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1977-11-18 第82回国会 衆議院 法務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十八日(金曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 濱野 清吾君 理事 保岡 興治君    理事 山崎武三郎君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 高橋 高望君       小坂善太郎君    篠田 弘作君       田中伊三次君    福永 健司君       鈴木  強君    西宮  弘君       飯田 忠雄君    正森 成二君       鳩山 邦夫君  出席政府委員         法務政務次官  青木 正久君         法務省矯正局長 石原 一彦君  委員外出席者         法務大臣官房営         繕課長     増井 清彦君         法務省民事局第         三課長     清水  湛君         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         法務省刑事局公         安課長     石山  陽君         外務省アジア局         中国課長    田島 高志君         大蔵省銀行局保         険部保険第一課         長       萱場 英造君         厚生省援護局援         護課長     田中 富也君         中小企業庁指導         部組織課長   松田 岩夫君         郵政省貯金局第         二業務課長   平林 一郎君         法務委員会調査         室長      家弓 吉己君     ————————————— 委員の異動 十一月十六日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     水田  稔君 同日  辞任         補欠選任   水田  稔君     日野 市朗君 同月十七日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     馬場  昇君 同日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     西宮  弘君 同月十八日  辞任         補欠選任   平林  剛君     鈴木  強君 同日  辞任         補欠選任   鈴木  強君     平林  剛君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    ○上村委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 会期も終わりになってまいりましたので、この際、従来からの懸案の問題につきまして政府側の所信と今後の方向についてただしてまいりたいと存じます。  まず、本委員会がかつて附帯決議を付しまして政府実行を促しております司法書士法改正について御意見を伺いたいと存じます。  附帯決議を付しましたのはすでに数年前でございまして、これが実行が遅々として進んでおらないように思います。第一に、次期国会司法書士法政府提案ができるかどうか、まずそれを伺います。
  4. 青木正久

    青木政府委員 司法書士法改正いたしまして国家制度に導入するという問題につきましては、司法書士制度充実発展させる意味からこれが検討をしているところでございまして、目下、日本司法書士会連合会法務省民事局とが鋭意検討協議を重ねているところでございまして、できるだけ早く成案を得て国会に提出したい、こう考えております。
  5. 横山利秋

    横山委員 できるだけ早くということは、すでに何回も歴代の法務大臣に伺ったことでありますが、私がお伺いしているのは、次期国会上程ができるのかどうか、するのかしないのかという点であります。
  6. 清水湛

    清水説明員 お尋ねの問題につきましては、私所管の課長といたしまして、現在のところ、非常に頻繁に日本司法書士会連合会協議検討を重ねている段階でございまして、私どもの希望といたしましては、できるならば次期通常国会司法書士法の一部改正案という形で提案したいということで、問題点を現在鋭意詰めているところでございます。まだ最終的な成案を得ておりませんので、果たして次期通常国会に提案できるかどうか、私ども事務レベル段階では必ずしもはっきりいたしませんが、そういう方向で鋭意努力しておるということで御了解いただきたいと思います。
  7. 横山利秋

    横山委員 二つの問題があります。  一つは、余りにも遅過ぎるから次の通常国会にはもはや提出をすべきであるというのが私の主張でありますが、同時にその内容であります。  一言で申せば、いまの試験制度国家試験に切りかえるということだけなら意味がない、それはおわかりのことだと思うのであります。両方とも満たさなければなりません。次期国会に提案し、かつこの司法書士法は数年来の懸案であり、改正する以上はそれにふさわしい内容が盛られなければならぬ。ふさわしい内容とは何か。要するに、一つ司法書士の仕事の社会的な価値を認め、その使命の重要性にかんがみる内容であること。もう一つは、それに伴って国家試験に伴うさまざまな問題が整理されること。もう一つは、自主権といいますか、司法書士会というものの今日の団結度合い研修度合い等を含めて、いまよりももう少し自主権が確立されるということでなければ意味がない。あえてつけ加えるならば、かねがね私が申しております公共嘱託制度についてもこれと相関連して改正がされる、それらがなくてはならぬと思うのですが、御意見はどうですか。
  8. 清水湛

    清水説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘問題点、まさに私どもそういうような方向で具体的に、そうであるとするならばどういう形をとったらよろしいかというようなことをいま協議検討しているわけでございます。私どもも、たとえば登記制度の問題にいたしましても、登記制度を支えているのは法務局の職員であるとともに司法書士であるという認識に立ちまして、司法書士制度充実発展を心から願うという点は全く同じでございまして、そういう面から、では具体的にどういう形でそれらの問題の解決を図るべきかという細かい点につきましては、いろいろな考え方があるわけでございまして、それらがまだ必ずしも一致していないという面もございますので、目下頻繁に会合を重ねまして、問題点の整理、検討に当たっているという状況になっております。
  9. 横山利秋

    横山委員 もう少し内容に入りまして御意見を伺います。  本司法書士法改正に関連いたしましては、法務省独自で処理ができるもの、つまり日司連との協議のみによって可能性のあるもの、それから弁護士なり行政書士なりあるいはその他の職域との調整上の問題のあるもの、そういうことが言い得られるのでありますが、その中で前者、すなわち自主権を確立したいということで争点となっております登録制度であります。  登録制度について、これが話がつかないようならば、私は法改正意味が余りない——意味がない幾つかの理由の中の一つの重要な柱だと思っています。年々歳々司法書士法改正が数回行われるのでありますが、健全な司法書士会、健全な司法書士業務発展を図りますためには、弁護士会制度とまでは私は一気に望まないにしても、少なくともそれに近づく一歩というものがあってしかるべきであろう。税理士と比較をいたしましても、そういう点では、司法書士法改正一つの重要な柱でありますところの自主権自主権の中で重要な柱でありますところの登録制度について踏み切ることが必要であると思いますが、いかがでございますか。
  10. 清水湛

    清水説明員 お答えいたします。  御指摘登録制度の問題につきましては、日本司法書士会連合会の方では、これを日本司法書士会連合会登録機関になるように改めてほしい、そういう制度を採用してほしいという意見を私どものところに寄せております。私どもといたしましても、そういう制度をとった場合に、これが円滑に機能するかどうかというような観点から、現在お互い意見を交換している段階でございます。現在のところ、直ちに日本司法書士会連合会登録機関とするというような結論が出ている段階ではございませんけれども、十分に御意見を参酌いたしまして問題点検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 先ほどからいろいろとあなたの話を聞いておりますと、司法書士会合意を得てとたびたびおっしゃる。それは大変重要なことであります。否定しはしません。けれども合意を得てということが、積極的な意味で御説明になっていられるのか、消極的な意味で、合意を得ないから、あるいは双方の意見調整できないからというならば、あなたの方がまとめる意思がなければ、いつまでたってもこれはまとまらないものです。だから、何はともあれ、まず法務省司法書士法改正して次期国会に提案する、その中の一つの重要な柱である登録制度について認めるのか認めないのか、合意を得ている問題なら、あなたの方が登録制度について了承するのかしないのかという決心をまずなさらなければ話が進まないのであります。その点、あなたの意見を聞いているのです。
  12. 清水湛

    清水説明員 お答えいたします。  登録制度の問題につきましては、いろいろ検討すべき問題がたくさんあるように思うわけでございまして、いま直ちに右か左か結論を出せと言われましても、ちょっと私の段階ではお答えいたしかねることでございますが、御指摘のように、まさにその問題が現在の私ども協議検討の中の重要課題になっておるという状況でございまして、さらにこの点を詰めてまいりたい。また、近日中にも日司連と私どもの間で定期協議会が持たれることになっておりますので、そこでもまた十分に議論がされることになるであろうと私は考えておる次第でございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 登録制度のみならず、ほかの問題でもそうでありますが、私ども政党筋としても、あるべき司法書士あり方についての一つ考えを持っております。したがって私は宣言しておいてもいい。私の政治的な立場といいますか主張といいますか、この際申し上げておきたいと思うのでありますが、もしまとまらないという理由をもって、自主権の確立ということを抜きにしてこの問題を国会へ提案されましたならば、議員修正をする用意がございます。私はそれが司法書士法改正にふさわしい一つの大黒柱と思っているものでありますから、あなたの方がそういうことをしないというならば、国会同志諸君と相談をしてその方向にしたい、そういうことの予見をし、先に申し上げておきますから、そういうことのないように、ぜひひとつ政府案の中で登録制度が確立されるということを望みたいと思います。  この間、愛媛の司法書士弁護士法違反被告事件について判決がございました。被告人は罰金四万円という趣旨判決であります。これは、その司法書士自身がまずいことでございますが、その判決書の中で裁判官が言っておりますことは、私はきわめて当を得た内容が含まれておると思います。  司法書士が作成する書類は、訴状答弁書告訴状登記申請書類等、いずれをとってみてもこれに記載される内容法律事件関係するものであるから、右書類作成については相当法律的素養を有し法律知識がなければできないこと勿論である。国が司法書士法を規定して一定資格を有する者のみを司法書士としその書類作成業務を独占的に行わせ、他の者にその業務の取扱いを禁止しているのは、結局これら国民権利義務に至大の関係を有する書類一定資格を有し、相当法律的素養のある者に国民嘱託して作成してもらうことが国民利益公共の福祉に合致するからである。従って、司法書士書類作成業務にその職務があるのであるが、他人の嘱託があった場合に、唯単にその口述に従つて機械的に書類作成に当るのではなく、その嘱託人目的が奈辺にあるか、書類作成を依頼することが如何なる目的を達するためであるかを、嘱託人から聴取したところに従い、その真意を把握し窮極の趣旨に合致するように法律的判断を加えて、当該の法律事件法律的に整理し完備した書類を作成するところにその業務意義があるのであり、そこに法的知識の涵養と品位を向上させ、適正迅速な業務執行ができるよう努力すべく、よって以て国民の身近な相談役的法律家として成長してゆくことが期待されるところである 等々、判決自身としては司法書士非違行為をたしなめたのでありますが、その弁論趣旨判決趣旨としては、まだほかにもございますけれども司法書士に対してきわめて高い評価をし、高い評価をするがゆえにこそその非違行為についてたしなめておる、こういうふうに言っておるわけであります。  この判決趣旨から申しますと、今回の司法書士法改正については、この判決趣旨に沿うような法律改正ということをすべきであると思いますが、いかがですか。
  14. 清水湛

