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1977-10-28 第82回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)委員長の指 名で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  エネルギー・鉱物資源問題小委員       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       佐々木義武君    島村 宜伸君       田中 六助君    楢橋  進君       萩原 幸雄君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    山崎  拓君       板川 正吾君    岡田 哲児君       後藤  茂君    上坂  異君       渡辺 三郎君    長田 武士君       西中  清君    玉置 一徳君       工藤  晃君    大成 正雄君  エネルギー・鉱物資源問題小委員長                 橋口  隆君  流通問題小委員       藏内 修治君    辻  英雄君       中島源太郎君    中西 啓介君       西銘 順治君    林  義郎君       前田治一郎君    武藤 嘉文君       渡部 恒三君    渡辺 秀央君       加藤 清二君    佐野  進君       清水  勇君    武部  文君       中村 重光君    玉城 栄一君       松本 忠助君    宮田 早苗君       安田 純治君    大成 正雄君  流通問題小委員長                 佐野  進君 ————————————————————— 昭和五十二年十月二十八日(金曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 上坂  昇君 理事 佐野  進君    理事 松本 忠助君 理事 玉置 一徳君       石橋 一弥君    稲垣 実男君       大坪健一郎君    鹿野 道彦君       藏内 修治君    島村 宜伸君       田中 六助君    辻  英雄君       中西 啓介君    楢橋  進君       西銘 順治君    萩原 幸雄君       林  義郎君    堀之内久男君       前田治一郎君    水平 豊彦君       村上 茂利君    森   清君       森田 欽二君    渡部 恒三君       渡辺 秀央君    板川 正吾君       加藤 清二君    後藤  茂君       中村 重光君    長田 武士君       玉城 栄一君    西中  清君       工藤  晃君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 龍夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      倉成  正君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         大蔵省国際金融         局次長     宮崎 知雄君         通商産業政務次         官       松永  光君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十月二十七日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     吉浦 忠治君 同日  辞任         補欠選任   吉浦 忠治君     玉城 栄一君 同月二十八日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     大坪健一郎君   藏内 修治君     水平 豊彦君   佐々木義武君     稲垣 実男君   田中 六助君     石橋 一弥君   辻  英雄君     森田 欽二君   中西 啓介君     森   清君   前田治一郎君     村上 茂利君 同日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     堀之内久男君   石橋 一弥君     田中 六助君   大坪健一郎君     粕谷  茂君   水平 豊彦君     藏内 修治君   村上 茂利君     前田治一郎君   森   清君     中西 啓介君   森田 欽二君     辻  英雄君 同日  辞任         補欠選任   堀之内久男君     佐々木義武君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 私は、わが国エネルギー政策基本であるエネルギー安定供給確保という視点から、アラビア石油国内引き取り問題について、政府の見解をお尋ねいたしたいと思います。また、時間があれば、ナフサ価格の問題についても触れてまいりたいと思います。  そこで、まず質問に入ります前に、エネルギー庁長官にお伺いをしたいのでありますが、九月十四日の読売新聞の記事の中に、アラビア石油問題について橋本長官は、「アラビア石油の問題は一私企業の問題であり、コメントする立場にない。」こう言われておるように新聞で報道されております。通産省私企業の問題について一切コメントしないという御方針なのかどうか。もし、アラビア石油は一企業の問題だから通産省資源エネルギー庁長官としてはコメントする立場でない、こう言うならば、私は大臣に全部お伺いをするわけでありますが、一応橋本長官からそれに対するお考えを承っておきたい。
  4. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 その記事の出る前日、私の方の自宅に夜遅く電話がありまして、いろいろと自主開発原油引き取りについて通産省は検討しているが、それは一にアラ石対策ではないか、かような意味の照会があったわけでございます。それに対しまして、私といたしましては、もちろんアラ石といたしましても主開発原油として大きな貢献をなしておる企業としての立場は十分意識いたしておりますが、私たち政策としては、アラ石だけの対策ではなくて、自主開発原油全体の対策と申しますか、わが国石油を安定的に引き取るという立場における対策である、かような意味で申し上げたのが、その部分だけがさような独立した形で記事になったものではなかろうかと私は考えておるわけでございます。
  5. 板川正吾

    板川委員 しかし、文脈のニュアンスの中では、あなたの発言は、アラビア石油問題はまあ私企業の問題だから余り介入したくない、こういう逃げ姿勢エネルギー政策に対して積極的な姿勢というよりも、逃げ姿勢があるように私は感じられるわけであります。これがエネルギー政策上問題だと思うのです。しかし、これは私の感じですから、これ以上申し上げません。  本論に入ります。  そこで、まずお伺いをいたしますが、アラビア石油の本年度出荷状況、前半一−六月と七−十二月の、後期の分はこれは予想も入りますが、出荷状況等についてどういう数字になっておるか、ひとつ御報告を願いたい。
  6. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生御承知のとおりに、アラビア石油カフジ原油フート原油がございますが、まずカフジ原油につきまして、本年の一−六月でございますが、国内引き取りが約百七十万キロリッター海外販売が約百万キロリッター現地製油所向けが約八十万キロリッターでございまして、合計いたしますと約三百六十万キロリッター強になるかと思います。一日当たり生産量にいたしますと十二万七千バレルということでございます。それから七−十二月につきましては、見通しと申しますか、私たちといたしましては一−三月の実績が一日当たり九万バレル程度という非常に低い数字でございましたので、四月以降、国内精製企業に対しましてアラビア石油原油引き取りを要請してまいったわけでございます。そういったことも踏まえまして、ことしの七−十二月の見通しといたしましては、まず国内向けが約一、百万キロリッター海外販売が約百二十万キロリッター現地リファイナリー向けが約百万キロリッターでございまして、合計いたしますと約五百三十万キロリッター、十八万一千バレル・ハー・デーということになるわけでございます。  この上、下——下期の方の見通しを含めまして合計して申し上げますと、七七年一−十二月、暦年でございますが、国内が四百八十万キロリッター海外が約二百三十万、それから製油所向けが約百八十万、合計いたしまして八百九十万キロリッターで、一日当たりにいたしまして十五万三千バレル、かようになっております。これがカフジ原油でございます。  フート原油をトータルいたしますと、一−六月で四百五十六万キロリッター、十五万九千バレル、七−十二月が約六百三十万キロリッターでございまして、一日当たり二十一万五千バレル、通じまして年間約千八十万キロリッターで、一日当たりにいたしまして十八万バレル、かように見込んでおります。
  7. 板川正吾

    板川委員 フートの方は国内引き取りが十分なされておりますから一応論外に置いて、カフジ原油についてお伺いをいたしますが、この出荷量生産能力との差はどれだけありますか。カフジ生産能力出荷数量、本年度後半は、予想を入れまして、この差はどのくらいありますか。
  8. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 カフジ原油能力は日産四十万バレルと言われております。したがいまして、約二十五万バレル、能力を生かしておらないということになろうかと思います。
  9. 板川正吾

    板川委員 このカフジ原油生産能力は一般に年間二千六百万キロリットル、そして公式には二千八百万キロリットル、こう言われておるのですね。そして、増産をすれば三千万キロリットルは可能であるという体制であると言われている。これに対して、ことしの引き取り量が七百十七万キロリットル、現地精製向けを入れましても、いまお話がありましたように八百九十万キロリットル、ざっと計算して三千万キロリットル近い引き取り残というものがあると思うのでありますが、御承知のように、アラビア石油サウジクウェート両国との開発契約が結ばれたときには、四十年間掘ってよろしい、四十年たったらば、全部これは施設を含めてすべて両国に返す、こういうことになっておるわけであります。要するに、採掘の期限が限定をされておる。ことし取らなかったからそれは後に残っていくというものではない。だから、一年間で二千万キロリットル近い石油を取り残しているこの現状を、わが国エネルギー安定供給確保という至上命令から、通産省は一体どうお考えになっておるのですか。これは一私企業の問題であるととられるべきではない、こう思いますが、いかがですか。
  10. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほど申し上げましたように、私たちといたしましては自主開発原油を安定的に引き取る、積極的に自主開発をすると同時に、それの安定引き取りをやるということは当然のことでございます。せんだっての石油部会におきましても、いわゆる政策原油引き取りについて積極的な対応をするようにという提言をいただいておりますので、その線に即してわれわれとしても対策を検討いたしておるわけでございます。先ほど御指摘のように、年産能力を多分に余してしか引き取り得ない。これにはいろいろ理由もあろうかと思いますが、そういったそれぞれの理由対応いたしまして安定的に引き取りができるように対処いたしたいと考えております。
  11. 板川正吾

    板川委員 通産大臣エネルギー庁長官は安定的に引き取るようにこれから対処する、こう言われておる。しかし、このアラビア石油の問題は、私はことしの初めの当委員会でも問題として提起したはずなんですね。そして、ことし一年間で二千万トン近い石油を掘る能力があり、日本にその大部分を輸入する気ならば輸入できるアラビア石油、これはわが国海外開発原油でしょう。これを掘り残しをしておきながら、これから国内引き取り体制考えるというのは、これはエネルギー政策として怠慢ではないかと思いますが、通産大臣、どうお考えなんですか。
  12. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、アラビア石油の問題につきましては、OPECの価格の問題もその間にはあったことでもございまするし、同時にまた、油それ自体が重質油であるということから、分解装置処理能力の問題もございましたり、ただいま長官が申すような結果となっておると存じますけれども、政府といたしまして、自主開発をしたということ自体が、御案内のとおりに政策的にこれを獲得する、こういうことでもある次第でございまして、特にわれわれといたしましては、今後備蓄の問題が非常に重大な問題となっておりますことにかんがみましても、これらの問題につきまして十分に配慮いたしまして、ただいま御指摘のような問題を解消いたしてまいりたい、かように考えております。
  13. 板川正吾

    板川委員 福田内閣は、資源有限時代だと言って、資源政策を最重点に置くと言っているのに、わが国海外開発をした油を引き取らないで、資源有限時代だなんと言う資格は私はないと思うのですよ。これは通産省責任ですよ、この国内引き取り政策を全然進めてこなかったというのは。問題が突然に起きたわけじゃないでしょう。私は今年の初めにこの傾向指摘しておったのですよ。わが国資金を投じて海外で開発したものを引き取らないのはおかしいですよ。  サウジアラビアのヤマニ石油相は、日本石油を掘らせてくれと常々言ってきておるのに、すでに開発しておる原油を引き取らないとは一体どういうことになっておるのか、フランスでは政府が法律でフランス石油に対して海外開発原油を強制的に国内製油会社に引き取らせておる、なぜ日本フランスのようにできないのか、こう発言しておるとある報道が伝えております。これは倉八石油公団総裁談として報道されたのでありますが、ヤマニ石油相がそう言われたそうですね。  アラビア石油は、確かに日本政府の資本は一%も入っておりませんから、それは民間の一私企業でありましょうが、しかし、外国は、アラビア石油を単なる民間の一企業というふうに見ていないのですね。日本国策的会社と見ておるんじゃないんですか。日本国策的会社として海外に膨大な投資をして、しかもそれが大成功をおさめて、どんどん採油できるのに掘り残してきて、これからその対策考えていこうなんというのは、私は通産省エネルギー政策としてはまことに怠慢だと思うのですが、どうお考えですか。
  14. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点は全くそのとおりだと思うわけでございますが、御承知のように、かように引き取り量が減少いたしておりますのは、一つには、カフジ原油価格がアラビアン・ライトに比べまして相対的に割り高になっておると申しますか、いわゆるプライスディファレンシャルの問題がございます。それから二つ目には、これも御承知のとおり、カフジ原油が重質油であり高硫黄の原油である、現在日本ではむしろ軽質原油需要が高くなっておるといった、わが国における需要構造との関係もあろうかと思います。さような問題に加えまして、ことしの一月から六月までいわゆる二重価格制といったような問題がございまして、アラ石としていかように販売努力をいたすにいたしましても、二重価格制という谷間に入りまして非常に苦悩したわけでございます。  ただ、私たちといたしましても、先ほど来御指摘のように、自主開発原油の促進あるいはこれの安定引き取りといったような政策的な問題意識と、現実におけるこういったコマーシャルベースとのギャップをどう埋めるかということが肝要になってくるかと思います。法制的にどう対処するか、あるいは経済的メリットといったような観点でこの目的意識現実とのギャップを埋めるということが私たちに課せられておる任務ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  15. 板川正吾

    板川委員 それでは、価格問題でお伺いをいたしますが、御承知のように、ことしの一月からサウジは五%の値上げをし、クウェートは一〇%の値上げをした、しかし、アラビア石油両国との間に協定があって、価格について差をつけないということになっておったから、結局サウジの五%値上げも一〇%値上げになり、価格割り高であったという事実は、いま指摘されたとおりでありますが、じゃその価格の違いというのは、アラビア、石油責任なんですか、それともこれは産油国責任なんですか。アラビア石油責任でなく産油国責任であるとして、それが原因となって引き取り体制がダウンしても、これは仕方がないという政策でありますか、その点はどう考えているのですか、伺いたい。
  16. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 どちらに責任があるかという御指摘でございますが、問題は、やはり産油国価格決定方式、あるいはそれに基づくところの加盟十三カ国の対応ということになろうかと思います。そういった意味合いにおきましては、アラ石みずからが単独に決定し得る立場にないということは明確に申し上げられるかと思います。
  17. 板川正吾

    板川委員 アラビア石油責任ではないんですよ、これは産油国決定なんですから。アラビア石油はいわばその被害者なんですね。値段が割り高である、そして重質油でもあるということで引き取らない、こういう傾向があったことは当実であります。  そこで、価格が一−六月はそういう五%と一〇%で片びっこでありますが、七月から御承知のように五%のサウジが五%値上げして一〇%になった。価格サウジクウェート間ではそろいました。しかし、隣りの油田であるアラビアン・ヘビー会社では、五%上げずに三%しか上げなかった。そのために、カフジとアラビアン・へビーの油は、ほとんど同質であるにかかわらず、アラビアン・ヘビーの方がまだバレル当たり約七セント安いということになってしまった。こういう価格差の問題を口実にして、実はアラビア石油を引き取るものがない、こういうようにおっしゃっておると思うのであります。  そこで、お伺いいたしますが、この七月以降、バレル当たり七セントというのは、一年間のうちの半分の一千万キロ引き取るとすると、一体その価格差の累計はどのくらいでありましょうか。計算したことありますか。——なければ言いましょう、時間がありませんから。それは、バレル当たり七セントの差を一千万キロリットルに合わせますと、ほぼ十一億であります。十一億円の価格差を何とか調整すれば、一千万キロ少なくとも七月以降引き取れたという計算になります。重質油は重質油として価格は安く決まっておるのでありますから。御承知のように、同じアラビアン・ヘビーは大量に輸入されて、他の油種とブレンドされて消費されているのですから、七セントの差を何とか補給すれば、カフジ原油を引き取らないという理屈には私はならない、こう思うのであります。  それでは、お伺いしますが、四十九年から五十年、五十一年、この三カ年間で、海外石油開発のためにどのくらいの資金が投じられておりますか、伺います。これはわかるでしょう。
  18. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 石油開発公団が四十二年に発足いたしましてからいままでの間の融資残高が約三千億円になっております。四十九年からの二年間、いまちょっと計算いたしておりませんが、二千億近くなるんではなかろうかと思うわけでございます。
  19. 板川正吾

    板川委員 石油公団からのもありますが、わが国海外開発石油探鉱資金を見てみますと、四十九年二千百九十七億、五十年千三百四十億、五十一年千四百四十三億、年平均大体一千五百億円程度になりますね。実はこの年平均一千五百億円程度海外投資をしても、その成功率というのは実に微々たるものです。その考え方からするならば、仮に二千万キロリットル引き取るにしても、二十二、三億で済むという計算バレル当たり七セントの差が二十二、三億ということであるならば、その程度の金は、私は石油公団から補給してもいいだろうし、あるいはそれを一時融資をしておくということも可能だろうと思うのですね。いや、そういうことをやるべきだと思うのですよ。石油公団法にそれが書かれていないというならば、改正案を出したらいいんじゃないですか。改正案も出さない、そして価格差があるから引き取れない、しかもそれは私企業の問題であるからコメントできない、こういうことではわが国エネルギー政策は立ちませんよ。一体エネルギー庁長官はどうお考えですか。
  20. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘のように、価格面からのメリットをつけるという意味においては御指摘のような考え方十分検討に値するかと思います。ただ、そういった価格問題のほかに私たちがいま検討いたしておりますのは、重質油国内軽質油需要に合わせるためのいわゆる重質油分解設備、これの導入ということも必要かと思います。  それからいま一つ検討いたしておりますのは、来年度以降石油開発公団備蓄業務を追加いたしたい。いわゆる国家備蓄を九十日を超えるものについて実施いたしたいということで検討いたしておりますが、そういった国家備蓄が実現する場合に、御指摘のような政策原油自主開発原油を優先的にその備蓄の対象として取り上げたい、かような方向もあわせて検討いたしておるわけでございます。
  21. 板川正吾

