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1977-11-18 第82回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月十八日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長  大野  明君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 増岡 博之君 理事 宮崎 茂一君    理事 坂本 恭一君 理事 渡辺 芳男君    理事 河村  勝君       北川 石松君    関谷 勝嗣君       古屋  亨君    太田 一夫君       久保 三郎君    斉藤 正男君       田畑政一郎君    草野  威君       宮井 泰良君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    小林 政子君       中馬 弘毅君  委員外出席者         参  考  人         (サンケイ新聞         論説委員)   山本雄二郎君         参  考  人         (弁護士)   木村 保男君         参  考  人         (商業)    鬼沢 伸夫君         参  考  人         (会社役員)  岩沢寅之助君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 十一月十八日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     伊藤 公介君 同日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     中馬 弘毅君     ————————————— 十一月十六日  国鉄貨物廃止削減及び地方線廃止反対に  関する請願加藤万吉紹介)(第二九三九  号)  同(小林政子紹介)(第二九四〇号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二九四一号)  同(草川昭三紹介)(第三〇二九号)  中央新幹線建設促進に関する請願増田甲子  七君紹介)(第二九七六号)  同(向山一人紹介)(第二九七七号)  原動機付自転車による賃貸業許可制に関する  請願増田甲子七君紹介)(第二九七八号)  同(向山一人紹介)(第二九七九号)  国鉄運賃の値上げ及び国鉄運賃法定制の緩和反  対に関する請願吉浦忠治紹介)(第三〇二  八号) 同月十七日  国鉄貨物廃止削減及び地方線廃止反対に  関する請願小川省吾紹介)(第三一〇四  号)  同(渡辺芳男紹介)(第三一〇五号)  同(水田稔紹介)(第三一六三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 十一月十八日  佐渡汽船株式会社中小内航海運業者に対する  圧迫排除に関する請願山本悌二郎紹介)(  第二四一号) は委員会許可を得て取り下げられた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案(内  閣提出第八号)  佐渡汽船株式会社中小内航海運業者に対する  圧迫排除に関する請願山本悌二郎紹介)(  第二四一号)の取下げの件      ————◇—————
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案を議題といたします。  本日御出席願いました参考人は、サンケイ新聞論説委員山本雄二郎君、弁護士木村保男君、商業鬼沢伸夫君、会社役員岩沢寅之助君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査の参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、山本参考人木村参考人鬼沢参考人岩沢参考人順序で御意見をお一人十五分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、山本参考人にお願いいたします。
  3. 山本雄二郎

    山本参考人 山本でございます。  この特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案について若干の意見を申し述べまして、今後の御審議参考に供したいと思います。  結論を最初に申し上げますと、私は、この特別措置法案は速やかに成立させることが望ましいと考えます。  まず最初に、航空輸送について概観しておきたいと思うのでありますが、改めて私から申し上げるまでもなく、航空輸送重要性というものは非常に増大してまいりました。戦後、陸海空における各交通機関の中で最も大きな伸びを見せたのは航空輸送であります。これはわが国の地理的条件はもちろんのことでありますが、経済的、社会的、文化的に負うところが多く、いわば歴史の必然であったというふうに言っても私は過言ではないと思います。また、きわめて多くの利用者が数多い交通機関の中で航空機を選択してきたというのも、それだけ航空輸送の利便が大きかったからだと思います。特に国際旅客輸送の面では、ほかに代替交通機関がないのが現状でありまして、国際交流がますます活発化する中で、航空輸送重要性は今後高まる一方であろうというふうに考えます。しかも、航空輸送は今後さらに一層大きく伸びるものと予測されております。  旅客輸送について見ますと、国内線では昭和五十年度に二千五百四十四万人であった旅客数が、十年後の六十年度には六千五百万人、さらに国際線では五十年度に七百九十四万人であったものが、六十年度には二千七百万人になるだろう、こう言われております。このような事実から見まして、航空輸送はいまや交通体系の中で欠くことのできない存在になってきておりまして、その比重はますます大きくなっていくというふうに考えざるを得ないと思います。  このように航空輸送が大きな役割りを担い、その使命を全うしていくためには、重要な前提条件、つまり空港が正常に機能するという条件が満たされることが必要であると思います。その条件が満たされない限り、航空輸送はまことに憂うべき状態に当面するということを考えざるを得ないわけであります。したがいまして、空港を正常に機能させていくことは、当面の最も大きな課題であるわけでありますが、それには空港施設整備充実、安全かつ円滑な運用と同時に、空港がその地域に受け入れられる、あるいは定着することが不可欠の要件であります。  しかし、残念ながら現状におきましては、空港をめぐるトラブルが各地で発生しております。特に問題になっておりますのは環境問題でありまして、中でも航空機騒音問題が深刻な社会問題化してきておるのは遺憾と言わざるを得ません。しかし、こうした問題について、ここ数年それなりに対策が講じられるようになってまいりました。全面的に問題を解決するには至っておりませんけれども、徐々に効果を上げているということも、これも事実だと思います。  従来のこういった対策は、大別すると三つの種類がありました。第一は、発生源対策であります。航空機エンジンの低騒音化など、機材改良または便数削減、時間規制運航方式の改善というのがこの中に含まれます。第二は、緩衝緑地防音林をつくるといった空港構造改良であります。そして第三が空港周辺対策であります。これには計画的な土地利用あるいは防音工事移転補償等、そういったような措置が入っているというふうに考えられます。それぞれ意味のある対策でありまして、今後ともこれを積極的に進めていくことが必要でありますが、中でも重要なのは、空港周辺対策であるというふうに私は考えます。  私は、かねてからこの空港整備空港施設を拡充すれば足りるという、点つまりポイント、点的な考え方ではなくて、空港周辺地域を含めた面、つまりスペース的な考え方をすべきだということを強調してまいりました。それには航空機騒音を防止することはもちろんですけれども、それだけではなくて健全な町づくりと結びつけていかなくてはならないと考えたからであります。そのためには、都市計画的な手法を導入いたしまして前向きに対処していくことが当然必要になってくるわけでありますが、機会があるたびに私はこういうことを主張してきたつもりであります。  そういう角度から見ますと、従来の空港周辺対策土地利用の面、特に立地規制の点で十分でなかったように思われます。防音工事移転補償については、早くから制度化されてきておりますけれども、土地利用については、空港周辺の再開発、つまり工場や倉庫などを空港周辺に配置するというようなやり方が中心でありまして、周辺地が宅地化されてそこに住宅がつくられ、それによって新たなトラブル発生するということを防ぐ手だてが十分でなかったように思います。  その点に関連しまして、私は、当然事前にトラブルを防ぐ対策がなくてはならないというふうに考えていたのですが、今回のこの特別措置法案によりまして、ようやく日の目を見ようとしているというふうに受け取っております。この特別措置法案は、これまでの空港周辺対策をより一層充実させるものとして位置づけることができるわけでありまして、その意味で速やかに成立させることを期待いたしたいわけであります。  この立地規制の問題は、空港周辺対策一環として重要でありますけれども、単に国内的な問題にとどまりませんので、国際的にもきわめて大きな意味を持っているという点を見落としてはならないと思います。  ことしの九月、取材のためジュネーブのIATA国際航空運送協会の本部を訪れましたときに、たまたま成田空港空港使用料の問題が出ました。そのときIATA側は、成田空港使用料は高過ぎるということを言ったわけなんですが、その理由一つとして、日本には空港周辺地域における立地規制法律がないからいけないのだ、こういうことを言っていたわけであります。つまり、立地規制法律がないから空港周辺にどんどん住宅ができる、その住宅に対して補償を行うようにするのでたくさんのお金がかかる、それをまたコストとして計算するので空港使用料が高くなる、こういう論法であったわけです。  成田空港に関する限り、若干事実関係に誤解もあるようですけれども、IATA側が言う立地規制法律がないという点は事実でありまして、その点については、もう反論の余地がなかったわけであります。IATA側がこの立地規制法律がないということを非難するのは、ある意味ではもっともな面があるわけでありまして、先進諸国ではほとんどの国で何らかの形の立地規制法律がありまして、日本だけが特殊な国だという印象IATA側は強く持っているように思われます。  この点は、国際社会の一員として伍していく上でやはり考えなくてはならない点ではないかという印象を強く受けました。その意味で、この特別措置法案には、国際的な側面があるということもあわせて申し沿えておきたいと思います。  次に、特別措置法案内容についてでありますが、私は、法律専門家ではありませんけれども、一人の社会人として考えましておおむね妥当な内容のものであるというふうに考えます。  幾つか問題はありますけれども、基本的な点だけを申し上げますと、第一に、この特別措置法案の場合は、地元中心という線が一つ貫かれているというふうに考えられます。特定空港に指定された空港につきましては、都道府県知事航空機騒音対策基本方針をつくることになっております。さらにまた、その場合に関係市町村長関係住民意見を聞くということにもなっております。本来空港周辺地域整備には、地元意向が十分に反映されることが大切でありまして、それぞれの地域の実情に即した計画でないと計画としての意味がないわけであります。その点、この特別措置法案は、地元意向反映という点で意を用いているというふうに私は受けとめております。  第二は、補償について配慮されている点であります。航空機騒音障害防止特別地域では、原則として住宅建築が禁止されるわけでありますが、その建築禁止によって生じた損失については空港設置者補償することになっております。特に住宅禁止によって土地利用に支障を来したという理由土地所有者土地買い入れを申し出た場合は、空港設置者がこれを買い取るということにもなっております。このように規制に対して救済措置が設けられている点は評価できるだろう、こういうふうに考えます。  第三に、積極的に土地利用を行うという点であります。この特別措置法案は、都市計画法と関連づけられておりまして、たとえば特定空港設置者買い入れ土地を公園とか広場とかに無償で使ってもらうというようなことになっておりまして、この点も前向きの措置と言っていいのではないかというふうに考えます。  このように特別措置法案が成立いたしますと、それだけ空港周辺対策は前進するというふうに考えられますが、ただ、運用の面ではこの法案にも問題がないとは言えないと思います。  たとえば補償に対する財源措置であります。確かに財源確保されているということでなければ、せっかくの補償措置も絵にかいたもちに終わるということにもなりかねないわけでありますから、その点は行政当局に格別の配慮を望んでおきたいと思います。  それからまた、特定空港においては、地元意向を反映するということにさらに一属留意する必要があろうかと思います。たとえば英国空港公団、BAAの所有する空港には必ず空港協議委員会、コンサルテーティブコミッティーというのが設けられておりまして、その中には利用者代表とか航空会社の人とかあるいは関係市町村の人とか、いろんな人が入って、その空港の運営について意見を申し述べる機関が設けられておりますけれども、こういう点は特定空港がつくられた後、一つ参考になるのではないかというふうに思います。  最後に、もう一度基本的な考え方について触れてみたいと思いますが、空港をその地域に定着させるためには、環境問題を中心空港周辺対策を推進することが重要でありますけれども、いまのところ、あることを一つやれば一挙に問題が解決するという妙手はないわけであります。そうなりますと、一つ一つ可能なことから対策を積み重ねていって問題を解決するということしかないわけでありまして、その意味でもこの特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案早期成立が必要であるというふうに考えるわけであります。そのことを改めて強調して、私の意見陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  4. 大野明

