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1977-10-26 第82回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 今井  勇君 理事 片岡 清一君    理事 菅波  茂君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 美濃 政市君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       阿部 文男君    愛野興一郎君       加藤 紘一君    熊谷 義雄君       佐藤  隆君    染谷  誠君       玉沢徳一郎君    羽田野忠文君       福島 譲二君    向山 一人君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    岡田 利春君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 鈴木 善幸君  出席政府委員         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         農林水産技術会         議事務局長   下浦 静平君  委員外出席者         外務省欧亜局大         洋州課長    山下新太郎君         大蔵省関税局企         画課長     勝川 欣哉君         農林大臣官房審         議官      佐々木富二君         通商産業省貿易         局農水課長  矢口 慶治君         労働省労働基準         局賃金福祉部企         画課長     宮川 知雄君         労働省職業安定         局雇用政策課長 白井晋太郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 十月二十五日  砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の  規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについ  ての臨時特例に関する法律案内閣提出第一〇  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の  規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについ  ての臨時特例に関する法律案内閣提出第一〇  号)      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。鈴木農林大臣。     —————————————  砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  最近の糖業をめぐる諸情勢を見ますと、種々要因が重なって国内糖価平均生産費を大幅に下回って推移してきており、これが精糖業のみならず、国内産糖その他各方面に多大の影響を及ぼすに至っております。  その要因といたしましては、まず第一に、昭和四十九年以降の砂糖消費の減退ないし停滞の状況の中で精糖業界過剰設備が顕在化し、販売面過当競争を招いていることであります。第二には、日豪長期契約に基づく砂糖価格国際糖価に比べて著しく割り高となっていることから、業界の安定と協調を図ることが困難な事態が生じていることであります。加えて、砂糖相場商品的特性から価格競争に走りやすく、最近では、国際糖価が低迷していることもあり、国内糖価はきわめて低い水準で推移しております。  このため、精糖業界は巨額の累積欠損を抱えるに至り、極度の経営不振に陥っておりますが、このことは国内産糖企業経営面にも大きな悪影響を与えており、ひいては、てん菜、サトウキビの生産農家所得確保の面でも少なからぬ不安を与えております。  こうした事態は、国民食生活における重要な物資である砂糖長期にわたって安定的に供給するという観点からも大きな問題であると考えられます。  以上述べてまいりましたような内外砂糖需給事情等変化に対処して砂糖の適正な価格形成を図り、あわせて粗糖輸入に関する国際的協定の円滑な履行に資するため、糖価安定事業団が行う輸入糖の売り戻しにつき臨時特例を設ける必要がありますので、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  まず、糖価安定事業団は、輸入糖について売り渡し申し込みがあった場合に、その申し込み者申し込み数量がその者の通常年における売り戻しの数量等を超えるときは、農林大臣にその旨の報告をすることといたしております。  次に、農林大臣は、糖価安定事業団からこの報告があった場合に、砂糖需給の安定に悪影響を及ぼすおそれがあると認められるときは、その報告に係る過大な売り渡し申し込み分についてその売り戻しを延期するよう同事業団命令することができることといたしております。これによりまして、国内砂糖需給適正化を図ろうとするものであります。  最後に、この法律は、昭和五十五年九月末までの時限立法としております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 金子岩三

    金子委員長 引き続き、補足説明を聴取いたします。杉山食品流通局長
  5. 杉山克己

    杉山政府委員 砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由におきまして申し述べましたので、以下その内容につき、若干補足させていただきます。  この法律案は、本則六条及び附則から成っております。  まず、第一条におきましては、この法律目的を定めております。  すなわち、この法律は、内外砂糖需給事情等変化に対処して砂糖需給適正化を図るため、砂糖価格安定等に関する法律に基づいて糖価安定事業団が買い入れる指定糖の売り戻しにつきまして臨時特例を設け、もって砂糖の適正な価格形成を図り、あわせて粗糖輸入に関する国際的協定の円滑な履行に資することをその目的といたしております。  次に、第二条におきましては、指定糖売り渡し申し込みに関する糖価安定事業団報告につきまして定めております。  すなわち、同事業団は、現在、砂糖価格安定等に関する法律に基づき、輸入糖について価格調整のための売買業務を行っております。この売買業務におきまして、平均輸入価格国内産糖合理化目標価格を下回っている場合に、輸入糖について同事業団に対する売り渡し申し込みがあり、かつ、その申し込みをした者の一定期間ごと申し込み数量が、その者の通常年における売り戻しの数量あるいは通常年における輸入数量等を基礎として農林大臣が定める数量を超えるときは、同事業団農林大臣に対し、その旨の報告をすることといたしております。  第三条におきましては、糖価安定事業団が行う売り戻しの特例につきまして定めております。  すなわち、農林大臣は、同事業団から第二条に基づく報告があった場合におきまして、当該報告に係る超過数量の売り戻しを直ちに行うと、砂糖需給見通しに照らし、その需給の安定に悪影響を及ぼすおそれがあると認められるときは、当該超過部分につきまして、その売り戻しの時期を一年以内の一定期間延期するよう同事業団に対し命令することができることといたしております。  なお、この特例措置につきましては、精製糖価格平均生産費を上回って推移しているとき、あるいは一般消費者または関連事業者の利益を不当に害するおそれがあるときは、農林大臣はこの命令を行わないものとし、また命令を行った後にこれらの要件に合致する事態が生じた場合にも当該命令を取り消すものとする等、その適切な運用を図ることといたしております。  第四条におきましては、売り戻しを延期した場合における売り戻し価格につきまして定めております。  すなわち、同事業団が売り戻しを延期した場合における売り戻し価格につきましては、当該輸入糖の買い入れのときから売り戻しのときまでの間におけるその保管に要する経費を加えて売り戻すことといたしております。  第五条及び第六条におきましては、砂糖価格安定等に関する法律の適用及び罰則につきまして定めております。  すなわち、この法律に基づき糖価安定事業団報告をする場合または農林大臣命令をする場合には、砂糖価格安定等に関する法律規定を適用することとするとともに、所要の罰則規定いたしております。  最後に、附則におきましては、この法律施行期日等を定めております。  すなわち、この法律は、公布の日から二カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、昭和五十五年九月三十日限り、その効力を失うことといたしております。  以上をもちまして、この法律案提案理由補足説明を終わります。
  6. 金子岩三

    金子委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  7. 金子岩三

    金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  8. 小川国彦

    小川(国)委員 砂糖は、最近需要量の低下が若干ございますけれども国民生活にとっては不可欠の生活資源でございます。そういう面で、この砂糖行政というものは国民生活に非常に深いかかわりを持っているわけでございますし、国の行う砂糖行政というものが直接国民生活にはね返っていくわけでございまして、そういう点では、私ども法案内容につきまして、十分この委員会の中で審議をしていく必要があるのではないかというように思うわけです。  私ども砂糖行政歴史を振り返ってみますときに、砂糖行政は、かつて輸入制限をしておった割り当ての時代がありますし、その後自由化時代に入りまして、過当設備過当競争、こうした問題が出てまいりまして、今日その問題がこうした立法化措置をしなければならないという事態に至っているわけでございますが、そういうような点において、私どもは、これまでの一貫した農林省砂糖行政というものを見ますと、どうもこの行政のあり方というものは、業者を甘えさせる行政であって、本当に国民のための砂糖輸入なり生産なりというものと取り組んできたのかどうか、そういう点で非常に疑念を感ずる面が多いわけでございます。  ずっと私、この砂糖行政歴史を振り返ってみますと、一九六六年の四月一日、昭和四十一年、いわゆる輸入砂糖トン当たり四千三百九十円の価格補助をする。これは砂糖卸売価格糖価安定法によりまして、一キロ百二円以上、百二十七円以下ということになっておりまして、これが百三十円になってしまった、このときにトン当たり四千三百九十円の価格補助をしまして、総額で約二百五十億円という助成を当時農林省砂糖メーカーに対して行っているわけでございます。  このときにメーカー側がどういうことを言っているかというと、輸入糖が安いときに無理やり課徴金というものを取られてきているのだから、高値になったら戻してもらうのは当然、まあ自分の貯金をおろすような感覚で物を言い、考えてきておったわけであります。そして、その当時農林省も、制度のたてまえがやりっ放しで、値下げ拘束力がないので、メーカーにお願いして卸売価格のこれ以上の値上げを自粛してもらうのが精いっぱい、こういう形で実は高騰時に補助金を出しながらも、それに対する値下げ対策、歯どめというものがなくて、結局お願いをして値下げを図ってもらうということしかできなかった歴史があるわけであります。  これはまさにメーカーのことのみを考えて、消費者対策というものはゼロというようなやり方ではなかったか。これが十数年前、昭和四十一年の農林省政策であったわけです。くしくも今度のこの政策を見ますと、まさにこれの繰り返しではないか、形は違っておりますけれども、中身においては同じ繰り返しではないのかというふうに見られるわけでございますが、この十年前当時の行政と今日とを対比してみて、農林省はこの立法の精神が果たして本当に消費者のための価格安定につながるものかどうか、この昭和四十一年のときに、ただ単にメーカーに対する補助金を交付しただけにとどまって、実質的には糖価引き下げにはならなかった、こういう反省というものは今度の立法の中にどう生かされているのか、まず、その点からお伺いをしたいと思います。
  9. 杉山克己

    杉山政府委員 現在の糖価安定法は、まさに糖価の安定を図る、そのことによって精糖企業はもとよりでありますが、大きな目的としては実需者消費者糖価の安定した供給を維持するというところに目的があるわけでございます。  ただ、現実にどうかということになりますと、最近の国際糖価の著しい変動、さらには豪州糖長期契約の問題、そういったことがございまして、現在の糖安法ではなかなかうまく機能しないという面が事実上出てまいっております。  基本的にそういう問題についてどうかということになりますれば、これは長い検討を必要とするかと思いますが、私ども、今回の措置は、まさに現在の糖安法では十分に機能し得ない価格及び需給の安定ということを図るために措置したものでございまして、その意味では、四十一年当時でございますか、先生のおっしゃられたそのころは、むしろ価格が高かった、これを下げさせるためにということでございましたが、安定したコスト価格水準を維持させるという意味で、趣旨においては同じようなことでございますが、今回の措置でもってそこを補うということを考えているわけでございます。
  10. 小川国彦

    小川(国)委員 その昭和四十一年当時二百五十億円もの補助金を出しながら値下げ効果がなかったという点は、どういうふうに反省をしておられますか。
  11. 杉山克己

    杉山政府委員 現実消費市場におきますところの価格形成について、指導なりあるいは助成を行ってその引き下げを図るということは、先生昭和四十一年とおっしゃられましたが、これは四十六年ではなかったかと私ども思いますが、ほかにも何回かあったわけでございます。ただ、それが現実にどの程度実効を果たしていたかということになりますと、それは一〇〇%といいますか、所期どおり効果を上げたこともあり、あるいはコストなり市場需給関係状況から思うように成果を上げ得なかったというようなこともあったかと思います。しかしながら、その後の経過をごらんくださればある程度御理解いただけるかと思いますが、特に四十九年の一般的な資源パニック状況が起こりまして、国際糖価も著しく上がった、あの時期におきまして、農林省としては強力な価格指導を行いまして、当時これは若干コストを下回る水準だったのでございますが、キロ当たり二百八十七円というようなことで、消費者に対しても実需者に対しても供給価格を安定した水準に維持し得たということがございます。  今日までむしろコストを大幅に下回るような水準業界価格を維持できないというところに問題があるわけでございます。
  12. 小川国彦

    小川(国)委員 私ちょっと年数を間違えましたが、一九七一年ですから四十六年でございました。  ただ、いま四十九年の国際糖価の値上がりに対する対策はわかるのですが、四十六年当時に補助政策を行ったけれども、それによる引き下げ実効というものはなかったのではないかということを尋ねているのですが、その実効についてはどういうふうにその点を評価されておられますか。
  13. 杉山克己

    杉山政府委員 数字自身はちょっとここに持ち合わせておりませんが、当時それなりに消費者価格は相当程度下がったと記憶いたしております。
  14. 小川国彦

    小川(国)委員 残念ながら、その当時荒勝巌という方が蚕糸園芸局長でそちらの方をやっておったのですが、実質的に対策なし、こういうような形での発表をしているわけで、そういう点では私は、この当時こういう助成をしたけれども、やはりこういう時代においても砂糖政策が失敗に終わってきているのではないかという一つの事例として、農林省に今度の法案提出に当たってそういう反省をひとつこの中に盛り込んであるかどうかという点をまず指摘しておきたいと思うわけであります。  それから次に、今度のこの法案審議するに当たっては、やはりその前提の問題として日豪砂糖長期契約の問題について触れなければならないと思うわけでございます。  この事実経過についてはもうお互いに知っていることでございますが、この五年間、日本オーストラリアの間で毎年六十万トン、三百万トンの輸入契約を結んだ。それが非常に高値契約であるために、今日、国際市況から見ても非常に問題のある価格になってきてしまっている。実はこの契約を結ぶときにいろいろな見方が出ているわけなのですが、この協定を結ぶときに、三井物産、三菱商事が、いわゆる商社がこの砂糖買い付けに入ってきて、飛び込んできて、そして、そういう商社主導型でこの長期協定が結ばれた、こういう見方一つと、もう一つは、この契約の形式は民間企業ペースになっているが、実態は政府がこの契約指導する形で行ってきた、こういう二つの見方がなされておりますけれども、この長期協定を結んだ経過について、農林省のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  15. 杉山克己

    杉山政府委員 若干長くなりますが、経過を申し上げますと、四十七年の夏ごろから食糧一般に対する不足ムードといいますか、ソ連の大量買い付け等を契機といたしまして、資源的に逼迫するのではないかという空気が出てまいりました。それが四十八年の秋に石油についてやはり同じような逼迫ムードが出てまいりまして、国際的にそういうものに対するパニックともいうべき一種の恐怖感が出てまいったわけでございます。日本といたしましては、資源的にきわめて不安定な状況にあるわけで、国際的にこれらのものの安定的な長期確保を図るということがきわめて必要になってまいったわけでございます。そこで、小麦とか大豆とか、そのほかの食糧についても、それから砂糖についても、やはり安定した長期取引をこの際確保する必要があるということで一般的に長期取り決め指導いたしました。  砂糖について申し上げますならば、それ以前からも長期的な契約は幾つかあったわけでございますが、この時期を境として、件数、   急激に増加してまいっております。現存その二百三、四十万トンの輸入数量のうち、長期取り決めによるものが約八割、二百万トン程度に及んでおります。  それらの中で、豪州糖長期取り決めは、これは実は特殊な契約の形になっておりまして、五十年を初年度といたしまして五年間にわたり六十万トンずつ引き取る、合計三百万トン。これは数量だけならよろしいのでございますが、そのものについて固定価格を決めまして、この間継続して引き取るということになっております。そういうことで、一般的に私ども農林省といたしましても長期取り決めを推進いたしましたが、豪州糖だけは一般の形とは違って価格までも固定した形で取り決めが行われたという経過がございます。  それから、それについて政府間の書簡が交換されたではないかという御指摘ございましたが、政府の介入ということは、指導という形一般ではありましたのと、それから、そういう取引が行われるならばそれに関連して種々国内的な手当てが必要であるということで、たとえば輸入するための輸入カルテルの結成についての手続を認めるとか、あるいはそこで価格を決めたその価格国内制度上の価格としてそれを取り扱うという事務的なことについて交換公文を交わしてこれを認めたという経過がございます。ただ、価格につきまして、政府が直接その価格でというようなことを指導し、あるいは承認したというようなことではなく、これはまさに当事者判断責任において決めたものと理解いたしております。  なお、三井三菱豪州糖契約を先導したのではないかというお話ございましたが、これは事実上砂糖取引オーストラリアに関する限り三井三菱が従来から、それ以前から市場として確保しておったところでございまして、実績があるということでその取引を行ったというように承知いたしております。
  16. 小川国彦

    小川(国)委員 この当時のいきさつを調べてみますと、これは民間主導の、いま局長の答弁では価格を承認したのではない、当事者が決めた、こういう形で言っておられるのですが、この一番重要な長期輸入協定価格を検討せずにこのことの承認を政府がするはずは私はないと思うのですね。やはりこの価格が、その当時トン当たり五百六十六ポンド、昭和四十九年の十一月で、最高値国際糖価であった、それが十二月の四百五十九ポンドのときに取り決めをさせた。山の最高値よりも若干下がってきたところで取り決めをさせたわけです。現在、御承知のように、五十二年の九月段階では百四ポンドで、もう実質最高値のときから見ると五分の一以下、こういうような国際糖価情勢にいまあるわけですが、山高ければ谷深し、こういうことわざが砂糖相場にはあるそうでございますが、これだけ上がってきた山の相場というものは必ず下がっていけば谷があるということを、農林省はその当時、こういうことをお考えになっていなかったのかどうか。これは何と言われようと、農林省がやはりこの問題については政府指導で進めてきたといういきさつは逃れられな  い事実だと思うわけです。  それで、これは私、外務省から日本大使オーストラリア担当大臣との間に書簡が交わされているということを承りまして、それを取り寄せたわけでございますが、皆さんの方ではこの書簡の果たした役割りというものを一体どういうふうに考えておられるか。少なくともこの民間協定というものをオーソライズする、そういう役割り政府が果たしたのであって、少なくとも政府がこの相場についてもこの協定についてもそれを承認した形の中でこの日豪長期協定というものが結ばれた、こういうふうに私どもはこの政府オーストラリア政府との覚書、少なくともこれは外交上の公文書でございますから、こういうものを日本側吉田大使発パターソン大臣あて書簡という形で出している、これは明らかな政府外交文書です。そういうものでこの長期協定を認めるということを言ったことは、実質的にはこの価格、最高の山に準ずるような、国際的に見て異常な高値の中でこういう長期協定を結ばせた、こういう政府責任は大きい、こういうふうに思うわけですが、その辺の政府責任についてはどういうふうにお感じになっていらっしゃるか、その点をお伺いいたします。
  17. 杉山克己

    杉山政府委員 当時、価格の動向についてどう考えておったかということでございますが、確かに、非常に資源が逼迫する、砂糖についても供給が断たれるのではないかというような、そういうパニック感が一面あった。そういう状況のもとで判断したということを考えなければいけないと思うのでございますが、今日になって考えてみますというと、確かにこういう価格変動はあり得ない話ではなかった。それらのことを冷静に考えれば、当時の判断が結果としては誤ったことになったではないかと言われれば、これは私は、何も政府とかなんとかということでなく、当時、日本国内全般にそういう情勢があったということだったと思います。  それから、その価格自体の取り決めについて政府が関与したかどうかということでございますが、先ほどもお答えいたしましたように、これはまさに当事者が、企業がみずからの責任判断において将来の価格変動も予見しながら、自分の予測を持ちながら取り決めに調印したということであろうと思います。御指摘のように、政府がこの取り決めに関して責任者間で交換公文を取り交わしております。しかし、これはそういう取り決め契約が行われるならば、それらの取り決めが円滑に遂行されるようにそれぞれ必要な国内の事務的な手続を取り進めるようにいたしますということでありまして、別段その価格内容まで立ち入ってこの契約自体を保証するとか、責任を持つ、そういう形のものではございません。  また、わが国の法制上、民間の当事者契約について政府がそういう担保をするということは、これはできない性質のものでございます。あくまでそれは価格についてまで責任を負うというような話ではなくて、必要な国内的な措置は手落ちなくとりますという意味交換公文であったと承知いたしております。
  18. 小川国彦

    小川(国)委員 豪州側の書簡では、「日本側民間業界豪州糖の販売代理人たるCSR社との間の交渉の結果、今後五年間に亘り最小限六十万トンの粗糖供給に関する民間契約が締結されましたが、豪州政府日本側民間業界とCSR社の契約条件にそうように輸出許可を与えます。これに関連して、日本政府が上述の契約に関して考慮されている措置につき通報していただければ幸いであります。」こういうことで、実質的にはこの協定を国が認め、そして、それに対してどういう考慮を払っているか、こういうことを通報してくれ、こういう要請がオーストラリア政府から出されているわけであります。  そして、それに対して日本側は次のような措置をとる、こういうようなことを向こうにお知らせするということになっておりまして、その一つは、「輸出入取引法に基づき豪州糖輸入カルテル結成の承認」、これはいまあなたが御答弁になりましたが、二番目の「平均輸入価格の算定に関し砂糖価格安定法施行令の一部改正」、こういう国内法の改正まで行っているわけで、「これらの措置は同契約の完全な運用を容易にし、かつ、日豪間の砂糖貿易を拡大することに寄与するものであり、日本政府の希望と合致するものであります。」こういうふうに言っているわけで、明らかにこの契約内容について政府が承認を与える、こういうふうに私はこの書簡を解釈しているわけであります。  ですから、いまにおいて政府が、これは民間が勝手にやったことで政府は知らないと言うことは、この書簡の上から、書簡の条文を素直に解釈していけば、政府はこれに同意を与えた、こういうふうに理解されるわけですが……。
  19. 杉山克己

    杉山政府委員 書簡内容は、いま先生が仰せられましたとおりでございます。これは、政府が承認したことの証拠ではないかという御趣旨のようでございますが、承認ということの意味でございますけれども契約はまさに当事者間の自由に行い得るところでございます。承認する、しないにかかわらず、これは本人の責任において、当事者責任において結ばれるという次元のものであろうかと思います。  ただ、この豪州との契約に関しましては、契約当事者が単一のものではございません。当時の、そういう原糖を必要としておりましたところのメーカー三十三社の連名でもって契約がなされております。そうなりますと、この輸入を行うに当たっては、その配分であるとか、価格の決め方であるとか、輸入カルテルといいますか、そういうジョイント、合同した組織の結成が必要であったわけでございます。そこで、そういうものの結成については輸出入取引法に基づいての規制が行われておりますので、この契約に関してそういう輸入カルテルを結ぶならば、それは結成を承認して、輸入できるようにいたしますという手続的な承認をいたしているわけでございます。承認についての約束をいたしているわけでございます。  それから、「平均輸入価格の算定に関し砂糖価格安定法施行令の一部改正」ということでございますが、これは現在の糖安法上、平均輸入価格というのは月に二回公表されるわけでございますが、そのときそのときの実勢によって当然に機械的に計算されるものでございます。ところが、豪州糖輸入長期にわたって取り決めるということになりますと、そういう相場の実勢とはやや離れた水準になります。この平均輸入価格の算定は、調整金でありますとか、あるいは安定資金の徴収等、全体の運用に大きく影響してくるところのものでありますので、相場のいかんにかかわらず、豪州糖についてそういう固定価格取り決めたならば、豪州糖の部分については、その実績価格をそのまま採用して、そして平均輸入価格の算定をいたしますということにいたしたわけでございます。  でありますから、別段、契約内容そのものについて保証したとか承認したということではなしに、そういう契約に伴って必要となるところの国内措置を円滑にとるようにいたしますということをいたしたわけでございます。  なお、一番最後の「日豪間の砂糖貿易を拡大することに寄与するものであり、日本政府の希望と合致するものであります。」というのは、当時まさにそのように考えておったことは事実でございます。
  20. 小川国彦

    小川(国)委員 この当時、政府がこの覚書を結んで、書簡を往復させてこれをオーソライズした、こういうことは、砂糖のような国際的にも国内的にも非常に不安定な相場のもので、私ども消費団体に聞いても、全く砂糖の値段というものは不安定で、これについての内容は非常に複雑怪奇だ、こういうことを言っているわけですが、この当時、この日豪砂糖長期協定というものを政府が結んだということは、まさに政府砂糖のばくちに手を出したものだということが言われているわけです。政府がこういうところまで手を出すということはどうかという批判が当時からあった。それは国際糖価の趨勢から見て、こんな異常な高値が長く続くことはない、こういう判断があったわけです。ただ、政府は、石油パニックの中のいろいろなあわてふためいた状況の中でこういう契約を結んでしまった。そして、いま局長は、政府がやったことは国内法の整備と補完作業をやったんだ、こういうことを言っているわけですが、これは頭がなくてしっぽがあるはずはないわけで、頭があるからこそ胴体もしっぽもあるわけなのです。  まさにこういう民間の非常に掛値の中の協定というものがあって、そして、それを政府が承認する形で後段の国内法の整備というものを行ったわけで、前段を知らなくて後段をやるということは不可解なことですよ。前段の事実があったからこそカルテルの結成も承認をしましたでしょうし、国内法の整備もやったわけで、前段の事実がなくてこういうことを行えますか。
  21. 杉山克己

    杉山政府委員 前段の事実と言われるわけでございますが、この書簡最後にあります「日本政府の希望と合致するものであります。」という意味では、それはある意味で前段の事実ということになるのかもしれませんけれども、このことによって、そういう意思といいますか、所見を述べたからといって、そのことによって直接この契約を担保したとか、保証したということにはならないし、それは当然当事者間であっても、その当時関係した政府及び取引の実際の当事者間にあっても、そういう意味を持つものというふうには理解されておらなかったわけでございます。
  22. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、政府が担保したとか、保証したということを聞いておるわけじゃなくて、砂糖行政というものは、ずっと一貫して農林省政策の中で行われてきているわけです。輸入制限時代も、自由化の時代も、これはやはり一貫して農林省政策指導の中で行われてきているんで、当然この長期協定農林省政策指導の中で行われたのではないか、そういう政策指導責任というものをあなた方はどういうように感じているのか、こういうことを聞いているわけなんです。
  23. 杉山克己

    杉山政府委員 当時、指導に基づいて、指導がなくともあるいはやったという部分もありますが、長期協定が幾つか結ばれております。それらの長期協定では価格取り決めがなくて、数量取り決め、期間についても三年、五年、七年というふうにさまざまでございますが、いろいろな形で取り決められております。その中で、豪州の契約だけは価格が固定されているという特殊性を持っている。これは先方が強く希望したからだということであって、政府責任ということになりますと、それならば、そういう価格でもって取り決めをした場合、将来危険があるからそれはやめたらいいじゃないかということを言うというような形になってくるのかと思いますが、もちろん価格の動向については、強気の見方あるいは弱気の見方、いろいろな考え方もあって、議論はなされたと思います。ただ、そのことについて政府が直接それを抑止するようなことに出なかったということは、確かにいろいろな判断の中で抑止するほどまでのことはないと考えたことはあったかと思います。しかし、それは当事者もそういうふうに判断して行ったところでありまして、そのことについて政府が直接どうのこうのという責任を負うというような話ではないと私は思います。  ただ、そういうこととは別に、精糖業界農林省は所管しております。その業界が安定的に経営が維持できないということになれば、これは問題でありまして、その原因としては豪州糖一つでございますが、さまざまな事情に基づいて現在の事態が生じている。これらのことに対して、まさに対策として取り組む必要があるということで今回の法案も出しておるわけでございます。そういう意味では、まさにそういう砂糖行政一般に関する責任考えるからこそ今回の法案をお願いするということになったというふうに御理解いただければ幸いだと存じます。
  24. 小川国彦

    小川(国)委員 民間の取引政府書簡を出すということは、これは異例なことだと思うのです。これはいままで日本のさまざまな民間協定があると思いますが、それを裏づける書簡政府が出す、これはやはり政府としてこの協定責任を持つということだと私は理解するわけで、そういうことの反省がなくして今度の法案を出してくる。そういうことは、やはり本末転倒ではないか。その辺に対する農林省砂糖行政というものの甘さ、こういうものを私は十分反省してもらいたい。こういう点から、いまその点を申し上げたわけで、抑止できぬと思った、そういう当時の農林省考え方というものの反省、それを若干いま局長も述べておられますので、そういう点はひとつ十分政府としても、砂糖政策への介入に当たって、やはり政府責任というものを十分考えた上で、これに対処してもらいたいということを申し上げておきます。  次に、今度の法案のねらいは、この法案提出することによって、毎年五百億円くらい出てきている精糖業界の赤字を解消して、経常収支を安定化させていこう、これが一つ立法目的で、今後三年間はともかく収支とんとんに持っていこう、こういう考え方だということを伺っているわけでございますが、問題は、これから三年間収支とんとんに持っていったとしても、千三百億円に上る精糖メーカーの負債、これは一体どういうふうに解消されるのか、その辺の見通しはどういうふうにうけておられますか。
  25. 杉山克己