    板川委員 重質油分解装置、これは、将来中国原油の輸入などに備えてその必要性があることは事実です。しかし、アラビアン・ヘビーは同じように重質油ですよ。それがなぜ引き取りをされているかと言えば、軽い原油とブレンドされて、それぞれ各精製場処理されているのです。だからアラビア石油カフジ原油も、そういうように各企業に割り当て、引き取ることを要請する、そういう行政措置がとれればいいんじゃないですか。アラビア石油は、御承知のように、精製会社直営工場は持っておりませんから、それは国の政策としてわが国精製会社外資系も含めて、二千万キロリットル、全体のわずか七%にしか当たらない量ですよ。それを、軽い油を引き取っておる外資系にも処理をお願いをして、そして全量引き取るという方法があっていいんじゃないですか。  フランス石油政策を見てくださいよ。日本みたいに海外に莫大な金を投資して、しかもそれが成功したら、これは一企業の問題だから、国内引き取り体制などは配慮をしないというのでは、私はこれからのエネルギー政策というのは進まないと思います。国策原油としては政府間協定によるGG原油なんかもあるでしょう、あるいは中国との友好関係のために、重い中国原油を引き取らなくちゃならないということもあるでしょう。そういうためには、やはりそれに対応する重質油分解装置も必要だけれども、急にふえるわけじゃないですから、とりあえずは国内精製会社に応分に引き取ってもらって、そうしてブレンドをして処理してもらうという方法がわが国エネルギー政策にあっていいんじゃないですか。  そこで伺いますが、石油業法ではそういう措置かできませんか。御承知のように、石油業法の三条と十条と十二条にありますが、三条では、「通商産業大臣は、通商産業省令で定めるところにより、毎年度、当該年度以降の五年間について石油供給計画を定めなければならない。」一として「原油の生産数量及び輸入数量」、二として「石油製品の生産数量及び輸入数量」、三として「特定設備の処理能力」、四として「その他石油の供給に関する重要事項」、これを私は、石油業法の目的である石油の安定的供給という点にしぼっていくならば、この第三条を読むことによって、この海外開発油の引き取りについて、政府計画なりが立つんじゃないか。  現に十条では「石油製品生産計画」という項目がございまして、「石油精製業者は、通商産業省令で定めるところにより、毎年度石油製品生産計画を作成し、通商産業大臣に届け出なければならない。これを変更したときも、同様とする。」第二項として「通商産業大臣は、石油の需給事情その他の事情により、石油供給計画の実施に重大な支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、石油精製業者に対し、石油製品生産計画を変更すべきことを勧告することができる。」こういうふうに三条と十条にあり、第一条の目的が安定供給を中心とした内容になっておるわけであります。  また、その通産省令によりまして、石油精製業者の「石油輸入計画届出書」という通産省が指定した様式第十号の中には、カフジ原油を幾ら引き取るか、北スマトラ原油を幾ら引き取るかという様式さえあるんじゃないですか。だから、この届け出の中にカフジ原油は引き取らない、こういう届け出があった場合に、海外開発原油国策原油と言われるべきものが予定通り引き取れなくても、何らの関心も持たないし、勧告もしない、問題になったのでこれから考えていく、こういうようなことでは、私はエネルギー政策は成り立たぬと思うのですが、一体いまの石油業法でそういう割り当てをすることが全く不可能ですか。不可能であれば、どこが不可能であるのか、その理由を明らかにしてもらいたい。
  22. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま石油業法の一条、三条、十条を引用していわゆる政策原油自主開発原油引き取りに対する割り当て制度の可能性ということを御指摘になったわけでございます。  石油業法の中でも、特に第三条の三項の中で、ただいま御指摘になったようなことに関連いたしまして、石油供給計画を定めるときの勘案事項としていろいろ書いてございますが、その中にやはり石油開発の状況といったようなことをも具体的にメンションされておるわけでございます。そういった意味合いも含めまして、私は、現行石油業法の中でもかなりのところまでやれるというふうに考えております。  ただ、具体的に割り当てという制度が、業法令体としては割り当てという概念を入れておりませんので、直接的に割り当てということができるかどうかという問題はございますが、たとえば供給計画の中で、かつてやっておりましたように、輸入原油の中でいわゆる自主開発原油をどの程度引き取るかといった計画を仮に設定いたしまして、その設定された計画に基づきまして各社を指導していくといったような方法も事実上可能だ、私はかように考えるわけでございます。  現在、われわれといたしましても、先ほども申し上げましたように、自主開発原油を含む政策原油の安定的引き取りということにつきまして、せんだっての石油部会の中間取りまとめでもさような指摘がございます。ただ、先生も御承知のように、四十五年だったかと思いますが、当時の石油部会で、できるだけコマーシャルベースでやるようにといったような指摘もございましたので、そういった答申との兼ね合いもございますので、われわれといたしましては、石油部会で、ただいま御指摘のような問題を含めて検討に入っておる、こういう段階でございます。
  23. 板川正吾

    板川委員 四十五年と今日の資源有限時代とは全く違うのじゃないですか。四十五年の石油部会の答申なんというのを金科玉条のように思って今日までそういうものに拘泥してきたというのは、私は怠慢だと言わざるを得ないのですよ。それは、四十五年の石油の需給状況と今日のエネルギー需給状況というのを考えてみればわかるのじゃ、ないですか。だから、私は石油業法の解釈を、過去のことは言いませんが、この解釈を今後こういうようにいたしますからと言って業界を行政指導する、通産省が一番得意な行政指導をしておやりになったらどうですか。かつてプロラタ方式を一応やったことがあるじゃないですか。そして石油の需給状況が厳しくなっているのにそれもやれない。なぜやれないのか、私はわからない。  もしこの石油業法が、不十分だというなら、ひとつ改正案を出してください。われわれはすぐ賛成しますよ。改正案も出さない、四十五年の石油部会の答申がこうだ、そしてすでに今日、現実に三千万キロリットル近いわが国で掘り出すことの可能な原油海外に放棄してきた。これはエネルギー庁としては重大な怠慢だろうと思うのです。フランスほど厳しくやれとは言いませんが、少なくとも海外開発原油GG原油、こういうものを政府の権限で割り当てをして引き取ってもらう、メジャーの企業にも引き取ってもらう、こういうことが日本石油政策としてあっていいと私は思うのです。これからもあっていいと思うのです。これはどう思いますか。もし石油業法の改正や補強が必要ならしたらいいんじゃないですか。何もしないでいて、価格の差があるからだめだとか、重質油だから引き取れないとか、そういうような理屈をつけて何にもしないというのはおかしいじゃないですか。どう思われますか。
  24. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私自身、自主開発原油安定引き取りということに対しまして非常な熱意を持っておるつもりでございます。特に重質油につきましても、現在時点では需給構造がどうのこうのといったようなことを言っておりますが、今後、数年後、十年後たった場合に、きわめて重要な石油の供給ソースであるということについても、先生の御指摘と私も全く同様な考え方をとっておるわけでございます。むしろ問題は、現状のなかなか輸入しがたい業界の状況に対しまして、政策とする目的意識との間のギャップをどう埋めていくかということだろうと思います。先ほど来御指摘になっておりますような経済的メリットをいかなる形で付与するか、あるいはそれに対して法制的な規定をどのように改定していくかといったような問題、あるいはその両方のコンビネーションも必要かと思います。  そういった問題も含めまして、現在石油部会で検討いただいておるということでございまして、むしろ私たちといたしましては、できるだけ早くその結論を得ることによりまして、可能な限り、必要とあらば立法手続もお願いいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  25. 板川正吾

    板川委員 石油部会の結論がそんなに長くかかるはずはないと思うのです。それはほかのものをくっつけて遅くするなら幾らでも遅くなるでしょうが、一体いつごろまでにその結論が出される予定ですか。  それから、ことしは十月過ぎまで来ましたからなんですが、一体来年度はどうされるつもりですか。依然として石油部会の答申なり何かいろいろ検討して、二千万キロリットル近い、あるいは千八百万キロリットルか知りませんが、やはりカフジの海の底に捨てておいてもよろしいということですか。それも、かつてとりましたように、プロラタ方式を行政指導でお願いをして、引き取り体制をいつごろからやるつもりですか、はっきりひとつ答弁してみてください。
  26. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘のプロラタと申しますか、ことしの四月以降、先ほどもお答えいたしましたように、国内関係精製企業に行政指導と申しますか、要請の形でやっております。  ただ、私はプロラタ自体が必ずしもベストの方法でないと思っております。と申しますのは、量的な問題が解決いたしましても、引き取り価格の問題について関係企業に聞きますと、やはり非常にむずかしい状況がある。具体的に申し上げると、アラ石が、量が決まっても、それを国内に売り渡すときのいわゆる価格の交渉がなかなかむずかしいといったような事情も聞いております。したがいまして、抜本的な対策ができるまではプロラタ方式に準ずるような形での行政指導というものは必要だと思いますが、問題はそれだけでは解決いたしませんので、先ほど来お話が出ております法制的な面、あるいは経済的な面での対策というものが、どうしても安定的引き取りのためには必要だ、私はかように考えておるわけでございます。
  27. 板川正吾

    板川委員 だから、価格の問題ですが、一−六月間の価格差は大きいので調整することはなかなかむずかしいでしょう。だから、それは過去のものとして仕方がないけれども、現在はアラビアン・ヘビーカフジ原油との価格差は、アラビアン・ヘビーがFOBで十二ドルニセント、カフジは十二ドル九七ントになっているので、これは七セントの差です。この七セントの価格差は、一千万キロリットルにするとわずか十一億円しかないじゃないか。同じ重質油アラビアン・ヘビー国内で引き取られているのに、カフジ原油がその価格差だけで引き取れないというならば、それは石油公団資金なりで一時補給するなりあるいは何らかの対策を講じて、これはアラビア石油、個々の私企業責任じゃないですから、それは引き取り体制を、この価格差をある種の補給政策をとったとしても、毎年一千五百億円も海外投資して油が出ないのが多い例から見れば、エネルギー政策上プラスじゃないかと言っているんじゃないですか。だから、そういう価格の問題だと言うなら、価格の問題も手を打ったらどうですかと言っているんじゃないですか。  それをまた、価格の問題だから引き取れない。片方、また重質油だからどうこう、同じ重質油でもアラビアン・ヘビーは、これは各社が、それぞれ外資系では引き取られているから、外資系にも協力をお願いして、二百万キロリットル、三百万キロリットルというぐあいにわずかなものを引き取ってもらえればできないはずはないじゃないかと言っているのですが、その点はいかがなんですか。
  28. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生御承知のように、原重油につきましてはキロリッター当たり七百五十円の関税を取っておるわけでございますが、こういった関税制度の中で、たとえば関税還付をするとかあるいは関税を減免するとかいったような措置もわれわれとしてはすでに検討に入っております。これは、われわれ独自の立場でなし得ない、関係省庁との検討ということもございますが、そういった問題も現在検討中ではございます。あるいは交渉を続けておるわけでございますが、まだどこまで可能性があるかということは申し上げられない段階でございますので、いままで差し控えておったわけでございますが、さような方向も一つの解決案になるのではなかろうかということで、交渉に入っておる段階でございます。  ただ、この場合一つ考えておかなければいけないと思いますのは、他の産油国との差別的なことにならないような方法論も必要かと思っております。そういった範囲で現在検討いたしておるということでございます。
  29. 板川正吾

    板川委員 差別的といったって、その差は、アラビアン・ヘビーが五%上げれば価格差はなかったのに、三%しか上げないからカフジ原油と差ができたのです。だから、他の原油との差別になるなんというのは、こっちが差別したわけじゃないので、向こうからそういう措置に出られたから、やむを得ず対抗するのは私は差別じゃないと思いますよ。  昔は国内原油については関税割り戻しをして補助した時代がありましたよね。わかりませんか。昔は国内石油に対して関税の割り戻しをして補助した。国内原油は生産コストが高いので、輸入原油との差額を割り戻した。キロリットル当たり一万二千円くらいだと思うが、関税から割り戻した時代があったと思う。いまは輸入原油の値段がぐっと高くなったのでやめていると思うのですが、そういう政策もあったのです。だから、海外開発原油、国策的な目的を持った原油は優先的に引き取るという姿勢さえあれば、やる方法は幾らでもあるのですよ。それを外資系に気がねして積極的に取り組まない、常にエネルギー庁長官逃げ姿勢だ、私は、これが今日の石油政策というものを混乱させておるのだろう、こう思います。  アラビア石油国内引き取り問題で、御承知のように、巷間二つの説が流布されております。それは、諸悪の根源は石油業界にありという有名な山下次官の発言以来、石油業界は通産省に対して感情的になっている、どうもしっくりいってない、だから通産省の方針に対して業界は常に反発をしておるからだ、これが原因だという説がございます。もう一つは、石油業界の中に、たとえば元通産省局長であり丸善石油の社長の本田早苗氏のように、これまた新聞によればでありますが、石油精製業界が石油ショックで赤字を出して困っておるときはアラビア石油は高配当を続けておったじゃないか、一六%、一四%と、われわれが赤字のときに高配当を維持しておって、今度は逆に赤字になったら政府に泣きついて、頭も下げずに油を買わせるとは何事だ、まさにこれは殿様商売だと怒っているという記事もございます。  確かに石油業界でそうした二つの反発があることは、私も否定いたしません。しかし、石油資源のないわが国が、年間二千万キロリットルの油を海外に放棄して、それでいいという理屈にはこの二説ではならないと私は思うのであります。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕 まさにこれは公私の混同であろう。感情的に国のエネルギー政策に反発をしておるのでありまして、これは公私の混同であろうと思います。特に民族系の石油精製企業には四十年から五十一年の十一年間に莫大な開発銀行資金、六・五%という当時としては非常に低金利で、一千四百億円からの金が長期に貸し付けされておったりしまして、それぞれ国策に協力するという意味もあって融資がされておるわけでありますが、この石油精製業界がアラビア石油を引き取らないという理由の二つの問題について、通産省はどういうふうにお考えをされておりますか。
  30. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のような反発が石油業界にあるかどうかは別といたしまして、私たちといたしましては、やはり今後十年間年率六%程度経済成長を維持するためには、どうしても必要とするエネルギー確保しなければならない。反面、石油に対する依存度を低減すると同時に、自主開発原油といったような安定的な供給ソースの拡大あるいは確保に努めてまいらねばならない、かように考えております。  八月末の総合エネルギー調査会の答申におきましても、昭和六十五年時点におきまして現在よりさらに百万バレルの追加開発をすべきだ、こういう提言をいたしております。現在約七十万バレルでございます。また、この間二十万バレルが掘り尽くされていくといたしましても、その時点で百五十万バレル、約九千万キロリッター自主開発原油を開発し、かつはそれを安定的に引き取るという必要性があるわけでございます。  そういった総合エネルギー政策立場、その中の一環としての石油政策立場からいたしまして、私たちといたしましても、ただいま先生が御指摘になったような問題がないように、石油業界全体として石油安定供給に努めるように指導してまいりたいと思います。私たちといたしましても、その指導が実を結ぶような諸般の制度的な対策も早急に検討していくべきだ、かように考えております。
  31. 板川正吾

    板川委員 産業政策局長にひとつ結論としてお伺いをしておきます。  私がいままで申し上げたのは、石油安定供給を図るために海外開発原油であるアラビア石油等の国内引き取り体制を確立すべきである、これが第一点。  第二点として、石油業法の解釈を現時点の状況に当てはめ、目的に当てはめれば、国内引き取りを要請することは可能だろうと私は思うのでありますが、もし不十分ならば、来国会に石油業法なりあるいは石油公団法なり必要な法改正をすべきだろう。  第三点としては、価格の問題があるならば、石油公団法の中でそれが調整できるような方策をとるべきではないだろうか。  こういう三点を主として申し上げたのでありますが、産業政策の上からいってこの三点について、お考えはいかがですか、承ります。
  32. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  私ども、これからの中長期を踏まえました日本の産業政策をどう展開していくかということに当たりまして最も大きな問題は、やはりエネルギー問題でございまして、エネルギー問題の一つはいわば供給サイトで、いわゆる供給の安定確保、その中には当然のことでございますが、新しい開発も含めました供給の確保ということが一つ。それと同時に、先ほどからエネルギー庁長官が御答弁申し上げておりますように、これから先のいろいろな供給上の制約を考えますと、国内でいわゆる省エネルギー政策の推進という需要サイド、消費サイトの問題、この二つが幾つかの大きな柱の中の最も大きな柱だろうと私は考えております。  そういう観点に立ちますと、ただいま先生御指摘の三つの問題でございますが、たとえば石油業法の解釈等の問題につきましては、これはエネルギー庁が所管の法律でございまして、現行の法律の一条ないし十条の解釈でできるかどうか、これはエネルギー庁で十分検討してもらう必要があると思いますが、それを離れましても、ただいま先生から御指摘のありましたような問題につきましては、われわれ通産省としても全体的に受けとめて検討していかなければならぬ問題だと思います。  ただ、たとえば価格の問題につきまして公団法の改正という御指摘がございましたが、あるいはこれは公団法の改正で公団がやる問題であるのか、あるいは先ほどエネルギー庁長官の御発言にありましたようなその他のいろいろな手段を考えるか、方法はいろいろあると思いますが、いずれにいたしましても、石油供給の安定確保ということが私、大変大きな第一の問題であると思いますので、私どもも全省の問題といたしましてそういう問題について適切な対応をしていくということが非常に重要なことである、こういうふうに考えております。
  33. 板川正吾

    板川委員 過去のことはもうとかく言わないつもりですが、将来に向かってひとつ早急に対策を立ててほしい、こう思いますが、大臣、いかがですか。
  34. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまの板川先生の詳細にわたりまするいろいろな御意見に対しまして、私どもも深く考えるところがございます。ことに、御案内のとおりに、この日本を取り巻く種々の情勢も非常に厳しい今日、われわれは省エネルギーの新しい産業構造を考えるにつきましても、特に備蓄の問題、さらにまた政策原油の問題は真剣に考えてまいらなくてはなりません。そういうことからも、ただいまのいろいろな御高見に対しましては、これを本当に検討もいたし、でき得る限りの努力を払ってまいりたい、かように考えております。
  35. 板川正吾

    板川委員 時間がございません。最後に、あと五分間ほどあるそうですから、ナフサの価格問題についてお伺いをいたします。  御承知のように、政府は九月三日の閣議で総合経済対策を立てられた。その際でも、ナフサの価格を生産、需要両業界の間に立って調整をする必要がある、こういうことを認めて閣議決定をされておるわけであります。また、濃野産業政策局長もある時期、この問題は何とか調整する必要がある、こういう発言が新聞等でも報道をされております。また、財界の土光氏も調整に努力しているという意味のことがしばしば報道されております。しかし、今日までこの問題は解決をいたしておりませんが、一体これも私企業の問題だからといって通産省は介入しないと言うのでしょうか、それとも、この問題について通産省としてどういう対処をされようとする心構えでしょうか、この点についてお伺いをいたします。
  36. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ナフサ問題につきましては二つの問題があると思います。一つは輸入の増量を図ることと、一つは値決めの問題だろうかと思います。  輸入の問題につきましては、当初七百五十万キロリッターを供給計画考えておったわけでございますが、今回百五十万キロリッター増量いたしまして、トータル九百万キロリッターの輸入を図ることにいたしたわけでございます。  それから、価格の問題につきましては、現在当事者間で交渉に入っております。私たちといたしましては、その交渉の進展状況の報告を受けながら、できるならば両当事者で話し合いがつくことをもちろん期待いたしておりますが、状況によっては調整の手段に出る必要もあろうかと思います。ただ、御承知のとおり、企業間の格差がかなりまた開いてきております。特にコンビナートリファイナリーと称するものが全国で九つあるわけでございますが、このコンビナートリファイナリーだけをとりましても、ことしの三月末時点でなお百三十五億円の累積赤字を持っておるわけでございます。そういった問題もございまして、一律に幾ら値下げするかということを指導するには非常にむずかしい問題がございます。さようなこともございまして、現在需給両当事者が交渉を進めておる、こういった段階でございますので、この状況を私たちとしては注視しておる、現状はそういう段階でございます。
  37. 板川正吾

    板川委員 現在のナフサの価格二万九千円というのは、五十年十二月に石油業法十五条の発動によって標準額が決められた際に決まった金額であります。二万九千円という価格設定は、石油業法による標準額で、通産省の指導で決まったわけです。しかし、五十一年五月に標準額が撤廃をされたのでありますが、その余後効といいますか、その後も二万九千円で動かないというふうになっているわけですね。私は、そのときのナフサの価格の設定が、他の石油製品価格との間でどうも当時割り周で決まった感じがするわけであります。ナフサだけ割り局で決まって、その後国際市況の変化などがプラスをし、為替相場の変動などがプラスをして今日の状況になっているのだろうと思うのです。たとえば昭和四十五年は高度成長のちょうど真っ最中でありますが、この昭和四十五年の石油製品の価格を一〇〇としまして現在の石油製品価格を比較いたしてみますと、原油が五七〇%に上がっておりますが、ガソリンは四五三%、ナフサは四七七%、灯油は二八五%、軽油は三四一%、A重油が三四一、B重油が四三三、C重油が三六三%ということになっておりまして、五十年十二月の標準額設定の際に、ナフサ価格がやや割り高であったという感じがいたします。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕 それは四十五年の価格をもとに設定されたという前提の比較であります。ですから、この二万九千円というのは通産省石油業法による標準額で決めたこともあるわけでありますから、通産省もこの問題について対岸の火事視しないで、生産業界、需要業界との間に話し合いを促進させて、調整するように努力を払うべきだということだけ申し上げておきます。大臣いかがですか。
  38. 田中龍夫

