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1977-10-26 第82回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十六日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 毛利 松平君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       稲垣 実男君    大坪健一郎君       川崎 秀二君    佐野 嘉吉君       玉沢徳一郎君    中山 正暉君       宮澤 喜一君    井上 一成君       高沢 寅男君    松本 七郎君       中川 嘉美君    寺前  巖君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  出席政府委員         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛施設庁総務         部長      銅崎 富司君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   加賀美秀夫君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      黒木 忠正君         警察庁刑事局国         際刑事課長   新田  勇君         科学技術庁原子         力局調査国際協         力課長     川崎 雅弘君         科学技術庁原子         力安全局保障措         置課長     栗原 弘善君         法務省刑事局総         務課長     吉田 淳一君         法務省入国管理         局入国審査課長 山野 勝由君         外務大臣官房審         議官      内藤  武君         外務大臣官房領         事移住部長   賀陽 治憲君         外務省国際連合         局外務参事官  小林 俊二君         運輸省海運局次         長       山元伊佐久君         運輸省航空局管         制保安部長   飯塚 良政君         海上保安庁警備         救難部長    久世 勝巳君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十六日  辞任         補欠選任   三池  信君     玉沢徳一郎君   不破 哲三君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   玉沢徳一郎君     三池  信君   寺前  巖君     不破 哲三君     ――――――――――――― 十月二十二日  金大中氏の原状回復を求める決議等に関する請  願(宇都宮徳馬紹介)(第二四七号)  同(河上民雄紹介)(第二七五号)  日中平和友好条約即時締結及び批准に関する  請願(松沢俊昭紹介)(第二七六号) 同月二十四日  金大中氏の原状回復を求める決議等に関する請  願(沖本泰幸紹介)(第三九一号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第四八〇号)  同(小林政子紹介)(第四八一号)  同(東中光雄紹介)(第四八二号)  同(不破哲三紹介)(第四八三号)  同(松本善明紹介)(第四八四号)  同(米田東吾紹介)(第四八五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の  規定の実施に関する日本国政府国際原子力機  関との間の協定の締結について承認を求めるの  件(第八十回国会条約第一〇号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉沢徳一郎君。
  3. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 本日、私は、先般起こりましたダッカにおけるハイジャック事件、その評価をめぐりましていろいろと考え方があるわけでございますが、しかし、わが国としましては、今後世界各国協力をいたしまして、今後このような事件再発防止全力を尽くしていかなければならぬ、かように考えるわけでございます。その点に関しまして、今回政府のとりましたハイジャック問題に関する解決の方法でございますが、外務省を初めとして、皆さんが総動員で人命救助第一にこの問題の解決に当たられましたことに対しましては、私もこれを評価するものでございます。  しかしながら、再発防止に果たしてこの解決がつながったかどうか、こういう点に関しましては、十分検討する必要があると考えるわけでございます。特に、わが国に対しましては、とかく外国新聞あるいは評論というものを見ておりますと、日本脅迫に屈しやすい性格を持っておるんではないか、おどかしに遭えばいつでも屈する、こういうような印象を与えておるということは、一つにはわが国の威信の低下にもつながりかねない、かように考えるわけでございます。  さらにまた第二点としましては、人命救助を第一に考えた結果、二年前のクアラルンプール事件でもそうでございましたが、その際犯人要求に応じまして刑務所から出した人間が今回の事件においても関与している疑いが強い、かように言われておるわけでございます。したがいまして今回も人命救助第一ではございましたが、超法規的な処置によりまして刑務所から海外に出ました犯人が再びこのような事件を起こす可能性というものは十分あり得る、かように考えるわけでございます。そこで、外務省としましてはこの問題につきましては世界各国協力をしましてその再発防止のために全力を尽くさなければならぬわけでございます。この点に関しまして外務大臣はどのような見解政策を今後各国に呼びかけていくのか、その点についてまず御質問を申し上げたいと存じます。
  4. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま玉沢委員のおっしゃいました、今後ハイジャック事件あるいは人質事件の根絶を期すような努力日本政府として真剣にいたさなければならない、おっしゃるとおりでございまして、政府といたしましてもこの種の事件は国際的な協力にまつところが大きいわけでございますので、外務省といたしましてもその政府の方針に従いまして努力をいたす所存でございます。  現に国連総会の場におきましてワルトハイム事務総長からこの問題につきまして問題の提起があり、わが国といたしましては、最も身近に事件に関心のある国といたしまして積極的にこの問題に努力をするという活動をすでに始めているところでございます。  わが国主張といたしまして、現在のところこの種事件につきまして国際的に非難をするということが第一でありますが、第二には、これらの防止につきまして各国がテロリストにつきましての情報交換を緊密に行っていくべきだという点が第二であります。第三といたしましては、東京、ヘーグ、モントリオール、この三条約にあらゆる国が加盟をすべきであるという主張をいたしたい。これら三点が主要な柱でございますが、これらにつきまして日本政府といたしまして真剣に努力をいたす、こういう所存でございます。
  5. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 いま大臣から、国際連合におきましても十分の処置をとるように呼びかけてまいりたい。国際連合ではハイジャック防止が議題の一つに取り上げられておるようでございまして、非常に結構であるわけでありますが、各国の理解を深めるという点におきまして一層の御努力を願いたいと思うわけでございます。  同時にまた、いま対策の一つとして挙げられましたハイジャック防止のための条約東京条約ハーグ条約モントリオール、これらの条約におきましては、たとえばハーグ条約の第二条におきましては、ハイジャック犯人に対しましてはそれぞれの国で重罪を課すべきである、こういうような条項もございますし、あるいは関係情報をお互いに交換する、犯人引き渡しをする、あるいはまた締約国ハイジャック機がその国におりた場合には、実力行使も含めた、つまり行使をいたしまして解放する、こういうような処置まで決められておるようでございます。ただ残念ながら先般のこのハイジャック事件当事国でありました問題国となりましたところのバングラデシュ、アルジェ、こういう国々はこのいずれの条約にも加入しておらなかった。これはきわめて残念なことでありますが、外務省見解としまして、こういう国々がなぜこの三つの条約というようなものにまだ参画しておらないか、そういう点について御見解を賜ればありがたいと思います。
  6. 小林俊二

    小林説明員 お答え申し上げます。  これらの国々はいずれもアラブ諸国であるかあるいはこの諸国の現在の中東問題をめぐる立場に同情的な諸国でございます。アラブ諸国にとりましては現在中東問題が非常に緊迫した状態でございまして、年内にジュネーブ会談が再開されるかどうかという瀬戸際に来ておるわけでございます。見通しは必ずしも明るくない面もございます。そこでこれらの国々考え方といたしましては、将来のこういった、かれらの目から見れば一つ闘争でございますが、その闘争を推進する手段としていささかもその手を縛られたくないという感じが非常に強く背後にあるようでございます。そのためにこういうハイジャック事件というような国際的な非難を呼びやすいこういった手段についてまでも、将来の行動、立場を拘束されたくないといったような考えが非常に強くあるようでございまして、この点につきまして私どもといたしましては、何とか少なくとも航空機ハイジャック、そういう特定の行為につきましてはその排除につきまして合意を取りつけたいものと考えて努力している次第でございます。
  7. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで犯人アルジェに逃げ込んでおるわけでございますが、情報交換という点におきまして、政府犯人引き渡し要求されたようでございますけれども向こうの方では間接的に断ってきた、しかしながらこれらの犯人がいまアルジェにいるのかどうか、あるいはまたアルジェからほかの地域に移ったのかどうか、こういう点については何らかの情報は得ておるわけでございますか。
  8. 加賀美秀夫

    加賀美政府委員 お答え申し上げます。  アルジェに引き取られました犯人につきましては私どももいろいろ広範囲の国々に訓令を発しましてこの情報収集に努めております。ただ現在までのところ果たして犯人アルジェリア国外に出たかどうか、あるいはまだ国内にいるのかどうかという点につきましてはいろいろ情報がございまして、先般新聞に報道されました、犯人がすでに国外に出たという情報につきましても確認できない状況でございます。私どももちろんいろいろなチャンネルを通じまして情報の確認に今後とも努めたいと思っております。
  9. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで日本処置とそれから西ドイツがとった処置でございますが、いろいろ対比されているわけでございます。  そこで西ドイツ政府は、最終的にはソマリア政府了解をとって実力武装部隊を送り込んで鎮圧をしたわけでございますが、国際法的に見まして、つまりそのような相手国政府了解をとればこういう措置というものは可能であるかどうか、こういう点も今後十分検討しなければならぬと思うのでありますが、まずその点が一つ。  それからもう一つは、ソマリア政府は、いろいろ調べてみましたところが、ハイジャック防止の三条約には加盟しておらないわけです。加盟しておりませんけれども、しかし西ドイツ政府の要望を入れて、ハイジャック防止に関しましては十分な協力をしたわけでございます。そうしますと、この条約に入っておらなくても、いわゆる外交的な努力によりましていろいろな処置というものが可能になってくるのではないか、こういうことを示しておるわけでございますが、こういう二点に関しまして御質問を申し上げたいと思います。
  10. 賀陽治憲

    賀陽説明員 お答え申し上げます。  第一の点でございますが、国際法上は司法警察権を他国で行使いたします場合には、当該国許諾を必要とするということでございます。したがいまして、警察力の派遣及びその行使という点については、この場合にはソマリア許諾が必要であったと考えております。  それから条約との関係でございますが、先生御指摘のとおりに、条約とは別個にソマリア政府は今回の西独政府との対応関係において対処した、こういうふうに見るのが正しいかと考えております。したがいまして条約との加入加入関係でなくて、別個の観点から西独政府協力をした、こういうふうに考えるべきであろうかと思っております。
  11. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで、二年前のクアラルンプール事件が十月二十三日の毎日新聞に載っておるわけでございますが、これに関しましては、二年前には日本政府武装警官現地に派遣しようと試みたのでありますけれどもマレーシア政府の拒絶によってこれができなかった、こういうような記事があるわけでございますが、これは事実かどうか、ちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  12. 三井脩

    三井政府委員 事実ではございません。
  13. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 事実ではないということでございますが、ただ、今後政府におかれましては、やはり西ドイツ方式実力をもろてこうした問題を解決することができないというならば、つまりいつまでも過激派要求に屈して屈辱的な解決を見なければならぬ。今回は六百万ドルあるいはまた凶悪犯人の解放ということでけりを見たわけでありますが、今後ますますこういう事件がエスカレートをしまして頻発をしてくる可能性が十分あると私は考えるわけであります。そういう点におきまして、いま政府はこの点に関しまして実力をもってでも解決をするという点に関しまして検討しておるということでございますが、私は現在の国内法におきましてもその運用によっては十分できる、かように考えておるわけでございますが、これに関しましてどういうような検討をされておるのか。警察庁、ひとつ御見解を賜りたい。
  14. 三井脩

    三井政府委員 西ドイツであのような措置をとったわけでございますが、私たちこの種事犯にどう対処するかということにつきましては、広く諸外国の例をも参考といたしまして研究を続けていくという態度でございます。そういう意味で、何よりも国内で発生したときにいろいろの状況がありますので、処理ができるような体制と力というものを整えなければならぬということを当面の私たちの急務といたしておるわけでございますが、海外の問題につきましては、いまお話しのようにいろいろの問題がございます。  その問題の中の一つが法的問題だ、こういうふうに思いますけれども、私は、やや話が迂遠になるかもわかりませんけれども、法的な問題が解決したからといってできるかということには問題があるわけでありまして、西独状況を見ましても、国を挙げてああいう措置を可能にするような諸条件が整っておるというところに意味があるわけでありまして、その他の条件を抜きにして、法的にできるかどうかだけを機械的に、ある意味では機械的にそこだけを問題にするということには賛成でない、こういう気持ちでございますが、たとえば何よりもあれは奇襲でありますから、やるぞ、やるぞと言って奇襲は成り立たない、こういうことになるわけでございます。まあ、卑近な一例でございますが……。  そこで御質問の法的な問題ということでございますが、この点につきましては法解釈上いろいろの考え方がございます。はっきりしておりますのは、いまの警察法はそういうことを予定し、想定して規定されておらないという問題がございます。そういたしますと、何よりも外国政府がそういうことを認めるかというような大きな問題点があるわけでありますが、外国政府が認めればわが方が国内法的にできるのか、こういう問題になってくるわけでありますが、この点についてはできるという考え方も可能でありますし、またできないという考え方もありまして、目下関係のところといろいろ検討中であるということでありまして、私は何よりも、そのことも大事でありますけれども、むしろその他の諸条件が熟するようにいろいろと努力することが大前提として大切なことではないかというように考えております。
  15. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 法律上の諸問題は今後検討を十分していただきまして、ただ、法解釈問題云々ではない、こういうことでございますが、確かにそのとおりでございます。ただし、わが国は何と申しましても議会制民主主義でありますから、やはり議会制民主主義というものはそのとうとい自由とそして法律によって治められる法治主義というものが崩壊をすれば、これは結局議会制民主主義というものの土台を失うものだ。そういう観点からやはり日本民族繁栄を確保し、国民の基本的人権を守るという強い決意をもって今後私どもがこれに当たるべきである、かように考えるわけでございます。そこで、もし今後私どもが強い決意をもってこの問題に臨まなければ、次はどういう事件が起こるか、こういう点をよく考えて、われわれは将来に向かってあるべき事件に対処しなければならぬと思うわけであります。  現在はこの航空機ハイジャック問題等いろいろやっておりますけれども、次にねらわれるのはどこかと申しますと、いままでもありましたが、在外公館あるいは海外日系人――私も非常に驚いたのでありますが、先般中南米に参りまして、外務委員長、それから大坪委員とグアテマラという国に参ったのでありますが、中南米に参りますと、日本という国は非常に金持ちであって、ここはおどかせば幾らでも金がある、こういうことであるかどうかわかりませんが、アメリカ大使、その次に日本大使あるいはその家族が左翼ゲリラ人質の対象になっておる。われわれ日本政治家も、向こうがどういうふうに考えたのかわかりませんが、これは非常に金持ちの連中であると考えたのかわかりませんが、護衛が五人もつきまして警備をしておる、そういうことであったわけでありますが、また現地で働いている日系人企業におきましても、労使関係の交渉にピストルを携行しなければ話し合いができないような、そういう険悪な状況もあるわけでございます。  したがいまして、在外公館警備の問題あるいは日系人の保護をどうするか、こういう点におきましてもいまから外務省十分検討をしてやっていく必要があるのではないか、かように考えるわけでございまして、これは外務省、ひとつこの点につきまして十分な配慮をしていただきたい。この点についてもし御見解があれば承っておきたいと思います。
  16. 内藤武

    内藤説明員 お答えいたします。  先生のおっしゃいますとおり、在外公館並びに進出企業に対して、いろいろな形での脅迫、その他爆弾を仕掛けたとかそういったことも再々起こっております。かたがた、われわれといたしましては、さきに大口総領事昭和四十五年にゲリラによって誘拐されて、そしてそれによって、先方の要求する犯人の釈放という措置を通じてようやくこれを釈放することができたというような生々しい体験も持っておりますので、中南米におきましてもそれからその他の地域におきましても、一般的にこのようなことを繰り返すまいということで再々注意しておるわけでございます。  具体的には、在外公館に対しましては、このような事件発生に備えて警備強化ということで、あるいは防弾ガラスを仕掛けるとか警報装置を導入するとか、それから来訪者についてチェックするとか、そういったことで、とりあえずできる限りのこと、想像し得る限りのことをずっとやっておるわけでございまして、かたがた在留邦人並びに在留の商社その他に対しましても、何らかのことがある際には直ちに大使館に連絡するようにということで非常に緊密に連絡しておりまして、屡次起こった事件に際しましては、そのような連絡に基づいて直ちに土地の治安関係者に言って、そのような爆弾でありその他の脅迫に対して対応するということで従来対処しておりますし、今後このような事件がいよいよ起こる可能性というものは必ずしも排除できませんので、一層注意して行ってまいりたいと存じておる次第でございます。
  17. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 ハイジャックの問題はそのくらいにいたしまして、次に中南米外交につきましてお伺いをいたしたいと存じます。  わが国は、最近ASEANの国々と非常な緊密な関係を保っておるわけでございます。これらの国々とは今後も相互補完的な意味での経済協力技術協力等をやっていかなければならぬと思うわけでありますが、わが国が今日直面しておる重要な問題としましては、何と申しましても、福田総理が申し上げますように資源有限時代であります。資源を確保しながら日本繁栄を確保していくという努力がなければならぬと思うのであります。  そういう点に関しまして私どもが注目しなければならぬのは、何と申しましても、資源を豊富に持っておる地域と申しますのは中南米でございます。先般、私は八月十一日から二十九日まで約二十日間にわたりましてこれらの国々十カ国を回ってきたわけでございますが、現地日本に対する感じというものを受け取ってまいりますと、日本に対しては非常に期待感もあるし、非常に親日的な感情も官民挙げて持っておる。ところが、返ってくる日本政府からの反応というものは余り中南米地域を大事にしておらぬのじゃないか。一つ例を挙げますると、外務省には中南米局というものも存在しておらぬというのが向こう国々から返ってくるのであります。  ところが、将来性を考えてみますと、メキシコは今後五年間で現在の日産十万バレルの石油の生産から二百二十四万バレルぐらいまで持っていく計画を立てておるわけであります。さらにはまたボリビア、これは石油もございますし、鉱産国であるととは御承知のとおりであります。あるいはまた最近産油国として脚光を浴びておりますトリニダードトバゴあるいはベネズエラ、こういう非常に重要な資源を持った国がたくさんあるわけでございますが、外務省はもっとこういう国々友好の実を上げるべく強力な政策を展開すべきじゃないか、かように考えるわけでありますが、外務大臣、ひとつお願いします。
  18. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまわが国中南米外交に対します姿勢につきましてお話があったわけでございます。わが国といたしまして、また外務省といたしましても、中南米外交重要性というものはもうよく認識しておるところでございます。特に資源に恵まれない日本といたしまして中南米に依存するところも多いわけであります。しかしながら、現在までのところ、たとえば日本援助政策をとってみましても、中南米に対しましてはいわゆるODA、政府開発援助はきわめて少額にとどまっております。開発のために民間主体開発が進められておるということでありまして、今後とも、わが国といたしまして政府開発援助も増額を図っていかなければならない重要な地域であると考えております。  また、中南米局の問題につきまして、昨年は皆様方にも大変な御尽力をいただいたのでありますが、まだ実現を見ておらないというのは大変申しわけなく思います。来年度予算を期して中南米局の新設はぜひとも実現いたしたい、かように考えております。
  19. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 今後とも努力をしていただきたいのであります。  そこで、大臣にも御認識をいただきたいと思ってお話を申し上げるわけでありますが、メキシコはいまメキシコ湾岸の方で石油を生産いたしておるわけでありまして、今後増産をする場合に日本の方でもぜひ石油を買ってもらいたい、こう言っております。ただし、隘路は、OPECの諸国よりも一バレル当たり一ドル高い、決して向こうの方は値引きをしない、こういうことで、これが隘路になっておるわけです。もし日本メキシコから石油を買うということであれば、四十八口径のパイプラインをメキシコ湾岸から太平洋に引く、こういうことを向こうの方では申し出ておるようでございます。  そこで、もしこのパイプラインが引かれるように相なりますれば、いま隘路となっておりますたとえばトリニダードトバゴとかベネズエラから石油を持ってくる場合にはどうしてもパナマ運河を通らなければいかぬ。パナマ運河を通りますと、これは五万トンの油送船しか通れないわけです。そこでコストが非常に高くなる。しかし、もしメキシコ湾岸から太平洋に油送管が通るというようなことになりますれば、トリニダードトバゴとかベネズエラからも石油を持ってくるという機会が増大をするチャンスがあると思うわけであります。  そこで大臣に、来年はメキシコのロペス大統領がおいでになるようでございますが、こういうことを踏んまえまして、やはり前向きにこれは検討をする必要があるのではないか、かように考えるわけであります。  また、ベネズエラにおきましては、うちの方では金はたくさんある、したがって日本からは技術協力をやってくれ。ところが、向こうの方で相当希望しておるようでありますが、これは言語の問題等もございまして、一名ぐらいしか来ておらない、こういうことでございます。こういうのも今後増大をする必要があるのじゃないか。  それからまたトリニダードトバゴでございますが、ここはいま産油国としまして経済力もついてきておりまして、カリブ海の中心でございます。カリブ海は、やはり中南米ということで含めるのじゃなくして、カリブ海独自の一つの外交というものも設定をしてかかる必要があるのじゃないか。カリブ海には五百万人、五十億ドルのマーケットがあると言われておりますが、わが国はこういうところにほとんど進出をしておらない。しかもカリブ海の中心であるべきトリニダードトバゴには、わが国から大使館すら開設されておらないという状況でございまして、カリブ海外交の貧弱性がここにあるのじゃないかと思うのでありますが、やはり今後こういうところにも大使館を設定いたしまして、資源有限時代に備えて強力な中南米外交を展開することを要望するものでございます。  最後に、外務大臣の御見解を賜れば大変ありがたいと存じます。
  20. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 メキシコの油の問題につきまして、これは大変大事な、大きな問題でございますので、今後鋭意検討をさしていただきたいと思います。  また、カリブ海諸国、最近大変脚光を浴びてきたわけでございまして、これに対します。特にトリニダードトバゴに公館を置くべきであるという御主張に対しまして、私どもも来年度予算の編成を前にいたしまして、この問題について努力をいたしたいと思います。
  21. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 以上で終わります。
  22. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、井上一成君。
  23. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、まず最初に、日本と韓国の正常な形での外交をより強く進めていくことが、日韓両国の永遠の友好を築く原則であるという考えの中から、いま両国間においていろいろとそれを阻害する要因があるわけでありますが、そこで、二、三日韓の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、昨日、一昨日と論議がなされておるわけでありますけれども、竹島の問題についてお伺いをいたします。二十四日の東亜日報に竹島に韓国の漁民が住みついたということが報道されたわけでありますけれども、きょうただいまの時点でこの問題について外務省当局は事実を確認されたのか、お尋ねをいたします。
  24. 中江要介

    ○中江政府委員 今日ただいまの時点ではまだ確認しておりません。
  25. 井上一成

    ○井上(一)委員 これは竹島という、あるいはわが国の固有の領土という観点に立てば対応がきわめてまずいというか、誠意がないというか、真剣さがないと私は思うのです。それで、いまこれからでき得ることで、すぐにでも在韓日本大使館を通して、その漁民が住民登録を竹島にしておるのだというようにも報じられているので、この点について即刻問い合わせるべきだ。確かめるべきだ。すぐにできるのですから、現地確認以前の問題として、住民票を竹島に移したというように報道されているので、この私の質問の点もすぐにできますから、即刻おやりになる、いま直ちに大使館にその指示をなさってはいかがでしょうか。なさる用意があるのでしょうか。
  26. 中江要介

    ○中江政府委員 そのことでございましたらすでに東京とソウルでやったわけでございまして、韓国側でその新聞報道の事実についていま調べてこちらに返事が来るという段階でございまして、昨日の午後四時に私は在日韓国大使館の次席であります公使を呼びまして本件について申し渡しております。他方、ソウルにありますわが国大使館に対して訓令を打ちまして本件について確認方を指示しておるわけでございます。その返事が来ていないという意味で、ただいま、いまの時点では確認してないと先ほど申し上げたわけでございます。
  27. 井上一成

    ○井上(一)委員 これはおかしいと思うのですね。これは役所間の問題ですけれども、すぐにそれはわかるわけなんですね。住民票が移されておるかどうかということはすぐにわかることなんですけれども、いまだに返事がないということですが、すぐにもう一度大使館に督促をする。何日たっているのですか。何時間たっているのですか。きょういまの時点までそのことも事実確認がなされないというような日本と韓国のいまの外交状態ですか。
  28. 中江要介

    ○中江政府委員 日本と韓国の外交状態がどうかということは別といたしまして、昨日の夕刻でございますのでもう返事が来てもいいころかとは思っておりますが、いまのお話でもございますので督促をいたしましてできるだけ早く確認をいたしますが、これは本来は、確認するということ自身も、普通の形で確認するということは、わが方の主権の及んでいる地域で違法に行われていることでございますので、言葉遣いその他にも細心の注意を払いながら、日本立場を害さないで、かつ、事実を確かめるということで鋭意努力しているということで御了承いただきたいと思うわけでございます。
  29. 井上一成

    ○井上(一)委員 日韓の国交正常化前の昭和二十九年の八月に韓国側が警備隊を常駐させる措置に出てきたですね。そういうことは非常に信義に反することであったわけですが、今回の事件はさらにそれに輪をかけた不信行為であるというふうに私は理解をしているのです。いま竹島に韓国の漁民が住みついたということは、平たく言えば日本の主権を侵害されているおそれがあるわけなんですよ。事は非常に重大である、こういうふうに私は思うのです。にもかかわらず、お互いの両国の友好を阻害しないでなおかつ円満にこれを解決したいということなんでしょうけれども、しかし、現実は主権にかかわる重大な不信行為であるという私の受けとめ方、そして政府外務省はそれじゃこの行為をどのように受けとめていらっしゃるのか。
  30. 中江要介

    ○中江政府委員 これは、今回漁民が住みついたということ自身を取り上げますと、日本立場からいたしますと、日本に正規に入国して日本での在留資格をとって在住すればいいわけでございますから、住みついていること自身が問題というよりも、住みついた人間を、韓国領内に自国民が住んでいるという、そういう手続で韓国が処理しているというところが問題なわけでありますから、その基盤にありますのは竹島に対する領土主権を主張しているかしていないかという根幹に触れる問題、こういうことでございまして、そういう観点からいたしますと、漁民が住みつくということも、住みついている漁民をどう扱っているかということも一つの対応でございましょうし、再三申し上げておりますように、先方の警備員がいたり、あるいはそのための施設が構築されたり、あるいはその近くに行きました日本の漁船なりかつては報道関係航空機がいろいろ文句を言われたりということ自身も同じく基本に触れる問題でありまして、その基本とは、これは申し上げるまでもありませんが、両国間の領土主権に関する紛争、この紛争は、戦後の日本のとっております立場はあくまでも平和的手段によって解決するということでございますので、しんぼう強く、韓国との間で何とか話し合いでこれを解決していきたいということで、過般の日韓定期閣僚会議の席上でも、わが方鳩山外務大臣から先方外務部長官に本件を提起して注意を喚起しつつ、何とかこれを話し合いによって平和裏に解決したい、こういうことで、速戦即決というふうにはまいらない点はございますけれども、基本の立場を崩しているということは、他方私どもは一歩もいたしていないということは御認識いただきたい、こう思います。
  31. 井上一成

    ○井上(一)委員 新聞の報道によれば、外務省は強く抗議をする、あるいはそういう姿勢を示されているわけです。どんな形で抗議をなさるのか、抗議の形、具体的にどういう方法を考えていらっしゃるのか、これは外務大臣にひとつお答えをいただきたい。そして、基本的には主権、いわゆる領土の問題であるということ、しかし現実にはそこに住みついているという事実を確認すれば、それでは、日本の領土に不法に韓国の漁民が居住をしたということになれば、あえて強制送還をする用意があるのかどうか。当然日本法律を遵守していく形の中でとられ得るべき具体的行為だと思いますけれども、あえてこの点についてもお尋ねをいたしたいと思います。
  32. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 竹島に漁民が住みついたという問題、また、その住民登録を竹島に移したという点につきましては、ただいま事実の確認中でございます。これに対しまして、もしこれが新聞報道のとおりだとすればいかなる措置をとるか、こういうお尋ねだと思うのでありますが、私どもまだいかなる措置をとるかは決めておりませんけれども、これは今後の問題に対しまして大変大きく影響を持つ問題であろう、こう考えますので、単なる抗議だけにとどまらずどの程度の措置をとるかということにつきまして、なお今後検討をいたしたいということでございます。その他につきましてはアジア局長から御答弁いたします。
  33. 中江要介

    ○中江政府委員 不法入国あるいは不法滞在という観点から見ますならば、これは今回の漁民を待つまでもなく、いまおります警備隊員も日本の法を犯して滞在しておるわけですし、そういう意味では、日本としては、その人たちも含めて退去強制ということは理論的には考え得るわけです。しかし、それを実施する、つまり実効支配がどう及んでいるかということは、これは申し上げるまでもないような状況でございまして、そのときに力をもって排除してわが方の実効支配を及ぼすのかという、その道はとらない。しかし、日本としての基本的な立場はあくまでも明らかにしておいて、一つ一つの事象が、将来場合によってあるいはあるかもしれない司法的解決というような場合に日本立場を害さないようにという手だては、最小限度ははっきりとっておく、その上で日韓友好観点から韓国がどういうふうに対応するかということを見守るというのが現在の状況でございます。
  34. 井上一成

