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1977-10-28 第82回国会 衆議院 運輸委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十二年九月二十九日)(木 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の とおりである。    委員長 大野  明君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 増岡 博之君 理事 宮崎 茂一君    理事 坂本 恭一君 理事 渡辺 芳男君    理事 石田幸四郎君 理事 河村  勝君       小沢 辰男君    北川 石松君       佐藤 文生君    関谷 勝嗣君       永田 亮一君    藤本 孝雄君       古屋  亨君    堀内 光雄君       三塚  博君    箕輪  登君       太田 一夫君    久保 三郎君       兒玉 末男君    斉藤 正男君       田畑政一郎君    草野  威君       宮井 泰良君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    小林 政子君       中馬 弘毅君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十二年十月二十八日(金曜日)     午前九時三十八分開議  出席委員    委員長 大野  明君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 増岡 博之君 理事 宮崎 茂一君    理事 坂本 恭一君 理事 渡辺 芳男君    理事 石田幸四郎君 理事 河村  勝君       逢沢 英雄君    愛知 和男君       北川 石松君    佐藤 文生君       関谷 勝嗣君    永田 亮一君       原田昇左右君    藤本 孝雄君       古屋  亨君    堀内 光雄君       堀之内久男君    三塚  博君       箕輪  登君    太田 一夫君       久保 三郎君    兒玉 末男君       斉藤 正男君    田畑政一郎君       草野  威君    宮井 泰良君       薮仲 義彦君    米沢  隆君       小林 政子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         運 輸 大 臣 田村  元君  出席政府委員         大蔵政務次官  高鳥  修君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         運輸政務次官  石井  一君         運輸大臣官房審         議官      真島  健君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       中村 四郎君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      角谷 正彦君         自治省財政局財         政課長     関根 則之君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道副         総裁      天坂 昌司君         日本国有鉄道常         務理事     田口 通夫君         日本国有鉄道常         務理事     高橋 浩二君         日本国有鉄道常         務理事     篠原  治君         日本国有鉄道常         務理事     馬渡 一眞君         日本国有鉄道常         務理事     橘高 弘昌君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ――――――――――――― 委員の異動 十月八日  辞任         補欠選任   草野  威君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     草野  威君 同月二十八日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     愛知 和男君   佐藤 文生君     原田昇左右君   関谷 勝嗣君     堀之内久男君   古屋  亨君     逢沢 英雄君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 英雄君     古屋  亨君   愛知 和男君     小沢 辰男君   原田昇左右君     佐藤 文生君   堀之内久男君     関谷 勝嗣君     ――――――――――――― 九月二十九日  地方陸上交通事業維持整備法案久保三郎君外  三十八名提出、第八十回国会衆法第二四号)  中小民営交通事業者経営基盤強化に関する  臨時措置法案久保三郎君外三十八名提出、第  八十回国会衆法第二五号)  交通事業における公共割引国庫負担に関する  法律案久保三郎君外三十八名提出、第八十回  国会衆法第二六号)  中小民営交通事業金融公庫法案久保三郎君外  三十八名提出、第八十回国会衆法第二七号)  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案内閣提出、第八十回国会閣法第  一一号) 十月二十四日  特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法案(内  閣提出第八号) 同月十八日  新東京国際空港設置に伴う銚子上空飛行コース  反対に関する請願小川国彦紹介)(第五七  号)  国鉄青梅線等快速電車増発に関する請願(有  馬元治紹介)(第九六号)  同(高田富之紹介)(第一二七号)  同(古屋亨紹介)(第一六四号)  列車及び電車汚物処理に関する請願工藤晃  君(共)紹介)(第九七号)  同(不破哲三紹介)(第九八号) 同月二十二日  列車及び電車汚物処理に関する請願小林政  子君紹介)(第一九一号)  同(松本善明紹介)(第一九二号)  佐渡汽船株式会社中小内航海運業者に対する  圧迫排除に関する請願山本悌二郎紹介)(  第二四一号) 同月二十八日  広島市上大須賀町内の新幹線高架下用地利用  に関する請願大原亨紹介)(第六四五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月十三日  九州新幹線早期着工に関する陳情書  (第七三号)  国鉄近代化促進等に関する陳情書  (第七四号)  みさと新駅の早期開設に関する陳情書  (第七五号)  地方バス路線の運行に対する国庫補助制度に関  する陳情書(第七  六号)  侵犯漁船の取り締り体制強化等に関する陳情書  (第七七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改  正する法律案内閣提出、第八十回国会閣法第  一一号)      ――――◇―――――
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  運輸行政実情調査し、その合理化及び振興に関する対策を樹立するため、  一、陸運に関する事項  一、海運に関する事項  一、航空に関する事項  一、日本国有鉄道経営に関する事項  一、港湾に関する事項  一、海上保安に関する事項  一、観光に関する事項  一、気象に関する事項 について、本会期調査をいたしたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     〔小林(政)委員委員長、動議を提出いたします」と呼ぶ〕
  3. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 大野明

    大野委員長 第八十回国会から継続審査となっております国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、第八十回国会におきましてすでに趣旨説明は聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————  国有鉄道運賃及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  6. 大野明

    大野委員長 ただいま委員長手元に、本案に対し、加藤六月君、河村勝君及び中馬弘毅君から、自由民主党民社党及び新自由クラブの三派共同提案による修正案提出されております。  修正案は、お手元に配付してあるとおりでございます。  この際、提出者から趣旨説明を求めます。加藤六月君。     —————————————  国有鉄道管理法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  7. 加藤六月

    加藤(六)委員 私は、自由民主党民社党及び新自由クラブを代表して、本法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  修正案の案文は、お手元に配付してございますので、朗読を省略させていただきます。  修正案の要旨は、次のとおりであります。  まず、政府原案におきましては、当分の間、鉄道普通旅客運賃賃率、航路の普通旅客運賃及び車扱貨物運賃賃率は、運輸大臣認可を受けて国鉄が定める賃率または運賃によることとし、その改定率は、決算で損失が生じたときは物価等変動率に一五%を加えた率を、決算で利益が生じたときは物価等変動率に五%を加えた率を限度といたしておりますが、これを次のように改めるものであります。  第一に、右の賃率または運賃のほか、国有鉄道運賃法規定により、運輸大臣認可いたしますその他の運賃または料金につきまして、運輸大臣認可をしようとするときは、当該認可に係る新たな賃率等実施される事業年度におけるすべての新たな賃率等実施による平年度収入増加見込額の総額が、当該年度経費増加見込額を超えないものとすること。  第二に、右の経費増加見込額は、実施年度の前事業年度経費の額に物価等変動率を乗じて得た額から、前事業年度経費の額を控除して得た額とし、前事業年度において新たな賃率等実施されなかった場合等にあっては、前事業年度経費物価等変動率を乗じて得た額から前々事業年度経費の額を控除して得た額とすること。  この場合において、前事業年度決算が完結していないときは、前々事業年度経費の額に物価等変動率を乗じて得た額を前事業年度経費の額とすること。  第三に、右の経費につきましては、鉄道事業連絡船事業及びこれらの付帯事業経営及びこれらの業務を行うのに必要な発送電及び電気通信業務に係る経費に限ることといたしております。  次に、政府原案におきましては、施行期日を公布の日といたしておりますが、国有鉄道運賃法改正規定につきましては、これを昭和五十三年三月三十一日に改めるものであります。  以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  8. 大野明

    大野委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  9. 大野明

    大野委員長 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案及びこれに対する加藤六月君外二名提出修正案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本恭一君。(小林(政)委員修正案に対する質疑を保障してください」と呼ぶ)
  10. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 前国会に引き続いて、今国会に入って初めての委員会になったわけですが、前国会から引き続いて、わが党を初めとして、この委員会委員の皆さんがこれまで大分質疑を尽くしてまいっております。私は、主として通常国会が終わった後いろいろ出てきたような問題を中心として、大変短時間ではありますけれども質疑をさしていただきたいと思っております。  予定でいきますと、いよいよ本日委員会審査を終了するという時点に差しかかってまいりました。まさに大詰めを迎えたわけでございますが、この法案修正案がいま出されましたが、これを含めて、物価変動率プラス何%というものからいわゆる経費負担増加額というように言葉が変わって、中身も変わるのだろうと思いますけれども、いずれにしても、相当な引き上げ率になるのじゃないかというふうに思っています。その引き上げ率というのは、あくまで上限の話ですけれども、相当な引き上げ率になるわけですから、いわば出てきたものすべてを直ちに運賃改定に持っていくということではなくて、それなりにそれを圧縮する考え方というものもあろうと思います。  したがって、まず最初に、いま出された修正案経費負担増加額、これによって試算をすると、新聞等では二〇%ぐらいが上限になるのじゃないかという報道もあるのですが、その辺についてはどの程度になるものと運輸省の方ではお考えでしょうか。
  11. 住田正二

    住田政府委員 運賃改定をする場合に私どもがまず考えなければいかぬことは、経費上昇は確かに毎年あるわけでございますけれども、それは全部運賃に転嫁するのではない。まず、企業が毎年生じます経費上昇額経営努力の中でカバーしていくというのが大原則でございます。これは国鉄のみならず、私鉄その他一般の輸送企業について共通に言えることではないかと思います。したがって、今回も経費上昇額まではよろしいという委任をしていただいているわけでございますけれども、まず、経費上昇については国鉄経営努力の中でできるだけ吸収していく、その上で、吸収できないものは利用者の方の負担でお願いするということでございます。したがって、経費上昇額から言いますと、限度としては場合によっては二〇%近いものが認められると思いますけれども現実運賃値上げは、極力いま申し上げましたような国鉄経営努力経費節減であるとかあるいは増収努力というものでカバーして圧縮していくように指導してまいりたいと考えております。
  12. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 私がお尋ねしたのは、もちろん圧縮をされてできるだけ抑えていく、これは当然のことだろうと思うのですが、そういうものを考えずに、いわゆるこの修正案でいきますと、前年度との対比でやっていくという形になりますね、そうなると、たとえば五十一年度決算を基準にして五十三年度経費負担増を見込んであれした場合には、上限はどの程度アップ率になるのでしょうか。
  13. 住田正二

    住田政府委員 本年度決算もまだ出ておりませんが、一般的に申し上げまして、国鉄経費が大体三兆円程度になっていると思います。したがって、仮に物価変動率が一〇%あるいは一一%ということになりますと、三千億とか三千三百億が経費上昇額ということになるわけでございます。それに対しまして、本年度運賃収入が幾らになるかということは、確定できませんけれども、大ざっぱに申し上げて二〇%近いものが上昇額になると思いますが、しかし、中身をどういうふうに変えていくかということによってまた変わってくるわけでございまして、賃率で上げる場合と料金で上げる場合と、あるいは通勤通学割引の是正を行う、そういうようないろんなやり方があるわけでございまして、そこら辺の判断は、国鉄総裁が他の交通機関との共存関係とかあるいは社会経済情勢というものを見ながら考えるわけでございまして、何%ということは非常に言いにくいと思いますが、単純に考えますと、二〇%程度限度になろうかと思います。
  14. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 単純に試算をしてみますと、いまおっしゃった二〇%程度ではとてもおさまりそうもありません。私ども試算によると三〇%を超えるんじゃないか。したがって、従来のようなやり方でいわゆる実質何%というと名目が必ずついてくる。そうなると、名目は昨年やったような五〇%に近いものが出てくるおそれがあるのではないかと思っています。ですから、そういうことを踏まえていま圧縮する方向で——いろいろな要素があろうと思いますから、圧縮するということは、もちろん考えなければならないことだろうと思いますけれども、そうすると、その圧縮をした場合に、それなり助成というのが考えられなければならないと思うのですが、その点については大臣の方いかがでございますか。
  15. 住田正二

    住田政府委員 今回の修正案が成立いたしますと、経費上昇額はカバーできるということになるわけでございます。したがって、現在あります国鉄赤字体質というものは、運賃でカバーするということができないわけでございます。したがいまして、今後の国鉄再建というのは、主として国鉄経営努力と国の行財政上の援助によって達成するということになるわけでございます。いま各党問でこの「再建基本方向」についていろいろ御協議いただいていると聞いております。その中でも国鉄経営責任と国の責任といいますか、めんどうを見る範囲というものを明確化するという方向で御議論いただいていると聞いておりますけれども、私どもといたしましても、国鉄経営努力に対応いたしまして、国鉄経営構造的欠陥というようなものについて公的助成を講じていくように努力いたしたいと思っております。
  16. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 結局は、この修正案が通っていきますと、いわゆる運賃法定制がなくなる、国会のチェックがなくなるということで、歯どめがなくなるということになるのじゃないかと思うのですが、その歯どめがなくなって、いわばある程度国鉄当事者能力を大きくしたのだから、国鉄の方で全部やってしまいなさい、国は関係ありませんというようなことになったら、これまた大変なことになるのじゃないかと思うのです。  いまの鉄監局長のお話で、運賃上げ幅圧縮の中で、企業努力とかいろいろな要素があることをおっしゃっていましたけれども、そういう歯どめがなくなるということを考えて、国は国としての責任を当然持っていくというような点については、大臣はどうお考えでございますか。
  17. 田村元

    田村国務大臣 私は、国鉄がやはり良識を持って経営努力をしていくものと思います。でありますから、いわゆる法外な運賃値上げというものを申請してくるということは考えておりません。しかも審議会等審査も受けるわけであります。また現在、他の公共交通機関等との、あるいは交通機関等との競争の現実をながめましたときに、とうてい無理なことはできない、そのように考えております。
  18. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 それはそれでわかるのですが、結局、平たい言葉で言うと、国鉄に何でもかんでもなすりつけてしまうという危険が今度は出てくるのではないかと思うのです。そういう意味で歯どめがなくなってしまう。その辺について大臣の御見解をお聞きしたいということです。
  19. 田村元

    田村国務大臣 何でもかんでも国鉄になすりつけてしまうとおっしゃるわけですが、裏返せば、国鉄にそれだけの当事者能力を持たせ、責任を持たせるということでございまして、むしろ従来から、国鉄当事者能力が弱過ぎるのではないかという御批判も、与党、野党を問わずございました。私は、先ほど申したように、国鉄良識を持って現実に即して事に処するであろうことを信じて疑いません。
  20. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 この点について大蔵省の方の御意見をちょっとお聞かせください。
  21. 松下康雄

    松下政府委員 国鉄公共企業体といたしまして、経営を一体として、その全部につきまして企業努力を極力強化することによって、利用者の方々によりよいサービスをより安いコストで提供するという基本は、現在も変わっておらないと思います。また、利用者の側におかれても、やむを得ない価格の上昇等によりますコスト増大の中で、適正な部分についての御負担を願うということも、これはやむを得ない点であると存じます。  ただ、いま御質問のように、今回の法案が通りましたならば、その両方だけで事を処していけばよろしい、国は従来のように関心を持たなくなるかどうかという点につきましては、現在国鉄が置かれております経済的なあるいは社会的な実情にかんがみますときには、そういう考え方は実際的でないと存じます。  財政当局といたしましても、国鉄企業努力、それから適正な利用者負担ということを前提としながら、従来も、国鉄立場考えまして、この経営努力限度を超えてなおかつやむを得ない負担部分につきましては、非常に厳しい財政事情の中から助成を行ってまいったのでございまして、本年度その額は四千四百五十一億円に達しているところでございます。この状況が基本的に今後も変わりません以上、今後におきましても、国の立場による行財政上の種々の助成措置を工夫いたしながら、全体として経営健全化を果たしていくためにどうすればいいかということを、この際真剣に考えてまいる必要があると存じます。今後とも運輸省国鉄当局とその点につきましては真剣な検討をいたしてまいりたいと思っております。
  22. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 先ほど鉄監局長答弁の中で、いわゆる費用負担区分明確化ということについていま話が行われているというような御答弁がありました。現実にそういうものをいま鋭意やっているわけですが、私どもは、負担区分明確化というのは、これまで何回も主張をしてきたことですし、ぜひそういう制度に持っていってもらいたいと思うわけですが、費用負担区分を明確にするということは、政府が政策として行う部分国鉄の運営の中で政府責任において処理をしなければならない部分というのがある程度明確になってくるということになると思うのですが、その分については当然政府責任を持って、最終的には財政措置ということになろうと思いますけれども、それだけではなくて、やはり経営健全化というところまで、国鉄国鉄自身の本来やらなければならない部分についても、ある程度助成というものを当分の間は考えていかなければならないのじゃないかと思うのですが、その点について大臣はどのようにお考えでございますか。
  23. 田村元

    田村国務大臣 御承知のように、国鉄の場合も御多分に漏れず原価主義をとっております。でありますから、国鉄が徹底した経営努力をしていく、そして、もちろん運賃によってのカバーもしていく、しかしながら、本来国鉄負担すべき限界を超えておるもの、つまり公共性の非常に強いもの、いまおっしゃった政策的な問題、そういう面につきましては、国は助成を十分にしていかなければならないと存じます。  実は、もうすでにこれは御承知と思いますが、いま四千四百五十一億という助成の話が出ましたけれども、それ以外に何とか特定財源を見出して、これで国鉄をカバーしたいと考えまして、特定財源探しに私はいま奔走いたしております。どういうものをどのようにするかというところまで詰まったわけではありませんけれども、もちろん他省庁との関係もございますから、ここで結論的に大みえを切るわけにはまいりませんけれども、何とか安定した特定財源を見出したいと考えて、一生懸命になっておるというところでございます。
  24. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 本日ただいま提案された修正案、これでいきますと実施期日が三月三十一日になる。そうなりますと、先般衆参を通過した補正予算、この中から八百五億円が不足することになるのですが、この財源はどうするのですか。大蔵省の方、ちょっとお聞かせください。
  25. 松下康雄

    松下政府委員 この補正予算の成立後に値上げの延期によって赤字が増加する事態がございましたならば、それをどうするかというお尋ねでございますけれども、私どもも、まだ具体的にどれだけの金額の減収についてどのような手当てをすればよろしいかということまで考える段階に至っていないわけでございます。この点につきましては、先般の補正後の収入予定額あるいは経費支出見込額につきまして、もう一度よく見直しを行いまして、極力経費節減等によって対処していただくように、その内容等については国鉄運輸省に御検討をお願いしたいと思っております。
  26. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 私は、むしろ大蔵省の方で責任を持って処理をしていただきたいと思っています。時間がありませんからもうこれ以上あれしませんが、ぜひお願いをしておきたい。適切な処理をしていただきたいと思います。  地方交通線について若干の質疑をしたいと思っておりますが、これまで、四十三年以来だと思いますが、赤字地方交通線の廃止の問題、いろいろなことが行われてきたと思いますし、いろいろな案が、計画が練られてきたと思います。その経過を、余り時間がありませんから、どういう計画でどういう実施をしてきたかということを、できれば簡単に御説明願いたいと思います。
  27. 住田正二

