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1977-11-17 第82回国会 衆議院 大蔵委員会税制及び税の執行に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和五十二年十月十四日(金曜日) 委員会において、設置することに決した。 十月十四日  本小委員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       池田 行彦君    大石 千八君       鴨田 宗一君    後藤田正晴君       丹羽 久章君    村上 茂利君       村山 達雄君    保岡 興治君       大島  弘君    川口 大助君       只松 祐治君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    永原  稔君 十月十四日  保岡 興治君が委員長指名で、小委員長に選  任された。 ————————————————————— 昭和五十二年十一月十七日(木曜日)    午前十時七分開議  出席小委員    小委員長 保岡 興治君       池田 行彦君    大石 千八君       鴨田 宗一君    村上 茂利君       大島  弘君    川口 大助君       只松 祐治君    貝沼 次郎君       高橋 高望君    荒木  宏君       永原  稔君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         内閣総理大臣官         房管理室長   藤井 良二君         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁税部長 水口  昭君         国税庁調査査察         部長      藤仲 貞一君         厚生大臣官房審         議官      吉村  仁君         自治大臣官房審         議官      福島  深君  小委員外出席者         大蔵委員長   小渕 恵三君         大 蔵 委 員 坂口  力君         法務省民事局第         四課長     稲葉 威雄君         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         文化庁文化部宗         務課長     石井 久夫君         厚生省医務局次         長       山口新一郎君         農林省農林経済         局農業協同組合         課長      永井 和夫君         運輸省自動車局         業務部貨物課長 金田  徹君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 十一月十七日  小委員永原稔君十月十七日委員辞任につき、そ  の補欠として永原稔君が委員長指名で小委員  に選任された。 同日  小委員丹羽久章君十月二十五日委員辞任につき、  その補欠として丹羽久章君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員高橋高望君十月二十七日委員辞任につき、  その補欠として高橋高望君が委員長指名で小  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制及び税の執行に関する件      ————◇—————
  2. 保岡興治

    保岡委員長 これより税制及び税の執行に関する小委員会を開会いたします。  税制及び税の執行に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  3. 只松祐治

    只松小委員 私は最初に、税制の大きな変動期といいますか、あるいは一般財政の危機と申しますか、こういうときには、もっと本委員会においても大臣あるいは総理出席のもとに、こういう問題を論議すべきであるということを申しておるわけでございますが、残念ながら本委員会等も余り開かれないし、さき総理を要求したけれども、お見えにならないという状況でございます。残念ながら小委員会でございます。したがって、もっと財政予算等の問題と関連して税の問題を論議したいと思いますが、きょうはそういう点はまたの機会に譲りまして、前回に引き続きまして、そういうものの一つの節目になっておりますいわゆる不公平税制、そういう問題を中心にして若干論議を進めてみたいと思います。  なお、新税等の問題にも触れますが、きょうあたり新聞を見ても、本委員会の前に、本委員会に出さないでどんどん新聞発表だけはする、まことにけしからぬ話であって、やはり立法府である本委員会に、行政府がいたずらに先に進むのじゃなくて、立法府と相談しつつ、あるいは立法府の意向をそんたくしてそういう問題はすべきである、こういうふうに思いますが、後で意見は述べてまいりたいと思います。  そこで、前回タックスヘーブン地域ペーパーカンパニー等の問題を論議いたしました。ところがその後、不公平税制一つの問題として税調でも挙げております医師優遇税制というような問題が論議されております。これは相当論議を尽くされておりますので、時間があればこれにも若干触れますけれども、むしろこれよりも、全然課税をされておらない、いわゆる非課税といいますか、課税対象外にある問題についてひとつ質疑をしたいと私は思うのですが、これもさきにここで法務委員会合同委員会をやりまして、公益法人の問題について論議をいたし、そのときも政府側はほとんど答弁に窮したわけでございます。公益法人だけでも十七万からあるという状況でございます。これを拡大発展させていく気風さえ見えるわけでありますが、こういうことになれば、税の不公平は単に平面的に不公平だけではなくて、縦に、将来継続的にもきわめて不公平を生ずるわけでございます。  そういうものの一つ問題点として、憲法問題とも関連してきわめて微妙な問題になってきますので、これはなかなかむずかしい問題ですが、宗教法人やそういういろいろな問題があります。  そこでまず、全く課税をされておらないそういう公益法人宗教法人というものがどういう状況であるか、概要について総理府の担当されておる方、それから税制面から国税庁においてどういう面が非課税になっておるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  4. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 お答え申し上げます。  各省庁が所管しております公益法人と申しますのは、大体四千九百ぐらいございますけれども、このうち非課税対象となっておるものがどれぐらいあるかにつきましては、総理府としては把握してございません。
  5. 只松祐治

    只松小委員 四千九百とは何の数字ですか。それは種類ですか、法人数ですか。
  6. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 地方公共団体を除くいわゆる本省庁で所管しております公益法人の数でございます。
  7. 只松祐治

    只松小委員 公益法人だけではなくて、たとえば皆さん方がいまつくられようとしておる学校法人から社会福祉、いろいろなものがあるわけですね。そういうもの全部を含めて、トータルとして何十万になるか、何百万になるか、たった四千九百ではないわけですね。公益法人だけでも十七万幾らか、各自治体にわたるものを合わせればある。だから総理府として、いわゆる内閣として、そういう非課税と目されておるものが一体どのくらいあるかということをお尋ねしておるわけです。四千九百くらいのところは、この前言っておるように論議をすでにし尽くしております。
  8. 藤井良二

    藤井(良)政府委員 私どもが所管しております公益法人でございますけれども、私どもの方でやっておりますのは、いわゆる公益法人監督事務連絡協議会というのをつくりまして、そこで各省庁における公益法人監督事務統一的改善というのをやっておるわけでございますが、この公益法人監督事務連絡協議会におきましては、民法三十四条の規定に基づく公益法人監督事務だけを取り扱っておりまして、いま先生がおっしゃられましたような学校法人なりあるいは医療法人なり、そういった関係法人は私どもの方では取り扱っておりません。したがいまして、その数については把握しておりません。
  9. 只松祐治

    只松小委員 では、日本全体のそういう非課税法人はどこでどういうふうに把握されておりますか。きょうは相当に各省庁お呼びいたしておりますから、どこかわかっておったらお答えをいただきたい。
  10. 水口昭

    水口政府委員 お答え申し上げます。  非課税法人ということではないと思いますが、法人税法において「公益法人等」というのがございます。その中には社団法人財団法人はもちろんのこと、宗教法人等も含まれるわけでございます。いま全体の数字は手元にございませんが、たとえばこれは宗教年鑑から拾った数字でございますが、宗教法人だけでも五十年十二月三十一日現在で約十八万一千となっておるようでございます。
  11. 只松祐治

    只松小委員 そのほかに答えるところがありますか。
  12. 石井久夫

    石井説明員 ただいまお答えになりましたとおりでございまして、私の方は宗教法人だけを所管しているわけでございまして、これは十八万あるわけでございます。
  13. 只松祐治

    只松小委員 いまみたいな状況だということですが、そういうものではない。いわゆる公益法人だけでも十七万ある。宗教法人は、宗教年鑑によれば十八万ではなくて三十二万ある。これは文化庁でつくっているわけですが、三十二万と一応の数字が出ておる。ただ、とり方をどういうふうにとるかということで多少表現は違うでしょうが、ここに出ているのは三十二万ある。そのほかにも医療法人学校法人、いろいろなものがあるわけです。  私がきょう問題にしようとしておるのはそういうことなんです。いわゆる日本行政官庁の主な皆さんがお集まりになって全く部分的にしか把握しておらない。日本全体にこういう非課税対象になっておる団体が幾つあるやら、そこに総資産幾らあるやら、私は調査の段階でも経済企画庁を呼んで聞いたのですが、経済企画庁なんかでも統計的に出てきておらない。財産として一兆幾らかという、サンプルをとった結果の推計しか出てきておらない。そんなものではない。こういう非課税対象というのは膨大な数になり、莫大な財産がある。にかかわらず、全然これが日本政府として把握されておらない。ここに大変な問題があるし、今後いよいよ大きな問題が生じてくると私ま思う。  後でも申しますけれども、とにかく現実に生産に従事する働く者だけが重税を課せられて、そういうものは一切課税対象外で、権力をかさに着て、あるいは信教やそういうものを自由にして納税をしない、こういう事態がいまどんどん進行をしておる。私たちの国内にがん細胞が発生している、シロアリが家の中を食っている、こう言っても決して過言ではないのです。後の税制論議をすればそれが出てきますよ。  そういうことを何とかしていかなければならない。そこで私は本委員会を開くべきだし、総理やあるいは少なくとも大臣が出席すべきであると言っておるわけです。まあ政務次官がお見えでございますが、こういうふうに一つもわからない。きょうは時間がないからあれですが、私の資料には一応のものは、私の調べられる限りにおいて約三カ月を要して調べておる。これはまた本委員会等で別の機会論議をいたしますが、次官はどういうようにお考えになりますか。
  14. 高鳥修

    高鳥政府委員 ただいま御質疑で御指摘いただいておりますように、公益法人宗教法人等につきましては、その内容については必ずしも把握が十分でないと思われる点も多々あると思うのでありまして、今後私どもといたしましては、さらに御指摘のような点を踏まえまして、十分努力をいたしてまいりたいと思っております。
  15. 只松祐治

    只松小委員 これはそういう通り一遍の答弁論議で済む問題じゃないのですよ。だから、大所高所からもう少し慎重に考えなさい、取り組みなさい、こういうことを言っているのですよ。そういう責任者が来てないから、私はこれ以上論議してものれんに腕押しみたいなものだから、相手にしないと言っては失礼だけれども、別な機会論議します。  そこで、具体的な問題に入りまして、国税でこういうふうに取っておらない、課税されておらない。ところが、地方住民としてはそこで生活をしておるわけですから、これは何らかの形で課税をされておる、しなければならない。地方税として、こういう国税非課税に対してどういうふうに対処されておるか、状況を御説明願いたい。
  16. 福島深

    福島政府委員 宗教法人に対します課税は、(只松小委員宗教法人だけではない。全体のそういうことを言っておる」と呼ぶ)非課税になっております。  法人等に対します課税につきましては、おおむね国税取り扱いに準じて取り扱いをいたすことに法律上なっているわけでございまして、たとえばそういった公益法人等の場合におきましても、その公益法人等が行います収益事業につきましては事業税ないし住民税課税をいたすことにしておりますし、また、本来の事業の用に供するもの以外の資産等につきましては固定資産税を課するという扱いにいたしております。
  17. 只松祐治

    只松小委員 一応住民税というのは国税に準じた額で決められてくるわけですね。  ところで、国税を払ってない、所得税を払っておらないという人にどうやって住民税をかけているのですか。
  18. 福島深

    福島政府委員 先生案内のように、所得等計算におきましては、国税におきます所得計算の例によって計算をいたすことになっておりますので、原則といたしましては、国税における所得計算の例によりまして計算をし、課税をいたすことにいたしております。
  19. 只松祐治

    只松小委員 所得税を納めておらない人はどうやって地方税計算していますかと聞いているのです。
  20. 福島深

    福島政府委員 国税におきます所得計算の例と全く同じような計算をいたしておるわけでございます。
  21. 只松祐治

    只松小委員 そうすると、地方税は納めておらない、こういうことですか。
  22. 福島深

    福島政府委員 御案内のように、所得申告等におきましては国税と共同の申告ということになっておりまして、大体同じ申告に基づきまして所得計算をいたしておりますが、たとえば国税納税義務がない、住民税だけ課税される対象のものにつきましては、地方団体が独自で課税をいたすわけでございますが、その計算の例につきましては、国税と同じような所得計算をいたしておるわけでございます。
  23. 只松祐治

    只松小委員 そういう言い回しをしないで、最低住民税なら住民税を課している、こう言ったらわかりやすいのじゃないですか、しちめんどうくさいこと言わないで。  では、国保税はどういうふうにやって課税しておりますか。
  24. 福島深

    福島政府委員 国保税課税につきましては、御案内のように、四つの課税計算基礎がございまして、均等割、平等割、所得割資産割と四つあるわけでございますが、その組み合わせが現実地方団体課税においては若干行われておるわけでございまして、御指摘の点は所得割計算だと思いますけれども、これは住民税におきます計算と全く同様の計算をいたしておるわけでございます。
  25. 只松祐治

    只松小委員 「僧侶等国保料(税)は、この所得や家族の数に応じて、それぞれの市町村ごとに定められるが、僧侶等平均所得国保料(税)の平均額は不明である。」いいですか、これは厚生省の私に対する文書回答ですよ。あなたが言っているのと、少しか大分か違いはしませんか。要するに各市町村によって相当異なってきておる。しかし、それは把握されておらない場合には最低額しか課せられていない、把握されておる場合にはそれに応じた分が課せられておる、こういうことで、市町村によって異なるわけです。厚生省どうですか。
  26. 吉村仁

    吉村政府委員 厚生省の方で把握しておりませんと申しましたのは、僧侶とか神官に対しましてどれくらいの国保税を課しておるか、その数字がわからぬか、こういう御質問に対しまして私どもは、国保税個々職種と申しますか、神官幾ら僧侶幾ら、芸者は幾ら、こういうようなことで個々職種ごと数字を把握しておりません、こう申し上げたわけでございます。  そこで、僧侶神官について国保税をどのように課しておるか、こういう問題になるわけでございますが、それは地方税あるいは地方税基礎になります所得というものが地方税のベースで把握されておりますので、それを基礎にいたしまして国保税所得割を課する、こういうことになっているわけでございます。
  27. 只松祐治

    只松小委員 みんな責任のなすり合い、でたらめだな。いま結論的に言ったのは、地方税責任を与える、地方税国税に応じて、こう言っている。国税は取っておらない、こういうことになったらどうなるんだ。だから、国税はそういう人にはほとんど非課税、しかし、地方税は大体取っているのですよ。ぼくが調べた限りにおいては国保税も大体取っているのです。いまの答え実態とは違いますよ、言っておくけれども国税に準じて地方税地方税に準じて国保税、そうじゃないのです。それなら、国税は取っているか取っていないか言ってごらんなさい。
  28. 水口昭

    水口政府委員 お答え申し上げます。  宗教関係に対する国税でございますが、まずその宗教法人に対する税金というものがございます。これは先生御承知のように、宗教法人公益法人等でございますから、収益事業に関しては税金がかかることになっております。したがって、収益事業に関して申告をしておられる法人ももちろんたくさんございます。それからその次は、宗教法人等住職とか神主さんとかそういった方でございますが、これは宗教法人から給与をいただいているわけでございますから、源泉徴収によりまして給与所得としての税金がかかるわけでございます。それから、小さなお寺等になりますと、まだ法人組織にならないというふうなところもございますので、これは申告所得税になるわけでございまして、確定申告をされている住職さんもたくさんおいでになるわけでございます。
  29. 只松祐治

    只松小委員 たくさんおいでになるとか、でたらめな答えをしなさんな。あなたたちが一人一人の税金を徴収する場合に、ぴしっぴしっと一円たりとも逃さないで論争するでしょう、ぼくは一番最後に徴税の問題は聞くけれども。たくさんおいでになるとか、ここで論議する場合に、そういうでたらめな、抽象的な論議をしなさんなとぼくは前から言っているでしょう。何人把握しているなら何人把握している、把握してないなら把握してない、こういうふうにちゃんと言いなさい。たとえばこういう野村証券から「宗教法人税金」という、市販なり無料で配っているオープン化されたものがあるのですよ。それを読んだって、あなたたちが言っているよりももっと具体的にずばりずばりと書いてあるのです。それから、文化庁文化部宗務課から出している「宗務時報」の中にだって、宗教活動とは何ぞや、活動の中でどういうものが利益を得てどうなっているという活動実態もある程度示されていますよ。君たちだけが勉強してないから野村証券の社員以下の答弁しか知らないし、これに書いてあるもの以下の抽象的な答弁しかできないだろう。これに準ずる、これを上回る——ここは国会ですよ。答弁しなさい。
  30. 水口昭

    水口政府委員 お答えいたします。  確かに数字ということになりますと、国税庁といたしましては、特に宗教関係者だけを取り出して統計をとっておりませんので、何人の方が幾ら納税をされておるか、あるいはどの程度調査しておるかということはつまびらかにはわからないわけでございます。  先ほど申しましたように、数字はともかくといたしまして、宗教法人あるいはそこの聖職者と申しますか、そういった方は、それぞれのルートで納税をされておるということでございます。
  31. 只松祐治

    只松小委員 じゃ、ここで資料を要求いたしておきます。  いわゆる公益法人に関するそれを、抽出調査でも何でも結構です。私はほとんど徴収されておらないと言っておるのです。あなたたちは国民の代表者、公僕として徴収する義務があるのだから、どの程度徴収しているのか資料を要求しておきます。委員長、いいですか。  私は、いまおっしゃられたその中で、宗教法人宗教家医療の場合も問題が出てきておりますね、医業医者というものは違う。学校法人とそこに働く教職員、これは違うのです。たとえば学校法人の場合は、教職員所得税を大体給料で取っています。しかし、愛知医大やいろいろな問題が出ているように、理事等がいろいろなめちゃくちゃをやっているのがありますが、まあおおむね人件費等に支払われておる、こう見て差し支えないだろうと思う。  ところが、医療業務の場合は、医業医者、こういうものがちゃんぽんにされて、二八対七二ということにされておる。ここから出てくるたとえば器械のように日々更新されるようなもの、あるいはほとんど公共的に使われている病棟の課税の問題とか、いろいろなそういうものがぽんと割られて七二対二八とされているところに問題点が出てきている。だから医療も、このパーセンテージだけ見て、本来の課税対象に返したならばこれはもっと合理的になるわけです。またしなければならないと思うのです。  宗教の場合でも同じであって、いわゆる信教の自由というものに保障された宗教法人非課税と、ここで働いておる人々の——この統計を見れば、二百七万人聖職者というものはいる。そこで働く寺男やいろいろな者を加えると、恐らく三百万人くらいの人がいるだろうと私は推定をする。これがどの程度課税されているかと言えば、私はほとんど課税されておらないと見る。逆に明治神宮とか伊勢神宮、あるいは本願寺とか大きなものは、大体課税されているだろうと思う。しかし、そうでない一人か二人のそういう人のところは、私が調べた限りにおいてはほとんど課税されておらない。それはどういうことになるか。  私のところに一昨日お見えになりました人の友人が下町の檀徒総代をしておる。お父さんが亡くなられて一年間に支払った金が約一千万円、私の友人参議院議員お父さんが死にました。戒名料は百万円と言われた。しかし、いろいろ探して安いところを見つけて、やっと六十万円のところを探した。戒名料平均大体百万円。  医は仁術なりと言われましたが、これはいま否定されております。聖職と言われて利益とは結びつかなかった宗教法人というものが、いまや個々利益に結びついてきておる。京都あたりの、拝観料が膨大に入る京都地域において皆さん方よく耳にするでしょう。祇園の一番の上得意さんはお坊さんだそうだ。私は実態を見たことがありませんからあれですが、そういうのをよく耳にしますよ。これはどこからくるか。宗教法人宗教家個人がちゃんぽんにされておるところからくるわけなんです。  私がいま問題にしているのは、宗教法人のことを問題にしているのではなくて、むしろ宗教家個人宗教団体あるいは医療なとにおける——いま特に私が問題にしているのは宗教でございますけれども、いま言うように何十万あるいはむしろ百万を超すそういう法人がある。私はこの前公益法人のことを言いましたから、きょうは公益法人のことは言いませんが、公益法人のあれもでたらめなんですよ。いろいろな報告がでたらめなんですよ。そういうものを正していかなければ、こういう非課税のものがますますふえてくる。そして社会保障制度はしていく。医療は早く、埼玉では六十八歳からです。国税は一銭も納めなかった、しかし六十八歳になれば、他人の納めた税金から自分は医療無料で受ける、あるいは老齢年金無料で受ける。情けないというより、これは誤りじゃないですか。やはり払うべきものは払っておいて、老人医療老人医療で受ける、社会保障制度は充実させて受けていく、こういうことにならないと、新税消費税やこういうものをただ取れるだけ取って、皆さん方はちょっと困難である、ちょっと抵抗があるこういうものからはほとんど取っていかない。その一例として私はタックスヘーブンの問題を前回の小委員会で出したわけです。きょうは宗教法人の問題やこの法人の問題を出しているわけです。  これをやるのは、私自身もなかなか勇気が要る。はね返りは必ずくる。しかし、そういうものをだれかが直していかなければ、イギリスや何かのように、七五%、九〇%と働く者だけが重税を課せられていっている。あるいは国鉄の共済一つ見ましても、働く者が少なくなって年金を受ける人が多くなれば、パンクしていく。これは国家財政も例外ではないわけだ。そういうことを立法の範囲内において改めていくのが、あなたたち政府におる人の任務じゃないですか、また立法府にいる私たちの任務じゃないですか。  そういうことを、いまあなたたちが二、三答えたみたいなでたらめな答弁で何もしない。知らないなら知らないと言いなさい。実態はわからない、残念です。申しわけない、いまから努力する、こう言えば今後の皆さん方の気持ちはわかる。しかし、実態はわからないのに言いわけだけして——いま私の時間は一時間しかないから、この問題だけでもうおよそ私の持ち時間、これに費やそうとする時間が過ぎていますから、ここでは詳しくは言いませんが、私の部屋に来てごらんなさい、幾らだって教えてやる。あるいは別な機会に小委員長、もう一遍開きなさい。私はこの問題をさらに徹底的に論議してみせる。  右代表して次官、どうです。いまの議論を聞いて、今後心を改めろとまでは申しませんが、とにかくちゃんとやる、こういうことを明言してください。
  32. 高鳥修