    杉山政府委員 この法案で意図いたしておりますところは、コストを償うような価格で市価を維持させるということでございます。その意味からいたしますと、千三百億、これはまだ千三百億と確定し得た額でございませんが、おおむねその見当ないしそれより若干多いくらいというふうに推定されます。そのすでに生じている欠損を解消させるかということになりますと、そこまでは直接意図いたしておりません。  これについてどう考えるかということになりますと、いま直ちに、短期にこれをすぐ解消させられるというような目途はございませんが、ともかく今後の経営について、原価が維持できるような形にとりあえず戻しておいて、将来の長い経営の中で逐次償却を図っていくということしかないと考えるわけでございます。そのためには当然今回の措置だけで足りるものではなく、企業努力、長い間にわたる合理化、そういう努力によって逐次解消を図っていくというようなこともあわせて必要であるというふうに考えております。
  26. 小川国彦

    小川(国)委員 国が少なくとも民間企業の経営について介入をしていって、それで赤房解消策を議会に法案として出してくる。そういうからには、そのことの中でどういうふうに糖価を安定させ、そして問題とされている三十一社でございますか、この砂糖メーカーというものの再建を図るかということは、これは言わずもがな、この法案の中の大きな問題点の一つだと思うわけですね。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  そうすると、三カ年でまさにこれは暫定計画を考えただけのことで、長期的な砂糖業界というものの体質を根本的にどう変えるのか、そうして安定した糖価というものをどうして実現できるのか、そういうことの見通しというものは私はないように思うのです。三年間精糖メーカーの首をつないでやるだけのことに終わってしまって、本当に糖価長期的に安定させるということにはならないのじゃないか。少なくともこういう法案農林省が出してくるからには、この千三百億あるいはそれ以上と言われる負債をどういうふうに解消していくのか、それには砂糖輸入に携わってきている、あるいはいろいろな形で今日の砂糖メーカーの行き詰まり、危機の状態を招いた銀行なり商社なり、それからメーカー、それぞれ経営の責任に当たった者の責任というものがあると思うのです。そういうものを含めて、この負債をどういうふうに負担さしていくのか、そういうものがなければこれはまさに場当たり法案と言われても仕方がないのではないか、こういうように思うわけですが、あなた方は砂糖メーカーの再建計画を提出させるというお考えはないのかどうか。
  27. 杉山克己

    杉山政府委員 私もいろいろの業界を所管いたしておりますが、砂糖について、現在、糖安法もございますが、なかなかこの仕組みの運用だけでは、特に現在のような事態では、十分な安定が図りがたいということは事実でございます。しかるがゆえに、今回の法案提出しているわけでございますが、では、そういうことだけでもってすべて長期的に将来問題は解決したと考えるかということならば、私は、この推移を見なければそこは何とも言えないと思いますが、一つには、こういうふうに安定しない、混乱する原因の一つには、企業のあり方、経営態度というのが大きな問題であろうかと思っております。  その意味では、この三年間の措置はまさに三年間の暫定措置ではありますけれども、いま先生が御指摘になりましたような名神の、各段階にわたる問題、商社の介入の問題もございます。それから、流通段階での秩序の混乱というような問題もございます。そういうことも含めて、この期間に安定するようなレールと言いますか、基盤が形成されることを期待いたしているわけでございます。したがいまして、確かに三年間、当面、企業の安定性を回復するということをこの法案目的といたしておりますが、その間に、いま申し上げましたような、全体について安定的に今後推移し得るようなレールを敷ければ非常に望ましいということで、行政的にもそれに取り組んでいくというつもりでおります。具体的な再建計画を直ちにいま出させるというようなことは現在の段階では考えておりません。
  28. 小川国彦

    小川(国)委員 そういう姿勢が非常に誤解を招きやすいと私は思うのです。当面の、確かに五十二年三月期中心の大手十一社の経常損益を見ても四百二億円ですか、それに未上場の会社を入れると、約五百億円、こういう経常損益というものが出ているわけです。ところが、この大手十一社の繰り越しの損益は九百三十二億円もあるわけです。ですから、この数字を見ましても、とても現状のこの経常損益を償うだけではこの精糖企業の問題の根本的解決にはならないと思うわけです。そうすると、皆さんが、今度の法案措置で当然砂糖が上がる、上がっていくことは消費者に転嫁される。転嫁される中で、どれだけ上がっていくのかという見通しはまだはっきりしていない。そうすると、上がってきた利益の中で実は経常損益の五百億を超えて、問題は一千二、三百億の累積赤字の方の解消にまでこの法案措置で進んでいくのではないか、そういうことが答弁の節々に見受けられるわけなんですが、そこまで考えているとするならば、これは当然メーカーの再建計画というものをきちんと出させる。そうじゃないと、いたずらに政府がこういう法案で当座のしりぬぐいをするだけで、こういうような放漫経営に至らしめたそのメーカー責任はもとよりですが、銀行なり商社なりの負担というものを国民の負担で解消していくことになってしまうんじゃないか。銀行も商社砂糖メーカーも一致して、こういう誤った砂糖相場の中での誤りのためにこうした膨大な赤字をつくってしまって、それを政府法案でしりぬぐいをしてもらって、そうして実質的な赤字の責任というものは銀行も商社メーカーも負わないということになってしまうんじゃないか。  そういう点から考えれば、これは当然メーカーの再建計画というものを出させて、その上でこういう法案立法措置というものが納得されてくるんじゃないかというふうに思うわけなんですが、その点いかがですか。
  29. 杉山克己

    杉山政府委員 この法案は確かに今後継続的に赤字を出させないようにする、コストを回復させるということを主眼といたしておるわけでございます。同時に、そのことを通じて業界経営の健全化、正常化ということを意図しているわけでございます。そういうことだけで、すでに発生している千数百億もの赤字は解消できないではないかとおっしゃられれば、わずかの期間でもってそういうものが解消できるとはとうてい考えられないわけでございます。もちろん企業努力によって何がしかそういったものについて軽減していく、額を減らしていくということは可能でありましょうが、全部を短期に解決するということは、これは不可能でございましょう。  それならば、そういう企業の今後の経営のあり方をどう持っていくかということは、これは実は企業によってそれぞれ事情も異なりますし、さまざまであろうと思います。また、関係する融資機関等の立場もあろうと思います。その意味ではまさに企業としての今回の立ち直り、健全化を一つの軸として、そういう長期にわたる債務超過といいますか、繰り越し損失の解消計画、その場合にあるいは債権者にも一部分担してもらうというような考え方も出てまいるかもしれません。そういう意味では企業自身の責任においてこういうことは当然考えるべきだと思います。再建計画をいま政府が直ちに出させるということは当然——当然といいますか、現在考えているところではございませんけれども業界指導に当たっては、それらの債務についての今後のこなし方といいますか、消化の仕方についても当然事情を十分調査し、状況を把握した上で指導するということは考えていくべき問題だと承知いたしております。
  30. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣からもその点についての所見を承りたいと思います。
  31. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この機会に私の考え方を申し上げておきたいと思うのでありますが、この砂糖国民生活に占めております重要性、これは小川さん、先ほど御指摘のとおりでございます。したがいまして、砂糖に関する行政を進めてまいりますためには、何といっても国民生活の重要な物資としての砂糖の位置づけをやはり明確に認識して行政を進めなければならない、このように考えております。  なおまた、御承知のように、国内産糖、てん菜糖であるとかサトウキビであるとかいう生産に従事しておる農民諸君もおるわけでございます。この全体の二〇%を占める国内産糖生産者、この立場もやはり考慮していかなければならない。さらにまた、輸入粗糖の精製業界、これが御承知のように、過剰の設備を抱えております。そして、販売面においては過当競争もやっておる。そういうところから構造不況産業の一つとしてこれが社会問題にまで発展しかねない、こういう状況もございます。  そういうようなことを総合勘案をしまして、この際、今回のような法律の改正を国会で御承認をいただいて、そして需給計画、国内の需要に見合った輸入というものを図っていく。大体二百六十万トン前後というものが適正な輸入量である、このように私は考えておりますが、とにかく、この精糖業界を含めて安定を図るということが、長期的な立場において国民生活の中で占めておる砂糖を安定供給させる、そういうことになるわけでございまして、私は、そういうような総合的な立場で今回の所要の改正を国会に御承認をお願いしておる、こういうことでございます。  そこで、御指摘のように、今回の改正は三年間の時限立法である。これだけで果たして膨大な累積赤字を抱えておる精糖業界の再建整備ができるかどうか、こういう問題がございますが、これを政府が直接、あるいは援助なり財政措置なり、そういうようなことを講ずるということは私はいま考えておりません。まず、業界の過剰な設備を自主的に整理をさせる、そして過当競争もこの際やめさせる、需給の均衡のとれた秩序のある輸入も図っていく、こういうようなことで、まず砂糖業界の安定を図るという基礎を築いて、その上に立って業界が、先ほどお話しになった銀行もあるいは商社当事者も真剣に長期にわたっての再建計画というものを立てて、これを進めていくということでなければいけない、そういう方向で指導してまいりたい、このように考えております。
  32. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣の答弁の方が局長の答弁よりバックしちゃっている感じがするのですね。局長の答弁では、一応そういう実態も調査をしようということを明らかにしているわけで、そして大臣は過当競争とか業界の安定というようなことを言われているわけなんですが、私はこの法案業界の安定のためであってはならないのじゃないか、やはり国民消費者のことを考えていかなければならないので、それには、いま置かれている業界の問題をこういう法案で救済しなければならないというのはきわめて異常な事態で、そういう異常な事態だということを考えたならば、仮に大臣の言われる業界の安定ということを考えてみても、三年間のことだけを考えたのでは安定にならないので、千三百億という膨大な赤字は利息だけでも大変なものになっていくわけで、当然その実態というものを調査して、それに対するところの再建計画なり赤字解消計画なり、それをきちっと農林省が把握していくということでなければ、この暫定措置というものは、全体の長期的なものを見据えた上での暫定政策でないと、全く何にも役に立たないものになってしまうのじゃないか。そういう意味では、いま申し上げた、やはり精糖メーカーの実態というものをきちんと調査をする、そして再建計画というものを見る、このくらいの姿勢が農林大臣にもあってほしいと私は思うのですが、その点いかがですか。
  33. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それは当然のことでありまして、私が総括的に申し上げた中に、そういう当然農林省としてやるべきことはやる。しかし、いまは業界の中でも過剰な設備を抱え、過当競争をやっている。そこに大きくコスト割れのような状況にもなっている、これが業界の大変深刻な事態になっておるということは、業界自体もよく認識をして、そして構造的な面の改善等についても業界なりに真剣に現在取り組んできておるところでございます。したがいまして、農林省としては、業界のそういう自主的な再建の方向、合理化の方向ということを十分見きわめ、それを指導しながら必要な措置を講じてまいらなければいけない、こう考えておるところでございます。
  34. 小川国彦

    小川(国)委員 私の質問に対する趣旨をお認めいただいたということで、その点は農林省にも取り組んでいっていただきたいと思います。  次に、法案の中身に入ってお伺いをしたいわけでございますが、このシェアを決めるに当たっては、通常年の数字に基づいて決めていくということになると思うのですが、今後総体的な砂糖輸入の割り当てというような形が出てくる、これは自由化以前の形に当然なってくる。そうすると、シェアをめぐって大変な利権争いが起こってくる。農林省もそれに番き込まれるというおそれがあると私は思う。そういう点で、一体この通常年のとり方というものはどういうふうに考えておられるのか。それから、シェアをめぐる争いというものを皆さんは防ぎ得るというふうに考えておられるのかどうか。
  35. 杉山克己

    杉山政府委員 その前に、ちょっと数字のことで、いまの御質問とも若干関連しますので、申し上げておきたいと思います。  先ほど大臣が申し上げました粗糖の適正な輸入量二百六十万トン、この意味は、もう少し正確に補足して申し上げますと、現在、日本精製糖、でき上がった砂糖での需要量は大体二百八十万トン前後と考えられます。このうち北海道のビート糖の供給が三十万トン、これを差し引きますと二百五十万トンということになります。ですが、これは精製糖ベースですから、これを粗糖のベースに直しますと約二百六十万トン、その意味で、二百六十万トンは精製糖企業にとっての供給量、需要量の適正な数量であるという意味で申し上げたのでございます。  全部輸入に頼っているかといいますと、沖繩からの国産糖、それからまた南西諸島からの国産糖がそのうちに一部含まれておりますので、それを差し引いた数量が正確な意味での輸入量ということになります。  そのことを一つお断わり申し上げておきたいと思います。  それから、通常年はどう考えているかというお尋ねでございますが、これはまさに文字どおり通常年、いろいろパニックのときとか、それから何を考えておりますか、先を見越しての思惑的な輸入、そういうようなことによってある期間の輸入量が増大するということはあるわけでございます。そういうのは異常な数量ということにして、これを除くという意味通常年ということにいたしております。  通常年をどのように決めるかということについては、これは各企業の個々の利害にも非常に強く響くところでございますので、慎重に検討いたしておりますが、過去の何年かをとりまして、その中で、総量的にも、それから個別各社の数量を見ても、これが一番ノーマルではないかと思われるような期間を、いま各般の数字を並べて検討いたしているところでございます。  それからまた、その基準をどのように決めるにせよ、業界の中でこれに対する利権的なものと考えての争いが出るのではないか、そのことによる圧力が役所にもかかることが考えられるのじゃないか、それについては防ぎ得ると考えているかというお尋ねでございますが、私どもは、これは十分防ぎ得る、また当然防がなければならない、そういうことでもってゆがめられるようなことがあっては、およそ砂糖行政は今後成り立たないというふうに考えております。  それから、業界の方も、こういう法律を出すに当たりまして、事前にそういった点についての意向を確かめております。  もとより、実際に決まるまでにはいろいろ曲折はあるかと存じますが、私どもはそういうようなおそれが全くないとは言いませんけれども、そういう場合にも十分対処し得るという考え方のもとに適正に定めてまいる決心でございます。
  36. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、これが自由化前の割り当て時代に逆戻りする、こういう状況が当然想定されますし、その通常年のとり方を、もうお互い各社、いろいろな形での調査をしたり研究をしたりしている、そういう形が出てくるので、これはやはり皆さんの方も慎重にこの通常年の決め方というものを考えていかなければならないのじゃないかということを指摘をしておきたいと思います。  それから、問題は、私どもは、この立法によって結果的には消費者への転嫁という形でこの値上がりが行われる、これをどういうふうに防ぐのかということを当然考えていただかなければならないと思うのです。どう考えても、何年五百億の赤字をとんとんに五百億浮かせるということになると、これは国内糖価の値上がり以外にはないわけなんです。そうすると、当然その値上がりというものは消費者のところにもかぶさってくる。いま八割がいろいろな菓子製造業君とか、そういう実需者団体ですか、消費者が二割とか言われておりますが、いずれにしてもこの消費量は非常に大きいわけで、それからまた、菓子とかパンとか牛乳とかに入ってきても、やはり値上がりになってくれば消費者にまたかぶさってくる、こういうおそれがあるわけなんですが、いま皆さんの方でこの法律によって考えている卸売価格を百九十五円前後とするなら、小売価格というものは一体どういうふうになるのか。何か伝えられるように、小売価格を二百五十円前後にするということになると、それは現在の小売価格から見て六割ぐらいのアップになってくる、またさらにそれが引き上げられてくるおそれもある、そういう歯どめの対策はどういうふうに考えておられるのか。
  37. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の改正法律案の成立を見て、それを実施した場合に、消費者価格の値上がりを来すのではないか、この点は国民の皆さんも非常に関心を寄せておられる重要な問題でございますから私から申し上げるのでありますが、私はどうしても、自由貿易ではありますけれども食糧の重要な一環をなす問題でございますから、国としてやはり需給計画というものがなければならない、このように考えております。その際に、この需給計画は、最近、砂糖の需要が減退ないし停滞傾向にありますけれども、ある程度の余裕を見た需給計画というものを立てる必要がある。品不足にしておいて消費者価格をつり上げるようなことは絶対にやるべきでない、このように考えております。  そうして、いまの事業団にその売り戻しの権限を与えるわけでございますが、その際におきましても……(小川(国)委員「大臣、私の質問していることは消費者価格は幾らになるかということです」と呼ぶ)まず、前段の消費者に悪い影響を与えるのではないかというように国民が御心配なさっているから、まず、それだけを私申し上げて、あと数字の問題は事務当局にやらせます。  そういうようなことで、末端の消費、需要の上面に悪影響を及ぼす場合には、直ちにそれは一年以内といえども弾力的に売り戻しもやるということで対処してまいりますから、基本的に需給の計画を立て、それを正常に運営することによって安定をしていくものだと私は考えております。  いまのような過剰な設備を持って過当競争をやっておる不自然な形というものは長続きするものではないし、これを長期にわたって安定させようというのが政府考え方である、こういうことをまず前提としてお話を申し上げて、局長から数字は御説明を申し上げます。
  38. 杉山克己

    杉山政府委員 砂糖卸売価格の推移を見ますと、五十一年ごろは大体二百円台で推移しておりました。これが五十一年の終わりごろから二百円を大きく下回るような状況になってまいっております。それ以前の四十八年、四十九年、特に四十九年のパニックが起こった後の五十年にかけての価格というのは三百円近くになりまして、非常に高い水準にあったわけでございます。そういう時期は別にいたしましても、五十一年のころはおおむね二百円であった。それが現在どうかといいますと、百七十五、六円ということで、いろいろな物価なり労賃の上がる中で砂糖価格だけは下がってまいっております。  そういう意味から言いますと、今日、平均生産費まで回復するということになりますと、数字で百九十五円見当になるわけでございます。百九十五円は、今日実際に形成されている価格から見れば確かに上がることにはなりますが、いま申し上げました価格の推移、それから企業としてぎりぎり必要なコストであるということをお考えいただければ、それは形としてはいまの安い、コストを割っている価格より上がることになりますけれども消費者に御理解いただきたい、あるいは実需者にも受けとめていただきたいと思うわけでございます。  それから、そういう今回の措置によって小売価格を大幅に引き上げるのではないかというお尋ねでございますが、小売価格は、砂糖の場合は卸売価格と非常に密接に関連した動きを示しておりまして、若干の時期的なおくれはありますけれども卸売価格の騰落に応じてこれが騰落いたしております。大体、卸売価格に対して五十円台の格差、流通経費が乗せられて売られておるという状況でございます。七月、八月のころ、二百三十円から四十円台の数字で小売価格は推移してまいっております。そういう中で特別な、スーパー等による目玉商品としての安売りというようなこともありまして、中には二百円を相当下回って売られているものもあります。そういう特殊なものはどうなるかということになりますと、これは今後ともそういう目玉的な売り方はあり得ると思います。ただ、そういうものと比較されまして大幅に上がるということではなくて、現在の小売価格水準から見て、いま申し上げました卸売価格平均生産費水準まで回復した場合、小売価格にどの程度の影響を与えるか、ほぼそのままくらいの水準で、影響が、若干時期がおくれて及ぶのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、消費者に対する悪影響を防止することについて何か考えているかということでございますが、これは大臣からもお答えいたしましたとおり、現在のこの法律の中で、精製糖価格平均生産費を上回って推移している場合、要するに企業のコストを上回って価格形成が行われている場合、そういうときは売り戻し延期をしないということになっております。コストを超えて不当に利得を得させるというようなことでこの法律考えられているわけではございません。
  39. 小川国彦

    小川(国)委員 いまいろいろおっしゃられたのですが、ずばり小売価格は平均値で幾らぐらいになるかという見通しの数値をちょっと……。
  40. 杉山克己

    杉山政府委員 これはことしの六月、政府糖安法に基づく指示カルテルを実施したときに糖価卸売価格で百九十七円、現在私どもが申し上げております平均生産費的なところにほぼ落ちついておった時期でございますが、このときの小売価格は二百四十七円でございました。そういうことが一つの推定される水準であろうかというふうに思われます。
  41. 小川国彦

    小川(国)委員 これはどう見ても、その六月、卸売が百九十七円、小売が二百四十七円、当然今度の卸売価格の想定が百九十五円、平均生産費だと想定すると、やはりこれは二百五十円近い小売価格になって、六割近い消費者に対する値上がりという形ではね返ってくる、こういうことになってくるわけですね。これでは消費者対策ではなくてメーカー保護策になってしまうのではないか、こういうふうに考えるわけですが、この辺の消費者対策というものに対して、農林省として積極的に——いまの糖価から見ても、現在百七十五円あるいは百七十六円という趨勢ですよね。そういう中で保たれているいまの価格をこういうように六割も上げるということは、結局この法案消費者に負担を転嫁する法案になる、こういうふうに理解せざるを得ないのです。これをいかに皆さんの方が売り戻し、買い戻し措置ですか、そういうことの中で下げると言われても、現実にはいま皆さんの想定している価格自体が六割のアップにならざるを得ないという現実があるわけですね。これはお認めになりますか。
  42. 杉山克己

    杉山政府委員 現在、工場から出て卸段階でもって取引されている価格が百七十五円ぐらいでございます。いま申し上げましたように、これは若干さきの数字で、さきというのは前の数字でございますが、百九十七円の卸売価格のときに二百四十七円で、五十五円ぐらいの卸小売の間の格差があるわけでございます。こういう数字は何に基づいて申し上げているかといいますと、総理府統計局の小売物価統計で申し上げているわけでございます。いま手元にありますのは七月の数字でございますが、小売価格が二百三十九円でございます。現在もおおむねこれを若干下回る程度水準で推移しているのではないかと思われますので、先生おっしゃられるように、小売価格、特別に低いものを見てくれば格別でございますが、一般的な水準に比べればそれほど大きな値上がりになるというふうには考えておりません。
  43. 小川国彦

    小川(国)委員 時間がなくなってきておりますのであれですが、その六割のアップというのは大変な値上げ率で、それだけに私どもは、今度の法案のねらいというものがメーカーに対して結局救済の手を伸べることになるが、その結果は消費者に転嫁される、こういうことはどうにも防ぎようがない。それだけにやはり政府としてはメーカーのいままでに立ち至った根本的な原因なり内容なりを調査をして、その上で、メーカーの再建策というものの中には、これまでこういう事態に至らしめた中には金を貸してきた銀行の責任もあるし、また、こうした砂糖の操作をやってきた商社責任もあるし、メーカーのいろいろな放漫経営の責任もあるでしょう。そういうものの責任をおろそかにしたまま、こうした実質的な消費者への転嫁という形は私どもは納得できない。そういう点からは、もう一度振り出しに戻りますが、この再建計画の中で、銀行、商社メーカーがどういうふうにこの責任を負担としてとるのか、こういうことは再建計画を提出させる中でひとつ明確にしてもらいたい。そうじゃないと、今度の法案は一〇〇%消費者にその責任が転嫁されて、銀行やメーカー商社はそのままになってしまう、こういう事態を私は免れないと思うのです。  大臣としてその点に対する明確な御答弁をひとついただきたいと思います。
  44. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の法律案の改正、これは業界の再建整備の問題には直接ストレートではつながらない改正でございます。しかしながら、小川さんが御指摘になりますように、この業界の体質を改善強化をする、合理化を図る、これなくしては精糖業界の安定、ひいては国内砂糖の安定にならないわけでございます。先ほども申し上げましたように、大体国内糖その他を考慮、計算をいたしますと、二百六十万トンくらいの輸入粗糖、それに対して四百四十万トンくらいの設備を抱えておる。これは何といってもやはり過剰設備である。こういう面にもやはり合理化の必要があるわけでございます。  銀行、商社メーカー、そういう段階において、それぞれ関係がございますから、十分それらを含めて業界の体質改善なり合理化なりというようなものを案を立てさせまして、これを指導し、政府としてもできるだけのこの業界長期にわたっての安定ができるように、体質改善等は積極的に進めてまいりたい、こう考えております。
  45. 小川国彦

    小川(国)委員 以上で、質問を終わります。
  46. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 脇田琢郎君。
  47. 島田琢郎

    ○島田委員 本日提案されました砂糖の売り戻し特例法案に関して若干の質疑をいたしたいと思いますが、私は、先ほどからわが党の同僚議員の質問に対して大臣初め政府当局がお答えになっている中でも、非常に心配される面が幾つか露呈をしているというふうに考えますときに、この法案の取り扱いはきわめて慎重を要する、そういう感じがしてならぬのでありますが、確かに本法案をつくられた政府当局には大変苦労の跡が見えるし、そういう意味では大変な苦心の作だ、こういうふうに思います。しかし、苦心されてつくられればつくられるほど、私どもはその裏にあるものをどうしても明らかにしておかなければならない。たとえば、当初、新聞で報道されました内容は、大臣が先ほど業界の体質改善、それはまさに四百四十万トン余に及ぶ過剰設備を抱えて今日苦しんでいるという実態にメスを入れなくてはならぬ、こう言われたのを裏書きするように、新聞は業界の体質改善ということを前面に押し立てて、この法案に対するいわゆる解説をしているようでありますが、それだけにその面に対して大変この法律は作成の段階で気を使った、その跡があらわれているわけであります。  そこで、幾つかの小川委員の質問に対して、問題提起が行われたのに対して政府側が答えている点でもう少し鮮明にしておかなければならない点があるわけでありますが、まず最初に私は、乙の法律が出てきた背景、この点について説明を求めたいと思うのです。
  48. 杉山克己

    杉山政府委員 やはり全般的な砂糖をめぐる諸情勢を配慮してこの法律が出てきたわけでございます。それを見てまいりますと、基本的にはやはり砂糖消費が特に四十九年以降減少ないし停滞いたしております。そのことによって精糖業界の設備能力が需要に対して過剰ではないかという問題が表に出てまいりました。  それから、業界の中に過当競争という紛れもない事実があるわけでございまして、コストを大幅に下回ってダンピングとも言えるような形で販売競争が行われている。  それからまた、日豪の砂糖長期契約に基づく引き取り問題がございます。  そういうようなことが業界の協調を一層困難にしているというような事情もありまして、さまざまな事情が絡み合って、国内糖価コストを大幅に下回って推移している。しかも、それが長い間抜け切れない。そのことによって精製糖業界、巨額の累積赤字を抱えております。上場会社の数字はわかりますが、それ以外の会社もありますし、それから決算期以降の推移もあありますので推定で申し上げるしかないのでございますが、正確なところはなかなか申し上げがたいのでございますが、とにかく千数百億に上るということは言えると思います。このことによって業界自身はまことに苦しんでいる。それから、そこに働く人たちの立場も非常に苦しい事情にある。  それから、そのことが単に精製糖業界だけではない、国内産糖企業の経営を圧迫するようになってまいっております。国内産糖として北海道のビートがございます。このビートもやはりグラニュー糖、精製糖をつくっているわけでございますが、この価格輸入糖価格が下がれば当然に下がるということで経営が圧迫される。そのことはビート糖の原料になっているビート、てん菜ですね、それからまた、南の力でも同じようなことがあるわけでございまして、鹿児島、沖繩におきますところのサトウキビ、これらの生産農家所得確保の面でいろいろ悪影響を及ぼしてまいっております。  そういうようなことから、これらの生産農家、関係団体等も、結局はやはり製品価格の安定が図られないことにはその不安の根本は解消されないということで、強く需給安定の措置を求めてまいっております。  そういうもろもろの事情を考えまして、これらの需給事情の変化に対処するための国内砂糖需給適正化を図るための法律、これを今回こういう形で、糖安法特例という形でお願いすることといたしたわけでございます。
  49. 島田琢郎

    ○島田委員 ただいまの背景にかかわる説明に当たって、大聖な点を忘れているのではないだろうか。つまり、砂糖というものが国民生活にとってどういう位置を持っているのか、こういう点をまず基本としてしっかり踏まえておきませんと、いろいろな法律を出し、制度をつくり、国会でまたいろいろな議論をしましても、これはかみ合ってきません。  そこで、私は大臣に、ぜひ砂糖の位置づけといいますか、それによって自覚しなければならない社会的な責任、こういう面について明確にしておかなくてはならぬと思うのですが、政府はこの砂糖国民食糧の上ではどういう認識に立って位置づけようとされているのでしょうか。
  50. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど小川さんにもお答えしたわけでありますが、やはり国民生活がだんだん内容的にも充実をし、向上していっておる、そういう中で砂糖というのは私は非常に重要な食糧一つである、これを安定的に供給を確保するということが、したがいまして国民生活にも大変重要な問題であると認識をしておるわけでございます。  そして一方において、国際糖価は、私が指摘するまでもなしに非常に変動の大きい商品でございます。そういうようなことから、糖安法をつくり、糖価安定事業団を設けまして、国際価格の大きな変動をここで遮断とまでは言わなくとも、できるだけここで調整をいたしまして、そして国内産糖生産の拡大増強、育成と相まちまして、国民にこの重要な砂糖供給を安定的に図っていきたい、こういう認識で取り組んでおるわけでございます。
  51. 島田琢郎

