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1977-11-15 第82回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十五日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 正示啓次郎君    理事 木野 晴夫君 理事 近藤 鉄雄君    理事 竹中 修一君 理事 塚田  徹君    理事 木原  実君 理事 長谷川正三君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    関谷 勝嗣君       塚原 俊平君    中村 弘海君       藤田 義光君    木島喜兵衞君       栂野 泰二君    矢山 有作君       新井 彬之君    市川 雄一君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         文 部 大 臣 海部 俊樹君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      藤田 正明君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    今村 久明君         人事院事務総局         給与局長    角野幸三郎君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         総理府人事局長 秋富 公正君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         文部省初等中等         教育局長    諸沢 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      井内慶次郎君         自治省行政局公         務員部長    塩田  章君  委員外出席者         法務省人権擁護         局総務課長   加藤 晴明君         外務大臣官房人         事課長     栗山 尚一君         外務大臣官房在         外公館課長   松田 慶文君         外務省国際連合         局外務参事官  小林 俊二君         大蔵省主計局主         計官      的場 順三君         労働大臣官房国         際労働課長   石田  均君         労働大臣官房参         事官      鹿野  茂君         労働省職業安定         局業務指導課長 田淵 孝輔君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十一日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     小沢 辰男君 同日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     関谷 勝嗣君 同月十五日  辞任         補欠選任   栗林 三郎君     木島喜兵衞君 同日  辞任         補欠選任   木島喜兵衞君     栗林 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  一般職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第三号)  特別職職員給与に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第四号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五号)      ————◇—————
  2. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより会議を開きます。  一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。矢山有作君。
  3. 矢山有作

    矢山委員 私は、これから給与法審議に関連をいたしまして、日本国民の生存、生活にかかわる重要な課題でありますので、十分納得のいくまで所見を承りたい問題がございます。それは部落解放対策の問題でございますので、ひとつ当局におかれましては、そのつもりで御答弁をいただきたいと思うわけです。  まず第一にお伺いしたいと思いますのは、政府がこれまで極秘扱いにしてきたと言われております「同和地区精密調査報告書」が、最近相次いで都内古本屋に出回って、高値で販売をされております。東京都の同和対策部部落解放同盟大阪府連によって現在五冊が回収されたと言われておるのでありますが、この経緯について総理府長官からの詳細な説明を聞きたいと存じます。
  4. 藤田正明

    藤田国務大臣 経緯説明につきましては、同和対策室長からやらせますので、御了承いただきます。
  5. 黒川弘

    黒川政府委員 「同和地区精密調査報告書」についてでございますが、この報告書同和対策事業特別措置法施行後の同和対策事業実施状況を明らかにするとともに、この事業の今後におきますあり方等に関する基礎資料を得ることを目的といたしまして、昭和四十九年度に、同和問題についての深い見識を持っていらっしゃる学識経験者調査を依頼いたしまして、その結果をまとめた報告書でございます。  これは、同和対策協議会委員、それから関係省庁等関係者配付したものでございますが、御指摘のように、この報告書が古書籍商において販売されていることが判明したわけでございますけれども、総理府といたしましては、現在どんな経路でこの報告書販売されるようになったかということにつきまして鋭意調査しているところでございます。今後その調査結果をもとにいたしまして、どのような措置をとるか慎重に検討してまいりたいというふうに考えております。
  6. 矢山有作

    矢山委員 そんな通り一遍な回答を求めておるのじゃないのです。もうすでにこの問題が暴露してから相当期間たっておる。しかも、あなたの説明にありますように、この報告書作成部数というものは限定されておる。配付先も明確になっておる。そうするなら、一体どういう経路をたどって都内古本屋に出回ったのかということは、すでにもう調査がついているはずなんです。その調査がついておらぬというのは、いかに総理府が怠慢かということを証明するのです。はっきりした答弁を求めます。
  7. 黒川弘

    黒川政府委員 この報告書製作部数印刷部数でございますけれども、二百部印刷いたしました。そのうち、先ほど申し上げました同和対策協議会委員等への配付部数はちょうど五十部でございます。したがいまして、百五十部が配付されない形で残ったわけでございますが、この百五十部につきましては、二十部を最終的に保管する措置をとりまして、残る百三十部につきましては廃棄するという処分をいたしたわけでございます。
  8. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、これまで、この問題が起こってから相当経過をしておるわけでありますから、配付先わずか五十部、五十の配付先を調べればいいのですから、調べた結果、その配付先には五十部ちゃんと報告書保管されておったのかどうか、これが一つ。それからもう一つ、二十部については総理府保管をしておるという。であるなら、総理府に確実に保管されておるのかどうか、これが第二点。第三点は、百三十部については廃棄処分をしたというが、一体どういう廃棄処分をしたのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  9. 黒川弘

    黒川政府委員 総理府保管しております二十部は、これは現在の時点で二十部あるということを確認しております。  それから、配付いたしました五十部については、現在どういう状況になっているか調査中でございます。  百三十部につきましては焼却処分に付したわけでございますが、この部数が、申し上げました百三十部ないしは五十部の中からいま市中に出回っておりますものが出たという疑いが高いというふうに思われますので、この点についていま調査しているわけでございます。
  10. 矢山有作

    矢山委員 そうすると、百三十部焼却処分にしたというのは、百三十部確実に焼却処分をしたということではないということですね。これが一点。
  11. 黒川弘

    黒川政府委員 百三十部焼却処分に付したわけでございますが、焼却確認がどのような状況で行われたか、この点についてただいま調査しております。
  12. 矢山有作

    矢山委員 それじゃ、五十部の配付先については、いますでにその配付先に存在をしておるかどうかということについて、確認はまだ全然進んでないのですか、それともある程度確認をしておるのですか。
  13. 黒川弘

    黒川政府委員 いま確認を進めている状況でございます。
  14. 矢山有作

    矢山委員 その状況は。
  15. 黒川弘

    黒川政府委員 各部数につきまして、現存しているかどうか、確認状況には現在至っておりません。
  16. 矢山有作

    矢山委員 じゃ、これは要求しておきますが、五十部の配付先は明確になっておるわけですから、したがって、配付先氏名資料として出してもらいたい。これを要求しておきます。  そして、資料として出してもらうと同時に、あなたの方で確認作業を続けられておるわけだから、もし配付先に存在しなかった場合、その持っておらない、配付を受けておりながら保管をしてない人の氏名は、わかり次第明らかにしてもらいたい。  この二点は約束できますか。
  17. 黒川弘

    黒川政府委員 御要望の趣旨に沿うように検討いたします。
  18. 矢山有作

    矢山委員 これは検討じゃないですよ。これほど「地名総鑑」の問題が起きて大変な問題になっておるときに、この「精密調査報告書」というような、配付先までも限定をされておる、そして二十部は総理府保管をしておる、百三十部は焼却処分にしたという、それほど極秘扱いにしておるものがどうなったやらわからぬということでは済まされぬのです。これは。  したがって、問題になるのは、百三十部の焼却処分の実態がつかめたならば、それはもちろん報告してもらう。五十部の配付先氏名は何としても出してもらいたい。そして、確認した段階配付を受けておりながら、保管をしてない人の氏名は明確にしてもらう。保管をしてないということは、いわゆる同和対策委員になる資格もない人なんですから、そんなものを軽々しく扱うような人は。いいですね。
  19. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいま同和対策室長がお答えしました数字はそのとおりでございますので、いま矢山先生がおっしゃいました確認はいたします。そして、御報告をいたします。
  20. 矢山有作

    矢山委員 それでは、次に移ってまいります。  五十年十一月に「部落地名総鑑」の販売購入が行われていることが発覚いたしまして以来、そろそろ二年になります。しかも、この間次々と類似のものが出回っておったということもまた明らかになっておるところであります。これらに対する真相究明といいますか、調査というのがどの程度進んでおるのか、詳細に承りたいと思います。これは総理府関係するところでもありましょうし、また同時に、法務省関係するところでもあろうと思いますので、それぞれの担当の方から御説明を賜りたいと存じます。
  21. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 「部落地名総鑑」等に係ります調査処理状況について申し上げます。  「人事極秘部落地名総鑑」は、昭和五十年四月ごろから販売されておりまして、これは部落差別を助長、拡大するきわめて悪質な出版営利行為であるというふうに考えまして、人権擁護局といたしましては、事実関係を徹底的に調査してまいりました。それで、この「地名総鑑」の調査過程などを通じまして、類似差別冊子種類発行されていることが明らかになりました。現在、「部落地名総鑑」を含めまして、七種類差別冊子につきまして、人権侵犯事件として調査をいたしております。  この詳細を申し上げますと、まず第一に、「人事極秘部落地名総鑑」でございますが、この調査担当しています主な機関は、東京法務局大阪法務局でございます。  その調査状況を申し上げますと、この「地名総鑑」の発行者は、東京都中野区上鷺宮一の九の十八坪田義嗣、大正九年五月三日生まれ。それから、印刷部数が五百部でございます。販売しました期間が、昭和五十年の四月から同年の十二月まで、販売代金は、三万円から四万五千円。販売部数が五十三部でございまして、そのうち、販売先が判明しておりますのは五十二部でございます。  次に、図書回収状況について申し上げますが、販売した部数のうち五十一部、それから坪田が任意提出いたしましたものが三百九十五部ございまして、これを回収いたしました。その余の五十四部について申し上げますと、うち一部は販売先焼却いたしております。五十二部は坪田焼却しております。一部は、坪田東京駅の切符売り場付近氏名のわからない者に現金で売ったために、回収が不可能となっております。  それから、この資料入手先は、大阪市北区天神橋筋三の九十七小西ビル三階B室労働問題研究所でございます。  この処理状況について申し上げますと、発行者及び購入企業中三社を除きまして、四十九の購入者につきまして勧告または説示処理をいたしております。  以上が「部落地名総鑑」に係ります処理状況でございます。  第二に、労政問題研究所発行全国特殊部落リスト」がございます。この調査担当しておりますのは、東京法務局でございます。  調査状況について申し上げますと、発行者は、大阪市東区南久宝寺町五の三大東ビル八百三号労政問題研究所北沢隆及び加藤昭三となっておりますが、この両名は実在いたしておりませんので、目下発行者につきまして調査中でございます。印刷部数も現在のところわかっておりません。それから、販売期間でございますが、昭和五十年の二月ごろから同年の五月末ごろでございます。販売代金は二万五千円、販売部数も現在のところわかっておりません。  それから、図書回収状況でございますが、これは販売先確認できました十一部のうち十部回収しております。  資料入手先はわかりません。  この図書処理状況につきましては、発行者を除きまして、購入企業に対し勧告購入担当者に対して説示処理をいたしております。  以上が第二の図書でございます。  次、第三の図書について申し上げます。  これは労働問題研究所発行全国特殊部落リスト」でございまして、この調査担当しておりますのは、東京法務局大阪法務局でございます。  その調査状況について申し上げますと、発行者は、大阪市北区天神橋筋三の九十七小西ビル三階B室労働問題研究所長岡和夫ということになっておりますが、これは仮名でございまして、発行者鈴木守立田中靖造というふうに推認されておりますが、鈴木守立昭和五十年七月七日に死亡しております。それから田中靖造は現在のところ所在不明で調査中でございます。印刷部数は現在のところわかっておりません。販売期間は、第一次分が昭和四十五年十一月ごろから四十六年九月ごろでございます。第二次分が昭和五十年の二、三月ごろでございます。販売代金は、第一次分が二万円、第二次分が三万円でございます。販売部数は、現在のところわかっておりません。  これらの図書回収状況につきましては、販売先確認できました五十四部のうち四十二部を回収しております。  それから資料入手先でございますが、これは大阪市東区高麗橋詰町五十五株式会社朝日通信社にあった資料を書き写したものではないかというふうに思われますので、引き続き調査をしております。  それからこの図書処理状況について申し上げますと、発行者及び購入企業中二十一社を除く三十三の企業に対しまして、勧告または説示処理をいたしております。それから購入担当者に対して説示処理をいたしております。  以上が第三の図書について申し上げたわけでございます。  次に、第四の図書について申し上げます。  第四は、労働問題研究所発行大阪府下同和地区現況」でございます。この調査担当しておりますのは大阪法務局でございます。  調査状況について申し上げますと、発行者は、先ほど申し上げました第三の図書発行者と同じでございます。それから印刷部数は現在わかっておりません。販売期間、これは第一次分が昭和四十七年十二月ごろから四十八年三月ごろでございます。それから第二次分は昭和五十年の四、五月ごろでございます。販売代金は、第一次分が三万円、第二次分が二万円でございます。販売部数は現在のところわかっておりません。  これらの図書回収状況について申し上げますと、販売先確認できました二十七部のうち二十一部を回収しております。回収しておりません六部は購入者が廃棄しておるわけでございます。  それから資料入手先について申し上げますと、昭和四十四年十月に大阪同和対策室が作成しました「大阪同和事業の概要」、これを流用したものと思われますが、それがなぜ労働問題研究所に流れたかという点につきまして、引き続き調査中でございます。  これらの図書処理状況については、いまのところまだ未済でございます。  以上が第四の図書について申し上げました。  次に、第五の図書について申し上げます。  第五は、労政経済研究会発行日本部落」でございます。これについて調査しております担当局東京法務局広島法務局でございます。  調査状況について申し上げますと、この図書発行者は、東京都港区新橋二の十五和泉ビル労政経済研究会でございますが、その代表者氏名等はわかっておりません。それから印刷部数も現在のところ不明でございます。販売期間はこれは昭和四十五年ごろでございます。それから販売代金は五千円、それから販売部数はわかっておりません。  この図書回収状況につきましては、販売先確認できました二部につきまして回収しております。  それからこの図書資料入手先は不明でございます。  この図書処理状況、これは未済でございます。  以上が第五の図書について申し上げたわけでございます。  次に、第六の図書について申し上げます。  第六は、「サンライズリサーチセンター特別調査報告書」でございます。この調査担当しておりますのは大阪法務局でございます。  調査状況について申し上げますと、この図書発行者は、大阪市東区北久宝寺町二の二十八サンライズリサーチセンター布上善之でございます。印刷部数はわかっておりません。販売期間昭和四十九年の春ごろでございます。販売代金は一万円です。販売部数も現在のところ不明でございます。  この図書回収状況について申し上げますと、販売先確認できました一部について回収しております。  この図書資料入手先は、いまのところ調査中でございます。  それからこの図書処理状況未済でございます。  以上が第六の図書について申し上げたわけでございます。  次に、第七の図書について申し上げます。  第七は、「本田秘密探偵社マル特分布地名」でございます。これを担当しておりますのは東京法務局でございます。  この図書調査状況は、発行者東京都豊島区東池袋一の四十六の十一堀口ビル株式会社本田秘密探偵社代表者本田治、これが発行者でございます。それから印刷部数並びに販売期間につきましては、現在のところ調査中でございます。販売代金は二万五千円でございます。それから販売部数につきましても調査中でございます。  それから図書回収状況につきましては、販売先として数社の名前が挙がっておりますので、現在回収すべく努力中でございます。  それからこの図書資料入手先は、現在のところ調査中でございます。  それからこの図書処理状況については未済でございます。  以上、第一から第七まで申し上げましたが、第一から第四までの図書調査状況につきましては、本年の三月二十八日に衆議院の予算委員会要求資料として国会に提出してございます。  それから回収いたしました「部落地名総鑑」等のうち、今後の調査などに支障のない図書につきましては焼却処分をいたしました。それを簡単に申し上げます。まず昭和五十年の十二月二十五日に三百九十五冊、それから昭和五十二年の九月十三日に百十二冊、合計いたしまして五百七冊でございますが、これをいずれもその日に焼却処分いたしております。  それから先ほど申し上げました第二から第七までの図書発行時期につきましては、いずれも第一に申し上げました「部落地名総鑑」よりも前に発行され、販売されていたということが調査の結果判明しております。
  22. 黒川弘

    黒川政府委員 「部落地名総鑑」が問題になりましたときに、総理府はどういう姿勢で臨み、あるいはどういう措置をとったかということでございますが、この事件が明らかになりましたのは昭和五十年の十二月でございますけれども、この問題につきまして、これは同和地区住民の就職の機会均等に大きな影響を及ぼし、その他さまざまの差別を招来するきわめて悪質な差別文書であるという認識に立ちまして、昭和五十年、その年の十二月十二日に総理府総務長官談話を発表したわけでございます。そういたしまして、国民的課題とも言えるこの問題につきまして、国民協力理解を求めたわけでございますが、さらに、その年の十二月十五日には関係省庁事務次官連名通知をもちまして、各地方公共団体に対しまして指導要請を行ったわけでございます。それから別に各企業あるいは企業団体に対しましては同じくその十二月十五日に、これは労働省サイドでございますが、労働大臣談話を発表するとともに、これも関係省庁事務次官連名によりまして、企業に対しまして同和問題についての理解協力を要請したところでございますし、またその年の十二月二十七日には、総理府総務長官がテレビを通じまして再度国民理解協力を求めたわけでございます。  また「地名総鑑」の購入企業に対しましては、昭和五十一年の三月以降法務局等、国の出先機関に指示いたしまして、都道府県と共同して指導啓発を行ってまいったところでございますが、さらに今年二月二十八日にすべての購入企業に対しまして、関係各省共同指導及び啓発を行ったところでございます。今後さらに同和問題についての啓発に大いに力を入れてまいりたいと考えております。
  23. 矢山有作

    矢山委員 法務省にお伺いしたいのですが、先ほどお話を聞いておって、販売先のわかったものの中で勧告なり説示を受けた企業もあるようですが、中には勧告説示も何もやってないところもあるように聞きました。これはどうして勧告説示をやってないのですか。
  24. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 御指摘企業につきましては現在啓発を行っておりますので、まだその勧告とか説示とか終局的な処理に至らないという意味でございます。
  25. 矢山有作

    矢山委員 いまの第一から第七に至るまでのいわゆる「部落地名総鑑」等の調査の結果を詳しく御説明いただいたわけでありますが、その御説明を聞いておりましても、いまだに発行者の不明なものが数ある。さらに発行部数不明なものがある。販売部数の不明なものもある。そして入手先もわからないものがある。こういう状態でもう二年になろうというのに真相究明されたという段階に至らぬというのは、まことにこれは残念な話です。  そこで私は、この真相究明を徹底的にやっていくために、何らかの対策政府としてとられる必要があるのではないか、こういうふうに思うわけであります。この問題については、これまでもたびたびの部落解放同盟と皆さんとの交渉の中で、真相究明を一日も早く急がなければならぬ、そのためには政府としてこれに対する対策本部を設置すべきではないかということが提案されておるようであります。しかし、一向それに応じようとする気配が政府には見えない、一体この点はどうなんです。
  26. 黒川弘

    黒川政府委員 「地名総鑑」等のこれらの問題に対しましては、同和対策協議会幹事会を頻繁に開催いたしまして、これまで種々の対策を講じてまいったわけでございますが、今後ともこの同和対策協議会幹事会でこの問題に対処する体制をとりたいというふうに思っております。
  27. 矢山有作

    矢山委員 同和対策協議会幹事会で対処すると言うのですか。ところが、同和対策協議会幹事会で対処して、真相究明ができるのですか。現在法務省がある程度やっておりながら、いまあなたも聞きおったようなところまでしかわかってない。真相究明というのにはまだはるかに遠いところなんだ。それなのに、なおかつ同和対策協議会幹事会でこの究明ができるのですか。
  28. 黒川弘

    黒川政府委員 同和対策協議会幹事会は、別な性格で言えば、各省間の連絡会議というような性格を持っているわけでございます。従来、先ほど申し上げました、たとえば各省事務次官の通知でありますとか、こういうものは、その幹事会におきます協議をもとにしてそういう措置をとったわけでございますが、いま御指摘真相究明ということについてこれが不十分であるということであれば、どういう体制が適当か、なお検討してまいりたいと思っております。
  29. 矢山有作

    矢山委員 言葉じりをとらえるわけじゃないのですが、不十分であればなんということはどこにありますか。不十分か不十分でないかは、あなた方が現在の究明の状態を見て判断すべき問題でしょう。いまの法務省説明を聞いておると、これは十分だと言えるのですか。これは不十分なんじゃないですか。不十分だとするならどうするのですか。これは総理府総務長官、どうですか。
  30. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃいますように、まだ未解明の点が多々ございます。それで、確かに二年を経過いたしておりまして、十分とは申されません。いま同和対策室長が申し上げましたように、幹事会を頻繁に開催いたしまして、先生がおっしゃいますようなこの究明に当たりたい、かように考えます。
  31. 矢山有作

    矢山委員 どうしてもあなた方はこの真相究明のための特別対策委員会でもつくろうという意欲がないようでありますから、したがって、ないものを私ども首に綱をつけてやれやれと言うわけにもいかぬから、しかし、それをやらなくても幹事会でやれるという自信があるからそうおっしゃっておるのでしょうから、私どもはその幹事会調査なるものを注目しております。  そこで、この際、資料をお願いしておきたいのですが、第一から第四までのものについては予算委員会に提出されたようでありますが、その後の調査の問題もありますから、第一から第四までについては重複するきらいはありますけれども、現在までの調査の結果について、すべて資料として御提出をいただきたいと存じます。その際に、購入企業の名前を一々明らかにして資料に載せていただけますでしょうね。その点、どうでしょう。
  32. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 委員会の御要請に応じて提出したいと思います。
  33. 矢山有作

    矢山委員 そこでもう一つ聞いておきたいのですが、私は、この「地名総鑑」なるものの内容をちょっと見たのですが、この内容を見ると、これはちょっとやそっとで調べられるような内容じゃないのですよ。これだけの資料のもとというのは、これを握っておるのは政府しかないと私は思う。先ほどの「地名総鑑」等の中に、一つの問題については、大阪府の調査機関の方が調査をした資料が漏れたのかもしれないというような意味の御発言がありましたが、私は、やはり公的機関、特に国が調査したその資料が漏れておるのではないかという疑いを強く持つのです。なぜそういう疑いをよけい強められるかと言うと、今度のような同和対策地区の「精密調査報告書」が、発行部数も限定され、配付先も限定されて、しかも極秘扱いにして国会議員の資料要求にも応じない、地方自治体の部落解放対策担当者の要求にも応じておらない、それほど極秘扱いに厳重に扱っておるものが漏れるぐらいでありますから、したがって、「地名総鑑」のもとというものも政府の方から漏れておるのではないか、私はこういうふうに思うのですが、その点で、ここまで事態が発展している以上、政府としてはそういう点はなかったのかどうか、真剣に調査をされましたか。
  34. 藤田正明

    藤田国務大臣 五十年に発行されました精密調査の実態報告書でありますが、これは当初は極秘文書ではなかったのであります。ただ、それができ上がりましていろいろ論議がございまして、これは配付しない方がいい、こういうふうな取り扱いに変更をいたしました。そこでダイジェスト版というものをつくりまして、このダイジェスト版には、いまの実態調査に関しますところの分析解明というふうなものを新たにつけ加えまして、これは五百部を配付したわけでございます。その二百部は実際は極秘文書という取り扱いではなかったのでございますけれども、途中からそういうぐあいに変更になり、限定をいたしたわけでございます。いまおっしゃいましたその他の文書についても、そのような極秘文書に等しきものが外部に出ておるのではないか、こういうことでございますが、その点につきましては、政府の方でより以上厳密に調査もし、今後とも注意をいたしていきたい。さっきの二百部の精密調査実態報告書に関しましても、総理府におきましては、直ちに幹部会を非常呼集いたしまして、文書管理の点につきまして厳重に注意を行ったところでございます。そのようなこともございますし、今後とも政府全体におきましても、注意を喚起してまいりたいと存じます。
  35. 矢山有作

    矢山委員 長官、あなた、答弁の中でおかしなことをおっしゃいますよ。当初極秘扱いでなかったのだ、こういうことになれば、この「精密調査報告書」というものは極秘扱いでないのだから市販されることはやむを得ぬということに、そういうふうに聞こえるわけですよ。取り扱い上極秘扱いの判こを押して極秘扱いにしようが、あるいは極秘扱いにすまいが、こんなものが市販されたらどれだけ差別を助長することになる万という認識はおありなんですか。その認識があるなら、最初から極秘扱いであったとかなかったとかというようなことは言えないはずなんです。どうなんです。
  36. 藤田正明

    藤田国務大臣 私は実情を申し上げた次第でございまして、最初は確かに九つの地名が載っておるわけでございますから、その九つの部落調査をしたわけでございます。そこで最初は極秘扱いではなかったのであります。ところが、そういう地名が上がっておるということ、まあその他のことも多少ございましたけれども、そういうところで、これは配付すべきでないというふうに意見が変わったわけでございます。私はその実情を申し上げたわけでございまして、これが配布されれば悪い結果を招くおそれが多分にあるということから配付を限定してしまった、こういうことでございますから、極秘文書ではなかったけれども極秘文書扱いにしたことは事実でございます。それがそのように漏れた、市販も五部か何かされたということにつきましては、まことに遺憾でございますので、先ほど御答弁申し上げましたように、五十部につき、また焼却分につき、これは厳重調査の上で御報告を申し上げたい、かように言ったわけでございまして、ただいまのことは実態を申し上げたわけでございます。
  37. 矢山有作

    矢山委員 実態を申し上げたとおっしゃるなら、実態を申し上げたということで理解をしておきます。  しかしながら、こういう文書が市中に出回ればどんな影響を及ぼすかということは、あなた方が途中で感じられて極秘扱いになさった。感じようが感じまいが、政府がこういう問題について調査をしたものが公々然と市中に出回るようなことでは困るのです。これは差別助長につながるのですから。それは取り扱い上極秘扱いにしようがすまいが、こんなものが市中に流れることを、これを阻止するために、政府としては最大の注意を払わなければならぬ。そういう物の考え方が「部落地名総鑑」で問題を起こしたり、「精密調査報告書」の市中販売というような事態を起こす。だから、今度のこういう問題というのは、かかって政府自身の問題ですよ。このことをしっかり腹に入れて、真相究明に取り組まぬと、同和対策協議会幹事会でやったら真相究明できるのだというようなことでは、とてもじゃないが真相究明にはいきませんぞ。発行部数すらわからない、販売先すらわからない、販売部数すらわからないという状態でしょう。このことを肝に銘じておいてください。  次に、同和対策審議会の答申があって十二年、特措法がいま九年目に入っております。ところが、今日この段階で「地名総鑑」の差別事件、あるいは「調査報告書」が流出する、こういうような事態に見られるように、差別はますます増加し、悪質化しておるわけです。この差別事件の増加の状況というのは、「同和対策の現況」の中でも明らかにされておりますが、この差別を根絶していくために一体政府は具体的に何をやろうとするのか、これを明らかにしてもらいたい。
  38. 藤田正明

    藤田国務大臣 労働省か総理府かということでちょっと迷いまして困った次第ですが、時間をとりまして申しわけありませんでした。  ただいま法務省の方からも、それからまた総理府の方からもいろいろと御答弁申し上げましたように、諸般の対策を講じながら国民に対する啓発を行っておる次第でございますので、今後ともこの啓発指導ということをますます強化していきたい、かように考えておりまして、これは決しておろそかに考えてはおりません。
  39. 矢山有作

    矢山委員 それでは、もう少し具体的にお伺いしたいと思います。  現行法のもとで、差別事件を中心とした人権侵害にかかわる所管行政は法務省人権擁護局ですね。そこで、私は人権擁護局にお伺いしたい。  答申が出て十二年、この間、答申に言われておる人権問題に関する対策、これをどう具体化してきたのかということであります。
  40. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 お答えいたします。  昭和四十年に出されました同和対策審議会答申を受けまして、昭和四十四年に同和対策事業特別措置法が制定されたのでございますが、それに伴いまして国が行います同和対策事業につきましての基本方針とその具体的内容が同和対策長期計画として策定されまして、その計画的推進が図られてまいったわけでございますが、法務省の人権擁護機関といたしましては、心理的な差別の解消を目的としておりますので、全国一万七百名の人権擁護委員、それから人権擁護局を中心といたしまして法務局、それから地方法務局の人権事務担当職員二百十三名、これが一体となりまして、差別解消のため啓発活動それから人権侵犯事件調査、人権相談などを積極的に進めてまいりました。なかんずく毎年十二月の人権週間、それから五月の憲法週間などには懸垂幕をかけるとかポスター、チラシなどを配布しますとか、それからテレビ放送、講演会、座談会の開催、それから特設人権相談所を開設するというようなそれぞれの工夫をこらしまして、各種の啓発行事を実施しております。  なお、今後の姿勢といたしましては、憲法十四条それから同和対策事業特別措置法及び同和対策審議会答申の趣旨を踏まえまして、国民の間に差別意識が存在する限り、人権擁護委員の組織の強化を図りますとともに、差別の解消に全力を挙げて対処していくつもりでおります。
  41. 矢山有作

    矢山委員 通り一遍の御説明をいただいたのですが、人権擁護にかかわっておる職員は二百十三人とおっしゃった。これは差別事件を専門に扱っている人だけじゃないでしょう。これはいろいろな人権相談を受けておるわけです。これが一つ。その人権にかかわっておる職員の人たちが実際に部落差別の問題について十分な自覚を持っておるのかどうかという問題点が一つある。また、持たせるように系統的な研修あるいは学習活動をやらしておるのかどうかという問題がある。  さらに、人権擁護委員が一万七百名おられるとおっしゃった。ところが、この人権擁護委員は、果たして実際に部落問題について理解を持っておる者が選定されておるのですか。私は、現実に人権擁護委員の何人かを知っております。しかしながら、部落問題の部の字についても理解がない。そういう人たちが人権擁護委員に数多く選ばれておるとするなら、この人権擁護委員の活動を通じ、あるいは人権関係職員の活動を通じて部落問題についての啓蒙も何もできたものじゃない、自分自身がわからないのだから。その点を一体どうなさるのか。  それから、人権相談にあずかるとかなんとかおっしゃるが、人権擁護委員に対しての予算措置は、あなたの御存じのとおりであります。ほんのわずかな、スズメの涙ほどの年間の実費弁償費しか組んでない。それで果たして多発しておる差別事件に対する対応ができるのかという問題が一つあるわけです。したがって、御案内のように、そのことについては答申の中に明白に指摘をされておるでしょう。人権擁護組織上の欠陥というものは明白に指摘をされておる。それについてあなた方はその答申の趣旨に沿う努力をしているのですか。全然していないじゃないですか。
  42. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 私どもは、先ほど御指摘職員、人権擁護委員に対する同和問題の認識の徹底につきまして、研修その他で極力努力をいたしておりますが、確かに御指摘のように不十分な点も多々あるかと思いますので、今後もなお一層研修その他の方法を通じまして啓発に努め、認識を十分に得させるよう努力をいたすつもりでございます。
  43. 矢山有作

