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1977-10-27 第82回国会 衆議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十七日(木曜日)     午前十一時五十四分開議  出席委員    委員長 正示啓次郎君    理事 木野 晴夫君 理事 近藤 鉄雄君    理事 竹中 修一君 理事 塚田  徹君    理事 木原  実君 理事 長谷川正三君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    井出一太郎君       宇野  亨君    中馬 辰猪君       塚原 俊平君    中村 弘海君       藤田 義光君    増田甲子七君       上田 卓三君    栂野 泰二君       矢山 有作君    新井 彬之君       市川 雄一君    大内 啓伍君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 三原 朝雄君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         国防会議事務局         長       久保 卓也君         防衛政務次官  浜田 幸一君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      銅崎 富司君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         防衛施設庁労務         部長      古賀 速雄君         外務省アジア局         次長      枝村 純郎君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省条約局長 大森 誠一君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      志賀 正典君         農林省構造改善         局農政部長   渡邊 五郎君         運輸省航空局飛         行場部長    田代 雅也君         海上保安庁水路         部参事官    進士  晃君         海上保安庁燈台         部長      高橋 顕詞君         郵政省電波監理         局周波数課長  森島 展一君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 十月二十六日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     三池  信君 同日  辞任         補欠選任   三池  信君     宇野  亨君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出、第八十回国会閣法第一〇号)      ————◇—————
  2. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、第八十回国会閣法第一〇号、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 きょうは十月二十七日で、米軍のファントムの横浜墜落事故からちょうど一カ月がたちました。一昨日同僚議員質問されましたが、聞いておりますと、政府がこの問題でやったことと言えば、十月十七日に発表した中間報告範囲を超えておりません。アメリカに従属した政府態度に、私はむしろ怒りを覚えるくらいであります。きょうは怒りをもって質問いたしますので、隠さずに答えていただきたいと、まず申し上げておきます。  そこで、まずエンジン持ち帰りの問題ですが、最初に、事故分科委員会日本側構成委員役割り権限はどういうものか、これを簡単に答えてください。
  4. 亘理彰

    亘理政府委員 お答えいたします。  事故分科委員会は、地位協定に基づいて設けられております合同委員会下部機構でございます。航空機事故につきまして、その事故原因を究明し、あわせてその再発防止のための対策検討して、これを合同委員会に勧告するということがその任務になっておるわけでございます。  構成委員は、日本側はただいまの時点では防衛施設庁の……(柴田(睦)委員役割り権限だけで結構です」と呼ぶ)以上でございます。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、日本側委員にもいま言ったような役割りがあるという、まことにりっぱなことを言われるわけですけれども、実際は違うのじゃないかと思うわけです。  中間報告を見ていただきたいと思うのですけれども、この中間報告では、十月五日、六日に米軍からエンジン本国に送り出したいという通報があったので、七日の事故分科委員会日本側は、アメリカ側に対し二つ条件をつけました。  一つは、米軍エンジンなどを米本国に移す場合は事前連絡を得たいということと、もう一つは、その調査結果は日本側に提供してほしい。日本エンジンなどの検査を行う必要がある場合は、日本エンジンを持ち帰ることを要求することもあり得る。こういう内容です。  これを見ますと、日本側は持っていってはだめだということは一言も言っていない。持ち出し最初から容認しているのではないですか。
  6. 亘理彰

    亘理政府委員 事故調査は、第一次的には米軍で組織しております事故調査委員会で進めておるところでございまして、事故分科委員会は、その調査委員会の結果を踏まえまして日米双方でこれを検討し、必要な勧告並びに報告合同委員会に対して行うということでございます。  いまのエンジン持ち出しの件については、すでに御報告しておりますとおり、米軍調査日本国内で実施してほしいということでありますが、一方で原因解明をできるだけ早くいたしたいということで、調査の必要上一部の機器等についって、どうしても米本国へ移して精密な検査を行った方が効率的であり、有効であるという場合には、これはやむを得ないかと思うわけでありますが、その場合には事前連絡をしてほしいということを申し入れておりまして、その事前連絡がなかったことにつきまして、私どもははなはだ遺憾であるという申し入れをした次第でございます。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっと答えになりませんが、エンジン持ち帰りを強く要求できないというのは、結局は政府の姿勢が国民の方に目を向けないでアメリカにばかり目を向けているということに問題があると思うのです。中間報告には事故究明のためにエンジン調査が必要不可欠であるということは一行も書いてありません。反対にエンジンには異常がなかったことを強調しているようです。さらに、墜落時刻飛行経路、飛行高度、この三点については「調査中」と書いているのですが、一番大切なエンジンについては調査するということは何ら書いておりません。「検査を行う必要がある場合には、」と言って、ごまかしております。エンジン調査に関して、なぜ現在調査中と明記しなかったのか。エンジン調査は必要不可欠のものであり、必ずやると言明すべきであると思うのですが、どうですか。
  8. 亘理彰

    亘理政府委員 おっしゃるとおり、エンジン調査は不可欠であると思います。したがいまして、申し上げましたように、米軍事故調査委員会におきまして、ただいまエンジンをカリフォルニア州にあります米海軍航空修理施設におきまして精密な検査を実施しておるわけでございます。それから私ども日本側からは、これにつきまして、その調査結果を提供してもらうこと、それから米本国における精密な調査はできるだけ早く完了して、完了次第日本に持ち帰ってもらいたいということを申し入れている次第でございます。  なお、この十七日の段階国会に御報告申しておりますところは、一番冒頭に書いてございますように、これは事故分科委員会検討した結果ではございません。これはその時点で私ども中間報告というべきものは無理であると考えたわけでございますが、たっての御要望がございましたので、防衛施設庁といたしまして、いろいろのルートで承知したところをまとめて、とりあえず御報告申し上げたということでございまして、いずれ事実とそれからその原因究明等につきましては、事故分科委員会レベルで精細な検討を行った上で合同委員会報告され、合同委員会から公表される手はずになっておる次第でございます。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 聞いておりますと、やるという言明に受け取れるわけですが、そうしますと、十七日の段階から今日すでに十日を過ぎております。この点訂正の上、中間報告を直ちにやり直すことを要求したいと思うのですが、どうですか。
  10. 亘理彰

    亘理政府委員 航空機事故原因調査というのは、いろいろな従来の前例を見ても、相当の日数を要するのが例になっておるわけでございます。私も前に参議院の内閣委員会でも、調査にどのくらいの時間がかかるかという御質問がございまして、これはケース・バイ・ケースでございますので、わからないわけでございますけれども通常の例としてはどうかというまた重ねての御質問がございましたので、通常少なくも数カ月はかかるのが例のように聞いておりますと申し上げたわけでございます。  いずれにしましても、私ども中途段階で不確定なことを申し上げることはできませんので、先般の十七日に御報告いたしましたところは、米軍情報によればということで、一々出所を断っておるわけでございまして、日米双方でこれを専門技術的に検討した結果につきましては、できるだけ早く事故分科委員会レベルでまとまって公表できるようにいたしたいということで、努力は進めてもらっておりますけれども、いまの段階で十七日以降の結果を踏まえて、内容的にさらに詰まったものを御報告できる状況にはなっていないわけでございます。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 自主的に、積極的に調査をやるというところが欠けておる、態度がふまじめであると私は思います。  九月二十八日付の朝日新聞を見てみますと、徳永克彦という人の目撃談が出ておりますが、この人は米軍機厚木基地を離陸して墜落するまで終始目撃しながら、しかもフィルムにおさめております。飛行機マニアである徳永君は、「離陸する前、エンジンを全開したとき、左側エンジンのノズル(噴気口)の左側から細長く赤黒い炎が出ていた。いつものアフタバーナーの炎とは違い、異常だった。燃料が漏れてアフタバーナーの火が引火したようだ。燃料が漏れると離陸前に計器で異常が分かるはずだが、パイロットがそれに注意せず飛び上がったのだろうか」、こう語っております。また、東京新聞には大和市役所基地対策課の職員の証言も載っております。こういう話に比べてみますと、中間報告は全くおかしいのです。防衛施設庁は、こうした新聞に出た目撃者の話を聞いて自主的な調査を何もしていないのじゃないかと思うのですが、調査いたしましたか。
  12. 亘理彰

    亘理政府委員 再々申し上げるようでございますが、現在は米側事故調査委員会でいろいろな精密な技術的な検討調査を進めておる段階でございます。いずれその結果が事故分科委員会報告されました段階で、これは日米双方でその内容を点検して、皆さんに御納得のいただけるような内容の御報告として出てくるというふうに思うわけでございます。  事柄は、いずれにしましても非常に技術的な分野にかかわってまいることでございますので、いろいろな人的な証拠と申しますか、証言等のほかに、物的な証拠等をいろいろかみ合わせまして、科学的に解析した上でないと正確な原因あるいは推定原因というものが出せない、こういうことであろうと思うわけでございます。私どもは、次に御報告する場合には、そういう正確に技術的、専門的に裏づけされた結果を事故分科委員会レベルから合同委員会に上がった段階で御報告いたさなければならない、こういうふうに思っておる次第でございます。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの答弁を聞いてみましても、目撃者、そうしたものに当たっていないということになるようです。人的な証拠というのは、時の経過とともに記憶が薄れてしまうわけですから、本当に調べるのだったら、直後に調べておかなければならない。それにさらに科学的な調査を加えるということでなければならないと思うわけです。中間報告を見てみますと、大切なことはすべて「米軍説明によると」、こう言って、みんな米側の言いなり、日本側としては独自に何もやっていないのではないかと思われるわけですが、もしやっていると言うならば、何をやっているのか、その項目を言ってもらいたいと思います。
  14. 亘理彰

    亘理政府委員 目撃者証言等については、警察当局でいろいろ集めてもおられるように承知しておるわけでございます。事故分科委員会レベルにおきましては、米側から第一次的な調査結果の報告がありましたときに、これを技術的に、非常に多岐な内容にわたると思いますので、まずその内容を十分に理解し、あるいは欠陥があればそれを追及する、点検できるそういう能力のある人たちに参加していただかなければならないということで、これは政府部内、それから政府部外もございますが、そういう専門的な方々の参加をいただくように、いま鋭意検討をしておるところでございます。  いずれにしましても、断片的な事柄を、裏づけされない情報をもとにして御報告することはかえって誤解を招くというふうに思いますので、現在の段階では、はなはだ不十分であることは私ども十分承知しておるところでございますが、いずれ十分に点検した、技術的にも点検された結果の報告が出るものと考えておる次第でございます。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 すでに一カ月がたっているわけです。いろいろ言われますけれども日本側が自主的に、具体的に調べていくということをやっていないということに問題がある。国民の前に、日本が被害を受けたのだという立場でちゃんと調査をする、そして調査をしたということが言えるような状況ではない、全く卑屈な態度だと私は考えます。  もう一つ、重大なことですが、中間報告には、第一報横田タワーから入ったと書いてあるのですが、私たち共産党議員団厚木基地調査に行ったとき、航空集団司令官宮沢海将、第四航空群司令曽禰海将補、この二人が、第一報事故機からの緊急周波数による緊急信号であるということを説明してくれました。これは防衛庁長官に伺いたいと思うのですけれども、なぜ中間報告ではこの第一報を隠しているのですか。
  16. 亘理彰

    亘理政府委員 別に何ら隠す理由もなければ、隠しておる事実もございません。私ども、この中間報告が不十分であることは、先ほど申し上げたように認めておりますけれども、私どもが承知している内容を正直に、承知している範囲で御報告いたしておるわけでございます。再々申し上げますが、正確には今後の調査を踏まえまして改めて御報告申し上げる、こういうことでございます。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その緊急周波数による緊急信号があったということは把握しているのですか。知っているのですか、知らないのですか。
  18. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私ども調査をいたしましたところが、いま先生がおっしゃいました緊急周波数による警報音を受信いたしております。そしてまた、先ほど施設庁長官から御説明いたしました横田管制所からの連絡もございました。同時に、これは時間がほとんど相前後しているようでございますが、たまたま付近を飛行しておりました米軍のヘリコプターからも、厚木タカンの北方六マイルのところでF4が墜落したという通報を受けておるようでございます。この三つの通報がほとんど相前後して管制塔に入っているようでございます。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 第一報がこの緊急信号であったのか、それとも横田タワーからかというのでは、大きな違いが出てくるわけです。緊急周波数による緊急信号を発信している場合は、中間報告で「調査中」となっている墜落時刻からそのほかの細かいことまでみんな横田タワーに記録されるということになるからであります。これが書かれていないというのは、これは重大な問題になるわけです。エンジン調査のこと、−緊急周波数のこと、目撃者調査をすること、この当然のことを明らかにして、中間報告を提出し直すべきである。再報告要求いたしますが、どうされますか。
  20. 亘理彰

    亘理政府委員 同じことを繰り返すようでございますが、中間的な段階で、いろいろな科学的な裏づけを持った調査結果ということで御報告いたしませんと、情報源が、ただいまもお話がありますように、一方的ではないか等々のおしかりを受けるわけでございます。私どもは、この調査結果を公表いたします。それから、もちろんこの事故分科委員会最終目標は、事故再発防止のためにどういうことが考えられるかという点にあるわけでございますが、この調査結果につきまして、隠すつもりは毛頭ございません。ただ、中間的な段階で断片的に御報告申し上げることは、かえって誤解を招く。強いてお求めに応じて提出いたしますと、また直ちにおしかりを受けるような内容になるわけでございます。その点は御理解をいただきたいと思います。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、これから先の調査のプログラム、いつごろになったら中間報告が新しいものとして出せるか、本調査はいつごろ出せるか、こういう見通しを述べてください。
  22. 亘理彰

    亘理政府委員 ただいまの段階では、具体的にいつごろということまでの見通しを得るに至っておりません。できるだけ早くということが私どもの考えでございます。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この問題の最後に、長洲神奈川県知事が去る二十四日、初めて福田総理に対して政府の無責任な態度について抗議をなさった、同時に米軍機飛行中止を強く要求されているということを私は強調したいと思います。そして、横浜市長も同様の主張をされているわけであります。これはまさに県民の声、国民の意思の表明であると思うわけです。私は、同じような抗議要求をいたしたいと思うわけであります。  次に、テーマを変えまして、ロランC問題に移っていきます。  柏市の米軍通信基地は、地元の全面返還要求に反して一部返還にとどめ、しかも返還しない部分はロランC施設基地にするということであるわけですが、一体柏ロランC施設民間平和利用が可能であるかどうか、その辺からお伺いしたいと思います。
  24. 亘理彰

    亘理政府委員 ロランC施設というのは、すでに先生にはいろいろ御説明申し上げておるところでございますが、これは米軍が設置する長波の電波による航法支援施設一つでございます。これは現在北海道沖繩、硫黄島、南鳥島の四カ所にあるわけでございますが、これの精度等に制約があるために、柏に同種類の施設ロランC局を開設するという計画になっておるわけでございます。  これの目的は、航空機あるいは艦船が、その安全な航行のために自分の位置方位等を正確にキャッチするための施設でございまして、米軍が建設するものでございますが、受信装置を持っている限り、米軍に限らず、民間であれ、どこの国の船舶航空機であれ、利用できるものと承知しております。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 一般的にロランC民間利用ができるということであれば、ロランC運用について日米間の取り決めがあると思うのですが、これはどうですか。
  26. 亘理彰

    亘理政府委員 地位協定に基づきまして、この運用については日、米関係当局間で調整をすることになっておりますが、具体的には、郵政省の方からお答えいたした方が適当かと思います。
  27. 森島展一

    森島説明員 郵政省といたしましては、在日米軍の使用する電波周波数につきまして必要な調整協議を行っておりまして、ロランC運用についての取り決めというようなものはございません。
  28. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それはどうもおかしいと思うのです。札幌調達局、現在は施設局ですが、ここで昭和三十七年に出しました「十勝太航海用電波燈台について」という冊子があります。これを見ますと、「ロランCの海図は海上保安庁水路部で発行市販するよう米側と約束ができております。」こう書いてあるわけです。これでも取り決めがないと言われるのですか。
  29. 進士晃

    進士説明員 お答え申し上げます。  そのアメリカとの取り決めということは、海上保安庁水路部としては全然承っておりません。
  30. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛施設庁の方、どうですか。
  31. 高島正一

    高島政府委員 突然のお尋ねでございますので、詳細調査の上、御報告をさせていただきたいと思います。
  32. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だから、取り決めがないというのは、いま私が言いました資料にも書いてあるくらいで、ないというのは全くおかしいわけで、いままで防衛施設庁は、ロランC民間利用平和利用ができると言っているのですから、運用についての取り決めが当然あるはずだと思うのです。やはり何か隠しているというのは、ここにも重大な軍事目的があるからではないか、こういうように思うのですが、軍事目的という面から防衛施設庁、どう考えますか。
  33. 亘理彰

    亘理政府委員 ロランC目的は、先ほど申し上げましたように、航空機あるいは船舶航行の安全を図るために、ロランC局から発進する電波を受けて、自己の位置方位等を正確につかめる施設でありまして、この利用については、どこの国であれ、どういう船舶航空機であれ、受信装置さえ持っておればだれでも利用できる。そうしてこの受信装置なり、そのロランのチャートは、一般にこれは購入すれば利用できることになっておりますので、私どもはこのロランC局につきまして、何らかの秘密めいたものがあるとは全く考えておりません。
  34. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ロランCというのは米軍が管理しているわけですから、米軍作戦上の必要から電波変更を行うということがあり得ると思うのですけれども、どうでしょうか。郵政省防衛庁の見解を伺います。
  35. 森島展一

    森島説明員 郵政省が行っております在日米軍が使用する周波数に関する調整は、日米双方のそれぞれの周波数が相互に、円滑に使用できるか否かという観点からの調整でありますので、周波数変更などが作戦上の必要からかどうかというような点については、関知いたしておりません。
  36. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 理論上はあり得ると思いますか、あり得ないと思いますか。防衛庁でも答えてください。
  37. 高島正一

    高島政府委員 お答えいたします。  周波数の問題につきましては、御案内のように地位協定電気通信電波に関する合意等によって、日米間で協議がなされるというふうに防衛施設庁としては承知しておるところでございます。
  38. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは伺いますが、軍事上の、作戦上の必要から過去にはそんなことがなかったかどうか。郵政省外務省海上保安庁、そんなことがあったかどうか、それぞれ答えてください。
  39. 森島展一

    森島説明員 過去には、先ほど話のございました北海道等ロランCにつきまして、電波周波数の問題で郵政省協議をいたしましたけれども、これが作戦上の必要から云々ということでは、全く私どもは関知いたさないわけでございます。
  40. 進士晃

    進士説明員 お答え申し上げます。  いまのお答えにもございましたけれども、これは作戦上のものか、それは私どもわかりませんけれども周波数は常に百キロヘルツでロランCは全部固定しております。ただ、発射いたしますパターンをときどき変更することがございます。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは防衛庁に伺いますが、防衛庁ロランCを使っているそうですか、過去に従来の電波を打ちとめられたという経験がありますか。
  42. 間淵直三

    間淵政府委員 そういう事実は聞いておりません。
  43. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ここに私は米軍水路情報を持っているわけですが、これを見てみますと、一九六八年一月二十二日から三月二日まで、ロランC電波発進が突然変更されました。それまで硫黄島が主局であったものが、急にそれまで従局であった南鳥島に主局が移って、十勝太、慶佐次、ヤップ島という順序で変わって、硫黄島が一時廃止されました。このため、一般船舶航空機ロランCは使いものにならなくなりました。こういう事実を防衛庁が知っていないはずはないのですが、いまのお答えでいいのですか。
  44. 進士晃

    進士説明員 お答えいたします。  これは私ども水路部でも水路通報と称するもので、これは冊子と無線、短波でございますが、短波の方は定時、冊子の方は一週間に一回発行いたしておりますが、同じものをアメリカの水路部でも発行しておりまして、その中で特に太平洋地域のものはハイドロパックと申しておりまして、ハイドログラフィーというのは水路、パックはパシフィックでございますが、ハイドロパックというものを毎日やはり私どもの無線航法経路と同じ形で短波で定時に発射しております。その中に、このロランCの要目の変更につきましては発射されておりまして、これは通常一般の船舶に対するものでございまして、これは一般の船舶のみならず、当庁もこれを受信いたします。
  45. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛庁、いまの事実は知りませんか。
  46. 間淵直三

    間淵政府委員 そういう事実があったと思いますけれども、特に私どもの方へ通知があるということではございません。
  47. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これもまたおかしいのです。実は、一月二十二日に急に変更するわけですけれども、一月二十三日にはプエブロ号事件が起きているわけです。この変更期間中の特別のロランCのチャート、海図は米軍や自衛隊だけが秘密に用意していて、一般の民間船舶には渡されていない、通報もされていない。そして、この間に米軍は核空母エンタープライズを北上させる、朝鮮民主主義人民共和国に対して大小三千発を超える弾丸を撃ち込むという軍事挑発を行っております。  このようにロランCは、有事には米軍専用に運用されるわけです。同盟国の軍にだけ海図が渡され、通報がされるというように私は思うわけですが、こういうことでは航行の安全といっても、ロランCを使用する漁船や船舶はどえらいことになってしまうわけであります。防衛施設庁は盛んに民間利用ということを強調しているわけですが、漁船など船舶を犠牲にして米軍や軍艦が行動しやすい、いわゆる朝鮮有事の際に正確に弾丸を撃ち込める、またミサイルを撃ち込める、そういうようにするために位置確認を正確にする電波灯台の役割りを果たすものにほかならないと考えております。防衛施設庁はこの事実を調査して報告してもらいたい。この報告ができなければ防衛二法の審議は実際にできない、そういう性質のものだと思うのですが、委員長、この報告が出せるように善処していただきたいと思うのです。
  48. 亘理彰

    亘理政府委員 防衛施設庁は、御承知かと思いますが、施設、区域の提供を任務としているわけでございます。ただいまの電波に関する運用の問題につきましては、しかるべき所管官庁においてしかるべき調整がなされておるものと考えます。
  49. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっと伺いますが、しかるべき官庁というのはどこになりますか。
  50. 高橋顕詞

    ○高橋説明員 お答えいたします。  私ども海上保安庁燈台部は、海上を航行する船舶の安全のための航行援助施設を一般的につかさどっておる役所でございますが、ただ御承知のような地位協定に基づきまして米軍が設置する施設につきましては、これは私どもの力の外と申しますか、そういう関係になるわけでございます。  ただ、ただいまお話に出ておりますロラシC、これはちょっと話があれになりますが、当初は余り利用されませんで、最近、従来ありましたロランAの受信機を改良して、このロランCをかなり精度を落として聞けるというような受信機を日本のメーカーが開発して以来、大分使われ出しております。そういう実態を踏まえまして、私どもといたしましても四十七年からロランC情報を水路通報に載せるということをいたしております。
  51. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私が聞いているのは、プエブロ号事件が起きて朝鮮で大々的な軍事挑発があったときにロランCのチャンネルが切りかえられたという事実を知らないとおっしゃるから、それを調査して報告してもらいたい。防衛庁長官、いかがでしょうか。
  52. 亘理彰

    亘理政府委員 先ほども申し上げましたように、この運用に関しましては日米政府間の所要の調整がなされるわけでございますが、これは私どもの所管ではございませんが、この所要の調整は、一つ地位協定の三条の二項にございまして、「合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。」こうあるわけでございます。この場合の日本側当局は郵政省であるかと考えます。
  53. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 チャンネルが変えられた、そして防衛庁の軍艦あるいは飛行機はロランC専用のものが十五隻あるわけです。そうすれば、日本の軍艦に新しいチャートが渡されていなければ、日本の軍艦はいま自分の位置がどこかわからなくなってしまう。アメリカが自分の意思で急に変える。その場合に日本の海上自衛艦がどこを通っているかわからぬようになってしまう。こういうことはあり得ないと思いますし、防衛庁がそれを知らないということはおかしいと思うのです。だから、どうもほかの省の話を聞いていると知らないようですから、それはあるいは知らぬかもしれぬから、少なくとも防衛庁の方だけは知っていると思うので、それを調査して、そういう事実があって、本当に海の上を航行できなくなったかどうか、そのことを調べてもらいたい、報告してもらいたい。これができなければ、これは本当に審議できませんよ。
  54. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生からのお話があったわけでございますが、私もその事実は知りませんでした。海上自衛隊のいままでの私が接触している限りにおいては、そういうことがあって大変不自由したという話も聞いたことがございません。したがいまして、いま直ちにわかりませんので、海上自衛隊でそういうことが事実あったのかどうか、これは調べて後ほど御報告をいたします。
  55. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、軍事基地の整理統合という美名のもとに在日米軍基地が強化されている実態を私は決して容認できない、こう考えております。  柏ロラン局は、現在の極東チェーンを廃止しないのですから、現在でも十分利用可能であって、軍事基地強化につながるロランC局の設置を取りやめるよう米軍に申し入れるべきであると思います。そして地元の声に従って全面返還を求めるべきであると思うのですが、どう考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。
  56. 亘理彰

    亘理政府委員 返還を求める考えはございません。
  57. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日本船舶、漁船について言えば、これは現行のチェーンで十分であるわけです。この計画は、日本船舶の必要から生じたものではありません。米軍軍事作戦上つくられるものである、私はこう断言いたします。返還を求める気持ちはないということですけれども、私は地元の声に立ってこの返還を強く要求いたします。新しい対朝鮮軍事戦略に伴ってつくられる、こういう施設はやめさせるのが現行憲法下の任務であるということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。
  58. 正示啓次郎

