○渡部(一)
委員 一九七五年五月十二日、約二年前になるわけでありますが、カンボジアの沖合いにおいてマヤゲス号
事件が発生いたしました。この
事件については当
委員会においても質疑が行われたものでございますが、
昭和五十二年、本年の九月二日の夜十時十五分からNHKで報道された報道番組の中におきまして、前大統領フォード氏が登場され、この問題について発言をされております。この内容を見ますと、従来
わが国政府が説明された言葉とは違いまして、
アメリカ側の対応というものが非常に乱暴な態度であったことが明らかであります。したがって、私はあえてその項目を読み上げた上、
政府側の御見識を問いたいと思います。
ちょっと二、三分拝借して読み上げますと、NHKの解説はまずこう述べております。「マヤゲス号
事件は、一九七五年五月十二日、カンボジア解放軍が
アメリカの貨物船マヤゲス号を捕獲したことによって発生し、直ちにフォード大統領が
アメリカ海兵隊を出動させて貨物船の奪還を図ったことにより世界の耳目をそばだたせました。この
事件は、
アメリカ国内ではベトナム敗戦から目を移させた武力
政策として
アメリカの威信を幾分でも取り戻したという受取方もありました。しかし
日本国内では、
アメリカ海兵隊がマヤゲス号奪還のために沖繩から出動したことに絡んで、特に日米安保の運用問題、その中でも事前協議の実情についての生々しい実例を示すことになったわけです。」
次にフォード大統領の言葉が入りまして、「公海上で米商船が拿捕されたのを知ったのは月曜日の朝五時十五分ごろか三十分ごろだった。詳細はわからない。七時半ごろ執務室に着き新しい
情報を得た。いずれにしろ米船が拿捕されたことは確かだ。正午ごろ軍首脳を招集することにした。
情報が増すにつれ専門家が軍事
解決の道を
検討した。だが、軍事に訴える前に外交
手段を尽くしてカンボジアに船を釈放させようとした。まず中国の代表部に連絡した。カンボジアとは外交
関係がなかった。国連筋からも働きかけた。要するにあらゆる可能な道を通じてカンボジアの
ハイジャックに抗議したのだ。」そこで記者が「ソ連に知らせたか。」と言うのに対して「特別にはしない。」今度は記者が「ホットラインは使わなかったか。
日本には通知したか。」と聞いておるのであります。それに対して「特にはしない。通常の外交ルートでは通知しただろうが、事前協議はしない。つまりこれは不法なカンボジアの行為で、
国際法に違反した公海上の拿捕
事件だ。緊急事態のあったとき、世界じゅうの国と相談などできない。米国大統領の義務として断固とした行動に訴えなければならない。作戦に出た米海兵隊は沖繩基地から出動した。」次に記者は、「米軍出動について
日本政府に知らせたか。」と聞いております。これに対して「海兵隊は沖繩からまずタイに移動し、そこから空海の救出作戦行動を支援した。その際にも通常の連絡だけで、特別にはしない。外交上の義務は果たしたと思う。」記者は「首相に直接知らせなかったか。」と言っておりますが、それに対しては「直接にはしない。」また記者は、「日米安保
条約には米軍出動の際の事前協議事項がある。」と
質問しております。それに対して「厳格な規定というより一般論のはずだ。こうした緊急性のある
事件、
アメリカ人の生命財産が
関係する場合は別だ。」と述べております。次に、「それが外交上の配慮より優先したのか。」と
質問しておりますと、それに対して「われわれの行動は日米
関係を損なうものではない。
国際法にかなっている。正しいことを行い、しかも成功した。米国の指導力を高め、サイゴン陥落の動揺を食いとめた。」と述べております。番組はもう少し続きますが、
問題点の個所を抽出したものであります。
わが国側のこの問題に対する態度と別に、
アメリカ側の認識がどのようなものかうかがわれまして大変興味のある番組になったものと私は思います。私はNHKを訪れましてこの部分を録音して帰り、テープで起こして本日この
委員会で読み上げたものであります。
まずこの問題の認識を私が
一つずつ伺う前に、
アメリカ局長はどういう御見識を持ってこれをごらんになったか、まとめてまず伺った方がよかろうと思いますから、お
伺いします。