    住田政府委員 地方交通線が国鉄経営の大きな負担になっておるという観点から、四十三年以来いろいろな案が出ているわけでございます。基本的な考え方は、鉄道運送よりも道路運送に任した方が、国民経済的に見てプラスであるというものについては、道路運送に移行しようというのが一貫した考え方でございます。四十三年に国鉄の諮問委員会の答申で八十三線区、二千六百キロメートルの廃止というのが出まして、四十四年以降第一次の再建計画以来道路運送への移管をする、四十七年の際には具体的に三千四百キロのものを道路運送に移管するというような具体的な数字も出ております。一貫して国民経済的に見て道路運送の方が有利であると認められるものは、道路運送へ移管するという考え方で来たわけでございますけれども、この地方交通線問題というのは、そういう国民経済的な観点だけで処理できない面もございまして、やはり地元の利用者に対する影響も非常に大きい、したがって、その取り扱いについては慎重に行う必要があるということで、五十年十二月の閣議了解におきましては、国鉄の自立経営上の負担と地元住民の利便というものを調整して、できるだけ地元の意向をくみ取った形で解決すべきであるというような方向が打ち出されまして、その閣議了解に基づいて、一昨年運輸政策審議会の中に地方交通線問題の小委員会を設けまして、いろいろ御審議をいただいて、本年の一月に中間答申を出していただいております。  この中間答申の考え方は、地方交通線については、地元の参画のもとに問題の解決を図るべきであるということで、四つの選択案を出しまして、地元住民と十分相談した上で適切な選択をしていただくという案が出ておりまして、今後そういう方向でこの問題の解決に努力していきたいと考えております。
  28. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 四十三年九月から始まって、当初八十三線区、二千六百キロという予定であったと思うのですが、四十四年九月の第一次再建対策以降数次の再建計画を経て現実に廃止ができたのは何線区、延べ何キロになるのでしょうか。
  29. 高木文雄

    ○高木説明員 十一線区で百二十一キロでございます。
  30. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 当初の目的とは大変かけ離れた現実になっているわけですが、これはやはり地域住民の観点に全然立たずに計画を実施しようとしたところに過ちがあったのではないかと私は思うのです。むしろ廃止の経過、いま簡単に御説明いただきましたけれども、いずれにしても、何でもかんでも切り捨てていく、縮小ということしか考えずにやっていく、したがって、ほとんどの地域で失敗をしてしまったというふうに思うわけです。  ですから、その反省の上に立って恐らくいま鉄監局長からお話のあった小委員会なるものが出てきたのだろうと思いますが、その小委員会で中間答申がこの前出されました。その中間答申に基づいていわゆる地方線に関する協議会ですか、そういうものがテストケースとして設けられておるようですが、これはいま七つあると聞いています。この七県における協議会、そのテストケースとしてなぜ七県を選んだのか、あるいはその中身はどういう構成で、どういうことをやっておるのかということをまず御説明願いたいと思います。
  31. 高木文雄

    ○高木説明員 中間答申で地方の方々に中心になってそうした問題に取り組んでいただくようにしてはどうかという案が出されておるわけでございますが、いまもお触れになりましたように、そのことは方向としては大変結構なことではないか、私どもとしても、ぜひそうお願いをいたしたいと思うわけでございます。  しかし、さて具体的にどういう地域を対象とし、たとえば県の単位がいいのか、もう少し広い範囲がいいのか、あるいはもうちょっと狭い範囲で協議会を考えていただくのがいいのかといったような問題もございますし、また、現実にはどういう方に参加していただいたらよろしいのかという問題もございますし、そういうことを、今後もし進めていくとすれば、現実の問題としていろいろと研究をしなければならない問題もございます。  そこで、中間答申を、いずれ本答申になりましょうけれども、その間において、そこらのことをいろいろ試行的にやってみる必要があるのではないかというような気持ちから、関係の府県にお願いをいたしまして試行をしてみていただいているわけでございますが、どういうわけで七県を選んだかというのは、率直に言いまして、何も理由があるわけではないのでありまして、もちろん地方交通線問題を抱えていらっしゃるところでなければならないわけでございますし、また試行でございますので、たとえば私どもの都合から言いますと、管理局の所在地の方がよろしいというようなこともありましたけれども、別に特に理由があって七県にお願いしたわけではなくて、実は、さらにそれにプラスアルファの県にお願いしましたうちで、まあ、それではやってみようかということで、運輸政策審議会にそれが反映するのであれば、そのことは有意義であろうということでお引き受けいただけたのが七県であるということでございまして、それ以上、特に何か選考基準とか選択基準というものがあったわけではないわけでございます。
  32. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 いまお答えの中の、いわゆるプラスアルファの部分が一番重要なんじゃないかと思うのですが、そのプラスアルファの要素というのは何なんですか。それによってこの七つに結局おさまったというか、そういう形になっているのではないかと思うのですが、いかがですか。
  33. 高木文雄

    ○高木説明員 率直に申しまして、地方交通線というのは、たとえば仮に県ごとに協議会をお願いするとしましても、非常に多数抱えておられるところと、そうでないところもあります。それから地方交通線の中で県をまたがっている地方交通線というのがございます。そうしたことを考えますと、やはり比較的そういう議論をしやすいところにお願いをしたといいますか、議論が進みやすいところがお引き受けくださったという形でございまして、どうも県をまたがっている線区の多いような県ではなかなかやりにくいということで、そう無理をしてもいけませんので、そこはそれでは今回はお願いいたしませんということで私どもの方が引き下がったというかっこうになっております。
  34. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 いろいろなところに国鉄の方から申し入れをして、それに応じてつくってくれたのが七県というようにうかがえるわけですが、大体この中間答申に基づいてそういう協議会をつくってみようと運輸省の方でお考えになった時点では、大体幾つぐらいの県で、どういうところを対象にしてやろうというふうに計画をなさったのですか。
  35. 高木文雄

    ○高木説明員 このことにつきましては、十分運輸省とも御相談をして進めてはまいりましたが、どっちかといいますと、最初私の方が進めておりましたので、私の方から申し上げますけれども、これは何といいますか、もし正規に将来協議会がつくられるとすれば、どんな形のものがいいかということが主体であったものでございますから、たとえば地方交通線が多い地域がいいとか少ない地域がいいとかいうことではなくて、率直に言って、きわめてアトランダムにお願いをいたしまして、よしやってみようと言ってくださったところもあるし、ちょっと持てよと言われたところもあるということで、そこらは実は余り計画的にやったのではないわけでございます。
  36. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 アトランダムにやったということで言い切るのなら、これ以上話をしても水かけ論になると思うのですが、そうすると、それじゃ次には構成のメンバーですが、人選はどこで何を基準におやりになったのでしょうか。
  37. 高木文雄

    ○高木説明員 いずれかといいますと、主として各県の御意向でお願いしたわけで、私の方からは余りその点は注文をつけてはおらないわけでございまして、将来もしこういう形のものがもっとオーソライズされた形で置かれることになります場合にどんなふうにしたらよろしいかということも、今回こういうことをお願いした場合の一つのテーマでございましたものですから、私の方が余りいろいろなことを注文づけしてはぐあいが悪いというので、その県その県の考え方といいますか、そういう感じでお願いをしたわけでございまして、したがって、でき上がった結果を見ますと、かなりいろいろなバラエティーに富んだものになっておるように感じております。
  38. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 各県にお任せをしたといっても、どういう形でどういう人を選んでくれというある程度の基準というのは、国鉄なり運輸省の方から各県に申し出をしているのではないかと思うのですが、各県の構成メンバーの肩書きだけを見ますと、いま総裁は、かなりバラエティーに富んでいると言っておりましたけれども、かなり画一的ですね。その辺はどうですか。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  39. 高木文雄

    ○高木説明員 まあ、県の交通に関係のおありになる専門家であるとか、それから市町村の代表格の方であるとか、そしてまた、官庁側としては私どもの管理局であるとか陸運局であるとか、そういうところが参画をしておるというところは全部共通だと思いますが、一番問題は、学識経験者なりあるいは利用者なりの中からどういうふうにしてこのメンバーに入っていただくか、そしてまた、それをどうやって探してくるかというのはなかなかむずかしいわけでございまして、そこがうまくいきませんと、将来オーソライズされたものとしてそういう機関ができましても、なかなかうまくいきませんので、私ども、そこらをどういうふうに今後選び方をお願いしたらいいのかなというあたりが非常に悩みの種でございますので、その辺は県によって、まだ七つのうちの相当部分について十分割り切れてないというか、今後の問題として考えるが、最初はどっちかというと、公的なメンバーだけでスタートしょうというふうになっております。そこらは私どもとしては、ぜひ利用者代表といいますか、学識経験者といいますか、そういう方々がしかるべく入っていただけるような形が望ましいとは思うわけでございますけれども、しかし、たとえば消費者代表といいましても、どういう方が消費者代表にふさわしいかというのは、具体的にはなかなかめんどうでございますので、うまくどの委員会でもそういう方が入っていらっしゃるということにはなっていないという結果にいまのところはなっております。
  40. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 いま答弁の中にあった消費者の代表というのは、余り言葉が適切でないと思うのですが、その交通線を利用している人が全然どこの県も入っていませんね。これは利用者の代表といいますか、そういうものは当初からもともと入れる気はなかったということになるのでしょうか。
  41. 高木文雄

    ○高木説明員 実は、この協議会が設けられます過程において、各都道府県と御相談しましたときの、どこの県がどうということは私、詳しく知りませんけれども、大体の雰囲気としては、そういう協議会を設けるのはよろしいけれども、そのことが何かどこかの線の廃止だとか存続だとか、あるいはほかへの、たとえば自動車交通への切りかえだとかいうことにつながることが非常に心配だということで、まあまあいまの段階では一般抽象論でやらざるを得ないというような雰囲気が大体強いわけでございます。でございますから、私、消費者と申しましたが、ある意味では利用者でございますけれども利用者代表といいましても、どうもどこかの線区と結びつくような雰囲気でその方が選ばれるというのではぐあいが悪いというようなこともあるものですから、率直に言って、非常にティミッドに各県とも進めるという空気が強いものでございますから、そこで、どなたかお願いして、それが、たとえば私どもは、現在は考えていませんけれども、昔、八十三線区に関係があったようなところですと非常にまずいというようなことになってきまして、同じ利用者の代表みたいな方を探す場合にでも、一体県の中のどんな地域の方というようなところがなかなかむずかしくなってきまして、そんなことから、それは各県とも非常に神経質になっておられますから、そこで地域代表的な方の選び方のところで具体的には困難を来して、結局、そこに到達しないでとまってしまっているというような感じでございます。
  42. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 中間報告の中に学識経験者等の記載もあるわけですが、その中間報告の中に、やはり地方交通線問題というのは、その「地域の利用者はもとより」という言葉を使って、しかも「国民一般の理解と納得がなければその実効を期し難い。」、したがって、その一般の理解と認識、協力を深めるようにこの協議会は設けられているはずだと思うのです。そうなると、いまの私が申し上げたような人選というのは、もともとその目的にそぐわないものになっているのではないかというふうに思いましたので、いまいろいろ申し上げたわけです。  それでは、恐らく本答申がこれから協議をされて出てくるのだろうと思うのですが、その場合には、日本の各都道府県、沖繩は国鉄はありませんから別にしても、恐らくほとんどの都道府県にこういう協議会というものを設置していこうという方向になるのでしょうか。その辺はいかがですか。
  43. 住田正二

    住田政府委員 最終答申はこれからの問題でございますけれども、地元で、住民の方の意見が反映されるような協議会をつくるということについては変わりはないと思いますので、各県別になるか、あるいは県によっては二つぐらいつくる場合もあるかと思いますけれども、そういうような協議会が相当数設けられることは確実であると考えていいと思います。
  44. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 いままでの協議会の委員のメンバーの方たちを見ていますと、地元のことを言うて申しわけありませんが、熊本で、熊本の協議会の委員になっている方を見ますと、熊本のいわゆる地方交通線と言われるものに、恐らくここ何年も乗ったことのない人たちのように思われるんですね。ですから、先ほど申し上げましたように、まさに利用者あるいはそこに働く人の代表、そういうような者を、今後つくっていくときには入れていくべきではないかと思うのです。そうしないと、いわゆる地域住民の意思の反映というのはできないし、したがって、理解を得ることはできない。そうなると、いままでと同じような結果に終わってしまうのではないかと思うのですが、その点について大臣どうお考えになりますか。
  45. 田村元

    田村国務大臣 現在はあくまでもテストケースでございます。しかも一般論を御検討いただいておる。将来は地域の利用者の代表の方にお入りいただく必要が当然生じてくると思います。
  46. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 先ほどの鉄監局長答弁といまの大臣答弁をあわせて、今後、本答申、最終答申の後、そういう協議会をつくる場合には、ぜひそういう人選をやっていただきたいと思います。  さらに、どうも密室でやりがちなものですから、もうちょっと公開の場でやってもいいような方向考えていただきたいと私は思っておりますが、いかがですか。
  47. 田村元

    田村国務大臣 公開という程度がどの程度か、私は、ちょっと判断に苦しみますが、いずれにいたしましても、地域住民にとっては非常に重要な問題でございますから、完全な密室での討議ということはあり得ないと思います。
  48. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 七県でテストケースとして協議会審議が行われてきたと思うのですが、大体そこの中のテーマといいますか、その辺は余り回数は行われていないようですが、どういうことを中心にしてお話し合いがなされたのでしょうか。
  49. 高木文雄

    ○高木説明員 手元にございますこれまでの経過に関する資料によりますと、各協議会を通じてどこでも一番議論されておりますのは、県内全体のいわゆる総合交通体系というようなことをどういうふうに今日まで議論されてきたかというような点が一つと、それから国鉄の現状はどういうことになっているのかという現状認識の問題、それからメンバーの方々は運輸政策審議会の答申というのを十分御存じないので、そこらがどういう背景によって議論されてきたかというようなこと、それから試行的なものでございますから、当然のことながら、今後この協議会はどういうふうに進めていったらいいのかという模索のようなことが行われているという点が、各協議会に共通する点として申し上げられるのじゃないかと思います。
  50. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 今後どうしていったらいいかというような点については、具体的にどこでどういう話があったということは別にしても、どういう話があったかというのはおわかりになりますか。
  51. 高木文雄

    ○高木説明員 非常に戸惑いが多いわけでございますし、それから県としては、いろいろその県その県の政治問題といいますか、非常に大きな問題でございますので、どうも廃止とかなんとかという議論にうっかり触れられないという雰囲気があるものですから、そこで、なかなか建設的には進んでいないわけでございまして、回数も少ないせいもございますが、率直に言って、きわめて戸惑いぎみに物事がいっておると言ってよろしいかと思います。私どもも、そうかといって余り押しつけがましいことは避けておるものですから、どこの協議会でこういう実りある議論まで進んできておるというところまではまだいっておらないわけであります。
  52. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 私の聞いておる範囲では、熊本ではこれまで二回開かれたと思うのですが、大体この二回で協議会は終わりになるのでしょうか。まだ引き続いて協議会において審議が行われるのでしょうか。
  53. 高木文雄

    ○高木説明員 熊本の場合について特別なことを承知いたしておりませんけれども、この協議会を通じて物事を進めていくといっても、なかなか容易でないなということで、いまお触れになりましたように、場合によったらあと何回かで一遍閉めた方がいいのじゃないかというような議論もあるやに聞いております。そこらが、中間答申では協議会を設けて議論をしてはどうか、私どもも、国鉄が東京でいろいろ物事を考えておるのはうまくないので、地方で考えていただきたいという気持ちがあり、中間答申もそういうことでありましたから、そこを試行的にお願いしてみたわけでございますが、現実問題としては、なかなか物事が進みにくいというのが、率直に言って実情であります。
  54. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、熊本の場合に次の協議会の日取りというのは決まっているのですか。
  55. 高木文雄

    ○高木説明員 不正確でございますが、いまのところ決まっていないと思います。
  56. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そうすると、大体これでいま行われている協議会の方は終わりになるのでしょうか。運輸省の方いかがですか。
  57. 高木文雄

    ○高木説明員 せっかく始まったわけでございますので、終わりにされては本当は困るのでございますけれども、しかし、そこはきわめて自主的といいますか、ボランタリーにつくっていただいたわけでございますので、私どもで無理にお願いするわけにもいかないということで、今後私ども少し考えてみますが、いま、それについて右とか左とかということを申し上げるところまで私の気持ちも固まっていないわけでございます。
  58. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 熊本では、たしか今月の一日だったと思いますが、二回目の協議会が開かれております。その協議会の後に、運輸審議会の小委員会の何人かの委員の方々が、協議会の委員の皆さんと懇談をしたと聞いておりますけれども、そこではどういう話が出ているのでしょうか。
  59. 杉浦喬也

    ○杉浦(喬)政府委員 私が出席しましたのでお話し申し上げたいと思います。  運輸政策審議会の委員五名が、地方協議会の委員委員会の終了後食事をはさみまして約一時間半ばかり懇談を行っております。私ども、非常に参考になるいろいろなお話し合いがあったというふうに承知をしておるわけでございますが、たとえば地方線問題につきまして、考え方が画一的であってはいけないのじゃないかという点の話が地方協議会の委員の方から出されました。と申しますのは、熊本の市を中心とするいわば一つの都市交通という問題と、それよりもっと離れた地域での国鉄線のあり方という点では、かなり考え方が違うのではないかというような御議論も出されました。この点も今後のあり方につきまして、私ども参考になったわけでございます。  それから、国鉄というものに対する地元の方の感覚といいますか考え方、どういう感じで国鉄を見ているかという点につきましても、地方協議会の方から、端的な感じ、地元住民の考えはこういう感じであるということも述べられておりまして、これも私ども、非常に参考になったことでございます。  それから、これも地方協議会の委員から出されましたが、熊本の視察の際に若干の国鉄のローカル線を見てまいりましたが、その経営内容につきまして、コストの割り振り、これは共通経費の問題が出ましたが、この辺がなかなかむずかしいなというようなお話も出ました。  いろいろと議題が豊富でございまして、大変参考になったというのが率直な感じでございます。
  60. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そちらの方はまさに懇談会だろうと思いますが、そういう協議会をこれからも続けていった方がいいとか悪いとかという話は、その懇談会の場では出なかったのですか。
  61. 杉浦喬也

    ○杉浦(喬)政府委員 大変有益な会合でありましたというごあいさつが、両方の代表の方からあったわけでございますけれども、そういう話を今後もやっていこうというふうには必ずしもなっておりません。
  62. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 この辺で時間もありませんからやめたいと思いますが、今後協議会を新たに設けていこう、本答申が出た後になると思うのですが、そういう場合に、先ほど御要望も申し上げましたが、そういう構成について、私どもは、いまも前国会から継続審議になっております四つの法案を出しております。そのうちの一つに、地方陸上交通事業維持整備法案というのを出しています。その中で審議会という制度規定しておりますけれども、それに私どもは、いわゆる先ほど申し上げたような人たちも入る審議会、しかも地方のいわば総合交通体系と言うと大げさですが、交通体系を考える場所というのを設けたいということでこの法案を出しているわけです。これは国鉄が直接法案の中に入っていませんけれども中身の議論としては大体同じことになってくるのではないかと思いますが、その点については鉄監局長、どういうふうにお考えになりますか、この法案も含めて一言御答弁していただきたいと思うのです。
  63. 住田正二

