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1977-11-11 第82回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十一日(金曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 林  義郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       田中 六助君    萩原 幸雄君       橋口  隆君    板川 正吾君       後藤  茂君    中村 重光君       渡辺 三郎君    長田 武士君       玉城 栄一君    西中  清君       宮田 早苗君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君  委員外出席者         食糧庁総務部長 小野 重和君         労働省職業安定         局雇用政策課長 白井晋太郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十一月八日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     中島  衛君 同月九日  辞任         補欠選任   工藤  晃君     不破 哲三君 同月十日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     工藤  晃君     ————————————— 十一月七日  中小企業倒産防止共済法案内閣提出第一二  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業倒産防止共済法案内閣提出第一二  号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  去る八日の商工委員打合会記録につきましては、本日の会議録に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔打合会記録本号末尾掲載〕      ————◇—————
  4. 野呂恭一

  5. 田中龍夫

    田中国務大臣 中小企業倒産防止共済法案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  最近におきます中小企業をめぐる景気動向は、一部の業種を除き、売上状況利益状況ともに停滞を続けておりまして、企業倒産件数は、依然として高い水準を維持したままに推移いたしております。これら倒産企業のうち圧倒的多数は中小企業者によって占められておりますが、近時は、倒産企業一件当たりの負債金額が年々増加傾向にありますとともに、倒産企業企業規模につきましても拡大化傾向が見られ、中堅中小企業倒産増加いたしつつあります。  現在の経済環境下におきましては、企業が一たび倒産に立ち至った場合、関係者事業を再建し、または関係従業員が再就職を目指すことは容易なことではなく、その社会的影響はきわめて深刻でありますことから、企業倒産動向は、中小企業者倒産に対する不安、とりわけ取引先倒産影響を受けてみずからも倒産に陥ることに対する強い不安感を引き起こし、これが企業意欲の減退を招くとともに、景気の低迷に拍車をかける結果とも相なっております。  経済的立場の弱い中小企業者につきましては、必ずしも取引先を選択する自由を持たず、かつまた、取引先企業財務状況につきましての情報入手が困難であるという事情から、事前に十分な対応をいたすことの余裕のないままに、突然、取引先企業倒産に遭遇し、その影響を受けてみずからも倒産のやむなきに至る例が非常に多いことにかんがみまして、従来の種々の施策に加えて、何らかの措置を講ずることか必要であると考える次第でございます。  こうした事情背景といたしまして、本法律案は、中小企業者がその取引先企業倒産によってみずからも倒産するという事態の発生を未然に防止することを目的といたして立案されたものでありまして、その概要は、次のとおりでございます。  まず第一に、中小企業者相互扶助の精神に基づいた中小企業倒産防止共済制度を確立し、本制度に加入いたしました中小企業者がその取引先企業倒産に遭遇して、売掛金債権等の回収が困難と相なった場合、その加入者に対しまして、積み立てた掛金の十倍に相当する額を限度といたしまして共済金を無利子で貸し付けることといたしております。  第二には、本制度加入者が納付することとなる掛金につきましては毎月五千円、一万円、一万五千円及び二万円の四種類として、積立額がその六十月分に達した時点におきまして掛けどめをすることができるものとしております。  また、貸し付けられます共済金の額は、掛金積立額の十倍を限度としておりますので、その最高限度は、千二百万円でございます。  第三に、現下の経済状況にかんがみまして、加入者ができる限り早い時期に掛金の積み立ての効果を享受できるように配慮し、本制度発足後一年間に限って、掛金事前に一括して納付する特例措置を設けることとし、一括納付した加入者に対しましては、倒産した取引先事業者から受け取りすでに金融機関で割引を受けていた手形が不渡りとなったことにつきまして共済金を貸し付けることといたしております。  これがこの法律提案理由及びその要旨でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようにひとえにお願い申し上げます。
  6. 野呂恭一

    野呂委員長 以上で提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  7. 野呂恭一

    野呂委員長 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐野進君。
  8. 佐野進

    佐野(進)委員 当委員会経済の問題に関し責任を持って対処する委員会であります。しかるところ、今日の不況、加えて円高の中で日本経済はきわめて困難な事態に逢着をいたし、各方面から、今臨時国会経済国会である、そのように言われてまいりました。私ども商工委員といたしましても、その見地に立って不況対策に対して万全を期しつつあったわけでありますし、特にこの集中審議を行うよう強く委員長に求め続けてきたわけであります。しかるところ、御承知のように、臨時国会会期延長を見、衆参両院においてこの会期延長したことの理由の一つの経済情勢に対応する政府対策をただしたいという、そういう見地から予算委員会が開かれ、円高経済問題について集中審議が行われたわけであります。     〔委員長退席中島(源)委員長代理着席〕 私ども商工委員会会期延長前に一応の集中審議を行いましたが、その後における深刻な情勢を踏まえて、再び当委員会としてその質疑を行うべき必要があろう、こう考え委員会としては重要法案を抱えておる中で、きょう不況対策あるいはまた円高問題等について政府にその所見をただしたい、こう考えてただいまより質問をいたすわけであります。  すでに二日にわたる衆参両院における集中審議の中に、幾つかの点について各党から追及され明らかにされておりますので、私は、重複を避け、具体的な問題について政府の所信をただしてみたいと思います。しかし、その前に、まず第一に大きな問題は、構造的な不況をどのようにして克服するかという問題については、前回の商工委員会の集中的な審議の中で追及をいたしました。したがって、今回は主として円高問題を中心として、今日の情勢の中でどのように対処していくべきか、こういうことを中心にして質問をしてみたいと思います。  一昨日、昨日を通じて明らかにされた円高対策の中で最も重要な問題は、貿易収支黒字減らし対策をどのように行うか、こういう問題であったと思うのであります。総理大臣は、三十億ドル程度輸入増加によって外貨を減らしたいという願望である、このように言われておるわけでありまするけれども政府は、今年度のこの情勢の中で三十億ドル程度輸入を図る中で、その円高対策について諸外国の誤解も解き、あるいはまたこれからの経済政策を運営する上に支障のない体制をつくってまいりたい、こういうように言われておるわけでありますけれども、その願望を達成する前途はきわめて容易ならざる条件が存在している、このように私どもはうかがい知ることができるわけであります。  通産大臣並びに経済企画庁長官がこの総理願望を具体的に実現する上に当面なすべき対策は何であるのか、このことについて両大臣からその見解を明らかにしていただきたい。
  9. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のごとく、この三十億ドルという、総理がお考えになりましたか御指示なされましたかは存じませんが、少なくとも私どもは、この黒字減らしの問題が日米間の最も困難な、さらにまた円高の原因でもありますることから、それにかんがみましてぜひとも黒字減らしを全力を挙げていたさなくてはならない。  そこで、御案内のごとくに、当面の問題といたしましてわが方といたしましては、あるいは石油備蓄でありますとか、あるいはウラン購入の問題でありますとか、非鉄金属備蓄あるいはナフサの問題、こういうふうな問題を、できる限り努力をいたしまして既契約分促進を図り、さらにまた新規の契約もこれに対しまして加え、またさらに何かドル減らしの面におきまして効果のあることはないか、せっかくいろいろと考え努力をいたしておるのでありまして、そういう点におきましては、少しでも多量の買い付けをいたすことができますように検討もし、努力も続けておる次第でございます。
  10. 倉成正

    倉成国務大臣 通産大臣からお答えいただいたことに尽きると思いますが、九月二十日に私ども対外経済対策の大綱について決定をいたしまして、これに基づいて九月二十日に決定しましたそれぞれの項目について検討を続けてまいりました。  御案内のとおり、この中にあります原油積み増しについて三億一千万ドル、非鉄金属備蓄について約一億ドル、ウラン鉱石輸入促進について一億三千万ドル、ナフサ弾力的輸入が約一億四千万ドル、飼料穀物の年内繰り上げ約八百八十万ドル、合計約七億ドルのものについては確実な中身が決まったわけでございますけれども、そのほか、農産物備蓄の在庫の積み増し、あるいは農産物等輸入の前倒しあるいは残存輸入制限品目輸入枠拡大、造幣局の銅、ニッケル等の繰り上げ購入、こういうものもその後具体化しつつあるわけでございます。しかし、これらを合わせましても約十億ドル前後ということになりますので、これでは不十分であるので、ひとつ考えられ得るあらゆることをいろいろな面でこれから考えまして、そしてドル減らしについて万全を尽くしてまいりたいと考えておるわけでございます。  経常収支の面では以上のとおりでございますけれども、そのほか円建て外債発行促進というような点が、また一方においてドル減らしにも通じますので、この辺についても努力をしていくというのがいまの考え方でございます。
  11. 佐野進

    佐野(進)委員 それぞれ答弁をお聞きしたのですが、その答弁は、いわゆる現在の情勢に対してきわめて重大な事態であるという認識、その認識に基づいて積極的に対応しなければならないという熱意が、この答弁の中では、私は遺憾ながらうかがい得ないと思うのです。  と申しますことは、もうここ数日論議がされて、お二人もそれぞれ耳にたこができるほどいろいろな面から指摘がされておることでございますから、そういう点については幾ら言われても仕方がない、こういうような考え方に基づいてそういう形式的な答弁がなされると思うのでありますが、私は、もうこの事態になってきた場合においては、通産省も経企庁も、両方とも、やはり一種の発想転換というか、いままでの経済政策の運営に対する基本的な問題について再検討を加えて、それらについて積極的に対応する、そういう姿勢を示さざる限り、今日のこの不況から脱却しようとし、さらに円高問題に対処して日本経済を運営していく、こういうことはなかなかむずかしいのじゃないか、そういうような気がしてならないわけであります。  そこで、これまた両大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、緊急輸入対策をそれぞれすでに発表し、その発表、言明に基づいて対応して以来、今日まで一体どの程度緊急輸入が実施されておるのか、その実施が三十億ドルという年内目標に対してどの程度パーセントになっておるのか、そして、これからその目標を達成するために、そのパーセントがきわめて低いと私は聞いておるわけでございますけれども、どのような積極的な策をお持ちになっておるのか、この点について、通産経企、両大臣からお答えをいただきたい。
  12. 倉成正

    倉成国務大臣 佐野委員からおしかりをいただきましたけれども、私ども経済の衝に当たっておる者は、佐野委員にまさるとも劣らぬ熱意を持ってこの問題に日夜取り組んでいるところでございます。  ただ、御承知のように、わが国貿易構造が、輸入の大部分が原燃料ということでございます。これはアメリカやドイツ、イギリス等と違いまして、こういう原燃料原材料輸入構造の大部分を占めているということになりますと、やはり基本的には国内景気がよくならないとなかなか輸入はふえないわけでございます。しかし、今日の円高貿易黒字、またアメリカの赤字ということを背景にしておりますので、日本としても何とか緊急輸入をしたいということで、あらゆる項目について、目をさらのようにして、何ができるかということを検討いたし、そしてそれを一つ一つ詰めていく段階に差しかかっておるわけでございます。  しかし、御案内のとおり、本当に具体的にこれが実施できるかということになると、なかなかこれはむずかしい問題がいろいろあるわけでございまして、発想転換というお教えでございますけれども、具体的にこうしたらよいという御名案があれば、ひとつ御教示を賜れば私ども幸いと思うわけでありまして、構想はいろいろあります。しかし、具体的にこれを詰めていくということになると、相手方もある、あるいはいろいろな影響もあるということでございますから、ここでこうなるということを申し上げられる段階までは至っていない。しかし、いろいろな点でいろいろな努力をいたしているという点だけは、ひとつ御理解をいただきたいのでございます。
  13. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま企画庁長官が申しましたとおりでありますが、さらに、御指示によりましていま取り組んでおります進捗状況を御説明申し上げますと、原油貯油量積み増しにつきましては、この秋までに過去の最高貯油量程度までは積み増しを実施する、こういう目標のもとに鋭意努力をいたしておりまして、これが大体三億一千万ドルでございます。  非鉄金属備蓄の拡充につきましては、市中銀行金属鉱産物備蓄協会融資をいたしまして、これは約三百億円でございますが、この十月に第一回の融資を行いまして、今年度末まで逐次継続することと相なっておる次第でございます。これが総量におきまして一億ドルでございます。  さらに、ウラン鉱石輸入につきましては、日本原子力発電とアメリカ鉱山会社との間にさきに購入契約が成立いたしまして、近く約一億三千万ドルの支払いが行われることになっております。  また、ナフサにつきましては、今年度約一億四千万ドルの輸入増を見込みますとともに、関係業界を目下鋭意指導いたしまして、積極的にこれが実現を図っております。  これが大体六億八千万ドル、約七億ドル程度輸入でございますが、これのみではなく、これ以外にもあらゆるものにつきまして検討をいたしつつある次第でございまして、目下ぜひともできる限りの黒減らしをいたしたい、かように努力をいたしております。
  14. 佐野進

    佐野(進)委員 いま両大臣に対して質問し、答弁があったわけでありますが、これは通商政策局長に聞くのがふさわしいのかわかりませんが、お見えになっておらないようですから、産業政策局長、あなたに——いますか。——貿易局長ということですが、どちらに聞いたらいいかわかりませんが、いま大臣お答えになったいわゆるウラン石油備蓄、これは原燃料であるという経済企画庁長官答弁にも明らかにされておるわけでありますが、輸入ということになりますと、当面即効的な措置として有効な効果を上げることのできる対象としてこの二つがよく言われておるわけでありますが、これそのものにつきましても、たとえばタンカー備蓄をするとかあるいは濃縮ウラン輸入するとか、こういう問題についてもそれぞれ国内的にあるいは国際的に非常に大きな問題があるわけであります。願望願望として、これを実施するということについては大変大きな障害を予想されるわけでありますから、ここにいま大臣答弁のような期待を大きく寄せることは、結果的にその目標を達成し得ないことになる可能性を含んでおるわけであります。  したがって、私は先ほど発想転換を求めるという言葉の中で、日本経済の将来の発展、いわゆるこの当面の不況を乗り切ることはもちろんとして、長期的に見た場合、経済発展方向として、この種の原材料あるいはまたその他について輸入を図ることが最も必要であるという方向は、当然円対策特別委員会その他において検討されつつあると考えるわけでありますが、濃縮ウランタンカーにおける石油備蓄の問題その他に対する具体的な見通し等について、この際ひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  15. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 両方とも私の方の所管でございますので、私からお答えいたしたいと思います。  まず、タンカー備蓄につきましては、昨年来、私たちの方も、いわゆる備蓄増強一環として基礎的な調査を進めてまいったわけでございますが、いわゆる黒字減らし対策との関連において、これを早急に実現するようにという指示を受けて、関係省庁検討いたしておるわけでございます。御承知のように、立地の問題を含めまして、安全、防災の問題あるいは経済性の問題、こういった問題もあるわけでございますが、黒字対策一環として有用に活用できるようにということで、現在関係省庁と協議をいたしております。  現在船主協会の方から提案されておりますのはVLCC型二十杯ということでございまして、これを全体活用するというようなことになれば、約五百万キロリッター分備蓄ができるのじゃなかろうかと思うわけでございます。  それから、ウラン鉱石あるいはウラン濃縮につきましては、現在、アメリカ、カナダ、豪州その他のあらゆる地域につきまして、その供給可能性を前提といたしまして交渉を続けておる段階でございます。いまの段階で確たる見通しを申し上げられないということは残念でございますが、これにつきましても鋭意努力をいたしておる、こういう段階でございます。
  16. 佐野進

    佐野(進)委員 エネルギー庁長官にも後で具体的な問題で答弁を求める事項がたくさんありますから、余り買って出ないで、ひとついまのうちはほかの方で答弁してもらうようにお願いしたいと思います。いま政策の問題を質問しておりますので、その点について、できれば産政局長から答弁をいただきたいと思います。  さて、いま経済企画庁長官は、いいお考えがあったらお示しを願いたいというような答弁がありました。私は、あなたが私に何もいい考えがあったらと聞かなくても、あなたほどの優秀な人がそういう答弁をするということはちょっと不見識じゃないか。私は取り消しを求めたいような気持ちであります。  と申しますことは、御承知のとおり、政府に対してこの事態の中で対応しなければならぬという提言は数多く出ているわけです。たとえば、森永日銀総裁が九日の記者会見で、いわゆる黒字減らし基本内需振興による輸入の増大であるが、いまは経済協力海外投資を含め、できることを一つ一つ実施することが大切であるということを言われております。さらに、政府に対して委員会の席上においても苦言を呈するような発言がなされております。日銀当局から政府苦言を呈せられるなんということは、およそあってしかるべきものではないわけでありまして、私は、政府みずから日銀当局その他に対してやはり積極的に対応するだけの見識と勇気を持たなければならないと思うのであります。そういう意味から、いまのような答弁をなさることは、私はきわめて遺憾に思わざるを得ないわけであります。  そこで、私は、通産大臣、さらに貿易局長答弁した方がいいだろうという産政局長のサゼスチョンもあるようでありますから、答弁を求めてみたい。それから経済企画庁長官答弁を求めてみたいと思うのでありますが、このような情勢の中で構造不況対策についてもとかく言われておるわけでございますけれども内需を喚起して輸入をふやす、その方策はもう長い間論議をせられてきております。したがって、内需をふやすために輸入を増大させる最大障害は一体何なのか、その障害を取り除くために何が必要なのか、そういうお考えがあるならばお聞かせをいただきたい。  さらにまた、経済協力の問題につきましても、棒鋼を初めとするいわゆる平電炉における生産物の輸出を初めとし、幾多の要望が強く当委員会においても出されております。もちろん、相手国に対して、与えてやるのだ、くれてやるのだというがごときことがあってはなりませんけれども、両国平等の原則に基づくところの貿易振興を図る中で、国内産業の行き詰まりつつある状態を打開するためにどのようにその障害を取り除くかということについて努力することは、今日当局の果たさなければならぬ最大の課題であろうと思うのです。  お題目として経済協力を言うのではなくして、具体的に経済協力の中でわが国産業が立ち行くような方途、ドル減らし状況と関連してどのように対応するかということが重要なことではないかと思うわけであります。これについて、通産大臣経済企画庁長官貿易局長、できれば産政局長答弁を承りたい。
  17. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま経済協力のお話でございます。経済協力については、ディスバースの促進、新規プロジェクトの発掘を努めまして、これからのドル減らしにも貢献していくということは、私ども九月二十日の対策に打ち出しておるわけでございます。  ただ、御承知のように、ドル減らしという見地から考えますと、これはやはり商品援助というか、いわば無償援助ということでないと、この部分を除きますとすぐドル減らしに急速に結びつくというわけにいかないということになりますと、これはやはり予算を伴ってくるわけでございますね、ことしの分を除きますと。そういうところで、これはなかなか急に、しかもこれが大量な金額であるということになると、御案内のとおり、わが国経済協力全体を見ましてもそれほど大きな額ではございませんので、その辺がなかなか急場の問題としては、この点も一つ一つやっていくという点については私ども全く賛成でございますし、その点は最善の努力をいたしておるわけでございますけれども、大きな金目ということになると簡単なものではないというのが実情でございます。しかし、御指摘の点は十分問題意識として持っておる、そして推進をしておるということについては御理解をいただきたいと思います。
  18. 田中龍夫

    田中国務大臣 私に対しても御質問がございますので申し上げますが、いまの対外経済協力の問題につきましては、各方面から相当な大型のプロジェクトの要請が出ております。これに対しましても迅速に対応するようにいろいろな機構整備の点で努力いたしておりますけれども、法制的な機構上の問題から申すならば、この十月一日から実施になりましたボンド保険ということは大きな一石であろうと私は存じますが、なおまた、役務輸出という問題になりましてのわが国の対応というものは、これは列国に比べまして非常におくれておるような状態でございます。  それからまた、プラント輸出の問題がさらに投資効果という意味から申しまして内需の相当な景気対策にもはね返ってまいりますが、同時に、ただいま経企庁長官が申しました商品援助の問題でありますが、これは従来大蔵省がこれにつきましてはいささか制約をいたしておりましたが、最近はむしろ積極的に対応してもらっております。  これらの問題につきましては、相当内需の点で拡大が期待される、こういうことを考えておりますが、全体の制約の中におきまするどれだけが役務輸出、どれだけがプロジェクト、どれだけが商品援助であるかというふうな作業もただいま鋭意いたしておる次第でございます。
  19. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問あるいは先ほどの御質問に絡みまして私の考えていることを申し上げますと、ただいま直接の御質問でございます海外援助問題、これは黒字減らし問題のほかに、いわゆる国内の構造不況問題等とも絡みまして、構造不況業種と言われております小棒、平電炉業界でございますとか、あるいはセメント業界あるいは繊維の業界等は、品物が外国に行くということによってそれから受けます業界の影響というのは、これは非常に大きなものだろうと思いまして、私ども、ただいま両大臣からの御答弁にございましたように、相手のあることでございますし、こちら側のいろいろな準備体制、いろいろございますが、ぜひこれは進めていくべきだと考えております。  さらにまた、先ほどの御質問に絡みまして、石油備蓄あるいは非鉄金属、原料の備蓄等の問題、これは当面の貿易収支経常収支のアンバランスの改善、黒字減らしということといたしまして、国内のこちらの受け入れ体制の問題あるいは相手との交渉等の問題、いろいろむずかしい問題はあるかもしれませんが、私どもできるだけの知恵をしぼって進めることは当然のことだと思いますが、なお、それを離れましても、さらに少しこれからの長い先を考えまして、日本の国のいわゆる経済的なセキュリティーという観点等から見ましても、こういう問題をそういう中長期の問題としても考えていくべきではないかと考えております。  それからもう一つの問題は、やはり黒字減らし貿易収支の改善という問題は、終局的には日本輸入がふえるのは、やはり国内の生産活動が活発になることが第一でございまして、生産活動が活発になるためには、やはり国内の各需要項目、これの伸びがなければならない。  従来、輸出と、どちらかと申しますと民間設備投資に引っ張られて国内生産活動というのが非常に活発化をする、こういう傾向でございましたが、これからの経済は、単に輸出、民間設備投資だけにおんぶするわけではなしに、その他の需要項目も皆バランスをとって伸びてこなければいかぬと思いまして、そうなりますと、具体的には、いわばこれからしばらくの経済運営の中では、やはり国の財政というものへの負担、財政の引っ張る力ということに相当期待をしていかなければならぬじゃないか、そういう方向で、私どもはいまの非常に落ち込んでおります生産活動を引き上げていく方向に、あらゆる需要項目の面でこれを引き上げていく方向をとって、それによって日本輸入をふやしていくということ以外にはない、それが基本的な方向ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  20. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 これまでのお答えでほとんど網羅されておりますので、追加して申し上げることはございませんが、わが国輸入の構造をながめてみますと、その六五%が原燃料でございます。一五%が食糧、残余の二〇%が製品となっております関係からも、輸入を需要を増大するためには、やはり工業生産を大いに増大するということであろうかと思うわけでございます。ただ、これにつきましても、時間がかかることでございますので、それまでの間にとりあえずとして行うべきこととしては、やはり三つの観点があろうかと思うわけでございます。  一つは、備蓄の増強あるいは前倒しの輸入、第二が製品の輸入の増大、第三が残存輸入制限品目拡大といったことであろうかと思いますが、そのうち、やはり最初の備蓄拡大というものが、わが国の安全保障の立場その他から言いましても、量から申しましても、非常に重要なことであろうかと思うわけでございます。
  21. 佐野進

