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瀬戸山国務大臣 一言ごあいさつ申し上げます。
このたび、はからずも
法務大臣に就任いたしました。申すまでもなく、
法務行政の使命は、
法秩序の維持と
国民の権利の保全にあると
考えますが、
わが国の内外にわたりきわめて厳しい問題が山積しているこの時期に当たり、その
職責の特に重大であることを痛感いたしております。私といたしましては、
委員長初め
委員各位の御
理解と御
協力を賜りまして、
所管行政の各分野にわたり、
時代の要請に応じた適切な施策を講じ、
国民の期待する
法務行政の
推進のため、誠実に
職責を果たしてまいりたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
ところで、この機会に当面の問題について若干申し述べたいと存じますが、まず、今回の
日航機ハイジャック事件における
政府の
措置につきましては、多数の
人命に対する緊迫した危険を回避するため、やむを得なかったものと
理解いたしております。しかしながら、犯人らの無法な
要求に応じ、重大な
犯罪によって
身柄拘束中の者を、一度ならず二度までも釈放せざるを得ないという事態に至りましたことは、まことに無念と言うほかございません。
およそ
わが国を含む
法治国家は、多年にわたる先人の努力と犠牲の上に定立されたものであり、国の
法秩序が厳正に維持されることが、
法治国家存立の基盤をなし、また、そのことによって
国民の一人一人が自由と平和を享受し得るものであることに思いをいたしますとき、暴力によって
法秩序を根本から破壊しようとする者に対しては、
国民全体が、みずからの自由と安全を守るため、断固として
法秩序を守るという認識と気概をもってこれに対処することが必要であると
考えるのであります。私といたしましては、この種の
事件が三たび発生することのないよう、その
防止対策に全力を傾注してまいりたいと決意いたしている次第でございますが、将来不幸にして同種の
事件が発生いたしました場合には、
人命の尊重についても十分配慮しつつ、ただいま申し上げました観点を踏まえ、世論の
動向等をも十分参酌して、慎重かつ厳粛に対処する所存であります。
次に、
立法関係、特に
刑法の
全面改正についてでありますが、
法務省では、御承知のとおり、
昭和四十九年五月に
法制審議会から答申を受けた
改正刑法草案を土台にして、
政府原案作成のための
作業を進めております。この
改正刑法草案は、
法制審議会が十八年間にわたって慎重に
審議を重ねた結果完成するに至ったものであり、
内容的にもきわめてすぐれたものであると承知いたしているのでありますが、
刑法は、
国民生活に深いかかわり合いを持つ国の
基本法の一つであり、その
改正については、
国民大多数の合意を得る必要があることは申すまでもないところでありますので、さらに広く
国民各界各層の
意見に
十分耳を傾け、尊重すべき
意見は尊重して、真に
現代社会の
実情に合致し、かつ、将来にわたって適合し得る
刑法典の実現に心がけたいと
考えております。最近、当
法務委員会を中心として
刑法全面改正問題について
検討を行う機運があるように伺っておりますが、
国民の総意を代表する
国会において、この問題について
検討がなされることは、今後
法務省が
政府原案の
作成作業を進める上においてきわめて有意義であると存じますので、そのような取り運びになりました場合には、
法務省としての
考え方も十分御
説明いたすこととし、また、
関係各位の御
意見を虚心に拝聴いたしたいと
考えております。
以上、簡単ではありますが、私の心持ちの一端を申し述べた次第でございます。
もとより、これらのことは、
委員長初め
委員各位の御
理解、御
協力なくしては果たし得ないのでありますから、どうかよろしく御支援、御
鞭撻のほどお願い申し上げます。(
拍手)