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、木村参考人にお願いいたします。
  5. 木村保男

    木村参考人 弁護士木村でございます。  本特別措置法案は、仄聞しますところによりますと、新東京国際空港にのみ適用されるというふうに聞いておりますが、私は、成田現状についてはほとんど何も知っておりません。ただ、過去十年ほどにわたりまして、大阪国際空港公害裁判をやってまいりました立場で、大阪国際空港現状を念頭に置きながらこの法律案を見てきたわけであります。そういう意味では、多少的外れになるかもわかりませんが、しかし、大阪国際空港現状は、一方では移転補償によってどんどん住民周辺から出ていっている、また反面、安い土地を求めて新しく人口が流入してきている、こういう状況を見ますと、政府といたしましては、何とか立地規制土地利用の面を考えなければならぬというふうにお考えになって、特定空港にこの大阪国際空港を含めるという措置をお考えになることが将来起こり得るかもわかりませんので、そういう観点から若干意見を申し上げたいと思います。  私は、この法律案を拝見いたしまして、基本的な問題あるいは個々論点について多くの疑問があるわけであります。  まず、基本的な問題でございますが、この深刻な航空機公害にどういうふうに対処するか、この公害対策には、私は三本の柱があると思うのであります。  一つは、被害徹底的調査という観点であります。昭和五十年十一月に下りました大阪国際空港に関する大阪高等裁判所判決の中にも、空港周辺には深刻な環境破壊があるだけではなしに、住民の間には身体的、健康的被害発生していることを明確に認定しているわけであります。そうなりますと、公害対策を進めていくためにはどのような被害があるのかを十分に調査する、そういう制度的なものが必要であろうと思うわけであります。それの把握がいわば公害対策出発点になろうかと思います。  二番目の柱は、言うまでもなく発生源対策であります。騒音発生そのものを減少させるためのいろいろな手段施策が要求されてまいるわけでありまして、たとえば便数規制、あるいは空港判決が示しました時間帯の規制、あるいはエンジンその他の機材改良によって騒音量を減らす、あるいは運航方式改良することによって騒音量を減少させることが要求されてまいるわけでありまして、この発生源対策公害対策の最も肝要な重要な柱になろうかと思うのであります。  そして、三番目に出てまいりますのが周辺対策であります。しかし、周辺対策はさきに言いました発生源対策に比べるならば、それはむしろどうにもならないことを何とかしなければならぬという意味で補完的、補充的なものだと考えなければならないのではなかろうかと思います。  しかし、現在の航空機公害現状を見てみますと、先ほど申しました三つの柱の出発点となる被害調査が全くと言っていいほど行われておりません。そういう事実の把握をせずに、いきなり周辺対策がクローズアップされてきておるわけであります。そして国の政策がとかく発生源対策を補助的な、あるいは第二次的な扱いをいたしておりまして、もっぱら周辺対策に主力が置かれているのが現状ではなかろうかと思うのであります。そういう意味では、この特別措置法もまたそういった一環の中に位置づけられるものではないかというふうに見れるわけであります。  しかしながら、この三つの柱がぐあいよく完備していませんと、その公害対策はきわめて跛行的なものにならざるを得ないと思うのであります。すなわち、周辺対策を強力に進めるということは、空港周辺から住民を追い出す手段になってしまう。  公害歴史を見ますと、たとえば明治に有名な足尾鉱毒事件というのがございましたけれども、この事件では、鉱毒発生を根元でとめるという考え方がなくて、谷中村の村民を追い出すという形で解決しようとしたという歴史がございます。これと軌を一にするような形が空港周辺でも見られるのではないか。そこのけそこのけ公害が通るという形で住民が追い出されていくことになるのではなかろうか。  そういう意味で、三本の柱による公害対策が抜本的に、全体的な視野の中で考えられ、そして立地規制も、そういった観点から正しく位置づけられなければならぬと思われるわけでございます。  本特別措置法につきまして、個々論点につきまして若干触れてみたいのであります。  まず、都道府県知事が定める基本方針というものがございますが、これにつきましては、住民意見書を提出することができるという規定になっております。すなわち、意見を述べる、そして都道府県知事住民意見を聞くことになっております。しかし、この聞くということは、聞きおくということでもいいということでありまして、私は、この法律が本当に生きた形になるためには、ぜひ住民の主体的な参加を明瞭に位置づけていただきたいと思うのであります。  大阪国際空港周辺の問題で、御承知のようにエアバス導入がなされました。その際、大阪府知事兵庫県知事、そして豊中、川西市長の立ち会いのもとに運輸省住民との間に周辺対策中心とする十項目の覚書ができたわけでありますが、その一つとして、大阪国際空港公害対策推進協議会というのが発足したわけであります。そして運輸省大阪府、兵庫県、そして周辺自治体関係者、それから周辺整備機構、そして訴訟団が参加して具体的な施策の策定を協議する機関が生まれまして、これが現実に機能を果たしておるわけであります。  大阪空港高裁判決は、最後の締めくくりにこういうことを言っております。本件のような深刻な公害問題は、単に一裁判によって解決すべきものではない、国や住民は地方自治体を媒介として胸襟を開いてこの問題解決に協議すべきであることを示唆しておるわけであります。  こういう意味からしますならば、この特別措置法基本方針を策定するについてもっと積極的に住民を参加させる、いわば住民から知恵を借りるのだという姿勢が必要ではないかと思うのであります。そして同じ考え方になるわけでありますが、新しい都市づくりという問題については、住民科学者を入れたアセスメントを実施した上で町づくり考えなければならないと思っておるわけでございます。  次に、立地規制の問題でございますが、一定地域住宅その他の建造物建築する場合には防音構造を義務づけております。現在の航空機騒音防止法では防音工事を助成する、言葉は助成になっておりますけれども、国ないしは整備機構の方で防音工事住民のためにするのだということをうたっておるわけでありますが、この特別措置法は、防音工事建築する側の負担においてなされなければならぬというふうになっております。航空審議会の答申では、こういった防音工事は簡易なものであって、財産権の本質的な価値を低下させるような制限ではないので、この点についての補償考える必要がないというふうに言っておりますけれども、しかしながら、零細な市民にとっては防音工事を自己の費用において負担するということは、やはり大きな負担になろうかと思うのでありまして、この点についての補償措置というものもぜひお考えいただきたいと思うのであります。  次に、損失補償買い入れ価格の問題として、本特別措置法はその基準時価というふうに考えております。しかし、大阪国際空港では、御存じのような深刻な公害のために地価は大幅に値下がりをしている。そういった意味で、時価基準とされますと、同じような形の住宅環境確保することができなくなる。周辺住民は非常に零細な住宅しか持っておりません。戦前戦後を通じて十坪ないし二十坪程度土地の上に筒いっぱいの住宅を建てておるわけでありますが、これが移転をして、ほかの地区で改めてそういった建物を建てようといたしますと、建蔽率その他の関係において、いまの二倍、三倍の土地を取得しなければ同一の規模の住宅を建てることができない。そうなりますと、いまの現住の家屋、土地を買い取っていただいただけでは、どこにも移れないというのが現状であります。このような被害の中で苦しむのはいやだけれども、どうしても移るだけの手当てができないのだという嘆きは、大阪空港では終始聞くところであります。  こういった面で公害特殊事情というものをお考えの上で、買い取り価格損失補償の額について十分の御配慮をいただかなければならないのではなかろうかというふうに思うのであります。  結論的に申し上げますと、本特別措置法は、都市計画法あるいは土地区画整理法のような手法をかりて立地規制をしようと考えておるわけでありますが、しかし、考えてみますと、都市計画法とか区画整理法とかいったものは、住民がいわばお互い利益のために、共同利益確保のためにお互い一定制限をしんぼうするという形になっておるわけです。  高い建物が建てられない、しかし、隣にもそういう高い建物が建てられないから日照の確保ができる、あるいは自分の土地の一部を割くことによって道路を整備してもらう、そういった共同利益確保するという形をとっておる、そこに相互受忍の根拠があるわけでありますけれども、この特別措置法は、いわば一方的な公害に苦しんでいる住民が譲歩しなければならない、そこに負担を課せられる、制限を加えられる、こういう形になっておるわけでありまして、都市計画法という器を使いながら、似て非なるものをここに入れ込もうと考えておるのではなかろうかというふうにも見られるわけでありまして、この法律を御審議いただく観点からいたしますならば、被害住民の福祉というものをお考えいただいて、ぜひ血の通った法律につくり上げていただくように希望いたす次第でございます。  以上であります。
  6. 大野明

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、鬼沢参考人にお願いいたします。
  7. 鬼沢伸夫

    鬼沢参考人 私は、現在本委員会審議されております特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案について、賛成の意見を陳述するものでございます。  先ほどの山本参考人さんのお話と重複する面もあろうかと思いますけれども、私は素人でございますので、私なりの考え方を申し上げてみたいと思います。  私は、かつて二年前に、私どもの地域の有志とともに、はなはだ不本意ではございましたけれども、成田空港現状での開港に反対するというような意見を述べたことがございます。  その理由は、いろいろございましたが、そのほとんどは解決の方向へ向かっているのではないかと思いますけれども、その理由一つとして、騒音問題の抜本的解決策として、現在審議されておりますような法案整備して騒音問題に取り組んでいただきたい、そう申し上げてきたはずでございます。  航空機騒音問題が最大の社会問題となっておるように聞いております大阪国際空港などの例を見ますと、このような制度の確立がぜひ必要ではないかと考えております。そういう意味で、いまごろ政府が提案したということは、むしろ遅きに失したという感がなきにしもあらずと思われるわけであります。  私は、成田市に居住しておりまして、成田市の健全な発展を願う者の一人であります。御存じのように、成田市は昔からお不動様の町として全国に知られておりまして、これまではお不動様とともに発展してまいったわけでございます。しかしながら、成田市の今後の発展は、成田空港を無視しては考えることができないわけでございます。  すなわち、成田空港は、わが国唯一の国際線専用空港でありますから、これを擁する成田市は、当然のことながら、日本の表玄関として今後発展していかなければならないと確信いたしておるわけでございます。ただ、そのためには、きわめて重要かつ不可欠な前提条件がございます。つまり、わが成田市が成田空港をその中心一つとして健全な発展をしていくためには、お不動様と成田の町がそうであったように、成田空港とその周辺地域社会とがよき隣人関係を保ちながら、調和のとれた形で発展していくことが重要であると考えます。  このように考えてまいりますと、空港周辺において生ずる航空機騒音問題は、きわめて重要な問題となってくるものと思われます。現に航空機騒音問題は、これまでもいろいろな空港で大きな社会問題を引き起こしてきているのは周知のとおりでございます。  成田空港における航空機騒音問題につきましては、従来からも、政府、公団並びに千葉県、そして成田市におきまして、学校、民家等の防音工事に対する助成、移転希望者に対する移転補償あるいは防音堤の設置などの対策が進められていることは承知しております。また、成田空港に就航する航空機は、エアバス等の低騒音機が中心になるだろうということも聞いております。しかし、いずれにしても、航空機騒音が消えてなくなるものではございません。  ところで、空港周辺というものは、一般的に都心との交通網が整備される等の要因によりまして生活が便利になる傾向があります。成田市にあってもその兆しが見えてきております。そのようになれば、当然に宅地化が進展する傾向が生じますので、何もせずにほうっておけば、成田空港周辺においても宅地化がどんどん進んでいってしまうものと思われます。成田空港周辺は、現在のところは住宅もまばらな田園地帯でありますが、すでに不動産業者等によりまして宅地造成が散発的に行われておりまして、今後空港の開港あるいは二期計画整備等などが進みますと、この傾向はますます助長されるものと予想されますので、将来、空港周辺住宅が増大し、騒音問題が深刻化してしまうということにもなりかねません。  こうした将来に起こるであろうと予想されます騒音問題を未然に防止するための抜本的な方策なくしては、航空機騒音問題の解決はあり得ないと思いますし、したがって、私ども成田市の発展もあり得ないと考えております。私どもとしては、以前から、何か有効な手を打つべきであると強く要望していたのでありまして、私が、この法案の提案がむしろ遅きに失したと申し上げたのも、このような理由からでございます。  さて、空港周辺住宅を建てさせなければ、私の申し上げた目的は一応達せられることになります。しかし、ただ単にそれだけでは、私が考えております空港中心とした周辺都市の発展などということは望み得なくなってしまいます。周辺都市の発展のためには、空港とその周辺地域に最も適切な形でいわゆる生活圏をつくっていかねばなりません。したがって私は、空港周辺について、一方で住宅等の建築制限するかわりに、自然的並びに社会的条件を勘案して、商業、工業、農業等の空港と調和のとれた産業を奨励する等の周辺土地利用計画的かつ積極的に進めていく必要があると考えます。  現在審議されている特別措置法案は、周辺の一部地域住宅等の建築制限していますが、また他方、しっかりした土地利用計画を決めていくようになっているものと思われます。ですから、この法律が成立し、成田空港がその対象となるなら、一方では、従来から進めてきております騒音対策を一層充実させていき、他方でこの法律をきちんと実施していくことによって、当面する空港周辺航空機騒音問題を解決しながら、将来的にも航空機騒音に十分配慮した形での健全な都市づくりが進められることとなるものと確信いたしております。  また、この法案のこのような大きな目的とうらはらに一番大切なことがございます。それはこの法律の施行によりまして、当該住民損失を生むことは絶対に避けなければならないということでございます。すでに現在、住民を追い出す悪法だというように決めつけている人たちもございます。しかし私は、公益のための協力者に損失を与えることは絶対にないと申し上げたい次第であります。  具体的には、第八条の「土地の買入れ」について、土地の価格は時価によるものとなっておりますが、この時価とは、特定空港設置者と当該土地所有者とが協議することが前提になっておりますので、土地所有者を保護する規定だと考えます。また、第九条の「移転補償」につきましては、予算の範囲内において損失補償することとなっておりますが、私は十分な予算の範囲内での補償考えます。  いずれにいたしましても、要は運用の問題であります。したがいまして、法律さえできればそれでよいというものではありません。法律の精神をくんだ、血の通った政策の決定と国や県等の十分な財政上の援助等、積極的なバックアップがなければ、このような制度は絵にかいたモチにすぎないことは言うまでもありませんので、この点については、この法律運用の問題として、先生方におかれましても絶大なる御協力、御援助をお願い申し上げる次第であります。  過去十一年間、成田は闘争の地というイメージを全国民に与えてきたかもしれません。しかし、良識ある成田市民が望んだことではありません。ほんの一部の人達と外部からの無法者の侵入によって法を無視されて行われてきたことであります。今後は成田土地で血を流す戦いは絶対に許せません。そのような意味で、成田の十一年の歴史は暗い時代だったかもしれません。しかし、本当の成田歴史成田空港歴史はこれから始まるのです。  最初にも述べましたように、今後の成田市の発展は成田空港とともにあります。単に成田市のみではありません。成田空港周辺の市町村の将来の発展は、すべて成田空港との共存共栄ができるかどうかにかかっていると申せるのではないでしょうか。そしてそのためには、将来に大きな禍根を残さぬよう航空機騒音問題を解消し、かつ空港と調和のとれた都市づくりが進められるかどうかが、今後の大きな課題となっております。このような点からも私は本法案が速やかに成立し、そして成田空港がその適用の対象となることを切望する次第であります。  以上であります。
  8. 大野明