    ○井上(一)委員 強制送還をするのが当然である、現実的にはそういうことが警備員を含めてされておらないという、それはどんな理由なのか、あるいはほかにもそういう特例があるのかないのか、これだけなのかどうか。  それからもう一点、外務大臣、この問題は大変重要な問題だ、そして世界でも例がないと私は思うのですよ、こういう形の。そういうことについて、政府として閣議でこの問題が取り上げられたのか。そしてそれの対応策というか、これに対する日本政府の対応は具体的に話し合いがなされたのか、あるいはいま検討中なのか。もう検討中だという答弁は本当はいただきたくないわけです。そういうことについてどういうふうにこの問題に取り組まれていらっしゃるのか、もう一度お聞きをしたいと思います。
  35. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この問題につきましてただいまのところ新聞報道しか得ておりませんので、私ども先方にいま急遽照会中でございまして、先方の返答あり次第この問題につきまして対策を協議いたしたいというのが現実でございます。
  36. 井上一成

    ○井上(一)委員 なぜ確認を急がないのです一か。――なぜ確認を急がないのですか。現地に飛ぶことすら可能なんですよ。日帰りのできる範囲内。そしていまの日本政府は、日韓の友好を深めていこうという姿勢にある中で、この問題がなぜ今日事実が確認をされないのか。あなた方は本当に竹島を日本の領土として真剣に対応する気持ちがあるのかないのか。私はそういう点で、いままで取り組んでこられたことは、竹島は日本の領土だという強い信念の中で取り組んでこられたように見受けられない、こういうふうに思うのです。いかがですか、いますぐに、住民票だけでも確認をきょうじゅうになさいませんか。
  37. 中江要介

    ○中江政府委員 わが方の大使館員なり何なりが先方の行政事務所に赴いて、権力をもってそのものを確認するということは、これができないことは御承知のとおりでございますので、どういたしましても韓国の官憲の手を経て確認するということでございますが、私どもとしても決して急いでいないわけではございませんので、さらに督促いたしまして、きょうじゅうと言わずにできるだけ早く入手するように、改めて訓令いたします。
  38. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務大臣いかがですか。このことに限って大臣にかわるべき使者を韓国に使いする、派遣するというお考えは持っていらっしゃいませんか。
  39. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 単なる抗議でなしに、もっといろいろな強い措置がとれないかということを申し上げておるのでございまして、その点につきましては、なおいまの御意見も体しまして検討をいたしたいと思っております。
  40. 井上一成

    ○井上(一)委員 いや、もう検討の段階ではないと言っているのです。具体的に――再度お尋ねをしますが、この問題解決のために政府代表、あるいは外務大臣としてあなたの代理を使いさすお考えはお持ちですかいかがですかということです。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  41. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 昨日もお答え申したのでございますが、単なる抗議では足りないと私は考えておりまして、日本政府のもっと強い意思を表示する方法を何らかとりたいというふうに考えておるところでございます。
  42. 井上一成

    ○井上(一)委員 私は、そのために、平和裏に、友好を損なわない形の中で何とか解決をしたいといういまのお答えだと思うのですけれども、だからこそなおさら、あなたの代理としてだれかを韓国に派遣する考えがあるのかどうか、それを聞いているわけなんです。
  43. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いまおっしゃいましたようなことも含めまして何らかの措置をとりたいということをいま考えておるところでございます。
  44. 井上一成

    ○井上(一)委員 この問題に関連して海上保安庁はこの事実確認のために何らかの対応をなされたのか、お聞きをいたしたいと思います。――いまの質問については答弁は最後で結構です。今回のこの問題は、韓国として当然近いうちに二百海里宣言を行うであろうと思われるわけであります。そういう中でのこの事実は、そのときのいわゆる自国の領土である、韓国の領土であるという主張のための予備的な行為ではなかろうかというふうにも考えられるわけですけれども外務省はそういうことについてどう認識をなさっていらっしゃるのですか。
  45. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほども申し上げましたように、今回漁民が在住したということに限って申しますと、そこに韓国政府の意思が働いているかどうかという点が一つ問題でございますので、その点について確認された上で評価をしなければならない、こう思います。  それを含めまして、一般に韓国政府が竹島について警備員を配置したり施設を構築したりあるいは日本側の航空機、漁船に対して警告を発したりというようなことは、これは予備的な措置というよりも韓国の立場に立って、つまり韓国としてはあれは自分の領土主権下にある島だ、こういう立場でございますので、その立場に立ってとっておる措置だ、こういうふうに思いますし、これに対して毎回強く反駁しておりますのは日本立場に立ってやっておるわけで、どういたしましてもこれは日韓両国の領土主権に絡まる国際法上の紛争である。したがって、こういうたぐいの紛争は国際司法裁判所で判決を求めるのが最も妥当であるというのが日韓正常化以来わが方がとっておる立場でございまして、この立場に害のあるようなことが行われないようにという点は先ほど申し上げましたように細心に注意を払っている、こういうことでございます。
  46. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務大臣に重ねて私はこの問題で確認をしたいと思います。  一刻も早く事実関係調査するということであります。そして、それと同時に、即刻韓国にこの問題解決のための使者を派遣をすることをも考えておるというふうに私はさきの答弁で理解をしたわけです。  さらにお尋ねをしたいのですけれども、もし韓国が日本主張を聞き入れないというか、相入れない、相対立する行為、行動をとった場合には、外務大臣はよほどの強い決意を持っていらっしゃるんだと私はかたく信ずるのですけれども、仮定の中でのお尋ねというのは非常に私もしたくないのですが、あえてこの問題については、もし日本の正しい主張が受けとめられなかったとすれば、そして現実にそこに韓国の漁民が住んでいるという事実が確認をされれば、外務大臣としては相当強い決意をお持ちでしょうか。
  47. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この漁民が仮に新聞報道のように竹島に永住といいますか、定住をするというようなことになった場合におきまして、その影響するところは各方面に及ぶであろうと考えられますので、これに対しましてまだいかなる措置をとるか、これは調査次第でありますけれども、これにつきましては日本政府といたしまして真剣な態度で取り組まなければならない、このように考えております。
  48. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、私はこの問題の早期解決努力されることを要望して、次の問題に触れてみたいと思います。  常に私自身もこの委員会を通してただしてきたわけでありますけれども金大中事件を解明することが日韓両国のいわゆる友好平和を築くこれまた一つの大きな要因になるんだということを申し上げてきたわけです。そういう意味から、たとえささいなことであっても私はこの事件解明に何としても努力をしなければいけないということを申し上げてきたわけであります。いわゆる関係当局でも十分御努力はなされていると思います。がしかし、さらに私の調査をもとにここで若干の質問をいたしたい、こういうふうに思うわけであります。もちろんきょう私自身が質問をする点については、いままでに質疑がされてないいわゆる新しい私なりの調査での資料であります。十分当局の方ではもうすでに御承知をしていらっしゃる部分もあるかもわからないし、そういう意味では、前回申し上げたようにお互いに事件解明のために相協力していくんだという立場に立ってお答えを私は特に願いたい、こういうことであります。時間の関係もあるので、私の尋ねたことについて率直にあえてお答えをいただけるようにまずお願いをしておきたいと思います。  八月の十九日以降九月十九日、約一カ月間に大阪港へ入港した韓国船は何隻ですか。
  49. 三井脩

    三井政府委員 いま八月十九日とおっしゃいましたけれども、八月十五日から九月二十日まで調べました。これによりますと、延べで百二十三隻入っております。
  50. 井上一成

    ○井上(一)委員 その中で二回以上入港した船は何という船ですか。
  51. 三井脩

    三井政府委員 二回以上この期間中に入港しましたのは二十四隻ありますけれども、その一隻は「竜進号」、「竜進号」を含めまして二十四隻ということでございます。
  52. 井上一成

    ○井上(一)委員 八月二十六日「竜進号」が入っております。そして、九月二日、九月十九日「竜進号」が入っております。それ以外にも「世竜」だとかいう船が入っているわけですけれども、これらの船の乗組員は日本へ上陸がすべてできたでしょうか。
  53. 三井脩

    三井政府委員 その点、調査しておりませんので、ちょっとわかりかねます。
  54. 井上一成

    ○井上(一)委員 私の調べでは、日本への上陸ができ得なかったという事実をつかんでおるのですが、すべての乗員ということはさておいて、いま申されました「竜進号」の乗組員は上陸ができ得なかったということも承知していらっしゃるでしょうか。
  55. 三井脩

    三井政府委員 「竜進号」の全部の乗組員が上陸しなかったかどうかという点については承知いたしておりません。
  56. 井上一成

    ○井上(一)委員 これは乗組員が上陸でき得なかったわけです。それは何らかの理由があるわけなんですけれども、十分お調べになる必要があるんじゃないでしょうか。  なお、あえてここでお尋ねをいたしたいのですが、その船の乗組員の中に、金大中氏を拉致したと思われる「竜金号」に乗っておった乗組員がこの「竜進」に乗船をしておったかどうか。
  57. 三井脩

    三井政府委員 金大中事件捜査の観点から当時の船の捜査をしており、その船の一隻が「竜金号」であるわけでございますが、「竜金号」の船員につきましては、その後わが国に寄港する等の場合には事情を聴取するように努めておるわけでございます。  いまお尋ねの「竜進号」にも、事件当時「竜金号」に乗っておった船員が乗って日本に寄港しております。
  58. 井上一成

    ○井上(一)委員 その乗組員は何という名前で、そして警察はその乗組員に対して事情聴取をされた事実がおありでしょうか。
  59. 三井脩

    三井政府委員 その乗組員の名前は、まあいろいろな人について聞きますので、ぜひ名前は控えさせていただきたいと思いますが、この人については過去に日本に寄港の際に数回事情聴取いたしております。今回の寄港につきましては事情聴取をいたしませんでした。
  60. 井上一成

    ○井上(一)委員 複数の人に事情聴取をされたのですか、限られた乗組員だけに事情聴取をしたのですか。
  61. 三井脩

    三井政府委員 事件当時「竜金号」の乗組員であった人につきましては、いま御指摘の方を含め数名につきまして事情聴取いたしております。
  62. 井上一成

    ○井上(一)委員 その全部の氏名は申し上げられないということですが、では私からそのうちの一名、鄭順男を取り調べましたか。
  63. 三井脩

    三井政府委員 先ほど申し述べましたように、具体的な参考人としての調べでございますので、その人の名前を公表するといいますか、こういうことについては捜査上いろいろの問題もございますので、せっかく御協力をいただいておる御本人がいろいろな意味で迷惑をこうむる点をぜひ避けたいと考えるわけでございます。  なおもう一つ、捜査的な観点から言いますと、捜査というのは、たとえば現場百回というような言葉にあらわされておりますように、事情聴取も何回も聞いてみるという中で事件解明に役立ついろいろなヒントが出てくるというようなこともございますので、いまお話しの人につきましても過去に数回調べましたが、なお引き続き調べていきたい、こういうふうに考えております。  名前等をいろいろ申し述べますと、どういう関係か、だんだん日本から足が遠ざかって、日本寄港の回数が減ってくるような傾向も見られますので、このことはやはり具体的な捜査への支障ということでもありますので、その個人名につきましては、ぜひ御理解を得まして公表を差し控えさしていただきたいと思います。
  64. 井上一成

    ○井上(一)委員 日本から遠ざかっていく、確かにもう来な吟であろうと私は思います。そのような状態をつくったのは一体だれなのかということなんです。  それで、ここで私、特定の名前を挙げたわけですけれども、確かに事情聴取されております。その調査の内容、そして状況、結果、これについて私はさらに詳しくお聞きをしたいと思います。
  65. 三井脩

    三井政府委員 それは捜査の内容ずばりでございますので、ぜひここでの御答弁は御容赦いただきたいと思いますが、端的に申しますと、「竜金号」で金大中氏を運んだのではないか、こういうような報道等がことしになってもありました。そういうような点も含めまして私たちは乗組員からそういう点を聞いておるわけでございますけれども、現在までのところ、金大中事件と結びつくような状況は、調べました船員等の供述の中からは出てきておらないというのがただいままでの現状でございます。
  66. 井上一成

    ○井上(一)委員 詳しい状態が、捜査の関係で答えられないということですが、さらに突っ込んで、捜査をなされた、事情聴取をなされた感触として、それらの乗組員が金大中氏拉致事件について何らかの事実を、あるいは事件究明に何らかの協力を得られるように受けとめられたのか。     〔毛利委員長代理退席、有馬委員長代理着席〕 全くもうそれらの乗組員からは事件解明のために得るところがない、あるいは何ら聞く必要が今後ない、さっきの答弁では、さらに日本へ来る機会を待っていらっしゃるような答弁なんですが、そういう立場に立つならば、何らかの形で事件解明に協力をしていただけるという心証を得られたわけでありますね。
  67. 三井脩

    三井政府委員 私たち事件解明がねらいでございますので、繰り返しいろいろな角度から事情をお聞かせ願いたい、こういうことでアプローチをしておるわけでございまして、ただいまのところまだ数人でございますので、なお多くの人から聞きたい、こういうふうに考えておりますが、それは事件との関係で大変協力的であるかどうか、こういうことについては特にどちらということをきめつけるといいますか、そういう心証を持ち得るようなものではないということでございます。
  68. 井上一成

    ○井上(一)委員 事情聴取の状況、そしてその事情聴取をされたときにだれが立ち会われたのかお尋ねをします。
  69. 三井脩

    三井政府委員 その詳細、私ちょっと存じておりませんけれども、この捜査は強制的に事情聴取するといいますか、取り調べるという性質のものではございませんので、あくまでも参考人として本人の任意、自発的な協力による供述をお聞きする、こういうことでございますので、そのときどきの状況に応じまして、大変忙しくて、上陸して警察署へ来てゆっくり話ができないというような状況の場合には、船内で事情をお聞きするというようなこともあろうかと思うわけでございます。
  70. 井上一成

    ○井上(一)委員 答えられる範囲はもう少し率直に答えていただかないと、時間的な制約があるので……。もっと申し上げると、上陸ができ得ないというのは、事故があったから、上陸のでき得ない条件であったからあえて船の中で聞いたのでしょう。あえて船の中で聞かざるを得なかったわけです。船の中で聞くについてもだれを立ち会わせたのかということを聞いているわけです。
  71. 三井脩

    三井政府委員 任意で相手方の都合を聞きながらできるだけ協力をしていただいて事情を聞かせていただく、こういう立場でございますので、相手方のおっしゃるような条件といいますか、状況のもとでお聞きをするということでございますが、ただ、だれが立ち会ったかという具体的なことをちょっと私いま覚えておりませんが、あくまでも任意の供述をお聞かせいただく、こういう立場努力をしておるわけでございます。
  72. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、船長立ち会いの中で事情聴取がされたこともあるわけですね。
  73. 三井脩

    三井政府委員 具体的なことをいまちょっと記憶しておりませんが、そういう場合もあり得ると思います。
  74. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらに「竜金号」当時に乗船し、その後「竜金号」が「唯星号」に名を変えて入港したそのときにも乗っておったというふうに思われる、生年月日も一緒で姓も一緒だという人物がおったわけですね。生年月日も姓も同じである、名前の最後だけが若干違うんだ。これは同一人物ではないということが明らかになったわけですけれども、この両名についてはどのように取り調べをしたのか、あるいはこの両名についてはどのような人であるのか。調査をした中で当局はどう認識をしているのですか。
  75. 三井脩

    三井政府委員 前段のこの人が二人の人で、調査の結果双子のきょうだいでございますので、別別の人でございます。  それで、「竜金号」に乗っておった人は弟か兄かちょっと忘れましたけれども、この人はその後わが国に入港しておらないというふうに私たちは理解しております。したがいまして、事情聴取をしておらないわけでございます。
  76. 井上一成

    ○井上(一)委員 確かに双子のきょうだいであり、「竜金」に乗っておった方が弟さんである。そしてそういうことについてその後事情聴取をしておらないということですが、さらに、それでは「竜金」の船長はその後日本へ来られたことがあるのかどうか、そして事情を聞かれたことがあるのかどうか。
  77. 三井脩

    三井政府委員 さっきの双子のきょうだい関係でございますが、事情聴取をしておらないということはいま申し上げたわけでございます。その事情聴取をしておらないから、全く日本に入港しなかったので聴取できなかったかという点については、ちょっと私は事実関係に自信ございませんが、聴取しなかったということははっきりいたしております。  それから次に、「竜金号」の船長につきましてはその後わが国に寄港の際事情聴取をいたしておるという状況でございます。
  78. 井上一成

    ○井上(一)委員 当時の船長からも事情聴取をした。さっき名前を出した鄭順男氏からも事情聴取しでおる。  私は、ここで申し上げたいのは、事件解明のために協力を得て事情を聞かしていただくのですから、そのような状況の中でそういうような状況をつくらなければいけない。ところが、極端な言い方かもわかりませんけれども、これは韓国がお決めになることですけれども、韓国の独自の厳しい制度の中で、いわゆる発言も含めて厳しい制度の中で、あるいは船長という上司、ときには統括官であり、監視役であり、ときには指導役をやらなければいけない人を直接その場に置いて取り調べをすることは、あえて本人をして真実をあるいは知っていることをしゃべらせるような状況じゃないと思うのですね。むしろあなた方はしゃべれない状況をつくり出しているのじゃないか、そういうふうに思うのです。いかがですか。
  79. 三井脩

    三井政府委員 事件の真相を解明するというわれわれの目標に向かって引き続き今日に至るも努力をしておるわけでございますが、いま御質問の点に関して言いますれば、捜査のやり方といたしましてはあくまでも任意捜査、任意の供述を求める、こういうことでございます。これをまた逆に相手方の立場から言いますと、日本の警察に物を言う必要はない、こういうことにもなるわけでございますけれども、そこのところを粘りまして、何とか事情を聞かしてほしい、こういう状況といいますか、こういう努力をいたした結果、ただいま数回にわたっていろいろ事情聴取ができた、こういうことでございますので、いま御指摘のように、立会人なしにやるとか、それからまた場所その他の状況につきましてもできるだけ任意で、自由にこちらが聞きたいことを話してもらえる、こういうような状況設定と申しますか、こういう努力は今後ともしていかなければならぬと思います。  そういう意味におきまして、われわれは当時の船員の入港の機会というものをいろいろな意味で大変期待をしておるわけでございますので、いま御指摘の点も含めまして、今後さらに努力をしてまいりたいというように考えます。
  80. 井上一成

    ○井上(一)委員 私がさっきから申し上げるように、事件解明をすることに向けての取り組みでなければいけない。だから「竜金」の船長も取り調べをしたのだ、そして鄭さんについても取り調べをした。しかし、郷さんの取り調べについても非常に不自然な取り調べをしているわけなんです。不自然な、われわれが理解のしにくい状況の中で取り調べをしておる。だから、極端なことを言えば、もう鄭さんは今後は日本へ来ませんよ。君が来ればまたいろいろとあえて聞かざるを得ない、あるいは郷さんの方にも、もうこういう問題にかかわることは自分としては非常に困るというような心証を逆に与えているわけなんですね、事情聴取をされた当局側の姿勢が。だから、あなた方がいままで努力をなさっていらっしゃったことについて、本当に事件解明のためにやられたのかどうか、むしろ私は若干疑問を持っているのですよ。だから、こういう質問をあえてしたわけで、これ以上この問題を大きくしたくないんだというような見方でその事情聴取が受けとめられておるとしたら、これは逆な方向に走ってしまうということなんですね。  それで、この問題については今後も十分取り調べや事情聴取をするという意向を打ち出されているわけですけれども、重ねてお聞きをします。  さらに複数の人々から、事情聴取をされた船長を含めて複数の人々から、今後も必ず事情聴取をしていくという姿勢は変えないわけですね。
  81. 三井脩

    三井政府委員 そのように考えておりますが、明言しますと、また日本へ来ないというような悪影響を及ぼすのも問題だ。しかし、捜査としては、事案の真相解明のためにできるだけ多くの人から突っ込んだ話を聞きたいという努力を継続してまいりたいと思っております。
  82. 井上一成

    ○井上(一)委員 もう一つお尋ねをしたいのですが、事情聴取をされたいままでの中間的な経過というもので、公表のできる範囲内では委員会でなさっていると思うのですけれども、乗組員以外、いわゆる船員以外ですね、船長を含めた乗組員以外からも事情を聴取されたことがありますか。
  83. 三井脩

    三井政府委員 意味がちょっとわかりかねますけれども事件当時「竜金号」の乗組員であった人が、その後その船に乗って、あるいは違う船に乗ってわが国へ来るときには、その機会をとらえて、努めて事情を繰り返しお聞きするということをやっておるわけでございます。たとえば「竜金号」ということをとらえて、貨物船ですから、「竜金号」に船員以外の人がおったということは私たちは承知いたしておりませんので、そういう人を調べたかということでありましたら、それは調べておらないということでございます。
  84. 井上一成

    ○井上(一)委員 私の尋ねているのは、乗組員以外の人から事情聴取をされたことがありますかということです。
  85. 三井脩

    三井政府委員 「竜金号」について言えば、「竜金号」の乗組員であって、「竜金号」の乗組員と何らかの関係にある人、友人その他という人を調べたかということでありましたら、調べはいたしております。
  86. 井上一成

    ○井上(一)委員 さらにこの問題については次回に詳しく問いただしていきたい、こういうふうに思います。  もう一点、私は外務大臣に、今度は南北統一の問題についてお尋ねをしたいと思うのでありますけれども、朝鮮半島がいわゆる三十八度線を境に南北に分かれた、こういうことは非常に好ましくない状態であるというふうにも思うわけですが、世界の平和を願うわが国としては、憂慮しながらも、それぞれの国の自主性を尊重していかなければいけない。そういうことで、国連に出席をされた折に、中国の外務大臣あるいはソ連の外務大臣に対して、この南北の対話のために日本は何か手助けをしたいのだ、しようと思うのだというふうに働きかけられたというふうに受けとめておるのですけれども、そういうことで御努力をなされたのかどうか、その結果はどうであったのか。
  87. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回、ニューヨークの国連総会の機会に、中国の黄華外交部長あるいはグロムイコ外務大臣とお会いをいたしたわけでございますけれども、黄華部長とは食事をともにしながらお話をいたしました。しかし、これは主として日中共同声明五周年のお祝いということで、そのような話題でありたわけでございます。グロムイコ大臣とも会談をいたしましたが、会談というような形のものでございませんで、そのような朝鮮半島の問題につきましては特に話題といたさなかったのでございます。
  88. 井上一成

    ○井上(一)委員 第九回の日韓閣僚会議で、この問題については何らか韓国側からお話し合いがあったのかどうか、話題として出されたのかどうか、お尋ねをいたします。
  89. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓閣僚会議におきまして、私と朴東鎮外務大臣との会談におきまして、朝鮮半島の情勢というものは当然のことでありまして、これは最大の関心事でございます。情勢につきましてお話し合いをいたしました。
  90. 井上一成

    ○井上(一)委員 その折に韓国側から、日本に対して中ソの接近という、そういうアプローチがあったんだというふうに受けとめていいのですか、いまのお答えは。
  91. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 一般の情勢判断といたしまして、いろいろお話し合いをいたしたわけでございます。その間におきまして、朝鮮半島の情勢というものが現状においてなかなか厳しいと申しますか、対立関係が厳しいということで、中ソ等が韓国政府を承認されることが好ましいことでありますけれども、それらにつきましてなかなか情勢はむずかしいというようなお互いの判断をいたしておるわけでございます。
  92. 井上一成

    ○井上(一)委員 いわゆる韓国がソ連なり中国と接触をしていくということは好ましいというお考えの中で、国連でもしそういうことでお手伝いができればという意味合いで、外務大臣独自の発想から接触をされたわけですね。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ニューヨークにおきまして、特にグロムイコ大臣と黄華外交部長との間で朝鮮半島につきまして立ち入った話はしなかったのでございます。日本政府といたしまして、従来から定期協議等の場におきまして朝鮮半島の問題につきましては、やはり中ソ両国が韓国の承認をされることが好ましいというような態度をとっておるということでございます。
  94. 井上一成

    ○井上(一)委員 いま朝鮮民主主義人民共和国がアメリカと平和条約締結したいという希望を持っているように私は受けとめているのですけれども、そのようなアメリカと接触することは、そういう希望を満たしていくために努力をすることは、これは日本政府として歓迎をする立場に立つのか、あるいは何らかかわり合いを持たないのだという立場に立つのか、あるいは困るのだという立場に立つのか、どの立場にお立ちになるのですか。
  95. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 米国と朝鮮民主主義人民共和国との間のことでございますから、わが国といたしまして、これにつきまして反対であるとか賛成であるとかいうことは申すべきことではなかろうというのが、率直なところでございます。この点につきましては、各種の報道もございますし、ある程度の働きかけがあったのではないかと私どもも見ておりますけれどもアメリカ政府といたしましては、韓国政府を抜きでの話はいたさないという態度を堅持しておる、その点につきましてはまだ方針を変えておらないと私どもは理解をいたしておりまして、私どもとしては、むしろそのようなことができる事態が来ることが好ましいというふうに申し上げた方がいいのではないかと思うのでございます。
  96. 井上一成

    ○井上(一)委員 それでは、先ほど保留された答弁を求めて、私の質問を終えたいと思います。
  97. 久世勝巳

    ○久世説明員 海上保安庁では、外務省と、協議いたしまして、巡視船によりまして竹島の調査を行っておりまして、その結果についてはその都度外務省に通報しているところでございます。本年度は去る八月三十一日に巡視船によりまして……。
  98. 井上一成

    ○井上(一)委員 答弁が違うので、それでは、私の方からもう一度質問を繰り返します。  今回、二十四日の東亜日報に報道された竹島に韓国の漁民が住みついたということについて質問をした中で、その事実確認をしたかどうかということで外務省にお尋ねをしたわけであります。そういう中で、外務省現地大使館との事実確認を急いでおるということですが、この問題について海上保安庁は事実確認のためにどのように行動をとられたのかということです。
  99. 久世勝巳

    ○久世説明員 実は、去る八月三十一日に巡視船によりまして竹島の現場調査を行った直後でございますので、現在のところ巡視船で現地調査するということは計画してなくて、先ほど外務省の方でおっしゃったような外交経路を通じていろいろ御調査した結果によってさらに検討したい、このように考えております。
  100. 井上一成

    ○井上(一)委員 それじゃ、今度の問題については、何も事実解明のために行動をしなかったということですね。
  101. 久世勝巳

    ○久世説明員 ただ、今回の調査のときに一応現地の詳細なる見取り図あるいは写真等を撮っておりまして、前回の、昨年行いました調査との比較検討ということで、建物等あるいは人員等がいろいろ推察されますので、それに基づきまして具体的な資料も得られる、このように考えるところでございます。
  102. 井上一成

    ○井上(一)委員 いや、それは事件が報道された以後行われたのですか。
  103. 久世勝巳

    ○久世説明員 それ前でございます。
  104. 井上一成

    ○井上(一)委員 私が尋ねているのは、この事件発生後、海上保安庁は何をしたのか、何か行動を起こしたのですかということを尋ねているのだよ。それ以前のことじゃない。私の質問について理解をしていただかなければわからない。私の聞きたい真意を御理解いただけましたか。――じゃ、それに対してお答えをください。
  105. 久世勝巳

    ○久世説明員 外務省とよく協議いたしまして、今後実際に調査をやるということを検討したい、このように考えております。
  106. 井上一成

    ○井上(一)委員 外務省と協議をしてと言うが、この問題では一回もまだ協議をしていらっしゃらないのですか。いかがなんですか。
  107. 久世勝巳

    ○久世説明員 まだ協議をしておりません。
  108. 井上一成

    ○井上(一)委員 限られた時間で本当に恐縮なんだけれども、私は冒頭にお尋ねをしたわけで、外務省は、この問題については海上保安庁、あるいはもっと広げて考えれば防衛庁、その他関係官庁とも何ら一回の会議もしていないのですか。
  109. 中江要介

    ○中江政府委員 事実がはっきりいたしません前には、そういう打ち合わせをするということは考えておりません。
  110. 井上一成

    ○井上(一)委員 おかしいですよ。事実がはっきりしないから、事実をはっきりさすためにも、それに対する対応をしていかなければいけないわけなんですよ。そうじゃないですか。事実がはっきりしないから、事実が確認されるまでは何ら手を出さないのだ、協議をしないのだということですか。
  111. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど私が御説明いたしましたように、この場合の事実というのは住民登録を移したかどうかということでございますので、その点がはっきりいたしませんと、これに対してどういう措置をとるかということについて、どういう関係官庁と相談するかということは決められない、こういうことを言っているわけでございます。
  112. 井上一成

    ○井上(一)委員 非常に真剣さが足りないと思う。もっともっと竹島という問題について、日本の領土であるという強い意識の中でこの問題と取り組まなければいけない、私はこう思うのです。  住民票の移籍については、もうさっき質問をしたとおり、すぐにでもわかるのですよ、努力をすれば。やはり、日本の領土に何か問題があれば、あるいは起こったであろうという予測にしても、もし仮にそういう予測があったとしても、いち早く確認をするのが海上保安庁の役割りの一つだと私は思うのですよ。だから、そういうに点について事実が確認をされたら、外務省は海上保安庁に対してどういうふうに協力を願うのか、協力をしてもらうのか、具体的におっしゃってください。
  113. 中江要介

