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鳩山国務大臣 私は輸出につきまして、仮に
現状のまま
内需を振興していった場合に、輸出が減って
内需に振りかわるであろうかという点について、いささか不安を持っておるのでございます。恐らく輸出は、いい商品は売れますからやはり輸出も伸びて
内需も伸びる、その結果になってきますと、設備の増設ということが起こって、次にまた
内需が減ってきた場合にはよけい輸出圧力が加わっていく、こういう繰り返しをとるおそれがあるのではないか。
一つは、たとえば造船というような産業をとってみますと、いま
日本は全世界の造船需要を賄える能力を持っておる、しかも設備は非常に近代化されておりますから競争力も強いということで、これは昨年来からヨーロッパ
各国と非常に問題になったわけで、何とかシェアを半々ぐらいにできないかというような話し合いが去年から続いておるわけでございます。そういうように
日本が競争力があり、しかも、お互いに
日本の国内でも競争していくためには設備を最新鋭にしなければいけない、こういうことで、オイルショック後には造船は一時非常な借金をしょい込みまして、非常な苦境になった。借金といいますか、為替差損をしょい込みました。その為替差損をリカバーするために、設備を近代化してどんどん新しい船をつくって、それでかせいで過去の為替差損を埋めることができた、こういう経過で、今日におきましては世界の大半の注文をみんな
日本が取っちゃうのではないかという心配が起こっておる。景気がよくなり、稼働率が上がってまいりますと、九割を超えるような
段階になりますと、次の設備投資にかかるというのが産業界で行われておるということで、いま自動車産業につきまして——個別の産業のことを申すのはもう適当でないと思いますが、
アメリカとソ連と
日本、これは世界の相当巨大な生産国になっておるわけで、そういう中で、競争力が強いけれ
ども、そういった何でも
日本でつくってしまうというところまでまいりますと、国際的な抵抗が非常に激しくなってくるという心配もある。したがいまして、
黒字対策をやってまいります場合に、輸出の面につきましても何らか配慮を加えながら
黒字対策に取り組みませんと、
輸入をふやしても追いつかないということが心配になるということで、輸出面につきましても節度のある輸出、何でも
日本が制覇してしまうということにならないようなことでいきませんと、
日本に対する国際的な風当りというものは解決しないんじゃないか、こういう気がいたすわけであります。
それから、
輸入をふやしていくことが拡大方針であるじゃないか、輸出を伸ばし
輸入も伸ばしていけば世界貿易がそれだけ広まるではないか、こういうような
考え方に対しましては、しかし、
日本が輸出を賄うだけの
輸入をした場合には、国内でそれだけの生産ができなくなるということになってくる、繊維、雑貨類はすべて
輸入になってしまうというようなことは、
日本の国の経済として好ましい形ではない。そういう
意味で、
日本の経済が安定した運営を続けていくためには、やはり重化学工業だけが栄えればいいということではないと思いますので、そういう重化学工業の面で、それはその中でもいま経営
状況の悪いところが多いわけですけれ
ども、その中で輸出の強い産業、国際競争力の一番強い産業がある程度の自粛をしていきませんと、
日本の全体の経済はうまくいかない、こういうことをふだんから
考えておるものですから、輸出の面につきましても節度ある輸出を忘れないようにしてもらいたい、これがいま率直な私の
考えでございます。