    高鳥政府委員 公益法人ないし宗教法人に名をかりまして、いわば税を適確に納めていないような声があるとすれば、きわめて遺憾なことでありますから、それらの内容につきましては今後とも、私どもの力の及ぶ限り十分適正な課税が行われるように努力をいたしたいと思います。
  33. 只松祐治

    只松小委員 そこで問題になりますのは、これは憲法なり信教の自由なりいろいろな問題と関連をしてまいりますが、少なくとも一定規模、十億にしますか、百億にしますか、一定規模以上の金額にしますかあるいは員数にしますか、これは私は監査したらいいと思うのです。さっき答えられました総理府のあれを見ましても、公益法人会計基準というものをいまつくろうとしておられる。現在やられておるのが、学校法人と労働組合の会計基準しかないのです。この二つしかない。いまされようとしているのが、社会福祉法人の会計基準、それから公益法人、これをつくろうかということで一つの素案ができつつある。そのほかのものはたくさんあるけれども、なされておらないのです。  少なくとも免税されておるということは、逆な面で言えば国家から補助を受けておる、裏を返せば補助に相当すると思うのです。私は何もかも国家が干渉するということはいいことではないと思います。しかし、やはり補助を受けているそういう団体は、一定限度の節度があってしかるべきだろう。そうすると、こういうものはもう少しその調査を必要といたします。やはり監査をして国民の前に、あるいは学校ならば父兄の前に、宗教ならば信者の前に明らかにすべきだろうと思います。このお答えはどこの所管になるのですかな。公認会計士は大蔵省証券局だけれども、どこですか、大蔵省所管であることは間違いないと思いますが、こういう点についてひとつ今後検討していくということが必要だと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  34. 高鳥修

    高鳥政府委員 公益法人なりあるいは宗教法人なり、社会福祉法人なり、医療法人なり、それぞれの所管省庁におきまして、法人の認可ないし運営につきましては、それぞれ当然監督すべきものである、このように思いますが、認可をする段階におきましていろいろとチェックをいたしましても、その後の経理等あるいは運営等につきまして十分監査をしているかどうかということにつきましては、それぞれの省庁責任においてなすべきことでありますが、ただいまの御意見につきましては、それぞれ各省庁において十分検討されるようにいたしたいと存じます。
  35. 只松祐治

    只松小委員 そこで、一般論はそのくらいにして、個々の具体的な問題を二、三質問いたします。  まず、そういう形で、非課税でもあるし、あるいはいろいろな特典を受けております農協の問題をお聞きいたしたいと思います。  埼玉県の秩父郡両神農業協同組合というものがありますが、ここには預金額が三億八千万円現在のところあるようでございます。ここである人が、七百六十七万円預けておるのでひとつ払い戻していただきたい、こう言ったら、払い戻しできないということで、払い戻しが行われないので、いま裁判中でございます。この農協ではほかにも、未亡人の方が御主人が亡くなったからと言って、やはり払い戻しを請求しておるけれども、これもできなくて、人権擁護委員会に保護を依頼しておる、こういう問題もあります。あるいはもっと違う農協で、多分七億円ぐらいですか、払い戻しを請求しておるけれども、金がないということで払い戻しが拒否されておる、こういうことも聞いておるわけであります。  一体農協の監査はどういうふうになっておるか。また、こういうふうに単位農協が行き詰まって、預金者にもこういうふうなことが起こっておるということは、私が先ほどから言っておりますそういう公益団体のずさんさというものにあるのではないかと思いますが、監督官庁の農林省、どういうふうに……。
  36. 永井和夫

    ○永井説明員 御説明申し上げます。  農協関係につきましては、連合会以上の段階は私ども農林省及び地方農政局におきます検査、それから単位農協につきましては都道府県知事の行います検査によりまして、その経営内容の適正化を図っておるところでございまして、総合農協につきましては、全国約四千八百弱ございますが、大体毎年の検査実績が、その約五割弱検査を行っておる実情にございます。したがいまして、お話の具体的な農協につきましてどういう状況かということ、実は私ども個々につきましては現在のところお答えしかねますが、大体全国的な平均から言えば、二年に一遍の検査を行っているのではないかというふうに考えております。なお、そのほかに単協につきましては、農協中央会が監査を行っておりますので、大体その検査及び監査によりまして、毎年一遍ぐらいは内容を見ているのではないかというふうに考えております。  それから、先ほど貯払い資金を拒んだというお話がございましたが、実は農協につきましては、一つは国の制度といたしまして、貯金者保険機構という特別法人を、一般金融機関の制度等にならいましてつくっておりまして、農協が破産をしたりして貯金者に不測の損害を与えないように、ふだんから積み立てるという措置を講じておるわけでございます。なお、そのほかに農協では自主的な相互援助制度というものをつくっておりまして、信連、中金の援助によりまして資金繰りの円滑化を図っておるわけでございますが、お話しのようなことが具体的にありといたしますと、制度に定めております貯払い停止なりあるいは破産の状態にまだ至らない段階において、具体的にそういう事実があったのかどうかということを把握いたしたいと思いますが、制度的にはそういう形になっておるというふうに私ども理解をしております。  ただ、農協によりましては、資金繰りが苦しい等の理由によりまして、一応貯金の払い戻しに来られる方にもうちょっと待ってくれと言うようなことが、あるいは全国的にも皆無の例ではございませんと思われますので、御指摘のようなお話が具体的にありといたしますれば、直接監督の立場にございます埼玉県とも連絡をとりまして、事情を聴取いたしたい、このように思っております。
  37. 只松祐治

    只松小委員 いまの問題は係争中ですが、農協側が、準備書面も出さなければ、公判期日が決まっても延期願いを出しておるというようなことで、なかなか裁判にも応じ切れないというような状況ですね。だからこの問題は、私きょう時間がありませんから、後で具体的にひとつお答えをいただきたい。  それから、法務省の方お見えでございましたらば、これはほとんどの新聞に出ておったから御存じだと思いますけれども、聖徒教会、これを見せた方が早いかな、渋谷の聖徒教会の金で二億円、信徒が集めたものを長男の会社へ回したという問題でございます。これもきわめてずさんな、二億円を会社あたりで使い込んだりということになれば、もう完全な背任横領、いろいろな問題が出てまいりますが、宗教の場合に、先ほどから申しますように、監督というものがおよそ行われない、こういうことで、大変微妙な問題のようでございますが、こういう問題はいかなる方に発展をしていくか。刑事事件として発展するのか、民事事件として発展するのか、そういうものはない、宗教でございますから、あくまで信徒会なり何なりにおいて、宗教法人の内部において解決すべきだというふうにお考えでございますか、お尋ねをしたい。
  38. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  具体的なケースでございますので、この段階で本件につきまして犯罪が成立するかしないか、いまだ申し上げる段階ではございませんが、一般的に申しますならば、宗教法人の場合でありましても、やはりその管理者と申しましょうか、会長なりあるいはしかるべき責任者が、その法人の金を自己の用途に流用するという形になりますれば、刑法上の背任罪あるいは業務上横領罪等の成否が考えられるわけでございます。
  39. 只松祐治

    只松小委員 この問題は、新聞にも出たから明らかになったということだと思いますが、明らかにならない、先ほど申しましたように、幾らお布施が来たか、あるいはお経代が来たか何したか、これは一つもわからないわけですね、どこも調査しておりませんから。したがって、これを神主さんなりお坊さんなりいろいろな人が勝手に使う、たとえば一千万円収入があっても、それは報告もされないし、だれも知らないわけですから、勝手に使う、こういうことになると、それが一億円であっても犯罪は成立しないだろうと思う。これはたまたま明らかになりましたからこういうことになるわけでございますが、一般論としてはむずかしいのではないかと思います。  その論議に入るのに、天下一家の会というのがいまあるわけでございます。これも数日来新聞をにぎわしております。時間があれば私は国税庁の方から、いま脱税問題として係争の問題をお聞きしたいと思うのですが、時間がなくなってきましたが、脱税問題として訴訟もされております。それから、いままではそういうことで、この天下一家の会は第一相互経済研究会ということで名前を変えてきた。ところが、今度これも法人を否認されたわけですね。そこで今度は、政治、あるいはさっきから私が言っております医療、あるいは宗教法人、こういうものに衣がえをしよう、表面を変えていこう、こういうことが報ぜられておるわけでございますが、まず最初に、法人格を取り消したのはどういう理由であるか、ひとつお伺いをいたしたい。
  40. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 正確には、法人格を取り消したわけではございませんで、要するに財団法人天下一家の会というものの理事に内村といういわゆるネズミ講の主宰者がなっているわけでございますが、その天下一家の会につきまして、その就任の登記あるいは名称変更の登記等を抹消するための手続をとったということでございます。  少し具体的に申しますと、もともと財団法人といたしまして肥後厚生会という昭和二十二年に設立されました団体がございまして、これが昭和二十四年に設立登記をいたしまして、それ以来ずっと登記がされていなかったわけでございますが、これにつきまして、昭和四十八年になりまして、内村という者がその財団法人の理事に就任したということで就任登記をいたしまして、そしてさらに天下一家の会という名前に変え、そしてさらに資産の総額の変更の登記等をしているという状況でございましたが、この役員変更の登記につきまして無効原因があるということで、このたび抹消登記の手続をとって、もし十二月七日までに相手方から異議が出ないか、あるいは異議について理由がないということになると、その一連の登記を抹消するという手はずになっている、こういう段階でございます。
  41. 只松祐治

    只松小委員 こういうふうに経済団体としてはわりと強く規制されるといいますか、取り消しなりそういうことができる。恐らく事実上取り消しになるのじゃないですか。そうしてくると、新聞によりますと、天下一家政治連盟というものをつくる、あるいは学校法人をつくる、病院をつくって医療法人をつくるということになる。しかし、これは幾ら内村さんといえども、正式に要件の備わった政治結社の届け出がなされる。恐らく内村さん個人でなしにほかの名前を使ってくるだろうと思うのですが、あるいは学校法人の届け出をしてくる、医療法人の届け出をしてくる。こういうことになると、これは拒否する理由は私はないだろうと思いますが、時間がありませんからあれですが、文部省なり厚生省あたり、こういうものが届け出があれば、条件が整っていれば拒否することはできないと思いますが、どうですか。
  42. 山口新一郎

    ○山口説明員 医療法人関係、お答え申し上げます。  医療法人につきましては、都道府県知事の認可になっておりまして、都道府県知事が認可をいたす場合にもあらかじめ、各県に医療機関整備審議会というのがございますが、ここに意見を聞いてやるということでございます。  その知事が認可をいたすに際しまして一番大きな問題といたしましては、病院等を経営するに十分な資産があるということが一つでございますが、なお、医療法人の場合には、設立しました後、経営に当たりまして剰余金の配当が禁止をされているという特別な条項がございます。そういう意味で、知事が認可をいたす場合にも、検討いたします場合に、単純に経済的な問題だけで判断をするということではなかろうというふうに私どもは考えております。
  43. 只松祐治

    只松小委員 要するにそういうことを言っても、条件さえ整えば設立されるだろうと私は思うのですね、経過を見ていればおのずから明らかになりますが、多少のジグザグはあっても。しかし、それが一たび設立されますと、愛知医大やいろいろなところの大学にありますように、これは相当自由にできるわけですよ、学校法人でも医療法人でも、私は医療法人実態を知っていますが。いわゆる天下一家の会の衣がえですよ。法の及ばないところに隠れていくわけですよ。  私は宗教法人の一、二の例を出しましたけれども、法の及ばないところ、税金の及ばないところに逃げていくわけです。そういうものがどんどんできていくということを私はさっき言いましたが、いま具体的な一例として、たまたま問題になっております天下一家教を引き合いに出しておるわけです。そしてたとえばいま現在でも、三十万のものに加入をいたしますと、十万円本部に送られ、そのうちの二万円は天下一家教の、大観宮というのですか、これに納められるわけです。そうすると、国税庁もどこも手がつかないのですよ。この金が集まったのを、今度は見せ金として天下一家の大会のときにぽんと何十億もつぎ込んでこけおどしをするわけですね。これは天下一家の、いまで言えば第一相互の金であるか宗教団体の金であるか、だれもその見きわめはつかないわけです。しかし、その宗教団体には金がちゃんとあるわけです。その金を持ってきてぽんとやれば、みんなびっくりしますよ、ああ、ここは大丈夫だと。いまから経済団体のものを全部取り消しになるかどうか、いまはまだ確かではないわけですが、取り消しになったところでこうやって逃げていくことができる。これはいまの特に税法は及びもつかない、こういうことになっていくわけなんです。  こういうのが私が先ほど触れました多くの団体に見られるし、そういう傾向がますます助長をされつつある。極端に言って、私が新しい宗教を、一定の要件さえ整えれば、文部省に提出すれば、それは許可されて、拒否することはできないわけです。とにかくそこには一切課税というものはないし、一切警察や検察の干渉というものはそこには生じてこない、いまの段階では。そういうことは、やはり法治国家でありますし、いまから福祉国家になっていく日本としては、ひとつ何とか改めていく必要があるのではないか、こういうことを私は問題として提起をいたしておるわけでございます。  事のついでにもう一つお聞きいたしておきますけれども、石原長官が、きのう決算委員会かどこかで問題になっているようでありますが、百五十万円ずつ九つの団体をつくって霊友会からもらった、それはけしかるとかけしからないとかという論議がなされておるわけでございます。この場合にも、石原さんが届け出たからこれは問題になるわけで、届け出なければ問題にならない。というのは、霊友会に対して国税庁もあるいは検察も調査権はない。及ばないのです。これは。霊友会に及ぶならば、他の一切の宗教団体に及んでいかなければならない。私の言うのは、他の一切の宗教団体宗教家個人もほとんど、でたらめだとは申し上げませんけれども、自由自在に使われておるわけです。霊友会だけ調べられても、それは信教に使いましたと——ここに書いてありますこの野村証券の問題、あるいはここにあります「宗教時報」の問題、こういうところをごらんになれば、駐車場とか絵はがきとか何とか、そういうものを除いて、とにかく全部宗教活動に使った。宗教行為であるということになれば、一切それは手を触れることはできない。できるのならやってごらんなさい、絶対にできない。ところが、山手教会の場合は、営利活動ということになりますから若干問題が出てくるだろうと私は思う。しかし、宗教活動に使ったということになれば、布教に使ったということになれば、これは一切手を触れることはできない。だから、石原さんがこれを公表されて明らかにしたから明らかになったので、明らかにしないで霊友会に聞きにいったら、霊友会は、私はそれは知りません。あなたはそれを調査することができますか。恐らくできないと思う。法務省どうです。これは調査することはできないでしょう。霊友会を調査することはできるかもしれませんが、向こうが、それは存じません、布教活動に使いました、こう言われた場合には、それ以上の追及はできないと思いますが、いかがですか。
  44. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  先ほどお答え申し上げましたとおり、宗教法人でありましても、その法人の目的外に会長なら会長なる者の自己の用途に使用するという目的でその金員を動かすということになりますれば、やはり犯罪を構成するということは一般論として言えるわけでございます。ただし、宗教法人の場合には、法人の目的外の行為、宗教活動と全く関係のない行為であるかどうか、その辺の認定が、憲法上の宗教の自由とも絡んでかなり微妙な問題があることは事実でございます。
  45. 只松祐治

    只松小委員 一般論でございますから、一般論としてはそういうことだろうと思う。しかし、具体例としていままでもなかったと思いますね、きょうは時間がありませんからそれ以上論争しませんが。とにかく宗教法人の聖域に立ち入ることはなかなか不可能である。ある週刊誌によれば、一千億からの金を集めて云々というようなこともある。そういうものがどこにどういうふうに使われるか、これは外部の者もできないし、まして検察、国税等は一切これにタッチすることはできないわけです。  だから、もとに戻りまして、ひとつこういう税金も納めない、あるいは公共的な負担も余りしない、こういうものはやはりできるだけ減らしていく。そうしないと、私たち平均余命が長くなるのは結構なことですが、それに伴って社会福祉制度を充実していかなければならない。それには当然、現在働いておる、いわゆる労働をしておる国民、労働をしておる法人、企業法人、営業を営んでいる法人だけが非常な厳しい徴税、追徴を受けて、新しい税制をつくっていかなければならない、こういうことになる。私はきょうはこれでこの問題はやめますけれども、また次回にでも論議いたしますが、ひとつこういう問題に対する対応策をぜひ立てていただくことを要望いたしておきます。  そこで、そういう状況にもかかわらずというか、とにかくそういう状況だからよけいに、この宗教法人とか、そういう法人だけではなくて、この前タックスヘーブンも言いましたし、いろいろ不公平税制になっているのですね。したがって、今日の財政の破綻が来て、新税というものがいまもくろまれておりますが、きのうやきょうあたり新聞を見ますと、もう消費税は、税調は一応答申をいたしておりますが、あきらめた。そして自動車関係税が二五%、酒税が三〇%、たばこが二〇%、こういうふうにどんどん上げるのだというふうなことが報ぜられております。しかも大蔵省決定、こう載っておりますが、それに間違いございませんか。主税局長、いかがですか。
  46. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 そのような記事は私も存じておりますが、例年いまの時期にそうでございますけれども、非常に華やかないろいろな記事が出ます。それは皆観測記事と言われるものでございまして、私どもの方で決定をいたしたとか発表をいたしたというものではございません。各社の記者の皆さんがそれぞれの立場で御勉強になって、それぞれの立場で予測を立てられていろいろに書いておられるというものでございまして、私どもが来年度どうする、ましていわんや率がどれぐらいになるであろうということをいま決める段階ではとうていございません。
  47. 只松祐治