    清水説明員 お答えいたします。  御指摘判決文は私も読ませていただいたわけでございますけれども、おっしゃるように司法書士法律的な地位というものをかなり的確に表現しておるように考えております。  そこで、司法書士と申しますと俗に代書というような表現で、ただ書類をつくるだけだというような誤解が間々あるように思われますけれども登記申請書類をつくるにいたしましても、訴状を作成するにいたしましても、告訴状をかわってつくるにいたしましても、かなり高度な法律的な素養を必要とするわけでございまして、そういうような趣旨から、司法書士制度社会的意義と申しますか、あるいは司法書士のいわば責務と申しますか、そういうようなものを法律の中自体において明らかにしてほしいというような要望が、また日本司法書士会連合会の方から私どもに寄せられているわけでございます。そういうことで、司法書士というものの法律的な性格を明らかにするということであるならば、またそれにふさわしい条文をつくることが可能であるならば、大いにそういう方向検討いたしましょうということで、現在その問題につきましても鋭意協議検討を重ねておる段階でございます。
  15. 横山利秋

    横山委員 政務次官にお伺いします。  実は、はからずも政務次官がおかわりになったわけでありますが、前の塩崎政務次官司法書士会の総会に御出席になって、大熱弁をふるわれたことがあるのです。それは司法書士法改正についてであります。私はおくれていったわけでありますけれども、満座の中で万雷の拍手を受けて、現職の政務次官としてお話をなさいました。これが全国の司法書士諸君に対して、政府の代表ということになりましたものですから、非常な期待を集めておったわけであります。恐らく第三課長もそばにいらっしゃったのではないですか。いまの慎重な御答弁と比べますと、塩崎さんの演説といいますかごあいさつはずいぶん積極的に、まあ局長課長が何と言おうともとおっしゃったかおっしゃらぬか知らぬけれども、しかし、政治家としての責任を持った発言をなさったわけであります。したがって、それは前任者のことであるとは必ずしも言いがたい、そういう政治的責任というものを私はお互いに感ずるわけでありますが、青木さんは、一体本問題についてどういうお考えでございましょうか。
  16. 青木正久

    青木政府委員 塩崎次官のその講演の内容を私聞いておりませんけれども、いずれにいたしましても、司法書士制度充実発展させるということはきわめて重要なことでございます。しかし、それにつきましては、いまのお話のようにいろいろ問題がございますので、前向きで、なるべく早くひとつ御提案申し上げたい。また、問題点一つ一つ協議いたしまして、納得のいく妥協点を見出した後に提案したい。私も、方向といたしましては前向きに国家試験制度を導入したい、こう考えております。
  17. 横山利秋

    横山委員 それでは、次官並びに局、課長は、もう一度あのときの塩崎政務次官演説内容を取り寄せていただきまして、いずれ国会上程をされることになるわけでありますが、その際に私はそれを読み上げて、提出されました政府案と見比べたいと思うのです。それは前任者のことだとは言いがたい点がある。また、塩崎さんに責任をかぶせたり、あなた方にそれのしりをふけと、そういう意味合いで言うわけではありません。少なくとも政府を代表して出席なさった人の演説について、法務省としても責任を持ってもらわなければいけません。塩崎さんがいいかげんなこと、あるいは勝手なことをそういうふうに言ったというのじゃ決してありません。塩崎さんは塩崎さんとして、信念とあるべき自分の意見を述べた、そう私は信じておるわけであります。決してそれは個人の立場でお出になったわけではないのですから、その点の調整を十分図ってもらいたいと希望しておきます。じゃ課長、結構でございます。  その次は、この間私どもが大臣と委員長に隣の部屋でお会いをいたしまして、宇都宮地方検察庁における刑事事件処理について栃木弁護士会決議した内容を披瀝をいたしまして、善処を求めました。この決議は、  宇都宮地方検察庁における刑事々件の処理は、捜査手続を中心に重大な変化をもたらした。この変化は、われわれ法曹はもとより、広く国民にとって看過することができない問題を含んでいる。  その運用の実体をみると、明らかに逮捕必要性がないと思われる被疑者逮捕し、逮捕の直後から自供している余罪事実によって逮捕勾留を繰り返し、深夜に及ぶ取調べを行い、あるいは病状を無視して取調べを強行して卒倒させた事例もある。さらに保釈請求に対する意見書の回答を著しく遅延させ、しかもその殆んどが「不相当」の意見である。また勾留の取消・保釈許可決定に対しては異常とまでに思われる準抗告を申立て、その申立理由たる証拠に基づかない推測事実・歪曲事実を述べ、あるいは本来保釈却下理由とはならない事情を強調するなどであり、これが容れられない場合は再逮捕するという徹底ぶりである。  同検察庁における刑事件処理の現状が右のように変化したのは同庁検事正姿勢によるものであることは疑いない。このことは検事正の本年一〇月八日付下野新聞「土曜随想」に明らかに表明されている。その要旨は「自白を撤回させず調書取調べを同意させ早期裁判を期す、そのためには身柄を拘束し釈放しないこと。否認する者は身柄拘束の犠牲を自ら払うか又は実刑を覚悟せよ」というのである。  この論旨が憲法刑事訴訟法の本旨に反することは明白である。法は自白の強要を禁止し、身柄を拘束しない任意捜査原則とし、強制捜査には厳格な要件が具備することを要求している。また保釈については法定の除外事由がない場合には許さなければならないのである。さらに公判廷においては証人調べ原則であって調書取調べは例外である。検事正の「随想」にみられるような自白の撤回を非難し調書の同意を得るために被告人を釈放すべきでないというのは法の精神を踏みにじること甚だしい。まして否認して実刑を覚悟するか、自白して執行猶予を得るかの選択をせまるなど不見識極りない。現行刑事訴訟法は、自白の偏重が誤判の最大原因になったことへの反省から「自白証拠の王である。」との考えを否定し、科学的・客観的証拠に基づいて事実を認定することを要請している。したがって公判手続においても被告人の言い分を充分に聴き、証人に対する反対尋問の保障などにより捜査過程における過誤を是正し真実発見が期待されているのである。  以上宇都宮地方検察庁姿勢人権無視検察万能の思想というべきものであり断じてこれを容認することができない。  よってわれわれは、検察庁に対し反省を促すとともに真に憲法刑事訴訟法を遵守するよう強く求める。右決議する。    昭和五二年一一月五日             栃木弁護士会 とあります。そして、これを裏づけるものが、いま出てまいりました十月八日下野新聞の「早い裁判厳正な裁判」という「土曜随想」などであります。  この「土曜随想」を見ますと、これは宇都宮地検検事正武田昌造君が投稿したのでありますが、私は専門家ではございません、しかし法務世界というもの、検察陣世界というものについて、まあ客観的な理解と認識を持っておるつもりであります。ところが、この「早い裁判 厳正な裁判」の「土曜随想」は、検察陣の中身、その内容、やり方、その内輪を暴露し、そして口をきわめて裁判官を非難をしておるわけであります。たとえば結語を読みますと、  刑罰には、本人を懲らしめると同時に、他の者を戒めるという働きもある。買収をしても滅多に見つからないだろう、捕っても二〇日か一月で間違いなく出られる、否認しても、争って引延ばしても、実刑になることはない、と法と裁判をなめてかかっているのが選挙ボスどもである。こういう輩は実刑にして見せしめとする他はない。  裁判官が、このような事情を知りつつ、厳正な刑を科することをためらうとすれば、それは選挙の浄化を願う国民の願いを踏みにじるもので、臆病と言わざるを得まい。実態を知らないが故に刑が甘いというのであれば、怠慢であり、見識を疑わなければならないであろう。公明選挙を願う県民各位が、裁判に注目されることを期待したい。 まるで検察独善で、おれたちがこんなに一生懸命やっておるのに、裁判官選挙違反——ここには「裁判官が、選挙違反をやたらに執行猶予にするのは、彼らが、平素は善良な市民であるとか、これに懲りて二度とやらないだろうとか、ハレンチ罪とは違うとか、違反はどの派にもあるのに運が悪かったのだ、というような理くつによるらしい。だが、これはとんでもない話で、買収犯民主主義の根幹を揺がす悪質犯なのである。」等々、全く検察独善といいますか、裁判の公正なあり方を公正に願うということでなくて、おれたちは一生懸命やっているけれども裁判官がだらしがなくて言語道断であるということを口をきわめて語っておるわけであります。  まあ時間の関係全文を読むことができませんが、こういうことでは弁護士会が怒るのも当然であり、かつは、宇都宮地方裁判所は黙しておるわけでありますが、心中憤慨にたえない感じを持っておると私は思うのであります。法務大臣委員長にこの間善処をお願いしておいたわけでありますが、一体どうなったでありましょうか。
  18. 青木正久

    青木政府委員 宇都宮地検検事正下野新聞に出した「土曜随想」の内容でございますが、私も読ませていただきましたけれども、まず、検事正新聞その他に寄稿するということはこれまでも例がございましたし、検察情勢国民に徹底させるという意味におきまして、決して不当なことではないと思います。問題はその内容でございますけれども、私も一読させていただきまして、表現が非常にどぎつくて、また穏当を欠くような表現という印象を受けます。しかしながら、その内容は、選挙違反につきまして、特に買収問題につきましては、これは民主主義の根本をなすものであり、実刑をもって処すべきだという内容でございまして、表現は別にいたしまして、内容につきましては特段の問題はない、こう考えております。
  19. 横山利秋

