事業税の性格に基づき、昨年十二月、外形課税を導入することを決意し、激変を避けるため、いわゆる所得、外形課税の折半方式を決定し、五十三年度から全国一斉に実施する方針を決めています。  事業税は、都道府県税収の四割程度を占める重要な税目であります。しかるに、税調答申は、一般消費税の実現と同時に、現行の外形課税の道を閉ざす意図があることは明白であります。これは事業税の生い立ちと性格を忘れ、地方の課税自主権を侵害するものと断ぜざるを得ないのであります。しかと関係大臣の見解を承りたいのであります。  ここで、私は、五十三年度地方交付税について伺っておきたいのであります。  今回の補正で地方交付税額は九百六十億円削減され、借入金で穴埋めされております。周知のように、地方財政は、ここ三年続けて大きな財源不足に見舞われたのでありますが、いずれも緊急避難の名で、主として借入金で措置されてまいりました。いまや地方交付税法第六条の三第二項は完全に死文化し、法違反がまかり通っております。来年度もまた二兆円前後の財源不足が見込まれております。制度を改正するか、交付税率を引き上げる以外に道はないのであります。総理及び関係大臣の確たる見解を伺いたいのであります。(拍手)  次に、土地課税緩和の動きであります。  総理は、過般、土地政策の見直し、特に土地譲渡益重課税、特別土地保有税の軽減、市街化調整区域の見直しを指示したと伝えられております。狂乱物価の際、土地を買いあさった企業の救済だとも言われております。  かつて、宅地供給を促進するという名で土地譲渡税の軽減が行われ、その結果、地価はかえって上昇し、地主だけが暴利を得たことは記憶に新しいところであります。いま再び地価高騰の兆しが見えるとき、二度と過去の失敗を繰り返すべきではありません。総理の明快なお答えを得たいのであります。  なお、この際、住宅政策の基本について簡単にお伺いいたします。  今回の補正による十万戸の融資住宅は、景気対策の大きな柱となっておりますが、現在、ミニ開発の問題、あるいは狭小劣悪な住宅に住み、所得の三割以上の家賃を支払う低所得者が三百万世帯もいることを忘れてはなりません。近年、公営住宅、公団住宅の計画と実績は、いずれも後退を続けております。私は、住宅政策の柱は公共住宅、特に公営住宅に置くべきだと思いますが、総理、いかがでございますか、改めてお答えを願いたいのであります。  第五は、三全総に関してであります。  今年八月二十五日、国土庁は試案を発表いたしました。試案は、従来の失敗にかんがみ、地方公共団体と住民の意向をしんしゃくし、生活、環境にウエートを置いた下からの計画方式をとり、その限りにおいては賛成でありますが、定住構想の裏づけとすべき産業構造政策等がほとんど欠如し、絵にかいたもちの感がいたすのであります。とりわけ、今後十年間、公共投資二百四十兆円と見込まれていますが、「地方財源の確保、安定について適切な措置を講ずる」とされ、全く具体性を欠いておるのであります。地方財政の実態はすでに述べたとおりであり、また、自治省の地方財政長期見通しによれば、租税負担率を三%引き上げた場合でも、昭和六十年度には十三兆円の公共投資額が不足するとされていますが、自治大臣としていかがお考えでしょうか。  また、二次全総計画にのっとって進められた苫小牧東部や、むつ小川原の大規模工業基地開発では、笛吹けど企業の誘致は行われず、その推進体である第三セクターは莫大な借金で利子も支払えず、破産寸前と言われております。試案の段階だと逃げないで、過去の失敗を繰り返さないよう、慎重な配慮と実現可能な具体的計画の作成を望んでやまないのであります。(拍手)  最後に、総理所信表明では一言も触れられていない点、まことに遺憾に存ずるのでありますが、過般の北海道有珠山噴火は、予測し得ない異常かつかつて類を見ない甚大な被害を生じておるのであります。私は、心からお見舞い申し上げると同時に、その対策として、政府は現行法を最大限に活用するとともに、特別立法をもってきめ細かい救済対策を講ずべきであることを強く要請いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇〕
  12. 福田赳夫