    田中国務大臣 御意見に対しましては、われわれもまさに先生の御高見に対しましてそのとおり努力いたしたいと思います。
  39. 板川正吾

    板川委員 私の質問は終わります。
  40. 野呂恭一

    野呂委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  41. 野呂恭一

    野呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐野進君。
  42. 佐野進

    佐野(進)委員 私は、二十六日の商工委員会において、主として通産省に対して不況対策に対する質問をいたしました。今日の不況問題は、円高の問題と関連いたしましてきわめて深刻な状況下にあることは、再三質問をしている中で指摘を続けてきたわけでございます。私は、きょうは主として円高問題を中心にして、この前質問をし得なかった問題について、通産省並びに経済企画庁に対して質問をしてみたいと思うわけでございます。  円の高騰は、御承知のとおり、昨日はついにヨーロッパ、アメリカにおいては二百五十円を割る深刻な状況下に入っているわけであります。こういうような状況下において、わが国経済、なかんずく中小企業を初めとする構造的不況業種に与えている影響は、看過でき得ないものになりつつあるわけであります。私は、そういう面において、この円高を招いた原因の中で、過日におきましても、再三指摘をし続けてきたわけでありまするけれども、結果として政府のこれに対する対応が非常にお粗末であった、おくれておった。なかんずくヨーロッパあるいはアメリカのこの円高をもたらすための一種の謀略的な動きすらあったのではないか、こういうように伝えられている状況の中において、この原因を追究し、この原因を取り除き、円高傾向を平常化する努力をすることは、わが国にとって非常に重要なことであろうと思うのでありまするが、通産当局はこれらに対してどのような措置をおとりになっておられるか。その責任と、あわせて今後の対策について、その見解を明らかにしていただきたいと思います。
  43. 田中龍夫

    田中国務大臣 お答えいたします。  御承知のとおりに、日本は、変動相場制のもとにおきまして、相場形成は市場の実勢にゆだねておるところでございますので、国際的なルールでは、乱高下につきましては市場への介入が認められておりまするけれども、その水準自体を問題として、一定の水準に円レートを誘導するということは認められておるとは存じまするけれども、しかしながら、現在の二百五十円を割るという問題に対しまして、われわれの方といたしましては、今後の推移をば見守ってまいると同時に、通産省の方といたしましては、日銀や大蔵当局、あるいはまた全体としての見通し等につきまする企画庁、そういうふうな関係各省庁とも緊密な連絡のもとに、私どもの守備範囲と申しますか、中小企業あるいはまた輸出産業に対しまする実際の対策を、きめ細かく、しかも本部を設けまして機動的に今後ともに運営してまいりたい、かように考えております。
  44. 佐野進

    佐野(進)委員 そうすると、いまの答弁とこの前からの質問を通じて私どもの聞きたいという点についての問題に関連をするわけでありまするが、政府としては、実勢が二百五十円そこそこの状況の中でいまの輸出ないし輸入が行われておるわけでありまするが、実勢としてどの程度に引き戻した場合わが国経済として好ましいか、あるいは政府としてどの程度に引き戻すように努力しなければならないか、その目標点についてひとつお答えをいただきたい。これは、産政局長もおられるので、円高の実勢に対してわが国の円の安定的な価格日本経済の現状に照らし合わせてどの程度が適当と考えるか、この点ひとつお答えをいただきたい。
  45. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  為替相場の問題は、ただいま大臣の御答弁にもございましたように、現在わが国はいわゆる国際的なフロート制のもとにございますので、現実に出てきております一つの円の為替相場というものは、いろいろな内外の経済事情の反映と私ども受けとめなければならないと考えておるわけであります。もちろんその場合に、いわゆる国際的に乱高下を防止するための介入は認められておる、このいわば国際的なルールと申しますか、これは私どもが物を考える上の前提にしなければならないと思います。  一方、いま先生御質問の、それでは一体幾らならば日本経済全体の運営がうまくいくかという問題、これは別の問題だと思いますが、これまた個々の産業、あるいは特に為替相場の問題になってまいりますと、私は、産業をさらに掘り下げました一つの業種におきましても各企業の力の問題というところまでなると思いまして、一律にどの相場が適正であるかということ、これは言うにかたい問題ではないかと思います。  ただ、そういう国際的なルールを前提にいたしまして政策への取り組みの姿勢ということを考えてみますと、これは従来から主として中小企業、産地等を中心に実施をしておりますように、個々の産地あるいは個々の企業というものが大体どの辺の水準ならば輸出を継続していけるかという一つのライン、目安というのはあるわけでございまして、過去の調査によりますと、主要な中小企業を中心とします産地におきましては二百七十円あるいは七十五円ならば輸出の運営ができていく、こういう答えが返っております。ただ、これを日本経済全体に引き直しまして幾らの相場であるべきだということはお答えがしにくい問題ではないか、かように考えております。
  46. 佐野進

    佐野(進)委員 大臣、いまの関連の質問になるわけですが、お答えしにくいというのは事務当局として当然であると思うのですが、経済企画庁長官なかなか来ないのですが、望ましい円レートというもの、円のいわゆるドルに対する価格というものは当然存在すると思うのです。いわゆる六・七%の成長率の裏づけとして幾らであった、二百六十何円であるとか二百八十何円であるとかいろいろな動きがあると思うのです。そういうような形の中で通産当局としては、日銀当局あるいは大蔵省と違いますから、面接的にはこの望ましい姿というものは言い得ないにしても、今日の実勢の中で通産行政を担当していく上に最も望ましい、そこへまで行かなければならないという一つの数字というものの目途は恐らく政治的に判断がついているのじゃないか、こう思うわけでありまするが、それについて大臣の見解はありませんか。全然その日その日の行き当たりばったりですか。
  47. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、七月に輸出関係の各産地、燕でありますとか、多治見でありますとか、大阪のめがねでありますとか、川口の鋳物でありますとか、そういう三十二カ所に係官を出しまして調査をいたしました。そのときが二百六十五円のレートのときであったと存じます。そのときにいろいろと各産地別にも報告がございましたが、その際、なかなか二百六十五円では苦しいところもありましたし、やっていけると言っておるところもございました。さらにだんだんとそれが二百六十円になり、二百五十円台になってまいっております。  もちろん、この輸出産業の中におきましても中小企業、こういったものは非常に深刻な打撃をこうむりまするし、と申しましても、また自動車とか家電だとかというふうなことになりますと、これに対しましては相当抵抗力を持っております。しかしながら、そのまた下部には下請の中小企業の膨大なものがあるわけでございます。そういうことをいろいろと勘案いたしますと、先生の御指摘のような、はっきりとした水準がどこの線であるかというクロスポイントを明確に申し上げることが非常にむずかしいということはどうぞ御賢察いただきとうございます。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
  48. 佐野進

    佐野(進)委員 経済企画庁長官、座ったばかりで大変悪いのですが、時間の関係もありますので直ちに質問をしてみたいと思うわけです。  実は、過日、あなたの出席を求めてこの商工委員会経済問題に対する集中審議を行おうということで、出席を要求したわけですが、参議院の物特であなたの出席を先に求めていたということで、遺憾ながら質問をすることができ得なかったわけです。きょうも実はあなたの出席を求めて質問しようと思っておりましたが、時間が大分経過してしまって原則的なことしか聞き得ないわけでありますが、いわゆる円高の問題が、構造不況の中において新たに加わった悪条件として、日本産業、いや日本経済の上に非常に大きな暗影を投げかけておる。もちろんこれにはメリットを受ける部門もあるけれども、メリットを受ける部門よりもむしろデメリットを受ける部門の方がより多い。こういうような形の中で、いま私どもは、不況を克服し経済を発展させるために、円高にどのように対応していくのかということは非常に大きな課題であろうと思うのです。  したがって、この課題にこたえるために、経済企画庁としてはどのような対策をとっているか。私は、構造不況も政府責任であれば、円高を招いた事態も政府責任ではないか、対外的ないわゆるヨーロッパなりあるいはアメリカなりの日本に対する一種の経済制裁を意味するものではないかという心配すらあるという状況の中において、経済企画庁はどのように考え、どのように対処しておられるのか、そして今日の経済情勢の中における円の価格というものは一体どの程度が実勢として最も望ましいと御判断なされておるか、この点をひとつ御見解を明らかにしていただきたい。
  49. 倉成正

    ○倉成国務大臣 円高の問題、特にきょうの寄りつきでは二百五十円を割るというような状況が出てまいりました。私どもこの状態を見ておるわけでございますけれども、この円高の背景についてはもうすでに通産大臣その他からお話があったと思いますが、一つは、日本の貿易収支の黒字、国際収支の大幅な黒字ということが背景にあると思います。しかし、これは日本側だけの問題ではない。すなわち、アメリカ側にも問題があるわけでございます。きょう発表になりましたアメリカのことしの一−九月の貿易収支の赤字は百九十三億九千八百万ドルということで、かなり大幅な赤字がございまして、その中には石油の輸入も入っているということで、私は、やはり短期的にはこういう為替の需給関係両国の国際収支の黒字、赤字という問題が背景にありまして、この実勢がやはり円高の問題に響いておると思うのでございます。それと、中長期的にはやはり両国の卸売物価というのが一つの目安になろうかと思いますが、スミソニアン以降の状況というようなことがある程度の参考になるというふうに考えております。  したがって、急激な変化ということはやはり輸出産業を中心として大きな影響が出てくる、特に輸出の比率の高い中小企業、繊維や雑貨等に出てまいりますから、やはりこれらの点について、通産大臣がすでにお答えになったと思いますけれども、できるだけそういうショックをやわらげる対策をやっていくということが当面の課題ではなかろうかと思いますし、また、円高の面でメリットとして出てくるのは、やはり物価の面で、卸売物価についてはかなり響いておりますけれども、これをさらに消費者物価について反映していくように努力をしたいと思っておるわけでございます。  望ましい姿ということは、為替の問題については、これはやはり為替相場の実勢に聞くという態度でございまして、乱高下については通貨当局がある程度の介入をすると思いますけれども、それ以外はやはり為替の実勢に任せるという立場をとっております。変動相場制というのはまさにそういうものを意味しておりますので、ここで私が望ましい姿というようなことを申すのは適当でないと思います。
  50. 佐野進

    佐野(進)委員 もう時間が余りありませんから、その点については省略をいたしたいと思うのですが、経済企画庁は、今日の不況下における物価の安定、さらにはその他いろいろなむずかしい問題に取り組んでおるわけでありまするけれども、何としても今日のこの円高の影響を、どのように日本経済の上にマイナス面を少なくし、プラス面を多くするために努力しなければならないかということについては、一番心配しなければならぬ立場にあるのではないか、こう思うわけであります。     〔山崎(拓)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕 したがって、いわゆる日銀等の面接通貨を取り扱う部署と違って、一定の経済の発展に見合う円レートの安定的な状況、これをどのようにして希望し、どのようにして政府部内において実現せしむるかということは、当然経済企画庁としてあなたがその責任を持ち、意見を出していかなければならないのだと思うのであります。にもかかわらず、いわゆる今回の円高は外圧によるところの円高である、実勢とかけ離れた形の中で動かされているのである、こう言われているとき、あなたがいまのような消極的な答弁、フロート制になっておるのだからやむを得ないというような形だけで、果たして政府はその責任を果たせるのかどうか、私は大変疑問に思わざるを得ないわけであります。したがって、この点について明確な御答弁をひとついただきたいと思うのであります。
  51. 倉成正

    ○倉成国務大臣 円の相場については、私どもも非常に深い関心を持っておるわけでございます。しかし、一定の相場を想定して、これが日本の相場であるというようなことを変動相場のもとで申すのは、余り適当ではないと思うわけでございまして、まさに変動相場制というのはそういうことを意味しておるわけでございます。ただ、急激な変化ということになりますと、先ほど申しましたように、輸出産業、特に中小企業に大きな影響が出てまいりますので、これらの点については最善の対策を講じていくのが適当でないかと思うわけでございます。  佐野委員がどの程度が適当でありというようなことを私にもし意見を求められるとすれば、それはちょっと大変お答えできないことを問うておられると思うのでございます。
  52. 佐野進

    佐野(進)委員 あなたは、いままでいわゆる経済発展のわが国における実勢というか状態というものについて、その見解を取りまとめていく責任ある立場にあるわけであります。この立場において、今日の円高の問題は避けて通ることのでき得ない問題ではないかと思うわけであります。したがって、そういう問題について、私は、あなたのいまの立場でその程度の答弁しかでき得ないということを不都合だとなじるわけではございませんが、いま日本経済に携わる者ひとしく頭を痛め、どうなるのかということで心配をしているのがこの円高の問題だと思うのです。もちろんメリットを受ける部面があることは間違いございませんか、デメリットを受ける人たちの数の方がより多いであろうということが常識であるとするならば、メリットを受けた人たちに対してどのようにそれを吐き出させるのか、デメリットを受けた人たちに対してどのようにそれを補うのか、これは政府として当然考えなければならない政策基本であろうと思うのであります。  そういう基本考える場合、行政当局の中で通産当局は、業界に対して自己の判断に基づくところの一定の希望を出すことは当然であろうと思うのでありまするけれども、あなたの場合はきわめて公平な立場でその結論を引き出すことはむずかしくないと私は判断しますがゆえに、その見解を質問申し上げておるわけであります。  そこで、通産大臣経済企画庁長官と、最後、中小企業庁長官、出たり入ったりしているが、ちょっと座ってもらわないと困るのだけれども、中小企業庁長官に聞きたいと思うのでありまするが、このような状況下において、いま倉成大臣からも話がありましたけれども、中小企業が、特に関連する中小企業が最も深刻な影響を受けるということはだれしも認めるところであります。したがって、それぞれの省庁に対するところの要求は要求として、中小企業庁当局として、これら関連中小企業者に対する対策を立てるために、通産省あるいは他の省庁に対してどのように要求をし、努力をしておられるか、この点についての見解を聞いて私の質問を終わりたいと思います。通産大臣経済企画庁長官、中小企業庁長官の順でお答えをいただきたい。
  53. 田中龍夫

    田中国務大臣 私の方といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、急激な変動がありますことは一番困るのでございまして、ある程度まで平静に安定していただかなければならぬのでございますが、しかし、私の方は、日銀あるいは大蔵当局等々と違いまして、いわゆる生産を担当し、あるいは貿易を担当する面からの考え方でございます。そういう点からいたしますと、乱高下といったような急激な変動が一番困る。しかしながら、御案内のとおりに、二百五十円という大台が割れてまいったような今明日の段階でありまするが、こういうふうな為替の変動の激しい時点におきまして、私どもといたしましては、産業を守り輸出工業を守っていくという点で、対策本部を持ちまして、同時にまた、十一月の中旬を目途に約七十数カ地点のところに詳細なデータを、早急に影響対策調査いたしてまいりまして、この結果を踏まえまして、さらにきめの細かい対策を講じよう、同時にまた、機動的な対策考えていこう、こういうふうな立場で臨んでおります。  御指摘の円レートそれ自体に対しまする先生の御質問にお答えにならないことを非常に残念に存じまするが、私の立場といたしましては、この線でひとつ御容赦をいただきとうございます。
  54. 倉成正

    ○倉成国務大臣 円高の成果をできるだけ卸売物価、消費者物価に反映させていきたい。卸売物価は、御案内のとおり、かなりの影響が出ておるといいまするけれども、必ずしも消費財に十分出ていないという点がございますので、この点についてはこれからもさらに努力をしてまいりたいと思います。それと、今回九月三日に決めました総合経済対策を着実に進めてまいりまして、内需を起こすことによってできるだけ国内需要を喚起してまいりたいという考え方を持っておりまして、個々の対策については通産省のやられる政策をバックアップしてまいりたいと思っております。
  55. 岸田文武

    ○岸田政府委員 中小企業にとりましては今回の円高の問題は非常に重大な事態であり、私どもとしても深刻に受けとめておるところでございます。  日本の中小企業は、戦後いろいろな荒波をくぐり抜けて今日に至ったわけでございますが、ある意味では非常に適応力があるとはいうものの、今回のように急激な円高という事態になりますと、これにいかに対応するかということは、この際、腰を据えて考えなければならない問題が出てきたのではないかという気がいたしておるところでございます。とりあえずつなぎ的な金融措置を講じた次第でございますが、こういう措置を講じておる間に、一方では景気の回復ということを心から期待をいたしたいと思いますが、しかし、中小企業対策としても、やはりこの際基本的にどう取り組むかということを考えてみたいと思っておるところでございます。  産地の実情をいろいろ聞いてまいりますと、産地の中には、やはりこの際思い切って新しい商品を開発するとか、あるいは高級化するとか、コストダウンを図るとか、さらには国内向けの製品へ取り組むとか、こういった前向きの対応考えようというグループもございます。また、別のグループといたしましては、いままで少しぜい肉があった、この際少し戦線を整理をして、そういう体制のもとでの行き方を考えていこうというグループもございます。さらにまた、一部には、いままでの仕事にしがみついておるのではなくて、別の分野への転身ということをこの際真剣に考えざるを得ないのではないかというような声も聞こえてまいります。  私どもは、いま申しましたような声を受けて、これらの対応策というものを本当に実りあるものにするような中小企業施策というものをこの際考えてみたいと思っておるところでございます。
  56. 佐野進

    佐野(進)委員 質問を終わります。
  57. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 中村重光君。
  58. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますから、具体的な質問は来週金曜にひとつ通産大臣にも長官にもお越しいただいて質問することにいたします。  基本的な問題について数点お尋ねをするのですが、いま経企長官佐野委員の質問に対してお答えになった。こうした公開の席上で、国際的な関係もありますから、また日銀の分野でもあるし、なかなか答弁しにくいという面もあることは理解するのです。それにしても他人事のように聞こえてしようがないのですね。いま、円高の利点というものをプラスに転じさせるために最大限努力をするんだ。まあ、そうしてもらわなければならないのだけれども、経企長官の願望にかかわらずなかなかそうは動いてないのですね。卸売物価の問題にいたしましても、若干下がってきているんだけれども、それが円高による——結局輸入というものは、もう原材料にしてもみんな安く入るわけです。それは手放しでいい傾向であるということばかりに見られないのですね。国内が非常に不況なんだから、需要というものがなかなか上向きにならない。そういうことで卸売物価というものが下がるというようなこともある。下がること自体は結構なんだけれども、下がっている背景という問題を重視していかなければならないだろうと私は思うのです。  望ましい円の相場は幾らかという、その点についてはっきりお答えできないと言うのだけれども、乱高下に対しては日銀が介入をするということは国際的にも認められているものであります。このままの状態でいったらバンクしてしまうのですね。いかに円高というものをプラスに転じさせると言ってみたところで、円高によるところの輸出、なかんずく競争力のないところの中小企業というものはまいってしまう、これが実情なんだから。これはどうなるのだろうか。二百五十円を割ってしまった。日本に対する国際的な反発はまだ依然として強い。どこまで円が上がっていくんだろうかといったようなことについての見通しといったようなものも聞いてみたいんだし、それからもうこれ以上円が上がったらどうにもならないんだという、パンクしないための政府考え方といったようなものは、ある意味においては、これ以上は政府が何とかしてくれるだろうという、やはり経済人あるいは国民がそれに対する期待感を持って、そして事業の運営に当たっていくというようなことにつながるための、その程度考え方を明らかにしていくのでないと、いろいろな関係がありますから言えないんです、言えないんですということだけでは、今日置かれているこの深刻な状態に対して国民を納得させることにつながらないんじゃないでしょうか。その点いかがですか。
  59. 倉成正