    横山委員 これは内容が、あなたもいまどっち向きで言っておるのかわからぬ。最初は表現穏当を欠く、最後は内容はまあ差し支えがない。それはどっちに力点があるのですか。あなた、両方ともかっこうのいいような顔してはいかぬですよ。  まず、検事正がこういう——あなたは全文をお読みになったということですから、省略をいたしますが、調査状況なり、検察陣の物の考え方なり内容なりを、かくのごとくじゃんじゃん新聞に出すということ自体が適当であると思いますかどうか。第二番目に、口をきわめて裁判官をばか呼ばわりしていることが妥当だと思いますかどうか。第三番目に、内容がまさに正しいとするならば、こういう検察官が独善的な、おれたちがやっていることは全く正しくて、裁判官のやっていることは全くだらしがなくて、政治家は全部が全部ばかやろうでということが、内容的にあるのですよ。それが公正な立場だと言えますか。
  20. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 刑事課長でございますが、私からお答えさせていただきます。  この問題につきましては、地元の検察庁からも報告がありまして、われわれとしても真剣に調査をいたしたところでございますが、まず、その前提といたしまして弁護士会決議文がございます。これは私も拝見いたしました。きわめて抽象的でございまして、地元の検察庁にもこの決議文が届きまして、決議文を弁護士会の会長さんと副会長さんが持参してきた。こういうことで、たまたま検事正が不在でございましたので、次席検事が面会いたしまして、よくその趣旨を承りまして、なお、決議文の内容等につきましても二、三と申しますか、かなり詳細に議論をしたようでございます。  そこで、その際に問題になりましたのは、決議文の中の基礎となった具体的な事例が一体あるのかどうかということでございまして、次席検事の指摘したところによりますれば、たとえばこの決議文中の、明らかに逮捕必要性がないと思われる被疑者逮捕しているというふうなくだりにつきまして、そのような事実があれば御指摘願いたいと申したところが、それに見合うような必ずしも具体的な例ではないがということで、ある私文書偽造行使詐欺事件につきまして、何か警察も逮捕しないのを検察官が逮捕したというのは不当であるというお話があったそうでございますが、この事件は、この弁護士会に属しております弁護士の先生が被害者の代理人として、検察庁に速やかに厳重な処分をしてくれということで、いろいろ告訴状を出してきたということでありまして、その告訴状に基づき事情を伺ったところが、確かに罪証隠滅のおそれもあるというふうなことで逮捕したということで、いささか弁護士さんの御批判も筋違いではないかという感じもいたしました。そのほか「深夜に及ぶ取調べを行い、あるいは病状を無視して取調べを強行して卒倒させた」というふうな事例、これに見合う事例といたしましても具体的な事例の御指摘がなくて、一つの例として、何か年寄りの老婦人を深夜取り調べたところが卒倒したそうであるというふうな程度の御指摘だったようですが、一応それに見合う案件といたしましては、選挙事犯の重要参考人でかなり老齢な方がおりまして、自宅で任意に事情を聴取しようとしたところが、かなり興奮して、たとえば検察事務官を突き飛ばしたとかいうふうな例もございましたので、自宅での事情聴取は困難と見て検察庁に来ていただいて取り調べをしようとしたところが、何かかなり興奮して気分を害されておるようなので、お引き取りをいただいたというような程度のことでございまして、いささか決議自体が具体的な事例の摘示に欠けておるという感がしておるわけでございます。それが第一点でございます。  それから、検事正の投書と申しましょうか寄稿の問題でございますが、ただいま政務次官からお話がありましたとおり、やはり表現的にはもっとやわらかい言い方があったのではないか、関係者に無用な誤解を与えることは検察官としても慎むべきだということはそのとおりでございます。ただ内容的には、この内容検討いたしてみますと、われわれといたしましても選挙事犯、特に悪質な選挙事犯につきましては迅速な裁判ということ、それから悪質者に対する厳正な科刑ということを検察の一つの課題として取り組んでおります。長過ぎる裁判に対する御批判があることは先生御承知のとおりでございまして、われわれといたしましても、何とかこの現状を打開したいということでいろいろな方策を考えて推進しておるところでございまして、そのような検察の考え方をオブラートに包まずに、やや端的に申し上げたというようなことだというふうに私は理解しております。
  21. 横山利秋

    横山委員 理解をしておるとおっしゃるのだが、結論としてどういうふうに考えたらいいのですか。「裁判官が、このような事情を知りつつ、厳正な刑を科することをためらうとすれば、それは選挙の浄化を願う国民の願いを踏みにじるもので、臆病と言わざるを得まい。実態を知らないが故に刑が甘いというのであれば、怠慢であり、見識を疑わなければならないであろう。」要するにこういう事実があったという立場で物を言っているんですよ。「であれば、」と言っているんだけれども、結局は「裁判官が、選挙違反をやたらに執行猶予にするのは、彼らが、」云々と書いてありますよ。事実があったから、裁判官がこういう判決をしたからけしからぬ、だから裁判官は臆病であり怠惰であり見識を疑う、こういうふうに怒っておるわけですね。  それからこの「早い裁判厳正な裁判」のこの投書の扱い、検事正としてあるまじき表現であり、内容についても裁判所の仕事に対してばり雑言を加えておるということが適当だと思いますか。結論として、政務次官にお伺いしますが、あなたはこの処理をどうなさいますか。
  22. 青木正久

    青木政府委員 表現につきましては最高検を通じて注意を促したいと思います。特に先生御指摘のように、裁判所は怠慢であるとか、あるいは「見せしめ」という言葉も出ております。まあ、三十五日に一回ずつ新聞に寄稿しているそうでございますし、それにしてはやはり各般に対する配慮が足りないという気がいたしますので、そういう措置をとりたいと思います。ただその内容につきましては、先ほども申し上げましたとおり、特に問題はないと思います。
  23. 横山利秋

    横山委員 十分しかりおきいただきたいと思います。  次は、金大中事件でございます。先般私は理事会に一つ決議案を提出をいたしました。「金大中氏が首都東京のホテルから白昼韓国権力により強制的に韓国へ連行された事件は、いまもって真相不明のままである。このことは、わが国主権の侵害にかかわることであるだけに、司法官憲などによせられている一部の疑いとともに、誠に遺憾であり、このままに推移したり放置することは決して許さるべきではない。本事件は、金大中氏を強制連行以前の状態即ち原状回復させるべきであるが、政府は、この際金大中事件についてその後の調査状況の一切を公表するとともに、改めて韓国と米国に対し調査協力を求めつつ徹底的な真相究明を行い、金大中氏自身からも自由な条件下で、真相の供述を得られるよう手段をつくすべきである。右決議する。」この決議案を提出をいたしました。  本国会におきまして、予算委員会あるいは他の委員会におきまして、金大中事件について数々の政府とのやりとりが行われております。私も、過ぐる国会におきましてこの問題を取り上げた一員でございますが、結局このままうやむやになりはしないかということを国民とともに本当に心配をいたしておるわけであります。野党側としては、この問題の一歩前進のためにアメリカへ調査に行く、あるいはアメリカから関係者を日本へ呼ぶ、そのための与党の協力を求めておるわけでありますが、必ずしも十分な与党の理解と協力がまだ得られる段階に至っておりません。国会も終わりに近づくわけでありますが、政府としては一体今後どういう方針でこの問題に臨まれるのか、ひとつ伺いたいと思います。
  24. 青木正久

    青木政府委員 いわゆる金大中事件につきましてはまことに遺憾なことでございまして、今後こういうような事件が発生しないように注意しなければならないと思うわけでございます。  それで、これまでも捜査当局で捜査をずっと続けてきたわけでございますけれども、いろいろ困難がたくさんあると思いますけれども、今後とも真相究明のために捜査当局は努力する、こう確信をしておる次第でございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 事務当局の捜査状況説明を伺います。
  26. 石山陽

    ○石山説明員 お答えをいたします。  法務省といたしましては、主管の検察当局が捜査の面について担当する次第になるわけでございますが、これまでのところ四十八年の事件発生以来、主として捜査の実務面は第一次捜査権を有します警察当局においてこれまで進めてきております。したがいまして、その関係の事件の全般の記録その他がまだ検察庁に送検されてきておりません。しかしながら、問題の重要性にかんがみまして、検察当局といたしましても警察当局と常時密接な連絡をとり、適当な助言等を与え、あるいは協議を遣わすなどして、事案の真相解明に努力しておるというのが大前提でございます。  それから、これまでに国会その他で御論議のありました、いろいろな具体的な証人の問題あるいは証拠の新しい発見の問題、これにつきましても検察当局としては警察当局と同様に十分関心を寄せつつ、これらと協力をいたしまして、その真相解明には今後とも引き続き努力をする、こういう決意で臨んでいるという報告を受けておる次第であります。
  27. 横山利秋

    横山委員 ちょっと奇異な感じがするのですが、常時密接な連絡はしておるけれども、警察当局から金大中事件についての正式な中間報告といいますか、それがないということはどういう意味なんですか。
  28. 石山陽