    ○正示委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  59. 正示啓次郎

    ○正示委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。中川秀直君。
  60. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 私は、現下のわが国の防衛問題のうち、特に緊急性の高い数点について端的に政府の見解をただしたいと思います。時間が余りありませんので、答弁も端的にお願いをいたします。  まず第一に、防衛庁が次期戦闘機として採用を内定し、さきに概算要求をしたF15イーグルについてお尋ねをいたします。  一昨日の当委員会の質疑で、F15の爆撃装置は構造上の理由で外すことはできない、空中給油装置も将来の運用を考えて、つけておきたいと考えている旨の発言が防衛庁からありました。この点についてお尋ねをいたします。  わが国の防衛力として保有すべき装備は、憲法上の制約あるいは専守防衛の立場から、わが国の自衛のために必要最小限度のものに限られることは言うまでもありません。この見地から、四十三年の十月二十二日の当委員会におきまして、増田防衛庁長官は、将来選ぶべき戦闘機FXには爆撃装置は施さないという答弁をなさっておりますし、またそれが政府の方針として貫かれ、現在使用中のF4EJファントムにも爆撃装置、空中給油装置は両方とも外しているわけであります。  今回の、一昨日行われました防衛庁の発言は、こうした過去の経緯での政府の方針を変更するということなのか、この点について基本的にまずお伺いをしておきます。
  61. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 最初にお断りいたしておきますが、いま先生がおっしゃいました政府の基本的な方針というのではなくて、私どもが次期戦闘機としてF15を概算要求をいたすに当たりまして、事務的に検討をいたしました。その際に私どもといたしましては、航空自衛隊の主任務でございます防空作戦をやるに当たって、いわゆるその防空作戦という限りにおいてどういう能力が必要かということを検討いたしまして、こういう形でやってまいりたいという中にその爆撃装置の問題あるいは給油装置の問題も検討したわけでございます。私どもといたしましては、F15という、いわゆる要撃に最も適した戦闘機、それはやはりファントムがつくられたときと違っているという判断をいたしました。  ファントムというのは、F104Jというまさに要撃に最も適した戦闘機ができました後、主として戦術戦闘機として対地攻撃の能力を非常に増加した形の戦闘機としてつくられておったわけでございます。しかしながら、きわめて性能のよい飛行機でありましたので、要撃任務にもすぐれた性能を発揮しておったわけでございます。したがいまして、あの時点では、要撃戦闘機として最も適したものとしてファントムを選んだわけでございます。同じような形でF15を選定したわけでございますが、あの場合には、やはり対地戦闘爆撃機といいますか、そういった能力も当時の戦闘機としてはきわめて大きかったがために、このいわゆる爆撃能力というものを全部そのまま備えるということではなくて、コンピューター等を外したというふうに考えているわけでございます。  F15につきましては、空中におきます対空戦用にきわめてすぐれた能力を持っております。しかし同時に、ある程度の対地支援といいますか、あるいは対地攻撃といいますか、能力は持っているわけでございます。しかしその爆撃装置の性格そのものが、ファントムF15の場合には違うわけでございまして、いわゆる要爆戦闘機でありましても、非常に緊急の場合には、地上を支援するということもあり得るわけでございますから、この程度の能力のものは差し支えないだろうという判断を事務的にいたしました。そしてまた構造上もそれを取り外すことがきわめてむずかしい、ほとんど不可能であるということも考えまして、爆撃装置をそのままにしておきたいと考えたわけでございます。  なお、給油装置につきましては、私どもの考え方は、いわゆる長距離を飛んでしかも攻撃能力を持ったもの、これがやはり必要最小限の自衛力の範囲を超えるというふうに判断いたしております。ところが、現実に侵攻してくる可能性のある飛行機のスピードは、きわめて速くなっております。そしてまた、高高度あるいは低高度で侵入してくるということが、現実に能力として持ちつつあるわけでございます。しこうしてF15を使用いたします一九八〇年代から十年ないし二十年という期間になりますと、そういう能力というものは、軍事技術的に見てきわめてすぐれてくると思っております。といたしますと、やはりいままでの運用形態の中で、航空基地から飛び上がっていって要撃をするだけではなく、緊急の事態、緊張状態におきましては、空中で警戒待機をするというような運用というものを考えなければならないというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、F15というものを使って防空作戦をやる場合に、そういった運用をやるわけでございますが、きわめて困難な場合、たとえば、有事になりまして、こちらの戦闘機が数が少なくなっていったというような場合、そういう場合に、少ない機数を有効に使う必要もあるということが考えられるわけでございます。また、滑走路等が被害を受けた場合、遠距離の基地から運用しなければならないという場合も考えられないわけではないわけでございます。そういう場合に、やはりこの空中給油という機能を持っていた方が、防空作戦をやる上では有利ではないかというふうに私どもは考えたわけでございます。  したがいまして、防衛庁といたしまして、事務的に検討をいたしました段階におきましては、なるべく有効に防空作戦をするという考え方からいたしまして、こういう希望を持っているということを申し上げたわけでございまして、いま先生がおっしゃいましたように、政府として決まったということではございませんで、これから政府部内にも御説明をし、また国会等にもその必要性というものを御理解いただいた上で、私どもはそういうふうにしていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  62. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 そうしますと、一昨日の防衛庁の答弁は、防衛庁のいま考えている考え方の一端を述べたのであって、正式の政府の方針ではない、こういうふうな御答弁ですが、そうすると、防衛庁の見解ではあるわけですか。
  63. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたしますが、F15の選定について、防衛庁が内定をいたしました時点は昨年でございます。前長官の時代に決められたわけでございまするが、その内定をいたしました経過等につきましては、いま防衛局長が申し上げたとおりでございます。私自身も、そうした内容の引き継ぎをいたします際に、坂田長官から、一九八〇年代以降の戦闘機、しかもわが国を攻撃してくる攻撃機等の近代化が進んでおりますが、そういうものの脅威に対して、これに対処する能力を持たせねばならぬというような問題でございまするとか、なおまた、局長が申しましたように、北は北海道から南は沖繩までという、そうした遠距離にわたります日本の地勢的な問題等、しかしこれはあくまでも専守防衛の基本線を崩してはならないという原則を踏まえてどうだというようなことを私も説明をるる承ったのでございます。その方針を踏襲して、今回F15を引き続き内定の線をとらえておるわけでございます。最終決定は、予算の概算要求では提出をいたしておりまするけれども、予算の政府原案が決まります時点までに、国防会議等で関係各省とも折衝の上、そうした最終的決定を見なければならぬという事態にあるわけでございます。
  64. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 私がお伺いをいたしておるのは、F15全体のことではなくて、爆撃装置、空中給油装置についてでありますが、いまの三原長官の御答弁を私なりに受け取りますと、防衛庁としては、それは外さないでいきたいという見解である、こういう御方針に私は受け取りましたが、では政府の見解にするために、政府の方針にするために、当然国防会議という機関があるわけで、そこでこの問題は議論をし、正式にお決めにならなければならないと思いますけれども、その点はいかがですか。
  65. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 そのとおりでございますが、その前に関係各省庁の事務的な折衝もいたしておるところでございます。なお、これは国防会議を中心にして具体的には進めていただいておる、最終的に国防会議にかけていただくということでございます。
  66. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 爆撃装置の具体的な内容について二、三お伺いをいたします。  F15に搭載されている爆撃装置の種類あるいは用法につきましては、たとえば、私どもの知り得ているところでは、ミサイルやガン、爆弾の射撃爆撃及び投下方法の管制あるいは選択をする機能を有するアーマメント・コントロール・セット、これが一つ。それから自分の飛行機と目標とを表示する装置、ヘッドアップディスプレー、これが二つ。それと先ほど伊藤局長から答弁がありましたような航法レーダーあるいは射撃、爆撃等のあらゆる管制、計算を行うコンピューター、この三本柱になっている、こういうふうに聞いておるわけでありますけれども、この爆撃装置は、たとえば手動で行うのか、半自動で行うのか、あるいは全く自動で行うのかということ。  そしてまた、いろいろ議論が出ておりますこの三つの装置が、いわゆる爆撃と射撃と空対空ミサイル、そういったものがワンセットで分離ができないのだ、一体化されているのだ、こういう御説明でありますけれども、これは全く分離ができないものなのかどうか。  この二点についてお伺いをいたします。
  67. 間淵直三

    間淵政府委員 爆撃及びミサイルの発射その他についての構成は、先生のおっしゃった三つでございます。それを爆撃をする場合目視手動でやるか、またレーダーを使って自動的にやるかということにつきましては、そのいずれでもできるようになっております。  それから、その爆撃装置だけを分離させることができるかということに関しましては、構成上分離できない、こういうふうになっております。
  68. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 ファントム4EJで除去をしました核管制装置、これはF15にはないのですか。
  69. 間淵直三

    間淵政府委員 これは、米軍の使っているものを含めまして、初めからございません。
  70. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 それではいま一点お伺いをいたしますが、その爆撃装置は、今後わが国の防衛という観点から、有事の際、何に使われる可能性がありますか。
  71. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは、私どもがF1という対地支援戦闘機を持っております。これは、直接侵略があった場合に、海上による輸送によって日本に侵略をしてくるわけでございますが、そのような輸送船あるいは艦艇等に対して攻撃をする任務を持っているF1という支援戦闘機、さらにまた、日本に上陸してきて日本の中で戦闘が行われるようなときに、これを支援する能力を持っておりますが、要撃機でございますF15あるいはファントム等にいたしましても、そういった緊急の事態においては、対地支援行動というものも当然行わなければなりません。そういう際に、そういった照準装置というものが役に立つものと考えておるわけでございます。
  72. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 有事の際、対地支援戦闘で使うケースがあり得るというお話ですけれども、もう一点、空中給油装置を外さぬ理由として挙げている将来の運用というもの、先ほど局長の御答弁では、戦闘機全体の技術水準が非常に高くなって、低高度高速侵入が非常に予想される事態になってきた。このために空中待機と申しますか、そういうものが必要である、そういう運用をするんだ、だから必要なんだ、こういうようなお話ですけれども、それ以外には全く使うケースはありませんか。  それと同時に、空中待機、戦闘哨戒、CAPというものはどのような運用をするのですか。  そして第三点として、空中給油機はわが国にはありませんけれども、これはどうするのか。  この三つについてお尋ねします。
  73. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように日本は、先ほど大臣からも御説明申し上げましたように、きわめて縦深性の薄い地勢になっております。したがいまして、諸外国に比べまして、レーダーでキャッチしてからそれに対応するために要撃戦闘を行うのには、低高度で侵入してくる場合には時間的にきわめて制限がございます。したがいまして、従来私どもが要撃戦闘機を選定する場合には、やはりそういう点も一つの大きな選定のポイントになっておりました。従来のいわゆる対象目標といたしましては爆撃機が主体であったわけでございます。しかしながら現実に戦闘機の航続距離が延び、行動半径が広がってまいりまして、こういった戦闘機が低高度でハイスピードで侵入してくるという可能性がきわめて濃くなってまいりました。そうなってまいりますと、レーダーでキャッチしてから基地を飛び立っていくのでは間に合わない場合が考えられるわけでございます。したがって、そういった危険な状態が、緊張状態が起こった際、すなわち有事におきましては必要に応じて、いま先生も御指摘になりました空中待機というものも実施しなければならないと思っております。その際にはある数の航空機を高空に上げておきまして、そしてレーダーで捕捉した目標に対して直ちに向かい得るような状況にしておくわけでございます。これは何時間かの交代によりましてパイロット、飛行機が交互に上がっていくということになるわけでございますから、そういった運用も今後必要になってくると思います。  その際、空中給油機をもってやる必要があるのではないかということでございますが、F15につきましては、そういうことをしなくても、ある程度の空中待機は可能でございます。したがいまして、私ども運用といたしましては、そういうことを考えておりますけれども、さらに最悪の場合に空中給油というものが必要になるだろうというふうなことも考えられるわけでございます。その例として、先ほど申し上げましたように、たとえば地上の滑走路が破壊されまして、近くの基地を使えなくなったようなときに、遠くから飛んでいって空中待機をし、あるいはまた要撃戦闘をするというようなときに、途中で空中給油をした方がもっと効果的に使える場合も当然あり得ると思います。そういうときには米軍の協力を得まして、空中給油機による給油が可能であるということにしておく方がベターであろうと考えますし、また同時に、そういう非常な事態におきまして、たまたま帰ってまいりました基地がすでに破壊されておったというようなときには、そういった空中給油機の給油を受けまして他の基地に着陸するということは、限られた機数を有効に使う上でもきわめて重要だというふうに判断をしているわけでございます。
  74. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 いま一点。  F15の行動半径について、戦闘能力は装備をつけた場合、あるいはつけない場合、いろいろな違いがあるように考えられますけれども、その二種類について行動半径はどのくらいか、そしてその行動半径ならば一体どの辺まで含まれるのか。また空中給油で行動半径がどの程度まで延びるのか、どこまでなのか、この点ちょっとお尋ねをしておきます。
  75. 間淵直三

    間淵政府委員 行動半径は武装の種類などによっていろいろ違ってくるとは思うわけでございますが、短距離要撃の場合は行動半径が約二百五十海里、それから長距離要撃の場合は行動半径が約八百二十海里でございます。それから対地支援の場合の行動半径は約二百八十海里でございます。
  76. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま装備局長から、短距離要撃、長距離要撃という御説明をいたしましたが、この運用の仕方といいますのは、短距離要撃の場合には急速に高度をとるためにアフターバーナーなどを吹かしまして、多量の燃料を使って上がっていく場合でございます。したがいまして、二百五十海里が行動半径ということになっております。長距離要撃機の行動半径ということになりますと、これは徐々に高度を上げながら必要な会敵地点に出かけていくというもので、燃料の使用量が少ないために行動半径が広くなっているということでございます。
  77. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 一・八掛ければキロ数が出るわけですけれども、かなり広範囲な航続距離、行動半径を持つことは、これはだれが聞いてもわかるわけであります。  そこで、防衛庁長官にお伺いをしたいと思うのですが、爆撃装置、空中給油装置を外さないということで、他国に侵略的あるいは攻撃的脅威を与えるようなものだとの誤解を生ずる懸念があるかもしれない。これは、この行動半径から考えて、そういう懸念は当然予想されます。私は、先ほど政府側の御答弁にありました両装置を外さない理由について部分的には理解をするものでありますけれども、しかし専守防衛の立場から必要最小限の装備というわが国の基本方針からすれば、これを外さないけれども、その使用は、他国への侵略あるいは攻撃的脅威としては使わない、そういうものではないのだということをはっきりしておかなければいけない。そういう歯どめがぜひとも必要だと私は思います。本日の新聞に出ております、かぎ括弧がついておりますけれども防衛庁の見解というようなものも、政府の統一したそういった見解がいやに誤解を与える点がある。そういう点もあると思います。堂々とできるだけ早い機会に、これだけ問題になってきたわけですから国防会議に付議をして、その点について、先ほどお話しした点について、そういった侵略的、攻撃的用途には使わないんだ、そういう脅威ではないんだということをはっきりと政府の統一見解で出すべきだと思いますが、これはもうぜひともそうしていただきたいと要求したいのでありますけれども、長官のその点についての御見解、国防会議の議員でもあられる防衛庁長官の御見解をお伺いしておきます。
  78. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いまの御意見に対するお答えでございますが、私どもといたしましては、わが国の防衛はあくまでも政治優先の立場をとる、シビリアンコントロール、絶対にその方針のもとに私どもの防衛任務の遂行をいたしておるわけでございます。したがいまして、先生いま御指摘のように、現在の攻撃機の、近代化された、技術水準、科学水準の非常に進んでおります攻撃機の状態、あるいは日本の本来の専守防衛の体制、また軍備の状況等、各国との対比をしてみまして、決して日本が他国に脅威を与えるというような事態ではないと思いまするけれども、いま御指摘のように、なお一層そういう点の理解を願うためにもこれから先、私は各省との折衝もいたしますが、国防会議において特にそうした点に注意をしながら審議を進めていただこうという考え方でおるわけでございます。
  79. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 国防会議に各省との協議の上、早急にと私はお願いしたのだけれども、早急にという御答弁はありませんが、付議をなさるということは御答弁で出たわけでありますけれども、先ほど私がお尋ねをした長い行動半径を持つF15、それに空中給油装置あるいは爆撃装置を外さないという防衛庁の希望、見解というものは、他国へ攻撃的、侵略的脅威と映るかもしれない。その点について、わが国の基本方針に即してそういうものではないのだという歯どめを国防会議に付議をして、政府の統一見解で出されるのだ、こういうふうに長官の御答弁は理解してよろしゅうございますか。ある程度方向を持った御答弁であると理解してよろしゅうございますか。
  80. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 防衛庁長官といたしましては、先生のいまの御意見を踏まえて国防会議に具申をしてまいるということを申し上げたのでございまするが、これ自体は議長でございまする総理初め関係国防会議のメンバーに対して、それらの方々の最終決定を願うわけでございまするけれども、重ねて申し上げまするが、防衛庁長官としては、いま御指摘の点につきましては十分御意見を申し上げて、そうした方向に努力をすることをお約束できると思うのでございます。
  81. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 わかりました。それではF15の空中給油装置、爆撃装置についての質問は次に譲ります。  三原長官にもう一点お伺いしたいのですけれども、昨今防衛費のGNP対比について長官はいろいろなことをおっしゃっておられます。この春の国会では、政府の方針である当面防衛費はGNPの一%以内の当面について、当面とは五十年代前期経済計画の五十五年度まで、今後四年間である、こういう答弁をさきの国会ではなさっておられる。また、八月の末ごろの福岡で行われた講演会では、国民の理解と協力があれば一%のラインを固定する必要はない、こうお答えになっておられる。そして一昨日は、先ほどお話しした政府方針の当面という当面を七、八年先と解してもらっても結構、十年先になってもいい、このようにおっしゃっておられる。たった二、三カ月ぐらいで私の印象では少しくるくる変わり過ぎるのではないかという気がいたします。防衛はすぐれて相対的なものでありますから、装備、わが国の持つ防衛力というのは国際情勢、軍事情勢、そういったものの中でどんな脅威があってどう対応すべきか、きちんとした防衛の基本政策を立て、その上に計画を立てて、その上に立った過小でも過大でもない適正な規模のものとして決めるべきだと私は考えます。したがって、その上に防衛費がはじかれて、その折のGNP対比が計算されるのであって、初めから一%にこだわって議論したり発言したりするのは適当ではない、私はこう考えています。しかし、長官のこのことについての発言がくるくる変わるようでは国民の理解はかえって得られないのではないかということを私は懸念をする。この辺しっかりと基本的な考え方を、長官、端的に答えてもらいたい。  たとえば防衛費は一%にこだわるのが適当なのかどうか、一%にこだわるならば本当はいつまでだとお考えになっているのか。御答弁によると、今後四年間、一昨日は七、八年先と解してもらっても結構、十年先でも構わない、こうおっしゃっておられる。いまおっしゃった御答弁二つあるわけですけれども、それはそのいずれなのか、ひとつお答えを願いたいと思います。  そして、同時に、国防会議ではこういった問題についても総理に献策はできるし、また国防会議で議論をすることができる、そういったもののための場でありますけれども、この防衛費の問題、基本的な発想を私の先ほどお話ししたような気持ちで洗い直す気持ちはないのか、この三点について、もう端的にお答えを願いたいと思います。
  82. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたしますが、一%に対しまする政府と申しますか防衛庁の考え方は、終始一貫をいたしておるという立場で私は申し上げておりまするけれども、いまそうした受けとめ方がなされるような発言であったということでございまするので、私の説明の仕方が不十分であったと受けとめざるを得ないことになるわけでございますが、ここではっきり私から申し上げてみたいと思うのでございます。  わが国の防衛力の整備につきましては、いま先生御指摘のように、これは国際情勢あるいは国内情勢、特に財政経済の推移あるいは国内におきまする諸施策との関係、調整等が考えられ、また現段階におきましては、過去数年間やはり整備をしてまいりました私どもの防衛力整備の積み重ねの経過等も踏まえて、当面一%を超えないというようなところで政府が方針を決められる、私どもはあくまでも忠実にこの方針に沿ってまいるということでございます。しかし、この当面超えないということの受けとめ方でございまするが、それは国内外の情勢の推移を見て、それは固定的なものでなくて、再検討をなされる、見直される時期もございますということを申し上げておるのでございます。  そこで、それでは私が先般四カ年というようなことを申し上げた点は、先生がいま御指摘でございましたように、その当面ということを政府でお決めになったときは、そのときの話し合いの意見交換の場における御意見を承っておるのでございまするが、これ自体は政府がいま立てておりまする五十年代前期の経済計画、それの見通しというようなものが中心になって、そうした点で当面は昭和五十五、六年、ここ四、五年というような見通しでいくべきであろうというようなことで当面というのが付加されたものであるというふうに承知をいたしておるのであります。  次に、私が十年云々というようなことを言ったではないかということでございますが、これはそのときの御質問の中身というのが、いま大きなプロジェクト、F15なりあるいはP3Cというようなものを概算要求で出しておる、これが果たしてこなせるのか、実際に一%以内でこなせるのかという御指摘がございましたので、これに答えて、いま申し上げましたように、当面一%を超えないという方針は踏まえてまいりまするが、しかしそうした大きなプロジェクトをここで達成をするためにはここ十年というような日時を要するわけでございまするから、その際の積算の検討をいたしました際には、大体十年ぐらいでもうこなしていけるというような見方をいたしてまいっておりますというようなことで申し上げたのでございます。あくまでも政府が決められました一%の線を超えませんという方針は、現下におきましては、防衛庁としてはその方針をやはり踏まえて防衛力の整備を行っておるということでございます。
  83. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 わかりました。  ちょっとF15の問題について、後返りをするようですが、観点が違いますので、さらにお尋ねをしたいと思います。  これはP3Cも同じでありますけれども、五十三年度の防衛庁の概算要求を拝見をしておりますと、概算要求に載っているF15は二十九機、二千四百七十五億円、このうち米政府から直接買うFMSが六機、ライセンス二十三機、P3Cの場合は十機、九百億円、FMSが三機でライセンスが七機、こういうぐあいになっているのですけれども、いろいろ計算をしてみますと、導入の際の為替レートは実勢の為替レートとかなり違うものではないか、三百八円ぐらいのレートで計算をしているのではないかと思われますけれども、この点いかがですか。
  84. 間淵直三

    間淵政府委員 私ども予算の概算要求をいたす場合に、輸入品についてはどのくらいの為替レートで計算しておるかということでございますが、御承知のように、こういう変動相場制下にありまして、幾らと決めるのが実際的には非常にむずかしいわけでございまして、と同時に、予算はその支出の上限を決めるということでございまして、そこら辺を勘案いたしまして、大蔵省の方で三百八円という支出官レートというのを定めておりまして、そのレートに従いまして概算要求をしているわけでございます。
  85. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 いま為替レートは二百五十円台であることは御案内のとおりです。概算要求時点でも二百六十円台でありました。福田総理がロンドンのサミットで約束をしたわが国の七億ドルの国際収支の赤字、これは五十二年度の経済見通しの数字でもありますけれども、これを達成するためには二百五十一円レートが必要であるとあるリサーチ機関がもうはじいているくらいで、まだ円は安いのだと言い切った米政府の対応、またこの為替の変動に対するわが国政府あるいは日銀の対応からも二百五十円レートは当分続く、場合によっては二百四十円レートさえ近いと言われている現状であります。  大蔵省にちょっとお尋ねをしたいと思いますが、五十三年度予算概算要求の第一次契約分、これはF15で五十七年度まで、こういう第一次契約分があるわけですね。P3Cも五十七年度まで。これは五十三年度から五十七年度まで支払いがある予定であるわけでありますが、五十七年度まで平均の為替レートが三百八円であるという何か有力な試算でもあるのでありましょうか。  また、この二百五十円レートを三百八円レートにして、相当の差額が出ますね。この差額は当然国庫へ後から入るわけでしょうけれども、決算上はどういう措置になるのか。  この二点、時間がありませんから端的に答えてください。
  86. 志賀正典

    ○志賀説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の、三百八円というのはどういうわけかという点でございますが、ただいま防衛庁装備局長からお話がございましたように、支出官事務規程におきまして三百八円ということを定めております。また、その根拠といたしましては、現在の基準外国為替相場を三百八円としておるわけでございまして、そういうことに基づきまして予算積算上三百八円で概算要求がされていると考えております。また支出官事務規程の定めもそういうところに根拠を置いておるところでございます。  また、三百八円と実際のレートの差はどういうことになるのかという点でございますが、先生からもお話がございましたように、その差額につきましては、政府間契約の場合におきましては、日本銀行から国庫の方に納入をされまして、当該年度の歳入ということに相なります。  以上でございます。
  87. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 根拠があるのかというその根拠は何ですか、支出官事務規程ですか。
  88. 志賀正典

    ○志賀説明員 お答え申し上げます。  会計法に基づきます支出官事務規程という規定でございます。
  89. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 それが根拠であるというお話ですけれども、それは法制上の根拠であって、私がお尋ねしているのは、その支出官事務規程が三百八円で決められている為替レートの試算の何か有力な根拠があるのかということですが、それについてはお答えがなかった。  さらにお伺いいたしますが、私はこれは非常にわかりにくいと思うのです。十円内外の実勢レートとの差ならばともかくも、五十円というような差をつけて、それは歳入に入れるというのですが、これは先ほどお話しした第一次契約分のF15、P3Cというものから計算をしてみますと、恐らく総額で相当の為替差額——差益とは申しませんけれども差額になる。私の計算では、六分の一と計算をすれば大方六百億ぐらいになるのではないかと思います。しかし、それは全部が全部米政府から買うものではないわけですから、米政府からFMSの形態で買うF15六機分で計算しても大方五十億、P3Cの場合はFMS三機分で三十億、計八十億ぐらいの差額が現実の実勢レートで言えば考えられ得るわけです。政府も財源難ということで大変御苦心をなさっているわけですけれども、多少の変動幅はいたし方ないと思いますが、それも私が先ほどお話ししたようにせいぜい十円、二十円のレート幅ではないかと思う。ゼロ・ベース・バジェットによる、本当にゼロからスタートをするという予算編成が叫ばれている中で、こういったやり方は国民にも非常にわかりにくいし、改めるべきではないかと私は思いますが、大蔵省、再度簡単に御答弁願います。
  90. 志賀正典