    ○倉成国務大臣 中村委員も事柄が非常にむずかしいということを十分御承知の上で御質問されていると思うわけでございます。先ほどから佐野委員の御質問にお答えしましたように、この背景が、日本の国際収支の黒字、経常収支の黒字が特に幅が非常に大きい。それからまた同時にアメリカにおける貿易収支、また経常収支、国際収支の赤字が非常に大きいというところが背景になっているわけでございます。したがって、日本のとるべき立場としては、できるだけこの経常収支の黒字幅を小さくしていくということ、まあ早く言えば背景にあるものを解消していくということが基本的な立場であると思います。総合経済政策をとりまして、内需を中心とした経済政策というのはそういう意味を持っておるわけでございます。  それから同時に、日本に対する風当たりが非常に強いという意味から、内需を振興することによって経常収支の黒字幅を減らしていくということには、やはりかなり時間がかかります。したがって、緊急に輸入するものがないかどうか、そしてアンバランスをできるだけ解消する方法がないかということで、備蓄をやるとかあるいは穀物の前倒しの輸入をやるとか、いろいろそういう施策を先般から通産大臣やあるいは農林大臣が申したような線で努力をいたしておりまして、なお、さらにいい方法がないかということをいま研究いたしておるわけでございます。  そういうことで円高というものは考えていきたいと思うわけでございまして、これを望ましいどこの姿にという発言については、ひとつ経済の衝に当たる私どもの口からそういうことをいま申し上げるのは適当でないと思うのでございます。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 この調子でいくとどこまで上がるというように見ていますか。それから、日銀総裁は、この円高というものは投機が働いているということを言われたんだけれども、経企長官としてはこの円高の背景というものをどう見ていますか。投機が働いている、いわゆる投機だというように見ていますか。そして、この調子でいったらどこまで上がると見ていますか、これで上げどまりになると思いますか。     〔中島(源)委員長代理退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
  61. 倉成正

    ○倉成国務大臣 これはだれもわからないと申した方が差しつかえないと思うわけでございますが、円高に対する投機あるいはいろいろな人の発言というのがやはり響いていることは、実であると思います。しかし、それがどの程度のものであるかということは、ちょっと私もよくわかりかねるわけでございます。同時に、そういう円高になる背景が、やはり日本の国際収支の黒字あるいはアメリカの赤字というところにある。したがって、個々の問題に手を触れることがやはり基本的な問題ではなかろうかと思うのでございます。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣、この円高対策としてできるだけ輸入をふやしていくようにしたいというので、とりあえず政府石油備蓄であるとか、あるいはウランであるとか、そういうものを輸入をして十億ドルというように考えているようであります。あらゆる努力をおやりにならぬといけないのだけれども、円高というのは、いわゆる洪水的な輸出というようなものが相当大きな要素を占めていることは間違いないんだけれども、輸出はどうするんです。輸出は規制するんですか。
  63. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいま御質問の輸出をどうするかという問題でございまするが、われわれといたしましては、日本のたてまえそのものがあくまでも自由貿易でありまして、むしろ保護政策というものに対しては闘ってまいっておりますると同時に、企業の面におきまして、いわゆる国内的ないろいろな御相談なり、あるいはまた行政上の業界同士のお話し合いというふうな自主的な姿をわれわれといたしましては考えておる次第でございまして、輸出を行政的に規制するというふうなことは考えておりません。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 行政的には規制はしないが、業界の自主規制は期待しているということですね。
  65. 田中龍夫

    田中国務大臣 これも業界自体の発意に基づく日本経済への一つの寄与でございまして、われわれはそれに対しまして喜んで御相談にも乗りたい、かように考えております。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 行政的な規制をやらない、こう言うんだけれども、通産省というのは行政指導というのはお家芸なんだから、いつもこれが問題になってきたわけなんだ。  そこで、置かれているところの繊維産業は、国際競争力を失ってしまってもうどうにもならないという状態に来ている。このままで放置したら、中小は言うまでもなく、大手だって私はまいってしまうだろうと思う。日本の歴史的、伝統的な繊維産業というものは何としても守っていくということでないといけない。アメリカは、繊維対策というものに非常に強力な対策を講じて、繊維産業というものを守ってきておる。  そうなってくると、行政的な輸出規制策はとらない、こうおっしゃるのだけれども、ある程度のコントロールというものはおやりになる必要があるんではなかろうか。輸出洪水ということになってくると、自動車であるとか、あるいは弱電であるとか家電であるとかいうものは、円高になって全く影響はないということは言えないだろうけれども、競争力というものは、これら業界の不断の努力と技術革新、いろいろな面において耐え得るという見通しなんですね。そうなってくると、この円高によるところの影響というのが大きな要素にもなってきて、懲罰ではないけれどもある程度コントロールしていく、総量規制的なものをもうこの際考えてみる段階に来ているんじゃなかろうか。  そうすると、総量規制というものをはっきり打ち出すことはできないだろうけれども、ともかく特定の産業というもの、これだけは何としても守っていかなければならないというものも、歴史的、伝統的な関係からあるだろうし、労働集約的な関係からもあるだろうと私は思うので、ここらは何かもう繊維産業等を生かすための対策というものを考える必要があるんじゃないか。これは経企庁も重大な関係があるわけだから、きわめて簡単で結構ですから、両大臣からひとつお答えください。
  67. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまも申し上げたように、自由貿易主義を国是といたしておりますわれわれといたしましては、国際収支の黒字の縮小ということは、基本的には輸入の増大によります拡大均衡によるバランスをとっていかなければならない、そういうことから輸出の抑制によってこれを達すべきではない、かように申し上げたことはただいまのとおりであります。  なお、そういうことから、お話の繊維工業が輸出産業として華やかな時代は遠く去っておりまするし、あるいはまた、反面に後進諸国からの突き上げというものもございまして、構造的には深刻な打撃をこうむっておるのでありまして、新繊維法と申しますか、新しい一つの転換という問題についても産構審等におきましていろいろと検討いたしております。いまここで、それでは国内的にごうごうという対策をとっておりますということは、もう私が申さなくとも先生の方が百も御承知のことで、専門家に向かって素人が講釈をするというのもまことに僭越なことでございます。  なお、より細かい詳細なことに立ち至りますれば、担当の政府委員が参っておりますので、産地別あるいはまた銘柄別その他のいろいろな問題につきましては詳細に御返答を申し上げます。
  68. 倉成正

    ○倉成国務大臣 日本の貿易構造は、原材料を入れまして、これを加工して輸出するという形をとっております。御承知のように、輸出の御三家と申しますのは鉄鋼、自動車、造船。そのうちの一つの造船は、中村委員がよく御承知のとおり非常に苦しい状況になっておるわけでございます。世界の貿易もだんだん鈍化してくるというふうにOECD等も見通しをしておるわけでございます。したがって、いまアメリカは多少景気がいいわけですけれども、ヨーロッパは西ドイツを初め若干景気がダウンしてきているという状況でございますので、われわれは輸出の問題については、集中豪雨的な輸出ということになりますと、これは失業を輸出するということで世界じゅうが非常に神経過敏になっておりますから注意深くやらなければならないと思いますけれども、しかし、日本の輸出というのは日本の産業の命綱であるというふうに思っております。同時に、われわれは輸入を何とかしてふやす方法がないだろうかということに最善を尽くしてまいりたいと思うのでございます。
  69. 中村重光

    中村(重)委員 私は、こうして質問をしておって、委員会の席上というものは答弁にもある程度の制約というのか、そういうものを考えなければならないのだろうということは理解しながらも、国民がこれを聞いていたらいらいらするというようなもんだね。もうある程度突っ込んで話し合いをするということで、国民にも自信と信頼感と、それからやはり転換をしなければならぬというなら転換もさせるということでないと、こういう状態では、私はいつか、大企業をして迷えるオオカミ、中小企業をして迷える羊と申し上げたのだけれども、本当に迷ってどうにもならない、ますますもって経済的なパンクというものを促進させるということにつながると思うのですよ。もう少し閣議で、もう一歩突っ込んで答弁をするというようなことでもって検討してもらいたいという気がしますね。  それから、円高か続いてくる。円高がこういう状態ですと、開発途上国から、向こうからは輸出の急増、こちらでは輸入が急増してくるというような形になりかねないと思うんだけれども、最近の状況はいかがです。
  70. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、産地の方にいろいろと調べてまいっておりまする報告によりましても、解約等々のことも出ておるようでございまするし、それからまた、先行きに対します約定もできないというようなことで、それは本当に、先生が仰せられますとおりに、暗たんたる毎日を送っておるのが実情だろうと存じます。私どももそれらに対しましては真剣に取り組んできめの細かい施策をいたしておりますことは、これまた先生の御承知のとおりであります。しかしながら、これにはいろいろとデリケートな関係もあるわけでありますから、そこで個々の対策につきましては全力を挙げてきめ細かくいたしておりまするけれども、総論的な意味におきましてなかなか申し上げにくいというのが今日の実態でございます。
  71. 中村重光

    中村(重)委員 非常に親切に答弁されることは結構なんだけれども、私は、円高ということになってくると輸入が急増してくるということになるのではないか、最近の状況はどうか、こうお尋ねしたのだから、それはそれなりにずばりお答えをいただいて、それでは中小企業は円高によって輸出でダウンし、また今度は発展途上国からの輸入によってダブルパンチでどうにもならないという状態に陥るのだから、それに対しては対策が必要になってくる。経企庁長官、いま手を挙げられたから、あなたからひとつお答えをいただきたい。
  72. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  私、手元に繊維製品の詳細な最近の輸入の動向の資料を持っておりませんが、私が耳にしておりますところの傾向によりますと、ここしばらくの間、国内市況の低迷によりまして二次製品等の輸入は若干低迷、それほど伸びは大きくなかったと記憶しておりますが、最近、関係商社筋等で私が耳にしましたところによりますと、この九月末からの円高で海外製品の競争力がこれで非常に大きくなりまして、今後繊維製品、二次製品の輸入はかなり伸びるのではないか、こういう空気を関係者は持っております。
  73. 中村重光

    中村(重)委員 そこで、中小企業というのは、病人なんだから、もう体が弱り切ってしまっているんだ。高成長のときはそれだけ力があるから、輸入というものがあってもそう大きな痛手は感じない。しかし、体がこんなに弱ってしまっているときには、輸入が少しふえても大変なことになって、もう完全にダウンしてしまう、こういうことになるわけなんです。ともかく、何と言うか、国は赤字があると国債発行をしてそれで何とかコントロールしていく。大企業というのは操短で耐え忍ぶことができる。中小企業はそれこそどうにもならないのだ、操短もできないというようなことになってくる。かといって、対策はどうかというと、不況対策として閣議決定してお出しになったのはつけ焼き刃で、もう二階から目薬みたいなことでどうにもならないのだ。だから、閣議決定をやったからというようなことでその推移を見てみようなんというようなのんびりしたことではなくて、もっと本当に積極的な取り組みをひとつしてもらわなければならないと言うのです。これは強く要望しておきます。  もう一つ円高で懸念されるのは、OPEC諸国が、いわゆるドル安になるわけだから、目減り補償という形で原油値上げというような動きが出てくるのではないか。そうなってくると、これはまた大変ということになるんだけれども、そういう声が起こっているようにも聞いているんだけれども、この点いかがです。
  74. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘のような点につきまして、外電等を通じて私たち承知いたしておりますし、また、これがどうなるか非常に危惧いたしております。ただ、御承知のように、OPECといたしましては、総会にかける前に経済委員会等で世界の経済に及ぼす影響あるいは引き上げの幅等についても十分検討した上、総会に諮るといったような手続を踏むものと私たち承知いたしておりますので、産油国といたしましては、御指摘のように、ドルの目減りをカバーするための値上げということも一つの考え方かと思いますが、それが世界の経済に及ぼす影響、特に不況から立ち直ろうとしている段階において、それがどのような影響を及ぼすかといったような点についても十分配慮した上、良識ある決定がなされるようにとわれわれは期待しているわけでございます。
  75. 中村重光

    中村(重)委員 それから、時間がありませんから、経企庁長官、今度の不況対策として十万戸の住宅建設の融資決定したんだけれども、波及的効果をどう見ていますか。
  76. 倉成正

    ○倉成国務大臣 今度の十万戸で大体事業費として八千七百億程度と見ておるわけでございまして、公共事業関係が、モデルに入れて波及効果、間接効果を計算いたしますと、大体一・八から二程度というふうに見ておるわけでございます。しかし、今度の十万戸の効果というのは、恐らく三分の二程度が本年度、そのあとは五十三年度に効果が出てくる、そういうふうに思っております。
  77. 中村重光

    中村(重)委員 私は、本年度に三分の二ということは可能性がないというように見るのです。これは国がこれから方針を決定して、それから貸し付けの準備、申し込み、契約、それからいろいろ資材等の手当て、こういうことになる。だからそう簡単にはいかない。前倒しで幾らか上昇傾向がある、これによって直ちにつながっていくんだというようには見られない。だから、甘くお考えにならないで対策をお立てになる必要がある。  それから、十万戸ということであっても、私は、十万戸ではなくて、五万戸程度にとどまるのではないかという気がする。ということは、銀行ローンなんかで住宅を建設する予定の人たちが、これを切りかえるだけにとどまるわけだ。もう一つは、べースアッブが思うようにいかないということで、なかなかこれを建てることができないということになってくるので、これは十万戸決定はされたけれども、そのとおりにはならない。五万戸以上と見ることも甘い、私はこう思う。  時期の問題、そういういろんな条件ということをお考えになって——十万戸やったらこれで万歳万歳、これで上向きになるんだと言って、本年度の前倒しで景気が回復すると胸を張ったんだけれども、そのとおりいかなかったという貴重な経験というものをもとにされて、そして積極的な景気対策をお立てになる。  それから、これは政府もお認めになっていることなんだけれども、いわゆる円高対策、黒字減らしということは国内需要を拡大するということが大事なんで、これも一つの国内需要を喚起する大きな柱なんだ、こういうことだろう。それはあながち私は否定するものではありません。ですけれども、社会保障も低福祉だということで後退させる。労働者の賃金も抑える。それから住宅は今度十万戸ということを計画をお出しになったんだけれども、国民生活関連のいろんな事業、なかんずく社会福祉の施設というものはヨーロッパ諸国に比べてはるかにおくれているから、そういったような点を思い切って充足していくといったようなこと等々、きめ細かい施策を講じて、パンクする状態にある日本経済を守っていく、こういうことにひとつしていただきたい。  それから、先ほど申し上げましたが、こうした質疑応答なんかももう一歩突っ込んで十分ひとつ話し合いをするというぐらいの勇気をお持ちにならぬと、国内では非常にかたくなに用心して物を言わない。ところが、外向けで報道陣と話をしたりするときには、宣伝か何か知らぬけれども、いろんな放言みたいなことまでやって問題を起こすというようなことなんかおやりになっておられる。だから私は、こういう委員会あるいは本会議の質問、そういうときに国民は一番注目しているわけだから思い切って答弁をする、話し合いをする、そういうことで国民に対して自信を持たせるということで、先ほど申し上げましたように、閣議等においても十分検討していただくことを心から期待をいたしたいと思います。  時間の関係もありますから、特に御答弁があれば伺うことにいたしますが、私の質問はきょうはこれで終わることにいたします。
  78. 倉成正

    ○倉成国務大臣 住宅の問題ですが、住宅は、御案内のとおり、大体いままでの募集の状況を見ていますと二倍ぐらいの応募がございます。十月に募集いたしますと、いろいろな手続をいたしまして、それから抽せんをするということになりますから、十二月にはこれが決まって、着工するものが出てくるわけです。大体、三カ月、四カ月目ぐらいがピークでずっと着工してまいりますので、年度内に、来年の三月までにかなり効果が出てくるという点がございます。  それから、私どもがいろいろな効果を測定いたしますときには、住宅公庫の枠がふえたから今度は一般でつくろうという人たちがこっちに移動してくるというのも、十分見込んでおるわけでございます。そういうのも計算をした上で一応の試算をしておりまして、いまお話しのように、十万戸やっておるけれどもその効果は五万戸以下である、そういうことはない。かなりの、相当大部分が、少なくとも八万戸以上の部分はそういう今度の——あと二万戸くらいのものが一般からこちらに来る可能性はあるかもしれません。しかし、大部分はこの効果によって景気の浮揚ができる、そう思っておるわけでございます。
  79. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 長田武士君。
  80. 長田武士

    長田委員 私は、最近の円高基調を反映いたしまして、円高差益が顕著と見られておりますところの石油製品の問題について、通産省に対し総括的に質問を行いたいと思っております。  その前に、きのうの新聞の報道によりますと、カナダの石油開発国策会社であるヘトロ・カナダ社は、このほどわが国に対しまして、カナダ・アルバータ州でのオイルサンド計画、これに参加するように要請があったと、この記事を見たわけでありますが、通産大臣はこの計画について御承知であると思いますが、概要を御説明いただきたいと思っております。
  81. 田中龍夫

    田中国務大臣 右の点につきましては、政府委員から詳細をお答えいたします。
  82. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいま御指摘の点について、お答えいたします。  ことしの一月に、カナダの国営石油会社でございますヘトロ・カナダから日本オイルサンドに対しまして、アサバスカ・オイルサンド鉱区につきまして、共同参加を求めてきたわけでございます。日本側といたしましては、日本オイルサンドがまず調査をいたしまして、引き続きまして、本年の八月に石油開発公団から技術調査団を派遣いたしております。その後九月に入りまして、石油開発公団の倉八総裁が現地に赴きまして、カナダ側の政府首脳とも会談いたしております。この鉱区は、原始埋蔵量といたしまして原油に換算いたしますと約二百四十億キロリッター、可採埋蔵量にいたしますと七十二億キロリッター程度ある、かように見られておるわけでございます。
  83. 長田武士

