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宮崎参考人 宮崎でございます。
化合繊業界は、最近になりましてこれもまた
構造不況産業だというレッテルを張られておりますが、まだまだ
成長力のある
産業ではございます。これがなぜ
構造不況かと言われますと、
一つには、最近急激な
値下がりがあるということでありまして、それは昨年の十一月からかけまして、
キロ当たり大体百円以上下がっております。総
生産は
年間には大体百四、五十万トン能力がございますが、そのうち半分が
国内でございますので、それを一部
操短しておりますから、まあ去年の十一月ごろから百円と計算しますと、
年間に計算して大体六百億ぐらい下がっておるということが第一でございます。
それから第二は、
先ほども
お話がございましたが、
円高の
影響でございまして、これが去年は一
年間で
為替レートが大体二百九十六円でありましたけれ
ども、これが昨日は二百五十一円。それが仮に二百五十二円ぐらいと計算いたしましても、全
生産量の半分を
輸出しておりますから、もちろんこれは
加工品も入りますが、大体
年間に四十二、三億
ドルの
輸出でございますが、これを二百九十六円と仮に二百五十三円としまして、その差額で計算して、そしてこれの八割が
化合繊でございますので、やりますと、千四百四十五億という数字になります。約千五百億でございます。ですから、この
円高の
影響というのは、一
年間に仮に同量が出ると仮定いたしますと、とにかく予定の千五百億減るということでありまして、
値下がりと両方合わせますと、約二千億減るわけでございます。これが非常に
合繊業界を圧迫しておる大きな
原因になっております。
ですから、私
どもとしましては、まず
自分でできることは
自分で当然やるべきでありますし、また、やる意思でございます。
まず、やっておりますのは、
他国でできない、特に
輸入に対して対抗できる
製品、つまり
特殊性のある
製品をまず
糸綿段階でつくっておりますが、これが大体全体の二五%は
発展途上国でできないような物をつくっております。これをわれわれは五割まで持っていきたいというふうに考えておりますが、仮に五割だけ
発展途上国でできないものをつくりましても、やはり一般のどこでもできる商品がどうしても要るのでありまして、五割は
発展途上国と競争しなければならない素材になります。そういう
努力をしておりますが、やはりこの
合繊工業というのは非常に
機械が進歩してまいりまして、
機械を上手に使いますと、いわゆる
GP物、われわれはゼネラルパーパスと言っておりますが、それは
発展途上国でも
日本並みの物はできるということでありまして、先ほ
ども綿工連の方がやはり
お触れになりましたように、これが
輸入の
問題等に逢着している
原因の
一つでございます。
次に、われわれがいま
自分で実施しておりますのは
操短でございますが、これは
役所の力によりまして十二年目、鉄鋼がかつてやりましてから十二年目に
合繊につきましての
勧告操短が行われまして、十月から発足をしております。これによりまして、ようやく
価格の下落は停止するという
状況になったのでありますけれ
ども、しかし、
先ほど申しましたように、円が急激にしかもドラスチックに強くなりましたために、結局
輸出は五割ですから、この
輸出が十二月までは
成約しておりますけれ
ども、一月以降はほとんど
成約ができません。大体二百四十円台の
値段でないと契約できませんので、それではとうてい採算に乗りません。ですから、十一月、十二月ごろになって、一月—三月の
輸出ができませんと、
危機的様相を帯びるという
状況になってきております。だから、そういう
意味で、この
操短による
効果が全く減殺されつつある。
操短は
国内向けの
生産を
操短しておりまして、
輸出は自由になっておりますが、その自由になっている
輸出が削減されますと、全体としての
操短率が高くなりますから、
自然操業が落ちます。そうすると、
固定費が上がりますから、コストが上がります。同時に、
労働者が余ってまいります。そういう
意味においては
雇用の問題を惹起する
状況になっておるわけでございます。
そういうふうにして、
自分でできることは、いまのとおりスペシャリティーのある
製品をつくることと、
役所の力を拝借しながら
操短をすることによる
応急措置と、両方を併用いたしますとともに、やはり
合繊といえ
どもようやく
過剰生産の気配が出てまいりました。したがいまして、この
過剰対策をどうするかということを、私
どもは
社長会を開きまして、昨日もいたしましたけれ
ども、この問題を真剣に検討をすることにいたしました。しかし、これは仮に二割あるいは三割を
凍結または
廃棄しますと、やはり一万数千人の
余剰労働力を生じます。いま現在、恐らく一割ないし二割の
余剰人員をわれわれは抱えております。しかも、相当な人間が減っておりますが、私の記憶によりますと、
繊維全体で二百七十五万人
労働者を
雇用しておりますけれ
ども、それがいま二十数万人減りました。
ゼンセン同盟傘下の
組合員でも十五万人減りました。これは三割に近いのですが、そういうふうにしていま
繊維業界全体の