    ○志賀説明員 お答え申し上げます。  支出官事務規程のよりどころは、先ほども申し上げまして繰り返しになりますが、基準外国為替相場が現在日本では三百八円というふうにしておるのがよりどころでございます。  それから、三百八円を直すべきではないかというお話でございますが、基準外国為替相場がそういうことで定められておりますので、現在私ども予算編成の作業に当たりまして、従来と同様三百八円ということで作業を進めております。  以上でございます。
  91. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 時間がありませんので、F15導入に関連してもう一点だけお伺いをいたします。  恐らく今後空からの侵攻の態様というものは、ますます複雑化すると先ほども御答弁がありましたけれども、これに対する対処策というのは、単に戦闘機だけで行われるものではありません。複合的な、しかも柔軟な発想が私は必要だと思いますが、F15導入に関連をして、たとえばわが国の防空システムの、あと残る二つの柱である地対空ミサイル、特にいまナイキを使っておりますけれども、このナイキの後継機をどうするのか、ポストナイキの勉強はしているのか、その点をまず第一点お伺いをして、次いでもう一つの柱であるバッジシステム、これはF15導入の際もいまのままでいいのかどうか、あるいはこのバッジシステムも更新をしなければならないのか。この二点をお伺いいたします。
  92. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いまは先生がおっしゃいましたように、防空体制の中ではいろいろな機能が必要でございます。戦闘機の機能も、やはり見通し得る将来にわたって防空体制の重要な機能であろうと私どもは考えておりますし、また地対空誘導弾の機能も重要でございます。私どもは、地対空誘導弾といたしましてはナイキとホークを持っているわけでございますが、ホークにつきましては、新しいホークに逐次切りかえつつございます。ナイキの後継機につきましては、各国でも研究をいたしておりますし、また日本の防空体制の中でナイキの後継としてどういうシステムのものがいいのかということは、すでに一昨年ごろから研究を始めておるところでございます。しかし、現時点においてこういうものというところまでは進んでおりませんけれども、研究はいたしておるわけであります。  さらに、バッジシステムとの連接でございますが、これはファントム104に積んでおりますバッジシステムと結びつけますデータリンク、これもF15に積むことにいたしております。したがいまして、現在のバッジシステムがそのまま有効に作用することになります。しかしながら、そのバッジシステムもすでに装備いたしまして十年たっておりますので、この性能を向上するためにはどうすればよいかということも逐次研究を進めているところでございます。
  93. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 わかりました。  もう一点。レーダーサイトの抗たん性についてよくこういう議論が行われています。わが国のレーダーサイトはまる裸ではないか、北部に九、中部に八、西部に七、沖繩に四、計二十八のレーダーサイトがあるわけでありますが、これについての攻撃に対する防御機能というのは全くない、機関銃一本ないと極言をする人もあります。そこまでは私も知りませんが、ともかく弱いことは事実です。同時にまた、飛行場についても遮蔽坑が全くない、こういう実態であります。  先ごろ、航空自衛隊の総合演習が十月十一日、十二日に行われたそうですか、朝七時にレーダーサイトが破壊されて、九時に臨時閣議というのを想定して演習をやられた。これはどういうことなんでありましょうか。当初から、このレーダーサイトはもうつぶされる、盲になるということを想定しているのか。私は、これは大変重大な問題だと思いますが、このレーダーサイトの抗たん性、私のお尋ねをしている実態がそのとおりであるならば、これからどうするのか。時間がありませんから、ひとつ簡単に御答弁をお願いします。
  94. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 レーダーサイト、航空基地の抗たん性といいますかサーバイバル、この点に弱点があるということは、私どもも承知いたしております。御承知のように、現在のレーダーサイトは、白い硬質のドームでできておるわけでございまして、きわめて視認しやすいような状況になっております。そしてまた、攻撃を受けやすい状況でございます。これを私どもは三次元レーダーにかえつつある状況におきまして、多少努力をいたしまして、その主要なところを地下に移すというような努力もいたしております。  一方、そういったレーダーサイトが攻撃を受けましたときには、やはりそれにかわる移動式のレーダーサイトというものを持っておきまして、破壊されたレーダーサイトにかわる機能を果たし得るようなことにすでに着手をいたしておりまして、現在、それぞれの方面隊に一つずつ移動軽快のレーダーというものを持っておりますが、逐次こういう軽便なものをふやしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  95. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 御努力を願います。  もう一点、P3Cについてお伺いをいたしますが、P3Cは恐らくソーナーを聴取したり、あるいは海の底をもぐっている潜水艦が果たしてどこの国のどういうものであるかという情報のえり分けということが相当重要な部分を担うのだと思いますけれども、ところがP3Cのそうした選択をするためのコンピューターによる情報、この情報はわが国にはないわけです。米軍からそれを供与してもらわないとP3C自身が無用の長物化をするおそれがある。この基礎データを米側からもらえるのかどうか。そうして三原長官が訪米をされた折にこの点についてお話が出たという話も聞いたことがありますが、どの程度もらえるのか。最大七割ぐらいしかもらえないのだという話もありますけれども、現在、電子戦というこの重要な中で、P3C自身の使い道の命運を決めるようなこのことについて、いまどのような状態になっており、これからどのようになるのか、お伺いをしておきます。
  96. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 原子力潜水艦の出現によりまして対潜作戦の上できわめて重要な変化をいたしておりますのは、主にパッシブといいますか、音を聞いてその潜水艦を判断し、攻撃するということになってまいります。いま先生がおっしゃいましたけれども、私ども海上自衛隊も全然そういった情報を持っていないということではございません。しかし、アメリカは圧倒的に多くの情報を持っているわけでございます。そしてそれをコンピューターにおさめておきまして、潜水艦を捕捉し、その識別をし、そして攻撃するという一連の対潜作戦が必要になってくるわけでございます。そのために、現在アメリカが持っておりますソフトウエア、情報、そういったものをできるだけたくさんもらう必要がやはり日米安保体制のもとでは必要でございます。  そういうことでございまして、このソフトウエアの情報そのものというような形ではございませんでしたけれども日米防衛協力の一環としてそういった情報をなるべく多くリリースしてほしいということは、先般大臣が訪米されましたときに、ブラウン長官にもお話しになりました。米側といたしましても、このP3Cが有効に活動できるために、日本の対潜作戦として必要な限りできるだけの情報をリリースしてくれるということを約束してくれております。したがいまして、どういう内容のものを必要とするか、そしてそれをリリースしてくれるかということを事務的に米側検討しているところでございます。
  97. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 わかりました。  時間がありませんので、最後のお尋ねをいたします。  米国の下院歳出委員軍事建設小委員会に米陸軍当局が提出をした一九七八会計年度軍事建設計画書の中で、在日米軍の新弾薬庫建設、まあこれについては新弾薬庫ではないという政府側の御答弁もあるわけでございますけれども、いずれにしても弾薬庫、貯蔵施設として予算を二千百三十二万ドル計上している。この問題について、最後に一点お伺いいたします。  政府委員はさきの参議院の内閣委員会で、これについて米側に問い合わしたところ、既存の弾薬庫の近代化及び改良工事を行うものであって、弾薬貯蔵施設の拡張という計画ではない、また、この計画の予算ももちろん確定をしたものではない、こういう御答弁をしておられます。  では、まとめてお伺いをいたしますが、この計画はいつ確定をするのか、米側に問い合わせたところではどうなっているのか、これが第一点。  第二点。現在わが国の在日米軍の弾薬庫は、広島県の広、秋月、川上、それから沖繩の嘉手納、辺野古、計五施設あるわけであります。この五施設全部の近代化及び改良工事なのか、あるいは特定の一施設なのか、これが第二点。  また、もし特定の一施設だとするならば、場所の確定はいつなのか、これが第三点。  第四点は、現施設内容、機能から考えて、改良、補修で、邦貨換算で六十二億円もかかるものなのかどうか。  そして、これが重要でありますけれども、もし補修や近代化、改良ではなくて、拡張につながるものであったとするならば、日本政府としてはどうするのか。これが一番大事な点であります。地元の、特に広島県は五施設のうちの三つを抱えておりまして、地元の県、市は、こぞって弾薬庫の集散基地化に以前から反対しておりますし、知事もあしたはキャンプ座間へ行って、地元の要望を在日米軍に直接お伝えをするようでありますけれども、予定をされている、一部うわさをされている川上弾薬庫のごときは、ちょうど学園都市をつくっているすぐそばであります。この弾薬庫改良にしろ近代化にしろ、場合によっては拡張なんということになったら、全くそぐわないということになると思いますが、特に、最後にお伺いをした、もし補修、近代化、改良ではなくて拡張につながるものであったら、日本政府としてはどうするのか、この点を重点に、四点にわたりお答えをちょうだいいたします。
  98. 亘理彰

    亘理政府委員 お答えをいたします。  ただいま先生からお話がございましたように、これは本年の二月でございますが、アメリカの一九七八会計年度の陸軍省の軍事建設計画に関連いたしまして、アメリカの下院の歳出予算委員会の軍事建設予算小委員会に提出された資料の中に、将来計画といたしまして、お話しの弾薬貯蔵施設の数字が、二千百三十二万七千ドルと掲記されておるわけでございます。これは、現在の米政府の予算の提案として審議されている状況にあるわけではございませんで、七八会計年度の予算の参考資料として、七九会計年度の計画として掲げられておるわけでございます。御承知のとおり、七九会計年度は来年の十月から始まる年度でございます。したがいまして、米国政府としてこれを確定して議会の承認を求めておるというものではございませんし、いわんや議会の承認を得ているものではないわけでございます。  それで、いつ確定するのかということでございますが、これは、七九会計年度の予算として、米政府として、もし議会の承認を求めるということになりますれば、この米議会の予算審議の上で確定する、こういうことでございまして、いまの段階はそういう状況でございます。  それから、在日米陸軍の弾薬庫につきましては、本土で広島県に三つ、沖繩に、これは共用でございますが、二つあることはお話しのとおりでございます。それで、将来計画として掲げられておりますものが、どこか特定しておるのかということにつきましては、在日米軍側に照会したところでは、特にどこと特定しておるわけじゃないという回答を私どもは得ております。  それから、改良、補修で邦価に換算して、これは三百円で換算すれば六十数億ということでございますが、かかり過ぎるではないかということでございますが、米側の回答は、あくまでこれは既存の弾薬庫の近代化、改良工事であって拡張という計画ではないということを、私どもに明言いたしております。  なお、私ども詳細は存じませんが、弾薬庫の形式には、上屋式あるいは隧道式、あるいは覆土式あるいは野積みと、いろいろあるようでございますが、どういう構造のものを考えるかによっても、経費はいろいろであろうかと思います。  それからもう一つ。拡張ならばどうするかという点でございますが、現在私ども米側から受けておりますのは、先ほども申し上げたように、拡張ということではないということでございます。いずれにしましても、私どもの立場は、在日米軍の安保条約に基づく義務履行のために必要な施設、区域を提供するわけでございますが、同時にこれは、地元の基本的な御理解をいただかなければ、維持、運用は円滑にできないということでございますので、一般的、抽象的にどうこう申し上げることは差し控えたいと思いますが、いずれにしましても、内容が具体的に判明しました段階で、地元の御要望を踏まえて対処いたしたいと考えております。
  99. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 答弁に関し発言をしたいことがございますが、時間が過ぎましたから終わります。     —————————————
  100. 正示啓次郎

    ○正示委員長 これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。矢山有作君。
  101. 矢山有作

    ○矢山委員 総理、御苦労さまです。  まず最初に、F15とP3Cの問題についてお伺いをいたしておきたいわけです。  最初に三原防衛庁長官にお伺いをいたしますが、これらの問題については、たびたび御説明にありましたように、昨年の十二月に、防衛庁としてはこのF15の採用を一応内定をしたようでございますけれども、しかし、この最終決定は政府としてできておらない、P3Cについても同様、こういうことで間違いございませんね。
  102. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  F15におきましても、P3C対潜機にいたしましても、防衛庁においての決定でございまして、政府として決定を願うには、これから先、各省との折衝をし、国防会議の議を経るという段階を踏まなければ、政府の決定にはなってまいりません。
  103. 矢山有作

    ○矢山委員 福田総理にお伺いいたしますが、先般、十月十三日の当院の予算委員会におきまして、わが党の上原委員の質疑にお答えになって、F15、P3C、いずれも国防会議では白紙である、こういうことを確認しておいでになりますが、そのとおりでございますね。
  104. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  105. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、私は一つの疑問を抱かざるを得ないのです。  何かと言いますと、各省庁間の十分な検討もできてない、国防会議の決定もできてない、国防会議は全く白紙の状態である、そういう状態の中で、一昨日来の論議を聞いたり、またけさほどの新聞の発表を見ておりますと、いかにもこれが正式に決定をされたがごとくに報道されておるわけであります。私は、この点は何としても納得がいかない。ましていわんや、問題点というのは、防衛庁が既成事実をつくり上げてしまって、そして後で各省庁との討議をやり、あるいは国防会議がこれを追認する、こういう形になりつつあると思うのです。こうなると、一体シビリアンコントロールというのはどうなるのか、シビリアンコントロールの機能というものが空洞化されてしまっておるのではないか、こういう疑惑を抱かざるを得ないのでありますが、その点の御所見を承りたい。
  106. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいま私がお答えを申し上げたとおりでございまして、この二つの機種につきましては、防衛庁防衛庁としてこれを五十三年度予算で実現をいたしたい、こういう考え方を持っておるのです。しかしこれを正式にどうするかということは重要な問題でありますので、これは当然国防会議を経なければいかぬ、それから予算の関連におきまして閣議の決定も経なければならぬ、こういう性格のものでありまして、防衛庁は両機種五十三年度実現ということを非常に希望はいたしておりますけれども、これはまだ政府としての正式な決定ではない、正式に決まるまでにはただいま申し上げたようないろいろな経路を経て決まるのだ、このように御理解を願います。
  107. 矢山有作

    ○矢山委員 そういう点で、先ほど申し上げたように国防会議なり政府の中での関係機関の討議もやられていない。そういう中でいま問題になっているわけです。私が一番問題として提起しておるのは、シビリアンコントロールの機能という面で問題があるのではないか、こういうふうに考えているわけです。したがって、こういう新しい装備を持とうという場合、特にこれが従来の国会の中における論議を踏まえていわゆる専守防衛だ、こういうような議論もなされておる中で、その専守防衛の立場から見て、これは全く大きな政策転換ではないかと思われるような、そういう疑惑を持たれる機種の決定でありますから、したがって、その点で国防会議のあり方というもの、こういったものを十分御検討をいただきたい、こういうふうに思うのですが……。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国は、シビリアンコントロールのたてまえを堅持しておるわけですから、最終的には国防会議が、さらに閣議が責任を持つ、こういうことになるわけであります。国会でもいろいろ御論議がある、これはよく承知しております。それから政府の中でも、まず大蔵省、防衛庁、これは相当議論のあるところであろうと思います。そういう議論を踏まえて国防会議がこの問題にどういう決定をするか、国防会議はシビリアンコントロールという立場において最終的な決定をするわけであります。紆余曲折はあろうと思うのです。あろうと思いまするけれども防衛庁が、あるいは自衛隊が独走する、こういうようなことは絶対にあり得ないことであります。
  109. 矢山有作

    ○矢山委員 この問題につきましては、私はこれ以上立ち入った論議はきょうはいたしません。なぜかと言えば、先ほどおっしゃったように、政府の中でも意見が統一されていない、まして国防会議では白紙である、こういう状態の中で、これ以上立ち入って論議をするということには、私は問題を感じます。特にこれら両機種の採用は、いわゆる現在持っておる憲法、それに基づいての専守防衛という立場からするなら幾多の疑問がある問題であります。したがって、この問題については改めて論議をするということにいたしまして、きょうは総理においでいただいたわけでありますから、主に総理に対してお尋ねをしたいと思うのです。  しかし、私はまず最初に御要望しておきたいと思いますのは、特に軍事関係の情報というのは政府が圧倒的に独占をして、そして情報を出さない、こういう状態の中の論議でありますから、そういうことで、私は従来の防衛論争というものがまさに不毛の論争に終わっておる、こういう感じがいたします。したがって、きょうの総理の御答弁の中ではできるだけ事実をおっしゃっていただいて、そして論議のかみ合うような御配慮をひとつお願いをしたい、こういう前提に立ってお伺いを申し上げたいと思います。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、ことしの一月の末にモンデール副大統領がおいでになりました。そしてまた、三月にはあなたが訪米なさって、カーター大統領との間でいろいろお話し合いをなさった。そして共同声明も出されたわけでありますが、その際に、在韓米地上軍の撤退の問題がかなり論議になったろうと私は思う。そのときに、在韓米地上軍をどういう理由で撤退をさせるのだということについて、カーター大統領なりあるいはモンデール副大統領の方から詳細な御説明があったでしょうか、どうでしょうか。あったとするなら、どういう理由で撤退をするということをおっしゃったのか、それをひとつ伺いたいと思うのです。
  110. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私とアメリカの首脳との間の話でございますから、委員会の質疑みたいに、撤退の趣旨いかんというような紋切り型の質疑ではございません。ございませんけれども、会談全体を通じまして私が感じ取った趣旨を申し上げますと、これはやはり一九六九年あのグアム・ドクトリン、つまり、みずから防衛の努力をする国に対しましてアメリカは協力援助をするのだ、そういうグアム・ドクトリン線上の一つの施策である、このように理解しております。
  111. 矢山有作

    ○矢山委員 総理のいまのお話は、私が最初お願いした趣旨からはかなり外れるわけですね。今後の在韓米地上軍の撤退というのは、必然的にわが国なりあるいは東北アジアの安全保障に非常に深いかかわりを持ってくる問題なんです。そうすれば、どういう理由で撤退するのだということについて、やはりきちんとしたアメリカ当局の説明というものがあったはずです。それを当委員会で言えないのだ、そういう態度でおられるから、私が最初に言ったように、議論がかみ合わなくなってくるのです。そういう重要な問題こそやはりあなたが委員会で発表なさり、そして国民に対して訴えて、それぞれの国民の理解を求めるという姿勢が要るのじゃないですか。国会というところはそういう場だと私は思っておる。総理の国会あるいは委員会に対する認識というものは大分間違っておりますね。
  112. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 矢山さんが何か誤解をされておるので、私は日米首脳会談の中身を申し上げない、こう言っておるのじゃないのです。私が申し上げておりますのは、日米双方で話し合った結果、私が感じ取ったことは、グアム・ドクトリン線上の一つの施策としてアメリカが米地上軍の撤退をするのだ、こういうことなんでありまして、いま誤解を受けたような点、つまり、首脳の会談ですから、私は米地上軍朝鮮半島撤退の趣旨いかん、そういう尋ね方はしておらないのだ、こういうことを申し上げたのです。しかし、全体の会談の中から私がつかみ取っておるもの、それはグアム・ドクトリン線上の一施策である、こういうことでございます。
  113. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、理由についてはそうだとおっしゃるなら、その会談を通じてどういう論議がなされたのか、恐らく会議録があるかあるいはメモがあるか、何かあるはずなんですから、それを発表していただけますか。
  114. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 さあ書いたものでは残っておらないのじゃないか、こういうふうに思いますが、趣旨は私が申し上げたとおりでございます。  なお、つけ加えますれば、そういうアメリカの首脳の考え方に対しまして私の方から、私は理解ができる、できるけれども、とにかくそのやり方、これは朝鮮半島における南北の軍事バランスというか、そういうものをよく考えて、慎重にやってもらいたい、こういうことを言っております。
  115. 矢山有作

    ○矢山委員 会議録はないだろう、メモなんというのはないだろう、こうおっしゃるけれども、常識的に、首脳会談ともなれば、会議録ないしはメモといったようなものは、私は当然あるはずだと思いますし、そういったものが現実にあるんだということは、先般十月十三日の上原委員の予算委員会における質疑の中でも、当時の中曽根防衛庁長官が渡米をしてアメリカの関係者と会ったときのメモが入手をされておるという事実に照らしてみても、私は必ずあるはずだと思うのです。しかし、それをない、ないとおっしゃる。それを、あるだろうと言って水かけ論をやっておったのでは話が進みませんから、それはそれとして話を先に進めます。  では、その会談を通じて福田さんはアメリカの在韓米地上軍の撤退の背景というか、そういったものをどういうふうにお考えになりましたか。ただ単にグアム・ドクトリンの延長線上にあるんだ、アメリカがそれぞれの国のみずからの力で防衛しろということだけを要求したんだ、そういう意味で行われておるんだ、こういうように解釈されているのですか。
  116. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 背景と申しますと、昨年暮れの大統領選挙のとき、カーター大統領がそのことに触れておる。つまり、在韓米地上軍の撤退ということを言っておる。その辺も私は一つの背景だ、こういうふうな感じがいたしますが、その他につきましては、いま申し上げましたように、やはりグアム・ドクトリン、この線上の一つの施策ということで打ち出されたものじゃないか、そのように考えています。
  117. 矢山有作

    ○矢山委員 私はあるものを読んでおったら、この前の五月二十二日にカーター大統領がノートルダム大学の卒業式でアメリカの新外交政策ということで演説をしておるようです。そのときに、ベトナム後アメリカ外交や国際機構の基盤がもはや現存の国際政治の試練に適していない、こういう点を強調して、それにかわる、より広範な諸国を包括した新国際システムというものを力説した、こういうふうに言われておるんです。これがいわゆるカーター・ドクトリンという名をもって呼ばれておるようでありますが、私はそういうカーター・ドクトリンをずっと読んで考えてみますと、在韓米地上軍の撤退というのはやはり相当深い背景を持って行われておると思うのです。  というのは、御存じのように、アメリカがベトナム戦争後、そしてまた最近の資源ナショナリズムの勃興、そういうことによって非常に第三世界の発言力がふえてきた、こういうことが一つある。それからもう一つは、最近伝えられるところによると、ソ連の軍事力の追い上げが非常に激しい、こういうことも言われておる。さらにもう一つは、自由主義諸国間において、先進国間においてアメリカの相対的な地位が低下をしてきた。こういう事実を踏まえて、私は、アメリカとしてはもう一度アメリカの世界政策における指導的な立場を回復する、そういう非常に大きな背景を持ちながら今度の在韓米地上軍の撤退という問題が提起をされてきておるのではないか、こういうふうに理解をしておるのです。また、そういう点を的確につかんでおかぬと、韓国から米地上軍が撤退するんだということだけに、そしてそのことはグアム・ドクトリンで韓国のみずからの防衛の努力を求めておるのだ、そういう単純な考え方をしておると、私はこれからの日本の安全保障なりあるいはアジア安全保障を考えていく上で非常に不十分さが出てくるのではないか、こういうふうに考えております。  したがって、そういう点は総理にもっと突っ込んだ分析をしていただいて、そうしたものをわれわれはこういう分析に立っておるという形でお示しを願うのが、これが私はお互いに防衛問題について論議を深めていく大前提ではないか、こういうふうに思います。しかしながらなかなか総理はそういうわれわれの主張については同意をされぬようでありますし、この問題だけ論議をしておりますと、そこで時間が済んでしまいますので、私はこの際特に、そういう非常にグローバルな背景の中での在韓米地上軍の撤退なんだ、その背景というものを十分御認識いただきながら今後に対処していただきたいということをひとつ要望として申し上げておいて、次に移りたいと思うわけです。  第二点の問題は、五月の二十五日、六日、カーター大統領の特使としてハビブ国務次官、それからブラウン統合参謀本部議長が訪韓をされ、朴大統領を初め韓国首脳と協議をして、帰りに日本に立ち寄った。そして鳩山外相や三原防衛庁長官等、日本側とも協議をしたということが言われておりますね。それからまた、第十回の米韓安保協議会の後、ブラウン国防長官が帰途日本に立ち寄って、福田首相らに米韓協議内容などを説明した、こういうふうに言われておるのですが、一体そのときにどういうふうなことが話し合われたのか。これまたなかなかおっしゃらぬだろうと思いますが、ぜひ許される範囲でお話しを願いたいと思うのです。
  118. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ブラウン統合参謀総長の私訪問は、これは本当の表敬訪問、そういうことであります。ただ一言中身に触れたところがありますが、それは、米地上軍の韓国撤退について米韓間で十分話をしてきた、私は韓国側の理解が得られたものと思います、そういうようなことを言っておりました。その他につきましては、全く表敬の域を出ません。
  119. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いまの具体的なブラウン氏との会談において要請がなされたかということでございますが、そうした具体的な要請を受けたことはございません。
  120. 矢山有作

    ○矢山委員 まあ私はこの在韓米地上軍撤退という問題は、韓国ではもちろん重大な関心を持っておるし、関心を持っておるだけではなしにむしろ反対をしておったわけですね。それからまた、われわれの承知しておるところでも、日本政府の方もこれに賛成というよりもむしろ反対の意向が強かったわけですね。そうなってくると、やはりこうした会合の席上で私はかなり突っ込んだ話が出ておるのだと思うのです、出なければ意味がないわけですから。たとえば、地上軍が撤退した後のアメリカ軍の配置や装備の問題であるとか、あるいは基地使用の問題であるとか、あるいは日本に対するその他の考え方であるとか、そういったものが示されておらぬというふうにおっしゃるのをそのまま私はうのみにすることができぬのですがね。
  121. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いまのお尋ねでございますが、これはモンデール会談があり、総理とカーターの会談があり、またブラウン議長なりハビブ次官等との会談があり、それからブラウン長官との会談等がずっと経過的にあるわけでございますが、そうした間になされましたことは、米韓の間において具体的なそうした撤退に対する打ち合わせ等の問題が進められておる時点でございまして、そういう場合に私どもの方からもお尋ねしたいのは、第一には、先ほど総理も申されましたが、とにかく私どもが大前提として考えておりますのは、朝鮮半島における南北の軍事バランスの問題なり、あるいは平和と安全が侵されないという、損ぜられないという事態、あるいはアメリカの韓国防衛に対しての約束の履行等、そういう問題を話し合ったり、意見の交換をしたりするわけであります。  そういう点についていま具体的になかったかということでございまするが、そういう点について具体的な問題があったとするならば、たとえば合同の軍司令部をつくるというような考え方ででもおるとか、あるいはこれを段階的に注意深くやっていく、あるいは一九七八年の暮れに六千人の陸兵を撤退するとか、その後のことについてはまだこれから先詰めをしておる、そういうような米韓の間における話し合いの結果等についてまず向こうから報告があり、私どももいま申し上げましたようなことについて意見を申し上げるというような経過のあったことは、かつても申し上げたことがあると思いまするけれども、そういう経過でございます。
  122. 矢山有作

    ○矢山委員 この米韓の会談、協議あるいは日米のそうした会談、協議を通じて地上軍撤退に伴う保障措置といいますか事後の保障措置、南北の軍事バランスを崩さないために具体的にどうやっていくのだというような保障措置というものは、これは恐らく韓国側も相当な関心を持っておるはずだし、韓国だけでなしに日本側もこれは重大な関心を持っておられる問題だと思うのです。したがって、そういう問題について具体的な話し合いがなかったということが私は理解ができぬのですが、実際問題として、具体的な保障措置の問題について話はなかったのですか。
  123. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先生すでに御承知と思いますが、米韓の第十回合同委員会の結果が声明をされました。はっきり発表されましたから、その中身に、いま申されましたような補完的な措置をどうするというようなことが出ておったのでございます。なお、具体的なことにつきましては政府委員から説明をさせますけれども、具体的にこういうような撤退の準備をいたしておるし、こういうような補完措置をしていくというような報告がなされたことはすでに発表されておりますので、先生も御承知だと思うのでございますが、なお、詳細につきましては、政府委員から説明をさせたいと思います。
  124. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ブラウン長官が参りましたときにその保障措置、そういった説明がございましたが、在韓米地上軍の撤退に伴ってその抑止力を高めるために空軍の一部を韓国に増派するというようなこと、あるいは韓国軍の近代化のために十数億ドルの援助を与えて近代化を促進する援助をするというような内容説明がございました。しかしながら具体的にどういう兵器をどういう形でというところまでは、まだあの段階では詰まっていなかったようでございます。
  125. 矢山有作

    ○矢山委員 私は特にこの問題に触れたのは、保障措置として日本側に対して何らかの要求があったのではないかということが聞きたかったから、この問題に触れたわけなんです。皆さんその点をなかなか言われようとしないのですが、これは先ほども韓国の側に対する保障措置としてはいろいろ公表になったと言っておられますが、日本側に対する要請についても、これはやはりすでに新聞報道されておるのですよ。具体的にそういった要請があったのですか。たとえば八月五日の日経によりますと、在韓米地上軍撤退に伴う日米防衛協力に関して五項目の要請があった。それは簡単に言うと、対潜能力の向上、防空能力の向上、補給態勢の充実、対韓経済協力、防衛費の分担、こういったものがあったのだということが具体的に報道されているのですよ。そのことの中身を私は聞きたいわけです。
  126. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 そうした具体的な五項目の要請は受けておりません。
  127. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、こういう報道は全く事実無根だ、こういうふうに断定なさるわけですね。この報道によると、防衛庁首脳は米国政府がわが国に対して日米防衛協力に関して五項目の要請をしてきたことを明らかにした、こういうことで報道されておるのです。そうすると、この報道は、日経だけに限りませんが、それらの新聞に報道されたのは全部事実無根と、こういうふうにおっしゃるわけですか。
  128. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 恐らく日経だけのことではないかと思いますけれども、私どもは、御承知のように、防衛力整備につきましては、自主的に、計画的に昨年設定をいたしました防衛計画大綱の中身の整備について進めておるわけでございます。そういう中にそうした問題のあることは御承知のとおりでございまして、向こうからこれこれというような五項目の要請を受けるというような事態ではございません。
  129. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、この五項目要請は全くうその報道である、こういうことが政府からはっきりと言われたわけであります。私はうその報道か本当の報道か、残念ながらこの報道を出した記者に会って聞いておりませんから、その点については後日の問題として残しておきましょう。  そこで、いま、米軍撤退とは無関係に防衛力の整備をやっておるのだ、おとといの議論の中では、対潜能力の向上も、あるいは防空能力の向上も、これは自主的にわが国の防衛計画に従ってやっておるのだという御主張をなさった、きょうもまたそういう御主張をなさったわけです。  そこで私はひとつ観点を変えてお伺いをしたいのですが、今度の防衛計画の大綱で基盤的な防衛力ということを言っておるわけですが、一体基盤的防衛力というのはどういうものなんですか。
  130. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛計画の大綱の中でお決めいただきました基盤的防衛力というのは、現在のような国際情勢のもとで、一方におきましては、防衛費というものが急激に増加しないという前提に立った場合、調和のとれた、小さくても意味のある防衛力として、こういう形のもの、すなわち陸海空にわたっての兵力量、そういった形、それから態勢、あり方といいますか、警戒態勢を中心とし、小規模の限定された侵攻には直ちに対処できるような形の均衡のとれた防衛力ということでお決めいただいた防衛力でございます。
  131. 矢山有作

    ○矢山委員 それでその防衛力は、「限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るもの」と、こういうふうに規定をしてありますね。
  132. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 そのとおりでございます。
  133. 矢山有作

