○原(茂)
委員 とにかく石頭に水をぶっかけているようなもので話になりませんけれ
ども、違約金、違約金と言うのですが、この
土地が再払い下げをされた暁の値段を考えたときに、違約金なんというのはスズメの涙なんです。何でもない、こんなことは。違約金なんてこれっばかりですよ。違約金があるからあるからと言っても、違約金の十倍ももうかれば、違約金を払えばいいんだから、だれでも違約をするんですよ。いま現に
土地を
中心にいっぱい行われている。そんなことを知っていながら、よくもしゃあしゃあとそんな答弁ができる。私は不思議でしょうがない。私の知っている大蔵
大臣にしては、どうしても答弁は納得しません。やがてこれが現実の問題としてもっと深刻な問題として発展してくると思います。そのときにまたこの問題について触れていきたいと思います。
第二に、大蔵当局は当該払い下げ地を含む北富士山ろくには地元農民の入会慣行があることを承認し、かつ尊重することを明言してまいりました。しからば、その入会慣行は、この払い下げに当たってどのような形で承認されかつ尊重されているのか。いわゆる諸懸案問題という個別具体的な問題とは異なり、この入会慣行の承認及び尊重ということは、全払い下げ地にかかわる問題であり、買い受け人たる山梨県の用途指定の義務履行と全面的にかかわり合いを持つ問題でもあります。この点について契約書内容からうかがえることは、入会慣行のいの字の尊重もない、全く一般の
土地の払い下げと何ら異なるところがないということに関してお伺いをいたします。
この北富士返還国有地払い下げ契約の内容を検討してみますと、さきの本
委員会において繰り返し繰り返し慎重な取り扱いと配慮を
要求してまいりました地元入会農民の当該払い下げ地に有する入会慣行については、その山梨県との間に締結された契約書のどの条項においても触れるところが全くないのであります。従来、
政府は、地元入会農民が当該払い下げ地を含む富士山ろくの一帯に立ち入り、使用、収益する入会慣行を承認し、かつ将来にわたってこれを尊重すると言明したところでもあります。また、本
委員会においても大蔵当局は、地元入会農民の該地に対する入会慣行を承認すると明言してもまいりました。一体この地元農民の入会慣行は、本件払い下げ契約締結に当たってどのように承認され、かつ尊重されているというのでしょうか。どこにあるでしょうか。
なるほど当該払い下げ地には、耕作者あるいは植林者が存在し、その利用者の存在している限り、払い下げ目的とした同地での林業整備事業の実施ができない。そこで、かかる
地域については、個別具体的にその解決を図らんとして、いわゆる諸懸案問題としてたな上げをし、払い下げ後にその解決を延ばしているというのが
現状であります。なお、この諸懸案問題は、個別具体的な払い下げ地の一部
地域についての問題であります。そして、おのおのその問題については、耕作権の存否あるいは入会権の存否等の問題が絡み、きわめて複雑な様相を呈していることは事実であります。御承知のとおりです。
しかし、この耕作権や入会権の問題と、いままで
大蔵省が認めてきた入会慣行の問題は別であります。大蔵当局は国会の
指摘した利用権は尊重するとの
趣旨の発言はいたしました。しかし、現実には土丸尾地区の耕作権はこれを承認も尊重もするとは決して言わなかった。また、同様に、入会慣行は承認尊重すると言いながら、檜丸尾の入会権に基づく植林というものを承認尊重するとも言わなかった。だがしかし、地元入会農民の入会慣行はこれを承認尊重すると明言しているのであります。大蔵当局の独自の見解に立った耕作権の否認あるいは入会権の否認は、その当否を含めていまここで論ぜんとするものではありません。これはまた別途やります。したがって、大蔵当局が入会権そのものを否認する以上、みずからの手によって作成した払い下げ契約書の内容にそれを容認するがごとき条項の存しないのは、その前提に立つ限り当然のことであるから、そのことを論ぜんとするものではありません。ただ、歴代の内閣が承認し、かつ当然のことではあるが大蔵当局も承認してきた入会慣行が、この払い下げ契約書のどこにも承認尊重されていないということを問題にしていきたいと思うのであります。
一方で地元農民の入会慣行を承認しておきながら、他方契約では全くこの点を無視する。否、単に無視するだけではない。大蔵当局は本件
土地買い受け人たる山梨県にその用途を付して売却しているのであります。したがって、買い受け人たる山梨県は、その指定用途たる林業整備の実施を分収造林方式によって実現すべき義務を負わされているのであります。大蔵当局はこの義務の履行を山梨県に実現させなければならないと思います。この義務履行の