    長田委員 この計画が実現いたしますれば、わが国エネルギー開発にとっても大きな問題であると思います。この問題については別の機会に質問をいたすといたしまして、本題に入りたいと思っております。  まず初めに、電力料金の問題についてでございますが、現行の電力料金、実は去年の六月から八月にかけて、さみだれ方式に九電力平均二三・〇七%の値上げがされたわけであります。これを認可された算定基礎の内訳、それについて具体的に御説明をいただきたいと思います。
  84. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 電気料金につきましては、御承知のように、電気事業法の第十九条の規定に基づきまして、原価主義によって定めることになっております。また、特定の事業家に不当な差別的取り扱いをしてはならない、かように規定されておりまして、この規定に従いまして、電気料金を算定するに当たりましては、まず、需給計画、工事計画資金計画、業務計画、こういった前提計画に基づきまして総括原価を算定いたすことにいたしております。この総括原価をさらに電気の使用形態、需要場所等の差異に従いまして電灯、低圧電力、高圧電力、特別高圧電力の四つの需要種別に個別原価を策定いたします。この個別原価を契約種別ごとに料金率を定める、かような手続になっております。
  85. 長田武士

    長田委員 具体的に数字をひとつお示し願いたいと思います。
  86. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 個別の具体的項目につきましては、公益事業部長からお答えさしていただきたいと思います。
  87. 服部典徳

    ○服部政府委員 先ほど長官が答えましたように、定められました原価計算方式によって査定を行ったわけでございますが、その結果といたしまして、値上げ率は先ほど先生御指摘のとおり二三・〇七%で、電灯につきましては二一・〇三%、電力につきましては二四・〇一%という結果に相なったわけでございます。
  88. 長田武士

    長田委員 私が伺っておりますのは、算定の総括原価の内容を伺っているのです。項目を伺っているのです。
  89. 服部典徳

    ○服部政府委員 原価の各項目別にそれぞれ査定を行ったわけでございますが、主なものを申しますと、燃料費につきましては、OPECの値上げ、当時若干うわさはされていたわけでございますが、これを申請では織り込んでまいりましたものを、査定では全部ゼロ査定ということで織り込みをいたしておりません。それから為替レートにつきましては、査定時の過去三カ月の平均ということで、これも申請よりやや下回る額だと思いましたが、九社平均では二百九十九円という結果になっておるわけでございます。その他、修繕費につきましては標準修繕費と実績修繕費を勘案いたしまして、それぞれ五〇対五〇の比率で査定に織り込んだ。また、資本費につきましては、特別監査を行って、原価に算定すべき有効かつ真実な資産という範囲を厳正に査定を行ったということでございまして、その結果といたしまして、総括原価、申請は九社合計で申しますと十一兆一千百四十六億でございましたが、そこから四千二百九十三億の査定を行いまして、十兆六千七百五十三億という査定結果になったわけでございます。  なお、原価別に申しますと、一番その値上げの寄与率が大きいのは資本費でございまして、全体の値上げへの寄与から申しますと、資本費が約三割近くの数字に相なるわけでございます。それに続きますものとして燃料費が二九%弱、それから他社から購入いたします電力料が一三%程度、こういった寄与率に相なったわけでございます。
  90. 長田武士

    長田委員 もっと細かい数字を知らしていただければ幸いだったのですが、次に移りたいと思います。  本年度において九電力会社が使用する燃料はどのぐらいであるか、原油、ナフサ、LNG別におわかりになりましたら、お知らせをいただきたいと思います。
  91. 服部典徳

    ○服部政府委員 五十二年度におきまして九電力会社が使用いたします燃料でございますが、構成比で申しますと、原油が全体の約一三%、ナフサが約一〇%、LNGが約一%、残りの四七%が重油その他という内訳でございます。
  92. 長田武士

    長田委員 そのうち国内石油会社から買う分と、輸入によって為替差益の恩恵を受ける分はどのぐらいあるか、その比率についてお伺いしたいと思います。
  93. 服部典徳

    ○服部政府委員 ただいま手元に数量的な比率は持ってないわけでございますが、金額的に申しますと、大体全体の燃料費の中の四五、六%というのが外貨建ての契約というふうに承知いたしております。
  94. 長田武士

    長田委員 ちょっと数字が違うのではないでしょうか。最近における円筒基調の中で、九電力会社が、昨年の電気料金値上げ以降今月に至るまで、どのぐらいの差益を得ておるか、この点数字を示していただきたいと思います。
  95. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 電力九会社におきまして五十一年度中の為替差益は百四十六億円でございます。それから五十二年度上期につきましては、外貨建て契約によるところの為替差益は四百二十七億円でございますが、ことしの一−七月におけるOPEC原油の上異というものをコストに織り込んでおりませんので、この分が百八十五億ございます。差し引きいたしますと、五十二年度の三期におきまして二百四十二億になります。それから、下期につきまして一定の条件を置きまして計算いたしますと、五十二年の上、下を通じて申し上げますと、いわゆる為替差益が千百二十一億円でございます。それから石油価格値上げ等の影響、これが三百八十億ございます。差し引きいたしますと七百四十一億円で、総括原価と比較いたしますと一・三%ぐらいになるわけでございます。
  96. 長田武士

    長田委員 五十一年度下期についてはどうでしょうか。
  97. 服部典徳

    ○服部政府委員 五十一年度の下期につきましては、平均の為替レートが二百九十円でございますので、為替差益を単純に計算いたしますと、百十億という結果になるわけでございます。     〔山崎(拓)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕
  98. 長田武士

    長田委員 ただいま御答弁がありましたように円高差益が生じているわけであります。この点、どのように消費者に還元されるのか、通産当局のお考えをただしたいと思います。
  99. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 公共料金でございます電気料金につきましては、できるだけ長くできるだけ低位に安定させるということが非常に大切なことではなかろうかと思います。  先ほど申し上げました七百四十一億円という為替メリット計算いたしますと、キロワット当たり十八銭ぐらいになるわけでございます。一カ月の電気使用料百二十キロワットアワー、いわゆるナショナルミニマムの上限数値を使っている家庭におきまして計算いたしますと一月当たり二十一円六十銭という数字になります。  これを大きいと見るか小さいと見るかという問題はあろうかと思いますが、ただいま私が申し上げましたように、公共料金、電力料金というのはできるだけ長く低位に安定させるべきであるということと、それから今後の為替レートの動き、あるいはこの十二月におけるカラカスのOPEC総会といったようなものを踏まえますと、この段階で値下げという形よりも、むしろできるだけ長く電力料金を据え置く方が適当ではなかろうか。と申しますのは、来年の三月末で昨年値上げをした際の原価計算期間が終わるわけでございますが、その三月以降と申しますか、四月以降もできるだけ長く現在の料金水準を維持したい、さような方針で業界を現在指導いたしておるところでございます。
  100. 長田武士

    長田委員 現行料金を据え置くというお話でございますが、現在の料金決定時における為替レートは二百九十九円であります。そのまま推移していくならば、さらに円筒が続いていくという仮定をいたしますと、ますます差益が生ずることになります。この場合に当局はどのような措置をとるつもりなのか、大臣の御所見を伺いたいのであります。  その前に、昨日のロンドンあるいはニューヨーク市場におきましては二百五十円台を一時割っておる。九月のアメリカの経常収支がやや赤字が小幅であった、こんなことでドルが持ち直したというニュースが入っております。そうなりますと、やはり私は考えるのでありますが、この円高傾向というのは、思い切った経済政策、たとえば輸入をある程度自由化するとか、その政策をとらない限り円高傾向というのは当然続いていくであろう、そう予想するわけであります。  そういう中にありまして、二百九十九円で決めたこの料金改定の基礎でありますが、依然として円高傾向が続くといったこういうケースの場合、この計算がもうすでにその用をなさなくなるという算定基礎ですね、基準からもうえらく差が出てくるわけでありますから、当然料金の値下げということに方向を踏み切らざるを得ないと思うのですけれども、大臣どうでしょうか。
  101. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまお話しのごとくに、差益の問題、円高の問題、今後の推移等々ございますが、ただいまも御答弁申し上げたように、来るべきOPECの値上げというふうな問題も巷間いろいろと伝えられておるような状態でありますと同時に、いまの差益の還元という問題も重要な国策でございますが、エネルギー庁長官からるる御答弁申し上げたような次第で、先行きの問題がなかなか見通しがむずかしいということから、今日なお、むしろそれよりも電力料金のごときは長期に据え置くということの方がいまの段階におきます政策といたしましてはしかるべきではないかというような考え方もございます。
  102. 長田武士

    長田委員 大臣、最近円高傾向にあるこういう経済情勢の中にあって、これを消費者に還元しようという、総理大臣も答弁で述べておりますし、また、国民もそれを期待しておるわけであります。  そういう意味で、公共料金であるこの電気料金、家庭電気料金が多少なりとも下がるということになりますれば、私は、確かに為替差益というのはこのようなことで国民に還元されたという一つの大きな手だてになると思います。そういう意味で、このまま円高が続いた場合、引き下げるという決意はございませんか。
  103. 田中龍夫

    田中国務大臣 いまの時点ではまだ考えておりません。
  104. 長田武士

    長田委員 次は、円筒差益というものは通常の取引上の利益ではないわけでありますから、これを企業留保などのために利用される性質のものではないと思うのですが、いかがでしょうか。
  105. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 全く御指摘のとおりである、と思います。先ほどもお答えいたしましたように、現行料金水準ができるだけ長く維持されるように有効に活用すべきだと思います。せんだって担当部長から各社社長に対してさような指導方針を示しましたのも、その指導方針に即して九電力側としてもそれに対処するようにという意味を含めたものであったわけでございます。
  106. 長田武士

    長田委員 したがって私は、当然株式への配当などに還元すべきではないと考えますが、この点はいかがでしょうか。
  107. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 全く御指摘のとおりでございます。
  108. 長田武士

    長田委員 円が強くなったということは、ある意味では、これは国民の努力によるものだと私は考えております。  そこで、私は、円高差益分は企業のもうけにするのではなくて、広く国民に還元すべきもので、あると考えるわけであります。この点について当局は、どのように行政指導されておるのか、また今後される計画なのか、お聞かせ願いたいと思います。
  109. 田中龍夫

    田中国務大臣 すでに先般、物価対策の担当官会議もいたしましたのみならず、差益の還元という総理の基本的な方針に沿いまして、われわれも関係各省ともに努力をいたしておりますが、通産省といたしましても、特に、流通部門あるいはまた輸入部門を担当いたしておりまする団体等々に対しましては通達を出しまして、そうしてできるだけの差益の還元の措置をとるように、同時にまた、とった措置に対しては報告もいたしますように、多分十一月十日を目途に報告を聴取いたすことにいたしております。なお、その団体おのおのが、たくさんの業者を抱えておるわけでございますから、これらの報告を今後検討してまいりたい、かように考えております。
  110. 長田武士

    長田委員 去る二十日行われました九電力社長会では、できるだけ現在の電力料金を据え置くことによって為替差益を消費者、需要家に還元をする、この方針を申し合わせたようでありますが、これは通産省の料金据え置き指導に応じたものであるとの報道がなされておりますが、この事実は本当でしょうか。
  111. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほど来お答えいたしましたような指導方針に基づきまして、公益事業部長から各社長に指示をいたしたわけでございます。それに基づいて自重自戒することを話し合ったのだろうと私は理解しております。
  112. 長田武士

    長田委員 通産省としては、どのような料金据え置きの指導をされたのか、具体的にはどのぐらいの期間、料金を据え置くように行政指導したのか、その点お伺いいたします。
  113. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 電力のコストを形成するものは、いま御指摘になっております為替レートのほかに、原油価格あるいは出水率あるいは需要の動向といったような問題もございまして、そういったものを総体的に判断する必要があろうかと思います。そういった意味で、具体的にどの程度の期間ということは確定的に申し上げられないわけでございますが、いずれにいたしましても、来年の三月末で現在の料金の原価計算期間が終了するわけでございますが、それ以降できるだけ長く指導してまいりたいと思います。その間、常時われわれといたしましても、事情聴取するとかあるいは監査、決算等についても、十分さような対応をしてまいりたい、かように考えております。
  114. 長田武士

    長田委員 次に、ナフサの問題についてお伺いをいたしたいわけでありますが、通産省は、去る九月二日に、過剰設備や、国際競争力の低下など構造的な原因で不況に陥っておりますところの平電炉、繊維、アルミ、石油化学の四業種について構造不況対策決定をいたしました。特にナフサの価格を引き下げるため、石油化学、石油両業界の価格交渉に通産省など第三者があっせんに乗り出すと発表されたわけでありますが、その後、今日に至るまでの経過はどうなっていますか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  115. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 石油化学用のナフサにつきましては、二つの問題点がございまして、一つは輸入量を増大するということと、いま一つは御指摘の値決め交渉の問題でございます。  輸入につきましては、当初の予定の七百五十万キロリッターを九百万キロリッターと、百五十万キロリッター増大することにいたしまして、その方向で対策を打っております。  それから、値決めの問題につきましては、現在、需給両当事者でハードながらネゴを続けておるという段階でございまして、両当事者の間に建設的な意見調整ができることを期待しておる段階でございます。
  116. 長田武士

    長田委員 種々の努力を積み重ねた結果、輸入を若干ふやしたということでありますが、ナフサの価格が依然として一定化されておる状態では不十分と言わざるを得ないわけであります。この点、当局はどのようなお考えでしょうか。
  117. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ナフサにかかわりませず石油製品一般に、できるものなら為替差益で還元したいという気持ちを持っております。その還元の仕方でございますが、御承知のように、石油業界におきましてもいわゆる為替メリットが発生いたしております。ただ一方で、それを上回るような大幅なコストアップ要因がございまして、たとえばことしの一月と七月のOPECによる原油価格の引き上げによりまして、ごく概算いたしましても、年度間で五千億円を超える支出増加がございます。そのほかに、備蓄、防災、保安関係費の上昇、あるいは関税その他の経費の上昇、こういったものも千五百億円程度、合計いたしますと六千五百億円程度が、本年度石油におけるコスト上昇要因になっております。これと為替メリットとの相殺関係がどうなるかということで判断いたすべきだと思います。一方で為替メリットが出ておりますが、他方でまた大幅なコストアップ要因がある、こういうようなことを考えながら対処いたしたいということでございます。  現に、この三月末におきましても、なお民族系企業につきましては七百億円の繰り越し赤字を持っておる。それから五十二年度の上期における決算につきましては、現在まだ最終的な集計はなされておらないようでございますが、赤字企業がこの春先よりもむしろふえてくるのではなかろうかという問題がございます。特にナフサにつきましては、先生御承知のコンビナートリファイナリーというものがございます。これが石油企業の中でも特に経営が苦しいという状況でございます。  そういった面も踏まえますと、先ほどお答えいたしましたように、いま直ちに還元するといったようなことはむずかしゅうございます。むしろ、この三月あるいは四月に二千円ないし二千四百円の値上げを打ち出したわけでございますが、この値上げを思いとどまると申しますか、現状に据え置くという、その限りにおいての差益還元を事実上行っておる、かようなことではなかろうかと思うわけでございます。
  118. 長田武士

    長田委員 去る二十五日でございますが、当委員会における参考人といたしまして出席されました日本化学工業協会の鈴木治雄会長は、ナフサ価格は国際水準並みにすべきである、こう発言されております。国際水準並みといいましても、自国に石油資源を持ち、天然ガスを主体に石油化学を展開いたしておりますアメリカのような安い価格が対象ではありません。日本と同様に石油資源の大半を中東産油国に依存し、条件的にはほぼ等しいヨーロッパ価格と比較してみると、わが国のナフサの価格の一キロリットル当たり二万九千円に対しまして、ヨーロッパのナフサ価格は、第三・四半期には一キロリットル当たり約五千円、第四・四半期に至っては一キロリットル当たり約七千円の格差があります。このため、企業の収益の悪化と国際競争力の低下を招く要因になっていると私は考えておるわけであります。  この点につきまして、基礎産業局長はどのように認識をされておりますでしょうか。
  119. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 石油化学工業は国際競争にさらされておるわけでございます。大ざっぱに申しまして、石油化学産業の三割弱が輸出をされておる。したがいまして、国際競争場裏におきましてアメリカやヨーロッパの石油化学製品と競合をいたしております。その場合に、基礎原料であるところのナフサの価格におきまして、日本石油化学工業が現在相当のハンディキャップをしょっておるということは、日本石油化学工業の困難の大きな原因になっておりますので、石油化学工業の立場から申しますならば、こういう国際競争にさらされる産業につきましては、コストの国際的なバランスができるだけとられるということが望ましいと考えております。
  120. 長田武士

    長田委員 局長も大変御苦労されていらっしゃるのじゃないかと思いますが、御存じのとおり、すそ野の広い石油化学工業の日本経済に及ぼす影響力を考えてみましても、さらには国民生活の擁護のためにも、今後どのようなスケジュールで改善をされる計画なのか、努められるのか、この点いかがでしょうか。
  121. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 まず第一番目に、ナフサの価格につきましては、これは石油製品価格体系の一環でございますから、石油製品価格体系ができるだけ国際的なバランスを回復するように改善されるということを期待いたしておるわけでございます。  それから次に、日本石油化学工業が必ずしも十分な競争力を持っていないことの原因は、ナフサ価格だけによるわけではございません。日本石油化学企業の規模は、国際的に見ますと、大体売り上げで申し上げまして数分の一、利益率にいたしますと数十分の一あるいは数百分の一というような状況でございます。やはりその原因の一つは、技術開発力においてまだ相当の遜色があるということもあろうと思いますから、今後とも技術開発投資その他を通じまして企業の体質を充実するということが必要かと思います。  それからまた、国内におきましては、石油化学製品の購入者は自動車、家電等の大企業が多いわけでございますが、他方、石油化学産業の末端で製品をつくっておりますものは中小企業が多いわけでございます。したがって、ここでその販売者と購入者との間で市場の力が著しい格差があるというようなこともございますので、石油化学工業の再編成を時間をかげながら推進をしていきまして、体制の整備を図るというようなことも必要であろうかと考えております。
  122. 長田武士

    長田委員 ただいま基礎産業局長のお考えを伺ったわけでありますが、いまのナフサの現状は是とするのですか、非とするのですか。明快な御答弁をいただきたいのです。
  123. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 われわれといたしましては、ヨーロッパ価格にできるだけ接近するということを望んでおります。
  124. 長田武士

    長田委員 ただいま基礎産業局長のお話でありますが、資源エネルギー庁長官はいかがでしょうか、御意見を伺います。
  125. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 国産ナフサの価格海外ナフサ価格に比べまして割り高である、その結果、石油化学を初めとする化学製品の国際競争力を減殺するということについては、私たちも非常に強い関心を持っておるわけでございます。  ただ、御理解いただきたいのは、各種石油製品のいわゆる価格体系というものは、それぞれの国における需給構造との関連があるということが一つございます。  それから、日本におきましても、その需給両当事者の間の結びつきというものがさまざまの形になっておるということでありまして、たとえばナフサについて申し上げますと、純粋にコマーシャルベースの売買あるいは親会社、子会社といったような関係、あるいは先ほど申し上げましたコンビナートリファイナリーといったように石油化学と一体となって石油精製を行っているというようなケースもあるわけでございます。その間の事情の差ということが二つ目に配慮すべきことではなかろうかと思うわけでございます。  さようなところから、需給両当事者の間で個別に値決めを交渉するというのが、現状においてはわれわれとしてはとるべき方法ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  126. 長田武士