    ○内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  経常収支の黒字問題で諸外国から大変いま批判を受けておるということは、お話しのとおりでございます。これに対してどういうふうに対処するか、考え方は先般発表しておりますので御承知と思いまするけれども、さてそれがどういう程度の効果を上げますかということになりますと、これが直ちに効果をあらわしまして、そうして今年度は、いま政府では六十五億ドルの黒字、こういうふうに見ておりますけれども、さあ、上半期に比べまして下半期が決定的に大きな違いが出てきたというようなわけにはなかなかいくまいと思うのです。しかし、大体上半期に比べまして下半期におきましては政府の施策の効果は出てきたなという傾向を諸外国において看取できるような状態にはぜひいたしたい、このように考えておるわけでございまするが、これを実現するためには皆様の御協力を得なければならぬ問題が特にたくさんあるのです。  たとえば東京ラウンド交渉一つをとりましても、国内的にずいぶん御協力を願わなければならぬ問題があるわけでありまして、しかし、国際社会の一員として日本国が責任を果たさなければならぬということは、これは非常に大事な問題でありますので、いろいろお願いを申し上げますが、御協力のほどはぜひお願いをいたしたい、かように存ずる次第でございます。  また、経済の実態は統計で見るところと違いまして非常に深刻だ、現状認識をどう見ておるのだというお話でございますが、これは高沢さんにもお答え申し上げましたが、現在日本経済全体のスケールとしては上昇過程で動いておる、しかも、その間におきまして国際収支は批判を受けるような状態だ、あるいは物価はだんだんと安定基調を強めておるというので、大混乱下の世界情勢の中では際立っていい動きなんです。しかし問題がある。問題がありますのは構造不況問題、中小企業問題、このように考えておるのでありまして、そういうとらえ方でいま経済政策を運営いたしておるところでございます。  そういうことを考えましても、特に気にかかりますのは、御説のとおり雇用問題でございます。雇用問題につきましては、どうしてもやはり景気全体を押し上げる必要がある。そこで、六・七%成長を実現するための施策、これを進めていることは御承知のとおりでありますが、同時に、経済全体が安定しなければ、先々の雇用問題、これが安定しない。そこで、いろいろ困難はありまするけれども、構造不況対策、これを進めなければならぬ、こういうことでございますが、それにいたしましても、当面出てくるところの雇用を一体どうするか、この問題につきましては、先ほど来るる申し上げておりまするとおり、職業の転換あるいは職業の訓練、あるいはさらにつなぎのいろいろな措置等、きめ細かに対策を講じていくつもりでございます。  それから、先々の雇用につきましてはそれじゃどうするんだといいますると、やはりこれはある程度の高さの成長ということが必要だろうと思うのです。資源エネルギー有限時代でありまするから、成長の高さ、これはなるべくなら低目にしたいのです。しかし、雇用ということを考えまするときに、そう低くこれを抑えるわけにいかぬ。やはりある程度の完全雇用的な社会というものを展望しながら考えなければならぬというふうに考えておりますが、その低くなければならぬという資源エネルギー上の要請と、また、社会を活力あるものにしなければならぬその前提であるところの雇用、このことを考えての高くなければならぬという成長への要請、これの接点は一体どうだということが非常に大事な問題ですが、ただいま私は、それは大体六%程度のところがその両者をまずまず満足せしめる接点ではなかろうか、そのように考えておるのであります。  また、構造不況問題に触れられまして、中小企業連鎖倒産防止共済制度創設論を提唱されましたが、私は、これは一つの考え方である、こういうふうに考えております。政府の方でも十分検討していきたい、かように考えております。  なお、エネルギー問題に触れられまして、石炭を利用せよ、省エネルギー政策を進めよ、サンシャイン計画も進めよ、これはもう全く細谷さんのおっしゃるとおりであります。しかし、細谷さんのトーンとして、核エネルギー、これについて余り強調されなかったことは、私の意外とするところであったわけであります。(拍手)やはり石炭利用、省エネルギーあるいはサンシャイン、これはもう本当に大事だと思います。しかし、これから二十一世紀への資源エネルギー問題の谷間をどうやって切り抜けるかということを考えますと、その主軸は何といっても核エネルギー政策に依存せざるを得ないのであります。この点をつけ加えまして、お答えといたしたいと思うのであります。(拍手)  行政改革につきまして、私が意欲を失っておるというようなお話であれば、これはとんでもない間違ったお考えのようであります。本当にいま世の中が転換をしておる、その中でみんな苦しまなければならない、特に構造不況産業だ、中小企業だ、ずいぶん苦しんでおるのです。