    ○中江政府委員 これは確認の結果によるわけでございますけれども、海上保安庁にお願いすべき部門といいますのは、海上巡視をしていただいて竹島の状態が前回巡視のときとどれだけ違っているかということをいままでお調べいただいておったわけでございますので、海上保安庁のみならず、いろいろの関係当局との相談によりましてどういう措置をとるかということが検討されていくのではあるまいか、こういうふうに思っております。
  114. 井上一成

    ○井上(一)委員 一日も早い、一刻も早い事実確認を求めて、私の質問を終えておきます。
  115. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡部一郎君。
  116. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、本日、まず日米安保条約に関する事前協議の問題につき、お伺いをいたしたいと存じます。  最近におきまして、横浜におけるアメリカの偵察機の墜落事故といい、また最近報道されましたマヤゲス号事件に対するフォード前アメリカ大統領の発言といい、日米安保条約の事前協議の運用については多くの問題があるように感じられます。  そこで、日米安保条約の事前協議制度については、当委員会において十年あるいは十五年前、非常に激しい論戦が交わされたいきさつがあるのでありますが、風化しつつあると言われているこの事前協議制度はどのような性格を持ち、どのようなときに適用するものと思っておられるのか、基礎的な御認識を改めてお伺いいたします。
  117. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生いま御質問にありました全体の運用ぶりという点が、必ずしも私、正確に理解をいたさなかったかもしれませんけれども、安保条約に付属いたしておりますところの安保条約第六条の実施に関する交換公文、そこに列挙されております三つの事項が事前協議の対象であるということでございまして、その認識に基づきまして従来、安保条約発足以来同じ認識で対処しておるということでございます。  なお、私のお答えが必ずしも的確でない面があるかもしれませんので、また御質問があればお答えさせていただきます。
  118. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 事前協議事項については、安保条約第六条の実施に関する交換公文の中に、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前協議の主題とする。」と明示されておるわけでありますが、この交換公文が交わされましてから今日に至るまで十七年、その間に事前協議が行われたことがあったかどうか、また、過去においてのこうしたものが事前協議をすべき事項と判明したときにはどうするか、その辺のことをまずお伺いしたいと存じます。
  119. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生よく御承知のとおり、事前協議の対象とされるべき事件が起こったことは、といいますか、むしろ事前協議が行われたことはいまだ一度もないわけでございます。
  120. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 一九七五年五月十二日、約二年前になるわけでありますが、カンボジアの沖合いにおいてマヤゲス号事件が発生いたしました。この事件については当委員会においても質疑が行われたものでございますが、昭和五十二年、本年の九月二日の夜十時十五分からNHKで報道された報道番組の中におきまして、前大統領フォード氏が登場され、この問題について発言をされております。この内容を見ますと、従来わが国政府が説明された言葉とは違いまして、アメリカ側の対応というものが非常に乱暴な態度であったことが明らかであります。したがって、私はあえてその項目を読み上げた上、政府側の御見識を問いたいと思います。  ちょっと二、三分拝借して読み上げますと、NHKの解説はまずこう述べております。「マヤゲス号事件は、一九七五年五月十二日、カンボジア解放軍がアメリカの貨物船マヤゲス号を捕獲したことによって発生し、直ちにフォード大統領がアメリカ海兵隊を出動させて貨物船の奪還を図ったことにより世界の耳目をそばだたせました。この事件は、アメリカ国内ではベトナム敗戦から目を移させた武力政策としてアメリカの威信を幾分でも取り戻したという受取方もありました。しかし日本国内では、アメリカ海兵隊がマヤゲス号奪還のために沖繩から出動したことに絡んで、特に日米安保の運用問題、その中でも事前協議の実情についての生々しい実例を示すことになったわけです。」  次にフォード大統領の言葉が入りまして、「公海上で米商船が拿捕されたのを知ったのは月曜日の朝五時十五分ごろか三十分ごろだった。詳細はわからない。七時半ごろ執務室に着き新しい情報を得た。いずれにしろ米船が拿捕されたことは確かだ。正午ごろ軍首脳を招集することにした。情報が増すにつれ専門家が軍事解決の道を検討した。だが、軍事に訴える前に外交手段を尽くしてカンボジアに船を釈放させようとした。まず中国の代表部に連絡した。カンボジアとは外交関係がなかった。国連筋からも働きかけた。要するにあらゆる可能な道を通じてカンボジアのハイジャックに抗議したのだ。」そこで記者が「ソ連に知らせたか。」と言うのに対して「特別にはしない。」今度は記者が「ホットラインは使わなかったか。日本には通知したか。」と聞いておるのであります。それに対して「特にはしない。通常の外交ルートでは通知しただろうが、事前協議はしない。つまりこれは不法なカンボジアの行為で、国際法に違反した公海上の拿捕事件だ。緊急事態のあったとき、世界じゅうの国と相談などできない。米国大統領の義務として断固とした行動に訴えなければならない。作戦に出た米海兵隊は沖繩基地から出動した。」次に記者は、「米軍出動について日本政府に知らせたか。」と聞いております。これに対して「海兵隊は沖繩からまずタイに移動し、そこから空海の救出作戦行動を支援した。その際にも通常の連絡だけで、特別にはしない。外交上の義務は果たしたと思う。」記者は「首相に直接知らせなかったか。」と言っておりますが、それに対しては「直接にはしない。」また記者は、「日米安保条約には米軍出動の際の事前協議事項がある。」と質問しております。それに対して「厳格な規定というより一般論のはずだ。こうした緊急性のある事件アメリカ人の生命財産が関係する場合は別だ。」と述べております。次に、「それが外交上の配慮より優先したのか。」と質問しておりますと、それに対して「われわれの行動は日米関係を損なうものではない。国際法にかなっている。正しいことを行い、しかも成功した。米国の指導力を高め、サイゴン陥落の動揺を食いとめた。」と述べております。番組はもう少し続きますが、問題点の個所を抽出したものであります。わが国側のこの問題に対する態度と別に、アメリカ側の認識がどのようなものかうかがわれまして大変興味のある番組になったものと私は思います。私はNHKを訪れましてこの部分を録音して帰り、テープで起こして本日この委員会で読み上げたものであります。  まずこの問題の認識を私が一つずつ伺う前に、アメリカ局長はどういう御見識を持ってこれをごらんになったか、まとめてまず伺った方がよかろうと思いますから、お伺いします。
  121. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  安保条約の問題につきましては、先生も御指摘のように長年の御論議が当委員会その他国会においてあるわけでございますが、そういう長い間の御論議を踏まえて先生がこの番組についていまおっしゃられたような御関心をお持ちになられたことは、私どもも十分理解し得るところでございますし、私どもといたしましてもこの番組に深い関心を持ちまして注意深くそのやりとりを伺わせていただいたわけでございます。  そこで、先生がただいまお読み上げになりましたやりとりを伺っておりまして、まず私の意見、感じを言えとおっしゃられるわけでございますが、私の感じますところを率直に申し上げさせていただきますと、いずれにしろフォード前大統領自身は大統領の職をやめまして、恐らく安保条約その他のテキストを手元に持ってこの答弁をやっているわけではないんだろうと思います。そこで必ずしも十分正確にその論議を詰めておるということでないような状況であったかもしれないという点が一つと、さらにその論議の応答の内容をいま拝聴いたしておりますと、たとえば、先生もお読みになりましたように、このマヤゲス号事件につきましては、フォード前大統領は、海兵隊は沖繩からまずタイに移動して、そこから空海の作戦行動を支援したということを言っておりまして、前大統領がそこで応答する際に彼の念頭にありましたものは、日本におけるところの米軍が国外の基地に移動して、この場合には後ほど、これがウタパオの基地だったというふうに報道されているわけでございますが、ウタパオの基地に移りましてから後に、そのマヤゲス号に乗っておるところの米人を救出する行動が発動されて、そこで行われたその行動自身のことを頭に置いて言っているものというふうにとるべきではなかろうかと考えるわけでございます。  それは、さらにいま先生もお読み上げになりましたところにありますように、緊急のときに世界じゅうのあらゆる国と相談することもできないというようなことを言っている点から見ましても、いわゆる安保条約上の事前協議制度のことを、そのこと自身を言っているというふうには思われない印象を持ちました。  これは先生にいまさら御説明申し上げるまでもなく、安保条約上の事前協議制度は日本からの単なる移動に対しましては適用がない、これは事前協議の対象でないということで安保条約締結以来、政府アメリカ政府考え方も一貫しているわけでございまして、そういう意味からいきまして、いまのフォード前大統領の応答が、基本的に従来日米両国がとっておりますところの安保条約の解釈から外れたものというふうには思われないという印象を持ちました。これだけ申し上げます。
  122. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 局長も言われておりますが、これは前大統領の発言でありまして、条約集を片手に言ったのではないから多少まずい点はあろうというふうにちゃんとうまくおっしゃいましたから、私もそれはそうだろうと思います。  ただここの言葉遣いを見ておりますと、緊急非常事態が起こった場合には世界じゅうの国と相談なんかできないと言っている言葉の一番最後のところに「作戦に出た米海兵隊は沖繩基地から出動した。」と明らかに言われているわけであります。つまり、この当時アメリカの海兵隊は戦闘目的その他を日本側に明示することなく出動したことは、当時の東郷次官の説明で明らかでありますが、この部隊はウタパオ基地に行くために行ったのではなくて、カンボジアに出動するための命令をもらって出動したことは当時のいきさつからして今日はもうすでに明らかであります。  したがって安保条約の事前協議の対象外と完全にみなすことについてはいささか疑義があろうと思うわけであります。つまりカンボジアに出動する、マヤゲス号事件のために出動する、そのための命令として大統領は沖繩の海兵隊を出動させた。それがたまたま途中でウタパオに寄ってから出かけた。そういう場合には全然事前協議の対象外としてしまうというやり方というものは、事実上、事前協議事項の空洞化を招くものではないかということは当委員会でさんざん言われたところであります。  まさにあなたは、フォードさんの言葉をかりて、事前協議事項の空洞化がこういうふうにして行われるという実例をいま御説明なすったとしか言いようがないと私は思うのですが、いかがですか。いまはちょっとうかつに答弁されたから、もう一回どうぞ。
  123. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 まさに先生御指摘のとおり、その問題をめぐって当委員会その他でいろいろな御論議があったことは私もよく承知いたしております。そしてこの点は、安保条約締結以来この国会でのいろいろのまさに御論議の焦点の一つであったということもよく存じております。さらに私は、いま申し上げた私の考え方自身は、政府が、総理大臣以下政府首脳がその都度お答えをしてきた考えのとおりでございまして、私がその辺特別なことを申し上げたつもりは実はないわけでございます。  一つ、いま先生が事実関係についてちょっとお触れになられましたので、これも当時御論議の中で出ましたところでございますけれども、当時マヤゲス号事件が起きましたときに官房長官が発表をいたしまして、そこでも述べておることでございますが、これは昭和五十年五月十三日、ワシントン時間でございますが、アメリカ国務省より在米日本大使館に対し、マヤゲス号が拿捕された事態にかんがみ、米国政府は在沖繩海兵隊一個大隊約千名に警戒態勢をとらせることを命じたこと、及び同部隊は輸送機の準備ができ次第海外基地へ出発させる予定であることを事前連絡してきたというのが当時の官房長官発表文の一項でございます。これが私どもの当時の事実関係に対する認識でございまして、ここにありますように、この海兵隊一個大隊はまさにアラートをかけられて警戒態勢に入ることを命ぜられて、そして飛行機の準備ができ次第、そのほかの基地に動く、当時それがウタパオであるということはわれわれは知らなかったわけでありますけれども、いずれにしろその海外の基地に移動するということで連絡をいただいたわけでございまして、これが事前協議の対象でないということは当時もお答え申し上げましたし、また私どものいま申し上げたこととも変わっていないというふうに考える次第でございます。
  124. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いろいろ申し上げたいことがありますから、組み立てから一つずつ申し上げなければならぬのですが、あなたがそっちの方にお触れになりましたから、そのお話をいたしましょうか。  当前、海兵隊一千名がアラートの中において出動命令を受けたということは、マヤゲス号事件に関連して出動が命ぜられたことはすでに明らかであります。したがって、これらがそれらの該当地域に対して進出することも、また予想されることの中の範囲内に入っておったと思います。わが国が事前協議事項というものによって安保体制を維持し、あるいはそれによって起こる戦争に巻き込まれる悲劇を回避しようとするなら、むしろ事前協議の対象外ではなくて、これもまた事前協議の対象内の事項としてアメリカ政府との間で協議をし、随時協議をすることが必要であろうと私は言っているわけであります。つまり、なるべく事前協議の対象外にしようとするのではなく、事前協議の対象の中に繰り込んでおかなければ、この問題のようなことがさらに将来は重大な事件を引き起こす可能性があるのではないか。だから、むしろこうした事件の場合は、むしろ事前協議の対象とするべき重要な検討事項になるのではないかと申し上げているのですがいかがですか。
  125. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 一般的な国際関係のあり方として、同じような事態が生じたときに、日本といたしましてこれに重大な関心を持つべきであるという点につきましては、何ら先生のおっしゃられることに異存はないわけでございます。そして、それは恐らく安保条約に照らして申し上げれば、第四条に基づくところの随時協議というようなものが行われてもよろしいような事態であろうかと思います。ただ問題は、安保条約の第六条の実施に関する交換公文におきますところの事前協議の対象は「日本国から行なわれる戦闘作戦行動」ということになっておりまして、問題は戦闘作戦行動がわが国から発進される、わが国の施設区域から発進されるということがまさに事前協議の対象となるかならないかの分かれ目でございまして、その明確な条約上のテキストから申しまして、いまのような国外への移動というものは事前協議の対象にならないということでございます。  さらに、これもまた第六条の実施に関する交換公文は「日本国への配置における重要な変更」ということも言っております。日本国への配置でありまして、日本国からの移動というものもここに入っていないわけでございます。そういう意味におきまして、わが国におるところの米軍が他の基地に移動すること自身をとらえてこの安保条約上の事前協議の対象にするということは、安保条約締結以来の日米両政府の理解するところとは外れるというふうに考えざるを得ないのでございます。ただそういうような事態を日本政府としても十分ウォッチしていろいろ対応を考えなければいけないのではないかというような問題につきましては、先生のおっしゃられるとおりであろうというふうに考えます。
  126. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 局長、御答弁がちょっといまのはおかしいのじゃないかな。合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更については協議するが、日本国からの重要な変更については問題でないと言われるのはおかしいのじゃないですか。私は当委員会で長歎やっておりますけれども、そういう御答弁は新説でございますよ。プラスもマイナスも、重要な変更については事前協議の対象になる、これがいままでの合意でございます。これが第一点。  第二番目には、余りいろいろおっしゃるとまたぼろが出るだろうけれども、いままでの事前協議事項の問題点の中で、われわれは、日本からの戦闘作戦行動というものが、途中で命令を受けたりあるいは一時どこかに寄っていったりすると空洞化するということについて何回も何回も申し上げたはずです。今回の場合はまさにその空洞化の例が起こったわけであります。事実、出動することが明らかだったのですから。したがって、先ほどからのアメリカ政府からの日本政府に対する通報の中で、あなたは二つしか言われませんでしたが、わざわざ三項目目には、目的地については戦闘行動であるから言えないということがついているはずです。向こうはなぜ目的地については言おうとしなかったのか、それは明らかにカンボジア出動ということを明言することによって安保条約の事前協議事項に抵触することを恐れたためと私には思われます。こうしたことは、アメリカ政府との協定の中で、協定それ自体の空洞化を図り、それがひいては日本国民の中における安保条約あるいは事前協議事項に対する深い反発というものを招くものではありませんか。むしろそうしたことを交渉によって今後詰めていく方向こそわが国政府のとるところであり、安保条約の不合理性、事前協議制度の空文化というものを防ぐ方向こそ外交官としてとるべき立場ではないかと私は思うので御質問しているわけであります。いかがでございますか。
  127. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 どうもこの道によく通じていらっしゃる渡部先生にたびたび同じことを申し上げるのを恐縮に存ずる次第でございますけれども、いま私が申し上げましたように、日本国から米軍が移動すること自身が安保条約の事前協議の対象にはなってはおらないという点につきましては、従来からお答えを申し上げているとおりでありまして、また当時マヤゲス号事件が起こりましたときのこの委員会での御論議においても、政府委員及び大臣からたびたびお答え申し上げたとおりでございまして、その点について私が特に新しいことを申し上げているつもりでは何らないわけでございます。  ただそのような事態が生じたときに、事前協議の問題と離れて、日本国として十分な国際情勢の的確な把握に努めるべきである、そうしてその的確な判断が行い得るようにすべきであるということでありますれば、まことに先生のおっしゃられるとおりであろうというふうに考えておる次第でございます。
  128. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう一つ、フォードさんの非常に問題点の表明があります。「日米安保条約には米軍出動の際の事前協議事項がある。」というのに対して、「厳格な規定というより一般論のはずだ。こうした緊急性のある事件アメリカ人の生命財産が関係する場合は別だ。」と述べているわけであります。「アメリカ人の生命財産が関係する場合は別だ。」という、こういう表明は、アメリカ大統領の職務に関する規定から出ていた用語でありますが、日米安保条約がそうした意味ではアメリカ国内法の規定によって障害されていることもこの言葉の文言からいうと感じられるわけであります。この部分はわが国としては見逃すべきではない発言だと思いますが、いかがですか。
  129. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生御指摘のように厳格な規定より一般論のはずだと言っておられるとすれば、その意味が何であるか、まことによくわからないというのが率直な私の印象でございます。ただ、そこの後で、たしか先生のお読みになりましたところでも、こういう緊急性のある事件アメリカ人の生命財産が関係するような場合は別だということをフォードさんは言っておられるようなので、その点は先ほど当初に私が御説明申し上げましたように、恐らくフォードさんの頭の中にありましたのは、そのウタパオ基地周辺から発進されたところの、米人の救出行動ということを頭に置いてのことではなかろうかというふうに考える次第でございます。  なお、私どもも実は先生と同様、このフォードさんのインタビューにつきましてはその重要性を十分認識いたしまして、注意深くNHKの番組を拝聴させていただいたわけでございますが、その点で多少十分に意味がとれなかった部分については、その原文のやりとりがどうなっているのかという点も幾らか確かめさせて伺わせていただいたわけですが、いま先生の御指摘になりましたところで、質問者の方が、「日米安保条約には米軍出動の際の事前協議事項がある。」というふうにたしか字幕は出ていたと思います。ただその場合に「米軍出動の際の事前協議事項がある。」と言っていた部分が果たしてどういうアングルから質問をしておられるのかという点がはっきりいたしませんものでしたから、その点NHKの方に私ども伺わせていただいたところが、その辺は、安保条約には日本からあるいは日本への部隊の移動に先立って事前協議に関する規定があるということを知っているか、こういう質問になっていたように思われます。先ほど来論議が出ておりますように、安保条約上は日本からの移動は事前協議の対象では実はないわけでございます。その辺が、日本からあるいは日本への部隊の移動について事前協議が行われるべきであるというお考えで質問者の方が質問をしておる。それに対してフォードさんの方は、そのウタパオ周辺から発進されたところの米人救助活動を頭に置いて答えておる。そういう点で多少質問と答えとが必ずしもかみ合っていない感も私どもは持ちました。そういう意味で、その言葉の一つ一つからこれが大変重要だというふうに考えるのはいかがなものかなという印象を持ちましたことをちょっとつけ加えさしていただきます。
  130. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 質問は多少問題があったのかもしれません。しかし事前協議事項について「厳格な規定というより一般論のはずだ。」という表現については、少なくともアメリカの大統領、ついこの間まで大統領をやられた方の発言としては不穏当でありましょう。これは私は、日米間の随時協議の項目の一つとして、こうしたことについてはアメリカ側の認識を深めるか、在米大使館を通してのアメリカ側の認識を深めなければとんでもないことになると思うのでありまして、外務大臣、その辺は御配慮いただきたいと思うのです。  もう一つ外務大臣に今度お答えをしておいていただきたいのは、事実関係はこれで大体詰まってきましたから、当時この作戦において、カンボジア側の哨戒艇は三隻が沈んで、四隻が撃破されました。また出動した方のアメリカ軍の方でも、死者が五名、行方不明が十六名、負傷者が八十名というような報告がその後ございます。かなりの手ひどい損害と応酬というのが行われている。そしてその後の波紋としては、タイ国におけるところの米軍基地というものは、大きな反米運動の盛り上がりのきっかけをつくり、タイ国における米軍基地は、ことごとくこの地域から追い出されたといういきさつもこれに伴って出てきたのであります。したがって、「正しいことを行い、しかも成功した。米国の指導力を高め」た、などという表現は私は当たらないかと思うのであります。こういう事大主義的な、砲艦主義的な行動というものについてアメリカ政府は反省をしなければならないと思いますし、こうした行動が同じように安保条約の運用として行われるならば、私どもはきわめて危険な側面を含んでいるのではないかと思われるわけであります。  以上二点につき外務大臣に、今後の安保条約の運用につきアメリカ側とも交渉を行い、こうした問題について十分な警戒と注意をいたすべきだと思うのでありますが、御見解を承りたい。
  131. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのマヤゲス号事件につきましてフォード前大統領の発言につきましていろいろ御指摘がございました。これらにつきまして、わが国といたしまして、安保条約というもの、その事前協議制が空洞化するではないかというような御批判があることも承知をいたしておりますが、政府といたしましてそのようなことのないように事あるごとに努力をいたしたい、かように思います。個別の発言がどうのこうのということよりも、ただいま最後におっしゃいましたアメリカ人の財産の保護のためには事前協議はなくてもいい、というようなことは、私は毛頭そのようなことを考えてはおらないと思います。しかし、なお念のために事あるごとにただいまおっしゃいました点につきましては、先方とよく理解を深めてまいりたいというふうに考えております。
  132. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 横浜の米軍基地の問題を少し丁寧に伺おうと思ったのですが、持ち時間が経過いたしましたので、次回に譲らしていただきます。
  133. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、先ほどの井上委員の質疑に関連し、鳩山外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
  134. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど井上委員から御質問のございました竹島に韓国漁民の住民登録が移されているかどうかということにつきまして、即刻現地と連絡をとりましたところ、ただいま次のような報告が入りました。  本二十六日付コリアタイムス紙は、独島――竹島のことでございますが、の人間は住民ではないという見出しのもとで、大要次のように報道している由であります。すなわち、外務部関係者は、独島の住民に関する報道は正しくないと語った。孔アジア局長の語るところによれば、報道と異なり、彼らは家族ではなく、また政府に住民登録をしていない。同局長は、彼らは鬱陵島の住民で、一時独島に漁業のため来ていたものと述べた云々であります。  なお、在韓大使館の担当官は、今日午後四時先方と会談をすることになっております。  以上御報告申し上げます。
  135. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、寺前巖君。
  136. 寺前巖

    寺前委員 いまも日米安保条約の問題について論議されましたが、私も引き続いて日米安保条約のもとにおける最近の懸案の問題について二点お尋ねをしたいと思います。  その第一点は、米軍ジェット機墜落事件をめぐって、米軍の空の支配がどうなっているのか、改めて検討が迫られているわけであります。この問題について聞きたいというのが第一点です。  それから第二点は、従来から墜落事故が起こる、その場合に、捜査並びに裁判権問題をめぐっていろいろ言われてきたものです。そこで、従来の経過にかんがみて、今度の事件でどうするのか、この問題について聞きたいと思います。  まず第一番目、米軍の空の支配問題について聞きたいわけですが、私どもの党の柴田議員を通じて、過般運輸省に資料をいただきました。昭和四十七年九月に日米合同委員会の航空分科委員会で米側が、訓練空域を現在よりも何倍かにわたる面積の要求をしたという事実の問題であります。  運輸省の人に聞きたいのですが、現在の米軍の訓練空域はどのようになっていて、そして、このときにどういう要求が出たのか、それが現在どう処理されているのか、お聞きをしたいと思います。
  137. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 先生御指摘のとおり、昭和四十七年九月二日に日米合同委員会の航空分科会で、十カ所の訓練空域提供の要望がございます。そして、現在日本国内では米軍の訓練空域というのはございません。
  138. 寺前巖

    寺前委員 私の手元にある資料が米軍の要求した資料――よろしいでしょうか。
  139. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 米軍から提供の申し入れのありました十カ所の訓練空域は、北の方から申し上げますと、鹿島灘沖、中部山岳地帯、関東南洋上、佐世保沖、豊後水道、計十カ所でございます。
  140. 寺前巖

    寺前委員 この地図でよろしいのですか。
  141. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 それで結構でございます。
  142. 寺前巖

    寺前委員 先ほど米軍の訓練空域はないとおっしゃったのですが、現にあるんじゃないんですか。R121とかR116とか、こう書かれているのが、現在の米軍のあれじゃないんですか。
  143. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 米軍の訓練空域は運輸省所管でございますが、実際の射爆訓練をする空域は防衛施設庁の所管でございます。
  144. 寺前巖

    寺前委員 いや、所管の話を聞いているのじゃなくして、空域がないとおっしゃったけれども、あるんじゃないんですかということを聞いているのです。あるんでしょう、このR何ぼというのは、これがそうなんでしょう。
  145. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 運輸省で所管しております訓練空域は、申し入れば十カ所でございますが、現在まだ設定しておらないということでございまして、これは私がお答えをするのはどうかと思いますが、射爆訓練をやるその空域、これは防衛施設庁所管の空域でございますが、これはございます。
  146. 寺前巖

    寺前委員 あるわけですね。  そこで、私はこれに基づいてお聞きをしたいと思うのですが、成田空港が近く開かれるということに聞いております。そうすると、このアメリカ軍の要求している空域が、ずいぶん広範囲の空域を要求しているわけですが、いまでもいろいろ空の問題が問題になっているのに、この空域を認めるということになったら、新しい飛行場を設定した場合に障害になってくるんじゃないだろうか。現行のものでも問題になると思うわけです。  そこで聞きますが、新聞報道によると、百里空域が現実にあるものをカットするかわりに、防衛庁が太平洋側にある数倍の訓練空域を要求しているという話がちょっと出ておりました。そうすると、それがここの地図でいうところの米軍のV空域と重複しているところになるように思うのだけれども、この地域はアンカレジ便や太平洋便など民間航空路と密接な関係のある地域だと思うのです。したがって私は、こういうようなもっと広大な空域を要求するアメリカ軍に対して、これは拒否すべきものだと考えるのですが、運輸省としては、この地域の空域の要求に対してはどういう態度をとられる予定ですか。
  147. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 先生御指摘のとおり、自衛隊の百里空域は、一部成田の空港の空域とは調整をしておるところでございますけれども、そのかわりに米軍から鹿島灘沖に新しい訓練空域というふうなことにつきましては、運輸省としては設定する気持ちは一切ございません。
  148. 寺前巖

    寺前委員 昭和四十九年当時に、これも新聞報道で私は読んだわけですが、防衛庁との間にE1、E2、E3と言われる訓練空域が合意されたというのがニュースとして流れておりました。これもやはりこの地域の問題です。私はこの地域は非常にふくそうしてきて重要な地域になると思うので、もしも合意されておったというのだったら、安全上からもその問題について白紙撤回にすべきだと思うのですが、事実関係と態度を聞かしていただきたいと思うのです。
  149. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 昭和四十八年から四十九年にかけまして、防衛庁からE1、E2、E3の空域、この設定方については成田開港前の状況において話がございました。その後、成田開港も近くというふうな状態でございますので、現時点では、運輸省としては、防衛庁の訓練空域を設定する意思はございません。
  150. 寺前巖

    寺前委員 その次に、この地図のS地域について聞きたいと思うのです。現にR116という地域が設定されておりますが、これ自身も、東南アジア、韓国便の路線として従来からパイロットの間では問題になっておった地域です。したがって、現にこのR116の空域そのものについてもこれをカットする問題を検討しなければならないところにきているのじゃないか。過般のミッドウェーの訓練場というのはまさにこの地域の問題であったと思うのです。それだけに私は、横田関係の空域の問題との関連性においてもこのR116自身のカット問題というのは検討すべき事項だと思うし、同時に、その南方にR116の八倍にもなるところのS地域要求が出ているけれども、この地域についても要求に応ずべきではないと思うのだが、運輸省はどういうふうにお考えか、お聞きしたいと思います。
  151. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 先生御指摘のとおり、成田開港後のことを考えますと、成田空港から東南アジア便は現在射爆訓練をやっておりますR116という空域にはかかりますので、この空域の削減方については、これは射爆空域でございますので、防衛施設庁を通じまして米軍に削減方を現在交渉中でございます。それで、そのかわりにもっと南の方のS空域、この拡大ということについては運輸省としては現在考えておりません。
  152. 寺前巖