    長田委員 国際競争力について再度伺いたいと思いますが、ナフサの需要業界は、国際商品を生産しているだけに、原料高はもろに国際競争力に影響が出てくるわけであります。輸出市場で日本と競争している欧州、韓国、台湾など、ナフサは一キロリッター当たり二万四千円と、わが国より約五千円安くなっておるわけであります。これだけ大幅なコストハンデを背負っているために、次のような悪影響が出ていると需要業界では分析をいたしております。  まず第一には、昭和五十二年六月に終わった五十一肥料年度の輸出数量は、前年度の百二十四万トンから七十一万トンへ激減しているということであります。  第二には、合成樹脂、合繊原料の主な輸出市場である東南アジア市場の占有率が八〇%から五〇%に低下したということであります。  第三には、輸出競争力だけではなく、逆に合成ゴムや塩化ビニール樹脂のように、国内流入の危機にさらされているものも出てきておるということであります。  このような国際競争力の低下について、大臣はどのようなお考えでしょうか。
  127. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、一方におきましてはナフサその他の内在的な理由もございましょう。他方におきましては、同種のいわゆるプラント輸出そのものが完成いたしまして、日本と競争関係にあるこれらの事業がくつわを並べてスタートを切っておる、こういうようなこともございましょう。そういうふうないろいろな内在的、外在的な要因というものにより、結論といたしまして肥料その他の輸出につきまして非常に縮小傾向をたどっておりますということは、ひいては当該企業が、いわゆる高度成長あるいはまた四囲の輸出の振興が華やかなりしころから比べてみますと非常に構造不況に陥らざるを得ない、さようなことから、これに対する対策を真剣に考えていかなければならぬ、こういうふうなことを改めて考えている次第でございます。
  128. 長田武士

    長田委員 このように国際競争力が弱い、しかも内需の低迷にあえいでおる石油化学業界に対して、石油精製三十六社は、二千二百七十二億円の経常利益、そのうち為替差益は一千五十億円とも言われておるわけであります。石油業界は石油の輸入での円高恩恵を受ける、その油を使う石油化学業界はその恩恵を受けることができない、逆に高いナフサを買わされて国際競争力まで失うというわけであります。  この点、大臣どうでしょうか、余りにも不公平ではありませんか。
  129. 田中龍夫

    田中国務大臣 その点は、担当の政府委員橋本長官からもるる申し述べたような次第でありまして、その事実というものは先生の仰せられるような次第でございましょうが、同時に、原則的に申すならば、いわゆる為替差益を国民に対して還元しようという基本的な線に沿いましていたしてはおりますけれども、具体的な当該ナフサの問題につきましては、ただいま詳細に御報告申し上げたような次第でございます。
  130. 長田武士

    長田委員 先ほど、石油業界は保安、公害あるいは備蓄投資などに多額の資金を使っておる、このように長官から御答弁があったわけでありますが、また、重油関税の引き上げなどがあるという御答弁もいただきました。こうした点は私はわからないわけではありません。  それではお尋ねいたしますが、石油業界がこうした費用を支払った実績が五十一年度はどのぐらいあったのか、また、五十二年度計画ベース、実績を含んでいただいてどのぐらいの支出になっておるか、この点をお伺いしたいと思います。
  131. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 五十一年度におきます石油業界の設備投資、これは現在細目については集計中でございますので、詳細には十分申し上げられませんが、暫定的な集計で申し上げますと、貯油設備に対する投資は支払いベースで百四十四億円でございます。ただし、この中には流通段階でのいわゆる油槽所は含まれておりません。それから二つ目に、公害防止設備でございますが、支払いベースで六百四十五億円でございます。保安防災設備につきまして、同じく支払いベースで五十六億円、この合計額が八百四十五億円になるわけでございます。この数字の中には、当然のことでございますが、五十一年度の投資金額でございますので、過去のこの種投資の償却費等は含んではおりません。  それから、このほかに備蓄につきまして、五十一年度の七十日から七十五日への原油の積み増しをやっておりますが、これが約三百八十八万キロリッターになります。これに要した原油代金は約九百七億円でございます。  それから、五十二年度については、まだこのような暫定数字で申し上げられないということでございます。
  132. 長田武士

    長田委員 計画ベースでは。
  133. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 石油部長からお答えさせます。
  134. 古田徳昌

    ○古田政府委員 五十二年度の実績見込みでございますけれども、現在私どもの方で各社ごとから事情を聴取しながら集計中でございまして、最終的な数字ではございませんが、ただいま長官がお答えしました範囲に該当する金額として千四百ないし千五百億円程度というふうに見込まれております。
  135. 長田武士

    長田委員 五十年の十二月一日に標準額を改定いたしましたときに原価計算をされたと思いますが、このときは一キロリットル当たりどの程度の利潤を見込んだのか、また、売上高経常利益率を何%と見込まれたのか、この点について長官にお伺いしたいと思います。
  136. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 五十年十二月に標準額を設定いたしました際の利潤が一キロリッター当たり百八十円でございます。このときの平均販売価格は、一キロリッター当たり三万一千円でございますので、いわゆる売上高利益率は〇・五八%になるわけでございます。
  137. 長田武士

    長田委員 では、五十一年度は売上高経常利益率はどのくらいになっておりましょうか。
  138. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 五十一年度の売上高経常利益率は一・三九%でございます。それから為替差益を除いた売上高経常利益率は〇・七二%でございます。
  139. 長田武士

    長田委員 いま御報告がございましたように、見込みに対してはこのように実に倍以上の、〇・五八に対する一・三九の売上高経常利益を出しておるわけであります。しかもその半分は為替差益の分なわけですね。その点いかがですか。
  140. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいまお答えいたしましたように、当初標準額を設定する際の経常利益率を約〇・六%程度に設定いたしましたのは、通常のベースに比べますと非常に低い数字でございます。あるいはその他の製造業に比べても低かったわけでございますが、当時コスト割れを何とかカバーしたいといったような要請から、さように低い経常利益率にいたしたわけでございます。  ただいま御指摘のように、確かに為替差益を含みますと一・三九%、為替差益を除きましても〇・七二%という利益率を上げたわけでございますが、試みにこれを配当率の面で申し上げますと、当初配当率を八%と予定いたしておったわけでございますが、五十一年度の実績では、平均いたしまして五・三%でございます。無配の企業につきましては、民族系の十六社の中で十二社、外資系二十社のうち九社、三十六社の中で二十一社が無配であった、かような状況もございまして、私たちといたしましては、石油企業がその前に抱えておりました四十九年、五十年の累積赤字、これが非常に過大なものであったということからいたしまして、まさに御指摘のように、標準額設定の際よりは、為替差益を外しますとわずかながら利益率が上がっておりますが、現実の問題といたしましては、当初意図いたしましたような配当八%の維持ができてない無配会社が二十一社もある、かような現状で、御理解賜りたいと思うわけでございます。
  141. 長田武士

    長田委員 一部の企業では赤字が出ておる、そういう御趣旨だろうと思いますが、こうした企業のために為替差益の分が広く還元できないということになりますれば、かねて政府が為替差益を国民に還元すると言明してきた立場と相矛盾いたしませんか。通産大臣、どうでしょうか。
  142. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まさに、為替差益をできるだけ還元するということについては、われわれも積極的にこの方向で努力すべきだと思いますが、先ほど来申し上げましたように、石油につきましては、為替メリットのほかに大幅なコストアップということも考慮しなければならない、こういうことでございまして、この為替メリットがなければ、当然に一月あるいは七月のOPECによる原油価格の値上がり分というものを価格に反映いたしませんと、各種石油製品の安定供給に支障を来すという事態になったであろうと思うわけでございますが、それが為替メリットの影響で価格引き上げをいたさなくて、その限りにおいて為替メリットを還元しておるというのが実情ではなかろうかと思うわけでございます。総じて、為替メリットの還元という政策目的に照らして、それにそごをしておるというふうには決して思っておらないわけでございます。
  143. 長田武士

    長田委員 そこでお伺いしたいのでありますが、このまま放置してまいりますと、石油化学産業は世界一高いナフサを使用しながら国際競争力を失ってしまう。そればかりでなく、不況の深刻化、長期化を助長いたしまして、雇用の不安定、著しい不安が生じてまいります。そうなりますと、国民生活に甚大なる悪影響を及ぼすことは目に見えておるわけですね。したがって、原料ナフサが二万九千円に固定されておることは、先ほども指摘したどおり、ヨーロッパに比べて四千円から五千円、最近の為替レートでまいりますと七千円の開きが出てきております。こういう高い水準ですから、石油化学工業は苦境に追い込まれておる現状なわけですね。  御承知のとおり、石油化学工業はすそ野の非常に広い産業でありまして、当面、こうした問題について、当局といたしまして何とかする必要があると私は考えておるのです。現在、石油化学、石油の両業界では価格についての話し合いが行われておりますけれども、石油化学側に価格を引き下げさせるだけのバーゲニングパワーというのがないんですね。石油業界も苦しいことは私はわからなくはないのですけれども、円高基調の中で莫大な為替差益を得ているということもまた事実であります。そういう意味におきまして、石油化学業界よりいい状態にあるわけでありますから、これを何とかできないかどうか、具体的にひとつ方法をお示しいただきたいのです。
  144. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の御趣旨、私もよく理解いたすわけでございますが、先ほどお答えいたしましたように、現在両業界あるいは需給両当事者が、それぞれの実情を反映して値決め交渉を続けておるわけでございますので、そういった面の進展状況をわれわれとしては注視したい、かように思っております。  一方、百五十万キロリッターの輸入増大をいたしておるわけでございますが、こういったものが両当事者間のお話し合いにいい結果をもたらして、建設的な意見調整がなされることを期待いたしておるわけでございます。
  145. 長田武士

    長田委員 現在のナフサの価格一キロリットル当たり二万九千円というのは、もとを正せば政府石油業界救済のための石油業法を発動いたしまして、標準額設定によって決められたわけですね。現在この価格は撤廃されておりますが、ナフサ価格は五十年十二月に決められたそのもの、そのまま移行しておるわけであります。これはドル建てで一ドル三百二円で設定をしておるわけですね。これを政府が正常な価格へ行政指導すべきであるということは、私は当然じゃないかと思うのです。その点、大臣いかがでしょうか。政府が行政指導を責任を持って価格を引き下げるというのは、まいた種は政府ですから、したがって、それをきちっと解決するのは政府責任を持つべきである、担当である通産省責任を持つべきであると私は考えております。
  146. 田中龍夫

    田中国務大臣 原則的なことを最初に申しまして、あと詳細るる担当エネルギー庁長官からお話を申し上げたような次第でございます。先生の言われることもよくわかりますが、現在はまだ私どもはその時期ではない、かように考えております。
  147. 長田武士

    長田委員 いま大臣の御答弁ですと、ナフサを下げる努力はされないという意味ですか。
  148. 田中龍夫

    田中国務大臣 御案内のとおりに、ナフサにつきましては、輸入の枠を拡大いたしましただけではなく、同時に、業界といたしまして石油業界との個別折衝をいたすようにお願いをした段階でございます。同時にまた、業界の元締めといたしましての経団連等が、その間のあっせんにも乗り出しておるような状態でございまして、いまのナフサの価格問題につきましては、これを見守っておるという時点でございます。
  149. 長田武士

    長田委員 それでは大臣、都合のいいときには手を出すけれども、都合が悪くなったらさっさと撤退してしまうという論理じゃありませんか。二万九千円という標準額を決めておきながら、そして撤廃をいたしました、知らぬ存ぜぬでは私は済まないと思いますよ。この点どうでしょうか。
  150. 田中龍夫

    田中国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、今日の時点におきましては考えておりません。
  151. 長田武士

    長田委員 それでは、時間が参りましたので、最後の質問をお願いしたいと思います。  円高の問題に関連いたしましてお尋ねいたします。  通産省は、去る十月一日に円高ショック対策といたしまして、為替変動対策緊急融資制度、これを新設されたわけであります。この制度は、必ずしも業界からの受けがよくないわけであります。と申しますのは、為替差損をこうむる企業がつなぎ資金としてこの制度を利用したいといたしましても、金利以上の利益を出さなければならない。まあ、うっかりお金を借りてしまうと、その分だけ出血になるという状況であります。  そこで、当局に伺いたいことは、このようなその場しのぎの対策ではなくて、為替差損を生ずる企業に対してはもっと抜本的な救済策をとる必要があるのじゃないか、そのように考えるわけであります。これに対して当局が取り組む考えがあるかどうか、ひとつ明快なる御答弁をいただきたいと思います。
  152. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話ございましたように、今度の円高問題で中小企業は非常に大きな打撃を受けております。したがいまして、私どもとしても、こういう状況のもとで中小企業がこれにいかに対応するかということを腰を落ちつけてやはり考えてみなければならない相当重要な局面ではないかと思っております。御指摘ございましたように、私どもとしても、いままでの中小企業政策を見直しをし、これに取り組む基本的な方向というものをこの際固めてまいりたいと思っております。
  153. 長田武士

    長田委員 いろいろ論議がありましたけれども、このナフサの問題については、また為替差益の問題、この問題につきましては、通産当局の今後の努力を私は見守ってまいりたい、そう思っております。その結果いかんによってはこの問題を次の通常国会でも引き続き取り上げることを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  154. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 松本忠助君。
  155. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまわが党の同僚議員からも、円高差益の問題、これがどのように国民に還元されているかというような観点から質問をしたわけでございます。私は、円高問題につきまして、大臣並びに経企庁長官に若干の質問をいたしだいと思うわけでございます。  すでに御承知のように、このところ高騰を続けております円の相場でございます。きのう二十七日、ロンドンの外国為替市場では一ドル二百四十八円台、ニューヨーク市場でも三百四十九円台をつけております。そうして、東京の外国為替市場では、一時二百五十円六十銭、最高記録。一昨日私が質問しましたときには二百五十一円でございました。そのようなわけで、新記録を出しているわけでございますが、さらに、きょうの東京の外国為替市場では、寄りつきが一ドル二百四十九円八十銭、こういうふうにいよいよ二百四十円台に入ったわけでございまして、二百四十円台というのは戦後初めてのことでございますし、異常な事態になっていると言わざるを得ないわけでございます。  そこで、大臣にお伺いするわけでございますが、日銀が介入している事実、これもわかるわけでございます。本来ならば、大蔵大臣あるいは日銀総裁等にもおいでをいただくべきでございますけれども、そのことが許されませんので、きょうはお二人の大臣にお伺いするわけでございますが、この原因をどうお考えになっていらっしゃるか。先ほど経企庁長官は、日本の貿易収支の黒字を挙げられ、さらに米国の九月の貿易赤字、これが予想されていたのは二十億ドル以上、こう言われておりましたけれども、十七億二千万ドルというようなことでございますが、こうした御説明もございましたけれども、この原因をどう受けとめていらっしゃるのか、どこにこの原因があるのか、この辺のことをひとつ、きょうは経企庁長官から先にお伺いいたしたいと思う。
  156. 倉成正

    ○倉成国務大臣 先ほどの御質問にもお答え申し上げましたとおりに、この円高の背景といたしましては、日本の貿易収支また経常収支の黒字という問題と、もう一つはアメリカの貿易収支等の大幅な赤字ということが背景になっておるわけでございまして、日本の場合には、ことしの四月から九月までで貿易収支で八十六億四千万ドルの黒字、経常収支で五十四億三千万ドルの黒字になっております。一方、きょう発表になりましたアメリカのFASベースによりますと、ことしの一月から九月までの間の貿易収支の季節調整済みの赤字が百九十二億九千八百万ドルということで、そのうちで対日の貿易収支が五十八億ドルとなっておるわけでございまして、五十八億ドルの日本に対するアメリカの赤字ということになっておるわけでございます。これが現在の円高の背景になっておると思います。もちろん、このほかにいろいろ投機的な要素が若干あったのではないか、あるいはいろいろな原因がほかにもあると思いますけれども、基本的にはこのことが背景になっておると思うわけでございます。
  157. 田中龍夫

    田中国務大臣 私も、ただいま長官からお答えいたしましたのと同様に、御案内のアメリカにおきまする大幅な赤字に対し日本の対米黒字の問題、さらに第三者といたしましてのいろいろな投機的な問題等々相重なりまして今日の結果になっておる、かように存じます。
  158. 松本忠助

    松本(忠)委員 お二人のお答えが期せずして一致でございますが、端的にお伺いいたしまして、こういう円相場に対して非常に敏感な情勢の中で、責任ある立場の者の発言が非常に影響を及ぼすわけでございまして、こういう点について当局の、特に最高責任者の発言というものは非常に重要ではないかと思うわけでございます。  毎日新聞の報道でございますが、十月二十七日の夕刊の「同時進行ドキュメント 円包囲網(4)」というところに、二十六日の午後八時から五十分間、NHKテレビの「総理にきく」という番組の中で、総理の発言に非常にむずかしい問題があったということの報道がございます。こういう時期でございますので総理も十分慎重な発言をなさったことと思うわけでございますが、総理の発言の内容は、円高問題に触れたときに、円高は物価安定の強い武器となると、円高容認とも受け取られる発言を行った。毎日の記事によりますと、「事実、福田総理は番組のなかで「円高はなんつったって物価を安定させるには強力な武器ですからね」と語った。」という記事がございます。  その記事が引き金になったかならないかわかりませんけれども、とにかくこれによって、先ほど申し上げました二十七日の外国の相場、あるいは日本の相場というものが、非常に円高傾向を示したというのは事実だと思うわけでございます。  これで私がお尋ねいたしたいのは、通産大臣としてもまた経企庁長官としても、福田内閣の閣僚としてこういう事実について総理に確認をなさいましたかどうか、この点についてお尋ねをいたしたいわけでございます。
  159. 田中龍夫

    田中国務大臣 本日閣議がございましたけれども、いろいろな案件がございまして、また、委員会の方もございましたので、この問題につきましては私は総理にお尋ねする機会もございませんでした。
  160. 倉成正

