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瀬戸山国務大臣 先ほど来いろいろな実情あるいは実例等を引いて、現に起こっておる
事態についていろいろ
お話がありました。これは非常にむずかしい問題と
思いますが、沖本さんの
お話を伺いながら、私もいろいろ
考えながら聞いておりました。よけいなことかもしれませんが、私はこういうように
考えるべきだと思っておるのです。結論は後で申し上げますけれども。
大体
人間に限らず、
人間も動物の一種だと
思いますが、あらゆる動物それから植物を含めていわゆる
生命体というものは、
生命の永遠の存続を図るために生殖作用を行う。
生命体の大小にかかわらずそれが行われておる。そこで、それはそのままでいいのですけれども、
人間社会においては、万物の霊長という
言葉がいまごろ適当かどうかわかりませんが、秩序ある社会をつくらなければならない。そういう観点から、
生命体は、
自分の
生命を継ぐものを、さらに次あるいは次の将来の
生命を健全に延ばすという
意味で、それをはぐくみ育てる
責任がある。一般の植物あるいは動物全部じゃありませんけれども、動物の中にはそういう感覚を持たない
生命体もあると私は
思いますが、
人間の場合には、非常に違ったというか高度といいましょうか、万物の霊長と言われるような
生命体なのでありますから、その
生命がずっと持続していくためには、社会を構成するためには、やはり組織立った仕組みをしていかなければならない。そこで、
自分のつくり出した
生命は
自分でそれをはぐくみ育てなければならない。これは昔はなかったわけです。他の動物にはないわけでございます。産めば産みっ放しで、子供も親もどこがどうなっているか全然わからないというのが一般の
生命体でございますが、
人間の場合にはそれを秩序あるものとしていかなければならぬということで、戸籍法を
考えたり何かしておる。
そこで、
生命体から出た、分裂した細胞といいましょうか、子供はここから出てきた子供である、こういうふうにして社会構成が明らかになり、そして組織的な社会をつくっていくような仕組みを
考えたのが戸籍法だと
思います。まだ世界各国全部調べているわけではありませんけれども、まだまだ戸籍法が整っておらない国々も相当あると
思いますけれども、いずれにしてもそういうことになっておる。そういうのが正しい人類社会のいき方であると私は
思いますが、先ほど来いろいろおっしゃるように、最近のわが国ばかりでないですけれども、そういう
人間の
生命の
あり方、
人間の
あり方というものについていろいろ
考えが乱れてきておる。おっしゃるように、性に対する観念が非常におかしくなってきたのは事実でございます。いいとか悪いとかという議論は別にして、先ほど来
お話しのようなことになる。それが生まれてくる子供に対しても、先ほど
お話がありましたが、子供には何も
関係がない。生まれてくる新しい
生命は何も
関係がない。生物の本能として出てきておる。しかもそれは、過去の
生命をもっと延ばそうというために出てきておる。これは罪も何もないわけです。罪の観念をここで言うのは適当でありませんけれども、そういうものだと思うのです。それも非常に不幸な状態になる、いまの決められた制度の中で
考えますと。あるいは親の万でも、さっきいろいろ
お話がありましたように、不幸な、あるいは悲惨なといいますか、状態が出てきておるのが現実の社会であります。でありますから、いま決めてある諸般の
法律制度には当てはまらない、
人間の
生命をとうとんで、その
生命の発展を期する上から言うと、その仕組みの中にはまらない現象が現実に起こってきておる。そして、多く実例を言われましたけれども、悲しむべきといいますか、あるまじきことで、非常に悲惨なことが起こってきておる。これは社会の乱れにもなっておる。これは、性教育あるいは学校教育、家庭教育、社会教育、その他全部別に
考えなければならない問題でありますが、それはそれとして進めなければならない。先ほど厚生省から
お話がありましたように、そういう児童の保護といういろいろなシステムがあるわけでありますから、それによってもやはり尽くすべきは尽くさなければならない。しかしそれでもまだ
解決ができない問題点があるということを沖本さんも指摘された。私もそう
思います。でありますから、これは、生まれた子供をそのままだれの子ということをしないで、別な人の子として届けるということが、これは表に出ないけれども相当社会にあるんじゃないかと思うのです。それで結構幸せに済んでいる面もある。さればといって、現在行われておる民法や戸籍法のたてまえをそれで全部崩してしまうと、さっき申し上げましたような本来の姿というものが破れてしまうおそれもある。ここに困難があると思うのです。
先ほど法制審議会の話も出ましたが、こういう問題を検討した
歴史があります。むずかしいもので結論をまだ得ておらない。長く申し上げませんが、いまおっしゃったように、いずれにしてもこれは現に起こっておる。数字にあらわれない方が多いんじゃないかと私は思う。中絶なんかでも、これはさっき統計を示されましたけれども、これは表に出た統計であって、表に出ないのが相当あるんじゃないか。これは想像でありますけれども、当然
考えられることであります。でありますから、これは、現実の社会に起こっている
事態、それが正しいとは
思いません。教育その他あらゆる倫理、道徳から皆改めるべきは改めなければなりませんけれども、いま起こっておる現象に対しては、いまの制度ではどうにもならないんだ。なるほどかわいそうだ。犯罪が起こる、小さな
生命が滅びていく、これを見逃すということは、それでいいんだということはちょっと私は言い切れないと思うのです。でありますから、いまも
お話がありましたが、これにいつまで結論を出すという簡単なものではありませんけれども、こういう
事態に対して、さればといって、これを奨励するような、何でもやりっ放しでちゃんとしてくれるんだというような風潮をまた誘発してもこれは大変な逆効果でありますから、そういうものを含めまして
関係各省で検討する。これは役所ばかりではありません。あらゆる方面の知恵を出し合って、いまおっしゃった、何の罪もない
生命をどうするか、それから、それをもとにして、悲惨な犯罪
事件あるいは悲惨なことが起こる、これをできるだけ防ぎ得る
方法、制度はどうあるべきか、こういう点を含めて検討すべき問題点だと
思います。そういうふうに
考えております。