    只松小委員 御勉強も、でたらめや筋違いの勉強ではないので、私はまことに当を得ている勉強ではないかと思うのです。そうすると、当たらずと言えども遠からずではなくて、当たっているのではないか。そういたしますと結局、せっかくいまから税調を開こうというときに一般消費税はこれでやめたとここの国会の場でお答えすることはなかなか困難だろうと思いますけれども、大体の方向としては——しかし、私か前から言っておりますように、本来もっと立法府が力を持って、こういうものは行政でするのではなくて、私たちがそういう法律をつくっていって、あなたが私と論議されたときにも、青木茂さん等が言っていますね、何も行政当局だけが責任を負うことはない、むしろ立法府がこういう問題を提起する、したがって立法府、この国会で論議する。国会で論議するときはあなたは、まだその段階ではないとか、決まってないとか言って逃げておられるわけですが、私は大体内定といいますか、ほぼ決まっておると思うのですね。したがって、私はもう少し国会でまともな答弁をしていただきたいと思う。  いまの段階で、ほぼ一般消費税というのは明年度、五十三年度はもうあきらめる、そしてこういうふうに他の税目の増徴を図っていく、こういうふうに移行しよう、こういうお考えに間違いはありませんか。
  48. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 それはまさしく只松委員のおっしゃいますように、近く開かれます税制調査会に五十三年度税制改正全般についての御審議をお願いするわけでございますから、その前に事務当局の方が方針を決定してしまうというようなことはないわけでございます。議論の材料といたしまして、現在公表されておりますし、私どもも御説明申し上げておるのは中期答申でございまして、各社の記者の方々が、その中期答申をベースにしていろいろ判断をされ観測されることは、もちろんそれを干渉するわけにまいりませんけれども、少なくとも大蔵省が決定したというような表現は全くの誤りでございますので、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。
  49. 只松祐治

    只松小委員 二十二日から税調が開かれるのだから、多分そういう答えだろうとは私も最初から予測はしておりました。だからこそ、先に国会の場で論議したらどうですか、こういうことを言っているわけですね。だから、税調との関係であなたたちは非常に苦しいというか、微妙な立場に立たされているだろうと思う。きょうじゃなくても、また一週間後なり十日後にも小委員会なり本委員会を開いて論議してもいいわけですが、きょうせっかく開かれたわけですし、こういうふうにぽんぽん新聞にも出ておるわけですから、およそその方向ならその方向。それから、私は税調の独立性ということを繰り返しお願いをしております。若干委員の変更はあったようでございますけれども、事務局くらい設けなさいと言ったら、小倉税調会長もそういうものが欲しい、こう言われておりますが、どっこい、主税局の方はそうはいかない。そういたしますと、税調に出すたたき台といいますか素材といいますか、そういうものは当然に主税局がお出しになるわけですね。したがってやはりこの段階で、二十二日から始まるならば、少なくともそれにたたき台を出される前に、国会に、国民の前にこういう方向で行きたいという一つの方向ぐらいはやはり示して、私は酒税を三〇%上げるかという率まできょう結論を出そうとかあるいはお答えしなさいとは申しませんが、大体こういう方向でいくということに間違いはありませんかということをお聞きしているわけです。どうですか。
  50. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 近く開かれます税調にどういう審議をしていただくのか、私がまだ成案を持っているわけではございません。  手順といたしましてはまず、新しい税調になったわけでございますから、いままでの税調がある意味で、中期答申そのもので述べておられますように、中期答申の内容をどうやって具体化するかは各年度改正で研究をするんだというふうに次の税調にバトンタッチしておられるわけでございますけれども、それを新しい税調が、中期答申の路線はそれでよろしい、その線でひとつ五十三年度を審議しようではないかということになるかどうかをまずお諮りしなくてはいけないだろう、私どもとしてはそうしていただくように希望いたしたいと思います。  一年以上かけて前の税調が御論議になったわけでございますから、いまから改めてイロハのイからやり直すということではとうてい間に合いませんので、私の希望といたしましては、ぜひひとつこの路線を踏まえて五十三年度議論しようというふうにしていただけるように希望いたしております。しかし、それはあくまでも新しい税調での御論議を待たなくてはならない。それを受けました上で、やはり来年度の経済見通しがまだ出ておりませんものですから非常にむずかしいのでございますけれども、なるべく早い機会に、来年度の経済見通しなりあるいは財政がこれにどう対応するかというようなことの数字が間に合わないにしても、一種の考え方を御論議願わなくてはならない。そういうものを受けました段階で、さてそれでは具体的な税目としてどういう税目を宗議しなくてはならないだろうか、ひとつ事務当局でたたき台を出してほしいというふうなお運びになるのだろうと思っております。その段階で具体的な税目をお出しする。  ただ、中期答申の路線を踏まえてということになりまする場合には、御承知のように中期答申は単に一般消費税のことを言っているわけではございません。いわゆる不公平税制の是正をやれ、また、既存の税制の仕組みの中でも増収可能なものはできる限りの増収措置を図れ、なおかつ不足するであろうからというつながりの答申でございますから、一般消費税の問題を御議論願うにせよ、そのほかに既存の税目で負担の増加を求める余地があるものは何かと言えば、中期答申では方向としましてはほとんど全部がその余地があるということになっているわけでございますから、やはり手順としては既存の税目全部についてこの機会に負担増加をお願いしていいかどうかということも御論議をいただく。そうやって論議がしぼられていって、それでは最後に五十三年度ではこことここを取り上げようというような手順を踏んでいかれるのだろうと思います。  くどくて恐縮でございますけれども、いまの段階でそのようなすべての議論を集約し、また、議論が出た都度私どもでできる限り新聞にも披露いたしておりますけれども、そういう議論を踏まえないでいきなりいま大蔵省がどこかの税目を上げることを決めるとか、ましてや率を決めるとか、そんなことはあり得ないわけでございますので、ひとつぜひその点を誤解のないようにしていただきたいと思います。
  51. 只松祐治

    只松小委員 時間があればこの問題をもう少し詰めたいのですが、時間がございませんから、逆な面で今度は減税についてお聞きしますが、各方面から不況対策等と関連いたしまして減税の必要が言われております。今度逆にあなたの方は、所得減税はしない、こういうことをほぼこれも明言をされております。あるいは土地税制については、総理も慎重にではあるけれども、前向きで検討しようというような意向が示されたと聞いております。それから、設備投資減税といいますか、これは行うべきであるということでそういう方向に傾いている、こういうふうにも聞いておりますが、以上三点について、時間がありませんから簡単にひとつその三点がどういう方向で検討されているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  52. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 いずれの問題も、最後に結論を得ますまでにはそれに応じまして、税制調査会にもちろんお諮りをしつつ、特に所得税減税のような非常に大きな問題は、税調の御意見を聞く前に政府としての態度が決まるはずはございませんけれども、いま各委員会などで御質問が現に出ておりまして、その場合に大蔵大臣としては、そういう御要望がありましても所得税減税はとうていそれにおこたえできるような情勢にないと思うということはお答えいたしております。  それから土地税制の問題は、土地税制の全体の枠組みを変えてしまうということは適当でないであろう、これも大蔵大臣としてはそう思うということをお答えしております。ただ、優良宅地の供給のためにいまの税が邪魔になっておる面があるとすれば、それは直さなくてはいけないだろう。税が邪魔になっているかいないか、邪魔になっていると思わないけれども、しかしやはりそれは十分邪魔になっていると言う方の意見は伺った上で、もし邪魔になっているところがあるならばそれは直さなくてはいかぬだろうということをお答えしております。  投資減税につきましては、これは大蔵大臣としては、いまの段階では要望にあるような投資減税というのは効果がないのではなかろうか、その意味できわめて消極的であるというふうにお答えをいたしております。
  53. 只松祐治

    只松小委員 最後に私は、いつも言いますように、税の場合は法律とともに徴税に問題がある、こういうことで論議をいたしておりますが、本当は本年度の税収の見通し等も聞こうかと思ったのですが、時間がありませんからやめますが、近ごろ非常に厳しくなってきております。  私の知っておる地域におきまして、プロパンガスの税の徴収が行われる。そこは、関東の一つのむしろ納税の促進の委員長のような立場をされておる方でありますが、そこに約一週間、多いときは五人から三人ずっと来て、税務署というのはよほど暇なんですな、このごろ仕事がなくなったのですか、こうそこの所長さんから言われたわけでございますが、こういった危険物というのは一つも脱税ができないような仕組みになっておる。にもかかわらず、そういうことが行われております。それで、ある地域におきましては、今度は大工さんを呼び出す。棟梁は、そのときに左官が来たりふすま屋さんが来たりいろいろある。しかし何日来いとぽんと呼び出す。したがって何だということになって、そこでけんかになったということも聞いております。あるいはある建設業者の場合には、五年間遡及して奥さんに贈与しただろうというようなことで、これは三年になったし、それから、こういうことは否認されたようでございますけれども、それは何千万だろうというふうに頭からぶっかけてくる、こういうことが行われております。  皆さん方おえらい上層部の方は、そういうことをなかなか御存じないだろうと思いますが、下々の私たちのところにはそういうことが寄せられてくるわけでございますが、税収の厳しいことはよく存じておりますけれども、余り国民にそういうむごいといいますか、無理な事態か起こらないように、ぜひひとつ中央官庁において御指導いただきますように要望をいたしておきたいと思います。お答えがあればあれですが、もしお答えがなければ結構です。御要望だけさせていただきます。
  54. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先生ただいま御指摘になりましたように、私たち税務の執行に当たりましては、納税者の御協力と、それからまた、それによりまして円滑な税務行政をやっていくというのが私たちの理想であります。そういった意味におきまして、私たちは無理のない税務行政をやっていくつもりでおります。
  55. 保岡興治

    保岡委員長 大島弘君。
  56. 大島弘

    大島委員 本日私がお伺いいたしたいのは、過日の九月二日、当小委員会において私が指摘いたしました三菱商事の脱税事件について、果たして現状を結果論的にこのままほうっておいていいのかどうかということでございます。  と申しますのは、あれ以来私のところに多数の電話あるいは手紙等が来て、大企業であるならば税金さえ払えばそれで済むのかということが、偽らざる中小企業やあるいは庶民の観測だろうと思いますので、私は、本小委員会を通じまして、果たして大企業であるならば税金だけ納めていればいいのか。また、二つの大きな問題がある。一つは青色申告の取り消しであり、もう一つは刑事訴追の問題である。私は、この二つについて本日お伺いいたしたいと思いますので、ひとつ納得のいくような答弁をお願いいたしたいと存じます。  私が先般九月二日の当小委員会におきまして質問したのと、その後の状況は大分違うわけでございます。と申しますのは、九月六日でしたか朝日新聞、あるいは九月十二日でしたか読売新聞その他の大新聞が、本事件につきましての概要をスクープして出された。そうして十月十四日でございましたか衆議院予算委員会におきまして、代表権のある会長である藤野参考人は、この所得は三菱のものと思われても仕方がない。情報の提供というような業務はやったこともないし、契約書もない、これは三菱の行為と見られても仕方がない。重加算税を払った以上は当然社会的に見て脱税と言われても仕方がない。社長も私も結論は同じ判定である。世間を騒がしてまことに遺憾である、こういうふうに言っております。その前に、九月二日の小委員会において、副社長の加藤参考人は私に対しまして、この所得は第三者のものであって当社のものではないと言っておる。この二つの大きな、会長、社長の見解と副社長の見解がかほどまで違うということは、まことに了解に苦しむところでございます。  つきまして、新聞記事その他私の手元に入りました情報によりますと、私が当小委員会で「X社」と言ったのは、実はバハマ連邦の首都ナッソーにあるパイコール社どいう会社である。それから、そのパイコール社とMIC、米国三菱との間に取引関係は一切ない。ただパイコール社の設立に当たってMIC、米国三菱が手助けしたことはある。それから、四十七年三月以降株の売買についても約五百億と言われる資金はほとんど三菱商事側が調達しており、バイコール社は一切出しておらない。そうしてこの期間に日本において株の売買で非常にもうけた。さらに株の売買だけではなくて為替レートにおいても、四十七年九月には一ドル三百八円であったのが、四十八年二月にフロート制となって二百六十円台になった。この巨額な利益も当然この中には含まれている。したがいまして三菱商事は、株の売買、為替差益、さらに脱税という三つの手段でもってこういう行為をした、こう言われております。あたかも外国の取引先から頼まれたかのように装い、証券会社に対するテレックスにはあたかもMIC、米国三菱が発信したかのように装うという、こういう手段でもってこの事実が行われた。さらに三菱商事側は、これはマスコミには秘密にしてくれ、アメリカには通報しないでくれという国税局に対する約束もあった。  大体事情は以上のようでございますけれども、私はここで、国税庁にこのとおり違いないかと言ったら、このとおりだと言うことは確かに守秘義務にひっかかると思いますので、私が言ったことと大きな差があれば差がある、なければひとつ黙っていていただきたい。
  57. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先生指摘のように、ただいまの先生の御指摘になりました問題について、それが全部正しい、あるいは正しくないということをここでお答えするのは御容赦を願いたいと思うわけでございますけれども、かって私が大蔵委員会で御答弁いたしましたように、いろいろと日本新聞は取材をしておられるということを感心している二とを申し上げたわけでございます。ただ、個別にわたって一つ一つが、これが正しい、これが正しくないということを申し上げるのは御容赦をいただきたいと思います。
  58. 大島弘

    大島委員 大体その答弁で結構だと思います。  さて、法人税法百五十九条、偽りその他不正の行為により法人税を免れた者は三年以下の懲役、五百万円以下の罰金に処するという、いわゆる租税通脱犯の規定があり、実際的には国税犯則取締法の規定によって通常は告発、それから起訴、裁判、こういうふうな段取りで行われるわけでございます。  そこで、偽りその他不正な行為により法人税を免れたという構成要件を充足するには何であるかということでございますけれども、これは法務省にお伺いしたいのですけれども、通説は、一つは、法人税を免れる犯意がある、それから二番目には、偽りその他の不正行為がある、それから、その不正行為と脱漏結果に相当因果関係がある、普通この三つの要件を充足すれば構成要件を充足して犯罪である、こういうふうに解釈しておるわけでございますけれども、法務省の見解はいかがですか。
  59. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  そのとおりでございます。
  60. 大島弘

    大島委員 そうすれば、二番目の偽りその他不正の行為のある、これはもう明白だと思うわけです。あたかも外国の会社から頼まれたかのように装い、あたかも米国三菱が発信したかのようにテレックスを打っている。偽りその他不正行為。それから、百十何億を脱漏した、これは当然相当因果関係がある。問題は第一の犯意でございます。これが一番むずかしい問題で、起訴、裁判についても常に争われる問題でございますけれども、先ほど申しましたように、当衆議院予算委員会において代表権のある会長が、世間を騒がして申しわけない、三菱のものと思われても仕方がない、これは社長も私も同じ考えだと言われております。私はこれで犯意は十分だと思うのでございますけれども、御参考までに聞きたいのですが、そういう場合に、委員会における議事録は刑事訴訟法上書面の証拠能力はどういうふうになるのか。私は、刑事訴訟法三百二十三条三号の「その他の書面」で、当然証拠能力がある書面だと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  61. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  多少専門的な言葉を使わせていただきたいと思いますが、刑事訴訟法はいわゆる直接審理主義というたてまえをとっておりまして、原則として証人主義でいくということでございます。この精神は言うなれば、伝聞供述、すなわち書面を排斥して人証中心主義でいくということになっておるわけでございます。したがいまして、供述を録取した書面は原則として刑事訴訟法上は証拠能力がないということになっておりまして、その例外が三百二十一条の一項各号、一号から三号まで列挙されておるわけですが、そこに供述者が死亡した場合とか海外にある場合とか、こういう場合には例外的にその証拠能力を認めるというたてまえになっております。しかし、これはあくまでも供述を伝聞ということで排斥するという精神でございまして、この伝聞供述とは直接関係のない、言うならば商業帳簿のたぐいでございますが、これは客観的な事実関係を証明するということで、三百二十三条で証拠能力が認められておるわけでございます。したがいまして、三百二十三条の三号「その他の書面」と申しますのは、商業帳簿等に類似するようなものというふうに考えておりまして、たとえて申し上げますならば、定期刊行物記載の市場の価格、株の相場等をあらわしました市場の価格、あるいは競馬の出走表、その他の統計表等のような客観的な事実を証明するような文書、これは三百二十三条に相応するという理解をしております。  したがいまして、国会で参考人が証言をしたということは、これは供述でございますので、原則としてその書面は証拠能力がないということになろうかと思います。
  62. 大島弘

    大島委員 それはそれで結構だと思うのですけれども、いずれにしても衆議院予算委員会において会長がこういうふうな発言をしたということは、今後査察官なりあるいは検察官の面前でそうやすやすと覆すことはできないであろうと私は思うわけでございます。  そういうふうにいたしまして、いずれにしても構成要件の充足を私たちは認めておる、こういうふうに解釈するのでございますけれども、一体これについて検察官が査察官から報告を受けているのか、それとも検察官独自でこういう調査をされているのか、その点につきましてひとつお伺いいたしたいと思います。
  63. 藤仲貞一

    藤仲政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、査察調査は告発を目的として行われるものでございますし、告発によって刑事訴訟手続に直結する調査であるわけでございます。そういうことからいたしまして、査察立件をいたしますに当たりましては、刑事立証をするに十分な証拠を収集し得る見通しがあるかどうかということが大きなポイントでございます。  本件の場合、前回の小委員会大島先生も御指摘になりましたとおり、公訴維持上の問題があって実は立件がむずかしいというぐあいに判断した次第でございまして、そういうことから、当時におきまして検察庁にこれを連絡したということはございません。
  64. 大島弘

    大島委員 公訴維持がむずかしいかどうかということは、これは主として検察官が決めることで査察官が決めることではない。査察官は専門外なんだから、これは主として検察官が決めることだと思う。  法務省の方は連絡を受けているのですか。
  65. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 ただいま査察部長の方からお答えがありましたとおり、連絡は受けておりません。
  66. 大島弘

    大島委員 検察官は、査察官から連絡を受けなくとも独自の調査でできるわけですね。かつてそういう例は、日通事件がたしかそうじゃなかったかと思うのですが、その点いかがですか。
  67. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  先生案内のとおり、直接国税通脱事犯、これは関税法違反事件とか間接国税違反事件等とは異なりまして、税務当局の告発というのは訴訟条件とはされておりません。したがいまして、純理論的に申し上げますならば、検察官あるいは警察官が税務当局の告発をまつまでもなく直接捜査をする、その事件を処理するということは抽象的には可能でございます。ただ、現在までそのような運用はほとんどなされておりません。  その理由といたしまして、まず第一に、この種事犯、きわめて高度な技術的な、かつ専門的な知識を必要とする事犯でございまして、もちろん東京地検の特捜部にもそれ相応の検事が若干名はございますし、いささか個人めいて恐縮ですが、私自身も何回かこの種の事件を取り扱ったことがございまして、それ相応の自信を持っておりますけれども、ただ、仮定の話といたしまして、何千億あるいはまた何百億というふうな大規模な企業の脱税事犯を捜査するということに相なりますれば、やはりこういう特殊な技能を持った検察官あるいは検察事務官を何百名という大量の人員を投入いたしまして、かつ恐らく数カ月にわたるような期間を要して初めてまとめ上げることが可能なんだろうと考えておりますが、そのような体制には、実際問題として検察としてはちょっと不可能であるということが第一の理由でございまして、これまでも他事件の捜査中に脱税に関する種々の端緒を検察官あるいは警察官が把握したという例はございますが、その場合におきましても、その関係資料をやはり国税の方に提供いたしまして、基礎からじっくりと査察官をして調査してもらうという立て方をしております。現実問題といたしまして、警察あるいは検察庁がこういう大規模な——こういうと申しますのは、一般的な話でございますけれども、大企業を相手としてその脱税を摘発していく、最初から取り組んでいくということは、かなり困難であるということが第一の理由でございます。  それから第二の理由といたしましては、逋脱事犯もわれわれの理解では、基本的に行政罰則であるというふうに考えております。刑事犯でございますれば、これは論ずるまでもなく、警察官あるいは検察官が最初から取り上げまして、事件の捜査、処理に当たるというのが筋でございますが、行政罰則につきましては、われわれの運用の基本的な考え方といたしましては、やはり所管行政庁の御意向なりお考えなりを基礎といたしまして、それに基づいて運用していくということが、その分野における行政官庁の適切なまた円滑な行政を確保する手段でもあると考えておりまして、行政庁の意向とは全く関係なしに警察が行政上の問題につきまして手を出していくということは、やはりできる限り避けるべきではないか、かような理解を持っております。  したがいまして、脱税事犯につきまして、最初から警察あるいは検察庁が乗り出していくというような考え方はわれわれいままでしておりませんので、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  68. 大島弘