そういう中で、政府がいままでの高度成長姿勢で行政を運営していいのかということは真剣に反省されなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。そのためには、政府は率先して行政改革、財政改革を行わなければならぬ、こういうふうにも考えておるのであります。その大方の考え方は、去る九月三日に、九月二日でしたか、もう発表したじゃございませんか。それをいま逐次具体化を詰めておるという段階なんです。この国会に間に合うようにその詰めばなかなかできませんけれども、次の通常国会までに具体案ができましたものにつきましては、御提案をして御審議をお願いいたしたい、かように考えておりますので、ぜひその際は御協力を賜りたい、このように存ずるのであります。  それから、行政改革で国と地方の事務の配分を並行して考えよということでございますが、これはもう当然そのように考えなければならぬ問題です。住民の身近なところで住民の意思を反映しながら行政が行われることが望ましい。そういう行政につきましては、これは国が引っ込んで地方がそれに出ていく、こういうことでなければならぬわけでありますが、そういう考え方をもちましてこの問題には取り組んでまいります。  それから、さらに税制の問題に触れられまして、私と大蔵大臣との間に見解の相違があるやに聞いておるがというようなお話でございますが、そのようなことはございません。先ほど申し上げましたとおり、中期税制答申はあくまでも中期的展望を示したものであります。もとより政府がお願いいたしまして答申を受けたのでありまするから、それは尊重しなければならぬ立場ではございまするけれども、それをいかに採用するか、その時期と具体的な内容の詰め、そういうことにつきましては、毎年度税制調査会に諮った上、政府においてこれを実施せられたい、こういうようなことで、いまこの段階におきまして、五十三年度においていかにこの問題を処理するか、それにつきましては、ただいま具体的な考え方を持っておりません。これにつきましては、大蔵大臣におきましても全く同意見でございます。  それから、仮にこの税制調査会が提言しておりまするところの一般消費税が採用された場合に、それを一部地方に回すべきじゃないか、また地方交付税交付金の対象にすべきではないか、こういうようなお話でございますが、まだ一般消費税をどうするか、これも考えておらぬ、こういうような段階におきまして、そこまで内部の詰めはいたしておりません。  それから、五十三年度において多額の地方財源不足が見込まれるので、地方交付税の税率を変更すべきではないかというお話でございますが、来年五十三年度におきましても、また地方財政非常に苦しいことと思います。しかし、この交付税率の改正問題、これは非常に重大な問題です。簡単にここで私がお答えをするというわけにはいかない、そういう性格のものでございますが、地方制度調査会等の意見も聞きながら結論を出さなければならぬ問題かと思います。しかし、いずれにしてもはっきり申し上げますることは、五十三年度におきましても、地方財政の運営に支障があるというような状態にはいたしません。これは明快に申し上げます。(拍手)  それから、土地税制の緩和は問題が多いので緩和をすべきじゃないというような御所見でございますが、先ほど申し上げたとおり、土地税制、これは枠組みを変えるのは妥当じゃない、こういうふうに私は思うのです。しかし、いろいろ適用上の細目なんかにつきましては、これはいろいろ検討する余地があるのじゃないかという意見を言ってくる人がかなり多うございます。そういうことで、この枠組みを変えないというその中でこの土地税制を検討するということは、検討するに値する問題である、こういうふうに私は考えておる次第でございます。しかし、その際に、土地税制あるいはその他のいろいろな土地に対する施策を変えたからそれによって地価が上がってくるという傾向を助勢するようなことがあってはならぬわけでありますから、それは基本的な考え方として厳守してまいりたい、かように考えております。  それから、住宅政策の基本的な考え方として、公団、公営、そういうようなものを中心にした考え方はどうかというのですが、これも先ほど申し上げましたが、そう偏った考え方じゃなくて、まあ民間住宅も、また公団、公営住宅も、また両者を国民が求めておる、そのバランスある進め方の方が妥当ではあるまいか、そのように考えております。  三全総についてもお尋ねでありましたが、これは人口の見方などにつきましては、余り都市集中が激しくなっては困るという配慮もいたしまして人口の数字を出しております。