    ○島田委員 わかりました。私は、大臣のおっしゃっていることをやはり法の一つ趣旨としてもきちっと端末に踏まえていただかないと、この法律は死んでしまう、こういうふうに思うので、あえて大臣のお考えを聞いたわけであります。  さて、そういう考え方に立つのであるとすれば、余りにも今日の国民食糧としての供給体制が乱れ切っているという点で、やはり認識を同じくせざるを得ない点は幾つかあります。それがややもすると、単に業界の今日的な状況を整備すれば直ちにこの趣旨に合致するというふうに短絡をしてまいりますと、今度の法案国民的コンセンサスを得られない、こういう結果に相なります。つまり消費者の方を向いてこの責任を転嫁するという、そういう印象が強くこの法案の中にあるからであります。そこのところを小川委員が厳しく追及をしたのでありますが、基本にかかわる大事な姿勢、この点が、大胆がおっしゃっているような姿勢に農林省自体がしっかりと立ってもらわないと、問題をこれから先にも残していく、こういうふうに思うので、きわめてしつこいようでありますが、私はそういう点をまず共同の認識の基本に据えて、これから若干聞いてまいりたいと思うのです。  そこで、安定供給という部面に限ってひとつ考えてみますと、砂糖というものは国内的にはもちろんでありますけれども、国際的にも非常に投機性を持って、あるときは大暴騰、あるときは大暴落、こういう歴史繰り返しではなかったか、こういうふうに思います。一つ最近の、わが国内における糖価の安定にかかわる法律が事実上発足をいたしました昭和二十八年以降の情勢の推移を見てまいりましても、そのことが歴然としているわけであります。  たとえば、一九五七年当時、スエズ運河の動乱による大暴騰が起こったのは、これまた歴史に明らかなところであります。そしてその後、一九五九年には砂糖が国際的に非常に不足をするという背景を踏まえて増産に踏み切るに至って、これは歴史に残る暴落をいたしました。一九六三年はキューバ革命で砂糖が一気に暴騰する。しかし一九六六年、三年後には実に一セントを割るという世界糖価の大暴落を経験しなければなりませんでした。そして、最近においては、一九七三年、昭和四十八年の石油危機と時を同じくして砂糖の買い占めという大変な騒ぎが起こって、砂糖は国際的にも大暴騰のいわゆる狂乱時代を迎えたのであります。しかしながら、一転して一九七五年には世界的な増産と需要の若干の停滞が原因になって暴落を見るという、今日的な状況に突っ込まざるを得なくなった。その間、国際的にもまた、第一次国際砂糖協定が一九五八年に成立をする。その後しばらく置いて、一九六八年に第二次の国際砂糖協定が成立をいたしました。その後、パンクをいたしました。ことしになって、つい先ごろようやく第三次の国際砂糖協定が成立する、こういう歴史が繰り返されている。これは私が説明するまでもなく、砂糖界における一つの常識として残っておる歴史繰り返しであります。  こういうふうに考えてまいりますと、そのたびに振り回されるのは、つまり国民食糧という大事な立場に立たされている、そして、その供給を受ける国民、酒費者の皆さん方の苦しみも同時にこの中に出てくるわけであります。  そういうことを考えますれば、今日、時を経て安定供給のために法案提出するということについては、基本的には私どもは反対をするわけではございません。しかし、こういう歴史の背景を一つ考えてみますと、どうもわが国内において、世界的なことを申し上げるのは口幅ったいのでありますが、国内においてそれじゃしっかりとした砂糖政策が根差していたかどうかという一つ反省がなければいかぬのですが、残念ながらそのときどきに糖安法が出、あるいは甘味資源特別措置法等の制度ができ上がってはおりますが、長期的に見てこうした砂糖の投機性に対応するような安定した法律ができ上がっていたという歴史がないのはきわめて遺憾なことであります。  そういう点を考えますと、今度の法律もまさに安定供給の名のもとに、業界の安定を図るという名のもとに出された法律であって、日本砂糖の将来的な長期展望に立った政策確立という点には欠けているのではないかという気が私はしてなりません。  そこで、そういう点を反省した上でこの法律が機能されなくてはいかぬのでありますが、それでは、なぜこういうふうに砂糖が不安定な状態を繰り返しておるのか。それは単に投機作物だ、投機製品だ、投機商品だと言っただけで片づけられないものがあると思うのです。いま、てん菜価格の決定も終わって、サトウキビ価格国内的な問題は当面日程として上がっておりますけれども、そのことを今回は少しおいておきたい。ただ、先ほど日豪砂糖協定の問題について厳しいお話が出されておりました点なども踏まえて考えますれば、外国からも日本砂糖に対する一つの注文が出ているのではないだろうか。たとえば、今度長い間話し合いのテーブルに乗り切れないでいた日豪砂糖関係が一つ前進の兆しを見せました。そこで、日豪間における砂糖の話し合いがなされた中でも、外国から日本砂糖業界に対する一つの注文が出されたと私どもは聞いておるのですが、今度の法案目的の中で、そういう点についてこういう言い方になっているのが気がかりでなりませんので、この辺を明らかにしてもらいたいのですが、第一条の「あわせて粗糖輸入に関する国際的協定の円滑な履行に資することを目的とする。」とあるのはどういう中身なのでしょうか。まず、ここをお聞きして、それから話を進めてまいりたいと思います。
  52. 杉山克己

    杉山政府委員 この法案は、それ自身はまさに需給適正化を図って価格水準の適正な回復、形成を図るというところにあるわけでございます。そのことが現実に問題となっておりますところの日豪の砂糖長期協定に対する価格改定の交渉、これ自身の解決にも貢献するという意味で、まさにそのことを「あわせて」ということでうたっておるわけでございます。直接的に日豪の問題を解決するために特別にこの措置をとったということよりは、企業自身の体質を改善し、健全な経営の状態を取り戻せば、そのことが今日問題になっている日豪の交渉に貢献し得る、こういう意味で「円滑な履行に資する」ということをうたっておるわけでございます。
  53. 島田琢郎

    ○島田委員 そうなりますれば、先ほど小川委員の質問に対して答えているものとは大分様相が変わってくる、こう思うのです。先ほどの質問の中では、政府が今度の日豪砂糖問題に相当首を深く突っ込んだ、それは行政上の責任を負うということになるのではないか、こう言ったのに対して、大臣初め局長も口をそろえて、それは業界の自主的な判断にかかわる部分だから私どもはそこまで行政的に介入はしておりませんし、介入する考えもない、こう言っておる。ところが今度は、法律をもってその民間における話し合いの担保をしようとしているということがいまの御答弁によって明らかになるではありませんか。私は、これは法案趣旨において非常に大きな矛盾を犯すと思うのですが、どうですか。
  54. 杉山克己

    杉山政府委員 直接、契約自身についての保証責任的な責任を持つものではないという意味は重ねて何遍も答弁申し上げたとおりでございます。ただ、業界の健全な経営を取り戻すということが交渉の上に好結果をもたらすであろう、さらには、いま価格改定交渉を行っておりますが、その価格改定結果に基づいたところの水準での取引自身、これを円滑に履行する上に役立つであろうという意味で、まさに「資する」ということを言っているわけでございます。その意味では小川委員の御質問にも答弁いたしましたが、政府としては業界を所管美禰としてこれを健全に育てていく、安定を回復させるということでの行政責任をまさに痛感しておるわけでございます。その観点からこの法案提案しているわけでございます。
  55. 島田琢郎

    ○島田委員 私が前段少し長く申し上げたのは、こうしたいわゆる外交上の手だての中で日本砂糖政策考えるということはおかしいのではないか、こういう趣旨に基づいているのであります。しかも、今度の法案は、当面の日豪砂糖問題に対する有利な展開を図る一つの担保条件として出された、こういうふうに認識しても誤りでない、こういう感じがする法律でありますから、さらに私はそういう考え方に立って日本の大事な国民食糧砂糖をお考えになること自体が誤りだということの反省を厳しく求めておきたいと思うのですが、大臣、いかがですか。
  56. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 豪州との間の長契の問題は、先ほど来るる御説明申し上げたところでございます。しかしながら、それはそれとしても、そういうようなことやまたは精糖業界過剰設備過当競争というような体質、そういうことがほっておけないような状況に相なってきておるわけであります。ひいてはこれが砂糖の安定的な供給にも影響をしてきておる、こういうような観点で私ども今回の法改正をお願いをしておるということでございまして、日豪の長契の後始末をするためにこういう法案を出しておるものではない、これは明確にしておきたいと思います。砂糖需給を安定的に確保して、業界の体質もそれに見合って強化をし、整備をしていこう、合理化をやっていこう、こういう趣旨で私どもやっておるのでありまして、そのことには恐らく島田さんも御異論はないところであろう、こう思うわけでございまして、御理解を賜りたいと思います。
  57. 島田琢郎

    ○島田委員 私はきょうに限らず砂糖の問題をこの一年間にずいぶんたくさん手がけながら、この場所からの質問もしてまいりましたので、そういう意味一つの集積というものの中からどうしても大臣から直接——大臣と砂糖の議論をすることは、正直言っていま初めてなんであります。いつも局長とやり合っていて、大臣が出てきたときになかなか砂糖のことをやれませんから、きょうはどうしても、魚のことは詳しいけれども砂糖はおれは知らぬということではないでしょうけれども、それでは私は困るので、砂糖のことをしっかりと御理解を願っておかなければいかぬと思う。  ちょっと脱線した話で恐縮ですけれども、あなたの前大臣は、私がここで失礼ながらメンタルテストをいたしました。私は砂糖のことはおまえより知っていると開き直るから、私は、それじゃ若干テストいたしますがと前置きしてお尋ねをしたら、ちっともわかっておらぬのであります。あきれ返ってしまって、私は何のために一生懸命こうやって砂糖のことをやってきたのか、自分自身にもいや気が差したというときもございました。ですから、鈴木大臣は魚のことは詳しい、これは天下周知の事実でありますけれども砂糖になったらというのじゃ、これは困るので、基本的なことをしっかりとひとつこの際、大臣ともせっかく会っての議論でありますから、私は少ししつこい質問を繰り返したのであります。  私はその認識において変わっているつもりで申し上げているのではない、それは大臣おっしゃるとおりであります。このままにしておいてよいのかという危機感は私自身にもあります。それがあるがゆえに、間違いのない砂糖政策を進めていかなくてはならぬと思うから、もしも国民的にコンセンサスを得られないような部分があるとすれば、この点はやはりこういう席から国民の皆さん方のコンセンサスを積極的に求めていくという姿勢がなければいけないのではないか、私はこう思うのです。ですから、先ほど小川委員の質問の中にもその趣旨が貫かれておりますので、私はそれも受け継いで、わが党の考え方をここに明確にしながら、この法案をよいものという立場に立って、必要であるならばこれを成立せしめなければならぬでありましょうが、問題があるとすれば、私どもは党結党の精神に立ち返って反対せざるを得ない、こういうことになりますので、しっかり御答弁をいただきたいと思うのです。  さて、それでは時間の関係で次に移ってまいりますが、今度のこの法案のもう一つの大事な点、見逃してならないのは、そして同時にまた大臣が大変気になることをおっしゃっているので、私はこの点はどうしても明確にしなければならぬと思うのです。業界のいわゆる体質という問題に触れております。それは直ちに過剰設備であるという言葉によって表明をされますが、果たして過剰設備だというふうに言い切れるかどうか、この点私は、農林省自体にも十分検討されているとは思われない節がある、こう思うのですけれども、これは私の思い過ごしであれば結構なことでありますが、どうも私が調べてみた限りにおいては、必ずしも設備が過剰だというふうにきめつけてしまえるような内容ではないように思います。もちろん装置産業で、粗糖を通せば白くなるというきわめて簡単な一つのシステムにあるこの精製糖の仕組みではありますけれども、それだけに、何でもかんでも単純に割り切って、これだけしか砂糖生産しないんだからこれだけの設備でたくさんだと言ってしまえるかどうか。  特に私はこの際まず前段にそれを申し上げる私の考え方の基本にあるのは、砂糖は、もう一つ、暴騰、暴落の繰り返しでありながらも、ややもすると過剰設備、過剰生産の名のもとに、せっかくそこで砂糖生産のために全力を挙げてまいりました労働者首切りというところにすぐ短絡してしまう、そういう危険な体質を持っているのもこの砂糖業界だということが一つあるからであります。そうなってまいりますと、私はいろいろな計算の方法があると思いますけれども、たとえば、いまの溶糖量に対する設備の比較で申し上げますと、砂糖を溶かす季節的な変動というものがかなり大きいということも、この砂糖の持っている体質の一つのように思います。あるときは一八〇を超えるようないわゆる季節変動値にあり、あるときは一〇〇以下というようなときもあります。しかしながら、季節的にそういう変動はあるけれども、最高砂糖を溶かすというその時期にひとつ計画の焦点を当てて計算をしておきませんと、ピーク時に砂糖が溶かし切れない、クリーニングし切れないという実態になってしまうわけですから、その辺のところを計算するとすれば、やはり一番多いときに計算をしておかないと、これは溶糖能力というものが正確だとは言い切れない、こう思うのです。ところが、それを平均値でとらえておるから、四百二十万トンとも言われ、四百四十万トンとも言われるこの設備は、二百六、七十万トンしか国内で必要としない砂糖をつぶす上では、単純計算をすれば間違いなく百二、三十万トンこれはオーバーだということになってしまう。ですから、そこのところを政府はどういう計算をされているのでしょうか。  試みに私の計算を若干御披露すると、日産大体一万六千七有トン、これぐらい砂糖をつぶします。つぶすといいますか、白くしている。八割の歩どまりにして日産一万三千三百六十トン溶糖するといたします。業界の常識では大体二百六十日、こう言っておりますから、二百六十日を掛けてまいりますと、一八一の季節変動値の最も高いときに計算をいたしますれば、六百三十万トンの溶糖能力を持ってないと日産一万三千トンの砂糖ができないという計算に相なるのです。二百六十日という問題はもう少し後で私は触れたいと思うのですが、このような計算方式で幾つか例を挙げてみましても、一番低いとき、つまり一万三千三百六十トンそのものずばりで掛けてまいりましても三百四十七万三千六百トンの処理能力を持っていなくてはならぬということになる。そういたしますれば、単純に四百四十万トンの施設は過剰でございますと大臣は言い切れるのでしょうか。この辺、そういう単純計算で業界のいわゆるぶった切りをお考えになったら、これはえらいことになってしまうと私は思う。  まず、この設備過剰という問題について政府の見解を伺います。
  58. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は実態を申し上げたわけでありまして、それをどの程度設備の合理化なりぜい肉を落とすかという問題は、いま島田さんがおっしゃったように、季節的に非常にピーク時もあります。いろいろなことを総合勘案をしてこれは決められるべき問題であるし、基本的に政府がこれだけの設備は廃棄すべきだとか、そういうようなことを押しつけるような考えは持っておりません。あくまで業界が置かれておる今日の厳しい情勢の中で、この構造不況産業の一つである精糖業界としてどういうぐあいに自主的な努力をするか、こういうことにあるわけでございまして、単純計算をしておるわけではございません。
  59. 杉山克己

    杉山政府委員 若干基本的な考え方に触れる話ではございますが、この際申し上げておいた方がよろしいかと思いますので、触れさせていただきます。  設備過剰の問題と並んで構造改善ということがよく言われるわけでございます。私どもは構造改善と申し上げますと、すぐ設備過剰と結びつけて過剰なものを整理するのかという話に理解されるわけでございますけれども、私ども構造と言う場合には、もちろん設備の問題もないとは言いませんが、それと並んで、あるいはそれ以上に企業自身の経営のあり方、それから流通段階の秩序のあり方、それから特に砂糖に顕著に見られます商社の介入のあり方、それらすべてのものを通じまして、改善すべき構造というよりはむしろ体質的なものといいますか、要素をたくさん持っておる、それらについて改善を図ってまいりたいということを言っておるわけでございます。  それから、その中で設備についてどう考えているかということについては、大臣が申し上げましたように、これは確かに単純に全体の推移なりほかとの比較というようなことを考えますと、年平均でもってとらざるを得ないわけでございますが、年平均でとれば、いまのままの設備をいまの大体の平均の稼働能力で操業すれば四百四十万トンぐらいはできるであろう、こう見ております。ただ、お話しのように、同じ年内にも不需要期と需要期とあります。そうすると、精糖にも波が出る。私はそういう波の出るようなこと自体も一つ問題であろうと思います。やはり年間できるだけコンスタントな操業をするということが望ましいのじゃないか。ただ、市況に応じてある程度の波はどうしても避けられないということはもちろんありますけれども、極端な波を生じるということは好ましくないのじゃないか。  それから、先生一八〇ものときがあるということを仰せられたのですが、ちょっと私どもの調査ではいままでそういう極端なのはないのですが、個別工場ではあるいはあるかもしれません。それから、特に操業を休んでいて一時つくりだめをするというようなときにはあるいはそういうこともあるかもしれませんが、一般的にはそういう高い波にはならないのじゃないかというふうに思っております。  それから、四百四十万トンの設備能力に対して実際に需要されるのは二百六十万トン程度、これは事実でございますが、では、その差が過剰かといえば、稼働率という言葉であらわすときは、四百四十万トン分の二百六十万トン、六割程度ということになりますが、その差の四割が過剰かということになれば、一見過剰には見えますし、そういう定義だってなくはありませんけれども、私どもは操業の形態、それから今後の需要の動向、そういうことを見て、全くそのものが過剰であるというふうに考えているわけではない。そこにはアローアンスは必要であろうというふうに考えております。  ただ、それを今後どういうふうに持っていくかということについては、まさに働く者の立場というものもありますし、それから企業自身の従来からのやってきた経緯ということもありますれば、そう簡単に机上計算だけでもって一遍にこれを廃棄するとか工場を統合するというようなことには直ちにはならないと思います。  そういう意味で、若干説明が先走って恐縮でございますが、この法律は直接的にそういった過剰設備の廃棄を義務づけているとか、そういうことを前提にこの需給調整を図るということを意図しているものではないということをこの際申し上げておきたいと思います。
  60. 島田琢郎

    ○島田委員 そういう理解というのは、どうしてもきちっと持っていてもらわなくてはいかぬのでありまして、これは業界の常識として、設備が過剰だ、そのままにしておくわけにいかぬ、スクラップする、スクラップするという問題が出れば必ず労働者首切り、これはついて回る。こういう点に、今度のいわゆる業界町編成あるいは体質改善と言われている一つ目的がそこにあるというふうに断ぜられる面がなきにしもあらず、こう私も心配をしている一人なんです。  今日の不況の状態を考えましても、また砂糖歴史的な一つの動きを見てまいりましても、やはりそのことがいままでには言える。たとえば、業界主要な十五社の平均で、昭和三十九年、四十年に入ったころのいわゆる従業員数の推移を見てまいりますと、現在段階では実に六五・七%、つまり三五%程度首切りが行われてきたということが数字の上で歴然としているのであります。四〇%も設備が過剰です。これを強調されるなら、われわれの常識的な判断であると、必ず首切りはそれについて回るだろうと考えざるを得ないところなんです。これは何人が考えても。設備の過剰部門については今後どういうふうに整理をしていくのかは業界の自主的な判断に任せる、局長はこう言っていますけれども、私はそこに危険な落とし穴があると思うのです。むしろ政府はそのことをさわらないで、行政上の責任を一切回避しながら業界の体質改善を自主的にやりなさい、やりなさい、こう言ってきたら、そこの落とし穴にはまっていかなければならない今日の業界の体質ではないのか、この点を私はこの法案審議するに当たって大臣から、今日のようなこういう不況な状態にあって労働者の首切りなんというような問題が派生をするような業界の体質改善を行政指導なさるとしたら、これは私は許せないと思うのですが、絶対にしないという確約をいただかなければこの法案審議に出たれないとさえ私は思うのですが、  いかがでしょうか。
  61. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 先ほど来明確に申し上げておるわけでありますが、今回の改正法律案は、需給の均衡がとれるようにやっていきたい、それによって国民の皆さんにも安定的に砂糖供給確保ができるように、また一方において流通面における過当競争、こういうものも長期的な観点に立った場合は決して国民の皆さんにもいい影響を与えるものではない、こういうような観点から出しておるのでありまして、業界の構造改善というよりも過剰設備云々というようなことは、この法案とは全然関係のない問題でございます。ただ、こういうような時期でございますから、コストダウン等、業界内部でそういうことを熱心に努力をしていくということは、これは消費者である国民の側から見ても当然要請さるべき問題である、私はこのように理解をしております。
  62. 島田琢郎

    ○島田委員 大臣の決意のほどは理解するのですけれども、しかし私は、この点についても、この面からも少し心配があります。先ほど千数百億に上る累積赤字処理の問題をめぐって議論がございました。これに対する政府側の答弁、私はやはり心配が残っていきます。というのは、こういうことになるのではないでしょうか。  いまの千数百億に上る負担をそのままにしておくとすれば、いままではこれを解消するために自転車操業、ダンピング、こういうやり方で切り抜けてきました。しかし、それでも倒産をする会社が出ているのであります。今度はどこで固定をするのかはこれからの検討だというふうにおっしゃっていますけれども、どこで固定をするにせよ、シェアが固定されてしまえば、幾ら千三百億の負担を解消しようと努力をするにせよ、その道は完全に閉ざされてしまうということにも一面なりかねません。そうすれば、そのために倒産が早まるという危険性もある。もちろん、いま大臣が否定をされておっても、過剰な設備切り捨て、従業員の切り捨て、それでも倒産をしてしまうというような事態に拍車をかける結果になりかねぬというもう一つの危険な側面を私は持っていると思う、元栓を締めつけちゃうのですから。いままでは何のかんの言っても、指示カルテルがあっても、指示カルテルで相当の効果を上げたと言いますが、ときには陪審を張ってでも操業を続けて、自転車操業式に借金のなし崩しを囲うていかなければならぬという差し迫った業者もあるんでありましょう。ところが、今度は大事な溶かす砂糖の元栓が締められてしまうのですから、とてもそういうことで生き残る道はなくなってしまう、こういう事態も起こりかねぬと思うのです。  この辺について、千数百億に上る赤字を積極的に解消するという行政上の何らかの手だてをあわせて講じておかなければ、せっかくの法律が生きてこないのではないか。むしろそれは政府の思うつぼで、弱者切り捨てだ、そんな弱い会社はさっさとつぶれてしまえというふうにお考えなら、これはもう論外であります。しかし、大臣は、大事な労働者の首切りについては、これは当然その点についての考え方をきちんと持っておかなければならぬという趣旨の答弁をされているのでありますから、その限りにおいてこういうことが起こり得ないような一つの保障を私はぜひ明らかにしておいてもらわないと困ると思うのですが、いかがですか。
  63. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は、島田さんのおっしゃることもある程度わからぬことでもないのでございますけれども国内の需要に見合った安定的な輸入がなされるべきである。需給を大幅にオーバーするような、自由化されてはおるというものの、そういうような需給のバランスを大きく変えるような状況、これは本来の意味国民に対する安定供給ということにはならない。また、過当競争、乱売、そういうようなことで一時的に消費者に廉売がなされたとしても、そういうものは長続きするものではない。こういうようなことで考えておるわけでございますから、元栓が締まってしまうという、おっしゃっている意味については、別に私は私なりに解釈をしておるということが第一点。  それからもう一つの点は、精糖業界には、先ほど来小川さんも鳥田さんも御指摘になっているように、商社もあるいは金融機関もこれに関係をしておるわけでございます。もっと端的に言うと、精糖企業というのは府社の系列の中にさえ組み込まれておるというような指摘もされておる、こういうことでございます。したがいまして、一千億を超える累積赤字があるにしても、これは商社もあるいは銀行もいままでめんどうを見てきておるわけでございますから、精糖業界の経営の安定をまず当面図るように、そういう基盤をつくることによって商社金融なり銀行金融なりというものもいままでよりは円滑に動いていくであろう、私はこのように考えております。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、長期にわたってそういう累積赤字というふうなものは逐次これを消却をしていく。また政府も、いまここで砂糖だからといって甘いことを申し上げるわけにはまいりませんけれども政府としても場合によれば必要な措置考えざるを得ないかもしれません。しかし、余り砂糖のことで甘いことを政府としていま言う段階ではない。  それからもう一つ、今回の法律の改正は、御承知のように、精糖企業の中で、大分であるとかあるいは名古屋であるとか、そういう経営が極度に不振に陥って、倒産とかいうような事態も一部発生をしている、そういうことを考えますと、早く精糖業界の安定ということも考えないと、これが働く人たちの問題にもなってくるわけであります。そういうことを考慮をして、今回こういう法律の改正を国会にお願いをしておる、こういう趣旨を御理解を賜りたいと思います。
  64. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、大臣が従業員の首切りといったようなことに発展しないためにもこの法案の中でそれを守っていきたい、こういう趣旨に基づいて答弁をされたと受けとめます。  しかしながら、私はしつこいようですが、業界はそんなには甘いものでないものだから心配でまた申し上げるのですが、いまお話にあったように、砂糖業界に限らないのでしょうが、特に砂糖業界における系列の厳しさを挙げてみれば、主要十五社の系列は大別して大体三つに分かれると言われます。輸入糖による区分け方は別にありますが、その一つ三井系、そして、もう一つ三菱系、日商岩井系、こういうことで代表されると言われています。これには金融機関もがっちりと組み合わされている、こういう複雑怪奇ないわゆる系統の中に置かれている、こういうことを考えますれば、なかなかにして再建というのはむずかしい。  過般、私は東海精糖の問題にタッチをいたしまして現地を調査いたしましたし、また系統にある銀行の代表者とも会いまして意見の交換をいたしました。私ではとても理解のできないような仕組みになっていることに改めて驚いたのです。とてもこれはわけがわからぬ、そういう印象でありました。ですから、砂糖業界行政指導するということも容易ならぬということはよくわかります。しかし、容易ならぬからといって手をつけないでおくわけにはまいらぬでしょう。そこのところにどうメスを入れるかというのは、一つはかかって——繰り返しますが、先ほど小川委員が指摘いたしましたが、再建計画をやはり明らかにして、それによって整理するものは整理するという思い切った手だてがこの際要ると私は思う。そして、それは一つには今度の法案消費者の方に犠牲を強いるという印象でとらえられている点を払拭する上でも大事な点ではないでしょうか。つまり、国民的コンセンサスを得る上でも今日の業界のそういう体質というものを政府みずから責任を持って整理をする、解消をする、こういうことがなければ国民の皆様は納得せぬのではないでしょうか。そんな感じがしてなりません。  したがって、私はもう一歩小川委員の意見に積極的に一つの提言をするとするならば、政府は具体的な救済策を持って臨むべきだとさえ思いますが、これは一朝間違えますと、つまりこの法案業界の再建策だみたいにだけとられてしまう危険性もありますから、その辺のところはきわめて用心をしなくてはなりますまい。そういう意味で、大臣は、あるときにはそういう考え方を持って臨まなければならない場合もあり得るというニュアンスでいまお答えになったと思う。その点は素直に率直に理解をし、了解をしておきたいと思いますが、重ねてそういう点について私は意見として申し上げておきますので、後ほど、お考えがあれば、次の質問に加えてひとつお答えを願いたいと思うのです。  そこで、過剰設備、過剰生産、そういう状態にあると言われているこの砂糖業界で、もう一つ問題だと私が思うのは、今日、週休二日制だという声さえ上がり、現実にそれが実行に移されている向きが非常に多いのでありますけれども、この装置産業と言われる、単純産業だと言われております中で、だから特別そうなのかどうか私はその辺までよくわからないのですけれども、依然として三交代制がとられ、夜中も働いている労働者がいる。食品産業界においての一つの不思議な現象だとさえ言われているわけです。なるほどコストを下げていくための一つの手だてとしては考えられがちな点ではありましょうけれども、しかし先ほど大体現行二百六十日操業ということを言っておりますが、やはり設備を大事にするためにはその設備を整備をし、ときには砂糖でありますから洗浄もしなければならない。そして、できるだけ設備を大事に長く使う。砂糖の設備なんというのはそんなに近代的に、目が覚めるほど設備が昔と変わっているようなものではございませんから、そういう点では大事に使えば相当長く使えて、逆にそのことがコストを下げていく上で大きく貢献するという一面もあります。  ところが、今日二百六十日の操業ということになりますれば、これは大変な長期操業でございますし、当然三交代三直制をもってクリーニングに携わる労働者のいわゆる生活権にもかかわるような重要な問題を含んでいるということもこの業界におけるもう一つの体質として、この際改善を心がけなければならない点ではないかと思うのです。そこのところをほっておいて、それをやればコストが上がる、そういう面が恐らく頭の中にあるのかもしれませんが、今日人を使ってきた人たちの責任においてやはりその従業員の生活の向上を図り、大裏な人間としての基本的なものは守る責任がある、私はこう考えているのですが、不思議なことに三交代制が依然として今日までまかり通り持続されている。悪ければ最後は首切ってしまうぞというふうな状態になっているこの職場というのは、今日の日本の発展してまいりました労働界における一つの不思議な現象だとさえ私は思うのです。ここはやはり行政的にきちっと指導していかなくてはいけないのではないでしょうか。私の考えは間違っているのでしょうか。
  65. 杉山克己