    佐野(進)委員 いままで質問をしてまいりましたことは、当面する円高がさらに深刻になっていくのではないか、二百五十円台、二百四十円台、そしてまたそれが二百三十円台に行かないとだれしも保証することはできないような情勢の中で、国内の産業に携わる者、経済の運営に携わる者、ひとしく大きな心配を持ってこの政府対策を見守っておるわけであります。その見守る政府対策が手落ちがあるとするならば、その手落ちによって被害を受ける人たちの立場はきわめて深刻であると言わなければなりません。私は、以上の見地から、両大臣を初め政府当局が、積極的にこの円高対策についての基本的な考え方を、先ほど申し上げましたとおり勇断を持って、新しい決意という言葉が適切かどうかわかりませんが、いままでの経済政策の運営ということだけでなく、転換をさせるという形の中での検討を積極的に続けて、不必要な混乱を経済界に巻き起こさせないように積極的な努力をひとつ要望しておきたいと思うわけであります。  さてそこで、先ほど来の答弁を聞いておりますると、結果的にどうしていいのかわからないが、まあ即効薬程度にあれもやろう、これもやろう、その中で何とか日がたつうちに情勢が有利に展開していくのではないか、有利に展開していく時を待とうというような、時を待つという姿勢を私はうかがわざるを得ない。いまの福田内閣の持つ性格の本質的なものであるがゆえにそうなのだと思うのでありまするが、福田さんの政策は、したがって経済は任しておけと言ってももう任し切れないというちまたの声が、その不満が積み重なった形の中で出ているのではないかという感じがするわけであります。  そこで、私は、さっき倉成経済企画庁長官が新しい考えがあったらお示しをしていただければ結構だというようなことも言われたわけでありまするが、こういうようなことをしてはどうかなという気がするわけであります。こういう現在のような円高情勢が続くとすれば、緊急的な輸入や為替変動緊急融資制度のみにとどまらず、新たな政策の展開を図ることが必要であろうということは先ほど来指摘をいたしておるわけであります。通産省としては、優秀な人材が集まっておるわけでありまするから、恐らくこういう状況の中で手をこまねいて時の来るのを待つほど消極的でないということは私は確信をいたしております。  かつて昭和四十六年の第一次ドルショックの当時、すでにその情勢の中で新しい政策を起案し、提言しようとしたときもあるようでございまするが、結果的に大蔵当局とその調整がつかず、日の目を見ずに終わったというような状況があったと聞いておるわけであります。私も当時から商工委員会に属しておりますので、その事情をいささか知るものでありまするが、昭和四十六年ころ、国際収支の黒字対策として第二外国為替特別会計というような構想があり、その創設によって外貨の機動的活用を図るという構想が論議され、結果的に大蔵当局の反対に遭ってこの制度が活用されなかったというように聞いておるわけでありまするが、その当時と現在とは事情は大きく変化をいたしております。いわゆる第一次ドルショック時代と今日の経済情勢とは大きく変化をいたしておるわけでございまするから、この情勢に加えて、通産当局としてそのような制度を創設し、緊急的な対策を図ることをお考えになっておられるかどうか。考えることが必要であるという立場に立って私は質問いたしておるわけでございまするけれども通産大臣経済企画庁長官産政局長の御見解をひとつ示していただきたい。
  22. 田中龍夫

    田中国務大臣 御指摘の点は、田中通産大臣の際に第二外為論というものが、大変に構想が打ち出されたということでございます。同時にまた、当時の非常にドルの過剰蓄積という問題、しかしまた、同時に過剰流動性があり、物価高の当時、私も自由民主党の対外経済協力特別委員長といたしまして、ドル別建ての同じようなケースにつきまして、自由民主党といたしましては研究をいたしたこともございます。  今回、このような情勢は、当時の過剰流動性や物価高というのとはまた条件が違いますけれども、ドルの黒字の膨大なものに対しまして、これをいかにして考えるかという問題につきましては、これはまだ成案は得ておりませんけれども検討なり作業は命じてはおります。しかしながら、なかなかむずかしい問題でありますことは、これは申すまでもございませんが、真剣にこの問題につきましては研究をさせております。
  23. 倉成正

    倉成国務大臣 通産大臣からお答えございましたけれども、第二外為会計を設けるということは、具体的に申しますと、そこにおいて希少金属を外貨準備で取得するとか、あるいはそれにかわるべき証券を外貨準備において取得するということを意味すると思うのでございます。これらの問題についても私どももあらゆる角度から検討はいたしておるのです。  ただ、佐野委員が御承知のように、技術的な面、それから希少金属と申しましても、たとえばコバルトであるとかニッケルであるということになりますと、これを急速に、大量に買い付けるということになると、世界の市場をいたずらに撹乱することにもなってまいりますし、やはり問題の解決というのが長期間を要する。したがって、当面の経常収支対策としては、アイデアとしては十分考えられるのですけれども、すぐ間に合うかどうかという問題があるということを御理解いただきたいわけでございまして、私どもも決してそれらの問題について無関心であるわけではなくして、いろいろな点で検討はいたしておる、しかし、非常に困難があって、当座の問題としてはなかなか間に合いにくいというのが現在得ておる感触でございます。
  24. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 前回の第二外為論のときの一番のネックは、たしか外貨準備を長期に運用することについての可否についての議論であったかと思うわけでございます。ただ今回は、その辺の難点も考えまして、せっかくの外貨でございますので、それを何か運用する方法ということで検討はいたしておりますが、ただいまのところ成案は得ておりません。
  25. 佐野進

    佐野(進)委員 むずかしくない問題は何もないわけで、むずかしくないならばやっているわけだから、私はここであえて質問する必要はないわけで、そういう点について三人の答弁を聞いてみると、通産大臣答弁が一番積極的で、だけれども私にとっては少し煮え切らない。そういう問題について積極的に突っ込んでどう対応するかということについて、もう省を挙げて取り組むという姿勢があってこそ、今日の円高不況経済情勢の中で、やはり通産省よくやっているわいという認識を得られることになるのじゃないか。私ども商工委員をやっておるわけですから、通産省の行政に対して大いにバックアップしたい、大いに積極的にやってもらいたいと常日ごろ願いを持ちながら対応しているわけで、きょう質問しているのもそういう意味でありますから、大臣以下ひとつ勇気をふるって、どんな問題でそのことが今日の経済情勢の中で必要なんだと判断された場合には、積極的に取り組んでいただくことを、もちろんいままでも取り組んでいることを何も否定いたしませんが、そのことを要望しておきたいと思います。  さて次に、このように深刻な経済情勢の中で、円高によって被害を受けている立場に立つ発言というもの、あるいはまた、その人たちに対するところの救済というもの、これに対する声は非常に大きいわけであります。しかし反面、円高必ずしもすべてが被害者ではない。円高によって利益を得ている人たちのあることも事実であります。この人たちに対する社会的な責任、その責任を追及するという声は余り出てこないわけであります。これは政治が、あるいは経済がそのことに対して寛容であるということになるのかどうかわかりませんが、やはり悪い人があればいい人がある、いい人があれば、悪い人の立場に立っていい人はその立場の中であらゆる配慮をしていく、それを行政が適正に指導していく、これでなければ経済を初めあらゆる問題について円満な運営というものがなされていかないであろうと思うのであります。  ところが、私どもが今日そういうような点で判断をいたしますと、この円高は結局輸入関係者にきわめて大きな利得を得さしめている。特に油あるいは外国の諸製品、この諸製品の輸入が結局円高という形の中で利益を得る代表になるわけであります。ところが、この輸入された品物に対して、小売、消費者段階において、円高において得た利得が何ら還元されてあらわれてこない。端的に言うならば、安くなって消費者の手元に渡るという状況でない。最もその代表となるものはナフサの問題でありますが、その前に、このような状況が何によって結果的に消費者にその利益が潤わないのかといえば、流通機構であるとか何であるとかこうであるとかという言葉になって返ってくるわけでありますが、経済企画庁長官、さらにはまた通産当局としては、これらの問題に対してどのように対処し、どのようにその不均衡を是正するための措置をおとりになっておるか、この点について御見解を示していただきたい。
  26. 倉成正

    倉成国務大臣 いま御指摘のように、輸出の依存度が非常に高くて、しかも輸入原材料が非常に少ない業種、これが非常な打撃を受けるわけでございまして、代表的なものが合繊であるとか化学とかいうものであろうかと思います。その反面、いま御指摘のように、輸入の比率が非常に高くて輸出が余りないものということで、電力、ガス、食品、こういうものが大きな利益を受けてくる、石油業界はもちろんでございます。  そういうことでありますが、大体この円高影響が端的に出てまいりますのがやはり卸売物価でありまして、これは原材料が三分の二を占めているというわが国輸入構造に関連するわけでございます。この点では、御案内のとおり、円が一%上がりますと卸売物価で大体〇・一五%ぐらいの下落になるということで、現実に為替要因が卸売物価の安定に大変寄与しておるわけでございまして、十月の卸売物価も非常に低い水準、十一月はあるいはマイナスになるのじゃなかろうかというぐらいの落ちつきを示しておるわけでございます。したがって、この原材料の面については、大体需要者が非常に大口が多いものでございますから、この需給関係、またその需要者と供給者との間に任せておいても円高効果は十分反映し得る、そういう考え方に立っておるわけでございます。  しかし、消費財の方になりますと、この卸売物価の下落が消費財に及んでいくまでの過程においては、ただいま御指摘の流通機構の問題のみならず、ある程度の時間的な経過が要るわけでございますので、その経過が、まだなかなか卸売物価の下落が消費者物価に反映するまでに至ってないというのが実情でございます。  それから輸入消費財、ダイレクトに消費財として入ってくるものがすぐ反映できないかという問題でありますけれども、これについては先般すでに御報告申し上げておりますように、三十六品目についての追跡調査をいたしました。しかし、これについても、ストレートに輸入価格が下落して小売価格が下落したというのは、あのときの調査では腕時計、木材、配合飼料、乗用車、カラーフィルム、書籍雑誌というものでございまして、そのほかは、輸入価格上昇にもかかわらず小売価格が下落または横ばいしたものが十一品目、あるいは輸入価格が下落したけれども価格が下がらないでかえって上がっているものという問題について、詳細に御報告を申し上げたとおりでございます。  その後、あの調査を公表した後の状況はどうかと申しますと、配合飼料につきましては、ことしの九月から工場建て値トン当たり五千円、六万四百円を五万五千四百円と下げまして、それからウイスキー等については、御案内のとおり、ジョニ赤等の標準価格三千七百円が三千二百円に下がっております。これは大体九月からそういう状況になっております。それから木材が、米ツガの丸太が、六月には一立米二万四千九百二十円が八月には二万四千四百二十円というふうに、木材は顕著に下がっておるわけでございます。それから、グレープフルーツがやはり若干下がっておる。カラーフィルムが、コダックの八ミリ用カラーフィルムが七・五%から一〇・八%、十一月から下がっておる。それから自動車、書籍等についてございますし、いまお話しの灯油等につきましても、一部の有力元売り会社が今冬については値上げをしないという撤回の表明をいたしたところでございます。  その後また、政府といたしましては、物価担当官会議を開きまして、政府の関与物資について、たばこ、それから牛肉、国際航空運賃、医薬品等について、それぞれ、たばこについては十一月から英国製の巻きたばこを中心に九・二%の値下げ、それから牛肉については、指定販売店の小売目安価格をキログラム当たり平均で五・七%引き下げる、千七百四十円から千六百四十円ということで、前回七月に千八百八十円から千七百四十円に引き下げたわけでありまして、合わせますと二百四十円、すなわち一二・八%の引き下げをいたしたところでございます。国際航空運賃についてはサーチャージの四%の撤廃ということで、これは国際協定がございますからこれに諮ったわけでありますが、十一月二十日から実施をするということになっておりますし、医薬品については十一月一日官報で告示をいたしまして、薬価の基準改正、平均で五・八%の引き下げということにいたしました。  その物価担当官会議の後、電力、ガス料金等についてはかなりの差益を出しておるので、恐らくエネ庁の長官あるいは通産大臣から御説明があると思いますけれども、為替差益を今後できるだけ長期間現行料金維持のために活用する、そういうことになっておる次第でございます。
  27. 田中龍夫

    田中国務大臣 詳細にわたります企画庁長官からのお話がございましたので、私の方からあえてつけ加えることもございませんけれども、ただ、先般通産省といたしましては、この輸入関係、流通関係の各団体に対しまして、傘下の業界についての差益の還元という問題を特に注意を喚起いたし、また同時に、その報告を求めた次第でございます。その中におきましても、大体わが国輸入消費財の流通マージンというものは諸外国に比べまして概して高いということと、また流通機構も非常に複雑なものが多いということが明確になっておりますが、それに対しましてその流通業者の販売政策上の輸入品についての、特に高値の問題についていろいろな機構が判明をいたしております。  差益の中におきましての一番大きな問題は、これは卸売物価が安定をいたしておるということ、また、消費物資に対しましても逐次それが浸透しつつあるのでございますが、その大宗をなしております、全輸入の四三%を占める油の差益の問題、さらにその中におきます先生の御指摘になりましたナフサ等の問題、また電力、ガス等の問題、これらの問題につきましては、御案内のとおりに、先般のOPECの七月の価格値上げという問題、さらに来るべきこの十二月のOPECの値上げの問題等々いろいろと問題を含んでおります。業界内におきます詳細な問題につきましては、エネルギー長官からお答えいたします。
  28. 佐野進

    佐野(進)委員 ナフサの問題については後で質問しますから。  いまの両大臣答弁を聞いて、それぞれ努力されつつあるということについては私もよくわかるわけでありますが、しかし、社会的な認識としては、その努力にもかかわらず、この円高に乗じてぼろもうけをしている人たちがある、それに対する追跡はきわめて緩やかである、こういう認識しかないわけであります。私どもも、いささか事情を知る者の一人としても、その感を免れません。今後、消費財の輸入差益等につきましては、その実態を経企庁、通産当局ともそれぞれ積極的にひとつ追跡調査をせられ、具体的な措置をおとりになることを強く要望しておきたいと思います。  さて、最後に、大臣の最後のときお答えがありましたナフサ並びに灯油の問題、あるいは電力、ガスの問題でありますが、今日経済情勢の中で石油の占める役割りがいかに大きいかということは、いまさら申し上げるまでもないわけでございまして、かつての石油ショックのとき、当時の山下次官は、石油会社は諸悪の根源であるという発言をして世の中を騒がしたこともまだ耳新しい状況であります。そして、いままた石油元売り業者が、精製業者が、それと同じようなことを言われるような状況になりつつあります。悪いときは悪いと言って泣きつく。泣きつくためにいろいろな形の中で泣きつくだけでなく、その利益を得るために狂奔する。よくなればよくなったで、その得た利益をいささかも吐き出そうとしなく、みずからの利益を独占し、他に苦しむ人たちの存在を何ら考慮することなく見過ごしている、そういうような印象をいまの石油精製会社ないし元売り会社からわれわれが受けるわけであります。これは受けることが間違っているのだとか、いないのだとかいう議論は別といたしましても、受けるというのが国民一般の認識であるということは間違いございません。  こういう認識に対して通産当局が厳正なる態度をもって指導する、その指導するために私ども法律をつくったこともあるわけであります。したがって、法的な裏づけに基づくところの権限が通産当局、エネルギー庁にはあるわけでありますから、今日の情勢の中において何をなすべきかという方向はおのずとおわかりになっておられるわけでありますのにもかかわらず、私どもとしてはきわめて手ぬるい、そういうような認識しか得られない状況に置いておることに対してきわめて不満であります。  特にナフサ値下げの問題に関しましては、先ほどの集中審議の際におきましても各委員から強くその点についての要望があり、あるいはまた、石油化学業界を代表しての意見陳述あるいは化学繊維業界を代表しての参考人の意見陳述の中においても、この問題の解決こそ不況業種を立ち直らせる一大条件であるということが強く指摘されておるにもかかわらず、その後何ら具体的、積極的な手を打たれておらないというようなことについてはきわめて遺憾であると言わざるを得ません。  通産大臣並びにエネルギー庁長官から、どのような努力をなさったか、その後における経過をひとつ報告していただきたい。
  29. 田中龍夫

    田中国務大臣 政治といい、行政といい、帰するところはやはり常識でございます。この二百五十円を割るような円高に対しましての輸入差益というもの、その大幅であろうという一般の常識から申しまして、同時にまた、その差益を国民全体に還元するというこの政治の大本につきましては、いささかもわれわれの考え方は外れてはおらないと思うのでございますが、しかし、個々の業界の中におきまするいろいろな問題につきましては、担当の政府委員からお答えをいたします。
  30. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 石油につきまして、円高基調に伴う為替メリットが発生していることも事実でございますが、一方、申し上げるまでもなく、コスト上昇要因というのは非常に大きく出ておるわけでございまして、ことしの一月と七月の原油価格の引き上げだけでも、年度間を通じまして約十八億ドル程度の価格上昇になっております。そのほかに、備蓄、防災あるいは保安関係のコストあるいは関税の増徴、こういったものも含めますと、大体五十二年度間を通じまして六千五百億から六千九百億円程度のコスト上昇要因があるわけでございます。一方、為替メリットにつきまして、これもマクロ的な計算になるわけでございますが、御承知のように、一円の円高につきましてキロリットル当たり八十五円程度のメリットが出てまいります。今年二億八千六百万キロリットルの輸入を予定いたしておりますので、大ざっぱに申し上げまして五十二年度内二十円高で推移した場合には約五千億円弱のメリットが出てまいるわけでございます。したがいまして、このメリット幅がふえればそれにつれて増大もするということでございますが、この両者の関係がどのように相殺関係に立つかということでございます。あるいは、一部におきましては為替の先物予約をいたしております。この部分につきましては為替メリットから査定をしなければいかぬ。また、特に民族系と申しますか、企業間格差がかなりついてまいっておりまして、本年三月末の決算時点におきましても、民族系だけでも七百億円程度の繰越損を残しておる。全般的に申し上げると、さような情勢にあるわけでございます。  御指摘のナフサにつきましても、ナフサを使用する石油化学業界あるいは化学肥料業界が非常な苦境に立っておるということは、重々われわれは承知いたしておるわけでございますが、この問題につきましては、やはり当事者同士で話し合いをしてもらいたい、値決め交渉をしてもらいたいという立場でございます。特にコンビナートリファイナリーと称するものが全国で九カ所ございますが、このコンビナートリファイナリーだけを取り上げましても、なお百三十五億円の繰越損を持っておる。かような状態でございますので、私どもの方でいまの段階で価格の調整に入っていくということは、必ずしも適当ではないのじゃなかろうかということもございまして、現在需給両業界において熱心に値決め交渉をやっておるというのが現状でございます。  一方、私の方といたしましては、当初年度間七百五十万キロリットルのナフサ輸入を予定いたしておったわけでございますが、諸般の事情からいたしまして、さらに百五十万キロリットルのナフサ輸入を増大することによりまして、需給面から両当事者の交渉が円滑に進むようにというふうに配慮いたしております。現在、この百五十万キロリットルにつきましては、輸入の交渉を進めておるという状況でございます。
  31. 佐野進

    佐野(進)委員 石油業者が苦しい状況にあったことも事実でありまするし、また、将来どのようになっていくかということについて予測のつかないことも事実であります。しかし、だれが考えても、いま円高で苦しむ、倒産がふえる、そして日本経済はどうなるかわからぬ、そういう中においてほくほくしておるのが石油輸入会社だよ、精製業者だよ、こう言われておることだけは間違いない事実であるとするならば、やはりここに鋭いメスを入れるというか、対策を立てる、そして国民の期待することにこたえる行政を進めるということは、通産省としては当然行わなければならぬ措置であろうと思うのです。  いまエネ庁長官のお話を聞いていると、その点については何か言いわけばかり言って、ちっともやっていない。最後のように百五十万キロリットルを入れるんだとか、あるいはまた、当事者間の話を進めるんだということだけで糊塗しようとしているようなこと、それも一種の答えにくい形の中で積極的に態度を示しているんだというぐあいに好意的に理解すればできますけれども、それではやはり国民は満足しないと思うのです。私は、少なくとも諸悪の根源だと言われたような事態を再び招かないためにも、通産当局の積極的な指導をお願いしたい。  特に、いまのようなことをエネ庁長官は答えておるにもかかわらず、けさの新聞に一斉に報ぜられているように、「灯油実質値下げを示唆 石田会長 暖冬、だぶつきを理由に」と。あなたが、ここで御答弁になるときは、灯油の値下げあるいはナフサの値下げ等について内情きわめて苦しいということを言いながら、その行政的な指導にはなかなか応じないような態度がある、石油業界はそういうような状態にあるということを言っておるその業界の会長が、記者会見の席上でそのようなことを言っておる。しかも、灯油の値下げというものについては、ここのところ各方面において、国会の中でもそうであるし、国会の外でもそうであるし、強く指摘をされておるにもかかわらず、価格の一体化その他をもって、ナフサの値下げが灯油の値下げを引き起こすことにもなるんだからナフサの値下げには応じられないということを言っておきながら、その灯油の値下げを示唆するような発言が行われる。にもかかわらず、行政当局はいまなお先ほど来の答弁であるというがごときことは断じてあってはならないと私は思うのです。勇断をもって対処しなければならぬと思うのであります。  通産大臣経済企画庁長官、エネ庁長官、三者の御見解をこの際聞いておきたいと思います。
  32. 田中龍夫

    田中国務大臣 冒頭私が原則論として申し上げたように、今日の為替の膨大な差益というものの国民大衆に対しまする還元という問題は、これは政治の問題でありまするし、同時に、行政を預かる者としましての最も重要な心構えであろうと存じます。他方、いわんや差損によりまして大変苦しい状態の業界を抱えておりまする者といたしましては当然考えております。  そういう中におきまして、あるいは石油業界のいろいろな事情も勘案し、あるいはまた電力、ガス等々の問題、今後のOPECの問題も考慮に入れまして、私どもといたしましては一大勇猛心をもってこの行政に当たっておるつもりでございますので、どうぞよろしく御信頼を願いたいと存じます。
  33. 倉成正

    倉成国務大臣 担当の通産大臣からお答えされたとおりでございますが、これだけ円高で利益が出ているのに、何らかの形で消費者に還元できないだろうかという素朴な消費者の気持ち、こういう精神を踏まえまして関係当局にはいろいろお願いをいたしておるところでございまして、やはり国民にわかりやすく、事情があるならあるでそれを説明しなければいけない、そう思っております。
  34. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私たちといたしましても、可能な限り還元いたしたいという考え方基本的な立場において変わりはございません。  ただいま灯油の問題についてお話がございましたが、昨年の九月に十八リットルかんの店頭渡しの小売価格を七百二十五円にとどめるように指導してまいったわけでございますが、昨今の情勢からいたしまして、去る九月のモニター調査の結果では、全国平均が七百十八円となっております。これは背景円高の問題があり、あるいは需給関係の問題があろうか、かように思っておるわけでございます。先ほど為替差益と、反面コストアップの要因があるということを申し上げたわけでございますが、この四月あるいは三月におきまして二千四百円あるいは二千円の値上げを打ち出しておったものが、すでに一部の元売り企業におきましては値上げを撤回するといったようなことも発表いたしております。  さような状況からいたしまして、今後かなり安定的に推移していくのではなかろうかというふうに見ておるわけでございますか、冒頭に申し上げましたような基本的な立場からいたしまして、今後の為替レートの推移あるいはカラカスにおけるOPEC総会の推移等を見まして、適切な対処を私たちとしてはとっていきたい。特に、先ほど来御指摘になっておりますナフサは産業用の原料でございます。灯油は民生用の燃料としてそれぞれ非常に重要な石油製品でございます。特にそういった点に着目しながら、今後の動向を見ながら適切に対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  35. 佐野進

    佐野(進)委員 両大臣答弁はそれでいいのですが、長官、あなたの答弁はちょっと不満なんだな。  要するに両大臣が言われていることは、今日、素朴な国民感情に訴え、理解してもらうためにも積極的に対応していきたい、こうおっしゃっておるのですよ。だから、あなたはそれを具体的に処置しなければならぬ立場ですね。そうなってくると、いまわれわれが求めていること、国民が求めていることは、やはりナフサの価格が——コストが上がったコストが上がったというのは何も石油業界だけではなくて、全部あらゆるところでコストが上がっているのですよね。その中で出血受注をしたり大幅な赤字を出しながら、苦しみあえぎながら企業の運営をしておる企業がいっぱいあるわけですよね。その場合、コストが上昇しているにもかかわらず、苦しみあえぎながら、なおかつ赤字を出しながら経営をしているその企業に対して、少しでもやはり温かい配慮ある行政的な処置をすることはやらなければならない緊急な課題じゃないですか。  あれはもう当事者間の話し合いということになれば、出す方は出したくない、もらう方はもらいたいのはあたりまえですから、そこへやはり通産行政として法律背景にした一種の指導力を持つあなた方か入って、たとえばもう端的に言うならば、ナフサの問題について——電力会社やあるいは石油会社は直接消費者と話し合いをして一定の回答を出しているのですよ。政府はそれに対して回答したということはないじゃないですか。あなたは両大臣の意向を受けて両者の間に入って調整をし、適切な対策を立てるというお考えがあるかないか。ないなんということは恐らく答弁できないと思うのですが、あるかないか、それだけ言ってくださいよ。
  36. 田中龍夫