    ○石山説明員 警察から正式な中間報告がないというふうに申し上げた趣旨では実はございませんで、警察から正式な事件の捜査を取りまとめた事件送致の形による送致がまだ行われていないという意味でございます。
  29. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  本件につきましては、われわれ国会側としては先ほど読み上げました決議のように、このまま推移したり放置することは決して許さるべきではない。国民の常識から言えば、ホテルの部屋に当該関係者の指紋があり、その指紋は本人の指紋と全く同一であることも確認されたにかかわらず、その人間の調査ができない。あるいはまた、警察庁の追跡調査がかなり徹底して行われたという報告があるのにかかわらず、杳としてその真相が明白でない。そういうことになりますと、一部の説にあります。実は警察も事前に承知をしておったのではないか——たとえば、私どもが常識で考えましても、金大中氏が日本へ来たとする、そうすると、所管の警察署におきましては、身辺護衛をするのが当然の務めである。私はむしろ善意で、当然の務めである。うわさされておる警護の必要のある外国要人が日本に来たならば、身辺に常に目を光らせておるのは当然の務めである。その当然の務めである以上は、金大中氏の動向なり将来への予定なり、そういうものを知らないはずはない。それを全然関係がなかったというふうに、警察の防護のために言い張っておるという感じがしてならない。これが一つであります。  それから、一説によりますと、警察庁は韓国のKCIAと情報交換があったのは当然であろう、なぜならば、韓国のKCIAは常時日本の警察庁の仕事の一部を韓国において平常業務としてやっておったセクションであるから、警察庁の幹部が韓国へ行ったら、打ち合わせ、情報交換をするのもこれは当然のことであろう、それがしていないとか表敬訪問しただけだとか、そういうふうなことを常に言って自分たちの身の潔白を言おうとするのはかえってやぶへびではないか。あるいはまた、港で金大中氏が乗っている船の上へ飛行機が来た、その飛行機がサインをしていった、あらゆる努力を警察庁がしたならば、その飛行機がどんな飛行機であるかわからないはずはない、あれだけ一生懸命やったというのにわからないはずがどうしてあるだろうか。  私はこの間も委員長並びに同僚諸君と一緒にニューヨークなり、あるいは先般はモスクワへ行ってきたのですけれども、日本の警察というのは、そう言ってはなんですけれども世界に冠たるものだと本当に思います。よくやっておる。検挙率もいまは八〇%以上超しておるのではないですか。実に日本の警察というものは世界の警察の中で優秀な機能であると私は評価しておる一人なのであります。その優秀な警察が、こんなに白昼堂々とホテルから外国の要人が連れ去られて、あらゆる警察陣を機能させて、総動員して調べたがわからぬということがどうしてあるだろうか。要するにそれは警察も一枚かんでおるという国民の疑いをどうしても払拭ができないのであります。だから、そこのところは、国民から寄せられておる警察に対する信頼感、そして金大中に関する疑惑、そういうものについて責任を感じてもらわなければ困ると思うのであります。きのうも酔っぱらい警官が三人、無免許で三台の車でがたがたやってる、そういうことは日常あります。私どもここでいろいろ指摘して、警察何をやっておるんだと言います。言いますが、大局的に言えば、日本の警察は世界で優秀な警察機構だと心から信用しておるのですよ。これは決しておべっかで言っているわけではない、外国へ行けばわかるのであります。そういうことであればこそ、金大中事件に関する警察の真価を問われる。世界で優秀であるなら、事この問題については、隠しておるという疑惑は何としても免れがたい。  あなたにそんなことばかり言ってもこれはなんでございますけれども、そういう警察に与えられておる疑惑について、検察陣としても人ごとではないと思うのであります。だから、この問題についても徹底的な解明をしていかなければならぬと思うのです。きょうは大臣もお見えになりませんけれども政務次官からもう一度、ひとつ本件に関するお考えを伺って、次に移りたいと思います。
  30. 青木正久

    青木政府委員 先ほど申し上げましたとおり、やはりこの金大中事件というのは非常に大きな事件でございまして、真相が解明されない部分もたくさんあるわけでございます。  今後捜査当局が、十分努力をいたしまして真相解明を果たしたい、こういう方向で臨む、こう考えております。
  31. 横山利秋

    横山委員 委員長にはお願いがしてございますが、この決議案につきまして、委員長としていかなる処置をしていただけましょうや。
  32. 上村千一郎

    ○上村委員長 金大中事件は、横山委員のおっしゃるとおり、非常に国民の関心の深いところでございます。  先ほどお話しのように、理事会の席上に決議案をお出しになられておることは確かでありまして、理事会でいろいろ慎重にこの取り扱いについて協議をしていきたい、こう思っております。
  33. 横山利秋

    横山委員 それでは、国会は二十五日に終了するわけでありますが、それまでにひとつ委員長のお手配で理事会で協議をする場を設けていただきたいと思います。  次は、台湾人の問題でございます。  旧日本人であった戦没外国人の遺族等に対する給付について関係者から問題が提起されております。  一 台湾、朝鮮、樺太、南洋群島等の住民であって、戦時中日本の軍人、軍属として、公務上死亡した者の遺族(戦傷病死を含む)又は公務上負傷した者に対し、国として弔慰の意を表する趣旨で、それら遺族および戦傷者の国籍の存する外国政府の諒解の下に一時金たる給付金を支給するものとすること。  二 戦時中の日本の軍人、軍属としての未払給与および軍事郵便貯金を本人に支払うものとすること。  三 受給資格の立証については、旧軍隊における上司又は同僚であった日本人の証言等を活用する方途を講ずるとともに、外国政府又は日本国内に存する外国人団体への調査依頼等の方法をも講ずるものとする。  四 給付金の交付手続については、日本国内に在住する者については厚生大臣が市町村長を通じて交付するものとし、外国に在住する者については外国為替などによって、受給権者に直接送付する方法を講ずるものとする。この要求は主として今日台湾人の人でありますが、台湾人の人たちが、日華条約が締結されたことによって、瞬間的に日本国籍を失い台湾人になった、そのために日本政府に対する請求権は一切そこで消滅をしたというのが日本国政府の態度のようであります。彼ら台湾人にしてみれば、その日華条約が締結される以前は、日本人として野戦に従軍し、戦死し、あるいは負傷し、あるいは軍隊において貯金をし、あるいは民間人として郵便貯金をしておった、それが瞬間にして、それらの戦死者の遺族であれ、あるいは負傷した本人であれ、あるいは軍隊で貯金をしておったその貯金が、あるいは民間において郵便貯金をしておったものが、一瞬にしてその請求権が消滅をしたということについては、これはわれわれとしては承服しかねる。特に、たとえば郵便貯金についてなどは、これは日本政府に対する債権が消滅したとはゆめ思われないという主張をしておるわけであります。  これにつきまして、五十年二月二十八日の外務委員会における厚生省援護局業務第二課長並びに郵政省貯金局第二業務課長答弁を引用いたしますと「台湾人元日本軍人軍属の給与の未払い分は四万七千百六十九件、金額で六千五百五十八万二千八百四十円。遺族に支払うべき遺骨葬祭料等は一万四千九十三件、金額で千六百三十四万三千四十六円。それぞれ東京法務局に供託してある。遺族扶助料は恩給法の上で(外国人だから)支払わないことになっている。郵便貯金は二種類ある。軍事郵便貯金(野戦郵便局で預入)は日本にある原簿によれば、現在高七十四万口座、金額で十三億六百九十万円。但し日本人の分もいっしょになっていて、台湾人の分だけを出すことはできない。台湾記号の郵便貯金は、原簿が台北にあるため正確な計数はできないが、おおむね現在高二百四十二万口座、金額で七千百七十万円。これも日本人の分などといっしょになっていて、台湾人の分だけを出すことはできない。」厚生省も郵政省も外務省の意向待ちといった姿勢——これは注釈でございます。  同じく五十年二月二十八日、前記外務委員会における宮澤外相の答弁、「日本政府が債務を持っていることは明らかで、債務者としての責任は果たすつもりである、果たすための方法は積極的に考えていかなければならない。」こういう答弁があって後、とんとその宮澤外務大臣の積極的に果たす方法についての推進がないので、業を煮やしてこの関係者が裁判を提起をいたしました。台湾人戦死傷補償請求事件、補償物の価額は約七千万円として「請求の趣旨 被告は原告らに対し各金五百万円を支払え。訴訟費用は被告の負担とするとの判決及び仮執行の宣言を求める。」こういう訴状が東京地方裁判所へ出ております。  そこで、政府側にお伺いをいたしたいのは、五十年二月二十八日、宮澤外務大臣の答弁があってから、郵政省、厚生省、外務省は何をしたか、まずそれをお伺いします。
  34. 平林一郎

    平林説明員 お答えを申し上げます。  郵便貯金の債権でございますが、消滅しておりませんで、台湾の住民の方の軍事貯金については郵政省でもってお預かりしております。  五十年の二月、横山先生が読み上げられましたとおりに、その当時、軍事貯金が七十四万口座ございます。その中で台湾の住民の方のものについてはちょっと分類ができませんという答弁をしておりますけれども、そういうことではいけないので、果たして台湾の住民の方の軍事貯金をどれだけお預かりしておるのかということでもってその整理をいたしました。ところが、台湾の方のそのときの戦地におけるところの預金したことにおきましては、台湾の方の姓名が、日本人名でもって当時使っておる方が大分おられる。ですから名前だけでもって整理するということは非常に不合理であります。それで、まず第一に、台湾の方の姓名を使っている方はその形の中で分類をいたしました。  もう一つは、預入申込書を見まして、その当時の住所から、これは台湾の方であろうという形の中で、そこに若干のそういうような誤差があっても、日本人かな台湾人かなという形のものは、そこのところでもって判定がつかないものは大体台湾の方という形の中で、それはそちらへ入れました。  もう一つは、厚生省の方にお伺いいたしまして、台湾の方でもって編成いたしました部隊所属の方、それは日本人の名前であっても、これは全部台湾の方という形に判定いたしまして、七十四万口座の中から台湾の方の口座というものをことしの七月までに、約半年かかりましたけれども、分類いたしました。  その結果はっきりいたしましたのが、台湾の方の軍事貯金につきましては、口座数で五万九千五百七十七口座、約六万口座ございます。そしてその方の二十一年三月末の現在高というものがはっきりいたしました。それは五千四百二十七万円でございます。これはその当時の一口座当たりにいたしますと九百十一円という金額になります。それにつきまして全部利子盛りをいたしております。利子盛りをいたしました形の中で、五十二年三月末現在という形でいきますと、一億六千二百十九万円、一口座当たり二千七百二十二円という郵便貯金というものを現在お預かりしております。  それからいま一つは、この軍事貯金に対する台湾住民の方の現在高の確認という問題について、いろいろ申告が来ております。四十七年ごろからぼつぼつ参りまして、四十九年ごろが山になり、そしてまた少し下火になっておりますけれども、その件数というのは、いままで受け付けましたものが約一万九千件ございます。六万口座ございますから、そのうちの大体三分の一ぐらいの方から申告が来ておる。ところが、その申告につきましては、通帳というような証拠書がない。私はたしかその当時こういう軍事貯金をやったという記憶がある。こういう者だと、そういうような名前を、これは調べるのは大変なわけですけれども、名前によっていろいろといま調査しております。そのうち、一万九千件につきましは一万一千件というものは調べて、中には全然記憶違いのような形の中で、やらなかったものもございますし、民間の貯金をしたものをこっちの郵便貯金じゃないかと錯覚したものもございましょう。そういう形の中で整理いたしまして、一万一千口座につきましては、現在高のあるものは全部、こういう形の中で、現在高幾らですよというような形の中でこれはやっております。  それからいま一つは、こちらの方としては、そういうように何か支払える状態が来たときにはいつでも支払えるようにということで、そういう申告書についての整理というものをしておる。それから、申告された方については、現在高について、これはあなたございますよ、その証書をお持ちになれば確かにこれはあるという形の中で、すぐ支払える状態をやっております。そういう努力をしております。  ただ、郵便貯金の支払える状態をつくるということにつきましては、関係各省庁といろいろ打ち合わせはしたのでございますけれども、やはり台湾住民のすべての財産権の請求処理問題の一環としてこの郵便貯金の問題というのが現在は取り扱われておる。そうすると、そういう形の中で、郵政省だけでこの郵便貯金の支払いをするわけにはいかないような状態でございますので、そういうような情勢というものが早く——この問題について台湾の方に速やかに決済いたしたいと存じておる次第でございます。
  35. 田中富也