    杉山政府委員 労働条件の改善の問題でございますが、私どもも調べましたところ、実にさまざまな就労形態でございます。五直のところもあれば四直のところもある、三百のところもある、あるいは二直、一直、実に五段階に分かれている。それから、交代も、三交代のところもあれば二交代のところもある、交代なしのところもある。そういう異なった事情のもとで競争が行われて、企業間の優劣格差も生じているという実態がございます。  そういう実態のもとに、労働条件の厳しいところでは改善ということは従来から要求があるところだとは思いますが、ただ私自身、経営の改善ということがなくて、本当にそういうことを念仏でうたってもできるんだろうか。やはりその前提になる企業の採算がとれるように安定した経営を保障するということがまずスタートではないかというふうに考えるわけでございます。そこで、今回の法案は、何遍も繰り返すようでございますが、そのことを最低限回復するということを考えたわけでございます。  それから、業界というのはそれなりに自分の足で立っておって、自分の判断責任において経営を行っているわけでございます。何事も政府依存ということでは済まない。その意味で、設備過剰の問題も含めてコストダウンのための企業努力を一段と要請する。今回のような措置をとれば、当然それは世の中に対する申しわけの意味からも私は必要になってくると思います。いたずらに政府助成をするとか、何か特別な基準をつくってこれで縛りつけるというようなことではなくて、やはり業界の中からそういう全体のことを含めて、債務の処理の問題も含めて、将来の展望、今回の制度改正といいますか、この法案による局面打開を一つの基礎、足がかりとしてそういうまじめな検討が生まれることを期待するわけでございます。なかなか業界だけでは、確かにまとまりの悪い、余り世の中からはほめられたことのない業界でございますけれども、私どもはそれでも所管している業界でございます。自分たちが責任を持ってこれを何とか一人前に育てるように今後とも努力し、指導してまいりたいと考えております。
  66. 島田琢郎

    ○島田委員 局長がお認めになるほどいまの砂糖業界における体質の問題は簡単なものではないということも私も認めているのですけれども、しかし、これは近代的な労働協約というようなものもいつまで待っていたって、自主的になんと言ったってこれはできっこないのですから、政府としては積極的にこの面について指導を強化されたい。これは労働省のやる仕事だなんて言わないで、あなたの所管の砂糖でありますから、そういう面でひとつ積極的な行動を起こしてもらいたいと思うのです。  一つ言い忘れておりましたが、設備過剰という問題で私が得た資料があるんですけれども、この面は業界が他の業種に比べて果たして異常なものなのかどうかという点を、これはひとつ専門の立場の方にお聞きしておきたい。私は専門でございませんからわからない点がございます。  調べてみましたのは十社でありますが、それぞれまちまち、大小がありますけれども、総じて十社の最近における新規投資額というのは二十九億八千二百万円であります。これの合計の評価額は四百二億でございますから、その比率において七・二%ということになります。固定資産の関係での比較で言いますれば、八百十一億九千八百万円でありますから、三・六七%の投資額、こういうことになるんですが、これは砂糖業界においては他の業種に比べて異常に高いのですか。それとも異常な体質のもとにおける投資額だという判断に立つべき性質のものなのでしょうか、この点はいかがですか。
  67. 杉山克己

    杉山政府委員 ほかの業界と精密に比較するということもなかなか困難でありますが、全体として最近の傾向からいたしますというと、企業の収支も思わしくない、供給がむしろ過剰であるというようなことから設備投資を控えられております。そういうことを考えますというと、最近の投資額はむしろ一般の産業における投資に比べてやや低い水準にあるのではないかというふうに考えられます。
  68. 島田琢郎

    ○島田委員 そうだとなりますれば、業界指導の方法というのは一定の方向が出てくると思うのです。ですから、そのために行政は何をやらなければならないかも明らかになってくると思いますが、私は重ねてこの際、大臣から明確にしていただきたい。  しつこいようですけれども、いまこの法案を前にして賛否両論があります。賛成する側は、砂糖のいわゆる国内的な立場での方たちもおりますれば、いろいろな形の人たちがおります。しかし、大多数の国民の皆さんは、砂糖と卵は物価の優等生と言われてきたのに今度砂糖が上がるのか、こういう点についてはきわめて神経質になっている、こういう面があります。そしてもう一つは、設備過剰という宣伝の前で労働者の首切りが強行されるのではないかという懸念を持っている向きがあって、賛否が分かれているのであります。私も、そういう判断に立つならばきわめてむずかしく考えざるを得ない、こういう思いでいる一人であります。  そういう業界において取り組んでまいりました問題から言えば、きわめてこれは厳しい状態で物を考えていかなくては将来に過ちを犯すというふうに考えると、なかなか容易でありません。しかし、この際私は、次の点について政府側の保証が得られるならば思い切った考え方に立たざるを得ないでしょう。これは党の一つの決定ではございませんから、あくまで私見でございますが、いま一番心配しているのは、物価に大きくはね返っていく、そういう原因をつくりはしないか、こういう点です。もう一つは、労働荷切りの問題に発展しないか、この二つであります。  そこで私は、先ほど大臣にひとつ首切りをしないという決意を迫ったのでありますが、この点はもう一回どうしても聞いておきたいし、しっかりと理解を求めるためにも、政府側のいわゆる明瞭な姿勢をお示し願いたいと思うのです。まず、それからお答えいただきましょうか。
  69. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私ども食糧供給を担っておる責任官庁でもあるわけでございまして、そういう意味国民の皆さんに将来ともに安定的に必要な需要に見合った数量が確保され、また価格も安定的にこれが供給される、こういうことが基本でございまして、現在の価格販売面における過当競争その他で大きなコスト割れをして、そういうことが形成をされておるということは一時的にはそれでいいかもしれませんが、長期安定的にこれを供給するという面から言いますと、やはりこの点は消費者の皆さんも御理解がいただけるのではないだろうか、こういうことが第一点でございます。  第二点の問題は、これは経済問題でございますけれども、しかし私、先ほども申し上げましたように、業界がこういうように経営が非常な危機に瀕しておるような状況下に置かれておる、そのために中小の精糖企業の倒産も出てきておる、そのために職場も失うような事態が発生をしておる、こういうようなことを私、深刻に受けとめておるわけでありまして、今回の法律の改正というのは業界の安定、これも一つ考え方としてこういうような法改正をお願いをしておる、こういうことで御理解を賜りたいと思います。
  70. 島田琢郎

    ○島田委員 しかし、どうも私はそういう御答弁では納得ができないのでありますが、私はもっと積極的な意見を持っています。たとえば、シェアを配分するに当たって労働の近代化、もちろん首切りをやらぬということを含めて、そういう点について積極的な姿勢を示さない会社にはむしろペナルティーとして元栓を締めていくぐらいの決意で臨んでもらわないといかぬと思っているくらいなんです。いまの大臣の御答弁では、どうも奥歯に物がはさまっているように聞こえてならないのですが、いかがなんでしょうか。
  71. 杉山克己

    杉山政府委員 率直に申し上げまして、今回の法案でもって精糖業界が隆盛発展をするというようなことまではとても期待ができない。現在もう経営が危機に瀕している、これをともかく正常な状態に戻すということを第一に考えているわけでございます。この法案でもって今後のすべての、雇用から何から安定させる、施設の整理あるいは人員問題一切発生させない、そういうことまでを意図しているわけではございません。直接的にこの法案によって整理させるとか直ちに首切りをさせる、そんなことを前提にしているわけでないのはもちろんでございますが、同時に、この法案が経済問題すべてを解決し得るものというふうには考えておらないわけでございます。したがいまして、需給の安定を図るという観点からすれば、むしろ過去の実績をベースにして、したがいまして法律の上でも通常年の実績を上回る場合ということで、それを根底に置いておるわけでございます。  そのようなことからいたしますと、そういう御意見なり御希望のあることはわかりますが、ほかの、そういう労務改善のようなことまでも条件にして割り当てを決めるということには現実になかなかまいりがたいのではないかというように思うわけでございます。
  72. 島田琢郎

    ○島田委員 私は、一つの厳しい考え方を持っているという点でこういう私の考え方を言ったのであります。もちろん、それは簡単にいくものでないことは私もよくわかりますけれども、それぐらいの決意でありませんと、業界体質改善というと、すぐ首切りにばっと流れていってしまう、それが一番安易なんでありますから。そういうことではこの法律の意図するところは完全に受け入れられたということにはならぬのではないか、こう思っているから、その点だけははっきりしておきませんと、これは砂糖をつくっているのは会社の社長ではなくて、現実にはそこで働いている労働者なんでありますから、そこのところを忘れたらいかぬと思う。それは確かに設備が古くなってくれば新しくする、要らなくなれば切り捨てていくということになる場合がありましょうけれども、しかし私がさっき一、二点指摘をしてまいった砂糖業界における労働の問題を考えただけでも、近代化し、新しい感覚に立って人を雇う責任を会社の社長たる者は負っていかなければならぬではないのか、そんな点も非常におくれていますよ、これはせっかくの機会だから、こういうときにやはり積極的にやるという考え方を示すくらいの会社でなければいけないのじゃないですか、こういうことを言っているのでありますから、ペナルティーを課せ、それはなかなかむずかしいことはわかっています。でも、やはりそれくらいのはっきりした考え方を持ってこの法案を少なくとも提案をされているのではないか、こう私は思うのですが、どうもその点については私の考えて期待しているようなお答えが返ってこない、こう思うものですから、もう一度お尋ねをしておきます。
  73. 杉山克己

    杉山政府委員 お考え趣旨、よくわかりました。確かに経営者の中に、労務問題について十分な誠意を持って、近代的な感覚を持って当たっているかと言われれば、そうでない向きのあることは私も認めざるを得ません。そういった事態についても、今回の割り当て云々とは切り離して、まじめに努力するよう、近代的なセンスを十分みがくよう指導することは、これは当然心がけていかなければならないと考えております。
  74. 島田琢郎

    ○島田委員 さて、もう一つの点でありますが、現在の形成糖価と言われておりますこの砂糖コストというのは一体幾らなのですか。
  75. 杉山克己

    杉山政府委員 コストは、原糖を輸入いたしますと、その輸入価格、それから、これを事業団に売り渡す義務を負っているわけでございますが、売り渡して売り戻しを受ける場合には安定資金の積み立て、それから調整金を徴収されます。さらに、関税と消費税を負担いたします。これらを加えたものが原糖の入手価格ということになります。その原糖価格に加工費、流通経費、販売のための経費、一般管理費、こういったものを加えまして企業コストが形成されるわけでございます。  現在これをキロ当たりで見ますと、百九十五円見当というふうに計算されるわけでございます。
  76. 島田琢郎

    ○島田委員 そうすると、卸価格、現在の値段を比較いたしますと、その差はおおよそ二十円近い、二十円くらいになる、こういうことになりますね。  そこで私は、一つ提案でありますが、従来も砂糖消費税という問題がしばしば議論になりました。各国に比較をいたしましても決して安くない日本砂糖消費税であります。御存じのとおりキロ十六円、これが砂糖消費税であります。この際、積極的にこの砂糖消費税という問題についてお考えになってみてはどうだろうか。これは、きょうは大蔵省が来てないのだから、農林省サイドではとても答えるわけにまいらぬ、こうなるかもしれませんが、これは何もきょう今日唐突に私が言っているのではございません。いままでも砂糖消費税の問題に触れて、この際撤廃すべきではないかということを言ってきました。コスト百九十五円という、こういうものを考えていきますれば、二十円はどうしても消費者国民の皆さんに御負担願わなければならぬということは明らかになってくるわけであります。そのかわりという言い方は、これは比較するにはきわめて妥当性を欠くかもしれませんが、砂糖消費税の問題を積極的に考える時期にいるのではないかと私は思うのですが、これは局長よりむしろ大臣、どうですか、私のこの考え方は。
  77. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 砂糖消費税の問題は、これは長い間論議をされてきておる問題でございまして、現在、消費者価格糖価からいたしまして、私は、決して消費者砂糖価格というものは高い水準にない、そういうようなこともございますが、これは税制全般にもかかわりのある問題でございますから、大蔵省その他とも十分慎重に検討を今後もしていかなければならない問題だ、こう思っております。
  78. 島田琢郎

    ○島田委員 私は積極的に検討すべき時期にあると思いますので、大蔵省が直接、税の問題には責任を負っている官庁でございますから、農林省のサイドで大臣、直ちにこれを私の考えているような方向で実施せよと迫ってもこれは無理があるかもしれませんが、大いに議論をし、そして積極的に取り組むべき性質のものではないか。それは今日のこういう状態をおいて非常によい機会はないという判断が私には一つあります。積極的に御検討願いたいと思います。  そこで、法案の中身で最後に少し、あともう幾らも時間がなくなりましたが、先ほど小川委員からもお話がされていた点の中で、私は聞き漏らしている点もありますからちょっと聞いておきます。  第二条でありますが、先ほどのお答えを聞いておりまして私はその辺少しあいまいだと思うのですが、「通常年における」というその「通常年」のとり方、これはどこに目安、いわゆる尺度を当てるかによって、非常に、業界全体を考える場合にバルクラインといいますか、救済のバルクラインというものが下がったり上がったりいたします。これはやはり重大な生殺与奪の権を持つということに相なりますから、この「通常年における」というこの「通常年」の決め方というのはきわめて大事な点です。すでに先ほど小川委員指摘のとおり、業界ではこれをめぐってもう相当動きが活発になってまいりましたから、農林省はこれは決めるのには大変でしょう。これは一体どういう考え方を基本にしておやりになろうとするのか。先ほどそのアウトラインはわかったのですが、もう少し具体的に知りたいと思うのですが、どうでしょうか。
  79. 杉山克己

    杉山政府委員 いま作業をしている段階でございますので、この具体的な内容はなかなか申し上げがたい状況にあるわけでございます。  ただ、先ほども御答弁申し上げましたように、基本的な考え方としては、これはかつての輸入した実績数量一つの権利として、実績として認めるという考え方に立っているわけでございます。そういう考え方のもとに、通常あるべき水準の年ということになりますと、これは何年か、全体の数量と同時に、個別の現実に操業している会社のそれぞれの輸入の実績を見て、ここら辺が通常の輸入水準ではないかということで通常年というのが考えられると思います。  ただ、これは私は、基準をつくるということと同時に、あるいはむしろそれ以上に大事なことは、業界の協調、調整ということであろうかと思います。基準をつくって、そのままかつてのように割り当てるというようなことではなくて、を一つふところにしながら、現実の今日までのその後の経過なりそれから現在の各企業なりなんなりの状況判断いたしまして、そして業界の中で調整をして、あるシェアをつくる、これは現実にいままでの指示カルテルの中でもそういうことが行われてまいったわけでございます。そうして、そういうふうにつくられたものが私ども考えております通常年のシェアと合っている限り、そのシェアを尊重するということで運用を図っていく必要があるのではないか。政府が一元的にこれをぴしゃっと決めて、それを直ちに割り当てるというようなことでなしに、そういう双方からすり寄せていくような考え方でこれを運用していく必要があろうと考えております。
  80. 島田琢郎

    ○島田委員 局長のいまのお話でまだ十分よくわかったわけではございませんが、私はなかなかこれは政府は大変だと思うのですよ。大臣の権限でおやりになる、こう言っても、これは果たして大臣の権限というその権力に物を言わせてこういうふうにせよというようなことになるかどうか。この辺は私は心配だし、それがファッショ化のそしりを受けるなんということであれば、せっかくお考えになったことも、これは筋として通っていかないことになってしまいます。  この際、これを民主的に進めるという上で、従来わが党を初めとする野党の側で提案をいたしました需給調整協議会あるいは需給調整委員会、こういうものを設置して、大臣の積極的な諮問に応じて検討するという機関を設けるべきであると提案をしてまいりましたが、私は重ねてきょう、需給調整委員会の設置を提案したい。当面、委員会の機能としては精糖の需給計画の作成、先ほど需給計画の問題がありましたが、いままで政府側には砂糖需給計画というものはありませんでした。この際、需給計画を策定するということは非常に大事なことでございます。それには、輸入あるいは販売の量、あるいは価格、こういう面について具体的あるいは基本的な検討を進めるということには欠かすことのできない一つの大事な要件だと思います。また、設備に関して過剰だ、あるいは不足で新規に新設をせなければならない、こういう事態だって起こり得るでしょう。そうする場合における新増設、廃棄の許認可。また一つは、なかなかいまの砂糖業界、言っては悪いですが、大臣の言うことを聞く、そういう素直な業界ではないと私は思う。そういうことは局長もお認めになっている。やはり監視体制を強化しなければだめだと思うのです。守らせるという体制が要ると思うのです。大臣、こういう大臣のいわゆる権限だけではとても処理し切れない問題がわんさと出てくると思うのです。  この際、民主的な意味合いも含めて、需給調整協議会ないしは需給調整委員会といったようなもの、この中にはもちろん当面の砂糖業界の代表、あるいはまたそこで働く人たちの代表、また必要によって農民、消費者の代表も加える、こういったような民主的機関を設置してこの運営に当たるべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。
  81. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 鳥田さんの需給調整協議会あるいは需給調整委員会、せっかくの御提案ですけれども、さあどうでしょうか、砂糖は自由化されておる。長年、そういう自由化の中で実績、シェアというものが自然に形成されてきておる。こういうような中で行われておるわけでございますから、そういう実績等も踏まえて、業界の中で話し合いによって決めていただく、そういうことを踏まえて政府がこれに対して措置をしていく、こういうやり方が事をスムーズに運ぶ観点からいたしまして私は一番いいのではないか。それを、いろいろの代表を含めて需給調整協議会を設置する、そこでシェアだとかいろいろなものも決めていく、こういうことになりますと、なかなかまとまりにくいのではないか、結論が出ることがなかなかむずかしいのではないか、私はこういうぐあいに考えております。  よく研究はいたしますけれども、私のいまの考えとしては、率直に申し上げてこのような感じを持っておるわけでございます。
  82. 島田琢郎

    ○島田委員 これで質問を終わりますが、最後の私の提案は、そう木で鼻をくくったようなあいさつでなくて、検討に値すると思って自信を持って提案をしたのでありますから、政府部内ではひとつ大いに御検討願いたい、そのことを私から要望申し上げて、質問を終わりたいと思います。     —————————————
  83. 金子岩三

    金子委員長 この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律案について、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、午後四時再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————     午後四時一分開議
  86. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律案について質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  87. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 砂糖価格安定等に関する法律第五条第一項の規定による売渡しに係る指定糖の売戻しについての臨時特例に関する法律案について、農林大臣並びに労働省当局に質問をいたします。  農林大臣に最初にお伺いいたしたいのでありますが、本法提案理由、背景についてお伺いするわけでございます。私は、本法提案に当たっては、後ほどいろいろ述べることにいたしておりますが、本法は本則六条及び附則から成っておりますけれども、本法において特に需給調整を主としたところの部分等については、私たちも評価いたしておりますと同時に、本法の必要な点についても十分検討いたしてまいりましたが、現在のこの時期に当たって農林省も相当苦労されたいわば労作であった、かように思っております。そういった意味で、中にはいろいろと組合側に対する問題等もございますし、たくさん問題が今後に包蔵されておりますので、逐次質問してまいりますけれども、冒頭申しましたように、まず本法提案理由、背景等について大臣から提案理由説明もありましたけれども、さらにひとつ具体的に冒頭、見解を述べていただきたい、かように思います。
  88. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、わが国の精糖業界は、この砂糖の需要が減退ないしは停滞をしておるような中におきまして、糖業界は過剰な設備を抱え、また過剰競争によりましてコスト割れを見るというような状況でございまして、このまま放置をいたしますと、現在、構造不況産業というものが非常に問題になっておりますが、この精糖業界もまた大変な事態になりかねない。企業の倒産あるいはそれに伴う働く人たちの失業、そういう問題も起こしかねないような状況下にございます。  本来、砂糖は国際価格が、御承知のように、大変変動の大きい物資でございまして、どうしてもこれを量並びに価格の面におきましても、安定的に消費者である国民の皆さんに供給するということが大事でございます。そういうような観点も踏まえまして、今回の改正案を提案をいたしたわけでございます。  本来、これが自由化されておるという品目でございますので、需給の均衡を保っていくような輸入、並びに配給の面でもそれを図っていくということは非常に苦心を要する点であったわけでございますけれども、いろいろ検討を加えまして、御提案を申し上げたようなやり方でもって精糖業界の安定も図る。それによって量並びに価格の面でも国民の皆さんに安定供給を図ってまいる。さらにまた、国産糖全体の二〇%くらいを占めておりますが、国産糖に及ぼす影響等も悪影響を及ぼさないように、そういうような総合的な判断から御提案を申し上げた、こういうことでございます。
  89. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣からいろいろ答弁がございましたが、中でも本法提出に当たって、大臣が一番最大とするその理由、それは何ですか。
  90. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 それは何と申しましても、砂糖は多様化されておる国民生活の中で重要な食糧一つでございます。国民の皆さんに量並びに価格の面で安定的に供給できるような措置を講じたい、これが最大の眼目でございます。
  91. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまおっしゃったことは、いわゆる砂糖国民食糧としての位置づけということにもなろうかと思うけれども、最大の理由として答弁がございましたけれども、それでは砂糖の位置づけというのは、国民生活の中でどういうふうに農林大臣は認識をお持ちでありますか、それも冒頭お答えをいただきたいと思います。
  92. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 この砂糖国民生活の中で私は非常に重要な地位を占めておると思います。国民生活が、所得の向上とともに食生活も向上し、充実をしてきておる。そういう面で、砂糖がわれわれ日常の生活を潤すというか、豊かなものにするという面でも非常に大事な食糧である、私はこのように認識をいたしておるわけでございます。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 先ほど提案理由説明の中で農林大臣は、「国民食生活における重要な物資である砂糖長期にわたって安定的に供給するという観点からも大きな問題であると考えられます。」ということを言っておられます。いわゆる国民に安定的な供給をするということを最大の理由としているということでございますが、その点はもう当然のことであります。  それでは、これまた冒頭伺っておくわけでありますが、いわゆる北海道のてん菜、また鹿児島南西諸島のサトウキビ、沖繩のサトウキビですが、この国内産糖と本法提案、この絡みというものはどういうふうにお考えになって今回提案しておられるのか、その辺も冒頭、大臣から明らかにしておいていただきたいと思います。
  94. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 てん菜並びにサトウキビ、これは重要な国内産の甘味資源として政府においても今日までいろんな施策を講じまして育成をしてきておるところでございます。特に北海道やあるいは沖繩、鹿児島県の南西諸品等におきましては、地域的な環境条件からいたしましても農民にとって非常に重要な作物でもあるわけでございます。そういうような国内産の甘味資源を育成するために、甘味資源に対するところの特別な立法もいたしまして努力をいたしておりますことは、御承知のとおりでございます。これが日本消費されております砂糖の中で約二〇%を占めておるわけでございまして、輸入糖を含めて現在のような過当競争が行われ、過剰設備のもとでコスト割れを生じて、糖業界が崩壊寸前の状態にあるということは、国内甘味資源生産者にとりましても大変な問題になるわけでございます。私どもは、そういう悪影響があってはならない、そういうようなことも十分踏まえまして、今回の法改正をお願いを申し上げておる次第でございます。
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま農林大臣から御答弁いただきましたが、そこで全体の需給見通しを立てる中で、いまも申し上げましたように、国内産の甘味資源の振興という問題を今後どう考えるのかということもどうしても聞いておかなければならぬ問題でございます。これは杉山食品流通局長からでも結構ですが、どういうふうに本法提案に当たって具体的にはお考えであるか、さらに細かく計画内容を御答弁いただきたいと思う。
  96. 杉山克己

    杉山政府委員 国内の甘味資源農林大臣からも御答弁申し上げましたように、きわめて重要な農産物であるということで、生産振興に一層努めてまいるという基本的な姿勢を持っておるわけでございます。  そこで、この法律が、まだ案でございますが、これが成立いたしまして適用されるということになった場合、国内産糖との関係がどうなるかということを見ますと、まず量的な関係、それから価格面での関係、この二面での関係が生じてまいると思います。  需給見通しを作成するということになりますが、その場合、まず国内産糖を優先的に使用するようにこれを先に充てるんだという考え方のもとに全体の数量を仕組むという考え方でおります。したがいまして、需要見通し数量の全体を決めますと、まず国内産糖生産量を差し引いて、輸入が必要となる数量を算定し、これを基準にいたしましてその数量が全体の需給上どうであるかという判断をして、売り戻しの延期を行うかどうかということを決めるということになるわけでございます。同様のことは、全体の需給の見通しの問題についても、それから個々の企業についての過大であるかどうかということを第三条の規定に従って判断する場合に当たりましても、それが国内産糖の引き取りに障害を来すことがないかどうか、むしろ逆に国内産糖の引き取りにインセンティブを与えることになるかどうかということの配慮を加えていく必要があると考えております。  それから、価格面での関連でございますが、これも大臣からお答え申し上げましたように、精製糖の製品価格水準コストをカバーするような線で維持されるということになりますれば、ビート糖の価格水準もそれなりに保証される、それから精製糖の原料である甘庶糖の粗糖価格も、企業間の買いたたきによって不当な値下げをこうむるということもないような関係になるというふうに考えております。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 後でいろいろ出てきますけれども、本法第一条に関連して若干お尋ねしておかなければ後の問題に絡んできますので、伺っておきますけれども、一条に「砂糖の適正な価格形成を図り、」ということがうたってありますけれども、この適正価格という問題ですけれども、いまキロ当たり赤字が十八円で、たしか百八十円プラス十八円で百九十九円ぐらいというようなことが一応言われておるやに聞いておりますけれども政府は現在の適正価格はどのくらいであるかということについてはどういうふうに考えておられますか、それもお答えをいただきたいと思います。
  98. 杉山克己

    杉山政府委員 一条でうたっておりますのは抽象的な「適正な価格」ということでございますが、考え方としては、これは需要する側から見れば、不当に精製糖業者をもうけさすことのないような価格、それから、これをつくる方の精製糖業者の立場からいたしますれば、経営が安定して維持できるような、コストがカバーできる価格ということになろうかと思います。コストは、これはまず原糖の価格、これが幾らで輸入されるか、それにまた関税、それから事業団に売り渡す場合に課されるところの安定資金なり調整金、さらには国内における消費税、そういったものを加えて原糖のコストが出るわけでございます。それをさらに加工、リファインするわけでございますが、その精製加工の経費、それから販売、流通の経費等を加えましてメーカーの製品のコストが出るわけでございます。これは、原糖の輸入価格はそのときそのとき変動しますが、私ども現在時点ではおおむねキロ当たり百九十五円くらいというふうに考えております。
  99. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、第二条関係について関連あることを若干お尋ねしてまいります。  まず、第二条に関連して、一応私たちも勉強さしてもらっていますけれども糖価安定制度の仕組み、いわゆる輸入糖価格調整について、粗糖平均輸入価格が安定下限価格を下回る場合、それから平均輸入価格国内産糖合理化目標価格と安定下限価格の間にある場合、さらにもう一つは、平均輸入価格が安定上限価格を超える場合、さらには国内産糖価格支持、どういうふうにするのか、これらをひとつわかりやすく、会議録に残しておきたいと思いますので、要点をつまんで、今回の本法改正の事業団が行なう重要な点でもございますので、順序立てて御説明をいただいておきたいと思います。
  100. 杉山克己