    大野委員長 ありがとうございました。  次に、岩沢参考人にお願いいたします。
  9. 岩沢寅之助

    岩沢参考人 はなし家でありませんので、非常に話が下手でありますので、まず原稿を読ませていただきます。  私は、成田空港四千メートル滑走路の北側五千五百メートルの地点に住んでいる岩沢と申します。私の家族は妻と長男夫婦、末娘、孫二人の七人です。私の職業はネームプレートの製造販売をいたしております。そしてこの製造業には、私の長男夫婦を初め五人の子供が、それぞれ別に世帯を持っていますが、通勤してきて一緒に仕事をいたしております。  さて、昭和四十六年、千葉県知事が公団の肩がわりをして民家の防音工事を始めました。当時私の部落、成田市西和泉には三十五戸が住んでおりましたが、そのうち七戸だけが民家防音の対象となり、同じ場所に住んでいながら他の二十八戸はその対象になりませんでした。私の家は、その対象となった七戸の中に入っていましたが、同じ部落の中で自分ら七戸だけが民家防音ができ、他にできないものが二十八戸も残るということでは納得できず、部落として成田市で初めて騒音対策協議会を結成し、市長並びに県知事に請願いたしました。  その結果、県知事は、西和泉部落全体を民家防音の対象とすることを約束したのでございます。しかしこの約束は、なお防音工事に多額の自己負担を残しており、私どもとしては、全額を国庫負担でやるように厳しく要求してきました。  その後、昭和五十一年一月八日、運輸省の告示による騒音地域指定が発表になりました。驚くことには、この地域指定は西和泉部落に第二種地域が食い込んでいました。私の家はこの二種地域には入ってはおりませんが、その境界からわずかに三十メートルしか離れていません。  それはともかくとして、西和泉部落は、さきにも申したとおり、部落全体として共同の歩調をとろうと申し合わせてきているところであり、部落が半分に分断されることには納得のいくものではありません。私たちは、こうした住民の意思を全く無視した騒音対策に応ずることができないと、今日まで一戸も防音工事をしていません。  ところが、今回の臨時国会の重要法案は、国鉄、健保値上げ法案、防衛二法とテレビ、新聞等で言われていましたが、いまごろになって、下積みの方からノラリクラリと出てきたのが、この法案であります。  この法案は、私どもにとっては、またまた厳しいものがあります。いまだに私たちの部落のように、民家防音工事も済んでいない、その上にこの法案の網をかぶせられては踏んだりけったりと言わざるを得ません。  先日、この法案審議されている当運輸委員会を傍聴させていただきましたが、諸先生方の指摘されていた点に全く同感であります。この諸先生方の指摘しておられた問題点が処理、解決しない限り、私ども直接この法案規制を受ける地元住民として納得するわけにはいきません。  この法案が憲法の保障する国民の生活権並びに財産権に著しい制限を加えるものであることは、すでに諸先生からも指摘のあったところであります。  しかも、同法第六条においては、違反建築物に対する措置として県知事が是正の措置を講ずべきことを命じ、同法第十三条においては、この命令に違反した者に対し二十万円以下の罰金に処することになっております。  本法では、特定空港設置者及び政府は、これに対し何らの補償措置を講じないのであります。被害者に自己救済を命じ、それができない者に対し罰金を科するというやり方は、国民の基本的な権利を犯す悪法だと言わざるを得ません。  さらに第八条において、公団は土地所有者から用益の制限を受けた土地買い入れるべき旨の申し出があった場合、買い取り請求権に基づきこの土地買い入れることになっております。この場合、買収価格は時価となっておりますが、その時価は飛行機が飛んだ後の契約時の時価ということでありますから、その価格はおのずから低減されたものとなります。せっかく公団が買い上げると言っても、騒音下の安い土地時価で買い取られたのでは正当な財産権の保障とは言えません。  同法第九条一項、二項は、主として農家を対象としてあります。——対象とはしてないのですけれども、まず農家だと思うのですけれども、農家の家屋及び土地等の補償及び買い入れについて規定しておりますが、農家の場合は買い取り請求権もありません。しかも、この買収価格は前条同様の時価であり、しかも、その時価設置者の判断に任されております。しかも、その措置は予算の範囲内においてと制約を受けております。こうした諸点は、私有財産権の保障、基本的権利を守る立場から非常に疑問のあるところでございます。  したがって、こういう法案については、一番関係の深い成田市、芝山町、下総町、大栄町、多古町等の関係住民の意思を十分反映させなければならないと思うのでございます。  しかしながら、今回の立法化に当たって成田市初め千葉県当局は、その要望をいたしてきたということでありますが、このように地域住民の重大な権利の侵害を受ける法の制定をいかなる考えのもとに要望してきたのでありましょうか。本法において関係住民の生活と権利はどのようにして守られると理解されたのでありましょうか。  この点について、私どもは、去る十一月十四日成田市長及び千葉県知事に、この法案に対する真意を明らかにしていただきたいということで、十五日に回答してほしいと申し込んだのですが、いまだもって回答はございません。きのうの朝、成田市長から、少々時間が欲しいということで電話がございました。このことをもってしても、県、市当局も、この法案内容には困っているのではないかと思うのであります。  以上申し上げてまいりましたが、最後に私は、成田空港に賛成とか反対とかの立場にこだわるものではありません。しかし私は、騒音激甚地の直下に先祖伝来の土地と家を持ち、家族、地域住民とともにその幸福だけは何としても守っていかなければなりません。特定空港として特別に規制するという空港向けの対策でなく、空港設置前にここに住んでいる住民の生活を第一に考えていただきたいと思うのでございます。  したがって、生活環境を破壊し、住民を追い出し、そうして住民を切り捨てていくような法案には反対せざるを得ないものであることを申し上げるものであります。  以上、つたない私の意見をお聞きいただきましてありがとうございました。どうか私の意のあるところをおくみ取りいただくよう心からお願い申し上げます。  以上でございます。
  10. 大野明

    大野委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 大野明

    大野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  12. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 参考人の皆さん方、朝早くからお忙しいところをお出かけいただきまして、この法案に対する貴重な御意見を私ども拝聴することができて、本当にありがとうございます。心から御礼を申し上げます。  私の持ち時間は、実は二十分しかございませんので、非常に失礼な言い方を途中するかもしれませんが、各参考人の方々にお尋ねをいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、山本参考人でございますが、大体お話の論旨、お説はよくわかりますが、問題点として運用面の問題が必要じゃないか、こういうお話でございまして、空港とその地域を定着させるようなことが必要じゃないか、もっと地元意見も反映するように、こういうお話がございました。  いろいろこの法案の中でも、御存じのように都市計画手法を取り入れて、この空港中心とする都市計画、お話のように国際空港でございますから、貨物輸送も盛んになるでしょうし、あるいは倉庫とかあるいは必要ないろいろな工場とか、そういったものを都市計画の上から決めて、そして住宅地域は発展するのだからここの辺がよかろう、こういった都市計画手法でもって決めるわけでございます。これは知事がやるわけでございまして、知事のもとでまた関係者専門家の都市計画委員会か何かそういったものの委員を指名してやると思いますが、大分民主的にそういった意見が反映されると思いますが、運用面でもっとこの法律でやれ、いままでの手法じゃなくてもっと何かやれ、こういうお話のように承りましたが、何か具体的に山本参考人、こういうふうにした方がいいのだという御意見があったらお知らせを願いたい。財源対策の方はこれは政府がやるわけですが、こっちの方は私としてはこれは十分にやらぬといかぬ、こういうふうに考えておりますが、地元意見の反映という点でお気づきの点がございましたら、ひとつ御意見を発表していただきたい、こういうふうに思います。
  13. 山本雄二郎

    山本参考人 お答えいたします。  この特別措置法案の中で、知事が基本方針をつくる場合に、関係市町村長、それから地元関係者意見を聞くということで地元意見を反映するルートが開かれている点は、先ほどの口述の際に申し上げましたように、私は評価できる点であろうと思います。  しかし、私が先ほど申し上げましたのは、法律が成立した後、運用していく場合によりきめの細かい措置が必要であるという点を申し上げたわけでありまして、その一つの例として先ほど申し述べましたイギリスの空港公団の空港協議委員会というのが一つ参考になるのではないかということを申し上げたわけであります。この空港協議委員会というのは、イギリスの空港公団がたしか七つの空港を管理しているわけでありますが、それぞれの空港にその委員会が設置されておりまして、委員は約三十名、それで、その中には空港公団の当事者はもちろんのこと、関係市町村あるいは航空会社、それからまたターミナルビルの中に店を出している人、それから旅行者代表というのも入っております。これはどういうふうにして選び出したかは私はちょっとわからないのですけれども、パッセンジャーリプレゼンタティブというのも入っております。そういう機関が恒常的につくられておりまして、その機関空港の運営について意見を言うという仕組みがありますので、日本の場合も、この特定空港がつくられた場合、法律の仕組みということとは別に、成立した後の運用の問題として考えてはどうかというふうに思うわけであります。
  14. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 木村参考人にお伺いいたしますが、木村参考人も、内容として、基本方針の作成とかあるいはまたいろいろな点について地元意見を聞いてくれという要望といいますか、御意見が強かったわけでございますが、いま山本参考人からイギリスの例をお挙げになってお話になりました、法律的なそういうものじゃなくて、空港協議委員会といったようなものをつくって、利害関係者を集めていろいろと地元住民意見を聞く、こういったような方向をお考えになっておられるのか。それとも、日本の法制的な組織上の問題からいきますと、成田市というものがあって、住民の選挙によって市長さんなり議員さんなり選ばれておいでになるわけでございますので、そういった市町村のいまある組織、そういったもので公的にはやれるのじゃないかと思います。私自身は、いまの山本参考人の御意見は、もっときめの細かい、非常に利害関係者が圧縮といいますか、極限されるわけですから、そういったものも非常に結構なのじゃないかと思いますが、木村参考人のお考えになっておられる、もっと地元住民意見を聞くとか住民に参加をしていただいてやるべきだ、こういう御意見は、いまの私や山本さんの意見と多少違うものでございますか、その構想について説明をしていただきたい。
  15. 木村保男

    木村参考人 確かに、地元意見を聞くということにつきましては、第一次的には、自治体の民主的に選挙されて運営されている議会あるいは市長を通じて意見をお聞きになるということが必要だろうと思います。  ただ、大阪空港のこれまでの歴史を見ますと、たとえばBランの三千メートルの滑走路を拡張する、これによってジェット機が運航を開始して公害が激化したわけでありますが、こういった拡張の経過の中で自治体の役割りが非常に誤っていたということが言えるわけであります。そういう経過を持っておるものですから、住民の方も間接的な民主主義にだけ頼っておるということでは不十分だ、やはり住民が、理屈ではわからないけれども感覚として危惧しているような問題を率直にぶつけるということがどうしても必要だ、また、この事業を行う側にそれを虚心に聞いていただくという姿勢が必要だ、単に手続がそういうことになっているから一応聞いておくということではなしに、真摯にその意見を聞いてもらうことが将来のいろいろな問題を解決する早道になるのだというふうに思っておりまして、そういう意味で、住民意見を積極的に取り入れていただきたいというのは、やはり公の手続上にそういうものが反映できるような制度、そういうものをぜひお考えいただきたい。  じゃ、具体的にどういうことになるのかというふうにお尋ねであろうと思いますけれども、先ほども例を御紹介いたしましたように、現在大阪にあります公害対策推進協議会というものを法律上の手続の中に組み込むような方法で、知事の基本方針策定について十分にそれが反映できるような制度的保障をひとつお考えいただきたいという趣旨でございます。
  16. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 木村参考人にお伺いいたしたいのですが、先ほど木村参考人の、基本的な問題として疑問を持っている、こう言われたのは、まず第一が被害徹底的調査である、第二は発生源の対策である、第三は周辺対策、こういう順序でやるべきなのに、この法律案は、第三の周辺対策に力点を置き過ぎている、こういうお話がございました。御承知のような被害徹底的調査、これはまた私ども、この法律以外のところで一生懸命住民の方々の御心配のないように徹底的にやるべきだと考えておりますし、第二の発生源対策の問題、これはもちろん航空機専門担当の飛行機会社でございますとかあるいは運輸省自体が、便数の問題、エンジン騒音のしないようにとかあるいは夜間に飛ばないように、これはこの法律外でできることでございます。したがいまして、これは残りますところの、参考人のおっしゃる周辺対策周辺騒音、そこだけにライトを浴びせてつくった法律でございますから、決して一、二をないがしろにしちゃってということではございませんので、私がそういうことを申し上げて、これは周辺対策をやるのだということについては御賛成でございますかどうか、一、二を完璧にやれば。その点はいかがですか。
  17. 木村保男