    大島委員 いまの答弁は、あくまでも査察主導型だと言われるんだが、それでは国税庁当局に聞きたいのですけれども、私が特にこの問題を取り上げるのは、毎年平均して百件の査察事犯がある。全部が全部中小企業あるいは個人、大企業というのはいまだかってやられたことがない。百十何億というふうな所得の脱漏をしてこれが査察事件にならないということは、あなた方が職務執行上においてどういうふうに考えているのか。あくまでもこれは公訴維持ができないからだめだ、そういうふうに考えているのか。  それはなるほど、中小企業だって脱税する者は悪い。悪いですけれども、彼らの中には、査察の立件をされたがために、あるいは自殺したりあるいは破産したりする者が多々ある。こういう大きな会社がこういう大きな脱漏をしてあなた方が検察官に連絡しないということ自体、まさにこれは公務員の職務の怠慢であると私は思う。その問題と今後の方針をお聞かせ願いたいと思う。時効は来年に迫っているのですよ。
  69. 藤仲貞一

    藤仲政府委員 お答え申し上げます。  私ども、大企業であろうが小企業であろうが、真に悪質な脱税を行っている者に対して、これは十分に査察立件をして告発できるというものについては、そういう手続をとるように鋭意努力しておるところでございます。  本件につきましては、ただいま御指摘ございましたように、証拠の収集という面が十分に行われるという見通しが得られなかったことが主たる理由でございます。  なお、本件につきましては、国税犯則取締法が調査権限の属地主義をとっておるというような事情もございますので、あわせて申し上げておきたいと存じます。
  70. 大島弘

    大島委員 そうすると、国税庁当局は、この問題は属地主義をとっているから、この行為は海外で行われたから対象にならないのだとか、そういうふうな考えをとっている。それから第一、こういう大きな問題を検察当局に、いま告発要否勘案協議会があるかどうか知らぬけれども、連絡しないということがすこぶるおかしいと私は思う。その点についてお答え願いたい。
  71. 藤仲貞一

    藤仲政府委員 お答え申し上げます。  海外で行われたからということがすべてではございません。ただ、先生案内のとおり、海外を舞台といたしましていろいろなことが行われておりますので、その関係の証拠を収集するということが国税犯則取締法において海外においてはできない、こういうことでございます。  もう一つ御質問がございました、なぜ連絡しなかったかということでございますが、査察立件をするに当たりましては、先ほども申し上げましたように、私どもの方で独自で判断をいたしまして立件をいたし、立件いたしました上検察庁の方にこれを通知する、さらに調査を了しまして告発を要するか否かという段階におきまして協議をいたしておるというのが長い間の慣行でございます。
  72. 大島弘

    大島委員 それでは最後に聞くけれども、これほどの大きな事件を国税庁だけで処理して検察の方へは連絡しないと言われるのですか。その結論だけ答えてくれ。時効は来年ですよ。
  73. 藤仲貞一

    藤仲政府委員 お答え申し上げます。  一般の査察事件と同様に、立件をするかどうかということは私どもの判断でさしていただいております。
  74. 大島弘

    大島委員 いや、立件をするとかいうことを聞いていない。立件をするかどうかということはあなたの方の考えだと言われるのですか。査察立件ですか。
  75. 藤仲貞一

    藤仲政府委員 はい。
  76. 大島弘

    大島委員 査察立件をするかどうかということはあなたの方の考えでいく、こういうことですか。——それでは、こういう問題はもう検察に連絡なしで、あなたのところだけで判断するということですね。
  77. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先生御承知のように、まず査察部門で取り上げるかどうかということになりますと、まず査察内部で査察立件という手続をとるわけであります。それで、国犯法の手続によりまして調査をいたしまして、その結果をもって告発するかどうかということは、またその段階で検察庁の方と御協議申し上げるということになっておるわけでありますけれども、本件につきましては、まず最初にこれを国犯法の規定によって調査をするという、つまり内部的な査察立件の手続でありますけれども、これは、現在のところその手続をとる考えはございません。  その理由といたしましては、御承知のように、査察立件いたしますのは、最終的には刑事訴追を求めるというきわめて重要な手続でございます。そのためにはおのずから、査察の内部立件の手続も慎重にならざるを得ないわけでありますけれども、本件につきましては、先ほど査察部長の方から御答弁申し上げましたように、かなりの部分が海外の問題である。したがって、国犯法によって、海外のことまで調査するという権限がなかなか及ばないということもございます。  それから、本件につきましては、修正申告を三菱商事が出しまして、その後東京国税局が重加算税を決定したわけでありますけれども、それまでにいろいろと議論がございました。三菱商事の方としてはまた、商事としての言い分がある。それから国税当局としては、それに対しまして御承知のように、法人税法の規定によりまして実質課税の原則によって、これを三菱商事そのものの所得であるというふうにわれわれが認定して三菱商事側を説得したということもございまして、いわゆる脱税そのものの犯意の点についても、一般の脱税を意図した不正経理あるいは偽りその他の不正行為に必ずしも該当するかどうかということにつきましても、私たちとしては疑問がございまして、そういったことで、行政罰としての重加算税は課税し、同時にまた、税金もわれわれの認定に従って修正申告を出させたわけであります。しかし、さらにそれ以上進んで刑事訴追を求めるというところまで踏み切るわけにはいかないということで、これは査察としては内部立件しなかった。したがって、現在のところそういったことは考えていないということでございます。
  78. 大島弘

    大島委員 時間もないのであれですけれども、そういうことをして大企業は金さえ払えば立件を受けないんだというようなこと、これは本当に正しい国税庁の仕方かどうかということを一億国民が目を据えて見ているということだけを申し上げまして、最後の質問に移りたいと思います。  今度は、当該三菱商事に対して青色申告の取り消しをしていない、これはまたすこぶるおかしい。この前国税庁は私の質問に対して、これは法人税法百二十七条一項三号、「取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し」「その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること。」これにひっかけたわけだろうと思うのです。というのは、私の解釈のように、これを並列的に「全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し」または「その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由」というふうに解釈すれば、この場合は当然青色の取り消しの範囲になる。しかし国税庁の解釈は、全部または一部を隠蔽、仮装しているけれども、かつその上、その他全体について真実性を疑うに足りる相当の理由ということは、三菱商事は売り上げ何兆だ、それは全部記帳されている。しかしこの百十何億というのはその何兆というものに比べれば微々たるものだ。そうすれば、前段と後段とを、なおかつその上というふうに続けて読むとそういう解釈になる、これはすこぶるおかしい解釈だと思うのです。たとえばそれならば、年間何兆の売り上げをしている物産、住商、伊藤忠、丸紅、こういうものが今後これと同じケースで百億、場合によっては千億脱漏しても、青色申告の取り消しにならない、そういう解釈はすこぶるおかしいと私は思うのですが、法制局のお考えはいかがですか。
  79. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 法人税法の百二十七条一項三号には、「その他」の文言が用いられております。「その他」の文言が用いられているということからいたしますと、先生のおっしゃるように、なおかつというような読み方をするのは適当ではないんじゃないだろうか。もしそういう読み方々するのであるとしますれば、他にしかるべき文言が用いられていたのではなかろうかというふうに考えます。  それでは、この三号につきましてどういうふうに考えるのかということになりますが、「その他」という文言が用いられておりますことと、それから青色申告制度の趣旨ということからいたしまして、まず、青色申告制度の趣旨の期待を損なうことになります取引の仮装、隠蔽というものを掲げまして、しかし、それでは不十分なので、「その他」以下の文言を規定したということであろうと思います。したがいまして、そういう意味から申し上げまして、この「その他」をなおかつというような趣旨で読むということは適当でないのではないかというふうに思います。ただ、御承知のように、青色申告の承認の取り消しにつきましては、税務署長の裁量権に属しておりますので、その意味におきまして、一部の隠蔽、仮装がありましたから直ちに取り消しをしなければならないということにはならないと存じます。
  80. 大島弘

    大島委員 いまの法制局の有権解釈によりますと、なおかつその上と読むのはおかしい、こういうことでございますね。なおかつその上と読むのは適当でないといまおっしゃいましたな。
  81. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 そのとおり申し上げました。したがいまして、読み方といたしましては、前半を読みましても、隠蔽、仮装した場合に、また百二十七条一項の柱書きに戻りまして、「取り消すことができる。」こうなりますし、後半の「その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること。」この場合にも「取り消すことができる。」こうなるわけでございますので、その両者が、一部の仮装、隠蔽というにとどまりまして、全体としましての真実性を疑う点で比較考量される場合があろうかと存じます。
  82. 大島弘

    大島委員 わかりました。それは私は正当な解釈じゃないかと思うのです。  そうすれば、四十九年三月五日の当大蔵委員会における国税庁答弁は、これは取り消しと見ていいですね。国税庁はそのときに、これは、なおかつその上と読むんだというふうに答弁しているのですが、これはいまの法制局の解釈から見て、取り消すというふうになるわけですね。
  83. 磯邊律男

    磯邊政府委員 法制局の有権解釈というのは、政府の解釈を統一するものでございますから、ただいまの法制局の解釈に従うということにいたします。
  84. 大島弘

    大島委員 そうしましたら、本件の場合、三菱商事の場合ですけれども、全部または一部を隠蔽、仮装している、これはもう事実だろうと思うわけです。これも取り消しの対象に十分なり得るということは言えると思うのです。いまのような解釈の上に立てば、後段と続けて読まなければ。法は「取り消すことができる。」と書いているんだし、そういう意味からいっても、本件の場合は青色申告の取り消しの対象になり得る、こう解釈しておりますかどうですか、国税庁の解釈は。
  85. 磯邊律男

    磯邊政府委員 御承知のように、青色申告の取り消すことのできる要件というのは、法人税法百二十七条の一号、二号、三号、四号とございまして、この一号、二号、四号というのは、これは客観的な、形式的な事実でございますから、いわゆる議論の余地はないわけでありますけれども、この三号によりましては、ただいま御指摘のような表現になっておりまして、これにつきましては、私たち総合的に判断をして、青色申告の取り消しに該当するかどうかということを決めておるわけであります。  三菱商事の場合でも、確かにそういったことで税務申告上の誤りはありましたけれども、しかし、それをもって直ちに青色申告そのものを、会社全体の帳簿に対して疑いを持つ、あるいは信憑性がないというふうな事実をもって、青色申告の取り消しに該当するかどうかということ、これはそこまで取り消す必要はないというふうにわれわれは解釈いたしまして、青申の取り消しをしなかったわけであります。  ただ、余談になって失礼ですが、追加させていただきますけれども、青色申告の取り消しに対しましては、私たちかなり慎重に考慮しておりまして、必ずしも一律的に青色申告の取り消しをするということはやっておりません。査察事件等で告発いたしますような事案につきましては、直ちに青色申告の取り消しをいたしますけれども、普通の行政罰等で重加算税等を課すような場合については、非常に慎重に検討いたしましてこの制度を運用しているということをお答えしたいと思うわけであります。
  86. 大島弘

    大島委員 この前あなたが私に答弁したときは、いまのこの百二十七条の解釈と違ったような解釈だった。ところがきょうの解釈は、そういうふうに一応この前のあなたのお考えとは違っているわけだから、全部または一部を隠蔽、仮装した場合は青色申告の取り消しになり得るのだ。たとえほかの売り上げがいかに大きくて、それが三菱の帳簿に記載されておっても、少なくとも百十何億というのが隠蔽または仮装されておった。その証拠に、それだから向こうは重加算税を払っているのだ。これは新たな法解釈の見地から、もう一度この青申の取り消しに対して考慮すべきではなかろうか。先ほどのようにもう査察立件もない、青色の取り消しもない、大企業は金さえ払えばいいのだ、税金さえ払えばいいのだ、こういう印象を与えること自体が私は非常にこわいと思う。こんなものはあなた、中小企業だったら青色の取り消しは一遍です。もう問題ないと思う。最も悪質なものです。まだ裏帳簿をつけて——これはよくないことですが、裏帳簿をつけておる場合はまた調査の手引きになる。しかし、本件の場合のごときは全く何もつけてない。しかもその書類を焼いている。悪質というのは、これほどの悪質はないと思うのです。そういう点で、もう一度これを検討し直す努力はしようと思われませんか。
  87. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、青色申告の取り消しというのは、取引の一部について隠蔽、仮装のあることの理由をもって直ちに取り消しに結びつくというものではないと私たち理解しております。現実の運用といたしましては、青色申告の取り消し制度全体の趣旨に照らしまして、隠蔽、仮装の事実が帳簿の記載の事項全体について真実性を疑うに足る程度のものかどうかということ、そういう点を中心といたしまして総合的に判断しているわけであります。  このたびの三菱商事の件も、確かにそういった形式的には第三号に該当する事実はございましたけれども、それをもって直ちに帳簿全体の真実性を疑うに足るということまで結びつくかどうか、そこまでは私たちは考えておりません。したがいまして、この三菱商事についての青色申告の取り消しということはただいまのところ考えておりません。
  88. 大島弘

    大島委員 いや、ちょっとその解釈は非常におかしいと思うのです。帳簿の全体についての真実性を疑うに足りなくてもいい、つまり前段の全部または一部を隠蔽、仮装した場合は取り消しの対象になり得る、いまのはそういう解釈じゃなかったのですか。
  89. 磯邊律男

    磯邊政府委員 帳簿の一部について仮装、隠蔽があったこと、それをもって直ちに青色申告の取り消しというふうな運用はしていない。やはりあくまでも考え方としましては、そのことによって帳簿全体の信憑性を疑うに足るといったような場合に、総合的に判断して青色申告の取り消しをするかしないかということを決めているわけでございます。形式的に見ますと、ただ帳簿の一部について仮装、隠蔽があれば取り消すことはできる要件に該当いたしますけれども、運用といたしましては、そこまでストレートに結びつけていないというのが、実際の運用でございます。
  90. 大島弘

    大島委員 本件の場合は、帳簿をごまかしているとかなんとかいう問題じゃないと思うのです。それは大会社ですから、これ以上完備している帳簿はないと思うのです。これの真実性を疑うのはだれもいない。ただ問題は、それ以外にけしからぬのは、帳簿どころじゃないのですよ、何もつけない。つけないで、その書類を焼いてしまっている。したがって、帳簿の全体の真実性を疑うに足りるということと結びつけるのは本件はおかしいと思う。帳簿自体はなるほど恐らくこれほど完備した帳簿はないと思う。問題は隠蔽、仮装、これは隠蔽でしょうがね、仮装じゃなくて隠蔽であるけれども、隠蔽部分があるのです。百十何億という所得の脱漏の隠蔽があるのだ。その場合にも取り消しの対象にならないのか。帳簿の全体の真実性を疑っているのじゃないのです。その点どうですか。
  91. 磯邊律男

    磯邊政府委員 事実としては、そういった仮装、隠蔽があったことは事実でありますけれども、実際に青色申告の取り消しをするかしないかということを私たちが判断する場合には、そういった事実が帳簿全体の信憑性を疑うに足るものであるかどうかということを中心に総合的に判断いたして決定しているということでございます。
  92. 大島弘

    大島委員 時間もありませんが、それであるならば今後、大商社、大メーカーは、本来の帳簿をちゃんとつけておれば、こういうことをしても青色の取り消しの対象にならぬ、こういう前例があるんだから。たとえばある商社が五百億、千億の脱漏をする。これと同じ手口でペーパーカンパニーを使って脱漏する。しかしそれらの本来の帳簿はまことに真実性がある。そういう場合にでも、これからはこういう青色の取り消しの対象にはならない、こういうふうになるわけですか。
  93. 磯邊律男

    磯邊政府委員 このたびの例が全般的な先例として決まったというわけでございません。個別的な問題になって恐縮でございますけれども、この三菱商事の場合にはそもそも、法人税法の規定による実質課税の原則というものを援用いたしまして、それによって三菱本社の課税であるというふうに私たちが決めつけたわけでございます。したがいまして、最初から脱税の意図を持って帳簿を改ざんしたかどうかということについては必ずしも明確ではない点もございます。そういったことで、あえて青色申告の取り消しまでいく必要はないというふうに判断したわけでありますけれども、ただ、初めから帳簿を改ざんしたり、あるいは仮装、隠蔽して、それが明らかにもう議論の余地なく脱税に結びつくような行為であれば、それはやはりその会社の規模あるいは金額等のいかんにかかわらず、青色申告の取り消しをするという場合もあろうかと思います。このたびの例をもって今後全部そうなるかというふうな御質問に対しては、そういうことはございませんということをお答えしたいと思います。
  94. 大島弘

    大島委員 それはその当時のいわゆる五十年三月現在においてはそうかもしれないけれども、先ほど言いましたように、十月の十四日に藤野参考人が予算委員会において、情報の提供というような業務をやったこともないし契約書もない。これは三菱の行為と見られても仕方がない。世間を騒がせて申しわけない。脱税といわれても仕方がない、こういうふうに言っているんですね。これを実質課税課税した。実質課税というのは、本来は三菱の所得ではないけれども、ほかの第三者の所得であるけれども、実質上所得が帰属すると見られて課税するのが実質課税でしょうけれども、トップがこういうふうに言っているわけですね。どうですか。これはまだそれでも所得の帰属があやふやだ、したがって青色の取り消しもできない、こういうふうに言われるのですか。
  95. 磯邊律男

    磯邊政府委員 藤野会長がどういうふうなお気持ちでこの前の予算委員会でお答えになったかは私はわかりませんけれども、私たちの解釈によりますと、いろいろ議論はあったかもしらぬけれども、最終的には国税の認定に従ったということを表現したものだろうと思います。したがいまして、これはある意味におきましては一般の脱税事犯とは若干ニュアンスの違うケースだろうと私は考えております。実質課税の原則を適用するにはなかなかむずかしい問題がございまして、三菱商事としてはいろいろな意見もあったかと思いますし、国税局はそれに対してまた反論をしたわけでありますけれども、最終的には国税局の意見に従って税金を納め、また重加算税の決定も受けたということでございますけれども、その点が一般の明らかに脱税を目的として帳簿を改ざんし、あるいは取引の一部について仮装、隠蔽していたという事件とは若干違うんじゃないか、そういうふうにわれわれ考えております。したがいまして、現在でも三菱商事に対します青色申告の取り消しをやるということは考えておりません。
  96. 大島弘

    大島委員 それは確かに一般の場合とは違います。一般の場合と違うという意味は、これほど悪質なものはないと思う。一般の場合は、普通ならば、売り上げ除外、架空仕入れ、あるいは在庫の調整というような方法で脱漏をするのがあたりまえですけれども、これは何もそういうことではなくて、全くのペーパーカンパニーを使って脱漏をしておる。これほどの——私は、そういう意味で一般の場合と違うとおっしゃるならまあ理解できますが、時間も切れますので、いまの青色申告の取り消しの問題と査察立件の問題、これはいずれにしても国税庁の姿勢が問われる問題だということを、一億国民がこの問題を監視しているのだと、そういうことを申し上げまして、私の質問を終わりますが、最後に、これは要望ですけれども、五万の税務職員はまことによく働く。今回の場合も、これは東京国税局の調査官がテレックスで発見した。普通ちょっと考えられないような努力で、こういう非常な努力に報いてあげるためには、やはり多年国税会議等が主張しておりますような中高年齢者の優遇官職の増設ということを、私はこの際長官にぜひお願いしたい、そして彼らの勤労意欲をますます高めていただきたい、そういうふうに要望いたしまして、時間が参りましたので、私は質問を終わります。
  97. 保岡興治