    寺前委員 その次にこの地図の西の方に移りたいと思います。いろいろ言われてきましたが、佐世保の母港化という問題がありました。佐世保が母港化ということになってきたときに、現在あるR104なり105なりの訓練場のほかに、ここの地図では島根県西北ということになるのでしょうか、R、R1という要求が出されております。この地域についても、佐世保母港化と言われる話と重要な関連があると思うのですが、同じようにこういうように拡大するような空域を設定するということは反対ですが、運輸省としてはこの問題についてもどういうふうに要求にこたえるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  153. 飯塚良政

    ○飯塚説明員 佐世保沖、R、R1、この二つの空域については地元から反対の要望もございますし、現在運輸省としては訓練空域をつくる気持ちはございません。
  154. 寺前巖

    寺前委員 外務大臣にお聞きをしたいと思うのです。運輸省は先ほどから米軍が広大な地域を十カ所も要求しているということを明らかにされました。その地域も明確になりました。しかもその地域は全体として日本の空の安全上から考えてもぐあいが悪いという立場から、受け入れる気はないということを明確に言っておられますが、外務大臣としても、日本の国民の要望を聞いて率直に運輸省と協力してその立場に立って対米交渉に臨むのかどうか、お聞きをしたいと思うのです。
  155. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの空域の問題につきまして、運輸省、防衛庁等の話をよく伺いまして、もし必要があれば協力をいたしたいと思います。
  156. 寺前巖

    寺前委員 何かはっきりしないな。運輸省は受け入れないという態度を表明されたわけですが、外務省はよろしいな。外務省はいや異論があるのだとおっしゃるのかどうか、どうです。
  157. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 外務省は従来余りタッチしておりませんものでしたので、この問題は運輸省あるいは防衛庁の方でどういう御意見を持っているか私も存じませんが、これらの関係省庁でお決めくださる問題だと思います。外務省といたしまして何かいたすべきことがあれば御協力をいたしたいということを申し述べたのでございまして、ただいま初めて聞きましたので、どういう立場に立つべきかということはいま私も突然判断がつきませんものですから、お話をよく伺いまして、成田空港もできますことでありますし、それに支障のないように、また空域の面で日本の民間航空に阻害にならないように努力をいたしたいと思います。
  158. 寺前巖

    寺前委員 次に移りたいと思います。  法務省おいででございましょうか。一九六四年の四月に今回の横浜の米軍機墜落事故と同じように町田市に、また同年の九月に大和市に、それぞれ四人、五人という死者を出すという不幸な事件がありました。当時、警察は業務上過失致死として送検するのだということを言っておられ、事実送検されたようですが、検察庁の方では第一次裁判権がアメリカの側にあるということをもって不起訴にしたということを聞いているわけです。事実に間違いがあるならばおっしゃっていただいて、そしてその結果アメリカにこの裁判権が持っていかれて裁判をやられたのかどうなったのか、その後の経過をひとつ御説明をいただいて、日本側としてはこの問題をどう処理をされたのかをお聞きしたいと思うのです。
  159. 吉田淳一

    ○吉田説明員 御指摘の事件二つにつきましては、昭和三十九年の四月に町田市に軍用機が墜落いたしまして、被害者、四名即死、二十三名の傷害があったという事件がございました。それからもう一つは、三十九年の九月八日に同じような事故が起きまして、これは大和でございますが、三名即死、傷害につきまして合計六名の傷害の事件が発生したわけでございます。  この事件につきまし七は、御指摘のとおり町田につきましては昭和三十九年六月十六日町田警察署から地検に事件が送致されております。その結果は、同年七月六日第一次裁判権なしで不起訴にしております。それからもう一つの大和につきましては、昭和三十九年十二月二十五日事件送致がされまして、四十年一月十九日第一次裁判権なしで不起訴になっております。  この事件についての米側の軍事裁判がどうなっているかというお尋ねでございますが、この点については、私、米側の刑事裁判権分科委員長に対しましてその結果について直接会いまして照会をしております。しかし、いまのところまだ米側に関係資料がないためその確たる返答を遺憾ながら得ていないというのが実情でございます。
  160. 寺前巖

    寺前委員 一九六四年の事件といえばもう八年たった事件ですね。照会をして関係資料がないままに放置をされている。事件は、四人、五人とそれぞれ死者を出した大事件です。こういう事件があいまいのままに八年間済んでいると言ったら言い過ぎとおっしゃるかしらないけれども、しかし関係者にとっては放置されたままであるという事実は否定することのできない事実だと思うのです。なぜこういうことになるのだろうか。人の命は地球よりも重いと総理はおっしゃっているけれども、現実には少しも重くないじゃないですか。放置されたままじゃありませんか。私はこれを考えたら、そもそも地位協定そのものが国際条約でも何でもないから知ったことではないと言い切ってしまえばそれきりかしらないけれども、あの地位協定に基づいてでも、日本の国民の死者を出すような事件に対して、第一次の裁判権がないからといって長期にわたってこういうことをすべきではないと思うのです。ぼくは、いまの地位協定においても、日本の国民が死ぬような大事故が起こっている場合には、第一次裁判権を放棄してくれと要求すべきだと思うのです。また、裁判をやるためには証拠の保全が要ります。したがって、捜査を直ちにやるべきだと思うのです。私は、一九六四年の事件がいまだにこうなっていることを考えたときに、今度の事件もまたこういうことになってしまうのではないかということを心配するのです。  私は法務省に重ねて聞くわけですが、第一次裁判権をアメリカが持っているからといって不起訴にしたけれども、第一次裁判権を放棄してくれということを要求することはできないのでしょうか、いまの両国の合意の内容から見て。できるのかできないのか。あるいは証拠を残さないことには裁判権を行使することはできませんから、証拠を保全するための捜査を日本としても一緒になってやるのだということはできないのかどうか、私はこの点について改めて法務省に聞きたいと思います。
  161. 吉田淳一

    ○吉田説明員 御指摘は、まず第一次裁判権の放棄を要請すべきではないか、それができるのかというお尋ねでございます。この点につきましては私が一々申し上げるまでもなく、地位協定の十七条三項(C)によりまして、第一次の裁判権を有する国の当局に対しまして、その権利の放棄を、特に重要であると認めた場合については放棄要請ができるということになっております。特に重要であるというのはどういうケースかということが一つの問題でございますが、その前に御説明申し上げておきたいことは、第一次裁判権の放棄要請をする以上は、日本側において十分犯罪としての容疑が認められて、これに対して裁判権を行使できるという自信と申しますか、見込みがなければいけないわけでございます。こちらで放棄要請をして、仮に放棄させても、こちら自身で裁判にかけるだけの犯罪としての資料が何もないということであれば、これは放棄要請をするのは適当でないと言わざるを得ないわけでございます。  お尋ねの件につきましては、当時の事故分科委員会調査結果等によりますと、一つは、大和につきましてはエンジンの損傷が非常に激しかったため故障原因究明不能とあり、もう一つは飛行機をコントロールし得なくなった原因は操縦士にはないと言い得るというような結論になっているようでございます。したがいまして、その当時日本側において裁判権を行使し得るだけの犯罪としての資料を収集できなかったということではないかと思います。  なお、裁判権の放棄要請につきましては、私どもといたしましては特に重要であると認めたケースについてはもちろんやるつもりでおります。しかし、このことはいわば相互主義でもございます。その点は十分私どもとしては慎重な、諸般の観点から自信を持ってできるもの、かつ特に重要であるというものに限ってそれをやるのが地位協定の趣旨でございますし、また相互にそれができることになっておりまして、日本側はいままで何回か放棄要請を米側から受けたことがございますが、一回も放棄をしたことはございません。厳然として、日本側の法令で処罰できるものについては日本の裁判権でやっておるのでございます。それが第一点についてのお答えでございます。  それから第二点でございますが、第一次裁判権が向こうにある場合にでも日本側が捜査できるのかできないのかという点でございます。  この点についてはできます。刑事特別法の十四条という規定がございまして「協定により合衆国軍事裁判所が裁判権を行使する事件であっても、日本国の法令による罪に係る事件については、」捜査をすることができるというふうに明文で規守をしております。したがって、日本の官憲は捜査権を行使することができるわけでございます。現に、必要なものについては捜査権を行使していると私ば考えております。
  162. 寺前巖

    寺前委員 それでは、今回の横浜市内米軍航空機墜落事故をめぐっていま御指摘の点を聞いてみたいと思うのです。  過般、防衛施設庁は衆議院の予算委員会に中間的な取りまとめの報告をお出しになりましたね。「事故の概要」というところを見ますと、一番「米軍の説明によると、」ということでずっと書かれていきます。四番も「米軍の説明によると、」あるいは六番も「米軍の説明によると、」七番も「米軍の説明によると、」ずっと以下全部米軍の説明によるとということばかりが羅列されている。そこで、こういうふうに米軍の説明によると、よるとばっかりがこうなっていって、あげくの果てには、この捜査上の一つの問題であるエンジン等を、十月五日、六日に米軍から捜査当局に対し、米本国へ持って帰りたいと通報があった、応じかねるということを申し述べた事実があるので、米側に対してアとイと二点を申し入れた、こういうようなことがずっと書かれています。それを見ても、われわれ自身も捜査が必要だから持っていくことまかりならない、一緒にここで捜査をしようじゃないかということは一言も書かれてこない。私は、防衛施設庁はこの中間報告を出したのは、関係者のところから報告を求めてお書きになったのだろうと思うけれども、防衛施設庁がお答えになることが必要だったら防衛施設庁にお答えをいただきたいし、直接の所管の人がお答えになるべきだったらお答えをいただいたらありがたいのですが、いまの話です。  人が死ぬような大事故が起こっておる。それが繰り返されている。飛び方の問題についても一定の合意があったと言われている。ところが、そういう大変なことが起こっている状況のもとにおいて、こういう重要なことに対する捜査をアメリカの手にゆだねてしまうというやり方について、日本の捜査当局の態度に問題があるのではないだろうか。現地の人はこう言っています。「飛行機の墜落とほぼ同時に、神奈川県本部に第一報が入り、神奈川県警は直ちに四〇〇名の機動隊を現地に派遣したが墜落現場約一キロメートル四方に阻止線を張ったり又墜落機の所有者を発見し、それが米軍であると判明するや一切の手出しをせず、近づく日本人の排除に専念し、報道関係者をはじめ、被害者本人までも近づくのを阻止したりした。他方午後三時頃厚木基地より米軍将校数名が到着し、現場の調査を行い、午後四時頃大型ヘリコプターにて、多数の米兵が到着した。そこで、飛行機の残骸を回収し持ち去った。」あたかも日本の警察というのは警備員になっているということ、「機密保持を前面にしたものであり、日本の警察は、米軍当局が来るまでの単なる警備員にされている。」ここまで現地の人に言われているわけです。そうすると、いまのお話では、捜査を一緒にすることが第一次裁判権のもとにおいてもできるというならば、日本の警察自身がなぜ一緒の行動を起こさなかったのか、私は疑問でかなわぬわけです。いまの地位協定の範囲内においてもやれるというものをなぜやらなかったか、これがお聞きしたい第一点。持っていかれるという事態が二度にもわたってあったときに、まかりならないという拒否をなぜしなかったのか、中間報告からもそれをうかがうことはできない。三番目に、これはエンジン等だけじゃありません。本人自身に対する問題においても捜査権があるというならば日本自身がやるべきではないのか。このパイロット自身に対する問題は一体どうなっているのか。米軍によると、米軍によるとという中間報告ばかりが出てくるけれども、捜査権を持っておる日本自身の手によるところの報告がなぜできないのか。防衛施設庁は、この中間報告を出したときにそのことについて何とも思わなかったのか。屈辱的な感じがしなかったのか。これは、捜査当局の関係者からの報告と施設庁自身が捜査当局から聞いておるならば、そのときの感じを率直にお答えをいただきたいとぼくは思います。
  163. 新田勇

    ○新田説明員 お答えいたします。  最初の現場保存の問題でございますが、ああいう事態が起これば現場保存に警察が出るのは当然かと思います。神奈川県警は当日四百名を投入いたしまして、日本側の主導権によって現場保存に当たったわけでございます。アメリカ軍からは四十名に上る者が来、応援の申し出がありましたが断っております。現に、徹宵警戒に当たったのは神奈川県警の百四十七名で、これに対し、アメリカの方は車両の警備ということで三名ほど、あそこに大きな車両を持ってきたのに泊まっていたということでございます。  それから品物の回収でございますが、これは翌日、二十八日に実況検分を警察側でやっておりますが、その終了後に引き渡したということでございます。  それから、エンジンを搬出する件でございますが、先生御承知のように五日、六日にそれぞれ向こうから申し出があったわけでございますが、これに対し、私どもは、それは少し困るということを申し、五日は一回は再考を約して撤回いたしたわけでございますが、六日になって施設、装備というような問題もあり、やはり持って帰りたいということを申してきたわけであります。そこで五日にも防衛施設庁に対し、アメリカ軍が持って帰る動きがあるということをお話しし、また七日にも重ねて分科委員会の方にそういうことを申し上げ、分科委員会の方で措置をおとりになったのを確認いたしておるわけでございます。  それから捜査の主体の問題でございますが、私どもといたしましては米側と一緒に捜査をいたしておる、すなわち共同捜査をいたしておるつもりでございまして、わが方で取れるものについては資料をすでに取っております。  なお、パイロットのステートメント云々の件でございますが、それはとりあえず向こうがやると言っておりますので、向こうのステートメントをもらった上で検討いたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  164. 銅崎富司

    銅崎政府委員 防衛施設庁の関係につきましてお答え申し上げます。  事故分科委員会先生御承知のように合同委員会の下部組織でございまして、合同委員会から、この事件につきましてはできるだけ迅速に事故問題の徹底的な検討及び調査を行うとともに、同種事故の再発を防止するための措置についての勧告を含めて、合同委員会に対する所要の勧告を行うようにということで、九月二十七日に指示がございまして、それを受まして九月三十日と十月七日の二回にわたりまして事故分科委員会を開いたわけでございます。  お手元に差し上げました中間報告でございますが、ここにもございますように、一番最初のところですが、「目下、事故分科委員会において、その事実の確認と、その原因の究明の作業を進めており、正確には、今後の調査結果を待たなければならないが、」ということで、九月三十日と十月七日の事故分科委員会におきましてはもっぱらこの事実関係を中心に聞いておるわけでございまして、そういうことで海上自衛隊で聞きましたものはそういうふうに書いてございますけれども、米側から聞きましたものは正確に米側の説明によればということで記述してあるわけでございます。  そこで、これから事故原因の調査、事実関係の究明ももう少し進め、原因の究明に入るわけでございますが、原因の究明はどうしても技術的な問題にわたりますので、現在の事故分科委員会の構成ではその点についての知識がないという問題がございます。十月の六日に合同委員会が開かれておりまして、そのときに日米間に合意があるわけでございますけれども、事故分科委員会が必要に応じ専門家の部会を設置することができることについても意見の一致を見ております。したがいまして、そういう点がございますので、事故分科委員会でそういう専門家をどういうふうに入れるか。現在メンバーとして考えられますのは、同じような戦闘機を持っております航空自衛隊の技術者、それから海上自衛隊が厚木基地の管理をしておりますので海上自衛隊、及び運輸省の専門家の方、それから先日横浜市長の方からも六名の方の推薦をいただいておりますし、運輸省の事故調査委員会でいろいろ過去にやられた専門の先生がおられますので、そういう名簿も運輸省の方からいただいております。したがいまして、どういう形でこういう専門の方々の知識なり経験を活用できるかということにつきまして検討を進めて、できるだけ早い時期にそういう専門の方の意見が聞けるよう、現在、事故分科委員会との関係でどうしたらいいかということを調整しておるところでございます。  それからエンジンの問題、先ほど警察庁の方からお答えがございましたが、ダブらないようにして申し上げますと、十七日に事故分科委員会日本側議長から米側議長に対しまして、現在、米軍が精密検査のために米本国に移しましたエンジン等につきましては、米本国で実施中のエンジン等の検査が終了次第日本に持ち帰るように申し入れているところでございます。  それから米側が本国にエンジンを持っていきました理由、これもまた米側の説明でございますが、まず事故原因を分析できる資格を持った技術者によってエンジンも徹底的に分析検討されなければならぬわけでございますが、そういう資格を持った技術者が厚木にはいないということと、飛行機が米本国で製造されたものであるので、その製造されたアメリカ本国に持っていく必要がある、そういう検査をする施設が厚木にはないということで持っていったというふうに聞いております。  以上でございます。
  165. 寺前巖

    寺前委員 法務省の先ほどの御意見によると、第一次裁判権の放棄自身は地位協定の十七条に基づいてすることができる、その判断は日本側でどうするかだという問題の指摘が一つありました。この問題について、私は法務省当局なりあるいは外務大臣なりから御意見を聞きたいと思うのです。むしろ私はこれは政治的に大事だと思うのですが、法務省当局にお聞きをしたい一つの点は、アメリカ側からはその裁判権を放棄してもらいたいということを何度も言われているという問題が提起されている。日本側からいままで提起したのはどれだけあるのか。航空機問題でこれだけの事故を起こしながら、一度なりとも要求したことがあるのか、事実関係をお聞かせをいただきたい、これが一つです。外務大臣には、これだけの人が死ぬような事件がありながら、なぜ日本で裁判をやらしてくれということが言えないのか、これについて外務大臣にお答えをいただきたいと思う。  第二番目に、法務省当局からは、ちゃんと裁判にたえ得るようなものでなければならないんだ、これが第一次裁判権を放棄してくれと言ったってできないことになるではないかという問題の御指摘だったと思う。捜査は第一次裁判権が向こうにある場合においてもできるんだという御指摘だったと思う。とするならば、日本の捜査当局は、第一番目の第一次裁判権を放棄さしてでも証拠を十分に、裁判にたえ得るという立場に立って調査をしているのかどうか、捜査当局の立場を私は聞きたいと思う。その気になってやっているのか。そうしたらこのパイロットに対する直接取り調べも行わなければならないことになるではないか、あるいはまた向こうへ持っていかれたということに対するいま施設庁の報告によると、資格を持った技術者が厚木にはおらない、飛行機はアメリカでつくられたものだ、百も承知です。検査施設が日本の側にないという御指摘、これでアメリカが持っていったんだ、こうおっしゃる。それじゃ日本の民間飛行機、アメリカでつくられたもの、日本でそれを検査する能力がないのか。なめられた話じゃありませんか。そんなものを持っていかなくても日本でできますよ、施設もありますよ、それだけではあなたの方は不安だったら、あなたの人をすぐよこしなさい、捜査当局は本気に自分でこれを追及すると言うんだったら、そういう立場アメリカ側に要求すべきだと思うのだけれども、事実はどうしたのか。私は、日本自身で裁判をやるという気魄があったのかどうかということを事実を通じて聞きたいと思う。これは捜査当局はどうしたのかということをお聞かせをいただきたい、これが第二点。  第三番目に、横浜の市長がいろいろほかのこともありますが、この件に関して言うならば、エンジンを日本に戻してこい、日本側の調査をやれるようにさせいというような一つ問題点を直後に提起しておられます。そしてそれまでの間に、調査委員会の全員をアメリカに派遣してアメリカ自身の調査に立ち会わせろ、速やかにその内容について公表させろということを明らかに、十四日、中間報告が出る少し前ですが、新聞を読んでいましたら横浜の市長が要求しておられたわけですが、これに耳をかして直ちに日本の方はそういう態度でアメリカ側に交渉したのかどうか。これは捜査当局自身も事故の何とか委員会に入っておられるのだから、そこが言われるのか、施設庁が言われるのか、外務省が言われるのか。言われたところは、この横浜市長が提起しておられる問題に対してどのような折衝をやったんだ、やり抜いたのか、どの点が拒否されたのか、率直に報告をしていただきたいと思います。
  166. 吉田淳一

    ○吉田説明員 それでは私の方からまず関係の部分について御説明させていただきたいと思います。  まず第一に、米側が日本側に放棄要請したことが何度かあるということを申したではないか、しかるに墜落事故について日本側は放棄要請をしているのかいないのか、なぜしていないのか、こういうお尋ねだと思います。この点につきましては、非常に数は、米側からあったものについては少のうございます。これも公式と言えるかどうか、非公式の程度のことでさたやみになったというようなことを含めまして先ほど申し上げたわけでございますが、やや専門的になって恐縮でございますが、たとえばある事件犯人と目される者につきまして日本側に専属的な裁判権がある場合、日本側に第一次裁判権があるものと米側に第一次裁判権があるもの、二つ両方持っているというようなケースが間々あるのでございます。たとえば被害者がもっぱら向こうの米軍人であるというケースと、またそれとは別に日本人に対して交通事故を起こしたというような事例があるわけでございます。そういう場合に二つで分かれるというのは適当でございませんというようなことが一つ理由になるわけでございます。それからあるいは共犯が日本人とそれから米軍人であるというようなケースがございます。そういう場合に統一的に裁判をするという必要が相互にもあるわけでございます。そういう一応の理由があるわけでございますが、それらの理由がある場合に先ほど申したような例が公式、非公式にあったわけでございますが、そのようなことについても応じておりません。日本側は日本側の裁判権を持ったものについてはやる、米側が第一次裁判権を持っているものは向こうでする、こういう形で来ているのでございます。  墜落事故についてはどうしたかと申しますと、先ほど二つのケースの御指摘がございましたが、先ほども御説明しましたように、警察当局といたしましては必要な捜査をしたわけでございますが、事故原因についていろいろ調査した事故分科委員会調査結果等によりますと、結局わが国でなるとすればやっぱり業務上過失致死傷というのが一番中心的な事件になると思いますが、それに対する犯罪としての過失を認めるに足りる証拠を収集できなかったということにあるので、そういうことでこちらで裁判権を行使しようがございませんので、放棄要請もそのとき考慮の対象にはならなかったというのではないかと私は考えております。  それからなお、米側の軍事裁判がほっぽり投げられているじゃないか、これは非常におかしい、これは確かに御指摘の点はごもっともでございまして、私、法務省の刑事局総務課長といたしまして日米合同委員会刑事裁判管轄権日本側分科委員長をしております。その立場からも、この間衆議院予算委員会において大出議員の御質問外務大臣がお答えいたしました墜落事故の現場の立ち入りの問題につきまして、米側の刑事裁判管轄権分科委員長スティーブンス氏でございますが、その法務将校に直接会いまして、それで墜落現場の立ち入りについての運用を誤らないようにしてほしいということが第一点、軍事裁判について公正な裁判が行われるということを日本側は重大な関心を持っている、ついては早く先ほどの指摘の事故についての、あったかないか、あったとすればどういう結果になったかということを調査して回答してほしいということを直接会って申し入れております。そういうことでございます。ただ墜落事故につきましては、何せその事件の性質上、事故原因というのが運転者の過失に基づくという点が認定できませんと、非常に刑事事件としてはなりにくいわけでございます。そういうことで、いままでいわば不問に付されていたとすればそういうことじゃないかと思いますが、当然米側にも公正に事件を取り扱う、それが地位協定の精神だと思いますので、その立場に立って善処してまいりたいと考えております。
  167. 新田勇

    ○新田説明員 裁判権を実際にどちらが行使するかということとは関係なく、わが方にも裁判権が実際に行使されることもあり得るという前提で、本気で捜査をやっております。ただ、エンジンのような高度に技術的なものの鑑定ということになりますと警察それ自体でもなかなかできないということで、分科委員会あるいはそこで嘱託される専門家の方々による鑑定に依拠することとなるわけでございます。  それからパイロットの取り調べでございますが、これにつきましてはいろいろこちらから申し入れをいたし、それに沿った取り調べが行われておると聞いておりますが、そういった結果を見た上でなおわが方において調べる必要があるということであれば、わが方からそういう申し入れをする手はずを考えておるところでございます。
  168. 銅崎富司

    銅崎政府委員 まず、エンジンの持ち帰りの件でございますが、先ほども話がございましたように、十月五日、六日に捜査当局に対してエンジンを持ち帰りたいという意向が表明されたのを聞きまして、私どもとしては、十月七日の事故分科委員会で、持ち帰る場合には事前に連絡するようにという申し入れをいたしておったわけでございます。それにもかかわらず連絡がなく持ち帰ったというのが事実でございます。
  169. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 まず、このエンジンの問題につきまして、これは経過は御承知のとおりだと思いますが、わが方といたしましては米側に対しまして、調査が済み次第エンジンを日本にまた戻してもらいたいという申し入ればいたしておりますし、それに対しまして米側からも、調査が済み次第日本に返すことは考えるという返答を得ております。  それから、やはり私も飛鳥田市長さんにもお目にかかりましたが、この問題はやはり事故の再発防止という観点から私どもは最大の関心を持っておるのでございます。裁判がどちらで行われるかという点につきましては、いろいろ御関心もありますけれども、そのことがやはり事故の再発防止に役立つ、そういった意味で、事故の原因究明ということが日本としては何より関心のあるところでありまして、事故の原因究明につきまして、外務省として御協力できることがあれば万全の措置をとりたいと考えておる次第でございます。御承知のとおり、これがパイロットの過失があったかどうかということが被害者の補償に非常に影響してくることであれば、これはまた大変な問題になるわけでありますけれども、その点はもう御承知のように公務執行中のものでありますから、被害者の救済あるいは補償につきましては、これは防衛施設庁の方で万全の措置を講じているところでありまして、そういった意味ではなくして、事故の再発防止という点から努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  170. 寺前巖

    寺前委員 お約束の時間が参りましたのでやめますが、私ちょっと外務大臣に重ねて検討願いたいと思うのです。日本人が四人死んだ、五人死んだという事件日本で起こっておる。それが、八年前の事件がいまだに何の報告もないまま今日まで来ておる。被害者並びに関係者の間では深刻な話です。しかも、あなたはいまお金の話を言われましたけれども、お金で済む話でもありませんし、お金にしたってわずかですよ、その当時の人たちのもらわれたお金というのは。問題は、日本の国民に被害を与えたような事件日本でなぜ裁けないんだ、裁く準備をしなさい、この気魄でもって捜査当局が準備をさせるかどうか、外務省当局もその立場に立って事に当たるのかどうかという姿勢というのは私は大事な姿勢だと思う。そこの姿勢を固めてもらわないことには、さっき法務省の人がおっしゃいました、第一次裁判権を放棄することを要求することができるが、ちゃんと後も裁判にたえるような態勢がないとだめなんだ、問題はそこなんです。本当にそういう構えで日本側が準備してごらんなさい。それは放棄しなくてもアメリカ自身においてもその追及の前には姿勢が変わるでしょう。八年間放置するということはないでしょう。われわれの側にそういう準備がなかったならば、そういう姿勢がなかったならば、放棄の要求はできないし、また事件の究明も進まないだろうと私は思う。重ねて私は日本関係者に姿勢を改めていただきたい。いま日本の主権を侵害し、不平等なものだと言われる安保条約の地位協定のもとにおいても、それをやる気になるならばもっともっとやり方があるはずだということから、私は強く態度を改めることを要求したいと思うのです。外務大臣の最後の所見を聞いて終わりたいと思います。
  171. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 裁判権の問題は、これは地位協定におきましてルールが決めてあるわけでございます。そのルールはもうよく御承知のことと思います。裁判権の問題につきましては私は、現行のルールの中で、やはり現状において処理をさるべきものであるというふうに考えますし、また、アメリカ側の裁判がきわめて不公正な裁判が行われているということも直ちには言えないわけでありますので、これは今後法務当局とも連絡をとりまして検討はいたしますけれども、現行の体制を早急に変えるということはむずかしかろうという判断をいたしております。
  172. 寺前巖

    寺前委員 現行のもとにおいてやれるということを法務省当局がおっしゃっているのは、問題はそれをやろうと思ったら姿勢が要るんだ。私は、その姿勢が悪いということを指摘しているので、改めて再検討してもらうことを要求して発言を終わります。
  173. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡辺朗君。
  174. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は二十分という時間をいただきましたので、問題一つだけ中心にお尋ねしたいと思います。ベトナム難民の救済問題でございます。  この問題は、過般九月十六日でございましたが、本委員会においてもずいぶん討議がされた点でございます。関連いたしまして、私、幾つかの点を質問さしていただきたいと思っております。  まず第一番目に、去る十月七日に小さな船、日本の船でございますが、第二十三神巧丸、乗組員十三名、これが漂流中のベトナム難民七十名を救助いたしまして香港に運んだということがございました。これについて外務省の方、あるいは担当の方で御存じの方ありましたら御報告をいただきたいと思います。あるいは新たにできたベトナム難民救済対策室の方でも結構でございます。
  175. 黒木忠正

    ○黒木説明員 ただいまお話しのような事件はございまして、結局香港がこの難民を、暫定的でございますが、引き取るということで香港に上陸が許可された、このように聞いております。
  176. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それはいつ解決いたしましたでしょう。また、いつ香港政庁側で上陸許可をいたしましたか。そこら辺、御存じありませんか。
  177. 中江要介