    住田政府委員 社会党から御提案になっております地方陸上交通事業維持整備法の考え方は、今後の地方交通線問題あるいは都市交通問題を考える場合の一つの参考になる案ではないかと評価いたしているわけでございます。  それから、いまお話のございました審議会の問題についても、私ども、大体同じような構成でやったらいいのではないかと思います。学識経験者という言葉を使っておりますので、先ほどの国鉄が中心になってやっております協議会も、学識経験者ということで知事の方でメンバーを選んでいるのではないかと思いますが、社会党の法案の方でも、やはり学識経験者という言葉を使っておられますので、具体的には知事が学識経験者としてどういう人を選ぶかということになるかと思いますけれども、いずれにいたしましても、地方交通線問題を解決するには、地元の意見というものを十分くみ取る必要があるわけでございまして、実際に協議会が発足する場合には、そういう点について十分配慮して人選が行われるということになると考えております。
  64. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 私どもも、学識経験者という言葉をお説のとおり使っていますけれども規定の中にいろいろ入れるわけにもいかないので、学識経験者という字句でくくっているわけですが、それには当然、地域の住民のというか利用者の代表の意見が反映されるような人たちを含めて考えている。したがって、先ほどもお願い申し上げましたけれども、この点は今後の問題として重ねてお願いをしておきたいと思います。  次に、貨物の問題で若干質問させていただきたいと思いますが、昨年の十二月にかなり大きな集約の計画といいますか、駅あるいはヤードの集約の計画が出されました。これについては、すでにいろいろ御議論があったと思いますので、そちらの方には触れませんが、結局この集約をするということについて、関係の市町村とか都道府県とかあるいは関係の大きな荷主さんとか、そういうところにどういう形で、こういうことをやりますよというような話を持っていっているのでしょうか。
  65. 田口通夫

    ○田口説明員 貨物集約につきましては、いろいろケースがございますが、いま御質問されました場合のケースは、たとえば都市計画とかターミナル改善とかいうものと関連しない貨物集約の場合だと思います。その場合、まず荷主さんでございますけれども、これは各駅別に個々に荷主さんをつかんでおりますし、経済圏ごとにつかんでおりますし、これについては詳細に説明をいたしております。従来、荷主さんの場合は、統合駅でどういう設備をしてもらわなければならないとか、そういう形の条件が出るのが多うございまして、比較的コマーシャルベースで話がつくということでございます。  通運に関しましては、すでに八月十八日に個々の集約駅を具体的に明らかにいたしましたので、その後、八月二十六日に社団法人の全国通運連盟会長から要望事項がございまして、各管理局ごとに集約の対策委員会を設ける、そして管理局の幹部並びにできれば陸運局からも出てきてもらって、通運業者としていろいろと話を詰めたい、こういうシステムがございまして、これも場所によってはすでに数回開かれておるところもございますし、集約のタイミングが少しおくれているところでは、期間に余裕があるところでは、まだやってないというところもございます。しかしながら……
  66. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 時間がないからいいです。私が一番最初に言った都道府県、地方自治体、市町村はどうなんですか。
  67. 田口通夫

    ○田口説明員 地方公共団体につきましては、これは非常に熱心に説明をいたしておりますが、いままでの経験から申し上げますと、大体よくわかる、理解はするけれども、イエスとは言いにくいという形で、本年度すでに二十六駅集約いたしておりますけれども、正式な同意はほとんどもらっておりません。  ただ、いろいろの立場の方々がおられますので、その立場上、よくわかるけれども、イエスとは言えないという形になりますが、そこで、私どもとしては、できるだけよく理解をしていただくということで、国鉄責任で、やはり今後も話し合いは十分いたしますけれども、やらせていただくという形になろうかと思います。
  68. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 やらせていただくというところに端的に出ているんじゃないかと思うのですが、何しろ強引に進めているという感じで私どもはいっぱいなんです。  まず十二月にあの発表をして、ことしの一月にある町長さんに一片の文書が行っているんですね。これは中身は申し上げるまでもないと思うのですが、「下記駅の貨物取扱いを最寄駅に集約したいと思います。つきましては、貴台の絶大な御理解とお力添えを賜り、」云々というのが、まず最初に町長のところに行くんですね。貨物の集約の問題というのは、地域経済に物すごく大きな影響を与えるので、こんな紙っぺら一枚を先へやって、後は強引にどんどん進めていってしまうなんというやり方をやっておったら、これはとんでもない大事になっていきます。しかも今度は、来年の十月に向けてかなり大がかりなことをやるわけですから、その点について市町村あるいは利用者の話をもっと聞く方向で物を考えていかなければいけないのじゃないかと思うのですが、こういう紙っぺら一枚、集約に関係のある市町村には全部これをやっておるのですか。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕
  69. 田口通夫

    ○田口説明員 非常に痛いところをつかれましたけれども国鉄も役所でございますので、一応紙切れは出しますけれども、それを出したままで見切り発車をするということはございませんで、必ずこちらの方にいろいろと要望書も出てまいりますし、現に私も、本社まで来られた町長さん等にはかなりお会いして、私たちの気持ちもいろいろとお伝え申し上げております。ただ一片の紙切れで見切り発車するという実例はございません。
  70. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 一片の紙切れに私はこだわるんですよ。こういうものがある日突然ポンと来るわけです。普通の商売の人だったらこんなことやるでしょうか。その辺に国鉄の姿勢があらわれていると私は言っているのです。これは全国的にやっているのですか、本社の指導でやっているのですか。
  71. 田口通夫

    ○田口説明員 役所と申し上げまして非常に失言をいたしましたが、そういう事務の慣習があるという意味で申し上げたわけでございます。全国的にそういうものを出せという指示は本社はいたしておりませんけれども責任は管理局長自体でやっておりますので、そういう形式をとっておるところもございますし、また、貨物課長なりあるいは部長なりが行ってお話を申し上げているところもございます。
  72. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 時間がないので残念なんですが、本来ならその実態を全部聞かせてもらいたいと思うのです。ですから、これは後で結構ですから、どこの管理局はどういうことをやっておる、何日何日何をやった、話し合いはどういうふうにやったということを、資料としてぜひ出していただきたいと思います。  それと、一片の紙切れじゃなくて、その後話し合いをやっていますと言うけれども、むしろ市町村長さんの方から国鉄へ押しかけていって、なかなか会わないけれどもやっと会って話をする程度だという報告を私ども聞いているのです。そういう実態もあるのですから、その辺は十分調査した上で回答をしていただきたいと思います。  もう時間になりましたから、この辺でやめますけれども、地方線については協議会を設けて慎重にやっている。貨物についても、先ほど申し上げましたように、地方経済に大変大きな影響を持っているわけで、しかも一遍に短期間にどかっとなくなるということは、大変な地域経済の混乱を起こすのではないかと思うのです。ですから、貨物についても、そういう集約の多いところについては、むしろいろいろな業者、市町村も含めた協議会みたいなものをつくっていく、そういうお考えはできないのでしょうかね。
  73. 田口通夫

    ○田口説明員 地方協議会のようなものをつくったらどうかということでございますが、私どもの現在まで経験いたしました貨物集約におきましては、それは満点ではございませんけれども、大体及第点かつかつのところはとれるであろうということでやってまいりまして、四十六年から五十一年まで約千百駅程度も集約ができたということでございまして、こういう実績から考えますと、やはりいままでの方法でやっていきたい。さらに荷主も特定いたしておりますので、そういう形で現在の方式をやっていきたい。しかし、できるだけ広い層について十分な説明をするなり、あるいは納得というまでいきませんけれども、理解を深めるなりということに努力は御指摘の趣旨に沿いましてしていきたいと考えております。
  74. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 そういう協議会的なことはやらない、従前どおりの形でやっていく、これでは結局はいままでやってきたことがもとのもくあみ、荷離れにすべて通じていっているのじゃないか。ですから、協議会というのはかなり大げさだということであるならば、もうちょっと小規模な話し合いの場というものを国鉄自身の方が設けていくべきだと思うのです。要望に来たら、その要望を聞いて説明をしますなんという態度では、とてもこれからの世の中は通用しないと私は思います。したがって、その辺はもう一度お考えを直していただきたいと思います。最後に総裁の御意見を聞かせていただいて終わりにしたいと思います。
  75. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま御指摘になりましたような体質があるわけでございます。それで、貨物の問題にかかわりませず、全般的にもう少し地域の問題として物事を考えるような、従来とは少し違う物の考え方を植えつけてまいりたいと思っております。方法として協議会みたいなものがよろしい場合もございましょうし、あえて協議会をつくらなくてもいい場合もございましょうけれども、いずれにしても、体質的に官庁的雰囲気という面が強いといいますか、営業的雰囲気が希薄であるといいますか、私も、そういうふうに最近感じておりますので、だんだんそういう方向に指導をいたしつつあるところでございまして、いま御指摘のことは、私どもに非常にぴんとくる御指摘でございますので、むしろそういう体質を少しずつ直していくことに努力を重ねてまいりたいと思っております。
  76. 坂本恭一

    坂本(恭)委員 終わります。
  77. 大野明

    大野委員長 次に、石田幸四郎君。
  78. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 国鉄運賃法の改正その他について冒頭に修正案が出されたわけでございますから、事態はかなり変わってきていると思います。そういった意味におきまして、今回の修正案が通ると仮定すれば、どれだけの大幅値上げになるか、こういった問題についても、十分な審議が行われなければならないと思いますので、まず、この点からお伺いをするわけであります。  政府提案の中にも出ております物価変動率、これの考え方、それから修正案に出てくる経費、これに物価変動率を掛けて、そしてまた、その前事業年度経費を差し引くということになるわけでありますが、まずお伺いをしたいのは、運輸当局として、この物価変動率とこの問題をどういうふうに数字の上で想定をしておられるのか、これからまずお伺いをいたしたいと思います。
  79. 住田正二

    住田政府委員 国鉄経費の中には人件費、物件費があるわけでございまして、人件費は毎年賃金統計によって上昇率が示されております。また、物件費の中には卸売物価指数の変動に連関するものもあれば、あるいは消費物価指数と相関するものもあります。そういう点を配慮いたしまして、たとえば五十二年度であれば、五十年度と五十一年度の間の賃金の上昇率あるいは卸売物価、消費物価の上昇率を国鉄経費の占める比率によりまして算定する、それで算定しまして出てきたのが物価上昇率という形になるわけでございます。
  80. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういう抽象的概念は初めからわかっておるわけなんですよ。ですからそれを、たとえば五十一年度の物価等の変動率を年平均でどういうふうに数字的に把握をしておるわけですか。卸売物価指数、消費者物価指数、賃金指数、こういったものが絡み合って変動率が出てくるわけでしょう。運輸省はいままで概算で一〇%というふうに言ってきているわけですけれども、しかし、それは将来の政府の物価政策、そういったものが成功したという場合を想定して一〇%と言っているのじゃないですか。そういった意味においては、物価等の変動率はもう少し上がってくるのではないか、実際の数字は上がっているのではないか、こういうふうに思うから、その中身を、卸売物価指数で幾ら、消費者物価指数で幾ら、賃金指数で幾ら、そういうものを何%ずつ掛け合うと、その数字が一体どのように出てくるのか、具体的な数字の上でお伺いをいたしておるわけです。
  81. 住田正二

    住田政府委員 五十一年度と五十二年度を比較いたしますと、結論的に申し上げまして、物価等変動率が一一・九%の上昇になっております。その中身といたしまして、賃金指数の方が一二・八%、消費物価指数が九・三%、卸売物価指数が五・五%、こういうものを組み合わせて出たのが一一・九%ということになるわけでございます。
  82. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いま運輸当局のお答えによりまして、物価等変動率は一一・九%である、こういうことが明らかになったわけでございます。  そこで、今度は経費の問題を詰めるわけでございますが、五十一年度の監査報告によりますれば、経費というのは損益計算書にあらわれた経費、人件費、動力費、修繕費、業務費、租税及び公課、利子及び債務取扱諸費、減価償却費、固定資産除却費、繰延資産償却費、こういったものが経費と定義をされておるわけでございますが、当然、損益計算書にあらわれてきた経費は、いろいろな規程によって明確に示されておるわけでございますから、これが中心になると思うのです。この中には、自動車の諸経費は別立てでありますから除かなければならない、あるいはターミナル法ですか、そういうものに基づくものも除かなければならぬということに聞いておりますが、五十一年度のこの会計監査報告書の中でどれとどれとどれが経費の中に該当するのか、一つ一つ明細に挙げていただきたいと思います。そしてこの五十一年度の損益計算書におきます二兆九千百五十六億、その中から若干自動車の経費等を引かなければなりませんが、そういった意味で一体五十一年度を基準として改正をする場合に、この経費の額を幾らと見るのか、これが非常に問題になるわけです。物価等変動率は一一・九%と明示されたわけでありますから、当然、経費の内容が確定をされなければ数字は出てこない、そういった意味で内容をお伺いいたします。
  83. 住田正二

    住田政府委員 五十一年度国鉄経費が、営業、営業外合わせまして二兆九千百九十三億円でございます。この中から、自動車関係経費五百七十六億円を引きますと、二兆八千六百十七億円、これが今回の法律の基礎になる経費ということに相なるわけでございます。
  84. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは五十二年度経費はまだ決算報告の上に出てこないわけでございますから、今度の修正案によって値上げ考える場合には、五十二年度経費というものは五十一年度決算に一一・九%を掛けた数字である。いま自動車経費を除きましたけれども、それを除いて二兆八千六百十七億ですか、それに一一・九%を掛けた額、このように考えてよろしゅうございますか。
  85. 住田正二

    住田政府委員 そのとおりでございます。
  86. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 さらに、今度の法律によりますれば、五十二年度においては値上げが全く行われなかったわけでございますから、五十三年度経費と五十一年度経費との問題が話題になるわけだと思うのですが、五十三年度運賃値上げをすると仮定すれば、いま示された五十二年度経費三兆二千二十二億、それにさらに一一・九%を掛けて三兆五千八百三十三億、そういう数字になろうかと思うのですが、そういうことを想定しての経費増の幅、そういうものが出てくると思うのですが、いかがですか。
  87. 住田正二

    住田政府委員 五十二年度決算ができておりませんし、五十二年度から五十三年度への物価変動率というものが出ておりませんので、先ほど一一・九%と申し上げたのは、五十一年度から五十二年度の数字でございますので、五十三年度の場合にはもう少し低い数字になるのではないかと思いますが、大まかに言って、いま先生の御指摘のような数字になろうかと思います。
  88. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 五十二年度物価変動率が明確にまだ出ていないわけでございますから、若干数字は違ってくると思いますけれども、ほぼいまお認めになったわけでございます。そうしますと、今度値上げをできる可能性のある経費の増の幅というのは、私の計算によりますと、約三千八百億ぐらい、こういうことになります。そうしますと、五十三年度運賃改定をする場合は、いま申し上げました三千八百億程度が問題になるわけでございまして、その数字を勘案してみたときに、五十三年度運賃改定というものは実収で何%、名目で何%ぐらいになりますか。
  89. 住田正二

    住田政府委員 正確に計算はいたしておりません。といいますのは、経費上昇額の方はいま御指摘になったような数字だと思いますけれども、割る分母の方がまだ確定いたしておりませんので、正確な数字は出しにくいわけでございますけれども、実収で二六前後になろうかと思います。
  90. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 名目ではどのぐらいになりますか。
  91. 住田正二

    住田政府委員 今後の運賃の改定というのは、この法律が通りますと、国鉄総裁が適時適切に判断して行うということになるわけでございます。その場合に、国鉄総裁としては、他の交通機関との競争関係というものを十分配慮いたしまして、できるだけ国鉄離れの生じないような形で運賃値上げ考えるということではないかと思いますので、名目と実収との間にどれぐらいの差ができるかわかりませんし、また、先ほど来御答弁申し上げておりますように、利用減というようなものがあっても、それはできるだけ営業努力の中で吸収していく、またさらに、値上げ幅自体につきましても、増収努力であるとかあるいは経費節減によりましてできるだけ圧縮するということでございますので、先ほどの数字は上限の数字であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  92. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 上限の数字であることは私もよく承知いたしております。その上で、いわゆる現実的な問題をあなたは逃げていってはいけないのであって、いままでだって実質アップ率名目アップ率と両方出しておったじゃないですか。そうした意味で、二六%の実質アップ率ならば名目は何%になるのか、可能性として理論的にどうなるのかということをお伺いいたしておるわけですから、それはお答えをなさらなければいけないと思いますよ。
  93. 住田正二

    住田政府委員 いま各党問で御討議いただいている「国鉄再建基本方向」の中で、利用減というものは営業努力でできるだけ吸収するということがうたわれておりますので、したがって、名目と実収との乖離というものをなくなす方向で努力いたしたいと思っております。したがって、従来とは違った考え方処理いたしたいと思います。実収が幾らになるから当然名目が幾らになるということでなくて、実収と名目とが大体同じような数字になるようにいろいろ工夫をいたしたいと思っております。
  94. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 これからの問題はこれからの問題ですよ。現実的な問題をいろいろ加味しなければならないことは私もよく承知しております。しかし、従来のやり方としてそういうような出し方をしていたじゃないですか。従来の出し方によると、どのぐらいになりますか。
  95. 住田正二

    住田政府委員 従来の方式でいきますと、一三七ぐらいになろうかと思います。
  96. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題はこの程度にしておきましょう。いずれにしても、名目というのは実際に窓口で切符を買う場合の上げ幅になるわけでございますので、いま言われたいろいろな施策を講じて上がらないようにしていただきたい、こんなふうに思うわけであります。  それから、まず国鉄総裁にお伺いをいたしますが、この政府提案によります法律案あるいは修正案にいたしましても、結局これは法定主義を外すわけでございますから、毎年値上げをするということにその趣旨が貫かれておると思います。特に物価変動率等の問題を出して、そして経費にそれを掛けていく、その趣旨は、経費の増大分を抑えよう、何とか値上げによって吸収をしたい、そういう趣旨でございますから、毎年行われないにしても、あるいは一年ごとになるという場合もあるかもしれませんけれども、しかし、この法律の趣旨は、原則として毎年値上げできることになっておるわけですね。国鉄当局は、経営立場からいって毎年の値上げを希望しておるのですか。
  97. 高木文雄

    ○高木説明員 従来は、国会でお決め願う形になっておりましたものですから、率直に申しまして、営業の方から言えば、こういうやり方が一番望ましいという案が仮にございましても、なかなかそのとおりにはいかない。といいますのは、法律を御審議願うことにつきましては、いろいろ準備の都合もあり、大変大きな仕事になりますので、とかくまとめてお願いをするという傾向にあったように思うわけでございます。  それで、これからは当然、限度額の中で、なるべく小さい幅で、そして他の競争機関との関係を頭に置きながら、どうしてやっていったらいいかということを中心に考えていくことになろうかと思います。そうしますと、何しろ急に今度やり方が変わるわけでございますから、もう少しとっくりいろいろと考えてみなければならないわけでございますけれども、前の政府案でお願いいたしましたときと今度の場合とどのように違うかわかりませんが、いままで政府案で考えておりましたときの私ども考え方は、やはり上げ幅をなるべく小さくした方がよろしいのではないか、そのかわり、毎年毎年というわけでもございませんけれども、従来よりは小幅にするかわりに時折上げさせていただくという形の方がよろしいのではないか、まとめていくという行き方はどうもうまくないのではないかというふうに思っておるわけでございます。  非常に残念ながら、日本の経済の場合には、現在のところ賃金が毎年上がっております。物価も毎年上がっておりますので、ほっておきますと、それだけまた赤字がふえるということが、いまの最大の悩みでございますから、それとの対応といたしましても明確にはお答えできません。まだいろいろ考えてみなければわかりませんけれども、どちらかと言えば、幅は小さくして、そして頻度はむしろいままでよりも勇敢に時折お願いする、こういうことではないかと思います。
  98. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時折値上げをするならば、上げ幅が小さければ、何も法定主義を外す必要もなくなってくるのじゃないですか。しかし、本音は、毎年値上げをしたいということでしょう。鉄監局長、これはどうなんですか。
  99. 高木文雄