    木村参考人 おっしゃるとおり、一、二の問題をぜひやっていただいて、いわばそのバランスの上に立った周辺対策をお考えいただくということであれば、私は大変結構だと思っております。
  18. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 また木村参考人は、都市計画手法を使うということは被害住民に対して気の毒じゃないか、都市計画というのは、みんなで道路をつくって、道路をつくるためには自分の土地も提供しよう、こういうことじゃないか、こういうお考えでございました。  それからいま一つ、これは政府の方でもまず適用は成田考えておりますということでございますが、木村参考人のお考えになっているように、すぐ被害住民の切り捨てということにはならないのじゃないかと私ども実は思っているのです。成田にいたしましても、これから国際空港として発展するために、あの周辺土地利用ということを考えていかぬとならぬわけですね。貨物輸送もございますし、旅客もございますし、倉庫を建てるところあるいは工場を誘致するところ、大体のところを決めていかなければならない。そして住宅も、先ほどのお話によりますと、いまブローカーがどこでも宅地開発を進めているようだという話がございましたが、やはり宅地としてはこの辺が適当ですよ、騒音のないところはここですよ、こういった一般的な都市計画、指導、そういうのがあって初めて土地が有効に利用できることになると思うわけでございます。  被害住民というお言葉がございまして、損失補償の問題とか防音工事が十分でないじゃないか、建築主の負担になっている、この点をお挙げになりましたが、多分そういった点をお考えになっているだろうと思いますが、私の申し上げました基本的に都市計画手法で、成田の将来の発展を考えてそういう手法を用いるということには御賛成いただけるのか。それで力点は、防音装置とか損失補償の額とかそういう点、つまり移転しても十分な補償なり土地収用の値段を十分にする、その点があればいいのかどうか、そこのところをちょっとお聞かせ願いたい。
  19. 木村保男

    木村参考人 私も、この法律が全面的に被害住民の切り捨てを意図した法律だというふうには思っておりません。いままでのいろんな問題を通じて何とかしなければならぬというものを盛り込んでいただいている法律、そういう面があるということは十分評価はいたしております。特にいま成田の問題が出たり、あるいは今後関西新空港の問題が出てまいるわけでありますが、そういった新設の空港については、この法律の機能する面がかなり大きいのではなかろうかというふうには思います。  しかし、大阪空港のような既設の空港については、これが都市計画法手法によってなされるということになると、いろいろな問題が起こってくるのではなかろうか。大阪空港の場合に、たとえば昭和四十四年に御存じのような公害裁判が起こりましたが、あの直前に住民の方で希望しておったことは何であったか、いろいろございましたけれども、その中の一つに、何とかわれわれを集団移住させてくれ、いままで一緒に住んできた隣近所の連中と一緒に移させてほしいということを運輸省に陳情に行った、それが住民の要求の中の一つの大きな柱だったと思うのです。確かに、古来から住みなれた町を離れるということは非常に大きな犠牲になるわけなんです。そういうものを都市計画法手法というのは全く分断してしまって、一人一人の住民を切り離して、そしてこの人がどこに移る、それについての対価はどうするのだという形になっておるわけなんです。  私は、先ほど申し上げた一連の関連で申し上げますと、住民が自分たちの希望するような町づくりをどうするか、都市づくりをどうするかということを頭に描いて、事業をやる側と積極的に話し合いをして、みんなが納得するような形の町づくりが何とかできないものだろうか、そういう形の中で補償の問題、額の問題というものは、いわば二次的に出てくるのではなかろうか、こういうふうにも思っておりまして、そういう面での手当てというものが、この法律にはまだ欠けているのではないかというふうに思っておるわけなんです。
  20. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 関西の伊丹の空港とか福岡の空港は、御存じのように、いまありますところの法律によってやると思います。この法律は、これから将来のことについて、成田とかあるいはそのほかの空港に適用するのではないか、そういった当局の話のようでございます。  山本参考人にお伺いいたしますが、これは成田だけではなくて、これから空港周辺が、滑走路ももっと長くなるし、あるいは空港周辺について住宅とかその他の発展が予想されるところに適用しよう、こういうことを当局は言っておるわけでございますが、そういった全般的な日本の発展する空港、これについてその時点において次々に指定をするわけでございますが、そういうふうに当局から聞いておりますが、成田空港だけじゃなくてほかの空港についても早急にやるべきかどうか。御存じのように滑走路もどんどん延長されつつあります。航空輸送というのは爆発的に増加しております。そういう点において、ほかのローカル空港に対する適用をどうするかということについて御意見を承りたいと思います。
  21. 山本雄二郎

    山本参考人 お尋ねの件ですが、確かに当面の問題としては成田空港がこの特定空港に指定されることになるだろうと思います。  そのほかの空港にもこれを適用するかどうかという点でありますが、これは空港によってそれぞれ事情が異なりますので、なかなか一般論としては申し上げにくいわけでありますが、いま宮崎委員が御指摘のような、これから急速に宅地化が進むということが考えられる空港があるとすれば、当然この特定空港に指定されてよいと思います。ただその場合、そういったことを一番よく御存じのお方は、その空港の置かれている県の知事であり、また、関係市町村の方でありますから、そういう方の意向を反映させながらこの特定空港に指定するかどうかということを決めたらよい、こういうふうに思います。
  22. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 もう時間もございませんので、最後に一問だけ、鬼沢参考人岩沢参考人にお願いしたいのですが、お二人とも成田に在住しておられる方で、私がお話を聞いて一番感じましたのは、いわゆる住民損失のないようにしてくれ、端的に言いますと、第八条の土地買い入れ値段はどうだ、下がったところで時価として買うのじゃないか、こういうような疑問が非常におありになるようでありますし、また、岩沢参考人につきましては、同じ部落が分断された、これは私、非常にお気の毒な話だと思うのですが、多分、いまの法律による一種、二種、三種の指定で分断されたことだと思いますが、こういうような運用面の点につきましては、当局に善処させなければならぬわけですが、土地時価の問題は、二、三日前ですか、空港公団の副総裁から、時価というのは帳簿価格じゃなくて、そのときの最も高い値段ですよ、たしかそういったような答弁があったように私も記憶しておりまして、私もこれは大体は質問したのですが、そういったような話に聞こえたわけでございます。ですから、その点につきましては、そう御心配は要らないじゃないかと思います。——何かもう時間か来たそうですから参考人の答弁は要りません。これで私の質問は終わります。
  23. 大野明

    大野委員長 渡辺芳男君。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  24. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 お忙しいところを本日は参考人で御出席いただきまして、まことにありがとうございます。いままで御意見を拝聴いたしておりましたので、逐次具体的にお伺いをさせていただきます。  話が初めから大きくなって恐縮でありますが、この法案は、率直に申し上げまして私権の制限になるわけであります。これだけの私権の制限をしている現行の法律というのはございません。  そこで、憲法二十二条には居住権の保障もされておりますが、特に二十九条の後段で「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」、こういうことになっている。  そこで、現在の騒音防止法によりますと、一番滑走路の周辺が第三種、その外側が第二種、その外側が第一種、こういうふうになっています。いままで千葉県なりあるいは空港公団がそれぞれ対策を進めてまいりましたのは、主として第三種、第二種という滑走路の周辺を重点的にやってきた。第三種の方は、一番表側の方は防音工事をやってきたわけであります。ところが、この法案でいきますと、特別地区に全部なっておるわけです。ですから、端的に言えば、私はここにはいたくない、そういうことになると移転をすることになる。第三種と第二種が約九百六十ヘクタール、第一種を入れますと千六百ヘクタールぐらいになりますから、合計して二千六百ヘクタールくらいですね。この中で特に二種、三種の地区に居住している人たちが二百七十一戸で、現在二百十九戸が移転をしたりあるいは移転の契約をしている、五十二戸が残っている、こういうふうな状況であります。これは価格問題としてもいろいろ問題があると思います。  初めに御指名しないで恐縮でございましたが、木村さんにお伺いしますが、大阪空港周辺対策でお骨折りをいただいておりますので、いままでこういう問題と取り組まれてきたと思うのですが、時間も三十分しかございませんから端的にお答えをいただきたいと思うのです。  その次に、山本さんにお伺いしますが、一番初めに憲法を持ち出したのですけれども、私がいままでの経過からも一番心配しているのは、憲法二十九条は「正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」、こういうことに、憲法でありますから抽象的でありますが、なっていますね。しかし、これがなかなか実際の運用ではできていないと私は思うのですが、この点の御意見を伺いたいと思うのです。
  25. 木村保男

    木村参考人 おっしゃいますように、大阪空港周辺の二種、三種地域で、現在移転補償によってかなりの民家が立ち退いております。そういう意味では、完全に昔の面影がなくなっておりまして、家屋がぽつんぽつんとあって、非常に荒涼たる風景になっておるわけです。  一つの問題としましては、価額のことなんですが、通常自分の物を売る場合には、もちろんその物件の客観的価額というものが出てくるわけでありますけれども、それ以外に、たとえばこのものに対して非常に愛着があるのだという場合には、そういった愛着を持っている物を失うということによる精神的な損失といいますか、そういったものも込めてでなければ売り主はなかなか手放さないだろう、こういうふうに思うわけなんです。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、移転補償といいましても、結局、公害発生によってもう無理やりにでもほうり出されるというのが実相でありますから、しかも、それを補償してもらう価額が、物の客観的な価値、しかもその場合、公害によって低下した分は補償しないというたてまえになっておるわけでありまして、そういう意味では、出て行く方としては、非常に不十分な感じを免れないだろうというふうに思うわけであります。  それからもう一つは、いま申し上げましたように、非常に荒廃化してまいりますと、たとえばそこで営業している人、おふろ屋さんなんかたちまち来てくれる人数が減ってしまう、小売商も同じことなんですが、そういった人たちが商売が成り立たなくなってくる、それでもうやむを得ず店を畳んで出ていかなくてはならぬ、こういったときの損失補償というものは、いまの制度の上では十分に組み込んでいただいておらない、こういったもろもろの矛盾が次から次に出てまいるわけでありまして、そういったものをぜひ一つ一つ温かい気持ちで手当てをしていただくことを私としては希望せざるを得ないわけであります。
  26. 山本雄二郎

    山本参考人 憲法との関連についてのお尋ねですが、私は、法律学者じゃありませんので、いささか常識的なお答えになるかと思いますけれども、この特別措置法案の趣旨が、いま御指摘の憲法二十九条に違反するということは、私はないだろうと思います。ただ、渡辺委員が御指摘なさいましたように、実際問題として正当な補償のもとに公共の用に供するというようなことが行われがたいという点というのは、確かに実際問題としてはあり得ないことではないと思います。  そこで、ではどうするかということでありますけれども、結局はこの法律運用をしていく段階におきまして、補償の態様とかあるいは金額とかそういう面について、そのときどきの社会状況の中で最も合理的であり、かつ財産権を持っている人に対して手厚い保護が行われるような、そういう努力を重ねていくほかはないのではないかというふうに考えます。
  27. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 この法案に関連して第三次の空港整備五カ年計画というのがございますが、それによりますと、新東京国際空港関係でいきますと、移転補償が二百十二億、これは去年から始まっています。それから防音工事の助成が十七億になっています。  それで、これは木村さんにお伺いをいたしますが、この救済措置が十分にやられることが、結局は、いろいろ騒音によって被害をこうむっているいままで住んでいた人たちへの当然の義務だと思うのです。ところが、不満足のような状態にやられて、しかも、法案の第九条では「予算の範囲内」と、こう言っておる。これは「予算の範囲内」と言っても、現実問題としてそんな安い補償ではだめだということになれば当然ふえていくと私は思うのです。しかし、これは端的に言えば、そこの該当者の、素直に行くか、とてもじゃないがだめだよというふうなことにもなると思うのですが、そんな関係からずいぶん運用が大切だということを参考人の皆さんは言われておりました。私は、やはりこのことを一番心配しております。外国の例も山本さん言われましたけれども、日本の実情とは、そういう補償問題では違っていると思います。  そんな関係から、ただいまお話をいただきましたけれども、特に木村さんから、発生源対策というものが従で、騒音がガンと来るから住民に出ていってくれませんか、要するに追い出しじゃないかというふうなお話がございましたが、私もそうだと思っています。だから、手厚い保護、手厚い保護というふうに皆さんも言われておるとおりでございますが、現実問題として、被害者に対する十分な救済ということを、私は重ねて——この前もこの法案審議で言ったのですけれども、なかなかうまくいかないということが現実問題として出てきているからトラブルがある。この点は重要な問題でございますので、山本さん、木村さんにぜひひとつ、御意見もありましてお伺いいたしましたが、重ねてお伺いをいたしたいと思います。
  28. 木村保男

    木村参考人 確かに、制度の問題もさることながら、運用の面においていろいろ御配慮をいただかなければならぬ問題があろうと思います。たとえば移転補償の額を決める交渉をしますときに、係の人が来まして、あなたのところは金額は本来ならこれなんだ、しかし松の木一本、何とかもう少し金額をふやしてあげるから、それで納得しなさい、ただし隣にはこんなことは言わぬといてくれよというようなことを言って帰っていくわけです。そしてまた、隣には隣で同じようなことをおっしゃって移転の交渉をされる。こういった姿勢というものは、やはり考え直していただかなければならぬのじゃなかろうか。  大阪国際空港周辺でいま何が一番桎梏になっておるかと申しますと、裁判問題の解決がされていないということだと私は思うのです。一審、二審の判決が出まして、あれだけの被害があるということを裁判所が認定した、にもかかわらず、国は不服だということで最高裁判所に上告されておる、いわば住民に片一方で平手打ちを食わしておきながら片一方で移転補償をどうするのだというふうな握手の仕方をお考えになりましても、これは住民の方がなかなか胸襟を開いてその話し合いに乗ろうという気持ちになれないわけなんですね。運用面においてどうだということを私が申し上げたわけでありますけれども、最も根本的な運用の問題とするならば、国は一日も早くこの裁判問題を片づけて、そして住民と本当にひざを突き合わせた形で話し合いができるような体制を一日も早くとっていただく、それによっていろんな新しい手法大阪空港周辺で生まれてくる。  たとえば、いま一番激甚地域になっているのが勝部という部落でありますけれども、この勝部のところへ緩衝緑地帯をつくることによって、そしてそっくりそのまま新勝部地区というものをどこかにつくってあげる、こういうふうな手法住民の福祉を考えた上での最も望ましい姿じゃなかろうか。この手法がとられ、そういう実績ができたら、成田の方でも同じような形で大阪に見に来られて、なるほど大阪はこういうふうにやっているのかということで御了解になるならば、非常にスムースに事が進むのじゃなかろうかというふうに私は思うわけなんです。
  29. 山本雄二郎