    ○中江政府委員 詳細の書類、いま横で調べておりますが、本件につきましては、香港政庁に一時上陸を香港で認めてもらいたいという折衝をいたしまして、三カ月という期間を限って香港政庁で一時入国を認めてくれておる。三カ月たちましても最終定着地への渡航その他で未解決の場合には日本側として考える、こういうことになっておるように聞いております。
  178. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私の記憶する限りは、十月七日に七十名の漂流しているベトナム難民、これは乳児も三人ほど含んでいると聞いております。そして香港に上陸できたのは十月の二十日か二十一日ではなかったかと思います。私は、実はこの問題一つ取り上げて考えても、そこにどうも日本政府のベトナム難民問題、こういうものに取り組む姿勢そのものが大変不徹底だし、そしてまた実際には、何か政策なり方針なりというものができていないのではないか、こういうことを感じました。たとえば十月の七日に七十名救ったのですけれども、これをどうしたらいいかということで外務省や海上保安庁に連絡をする。十五日になっても、一週間たっても、どうしていいという指示が来ない。こういうような事態がある。私はこういう点一つを取り上げても、どうもわが国政策の弱点みたいなものが集約されているようにも思えまして、あえてここでベトナム難民問題を再度取り上げさしていただきたいと思うのです。  九月の二十日でございます。ベトナム難民救済対策室が内閣にできたといいます。これはいままで日本政府が民間に任せていた、そういう難民問題、これに対して少なくとも一歩前進の姿勢を示したことには違いないと思いますが、そこでお尋ねをいたします。対策室はどのような構成をもってつくられたものであり、いまどのような仕事をしておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
  179. 黒木忠正

    ○黒木説明員 御説明いたします。  九月二十日の閣議了解に基づきまして、内閣にベトナム難民対策連絡会議というのができておりまして、これの議長は内閣官房副長官、構成員としましては、内閣審議室長、それから内閣官房長官が指名する関係局長等ということでございまして、総理府、法務省、外務省、大蔵省、厚生省、農林省、運輸省、労働省、建設省、自治省というところがメンバーになっております。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕 さらにこの関係省庁と、それから国連、赤十字その他の難民を保護しております団体との連絡の一本化を図り、その他必要な施策の取りまとめを行うために、内閣総理大臣官房に対策室というのが設けられておりまして、現在職員五名をもちまして対策に当たっております。
  180. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その場合に、たとえばいまの事件です。もうすでに対策室はできている。ですから十月七日にそういう事態が起こった。そうすると一週間たってもそれに対する明確な指示ができないということは、一体この対策室がどういう基本方針でこういうような問題を処理していかれようとしているのか。ここら辺、もう少し説明していただかないと、何かもう機能していないというようにも受け取られるのですが、そこら辺もうちょっと説明をしてください。
  181. 黒木忠正

    ○黒木説明員 先ほど御説明いたしましたように対策室がございまして、これは九月二十八日発足しております。それで先ほどの連絡会議ないしは対策室の当面の問題といたしまして、難民収容のための施設をとにかく準備するということ。これが一番緊急の問題ということになっております。それから次に緊急を要する医療、病気になった場合の医療問題でございますが、そういったものについても援護措置検討する。これは二番目の問題であります。それから三番目としまして、難民に対する職業技術訓練の供与を図る。それから四番目といたしまして、難民を受け入れるに当たりまして赤十字その他の関係団体の協力を得て円滑な運営を図る。この四つが私どもに課せられたテーマになっております。先ほど申し上げましたように対策室というものができておりますけれども、これが具体的な案件を処理するということではございませんで、先ほど申し上げましたように関係省庁、関係団体との連絡の一本化を図るということが主たるものでございまして、いま申し上げました四つのテーマにつきましてもそのような関係で取り扱っておるというのが現状でございます。
  182. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、そこら辺に問題があると思うのです。実際問題として、まだまだ難民の方々が漂流している。そしてそれを救済するというようなこれからの事態が予想されるわけです。そうした場合に、すぐにやはり適切なる指示をする、こういう機構がこちら側にないと、救った方も大変なことになる。たとえばいまの小さな船です。乗組員が十三名で、船の大きさは四百九十五トン。これが七十人、乗組員の何倍かの人を収容する。そうすると、食糧も水も、それから一切の燃料であるとか、そういうような問題も考慮しながら、難民救済をどうやったらいいのかということで対処していかないといけない。航路も変更しないといかぬだろう。こういうような問題が起こったときに、一週間もほったらかしみたいなことになるようでは、これは何のための対策室か。それは施設をつくることも医療の問題もわかりますけれども、こういう問題にやはり迅速に対処するということをひとつぜひその対策室の仕事の中に加えていただきたい。これは要望をまずしておきます。  次に、これは外務省にお聞きしたらいいのでしょうか、どちらにお聞きしたらいいのでしょうか。九月十六日のときの鳩山外相のお話の中に、日本に今日まで到着したベトナム難民は千百二十五名だった、こういう数字も示しておられましたが、現在ではいかがでございましょう。そしてまたこれからふえるというのか、そういう見通しはなかなかむずかしいのでしょうけれども、難民の増減の問題についての見通し、こういったこともひとつ説明をしていただきたいと思います。
  183. 中江要介

    ○中江政府委員 外務省で聞いております現在の数でございますが、現在までにわが国に一時上陸を認められた数が千二百六名となっておりまして、このうちの三百七十七名が再定住先に出国しておりますので、結果といたしまして八百四十八名が残っております。他方わが国で生まれました子供が十九名おります。  これからどうなるだろうかという点ですけれども、これは責任をもってどうなるということはもちろん言えるあれではございませんけれども、傾向といたしましては本年は昨年よりもふえてきている。本年の中では五月、六月ごろがピークで、七、八は少しは減ってきているという状況でございます。これからどうかといいますと、これはなかなかわからないということでございます。
  184. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 なぜ難民がそのように出てくるのか、国外脱出しているのか、そこら辺の事情はよくわかりませんけれども、わかっている範囲で、答えられる範囲でひとつ答えていただきたいと思います。  と同時に、脱出してきた、そしていま日本に上陸したというベトナム難民の方々の職業であるとか階層であるとか、あるいは年齢層、そういうようなこともわかりましたら教えていただきたいと思います。
  185. 中江要介

    ○中江政府委員 なぜ難民となって自分の国を捨ててきているかということにつきましては、推測その他雑情報、いろいろ取りまぜますと、大きく分けまして三つぐらいのカテゴリーがあるのではないかと思います。一つは、すでに友人、知人あるいは先輩、家族、そういった者がアメリカなりヨーロッパなりに出ておりまして、そのもとに自分も行きたい、しかし、出国をする手続がなかなかむずかしいんだろうと思うのですけれども、出られないというので出てきている例。こういう人たちはどちらかというとわりあい裕福な人のたぐいかと思います。もう一つは、今度はそういう人はないけれども、かつて南ベトナムの旧政権時代に相当程度の高い生活を楽しんでいた人たちで、多少の蓄積もあって、外国に行っても、少なくとも現在の南ベトナムにおける新しい生活よりはより高い生活が楽しめるのではなかろうかという、一種の夢といいますか、そういう将来を考えて出てくる人。それから三つ目は、これは最も惨めな人たちだろうと思うのですけれども、全く着のみ着のままで、とにかく新しい体制のもとでの生活に耐え切れなくて出てくるというような人たちに大体分かれるんじゃなかろうかと思いますけれども、これはあくまでも推測なり、いろいろの情報から私どもが勝手に整理したわけでございまして、一々当たったわけでもございませんし、またそういうことで正しいのかどうか、これはいまその地を管轄しておりますベトナム政府政策とも関連する問題でございますので、それ以上立ち入ったことは私どもとしても申し上げられない、こういうことでございます。  あと職業その他につきましては法務省の方から御説明していただきます。
  186. 山野勝由

    ○山野説明員 職業等につきまして御説明いたします。  入国管理当局におきましては、これらの人々の上陸に際しまして一応事情の聴取を行っております。その事情聴取の際に当事者が明らかにしたことでございますが、範囲は非常に多岐にわたっておりまして、一々挙げませんが、一応代表的といいますか、わりあい頻繁に目につく職業を例示的に申し上げますと、軍人、官吏、技師、それから細かくなりますが、教師、薬剤師、運転手、電話のオペレーター、それから普通農業をやっておったとか、漁をしておったとか、学生と称する者もおります。  以上でございます。
  187. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この人たちは、日本に来られて、ここへ定住するという希望の表明がないのでしょうか。全部アメリカだとかフランスだとか、そういうところに行きたがっているのでしょうか。
  188. 山野勝由

    ○山野説明員 先ほど申し上げましたように、上陸の際に当事者からこの点の申告と申しますか説明を聞いておるわけですが、すべてある特定の国へ行きたいと言っておるようでございます。現在のところ定住したいという話は私ども入管当局としては聞いておりません。  ちなみに、定住希望先はやはり米国が圧倒的に多うございまして、続いてフランス、カナダとなっております。現在まで出国いたしました難民の出国先を御参考までに申し上げますと、やはり一番多いのが米国でございます。それに次ぎましてカナダそれからフランスそれからイギリス、スイス、オランダ、こういう国へ出かけております。それからこれ以外に南米のパラグアイにも行っております。  以上でございます。
  189. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、いつもその点疑問に思っております。それから難民の方の個人的な意見をいろいろ聞いてみますと、必ずしもみんな外国に行きたいと言っているのではなくて、案外たくさん日本に定住したい希望を持っている、しかし日本ではそれが不可能だからよそに行く、こういう印象も私は受けたのですが、その点いかがでしょうか。みんなが当初からそういうふうに他の国々に行きたいと言っていて、日本に定住する、日本で暮らしたいという願望はもともと持ってないのですか。もう一遍確かめておきたいと思います。
  190. 山野勝由

    ○山野説明員 先ほど御説明いたしましたように、私どもの方は、上陸の際に希望の先について話を聞いておるわけでございますが、その後こういった人たちは国連の難民高等弁務官事務所東京駐在所の調整のもとに現在日本に滞在しておるわけでございますが、その間出国希望その他は国連事務所の方でいろいろ聴取しておるようでございますが、その方面からもまだ定住希望という形で連絡を受けたことは実はございません。
  191. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この点は、日本という国、一般市民だとか、それから船に乗っている人たちは大変心配もし、そしてまた人道的な立場から大変あったかい気持ちでいるんですね。それに比べて、どうも日本政府の方が冷たいということが難民の方にははね返ってくる。そしてそれがどうもよその国に出ていくんだという希望にもなって出てくるというふうに思えてならないのです。しかし、いままでのところお聞きすると、日本に定住したいというのはまだ聞いたことがない、こういうお話でございますから、一応それはそれとして、それでは信じておきたいと思います。  ところで、アメリカ政府が緊急措置として新難民受け入れ計画を発表いたしました。これについてひとつ御説明いただけたらと思います。
  192. 中江要介

    ○中江政府委員 先生御指摘のアメリカの新しい計画といいますのは、新パロール計画、こういうふうに呼ばれている計画だと思います。これは、いわゆる通常の移民とか難民に対する入国手続によらないで、アメリカの司法長官の特別許可に基づいて、インドシナ難民に限って一万五千人を目標として入国を認める、こういうものだと承知しております。この計画は、本年の八月十一日から実施されている。アメリカ政府の説明によりますと、いま申し上げました一万五千人のうちで、七千人は海路脱出した難民を対象とする、あとの八千人はラオス等経由してタイに脱出したインドシナ難民を対象としている。そういうことで、特に海路脱出のベトナム難民につきましては、通常の難民受け入れの際に必要とされる入国条件を課することなく、自由にといいますか、無条件で入国を認める方針である、こういうふうに聞いております。これによりまして、わが国がいま抱えておりますベトナム難民の中でどの程度がアメリカ側で受け入れられることになるであろうかということは、現在アメリカに照会中でございますが、確たる数字というのはまだ確認されていない、こういうのが実情でございます。
  193. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そういうような状態の中で、先ほどの問題にちょっと返りますけれども、もし日本で定住し、そしてまた就労するというような希望が表明された場合、これは日本側でも当然受け入れていくということも考えておられますか。この点はいかがでございましょう。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  194. 小林俊二

    小林説明員 国連局といたしましては、高等弁務官事務所を通じまして種々この問題についての連絡を受けております。実は私自身、八月にジュネーブで高等弁務官に会ってまいったわけでございます。高等弁務官事務所としては、もちろん難民の希望に応ずるように、難民の状態に人道的な処遇を加えるように常々希望しておるわけでございます。私どもといたしましても、難民の第三国への再定住につきまして国連のそうした機関を通じて種々協力を得ておるわけでございますから、それに対する考慮もございますので、こういった高等弁務官の希望につきましてはできる限りのことをしたいという気持ちでおります。先ほど御説明のございました対策室におきましても、この定住の問題につきましては引き続き検討するということを合意しております。この問題につきましては、まだ結論が出ているとは申しがたいのでございますけれども、私どもとしてはその観点からできる限り早急に関係省庁間の合意を取りつけようという努力をいたしております。
  195. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 九月十六日の外務委員会における討議の中では、外務大臣も、それから御答弁された方々からもちょっと前向きなお話があったように思うのです。定住する場合に法律上の考慮もしなければいけない、そういった問題もひとつ検討をしていくということがございました。  これは、ここでこれ以上突っ込んでは時間も過ぎてしまいますが、対策室ができた以上、これを単に施設だとか医療とかという、何か一時的なものに焦点を置くのではなくて、やはり難民救済というものの基本方針、その中に定住も含める、それから就労も、職業供与も具体的に打ち出していくという、そういう点にひとつ重点を置いて考えていただきたい。これは要望しておきます。  それからもう一つ、いまさっきからお話を聞いておりますと、難民がまだふえてくるという傾向、これはございます。そうすると、実際に日本の船で救っている場合、乗組員の方々は、自分たちの航路が向こうに行くんだということがわかっていても、目の前で漂流している人たちを見ますと、これはやはり救い上げているのです。そして航路をときには変更して、向こうに行くのがこっちに帰ってくるというような形もとらざるを得ない。あるいはまたどういうふうに対策を講じるべきか、受け入れ施設はどうなるか、こういうことについても本国の方に打電もする、こういうようなことをする。さらには、乗ってこられた方々、先ほど一つの例として出しましたけれども、第二十三神巧丸というような小さな船であっても、乗組員が自分たちの乏しい食料なんかを割いて、あるいは衣料も与える。着のみ着ままの方にはそういうふうなこともやっておられるんですね。  そういう点で、日本国側の政府の方での受け入れがきちっとしている、対策が緊急にぱっとできるということがないと、たとえば日本人の船員がやっておられる人道的な行為そのものがどうもむだになってしまうような気がしてなりません。こういう点について、たとえば人道上という言葉一つで片づけられない問題もあるいは出てくる。それはいまのように航路を変更したり、それからまた電報を打ってあれこれ対策を講じてもらうように交渉をする、折衝をする、そういった費用も、電報代だけでも百万円以上もかかる。あるいは航路を変更すれば船会社においても大きな経済的な負担も出てくる。こういった問題をやはり具体的に補償するという政府側の措置がないと、人道上という名のもとにいろいろな行動をしようと思っても、足かせ手かせがあっちこっちにあるために、実際には、ないことを希望しますけれども、難民を見ても、見て見ないふりをして通らざるを得ない、こういう事態も予測されるわけであります。そういう点の補償措置と経済負担補償措置というようなことは考えておられるかどうか。特に船舶の航行中の事態を予想いたしまして、ここら辺についてはどのような対策があるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  196. 山元伊佐久

    ○山元説明員 お答え申し上げます。  現在、救難の問題につきましては、国際条約に基づきまして船員法の十四条におきまして、船舶が遭難した場合にはその関係者を救助しなくちゃいけないという規定がございます。ベトナム難民の場合もこの規定に基づいて救助しているわけでございますが、実際問題としては、先生御指摘のとおり、船員の方々が大変な苦労をしているわけでございますけれども、これは世界的にお互いに助け合うという人道上の見地からの定めにもよりまして、お互いに助け合うということでやっているわけでございます。  救助に要した費用、たとえば食料あるいは衣服、あるいは先生御指摘の離路するための経費、こうしたいろいろな経費がかかるわけでございますが、これは一般の遭難船の場合と同様に、ベトナム難民を救助した場合におきましてもPI保険からてん補されているという実態でございます。したがいまして、現在のところは船社側からも特に何とかしてほしいという要望が出てないというのが実情でございます。
  197. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまの点で、大手の船会社や何かはそういう点は保険にも入っており、いろいろできるんですね。ところが、小さな、たとえば第二十三神巧丸というような例を出したのですけれども、これはタグボートなんですね。しかも、これは小さな会社でございますね。そうしたところはそういった措置が講じられていないですね。そういう場合は、やはり政府がしなけれどならぬ、そういう点をひとつ検討していかなければいかぬのではないでしょうか。そこら辺、再度……。
  198. 山元伊佐久

    ○山元説明員 ただいまの先生の方から御指摘のございました本件事案、タグボートでございますけれども、この場合も保険に入っておりますので、保険会社に請求いたしますれば所要の経費はてん補されるという制度になっております。
  199. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が来ましたからなんですけれども、たとえばいまの電報代であるとか、そういうようなことも全部入りますか。
  200. 山元伊佐久

    ○山元説明員 通信費もてん補されております。
  201. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が参りましたから、再度、私、要望だけをいたしまして終わりたいと思います。  それは、先ほどの対策室ができた、これは一歩前進であると思います。日本が、こういう難民という問題を本当に真剣に取り上げている、そして、具体的な対策を講じているというのは国際的にも注目されているところだと思うのです。それだけに何か、アメリカなりフランスなり、そういうところへ追い出していく、その中間的な措置だけを講じているというような印象を与えるような政策ではなくて、より根本的には、難民というものを日本国内においても受け入れていくという姿勢で具体的な方策というものをひとつ進めていただきたい、これを要望して、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  202. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、伊藤公介君。
  203. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私は、先ごろの衆参の予算委員会でいろいろ論議をされました金大中事件について、再び御質問を申し上げたいと思います。  どうも、政府の答弁をずっと聞いておりますと、金大中事件に対して国民の疑惑は非常に強い、つい先日も朝日新聞の紙上の討論会で、各党、大臣を囲んでいろいろな討論をしておりましても、六つの政党のうち五つの政党はこの真相を強く明らかにすべきだという考え方に立っております。つまり、伯仲している議会の中で、国民の多くの人たちにこの問題は明らかにしなければならない、こういう要求があるわけですから、政府はこれに対して積極的に、徹底的に真相を明らかにするという立場で臨んでほしい、こう思っているわけでありますが、どうも金大中事件、あるいは日韓の背後の関係はうやむやにされていきそうな気がしてなりません。私はとてもやりきれない気持ちになっているわけでありますけれども、限られた時間の中で、数点確認をしながら御質問を申し上げたいと思います。  政府は、金炯旭氏のアメリカの下院での証言は、八年も前にすでに職をやめている、また金在権氏の伝聞にしかすぎない、こういうお立場から、証拠が不十分だ、こう言い続けてまいりました。しかし、日本政府は不十分だと言うその金炯旭氏を、アメリカの議会では呼んで証言をさせているわけでございます。たとえば私どもが、普通ごく一般のいろいろな事件を解明をしていく場合にも、証言あるいは聞き込み、いろいろな形で捜査を固めていくと思うのです。伝聞であればなぜ証拠が不十分なのかということが私には理解ができません。伝聞であろうとも、少なくとも真相を明らかにするために役立つものであれば、それは十分その真相を明らかにしていくべきなのではないかという気が私はいたしますけれども、金炯旭氏のこの一連の発言は不十分だとするその根拠を、まずお尋ねをしたいと思います。
  204. 中江要介

    ○中江政府委員 これはたびたび政府として御説明しておりますように、日本政府としていま関心がありますのは、米韓癒着ではなくて金大中事件、こういうことでございます。アメリカが金炯旭という元中央情報部長の証言を求めておりますのは、これは米韓癒着という観点から証言を求めておりまして、その中にたまたま金大中事件に関連する部分が出てきた、こういうところから物事が起きたわけでございまして、この金大中事件に関するところを見ますと、これは当時、つまり事件が起きましたときに日本にいなかったし、事件が起きましたときに韓国中央情報部の責任ある地位にいた人でもない、むしろ金炯旭氏の証言の内容が、金在権元駐日公使、この人は事件当時日本にいたということは私どもの記録でもはっきりしておるわけでございますので、この金在権元公使から聞いた話だということでありますので、日本金大中事件の真相を究明するという観点からいたしますと、この金在権元駐日公使に直接事情を聞くのが最も的確である、これは捜査当局とも御協議いたしまして、そういう方針に基づいて、現在アメリカ政府を通じまして、筋を通して金在権元公使に対する任意の事情聴取というものの可能性を探求している、こういうことでございます。
  205. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 金在権氏の問題はその次にお尋ねをしたいと思いますけれどもアメリカの議会で、米韓の癒着の問題にしろいずれの問題にしても、金炯旭氏の証言に何らかの証拠あるいは信憑性というものがあるという前提に立ってフレーザー委員会では金炯旭氏の証言を求めているわけでございます。  その同じ人物の金炯旭氏がこの金大中事件についてるる証言をするというその内容についても、それはいささかでも信憑性があると考える方が真相を究明するためには私は正しい立場だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  206. 中江要介

    ○中江政府委員 私どもがいままでアメリカにおける金炯旭証言というものについて得ました資料に関する限り、日本の捜査当局にこれを示しましていろいろ評価を求めましたところ、その中には本当かもしれないと思うものもあるけれども、しかし事実と非常に違うものもある。全般として、金炯旭氏自身の証言の信憑性といいますか、証拠性というものは必ずしもこれを信頼していいかどうかについては疑問がある。むしろその証言にたびたび引用されております金在権元公使から直接事情聴取することの方が金大中事件の真相究明に役に立つという捜査当局の判断があるわけでございますので、外務事務当局といたしましては、その線に沿ってアメリカ政府と交渉している、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  207. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私は刑事でも弁護士でもありませんからわかりませんけれども、いま御答弁を聞いておりますと、信憑性もあるという点もその中にはある、あるいは信憑性がないということも言い得る、こういうことですが、たとえば私ども犯人をつかまえる場合には、いささかの疑問があっても、疑問のあるものを一つ一つつなぎ合わせていって犯人を割り出していく、真相を明らかにしていくという作業を恐らくされるだろうと思うのです。金在権氏を呼ぶということもわかりますけれども、その金在権氏を呼ぶという根拠になった金炯旭氏も、あわせてお二人とも呼んで、双方に証言をしてもらうということの方がより真相は明らかになっていくと私は思いますけれども、いかがなものでしょうか。
  208. 中江要介

    ○中江政府委員 これは権限の問題を持ち出して大変恐縮でございますけれども、これを判断するのはやはり捜査当局でございまして、外交的にどうこうということとはかかわりのない問題でございますので、外務省といたしましては、金炯旭という人から意見を聴取することの捜査上の評価というのは、これはもっぱらわが方の捜査当局の判断にまっているということでございます。他方、何人によらずこれを国会における証人として喚問することの是非というのは、総理もたびたびおっしゃっておりますように国会がお決めになることでございまして、私どもとして格段の意見を申し述べるということはいたしておらないわけでございます。
  209. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうしますと、捜査当局としては、金炯旭氏を呼んでも何らのメリットもない、あるいは金在権氏を呼んで真相を聞くということの方がより捜査に役立つ、こう考えているのですか、どうでしょうか。
  210. 竹内黎一

    竹内委員長 警察の御要求がありませんので出ておりません。
  211. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 わかりました。いずれ捜査をしていく上でそのことが必要かどうかということは改めてお尋ねしたいと思います。  先日、フレーザー委員会の顧問、ベッチャー氏が来日をいたしまして、在日韓国人の三人から事情聴取をした際、この三人の方々はいずれも、金大中事件はKCIAによって行われたものではないか、まずその九〇%は正しい、こう答えたと言われているわけでありますけれども政府としてはこのフレーザー委員会の証言というものをどのように受けとめられているのか、またアメリカの議会における金炯旭氏の証言というものに対して、信頼をし得るのかどうなのか、どういう認識を持っておられるのかお尋ねしたいと思います。
  212. 中江要介

    ○中江政府委員 まず前段のフレーザー委員会のスタッフであるベッチャーという人が日本に来まして、おっしゃいましたように三人の在日韓国人にインタビューをしたということがございました。  そこで私どもがこのベッチャーという人の入国を認め、また在日韓国人と接触することについて、まずはっきりしておかなければいけない点は、これはアメリカにおいて行われております議会における証言というような性格のものではなくて、議会の事務局のスタッフによる単なる情報収集の一環として関係者に会ったということでございまして、いかなる見地から見ましてもアメリカの公権力の行使というようなものではないということは事前にはっきりいたして入国を認めたわけでございます。  入国しまして三人の在日韓国人とインタビューしました中身について私どもが得ておりますところの先方の説明は、一部新聞その他に報道せられているところとは多少ニュアンスが違っておりまして、ベッチャー氏が言いますのは、インタビューは九月の二十六日と二十九日の二回行った。これは報道されているとおりです。ただ、インタビューにおいて対象となったのは、主としてアメリカで問題になっております統一教会の活動に関するもので、しかも米国に関連するものについて話をした。金大中事件についてはどうかといいますと、フレーザー委員会としては、日本における金大中事件については調査していないし、また今後も調査することはない、そういう立場をとったと、ベッチャー氏自身がはっきりと言っております。こういうことでありますので、今回のインタビューにおいて金大中事件が大部分を占めたとか、あるいは金大中事件はこういうことであったとか、スタッフであるベッチャー氏の語るところからはそういうことはなかったというふうに私どもは判断しておるわけでございます。  他方、それとは別に、一般にアメリカの議会で行われております証言をどういうふうに受けとめているかといいますと、これはアメリカ議会における証言と、ただそのままに受けとめる以外にないのでございまして、外国の議会における証言の価値評価を日本側が公の立場で言うことは許されないことである、こういうふうにわきまえておるわけでございます。
  213. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務省の中江アジア局長アメリカの国務省に、金在権氏から任意に事情聴取ができれば捜査官を派遣したい、こう申し入れをして、金氏は、応じてもいいけれどもアメリカ国内では困るということであったので、八月の下旬に折り返し、アメリカ以外の国で事情聴取ができるかどうかを照会中である、その返事がないので、先週の末問い合わせをしたところだ。これは先ごろ参議院の予算委員会でお答えになられたわけでありますけれども、その正式に申し入れをされた日時、それからアメリカの国務省のだれあてに、どなたのお名前で申し入れをしたのか、もう一度お尋ねをしたいと思います。
  214. 中江要介

    ○中江政府委員 何月何日というところまでちょっといまあれですが、最初にアメリカの下院の国際関係委員会国際機構小委員会、いわゆるフレーザー委員会におきまして金炯旭元韓国中央情報部長金大中事件に関する証言が出ましたのが六月の下旬であったわけでございますので、この証言があったという情報を入手いたしましてから、アメリカの国務省と在米のわが大使館との間で、任意の事情聴取を行うについて、どういう段取りでやるのがよかろうかという話をまず始めたわけでございます。それに対しまして八月の十七日にアメリカの国務省から在米日本大使館を通じて通報してきましたのが、いま先生がおっしゃいましたように、日本政府からの要請については、アメリカ政府としては、金在権氏の同意を条件として米国内日本側が直接事情聴取を行うことには異議はない。そこで、金在権氏本人の意向を確認すべくアメリカ政府当局は同人と接触した。金在権氏は、日本側当局の事情聴取に応じるべき理由はないと思うけれども、他方、聴取に応じることに反対はないとのことであった。ただし、現在金在権氏の家族は米国内で新しい生活を設定するべく努力しているところであり、マスコミなどの注目を避けるため米国内での事情聴取には応じたくないということであった。こういう返事がありましたので、今度はアメリカ政府当局、つまり国務省を通じまして、それでは金在権氏としては近い将来米国外に出る予定があるのかどうか、場所の問題を含めてどのような条件が満たされれば事情聴取に応ずるのかなどについて、さらに金在権氏の意向の確認を進めてもらいたいということを改めて申し入れておいたところ、返事がないので、先ほど御指摘のように、予算委員会で私が答弁いたしましたように今月の上旬だったと思いますが、催促いたしました。その返事がまだ参りませんので、今、明日中にさらに催促をする手はずをしております。そのレベルは在米日本大使館の参事官から先方の日本部長、こういうレベルでやっておるわけでございます。
  215. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうすると、金在権氏は日本へ来て証言をしてもいいということでありますと、日本へ証人として来てもらうという手続はとるということでございますか。
  216. 中江要介

    ○中江政府委員 いま進めておりますのは、金在権氏から任意の事情聴取をするということでございますので、これを法廷における証人として喚問するとなりますと、これは司法上の手続ということで、また別個の手続になると思いますし、その場合には日米間の司法共助ということになるかと思います。  他方、いま照会しております話では、仮定の問題といたしまして、金在権氏が仮に日本で任意の事情聴取に応ずるということになりますと、これは金在権氏を日本に入国を認めるということだけで済む問題で、それ以上の司法上の問題は出ないと思いますが、それをさらに権力をもって義務的に証人として拘束して出廷させるというような手続になりますと、これはまた別の考慮があろうか、こう思います。
  217. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 金東雲元一等書記官についてちょっとお尋ねをしておきたいのですけれども三井警備局長は金東雲に対してこれ以上の証拠は必要ない、逮捕をして供述書をとればいい、こう答えていられるわけであります。金東雲氏は現在韓国にいるということですけれども、具体的に韓国のどこに、どのような待遇を受けているのか、またこれからの金東雲に対しての手続はどういう手順になっているのか、お尋ねをしたいと思います。
  218. 中江要介