    杉山政府委員 現在の糖安法の仕組みは、一定の価格帯の幅の中に国内における輸入糖価格水準を安定させるということを目的といたしております。その一定の価格帯というのは、下限価格と上限価格の範囲ということになるわけでございます。その下限価格、上限価格は、国際相場変動、それからその変動の推移、これを見まして、機械的なといいますか、技術的な計算のもとに算定されるわけでございます。国際的にこの辺が従来の水準であり、変動の幅としてはこのくらいまではいき得るだろうというようなことを想定いたしまして、上限、下限の価格を算定いたすわけでございます。そして、その間の中に輸入される砂糖国内での価格水準を保つということを考えているわけでございます。  そして、現実輸入される原糖がどういうような水準にあるかによって事業団への売り渡しなりあるいは各種の課徴金の負担の仕方が異なってまいります。  まず第一に、安定下限価格より下回った非常に安い価格で売られております場合、これは安定下限との差額を安定資金として積み立てることになります。つまり、これは価格が安かったときには、将来高くなるときのことを考えて積立金を準備しておく、そのための積立金をあらかじめ積み立てるんだという意味になるわけでございます。  それから、安定下限価格を超えて合理化目標価格——この合理化目標価格の中身は、国内産糖がこういう水準価格が決まってほしいといいますか、一つの目標生産費というものを決めまして、目標生産費を基準にして、大体こういったところでおさまれば一番望ましいんだというような、まさに名前のとおり合理化した場合における目標の価格、そういういわば国内産糖についてあるべき水準価格と、いま申し上げました輸入糖現実価格、もちろん安定下限価格を上回っている場合の価格でございますが、それとの差額について一定の率を、調整率と称しておりますが、それを掛けて、その掛けた額を負担金として徴収するということにいたしております。これは実質的な意味は、要するにそういう額に至るまでの国内糖に比べて輸入糖の安い部分は、財源として、国内産糖に対する対策費として負担していただくという意味でございます。現実国内産糖コストはそれをはるかに超えて高い水準にありますが、その合理化目標価格を超える分については、これは政府一般財源から負担している関係になるわけでございます。  それから最後に、安定上限価格を超えて国際価格が非常に高い水準現実にある場合、このときは輸入するものは、事業団に高い輸入価格で買ってもらうということができるわけです。高い価格で買ってもらう、そして事業団は、その上限価格を超える分については、これを以前に徴しましたところの積み立ててある安定資金でもって補てんするということにいたしております。ただ、現実の問題として、四十九年のときに国際相場が余りにも上がりましたものですから、その安定資金を全部使い切ってもなおかつ高い輸入糖について、それ以上はめんどうを見切れなかったという事態がございます。そこで、安定資金がなくなってしまった、事業団の収支の中ではそれ以上価格高騰時の手が打てないということになりましたので、これは糖価安定法の中に規定がございますが、その場合は関税を免除することができるということになっております。  非常に複雑な仕組みで、口で申し上げただけではなかなかおわかりにくかったかと思いますが、これらの措置を通じて、輸入された砂糖国内価格を安定させるということを考えておるわけでございます。
  101. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 二条関係で、先ほどの局長の答弁で、通常年の問題でいろいろ申されましたが、さらに私お伺いしておきますけれども、これも今後いろいろ関連した問題が出てきますのであえて伺いますが、この通常年のとり方は、過去の何年かの平均を慎重にとるというような政府考えのようでございますけれども、本法提案に当たって、何年かのというようなことでは私ども納得できません。よく言われる米価にしても麦価にしても、すべて逆算方式でよくやられるので、いわば社会の実勢から見てこのくらいの値段が適当であろうというようなことを大体想定して、逆算して過去の年度を決めるというようなことになりかねないとも思いますが、もっと具体的にこの問題についてはっきりと当委員会で、本法審議に当たって明らかにしておいてもらいたい、こう思うわけです。  と申しますのは、この通常年のとり方によっては、事業団が売り戻しをする場合、いろいろな面に当たって今後過当競争なんかなくしていかなくてはなりませんけれども、各社のいわゆるシェアの争い等が始まってくるというようなことも考えられないでもない。その点は十分指導していかれるとはいうものの、将来かなり厳しい情勢が想像されますし、またぞろああいったパニックみたいな、四十八年みたいなことはないにしても、どういう変動が来てまた砂糖が、三百円台に上がってはなりませんが、高騰を続けて問題化するというようなことがあってはなりませんけれども、そういうふうなことも想定しますと、こういったことをきちっとしておかなければならぬ、こういうふうに思うわけですが、本法審議に当たって通常年考え方を具体的にさらにひとつ局長から答弁をいただいておきたい、かように思います。
  102. 杉山克己

    杉山政府委員 先生も御指摘のように、この問題は各企業の経済ベースに直接影響する話でございます。したがいまして、その決定、いかなる期間を通常年として考えるかということは慎重に判断する必要があると考えております。  私ども基本的な考え方としては、まさに文字どおり通常の年、何かパニックが起こって買い急ぎ衝動があったというようなことでむやみにふえたような年あるいは思惑的に買いを進めた年、そういうような期間は除いて、通常の、まさに需給を将来安定させた水準考えていく上で必要な、当然と考えられる年というふうに思っておるわけでございます。  具体的にそれがいつからいつまでの期間かということになりますと、過去七年をとるのか五年をとるのか、それからその中で異常な年としていつの年を排除するのか、非常に幅のあるところでございます。私どもこの法律趣旨に従いまして、需給を安定させるという観点から通常という年をひとつ判断する必要があろうかと思っております。まだ全体について、それから個々の会社の実績について慎重に数字を見比べているところでございまして、数字そのものを申し上げられるような段階にはもとより立ち至ってないわけでございますが、先生も触れられましたように、このことによっていたずらな権利侵害というか、不当な損害をこうむったというような意識をもたらすことのないように、また不当にある企業がもうけたというようなことになることのないように慎重に配慮して期間を決めてまいりたいと思います。  それから、そのことと関連いたしまして、むしろ実際の行政上大事なのは、私は業界の協調を取りつけて、その通常年数量を基礎としてできる、お互いの間で話し合いのついたシェア、これは従来指示カルテルの際にもそういうような業界調整を求めて、それなりにその都度設けられてまいったものでございますが、そういう調整をひとつ基本に考えていくべきではないかというように思っております。
  103. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、第三条関係に入りますけれども、その前に、第三条と大変関係もございますので、数点、政府の見解をお伺いしておきます。  御承知のように、今回提案のこの法案と、たまたま横浜港に連合艦隊が押し寄せたようなかっこうになっております十六隻、二十一万三千トンのいわゆる豪州からの砂糖船が着いておる。すでに二十一日から荷揚げが始まっておりますが、この問題、そこへ持ってきて五十年七月から引き取りを開始しましたところのいわゆる日豪砂糖長契改定問題、われわれは俗に本体交渉と、こう言っておりますが、この三つがあるわけです。ややもすると国民も、また、われわれもごっちゃにするために混乱をしますような事態になるわけですが、本法提案、さらに日豪砂糖長契改定問題、そして横浜港にいま来ている豪州の十六隻、二十一万三千トンの砂糖問題と、三つはやはりきちっと分けて整理をして考えねばならぬ問題であると思うわけであります。しかし、軌を一にしてその裏においては全部これがつながって、全部関係があるということも否めない事実であります。後ほどいろいろと申し上げますけれども政府もこの機を逸して、本法を出して砂糖問題のいわゆる安定価格維持を図る調整機能を発揮しなければ将来に大なる禍根を残す、大変なことになるということで、ある意味においては今回の十六隻、二十一万三千トンの豪州船の砂糖が押し寄せてきた、また長期契約の問題が、一カ月後に解決するというものの、いろいろと大きな問題となってきている、この機会をついてやらなければならぬ。そして、三年以内に何とか解決しようという意味で私は労作として認めるわけでもありますが、半面そこには大変な責任がある。と同時に、こういった三つの問題がごっちゃになっているものですから、いろいろ国民の中にわかりにくい問題が起きてきているというのが事実であります。  そういった意味で、本法の第三条に入る前に、まず日豪砂糖長契改定問題、すなわち本体交渉について確認をする意味で若干のことをここで政府から答弁を求めておきたいと思うのです。  この日豪砂糖長契改定問題は、簡単に言いますと、一つトン当たり二百八十五ポンドを日本側は二百四十ポンドにまけてくれと、こういうことを言っているわけですね。  二つには、毎年六十万トンで契約したが、すでに五十年七月から五十二年六月まで二年間引き取ったので、あと三年残っておりますよと、こう言っているわけでしょう。  三つ目には、よって、日本側は三年を五年に延ばしてくれというようなことをいま盛んに言っておられる。ところが、豪州側は、五年では長いから四年にしてくれ、こういうことですね。そして、日本側は、高い値段の砂糖が、六十万トンのうち毎年三十六万トンと踏んで、それを五年となると百八十万トンになります。毎年買い入れる量を減らしてくれ、高い砂糖の量を減らしてくれ、こういうことで六十万トンのうち三十六万トン、五年間で百八十万トンにしてくれ、また六十万トンから三十六万トンを引いた残りの二十四万トンについては、いわゆる国際価格と言いますか一般価格で買いましょう、こういうふうに主張しておるわけです。要するに、高い砂糖の方が三十六万トン、安い方の砂糖が三十四万トン、合計六十万トン、こういう交渉のようであります。  しかし、豪州側は、この二十四万トンについては大体認める方向でいっているように思いますが、下限価格を設けろと、こういうふうなことを言っているとわれわれは理解しておりますが、この点はそうであるかどうか。すなわち、国際糖価プラスアルファでやってくれと豪州側は言っているというふうに認識しているわけです。したがって、結局、年間三十六万トンプラス二十四万トンで、合計六十万トンを輸入するということになるわけですけれども、この辺まだ若干問題点が残っているやに思っております。  いずれにしても、本法が国会を通過すれば、その後おおむね一カ月、大体十一月ごろをめどにいわゆるこの本体交渉の解決を見るというふうなもくろみで推移しているように認識をしておるのですけれども、この点、私が言っていることに間違いないか、また、そういうような経過であるか、それに対する当局の考えと言いますか、いま、いろいろ検討されていることについて補足して説明があれば説明をつけ加えて明らかにしていただきたい。まず、このことをひとつお伺いします。
  104. 杉山克己

    杉山政府委員 いま先生の申されましたように、豪州糖価格改定問題は、途中でもって双方の各種の提案の提示があって、過程ではおっしゃられたようなことがあったわけでございます。ただ、途中の一々を申し上げておりますと煩わしくなりますので、現在の状況と見通しだけを申し上げます。  現在、残り三年の分についてこれを四年に延ばす、そして全体の量の百八十万トンは変わらないにいたしましても、四年に延ばすと毎年の引き取り量が四十五万トンに減ります。そこで、十五万トンを別途加えて、全体としては六十万トンを引き取るという数量契約をまずいたしております。  価格については、確かに日本側は当初の百八十万トン部分、毎年四十五万トンに今回見通されるその分につきましては、二百四十ポンド前後の提案をしたこともございますが、実は若干それより高い水準でまとまるのではないかという方向にまいっております。  それから、追加的に、毎年六十万トンを欠けることになるのでそれを補うために買い入れる分、これについては若干複雑でございますが、二つに分けまして、そのうちの一定部分は国際価格そのもの、そのときそのときの相場で引き取る。それから、残る割合の部分につきましては、これは国際価格とはいうもののいろいろ変動するではないか、その場合の下限保証、上限保証という安定価格帯的な保証が欲しいという豪州側の要求がありまして、そういう価格帯の中で価格を決めるということでいま交渉を煮詰めておるわけでございます。  その価格帯をどういう水準にするかということで、確かにかなり深刻な問題が理論的にも実際的にもあるわけでございますが、ただ大勢としては、先ほど先生も言われましたとおり、すでに東京湾に滞船していた船も引き取られつつあります。本体についても、それほど双方の意見は開いておらない状況になったわけでございます。さらに、付加的な部分についても、それが致命的なダメージになるというような話でもございませんので、私どもとしては慎重に考えればあるいは一カ月くらいということも判断した時期がございますが、現在ではもう少し早く、特に日本側でこういういろいろな法的措置ども講じて業界の健全化を図っているということも反映いたしまして、この交渉自身は何とかまとまるところにきているのではないかというように判断いたしております。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう少し早く双方の意見調整をして、十一月中には解決していくという方向のようでありますが、この問題も年内に、これは避けて通れぬ問題でありますし、国民生活に重要な影響をもたらす問題でございます。いずれにしても、政府も全然責任なしとはしないわけですから、ひとつこの点については十分早く解決する方向で指導をしていただくようにお願いしたい、こう思っております。  先ほど申しましたもう一点の、横浜港を初め豪州の砂糖船が日本に十六隻、二十一万三千トン来ておりますけれども、この件については去る十月十七日夜にようやく解決を見たわけでございます。そして、十月二十一日だったと思いますが、埠頭で荷おろしが始まった、こう認識しております。  この問題も三点ございまして、確認の意味で申し上げておきますが、一応砂糖については引き取る。ただしがついておって、今回引き取る十六隻、二十一万三千トンの砂糖については、百八十万トンの内訳であるとする、こういう主張であったと思うのですが、その点もひとつ明確にしておいていただきたい。  二つ目には、価格トン当たり二百四十五ポンドである。日本円にして、一ポンド四百六十円にしまして一万二百七十円というふうになっておるようでありまして、ただしこれは仮価格だ、こうわれわれは認識しております。本体交渉で決まったならば、この価格というものはその差額を必ず精算をする。一カ月後に決まるであろう日豪砂糖長契改定契約が締結されますと、二百四十五ポンドが仮に二百四十ポンドの場合は五ポンドを返す、こういうようなことでいろいろ検討事項がついておる、かように思っております。  三つ目には、いままでの滞船料は豪州船が負担する。これは実際に二カ月以上の船もありますから、一日に百万円ぐらいかかると言われている。一隻二カ月で約六千万、一カ月の船は三千万ということで、これは大変な滞船料になっております。これは豪州が払う。  こういうことだと思うのですが、こういった解決内容については間違いないか、改めて確認をしておきたいと思うのです。
  106. 杉山克己

    杉山政府委員 滞船の処理については、先生の言われましたとおりの内容でお互いの合意を見て処理がなされつつある状況でございます。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それで局長、この価格の問題については、これは仮価格で、本体交渉が決まったらその差額は精算する、これは間違いないですね。
  108. 杉山克己

    杉山政府委員 間違いありません。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 まず、それだけを伺っておきまして、本法の第三条のところへ入ってまいります。  第三条で、「農林大臣は、前条の報告があった場合において、申込数量当該報告に係る者の最近における砂糖の製造事情等を考慮してもなお売戻数量等からみて過大であると認められ、」云々とありますけれども、この「過大であると認められ、」という、この具体的な基準はどういうふうにお考えでございますか、これも明らかにしていただきたいと思うわけです。
  110. 杉山克己

    杉山政府委員 「最近における砂糖の製造事情等を考慮する」ということにいたしておりますのは、第二条で規定しておりますところの難業団から農林大臣への報告の基準となる通常年における売り戻し数量等と、当該年における当該一定期間の砂糖の製造等に関する諸事情の違い、これは過去の通常年の実績というものが最近の事情に照らして、それがどの程度乖離しているか、新しいそういった事情をやはり考慮する必要があるのではないかという、そういう諸事情の違いを考え趣旨でございます。たとえば、具体的に次のような各企業の特殊な事情を考慮する必要があるのではないかというふうに考えられます。  たとえば、工場の改修等によりまして一定期間操業を停止するというようなこともあります。そういう場合に、その前の期間に停止期間の分を見込んで生産を上げておく必要も生じてまいるわけでございます。そういうような事情があるならば、その分は、たまたまその当該期間中にふくらんだだけのことで、ならしてみればふくらんだことにはならないというような事情、それから国内産糖との関係でもって特殊な事情が出てまいる場合があります。たまたまその年の国内産糖が不作であった、手に入らないというような場合に、それを何で補いをつけるかといえば、やはり輸入糖で補いをつけざるを得ない。そういたしますと、過去の実績だけで枠を決めるというわけにもまいらない。そういう場合の調整措置としてこの規定を置いたわけでございます。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、その次に、「同条の農林省令で定める期間ごとの砂糖需要量及び供給量の見通しに照らし砂糖需給の安定に悪影響を及ぼすおそれがあると認められるときは、」云々とございますね。この需給見通しはどのような考え方のもとに決めるのかということも正確にお伺いしておきたいと思うのです。
  112. 杉山克己

    杉山政府委員 需給見通しは名前のとおり見通しでありますので、これを計画だと考える向きもあるでしょうが、あらゆる施設整備についてもこの基準でやるというような、あるいは新規参入を抑制するとか、既存設備を廃棄するというようながっちりした目的を持った計画とはやや性質を異にしています。見通しでございます。そういう需要、供給の見通しは、年間を通じての安定を図るという見地からすれば、当然年間見通しが要るわけでございます。そのほか、四半期別の見通しも作成するということにいたしたいと思っております。そして、そう固定した考え方でなく、四半期ごとにこれをレビューして適正に修正していく必要があると考えております。  見通しを作成するに当たっては、これは適正需給量を調整するベースになるものでございますから、関係方面の意見も聞いて、十分槙重に決めていくということで脅えております。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さてそこで、農林大臣初め当局にお伺いするわけでございますが、本法の内容について大事な点を一わたりお伺いし、砂糖戦争の問題等いま明確にしていただいたわけでございます。大臣の提案理由説明にもありますように、また、しばしば答弁されましたように、現在の国内糖価の動向というものが平均生産費を大幅に下回る価格で推移している、これが精糖業界の健全な経営を著しく阻害もしているし、国内甘味資源の振興にもきわめて重大な影響を与える、こういったことが本法提案に対する一つの認識の大きな柱になっておるのであります。そこで、四十九年以降砂糖消費も減退している、これも事実であります。これも、なぜ減退しているのかということをよく検討しなければならぬ問題もあります。近ごろの若い人は甘い物を食べないということが大きな原因でもあります。いずれにしても、農林省が認識しておられる問題、またこの法案を火にあぶってみると、あぶり出しではないけれども法案の裏を見ると、企業を整理統合して、労働者を首切りするというようなことが映し出されると言われても過言ではないようなうらはらの問題があることも事実でありますので、重要法案としてわれわれも慎重な扱いをすべきだということでいまからお伺いするわけでございます。  大臣は、精糖業界過剰設備が顕在化して過当競争を招いておるというようなことも理由一つに挙げておられます。なるほどうなずけないわけでもございませんが、そういったことについて私たちは、たとえば豪州糖問題について、政府としても豪州糖問題にまるきり責任なしとはおっしゃらぬと思いますけれども、今回こういうふうに本法を提案して、何とか国民の食生活安定のために、さらには糖業界の健全化のためにということで法案を出しておるわけですから、責任は十分感じておられる、かように思うわけですけれども、設備が過剰であるとか、または過当競争を招いた、こういうことをおっしゃっておりますけれども、それでは精糖業界過剰設備の解消策について政府は具体的にどのような方法でやるのかを端的に私はお伺いしたいのです。どういうふうにお考えであるのか。先ほどからしばしば答弁にありましたので、率直に、単刀直入にお伺いしたい、かように思います。
  114. 杉山克己

    杉山政府委員 この法案を出すに当たりまして、基本的な考え方として、これは政府が特別に精糖企業のあり方を規定するというようなことを考えているわけではない。やはり企業というものは自分の足で立って経営を進めていくべきであるという前提に立っております。そういう観点からいたしますと、企業自身が経営努力を行って需給調整も図ってまいりたい。しかし、そうはいっても現実過当競争状況から、政府制度的なそういう担保をもらわないことにはうまくその話も進められないということが基本になっていると思います。したがいまして、私どもはこの法律を出していたずらに精糖企業を特権化するということでなく、精糖企業が自力で立ち直るための条件を整備するというぐらいの考え方のもとにこの法律提案しているわけでございます。したがいまして、各般の面で企業の自主努力を前提、必要とするということになるわけでございます。この点につきましては、構造改善というような単純な言葉で表現されますけれども、私どもとしましては、経営者の企業態度、それから販売体制、流通体制あるいは商社介入の問題、それらの各種の問題を含めて、健全な経営のあり方を回復する、軌道に乗せるということを当然必要とするものと考えております。  その一環として設備過剰の問題があると思うわけでございます。設備については、これは単純に需要量と精糖能力を比較いたしますというと、操業率が六割であるというようなことになって、その差が過剰かというようにも考えられやすいのでございますが、私どもとしてはその差は直ちに過剰であるというふうには考えておりません。それはやはり時期時期によっての操業の繁閑というものもございます。それから、全体的に需要が停滞はいたしておりますものの、長期的に見れば今後人口増に見合っての若干の需要増も考えられる、そういうようなことを考えますというと、ある程度の余裕は必要ではないかということも考えられます。  それから、さらにまた、精糖業界は装置産業でありまして、一社一工場というような経営形態が主であります。それから、製品の流通が地域的に限定されているというような事情もありますので、私どもとしてはそういった事情を総合的に考えて、企業がそれなりに自主的な立場から経営改善のための努力、設備についてあるいは販売のあり方について、およそ一切の経営について最大限の努力を払ってもらうということを考えているわけでございます。  その意味で、この法律は、直ちにどれだけの過剰設備を廃棄しなければいけない、そういうことを義務づけているものではございません。いま申し上げましたような総合的な観点から企業の自主努力、経営というものはその意味では大ぜいの人が参画いたしております。関係する商社も金融機関も、それから働く人の立場もあります。ひとり経営者だけの問題ではないと思います。そういう糖業界の、いまいわば非常危急のときであるということを考えて、全体が一丸となってそういう経営改善のために努力をしていくべき時期ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一応御答弁いただきましたが、先ほど私いろいろ指摘しましたように、いずれにしても、今回のこの需給調整に対してはわれわれも評価するわけですけれども農林省初め行政当局が今回本法を急に提案するというようになったいきさつというものは、当初、今国会は会期が四十日で短い、どうするかということで、国会の冒頭においては検討中ということになっておりましたけれども、これが急遽提案されました。その背景には、先ほどから私が指摘しました日豪砂糖問題、また両国の国家関係全般に影を落としてきたところの今回の十六隻、二十一万三千トンのいわゆる砂糖船の問題もございましたし、こういったことがあって、政府も何とかしなければならぬということで、この機会を失しては大変なことになるというふうに判断しておられて、そういうふうなことも踏まえ、今回この本法を提案する、そういった意味責任は十分にあるというように私は思うのですが、そういった背景を率直に認められるのかどうか、その辺はどういうふうにお考えになって提案されたか、あわせてここでひとつお聞きしておきたい、かように思います。
  116. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 瀬野さん御承知のように、いま精糖業界は非常な経営難に陥っております。農林省所管の業種としてはいわゆる構造不況産業とも言えるような非常に苦しい立場に立っております。また、大分県あるいは愛知県、東海精糖等経営難のために倒産のやむなきに至った、こういうような事態、そして、そこに働いておられる従業員の方々も職場を失うというような事態も起きてきておる。そういうようなことを考え、また御指摘の豪州との長契、これもやはり現在の国際糖価から見て割り高になってそれが相当の赤字の要因にもなっている。これが精糖業界の経営にも大変な重圧になっておる。いろんなことを総合的に勘案をいたしまして、私どもは早急にわが国のこの精糖業界の現状を打開し、改善をする必要がある、このことがまた消費者である国民の皆さんに国民生活で必要な砂糖を量的にも価格の面でも安定的に供給させるゆえんでもある。こういう総合判断をいたしまして、この国会に御審議をお願いをする、こういうことにいたしたわけでございます。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣も大変心配しての答弁のようでありますが、私この機会に率直に申し上げますと、現在、大変経営危機に直面している業界では、組合員の皆さん方も、需給調整を主とした部分については一応評価はしておるとしながらも、いわゆる需給調整というものが豪州糖問題の政府責任を覆い隠す意図があるのじゃないかというようなことを率直に指摘しておられます。  また、過剰設備ということの政府の認識のもとに、大臣もいまいろいろ申されましたが、法案成立後、構造改善を進めることになって、いわゆる現設備、工場の廃棄をし、働く労働者の百を切るということが行われたのでは大変な不況下において問題であるということは、大変心配されている問題であります。  さらに、本法の裏にある行政指導には、労働者にとって非常な危険性を含んだ内容を含んでいるということも率直な意見であり、需給調整の必要性はいかなるときよりも増しておることは現在労働組合また組合員の皆さん方も認識しておられますけれども、これが一つの方針となって、その陰に年内に倒産が相次いでくるという危険性をはらんでいる精糖会社がたくさんあるわけです。先ほどおっしゃった大分県、三重県、それから九州製糖初めすでに破産宣告を受けた糖業会社もありますし、複数以上の工場がとりあえず心配だということで、三井三菱系、台糖、それから伊藤忠、こういったいわゆる複数あるいは三社等を経営している精糖会社もあるわけですが、われわれは俗に三〇%グループと言っておりますけれども豪州糖を三〇%入れるグループ、この会社等は、さしあたって六社がそういった脅威にさらされるということで大変心配しているわけです。そういったことで年内に倒産が相次ぐと、年の瀬も迫って大変なことになるということでわれわれも危惧しております。その辺は大臣も十分認識しておられると思いますが、先ほどからのいろいろな大臣の答弁その他を聞いておりまして、農林省豪州糖に対する差別関税はやらない、また国庫の支出によるところの現行国際相場との価格差を是正することもかたくなに拒んでおります。いわゆる国家財政は負担できない、こう言っておられる。そこで、この法律が製品価格を全体的に押し上げていくということになりかねない。そういったことができなければ先ほど言われたいわゆる適正価格百九十五円というものがどうしても消費者サイドにしわ寄せされていって上がるということは当然考えられてくる。また、豪州糖によって今後生じる赤字を抑えるということができなくなる、私はかように思うのですが、その点の認識はどうですか。いわゆるこの物価高の折にさらに追い打ちをかけて消費者に負担を強いるということになりかねないということがあるのです。  ほかにもいろいろありますけれども、長くなりますのではしょって聞いてまいりますが、その点当局はどういうように検討しておられるのか、率直にお答えをいただきたい。
  118. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまの御発言はいろいろな重要な問題に触れて御質問なさっておるわけでありますが、まず第一に、今回の法改正が実施された場合には相当過剰設備の廃棄ないし合理化が行われて、働く人たちが職場を失うような事態になるのではないか、こういうことでございます。私は、むしろ現状のままに放置をいたしておきました場合にはどうなるか、普通の企業でありますれば、ともに倒産等のやむなきに至るような深刻な事態内容になっておると思います。それは商社の系列にある、そのバックに金融機関がある、とにかく商社の方にしても金融機関にしてももうぎりぎりのところまでこれを抱きかかえ、支え、どうにか経蔵を継続しておる、率直に言うてこういう事態ではなかろうか。こういうような事態を放置しておきますれば大変な事態を招来する。精糖業界全体が大変な事態に相なる。そういう際において、その職場で働いておられる多数の方々が一体どうなるのか、こういう問題がございます。そこで、どうしてもこの際過当競争販売面におけるところの乱売、シェア競争、そういうことも業界として節度のあるものにしてもらわなければいけない、また経営全般についても経営努力もしていただかなければいけない、こういうことになるわけでございます。そのためにはやはり国内糖を前提として、輸入糖につきましても需給調整ということももっとやる必要がある、このように私は理解をいたしております。現状を端的に言うと、現状のままに放置した場合には糖業界全体が大変な事態になり、また、その職場で働いておる多数の皆さんが一層苦しい立場に立つのではないだろうか。ですから私どもは、一日も早く業界の経営の安定、合理化を図っていく必要がある、こういう認識に立つものでございます。  もう一点は、今回の措置によって砂糖消費者価格が上がるのではないかということでございます。現在の砂糖消費者価格というものは、先ほど来申し上げるように非常な過当競争、販売シェアを拡大するための乱売その他の異常な状況下にあります。そういう中で形成された価格というものは長続きするものではない、そういう不健全な状態がいつまでも続くものではない、そういうように考えますと、どうしてもコストを割らない適正な価格でもってこれが消流がなされていくということでないと真の安定ということはない、私はこういう認識でございます。こういう問題に私ども適切な対応策を講じなければ、いつの日か消費者の皆さんにも御迷惑をかけることになる、こういう考え方で本法の改正の提案をして御審議をお願いしておるということでございます。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣の慎重な御答弁でございますが、いまもいろいろお話がございましたように、端的に受け取れば、ほっておけばまだたくさんの犠牲者が出てくるし、大変な問題になる、それで本法を提案して大分影響力を少なくする。いずれにしても、その言葉の裏を見れば、企業合理化によって相当な犠牲者が出ることもやむを得ない、こういうふうにおっしゃらぬけれども、私のひがみ根性かもしれませんが、そういうふうに聞き取れるような答弁に聞こえるわけでございます。その辺を大変心配しておるわけです。  それで、先ほどもちょっと申し上げましたように、政府は差別関税とか国庫の支出、こういったようなことはこの豪州輸入糖についてはやらないということではっきりしておるわけですが、そうなりますと、豪州糖の比率の高い企業と低い企業、このコスト差というものは大変大きいわけでございます。まあ当時はうんと取った方が喜んだかもしれませんが、今日のようにこういうふうに輸入糖が上がってまいりますと、当時の割り当てが少ない方がよかった。当時少なくて文句を言った企業はいまはよかったということになるわけで、どっちにしたってこれは国民に全部しわ寄せが来るという心配があるものですから、あえて聞くわけですけれども、そういったことで励ますと、現在、三井系では芝浦精糖、大阪製糖、横浜精糖というのがあります。これは三工場持っております。それから、台糖が二工場。それから、九州製糖がありますし、これは三〇%グループです。さらに、三菱系では大日本製糖、明治製糖、塩水港精糖、それから新光製糖、これがあります。その中で大日本製糖と塩水港、この工場が複数になっておりますし、日新製糖がやはり複数になっております。そこで、この三井と台糖、大日本、それから塩水港精糖ですか、これがさしあたり問題になってくるんじゃないか、こういうふうに懸念されて、われわれも大変心配しておるわけです。なお、三〇%グループには、そのほかに日新製糖とか東海精糖があります。ほかはもうほとんど一〇%グループとなりますけれども、先ほどおっしゃるように、精糖会社というものは装置産業ですから半分切ってよそへ持っていくとかということはできません。企業が行き詰まれば、一社もろとも最初から最後まで一貫したものであり、一社一工場ということになっておりますから、三分の一をよそへ持っていくというわけにいかないわけですね。そういったことは皆さん百も御存じでございますが、われわれはこういったことについて、何としてもこういう不況下において犠牲者を出してはいけない、かように思うわけでございますので、この点についてはいわゆる首切りを出さぬように農林大臣も最大の努力をする、そのために十分慎重な対策を講じていわゆる業界指導に当たる、本法の運用に当たるということをひとつ国民の前におっしゃっていただきたい、かように思うのですが、大臣どうですか。
  120. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 こういう不況下にございまして、一人の働く人といえども職場を失うようなことがあってはいけない、私はそういう考え方で精糖業界の再建の問題についても業界指導してまいりたい、このように思っております。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 杉山局長もいまの大臣の決意をお聞きになったと思いますが、大臣から本当にありがたい決意をいただきまして私も一応了といたすわけでございます。  局長、何かつけ加えることありますか。余り後退した答弁では困るのだが、お伺いします。
  122. 杉山克己