    田中説明員 厚生省の未復員者給与法に基づきます未復員者給与でございますが、これは先生が御指摘なさった件数、金額で、現に法務局に供託してございます。したがいまして、この支払いについての件でございますが、やはり、ただいま郵政省の説明員から御説明ございましたとおり、私どもも軍事郵便貯金あるいは恩給と並びまして未支給給与につきましては、これの債務履行についてはいろいろ複数省庁の債務履行という問題も絡みますので、したがって統一的な方式によって履行するという見地から考えておるわけでございますが、いまだ結論を得ていない状況でございます。
  36. 田島高志

    ○田島説明員 外務省は条約上の見地からどういうふうにこれを処理するかという面で担当をしてまいったわけでございますが、現在台湾との間に政府間で特別取り決めを行って処理するということが不可能になりましたので、その他の方法でどういう解決する方法があるかということにつきまして関係省庁、ただいまの郵政省、厚生省、各関係者の方々と鋭意相談をいたしてまいってきております。
  37. 横山利秋

    横山委員 いま聞けば事務手続としては郵政省も厚生省も、その事務手続という範囲内で一体いいのかどうかずいぶん議論がありますが、一応の事務手続は進んでおる。けれども外務省が最後に言われたように、日華条約が消滅して国交がないからどうしたらいいかということを、鋭意とおっしゃるけれども、そんなことなら何も五十年の宮澤外務大臣の答弁から一歩も出ていないわけでありますが、本問題、台湾人から出ております請求、理由があるその請求について根本的に基本方針として責任を負う役所は外務省でございますか。
  38. 田島高志

    ○田島説明員 お答えいたします。  これは外国人との関係がございますので、その面で外務省も関係がございますが、外務省のみならず、その他の関係省庁もございますのでいろいろな省がこの問題について関係しておるというふうに理解してございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 関係しておることはわかるのだが、この問題の根本的な処理あり方について責任を負う役所は一体どこかと聞いておる。訴状が出て訴えられておるのですから、結局は法務省の訟務局が窓口になって、その裁判に国を代表して処理をしなければならぬことになってまいりました。私はそういう裁判を経由しないで、宮澤外務大臣が、果たすための方法を積極的に考えていかなければならぬと言った責任をひとつ負ってもらいたいと思うのでありますけれども、そんなことを言っておっても中国課長立場としては御答弁ができかねるのではないかと思うのですが、法務省青木さん、どうお考えですか。訟務局を受ける立場として、裁判になれば結局はいやがおうでも国としての基本方針を決めなければなりません。基本方針を決める役所、大臣があいまいな状況なんであります。外務省にしてみれば、手足はみんなほかの省があるのだから、頭だけやってくれと言ったっておれはそうも責任を負いかねるよというような顔をしておみえになる。私はきょう限りではないですけれども責任を持ってこの問題について答弁をしてくださるのはどこのだれですか。官房長官ですか、法務大臣ですか。
  40. 青木正久

    青木政府委員 いま、第二次大戦中台湾の方で戦傷死された方の裁判が提起されておるわけでありまして、これはまだ訴状の送達が十月一日にあったばかりでございまして、第一回の口頭弁論の期日が二十八日ということでございます。そういう状況でございますので、今後関係各省と連絡をとりまして、いま先生御指摘の点につきましては煮詰めていきたい、こう考えております。
  41. 横山利秋

    横山委員 それでは私の質問に率直に答弁なさらないのであります。きょう私のこのような質問に対して、だれも責任を持って基本的な答弁をしてくださる方がないようでありますから、それをだれですかと聞いておるのです。それがもしいま決まらないなら、一体それはだれにするかということをあなた責任を持って、どうせ訟務局でこれを受けなければならぬのですから、法務大臣なら法務大臣が本件について責任を持って今後答弁いたしますとおっしゃるか、あるいはこれは総理府になりますか、それを決めてこの次に報告をしてください。いかがですか。
  42. 青木正久

    青木政府委員 訴訟に関しましてはもちろん法務省でございますけれども、いま先生御指摘の点につきましては相談をいたしまして、後ほど大臣から御答弁いたします。
  43. 横山利秋

    横山委員 それでは事務的な状況の経過についてはわかりました。しかし、そういうようなことを解決いたしますためには、いま郵政省並びに厚生省からお話がございましたように、結局は政治的な解決をせざるを得ないと私は思うのです。そういう政治的な解決を考え責任者を決めて、その責任者の手元で十分私どもと質疑応答がやり得る体制を速やかにおつくりを願いたいと思います。  次は保険の問題でございます。きょうは実は時間がございませんので問題提起と資料要求に結局ばとどめざるを得ないと思います。  私が問題提起をいたしますのは、生命保険の契約者配当並びに生命共済の期末配当等の問題でございます。ここに「財界さっぽろ」三月号、「疑惑の〃共済保険〃で見せた札商首脳のケリのつけ方」という新聞がございます。「札幌商工会議所が行なっている「団体保険共済制度」の運用、経理が誤った方法で行なわれ、背任汚職があるのではないか、と重大な疑惑が持たれた」というところから出発をいたしております。  大蔵省からおいでになっておりますが、時間の関係上、ここに有斐閣の出版であります「新生命保険実務講座」の「配当金の割当」等の文章を一遍朗読してみますから、これに大蔵省の解釈、間違いがなければないで結構です。  各事業年度末に積み立てられた配当準備金は、保険契約者平等待遇の原則からいって、各契約者に公平に分配されることになるのであるが、この場合の相互保険会社では、まず利差益、死差益、費差益等の各利源別に剰余金を分析計算して、條件を同じくする各保険群団ごとに大きく割り当て、しかる後に各種類内における各個の契約に対して割り当てることになる。株式会社の契約者配当にあっては、利益金計上以前に損金として保険契約利益配当準備金を計上するが、その配当方法は、相互会社の場合とほとんど同じ方法をとっている。 それから「配当金の支払」  配当金の支払方法について、大体次のような方法がとられる。  1 保険料払込中の契約については、次の保険年度の保険料と相殺するものとする。  2 次の年度の契約応当日から、会社の定めた率の利息をつけて積み立てておき、契約消滅のときまたは契約者から請求があったときに支払うものとする。  3 月払契約にあっては、次の保険年度中に現金で支払うものとする。  4 次の年度の契約成立応当日に、一時払の保険料に振り替えて、保険金を増額するものとする。  このうち、各社の保険約款はほとんど、1の保険料と相殺する方法と、2の利息をつけて積み立てる方法を定め、そのいずれかについて契約者が選択権を行使しないときには、保険料と相殺する方法によるべきものと定めている場合が多い。 時間の関係上省略いたしますが、この配当金の割り当て及び契約者に対する支給の方法というものは、大体こういうものと理解してよろしゅうございますか。
  44. 萱場英造

    ○萱場説明員 お答え申し上げます。  いま先生が御朗読いただきましたところと基本的には全くそのとおりでございます。
  45. 横山利秋

    横山委員 そこで、配当金というものがこのような順序を経て最終的に契約者がそれをもらう権利がある、保険会社はそれに対して支払う義務がある、そういう解釈でよろしゅうございますか。
  46. 萱場英造

    ○萱場説明員 お答え申し上げます。  先ほど先生が御朗読いただきました仕組みによりまして、生命保険契約を結びますときには契約申込者が契約を会社に結びたいという申し込みをいたしまして、それから保険料相当額を会社に納めます。その申し込みを生命保険会社が承諾して生命保険契約というのが、ものによってはかなり長期にわたる契約が結ばれます。その場合に、保険料の計算というのは、いま先生御指摘ございましたように、一定の予定に基づいた予定利率を使いまして保険数理に基づいて計算されます関係で、その予定と実績との差を何らかの形で調整する必要がございます。そういった意味で、契約者配当というのはそういった予定と実績との差から生じます差額の調整ないし精算という意味を持っておりますので、当然これは契約者としてその精算を受けるのは保険の基本的な仕組みと御了解いただいて結構でございます。
  47. 横山利秋