    ○中江政府委員 これは答弁されました三井局長がおっしゃる方が正確かと思いますけれども、私どもが聞き及んでおりますところでは、金東雲元一等書記官につきましては、これは逮捕状を請求するケースである。逮捕状を請求するには、いま挙がっている指紋その他の材料で十分だということでございまして、逮捕状を請求した上で本格的に調査をして真犯人かどうかということが明らかになる、こういう段階だというふうに聞いております。  いま金東雲元一等書記官がどこにいるかという点は、韓国にいるものと推定されますが、私どもは承知しておりません。  どういう手続が残されているかと申しますと、これはたびたび言われておりますように、一九七五年七月二十二日の口上書をもちまして、金東雲に対する日本捜査当局が持っている容疑については、韓国側の取り調べでは起訴し得る段階にまで至らなかったということで、その韓国側の捜査の結果について日本としては一〇〇%満足ではないが一応のけりをつけたものとして評価をしたということでとどまっておりますので、金東雲元一等書記官の身柄についてさらに何らかのステップをとるためには、当初の一九七三年十一月二日の外交的決着のときの留保条件である公権力の行使というものについて確たる証拠が挙がるという事態にならなければ外交的にはむずかしい、こういうのが現状でございます。
  219. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 終わります。
  220. 竹内黎一

    竹内委員長 午後三時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後二時二十七分休憩      ――――◇―――――     午後三時十二分開議
  221. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定の実施に関する日本国政府国際原子力機関との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  222. 河上民雄

    河上委員 先般、十九日から二十一日にかけましてワシントンで国際核燃料サイクル評価会議が開かれております。この会議には日本代表として大川国連局長も出られたようでございますけれども、この問題につきましてこの機会にお尋ねしたいと思います。  最終コミュニケによりますと、この会議は交渉ではなく研究であるというような言葉が出ておりまして、また参加各国はこの会議の結果に拘束されないというようなこともうたわれているわけでありますけれども、この辺の評価ですね、カーター大統領の思惑というものが出発点になりまして、カーターの核再処理禁止という厳しいアメリカ政策各国に、まあ言葉は悪いですが押しつけたいということで始まった会議であったはずだと思うのでありますけれども、このような結果になりました点について、その経緯あるいはどうしてそうなったかというような点、またこういう結論というものは今後の核拡散防止の上から見てどういうふうにお考えになっておるか、政府の御意見を承りたいと思います。
  223. 大川美雄

    ○大川政府委員 おっしゃるとおりこの共同コミュニケ、最終コミュニケにはいまのようなことが書いてございますが、そもそも四月七日に発表されましたカーター大統領の原子力政策では、いかにもかなり厳しい姿勢が出ておりましたけれども、その後たとえばロンドンの七カ国首脳会議その他いろいろな場での話し合い、それからアメリカが二国間で行った話し合い等々を通じまして、アメリカも恐らくだんだん各国考え方が従来よりもよくわかってきたのではないかと思いますけれども、少なくとも四月現在に比べますと、今度の会議ではわりあい融通性のある考え方、あるいは姿勢を示してきたものと私には感じられました。それで、初めから二年間の作業の結論を一応設定して、それに向かって真っすぐに行くのではなくて、全く技術的かつ客観的にいろいろな問題を検討していこう、しかも交渉ではなくて、これは検討会、研究会あるいは勉強会というようなものとして把握されておりますし、しかもその結論を参加国は初めから受諾することを約束するものでないということもはっきりされましたので、今後二年間にわたって定められましたいろいろの分野で各国の専門家が自主的に意見を交換して、原子力の平和利用の推進という面と、それから核の拡散をできるだけ防止するという二つの面をなるべく調和した形で持っていこうということになろうかと思います。その点で、一方的にアメリカ政策を押しつけられるというようなことじゃなく、各国が本当に自主的に一番いい解決策を見出そうという道が開かれたという意味で、この間のINFCEPの第一回の会合は一応の成果をおさめたと私どもは考えております。
  224. 河上民雄

    河上委員 これはアメリカの当初の意気込みからしますと、それだけアメリカが利口になったのかどうか知りませんけれどもアメリカの影響力の後退というふうに見ることができるのか、それとも、今後ともアメリカのこの問題に関するイニシアというのは続いていくのか、ますます強くなっていくのか、そういう点はどうでございますか。日本の場合、何といってもアメリカの影響を一番強く受けるわけで、ヨーロッパの場合のように近隣諸国と連れ立って、誘い合って一つの力をつくるということは非常に困難だと思うのですよ。この今回の会議の、印象を含めてでありますけれども、結論の内容検討の上で、アメリカの影響力というものは後退したというふうに考えられますか。
  225. 大川美雄

    ○大川政府委員 一方的にアメリカ考え方各国に受諾させようというふうな姿勢が見られていたことしの前半ごろに比べますと、アメリカの姿勢は確かに変わってまいったと思います。先ほど申し上げましたとおり、わりあい柔軟な姿勢で今度の第一回会合に臨んだ次第でございますけれども、さればと申しまして、アメリカが当初の核拡散を防止するという命題を後退させたということではなくて、これはどこまでも、最後の最後までアメリカとしては言い続けるでありましょうし、また、原子力の平和利用を推進したい国々といえどもみんな核の拡散を防ぐべきであるという大義においてはアメリカと意見を異にするわけでもありませんので、その点は同じ考え方をしているのではないかと思います。ただ同時に、アメリカ以外の、特に資源を持たない国あるいはこれから原子力発電を推進していこうという国々考え方がかなりはっきり会議で表明され、アメリカ側でもそれに耳を傾けるだけの姿勢を示したということであったかと思います。  アメリカの影響力が後退したかどうかという御質問に対してはなかなか後退したとも申し上げられませんし、後退しなかったとも申し上げられない。これはみんなが一緒になって今後二年間検討を続けた上で答えが出てくるのではないかと思います。
  226. 河上民雄

    河上委員 今度の会議で当然資源国と非資源国の主張の違いというのはあったのじゃないかと思いますし、またアメリカ日本あるいはヨーロッパ等の間に主張の違いがこれまでの経緯から見てあったと思うのでありますけれども、そういう点は会議の中でどういうふうに出てきたか御報告願えますか。
  227. 大川美雄

    ○大川政府委員 アメリカのほかに、たとえば豪州でありますとかカナダといったような国々は原子力平和利用面では資源国と呼ばれている国々でございますが、こういった国々は確かに核の拡散の危険を防止しなければいけないという面を強く前面に押し出しておりました。その危険を防止するために規制措置を強化する必要があるのだということを説いておりましたが、それに対しまして、わが国を含みます先進消費国あるいは資源輸入国、さらに今度から初めてこういう国際討議に参加いたしました多くの開発途上国が、いずれも核の拡散を防止するための規制措置の必要は認めながらも、原子力平和利用の立場を強く打ち出したと言えるかと思います。なお、日本それからヨーロッパの国々は核の拡散防止という命題とそれから原子力平和利用の推進という命題は両立し得るのだ、まさに両立させるための一番いい方法を見出すのがINFCEPの主たる課題なんだという主張をした次第でございます。
  228. 河上民雄

    河上委員 今度の会議で総会とか技術調整委員会とか作業部会というものが設置されたと聞いておりますけれども、これはスケジュールといいますか、作業内容、今後どういう仕事をするのか、また日本政府はこれにどういう形で参加するのか、また会合などはどこで大体行われるのか、そういう点につきまして、大変技術的なことですけれども承りたいと思います。
  229. 大川美雄

    ○大川政府委員 まず組織的なことから申し上げますと、この間集まりましたのが四十カ国から成りますいわば全体会議でございまして、これは今後原則として一年に一回ずつ、最後の全体会議はいまから約二年後に開かれるということに一応合意されております。そのほかに、そのもとで八つの作業グルーブ、作業部会が設置されておりまして、それぞれの付託事項に応じて全く技術的な見地からそれぞれの検討を行っていくということになっております。その八つの作業部会の仕事をいわば技術的な見地から調整するという役割りを担ったのが技術調整委員会でありまして、これは原則として年に二回あるいは六カ月に一回ずつ開かれる。ただし、第一回目の技術調整委員会は十二月十二日からウィーンで主として国際原子力機関の会議施設を借用して開かれることになっております。  日本はこの八つの作業部会のいずれにも積極的に参加していくという意向を表明いたしました。これのそれぞれの作業部会に、実は共同議長国と書いてありますが、実態は議長国というよりもむしろ幹事国といった表現の方が適切かと思いますけれども、第四作業部会すなわち使用済み燃料の再処理、出てきたプルトニウムの取り扱い、プルトニウムの再利用といった問題を取り扱う第四作業部会の幹事国をイギリスと一緒に務めることになりました。  この八つの作業部会がいつから作業を開始するかはそれぞれの幹事国がお互いに相談して決めていくことでございますので、日本が責任を持っております第四作業部会につきましては、もうすでに非公式にイギリスと話し合いを始めておりますけれども、その話し合いの結果、なるべく近いうちに第一回の作業部会、第四作業部会の第一回会合が開かれることになろうかと思います。
  230. 河上民雄

    河上委員 それは、幹事国になった場合、日本ではどういうクラスの人が参加されますか。
  231. 大川美雄

    ○大川政府委員 この作業部会はいずれもきわめて専門的技術的な内容の事項を取り扱いますので、それぞれの専門分野の方に日本を代表していただくことになろうかと思います。  なお、先ほど申し忘れましたけれども、技術調整委員会のメンバー国は、先ほどの八つの作業部会の各共同幹事国である、共同幹事国の数がただいま二十二カ国でございますので、その二十二カ国で構成するということになります。
  232. 河上民雄

    河上委員 大体伺いましたが、大臣にお伺いいたしますけれども、以上のようなことですが、この協定の批准を迎えるに当たりまして大臣一つのお考えを承りたいと思います。  私、先日、社会主義インターの幹事会という会合に出席するためにスペインのマドリードに行ってまいりましたけれども、そこでの討議のテーマの一つが中東問題あるいはアフリカ問題とともにこの核軍縮問題でありまして、かなり白熱した論議が行われたのでございます。御承知のとおりパリからモスクワまで飛行機で飛んでも三時間ぐらいの距離で、地続きの中でもある。そこへ大変な戦略兵器、戦術兵器が両軍ともにたくさん配備されているわけです。そういう緊迫した中での核軍縮、核不拡散の問題の論議であったわけです。  そこで指摘されましたことは、まず第一にはソビエトとアフリカの核軍備競争が依然としてとどまるところを知らず、ますます破壊的な武器の製造に進んでおるということ、それから第二は、平和的核技術の普及が核兵器製造の可能性の拡散につながっておる、こういうことが非常に強く指摘されておるのであります。  第三番目に問題とされたのは武器の輸出、端的に言えば、先進諸国の第三世界に対する武器輸出というのはもはや世界の経済の機構の仕組みの一つになりつつある、こういう状態を一日も早く解消しなければならない。これには雇用の問題とかいろいろ出てくるけれども、非常に緊急の課題であるというようなことが指摘されまして、それをめぐって非常にいろいろ議論が行われたのでありますが、この協定は、平和的な核技術の普及というのは核兵器製造の可能性を世界にばらまいていくという問題と、まさに直面しているわけでございますけれども日本政府としては、この問題につきまして、そういう角度から当然NPTに入る、また批准する。そしてまた、日本の国会もそういう態度でこれに対処したわけですけれども、こういうことだけで十分やっていけるのかどうか、単に調印すればそれで済むというものなのか、もっと切迫した状況にあるのかどうか。  私は、ヨーロッパのその人たちの議論を聞いておりまして、何かもっと切迫した状況にあるような感じを非常に強く受けたのですけれども、こういう平和的な核研究技術の普及ということが残念ながら核兵器製造の可能性の拡散につながっているというこの事実に対しまして、どうしてこれを阻止していったらいいのかという点について、この際、この協定審議に当たりまして、外務大臣から所信を表明していただきたい、こう思うのであります。
  233. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 NPT条約が核兵器の拡散を防ぐための国際的な取り決めであるということは当然でありますけれども、カーター大統領が言い出しました、平和利用であっても技術そのものが核兵器に転化し得る技術であるという点を強く指摘して、そしてそのためには、平和利用の目的であってもこれが核兵器の拡散につながらないようにという発想の根本はそこにあったのであろうと私は思います。NPT条約があれば安全ではないか、こういうことに対して、それだけではなお不安である。今日まで、インドの核実験でありますとかあるいは南アの問題でありますとかその他の問題は、NPT条約に入っていない国々において現実にそういう実験が行われたわけでありますけれども、これから先の問題といたしまして、現実に、条約さえあれば安心であるかというと、必ずしもそうは言えないのではないか。NPT条約に加盟している一部の国でも、非常に情勢が変わった場合には核武装も辞せないというようなことが言われたりするということが、そのことをあらわしていると思います。  そういう意味で、今回のINFCEの討議というのも、大きな切迫した――ただいま切迫したとおっしゃいましたが、本当に核兵器の不拡散、拡散を防止する、こういうために、しかも、核エネルギーの平和利用と両立させるように何とか新しい道を見出さなければならないというのがINFCEの会議であろうと思うのでございます。そういう意味で、わが国といたしましても、INFCEの会議各国とともに真剣に積極的に参加して、努力をして、新しい道を見出さなければならないというのが今日の問題ではなかろうかと考える次第でございます。
  234. 河上民雄

    河上委員 大臣からいまそういうようなお話がございましたが、いままでの平和利用による核技術の問題、核の平和利用の問題につきまして、それが軍事利用につながらないようにという点につきましては、どちらかと言えば、国際的な取り決めに対して何か受け身で対応してきたようなきらいがなかったとは言えないと思うのです。やはりこういう会議に参加する以上は、単に受け身ではなくて、日本の方からこういうふうにすべきではないかとか、積極的にそういうような提案を本来出さないと、単に国際的な取り決め、大きくは条約、小さくはいろいろの技術的な取り決めに至るまで、ただそれを受け入れてまじめにわれわれは守っておりますというだけではいけないんじゃないかという気がするわけでございます。大臣、せっかくいまここでNPTに基づく保障措置協定の審議をいたしておりますに当たって、今後そういう点につきまして決意というものをこの際表明していただきたいと思うのでございます。
  235. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほど国連局長からも御説明申し上げましたように、INFCEの会議におきまして最もかなめをなすところの第四作業部会、イギリスとともに共同議長国、共同幹事国と言った方がいいかもしれませんが、このような大事な責任を引き受けることになったわけでございまして、この会議はまさにいまおっしゃったような問題を取り扱っていくところでございます。  東海村の再処理工場の運転につきまして、長い間アメリカと交渉がございまして、そういった過程で、日本として当初の計画どおりの運転というものを主張してきたわけでありますが、その間におきまして日本アメリカと共同研究、討論をずいぶんいたしたわけでありまして、これらにつきましても私どもはやはり今後の問題といたしまして、東海封の折衝は折衝であのように終わりましたけれども、今後、世界全体として、INFCEの会議で核不拡散と平和利用といかに両立させるべきかということにつきましては、日本といたしまして積極的な姿勢を持っていかなければ、国際的な協議の場と申しますか、勉強会に議長国としての責任を果たせないであろうと私は思います。  これは私は素人でありますが、日本の原子力関係の権威者の皆様方に今後格別の御努力をお願いしなければなるまい、外務省といたしましても積極的に協力をいたしたいと思います。
  236. 河上民雄

    河上委員 アメリカのカーター大統領は、今回の会議で核銀行構想と言われているような構想を打ち出しておるのですけれども、これについて、わが国の原子力開発との関連で政府はどういうふうにお考えになっておるか。非常に興味を持って見ておるのか、これは日本としては受け入れられないとお考えなのか、非常に歓迎をされておるのか。その内容は必ずしも詳細にはわかりませんけれども、大まかに言うと、二国間の核燃料の供給が一時的にストップした場合に、燃料を供給できるような国際核銀行というようなものをつくって、そしてアメリカとしては濃縮ウラン供給について十分に協力するというような意味のことを言っているわけですけれども外務大臣、こういう発言というか構想に対して日本政府としては十分検討されておるのか、その上に立ってどういうお考えを持っておられるのか伺いたいと思います。
  237. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私は必ずしも専門家でございませんけれども、従来からカーター政権の考え方、これは日本日本の原子力開発の方向として従来とってまいりましたプルトニウムを利用したところの燃料サイクルというものにつきましてきわめて強い否定的な態度があるわけでありまして、そのプルトニウムリサイクルというものはまだ時期が早いんだ、これをとにかくしばらくやめてもらって、その間の燃料に対しましてアメリカは何とか考える、濃縮ウランの供給等につきまして考える、こういう言い方をしておりましたので、従来のアメリカあるいはカーター政権の考え方を発展さしたものではあるまいか、そういう意味に私自身は理解をいたしておりまして、日本といたしまして従来からの開発計画、これを日本のエネルギー事情からいきましてぜひ実行すべきだ、こういう日本としての考え方に立っておりますので、率直に申してやや警戒的な感じで見守っているというところでございます。
  238. 河上民雄

    河上委員 今回の国際核燃料サイクル評価会議につきまして伺ったわけですけれども、先ほど私が申しましたように核不拡散ということはこれだけうたわれながら、実際には大変な勢いで、不拡散ではなく拡散の方向へ行っているケースが非常に多いわけであります。先ほど申しました会議でも非常に議論が出ましたけれども、現在第三世界というのは百十カ国数えられる中で実に七十八カ国が先進諸国から常に武器を輸入している、こういう状況も発表されておりまして、一たん輸入し始めるととめることができない、また輸出するためには先進諸国では武器産業というものが定着せざるを得ない、こういう状況になっているということでございます。これは通常兵器の場合でありますけれども、核の問題についても平和利用という名において拡散が行われる可能性が非常にあるということが指摘されておるわけでございます。ひとつ日本政府はこういう問題について先頭を切って、ただ国際的取り決めを渋々受け入れるというだけでなく、こういう問題について日本政府としても寄与するように、これは政府を責めるだけではなくわれわれ自身を含めてでございましょうけれども、今後もう少し積極的に考えないといかぬなという感じを私は持っておりますので、ひとつそういう点を十分留意して今後やっていただきたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  239. 竹内黎一

    竹内委員長 渡部一郎君。
  240. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ハイジャックのことから伺うのですが、核ジャックの危険性というものが最近ますますふえてまいりまして、スウェーデンのハミルトン代表という方が、昨年になりましょうか、核物質の物理的保護に関する国際条約締結というのを国連で御提案になったということを承ったことがございます。  すなわち「核エネルギー利用の拡大とともにプルトニウムの蓄積が非常な勢いで進んでいる。その結果、盗難や脅迫による核拡散の危険性が著しく高まっている。」また「原子力施設や、輸送または保管中の核分裂物質の物理的保護について最小限度の基準を設定した国際条約の制定が急務となった。」「この会議国際原子力機関に対し、右のような条約案を起草するための交渉を急いで開始するよう勧告することを望む。」先日のハイジャック事件の発生以来、ハイジャックの危険性を阻止するための国際協定というものが考えられるにつけまして、飛躍する議論のようでありますが、こうしたことも当然考慮の中に入れなければならない時代が来たのではないかと思います。  政府ハイジャックに対する対策の中では、この核ジャックの部分についてはちょっと抜けているように思うものですから、私は御見識を承りたいと思っておるわけなんです。御存じかどうか知りませんが、最近ではテレビドラマの中に、核をジャックして当国会の入り口で爆発させるなどというドラマが堂々と上映されているような事実もありますし、私はむしろ核ジャックをする人の理論的な意義づけというか、彼らを激励するような風潮あるいは考え方というものはきわめて多いし、核ジャックによるところのこうした巨大な人類的な惨禍に対して私たちはもう考えなければならないときが来ているのではないか、こう思うわけであります。  この提案に対して日本政府がどういうふうに答えられたかは存じませんし、こうした呼びかけに対してわが国政府は考慮する余地があるのではないか。また同種の考え方ハイジャック防止のために政府は提案する必要があるのではないか、そうした観点からお伺いをするわけでありますが、大臣の御見解を承りたいと存じます。
  241. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 核ジャックに対する配慮がないではないかというお話でございまして、なるほど先般ハイジャック並びに人質問題につきまして議論をされておりまして、ハイジャックにつきましては、まだその点につきまして詰めが行われていないと思います。ただわが国といたしまして、一〇〇%の純粋なるプルトニウムを持つということ自体は、いまのお説のように大変危険なことである。そういう意味で、これからの一つの方向といたしまして、日本の燃料政策として仮に二〇%のプルトニウムが必要なのであるということであれば、そのようなものとして常時保管することの方が安心であるということは言えると思いまして、なおこれらの点につきまして、また今後のINFCE等の対策にも関係してこようかと思うのでございます。しかしいま御説のような、それでなくても放射能その他の危険を伴うものでありますから、いまおっしゃいました点につきましては今後検討を要すると思います。
  242. 大川美雄

    ○大川政府委員 国際原子力機関におきましては、数年前からまさに輸送中あるいは貯蔵中、使用中の核物質等の物理的な保護のためにいろいろの勧告をつくっておりますし、また現に来週からウィーンにおきまして国際的な核ジャック防止のための協定作成のこれからの準備をするための会議がまさしく開かれようとしております。これに日本政府ももちろん代表として出まして、積極的にその審議に参加する予定でございます。
  243. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そのような協定が作成されるに当たっては十分留意をしていただきたいと思うのでありますが、核兵器それ自体というものが、国家による世界に対するハイジャックみたいな様相を濃くしておるわけであります。  最近イギリスにおきまして、あるいはアメリカにおきまして、核兵器というのはだれでもつくれるというような刊行物が発行され、またそれに基づいてつくられた核兵器のモデルプラントを見ますと、プラントというには余りにもぎょっとするほど小さいものができ上がっておる。縦横約五、六十センチの大きさのもので、核爆弾の小型と言えば小型でありますが、そうしたものが大学卒業者程度の学力で十分つくれるような時代を迎えておる。また、アメリカの会計検査院の報告によれば、最近アメリカ各地における原子力発電所で使用した使用済み燃料の中から、プルトニウムの散逸量といいますか、なくなってしまった部分というのが非常に高いオーダーで発見されていることを述べております。こうした事実というものは、すでにウラニウムの燃料というものに対して、あるいは再処理用のいろいろな廃棄物に対して特別な防護を行わなければ、人類的にも問題な危機状態を迎えることを示していると思います。政府はこれに対して国内措置としてどういう対策を立てられようとされているのか、また、世界的にはこれは重要な問題となりつつあるのでありますけれどもわが国側においても、現在までの使用済みの燃料の散逸あるいは滅失あるいは盗難、そうしたものはどの程度確認されておられるか、あわせてお伺いしたいと思います。
  244. 栗原弘善

    ○栗原説明員 核物質防護でございますが、これにつきましては、先生御指摘のように最近世界的にも関心が非常に高くなったところでございます。従来からわが国におきましては、原子炉等規制法によりまして核物質の防護というものにつきまして所要の規制を行ってきたところでございますが、最近、先生も御指摘されましたような事情によりまして、われわれとしてもこの核物質の防護に関する施策というものは一層の充実強化が必要であると思っております。そのために、ちょっと古い話になりますが、昭和五十年の十月に関係各省庁のフィジカルプロテクション、核防護でございますが、フィジカルプロテクションに関する対策会議というのを一応つくらせていただきました。その後、実は昨年の五月でございますが、原子力委員会におきまして専門部会といたしまして核物質防護専門部会というものをつくりまして、わが国における核物質防護における今後の対策その他について検討を始めさせていただいたような次第でございます。この専門部会は本年の十月に第一次報告書と申しますのを作成いたしました。これは、わが国におきます核物質防護の体制はどのようにあるべきか、それから守るためのいろいろな要件と申しましょうか、たとえばこれは核物質が入っております施設、それからもう一つ、核物質輸送中の問題と二つございます。それで、それぞれ、施設におけるどのような対策をとるべきかということ、それから輸送中においてはどのような対策をとるべきかということ、この二つに分けてわが国における施策について検討の結果、こういうものでどうであろうかという第一次報告書を出したわけでございます。それで、これを受けまして、私どもといたしましては、現行の規制法等にのっとり、さらに施策の充実強化というのを図ってまいりたいと思っている次第でございます。
  245. 竹内黎一

    竹内委員長 答弁の追加があるそうです。
  246. 栗原弘善

    ○栗原説明員 大変申しわけございません。核物質のなくなったとか滅失とかいう問題についてちょっと御説明をするのを忘れましたので、追加させていただきます。  最近、アメリカの会計検査院、会計検査局でございますか、というようなところで報告が出ております問題は、MUFという言葉であらわしておりますが、不明物質量と申すものだろうと思います。これにつきましては、これは実は核物質の在庫量を測定する場合に、その在庫量を測定いたしますときにどうしても測定上の誤差というものがたまったりいたしまして、実際にはこれだけあると帳簿に記録しておりますものが、測定をいたしますとプラス・マイナスが出てまいります。そのような帳簿上の在庫量と実際に測定した在庫量の差というのはMUFという言葉で表現しておりまして、そのMUFというものが実はそれぞれ半年に一回とか三カ月に一回とか帳簿を締めて測定をいたしますと出てくる。これがその報告となって出てまいるものでございます。  したがいまして、そのMUFが出てくるというものはこれは必ずしもなくなったということではございませんで、ときにはその測定上の誤差というものになるものもございますし、それからたとえば核物質等を加工している施設でございますと、加工に伴ってどうしても工程損失と申しますか、ロスというのが出てまいります。このロスというのは当然ながら規制をしておりまして、測定をしているわけでございますが、それでもどうしてもごく微量ではございますが、たとえば測定にかからない部分がある。こういうものがロスとしてやはりMUFの一部になってくるわけでございます。こういうものにつきまして最近会計検査局等で、かなり大きいのではないかという指摘があったわけでございますが、これは必ずしも核物質がなくなってしまったということではないということを、アメリカのERDAでございますか、今度エネルギー庁に変わりましたが、そのエネルギー研究開発庁もそのようなことを申しておる次第でございます。
  247. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 少し古くなりますが、東海村の原研の事故の際私が参りましたときに、再処理を要する核燃料がらを大きなドラムかんに入れて地面の上に並べておく、あるいは地下を少し掘りまして並べてあるのを見てきたわけでありますけれども、きわめて物騒なところに並べておりまして、当時私は担ぎ出す誘惑には駆られませんでしたけれども、もし万一担ぎ出そうという人がおったらこれは簡単に持ち出せるものだなという気を私は強く受けた覚えがございます。最近聞いてみますと、やはりそのときと余り事情が変わっていないようでございますから、私は、核防護、核燃料に関する防護、こうしたものは私たちとしては従来のシステムによってできるような単純なものではなくて、自衛隊の弾薬庫あるいはそれらのロケット燃料等を防護するような強烈な組織が要るのではないかと思うわけであります。  場合によってはそれら警察力等によって完全に防護するシステムがつくられなければならぬことは目に見えておるわけであります。わが国は比較的こうした防護をしなければならぬというような体制が弱うございますし、恐らくは事件が起こるまではこうした核防護に対しては非常に安易に考えるのではないかと思います。先ほど言われました単なるロスではなくて、わが国でも大学の研究者が落っことしてしまって、落っことしたものをまた別の人が拾ってポケットに入れて家に持って帰ったなんという、ロスなんというのじゃなくて落とし物に属するものまで生じたわけでございますし、意外に単純に持ち出せる。  したがって、最近アメリカにおいて核燃料あるいは核燃料生成物質についてはアメリカ側が貯蔵を引き受けよう、その間においては核の燃料の再処理に手をつけない方がいいではないかという提案が行われておりますけれども、防護体系の方から日本は核燃料を扱うのに値しない国家だというきめつけがこの次の時点では行われるものと私は思っているわけであります。そのときに、わが方には法律もなければシステムもないというような状況でありまして、これは単に原子力委員会やあるいは核燃料防護のための小さい委員会検討すべきことではなく、政府の大きいレベルで、これに対する防護システムというものを閣僚としても検討なさるのが必要ではないか、あるいは閣僚会議検討事項になさるのが当然ではないかと思っているわけでありますが、まず御担当のいま御答弁なさいました方に、それに対しての御見解を承り、次に大臣の御見解を承りたい。
  248. 栗原弘善