    矢山委員 いままでいつも国会でのやりとりというのは、そういうような抽象的なやりとりで済んでおるから、それがそのときのやりとりだけに終わってしまって具体化されておらぬのです。したがって、私はもっと具体的な答弁を求めたいと思うのです。  御存じのように、答申の「人権問題に関する対策」の中で「具体的方策」について書かれておるでしょう。もし資料をお持ちなら「具体的方策」の(iii)のところを見てください。「人権擁護機関の活動を促進するため、根本的には人権擁護機関の位置、組織、構成、人権擁護委員に関する事項等、国家として研究考慮し、新たに機構の再編成をなすこと。しかし、現在の機関としても、次の対策を急がねばならない。」として、緊急に急ぐべき対策としてa、b、c、d、eにわたって列挙されております。  a 担当職員の大幅な増加をはかり、重点的な配置を行なうこと。  b 委員委嘱制度を改正し、真にその職務にふさわしい者が選出されるようにし、またその配置を重点的に行なうこと。  c 人権相談を活発にし、かつ実態調査につとめ、これらを通じて地区との接触をはかりその結果を担当職員および委員に周知せしめる措置をとること。    その他、つねに同和問題についての認識と差別事件の正しい解決についての熱意を養成するため研修、講習の強化に努力すること。  d 事件調査にあたっては、地区周辺の住民に対する啓発啓蒙をあわせて行ない、不断にこれをつづけること。  e 以上の諸施策を行なうための十分な予算を確保、保障すること。  これだけのことが当面やるべき措置として列挙されておるのです。しかも、この答申が出て十二年になるのに、人権擁護委員の定数すら満たされておらぬ状態でしょう。人権擁護の職員はたった二百十三人という状態でしょう。人権擁護に当たる職員にしても、差別事件だけではない、いろいろな人権関係の相談を全部受けるということになっておる。しかも、その職員自体が、部落問題についての認識が不足である。人権擁護委員はたしか定員が二万名と聞いておりますが、一万七百しかおらぬ。しかし、その人権擁護委員も、部落問題について何らの理解もない連中がたくさんおる。そういうことを放置しておいて、十二年間一体何をやったと言うのか。そういう姿勢では、あなたのいまの御答弁をそのまま、はい、そうですか、ではよろしくお願いしますと言って済ますことはできない。一体具体的にどうやろうとするのか、それをはっきりすべきなんです。しかも、この十二年間にやらなければならなかったことは、そういう当面の具体策だけではない。(iii)の項に指摘するように、抜本的な人権擁護組織というものを考えなければならぬということまで言われておるのです。これは一体どうするのですか。
  44. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 それでは、昭和五十一年度に同和問題に関しまして啓発いたしました具体的な内容を申し上げます。  まず第一に講演会と座談会でございますが、これは三百九十七回開催いたしまして参加者数が四万六千四百七十四名でございます。次に印刷物の配布でございますが、ポスターは九万二千七百七十六枚、パンフレットは八十九万一千八百七十五枚、その他五百十九万四千二百六十五枚、以上の印刷物を配布いたしております。それから広報紙等の掲載につきましては五千三百六十八回、掲示板などの掲示につきましては十五万一千八百五十五回、有線放送につきましては一万一千六百六十五回、広報車の巡回につきましては七百九十回。  以上のような啓発活動をいたしております。
  45. 矢山有作

    矢山委員 もう一つ、具体的に聞きます。  今後の課題として、人権擁護職員の強化を図るのかどうか、そして人権擁護職員に徹底的に部落問題の理解がいくような研修というものをやっていくのかどうか。それから、人権擁護委員の拡充を図り、人権擁護委員の中に部落問題に対する理解者を入れていく、理解ができていない者については徹底的に理解させるような系統的な研修を行う。次に、人権擁護委員の活動を活発にするための予算措置を講ずる。これらの具体的なことをやる考えがあるのかどうか。簡単にお答えください、やるかやらぬか。
  46. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 御指摘の趣旨に従いまして努力いたしたいと思います。
  47. 矢山有作

    矢山委員 五十三年度の計画は。
  48. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 五十三年度の予算要求について、現在努力しております。(矢山委員「だから具体的に」と呼ぶ)具体的な点は、総務課長に説明させたいと思います。
  49. 加藤晴明

    加藤説明員 お答えいたします。  先ほど先生御指摘委員のことに関しましては、推薦をいただきます際に、同和問題について正しい理解を持ち、かつ情熱を傾けて働いてくださる方々を市町村の理事者の方に要請いたしますし、それから委員の研修につきましても、十分計画を立てております。さらに、人権擁護職員の研修につきましては、法務省の付属機関であります法務総合研究所の各研修コースにおいてその徹底を図りたいという趣旨でお願いしてありますし、現実に実務に当たる職員につきましては、実務研究会を各ブロックごとに企画して実施してまいりたいと考えております。  なお、委員の増並びに実費弁償金につきましては、私どもできる限りの努力をいたしまして、大蔵当局に御理解をいただきたいと考えておる次第でございます。
  50. 矢山有作

    矢山委員 当面、答申の中に指摘されておる問題は、とっくにできておらなきゃならぬ問題ですが、これができておらぬわけですから、その実現のためには全力を挙げていただくと同時に、答申の中に指摘されておりますように、人権擁護組織の抜本的な改革の問題についても十分御検討をいただきたいと思います。この抜本的な改革の問題について御意見があるとするならお伺いしたいところでありますが、時間の制約がありますから、次に移ります。  「地名総鑑」差別事件の全貌が、先ほど来御説明いただきましたように、いまなお不明であります。しかも社会的な糾弾を受けておる最中に「精密調査報告書」が市販される、こういうような状態であります。これらの状況を考えるときに、私どもは、こうしたことが再び起こらないようにするためには、やはり法的な規制措置を考える以外にはないと思うのであります。この点につきましては、御案内のように、答申の中にもうたわれておるところでございます。答申の「人権問題に関する対策」、それの基本的な方針の中にもこの法的規制の必要性というものには触れておりますし、具体的な方策の中に、(ii)として「差別に対する法的規制、差別から保護するための必要な立法措置を講じ、司法的に救済する道を拡大すること。」このことが明確に言われておるわけでありますが、今日の差別事件の実態を見て、この法的規制についてどういうふうなお考えを持っておられるか、承りたいと存じます。
  51. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 お答えいたします。  法務省におきます同和対策は、啓発活動を通じて心理的差別の解消を図るということで、先ほど申し上げたとおりでございまして、本来このような啓発は、法による強制にはなじまないものと考えております。しかしながら、御指摘の一部落地名総鑑」等、悪質な差別図書を出版、販売するという、部落差別を営利目的に悪用し、差別を拡大、助長するというような悪質な事件が発覚しましたことは、これは政府が推進しております同和行政に逆行するものでございまして、まことに遺憾であると考えます。  そこで、人権擁護の事務を担当しております私どもの立場といたしましても、このような悪質な差別行為に対しては法的規制措置が必要であると考えております。その見地から、総理府を初めといたしまして、関係各省とともに検討を続けておるのでございますが、さらに積極的に緊密な連絡をとって、この問題に対処してまいりたいと考えております。
  52. 矢山有作

    矢山委員 法的規制を考えておられるということは、まことにもっともなことだと思うわけです。しかし、その法的規制の検討が、また検討、検討ということで二年も三年も五年も六年も続いたのでは、これは何の意味もないわけでありますから、法的規制をやるということについての目途というのはどこに置かれておるか、承りたいと思います。
  53. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 私どもは、すでに具体的な検討を始めておりますので、時間は多少かかるかと思います。非常にいろいろ困難な実は問題がありますので、慎重に検討しなければなりませんけれども、それを積極的に、なるべく早くめどをつけたいと考えております。
  54. 矢山有作

    矢山委員 次の通常国会くらいに提案できるのですか。
  55. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 これは法務省だけではありませんで、関係各省との関係がございますので、次の通常国会には無理かと存じます。
  56. 矢山有作

    矢山委員 これは法的規制措置は急がなければいかぬと思うのです。私はくどいようですけれども、「部落地名総鑑」の発行者は、部落問題の状況を承知の上で発行しておるわけですよ。その販売のために配ったチラシの中にはこういうことを言っているのです。“八鹿高校事件のような暴行事件が各企業において起り得ないとは断言出来ない、”“これ等の人々の採用が果して妥当であるかどうか”と企業の就職差別感をあおり立てている。さらに“企業百年の将来のためにも誤りなきを期してゆかねばならない、”“そのためにも地名総鑑を人事調査資料に使ってほしい、”こういう呼びかけをやっておるのですよ。そうして最後に“保管極秘扱いに……”ということで、公表されることを警戒をしております。これは企業の人事担当者の抱いておる、部落出身者に対する予断と偏見を巧みに扇動し、部落出身者の就職に反対をし、解放運動に挑戦するきわめて悪質な差別であります。しかも一部三万、四万という高値でも十分に売れると考えて発行しておることは、各企業とも部落出身者の就職を敬遠しようとしておることを承知しておったということであります。人権侵害が商売として成り立ち、金もうけになるという計算の上に立った行為、これは部落出身者の労働権、生存権を否定しようとする組織的、計画的な差別事件であります。まさに社会的な犯罪だ。基本的な人権尊重の立場に立った日本国憲法の立場からしても、明らかに許されないことであります。私どもは、ただ単に法的規制をやるつもりだ、やるつもりだと言うのではなしに、いまのこの悪質な差別事件の実態を踏まえたときに、早急に法的規制をやってもらう、このことを強く要望いたしておきます。  次に質問を移しますが、この問題もかつて予算委員会で論議をされておるところでありますが、御案内のように、世界人権宣言を補完する国際人権規約というものが昨年発効いたしました。現在何カ国が一体批准をしておりますか。
  57. 小林俊二

    ○小林説明員 お答えいたします。  人権規約には、御承知のようにA規約とB規約がございますが、A規約につきましては現在四十六カ国、B規約につきましては四十四カ国が批准しております。
  58. 矢山有作

    矢山委員 わが国もこの国際人権規約の審議には参加しておりますね。そして採択に当たっては賛成をしておる。さらに一九六八年の四月二十六日から五月十三日にかけてテヘランで世界人権宣言採択二十周年を記念して開催された国際人権会議で国際人権規約の批准促進が決議をされました。このときにもわが国は賛成をしておるはずでありますが、間違いございませんね。
  59. 小林俊二

    ○小林説明員 わが国といたしましては、A規約、B規約とも、そのいずれにつきましても趣旨に全面的に賛成いたしておりますので、そうした決議にも参加したわけでございます。
  60. 矢山有作

    矢山委員 世界の先進国に属しており、サンフランシスコ平和条約前文で、世界人権宣言の目的を実現するため努力することを宣言をし、さらに基本的人権の尊重を三大原則の一つとしている憲法を持っておるわが国が、当然他国に先んじても国際人権規約を批准し、その発効を促進をこそすべきであったと思うのであります。しかるにいまだ批准をしていない。一体その批准をしていない具体的な理由は何なのか、これを明らかにしてもらいたい。
  61. 小林俊二

    ○小林説明員 外務省といたしましては、この人権規約の意味する法律上、政策上の意味につきまして詳細に分析いたしました。また、各国がこれらの条項の遵守のためにいかなる考えを持っておるか、またいかなる措置をとっておるかということについても情報を収集いたしまして、この条項にかかわります関係各省にそれぞれ通報して、検討を求めてまいったのでございますが、この条項はきわめて多岐にわたっておりまして、これを厳格に解釈するならば、きわめて広範なインパクトをもたらすということになるわけでございまして、その検討につきまして今日まで時間が長くかかったということでございます。  実はこのA規約、B規約とも、発効いたしましたのは、署名後十年を経ました昨年の初めのことでございまして、そうした問題が多かったために、各国ともそれぞれにこうした経緯をもたらしたことと存じます。もちろんこうしたA規約、B規約とも、条項によりましては、それぞれ留保をすることが可能でございます。したがいまして、都合の悪いところをすべて留保すれば、これはいますぐにでも規約に加盟ないし批准できるのでございますけれども、私どもといたしましては、留保を少しでも少なくしたいと考えておりまして、そのために関係省庁との折衝に手間取っておるという現況でございます。
  62. 矢山有作

    矢山委員 採択されて十年、諸外国も賛成をした以上は批准をするのが国際信義に沿う道だということで十年間検討してきた。そしてただいまあなたが御指摘をされたように、A規約については四十六カ国、B規約については四十四カ国の批准を見たわけです。わが国も十年間ぼんやりしておったのじゃないと思う。賛成した以上は批准をしようという努力をされたと思う。十年という歳月は、十年一昔という言葉がありますが、短いものではない。長期にわたって検討をした結果、一体国内法のどことどことどこが問題なのか、具体的にもう詰まっておるはずですから、それを明らかにしてもらいたい。
  63. 小林俊二

    ○小林説明員 問題となる条項はいろいろございますけれども、たとえば高等教育を無償化すべきであるといったような規定がA規約にはございます。(矢山委員「義務教育だろう」と呼ぶ)それは初等教育でございます。高等教育も義務化すべきであるといったような条項もございます。また、外国人に対しても初等教育を義務化すべきである、あるいは無償化すべきであるといったような規定もございます。あるいは社会保障について内外人を平等に取り扱わなければならないといったような意味の条項もございます。これがA規約の諸条項でございます。またストライキ権につきましても、その範囲について若干の問題がございます。  それからB規約につきましては、戦争宣伝あるいは差別の扇動等を法律をもって禁止しなければならないといったような条項もございます。先ほど差別に関する法律的な規制ということが先生からも御指摘がございましたけれども、その点がもし一歩前進すれば、その点に関する限りはB規約ものみやすくなるということが言えると思います。そのB規約の第二十条でございますが、その規定はさらに広範でございまして、差別以外にもいろいろな問題が掲記されております。そうした問題についても法律で禁止しなければならないといったような義務を課しておるわけでございまして、こうしたことは結局、表現あるいは出版あるいは言論の自由に結びつく非常に重大な問題でございますので、そうした自由との兼ね合いをいかに解釈し、いかに処理するかといったような困難な問題もあるわけでございます。
  64. 矢山有作

    矢山委員 先ほど、無償初等義務教育の問題や社会保障の問題を言われましたが、こういった問題は、近代国家においては進んで内外人平等に扱っていいのではないか。それが現在の世界の流れでしょう。無償初等義務教育についての問題、これは何も外国人だから日本の学校で学ばしてはいけないということはないでしょう。学びたいという者は学ばせればいい。社会保障にしたところで、たとえば国民健康保険で言うなら、すでに加入を認めている例もある。そうすれば、社会保障についてはむしろこれを前向きにとらえていく、これがいま近代的な国家のあり方です。そういう点から言うなら、いま言われたようなA規約に類する問題というのは、そんな大きな問題はないはずなのだ。  B規約の問題で戦争宣伝の問題でありますが、戦争をやれやれという宣伝が、日本国憲法の立場からとらえた場合に正しいのか正しくないのかということは、おのずから明らかじゃありませんか。日本国憲法は平和憲法です。戦争を否定しておる。そうするならば、戦争をやろうという宣伝を禁止するのがどこが悪いのですか。人の生存権を脅かすような差別をやることを禁止するのがどこが悪いのですか。そんなものがB規約に抵触するからいかぬということにはならぬはずであります。
  65. 小林俊二

    ○小林説明員 御指摘の点は、私どもとしてはよくわかるのでございますけれども、しかしながら、問題は、それを法律をもって禁止するかどうかという問題でございます。先ほども法務省の方から御回答がございましたように、それは法律ではなくて、社会的な信義的な全体としての雰囲気と申しますか、そうした観点から規制していくのが正しい道であるといったような考えもあるというお答えでございました。そうしたことは戦争についても同じだと思います。もちろん戦争を扇動するという行為が非難されるべきことは言うまでもございませんけれども、それはまた言論の自由と一方において結びつく問題でございますので、それを法律をもって禁止するということが正しいかどうかということは、また別の政策的観点があるかと存じます。  また、いかなる点において法律的禁止と言えるかどうかという問題もございます。たとえば日本国憲法はもちろん戦争を否定しております。それをもって法律的禁止と言うことができるのかどうかという問題もあると思います。たとえばそれとは別に、新しい特別の立法をもって戦争を扇動するような言論に対して罰則をもって禁止しなくてはならないといったような解釈も存在し得るわけでございまして、そこまでまいりますと、問題は先ほどの言論、出版あるいは表現の自由といった問題との兼ね合いを慎重に検討しなければならないということになると思います。
  66. 矢山有作

    矢山委員 法務省人権擁護局長が言ったのは、なるほど差別をなくするのには啓発、啓蒙、宣伝が必要なんだということは言ったわけだ。ところが言論の自由といえども、人の生存を脅かすような差別文書を出すことが言論の自由の名のもとにおいて許されますか。あなた方は知らないだろうけれども、部落の人たちにとっては、差別をされることによって就職ができなくなる、結婚ができなくなる、自殺をする人間が一年に二人や三人出るのですよ。人の生存権を脅かすような、そういう言論が許されていいわけはない。だから人権擁護局長は、その点については最小限度の法的規制は考えなければならぬと言っているわけでしょう。あなた一体何を聞いておったのだ。戦争の問題でも同じですよ。日本国憲法は戦争を否定しておる。戦争をことさらあおり上げるような、それを商売にするようなことを許していいのかね。  そういうふうに考えていくなら、あなたがいま挙げられた問題というのは、必ずしもこのA、Bの規約を批准できないという決定的な理由にはならぬということを私は言いたいのです。しかも、あなた自身が言ったように、A、B規約を批准するに当たって、国内の現状からしてまだそこまでいってないという時点においては留保が認められておるわけでしょう。そうするなら、まずわが国がやるべきことは、留保すべきものは留保をして、人権規約はこれを批准をして、そうして将来の方向として残された、留保された問題点の解明に努めていくという、これが人権規約の採択に賛成して十年になる、しかも日本国憲法のもとにおける日本の国際信義を貫く道じゃないのか、このことを私は言いたいのです。
  67. 小林俊二

    ○小林説明員 ただいま私から申し上げました各条項の問題点は、これを外務省の主管事項と申すことができるのかどうか若干疑問もございますので、私は少し答弁において範囲を逸脱したのかも存じません。しかし、全体的な方向といたしましては、私どもとしては、なるべく留保を少なくして一刻も早くこれを批准したいという気持ちを持っております。実は外務省の主管事項といったようなことは、この条約A、B両規約ともそれぞれ存在しないのでございまして、私どもとしてできることは、先ほど申しましたように、海外における解釈、状況、あるいは国内におけるこれを適用した場合の意味、そうしたことについて関係各省に御説明申し上げて御検討を御依頼申し上げるということでございます。こうした作業は、私どもとしてはあらゆる力を尽くして今日までやってまいったわけでございますし、今後ともそういう努力を続けるつもりでございますので、先生のおっしゃられる御趣旨は、私どもとしても十分理解申し上げることができると申し上げることができると思います。
  68. 矢山有作

    矢山委員 これまでの質疑において、外務大臣もこの批准については相当積極的に考えておられるようでありますし、あなたも積極的に考えるということであります。私は特にここにおられる各省の方に申し上げておきたい。特に法務省の方あるいは厚生省の方——厚生省はここにおりませんが、そういう人たちは国際人権規約というものの持つ意味を考えて、やはり積極的に外務省の批准の方向に協力する努力をしなければいかぬと思う。きょう出席しておられる閣僚は藤田総理府総務長官一人でありますから、藤田総理府総務長官も、この国際人権規約をめぐる論議を踏まえながら早期批准の方向に向けて努力をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  69. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃいますように、国際人権規約の批准につきましては、何ら異存がないところでございますが、ただいま外務省が申し上げましたような若干国内法の点でひっかかる点がある、その辺の調整をいたさねばならぬということでございますので、この趣旨には問題がございませんので、早期批准という方向で国内法との調整を行っていきたい、かように考えます。
  70. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 国際人権規約の批准につきましては、人権擁護局といたしましては、これは早期に批准すべきであるという方針をずっと堅持してまいっております。ただ、法務省の所管といたしまして、刑事局の所管事項それから入国管理局の所管事項に若干検討すべき問題点がありましたので、法務省全体としての意見がおくれたのでございますけれども、結局、検討の結果全く問題がない、A、B規約を批准するにつきまして問題がないという結論に達しましたので、過日その旨を外務当局に連絡してあると聞いております。
  71. 矢山有作

    矢山委員 そうすると外務省、法務省の方は——私は法務省が一番ネックになっておると思っておった。そのネックになっておる法務省がこの人権規約の批准にきわめて前向きの答弁をした。そうすると、これは一体あなたどうなる。そうすると、あとは厚生省の問題だけだ、主な問題は。厚生省の問題にしても、先ほど指摘したように、これは改善できる問題なんですよ。外務省の方がちょっと腰が抜けたのじゃないの。一体どうなっておるのですか。
  72. 小林俊二

    ○小林説明員 法務省の方は全く問題がないという包括的な御答弁でございましたので、私、もしそれが事実であるとすれば非常にやりやすくなると思います。私が、あるいは何か連絡が悪いのかも存じませんけれども、そういうふうには聞いておりませんでしたので、もしそうであればまことに結構でございますが、その他の問題といたしましては、A規約につきましてはストライキ権の問題、特に三公社五現業のストライキ権の問題であるとか、先ほどの高等教育、たとえば初等教育にいたしましても、外国人に初等教育を義務とすることが適当であるかどうか、義務と申しますのは、それに違反した場合に罰則を適用するということでございますから、日本に滞在しております外国人に、その子弟を教育委員会の認める学校へ通わせなかった場合に罰則をもってこれに臨むのが適当なことなのかどうかという問題もあるように聞いております。したがいまして、そうした問題点がございますけれども、法務省がそういう前向きな態度でございますとあれば、私どもとしてはやりやすくなる点が多いと思いますので、さらに検討を進めたいと存じます。
  73. 矢山有作

    矢山委員 外務省、無償初等義務教育の問題についても、あなたそんなに心配要らないのだよ。たとえばいままで障害児を日本の文部省はどう扱ってきた。障害児に対して積極的に教育をしなければいかぬ義務が国家にはある。ところが、その障害児なるがゆえに就学猶予、免除の制度というのをわざわざこしらえておったのだよ。だからそんなことは、外国人に初等教育を義務づけて、それに従わなければ罰則云々というような問題は、法的に解決のつく問題だと私は言うのです。だからもっと積極的に本気で取り組みなさい。法務省の方がよっぽどいい答弁をしておるじゃないですか。主客逆転だよ、それは。わかりましたか。  それじゃ次に、「地名総鑑」の購入企業が多数に上っていることによって企業の根強い差別性が明らかになっておるのでありますが、労働省は今日までこの差別意識に根差す就職差別をなくすために一体何をやってきたのか、承りたいのであります。
  74. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 同和地区の方々の就職の機会均等を確保する、これが同和問題の中心的課題であるということが同対審で指摘されておるところでございます。私ども労働省といたしましては、この同和地区の方々の就職の機会均等を確保するという観点から、まず第一点は、新しく就職される同和地区の方々に対して、必要な就職前の指導、あるいは必要な技能の付与という面の対策と同時に、あわせて、何と申しましても採用する企業側に対して、同和問題について正しい理解と認識を持って、採用に当たっての差別を一切させない、こういう観点からの指導、啓蒙を行ってきたわけでございます。そういう意味で、私ども特に安定行政の立場から雇用主研修会を延べ三十五万事業所に実施してきたところでございます。しかし残念ながら、先ほどから御指摘のございましたような「地名総鑑」というきわめて悪質な差別事件が起きているという現状にかんがみまして、特に本年度から雇用主に対する指導、啓蒙というものをさらに強化したいということで、企業内同和問題研修推進員制度というものを発足するように現在検討をしているところでございます。  いずれにいたしましても、私ども今後とも同対審の趣旨に沿った対策というものを強化してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  75. 矢山有作

    矢山委員 いまのお話を聞いて、労働省がやってきた企業に対する就職差別をしないようにという啓蒙活動というものは、余り効果がなかったどころではない、さっぱり効果がなかったということが、今度の「地名総鑑」差別事件で明らかになったわけであります。そして今後の対策として、いま企業内の同和問題研修推進員制度をつくるということが一つの案として、これは新しい試みなんですか、浮かんできたわけなんでありますが、この研修推進員制度をつくって、一体これは具体的に何をやらそうというのですか。
  76. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 主要企業に対しまして、この研修推進員制度を置かせようということでございますが、その趣旨は、まず第一点は、この研修推進員制度の対象者を、その企業の中において人事問題についての一定の権限を有する人を対象といたしたいというふうに考えておるわけでございます。その人たちに対して、行政の立場から同和問題についての啓蒙活動、すなわち研修を実施いたしながら、企業における採用、選考に当たっての差別的なシステムを排除していきたいということが第一点でございます。と同時に、あわせて企業の中における同和問題についての研修を深めさせる、そういう活動をお願いしたいというふうに考えておるところでございます。
  77. 矢山有作

    矢山委員 そういうような推進員制度もいいだろうし、それから先ほど来いろいろ言われておる啓蒙、宣伝活動もきわめて重要なことでありますから、どんどんやらなければなりません。しかしながら、私は、現在の「地名総鑑」に見られるような状態を見ておるときに、精神的なものだけではこの就職差別というものはなかなかなくならぬのじゃないか、こういう気がしてならぬのです。そこで、私はやはり就職差別の禁止ということを法的にやるということを考えなければならぬのではないかという気がしておるわけです。そのことは何も私のひとり考えではないので、これは御存じの同対審の答申の中にも、先ほども読み上げましたが、「差別に対する法的規制、差別から保護するための必要な立法措置を講じ、司法的に救済する道を拡大すること。」こう言われておるのでありますから、私は、就職、採用時における差別扱いを禁止するという法制というものも、答申の中ではうたわれておる問題である、こういうふうに考えておるわけであります。したがって、そういうような法的な措置をとるという気持ちがあるのかないのか、このことをまずお伺いいたしたいと存じます。
  78. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 先生御承知のように、職業安定法におきましては、職安で職業紹介に当たりまして人種、信条、性別等による労働能力と関係のない要素を理由とする差別的取り扱いをしてはならないこととされております。そういうことで、現に安定機関におきましては、求職者の希望や能力に応じて、この法律の趣旨にのっとり、職業紹介を行っているところでございます。また、就職時の差別事案につきましては、従来から人の採用については、その能力、適性をもとに選考が行われることが基本でなければならず、そういう意味から、たとえば出身地や家庭環境等、本人の能力以外の要素により選考が行われることがないよう、統一応募書類の使用の徹底、履歴書用紙の改正事業主に対する啓蒙、指導等をきめ細かく実施しておるところでございます。  お尋ねの法律の点につきましては、私どもとしては、こういう行政措置の積み重ねの中で、能力をもとにした人の採用について事業主の理解を促進していくということで対処したいと考えております。
  79. 矢山有作

    矢山委員 職安法の第三条というのは、職業紹介のときの問題ですから、これをもとにして実際に採用側の差別をとめるということは、なかなか法的には効果はないと思うのです。先ほどおっしゃったようなことで就職差別がなくなっておるなら、今日こういう問題は起こらないのです。あなた方は、この「同和対策の現況」を読まれましたか。この中を見ても、どれだけ部落の人たちが就職差別を受けて就職できない状態になっておるかということが詳しく書かれておるはずであります。そうすると、この段階で必要なのは、答申も言っておるように、就職時における差別を禁止するための法的な措置というものを何としても考える必要があると思うのです。  ところが、この問題は、国際的にはすでに一足先に進んでおるのではないですか。一九五八年に採択されましたILO第百十一号条約によりますと、御存じのように、この条約は雇用及び職業についての差別待遇に関する条約であります。これは採択以来すでに二十年になっております。国際的には、就職差別の除去というものが、こういう形で法的な効果を持つものとしてつくり上げられておる。私は、国内においてもこれに対応したような措置が考えられるべきであると思う。そこで、ILO第百十一号条約をいまだにわが国は批准していないわけでありますが、批准していないその理由は何なのか、私はこの問題を先にお伺いしたいと思います。
  80. 石田均

    ○石田説明員 お答えいたします。  ILO条約につきましては、先生御案内のとおり、昭和二十八年であったと存じますが、閣議決定がございまして、国内法と十分調整して、国内法と矛盾しないように法令を整備した上で批准する、こういう基本的な方針をとっておるわけでございます。  そこで、この条約の内容でございますが、先ほど先生おっしゃいましたように、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身または社会的出身を理由として雇用すること、あるいは雇用した後の労働条件等に関して差別待遇を行うことをなくしていく、こういう趣旨の条約でございます。  その第三条でございますが、この条約を批准した加盟国は、こういった方針の承認及び遵守を確保するに適当とされる法令を制定する、中身はどういうものであるかは別といたしまして、こういうことを義務づけておるわけでございます。  そこで、現在わが国の法制がいかがなっておるかと申しますと、労働基準法におきましては、労働者の国籍、信条、または社会的身分を理由として、労働条件一般につきまして差別扱いをしてはいけない、あるいは性別によりまして賃金の差別扱いをしてはいけない、こういう規定はございます。しかし、それだけでございまして、いま条約で掲げておるというふうに申し上げましたいろいろな差別待遇につきましては、法律上の規定がございません。雇用されること自体につきまして、先ほど労働省の業務指導課長から申し上げましたように、職業安定機関の行う職業紹介等の業務については均等待遇を確保するというふうな規定がございますけれども、それ以外には規定がございませんし、この条約におきまして職業上の問題として職業訓練も取り上げられておるわけでございますけれども、職業訓練についてもこの種の規定がないわけでございます。こういったことは、もちろん差別をしてもいいのだという思想では全くございませんで、法律上そこまで現在いけないということで言っておるわけでございますけれども、どの程度の内容の法令をつくりますれば、いま申し上げました、この条約で申しております方針の承認と遵守を確保するに適当であるかといったような問題と絡んできておりまして、慎重に検討しなければならない、そういうことで批准がおくれておるということでございます。
  81. 矢山有作

    矢山委員 日本政府は、この第百十一号条約に賛成していますね。賛成している以上は、政府としては、雇用及び職業についての差別待遇を容認するという立場じゃないのでしょう。雇用及び職業についての差別待遇には反対であるから、政府はこの条約に賛成したわけですね。そうなんでしょう。
  82. 石田均

    ○石田説明員 ただいま御指摘の点につきましては、おっしゃったとおりでございます。政府は賛成をいたしております。これは非常に理屈っぽいことを申し上げて恐縮でございますけれども、ILOの条約というものは多数の国の間の条約でございます。したがいまして、賛成、反対の態度を表明いたします場合に、これはいろいろと問題があるわけでございますが、国際的な基準としてなじまない、あるいは日本国の法制として致命的な欠陥があってというふうなことがある場合がありますけれども、原則的には、国際的な基準としてふさわしいかふさわしくないかということが、その条約に賛成するか、棄権するか、反対するかという場合の重要な基準になろうかと存じます。  もし仮に、国内法に若干でも抵触するのであれば加盟各国が全部反対ないし棄権をするという態度をとりますと、国際的な基準というものは生まれようがないわけでございます。そういうことがございまして、私どもとしては当時いろいろ検討いたしまして賛成いたしておるわけでございますが、国内法との抵触関係というものは若干の問題が出てくる。日本の場合には、先生御案内のように、条約を非常に誠実に守るという立場でいっておりますので、条約を批准した後におきまして、条約に違反しておるというようなことは絶対に言われたくない、こういうこともございまして、勢い慎重にならざるを得ない、こういうことでございます。いろいろ厄介なことがあるということで御理解賜りたいと存じます。
  83. 矢山有作

    矢山委員 国際的基準として、これは日本政府は賛成したわけですよ。そして賛成をしたら、いま直ちに国内法が現実に整備されておらなくても私は批准をしていいと思う。それは第二条にこんなことを言っているでしょう。「この条約の適用を受ける加盟国は、雇用及び職業についての差別待遇を除去するために、国内の事情及び慣行に適した方法により雇用又は職業についての機会及び待遇の均等を促進することを目的とする国家の方針を明らかにし、かつ、これに従うことを約束する。」となっておる。この文意から推察すれば、いま現在においてすべてこの条約の基準を満たしておる必要はない。将来の方向として国が基本的な方針を立てた上で批准をするということは、私は差し支えないと思うのです。むしろ、この条約の採択に賛成した以上は、これを批准して、そして批准の上に立ってこの条約の趣旨に沿うように国内法を整備していったらいい。あなた方は、国内法をまず整備しなければ批准ができないのだ、こういうふうに考えている。私どもは、まず、国際条約に賛成した以上は、賛成をしたという立場をとって批准をすべきだ。批准をして、そして国内法の整備を進めていけばいい。その方が問題が早く進むのですよ。全部が満足されるまで批准をしないという形をとると、十年たっても、二十年たっても、三十年たっても国内法は整備できぬから批准しません、こう言うのだ。批准を先にする。そうすれば、国内法の整備を何としてもしなければならぬ、国際信義の上から言っても。だから批准をするということの方が先行すべきだ、私はそう考えるが、どうなのですか。
  84. 石田均

    ○石田説明員 お答えいたします。  先生のおっしゃる、批准をしてから国内法を整備すべきだというお考え方は、それなりに一つの御見解であると存じます。  ただ、大変残念でございますけれども、たしか昭和二十八年と記憶いたしておりますけれども、政府では閣議決定がございまして、ほかの条約についてはそういうことになっておるかどうか存じませんが、ILO条約に関しましては、国内法を整備した上で批准をするという政府の方針が立てられておりまして、その後ずっとその方針が貫かれております。したがいまして、先生のおっしゃいます御意見が全く理解できないわけではございませんが、政府としては従来そういう方針で来ておりますし、その方針変更については大変重要な問題でございますので、私といたしまして、いまその方針を変更すべきであるとかなんとかということを申し上げる状態ではないということを御理解いただきたいと存じます。
  85. 矢山有作