    杉山政府委員 いまの御質問、幾つかのことを含んでおりましたので、答弁漏れになってはいけないという意味で申し上げるわけでございます。  豪州糖によって赤字が出ているではないか、そういった豪州糖の負担の大きいところに対して、関税とかそのほか財政負担でこれを救済する手はないのか、あるいは何らかほかの形で企業間のコスト格差を解消する手はないのかというお尋ねが一つ入っておったかと思います。これは私ども、やはり価格について企業の責任でもって契約をした、そのことがたまたま結果的に今日の不利を招いたということになりますと、国が直接的にこれを肩がわりする、財政負担するという形は、これは正直申し上げてとれないところであると思います。その意味で、むしろ豪州糖の負担は、これは当時、本当に国民に必要な資源長期的に安定的に確保するという観点からとられた措置であることを思えば、確かに消費者転嫁価格という形でもってお願いすることは、まことに残念な結果にはなっておりますけれども、私、そういうものは不安のある資源について入手するために当時としてはやむを得なかった必要なコストであるという考え方のもとに消費者に負担をお願いする、その事情をよく理解していただくということが必要なんではないかと思います。そういう意味で、むしろ政府が直接負担するよりは今回のような形で適正なコスト価格を実現していくということを考えるのが筋だと思っております。  それから、企業閥の格差の問題については、確かにまだ解消できるというところまでは来ておりませんけれども、今回の豪州との交渉によりまして、価格はある程度引き下げは可能な情勢になっておるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 それほど期待するほど大きなものではございませんが、ある程度縮まる。さらに、価格水準もでありますが、引き取りの期間を四年間に延長するということによって一般相場のものと薄めるということも出てまいるわけでございます。そういうことによって格差は相当程度解消してまいる。さらにまた、これは豪州糖のような高いコストの物については、現在の糖価安定制度の仕組みの中で調整金を免除するという形で実質的に負担軽減を図っている面もございます。  そういうことからすれば、各般の措置によってかなり今回、豪州糖の負担の大小に伴う企業間格差は縮まるのではないかというふうに思うわけでございます。そういう中にあって過当な競争を排除するような今回の措置がとられますれば、ともあれ豪州糖負担の重いところでも安定した経営を続けていける、そして三年なり四年なりしんぼうすれば後は正常化する時期が来るというふうに見ておるわけでございます。  それから、労務問題についてもいろいろお尋ねがあったわけでございますが、そういうすべての問題を解決するというか、企業間格差なりあるいはすでに過去に累積している赤字を解消するというところまではとうていこれは手が及ばないのでございますが、ともあれ経営の安定が雇用の安定に役立つという考え方のもとにこの法案を出しているわけでございまして、雇用関係については私のところにもいろいろ懸念の御意見が寄せられるわけでございますけれども、この法律でもって直接、構造改善をやって工場統合をやれ、企業合併をやれということを強制しておるわけではございません。  ただ、私が申し上げておきたいのは、これは基本に経済の問題があります。今回のこの措置だけでもって糖業界が直面しているむずかしい、基本的に根っこにあります経済の問題それ自体を全部解消するわけにはまいらない。そういう事態からいたしますと、これはこの法律が強制するとかなんとかいうことでなくて、かなり厳しい雇用条件なりあるいは企業の合理化ということは進まざるを得ないんじゃないか。それは企業の自主的な判断によって新しい情勢に対応するため、生きていくための措置としてあるのだと私は思っております。  ただ、そういうことに対して私どもは、今回の措置を契機にいたずらに首切りを進めるのだということでもって考えているわけではないので、そういうあらゆることを解決するための法案ではないけれども、合理化努力、これは企業として当然必要な措置であるというふうに考えておりますので、念のためつけ加えさせていただきました。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣並びに杉山局長からいま十分意見を伺いました。いずれにしても慎重に対処していただいて、そうした馘首につながることのないように、どうかひとつ業界に対する指導を十分にやっていただくように、本法の運用に当たって重ねてお願いいたしておきます。  なお、いま杉山局長の答弁の中で消費者の問題、われわれも若干の負担はあるということについては、これに反対するわけではありませんけれども、やはり物価高の折でありますので、消費者に影響がたくさん及ばないように、さらには業界に対してもまたいろいろと配慮をしていただいて、その点は十分対処をしていただくようにつけ加えておきます。  そこで、いまその話が出ましたのであえてお伺いしておきますけれども、一千三百億円以上という累積赤字があるということでいろいろ覆われておりますが、この赤字が、これまた今回の本法の運用に当たって消費者サイドにかかってくるとなると、二年間で累積した赤字、これが消費者に大変な影響を及ぼすということになりますので、私はこれは企業の努力によって何とかしてもらいたいし、たな上げをして、そして、これを徐々に解消する方向で考えていただくように指導もしていただきたいし、これがいつの間にか消費者サイドにまたいわゆる負担がかかってくるということのないように、十分もうおわかりになっておることだと思いますけれども、その点についても念を押しておきたいので、あえてお答えをいただいておきたいと思います。
  124. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 私は先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、精製業界がこういう大変な苦しい状況下にある、軒並みに経営破綻というような心配さえもされるような事態にある。そういう中で商社金融あるいは銀行金融、これもなかなか円滑にいかなかった、こういう状況であります。かろうじて何とか自転車操業的に経営を続けてきた、こういうことでございますが、今回の政府提案によって業界の方にも一応の安定のめどが立ってきた。こういうことになりますれば、私は、商社金融の面でもあるいは金融機関からの融資の面でもいままでよりは非常に滑らかになってくるのではないか、このように考えます。これは金融機関あるいは大商社というものでございますから、国がこれに対して国民の税金を使って助成をするとかなんとかいうことはなかなか国民的なコンセンサスというものは得にくい問題だ、私はこう考えておりますから、いままでの累積赤字は今後の企業努力、そして長期にわたってこれは消却をしていただきたい、このように考えておるところでございます。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣から、また杉山局長からもるる業界並びに労働者に対する答弁等ございましたので、一応私も承りました。  そこで私は、この機会にあえて政府当局にも、また業界にも聞こえていただきたいというような気持ちで若干の提案をして、御検討をいただき、今回またとないと言っては語弊がありますけれども、こういった十六隻二十一万三千トンの豪州砂糖船の問題、それから本体交渉のときでもあるし、たまたまこういう法案を臨時国会に急遽提案して審議をするというときでもございますので、今後のためにもぜひひとつ御検討いただきたい。特にこの法案時限立法でもありますし、三年間という期限がございますから、ぼやぼやしておりますと、御承知のように、過去にカルテルを結んでやってまいりました、昭和五十一年十二月、五十二年三月と二回にわたって糖安法に基づく指示カルテルを発動しましたけれども、結局これが過ぎるとまたもとのもくあみということで、いわゆる緊急避難的な要素はあったといいながらも、後はまたもとのもくあみ、こうなります。今度も、三年間というけれども、またもとのもくあみになりかねない、こういうように思うので、恒久対策もさることながら、どうかひとつ十分にいまから言う提案を検討していただいて、業界も改めていただくように指導してもらいたいということであえて勇気を出して私は申し上げるわけです。  それは、精糖企業は他の企業と異なって、先ほどから申しますように、装置産業であります。一社一工場であります。工場の半分を整理するとか、三分の一をよそへ移すとか切って取るというわけにいきません。また、砂糖そのものは白くて甘いということで、北海道から沖繩に至るまでどこへ行っても砂糖というものは、これは上白糖は同じですから、北海道のは甘味がすごくて九州のは甘味が半分というわけではないのです。同じです。要するにこれは商品特性がないわけですね。しかも、言うまでもなくメーカーは御存じのように、いろいろ商標を付しております。すなわちブランドをつけておりますが、私は、このメーカーの製品、これはもうほとんど商品特性はないわけですから、ブランドの統一を図るというようなことは、この機会に業界も、また農林省もしっかり指導をして、一生懸命取り組むべき問題ではないか。大変なことでありますけれども、よく大臣が日ソ漁業交渉で言われた、困難であるが不可能ではないということで努力してもらいたいと思うわけです。北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州と、いろいろ八つか九つかグループに分けてもいいから、グループ単位に、東北はA企業、九州であればB企業というふうにして、販路協定をすることによってむだな運賃コストその他をなくし、乱売合戦もなくなる、こんなふうなことも、やはりこの際いろいろ将来のことを考えたときに、困難であるけれども不可能ではないわけですから、折々検討していく、そうしないと、あっという間に三年過ぎてしまう。さっきの指示カルテルのように終わったらまたもとのもくあみになったのでは、またぞろ苦労しなければいかぬということで、さっき大臣から首は切らぬように努力するというありがたい答弁もあったのですからもうそれでいいわけだけれども、こういったこともこの際私は、政府もまた指導していただくように、業界考えるようにしてもらったら、組合もまた労使双方真剣に取り組んでもらえれば、こういうふうに思ってあえて申し上げるわけですが、その点はどうでしょうか。  さらには、委託生産ということも、これは次の段階では考えられるのじゃないか。さっきから聞いていると、これは業界に厳しい状態が起きてくれば、大阪なら大阪にAとBがあれば、どうしてもB工場を何とか整理をしなければいかぬということが仮に起きた場合には、A工場に委託生産をして、従業員その他を全部やる、こういうふうなことも考えてはどうか、そして最後の手段としては合併ということも将来考えられるということもあるだろうと思うので、言いにくいけれども勇気を出してそういったことをあえて申し上げておきますので、そういったことについて大臣並びに局長、ひとつしっかり頭に入れていただいて、三年間の時限立法でもありますから、検討していただいて、業界の安全、家族も含め、下請を含め、従業員、労働者、みんなが安心して日本国民的な主要食糧である砂糖に精魂を打ち込んでいけるようにやっていただきたい、こう思うのですが、時間も迫ってきましたのでひっくるめて申しましたが、御答弁を大臣からいただきたいと思います。
  126. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 精糖業界、非常に複雑な家庭事情、系列の問題、いろいろな生産面あるいは流通面、複雑な事情を抱えておる。こういうことを百も御承知の瀬野さんから、いまのような画期的な御提案があったわけでありますが、これは恐らく新聞報道その他を通じて業界の方にも警鐘として大きく響くであろうと思います。  私どもも今後、業界の体質改善なりあるいは企業努力なり、そういう面につきましては業界をできるだけ指導いたしまして、そういう方向に向かうように努力をしてまいりたい、このように思います。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大臣、そうしてさらに先ほども申しました時限立法で、昭和五十五年九月三十日限りでその効力を失うということですけれども、この三年後に期待された結果があらわれなかった場合は、何らかの恒久対策を別途考慮をするという方針であるかどうか。先のことを言うことはどうかと思いますけれども、五十一年、五十二年の指示カルテルの後もとのもくあみになったというさっき申し上げたこともございますので、この点についてちょっと答弁がなかったですけれども、いまの答弁は十分私も傾聴に値する答弁としてお聞きしておきますが、この件についてもあわせて、三年以内に何とか心配のないようにする、三年後についてはどうということについて見解があれば、あわせてひとつ追加してお答えをいただきたいと思います。
  128. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 こういうテンポの早い経済社会におきまして、私は三年というのは相当の時間がある、この時期を漫然として不徹底なままにやっていくというような悠長なことは考えられないような現状にあると思います。したがいまして、十分私どもこの三年間に成果が上がるように指導の面でも最善を尽くしたい、このように考えております。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣おっしゃったように、せっかくの努力をひとつ心から期待をいたしておきます。  労働省来ていただいておりますので、最後になりましたけれども一、二点お伺いしておきます。  すでに内容については通告しておきましたから詳しくは申しませんが、この問題については十分労働省としても、いわゆる雇用政策課の方においても企画課においても検討しておられると思いますが、いまいろいろ論議してきましたように、まだ先のことであるとはいいながらも、今後のこともありますので、お伺いしたい。これは農林省にも聞くべき問題であるけれども、あえて労働省に来ていただきましたので、もし補足が必要であれば農林省からもお答えいただいて結構です。  まず私は、今回のこの問題について、本法提案に当たりまして、いままでもそうでしたけれども業界労使のいわゆる話し合い体制の確立をしていただきたいということについて、労働省の方に一生懸命に努力してもらいたいのです。いわゆる精糖工業会と全国砂糖関係ですね、いままで話し合いは何回もやってきたけれども業界としての態度、意見でなくて、企業側、経営者側としての言動のみで、すれ違いで一つもかみ合ってきていないというのが現状です。そうした意味で、何とかひとつこの機会であります。大変な大きな転換期でもございますので、いわゆるこういった話し合い体制が確立できるようにひとつ仲介の労をとってもらいたい。勧告等をしていただければ幸いだと思うが、その点について労働省関係、どういうふうにお考えですか、簡潔にお答えください。
  130. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  労働省としましても、精糖業の関係につきましては逐次ヒヤリングその他をいたしまして実態の把握その他に努めているところでございますが、ただいまの問題につきましても今後十分配慮してまいりたいというふうに思っております。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、労働省にお伺いしておきますけれども、いま現在、この精糖企業においては四直三交代制をとっておりますが、三直三交代制が多いのは事実でございます。ゆえに過重労働を強いられているというのが現状でございます。機械はフル回転するし、一日八時間労働で三交代ということになっております。時間の関係で詳しくは申しませんけれども、交代制、労働日数の二百三十日の問題でございますが、大規模の工場設備廃棄というようなことに将来だんだんなっていくようなことが起きた場合には、労働者の首切りということの阻止をするための問題が考えてこられます。こんなことは起きないということで、労働省も十分指導していただきますけれども、現に大分、また三重県でも、九州製糖というのは大変心配されております。こういうようなことで、労働省としても、労働条件の向上につながれば、私は大賛成でありますけれども、こういった問題が必ず懸念される。また、現有において本法審議に当たって、こういったこともあわせて労働省から聞いておきたい、かように思って私は申し上げるわけですけれども、労働者が、業界立て直しのために、いま必死になっていろいろと要請活動をしておりますけれども、満足な交渉体制は一つもつけられないということで、労働関係も大変深刻な実情にございます。  そういった意味で、一方においては、四十八年をピークとしていわゆる過剰設備をやってきた。消費が減ってきて、現在においては相当な過剰設備であるとか言われますけれども、反面においては、労働者が、いわゆる三直三交代制で大変な労働を強いられているというのも事実でございまして、年間を通じて、年末年始の休みがなかったり、ゴールデンウイーク、夏休みの休暇、週休二日制、機械の点検整備、こういったこともやらなければならないけれども、実際に二百三十日ということで、過重労働されまして、なかなかそういうゆとりがない。こういった年末年始の休みとか週休二日制とかいろんなこともありますが、年間を通じて、人並みの休みをとってやるということになりますと、いま二百三十日の操業日数ぐらいになるわけでございまして、四百四十万トンも製造能力があるというふうに過剰と言われているのですけれども、実際は過重労働を強いられているというのは事実であります。そういったことから、もっと人間らしくしてあげなければならぬ。すなわち、一日八時間でいわゆる三交代だと、三、八、二十四時間ということになりますけれども、これを他企業並みに何とか労働時間を考えてあげて、もう少しゆとりを持った労働にしてあげなければ、片一方ではものすごい労働を強いて、やれ設備過剰であるということでいろいろ言われている点もございます。  時間が迫ってきたものですからはしょって申し上げますけれども、そういうようなことで、労働者の労働時間と、それから機械の点検をしたり、いろんな瞬間が欲しいわけですけれども、そういったものに対する余裕がないままいま推移しているのが事実でありまして、過剰設備と言われますけれども、そういったゆとりをとれば過剰設備というようなことなども言われなくなる。相当無理な労働を強いられているということが言えるわけです。  その辺は労働省としてはどういうふうに考えておられるのか。こういう時期でございますから、こういうようなことも十分考えて、人並みの休みをとらせて、そして十分休養もとって従業できるような方向にしていくべきだ、かように思うわけです。こういったことも労使の話し合いをさせなければなかなか解決できない問題だと思いますので、これもひとつ、最後になりましたけれども、あえて労働省に見解を承っておきたい、かように思うわけです。
  132. 宮川知雄

    ○宮川説明員 精糖業界におきましては、昭和四十五年ごろから、それまでのいわゆる三百三交代が現在の四直三交代、四組で一日三回ということになりますので、一組お休みになる形でございますが、その四直三交代に次第に変わってきております。それで、現在におきましては、各社多少の差はございますが、いまお話がございましたように、年間大体二百三十日の稼働ということに相なっております。  それで、これが過重であるかどうかという問題でございますが、参考までに申し上げますと、同じく四直三交代をとっております鉄鋼業界が、年間稼働日数は大体二百七十日でございますので、私どもといたしましては、いま直ちにこれについて特にどうこうということは考えておりません。ただ、労働条件というのは、賃金問題まで含めまして十分労使でお話し合いをしていただきたいところで、いまお話がありましたように、私どもといたしましては、そのお話し合いがさらに進むように期待しているところでございます。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が短くて、もうあと質問できなくなりましたけれども、どうしても聞いておかなければならない問題がありますので、一点、大臣に最後に承っておきます。  ただいまの労働時間の問題その他については、ひとつ農林省側も大臣も十分承知していただいて、ちょっと時間がなくてはしょりましたけれども、そういう問題がございますので、どうかひとつ十分頭にとどめて、今回の法案の成立後のいわゆる指導には十分当たっていただきたいと思います。  実はサトウキビの価格決定についてでございますけれども、てん菜は十月七日に決定しましたが、いよいよ政府が今月末までにこれを決めることになっておりまして、聞くところによると十月二十八日に決めるということです。いよいよ本委員会審議する時間がないようになりましたけれども、てん菜が決まれば、私が先般も質問しましたように、連動的にサトウキビが決まるようなものだということで、私たちは政府に対していろいろ厳しく考えをただしたわけでございますが、御承知のように、十月二十八日ごろ決めるというようなことですけれども、今後のその方針、日程が大体どうなっておるかということを、簡潔でいいから一つ。  それから、私はいろいろ申し上げようと思ったけれども、ずっとてん菜とサトウキビの価格を見てみますと、まさに四十九年はてん菜の最低生産価格トン当たり一万一千百十円、サトウキビは一万一千二百円で九十円の差。五十年はてん菜が一万二千百四十円、サトウキビが一万二千三百四十円で二百円差、農家手取りは百円の差、サトウキビは百円高いだけ。五十一年は最低生産価格が、てん菜の方が一万三千百円で、サトウキビは一万三千三百十円で二百十円の差、しかし農家手取り価格になると、てん菜が一万七千円で、サトウキビの方が一万七千百円で、これまた百円。毎年百円ぐらい手取り価格の差で、てん菜の方が百円少なくてサトウキビは百円多い。こんなことならば審議会にかけていろいろ審議しなくても、ことしはあらかじめ申しますと、五十二年はてん菜の最低生産価格が一万六千四十円でございましたから、この寸法でいけば、サトウキビはもう審議せぬでも恐らく一万六千二百円になるだろうと、私のコンピューターではなっております。そうすると、農家手取り価格は、二千八十円の奨励金を含んで一万八千百二十円がてん菜であると、サトウキビは一万八千二百二十円ぐらいになるということで、これはもう決まったようなものだと思うのだが、全くこれはどういうわけか知らぬけれども、農家手取り価格で同じ百円くらいの差で来ておりますが、これではちょっと問題だと私は思うのです。農家も怒るのは間違いありません。  それで私は、この間も委員会で、てん菜は大規模である、てん菜は少なくせよと言いましたけれども、サトウキビは圃場整備もできてない、しかも植えつけてから最初とるまでは一年半もかかる、しかも品種の改良もおくれている、また生産費も高くつく、いろいろな問題がたくさんございますので、これでは鹿児島の南西諸島の皆さんや沖繩の皆さんに余りにかわいそうである、こけんにかかわる問題であるということで、いま鹿児島、沖繩県の皆さん方はいろいろあるけれども、とにかくサトウキビはもっとてん菜と価格差をつけてもらいたい。こんな毎年百円ずつということなら、もう審議をしても、やらぬのと同じじゃないかということで、大変深刻な状態になっております。私も九州の代表として、瞬間も経過して各委員に恐縮でありますけれども、サトウキビのいわゆる日程が詰まっておりますし、政府決定も目前でありますし、また審議する委員会の時間が、きょうの理事会でも検討しましたけれどもないので、あえて大事な問題でありますから、この日程と価格問題について二点にしぼって最後に大臣に承って質問を終わりたいと思います。
  134. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 沖繩のサトウキビ、また鹿児島県の南西諸島、これは海洋性亜熱帯性の特殊な環境の中で、しかも台風常襲地帯というような悪条件の中でやっておるわけでございまして、私は沖繩なり南西諸島で働いておられる農民の方々にとっては本当に重要な基幹的作物である、このように認識をいたしておるわけでございます。私は、この振興のためにできるだけ農林省としても努力をしておるわけでありまして、沖繩県のこの種苗の改善等につきましても意を用いておりますが、まず原原種農場をつくってほしい、こういう御要望もございまして、私も沖繩に参りましたとき、これを公約をしてまいりました。直ちに事務当局に命じまして来年度予算にもその用地買収費等を要求をしております。四、五年の間にこの種苗が沖繩全島に配給できるようにもいたしたい、このように考えておりますし、価格政策だけでこのサトウキビの生産性の向上ということは私はできない、どうしても、御指摘がありましたように、土地改良基盤整備事業等もやらなければいけない、いろいろな生産対策、構造対策、これを総合的にやる必要があると思っております。  それからなお、価格につきましては、これは瀬野先生もう十分御承知のように、てん菜糖とにらみ合わして価格決定がなされておるということで、私はてん菜糖に今度とりました新しい算定方式、これを基本にいたしましてサトウキビの今年度の価格を早急に決定いたしたい、このように考えております。  ただ、ここで申し上げておきたいことは、てん菜の生産性の向上は相当進んでおります。三十六時間ぐらいになっておるわけでありますが、サトウキビの方は百六十時間をオーバーするというような状況にございます。しかも、それが刈り取りの際に労働時間の七割を使っておる、こういうようなことで、私は今後刈り取りの問題等につきましても、機械化を促進するとかいろいろな改善策をとることによって生産性は大きく改善できる余地をたくさん残しておる、そういう面に政府としては価格政策のほかにできるだけの努力を払ってまいりたい、こう思っております。
  135. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 質問を終わります。
  136. 金子岩三

    金子委員長 神田厚君。
  137. 神田厚

    ○神田委員 砂糖価格安定等に関する法律臨時特例に関する法律案について、御質問を申し上げます。  まず最初に、この法案が出てきた背景というものにつきまして、どういうふうな形でこの法案が出されてきたのか、このことをよく私どもは見きわめなければならないというふうに考えているわけであります。いろいろ趣旨説明の中にはございましたけれども、こういうふうな法律案を出してくるという背景の中には、やはり業界その他につきましても十二分に何らかの話し合いがなされて、そして、この法律案が出されてきた、こういうふうに考えられるのでありますけれども、この点につきましてどうでございますか、御質問申し上げます。
  138. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 御承知のように、わが国における砂糖消費の傾向は減退傾向と申しますか、非常に消費は停滞を続けております。また、砂糖業界、粗糖業界を見ておりますと、非常な過当競争というものが行われておる。また、過剰な設備も抱えておる。それにさらに豪州糖の長契によるところの問題もありまして、精糖業界全体の経営が非常に困難に相なっておりますことは御承知のとおりでございます。  またもう一つ、こういうようなことの結果として大分県あるいは東海地方等の精糖企業というものが倒産等の憂き目に遭っている。すでにそのために職場を失うような従業員の方々も出ておるというようなことでございまして、これを放置することができない状況に相なっております。  私どもは、そのためには何といっても輸入糖を含めて需給の均衡というものをやはり回復をさせる必要がある。また、企業の努力もお願いをしなければならない。そして、精糖業界の安定を図ることで消費者に対しましても必要な量を適正な価格で確保できるようにしていかなければいけない、こういうぐあいに考えて今回の法改正をお願いをした、こういうことでございます。
  139. 神田厚

    ○神田委員 ですから、この法案を出すに当たりまして業界の方とそういうことにつきまして交渉なり話し合いなり、そういうことをなさいましたか。いかがですか。
  140. 杉山克己

    杉山政府委員 砂糖業界の経営不振といいますか、業況悪化はすでに久しい期間を経過いたしております。この間、これをどのようにして脱却するか、さまざまの役所との間の話し合いが持たれておるわけでございます。その間、たとえば昨年十二月から二回にわたりまして糖安法に基づく指示カルテルを結成するというようなことも行ってまいったわけでございます。ただ、そういうようなことをやってもなかなか事態は改善されない。一方、豪州との交渉問題も難航しているというようなこともありまして、さらに一層の基本的な対策が要請されるに至ったわけでございます。  そのようなことから私ども政府としては、業界の一番志向しているところは需給調整であるということは、これは明らかでございましたので、それらの意向をくんでこの案を作成するに至ったわけでございます。その間において、具体的にどんな形をとるか、条文の細部について一々詰め合わせるということはいたしませんでしたが、基本的な考え方、業界の希望する全体の方向、さらに、そういうことに伴う業界自体としての今後の経営についての基本方針、それらを承りまして案をつくったという経過がございます。
  141. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、業界の意向をくんでやった、出してきたということになりますと、この法律案の裏に意図されておると言われておりますいわゆる合理化、構造改善、現在の設備過剰をこのままにしておけないというような状況、たとえば、一説によれば、二〇%程度の設備をやはり何とかしていかなければならないのではないかという問題点、こういうことにつきましては、具体的な話があったのでありましょうか。
  142. 杉山克己