    ○栗原説明員 お答えいたします。  わが国における核物質防護の現状でございますが、これにつきましては先ほどもちょっと御説明したところでございますが、特にプルトニウム、それから高濃縮ウラン、このようなものにつきましては非常に厳重な警護をしておると私ども考えておりまして、たとえばプルトニウムを貯蔵しているところというのは、例を挙げさしていただきますと、東海村に動力炉・核燃料開発事業団というところがございます。その事業団におきましてはプルトニウムを扱っておるわけでございますが、そのようなところでたとえば貯蔵庫に近づこうという場合には、七重のバリアと私ども呼んでおりますが、いろいろな障壁というものがございまして、その障壁を通っていかなければプルトニウムに近づくことができない、それからまた、入り口におきましては核物質を測定する機械が備えつけてありまして、たとえばポケットに入れて出ようとしますとビーと鳴りまして、プルトニウムを持っているということが発見できるというような、最近はそのようないろいろな機器によりましても守っているわけでございます。  それからさらに、日本の場合におきましては、もちろん警備をしているわけでございますが、私どもといたしましては警察庁の方とよく連絡をとっておりまして、一たん緩急があった場合に即座に来ていただくというような連絡体制は十分つくっておるところでございます。  それから、この問題につきましては、確かに先生がおっしゃいましたように非常に重要な問題と考えておりますので、私どもも原子力委員会におきます専門部会において御検討を第一次はしていただいたわけでございますが、この専門部会も解散することなく、報告書を出したということではなくて、今後わが国においてどのような体制が必要であるか、それからさらに、それを担保するためにどのような技術開発が必要であるか、それから、この問題はかなり国際的な色彩が強うございますので、国際協力の問題についてどのように考えるかということについて、引き続き御検討を願っておる次第でございます。
  249. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 核燃料あるいはその生成物の防護の問題、この問題は所管の各省におきまして御努力いただきたいと思いますが、この問題はいずれ国際間、二国間あるいは多数国間で問題になると思われる事項でございますので、外務省といたしましてもこの問題に積極的に取り組みたいと思います。
  250. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 核燃料の移送のケースを見ましても、百万円札を運ぶ神経とか、それからダイヤモンドを移動するときの防護のやり方等と比べてみましても、ウラニウムの運び方あるいは核燃料全般に対する扱いというのはまだ無力だろうと私は思います。最近では銀行の計算センターに対する防護システムというのは大変に前進しているものでありまして、そうした例も御参考にしていただいて、いま持っている防護システムのようなものはたちまちにして破られるものでありまして、恐らく事故が一遍起こってみると日本政府としては、緊急事態というので非常な大きな反応を示されるであろうと私は思うわけであります。  だから、日本政府の目を覚ますためには、事故が早目に起こった方がいいのかもしれない。そして、ウラニウムの十キロぐらいかっぱらわれたあげくに大騒ぎをすると、初めて反応が始まるのかもしれませんが、そうした事態を迎えたときに、日本は原子力というものを扱えない国家だ、やれないのだ、能力がないのだ、幼稚なんだという烙印を押されるということは、決して賢明なことではないだろうと私は思うわけであります。ですから、保障措置協定の審議に当たって、核というものが非常に大きな戦略物質であり、あるいは政治物質であるということを御配慮いただきまして、その扱いに万全を期せられることを望みたいと思っているわけであります。  すでにアメリカにおいては、大規模集積地域に対しては、その集積地域を軍隊の、あるいはSAC等の用地の中に置き、猛烈な軍隊を駐とんさせてそれを保護する体制を整えつつあると聞いております。私は、そうしたことを考えますときに、わが国のウラニウムに対する考え方というものは余りにもナイーブではないかと思いますので、重ねて申し上げたわけでありまして、今後の御研究をいただきたいと存じます。  それからもう一つ、NPTの条約をかなり私たち努力をして当委員会を通過せしめたいきさつがあるわけでありますけれども、保障措置協定の審議に当たって非常に不愉快に思いますことは、米ソの核軍縮に対する意欲というものが非常に弱く、またNPTに参加しない国家における核兵器の開発というものがますますスピードアップされつつあるという事実であります。非常に不愉快なことには、すでにイスラエルにおいては核保有が十数発あるとか伺っておりますし、またNPT条約に加わらないと言っていたインドに対して、アメリカは公然と原爆数十個分に当たる核原料を売り渡しをしたというようなことも聞いておりますし、また、南アフリカにおきましては、国際的な孤立状態を回復するために、核兵器を公然持つと研究を開始したということも聞いておりますし、そうしたようなうわさは一、二の国にとどまらないのであります。  わが国は、NPTに入り、保障措置協定をいま審議することによって責任を逃れたのではなく、先ほども大臣が御自分でお述べになりましたように、NPTは万能でなく、NPTに入ったということが、一つ状況ではありますけれども、今後大きな問題を含んでいることは明らかであります。私たちにとりましては、NPTに参加してない国の参加を求める努力をどう行っていくのか、それはどの程度の効果を上げているものか、今後効果が上がるものかをまず伺いたい。  それからもう一つ、米ソ両国の核保有の減少に対する努力が非常に足らない、きわめて不満に思っているわけでありますが、これに対してどういう御見識を持ち、かつどういう対策を現在立て、そしてどういう実効を得ておられるか、その辺を、むずかしいことでありますが、御答弁いただきたいと存じます。
  251. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 詳細は国連局長から補足をしていただきますが、いまおっしゃいますように、NPT条約というものは不平等条約である。不平等条約であるからこそ、核兵器保有国が核の軍縮に努力をしてもらう、これが両方セットになってこそ、初めて私はこの不平等条約一つの合理性を持ってくるのであろうと思います。そういう意味で、個別な努力は一々あるいは申し上げられないかもしれませんが、私も先般インドを訪問いたしましたときに、この問題につきまして先方と議論いたしました。それに際しまして、先方としてはアメリカからもソ連からもNPT条約に入るように言われておるというようなことも言っておりました。わが国といたしましても、ぜひインドに入ってもらう、入るべきであるという主張をしてきたところでございまして、機会あるごとに、NPTに加入していない国に加入を呼びかけること、それから、核兵器国の努力といたしまして、私もバンス国務長官に会います都度、米ソの間のSALT交渉の推移、経過をその都度報告を求めてきておりまして、ぜひとも核兵器国の努力を常に求める、こういう態度を取り続けていくべきである、このように考えておるところでございます。
  252. 大川美雄

    ○大川政府委員 核防条約未加盟国に対する加盟の要請というようなことは、最近では特に八月のジュネーブにおきます軍縮委員会でのわが代表の演説で改めて強く要請いたしまして、かなりの反響を呼んだと思っております。  それから、目下ニューヨークで開会中の第三十二回国連総会第一委員会においてすでに軍縮関係の議題の討議が始まっておりまして、その場でもわが代表から、まさしく核防条約未加盟国への呼びかけを改めて行うことになろうかと思います。  なお一つ、先ほど話題に出ておりました先週のINFCE、核燃料サイクル評価作業、この会議に実はインドとパキスタンそれからブラジル、アルゼンチン、スペイン、ポルトガル、イスラエル、エジプト、インドネシア等々、数々の核防条約未加盟国が出席いたしておりました。これは評価すべき現象ではなかったかと私は思います。  それから私が承知いたします限りでは、核防条約への加盟を目下検討中の国々としては、インドネシア、南アフリカ共和国、ポルトガル等々があるようでございます。
  253. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日本赤軍によるハイジャック事件は、日本国の多くの人々に対して非常に大きな衝撃を与えましたけれどもアメリカ及びソ連両国による核兵器群による他の国家群に対する威圧というものは、ある意味ハイジャックだと私は思います。それはレベルと規模が大きいだけであって、そして国家という形で国家行為としてなされるだけの話であって、その脅威たるや類例を見ないものであると思います。こういう世界的な犯罪行為に対してわが国はもっともっと厳しくあらなければならないと思いますし、そしてその両国が恣意的に自国の生存という名目のもとに、他の国家群を恐喝することはとうてい許しがたいことである、わが国の憲法の精神からいいましても、わが国外交の視点はかなりそこに比重を置いていいのではないかと思っているわけであります。したがって、この米ソ両国の原子力に対する政策に対して一方的に盲従する段階というものをなるべく減らし、そして他の国々との間に原子力開発に関して大きな連帯をつくり上げるということは非常によいのではないかと思います。すなわち、日米安保の場合はアメリカと組むことによって日本の安定をねらうというのが政府の方針でありましょうけれどもわが国にとっては、原子力開発の体制というものをアメリカ政府にのみゆだねることによって、わが国の体制が首を締められるというようなことは決して感心したことではないと思います。  そこでまず第一段階として、わが国の原子力開発あるいは原子力燃料の確保に対しては、西ドイツの例にならいまして、西ドイツはその燃料をいわゆる資本主義国から三分の二、ソビエトから約三分の一を得ておるようでありますが、わが国も東西両陣営にまたがって原子力燃料を確保するような、そういうわが国の選択肢を広げるという立場から、原子燃料あるいは原子力技術の交流の相手先を東西両陣営にわたって広げるべきだと私は思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  254. 武田康

    ○武田政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の濃縮ウランの確保の問題でございますけれども、御指摘のとおり西ドイツでは主としてアメリカから大体六割あるいはもうちょっと、それからソ連から三割何分、四割近くというようなものを取得しているのがきょう現在でございます。西ドイツは自主開発もいまいたしておりまして、それも踏まえて将来に向かいましては、自分自身でやるもの、それからアメリカ等からもらうもの、ソ連から供給を受けるものというような組み合わせ、いわば多角化というのが目指している方向であると承知しております。  日本の場合にも同様な多角化は目指しているわけでございますが、現状を先に申し上げますと、アメリカのERDAから五千百万キロワット分の濃縮役務の供給を受けるというような契約を各電気事業者がしているところでございます。さらにそのほかにフランスのEURODIFからも供給を受ける。それから御承知のとおりでございますけれども、動力炉・核燃料開発事業団がウラン濃縮についていろいろ勉強し、すでにパイロットにかかっているというようなことでございまして、いわばドイツと同様に、自分でもやるし、それからいろいろな国からも取得するというようなことで、多角化の努力をし、先生のおっしゃるとおり選択肢を拡大するという努力を、いままでもしてきておりますし、今後ともその方向であろうかと思います。  それから御指摘の、ドイツと同じような、東西両陣営ということで、仮にこれをソ連というお話であるというふうに私理解いたしましてお答え申し上げますと、濃縮ウランの購入そのものというのは、実は国のポリシーもございますけれども、濃縮ウラン役務を取得すべき第一次的ポジションにございます原子力発電所の運営者といいますか、所有者でございます電気事業者が、自分自身の燃料を確保するという観点から従来契約を結び、購入し、確保してきたところでございまして、現状の日本では、実はこれから十年先ぐらいまでをながめますと、先ほど申し上げました諸契約で一応十分確保しているという状況でございます。そういう意味で、いまさしずめさらに購入先をふやす、ソ連からもらうというような考え方はどうもないようでございます。私どもといたしましては、基本的には濃縮ウラン購入といいますか、役務契約をする当事者でございます電気事業者がどういう判断をするかという一のを待ちまして、多角化というような基本的な考え方を持っておりますが、第一次的な当事者の判断を待って利どもとして考えるべきことは考えたいというのが現在のポジションでございます。
  255. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 原子力燃料の輸入に関してはここ十年あるいは十数年にわたって日本側の業者がその必要量を手当てしているので必要がないというお話でございましたが、政府の示された総合経済政策の中の第七項、対外経済協力の中におきましては、対外経済政策につきましては、明らかに、現在膨大に上っております黒字の積み上げというものを何らかの形で縮小していこうという方向で努力をすることがうたわれております。ウラニウム資源における、あるいはウラニウム鉱石あるいは濃縮ウラン等による輸入量のある程度の確保というものは、きわめて大きなこうした効果のあるものと思いますし、その部分は民間業者にゆだねるものとしてではなく、政府として検討の余地があるのではないかと私は考えるのでありますが、その辺はいかがでございますか。
  256. 武田康

    ○武田政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、ごく最近でございますけれども、ウランの鉱石につきましてある電気事業者、原子力発電株式会社でございますけれども、輸銀融資を活用いたしまして約千四百トン、お金にいたしまして一億三千万ドル程度であったかと思いますけれども、そういうウラン精鉱を前払いする、購入する、こういうようなことを契約を結んだようでございまして、この契約では、先ほど御指摘のように日本の外貨ポジションあるいは国際収支といったらいいかもしれませんが、その分だけ黒字幅が減る、こういうような効果を持つわけでございます。  実は先ほど濃縮ウランの役務契約について申し上げましたのですが、濃縮ウランの役務契約を幾ら持っておりましても、もとのウラン鉱石が、しかるべき時期、役務契約をやっている相手方に運び込む時期に適時にウラン鉱石の手配ができていなければいけないわけでございます。日本の中にも電気事業者が多数ございます。それで、マクロには先ほど濃縮ウランの役務契約について申し上げましたとおり、ウラン鉱石につきましても相当期間の手配をすでにいたしておるところでございますが、ミクロに詳細にタイミング等を合わせまして検討いたしますと、会社ごとにはいろいろ違うポジションでございます。で、いま申し上げましたウラン鉱石の手配をしたというのは、いわばマクロとミクロの調整のような問題でございます。そういった意味で長期にわたって一応手配しているということと、個々別々に、ある時期時期ごとにはウラン鉱石の手配をさらに追加してしなければいけないということは、両方お互いに矛盾していることではないわけでございます。  私どもといたしましては、現在ウラン――鉱石の方も濃縮も含めましてでございますが、これの確保は、今後の原子力発電の進展といいますか、展開のために必要不可欠なことでございまして、それもいろいろな情勢に応じて十分対処し得るような体制にあることが必要である、こう思い、先ほど申し上げました電気事業者の今度の購入につきましても、方向としてそれは非常にいいことであり、したがいまして、輸銀融資の活用等ということでは私どもとしても大いに手伝っているところでございます。
  257. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私が申し上げるのは、鉱石の輸入であるとか役務の提供であるとか、そうした面についていままでのようにアメリカ一辺倒ではなく、ソビエトに対しても、あるいは共産圏諸国に対してもそういう道を開くことによって恣意的な支配を切り抜けていく外交上の配慮が必要なのではないかと言っているわけであります。つまりわが国は、今回、宇野科学技術庁長官がアメリカ合衆国との間におきまして九月十二日に共同声明を結んでこられましたけれども、その共同声明の内容を拝見いたしますると、実に日米原子力協定の条項がわが国の原子力行政の上に大きなある意味ではブレーキになり、ある意味では大きな一本の基本線となって貫かれているのを感じるわけであります。それは必ずしもわが国アメリカの言うとおりに原子力政策をつくらねばならぬという規定ではありませんけれども、少なくともわが国の原子力に対する研究開発というものがアメリカ政府の大きなさじかげんによって右往左往されているところは、この一年間にわたる交渉経過を見れば明らかであります。したがって、この日米原子力協定の中の条項をこれ以上盾にとって交渉されるのであるならば、原子力協定のこれら条項を削除するために努力をするか、あるいは原子力協定はそのままとして、わが国の原子力外交に関する選択肢を他の国々との間に広げていくか、どちらかの方法が必要になるのではないかと私は考えるわけであります。そこで先ほどから伺っているわけでありまして、私は日本の原子力研究開発を首を絞めてしまおうとしておるのではなく、日本の原子力研究開発を広げることによって日本の国を将来安定させる道をこの際開いておくべきではないかと申し上げておるわけでありまして、お察しいただきまして御答弁をいただきたいと存じます。
  258. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本アメリカとの原子力協定がありますために、日本アメリカから供給を受けておる濃縮ウランにつきまして、その再処理等につきましてアメリカとの間に話し合いをしなければならない、こういう立場にあるわけで、原子力協定のその条項につきまして、今回の交渉を通じましてはなはだアメリカの言うとおりになるのではないか、こういうような御批判が出ておるわけであります。日本といたしまして核燃料あるいは濃縮ウランの取得先を広げるということは、それ自身として歓迎すべきことであろうと思います。ただ、日本アメリカとの間でいろいろ交渉を行いましたけれども、これはやはり今後の核拡散防止と平和利用の両立を図るという意味では私は決してむだな交渉ではなかったと思っておる一人でありまして、そういう意味アメリカとの間はとにかく話し合いで話が通ずる相手であるということも今回の交渉によりまして経験をしたところであって、今後ともやはり日本アメリカとの間に話し合いをして、お互いに協力関係をして原子力の平和利用の面につきましても発展を図っていくべきものと、そういう方向を取るであろうと思うわけでございます。しかし、御説のような西ドイツのような例もございます。今後とも対ソ関係につきましては、鋭意検討を続けてまいりたいと思っております。
  259. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 このたび、来月の十五日に日ソ民間原子力協定が結ばれ、核融合反応を初めとする現在の当面する原子力の技術について協力関係を結ぶ、こういうことがうたわれておるわけであります。この開発研究の成果の交換でありますけれども、私に言わせますと対ソビエト関係の技術協力関係というものは、しばしば何回かにわたる打ち合わせにもかかわらず、進展していないというのが実情だろうと思います。それはソビエト側のやり方がきわめてよろしくないというふうにも言えるかもしれませんし、技術の保全あるいは尊重についてソビエト側は日本のルールというものとなじまないというような言い方があるかもしれません。したがって、こういう大げさな協定を結ぶ背景に技術的な話し合いというものがもっと細かくなされませんと、両国関係の科学技術交流に関する諸協定というものはむだになるのではないか。たとえば田中総理がソ連に行かれた際に結ばれた共同声明に基づく科学技術の交流の協定というものは、非常に低いレベルにとどまっているというのは、公然周知の事実であります。したがって、これは民間の原子力協定ではありますけれども、どの程度の規模にしてどの程度の交流にするのか、かなり詳しく外務省がこれに関与する必要があるのではないか、また、科学技術庁も重大な関心を持つ必要があるのではないかと思っておるわけであります。この辺の御見識を承りたいと存じます。
  260. 大川美雄

    ○大川政府委員 今度署名されると言われておりますのは、日本原子力産業会議とソ連の国家原子力利用委員会との間の原子力協定でございます。日本から見れば民間の協定でございますが、中身はいまおっしゃいましたようないろいろな面での協力でございまして、その第一回の協定に基づきます専門家同士の会合というのは、来年の一月下旬ごろに開かれるようにも私は聞いております。  なお、それとは別に、実は一九七三年に日本政府とソ連政府との間で締結された科学技術協力に関する協定が別途ございます。
  261. 川崎雅弘

    川崎説明員 国連局長の答弁に続きまして若干補足させていただきたいと思います。  先生御指摘の日ソ政府間の科学技術協力協定につきましては、四十八年に締結いたしまして以降、四十九年の一月にソ連の原子力関係の視察団が訪日をいたしまして、わが方の政府関係者並びに動燃、原研等の政府関係機関との間でお話し合いをいたしました。引き続きまして、四十九年十二月にわが方からも代表団を訪ソさせまして、そこでどういう協力分野をどのように具体的に進めるかという話し合いを行いました。その結果、本年九月に第一回の日ソ科学技術協力委員会というものを開催するという方向で検討しようということになっておったわけでございすが、ソビエト側のレスポンスがなく、残念ながらいまだ開催されておりません。その間、わが方といたしましては、すでにアメリカと並んで進んでいると言われております核融合の分野あるいは高速増殖炉の分野について協力をしていくことがわが国としても望ましいと判断しまして、これらにつきましての協力の具体化について提案をいたしましたけれども、遺憾ながら先方からの返答が得られないまま今日に至っている次第でございます。  なお、今回結ばれると伝えられております民間レベルでの原子力産業会議とソビエトとの間の協力の中では、動力炉と核融合の分野が特掲されていると聞いておりますが、本件につきましては、御承知のとおり、政府のナショナルプロジェクトとして進めている点もございますので、産業界の協力ぶりについては政府としても重大な関心を払って万全を期して臨んでいきたい、かように考えております。
  262. 大川美雄

    ○大川政府委員 先ほど私が来年の一月下旬に第一回の会合が開かれると申し上げましたのは、今度署名される民間の協定ではなくて、七三年の日ソ政府間協定に基づく委員会の第一回会合でございます。謹んで訂正させていただきます。
  263. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日中間の技術交流協定の話が先日訪中した際に先方の深い関心の的でありましたけれどもわが国側が東ヨーロッパの諸国との間で技術交流協定を結んでいないという現実の前におきまして、日中間の技術交流協定というものは尚早であるという結論は容易に出ることが認識されたわけであります。どうして束ヨーロッパの諸国との間で技術交流協定ができないかというと、ソビエトとの間の技術交流協定が東ヨーロッパに抜けるようにあるいはそれ以上に、東ヨーロッパにおけるところの諸国との間の技術交流というものはその果実のみが他のワルシャワ条約連合国家群の間に伝えられるという可能性というのはきわめて高いという御認識であるように推察をいたしているわけであります。こういうことから肝心かなめの技術交流が進まないということが、広い意味で言えば世界のぎしぎしの一つの種になるという可能性も私は感じているわけであります。また、逆に言えば、こういう技術交流協定というものを安易に結ぶことによって、わが国のポテンシャリティーを落とすという可能性もきわめて高いものでありますから、技術交流協定というのはあくまでも慎重な外交の配慮によってこれらの国々とも結ばなければならないし、現在漁業交渉に対して払われている以上の神経をこれらに対しては払わなければならないのではないか。また、トータルしたわが国の外交のさまざまなバランスの中に技術交流協定というものあるいは原子力に関するさまざまな協定というのははめ込まれて、計量され、計算されてやらなければならないのではないかと私はかねがね思っていたわけであります。  そこで申し上げるのでありますが、したがって、わが国のこうした日ソ原子力協定に対する取り組みもそういう大きな枠組みから十分配慮してやっていただきたいし、そしてそれは少なくともわが国及びわが国の周辺の平和にとって有害なものであってはならないし、そういう点を考えていただきたいと思うのであります。ただ私が本日述べたのは、とかく今回のカーター・ショックに見られるように、わが国の原子力問題に対するわが国政府政策が必ずしも樹立しているとは言いがたいときに、一つのカーター・ショックによって激動し、揺り動かされ、さらに対米追随を原子力の面で深めていくということは決して賢明なことではなく、原子力エネルギー政策というものは一貫してわが国の基本問題としてその選択肢を広げ、自立性を高めてわが国の国益を守り、世界の平和を守るという方向において考えなければならぬと思うわけであります。したがって御決意のほどを先ほどから承っているわけでありますが、どうも御認識が私のそれとはちょっと違うようでございまして、何となくくつの上から足をかいているような感じもいたしますから、いま思慮深く物を考えていらっしゃるようには見がたい。何となくここでは言葉を慎んでおけば済むような感じが先ほどからそくそくとして伝わってくる。これでは私はどうもいかぬような感じがするわけであります。  大臣に最後に御答弁を承るわけでありますが、この問題については特段の関心をお持ちいただきまして、今後日米関係だけでなく、原子力エネルギー問題等は外交の大きな主軸である、こういう御観点から御研究をいただき、またわが国のエネルギー選択肢というものはもっと広げるべきだと私は思っているわけでありますが、御見識を承りたい。
  264. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 渡部先生と科学知識の蓄積が大変違いますので大変申しわけないのでありますが、きょう御指摘のありましたお話は大変重要なことであり、わが国がこれから対処していく上で本当に考えなければならない数々の点の御指摘があったわけでありまして、まことに大事な点でありますので、きょうお話をいただきましたまず防護の問題それから核燃料に対しますこれからの入手先の問題、あるいは科学技術の協力問題等等につきまして今後鋭意努力をいたしたいと思います。
  265. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 結構です。
  266. 竹内黎一

    竹内委員長 渡辺朗君。
  267. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私は二十分くらいお時間をいただいてと思っておりますが、大変端的なことをお尋ねいたします。これは外務大臣にもお尋ねしますし、それから通産省の方がおられたら通産省の方にも、それから科学技術庁の方がおられたらそちらの方にもそれぞれ御意見を承りたいのです。  いままでここで保障措置協定を論じていたわけでありますけれども、同じようにいま科学技術振興対策特別委員会では原子力三法が論議されております。たとえばこの保障措置協定だけをいま緊急に通す、一応原子力三法を切り離すということになっても構わないものでございますか、どうしてもこれは一緒にやった方がいいものなのか、やらなければならぬものなのか、そこら辺の御認識なりお考え方を聞かせていただきたいと思います。
  268. 川崎雅弘

    川崎説明員 ただいま先生の方から御指摘をいただいた点は、大変むずかしいお答えぶりになろうかと思いますが、提案いたしました政府といたしましては、まず最近の原子力平和利用についての国内の世論、あるいは国会での数々の論議等を通じまして、まず第一に安全を確保するための体制というものをしっかり整えよという御注文にこたえて、原子力安全委員会を設立する、そのために基本法の改正を行わなければならない。これは内に対する一つの問題でございます。  それから、いま御指摘の保障措置協定のNPT下の保障措置取り決めに関連いたしまして、これを国内で法制化のもとに担保するために原子炉等規制法の改正をやはり同様にお願いしております。これらが先生御指摘のいわゆる原子力三法の改正でございます。  したがいまして、内に対しては、国内の動向を反映しまして、規制法体系下での安全規制の充実を図ると同時に、安全問題についての行政体制を国内の意向に従って政府として速やかに確立しなければならないということで二つの目的を持っております。これに対応するとともに、対外的には、NPT下に入ったことを実体的に保障措置取り決めにおいて実行していくために協定の御承認をお願いし、またかつ、国内法的にそれを担保するための手段としての規制法の改正をお願いしている、かように考えますと、これを切り離すということについてはなかなかむずかしい問題があろうか、かように考えております。
  269. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣はいかがでございましょう。
  270. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいま科学技術特別委員会で御審議いただいております三法律案は政府が出しました法律案でございまして、いろいろの見地から、もちろん政府としてはその成立が望ましいと考えているわけでございます。そのうち、私が直接関係している分といたしましては、ここでいま御審議いただいております核防条約保障措置協定の実施のための国内関係条文の改正がございますが、私の立場といたしましては、核防条約第三条の第四項だったかに基づきまして、本年十二月四日までにこの保障措置協定の批准手続を完了しなければならないことになっておりますので、それはぜひともさようになることを願っている次第でございます。
  271. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これは余り突っ込んでお尋ねはいたしません。ただ、密接ではあるけれども、不可分ではなくて可分だという印象も受けたのですけれども、そのような認識でよろしゅうございますね。これは、どちらにお尋ねいたしましょう。これは外務大臣に御意見を承っておきたいと思います。特に、十二月四日という日切れの問題もございますから、この点はそれだけでも急がなければいけない、こういう認識でよろしゅうございますか。
  272. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 この保障措置協定自身は、十二月四日までにぜひとも成立を必要としておるわけでございまして、他の国内三法、その中でも原子炉等規制法につきましては、国内措置として必要である。ただ、その措置の内容につきまして、保障措置協定自体に関連するものはぜひ上げていただきたい、こういうことであろうかと思うのでございますけれども、他省の提出法案でございますので、その点はこの程度にとどめさせていただきたいと思います。
  273. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それじゃ、その問題はこれ以上触れません。私どももいろいろ検討させていただいてと思っております。  さて、今回の保障措置協定の問題を考える際の大変基本的な点に戻って恐縮でございますけれども、その基本的な認識について、外務大臣初め関係諸官庁の方にお尋ねをしたいと思います。  それは、NPTの核管理措置が強化されればされるほど、核保有国と非核保有国との間の平等性の格差というものが広がっていくというふうに思われます。先ほど外務大臣も、このNPTは不平等条約であるということを言っておられましたけれども、ますます今後差別感を深めていくように思われてならないのです。この問題をどう考えたらいいのか。これは特に先進的な核保有国が技術なり、あるいは原料なり、こういったものを独占していくということになりますと、ますます政治的、経済的にもわが国というのはまた格差をつけられる、こういうことの不安もございます。  さらには、国際的な発言権の上でも、やはり核保有国が技術や濃縮ウランというものを独占していくという形になりますと、少なくとも、原子力の平和利用の分野においては、もう完全に決定力というものをわれわれが持ち得ないという形になってくる。こういうことで、政治的にも発言権を弱めざるを得ない、弱まってくるのではあるまいかという事態を憂慮するのですけれども、この問題についてお考えはいかがでございましょうか。ひとつ教えていただきたいと思います。
  274. 大川美雄