    矢山委員 そこで、藤田総理府総務長官、あなたは閣僚の一人なので、二十八年の閣議決定によってただいま御説明のようなことになっておるのでいかんともしがたいということなんですが、あなたはILOのこの条約批准について主管庁ではないとしても、いまの議論を踏まえながら、閣議の中にILO百十一号の条約批准の問題を持ち出してみる気はありますか、ありませんか。
  86. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいまの矢山先生のおっしゃることは確かに一つの行き方でありますし、見解でありますから、これを閣議の中に話題として私の方から持ち出そうと思います。
  87. 矢山有作

    矢山委員 総理府総務長官、ひとつこのILO百十一号条約については全力を挙げて、閣議の中で持ち出して、早期批准に御努力いただきたいと思います。あなたの御理解に敬意を表しておきたいと思います。  そこで、このILO条約を踏まえて、いわゆる雇用及び職業についての差別待遇をやってはいかぬ、こういう国際的な基準があるわけですから、わが国はそれに批准をしてないまでも賛成をしておるのだから、先ほど来議論をしておる、わが国内における部落差別における現在の実態を考えた場合に、私は就職差別を禁止していく最小限度の立法措置というものを考えてみるべきではないかと思う。一切そういうことはやらぬと言うのでは、私はきわめて不満なのでありますが、そういった立法について今後検討してみようという気持ちが労働省にはおありなのか、おありでないのか。その点を重ねてお伺いをいたしたいと存じます。
  88. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 就職差別の禁止の立法措置につきましては、そもそも差別事案の認定につきましてはいろいろ困難な問題が伴いますし、立法技術的にむずかしい点などもございましていろいろ問題はございますが、先生の御趣旨もよくわかりましたので、今後とも慎重に検討してまいりたいと存じます。
  89. 矢山有作

    矢山委員 この就職差別の禁止の法制をやる上においてむずかしいと言われておる理由の一つとして、私が漏れ聞いておるところによりますと、契約自由であるとか、営業自由であるとか、こういった問題が持ち出されておるように聞いております。しかし、契約の自由、営業の自由という問題は、人の生存権が確保されて、初めて成り立つ問題であります。差別によって人が命を失われるような厳しい部落差別の実態がある中で、ただ単に契約の自由、営業の自由という立場からだけでこの就職差別を禁止することができないのだという論法にはならぬということを私は考えております。この点、労働省はどうお考えですか。
  90. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 先生のお説の趣旨も十分踏まえまして検討させていただきたいと存じます。
  91. 矢山有作

    矢山委員 最後にもう一点お聞きしておきたいのでありますが、総理府は、五十四年三月三十一日をもって部落問題が一切解決するというふうにお考えですか。
  92. 藤田正明

    藤田国務大臣 特別措置のことをおっしゃっていると思いますが、残事業は相当量残っておる、かように考えております。
  93. 矢山有作

    矢山委員 そこで、残事業も相当量残っておるということももちろんでありますが、きょうの議論の中心にいたしました「地名総鑑」に見られるような非常に差別の悪質化の傾向が見られておるときであります。私は、ただ単に残事業がもう五千億何がしあるから云々ということだけでなしに、いまの部落差別の悪質化、そして部落差別事件の増加の傾向を見るときに、何としてもこれを解決していくためには、現在の特別措置法が五十四年三月三十一日で切れてしまう、後はもう知らぬということでは、この部落問題の解決に政府が真剣に取り組んでおる、答申の趣旨に沿って国の責務として部落解放の問題に取り組んでおるということは言えないと思うのです。  そこで、私どもは、この特別措置法の内容を、いままでの経験に照らして、不足しておるところを補充し、強化をして、さらに適当な期間延長すべきであるというふうに考えておるわけでありますが、総理府総務長官の御見解を承りたいと存じます。
  94. 藤田正明

    藤田国務大臣 ただいま五十二年十一月でございます。そして、この特別措置法が切れるのが五十四年三月末日でございます。まだまだ時間的な余裕は十分に残されておると思います。この特別措置法の制定の由来も、先生すでに御承知のとおりだと思います。審議会ができ、協議会ができ、そうして四党協議会というものが昭和四十三年に結成をされました。その四党協議会というのは、自民党、社会党、公明党、民社党、この四党でございますが、この四党協議会において、現在のような特別措置法の立法趣旨といいますか、立法というものが作成をされたわけでございまして、形は政府提案になっておりますが、実質的には四党共同提案というふうな形でつくられたことは御承知のとおりだと思います。  そういうふうな経緯から考えまして、この立法は五十四年三月末日で一応期限切れとなるわけでございますけれども、まだその間には相当な期間がございますから、どうぞひとつ各党でいろいろと御審議、御相談をいただきたい、かように思う次第でございます。
  95. 矢山有作

    矢山委員 総務長官は、特別措置法立法のときの経過を非常に重要視して物をお考えになっておるようでありますが、しかしながら、なるほど立法の経過はそういうあなたのおっしゃるような経過であるにしても、法律そのものは政府提案の法律なんですね。そして、政府が提案をして国会を通過したその法律のもとで十年間部落問題に取り組んできた。ところが、十年間たっても部落問題についての解決ができなかった、この責任は一にかかって政府にあるわけでしょう。であるとするなら、その責任のある政府がこの部落問題の解決のためにどうするかという方針をまず第一次的に決めなければならぬ責任がある。そうじゃないのですか。そうでなくて、立法の経過がそれぞれ党が相談してやったのだから、またそれぞれ相談してやってくれ、相談がまとまったらおれの方は受けようというのは、およそ主客転倒の議論です。どうなんです。
  96. 藤田正明

    藤田国務大臣 私が申し上げておるのは、まだまだ期間がございます。五十四年三月末日でこれは期限が切れるわけでございますから、期間もございますし、これはいろいろ議論を尽くさなければならぬと思います。御承知と思いますが、五十年に残事業を計算したときに一兆二千億何がしがございました。これは五十年から五十三年まで四カ年の間にどれだけ消化をされたかという問題もございます。その五十三年度の予算につきましても、現在は概算予算の請求中でございまして、予算も決まっておりません。ですから、どれくらい残事業があるかということは、相当量ということは申し上げましたが、金額的にはまだ申し上げられませんし、また一兆二千億の五十年度のときの計算もインフレ率とかその他を掛ければどういうことに相なるのか、こういうふうな計算もまだできておりません。そういうことも踏んまえて、まだ時間のあることですから、われわれとしても、政府としてもいまの同対協ともよく相談もいたしますし、また地方官庁ともよく相談もいたします。われわれはわれわれなりに研究もいたしますけれども、こういう法律の作成の経過もありますから各党もひとつ御協議を願えればと。われわれはほっておいて各政党間の話し合いを待とうという意味だけではございません。われわれとしても十分に検討してまいります。同時に各政党間においても相談をしていただければ幸せである、かように申し上げている次第でございます。
  97. 矢山有作

    矢山委員 日にちは忘れましたが、ごく最近、私は総理府の秋山副長官ですか、あの方と解放同盟の皆さんとお会いしたときに、副長官の方からは今後の段取りについて、ある程度具体的な話が出たわけであります。私は、それがあたりまえだと思うのです。なるほど期間はある、あると言いながら、五十四年の三月三十一日をもって切れるのですから。そうすると、あなたがおっしゃるように、たとえば残事業一つを取り上げても非常にたくさんの問題がある。ところが、その事業だけでは問題が片づかないということが今度の「地名総鑑」事件で明確になってきた。そうすると、総合的なきわめて強力な対策が今後必要とされるということが明らかになっておるわけです。そういう状態の中で特別措置法をどうするかという議論をするためには、五十四年三月三十一日というのは、そんなにたっぷりと余裕のある期間ではないと私は思うのです。したがって、少なくとも通常国会においては、この特別措置法をどうするかというめどはつけなければならぬ。めどをつけるとするなら、あなた方の方で具体的にどういうふうな処理をやっていきたいということぐらいは考えておかれぬと問題が進まぬのではないか、こう思うのです。そこで私はお伺いしたわけです。
  98. 藤田正明

    藤田国務大臣 おっしゃるように、この次の通常国会の末ぐらいまでには方針を固めていかなければならぬと思います。ですから、五十四年の三月末に切れるということであって、実際には次の通常国会といいますと、五月、六月が通常国会の切れるところでございましょうけれども、それまでには方針ははっきりしなければならぬ、これはそのように思います。期間があるということは、それまでの期間のことを申し上げておる次第でございますし、それからまた、同対協にも十分にわれわれといたしましては相談をいたすつもりでございます。そして、その意見も尊重いたしてまいりますし、地方公共団体の意見も十分尊重いたしてまいりたい。いろいろ地方公共団体の方から陳情書が参っております。そういうことも十分加味して方針はつくっていこう、こういう考え方でございます。
  99. 矢山有作

    矢山委員 これで私の部落解放対策に関する問題の質疑を終えるわけでありますが、私は、きょうの質疑を通じて、やはりこの部落問題への取り組みというものが政府の姿勢としていまだ十分ではないということを御答弁の中から痛感をさせられたわけであります。答申にも言っておりますように、あるいは特別法にも言っておりますように、部落解放の問題というのは国民的課題であります。また、国の責務であります。したがって、このことを踏まえて、今後特別措置法の強化延長の問題を含め、政府が総力を挙げてこの問題の解決に取り組んでいただきたい。そして、当面は「地名総鑑」をめぐる問題、さらに「同和地区精密調査報告書」をめぐる問題の真相究明をぜひともお願いをいたしたい。そして、さらにそれらの問題とあわせて、国際人権規約なりILO第百十一号条約の批准の問題についても真剣に取り組んでいき、そしてわが国が国際的に約束をしたことはこれを必ず果たす。そして、しかもわが国は新しい憲法のもとに基本的人権の尊重というのが三大原則の一つになっておるわけでありますから、それにふさわしいような法整備をやっていただきたい、このことを特に申し上げておきたいと思うのであります。特にその中で、法整備ということを言う以上は、部落差別をなくするための法整備がきわめて重要であるということはすでに申し上げたとおりであります。  これで私の質問を終わります。(拍手)
  100. 正示啓次郎

    ○正示委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  101. 正示啓次郎

    ○正示委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新井彬之君。
  102. 新井彬之

    ○新井委員 私は、ただいま提案されております給与三法について質問をさせていただきます。  本年の民間、三公社五現業における給与改定はすでに終わっておるわけでございますが、当委員会におきまして附帯決議がつけられている問題について、初めにお伺いをいたしたいと思います。  その中で、公務員給与の早期実施についてのことが附帯決議についておるわけでございますが、早期支給のための制度的改善に関する政府及び人事院の検討状況はどのようになっておるのか、まず初めにお伺いいたしたいと思います。
  103. 藤田正明

    藤田国務大臣 給与の早期支給の問題につきましては、四十九年から附帯決議でずっと言われておることでございまして、われわれ総理府当局といたしましても、常に留意をいたしておるところでございます。改定給与の早期実施に努めますのには、制度的な改善も必要ではないかというふうなこともございまして、三つ、四つの制度的な改善の方法も実はこの委員会の席上で申し上げたこともございますが、いずれもいろいろな難点がございまして、どうもうまくいかないなというような点もございますので、その点もいい知恵があれば教えていただきたい、かように思っておる次第でございますが、早期支給の実施につきましては、極力今後とも努めてまいるつもりでございます。
  104. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人事院勧告の早期実施につきましては、国会、各方面でもいろいろ御論議をいただいておるところでございます。人事院といたしましても、もとより勧告をいたした上からはこれを早期に実施していただくということが一番望ましい姿でございますので、その方向で従来からも政府並びに国会にもお願いを申し上げておるところでございます。  ただ、これを実現いたします方法といたしましては、ただいま総務長官からもお話がございましたように、いろいろ御検討いただいておるわけでございますが、やはりそれぞれに利害得失、難点というものもあるわけでございまして、しょせん、給与と申しましてもこれは法律事項ということでございますので、それとの関連でやはりどうしても制約というものがそこに出てくることは当然のことでございます。したがいまして、いろいろな点でわれわれとしても検討をいたしておりますし、また、政府においても御検討いただいておるわけでございますけれども、それぞれの問題点で大変深いところに問題が伏在をしておるという点もございます。それを突破して早期実現に持っていくにはどうしたらいいかということがございますが、何と申しましても国会でもって御議決をいただく、それを早くやっていただくということが一番の捷径であるというふうに考えておる次第でございます。  しかし、何分にいたしましても、公務員の場合は四月にさかのぼってやるということでございますけれども、勧告自体はやはり八月になっておりまして、今度の場合は、政府関係においても大変御努力をいただきました結果、例年にない早い時期に法律案として御提出をいただいたということに相なっておるわけでございます。われわれといたしましても、こういう御努力に対しては多といたしますとともに、なおさらに早期実施ということが可能な方法がないものかということにつきましては今後とも十分に検討を加えさせていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  105. 新井彬之

    ○新井委員 四月一日にさかのぼって支給されるわけでございますけれども、よしんば、この法律案が今回の国会を通りますと、十二月分から支給されるというようなことになろうかと思うわけでございますが、これが四月一日から支給されたのと十二月から支給されたのでは金額的にはどの程度の影響があるのか、人員的にはどの程度の方に影響があると思いますか。  これはたとえて言いますと、現在非常に不況だということが言われておるわけですね。そしてこの不況の克服のためには減税もしなければいかぬ、あるいはもっと消費を拡大するためにはいろいろな施策をやらなければいかぬということが言われておるわけですね。したがって、そういうような一つの観点からの返事がいただきたいことと、一体このことによって公務員の方々はどのぐらいのプラスがある、損があるというふうに総理府並びに人事院は判断をされておるのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  106. 秋富公正

    秋富政府委員 勧告は八月九日に出たわけでございますが、施行は四月一日にさかのぼってでございます。先ほど人事院総裁もお答えになりましたように、政府といたしましては、八月九日に人事院勧告をいただきまして、九月九日に完全実施の閣議決定をいたしまして、会期早々の十月七日に国会に提出したということは、いままでの中で一番早いグループと考えることができるわけでございます。  いま、どういう効果があるかということでございますが、今度の場合、俸給表の改定は平均いたしますと七・一%の改定でございますが、これをもし四月にできる、あるいは六月段階でいきますと夏のボーナスにおきましても直ちにはね返ってくるわけでございますが、そういったものがすべてこの国会で成立させていただきましてさかのぼるわけでございますので、それだけ、正確に申しますと金利と申しますか、それからこれがまたひいては地方公務員にも影響いたしますので、消費の喚起あるいは経済の購買力といった問題にも影響はいろいろと出てくると思いますので、一刻も早く成立させていただきたいと考えておるものでございます。
  107. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答えいたします。  四月一日にさかのぼって支給するのと、それからたとえば十二月からということになるのと金額的にどのくらい違うかということでありますれば、差額の面積計算ということに相なると思います。ベースアップにつきまして一カ月ざっと計算いたしまして一万二千円、そんなものでございます。それで期末・勤勉手当六月、十二月、こういうふうにございます。通算いたしますと、これでざっと十カ月分、こういうことになります。そういうことにいたしますと、全体で一万二千円の十倍、一人当たり大体十二万円、非常に大まかに申しまして、こういうことになります。さかのぼりますれば、それが一時に後になって出るわけでございますが、その支払いがおくれるかどうかというような関係に相なると思っております。
  108. 新井彬之

    ○新井委員 これは地方公務員の方々も、国会でこの法が通って、国家公務員に合わしているところがたくさんございますね。したがいまして、国家公務員の方だけに与えるのではなくて、非常に多くの方々に影響を与えているのではないかというぐあいに考えているわけでございます。これは政府機関、現業、非現業あるいはまた自衛隊の方、それから地方公務員、地方公営企業職員、こういういろいろな方を全部計算いたしますと六百万人くらいが影響されてくるのではないか、金額にすると約八千七百億円の影響があるのではないかという試算ができるわけであります。したがいまして、よしんば四月一日からの分について、おくれた分には金利をつけましょう、これは三百万円まで無税の優遇の利子をつけて、五・七五%ですか、そういうような形にしたとしましても、これはやはり公務員の方にとっては大きなマイナスではないか、やはりいただけるものは、本来は四月一日からいただけるというのが本筋のはずでございます。それでなければ何もこんなもとに戻って四月一日から支給をしなさいとか、そんなことを論ずる必要は何にもないわけですね。ところが、さっきも総務長官言われましたように、確かにいろいろな四項目のことがありまして、非常にひっかかるということがございますね。だから、さきの答弁を聞いておりますと、それについては一歩も前進をしていない、こういうような感じがするわけです。それでは、この前の委員会で答弁があって、この四項目については検討しなければいけない、早期実施はしなければいけない、こう言われますが、その時点からいままでに何を検討されたか、総理府と人事院にお伺いをいたしたいと思います。
  109. 秋富公正

    秋富政府委員 八月十日の当委員会におきましてやはり早期支給の問題が出まして、私、四つの方式について申し上げましたので、いまその問題について改めて申しませんが、その際、社会党の大出先生から政令案を検討してはどうかということがございました。また私はそのとき、組合の皆様方にも何かいいお知恵があったらお示しいただきたい、私の方もそれについて積極的に検討してみたい、かように申したわけでございます。それから現在までにどういう検討をしたかというお話でございますが、いまの政令案というものにつきましても、いわゆる一般職につきましては人事院の勧告がございますが、特別職あるいは自衛隊の職員あるいは判事、検事といった給与につきましては、すべて一般の公務員の人事院勧告に準じているという点はございますが、そういった客観的なものがございませんので、そういったものを政令で検討することの問題もう一つは財源の問題、五%までは給与改善費を組んでおりますが、それ以上のものについての手当ての問題とかございますので、そういった点をいろいろと検討いたしておりますが、ただいまのところ、まだ成案を得るに至ってない状況でございます。
  110. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 早期支払いの関係で申しますれば、人事院の勧告時限ということで考えますれば、勧告作業をできるだけ早くやって、それで一日も早く勧告をするということがどうなのかという検討の面が一つございます。それにつきましては、ここのところ、事務的な話で恐縮でございますが、調査をいたしまして、それで集計をし、さらに仕上げの配分を決めて文書にしてお願いするということを物理的にどれだけ縮められるかということで、この早期実施の宿題が出ましてから毎年一生懸命検討している次第でございます。  ことしの場合で申しますと、八月九日に勧告いたしておりますが、昨年よりわずか一日でございますが短縮いたしておりまして、昨年は一昨年よりさらに早かったわけでございますが、そういうことで詰めております。いずれにしましても、民間の春闘の終わった後でという制約があるものですから、したがって、大体私どもの作業、それから総理府統計局に全力協力をお願いしておりますが、その統計局も恐らく最大限の短縮でやっていただいているという現状でございます。  そういうことで、私どもは、そこで出てきました結論につきまして勧告を申し上げるたびにできるだけ速やかに実現されるようにお願いしたいということを勧告のかがみにいつも書いてお願いしておりますが、そういう気持ちで、事務的にも、また気持ちとしても一生懸命やっておるという次第でございます。
  111. 新井彬之

    ○新井委員 私、いま聞きましたけれども、結果的にはこういう面が前進をして、今後こういうことで解決していきますなんというような答弁じゃないわけですね。これはまた来年も同じ答弁だと思いますよ、結果的には。  そこで、私は提案を申し上げておきたいのでございますけれども、これはいろいろな法律的な規制がございますから、いろいろなやり方の中で問題はあろうかと思いますが、いまも人事院からお話がありましたように、早期勧告ということについてはありましたけれども、大して日にちが早くなるような状態でもないわけでございますけれども、とにかく勧告が出た場合に、本年度の予算については給与関係は五%手当てをしてあるわけでございますね。それで勧告は六・九二%ですか、そういうことになっておるわけでございますから、少なくとも後のそれを最終的にどうするかということは、これは当然国会のこういう議論において結論を出さなければいけないわけでございますけれども、それまでに当然その時点で五%は支給をしてあげるというような形でも、たとえ一歩でもできるところからやらなければいかぬ、こういうぐあいに考えておるわけでございます。そういうことで、これは今後また一つの意見として総務長官に検討していただきたいと思うのですが、いま本当に四月一日にさかのぼってできるようなことでは、これは絶対できませんね。人事院の勧告が春闘を踏まえて、そして六月十五日ですか、そういうことでやっているわけですね。それで勧告自体が幾ら早くたって六月十五日以前に出てくる気配はない。したがって、それ以後何カ月間を、まずとりあえず早くするためにはどうしたらいいかと言えば、人事院の勧告というのは法律的にも非常に権威があるわけでございますから、その中で全部が全部そのまま実施するというのは、それは政府が認めるかどうかという問題に相なろうかと思いますから、当然予算措置としての五%というのはその勧告の出た時点において支給を始めていく、そして正式にこうして委員会を通った後は、それに準じた手当てをまたやっていくというような考え方が一つは一番実現性がある、可能性があると思いますが、いかがお考えになりますか。
  112. 藤田正明

    藤田国務大臣 いまの二段払い方式と申しますか、人事院勧告が出た時点において予算に計上してあるパーセント分だけは第一段階でお支払いする、それから第二段階目は、この国会審議の後、法案が成立した後、こういう二段払いの御趣旨かと思いますが、確かにこれも一つの検討すべき案だと思いますので、真剣に検討させていただきます。
  113. 新井彬之

    ○新井委員 それからもう一つは、特別給については、昨年の附帯決議におきまして「今回の特別給の改定については、民間の動向を考慮し、可及的速やかに従前の月数に回復するよう努力すべきである。」こういうふうに附帯決議がついておりますね。現在円高というような問題から、非常に景気のいいところと、また逆に非常に悪いところと、非常にむずかしい日本経済の状況になっておりますが、そういうことを踏まえまして、この附帯決議についてはどのようなお考えを持っておられるのか、人事院の方からお伺いしたいと思います。
  114. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 特別給につきましては、昨年は実は、再三申し上げておりますように、私といたしましても、大変心ならずもというようなことで、〇・二カ月分の削減を余儀なくされたということでございます。これはあくまで、人事院といたしましては、民間の客観的な資料というものを正確に調査をいたしまして、その結果として出てまいりましたものを参考として、最終的な方針を決定するという方向で従来もやってまいりましたし、今後もそういう方針で参りたいというふうに思っておるわけでございます。昨年はデータの集計というものが、遺憾ながら、大変な不況というようなこともございまして、いい結果が出なかったということで、一般の公務員の方々にもごしんぼうをいただいたということでございます。昨年の法案の審議の過程を通じて、いろいろ問題点も御指摘がございました。また、いまお話のございました附帯決議等のことも、私ども十分承知をいたしておるわけでございます。そういう観点に立ちまして、ことしも十分精密な調査をいたしました結果、遺憾ながら、昨年の場合をもって見ますると、昨年の夏期の手当、これはやはり景気が大変落ち込んでおったものが十分に回復をしないということもございまして、悪うございました。冬の関係になりますと、やや持ち直したということがございまして、その集計をいたしましたところ、四・九台ということで、ようやく前年を維持するというところに相なった次第でございますが、なお前にさかのぼってこれを引き上げる、もとへ戻すというところまでは統計が出てまいらなかったということでございます。  しかし、われわれといたしましては、あくまでも客観的な資料に基づいて、公正な計算のもとに事柄を処理してまいりたい、それがまた長い目で見ますると、国民一般の御理解もいただけるし、コンセンサスも得られるというふうな立場でもって事柄を処理しておるわけでございます。来年のことを言うと、まだわかりませんですが、来年度につきましても、従来方式でもって、厳密な調査をいたしてまいりまするし、その結果どういうようなことになりますか。結果が出ますれば、それとの見合いで、正確に事柄を処理をするという方向で参りたいと思っておりますし、附帯決議の趣旨、精神というものは、われわれ十分腹の中に入れて対処をしていくつもりでございます。
  115. 新井彬之

    ○新井委員 少なくとも、国会で附帯決議がつけられて、そして提案をされているわけですね。したがいまして、そういう問題については調査も明確にして、これはどうしてもそうならないのだというときには、明快にデータを挙げるなり、やはり説得力のあることで言っていただかないと、実際問題として何でそうならないのかということが明確にならないということがあるように思います。したがいまして、きょうは別としまして、今後はそういうことでひとつよろしくお願いしたい、このように思うわけでございます。  その次にお聞きしておきたいことは、週休二日制の問題でございます。これも附帯決議がつけられまして、いろいろとテストケースをやられておる。そのテストも、それこそそんなテストでわかるのかと思うぐらい小規模なテストをやられておるようでございますが、それも終わりまして、いよいよ今後どうするのかということになっていると思いますけれども、この場合に、人事院総裁も言われておりますが、週休二日制というのは時の流れである、したがって、公務員といえども当然週休二日制にしなければいけない、こういうことで言われているように思います。  そこで、週休二日制ということについて、一体いつごろのめどをもってこの実現を図るためにテストをやっているのか、それともテストが積み重なった段階でやろうとしているのか、その辺をまずお伺いしておきたいと思います。
  116. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 週休二日制につきましては、御承知のように、昨年の十月から一年の期間ということでテストを実施してまいりました。計画どおり一年を経過いたしまして、現在各省庁から報告を聴取するという段階でございまして、大体みんな集まりました。これを集計いたしまして、現在内容を分析、検討を加えておるという段階でございます。  週休二日制は、いま御指摘になりましたように、これは世界の大勢である、天下の流れの大きく向かう方向であるという考え方を私はとっております。そういう意味合いをもちまして、テストというのも、週休二日制というものを制度的に実施をするということを前提にいたしまして、これをやった場合にどういういろいろな問題点があるのか、解決しなければならない対策、その他の点はどこにあるのかということを慎重に検討しなければならぬということで取り組んでおるわけでございます。  そういう意味合いから申しますと、昨年からことしまでやりました週休二日制のテストは、いま先生も御指摘になりましたように、いろいろ批判がございます。大変薄い方向でやったというようなことで、こんなことではテストの意味はないのじゃないかというような御批判も十分われわれの耳に入っております。それは承知をいたしております。ただ、事柄が大変重要でございまして、事は国民の生活一般にも直接に影響する問題でございますので、われわれとしては、やはり慎重の上にも慎重の態勢をもって臨まなければならぬということでやってきておるわけでございますが、過去一年においてやりましたその実績については、後刻結果がまとまり次第、いろいろな方向でまた御説明を申し上げたり御報告を申し上げたりいたしたいと思っておりますけれども、各官庁ごとに千差万別の態様がございます。また、やり方自体につきましても、ほぼ人事院が考えましたとおりのことでやって、大体支障なく行われておるものもございますし、また一面では、交代制の関係その他現場の関係を持っておりますところでは、人事院が示した程度のものでもなかなかやれないというようなことで、非常にばらつきがございます。そういう点をどういうふうにして斉一的に持ってまいるかということになりますと、いろいろな問題点があるわけでございます。  そこで、現在結果を踏まえて検討をいたしておるわけでございますが、今後の方向といたしましては、先般の人事院勧告における報告でも触れておりますように、もう一度引き続いてテストをやりたい、テストの方法その他具体的な問題につきましては、現在、結果の報告を分析した結果、その上で具体的な問題を出してまいりたいというふうに考えておりまして、いまのところ、ここで申し上げるところにまで至っおりません。しかし気持ちといたしましては、過去一年やりました結果を踏まえまして、もう少し密度の濃いやり方でもってテストをやっていく、これをやることによりましていろいろ問題点も浮き彫りにされてまいりますので、その上で今後どういうふうにやっていくべきかということについての具体的な方策を打ち出してまいりたい、かように考えておるわけでございます。現在、結果の検討中でございますので、今後のステップにつきましては、もうしばらく御猶予をいただきたいと思います。
  117. 新井彬之

    ○新井委員 非常に御丁寧な答弁でございまして、心から感謝いたしますが、時間が余りありませんので、なるたけ短く要点だけでお願いしたいと思います。  人事院というのはどこからも左右されてはなりませんし、本当にしっかりしていただかなければならない機関であるということを私は感じておるわけでございますが、何でも民間がやった後に、ではひとつそろそろこっちも動こうという考え方だけが正しいのかどうか。そうではなしに、本当にこれをやることによって時代の先取りにもなるし、当然そうしなければいけないということで、世の中の先端を行くというようなこともやはり大事なことではないかと思うわけです。したがいまして、週休二日制の問題についても、結果的には、まだデータが出てきますよ、そうしてもう一遍次にテストをやりまして、ところがそのテストだってまだ余り濃くなかった、もう一遍やりましょうなんということになりかねないような現状でございまして、それは、週休二日制にするのがいいのか悪いのかということについて、実際問題の仕事の上で国民の多くの方に迷惑をかけるのか、これはやはり大きな問題でございますから、調査は徹底的にやっていただきたいと思います。どうか、そういう点においても人事院はひとつ確固たる確信を持ってどんどん調査を進めていただくように、この問題についてはお願いをいたしておきたいと思います。  それから、次に生計費の問題について若干お伺いしておきたいと思います。  公務員の俸給表の決定に当たっては、国家公務員法第六十四条第二項では「生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、」こういうぐあいになっておるわけでございます。それで生計費と民間賃金の動向、この二つが給与決定の重要な要素になっておるわけでございますが、人事院の勧告の中に、今回の俸給表の改定を見ると、六・九二%の勧告よりも低いものが出ています。七・一%というものがありますし、六・九二よりも低いものが出てきておるけれども、そういう場合、生計費というものは一体どの程度——どの程度というよりも、生計費はこれだけ入っているんだ、こういうぐあいにお答え願いたいのでございます。もう一言で結構でございますから、どれだけ入っているか、お答えを願いたいと思います。
  118. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答えいたします。  給与決定の、主として本俸でございますけれども、俸給表決定の要素として生計費、物価もございますが、そういう要素はどう反映しているかという御質問でございます。私どもは、民間給与を調べるというその民間給与の中に、たとえば春闘の中の団体交渉の中にあらわれておりますやりとりの過程の中に、物価がどうだとか暮らしがどうだとかいうことの結果として賃金が決まっておる。その賃金との均衡をとることによって、間接的ではあるけれども、生計費は溶け込んでおる、こういう受けとめ方をいたしておりますが、なおかつ人事院は独自に標準生計費を算定いたしておりまして、これは厚生省の国民栄養調査とか総理府の家計調査とか、そういう国民一般の家計の状態を代表するような、その標準的な値をとりまして、それで、私どもが俸給表を決めますときに世帯賃金のところに着目いたしまして、その世帯別、たとえば結婚年齢に見合う号俸、それから子供が一人でき、二人できるという、三人、四人世帯の俸給表の当該モデル号俸がございます。そこのところで世帯人員別標準生計費と比べてどうかというチェックをして俸給表を作成しているわけでございます。
  119. 新井彬之

    ○新井委員 というと、簡単に答えていただきたいのですが、結果的には生計費というものははっきりしないのだ、計算では出てこないのだ、こういう理解でよろしいですか。
  120. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 人事院が勧告いたしますときに参考資料を添付しておりまして、その参考資料の中に標準生計費の世帯人員別のデータも公表いたしております。それで、それは世帯人員別になっておりますので俸給表と結びつきませんので、その世帯を持つ年齢を媒介にしましてその年齢に見合う号俸を拾いまして、俸給表を定めるときのチェックに使っておりますが、公表いたしておりますのは、標準生計費の数字そのものを参考資料の中に出しております。
  121. 新井彬之