    山本参考人 補償の問題でありますけれども、確かに、この特別措置法案は予算の範囲内だということが規定されておりますけれども、私に言わせますと、その予算すらもし確保されなかったという事態があったら、これは一番ゆゆしい問題だろうと思います。  それで、実際に補償を進めていくに当たって、ただいま木村参考人から個々のケースについてのお話がありましたけれども、問題は、一体どこまでやればそれが完全であって、補償される方に御満足いただけるかという点がなかなかとらえがたい問題だろうと思います。そのためには、いまお話もありましたけれども、やはり補償をする側とされる側がひざを交えて折衝を進めるということが運用上の問題として非常に大切だろうと思います。したがいまして、そういう場合に、いまのように対立、とげとげしい空気があるという状況の中ではそれがむずかしいわけでありますから、そういう点についても、特に国会あたりで、よりよき関係が生み出されるように御指導をいただければ幸いだと思います。
  30. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 この法案審議も運輸委員会でやっておりますが、先日、時価買い入れるという問題について運輸省なりあるいは公団から回答がございました。それによりますと、この法案の第八条に、住宅移転、宅地の買い入れ、こういうものは時価であると言うが、時価とは何だ、こういうふうに質問したら、近傍類地の価格を参考にして決めます。こういうふうに言っている。近傍類地と言っても、安いところを対象にしてやっておったのではだめじゃないか、それは二、三カ所やります。高いところも安いところもやります。こう言うのです。  木村さん、先ほどお話がございましたが、飛行機が飛ぶようになりますと、周辺土地は地価が下がるじゃないか、だからそうなると、移転をする場合に大変な損害になるじゃないか。(「上がっているところもあるよ」と呼ぶ者あり)私は場所によって上がるところも、いまこちらで言ったけれども、あると思いますよ。  そこで、法案審議でありますから、具体的に幾らというふうなことは現実問題としてもまだやっておりませんが、移転なり何かをするときに千五百万円の補償をします。現実には二千万円かかったならば、これはおれは犠牲者じゃないか、こういうことになりますね。よく言われておりますが、裁判などは近傍類地でやる場合には、二、三カ所を参考にしてやるということになっておりますが、公団と個人との折衝というのは、私は率直に言って弱いと思うんですね。でありますから多少の価格の差が隣のうちとあっても、それはやむを得ないとしても、大阪で言われているような協議会なり部落ごとにやるとかいうやり方の方がいいかどうか。この補償の問題について、お骨折りいただいている木村先生に、ひとつどういうふうなことであるかをお伺いしたいのです。
  31. 木村保男

    木村参考人 いまの御質問、端的にどういうことでございましょうか。
  32. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 ですから、移転補償をするときに千五百万円補償を出された、現実には二千万円かかった、そういうふうなことがたくさんあるじゃないか、それでは犠牲者になるじゃないか、大阪の方ではそういうことがおありかどうかということです。
  33. 木村保男

    木村参考人 大阪裁判の証拠としまして、移転していった人がどういう形で移転をしたかということについていろいろ調査いたしました。ほとんど大部分の人が借金をしております。これは移転価額のままでは郊外に新しい家を持つことができないということを示しておるわけなのでありまして、子供がこんなやかましいところで受験勉強しなければならぬということじゃ耐えられぬだろうというので親が身銭を切り、人から借金をして新しいところに移っていっております。そういう意味では、移っていってよかったという感想は出てくるわけですけれども、しかし、新しく借金をどうして返していくかということを考えると、将来に非常に不安を感じるというふうな回答が返ってきております。そういう意味では、やはり公害によって痛めつけられた、次には借金してまでどこかへ移らなければならぬというダブルパンチを食らっているという率直な感想を持っておるのじゃなかろうかというふうに私は理解しておるわけであります。
  34. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 現地にお住まいの岩沢さんにちょっとお伺いいたしますが、お話によりますと、現行法でいきますと第一種の地域にお住まいのようでありますが、この地域も今度の法律によりますと移転をすることになるわけですね。本人が希望すれば移転することになりますが、現在、西和泉部落というのですか、三十五戸のうち七戸が防音工事の対象になったということは、これも法案を提出する前でありますからなんですが、自己負担を強いられているというふうなお話がございました。つまり助成金が少ない、それで防音工事はこれで完了、現実には大変よけいにかかった、二百万円かかるのを百五十万円とか百万円しか出さないということに対する非常な御不満があるんじゃないかと私も感じた。そういうことが現実に、あなたの地域ではまだやっておられないようでありますが、周辺地域でたくさんございますか。
  35. 岩沢寅之助

    岩沢参考人 私のところが五キロ五百の地点、五キロ五百から先端が五キロ六百十五メートルということで、先端が二種ですけれども、二種の先端が四百九十メートルで結んであるわけです。これが部落の中に突っ込んでおるのですけれども、この一種の七キロ、八キロまで辺はほとんど民防が済んだと言ってよろしいでしょう。しかしわれわれは、どうして民防をやらないのか、公団さんの関係きょうおられるでしょうか。——まあ、これは運輸省関係ですからあれですが、公団さんも本当のところ交渉が下手だと思うんですよ。いま七戸の移転の中にパンフレットを持ってきてひとつこういうことで移転してくださいとやっているのですが、この七戸のうちには六戸が非農家であるのです。非農家のところへ農家を対象とした移転のパンフレットを持ってきて、これでいかがですか、これでいかがですかとやっているんですよ。まだ調査が不十分なんです。その点は、この人は非農家である、この人は農家であるということで、農家である人には農家を対象にすることで話し合ってくる、非農家に対しては非農家であるということを対象にして話していく。それをくそもみそも一緒にしたものを持っていって交渉したってうまくいかない。  それと、まず民防の問題より七戸の移転のことについて条件が非常に甘いんです。言ってくることが。私どもは、藤倉成田市長当時、成田市民は空港ができると幸せになるのだ、こう言われてきているのです。だから、幸せにならなくちゃ困るわけです。本当に私どもは幸せになりたいと思っています。空港が来たために、ああ空港が来てよかった、そういうふうに私どもはなりたいと思っているのです。  ところが、農家にしても先祖伝来のたんぼをこうしたらいいだろう——いまは国の助成も受けまして基盤整備等もできまして、本当によくなっております。そういうようなところの代替地が、こちらからおっしゃっていることがどこにもないのです。本当にありません。その条件というものは個々に違います。部落全部が同じ条件じゃないのです。最終的に公団さんが煮詰めていけば全部違うと思うのです。その条件が合ったものは公団さんも持っていないだろうと思うのです。
  36. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 わかりました。  そうしますと、先ほど私が申し上げましたが、第一種区域というのは、これは移転を希望すれば移転ができるようになっている。なっているというよりみんな移転をしてもらいたいというふうな線引きをやるのです。おたくも関係するわけです。しかしいままで、この第一種区域内に八百十七戸あって、防音工事を済んでいるのが五百三戸、残りが、空き家が十戸あって、三百十四戸まだやっていない、こう言っておるのです。だから、法案といままでやってきたことはちぐはぐな状況がございます。  この辺が、これからの防音工事に対する対策というものが、率直に言ってどういうふうに進められるかということで、私も公団に質問のときに聞いたのですけれども、いや全部今度は特別地区の指定地域内に入ります。こう言っている。でありますから、現地にお住まいでございますから、この点は公団との交渉になってくると思いますが、これからの建築制限住宅制限ということもございますが、いまお住まいの皆さんにはまた関係をしておりますから、ひとつこの点はお含みおいていただいた方がいいのではないだろうかと思います。  もう一度、木村さんにばかりお伺いして恐縮でございますが、たとえば専業農家ですと、区域外に出て、それから住宅をつくりまして、新しく線引きをされた特別地区の方へ入って、土地はなかなか地力があるところでありますから、農業に適していますから、やるということができますが、一反か二反しか持ち合わせがない、兼業農家である、こういう場合に、大阪空港周辺はまあほとんど宅地化しておりますからなにですが、いままでの御経験で農地を買い上げたというふうなことはございますか。私は、公団に、そういうものは買い上げろ、こう言っているのです。考えておきます。こういう答弁でございましたが……。
  37. 木村保男

    木村参考人 農地の買い上げの実績があるようでございますね。おっしゃるように、大阪空港の場合はBラン拡張の時点で農地がほとんどなくなりました。ですから、現在は非農家、特にサラリーマンの中小住宅がほとんどなんですが、国が空港裁判のときに大阪空港の公共性を言いまして、京阪神三都の真ん中で、きわめて足の便のいい、立地条件のいい空港であるから公共性が高い、こういう主張があるわけなんですが、これは住民側から言わせましても同じことでありまして、大阪、神戸、京都へ出ていく勤め人が、きわめて足場のいいところで生活ができておったわけですね。しかし、移転補償で出ていかなければならぬ、この場合に、兵庫県のかなり奥の方に行かなければならぬということで、従前の通勤時間から倍も三倍もかかるというところへ追いやられているような実情であります。  農地の場合は、若干事例は聞いておりますけれども、それによってどういう不都合が起こっているかというところまで、まだよく存じておりません。
  38. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 では、終わります。ありがとうございました。
  39. 大野明

    大野委員長 次に、宮井泰良君。
  40. 宮井泰良

    ○宮井委員 参考人には本日は大変御苦労さまでございます。先の方の質問と重複するかもわかりませんが、御了承いただきたいと思います。  まず最初に、山本参考人にお伺いいたしますが、この法律は、民間空港、それも成田空港に適用する、こういうふうになっておるのが主たるものでございます。しかし、米軍基地や自衛隊、この飛行場の騒音問題が現在起きておる、このことは御承知のとおりでございまして、防衛施設庁もすでに検討に入っておる、こういうふうに聞いておるわけでございますが、今後このような点についてお考えがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  41. 山本雄二郎

    山本参考人 現在御審議中の特別措置法案は、民間空港を対象としたものだと思いますが、いまお話しのように、米軍基地あるいは自衛隊基地におきます航空機騒音の問題は、問題の性質としては別に変わらないわけでありますから、もし今後、この法律をそのまま適用するということはないと思いますけれども、都市計画的な手法を取り入れて問題を解決していくということは、今後十分検討に値する問題だと思います。
  42. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは、続きまして木村参考人にお伺いいたしたいと思います。  この法律は、先ほどからも出ておりますように、私権の制限か公共の優先かということで、論議がなされておるわけでございます。また私も、私権の制限につながる色彩が強い法律である、このように考えておるわけでございます。そしてまた、この法案が通った場合におきまして、他の公共事業の用地の取得に当たりまして、この手法が適用される可能性がある。  せんだっての委員会におきましても、建設省等の答弁では、これは検討をしたいというふうなことを述べておりましたし、具体的には新幹線とか高速道路とかいろいろな点に適用される可能性がある。そうなりますと、すべて公共優先という名のもとにおきまして私有権の圧迫ということになるのではないか、このように考えておるわけでございますが、この点について御意見をお伺いいたしたいと思います。
  43. 木村保男

    木村参考人 大変揚げ足取り的な議論になるかと思いますけれども、憲法二十九条に、公共の用のために一定制限があるのだということが決められておるわけでして、そういう意味では、公共事業それ自体のために土地が収用されたり、あるいは用法について一定制限を受けるということがあり得ることを予定しているわけです。たとえば道路を広げるから、その拡幅分だけを買い上げるというふうなことが予想されている規定だと思うのです。ところが、この特別措置法というのは、若干そこからはみ出ているのではなかろうか。すなわち、飛行場の滑走路を拡張するとかあるいは飛行場の設備それ自体を新たにつくるからということで手当てをしているのではなしに、公害が起こっている、だから、何とか障害を除去するためにやるのだということですから、では、そこで言う公共性とは何かというと、公害がまかり通っているということが公共性というふうなことにもなりかねないわけなのでありまして、こういう読みかえは、若干いままでの法体系にはなかったものではなかろうか。  そうなりますと、この特別措置法ができますと、従前の法体系とは違ったものの導入ということで、建設省あたりの今後の公共事業にこれを応用してくるという場面が十分考えられる。先生の御指摘のとおり、そういうことは十分あり得ると思いますが、そういう意味では、この特別措置法で提起されているようないろいろな問題点を十分ここで御審議いただくことが、将来の問題を、紛争あるいは紛糾を未然に防止する意味でも非常に有益ではなかろうかというふうに思います。
  44. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは次に、鬼沢参考人にお伺いをいたします。  運輸大臣は、当委員会におきましても、成田空港の年内開港を阻む大きな障害はなくなった、このように答弁をいたしておるわけでございます。たとえば空域の問題などをとりましても、成田を北向きに発進した飛行機が、百里基地の西側部分で自衛隊機と交差する、その際、民間機は上の方を飛ぶ、それから自衛隊機は下の方を飛ぶ、こういうふうなことは合意されておるわけでございますが、このような空域の問題を一つとりましても、きわめて危険な要素が多いのじゃないか、このように私は考えております。  このようなことも含めまして、大臣の言う年内開港には大きな障害はなくなったという発言に対しまして、どういうお考えを持っておられるか、お伺いいたします。
  45. 鬼沢伸夫