    田中国務大臣 エネルギー庁の長官の方も、私どもの意を体して、本当に真剣に四つに取り組んでおる次第でございまして、その点はだんだんと行政効果もあらわれてくるだろう、かように考えております。
  37. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣が助け船を出したのに、ぼくがまたあえて追い打ちをかけるようになってはいけないと思いますので、これは打ち切りますけれども、いずれにせよ、長官、この商工委員会初め各方面の意向を受けて積極的に日本経済発展を図るためにも、いわゆる悪徳利益を得ている——悪徳とまで言ってはこれは言い過ぎになるかもわからぬけれども、特別の利益を得て吐き出さないでいるという悪い印象を石油業界からなくするように、一段の努力をひとつ要望しておきたいと思います。  さてそこで、これら経済情勢の中で、いまどうやって企業の運営を図るか、あるいは関係する産業が発展していくのかがそこに携わる人たち共通の悩みであり、何としてもそういう状況の中から抜け出していきたい、この構造不況と言われる状況の中から抜け出していきたい、こういうことで真剣に努力が払われていることは御承知のとおりであります。  そこで、この問題に直接関係のある公正取引委員会が、ここのところ委員長発言という形の中で、新しい公正取引委員会像とも称せらるべき、そう判断してもしかるべき見解の表明がたびたび行われているわけであります。私は、過日、公正取引委員長が、就任いたしましたその際、あなたの公正取引委員会における運営はいかにあるべきかということについて質問をいたしました。あなたは、厳正公平にしていままでの委員会の運営の方向を忠実に守る形の中で対処していきたい、こういうように言われております。しかし、昨日の経団連ですかあるいは日本商工会議所ですかにおける発表ないしその他の問題の中で、幾つかの新しい公正取引委員会としての方針と考えられるような、いままでの方針変更、いわゆる新しい方針と考えられるような見解の表明をなさっておられまするが、あなたは新委員長として、ことしの第八十国会においてわれわれが苦心の末成立せしめたいわゆる独禁法改正その他の審議経過を判断せられ、その判断せられた上に、各委員の見解を聴取せられ、各委員の見解を聴取せられた上に、関係方面とも十分密接なお打ち合わせの上この発言をなされておると判断しますが、そう理解してよいかどうか、この際、見解をお示しいただきたい。
  38. 橋口收

    橋口政府委員 前々回でございましたか、佐野先生の御質問お答えをいたしまして、新委員長としての基本的な考え方を申し上げたわけでございます。今日それを繰り返して申し上げることは省略をさせていただきたいと思いますが、その際、私が申し上げましたことが幾つかございますが、一つは、現段階における独占禁止政策の運営に当たって配慮すべき事項としての現在の経済についての認識がございます。かつてないほどの長期間の経済の停滞が続いておりますし、先ほど来御議論がございますような円高の問題もございますし、さらに過去の蓄積を相当吐き出しをいたしておる、そういうような状況もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、戦後見られないような不況状態の継続という、こういう認識に立っていかに独占禁止政策があるべきかということについて日夜苦心をいたしておるわけでございまして、いま御指摘がございましたような新方針というまで固まったものはございませんが、委員会でも十分検討をいたしておるところでございますし、改正独禁法が近く施行が迫っているということもその際申し上げたわけでございまして、そのガイドラインなりあるいは政令なり規則の制定に、これまた日夜努力をいたしておるところでございます。  当面の最大の課題は、何と申しましても改正独禁法の適正な施行ということでございます。第二に大切なことは、現在の経済情勢との調和をいかに図るか、この二点にあるというふうに基本的に考えておるわけでございます。
  39. 佐野進

    佐野(進)委員 そこで、調和を図り、円滑な運営を行うということでございまするが、たとえば施行直前にある改正独禁法に基づくところの運用の中でもいわゆる企業分割にいたしましても、あるいはその他私たちがいろいろ重要問題として取り上げた事項等々について議論をした結論というものは、よく御理解をなさっておると思うのであります。したがって、その御理解をなさっておる上でそれぞれの措置を講ぜられる場合は、それぞれ関係方面とやはり十分密接な打ち合わせなり調整なりが図られてしかるべきだと思うのでありまするが、そういう処置をとられているかどうか、あるいはとった上での一つの見解の表明となっているのかどうか、その点をひとつ聞いておきたい。
  40. 橋口收

    橋口政府委員 改正独禁法の施行のためには、関係省庁との協議も必要でございますし、また、経済団体なりあるいは消費者団体等との打ち合わせも必要になるわけでございまして、先生が御指摘になりました新聞の記事は、そういう意味での経済団体との一つの懇談の場でこちらの内定した方針について協力を求めるということもございますし、さらには、意見の結果でこちらの方針をさらに検討するということもございますし、そういう過程で生まれたものでございまして、先ほども申し上げましたように、最終的に政令なり運用方針なりガイドラインで正式にお示しいたしますまでは、まだ検討中の段階なんでございます。
  41. 佐野進

    佐野(進)委員 公取委員長、あなたの置かれている立場というものは非常に重要であるのですね。私どもは、公正取引委員会の強化のために、各方面の——各方面ということもないけれども、相当強い反対があるにもかかわらず、血のにじむような努力をして独禁法の改正をなし遂げてきた経過があるわけです。したがって、この改正に直接的に携わった高橋前々委員長あるいは澤田前委員長は、その内容等についてはきわめて熟知しておると思うのですね、われわれが心配したことについて。その法律が運用される際においてどうなるべきかということについては、非常に心配しておったと思うのです。  したがって私は、あなたがたとえば同調的値上げの認定基準は一〇%内の近似めどをつけるという見解を表明されたり、あるいは設備共同廃棄を不況カルテルとして認可もすると言われたり、あなたが新しい情勢の中でそれぞれ必要だと御判断なされてこのような政策をおとりになった、このような対策をとり、それを発表されたと思うのでありまするけれども、やはりそれにはそれなりの手続というかそれなりの御努力というものが、政省令ができて発表され施行される前の段階の中においては、われわれにもわかるような形があってしかるべきじゃないかと思うのです。だから、あなたが独禁法運営について前二人の委員長と同じだと私は申し上げてはおらないのです。あなたはあなたとして独自な立場に立って運用される必要があろうと思うのです。しかし、この種法律を運用しようとする前段階における努力というものがあるとするならば、その努力はあくまでも経済政策全体との調和を保つ中で、公正取引委員会として独禁法を運用する条件の中でやはり対処されていった方がより好ましいのではないかと判断しておるわけです。  したがって、その点について、たとえば設備の共同廃棄を不況カルテルとして認可するというようなことが発表された場合において、これらについては、一体公正取引委員会が今後この種設備の共同廃棄というものについてその行政的な範囲としてお取り上げになり、これらの問題について対処していくということなのかどうか、あるいは産業政策としてこの種問題は本来存在すべきものとして御判断になっているけれども、これは今後新法施行に当たって、この種行政は公正取引委員会が当然行うべきものと判断されてこのような記者発表をされたのかどうか、この点をひとつ聞いておきたいと思うのです。
  42. 橋口收

    橋口政府委員 問題を集約してお尋ねがございました設備の共同廃棄の場合のカルテルとしての認可の問題でございますが、これは改正独禁法施行と直接関係のない問題でありますことは、先生よく御承知であろうと思います。  この問題につきましては、いろいろな問題がございます。多面的な角度から検討する必要があるわけでございまして、法律問題もございますし、さらに従来の経緯の問題もございます。法律問題なりあるいは経緯の問題について、ある結論を得た場合には政策的にどういうふうに判断するかという委員会としての問題がございます。そういう問題につきまして現在検討中でございますし、さらに関係当局とも相談をいたしておる段階でございまして、いま直ちにそういう方針を採択したということではございません。  ただ、公正取引委員会の行政体験といたしまして不況カルテルを幾つか認可いたしておるわけでございますが、先ほど申しましたような経済情勢が継続いたしますと、なかなか緊急避難的な不況カルテルとしての処理が困難な場合もございます。つまり、短期間で需給ギャップが解消するという事態が招来されないということになりますと、かなり長期間にわたってカルテルを結ぶことが必要な事態も予想されるわけでありまして、その場合には、生産数量の制限あるいは販売数量の制限とかいう形で、カルテル行為が長期間継続するわけであります。  現在やっておりますカルテルにつきましても、全部が全部というわけではございませんが、たとえば在庫率を見ますと適正な状態に回復をいたしておるにもかかわらず、市況が回復しないというような例がございます。そういうものを見てみますと、やはり基本的には生産能力としての設備能力の過剰状態というものが市況の悪化につながっている背景ではないかと考えるわけでございまして、そういう問題の根本的な解消がありませんと、いつまでたっても不況カルテルを解消するような事態が招来されない。  そういうことを考えてみますと、今日、設備の共同廃棄につきまして業界で合意ができました場合に、公正取引委員会がいかに対応するかという大変むずかしい問題に直面をいたしておるわけであります。つまり、そういう問題意識を持って関係各省とも相談しているというのが、現在時点における正確な状態であろうと思います。
  43. 佐野進

    佐野(進)委員 あなたのお話を聞けば、私どもは何もそういう検討をしていることについてとやかく申し上げる必要はないわけです。しかし、このことはやはり相当重要な問題でありまするから、このように大きな反響を呼んでおると思うのであります。  私は、産業政策との一貫性あるいは公正取引委員会との問題について、いまさらここでどうだこうだと申し上げる必要もないと思うのでありますが、何かちょっと感じとしては、委員長のそのような考えが唐突に出されたような気がいたします。しかし、新聞記事でも発表されれば、そのことは当然実施されるものであるという受けとめ方をするのは、一般国民の当然の姿勢であろうと思うのであります。したがって、私はここでいまさら、それらの問題について十分事務局と検討せられ、あるいは通産省の方、特に産業政策の問題等の関連について調整されたのかということを聞いてみたいと思うのでありますが、まあしかし、そこまで聞く必要もないと思いますからやめます。  いずれにせよ、あなたは新委員長として、第八十国会で成立した新独禁法を施行する一番目の委員長ということになるわけでございます。そしていま、不況下に苦しみ、先ほど来議論しておるように円高下に苦しむ産業界の実情の中で、公正取引委員長として対処されるわけでありますので、前の委員会で私が質問したその根本原則に基づいてさらに質問いたしましたので、その点をよく御理解の上、今後の運営に対処していただきたいと思います。  さて、時間が大分たちましたので、二、三締めくくり的な質問をしてみたいと思います。  生活産業局長ないし基礎産業局長、当面最大不況業種を抱える局長として日夜御苦労なさっておられるわけでありますし、さらに中小企業庁長官は、その最大の犠牲者である中小企業者に対して積極的に対応をしておられるわけであります。  そこで、私は、もう何回も何回も質問しておりますので、この際、むしろ質問という形ではなく、あなた方はいま一体何が必要なのか、こうしてもらいたい、不況業種を抱えるわれわれとしてはこうあらねばならないという点をこの委員会の中で発表してもらえるならば、われわれはそれを聞いて積極的に対応していきたい、こういう気がいたしますので、基礎産業局長は何か所用のため欠席しておるようでありますから、生活産業局長中小企業庁長官からひとつ見解を示していただきたい。
  44. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答えを申し上げます。  大変温かい御配慮をいただきましてありがとう存じます。すでにしばしばこの席でも御説明申し上げましたように、繊維産業あるいはその他の所管産業につきまして構造不況業種と言われる状態になっておりまして、問題は非常にむずかしい状態でございます。基本的に過剰設備と言いますか、過剰設備を基本といたしますところの需給ギャップというものか現在の不況の根本原因でございます。いまいろいろお話がございましたように、不況カルテルをすでに二回にわたり延長をいたしておるというふうな状態でございますし、物によりましては強力な個別の減産指導も行っておる、こういう状態でございます。そこへ円高という条件が重なりましたので、一層問題はむずかしくなってきたわけでございます。  私どもといたしましては、短期の需給調整とともに、共同の設備廃棄問題その他に取り組んでおるわけでございまして、方法論といたしましては、短期の需給調整とやや長期の需給を調整いたします意味での設備の調整問題というものが基本でございます。その間、現在、やはり円高も含めましていろいろと苦境に陥る個別企業も多いわけでありまして、その辺を含めまして、緊急の救済措置というふうなものにも努力をいたしておる、こういう現状でございます。  何か要望することはないかということでございますが、先般来、緊急対策、総合対策ということを決めまして、それを鋭意進めておりますので、その方向に沿って今後もやっていきたい、このように考えておるわけでございます。  なお、来年度の新政策の中に含めましていろいろ新しい要望もあるわけでございますが、それはそのラインで実現を図りたい、このように考えておるわけでございます。
  45. 岸田文武

    ○岸田政府委員 不況の問題及び円高の問題を抱えまして、特に輸出を中心とする各産地におきましては、非常に深刻に受けとめておるようでございます。  各産地の声を聞いておりますと、まず、よく聞かれますことは、何とか為替の安定を図ってほしいという声でございます。それと同時に、やはり非常に大きな声として、景気対策をしっかりやってほしいという声が聞かれます。私は、やはり中小企業の立場としていわば当然の声ではないかと受けとめております。  ただ、そうは申しましても、中小企業対策としても、こういうむずかしい局面にありますだけに、やはりできるだけのことをやっていくということが大切かと思っております。とりあえず金融で当面の処理をいたしながら、少し根本的に、これからどう中小企業が生きていったらいいのか、この辺のところを中小企業業界と私どもが一緒になって考え、そして、それに必要な対策を打ち出していくということが求められているのではないか、こう思っておるところでございます。
  46. 佐野進

    佐野(進)委員 約一時間半にわたって質問をしてまいりましたけれども、今日の円高不況下における日本経済発展と国民生活を守る上に、経済企画庁そして通産省、公正取引委員会、ともに重要な役割りを背負われておると思うのであります。私の質問の中で、あるいは皆さんの意に沿わない質問があったかと思いますが、心は一つだと思うのであります。先ほど来質問いたしてまいりました諸点につきまして、十分ひとつ私の考えを入れられて、積極的に対処し、今後の運営に当たっていただくことを強くお願いしまして、私の質問を終わります。
  47. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時二十五分開議
  48. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西中清君。
  49. 西中清

    ○西中委員 最初に、円高差益の還元につきまして御質問をいたしたいと思います。  円高に伴いまして、輸入物資については膨大な為替差益というものが発生しておる。これを消費者に還元しろという声は非常に高いわけであります。しかし、現実としては、大半の輸入物資の小売価格はほとんど動かない、下がらない、こういった状況でございます。その原因についていろいろ言われておりますけれども、流通過程で吸収されている分が大きいのではないかということも伝えられております。  そこで、通産省にお伺いをいたしますけれども、昨日、消費財の流通調査を発表されましたけれども、最初にその概要を御説明いただきたいと思います。
  50. 田中龍夫

    田中国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  51. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 昨年の秋に、日本とECとの話し合いの場で、日本の流通機構は複雑であるという話題が出たわけでございます。そこで、通産省といたしましてその流通機構の実態について調査をしようということになりまして、消費財の六品目につきまして三つの方法をもって調査したわけでございます。一つは、ジェトロを通じまして外国品の海外における売れ行きの状況、第二には輸入品の国内における販売状況、これは総代理店を通じて調査いたしております。それから国産品の国内における流通状況、この三つの観点から調査いたしましたその結果を発表したわけでございます。  ただ、この結果は、確かに日本の流通段階は多くて複雑であるということと、マージンが少し高いという結果が出たわけでございますが、一つお断り申し上げておきたいのは、これは円高問題以前の調査でございます。したがいまして、円高の問題を含めまして今後さらにこれを詰めまして、今後の施策の資としたいと思っておる次第でございます。
  52. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、いわゆる円高の差益というものについては、この調査の中にはほとんど含まれていないということでございますか。
  53. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 御承知のように、今年の一月四日の相場が二百九十二円でございます。それで、その後調査の時点までの間に若干の円高がありましたが、昨今のような大きな円高は加味されておりません。
  54. 西中清

    ○西中委員 輸入品の小売価格が非常に高いという実態が出ているようでございますけれども、その原因の主なものはどういうことが言えるとお考えですか。
  55. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 原因につきましては、ただいま申し上げましたように、国内の流通段階が若干複雑であるということと、それから日本人の嗜好からいたしまして、外国品につきましてかなり高くっても買うというような嗜好があることに原因しておるのじゃなかろうかと思っておる次第でございます。
  56. 西中清

    ○西中委員 ただいまのお話のような点につきましては、過去の調査でも、それから一般的にも繰り返し言われてきておることではないかと思います。  そこで、通産省としては、最近の急激な円高についてはまだ調査の中に入っておらない、過去のものである、こういうお話でございましたけれども、いずれにしても、円高差益を消費者に還元するということ、これは非常に重要な問題でございますけれども、どういう対策をとっていこうとされておるのか、これについて具体的に御説明をいただきたいと思います。
  57. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 流通機構の問題は、御承知のように非常に複雑な問題でございまして、特に昨今の不況以後、第二次産業に対する雇用の場が比較的少なくなった、反面、第三次産業、特に商業段階の雇用吸収力がかなりあるということで、国民の雇用もかなり流通段階に雇用されておるというようなこともありまして、これを究明するということはなかなかむずかしいかと思いますが、やはりこの円高の利益は国民に還元すべきものであろうと思いますので、できる限りそれが国民に還元できるような方向ということで検討してまいりたいと思っております。
  58. 西中清

    ○西中委員 検討していきたいということは、いまこれに対する対策はないということでございますか。
  59. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 遺憾ながら、現在の段階対策らしいものは、具体案はまだ作成いたしておりません。
  60. 西中清

    ○西中委員 大臣、現在これほど流通機構が差益を吸収する、非常な国民の非難の的になっておるわけでございますし、これは先ほども申しましたように、かねてから問題になっておるところでございます。  いまの御答弁では、いまのところ対策がないということでございますけれども、当然これは監督すべき官庁、またはそれに関与しておる官庁としては、何らかの対策をもって国民の期待にこたえるということが必要だと思うのです。ところが、現状においてはこういうものを野放しで置くというような、非常に残念な結果でございますけれども、どのようにお考えになりますか。
  61. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、先般、物価担当官会議がございました。これは企画庁を中心にいたしましての分でありますが、その後におきまして、当省といたしましては、輸入関係、流通関係の各団体に対しまして通達を出しまして、これは十月の十八日付でございまするが、円高効果を消費者価格へ反映するように協力要請の文書を出しております。これは傘下の各企業に対しまして、円高のメリットをできる限りどう還元するかという方策につきましても答えを求めております。これは大体十一月十日の期限で報告するように要望いたしておりますが、まだそれの集計整理ができておらない段階でございます。これ等をさらに検討を加えまして、われわれといたしましては、国民大衆に対しまするできる限りの差益の還元をいたしたい。  それから、基本的には、どうも表面にはちっとも出ておりませんか、企画庁長官等も常々申しておりますような卸売物価の安定、それからさらに銘柄別にでもだんだん消費関係にもこれが浸透してまいりつつございます。これは目に見えない、はでではございませんが、現実には差益の還元がございます。  それから今度は、具体的な面といたしましては、輸入の大宗を占めておりまする石油関係、あるいはまた電力、ガス、こういったものに対する問題がございます。ナフサの問題につきましては、御承知のように、輸入増加いたしまして、七百五十万キロリッターを九百万キロリッターにいたしました。ナフサの中には国産のナフサもございまするが、輸入ナフサもございます。輸入ナフサにつきましては、現実に国際価格より大分下がっておりまして、当初の二万九千円という分が、これはさらに詳細エネルギー庁の方からお答えいたしまするが、二万四千円ぐらいにはなっておる。これは確かに化学工業、ナフサを原料といたします企業に対しまする大きなメリットであろうと私は思います。これも原料でございますので、余り表立って表面には出ておりませんが、現実には相当なメリットがございます。
  62. 西中清

    ○西中委員 いまの大臣説明によりますと、まず、電力にしても石油にしても、差益が消費者に明らかに還元されたという証拠はいまのところありません。さらにまた、卸売物価ということでございますけれども、先ほどの話のように、流通段階で全部吸収され、これは消費者には反映されておらない。ですから、御説明としては私はよくわからないわけでございますけれども、少なくともこの流通機構に対して政府としてこういうように改善をしていきたいとか、今後こういう点について指導するとか、何らかの対策がなければならないんじゃないか。先ほど局長からの話では、いまのところ何もない、こういうことでございますけれども、少なくともこういう点は考えられるというような線はないものかどうか、再度お伺いをいたします。
  63. 田中龍夫

    田中国務大臣 冒頭申し上げましたように、差損の方につきましては非常に深刻ないろいろな問題が表面立って出てまいりまするが、差益の方の面は余りそういうふうに具体的に露呈いたさないのでございまして、そういう点は、私どもも何とか、この差益についてぱりっとした、国民の皆様方にもわかっていただけるような表現はできないものか、かように考えております。また、総理も、この差益の還元の問題は非常に早くから、過ぐる予算委員会、あの臨時のものではない通常会のときにも、この問題については非常に強く期待をされておったのでございます。実際問題としましては、どうも具体的に表面立った彫りの深い表現ができてないということはまことに残念でございますが、しかし、実際には相当浸透いたしております。日本の国のあらゆることから見ましても、大体原料、燃料、食糧、材料、ほとんど海外に依存しておるのでありますから、その差益というものの大きなものが存在することは、これはもうまぎれもない事実でございます。  以上です。
  64. 西中清

    ○西中委員 どうも具体的なお話が出てこないようでございます。非常に残念な思いでおりますが、少なくともこの差益の還元、こういう問題については、その中で大きな一つの要素としてネックになっておるのは流通機構、こういうことだけはほぼ明らかになっておるわけでございますから、この点について早急に手を打つ、または早急にこの対策考える、最後にこれだけは大臣お約束できないでしょうか。
  65. 田中龍夫

    田中国務大臣 これらの面につきましては、当然行政といたしましてできるだけ簡素化いたしていかなくてはならないのでございます。なおまた、特に鉱工業製品以外に農林物資も相当ございまするが、これらは私の方の所管あるいはまた農林省初め関係方面ともよく連絡をとりまして、流通機構の問題は整備いたしたい、かように考えております。
  66. 西中清

    ○西中委員 いずれにしても長い問題でございます。どうか本気でこの流通機構の改善に着手をいただきたいと思うのです。  先ほど大臣もちょっとおっしゃいましたけれども通産省としては、輸入団体、流通団体、これに対して円高効果の消費者への還元について十月の十八日に協力要請をされたようでございます。昨日までに報告が来るようになっておるようでございますけれども、これによりますと、輸入関係が三十八団体、流通関係が十六団体でございますが、御回答は全部ありましたでしょうか、どうでしょうか。
  67. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 回答につきましてはおおむね出そろってまいっておりますが、ただ、中での内容のチェックその他の整理をただいま進めつつある状況でございます。
  68. 西中清

    ○西中委員 報告してないのは何団体でしょうか、どういうところですか。
  69. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 特に事情につきましては、現在個別に状況、様子を聞きまして理由を確かめてまいりたいということでやっております。特に特別の事情があるものとは必ずしも思われませんが、ほぼ出そろってきております。
  70. 西中清

    ○西中委員 報告しないところは言えませんか。
  71. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 まだ集計確定をいたしておりませんものでございますから、具体的にどういう理由でおくれているのか等調べませんと、事情がただ単に——きのうのきょうでございますので、その辺の問題があるかと思いますが、たとえば流通関係の団体と輸入関係の団体、両方合わせまして五十四団体に出したわけでございますが、そのうちいまのところまだ報告がございませんのが七、八団体でございます。おおむね一応の報告が出てまいっております。
  72. 西中清