    ○新井委員 民間の給与の決定は、御存じのように、物価が上がりましたとか、いろいろの状況でデータを出して交渉されるわけです。ところが実際問題は、その会社が黒字であるか赤字であるか、そういうことにも非常に影響されるわけです。あるいは業種別にもよりますけれども、ほかの同業者がこのくらい出していれば出さなければいかぬのじゃないかというようなことの中に一切含まれて出てくるのではないかと考えるわけでございます。したがいまして、国家公務員法第六十四条の第二項の明確にうたっております「生計費、民間における賃金」、こういうことも本来ならば、それを考えまして、そうして明確に、生計費がこうですよ、民間賃金はこうですよ、だからこういうぐあいに上げるのですよという方式をこの法律ができた時点におきまして、とってやらなければならなかったものではないかと考えるわけでございます。しかしながら生計費の上がり方が大変上がっておる、そしてまた民間も非常に景気のいいところと悪いところといろいろありまして、そういう中で一つの標準の賃上げ率が出てまいりますね。したがいまして、近ごろいろいろの方から聞いてみますと、どうも人事院勧告というのは、春闘のパーセントがイコール人事院勧告じゃないか。したがって、人事院が一生懸命に調査はしておるかもわからないけれども、結果的には、この法律で言うところの「生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情」というような一つ一つの明確な論理を持っての絡みでそういうものが出てきていないのではないかということが言われているわけでございます。  そういうわけでございますから、確かに標準生計費というのはいま非常に出しにくいのですよ、こう言うならそれで結構です。出しにくいものを、ではどういう方法をもって出せばいいのか、いま検討しているのだ、いいことがあったら教えてくれと言うなら、私だっていろいろ申し上げたいと思うのですけれども、あくまでも、生計費がちゃんと入っているのだ、そしてその中で人事院としてもちゃんと四人家族で出しているというようなことを言われるわけでございます。これは東京都が出したり、あるいは総理府が出したり、いろいろ出しておりますけれども、標準生計費そのものに非常に違いがあるわけです。そうすると、この法律にうたわれていることを、どれが正しいかということになった場合は、やはり総理府と人事院とが、なぜそのデータの違いがあるのかということを大分やらなければいけないのじゃないか、こういういろいろの問題に発展してくると思うわけでございます。したがいまして、この生計費の問題についてもいろいろ言われておりますが、実際問題、それが本当に計算ができるものかできないものか、それだけをきょうはちょっと答弁を聞いておきたいと思います。
  122. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 生計費の関係で申しますと、民間賃金の中に水準問題と配分問題という二つの考え方があると思います。水準を決めますのは、主として民間賃金の中に含まれている間接的な生計費の高さということでいいと思います。私申し上げておりましたのは、配分の問題として、個人個人のふところに入りますという関係の配分の問題においては、これは生計費のチェックが必要だということで人事院はやっておるわけでございます。歴史的に申し上げましても、たとえば高卒の初任給を決めますのに、東京の青年男子の標準生計費でずっと決めてきた、その標準生計費に見合うものを初任給としてきた経緯がございます。現在非常に求人難の時代が真ん中にはさまりましたものですから、生計費どころではないもっと高いものになってしまいましたけれども、生計費はいわばそういう個別のチェックにいままで使ってきておりますし、考え方としては現にそういう方向でやっております。  それで、たとえばことしの場合の配分で申しますと、やはり生計費、物価の関係で言いますと、実質賃金というのが非常に大事でございますので、そういう意味で、生計費とか物価の要因を込めて二人世帯、三人世帯、四人世帯というようなところを特に検討したということでございまして、そのデータは参考資料に生計費として提示してございます。
  123. 新井彬之

    ○新井委員 では、今回のこの勧告におきまして六・九二、実質七・一のところもあるし六・九二より下のところもありますけれども、そうしますと、公務員の方々の生活というのは、実際問題、実質生活というのはこの賃金で向上するのかあるいはダウンするのか、どっちだとごらんになっておりますか。
  124. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 実質ということで、たとえば物価でデフレートして申し上げますれば、春闘で八・八という数字がございます。それから四月現在の消費者物価でございますけれども、これは八・六というような伸びを示しております。私どもが勧告いたしました六・九二、俸給表べースで言いますともう少し高くなりますが、いずれにしても個人的に見ますと定期昇給が入ってまいりまして、これを入れますと八・七八くらいの高さになっております。したがいまして、これで幾らよくなるのかという御質問に対する答えにあるいはなりにくいかもしれませんが、少なくとも実質は平均的には十分維持されておるというふうに考えております。
  125. 新井彬之

    ○新井委員 その問題についても、私は非常に異論があるわけでございます。これはやはり物価高でありますし、いろいろの物が大変上がっている、そういう中でこの程度の賃上げでもって去年の生活が維持できると言うことはできない。これを議論しますと、まだまだいろいろデータを挙げて議論しなければなりませんけれども、きょうは時間がございませんから、勧告も出ているし、法案も出ていることでございますから、あれでございますが、とにかくこの法律、国家公務員法第六十四条第二項で言うところのものというのは、当然これは実質賃金として、実質生活というものがよくなっていかなければいけない、そのような勧告をしなければいけないのだというぐあいに受け取っておるわけでございます。ただ、むずかしいのは、やはり不況の中にあって民間の方々が非常に大変な状態であるというようなときに、じゃ公務員だけ上げていいのかという論議がございますが、本来ならば民間も公務員もやはり一歩ずつの生活の向上というものを国家そのものは全力を挙げて考えなければいけない問題である。このことを基本にして人事院勧告というものが出されなければならない、こういうぐあいに理解をいたしておるわけでございます。そういう点についても、また今後議論をさしていただきたいと思います。  次に、今回、人確法によりますところの教員給与第三次改善の勧告ということがあるわけでございまして、この件については、私非常に疑問を持っているわけでございますが、まず初めにデータからちょっと教えていただきたいと思います。  昭和四十五年から四十八年まで教員免許を取った方々の人数と、それから教員採用試験を受けられた人数と、それからその中で実際に働いておられる先生方の数を教えていただきたいと思います。これは昭和四十五年から四十八年までと、四十九年から五十二年まで教えていただきたいと思います。
  126. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 まず、新規大学卒業者で教員の免許状を取った者の数でございますが、これは一人の人がたとえば中学校の国語と社会というふうに二教科の免許状を取るということもあり得ますので、延べ人数で申し上げますと、昭和四十五年が、小、中、高、特殊教育、幼稚園、養護教諭、全部含めますと、二十一万二千六百人となっております。四十六年が二十一万二千四百人、四十七年が二十万八千二百人、四十八年が二十万六千三百人、四十九年が二十一万百人、五十年が二十二万六千二百人、五十一年が二十四万六千三百人、五十二年が二十六万九千百人、こういうふうな数字になっております。  ところで、これらの免許状取得者のうち実際に学校の先生として採用を志願した、つまり採用試験を受けた数でございますが、これは小・中学校だけになって恐縮なんですが、四十六年の調査では小学校が二万九千百六十四人、四十七年が二万七千七百五十八人、四十八年が調査しておりませんで、四十九年が三万九千二百九十二人、五十年が四万一千六百八十人、五十一年が五万一千六百八十六人、五十二年が六万三千二百六十一人というふうにふえておりまして、それに対しまして採用者の数でございますが、四十六年が一万七千五百九人、四十七年が一万七千五百八十人、四十八年が調査ございませんで、四十九年が一万八千二百六十五人、五十年が一万七千七百七十七人、五十一年が一万六千五人、五十二年が一万七千九百三人となっておりまして、念のため倍率を申し上げますと、四十六年が一・七倍、四十七年が一・六倍、四十九年が二・二倍、五十年が二・三倍、五十一年が三・二倍、五十二年が三・五倍となっております。  中学校につきましても申し上げましょうか、よろしいですか。
  127. 新井彬之

    ○新井委員 はい。  総理府総務長官にお伺いしたいわけでございますけれども、この人確法に言うところの「人材」とはどういうぐあいに解釈をされますか。
  128. 藤田正明

    藤田国務大臣 人確法に言う「人材」ということですね、そういう意味ですね。
  129. 新井彬之

    ○新井委員 そういうことでございます。
  130. 藤田正明

    藤田国務大臣 教職員に関しましては、よりよき先生を集めたい、いわば聖職というふうなことを考えまして、次代を背負う少年でございますから、そういうよりよい先生に大いにひとつ御指導を願いたい、これがその人材確保法の精神でございます。
  131. 新井彬之

    ○新井委員 そうしますと、人材というのはほかの公務員に比べてどこが違いますか。要するに人材確保をされるわけでしょう。私は全部が人材だと思っておりますが、この人確法に言うところの「人材」というのは、極端に言えば、皆さん方も皆公務員でございますけれども、ほかのとどこに違いがあるか、教えていただきたいと思います。
  132. 藤田正明

    藤田国務大臣 人材が公務員の中にあることは確かでございますが、特に児童・生徒を教育指導することでございますから、そういう教育指導に関して特別に向いている人、また人格も高潔な人、こういう意味合いであろうかと思います。
  133. 新井彬之

    ○新井委員 では、ほかの人は余りそういうことではないのかなという感じがするので、ちょっと当を得ていないと思うのでございますが、少なくともお金だけで動くような人というのは、私は人材ではないのじゃないかと思います。したがいまして、今回のこの教員給与の第三次改善の問題につきましても、多くの先生が私のところに見えましたけれども、その先生方だって何も生活が楽であるわけじゃありません。あるいはまた、本当にお金の要らないという人はいらっしゃらないと思いますけれども、自分の仕事のために、本当にその職場を守ったり何かするために、これはお金ではかえられないものなんだ、明確にそういうことを判断していける人というのはやはり人材ではないか、私は、こういうぐあいに思っているわけでございます。  そういうことを一つ前提といたしましてお伺いしていくわけでございますが、私は、これは人事院としてしっかりしていただかなければいけないなと思うことは、本来ならば、人確法という法律ができて、これには当然人事院がそのことについて勧告しなければならないことになっているわけですね。したがって、勧告されることは結構です。現在の教育の中にあって、どういう形で人材を集めたらいいのか。これは給与の面はこういうことをしなければいけません、こういうぐあいにした方がいいですとか、いろいろな御意見を言われることは結構でございますが、どう考えても、予算が先についちゃって、そうしてその予算に合わせて勧告をしておるのではないかというように見受けられて仕方がないわけでございます。そうでなければ本来給料、給与というか待遇改善のときに円満にいかないなんということは余りないわけですね。少ないからこれはもっと上げてくれということはございましても、これは要らないなんという話が出てくるような問題が出てくるわけはありません。  したがいまして、人事院は、一体教育問題というものをどのようにとらえて、この人確法に対する勧告をなさったのか。そしていまいろいろな問題がございますね。前の文部大臣も、いまの文部大臣も非常に調和のとれた教育ということを言われておるわけでございますが、その調和が破壊されるかどうかというような問題になるというようなことが考えられるわけでございますが、そういう問題についてどのような判断をされて、今回のこの勧告に至ったのか、今回というよりも五十一年の三月十一日の勧告に至ったのか、その件についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  134. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 御注意もございましたので、趣旨を省略しないような限度で、なるべく簡単に申し上げたいと思います。  人確法の経緯その他は、これは先生もよく御承知のとおりでございまして、この取り扱いというものが一般の給与勧告等と大分異なっておることは御承知のとおりであろうと思います。法律が特にできたという点と、しかも、それを実施するための裏づけとして財政措置も同時に講ぜられるということに相なっておる点、これは他の一般の給与勧告等とは非常な相違であろうと思います。人事院が人確法に基づいて勧告を義務づけられるということについては、その経緯はいろいろございました。人事院の立場もいろいろあったわけでございますが、しかし、法律がちゃんとできたということで、これに基づいてそれぞれの仕事をやっておるということでございます。人事院といたしましても、義務教育のみにとどまりませんが、特に義務教育等については、先生というものが教育の主体でございますので、これに人材を得なければならぬという必要性はつとに認めておるところでございます。  そういう意味で、漸次勧告を行ってまいりまして、第一次、第二次、それから第三次ということでございましたが、第三次の勧告につきましては、御承知のようないきさつで、昨年の三月に勧告をいたしたのが今日までまだ実現に至らずして来ておるということでございます。勧告権を付与されたということでもございますし、事柄の重要性はよくかみしめて承知をいたしておりますので、それを実現する方途といたしまして第三次の勧告をやったというふうに私自身も解釈をいたしております。
  135. 新井彬之

    ○新井委員 この人確法による勧告というのは、これは全く人事院がこの趣旨に基づいてやられるということですね。ここには、法律的には何%上げなさいとか、そういうことは全然言っていないわけですね。したがいまして、あくまでも人事院レベルにおきまして、だれからも左右されないで、それで勧告というものを行う、ちょっとまだ納得できないところがございますが、その中で、ではなぜこんなに教職員の先生方の間でいろいろな問題が起こってきたのか、このことについては、人事院総裁、どのようにお考えになっておられるのですか。
  136. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 金額的に幾らやるかということをはっきりと規制されておるわけでないことは、御承知のとおりであります。ただ、人確法にも計画的にこれをやっていくという趣旨が述べられておりまするし、その趣旨に従って予算措置も講ぜられているということは、これは厳然たる事実でございます。  給与のベースの問題が基礎にございますので、正確には申し上げられませんですが、一般的に言って、当時、これが発足をいたしました際には、いろいろ議論ございましたが、二五%程度を上げよう、それを三カ年計画程度でひとつ達成をしていこうではないかということで進んでまいりました。いわゆる第一次は一〇%、その次も一〇%、後は、残りは五%ということでございます。そこが、給与ベースが上がってまいっておりますので、実質的には初めは一〇%でありますが、第二次は七%程度ということ、それから第三次の方は三・四%というくらいになっておるものと私は解釈をいたしておるのであります。  これの実施に当たりましては、先刻も申し上げましたように、一般の給与勧告とは違いまして、一つの大きな方針というものが法律でもって掲げられておるということがございます。また、その裏づけとして財政措置というものも講ぜられておるということであります。ほかならぬ教員の処遇、あり方等の問題につきましては、これはやはり専門の文部省というものが責任官庁としてあるわけでございますので、文部省の御意見というものもやはり十分拝聴して、これを勧告作業の中に反映をしていくということも、これは大変重要なことでございます。  それと人事院の独自性ということは、これは別問題でございますけれども、やるについては、確信を持てば独自性を発揮いたしてやってまいりますけれども、やはり専門の教育主管官庁である文部省の御意見というものを、これは十分反映をせしめていかなければならない、それがたてまえであるというふうに考えております。そういうことで、文部省の方から第一次、第二次あるいは第三次について、今度はこういう点についてひとつ力点を置いてやってもらいたい、こういう点をひとつやっていただきたいというような要望が出ております。その要望の一環といたしまして、いまお話のございました、恐らく主任手当の問題と思いますけれども、これも文部省の当局としてお話がございました。われわれの方といたしましては、人事院の立場として、余り野方図な、また無政策なことでは困るのであって、主任というものはやはり制度化して、はっきりとした軌道に乗せてもらいたい。その上で必要があれば給与的な評価というものをそれなりに講じていくことはよいでははないかというような判断から、去年の勧告、第三次の勧告でもってこのような措置をお願いをいたしたということでございます。
  137. 新井彬之

    ○新井委員 いま聞いていますと、どう言うか、本当に全く文部省レベルでこういうことがあったので、それもよかろうというようなことでこっちとしてはやっちゃったという感じに受け取れるわけです。私は、何も文部省のことを聞いちゃいけないなんて言っているわけじゃないですよ。文部省だって、あるいはまたどこだって、それはいろいろな御意見とかそういう提案については聞くべきである、このように思います。しかしながら、今回のこの給与法の改善について多くの学校の先生方がこれだけは何とかならないものかということを、これはやはり人事院に対してもいろいろと意見なり要望なり、また具体的ないろいろなお話があったと思いますけれども、そういう問題はなぜ取り上げられないのですか、それをお伺いしたいと思います。
  138. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 この人確法に基づく教員の給与の改善問題だけではございませんで、人事院が所管をいたしておりますいろいろな問題について、各方面の御意見を率直にお聞きをするという態度は従来からもとってきておりますし、今後ともそういう方針で私は少なくとも参りたいというふうに考えております。その中で給与問題というのは、何といたしましても、これは公務員の生活にかかわる問題でございますので、大変御意見も多いわけであります。  毎年、給与勧告の前後になりますと、大変な文書、あるいは実際上の陳情あるいは交渉その他のことで、われわれといたしましても、寧日のない日々を送らなければならぬということでございますが、それはそれなりに、やはりそれぞれの公務員の立場からいろいろな御意見があるわけでありますからして、これは率直にひとつ受けとめて参考にすべき点は参考にしていくという態度でやっております。また一面、別の角度から、公務員というものは、やはり能率が余り上がらないのに親方日の丸じゃないか、いま中小企業なんかは大変困っておるのに、また一方的に民間の春闘の相場がこうだから公務員についてもこうだというのは勝手もはなはだしいではないかというような、大変なきついおしかりも別の点では承っておるようなことでございますが、しかしわれわれといたしましては、人事院の立場というものがございます。いろいろ御批判またおしかりもございますけれども、やはり人事院として当然やらなければならぬ仕事ということの使命感に立って、毎日の仕事に取り組んでいるというのが現状でございます。  教員の問題につきましても、いろいろ御反対の意見もございます。また別にそうじゃなくて、ぜひやはりこれはやるべきじゃないかというような御鞭撻、御叱正の向きもあるわけであります。非常にいろいろな角度からの御意見がございます。ございますが、その点はやはり全体としての立場からかくすべきではないか。特にその間において主管庁であります文部省において、こういう制度的な改正をやるからこうしてもらいたいのだというような御意見が出てまいっておる現実でございまして、そういう点について大所高所に立って総合的な判断をいたしました結果、こういうことをぜひお願いをしたいということで御勧告を申し上げている次第でございます。
  139. 新井彬之

    ○新井委員 総務長官にお伺いしたいと思うのですけれども、今回のこの法律案を提出されている中には問題ないわけですね。これはだれもが賛成をされておる。ということは、「第十九条の五第二項中「一万百円」を「一万五千二百円」に改める。」これに伴って人事院規則でもって、極端に言えば主任手当というものを創設するわけですね。その主任手当というものが一体学校の教育問題についてどういう影響を与えるか。このことを、確かに賛否両論はあろうかと思いますけれども、少なくともそのことについての納得する段階でなければこれをやるべきではないという考えに立っておるわけであります。したがって、この法律案がよしんば廃案になって通らなくても、主任手当だけはちゃんと人事院規則ですから、いつでも変えて通れるというような、そういうようなやり方をされるということは、私はやはり大きな問題としてちょっと問題があるのではないかと思いますが、総務長官、いかがお考えになりますか。
  140. 藤田正明

    藤田国務大臣 この法案が廃案になって、主任手当が人事院規則だけで出せるとは思っておりません。やはりこの法案が全部、いまの第三次給与前半分が成立することによって人事院規則というものが出されてくる、かように考えております。
  141. 新井彬之

    ○新井委員 いま総務長官からお話がございましたが、これは法律的な問題で言っているわけでございまして、もちろんこの法律案が通過しないのに主任手当だけ出すなんということは当然できないと思いますが、法律的には、予算も通っていることでございますから、出そうと思ったら出せないことはないわけでしょう。どうですか人事院、お伺いしておきます。
  142. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 法律的、制度的にはこれは人事院規則でもって措置ができるわけでございますので、法律的、制度的にはやろうと思えばできないことはございません。ただし、いま総務長官もお話がございました、また私もそういう持論に立っておるわけでありますが、やはり人事院の勧告報告なんというものは、ばらばらに手当たり次第に好きなものをとってどうこうというような筋合いのものではないというふうに考えておりまして、昨年の第三次勧告というのも御承知のように四本柱でもって成り立っているわけでございます。そういう意味で、これはやはりいずれも連動性を持った一つの総合的な体系の一環としてとらえておりますので、その分だけを切り離して人事院独自で措置をするということは、私といたしましては考えておりません。
  143. 新井彬之

    ○新井委員 ただいま人事院総裁はそういうお話がございましたけれども、私は、今回のこの法律案については少なくとも人事院規則を一応見合わしましょうと言えば、これは何も問題ないと思うのです。だれも問題なくなる。その上に立ってもう一度いろいろ話し合いの結果、そうしてみんなが納得するような形でその人事院規則だけは実行されたらいいのじゃないか、こういうぐあいに思うわけでございます。  もう一つお伺いしておきたいことは、人事院規則でやる場合に一体法律は何を用いて、どういう形でこの主任手当という手当を出されるのか、それをお伺いしておきたいと思います。
  144. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 繰り返しになりますが、昨年の第三次勧告というのは四つの柱から成り立っておりまして、いずれも連動性を持っておるものであるというふうに解釈をいたしております。したがいまして、この四つの措置というものは同時に実施に移すということをたてまえとしてまいりたいという方針には変わりはございません。  このやり方につきましては、法律が通ることに相なりますと、人事院規則の発動でもって特殊勤務手当の関係改正が行われるということに相なるわけでございます。したがって、それの措置としてこの内容の実現を図ってまいるという段取りに相なるかと思います。
  145. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、どの法律でどういうぐあいにやろうということは、いま全然考えていないということですか。それとも、いやもしも通った場合には、この法律に当てはめてこういう形でやるというぐあいに考えておられますか。
  146. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 長い間の問題でございますので、われわれ人事院といたしましても、事務当局といたしましても、いろんな角度から種々検討を加えておることは事実でございます。ただ問題が大変むずかしい問題に相なっておりますし、過去の経過というものもございますので、われわれといたしましても事柄はやはり慎重を要するというふうに考えております。したがいまして、国会における御論議、きょうあたりからいろいろお話も承っておるわけでございますが、当院における御審議、あるいは参議院における御審議等の経過を十分踏まえまして、これらを十分に参酌しつつ適正な結論を出してまいるという態度で進みたいと思っております。
  147. 新井彬之

    ○新井委員 委員長、これはやはりちょっと審議できませんね。というのは、今回のこの法律案に重なって——明確にこの法律が出ているのです。そして予算もついているわけですね。その上でなおかつ人事院規則ではもう勧告のとおりに主任手当をやりますと言うのですよ。どんなやり方をどういう法律をもってやりますかと言ったら、まだ検討してないと言うのです。検討するまで私は質問を保留したいと思います。何にも聞きようがないじゃないですか。だから、もしもこういうことだというならおっしゃっていただいて結構ですけれども、これから検討するというなら、検討するまで私はこれで質問を保留いたしたい、このように思います。
  148. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 いろいろな点は、資料もございますので、慎重に検討いたしております。これは事実でございます。ただ、これは問題が問題ですから、国会においても十分御論議をいただくことが必要でございますし、また事実御論議があると思います。そういう点はやはり国会の審議という大変重要な段階がございますので、その点を十分に踏まえた上で最終的な結論は出していくということにいたしたいと思っております。  その前提といたしまして、御承知のように、すでに文部省令でもって省令主任というものがございます。これが一つの大きなめどであり枠であるということは、これは事実でございます。これに対して、そういうものは全然別問題として、人事院といたしましては独自の立場から考えていくという種類のものではございません。専門の官庁であります文部省がいろいろ御検討いただいた結果、省令として具体化されている主任がございます。そういうものが一つの大きな目安になるということは、はっきりいたしておるわけでありまして、いまのところは、その中でどういうものをどういうふうに指定するか、その時期をどうするかということにつきましては、もう少しやはり国会の審議状況その他を伺った上で措置をしたい、こういうふうに申し上げている次第であります。
  149. 新井彬之

    ○新井委員 ちょっとこっちも勘違いをしておったところがございますが、どういう主任に対してどういうぐあいにやっていくというのではなしに、この主任手当制度というものについて、どの法律を用いてその手当というものを支給していくのかということをぼくはお伺いしているわけです。だから、それも決まってないと言うならわれわれは質問しようがないので、ちょっとさっき勘違いいたしましたので……。
  150. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 それは私の説明があるいは足りなかったことから誤解を与えたかと思いますが、これはやり方といたしましては、特殊勤務手当でもってやっていくということは、はっきりいたしております。特殊勤務手当については、人事院規則で内容を具体化していくという方向は、法律上もはっきりいたしております。その方針にのっとってやるということでございます。
  151. 新井彬之

    ○新井委員 では、その特殊勤務手当というのは何法の何条にあって、内容を一遍ちょっと読んでください。
  152. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 給与法の第十三条に特殊勤務手当の条文がございます。それで、これを受けまして人事院規則として、これは国立学校の教員に対してでございますが、特殊勤務手当に関する人事院規則の九−三〇、これの一部改正をいたします。国立学校に対してはそういう規則改正でいきたい、こういうふうに、当初勧告の時点から説明のところでそういう御説明をいたしております。それで、この人事院規則の改正の中で、今度は具体的な主任の範囲につきましては、それを今度は通達で具体的な人事院の定めとして決める、こういう運びに相なろうかと存じております。公立については、この国立の状態に準じておやりになる、こういうふうに思っております。
  153. 新井彬之

    ○新井委員 そこの十三条はどういうことが書いてあるか、読んでください。
  154. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 「著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で、給与上特別の考慮を必要とし、かつ、その特殊性を俸給で考慮することが適当でないと認められるものに従事する職員には、その勤務の特殊性に応じて特殊勤務手当を支給する。」という条でございます。
  155. 新井彬之

    ○新井委員 そうすると、この主任というのは、「著しく危険」だということになりますか。
  156. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 「著しく危険」というその定義に該当するものではないと思いますが、現在、特殊勤務手当の範疇は二つございまして、「危険、不快、不健康」というグループと、それから「困難」というのと、二種類が具体的にございます。  それで、主任の場合にはこの「困難」に該当する、こういうふうに考えておりまして、たとえば教員の場合で申しますと教生実習の関係の手当でありますとか、あるいは多学年手当でありますとか、こういうものがそういう「危険、不快」ということではなくて、「困難」の範疇に属するものとして現に規則で実施いたしております。
  157. 新井彬之

    ○新井委員 これは非常になじまない法律だと思いますよ。それはうそだと思ったら、先生方を今度参考人でずっとお呼びになって、非常に困難かどうかということをお聞きになったら、「困難」という解釈は一体何が困難なんだ、こういうことになろうかと思いますが、実際問題、学校の先生方というのは、これはやはり教頭さんであり、校長さんであり、あるいはまたほかのきょうから勤務された先生であり、一番大切にしている子供さん方の教育ということについては、全く平等な形でやられているということをお伺いしているわけでございます。また現在においても、主任制度というのは、制度がなくても当然学校の運営というのを円滑にしていくためには全部が善意で努力をし合って、その中で調和のとれた学校教育ということをやられているわけですね。したがいまして、それをまた、あなたは主任だ、著しく困難な仕事ですなんということになれば、それは確かに、学校の先生からその主任にされた人は逆に困難にされちゃうということで、ここの条文が当てはまっちゃうような状態になるかもわかりませんけれども、私は、こういうことで当てはめることには非常に困難があるというぐあいに一つ考えるわけでございます。  それから、先生方がこの手当については要らないのだ、学校の教育を守りたいのだ、こう言われているわけですね。さあそこで、きょう大蔵省見えていますか。
  158. 正示啓次郎

    ○正示委員長 はい、来ております。
  159. 新井彬之

    ○新井委員 大蔵省の方は、たとえて言いますと教科書の無償配付をなくすのだ、そのなくし方もどういうなくし方をするかというと、金持ちのところからの子供さんは教科書代を取って、所得制限を設けて、ある程度の人は教科書の無償配付をするのだ、こういうことを言っているわけですね。しかしそんなことをもし学校でやったら、学校の生徒の間は、われわれもそうでございますけれども、あなたのところはお金持ちだからごりっぱですよ、あなたのところは生活保護を受けているから大変ですよなんて、そんな差があるようなことで子供さん方が伸び伸びと成長していけるわけはないと思うわけでございます。したがって、こういうお金があるならば、そういうところにどんどん使っていただきたい。まだまだたくさんあるわけでしょう。そういう本当に学校教育を見る場合においては、少なくとも教育とは何ぞやということから問題を発していかないと、これはやはりうまくいくわけないと思うのですね。したがいまして、そういうようなことについては、一体大蔵省はどのように考えているのか、あるいはまた人事院は一体そういう面から見ているのかどうか、それをもう一度答弁を願いたいと思います。
  160. 的場順三

    ○的場説明員 御指摘の点は、五十三年度予算編成にかかわることでございます。御承知のとおりの財政状況でございますので、既定施策につきましても全面的に見直しを図るということでただいま検討いたしておりますが、義務教育教科書無償制度につきまして、ただいまのところ具体的にどういう方法でどうするかということを決めているわけではございません。今後、制度の趣旨、それから従来の経緯等を十分に検討して、文部省と検討していくことであるというふうに考えております。
  161. 新井彬之

    ○新井委員 そんないいかげんなことを言っておるようじゃ、私の言っておることは全然わかっていないように思うわけでございますが、どちらにしましても、時間が大幅に超過をいたしたということでございますので、本当に最後に、総理府総務長官にも、あるいはまた人事院総裁にもお願いをしておきたいわけでございますが、やはり教育問題というもの、これは一番国家の中で大事なことであるというぐあいに考えておるわけでございます。したがいまして、本当に、そういう一つ一つの問題というのをもう一度、先ほども人事院総裁が言われましたけれども、いろいろと各意見を聞きまして、そうしてその実施をするというようなことでございましたけれども、私は、少なくともそういう問題がある間はそれを留保して、そして円満の中でやっていくのが、これがやはり今後の日本の本当に豊かな教育を発展させるために必要なことではなかろうか、このように感じておりますので、強く御意見を申し上げて、質問を終わります。
  162. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、木島喜兵衞君。
  163. 木島喜兵衞

    ○木島委員 委員を差しかえていただいて、質問させていただく機会を与えていただきましたことを感謝いたします。  ここ一、二年、この給与法でもって大分混乱もしているのですけれども、世間的に見てずいぶん、どう言ったらいいのでしょうか、奇怪なる現象というようなものを感ずるのです。  第一、どうでしょうか長官、大体、世間一般から言えば、労働組合が要求もしないものを、賃金を払う、払うなんて言うのは、余り世の中で聞かぬのだが、そんな例、知っていますか。
  164. 藤田正明

    藤田国務大臣 余りそういう例はないように思います。
  165. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 大変珍しいことだと思います。
  166. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大変珍しいとしても、珍しいけれどもあるいはあるかもしれないということですね、珍しいということは。もし世の中にそのようなことがあるとすれば、一体どんな場合でしょう。
  167. 藤田正明

    藤田国務大臣 賃金が向上して生活が豊かになることは、だれしも好ましいことだと思います。しかし、いまおっしゃいましたように、その生活が豊かになることを拒むということは、別な原因があるからそういうことになるのだろう、別の要因があることだと思います。
  168. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いえ、まだ拒むとか拒まぬとか言ってないのです。労働組合が要求もしないものを出すというのは珍しいだろうとおっしゃるから、それではそのような珍しい、要求もしない賃金を出すというような場合は、一体どういうときなんだろうと聞いているのです。どうでしょうか。
  169. 藤田正明

    藤田国務大臣 組合の方から要求もしないときに、そういうふうな賃金のアップなり、あるいは手当なりというものを出すということも、これはあり得ないことではないわけでございまして、だからそういう場合は、いまの組合はもちろん全部が一致して反対をしているのか……(木島委員「反対とかなんとか言ってない」と呼ぶ)それは賛否こもごも、両方あるのかという場合もございましょうし、そしてまた、これを企業にたとえれば、会社側がそこに何らかの気持ちを持って、そしてそういうふうな給与を与えよう、こういう何らかの配慮をもってという場合もあり得ると思います。
  170. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そうなんですね。うんと業績が上がってもうかって、業績がよかったから要求しないけれども出してやろうということか、あるいはいまおっしゃったように、ある意図を持って出すかということでしょう。しかるに今日、国家財政は大変にもうかっている状態でございましょうか。
  171. 藤田正明

    藤田国務大臣 大変に困窮をしておる状況でございます。
  172. 木島喜兵衞

    ○木島委員 すると、経済的には出せるところの状態ではない。とすれば、ある意図を持っているとすれば、その意図とは何であろうか。
  173. 藤田正明

    藤田国務大臣 教職員の人材確保法案に基づきまして、それで第三次の給与改善を今回行う次第でございます。
  174. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大変りっぱな御答弁であります。にかかわらず、世の中で、一般論で、金をやるというのにストライキまでやって、いやだなんと言う例を御存じですか。
  175. 藤田正明

    藤田国務大臣 これは議論の分かれるところでございまして、全部が全部そのようないやだよ、こういうことでもないのではないかと思いますが、確かにおっしゃるとおりに、いやだよということでストライキをやるということも存じております。
  176. 木島喜兵衞

    ○木島委員 おるのですね。
  177. 藤田正明

    藤田国務大臣 この間、相当多数の方々が総理府に参られました。
  178. 木島喜兵衞

    ○木島委員 この問題でね。ぼくはいま一般論で聞いているのです。しかし、だんだんとあなたは先に進んでいるから。だれもが金が欲しいと思う。先ほど、もうかっておらないのに、ある意図を持って出す、その意図とは何かと言うと、人確法に基づいてというお話でございました。それに基づいて今日まで、給与はだれもが反対をいたしませんでした。人確法は、衆参ともに満場一致で可決された法律であります。だれもが金は欲しいのです。欲しいにかかわらず、なおストライキをやってもそれは要らないと言う、その現状をどのように御理解になりますか。
  179. 藤田正明