  98. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間が余りありませんので、端的に何点かお尋ねをしたいと思います。  そこで、初めに主税局長にお尋ねをいたしますが、きょうの新聞あるいはテレビ、ラジオ等で歳入欠陥の問題が大きく報道されております。そこで、この文章によりますと、「大蔵省の大倉主税局長は、十六日、自民党本部に大平幹事長を訪ね、今年度と来年度の税収見通しを説明した。この中で同局長は、「今年度税収は補正後の十七兆九千四百億円より不足するのは確実だ」と歳入欠陥が避けられないことを明らかにした。」こういうふうに括弧つきで報道されております。  これは自民党の方に行って説明をなされたのでしょうけれども、やはりこういうことは五十三年度税制を考える上において非常に大事な問題でありますので、この席において、このとき説明をされたこと、歳入欠陥五千億というふうに一応出ておりますけれども、どの程度のものを大体推計しておられるのか、この辺のところを答弁を承りたいと思います。
  99. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 昨日、私と主計局長が自民党の幹事長にお目にかかったことは事実でございます。主たる目的は予算編成の日程を御相談しに参ったのでございますが、そのときに、来年度は予算編成が従来以上に非常にむずかしい局面にあるということは申し上げました。そのお話を中心にいたしまして、今年度がどうかなということになりまして、今年度はいまのところ九月末までしかわかっておりません。九月末はすでに公表いたしております。当委員会にも資料としてお出しいたしておりますように、私どもの言葉で申します進捗率によりますと、前年に比べまして三角〇・一%でございますので、九月末の状況でございますればいわばとんとんという形になっているわけでございます。しかし、今後の見通しの問題といたしまして、どうもある程度その三角がだんだん広がっていくのではなかろうか。つまり補正後税収が年度内に予算どおりに入ってくるという見込みはまずないということを申し上げました。それがその欠陥確実というふうな表現になったんだろうと思います。  しかし、どの程度の大きさのものになるかは、遺憾ながら全くまだわかってまいりませんということも申し上げました。と申しますのは、余りに不確定要因がまだ多うございまして、九月末までしかわかっていない。これからの月々のペースの中で、一番大きな要素は三つございます。一つは、十一月末税収にかなり入ってまいりますのですが、九月決算でございます。これは、各社の決算予想というようなものは私どもフォローして勉強はいたしておりますが、実際に税収になるものと各社の決算予想とはそれぞれかなりの食い違いがあるのが通例でございますので、十一月末の状況を見ないと何ともわかりません。それから年末のボーナス、これもいろいろな予想が出始めておりますが、これまた実際にふたをあけてみるまではわからない。それからさらに、いつまでたってもわかりませんのは、三月十五日が期限でございます申告所得税、これはかなり大きなオーダーでございますので、四、五%のブレでございましても数字的にはかなり大きなものになりますが、これは実は予測すべきデータというものはないわけでございます。  以上三つの非常に大きな変動要因を抱えておりますので、歳入不足が避けられないという感触は申し上げましたし、また、そういう判断をもって今後の予算編成に臨まざるを得ないでありましょうということを申し上げたのでございますけれども、どのくらいの金額になるかはわからない。しかし、いつまでもわからないというわけにはいかないので、年内編成の日程であるとすれば、十二月のぎりぎり十五日とか二十日とかまでにはできるだけのデータをそろえた上で、一種の見切りをつけて推計を行わないと五十二年度の税収がわからないということになります。そういうようなことをいろいろ申し上げておったわけでございます。  したがいまして、ただいまの御質問に対するお答えといたしまして、やはり幹事長に申し上げたのと同じことを申し上げることになるわけですが、ある程度の歳入不足になることは避けがたいと思います。しかし、それがどれくらいの大きさのものになるかということは、残念ながらまだ私どもとしてわかりません。したがって、幹事長にも数字は何にも申しておりませんし、きょうの委員会でもちょっとお答えができないわけでございます。新聞紙上いろいろ数字があるではないかという御質問になるかもしれませんが、これは、ごらんのように各紙それぞれ違いますし、非常に大きな幅で動いている新聞もございますし、それはまた、先ほど只松委員にお答えしましたように、各紙それぞれの記者の方々が鋭敏なる頭脳でそれぞれの予測を立てられたのであろうというふうにしかお答えできないのが現状でございます。
  100. 貝沼次郎

    貝沼委員 大体そんな答弁になるのだろうと私は思っておりましたけれども、そこで、歳入欠陥がほぼ確実に起こるであろうというような予想が立ってまいりますと、ここで問題になってくるのは財源対策ということになってくるわけでありますが、これは主税局直接の問題ではありませんけれども、しかし、大蔵省内としてはやはりそういった相談というか打ち合わせというものがそろそろなされておらなければならないと思うわけでありますが、そういった話はございますか。
  101. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 実は、たしかこの小委員会であったと思いますが、やはり只松委員の御質問だったと思いますけれども、ことしの歳入はどうだという御質問がありまして、そのときに、自然増収というのはとうてい期待できないのではないでしょうか、何とか予算に届いてくれないかと思っておりますが、というようなことをお答えしたのが九月でございました。それ以後、遺憾ながらその心配が現実のものになりつつあるわけでございます。したがって、補正を組むころから心配はしておったわけでございますので、万一足りないときにどういう手段をするかということは事前に考えておいてくれよということは、部内ではすでに申しております。ただ、具体的に何をやるかというのは、実はどれくらいの幅かということと表裏一体でございますものですから、関係部局としてはどれくらいになりそうか早く教えてくれと、こう言っておりますし、私どもの方はもうちょっと待ってくれ、まだ自信のある数字が出ないのだということで、お互いに困ったなと言いながら今日に来ているという状況でございます。
  102. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは次に移ります。  来年度、五十三年度税制についての考え方でありますが、たとえば中期税制の答申であるとかあるいはいろいろな報道、うわさ等を考えてみますと、五十三年度税制改正では基本的に増税型というふうに言われておるわけでありますが、これは本当にそういう型ですか。
  103. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 これも先ほど只松委員にも別の角度からお答えしたわけでございますけれども、何としましてもやはり税制も全体の経済政策の中の一つでございますし、全体の経済政策の一環として考えるべきものだと私は前から思っておりますので、やはり五十三年度の経済見通しとそれに対応した財政がどういう役割りをしなくてはならぬのかということとの関連で考えてまいりたいと思っております。その意味では、計数的にはいかんせんまだ姿が非常にはっきりしないわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、事務的に考えてみますと、歳出内容を極力洗い直すということは、中期答申でも強く要望されておりますし、それがなくても、主計局としては歳出内容の洗い直しというのはぜひやりたいということを言っておりますけれども、それによって歳出の総額を大きく切れるかどうかということはまたおのずから別の問題でございますし、同時にまた、景気に対して財政に対する期待が非常に大きい、少なくとも景気を下支えするだけの財政規模というものはどうしても必要であろうという面は否定できないと思います。その意味で、歳出総額を大きく切って運営をしていくということにはならないのではないか。  そういたしますと、財源をどう考えるか。一部には国債は幾ら出してもいいではないかという御意見もございますし、その辺を十分議論しなくてはならないでしょう。国債を非常に大きく出すとして、一体それが市中消化可能かという限界まで近づきつつあるのかもしれませんので、その点も十分議論しなくてはならない。  したがって税の方も、方向といたしましては、税目ごとに洗い直しをして、負担の増加を求めてもいい、しかもそれが全体の景気対策としては大きく矛盾することはないだろうというものが、最後に検討の対象としてしぼり出されてくるということがあるだろうと思いますけれども、それが具体的に何であるかということになりますと、先ほどお答えいたしましたように、まず経済情勢の方、それから財政全体の役割りの方から入っていって、税調としてもその御議論をしていただいた上で、さて五十三年度にどれを取り上げるかということになります。  いずれにしましても、減税ができるという状態ではないのではないか。したがって基調としては、何か増税を考えて、しかもそれが全体の財政運営なり経済運営と矛盾しないというものがないだろうか、何らかの増税を考えざるを得ない状態ではなかろうか、事務的にはそう考えておりますけれども、なおくどくて恐縮でございますが、それは計数的な見通しが立ちませんと、余りいまの段階で具体的な姿が浮かんでこないわけでございます。もう少し計数的な詰めが早く出てきてほしいということで、率直に申し上げまして企画庁事務当局に対しましては矢の催促をしているわけでございます。
  104. 貝沼次郎

    貝沼委員 非常に回りくどい、わかったようなわからないような答えですけれども、結局やはり増税の方向は考えておるということですね。どうも考えざるを得ないということですね。  それで、その規模等には経済政策云々、そういったいろいろな条件があるという説明のようであります。しかし、これはいつまでもわからない、わからないということでは通らないのですね。十二月の終わりごろまでにはすべて決まらなければならないわけですから、いまはもう十一月のきょうは十七日ですから、この短期間にぱぱっとすべてが決まっちゃうというようなことは恐らくないのであって、やはり現在何らかのものを想定して、ひそかに検討を続けておるだろうと私は考えるわけですね。したがって、そういうような作業があると思うので、たとえば新聞などでは増税規模がたとえば五千億円ぐらいではないかとか、あるいは選択増税というものがとられそうだとか、いろいろあるわけですけれども、これはたとえば五千億円というのは、さっきの絡みで、これは税収の落ち込みというものと関係があるというふうに説明されるかも知れませんので、突っ込むことはできませんが、選択増税ということはやはりやろうと考えておるのか、それとも全然考えてないということなのか、この辺のところはどうなりますか。
  105. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 実は選択的増税というのは、もちろん法律用語ではございませんし、ある時期に使われたことがございますけれども、余り適当な言葉ではないのではないかという気がしているわけでございます。  基本的な考え方としては、さっき申し上げたように、全体の経済運営と余りひどく矛盾するような形の増税ということは、やはりとるべきでないのかもしれませんですが、しかし、たとえば増税はいかなる増税であれ、それは投資を冷やすとか、あるいは消費を妨げるとか、成長率を鈍化させるとかいうような意味での御意見はございますけれども、それは私ども必ずしもそうは思わないので、きめ細かく吟味をしていって、全体の経済政策なり財政の運営の健全化なりというものから見て、十分説明できるし、何とか納得していただきたいというようなものは、それはあるだろうと思います。
  106. 貝沼次郎

    貝沼委員 大体その辺から先は恐らく答えが出ませんので、次に移りたいと思います。  この前問題になりましたタックスヘーブンの問題でございますが、これはたしか通常国会にその法案が提出されるという見通しであったと思いますが、これは本当に今回提出されると私どもは信じておるわけですけれども、報道によりますと、局長はすでにその課税方法について産業界の関係者に説明に入っている、こういうふうに言われております。果たしてこういう事実があるのか。さらに、もしそうであるとするならば、その説明の概略というものはどういうものであるか、説明をしていただきたいと思います。
  107. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 これはちょっと時間をいただきませんとなかなか答えにくいと思うのでございますが、やはりこの小委員会大島委員、只松委員、あるいは荒木委員からこの問題の御提起がございました。私どものお答えといたしましては、できる限りこの十二月に召集されます通常国会に間に合うように準備をいたしたいというお答えを申し上げました。いまそのつもりで検討を進めております。  考え方の基本といたしましては、そのときにもお答えいたしたかもしれませんが、要するにタックスヘーブンと言われる地域に子会社を設立、する、そこにもつばら租税負担を逃れるために子会社をつくるという状態は、これは負担公平の見地から立法措置をもって対処してまいりたい、それが一つの基本でございます。  ただ同時に、今後のわが国の場合には、やはり中長期的に見て、海外投資というものは促進せざるを得ない経済環境にあるであろうし、同時にまた、開発途上国に対する経済協力という意味での海外投資というものももちろんある。したがって、そういう意味でのいわば租税上の目的でなくて、正常な経済活動としての海外投資なり海外経済協力というものを阻害しないようにという配慮はどうしても必要であろう。その両者の接点をどこに求めたらよろしいかというのが最大の問題であろうと思います。  その意味で私どもは、現実に海外活動をしておられる企業の意見をできるだけ広く聞きたいと考えまして、ことしの五月以降、関係団体に頼みまして、実際に海外活動をしておられる企業に集まっていただいて何回か議論を続けております。いままでのところ、考え方としてはほぼなるほどなというふうにわかってきていただいているのではないかと、やや楽観的過ぎるかもしれませんが、そう考えております。まあ最初のときは、海外投資というのは非常に大事なので、そこへ税が介入してひっかき回されては困るというふうな一般的な反対論が非常に強かったのですけれども、そういうことではないのだということで説明を重ねまして、基本思想については理解ができ上がってきつつございます。  したがって問題は、私の申し上げたような意味での正常な海外事業活動というものをどうやって法律的にはっきりするかというところにしぼられてまいっておるわけでございます。その場合でも、私は個人的には、できるだけ法律ではっきりする形をとりたい。個別の認定にゆだねる部分をできるだけ少なくしたい。そうしないと、一対一で、私のこの活動はいいんですねとか、それはいけないんですというような制度というものは、やはり将来の税務執行に非常に負担をかけまするし、いろいろな意味で望ましくないので、法律上の要件としてできる限り規定をしていきたいと考えております。そこは非常にやっかいでございまして、いろいろな表現で考えて仮案のようなもので相談をしますと、いやそういう表現をされると、実はここで会社をつくって人間を雇って、それを基地にして隣の国に売っているのもひっかかっちゃいます。それはしかし税が安いからというわけではないんで、そこの原料を使うので、むしろそこにいなくては仕事ができないんですからというような問題が当然出てくるわけで、それを法律上どう表現するかということで、いま作業を鋭意進めているわけでございます。  大変時間をとりまして恐縮でございますが、基本的な考え方としては、正常な海外投資活動あるいは海外経済協力による事業、それが結果として租税回避に扱われてしまうということにならないように、きめ細かい工夫をして成案を得たい、いまでも、できることならば今度の通常国会に間に合うように案を仕上げたいというふうに考えております。
  108. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がだんだんたってまいりましたので、来年度税制の中で特に問題になってまいりますのが、一般消費税を導入するかどうか、こういう問題でございます。  これにつきましては、中期税制の答申でこれの新税構想が出ておるわけでありますが、これについて大蔵省は、たとえば日本皆さんの反応というものがどういうふうになっているのか、納税者あるいは非納税者、こういった人たちがどういう考え方を持っているのかというようなことで、あるいは調査なさっているかもしれませんけれども、私どもの目につく範囲ではまずない、こう思うのです。  そこで、非常に簡単なアンケ−トでありましたけれども、私ども公明党岡山県本部としては、この一般消費税に対する意識調査を行ってみました。それは一つは、この一般消費税に対する意識といいますか関心がどれぐらいあるかということで、こういうのが話題になっていることを知っておるかどうかということ、それから、職業別にどういう反応があるのか、反対なら反対でどういう反対の理由が多いのか、賛成はどういう理由が多いのかというので、製造業、卸売業、小売業、農業、サービス業、一般消費者、それからさらに、その賛成、反対の理由を両方並べまして、たとえば賛成では、国の財政の赤字を埋めるのに必要だからとか、あるいは高福祉のためには高負担は当然であるとか、あるいは外国でもやっているからやってもよいと思う、所得税法人税など直接税に比べ負担感が少ないからよい、国民が、律に負担するからよい、これらを賛成の理由として挙げておるわけです。反対の理由としては、一般消費税課税する前にまず不公平税制を是正すべきであるとか、あるいは行財政で改革を行わずしての増税は片手落ちだからとか、あるいは所得に反比例する大衆課税になり、物価が上がる、あるいは中小零細企業は事務的経費の負担が多くなる、また便乗値上げを招き景気が沈滞するというようなことで、実はやってみました。  大体方法としては、層化二段無作為抽出法によったわけでありますが、これは初めから業種を撰んでやったわけではなく、ぶつけた人の中で業種を聞いたわけであります。  そういうふうにして対象三千五百人に当たりまして、回答が三千二百八十七人、回収率は非常によかったわけであります。この結果、一般消費税に対して関心を持っている人は七九・七%、非常に関心が高いということがわかっております。  それから、一般消費税の導入に関する賛否でありますが、賛成と言った人はこのうち百三十八人で四・二%、反対と言った人が二千八百七十八人で八七・五%、わからないと言ったのが二百七十一人で八・二四%というふうに、非常に反対の意見が強い。まあ賛成がかなりあるというところからも、かなりフェアな調査だと理解していただきたいと思うのです。  さらにその賛否の内訳ですが、年齢別に見ると、賛成は男女とも大体五十歳から六十歳、反対の人は男女とも四十歳、まあ男性は四十、次は五十、女性では四十、三十というふうにして、大体中年の人が反対である。  今度は男女別に賛成、反対を見ると、男性の方で賛成というのは四・六三%であり、反対は八九・一%、女性の方は賛成が三・五二%で反対が八五・四一%、これは性別には余り関係がないという結果になっております。  そのあと業種別に見たわけでありますが、賛成の中で特に多い理由、これは何かと申しますと、所得税法人税など直接税に比べ負担感が少ない、これが一番多い。しかもこれは製造業に多い。それから、国の財政の赤字を埋めるのに必要だからというのが卸売業並びにサービス業に多かったという結果が出ております。それから、反対の理由で一番多い理由は、これはどの業種もそうでございましたが、まず不公平税制を是正せよという、これが圧倒的に多くありました。それからその次は、所得に反比例する大衆課税になり物価が上がるから反対であるというのが二番目であります。その次は便乗値上げ、その次は行財政、まあ四番、五番になりますと小売業、卸売業は、中小零細企業の事務的な問題が上に上がってまいりますけれども、大体の流れとしてこういった傾向があったわけでございます。  これは大体予測できる結果ではないかと私も思うわけでありますけれども、こういうような一般消費税のアンケートをもとにして考えてみますと、この一般消費税は少なくともまだ国民の理解は得ていない、それでさらにみんな非常に不安を持っておるというようなことがはっきりしているのではないかと思います。  そこで、先日国税庁長官はこの一般消費税に対して、大阪でですか、いろいろお話しになっているようでありますけれども、要するにこの創設には数年かかるというふうにかなり否定的な発言をなさっておるようであります。こういったことから考えますと、国税当局、いわゆる徴税当局としてもこれはまだまだ問題がたくさんあるとお考えではないのか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、時間がありませんので、国税庁長官にお尋ねしたいのでありますが、こういうような国税庁長官の発言、それから、ただいま私が申し上げましたようなこういうアンケートの結果、こういうものを考え合わせたときに、果たしてこういう一般消費税の導入というものはいまやらなければならないと考えるのか、あるいはこれは考えなければならないと判断なさるのか、その辺のところの感触を承りたいと思います。
  109. 磯邊律男