    杉山政府委員 この法律自体とは別個に、業界自身の経営分析ということは、私ども役所におきましても、それから業界の側におきましても、それぞれ勉強といいますか、鋭意分析をしておったところでございます。特に、指不カルテル結成のころにそういった設備等についての議論も交わされました。そのころ、業界あるいは私ども、それほど大きな数字の差はありませんが、全体としての設備能力に対する需要の割合はどのくらいか、つまり稼働率はどのくらいかというような計算をいたしたことがございます。そのときは稼働率はおおむね六〇%、しかし、その差の四〇%が即過剰であるとは言いがたい、それは操業の繁閑あるいは今後の需給の動向を見ながら整備すべき対象設備を考えていく必要があるというようなことで、かなりそこら辺は突っ込んだ議論をいたしております。ただ、これはこの法律それ自体と直接に結びつけたというよりは、業界自体が経済問題として経営努力によって改善を志向していくべき問題であるということのようにいま議論を進めておったところでございます。
  143. 神田厚

    ○神田委員 どうも答弁では釈然としないのでありますが、私どもやはりこの改正法によりまして、さらに合理化がされまして、そして多くの労働者が失業をしていくというような、こういう問題は非常に憂慮しているわけであります。構造改善という問題が端的な言葉では出てまいりませんけれども、そういうことも意図した形での法律案であるというような話も仄聞しているわけでありまして、そういうようなことにつきまして、どの程度の配慮を含んだ形で出されているのかということを心配しているわけであります。  時間がありませんので本当に突っ込んだ議論ができませんが、こういうふうな形で砂糖業界が非常にむずかしい事態になったということは、前からすでに各委員から指摘がありましたように、豪州糖固定価格での輸入、この問題と切り離して考えることはできないわけであります。この豪州糖の問題につきまして、農林省が当時の業界に対しまして非常に強力な指導をしている。したがって、やはりそれによります責任といいますのは、政府みずからがもっと前向きな形で認めていかなければならないというふうに考えるわけでありますが、その点はいかがでありますか。
  144. 杉山克己

    杉山政府委員 豪州糖契約に伴う責任ということになりますと、責任という言葉でもさまざまな範囲、幅がある話であろうかと思います。私ども、確かに豪州糖契約成立に当たっては、長期安定取り決めを行うことが必要であるという観点から、これは何も砂糖に限らなかったのでございますが、当時の資源パニック状況を背策として業界指導したという事実がございます。その指導についての責任ということになりますれば、確かに今日、豪州と、こういう経済実態に合わなくなったというようなことから価格改定交渉が行われるに至ったわけであります。そういう価格改定交渉自体につきましても、政府がいろいろ窓口になって、その間の調整をとるというようなことも行ってまいったわけでございます。ただ、直接に豪州糖についてこうむっているところの業界の負担、これを政府が肩がわりするとか財政補てんするというような形では、これは責任をとるというようなことはあり得ない話であると思っております。  ただ、私ども各般の業種を所管しておりますが、砂糖業界もその重要な業種の一つであります。その業界が当然安定した経営を続けていくように指導し、各般の措置をとるということは必要であると考えております。単に豪州糖という観点からだけでなく、砂糖業界の経営安定という観点から諸般の措置を講じてまいっておりますし、今回の法律提案も、まさにそういう観点に立ったものでございます。
  145. 神田厚

    ○神田委員 この豪州糖の問題では相当突っ込んだ指導をしている。その指導の仕方というものはいろいろと、とにかく長い期間に、一年ぐらいかかりまして農林省は一生懸命その業界に対して指導しているわけでありますね。四十九年の二月ごろには倉石農林大臣が、先ほどおっしゃいましたように、資源ナショナリズムの横行の時代で、食糧安定供給のために食糧外交が必要である、砂糖についても砂糖業界が一本になって長期協定ないしそれに類する方式で官と一体となって輸入考える必要がある、こういうことを言って、これから業界に対するいわゆる指導を始めたわけであります。その間、本当に綿密な指導をしておりまして、その中にはただ単に農林省だけではなくて、通産省それから大蔵省、外務省、これらが全部やはり農林省と歩調を合わせまして、その都度意見を求められ、あるいはこういうふうな行政指導内容に立ち入っているというふうに考えておるのですが、この辺のところはどういうふうに考えておりますか。
  146. 杉山克己

    杉山政府委員 確かに当時、資源、特に重要な食糧砂糖もその中に含まれるわけでございますが、その確保について政府が重大な関心を払い、その安定確保のために必要な指導をとったことは事実でございます。個々の事実について詳細記憶しているわけではございませんが、先生がいま挙げられましたようなことはあった話だと私どもも存じます。  ただ、そのことは、政府だけが、実際に必要のないものを、当事者たちのいやがるものを無理やり押しつけたということではございません。当時の日本全体の空気といたしまして、当事者も含めまして、そのような安定確保が必要であるという全体の認識があったことが一つございます。それと、その指導に関して、少なくとも政府は、価格をこうせいとかああせいという形の価格判断についての指導は直接行っておらないのでございます。
  147. 神田厚

    ○神田委員 そういうふうにおっしゃいますけれども、われわれが聞いておりますところによりますと、政府はやはり価格の問題についてもこれを指導していた、こういうふうな証拠があるわけであります。このことにつきましては後で御質問申し上げます。  また、いま、その当時必要であったから、政府がやったことが問題ないという話でありますけれども、そういう話は聞けないのでありまして、やはり見通しを誤ったということについての責任は十二分に感じなければならないというふうに考えるわけであります。  そこで、通産省並びに外務省、それから大蔵省各省の担当官が来ていると思うのでありますが、その当時、四十九年の初めから四十九年の募れにかかりまして、農林省からどういうふうな形でこの豪州糖の問題について相談を受けたか、あるいは糖業界を中心とする人たちの間でどういうふうな形の話し合いがなされたか、簡単で結構でございますから、お答えいただきたいと思います。
  148. 矢口慶治

    ○矢口説明員 当時の状況につきまして、どういう形で行われたかという点につきましては、必ずしも私どものサイドですべてを把握しているわけではないわけでございますが、とにかく農林省、それから業界等の連絡、そういったものは適宜これをしていたというふうに考えております。  そして、本件についての通産省としての対応は、主として長期契約履行に関連をいたします輸入カルテルの認可というものについて判断をすべく検討をしたわけでございますが、当時の砂糖の世界需給事情のもとにおきまして、長期契約の締結によりまして砂糖の安定的確保を図ろうとすることにつきましては、わが国への砂糖供給にとりまして有意義なもの、だというふうに考えまして、カルテルの認可を行ったわけでございます。
  149. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 農産物に関する通商上の重要な交渉につきましては従来からも関係各省間で協議しておりまして、日豪砂糖協定についてもその締結前に農林省から御相談を受けたことはありまして、関係者間で議論はしたことはありましたが、当省といたしましては本件は予算ないし関税と直接関係がなく、究極的には業界御自身あるいはその指導監督を行う農林省の御判断にまつ問題である、したがって、これは業界あるいは所管省にお任せするのが適当であろうと考えて処理した次第であります。
  150. 山下新太郎

    ○山下説明員 外務省も、その当時におきまして農林省から御相談をいただいたことは事実でございます。それで、私どもがその時点におきまして主として関係をいたしましたのは、実は豪州側、これは豪州政府及びCSRでございますけれども、この民間契約につきまして日豪双方の政府が何らかの形で関与してほしいということを希望していたことがございまして、そこで契約を締結いたしました後の一九七五年一月に、それぞれの政府が相手国の政府に対しまして両国政府がとるべき国内措置を通報するその書簡を出すという問題があったわけでございます。そういう観点から外務省といたしまして関係した次第でございます。
  151. 神田厚

    ○神田委員 こういうふうに見ますと、農林省主導的な立場で各省庁との間で連絡をとりながら豪州糖輸入の問題について進めてきた、こういうことが明確になってきているわけであります。そしてさらに、当時の局長であります森局長は、こういうふうな状況の中で、この豪州糖の長契問題に対しまして非常に積極姿勢をとっておりまして、いろいろなところでいろいろ発言をしておりますけれども、長契についてはできるだけ自分たちが農林省として力を尽くして、そして政府がそこに出て決めなければならない問題については政府が出てネゴする、根回しをする、交渉する、こういうことも言っているわけであります。さらには、こういうふうな問題が相当長期間にわたりましていろいろなところでやられているわけであります。各農林省課長の人たちも本当に局長と一体になってこういう形でのいわゆる方向づけを強力にしてきておりまして、そして最後にどういうふうな形になってまいりますかと言いますと、大変時間がなくて突っ込んだ話ができないのでありますけれども、いわゆる豪州との直接の価格の交渉の問題に入りました。先ほど杉山局長は、価格問題については農林省指導してないとおっしゃいましたけれども、決してそういうことではなくて、価格問題につきましても非常に積極的な主導権を持って、そして各省庁に対しましてもこれを働きかけている。  農林省としては、当時の九月下旬に豪州との話し合いで上限下限のセットあるいは中間のスライド案、こういうものが出てきたときに、農林省は韓国やマレーシア、こういうものより悪い条件では困る、こういうことを言ったりしている。そして、大蔵省ではインフレーションクローズ、こういうふうなインフレーションの条項では困る、それから外務省では交換公文は困る、こういうことを言っているわけであります。そしてさらに、こういうことを言っておりながら最終的にどういうことを言ってくるかと言いますと、農林省の方では具体的な価格の問題につきましていろいろなところを指導しておるわけであります。つまり、当時のイギリスポンド百三十五ポンドプラス一二%インフレーションクローズ、これの五年間で平均一本価格で二百十二ポンドではこれはどうだろうか、こういうような具体的な価格指導もしているし、指示もしているし、相談にも乗っている。こういうことをしていながら、先ほどは価格については一切何もしておりません、指導しておりませんという話でありますけれども、そういうことじゃない、かなりきめ細かな価格の問題まで突っ込んだ話をしているはずでありますが、いかがですか。
  152. 杉山克己

    杉山政府委員 私が指導していないと申し上げた意味は、現在の価格契約価格が非常に高い水準でございます。そういった価格で取りまとめるように指導したことはないということを申し上げたのでございまして、その過程におきましてはむしろ将来価格が下がる懸念がある、それらのことについて十分配慮すべきである。それから、韓国とかマレーシアとか、そういうところの条件ともにらみ合わせて決めるべきである。それから、通貨の変動ということは十分あり得る話であるし、そのことを一方的にインフレ条項のような形でもって現在織り込むということは危険というか、問題が多いのではないか、そういう価格の決め方自体についてはいろいろアドバイスしたということは私も承知いたしております。ただ、遺憾ながら、当時むしろもっと低く決まった韓国なりマレーシアの水準、そういったものに比べて現実高い価格で決められた。それから、上下限の価格帯の中で国際価格をとってはどうかというような考え方も消えたというようなこともありまして、現在決まった価格について政府が特に指導してそういう形で決めさせたということはないという意味で申し上げたのでございます。
  153. 神田厚

    ○神田委員 この問題は大変細かい問題にわたりますので、また機会がありましたらやらせてもらいますが、そういうふうな形で最終的にはどういうふうになるかと言いますと、巷間言われているいわゆる交換公文をお互いに取り交わしているわけであります。それで、その交換公文というか覚書、こういうもので先に豪州の方から日本の大使にその保証を要求してきているわけであります。これらに対しまして日本の大使はいろいろと述べております中で、以上の措置が同協定の運用を容易にし、日豪間の砂糖貿易を拡大することに寄与するものと思います。ここに原語でその実物がありますけれども、そういうものをキャンベラで取り交わしている。  このことを見ますと、どうしてもこれは政府指導によってなされたものであるというふうにわれわれは考えるわけでありますが、この点はいかがでありますか。
  154. 杉山克己

    杉山政府委員 長期協定長期価格取り決めについて安定的確保の観点からこれを指導し、慫慂したという事実は確かに御指摘のとおりでございます。そして、当時そのことが、契約を締結されたことが日本政府の希望とも一致すると申し述べた書簡のとおりに考えておったということも事実でございます。結果的に確かに価格が下がった、国際相場が著しく下がったということからその点は見込みが違ったというか、当時の判断と違った結果になっております。おりますが、そのことから直ちに私は、いろいろ巷間言われますように、この豪州糖協定に伴う損失について政府が補償するというような意味での責任なり、そういう形での後始末をするということはあり得ないということを申し上げておるわけでございます。ただ、関与する業界、所管している業種につきましてこれが健全に発展するように、いまはむしろ危殆に瀕しているというような状況でございますから、正常の姿に回復するように指導し、諸般の措置をとるということは当然だと思っております。そういう形を通じてこの豪州糖問題も全般の経営問題の一環として解決を図っていくということを考えております。
  155. 神田厚

    ○神田委員 ですから、オーストラリアの方の州の長官、ピーターセンという方ですけれども、この方にしてみれば、やはりオーストラリアとしましては、日本商社といってもこれはもう政府の保証で政府指導してやったんだ、そういう中で日本政府がこの協定に関してどういうふうな措置をとられるのか、自分たちは合意したけれどもどうしてくれるんだ。これについて日本政府が、それは要望に沿うようにいろいろカルテルをやったりあるいは糖安法の一部を改正したり、そういうことをしながらその要望にこたえますというようなことを言っているんですから、言葉として見ればこれは保証と同じことであります。私はそういうふうに考えるわけでありまして、こういうことを覚書の交換をしておくということ、そしてさらに、そういうことが現在の豪州糖の大変な事態を招いたという責任は免れないというふうに考えるわけであります。  時間がありませんので次に移りますけれども、したがって、そういう中から、豪州糖関係の多くの方が、やはり今度の需給調整法案によりまして何らかの形で長契豪州糖に適正な救済措置をしてもらいたい、そして、あるいは事業団売買に関しまして個別のr率を適用してもらいたい、つまり二本立ての輸入というものを認めてもらいたいというような意見も来ているわけであります。そういうふうなところをいろいろと考えてまいりますと、ひとつそういうふうな形でこの法案を運用していけるのかどうか、また、そういうふうなお考えがありますのかどうか、お聞かせいただきたいと思うのであります。
  156. 杉山克己

    杉山政府委員 豪州糖負担の重い企業に対して、その企業間格差を是正するような特別な措置を講じられるかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、豪州との価格改定交渉、まあこちらが希望しておったような水準にまではなかなか届かないわけでございますが、幾分かは価格引き下げられる。それから、三年間で引き取るところを、高い価格の部分は四年間に薄める。そして、一般的な価格水準をベースとした価格でもって若干の数量を年々つけ加えた取引を行うということが大体見込まれておるわけでございますので、そういうことによって豪州糖の単年における格差はかなり薄まるといいますか、縮まるというふうに考えられます。  それから、政府措置としては、現在までも豪州糖については糖価安定法上課せられるところの調整金の徴収を免除するというような形で、理由のある負担軽減は措置いたしているところでございます。  rの問題とか、そのほか個別に各般の要請も承っております。これらは糖価安定法上の運用の問題でございますが、この豪州糖契約改定の推移も見ながら、今後の問題だというふうに考えております。
  157. 神田厚

    ○神田委員 そういう中で私は、やはり豪州糖については政府は少し責任を持たなくちゃだめだ、こういうふうに考えるわけであります。  さらに、いま、これらの中でいわゆる弾力関税みたいなものを適用する考え方はあるのかどうか、あるいは消費者に対しまして高いツケが回ってこないような形にするためには、この法案の運用につきましてやはりそれなりの需給調整の機能というものを厳密に果たさせなければならない。そういう意味におきまして、これらにつきましてこの法案の運用をこれからどういうふうな形でやっていくのか。一部では需給調整委員会のようなものをつくってチェック機関をつくらなければまた農林省が独走するぞというような話もあるわけでありますけれども、そういうことも含めまして、この法案をこれから先どういうふうな形の運用をしていくのかをお聞きしたいと思うわけであります。
  158. 杉山克己

    杉山政府委員 要するに、今回の需給調整は、業者ごとのシェアを決める、需給調整を図るというところに焦点があるわけでございます。その場合、何を基準にして決めるか、およそ白地に好き勝手に絵をかくというような話ではなくて、過去における通常年の実際の売り戻し数量をいわば一つの既得権的なものとして、それをベースにして数量を算定するということにいたしております。その意味から言えば、むやみに数量が大きく変動するというようなものではない。それから、いままでも行政的な指導のもとに指示カルテルが行われた経過がございます。過去の輸入数量あるいは生産、販売数量、そういったもの等を基礎といたしましてそれらの調整が行われたということでございますし、私ども今後やはりそういった基本的な運用の仕方は同じように考えてまいりたいというふうに思っております。したがいまして、直接業界のシェアの問題でもございますので、余り関係者を多くしていたずらに論議を紛糾させるというようなことでなく、実質的に需給調整が上がるような形で運用することが望ましいのではないか。  それからまた、消費者に対する配慮といたしましては、この法律第三条自身に、平均生産費を上回るような事態が生じてそれで推移している場合に、この売り戻しの延期をすることはできないというようにいたしております。また、一たん出した売り戻し延期の命令につきましても、そういう事態になったとき、あるいは消費者実需者の利害が損われるようになると判断されるときはこれを取り消すというようなことで、いたずらに価格をつり上げる、消費者実需者に幾ら負担さしても構わないんだというようなことにはなっておりません。十分運用の晦でも実際にその規定に沿って適正を期してまいるという考えでおります。
  159. 神田厚

    ○神田委員 そこで一つ問題になってきますのは、需給適正化を図ることの中で、「各メーカー事業団に対する売渡申込数量が売戻基準数量を超える場合には、農林大臣事業団に対し、事業団が買い入れた輸入糖をその超える数量の範囲内において、売戻しの延期を行うよう命令することができる」、こう言っております。この中で「各メーカーの最近における砂糖の製造事情等を考慮してもなお売戻数量等からみて過大であると認められる場合」というふうな売り戻しの延期のことが出ておりますけれども、この過大と認めるということの具体的な基準はどういうようなところから来ているのですか。
  160. 杉山克己

    杉山政府委員 これは一つは、全体の上需給悪影響を及ぼす、具体的には、コストを償えるような価格形成を損なうおそれがあるとき、それから個別的にどういう場合にその過大であるかないか判断するかということになりますと、いろいろのケースがあると思います。最近の実情、これが特にある特定なケース、実態を反映しない非実際的なものであるというような場合は、これは過去の輸入数量を大きく——大きくといいますか、超えておりましても、直ちに過大であるというふうには考えられない。  具体的にどういうことかといいますと、装置産業でございますから、設備、機械を休ませるというような場合がございます。そういうような時期は、その前の時期にある程度つくりだめをするというようなこともあります。そうなりますと、その時期の輸入量あるいは売り戻し数量は当然多くならざるを得ない。そのほかいろんなケースが考えられますが、そういうような企業自身やむを得ない新しい事情、それらを配慮するということでございます。
  161. 神田厚

    ○神田委員 法案内容につきましては、また機会がありましたらいろいろ御質問させていただきたいと思うのでありますが、この後、稲富議員が関連質問をいたしますので、私、最後農林大臣に御質問申し上げたいのであります。  いま論議の中で明らかにしてきましたように、糖業界をめぐる情勢というのは非常に厳しい、そして各企業のシェア争いやそういうものが非常に混沌としている、こういう中でこの法案が出されてきたわけであります。そして、そこに働く人たちにとって一番問題なのは、自分たちの職場がなくなってしまうのではないか、こういうような心配もありますし、消費者にとりましては、高い砂糖をなめさせられるのではないか、あるいはお菓子の業者にとりましては、そういうものが高くなるのではないか、こういう心配があるわけでありますが、その辺のところにつきましてひとつお考えをお聞かせいただきまして、豪州糖の問題も含めまして最後農林大臣の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  162. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いまお話にございましたように、わが国の精糖業界の現状というものはきわめて深刻な事態にあるわけでございます。これをこのままの状態に放置しておきますれば、国民の皆さんに対する安定的な供給、これにも悪い影響を及ぼす、また全体の二〇%に及んでおります国内産糖、これにも影響を及ぼすわけでございます。さらにまた、御心配なさっておりますように、精糖企業はいずれを見ましても大変経営が悪化をいたしておりまして、辛うじて商社のてこ入れによって企業が運営をされておる。金融機関なり商社なりというものの手を離れた場合には、いずれの精糖企業ももうあしたがないような深刻な状況下にあるわけであります。そういたしますと、そこで働いておられる勤労者の皆さんも大変御不安に駆られておるというのが実情であろうかと思います。  そういうようなことを総合判断をいたしまして、この際、やはり根本は、輸入糖を含めまして需給の適正を図るということ、また過当競争、これもやはり節度を持っておやりになりませんと、コストを割ってまた販売面でも乱売競争をする、そういうような状態になる。その結果、現在の消費者糖価が一体いつまでもこういう状態で続いていくのかどうか、これも非常に不安定なものである。でありますから、精糖業界全体の経営努力、企業努力というものもぜひやっていただかなければなりませんし、需給の関係につきましても、これも適正に運用されるようにしなければいけない。そういたしまして、長期にわたって国民の皆さんに量的にも価格の面でも安定的に供給ができるような体制、そういうものに持っていかなければいけないというのが私の考えでございます。
  163. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は関連いたしまして、ただ一点だけお尋ねいたします。  その一問でございますが、サトウキビの価格が明後日決定されるような状態にあるということを承りますので、機会がないので、この機会に今年度のサトウキビの価格決定に対しまして簡単にお尋ねいたしたい、かように考えます。  まず、最初に申し上げたいことは、本法律案が通過いたしましても、国内糖の生産というものに対しましては、将来一層これは努力をすべきものである、かようにわれわれ考えておりますが、この点に対する政府考え方を承りたいと思います。
  164. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 国産糖の問題につきましては、てん菜の場合、またサトウキビの場合、いずれもわが国の甘味資源として非常に重要な作物である。また、サトウキビは沖繩県並びに鹿児島県の南西諸島にとりましては何といっても基幹的作物である。そういうようなことで、この生産性も安定的に向上させていく必要があるし、また農家の所得も確保していかなければいけない、つまり再生産を確保するようにすべての政策を進める必要がある、このように考えております。  そこで、近日中に決めますサトウキビの価格の問題でございますが、これは稲富先生もうよく御承知のように、同じような甘味資源であるてん菜等の価格形成、ああいうものと平仄を合わせましてこれをやっておるわけでございます。今年のてん菜の価格補助金の半分を基本価格に繰り入れをいたしまして、そしてパリティ計算で価格を決定をした、私はいままでの算定方式よりは前進をしたものと考えておりますし、今後もそのように考えてまいりたい、このように考えております。  ただ、ここでサトウキビにつきまして申し上げますことは、価格政策だけでは今後生産農家の所得はそう安定をするわけにはまいらない。どうもいまのところ炭塵性が非常に低うございます。てん菜の場合には三十六時間程度の時間でやっておりますが、百六十時間を超えておる、こういうことで非常に生産性が低いわけでございます。今後、土地基盤整備の問題あるいは生産対策の問題、いろいろ総合的な施策を加える必要がある。特に労働時間の七割を刈り取りのために使っておるという状況でございます。こういう点は機械の導入その他も助成をいたしまして生産性の向上に努めてまいりたい、こう考えております。
  165. 稲富稜人

    ○稲富委員 私が次に尋ねようと思っていたことを全部答弁なさいました。もう言うことはないようになったのでございますが、問題は、いま大臣もおっしゃいましたように、農産物の価格を決定することは、その生産費並びに所得を補償する、こういうことが価格決定の基本であって、これが再生産を確保することにつながるものである、かように考えます。特に沖繩のサトウキビ、これは御承知のとおり基幹作物でございますので、本土における米と同じような立場にあるものでございます。しかも、労働時間におきましてもいろいろな条件において非常に困難な状態にありますので、これが再生産を確保するためには、いま申されましたように、あるいは土壌の改良であるとか、いろいろ将来なさなければいけない問題はあると思いますけれども、今日においては、少なくとも本年度の価格というものは、この基幹作物であるという、かような立場、また労力費あるいはいろいろな被害、こういう点を十分勘案しながら本年度の価格決定をすることが次期生産を確保するために必要である、かように考えます。大臣もすでに答弁なさったのでありますから、その点をぜひひとつ大臣にさらに確認をいたしてもらいたい、かように考えるわけでございます。  さらにまた、次にお尋ねいたしたいと思いますことは、御承知のとおり沖繩におきまするサトウキビは非常に土壌改良等が十分いっておりませんので、少しの風が吹けばすぐ倒れるというような非常に被害が多いのであります。これは基幹作物でもありますので、当然、農業共済の対象とすべきである、こういうことも考えるわけでございますので、これに対しては、政府でもそういう考えを持っておられるかのようにも承っておりますが、これに対する政府考え方というものをこの機会に明らかにしていただきたいと思うのであります。
  166. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 沖繩県はサンゴ礁質の土壌、特殊な土壌形成になっておるわけでございまして、この土地改良事業というのは、先生御指摘のように、非常に重要であり、また、その基盤整備事業をぜひひとつおくれを取り戻すように積極的にやってほしい、こういうようなことで、私ども内地の若衆に対するよりも土地改良事業費等の配分については特別な配慮を実はやっておるわけでございます。今後ともそういう方向で努力をしてまいりたいと存じます。  なお、共済の問題につきましては、いま試験実施をいたしましておりますが、この点は担当の方から御説明を申し上げます。
  167. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 サトウキビの共済の問題でございますが、昭和四十九年から、御承知のように、畑作物共済及び園芸施設共済に関する臨時措置法というものに基づきまして、現在、試験実施を行っているところでございます。  農林省としましては、この試験の結果を踏まえまして、サトウキビを含む畑作物共済について昭和五十四年度から本格的な実施を始めたい、こういうことで目下制度化のための準備作業を進めているというところでございます。
  168. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありますから、一言だけお尋ねしたいと思います。これはサトウキビではなくて、沖繩の農業の問題でございますが、沖繩県の農業に対しては、わが国にある唯一の亜熱帯地方であります。亜熱帯地方の農業というものに対しては、特殊の試験研究が要ると思います。政府に対しましても、まず沖繩に国立の農業試験場をつくるべきである、そして亜熱帯地方の農業としてのあの特殊性を生かした農業というものをやるべきである、こういうような考えをわれわれは持っております。そういう農業を開発するためには、南部の方には灌漑水の問題と土壌改良の問題を行ってまいります。沖繩の将来の発展というものは、農業と畜産と水産、この三つが沖繩の開発の重点でなければならないと思います。その他におきましても、いまはやはり基幹作物としてはサトウキビでございますので、将来の問題はそういう点に取り組みながら、亜熱帯地方としての独特の一つの農業というものを発展させる。そうして、パインでもあるいはパパイアでも、そういうものに対する種子の改良等もやっていく、サトウキビの改良等もやっていくという、将来のそういう見込みの上に立って、現段階においては、今日のサトウキビの生産者が、サトウキビを生産することによって、十分その農家経営がなし得る、こういう価格を決定することが最も必要である、かように考えますので、本年度の価格決定に対しては、その点を配慮しながら、ひとつ特段の決定をしていただきたい、こういうことをお願いしたい、かように考えております。
  169. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま稲富先生から御指摘のように、沖繩県は海洋性亜熱帯性の、日本としては独特な気候風土のところでございまして、それにふさわしい農業の振興ということを考えなければならない。お話しのように、サトウキビは基幹農業である。さらに、パインの問題、肉牛を中心とした畜産の振興、それから最近、冬野菜、春野菜の時期に、内地では野菜の需給関係が非常に逼迫するわけでございますが、沖繩県で春野菜、冬野菜の栽培、これには輸送費の問題が絡んでまいりますが、そういう点も十分考慮に入れまして、野菜の栽培等もお願いをしたい。  さらに、何といってもああいう島国でございますから、離島も多いことでございますから、水産業、漁業の振興、こういう点に力を入れて、そうして沖繩県民の方々の所得の向上、農林、畜産、水産業の振興を図ってまいるようにいたしたい。いま石垣島に亜熱帯農業の分場がございます。農林省の技術会議の方が直接それを所管をいたしましてやっておりますが、今後とも品種の改良その他技術の革新等につきまして、できるだけの努力をしてまいりたい、このように考えております。
  170. 稲富稜人