    ○高木説明員 これは今後の日本の経済の動向によることが非常に大きいわけでございまして、昭和四十八年の石油ショック以来の今日の賃金の上界率あるいは物価の上界率というのは、過去のトレンドから見ましても非常に異常でございます。したがいまして、次第にこの傾向は安定の方向に向かうに違いないと思っておるわけでございます。そこで、経費の増加額というものも、ここ二、三年経験いたしました急激な上昇というのは、ある意味では非常に異常であったわけでございますので、最近私どもが持っておりますところのある種のイメージのとおり今後やっていかなければならぬということにはならないのではないか。そういう意味でなるべく上げ幅を小さくすることもできましょうし、頻度もそうしょっちゅうということでなくていけるのではないかと思いますけれども、私が申しましたのは、たとえば三年に一遍にしてまとめて上げた方がいいか、あるいは上げ幅をうんと小さくして、そのかわり時折上げさしていただいた方がいいかということになりますと、どうも営業の方の都合から言いましても、また、利用者の方々が受けられることになるショックといいますか、そういうことから言いましても、余り上げ幅が大きい行き方というのは、どうもうまくないのじゃないかという感じをいま持っておるわけでございます。
  100. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 しつこいようですが、もう十年、二十年の長期展望はやめまして、この五年ぐらいの問題として考えた場合、具体的に五十三年、五十四年、これから国鉄再建しなければならないわけでございますけれども、五十三年、五十四年度助成を増加してもらうという問題と地方ローカル線の問題を基本的にどうするか、いろいろな対策を講じなければならぬと思います。しかし同時に、やはりいま国鉄再建の柱は三本ですね、国の助成国鉄経営努力利用者負担、この三本の柱から見ても、もうすでにこれは閣議決定されている問題でもありますし、そういう短期展望に立って考えてみた場合、本音としては、やはり毎年値上げということになるのじゃないですか。
  101. 高木文雄

    ○高木説明員 今回のお願いしております案、もしくはただいまお聞かせいただきました修正案のいずれの場合におきましても、大変やり方が変わるわけでございますが、これは私どもにとりましては、ある意味では非常にきついことでございます。特に最近のいろいろな輸送事情を見ておりますと、かなり従来とは違って、一段と激しい競争にさらされてきたなということをしみじみと感ずることが多いわけでございます。そういうことを考えますと、制度としてどうあるかというそこが変わるということが一つと、それから競争が非常に激しくなってきたというか、まだ全然運賃を改定できないという状態ではございませんと思っておりますけれども、いわば天井に非常に近づいてきたという感じがいたすわけでございまして、そういう点から申しまして、私どもとしては、ちょっと従来には考えられない非常に厳しい状態に置かれてきておるというふうに思います。  お客さんに御迷惑ということがあってはいけませんが、同時に、私どもといたしましても、最近経験いたしましたように、旅客の輸送量が減ってくる、貨物の輸送量は四十五、六年から減ってきたわけでございますけれども、旅客の輸送量が減ったという経験は、何しろ初めてでございまして、むしろそうした営業的にどうやっていかれるかなというようなことを考えますと、そうしょっちゅう改定をしてやっていけるかどうかということは、率直に言って非常にむずかしい。よほど幅なり時期なりやり方なりというものを、いままでとは違った形で考えていかなければならないと思っております。  それについては、やはり他の面、経費の節約ということのためのもろもろの努力と、それからぜひともやはり強い政府のお助けというものがないといかぬわけでございまして、そこらの組み合わせを今後どういうふうにウエートづけをしていくかということは、いまなかなか情勢といいますか経済の動きが急激でございますので、私どもとしても、はっきり申し上げられませんけれども、その三つの組み合わせしかないのではございますけれども、大変条件は厳しいという感じを持っております。
  102. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総裁として当然、他の交通機関との競争の問題も考え利用者負担の限界等も考慮して値上げをしないような努力をしなければならぬということは、その御趣旨はよくわかります。しかし、鉄監局長にお伺いしますけれども、具体的に五十三年、五十四年の予算編成という問題を考えたときに、その段階まではやはり経費は増大をするというふうに見通しをするのが正しいわけでしょう。そういうふうに考えてみた場合に、仮に国鉄当局が毎年値上げをしたいというような申請を、少なくとも短期展望の上に立って考えた場合に、当然、これはそのときの諸情勢を勘案してとめるべきはとめなければならぬわけでありますけれども、その問題についてどういうような所感を持っていますか。
  103. 住田正二

    住田政府委員 今回の法律の改正の趣旨は、国鉄総裁の判断で適時適切な値上げを行うということになっているわけでございます。したがって、五十三年度の段階でどういうような運賃値上げを織り込むかということは、今後の国鉄の財政状況を見ながら決定される問題ではないかと思います。確かに経費の上昇はございますけれども、先ほど来申し上げているように、できるだけ経営努力によって経費上昇は吸収していくということでございますので、どういうような内容の運賃値上げをするかは、今後国鉄総裁の判断を基礎に検討させていただきたいと思います。  今回修正案が先ほど出されたわけでございますが、私どもの受けとめ方といたしましては、従来の三本柱というものの考え方が、若干これで変わってくるのじゃないかというように考えております。といいますのは、運賃値上げ経費上昇額だけということになるわけでございまして、したがって、国鉄再建というのは、国鉄経営努力とそれに応ずる国の行財政上の援助という二つの柱に重点が置かれてくるわけでございまして、運賃値上げ経費の上昇をカバーするだけでございますので、それによって国鉄再建を図るということではないわけでございます。
  104. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは大臣にお伺いいたします。  いまいみじくも鉄監局長の方から三本柱と言われ、しかも利用者負担限度額というのは、経費の増大程度、それもいわゆる上限規定するものでありますから、もう少しそれを下回るところで恐らく運賃申請が行われてくると思います。そうしますと、国鉄経営努力というものがもちろんありますが、これからいま問題を詰めたいと思いますけれども、やはり構造的に欠損が出る状況がありますね。七千億と言われております。しかし、いまのお話をずっと推論をしてみますと、上限を決めたわけですから、その上限より下回らなければならぬということは当然であります。また、利用者国鉄離れという状況も考えてみますと、先ほど示された三十何%というような値上げにはならない、また、そうあってはならないというふうに思うのでございますけれども、そういった意味において、七千億の構造的な欠損というものはさらに増大をするというふうに受けとめていかなければならないと思うのです。  いずれにしても、この構造的欠損というものがそう簡単になくなる問題ではないわけでありますから、今回運賃改定利用者に求めるというその反対給付というわけじゃありませんけれども政府再建に対してもう一歩、前回以上の積極的な姿勢を示さなければならぬ、こういうふうに思うのです。それはやはり単なる文言の上だけでは意味がないわけでありまして、来年度の予算編成あるいは五十四年度の予算編成において、実質的に大幅な助成の方法を考えなければならぬと思いますが、これについての御見解を承りたい。
  105. 田村元

    田村国務大臣 私は、過去の国鉄の財政問題についての対処の仕方を批判しようとは思いません。しかしながら、ややともすれば、運賃値上げというものに過度に頼り過ぎておったのではないかという考え方運輸大臣になる前も抱いておりました。今度は運賃値上げについて厳しい上限の枠をはめられたわけでありますから、しかも国鉄経営現実のとおりでございますから、当然、政府として従来以上の責任を感じなければならないし、果たしていかなければならぬわけであります。でありますから、政治、行政の責任を痛感いたしておりますが、いろいろな面で本来国鉄負担の限界を超えるもの、そういう費用に対しては思いを新たにして政府が保護すべきもの、このように考えております。  その意味で、先ほどもちょっと申し上げましたが、特定財源の問題等についても意欲的に取り組んでおるような次第でございます。
  106. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いま申し上げました構造的欠損、それからまた、国鉄経営上の負担の限界を超えるという問題ですけれども、具体的にこの構造的欠損の定義を一体どういうふうに考えたらいいと思いますか、いかがでしょう。
  107. 住田正二

    住田政府委員 構造的欠損という意味でございますけれども、従来よく例に挙げられておりますのが、地方ローカル線であるとかあるいは国鉄のバスあるいは公共負担というようなものがその例になるのではないかと思います。  いま各党間でお話しをいただいている「基本方向」の中で、国鉄経営いたしております路線の中には、きわめて効率性の低いものがあるわけでございまして、そういう分野につきましては、他の輸送機関といろいろ競合している面があるわけで、そういう点を考慮して、効率的な輸送体系の中で国鉄がどうあるべきかということを十分検討した上で、なおやはり国鉄として果たさなければならない使命がある、その使命に伴って生ずる赤字、そういうものが構造的欠損というものではないかと思います。  具体的な例として、先ほど地方ローカル線の例等を出しましたけれども、地方ローカル線についても、どの範囲が構造的欠損であるか、構造的欠損であるとしても、どこら辺まで国あるいは地方公共団体がめんどうを見なければいかぬのかというようなことは、今後国鉄経営改善計画の中で具体的に示されていくことになろうかと思います。そういう準備を五十三年、五十四年の二年間にやった上で、五十五年からそういう点についての助成を行って、国鉄を健全経営に乗せようというのが、いま各党間のお話し合いの趣旨ではないかと考えておるわけでございます。
  108. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 本当はすでにこの構造的欠損というのはわかっておるわけでございますから、これとこれとこの問題については責任を持つという政府の最低の条件を出さなければならぬと思うのです。そういうものの柱が立たない限りは、やはり繰り延べ、繰り延べということで最終的に累積赤字の解消を図るというような形をとる以外に方法はないわけですから、もう少しその点ははっきりしてもらいたい。  特にこれから新線建設をする場合が出てくると思うのですけれども、たとえば新幹線と並行の在来線との経営成績を見てみますと、東京−新大阪間、新幹線において二千四十二億の収益で係数が四六。在来線はマイナスの千二百四十五億、収支係数が一六九。新大阪−博多間が新幹線の収益が百十八億、収支係数が九三、とんとんですね。在来線の赤字は千百六十八億、一八九という収支係数になっておるわけです。  そうしてみますと、上越新幹線あるいは東北新幹線をつくった場合も、当然並行の在来線の収支係数が二〇〇ぐらいになってくると考えられますね。この予測値がどういうふうになるか、いますぐ明確にする必要はないにしても、当然そういう方向考えられるわけでしょう。そうすると、新幹線をつくれば在来線の主要幹線までも構造的に赤字が出てくるわけでしょう。そういう問題まで構造的欠損の中に考えるのか考えないのか、ここら辺の判断は非常に大事な問題になってくる。今後、国鉄が都市間の旅客輸送、大都市圏の旅客輸送あるいは定形貨物というものを中心として経営的努力をしていくわけでありますけれども、この二つの新幹線をつくっただけでも、構造的な欠損はそのようにものすごい赤字となってくるわけであります。こういうものも当然、構造的欠損の中に含まれるべきじゃないかと私は思いますけれども、これはどうですか。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  109. 住田正二

    住田政府委員 いま各党間でお話し合いをしていただいている基本的な考え方の中で、国鉄の任務は都市閥旅客輸送、大都市通勤輸送、貨物の大量定形輸送にあるということになっているわけでございますが、いま挙げましたものは、国鉄が商業的に採算がとれる範囲のものであるという認識をいたしているわけでございます。  確かに新幹線ができますと、並行在来線の経営は悪くなりますけれども、新幹線と合わせれば大体黒字になる、すぐ黒字になるわけではございませんけれども、数年先には黒字になるというふうに見ております。したがって、新幹線ができたから東北線あるいは上越線が構造的欠損になるという見方はいたしておりません。  今度の「再建基本方向」で国鉄責任範囲ということが明確化されてきているわけでございまして、あの範囲内のものは構造的欠損にはならない。もちろんあの中で公共負担によりまして赤字が生ずる場合には、そういう公共食掛については、構造的欠損と見ざるを得ないものもあるかと思いますけれども、そういうものを除きまして、普通の営業、都市間の輸送であるとか大都市通勤輸送というものが構造的欠損に該当するというようには考えていないわけでございます。
  110. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 構造的欠損とは考えない、新幹線と在来線をトータルで見ていくのだというお話でございますが、それはそれも一つの見解でありましょう。しかし、これが今後また新幹線が延びるに従って大きな問題になるということについては提起をいたしておきます。  さらに、これは運輸大臣にお伺いをしなければならぬのでございますが、国鉄運賃のグリーン車と航空運賃が新聞でもずいぶん話題になりまして、ついにグリーン料金を下げざるを得ないというような状況になったわけですね。そういうふうにいろいろ話題が出ておる中で、大臣もいままでおっしゃっておったと思うのですが、やはり他の交通機関との調整を図らなければならぬ、早く言えば総合運賃政策というものを導入しなければいかぬ、そういうようなお考えが私はあるのではないかと思いますけれども、この点についてどういうふうにお考えになりますか。
  111. 田村元

    田村国務大臣 私は、おっしゃるような方向に将来進むべきだと思っております。実は、率直に言って、国鉄のグリーン車と航空運賃の比較をしてみましたときに、これはまことに不自然であります。もっとも外国では、汽車で旅行するのが非常にぜいたくな旅行という観念もあるようでございますけれども、また、その説を支持する学者等も日本に一部おるようでありますけれども、日本の場合は、何といっても国鉄は全国くまなく行き渡っておる、しかもヨーロッパと違って旅客が中心であるということを考えますときに、単にわれわれはヨーロッパ等を参考にするわけにはまいりません。でありますから、運賃決定については総合的な判断をしなければなりません。原価主義に基づく、あるいはサービスの問題等いろいろな面を考えてランクづけをしていく必要はあろうかと存じます。  実は、まだ公にはいたしておりませんけれども、私は、でき得べくんば運輸省の行政機構そのものを総合交通体系にそぐうような体系にしたいということを考えて、いろいろと私案をつくってまいりました。いまの運輸省、率直に言って各局が皆商売がたきのようなかっこうになっておる、しかも横の連絡がないということでありまして、運賃決定をするときに運輸省の何らかの機関にすべてが相談をかけて、そうしてそこで調整をしていくというようなことにすれば、いわゆる俗に言う総合運賃体系というものが保たれていく、このように考えております。でありますから、まだこの行政機構改革がどのようになるか、第一、私が何年先まで運輸大臣をいたしますか、これははっきりわかりませんから、何とも明言はできませんけれども、少なくとも私は、そのような考え方で今日まで進めてまいりました。いま石田さんのおっしゃること、私も大体同感でありまして、そういう線でこれからも検討をしていきたいと考えております。
  112. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 まさに運輸大臣が言われるようなケースが一つ出てきているわけなんですけれども、いま具体的に申し上げますが、その前にもう一つ、いま国鉄総裁がいろいろごちゃごちゃ言われましたけれども、これは毎年もしくは隔年ごとの運賃値上げ方向であることは、だれが見てもそういう法律案になっておるわけです。しかも国鉄経営現状の上からいけばそれが迫られておる。特に大蔵当局あたりから厳しく注文をつけられるわけですね、そういうようなごまかしはやめて、考えてみますと、やはり今度は逆に国鉄運賃値上げというものが、いま申された他の各交通機関の各種の運賃値上げの先導役になってしまうおそれすらあるわけですね。その問題の歯どめも十分にお考えをいただくような制度をつくっていただかなければならぬということを申し上げておきたいと思うのです。  一つの事例を挙げるわけでございますけれども、これは国鉄経営の問題にも関連をするのですが、いま大阪−鳥取問において中国縦貫道路を経由したバスの運行が行われておるのです。このパンフレットを見ますと、この特急パスは大阪−鳥取間を三時間三十分で走っておる。そして国鉄の場合は、時間表を見ますと、特急で四時間ちょっとかかっていますね。しかも料金が、これは去年の場合でございますけれども国鉄料金運賃その他を入れまして二千四百八十円、この特急バスは千七百円。特急バスは三時間三十分、特急の方が四時間ちょっとかかっておる。しかも特急バスの料金国鉄に比較して二千四百八十円のものが千七百円だ。ことしの七月に二千三百円に値上げをしたそうでございますけれども、これは恐らく考えるに、かなりの大幅値上げですね。三五%ぐらいの値上げになっておるのです。そこまで値上げをすれば、ある程度の調整はとれるのかもしれませんけれども、しかし、前年度の比較を考えてみますと、千七百円に約二千五百円ですから、八百円も違うわけですね。早くて、しかも料金が安いということで、そういうところにこの会社が目をつけたのだと思うのですけれども、そういうわけで、こういうような状況も同じ運輸省の中でやっておるわけですから、このことによって、こういうものを認可することによって、ますます在来線の赤字を助長するようなことになってしまうわけですね。そういうような問題についても十分なる御検討をいただかないと、ばらばらな行政をやっておったのでは国鉄はどうしようもない。  しかも、こういうのに対応して山陰本線のあるいは福知山線のそういうような電化、複線化というような問題を考えたところで、これは財政的にいっても、工事期間の上からいっても早急にできる問題ではないわけですね。そういった意味で、これらの、特に今度国鉄運賃認可事項になるわけでございますから、認可に当たっては慎重な上にも慎重な態度をお願いしたい、こういうふうに思うわけですが、もう一度それに対する御所見を承りたい。
  113. 田村元

    田村国務大臣 いまの事例でございますが、国鉄は線路が敷いてございますから、その距離によって運賃をはじき出す、バスの場合は短絡できるというようなことがあるのでありましょう。いずれにいたしましても、これからの国鉄運賃を決めていくときには、そのような問題をも含めてきめ細かく、場所によってはケース・バイ・ケースというような決め方をしていかなければならぬ時代が来たのではないか、これは国鉄当局もそのように考えておるようでございます。  いずれにいたしましても、そういうことが起こってきたのも、航空運賃とグリーン車との関連と同じような趣旨でありまして、でありますから、仮に先ほど申し上げました行政機構がうまくいったとして、仮に運輸政策局というようなものができれば、そこで運賃調整をすることができるというような権限を持たしていくとか、いろいろな方法を講ずる。  ただ私は、国鉄を救うために国鉄運賃を基礎にして他の運賃を決めようと思っておりません。率直に言って、国鉄も一つの交通機関であるという考え方の上に立って運賃は決めていかなければならぬもの、これは私の信念でございます。でありますから、ときに国鉄に苦しい事態が起こり得るかもしれませんけれども、その点公正に万遺憾なきを期して進んでまいりたい、こう考えております。
  114. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その話に関連しまして、一体政府国鉄の位置づけをどう考えているのか。これはいろいろな考え方があると思いますが、やはり全体の輸送量という問題を考えてみた場合に、私、一つの数字を挙げますが、たとえば人キロで三〇%と言われていますね、旅客の場合。それから貨物の場合はトンキロで、あれは一二%ぐらいですか、そのぐらいのシェアと言われておるわけですね。これを減らすとなれば、それは経費も減るでしょう。あるいは全体の輸送量というものを考え、あるいは将来またさらに文化生活が前進をいたしますれば、やはり交通量というものもふえるわけですね。そういうものを考えて、一体現状程度の数字は維持し得ると考えるか、あるいは微増すると考えるか、あるいは減少すると考えるか、そこら辺の見通しをつけない限りにおいては、国の助成の方針も私は定かには決まらないと思いますよ。ここら辺の見通しをどういうふうに責任者としてお考えになりますか。この一つの基準が決まらないことには、今後その方向が出てこないように私は思うのですが、いかがでしょう。
  115. 田村元