    横山委員 それでは時間の関係上、恐縮でございますが、各省に資料の要求をいたします。  この札幌商工会議所で起きました事案に関連をいたしますが、各県の商工会議所と各県の中小企業団体中央会が保険会社と契約して、経営者共済等の——等と言いますが、等の名前で中小企業対象の共済制度を行っております。大蔵省にまずお願いしますのは、各県別に両者の締結した委託契約書を提出してもらいたい。委託契約書がなければ、委託契約書に類する資料を提出してもらいたい。同じく大蔵省に、その際中小企業に対して見せる約款を提出してもらいたい。また、手数料とともに期末配当金ということになると思いますが、期末配当金を保険会社が出しておると思いますが、この三カ年、各商工会議所及び中央会に手数料並びに期末配当金をそれぞれどのくらい出しておるか、その金額を提出してもらいたい。  中小企業庁にお願いをしますが、その両者の金額はだれが収納したのか。商工会議所ないしは中小企業団体中央会なのか、それとも、先ほど言いました経営者共済等の名前、第三者であるか、だれが収納したのか。収納者はそれをどういうふうに管理、使用しておるのか。  それに関連いたしまして、その金額がわかりますと、大蔵省としてそれは一体税金対策上どういうことになっておるのか。同じく大蔵省に、そうだとすれば、それは末端契約者、中小企業者に支給されておるのかどうか。  それから、これは中小企業庁、通産省になりますか、商工会議所及び中央会にこの三カ年出ておる補助金は一体幾らであるか。  これをひとつ、大変ごめんどうであるけれどもそれぞれの省が調査をしていただきたいと思います。各県ごとの問題でございまして大変ごめんどうではあろうと思いますが、私が質問しようとする趣旨は、札幌の状況からいいましても、また、いまの契約者配当のあなたの御答弁立場からいいましても、私の趣旨はもうすでに、頭の早い人たちばかりでございますからおわかりだろうと思います。その資料の提供を待って質問をいたしたいと思います。もっとも、この資料の提供が二十五日までにできるかどうか、少し疑問がございますね。それはわかります。しかし、できる限り、できた時点で委員長を通じて私の手元へ届くようにお願いをいたしたい。よろしゅうございますか。
  48. 萱場英造

    ○萱場説明員 ただいま先生からかなり細部にわたります広範な資料の御要求がございましたわけですが、私どもの所管しております生命保険業の指導監督という立場からあるいは権限を越える、所管を越える問題もあるかと思いますので、内部で整理させていただきまして、他省庁の所管にわたる場合には、そちらを通じて提出するように相談いたしたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  49. 横山利秋

    横山委員 結構です。通産省はいいですか。
  50. 松田岩夫

    ○松田説明員 ただいま萱場保険第一課長から御答弁ありましたとおりでございますが、何せ各県に権限をおろしております団体それぞれございますので、多少時間その他いただきまして、できるだけ御要望の資料が出るように努めたいと思います。
  51. 横山利秋

    横山委員 お察しのように、これは商工会議所、中央会の根幹に触れる問題であり、場合によっては犯罪を構成する可能性もあるのでありますから、時間はそんなに、きょう、あすとは言いませんけれども、十分に誠意のある資料の提出を不日お願いをいたしたい。  以上で私の質問を終わります。
  52. 上村千一郎

    ○上村委員長 次に、鈴木強君。
  53. 鈴木強

    鈴木(強)委員 お許しをいただきまして、私は、甲府の刑務所の移転問題と、それに関連いたしまして、全国の拘置所ないしは刑務所の施設問題についてお伺いをさせていただきます。  甲府刑務所の問題につきましては、昭和四十八年六月十四日、私当時参議院におりまして法務委員を担当しておりましたが、その際、当時の田中伊三次法務大臣に質疑をいたしておるのでございます。その節も申し上げましたが、甲府市は戦災を受けておりまして、その後全般的な都市計画をいたしておりますが、特に東部地区の開発計画につきましてすでにその計画案ができ上がっておったのでございますが、たまたまこの東部地区に甲府刑務所がございまして、そのために東部地区への計画がなかなか難渋いたしておったのでございます。困り果てた末に何とか刑務所を移転していただけないだろうかということになりまして、法務省の方にいろいろお願いもしてまいったのでございます。そういう中で、私の質問に当時の田中法務大臣がお答えをしていただいたのでございますが、田中法務大臣は「当方の事情の許す限り御協力を申し上げたい」と非常に御理解のある態度を表明されたのでございます。そして具体的には、調査費を四十九年度の予算で概算要求したい、ここまで実は言及をしていただきました。また当時の官房営繕課長の水原説明員からは、甲府市の大津地区を予定しておるという御説明がございました。  実は、その後年月がたっておりますが、地元の方の計算違いもございまして、この大津地区については反対の意見どもございまして、甲府市長も大変苦労しておりましたが、なかなか解決ができませんで、やむを得ず堀之内というところに地域を変えたのでございます。大変御迷惑をかけました。この点、私からもおわびをいたしますが、それにもがかわらず法務省として鋭意いろいろな御配意をいただいておりまして感謝いたしております。  きょうは、ここでその後の経過について概要を最初に教えていただきたいと思うのであります。
  54. 青木正久

    青木政府委員 甲府刑務所の移転につきましては、長年の地元の御要望でございまして、このたびそれの移転新営ができることになりましたことは非常に喜ばしい限りだと思っておるわけでございます。今後は法務省の事務当局と里府市とさらにいろいろ打ち合わせをしまして、りっぱなのができ上がりますように祈っているわけでございます。そして新しいのができましたら、矯正の実が上がるように運営についても努力していきたいと考えておる次第でございます。  細かい点につきましては矯正局長の方から御報告申し上げます。
  55. 増井清彦

    ○増井説明員 甲府刑務所の移転につきましては、本年度予算措置が認められましたので、現在の施設は法務省から大蔵省の方に所管がえし、大蔵省では国有財産地方審議会の議決を経まして甲府市に払い下げられることになっております。見返りに甲府市で新しい刑務所を移転地につくりまして、法務省がこれを購入する運びになるわけでございます。  現在までの事務の進捗状況でございますが、手続の面といたしましては、去る十一月五日甲府市長から大蔵大臣に対しまして、現在の施設の跡地の売り払い及び購入申請がございましたので、法務省でもできるだけ早い機会に国有財産関東地方審議会で審議をしていただくように関東財務局の方に要請しております。聞くところによりますと、年内にその審議が行われるということでございます。議決がございますと、明五十三年三月に正式の契約を締結する予定でございます。  他方、工事面でございますが、すでに法務省で新しい施設の基本計画を作成しておりまして、これに基づいて現在甲府市が実施設計を進めております。順調に参りますと、明五十三年六月に着工し、五十五年三月には完成を見ることになろうかと思います。その後、五十五年四月に新しい施設に移転をいたしまして、古い現在の施設は速やかに大蔵省から甲府市に払い下げられるということになるわけでございます。
  56. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大変煮詰めたお話にまで進んでおりまして感謝しておりますが、いま甲府刑務所は未決、既決を含めて何名収容していますか。
  57. 増井清彦

    ○増井説明員 現在の甲府刑務所の収容者定員は五百五人でございます。本年九月現在の実人員、収容されております者は四百七十四人ということになっております。
  58. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それは未決、既決わかりますか。
  59. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 甲府刑務所の移転につきましては、鈴木委員初め地元の皆様から大変御協力をいただきまして、私からも厚く御礼申し上げます。  ただいまの点、詳しい資料を持っておりませんが、四百五十七名のうち大体百名前後が未決でございまして、それ以外が既決と承知いたしております。
  60. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それでは、後ほど正確な数字をひとつ資料で示していただきたいと思います。  これはもしお差し支えがあれば結構ですが、できましたら教えていただきたいのですけれども、等価交換的な方法によっておやりになるようですが、いま法務省考えておる全体の計画ですね。五百五名の定数で四百七十四名か、四百五十七名か、その程度の方が収容されておるようですけれども、今度お建てになる総体の計画、規模というのはどういうふうになっておりますでしょうか。
  61. 増井清彦

    ○増井説明員 まず定員の関係でございますが、定員は未決、既決合わせて三百五十名でございます。内訳は、既決が二百五十名、未決が百名でございます。  規模の点は、土地の面積は約七万一千平方メートルで、現在の施設とほぼ同じでございます。建物の面積は延べ一万五千百六平方メートルで、現在の施設に比べますと、一六・六%ほど減になっております。構造その他につきましては、現在の建物が一部れんが造、一部木造になっておりますのが、全面的に鉄筋コンクリート造になるわけでございます。  なお、収容定員の関係でございますけれども、量よりも質の充実を主眼に置きまして、現在の収容状況では一応三百五十人で足りるのではないかということで当初から計画を進めているわけでございまして、現在入っている者の調整につきましては同種類の刑務所の間で収容調整を行うことになっております。もし将来収容者の増がございましてさらに施設を拡大しなければならないという事態が生じましたときのために一応増築のスペースは考えてございますので、最大限六百名の収容施設までになることは可能でございます。
  62. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうしますと、終局的には六百人収容の施設にしたいということでございますね。とりあえず三百五十人程度の規模でつくりたい、こういうことでございますか。
  63. 増井清彦

    ○増井説明員 若干趣旨が違うわけでございまして、現在のところは一応三百五十名で足りるのではないか、そういう見通しを持っているわけでございます。ただ、一回施設ができますと、鉄筋コンクリートの施設でございますので、五十年あるいは六十年という期間は持ちこたえなければならないことになりますので、その場合のために、どの建物でも同じだと思いますけれども、増築のスペースということを常に考えているわけでございまして、最大六百名までは可能であるという見込みを持っているわけでございます。
  64. 鈴木強

    鈴木(強)委員 表現は別としても、終局的に六百名収容の余裕はあるということでございますね。ですから、全体的ないまあなたがお述べになりましたような計画をやっておって、なおかつ将来の構想としてはそういうところまで考えておるというふうに理解をしていいですね。  それで、まあ収容される人が減っていくことは大変喜ばしいことでございまして、ふえるということはわれわれとしてはどうも好まないのですけれども、残念ながらふえているというのが実情だと私は思うのですね。ですから、甲府の、いま四百七十四名ですか入っておられる収容者の人たちを、新しくできた場合にはどこかへ移送しなければならぬという問題が出てくると思いますね。ですから、それは現状、予算の点等もありましてやむを得ないことだと思いますが、将来構想としては、私はできればこの際一緒におやりになっておった方が経済効果の面からいってもいいと思うのでございますけれども、予算もあるでしょうから、いま質問の段階ですので、私は願わくは一緒に六百人収容の近代的な刑務所にしてほしい、こう思うわけです。  それで、いま建っておりますね。この地域の建物は上物はどうなんでございますか。どこが処理することになっておるのですか。
  65. 増井清彦

