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鬼沢参考人 私は、現在本
委員会で
審議されております
特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案について、賛成の
意見を陳述するものでございます。
先ほどの
山本参考人さんのお話と重複する面もあろうかと思いますけれども、私は素人でございますので、私なりの
考え方を申し上げてみたいと思います。
私は、かつて二年前に、私どもの
地域の有志とともに、はなはだ不本意ではございましたけれども、
成田空港の
現状での開港に反対するというような
意見を述べたことがございます。
その
理由は、いろいろございましたが、そのほとんどは解決の方向へ向かっているのではないかと思いますけれども、その
理由の
一つとして、
騒音問題の抜本的解決策として、現在
審議されておりますような
法案を
整備して
騒音問題に取り組んでいただきたい、そう申し上げてきたはずでございます。
航空機騒音問題が最大の社会問題となっておるように聞いております
大阪国際空港などの例を見ますと、このような制度の確立がぜひ必要ではないかと
考えております。そういう
意味で、いまごろ政府が提案したということは、むしろ遅きに失したという感がなきにしもあらずと思われるわけであります。
私は、
成田市に居住しておりまして、
成田市の健全な発展を願う者の一人であります。御存じのように、
成田市は昔からお不動様の町として全国に知られておりまして、これまではお不動様とともに発展してまいったわけでございます。しかしながら、
成田市の今後の発展は、
成田空港を無視しては
考えることができないわけでございます。
すなわち、
成田空港は、わが国唯一の国際線専用
空港でありますから、これを擁する
成田市は、当然のことながら、
日本の表玄関として今後発展していかなければならないと確信いたしておるわけでございます。ただ、そのためには、きわめて重要かつ不可欠な
前提条件がございます。つまり、わが
成田市が
成田空港をその
中心の
一つとして健全な発展をしていくためには、お不動様と
成田の町がそうであったように、
成田空港とその
周辺地域社会とがよき隣人
関係を保ちながら、調和のとれた形で発展していくことが重要であると
考えます。
このように
考えてまいりますと、
空港周辺において生ずる
航空機騒音問題は、きわめて重要な問題となってくるものと思われます。現に
航空機騒音問題は、これまでもいろいろな
空港で大きな社会問題を引き起こしてきているのは周知のとおりでございます。
成田空港における
航空機騒音問題につきましては、従来からも、政府、公団並びに千葉県、そして
成田市におきまして、学校、民家等の
防音工事に対する助成、
移転希望者に対する
移転補償あるいは防音堤の設置などの
対策が進められていることは承知しております。また、
成田空港に就航する
航空機は、エアバス等の低
騒音機が
中心になるだろうということも聞いております。しかし、いずれにしても、
航空機騒音が消えてなくなるものではございません。
ところで、
空港の
周辺というものは、一般的に都心との交通網が
整備される等の要因によりまして生活が便利になる傾向があります。
成田市にあってもその兆しが見えてきております。そのようになれば、当然に宅地化が進展する傾向が生じますので、何もせずにほうっておけば、
成田空港周辺においても宅地化がどんどん進んでいってしまうものと思われます。
成田空港の
周辺は、現在のところは
住宅もまばらな田園地帯でありますが、すでに不動産業者等によりまして宅地造成が散発的に行われておりまして、今後
空港の開港あるいは二期
計画の
整備等などが進みますと、この傾向はますます助長されるものと予想されますので、将来、
空港の
周辺に
住宅が増大し、
騒音問題が深刻化してしまうということにもなりかねません。
こうした将来に起こるであろうと予想されます
騒音問題を未然に防止するための抜本的な方策なくしては、
航空機騒音問題の解決はあり得ないと思いますし、したがって、私ども
成田市の発展もあり得ないと
考えております。私どもとしては、以前から、何か有効な手を打つべきであると強く要望していたのでありまして、私が、この
法案の提案がむしろ遅きに失したと申し上げたのも、このような
理由からでございます。
さて、
空港の
周辺に
住宅を建てさせなければ、私の申し上げた目的は一応達せられることになります。しかし、ただ単にそれだけでは、私が
考えております
空港を
中心とした
周辺都市の発展などということは望み得なくなってしまいます。
周辺都市の発展のためには、
空港とその
周辺地域に最も適切な形でいわゆる生活圏をつくっていかねばなりません。したがって私は、
空港周辺について、一方で
住宅等の
建築を
制限するかわりに、自然的並びに社会的
条件を勘案して、
商業、工業、農業等の
空港と調和のとれた産業を奨励する等の
周辺の
土地利用を
計画的かつ積極的に進めていく必要があると
考えます。
現在
審議されている
特別措置法案は、
周辺の一部
地域で
住宅等の
建築を
制限していますが、また他方、しっかりした
土地利用計画を決めていくようになっているものと思われます。ですから、この
法律が成立し、
成田空港がその対象となるなら、一方では、従来から進めてきております
騒音対策を一層充実させていき、他方でこの
法律をきちんと実施していくことによって、当面する
空港周辺の
航空機騒音問題を解決しながら、将来的にも
航空機騒音に十分
配慮した形での健全な
都市づくりが進められることとなるものと確信いたしております。
また、この
法案のこのような大きな目的とうらはらに一番大切なことがございます。それはこの
法律の施行によりまして、当該
住民の
損失を生むことは絶対に避けなければならないということでございます。すでに現在、
住民を追い出す悪法だというように決めつけている人たちもございます。しかし私は、公益のための協力者に
損失を与えることは絶対にないと申し上げたい次第であります。
具体的には、第八条の「
土地の買入れ」について、
土地の価格は
時価によるものとなっておりますが、この
時価とは、
特定空港の
設置者と当該
土地の
所有者とが協議することが前提になっておりますので、
土地の
所有者を保護する規定だと
考えます。また、第九条の「
移転の
補償」につきましては、予算の範囲内において
損失を
補償することとなっておりますが、私は十分な予算の範囲内での
補償と
考えます。
いずれにいたしましても、要は
運用の問題であります。したがいまして、
法律さえできればそれでよいというものではありません。
法律の精神をくんだ、血の通った政策の決定と国や県等の十分な財政上の援助等、積極的なバックアップがなければ、このような制度は絵にかいたモチにすぎないことは言うまでもありませんので、この点については、この
法律の
運用の問題として、先生方におかれましても絶大なる御協力、御援助をお願い申し上げる次第であります。
過去十一年間、
成田は闘争の地というイメージを全国民に与えてきたかもしれません。しかし、良識ある
成田市民が望んだことではありません。ほんの一部の人達と外部からの無法者の侵入によって法を無視されて行われてきたことであります。今後は
成田の
土地で血を流す戦いは絶対に許せません。そのような
意味で、
成田の十一年の
歴史は暗い時代だったかもしれません。しかし、本当の
成田の
歴史と
成田空港の
歴史はこれから始まるのです。
最初にも述べましたように、今後の
成田市の発展は
成田空港とともにあります。単に
成田市のみではありません。
成田空港周辺の市町村の将来の発展は、すべて
成田空港との共存共栄ができるかどうかにかかっていると申せるのではないでしょうか。そしてそのためには、将来に大きな禍根を残さぬよう
航空機騒音問題を解消し、かつ
空港と調和のとれた
都市づくりが進められるかどうかが、今後の大きな課題となっております。このような点からも私は本
法案が速やかに成立し、そして
成田空港がその適用の対象となることを切望する次第であります。
以上であります。