    ○西中委員 細かい分析はともかくとしまして、いまお話によりますと、大体四十七、八団体が出ているということでございますね。その中で、具体的に消費者への円高効果還元について何らかの方策を御報告になった団体はあるでしょうか。
  73. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいま申し上げましたように、ただいま内容を整理集計中でございまするので、全体の状況につきましてまだ御報告申し上げられる段階ではございませんが、全体として概観いたしましたところの感じでは、傘下の企業に対しまして、団体から文書等によりまして、円高の小売価格への反映についての協力をするようにという周知徹底を図ったというような団体がかなり多いようでございます。中には、緊急理事会を開きまして今後協力を申し合わせていこうというような団体も見受けられるようでございます。
  74. 西中清

    ○西中委員 そうすると、還元に効果があるだろうというような具体的な案をお出しになったところはございますでしょうか。
  75. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいまのところ、そういった形では実は必ずしも報告は出てまいっておりません。と申しますのは、申し上げますまでもなく、輸入価格の小売段階への反映につきましては、いろんな輸出者側の価格決定要因、あるいは国内のいろんなコストの要因、あるいは価格を変更するということに伴ういろいろな事務的な問題等がございまして、どういう形で小売価格に反映させられるかという点につきましては、各業種によりましてもいろいろ事情はございますし、その辺につきましての具体的な報告までは、ただいまのところ参っておりません。
  76. 西中清

    ○西中委員 何か特異な、または注目すべき提案をなさったような組合なり団体はございませんか。
  77. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいまのところ具体的な内容につきまして集計中でございますが、先ほど申し上げましたように、理事会を開きまして協力申し合わせをやろうというようなケースがございますが、そのほか、具体的にどうというところまで、まだ私どもの確認はいたしておりません。
  78. 西中清

    ○西中委員 そうすると、せいぜい理事会で相談をしようとして集まった、また集めようと、この程度のものですね。  大臣、要するに、要請をされたけれども、お聞きすると、そう効果はないような感じもするのですが、どうでしょうか。
  79. 田中龍夫

    田中国務大臣 ちょっとその出しました通達の文章をお読みしますが、貴組合におかれまして輸入品価格の低下の効果国内消費者価格にも十分反映されるよう措置すべきであると考えますが、この点については傘下の各企業に対して周知徹底を図ると同時に、この努力を強く要請する次第であります。なお、貴組合においてとられた措置の概要についてはさらに報告をしてください、こういうふうな文章になっております。これは各企業ではございませんで、流通関係の組合、団体に対しまして出したものでございますから、この一つの団体の傘下にはたくさんの実際の企業体があるわけであります。
  80. 西中清

    ○西中委員 この問題、もう少しなにしたいのですが、経企庁長官が急がれるそうですので、次に移ります。  経企庁としては、六月の調査を八月にまとめて、やはりこの種の発表をされておりますが、最近の状況はどうなってきているか、経企庁の方のお調べを説明していただきたいと思います。
  81. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま通産大臣にいろいろ御質問ございましたが、ちょうどそれと関連して、私の方の基本的な考え方を申し上げたいと思います。  六月のときの調査では、輸入品が下がってそれに並行して下がったものが、腕時計とか木材、配合飼料、乗用車、カラーフィルム、書籍、雑誌というのがございました。しかし、輸入価格は下がりましたけれどもなかなか値段が下がらないものがございます。これには、たとえばマグロとかプロセスチーズとかあるいは石油ストーブ、レコード、めがねフレーム、そういうものがございます。マグロは国内の需給が逼迫しているという問題があり、また、プロセスチーズは、国内産の価格とミックスしますので、そういう面でなかなか下がらないといういろいろな特殊事情があったわけでございます。  しかし、私は基本的にはこう考えております。やはり市場経済のもとでの価格の形成は、特定の物資は別でございますけれども、一般的には自由、公正な競争によって価格は形成されるべきものである。したがって、自由、公正な競争を阻むものをなくしていくということが基本ではなかろうかと思います。  したがって、それをもう少し具体的に申しますと、たとえば肉が非常に高い。小売店に行ってみますと、肉の仕入れは全部、自分で仕入れるのではなくて、仲買の人が持ってくるわけです。したがって、それならばもう少し小売店が部分肉を購入することができるように部分肉の市場をつくるということになれば、その部分では非常に流通関係が合理化されてくるということになります。  それから、いま非常に複雑な流通機構になっていますけれども、やはりこれに対して個々のことを手を加えるということよりも、何か刺激を与える。そうなると、たとえば生協に補助金を与えて、生協が産地直売というような形をやりますと、その刺激によって流通機構がだんだん改善されていく。これはスーパーと小売店との関係、社会問題との関連がございますから非常にむずかしいことでありますけれども、やはりある程度の刺激が流通機構をだんだん合理化していく、そういう基本的な考え方を持ちながら、具体的な現実的な問題を処理していきたいというのが私ども基本的な考え方でございます。  そこで、いまお尋ねの、その後どうなったかというお話でございますが、調査公表後、配合飼料については、工場建て値トン当たり六万四百円が五万五千四百円で、五千円ほど九月に下がりました。  ウイスキーは、デパート等の店頭で、御承知のように、ジョニ赤で三千七百円の標準価格が三千二百円程度になっております。  それから木材は、米ツガの丸太一立米当たり、六月に二万四千九百二十円が八月には二万四千四百二十円。  それからグレープフルーツは、キログラム当たりですが、六月二百八十五円が八月には二百六十五円と若干下がっておりますし、カラーフィルムも、コダックの八ミリ用についても七・五から一〇・八%引き下げということで、十一月から実施をいたします。  それから自動車については、フォード社の十二車種について、二十モテルの国内販売価格を平均二十万円下げるということ、これは十月二十七日に発表いたしました。  書籍は、これは一番円高が反映しているものでございまして、行政指導いたしませんでも、これは一定の円レートに一定のマージンをかけてやっておりますので、これが一番円高を端的に反映しておるのではなかろうかと思っております。  それから灯油については、御案内のとおり、一部有力会社が今冬に値上げを撤回を声明いたしました。  それから、先ほど通産大臣からちょっとお話がございましたけれども、物価担当官会議を開きまして、政府の所管物資について、たばこについては、英国製たばこを中心に十一月実施で九・二%引き下げ、それから牛肉についても、それぞれ目安価格を十一月十一日にキログラム当たり千七百四十円を千六百四十円と、これは前回七月に千八百八十円を千七百四十円と下げておりますから、合わせますと二百四十円、一二・八%の引き下げが行われておるわけでございます。これは指定小売販売店の分でございます。  それから国際航空運賃については、サーチャージ四%の撤廃というのを十一月二十日に実施する予定でございます。これは国際協定があるものですから、日本だけでできません。しかし、日本発の料金等についても安くなるわけでございます。  それから医薬品については、薬価の基準改定を、平均で五・八%引き下げということで、十一月一日告示にいたしております。  それから電力・ガス料金については、後ほど御説明あると思いますけれども、為替差益を、できるだけ長期間現行料金で据え置いていくということで、来年の三月までということになっていますのを、さらに長い期間現行料金でいく、こういうところが大どころの状況でございます。
  82. 西中清

    ○西中委員 詳しく御説明をいただいたのですが、たばこ、牛肉、航空運賃、医薬品、電力・ガス料金、政府の関与しておる輸入物資に係る値下げ、これは、現在の為替レートを考えて、さらに下げるという気持ちがあるかないか、それから、これ以外に政府が関係しておる輸入物資についての値下げはいまお考えになっておるかおらないか、その点はどうでしょうか。
  83. 倉成正

    倉成国務大臣 私とも、先ほど申しました基本的な自由、公正な競争が行われるように、これに対する刺激を与えるということのほかに、もう一つ大事なことは、やはり消費者、国民一般に的確な情報を提供するということではなかろうかと思うのでございます。いま統制経済をとっているわけでございませんので、一々これを指図するのは適当でない。したがって、情報を提供して、そしてできるだけ刺激を与えて、そして正しい価格が市場経済において実現するようにするというのが基本姿勢じゃなかろうかと思っております。  したがって、政府の関与するいろいろな物資につきましても、たとえば小麦が海外市場価格が下がっているじゃないか、また、円高でさらにこれに上乗せして下がっているじゃないか、この利益をどうするのかというような問題が、やはり消費者の皆さん方にとって非常に大きな関心事の一つであることも承知しております。この点については、農林大臣としては、やはり国内の米が生産過剰である、そして米麦の比価の問題等があるということで、なかなか麦価についての問題をすぐそのままの形で還元するということはむずかしい、そういう御意見を持っておられます。これも、やはり国内政策としては至極ごもっともなことであります。  ただ、私としては、わかりやすく、どういう理由があってどういうことがあってこういうことになると、やはり消費者、国民の皆様方が納得のいく情報を提供していくということが大事である、そういうふうに考えております。
  84. 西中清

    ○西中委員 いまの御説明の前に、政府がある程度動かせるもの、これについてほかに値下げについてお考え部分があるかないか、それから、先ほど若干の値下げを御説明になりましたけれども、こうしたものでさらにお考え部分はないかどうか、こういうところをお伺いしておるわけです。
  85. 倉成正

    倉成国務大臣 いま、政府でというお話だったものですから、政府所管物資の小麦を一例挙げたわけでございますけれども、当面、いますぐ政府所管物資で引き下げというところは、現在のところございません。
  86. 西中清

    ○西中委員 やはり消費者物価が八%、九%という高水準の現在でございますから、この為替差益を還元させる、これは関係団体にも要請をされているようでございますけれども、何といっても、政府がみずから関与している物資について値下げをするという姿勢がやはり一番基本であるし、そうでなければ協力を要請してもそれは迫力のないものになる。そういった点で、いまも小麦のお話をお出しになりましたけれども、もちろんこれは農林省の所管でございますのでなんでございますが、同時にまた、物価問題としても経企庁としてもいろいろと考え方というものはあると思います。  そこで、まず小麦の円高差益、これは五十二年度ではどのくらいになるか、農林省の方から御説明をいただきたいと思います。
  87. 小野重和

    ○小野説明員 円高差益というお話でございますが、円高問題のほかに、国際価格の動向がむしろ円高問題よりは大きな影響を持ちますので、両方あわせまして御説明申し上げたいと思います。  最近の輸入麦の買い入れ価格は、国際価格が底値圏と見られますが、低迷いたしております。一方、円高基調ということもありまして、政府の買い入れ価格が予算価格を相当に下回っているということでございます。  今後どういうことになるかということでございますが、これはなかなか的確な予想というのはむずかしいわけでございますが、たとえば国際価格の問題でございますと、アメリカでは生産調整を再び始めるとか備蓄を増強するとかいう動きがございますし、また、ソ連、中国等が不作でございまして、相当大量の買い付けに入っているという情報も入っております。また、そういう国際価格がどうなるかということを的確に見通すことは現時点でむずかしいわけでございますが、最近までの買い入れ価格の動向、これを踏まえましてあえて試算いたしますと、全体でございますが、予算に対比いたしまして約六百三十億程度の損益の変動があるのではないかというふうに考えております。そのうち円高の分というのは約百五十億円程度ではないかというふうに私ども見込んでおります。
  88. 西中清

    ○西中委員 それは、いまの説明は差し引きした上の話だと思うのですけれども、これはひとつおきまして、長官は急がれておるようですから。この問題については農林大臣としては据え置きを示唆するような発言も一時はありました。ですから、国民の感情から言ってもいまの説明は私はちょっとおかしいと思いますけれども、現実にかなりの差益が出ておることは事実でございますから、確かに麦価の決定は米価の決定と関係するんだとはいうものの、明らかに大変な円高差益が出ておる、こういう中でこの小麦の問題、長官としては値上げをすることについては慎重であらねばならないし、また同時に、これだけの差益が出ておるのだから、当然国民感情から言っても上げない方がいいのじゃないか、私は、物価問題として、長官の立場から言えばそういうお考えが至当ではないかというように考えておるのですけれども、長官どうでしょうか。
  89. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまの点、ただいまの御質問もよく踏まえて、農林大臣とよく御相談をいたしたいと思います。やはりどういう処置をするにしても、国民によくわかるように説明をすることが必要だと思います。
  90. 西中清

    ○西中委員 それでは長官、上げねばならないという立場にお立ちになっておりますか、それとも値上げをしなくてもいいのじゃないかというような立場に立っておられるか、その辺はどうでしょうか。
  91. 倉成正

    倉成国務大臣 これは食管法もございますし、所管大臣が農林大臣でございますから、私がここでとかく申すのはいかがかと思いますが、私の顔を見てひとつ御判断をいただきたいと思います。よく御相談いたします。
  92. 西中清

    ○西中委員 最後に長官に、また話は飛ぶのですけれども石油製品の値下げ、これはどういうように具体的措置を講じようとなさっておるか、お伺いしたいと思うのです。前提になるお話をいろいろしなければなりませんけれども、最後の質問ですから。  長官のいままでの質疑の中でのお答えによりますと、卸売物価に反映しているというようなこともしばしば言われておりますし、これから時間はかかる、経過措置はあるけれども消費者物価にやはり差益というものも響いている、こういうお話もされておるわけです。ですから、まず最初に、石油製品の値下げ、これについてはどうお考えか、第二番目は、いつごろこの円高差益が消費者物価に反映するのか、その辺のところの判断をお伺いいたしたいと思います。
  93. 倉成正

    倉成国務大臣 石油の大口の需要者、たとえば電力業界であるとか鉄鋼業界であるとかいうのは、これは十分力を持っていますので、当事者同士の話し合いで価格が決められてしかるべきだ、政府がこれにくちばしを入れるべきではないという考え方を持っております。ただ、消費者サイドの灯油の問題等については深い関心を持っておるというところでございます。  それから卸売物価への波及でございますが、これは全体としてどう響いていくかということでございますが、その卸売物価がどういう原因でどの物資によって下がっていったか、たとえば卸売物価を構成している中の生産財で下がった場合と消費財で下がった場合とで違いますけれども、消費財等で下がった場合には非常に波及効果が早くて、数カ月で出てくるということでございますが、そのほかのものでありますと、もう少し時間がかかってくるということではなかろうかと思います。
  94. 西中清

    ○西中委員 それでは長官、結構です。  少しもとに戻りますが、農林省にお伺いします。五十二年度の小麦の輸入数量はどれくらいで、それにかかわる差益はどれくらいなのか、お答えをいただきたいと思います。
  95. 小野重和

    ○小野説明員 小麦の輸入量は、食糧用でございますが、約四百三十万トンでございます。  それから、その小麦に係る損益変動、先ほど六百三十億と申し上げましたのは麦全体でございますので、小麦だけ申し上げますと——ちょっと恐縮でございます、いま手元に麦別のがございませんので、大麦を含めまして六百三十億の損益変動ということでございます。
  96. 西中清

    ○西中委員 四百三十万トン、六百三十億円の差益であります。もちろん小麦の国際相場が上昇しているというようないろいろの事情はあるかと思いますけれども、私は、先ほど経企庁長官に申しておったのは、そういった意味でこれから考えていかなければならない、このように思うわけでございます。  そこで、通産大臣にお伺いをいたしますが、灯油は値下げをするようなしないような、いろいろな発言が予算委員会等であったわけでございますけれども、現在、通産大臣としてはどういうお考えであるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  97. 田中龍夫

    田中国務大臣 特に灯油という銘柄についてのお話でございますが、この問題につきましては、四囲の情勢を勘案いたしまして慎重に考えております。
  98. 西中清

    ○西中委員 たとえて言いますと、これは参議院の予算委員会の話でございますけれども、下げる方向検討するという御答弁がありますけれども、この考えに変わりはないのですか。
  99. 田中龍夫

    田中国務大臣 石油の問題は、各銘柄が全部相関関係を持っております関係から、単一銘柄のものの検討と違いまして、なかなか容易でない面がございます。私が先ほど来申しておりますることは、何しろ輸入の大宗をなしております鉱物油燃料の問題でありまして、これに大きな差益が出ておることは事実であります。これがまた原料に使われております面、あるいはさらに電力等におきまする生だきの面とか、いろいろな問題がございます。そういうふうな問題やらガソリンやらいろいろの問題と相関関係を持っておりますので、われわれといたしましては、あるべき方向はこの差益を国民に還元しなければならない、こういうふうに常時考えております。と同時にまた、ドル価格の不安というふうなものが、逆に言いますとOPECの石油価格の再値上げというふうな問題が巷間伝えられておったりなんかいたしまして、この油の問題は簡単には明確に申し上げられない状態にございます。
  100. 西中清

    ○西中委員 昨日の石連会長の記者会見では、「灯油値下げを示唆」し、「小売り補助金ふやす形で」値下げをしたい、する、こういった意味の示唆があったわけでございますけれども、こういう業界の意向が出ておる中で、問題はやはり通産省としての指導というものが大きなかぎになると思うのです。業界への世論、そして莫大な差益というものを持っておるこの現状からいけば、少なくとも国民が納得できるような形を指導していかなければならないのは当然だと思うのです。こういう石連会長の発言があるわけでございますけれども通産省としてはそれでもなお慎重な構えでおられるのかどうか。むしろ積極的にこういう方向で御指導なさるのが私は筋ではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
  101. 田中龍夫

    田中国務大臣 なお詳細につきましては、担当政府委員からお答えいたします。
  102. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 家庭用の灯油につきましては、私たちの方も、かねがね価格的に量的に安定供給をいたしたいということで指導してまいっておることは御承知のとおりでございます。昨年の九月に、十八リットルかんの店頭渡し小売価格を七百二十五円におさめ得るように指導してまいったわけでございます。昨今の状況といたしましては、モニター調査の結果では九月時点で全国平均七百十八円になっております。十月の調査結果についてはまだ集計中で確たることは申し上げかねますが、横ばいもしくは弱含みではなかろうかというふうに推定いたしておるわけでございます。かような状況にございますのは、先ほど来お話しの円高基調による為替差益、あるいはこの秋はまだ比較的暖かく推移しておるといったようなことが需給関係に反映しておる、そういう結果ではなかろうかと思うわけでございます。  ことしの三月から四月にかけまして、OPECの原油価格引き上げに伴いまして、元売り十三社は二千円ないし二千四百円の値上げ案を打ち出したわけでございます。一部の元売り企業におきましてはその値上げを撤回しておるということでもございますが、その他企業についても大体これに追随しているようなのが実情ではなかろうかと思います。その二千円ないし二千四百円の値上げが妥当であったか、その適否は別といたしましても、そういったものが現在の小売価格に上乗せされておらないということ、換算いたしますと、二千円の場合、十八リットルかんだと三十数円値上がりになるはずであったと申しますか、円高差益がなければ原油コストの上昇からさような結果も出てきたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、昨年九月時点の七百二十五円をさらに下回った価格になっておる。私といたしましては、さようなところから、為替差益の消費者還元のための第一段階として、据え置きと申しますか、あるいは昨年の価格よりも弱含みであるというところに、まず第一段階の消費者還元のメリットを認めるべきじゃなかろうか、こういう感じでございます。  第二段の問題といたしまして、先ほど大臣お答えいたしましたように、円レートの推移、現在二百五十円を割っておるというものの、これはまだせいぜい一月かその前後のものでございまして、もう少し定着の関係を見るとか、あるいはカラカスで行われる十二月のOPEC総会、こういったものを見て対処していきたい、かように考えておるわけでございまして、御指摘の石連会長の発言なるもの、私も新聞を通じてしか知り得ないわけでございますが、どういう意味合いをもって言っておるか、見方によれば、物の価格というのは需給バランスで決まるんだというようにもとれますし、いかような解釈も、聞く人、とる人によって若干ニュアンスも変わってくるかと思いますが、私たちといたしましては、冒頭に申し上げましたように、できるだけ量的に価格的に安定供給、安定確保いたしたいという立場において今後の灯油価格等についても厳正に対処してまいりたい、あるいは物価の動向の推移等をながめながら善処いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  103. 西中清

    ○西中委員 少なくとも業界でこうした雰囲気というか、これあっての石連会長の御発言だと思うのです。その点を踏まえて、大臣としてはできるだけ国民の期待にこたえるようにしていただきたいと思うのです。ちょっと最後に御答弁をいただきたい。
  104. 田中龍夫

    田中国務大臣 もちろん業界自体もそのような御意見であると同時に、われわれも、国民の願望といたしまして、差益の還元ということは当然考えたい、かように考えております。
  105. 西中清

    ○西中委員 公取委員長さんにお伺いをしたいのですが、いままで円高差益の問題について若干質疑をいたしましたけれども、公取としても、消費者への還元という点については、それ相応の努力を期待しておるわけでございます。特に並行輸入促進、これはこれからどういうようにお考えになっておるのか、具体的な考えがあれば御説明をいただきたいと思います。  それから、そのほか公取としてでき得る措置、こういうものがあれば御説明をいただきたいと思います。
  106. 橋口收

    橋口政府委員 円高に伴う為替差益の還元でございますが、この問題につきまして公正取引委員会としてタッチし得る問題点といたしましては、いま御指摘がございました並行輸入を阻害するような条件を取り除くということであろうかと思います。  御承知のように、輸入総代理店契約を締結いたします場合には、その内容を公正取引委員会に届け出をすることになっておりますが、この制度はまだ必ずしも十分一般の経済界に定着しているとは言いにくいのでございまして、間々届け出を忘れる事例もございます。したがいまして、今回問題が起こりましてから当委員会としては検討いたしまして、十一月二日付で、消費財を輸入いたしております事業者団体二十四団体に対しまして、契約の届け出を行っていない事業者があれば直ちに届け出をするようにという経済部長名の通達を出しております。さらに、従来の事例では、輸入総代理店契約の中に並行輸入を阻害するような条項がございまして、それの削除を命じた例も相当件数ございます。  より具体的には、最近の並行輸入の実態につきまして一応把握するために、百貨店、スーパー等約十店舗について聞き取りの調査をいたしております。詳細は経済部長からお答えを申し上げさせますが、大体の感触といたしましては、最近では輸入総代理店等から並行輸入を不当に阻害されるような事実はどうもないようでございます。  それから、並行輸入は四十八年ごろから活発化してまいっておりますが、どうも最近の状況では、供給の安定性に欠け、あるいはまがいものが混入するということがあるようでございまして、必ずしも最近は並行輸入が活発に行われているとは見にくいというのが少なくとも十店舗から聴取した結果でございます。
  107. 妹尾明

    ○妹尾政府委員 お答えいたします。  調査状況は、いま委員長が御説明したことに余りつけ加えることはないのでございますけれども、まだ完全に結果を整理しておりませんので、いまの段階で確たることを申し上げるのはむずかしいと思いますけれども、どうも現状では並行輸入に余り期待できないのじゃなかろうかというところでございます。  それから、輸入総代理店契約のチェックの状況でございますけれども、最近の状況を簡単に御説明いたしますと、四十八年度で輸入総代理店の契約件数は九百五十五件ほど届け出がございましたが、その中で、並行輸入の関係で問題の条項があるということで是正方の指導をいたしましたものが四十七件、四十九年度七十件と、四十八年、四十九年はかなり多かったのでございますが、その後多少数が減っておりまして、五十年度二十七件、五十一年度二十五件、こういうふうな状況でございます。
  108. 西中清

    ○西中委員 先ほど長官の都合で、こちらもちょっと急ぎまして質問が飛んだわけですが、輸入団体、流通団体に対する協力要請をされて、昨日この報告を受けられたと先ほどお話がありました。これがまとまるのはいつごろになるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  109. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、まだ回収されていない、報告されていない団体が数件ございます。その状況を確認いたしまして、全体の取りまとめにはやはり十日ぐらいかかるのではないかと思います。
  110. 西中清

    ○西中委員 次に、公正取引委員長にお伺いいたします。  九日の記者会見で、独禁法で設備廃棄の不況カルテルをやれるかどうか検討しているが、これは可能だと思うという発言をされているようでございますが、まず御真意をお伺いしておきたいと思います。
  111. 橋口收

    橋口政府委員 午前中の委員会でもお答え申し上げましたが、現在、改正独禁法施行のために政令、運用基準、ガイドライン等の作成の作業をいたしておりますが、そういう作業の過程におきまして経済団体等の御意見を拝聴する必要がございますので、経団連、商工会議所等に出向いていろいろ懇談をいたしておりました内容が、一部手違い等がございまして外に出まして、定例の記者会見で記者団の質問に対して私がお答えをしたわけでございます。  この問題は、現在公正取引委員会検討中の問題でございまして、関係省庁もございますし、従来の運用方針との調整もございますので、まだ最終の結論を出していないわけでございます。ただ、委員会では、この問題につきまして十分検討いたしまして、その検討の結果を踏まえて関係省庁に御相談を始めておるところでございます。法律問題それから従来の経緯とのすり合わせ、それから政策的な判断の問題等を含めまして最終的に結論を出したいと考えております。
  112. 西中清

