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大内委員 私は、民社党を代表して、ただいま上程されました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に対し、
反対の討論を行わんとするものであります。
われわれが
防衛二法案に
反対する第一の
理由は、
わが国を含むアジアの平和
体制実現のために、
わが国がいかなる構想を持ち、また行動しようとするのか、その中で
わが国の
防衛力はどう位置づけられなければならないのかという総合的な平和構想、平和戦略が欠如した状態の中で、ただ惰性的に
防衛力の増強がなし崩しに行われようとしていることであります。それはまさに
防衛力の独走であります。
昨年十月、
政府は基盤的
防衛力構想をまとめ、
防衛力の規模については、これを現状で凍結し、今後の
防衛力の整備は、質的な整備に重点を置く方針を内外に明らかにいたしました。
しかし、今回の
防衛二法は、同構想が打ち出される前の原案であり、それは明らかに
防衛力については現状規模を維持するという同構想の方針に矛盾し、したがって、本来的には、基盤的
防衛力構想の
決定に伴って当然その見直しが行われてしかるべきであったにかかわらず、それが全く行われていないことであります。基盤的
防衛力構想とこれは一体どのような関係を持つのか一切不明のまま、三年前の案が惰性的に続けられていることは、余りにも不見識と言わなければなりません。
同時に、われわれが留意しなければならないことは、
防衛力の規模は新
装備の
導入を
理由として自動的にその増強が行われるべきではなく、シビリアンコントロールの最高
決定機関である
国防会議の
決定に基づき、陸海空の定員が定められ、かつそれが国会で承認され、その限界において人的配置が行われることが原則でなければならないことであります。今回のように、新しい
装備の配備に伴って
防衛庁ベースで人員増が当然
事項のように行われていくならば、その数の大小を問わず、定員に関するシビリアンコントロールは基本的に崩れていくことを重視しなければなりません。
特に、
国防会議が審議機関としての機能を実質的に失い、いたずらに
防衛庁から出てくる諸提案について受動的にイエス、ノーを言うだけの諮問機関に堕していることは、シビリアンコントロールの最高機関として重大な欠陥があると申さなければなりません。
昭和四十七年の第四次防先取り問題は、まさにこのような
国防会議の欠陥と、それに基づく
防衛庁の独走の中から起こったことはまだ記憶に新しいところであります。
今日、安全保障の問題は、狭義の
防衛力整備の問題にとどまらず、外交、経済、エネルギー、食糧、国際協力等々、多角的な検討を必要とし、
防衛力をどのように位置づけていくかはそれらの総合判断の帰結として結論づけられなければなりません。
しかし、
国防会議の現状は、その構成並びに法制的位置づけから言っても、そのような
体制は今日とられておりません。すでに
政府は、
昭和四十七年
国防会議の改革を閣議
決定し、その後の国会
答弁においても、
防衛庁長官も、
国防会議事務
局長も、
国防会議改編の
必要性を
指摘しながら、それを今日まで具体的に実行せず、ただわずかに運用面で議員懇談会を運用することによって事足れりとしております。最近の
福田総理の
答弁もまたしかりであります。しかし懇談会は、その中身がどうであれ、しょせんは
決定機関ではありません。しかし
国防会議は、安全保障にかかわる各方面の
責任者で構成される
決定機関であることが要求されているのであります。
わが国防衛の基本であるシビリアンコントロール
体制をこのように欠陥車のまま放置しながら、
防衛庁からの要求によって定員増がなし崩しに図られる状態は、まさに本末転倒の姿であり、このような安易なやり方を容認することはできません。また、それは決して
防衛力について国民のコンセンサスを得る道ではないと確信いたします。
反対の第二の
理由は、陸を初め空、海において相当数の欠員を放置したまま、ただ定数の枠だけをふやせばよいという
考え方は、余りにも形式的であり、安易であるということであります。
自衛隊は、現在約三万人にも及ぶ欠員を抱え、それが近い将来充足されるという見通しは、
政府みずからが認めるように全くありません。むしろ、若年労働者の不足傾向からして、将来は、現在の充足率を確保することすら困難になることは必至であると言わなければなりません。それにもかかわらず、欠員を放置したまま定員枠だけをふやそうというのでは、国民を納得させることはとうていできません。
定員を充足させることができないというならば、その計画自体こそが洗い直されるべきであります。あるいは、今後定員は確保できますという保証と対策を示すことが先決であります。こうした方策を講ぜず、惰性的に定員枠だけをふやそうというやり方は、国民を愚弄する措置と断ぜざるを得ません。
以上が
防衛二法に
反対する主な
理由でありますが、この際、
防衛力のあり方について、一、二申し上げておきたいと存じます。
その第一は、すでに
反対理由の中で
指摘したとおり、
防衛に関するシビリアンコントロール
体制を名実ともに確立するため、この際、
国防会議の改革を早急に進め、これによって総合的な安全保障政策を確立できる基盤を整えることであります。そのことなしに行われる一切の
防衛力
強化は、きわめて危険であることを警告しておきたいと存じます。
同時に、これは国会自体の問題でありますが、懸案の
防衛委員会を早急に発足させ、広義、狭義の
防衛問題について総合的に討議できる場を国会の中に速やかにつくり上げるべきであります。
その第二は、
防衛問題に対する国民のコンセンサスの確立であります。安全保障の根幹は、みずからの国を守ることに対する国民的合意と団結の確立であります。そのためには、まず
政府が、これまでのような事なかれ主義的な
防衛論議で国民をごまかし、既成事実の積み重ねによって
防衛力の増強を図るといったこそくなやり方を改め、
政府の国際情勢認識を国民に率直に述べ、その中における
わが国の
防衛力整備の
必要性がどういう点に存在するのか、それはどこまでの整備を目標とし、いまそれがどういう状態で進んでいるのか、また
アメリカの
日本防衛の実体はどういうものなのか、それに基づく日米の
防衛分担はどういう形でなされなければならないのか、またそれはいまどのような現状にあるのか等々について国民に
理解を求める率直な姿勢がきわめて重要だと
考えます。
われわれは、これらの措置がこの際
政府において早急にとられることを強く要望し、また、われわれ自身も
わが国の
防衛問題について真剣に取り組むことをここに表明し、私の
反対討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)