    磯邊政府委員 税制の問題でありますから、私が御答弁するのはいかがかと思います。ただ、せっかくのいい機会でございますので、この前の大阪におきます私の記者会見の内容として一部の新聞に報道されました、一般消費税の導入には四、五年かかるという記事についての真相を、ここでお答えさせていただきたいと思います。  実はあの記者会見をいたしまして、そのときにいろいろと質問がありました中で、一般消費税新税が導入されるような情勢でもあるし、現在の国税当局としての機構、定員についてどう考えるかというふうな質問がございました。私としては、むしろ一般消費税の導入というふうなことは、これはもう今後の問題でありますから、それは余り私の立場で議論することでないので余り頭に置かずに、現在の税務の執行体制から考えますと、調査対象者の増大であるとかあるいは取引の複雑化、大型化、そういうことがありますにもかかわらず、税務署の定員というものは一向にふえませんので、御承知のように実調率等も低下し、われわれとしても税務として十分な仕事もできないような状況になっておる。したがいまして、機構、定員の充実を早急に図る必要がある。ただそう言っても、税務の職員というのは、ただ新人を頭数さえそろえたらいいというのではなくて、税務大学校の一年間の教育期間を含めて一人前になるためにはやはり四、五年かかるのだ、そういった意味で早急に機構、定員の充実を図ってもらいたいということを私申し上げましたら、どうも私の話し方、表現が悪かったのか、あるいは誤解されたのか、いずれかわかりませんけれども、一部の新聞でああいうふうに取り上げられまして、その点私としては非常に残念に思ったわけであります。そういった意味で、この席をかりまして、この前私が答弁いたしましたのは、一般の税務職員の養成の問題についてお話ししたことでありまして、決して新税導入云々に絡んでのお答えではないということをまずお断わりさせていただきたいと思います。  したがって一般消費税の導入につきましては、これは今後の税制調査会なり国会の御審議等で議論されるわけでございまして、それがいつどのような時期にどのような形で施行されるのかということは、私全くわかりませんけれども、いずれにしましても、仮に一般消費税が導入されるということになりますと、やはり私たちは機構、定員を含めまして、税務行政全体として最も効率的な体制をつくる必要がありますから、今後いろいろと御議論あるいは検討されるその段階に応じまして、関係当局の方との意見の調節を図りながら、それに対応する税務の機構、定員についても検討させていただきたいと考えております。
  110. 貝沼次郎

    貝沼委員 そういたしますと、国税庁長官は、もしも大蔵省の方で来年度これを強引にでも導入しようというようなことがあれば、実際徴税当局として訓練なりそういったことは間に合うという判断に立っておりますか、それともちょっと無理だなという判断に立っていますか。
  111. 磯邊律男

    磯邊政府委員 税務職員というのは、自画自賛でありますけれども、非常に優秀な有能な職員が現在そろっております。したがいまして、もしこれが来年度からでも発足するということになりましたら、私たちとしてはそれに対しては万全の体制を整えまして執行に当たるつもりであります。
  112. 貝沼次郎

    貝沼委員 万全の体制といっても、たとえば人員とかいろんな問題がありますから、それは非常に無理をすればということでしょうけれども、私は大変な問題が実際はあると思うのですね。  そこで主税局の方にお尋ねをいたしますが、要するに一般消費税の導入は、いま申し上げましたように世間的にはこういうふうに非常に反対が強いし、それから、いろんな新聞等の内容等読んでみましても、どうも総理大臣どもこれを見切りをつけたような感じがあるようだし、私は導入すべきではないと思っておりますけれども、これは五十三年度導入は見切りをつけたのですか。
  113. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 一般消費税をできるだけ早い時期に具体的に勉強しなければならないということを提言されて、それを何年度にどのような幅でやっていくかということは、次の税制調査会にバトンタッチをされたわけでございますので、次の税制調査会、つまり今度発足いたします新しい税制調査会に早速お諮りをしませんと、いまの段階で、政府の方で一方的に五十二年度はやるとかやらないとか申し上げるわけにはまいらないと思います。
  114. 貝沼次郎

    貝沼委員 本当はきょうは税制調査会の会長さんに来ていただこうと思っておったわけですが、ちょうどこの前解散をしまして、まだ決まっておりませんので呼ぶことができなかったので、私は主税局長に聞いておるわけですけれども、要するに断念をしたのだろう、私はこう考えておるわけであります。また、こういうようなアンケートの結果からも、これは導入すべきでないということを今回は主張しておきたいと思います。  それからもう一点は、今回のこのアンケートの結果でも、反対の第一の理由として不公平税制の是正というのが出ておるわけでありますけれども、これは私も当然の結果だと思っております。そこで、この不公平税制の是正、これについては主税当局としてもいろいろ検討なさっておると思うのです。最終的にはまた税制調査会にかけなければということかもしれませんが、いままで検討し、これだけは何とかやらなければならないというものがあるならば、その経過について説明を願いたいと思います。
  115. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 これは毎年度の答申にも出ておりますし、中期答申にも出ておりますが、物の考え方として、制度、執行の両面での公平の確保がぜひ必要だということは当然のことでございますし、私どももそういう基本的な考え方で努力を続けてまいりたい。ただ問題は、不公平税制とは何であるかということでございまして、それにつきましては、税制調査会でいわゆる政策税制の整理合理化を進めろというふうに整理をしていただいておりますので、私どももその方針でやってまいりたい。  ところで、政策税制の中での法人関係部分につきましては、五十一年度、五十二年度でかなりの整理をさせていただきました。国会で法律を通していただきました。それで十分だというわけではございませんので、引き続き努力をいたしたいと思いますが、五十三年度につきましては、期限の到来する分を中心に整理を考えていくことになろうと思います。  それから、利子配当課税は総合課税に移るという方向での具体的な勉強を進めろという答申をいただいておりまして、これはかなり時間のかかる問題でございますが、その努力を続けてまいりたいと思います。  社会保険診療報酬課税の特例につきましては、少なくとも私どもの立場としましては、ぜひ今度の国会で何らかの是正をしていただきたいというお願いを関係方面にいたしております。  したがって、不公平税制という場合に、具体的には政策税制をいかに整理していくかを考えておる。法人関係の準備金、特別償却は二年間かかりましてずいぶん整理したつもりでございますが、今後も期限到来分を中心に整理をしてまいりたい。利子配当課税の総合課税につきましては、時間をいただいて、現実に総合課税が可能になるような方策の勉強を続けてまいりたい。社会保険診療報酬課税の特例は何とか今度の国会で是正できますように、これはひとつ国会の皆様方にもぜひ御協力をお願いいたしたい、このように考えております。
  116. 貝沼次郎

    貝沼委員 不公平税制の是正は断固ひとつやっていただきたいと思います。  それから、時間がだんだんなくなってきましたので急ぎますけれども、要するにまた予算委員会になりますと盛り上がってくる問題は、減税の問題であろうと思います。今年度の場合も、ずいぶん当局は抵抗いたしましたけれども、ついに減税が行われました。こういうようなところから減税論というものは大きく出てくると思いますが、今回、特に景気の回復への緊急施策として個人消費へのてこ入れ、こういったことを考え、あるいはいろいろな失業者または倒産の続出というようなところから考えましても、どうしても所得税減税というものは要求されてくると思います。またやらなければならぬと私は思っております。当局は恐らく否定的な見解を述べるのではないかと思いますけれども、現在やる気持ちがあるのかあるいはないのか、そこだけを聞いておきたいと思います。
  117. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 もちろん非常に大事な問題でございますから、税制調査会にお諮りしなくてはならない非常に大きな項目の一つでございますが、いまの私どもの気持ちといたしましては、そういうことを考える余裕が全くないというふうにしかお答えできないと思います。
  118. 貝沼次郎

    貝沼委員 ただいまも申し上げましたように、経済政策上これは非常に大事な問題でありますので、単なる財政の問題だけでなく、日本経済全般という立場から減税すべきであるということを強く主張しておきたいと私は思います。  それからさらに、円高緊急対策の一環として中小企業を対象とする法人税遠付の問題であります。これはもう過去の例から見ても、たとえば昭和四十六年十二月十六日あるいは昭和四十八年五月、即座に円高に対応して施策がとられたわけであります。このたびも、過去の例ほど作業は簡単ではないかもしれませんけれども、しかし、これは早急に実施すべきであると考えるわけでありますが、この点についてどのようにお考えですか。
  119. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 その件につきましては、すでに中小企業庁から具体的な要望を受けておりますので、内容をしさいに検討いたしまして、五十三年度の税制改正の一環として適正な結論を得て御審議を得たいと思っております。  ただ、一言だけあえて申し上げたいのは、特別措置はいかなるものであれ政策税制であることは間違いないわけでございますから、関係省庁に対しましては、いままである政策税制の整理合理化をやってほしいんだ、いまあるものはみんな既得権だ、その上に情勢に応じて次々新しいものをというのは困りますよということは強く申しております。
  120. 貝沼次郎

    貝沼委員 租税特別措置法その他の絡みでそれはいろいろあるでしょうけれども、こういう緊急の場合は、やはり打つ手は打っていかなければならないし、打つのが正しいと私は思うわけであります。したがって、こういうような法人税還付の問題につきましては、私は強く要望しておきたいと思います。  細切れではなはだ申しわけないのですけれども、もう一点は住宅の問題であります。  この住宅の問題も、いままでは新築家屋を購入するような場合には租税特別措置法によっていろいろと優遇がなされておりました。しかし、このような景気の低迷、そしてたとえば会社の従業員が残業がなくなったというようなところから、残業目当てにして新築の家を建てたところが、その支払いができなくなったということで、いま家を手放しておる人が相当出ておるわけであります。これは特に大企業なんかの従業員が多いわけでありますけれども、そういう傾向が出ております。したがって、中古の家屋というものはかなり売りに出されておるし、また、実際に家屋を購入したい人は、中古ならば手が届く、しかし、新築にはなかなか手が届かないというような声もたくさん出ております。したがって私は、住宅政策という立場から考えるならば、新築だけに優遇策を考えるのではなしに、たとえば不動産業者が中古を買うときまで優遇しろなんてそんなことを私は言っているのじゃなくて、本当にその家屋に住みたい人が買う場合に何らかの方法はとれないものかというふうに思うわけであります。たとえば租税特別措置法の四十一条であるとか七十二条、七十三条、七十四条というようなものをそのままそっくりとは申しませんけれども、何らかの方法をもってこれに似たようなものが考えられないのかどうか、この辺を承っておきたいと思います。
  121. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 時間の関係でごく簡単にお答えいたしますが、率直に申し上げて、中古住宅を取得したときに税負担を軽減するという優遇を与えることが、住宅政策としてどういう意味を持っておるのか、私はちょっと理解できないという感じがございまして、きわめて消極的でございます。
  122. 貝沼次郎

    貝沼委員 きわめて消極的というのは全く遺憾だと私は思いますけれども現実はそういう新築を買うよりは中古を買う人が多くなったということは、ひとつ頭にとどめておいていただきたいと思います。  それから最後に一つだけ、これも恐らく消極的な返事かもしれませんが、以前わが党の坂口議員からも質問があったことでありますが、身体障害者が乗っておる自動車に対する優遇は何とか考えられないかということであります。いままでもいろいろ優遇策がございます。そこで、自動車重量税について何とか考えていただきたいという陳情が、恐らく大蔵省の方にも出ておると思うのですね。そういうようなところから、その陳情そのものまるまるというわけにはあるいはいかないかもしれません。しかし、そういう方々に対する温かい政治の姿勢というものはやはり示さなければならぬと思うわけでありますので、それについて今後何らかの検討はなさるつもりがあるのかどうか、その辺を伺っておきたいと思います。
  123. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 従前からの御要望がございまして、私どもも鋭意勉強いたしたわけでございますけれども、物の考え方としまして、できるだけ御要望を入れる方向で考えたい。その場合に、やはり各種の税目にその税の性格というものがございますから、たとえば物品税は、車を買う方は車を買えない方に比べてそれなりの担税力があるであろうからといって負担をお願いしている消費税でございますから、物品税ならば、身体障害者の方が自分で移動されるのにどうしても車が要るということでお買いになる自動車は、免税にしてもいいであろうということで免税措置が講ぜられているわけで、その意味で、できるだけ要望におこたえするような具体的な措置はとっております。税であればすべてをと言われましても、それはやはり各税の性格があるわけでございまして、自動車重量税につきましては、私ども従来の検討の結果といたしましては御要望に沿いかねるのではないか。それぞれの税の性格から考えてできるだけ御要望に沿うということで解決をしてまいりたい。できるだけのことはすでにしているのではなかろうかというふうに私どもは考えております。
  124. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  125. 保岡興治

    保岡委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十七分開議
  126. 保岡興治

    保岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。荒木宏君。
  127. 荒木宏

    荒木委員 税務行政を中心にお尋ねしたいと思います。  同僚議員から青色申告の取り消しの質疑がありましたので、初めに一言伺っておきたいのですが、昭和四十九年であったと思いますが、商社の海外所得の脱税の問題が国会で論議をされました。その際私も本委員会で青色取り消しについて論議をしたことがあります。先ほど長官の御説明を伺っておりますと、一部の所得脱漏については取り消しになる場合もあり、ならない場合もある。その取り消しの有無を決める物差しは全体の記録の信憑性にかかる、こういう説明であったように思います。  私は、その運用も一つの扱いであろうかとは思いますが、しかし、そうした全体の信憑性にかかるという非常に一般的、抽象的、言い方を変えますと、漠然とした運用で果たして区々になるおそれはないか、つまり言葉を変えれば、法的安定性、行政上の安定を害する危険はないのか。さらにまた一方では、わずかな額で青色取り消しになるという事例も間々ありました。そうした点から、公平性、ひいては税務行政に対する信頼を欠くおそれがあるのではなかろうか、こういう気持ちもするわけであります。その点についての長官の御意見を伺いたい。
  128. 磯邊律男

    磯邊政府委員 青色申告は、取り消しの要件は、午前中大島委員の御質問に対してお答えしたとおりでございますが、私たちは現在基本的には、青色申告というものをいかにして育成していくかということを中心に考えておりまして、よほどの場合でなければ青色申告の取り消しというのはやりたくないというのが基本的な考え方であります。たとえば中小業者の方などでも、重加算税をかけるような場合であっても、それは直ちに青色申告の取り消しはやらずに、私らの言葉で言いますと初犯宥恕という言葉を使っておりますが、これは最初のことであるとか、あるいは重加算税をかけてもそれは額が過少であるとかいうふうな場合には、やはり長い目で見て青色申告者を育成していくという意味において、その青色申告の取り消しをやらないような運営をしているというのは事実でございます。ただ、先生指摘のように、それが恣意的に流れて法的安定性を欠くというふうなことがあってはいけませんので、青色申告の取り消しということについては、あるいは取り消さないという場合については、これを慎重に検討して、そういった恣意的に流れないようなことで運用しているのが実態でございます。
  129. 荒木宏

    荒木委員 全体の信憑性にかかるという物差しで、心がけとしては慎重にという答弁のように伺ったのであります。しかし、出てきた結果としては、一部脱漏の額が百数十億であっても取り消しにならない、片や一千万未満、それで取り消しになっておる事例、私は個々の事例はいま申し上げませんけれども、間々報告を受けておるわけです。ですから、たとえば全体の取り扱い金額の中での脱漏金額の比率、これも一つの物差しかと思うのですね。あるいは脱漏金額の上限といいますか、こうしたことを見るのも公平性を担保する一つの物差しかと思うのです。そういった意味での安定、信頼、そうしたものを確かなものにしていく工夫、それは進められてしかるべきではないか。国税庁内部では何にもないのですか。つまり全体との関連で見なさい、慎重にやりなさい、それだけで、特に内部で、全体の何割とかあるいはこれ以上の金額とか、そういう物差しは何にもないのですか。
  130. 水口昭

    水口政府委員 お答えいたします。  青色申告の取り消しにつきましては、法律のほかに内部的な基準はございますが、先ほど長官がお答え申し上げたように、なかなか画一的にやるべきものでもないというところがございますので、ケース・バイ・ケースで判断しておるというのが実態でございます。
  131. 荒木宏

    荒木委員 それでは、ひとつその内部基準ですね、検討のために報告していただけませんか。いまかなり関心を集めておる事例がありますね。百数十億でも取り消しにならない、しかしわずか数十万、数百万で取り消しになった事例がある。本人もそうでしょうし、聞いた人もそうでしょうし、そうした意味でのやはり得心というか納得というか、明らかにしていただきたい。
  132. 水口昭

    水口政府委員 お答えいたします。  これは実は内部基準でございまして、従来外へ出さないことにしておりますので、ひとつ御容赦をいただきたいと思います。
  133. 荒木宏

    荒木委員 いまそういう御答弁ですから、これは、小委員会は理事会というのはありませんけれども、小委員長に、当委員会として、同僚委員からもその点の指摘があり、私はいまこういう財政危機の折に、税務行政に対する信頼の問題というのは非常に大事な問題だと思うので、国税庁当局にいまの内部の基準を国会に何らかの方法で明らかにするように、ひとつ理事会でお計らいをいただくなり、取り扱いを御検討いただきたいとお願い申し上げておきます。よろしゅうございますか。
  134. 保岡興治

    保岡委員長 わかりました。理事会の方で検討いたしたいと思います。
  135. 荒木宏

    荒木委員 それと対比をいたしまして、一般の納税者に対する税務行政が、これはずいぶんたくさんの数でありますからいろいろなケースがあると思うのですけれども、しかし、過酷である、厳しい、暴言を吐かれる、こういう事例が最近まだ間々続いてまいりました。たしか昨日も参議院の決算委員会でわが党の議員がこの点について質疑をしたはずでありますが、長官はきょうの御答弁の中で、納税者の協力を得ていく、無理のないようにしたい、こういう考えを伺ったわけであります。私はやはり納税者の協力を得るには、道理に基づいて、そしてそこに納税者の納得と信頼というものが生まれてこなければ、長官がおっしゃるような事態にはなかなかならないんじゃないか、こういうふうに思うのですが、そこで、具体的な事例として幾つか申し上げる前に、一般的に調査の日時あるいはその時間帯、こういったものについての納税者の便宜というものがあろうかと思うのです。その点について、納税者あるいは関係者の都合や便宜をどのように考えていらっしゃるか、お考えを伺いたいと思います。
  136. 水口昭

    水口政府委員 お答えいたします。  やはり先生お話しのように、納税者の方にもいろいろ都合があろうかと思いますので、税務署から調査に参ります際には、一般的にはなるべく事前通知をいたしまして、そこで日時等を取り決めるというふうな配慮をいたしております。
  137. 荒木宏

    荒木委員 そうすると、日時、時間は当事者の便宜を十分取り計らうのをたてまえにしている、こう伺ってよろしいわけですね。
  138. 水口昭

    水口政府委員 税務署の方の調査の都合もございますので、両者のバランスの上に立って考慮する、こういうことでございます。
  139. 荒木宏

    荒木委員 従来もこの種の論議委員会、小委員会でもしばしばありました。またきょうは、全国から中小業者の関係者が寄りまして、税務行政の民主化も含めて大会を開いておるようでございまして、委員会の後申し入れをなさるという話も伺っておるのですが、いま伺ったこの国税庁のそういうたてまえがなかなか実行されない。  それで、私の方に報告がありますのは、本年、東北の国税局、これは仙台の国税局といいますか、ここの係官が銀行に調査に参りまして、そして労働基準法三十六条協定で時間が決まっておるのに、きょうは徹夜ででも調べる、こう言って、支店長が、労使関係で困ります。こう言っておるのに、十一時ごろまで半ば強制的に調査をさせたということで、地域ではずいぶん問題になっておるようでありまして、本年の五月の二十日付をもちまして宮城県の労働組合評議会、それから金融労働組合の共闘会議その他が現地の局長さんに申し入れをしておるようであります。  こうした労働基準法に違反するような調査の応対を強要するといったことについてはどのように考えておられますか。
  140. 磯邊律男