    ○西中委員 私は、不況下における独禁法の運用は非常にむずかしいし、重要な問題であると思っております。改正独禁法が間もなく施行されるわけですが、独禁法の改正のねらいの一つは、独占、寡占の弊害をチェックすることにあったように思います。当面する不況を乗り切るためには認可要件に当てはまる不況カルテルの認可はやむを得ないとしても、結果として独占、寡占が進行するということになってはならないと考えておるわけであります。  こういう意味で、これは私個人の考えと言ってもいいかもしれませんけれども、設備廃棄についても独禁法にのせていった方がよいのではないかという考え方を持っておるのです。しかし、現行法で設備廃棄のカルテルが可能であるかどうかについては若干の疑問を持っていることも事実でございます。その辺はどうお考えなのか御説明をいただきたいと思います。
  113. 橋口收

    橋口政府委員 私どもが、公正取引委員会の中で、設備の共同廃棄につきまして現在の独占禁止法が有効に作用し得るかどうかという検討を開始いたしました動機と申しますか契機といたしましては、いまお示しがございましたように、一般的な不況状態、つまり短期的な景気循環過程に生じた不況状態を脱出するために不況カルテルを認めることができるというのが独禁法の規定でございますが、仮にそういうふうに限定をいたして考えますと、景気循環に基づく需給のアンバランスよりももっと深刻な状態である構造的な不況状態に独占禁止法が適用し得ないということは、論理上むしろおかしいのではないかという感じがしておるわけでございます。  ただ、いままでは公正取引委員会の運用の方針としましては、いま先生おっしゃいましたように、どちらかと申しますと、短期的な不況状態脱出のための緊急避難的なカルテルに自己制限をいたしておるわけでありまして、これは公正取引委員会が自己に課した制約条件であるというふうに考えておるわけでございます。  具体的に申しますと、法律の文言として、「設備の制限」という事項がございます。カルテルの内容として、生産数量とか販売数量の制限のほかに、設備の制限という規定がございますが、その文言の制限の中に廃棄なり処理が入り得るかという法律問題がございますので、この点につきましては、政府の内部で、通産当局とも相談をいたしておりますし、法制局とも相談をいたしておるわけでありまして、法律上の障害がないということであれば、論理上は、一般の不況状態よりも深刻な構造不況業種の不況脱出のために独占禁止法が有効に作用し得ないということは本来おかしいのではないか、こういう感じを持っておるわけでございます。
  114. 西中清

    ○西中委員 そうすると、委員長のただいまのお話は、公取としてはほぼ現行法で可能ではないかというお考えである、こういう意味でございますか。
  115. 橋口收

    橋口政府委員 端的に申しますと、そういうことでございます。
  116. 西中清

    ○西中委員 そういう立場に立ちますと、西ドイツ独禁法、こういう点についてみますと、設備廃棄カルテルが認められておるようでございますが、実際の運用実績は少ないというようなことも聞いておるわけでございます。  ここで問題は、需給の見通しをどのようにするか、こういうところに公取としてはかかってくるのではないか、こう思うわけであります。現行法で仮に可能であるとしても、したがってその運用、これはきわめてむずかしいのではないか、このように私は判断をするわけであります。委員長の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  117. 橋口收

    橋口政府委員 西独のカルテルは、御承知のように、構造的不況カルテルでございまして、特定物資につきまして需要が永続的に低下いたしました場合にのみカルテルが認められるということでございまして、日本よりは要件を限定しているわけでございます。つまり、日本の方がカルテルの要件の幅が広いわけでございますから、そこで、さっき申し上げましたように、構造的な不況業種に対する措置としても包含をしているのではないか、こういう考え方を申し上げたわけでありますが、後段の需給の見通しというところが、まさに御指摘のように大変な難問でございまして、そういう難問がありますために、先ほど来申し上げておりますように、ここ十年間は、公正取引委員会としては、運用方針として、一般的な短期で問題の解消をする不況カルテルに運用を自己制限をしておったのではないかと私は思うわけでございます。  したがいまして、まさに御指摘の点が一つのハードルでございまして、そういう点につきましてもさらに検討を深める必要があると思いますし、仮に将来構造的不況カルテルを認める場合にも、需給の長期見通しにつきましては、これは産業官庁と十分御相談をしてお力をかりる必要もございますし、そういうこともございますから、現在なおすり合わせの最中ということでございます。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、林(義)委員長代理着席
  118. 西中清

    ○西中委員 これに対して通産省の方は、報道によりますと、構造不況問題は産業政策、この土俵の上で取り扱うべきものである、こういうようなことが言われているようでございます。その一つの背景として、昭和四十一年に、通産省と公取との間で、近い将来の需給関係の影響を与えない設備投資調整や設備の廃棄は独禁法上の問題としない旨の覚書を交換したようになっておるようでございます。この点はどうなのか。私は、この覚書は合併あるいは投資調整に関してのものであるというような認識でおるわけでございますけれども、公取委員長の御見解をお伺いしたいと思います。
  119. 橋口收

    橋口政府委員 いまお話がございましたのは、昭和四十一年の通産事務次官と公正取引委員会事務局長との間の往復文書のことであろうと思いますが、これは昭和四十一年の十一月二十四日でございますから、まる十一年を経過いたしておるわけでありまして、これは、当時の資本自由化、開放経済体制の到来に伴って、日本の産業の国際競争力を強化するために、むだな投資あるいは重複投資を避けるという投資調整ということが、いわば前向きの措置としての投資調整ということが往復文書の主な内容をなしておると思います。それに加えて、合併についての基準、企業の大型化を要請する経済情勢の変化に即応しての合併の条件ということを決めておるものだと思います。そのほかに、おっしゃいますように、設備の処理につきましても、廃棄につきましても、投資調整と同じように取り扱うという文言が入っております。ただ、これは通産事務次官と事務局長との間の往復文書でございまして、当時の事情を調べてみますと、これは公正取引委員会でも検討いたしたものでございますから、これは委員会として関知しないということを申し上げるつもりは毛頭ございません。  ただ、申し上げましたように、何分にも十一年という時間の経過がございますし、また、この文言を一々取り上げて、たとえば過剰設備の処理につきましては、つまり投資調整に準じて取り扱う。投資調整と同様とするというふうには書いてないわけでございます。準じて取り扱うというふうに書いております。しかし、ここで、準じて取り扱うということでありますから投資調整とは違うという議論をするつもりは毛頭ございませんけれども、これだけの時間の経過の今日におきましては、この文章の文言の一々にこだわるとか、あるいはそれぞれの文言をそのまま墨守するという考え方も、これまた適当ではないのではないか、新しい事態に即して法の運用の方針というものを御相談していきたい、こういうことでございます。
  120. 西中清

    ○西中委員 ただいま論議を通じまして公取委からいろんな意見が出たわけですが、通産省としてはどういうようにお考えか、お話しをいただきたいと思います。
  121. 田中龍夫

    田中国務大臣 いまの設備の制限を設備廃棄まで広げることにつきましては、独禁法上の検討を要する問題もございますが、また、過剰設備の廃棄というものは、構造改善政策一環といたしまして行われているものでございまして、今後、通産当局並びに公取両事務当局におきまして十分意見交換を行って検討してまいりたい、かように考えております。  しかし、ただいまの構造不況の問題は、何といいましても深刻な当面の日本経済の問題でありまして、われわれといたしましては、この論理の問題よりも実際に塗炭の苦しみをいたしております業界に対しまする救済をどうするかという、この国家的な、別な観点からの機動的な処置等も私は必要でございまするし、十分に検討いたさせます。
  122. 西中清

    ○西中委員 ともかく、現在非常な円高、そして不況、こういう深刻な状況が重なっておるわけでございますが、その対策は急務でございます。業界によっては設備廃棄も避けられない、これは私も十分認識をしております。だからといって、将来禍根になるような、弊害になるような処置も慎まなければならないことは言うまでもございません。不況下、独禁法をどう運営していくか、こういった問題を委員長さんにお聞きしたい、こういうように思います。  同時にまた、委員長にお伺いしたいのは、十二月二日に施行される改正独禁法の運用に関してでございますけれども、独占的状態にある事業分野として、当初九業種を挙げておられました。これに新たに十九業種を追加し、また、同調的値上げの報告対象業種として八十五業種を挙げていますけれども、これを全面的に洗い直すと言われている。こうした、いわば見直しといいますか、そうしたことの理由は一体どういうところにあるのか。  それから、その他改正独禁法の施行準備の進捗状況はどういうようになっておるのか、この辺のところを御説明いただきたいと思います。
  123. 橋口收

    橋口政府委員 お答えいたします前に、先ほどちょっと落としましたので、補足をさせていただきたいと思いますが、十一年間で大変大きな情勢の変化があったということを申し上げたのでございますが、実はそのほかに、いまちょうど御質問ございました改正独禁法が施行になりますと、設備制限、設備廃棄等の行為がございまして、その結果商品価格に影響を及ぼしますような場合には課徴金が課されるわけでございますから、これはいままでと全く違った事態でございまして、業界としても不安定な状況のまま行為を行うということには不便が多いのではないか、そういうカルテル規制の強化というものも背景になっているということをつけ加えさせていただきたいと思います。  それから、不況下における独占禁止政策の運営というのは大変むずかしい問題でございまして、むしろ御教示を得たいと思うわけでございますが、最初の方の御質問にございましたように、不況から脱出しました後にカルテルマインドと申しますか、カルテル体質が日本経済の中に残って、経済の若さとかあるいは活力とかを失わしめるというような策はとるべきでないという基本的な考え方を持っておるわけでございます。しかし、今日のような異常な経済の停滞の状態が長期間続いてまいりますと、いろいろな問題も出てまいりますので、日本経済が全体として減速経済過程に軟着陸するのを、独占禁止法の立場から側面的にお手伝いするという面も必要であるというふうに考えておりますので、基本的に競争体質というものを残しながら、いかにこの事態に適切に対処していくか、これは前々回の委員会で申し上げましたが、独占禁止法の運用につきましては、寛厳自在よろしきを得ると申しますか、寛ならず厳ならず、適正な、また厳正な運用をすべきであるというふうに考えておるわけでございます。  それから、改正独禁法の準備の状況でございますが、これは一応の目標としましては、十一月二十日ごろまでに政令、府令、規則、運用基準、ガイドライン等につきまして成案を得て一般に公表いたしたいというふうに考えておりますが、もう残すところわずか十日ほどでございまして、あるいは二十日より少しおくれるという感じも出てまいっております。いま精力的に関係各省や民間の方々と意見の調整をいたしておるところでございます。  その中で特にお話がございましたのは、事業分野に関する独占的状態のガイドラインでございますが、これは、ことしの四月に国会に提出をいたしました事務局試案では御指摘のように九業種と、それから十九業種になっておるわけでございますが、その後いろいろ検討いたしておりますと、業種間の出入りと申しますか、その後新たに入手した資料とかあるいは事情の変更等がございまして、明確に九業種とその他業種とに分けにくいような事情もございます。  それから、ああいうガイドラインというものは本来公表しないで、公正取引委員会の行動の自由を留保した方がいいという御意見もございますが、しかし、行政の安定性という点から申しましても、公表すべきものは公表すべきではないかというふうに考えてまいりますと、現状において独占的状態の市場構造要件に該当するというふうに断定するものと、将来独占的状態の市場構造要件に該当する可能性があるものとを、合わせて一表にまとめて表現した方が現状によりよくマッチするのではないか。入手いたしました資料と申しましてもおのずから限界がございますし、さらに調査を深める必要もございますので、暫定とは申しませんが、現状における表の形式としては二種類に分けない方がいいのではないかというのが、最近までの検討の結果でございます。  それから、同調的値上げの対象品目も、国会に提出いたしましたのは、そのとき得られた資料に基づきまして、これはたしかお断わりしてあったと思いますが、輸出入関係の調整をいたしておりませんので、これを調整いたしますと八十数品目というものはかなり減ってくるのではないかという予感を持っておるわけでございます。さらに資料を調整する必要もございますが、これもできれば同時に発表いたしたいと考えておるわけでございます。
  124. 西中清

    ○西中委員 公正取引委員長への質問は以上で終わりでございますので、お引き取りいただいて結構でございます。  次に、円対策緊急輸入についてお伺いいたしたいと思います。  これは政府としては当初輸入対策七億ドル、それからその後の話として三十億ドル、さらにはまたきのうは統一見解なるものが出てまいりまして、この点については何をしているのだろうという感じを非常に深くいたしておるわけでございます。いずれにしても、こういう迷走状態というものは対外的には不信感を呼ぶものであるという認識が強いわけであります。確認の意味でございますけれども、昨日は見通しのついたもの十億ドルということでございますけれども、この十億ドルは何かどれくらいずつになっておるのか、お教えをいただきたいと思います。
  125. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまわれわれが確実と存じます黒字減らし緊急輸入でありますが、原油にいたしまして年内に三百六十万キロリットルの積み増しをいたしたい、これが約三億一千万ドルになります。それから非鉄金属でありますが、これは年度内に備蓄の拡充によります間接輸入の増でございますが、一億ドルでございます。それからウランの関係は、年内に原子力発電のウラン鉱石購入等々でありまして約一億三千万ドル、ナフサの関係は年度内に約百五十万キロリットル程度輸入数量の増、これが一億四千万ドル、これで大体六億八千万ドル、さらにこれ以外にも買えるだけ買いたい。なお、この銘柄以外におきましても、将来にわたりましてただいま備蓄した方がいいものにつきましてはさらに検討いたしたい、かように考えております。
  126. 西中清

    ○西中委員 通産省としておよそ六億八千万ドル、こういうことでございますが、このほか現時点において何か別なものをお考えであるかどうか、その点はどうでしょうか。
  127. 田中龍夫

    田中国務大臣 これはいろいろと検討をいたしておる最中でありまして、まだ申し上げる段階でもございません。なおまた、交渉相手のあることでありまして、なかなかむずかしい交渉でございます。
  128. 西中清

    ○西中委員 石油備蓄はいま三・一億ドルという話でございますが、どれくらいの量で、設備はこれを収容し得るのかどうか、その辺はどうでしょうか。
  129. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 原油積み増し三百六十万キロリットルと申しますのは、過去における在庫の最高レベルが原油にいたしまして六千四百五十万キロリットルであったわけでございますが、ことしの八月末の在庫水準が六千九十万キロリットル、そういった八月末の在庫水準から過去最高の時点まで積み増しをいたしたい、こういうことで指導してまいったわけでございます。現在、九月末時点の統計しか出ておりませんが、これが約六千二百万キロリットルになっております。十月末では大体六千三百ないし六千三百五十万キロリットル程度までになっておるのではなかろうかと思いますので、十一月末時点におきまして、過去最高の六千四百五十万キロリットルまでの積み増しは可能である、かように考えております。  タンクの容量でございますが、これは原油と製品あるいは半製品合わせまして、かれこれ一億キロリットル程度あろうかと思います。したがいまして、六千四百五十万キロリットルというのは、それに対して六四%ということになるわけでございますが、通常、タンクを効率的に動かせるためには、いわゆる回転数と申しますか、備蓄率が五〇%というのが普通でございます。過去におきまして、六千四百五十万まで原油あるいは製品等で備蓄いたしました時点におきましては、たとえばタンカーが沖合いで時間待ちをしなければいけないといったような問題があります。あるいは製品、半製品が過去の最高時点におきましては、むしろ今度は製油所の稼働に支障を来すといったようなこともございますので、私たちといたしましては、過去最高原油換算六千四百五十万キロリットルというのが原油タンクにおける最大可能な積み増し量、かように考えておるわけでございます。
  130. 西中清

    ○西中委員 そうすると、当面これ以上の積み増しは不可能であるということでございますね。
  131. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  132. 西中清

    ○西中委員 この備蓄に要する資金、膨大なものでございますけれども、そのめどは立っておるのでございますか。
  133. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 これはコマーシャルベースの積み立てでございますので、関係企業といたしましては、市中から調達いたすものと考えております。御承知のように、市中金融はやや緩慢でございますので、その資金調達は可能だというふうに考えております。
  134. 西中清

    ○西中委員 一部ではタンカーによるところの備蓄と言われておりますけれども、その経過はどういうようになっておりますか。  それから、原油を積んだタンカーをもしも実現を図るとするならば、そのタンカーの係船場所、こういったものは一体どうなるのか、この辺について御説明いただきたいと思います。
  135. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 タンカーによる備蓄につきましては、昨年来私の方で、今後の石油備蓄増強の一つの方法論として基礎的な研究をやってまいったわけでございますが、昨今の情勢から急いで実現に移せないかといったようなお話がございまして、現在関係の各省庁と話し合いを進めておるということでございます。  御指摘のように、係留地点をどこに求めるかといった立地上の問題のほかに、安全防災対策の問題、あるいは経済的な問題といったようなことも当然検討いたさなければならないわけでございます。現在鋭意そういった面につきまして関係の省庁と詰めておるということでございます。したがいまして、具体的にどこに係留するかというところまで、まだ至っておらないというのが実情でございます。
  136. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、大体めどはいつごろに置いておられるのか。それから同時に、これだけの備蓄をすることについては、商社なりまた石油会社なりがどう考えているのか、その辺のところはどうでしょうか。
  137. 田中龍夫

    田中国務大臣 この問題は、わが国といたしましてぜひやりたいケースでありまして、いろいろと障害がありましたり、あるいはまた交渉の経過もございまするが、できるだけこの問題を速やかに解決いたしたい、かように考えております。
  138. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 めどにつきましては、ただいま大臣からお答えがあったわけでございますが、御指摘の商社なり関係業界、どう考えているかという問題であります。  実はこの問題は、先ほど申し上げましたように、どこに立地を求めるか、これは、漁業との調整を含めまして、地元の了解を得るということが非常に大切な問題でもございます。そういった事情からいたしまして、まだわれわれといたしましては積極的に関係企業に働きかけておるという段階ではございませんが、ただ、先ほど申し上げましたように、陸上タンクではもういっぱいでございますので、これ以上に積み増しを必要とするならば、やはり海上備蓄だとかタンカー備蓄などに頼らざるを得ないというのが実情ではなかろうかと思うわけでございます。  やり方として考えられますのは、一つは、民間ベースで備蓄するかどうか、それから二つ目には、さもなければいわゆる政府備蓄と申しますか、石油開発公団に備蓄させるかどうかという問題がございます。  これはいずれにもメリット、デメリットがございまして、実は民間でやる場合には、いわゆるコマーシャルベースではなかなか進み得ない点もあろうかと思いますので、それなりの国としての助成を必要とする問題であろうかと思います。それから、公団による備蓄の場合には、これは当然のことでございますが、石油開発公団法の改正という問題が出てまいるわけでございます。  そういった問題を踏まえながら、われわれといたしましては、先ほど大臣お答えいたしましたように、できるだけ早くこの備蓄のめどを立て、現実に備蓄をいたしてまいりたい、かように考えております。
  139. 西中清

    ○西中委員 緊急輸入の問題でございますから、この三・一億ドルについてはもう手当ては終わっておるという意味でございますか。その点はどうでしょうか。  それから、この分は来年度やるべきものを前倒しにしたのか、別枠としてお考えなのか、その辺のところをお教えいただきたいと思います。
  140. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御承知のように、石油輸入に当たりましては、いわゆる輸入ユーザンスという問題もございますので、決済は三カ月ないし四カ月先になろうかと思いますが、この点につきましては、先ほど申し上げたように、市中金融で十分達成できるものと考えております。  それから、この六千四百五十万キロリットルまでの積み増しにつきましては、今後冬場における需要にかなりのものが向けていかれるだろうと思いますが、御承知のように、昨今、石油製品一般について需給が緩慢になってきておるわけでございまして、かような指導と申しますか、行政の方針というものを打ち出さない場合、むしろ原油輸入が削減されてくる。したがって、それだけのまた黒字がふえてくるという可能性もあるわけでございますので、私たちといたしましては、あくまで緊急対策として、過去の積み上げ実績の最高レベルまで積み上げることによって、本来ならば減るであろうところの輸入、したがって外貨支出をこの程度までは維持したい、こういう観点で指導してまいっておるわけでございます。
  141. 西中清

    ○西中委員 次に、ウランの問題についてお伺いします。  これはアメリカとの交渉が行われているように聞いておりますが、その進展状況はどのようになっておりますでしょうか。
  142. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 緊急対策として実施いたしましたウラン鉱石輸入につきましては、さきに日本原子力発電とアメリカのラッキーマックウラニウム社との間で千四百三十ショートトン、金額にいたしまして一億二千六百万ドルになるわけでございますが、この購入契約がすでに九月中に締結を終わっております。これに対する支払いといたしましては、十一月十五日と十二月二十日ぐらいに予定いたしておりますが、この資金につきましては、輸銀から七〇%、金利六%の融資を活用いたさせることにいたしておるわけでございますが、この案件のほかに、世界あらゆる地域というと言い過ぎかもしれませんが、ウラン供給可能性のある地域にわたりましてそれぞれの電力会社が交渉を進めておる、こういう段階でございます。
  143. 西中清

    ○西中委員 この問題については、新聞等で日本の姿勢についていろいろな批判があるというような報道がなされております。たとえて言うと、アメリカではその核政策上また安全保障上いろいろな施策を推進しておるわけでございますが、アメリカ側から抗議があったというような報道もあるわけですが、その辺の経緯はどうなっておるでしょうか。
  144. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 アメリカにかかわりませず、今後各国とウラン鉱石輸入交渉を続けていく、ただし、これはそれぞれの電気会社がやるわけでございますが、そういった場合に、いま御指摘の安全保障としての問題の指摘よりも、やはりウランの需給状況に対する影響といったような面が多いんじゃなかろうかというふうに私は考えておるわけでございます。もちろん安全保障につきましては、御承知のように、INFCEP等で別途核拡散防止のためのあらゆる検討を国際的にやろうという組織が発足いたしておりますので、その問題はそちらの方での検討でございまして、本件につきましては、需給事情からの意見があるとするならば、むしろそういった面からの意見ではなかろうかというふうに私は受けとめておるわけでございます。したがいまして、アメリカから正式に抗議があったとかなかったといったことは現在ございません。
  145. 西中清

    ○西中委員 非公式で内々にそういったものがあったのかどうか、その辺はどうでしょうか。  それから、いま市場としてはむしろ売り手市場、こういうことでございますが、こういう中でスポット買いを進めるということは世界の批判を浴びないかどうか、その辺の判断はどうでしょうか。
  146. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 抗議といったものは、正式、非公式いずれを問わず、私たちは耳にいたしておりません。  それから、売り手市場におけるこういった買い付けはどうかということにつきましては、それが一挙に大量のものになる場合には問題も発生するかと思いますが、各国はいろいろな目で見ておると思います。たとえば、自分の国にも買い付けに来たらどうかといったような感触のものもあるんだろうと思いますし、あるいは買いあさられてはまた価格引き上げにつながるんじゃなかろうか、特にスポット物についてはそういった傾向もございますので、そういった意見はあろうかと思いますが、一方で、やはり現在日本が置かれておる貿易黒字事情等からいたしまして、単純に国益という立場じゃなくて、国際的な立場に立っての行動としてわれわれは本件を意識いたしておりますので、ただ御指摘のように慎重に対処していく必要があろうか、かように考えております。
  147. 西中清

    ○西中委員 大蔵省にお伺いしたいのですが、きょうの報道では、関税六十品目一〇%下げという報道がなされておりますが、これはもう固まっておる案でございますかどうですか、ちょっとその辺のところを御説明いただきたいと思います。——大蔵省、来ていませんか。
  148. 澤野潤

    ○澤野政府委員 お答えいたします。  現在、総合経済対策一環としての対外経済対策、その中で関税の前倒し引き下げということを検討いたしているのは事実でございますけれども、まだ私は、大蔵省の方からはそういうものが固まったという話は聞いておりませんし、あの報道も私の方からは確認いたしておりませんが、そのことを検討いたしていることは、対外経済対策一環として事実でございます。
  149. 西中清