    藤田国務大臣 もう話は核心に来たと思いますが、主任手当の問題であろうかと思います。この主任手当に関します賛否両論、これはいろいろ意見がございまして、反対の方々が団体的においでになりまして、反対の意見を述べられたことはございます。そのお話を伺いまして、私ははなはだ残念に思いました。
  180. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私が最初に奇怪なる現象と申しましたその第一は、一般論的に言えば、要求もしないのに出すというのも世の中から言えば奇怪なる現象だし、金をくれるというのにストライキをやって要らぬと言うのも奇怪なる現象でありますが、しかしいまおっしゃるように、そこに主任が絡む。  そこで文部大臣、奇怪なる一つの現象をひとつ……。すでにいままでもずっと各現場では、その教育の実態に即しながらどこでも主任というものがあった。そうして円満にやっておる。問題はなかった。それをあえて制度化しよう。何も無理することはない。現にあって、円満に、平和にやっておる。それによって学校運営はできておる。にかかわらず、なおそれをせねばならなかったところのものも一つの奇怪なる現象ではないかと思うが、その辺いかがでございましょうか。
  181. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 その点につきましては、五十年の十二月に、前の永井文部大臣がいろいろとお考えになりまして、「主任の制度化に当たって」という見解を発表されたわけでありますが、そこにありますように、確かに現在、主任というものは各学校において設置され、運営されておるわけでありますが、学校の教育活動面をより一層活発にするためにこの主任というものを制度化し、その活動に対し適当な報酬を支払う、こういうような考え方に立ってこれを制度化しようとした、こういうことでございます。
  182. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、いままであって、円満に何も問題がなかったのに、そのことによってこのような問題が起こって、この法案、実はその奇怪なる現象のまた別の角度から言えば、法文上においては何にも反対はない問題なんです。先ほど新井さんがおっしゃっているように。それが二回も流れておるのです。法文上何にも反対のないものを、反対して二度も流し、それを阻止しようと質問している私も非常に矛盾を感じているのです。奇怪なる現象の質問をしているのです。無理することはないのじゃないの。なぜ制度化しなければならなかったのでしょう。奇怪なる現象の一つとして私は聞いているのです。
  183. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 いまも申し上げましたように、主任というものが実際ある。そこで、その主任というものの職務あるいは性格というものをこの際より一層はっきりする。そうしますと、学校の教育活動というものを見ました場合に、学校の管理面を受け持ちます校長、教頭といったような方の仕事に対応して、主任という方は、むしろ学校の教育活動自体についてこれをより活発にするための役目をそれぞれ分担されるものである。したがって、教務主任であれば学校全体の教育課程の編成、学年主任であれば学年全体の教育進行状態の調整といったような、そういうお仕事をされておるわけでありますから、そういう管理面でない教育活動面の仕事というもの、これをとらえた場合に制度的に連絡調整、指導、助言というふうにとらえたわけでありまして、それを制度上明確にいたしまして、その職務の内容を明らかにするとともに、そうすることによってそれに対する一定の報酬を与えられるようにしよう、こういう考え方でございます。
  184. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、それは連絡、指導、助言なり、そういうのはいままでも教務主任であろうと学年主任であろうとやっておって、何の問題もなかった。いま明確にすべきだというその点だけで明確にすることはいいかもしれません。しかし、明確にするということから出発したこの教育界の混乱を起こすほど必要であったかどうかということを聞いておるのです。
  185. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 明確にいたしますことによって、これはその御苦労に対して手当を支給するという道を開こうというその二つが一緒にあったわけでございますので、そのためには、職務を制度化して明確にするということが必要であるというふうに考えたわけでございます。
  186. 木島喜兵衞

    ○木島委員 すると、主任に手当をやった方がいいから混乱をしても制度化をしよう、あるいは調査によれば現に百幾つも主任がある。それを幾つかだけ金をやるために、教育界は混乱してもそのようなことをせねばならなかった必要があったと文部省は御理解しておるのですか。
  187. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 文部省は、決してそんな混乱してもやるという考え方ではなくて、十分な御理解を得てこれをやりたいということで、永井前大臣もしばしばそれは繰り返されたところでありますが、結果的には十分な御理解を得られない面もありまして、一時おっしゃるような混乱といいますか、そういうこともございましたけれども、今日の時点になって考えました場合、大体平穏に、主任の制度化をされたところも学校が運営されているというふうに考えておるわけでございます。
  188. 木島喜兵衞

    ○木島委員 理解を得てやりたいとしながら、二年たってなお理解を得ずして一歩も進んでおらない。そのことは政令、省令を出すときからすでに問題があり、おっしゃるように理解を得てということは皆さんの態度でありました。しかし理解を得ておらず今日に至っておる。国会は二度もこの法案を流しておる。にかかわらず、今日もなおやらねばならないという必要を感じていらっしゃるのですか。
  189. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 今日でもなお先生御指摘のように、十分な御理解も得られない向きもあるのははなはだ残念でございますが、私どもは、引き続き理解をしていただきたいということで努力をしておるわけでございまして、そういう前提に立って、いま手当の支給ということを人事院にお願いしておる、こういうことでございます。
  190. 木島喜兵衞

    ○木島委員 理解を得て実施をしたい、そしていまなお理解を得るための努力をし、それに期待をする。しからば、理解が得られる努力をし、得られるまで待つべきではないかと考えますが、いかがでございましょう。
  191. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 その点につきましては、実は省令を出しますときもそういう御議論がありましたのでございますが、われわれとしては最善の努力をし、なおかつ理解が得られない場合、それじゃいつまでも省令を出すことは控えるかというと、やはり行政の当局者としてそういうわけにもいかないということで省令の公布に踏み切ったわけでございますが、今回も予算の問題、その他いろいろな関連がありますから、最後まで努力をしながら、しかし一定の時期に来て、全部の方の御理解が得られなくともやむを得ず踏み切るということも、それはあり得るのだろうというふうに考えるわけでございます。
  192. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私は、さっきから聞いているのね。実態とすればみんな各学校にあって、円満にやっておる。だからいま私は、むしろ、より明確にしたいとあなたおっしゃるから、それはそれでいいですよ。しかしそのことが理解を得られずに、今日このように混乱をしながら、しかもその出てきた法案というのは、形の上ではみんな異議ない法案でいながら、その陰にあるもののために二回も流れておる。そういう中でなおやらなければならないのか。あなたは手当を出すために制度化したと、さっきおっしゃった。いましかし、制度化そのままを百歩譲って認めても、それならこの金の方はもうちょっと待つということにならないでしょうか、理解を得るまで。そのことが教育の円満のためじゃないのか。今日の状態は必ずしもいいという状態ではないでしょう。本当に教育というものを愛するなら、文部省が教育というものを大事にするなら、そういう措置こそ必要なのではないのかと思うのですが、どうです。
  193. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 お言葉を返すようで恐縮でございますけれども、確かに要らないという方もおられますけれども、しかし現場には、ぜひこの際規則をつくって早く手当を出してほしいという要望のあることも事実でございますので、そのことも考えながらやってまいりたい、かように思うわけであります。
  194. 木島喜兵衞

    ○木島委員 一部にはそういうのがあるでしょう。しかし、いまおっしゃっているのは、日教組をおっしゃるのでしょう。教師集団の最大な集団は日教組であることは否定できないでしょう。その最大な教師集団がこれに対して批判を持っておるから、そこから今日の教育の混乱があるわけでしょう。ごく一部の人たちがあるかもしれません。最大の教師集団がそうだ。あなたのさっきからの答弁をずっとつないでいくと、そういうことになりませんか。だが、それを予算があるからやらなければならない、そんなことありません。去年だってつぶれているのです。去年だって予算をお組みになっているのですよ。それでいいじゃありませんか、教育を混乱せしめないために。あなたは理解を求めると言う。理解を求めるために努力したらいいじゃないですか。今日二年もたって、どうせ二年間延びたのだからもう少し延びたって構わない。そのことが教育のためにいいのじゃないですか。どうですか。
  195. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 確かに日教組が最大の教師集団でございますけれども、これは日教組が絶対反対だと言えば、それじゃそういうことは一切しないかというと、やっぱり私はそういうことも十分考えなければいけませんけれども、教育界全体の動向なり、その制度の趣旨なりということを考えてやる必要があるのだろうというふうに考えますので、その反対の問題は引き続き、賛成してもらうように努力はいたしますけれども、いまの時点では、やはり私は、この際ぜひ手当を実施するようにしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  196. 木島喜兵衞

    ○木島委員 文部省は、反対があるけれども既成事実をつくって、そして進めていって、そしてその上に立って理解を求めよう、そういうことですか。そういうことで教育というものを文部省はやろうと考えているのですか。だんだんと、私はまだ序論を言っているのでありまして、本論に入っていく中で聞きますが、まずそこまででおきます。いま序論でありますから。奇怪なる現象をただずっと私は羅列しているだけであります。  人確法というのは、先ほど言いましたように、満場一致でもって通りました。その人確法に基づく予算の配分でかくのごとくまた混乱をしておる。委員会は二度もこれを廃案にしておる。みんな一緒になって、人確法の目的に合わせてやろうとした。それは問題がなかった。だのに、その配分でもってこのようになっておる。人確法をつくるときのねらいと現在のこの主任というものが、人確法をつくった議会全体の意思とは相反するものがあるからでしょう。人事院総裁、これをどう考えますか。
  197. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 私もつぶさに、いろいろな御意見のあることは承知をいたしております。また事実、いろいろな方面からの御要望なり御意見というものも承知をいたしておるわけでございます。ただ、この人確法のできましたときは私はおりませんでしたが、これの成立の経緯その他については詳細に承って、十分よく知っておるつもりでございます。何といいましても、やはり人確法という法律の性格から言いましても、義務教育の教員にいい人を確保しなければならぬという精神からしましても、事柄はやはり文部行政の最大のポイントでございます。そういう意味合いから本法の実施、勧告の具体的な内容等につきましては、文部省の御意見というものも十分拝聴をしていかなければならぬというようなたてまえをとってきておりましたし、また事実この問題については、文部大臣からもいろいろの御要請のあったことは事実でございます。  主任の問題につきましても、いろいろな経過を経まして制度化されて、今日にまできておる。この周辺を取り巻く問題というのがいろいろあることは、私も承知をいたしておりますけれども、制度化されて、やはりこれについての給与的な評価をしてもらいたいということになってまいりますると、それ以上人事院といたしましてとやかくのことを言うのも限界がございます。そういうような点もありまして、従来の経緯から制度化されたものについて、これを根幹としながら主任制度というものを給与上も評価をしてまいるということは適切なことではないだろうかと思っておりますが、いろいろ問題があることは事実でございますので、慎重の上にもやはり慎重を期しながら、運用については配慮していかなければならぬという気持ちは持っておる次第でございます。
  198. 木島喜兵衞

    ○木島委員 おっしゃるように人確法は、いまのあなたのお言葉をそのまま言えば、賃金を上げることによって教育界にいい人材を得ようとすること。教育界に給与でもって人材を集めよう、そのことについてはいろいろな議論もありましょうが、それを是とした場合に、その現場の大部分の教師集団がいやがるものを、それを押しつけることによって人材が確保できるのですか。人材を得るためには、そこに人材を集めるのには、その教育という場がそのことによって喜んで集まってくる状態がなければ、人確法というものの目的は達せられません。最大の教師集団がいやがっているのに押しつけられる。教師集団がいやがっているそういう状態の中に、いい人材を集めようということは矛盾ではないですか。総裁、どうお考えになりますか。
  199. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 最大の教師集団がこの問題について非常に反対である、否定的な態度がいまなお強いという現実は、私も承知をいたしておるつもりでございます。ただ、行政というものには、それなりのやはりたてまえがございます。文部行政あるいは教育行政という側面から事柄を論じなければならぬ面もあるわけでありまして、教師集団というものの意見もそれは十分拝聴し、尊重していかなければならぬということは事実でございますけれども、それと同時に、教育行政的な面というもの、これは文部省が責任を持っておられるわけでありまして、その面というものを無視するわけにもまいらないという面がございますことも御承知おきを願いたいと思います。
  200. 木島喜兵衞

    ○木島委員 行政のたてまえというお話が出ました。わかりました。これから議論をいたします。  いま私は、ここまで申し上げましたことは序論と申しました。今日この審議をやっている中におけるところの奇怪なる現象、一つは、財政的に苦しい中で要求もしないのに賃金を出すなんというような奇怪な現象、だれもが金が欲しいというのに、それをストライキまでやって要らぬと言う奇怪なる現象、そしていままで主任があって、平和に円満にやっておったのに、それを制度化し、賃金をつけるという奇怪なる現象、人確法が円満に満場一致でできたものを、その配分でもって二回も流れておるという奇怪な現象、こういう奇怪な現象というものは、常識的にはなかなか通らない。通らないが、そういうことが起こるのは一体何か。私は、ここに教育行政の根の深さというものを感じます。  文部大臣、三木内閣ができたときに、民間学者の永井さんが文部大臣になりました。あのとき三木派の一人でもあり、そして官房副長官でもありました大臣、永井さんはなぜあのときに、いかなることが大臣になる一番中心の課題として登場したのでしょうか。
  201. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 それは、そのときの任命権者である総理大臣が、永井さんが文部大臣に適任である、こう判断をして任命したのだと考えます。
  202. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それは不適任だと思って福田さんがあなたを任命したわけじゃない、それは常に大臣、そうですわね、どんな場合でも。だが特に、いままでずっと、二十七年までは民間学者大臣が多かった。昭和二十七年から岡野清豪以来ずっと政党大臣が続いてきた。そこへぽこっと学者大臣が入りました。その三木さんのねらいは何であったのだろうかということです。
  203. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 打ち合わせをしてきたわけではありませんので、ここから先は私の推測になるわけでありますけれども、三木さんの物の考え方の中には、教育というものは児童・生徒のために真っ白な静かな雰囲気で勉強ができるように、学校というものが教育効果を上げていくようなものでありたい、こういう念願を持っておる人でありますから、そういうことを考えつつ周辺を見回して、永井さんが一番適当であろう、こう判断して任命したものと私は思います。
  204. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そのとおりだと思います。教育を政争の場から静かな場にするとして、三木さんは永井さんを任命いたしました。その物の考え方は、大臣、いまもあなたはその後を受け継がれたわけですけれども、賛成ですか。
  205. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 私も常にそう願っております。
  206. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そういう意味では海部文部大臣も、永井さんのたとえば四頭立ての馬車とかそういうものを踏襲しながらお進めになっていらっしゃるところに敬意を表しております。その永井さんが政争の場から静かな場にと、最大な任務を持って登場して、そしてこの主任問題によって静かになりかけたところの教育界に再び政争への道を開いた、まことに皮肉なことだと私は思っておるのです。大臣、その当時官房副長官でいらっしゃいましたが、これはいま私がお聞きすると、あなたは大変答弁しづらい要素がありますけれども、政争の場から静かな場にと言った三木さんのその願いによって文部大臣になった永井さんが、皮肉にも政争を激化し、この法案が二度も流れるような状態にせしめられたのは一体何だったのでしょうか。大変お答えしづらいかもしれませんが、いかがですか。
  207. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 私は永井前大臣から仕事の引き継ぎを受けましたときも、必ずしも永井さんになって政争が激化したとは感じませんけれども、この問題と限定されますと、やはり永井さんの考え方といいますか、あるいは文部省の考え方というものと、それから一部の教職員組合の方々の御理解との間にかみ合わない点があったといいますか、言葉をかえて言うなれば十二分の御理解をいただくことができなかったことがまことに残念なことであった、私はこう考えますし、永井さん自身ももっと理解していただけるように努力を続けられたかったろう、私はそう推察をしております。
  208. 木島喜兵衞

    ○木島委員 全く同感であります。永井さんはこの国会の審議の中で絶句をしました。涙も流しました。この問題に絡んで局長が左遷されました。政務次官が辞任をいたしました。そういう時期がありました。今村初中局長、なったばかりで文化庁の次長に行ったでしょう。山崎政務次官がそのときにやめたでしょう。そういうことがありました。  私は、永井さんが出たときにこう言ったのです。いままで自民党の文教政策に対してあの方の多くの著書、あるいは論説や論文の中で今日の教育行政を批判してきた、その自民党の内閣の一員になったときに、まさにそれは厚木飛行場におりたマッカーサーの心境であろうと同情を申し上げたのであります。永井さんが、永井さんの思想を生かすことができず、自民党の押しつけの中で、政争の場から静かな場にと願いながら登場した永井さんがその道を進ませられていったからこそ、涙を流したのです。私は、永井さんに申しました。あなたの今日までの人生、あの学業、あの学績、それを文部大臣という最高の地位について、彼が述べたところの教育行政はできないにしても、反対のことをあなたがすることになったならば、あなたという今日までの学者永井道雄は、今日までの学問的な実績は、すべて死んでいくだろう。あなたは再び同じ論文を、同じ著書を書くことはできないだろう。今日までのあなたの主張というものを全面的に否定をせねばならなくなるだろう。そうしてそのことは永井道雄一人じゃなくて、今日の政治に対し、行政に対して批判した者が最高の責任者になって、そのことと逆のことをやることによって、もしも国民が、批判とは単なる実現不可能な、批判のための批判ということになったならば、それはまさにあなたの一番恐れるところのファシズムへの道を開くことになるのではないかとすら私は申しました。  いまそのことを言おうと思っておりません。たまたまこの主任問題が起こったあのとき、海部文部大臣は副長官としてスト権ストの中で大変に御奮闘なさいました。あのとき三木さんはある一つの案を持っていらっしゃったようでありますけれども、自民党によってそのことはできませんでした。その辺はあなたがよく御存じだろうと思う。そしてこの主任についても、永井さんはある見解を持っておったが、そのことを自民党の圧力というものの中で捨てざるを得なかったことは、これは私はあなたにいま聞きません。いまこういう公の席でそういうことはなかなか言えないことでしょう。けれども、そこに問題があるのだ。行政のたてまえと先ほど人事院総裁がおっしゃった。教育行政のたてまえとは一体何なんだろう。教育行政のたてまえは、人事院総裁さっきおっしゃいましたけれども、その基本とすべき法律の条項は何でしょう。人事院総裁、どうですか。
  209. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 教育というのは、私からるる申し上げる必要もなく、子供を教育して、将来りっぱな国民として、社会人として育てていく、そのための活動全般を指すものだと理解いたしておりますが、その教育の仕事の中では、ほかならず、やはり教員にその人を得るということが一番の眼目ではないかというふうに考えております。
  210. 木島喜兵衞

    ○木島委員 専門でない人事院総裁にこのことをお聞きすることはないのでありますけれども、先ほどあなたは、いろいろあるけれども、教育行政のたてまえとしてやらなければならぬとおっしゃったから、しからばあなたは教育行政のたてまえとは一体どのように理解していらっしゃるかと思って、実はお聞きしたわけです。  法規的に言うならば、教育基本法第十条であります。教育基本法第十条は、教育行政の項としてうたっております。「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」とあります。第一項と第二項がありますが、第一項は、言うならば教育行政の前文のようなものであります。不当の支配に服するということは、もう余りこういう講義をするのはあれでありますが、それにはいろいろと議論がありますけれども、少なくとも学者の中で共通し、だれもが一致するものは、公権力の支配であります。明治教育に対するところの批判から、教育は不当の支配に服することなく、公権力の支配でなくて、そうして国民全体に対して直接責任を負うのです。政治はすべて国民全体に責任を負いますけれども、直接責任を負うということは何かと言うと、言うならば四権分立的なものであって、他の一般の政治と違って、教育に関しては直接国民の意思が通じ合うということが十条の思想です。ですから、自民党の政府が自民党の物の考え方でもし行政をなされるとするならば、まさに不当の支配と言わねばならぬでしょう。その歴史がずっと続いてきた、その一環にこの主任があると私は考えます。大臣、よく日教組と文部省とか政府とかいうのは、ずいぶん対立的に言われますね。しかし、日教組と文部省のみつ月時代があったのです。御存じですか。敗戦後、あの明治教育の批判から、反省から、文部省も日教組も新しい教育をつくろうという立場では完全に一体でありました。まさにみつ月時代でありました。そういう時代が、わずかではありましたがあったのです。それがいつか現状のように分かれる時期、対立する時期が来ます。その出発は一体何だったのであろうか。まあ、教育論争だけじゃいけませんから、余り一々聞きませんよ。少なくとも朝鮮戦争を契機として憲法改悪だとかあるいは再軍備ができたとき、あるいは昭和二十八年の池田・ロバートソン会談によって、日本の国の憲法というものがいま国民の中に支持を受けておる、その中でもって再軍備ができないならば、広報と教育をもって国民の防衛意識を高めようというあの池田・ロバートソン会談以来、先ほど申しましたように、昭和二十七年まで「不当な支配に服することなく」という教育基本法第十条の思想に基づいて学者大臣が続いてきておったのが、昭和二十七年に岡野清豪以来、政党の大臣になります。そしてそこから、たとえばこの問題につながるならば、教育委員会が公選制から任命制になったのは昭和三十一年。翌年三十二年に校長を管理職にして——自民党の文部省の物の考え方が県の教育委員会、市町村の教育委員会、翌年校長に、そして教頭が今日の主任のように省令化されます。四十九年に教頭が法制化されます。そしてこの主任。自民党という一つの政党が教育を支配し始めてから、実は日教組と文部省の対立関係が続いてきた。政争の場から静かな場にしようとするときに、政争になぜなったかというその原因を排除せずして、静かな場に返ることはできないでしょう。その教育——先ほど人事院総裁が教育行政のたてまえからとおっしゃったから、私はあえてこれを言うのでありますが、そのたてまえ、教育基本法第十条のそのたてまえというものを原則に考えたときに、この主任というものが一体いかなる教育行政の流れの中から、不当の支配だと私は断ずるのでありますけれども、そうでないならそうでないという御議論をいただきたいと思いますが、その中から出ておる。そのことがあるから、私はあえて先ほどから局長に、このような奇怪な現象が生まれた、生まれたものは一体何か、そのことを抜きにしてこの問題の解決はないであろうという立場で御質問を申し上げておるのであります。何かこれは御意見があれば、お聞きする範囲で結構です。
  211. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 先ほど永井前大臣のことについて、るる御指摘がございましたけれども、私は、実は昨年の九月から自由民主党の国会対策委員長という立場に立ったこともございますが、当時の永井文部大臣が私に、まさか私が次の文部大臣になるということは全然予測しないでおっしゃったことでありますけれども、この主任制度の問題については、海部さん、大変な誤解があって、なかなかうまくいかない、誤解を解くように一生懸命努力をしておるけれども、国会対策の方でもこれはしてほしい。そのとき永井さんのおっしゃった誤解というのは、こういうことだったのです。これは別に国家権力で統制を強めようとか、えらい人をつくろう、という表現をされましたけれども、えらい人をつくろうとか国家権力で統制しようというのでは絶対なくて、子供のために学校が明るい伸び伸びとしたものになるように願ってしておることであって、そこのところの誤解が解けなければならぬということを盛んに言っておられたことを、私はいま先生の御質疑を承りながら思い出しておったのであります。昨年の暮れ私が文部大臣を命ぜられたときに事務の引き継ぎを受けたわけでありますが、そのとき永井前大臣がやはりたった一つ気にかかっておったのは、これがまだそのまま残っておるけれども、このことについては決して管理ではない、指導、連絡調整であるということを私にも強く言い残して行かれたわけでございます。そういう意味で、これはやはり教育の場を考え、しかもそこで授業を受ける児童・生徒のために、より一層学校教育というものが効果を上げ、学校活動というものが円滑に行われていくことを永井前大臣願っての心情であり、発言であり、行為であった、私はこう理解をし、受け継いでおりますので、このことをちょっと申し上げさせていただくわけであります。
  212. 木島喜兵衞

    ○木島委員 この辺は本来文教の中でもってやるべきことでありますから、多くを申しません。私は私なりの物の考え方を、しかもこれは今日まで文教委員会の中でずいぶんと永井さんとも議論をしてきたことでございます。そしてその間において、私は永井さんの著書や論文等をもとにして、あなたはこのときこう言ったでしょうということを言いながら来たのですが、これはまあ、きょうは……。  しかし、いずれにせよ、大臣も先ほどおっしゃるように、教育界を政争の場から静かな場に持っていこうとする。しかし現に政争化しておる。だから二回もこの法案が流れた。しかし、ここで何らかの打つべき手、考えられる手段というものはないのだろうか。こういう状態は好ましくない。とすれば、何かみんなで考えて知恵をしぼる、そういうものがないだろうか。藤田長官、どうお考えになりますか。
  213. 藤田正明

    藤田国務大臣 法案を通していただくことだと思います。
  214. 木島喜兵衞

    ○木島委員 法案を通すか、通さないことでもって二回も流れているのですよ。そのことから現場が混乱しておるのです。それを通して押しつける。鎮圧をする。それが混乱をなくするといま長官はおっしゃったのでございますか。
  215. 藤田正明

    藤田国務大臣 政府といたしまして法案を提出した立場でございます。ですから、ここでいい知恵はないかと言われましても、私の方といたしましては、もうなるたけ円満に、これはひとつ法案を通していただく以外にはいい知恵はない、もしいい知恵があるのなら本当に教えていただきたい、かように思います。
  216. 木島喜兵衞

    ○木島委員 法案そのものには、先ほども申したとおり、だれもが反対ないのでしょうと言っているのですよ。法案を通すに連動するものがあるところに問題があるわけでしょう。法案を通す、いい知恵があるかどうか。法案以外のことなら話し合いの場がありませんか、考える余地はありませんか、そこを聞いておるのです。法案を通せばいいのではありません。法案そのものは議論のないところです。各党そうでしょう、法案そのものは。
  217. 藤田正明

    藤田国務大臣 昨年から人事院の勧告を受けまして、そしてまた本年も人事院の勧告を受けました。廃案に二度なったことも知っておりますが、そういうことで、人事院の勧告を受けまして今回総理府としてああいう形で法案を出さざるを得なかった、こういうことでございますので、私の方といたしましては、ぜひひとつ法案を通していただきたい、かようにお願いする以外に道がないと思います。
  218. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、長官、法案というのを通すのは簡単なんです。その背後に一つあるものがあるから、もめているのです。そのことは法案と関係ないのだから、話し合おうと話し合いませんか。あなたはある一つの主導権を握って、あるいは文部大臣は文部大臣でもって、教育は今日少なくとも平静だとは言われません。静かな場だと言われません。その静かな場にするために、こうしようじゃないか。そういうことが、あるいはある意味で政治と言うのかもしれません。そういう意味じゃないだろうか。どうでしょう。
  219. 藤田正明

    藤田国務大臣 政府の方といたしましては、これはこの法案を三本提出したわけでございますが、これに付随するところの人事院規則による主任手当の問題、これがいま先生からいろいろ御指摘も、また御批判も受けている次第でありますけれども、しかし、これらにいたしましても、文部当局と人事院の方でいろいろお話し合いの上でこれらもおやりになったことと私どもは考えております。ただ、総理府総務長官といたしましては、提出しました法案を通していただく、これをお願いする以外にない、かように申し上げておる次第でございます。
  220. 木島喜兵衞

    ○木島委員 人事院総裁、これはどうなんですか。人事院というのは、どうして生まれたのですか。
  221. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人事院制度というのは、人事行政の公正な運営を確保する、これによって国民に対して行政の能率的な運営を保障するという大きなねらいのもとに設立をされたものでございますが、これは任用上の問題あるいは給与上の問題、その他諸般の分野にわたっておるわけでございます。いま当面問題になっておる論点にしぼって申し上げますと、公務員についてはいろいろな制限がある、特に労働基本権につきましては制約がございます。そういう点の一つの見返りとして公正な人事行政というものを推進していく、また公務員の待遇というものを客観的、合理的に確保していかなければならぬ、そのための機能を果たすための一種の第三者機関として設立をされたというふうに私は理解をいたしております。
  222. 木島喜兵衞

    ○木島委員 人事院がなぜ生まれたかということを申し上げたのでありますが、要するにマッカーサー書簡によってスト権を公務員から取ったから、本来労使という関係だけで言えば、それは団体交渉なり、あるいはときにスト権を含めながら交渉して自主的に決めていくという形が一番好ましい、けれども、公務員という一つの制約があるから、いま私はいい悪いは別として、スト権をなくした、したがって、それでは労働者の保護ができないから、すなわち国家公務員法第三条でも労働者の保護をうたっておりますね、その立場からの代償機関として人事院というのがあるわけです。すると、先ほどの新井さんの御質問にあなた御答弁になったように、今日そのように両者が対立しておる。文部省から要求があった、しかし、それはできないから、野方図じゃいけないから、あなたさっきの御答弁では、そこで制度化すればそれは出しますよとあなたは答えた。代償機関というのは両者の対立があって、本来スト権でも自主的に解決すべきことが一番労使の関係では常態であります。いまスト権をどうのこうのは言いません。最大なるところの労働組合が反対をしておるときに、一方の文部省の要求を入れて、そして実施をする、そのことによって、やっと静かな場になりかけたところの教育の場が今日政争の場に化しつつある、このことは人事院総裁として、人事院が生まれたときの趣旨、そのことからいって、問題をお感じになりませんか。
  223. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 主任の問題をめぐりましていろいろな問題が起きておるということは、十分承知をいたしております。こういう問題についていろいろ物議が起きる、あるいは教育界にいわゆる混乱が起きるというようなことは、まことに遺憾千万なことでございます。したがって、人事院の立場といたしましても、こういう問題の処理に当たっては十分基盤が整備された上で円滑に実施をされていくということが望ましいことは申すまでもないわけであります。そういう意味合いから、先刻来お話がございますように、文部省でもいろいろ努力もせられて、経過がずっと続いて今日まで来ておるわけでございます。ただし、いまなお教育界というものが非常に鎮静化して落ちついた形になっていないということは、遺憾ながら現実の姿でございます。  そういう意味合いでは、人事院といたしましても、いろいろ考えさせられるところがあることは事実でございますが、先刻来申し上げておりますように、教育行政の面というものを無視するわけにはまいりません。特に責任の当局者でございます文部省がいろいろの点から御検討になって、このようにやりたいというふうにおっしゃられれば、その内容を検討した上で是認できることは、また納得のできることはそれを制度化していくということはやむを得ない仕儀ではないかというふうに考えておるのであります。しかし、なおこの問題をめぐりまして、事柄が十分鎮静化し、また納得が得られて、円滑な形で事柄が処理されていくということが望ましいことは、人事院の立場としても異論のないところであることは申すまでもございません。
  224. 木島喜兵衞

    ○木島委員 今日の状態が遺憾な状態である。遺憾な状態をつくっておる一つの原因は、人事院が主任手当をつくるというところにある。遺憾な状態をみずから導き出しておって、いまさら遺憾であるということでは済みません。遺憾な状態をつくったところの人事院総裁、その責任においてこの問題を処理するところの知恵はありませんか。
  225. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 主任の問題はいろいろ長い間の経過がございまして、制度化の点において文部当局としても踏み切られて、省令を出されたというようなことがございます。  われわれといたしましても、従来のような非常に雑多なかっこうの主任制度では困るということで、これを整備したかっこうでひとつ合理的にやっていただきたい、その制度化の都合を見た上で、これに対して給与上の評価をどのようにやるかということは考えようではありませんかというようなことを申し上げまして、文部省もそれに同調して、ああいう措置を講ぜられたということが基礎になっておりまして、今日まで至っておるということが御承知のような経過でございます。その後いろいろこれを中心として問題が出てまいっておりまして、先刻来いろいろお話が出ておりますように、過去において廃案になったのが二回ということも現実の姿でございます。  こういう意味からいたしまして、その点自体は非常に異常なことであり、残念至極であるというふうに思っておりますが、やはり人事院といたしましてはいろいろな角度から問題を検討いたしまして、ぜひひとつこういうことでお願いをいたしたいという結論を出しまして、昨年これに関する勧告ないし報告としてお出しをいたした次第でございますので、できる限り早い機会に本問題を盛り込みました法案が成立をいたしますことを心から希望をいたしております。私自身といたしまして、何かこの問題についての解決のための名案というようなことは、名案も事実上ございませんし、考え得る範囲内ではないということを申し上げなければならぬと思います。
  226. 木島喜兵衞