同時に、広域市町村圏、また広域生活圏、既存の仕組みとの調整をどうするかということについてのお尋ねでございますが、これは十分にその調整がとれるようにした上実施に移す、このような考えでございます。  第三セクター方式の行き詰まりにつきましてのお話でありますが、確かに私は、国それから地方公共団体、それから民間、この三者が一体となってある一つのプロジェクトを進めるという考え方、これは一つの有力なる考え方だと思うのです。ただ、いまこれが御指摘のようにうまく動かない。動かないのは、四年続きの低成長下で企業がかなりまいっておる。そういうようなことで、企業の力というものが低下しておるというので、三本足のその一つがなかなかそろわぬ、こういう問題が出てきていまのお話しのような感触も出ておるというふうに思いますけれども、さあそれだからといって、この考え方が将来にわたってこれはもうだめになったんだというようなとらえ方をするのは妥当ではないのではあるまいか、私はそのように考えるのであります。  最後に、有珠山の噴火に対しましては、政府として本当にできる限りの対策をとっておるわけでありまして、いま政府といたしましては、これに対して特別の立法が必要であるというふうには考えておりません。既存の立法でできる限りの対処ができる、このように考えておるということを申し上げて、終わります。(拍手)     〔国務大臣坊秀男君登壇〕
  13. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お答え申し上げます。  一昨日四日、税制調査会から中期の税制についての、これからの税制をどうするかということについての答申をいただきました。この答申の内容はきわめて広範なものでございまして、内容が全く広く、いろいろな各般のことについて熱心なる御答申をいただいておりますが、この答申は政府といたしましても尊重していくべきであり、いかねばならない、かように考えております。  しからば、この広範なる事項の中で一体どこまでこれを実現していくかということは、これは中期税制でございますから、これからの各年度における日本経済の実勢と申しますか、現状と申しますか、これをしさいに観察いたしまして、そしてこれに対しまして、これらの答申を受けた御提言に対しまして、この御提言を具体化していく、こういうことでございます。  したがいまして、四十三年度におきましても、もちろんそういったような方針でもってこれをやっていくということで、今日は……(「四十三年度か」と呼ぶ者あり)間違えました。謹んで訂正をいたします。五十三年度であります。  それで、現在のところは、総理が御答弁せられましたとおり、五十三年度の税制についてこれをどういうふうに取り上げていこうかということについては、まだ決まっておりません。いわんや今日のところ、五十三年度経済見通しもまだ固まっていないというような状態でございますが、そういったようなこととよくにらみ合わせまして決めていきたい、かように考えておる次第でございますので、さようにひとつ御了承のほどを願います。  それから、提言の中に一般消費税というものがございます。これは税制の中では非常に大事な問題であることはもう御指摘のとおりでございますが、さて、その一般消費税をもしも——これは御質問でございますからお答え申し上げます。もしもこれを取り上げていくということになったならば、一体この一般消費税と地方税との関係をどうするのか、こういう御質問であったかのように私はお受けいたしておるのでございますが、それにつきましては、こういうことを書いてございます。ちょっと読みますからね。(発言する者あり)いや、これは細谷さんが御指摘なさったことでございますからね。具体的な方法については、さしあたり一これは答申の言葉でございますからね。細谷さん二つあるとおっしゃる。そのとおりなんです。一つは、「国税において新税を創設するに際し、その一部を売上高、従業員割その他適切な基準により都道府県に配分する方法、」これが一つでございます。第二は、「地方財源として配分される新税のうち」(「それをどうするのかだ」と呼ぶ者あり)いま申し上げますから……。「新税のうち地方税とされる部分については、事業税の一部にこれを加えることとし、現行の所得課税方式と併用する方法」、これが第二の方法でございますが、これが考えられるが、なお、政府において、「さらに新税の創設に伴う国、地方を通じる適正な税財源配分のあり方、納税者の便宜、国境税調整等の観点を含めて」検討を続け、その結果を踏まえて一般消費税導入時までに最終的な結論を得ることが適当である、こういうふうに指摘されておるのでございますが、この点につきましては、今後政府におきまして、自治省と大蔵省とが中心となりまして熱心にこれを検討してまいりまして、一応のまとまりがつきましたならば一これを税制調査会にもう一遍持っていきまして、そうして最終的な結論を得たい、かように考えておるのでございまして、どうぞひとつさように御了承願います。(拍手)     〔国務大臣石田博英君登壇〕