    ○矢山委員 そして五十二年七月の「日本の防衛」といういわゆる防衛白書ですか、この中を読んでみますと、わが国の防衛力については、基盤的防衛力整備の立場から見て量的には大体達成をされた。今後は質の向上に重点を置いて防衛力整備をやっていくんだ、こういうふうに言っておいでになる。質の向上というのは一体どういう意味か、具体的に御説明願いたい。
  134. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 一次防から四次防までの防衛力整備というものは、いわゆるわが国に予想される侵略に対処できるような防衛力ということで、質と量とともに向上させるという形で防衛力整備を進めてまいったわけでございます。したがいまして、質におきましても、その二十年間には、戦闘機を見ましても、F86FからF104ファントムというふうに質は向上されております。しかしながら、基盤的防衛力をお決めいただきますときには、一応四次防で完成する勢力というものを量的には一応概成したという前提に立ちまして、これをすきのない防衛力にするために、配置あるいは編成等につきまして検討をすると同時に、質の近代化というものは、それぞれの時代に応じた装備に変えていくという御方針を決めていただいたわけでございます。  いま申し上げましたように、戦闘機一つを見ましても、あるいは戦車にいたしましても、米軍から供与されました戦車にさらに四次防までの期間に、六一式戦車さらに七四式戦車というふうに質が向上いたしております。そういうような形で陸海空の装備品が更新される時期を見まして、新しい技術のもとに性能の向上した装備を整備していくという考え方でございます。
  135. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、質の向上を追い求めれば防衛力の限界というのはないわけですね。要するにそのときどきの技術水準、周辺の状況、いろいろな状況を勘案しながら質的な強化を図る、こういうことになるのでしょうから、そうすると、基盤的防衛力の整備と言っていかにもこの程度のものがあればやれるんだと言って、その上限を示したような印象を国民には与えられるわけですね。ところが、いまの話を聞いていると、この防衛力整備をいわゆる基盤的防衛力整備の名のもとにやっていけば、幾らでも無限に広がっていくわけです。そのことがいまF15やP3Cの防衛庁の採用内定というこのことにもあらわれているわけですね。そういうような物の考え方でいくのであれば、私がいま在韓米地上軍の撤退の問題に関してアメリカ側から要求があったのではありませんかと言っても、いや、それは要求はなかったんだ、自主的にやっておるんだ、これで通る理屈になるわけです。だから私の言いたいのは、基盤的防衛力整備と言って、いかにも日本は大きな軍備を持たないんだというような装いをこらしながら、その実は質的向上を目指すということで、無限大の軍拡の道を開いておる。しかもそのときにもっと重要なのは、基盤的防衛力の背景をなしておる国際情勢、その他の情勢が大きく変化してきたときには、それはそれに対応できるような形でエクスパンドするんだ、こういうふうに言われておるわけです。そうすると、まさにわが国の防衛力整備は、基盤的な防衛力で小さなものにとどまるどころの話ではない。これはまさに軍拡路線、軍備拡張路線を巧妙な手段で敷いた、こういうふうにしか私は理解できないのですが、いかがですか。
  136. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  決してそうした無制限な体制で整備をするわけではございません。御承知のように、防衛計画大綱の別表には、明確にこの防衛力体制が示されておるわけでございます。それを踏まえて、質的に、計画的にこれを進めていくわけでございます。しかも財政的には一つのGNP一%の枠でやれ。なおまた国防会議におきましては、主要整備項目について国防会議の議を経なければならないわけでございますから、決してとめどなく無制限に防衛力整備がなされるというようなことはございません。
  137. 矢山有作

    ○矢山委員 おっしゃり方はそうでしょう。しかしながら仕掛けとしては、無限に軍備拡張ができる道が開かれておる。一%の問題を持ち出されましたが、一%の問題にいたしましても、もう繰り返しませんが、一昨日、きょうの議論を聞いておっても、確実に一%以内に抑えて絶対に将来上げないのかと言うと、そういうことにはなっていない。当面一%をめどとしてと、こういうことになっておる。その解釈の仕方には非常に大きな幅があるわけでありますから、したがって、私はそれはあなた方の弁明として聞いておきますけれども、そういうようなものではないということだけは、いまの基盤的防衛力と称しておるものの実態だ、私はこういうふうに思います。  そこで次にお伺いしたいのは、在韓米地上軍撤退に伴って、対韓経済援助の増大が要請されておるのではないか、こういうことが一つの問題です。私どもは、この先ほど言った五項目要請というのが本当だというふうに考えていますから、そういう前提に立って、ひとつお伺いしたいわけでありますが、韓国では、御存じのように、すでに小銃だとか野砲だとか、その地対空機関砲ですか、そういったものは国産化されているわけです。それからまた韓国側の情報によりますと、今年中にはヘリコプターの生産が可能になる。明年度中には戦車、一九八〇年末までには戦闘機、核兵器を除いてすべての兵器の国産化が可能になり、量産兵器については輸出も可能になるのだ、こういうふうに言っているわけです。まさに兵器国産化に全力を挙げているわけです。しかもそのさなかで、そういう情報がある中で、過日の衆参両院の予算委員会で、昌原機械工業団地に進出しておる日韓合弁企業が韓国の軍需生産の強化に協力しておるということが指摘されたところであります。  伝えられます韓国の第四次五カ年計画は、総額十九兆ウォンを上回ると言われております。そして外資導入に依存するものは百億ドル、その中には大体日本に二十億ドルぐらいを期待しておるのではないか、こういうふうに言われているわけです。そしてその第四次の計画というのは、第三次五カ年計画に引き続いて重化学工業化を推進していく中で機械工業の育成を最重点課題とし、昌原機械工業団地を核とした機械工業の集中育成を図る、こういうことがこの「韓国第四次経済開発五カ年計画 使節団報告書」の中に明示をされております。そこへ持ってきて、アブラモビッツ国防副次官補の発言によりますと、在韓米地上軍の撤退の補完措置として、韓国における防衛産業の発展に協力することが明確に打ち出されております。これは民社党の佐々木副委員長に対してアブラモビッツ国防副次官補が言ったということでありますが、そういう状態の中でわが国の対韓経済援助が増強されるということは、私は必然的に韓国の軍需産業育成という方向に力をかすことになるのではないか、こういうふうに思うのですが、いま申し上げた点をすべて踏まえた上で御答弁ください。
  138. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 韓国が防衛産業の育成に非常に熱心である。またアメリカがそれに非常に関心を持ち、また協力をするという態度を示しておる、これは矢山さんの御指摘のとおりでありますが、わが国といたしますと、御承知と思いますが、武器輸出三原則というのがあるのです。それから、予算委員会でも明らかにいたしましたが、わが国からの対韓投資これも武器輸出禁止三原則、この趣旨に準じてやる、こういうことでありまして、わが国はとにかく世界で一番近い隣国、韓国でありまするから、この韓国との間の経済交流、これはもうどうしても避けることはできません。そういう中でわが国は対韓援助協力をいたしまするけれども、事いやしくもわが国の援助協力が韓国の兵器産業を育成するというような趣旨にならないように、これはもう厳にこれを自制しなければならぬところである、こういうふうに考えております。何かいろいろ新聞等に出ておるというお話でございまするけれども、さような考え方は日本政府といたしましては持っておりませんです。
  139. 矢山有作

    ○矢山委員 その進出企業が兵器生産に協力をしないということについての具体的な有効な歯どめ策がありますか。
  140. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは、兵器産業というようなものを目指すというような事業にはわが国は協力をしない、こういうことにしておきますれば、それでもう十分な歯どめでございます。今度こういう兵器産業をつくるんだ、だから金を貸してくれ、こういうような際には、これはお貸しいたしません、そういうようなことでその点は十分に保障できる、こういうふうに考えております。  それから、ただ一つ、わが国の企業が韓国に対して投資をする。初めのうちはこれは平和産業だというので投資をする。それが認められるというようなことになった。ところが後になってこれが兵器産業に転換をするというようなことになる場合がなしとしないというように考えますが、そのときは日本の親企業を通じて、そういう日本政府の投資を許可した趣旨に反するようなことにならないように努力をするとか、あるいは行政的にいろいろな指導をするとかいたしまして、結果においてわが国の対韓投資が兵器産業に投資されたというようなことにならないように、これは責任を持って私どもは指導するつもりでございます。
  141. 矢山有作

    ○矢山委員 親企業を通じて指導するとかあるいは行政指導をすると言っても、それが現実に行われていないから昌原機械工業団地における問題が提起されてきたわけでしょう。だからそういう子供だましの御答弁でなしに、具体的に有効な防止策があるか、こう言っているわけですから、有効な防止策としてはこういうふうにやるんだということをおっしゃっていただきたい。いまのようなことでは防止策になりませんよ。
  142. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 昌原団地ですか、そういうようなところで言われているような事実がもしあるというようなことになりますれば、ただいま申し上げたような方針に従いまして、またただいま申し上げたような方法によりまして、わが国が韓国の兵器産業を助成したのだというようなことにならないように政府は責任を持ちます。
  143. 矢山有作

    ○矢山委員 責任を持つと言いながら責任を持たないことになるから、したがって、私は有効な具体的な措置を聞いておるのですよ。しかし、この問題で時間をとるとあれですから……。ただ、この問題は将来非常に重要な問題ですから、私ども時間を持って具体的な有効な措置というものについてはあくまでもお聞かせ願いたいと思います。きょうは、これ以上おっしゃらぬのなら、これでやめておきます。  次にお伺いしたいのは、ブレジンスキー補佐官がこういうことを言ったということが伝えられておるのです。在韓米軍の撤退をめぐって、八〇年代に向けてどのような安全保障取り決めが適切であるかを論議する、これが日韓両国政府米軍撤退についての協議をする最大の目的である、こういうふうに言われておるのですが、こうした問題に対する話とか示唆というようなものがありましたか。
  144. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 私が九月に渡米をいたしました際に、私が尋ねたわけではありませんが、ブレジンスキー氏から、韓国問題については、朝鮮半島に平和と安全を保持する必要があるので、そうした点については安全、平和を損なわない体制について万全の処置をしてまいります、カーター大統領もこの点については厳重の指示がありましたという言葉を聞きました。
  145. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで私が聞いておるのは、いわゆる日米韓の間での新しい安全保障のあり方というものについて議論がなされたのではないか、こういうふうなことを聞いておるわけです。しかし恐らくそれは協議がありましたということはおっしゃらぬでしょう。  そこで私はもう一つ質問を移したいのですが、私たちの耳に入っておるところによりますと、日本外交筋の見解と言っておりますから、ソウルからのあれですから恐らく日本大使館筋だろうと思いますが、そこから伝えられておることとして、日本政府も韓国政府との間で朝鮮半島の安全保障問題について協議を深める時期が来ておる、こういうふうにはっきり言い切っておるというのですが、こういうことが外務省の中でいままであったのですか。
  146. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいま御指摘のようなことは、私ども承知いたしておりません。
  147. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、日本の外国駐在機関というのも無責任なことを言うものですね。これも恐らく新聞が書いたのがうそだ、こうおっしゃりたいのでしょうが、しかしこういう動きが大使館筋の情報として流れておるということ、このことはやはりブレジンスキー補佐官が言った発言を一つ裏づけることになるわけなんですよ。それで私はわざわざこういう例を引いた。  それからもう一つ例を引きますと、これも七月七日のそれぞれの新聞に載っている記事ですが、ソウル六日発で小栗特派員、これは朝日新聞の特派員のようです。この方が北村謙一元海将、これは七三年まで自衛艦隊司令官をやっておった人ですが、現在は石川島播磨重工の顧問であります。その方が六日の日にソウルで開かれた学術セミナーで講演をして、朝鮮半島で軍事衝突が発生した場合、日韓両国の海軍が対潜水艦作戦と海上交通路確保のため軍事協力をすることが必要だと主張した、こういうふうに言っているわけです。こういう報道を見ておると、やはりブレジンスキーの頭の中に日米韓を通ずる新たな安全保障体制というものがあるのではないか、こういうことを私は推察をせざるを得ぬのです。いまの北村元海将の問題についても政府は否定をされておるようであります。しかしこういう報道が出てくるのを、すべてそういう事実はないのだ、報道が間違っておるのだ、報道がうそなのだということでは、これは国民の疑惑を深めるだけです。私が最初言ったでしょう。情報は全部あなた方が握っておる。そういう前提の中で防衛議論をやっておるのですよ。だから防衛議論が不毛になるということを私は申し上げた。全部そういうことを否定なさるというところに問題があるのです。私は、ブレジンスキー補佐官のような地位の方が思いつきで場当たりの発言をするはずがないと思う。やはりこれは在韓米地上軍の撤退に伴う新しいアメリカのアジア戦略をどうするかということで考えられておるに相違ない。考えられておるから、そのことが発言となって出てくるわけでしょう。だから、それを一々全部否定をされておったのでは、これはまさに議論はかみ合わないのです。  それで、特に北村元海将の言葉を裏づける例をもう一つ申し上げたいと思うのです。最近、米当局者の中で、アメリカと在欧米軍を結ぶ大西洋海上輸送路がソ連海軍の飛躍的増強によって脅かされておる、このことを憂慮して、太平洋、アジア海域の米海軍力は、ベトナム後過剰との判断も強まってきたので、第六艦隊など在欧艦隊の増強の措置が検討され始めておる、こういうふうに言われておるのですね。  これらのことを考えてみると、在韓米地上軍の撤退というもの、それはアメリカの今後の東北アジアの安全保障をどうするかという問題と深くかかわってくるわけですよ。そうすれば、ブレジンスキー補佐官の報ぜられた発言というのは無視できない。しかも、こういう人の発育を、その地位にある人の発言をただ無視するということだけでは問題は片づかぬと私は思う。そういう点、どう思われますか。
  148. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お言葉を返すようでございますけれども、私どもは、あくまでも日本の平和憲法なり平和日本の政治、政策の線に沿って防衛力の整備をし、防衛の任務に当たっておるわけでございます。したがいまして、私ども情報を握っておきながらそれを国会等で発表しないのだと言われますけれども、そういうことはございません。御質問には答えてまいっております。ブレジンスキーなりあるいは北村君という自衛隊を退官いたしました海将の言にそういうことがあるから、全体的に見て、日米韓において新しい防衛体制を考えておるのではないかという御指摘でございますけれども、そういうことは絶対ございません。あくまでも政治優先の中での防衛力の整備をやっておりまして、日韓の間においてそういうような新しい軍事体制を考えるというようなことは毛頭ないことをここで申し上げておきたいと思うのでございます。
  149. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、今後の在韓米地上軍撤退後の新しい安全保障の問題について問題が提起をされたときには、これには絶対に応じないんだということを総理、断言できますか。
  150. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日韓米、これで話し合って、その枠組みの中での日本の防衛という考え方はとっておりませんから、そういうような種類の話がありましても、お断りいたします。
  151. 矢山有作

    ○矢山委員 時間がないのではしょってしまいます。ただ、私は、最後に一つだけ申し上げておきたいと思います。  在韓米地上軍の撤退は、ただ単に朝鮮半島の紛争に自動的に巻き込まれたくないという、そういうアメリカの狭い考え方から出たものじゃないと思うのです。最初私が申し上げましたように、ベトナム戦後の世界情勢の大きな変化の中で、アメリカのアジアなり世界における戦略体制の再編成の一環として考えられるべきだというのが私の考え方です。したがって、この機会にわが国がやらなければならぬことは、朝鮮半島の緊張緩和、そして平和的な、自主的な統一のために積極的に努力すべきだ。いやしくも撤退後の補完措置として、韓国朴政権の強化のてこ入れだとか、あるいは自衛隊の増強に向かうべきではない。そういうことをやることはかえって逆に朝鮮半島の緊張状態を激化する、平和に害があるという私は考え方ですので、したがって、そういう点は、朝鮮半島における緊張激化あるいは日本の軍備拡張、そしてアジアの平和の中にかえって阻害要因をつくる、ぜひそういうことのないようにしていただきたいと思います。  次に、もう一つだけ最後に伺っておきたいのですが、去る五月十八日の当委員会の質疑で、日韓大陸棚の共同開発区域の防衛について質問いたしました。この問題は非常にむずかしい問題なので今後検討していく、こういうのが集約した御答弁でありましたが、その後この問題についてどういう見解をお持ちになっておりますか。
  152. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 御質問の共同開発区域は、御承知のように公海上の施設であります。これに対して攻撃がなされる場合におきましては、それが自衛権の発動の要件でございます。なかんずく一つの要件である、外国によるわが国に対する組織的、計画的な武力攻撃に当たるかどうか、これが問題となるわけでございます。御質問の武力攻撃がこれらの要件に該当する場合におきましては、自衛権の発動の対象になるわけであります。しかし、そうでない場合は自衛権の発動をしてはなりませんし、海上警察行動によって対処されるものと思うのでございます。  いずれにいたしましても、ケース・バイ・ケースで対処する以外に、仮説のそうしたことについていま具体的にどうだというようなことを申し上げることができないのを残念に思います。
  153. 矢山有作

    ○矢山委員 この問題については、そのときのやりとりで日米安全保障条約との関係を申し上げたところが、それは領域というものには当たらぬから、したがって、これには日米安保条約はかぶってこない、こういうことをおっしゃったわけであります。  そこで、私は念を押しておきたいのは、わが国の防衛というのは、限定的かつ小規模な侵略には原則として自力で排除する、こういう原則になっております。もし自力で排除不可能な場合にもこの安保条約五条の適用はない、このように解釈してよろしいか。
  154. 大森誠一

    ○大森政府委員 お答え申し上げます。  日米安保条約第五条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」云々、こういうような規定となっているわけでございます。日韓大陸棚協定に基づきます共同開発区域というものは、このような日本国の施政のもとにある領域ではないというふうに考えますので、先ほども御指摘のようなケースとしての日米安保条約第五条の発動ということは考えられないということでございます。
  155. 矢山有作

    ○矢山委員 これは重要な問題ですから、総理に確認しておきます。  ただいまの外務省の答弁でよろしゅうございますか。
  156. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおり心得ております。
  157. 矢山有作

    ○矢山委員 最後にもう一つだけ。これは日韓の共同開発区域であります。したがって、先ほどの御説明にあったように、わが国の自衛権が発動される場合もあるでしょう。あるいは韓国の自衛権の発動をされる場合も想定をされます。同じ共同開発区域の中で日本が自衛権を発動した、韓国が自衛権を発動した、そのときも日韓の協力関係は、現在の状態の中では一切ないわけでありますから、一切ない、そういうふうに理解してよろしいか。私はこのことをあえて御質問申し上げるのは、先ほど申し上げましたように、北村元海将のソウルにおける学術セミナーでの発言があります。したがって、それとの関連で私はこの問題をきわめて重視しておるわけでありますので、明確にお答えを願いたいと思います。
  158. 大森誠一

    ○大森政府委員 共同開発区域に対しまして仮に武力攻撃というような事態が発生いたしました場合には、日韓それぞれが一般国際法の枠内で対処するということになるわけでございまして、日韓双方が共同してということは考えられていないわけでございます。
  159. 矢山有作

    ○矢山委員 この問題は、私は、総理それから三原防衛庁長官から御確認いただきたいと思います。
  160. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いま外務省条約局長が答えたとおりでございます。共同するようなことはございません。
  161. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 防衛庁長官の答弁のとおりであります。
  162. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、市川雄一君。
  163. 市川雄一

    ○市川委員 先ほどF15の問題が出ましたが、まだ防衛庁の内定の段階で、国防会議あるいは政府の閣議決定に至っていない、こういうお話でございました。そういうことを踏まえて、この際、総理の御認識と私たちの認識が一致しているのかどうかという点をあらかじめ確認をしておきたいと思います。  この問題でございますが、昭和四十七年十一月七日の衆議院の予算委員会、ここで増原防衛庁長官が「わが国の戦闘機の爆撃装置についての政府見解を申し述べます。」と、これは単なる答弁じゃない、政府の見解を述べたわけですが、その中で「将来選ぶべき戦闘機、FXには爆撃装置を施さないと答弁したのは、当時選定を予定していたFXは、要撃戦闘を任務とするものであるが、」途中略しますが、「行動半径の長いものを選定することとしていたので、爆撃装置を施すことによって他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないとの配慮のもとに、同装置を施さない旨を申し述べたものと考える。」と、こういう政府見解が述べられているわけでございます。そしてまた、「四次防で整備する新支援戦闘機FST2改は、わが国土及び沿岸海域において、わが国の防衛に必要な支援戦闘を実施することを主目的とする戦闘機であるので、この任務を効率的に遂行するために必要な器材として、爆撃装置をつけることにしている。しかしながら、同機の行動半径は短く、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるおそれを生ずるようなものではない。」こういう政府見解が出ているわけでございます。  また、四十八年四月十日の参議院の予算委員会におきまして、当時の田中総理大臣が「第一点、空中給油はいたしません。第二点、空中給油機は保持しません。第三点、空中給油に対する演習、訓練その他もいたしません。」これはファントム戦闘機の装備についての質問に対する総理大臣の答弁であるわけでございます。  こういう答弁あるいは政府の見解というものが国会の論議の中で述べられておるわけでございますが、最初に申し上げた政府の見解、文脈を整理してみますと、航続距離の長いもの、行動半径の広いものに爆撃装置をつけると、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるものと誤解を生むので装置はつけない、これが一つの柱になっておるわけでございます。もう一つの柱は、行動半径が短いものは他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるおそれが生じないから同装置をつけるのだ、こういう見解でございますが、しかし当時の議論は、ファントムはこの航続距離が四百海里、新支援戦闘機FST2改は三百海里、わずか百海里の航続距離の違いでこういう論議を交わしているわけですね。今回防衛庁が内定しておりますF15は、航続距離は四千六百三十キロ、海里に直しますと二千五百海里、これはもうお話にならないくらい航続距離が長いわけでございます。  こういうことを考えますと、現時点におきまして防衛庁内定のF15を決定するということは、これはこの政府見解あるいは政府の政策の重要な変更になる、こういう御認識を総理は当然お持ちだと思いますが、確認の意味でお伺いしたいと思います。——総理にお伺いをいたします。(「総理、総理」と呼ぶ者あり)
  164. 正示啓次郎

    ○正示委員長 伊藤防衛局長、一応説明を……。
  165. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず、事実について御説明申し上げます。  四十七年、四十八年のときの御議論、それに対する防衛庁の見解というのを申し上げましたときには、いま先生も御指摘になりましたように、ファントムとそれからF1、それからファントムの給油機、こういう関係において議論がなされたことでございます。  御承知のように、ファントムという飛行機はF104の後継機として製造されたものでございまして、F104が要撃プロパーといいますか、その目的のためにつくられた飛行機でありますのに対しまして、ファントムという飛行機はいわゆる戦術戦闘機として開発されたものでございます。したがいまして、あの性能から見ますると、要撃能力はもちろん持っておりましたが、爆撃能力というものも当時の戦闘機の中では際立って大きかったわけでございます。したがって、そういった能力を持った飛行機、それに対しまして、F1というのは対地支援攻撃でございますから、地上の攻撃というものが主目的でございます。したがいまして、ファントムとの関連においてあのような見解が述べられたものでございます。  また、いま申し上げましたような形で、戦闘爆撃機としてのきわめて能力の高いファントムが給油装置を持って長距離まで出かけていくということになると、その能力から見まして脅威を与えるというふうに誤解をされる危険があるというので、給油装置を外すというふうに御決定いただいたと私どもは考えているわけでございます。  今度のF15という飛行機は、その性能から判断いたしましても、すでに御承知のように、要撃戦闘、すなわち空中における空対空の戦闘能力がきわめてすぐれているものでございまして、あの性能の飛行機からいたしますと、対地攻撃能力というものは小さいと判断されるわけでございます。したがいまして、そういった要撃機としての能力というものを考えて、私どもは爆撃装置それから給油装置というものを置いておきたいというふうに考えているわけでございます。
  166. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 過去の経緯につきましては、ただいま政府委員から申し上げたとおりでございますが、さてこれからのF15をどうするかという問題であります。これは先ほど申し上げましたように、まだ政府として正式に採択を決定しておるわけじゃないのです。いわんやF15に空中給油施設をするかしないか、これは当然まだ決定をしておる問題じゃない。この給油施設をF15採用の場合につけるかつけないか、いま国防会議の事務局において検討をしておるよしでございますが、国防会議におきましては、慎重にその経緯を聞きまして、そうして最終的な結論を出す、こういうことにいたします。
  167. 市川雄一

    ○市川委員 これから慎重に検討するということは当然でございます。それを伺っているのではなくて、国会における政府見解というのはそんな軽いものではないとぼくは理解しているわけですね。そのときに政府見解がきちんと出ているわけですよ、防衛庁長官がね。そこでおっしゃっていることは、いままた何か拡大解釈なさるような御答弁が伊藤さんの方からありましたけれども、このときはそんな機能のことを問題にしているわけじゃない。やはり足の長さというものが本質的な議論になっているわけですよ。そういう意味では、あくまでも行動半径が広い、航続距離が長い、これはやはり他国に脅威を与えかねない、だから持ちません、しかし短いものは持ちます、こういう議論をしているわけですが、この政府見解を厳しく拝見すれば——いま防衛庁は技術的には外せないと言うのでしょう、爆撃装置も同じコンピューターに入っていて外せないんだ、そういうものの導入を考えておられるわけですから、決定を慎重にやるかやらないかという問題をいま伺っているのではなくて、現時点における認識、決定なさる場合ですよ、そういうことを決定なさるということは政府の政策の重要な変更であるという御認識があるのかないのかということを総理に伺っているわけです。総理にこれは伺いたいわけです。
  168. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御質問の点は過去の経緯等も含めまして慎重に検討いたしまして、結論を出します。
  169. 市川雄一

    ○市川委員 過去の経緯を総理は御存じだと思うのですね。そうしますと、これは明らかに重要な政策の変更ですよ。これから国防会議にかける、あるいは閣議で決定するんだというお話でしたけれども、これは一技術上のレベルの問題ではないと思うのですね。先ほども御指摘がありましたが、大体いままではそういう技術上やむを得ないとか、どうにもならないからということで、そういう技術レベルの決定が先になされ、既定事実ができる。それに対して政府が追認して、憲法解釈を拡大するとかあるいは政府見解を手直しするとか、こういう形で国会でおさめるというケースがあったわけですけれども、これもそうなることをいま心配しているわけです。そういう意味で、この政府見解というものを読みますと、明らかにこれは重要な政策の変更に当たるわけですよ。そういう認識を総理がお持ちにならないで、何となくその辺ぼかしておいて、これから国防会議で慎重に検討します、閣議で慎重に検討しますということでは、われわれとしては納得ができない。そういう意味でもう一度お伺いしますが、これは政策の変更になりませんか、総理。どうですか。その価値判断をお伺いしているわけです。
  170. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  総理に政策の変更になるかならぬかというお尋ねのようでございますけれども、まだそこまで行っておりません。御承知のように、そうした機種を決定をする最終のものは、シビリアンコントロールの機関でございまする国防会議が最終決定をなさるわけでございます。そこで、そこまでに行く制度上、手続上の処置をいまやっておるところでございます。シビリアンコントロールは防衛庁長官のところでまずやるわけでございますが、この点につきましては、先ほど来政府委員が御説明申し上げ、先ほど中川さんにも私は御回答申し上げたのでございまするが、昨年の暮れ、前長官の際に御決定を願いまして、その引き継ぎが私になされたわけでございます。その際に大綱的に承りましたのは、一九八〇年以後の列国の防衛力整備の状況、特に防空力整備の脅威等について対処をしなければならない。また日本の特殊事情、地勢的な問題等もあるわけでございますが、そういうもの等も踏まえて、いま御指摘がございましたように、あくまでも専守防衛の立場をとっていくというところ、それから他国の脅威にはならない、そういうことで私も第一次のシビリアンコントロールの立場に立つ防衛庁長官として、一応防衛庁が決定をいたしておるのでございます。これから先は、いま手続といたしまして、各関係省庁と国防会議の参事官会議を中心にして御検討を進めてもらい、この検討の成果が出てまいりました時点において国防会議を開いて最終御決定を願う、そういう手続上の段取りを進めておるという事態でございまして、いま総理に政策の変更になるかならぬかというお尋ねでございますけれども、そうした事態にまだ参っていないという事情を申し上げておるところでございます。
  171. 市川雄一