    田村国務大臣 私は、やはり国鉄は健全経営をするためには、ぜい肉はとらなければならないと思います。しかしながら、今日の国鉄のシェアというものを減らすという前提の上に立って考える必要はない。私は、やりようだと思うのです。それが経営努力だと思うのです。でありますから、中長距離、大量輸送あるいは貨物において大量定形輸送というような国鉄に与えられた使命があるのでございますから、この使命を果たしていく、そしてその位置づけられた責任を全うしていくということが必要だろうと存じます。  ただ、先ほど申したように、ぜい肉だけは落とさなければならぬだろう。これは仕方がないことでありまして、御協力を賜らなければなりませんが、私自身いわゆる俗に言われておる安楽死論をとろうとは思っておりませんし、国鉄はやりようによっては、まだまだりっぱに生き長らえることができるというふうに信じております。
  116. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 もう一つ運輸大臣にお伺いをいたさなければなりませんが、総合運賃政策を導入するということを考えてみますと、また、これは総合交通体系の問題もあるのですけれども、いずれにしましても、たとえば道路運送法であるとかあるいは海運の船舶の法律にいたしましても、かなりもう古い時点に決まっておる。たとえば内航海運業法にいたしましても昭和二十七年ですね。道路運送法にいたしましても昭和二十六年。実に二十数年間、四分の一世紀をもう経過しておるわけですね。したがって、総合運賃政策を導入するにしましても、その裏づけとなる法律というものは、もう一遍これは見直しをしなければならないというところに帰結せざるを得ないのではないか、私はこういうふうに思うのです。  いま自動車の問題を議題にしようとは思いませんけれども、過積みの問題もありますし、それによっていわゆる認可料金認可運賃が乱れている、そういう問題もあります。それからまた、荷主の責任等の問題は、そこには明確にされておらぬわけでございますから、ある特定の被害者だけが一方的に被害を受けるというような状況もあるわけでしょう。  そういう問題等を考えた場合に、それらの法律、航空法まで入るかどうか私も十分は検討しておりませんけれども、少なくとも陸海空のそれぞれの法律を総合的な見地に立って見直しを迫られていると思いますが、それについての御見解を承りたい。
  117. 田村元

    田村国務大臣 いわゆる四十六年答申あるいは閣議了解、俗に言われておる総合交通体系、これが志向しておる方向というものは、私は、いまなお妥当なものが多いと思います。しかし、時代が変わりました。これは大きく見直していかなければならないと思います。それが一脈。  それからもう一つは、先ほど私が申し上げましたように、端的に言って、いまの運輸省の行政機構ではなかなか横の連絡がとりにくいということがあります。率直に言って、お役人を後ろに置いて物を言うのもおかしいのですけれども、どうも官僚というのはセクト主義が強いというのか、ときどき、仮にこの局とこの局が何かの問題で対立をする、なかなか譲らない、場合によったら両方の局長を入れかえてやろうかとすら思うようなことがあります。でありますから、やはり総合交通体系というものにそぐうような、そのような行政機構改革をやっていくことは私は絶対必要だ、このように考えるのです。だから、これは官僚の相当な抵抗もございましょうけれども、これを排除しなければなりませんので、その点は御協力を賜りとうございますが、そのようにすれば、総合交通体系といやでも取り組まなければならぬ。もっとも総合交通体系そのものを金科玉条、憲法にしてはならない。これは自由経済に逆行しますし、第一官僚統制が強まります。でありますから、下手なことはできません。けれども、ガイドラインとしての総合交通体系というのは私は絶対必要だと思うのです。そのようにすれば、すべての交通に関する法律あるいは政令等を全部一遍総点検する必要が出てくるのじゃないか。また、そうしなければならぬ。いま、どれがいい、どれが悪い、どこを直せ、それは私にはわかりません。わかりませんが、そういう総点検をしなければならぬ時期は必ず来るし、また、そうしなければならぬ。これは仰せの通りだと、私も同感であります。
  118. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総合交通体系の問題もお伺いしたいのでございますが、その前に、国鉄総裁、いま話題にしました福知山線を経由した特急が走っていますね。福知山線と山陰本線を経過して新大阪から博多まで行く特急が出ていますね。それと比較して縦貫道路を通ったやつの方が早いわけですよ。値段も安い。こんなことをやっていると、国鉄はどんどん取り残されてしまう。確かに、いま便数は大したことではありませんよ。しかし、米子まで入れますと四便走っておるのですね。そうすると、毎日二百人の人が国鉄に乗らないでバスに乗っていくわけです。そういった意味で、地元の声をいろいろ聞いてみますと、どうしたってこれはバスに乗りますよと言うのですね。こういうような現状を放置していくと、あの線はますます収支係数が悪くなってしまう、赤字がどんどんふえる、そう見ざるを得ないわけですけれども、この対応策は一体どういうふうに考えていらっしゃるのか、この点が一点。  それから、私たちから見ますと、これは経費の問題もあるにしても、何らか国鉄の中で対応策が議論をされてもいいのじゃないか、そういうことで、外から見ているだけではわかりませんけれども、そういうものに対する対応というものが非常に遅い、怠慢ではないのかというような感じすら受けるわけですけれども、その点も含めて御答弁をいただきたい。
  119. 高木文雄

    ○高木説明員 いまの山陰の問題でございますけれども、これは率直に言って、非常に多くの問題を持っておるわけでございます。中国縦貫道がだんだん延びていくにつれまして、私ども、いろいろな意味で、非常にショックといいますか、影響を受けております。さはさりながら、いまの山陰本線を強くする、あるいは福知山線を強くするということについてはどう考えたらよろしいのか。これはやはり大変金のかかる話でございまして、もともとそう人口の多い地域ではございません。どうしても瀬戸内海筋と比べますと、人口が少ない地域でございますので、投資効率を詰めて議論していきますと、いわば採算的に、これにうんとお金を投入して改良をしようとしましても、投資効率からいってつじつまが合わないという現状でございまして、他の地域にも似たようなところがいろいろあるわけでございますけれども、山陰線の問題というのは、かなり典型的にあらわれてきております。現在は、どちらかといいますと、新幹線を軸にいたしまして、山陽と山陰とを横に東西につなぐというよりは、南北につなぐ方法をいろいろと研究いたしたりしているわけでございます。確かに対応が遅いという点もあるかもしれませんけれども、中国地域の交通のあり方がかなり変わってきておりますし、それにわれわれがどう対応していったらいいか、同じ投資をするにしましても、どこに重点を置いて投資をしていったらいいか、これはむずかしい問題でございまして、相当研究はさせておりますが、いまここで、こういう対抗策をもって臨むというふうな案を申し上げられるところまではとても煮詰まっていない現状でございます。
  120. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 大臣にお伺いをいたします。  いまの問題も考えまして、いわゆる中国縦貫道ですか、こういうものが延びれば、国鉄赤字はますますふえるという問題があるわけですね。やはりそういうものを整理するについては、総合的な交通政策が必要だということが従来ともに言われておるわけですね。総理は経企庁長官のときにも、この総合交通体系というのが確かに話題になって、やらなければならぬということを歴代の経企庁長官がおっしゃっている。運輸大臣も恐らくそういうお考えを先ほど申されたのだと思うのですけれども、このやり方ですね。実際に運輸省の担当の部局に聞いてみますと、総合交通体系なんというのは青い鳥だ、現実にはなかなか存在しないんだと。これはいわゆるエネルギーの問題、経済成長率の問題、いろいろありますね。ですから、なかなか方向をはじき出すことができないのだろうと思うのですが、私たちが考えるのには、やはり下から積み重ねてこないと、こういう問題は総合的に検討しにくいのではないか、こう思いますね。  わが党のトータルプランによりますれば、まず交通問題を考える場合には、生活地域交通というものから組み立てていかなければならないというのが、実はわれわれの持論なのですけれども、いまその考えをすぐ押しつけようとは思いませんけれども、もう少し県あるいは地方という問題を考えて、そこから積み重ねた場合、いわゆるエネルギー問題というのは大きなネックにはなるにしましても、最小限度このぐらいの輸送量というものが必要だというのが、かえって逆算されてくるように私は考えるわけなんですけれども、そういう面からでも、やはり総合交通政策の基本というものをもう一遍考え直して、そこで、やはり柱を立ててもらわぬとだめなんじゃないか。  各大臣、みんな総合交通政策体系ということをおっしゃるけれども、この作業は何年来進んでおらぬのですね。進んでおらぬだけでいいということになりますと、いまの山陽本線と中国縦貫道みたいな問題になって、問題はだんだん格差が広がってしまうということになるわけでございますので、これは人間の考えでございますから、一〇〇%正しい意見が出るか出ないかは別としましても、ある程度及第点が取れるところなら大胆に打ち出してみないと、基準すらも考えられないということになってしまっては、これはだめだと思うんですよ。これについての御意見を承りたいと思います。
  121. 田村元

    田村国務大臣 総合交通体系というものは、これは運輸省だけで決められるものじゃありません。私は、かねがね思っておるのですが、内閣に運輸省、建設省、国土庁等を中心にした総合交通体系に関する何か常置機関、チームをつくってもらいたいものだ、そうしてあらゆる角度から総合交通体系をもう一回つくり直してみる、そういうふうにしてもらいたいものだとかねがね考えております。  折を見て総理にも進言しようと思っておりますが、大体この総合交通体系というものに対する評価は二つに分かれておって、必要だと言う人と、あんなものは、いまの話のように青い鳥だと言う人もおるわけですが、本当のことを言って、青い鳥でも庭に住みついてくれればいいわけでありまして、私は、青い鳥を追い求めたいと思いますよ。  そういうことで、運輸省だけでできることではございませんから、私は、内閣全体の問題として問題提起をしたい、こう考えております。
  122. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 以上で中断をします。
  123. 宮崎茂一

    宮崎委員長代理 午後二時四十五分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十七分開議
  124. 大野明

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石田幸四郎君。
  125. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 残りの時間を、具体的な問題で国鉄に、その経営の姿勢の問題について関連をしてお伺いいたします。  それは、前国会において公明党の宮井委員が、わが党が国鉄保有地の問題について現地調査をいたし、そしていろいろ質疑を行ったわけでございますが、その補完を含めて質疑を続行させていただきたい、こう思います。  まず、運輸省に伺うわけでございますが、この国鉄の保有地、膨大なものがあるわけでございますけれども、特に新聞等にも話題になりましたように、かなり土地の評価額が高いところもあって、そういうものを効率的に活用するとか売却するとか、そういうような問題が提起をされておるわけですが、国鉄再建のために運輸省としてはいわゆる売却方式を柱にすべきではないかという議論があるようでございます。いわゆる一兆円ぐらいの資産を売却して、そして経営に資すると同時に、また、それに伴う利息の軽減、そういう効果もあるのではないかという議論がなされておるようでございますが、一体運輸省としてこの案が具体的になっているのかどうか、あるいはまた、どういうような構想があるか、まず、その点についてお伺いをいたします。
  126. 住田正二

    住田政府委員 国鉄は、御承知のように膨大な土地、それも余り高度に利用されていない土地を持っているわけでございます。その中には国鉄だけではとても使い切れないといいますか、もっと都市計画とかそういう見地から利用した方がいいような土地もあろうかと思います。そういうような土地については、むしろ処分して借金を減らした方が国鉄再建には役立つのではないか。一般的に申しましても、国鉄のような経営危機にある企業の場合には、できるだけそういう資産を処分して借金を減らしていくというのが一般のやり方でございますので、全部を国鉄が持って関連事業として使うのではなくて、いま申し上げましたように、非常に大規模で国鉄だけではとても手に負えない、もっと国だとか地方公共団体が中心となって活用を考えていった方がいいような土地あるいは余り高収益の望めないような土地については、むしろ積極的に処分した方が国鉄再建に役立つであろうと考えておるわけです。  ただ、非常に大きな土地でございますし、したがって、金額も張ることになりますので、簡単に地方公共団体あるいは国に買ってもらうといっても、すぐ話のつく問題ではございませんので、今後関係省庁にいろいろお願いをいたしたい、さように考えているわけでございます。
  127. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総裁にお伺いします。  その評価額、どのぐらい処分したらいいかという問題は除きまして、いま運輸省の方針としては、借金に充当する、利息の軽減等を図るというような意味合いからも、売却の趣旨が柱になって考えられておるように思うのでございますけれども国鉄当局国鉄当局としての言い分があろうかと思うのです。いろいろ将来に対する計画性もあろうかと思いますので、そういった意味において、運輸省がそういう柱を立てるとすれば、国鉄当局として処分をすべきものはどのぐらいあるか、あるいはまた低効率になっている状況もあろうかと思うのですけれども、そういうものを含めてどういうような方針でおられるか伺いたい。
  128. 高木文雄

    ○高木説明員 基本的な考え方としては、運輸省のお考えと私どもと余り違いはないと思います。何しろ全体として赤字でございますし、それから借入金がたくさんあるわけでございますから、赤字立て直しの常道として、不用なものがあればそれを売却して、少しでも利子負担を軽減するというのが常識であろうかと思います。  ただ、具体的な案件について考えてみますと、たとえば東京の山手線の周辺に昔貨物駅がございましたが、それがいま廃止になっておりますので、いまのところ未利用の状態のまま残っております。これをどういたしますかというような問題になってまいりますと、いろいろ研究させておりますが、やはり単にこれを処分するというのが得策かどうかは相当疑問でございまして、いろいろな事情、と申しますのは、周辺の道路事情その他によって現在のところはどうも評価額が比較的低い、区画整理その他と総合して物を進めてまいりますれば、むしろ非常に値打ちが出てくる可能性がある土地がありますというような場合に、いまこれを売ってしまうことが得策かどうか、数年のうちには値段というか評価が上がってくることが目に見えておりますのに、いま売ってしまうことが得策かどうかというような問題でございますとか、そこへしかるべき施設をつくりましたならば、単にその土地が活用されるというだけではなくて、お客さんにそこへ寄ってもらえるということを通じて、単なる土地の活用ということのほかに旅客誘致の誘因要素が相当あるというような場合がございます。  その辺について、実は昨年の暮れから、私の私的な懇談会というような形で資産活用懇談会という名前をつけてやっておりますが、そこへ十人ほどの都市開発だとか資産問題とかの民間の堪能な方にお集まりいただいて、いま議論していただいておりますが、その議論の焦点も、どの程度のものを売却し、どの程度のものをもうしばらくがまんして持っておって将来活用するかという線の引き方を、個別の案件ごとに、ケースメソッド方式というような形で勉強してもらっておりまして、それに応じて大体の感覚を出してまいりたいと思っております。  ただしかし、それは国鉄の持っております土地の全部について考えておるわけではないわけでありまして、飛び地その他で、むしろ処分した方がいいというものもまだまだたくさんあるわけでございますので、ほかにしばらくの間活用の道のないものは処分していきたいと思っております。それを数量的に把握する仕事をやらなければならないわけでございますが、これはいま、いわば調査表のようなものを回しまして、いろいろ分類をして記入させて集計をするというような仕事をやっておりますが、何しろ量が多いものでございますから、まだその集計の結果を私どもにらむというところまではまいっておりません。いずれ数量的な把握もぼつぼつまとまってまいるかと思いますが、それがいつごろになりますか、まだ報告を受けておらないという現状でございます。
  129. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総裁、五十年一月に行管から、この未利用地等の実態把握について勧告が出されておりますね。これを読んでみますと「経理局は、未利用調査についての実施基準及び未利用地の利用計画についての分類基準を明確化し、各部局に対し、これら基準に基づきその使用する用地の利用状況について総点検を実施させること。」というふうになっているわけでしょう。  いまのお話でございますと、未利用地その他を含めての話だと思いますけれども調査を続行していると言うのですが、これは五十年の一月に行管から勧告がなされておるわけでして、それから二年を経過しているわけでしょう。一体二年もかかってこういう問題の実態掌握がまだ済まないというのは、私は、非常に不可解に思うのですけれども、どうしてこうおくれるのですか。
  130. 高橋浩二

    ○高橋説明員 私からお答えいたしたいと思います。  行管から御指摘をいただきまして、私の方は、一応大きな分類といたしまして、将来の事業計画に必要なもの、あるいはただいま事業計画を検討しているもの及び最後に、いま直ちに売却してもよろしいという、大きな分類による実態の把握は、一昨年から把握をいたしております。それによる数量は確実につかんでおりますけれども、ただいま最初に申し上げた事業計画のあるものというその事業計画とは、どういう種類のものをどういうふうに使うのだという、その辺の基準が非常に不明確でございましたので、ただいま総裁から申し上げましたように、その辺をはっきりした基準を立てて、それに基づいて事業計画及びそれに従ってどれだけの面積が必要か、そういう検討を改めて全国的にいま見直しをやっているところでございます。  大ざっぱでございますけれども、いまの三つに分けた分類については、一件ごとに把握をいたしております。
  131. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまの問題についてはわかりました。そういった土地の活用懇談会をつくって見直しをなすっているそうでございますけれども、いま話が出たように、低効率のものを一体どういうふうに活用していけばいいか、そこら辺の売却すべきか活用すべきかの基準の問題等もいろいろあるようですよね。そういう問題を、むずかしいからといって放置しておいたのでは、いつそういう計画が決まるかわからぬでしょう。いずれにしても、終着点というものを明確にして、そうして指示を出さなければ、ずるずるおくれていくばかりじゃないでしょうか。したがって、いまの全体の把握についても、いつまで、それから計画は一年間なら一年間のうちに立てるとか、やはり大ざっぱな見通しというものを明確にしてもらわなければ、この問題はこれ以上進まないと思います。現在の国鉄経営の危機状態から見て、少々のんびりに過ぎないかと思いますが、いかがでしょうか。
  132. 高木文雄