    磯邊政府委員 その仙台局のことしの五月の問題というのは私も承知いたしております。  これは一般の調査ではございませんで、ある会社を査察で立件いたしまして、強制捜査に入ったわけでございますけれども、たしかそのときの預金関係の問題を調べる必要があって、仙台国税局管内のある銀行に査察官が入りまして調査した、そのことだろうと思うのでありますけれども、御承知のように、私たち査察立件いたしましたら、当日にそういった資金関係の事実を固める必要があるということで、銀行の方に対しましても調査に協力してくれることをお願いしたわけでございますけれども、なかなか銀行の方でそういった関係の資金証票に対する調査の協力の度合いが悪くなりますと、どうしても五時に打ち切るつもりの調査が八時になり十時になるというふうなこともあるわけであります。労使協約がどういうふうになっておるか私たちよく存じませんけれども、少なくとも私たちは銀行の責任者に対しまして、そういった深夜に及ぶ調査にならなくても済むように速やかに協力してくださいということをお願いしておるわけでありまして、こういった遅くまでわれわれが調査をしなければいかぬというのは、これは決して私たちの本意とするところでなくて、結果的にそうなってしまったということでございます。
  141. 荒木宏

    荒木委員 何だかはっきりしないお返事ですが、そうすると、労働基準法に違反する結果になってもやむを得ぬのだ、こういうことなんですか。
  142. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私たちは、労働基準法の関係を担当しておりませんけれども、もしそれであれば、銀行の方で労働基準法違反にならないように、たとえば役席が出てきて応対するとかいうふうな処理をしてしかるべきではないかと思っております。
  143. 荒木宏

    荒木委員 ここに朝日新聞の報道記事があるのです。長官も事案御存じだと言うからあるいはごらんになったかもしれません。ここに宮城県労評の地域に配りましたビラがあります。それから局長あてに申し入れた申し入れ書もあるんです。三十六条協定で午後八時までになっております。こういうふうに支店長が言ったというのですね。脱税を幇助するのか、こういうお返事だったというのです。これは長官が現地に行っておられても、この担当者と同じ返事をされますか。
  144. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ちょっとそのときの様子は具体的にわかりませんので、ただそこだけでは何ともお答えいたしかねます。
  145. 荒木宏

    荒木委員 私伺いたいのは、基準法で三十六条協定というのが結ばれている。それは国税庁は関心を持っているのかいないのか。つまりそういうことがあろうとなかろうと調べるということなのか、それとも基準法は尊重する、三十六条協定については守るようにする、こういうことなのかということなんです。経過についてはお話しのようにいろいろありましょう。それを受けた銀行の方がどういう態度であったか、またその中でどういうやりとりがあったかということはいろいろあると思うのです。法律を守るということをおっしゃるのか、それともそれはもう守らないとおっしゃるのか、これを聞きたいのです。
  146. 磯邊律男

    磯邊政府委員 公務員でございますから、法律を守るということに努めております。
  147. 荒木宏

    荒木委員 そうすると、結果としてはこの日は守らなかったわけですね。守れなかった。結果は御存じでしょう。そのことについて一言の釈明もしないというのはどういうわけですか。
  148. 磯邊律男

    磯邊政府委員 私たちは、銀行の方が私たち調査に協力をしてくれれば、そういったことにはならなくて済んだんだろうということを言っておるわけであります。
  149. 荒木宏

    荒木委員 経過は、皆さんの方に言わせると、銀行の調査の協力がなかった、十分でなかった、こういうことになるのでしょう、御説明を伺っておると。それは理由なんですね。理由、原因がそういうことであって、結果として違反が起こっているというのです。その違反について防止の努力なり尊重の努力をなさるのかなさらぬのか。結果、違反が起こった、それは皆さんの方で調査に行かれたから労働基準法違反ということが起こった。やはりそれは遺憾であるし、そういうことがないように努力するというのはこれは当然じゃないでしょうか。銀行の方の応対態度は、これはまた別途なにしなければならぬと思います。また、どっちにしたって当事者同士ですから関係はしておるのでしょうけれどもね。何かその出かけた係官に全くそのなにがなくて、それで態度がよくなかったから違反が起こったんだ、やむを得ぬのだ、こういうことに聞こえますと、大変残念なことだと思いますけれども……。
  150. 磯邊律男

    磯邊政府委員 恐らく現場に臨んだ査察官も、その労働基準法違反でございますか、その法律、私は実は査察官が詳しく知っておったかどうかわかりませんけれども、法律違反をすることが、何も好んでしたわけじゃないんで、結果的にそういうふうになってしまったので、あの場合においてはやむを得なかったと私は考えております。
  151. 荒木宏

    荒木委員 ちょっとしかし、そうおっしゃると引き下がれぬことになりますがね。法律を守らなくても、違反が起こってもやむを得ぬ、こうおっしゃるわけですね。そうすると、皆さんの方が調査に行かれて、調査を受ける側も、事情によっては法律が守れなくてもやむを得ぬということになるんじゃないでしょうか。公務員として法律を守るということをおっしゃりながら、法律が守られなくてもやむを得ぬという——法律を守らなくてもやむを得ぬのですか。これは強制捜査とかあるいは時間を超えて労働がなされる、協力がなされるというような場合は、ルールとして決まっているでしょう、法律で。そのルールを守らなくて、それを踏まなくて、結果として違反が起こってもやむを得ぬというのはちょっとうなずけないんじゃないでしょうか。
  152. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ルールとしての法律を守って私たちも仕事をせなければいけないということは、これはもう当然のことであります。ただ、あの場合だけを取り上げて指摘されますと、何もあのときは査察官はあえてそういった深夜まで調査をするつもりで行ったわけではないのでありまして、銀行側の方の答弁がはかばかしくなく、また、それを故意に隠したというような事実の疑いが持たれまして、それでどうしてもその日にその事実を解明せなければ今後の査察調査に重大な支障が及ぶというふうに判断したので、あえて当事者の理解を求めて夜遅くまでその銀行において調査をしたということだろうと思うのです。決して私たちはその目的、その査察調査のためには労働基準法は無視していいとか、あるいはルールを無視していいということは考えておりません。したがって、そういった意味では、深夜に及んだということははなはだ残念に思っておりますが、ただ、それは単に査察官だけの問題でなくて、やはりその協力する側にも問題があったんじゃないかというふうに考えておるわけであります。  ただ、繰り返して申しますけれども、基本的には、その目的のためにはルール違反をやってもいいとか、あるいは労働基準法違反をやってもいいということは決して申し上げているわけではございません。
  153. 荒木宏

    荒木委員 一般的なことがはっきりされて、そして今後の扱いで、当事者の協力も得られる、また納得も得られるというふうな方向で扱いを強められるということが望ましいわけでありまして、この件だけで、結果として違反が起こっておるのを、相手がよくなかったからだということで無理押しをされるということは、私は事案を知っておる関係者に対する影響からもよくないと思うのです。基本的なあり方としてはそういうことが起こらぬようにというふうに言われますから、そのことを期待して、なお今後の指導強化を要請しておきたいんです。  関連しまして、関係者、当事者がいろいろ説明をするのに物的、人的な補助を希望する。たとえば資料を見ながら説明をしたいとか、あるいは自分の職場の中の事務の補助者に説明をさせたいとか、あるいは所属しておる団体の担当者に説明をさせたいとか、こういう当事者あるいは関係者の希望については、これはどういうふうな取り扱いの方針ですか。
  154. 水口昭

    水口政府委員 たとえば納税者本人でございませんでも、その記帳を担当している者が説明をするというふうなことはあるようでございますが、その場合、その納税者以外の人が、税理士は別でございますが、非常に大ぜい立ち合われるというふうなことは、税務の執行から見て好ましいことではないと思っております。
  155. 荒木宏

    荒木委員 よく問題になっておるのは、そういう大ぜい立ち合うとかいうことでなくて、日ごろからいろいろ相談に乗り、経営の助言も受けておるような所属団体の担当者が一人または二人、その関係者の希望によって同席をする、こういう場合に、それを一切認めないというふうなところから問題は起こっておるように思うのですけれども、いま言われるような実際に物理的にも多数で、調査ができないというような場合は別にしまして、当事者の希望によって、その方がより当事者の供述が正確になる、あるいはそれによって十分意を尽くした主張ができるというような場合の同席あるいは援助ということについては、どういうふうな方針ですか。
  156. 水口昭

    水口政府委員 ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないと思います。一般論として申しますと、納税者以外の方が、税理士等は別でございますが、調査に立ち会われるということになりますと、いろいろ問題が起こる場合がございます。一つは秘密の問題でございます。守秘義務との関連で問題がありはしないか。また、納税者以外の方が、税理士でもないのにしばしば立ち会いをされるということは、場合によっては税理士法上の問題も生ずるのではなかろうか、いろいろな問題点があるというふうに考えております。
  157. 荒木宏

    荒木委員 私はっきりしておいていただきたいのは、一切認めないという趣旨なのか。ケース・バイ・ケースとおっしゃったのですが、いろいろ問題があり得る場合もありましょう、しかし、その方がベターである場合もあるので、一切認めないというふうなことだとかえってまずいのではないかということを言っているのですが、どうですか。
  158. 水口昭

    水口政府委員 先ほどもちょっと申し上げたと思いますが、たとえばその記帳を担当している者が立ち会うというふうなことはときに行われているようでございます。
  159. 荒木宏

    荒木委員 そうすると、それについて日ごろいろいろ相談に乗っておるとかいうふうな人の場合も、一緒に調査に当たることを本人の意を尽くすという点から認めてもいい場合があるのではないか。つまり私が聞いておりますのは、そこのところをシャットアウトしているから、かえって問題がうまくいかないのではないか、こういうことです。
  160. 水口昭

    水口政府委員 ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないとは思うのですが、結局、本人と税理士さん、それ以外は原則としては困るのではないか。特殊な場合は、さっきもしばしば申し上げておりますが、記帳を担当しておる者とかそういった場合には、認められる場合があることはあるのでございますが、一般的には好ましくない、こういう考えでございます。
  161. 荒木宏

    荒木委員 これはケース・バイ・ケースのそうした積み重ねということもありましょうから、なおそうした話し合いの慣行の蓄積によって、事態が改善するということをわれわれも希望したいと思うのです。  税務行政につきまして以前に国会で決議がありました。これは衆議院の請願の採択ですけれども、それについては内閣の方からも、処理要領というのは返事でもらっておりますけれども、この請願採択の取り扱いにつきまして税務職員の人たちの中から、全く拘束されない、つまり守る必要がないというふうなことがあからさまに言われて、そのことがまた新しい紛争のもとになるということでございまして、改めていまの段階で、昭和四十九年でありましたか、当時採択をされました請願に対する長官のお考えを伺っておきたいと思うのです。一四〇三号で、四十九年六月三日付で採択されておりますが、「税務行政の改善については、税務調査に当たり、事前に納税者に通知するとともに、調査の理由を開示すること。」という請願であります。
  162. 磯邊律男

    磯邊政府委員 七十二国会におきまして、中小業者に対する税制改正等に関する請願のうち、税務行政の改善に関する部分、いま先生がおっしゃっいました「税務調査に当っては事前に納税者に通知すること。」「税務調査に当っては納税者に調査の理由を開示すること。」この二つが採択されたということは十分存じております。同時にそのときに、「税務調査は、租税の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するために欠くべからざるものである。この税務調査の目的・性格に照らし、適正な調査を行うため、——事前通知については、原則として調査日時をあらかじめ通知することとしているが、特別調査事案や調査に対する忌避・妨害が予想される事案等の場合には通知しないことがある。また、2調査理由については、調査事項を限定するような具体的理由は開示できないが、必要に応じ、概括的な調査理由の開示は行っている。」こういう内閣の処理意見が出たということも存じておりまして、この点は第一線の税務署に対しても十分徹底させております。したがいまして、第一線の税務署員がこの採択された請願を守る必要がないのだと言うということは、常識として考えられないところであります。
  163. 荒木宏

    荒木委員 昨日の事案に対する指導の問題もあると思いますが、あわせて、先般も直税部長に別途御連絡をしたような事例も間々出ておりますので、先ほど来ありますような請願採択に対する処理も含めて、行政指導の一層の強化を要望しておきたいと思うのです。  来年度の税制は、調査会でまたいろいろ意見が交わされて、本委員会論議も進められると思います。時間が参りましたが、一点だけ伺っておきたいと思いますので、その点御容赦いただきたいと思うのです。  きょうのある新聞にも出ておりましたが、自動車関係税の取り扱いについて観測記事があったようであります。これにつきましては、御承知のように、営業用と自家用との格差が設けられて、暫定的な取り扱いということになっております。中小規模の運送業者の方からは、営業用と自家用の格差の存続についての要請もあるようでありますが、この機会に、地方税もありますので、自治省と運輸省から、営業用と自家用の格差が設けられた趣旨と今日的な意味合い、これの御説明を伺って、その上で最後に主税局長から、先ごろの税制調査会の中期答申の中に「自動車関係諸税については、その負担が経済社会の実情に照らし適正なものとなるよう配慮すること」という指摘がありますが、この営業用と自家用の格差が現在の経済社会の実態から見てどのように評価をされるか、いまの時点での認識を伺って質問を終わりたいと思います。
  164. 福島深

    福島政府委員 自動車関係諸税につきましては、五十一年度において大きな改正が行われております。特に地方税で申しますと、自動車税というものがございまして、その改正を五十一年度に行っておりますが、その段階で、トラックとバスにつきまして営業用と自家用の区別を新たに設けたというようなことをいたしております。それから、自動車税の税率の引き上げにつきましては、普通の乗用車につきましても、営業用と自家用とでアップ率に差を設けまして、自家用は原則として三〇%、営業用はその半分の一五%というようにいたしておるわけでございます。また軽油引取税につきましても、ガソリン税の引き上げと違いまして、四十九年以来据え置かれておったものを五十一年度に初めて引き上げるというような配慮をいたしたわけでございます。  これは幾つかの理由がございますけれども、営業用の自動車につきましては、公共輸送機関としての役割りを考えなければならないということが一つ。次に、輸送効率の面を考えてみましても差があってしかるべきではないかということ。第三番目といたしまして、料金の引き上げということになりますとそれが物価にある程度影響してくるということがございますので、それをできるだけ避けると申しますか、低く抑えていくべきではないかというような御意見がございまして、営業用の自動車関係諸税については自家用等に比べましてやや低めに抑える、あるいは引き上げの時期が非常におくれて行われるというようなことに相なっておるわけでございます。  しかしながら、そういう考え方がある一方、実際営業用の自動車が負担をしております税の負担水準と申しますか、そういうものを見た場合には、日本の場合には国際比較的に見ますとまだかなり低いというようなこともございますので、そういうようなことも含めて私どもは、これからの問題に対処していかなければならぬだろう、このように考えておるわけでございます。
  165. 金田徹

    ○金田説明員 お答え申し上げます。  自動車の場合、旅客の方につきましては、公共輸送機関としてのバスあるいはタクシーといったものとマイカーみたいなものとあるわけでございますし、またトラックにおきましても、自家用トラックと営業用のトラックとあるわけでございますが、いずれの場合にも私どもの目から見ますと、輸送という物を運ぶという効率から申しますと、営業用の方が高いわけでございまして、自家用の場合には、すぐに使えるという使い勝手のよさということはございますが、輸送という効率から申しますとどうしてもロスが多くなるわけでございまして、実車率とか積載率とかそういうことも悪いわけでございます。と申しますことは結果的には、同じような物量あるいは同じような人間を運ぶ場合に、自家用で輸送するということになりますと、道路の占有の度合いも高いわけでございますし、またエネルギーもよけい使う、排気ガスも出すというようなことが相対的に多いわけでございますので、そういう点を主として考えまして、なるべくならば営業用の方に誘導いたしたいということから、その誘導策の一助として税制の面についても営業の優先をお願いしているような次第でございます。
  166. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまお聞き取りいただきましたように、立場によって意見の違う問題でございます。  前回五十一年度の引き上げのときには、お手元の答申にもございますように、税の性格上からは格差がない方が望ましいんだという意見もかなりございました。しかし一方で、いま運輸省から御説明があったような、輸送効率というものから考えればある程度の格差を政策的に設けるということにも意味があるんじゃないかという御意見もあって、結果として上げ率に差を設けるという形で立法され、通過して現在に至っているわけでございます。  仮にこの次に負担の引き上げをお願いするとしますと、当然この問題も改めて議論をしていただく。恐らく依然として税制調査会の中でもまた両論が出てくる、そのどちらによりウェートをかけた結論になるのか、ちょっといまの段階で私としては予測はつきかねるという状況でございます。
  167. 荒木宏

    荒木委員 終わります。
  168. 保岡興治

  169. 永原稔

    永原委員 「今後の税制のあり方についての答申」、税制調査会のこの考え方について、内容を少し承りたいと思います。  経済計画とかあるいは長期の財政収支試算というのは、現実的には非常にむずかしいということは承知しております。一定の経済安定の状況の中で計画を立てるのだったらいいのですけれども、恐らくこういう経済情勢はこの経済計画の中には盛り込まれていなかったであろう。と同時に、経済計画の伸び率を基準にした財政収支試算においても、こういうような状態は予測していなかったと思います。そういう中で答申が出ていますので、これがそのままうのみにされるとは思いませんけれども、一年数カ月にわたって多くの方々が御検討になったこれからの税制のあり方について、これを主税局の方はどういうようにお受けとめになっていらっしゃるか、基本的な態度についてまず承りたいと思います。
  170. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 結論的に申し上げますと、こういう方向で審議をお願いいたしたいということを大蔵大臣、自治大臣からお願いをしまして、以来一年以上かけて熱心に御討議をいただいた結果でございますので、できる限りこれを尊重しながら、今後その具体化を検討してまいりたいと思います。
  171. 永原稔

    永原委員 今後の税制のあり方についての提言、これを拝見してみますと、「必要とされる増収の規模がどの程度のものであるかを吟味しておく必要がある。」と片方に言われて、しかも「税制改正による所要増収額が具体的にいくらになるかを現段階において計数的に確定し、それを所与の前提として議論を進めることは必ずしも適当ではないが、」というように申されておりますけれども、やはりこの検討をなされたときには、昭和五十年代前期経済計画に基づいた財政収支試算、国、地方を通ずる財政収支試算というものをまず念頭に置かれたのは否定できないことだろうと思うのです。ここにもありますように、税収の対GNP弾性値が国税の場合は一・二ないし一・四、地方税は一・一ないし一・三というような、こういう幅で試算なさって、国が四・六兆から六・六兆、地方においては一・七兆ないし二・八兆、こういうように試算されるということが、やはり頭の中にあったのではないかなという気がするのですが、それを受けていろいろな各税目の検討がなされた、こういうようなことは私の憶測にすぎませんけれども、どうでしょうか。
  172. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいまの御質問の点が調査会の中でも非常に御議論があったところでございます。それで、経済計画そのものが、作成後二年以上たって、少なくとも計数的には相当変わるのではないかという御議論があったことも事実でございます。したがって、それをベースにした財政収支試算というものも計数としては変わるであろう。したがいまして、ただいま御質問の中で御引用になりましたように、答申の本体としましては、計画なり試算の計数にこだわらないのだ、その計数を前提にして、たとえば五十五年に四兆足りないからどの税で何千億、どの税で何千億というふうに作業をすることは適当でないという判断になっているわけでございます。しかし同時に、計数的な手がかりを全くなしに、いわゆる不公平是正をやりあるいは現行税制での見直しをやって、足りるのかとか、いや、やはりそれでは足りないのかとかということは、その判断の基礎にないと提言ができないではないか、そういう意味で参考にはしておられるわけです。  したがって、いままでの答申にちょっと例のない非常にデリケートな扱いになっております。それは御指摘のとおりでございます。本文では、それを所与の前提とするのは適当でない。しかし、提言をするに際して、一つの参考としては、計画なりそれに基づく試算の数字によって推計をしてみたものは参考に供されておる。その意味で、本文でなくて(注)になっておるという非常に微妙な扱いになっております。
  173. 永原稔