    ○市川委員 手続を伺っているのではないのに、時間が過ぎちゃうのですが、では防衛庁長官はそういう重大な政府の政策変更に当たるという認識でおられるのですか、どうですか。
  172. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、そうした憲法違反とか政策変更になるというような考え方に立っておりません。
  173. 市川雄一

    ○市川委員 その発言が非常に問題だと思うのですね。政府国会で答弁して約束した。それがすぐ簡単にひっくり返って、長官がかわると私はそう思いませんということでは、これは通らないと思います。そういうことで総理の認識を伺ったのです。これはシビリアンコントロール、だから手続があるんだとおっしゃいますが、しかし政策決定の本質に対して変質を促すような決定は、それが技術上の決定であれ防衛庁段階の決定であれ、これはやはり問題だとぼくは思うのです。これは将来政府の政策決定の本質を変えるもの、そういう決定であれば、それがたとえ下部の決定であろうが技術レベルの決定であろうが、これはやはり重大な問題だという認識を持たなければいかぬと思うのです。そういう御認識が欠けているんじゃないですか。そういうことを私はいま質問しているのですが、それを手続の問題にすりかえておられるわけですよね。まだ総理レベルまで来ていないから、だからこれはいま答弁できないんだ、慎重に検討します、これでは答弁になっていないとぼくは思うのですよ。そういうことを申し上げておきたいと思うのです。そういう意味から、これはまた改めて、先ほどお話がございましたが、ほかの質問も用意しておりますので、今後の推移を見ながら私たちも対応していきたいと思います。  次に、いまの問題と関連しますが、防衛庁では次期対潜哨戒機にロッキード社のP3C導入を同じく内定しておるわけでございます。来年度予算要求で十機分を計上していると聞いておりますが、政府はこれまで国民の理解や支持がなくては防衛はあり得ないことを再三明らかにしてまいりました。またロッキード事件の際にもPXLの選定にはいささかも国民に疑惑を持たれるようなことのないよう慎重に取り扱うということをおっしゃっておられるわけでございます。PXLとロッキード社との問題に関しましてはこの委員会でも論議されてまいりましたけれども防衛庁説明では、PXLに関する国産化白紙還元の疑惑は全く根拠がないものであった、あるいはロッキード社と児玉譽士夫との秘密コンサルタント契約が解消された、ロッキード社から調達の公正な価格の適正化に関する誓約書が防衛庁に提出されたというようなことを挙げられてP3Cの導入決定を正当化しようとされておるわけです。しかし、このロッキード社という会社が賄賂商法を行ったという事実はあるわけですし、このP3Cの売り込みに関しても、児玉と契約して裏工作をさせようとした事実があるわけです。そういうことを考えますと、いま裁判が進行中で、全面的に疑惑が晴れるということは最終的な判決を見ないとわからないわけでございますが、そういうことを考えますと、政府のやり方を見ておりますと、汚い会社でも、いまはないと言うんだからいいじゃないか、こういう論法になりかねないわけなんですが、総理はこうした防衛庁のやり方が適当であるとお考えになっているのかどうか。国防会議で最終決定される問題でございますが、少なくとも総理はロッキード事件の一審の判決を待って決定するというくらいの慎重な配慮、国民に対する理解を得るという上ではそういう配慮をしてもいいのではないかと思いますが、その点、総理のお考えはどうでしょうか。
  174. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 P3Cにつきましては、防衛庁は緊急にこれを整備したい、こういうふうに申しておるわけであります。それを受けまして、政府におきましては年末になりますと国防会議を開く、また予算閣議が開かれる、こういうことになって最終的にどうするかということを決めるわけでありますが、ずいぶん金のかかる契約を締結するということになりますので、これは非常に慎重な態度検討しなければならぬ、こういうふうに思っております。ただ、P3Cを選ぶかどうかという点になりますと、やはり性能、これが何といっても大事な判断の問題になるだろう。それから価格、とれも財政上非常に重要な問題です。そういう諸般の状況を踏まえまして、さてどの機種が一体わが国の国益に合するか、こういうことになるだろうと思う。その際に、ロッキード社が扱っておるこのP3Cということになる、こういうことになります場合を考えますと、その際には、いま市川さん御指摘の国民感情、こういう問題もいろいろ慎重に考えなければならぬと思います。その際には国民からこの問題についての疑惑がないような措置、これは厳重にとらなければならぬ、こういうふうに思いますが、それらとにかく総合的にあらゆる角度から検討いたしまして、国防会議並びに閣議において最終的な判断を下したい、このように考えております。
  175. 市川雄一

    ○市川委員 この問題、これ以上お答えがないと思いますので——このP3Cの導入は、いままでいろいろな新聞報道でも伝えられておりましたが、米国から再三に要請されていたということが報道で伝えられておる。たとえば日米防衛分担の実態を調べたスターツ米会計検査院長の報告では、日本がP3C機を購入すれば米国の対潜哨戒負担を減少できるということが述べられているわけでございます。こういうことに関連いたしまして、P3Cを必要とする情勢は、結局ソ連の潜水艦に対処するものではないか。したがって、ソ連の方では再三にわたって新たな日米軍事協力であるという警告を発しているというふうにも聞いているわけでございますが、こういう日本と米国との軍事協力につながるこのP3Cの導入ということが、かえって日本の周辺諸国に脅威を与えるのではないか、刺激を与えるのではないか、あるいは日ソ関係に悪影響が起きてくるのではないかということも予測されるわけでございますが、特に対ソ関係について、総理はこういうことをどういうふうにお考えですか。
  176. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国はわが国として国を守る、これは自衛の権利を持っておるわけです。どこの国がどういう感触を持とうが、わが国はわが国をわが国の力で守り抜かなければならない、こういうことでございます。  対潜哨戒機、これは攻撃的なものではございません。他国からの侵略に備える、そういう性格のもので、これくらいを整備しまして、これが他国に脅威を与える、あるいは不快な感じを与える、こういうふうには私は思いません。どこの国にせよ、これくらいのことをして不快の念を持つという国があれば、それはその国の方が間違っている、こういうふうに思います。
  177. 市川雄一

    ○市川委員 総理は八月十八日、ASEAN歴訪の最終地マニラにおきまして、東南アジアに対するわが国の姿勢として三つの原則をマニラ声明の中で明らかにされたわけです。  これは所信表明においてもこのことを強調しておられるわけですが、この中の第一として、日本軍事大国にならないということを決意している、こういう言葉があるわけですが、総理がおっしゃっている、日本軍事大国にならないという、この軍事大国というのは何かはっきりとした原則をお持ちなのかどうか。基準をお持ちなのかどうか。こういう原則を守っているんだ、それで日本軍事大国にならないのだ、こういう原則を破るとやはりこれは軍事大国化への道である、当然こういう確固たるお考えと原則というものをお持ちで、日本軍事大国にならないことを決意しているというふうに総理はおっしゃったと思うのですが、その原則といいますか定義と申しますか、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  178. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国が平和国家であるということは、もう大方の世界じゅうの国が理解しておると思うのです。しかし一部に、経済大国はもう当然というか、流れといたしまして自然に軍事大国化していくものだという歴史も一方にあるわけです。その歴史的な流れを踏まえまして、いずれは日本の国は経済大国にとどまらぬ、経済大国を踏まえて軍事大国化するのではないかというような見方をする人があるわけなんです。  私は、ちょうどわれわれの隣組でありまするところの東南アジア諸国を旅行した、この機会に、これを東南アジア隣組の皆さんに誤解がないように、また同時に、世界全体といたしましても正しくわが国の立場を理解するように、さように考えまして、マニラで発言をした、その第一項目として日本は再び軍事大国にはならぬ、こういうふうに宣言をしたわけなんですが、軍事大国にならぬということはわが国の憲法でちゃんと決まっております。その憲法ののりを越えぬということであります。すなわち、わが国は自衛力は持つ、持つけれども、他国を脅威するようなあるいは他国を侵略するような、そういう軍備は持ちません、こういうことでありまして、軍事大国というのはどういう限界かというお尋ねでありますれば憲法の規定に従う、こういうことでございます。
  179. 市川雄一

    ○市川委員 日本軍事大国になりませんという、いまの憲法の規定に従っていくことであるというようにおっしゃられたわけですが、総理どうですか、いまの世界で総理が軍事大国だと認識されている国はどんな国がございますか。どうですか。
  180. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まあ常識論でございますが、米ソ両国のごときは軍事大国じゃないか、かように思います。
  181. 市川雄一

    ○市川委員 次に、時間も迫ってまいりましたが、在韓米軍の撤退の問題でひとつお伺いしておきたいことがございます。  防衛庁長官はこの委員会でも、在韓米軍の撤退は、アメリカが南北の軍事バランスを崩さない、あるいは朝鮮半島の平和と安全を損なわないという前提でやるんだからということを、しょっちゅうおっしゃっておるわけです。しかし、どうも防衛白書を読んだり長官のお話を伺っていますと、南北朝鮮の軍事バランスとか朝鮮半島の平和と安全を損なわないとか、何を基準、何を原則におっしゃっておられるのかということがよくわからない。要するに日本政府として、そういう何か考え方あるいはまず客観情勢の分析、認識、そしてそれに基づいてある基準があって、南北の軍事バランスが保たれているとか、朝鮮半島の平和と安全が損なわれないとかという判断があるのだろうかという強い疑問を持たざるを得ない。たとえばその一例として申し上げますと、昨年の白書では、これはすでに指摘されていることでありますけれども、「南北の軍事力は、四万二千人の在韓米軍を含めて、概ね均衡しているとみなすことができる。」昨年の白書では、朝鮮半島の南北の軍事力のバランスは、在韓米地上軍四万二千人が存在しているということを前提にしてバランスしているというふうに判断しておられる。ことしの白書では全然そのことに触れておらない。アメリカ地上軍が撤退すると言ってきた、だけれども、それにかわる代替措置、空軍の強化あるいは韓国軍の近代化というものを言っているから、どういう代替措置をとるか、いまの時点ではわからないけれども、大丈夫だというふうにアメリカは言ってますよということしか書いてないのですよ。そうなりますと、政府には自主的判断がないのではないかということですね。  なぜこのことを申し上げるかと言いますと、そういう自主的判断がなくて、また基準も明らかにされない。恐らくお持ちになっているのだろうけれども、おっしゃらないのじゃないかと思うのですが、そうなりますと、将来、この四、五年後に在韓米地上軍の撤退が完了する時期が近づいてきて、いろいろやってみたけれども、どうも代替措置や補完作業がうまくいかぬ、ひとつ日本の方で防衛力を強化してその分を補完してくれないかという要請を受けても、自主的に日本の防衛整備は決めてきたんだ、これからも決めていくんだとはおっしゃっているけれども、そういう南北の軍事バランスということについても、明快にこういう基準、こういう考え方で私たちは認識しておりますということが、持ってないと言う以上、あるいは出ないと言う以上は、アメリカから言われたら言いなりにならざるを得ないということを申し上げたいわけです。  そういう意味で、はっきりした米在韓地上軍の撤退に伴う問題について、南北の軍事バランスとか朝鮮半島の安全と平和を損なわないとかということは、一体いかなる分析と基準でおっしゃっているのか、これをお伺いしたいと思うのです。
  182. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 朝鮮半島の平和と安全が保持されておるということは、第一には、いま申し上げましたように、南北の軍事バランスの問題があると思うのでございます。現実の問題といたしましては、(市川委員「基準をちょっと簡単に」と呼ぶ)兵力が大体均衡のとれた兵力であるということ、しかし、実際上におきましては、越境問題がありましたり、あるいは板門店の問題等があったりして、いろいろな緊張は継続をいたしておりますけれども、大体いま申し上げましたように、兵力のバランスがとれておるという事態でございます。  在韓米地上軍が撤退をする、まだ撤退をいたしておるわけではありませんけれども、撤退については、このバランスを崩さないという立場で米韓において話し合いが成立をいたしておりますし、私どももこの推移につきましては、これを注視をいたしておるわけでございますが、現状におきましては、そうした朝鮮半島自体における問題もあると思うのでございます。事情があると思うのでございます。なおまた、朝鮮半島の平和と安定の一つの要素としては、やはり国際情勢だと思うのでございます。  世界の軍事大国と申しますか、二極的なそうした体制の中にある米ソの関係でございますとか、あるいはまた、二極とは別個の立場で一極を形成する中華人民共和国の体制、しかも、これと中ソの関係でございますとか、あるいはまた中米の平和外交の継続でございますとか、そうした朝鮮半島を取り巻きます三つの大国におきましても、朝鮮半島の平和を乱すような、損なうような事態が発生することを望んでおりません。そういう客観情勢もあるわけでございます。なおまた、南北両国におきましても、できるだけの平和への努力を払っておるものと思うわけでございます。  そうした諸般の情勢から、朝鮮半島の平和と安全が損なわれないという、そうした情勢判断をいたしておるのでございます。
  183. 市川雄一

    ○市川委員 いまの答弁に関連してお聞きしたいことがあるのですが、たとえば防衛白書では五項目の国際情勢分析と国際政治行動というものを挙げておられる。この情勢が変化しない限り、基盤的防衛構想で行くのだ、もし変化すれば新しい防衛体制に移るのだということを明記しておられるわけですけれども、その中に、いまの朝鮮半島がおおむね現状を維持して、そこに武力紛争は起きないだろうということがあるわけですよ。  そういう分析に立って朝鮮半島というものを政府はながめているわけですから、当然その前提が崩れないように努力しなければいかぬと思うのですよ、それが崩れれば防衛力を拡大すると、こうおっしゃっているわけですから。そうなりますと、やはりこれは朝鮮半島の緊張緩和というものに日本政府が努力しなければいかぬじゃないかと思うのです。ところがいま韓国とだけ正常な関係を持っているけれども、北側とは正常な関係を持っていない。したがって、これはやはり南北と正常な関係を持つということがこの朝鮮半島の緊張緩和につながる、それは日本の平和と安全に非常にプラスになることではないかと思うのですが、この辺のことについて総理はどういう御認識ですか。
  184. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島の平和は、これは南北のいろいろな意味における均衡、この上に成り立っておる、こういう理解でございます。  これはそれじゃどういう評価でバランスされておるのだということになりますと、これははかりではかるような性格のものではないと思いますが、とにかく、この平和が成り立っておるのは、現状が全体として均衡しておる、そういう状態であるからだ、こういうふうに思います。  ですから、この現状に軍事的に政治的に大きな変化が出てくる、こういう状態は私は均衡が破れる、そういうことと理解しております。
  185. 市川雄一

    ○市川委員 では、時間が参りましたので、終わります。
  186. 正示啓次郎

    ○正示委員長 続いて、受田新吉君。
  187. 受田新吉

    ○受田委員 福田総理大臣、きょうは福田総理大臣お一人に質問を申し上げまして、余人の答弁をお断りするという原則で二十分間をやらせていただきます。  福田総理大臣は、先般アメリカを訪問されまして、カーター大統領と共同声明を発せられました。われわれは佐藤総理、三木総理と、その共同声明の変遷につきまして、極東、東アジアの平和に触れた部分について指摘したいところがございます。佐藤総理は、韓国の安全は日本の安全という一体的な共同声明を出されました。いわゆる韓国条項。三木総理は、朝鮮半島の平和というものを持ち出され、もちろん韓国の安全という言葉も中へ入っております。  ところが福田総理の米大統領との共同声明の中には、「日本及び東アジア全体の安全のために、朝鮮半島における平和と安定の維持が引続き重要であることに留意した。両者は、朝鮮半島における緊張を緩和するため、引続き努力することが望ましいことにつき意見の一致をみるとともに、南北間の対話のすみやかな再開を強く希望した。」この一項があるわけです。「南北間の対話のすみやかな再開を強く希望した。」総理は、この共同声明に基づき、朝鮮半島における平和と安定の維持のための南北間の対話の速やかな再開を希望した具体的な事項について御答弁を願いたいのです。
  188. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私の朝鮮半島に対する姿勢は、いま受田さんが正確に理解をされておるとおりでございます。  そこで、何とかして南北間に対話が始まらぬかなということを本当に心から私は期待をいたしておるわけであります。私は私なりに、私のその期待が実現するようにというふうに存じまして、私のなし得ることはやっておるわけでございますけれども、これをまた具体的に申し上げますと、これがまた私の期待と相そぐわぬというようなことにもなりますので、具体的には申し上げませんけれども、いろいろ気を使っておるということを正直に申し上げます。
  189. 受田新吉

    ○受田委員 総理は、三月二十五日の参議院予算委員会で、頭の中にはいろいろあるが申し上げることは妥当でないと仰せられた。あなたの総理の任期はもう一年になんなんとしてきました。来年で任期満了。次をねらわれれば別としまして、強く希望した、その具体的なものが出てこなければいかぬのですよ。総理の任期が終わりますよ。そういう意味で、次をねらわれるとしても、来年の末までの間にこの具体的な南北の対話を実践していただかなければならぬ。  私、実は南朝鮮、韓国へも四回旅をし、北朝鮮すなわち朝鮮民主主義人民共和国へ二回旅をし、先般も旅行してきました。私は、同じ朝鮮民族、日本に一番近い朝鮮民族が三十八度線をにらんで互いに憎しみと敵対意識を沸き立たせていることは、本当に悲劇だと思うのです。朝鮮半島の問題を本当に解決するのは、アメリカよりも日本でなければいかぬ。朝鮮民族に対する長い歴史の上のいろいろな御苦労をかけたわれわれとしても、朝鮮民族には、とにかく一番身近な、日本に近いこの国には、兄弟国としての本当の愛情を注がなければならぬと思うのです。ところが、現実は、北の脅威を南は叫び、北は南の米軍との一体的な武装強化を大いに憎しんでおる。悲しみです。  国連の百五十ヵ国に近い中の九十余カ国がすでに両国を承認して、その差はわずかに数カ国、両方承認している国も五十カ国に近いという状態の中で、アメリカが、私もあちらでいろいろと感触を得たのでは、アメリカがすでに日本を飛び越えて北鮮との間で何らかの関係をつくろうという声も出ておるようなことです。中国との間でわれわれが経験したことから見ても、身近な朝鮮問題は日本が責任を持ってやる。南北の対話のためには、たとえば東京で南北の責任者同士の対話を催すなど、あるいは韓国にはいま経済援助を相当の額に上って、累積しておるわけでございますが、同じ朝鮮民族で国交が開けていない北に対しては、これらについて貿易上の延べ払い等に対する批判が出ているというようなことになっている。軍事警戒ラインを西海岸に北鮮はやった。西日本の漁業者はいままで漁労した地域から締め出された。これに対する補償はどうするか。民間協定等が結ばれたら、それに対して政府は何らかの北との関係において政府の保証、あるいはこれに近い措置をとるとか、文化交流、技術交流などを通じて北とも国交が開かれるまで、密接な連絡をとりながら、両国の対話を再開する努力をされる必要があると思うのです。総理の南北の対話の再開、速やかにという主張に対して、ぼんやりと任期を過ごされるということは、私は許されぬと思うのです。ある程度の具体的な施策ぐらいは、もうあってしかるべきだと思うのです。アメリカよりも日本が先にこの問題を取り上げるべきであると思うのですが、ぼんやりした日本外交ではあり得ない。総理御自身の判断でこの問題はひとつ解決していただきたい。
  190. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 朝鮮半島が南北に分かれて相対峙しておる、こういうことは本当に民族の悲劇である、こういうふうに私は思います。ですから、アメリカがどういう態度をとろうと、それはアメリカのことでありますが、わが日本としては、隣国といたしまして、南北の平和的統一ということを真剣に考えるべき立場です。これは受田さんと全く同じでございます。  ただ、南北の緊張状態というのは、私の見通しとしてはそう簡単に解消はしそうもない。しかし、その緊張の続く中でも、まず対話が始まって、そして緊張を解きほぐすという、そういう手順を踏まなければならないのではないか、そのように考えておるわけなんでありますが、私はカーター大統領とも会談いたしまして、両者とも強く南北対話が始まることを希望する、こういうことで意見の一致を見たわけでございますが、私は本当にそういうふうに望んでおるのです。それで私も、乏しい知恵ではございますけれども、いろいろ頭を使いながら、そういう機会ができるようにということを念願し、また私のできることはやっておる、こういうことなんですが、何せとにかく緊張が非常に激しい南北の関係である。そういう中でありますから、その中で対話を始めるということは、言葉では対話の開始と、簡単でございますけれども、さあ実際ということになると、そう簡単なものじゃない。よほど環境をつくって、そしてそのいい環境の中で事が進められるということだろう、こういうふうに思いますが、せっかく努力をいたします。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは共同声明の中に、韓国にある地上軍の撤退という米国の意図を盛り込んでおられます。これについては、全面撤退というのが一応伏線にあるわけですか。全面的な地上軍の撤退というのをあなた御自身は感触を受けたかどうかです。
  192. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私のカーター大統領との会談では、段階的に、最終的には全面撤収だ、こういう印象でございます。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、私はこの南北問題について、南へ行った人は北のことを知らないで一方的に北を批判する、北へ行った人は南を全然知らぬで南を批判する、そういうかっこうになっておるのです。私は双方見ただけに、同じ民族でこの悲劇を解消する、愛情を持ってそれぞれに当たれば、そういう対立を緩和する努力は幾らでもできる。われわれは南との国交を十分保持しながら、北に対しても愛情ある、国交は開けなくても、やがて国交を樹立する前提のもとに、いろいろな施策があると思うのですが、総理として、その施策についてお答えが願えると思うのです。
  194. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私どもの自民党でも、かなりの人が北鮮を訪問いたしておるわけです。超党派の議員連盟が先般も北鮮を訪問いたしましたが、その団長はわが党の久野忠治君ですよ。そういうようなルートを通じまして、私も北鮮のことにつきましてはいろいろ聞いたり、知識もある程度持っておるつもりでございますが、いま朝鮮半島は二つに分かれて、韓国はまだソビエト連邦からも、あるいは中華人民共和国からも承認を得ていない、こういう状態です。そういう状態でありますから、わが国がいま韓国と国交を結んでおるという立場であるにもかかわらず、朝鮮民主主義人民共和国、つまり北側と条約というか、国交を持つというようなことは非常に困難な状態ですが、そういう中ではありますけれども、できる限りの交流、これは気をつけておるつもりでございます。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 私は、国防会議を中心とした文民統制の点に触れます。簡単に答えていただきたい。  総理、いま文民統制がいろいろと騒がれている中で、国防会議の機能をどうするかということで、国防会議昭和四十七年十月の田中内閣のときの閣議決定で、国防会議の構成員を、四人閣僚をふやすという決定を見たが、これは実現しておらぬ。行政的な内閣法あるいは国防会議法として、防衛庁設置法の中の規定から生まれた国防会議構成ではなくて、少なくとも防衛庁外務省、経済関係の役所等を統一した外交、経済、防衛を含めた高い観点の国防体制というものをしく機関としての国防会議をつくるべきである。行政機関としての国防会議、諮問機関よりも行政機関で下へ十分意思が通じるような形のものをつくるべきである。それにどう取り組もうとしておるか、お答え願いたい。
  196. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国防会議につきましては、構成員を拡大する法的な措置が必要なんでございますが、法的措置を待つまでもなく、国防会議議員懇談会というのがありますから、そこへ必要な閣僚に参加してもらうとか、国防会議の実質上の機能の向上ということをやっておるわけでございます。それから、私が内閣になりましてから、国防会議運用ですね、これは国防会議の事務当局から出てきた案件をとにかく処理するということでなくて、常日ごろから広い立場における国防、そういうことに関連する諸問題を、つまり防衛問題の背景、そういう問題につきましても、国防会議または国防会議議員懇談会においてひとつよく論議しよう、こういうようなことで、国防会議が本当に広い立場からわが国の自衛力が適正に運用されるというために機能を発揮するようにという努力をいたしております。
  197. 受田新吉

    ○受田委員 いままで防衛庁で案をつくった、それを最後に国防会議で承認して、閣議、国会となっている。シビコンの最高は国会だ。それから政府、それから国防会議防衛庁、こうなっているわけだ。ところが、いま結局、さっきのF15にいたしましても、もう防衛庁が決めたのを、最後に国防会議でどうするかというだけのことという程度では、国防会議が出先のような機関になる。はっきり申し上げるが、防衛庁設置法の中から生まれた国防会議でなくして、その上にある国防会議として法改正をやる意思があるかどうかということを尋ねるのです。  それからもう一つ、F15にしても、かつて三十三年にはグラマンかロッキードかで、一遍グラマンに内定していながら、国防会議がまた白紙還元でロッキードにかわった、そういうことがあるから、国防会議ではこのF15がもし問題があるならば、情勢が変化すれば当然国防会議ではF15の防衛庁の内定を変更することもあり得るのが国防会議でなければならぬと思うのですよ。  そういうことを含めて、もう一つ防衛庁長官が一年に一遍ずつかわりよる。こういうことでは防衛庁の内部はなかなか思うようにいかないんだ。やはり二年なり三年なりはっきりつかんで、制服の幹部がどういう能力を持っているかぐらいまでを判断するほどの防衛庁長官にしておかなければならぬので、一年に一遍、半年に一遍、前の四十七年の先取り事件のときに、国会が大問題を起こして、国防会議が決めぬうちにT2等の予算を計上したので、とうとう削除されたことがあるね。そういう歴史もあるのです。その意味で防衛庁長官の任期は少なくともあなた御自身が——三原さんとは言わぬから、とにかく防衛庁長官の任期はある期間は続けるべきだという判断を持つかどうかという問題をあわせて御答弁を願って……。
  198. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国防会議は、いまここで機構の改革をせぬでも十分機能すると私は思うのです。この会議の運営に十分配慮して、政府全体として防衛問題に理解と熱意を持つということになれば、私は、別に防衛庁の中の国防会議という仕組みをいま変える必要はない、こういうふうに思います。  それから、防衛庁長官の任期ですか、それについての御所見でございますが、これは謹んで拝聴いたしました。
  199. 受田新吉

    ○受田委員 わが党は常に防衛委員会の提案をしてきた。ところが、自民党も一応納得した。防衛特別委員会にしてこの問題を国民的規模で討議しようという御決意を示された。にもかかわらず、まだいつからやるかということにあやふやなところがあるわけです。総裁として、この問題についてどう取り組もうとしておるのか、お答え願いたい。
  200. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は常々、国防問題防衛問題、これが国会においてもっともっと論議されてほしい、こういうふうに思っております。それは、つまり国民が防衛問題につきまして理解と関心を持つゆえんである、こういうふうに考えるからなんですがね。私は、そういうふうにぜひしてもらいたい、こういうふうに思います。どうかひとつそういう方向へ、国会の中におきまして話をまとめていただきたい、お願い申し上げます。
  201. 受田新吉