要求は、結局地元農民の入会慣行、すなわち同地に立ち入り、使用、収益することと相矛盾することになるのは当然であります。言いかえれば、契約内容においてその存在を無視し、さらにその用途指定において買い受け人たる山梨県にその分収造林を強いることによって、完全にその入会慣行をどう解決するかの難問を解かなければ一歩も進まぬ仕組みになっているのが
現状であります。一体、今日までの処置で、どこに入会慣行の承認尊重があると言えるのか。
川梨県が大蔵当局に提出した北富士県有地
管理規則なるものがあります。当該払い下げ地についての
管理規則でありますが、そのどの条項を見ても、入会慣行の尊重をうかがわせるものさえないのであります。これはもう
大蔵省も御存じのとおりだ。否むしろ完全な否定にも等しい状態になっています。
その
管理規則の第五条には、分収造林契約の締結について規定し、その契約の様式まで決定しております。それによると、第二十条、造林地の落ち葉、落ち枝及び下草の類については、造林者が自由に処分できると規定しております。地元農民は、当該払い下げ地については枯れ枝一本、否枯れ葉一枚すら手にすることができなくなるのがこの規定であります。挙げて造林者のものとなるのであります。
このように買い受け人たる山梨県も全く入会慣行なるものを認めていないことは、その払い下げ契約締結前にこの
管理規則を提出させた大蔵当局は百も二百も承知のはずであります。
重ねて問いたいのですが、一体どこに大蔵当局の承認尊重している入会慣行があるのか。まさか、この造林者、すなわち恩賜林組合等地元地方公共団体が自由に処分できるという点において、地元農民の入会慣行が承認されているということではあるまい。これはもう矛盾します。地元農民は造林者のお世話になって暮らすもの、入会慣行の承認などとんでもない、これが言ってみればこの
管理規則の規定している精神なのだ。地元農民は施しを受ける地位にあるにすぎないことになるのであります。大蔵当局は当
委員会において地元農民の入会慣行を承認した。しかし払い下げ契約において、分収造林を地元公共団体に実施させんとすることにおいて、これを完全に否定せんとしておるのが
現状であります。
買い受け人たる山梨県は、地元農民を施しの対象としてしか扱わないことになります。何の裏づけもなく施しを受ける者はこじきであります。かかる一連の事実は一体何を意味するのか。私は、大蔵当局が本
委員会において入会慣行を承認すると答弁したとき、これは重大な発言であると評して、その具体的取り扱いをじっと見守ってまいりました。だがその結果は、その発言とは逆に地元住民の入会慣行を完全に否定した。その憤りが、去る十月二十日の
決算委員会調査の折、本払い下げに賛成している諸君ですらがわれわれに対し入会デモを行うという事態を醸し出してまいりました。まことに、大蔵当局の本
委員会での発言は、その場限りの無責任きわまるものであると言わなければなりません。
もっとも、いまなお大蔵当局は、本件払い下げ地に用途指定を付した以上、その責任において分収造林による林業整備事業の円滑なる実施を指導すべき地位にあります。そして、一方、本件
土地の払い下げを受けるに際し、地元住民の従来の入会慣行の承継を約した山梨県当局も、いまだに地元、地方公共団体のいずれとも分収造林契約を締結していない。したがって大蔵当局の、地元農民の入会慣行の尊重という国会に対する約束を実現し得る余地はまだ十分あるのであります。
最後に私は、大蔵当局に対して、大蔵当局の責任において、入り会いのいの字もない北富士県有地
管理規則の改正を行政指導するとか、または別途、将来、法的に疑義を残さない何らかの方法によって入会慣行を承認させるような措置を指導すべきではないかと思うが、この点に関する誠意ある
大臣の答弁を願いたい。
さてここで、林野庁造
林課長にもおいでいただきましたので、お伺いいたしますが、次いで答弁を願いたいと思います。
それは、山梨県では北富士県有地
管理規則第二条で、知事は林業整備事業を分収造林特別措置法に基づく分収造林により実施するものとすると規定しています。しかして分収造林特別措置法第一条一を見ますと、「
土地所有者を当事者とする契約においては、
土地所有者は、造林者のためにその
土地につきこれを造林の目的に使用する権利を設定する義務を負うこと。」と規定しています。だとすると、同地における、大蔵当局も認めている地元住民の入会慣行が、分収造林の目的に使用する権利、たとえば地上権の設定と衝突する場合、その障害となる地元住民の入会慣行の始末をつける義務を負うのは
土地所有者たる山梨県であると解してよいかどうかを簡潔にお答えをいただきたいと思います。