    ○木島委員 行政の立場、あり方等も考えなければならぬと言うけれども、文教行政のあり方その他は文部省が考えることであって、あなたが中心に考えることじゃありません。それを考えることはむしろ越権的行為だ。ではなしに、あなたの、人事院の第一の任務は何かと言うなら、スト権をなくしたところの労働者と使用者の関係において代償的機関としてどうするか。たとえば公共企業体等は調停委員とか仲裁委員があります。そういう性格も最も大きく人事院は持っておるわけでしょう、その発生の由来からして。文部行政のあり方とかそんなものは、あなた方が第一に考えることじゃない。にかかわらず、そのことから今日の教育の混乱が生まれておる。それを、これを早く通して主任手当を人事院規則で出せばそれが一番いいのだからぜひそうしてください、あなた方が投げた一石でもって今日教育界は混乱しておる。混乱しておるのに、そのことを早く通してください、そこで平和になると言うと、先ほど言った鎮圧しかないじゃありませんか。鎮圧の思想です。だから名案はないかと言っているのです。知恵がないかと言っているのです。私は、なくはないと思っている。
  227. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、ただいまのところ、私自身としてそういう立場にもございませんし、名案というものを持ち合わせているわけではございません。
  228. 木島喜兵衞

    ○木島委員 さっきの質問にもう一回戻りますけれども、両者が対立しているときに、公共企業体等では調停委員や仲裁委員があって、俗に言われる言葉だけれども、足して二で割る式のものが出る。これはそうじゃないのですね。一方に手を挙げて一方は全然聞かない。それは何でだと言ったら、行政のたてまえだ、そんな行政のたてまえ、行政のあり方はあなたが考えることじゃない。ですから、そういうことをやるところに、人事院が代償機関という人事院の本来の生命というものを失った自殺行為をやっているのじゃないのか。人事院の自殺行為じゃないのか。こういうことを繰り返していったならば、一体人事院というものは公務員から信頼されるだろうか。一昨年スト権ストのときに大臣が大変に御苦心なすったが、それならやはりスト権をよこせと労働者はなってくる。そして一昨年大臣が大変苦労なさったようなことになってくるのじゃないですか。人事院が代償的な機能というものをみずから失ったら、おのずからそうなるでしょう。そこが人事院としての生命なんだから、それを失ってはならないと思うのです。これは人事院のあり方として基本的な問題だからお伺いしているのです。
  229. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 お話がございましたように、人事院の代償的機能というものは制度本来の基盤でございます。その点は私も肝に銘じて、よくよく承知をいたしておるつもりでございます。そういうつもりでいままでも仕事をやってきておりますし、今後もそういう態度でもってやっていきたいというふうに考えております。  ただ、この主任の問題というのはいろいろ御議論がございます。問題とする立場、立場でいろいろむずかしい御議論があることもよく承知をいたしておりますけれども、これはやはり一種の教育行政のたてまえ論と言いますか、そういうところから出てまいったものであるというふうに承知をいたしておるわけでありまして、それはそれとして、やはり人事院の立場としても、それについての給与的評価をやっていく、どういうふうにやっていくかということを種々検討いたしました結果、このような結論に相なった次第であるという点について御了承を賜りたいと思います。
  230. 木島喜兵衞

    ○木島委員 先ほどから行政のたてまえと言われます。行政のたてまえで言えば、そしてあなたの先ほどの御答弁で、文部省は主任に手当を出してくれと言った。たくさんあるので、そうまんべんなく出せぬから、したがって、しぼって制度化してくれと言った。そこでできたのが省令である。したがって、それを中心にして手当を出すとおっしゃいました。  行政のあり方として必要であるというものがあった場合に、それは人確法の予算でつけるべきものなのですか。一般勧告の問題ではありませんか。仮にそういうものが必要である、人事院の中に新しい職制ができる、総理府の中に新しい職制ができる。それはその職制に応じて仕事の内容、困難度や責任の度合いによって給与を上げねばならぬ、新しい給与をつけなければならぬ、新しい手当をつけなければならぬ。これは一般勧告の部類に入るべきものではありませんか。人確法の予算を使うということは誤りではありませんか。
  231. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 財源をどのように求めるかということは、議論としてはいろいろあると思います。ただ、人確法の場合は法律一つの柱になっておる、それと並行して計画的にこれの実現を図らなければならぬというようなたてまえもございまして、財政上の裏づけが同時になされるという、非常に他の場合とは異なった措置が講ぜられてきたわけであります。  それが第一次、第二次、第三次にわたって行われてまいりましたが、初めは本俸中心でもって事柄を処理してきた。しかしそれだけでもって押し通しまする場合におきましては、やはり他の公務員との間の均衡論その他でもっていろいろ限界が出てくるというようなことがございました。そういうような点も配慮をしながら、その後は教員の特別手当というようなことも考えましたし、また昨年の場合には四つの柱というものを立てまして、ひとつ措置をお願いいたしたいということを申し上げた次第でございます。  予算措置も講ぜられていることでもございますし、人確法に基づいて一連の給与改善措置というものを内容といたしておりますので、私どもといたしましては、やはり人確法に基づく予算措置の範囲内においてこれを措置することは間違いではないというふうに考えております。
  232. 木島喜兵衞

    ○木島委員 おっしゃるように、人確法では予算をつけたり、あるいは計画的にと言ってそれは人事院勧告に任していますね。けれども、いまあなたは予算とおっしゃった。予算をつけたときに、義務教育の特別手当だとか、主任だと幾らだとかつけたのじゃないでしょう。第二次に特別手当が出ました。あの予算をつけたときに、特別手当を幾ら幾らだと言って予算をつけたのじゃないでしょう。今回もそうでしょう。二・五%は、主任は幾ら幾らだとつけたのじゃないでしょう。そこです。言っているのは。
  233. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 これは人確法の国会審議の過程においても、いろいろ議論が出ておったことというふうに承知をいたしておるのでありますが、結局、いろいろ議論はございましたが、人確法に基づく義務教育教員の待遇の問題については、人事院に具体的な内容はお任せいただくということに相なったと承知をいたしておるわけであります。そのことが法律上の文言でも明らかに相なっておるのではないかというふうに考えております。  と申しますのは、給与の内容というものは、非常に総合的に事柄を考えていかなければなりませんし、いろいろな点の均衡問題その他もございますので、そこはやはり一種の専門的、技術的な問題として人事院にお任せをいただくことが適当ではないかということでそういうふうに相なっておるというふうに考えております。したがって、いまお話のございましたように、全体の予算の枠というものはございましたけれども、その内容は、本俸が幾らとか特別手当が幾らとかあるいはその他の手当関係が幾らとかいうような限定はございません。その点は、人事院として、給与専門の立場としていろいろ検討もし、また責任当局である文部省の御意見等も十分に参酌をいたしました結果、こういう結論を出したということでございます。
  234. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、あなたさっき予算でもってあるからとおっしゃったけれども、予算じゃないんですね。プールでもって、おっしゃるとおり、中身は人事院に任したのです。その任したときに、新しい制度、新しい職制ができたとすれば、それは人確法はないということにつながるでしょう、人事院の役所に人材確保法はないのだから。しかし、総理府に新しい職制ができれば、そういう人材確保法はないのだから、人事院の原則からすれば、そこに賃金を新しくつけなければならぬとすれば、それは一般勧告の中に入るべき分類のものでしょう、人事院の一般的なあり方として。人材確保法というのは一体何かと先ほどお聞きしたのです。賃金を上げて、そしていい人材を教育界に集めようというときに、いやがるものを押しつけるから人確法にならないとさっき言ったのだ。そのことの議論をいま除いても、新しい制度、新しい職制ができて、少なくともそこに必要なのは一般勧告じゃないですか、人確法の趣旨に沿った予算の使い方じゃないじゃありませんか、こう私は言っているのです。
  235. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人確法の精神に沿うか沿わないかというのは、これは立場、立場で議論の存するところでございます。私たちは、これが趣旨に反するものだというふうには考えておらないということでございます。したがいまして、一般的な教員給与の改善ということだけじゃなくて、人確法に基づく給与改善は目下行われておることでもございますので、そういう意味で昨年の勧告においては四本柱を立てた。それの一環としてやっておることでございますので、これは一般勧告でなければならぬというふうには考えません。
  236. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ぼくはそう考えるが、あなたは見解が分かれると言う。あなたの見解を聞きましょう。私はそうだと思いますが、あなたはいろいろ見解があるところだとおっしゃる。見解があるということだけれども、見解をおっしゃらないのだから、見解をお聞きしましょう。それで、私がああそうですかと納得すれば結構です。私は私の見解を述べた。あなたは見解がいろいろあるところだとおっしゃるが、いまの問題に関しては、あなたは見解をお述べになっていらっしゃらない。見解をお聞きしましょう。
  237. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 これは、人確法に基づいては第三次にわたって勧告を行ってまいりました。第一次、第二次と、第三次は昨年出したわけでございまして、その内容といたしますことは、最初は本俸関係である、その次は本俸と特別手当というようなことで措置をいたしました。第三次においては、繰り返し申し上げておりますように、四本柱を立ててこれの内容としてやったということでございまして、一般勧告でなければならぬというものではない、私はかように解釈をいたしております。
  238. 木島喜兵衞

    ○木島委員 なければならないわけでないという理由を私は聞いているのです。さっきから繰り返しますが、人事院の中に新しい職制ができたときに、そこに何らかの手当や何かしなければならぬとするならば、総理府に何か新しい制度ができたというのなら、それは一般勧告でしょう。公務員全体の原則でしょう。人確法というのは、賃金を上げて教育界にいい人材を集めようという趣旨からすれば、そういうものに使うべきものであって、人事院は、どの省だって新しい法律でやるのだから、一般勧告でやるのだから、そういう性質のものじゃございませんかということに対する反論があったら反論してくださいと言っているのです。
  239. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人確法というものがありませんければ、制度改正に伴って何らか給与的な評価をやらなければならぬという必要性ができた場合に、これは一般勧告あるいは報告でもってやるという場合が多かろうと思います。ただ、この場合は、人確法という法律があり、また、その裏づけとなる予算措置も講ぜられておるということでございます。また文部当局からも、第三次の勧告については内容としてこういうものを盛り込んでいただきたいというような意見の申し入れ等がございました。そういうことも踏まえまして、連動したものとして四つの柱を立ててやったということでございまして、これは人確法に基づくものとして措置をするということの合理的な根拠があるというふうに考えております。
  240. 木島喜兵衞

    ○木島委員 事情はわかりますよ。事情はわかって聞いているのだから、あなたの苦しい立場はわかります。しかし、そういう意味では、原則というものをきちっとしておかないと、まあ仕方ないから現状でもってこうしようかというようなことがあってはならないと私は思っているのです。たとえば先ほどの特勤手当、局長から話がありました。主任手当は本当に特勤になじむと思っていらっしゃるのか。そう言えば、と思いますとおっしゃるだろうが、本当に思っているの。
  241. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答えします。  特殊勤務手当の性格でございますが、現行給与法十三条の定義の中に、二つに区分して、性格分けをして現在特勤手当ができております。困難である部類とそれから危険、不快、不健康という部類とございます。高いところへ上がったり、あるいは水の中にもぐったりという、こういう危険であるとかあるいは不快であるとか、そういうグループと、それから職務の中身が困難である、むずかしいということとの関連と、二種類に分けて現に規則を運用いたしてございます。  それで、その中の教員の関係で申しますと、先ほども御説明いたしましたようなそういうグループがございまして、それが適当であるということで特殊勤務手当としてお願いしておる、こういうわけでございますが、これはもともと、もっと振り返って申しますと、何か特別な職務内容の困難ということで付加するものとしての給与上のやり方としては、本俸のほかに調整額でありますとかあるいは特別調整額でありますとか、そういう調整の仕方がございます。それで、それぞれどうであろうかという検討をもちろんしてみたわけでございますが、教員のために、特別手当のほかに給与法に特段にもう一条起こすことが妥当かどうかということも検討したわけでございますが、現に特勤の中にそういうグループがありまして、それでいける、妥当であるということで結論を出したわけでございます。
  242. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、その妥当だという結論の理屈を聞きたいのです。著しく困難ですか。特勤は著しく困難ですね。いまおっしゃるように、二つに分類すれば、著しく困難。主任は著しく困難なんですか。
  243. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 「著しく」という程度の問題であろうかと思いますが、同じく校務の分担の中で、特にそういう主任の中でも同僚の職員、教員に対して連絡、指導、調整という、そういう御苦労をなさるということは、ほかの関係とは違うということで特に困難、こういうふうに解釈いたしております。
  244. 木島喜兵衞

    ○木島委員 わかっていますよ。ただ、私が言いたいことは、少なくとも法律の趣旨に反することを、疑わしいことを、便宜的に、勝手に行政がやっちゃいかぬということです。法律に厳しく著しいとかそういうことが書いてあるが、そのことは、いまの立場で言えば事情はわかりますよ。けれども、あなた方だってこれは特勤になじむかなじまないかはいろいろ議論なされた、検討なさったのでしょう。けれども、少なくとも法律の趣旨に反する行政があってはならないと思う。法律軽視、法律無視のごとき印象を与える行政があってはならない。法律無視あるいは軽視などということは、立法府の軽視、無視につながるからだ。私は、そういうことがなされる、無理してもせねばならない、そこに、最初に返りますけれども、幾つかの奇怪なる現象が起こるところのものもまたよって来ているだろうと思うのです。  著しく困難、ちょっと中身を聞きますけれども、もし主任手当をつくるならば、これは先ほどの局長のお話でございますと、省令化された主任を中心にして、まだ固まっておらないというお話でございますが、すると、いままであった主事にはつけるのですか、今度省令化された主任がありますね。そのほかに、いままで主事というのがありましたね。主事にはつけるのですか。
  245. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 省令化されました、制度化されました主任の中で、主任、主事というような名称の違いはありますけれども、いずれにしても省令の上で連絡調整、助言、指導、こういうことをなさる、そういう職務内容、それに対する御苦労、こういう結びつきになってございます。したがいまして、そういう実質的な御苦労を伴う職務に対して手当てをしたい、こういうつながりでございます。
  246. 木島喜兵衞

    ○木島委員 したがって、たとえば具体的に言えば進路指導主事だとか保健主事とかありましたね。それにつけるのですか。
  247. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 現在省令にある中で、たとえば生徒指導主事と言いましても、中学校の場合と高校の場合と、その間に職務の内容に若干違いがあるのではないかというようなことも伺っておりまして、その辺、大変細かい問題でございますが、検討いたしております。
  248. 木島喜兵衞

    ○木島委員 すると、省令にある主事、主任の中でも手当のつく者があり、つかない者がある。現に学校では大変に数多くの主任がある。それはつかない。そして、そのつかないかつくかは、著しく困難であるか否かということによってつくかつかぬかになるという論理構成になりますね。
  249. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 たとえば、学年主任というものがございます。小学校で申しますと教務主任、学年主任というのが主力であろうと思いますが、学校の規模といいますか、学級数等に非常に開きがございます。やはり同じ学年でありましても、学級の数によって学年主任の方の連絡調整、指導、助言という御苦労の程度において違いがあるとするならば、その辺はどういうことになるかという検討をいたしております。そういうことで、省令化されましたものが全部どうかというところまでまだ詰めておりませんが、その辺はいま検討をいたしております。
  250. 木島喜兵衞

    ○木島委員 たとえば給食の主任なんというのは、これは大変に困難な仕事なんです。私は、人事院というものの仕事は、給与に関しては均衡論に立っておると思うのです。民間とか生計費とかとの均衡です。具体的な教育の場合に、どれが困難であり——同じ主任でも省令にあるないにかかわらずなんだから、そのことは、実は人事院が決め得るところの能力が元来あるのかどうかとすら思うのでありますけれども、しかしそれは人確法において人事院に任している。だから私がさっきから言っているのは、その人確法の趣旨と主任というものは元来性格が違う。新しい制度というものは違うのだから、全体的に上げるということに使うべきものであって、人事院がどれが困難であるか、どれが困難でないかと言うことは、大変失礼でありますけれども、本来皆さんは専門でないのだから、なかなかおわかりにならない。しかしそういうものは皆さんに任している。そこで皆さんは、文部省に聞くと言う。文部省に聞いてやったことが代償機関として一体どうなるんだ。文部省の言うことだけ聞いて、一方にこういう反対があるんだということになるから、私はいま人事院のあり方全体として問題があるのじゃないかとお聞きをしておるのです。  時間がありませんから、次に進みます。  初中局長、大体市町村でもみんな主任は省令によって発令しているのですか。どのくらい進んでいますか。
  251. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 県立学校につきましては、東京、神奈川、大阪、京都、沖繩の五都府県がまだ規則が制定されておりません。それから市町村立学校につきましては、いまの五都府県のほかにまだ残っておりますのが、新潟とか長野とか福岡とかいう県でごく一部の市町村が残っておりますし、兵庫県の全市町村が残っておるということで、その他の県立学校、市町村立学校については規則制定が終わっておる、こういう状況でございます。
  252. 木島喜兵衞

    ○木島委員 その教務主任は、大体どんな人がなっていますか。
  253. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 教務主任につきましては、五十年の一月に調査をしたものがございますが、大体年齢で言いますと平均して四十六歳、これは小・中・高を通じて同じでございます。そして経験年数がしたがって二十四、五年、それから平均して教務主任としての経験年数は二年くらいというのが標準でございます。なお、つけ加えますと、その前に学年主任とか生徒指導主任とか、こういう主任の経験を持っておられる方が多いように思われます。
  254. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、これももう余り声を大きくして言いませんけれども、やはり中間管理職にしないとか連絡調整とか言うけれども、たとえば教務主任というのは実態としては第三席がなっているということですね。皆さんがおっしゃる理念はどうあれ、実態としては中間管理職的な人たちが具体的になっているということになりますね。教務主任は第三席がなっている。そして教務主任になった者は、いまおっしゃったように、学年主任を何年かやったということになると、今日この問題を通して混乱があると言った、その混乱のやはり一番憂えられておるものが実態としてあらわれておるということになるのじゃありませんか。素直に、どうですか。
  255. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 ただ、その点はこれまでも申し上げておりますように、校長、教頭というものが学校の管理運営の責任者ということで、言ってみれば管理的側面を受け持っておられる。それに対して、教務主任の仕事自体は、時間割りの編成であるとか各先生間の相互の調整であるとかいうことで、これはこれまでの御審議の過程でも教務主任というものはそういう管理職的な仕事をするのじゃない、こういうことであり、われわれもそういうふうに考えておるわけでございますから、これを制度化したからといって、お言葉のように教務主任が第三席的な、いわば管理職的なものになるというふうには考えておりませんし、またそういうことはあってはならないというふうに思うわけでございます。
  256. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いままで、制度化以前においても、たとえば教務主任なら教務主任があって、いま言ったように第三席的な方がなっていらっしゃった。それを制度化し、手当を出す。その目的は、どのようにおっしゃっても、実態的にはやはりそこにあえてするものは一体何かという危惧は、批判側が言っておることとあわせ考えると、問題点は依然として残ってきたし、実態としても残ってきた。具体的に芽が出てきたと思う方が素直ではないでしょうか。  時間がありませんから、次に局長、あなたと私との間でずいぶん議論をしてまいりましたところのABC方式、まあ議論しましたからいいですよ。ただ、私、これはあえて永井さんのみそだと思うことは、そして永井さんの中間管理職にしたくないという意図もあって、そこにむしろ逆に、あなただろうと思うけれども、役人の知恵も入って、あそこに「校務分掌」という言葉が入った。いままでの主事の中には、校務分掌の場合もあるのだが、「校務分掌」とは入っておらない。入れたものは何かというと、そこがみそだと思っているのですよ。その「校務分掌」の「校務」というのは、学校教育法の省令でありますから、学校教育法の中にある「校務」というのは「小学校」の二十八条三項の「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。」というところにしかないわけだ。だから、これは校長の権限である。だのに、それをなぜAでもって教育委員会が任命するのか、Bでもって教育委員会の了承が得られなければ任命ができないのかということを申し上げてまいりました。それは、しかし地教行法等の関係でもって校務というのは校長にある部分委任するのだというあなたの説であります。中心点は。しかし、それは二十二年からできておる学校教育法、三十一年に警察官を動員してつくったところの地教行法、どちらが優先するのだろうか。それはお互いに関係し合います。矛盾があります。しかし、もしも校務というものは教育委員会の権限が第一義的で、教育委員会が運営規則等でもって校長に委任をするのだとするならば、学校教育法二十八条の「校務」というものは、教育委員会の委任を受けて校務をつかさどると直すことが素直だと思います。そうではない。私は第一義的には校長にあるのだと思う。もしもその校長にある下位の権限を上位が取るとすれば、それは先ほど言ったところの教育行政上下位の権限を上位が取ることは、教育行政の不当の支配と思想につながってくる。私は、それを違法だと主張してまいりました。あなたは違法でないと主張してまいりました。いまその議論はここで繰り返しません。しかし、少なくともこのことは主任か主任じゃないかの問題でなくて、実は私は教育法学的な議論を少しあなたといたしたいところでありますけれども、少なくともA、B、Cの通達はしたけれども、Cが好ましいのである。主任制が仮にできたとしても、手当と関係ないのですから、もうすでに省令ができているのですから、Cの方がより好ましいという見解になるべきだろうといまなお思っておるのでありますが、局長の御見解をいただきます。
  257. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 その前段の法律論のところは省略いたしまして、結論は私がこの前も申し上げましたように、校長さんに任されておる校務というものを、教育機関の特質からしても、一般的に言えば校長さんが自由にやっていただいてよい教育をしていただくということがよろしいわけでございますけれども、たとえば先生の長期出張などについては教育委員会に届け出ろとか、あるいは学校の施設を第三者に貸す場合には教育委員会に届け出ろとかいうようなことで、一部教育委員会が規則をつくって自分のところへ引き上げるということも、これは制度上私はあることだというふうに申し上げておるわけでございます。  そこで、そういう観点から考えました場合に、いまの主任の任命の仕方について、教育委員会が校長の意見を聞いて任命する、あるいは校長が教育委員会の承認を得て任命するというやり方に対して、校長が任命して教育委員会に届け出るという、この三つのうち三番目のが一番いいのだという先生のような御主張もあろうかと思います。あろうかと思いますけれども、いまの制度のたてまえは、その選択を教育委員会に任せておるわけでございますから、そこで教育委員会によってはC案をとることもありますし、A案、B案をとることもあってもしかるべしということでございます。  ただ、実態を申し上げますと、今日までこの規則を制定した県について言いますと、C案が十九県ということで一番多いわけでございますが、今後あと残った県がどういうふうな方式をとるかは、私は、やはりそれぞれの都府県の判断にお任せしてやっていきたい、かように思うわけでございます。
  258. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それは省令をつくって、指導文書を出して、A、B、Cどちらでも結構です。教育委員会が考えなさいと言うからそれはばらばらに考えたのであって、それはあたりまえの話です。ではなしに、教育法の形態からしたならば、私は学校教育法を大事にしようと思っておりますから、憲法、基本法、学校教育法というものを一番基礎に置こうと思っておりますから、その二十八条というものは、教育委員会が委任したものだけが「校長は、校務をつかさどり、」という範囲になるのだったら二十八条を直さなければいかぬと思うのです。だから、そういう観点からしてA、B、Cと出してしまったけれども、そして実態もCが多いとおっしゃるならば、Cがより好ましい。少なくともきょうは文教委員会じゃないのでありますから、私は結論だけ言っているのでありますけれども、Cが好ましいということにならないだろうか。そのことは、もうむしろ法的なことを根拠にしながらまともに考えていただきたい。
  259. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 このことは、今回の主任の省令化の前に保健主事あるいは進路指導主事というような省令化された主任があったわけでございますが、その任命の方法につきましても、それ以前において教育委員会あるいは学校のいずれかに分かれておったわけであり、それを文部省もそれぞれの委員会の判断に任せてきたわけでありますから、その延長として今回の措置を考えました場合にも、前大臣の見解としてどのような任命方式をとるかは従来のやり方を踏襲すればよろしい、こういう判断を示しておりますので、その考え方をいま変えるつもりはないのでありまして、それぞれの委員会の判断に任せてやっていただく、かように思うわけでございます。
  260. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もう終わりますが、私は、最初にこの審議をするに当たっての幾つかの奇怪なる現象ということを申しました。そして、教育というものを政争の場から静かな場にというときに、その原因というものを排除すべきだと考えますと申しました。そして人事院の今回の主任手当というものに関しては、人事院の自殺的行為というものも考えられます。  長官、だから私、こう思っているのですよ。一つは、知恵がないか、ないかと言っているのですが、文部省は制度化したいと言った。省令はできました。幾つかの地域ではまだやっていないけれども、主任は制度化されたのです。あとある問題は手当だけなんです。手当だけをなくしたら、いま主任の省令は一これはもう法律上立法府の問題じゃございませんから、すぐに平和になりますよ、足して二で割るというみたいだけれども。さっき言ったように、金が余っているのじゃないのだから、大変に苦しい財政事情なんだから、ストライキまでやって要らない、要らないというのにやる必要はないじゃないですか。しかし、文部省が制度化したいとおっしゃる制度はできたじゃないですか。現にやっているじゃないですか。それだけでいいのじゃないですか。きわめて事態は単純じゃないですか。どうでしょう。
  261. 藤田正明

    藤田国務大臣 先ほどからの先生の御議論につきましては、いろいろと敬服をして聞いてまいりました。ただ、いまのような三本の法案につきましては、総理府の方はもうこれを提出いたしまして成立をお願いをするだけでございます。
  262. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それでは委員長にお願いします。  委員会では二回流れたこの法案をいま審議いたしております。だから、理事会に諮って、最小限主任手当を凍結をして、そしてその中でもって理解を求め、合意が得られる、少なくとも今日の教育の混乱というものがこの給与の中から生まれてはならぬと思っているのです。すでに制度はできた。その手当を出す。要らないと言っている。財政は苦しい。なら、そういう道があるのじゃないのか。それ以外に知恵があるかもしれません。それは議会の意思として、立法府の意思として、委員長、御努力いただけませんか。
  263. 正示啓次郎

    ○正示委員長 先ほど来、木島委員が大変日ごろのうんちくを傾けられて、いろいろ御意見をお出しになりました。政府側からは、また政府側としての応答がございました。私は、この際、意見は差し控えさせていただきたいと思います。
  264. 木島喜兵衞

    ○木島委員 努力しないということですか。
  265. 正示啓次郎

    ○正示委員長 私の意見は差し控えます。
  266. 木島喜兵衞

    ○木島委員 あなたの意見はいいですが、少なくとも理事会に諮って、こういう問題を相談するということはできませんか。
  267. 正示啓次郎

    ○正示委員長 委員会の運営については、いろいろ理事会で御相談をいたしますが、この議案についてどうこうという意見は、差し控えさせていただきます。
  268. 木島喜兵衞

    ○木島委員 じゃ、委員長が差し控えるという範囲で私も終わります。  どうも失礼しました。
  269. 正示啓次郎

    ○正示委員長 どうも御苦労さまでした。(拍手)  続いて、受田新吉君。
  270. 受田新吉

    ○受田委員 三本の給与関係法案が提案されておりまして、大変忙しい委員会になっておるのですが、この三本のうちで、まず特別職職員給与に関する法案に対する質問をさしていただき、引き続き防衛庁職員給与法を質問さしていただきまして、最後に一般職へ移ることといたします。  特別職職員給与法案の改正案を拝見しますと、総理大臣の俸給月額を別表第一で拝見しまするところ、百五十五万円と規定されているわけです。これは何を根拠に決められた金額でありますか、御答弁を願います。
  271. 秋富公正

    秋富政府委員 総理大臣の給与は、ここ十数年は、大体民間企業の三千人以上の企業の一番トップクラスのところ、あるいは一般公務員の号俸の大体倍というのが給与改定の際の大体の過去の例でございましたが、今回は一般職俸給表の平均のアップ率が七・一でございまして、これを基準にいたしまして改定いたしまして、現実には百五十五万円、六・九%の改定といたしまして法律案を提出いたしております。
  272. 受田新吉

    ○受田委員 民間企業のトップクラス、一般公務員の倍というお話でございまするが、これは一般公務員の給与の最高でございまして、つまり公務員の中の最高の給与が三権の長の給与にかかってくるわけですが、総理大臣の給与というものは、やはり国全体の公務員の給与の頂点に立つだけに、上に薄く下に厚いという愛情のこもった、上に立つ者は謙虚にという気持ちから、こうした高禄についてはもっともうと謙虚に金額を決めるべきではなかったか、御答弁をいただきます。
  273. 秋富公正

    秋富政府委員 いまの一般職の号俸の倍というところでまいりますと百六十万円、一〇・三%のアップ率になるわけでございますが、総理の御指示、経済社会情勢にかんがみまして上の方を薄く、上薄下厚といいますか、あるいは一般の指定職あるいは一般の号俸の改定よりも低く定めた次第でございます。
  274. 受田新吉

    ○受田委員 それをもっともっと謙虚にすべきじゃないか。これは別に総理は金額が高いことで満足する人ではなくて、多少遠慮したことも聞いておるのですが、やはり最高俸給というものはむしろ国民の信頼をかち得るためにももっと謙虚にすべきである。六・九としたというその基準にまだ謙虚さが足らない。  国務大臣の百十三万円というものは、何を基準にされましたか。
  275. 秋富公正

    秋富政府委員 これは、総理のいま申しました六・九、国務大臣につきましても七・一%を基準にいたしてはじいたのでございますが、いわゆる端数の整理という関係で百十三万円ということになりましたために七・六%になっておりますが、これは指定職全体の八・八%よりも低い改定率でございます。
  276. 受田新吉

    ○受田委員 その基準が納得できないのです。何かこの辺は思いつきで金額が決まっている印象がある。  そうしますと、内閣法制局長官、公取委員長、これが九十五万、それから人事院総裁を除く人事官が八十一万、それから官房副長官がそれより一万安い八十万、これは一体何を基準にこの八十一万と八十万の差が生まれたのか。同時に、国家公安委員会の委員が七十八万八千円というこの一万二千円は何を基準に差がついたのか。御答弁をいただきます。
  277. 秋富公正

    秋富政府委員 これは従来から指定職の号俸とのバランスということを考えてきたわけでございまして、いま御指摘の検査官あるいは人事官は指定職十二号俸、東大、京大の学長と同額で従来から来ているわけでございます。また国家公安委員、公取委員、これは指定職十一号、事務次官、旧五帝大の学長と同じ額で従来から来ておるわけでございます。内閣、総理府の副長官はその間にございまして、これは従来と同じバランスをとって今回の改定を行おうとするものでございます。
  278. 受田新吉

    ○受田委員 八十一万と八十万の一万の差がどうしてついたのか、御答弁をいただきます。
  279. 秋富公正

    秋富政府委員 現行におきましては、検査官、人事官が七十四万円でございます。内閣、総理府の副長官あるいは時従長は七十三万円でございます。その間に一万円の間差額があったのでございますが、これをそのまま引き継いで一万円の差をそれぞれ七万円の改定で持ってきた次第でございます。
  280. 受田新吉

    ○受田委員 事務次官とそれから内閣官房副長官総理府総務副長官の金額の差はありませんか。
  281. 秋富公正

    秋富政府委員 内閣官房副長官総理府長官は現行においては七十三万円、国家公安委員、公取委員は七十一万八千円で一万二千円の差でございましたが、今回も改定案におきましても同額の間差額でございます。
  282. 受田新吉

    ○受田委員 官房副長官総理府総務副長官と、それから各省の事務次官とは対応する立場であると思います。次官会議の世話役などをしたりして、これに差がつくのは原則としてどういう意味があるのか、お答え願いたいのであります。
  283. 秋富公正

    秋富政府委員 御承知のとおり、内閣、総理府の副長官特別職でございまして、一般職事務次官と従来からこの間に差があったのでございます。沿革的なものでございます。
  284. 受田新吉