    ○大川政府委員 おっしゃいますとおり、核防条約体制には初めから核兵器国と非核兵器国との間の不平等という大きな要素が内在的に本来から存在しておることはそのとおりでございます。そこで、核防条約の第四条におきまして、非核兵器国の原子力平和利用活動のための保障が規定として入っておりますし、それから同時に、核防条約の第六条におきまして、核兵器国は核軍縮を推進しなければいけないのだという厳粛なる義務が規定されているわけでございます。今後その差がだんだん広がっていくかどうかという問題でございますけれども、私が先週出席させていただきました例の核燃料サイクル評価あるいは評価作業におきましては、少なくとも今後二年間、核兵器国と非核兵器国、核防条約の加盟国と未加盟国、先進工業国と開発途上国等々、あるいは燃料を供給している国ともっぱら燃料を外から仰いでいる国といったいろいろなカテゴリーの国々が参加いたしておりましたけれども、それがいずれも同等の発言権を持って八つの作業部会で今後二年間検討し合っていくということになっておりますので、少なくともこの評価作業を通じまして核兵器国以外の国国の声も十分上げられることになるという意味でこれから始まる作業を評価し、活用していくべきであるかと思います。
  275. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいま国連局長が御答弁申し上げましたが、わが国といたしまして、現行NPT条約の第四条の精神、原子力の平和利用の面でその権利が妨げられてはならない、そういう意味におきまして、わが国のような非核兵器保有国といたしまして、その差別がつくようなことのないように、また、法制上のみならず、事実上におきまして、そのようなことがないように今後とも最大限の努力をいたすべきものと考えております。
  276. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまお話の出ましたINFCEの問題につきましては、後ほどまたお聞きしたいと思いますが、もう一つ原子力の問題についての認識をお聞かせいただきたいと思うのです。  これは原子力の平和利用、これが国際的にどんどん広がっていく。他方、ですから核の技術的な独占、核技術という問題の、核生産の技術的な面をだけ考えますと、独占というのがむずかしくなってくる。そうなると、核保有国は、現在外交の表舞台ではNPTによる核不拡散、こういうことを一方で非常に強調していながら、その実どうも背後では経済援助だとか外交活動、こういうものを通じながら原子力プラントの売り込みを図っていく、そういうような活動が出てきて、国際市場の上では原子力産業の売り込み競争というようなものが激化していくという傾向にあるというふうに現状を見てよろしいかどうか、そこら辺の認識をまずひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  277. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいま言われましたような傾向がないとは決して申し上げられないと思います。まことにその点は遺憾なことでありまして、わが国といたしましては、とにかく核の拡散を防ぐための基本的な文書としての核防条約の普遍性と申しますか加盟国の普遍性を達成すべく、いままでにも努力してまいりましたし、引き続き努力してまいりたいと思います。  核防条約に入っていない国々が、核防条約に入っている国と同じように供給国からいろいろの施設や材料や知識や原料を入手できること自体問題があるんではないかと私どもは考えております。しかしいずれにいたしましても、先ほど申しました核燃料サイクル評価作業におきまして、こういったいろいろの問題が総合的に検討されることになるわけでございまして、そこからどういう国際的な新しい組織なり制度なりが出てくるか。出てくるかどうかもわかりませんけれども、それはすべて検討の結果でございますが、私たちとしては、国際的な核拡散防止のためのいろんな制度が平和利用の推進を阻害することなく樹立されていくことを希望している次第でございます。     〔委員長退席、山田(久)委員長代理着席〕
  278. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま、そういうような売り込み競争というのは遺憾であるとおっしゃいました。たとえば西ドイツは核防条約に入っておりますね。フランスは入っておりませんね。ところが両国とも大変に売り込みに一生懸命である。西ドイツの場合には、一九七五年にブラジルに借款を与えて、そして総額百五十億ドルとも言われるように大きなプロジェクトを売っている事態がある。これは単に遺憾であるということだけでは、大変にまことに遺憾な話なんで、実際のところそういうふうなものがどんどん進められているのに、日本の方は何かずいぶん格差をつけられていくような形、これはもう残っていく、これはどうにもしようがないことである。いまその何か大きな格差というか、そういうものを感ぜざるを得ないのです。  特に輸出産業として国際市場で大きな地位を占め始めてきた原子力産業というもの、これは、やっぱりこの趨勢というのは続くというふうに思わざるを得ないんではあるまいか。そうなりますと、先般来出ている懸念なんですけれども、どんなに核の管理体制を図っていっても、どうも経済原理の上からもそれが崩されていくという危険性があるのではないか。たとえばINFCEの創立総会においても、これは国連局長にお尋ねしたいのですけれども新聞によれば、フランスもそれから西ドイツも、核再処理とプラントなんかの対外輸出、核再処理の技術であるとかあるいは原子力の発電所、そういうものの対外輸出を促進するために、大変途上国の意向というものを支援したとかバックアップしたとかというようなことも伝えられているのですけれども、こういうような傾向に対して日本は本当にどう対処したらいいのかということを私は懸念をいたします。どういうふうに対処したらいいのか、単に遺憾であるでは困るので、そこら辺の方針というようなものをもうちょっと具体的に教えていただきたいと思います。
  279. 大川美雄

    ○大川政府委員 核関係の資材、機材、原材料等の輸出面につきましては、実は御承知かと存じますけれども、いわゆる供給国グループというのがロンドンで会合をいたしまして、そちらの輸出の面からお互いの政策をなるべく一つの型にはめていこうというような国際的な努力が行われております。  それからフランスは、おっしゃいますとおり核防条約の加盟国ではございませんけれども、少なくとも核防条約の精神に沿って行動するんだということははっきり表明いたしております。問題は、そういった国々が原子力資材を輸出しようといたしております先々の国々で、核防条約に入っていない国が若干あるという点であります。  なお、先般のINFCEの会議におきまして、独仏等が特に開発途上国の立場を支援したというふうに私は特に感じませんでしたが、いずれにいたしましても、この分野での多数国間の協議の場で開発途上国が十何カ国出てきたのは、原子力機関の場合を除きまして恐らく初めてのケースでございますので、日本も含めまして、先進諸国は一応開発途上国の言い分なり要望なりに耳を傾けたことは事実でございます。
  280. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 通産省の方、おられたらお聞きしたいのですけれども日本もいま一生懸命濃縮技術や何かをやっておりますね。それから再処理の技術も一生懸命開発しておられるというふうに理解しております。そうしなければ、また、これからのエネルギー政策そのものの根幹が揺らぐと思いますので、やっておられるし、今後推進する決意であろうと思いますが、そういった技術や何かを持っている。途上国から、たとえばそういった技術を売ってほしいというようなことが来た場合は、これはどういうふうに対処されますか。
  281. 武田康

    ○武田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生御指摘のように、ドイツとかフランスが、たとえばドイツがブラジルに、フランスがイランなりパキスタンなり、そのほかいろんな国が相手としてあるわけでございますけれども、見方によりますと、プラントの売り込み競争というようなかっこうで、これはもちろん輸入国側が原子力発電が必要でございまして、それを推進しなければいけない。しかし技術も物もないのでどこか売ってくれるところがなければいけない。一方、そういう技術なり物なりを供給する能力のある国、これは先進工業国に現状では限られているかと思いますが、そういうことでその取引が成り立ちあるいは成り立ちかけているというのが現状でございまして、それに比べまして日本が立ちおくれている、これまた現在私どもの置かれたポジションでございます。ただ、すでに現在まででもコンポーネント等ハードの輸出は現実にございまして、アメリカとかドイツ等々にも日本のものが出ているわけでございますけれども先生御指摘のように、今後原子力機器産業とでも言ったらいいかと思いますが、これは知識集約化産業の一つでもございますし、高度なシステムあるいは技術を要する産業でもございますので、日本の産業の高度化あるいは輸出構造の高度化という点から、輸出産業の一つになるべく期待されている分野でございます。ただ、現在までのところ、実は先ほど御指摘の核燃料サイクル面で、それらもくっつけてというわけにまいらぬものでございますから、立ちおくれているというのが現状でございまして、今後につきましては、これも輸出産業として育てていくべき性質の一つであろうかと思います。しかし、その際、先ほど来いろいろ御議論がございますように、私どもといたしましては、原子力の平和利用あるいは核拡散防止というのに非常に重大な関心を持っているわけでございまして、現在までもそうでございましたが、今後とも原子力関連機器の輸出につきましては、核拡散の防止、あるいは日本国内的に申し上げますと、原子力基本法の平和利用に徹するという方針にのっとりまして、平和利用を前提としながら進める方針でございます。  それから、先ほどちょっと不平等というお話がございましたので、関連して一言申し上げさせていただきますと、現在いろいろ議論が出ているところでございますが、アメリカのもろもろの提案あるいはINFCEにおけるいろいろな検討等々を考えますと、今後国際的な規制、核拡散防止に関連いたしまして、これが一層強まってくるというような予想もございます。しかし、その中で、原子力の平和利用を進めるという前提のもとで、核兵器国と非核兵器国との間で差別的な取り扱いができてはいかぬ。これは輸出に関連しても同様でございますが、そういう差別的な取り扱いがなされてはならないという基本的な考え方のもとで、私どもとして行動していかなければいけないと思っている次第でございます。
  282. 大川美雄

    ○大川政府委員 二点ばかり私の御説明を補足させていただきたいと思います。  まず一つは、ドイツ、フランス、いずれも御存じのとおり、それぞれブラジル、パキスタンに再処理プラントを含む契約を結んでおります。ただ、今後はそういった再処理施設を輸出することはしないということを表明いたしております。既契約は尊重するけれども、今後はいたさないという意思表示がございます。  それから第二の点は、先ほどの核防条約の核兵器国と非核兵器国との差別の問題に関連してでございますが、核防条約下では、原子力の平和利用活動につきまして国際原子力機関の査察を受けなければいけないのは、非核兵器国のみに課せられた義務でございまして、核兵器国はその義務をしょってない。ところが、アメリカ合衆国とイギリスだけは自発的に自国の原子力平和利用活動に国際原子力機関の保障措置を受諾するという意思を表明いたしまして、すでに国際原子力機関との間にそのための協定を締結いたしております。その発効は、実はいま御審議いただいている日本国際原子力機関との保障措置協定の発効を待ってということのように承知いたしております。したがいまして、残るソビエト連邦が、同じように自国の平和利用活動に国際原子力機関の保障措置を受諾すれば、多少なりとも核防条約の不平等体制が是正されることになるわけでございまして、わが国といたしましても、従来からソ連に対しても同様に自発的に保障措置を受諾するように呼びかけております。
  283. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 微妙なところでございますので、その点で確認させていただきますけれども、これはいま通産省の側からお話がございましたように、あくまでも平和利用ということに限定するという意味では、再処理技術をも含めて期待されている輸出産業でもある。それから、先ほど国連局長からのお言葉でございましたが、西ドイツの場合は再処理の方を今後は輸出しないということになっているというお言葉がございました。ちょっと私が理解するのでは、平和利用に限定し、かつまた相手国がそれを受け入れたり、あるいは買い取った国がNPTに加盟するということになれば、その問題は構わないのではないでしょうか。これは国連局長の方にお尋ねをして確認したいと思いますが、日本はどこかにこれは絶対に輸出しないという誓約をしておりますか、この辺ちょっとお尋ねをいたします。
  284. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいまの御質問は、日本が再処理施設を輸出しないことを誓約しているかどうかということでございますか。そういったような意味での誓約はいたしておりませんけれどもわが国といたしましては、再処理技術あるいは再処理施設、それからウランの濃縮技術、濃縮施設にいたしてもそうでございますが、これは確かに核の拡散につながり得る要素を持っているという認識は持っております。でございますので、相手国を選ばずむやみにそういったものを輸出するというような世の中ではなくて、それぞれの国が自粛と申しましょうか、行いまして、責任のある行動をとることが、やはり国際協力上あるいは核拡散防止上望ましいのではないか、かように考えております。
  285. 武田康

    ○武田政府委員 先ほどの私の答弁の中でやや舌足らずだった点があろうかと思いますので、その分の補足といまの点に関連いたしましたことをちょっとお答えさせていただきたいと思います。  先ほど、フランスなりドイツなりに比べて、日本は輸出としては立ちおくれている、それは機器の問題もございますけれども、核燃料サイクルという問題も含めてと、こういうことを申し上げたわけでございますが、たとえば機器を輸出するならば、ウランの供給がなければ困るとか、そういったようなこともいろいろ現実問題としてはあるようでございまして、その辺の意識がございましたものですから、実は日本自身は、日本の中で使う核燃料を当面確保しておりますけれども、人に上げるまでの余裕がございませんというような潜在意識がございまして、それが言葉に出たものでございます。  なお、もう一言つけ加えさせていただきますと、現在の日本の濃縮とか再処理は科学技術庁、動力炉・核燃料開発事業団がいま鋭意技術開発を進めているところでございまして、先生御高承のとおり、再処理につきましては、使用済み核燃料を使う運転にいま入った段階でございますし、ウラン濃縮につきましても、現在パイロットに取りかかったところでございます。したがいまして、すでに物をつくって、これが商業用で大いにたくさんつくっているという状態とは違うわけでございまして、現在まさに話題になり、これから近い将来考えられるものとしては、やはりコンポーネント、すでに行われておりますが、そういうものから原子力発電機器というようなものが当面の課題でございまして、そういったものを原子力機器産業あるいは原子力関連機器というふうな表現で先ほど申し上げたものでございます。
  286. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまの問題はまた改めて機会をいただいていろいろお尋ねしたいと思う点がございますので、またの時間をいただきますが、最後に、私、開発途上国と日本立場という点にしぼって、御質問させていただきたいと思います。  それは、INFCEの設立総会でも、途上国から先進国に対して、核の独占ということに対する批判が大変出たというふうに聞いておりますが、日本立場というのはそういう批判に対してどう対処していくべきなのか。いままでどのような態度で御出席されておられ、あるいは外務大臣として訓令も出されたでしょうけれども、どのような訓令を出されたのか、そこら辺をもう一遍お聞かせいただきたいと思うのです。  というのは、これは伝えられるところでは、インドだとかエジプトだとかブラジルだとか、そういうところからいろいろな意見もあったと聞きますし、ユーゴスラビアのような国からまた発言もあったと聞きます。それは非産油途上国、こういうことにおいてのエネルギー源として原子力をどうしても必要だという気持ちから出てきているのでしょうし、それからやはり核保有国の方が先ほども申し上げたように大変強い立場で、かつまた差別的立場をとってくることに対する反発もあったでしょうし、そういうような動きが出てきたときに日本はどこに位置したらいいのかという点、私は大変疑問に思いますし、同時にその意見の発表の仕方なり立場の表明の仕方によっては今後の外交上も大変大きな影響が出てくると思います。その意味で、この点について日本はどのような発言をされたか、今後どのような対処をしていこうとしておられるのか、具体的にひとつ教えていただきたいと思います。
  287. 大川美雄

    ○大川政府委員 先週のINFCE創立総会におきます日本の発言におきましては、わが国としてはここに御出席の開発途上国の御意見も十分拝聴いたしたいというような趣旨を発言いたしました。こういう国際的な場でとかく出てまいります。いわゆる南北問題的な要素が全然なかったと言うとうそになりますので、若干そういった要素が出てまいりましたけれども、何しろ今後二年間行われます八作業部会における検討作業はきわめて専門的、技術的な作業でございますので、国連でございますとかUNCTAD等で出てまいりますような激しい政治的な南北問題的な対立はできるだけ回避されなければいけないかと思いますし、またそういった激しい対立関係はないのではないかと思います。  わが国といたしましてはもうすでに、たとえば国際原子力機関を通じまして開発途上国の原子力平和利用活動に対しまして技術援助等の面でいろいろ協力をいたしておりますし、今後ともそれを増大していかなければいけないかと思います。ただし、それはどこまでも核の拡散につながらない形での開発途上国における原子力平和利用活動に対する支援ということであろうかと思います。開発途上国に対する援助を通じまして、核の拡散につながるようなことになりましたら大変なことになりますので、その点は十分配慮をしながら開発途上国の平和利用活動に協力してまいるというのが日本政府考え方かと思います。
  288. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣、何かございませんか。
  289. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国は原子力の面では、資源の乏しい、資源のない国ということで、エネルギーの不足国という立場でありまして、そういう意味におきまして、わが国といたしましては原子力の平和利用の権利が妨げられないように、そして核拡散の防止にも何らかの手段を講ずる、そういった二つを両立させたい、こういう願いでありまして、一般的に開発途上国の諸国といたしましては、そういう意味わが国立場を同じくする国が多い。ただし、わが国といたしましては、核拡散の防止という点につきましては先進国の一員としても責任を持たざるを得ない、その点において協力しながら、エネルギー不足国としてこの平和利用の権利は、核防条約に加盟するという立場があればそういった権利は尊重さるべきだ、こういった考え方で進んでおるわけで、したがいまして、その立場はきめの細かい配慮が必要であると考えておるのでございます。
  290. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう要望だけをして、時間が参りましたからやめます。  それは先般福田総理が東南アジアを回られた、外務大臣も一緒にいらっしゃいました。そういうときにも、これから平等なる関係で、そして新しい時代を築くということを宣言されておられるわけでございます。  核エネルギーの問題はいま新しい時代を迎えようとしている。そのときに日本がどういう立場をとるか、特にこの問題につきましてはINFCEの設立総会にもすでに徴候が見られたように、南北問題の影は落としてございます。したがいまして、その中においてこれからの日本立場というのは大変慎重に、かつまた建設的なものであってほしいと思いますので、これは手腕を御期待申し上げますから、外務大臣に、まことにむずかしい問題でありますけれども、ひとつ日本立場を貫いていただきたい、これを要望いたしまして私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  291. 山田久就

    ○山田(久)委員長代理 土井たか子君。
  292. 土井たか子

    ○土井委員 国連におきまして非核武装地帯はただいまのところ一体幾つ採択をされておりますか。そして、それに対しまして、わが国としてはどのような態度でこの問題にいままで対応されてこられているかというところをまずお尋ねしたいと思います。
  293. 大川美雄

    ○大川政府委員 いわゆる非核地帯としてすでに協定なり条約ができ上がっておりますのは一つでございます。これは中南米のいわゆるトラテロルコ条約と申しますものでございます。これも最終的に付属議定書に対する批准がまだ出そろっておりません。  一般的に、非核地帯の設置という問題は、核の拡散防止あるいは核戦争の防止という意味ではそれなりの意義があると私どもは考えておりますけれども、実は一昨年の夏でございましたか、ジュネーブで非核地帯に関する専門家ばかりを集めた検討会がございまして、そこであらゆる角度からこれの可能性なり問題点なりが論議されたわけでございまして、その際に実にいろいろの議論が出て、ついに意見の一致を見なかったというくらいに複雑な問題が絡んでおりますので、一概になかなか、一つ地域でできたからほかの地域ですぐにそれが応用できるというようなもので必ずしもないと感じております。しかし、これは今後とも国際的に十分検討していかなければいけない問題であろうかと思います。
  294. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま条約一つとおっしゃいましたが、決議案については幾つ採決されておりますか。いわゆる非核兵器地帯設置とか非核武装地帯設置という意味での決議です。
  295. 大川美雄

    ○大川政府委員 決議の採択という段階で申しますと、実は南太平洋それからアフリカ、中東等々に、毎年のように国連総会におきまして非核地帯設置のための決議案が出てまいりまして、大体採択されております。
  296. 土井たか子

    ○土井委員 毎年のように出てきたその数は、いまのところ要約幾つくらいですか。国連で採択された決議案は一体幾つあるのですか。
  297. 大川美雄

    ○大川政府委員 従来からの各総会を通じてのすべての非核地帯の決議の総計をいますぐ申し上げる準備がちょっとございませんけれども、アフリカの関係と中東の関係と、それからさっき私がちょっと申し落としたかもしれませんけれども、南アジアについてもそういう決議案が採択されております。なお、非核地帯とは申しておりませんけれども、別にインド洋平和ゾーンというものをつくろうという国際的な努力もございまして、そのために特別の委員会も活動しております。
  298. 土井たか子

    ○土井委員 一度それを正確に、非核地帯に対しての決議はどういうものがあるかというのを一括して文書化して御提示いただければ結構でございますが、できますね。
  299. 大川美雄

    ○大川政府委員 できます。
  300. 山田久就

    ○山田(久)委員長代理 それじゃひとつそれを出してください。
  301. 土井たか子

    ○土井委員 そういう程度で考えていらっしゃるのだったら、こういう質問を申し上げても御答弁は明確にいただけないかもしれませんが、いまたとえば南太平洋に非核地帯をつくろうという決議を国連で採択するときに、日本の代表もその場所にいらっしゃるはずであります。どういうふうにその問題に対して対応されてきたのか、あらましわかればお話しくださいませんか。
  302. 大川美雄

    ○大川政府委員 もしお許しいただければ、これは先ほどお約束しました決議の数その他を御報告申し上げるときに一括まとめて御答弁申し上げる方が正確かと思いますけれども、お許しいただければそうさせていただきたいと思います。
  303. 土井たか子

    ○土井委員 端的に申し上げまして、それでは南太平洋の非核地帯設置に対して日本は賛成をなさいましたか、反対をなさいましたか。
  304. 大川美雄

    ○大川政府委員 賛成いたしております。
  305. 土井たか子

    ○土井委員 日本としては賛成をされているわけですね。  実は、この南太平洋の非核兵器地帯設置の中には言うまでもなくニュージーランドが入っておりますが、ニュージーランドという国は御存じのとおりにアメリカとの間でANZUS条約締結いたしております。したがいまして、その立場からすると日本としては考えてみなければならない一つ条件というものをここに見ることができるように思うのですね。日本は申し上げるまでもなく日米安保条約のもとにいまございますから、そういうことから申し上げますと、一つはこの例を考えながら、特に核軍縮の問題というのはもうNPTの審議の節にも重々論議されましたとおりで、非核保有国が核保有国のなすことをなすがままに受け入れるというのであっては、とうていできることではないわけでありまして、むしろ非核保有国が積極的に核保有国に対しての働きかけをなしていくというところに、いま、もちろん日本を中心に考えた非核保有国のあり方というのがあるように私は思うわけであります。  そういう点から考えまして、NPT審議の最後の段階、議事録によりますと、五十年の六月十八日に、私ども社会党が中心となってアジア・太平洋地域における非核武装地帯の設定ということを提唱いたしました。当時の宮澤外務大臣はこれにお答えになって、「もともと核兵器を使用しないということを主張するわが国立場として、検証の方法があり、現実の情勢をつくりつつ、そういう状況の中で、核兵器保有国に対して道徳的な説得を行いまして、そうして非核地帯というものを設定をして、行く行くはこれを世界に広げていくという構想は、やはり外交の大きな目標としてわれわれが常に忘れてはならない一つの構想であるというふうに考えております。」こういうお答えなんです。     〔山田(久)委員長代理退席、委員長着席〕 そしてその結果、委員会決議というかっこうで、核兵器の不拡散条約に関する件の項目が五つ大きな柱がございますが、この五つの中の一つに「世界の平和維持に非核化地帯構想が重要な意義を有していることにかんがみ、我が国はこの為に国際的な努力をすること。」という一項をわざわざ入れたのです。いきさつはもう鳩山外務大臣御承和のとおりで、これは国会のNPT審議の折、審議の内容から具体化された委員会決議であると言わなければならないと思うのですね。  そこで、ここにはっきり「我が国はこの為に国際的な努力をすること。」と明記されてございますが、外務大臣とされては具体的にどういう努力をこの問題に対して払おうとなさっているか、また払うことに対しての御用意がおありになるか。これをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  306. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 NPT条約は、非核兵器保有国の立場からすれば、核兵器保有国が核軍縮ということに努力をしてもらうということが重要な目標であると思います。その点につきましては、現在は来年の軍縮国連特別総会、これを目標といたしましていま準備的な会合が重ねられております。わが国といたしましては、核軍縮の必要を特に強調をいたしたい、これはたびたび申し上げているところでございます。  また、わが国といたしまして、米ソの間のSALT交渉につきましては、これは重大な関心を持ち続けておるところでありまして、私自身も訪米の際に、あるいは先般はバンス長官が東京に寄られたとき、それらのときにおきましては常にわが国主張を申し上げ、そしてSALT交渉も現況につきましてはいつも先方の説明を聴取する、そういう態度をとり続けておるわけでありまして、今後とも、特に来年の軍縮特別総会は大事でございますので、そのためのわが国立場を強く主張する所存でございます。
  307. 土井たか子

    ○土井委員 核軍縮を初めとする軍縮の問題はもちろんのこと最大限の努力を必要とする課題でございますけれども、いま当委員会の決議の中にあります非核化地帯構想についてはどういうふうにお考えですか。  特に具体的に私お尋ねしたいことが実はあります。それは先般私、日米議員会議でいろいろ朝鮮問題を討議するためにワシントンに赴きまして、そのときに核軍縮の問題や、それから今後の軍備競争をいかに抑えていくか、なくしていくかということを国務省の外郭である軍縮小委員会に行っていろいろ話した覚えがあるのですが、そのときにやはり、アメリカが韓国から撤兵をする、核の撤去もする、これはもう絶好の機会であって、非核三原則を国是としている日本が単にこれを国内的に国是というふうに認めるばかりではなくて、国際機関において日本という国は非核三原則を国是とする国であるということを対外的に鮮明にして、そしてさらに朝鮮半島に向けて日本を中心にした非核武装地帯というものを設置していく努力を払う絶好のチャンスだというふうに私は考えるがという提唱をしましたら、まことに私も同意する、アメリカ側の軍縮小委員会のメンバーがそういう発言でございます。マクガバン上院議員などもそういう構想に対しては賛意を表される論調を展開されているわけでありまして、この辺は、やはり日本が肝心かなめの当事者でありますから、そういうことに対してどれだけ意欲があり、どれだけ具体的構想を持ってそれをやる気があるかというところが実は大変大きな課題だと私は思うのです。  先ほど来私がお尋ねした中に、NPT論議の中での五十年六月十八日の議事録をここで引き合いに出しましたけれども、あの議事録の中でも、提唱した中身は、アジア・太平洋地域における非核武装地帯の設定という具体的な中身でもって外務大臣への質問を展開したわけでありまして、そういう点から言うと、そういうことに対しての構想は、漠然とした抽象論ではなくて、やはり具体的にわれわれとしてはある構想やある計画に対しての設定が必要じゃないか、このように思うわけでありますが、外務大臣の御答弁をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  308. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国自身が非核三原則で核兵器は全くないということは、これはもう明らかでありますし、またわが国自身の非核三原則につきましては、先般の国連演説でも全世界に向けて、わが国は絶対に核武装はしない、非核三原則を強調してまいったところでございます。  ただいまお触れになりました韓国の核の問題でございますが、この点は韓国に核があるのかないのか、これは公式にはわからないところでございますが、その質問をしてもそれは絶対に答えが返ってこないのでございます。  しかしいまお述べになりましたわが国が非核三原則である、それはやはり正しいからそういう政策をとっておるということでありまして、これはもし韓国にそういう核があるとすれば、核がない方が好ましいということにつきまして私はそう思うわけでありますが、核は撤去するのかどうかということにつきましても、実のところ核の問題については一切ノーコメントというのがアメリカ側の態度でございます。しかし今後の推移をまちまして、これは防衛上のいろんな観点もあろうかと思いますが、わが国といたしまして、それは核兵器がない地帯が拡大することが望ましいという点では私もそのとおり考えます。  具体的な手段方法等につきまして、いま直ちにどういう努力をするかという点につきましては、いま直ちに御返事をすることはできませんけれども、常々そういったことも心がけてまいりたいと思っております。
  309. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま審議中の、核に対しての平和利用の保障措置の問題というのは、平和に、しかも安全に核を利用するということに対してのあかし、核を非平和的に、そして非安全的に利用するということを認めないという内容なんですね。やはりこれはいかに安全に、いかに平和的に利用するかということに対しては、査察制度でひとつしっかりやろうというふうなことだけではなくて、いろんな政策の中で核に対しては平和を脅かしたり安全性が確認されないような方向で一切使用してはならないという打ち出し方というものを積極的にすべきだという意味も大いに含んでいると思うのですよ。  だから、そういう点からいたしますと、特に全世界の中では有数の、大変ユニークな非核三原則の国であります。そういう点からしたら、大いに全世界の国々が、非核保有国である、しかもその中身は非核三原則を国是としている国であるという意味で注目していると思うのですね。わが国自身がNPTを締結いたしまして、いままさにそれについて補完をすべく、この保障措置の協定に対してサインをしようとしているところでありますから、したがいまして、こういう中身についても、非核保有国ということで核保有国の言い分を単に受けて立つだけではなくて、先ほどから言うように自分自身のこれから果たす役割りを十二分に、いま申し上げたような積極的意味を持って展開すべき内容を含んだ協定ではないか、そういうふうに考えております。  したがいまして、いま外務大臣おっしゃった御答弁というのは、何だか知らぬけれども、聞いておってまだまだ気弱い感じがするわけでありまして、これで果たして安全は大丈夫であろうか、平和利用といったって果たしてこれでいけるのかなという気分も私自身いたしますが、もうひとつそこのところをしっかり御答弁いただきまして質問を終えたいと思います。質問を終えますから、ひとつしっかり御答弁ください。
  310. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 核兵器の軍縮、この点につきましては、これはそれをやってもらわなければ、非核保有国として、それがまた場合によっては平和利用につきましても何らか制限を受けるような方向にいま進みつつあるときでありますので、わが国といたしまして核軍縮という点につきましては、これはわが国の特殊な、わが国なるがゆえに声を大きくして言えることでありますし、言う責務があるというふうに感じておりまして、その点は全く同感でございます。
  311. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  312. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、明後二十八日金曜日午前九時四十五分理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会