    鬼沢参考人 いま先生、年内とおっしゃいましたが、年度内ということだと思いますけれども、私どもは、成田の地に住んでおりまして、いま先生がおっしゃったような空域の問題その他についても、たしかその自衛隊の百里基地との絡みにつきましては、十日ほど前ですか何かの報道によりますと、一応話がついたというふうなことも聞いておりますが、そういう専門的なことはちょっとわかりませんけれども、たしか三月末には開港できるのではないかというふうに、その開港時期については思っております。  ただ、御指摘のように問題が、そういった問題一つをとりましても解決はしていないのじゃないかと言われることだと思いますが、そのとおりだと思います。また、私どもが何か言いますと、どうも成田の連中は要求が多過ぎるというふうなとられ方もあろうかと思いますけれども、決して私はそうは思っておりませんし、これは国策といいますか、公共のために必要な作業がたまたま成田の地において行われているのだ、それに伴う諸施策は当然国の作業としてやるべきではないかということで、その積み残された件につきましては、先生方においてスムーズに解決していただきたいと思います。
  46. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、岩沢参考人にお伺いいたしますが、成田空港周辺には農家の方が多いわけでございまして、したがいまして、朝も早いことですから、九時、十時ごろにはもうお休みになるのじゃないか、こういうように思っております。で、羽田周辺と違いまして成田の方は非常に静かである、こういうこともございまして、夜の九時、十時あるいは十一時に飛行機の離発着がありますと相当の騒音になる、こういうふうに思います。今度開港になりますと、成田も羽田並みに夜は十一時まで、午前中は六時からというふうな方針になっておる、こういうふうに聞いております。また、この時間帯も、現在の羽田空港におきましても夜などは十一時となっておりますけれども、先方の空港の出発がおくれたりいたしますと、また、かなり大幅におくれる場合もある、こういうふうになってくるのでございますが、こういった時間帯等の件につきまして、地元の皆さんの御意見をぜひお伺いしたいと思います。
  47. 岩沢寅之助

    岩沢参考人 この飛行時間ということについて、いま成田市も県も要請しているようでございますが、私の考えとしては、とにかく国際空港であるのだから、時間にこだわっていたのでは用が足りないのじゃないかと思います。だから、恐らくこれは二十四時間営業となるのではないかと私は考えております。人が眠いからどうだこうだと言っていたのじゃ、実際的に用が足りないのです。本当にフルに回転して使おうといったら、恐らく時間なんかあったものではないと私は考えております。まあ一応規則はつくっておいてもらった方が結構です。恐らく夜の時間帯に、じゃ十二時に成田空港に着きますと言っても、何か混乱が起きていれば十二時に着きません。一時間、二時間と羽田空港でもいまおくれていっている。それであるので、私はこれはもうとても——まあ法律だけはつくっておいてください。規則だけはつくってもらって、二十四時間営業ということは覚悟しております。それで、寝られるのには四〇ホン以下でないと眠れないというのが一般的な常識ですね。だから、この方法はまた役人の方で立てていただく、こういうことをむしろ私は考えます。
  48. 宮井泰良

    ○宮井委員 大変ありがとうございました。  次に、再び山本参考人にお伺いいたしたいと思いますが、御承知のとおり、昭和五十八年に環境基準の最終目標を七五WECPNLといたしておるわけでございます。今後エンジン改良などによりまして、十年後にこのような数値に近づけていく、こういうことになっておるわけでございますが、この十年後の騒音の予測というものは非常にむずかしいものがあるのじゃないか、このように考えておるわけでございますけれども、この点について御見解をお伺いいたしたいと思います。
  49. 山本雄二郎

    山本参考人 宮井委員の御指摘のとおり、確かに、十年後の騒音の状況を予測するというのは、非常にむずかしい問題であろうと思います。ただ一つ考えられますのは、発生源対策が進められまして、低騒音機がより多くなるということが考えられますので、現在よりは騒音地域というのは縮小されるのではないかというふうに考えられます。  事実、たとえばこれはイギリスの場合でございますが、ロンドンのヒースロー空港周辺では、十年後、十五年後についてもその予測を行っております。それはかなり最低と最高の幅がありますけれども、旅客数あるいは貨物の輸送量は現在よりもかなりふえるにもかかわらず、騒音量はかなり減るという予測が出されておりますので、日本の場合も、特に成田空港のような国際空港の場合は同じような傾向をたどるのではないかというふうに私は理解しております。
  50. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、木村参考人にお尋ねしますが、先ほども出ておりましたので重複するかもわかりませんけれども、土地の買い上げの問題でございます。法律案によりますと、時価によって買い上げる、こういうことになっておるわけでございますが、飛行場周辺騒音区域内は地価の落ち込みが大きい、そういうことを勘案いたしまして、地価の落ち込みというものに対して補償問題が出てくるわけでございます。  先ほど述べられたことでも結構ですけれども、それ以外に何か具体的にございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  51. 木村保男

    木村参考人 空港周辺の地価が下がっているということは私、事実だと思うのです。それでは、なぜあのやかましいところにまた新しい人がどんどんやってくるのかというふうに疑問をお出しになる向きがあろうと思いますけれども、しかしながら、庶民が自分の住宅を手に入れるということは日本では非常にむずかしい、日本ではダイヤモンドが高いですけれども、その次くらいに高いのが土地じゃないかと思うのですが、安い土地を手に入れるというのは庶民にとっては非常な魅力なんですね。  そういう意味で、少々騒音でやかましいだろうということは耳にしておりますけれども、何とかそんなものはなるだろう、それよりも、安い土地を手に入れた方がずっと子供のためにもなるのだというようなことでやってくるわけですね。しかし、やってきてやはり現実にさらされたら、これはたまらぬということになる。私は、その現象を見まして、結局、一般市民が、いわば自分の生存権的な不動産というものを切り売りしてでも安い土地を手に入れようという志向がそういう現象にあらわれている、そういう意味では、こういうふうに価格を下落させたのは、やはり空港の設置に伴う一連の企業活動というものでありますから、そういう意味では、損失補償といいますか、もっとはっきり言えば、損害賠償を加味したような形の算定というものをお考えいただかなければならぬのじゃなかろうかというふうに思っております。
  52. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、鬼沢参考人にお伺いしますが、空港公団が周辺土地を買い上げました場合、跡地利用について国は有効な土地利用をする、このように申しておるわけでございますが、この土地の利用についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 鬼沢伸夫

    鬼沢参考人 この法案の中にも地方公共団体が公園、広場等に使いたいときには、いわゆる無償で貸していただけるというような条項がございますが、地元として非常に歓迎すべき条項だというようにこの点については考えております。  それと、またいま先生の言われました利用方法につきましては、当然騒音地区でございますので、空港設置者サイドに立ったと言うとちょっと語弊がありますけれども、運営する公団サイドと周辺に退いていく住民との接点にその地区がなるはずでございますので、その騒音というものをそこである程度緩衝できる、解消できる場にして利用すべきじゃないか。それには、この法案にあります公園、広場というのは非常に適切なものではないか。ただ、全部が公園、広場でも困りますので、さらに、いまもお話に出ました狭い国土でございますので、騒音地区で十分に仕事ができるような、商業活動でも結構ですし、工業活動でもあるいは農業経営でも結構だと思いますけれども、そういったものの用にも供していったらいいのではないかというふうに考えております。
  54. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは最後に、岩沢参考人にお伺いします。  現在の独立して庭にある防音室ですか、これは現地に行ってみましても非常に人気が悪い。何か防空ごうのようなあれだということも聞いております。そういうようなことと、また、現在住んでおられますおうちを全室防音にする、こういうようなことも出ておるわけでございますが、そういったことについての御意見、また、それらの件で国の補助のあり方、こういったことをお聞かせ願えたらと思います。
  55. 岩沢寅之助

    岩沢参考人 いま自分のところは建てていないけれども、周辺に建っているので見学にしょっちゅう行っております。しょっちゅうと言ったって、商売にしているわけではないのですけれども。それで、建てたけれども、トイレがない、水もないというようなことでしたが、いまはだいぶ改良されてきて、まあいいということなんですが、実はいいと言ったって、初めは六畳と八畳が別にセメントで仕切ってありましたので、非常に不便だったので、それを公団との話し合いの中でとってもらったのですけれども、初めはとれと言っても、役人というのはなかなかとらないのです。言うことを聞かないのです。けれども、一年かそこら研究してみるととるんですね。こういうことを私が言っていいか悪いかわからないのですけれども、いま民防という防音家屋を建てた人はもう雨漏りがしているのです。早いもので、四十六年から始まっていますから四十七年ですか、もう雨漏りが実際にしています。ある人の例を聞いたら、お産した人を入れておいたら、冬でしたから電気料だけで三万かかったそうです。そうすると、あの中に住むのには冷暖房の費用がだいぶかかるわけです。だから、もっと環境をよくして、全室防音ということをいま非常に叫んでいるのですけれども、全室防音ならば中が自由に使えるということであるので、全室防音ということを要望しておるわけでありますが、それもこの間、傍聴の中で聞いていると五十四年ですか、その辺になったらお見せいただいて、何とか住民の納得するものができると言うのですけれども……。  まあ、そういうことでございます。
  56. 宮井泰良

    ○宮井委員 ありがとうございました。
  57. 大野明

    大野委員長 次に、米沢隆君。
  58. 米沢隆

    ○米沢委員 きょうは参考人には大変御苦労さまです。  まず最初に、山本参考人木村参考人にお尋ねしたいと思います。  御承知のとおり、日本は大変狭い国でありますが、しかし文明、文化の発達によりまして交通網が発達し、空港整備される方向にあります。こうして便利になることはいいのでありますが、しかし御承知のとおり、高速道ができましても、新幹線ができましても、空港ができましても、大変大きな騒音公害というのが出てくる。その意味では、公共性というものと騒音という関連では、そこの地元住民の受忍の義務といいましょうか受忍範囲、どのくらいだったら私は堪忍できるのだという、そのあたりの問題が、特に個人的な価値観等もありまして大変むずかしい問題に発展していく。先ほど来の議論も、まさにすべてそこにかかっておるのじゃないか、そう思います。  たとえば今度の防止地区、特別地区等々、七五の騒音レベル、八〇の騒音レベル、あれは国自体の一つの受忍の義務を示した数字ではないか、私はそう思うのでありまして、その意味では、先ほど来参考人の皆さんに御指摘いただいておりますように、結果的には、そういうものは法律では前もって準備できない、したがって、話し合いというものを徹底的にやってほしい、そういうお話としてお伺いをさせていただいたわけでございます。  そこでお二人の方に、個人的、抽象的で大変恐縮でありますけれども、私だったらこれくらいは受忍すべきだという、そういう個人的な見解を、公共性との関係でどういうふうに思っていらっしゃるのか、それを聞かせていただきたいと思います。
  59. 山本雄二郎

    山本参考人 ちょっとお答えしにくいわけですが、私は、かって中央線の沿線で線路のすぐ近くに、学生時代ですが、下宿していたことがあります。その当時、いまのように騒音問題が非常にうるさく言われていなかった時代ですから、したがって、どの程度騒音の量だったはわかりませんけれども、確かに個人差がありまして、私自身は余り何とも思わないのに、一緒にいる人はうるさいと言うとか、そういう点がありまして、たとえば数字を挙げて、これぐらいなら受忍限度の範囲内であるということを、いまここで申し上げることはちょっとできません。お許しいただきたいと思います。
  60. 木村保男

    木村参考人 大阪空港の原告も空港の公共性があるということはよく承知いたしております。それを尊重しなければならぬということも十分に考えておるわけなんです。  先ほど岩沢参考人が、成田の新空港が開港になれば二十四時間フル操業をすることは、もう覚悟しておるというようにおっしゃっておるわけですが、私たちのように、九時から飛行機をとめろというふうな要求を出しておりますと、岩沢さんに比べれば国賊的発言かもわかりませんが、私が申し上げたいのは、住民の方もそういうことで空港あるいは航空交通の持っておる公共性というのはよく承知しております。そして岩沢さんの発言があったような気持ちというのは、やはり昭和三十九年に大阪空港にジェット機が乗り入れる段階では、住民のほとんど大部分の人が持っておった気持ちではなかったろうかと思うのです。しかし、それがいまのような非常に深刻な紛争にまで発展しているというのは、やはり国の方の無策が招いたのじゃなかろうかというふうに言えると思うのです。  それで、それじゃどの程度ならしんぼうできるのかというお尋ねなんですが、確かに、山本参考人おっしゃいましたように、これはかなり個人差がございます。原告の居住地のついそばに日本航空の寮がある。だから、そういう意味では日本航空の寮もWECPNLの八五以上の数値の地区にあるわけなんですけれども、そこに住んでおる日航の職員の人たちがどういうふうに受け取っているのかということになりますと、あるいは原告の人たちとは違った受け取り方になっておるかもわかりません。しかし、そこの社宅の奥さん連中は、やはりやかましいということをおっしゃるわけです。  私は、最低限度基本的な生活が破壊されるというような状態を招かないような程度、まして健康被害が出てくるようなことは絶対に避けていただかなければならぬ、それがぎりぎりの線ではなかろうかというふうに思っております。
  61. 米沢隆