    ○受田委員 これはもしその理論でいくならば政務次官の給与を支給すべきである。もう一番奮発して、政務次官と同額にすべきである。
  285. 秋富公正

    秋富政府委員 従来は内閣、総理府ともに副長官は一名でございました。ところが非常に内閣、総理府の機能強化に伴いまして二名になりまして、一名の副長官は国会議員の方をもって充てるということになりまして、内閣、総理府の副長官の中で特に指名いたします方につきましては、これを政務次官と同額にするという規定ができまして、現行はそういった国会議員の副長官の方は政務次官と同額になっております。
  286. 受田新吉

    ○受田委員 それは当然です。国会議員の給与、政務次官の給与と同額でありまして、国会議員がつくポストが下げられるというようなことは、これは筋違いにもなるわけでありますので、むしろ官房副長官を政務次官と同額にすべきであり、もし事務次官と対応号俸とするというのならば、特別職一般職を問わず事務次官と同額とすべきである。そこに、何やらここへちょろちょろっとごまかした数字が出たような印象を与えるわけでございます。この問題は、こうした特別職給与が改善される機会に、性格的に同一の勤務に対して職務と責任という意味から言うならば同額にすべきである。総務長官の部下に八十一万円の副長官と八十万円の副長官がおるというようなこともおかしいわけでございますので、給与の法案を担当される総理府においてこの金額の調整を図ってしかるべきであると思うのです。これはかつて国家公安委員会の委員が著しく高い水準に待遇を受けていたことがございます。だんだん議論をされてこれが押し込められて下がってきた、こういういきさつもありまして、きわめて流動的にこの特別職の俸給は動いてきたわけでございますので、この機会に一万円の差をつけておるこのちょっとしたユーモア的な給与法改正すべきであると思います。  次に大使、公使の俸給表でございますが、特号をもらう大使は、特に重要な使命を持った大使は国務大臣と同額という規定が別にあるわけなんです。したがって、百十三万円の大使がこの表以外にあるわけです。これはどこの大使でございますか。
  287. 秋富公正

    秋富政府委員 大使特号と申しますのは、国務大臣の御経験をされた方を充てる場合でございまして、かつて外務大臣の岡崎勝男氏が大使になられたときに特号というのがございましたが、それ以外は、現在は特号の大使はおりません。
  288. 受田新吉

    ○受田委員 公使が四号俸あるわけです。公使の一号から四号までは大使の一号から四号までと同額である。その上に五号大使がおるわけです。そこで私、しばしば当委員会で指摘しているのですが、公使、大使、これは特命全権大使と特命全権公使がこの俸給表に載っている。名称公使は外されて、参事官給与をもらっておる。つまり職務と責任において給与が決まるというのが国家公務員法六十二条に厳たる規定が出ておるわけでございまして、職務と責任、名称が公使として外務大臣から指名された者は、公使の職務を行うのであって、参事官の職務を行うのではない。したがって、職務と責任という法律のたてまえ、これは一般職ではありますが、当然ここに特別職にもこれを準用すべき規定が死んでおる。  私、ここでお尋ねしておきたいのは、特命全権公使がいま四人と伺っておりますが、その四人の号俸がそれぞれどれに適用されているか。  それから名称公使と称せられるのと、現地で特に公使としなければならぬような要請で、便宜的な公使というのがありまして、公使には三種類あると見ておるのですが、その三種類の一番最後の分は現地採用の公使というような印象でありまするが、それは別として、名称公使として当然外交上のりっぱな公使役を果たす人にはこの公使給、特命全権公使、認証官を提唱すべきではないかと思います。きょうは外務省もおいでになりましたので、お尋ねをさせていただきます。
  289. 栗山尚一

    ○栗山説明員 お答えいたします。  名称公使の制度につきましては、従来から、先生から幾度か御指摘がございまして、私どもの方でも検討させていただいておりますけれども、特命全権公使につきましては、従来から御説明申し上げておりますとおりに沿革的な事情もございます。歴史的に申し上げれば、先生御承知のとおりに、従来は公使館というものがございまして、その公使館の館長としての特命全権公使というものが沿革的には肩書きのソースでございまして、これが先生おっしゃいましたとおりに、現在四つのポストにつきまして非常に大きな大使館の次席ということで定員上認められておりますが、このほかに、現在一般職で三十三名の名称公使がございます。  こういう名称公使につきましては、館長の補佐として各大使館において非常に重要な仕事をしておりますので、それなりの待遇というものは必要かと存じまして、過去において御説明いたしましたとおりに、在勤俸で特号というのを設けまして、これを名称公使の大部分の者については適用して、待遇上一般の参事官とは異なる職務に相当の待遇をしておるというのが現状でございます。
  290. 受田新吉

    ○受田委員 それはこれまでしばしば承ったことでございます。ただ、公使として外交交渉に当たっているその人が参事官の月給しかもらっていない、在勤俸の特号をもらうという、ちょっとした色をつけて、この大事な職務を担当させるということは余りにも酷でございます。職務は公使です。これは、私は名称公使でございますなどと言って、実は参事官でございますというようなことをやったら、外交交渉は不成立です。事実、ごまかしておるのです。公使でない者を公使と称してごまかした外交をやらせておる。それは相手国を侮辱しておるわけです。実は参事官で特号をちょっと在勤俸でサービスしておるのだが、人に言いなさんなよ、表面は公使ですよ、そういう職種を担当される公使は本当に不幸ですね。やはり堂々と、特別職に公使給があるのですから、この一番最後の一号俸で結構ですよ。一号俸を支給して、公使の号俸を受ける公使として堂々と外交交渉に当たらせるべきである。外交をごまかしているのですよ。公使でない者に公使という名前をつけておるのです。日本外交の侮辱だと私は思うのです。なぜこの公使を正式の公使にできないのでございますか。公使と称している以上、その理由をちょっと聞かせてもらいたいのです。
  291. 栗山尚一

    ○栗山説明員 先ほどの私の説明が若干言葉が足りなかったかとも存じますけれども、名称公使と申しますのは、名称を与えられております間は名実ともに公使でございまして、決して相手国との関係におきまして肩書きを詐称しておるとか、そういうことではございません。その点、非公式の現地限りの公使という、さっき先生から御指摘がありました、いわゆるローカルランクの公使というのとはおのずと性質を異にしておると思います。  特命全権公使につきましては、まさに先生よく御承知のように、これが特別職で認証官ということがございまして、この数を非常にふやすということにつきましては、おのずと特別職あるいは認証官というものの制度上いろいろ問題がございますので、従来からいろいろ検討さしていただいてはおりますけれども、これをふやすということについてはなかなかむずかしい問題があることは、先生御承知のとおりであると思います。
  292. 受田新吉

    ○受田委員 これは二人国務大臣がおられるわけですが、閣議でひとつ取り上げてもらいたい。それは外交上の大事な公使の職務を行っている。その人は特別職の公使となると認証官になる。その数がふえると、ほかの省にも影響するという。大体外務省は、初め五、六十人の大使がいまは百人を超えておるのじゃないかと思うのです。いま認証官たる大使が幾らになっておるのですか。
  293. 栗山尚一

    ○栗山説明員 お答えいたします。  現在大使の数は九十七名でございます。
  294. 受田新吉

    ○受田委員 大使の数が九十七名、まあ百名ですね、国連などへ行っている人を含めてでしょうが。この公使を入れると百一名認証官が外務省におる。それ以上認証官をふやすとほかの省がおかやきをするということであるとするならば、日本を代表して外交交渉に当たる大事なポストの人が外務省に自然に多くなるということはやむを得ないことだということで、お二人の若い国務大臣、人事課長は非常に謙虚な御発言をされておるのですが、日本の国威に関することで、公使の仕事をしながら実は参事官の月給しかもらっておらぬ、こういう不幸な立場になっていらっしゃる皆さんに、三十三名もあれば全部一遍になかなかいきにくいでしょう、その中で最初のランクに入る公使はどことどこと、四、五名ずつでもふやして、特命全権公使が十名ばかりになったってほかの省がおかやきをするんじゃないよとひとつ閣議で御発言を願って、せっかく公使として外交交渉に全力を尽くしている皆さんに報いてあげるべきである。これはむしろ他省の大臣たちが提案してほしいと思うのですが、藤田先生、いかがでしょう。あなたは特別職の俸給を提案される担当国務大臣であるだけに、あなた御自身の法案提案者としての御意見が要ると私は思うのです。
  295. 藤田正明

    藤田国務大臣 各国とのバランスのこともございますので、外務大臣とまず相談をいたしまして、先生の御意見を閣議に出せれば出してみたいと思います。
  296. 受田新吉

    ○受田委員 そういうふうに御配慮を願いたい。  もう一つ、ここに防衛庁の政府委員がおられるのですが、防衛庁の職員特別職であります。その防衛庁の職員が防衛駐在官として海外に勤務される場合、アメリカの場合は七名おられる。七名のうちの一番のポストにおる人は将補である。将官、それが行っておられるのです。これは参事官で、そのポストに甘んじておられるわけです。防衛駐在官は一般職特別職か、どちらでございますか。
  297. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 お答えいたします。  防衛駐在官は、身分的には外務省職員でございまして、外務省の定員の範囲内に含まれております。したがいまして防衛庁設置法第七条に定める自衛官の定員の範囲外ということでございますので、一般職でございます。
  298. 受田新吉

    ○受田委員 自衛官である間は特別職、外務省へ行くと一般職になるのです。そして、それが一等書記官とか参事官とかいう名称をもらって純然たる外交官。自衛官という身分は残るのか残らぬのかと言うと、自衛官という身分は残っておるのです。これは。
  299. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 自衛官を兼務するという形でございますので、残っておるわけでございます。
  300. 受田新吉

    ○受田委員 だから、特別職たる自衛官が一般職たる書記官になるわけです。そして、実際の仕事は自衛官の方の仕事はしないで、外交官の方の仕事しかやらないわけです。外国へ行っても自衛官の仕事は一部やりますか、どうですか。兼務となると、やることになるのですか、どうですか。
  301. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 防衛駐在官は外務省職員でございまして、在外公館におきましては、大使の指揮監督のもとに職務に従事するということでございますが、実質的には軍事情報の収集等の仕事をいたしておるということでございます。
  302. 受田新吉

    ○受田委員 これは私もちょっと疑義があるのですが、自衛官兼外交官つまり一等書記官、兼という名がつくと、本職が自衛官で兼職が外交官ということになって、本職の職務ということが残るはずです。それはどういうことになりますか。
  303. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 本職の方は外務事務官でございまして、自衛官を兼務するということでございます。これは、駐在国におきまして、各国駐在武官とのいろいろな折衝等がございますし、それから国際儀礼上、自衛官の官名を呼称し、かつ制服を着用することを許す、こういうことで、そのために自衛官としての兼務をさせておるということでございます。
  304. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、制服を着用して諸外国の駐在武官と肩を並べるときに自衛官というにおいが出る、そのほかは外交官の職をやる。二様の仕事をしておるということになりますね、兼務ということになりますと。私は、外交官として外交事務に当たるということであれば、自衛官という方はいわゆる死に体であると思っておったのですが、生き体ですか。
  305. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 先生御存じのように、現在戦前の駐在武官制度と異なっておりますので、諸外国におきまして在外公館の職員として軍事情報の収集、調査という職務に従事しておるわけですが、そのこと自体は外務省の仕事でございまして、直接防衛庁の仕事ということではございません。
  306. 受田新吉

    ○受田委員 だから、自衛官の仕事はやらないのです。外交官の仕事をやるわけなんです。そう解釈すればいい。外務省人事課長さん、そうではないのですか。  それとあわせて、ついでに出られたときに、何回も行かれると距離がありますから御苦労でございますから、一緒にお答え願いたいのですが、たとえば防衛大学を第一期卒業、二十年ばかりたった者と、大学を卒業して外交官試験に合格して二十年たった者とが同じ待遇で外交官をやるのか。防衛駐在官の方はちょっと格づけが下がっておるのか。もし下がっておるとすれば、どういう理由で下がっておるのか。それから、いまアメリカに行っていらっしゃる将官たる防衛駐在官、参事官は、いまのアメリカにおられる他のキャリア出身の参事官と、その待遇がどうなっているかというような比較論を中心に御答弁をいただきたいのです。
  307. 栗山尚一

    ○栗山説明員 お答えいたします。  防衛駐在官の肩書き、等級が、外務省の上級試験、あるいは国家公務員の上級試験を受けて各省庁から外務省に出向していただいて在外公館に配置されておる者と比較しまして、若干格づけの点でおくれているということは事実でございます。現実に、全く同年齢、同年次ということで同一の待遇になっておらないということは、御指摘のとおりでございますけれども、これは人事院規則上、防衛駐在官の方々が、人事院規則に定められておりますいわゆる正規の試験、国家試験を通ってそれの合格の資格がないということから、従来同等の格づけができないということによるものでございまして、他方、先生いま御指摘がありましたように、最近におきましては、防衛大学出身の防衛駐在官というものが現実に何名か出てきております。私の手元にございます資料で申しますと、現在防衛駐在官二十七名、各国に出ておられますけれども、その中で防衛大学出身の自衛官の方が五名おられます。こういう状況になってまいりますと、先ほど申し上げましたような防衛駐在官の処遇あるいは待遇の改善ということはぜひとも必要である。外務省といたしましては、従来から防衛駐在官の待遇改善というものにつきまして、その必要性を認めて、いろいろと努力をしてきておりますけれども、防衛大学の出身の防衛駐在官が今後だんだんふえてくるということでございますので、なおさらその必要性が認められます。そこで目下関係方面と協議をいたしまして、これらの方々の待遇の改善をやろうということで目下具体的に検討中でございます。
  308. 受田新吉

    ○受田委員 防衛大学を卒業して、さらに上級試験のようなものを受ける制度が自衛官にはない。そこで防衛庁の内部では、防衛庁内部の上級職試験というのがあるのですね。つまり、人事院がやる国家公務員の試験でなくて、防衛庁内部で上級職試験というのがあるでしょう。どうですか。
  309. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 ございます。これは、技術系の職員を採用いたしておりますが、上級職試験ということで採用いたしております。
  310. 受田新吉

    ○受田委員 その防衛庁内部の技術系の職員の上級に合格した者は人事院が認めるということになっておるのですか。つまり、人事院のやる国家公務員上級に合格した者と同じと認めておるのですか、どうですか。
  311. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 なっておりません。
  312. 受田新吉

    ○受田委員 こういうことになりますと、防衛大学を卒業して同一学歴、同一勤務年数、一方は試験を受ける制度がない。防衛庁内部で技術系があるけれども、それすらも国家公務員の上級として認められていない、こういうことになれば、受ける道がない。ない以上は、その最高の、たとえば幹部学校を出るとかという経歴をもってそれに充てるというような措置をしてあげないと、同じ外交官で行って、同一学歴、同一勤務年数、防衛大学を出て上級を受けようと思えば当然上級にパスする能力を持っていながら受けることのできない、そういう駐在官に道が閉ざされることになるのです。これは人事院の方でやる細工になるのですか、外務省でやる細工になるのか。人事院規則でやれるのじゃないかと思うのですがね。これはどこでやる細工になるのか。人事院じゃないかと思うのです。——総裁、お答えできますか。
  313. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 できると思います。人事院の所管ではございません。
  314. 受田新吉

    ○受田委員 人事院の所管にはならない。つまり、国家公務員上級で、外務省の上級試験で、外務省としてお答えすればいいらしい、それは。もう外務省の細工でいいそうです。  それでは人事課長、外務省の独断で人事院に気がねなしにやれるようですから、直ちにお帰りになってやる。これも二人の若い国務大臣、お二人がひとつ閣議で十分相談されて、外交上のバランスがとれるようにしてあげないと、おれは上級をやろうと思えば行っとったんだよ、受けることができないんだという、つまり防衛駐在官に選ばれるほどの人は、上級でなまはんかな人よりははるかに人材が多いですよ。その意味では、むしろ十分バランスをとって処遇をしてあげるべきである。  それからもう一つ、これは外務省の仕事なんですが、われわれ常に心にかけておる問題で、世界各国の中で日本はりっぱな国家であるという意識をみずからも持っており、各国にもそのように理解してくれる国がたくさんあるのですけれども、国連機構の中においては負担金は出しておるけれども、国連のいろいろな機構にはおおむね参加していない。国連大学がくしくもわれわれの期待する方向へ行ったという程度でございます。  そこで、平和維持のためのいろいろな機構があるわけですが、われわれとしてもこの平和機構の中で日本が当然参加していいものがたくさんこれは転がっておるのです。これはどうなんでしょうかね。国連におけるこの機構の中に、安全保障理事会とつながっていくと思われるようないろいろな審議会、委員会等があります。また、国連の総会によって設立された機関等もあるわけですが、この中には難民救済の国連機構、児童基金というような大事な問題から、訓練、調査、研修、それからある意味では少し軍事的なにおいがするかもしれぬが、軍事監視団あるいは休戦監視機構、こういうような制裁委員会とか、こういうところへは、日本から代表者を送ることになっていないじゃないですか。
  315. 小林俊二

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  いま先生の御指摘になられた機構には、性格的に幾つか違ったものが含まれておるように伺いました。国連の諸機関の、何と申しますか、恒常的な職員として採用されるということは、これは採用される個人の問題でございまして、私どもとしては、国連局の中に国連人事センターというものを設けまして、国連でこういうポストがあいてますよということを一般に知らしめるようなサービスを行っておりますし、それからまた、国連の職員として、あるいはその他の国際機関職員として働いてもいいという希望を持っておる方々を登録して、これを心当たりの向きへ配付するというようなこともいたしております。したがって、これは適格性を有する日本人の存在の有無ということでございまして、これは一般の就職と全く同じ問題でございます。  それから、国連の平和維持のことについてもちょっとお触れになりましたけれども、これは少し性格が違っておりまして、そういった通常の職員の就職という問題ではございませんで、総会の決議あるいは安保理の決議に基づいてつくられましたそういう要員団に、国が派遣するということでございます。したがうて、そういう組織が存在する間、国の要員を派遣するというかっこうになります。この点につきましては、従来からいろいろな機会に、日本からも国連加盟以来そういう機構に人を出したらどうだ、特に、軍事的な要員を出すことはできるじゃないかというお話がございました。この点につきましては、防衛庁設置法あるいは自衛隊法の関係がありまして、防衛庁職員というかっこうのままで直ちに派遣するということは適当ではないという結論でございましたが、先ほどからお話しに出ておりましたような、たとえば外務省職員として防衛庁職員を事実上派遣することはできないかというようなお話もございました。この点につきましては、従来から技術的には、法律的には可能である。しかし、どうせ本当に出すのであれば、それを出すことについての国民的コンセンサスを背後にして正式のかっこうで出すのが本来の筋ではないかというようなお話が一般的でございまして、今日まで実現されるに至っておりません。  ただ、私ども国連局といたしましては、国連の平和維持活動というものに対して、基本的に国際協力の観点から支持していくべきであるという強い気持ちを持っております。年々私どもが分担金というかっこうでこういう活動に財政的な寄与をしておりますのもそうした支持のあらわれでございますが、それのみならず、要員を派遣すべきではないかという気持ちは常に持っておりますので、こうしたことが可能になるように、一般的な支持が得られますように心がけておるということでございます。そのためには、軍事的な色彩のない要員の派遣ということから始めることが適当ではないかということも内々考えておる次第でございます。
  316. 受田新吉

    ○受田委員 参事官の御答弁は、非常に物わかりのいい御回答と思います。  そこで、日本も国連参加国として分担金を負担するだけでなく、国連を通じて世界の恒久平和に貢献しようという熱意はどの国にも負けていない。したがって、外交官を派遣したり、各省からエキスパートを派遣して、それぞれ専門の、厚生省なども、いま私が挙げた中にも厚生の官僚が行ってもいいところがたくさんある。それから、いま防衛駐在官は、これは外交官で行くわけです。制服というものの職務は死に体になっておるのです。それをこうした安保理事会の決定に基づく機関、監視団のようなところへ派遣しても、それは決して海外派兵という立場に立たないと思う。それは一つの外交官の長期出張というような任務で、勉強、見学、視察、現に防衛庁の飛行機選定については、自衛官がみずから企業を歩いたり、軍を歩いたりしておるわけです。これはある意味で言えば、制服の海外派兵のような印象を与えるのがいま平気で行われておる。したがって、外交官としての自衛官をそれらの研究、つまり平和維持に当たるわけで、戦争挑発に参加するのじゃないのですから、戦争を避けるための出張ということであれば、これは決して国民の合意を得られないものではないと私は思うのです。こういうことには勇気をふるって外務省も当たってみられていかがですか。国民の合意というものは、つまり制服の海外派兵じゃないのですから、それはむしろ平和への貢献という意味ですから。
  317. 小林俊二

    ○小林説明員 各国の現状を、こういう国連の行っております平和維持活動へ対する協力、要員の派遣という意味におきましての各国の現状を見ますと、防衛駐在官という、いわば大使館付武官でございますね。こういう立場の軍事要員、すなわち外交官の資格を有する軍事要員をそういう監視団に派遣するということは行われていないわけでございます。  したがって、それを行うとすれば、これは一種の便法というかっこうになります。言いかえれば、もしこれに反対する立場をとる方があるとすれば、それは一種の擬装ではないかということにもなるわけでございまして、そうしたこそこそと行うというようなかっこうをとるのは好ましくないというのが、これに対する慎重論だったかと思います。したがって、もし国連の平和維持活動に対して軍事要員を派遣するということについて国民的なコンセンサスがあるならば、それを背景にして関係法令を改正して堂々と派遣する、外務省の定員の枠内で派遣するというようなことをやめて、初めから軍事要員として国連の活動に協力するのだという形をとって出すのが正しい筋道ではないかという議論は十分成り立つのだと思われます。
  318. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁、官房長から御答弁願います。人事教育局長でもいいです。
  319. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 この問題につきましては、防衛庁内部におきましてもかねてから研究と申しますか、勉強はいたしておるわけでございますけれども、先ほど外務省の方からお答えになりましたように、いろいろな問題がございます。現行法では自衛官そのものを国外に、ただいま先生おっしゃいましたように、国連の平和監視団とか、そういうものに参加をさせるという任務は与えられておらないわけでございますので、やるとすれば現行法令を改正するか、あるいは先生先ほどおっしゃいましたように、外務省の職員の身分を持っている防衛駐在官を派遣するかということになろうかと思いますけれども、この問題につきましては、さらに外務省の御意見を伺いながら検討を進めたいというふうに考えております。
  320. 受田新吉

    ○受田委員 自衛隊員は、自衛隊法第三条に規定されている直接侵略及び間接侵略に対処して国土、国民を守る使命があるわけです。しかし、そういうことについても、国連を通じて平和へ貢献するということであるならば、その自衛隊法第三条の精神にもとるものじゃないです。もとらないです。それから、視察とかあるいは出張とかいう意味で行くということであるならば、そんな法律改正しなくても、隠れみのという意味でなく、堂々たる出張ができるじゃないですか。そういうことで研究をしてもおいたい。  もう一つ、今度は外務省と文部省に関係する問題ですが、在外日本人学校があります。これはいまや五十に近い数を数えておるようで、飛躍的に在外日本人学校がふえております。そこへはもう地方公務員たる教師が、いま、最近の情勢では十倍に余る志願者が殺到するほどこの在外日本人学校への教師志願者が多い。ところが、海外で六百何人の子弟が教育を受けているその在外学校の子供たちは、学校教育法による教育を受けるということになっていない。これは何らかのかっこうで特典を与うべきじゃないか。そこにおる教師は、今度の改善措置で本拠の方の休職とかあるいは長期出張とかいう方の手当は上がるが、在勤俸は上がらないということになるのですが、その教師の待遇、その両面から御答弁を願いたい。
  321. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 お答えいたします。  在外の日本人学校の教員の給与につきましては、ただいま先生御指摘のように、現在公立学校教員が約四百十三人、それから国立の付属ということで十七人行っておりますが、この国公立学校から派遣されておりまする教員につきましては、給与法または給与条例に基づきまして給与が支給されておりますので、今回の給与改定が当然に響きまして、その恩恵を受けるわけですが、その派遣教員に支給されておりまする在外手当に相当する謝金があるわけです。これは給与とは別に謝金として支給されておりますので、このたびの給与改善と直接には結びつかないと思います。  なお、現地採用の教員の給与につきましては、それぞれの日本人学校設置者が現地の雇用状況でありますとか、そういう事情等も勘案して定めておるところでありまして、今回の給与改善の結果がそのまま反映するものではない、かように思っております。なお、この点はいま外務省の方でめんどうを見てもらうている点であります。  なお、ただいまの御質問で、海外の日本人学校の行っておる教育内容、学習指導要領に準拠するということになっておるわけですが、実際にそこに行っておりまする教員の人たちのやっておる苦労とか、いろいろなことを考えたら、その点はどうなんだというお尋ねもございました。私どもも学習指導要領に準拠して、わが国の小学校、中学校の教科と同じ教育をできるだけちゃんとやってもらうということのみならず、現地の利点を生かすことができぬかということで、現地採用教員の方々の大部分もそうらしいのですが、現地の外国語と申しましょうか、現地の言葉の勉強であるとか、あるいは現地の子供たちとの交流であるとか、そういう特別活動であるとか、そういうふうな点に各日本人学校でいろいろと工夫をしておられる。私どももこれは非常に貴重なことであろう、かように存じておるところであります。
  322. 受田新吉

    ○受田委員 学校教育法の法律に規定した就学を認めるという便法、これについて、こちらへ戻ってから影響がありますから……。
  323. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 日本人学校が創設されまして、教員も派遣されて、その教育内容を見ながら、日本人学校の方から学校教育法施行規則に基づきまして、国内の小学校、中学校の卒業と同じ資格といいましょうか、それを認める規定がございまして、その申請が日本人学校の方から出てまいります。それを見まして、こちらで指定をいたしますので、その日本人学校につきましては、帰国後の受け入れに支障は生じておりません。
  324. 受田新吉

    ○受田委員 まあいわば私立学校が海外にある、学校教育法に基づく小学校、中学校があるという観点に立ってこれを考えていくと理解してよろしゆうございますね。  そこで、海外に外交官あるいは商社その他研修等でたくさんの日本人が行かれる。いまは世界は一つになった。そこで文部省は外務省と一緒になって、日本人が世界のどこでも自由に勉強ができる、教師も優秀な資格を持った教師がそこの教育の任に当たっておる、このかっこうをひとつ本物にしていただきたい。  もう一つ。いま大変な円高です。いま聞いてみたら、きょうも一ドル二百四十四円ぐらいになったようですよ。そういうときでございますが、外交官の従来の在勤俸、在外勤務手当、これは国会で法律で決まってくるのですが、これは円建てで支払いしていますか、ドル建てでございますか。
  325. 松田慶文

    ○松田説明員 お答えいたします。  円建てで定められております。
  326. 受田新吉

    ○受田委員 円建てとすると、当委員会で在勤俸、在外勤務手当というものを決めたその水準は三百八円でしたか、幾らでしたか。
  327. 松田慶文

    ○松田説明員 昭和四十七年に在勤俸を外貨建てから円建てに変えていただきました際の一ドル当たり円は、スミソニアン合意に基づきまして三百八円でございましたが、現行給与は二年前に改定させていただいております。そのときは三百二円でございました。
  328. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、大使はアメリカでいうならば一万八千ドルだったか、そうした大変な在勤俸をもらっているわけですが、三百二円から二百四十四円にもなれば、大変な利益を上げるようになってきているわけです。これは戻すのか、あるいはこの際お預けして、今度円安になったときの対策に持っていくのか。黙っておったらごっそりいただくということになりますか。国民の税金でございまするので、明確にしていただきたいです。
  329. 松田慶文

    ○松田説明員 御説明申し上げます。  御指摘のとおり、ドルは過去数カ月下落しておりまして、その限りにおきましては、今年度の当該部分に関します限り、円建ての在勤俸を現地でドルで手取りで受け取る際にその分だけ評価額が上がっている、御指摘のとおりだと思います。しかしながら、この制度は単にドルが下がる場合のみを想定しているわけではございませんで、仮にドルが上がっても直ちに上がるというものではなくて、やはり国会の御審議をいただきまして、年に一度改正をするか、あるいは法律の授権の範囲内で上下二五%の範囲内で政令を調整するか、いずれかと相なる次第でございます。  他方、現在約三分の二の在外公館におきましてはドル払いにしておりますが、そのほかドイツマルク、スイスフラン芸等々の主要通貨もございまして、そちらの方はさほど動いていない次第でございます。
  330. 受田新吉

    ○受田委員 これは法案の審査の過程で、ドルが安くなって円が高くなってくるということを一応想定していません。大体そこへ安定しておるということです。今度ドルの価値が上がって三百六十円までいくというときは、決して外務省は黙っておりませんよ。大変だ、大変だというので改定を要求するわけです。これがドルの値打ちが下がってくると黙っておってごっそり貯金をする、こうなると、これはやはり日本の外交上の権威にも関する。われわれとしては、いままで在勤俸を引き上げることにずいぶん苦労してあげておるのです。かつて十年も据え置きであった昭和三十四、五年、これを一挙に大改定をして、自来二年に一遍ずつという改定の措置をとってあげておる。日本国としては喜んでいいか悲しんでいいかわからぬような、こういう非常な円高になってきている時点で、海外の物価が上がるわけじゃないですから、この点は何かの措置をとって、国民の不信がわかぬうちに措置をとる必要があると思うのです。
  331. 松田慶文

    ○松田説明員 在勤俸の扱いに際しまして、それが国民の税金で賄われていること、それから為替変動があること、これを十分しんしゃくすべきことはまことに御指摘のとおりであります。この点もございまして、昨年度在勤俸を考えます際に、昨年度も若干の為替の変動がございましたものですから、外務省といたしましては、在勤俸の全面改定を国会にお願いすることは遠慮いたしまして、昨年はごく一部の中近東その他における特別な地域の政令調整だけをさせていただいた経緯がございますが、本年度もまた引き続きまして現下の為替事情にかんがみ、外務省といたしましては、来年度の在勤俸全面改定は御辞退申し上げることにしております。そして種々計算いたしますと、去年は全面改定いたしておりませんので、おととしを基準値として考えますと、現在までのOECD諸国の二年間の物価増は一九・五%になっております。すなわち、一国一国では若干のばらつきがございますけれども、先進諸国おしなべて論じますと、ヨーロッパを中心に過去二年間で二割ほどの物価増があるわけでございます。したがいまして、在外給与法の第五条で為替、物価、生活水準を考えるべしとお定めいただきましたことに照らしましても、他方において為替は一七、八%ドルの場合に下落しておりますけれども、一九・五%の物価増がございまして、私どもといたしましては、来年度の場合、表面的なドル安にもかかわらず、おおむね過去一両年と同程度の水準が保たれる。すなわち、為替益と物価増とは相殺される関係が少なくとも来年一年は続くであろう。したがいまして、在勤俸の改定はドルその他の地域においては全く必要ない、このように考えている次第でございます。
  332. 受田新吉

    ○受田委員 物価高で、ドル安が二割、おおよそ二割下がった分は、物価が大体それに近いものが上がるから改定せぬままで置いておきたい、こういうお話です。ただ、その間のずれがある。ずれの部分の利益まで私はあえてかれこれ言いませんが、こういうものは、公務員の給与がこれだけやかましいときでありまして、国家公務員の分も非常に微々たる上がりにしかすぎないときに、外交官はそのドル安から次の改定までの利益というものは相当のものがあるということだけは計算に入れておいて、有効に使ってもらいたいということです。  もう一つ、今度は文部省の方へ、一般職へ入る前に聞きたいことがあるのです。文部大臣、私、非常に残念な現象を京都大学、東北大学等で聞いておるし、事実、その周辺までこの間行ってみたのです。果たせるかな大変な事態が起こっておる。赤軍派の活動というものは、学園を荒廃に帰そうとしておる。学長自身が中へ入り込むことに八カ月も時間をかけたという状態である。国民の税金で賄われる国立学校が、学長が学内へ入れないような、そんなぶざまでいいのかどうか。昭和四十四年に大学の運営に関する臨時措置法というのがあった。それは五年で期限が切れるようになっておったのをまだ生かしておるわけです。臨時という名前が泣くような法律がいま一つある。昭和二十九年に義務教育諸学校の教育の政治的中立確保に関する法律という、当時われわれずいぶんこの問題に疑義を抱いておったのですが、臨時措置法とした教育の政治的中立確保法というものが、臨時がまだ今日生きておる。臨時というのは、ある期間だけという意味であるはずが、二十年以上も生きておる。大学運営の臨時措置法は五年でやめるという趣旨であったのが、引き続きまだ生きておる。これは京都大学のような事件を予想して生かしたのかどうか。  それから、臨時という言葉は文字どおり臨時でなければいけないわけなんですが、これを臨時になし得ないところに、文部省は道徳の根源でもあるはずですから、臨時ということでごまかしにせぬと、もう臨時を外した法律にするというような配慮は要らないかをお答え願いたいのです。
  333. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 御指摘のとおり、京都大学はきわめて遺憾な状況にございます。ただ、十一月に入りましてから大学当局は再三にわたりまして学内に機動隊を導入し、それによって学長もまた構内に入っております。大学は強い姿勢をもって学内の現在の不正常な事態の改善に努力を続けているところでございますので、われわれもその大学の努力を助けて、しばらく大学の自主的な解決を期待いたしたいと考えております。  なお、臨時措置法が、御指摘のように、附則五項の規定による廃止すべきものとされた期間を超えてなお存続をしているという点については、かねて御指摘もありますけれども、私どもも、これは法律の規定の趣旨に反する状況があるわけであり、これについては速やかに何らかの法的な措置を講ずべきであるということで、従来から検討してきているところでございます。今後ともその検討を継続させていただきたいと存じます。
  334. 受田新吉

