○土井
委員 政府が、とおっしゃいますが、問題は
公害対策基本法というのは
環境庁によって行われる
法律なんですよ。
環境庁の
環境行政というものはいかにあるべきかということに対して基本的な問題を述べている
法律なんですよ。こういうことをやっていかなければならないよということを述べている
法律であり、具体的に
環境基準の設定などについて、また、特定
公害というのはこういうものだということの明示の規定も置きながら、
環境行政に対して問題にしているこれは
内容なんです。政府とおっしゃいますが、そこのところははっきり
環境庁に対してこれは明示されている
法律であるということはやっぱりお
考えいただかないと私は困ると思うのですね、政府の中でもわけても。いまの経済の発展との調和ということも、経済の優先というものを許さないという方向でやるというのはこれは別の問題であります。たとえば通産省が通産行政を行うときに、やはり人権であるとか、何より大事な人の生命とか健康というものを無視してどしどし企業誘致を進めたり、先ほど来問題になっていた埋め立ての問題に対して賛意を表したりするようなことは、通産、建設、運輸行政の上では許されないというのはこれは鉄則でしょう。これは、いま大臣がお答えになった、そういう方向でやるべき行政の一側面だと思います。けれ
ども、
環境行政というのはそんなことじゃないと私は思うのですね。
環境行政というのはあくまで経済優先というふうなものを抑えるんじゃなくて、むしろ人の健康をどこまでも
考え続ける、
環境保全というものをどこまでも
考え続ける、これがやっぱり
環境行政の本旨でなければならない。このことをやはり明確にするために四十五年のあの
公害国会の中で
公害対策基本法の一条二項にあった経済との調和条項というのは削られたという大変大きな意味があったのではないでしょうか。
こういうことを申し上げて、ひとつそれじゃ
長官にこれに対しての御感想をお聞かせいただきたいんですが、これは日弁連ですね、日本弁護士連合会が「
公害と人権」という一冊にまとめたものを出されておりますけれ
ども、この中で「
公害基本法について」ということが述べられている部分があります。これについては、この全部が全部また読むわけにはまいりませんけれ
ども、ひとつその部分で問題になる点を、そこだけをはしょって言うんじゃなくてその前後も少し加味しながら少し読んでみようと思います。
「
公害基本法の目的は、国民の健康の維持とこれに必要な生活
環境の保全という、極めて基本的な、人権擁護の立場から出発しなければならない。今日までの各種の
公害対策が、その実効を挙げえなかった根本的理由は、産業経済の保護という美名に眩惑せられて、その本来の目的を忘れたことに存する。しかるに政府原案はその基本法の目的について、」
——というのは、これは出されたのが
公害国会直後であります。つまり四十六年の十月に発行されているわけです。「「国民の健康を
公害から保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図りつつ、生活
環境を保全し、公共の福祉の確保に資することを目的とする」と規定し、厚生省原案が、「国民の健康、生活
環境及び財産を
公害から保護し、公共の福祉に資すること」を目的と規定していたのに比し、人権擁護の立場から著しい後退を示し、ふたたび従来の
公害対策の根本的誤りを犯そうとしている。われわれが、国民の健康の保持と生活
環境の保全を重視するのは、憲法二五条第一項が「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障したことに、その根拠を置くものであり、
公害対策につき国がその責任を持つべき理由は、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」旨規定する憲法二五条第二項に存する。かかる憲法上の保障は、人の生存権に関する問題として、無
条件に守らるべき命題であり、他の如何なる理由も、これを否定するものとはなりえない。いかに必要な生産といえ
ども国民の健康を侵害して許さるべきでないことは理の当然である。今日われわれが直面している
公害問題は、まさにこの基本的人権に関する問題である。国民の生存のために必要とされる最低限度の生活
環境は、その目的に従って、純粋に科学的、医学的見地からのみ考察さるべきであって、経済の発展その他の如何なる問題も考慮さるべきではない。而してかかる立場を貫くことは、決して産業の発展を阻害するものとはならないと、われわれは確信する。その理由は、
大気汚染、水
汚濁、騒音、地盤沈下等の
公害の深刻化が、企業の直面する技術革新の重大な障害となり、企業自身の財産を侵害するばかりでなく、そこに働く労働者にとって、深刻な労働
条件の悪化となって作用することを
考えれば、容易に理解しうるであろう。冒頭にのべた如く、いまや
公害は住民そのものに対する侵害であるばかりでなく、産業自らをも侵害するものであることを強く銘記すべきである。われわれは以上の立場から、
公害対策の目的の中から、「経済の健全な発展との調和を図りつつ」の条項を削除すべきであると
考える。」こう述べられているわけであります。
このことに対して
長官としてはどういう感想をお持ちになるか、ひとつお聞かせくださいませんか。