雇用がどんどん減少しておりますが、私
どもが
過剰設備の
凍結または
廃棄を仮にいたしますとしますと、当然に一万数千人の
労働力の過剰を生じてまいります。この
対策が、一番われわれが頭が痛い問題でございます。
そこで、われわれがどうしてもできないことば、
先ほど申しました
円高対策でございますが、われわれ
民間人としては
円高をどうすることもできません。しかし、私は、
日本の円が真に強いとは決して思っておりません。私
どもの実感では、もうかる
輸出というものは、
先ほどは二百七十五円という話がございましたが、
ドルショックのときに私は三百円と申し上げましたけれ
ども、当時、非常に
競争力がある時代でも、やはり三百円でございました。と申しますのは、
原価には
工場原価、
比例原価、総
原価とございますが、総
原価をカバーして利益が出るのには三百円が当時でも必要でございましたが、いま二百七、八十円では総
原価をカバーすることはとうていできません。しかも、少なくとも現在の二百五十円というのは
日本の円の
実力を決してあらわしているものではない。投機またはある
意味の
他国からの攻撃によるものと私は思っておりますが、これに対しては適切な方策、これは根本的にはいわゆる内需の喚起によるのが第一でありますが、
緊急輸入をされましても
日本の
景気がよくなるわけではございません。
仮に
ドルを減らそうと思えば、八月末で百七十七億
ドルあった
ドルが、
対外債務が百二十二億
ドルございますから、差し引くと
日本の
ドルは五十五億
ドルしかございません。それでこれは、ドイツは、
マルクは三百億
ドル純粋の外貨があるわけでございまして、その三百億
ドルを持っている
マルクは余り動かないで、五十五億
ドルしかない
日本の円が非常に上がっているということは、まさに異常だと思っております。このことに対しましては、私
ども民間としての力が届きませんので、どうか、ぜひひとつ
政府を督励していただきまして、この円の
実力を離れた
異常高に対する
対策を、諸
先生方はもう
十分御存じでございますが、これをぜひお願いしたい、これが緊急の
措置だと思います。
それからもう
一つは、
日本の
合繊原料は結局
石油から出ます
ナフサでございますが、
ナフサが大体アメリカよりも七千
円高かったのですが、最近の
円高によってさらに差が出てまいりまして、ヨーロッパよりも五千
円高かったのですが、最近は七千円以上高くなっております。われわれの方に入ります
韓国製品が大体五千
円高いのですが、これは政策的に決められております。そういう
意味では、この
ナフサ価格を国際的に競争し得る
値段にぜひやっていただくことが必要であって、これは現在は
標準価格ではございませんけれ
ども、一応
標準価格の設定によって決まったものがそのまま据え置かれておりますので、この問題を解決するのには、私
どもが
お互いのネゴシエーションによってやれるものではございません。やはり
油種間の、灯油その他の
値段の
調整によるものでございますし、また、
円高による差と両方ございますが、これは大きな
税金を、
石油関係は
関税その他
ガソリン税等を納めておりますので、そういう
税金との
調整も考えて、
石油精製業界と共存し得るような
価格体系をお願いするしかしようがない。これは私
ども民間だけでできる問題ではないというふうに考えております。
その次には、
先ほどお触れになりましたが、
国際協定の発動でございますが、よく世間では
繊維業界が
輸入規制を主張しておるということを言われますけれ
ども、あれは非常に不穏当でございまして、大体、
国際協定というのは
ガットの
ルールによってできた
規定でございまして、あの
規定を発動するということは、従来の
ガット十九条を発動すると全く同じでございますから、必要によって、
条件に合えば
国際ルールを発動していただくということは、これは何も
ガットの
ルールに反することではないわけでございます。これはやはり私
ども民間ではできない問題でございます。しかし、もちろん角間はわれわれ
お互いに相携えまして
輸出国との間に
話し合いをしておるわけでございますが、こういう点をお願いいたしますとともに、私
どもはわれわれでできることは
自分で全力を尽くしてやりますから、ぜひひとつそういうわれわれのできない点に御
配慮をいただきたい。
特に、最近は信用不安の問題がございまして、けさも
新聞紙等で報道されておりますが、このディーラー、
産元等に信用不安の問題がございます。われわれ
メーカーがいろいろなてこ入れをしておりますが、遺憾ながら
メーカーも、最近はわれわれ自身が力が尽きてまいりましたので、ここら
あたりに対しましても
政府は非常に適切な手を打っておられますけれ
ども、ひっきょうするに
不況のために起こるのが多いのでございまして、
経営のミスというよりも、構造的な
原因による
不況、それに基づく信用不安というのがございますから、われわれ
メーカーもできるだけ
努力いたしますが、これはどうかひとつ諸
先生方の御尽力によりましてこの
危機を脱するようにしていただきたいと思います。
これで私の公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。