    ○受田委員 今後ともその検討を続けると言うけれども、京都大学事件などのようなものが引き続き予想されるというので、これが残っているのかどうかです。
  335. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 大学紛争の状況というのは、臨時措置法が制定されました当時とはかなり様相を異にしてきているわけでございます。当時のような大学全体あるいは学部全体を巻き込んだ長期にわたる紛争というのは、現在は見られておりません。ただ、臨時措置法が現実に果たした、そういった紛争に対する抑止力というものを私どもは評価をいたしておりますし、そういったことも考えて、この法律に対する措置というものを考えてきたわけでございますが、現実に京都大学のような事態を予想し、それに対してこの法律を発動するということをもって存続をさせてきたわけではございません。
  336. 受田新吉

    ○受田委員 警察官の導入という道もすでに京都大学はやっておる。別にこの法律がなくても、もう全国的に、また国民の世論も、そういうおかしいことをする者に対しては厳しい態度になっておる。なっておるときは、臨時措置法などというものはもう廃止していいはずのものです。きょう文部省の各局長、歴代の大学局長の経験者がたくさんおられるわけですが、そういう経験を積まれた皆さんから見て、臨時的措置で必要ないときにはもうさっと廃止されて、また必要があれば、そのときは大変抵抗があるからというようなことでなくて、もうここまで落ちつけば臨時的なものは廃止した方がいいと思うのです。こういうところを配慮していただくべきじゃないか。  それからこれは初中局長の、義務教育学校の政治的中立確保法も、もうこのあたりで不要になったのじゃないですか。臨時、臨時と、臨時が二十三年続いておるのです。臨時という名前が泣かぬようにやるべきであるという意味で、お二人の答弁をもう一遍お願いしたい。
  337. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 大学の運営に関する臨時措置法は、御指摘のように、廃止すべきものとされた時点からすでに長期の間その措置をとることなく経過をいたしているわけでございます。したがって、法律は存続はいたしておりますけれども、この法律の規定によって文部大臣が具体に権限を行使するということについては、私どもは慎むべきであるというふうに考えております。したがって、この法律を今日の時点でどのように措置をするかということについて、先ほどお答えを申し上げましたように、検討させていただきたいと思っております。
  338. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 御指摘法律昭和二十九年でございまして、当時の諸般の情勢を反映して、義務教育学校の教育の場が一方に偏した党派的勢力の支配の場とならぬように教育の中立性を確保しようということでつくった法律でございまして、今日は確かに状況が変わっておるわけでございます。したがって、その立法の趣旨も臨時法ということになっておるわけでございますけれども、しかし、この法律も私の記憶しているところでは、現実にこれを適用して刑事罰を科せられたというようなことはないわけでありますが、この法律があるがゆえのいわば抑止力といいますか、そういう効果は今日まであったと思うわけでございまして、そういう判断に立ちまして引き続き検討はさせていただきたいと思いますが、いままでのところ直ちに廃止するというようなことは考えていないわけでございます。
  339. 受田新吉

    ○受田委員 伝家の宝刀を抜かぬけれども、これによって抑止されておる、非常に権威ある法律であるということですね。これはやはり教育の世界などに、事実上宝刀を抜かぬでも済むようになっている法律は早く処分した方がいいのです。これは教育の世界であるがゆえにそうなんです。私がなぜあえてこの問題を提起をするかと言うと、教育の世界というものは、お互い不信で成り立つ世界じゃないのです。信頼からいかなければならない。教師を信頼し、大臣は学校の先生たちの組織についてもそれぞれの組織と会談をして教育の世界に栄光を与えしめようとしておられるわけです。そういう趣旨から言うならば、何か伝家の宝刀、抑止力があるからこれを生かしておいた方がいいのだというのを一方でひらめかしながら一方でやさしくやるというのは、これは「主に信頼する者は、動かされることなく、とこしえなるシオンの山のごとくである。」というバイブル詩篇一二五にある、あのわれわれが本当に愛している詩の文句にも反するわけです。信頼に立ってやっていくということで、一応御用の済んだ法案はさようならと廃止手続をしてしかるべきである。それからいま大学局長からもお話が出ましたような本当に奇妙な力で学園の自治を壊すようなことのないような、本当にすぐれた教師を配置して、そこに民主的な運営によって、信頼される教師によって信頼される学生が教育を受ける、こういうふうなたてまえに早く復元すべきだと思うのです。  それからもう一つ、大臣、一緒に答弁願いたい。  いま義務教育諸学校の教科書無償提供の制度が長く続いてきたが、最近、大蔵省等でこれを有償にしようじゃないか、老人医療についても無料でなくて、多少の有料にしようじゃないかという新しい動きがあるわけです。教育の世界に、あの可憐なる子供たちに、教科書無償というこの歴史と伝統から生まれたものを、これはどうぞ守り抜いてもらわなければいかぬ。そういうことについてもりっぱな結論をお持ちかどうか、お答えを願います。
  340. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 教育の場というものが信頼によって成り立つべきであるという先生の御主張には、私も全く同感でございます。同時に、教育の場というものは児童、生徒、学生が本当に静かに勉強のできる雰囲気が保たれ、教育、研究の場としてふさわしいような平静な状態が保たれなければならぬということも当然のことでございますので、そういった状況がいつまでも維持できますようにわれわれは心から願っておるわけでございます。そういう意味で、局長が申しましたように、大学紛争に対する抑止力としての効果があったということは、大いに役立ったという評価も成り立つわけでありまして、しかし、きょう現在まだ京都大学には、はなはだ遺憾とすべき実情がつい最近まで起こったことも、これは率直に認めなければならぬことでございます。私は、先生の御趣旨を体して、信頼の場として、まただれが見ても信頼するに足る平静な場として学校が環境を取り戻していくこと、これを願いつつ、十分に先生の御主張には耳を傾けて検討を続けさせていただきます。  後段の教科書の問題につきましては、これは御承知のとおりに憲法二十六条の精神を受けて国会でも法律を成立させていただいて、昭和三十八年から逐次学年進行して、完全にこれが定着してもう十数年を経ているものと思っております。私はこれが日本の教育に及ぼした影響、大なるものがあると信じておりますし、いい制度であると心から思っておりますので、この制度は大切にしていきたい、こう考えております。
  341. 受田新吉

    ○受田委員 一般職の法案に入っていきますが、一般的な問題は、もうこれまで委員会でしばしば討議されたことでございまするから、これを省略して、主任手当の問題にすぐ入っていきたいと思うのです。  人事院の生い立ち、私、片山内閣、芦田内閣当時、決算委員会の委員として、中曽根君たちと一緒にこの国家公務員法というものを審査させていただきました。二十三年の七月から臨時人事委員会がスタートした、そのころからの歩みをよく知っているだけに、人事院が政府機関としては独立した性能を持って、ストライキで争うことのできる公務員でなくて、その身がわりをして、人事行政、給与行政の根源に立とうとしておる歴史もあることも、これはよく知っております。ところが、文部省は従来二つの大きな独裁的な行動をしたわけです。十数年前、国立大学の総長で東大と京大の総長を認証官として特別の扱いにしようという法律をお出しになりました。そのころから少し文部省によって人事院が動かされてきた。そして指定職というものがそこから生まれてきた。東大と京大の総長のために指定職が生まれてきた。その指定職が、今日行政(一)から指定職にどんどんほとんどの者が上がって、初めのころには外局の長官みたいなのが指定職だったのがだんだんと局長になり、いまや部長の一部まで指定職になるようになってきた。非常にそこに屋上屋を重ねることになってきた。今度も教員の場合に、校長は特一が生まれ、教頭は一が生まれるというような、これに準じた扱いがだんだんされてきたわけです。そうした文部省の強い要請に人事院が、あのときは抵抗したのですよ。これは私、当時の審査を担当して、これに負けてはならぬというので、大いに馬力をかけてお手伝いをしたつもりですが、その後、文部省がまた独特の要請、人確法というものが教員に対するサービスという意味で、生い立ちでやむを得ない立場はありましたが、それに伴うて、いわゆる教頭職法というものも誕生した。さらに、今回主任手当というものが頭をもたげてきた。こういうようなことで、人事院が文部省については常に頭を痛めてこられたというこの厳しい歴史を藤井総裁は御存じでございますか。
  342. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 従来のいきさつその他についても非常にお詳しい受田先生に比べますと、私などはまだ素人の域を出ないと思っておりますけれども、いまお話しになりましたような経緯、問題点等については、重々承知をいたしておるつもりでございます。
  343. 受田新吉

    ○受田委員 文部大臣、人事院総裁が重々承知いたしておられるほど文部省は、人事院にいろいろな御注文を強くお持ち込みになったわけなんです。そして文部省の言い分を通されると、たとえば厚生省所管の看護婦の待遇などというものがまたどこからか出てくる。こういうふうになると、人事院は人事院独特の給与体系というものを横からの政治的圧力で崩していく。さっき木島さんがちょっとおっしゃっておられたが、その意味では、文部省は人事院にわがままを持ち込んでおられる。これは教育の振興という意味においてはうなずける節があるのですけれども、人事院独特の任務を壊さないような配慮をしながら人事院に要請されるべきものであると思うのです。海部大臣は聡明なお方ですし、部内での抑止勢力として存在していただいておるはずでございますから、ひとつそれをお考えになって、運営をお図り願いたい。そういう前提のもとに、いまから質問させていただくわけです。  教頭を専任にすることについて、私自身がこれにはむしろ積極的に取り組ましてもらっている。校長とその補佐役の教頭というものは、お二人が学校にきちんとおって部内を統制し、規律ある学園を築くという意味では、管理職として校長と教頭合わせて、大体六十六万人のうち六万人ですから、いわば十一人に一人くらいの割合で管理職がおる。一般公務員も、五十万人の公務員の中で四万五千人が管理職でございますから、これも大体十一人に一人くらいの割合でおる。これも学園といまでバランスがとれておる。もしその上に管理職を、たとえば教務主任だけを管理職にしようとなされば、学校は管理職で一般公務員とのバランスが崩れてくるということにもなるわけです。そういう意味から言うと、主任に手当を出すということは、一切の管理的性格のものではないという前提は毅然と守らなければならない。その点を明確にしていただきたい。
  344. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは管理職ということを考えてやっておるものではございませんで、先ほど来御答弁申し上げましたように、あくまで指導、連絡調整、助言といったところで学校活動を活発にしてもらうための職務である、こう考えております。
  345. 受田新吉

    ○受田委員 指導、連絡、助言をする、活発にやってもらうという立場で省令で定められた主任、小学校で二、中学校で三、高校で五、そうなっていますね。ところが、その主任と同じ量もしくはそれ以上の苦労をしている主任がおるかおらぬか。この主任以外にはないということですか、どうですか。
  346. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 昭和五十年十月に私どもが調査しました実態調査によりますと、それ以外にも、たとえば先ほどお話が出ました給食主任であるとか教科書主任、研修主任、図書館主任、いろいろの主任があることはございます。ただ、私どもが人事院に主任手当の対象として考えていただきたいというふうに申し入れました、ただいまお挙げになりました主任は、その設置の実態を見ますと、各学校を通じて設置率が最も高いという主任であり、かつ学校の判断においても、もちろんどの主任も大事なんでありますが、やはり校務全体を見ました場合にとりわけ必要だ、こういうような判断があるように見ましたので、そこに一つの線を引きまして、いま申し上げたような主任について、とりあえずその給与の対象としてもらいたい、こういうふうに申し入れをしたわけでございます。
  347. 受田新吉

    ○受田委員 これは制度化以前の五十年五月現在と思われるのですが、大事なところで調査された資料です。その資料をここへ例示しますと、小学校で教務主任が七九%の設置率、学年主任が四七・六%、ところが生徒指導主任は五一・二%、保健主任は六二・一%、教科主任は五六・七%、給食主任は四六・四%、図書主任は四五・五%と、学年主任よりも多いのが三つもあり、ほとんど同じのがさらに二つあって、合わせて五つが学年主任と同格であるという問題になってくるわけです。  こういう実態調査、これはきわめて有力な機関によって調べていただいておるのですが、実際に必要とする主任というものが小学校でさえも、いま指摘したように学年主任の上位に、あるいは同等にそれだけ並んでおる。そうしますと、教務主任と学年主任だけを取り上げることは、実際の需要に対する声ではないということになると思うのですが、いかがでしょう。
  348. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 学年主任というものは、要するに一学年に何学級あるか、一個学級の場合は学年主任とは通常言わないのでございまして、二個学級以上でございますので、その点がちょっとほかの主任と違おうかと思うのであります。いまの調査をさらに詳細に学校の規模別に見ました場合には、確かに七学級から十二学級までの学校では学年主任の設置率は四七・四となっておりますが、十三学級から十八学級までの学校では八二・五となっておりまして、これは教務主任に次ぐものであり、それ以上の規模の学校になりますと九三・五、九七・六というふうに、ほとんど学年主任を設置しておるということでございますので、そこのところを考えまして、小学校の場合は教務主任と学年主任を取り上げた、こういうことでございます。
  349. 受田新吉

    ○受田委員 私、いま一例を引いたにすぎません。余り時間をかけませんでも、もうポイントはわかっていることですから。同等の主任、まだそのほかに特別活動主任が四一・二、視聴覚主任が三九・二、これは主任としての労苦は著しく骨の折れる方へ入る。さっきからの議論は著しいかどうかということだが、それに入る主任があるわけです。そしてどの学校も設置率から言えば、そういうのが入ってくるわけです。そうなれば、御苦労さんという意味であれば、教務主任と学年主任だけでなくさらに範囲を広げて、大体学年主任と同じレベルで他にこういうのがあるというものを拾い上げて、これを省令化するというような配慮をする用意があるのかないのか、お答えを願います。
  350. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 現在省令化されております主任は、小学校では教務主任と学年主任、それに従来からのものとして保健主事があるわけでございますが、第三次の一年次の改善におきましては、先ほども申しましたように、御指摘の主任について手当支給の対象として研究してください、こいうふうにお願いをしておるわけでございまして、ただ、第二年次というものがあるわけでございますから、その点につきましては、今後さらに人事院といろいろお話をして、検討していただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  351. 受田新吉

    ○受田委員 人事院は人確法の扱いについて、すでに第三次までの改善案を出され、これが法案化された。第一次の九%、二次の七%、今回の改善措置に残された二・五%というのはいつごろ勧告なさるわけですか。
  352. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 給与というものは、いろいろ連動いたすものでございますし、全体として総合的に考えていかなければならぬ筋合いのものでございます。したがいまして、第三次の勧告というのは、御承知のように、まだ成立をいたしておりません。いろんないきさつがございまして、昨年勧告をお出ししたわけですが、まだ実現の運びに至っておらない。本国会でいろいろ御論議をいただいておるということでございます。見通しがつきました段階におきまして、最後に残っておりまする第三次のいわゆる後半分というものについては検討いたしまして、しかるべき時期に最終的な決着をつけたいというふうに考えておりますが、いま現在のところ、いつお出しするかということは、まだお答えできる段階ではございません。  しかし、いずれにしても、予算措置その他のことが行われておることもございますので、第三次前半が見通しがつきました段階において、次に後半分についても検討に取りかかりたい、かように考えております。
  353. 受田新吉

    ○受田委員 今度の改善措置に残された分は二・五%、これはなぜ一緒にやられなかったのですか。三回でやるべきなものをなぜ四回に分けられたのですか。
  354. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 これは御承知のとおり、予算措置その他の順序がございまして、第三次分については、二回に分けて組まれたという経過がございます。したがいまして、それとの調整の関係で後半分については、まだやっておらない。これは前半分が終わった段階においてお願いすることになる、こういうことを申し上げておる次第でございます。  その率は、形式的には五%でございましたが、したがって半分に分けておりますから二・五%でございます。しかし、基礎になる給与が上がっておりますので、実質は、前半分につきましても一・七程度になっております。後半分につきましても、大体それか、あるいは実質上はもうちょっと比率としては下がるという見当をつけております。
  355. 受田新吉

    ○受田委員 これは人確法制定の当時の趣旨から言うならば、三回で当然処理すべき問題だったのです。それを三回目が二つに分けられているというのは、どうもおかしいと私は思うのですがね。一回に提出して、一遍に勝負つけてしかるべきであったということじゃないのでしょうか。
  356. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 そういう考え方は確かにあると思いますし、それが筋ではないかという御議論は当然あり得ると思います。私どもといたしましても、別にこれは二回に分けなければならぬという筋合いのものじゃない。措置といたしましては、やはりできるだけ速やかにやることが適当なものでございますので、そういう予算措置その他が講ぜられましたら、当然三次は前後分けないでやることに相なったろうかと思いますが、予算措置その他の問題の関連もございまして二回に分けざるを得なかったということでございます。
  357. 受田新吉

    ○受田委員 この三回目が二つに分けられたということに私、ちょっと疑義があるのですが、分けられると、ここに問題が一つ起こってくる。  いま局長が、さしあたり主任は省令化したもので処理して、次を検討したいという、私が指摘したような問題を検討したいというおぼしめしである答弁があった。そうしますと、このたびの法案が通ったと仮定しますね。通った場合に、残された主任を今度追加する措置を、人事院が人事院規則でこれを追加するというときに、このたびの主任の手当を出す実施期を、これは人事院規則で実施期を空欄にしておけばいいのですから、次に追っかけてくる、もう一つ五十二年度の予算に取ってある第三次後半の二百二十九億は、この法案が通れば当然すぐ勧告をしていただくと私は思うのです。年度内に法案が成立するならば、予算で主任手当の追加分が用意された時点で、このたび通る主任手当をそれまで実施を待って、同時に主任手当をスタートするということができますかどうか。人事院が、たとえばこれが通れば一月ごろか二月には勧告をしなければならぬと私は思うのですが、通ったときには、勧告はそのころになりますか。そうすると、本年度内に次の給与改善が通る。そうすると、ものの三カ月か四カ月待てば次が追っかけてくるのでございますから、このたび通った、それに連動して決まる主任手当の対象を、手当を支給する時期を来年の三月まで待って、次に追っかけてくる分と一緒に支給するという手があるかないか。
  358. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 考え方といたしまして拝聴いたしたわけでございますが、第三次の関係は、その実施時期というものが一般の勧告とも合わせまして四月一日ということに相なっておるのでございます。先刻文部省の局長からもお話がございましたが、一応現在のような形で昨年省令化されたといういきさつがございますけれども、文部省自体といたしましても、あれでもって全部完璧なんだという態度は恐らくとっていないと思います。そういう意味で引き続き検討を加えるということを申されたというふうに私としても理解をいたしております。  そこで、そういう意味では、やはり省令化するということは、文部行政の一環として非常に権威のある一つのめどになるわけでございますので、われわれといたしましては、省令化された主任の中から手当をつける主任というものをどういうふうにするかということを決めていかなければならぬ。それがたてまえであると思います。したがいまして、今後御検討の結果、さらに時期はいつになるか知りませんけれども、省令化される主任について、何か追加とか改定とかいうようなことが行われる事態が起きてまいりますれば、人事院といたしましても、その点十分文部省と御相談をして、しかるべき措置を講じてまいりたい。われわれといたしましても、一応省令化されたことですから、これの点を尊重してまいりますけれども、人事院自体といたしましても、省令化の関係は、これは全然今後も改正の余地のない完璧なものとは考えておりませんので、文部省の方とも打ち合わせをいたしまして、しかるべき措置を検討いたしたいというふうに考えます。
  359. 受田新吉

    ○受田委員 諸沢先生、教頭職法案の成立のときは、教頭の担当する子供が、教頭が職務を行うためにその受け持ちが非常に不幸になる、自習が多くなる、それを救うために教頭の枠外定数をふやして、それを定数の上に上積みして現場の苦労を救っていくという趣旨で私は修正案を出したわけです。ところが、その実施が実は五カ年計画、おととし局長から伺いました五千人増員をまず五カ年計画でやる、すでに千名をやった、それから千人ずつでやるというが、事実は特殊学級などのことがあって、千名ずつの割合になっていない。そこでこれを、五千人を完成した上でさらに次の、教頭の受け持ち時間が大体一般の先生の半分と計算をした場合に何人おるのをどうどの間にやるというところをちょっとお示しを願いたい。
  360. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 教頭の法制化に伴って、昭和五十年度からいま御指摘がありましたように、五カ年で五千名弱の教頭定数の増を図る。それは小・中学校とも十八学級以上の学校について教頭の定数が一名ずつ配置できるような定員になるわけでございます。そこで、あと残りの学校についても完全に一名ずつの定員配置をするためには、一万強の定数増が要ろうかと思うわけでございます。  ところで、学校の先生の定数増の問題につきましては、昭和五十三年度で現行の五カ年計画が終わりますので、引き続き年次計画を立てて増員を図りたいと考えておりますが、御承知のように、現在、もちろん教頭も大切でありますけれども、養護教諭、事務職員の完全配置であるとか、あるいは小規模中学校の無免許教科担当教員の解消であるとか、いろいろな教育上の要請もございますので、それらの要請とにらみ合わせて次の計画は立ててまいりたい、かように考えておりますので、現時点におきまして、何年間にどれだけという数字を明確に申し上げることはちょっとできませんので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  361. 受田新吉

    ○受田委員 あの教頭職の専任化の法案提出の際に附帯決議をつけてあるのです。いま御指摘の養護教諭、事務職員の必置を同時に附帯決議でやりました。それは教頭の枠外定数増とは別の意味で附帯決議がついておるのを、いまあなたの御答弁では、養護教諭なども一緒に入るような計算をされてくれたのじゃ、当時の法案の修正案の提案をしたのはこちらなんだから、これはこちらの法案の趣旨に合致しない文部省の態度ということになるのです。教頭の枠外定数増と養護教諭それから事務職員は、別枠で附帯決議でこれはつけてあるのです。これを混同してくださっては困るのです。ちょっと御答弁をもう一遍……。
  362. 諸沢正道

    ○諸沢政府委員 おっしゃるように、事務職員、養護教諭は附帯決議にございますから、そしてまた事柄の性質として別であるということもよくわかるわけでございますが、しかし義務教育学校の教職員の定数増であるという見地から、われわれとしては、この増員を一つの人数として考えていかなければならぬわけでございますので、もちろん御指摘の点は十分念頭にあるわけでございますが、予算の要求あるいは定員増の要求としては、現時点で教頭だけ切り離して、こういうふうにしますということは申し上げられませんので、重ねて恐縮でございますが、ひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  363. 受田新吉

    ○受田委員 文部大臣、事務当局はちょっとちょろまかしておるのです。この修正案を出すとき、自民党の皆さんに対するわれわれの強い要望は、教頭数を定数の枠外で増員せよ、同時に事務職員、養護教諭も別途にこれの増員を図って、第一線の先生方に安心して教育に従ってもらうという法案の趣旨であったわけなんです。それがいまここで明らかに答えられませんというような答弁を諸沢先生はおっしゃっておるのですが、これは国会の審議、お互いが法案を成立するときの、これは議員の修正案なんだ。議員の修正案というのは、政府案を優先して議員修正案を軽視するということがあってはならない。文教の府であるがゆえにうそがあってはいけない。正しい発言をしていただかなければいけないのです。だから、いまの一万強という、一万一千ぐらいという当時の答弁であったのですが、その増員と事務職員、養護教諭の増員というものは速やかな措置をしていただかないと、また主任手当を出すという、初めの橋が渡れないで次に追っかけてくるというようなかっこうになる。  これは大臣に答弁願いたいのだが、大体主任というものは、文部省としては、教員の優遇措置に対する審議会のようなものをつくって、四十九年に三輪先生が責任者でやった、それの答申が五十年に出た、そこであわてて主任というものが生まれてきたのです。歴史が非常に浅いのです。教頭が実を結ぶまで十数年かかった。もっと世論にも訴えて、主任手当を出すのが是か非かを第一線の先生方の意見も聞いて、しかる後にこれを実を結ぶべきであったのが、余りにも早急にこれを出されて、三輪先生だって大変迷惑なことです。出したらすぐ食いついてくる。魚のえさを投げたと思ったら、すぐぱぱっともう食いついてくる。前の橋の方は片づけないでおいて、次の橋へすぐ渡っていくというのは、これは文部省という信用を大事にする役所としては、大変な虚偽であるわけです。本当に真実をもって第一線の教師たちに希望を持たしめ、子供も安心して、父兄も安心する体制を固めなければいかぬ。これは、大臣としては英断をふるわなければいかぬです。前の永井大臣のときにできた法案でありますと同時に、これは大臣の強い政治力によって、この問題の解決を図らなければいかぬ。いまの諸沢先生のお話は、どうもこの残りの改善措置をまだするから、はっきり言えませんということです。これは二年前の答弁とちっとも前進していない。五千人が来た暁にはどうするか。五千人の中へ事務職員、養護教諭が入る、こうなると、その次の残った五、六千人というものはいつやるかという答えがここへ出ておらぬのです。大臣から、これは強烈な指導力を出して、発言が願いたい。
  364. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 ただいま御指摘の教頭の定数の問題につきましては、来年度五カ年計画が一応完了するわけでありますので、その次に、これをほっておくわけにはまいりませんから、その次の計画を立てますときに、これは十分検討をさせていただきたいと思います。
  365. 受田新吉

    ○受田委員 いまの養護教諭の数字などと混同させて考えるということでなくて、教頭は別枠で考えなければいけませんね。それをはっきりしておいていただきたい。
  366. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 養護教諭の数の問題と教頭の問題を、この次検討をするときは別枠として検討させていただきたいと思います。
  367. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ答弁願いたい。自治省に一緒に答弁願いたいことがある。お互い信頼関係の国会であり、議員提案というものが無視されて、政府提案が強行されるというような文教委員会とか内閣委員会であってはならないのでございますから、はっきりしておきたい。  主任手当を支給するに当たって、第一線の先生方の実態は、人確法の給与改善で、実は他の職種とバランスが崩れた、また国家公務員と地方公務員との差があり過ぎたのを是正するためにラスパイレス方式等を一緒にして、人確法の改善の教員優遇が差し繰られているという事実が、この通牒でもはっきりくみ取れることであります。自治省は従来、処遇が改善され過ぎたところは調整せよと言っておられるが、これは明らかに地方公務員が優遇されているからこれを調整せよ、こういう措置です。つまり人確法の改善を国家公務員と地方公務員のアンバランスで差し繰るという動きがなかったか、御答弁願いたい。
  368. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  人確法に基づく教員給与の改善につきましては、公立学校の場合につきましても、国の措置に対応した改善措置を講ずるように指導しておるところでございます。いまお話しの一般の公立学校の教員の給与水準が国立学校の教員のそれを上回っておるという実情につきまして、私どもが給与水準の是正ということを指導しておりますけれども、それは人確法に基づく給与改善措置の施行とは別の話でございまして、人確法に基づくところの給与改善措置につきましては、国に準じた措置をとるように指導いたしておるところでございます。
  369. 受田新吉

    ○受田委員 自治省の通達の中に、いままで引き上げられ過ぎたところは調整せよと教員の給与について書いてある。あれはどういうことですか。
  370. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま申し上げましたように、通牒の中にすでにその給与水準が国立学校の教員のそれを上回っている団体にあっては、国立学校の教員の給与との均衡が保たれるように所要の調整措置等を講ずるようというふうな文句が入っております。それは人確法の改善措置でございませんで、元来の一般の給与水準が国立の先生方の給与水準とバランスがとれるようにすべきであるという指導でございます。
  371. 受田新吉

    ○受田委員 問題は、一般公務員と教職員、それから国家公務員と地方公務員、それは皆かみ合っているのだね。これは非常に時間のかかる問題であるから、二日後の質問でわが党の大内君から重ねてこれを質問していただく予定でございますが、この問題は十分前提にしておかないと、せっかく人確法で改善措置をされると言いながら、昇給短縮が逆に昇給延伸になったりして、差し繰られたままで事実は大したことはない。  もう一つ、人事院も、教職員の俸給表の中・小学校のあの第三表の改善に合わせて、高等学校がこれにくっつくのは当然ですが、大学、高専をずっと優遇措置をとり始めた。つまり同じ教員という関係で、義務教育の優遇であったと思ったら、みんな一斉に行くというようなかっこうになってきているのですね。これはおわかりのとおりです。総裁、そうですね。つまり中・小学校の教員の優遇が通ったらほかの職種とのバランスが崩れたから、五十二年の勧告において中・小の六・七%に対して、大学、高専をそれより〇・五%以上ぱっと上げる、これをやられましたね。
  372. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 小・中、高校をやったから、それに歩調を合わせて全部一斉にぱっとやるということではございません。われわれとしましては、給与を預かっておるたてまえといたしまして、やはり明確な不合理というものは、また不均衡というものは黙視はできません。しかし人材確保法という趣旨は、これは厳然としてあるわけでして、義務教育関係の教員については、やはり人材確保をするために待遇改善をすべきなんだということは明確にあります。それとの対比でもって大学、高専等におきましても明確な不合理、不均衡が生ずるということはやはり最小限度差し控えなければいかぬ、是正しなければならぬ、そういう角度から最小限の手直しをやったということでございます。その点をひとつ御了承賜りたい。
  373. 受田新吉

    ○受田委員 これで最後の質問です。  この主任手当というものは、いまのような、第一線ではこの手当を出すことによって、実は一般の先生たちは、もらう人も迷惑、もらわない人も迷惑という問題が事実起こる。私も学校長の経験をしております。校長、教頭の管理職というのは、きちっとしたものできちっとしたらいいが、あとの先生方に階級差をつけるような印象は与えたくない。出さぬならすっかり出さぬがいいし、出すのなら主任としてかっこうのついた人に一斉に出す、そのいずれかを選ぶ以外にはない問題だと本当は思っている。その趣旨に沿うて、この主任手当というものを考えてほしいと思うのです。  時間が参っておりますので、これで質問を終わりますが、ひとつこの問題を早急に検討していただくことと、人事院としてはさっき私が指摘した、このたびの改善措置で主任手当が設けられた、残った主任手当が後から追っかけてきた場合は、同時発足のような手続が人事院としてはできると私は思う。人事院はそのくらいの配慮をしてこの調整をとるということを図っていくべきであり、文部省と相談するというよりも、これはもう人事院が単独でやれるのですから、文部省に相談なしに。いいですか、主任手当の支給時期を後のとひっかけて一緒にする、ちょっとずらす。これはやろうと思えば、文部省抜きに人事院でできるのです。  それでは、質問を終わります。
  374. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 ほかならぬ、いろいろ問題のあった主任制度の関係でございます。また文部行政と大変密接なと申しますか、文部行政自体の問題でもございます。その責任官庁として文部省があるわけでございますので、ほかの事柄と若干違います。したがいまして、事柄の重要性にかんがみまして、やはり文部省と密接に連絡をとりながら対処をしてまいりたいと思います。  なお主任については、先刻も申し上げましたように、現在の省令化されておるものが万全で、今後全然改正の余地もないのだというふうなことは考えておるわけではございませんで、いろいろな点について今後、省令の追加あるいは改正等が行われることになりますれば、われわれといたしましても、それらの点について十分連絡をとって善処したい、かように考えます。
  375. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次回は、来る十七日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十五分散会