    ○受田委員 そういう方向ではなくて、総理自身が総裁として決断を下してやるべきなのです。そういう方向が願わしいなんということでは、これは話にならぬ。そういうことでは、とてもリーダーシップは発揮できませんわ。  私は、最後に一言だけ質問したい。生命は地球より重いと総理は何回も言われて、ハイジャックであれだけやられた。しかし、防衛庁ではこの四月から十七人の死者を出しておる。こういうところで、もう少し部下の生命を大事にすることを最高指揮者としてやるべきだ。  もう一つ、あなたは外務大臣当時、天皇陛下をヨーロッパへ御案内された責任者です。そういう意味から、親善外交に陛下に御苦労願う順番が、アメリカに続き、次にどこへ続くかという意図を持っておられるか。陛下の御地位を悪用してはならない。しかし、本当に憲法第一条の規定に基づく陛下として親善に御協力いただくことは、健康が許せれば当然あってしかるべきだ。来年はブラジル移住七十年式典、百万人近い同胞がお待ちしている大変な御要望もある。どう対処されるか、お答えを願って、私の質問を終わります。
  202. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ブラジル移民七十年記念式典が来年行われる。そこで、日系移民八十万人が、陸下の御来訪をその機会にと言って熱望しておるのです。しかし、陛下のお年のことなんか考えますと、ブラジルというと遠いですからね、これはなかなかそう踏ん切りがつかない、こういう段階でございます。そういう際には、皇族の中で御名代としてふさわしい人に行っていただきたい、こういうふうに考えております。
  203. 受田新吉

    ○受田委員 初めの質問の人命尊重……
  204. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 人命尊重、これは何といっても大事なことでありまして、私は、人命は地球よりも重い、こういうふうに申し上げましたがこれは私の考えとして変わるところはございません。  ハイジャックに関連してのお話でありますれば、私の考え方は、人質も助けなければならぬ、同時に国の法の権威も守り抜かなければならぬ、この二つを実現をする、これが政府の最高の責任でなければならぬ、そういう認識でございます。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 私の質問は違うのです。自衛官がこれだけ多く死亡している。航空事故で、飛行機も落ちる、人命も失っている。これは内閣総理大臣として、自衛隊の最高指揮官として、訓練のために人命を軽視する思想があるのじゃないか。最高責任者として、私はそれを指摘しているわけです。
  206. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 自衛隊におきまして、訓練の途中におきましていろいろ事故がある。最悪の場合には人命を失うというようなケースがある。それを聞くたびに、私は本当に痛恨にたえません。防衛庁長官に心してもらいまして、そういう痛恨事の起こらないように最善の努力を尽くしたいと存じます。
  207. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、柴田睦夫
  208. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が十分しかありませんので、福田総理にだけ質問いたします。  福田総理は、さきの国会、五十二年三月二十九日の参議院予算委員会で、在日米軍基地からの戦闘行動に対する日本基地使用の事前協議では、イエスもあり、ノーもあると答弁していますが、実際はノーはなくてイエスしか答えないのではないかと思うのですが、この点について、まず確認したいと思います。
  209. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 安保条約によるわが国の基地からの米軍の出撃に対しましては、イエスもあればノーもある、イエスと言う場合ばかりじゃありません、ノーもある、このように御理解願います。
  210. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 総理は、三月に訪米されてカーター大統領とも会われ、そして共同声明も出されました。米側の認識を御存じだと思うのですけれどもアメリカ側はどういう認識をこの点について持っているのでしょうか、お伺いいたします。
  211. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私の内閣になりましてから、そういう論議をいたしたことはございませんけれども、私と同じ認識を持っておるというふうに信じております。
  212. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうではないと考える資料があるし、私もそう考えるのです。私の手元に国防総省国防情報局の資料がありますから、これを見ていただきたいと思います。  これは「南朝鮮に対する脅威」と題する資料であります。この中のミリタリーバランスの三ページの一番下の行「イン ジ イベント オブ ウォージャパン ウイル アロウ ザ ユース オブ イッツテリトリー フォー サポート フロム アンド オーグメンテーション ツー ジス フォース」、こうあります。要するに、戦争になったなら日本は兵力の支援と増強のために領土使用を許可することになる、こう言っているのではないかと思うのですが、こうなりますと、福田総理の言われたことと全く食い違うことになるわけですが、この点、どうお考えですか。
  213. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま資料を渡されましたが、私も唐突のことで、またこれは英文でありますので、十分そしゃくできませんけれども、とにかくわが国といたしましては、この米側から協議を受けた場合にイエスと言う場合もあるし、ノーと言う場合もあるという態度には、いささかの変化もございません。
  214. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ここに「ウイル」という言葉を使っているわけですが、もともとウイルといっても相手の意思をあらわすものであって、これは日本政府の確定的意思をあらわしているわけです。しかも国防総省の資料であって、いいかげんなものでは決してないわけであります。この食い違いは、いままで歴代総理が国会などで答弁された、したがって福田総理もそれを答弁されたが、結局こういうことになりますと、総理の答弁が、言葉が悪いですけれども国民にうそをついていたことになるという意味で、大変重大なことになるわけです。  特に重大なのは、これが現在重大な関心事となっております朝鮮政策についての情報として出されていることであります。しかも、この文書は秘密ではない扱いになっております。そういう意味で、政府は早急に調査もし、そうしてまたアメリカ側にも照会して国会報告すべきであると思うのですが、総理のお考えをお伺いします。
  215. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 唐突の資料の御提示でございますので、まず検討をさせていただきたいというふうに考えます。この資料自身につきまして研究をさせていただきたいと考えます。
  216. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私の持ち時間がまだ五分ほどありますが、いまちょっと検討してみたらどうですか。——これは公文書であるということは認めますか。
  217. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 まさにその辺を含めまして、いかなる種類の文書であるかをゆっくり検討させていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  218. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 公文書であれば、そういう重大な内容が含まれているわけですから、これはぜひ調査し、アメリカにも照会しなければならない性質のものだと思うのですが、どうですか。
  219. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 たびたび繰り返しになりまして恐縮でございますが、まず文書がどういう性質のものであるかということを研究させていただきたいのと、それから先生の御指摘の個所がいかなる文脈と申しますか、意味合いで書かれているのかというあたりは、ゆっくり読んでみませんとわかりませんので、その辺を研究させていただきたいということでございます。
  220. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは時間を与えますから、これについてもちゃんと調査して報告されることを要求して、終わります。
  221. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次に、中川秀直君。
  222. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 私どもも十分の持ち時間ですから総理にだけお伺いをいたします。  総理、先ほど来議論が出ておりますF15の爆撃装置あるいは空中給油装置の問題でありますが、防衛庁は内部検討段階でワンセット、一体のものであるから外そうといったって外せないのだ、こういう御見解を出しておられる。これから国防会議でこの問題を検討するという御答弁がありましたけれども、仮に検討いたしましても、外せないものが外せるわけはないのでありますから、外せないということになったら、また別の機種を考えるということになってしまう。別の機種を考えるということになれば、その選定作業だけでも大変であります。  そこで、私ども防衛庁がこの両装置について外せないという理由、またその必要性というものもある程度理解する立場でございます。しかし、だからといって、いままでの経緯のあるこの問題について、とりわけ、先ほどもお尋ねがありましたが、大変航続距離も長い、他国への侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものと誤解をされる懸念もないわけでもない、ということになると、仮定の話でありますが、国防会議で御検討の際には、もし外さないという決定をした場合でも、これは当然、そういう侵略的、攻撃的脅威として使うものではないのだ、その運用、使用については当然これこれの歯どめがあるのだというような見解を明らかにし、政府の方針としてそれは明確にしておくべきだ、こう考えます。総理の御見解を伺いたいと思います。
  223. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いずれにいたしましても、この問題は、F15を導入するのかしないのか、まだこれ自体決めておらぬのです。ましてそれにどういう装置をするかという問題につきましても、当然これから検討されなければならぬ、こういうことですが、いろいろいきさつもあるようでありまするから、いきさつを含めまして十分検討いたしまして、妥当な結論を出す、こういうふうに御理解願います。
  224. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 何を御心配になっておるのかわかりませんが、なかなかガードがかたいという御答弁の印象でありますけれども、時間がありませんから、次に移ります。  わが国の独立と平和を守る防衛との関連で、現行憲法の改正に関する総理の見解を、私はこの際改めてお伺いをしたいと思います。  現憲法は自衛力まで否定をしてはいない、このようにわれわれは解釈をいたしております。また自衛隊は合憲であり、その法解釈で十分だと私たちは考えている。平和憲法はこの意味ですでに国民の間に定着したと私たちは考えております。したがって、当面あるいは将来においても改憲は無意味であって、百害あって一利なし、このように思っていますが、総理はいかがでございますか。
  225. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この憲法は、これは憲法自体に改定規定まであるくらいでありまして、改定を否定しておる性質のものではないのであります。私どもの自由民主党におきましても、何とかして自主的な立場の憲法を持ちたいな、こういう考えでございますが、しかしその場合におきましても、この憲法を貫いておるところの平和主義、民主主義また国際協調主義、これは変えることはできないぞというような見解を自由民主党は持っておるわけであります。私は、その姿勢は正しい姿勢である、こういうふうに思います。思いますが、さあ現実の問題として憲法改正となれば大変なエネルギーの必要な問題だ。そういう問題に手をかけるというようなことになれば諸政停滞する、こういうようなことにもなりかねない問題だ、こういうふうに理解をいたしております。ですから、現実の問題とすると、憲法改正というようなことが具体的な日程に上ってくる、こういう時期は当分の間私はなかなか予見はできない。できませんけれども、まあとにかく憲法の規定自体にさようなことまであり得ることを予定しておるわけでありますから、法理的にはこれが本当に永久不変なものであるという認識ではありません。しかし現実の問題とすると、なかなかこれはそう簡単に手がけ得られざる問題である、また手がけること、これが妥当でない問題である、そういう認識でございます。
  226. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 そうしますと、総理は総理御自身の見解、これは自民党総裁としての見解にもなると思いますけれども、平和主義を貫きつつ現行憲法の自主的改正を図るという与党自由民主党の政綱、党の使命というものは正しい、こう御認識なさっていると御答弁ですが、そうすると、その論理的帰着は、仮定の話ですが、仮に自主改正をするという事態になったとしても、九条やその他は与党はいじらないのだ、こういうような論理的結論になるわけですかな。その点はどうですか。お考えを端的に……。
  227. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 現行憲法の内容をどういうふうにするかということにつきましては、言葉の整理だとか、そういうようないろんな側面もあろうと思います。しかし平和国家としての立場、私は先ほど平和主義、こういうふうに申し上げました。それからまた民主主義国家、つまり人権は尊重するとか、そういうものまで含めましての意味でございます。  それから国際協調主義、この筋、これを変えるということ、これは断じて許さるべきことではない、こういう認識でございます。
  228. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 禅問答ですが、次の問題に移ります。  先ほどもちょっとお尋ねがありましたけれども、私は、現代における国防というものは、いわゆる軍事的な侵略のみならず、経済封鎖あるいは経済的な制裁、心理的あるいは精神的な威圧、多種多様な要素があると思うのです。こういう複雑、絡み合った脅威に対応することがこれから、より一層重要な時代に入ってきた、このように考えます。わずか二五%の石油削減で大騒動したあの石油ショック、中東戦争の教訓は、何よりもこれを物語っておると思うのですが、総理の安全保障に対する認識並びに、その安全保障を、もしそういう複雑多岐な、非常に総合的な、資源も食糧も、あるいはエネルギーもすべてひっくるめた対応がこれから必要だとするならば、現在わが国の法制度で行われている体制で十分だとお考えなのか。たとえば先ほど御議論がありましたけれども、国防会議も、私は非軍事的な側面を含めた日本の安全保障全般に関する整合的な基本構想からまず審議が始められ、またそういう運用がなされるべきだ、こう思いますけれども、現在はそういうようなことはなかなか行われていない。先ほど総理は、いやそうではなくて、私の時代になってからそういうことも随時やるように指示しているのだとおっしゃいますけれども、実際は開かれてないことが多い。この際、新しいそういう時代の発想で、わが国の安保問題、安全保障に対する対応というものは従来のマンネリを一新して新しい発想で考えていくべきじゃないか、また行政府においてもそういうような対応をしていくべきだと思いますけれども、その点、総理の見解を伺いたいと思います。
  229. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 防衛問題は自衛力を強化する、こういうことだけで解決できる問題じゃありません。自衛力の強化、もとよりこれは大事な問題でありまするけれども、やはり資源の問題でありますとか、その他民生の安定、そういう諸問題があります。そういう国政全体の中で国の安全はこれを求むべきものである、こういう認識でありまして、大体そういう考え方で防衛問題は見ておる、こういうふうに御理解願います。
  230. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 現実には、そういう会議の場であるべき国防会議がそういう運用をされていないではありませんか。いま国防会議の付議事項としては、国防の基本方針、防衛計画の大綱、産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否、その他総理が必要と認める国防に関する重要事項、こうなっておりますけれども、装備等の防衛庁から上がってくるものについての決定はたびたび行われておりますが、たとえば産業等の調整計画の大綱について議論が行われ、示されたことはないし、あるいはそういった第五項目にある、その他必要と認める国防に関する重要事項、いまおっしゃったエネルギー、資源、食糧、多面的な総合的な安全保障に対する献策もできるはずになっているのですが、そういうことに対しての建議も行われたことはない。私は、これは総理の御発言と実際行われていることは全く違うのではないか、こういう気がいたします。  そこで、先ほどもお尋ねがありましたけれども、私は国防会議でそうした問題も含めてこれから運用すべきだ、こう思いますし、その点についての御見解をひとつ。  それからまた同時に、統幕議長や各幕僚長の人事等も、有事の際は非常に重要な役割りを負うのでありますから、私はこれは国防会議で諮られるべき人事ではないかという気がいたします。  この二点、総理のお考えを最後にお伺いして、質問を終わります。
  231. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国防会議では、中川さんのおっしゃるような立場で国防、防衛問題を見ておるわけです。それで、国防会議の正式の構成員というまでなっておりませんけれども、国防会議議員懇談会というのがありまして、これには通産大臣も入っている、科学技術庁長官も入っている、そういうようなことで、十分これらの人の意見も防衛問題の処理に反映をされておる、こういうふうに私は考えております。  また、統幕議長の人事、これを国防会議に付議したらどうか、こういうようなお話ですが、これはまあ防衛庁長官がもうじっと自衛隊を見ておるのですから、防衛庁長官にお任せをしておいて一向差し支えないことじゃないか、そのように私は思っております。
  232. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 終わります。
  233. 正示啓次郎

    ○正示委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後五時一分休憩      ————◇—————     午後六時二分開議
  234. 正示啓次郎

    ○正示委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  235. 上田卓三

    ○上田委員 F15の問題につきましては、後から防衛庁の長官にお聞きさせていただくとしまして、私の地元にございます大阪の八尾空港の問題について、まず質問したいと思います。  御存じのように八尾空港は、大阪市の近隣都市として近年急速に都市化現象を示す三十万都市の八尾市にあるわけであります。八尾空港は、市域の南を東西に大きく分断いたしておりまして、空港は、運輸省所管地域八十二万六千三百十一平米、防衛庁所管地域は十三万千六百七十八平米でございます。合計九十五万七千九百九十平米、約三十万坪に及ぶ広大な面積を占めておるわけであります。八尾空港は、千四百九十メートルの主滑走路、そして千二百メートルの副滑走路、三本の誘導路、三角地域十三万二千百六十四平米あるわけであります。民間航空施設、陸上自衛隊駐とん隊より構成されておるわけであります。  八尾空港の存在によりまして、同市には都市計画、地域開発のための広大なガンがあると言っても過言でないという深刻な事態が引き起こされておるわけでありまして、市民生活に重大な損害を与えておるわけであります。空港周辺地域の街路、公園、下水道、教育施設など、公共施設などの立ちおくれが都市機能を著しく阻害をいたし、交通難あるいは騒音、排ガスなどの公害、そして浸水など大きな都市問題を引き起こしておるわけでありまして、市民の生活環境を悪化させておるわけであります。市の最南端で空港と大和川で囲まれましたいわゆる太田、沼の両地域は、八尾の僻地と呼ばれるような状況にあります。  また同空港は、戦前、戦中に、軍部が有無を言わさず数次にわたり強制収用し、先祖伝来の農地を奪ったものでありまして、強制収用された住民の恨みは根強いものがございます。当時の事情を地元の木の本の谷原さん、七十三歳の方でございますが、次のように述べておるわけであります。「そうや、土地に赤紙が来たんや。」昭和十五年五月の半ばの説明会というのが、大正小学校の講堂で開かれた日であるようであります。「といっても説明聞いて考える余地なんかありやせん。軍人が軍刀をガチャガチャちらつかせて歩き回ってた。軍の強制だった。」こういうことを証言しておるわけでございます。  こうした事情を背景にいたしまして、地元では戦後一貫して八尾空港の返還運動が続けられてまいったわけでありますが、特に四十年代後半になりまして、空港西側の民航地区十一万五千五百平米の返還と三角地域耕作者の離作補償を柱とする要求が強まってまいりまして、その結果、昭和四十五年四月、大阪府、八尾市それから大阪航空局、近畿財務局によるところの空港問題連絡会議が設置されたわけでございます。  跡地利用計画も、A地区は学校ということで三万六千七百平米、それからB地区は三万百平米、C地区は住宅ということでございまして四万八千七百平米と作成されたわけであります。運輸省の航空局内部資料によりますと、「八尾空港ターミナル地区の払下げ問題の処理方針について」ということの中では、払い下げ条件で折り合うA地区のみの払い下げを先行して実現することで合意したということが五十一年一月の二十七日付で述べられておるわけでございます。B地区、C地区の払い下げについても鋭意交渉が続けられておるわけでございました。  三角地域の離作補償費を、国の方も昭和四十六年度六千四百万円を計上し、四十七、四十八年度に繰り越しておるわけであります。八尾市も概算約四億円の離作補償の計上を準備し、民航地区の払い下げは九分九厘話が煮詰まり、地元も大きな期待をしておったところでございます。  ところが奇怪なことには、最後の土壇場で予算決算及び会計令、予決令というものの上において難点があるという理由で、この計画が流産いたしたわけでございます。地元では、民航地区払い下げに強力に陰で抵抗したのは防衛庁ではないか、こういうようにいまでも多くの方々は信じておるわけでございます。三原防衛庁長官にお聞きしたいわけでございますが、その真偽はどうであったのかということをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  236. 平井啓一

    ○平井政府委員 ただいま御指摘の八尾空港でございますが、御説明がありましたように、運輸省が所管します八尾空港の滑走路等を供与させていただいて、陸上自衛隊の中部方面航空隊等が使用しておりますが、ただいま地元と運輸省との間に進められております一部払い下げと申しますか処分のお話の経緯につきましては、先般あらかじめ御指摘がありまして、運輸省の方にも照会さしていただきまして、当庁として内容も承知させていただいておりますが、現在承知させていただいておる段階で、この計画の内容について防衛庁として特段異論を唱えるような立場でもございませんし、調べてみましたが、これに対して特に反対を申し上げたというような経緯はございません。
  237. 上田卓三

    ○上田委員 防衛庁としては、この問題に対して今後も反対する意思はございませんか。
  238. 平井啓一

    ○平井政府委員 反対するしないの問題じゃなくて、地元と運輸省とがお話を進められます内容が、現在承知しておりますところでは、当庁の使用に別に何ら支障もないわけでございますので、異論を申し上げる立場ではございませんが、今後もし何らかのかかわり合いが出てくるとしますれば、当然運輸省の方からも何らかの御相談があろうかと思いますけれども、現在の段階では、反対申し上げる立場ではございません。
  239. 上田卓三

    ○上田委員 それでは運輸省の方にお聞きをしたいわけでございますが、この問題は結論的に言うならば、運輸省の無責任な態度に問題解決を妨げる原因があった、このように確認できると思うわけであります。運輸省は新設の空港については非常に熱心でございますが、既設の空港には何か問題が起きなければ放置しているという状況があるのじゃないか。住民パワーが爆発するか、あるいは地元の自治体が強力に要請しなければ何もしないという現状があるわけでございます。  昭和二十七年に農民の猛烈な返還運動が滑走路を占拠して、初めて百八十万平米の返還が実は実現をいたしておるわけでございまして、今回も八尾市が相当苦心して、四億円の離作補償費をひねり出して、この返還運動が初めて動き出したのが実情でありますが、八尾空港の整備についての基本的な計画についてお聞かせ願いたいと思います。
  240. 田代雅也

    ○田代説明員 八尾空港の西側のターミナル地区、それから三角地区の耕作の問題、その点の経過につきましては、ただいま先生お示しのとおりでございます。いままでの案がうまく成立しませんでしたのは、やはり先生のお示しのとおりでございまして、予算決算及び会計令の手続上、A地区を八尾市に払い下げて、そこに市で高等学校をつくる、それを府の方に寄付をするということが予算決算会計令の観点から払い下げに適しないという、単に技術的な、あるいは、制度的な理由だけでうまくまいりませんでした。  それで、その後やはり地元の方々の御要望もございます。あるいは大阪府、八尾市の方々の御要望もございます。何かうまい解決策はないかということで、私ども運輸省の出先機関でございます大阪航空局と八尾市、大阪府三者の間で鋭意協議が進められておるわけでございます。できるだけ早い機会にうまい成案を得まして、地元の方々の御満足を得たいという考えでございます。
  241. 上田卓三

    ○上田委員 八尾空港の存在自体そのものも含めて、やはり根本的な見直しが必要ではないか、このように思うわけであります。  まず第一の理由は、八尾空港の利用の実態そのものにあるだろう、こういうように思います。ごく少人数あるいは小規模な、私的な営利と趣味的用途に現在利用されておるわけでありまして、九十五万平米の広大な国有地を利用するに足る公共性を備えるとは断じて言えないような状況であります。単発機、セスナが五十九機あるわけでありますが、その中で自家用関係が十四機、飛行クラブ用が二十三機、これは日本産業航空、日本フライング航空、学生航空連盟などのものでございますが、それ以外にも空中宣伝機が十一機、これは大阪航空と第一航空でございますが、住民利益とはおよそかけ離れた無関係な状況にあるわけであります。双発機は十五機中七機が自家用、三機が飛行クラブ系企業所有であるわけであります。定期航空運送事業に利用される航空機は、東亜国内航空のヘリコプター数機のみでありまして、単発機、双発機には一機もないというような状況であります。  しかも、公共性の高い警備あるいは災害救助、あるいは消火救難用の航空機は、大阪府警が三機、それから海上保安庁が二機、大阪市消防局が二機、合計七機のヘリコプターで、有翼機は一機もないわけであります。報道用セスナもヘリコプターで十分代替可能であろう、こういうように考えるわけであります。  第二の理由でございますが、広大な空港によって犠牲にされるのは、住民福祉そのものであるだろう、このように考えます。  空港周辺の排水はまことにお粗末でありまして、毎年梅雨どきには浸水を繰り返す太田地区。また騒音、排ガスで通行不可能な通学路である河内地下道。それから空港の全周に存在する農林省管理下の道路の管理放棄といいますか、ほとんど未舗装の状況にあるわけであります。また、沼地区では、最寄りのバス停や小中学校まで歩いて三十分から四十分かかるという信じられないような交通事情のもとにあるわけであります。また志紀西地区では、自衛隊のヘリコプターの騒音公害に悩まされる、こういうような状況にあります。  今月の上旬に地元のいわゆる「いのちとくらしを守る会」の方々がアンケートをとったわけでございますが、太田地区の九七%の住民が、空港の存続のため多大な不利益をこうむり、住民が無視されていると訴えておるわけであります。九九%の住民が排水施設の不備と通学、交通の不便を訴えております。  急速な都市化の進展、あるいはさらに昭和五十五年春に完成予定される地下鉄二号線の民航地区南部への延長と八尾南駅の開設、同駅周辺における大阪八尾開発事業団による地域開発と商店街の育成計画は、八尾空港に対する地域住民の批判的世論を一段と激化させておるわけであります。  第三に、空港の東方二キロメートルに高安山があるわけでありますが、地形が悪いために空港としての評価がきわめて低いとわれわれはみなしておるわけであります。  以上の観点から、最終的には、われわれは完全撤去を含めた根本的な見直しが必要である、こういうように考えておるわけでありますが、この根本的な解決としていわゆる完全撤去というものをある程度考えておられるのかどうか、そういう点についてもう少し突っ込んだ形でこの返答をいただきたいと思うのです。
  242. 田代雅也

    ○田代説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のように、現在八尾空港は小型機が共用しているわけでございます。言うまでもないことでございますけれども航空機の主目的は、旅客あるいは貨物の輸送を第一の目的としているわけでございますけれども、そのほかに、やはり航空機の活動分野といたしまして産業航空の部門がございますし、また災害時救難活動等の用途もあるわけでございます。産業航空といたしましては、使用事業という小型機の同じ分野がございますけれども、たとえば各種の調査でございますとか、航空測量でございますとか、建設の協力でございますとか、あるいは報道関係、そのほかに先生お示しの訓練活動と申しますか、自家用の事業がございます。それから消防その他の飛行機もあるわけでございます。これら小型機が一般のジェット機の発着いたします空港でともに滑走路を使用するということになりますと、安全の面あるいは空港の能力の面等でいろいろの問題がございます。したがいまして、本来こういった小型機は、できるだけジェット機と大型機の着く飛行場とは別に飛行場がセットされることが望ましいわけでございます。現在の八尾空港と申しますのは、そのような意味で、やはり関西地区におきますこのような航空の用途に供する飛行場として存在意義があるものと、私どもは考えておるわけでございます。  しかしながら、先生お示しのように、やはり空港があることによって周辺の方々にいろいろな御不便をかけるということ、特に八尾地区につきましては、ただいまお示しのように地下鉄もできるわけでございますし、最近とみに人家がふえてきた地区でございます。そういった方々に、空港があることによって御不便をかけることができるだけないようにするのが国の責務でございます。したがいまして、今後先ほど申しました西側のターミナル地区についてそれを縮小するとか、あるいは現在の空港の面積を縮小する、あるいは再配置をする等々によりまして、できるだけそういった方々に御迷惑をかけないようにしたい。同時にまた、必要がございます場合には、周辺対策等についても検討する用意があるわけでございますけれども、八尾空港を撤去する計画は、現段階として国では持っておりません。
  243. 上田卓三

    ○上田委員 空港の必要性というものは一般的にわかるわけですけれども、八尾空港があることによって地元の人たちに相当な迷惑をかけている、それに対して何らメリットがないと言うのですか、こういう状況にあるわけです。  それと運輸省航空局も認められているように、いろいろ先ほど私が申し上げたように、現在使用されているのですけれども、それだけの面積が必ずしも要らないということで、一部になるか大部分になりますか、払い下げという問題が出てきておるわけでありますから、そういう点で、いわゆる完全撤去についての意見が完全に一致しなくても、はっきりとした空港の整備計画と周辺環境の整備の実施は急務であろうと思いますし、払い下げについてもできるところからやっていくということがなければならないだろうと思うわけであります。  そういう点で特に重要なことは、民航地区と第一誘導路が西側に約千メートル張り出されておるわけであります。東西方向三キロにわたって八尾市を分断しているということでありまして、都市計画上のガンになっていると言っても過言ではないと思います。しかも民航地区北側、木の本及び西木の本はすでにぎっしりと住宅が立ち並ぶほどの都市化が進んでおるわけであります。さらに加えて、先ほども申し上げましたように地下鉄の二号線八尾南駅が、いわゆる民航地区南側に着くわけでございまして、そういう点で民航地区の撤去を差し迫ったものとしているのではないか、このように考えますので、民航地区のいわゆる撤去等については八尾市長、大阪航空局、大阪府の総合調整課の三者の間で年内に一定の結論を出すべく協議中だというようにわれわれ聞いておるわけでありますが、運輸省は、そのことに対して本省の方ではどのようにしていただくのか、われわれは、やはりこの三者の話し合いの上に年内にぜひとも結論を出していただきたいと思っているわけでありますが、そのことについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  244. 田代雅也