    ○西中委員 この問題について、自動車、電算機等が出ておるわけでございますけれども通産省としてはどういう見解をお持ちであるか、お伺いをしたいと思います。
  150. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 先般の日米高級事務レベル協議では、アメリカ側からいま御指摘の点は関心が非常に高いという意思表明があったわけでございます。したがいまして、私は、前倒し問題という中には、十分そういうことも配慮しなければならぬというふうに考えております。
  151. 西中清

    ○西中委員 対外経済対策の推進を発表されました中で、残存輸入制限品目、二十七品目の輸入割り当て枠を拡大する、こういうことが記されておるわけでございますけれども、この点についてはどうなっておるのか、具体的にお話をいただきたいと思います。
  152. 澤野潤

    ○澤野政府委員 お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げました関税引き下げと同様に、この残存輸入制限の品目の緩和という点につきましては、やはり九月三日の総合経済対策の中の一環として対外経済対策の中でうたっておるものでございまして、これにつきましては、九月の二十日に関係閣僚の間で、その中で具体的に積極的に推進、検討することができるようなものにつきまして確認いたしたところでございます。したがいまして、この残存輸入制限の品目の輸入枠拡大等につきましては、現在品目ごとに需給等を勘案いたしまして、輸入枠拡大等、そういったことにつきまして鋭意検討いたしておりまして、まさに先生のおっしゃいましたように、二十七品目についていろいろと検討いたしておるところでございます。
  153. 西中清

    ○西中委員 これは問題がいろいろ多いことでございますから、いま検討中で、この場で発表ということはむずかしいかと思いますけれども、かなり日にちがたっておるわけでございますが、このうちどの程度のものをお考えになっておるのか、全部の品目というわけにはいかないでしょうし、特にどういう考え方でいま通産省関係の品目を考えておられるのか、その辺はどうでしょうか。
  154. 矢野俊比古

    ○矢野政府委員 所管ではございません、関連局長として御答弁いたしますが、私どもの方は革及び革製品四品目、石炭というのがございます。しかし、これはいずれにしても日本の社会制度との関係も石炭を除きまして非常に高いものでございますから、この辺は私どもは慎重に扱いたいというふうに考えております。
  155. 西中清

    ○西中委員 お答えがしごく抽象的なんですが、大臣、この残存輸入制限品目についてのいまのお考え方はどういうところにあるか、御説明いただきたいと思います。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  156. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  残存輸入制限の問題でありますが、政府は、九月の三日の総合経済対策一環といたしましての対外経済推進の問題をいたしましたが、この残存の輸入制限品目につきましての品目ごとの需給動向を見ながら、輸入の枠の拡大でありますとかあるいは関係省との協議といったものを重ねて、さらに輸入の問題を促進してまいりたい、かように考えております。現在二十七品目でありますか、当省の関係も五品目ほどございまして、これらにつきましても推進を図りつついたしておる次第でございます。
  157. 西中清

    ○西中委員 次に、円高によって大きな打撃を受けておる中小企業対策についてお伺いしますが、十一月四日には、中小企業為替変動対策緊急融資融資条件を緩和して貸出金利を引き下げる、こういう決定を見たわけでありますが、現在私どもの方に中小企業者から参っております声としましては、六・二%、こういう年利、金利ではというような声が少なくないわけでありまして、もっと金利を下げることはできないのか、こういう声も多いわけでございますが、この点はもっと安くする考え方はないのか、お伺いをいたしたいと思います。
  158. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、つなぎ融資の問題につきまして今回の措置がとられたわけでございますが、十月一日から最初にいたしました分をさらに金利を引き下げ、通利七分六厘を六分二厘にいたしましたし、あるいはまた五年以内の分を六年までにいたしましたし、そのほか据え置きの期間を一年を三年、こういうふうな措置をとりましたばかりでございまして、私どもの感じからいたしますれば、そういう御要望のあることも十分承知はいたしておりますけれども、しばらくこれについては模様を見たい。御案内のとおりに、六千万に対しましてさらに上乗せの二千万というような状態でございますので、ある程度当面これをこなしていけるのじゃないか、かように考えておる次第でございます。  なお、さらに詳細なことにつきましては政府委員からお答えいたします。
  159. 西中清

    ○西中委員 後でお答えいただくとして、やはり実感的には非常に厳しい状況でございますから、もっと金利を下げろ、こういう声が強いわけです。できるだけその線に沿って早急に対処していただきたいと思うのですが、たとえて言うと、神奈川県は年利五ないし五・五%、横浜市は四・五%、こういう発表がされておるわけでございます。やはりここまで下げると、なるほど円高緊急対策のそれなりの効果というものは実感として感ぜられるわけでございますけれども、そういう点もあわせて、この六・二%を何とか下げるような方向検討されたい、こういうように思うわけですが、どうでしょうか。
  160. 岸田文武

    ○岸田政府委員 円高問題が起こりまして後、各産地の実情を調べてみまして、各産地とも新しい注文が非常に停滞しておる、その結果手持ちの受注量が次第に減っておる、これから先どうなるかということを非常に心配をいたしておりました。各産地からの要望としましては、とりあえず何らかのつなぎ金融が欲しいという声を受けまして、先ほど大臣からお話しいたしましたように、十月一日から為替変動対策緊急融資制度というものが発足した次第でございます。  ただ、その運用につきましては、いまもお話ございましたように、当初は通利でスタートいたしましたものの、これを特利でやってほしいという声が私どものところにもたくさん参りまして、それを受けまして、実は財政当局ともいろいろ折衝し、その結果六・二%当初三年間、その後六・七%というような形で話がつきまして、十月一日にさかのぼって適用するということにした次第でございます。  実は六・二という水準につきましては、この資金の元であります運用部資金コストが六・五%でございまして、これを割るというのはいわば異例の措置でございまして、いまやっております制度としましては、災害等でその例があるのみでございます。なお、従来のケースと比較いたしましても、第一次ドルショック対策のときには六・五%でございまして、それから第二次ドルショック対策が今回と同じ六・二%でございまして、それと比べましても最も低い水準にあるということが言えると思います。  さらに、それにつけ加えて御説明をいたしておきたいのは、第一次、第二次ドルショック対策のときには、こういう特利適用の限度中小企業金融公庫では一千万円でございまして、今回は二千万円になっております。国民金融公庫は同じ五百万円でございます。そういった意味での改善が加えられていること。さらにもう一点といたしまして、今回の貸し付け期間が六年間、そのうち三年間据え置きとなっている。これは第一次、第二次のドルショック対策が三年、四年でありましたことと比べますと、非常に長くなっております。特にその中で、据え置き期間三年というのはほかの制度にも例のない措置でございまして、三年間は利息だけ返せば元本は返さないで済むというような点は、現地の産地が受けております被害を特に配慮した制度である、かように考えておるところでございます。
  161. 西中清

    ○西中委員 特に配慮された部分はわからぬことはございませんけれども認識として、現状の厳しい状況というものは、地方自治体の融資条件を見てもこれなら政府のお金よりも地方自治体に、こういう流れになってくるのは当然だろうと思います。ですから、この緊急対策としても、実際実効の上で、むしろこんなものは高いから地方自治体の方がいいやというようなことになるのは当然だろうと思うのです。ですから、実際に役に立つようにもう一考される必要があるのじゃないか。ぜひともまたその方向検討されたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。
  162. 田中龍夫

    田中国務大臣 構造不況の問題につきまして、われわれといたしましては、地方自治体にもお願いいたしまして、信用補完というふうな特別な措置をとりながら、特に低利な措置をいろいろと検討していただいて、同時に、自治体の方におきましても、自分の管下の大事な企業であり、県民でございますので、知事といたしましても特段の措置を講じられておると存じます。いまのこれら深刻な構造不況対策あるいはまた倒産防止の対策、連鎖倒産対策、いろいろな問題と、さらにあわせまして御案内の為替変動の問題につきましての解約、その他いろいろな取引上の問題のつなぎ融資が今回の措置でございますので、私どもにおきましても、御趣旨のほどは十分にわかっておりますから、できる限りのことはあわせていたしたい、かように考えております。
  163. 西中清

    ○西中委員 先ほども申しましたように、五ないし四・五というような地方自治体の措置円高緊急融資、こういうものと比較しましても少し差があるようでございますから、この点についてなお一考を強く要求をしておきたいと思います。  それから、政府金融機関の既往貸し付けの返済条件、これを緩和するというように同じく決定をされておるわけですが、これは具体的にはどういうようにされるのか、御説明をいただきたいと思います。
  164. 岸田文武

    ○岸田政府委員 政府関係金融機関が貸し出しました資金につきまして、相手方が非常に困っておりますときには、やはりその実情を見ながら弾力的に返済条件を考えていくという趣旨でございます。こういった一般的な考え方は、従来からもその旨の指導をいたしておりましたが、特に今回、不況が非常に深刻化しておる、それに加えて円高という事情が加わった、この辺のことを頭に置きまして、返済条件については相手方の実情もよく見て、十分相談に乗るようにということを改めて指示をいたした次第でございます。  従来の実績を見ますと、政府関係金融機関で、一昨年で約三万件の返済条件の変更が行われております。それから昨年が、それがふえまして約四万件でございます。こういう数字からもおわかりになりますとおり、返済猶予の問題についてはかなり従来からも弾力的にやってきたことがおわかりいただけるだろうと思います。今後ともそういうような方向で指導していきたいと思っておるところでございます。
  165. 西中清

    ○西中委員 これは、金利はどの程度のものをお考えでございますでしょうか。というのは、不況対策を発表されたときにもこれと同じような処置をとられております。それで、現実に私どもの方へ参ります声は、零細な企業ですと借り入れはわずかなものでございます。それで国金まで出かけていく。〇・三%ぐらいの金利を下げてもらうのに、まず届け出をしなければならない。出ていくのに場所によりましては一日かかる。交通費も二千円、三千円とかかる。まるまる一日届け出につぶれてしまう。要するに、金利を軽減された分ぐらいはそれで帳消しになる、こういうように実効性のまことに乏しいことが伝えられておるわけでございます。ですから、この返済猶予とともに金利の面ももう少し何とかならないのか、安くならないのか、こういう声も多いわけでございます。もう少しその辺のところを御説明いただきたいと思います。
  166. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど御説明いたしました返済猶予の問題は、相手方が非常に経済的に困難に陥っておる、これを約定どおり実行してしまうと相手方の企業がつぶれてしまう、こういう場合には、金融機関としても場合によっては元も子もなくなってしまうわけですから、よく相手の実情を見た上で、一定の期間元本の返済をたな上げするというような措置を講ずることを念頭に置いたものでございます。  いまお話ございました金利の軽減の問題につきましては、私どもも、中小企業の金利負担が非常に大きい、経理を圧迫しておるということはよく承知をいたしております。その意味におきまして、下げられるだけ下げるということで、大蔵省ともあるいは三機関とも話し合いを続けてまいりました。今年公定歩合が逐次下げられることに伴いまして、たとえば中小企業金融公庫でございますと、年当初の基準金利が八・九%でございましたものが、昨今では七・六%まで下がってきております。それに加えまして、今回、従来にない異例の措置でございますが、既往金利の引き下げ措置というのを特定の分野について講ずることにいたしたわけでございます。  御承知のとおり、中小企業金融公庫を例にとりますれば、一番高いときは、基準金利が九・四%という時期がございました。それから八・九%という時期もかなり長く続いておりました。現在の七・六%とかなりの差があるということから、できればこれをひとつ下げてもらいたいという声を受けまして、八・六%を超える金利については今後一年間八・六%までは軽減をしようという措置を講じた次第でございます。ただ、これはいわゆる不況業種について、正常な経営をしながら赤字を続けておるという企業について講ずることにいたした次第でございます。  こう申し上げますと、そのような限られた分野でなくて、もっと広く広げてはどうか、あるいは引き下げ幅ももっと下げられないかというような御意見もあろうかと思いますが、私どもは、原資の状況を見まして、まず基準金利を下げられるだけ下げていこうということを精いっぱい努めてみたつもりでございますが、さらに、先ほど申し上げました要望のありますことを受けて、各金融機関の経理上かなり困難のあることはよく承知をしながら、せめてこのくらいは措置をしてほしいということを話をし、いろいろ調整の末、その程度措置を講じたという経緯がございます。私どもとしては精いっぱいの措置であると考えておるところでございます。
  167. 西中清

    ○西中委員 この既往貸し出しの金利の引き下げ、これにはかなり矛盾が多いんじゃないかと思いますが、たとえて言いますと次期の決算において赤字の出た中小企業、これは当然引き下げを実施するということだと思うんですね。一方では、努力して努力して赤字が出ない、これは下げてくれない、こういう形になるかと思いますね。ですから、円高の被害が大きい中小企業については、全部ということはできないでしょうけれども、一定の線を引いて、その線ですべて金利を下げる、こういうような処置でもとらない限り、その努力というものは余り報われない。これは一つの例でございます。ですから、届け出なり御相談なりということでございますけれども、一定のところでやはり引き下げをするというような処置は考えられないものか、その辺はどうでしょうか。
  168. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもも、中小企業をお世話をする立場からすれば、下げられるだけ下げるということで従来もやってまいりましたし、今後もやってまいるつもりでございます。少額の金利引き下げのために手間が大変だというような声も、あるいはお聞きになったのかもしれませんけれども、いずれにせよ、元本の返済、金利の返済があるわけでございますから、その際に手続をしていただければ、手続の面ではそう御迷惑をかけずに処理できることではないかと思っております。  赤字でない黒字企業についてもこれを適用すべきではないかという点につきましては、これは私どももやはりいろいろ考えなくちゃならない問題があるような気がいたします。と申しますのも、この中小企業金融三機関の原資は、いわば大部分が国民の零細なる貯金がもとになっておるわけでございまして、それらの資金を活用するに際して、黒字企業までカバーするというところまで行っていいものだろうかどうだろうか、私どもとしてはやはりそこまではちょっと踏み切りにくいというような感じをいま持っておるところでございます。
  169. 西中清

    ○西中委員 時間が参りましたので、最後にお伺いしたいのですが、これは商調法の問題でございます。  いま全国各地でスーパーなど大規模な小売業の進出があって、それに対して地元の商店街とトラブルが起こっておる。これは当事者同士なかなか話がうまくつかない。とりわけルールがもう少し確立されておらない、こういったことが問題だろうと思います。店舗面積が地方で千五百平米、政令指定都市で三千平米、これ以上のものは大店法で規制ができるようになっております。ところが、最近の傾向としては、この店舗面積か規定よりわずかに小さい、こういうことから、大店法の規制を受けない大型店の進出がふえているという事実がございます。  八十国会におきまして商調法が改正されました。この改正によって、大店法の対象外となっておる基準面積以下の大型店、中型店、こういう進出が改正商調法で新たに加えられた大企業者の定義に該当する大型店、中型店であった場合、中小小売商と紛争が生じたときに、申し出の資格を持っている中小小売商であれば改正商調法の適用がなされる、そして調査、調整等が行われる、こう考えておるわけですが、その点は間違いないかどうか。  それから大型店、中型店等の進出が中小小売商との間で紛争を生ずる懸念がある場合において、基準面積以上のときは大店法、それ以外であったならば改正商調法によって、どちらかの法によって解決への手段を講ずることができる、こう解釈をしておるわけですが、その点は間違いないかどうか。
  170. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話ございました小売商業調整特別措置法につきましては、御案内のとおり、さきの国会におきまして議員修正の形で修正が加えられました。私ども承知しております経緯としましては、同じ国会におきましていわゆる分野調整法が制定をされた。これによりまして、小売商を除く製造業、卸売業、サービス業につきましては、特定の商品について大企業が進出し、それが結果として中小企業の経営に大きな影響を及ぼすというときの新しい調整ルールが設けられたわけでございますが、小売商につきましてやはりそれと同じような措置が必要であるということから、修正が行われたという経緯かと存じます。  その際には、やはり分野法が特定の物品の進出ということが問題の契機となっておることと平仄をとりまして、商調法におきましても、特定の物品の取り扱いについて大企業が進出したときに、特定の小売団体、特定商品を扱う小売団体から紛争の調停についての申し出ができる、こういうような形で修正が行われたわけでございます。  ただ、その修正が行われました後におきまして、小売商の方々から、確かに先回の商調法の改正は一歩前進として評価できるものの、小売商は地域的な持殊性があって、物品別の問題だけではなくて、地域別の問題提起というようなことの道が開かれてしかるべきではないかという意見が、私どもの耳にも聞こえておるところでございます。この点につきましては、いま与党でもいろいろ御議論をいただいておるところでございまして、私どもはそれらの御審議の結果を見守ってまいりたい、かように考えておるところでございます。  なお、後段にお話ございました、先回改正部分に関連をいたしまして、大都市では三千平米、その他の都市では千五百平米以上のものは大規模店舗法の適用を受け、それ以下のものについては商調法が適用になるか、こういう点につきましては、大体お示しのとおりかと考えております。
  171. 西中清

    ○西中委員 そこで、三点お伺いしますか、一つは、業種別ではなくて商店街等の中小小売団体、これは一定の政令条件に該当するならば、大企業者の進出計画について、都道府県知事に対して調査の申し出及び調整の申し出ができるようにしてはどうかというような要望がございます。この点はどう考えられるか。  それからまた、政令要件に該当しないため都道府県知事に対する申し立て権がない商店街、中小小売商団体も、商工会議所かまたは商工会に調査を申し出ることができるようにし、申し出を受けた商工会議所または商工会は調査をし、通知をすることができるようにしてはどうか、こういう要望もあります。  そしてそれに関連して、二のただいま言いましたケースについて、その場合の紛争については商工会議所または商工会があっせんを行うようにしてはどうか、この三つの考えは、通産省としてはどういうような見解をお持ちになりますか。
  172. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先回の国会におきまして商調法の修正について御審議が行われた際、あわせて決議が行われまして、この際、小売商に関する調整のルールをどうするか、あるいは小売商の振興についての従来のやり方で改善を加えるべき点がないか、これらについて政府においてもこの際十分慎重に審議をすべきであるという決議をいただきました。  私どもも、その線に沿いまして、八月以来小売問題懇談会を設けまして、いまお話しのような点についての実情把握及び問題点の整理をいま鋭意やっておる最中でございます。いまお話ございましたような問題も、当然私どもとして考えていかなければならない問題の一つであろうかと思っておりますが、別途、そのように時間をかけているよりは、何らか少しでも早く一歩でも前進を図ってはどうかという御意見がございまして、その辺のところを、いま私どもも中でいろいろ議論をいたしておる最中でございます。
  173. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  174. 野呂恭一

    野呂委員長 安田純治君。
  175. 安田純治

    ○安田委員 現在、御存じのように長期不況、それから円高という厳しい中で中小企業は大変深刻な危機に見舞われていると思うのであります。そこで、ことに不況業種の中小企業の危機は深刻だと思うのですけれども、この中で一体政府はいままでに打つべき手は全部打っているというふうにお考えなのかどうか、ことに通産サイドにおいて、通産大臣の側としてもう現在まで考えられる打つべき手はすべて打ったというふうにお考えなのか、それともまだまだ打つ手について検討している、あるいは打つべき手があるということがあればお知らせ願いたい。
  176. 田中龍夫

    田中国務大臣 特に円高、構造不況、こういうふうな二波、三波と大変苦しい状態に置かれております中小企業にありまして、われわれといたしましてはでき得る限りのいろいろな御意見を取り入れて対策考えてまいっておりますけれども、何しろ人間のすることでありまして、至らざる点が多々あるかとも存じます。いろいろと御意見がございましたら、どうぞひとつ建設的に御指示をいただきたい、かように考えます。
  177. 安田純治

    ○安田委員 結局、打つべき手はすべて打ったとは言えないということだと思うのです。何かいい考えがあれば、なおそういう手は打つ用意があるというお考え答弁だというふうに伺ってよろしいと思うのです。  そこで、いま西中委員もちょっと質問をされたようでありますが、対策としての金利の引き下げ、これも非常に重要な問題だと思うのです。既往金利の引き下げについて、十一月一日から引き下げるということになっておるようでありますが、実施状況はどうなっておるか、お伺いをしたいと思うのです。ことに、これによって、八・六%ですかに引き下げることによって、一体どれだけ負担の軽減が総額なされるのか、この数字も伺えれば大変ありがたいと思います。
  178. 田中龍夫

    田中国務大臣 計数上の細かいことにつきましては長官からお答えいたしますが、変動対策の緊急融資といたしましては十一月の十日現在で二百九十五件の申し込みで四十億でございます。  あと、詳細は政府委員からお答えします。
  179. 岸田文武

    ○岸田政府委員 既往金利の引き下げの実績は、実は十一月一日からスタートをしたばかりでございますので、まだ集計の段階に至っておりません。大体毎月ごとには実績がフォローできるかと思っております。私どもも、その結果につきましてはなるべく早く集計をし、実情把握をいたしたいと思っておるところでございます。
  180. 安田純治

    ○安田委員 負担軽減の見込み額、総額でどのくらいか。この八・六%に既往金利を引き下げる対象とされるのは、赤字決算という企業でしょうけれども、一体どのくらいの見込みか。全く見込みもわかりませんでしょうか。
  181. 岸田文武

    ○岸田政府委員 正確な見込みはまだつかんでおりませんが、大まかな見当で申しますと、対象となりますのがいわゆる不況業種でございます。不況業種は、御承知のとおり、ことしの春から逐次追加指定をしてまいりまして、ごく最近では細分類で約九十二業種が対象になっております。これを九十二業種の出荷額ウエートで見ますと、大体全体の二五%くらいを占めております。その中で、いわゆる赤字企業というものが対象になるわけでございますが、中小企業は御承知のとおり一般的に経営が非常に苦しい、なかんずく、不況業種の指定を受ける企業にありましては、一部は黒字経営もあろうかと思いますが、赤字経営の企業もかなり多かろう、こういうようなところからおぼろげな推定をつけるより仕方がないのではないかと思っておるところでございます。
  182. 安田純治

    ○安田委員 中小企業庁長官、そうおっしゃいますけれども、意外とこれは負担の軽減にならないのではないかというふうに思わざるを得ないのですよ。大体、中小零細業者で赤字申告をしなければ既往金利引き下げの対象にならぬというふうに考えますと、この中小企業の赤字というのは一体どういう性質を持っているかということからまず考えてみたいと思うのですが、これは御存じのように資本の蓄積がないわけですから、赤字というのはそれ自体もう倒産あるいは死を意味するわけでして、そういう意味では、赤字というのは、意外に申告の段階で赤字になっているところは少ないんじゃないかというふうに思うわけでございます。たとえば、これは大阪民商でずっと中小企業調査してもらったのですが、約六万二千業者のうち、申告を出している人が四万五千業者あって、そのうち青色申告が千九百人、この千九百人のうち欠損申告をしたのが百二十人にすぎないというのです。六万二千人調べてですよ。それから白色申告をしたのが約四万人、このうち欠損申告者はたったの三人にすぎない。こういう数字が私のところに来ているのでございますけれども、そうしてみますと、これがすべてかどうかわかりませんけれども、これは大阪の例ですが、しかし、特殊な業種だけを調べたのじゃございません。六万二千人のうち、こういう状態になっておる。しかもこれは不況業種だけじゃございません。すべての業種を含んでいるわけですから、この中から不況業種だけ選び出して調べれば、もっと少なくなるかもしれません。あるいはこの欠損を出した青色申告者千九百人のうち百二十人、それから白の四万人のうち三人が全部不況業種かどうかわかりませんけれども、とにかくこういう数字がどうもあるようなんですが、そういう点で大体の計数をお調べになったことはないでしょうか。
  183. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私は、中小企業の方とお話をしておりますときに、金融機関に行くときには景気のいい話をする、税務署へ行くときには景気の悪い話をするというようなことをよく冗談まじりに聞いておりますが、ただ、いまお話しの数字は税務申告のお話でございますので、それぞれお調べになった上の数字かと思いますし、私どもとしても十分気をつけて見ていかなければならない数字ではないかと思っておるところでございます。  ただ、そうは申しますものの、別途商工組合中央金庫で中小企業の経営状況についてあらましの調査をいたしましたときに、私の記憶では、赤字企業というのが中小企業の中で約三割ぐらい、それから収支とんとんといいますのが二割ちょっとというような数字があったような記憶がいたします。その数字も多少前の数字でございまして、その後不況も一層深刻化しておるし、また円高という問題が加わってまいりました。私どもは、赤字と言いますときには、従来の実績で赤字が計上されているというだけではなくて、やはり今期の実情が赤字であるというところまで、ある程度弾力的に考えていいのではないかというふうに感じております。そういうふうに考えてまいりますれば、私は、第一感としましては、先生のおっしゃるよりはもう少し適用範囲が多いのではないかという気がいたしますものの、なおよく調べてみたいと思います。
  184. 安田純治