    ○高木説明員 全部が全部いまから申し上げるような状態ではないわけでございますけれども、非常に多くの場合に、特に土地の値段が比較的高いものでわりあいに類型的に多いのは、都会地の元貨物駅の跡地でございます。そういう場合ですと、旅客駅と貨物駅とが大体同一地点にあるわけですけれども、旅客駅のある方はすでに市街地として相当開発されており、にぎわっておる。ところが、貨物駅があった方はちょっと裏町みたいなかっこうになっておりまして、比較的うらぶれたような感じのところになってしまっておる。それを、しかし地元としては何とか開発したいという計画は、かねがね地元の市町村なり、東京でありますと区役所なりが持っておられるわけでございます。そこらでかねがね市町村側から開発をしてほしいということがあり、また、それを進めるためには、うちだけではだめでございまして、区画整理とかそういう市町村サイドの御計画に乗っていかなければならないわけでございますが、その地点ごとに計画の進捗度合いに差がございましたり、計画はできているけれども、周辺のもろもろの一部移転というような問題が伴いますために、反対派と賛成派があって進まないというふうなことがあるわけでございまして、私どもとしては、むしろ気持ちとしてはいわば焦っておるわけでございますが、そういう先方さん側の事情によって進まないというふうなものもございます。  それから、もともとこの資産をどんどん活用していこうではないかという雰囲気が国鉄の中で盛り上がってまいりましたのは、まだ本当にここしばらくのところでございますので、前にはせっかく先方さんから申し出があったのだが、国鉄側がにべもなく断ったというようなことがありまして、こちら側のこれまでの態度がそうであったために、先方さんからの申し出を断ったり、先方さんから、そもそも国鉄はそういう積極的な気持ちはないだろうということでお申し出がなかったりというようなことがあったのではないかと思います。  きわめて具体的な話といたしまして、最近はいろいろとそういう開発についてのお申し出もいただいているわけでございますので、従来に比べますれば、だんだんと展開が早まっていくものと考えております。ただ、事の性質上、全体計画を立てて、そのうち何割を何年度までにというふうに進めるところまではいうておりません。個別の案件ごとにはある種の見当がつきかかっておりますけれども、全体として何年までにどういうテンポでというようなところまでの絵をかくところまではいっていないという状況でございます。
  133. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 具体的な問題に入りたいのですが、これは運輸大臣にぜひお伺いをしたいのでございますけれども国鉄のそういった未利用地ないしは低効率のものを買収するといいましても、やはりそれを優先的に使うものは地方自治体だと思うのです。御存じのとおり、地方自治体もオイルショック以後大変厳しい財政状態にあるわけでございまして、買いたくても手が出ないというような状況もあるやに聞いております。そういう問題を推進をするために、やはり特別の方式を考えなければだめじゃないかと思うのです。ただ手をこまねいて、地方では金がないからだめなんだと言っていたのでは、売ろうという方針を何ぼ立ててみても、絵にかいたもちにすぎないわけですね。  いま自治省お見えになっていますか。——自治省にお伺いをするわけでございますが、過去何年間かにおいて、水田の買い上げに対して、地方自治体が公共用地に供する場合は特別の債券の制度をつくってやっていたことがございますね。ちょっとその間の説明をしてくれますか。大体年どのぐらいの金額になったか、どういう形でやったか、どこの金を使ったか。
  134. 関根則之

    ○関根説明員 水田債という制度を設けまして、昭和四十五年度から五十年度まで六年間にわたりまして地方債の発行を認めております。総額一兆一千五百四十四億円でございまして、大体各年度二千億程度ずつの債券を発行いたしておるわけでございます。これは先生お話しのように、水田を買収いたしまして公共的な用地にする、そのための買収経費を見るものでございます。
  135. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いま自治省から御説明がありましたように、そういう形で、水田を買い上げるときにはそういう債券を発行してやったわけです。総額にして一兆一千五百四十四億円、約六年間においてこれだけのものが行われたわけですね。年間約二千億ということです。そういう形がもし可能であるとすれば、いま国鉄が毎年二百億から二百五十億ぐらいの売却を予定いたしておるけれども、なかなかそれが進まない、そういう問題もかなりスムーズに進むことになるのではないかと思うのです。こういうような問題を検討できませんか。
  136. 田村元

    田村国務大臣 いま承ったばかりですから、いまここで私が結論的に物を申すこともどうかと思います。しかしいい意見じゃないですか。検討さしてください。
  137. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それでは具体的な問題に入ります。  国鉄側にお伺いいたしますけれども、前国会において宮井委員から、福岡県の志免炭鉱の跡地の問題が取り上げられたわけでございます。これはもうずいぶん長い間かかって検討されてきたようでございますが、志免炭鉱の跡地については、前回のお答えでは、何年後に売却するというようなことは、まだ決まってないというふうな御答弁があるようでございます。また、地方自治体の財政上の問題もあるので、県にも入ってもらいたいというようなことを言われておりますけれども、この問題は決まりましたか。
  138. 高橋浩二

    ○高橋説明員 いま先生がおっしゃるように、前回にもそういう御指摘がございました。その後、私の方の責任者が現地に参りまして、関係町村といろいろこの問題について御協議を申し上げました。  私の方の方針といたしましては、ただいま志免に残っております土地が五十九万平方メートルほどございます。そのうち、私の方で確実に利用したいというのが約一割強の八万平方メートルほどでございます。したがいまして、残った五十二万平方メートルについては一括処理をして、県または関係自治体に売却するという方針で提示をいたしております。  ただいまそういう状況でございます。
  139. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 その問題についてなお具体的にお伺いをしたいわけでございますが、これは半分はボタ山ですね。現地を私も見ましたけれども、実際にあのボタ山のいわゆるボタを活用することはできないような汚泥の多いものだそうでありまして、したがって、実際に有効利用できる土地は半分程度、三十万平米をちょっと欠ける程度じゃないかと思うのですね。そういうようなことを一括で処理してくれと言って、あそこの地方自治体四カ町村に押しつけてみても、できる話じゃないと私は思うのです。だから、県に入ってくれと言下のかもしれませんが、県だってあれだけのボタ山を崩すなんということはとうていできる問題ではない。結局その管理に要する費用というものを見込んだ形でこれはやらなければならないはずですね。そういうわけで国鉄が使いたいという八万平米を除いた五十一万ぐらいのところですか、それを一括で売却するというのは無理があるんじゃないですか。
  140. 高橋浩二

    ○高橋説明員 確かに、一括して一度にということには、いま先生のおっしゃるような自治体の財政状況その他で問題があろうかと思います。私の方で申し上げておる一括というのは、一応全体をどういうふうに一括して処理するか、あるいはそういう方針を一括してとりあえず先にまとめて、そして実際の売却については、その方針に従った売却というようなことも考えられるのではないか。したがいまして、自治体だけでなくて県にも仲に入っていただいて、一括処理方針を決めた上で逐次売却するということも考えてはどうかというふうに考えております。
  141. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私の言うのが、多分にせっかちに過ぎるのかもしれませんが、ボタ山の問題まで一括審議の対象に入れたって、これは話が進まぬでしょう。これは明確に別の問題として考えなければ、この話は進むはずないですよ。その点の見解はどうですか。
  142. 高木文雄

    ○高木説明員 おっしゃることは私どもよくわかるわけでございますけれども、ボタ山だけ残ってしまうと、あとどういうふうにするのかというのが、また困るわけでございまして、何としてもこれはやはりボタ山の処理をどうするかというのを何とか早く見当をつけて、専門家の意見等も聞きながら処理方式を決めるということにしませんと、これだけが残りましても、まことに困るわけでございますので、そういうことでいまお願いをいたしております。何らかの結論が出得るのじゃないかということで、私どもは、そのことのためにいつまでも処理がおくれるということがあってはならぬことは、御指摘のとおりでございますので、県にお願いする、市町村にお願いすると申しましても、現に私どもが管理しております関係上、私ども逃げるわけにはいかないわけでございますので、何とかお願いしておりますとは言うものの、こちらも積極的に取り組みまして、いい案にたどりつきたいというふうに思っております。
  143. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 くどいようですが、総裁、そのボタ山やめたらどうですか。こんな問題は福岡県だって何年来研究されておるわけですよ、あそこは、福岡県にはあのボタ山しかないわけじゃないんだから。ところが、実際にボタ山をどう処理するか、仮にあのボタ山を崩してどこかの埋め立てに使うと言ったって、約二十億円の金がかかるそうじゃないですか。そういうようなことは、いろいろな点から議論されておるわけですよ。しかも、そのボタ山の土地というものは活用がなかなかしにくい。完全にできないとは私も言いませんけれども、現段階においてはあのボタ山の土地は活用できない、ほぼそういうような結論が出ている状況の中で、それで一括処理しろと言ったって、それは無理な話です。したがって、一応あれは別にして、その処理方法は処理方法でまた考える、そういう方法をとらないと、あの問題は解決できないと思いますね。これは議論していてもしようがありませんから、御注文を出しておきます。  さらに、私が非常に残念に思ったのは、現場に行っていろいろな話も聞きました、国鉄側の意見も聞きましたけれども、あそこに、いま国鉄は福岡周辺に宿舎がないから、いわゆるアパート形式のようなものを建てたいということだそうでございますけれども、それにしてもさんざん議論はし尽くされているわけですから、もうちょっと具体的な決断というものをすべきではないかと私は思います。と申しますのは、あそこに約七百幾つかの世帯を入れるだけのアパート群をつくりたいとおっしゃっておるのですけれども、その前提条件というのは、現場の責任者の話を聞くと、いわゆる鹿児島新幹線あるいは長崎新幹線、そういうものができた場合には、それだけの人間をそこに把握しなければならぬから、これだけの大きなものをつくりたいと言っているわけなんですね。一体、鹿児島新幹線や長崎新幹線のめどというのはあるのですか。これは一体十年先にできるのですか。ですから、そういうような物の考え方に立っていたのでは、こういう問題の処理はできないということを、私は特に総裁に申し上げたいわけなんです。一応計画を立てる場合、十五年なら十五年という目標をつくるなり、あるいは短期の目標でも結構でございますけれども、どこかに線を引かなければ話し合いがつかないんですね。  それから、現実にあそこは水の状況が非常に悪くて、現在建っている民間のアパートにももう地下水をくみ上げてお願いをする。水道は供給できませんというような状況の中にある。しかし、国鉄にはずいぶん世話になっているから、そういうものをおつくりになった場合に、水を供給しないとは申し上げませんけれども、非常に厳しいという情勢もわかってもらいたいというふうに地元の責任者も言っておるわけなんですね。  それから、現にあそこは板付飛行場からちょっと車で行ったところでございますから、福岡のいわゆる通勤圏内ですね、完全に。そういう状況から見て、人口急増地帯であるからどうしても学校をつくらなければならぬ。中学校をどうしても五十四年度には開校しなければならぬ状況にあるそうです。そうすると、いま八万平米と言われた中に約二千坪、六千平米近いものですかな、そういうものが町の昔の農業用水として残っているわけですが、それを中心にして学校をつくる以外には、学校としては狭い地域でございますので方法はない。そういうことで国鉄と、それから町の方では意見調整ができないままに今日まで至っておる。  そういうような状況を考えたときに、やはりそういう問題が本庁に上がってきて、そして本庁ではイエスかノーかはっきりした結論を早く出さなければ、これはもう学校建設というきわめて緊急を要する地方自治体の問題もあるわけでございますから、そういう問題がごちゃごちゃしていつまでも結論が出ないなんということは私はけしからぬと思うのです。早く結論を出してあげる。そのことによって地方自治体も方針を変更しなければならぬということにもなるかもしれませんし、あるいは国鉄が譲って、じゃ、ある程度のことで妥協して学校用地まで確保しようかということになるかもしれない。いずれにしても、五十四年度の四月一日の開校ということが目前に来ているのに、まだこういう問題が二年も三年も経過しながら結論が出ないなんというのはおかしいじゃないですか。そういうところに国鉄経営の姿勢の問題が私はあると思いますよ。  もう一つ申し上げますけれども、このそばに須恵町というところがありますが、そこに建っている旧の国鉄職員の宿舎、そういうものがもう使われないままに長年放置されておる。そうして青少年の非行化を助長するような問題になっているそうです。その問題について須恵町あたりからずいぶん国鉄にも陳情が行っているはずです。しかし、旧態依然として壊れっ放しの家がそこへごろごろ並んでいるじゃないですか。そのくらいのことは費用もかかるわけじゃないのだから、早く結論を出して、除去するなら除去する、そういう明確な方針を早く決めなければだめじゃないですか。そういう問題、何年かかるのですか、一体。こんな小さな問題まで結論が出ないようなそういう国鉄経営の姿勢じゃだめじゃないですか。一体こういう問題を処理することは決まっておるんですか、決まらないんですか。一体何年かかるのですか、はっきりしていただきたい。
  144. 高橋浩二

    ○高橋説明員 去る七月の二十八日に本社の責任者が現地に赴きました。関係の三町というのは、志免町、粕屋町、須恵町の三町でございます。この三町に寄っていただきまして、そうしてこれの一括処理というのは、さっき言った方針を決めることを相互に協議いたしまして、早急にこの売却、私の方はできるだけ売却をしたいということで提案をいたしております。  いま先生の御指摘は、その後いろいろ地元からお話があるかと思いますが、私どもただいまそれは聞いております。したがいまして、そういう問題を整理いたしまして、なおかつ、これはいろいろないきさつがございまして、県御当局が仲に入っているということもございますので、その辺をあわせて私の方は早急に事務的な詰めを行いたいというふうに考えております。  空き家が約二百戸ほど、木造の建物が残っております。それについては私どもの方も、いま直ちに全部というわけにまいりませんけれども、できるだけ早くその空き家については除却をして整地をしたい。  なお、もう一つ御要望のありましたのは、あいている土地等に雑草等が非常に茂って、それがまた非常に環境を悪くしているという点もございますので、その点の除草等についても、私の方から委託を申し上げて、環境をできるだけよくするということに努めたいというふうに考えております。
  145. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この問題はこれでやめますけれども総裁、そういうような状況で、そんなささいなことまで決断を下せない組織というのは、一体どういうことになっているのですか。そういう家の除去だとか雑草の除去ぐらいのことが、何年かかって、何年陳情されても解決できないままに放置されているというのは、私は、組織そのものがおかしいと思いますね。一体だれがそういうものを決定する権限を持っていらっしゃるのですか。地方のそういった局長あたりは権限がないのですか。いかがですか。——常務理事じゃだめだ、基本的な問題だから。
  146. 高木文雄

    ○高木説明員 志免の問題というのは、きわめて長い話でございまして、私も、どうしてこう長くかかっているのか、どうもよくわからないのでございますけれども、一般的にはそこに古い建物がありましたり、雑草が生え茂っておりましたりというような問題は、当然これは現地、現地の管理局長のところで処理をすべき問題でございます。売却ということになりますと、一定の面積あるいは金額以上のものにつきましては本社でありまして、いま私、その基準を記憶いたしておりませんが、少なくとも志免のような大きなものについては本社で決めることになっております。
  147. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 国鉄総裁に御要望申し上げておきますが、われわれも組織人でございますから、いろいろな組織の運営をやってまいりました。この問題に限らず、ほかにも問題があるわけですけれども、そういう問題を処理する場合の処理の仕方というのは、国鉄の場合、非常に時間がかかる。確かに、他の地方自治体等との関連等もありましょう。しかし、ささいな問題まで何年かかっても処理できないなどというのは、私は、組織そのものがおかしいのじゃないかと思うんですね。もう一遍、そこら辺の権限という問題、それから組織の運営の問題についても検討のメスを入れていただきたいと思うのです。それでなければ動きませんよ、実際。これはいかにもいまの経営状態が悪いという国鉄の現状の中から、私は、その責任を問われるというよりは、本当にみっともない状況じゃないかと思います。その点だけ御要望申し上げておきます。  それから、安全性の問題について残された時間お伺いをいたしたいと思います。  特に安全性ということになりますと、橋梁とかトンネルとか、そういう問題が話題になると思いますけれども、これは抽象的な言い方になりますが、東北本線に総裁はお乗りになったことがあるかどうか私はわかりませんけれども、われわれもしばしば東北本線に乗っておりますけれども、横揺れが非常にひどい状況でございますね。グリーン車に乗っていても、ひじかけにどんどんひじがぶつかって、ろくに本も読めないというような状況も経験をいたしておりますけれども、こういうものは施設の老朽化からきている現象じゃないのですか。そうじゃありませんか、いかがですか。
  148. 高木文雄

    ○高木説明員 乗り心地の問題につきましては、全国的にどうも非常に問題がございます。ただ、乗り心地と安全の関係ですが、安全サイドからは、かなり検測車等を走らせまして見ておりますので、安全については心配のところまでは至ってはいないと思っておりますけれども、そこまでは至らぬにしても、いかにも揺れが大きくて乗り心地が悪いという現象が起こっております。  その現象のうちで、現在、私ども最も気にしておりますのが、全国の中で東北線と上越線でございます。なぜ東北線と上越線が悪くなったかと申しますと、やはり一つには、四十二年でございましたか三年でございましたかからスピードを上げることになりました。いまから考えてみると、やはりスピードを上げたことと、路盤の保守状況との間においていささか無理があったのではないかという反省が一部には起こっておるわけでございます。もう一つ問題は、ちょうどこの間、十年ほどの間に路盤の保守体制の切りかえをやってまいったわけでございまして、一口に申しまして、大型の機械を使って保守するということに切りかえてきたわけでございますが、必ずしも事前の準備といいますか教育といいますか、いろいろな点で準備不十分というようなことがありまして、予期したほど機械によるところの保守の能率がうまく上がってないという事態になっておりまして、最近は、ここ二年ぐらいの間にいろいろ研究いたしまして、ようやくその問題に手をつけることにいたしました。お客様には大変御迷惑をかけるとは存じますけれども、これからしばらく東北線、上越線については汽車を一時運休する。一日のうちある時間、一本ないし二本汽車を休ませていただきまして、その休ませていただいた時間に大型の機械を入れまして、逐次保守をやっていくというふうに考えております。  なお、東北線については、もともと一部かなり地盤の悪いところがありまして、幾ら保守を繰り返してもすぐまた条件が悪くなるというようなところがございますので、これについては相当基盤的に、根本的に路盤を直すという計画をいま立てて、ぼつぼつ実行に入るところでございます。
  149. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 橋梁の問題についてお伺いいたしますが、橋梁の耐用年数は、鉄骨の場合、鉄筋の場合、何年ずつになっておりますか。
  150. 高橋浩二

    ○高橋説明員 橋梁の鉄げた、いまの鉄でございますが、鉄は耐用年数を四十年、それからコンクリートは五十年ということに定めております。
  151. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 この橋梁の上部部分について耐用年数を五十年と考えて、五十年を経過したものは総体で何カ所ぐらいありますか。何カ所というより何レーン数というんですかね。
  152. 高橋浩二

    ○高橋説明員 年数で言いますと、全体の七割が、いま申し上げたいわゆる法定の耐用年数を超過いたしております。
  153. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 いまパーセントで言われましたけれども、数字で示してください。それから橋梁の下部の基数の問題についてもお示しをいただきたい。
  154. 高橋浩二

    ○高橋説明員 先生の御質問にぴったりの答えになるか、ちょっと違っているかと思いますけれども、橋梁の鉄げた及びコンクリートげた、いわゆるけたでございますが、けたが合計いたしまして全国に八万二千七百七十二基ございます。このうち五十年以上を経過している、今度パーセンテージでございますが、五十年以上から六十年までのものが一四%……
  155. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それぐらいで結構です。
  156. 高橋浩二