    ○田代説明員 ただいま先生お示しのような点につきまして、私ども現地を督励して、できるだけ早く結論を得るようにさせたいと考えるわけでございます。ただ、当事者が非常に多うございますので、年内を目途としておりますけれども、私どもとしては、できるだけ早急に結論を出して、地元の方々の御要望にこたえるようにしたい、そういう覚悟でございます。
  245. 上田卓三

    ○上田委員 年内にあるいは早急に、年内ということですけれども、できるだけ早くということでお答えいただきましたので、了としたいと思います。  しかしながら、それは結論を年内にあるいはできるだけ早く出すということでありまして、われわれはぜひともその実現については、地下鉄が来るということもございますので、地元としては五十五年の春に地下鉄の八尾南駅が開設されますので、その時点に合わせて民航地の部分について撤去できるようにひとつお願いしたい。そのことをぜひとも要望したいわけでありますが、その点、年内の結論の中身として、五十五年の春までに払い下げるという方向である程度検討をしていただけるかどうか、技術的な問題もあろうと思いますが、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  246. 田代雅也

    ○田代説明員 五十五年に地下鉄が八尾まで延伸するという計画、私ども十分承知しております。また、それに伴いまして地元の方々がいまの民航地区あるいはそこにつながります誘導路のところに通路をつくる、それによって地下鉄を利用しやすくするということについての御要望が非常に強いということも私どもも十分了承しております。したがいまして先ほど申しましたように、関係者一同できるだけ早急にそういった方々の御要望に沿うように努力したいと考えておるわけでございます。
  247. 上田卓三

    ○上田委員 五十五年の春までに、ぜひとも地元の要望に沿えるように最善の努力をしていただくようにお願いをしておきます。  さらに、いわゆるA地区、B地区、C地区があるわけでございますが、私がさらにつけ加えたい問題は、第一誘導路は問題になっていないわけでございますが、これらの民航地区の撤去、払い下げに際してこの誘導路も含めるのが当然ではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  248. 田代雅也

    ○田代説明員 第一誘導路は、先生お示しのように、いまの民航地区として機能しているわけでございます。したがいまして、この民航地区が仮に別の用途に供されるようになりました場合には、現在の第一誘導路は誘導路としての機能はなくなるわけでございます。したがいまして、その点も含めまして地元の方々と協議申し上げたいと思っているわけでございます。
  249. 上田卓三

    ○上田委員 第一誘導路も含めて検討していただくということですね。それではさらに質問を続けたいと思います。  そこで、いわゆる民航地の撤去はそういう形で検討していただくことになったわけでありますけれども、問題は格納庫ですね。それと空港事務所の移転がやはり前提になるのではないか、このように思うわけであります。空港周辺の急激な都市化あるいは地下鉄の進入、地価の高騰によって三角地域内におけるいわゆる離作交渉、離作農があるわけでありますから離作交渉は四十六年から四十八年当時とは比較にならないような状況になって、非常にむずかしい状況になっておるわけでありますが、この離作交渉というものについてあなた方は一体どのように理解しているのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  250. 田代雅也

    ○田代説明員 八尾空港敷地内の三角地域の離農補償の問題だと思います。これにつきましては長い経緯がございまして、国の立場からいたしますと、借地権ですとか耕作権でございますとか、そのような権利関係につきましては存在しないという立場でずっと来ているわけでございますけれども、長い間にわたりまして事実上農民の方々が当該地区を耕作しておられるわけでございますので、現実的な解決を図る必要がある。そのために、今後関係省庁の方々あるいは地元の方々、関係当局の方々と十分協議の上、対処したいと考えておるわけでございます。
  251. 上田卓三

    ○上田委員 いまの発言はちょっと脈に落ちないわけでありますけれども、とりあえず申し上げますが、四十六年のあなた方のいわゆる離作補償費は、先ほども申し上げましたように六千四百万円ということになっておるわけであります。そうすると、この三角地域の面積が十三万二千百六十四平米であるわけでありますから、それを一平米当たりに直しますと四百八十四円ということになるわけですね。だから、一坪千五百九十七円ということになるだろう、八尾市の四億円を上乗せしても、——私、計算すると一坪当たりが九千九百八十五円になるわけです。そうすると、それを上乗せしても坪当たり一万一千五百八十二円にしかならない、こういうことになるわけでありまして、そういう点で法的な根拠がないというようなことをおっしゃっておるので、離作補償というような形であなた方は考えておらないのではないかというふうにも思うわけでありますが、いずれにいたしましても六千四百万円計上されたわけでありますから、その根拠は一体どこにあったのかということについて、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  252. 田代雅也

    ○田代説明員 申しわけございません。四十六年の六千四百万円の積算根拠につきましては、ただいまちょっと資料がないわけでございますけれども、私思いまするに、その当時におきまして、やはり現実的に多数農民の方々がその地域を耕作しておられた、それに対します補償的な意味の金額であったというふうに理解しておるわけでございます。
  253. 上田卓三

    ○上田委員 それが納得できないのですね。先ほど私が数字で示したわけでありますが、六千四百万という予算が計上された以上、その根拠があるはずだと思うのですね。それは探したらあるのですか。現在手元にないという意味なんですか。その点、ちょっとよくわからないのですけれども
  254. 田代雅也

    ○田代説明員 その当時の考え方がございまして、今後このような方法でいくかどうかにつきましては、関係方面と協議しなければいけないわけでございます。当時の考え方でございますが、耕作しておられます農民の方々の離作料という考え方でございます。その離作料の積算の一応の根拠でございますけれども、その段階におきましては、転業に通常必要とする期間の所得相当額ということで、三年分の所得相当額というものを計上しているはずでございます。
  255. 上田卓三

    ○上田委員 それはその当時の考え方で、今後は今後の方針で臨みたいというような意味であったというように思うのですけれども、いずれにいたしましても、四十六年当時、坪に直して千五百九十七円、運輸省の持ち分だけ見ますと、そうなるわけでありますが、それを基礎にするならば、まあ物価高をどう見るかによるかもわかりませんけれども、たとえそれを三倍に見ても五千円程度にしかならぬわけですね。そういうことを考えますと、現在たとえば木の本地区をとってみますと、地価は坪で約二十万円ぐらいしているわけですね。だから、そういう点でわれわれとしては、耕作権を前提とした離作補償費とするならば、当然地価の四割ないし五割で、まあ八万から十万円が相当ではないか、そういうふうに考えておるわけでありまして、そういう点でそういう考え方にある程度同調されるのかどうか、その点についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  256. 田代雅也

    ○田代説明員 その点につきましては、今後、類似の権利、類似の補償、類似の支払い等の前例を踏まえまして、関係方面と十分打ち合わせながら検討していきたいと思います。
  257. 上田卓三

    ○上田委員 先ほど、離作農の方々のいわゆる権利関係について若干お答えをいただいたと思うのですけれども、もう一度、いわゆるこの三角地域の離作農に対する権利関係について、運輸省のはっきりとした考え方をここで明らかにしていただきたいと思います。
  258. 田代雅也

    ○田代説明員 現時点におきましてその耕作者の方々と国との間に契約関係はございません。事実上耕作を行っておるわけでございます。それが長期間にわたっているわけでございます。したがいまして、それが現実的に何らかの権限として耕作者の方々にあるということは十分あり得ることでございます。その点につきましては、やはり法律の解釈に絡みますので、その辺、法務省と今後十分相談の上、現実的な解決を図りたいと考えております。
  259. 上田卓三

    ○上田委員 ということは、不法に耕作しているということではないということですね。あるいは、いわゆる耕作権というものを国がちゃんと認めてくれておるのかどうか。その点についてもう少し詳しくお答えいただきたいと思います。
  260. 田代雅也

    ○田代説明員 不法であるというような考え方ではございませんのですが、これがどのような実態であるか、どのような権利関係にあるか、その点につきましては、私どもまだ十分な結論を持っておりません。
  261. 上田卓三

    ○上田委員 それはおかしいじゃないですか。不法占拠ではない、あるいは不法ではない。そうしたらどういう権利関係にあるのかということをまず明らかにしないと、そういう離作農に対しての補償の問題でやはり大きな問題先ほど私が申し上げたような状況が出てくるわけでありますから、地元の方々は当然耕作権はあるのだ、まあ文書で云々という話がありましたけれども、われわれは不法でないのだ、国自身も認めておるということになれば、そういう意味ではいわゆる正式な耕作権者であるというように地元では理解しておるわけでありますが、そういうような立場で臨んでくれるわけですか。
  262. 田代雅也

    ○田代説明員 国有財産の上に実質的な耕作を行っておられるわけでございます。したがいまして、国有財産の処理あるいは国有財産を払い下げる、あるいは国有財産の使用を許可する、それらのもろもろの点につきましては、やはり慎重に関係当局で検討しなければいけない問題であると理解しておるわけでございます。運輸省といたしましても、その国有財産の主務官庁である財政当局、あるいはそういった権限関係について検討される法務関係の部局、そういったところと十分検討の上、適切な処置をとることが必要であると考えておるわけでございます。
  263. 上田卓三

    ○上田委員 いずれにしましても、もともとあの空港の土地というものは地元の農民の土地であったわけでありまして、当時軍部によって、先ほどのおじいさんの例によるごとく土地に赤紙が来たというように、やはり軍部の力で不法に取り上げた、こう言っても過言ではない、こういうように思うわけでありますから、そういう点で国有地に耕作しているということでありますけれども、現実的には耕作権があるのだというような解釈で臨んでいただきたい。非常にくどいようでございますけれども、ただ国有地に耕作しているのだというようなことだけじゃなしに、その前の経過があるがゆえに耕作を現在されておるわけでございますから、そういう点であなた方自身が不法でないというように認められるならば、さらに一歩前へ進めて、耕作権があるのだというような解釈で臨んでいただきたい。このように思いますので、くどいようですけれども、もう一度お答え願いたいと思います。
  264. 田代雅也

    ○田代説明員 当該三角地帯につきましては米軍が管理していた時代、それから財務局に移管されまして普通財産として処理された時代、それから運輸省の行政財産の時代、いろいろあるわけでございます。その経緯を十分踏まえまして現実的な解決を図りたいと考えておるわけでございます。
  265. 上田卓三

    ○上田委員 私の言っているような立場でやっていただけるんだというふうに解釈したい、このように思います。  いずれにいたしましても、先ほど私が言ったように、地元では離作補償費は大体坪十万円ぐらいが相当であるということで、そういうことであるならば地元の方も協力しようではないかというように考えている、このように思うわけであります。いずれにいたしましても、戦後三十年にわたって三角地域の土地が現に耕作されてきたということを十分に御理解をいただきたい、このように思うわけであります。  さらに質問申し上げますが、特にこれは運輸省でさらに検討していただきたいわけでありますが、周辺の整備に関連して民航地区といわゆる第一誘導路の間に大阪府道の堺−布施−豊中線が地下道となっておるわけであります。車の排気ガスのため、人の通行を困難にしているわけでありますが、一部のオープンカットではよくなったと言われておるわけでありますが、ほとんど通行できないような状況になっておるわけであります。そのため学童は通過するのにいまでも飛行場を横断して通学しておるわけであります。そこには危険防止の意味から二人の警備員がいるわけでありますが、しかしその費用は地元の人々が負担しているような状況にあるわけであります。そういう点で、こういう状態の解決をどのように考えておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  266. 田代雅也

    ○田代説明員 先生御指摘のように、いま第一誘導路の地上部分を横切って通行しているわけでございます。このようなことは、空港管理の上から申しますと、決して望ましいことではございませんが、やはり地元の方々の利便確保のためにやむを得ない措置だとして認めているわけでございます。このような状態を抜本的に解決いたしますためには、先ほど申しましたように、第一誘導路を含めました民航地区につきまして早急にその措置を考えまして、根本的な解決を図ることが必要であると考えておるわけでございます。
  267. 上田卓三

    ○上田委員 空港が東西に三キロと長く横たわっておるわけであります。本来水田地帯で、排水に支障が生じ、地元住民に多大の損害を加えておるわけでありまして、旧阪神土地改良区内の水路及び道路の整備が著しく立ちおくれておるわけでありますが、それについて、具体的にいかなる整備計画を持っておるのか、お聞かせください。
  268. 田代雅也

    ○田代説明員 空港内部の排水関係につきましては、五十一年、五十二年で調査しているわけでございます。それによりまして今後の排水計画を確立しなければいけないわけでございますが、空港の内部の排水あるいは周辺部の水はけの問題、いろいろございますので、今後排水の問題につきましては、関係自治体と十分協議をいたしまして、適切な処理をしたいと考えておるわけでございます。
  269. 上田卓三

    ○上田委員 農林省の方にちょっとお聞きしたいのですが、いわゆる旧阪神土地改良区内の道路の舗装状態は驚くほど立ちおくれておるわけであります。農林省の管理下にあるわけでありますが、都市化が進み、しかも市街化地域に指定され、今後さらに住宅、工場が建つ状況にあるわけでありますから、道路管理者の農林省の責任でまず舗装すべきではないか、このように現在の農道を舗装してもらいたいという地元の意見があるわけでありますが、農林省としてはどのように考えておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  270. 渡邊五郎

    渡邊説明員 御指摘のいわゆる開拓財産の関係でございますが、まず一般論で申し上げますが、この種の市街化区域に所属します開拓地のための道路、いわゆる開拓財産につきましては、早急に処分をいたしまして地元側に譲与するということが私どもの方針になっております。したがいまして、管理の問題の先に、私どもとしては御質問の開拓道路につきましてもこれを市道として管理することが適当であろう、こう考えておりまして、その場合には市の方に無償譲与等の措置をとりまして移管してまいりたい、こう考えております。  御指摘の管理関係でございますが、これは現在の農地制度上大阪府に管理の委任をしておるわけでございますが、問題は、この地帯が市街化区域に指定されております。したがいまして、こうした地帯につきまして農業施策面からの助成が私どもの立場からいたしまして困難だという事情がございますので、私どもは市道へ管理を移していく際に、この整備問題につきましても関係方面とよく打ち合わせなり要請をしていきたい、このように考えておるわけでございます。
  271. 上田卓三

    ○上田委員 農林省としてこの農道等を市に移管と言うのですか、無償で移管したいというようなことでありますけれども、やはり農林省の手でちゃんとこの農道を舗装して地元へ返すということでないと、とりわけ空港をはさんでいるというようなこともございますので、本当に地元はありがた迷惑だとは言いませんが、いままで農林省の管轄下にあったのですから、私はやはり農林省の責任でこれを舗装して、そして地元に移管するという措置をとっていただきたいのですけれども……。
  272. 渡邊五郎

    渡邊説明員 私どもとしましては、この地帯につきまして、多少経過的に申し上げますと、昭和三十二年七月に売り渡しを了しました開拓地でございます。この地域が開拓地といたしまして農業的に利用されております限り、私どもが農業用の道路としての機能の保全に努めなければならないわけでございますが、先ほども申し上げましたように、四十五年にこの地域が市街化区域に指定された。そういたしますと、これは市街化される地域ということになりますと、私どもの農林関係の公共投資ではなくて都市計画サイドで維持していく、こういうような取り決めで進めてきておりますので、私どもそういう点で農林関係の施策面からの助成が非常に困難だという事情もございまして、この点につきましては先ほども申しましたように、管理を移す際に未整備の問題につきましては、府とも協議いたしまして要請してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  273. 上田卓三

    ○上田委員 場所が場所であるだけに、これを無舗装の状況で市に移管をしても恐らく国の、いわゆる建設省の補助金をもらえないような状況になるのじゃないか、市の単費でしなければならぬような状況になるのではないかというようにわれわれは危惧をしておるわけであります。そういう点で、やはり少なくともいまおっしゃったように、市街化地域内の農道を舗装をしてはならぬという法律は私はないと思うのです。ありますか、ないと思うのです。その点どうですか。
  274. 渡邊五郎

    渡邊説明員 お答えいたします。  私ども申し上げますのは、農業用の用に供されております道路、こうしたものの維持は、農業用の目的のために維持管理ということは当然しなければならないわけでございます。したがいまして、農用地区域なり農業を主といたします地域につきましては、そうしたことは私どもの当然の務めでございますので、努力いたす所存でございます。問題は、当地域が市街化区域という形で宅地化が促進されて、現にかなり促進されておる模様でございますが、そういう地域はむしろ都市計画サイドでこれを処理するというふうに私どもはいたしておりますので、そうした面での整備を私どもからもこの際お願いしていこう、こういうふうに考えております。
  275. 上田卓三

    ○上田委員 農林省の予算の中にいわゆる農道舗装という費目がありますね、あるのかないのか、ひとつお聞かせください。
  276. 渡邊五郎

    渡邊説明員 農業基盤整備事業の中に御指摘のような農道舗装がございます。
  277. 上田卓三

    ○上田委員 それはあれじゃないですか、いわゆるガソリン税の一部が財源に充てられているのじゃないですか。
  278. 渡邊五郎

    渡邊説明員 ガソリン税を財源といたしますのは、農免道路と称される道路整備事業で、農道舗装はそれと違うのではないかと、私直接担当ではございませんので、そういうふうに理解しておりますが、財源としては別じゃないかと存じます。
  279. 上田卓三

    ○上田委員 私ももう少し勉強してみたいと思うのですけれども、いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、ああいう地域でございますから、私は農林省においてやはり何らかの方法を用いて完全に舗装して地元に返還してやってもらいたい、あるいは建設省とも私も当たりたいというように思いますが、いずれにしても国から大幅な助成をいただいて市に余り迷惑がかからないような形でひとつこの地域の道路が舗装されるように御努力をいただきたい。そういう意味で御努力をいただけるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  280. 渡邊五郎

    渡邊説明員 基本的には先ほど私が申し上げた立場にあるわけでございますが、こうした事情から、私どもも今度の開拓財産の移管に際しましては、府、市とも協議いたしまして、何らかの形で整備がされますよう私どもとしても努力したいと考えております。
  281. 上田卓三

    ○上田委員 一応八尾空港の問題についてはこれで質問を終わりたい、このように思います。  次に、先ほど福田総理も出ていただきまして、わが党代表の矢山委員からも鋭い追求があったというように思うわけでありますが、要するに一昨日の伊藤防衛局長のそういう発言に端を発して、公明党の代表の先生質問の中でF15の問題が大きくクローズアップされてまいったわけでありますが、それに関連して若干申し上げたいというように思うわけであります。  まず三原防衛庁長官にお聞きいたしますが、いわゆる憲法上の原則として攻撃的兵器は保有できないという解釈は自民党政府の歴代の確認であったのではないか、このように私は考えておるわけであります。そこで再度確認しておきたいわけでありますが、憲法上、攻撃的兵器は保有できない、いまもなおそうだというように解釈していいのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  282. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 自衛隊の航空機につきましては、御承知のように、憲法の枠組みがあるわけでございます。専守防衛の立場をとるということであるわけでございます。したがって、わが方から外国を攻撃しないということは明確でございます。しかし相手から攻撃を受けた場合にこれを要撃するという、そういう立場は私どもとしてはとらざるを得ない。わが国の平和と独立、国の安全を守るためには攻撃に対しまする要撃はやらざるを得ないということでございます。
  283. 上田卓三

    ○上田委員 ということは、私が先ほど申し上げましたように、専守防衛の方針の立場から考えても、いわゆる攻撃的兵器は用いないというようにおっしゃったというように考えますので、続けて質問いたしますが、いわゆる戦略的な攻撃兵器、たとえばICBM、大陸間ミサイルがあるわけであります。またSLBM、原子力潜水艦ですね、あるいは戦略爆撃機としてB52があるわけでありますが、いま申し上げた以外にどういう兵器が攻撃兵器とみなされるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  284. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がお示しになりましたのがまさに攻撃兵器だろうと思います。攻撃兵器というのは相手に脅威を与える、相手に打撃を与えることをもっぱら目的とした兵器でございまして、その代表的なものとしてしばしば国会でも御説明いたしておりますように、たとえばICBMのような長距離弾道弾あるいは長距離爆撃機あるいは航空母艦をもってする攻撃機、そういったことを御説明しておるわけでございます。
  285. 上田卓三

    ○上田委員 いずれにいたしましても、たとえば昭和四十七年の十一月の七日の予算委員会で当時の増原防衛庁長官は、わが党の石橋書記長の質問に答えまして、「要撃戦闘上は滞空時間が長いということで利点があるのでありますが、行動半径の長いものを選定することとしていたので、爆撃装置を施すことによって他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないとの配慮のもとに、同装置を施さない」というように言明いたしておるわけであります。  そういう点で、一昨日の伊藤防衛局長の発言は、先ほど総理等の発言も聞いておったわけでございますが、私の口からさらにこういう前の総理なり、あるいは委員会での大臣の答弁で、いわゆる誤解を生じかねないものとの配慮から云々ということでありますが、そういう配慮は行う必要がないという考え方の中から、F15の問題が出てきておるのか。そういう判断に転換したのかどうか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  286. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 御指摘の、外国に脅威を与えないというその配慮は、当然なさねばならぬと思うわけでございます。したがいまして、F15を選定をし、これを防衛庁において内定をいたします場合には、そうした外国に脅威を与えない、そうした誤解を受けないようなやはり国民への理解なり、外国への理解をしていただく処置は明確にいたしたい、そう考えておるわけでございます。
  287. 上田卓三

    ○上田委員 相手に誤解を与えないということは、相手がそう思わないようにするということですね。だから一方的に、これなら相手は脅威を感じないだろうというような、こっちの主観的な考え方じゃなしに、相手国と思われるところがそれは攻撃的だというように、しかじかかくかくだという形で誤解を与えない、そういう意味ですか。
  288. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほど来防衛局長も申しましたし、私も申し上げたのでございまするが、結論的に申し上げまするならば、現在の日本を攻撃するであろうというような予想をすることは非常に困難でございまするけれども、しかし、今日の列国の航空機の科学的、技術的な進歩、そして近代化された現実というようなものが具体的に存在をするわけでございます。なおまた、日本のこの地勢的な立場、北海道から沖繩までというようなそうした地勢的な条件、それから私が先ほど申しましたように、具体的にシビリアンコントロールとしてこういう具体的な処置をいたしますというような、そうした幾つかの条件というようなものを私どもは考えておるわけでございます。そういう点を明らかにして、外国から脅威を感ぜられるような、誤解を受けない処置をいたしたいということを申し上げておるところでございます。
  289. 上田卓三

    ○上田委員 F15の外部搭載能力は約八トンというように言われておるようでございますが、この場合に、いわゆるMK80系の爆弾、それからまたM117、M118の爆弾ですね。それから対地攻撃用のレーザー爆弾を装備できるというように聞いております。F15は、それぞれの爆弾は、搭載能力をフルに発揮した場合何発搭載できるのか、お聞かせいただきたいし、それぞれの場合の破壊力は一機でどの程度なのか、お聞かせいただきたいと思うわけであります。  参考までに、B29一機当たりの爆弾の搭載量はどの程度で、当時の爆弾の破壊力でどの程度の破壊力なのか、そういうことをお聞かせいただきたいと思います。
  290. 間淵直三

    間淵政府委員 爆弾の搭載能力でございますが、たとえば五百ポンドの爆弾といたしますると、通常の場合は、支援戦闘の場合の標準兵装といたしましては十二発でございますが、最大積みますれば十八発までは積むことができるということになっております。  その破壊威力と申しますのは、その爆弾の種類によってもいろいろ違ってくると思うわけでございますが、通常の五百ポンド爆弾というものはいまちょっと手元に資料がございませんで、後ほど調べさせてお答えさせていただきたいと思います。
  291. 上田卓三

    ○上田委員 私が聞きたいのは、F15のいわゆる爆弾の破壊力が、比較でたとえばB29の何機分に当たるのかということを実は知りたいから申し上げたのです。
  292. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 B29第二次世界大戦ときの飛行機でございますので、爆弾の搭載量をいま手元に資料がないわけでございますが……(上田委員「大体で結構ですが」と呼ぶ)ちょっと大体というのはわからないわけですが、仮にファントムの場合と比較いたしますと、ファントムの場合には、いまの五百ポンド爆弾で参りますと最大の搭載量が二十四発ということになっております。
  293. 上田卓三

    ○上田委員 さらに、F15が最大限の爆装をして空中給油を一回行いますと、航続距離はどの程度延びるのか。いわゆる作戦可能の半径はどのくらいかということをお聞かせいただきたい。特に、千歳基地から発進した場合は、たとえばソビエトの極東でありますシベリアの何キロくらいまで作戦可能半径に入るのか。たとえばバイカル、ハバロフスク、イルクーツクというような距離があるわけですが、大体一回給油したらどの程度まで発進できるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  294. 間淵直三

    間淵政府委員 最大の、限度いっぱい爆弾を積んだといったような場合は、非常に距離が短くなると思うわけでございますが、標準兵装の場合、五百ポンド爆弾を十二発積んだ場合というのは約二百八十海里ということになっておるわけでございますが、理論的に申しますと、給油いたしますればかなり延びるということになるわけでございますが、実際問題といたしましては、パイロットの疲労でございますとか、それからただいまお示しになりましたように、シベリアの上で給油するといったようなことはおよそ考えられないことでございまして、そういう計算をしてございませんでございます。
  295. 上田卓三

    ○上田委員 計算してないと言ったって、あえてしないのじゃないですか。
  296. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私どもは、このF15つきましては、先ほど来御説明しておりますように、概算要求をするに当たりまして事務当局で検討いたしましたのは、要撃戦闘機としてこれを評価し、そしてその機能を果たすための能力というものをいろいろ調べております。したがいまして、その爆撃能力というものについては、いま手元にある資料としてはその程度のものしかないわけでございます。これは元来そういうふうに使うということを考えていないからでございます。
  297. 上田卓三

    ○上田委員 そう答えるだろうというふうに思っておったのですけれども、しかし、いずれにしてもこのF15というのは非常に足の長い飛行機であります。いままでのたとえばF104Jは千七百キロぐらいだと聞いておりますし、F4EJは二千九百六十キロ、またF1は二千六百キロということであります。それに比べてこのF15は四千六百三十キロだ、こういうことでありますから、非常に遠くまで飛べるということであります。さらに、いますぐ給油するということに対して、これは政策の転換であるということで、われわれは強く反対したいわけでありますが、いずれにいたしましても、爆撃装置がついておるわけでありますから、そういう意味でこの飛行機自身が非常に攻撃用的な性格を持っておるわけであります。ただ専守防衛という立場からあえてそういうことは、計算できぬことはないけれども、計算しないのだというわかったようなわからないような発言になっておるわけでありますが、常識的に見た場合に、一回給油をすれば相当遠くまで飛ぶことができるのだということは確認できるのじゃないか、こういうふうに思います。仮定の話ですよ。私は仮定のことも考えなければいかぬと思うのです。そのことが他の国に対して脅威を与えないか、誤解を招かないかということになるわけでありますから、そういう点で、その飛行機の可能性というものに極度に目を覆うて、そういう可能性があるにもかかわらず、われわれは専守防衛という立場からそういう可能性については研究しないのだというようなことは、理屈が通らないのではないか。逆に言うならば、日本以外の国は、このF15については、一回給油したらどれだけ飛んでいけるかということをちゃんと計算できるのじゃないかという意味で脅威を与えるというふうに思うわけであります。そういう意味で、計算していないと言われたらもうそれ以上何をか言わんやの状況になるわけでありますが、そういうことを含めて、もう一度その点について、くどいようですけれども、お答え願いたいと思います。
  298. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私どもが脅威を与えないと言うのは、先ほども大臣から御説明申し上げましたように、現在の軍事技術の趨勢、それからF15というのは、本来要撃戦闘機としての性能が非常にすぐれているという意味で防空戦闘用としての能力を持っているということでございます。同時にまた航続距離があるということは、軍事技術の進歩に伴いまして低高度で入ってくる飛行機に対処する能力としても高く評価できるというふうに私どもは判断しているわけでございます。したがいまして、脅威を与えるか与えないかということは、やはりその装備をいたします航空機が防空任務につく際の世界の航空機の技術的進歩といいますか現状、そういうものとの相対において判断されるべきものだというふうに考えるわけでございます。
  299. 上田卓三