    ○安田委員 とにかく、この既往金利の引き下げの対象になる人の赤字というのは、やはり税金の申告のときが赤字であるということなんでしょうね。そうではございませんか。何をもって証明させるかということなんです。
  185. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもは、いかなる書類によってどうこうというようなことは、通達の中にもうたってございません。企業の実態を見て赤字経営になっておればこの適用を受けるというふうに、一応簡単に理解をいたしておりました。
  186. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、必ずしも申告どおりじゃなくてもいいような話にもなっちゃうわけでございますけれども、それはともかくといたしまして、これは大蔵省あたりに聞けば、中小企業のうちどのくらいが一体欠損申告をしているものか、これは数字だけは簡単につかめると思うのですね。そういう教字をお調べになれば、先ほど西中委員質問に対して、できるだけの金利を下げる努力をして八・六%なんだとおっしゃいましたけれども、これは意外に借りている側にとっての負担軽減の総額が少ない、つまり金融機関の方にしてみれば、それだけ金利をまける金額が実際上意外と少ないのじゃないかというふうに、この大阪の私が調べてもらった例だけ見ますと思えるわけなんです。  ですから、先ほどの西中委員質問に対するお答えで、できるだけ下げて八・六%なんだとおっしゃいますけれども、この場合はできるだけ下げたいというその中身ですね。なぜ八・六%以下には下がらないかという理由、これをお知らせいただきたいと思うのです。
  187. 岸田文武

    ○岸田政府委員 先ほど御説明いたしましたように、中小企業金融公庫、国民金融公庫の原資は主として運用部資金でございます。運用部資金が下ればそれだけコストが下がり、そして貸出金利が下げられるということでございますので、私どもは、運用部資金が下がった都度、それから得られる余裕をもって基準金利をできるだけ下げるということでずっとやってまいりましたし、今回七・六%に下げますときにもいろいろ大蔵省等に相談をいたしまして、各金融三機関の経理の許す範囲で極力下げるということで七・六%が決まった経緯がございます。  ただ、それに加えて、既往金利の問題もできればこの際何とか私どもとしては実現してみたいと思いまして、いままで、あるだけの金を基準金利の引き下げに使っていこうということで折衝しましたのに、さらに加えまして、一定の特に困っている人のためにプラスアルファとしてこれを実施した。当然これは三機関の経理の圧迫要因になりますが、しかし、こういう経済情勢でございますから、そこはひとつわかってくれということで話をいたしまして、いま申し上げましたような金利まで持っていったという経緯がございます。
  188. 安田純治

    ○安田委員 政府系三金融機関の圧迫要因になるとおっしゃいますけれども、私がさっき述べた欠損申告した人の数は非常に少ないかどうか。六万二千件のうちのですけれども、全部調べたわけじゃございませんから意外に少ない数字かもしれませんが、それにしても、総額として圧迫要因になるほど金利の引き下げの部分がはね返ってくるのかどうか。八・六%というパーセントはそれはいいのですけれども、それは一体どのくらいの金利負担の軽減の総額になるのか、見込みですね。こういうことになってまいりますと、もちろんそれは正確な数字はわからないでしょうけれども、欠損申告した人が大体どのくらいいるか、それが何%ぐらいに当たっているか、それが市場における出荷額でおおよそどのくらいのパーセンテージを占めるものかということから逆算していけば、おおよその数字はわかると思うのです。そういうことさえもしていないのでは、ただ、八・六%だったらぎりぎりで、三金融機関の経営圧迫要因になるかどうかということは、絵にかいたもちというか、八・六%に下げたといっても、それによって恩恵を受ける額はほとんどないという場合だってあり得るのじゃないかというふうに考えるわけです。  ですから、これは通産大臣にお願いしたいことなのでございますけれども、ぜひそういう点も考えまして、八・六%といって、パーセントはもちろんパーセントですけれども、それによって一体どのくらい政府系三金融機関の経営圧迫にはね返ってくるものか、この恩恵を受ける対象者の数を調べて、おおよその見込みをつけていただいて、もしそれが意外に少額なんだということがあれば、なお金利の引き下げに努力をしていただきたいということをお願いしたいのでございますけれども通産大臣のお考えはいかかでしょう。
  189. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのような御質問の内容は、調べるのもなかなか骨であろうと存じますけれども、いま御指摘のございましたように、できる限り一人でも救ってまいりたいというわれわれの気持ちから申しましても、今後あらゆる努力をいたしたいと考えますが、この際、一言ちょっと訂正を申し上げておきます。  先生が最初既往金利の引き下げの中小企業の問題をおっしゃいました。私は円高の問題で頭がいっぱいだったものですから、円高の既往金利の引き下げの緊急融資の件数を申し上げまして、十一月十日の二百九十五件、四十億、これは誤りでございます。先生のおっしゃるのは不況業種の不況金利の引き下げでございます。いまのことにつきましても、御趣旨のほどは十分に体しまして、今後善処いたしたい、かように考えます。
  190. 安田純治

    ○安田委員 そこで、黒字決算をしたところまで国民の零細な貯金を原資にしたお金で金利を下げることはできないというような先ほどの御答弁もあったようですか、中小零細業者の場合に、先ほど言ったように資本の蓄積があるわけじゃなし、赤字はそれ自体生活費ゼロということにつながる業者が相当多いわけですね。ですから、赤字というだけではなくて、たとえば何らかの形で線を引くとするならば、せめて、たとえば給与所得者の標準世帯、夫婦と子供二人の四人ですか、所得税のかからない範囲くらいの所得の申告の場合、そのくらいのことは、生活費のぎりぎりだからこれは給与所得者の場合に税金がかからないのだと思いますね。だから、その年にそのくらいの所得を上げたとしても、これは生活費としてはぎりぎりの状態でございますから、せめてその線くらいまで——これは現在の赤字対象の人を全部金利八・六%とするとどのくらいはね返ってくるかを測定した結果でもよろしいのですが、その結果それが意外に少ない数字だということになれば、たとえば一つの提案として、給与所得者の標準世帯で所得税がかからない程度までの黒字については、既往金利の引き下げの対象にしてもいいのじゃないかと思うのでございますけれども、その点いかがでしょう。
  191. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま御提案のような形になりますと、お一人一人の税務申告の状況を伺って、それによって判定をするということになろうかと思いますが、そういうようなやり方が本当に機動的なやり方になるかどうか、私はなお研究が要るのではないかという気がいたします。私、先ほど来、できるだけの範囲で既往金利の引き下げの努力をしたという経過を申し上げましたが、もちろん私どもも、この使用実績がどうなるかというようなことをよく見まして、もしさらに余裕があるようであればまた検討するということは、当然やってしかるべきことではないかと思っておりますものの、ルール自体をいまおっしゃったような形に改正することについては、なおよく研究さしていただきたいと思います。
  192. 安田純治

    ○安田委員 一人一人の税金の申告を見てやると機動的じゃないというようなお話もありましたけれども、かえって機動的だと思うんですね。これは非常に簡単ですね。納税証明書一通をつければすぐわかっちゃうので、むしろ帳簿をひっくり返しているよりも簡単明瞭なんですね。それだけでいいかどうかは別として、少なくとも所得申告の中身を添付させることはそれほどやっかいなことじゃないと思うんですよ。ですから、そういう機動性がないとかなんとかいう問題じゃないのじゃないかと思います。ぜひ前向きの姿勢でこれを検討していただきたいと思います。  次に、大規模小売店法や商調法の運用の問題について若干お伺いしたいわけですけれども、御存じのように、八十国会で商調法の改正があったときに、大店法あるいは商調法を含めての抜本的見直しを図ろうという趣旨の特別決議があったと思うのですけれども、現時点で改正の見通しについてはどの程度ついておるのか、伺いたいと思います。
  193. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 お答え申し上げます。  前国会で、国会の決議によりまして、大店法、商調法、小売商業振興法等の抜本的な検討を行うということがございましたので、私ども早速、産業政策局長中小企業庁長官の諮問グループと申しますか、そういった形で学識経験者を中心にいたしましてグループを編成していただきまして、小人数のグループでございますが、七月十四日からスタートいたしまして、現在までに八回会合をしていただいております。その間、五回分につきましては、各関係者、大規模店あるいは小売商業者あるいは消費者、労働組合等の皆様方から御意見を伺ってまいりました。  ただいまその御意見をまとめまして、これは御意見につきましても右から左いろいろな御意見がございますが、それの内容をさらに踏まえまして、懇談会でいろんな問題点ごとに御検討をしていただいているという状況でございます。懇談会は、いろいろ問題が多いものですから、恐らくさらに数回回を重ねざるを得ないと思われますが、十二月中には一応の取りまとめをしていただきたいと考えております。
  194. 安田純治

    ○安田委員 ぜひその点も精力的にやっていただきたいわけですが、なお、現行法の運用自体も大分不十分ではないかというふうに思われるわけであります。ことに、御存じのように、商調協のあり方が問題であるというふうに思われる点がたくさんあるわけであります。  たとえば群馬県の渋川市の例でございますけれども、この渋川市で、商工会議所の会頭さんが持っている土地の上にスーパーが建つということで話がだんだん進んでまいりまして、いま問題になっているわけであります。その会頭さんは渋川倉庫というのを経営しておって、その倉庫を工業団地の方に移転して、その跡地をニチイに貸すという話なんです。  それで、驚くべきことがあるわけですが、ことしの二月に、ニチイの方から渋川倉庫の社長、つまりその地主さんに対して「建物賃借申込書」という文書が来ておるわけです。これを見ますと、こういうふうに書いてあるのですね。時候のあいさつがありまして、その次に、「早速ながら、貴社御所有の下記表示の土地に日本都市総合開発株式会社より」、これはコンサルタント会社だと思うのですが、「出店の依頼を受け、渋川市の商圏、商調協、建設地の権利関係等、検討致しておりましたが、下記条件にて賃借出店致したく、書面を以ってお申し込み致します。」これは二月五日付の申込書なんです。  ですから、その前にもうすでに話があったということですね。それに対する一種の回答みたいなものですが、その「下記条件」というのは何かといいますと、いろいろあるのですが、「当社は上記所存の物件について、」この土地ですね、「渋川市地域の商圏等を考慮した結果、売場面積として約三千坪(建築延床面積約四千五百坪)を確保することが必要と認めるので、その確保について、商工会議所、商調協等に対し、貴社は全面的に協力することとする。」これが建物賃借申込書のニチイから出された「下記条件にて賃借出店致したく」という条件なんです。  それに対する答え、これはニチイの社長さんに対して渋川倉庫の社長さん、これが渋川の商工会議所の会頭さんなんですが、出した返事です。どういうふうに書いてあるかというと、時候のあいさつがありまして、次に、「さて、当社敷地の開発に関し、日本都市総合開発株式会社より計画を受けて参りました所、二月五日付、貴社より建物賃借申込書を受け取りました。貴社の要請を受け、渋川市街地発展の為、弊社地を開発することに同意致します。つきましては、早期解決を図る為、全面的協力を致す所存であります。」こういう手紙が二月八日付でニチイの方に返されているわけです。  私がなぜこんなことを読み上げるかといいますと、商調協の委員を委嘱するのは商工会議所の会頭さんになっておるようですね。しかもその商調協の委員は中立性を保持しなければならぬというようなことが書いてあるわけです。  そこで、事前の二月五日に、商調協や何かから売り場面積三千坪の確保をするように全面的に地主は協力しろ。その地主が商工会議所の会頭さんだ。二月八日には、それは早期解決のために協力する所存でありますと、いわば密約といいますか、これはわれわれに正式の文書が入っているんだから密と言えるかどうかわかりませんけれども、そういう約束がちゃんと印刷された文書でお互いに取り交わされている。  それから今度は、六月の渋川市の市議会でこの件が明るみに出まして、騒ぎになったわけです。それで商工会議所の会員が、堀口さんという会頭さんにどうしたのだと事情を聞いたところが、何も語らなかったということがあるわけです。  その後六月三十日に、商工会議所の常議員の選挙や何かございました。この辺でもいろいろごたごたがあるようでございますが、七月ごろに商工会議所の会頭就任あいさつがあるわけです。そこでは、この会頭さんは、またいずれ来るであろう大型店の進出など数々の問題がありますというようなことを言って、まだニチイのことは知らぬ顔しているわけですね。騒ぎになっても知らぬ顔をしている。  そして、八月三十日に至ってニチイ進出を堀口会頭さんが初めて発表する、九月二日にニチイが新聞記者に記者会見をして発表をするというようなことで、十月六日に第一回の商調協が開かれ、二十四日に第二回商調協が開かれておる、こういう経過になるわけです。  そうしますと、商調協の委員は、商工会議所が通産局の了承を得た上委嘱するというふうになっておるようでございますが、しかもそれは中立性が必要なんだ。そうなりますと、現実に渋川の商調協で選ばれた人がへんぱな人かどうかわかりません。まだ二回しか開かれておりませんし、そういう人たちがどういう言動をとるか、これからの問題なんですが、言うまでもなく、実体的な中立性、公正性、同時に、公正らしさといいますか、中立らしさといいますか、外形上の中立性、公正さも保たなければならないと思うのですね。  ところが、こういう密約が交わされているということになりますと、こういうことで会頭さんが委嘱する商調協の委員というものは中立性があるのだろうか。三千坪の売り場面積を確保するのに全面的に協力しますと二月八日にやっておるのですよ。その後で十月に商調協が開かれておるのです。  こうなりますと、渋川の商店街の人たちにしてみれば、大店舗が進出することがいいことか悪いことかは別として、すでに外形上公正らしさが失われておる、こういう問題があるわけです。  こういう問題を考えますと、商調協は、御存じのように、法律に明文の規定があるわけじゃなくて、通達といいますか、そういうようなことでやっておるようですが、この点での商調協の運用が実にずさんじゃないか。実はこれは渋川の例だけではございませんけれども、こういう実例も一つあります。  したがって、法の改正はもちろん精力的に検討していただきたいのですけれども、現行法の運用についても、たとえば渋川の例など考えますと、これはゆゆしき大事である。現行制度の中のそうした商調協の制度自体の信頼性といいますか、威信が地に落ちておると言っても過言ではないと思うのです、少なくとも群馬県においては。この点いかがお考えか、大臣お答えいただきたいと思うのです。
  195. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまのいきさつをいま先生から承ったのでございますが、それに関する限りでは当事者が事前に約束したような形に相なっておりますが、なお十分に調査をいたしたいと存じますが、担当の政府委員からさらにお答えいたしましょう。
  196. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 商調協を、商工会議所の会頭が委員を委嘱をいたしまして、案件が出てまいりました場合に商調協におきまして検討審議をするというルールかできておるわけでございまして、その際、私どもといたしましては、通達によりまして、商調協の編成につきましては公正、妥当なものでなければいけない。「商業者、消費者、学識経験者の代表者のうちから、相互に均衡のとれるよう考慮して選定すること。」ということで、各商工会議所にも指示をいたしておりますし、また、任命に際しましては、各担当の通産局にも相談をして任命をするようにというように運用してまいっております。  渋川市の商調協の場合にも、全委員二十名のうち小売業者五名、大型店一名、卸売商二名、消費者五名、学識経験者七名というような形で編成されておりまして、この委員は昨年任命されたようでございますが、こういった商調協におきまして、地元のいろいろなサイドからの意見を十分調整していただくということをやっておるわけでございます。     〔委員長退席、武藤一嘉一委員長代理着席〕  それで、商工会議所の会頭さんがたまたまデベロッパーと申しますか、そういった形で関与しておられるというケースが実は起こっておるわけでございますが、ただ、私どもとしましては、本件につきましては確かにそういった関係は十分配慮されるべきであろうと思われるわけでございまして、商調協の運用自体につきまして関係者の意見が十分取り入れられるようにしてもらいたいと望んでおります。  ただ、制度の問題といたしましては、渋川市の商工会議所が担当いたします案件というのはいろいろと出てくるわけでございますので、そういった意味では、必ず商工会議所の会頭さんが直接関係があるという場合とは限りませんので、いまの制度の中で、いま申し上げましたように、そういう点も踏まえて商調協の審議を十分やっていただきたいというように考えております。  私ども調査いたしましたところでは、ことしの九月に第三条の届け出が出されまして、現在までのところ三回くらい商調協が開かれているというように報告を受けております。この商調協の審議でできるだけ納得のいくような話し合いを進めていただきたいというように指導してまいりたいと思っております。
  197. 安田純治

    ○安田委員 そういう御答弁ではちょっと納得できないのですよ。というのは、たまたま渋川の場合には商工会議所の会頭さんがデベロッパーであった、だからそういうことが起きるのだ。しかし、これは常に起き得る可能性が十分あるので、渋川だけの条件ではないと思うのです。大体どこの市の商工会議所の会頭さんも有力者でございまして、市の中心部などに土地を持っている方が多いのですね。実際、地方の都市へ行けば、大体大スーパーなどが目をつけるようなところには土地をお持ちになるか、あるいは直接土地をお持ちになっていなくても、それと利害関係がある人が多いのですよ。ですから、会頭一人が委嘱するような形をとるこの通達、ここに一つ問題があるのじゃないか。もっと民主的といいますか、広範な人から、選挙までいかなくても何らかの形で選ぶというような方法をとらなければいかぬのじゃないか。  あなたのおっしゃるように、昭和四十九年二月二十八日付の通達ですか、確かにこれで「商調協の公正妥当な組織運営を確保するため、」云々とか、その中で3ですね、「学識経験者については、特に中立性および地元における信望に留意すること。会議所から選出される委員についても、特に中立性に留意すること。」と書いてある。りっぱに書いてある。  ところが、実際に三千坪の売り場面積を確保することに全面的に協力するんだということを、ことしの九月に三条申請を出す七カ月前にもうすでに密約しているわけですよ。その人が委嘱するのですからね。  たまたま委嘱された人が案外骨のある人で、反骨精神が強くて、たとえおれが委嘱されても会頭の利益は図らぬというような人が選ばれれば、それこそあなたのおっしゃるたまたまそういう救済があっただけの話であって、この商調協の運用について、いままでの通達ではこうした抜けが出てくることは十分考えられるわけで、たまたま渋川市だけに偶発的に起きたんだということではないのじゃないかというふうに疑われても仕方がないのじゃないか、会頭が委嘱するというやり方では。  それから、これは通産局と十分連絡をとってその了承を得た上で云々、こう書いてありますけれども、実際問題として、通産局が一々市の事情がわかるわけじゃございませんから、多分これは盲判みたいになるんだろうと思うのです。そうすると、会頭さんのワンマンで、したがって、まさにニチイがここに目をつけて、この契約書を見るとうまいこと書いてあるのですね。「渋川市の商圏、商調協、建設地の権利関係等、検討致しておりましたが、下記条件にて」、つまり、これは商工会議所の会頭さんである堀口さんの土地だ、商調協をある程度動かせるんじゃないかというような期待がはっきり読み取れるような文章ですよ。そして「その確保について、」つまり三千坪の確保について、「商工会議所、商調協等に対し、貴社は全面的に協力することとする。」これを条件にして賃貸借の申し入れをやるというのですからね。  それに対して、次の次の次の日、はい、そうします、「早期解決を図る為、全面的協力を致す所存であります。」こういう返事が来た。これから選ばれてきた商調協を疑うなと言ったって、これは無理だろうと思うのですね。どうですか。  ですから、やはりこれは制度の問題としても、もうちょっと商調協の中立性といいますか、公正性を疑わしめないようなやり方、これがまず第一に必要だろう。もちろん結論が公正であることは必要ですけれども、そのプロセスにおいても、いささかもこういうことが疑われないような仕組みにするためには、やはり会頭さん一人の人格に頼るだけではなくて、もうちょっと何かチェックするシステムがあってもいいんじゃなかろうかということを考えるわけです。それが私の指摘したい現行法における運用の欠点といいますか、運用上問題点かあるということの一つであります。  それから、同じニチイなんですけれども、横浜市の例で見ますと、これは横浜市の天王町へニチイが進出するということで、五十一年の十月ごろに三条申請があっていろいろあったわけですが、周りの商店街の人がことしの八月十九日に市に陳情をしたいと問い合わせたら、二十三日が都合がいいという返事があった。  二十三日に行きましたら、商工会議所の企画部次長が、あなたたちの陳情は書式に合っていない、陳情書が私信で届いている、期限が切れている、そういう返事をしておるのです。ということは、どういうことを意味するかといいますと、実は官報に公示して、届け出から三カ月以内は通産大臣の調整期間だというわけですね。その期間が切れちゃった、最後にはこういう話なんです。  ところが、この陳情は、実は八月十日の日ですか、私自身も現地の人を連れて通産省へ行きました。そして陳情書を出した。そのときに意見書とはしなかったけれども通産大臣あての陳情書という形で出したのです。しかし、以前の国会で、野間議員の質問に対して、意見は口頭で述べてもそれは尊重するといいますか、受け付けるというような答弁があったということだったので、陳情書という形をとっておるけれども、これは意見として考えてもらいたいというつもりで、私自身も地元の商店街の人を連れていったわけです。  したがって、この意見が出たんだからいよいよ何か陳述をする機会が与えられるだろうと思ったところが、ことしの十月二十七日ですか、商工会議所に、いつまでたっても連絡がないので、尋ねたわけです。そうしたら、もう少し早く通産局に意見書を持っていってくれたらよかったんだ、七月二十日に届け出、五条申請があったので、八月、九月、十月の二十日でもう三カ月の調整期間が切れちゃっている。しかも、その陳情書は意見として取り扱われずに、通産省の担当官から横浜の商工会議所の次長さん個人あて、安達さんという人あての手紙に、こういう陳情が来たという陳情事項だけをくっつけて送っている。そのために、地元の意見は特段ないという形で結論が出てしまっておる。しかも、さあ後から地元の商店街の人が行ったところが、通産大臣の調整期間は三カ月で、十月二十日で切れちゃった。もうどうしようもないというような返事なんです。この意見の扱い方についても、きわめて不親切といいますかずさんだというか、そういうことがあるわけです。  時間が来ましたのでこれでやめますけれども、そういう意味では、商調協のあり方といいますか、地元の商店街の中小業者の意見を十分反映するように構成しなければならないし、運営もしなければならないと思うのですよ。ところが、通産大臣あての陳情書だったから意見として扱わなかったとかと言うわけです。そうしたら、そのときに教えるべきだと思うのですね。これは大臣の調整期間は三カ月しかないのだから、いますぐ意見書という形で出しなさいとかなんとか教えるべきなのに、そういう教示もせず——確かに書式が違うということは言いました、そのとき私もわきにいましたからね。ただそれだけなんです。三カ月というのはいつ起算でいつになるのだ、それまでにこうしなさいということを親切に教示しない、そういう問題がある。ですから、渋川の問題も今度の横浜の問題もたまたま同じニチイが絡むのですが、地元の商店街の人にしてみれば、何か通産当局はニチイと特殊な関係にあるのじゃないかというような、そういうようなことを言う人も出てくるというような状態で、これは大変問題だと思うのです。  ですから、そういう点で、現行法の運営についても、ぜひ公正中立を疑われないような商調協の構成にしていただくような保証を考えていただきたい、これが一つ。それから、そういう問題点がこのままでおくとまだまだ起きますので、ぜひ抜本的な見直し、改正について精力的に検討していただいて、次の通常国会に出せるようにしていただきたいのです。この点、お答えをいただきたいと思います。
  198. 田中龍夫

    田中国務大臣 特に行政の執行に当たります者は公正無私でなければなりませんし、その信頼の上にこそ本当の権威があると私は思うのであります。たまたまいま御指摘をいただきましたようなことはまことに申しわけないことでありますが、なお本件につきましても今後いろいろと配慮してまいりたい、かように考えます。
  199. 安田純治