  14. 石田博英

    国務大臣(石田博英君)特に私の御指名がなかったようでありますが、せっかく議長から呼ばれましたので、所管のことについてお答えをいたしたいと存じます。  雇用問題が重大であり、かつ雇用問題を処理するのには、雇用問題だけ別に取り上げて処理はできないことは言うまでもないのでありまして、したがって、五十二年度当初予算の前倒し発注あるいは今回の補正予算等の効果が経済情勢の改善に役立つことを大きく期待をいたしております。  しかしながら、今回の雇用情勢の大きな特徴は、同じような石油ショックを受けながら欧米各国に比べて完全失業率が低いというその裏側には、わが国の終身雇用という雇用慣行、それから雇調金制度というようなものが背景になっておりますので、非常に多くの過剰雇用が存在をしておるわけであります。したがって、経済の回復が直ちに雇用の改善にいくのではなくて、その所要労働力は過剰に雇用しておる労働力を振り向けるという段階がまずあるわけでございます。それからもう一つは、時間延長によって賄っているという傾向もございます。さらにいま一つは、公共事業が、予算の成立から発注、工事施工という間にかなりの時間的な経過がございます。しかし、前倒し発注が効果を順次あらわしてきていると思われるのは、先ほど御発言の中にありました七月の有効求人倍率と八月の有効求人倍率の間にわずかながら改善の跡が見え始めております。これは主として建設業で見られておりますので、やはり順次その効果があらわれてくると考えております。  雇用対策は、一つには、いわゆる構造不況業種というものを対象といたします現在当面をしておる緊急課題に対する対処の仕方でありますが、これは雇用安定資金制度の活用あるいは構造不況業種から離職者雇用してくれる方々に対する奨励措置、あるいはまた求人の積極的な開発、さらにまた勤労者の職業転換の移動による住宅その他の準備、こういうことによって対処しようと考えておりますが、いま一つは、高齢化社会あるいは高学歴社会、そういうものを背景といたしまして、中長期にわたった展望と方針の確立が必要であろうと思うのであります。  そこで、先般、雇用問題閣僚懇談会を設けまして、将来雇用吸収力がわが国の諸条件の中で見込まれる産業は何であるか、あるいはまた、横ばいあるいは低下を示すものの中でも所要の措置を講ずれば何とか改善ができるものは何であるか、その量はどれぐらいであるか、いわゆる構造不況といわれるものはどれぐらいの雇用量を持っておるか、そしてどれぐらいの転換を必要とするものであるかというものを見きわめていきたいと思っておる次第であります。その上に立って、中長期の雇用対策というものを講じたいと存じます。  それからもう一つは、雇用の創出でございます。この雇用の創出について、いま鋭意検討を命じておるところでございます。  また、新規学卒者については、これは求人の総数と大学卒業生の求職者の総数とのバランスはとれておる、ただ、企業の規模あるいは職種についてアンバランスが非常にあるところに問題があるわけであります。しかし、先ほど久保田さんのお話にもありましたように、教育が社会の需要とマッチするように改善をされることを、労働行政担当者としては熱望する次第でございます。(拍手)     〔国務大臣小川平二君登壇〕
  15. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) お答えいたします。  法人事業税の外形標準導入の問題につきましては、この税が、本来、企業の事業活動と地方公共団体の与える行政サービスとの間の応益関係に着目して課する物税でございますから、外形標準をとることが望ましい、同時に、そのことが都道府県に対して安定した税収を与えるゆえんであろう、こう考えて、自治省といたしましては、この実現を強く希望いたしておるわけでございます。  これを実行いたしまする際には、税法の改正によって統一的な形で実行することが望ましい、かように考えて、税制調査会の御審議を煩わしたわけでございますが、税制調査会からは、先ほど先生が引用なさり、大蔵大臣が改めて朗読をいたしましたような趣旨の答申をいただいておるのでございます。