    ○高橋説明員 それから六十年から七十年のものが七%、それから七十年以上が四%。したがいまして、二五%のものが五十年以上を経過したけたでございます。よろしゅうございますか。
  157. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 めんどうくさいから私の方で申し上げましょう。大体橋梁の上部分が二万六百九十三レーン数、それから下部の部分が基数にして五万五百三十二、大体そういうものが耐用年数を経過いたしておるわけでございますが、もちろん耐用年数を過ぎたから、直ちに危険性があると私は申し上げません。当然補修しながら使っているものだと思うのでございますけれども、しかし、これは原則的に言って、会計上からも耐用年数を過ぎたものは、減価償却費その他を使ってつくり直すべきものというふうに定められているはずでございます。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕 現実の問題と絡み合わせて考えてみましても、すでに七十年を経過しているものがございます。七十年と申しますと、明治末期につくられたものが、いまなお補修しながら使われているということについては、かなり疑義を抱かざるを得ない。鉄骨の場合は四十年が耐用年数ですから、それから三十年間も経過しているわけでございますから、そういうものの取りかえ行為と申しますか、そういうものの原則論がなければならぬはずだと思います。  それから、トンネル部分について申し上げますけれども、五十年を経過したものが約百四十、六十年を経過したものは八十四カ所、それから七十年を経過したものは七十カ所、合計二百九十四カ所、キロ数にして全体の二六%、三百四十六キロというものが五十年以上経過しておるわけですが、五十年ぐらいのものはいいとしても、六十年、七十年ぐらいのものは、これはそろそろつけかえの時期にきているのではないか。  こういう問題をなぜ私が申し上げるかといいますと、在来線の運転阻害件数のうち災害原因が四十七年から以降際立ってふえているわけです。四十七年が千七百八十回、四十八年が二千三百四十四回、三一%の増、四十九年度は二千五百八十九、一〇%の増、五十年度が前年度より減りまして二千二百七十三回ですか。それから五十一年度に至っては三千七百十二、実に前年度の六三%の増になっております。四十七年から比べると、災害が原因で運転が阻害されたという件数は実に倍以上になっているわけです。  こういうところにやはり施設の老朽化というものが基本的にあるのではないかと私は指摘せざるを得ないのでございますが、まず、この答弁からいただきたいと思います。
  158. 高橋浩二

    ○高橋説明員 いま先生のおっしゃいましたのは、列車支障件数ではないかと思います。私のいま手元にございますのは、そのうちいわゆる路盤とか橋梁とか、そういう線路構造物の災害に原因いたしまして列車に支障する件数というのは、この四年間の平均は一年間に千二百三十件ほどでございます。これはむしろ十年前と、減っているとは申しませんが、年によって非常に違いますので、ほとんど横ばいの状況でございます。私らは、この災害によって列車支障をする件数を、できるだけ列車のダイヤを安定させるために極力少なくしたいということで今後も努力してまいりたいと思いますけれども、ただいまのところは、十年前とほぼ横ばいの状況で、なかなか災害その他によって列車の不通事故がなくならないといううらみを持っております。
  159. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それではお答えにならないわけでございまして、災害が直接あって、それによって運転阻害が起こった、そういう状況がもちろんあるということは、私も承知をいたしておりますが、たとえば小さな災害、それでもなおかつ運転阻害をされたという状況のケースを考えてみた場合に、いわゆる構造的に老朽化が進行しているために、そういうような原因が併存して、そして運転阻害になっている、そういうケースだってあるのじゃないですか。そういう問題についての答弁を求めているわけです。
  160. 高橋浩二

    ○高橋説明員 列車を支障いたします原因には、いま私が申し上げたのはそのうちの災害でございますが、それ以外に、たとえば踏切で列車が支障する、あるいは車両その他が古くなって故障を起こすというものも、全体ひっくるめまして列車支障件数ということで、これが若干ふえているということは、先生のおっしゃるとおりでございます。
  161. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時間がなくなりましたから残念ですが、この問題十分詰められません。しかしながら、耐用年数というものを一応定めてある以上は、いま言った古いものに対する取りかえというものを基本的に考えなければならない、そういう計画をもちろん国鉄当局としては持っていなければならないと思うのですけれども、それはどういうような対応になっているのでしょうか、お伺いいたします。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 高木文雄

    ○高木説明員 もろもろの施設の整備につきましては、まだ私も詳しくはわかりませんが、どうもやはりおくれぎみでございます。いま御指摘の路盤関係のものにつきましても、また車両関係につきましても、どうもおくれぎみでございます。これはやはり全体として経理状態が悪くなっておりますために全体がうまく回らない。一方、新幹線のような大きなものは別といたしましても、複線化なり電化なりの御要請が非常に強いので、とかくそちらの方に経費を回しがちになるわけでございまして、ぎりぎり、安全に欠くることがないよう相当気を使ってはおりますが、本来もう少しそちらの方に力を入れていきたいなということを感じておるわけでございまして、何とかその工夫を今後続けてまいりたいと思います。
  163. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それから、減価償却費の問題についてお伺いをしたいわけでございますが、減価償却費というのは、元来いわゆる使用中のものが老朽化して、それを再建するために主として使われることになっていると思うのですが、最近の減価償却費の数字を見てみますと、かなり低くなってきて、いまは、この三、四年はちょっと横ばい状態のようでございますけれども、取得をしたときの価額と、それを再生しなければならない価額というものは、金額的に相当差があるわけです。ですから、減価償却費というのは、いまはいろいろ物価高や何かがございますから、金額の上では伸びておるのは私も承知しておりますけれども、やはりパーセントというものがある程度横ばいということはまずいのではないか、むしろ減価償却費というのは、もう少し上昇ぎみに回復してこなければならないのではないか、こういうふうに推則をするわけですが、この点はいかがでしょうか。
  164. 高木文雄

    ○高木説明員 これは国鉄の問題というよりは減価償却理論の一般的な問題でございまして、日本経済全体について非常に問題になっているところでございます。御承知のように、減価償却の概念というのは、物価が変動しないということを前提にして組み立てられておるわけでございまして、インフレ経済下における減価償却のあり方いかんという問題は、会計学といいますか経営学といいますか、そちらの方の最近の大きなテーマになっていることは御存じのとおりでございます。国鉄のように非常に多くの資産を持っております場合には、特にその影響が大きいわけでございますけれども、しかし、減価償却概念はすべての企業に通用する一つの概念でございますし、税法の計算基礎でもあるわけでございますので、いまのところ私どもとしては、これをインフレ時代にふさわしいものに私どもの方だけがするというわけにもまいらないのではないかと思います。  そういうことでございまして、御指摘の問題があることは事実でございますが、ちょっと国鉄の中だけで処理し切れない大変大きな問題であるというふうに考えます。
  165. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 最後に、大臣に伺いますが、設備の老朽化という問題は、当然保守だけでは追っつかないということを物語っておるわけでございまして、そしてまた、最近の物価高騰の中における建設費は膨大なものがありますね。ですから、そういった意味においては、この国鉄の基盤整備の問題について、国がやはり基本的に、道路に投資をしていると同じように、まあ、これは特定財源があるのですけれども、将来は国が投資をするという形にいかないと、とても私は国鉄だけでは追っつかない時代が早晩来るのではないか、こういうふうに危惧をいたしておるわけでございますが、それについての御所見を承って私の質問を終わりたいと思います。
  166. 田村元

    田村国務大臣 つい先般も国鉄の当局者と懇談いたしましたときに、東北、上越線の揺れのひどいことを私も指摘いたしました。いまの問答といいますか質疑応答を、私、大変興味を持ってというと失礼かもしれませんが、拝聴いたしておりました。いまおっしゃったような問題、私は、検討するに値するものという感じで実は承っておりました。国鉄並びに財政、当局等と一度この問題で詰めて話をしてみたい、このように思います。
  167. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 時間がありませんから、終わります。
  168. 大野明

    大野委員長 次に、小林政子君。
  169. 小林政子

    小林(政)委員 国有鉄道運賃法修正案につきまして、提案者に質問をいたしたいと思います。  先ほど来、委員会の中で石田委員の、質問に対して政府は、五十二年度値上げをしない場合、五十三年度値上げは実収で二五%、名目で約三七%と答弁をされましたが、私たちの計算では二五%ではなく三〇%になると思います。しかし、それはさておいて、実収二五%の増収を得るためには、値上げ率は三七%ではこれはとうてい済みません。昨年五〇%の大幅値上げが行われましたけれども、実質増収が現状では三〇%程度というふうにとどまっています。このことから見ても、三分の五倍、すなわち、四〇%以上の値上げをしなければ実収二五%の増収はとうてい図れない、このように考えますけれども、このような大幅値上げというものが二年に一回行われるということを意味するものだと考えますが、この点をどう修正案ではされているのか明らかにしていただきたいということが第一点。  時間の関係で第二点の問題についてお伺いをいたしますけれども、さらに値上げをしなかった場合、修正案では経費増加見込額のところに「(前事業年度において実施された新たな賃率等がなかった場合又はこれに準ずるものとして政令で定める場合は、実施年度の前々事業年度日本国有鉄道経費の額)を控除して得た額とする。」このように規定をされておりますけれども、これはどういうことを想定しているのか。私の考えでは、低い率の値上げを行ったときとか、あるいはまた値上げ実施したのだけれども、増収にこれが結びつかなかった、こういう場合に考えられるものとしか思われませんけれども、この点「準ずるものとして政令で定める場合」ということだけになっておりますので、あいまいな規定では困るので、はっきりとした御答弁をお願いいたしたいと思います。
  170. 加藤六月

    加藤(六)委員 提案者としてお答え申し上げます。  小林議員も理事会でいろいろ御意見をいままで述べられておりましたが、昨年の五〇%の大幅値上げをやったことに伴うところの国鉄離れということ、また、ある面では運賃値上げと国の助成国鉄合理化という三本柱というものが限界に来ておるという議論等は、当委員会でもたびたび繰り返されたところであります。そして今回の修正案の骨子で政府案と根本的に違いますところは、政府案は一五%、五%という基礎的数字を入れて収支均衡を図ろうとした案であったわけであります。今回の修正案基本は、そうではなくして、赤字体質をこれ以上増加させないぎりぎりの案にとどめたところにその根本があるわけであります。そしてまた、大幅な値上げということが不可能であるということは、われわれ十分に認識した上で考えておるわけでございまして、そういう点等から、大幅な値上げをねらった案ではございません。そしてまた、運賃法の一条には「公正妥当な」という数字はあくまでも生きておるわけであります。それからまた、国民的常識というものも、あるいは国鉄運輸省の常識というものもあるわけでございます。そういう点等から、先ほど鉄監局長がお答えになっておりました数字というものは、仮定の上に立った数字ではないかと思います。  そしてまた、もう一つの点は、小林議員の質問は、二五%の実収アップをねらった場合には名目一五〇%にしなくてはならぬのではないかという御質問でございましたが、実収二五%を上げるのに名目五〇%上げる必要はないと思います。それは小林議員自身がいま御指摘になりましたように、国鉄名目五〇%値上げをした場合に実収は三〇%ではなかったかというお話があったようでございまして、これからもしこの修正案が衆参両院を通過して成立した場合には、私たちは、さらに具体的に国家助成、公的負担というもの、あるいは国鉄の構造的欠損というものに対して国がどう応援していくかということと、国鉄自身の必死の増収努力合理化努力ということを含んだ上での運賃改定率というものを出していくように考えておるわけでございます。そこら辺はたびたび理事会で議論いたしておりますので、十分御理解していただいておるのではないかと思います。  そして法案自身についてでございますが、ただいま第二点の御質問の「前事業年度において実施された新たな賃率等がなかった場合」ということは、これは運賃値上げを行わなかった場合、すなわち、運賃値上げを行わない年もあるという想定で、運賃値上げが行われなかった年という意味でございます。  それから、その次の「又はこれに準ずるものとして政令で定める場合」は、これはきわめて軽微な、額の場合を想定いたしております。  しからば政令で何を定めるのかという御意見等も出てくると思いますが、たとえば先に、きわめて軽微な場合とはどういうものであるかと言いますと、前年度の軽質増加額に係る利子負担分、こういうものが一つは考えられます。それから私たちが国鉄問題を研究していった場合に、新聞、雑誌というのは一律に上がりません。国鉄とそれぞれの新聞協会、雑誌関係協会との間にいろいろな話し合いや折衝があって、一定の値上げをした時期とは相当ずれてやる場合があります。この金額は  一億になるのか五億になるのか知りませんが、そういう場合を想定いたしておるわけであります。  そこで、政令でこれをうたう場合には、前事業年度において実施されたすべての新たな賃率等実施による収入の増加見込額の総額が前事業年度の軽質の増加見込額に係る当該年度の利子負担分に相当する額を超えるものでない場合を考えて、これを政令でうたってはっきりしておきたい、このように考えておるわけでございます。小林(政)委員 先ほど来から私ども試算によっても明らかな数字が出ておりますし、圧縮をする努力をするということであっても、法的にはその限度まで値上げすることを認める、こういう内容であることはもう間違いがないわけでございますし、さらに政府原案では収支の均衡が回復した場合には、値上げ率は物価変動率プラス五%でございましたけれども修正案ではこの歯どめもなくなってしまっている。  以上、聞いた点でも、修正案と言いながら、私は、むしろ原案よりもより一層悪い内容を盛り込んだものだと言わざるを得ないと思いますけれども、この点について意見を申し述べて質問を終わります。
  171. 大野明

    大野委員長 ただいま福田内閣総理大臣が出席されました。  これより福田内閣総理大臣に対して質疑を行います。  この際、質疑をなさる委員各位に申し上げます。質疑時間は理事会において申し合わせたとおりでありますので、その時間の範囲内においてお願い申し上げます。したがって、答弁も簡潔にお願い申し上げます。  それでは、久保三郎君。
  172. 久保三郎

    久保(三)委員 限られた時間でありますから、簡単に総理に二点ほどお伺いします。  一つは、国鉄再建の大綱といいますか、基本的な考え方であります。これまで政府は、国鉄再建対策要綱、こういうものでいわゆる三方一両損というような方式で再建を図ろう、しかも、その中心的な課題は何かというと、現在ある対策要綱でもはっきり示しているように、昭和五十四年度国鉄の財政を均衡させようということであります。これは二年でやろうというのができなくて四年にした。その以前は十年の計画を立てたのだが、これはもう始まる前からだめだった。  そこで、結局何が原因であるかということ、これはいまさら申し上げるまでもありませんし、しかも最近の国鉄というのは、これまでの議論でもお話がありましたように、国鉄離れと言われているような特徴的なものが出てきたということであります。これはまさに経営基本を問われる時代になってきたと思うのです。国鉄経営再建というのは、一言で言うならば、国鉄の機能が国民経済的に十分効率よく機能できる基盤をつくることが再建基本であろうかと思うのであります。  そういうことからいくならば、今日まで政府の方針としてやってきたのは、いま申し上げたように、財政の均衡を図ろうということに焦点を合わせてきた。その中心は三方一両損だが、特に運賃値上げというものを、かなりの比重をもってやってまいりました。昨年は、昨年のいまごろでありますが、御案内のとおり五〇%値上げ。順調にいけばというか、できるなら、ことしもということでありましたが、そうはいかない。五〇%上げた結果どうなったかというと、これはいま申し上げたとおり家質ともに減ってきた。特に貨物は、その後の経済の不況というか停滞がありまして、だんだん減ってきた。そこへ持ってきて、いま審議中のこの、一言で言えば運賃法定制緩和、フリーハンドを政府国鉄に与えようという法案が出て、五十二年度当初予算の編成に当たっては、一九%値上げを見込むという宣言が総理の口から、たしか一月の初めにこれは出ました。途端に国鉄の貨物はなくなっていってしまって、いまや国鉄の貨物は、御承知のとおり低落の一途をたどっているということであります。その後旅客もそうでありまして、遅まきながら、一遍値上げはしたが、グリーン料金等の値下げをしてやや回復を図ろうとしているのですが、一たん離れたものはなかなか返ってこぬというのが実態だと思うのです。  そこで、考えてみなければならぬのは、結局国鉄再建の方策というのは、単純な財政の帳じり合わせであってはならないということなんです。もちろん、国鉄を全部つぶしてしまえというのならば、それも一つの方法かもしれません。しかし、そうではないと思うのです。何とかして国民経済的に有効に機能させるということが再建の基礎だと思うのです。再建の基礎はそういうことでありますから、それを土台にしてやっていく。それにはどうしたらいいかというと、大まかにまいりますれば、国鉄責任、特にいままで不明確であった政府責任というものを明確にしていくことがまず第一に必要だと思うのです。今度、きょうもこれまで議論がありましたように、この法律案はフリーハンドを与える。特に政府に与える。大蔵省からの答弁もありましたが、これはあいまいであります。結局政府責任を回避しながら、できもしない運賃値上げを強要していくのではないかという心配が内外ともにあります。そういうことでありますから、この際はやはり基本的にこれまでのやり方を見直していく必要があろうというのが、私どものこれまでの議論の集結だと私は思うのです。そういう意味で問題を新たにとらえる必要がある。  再度申し上げますが、国鉄経営の基盤をつくっていくということをこの際真剣にやっていく、そのための環境整備もしていく、責任のあり場所も明確にしていくということが必要だと思っております。  そういう意味で、これまでの基本方針であるところの国鉄再建対策要綱は、この際改められるべきだというのがわれわれの考え方なんでありますが、総理としてはいかがお考えでしょうか。
  173. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 国鉄問題は、私もこれは非常に頭の痛い問題と心得ております。  私は、国鉄がいま非常に窮況にある、その打開の方途いかんということになりますと、なかなか一挙にという名案も立てかねるような状態でありますが、その国鉄の前途を考えてみますると、これは非常に重要な国家的、社会的役割りを担っておる、こういうふうに思うのです。つまり資源エネルギー有限時代だ、そういう時代におきまして、どうしてもそう遠からない時期に国鉄の大量輸送機関としての使命というものが見直される、そういう時期が必ずやってくる、そういうふうに私は思うのです。  そういう展望を持ちながら、今日この時点において国鉄をどうするか、こういう問題でございますが、政府として従来か国鉄自身経営努力、それから適正な利用者負担、それからさらに国の適切な行財政上の援助、この三つの要素を中心といたしまして諸般の施策を講じてきておりますが、最近における国鉄経営を取り巻く諸般の事情の変化、こういうことを勘案いたしまして、今回の法律案の成立を待ちまして改めて国鉄経営のあり方を含め抜本的な再建対策検討してまいりたい、このように考えております。  久保さんはいま、従来の再建計画を変更するか、こういうお話でございまするが、まさに私どもは、最近のそのような環境変化、それをとらえまして再検討しなければならぬ、かように考えております。  この国鉄再建につきましては、その基本方向につきまして各党間でもずいぶん御論議を願っておるというふうに聞いておりますが、その御論議の結果の基本方向、それにつきましては、私は、その内容につきまして適切なものである、こういう判断をいたしておるわけであります。  まず、国鉄のあり方につきましては、国鉄鉄道としての特性を発掘し得る分野を中心としてみずからの採算において企業経営を行うとともに、その他の特に効率性の低い分野につきましては、他の輸送機関との関連におきまして効率的な輸送体系を形成する、そのための施策を講ずるなど最大限の経営改善を行った上で、なお負担の限界を超える、そういう部分につきましては、公的援助を含む所要の対策検討することも必要である、そのように考えておるのであります。  なお、これとあわせまして、運賃上の割引制度や、新線建設等につきましても必要な検討を加え、国鉄経営上の負担軽減を図らなければならないと考えておるのであります。  以上の方向に沿ってその経営基盤を確立するため所要の措置をとりたい、そのように考えておるわけであります。  なおさらに、これらとあわせまして、政府といたしましても、総合交通政策上の具体的な施策を講ずるほか、収支均衡時点までに累積する赤字処理について、国鉄経営努力とあわせ、債務のたな上げをするなど国鉄再建のための行財政の援助を行っていきたい、かように考えております。  以上のような基本的な方向で、今後政府といたしましても、国鉄再建を達成するため鋭意努力していく所存でございます。
  174. 久保三郎