    ○稲富委員 質問を終わりますが、いまおっしゃいましたように、沖繩の将来というものは、やはり農業と畜産と水産、これが三つの柱でなくちゃいけないと思います。クルマエビのごときものも本土では一回しかできない、沖繩では二度できる、こういうような特殊事情を生かさなくちゃいけないということ、さらに沖繩の農産物を本土に入れる場合に、防疫検査がある。同じ日本でありながら防疫検査をやるということにも、これはいろいろばい菌があるとか言われるけれども、そういうものをなくするような指導というものが必要であって、防疫検査をなるたけ廃止することのできるようにするということ、そうして沖繩の天然の野菜その他を本土の方に安く持ってこれるような方法をとる、こういうことが必要であると思います。  これはまたいずれ機会がありましたら、沖繩の農業の問題については十分お話を申し上げたい、またお尋ねしたいと思いますけれども、きょうはサトウキビの問題でございますので、だんだん幅が広くなりましたけれども、サトウキビの価格の問題に対しては特段の配慮をしていただくように重ねてお願いいたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  171. 金子岩三

    金子委員長 津川武一君。
  172. 津川武一

    ○津川委員 砂糖は私たち国民にとって非常に大事な食糧、欠かすことのできない食糧であります。カロリーから申しますと、非常に高いカロリー存持っておるし、子供の成長にとっても欠かすことのできない材料でございます。また、非常に水に溶けやすい。百グラムの水に二百も溶けるというので、日本のわれわれの食品、特に調味料のあらゆるところに入っていくことができる大事なものであります。また、そういう調味料として見たときに、水をたくさん含むので、たとえばパンなどの老化を防ぐこともできるし、非常にそういう意味でまた防腐剤の役割りも果たすので、ある程度砂糖を含んでいるものは、その他の防腐剤は要らないというかっこうの大事な大事な宝の食品であります。したがいまして、これの消費、これの需要を正しく把握し、正しく育てていくこと、その供給に対して特に国内糖を中心に自給率を高めて供給を円滑にしていく、そして流通をよくする、価格を安定をしていくということが非常に大事な行政になっております。  こういう点で政府砂糖に対する考え方、覚悟をちょっとお伺いしてから入っていきたいと思います。
  173. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 砂糖国民生活にとってきわめて重要な食品である、また砂糖の効用、津川先生の医学者らしい非常なお話を伺って私も勉強になったわけでありますが、そういう非常に重要な食品である、このように考えております。したがいまして、国産糖の生産は今日全体の消費量のおおむね二〇%程度にとどまっておりますが、この国内の甘味資源生産を伸ばしていくというような施策も今後努力をしてまいりたい、こう考えておりますし、なお国民の皆さんに量並びに価格の面でも安定的に供給ができるように輸入糖を含め需給計画の目安というものを立てまして、そして安定供給ができるように努力をしてまいる所存でございます。
  174. 津川武一

    ○津川委員 以上のような立場から、私は次の四点にわたって質問をしてみたいと思います。  一つは、今度の豪州砂糖のこういう大変な状態からどう糖業界を確立していくのかという問題、二つ目には、このことで労働者に一方的に犠牲を強いられないようにしなければならぬということ、三つ目には、砂糖の需要と供給の関係を正しくやっていくこと、四つ目には、ただいま前の質問者にもありましたように、サトウキビの価格が決定される時期になりましたので、サトウキビに対して少し質問をしてみたいと思っております。  初めに、今度の法案砂糖国内消費生産にどんな影響を与えるかですが、昭和五十年の農林省の農産物の需要と長期見通しによれば、国内砂糖消費昭和四十七年の三百七万七千トンから昭和六十年の三百八十五万トンになるという見通しを立てております。一人当たりの消費は年二十七・九キロから三十・八キロになる、こういう見通し。ところが、実際は四十九年には二百七十二万五千トン消費、五十年には二百八十七万トン、ことしの見通しでも二百八十万七千トン、六十年に見通した三百八十五万トンにははるかに食い違いが出ております。国内生産量と自給率は、長期見通しによれば昭和四十七年六十二万一千トン、六十年にこれを百六万四千トンにする。自給率も四十七年の二〇%から六十年に二八%にする。ところが、実際はどうでしょう。四十七年の六十二万一千トンから五十年には四十四万九千トン、ふえるどころか減ってきております。自給率も四十七年の二〇から四十九年、五十年には一五まで落ちております。生産も自給率も長期見通しとかなり違ってまいっております。作付面積でも、サトウキビでもほとんどふえない、比率としては少し、てん菜に至ってはかなり作付面積が減っております。  どうしてこうなったかであります。ここのところよく考えていかないと、これからの需要供給、いろんな問題で破綻が出てくると思います。したがって、国内糖の消費生産、自給率の向上にはどのように対処していくのか、長期見通しをこのままにしておいたのでは砂糖行政が実際に適応しないので、長期見通しなどというものをもう一回考え直してみなければならぬと思いますが、この点はいかがでございます。
  175. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 国内甘味資源需給の持っていき方あるいは推移についてはただいま先生御指摘のとおりでございますが、私どもといたしましては、てん菜にいたしましてもサトウキビにいたしましても、生産が減退をしてきたのを生産拡大の方向に、つまり長期見通しで志向している方向にぜひとも誘導をしなければならないというふうに考えておりまして、四十九年をボトムにいたしますサトウキビにつきましてはいろいろと生産対応の施策を強化してまいってきております。その結果、生産、収穫面積も年々着実に増加の方向に転じてまいりました。  私どもとしてはまだ基盤整備の未整備の問題、それから収穫作業の機械化による省力の問題、それから病気の防除の問題、いろいろの問題、課題を抱えておることを承知しておりまして、これらについては、地域の農家の経営の上から言いまして相当大きなウェートを持つ作物でございますので、特に力を入れることにしてまいりたいと思っております。そういう方向で将来の自給率の目標にできるだけ早く到達するように努力をしたいというのが基本的な態度でございます。
  176. 津川武一

    ○津川委員 そこで、どうして長期見通しどおりにいかないかという、ここの反省点がなければ問題が解決されないと思うのです。サトウキビで言うと、耕作反別、かなり減っていますね。反収も減っているね。生産量も減っている。ここのところどうするかの問題で、そこで沖繩県民や鹿児島の人たちがいろいろなおねだりや要求を皆さんのところに出しております。特に沖繩ではサトウキビが農業の大宗である。新潟や宮城や山形における米並みな比重を持っている。これでどうして生きるかの問題はやはり価格の問題なんだ。それで、沖繩の人たちは、昭和五十二年産サトウキビ最低生産価格生産費並びに所得を補償し、かつ再生産が確保されるよう、当面とりあえずトン当たり二万四千円以上にする、こうしなければなかなかやっていけないと言っています。これをどうするかという問題、やはりこれにこたえてあげなければならないと思います。また、私たちは、この農林水産常任委員会でこの間の十月五日にこういう決議をしております。てん菜の生産価格については、「前年度の農家手取価格を基礎にして、最近における労賃、生産資材等の上昇を適正に織り込み、農家の所得及び再生産の確保が十分図られるよう所要の措置を講ずること。」この私たちの十月五日の決議、これは国民の決議です。これをどうしているか、沖繩や鹿児島の人たちが要求しているとりあえずトン二万四千円、この要求をどうするかということ、具体的に答えていただきたいと思います。あさってから決めるそうでございますが……。
  177. 杉山克己

    杉山政府委員 この委員会におきます決議のあったことは、私どもも十分銘記いたしております。てん菜の価格を決めるに当たりましては、従来、本体価格とそれに加えて奨励金ということで農家手取りが確保されておったわけでございます。ただ、奨励金は、これは企業が支払い得る能力のあるときにこれを支払うというようなことでスタートした関係から、価格とは性格を異にする、したがって、いつこれが打ち切られるかわからないというような不安さも持っておったわけでございます。それから、その負担区分につきましても、まさに企業の収益性が確保されているときは企業が支払い得るでしょうが、それが一たん悪化したときは、企業としては支払い得なくなる。現に五十年、五十一年と、政府がその一部を負担するというような形で、あるいは五十一年には全額を負担するというような形で処理が行われてまいったわけでございます。しかし、そのようなことでは農家の手取りを安定的に確保することにならないという考え方のもとに、ことしのてん菜の価格につきましては、農家手取り、これをベースに総体をパリティで伸ばすということにして手取りの水準でのパリティ額アップを確保したところでございます。  それから、これを価格に取り込むということにつきましては、事実上の価格の取り扱いとしたことは、パリティのベースとすることにしたことは、いま申し上げたとおりでございますが、現実の基本価格とすることにつきましては、実はその負担区分についての理論的な整理をどういうふうにつけるか、さらに財政上の取り扱いの問題、これは輸入糖におきます合理化目標価格を通じての調整金負掛というような若干ややこしい話でございますが、そういう仕組みの問題等もありますので、それらのめどを立て次第逐次取り込むということにして、本年はその二分の一をとりあえず基本価格に繰り入れるということを図ったところで、従来の方式に比べればかなり改善が図られたというふうに考えております。
  178. 津川武一

    ○津川委員 農林水産常任委員会の決議を尊重すると言うから、それに沿って全力を挙げて農民の要求にこたえるように私からもこの場で要求して、さらにまた進めていきます。  次に、沖繩のサトウキビ。やはり台風が来る、干ばつが来る、病虫害がある、そこでどうしても共済制度が必要だ。これはいま稲富委員が質問したから、ここのところは触れていきませんが、ハワイだと二十トンぐらいになる。うちの方だと反収七トンなのです。どうしてこうなるかというのです。うちの方のいま植えているサトウキビというのは、二十数年同じ品種なんだ。そして、水がかからないのだ。こういう点が非常に多くなってきている。こういう点を考えていくと、どうしても品種の更新が、そのための試験研究が決定的に必要になってきております。ビートはこれで二トン以上、品種更新して上がったことがある。サトウキビでこれが得られないはずがない。試験研究、ここのところが一つの大事な大事な対策になってまいります。  二つ目には、やはり土地基盤整備をする。しかも、それが水がかかるように、灌水ができるように、ここのところがまた決定的になっておりまして、この二つが前進するならば、私は沖繩のサトウキビの生産面におけるかなり改良になると思うのですが、これに対して農林省の具体的な計画を立てていただきたい。立てているとは思うのですが、それを聞かしていただきます。
  179. 下浦静平

    ○下浦政府委員 まず、サトウキビの品種改良の件につきましてお答え申し上げます。  サトウキビの品種改良につきましては、農林省九州農業試験場温暖地作物研究室というのが種子島にございます。それから、先ほども大臣からお答えがございましたように、熱帯農業研究センター沖繩支所、これは石垣島にございます。国の試験場といたしましてはこの二カ所でやっておりますし、それから県の試験場、これは鹿児島県農業試験場、沖繩県農業試験場でございますが、これとまたタイアップをいたして推進をしておるということでございます。  この育種の関係でございますけれども、これは重点目標といたしまして、高糖、これは糖度の高いということでございますが、それから多収、早熟、強幹、機械化適性という点に重点を置きまして実施をいたしておりまして、昭和四十七年に九州農業試験場におきまして、新品種Ni1というものを育成をいたし、それから本年度に入りましてでございますが、株出しの性能が非常に高い、多収のNiN2という品種を開発をいたしまして、それぞれ登録をいたしまして普及に移しているところでございます。沖繩県農業試験場におきましても県単事業といたしまして進めてまいりました育種事業でございますが、これを昭和五十一年度から国の指定試験ということで移しまして、ただいま鋭意推進をしておるということでございます。  今後ともただいま御指摘の点につきましては努力を続けてまいりたいというぐあいに考えております。
  180. 津川武一

    ○津川委員 試験研究のことをもう一つ言うと、バレイショには北海道、青森県、九州にまで原原種の試験場があります。これで非常によくなっている。サトウキビの原原種の試験場、これをつくることがまたぜひぜひ必要になっていますが、そういう沖繩農民、鹿児島農民の声にこたえるつもりがあるのか。  もう一つには、基盤整備で、特に水、灌水、灌漑の基盤整備をひとつぜひやらなければならないと思うのですが、この二点、重ねてお願いします。
  181. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 第一のお尋ねでございますが、沖繩にはサトウキビの原原種農場がございません。これは実は種子島にはございまして、種子島に設置しました折は沖繩もカバーするという趣旨でつくったのでございますけれども、一番決定的な問題といたしましては、沖繩地域に未発生のビールス病であるモザイク病が鹿児島県下には存在をする。そこで、原苗の段階からずっと系統的に繁殖をして持ち込むということがちょっとなかなかむずかしいという事情もございます。もう一つは、距離的にもかなり離れておる。いろいろ諸事情がございまして、現在のところ鹿児島県の方の更新供給率を見てみますと、かなりいい線をいっておるというふうに思っておりますが、沖繩の方はそれが非常に悪いということは、これもまた生産対策としては見逃せない重要な課題、ポイントでございますので、私どもといたしましては今後沖繩の適当な地に原原種農場を設置してまいるという方針で目下具体案の検討を進めておるところでございます。  基盤整備の関係でございますが、これにつきましてはおっしゃるように灌水の関係が非常に重要であるということは私どもも十分考えております。したがいまして、構造改善事業あるいは土地基盤整備の土地改良事業、こういったものの中で十分その点に配慮をして、土地条件をよくしていくということが必要であろうと思っております。沖繩におきましては、公共事業である農業基盤整備費におきましても重点的な配分を構造改善局といたしまして考えておるところでございまして、来年度につきましても同様の考え方で進んでおるわけであります。公共関係は、沖繩、奄美全体を含めてでございますが、本年度は百三十三億ということでございますけれども、これを来年度は他の地域の公共の伸びよりもアップ率を高くいたしまして、そして基盤整備の充実に心がけてまいりたいという心組みで取り進めておるところでございます。
  182. 津川武一

    ○津川委員 そこで、問題を法案に関連したところに移してまいります。  いま精糖業界が資本金の七倍もの赤字、千三百億円も抱え、構造不況業種の一つに数えられ、そのために今度の法制化になった。その直接の原因になったのは、日豪砂糖長期協定によって高い砂糖を買う羽目にさせられてしまったからであります。この長期協定が結ばれた七四年十二月当時の新聞記事をちょっと読んでみると、契約価格は「国際相場の半値」「価格長期間固定した輸入契約をわが国が結ぶのは農産物では初め」て」と絶賛をしております。しかし、この長期協定政府の要請と総合商社のイニシアチブで結ばれたものであることは今日周知の事実であります。この国際相場変動による価格の暴落により、最初に目指した安い豪州糖を一度も買うことができずに、高い豪州糖を買う羽目になったばかりに、豪州糖の引き取りシェアの大きい精糖会社ほど大きな赤字を抱えてしまったのは、世界相場の暴落のせいにだけするわけには京いるまいと思います。三十八年の砂糖輸入自由化以来総合商社が非常に砂糖に手を出してきて、精糖メーカーは大手商社砂糖部門だと言われるようになっておるのでございます。  そこで、問題ですが、協定を結んだとき、今日みたいな暴落があるということを予想しての措置協定の中に盛り込めなかったのか、政府がこの点を見誤ったのではないか。ここのところで政府の正直な気持ちを聞かせていただきます。
  183. 杉山克己

    杉山政府委員 協定締結当時、政府がどのように考えていたかということでございますが、価格の見通しについては政府の内部でもいろいろな見方をする向きがあったと思います。ただ、全般的に言えることは、豪州との契約価格がこんなに国際価格と乖離するようなことになるとは当時多くの人は思わなかったと思います。そういった基本的な認識のもとに指導を行ったということは認められると思うのでございます。  それから、契約の中においてそういう価格変動に対する予防的な規定は入れられなかったのかというお話でございますが、これは正直に申し上げまして、契約自身は当事者同士でもってその文章も内容も吟味して判こを押したというものでございます。したがって、契約内容の一々についてこれを国がチェックするという性格ではございません。ただ、これは基本的な、むしろ契約自身の前提となる合意書でございますが、その中に、この協定については毎年一遍この契約の運用と継続性について見直すという条項がございます。  日本側としては、この条項は、価格変動が著しく、契約自身の継続性に問題を生ずるような場合は、当然この条項によって見直しができるというふうに理解をいたしておるわけでございます。ただ、豪州側は、これに対しては、そういうような規定はむしろ技術的なその都度その都度のトラブルのような問題について適用されるものであって、基本的な価格のような条項については適用されないということを主張いたしております。そのことからいたしますと、この最終的な解釈は裁判所にでも行って争うというような話になるわけで、現在まで意見が対立いたしております。  その意味で、全く価格変動等に対する予防的な規定がなかったというわけではございませんが、今日になってみますともっと明確にしておくべきだったということで、不十分であったと思います。
  184. 津川武一

    ○津川委員 そこで、今日のこの混乱はやはり政府と、精糖メーカーを実際握っておる商社責任だと私は思うのです。したがって、問題を解決するには政府責任を負う、商社責任を負う、そういう正しい認識に立たなければ問題は解決しない。ところが、この法案を見ると、この二つの責任がちっとも明確にされていない、そういう処置がされていない、不思議でしょうがないのですが、問題解決の責任政府商社にありませんかということです。
  185. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 今回の法改正を国会で御審議をいただいておりますのは、豪州糖の長契の問題だけでこれを提起しておるのではございません。もし、それであれば、これは単独な立法として御審議を煩わさなければならない問題でございます。すでに灘川さんも御承知のように、国内砂糖消費は減退傾向、停滞傾向をずっとたどっております。一方、精糖業界におきましては、輸入からあるいは販売に至る間における過当競争、これも否めない事実でございます。また、過剰な設備と指摘されるような面もある。こういうことで、精糖業界全体が悪化の一途をたどっておる。そのために一部企業においては倒産等の事態も発生をしておる。働く方々にも離職等の犠牲が強いられておる。こういうような状況でございますので、政府といたしましては需給の調整を基本にいたしまして、自由化されておるこの砂糖をどうやって需給関係を均衡のとれるように回復するかというそのやり方も、ガットとの関係等もあって非常にむずかしい問題がございましたが、いろいろ工夫をこらしまして、御提案申し上げておるようなことにいたしたわけでございます。  私は、豪州糖の長契の問題は全然関係のないものとは申しませんが、私どもが今回の法案提案いたしておりますのは、いまの精糖業界の現況、非常な不況産業として放置できないような状態、このことがまた長期にわたっては国民の皆さんへの砂糖の安定供給にも支障を来す、国内産糖の今後の生産の増強育成にも支障を来す、こういうようなことを総合判断をして御提案を申し上げておる、こういうことでございます。
  186. 津川武一

    ○津川委員 今度の法案提案理由の大きなものに豪州糖の問題があることはこの間の大臣の提案理由説明の中にもありましたが、やはり総合商社政府責任を明らかにするという意味において、商社自身が何らかの形で問題を解決するために乗り出してこなければならないと思います。  小さな例ですが、たとえば商社は精糖会社の原料買い入れ、それから精製糖の販売に手数料を取っております。また、精糖会社に商社が融資している場合かなり金利を取っている。ここらあたりに自省、反省責任をとるという形のものを、農林省は総合商社にそういう措置をとるように指導すべきだと思うのです。私は、たとえばこういう形で政府と総合商社責任が明らかになると思うのです。こういう例はいかがでございますか。
  187. 杉山克己

    杉山政府委員 個別の商社に、そのそれぞれの系列あるいは関係先の精糖企業に対して金利をまけろとか債権を消却しろというようなことは、これは商売の話でございますからなかなか言いがたいところがございます。しかし、そういうようなことでなしに、全体的な、自分の関係する企業を健全な経営に立て直すということで商社も一翼を担って、その将来のあり方、今後の持っていき方について十分責任を持って相談に応ずる、指導するということは当然態度としてあるべきだと思います。政府もそのように要請してまいりたいと考えます。
  188. 津川武一

    ○津川委員 こういう形で国際的な砂糖価格が下がると、その恩恵は消費者が受けなければならない。ところが、豪州糖によって必ずしもそれが消費者に全部返ってこない。そこで、もう一つのこういう形の救済策として、砂糖関税はキロ四十四円、消費税がキロ十六円、これは豪州糖、非豪州糖に対して平等に行われておりますが、豪州糖に関する関税に、弾力的に軽減する措置考えてみたらどうか、消費税についても軽減してみたらどうか、これが消費者の声でもございます。いかがでございます。
  189. 杉山克己

    杉山政府委員 豪州糖の負担による企業間の格差を是正する直接的な措置というのは、事柄の性格上なかなかとりがたいところがございます。そういう基本的な性格に加えて、関税自身が、そもそも相手により、人により税率を異にするというような、そういういわゆる差別関税をとるということは、単に国内的のみならず相手方もあることでございますから、豪州以外の国からすれば、なぜわれわれのところは高い関税を取るのかという問題にもなりまして、制度としてそういう差別をつくるということはなかなかむずかしいという事情も一つございます。  それから、豪州糖についての、その負担が重いことによる企業間の格差は、やはり本来的には豪州にも理解を求めて価格引き下げをできるだけ図っていくというのが基本的な方向であろうかと思います。今日までそのように努力してまいっているわけでございますが、正直申し上げまして、その点ではまだ十分な成果を見るに至っておりません。どうにか妥結は近いというふうに見込まれますが、日本側が希望するような水準まで値引きを実現するというところまでは至っておらないわけでございます。しかしながら、若干の値引きと、それから期間を、現在三年でございますが、これを四年に薄めるというようなことで話し合いがまとまりつつあります。そういうことによる解決で、全体としての豪州糖のその時点における負担は、期間は若干長くなりましても、薄まるというようなことで格差が縮められてまいります。  それからまた、一部でございますが、現在、豪州糖コストが高い、高い価格輸入が行われているということから、豪州糖に対する糖安法に基づく調整金の徴収を免除いたしております。  これらの措置をあわせますと、特に今回無制限な過当競争を排除するようなこういう需給調整措置がとられますれば、確かにまだ全面的に格差が解消されるということにはなりませんけれども、若干しんぼうすればそんなに遠くない将来に正常な状態に回復し得るというふうに考えております。
  190. 津川武一

    ○津川委員 最後の問題は、労働者の犠牲にならないかというわけです。この法律案が三年間の町限立法で、したがって、この三年間で不況の根源を断ち切ろうという強力な構造改善が業界から行われると思います。行われる前に、この間、新光製糖と東海精糖が倒産し、労働者の犠牲による構造改善が進められております。そこで、労働者はこの点を非常に心配しております。どうなるんだろう、自分たちのことが非常に心配になっているわけであります。ここのところで大きな不安が出ていますが、たとえば三井三菱系統の中で系列の弱いところ、施設の古いところにしわ寄せがくる、こういうことが実際に出てくると思います。したがって、この法律はスクラップ防止にはならないんじゃないか、倒産防止にはならないんじゃないかということが労働者の間では真剣に心配されて討議されております。  たとえば、三井では川崎、芝浦、岡山に三つの工場を持っております。この系列の大東製糖は灘と川崎、ここに工場を持っております。同じ系列の九州製糖も工場を持っておる。この三井系の中で川崎、芝浦、そしてもう一つ大東製糖の川崎、川崎に工場二つ、芝浦に一つ、この三つのうちの一つは整理されるだろう、企業の常識じゃないかと言っている。そこで、労働者は、自分たちの上に具体的に工場閉鎖、首切りが来るんじゃないか、こういう心配が具体的に提起されております。  三菱系統のものを見てみます。これは大日本製糖ですが、千葉と堺と門司に工場を持っております。系列の明治製糖は、川崎がつぶれて千葉と戸畑に工場を持っています。明治の系列は下関に一つの系列会社がありますが、これは日本甜菜製糖です。こういったかっこうで三菱の系統の中に入っている問題で、関門海峡を境にしていて門司、戸畑、下関、これが整理される。  業界が三年ということで構造改善をやれば、ここで労働者の中には具体的にこの心配が出ておる。こういう形で労働者が一番大きな犠牲になる首切りが行われる工場閉鎖をやらしちゃいけない。少なくとも私がいま指摘した東京周辺にある三井の三つ、三菱の関門海峡にある三つの工場、これが閉鎖されるようだとここに大変な事態が起きる。こういうことはさせないでしょうね。その保証、特別な指導、これが具体的な労働者たちの指摘なんです。この指摘にどうこたえるか、明らかにしていただきます。
  191. 杉山克己

    杉山政府委員 大変具体的に個別の会社名、工場名を挙げての御質問でございますが、構造改善あるいは企業努力によるコストダウン、これがどのように図られるかということはまさに法律があろうとなかろうと、これだけむずかしい業況になっている業界の経済的な宿題でございます。この法律は、何もこの法律によってそういう工場を整理する、首を切るということを義務づけたり条件としているものではございません。むしろ、この法律によって需給安定を図れば、それによって企業の経営は曲がりなりにも維持されるだろう、回復し得るだろう。そのことによって、隆々発展しておよそみんな栄えるというようなことにはならないでございましょうけれども、しかし最低限とにかく何とか経営が維持できるようになるだろう、こう考えております。  では、そのことが直ちにいまある施設、労働力、雇用、これを完全に現状のまま維持するのかと言えば、私はそういう基本的にある経済的な宿題までをこの法律によって全面的に解決し得るとは考えておりません。したがいまして、その問題はその問題として、この法律のあるなしにかかわらず、今後とも起こり得る問題だとは思っております。ただ、経営の安定なくして、経営の収支の向上なくして、雇用の安定はあり得ないと思います。その意味では、一般的に今回の措置需給調整によって経営の安定、維持向上を図り得るということは、これはお認めいただけると思います。  それから、政府一般的な指導の方針としては、それは当然雇用の安定ということは、一つの企業の大きな責任として考えていくべきだというふうには考えております。しかしながら、現実におよそ工場の配置にしても、現実の工場の設備にしましても、機能の悪いもの、能率の低いもの、これがあることも事実でございます。その中で雇用の安定との関係を考えながらやはりできるだけの企業努力を図っていく、改善措置をとっていくということは、私はむしろこれだけの大きな法的な措置制度的な保証を国に求める以上、企業としても果たすべき責任は当然果たすべきであるというふうに考えております。そのことを直ちに首切りだとか工場廃棄だとか、すぐそれに結びつける必要はないのでございまして、そういうことについては、今回の措置により、ソフトに構造改善が図り得るようにむしろ基本ができてきたんだというふうにお考えいただければよろしいかと存じます。
  192. 津川武一

    ○津川委員 そこで最後に、大臣、いまの話だと、この法律は工場閉鎖、首切りには必ずしも役に立たない。首切りがあり得るだろう。この法律だけじゃないと言っている、あろうがなかろうがと言っている。ここが大変なんです。大臣、非常にそういう点を労働者が心配している。  もう一つ、労働者の言葉を紹介しましょう。いま私が挙げた三井三菱グループは、三〇%以上が高い豪州糖なんだ。このグループを豪州グループ、豪糖グループと言っている。その他のグループは、一〇%ぐらいしかシェアを持っていない。したがって、この豪州糖グループはかなり強硬に労働者に整理を迫ってくるだろうというのが具体的な心配なんです。  そこで大臣、三井三菱の大きな商社が握っておるこのグループに対して、やはり首切りがないように、労働者の生活を守るように特別に指導する必要が国にあると私は思いますが、大臣の方針を聞かしてもらって、納得すればこれで終わります。
  193. 鈴木善幸

    鈴木国務大臣 いま精糖業界は、非常に経営のピンチに立たされておるわけでございます。いままでも農林省としては、商社等に対して、とにかく商社がいままで系列化し、抱きかかえてきたのであるから、できるだけ金融の面その他についてもめんどうを見て、そうして倒産等の事態にならないように、こういうことで指導してまいりました。系列の薄いもの、あるいは系列下になかった大分県の精糖企業であるとか東海精糖であるとか、そういうところが脱落をしていった、こういう状況下にございます。そういうようなことで、私どもはまず精糖業界が今後安定できるような措置を講じなければならないということを含めて、今回御提案を申し上げておるわけであります。そうすれば、商社におきましても見通しがついてきたというようなことで、さらに、いままで見通しがない、いつまでもこれは抱え切れないというような状況下に置かされたものもあると思いますけれども、それは状況が変わってきた、めんどうを見てやるかいがある。また、金融機関におきましてもいままでとは対応が違ってくる。  そういう意味で、私どもは今後ともこの精糖企業というものが存続をしていくように、そして働く人たちにも不安がないように業界指導してまいりたい、こう考えております。
  194. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  195. 金子岩三

    金子委員長 次回は、明二十七日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十三分散会      ————◇—————