そして、この問題については、新税が導入される時点までに具体的な結論を得るべきである、かようなことに相なっておるわけでございまするので、ただいま鋭意検討を始めておるところでございます。その際、御指摘のありました構想については十分研究をいたしまするし、あるいはまた、細谷先生は十分経緯を御高承のことでございまするが、全国知事会とも隔意なき話し合いを遂げまして、適正な結論を得たいと考えておるわけでございます。  それから、明年度において交付税率の変更をするのかしないのかという御質疑でございます。本年度におきましては、交付税率の変更はせずに、制度の改正をもって対処いたしたわけでございます。来年度の地方財政の状況というものをただいまの時点で的確に予見するということははなはだ困難でございまするが、いずれにしても相当巨額の財源不足を生ずるに違いない。地方交付税法六条の三の二項が想定いたしておりまするような事態が出てくるということは、率直に申して大いにあり得ることだと存じます。その際、いかなる方法でこれに対処するのかということは、ただいまの時点ではっきり申し上げることはむずかしゅうございまするが、総理大臣から答弁を申し上げましたように、地方財政の健全な運営を阻害せざるような万全の措置を必ずとらなければならないと考えておりますので、そのように御了承いただきとう存じます。(拍手)      ————◇—————  裁判官訴追委員辞職の件
  16. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) お諮りいたします。  裁判官訴追委員瀬戸山三男君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————  裁判官訴追委員選挙
  18. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) つきましては、この際、裁判官訴追委員選挙を行います。
  19. 瓦力

    ○瓦力君 裁判官訴追委員選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
  20. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 瓦力君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  議長は、裁判官訴追委員に塩崎潤君を指名いたします。      ————◇—————
  22. 瓦力

    ○瓦力君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明七日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
  23. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 瓦力君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時一分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 鳩山威一郎君         大 蔵 大 臣 坊  秀男君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 渡辺美智雄君         農 林 大 臣 鈴木 善幸君         通商産業大臣  田中 龍夫君         運 輸 大 臣 田村  元君        郵 政 大 臣 小宮山重四郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 長谷川四郎君         自 治 大 臣 小川 平二君         国 務 大 臣 石原慎太郎君         国 務 大 臣 宇野 宗佑君         国 務 大 臣 倉成  正君         国 務 大 臣 園田  直君         国 務 大 臣 田澤 吉郎君         国 務 大 臣 西村 英一君         国 務 大 臣 藤田 正明君         国 務 大 臣 三原 朝雄君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君      ————◇—————