    ○米沢委員 次は、木村参考人に重ねてお尋ねしたいのでありますが、いま空港等が公共性を持ち、その必要性については、だれも、裁判闘争に参加しておる皆さんも、ほとんどの方がそのあたりは認めていらっしゃる。しかし、今後成田空港が開設をされて、将来的にこういう法律である程度土地利用規制をしない限り、ますます宅地化等が進んでいって、また、将来に大きな新しい紛争の種を残すという、そういう意味では、こういう趣旨の法律というものの必要性については、私は御理解いただいておるのではなかろうか、そう思います。  しかしながら、いままでの大阪空港等の教訓によりまして、非常に運用のやり方がおかしいとか、補償措置のやり方がおかしいとか、住民に対する意見の聴取の仕方がおかしいとか等々のものが指摘をされて、今後そういうものが生かされていくということが必要でありましょうけれども、騒音が大変激しいところについては、たとえば部落ごとに移転をするという都市移転論みたいなものをもし導入したならば、理想的に確かにいいかもしれませんけれども、これはまた言うべくして大変むずかしい問題だ、そう思います。  そういう意味で、やはりこの際、局地的に大変厳しいところを一緒に部落ごと移転することがむずかしいことであるならば、何とか次善の策としてそういう一つの効果をもたらすような、すべて理想的ではないにしても、何割かそのあたりを満たすことのできるそういう次善の策を考えることが行政のとるべき手段ではないか、そう思います。  そういう意味で、都市移転論みたいなものは余りにも理想的であって、言うべくしてむずかしい。したがって、何か次善の策としてでき得るものがあるのかないのかということが一つと、それからもう一つは、移転する場合の、あるいは買い上げする場合の時価の問題が、先ほどから問題になっておりますけれども、特に木村参考人の御意見は、単にその時価だけではなくて、祖先伝来そこに住んでおった土地に対する愛着、また、お互いに仲よくいままで住んできた者が別れて住まざるを得ない、そういうものに対する何らかの補償というものを考えるべきだ、そういう御意見として伺ったわけでありますけれども、いま法体系の中では慰謝料みたいなものが、それに似たような算定方式で出てくるのじゃないかと思いますが、今後現実に成田の場合運用としてそこらまで踏み切って考えていこうという動きにしていかねばならぬと思いますけれども、その際、そういう時価プラス慰謝料的な土地の愛着料みたいなものが果たして算定可能なものなのかどうか。それは確実に計算上きれいに出てくるものではないと思いますけれども、しかし、何らかの形で算定可能なものなのかどうか。その歯どめがなかったら、また行政の方もしり込みして、何ぼ取られるかわからぬということで逃げ腰になって、結果的には従前からの理屈ばかりを繰り返すであろう、そういう意味で、そのあたりについての御見解をちょっと聞かしてほしいと思います。
  62. 木村保男

    木村参考人 確かに、この特別措置法のような考え方というのは、成田のような新設の空港には次善の策として考えられる方法であると思います。そういう意味では、何もかもすべてが否定的評価をすべきではない、やはりくみ取るべきところは十分にくみ上げていかなければならないだろうというふうに思いますので、先生の御指摘はごもっともだと思います。  ただ私は、こういう法律ができるまでに、やはり空港自体の設備をおつくりになる段階でもうそれを組み込んだ計画というものをお立てになる必要があるのじゃなかろうかと思うのです。先ほど米軍基地とか自衛隊基地についてこれは適用すべきかどうかということ、あるいはこれからつくる空港について同じような問題が出てくるだろうかという御質問がありましたけれども、やはり日本の国土が非常に狭いとはいいながら、公害発生するような施設というものはできるだけつくらないようにしなければならない。つくるならば、そういうものができないように事前に、未然に防止するような大局的な観点というものをひとつお考えいただく。もうここでできてしまったものはしようがありませんので、それの次善の策としてはこういうこともあり得ると思います。  ただ先生の御発言の中で、集団移転、集団的に町を動かすということが非常にむずかしいという御発言がございましたけれども、私は少し考えが違うので、代替地造成というものが一つの方法として積極的に取り上げられておりますので、そういうものをもう少し制度的に完備してもらうならば、個々の単位の町を動かすということは、それほど困難なことではないのじゃなかろうか。少なくとも空港のような大きなものを、何百億、何千億というプロジェクトを考えられる場合ならば、それに比べればきわめて微々たるやさしい問題ではないかと思っております。  それから、慰謝料込めということの算定がむずかしいということはおっしゃるとおりだと思いますけれども、しかしながら、命をどういうふうに金銭的に評価するかということは、私たち法律をやっている人間にはしょっちゅう出てくる問題でありまして、評価できないものを無理やりに評価して、しかも、そこに一つの相場みたいなもの、算定の基準みたいなものをつくってきておりますので、それはそれなりに今後の問題として、地価の上にどういうふうにプラスしていくかということについても、お互いのコンセンサスができ上がるのじゃないかというふうに思っておるわけです。
  63. 米沢隆

    ○米沢委員 時間があと五分ぐらいしかありませんので、鬼沢参考人岩沢参考人に伺います。まず最初鬼沢参考人に御質問申し上げ、それから岩沢参考人にまた申し上げますので、一挙にやりますので聞いておいていただきたいと思います。  鬼沢参考人のお話をお伺いしまして、成田が闘争の町としていままで推移してきて、大変御心配なさったという、そして今後できるならば成田空港とともに発展をしたいという御意見に大変敬意を表するわけでありますけれども、しかし、大変長い間の闘争の場面になりましたし、同時にまた、成田空港へ入りますと、成田市に住んでいらっしゃる住民の賛成派や反対派を含めて、今後何十年という間感情的なしこりが残っていくのではないかということが憂慮されます。そういう意味で、同一に憂慮をされる鬼沢参考人に、特にその意味において行政に何を望まれるかということを聞かしていただきたいと思います。  それから岩沢参考人には、ちょうど四千メートル滑走路の直下に入る大変騒音の厳しい地域に住んでいらっしゃる悩みを深刻なものとして拝聴いたしましたし、特に昭和五十一年の地域設定に当たっては、同じ部落が第二種と第三種に分かれて分断されるという、それゆえに第二種のところは移転対象になり、第三種は防音工事をしなければならぬ、そしてそれに参加しておる人もおればしていない人もおる、そういう意味で、空港が来たがゆえに部落そのものの連帯というものが崩れていく、そういうことを大変深刻な問題だなというふうに考えたわけでありますけれども、しかし、現に成田空港は三月三十一日前後には開港すると言います。そういう意味で、今後そういう悩みを持った皆さんの立場から、空港設置者あるいは県、市町村にいま一番聞いてほしいということを端的におっしゃっていただいて、質問を終わりたいと思います。
  64. 鬼沢伸夫

    鬼沢参考人 いままでの成田の経過でいきますと、当然空港について開港反対者あり、あるいは促進者あり、無関心派ありという形の市民構成であるわけでございますが、それはそれなりに、いま審議されている法案のように、公益のための協力者に対しての手厚い措置ということは国なり県なりでやっていただきたいと思います。  私どもが開港後の成田ということで一番心配しておりますことは、現在五万ちょっとの人口の成田市でございますが、開港後恐らく数年のうちに、いまできておりますニュータウン、想定人口六万人のニュータウンでございますが、これが成田の町にもう一つできて一挙に十万都市になる。そうしますと、いわゆる旧住民の五万人と新住民の六万人あるいはそれに民間のいろんな開発によって入ってくる人たち、これを合わせますと新住民の方が多くなる。いま地方行政といいますか、そういったものに対して私どもが願いたいことは、やはりニュータウンといいますと、どうしても設備の近代化された住みよい環境のところでございますし、旧住民のところといいますと、農村地帯あり狭い道がありということで、そういったことで格差のない行政、新しい町も古い町も格差のない行政ということを私どもはいま望んでいるわけでございます。
  65. 岩沢寅之助

    岩沢参考人 いま考えていることは、まず成田市、千葉県、公団が一体となって私どものことを心配していただきたい、かように考えるのです。これをやってもらわないと、私どもの部落は非常に一致している部落で、最終的には裁判ざたも起こすかもわかりません。そういうことで、四十九年九月より一戸当たり五百円という騒音対策費を寄せていま貯金してあります。裁判をやるにしても何にしても金がかかりますから、なかなか金を寄せてからということでは間に合わないので、四十九年九月より騒音対策費として毎月五百円ずつ均等に寄せて貯金しております。そうしておるような体制でありますので、市、県、公団さんは、よくこれを御理解されて、御心配していただいて、本当にわれわれが不安でない、安心していられるようにしていただきたいというのが私の念願でございます。
  66. 米沢隆

    ○米沢委員 どうもありがとうございました。
  67. 大野明

    大野委員長 次に、小林政子君。
  68. 小林政子

    小林(政)委員 参考人の皆さんには、きょうは長時間にわたって貴重な御意見をいただき本当にありがとうございます。私、まず最初木村参考人にお伺いいたしたいと思います。  私ども従来、空港周辺騒音防止対策は、先ほど先生もおっしゃっておられましたけれども、発生源でこれを規制していくことが一番重要な問題だというふうに考えております。そして周辺住民被害を最小限に抑えるとともに、この生活環境保全のための防止対策は原因者負担ということでやっていくべきが基本的に当然のことである、このように考えております。  ところがこの法案委員会審議を続けてまいりましたけれども、一つ一つ質疑の中で明らかになりましたのは、空港が設置されたことで被害を受ける住民に対して、その住宅だとか先祖伝来の土地利用規制する、その上違反したものは処罰する、こういう内容を含んでおります反面、被害者に対する納得のできる補償措置だとかあるいはまた被害住民意見を反映させる民主的な手続、こういったものがほとんどと言ってもいいくらい欠如している。単にこれだけでは空港設置のための土地規制法じゃないか、このような感さえ実は法案審議している中で受けたわけでございます。  先ほど先生も、この法律は従来の法体系にはなかったものが取り入れられていると思われるという御発言がございましたけれども、騒音防止法という法的要件の成立といいますか、そういった要件が法的に成立しているのかどうか、まずこの点について先生の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  69. 木村保男

    木村参考人 先生の前段でおっしゃっていただいたことは、私も全く同感でございまして、冒頭に申し上げたとおりでございます。  ただ、こういう法律が出てきたというのは、先ほどからの議論でもわかりますように、いわば必要やむを得ないこの現状を何とかしなければならぬので、やむを得ず出てきたという性格を持っておるわけですね。ですから、純法律的な観点から言いますと、多少いままでと違った考え方を導入しないと少し説明のしにくい面があるわけですが、それであればなおさら、住民参加によるこういう直接的な、民主的な手続の導入という思い切った斬新な考え方を盛り込んでいただいてもいいのじゃないかというふうに考えて冒頭に申し上げたわけです。
  70. 小林政子

    小林(政)委員 山本参考人木村参考人にお伺いをいたしたいと思いますけれども、私どもも、飛行機の特性から騒音被害が全くなくなるということは防ぎ切れないものでございますので、そういった現状のもとでは、被害を最小限にするためにある程度立地規制というものは避けられない、このように考えております。その上に立って、その場合であれば、より一層土地所有者土地利用制限を求めるわけでございますから、被害住民の合意をまず取りつけなければいけない、そして納得できる補償措置だとか被害住民意見が本当に反映される手続を、やはり制度的にきちっと保障していくということがきわめて重要ではないかというように考えております。この法律審議しておりまして、そういう手続規定が非常に不十分であり、しかも、この法律では先住者の権利という問題が相当侵害をされているのじゃないかという感を強くいたしたわけでございます。  御承知のとおり、この防止地域という地域につきましては、環境基準で五十八年までにWECPNL七五を目途に環境基準が設定をされているわけでございますけれども、今度の防止地区というのは、結局七五から八〇の区域の地域でございます。したがって、これは当然、騒音障害を取り除いていくという点でむしろ国が本当に責任を持って公の工事もやるべきではないか、こういう感じを持っておるのでございます。その地域土地規制して、しかも、そこに新しく住宅を増改築するという場合には、防音構造は個人負担だ、こういうことは私は問題だと思うのです。この問題については、当然国の責任でやはりきちっと補償対象にしていくべきではないだろうか。それから、その地域にいま生活をしている人たちの土地の買い取り請求権だとか移転補償という問題も、ここには適用されないのです。私は、この点について国が補償責任を放棄したものではないかというふうにすら思いますけれども、こういった点についてお二人の参考人の方々の御意見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  71. 山本雄二郎