    ○上田委員 給油装置の問題でちょっとお聞かせいただきたいわけでありますが、この飛行機は給油装置をつけることができるということであります。昭和四十八年三月二十二日、参議院の予算委員会で、当時の増原防衛庁長官は、「自衛隊においては、給油機を持たず、給油の訓練を行なわず、将来も給油をやろうという考えがありません。」こういうように言っておるわけでありますが、いずれにいたしましても、給油機を持たず、あるいは訓練を行わないという原則は今後も変わりないのですか。
  300. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 原則的な立場で増原長官が言われたものではないのではないかと私は思うのでございます。先ほども申し上げましたが、列国の航空機の実態、特に近代化された航空機の脅威というもの、これにどう対処するかということをやはりわれわれは防衛の責任を持つ立場から考えていかねばならぬと思うのでございます。したがいまして、給油機を持つという点につきましては、給油機によって、先ほども防衛局長が申しましたように、高高度あるいは低高度で侵入してまいります高速度の航空機に対して、空中に待機をしながらこれを要撃するということを考えてまいりますれば、長時間にわたって空中に待機できるという立場から考えていかねばならぬと思うのでございます。そうした具体的な攻撃機の客観情勢の推移にこたえながら、そうした脅威に対してこたえていくということでございますので、原則が給油機を持つとか持たないとかいうようなことよりも、そうした航空機発達の推移、攻撃の予想されるそうした脅威等を勘案しながら、私どもは防衛の責任を遂行しなければならぬ、そういうことで航空機の選定等をやらねばならぬという立場にあるわけでございます。
  301. 上田卓三

    ○上田委員 いずれにいたしましても、F15は国防会議にかかっていないわけでありまして、そういう意味で、わが国の憲法のたてまえから見て、あるいは三原長官も含めて歴代の大臣が専守防衛という立場で考えているということであるならば、概算要求であったにしてもF15を購入するという一定の意思が働いたということ自身重要な問題ではないか、越権行為と言うのですか、非常に走り過ぎておるのではないか、国民に大きな危惧を与えるのではないかというように思うわけでありまして、幾らシビリアンコントロールが効いているといったって、そういうものがあるにもかかわらず、常に防衛庁がひとり歩きしながら全体の世論を操作するということにもなりかねない。とりわけF15は給油装置をつけられる、あるいは爆撃装置がついておるということでありますから、われわれはこの問題に対して、防衛庁がいままでとっていた態度というもの自身、ある程度反省する必要があるのじゃないかと思いますので、おとといもやはり問題になっておるわけでありますが、そういう点についての勇み足というのですか、防衛庁の一定の考え方というものについてお聞かせ願いたいと思います。
  302. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 わが国の防衛は、防衛の基本方針にも明確でございますように、第一に、平和外交の展開ということをうたっておるわけでございます。第二には、理想的な国家の形成に努力をしよう、経済的にも、社会的にも国民の福祉を考えた理想国家、福祉国家をつくろうというのでございます。第三には、憲法の枠内における最小限度の自衛力の整備をしようというようなことを明確にいたしておりまして、特に、外部に対して侵攻はいたしません、しかし侵攻に対しましても、小規模なそうした攻撃に対しましてはこれを自力で要撃し、撃退をするが、しかし大規模の攻勢については、これはアメリカとの安保条約でアメリカの協力を頼まなければならぬというようなことがわが国外交の基本方針でございます。したがいまして、私どもは常に平和憲法のもとにおける自衛隊の防衛力の整備ということで進んでおるわけでございます。なおまた、このFX、つまりF15につきましては、どういうような機種を選定し、どう持っていくかというようなことを、実はもう五、六年間の研究を進めてまいり、もう一年になりますが、昨年の暮れに前坂田長官においてすでに内定を願ったということで、国防会議にかけたわけでございまするけれども事前の各政府関係者におきまする連絡が不十分なところから本年に持ち越されておるという事態でございます。決して私ども自身が勇み足をするとか、そういうような事態ではございません。日本がいかにして平和を守り、独立を守るかという、そういう立場から数年にわたって審議を重ね、検討を重ねてまいり、昨年決定して、なおことしに持ち越して引き続き検討を進めてまいって、最終的な防衛庁としての内定をしたということ。そして、しかもそれが関係各省との連絡をし、審議を重ねて、これは国防会議事務局を中心にしてやっていただいておりますが、最終的には国防会議にかけ、予算閣議にもかけて御決定を願う、私どもはシビリアンコントロールのそうした処置を仰ぎながら、そして最終的には国会の御審議を願うということでございますので、決して勇み足的な立場でやっておるわけではございません。その点はひとつ十分の御理解を願いたいと思うのでございます。
  303. 上田卓三

    ○上田委員 私は長官の言うておる中身は矛盾していると思うのですよ。理解できません。というのは、五、六年前から機種の問題について検討を加えてきた。あるいはまた、ちょっと私も十分聞き取れなかったのですが、ひょっとしたら五、六年前からF15のことを考えておったのじゃないか、考えていたと言うよりも、ある程度そういう機種というものについて話題にのっておったということではないかというふうに思うのですが、いずれにしても国防会議に一回出されたものが、いろいろの経過があるにしても決まらなかったとい  にもかかわらず、概算要求としても防衛庁で一定の結論が五十三年度の要求として出てきたということ自身、私はおかしいというふうに思うのです。総理大臣もこのことについて検討したいというような形で明確な答えをもらえなかったのですけれども防衛庁としてははっきりした態度をそういう意味でとっておるのではないか、こういうふうに私は思うわけであります。  そういう点で、防衛的な意味での戦力であって、決して攻撃的な、あるいは侵略的な自衛隊であってはならないということを言いながら、確かにこのF15は侵入した敵機を迎え撃つ対空戦闘が主要な任務という形で、防衛的なというような形で言われておりますが、しかしこれがもともと爆撃装置がついている、あるいは空中給油ができるということになり、さらに先ほど言うたように、この飛行機は足が長いということになりますと、いわゆる専守防衛だと言いながらも、あるいは防衛的な飛行機だと言いながら、実際の中身は攻撃的な性格を持ったものだというように私は思うわけであります。そういう点で、これはいままで大臣自身が専守防衛だと言いながら、実際やっていることは、なし崩し的に、かつての冷戦政策の時代のような、いわゆる攻撃は最大の防御だという、そういう考え方になるような中身を含んでおるのではないか、こういうように思うわけであります。そういう点で、幾ら世界の平和とかあるいは善隣友好だといっても、たとえばお隣にソ連とか中国とかあるわけでありますが、それらの国から見ると、やはり攻撃的な中身を持った飛行機だというように、誤解というよりも、確実にそれは攻撃的な中身のものだという形に理解されるのではないか。そういう疑いと言うよりも、もっと濃厚なものではないかというように思うわけでありまして、やはりそういう点でそのものに対してわれわれは再検討を求めたい、こういうように思いますが、どうですか。
  304. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 方針は先ほどからるる申し上げておりますように、防衛庁において決定いたしたものでございます。これから先の御理解を願う御意見として、いま御指摘されましたようなことは十分承りまして善処してまいりたいと考えておるところでございます。日本の自衛力の整備というのはあくまでも政治優先の国家として行われてまいるものでありまして、疑えばいろいろな疑いが出ると思いますけれども、そうした日本の防衛のスタートというのが政治優先でございます。したがって、核を使わないと言えば核を使わない三原則を——これなども法律によるものではございませんけれども、はっきり政治優先の立場をとって、やらないというようなことを守ってくるわが国の防衛力整備の体制でございますから、その点につきましては、いま御提言のありましたことは十分ひとつ心にとめながら、今後の私どもの進め方について貴重な参考にいたしたいと思っておるところでございます。
  305. 上田卓三

    ○上田委員 納得はできません。われわれは何を言いましても、過去においてあの忌まわしい戦争を引き起こした当事者でもあるわけでありますし、世界でただ一つの広島と長崎での原爆被爆国でもあるわけでありますから、われわれ日本の外交というものを考えた場合に、やはりわれわれの党が言っております非武装中立という立場で、とりわけ憲法九条のいわゆる軍隊を持たないという立場に立つべきでありまして、防衛的な意味であったとしても、軍隊を持つべきではないとわれわれは考えておるわけであります。問題はやはり世界じゅうから戦争の火種をどのように一掃していくのか、あるいは軍縮をどのように達成していくのか、そういうような立場で考えないと、そのことがなかなかできないから、やむを得ず攻撃されたときの用意として性能のいいもの、最高のものということになりますと、そこは攻撃的なものと防衛的なもののもう紙一重になってしまうわけでありまして、やはり三原長官のような考え方は、だんだんと攻撃的な兵器であっても、防衛的な兵器なんだということになってしまう、こういうことで私は非常に危惧をいたしておるわけであります。  そういう立場から若干質問を申し上げたいわけでありますが、特に福田総理は、本会議などでも、常に資源有限時代だというような言葉をおっしゃっておるわけでありまして、そういう意味で私は長官にお聞きしたいわけでありますけれども、世界の中で一番いわゆる資源の浪費は何だとお考えですか。世界もわが国も含めてですけれども、浪費というのは何だとお考えになりますか。
  306. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 どうも御質問の意味が私にはとりかねておるところでございます。
  307. 上田卓三

    ○上田委員 それは軍備じゃないですか。軍事費じゃないですか。そう思いませんか。
  308. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 私、憲法の条章に従って戦争をするような軍事的な装備は持っておりません。あくまでも私どもは、国民の福祉政策、平和と安全な福祉政策の大前提は、どうしてもそういう意味で自衛的な体制を持っておくということが福祉国家建設の大前提だと思っております。今日の平和と安全あるいは国の独立が保持されておるという点につきましては、やはり力においては本当に完全な自衛力を整備したという体制まで行っておりませんけれども、自衛力の存在というようなものがそうした国民の福祉政策なり、あるいは平和で安全な政策に役立っておるという考え方に立っておるものでございます。
  309. 上田卓三

    ○上田委員 世界の国々の軍備費が、どれだけ国民の血税、いわゆる国家予算を占めているか、そしてそれだけでなしに、各国が持っているところのそういう軍備というものが、いわゆる防衛という名のもとで、これはアメリカにおいても、ソ連においても、どこの国においても、他の国を攻めるために軍拡をしているのだ、軍備を持っているんだという国はないと思うのです。少なくとも他国から攻められたときにそれを阻止するのだ、防御するためだということです。それはかつて、日本の軍部自身も、侵略しながら、これは防衛のための戦争なんだという形であの無謀な戦争をしでかしたわけであります。そういう軍拡競争は、突き詰めていけば、今日のような形のいわゆる核兵器、これにはもうわれわれが計算できないくらいな大変な予算が要るということは先刻御承知のことだと思うのです。そういうことから軍縮という問題も大きく問題になってきておるわけでありますが、やはりわれわれは、日本というこのちっぽけな島国で、一億一千万の国民を生活させていかなければならないということを考えれば、多くの国々と平和の、平等互恵のそういう政治を追求することが必要だと思うのです。世界で日本の資本主義のいわゆる発展というものに目を見張るような、そういう脅威の的になっております。それもやはりあなた方も認めておるように、国家予算の中に占めるところの軍事予算が比較的少なかったということ一つ見ても、逆に言うならば軍事費が多ければ日本の今日の状況はない。もっとはっきり言うならば、そういう予算をもっと減らせば減らすほど日本の国は栄え、経済的にも政治的にも、いろいろな面で安定していくのじゃないか。あるいは今日の不況というものを回復する、いろいろな手段があります。しかしその財源というものを考えた場合に、軍備をある程度拡張していく、それは他の国に比べてまだ比率が少ないのだ、いわゆる一%以内だ、こういうような形で、のほほんとしておられないのではないか、私はこういうように思っておるわけであります。わが国においてもそうでありますが、一般的に軍事費、軍備というものは人類の一番の浪費である、これ以上の浪費はないというように私は考えるわけでありますが、そういう点で長官の考え方を再度お聞かせ願いたいと思います。
  310. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 繰り返して申すようでございまするが、旧軍的な物の考え方は毛頭持っておりません。これは明確でございます。  なお、自衛隊設置の方針の中にございまするように、われわれとしては、いまあなたが申されますように、そうした戦争のための軍事的な防衛力というようなものがない平和世界が実現することはありがたいことで、自衛隊の設置については、国連が世界の平和についてこれを維持し得るような体制までなりますれば、私どもはこれほどありがたいことはないと思っておるわけでございます。しかし現実の世界の情勢、そうした情勢の平和、そうして協調と抗争の体制の中に現実は動いておるという事態の中で、しかも憲法の枠内で、最小限度みずからの国の平和と独立を守り抜いていこう、安全を保持していこうということで、最小限度のそうした自衛力を持っておるわけでございます。これは旧軍時代の軍事的なものではないという立場で、そうした国民の福祉、国民の生活を守る、そういう大前提になる平和維持のための自衛力だと考えておるわけでございます。その点は御理解を願いたいと思うのでございます。
  311. 上田卓三

    ○上田委員 先ほど申し上げましたように、軍事費ほど重大なあるいは巨大な資源の浪費はないと私は考えておるわけでありまして、たとえば一九七六年の全世界の総軍事費は三千億ドルと言われておるようでございます。全人類三十五億人——三十五億八千七百万人じゃないかと思うのですけれども、三十五億人にいたしましても、一人一人が、いわゆる大人も子供も一人平均八十五ドル、日本円に直すならば二万一千二百五十円を軍事費に負担しているという計算になるわけであります。アメリカは独立後百年で三百億の軍事費を組んでおります。過去三十年間で一兆六千億ドルの軍事費を浪費したということになるわけであります。アメリカの人口が二億一千万人としますと、戦後三十年で一人当たり七千六百十九ドルと、信じられないほどの巨額な資金が投入されたということになるわけでございます。これは日本円に直すと百九十万円ということになるわけであります。  長官にお伺いいたしますが、最強力の資本主義国アメリカが一兆六千億ドル、全アメリカ人一人当たり百九十万円を浪費しているということになるわけでありますが、アメリカの国際政治における影響力はそれで増大したというようにお考えでしょうか。どうですか。
  312. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 私がそういう御質問に対して答えることは差し控えたいと思うのでございます。
  313. 上田卓三

    ○上田委員 かつてのあのアメリカがいま円高と言われるような状況の中で、やはりアメリカ自身がかつてに比べるならば、国際的影響力、政治的な影響力も含めて、経済的にも含めて、非常にかげりを見せているということ自身、やはりいい例じゃないか。アメリカのような形で、いわゆる対ソ連というものがあるにしても、そういう形でこの軍事力を拡大することによって、アメリカ国民経済だけではなしに諸外国からもそういう形で影響力が離れていくという状況に私はなったのではないか、こういうように考えておるわけでありまして、長官は外国のことで特に政治的に言明を避けたのではないか、こういうように思うわけでございます。  いずれにいたしましても、アメリカはベトナム戦争で百五十億ドルを支出いたしておるわけであります。最盛期は六十万の戦闘部隊の投入も、ベトナムにおける米国の目的を達成しなかったわけであります。古い話を言うわけではございませんけれども、ナポレオンにとってもいわゆる騎兵隊の数が、東条とヒットラーにとっても師団の数が、いわゆる国際政治における力だ、正義そのものだったということでありますが、しかしながら、最強力の資本主義国でありますアメリカの巨大な軍事力も結局は万能ではないということが明らかになっただろう、こういうふうに思うわけであります。そういう意味で、力と強制で対外政策を推進することは今日の世界では不可能になってきたと言っても過言ではなかろう、こういうふうに考えるわけであります。  そこで長官にさらにお聞かせいただきたいわけでありますけれども、いわゆる軍事力は政治的利益の絶対の保証ではないというように私は考えますし、また軍事力の対外政策上の役割りは今日減少している、こういうふうに思うわけでありますが、そういう時代にわれわれがいると長官は考えておるのかどうか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  314. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 あなたも御承知のように、わが国の方針といたしましては、平和国家としてわが国は国益を守るために軍事力を背景にして国益を守るという方針はとっておらないことは平和憲法の示すところでございます。したがいまして、私どもはそういう立場に立って物を進めておるわけでございます。
  315. 上田卓三

    ○上田委員 ということは、いま私が言ったことを認めるわけですか。お聞かせください。私がいま言ったことに同意するわけですな。
  316. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 私は、いま申し上げましたように、軍事力を背景にして国益の確保というようなものはやらない、あくまでも平和的な手段に訴えて、外国との折衝を、あるいは国際関係を続けていくという考え方に立っておるということを申し上げたのでございます。それとあなたの御意見が一つでございますれば、同じ意見だと思うのでございます。
  317. 上田卓三

    ○上田委員 ということは、もう日本の自衛隊自身が必要でないような国際環境をつくるということも大事だし、また日本自身がやはりそういう環境づくりのためにどのように努力をしていくかということが私は非常に大事なことではないか、こういうように思うわけであります。そういう意味でやはり軍備を増強していくということでなしに、さらに縮小していくということの中で世界平和のために日本が一定の役割りを果たしていくということでないと、日本は軍備を増強しつつ、そして口で平和だ、平和だと言ったって、私は、諸外国はそれを認めない、こういうふうに思うわけですけれども、それはそういうことで理解していいですか。
  318. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほどから申しておりますように、わが国の防衛力の整備ということは、いま戦争のための軍備につながるものではありませんということを重ねて申し上げておるわけでございます。したがいまして、現在の防衛力の整備を防衛庁において、政府においてやっておりますのは、決していま御指摘されるように、軍備拡張というような立場でやっておるわけではないということを、いままで何回も繰り返して申し上げておるところでございます。
  319. 上田卓三

    ○上田委員 それでは、拡張しないで減らしていくのですか。
  320. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 わが国の防衛力の整備の方針につきましては、昨年防衛計画大綱を示しました。最小限度の自衛力というようなものは大体枠組みとしては現在の状態でよくはなかろうか。そこで内部的に欠落があるところ、機能的に欠陥があるようなところを質的に整備していこうということでございまして、決して拡大するというようなものではございません。
  321. 上田卓三

    ○上田委員 拡大する意思はない、現在のままでいい、ただそういう欠陥を補うという意味で、ということでF15の問題も出てきていると思うのですけれども、そういう現在のままだと言いながら、それを内部的に質的向上することによって、やはり実質的に軍拡の道を歩んでいるのではないか。われわれもそう思いますし、国民の皆さん方はF15というものを知った場合に、あるいはすでに知っておるわけでありますが、それが自衛隊のそういう装備の拡充というようにとらまえるべきであって、一つもそれが拡充してないというようにとらまえる方が間違っておるのではないか、私はこういうように思うわけであります。
  322. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 私は、国民各位が自衛隊なり自衛力の整備をいまやっております状況について御理解を願っておると思うのでございます。自衛隊の必要性等につきましては七十数%の理解、支持をしておられることも承知いたしておるわけでございます。その点は、特にひとつ御理解を願いたいと思うのでございます。
  323. 上田卓三

    ○上田委員 それは意見の相違でありますが、いずれにいたしましても、軍事力の増強が直接政治的影響力の拡大を意味しないにもかかわらず、そういう時代が到来しておるにもかかわらず、物理的暴力、すなわち軍事力こそが対外政策と安全の保障という幻想を持つそういう反動的政治家が、軍事費の増額あるいは軍拡に拍車をかけておるということは事実であろう、こういうように思うわけであります。  アメリカ軍事費も一九七六年千百四十億ドルであったわけでありますが、さらに一九八〇年には千五百億ドルと予測されておるわけであります。NATOの軍事費も一九七四年以来千三百十六億ドル、千四百九十三億ドル、そして昨年は千五百五十億ドルと急増いたしておるわけであります。日本の防衛予算も一九七五年一兆三千二百億円であったものが、一九七六年には一兆五千億円になっておりますし、ことしは一兆六千九百億円と激増しておるわけであります。数年後、いわゆるGNP一%の枠が破られることは、私は、確実になってきているのではないかというようにさえ思うわけでありまして、そういう点で軍事費増額、いわゆる力の政策にいまこそ終止符を打つことこそわれわれの時代の根本的問題ではないか、こういうように思うわけであります。そういう意味で、軍事費の増額は世界の平和を決して保障しないというように私自身は思うわけでありますが、長官のその点についての御見解をひとつ承りたいと思います。
  324. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 わが国の政府は、憲法の枠内におきまする必要最小限度の自衛力を持つという方針のもとに進んでいるわけでございます。非武装中立の施策をやっておるわけではございませんので、そうした点において、私どもといたしましては、御指摘になるような軍事力の増大なんというようなものは考えておらない、あくまでも最小限度の政府がとっておりまする施策を忠実に踏まえて、私どもは国の平和と独立、国の安全を守る体制の防衛力の整備を図っておるということでございます。
  325. 上田卓三

    ○上田委員 長官はそうおっしゃいますが、先ほど私が数字で明らかにしましたように、防衛予算は年々ふえておるわけでありますからね。長官はそういうことを言いながら、実際は、防衛予算はふえているわけであります。  それと、私は長官に約束できるのかということでお聞かせ願いたいわけでありますが、いわゆるGNP一%以内ということがちょっと問題になっておるわけでありますが、絶対これ以上、一%を上回るようなそういう予算にはなってはならないというように思っておるのか思っていないのか、その点はどうですか。
  326. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたしますが、先ほども申し上げましたように、わが国の自衛力の整備というのは政治優先でございます。政策として御決定なさった線で進んでおるわけでございます。政府において当分の間一%の枠を超えない程度でやれということでございますので、その線を踏まえて防衛力の整備を自主的、計画的に進めておるわけでございます。しかし、それは国際情勢でございまするとか内外の情勢でございまするとか、そういうような情勢を踏まえてやっておるわけでございます。急変するような世界情勢というものがある場合は別でございまするけれども、現状におきましては、その政府が決定をいたしておりまするGNP一%の枠内で私どもは任務の遂行ができる、またやっていかねばならぬという方針のもとに、任務の遂行をいたしておるということでございます。
  327. 上田卓三

    ○上田委員 世界の政治情勢といいますか、軍事情勢といいますか、そういうものが大きな変動がない限り一%以内でやっていくということですね。もう一度お聞かせください。
  328. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 そのとおりでございます。
  329. 上田卓三

    ○上田委員 昨年の防衛白書でも、またことしの防衛白書でも、均衡による平和といういわゆる危険な哲学を前面に出しておられるわけでありますが、この考え方は、悪名高いというか、そういう意味では恐怖の均衡に基づく平和の日本版であると言ってもいいのではないかと思うのですが、このような考え方は、米ソ両国間に絶滅の危機があるとき平和は維持され、相手国に効果的なおどしの手段が向けられているとき平和が維持される、いわゆる力の均衡の状況の中で初めて平和が実現するのだというような均衡論的な考え方になるのではないか、こういうように私は思っておるわけであります。したがって、軍縮というものが力関係を変え、戦争の危険性を増大させるというような奇怪な主張にもなるのではないか。均衡しているから平和が保たれるのであって、軍縮という一つの変動によって力関係が変わることによって、その中からいわゆる戦争の危険が生まれるというような考え方、われわれはなかなかそういうことは理解できないのですけれども、そういうような考え方をやはり防衛白書でやっておるのではないかというようにわれわれは考えるわけであります。  そういう点で、今回のF15の爆撃装置あるいは給油装置の装備こそ、効果的な攻撃と侵略の威嚇をソ連とか中国とかその他に与えるという効果をねらったものではないか。いま攻撃はしないけれども、いつでも攻撃できるんだぞというような論理からF15というものが出てきたのではないか、防衛白書のそういう線からこういうものが出てきたのではないかというようにわれわれは考えるわけであります。そういう点で、均衡に基づく平和という安全保障構想は、平和を愛する諸国民の公正と正義にとって、また安全と生存を保障しようという憲法の前文の原理と救いがたく対立するのではないか、こういうように思うわけであります。そういう点で防衛白書というものは憲法の精神から考えるならば相当な矛盾を私は感じるわけでありますが、そういう点について長官の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  330. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛白書で書いております情勢判断というのは、現実の国際情勢あるいは軍事情勢というものを踏まえて書かれているわけでございます。いま恐怖の均衡というようなお話がございましたが、軍事的な面からいたしますと、やはり安全保障の枠組みというものがございます。そして各国民が一番考えておるのはセキュリティーの問題、安全保障という問題であろうと思います。その安全保障の各国が考えております政策の中で、軍事力と申しますか防衛力ということも、現実の世界におきましては、そのセキュリティーを守るそれぞれの機能を果たしているわけでございます。私どもがあそこに書いておりますのは、そういう中で全く軍事的に空白の部分ができると、そういうものが存在すること自体がやはり不安を醸成するもとになるのではないか。したがって、よその国が日本に対して侵略を意図するといいますか、誘惑に誘われないようなきちんとした安全保障のための防衛力というものは持っておくというのが政府の考え方であり、防衛庁の考えている防衛力という考え方でございます。
  331. 上田卓三

    ○上田委員 防衛白書のいわゆる均衡による平和というものに対して、われわれは非常に危険なものを感じておるわけであります。平和と安全の保障は、国内における国民福祉の充実あるいは向上であろう、こういうように思うわけでありまして、国際社会における緊張の緩和といいますか、あるいは軍拡競争に終止符を打つことであろう、このように思うわけであります。わが国の一人当たりの社会保障の給付額はアメリカの五分の一ですね。それから西ドイツの六分の一であります。また、下水道の普及率はアメリカの三分の一、西ドイツの四分の一ですね。それから一人当たりの公園の面積でありますが、これはアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、イタリア、スウェーデンの驚くなかれ十分の一から四十分の一というような惨めな状況であります。住宅の貧困、医療の荒廃は世界有数であると言っても過言でない、このように思うわけであります。戦闘性抜群、居住性最低、こういう帝国海軍がかつて惨めな敗北を遂げたように、いわゆる国際競争力抜群、国民福祉劣悪というわが国のそういう実態はやはりふだんの国内的動揺と激しい国際的糾弾のもとにさらされるのではないか、こういうように思うわけであります。戦争というものに対して、やはり厳しい考え方を持たないところから人を人と思わない差別社会が生まれてくるわけでありますし、また日本の社会は、国際人権宣言が昭和二十三年に国連で採択されたわけでありますが、その法的内容を持つところの国際人権規約をいまだに日本は批准しておらない。先般カーター大統領は、国連本部において事務総長のもとで国際人権規約の批准のための署名をされたわけですが、いわゆる先進国と言われる国の中で残っておるのは、フランスと日本だけである。そのフランスさえも今度は人権差別の罪という形で、そういう人種差別をした人間に対して最高千二百万円の罰金をとか、あるいは国際人権規約よりも中身のある、いわゆるヨーロッパ人権規約にすでに署名しているということで、世界じゅうで日本が一番人権問題に疎い、そういう状況にあるわけでありまして、そういう点で福祉の問題も先ほど私が申し上げたわけでありますが、日本軍事予算というものと、そういう国民経済、国民の福祉というものと大きくかかわっておる、限られた国家予算の中でどう配分していくかというような大きな問題になろう、私はこういうふうに思いますので、そのことを特に三原長官だけに申し上げるわけじゃございませんが、これは日本の自民党の政府そのものに対して強く申し上げて、これは回答をもらわなくても結構でございますから、時間が来たようでございますから、私の質問は、これでもって終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  332. 正示啓次郎

    ○正示委員長 次回は、来る十一月一日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時二分散会