    ○安田委員 私が出した二つの例はたまたまニチイに絡むものですけれども、どうもあらかじめ密約なんぞをしておくような、そういうお行儀の悪い企業に対しては、新しい抜本改正になったりあるいはこの運用を見直す過程においても、その間ぜひ厳重に行政指導をしていただきたいということを最後に要望いたしまして、質問を終わります。
  200. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員長代理 上坂昇君。
  201. 上坂昇

    ○上坂委員 十月三十日に、行政管理庁が、余暇関連施設に関する調査結果というのを発表しているわけであります。私は、中身を全部検討しておりませんが、まあ新聞に言っている程度で判断をして、これに関連する問題として、雇用促進事業団が現在まで建てている施設あるいは建てようとしている施設について質問をしたいというふうに思います。  ここにも書いてありますが、非常に「むだの実態が明らかになった。」こう言っております。一つの具体例が出ております。新潟県北魚沼郡湯之谷村、人口約六千人のところで、半径五キロの範囲内に国民保養センター、国民宿舎、いずれもこれは環境庁、福祉センター、これは町と村の施設、国民年金保養センターが厚生省で建設中、生活改善センターが農林省、五つの施設が集中しているが、目的は大体同じ。設備のいいところには集中しているけれども、国民保養センターなどはがらあき、こういう記事が出ておるわけであります。  そこで、私が問題にしたいのは、こういったむだなというだけではなくて、いま各地に各省がいろいろな施設をつくっておりますが、そのつくっている施設が、いわゆる民間、民営の旅館等の施設に対してその分野を荒らす結果にはなっていないか、こういうことについて私は質問をいたしたいわけであります。  というのは、先ほどもいわゆる大企業の進出の問題が出ておりましたが、国は何といっても一番大きいのでどんなことでもできる。それがどんどんりっぱな施設をつくっていけば、これは太刀打ちできない。値段もこちらは安くできるし、赤字が出ても倒産をしないということになれば、こんな強力な企業はないわけであります。そこがどんどんこうした建物をつくっていくということになりますと、これは中小のホテルにしても旅館業にしても、あるいは食堂、結婚式場、そうしたものが非常な圧迫を受けるということは必然ではないか、こういうふうに私は思うわけであります。ひとつそういうことを認識していただいて、決して私が質問していることが通産省とは関係がないというぐあいにはとらないでいただきたい、こう思うわけであります。  そこで、雇用促進事業団の宿泊施設として勤労福祉センターあるいはいこいの村というものが一体全国で幾つあるのか。これはどういう条件で建てられるものか。それからこれらの施設の経営主体、それから運営の方法、まあ独立採算であるとかなんかという問題もありますが、そういうことを含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
  202. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  御質問の勤総は全国で二十一カ所、それからいこいの村が十カ所ございます。     〔武藤(嘉)委員長代理退席、委員長着席〕 これらの勤労総合福祉センターは、新産都市とかいわゆる特別地域、開発地域におきまして、勤労者の福祉施設を充実し、雇用の促進と職業の安定を図るために設置されているものです。  それから、いこいの村は、勤労者が週休二日その他余暇を利用いたしまして、家族連れで宿泊し、自然に親しみながら休養や健康増進を図るための施設として設置されているものでございます。  これらの施設におきましては、宿泊施設のみではなくて、スポーツ施設、それから研修施設等を併置いたしております。  それで、この運営は地方公共団体に委託しますとともに、地方公共団体はそれぞれ財団法人等をつくって、再委託して運営しているようでございます。
  203. 上坂昇

    ○上坂委員 センターが二十一カ所でいこいの村が十カ所、三十一カ所現在運営されておるわけでありますが、このセンターといこいの村の建設費というのは大体どのくらいが標準になっているか、お答えをいただきたい。  もう一つ、これを建てる場合、所在地の市町村なりいわゆる地元といいますか、その自治体はどういう負担をするのか。  それから、土地については買い上げをしなければならないのか、借地でもいいのか。
  204. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  勤労総合福祉センターが七億、いこいの村が九億の定額で建てることになっております。  それから、地元都道府県または市町村の負担は、これは先ほども申し上げましたように、開発地域に建設されるということで、そこへ参ります道路とか土地の造成等で負担していただいておりますが、建物そのもの、それからそれに付属します施設につきましては、その七億と九億の範囲で建設させていただいております。
  205. 上坂昇

    ○上坂委員 そうすると、土地は地元で造成をして、地元で取得をしなければならないということになりますね。これは借地ではだめだ。もちろん道路は借りるわけではないから、道路はちゃんと施設をする、こういうことですね。
  206. 白井晋太郎

    ○白井説明員 そのとおりでございます。
  207. 上坂昇

    ○上坂委員 このいこいの村を建設する場合には、本来十数億かかっているというふうに言われておりますが、そういう事実はありませんか。これは、もうどんな大きなものにしてもとにかく九億円しか出さない、こういう意味ですか。
  208. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  どんな大きなものでもということではなくて、この九億円の範囲内で設計していただきまして、それを建てるということになっております。それで、最近の例で申し上げますと、先ほどの土地、それから道路その他に要するものの地元の負担としましては、九億に対しまして、たとえば山口県で小野田市に建てておりますが、四億の地元負担、それから福岡で九億に対しまして五億の地元負担というような例がございまして、九億の約半分ぐらい地元で負担しているということでございます。
  209. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、九億円は全部出すのではなくて、九億円のうちの四億円、大体半分ぐらいは地元で持つ、こういう解釈ですか。
  210. 白井晋太郎

    ○白井説明員 いえ、九億円で建物を建てまして、先ほども申し上げましたように、土地とか道路に要するものは地元負担として四、五億使っている、そういうことでございます。
  211. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、やはり十数億かかる、こういう結果になってくると思います。  そうした施設がどんどんつくられて、その地域の宿泊施設なりあるいは食堂なり結婚式場、そうした施設が十分利用されるということになりますと、遠くから人を誘致して、それで、そこが目的だと言われておりますけれども、やはり近くの者もこれを使うということが当然になってまいりますと、そうした面で、地元の地域の人口なりあるいは経済圏なりというものが小さい場合には、非常に地元を圧迫する結果になると私は思うのですが、その点については、長官はいらっしゃらないようですので、労働省の政策課長で結構ですから、お答えをいただきたい。
  212. 白井晋太郎

    ○白井説明員 このいこいの村等につきましては、先ほども申し上げましたように、数も非常に少ないわけでございますが、地元から非常に強い要望がありまして、地元でぜひ設置してくれということで、それぞれ地元議会の承認を得たり、いろいろな陳情を受けまして、地元で調整された上で設置いたしておりますので、その点は十分地元で配慮されているものとわれわれは判断いたしております。
  213. 上坂昇

    ○上坂委員 地元でいろいろな問題が起きてくればこれは設立しない、こういうふうに受け取っていいですか。  それから、これからも地元の要望があれば、福祉センターなりあるいはいこいの村というものを幾らでもつくっていく、こういうお考えですか。
  214. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  地元で反対のある場合ということでございますが、私の方では、十分に納得のいった上で設置させていただく、地元とよく相談して設置することにいたしております。  それから、これを今後どんどんつくっていくのかという御質問でございますが、福祉センターにつきましては、現在、三カ所だったと思いますが、建設中のものはございますけれども、それを除きましては、今後はもうこれ以上つくるのをやめております。  それから、いこいの村につきましては、建設中のものもございますが、来年度予算要求につきましては、先ほど先生がおっしゃった点だけではございませんけれども、今後の雇用保険財政上のいろいろな問題も勘案いたしまして、この二、三年は様子を見るということにいたしております。
  215. 上坂昇

    ○上坂委員 この施設がいわゆる黒字の場合、利益の出た分はどうするのか、それから、赤字経営になった場合はどういうふうな対策を立てていくのか、お答えをいただきたい。
  216. 白井晋太郎

    ○白井説明員 先ほど申し上げましたように、この運営自体は、地方公共団体、さらには財団法人に任されているわけでございますが、黒字の場合には、それぞれの運営主体において、その黒字を使いまして施設の整備とかそういうように使われているようでございます。  赤字の場合は、余りとんでもない赤字というのは現在のところないわけでございますが、赤字の場合には、借入金その他で一応処理されているようでございます。
  217. 上坂昇

    ○上坂委員 先ほどの行管庁の調査にもありますように、いま地域によっては非常に過当競争になっているように見られる節もあるわけですが、全国的には実際に過当競争を生じているところがある。それは観光地にしましても、いわゆる開発都市にしてもあるのですが、その問題になっている地域をどのぐらいつかんでいるか、お答えをいただきたい。
  218. 白井晋太郎

    ○白井説明員 先ほど先生のお挙げになった新潟県につきましては、労働省のこの種の施設はないわけでございますが、先ほども申し上げましたように、設置の個所数も少ないし、要望によって設置いたしておるという関係で、特に厳しい非難を受けているといった個所をわれわれは承知いたしておりません。
  219. 上坂昇

    ○上坂委員 愛媛県の今治市では非常に大きな問題になっておりまして、この前、労働省の官房長にも陳情して資料を全部出しておるわけなんです。ですから、一々説明しませんが、これを見ただけでも、こういう資料には非常に問題になっているところがある。それから北九州、いわゆる福岡県の旅館組合が反対をしておる。最近、地元のコンセンサスがないままに建てられるものが非常に多いものですから、こうした類似の施設、いわゆる旅館であるとか食堂であるとかというところからの反対運動というのが非常に大きくなってきている。これは十分調べる必要がある、調査をして対策を立てる必要があるんじゃないかというふうに私は思うのです。  そこで、これはいわゆる分野法にも関係するわけでありますが、民間旅館とか飲食業というのは、いま不況で非常に容易ではないわけですね。したがって、改増築というのですか、そういうのは非常に困難ですね。ところが、公営のものは、国の金でつくるんだから幾らでもデラックスなのができるし、改造もできるし、増築もできるわけですね。したがって、赤字であっても借入金はできるわけです。ところが、普通の旅館とか飲食店は借り入れなんか赤字になったら絶対できないわけです。これは大変なことになると思うのです。そういうことを考えて立地をしないと民間圧迫になってしまう、私はそういうふうに思います。こうした施設をつくる場合は、目的は先ほど答弁にあったようなことが目的になっておりますけれども、やはり立地条件というのは非常に重要になってくるのじゃないかというふうに思うのです。  挙げられました開発都市であるとかあるいは観光、産業の地域であるとか、そういうところはなるほど人がたくさん行く。そのほかにも、行財政の中心地であるとかそれから学術の中心地というところには非常に人も集まるし、それから団体も見学とかなんかにも行く。しかし、全くもう本当の村のようなところで観光施設も何もないというところでありますと、そうした人を呼ぼうと思ってもなかなか来ないし、もしそういう人たちが来れば、それらは民間を圧迫する結果になってしまう、こういうところに立地というものは非常に重要なファクターを占めてくるのじゃないかというふうに私は思うのです。その点で、いま私の言ったようなことが納得できるのかどうか、お伺いしたい。
  220. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  先生のおっしゃる御趣旨はよく理解できるところでありますが、大体、施設の設置の趣旨が勤労者の福祉、また勤労者の家族の福祉にあるわけでございまして、そういう点から、民間圧迫になるような立地の仕方は十分配慮していかなければならないというふうに思っております。今後、先ほど申し上げましたように、この大型施設の新設につきましては、一応休みの期間を設けるわけでございますが、その点十分配慮してやっていきたいと思います。市町村によりましては、そういう施設を呼ぶことによって新たな需要を呼び起こしたいという希望もございまして、その辺の兼ね合いもずいぶん考えてまいりたいというふうに思っております。
  221. 上坂昇

    ○上坂委員 大臣、早くから遅くまで大変御苦労さまですから、お引き取り願って結構ですが、実は、いま申し上げているものは、この前できました中小企業分野確保法、この法律の中ではサービス業が除かれておるものですから——こうした食堂だけは入っていますがね、非常に困っている場面がたくさんあるわけです。そういう点で、これからもこうした問題がたくさん出てくるおそれがありますので、そういう点は政策として中小企業の部面をできるだけ確保して圧迫しないような形で行政を進められていくということを要望しておきたい、それだけであります。後、お引き取り願って結構であります。
  222. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御指摘でございました点でございますが、こういうものが入ってないことはないそうでありまして、会社経営なり個人のものはありますが、当該公共施設のようなものが入っていないというところに問題が残っておるという次第だそうでございます。なお、これらにつきましても、われわれは、観光という問題と非常に重大な関係もございまするし、地元の中小企業の関係もございますので、十分留意をしてまいりたいと存じます。  ありがとうございます。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席
  223. 上坂昇

    ○上坂委員 いま大臣からお答えがありましたけれども、これは中小企業庁長官にお伺いしますが、そうしますと、旅館業はこの分野法の適用に入ると考えていいですか。
  224. 岸田文武

    ○岸田政府委員 分野法におきましては、サービス業も対象になるということでございますので、旅館業も含まれるかと考えております。ただし、分野法におきましては、進出する大企業について定義を設けておりまして、会社または個人というふうに書いてございます。したがって、いまお示しの雇用促進事業団の施設等は、いまの問題からして適用にならないという関係かと考えます。
  225. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで、この分野法の手落ちというのですか、不備な点が出てくるわけでありまして、個人の会社よりも大企業よりももっと大きい国が民間を圧迫するという形になりますと、これは大変なことになる。前にもお話ししましたが、書店業なんかの場合、いわゆる弘済会等が公の施設を使って余り書店なんかをつくるということは民間圧迫になるから、そういうことは十分指導をしてもらいたい、こういう要請をしておいたことがありますが、これは法律に民間だとか個人だとか法人だとかとあるから、そっちの方だけは取り締まるのだけれども、国の方は何をやってもいいというのではまことに困るので、まず国が率先垂範をしていかなければならない。そうなりますと法律改正の要もあると思うのですが、その点、長官の御意見はいかがですか。
  226. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお示しの問題は、立案過程でも私どもいろいろ議論をした問題でございます。ただし、国及びその監督のもとにある機関、これはいわばこういった問題についていろいろ配慮をした上で行動し、あるいは許認可を行うというようなことは当然のことではないかというふうに考えて、適用から外したという経緯でございます。  いま雇用促進事業団の施設についていろいろ御意見を拝聴しておりましても、雇用促進事業団の方は地元の意向を十分尊重するというたてまえで従来から運用してまいっておられるようでございますし、また、仕組みの中で都道府県の推薦というような制度も入っておるようでございます。いまの私ども考えておる気持ちをお察しいただいた上での運用かと考えておるところでございます。
  227. 上坂昇

    ○上坂委員 そういう点は当然配慮をした上でこうした建設を進めなければならない、この点は労働省の方も十分心得てやっているだろう、こういうお答えでありましたか、分野法によりますと、事前にここへ進出をしてくるのだというにおいがすれば、担当大臣に申請をして調査をすることができる、そしてそれをやめさせることができるところまでいっている。そうした地元の旅館とか何かを圧迫するようなおそれがあるというふうに思ったときには、労働省の施設であろうと厚生省の施設であろうと担当大臣に要求をして、調査をして、それをやめさせなければならないと思うのです。  そこで、私は、労働省の課長が言われたように、地元の要求があれば何でも受けてしまうというのではだめだと思うのですね。これでは全く指導力がない。地元から要求があったら何でも出すというのだったら、だれだってできる、そんな行政ならば。問題は、その地域が本当に立地条件に合っているかどうか、そしていま言ったような民間を圧迫するような形にならない、そういう保証があるか、共存していくことができるか、そういうことを配慮していかなければならない。特にいまのような不況の時代においては、ことさらそういう配慮が必要だと思うのです。ですから、単に地元が要望しているからこれは受けますよ、こんな行政指導ならだれでもできるのだから、そういう指導ではなくて、もっときちんとした調査によって、本当に適地であるという証明があってやるべきだ、こういうふうに私は思います。この考え方が一つ。  これについてどう思うかということと、したがって、私は、そんなばかな行政はやっていないと思うから、恐らく十分な調査をしたのではないかと思うので、私がこれから言う町について、建設をしようとするところについて調査をしている結果をひとつここで発表をしていただきたいと思います。  それでは、福島県双葉郡浪江町のいこいの村建設予定の問題でありますが、これの青写真ができておるならば、その青写真を私に提出をしてもらいたい。それから、いまここでは建設費及びその規模を発表してもらいたい。
  228. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  前段の立地条件等についてでございますが、要望があれば何でも受けるということではもちろんございませんで、これはそれぞれ非常に要望が多く、競争の激しい施設でございまして、それにつきましては、全国的に見て最も立地条件の適するところに配慮して設置いたしているわけでございます。  それから、次の御質問の福島県浪江町の件でございますが、これにつきましては、昭和四十八年九月の浪江町議会において、福祉施設いこいの村を設置したいという決定がなされまして、五十年十月に陳情書の提出を受けております。その結果、労働省では、五十一年五月二十五日付で、先ほどの予算額九億円、三カ年計画で設置する予定を立てておりましたが、その後、浪江町で建設反対者もあるということを伺っておりますので、その反対者との話し合いの経緯を待ちまして、その推移を現在見守っているところでございます。計画額は、事業団の九億と地元が六億九千八百万、合わせまして十五億九千八百万の計画を提出されております。
  229. 上坂昇

    ○上坂委員 そうしますと、この設計は地元が設計をして、それを労働省の方に出す、こういうことですか。その地元から出てきた設計書がありますか。
  230. 白井晋太郎

    ○白井説明員 これは普通一般には地元がアウトラインの計画をつくりまして、その九億の建物その他につきましては、決まったところで事業団の方で設計図をつくるわけでございますが、先ほど申し上げましたような経緯がございまして、浪江町についてはまだ設計図ができておりません。それから、町の方からもまだ提出されておりません。
  231. 上坂昇

    ○上坂委員 地元の反対があっていまとめておくということはわかりますが、向こうからの要請で労働省の方から行って立地条件とかなんかを調査したわけでしょう。その調査の結果について、非常に適地である、こういうような判断を下したのかどうか、その点についてはどうですか。
  232. 白井晋太郎

    ○白井説明員 調査票につきましては、私の方が一応決定する前段階としまして、各都道府県の職業安定課ないしは雇用保険課または労政課のところもございますが、それらの県を通じまして調査をし、それが上がってくるという形になっておりまして、福島県と浪江町が建設用地について調査した資料は手元にございます。公式に労働省の方から調査に行ったということはございません。
  233. 上坂昇

    ○上坂委員 そうすると、労働省は調査をしなくても、さっき言ったように開発都市であるとか新産都市であるとかいうところにセンターをつくる、あるいはいこいの村については観光地であるとか産業的にも非常にいい地域であるとかいうことを勘案してつくるというのですが、そうなりますと、全国のことを何でも知っているから調査をしなくてもいい、こういう判断で調査をしなかったのかどうかそれはわかりませんけれども、しかし、実際に調査をしなければ、その地域の人口動態なりあるいは経済状況であるとか民度であるとか、その地域のいろいろな条件とか、そういうものがわからないんじゃないかと思うのですがね。そうすると、地元がただ言えばこれは判断をして許可してしまう、こういう結果になってしまって、お答えと大分違うように考えるのだけれども、その点は自信を持って適地であるという判断をするまでには至っていない、こういうお答えのように私は思うのですが、そういうふうに受け取っていいのですか。
  234. 白井晋太郎

    ○白井説明員 毎年設置しますこれらの施設につきまして、一々労働省の方から全部調査に行くということはいたしていないことは事実でございます。全国のことを労働省で全部知っているわけではございませんで、それを絶対に自信を持ってということではございませんが、先ほども申しましたように、地元の要望も非常に強く、地元が一致して見取り図その他をつくりまして、こういうところへこういう施設をつくりたいということで判断いたしているわけでございます。それには、先ほど申しましたように、各都道府県の出先を通じまして、さらに補完して調査させているということでございます。
  235. 上坂昇

    ○上坂委員 そういう形になるから、いま一番最初に申し上げた行政管理庁の調査のような結果が出てくるんじゃないかというふうに私は心配するわけです。実際にその立地条件とかなんか完全に把握しないで、とにかく地元の要望があったから行ってつくりましょう、それでみんな各省ともつくったら、六千人の人口のところにみんなつくったら、まいっちゃうのがあたりまえです。そういう結果は、労働省の施設がないからと言っていることでは済まないので、そういうことが各地に起きる状況になったら大変だから、前に十分な調査をし、的確なる判断をして、その判断によって地方行政を指導していく、こういう立場でなければならないと思うのです。  いまの双葉郡浪江町では、旅館であるとか食堂であるとかあるいは結婚式場であるとか、そういう関係の業界のコンセンサスは全くできていないからそこの反対が強くなってきている。同時に、実際にこれを使う労働者の側の人たちについても、地元にそういうものができても果たして地元がこれを十分に使うのか、いこいの村というような性格からいけば、むしろこれは遠くから来る人を対象にする施設になる、それならば、むしろもっと違った面で、労働福祉会館であるとか本当に会議ができるというようなところをつくってもらう、あるいはいろいろな集会をすることができるそうしたものをつくってもらった方がいい、こういう声が非常に強くなっている。今後こうした声が強くなってきていろいろ陳情もあるだろうと思うのですが、その場合にはもう一度、今度は出先に任せたり町とか県を、これは信用することは必要でありますが、信用するだけではなくて、実際にこれを調査をして判断を下す、こういうところに進めてくれる意思があるかどうか、お伺いをしたい。
  236. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、地元の要望が一致しなければわれわれの方としては設置するつもりはございませんので、地元とよく話がつくようにそれを待っているところでございます。  会館の問題は、全然別の施設の関係になりますので、そういうメニューは現在のところございませんので、そこまで検討いたすことは不可能かと存じます。
  237. 上坂昇

    ○上坂委員 これで終わりますけれども、最後に中小企業庁長官にお伺いします。  このような問題が実際生じているわけですね。その場合、労働省の施設だからそれじゃそのままそっちでおやりなさい、こういうかっこうでは、せっかく分野法を制定した意味がなくなると思うのですね。そういう点で、この法律の元締めである通産省としてもこうしたものを十分勘案をされて、民間の企業の圧迫にならないようなひとつ指導なり各省間の話し合いを私は進めていただきたい、特に零細中小企業を圧迫しないような立場での行政をとっていただきたいと考えるわけであります。  それから、労働省の方に申し上げますが、浪江町は旅館が三十一軒あるのです。その周辺で六十七軒の旅館がありまして、飲食店は六十二軒なんです。この地区は東電の大熊原発がすぐ隣で、いま東北電力も浪江に原発をつくろうという、計画よりも意思を持っているわけであります。そのほかにいろいろ農業の問題やら環境の問題やらでダム工事が幾つか建設をされている。そのためにいま請負業者もかなり入っている。したがって、そういうことを当て込んで、大熊原発建設のころ、いまから七、八年前ごろから設備改善をやってきたのです。設備改善をやってきまして、現在旅館一戸当たり月に七十万円くらいの返済金をしょっているのです。あと大体十年くらい返済をしていかなければならないという状況にあるわけなんです。総額にして約六億八千万円借り入れしているわけでありまして、六室、二十人くらいの零細な旅館ですら月に三十五万から四十万の返済金を持っているのです。したがって、非常に敏感です。こうした実情をあなたの方では把握していないだろうと思うのですが、地元にはこうした問題があるのだということで、この問題については慎重な配慮を要望したいと思います。  きょうは課長が責任を持って出られたのだから、労働省の部長なり局長なり、大臣にもこの点は十分お伝えをいただきたい。あなたが責任を持って私に答えられたことを実行してもらうことを要望します。
  238. 白井晋太郎

    ○白井説明員 この施設の建設につきましては、先ほどから申し上げたとおりでございまして、先生のおっしゃいました趣旨は十分理解いたすところでございます。地元の要望に沿って設置してまいりたいと思います。
  239. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いろいろ貴重な御意見をありがとうございました。私ども中小企業の声をよく受けとめ、関係方面にもよく流してまいりまして、円満に事が進みますようにお手伝いをしていきたいと思います。
  240. 上坂昇

    ○上坂委員 質問を終わります。
  241. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 次回は、来る十五日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五分散会      ————◇—————