    永原委員 数字の点は非常にむずかしいだろうと思います。  個々の税目についていろいろ伺ってみたいと思いますけれども、これは所得税のことについては、上げる余地はあるのだと言いながら、「この問題は間接税等に負担の増加を求めることについての審議の結果と伴せて総合的に検討することとした。」こうありますけれども、ここでいう「間接税等」というのは何を指していらっしゃるのでしょうか。
  174. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 その部分は、審議経過の取りまとめという意味も多分に持っておりますので、答申の第二のその部分の文章の基礎になりましたのは、昨年十二月に当委員会にも資料としてお出しいたしました部会長報告が、審議の経緯として非常に強く作用いたしております。したがって、第一部会の方では、所得税住民税に負担を求めるのに十分理由があるだろという御意見が非常に強かったわけで、それは部会長報告にもそのとおりに出ております。しかし、今度は総会ベースで各部会の報告を総合的に考えて第三の提言になる。そうすると第二の部分も、各部会長報告を基礎にしながら、やはりもう一度総会でながめ直して、総会として各税日ごとの検討の結果をまとめるということにしようではないか。したがって、部会長報告を下敷きにしながら、総会の判断が加わってきたわけで、十分に理由はあるけれども、ほかのものの検討ともあわせて最後に全体として考えようではないかという表現になったわけで、したがって、そういう経緯を踏まえた上でお読み取りいただきますと、そこにございます「間接税等」と申しますのは、第二部会で勉強した諸税目ということでございまして、それは資産課税、流通課税、消費課税のすべてを指しているわけでございます。
  175. 永原稔

    永原委員 資産課税やそういうものまで含まれるというお話がありましたけれども、これは中を読んでいきますと、「結局のところ、所得税及び個人住民税について一般的な負担の引上げを求めるか、あるいは、広く一般的に消費支出に負担を求める新税の導入を行うかという問題に直面せざるを得ないであろう。」こういうことが述べられていますけれども消費税だけでなくて資産税まで含んだお考えだったのですね。
  176. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 そこで第二部会は、資産課税、流通課税、消費課税を網羅的に総点検されたわけでございます。その部分は、お手元の第二の中の既存の資産税等の検討というところで要約されております。その検討の結果は、資産税と申しますのは、現実には国税で申せば相続税しかないわけです。それから流通税というのは、印紙税、登録免許税しかないわけです。それぞれに検討されまして、流通税については、なお負担の増加を求める余地があるだろう。それから相続税については、現在の仕組みは大体そのままでよかろう。しかし、今後はむしろ負担を引き上げる方向で考えたらどうかというおまとめになっています。しかしいずれにしましても、その第二部会の守備範囲の中では、その両者について財源的に多くのものは期待できないだろう。したがって、消費税で既存の税目からまず勉強する。既存の税目に要約されておりますように、それぞれ負担の増加を求める余地はあるが、これに大きな増収は期待できないだろうということになりまして、新税の検討に移って、それで新税の中で、土地増価税、富裕税を初めとして八項目を検討して、それで一般消費税的な四税目のほかのものにはそれぞれの一応の結論か出て、四項目を一括して日本的な消費税を探そうかということで、第二の三の新税の中のさらに二番目の部分の考えられる一般消費税というのが出て、以上が第二部会の系統の審議で出てきた。第一部会の系統は第二部会を待ちながら考えよう。しかし、所得税には十分の理由がある、こう言った。  第三にいきますと今度は、冒頭におっしゃったように、ある程度の規模で考えればいいというならば、それはやはり旧税は良税なんだから、いわゆる不公平是正をやり、いまある税を手直しして済むはずなんだが、それじゃ足りないだろうということになって、考えましょう。こうなりますと、第一部会の方で大物で残しておった所得税住民税なのか、それとも第二部会でいろいろとやってみて、結局は考えるとすればこれだという日本消費税か、そのどちらかの選択になるのではないか。そのどちらかの選択になると言っておられる部分のすぐ前で、既存の税目の中でできるだけ増収努力を図るべきだという部分がございます。第三の中に。したがって、いまある資産税とか流通税とかあるいは個別の消費税とか、それはそれとして負担増加を求める余地のあるものはやりなさいという、その部分の方へ入っているわけです。第三の中でそれが全然ドロップされているわけではないわけです。
  177. 永原稔

    永原委員 それで、この答申も何か少し逃げているような感じがするのですけれども、今後の税制のあり方について、所得税住民税にするか、あるいは新税の導入にするか、そういう選択は「国民の選択すべき重要な課題である。」こういうように示されております。しかし、やはり原案をおつくりになるのは大蔵当局なんです。どちらに重点を置いてお考えになるのか、お気持ちを伺いたいと思います。
  178. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 それは大蔵事務当局と申しますよりも、税制調査会の御審議の模様をまず申し上げなくちゃいかぬと思うのですが、いま永原委員がおっしゃいましたように、提言の中で、これは国民に選択を求むべき重要な課題であると言って、一遍段落が切れております。その段落でいわゆる中期答申はとめよう。つまり、どちらかを選ぶ、どちらにも理由があるから、それはむしろ税制調査会としては、そのどちらを本当は国民の皆様がよりよいとするというのか、あるいはがまんするとすればこっちだというのか。増税でございますから、むしろがまんするならこっちだという意味でございましょうが、そういう白紙の選択を求めようという御意見が最後まで残っておりました。それは私どもが報道機関に説明したときにも終始そういう説明をしておりました。したがって、観測的に一般消費税に決めたというのは早くから出ましたけれども、最後の方になりますと、むしろまだ議論しているという報道が出てきたというのは、そういうことなんです。  ただ、調査会内部で一年以上もやってさておいて、白紙で、どっちにも理由があるから、まああなた方が好きな方にしなさいよというのは、いかにもそれはある意味で無責任ではないか。やはり選択の問題だということをはっきりさせた上で、それが税制調査会としては、所得税住民税の、しかもそれはお金持ちだけではなくて、三千万人の人全部を相手にした増税なんだから、それはやはり限界があるのではないかと調査会は考える。したがって、一般消費税の方を考えたらどうだ、そっちの方がいいじゃないかと思うけれども、そこをひとつ国民の理解を求めなさいという答申になったわけです。私どももその御意見を十分尊重して、これからなぜそうなったかということからまず御説明にかかっておる、十月以来、そういう状況でございます。
  179. 永原稔

    永原委員 少しまた細かくなってまいりますけれども法人税、これは「苦干の負担の増加を求める余地がある」こういうように書かれておりますが、一%で千五百億、法人住民税二百五十億程度、こういうようなことが出されておりますけれども、大体どのくらいが適当とお考えになりますか。
  180. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 そこはいま私が申し上げますと、すぐにまた、大蔵省は何%増税を考えているんだみたいな記事になってしまいますので、非常にぐあい悪いわけでございますけれども、ただ、答申の中で考え方として出ておりますように、なお若干という表現もございますし、それから、諸外国に例がなくという表現もございますし、その基本的にある考え方というのは、やはり国際経済の中の日本経済なんで、日本経済を島国のように考えて、ほかの国で事業活動をする場合の法人負担に比べて、日本事業活動をする場合の法人負担が異常に高いというようなシステムは思わざる弊害を招くので適当でないであろうという認識があるように思います。したがいまして、若干低いから、適当な時期をとらえて引き上げを考える余地があるという御判断の「若干」という幅の考え方は、やはり世界経済の中で日本と並ぶような地位にある国の、そこで事業活動をした場合の負担が頭にある。そうであるとしますと、アメリカと日本の差というのはわずかでございます。フランスと日本にはほとんど差がございません。イギリスと日本にもほとんど差がございません。ドイツだけ若干高くなっております。それらを考えますと、逆に申せば、法人税の税率引き上げで一兆円とか二兆円とかいうことはできないという判断があると思います。税率換算して考えて。それでお答えにかえさせていただきたいと思います。
  181. 永原稔

    永原委員 これは自己資本の資本率も大分違うので、必ずしも一概には言えないと思いますけれども、いまのように、中小法人と大企業、これとの二段格差の税率ですね、これはやはりずっと継続して——あるいは私どもは、中小企業対策の観点から、むしろ限度額を上げるべきだ、そういう主張をしたいのですけれども、こういうような考えはずっと貫いておいでになりますか、二段階の税率というのは。
  182. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 その点は、私どもの理解は、税制調査会の中では、特に専門委員の方々などには学者の方が非常に多うございますし、そもそも法人税に段階があるのはおかしいという論者の方が非常に多いのです。基本的な仕組みとしては、段階税率というのは、それはおかしいのだろう、ただ、中小企業問題というものを考えれば、いまある二段階税率というのは維持してもよかろうというふうに、いわば学者がそこで妥協しておられる答申だということでございまして、まあ制度の仕組みそのものとしてはこのままでもよかろうというニュアンスであるように受けとめております。
  183. 永原稔

    永原委員 社会保険の診療報酬課税のことは先ほど出ましたのでやめまして、利子配当所得課税ですけれども、「総合課税に移行するまでの間は、源泉分離選択課税に係る所得税額の一定部分を住民税相当分として地方団体に配分する措置」こういうようなことがうたわれておりますけれども、これについて自治省の御意見はどうでしょうか。
  184. 福島深

    福島政府委員 所得税におきまして源泉分離課税を選択した利子所得等に対します住民税の問題は、御案内のように、現在課税をされていないということで、自治省といたしましては、でき得れば地方税住民税として課税をする方法はないかということでいろいろ検討いたしておったわけでございまして、五十一年度の税制改正におきます政府税制調査会の答申によりましても、この点は御検討いただいたわけでございます。  しかしながら、課税技術上の問題等ございまして、それがなかなかむずかしいということもございまして、五十二年度の措置といたしましては、御案内のような臨時特例交付金ということで、交付税の中に入れて地方財源として措置を考えていただきたい、こういうことで大蔵省にお願いしておったわけでございます。臨時特例交付金が九百五十億ございますが、その中で私どもの主張も考慮して措置をした、そういう形に相なったわけでございます。  この中期答申に書いております御趣旨も、御議論としては、税として徴収することにつきましては、これはやはりなかなか問題がございます。五十五年度には抜本的な見直しが行われるわけでございますので、それまでの間は、今回五十二年度の予算でとられましたような措置も含めまして、地方財源としての何らかの配慮をしていただくということで、この税制問題に一つの解決策を見出したらどうか、こういう御意見がございまして、その御意見がここに出ているもの、このように承知をしております。
  185. 永原稔

    永原委員 五十五年にこの利子配当課税の解決ができるとすれば、それまでの間はいまのようなことも技術的にやむを得ないかもしれません。しかし、いまお話がありましたように、特例交付金の中で一体幾ら入ったのか、ちょっと数字がぼくもわからないのですけれども、こういうものも、来年度予算編成においても確実に守っていただきたい、このことを政務次官にお願いをしておきます。  それから、固定資産税、都市計画税、これは「増加を求める方向で検討すべきである」というように書いてありますけれども、これについてどうでしょうか、自治省は。
  186. 福島深

    福島政府委員 固定資産税と都市計画税は、わが国におきます資産課税の中枢をなしておるような税制だと思うのでございます。また、地方財源としても大変大きなウエートを占めておるのでございますが、その税収の状況が、地方税全体におきます割合を見ましても年々減ってきておるということもございますし、国民所得に対します固定資産税等の負担の割合もだんだん減ってきておるというようなこともございますので、税負担の増を国民に求めます場合には、資産課税としての固定資産税等の負担の増を求めることも検討をしていいのではないか、こういう御趣旨であったように思うのでございます。  ただ御案内のように、現在、評価の問題がいろいろございまして、評価の適正化をすべきであるという大変強い御意見がございます。また、私どもはその努力をしておりますが、その適正な評価のために、毎年一定の調整措置を講じながら、現在適正な評価に持っていこうというようなこともしておる段階でございますので、委員の方の御意見の中に、税負担の増を将来求めていいと思うけれども、さしあたっては負担の適正化ということを中心に適正な負担を求める、そういう努力をすべきである、こういう御答申をいただいたものと思いますし、私どもも全くそのような努力をすべきものと考えておるわけでございます。
  187. 永原稔

    永原委員 時間がなくなりますので、まとめて申します。  料理飲食等消費税、娯楽施設利用税あるいは不動産取得税、こういうようなものに対する見解も伺いたいと思います。  その前に、し好品課税で、酒、たばこの税負担についてここには、「今後とも、適切な負担水準を維持することができるよう」と非常に幅の広い考え方が示されているのですけれども、先ほど来、三千億とか二千億とかいうようなし好品課税の増税案がいろいろ新聞に報道されて、新聞記者がいろいろ勉強した結果かもしれませんけれども、こういうような「適切な負担水準を維持する」ために上げなければならないのかどうか、財政的な見地から上げなければならないのか、そういう点についてどうお考えでしょうか。
  188. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 考え方としては、両方ともあるのだろうと思います。負担水準が、いわばよく言われます意図せざる減税というような形で低下していく、それはある時期をとらえて調整しなくてはならない、そういう考え方は全体を通じて一つある。しかしそのほかに、やはり嗜好品という特殊性に着目をして、財政上の歳入としてそれなりの地位を保っていくという角度から負担水準を吟味したいという考え方も残っている。したがってその点は、具体的にもし負担増加をお願いするとしますと、その両方の角度からしてどういう税率がいまの段階ならば一番いいのかということを十分吟味してみて、もしお願いするとすれば、国会に御提案する案というのはどの考え方でどの税率で提案しておるのかということを御説明して、御審議を仰ぐということになろうかと思っております。
  189. 永原稔

    永原委員 非常に細かくなりますので、もう一つでやめますけれども、先ほど荒木委員から自動車関係のことがいろいろ質問されました。営業用と自家用との問題については理解ができるのですけれども、たとえば軽油引取税の還付といいますか、補助と言った方がいいでしょうか、こういうものについて二年間、いわば返すような補助金を支出しておられるようですけれども、こういうものを引き上げる場合に、公共用とか効率とかあるいは物価へのはね返りとか、そういうことを考えて措置をしてあるというようにお話があったのですが、そういう観点からいたしますと、二年間でいいのかどうか、来年以降どうなさるおつもりなのか、その点もお聞きしてみたいと思います。  それと、たとえば営業用のバス、トラックとハイヤー、タクシー、こういうようなものがどういう関係で考えられているのか。ハイヤー、タクシーにはそういう措置がなされておりませんけれども、やはり公共用であり、効率的であり、あるいは物価というような観点からすると同じような立場にあるのではないかという気がしますので、ハイヤー、タクシーに対する考えを伺いたいのが一つ。  それから、物品税の関係でも、やはりバス、トラックにはある程度免税されているような面があるようですけれども、ハイヤー、タクシーというものに対してはどういうお考えであるか。  それから、自動車重量税、これも先ほど言いました効率論あるいは物価論、こういうものから、営業用、自家用の格差が設けられていますけれども、これも二年の暫定的な措置になっていますけれども、これに対するお考え方はどうであるか。  それと最後に、自動車重量税ですけれども、税にはそれぞれ性格があるということは主税局長先ほどお話しになりました。しかし、自動車税あるいは自賠責の保険は、検査期間が終わって、残存期間がある場合に登録抹消になれば、その場合還付されるようになっておりますけれども、自動車重量税についてはそういう措置がなされていません。やはり検査期間を残して登録抹消した場合に還付の措置が必要ではないか、こう思いますけれども、それについてのお考えを承って、質問を終わります。
  190. 福島深

    福島政府委員 地方税について二点お尋ねがございましたので、お答え申し上げます。  第一点は、運輸事業振興助成交付金の点であろうかと存じますが、これは御案内のように、五十一年度に軽油引取税の税率の引き上げを行ったわけでございますが、その際の御意見の中に、やはり物価あるいは料金に与える影響等を考えて、公共性の強い営業用のトラック、バス等については、そういう負担ができるだけかからないように、営業用と自家用の税率を区分したらどうかという御意見がかなりあったのでございますけれども、しかし、これは課税技術上大変むずかしくて、これを下手に取り込みますとかえって不公平な徴収を招くというようなこともございましたので、税としては公平に一律にいただく。しかし、やはり料金だとか物価に与える影響等もございますので、それを先ほど申し上げました運輸事業振興助成交付金という形で、引き上げたものの一部分を、還付ということではございませんけれども関係公益法人の方にいわゆる奨励補助金を出しまして、そこで公共的な使用をしていただく。それによって料金の引き下げと申しますか、料金が余り上がらないように、あるいは物価に与える影響もできるだけ少ないように、そういう事業をいたしていただこう、こういう趣旨でつくったわけでございます。  しかし、この軽油引取税の税率の引き上げは、御承知のように五十一年と五十二年ということになっておりまして、五十二年で一応切れることになっております。五十三年度以降の税率につきましては、税制調査会等におきまして改めて御審議をいただくことになるわけでございます。そこで私どもとしては、その税率の引き上げ期間である二年間に限ってこの措置をとるということにいたしたわけでございまして、五十三年度以降これをどうするかという問題につきましては、税制調査会等の御審議でも当然御議論があろうかと思いますので、そういう点十分留意をして今後の措置を考えていきたい、このように考えております。  それから第二点で、この運輸事業振興助成交付金が営業用のトラックとバスだけが対象になっておって、ハイヤー、タクシーが対象になっていないという御指摘でございますが、これは御指摘のとおりでございます。  ただ、ハイヤー、タクシーの場合を見てみますと、現在の営業用の乗用車の中で、軽油を燃料として使っております車は大変少のうございます。大体五千台強でございまして、全体の営業用乗用車の中で二・二%程度でございますので、これにそういう特段の配慮をして関係団体に交付するといたしましても、額自体もそれほど大きな額になりませんし、また、それが直ちにタクシー、ハイヤーの料金にはね返ってくるほどのものでもなかろう、こういうようなことで、その点については私どもは必要がないのではないか、このように考えておる次第でございます。
  191. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御質問の残余の部分でございますが、まず物品税は、おっしゃいますとおり、乗用自動車が課税対象でございます。貨物自動車は課税対象でございません。乗用自動車につきましては、自家用の車をお買いになる方で車に乗っておられる方、それは、そういうものを買わない方に比べてそれなりの担税力があるという考え方で負担していただく消費税である、その考え方に立ちますと、やはり乗用自動車がタクシーなりハイヤーに使われております場合でも、それはやはりタクシーに乗る人、ハイヤーを使う人にそれなりの負担をしていただきたいという意味で、あえてタクシー、ハイヤーを物品税の対象外に置くことをしないでもいいではないかという考え方であるように私は理解をいたします。  それから、自動車重量税で、廃車した場合には残存期間は還付すべきではないかという御意見でございまして、これはかねてからございます。ただ、やはりこれも税の性格をどう考えるかということであろうかと思います。自動車重量税の性格につきましては、やはり基本的には一種の権利創設税である。つまり車体検査を受け、それによってその自動車を走行に使ってよろしいという資格をもらった、その機会に負担をしていただくものだと理解いたしておりまして、その意味では、車検の機会に負担していただいておるということであって、有効期間内の問題というのとはちょっと別ではないか。しかし保険というのは、車がなくなりますればもう危険負担をしないわけで、当然リスクがなくなってしまえば、リスクのない期間の保険料を返すというのはあたりまえではなかろうかということで、やはり両者にはおのずから差があるのではないかと考えております。
  192. 永原稔

    永原委員 いま自動車税の方は還付になるのでしょう、地方税の方においては。ですから、それとの均衡で申し上げているので、まあ権利創設税とおっしゃいますけれども、やはり自動車税というものと比較しまして、同一に考えるべきじゃないかなという気がするのです。
  193. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 もとはと申せば、非常にいろんな税目でいろんな負担を求めておるので、そういうことになるのかもしれませんが、やはりそれならそれなりに、各税はなぜ負担していただくかということがある。その意味で、自動車税というのは、課税の原因は、やはり固定資産税と同じような意味での資産保有税である。したがって、資産を保有している期間に対してかかるので、資産現実に保有していなければ、それにはもはや課税する理由がないということになるのではなかろうか、そういうことに理解しております。
  194. 永原稔

    永原委員 時間が来ましたので、終わります。
  195. 保岡興治

    保岡委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十分散会