    ○増井説明員 現在の古い建物の取り壊し費用でございますが、この取り壊しの事務は甲府市が行うことになっておりまして、その取り壊し費用の分だけ跡地の価格から差し引かれるということになっております。
  66. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、全体の所要工事費というのはどのくらいかかると見込んでいるのですか。
  67. 増井清彦

    ○増井説明員 二十四億五千百五十二万五千円でございます。
  68. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大体わかりました。大変御配慮いただいておりますが、これから若干質問をいたします拘置所ないし刑務所の施設の実態についての質疑の中で、甲府の施設が一体どういうふうなものなのか。あそこは非常に自殺者が出ておりますし、この囚人というか収容者同士でけんかをして事故が起きたり、これは甲府だけでございませんが、いろいろ問題が出ておるわけでして、そういう点から、私もそういった点も参議院当時質疑をいたしたことがございますが、それらの問題との関連で後ほどこの甲府の具体的な建設の内容について若干触れることになるかもしれませんが、時間の関係で次に参りますが、いま全国に拘置所と刑務所がございますけれども、その刑務所に収容されております未決ないしは既決の受刑者の方ですね、そういう数は、未決者数から既決者数は何人ぐらいございますか。もしできますれば、最近の動向を知りたいものですから、統計的にもしありましたら、それを知らしてほしいと思います。  それから、三年なら三年で結構ですが、その間に自殺をされた受刑者が、未決を含めてどのくらいおるのか、あるいは自殺未遂はどのくらいあったのか、この点をちょっとお知らせいただきたい。
  69. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 全国で、矯正のうち、いわゆる行刑施設は百八十八でございます。  内訳を申しますと、本所が七十四、支所が百十四でございます。さらにその内訳を申し上げますと、本所七十四のうち、独立の拘置所が七カ所、したがいまして残りの六十七カ所が刑務所でございます。それから支所百十四のうち、拘置支所が百五でございまして、刑務支所が九つでございます。  それから次に、収容状況について御説明申し上げます。数字でございますので、年度別に順次申し上げてまいりたいと思います。  昭和五十年、これは十二月末でございますが、における収容人員は、総数が四万五千九百九十四名でございまして、そのうち未決が八千七十二名、したがいまして受刑者は三万七千九百二十二名でございます。  昭和五十一年度は、これも年末の数字でございますが、総数が四万六千八百三十四名、そのうち未決が七千九百三十五名、残りの既決が三万八千八百九十九名でございます。  次に昭和五十二年度、本年でございますが、九月末現在の収容人員は、総数が四万八千五百七十四名、未決が九千百二十一名、残りの既決が三万九千四百五十三名でございます。  総体的には、まことに残念なことではございますが、増加いたしておりまして、特に未決における増加が著しいかと存じます。受刑者も逐年増加しているところでございます。  三番目に自殺件数について申し上げます。  昭和五十年度は、総数が二百三十一件ございまして、既遂は十件、未遂が二百二十一件でございます。  昭和五十一年度は、総数が二百二十三件と減りまして、既遂が九件、未遂が二百十四件でございます。  昭和五十二年度、これは十月末現在でございますが、総数におきましては百二十一件と大幅に減少いたしましたが、既遂になりました点は遺憾ながら十三件と増加いたしまして、未遂が百八件でございます。
  70. 鈴木強

    鈴木(強)委員 自殺をなさるということについては人権尊重の点から最大の配慮がなされなければならないと思います。こういった報告を聞きましても私は胸を痛める者の一人でございます。  それで、当時私と田中法務大臣との間でこの問題について若干質疑をいたしまして、結論として、当時の田中伊三次法務大臣は、一つは要注意者の発見に努めること。これはもう精神医学的あるいは理学的な面からいろいろ御検討されておるようですが、なかなかそれだけでは結論を出すのはむずかしいので、他の客観的な、主体的ないろいろな調査もなさって要注意者というものを早く発見する、これが一つ。  それから二つ目には、監守を十分にするということ。そのときに、たとえば十分置きに監守をしておったものを三分にするとか、十五分ごとに監守したものを十分にするとかいうような監守体制を強化する。  もう一つ大事なところは、拘置所なり刑務所に独房がございますが、その点がどのくらいあるか教えていただきたいのですが、その独房の中で突出部分がありまして、そこにいろいろな工夫をして首つりをやる首つり自殺というのが非常に多いのでございます。東京拘置所あたりでも、かなり自殺者が出ることでは有名になっておるわけでございまして、当時田中大臣としては、この三つについて徹底的に検討して、予算が必要であれば予算の措置をしてやりたい、こういう改善策をお示しになりました。私も非常に結構なことだと思いまして、大賛成をしたのでありますが、その後首つり自殺、こういったものをなくすために、突出部分のあるところは何とかなくすような工夫をしていただいていると思うのですが、そういう工夫をされても、なおかつ首つり自殺は、自殺者の中でどのくらいあるのか、その辺をちょっと教えてもらいたいのです。独房の数が幾つあって、そのうち突出部分があるのが幾つあるのか、それから、そういうところを利用して首つりをした自殺者というのはどのくらいいるか、それをお聞きしたいのです。
  71. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 先に、いわゆる第二種独居房と申します自殺予防措置を講じている房について申し上げたいと思います。  昭和四十八年、これはちょうど田中大臣が御在任中でございまして、その一月一日に、東京拘置所で森恒夫君が自殺したというときでございましたが、その年に七十五カ房整備いたしました。四十九年に百十一カ房、昭和五十年に百十六カ房、昭和五十一年に百一カ房でございまして、合計これまで四百三カ房でございます。  ところで、独居房の総数ば現在一万九千七百四十九カ房でございます。未決の部分が六千九百四十四カ房でございまして、これから考えますと、自殺予防のための房の整備というものは、まだ非常におくれているという面がございます。しかしながら、一方におきまして、昭和四十八年におきまして田中大臣が御説明申し上げたほかに、私どもの方といたしましては、分類調査の徹底をしよう、いわゆる科学的分類によりまして、危険な者を早く把握するという方法をとろうということを徹底いたしております。動静の把握につきましては、先ほど御指摘のとおりでございます。そのほかは、職員の研修の充実を図っております。さらに物品管理の面、すなわち凶器となるような物品の管理については、できるだけ注意をするということに努めているわけでございます。  ところで、ただいま申し上げました物品についてでございますが、凶器が入るということは、まことに幸いなことでございまして最近はございません。そこで、先ほど申し上げました自殺の既遂になった者、未遂の大半もそうでございますが、おおむね首つりでございます。そこで、一つ残っておりますのが視察時間を短くしようということでございまして、当時から十五分間隔でいたしております。この十五分と申しますのは、おおむね十五分の時間があれば、首つりを発見いたしましてから、いろいろ人工呼吸等をして蘇生する時間ということでやっておるわけでございます。これを縮めたいという考えがもちろんございます。それについての難点の一つは、特に夜間の自殺が多いわけでございますが、夜間の視察に余り職員が歩きますと、そうでない人についての安眠妨害になるということになります。したがいまして、夜は運動ぐつで、しかもリノリウムを張りまして、なるべく音のないようにしているわけでございまして、この運動ぐつにつきましても最近予算措置が認められましたが、大半は自費で買っているというような状況がございます。こういう点につきましては、予算上の配慮を今後とも続けていきたいと思っております。  その次は増員でございますが、まことに残念なことではございますけれども、この時代でございまして、非常に増員がむずかしい段階でございます。したがいまして、一般的ないわゆる人間の力を使わないで済む保安の警備用具を充実するという方面に努力する反面、事務の省力化を図りまして、事実上こうした視察をする第一線職員の増加に努めているところでございますが、とにもかくにも全般で一万六千人余りでございますが、最近非常に多忙な点もございまして、いわゆる保安職員に対する内部における増員配置ということが困難な実情にあるというのが現状でございます。  それからもう一つ、自殺予防の部屋でございますが、これは当時私も秘書課長をいたしておりまして、直接田中大臣を補佐いたしましていろいろ検討いたしました。自殺が完全にできないようにいたしますと、特に窓のところに鉄のものが入っているのをたくさんつくらなければいけないのですが、暗くなるということで、自殺予防のためにこの点を増加していきますと、逆に自殺予防房はけしからぬという話も最近出ております。そういうことをおっしゃられる方には、東京拘置所等を見ていただいているのでございますが、決して暗くなるものではございません。この点は、田中大臣みずからガラスを透かして見て、最初は非常に暗かった点があったのですが、それを明るくするように御配慮をいただいたのでございます。そういう点でむずかしい点もございますが、今後とも自殺の予防につきましては十分なる努力をしていきたいと考えている次第でございます。
  72. 鈴木強