    ○倉成国務大臣 私、新聞で拝見をいたしたところでございます。
  161. 松本忠助

    松本(忠)委員 通産大臣は発言をしなかった。  そういう事実が新聞報道にあったことを、通産大臣は御存じでございますか。
  162. 田中龍夫

    田中国務大臣 けさ、その新聞のことを聞きましたものでありますから。
  163. 松本忠助

    松本(忠)委員 ゆうべの夕刊の記事でございますが、けさ御存じになったということでございます。いずれにしましても田中通産大臣はそのことについては関心がない、と申し上げては大変失礼でございますけれども、そのようにしか受け取れないわけでございます。  経企庁長官は、新聞記事ですでにごらんになっていらっしゃるけれども、この問題について総理に真偽のほどをたださなかった、こういう点が私はどうも受け取れないわけでございます。これは重大な影響を及ぼすわけでございますから、新聞記事をごらんになったときでも結構ですが、もう恐らく新聞記事より前に経企庁長官あるいは大臣の耳に側近から入っていることと思うわけでございまして、私ども以上に情報に敏感でいらっしゃる経済大臣として当然のことじゃないかと思うわけでございます。しかし、そうした問題に対して閣議の中で発言もしない、新聞を見ただけであるということは、どうも私ども納得しかねるわけでございます。  いま国民の皆様が円高の問題について非常に敏感に反響を示していらっしゃる、そういう中にあって、少なくとも中小企業の存立というものがこの円高によって大変な危機に立っていることは、もう通産大臣御存じだと思うわけでございます。にもかかわらずそうしたことであっては相ならぬと私は思うわけでございますが、これは私の考えが間違っておるのでございましょうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  164. 倉成正

    ○倉成国務大臣 急激な円筒で、輸出産業、特に中小企業に大きな影響が出てくるということは、先生の御指摘のとおりでございまして、われわれもこの対策に万全を尽くさなければならないと思っております。  円高の効果をできるだけ国民に還元していくべきであるということは総理がかねてからおっしゃっていることでございまして、卸売物価は、確かに配合飼料であるとか木材であるとかその他にかなり響いておるし、石油会社値上げを撤回するということであるけれども、消費財についてなかなか思うようにいかないから、もっとしっかりやれということを言われておるわけでございます。この総理の日ごろの考えを申されただけのことであって、円高をこれで許容したということではさらさらないという感じでございます。したがって、これを改めて閣議の席でとやかく言うということ自体がおかしいと思っておる次第でございます。
  165. 松本忠助

    松本(忠)委員 円高の傾向というものは急に出てきたわけではございませんで、徐々に進行してきたわけでございますが、特にここで二百五十円台、さらにはきょう二百四十円台に初めて飛び込んできた。戦後初めてそこまで来たわけでございますし、こうしたことはもうすでに両大臣とも十分認識があり、円高傾向が続くであろうという認識のもとにおいて総理の発言を受けとめられ、それに対する対応策もとられてきた。総理の発言があったから急にきのうのような相場が現出したというわけじゃないので、改めてきょう聞く必要もなかったとおっしゃればそれまでかと思いますけれども、私どもはそのように受けとめておりません。こういう時期には慎重な上にも慎重な発言をしなければならないと思うわけでございます。  すでにこの問題について、先ほど社会党の同僚議員からもお尋ねがございましたけれども、投機の対象になっているのじゃなかろうかという気持ちがします。そこでドル売り円買いということになってまいりまして、これでいわゆる円相場の安定ができない、こういうふうになるのではなかろうかと思います。したがいまして、このような時期には安易な発言というものは慎まなければならないと思うわけでございますが、私は、総理の発言が女性を相手の、いわゆるお台所のお話の中で出てきた、そういう点から安易にお考えになったのではなかろうかと受けとめておりますけれども、どうも一国の総理ともあろう者がそれではならないと思うわけでございます。  この毎日新聞の記事によりましても、総理の発言というものはすでに海外でも非常に関心を持っていた、そのようなお話が書かれております。「(外為市場)ちょっとしたニュースにも敏感に反応するということを知らないのかね、あの人は」、こんな会話が交わされている。「一国の総理として軽々しすぎるよ」、「またまたドルを売り込ませる可能性があるな」、「緊急輸入だの、ドル減らしだのといっているにしては、おそまつすぎる。思わざる波紋としてはね返ってきて、びっくりするんじゃないだろうね」、こんな表現があるわけでございます。これを中小企業の方々が見たときにどのように受けとめるかが私は問題だと思うわけでございます。一国の総理であり、経済の福田と言われる総理が、こうしたニュースを、外国からの受けとめ方、自分の発言によってどんな影響が出てくるか、こうしたことは十分考え過ぎるほど考えていなければならないと思うわけでございます。そうした中において外国側でこのような報道があるということ自体、これからの円高問題についても、本当にこのままずるずるいくようになったら大変なことになります。  そこで、こういう御発言については、その真偽を確かめ、さらにはこうした発言が影響が多いことは率直に総理にも申し上げる、それが内閣としての連帯の責任ではないかと私は思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  166. 倉成正

    ○倉成国務大臣 新聞記事について私どもが論評をすることは差し控えたいと思いますけれども、昨日の物価対策委員会等におきましても、円高の効果がなかなかまだ及んでいないではないか、もっとしっかりやれ、円高をもっと物価安定に寄与するようにやれというのが多くの議員の方々の御発言でございまして、それに対して、われわれも一生懸命やっておりますけれども、まだ十分でございません、さらに努力をいたしたいということを私からお答えしたところでございまして、国会の諸先生方もそういうことで言っておられる、日ごろの持論を総理が述べられただけのことでございまして、決して円高との関連ではないと確信をいたしております。
  167. 松本忠助

    松本(忠)委員 いろいろお尋ねいたしたいことがございますけれども、特に今回の問題につきましては、私は、総理の発言が円高に影響を及ぼしたというような外国側の報道というもの、これを一つ取り上げまして、慎重な中にも慎重な発言をしていただきたいということをお願い申し上げまして、一応次の問題に移らしていただきます。  構造不況の問題でございますが、特に先般二十五日、二十六日に、当委員会といたしましても業界の代表の方々にもおいでいただきまして、いろいろとお話しを伺いました中で、平電炉業界から、二十五日に普通鋼協議会の会長の安田安次郎さんにおいでをいただきましていろいろお伺いいたしました。  そこで、お尋ねいたしたいことは、平電炉業界、特にアウトサイダーも含めて、いま通産当局として何をなさろうとしているのか、また、過去においてはどう指導してきたのか、こういった点について一応お伺いをいたしたい。
  168. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 まず、過去においてのことからでございますが、平電炉設備能力昭和四十六年の初めごろ、おおむね一千万トンでございました。ところが、このころから急速に増加いたしまして、昭和四十八、九年ぐらいまで非常に早いペースで設備の増加が続きまして、現在は二千百万トンというような、そういう数字になっておるわけでございます。  その途中におきまして、特に昭和四十七、八年ごろから、それだけ設備増強をしたにもかかわらず、平電炉製品、特に小棒の不足という問題が生じてまいりました。昭和四十八年の二、三月ごろには小棒の価格が暴騰いたしまして十万円になった。それでも小棒が手に入らないものですから全国の建築屋さん、大工さん等が通産省の庭で集会を開いて、小棒をよこせというような騒ぎが起こったこともございます。  そういうわけで、昭和四十八年、特にこの小棒不足を痛感するようなそういう状況のもとで、産業構造審議会の鉄鋼部会が開かれまして、そこで十一月に中間答申が出ておりますが、この中間答申によりますと、昭和五十二年度における小棒の生産必要量は千六百万トン、こういうような答申が出ておるわけでございます。  こういうふうに、その当時におきましては小棒が著しく不足するという一般的な背景がございまして、そういう背景の中で、特に昭和四十八年等におきましては、通産省が平電炉メーカに対して小棒の増産を要請するというようなこともございました。しかしながら、念のため申し上げますと、この平電炉の設備増強のピークは四十六、七年ごろでございまして、それ以降、それから四十八年十一月に中間答申を出してから以後、通産省が小棒の生産設備につきまして、個別に設備の増設を具体的に指導したというような事実はございません。ただ、四十八年に一般的に増産を要請したというようなことはございます。  以上がこれまでの経過でございますが、オイルショックが起こりまして、昭和四十八年から四十九年、このころはまだ物不足的状態が続いておったわけでございますけれども、総需要の引き締めに伴いまして、昭和左十年ぐらいから急速に景気が悪化していく、小棒の需給が急速に緩みまして価格が崩落をするというような事態が起こりまして、以後約二年半にわたりまして小棒の価格はコストを割るというような事態が生じておるわけでございます。  そこで、こういう小棒の価格のコスト割れという状況を救済するために、独禁法上の不況カルテルの締結、現在はこれを中小企業団体法に基づく数量カルテル及び価格カルテルに切りかえまして、需給の均衡の回復を図っておるわけでございます。また、非常に大きな過剰能力がございます。昭和五十五年度におきましても三百九十万トンないし五百九十万トン程度の需給ギャップが見込まれますので、少なくともこの平電炉につきまして三百三十万トン程度の過剰設備の処理をするというような結論を出しまして、これに基づいて、現在この設備の処理を進めて、来年度末までにこの設備の処理を完了するというようなことも行っておるわけでございます。  また、雇用対策といたしましては、雇用安定法に基づきまして、雇用安定法上の業種の指定をしていただきまして、労働省とも協力してこの雇用対策を進めておる、あるいはまた、鉄鋼連盟の場におきましてこの平電炉労使の連絡協議会をつくり、そこに労働省、通産省の担当官も出席をいたしまして、雇用問題についてもいろいろ苦慮いたしておるところでございます。  以上のようにいろいろ努力をいたしておるのでございますが、現在の小棒の価格水準は五万二、三千円というところでございまして、依然としてまだコストを割っておるというような、そういう状況でございます。
  169. 松本忠助

    松本(忠)委員 ちょっと確認の意味でお尋ねいたしますが、いま高炉が五十九本中十九本が休止しているという話を聞きますが、これは事実ですか。
  170. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 仰せのとおりでございます。
  171. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、いま局長が言われました現在稼働の能力の二千百万トンというのは、稼働している四十本で二千百万トンできるということですか。
  172. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 五十九本と申し上げましたのは、これは高炉の方でございます。それから、二千百万トンと申し上げましたのは、これは平電炉でございます。
  173. 松本忠助

    松本(忠)委員 それで、現在の実情をどのくらいに見込んでいらっしゃるわけですか。それから、今後の見通しというものについては……。
  174. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 平電炉から出てくる粗鋼生産のベースで申し上げますと、能力が二千百万トンでございますけれども、稼働率がおおむね七〇%でございまして、したがって、需要に見合う生産量は大体千三、四百万トンというところでございます。  それから、見通しにつきましては、非常にむずかしいのでございますけれども、GNPの伸び率等によりますが、数%というところではないかと存じます。
  175. 松本忠助

    松本(忠)委員 それで、いまのお話の中で、来年度末までに設備の廃棄を三百三十万トンなさるというお話がございましたけれども、これは、現在業界がこの点についてはよく理解し、そしてこの三百三十万トンについては通産当局とも、また業界としても同意見で、一応三百三十万トンという数字が出ているわけでございましょうか。
  176. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 三百三十万トンは総体の数字でございますが、個別にどの企業のどの炉をつぶすかということに関しましては、通産省が個別の企業から報告をとりまして、その意思を確かめた上で、それを全部合計いたしますと三百三十万トンになるわけでございます。
  177. 松本忠助

    松本(忠)委員 三百三十万トンの設備廃棄をしたときには、業界としても、今後の見通しという問題もございますけれども、一応どうにか成り立っていくという数字でございますか。
  178. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 これは、今後日本の全体の景気、経済がどういう方向にどういうふうに動いていくかということとも関係をいたしますけれども、経済が六%前後で成長を続ける、それに伴って、過剰能力昭和五十五年度におきましては三百九十万ないし五百九十万トンというふうにわれわれは幅を持って見ておりまして、その二百九十万という数字に立脚いたしまして、三百九十万のうち六十万トンは高炉が生産を圧縮する、それから三百三十万トンは平電炉が設備をつぶす、こういうことでバランスをする、こういうふうに見たわけでございます。  ただし、これは三百九十万ないし五百九十万の三百九十万の方をとっているわけでありますから、不幸にしてもし五百九十万の過剰が出てしまった、そっちの見通しの方が正しかったということであれば、昭和五十五年度におきましてもまだ少し過剰能力が残ってしまう、こういうことになりますが、この辺、先ほど申し上げましたように、小棒というものの見通しが非常にむずかしいのでございまして、小棒が少しでも足りなぎみになりますと、価格が暴騰し、小棒をよこせというような大騒ぎが起こるというような苦い経験を積んでおりますので、供給と需要関係におきまして、供給が少し余裕があるような見方をとり、かつ政策をとっておる、そういう状況でございます。
  179. 松本忠助

    松本(忠)委員 いずれにいたしましても、業界として三百三十万トンの設備廃棄をするということは、大メーカーは別といたしましても、中小の平電炉業界といたしますと重大な死活問題でございますので、この政策決定については十分な話し合いが行われなければならないと思うわけでございます。  問題は、先ほども局長のお話にございましたように、非常に設備が増強に次ぐ増強、こうした事実があったわけでございます。これはもちろん現在とは全く様相の違う時代でございますけれども、しかし、この問題については、増強しろというのは、むしろ商社が強力なてこ入れを行い、そして増強に次ぐ増強、それが今日またこういう時代になりまして、本当ににっちもさっちもいかないというような状態になってしまっているわけでございます。そうした中において商社がいろいろな面で介入しているという事実があるように聞き及んでおりますが、そういうについて、特に一つの著名な平電炉の工場が倒産した、その背後に有力な商社がいろいろと画策をしている、こういう事実もわれわれ聞き及んでいるわけでございまして、いま真相を調査中でございますけれども、そうした中において、その商社の言うならば貸し金というものは全く上手に回収しているけれども、問題は政府あるいは政府機関あるいはまたそれに類するような事業団等々の借入金というものについては、全くこれがそのままに置き据えられているというような話も聞いているわけでございます。  そうした問題が、こういう不況のときになってまいりますと、いろいろと話に尾ひれをつけて出てくるわけでございまして、そうして疑心暗鬼を生み、さらには業界の団結を乱すことになると思いますので、どうか通産当局といたしましては、慎重の上にも慎重にこれらの問題に対処していただきたいということをお願いするわけでございます。  いずれにいたしましても、この問題は単に平電炉に限らず、国内産業のいわゆる不況業種と言われるものが非常に死活問題としていまあるわけでございますので、当局の一層の御指導をお願いをいたしたいと思うわけでございます。  約束の時間が参りましたので、以上で終了させていただきます。
  180. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 工藤晃君。
  181. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 昨夜ニューヨーク市場及びロンドン市場で円が一ドル二百五十円台を割って、本日の東京市場も二百五十円を割るということになりました。そのきっかけは、言うまでもなく、昨夜アメリカの国際収支が発表されたということでありますが、そのことは、きょうの質問はおとといからの質問の継続にもなりますが、私の主張の、正しさをはっきり示したのではないかというふうに思っております。  つまり、円高の原因や背景、その中でアメリカの国際収支問題というのが非常に大きいのだ、そうしてそのアメリカの国際収支の大幅な赤字、先ほど企画庁長官もそう言われましたが、それはやはりアメリカ自身がいわば選択している構造的な変化とか戦略、対外政策、それにもかかわりが非常に大きいということになります。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕 たとえば、きょうの日本経済新聞や毎日新聞を見ましても、ことしのアメリカの石油の輸入は四百五十億ドルになるであろう、これはいまアメリカが進めている備蓄政策の一つの具体的なあらわれであります。先回も私申しましたが、昨年が大体三百二十億ドルくらいだと思いますから、百億ドル以上も石油の輸入をふやしていて、これが貿易収支の悪化をつくり出しているわけであります。同時に、私は先回表をこの委員会においてお配りしましたが、それでアメリカの国際収支がなぜ悪化するかという理由として、アメリカの企業というものが、アメリカの産業がアメリカの本国で製品をつくって輸出するというタイプから、世界じゅうに子会社をつくって、多国籍企業として発展して、そうして世界市場における地位はきわめて高いけれども、それは海外での会社の売上高の増大だとか、海外での子会社からの輸出の増大という形であらわれて、むしろ国内から輸出するものは農作物だとか、飛行機だとか、兵器だとか、そういうものだけがふえる、こういう構造になっている。こういう問題も示したわけでありますし、また、アメリカが力の政策の継続を行っているという形で、いろいろな対外政策にかかわる海外での軍事支出も含めて、それが経常収支の赤字の大きな要因になっている、こういうことを指摘したわけであります。これに加えて、アメリカは非常に対外投融資をふやしていることがいわゆるドルのたれ流しとなり、これがドル不安の大きな種をつくり出している、これも指摘できるところであります。  しかし、私が指摘しなければならないのは、どうも政府はこの円周問題についてはっきりした認識を持っていないのではないか。この円高問題の認識、原因とか背景についての認識をもっとはっきり持つ必要がある。というのは、もうすでにニクソン・ショック以来、戦後のIMF体制という旧来の仕組みが崩れて、変動相場制になってしまった。そこで起きている問題なのであります。旧来の体制のもとならば、アメリカのドルは金との交換価値を一定に保とうとする、それで周りの通貨が、ドルとの関係を為替レートを一定に保とうとする、この双方の利益が相まって、一見金為替相場制に近い形をとってきて、ある安定があったわけですが、そこが崩れてしまってから、すべてが全く相対的、変動的になってしまった。そして、その中でアメリカ側がさっき言ったような政策上いろいろ大きな赤字を出すということが、たとえば日本の円が強く表現される。もちろん日本の側にも大きな問題があります。これは後で触れますけれども、日本が輸出の黒字を出すといういろいろ問題がありますが、ともかくアメリカ側が政策的に大きな赤字を出すということが実際円高というものを著しくしてしまっている。たとえば先ほど言いました石油備蓄政策で、ことしは四百数十億ドルという輸入をするという政策を選ばないとすれば、アメリカの貿易収支というのは、こんな赤字を出さないはずである。あるいは黒字になるかもしれない。そういうときは、円高問題というのはもっと別の形で、何もこういうふうにどんどん切り上がるということにはならないはずではないか。  だとすると、アメリカがこういう政策をわざわざとっているときに、そうしてまた、円高がはなはだしくなって国内の中小企業や勤労者が大変迷惑をこうむっているときに、なぜアメリカ政府に対して、この国会の中においてあるいは政府として一定の見解を持ち、また、必要に応じてそれを言うということをやらないのか。この前、企画庁長官がこれを非常にためらわれるようなことを言われたので、この点についてまず見解を伺いたいと思うわけであります。
  182. 倉成正