    山本参考人 幾つかの点で御指摘があったわけですが、一番最初の、この問題について地元住民意見を反映させるべきではないか、そういう点を制度的に保障すべきだという御意見は、非常にごもっともだと思います。  今度の特別措置法案では、知事が基本方針をつくりまして、その過程で関係市町村長あるいは地元住民から意見書の提出を求めて意見を聞くということがあるほか、また、この都市計画地域指定を行うときにも意見を聞くという二つの段階があろうかと思いますけれども、私は、現在の段階ではこの辺が一つの限界とまで言いませんけれども、ある程度納得できる線ではないかと思います。その点については、もちろん御批判があろうかと思いますけれども、全く住民意向をくみ上げることを無視しているというふうには私には思えません。  それから、補償の問題でございますけれども、特に先住者の権利の侵害になるという御指摘も、確かにポイントの一つだと思います。それで、先住者が改築する場合と増築する場合とでは、若干状況が違うかと思いますけれども、たとえば増築の場合は、新たにそこに家を建てる人がある場合と余り状況が変わらないじゃないかと思いますので、これはまた別ですけれども、何らかの補償をするということは考える必要があるだろうと思います。ただ、どこまでやるかということは、非常に問題でありまして、現行法といいますか、今度の特別措置法案の中でこれが明確に規定されておりませんけれども、恐らく今後そういう点が問題として残るのではないかということは、いま小林委員が御指摘のとおりの点としてわかると思います。
  72. 木村保男

    木村参考人 確かに、おっしゃるように環境基準が達成されるならば、特別防止地区なんて要らぬわけです。ですから、そういう意味では、やはり便数規制なり機材改良、そういうことによってできるだけ速やかに環境基準を達成してもらう、この姿勢が第一義的だろうと思うのです。ところが、大阪空港の場合において、環境基準の達成というものは十年を超える可及的速やかにやるのだということになっておりまして、日本語としては非常におかしな日本語でして、十年を超える可及的速やかに、初めこれを聞いたときに、ミスプリントではないかと私は思ったのですけれども、そうじゃないということなんで、やはり発生源対策中心として環境基準をできるだけ早く、できるだけ広範囲に適用できるように御努力をいただいて、そしてどうしてもいかぬ部分のみに限定してこういった法律をお考えいただかなければならぬ、そういうふうに発想が逆ではないかという感じを持っております。  それから補償、たとえば防音工事は工事者の自己負担だという考え方ですが、これはやはり公害の原因者負担の原則から言いましたら、それを住民の方にしわ寄せするというのは問題があるじゃないか。国が何らかの形で、公団が何らかの形でお考えいただく。と同時に、この空港問題については、航空企業は全く関係がないのだという顔をされておられるが、しかし、これは原因者の一員であることには間違いがないのでございまして、公害対策をどうするか、公害問題をどういうふうに解決するかについては、航空企業も真剣に考えていただかなければならぬのじゃなかろうかというふうに思っております。
  73. 小林政子

    小林(政)委員 木村先生が大阪空港の実態を訴訟等で大変詳しく御存じでございますので、時間がもう五分前ということでございますので、その経験からお答えをいただきたいというふうに思います。  成田空港の場合は、五十八年の段階で国際線のいま予想されております便数、大体三百便ちょっと超えるぐらいではないかというようなことが想定されていると政府から聞いておりますけれども、WECPNL七〇、八〇の地域で、防音構造は政令でアルミサッシの窓枠程度で大丈夫なんです。こういうふうに言われておりますけれども、夜分などは、静かな成田を具体的に想定いたしますと、果たしてこういうことで安眠といいますか、十分な生活環境というものが保全されるのかどうか、こういう点を大阪などのいろいろな体験からお答えをいただければ大変幸せだと思います。
  74. 木村保男

    木村参考人 防音工事によって二〇ホンぐらい下がるということは事実だろうと思います。しかし、先ほど岩沢参考人がおっしゃったように、睡眠確保のためにはせいぜい四〇ホン、これがぎりぎりだということも事実でございまして、防音工事をしなければならぬような地域について、深夜、ジェット機が飛んで、それで果たして睡眠が確保できるかということになりますと、私は、これはきわめて疑問だと思うのです。だから、少々下がっても、それはやはりある程度対症療法的な施策でありまして、睡眠確保という、国民にとっては健康上必要最小限度の要請にこたえるためには、どうしても深夜便はやめていただかなければならぬという事態が起こってくるのじゃなかろうかというふうに思っております。
  75. 小林政子

    小林(政)委員 お二人の参考人の方にもちょっとお聞きしたかったのですけれども、時間が来てしまいましたので、大変失礼をいたしました。
  76. 大野明

    大野委員長 次に、中馬弘毅君。
  77. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 参考人の方々には、お昼の時間もつぶしまして大変御苦労いただいております。  まず、山本参考人にお伺いいたしたいと思いますが、もう皆さん方の御質問で大体わかっておりますので、簡単にお答えいただいて結構でございます。  地元中心に本当にひざを交えてやっていかなければならないということでございましたが、確かに、いまここでいろいろ問題になっておりますのは、法律の問題以前の行政の問題だという気がするわけですね。いかにりっぱな法律をつくりましても、行政の側で住民と非常に離れたことをやっておる、意識も十分にくまないというようなことでのいろいろなトラブルが起こっているようだと思います。そういうことに対しまして、具体的にどういうところを、今後の問題として、行政のあり方として考えていかなければならないか、山本さんの御意見をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  78. 山本雄二郎

    山本参考人 ただいま御指摘のとおりでありまして、法律以前と言っていいかどうかわかりませんが、行政の分野に属する問題が非常にトラブルを招いている原因になっておると私は考えます。  これはお答えになるかどうかちょっとわかりませんが、以前、空港公団の職員の方が土地収用に当たっているときに、われわれに毎晩一升びんを一本ずつくれれば、それだけでも地元の人たちと本当に話し合えるのだがというようなことを言っていたのを思い出します。ということは、恐らく現在の予算措置その他では、そういうことがなかなか簡単にできないのだろうと思うのですけれども、そういう辺にもう少しきめの細かな配慮ということが必要でありまして、今後、補償問題のように金銭が絡んで非常に問題が錯綜してくる場合は、特にそういう点に配慮していく必要がある、こう思います。
  79. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 同じような観点から木村参考人にお伺いいたしますが、大きな声の小さな集団の要求がかなり通って、小さな声の大きな大衆といいますか、これが泣き寝入りになるようなケースが往々にしてあるわけなんですが、そういうところでの行政の配慮というのがどうあらねばならないか。どうもいま、そういうところでの問題に対する配慮が欠けているような気もするんですね。その点について、いろいろ御苦労されています木村参考人から御意見を伺いたいと思います。
  80. 木村保男

    木村参考人 確かに、いろいろな各地の紛争には、先生御指摘のように、ごく一握りの人たちの声高の主張が通っているというふうな面がないわけではありません。しかし、事大阪空港に関する限りは、いろいろな主張というのは、これは最大公約数的な意思、意見を体して要求が出されている、私はそういうふうに考えておるわけなんです。住民の人たちとよく話をして、そしてそこの意見交流が十分であればトラブルが生じなかったような問題も、非常に拙劣な方法のために紛争が拡大してしまうということがあるわけですね。大阪空港の場合、たとえば大阪航空局の出先の職員とかあるいは周辺整備機構のこれに当たっている人たちというのは、私から見ましてもずいぶん一生懸命やっております。それは決して手を抜いているとか尊大に構えているとかいうことはないと思うのです。ところが、出先の方が地元のいろいろな意見を聞いてこれを本省に上げるのですけれども、これがなかなか通じないわけですね。本省の方と出先との間では、出先の地元でどういうふうな問題点があるかということを本省の方ができるだけ早く、それこそジェット機に乗ってキャッチしてもらわないと、これがなかなかうまく解決しない。  そういう意味では、最近運輸省空港公害問題については非常に理解を示しておられて、航空局長が直接地元へ足を運んで問題の解決に当たる。ちょっとよその省では、本省の局長級が地元へ足を運ぶというようなことはめったにないと思うのですけれども、それほど空港公害問題というのは、逆に言えば深刻になっておる。そういう意味で、運輸省本省の方でひとつこういったいろいろな地元の問題をできるだけ素早くキャッチしていただいて、すぐに投げ返していただきたいというふうに希望いたすわけです。
  81. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 重ねて木村参考人にお伺いします。  この法案で直接には特定空港大阪空港は指定されないようでございますが、今後進めていく成田参考になりますので、あえて御意見といいますか、お声を聞かせておいていただきたいのですけれども、周辺整備機構にかわる仕事を空港公団がやることになると思います。周辺整備機構は、先ほどお話がありましたように、かなり一生懸命やっている、しかし、まだ十分でないというようなことのようでございますが、予算すら十分に使えない、あるいはその代替造成地も権利を与えられております。しかし、実際にそこへ移る人がないというようなこともございますね。その辺、どういうことでそうなっておるのか、その辺のところを少しお聞かせ願いたいと思います。
  82. 木村保男

    木村参考人 大阪国際空港周辺に投ぜられている予算というのは、かなり大きな金額だろうと私は思います。ところが、周辺整備機構中心として、正直に言いましてこの予算を十分使いこなしておらない、使い切っておらないというのが実情じゃなかろうか。これは非常に手前みそではありますけれども、この間、周辺整備機構理事の方とばったり新大阪の駅で会いまして、そのときにおっしゃっていたのは、先生、やっぱり私たちが住民の方に話をしに行ったときに非常にしこりになっているのが裁判問題なんだ、あれが解決するならばもっと虚心に話し合いができるのだ、これは黒田大阪府知事にも申し上げたのだけれども、その点は何とかならぬのだろうかということで運輸省へお話ししに行っているのですというふうなことをおっしゃっておりました。  それから、地元住民の方も本省の方へいろいろ陳情に上がるわけなんですが、そのときにも、いや、運輸省もこの裁判問題は何とか解決したいと考えておるのだというふうにおっしゃるわけなんですけれども、一向にそういう気配がない、単にリップサービスにとどまっているのじゃないかというふうな印象を受けるわけなんで、まあ手前みそだとは思いますけれども、この裁判問題を解決してもらうことがこの問題を大きく前進させるかぎりになっているのじゃないかというふうに思っておるわけなんです。
  83. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 鬼沢参考人岩沢参考人地元の御意見として聞かせていただきます。  この法案では、特定空港に指定されましたら、知事が一つの案をつくってそれを住民に提示することになっております。そして住民の側あるいは関係者は、これに対して一つ意見なり提案をしていくということになっていますね。それでもってまた一つの正式な成案を得るということになっております。その際に、鬼沢さん、岩沢さん、それぞれどういう形での御要望をなされるか、あるいはまたどういう手続でやっていかれるか、お答えしていただきたいと思います。
  84. 鬼沢伸夫

    鬼沢参考人 一応そういう手続に行くまでに素案といいますか、それは提示されるものというふうに考えております。ですから、素案というものの方向づけが出た時点でそれに住民としての希望を述べていくべきじゃないか。それには時間的な問題があるでしょうけれども、素案といいますか、その方向づけが公表される時点からではなく、それ以前からこういう方法でいくのだ、こういう素案があるのだということは、なるべく早い機会に地方自治体を通じて住民に知らせるべきだと思いますし、それを周知した上で住民サイドの声を地方自治体を交えて吸収していっていただきたい。  つけ加えて一言なんですが、成田空港の場合の先ほどの木村参考人への御質問についてなんですが、多分空港公団というものが介在していて非常に大きな力だというふうに地元民からは見られているわけです。しかしながら、実際の空港公団の能力というものは、先生方御存じのように空港公団法にのっとった範疇での業務だということで、住民サイドから言えば、空港公団は国の出先なんだ、何でも公団に言えばわかるのだというのが現状でありますので、その辺については国と空港公団との関係、極端に言うと、空港公団法の改善といいますか、そういうことにまでも進んでいっていただきたいというふうに思います。
  85. 岩沢寅之助

    岩沢参考人 私どもの考えとしては、まず市をサイドにしてどこまでも突き上げていく、そういうことを基本的に考えておるのです。やはりテーブルをけ飛ばして話はできないので、テーブルはどこまでも持つ。そのかわり、どこまでもわれわれの言うことも聞いていってほしいということを私は考えるわけであります。  でありますから、補足しますが、まず住民が困るということ、人間が困るということ——この間も傍聴させていただきましたが、飛行場は公共性だということで人権というものが何かわきへ置かれているような気がする。そういうことでなくして、私どもの部落は先生方にお世話になっておる。いろいろとお世話になっております。共産党、社会党、自民党さん、何党でもそういう党派に関係ありません。関係なく、自分らのために先生方にお世話になっていろいろと研究しております。ところが、この国会とか委員会で、こういう人間を大事にしなければいけないことが、この中で反対論としてたたかれているということは、非常に国民として残念だと思うのです。やはり住民が困るということにはみんなで、超党派で一生懸命やっていただきたいと思います。私どもは、大きな集団をつくってわいわいと騒ぐとかそういうようなことはいたしません。どこまでも市長を先頭にして、行事を先頭にしてやっていこうと私は思うのです。どうぞひとつお願いします。
  86. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 有意義な御意見ありがとうございました。長時間本当に御苦労さまでございました。
  87. 大野明

    大野委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。      ————◇—————
  88. 大野明

    大野委員長 この際、請願取り下げの件についてお諮りいたします。  本委員会に付託になっております佐渡汽船株式会社中小内航海運業者に対する圧迫排除に関する請願につきまして、昨十七日、紹介議員山本悌二郎君から取り下げ願いが提出されております。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