    鈴木(強)委員 当時のお約束が実を結びつつあることは大変喜ばしいことでございますが、なお突出部分のある独居房が相当数あるようですから、これについては鋭意なくするための施設改善ということを一刻も早くやっていただきたい。やはり人命尊重、人権尊重の立場に立って、何とか自殺をする行為だけは、人為的に防げるものはあらゆる手段を使ってこれを防ぐという対策を怠らずにやっていただきたいと思います。  なお、保安要員、監守のための職員の数等は、私どもも増員がうまくいっていないことも知っております。したがって、こういう点は予算的にも要求をし、大蔵にも理解をしていただいて、必要な保安要員を確保し、どんどんふやして、少なくとも現在の保安要員の方々の個々の犠牲においてやられるというようなことのないようにしていただきたいと思います。国民は、こういうところに要員の増をすることは喜んで認めてくれると私は思います。われわれも大いに賛成です。これを総定員法か何かでやりくりしていくようなことについて私たちは納得できない。どうかそういう点は自信を持って、国民は支持していることを考えて、要員の措置等はやっていただきたい。これは私の希望です。  まだいろいろありますが、時間がないようですから、あと二、三で終わらせていただきますが、その次に、受刑者が刑務所の中でいろいろ作業をされていると思います。受刑者の中には、いろいろな特技を持った方がいらっしゃいますので、おおよそどういうお仕事をなされておるのか、そしてその方々が年間にどれぐらいの生産を上げておられるのか、そして、そこでつくられた物はどういうルートで販売をされ、その収益はどうなっていくのか、また物をつくる受刑者の方々に対してどの程度の報酬的なものを与えておられるのか、これらを一括してお答えいただきます。
  73. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 現行刑務所で実施しております作業は約二十業種にわたります。したがいまして重要な点のみを、あるいは作業の活発に行われておる点を例を挙げて申し上げたいと思います。  一つは、家具、建具等の木工製品の製作作業でございます。二番目は、活版印刷及び写真植字の印刷作業でございまして、現在職員の年賀はがき等を印刷しております。そのほか名刺等を印刷しておるのでございますが、国会議員の方の御注文は余りないようでございます。三番目に、作業服等のいわゆる縫製作業をやっております。四番目に機械加工、組み立て、溶接作業。五番目に、くつ、かばん等の革製品の製作作業でございます。  なぜ刑務作業を行うかということでございますが、これはやはり社会に復帰した後有能な作業ができるということを考えておりますけれども、現在の社会の労働需要に合致する作業を全部刑務所でやるわけにはまいりません。たとえば、危険な用具を用いるものであるとか、青酸カリ等を用いるというものはできないわけでございます。そこで私たち一応考えておりますことは、いわゆる五原則といいますか、一つは共同生活への順応に役立つ。現在の作業というものは非常に流れ作業になっておりまして、それからまた一方犯罪を犯す者は社会での共同生活ができないがために落伍した者でございますので、作業を通じまして共同生活への順応を図ろうということが第一でございます。二番目は規律ある生活の維持であります。やはりだらしない生活ということから犯罪に走るということで、作業時間を決め、日課時間を守ってもらうということで、規律ある生活をさせなければならぬであろう。三番目は勤労意欲の養成でありまして、これは特に御説明を申し上げる必要はないかと思います。四番目は職業的技能及び知識の付与でございます。最後に五番目は、集中心、忍耐心の涵養でございます。犯罪を犯しまして受刑者として刑務所に入ってきた方を拝見いたしますと、どうも集中心、忍耐心が足りない、そのためにせっかくいい職業につきながらすぐにやめてしまうということでございましたので、こういう点を矯正するという立場から、こうしたものに役立つ作業を探しているのでございます。しかしながら現在経済的な不況になりまして、いわゆる有用作業の開拓には刑務所の担当官が非常に苦労をしているところでございます。  そのほかの作業といたしましては、横浜刑務所で石けん、市原刑務所でみそ、しょうゆ、静岡刑務所で事務の用紙、ちり紙、それから加古川刑務所で中に入っている者のタオル、それから神戸刑務所で運動ぐつ、サンダル等をつくっておりますが、こういう物は収容された者に着せ、飲ませ、食べさせる、あるいは使う物でございます。  それから次に、どのぐらいの調定額が上がっているかということでございますが、昭和五十一年度における刑務作業の収入額は百十三億二千四百万円でございます。しかしながら、細かい数字はちょっと忘れましたが、約三十五、六億の作業のための経費がかかっておりますので、いわゆる実収入は七、八十億にならざるを得ません。これらの収入を上げるに当たりまして、作業製品を売却するわけでございますが、その売却先は民間もございますし、官公署もございます。民間に行きますのが大体九一%でございます。それから官公庁が使いますのが七%、先ほど申し上げましたように全国の各刑務所で使う、いわゆる自給する分が二%でございます。  最後にいわゆる作業賞与金という点でございますが、昭和五十一年度における作業賞与金の支出額を申し上げますと、六億八千三百万円でございます。この点につきましては国会におきましても少な過ぎるではないかという御指摘がございますし、私どもでも増額に努力しているところでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、大体八十億ぐらいの実収入ということで、これを受刑者で平均いたしますと実は年収二十四万円ないし二十五万円程度になるわけでございます。そのほか、いわば食べさせ着させといういわゆる収容費がございまして、現在は、収容費と、先ほど申し上げました作業経営費を足しますと、百十三億という調定額ととんとんないしは赤字になるということでございます。したがって、そういう関係から非常に作業賞与金の増額が困難であります。一方余りに増額いたしますと、いまの経済不況の中で一般社会で働くよりも刑務所で非能率的に働いた方が収入が多くなるということになったのでは、これは社会復帰にも役立たないということで、なかなか痛しかゆしのところがございますが、生産性を向上いたしまして、また有用作業を導入いたしまして作業収入額を上げるに伴いまして作業賞与金の増額も図っていきたい、かように考えているところでございます。
  74. 鈴木強

    鈴木(強)委員 細かいところまで説明いただきましたが、わかりました。  それからもう一つ、受刑者ないしは未決の方々の健康管理はどういうふうにされておりますか。
  75. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 社会から国の強制力によって刑務所ないし拘置所に収容する関係上、いわゆる保健衛生につきましては一番重点としているところでございます。問題は医療体制でございまして、物的面の整備につきましては相当数の整備ができました。たとえば、いま社会におりますと、われわれもそうでございますが、適当な時期にレントゲンの検査があるということで、レントゲン機械を買うと非常に高い関係がございまして、財政当局の御配慮によりましてリースで新しい機械を仕入れているということでございます。一番の問題は実はお医者さんの数の確保でございまして、現在それぞれの刑務所、拘置所におきまして地域の大学等と協力をいたしましてお医者さんに来ていただく、そして刑務所の医務課長になっていただくということをしております。この点につきましては、社会におきましても医師不足が叫ばれている折から、刑務所におけるお医者さんの確保については非常に苦労がございます。この点につきましてはまた別途私お願いに上がるようなことがあるかと思いますが、御理解ある方々の御協力を得まして医者の確保に努めたいと思っております。医者の中でも一番困っておりますのは歯科医師の確保でございます。われわれでも社会におりますと、歯医者さんにおかかりするのにはアポイントメントをとって相当先になるわけでございますが、刑務所に入ってくる人は、社会にいたときはお医者さんにかからないで、中に入ってから歯を治していこうというのが多いので、昨日も実は横浜刑務所に視察に参ったのでございますが、これまで月に二回おいでくださったのを、お願いいたしまして月に四回来ていただくようにいたしているのでございます。この点につきましては各地の歯科医師会に非常に御協力していただくところでございますが、いかんせんそう報酬は差し上げられませんものですから、なかなか御協力を得られないという点がございます。  医療設備につきましては私ども決して十分とは思っておりません。しかしながら、最大の努力を最も払わなければいけない分野であるということで努力を重ねているところでございます。どうか、実情を御理解の上、また御協力をも賜りたいと存ずる次第でございます。
  76. 鈴木強

    鈴木(強)委員 罪は憎んでも人は憎まず、ですから昔のように拷問したり、不当な、人権を侵すような取り調べをしたりしてはいけないのです。ですから、そういう意味において拘置所なり刑務所というものが近代化され、そして自分の罪を静かに反省をして更生をしていくというような立場に立って行政が行われなければならないと私は思うのでございます。  甲府の方もおかげさまで見通しがつきました。それで、いま突出部分があるために、自殺者の中では首つり自殺がほとんどである、非常に残念に思いますが、少なくとも甲府の場合にはそういう点は、突出部分は全部なくした近代的なものに独居房はなる、こういうふうに理解をしてよろしゅうございましょうか。
  77. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 刑務所における生活で、いわゆる独居がいいか雑居がいいかという点は、学説並びに運用上非常に問題のあるところでございます。現在、監獄法の改正を法制審議会で御審議いただいているところでございますが、今度はいままでのような独居房、雑居房という観念は廃そう。といいますのは、拘禁形式として独居房、雑居房という観念をとっておりましたが、できるだけ社会生活への復帰を容易ならしめるために個室への指定、共同室への指定ということで、できるだけ社会的な生活に近づける方法をとりつつ処遇をしていきたい、かように考えているところでございます。  その場合におきまして、全部個室にするというのも確かにお考えでありまして、そういう説を唱える方が内外ともに多数ございますが、共同生活におけるいわゆる集団作用における処遇というものも大切なわけでございまして、昔のようにいわゆる牢名主等が出るようなことではいけないわけでございますが、やはり年長の者が入り、受刑者ですから全部犯罪を犯しておりますけれども、よい受刑者がリーダーをとって処遇をしていくということによりまして、中での生活が規律を保たれる。そしてまた、社会に出ますといずれにいたしましても一人では生活できないわけでございまして、働くにいたしましても通勤するにいたしましても、集団の中における人間でございますので、そういう面からいいますと共同室を多くするということも一つ理由であろうかと思います。そこで、現在矯正局が考えておりますことは、やはり未決、既決によって違いますけれども、できるだけ個室をふやそうという考えでいる点については御指摘のとおりでございます。  そこで、甲府の刑務所につきましては、現在は未決、既決とも個室、共同室、独居房、雑居房との関係が一対三でございまして、独居房が少ないのでございます。それに対して、新施設におきましては、いわゆる個室を未決は七対三にいたしたい、それから既決につきましては五対五、半々にいたしたい。おおむね各国ともとっております個室処遇、共同室処遇の原則は大体このようでございますので、国際的水準に達するという意味もございまして、先ほど申し上げましたような未決は七対三、既決は五対五で個室の整備に努めたい、かように考えておるところでございます。
  78. 鈴木強

    鈴木(強)委員 では、委員長、ありがとうございました。終わります。
  79. 上村千一郎

    ○上村委員長 次回は、来る二十二日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十四分散会