    ○倉成国務大臣 現在のアメリカの貿易構造、それから国際収支の中を分析いたしてみますと、御案内のとおり、一九七五年までは経常収支の黒字が出ておったわけでございます。これは御案内のとおり、一九七五年では百十五億ドルの黒字を示しておったわけでございますけれども、一九七六年から、景気の回復ということもございまして、大幅な赤字が貿易収支で出てまいりました。これを貿易外収支で補うけれども、十分でない、移転収支の赤字があるものですから。そこで経常収支の赤字が出るという構造を示しているわけでございます。ただいまお述べになりましたような石油備蓄政策、相当大幅な備蓄をアメリカが行っているということが、アメリカの貿易収支の赤字の原因になっているということは御指摘のとおりだと思います。ただ、同時に、IMF体制が、新しい秩序を求めながら、まだ完全に新しい経済秩序というのが確立してないわけでありますけれども、一つには、やはりOPECの黒字という問題、このOPECの黒字がこれからどういうふうに世界の金融の中に入っていくかということが一つの課題ではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、工藤委員は、このアメリカの政策について日本が何か注文をつけて、もっと貿易収支なり経常収支の赤字が出ないようにしたらどうか、端的に言えばそういう注文をつけたらどうかという御意見のようでございますけれども、アメリカはやはりアメリカなりに一つの石油政策についてもあるいはその他の問題についても考えておることでございますから、日本が他国の政策について干渉がましいことを言うことは私は適切でないと思います。  ただ、私は、国際経済会議の場において国際資金の還流の問題等についていろいろ議論をしていくということは大切なことであろうかと思うわけでありまして、ことしの六月、CIECの会議で、私も日本政府の代表で出てまいりましたけれども、そのときには、OPECの諸国から、金融資産の保全であるとかあるいは資本市場のアクセスの問題であるとか、いろいろな話が出てまいりまして、アメリカ側とのやりとりもあったことも記憶しておるわけでございます。
  183. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) アメリカへの批判は内政干渉になるとかそういうことを言われましたけれども、もし本当に今度の円高問題の原因として、アメリカ側のとっているそういう戦略などと関連して、あるいはアメリカ側のいろいろな構造的変化と関連して出ている大きな赤字——しかも、私が前回示したように、アメリカと日本と比べると、あのスミソニアン会議以後の物価の動向を見ても、日本の方がよほどインフレを進めている。それにもかかわらず、アメリカが大きな赤字を出すがゆえに出てくる円高というものがある。そういうときに、なぜアメリカ側のそういう問題をもっとはっきり指摘しないのか。それが第一。  それから第二として、アメリカ政府側やアメリカ議会内でのいろいろの政府の発言を見ますと、もう私がここで新聞に載ったものだけを引用するだけでもとても時間がないほど、繰り返し日本に対する黒字批判というものが厳しくやられている。ブルメンソール財務長官の批判というものは、国会内でも問題になったほど行われている。アメリカがまさに官民一体で日本に対する対日攻勢をやって、そしてまさに日本の円高をつくり出した、誘導した。これが事実である。そういうときに、なぜ日本の方はそのアメリカに対しての批判を差し控えなければいけないのか。ここに、私はいまの政府の大きな姿勢があると思うのです。  ですから、いままでよく言われたことは、IMF体制である、実勢に任せなければいけない。しかし、その実勢なるものも、さっき言ったように、アメリカの政策の取り方ではアメリカ自身の国際収支をもっと改善し得る道があるのに、わざわざこっちを選んで、それで円高が出てくる、こっちの方が実勢である、こっちへ向けられるという可能性があるときに、もうアメリカの政策はすべて受け入れて、こちらが実勢だとやる。  しかもそれに加えて、いまの実勢というのは、もう一つ問題があるのは投機の問題であります。これはすでにずいぶん前の話でありますが、アメリカの関税委員会が上院歳出委員会へ報告した。これは恐らく六年前か七年前だと思いますが、そのとき報告された内容で、多国籍企業というのはとんでもない短期の流動資産を持っている、それはまさに世界の通貨当局の持っている外貨準備や国際通貨機関の持っているそういう準備高、その二倍くらい持っている、ほんのちょっと動かすだけでもこれが投機になるし、その通貨というのは非常なダメージを受けるということがすでに数年前に指摘されているわけであります。そうすると、こういう投機が加わると、それがまた事実上実勢であると言われてしまう。ですから、この実勢に任さなければいけないという論議というのは、実はこれは私のおとといの質問でも大蔵省の方からもそういう回答がありましたが、実はそういう変動相場制の中でつくられた実勢ですね。それを全部目をつぶらなければいけない。  しかし、考えていただきたいのは、そうやってつくられる実勢の結果、だれが被害を受けているのか。円が二百七十円、二百六十円、二百五十円になって、一体これは日本の景気回復にますます役に立つというのか、中小企業の経営安定に役に立つというのか、もちろんそんなことばないと思います。もちろん、私は、ただ一方的に円は二百八十円のままがいいというようなことは言いません。一定のレートは国内物価安定に役立つということぐらいは、私はっきり指摘します。しかし、いまのようにまさに急激にどんどん一六・数%といったような勢いでの切り上げが行われ、いまこのままでいくと二百五十円台がもう突破されたというようなとき、こういう姿勢を取り続けるということは間違っているのではないか、こういうことで、やはりアメリカに対してのはっきりした態度をとること、そしてまた、日本の物価の安定も考えなきゃいけないけれども、同時に、景気回復、中小企業、零細企業、勤労者の生活、失業問題、こういうことから考えて一定のところに円のレートを管理するような最大限の努力をする、こういうことこそやるべきではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、もう一度御回答願いたいと思います。
  184. 倉成正

    ○倉成国務大臣 いま世界の国々が非常にいらいらしている。そして、ある意味においては非常にくたびれている。しかも、多少いらいらがあるということは、一つには、この二年間ぐらいをとりましても、毎年OPECが四百億ドル以上の経常収支の黒字を出しておるわけでございまして、この黒字のツケが先進国とそれからまた非産油途上国にいっているわけでございます。この上に日本が経常収支の黒字を出しまして、そしてそのツケを先進国の方に回しているじゃないか、したがって、失業の輸出をしているというような非難を受けておるわけでございまして、そういう意味で、国際会議等でもいろいろ日本の経常収支の問題等について議論があるわけでございます。  確かに、工藤委員がお話しのように、アメリカの国際収支の構造にはいろいろ問題があると思いますけれども、きのう発表になりましたFASベースによりましても、一九七七年の一月から九月まででアメリカの貿易収支の赤字が百九十二億九千八百万ドルということでございます。季節調整済みでございます。これに対して、対日貿易収支の赤字がやはり五十八億ドルあるわけでございます。したがって、日米関係に問題を限って申しますと、向こうとしてはこの大幅な赤字の中で相当部分日本が占めているじゃないかという意見が出てくるということは、われわれとしてもまじめに受けとめなければならないと思っております。
  185. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 企画庁長官は、外の方のいろいろな日本に対するいら立ちとかということは非常に深刻に受けとめられているようだけれども、実際この円高によってそれこそ日本の失業がふえる問題、倒産がふえる問題、それに対してどう対処するかというところがはなはだ不確かだということを考えざるを得ないわけでありますが、時間もありませんので、OPECの問題その他を含めての私の議論はここではもうやめます。  この前の質問のときに、私が、商社が六日の朝から投機に走り出した、そのきっかけの問題についで質問しましたが、この問題についてもう少し確かめておきたいと思います。  松川財務官がIMF総会に参加して、そして七カ国高級事務官会議に出席し、五日に帰ってこられた。ところが、五日に帰ってくる直前に、ここにおられる倉成企画庁長官国内での記者会見の発言がアメリカ側で問題になった。新聞報道で伝えられたところによると、記者の質問に対して、円は二百六十円から二百七十円で推移するであろうというふうに答えられたということが、少なくともそういう形でアメリカに伝わった。そのため、松川財務官は飛行場でアメリカの財務省の人に取っつかまってしまって、あの真意は何だ、日本政策を変えたのかどうかということを言われたということであります。  大蔵省にお聞きしたいのですが、そのとき松川財務官はどのように問い合わされ、どのように答えられたのか、その辺についてもう一度伺いたいと思います。
  186. 宮崎知雄

    宮崎(知)政府委員 お答え申し上げます。  ちょうど十月の四日だったかと思いますが、松川財務官がIMFの総会に出席して後、日本へ帰るときだったそうでございますけれども、アメリカの財務省から在米の日本大使館に、松川財務官と至急連絡をとりたいという連絡があったそうでございます。松川財務官はたまたまちょうど飛行場におりましたので、飛行場からアメリカの財務省の方に電話をいたしましたところ、実は東京発のロイター電だったかと思いますが、倉成長官が、円は一ドル二百六十円から二百七十円の間を推移するだろう、こういうことを記者会見でおっしゃったということだけれども、これは一体日本の為替方針の変更を意味するのかどうかということを向こうが聞いてきたそうです。  そこで、松川財務官は、いやそういうことはない、日本は、従来から為替政策についてはIMFのフロートのガイドラインに沿って行っている、これからもそういう方針を堅持していくつもりであって、そういう方針の変更ということは全くない。それからもう一つ、実は倉成長官のそういうふうな記者会見での発言というのは自分はいま初めて聞くので、その真意については在米の日本大使館を通じて照会させる、こういう返事をしたそうでございます。  以上でございます。
  187. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) そこで、これは一昨日私が質問したところをもう一度確かめたいわけですが、一部の商社の中で、松川財務官が五日に東京へ帰ってこられた、そして省内会議が開かれた、その後総理に対する報告が行われた、その内容ということが、結局二百五十円まで切り上がることを認める、それに合意してあるということが一つの事実であるとして商社の中で伝わり——もちろん私がそう断言しているわけじゃないですよ。そういう二百五十円で合意してきたと断言しているわけじゃない。少なくとも商社の中では、そういう事実があったとして、そして六日の朝からドル売り円買いへの殺到が行われた。この六日の朝からドル売り円買いへの殺到が起きたというのは、これは明らかなんです。  これはこの前のお答えでは、いやそんなことはありません、投機をやっているのは外部であって、商社に限ってそういうことはやっていない、これはそんなことはありません、こういうことですが、たとえば十月六日の出来高というのは、これは直物でありますが、計七億五千百万ドルで、これは前の日の五日の三億二千百万ドルの倍以上になります。しかも午前に五億四千九百万ドルと、午前に殺到しておるわけであります。午後は二億三百万ドル。このことは大蔵省の方は否定されますが、商社の投機であるというのは各紙の一致した報道でありまして、たとえば日経の十月六日付夕刊は、「六日の市場では外銀の円買いはそう活発ではなく、国内の商社、メーカーの輸出予約が急増している。」こういうことや、朝日の十月七日付、「六日の動きで目立ったのは、週明けの円急騰の主役だった欧米、東南アジアなどの投機筋にかわって、国内商社、メーカーなどの輸出予約がどっと出たこと。」読売の十月七日も同じように指摘しているわけであります。  ですから、投機がなかった、少なくとも商社による投機がなかったというようなことを言うのでなしに、私は、ここで調査を要求したいし、また、資料を要求したいのですが、七日の出来高がこんなに異常にふえた原因は何なのか。商社の中で、少なくとも事実かどうかわからないけれども、こういうことを松川財務官が合意してきたということが流れた。そういうことについてのいろいろな調査、そうしてこういう投機が仮にもしそれが真実で、そういう事実が漏れてそして投機が行われた、これはもうとんでもないことでありますから、そのこと自体調査の対象になりますが、仮にそうでないとしても、そういううわさが出たというのは、IMF総会のときからわかり切ったというか、よく伝えられたことなんですから、政府がなぜそういううわさに対して行動でもってはっきりと、そんなことはないと示せなかったのか、そのこともあわせて聞きたいし、そのことも調査しなければならないと思っておるわけであります。  何となれば、そういううわさがあるとき、それこそ非常にこれは影響するわけでありますから、ただ記者会見で、だれがこうしゃべったというだけで打ち消せるものではありません。そういう投機に対して立ち向かうというはっきりとした姿勢をとって、初めてこれに対する回答が出るのですが、なぜそれができなかったのか。そういうことでありますから、私は、この六日の朝から起きたそういう投機の問題、そしてなぜそういうことが起きたのかということについて調査して、この委員会にも資料を提出することを要求しますし、また、さっき言ったように、うわさが出たとき、なぜはっきりした形で、行動でもってそのうわさを打ち消すようなことをしなかったのか、その非常に奇妙な点についてお答えを願いたいと思うわけであります。
  188. 宮崎知雄

    宮崎(知)政府委員 お答えいたします。  為替相場の動きには、御承知のように、いろんな要素があると思うのでございまして、確かに先生が御指摘のように、ちょうど十月の六日でございますか、その日の出来高は相当大きな金額になっておりますけれども、その原因につきましていろいろなうわさがあると思いますが、私ども、松川財務官がアメリカとの間で、一ドルを二百五十円台に持っていくというような約束をしたというような事実はございません。そのことはこの前の当委員会においてもお答えいたしましたし、現にアメリカでの記者会見の席でも、松川財務官がはっきりと、そういう事実はないということで否定しております。相場の動きについていろいろな思惑も確かにありますし、それがいろんな方の発電というものがいろいろ影響しているということは事実でございますが、そういうことについて、一々当局がこれに対して反論をするとかなんとかいうこともいかがかと思いますが、私どもとしましては、松川財務官が記者会見の席でもうすでにそういうことを否定しておりますので、それ以上の措置をとらなかったわけでございます。  それから、商社筋の投機の御質問でございますが、確かに、私どものずっと調べておりますところによりますと、輸出予約とか輸入予約の動き、そういうふうなものを見てみまして、たとえば御指摘の七日の日でございますが、七日の日のそういう輸出予約とか輸入予約の数字というのは、実はそれほど大きな数字ではございません。  ちょっと具体的に数字を申し上げますと、十月の七日の輸出予約は……(工藤(晃)委員(共)「六日」と呼ぶ)六日は確かにふえております。六日は輸出予約が約三億でございます。しかし、輸入予約もまた二億ぐらいございます。そこで、それほど大きな差があるというわけでもございませんし、それからまた、通常よく投機が起こりますときに言われますところの輸出前受けでございますね。輸出の場合の前受け金の動きというものを、たとえば、十月の一日から二十四日までの数字しかちょっとわかりませんが、これを集計してみますと二億五百万ドルでございます。この三億五百万ドルという数字は、たとえば七月、八月、九月のやはり同時期、一日から三十四日の集計と比べるとどういうことになっておりますかと言いますと、七月の場合には、これが二十四日までで二億四千八百万ドルでございます。それから八月が二億二千二百万ドル、九月が二億八千九百万ドルということでございまして、この輸出前受けの動きから見ましても、それほど極端な変化は見られないわけでございます。  輸出予約につきまして先ほど六日の数字を申し上げましたけれども、これをずっと集計してトータルを見ましても、若干の差はございますけれども、大体均衡したような形になっておる、こういうふうな状況なものですから、私ども、現在までのところは、国内でのそういう商社についての特に大きな投機的な動きはいまのところ見当たらないというふうにこの前お答え申し上げたわけでございますし、私どもも現在のところはそういうふうに判断をしております。
  189. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまのは輸出予約など総額で示して、私の言っているのは、特定の大きな商社がどういうような円買いをやったのか、そういうこと、それを資料として示さないと、私に対する反論にならないし、先ほど言いました七億五千万ドルですか、そういう巨額の、大体内訳がいわゆる非居住者、外国人がどのくらいで、国内がどのくらいでと、そういう内訳をもって示さないと、これは反論にならないし、また、調査にならないと思います。なぜならば、この投機に走ったのは、大きな総合商社です。ですから、そこを対象としてもっと調査をしなければ調査にならないし、それをもって投機はなかったという何のあれにもならないと思うのです。私はそういうようなあれでは大変不満足でありますから、もっとそういうことも立ち入った調査を要求するものであります。  さて、それに加えまして、いま為替差益の問題、差損の問題が問題になっておりますし、わが党も二十五日、灯油や農事用重油、漁業用燃料の価格、あるいは家庭用電力料金や小口業務用電力料金などの為替差益を還元させる、値下げをやらせる、こういう申し入れも政府や業界に行ったわけでありますが、ここでは最後の質問として、特に総合商社の場合、総合商社が出している為替差益問題、これをもっとはっきりつかまなければいけないのではないか。  これも時間がないから、私の調査結果を結論的に言いますと、結局、大きな商社の場合は、これは六つばかりとりましても、輸出と輸入との成約の残の差額を見ましても、二兆円を超える輸入超となっているわけですね。あるいはまた、外貨建ての借金、負債が大きいとかということから、ざっと見積もっても六社で三千億円を超える為替差益が出る、このように言えるわけであります。そしてこれに加えて、いま言ったような投機で利益を大きくするとすれば、これはとんでもないことなので、私は、この問題で一つの提案として、彼らの利益、こういう為替差益による利益を値下げという形で吐き出させるということに加えて、いまの問題になっている構造的不況業種は、その多くのものは、たとえば平電炉にしろ、砂糖にしろ、板紙にしろ、そういうものはいわゆる商社系列で、そして日本列島改造論だなんということのもとでめちゃめちゃな設備投資をやらして過剰設備をつくり出した、そういう責任もあるから、この総合商社が得たこういう為替差益は、こういう構造不況業種対策に対しても、労働者の雇用を守り、中小企業を守るというためにも使えるような行政指導をきちっとやるべきではないか、そのことを最後に質問いたします。
  190. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  いわゆる総合商社の為替差益問題についての御質問でございますが、私ども、省内に円高問題の対策推進本部を設けまして、主要産業の円高問題の影響あるいはその受けとめ方、対応の仕方等、主要業種について調査をいま進めておりますが、総合商社につきましても、何社か選びましてその実態把握をいまやっておるところでございます。そういうことで、最終的な調査内容は大体十一月半ばごろまでかかって固めるつもりでございますが、いま私どもが受けております大体の感触、考え方についてこの場で御説明申し上げます。  ただいま御指摘のように、総合商社、特に九大商社と言われます大商社につきましては、大体取扱高の半分が貿易取引でございまして、この一年間で大体往復で二十兆ぐらいあるだろうと思います。これは輸出、輸入が大体同額、十兆、十兆ぐらいではないかと思います。問題は、確かに輸入十兆ございますが、中を洗ってみますと、大体その七、八割は原料といたしまして、為替の最後の差益及び差損、これはメーカーの負担になっておりまして、商社は直接そういうリスク負担もしませんし、差益も受けないという立場に立っておりまして、これが七、八割になるのではないか。すると、残り二、三割は商社のリスクでやっておるものがございますが、これは同時にまた、輸出でも同様の問題がございます。  そこで、商社は、総合商社の一つの機能といたしまして、貿易の面でそういう為替の持ち高をマリーを通じまして均衡化をさせるということが、商社の輸出入の為替問題についてのいわば商社運用の基本方針でございまして、そういう意味から見ますと、商社はいまのような短期の債権債務、そのほかに長期の債権債務を均衡させて、そこでのバランスをとっていくというのが商社運営の基本になっておりまして、ごく短期、一日とか二日とかいうことで考えますと、そこには債権債務のどちらかのバランスが超過することがあるかもしれませんが、おしりといたしましては商社の債権債務は大体バランスをとっておりますので、そういう意味で、為替差益あるいは差損というものが生ずるといたしましても、そう大きなものではないのではないかという感じが私どもはいたしておるわけでございます。
  191. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) もう時間がありませんが、いまのあれは九大商社という形で総額について述べられましたが、たとえば三菱商事の場合どうかとか、そういう個別に見ていくと、大きなところの輸入が非常に大きいという結果が出てくるわけであります。そういうことも含めまして、この投機の問題での利益がありますので、この問題は私たちとしてはあくまで追及して、そういう不当なもうけに対して、仮に利益が出るならば適切にこれを行政指導で還元する、たとえば構造不況業種対策にも行わせるとか、こういうことを最後に要求して、私の質問を終わります。
  192. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、来る十一月一日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会