    久保(三)委員 ただいま基本的な方向について総理から御答弁がありました。  そこで、だめを押すようなかっこうで恐縮でありますが、当然いまお述べになった御方針は、これは権威あるものとして格づけする必要があろうかと思うのでありまして、ついては、お述べになったものを基本にして閣議了解事項となさるおつもりでありますか、念のためにお伺いをします。
  175. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 その点につきましては、この政府提案の法律案が成立する、まあいろいろ御論議の模様は承知しておりまするが、それを含めましてこの法律が成立をする、そういう上は政府において国鉄再建の新しい計画を策定する、そして昭和五十三年度予算編成のときまでにはこれを閣議了解する、さようにいたしたいと存じております。
  176. 久保三郎

    久保(三)委員 次に、もう一つお尋ねしたいのは、この法律案が仮に順調に参議院に送られて会期中に可決されるとするならば、修正案で恐らく多数でここは通ると思うのでありますが、そうしますと、三月三十一日から施行ということになります。三月三十一日に施行ですから、実際は来年度の予算に関係する四月からこの法律は適用しようと思えば適用できるわけである。しかし、この法案の提案の理由の大きな柱は、適時適切に値上げをしていきたいということでありますから、われわれの考え方からするならば、少なくとも昭和五十三年度の予算編成に当たっては、これはいまの国鉄を取り巻く客観情勢を考えるとともに、この法律の性格からして、予算編成の中には織り込まないのが適当だというか、これが本当だと思うのでありますが、来年度予算編成に当たってこの法律適用を前提にしたものをお組みにはならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  177. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 今回の法律は、国鉄当局が適時適切に法律で決められた限度内においての運賃改定ができる、こういうようなことになるわけでございまするけれども、これが成立したからといいまして、すぐこれを実施するというそういう考え方は持っていないわけです。  それから、昭和五十三年度の予算においてはどうするかというお話でありますが、これは久保さんがいまお話しのように、運賃改定を五十三年度予算に織り込まないと、こういうことまでここでは言えないのでありますが、いずれにいたしましても国鉄再建、これは非常に重大な問題でありますので、国鉄総裁がどういう判断を示すか、その辺も重要な参者資料といたしまして決定いたしたい、このように申し上げるほかないのであります。
  178. 久保三郎

    久保(三)委員 私の総理に聞くことは余りたくさんないので、大体この二つだけなのでありますが、いまの最後の御答弁は大変歯切れが悪い。もっとも来年のことを言うと鬼が笑うと言うから、お互いに来年のことは言えないかもしれませんが、少なくとももはや来年度の予算編成を目の前にしております。そこで私が特にお尋ねをしているわけなのでありまして、決して反対しておるから適用はいかがかと思うというのではなくて、いまも共産党の小林議員から修正案提案者に質問がありましたが、この修正案も原案も、中身においては余りというかほとんど違いがないのです。だから、違わないというところに、やはり何か魂胆がありはしないかというふうに私は思うのです。しかも世間に公約している限りは、適時適切にお使いになることは、法案に反対でも通ればやむを得ぬと思うのです。しかしながら、当初からもしもお使いになるというならば、国鉄運賃法改正案を出して、予算と同時に並行して審議をされるのが筋でありますよ、はっきり申し上げて。それを実際は制度改正ということでふれ回って今日まできたのです。  そういうところからいくならば、もしも来年度予算にどうしても運賃値上げを何%か御予定なさっているならば、これは国鉄運賃法改正を提案してくるのが筋であるということだけは申し上げておかなければなりません。  そういう点で、まあ総理も来年のことはなかなか言いにくいかもしれませんが、私どもとしては、客観的情勢からいっても値上げはできにくいと考えております。値上げに反対というだけじゃなくて、できない条件にあるということ。だから、前段に申し上げたように、経営基本的な態度というか方針というか、そういうものを改めていくべきだという提言をしているわけでありますから、ひとつお間違いのないように善処をしていただきたい、こういうふうに思います。  大変時間が余ったけれども、お尋ねすることはございませんから、この程度であります。  ただ、時間があるからもう一つ申し上げますが、円高ということでありますが、とうとう二百五十円を切りました。これは日本全体の政治経済にとって大変問題だと思うのです。そこで、これに対しての御所見を伺っておきたいと思います。
  179. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 円高問題というのが降ってわいたようにこの二十日余りの間に起こってきた。この背景は、アメリカの方で国際収支赤字が非常に多額に出る、他方、わが日本におきまして逆に黒字が非常に大きくなりそうだというようなことが、先月の末にワシントンで開かれたIMF総会の場でささやかれたり論議されたりした。そういうところから、こういう予測もしないような事態が起こってきたわけであります。こういう際に、日本やアメリカ、ヨーロッパ、とにかく世界を動かすこれら三つの極といいますか、そういう三極の協力体制は非常に大事だと私は思うのです。お互いがおまえはどこが悪いのだというような言い合いをしておるというようなことになりますと、世界は大変なことになってきやしないか、そういうことを心配しておるわけです。ですから、お互いに皆反省してみますれば、それぞれ正さなければならぬ点があるのですから、お互いにみんなが反省をいたしまして、正すべきは正す。わが日本といたしましては、やはり黒字が少し大き過ぎます。これを正さなければならぬ。正すためにこそ、先般補正予算でお願いいたしましたけれども、二兆円の事業費の追加を実行するということにした。そうすると、国内の景気がそれだけ上向く。上向けば海外からの輸入が多くなる。そういうことをねらったのですが、それでも当面のわが国の対処のしぶりといたしましては十分でないと思うのです。やはりこの際買うものがあれば思い切って輸入をしておくという体制をとるべきだ、こういうふうに思いまして、いろいろな資材につきまして、いま相手方と交渉に入っておるという段階であります。  わが日本の国際社会における立場は非常に重要になってまいりました。わが国がどういう態度をとるかということは国際社会にも非党に影響力がある。そういうことになってきましたので、世界の経済の安定ということを目指しながら、わが国としても責任のある態度をとっていきたい、このように考えております。
  180. 久保三郎

    久保(三)委員 以上で終わります。
  181. 大野明

    大野委員長 次に、石田幸四郎君。
  182. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 修正案が審議されている段階におきまして、今度の修正案にいたしましても、その裏打ちがきわめて大事なわけであります。先ほど総理は、この委員会で取り上げられた「再建基本方向」についていろいろと所信を述べられたわけでございますが、五十二年一月二十日において日本国有鉄道再建対策について閣議了解をしておられるわけでありまして、いま申し述べられたこととかなり違う点がございます。  一つは、収支均衡の回復の問題でございます。一月二十日の閣議了解によれば「その目標年度はおおむね昭和五十四年度とする。」となっておるわけです。しかし、先ほどの再建案によると、昭和五十五年以降、運輸省説明によれば、さらにずれるのではないか、そのような見通しも述べておられます。  それから、この閣議了解の中にあります「経営改善のための措置」にいたしましても、「国鉄は、経営上の赤字要因となっている貨物、赤字ローカル線、自動車、船舶、手小荷物等の各部門について、経営改善のための具体的な対策を樹立し、これを確実に達成するための態勢を昭和五十二年度内に確立するとともに、早急にこれを、実施に移す。」とあるわけでありますが、いま総理が述べれた所信とはずいぶん違うわけであります。  そういった意味において、この五十二年一月二十日に閣議了解されたものは、その骨子において消滅したものと考えてよろしゅうございますか、お伺いします。
  183. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 本年一月の国鉄再建についての政府の閣議了解、これは別に消滅したわけではないのです。しかし、非常に環境が変わってきておることは御承知のとおりでございます。そこで、いま法律案を皆さんに御審議願っておるわけでありますけれども、この法律案が成立をすると、その成立ということを踏まえまして、先ほど申し上げましたように、国鉄再建についての基本的な考え方を打ち出したい、このように考えておるわけであります。
  184. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 それから、運賃法の問題に絡んでお伺いをしたいわけでございます。  今回の修正案によれば、先ほど来しばしば議論になっておるのでございますが、もし五十三年度において運賃改定をするとすれば、単年度の範囲内で考えた場合、いわゆる前事業年度経費物価変動率を掛けて、そして五十二年度経費を差し引いてみますと、実質的な値上げというのは一七・五%、名目で二四・八%という数字が挙げられておるわけでございます。しかし、五十二年度中においては値上げを行わないわけであります。そういうものを想定して考えてみますと、わが党が試算したところによると、実収で約三〇%以上、名目で約四〇%以上の値上げになるわけであります。先ほど運輸当局にただしたところ、実収は二六%ぐらい、名目は三七%ぐらいになるのではないかという答弁がありました。  私は、この数字、必ずしも賛成をしないのでございますが、今回の修正案にしましても政府原案にしましても、運賃の法定主義を外してしまうわけであります。外してしまうといいましても、これは言葉を言いかえれば、いわゆる一時避難的な措置ではないかと思うのです。そうすると、この運賃法には、運賃法そのものが消滅してしまったわけではないのですが、「運賃及び料金は、この法律の定めるところによる。」ということになっていますが、そうしますと、少なくとも名目で四〇%以上、そういうものについては法定主義でいくのだ、それ以下のものはこの新しい法律でいくのだというようなことになってしまうわけであります。しかし、名目で四〇%ということは、現在の物価上昇率からいきましても、非常にこれは大幅な可能性のある問題であります。そういうようなかなり高度の値上げ幅というものが、いわゆる運賃法にひっかからないということにつきましては、これでは運賃法の存在意義というのは全くなくなってしまうのではないか、こういうふうに私は危惧するわけであります。  税の問題を取り上げてみましても、税はあくまで法によって定むべしというのが、いわゆる法律論のたてまえであります。そしてまた、この運賃料金、そういうものも過去の独占企業という形、そういうような状況にあっては、やはり税と同じような体系で法律によって定むべきである、これがいわゆる法律論の中で有力な議論として今日まで来たわけであります。  そういうようなことも踏まえてみますと、これほど大幅の値上げをできる措置というものは、運賃法そのものの存在意義を消失せしめてしまったということになりはしないか、こう思いますが、これについて総理大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  185. 住田正二

    住田政府委員 先ほども説明申し上げましたように、今回の修正案は最高限度を示しているだけでございます。したがって、経費上昇額がありましても、それはできるだけ経営努力で吸収するということで、実際の運賃値上げの幅は低くとどめるようにいたしたいと思っているわけでございます。  実際問題といたしましても、現在国鉄の独占性というものは非常に薄れておりまして、他の交通機関と非常に厳しい競争関係に立っておりますので、無制限な値上げはできないわけでございます。したがって、計算上は一年運賃値上げをしない場合には、確かに一定幅というものが大幅になりますけれども、実際に行います運賃値上げというものは、そういう大きなものにはならない、できるだけ低く抑えてあります。国鉄総裁が自由にできるというわけではなくて、その範囲内で運輸大臣認可するわけでございますから、運輸省といたしましても、十分そういう点を考慮いたしまして適正な幅で認可をしていく、そういうような運用をいたしたいと考えております。
  186. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 私は、総理に、この運賃法との関連はどうなるかということをお伺いしておるわけです。いままではいわゆる低率であっても、運賃法の第八条には「全体として日本国有鉄道の総収入に著しい影響を及ぼすことがない運賃又は料金の軽微な変更は、日本国有鉄道がこれを行うことができる。」というふうになっておるのです。軽微なものはこれはできるわけですね。しかし、運賃法のたてまえは、少なくとも国民生活に影響を与える程度の上げ幅については、この法律に基づいて行わなければならないわけでしょう。そうすると、仮に理論的にいくと、四〇%も値上げできそうな状況を、この運賃法はチェックすることができなくなってしまうわけでしょう。その運賃法との兼ね合いについて、一体総理はどういうふうにお考えになりますかと伺っておるわけです。
  187. 住田正二

    住田政府委員 先ほどの説明が十分でなかったかもしれませんけれども、今回の法律は臨時的な法律でございます。したがって、いずれ将来は現行の運賃法に戻るわけでございます。国鉄の努力あるいは国の行財政上の援助で国鉄赤字体質が解消されるまでの暫定期間でございますから、それが終われば当然本法に戻るということになると思います。
  188. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そこの赤字が解消されるまでと言いますけれども、かなりの長期と思わざるを得ない。提案者は五十五年というふうに説明しましたけれども、運輸当局の考え方によれば六年か七年、しかし、いままでのいろいろな状況を見てみますと、さらに延びる可能性すらある。そういう状況の中において、そうすると、この両法案の一部を改正する法律案というもので、かなり長期にわたってこれを主体にやるというようなことになるわけですね。そうすると、もう国有鉄道運賃法そのものというのは、存在意義が全く失われたと言わないけれども、かなりその存在価値が疑われるような状況になるじゃありませんか。そういった意味において、四〇%も値上げ可能な問題というものを軽々しく新しい法律によってやっていいのかどうか、その関連で総理大臣の所見を伺っておるわけです。
  189. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 財政法は運賃法定主義を決めておるわけです。これは御承知のとおりでありますが、今回その精神を踏まえまして、法律をもちまして、そしてこれから当分の間の賃上げの上限を規制し、その上限の中における運賃の引き上げ、これを運輸大臣に御委任願う、こういうことにするわけでありまして、法定主義、これの精神は踏んまえてのことであります。  ただ国鉄再建、こういう重大な問題がある。その重大な問題を何とか実現しなければならぬ、そういう考え方から上限を決めて、それ以下の賃上げにつきましては、これを運輸大臣に任していただくという措置をとろうとしておるわけでありまして、法体系を乱るものであるというふうには考えておりません。
  190. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 必ずしも私は納得しませんけれども再建策にかかわる問題としまして次にお尋ねをするわけですが、先ほど来お話が出ておりますように、政府助成国鉄経営努力利用者負担、この三本柱が再建基本になることは、私もあえて否定をしませんが、しかし、今回の法律によりまして、利用者負担というのが条件という形であるにしましても、かなり具体的な数字として示されておるわけであります。私たちは、この法定主義を外すということに基本的に反対なのでございますけれども、いずれにしても、これがもし通過をしたということになりますれば、利用者負担というものが、ここに明確な形で、生活のしわ寄せという形であらわれてくるわけであります。再建という問題を考えました場合に、そういった利用者負担も行わなければならないが、同時に、国鉄経営努力とまた政府助成ということも具体的な形で示されていかなければ、私は、大変国民各位にとっては片手落ちの措置になると思うのです。  そういった意味で、政治不信の助長ともなり得るわけでございまして、当然五十三年度、五十四年度、先ほども基本方向の問題に触れられましたけれども、これには現在の国の助成よりもかなり大幅な助成が行われるということを、やはり総理として国民の前に示す必要があるのではないかと思いますが、具体的な数字でお示しをいただければ一番いいのですけれども、しかし、来年度の予算の大枠もまだ決まっていないでしょうから、それは無理としましても、そこら辺の総理の決意をひとつお伺いいたしたいと思います。
  191. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 先ほども申し上げたわけでありますが、国鉄再建利用者の協力、そういうことにのみ依存しているわけじゃないのです。国鉄自体がその経営努力をする。それから特に鉄道としての特性を発揮し得る分野を中心としてみずからの採算で企業経営を行う。同時に、その他の、特に効率性の低い分野については、他の輸送機関との関連において効率的な輸送体系を形成するための施策を講ずる、これに最大限の努力をするわけです。しかし、そういう経営改善の努力を行っても、なお負担の限界を超える、こういう場合があるわけでありまして、そういう場合につきましては、これは公的助成を含む所要の対策を講ずるということを申しておるわけであります。また、さらに政府としては、総合交通政策上の具体的な施策を講ずるほか、収支均衡時点までに累積する赤字処理について、国鉄経営努力とあわせ債務のたな上げをするなど、国鉄再建のための行財政の援助を行う、こういうことまで考え国鉄再建をあえてひとつ実現をしたい、こういうふうに考えておるわけで、安易に利用者負担利用者負担、こういうふうに申し上げましても、それじゃ客観点に見まして限界があります。この限界を超えて利用者負担を求めようなどといたしましても、それはできるものでもございませんし、また、それは政府としてもとるべからざるところである、そういうふうに考えております。  要するに、しばしば申し上げておりまするとおり、利用者の適正な負担、それから国鉄当局企業努力、さらに適正な公の助成、この三本柱の上で何としても国鉄再建はこれをやってのけたい、こういうふうに考えております。
  192. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 そういう総理の御所見であるならば、いわゆる国鉄経営努力をしても、なおかつ出るところの赤字、そういうものについては、政府責任をとりたい、もしくは所要の対策を講ずるとありますが、問題は、やはり構造的な赤字だと思います。いろいろな対策を講じたからといって、この構造的な赤字、七千億と言われておりますけれども、そういうものが簡単に消えるとはなかなか思えない。そうしますと、いわゆる五十五年度を目指して収支均衡を図るというのであれば、少なくとも五十三年度、五十四年度にはこの構造的な赤字部分というものは政府責任を持つというふうに解釈してよろしゅうございますか。政府がそういった助成措置を講ずるというふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  193. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま各党で御相談願っておる「国鉄再建基本方向」では、まず国鉄経営のあり方につきまして、五十三、五十四、この両年度中に所要の対策を確立した上で、五十五年度から国鉄再建を軌道に乗せるように考えておるというふうに私は理解をいたしております。具体的な助成の内容は、これらの結果を待って決定されることになりますが、収支均衡までに生ずる赤字につきましては、今回の基本方向の線にも沿って国鉄経営努力のほか、債務のたな上げも含めて処理したいと考えておる、このように御理解願います。
  194. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 次の問題へ移ります。  何といっても国鉄赤字というのは大幅であります。五十一年度におきましても九千何百億というような感じになってきておるわけでございますが、構造的な赤字を含めますと、政府助成等を入れましても、なかなかこの赤字の解消ができないわけであります。  そういった意味において、先ほどの委員会の中で運輸大臣から、特別財源という問題を努力してみたいというように御発言があったように私は受けとめたわけでございますが、総理は、こういったお考えについていかが御判断をされますか。
  195. 田村元

    田村国務大臣 正確を期するために、また、いい機会でありますから、総理にも聞いていただくためにも、私の答弁を繰り返しておきたいと思います。  国鉄再建のために一般会計にのみ頼って、その都度あくせくすることばかりが能ではないという感じもいたします。そこで、何とかいい特定財源がなかろうか、私は、いま必死になってこれを探しておる。もちろん、具体的にどういうものをといって発見したわけではありませんけれども、何とかいいものはないだろうか、こういうことで模索をしておるという段階でございますから、私から総理にまだこのことで相談をしたわけではありませんけれども、そういう私の気持ちであるということを申し述べたということだけは御理解を願いたいと思います。もちろん、きょうは総理も御出席でございますから、私の考え方をおくみ取りいただければまことに幸いと、こういうことでございます。
  196. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 こういう鉄道というのも、これは私鉄を含めてでございますけれども、やはり交通機関でございますから、基本的な問題として私は、道路整備と同じような政府投資というものが順次行われていかなければならない、そういうふうに思うわけでございます。そういうふうに考えますれば、やはり特定の財源配分といいますか、そういうものが必要ではないかと考えるわけでございますが、いまの運輸大臣のお話についても格段の御努力をいただきたいということを総理に申し上げておきたいと思うのです。  それから、総理にもう一つお伺いをしたいのでございますが、いずれにしても、いま国鉄は独占企業ではなくなりました。しかし、先ほども議論したわけでございますが、旅客輸送で、いわゆる人キロで三〇%、貨物にしてトンキロで一二%近いシェアがあるわけでございまして、何といっても少なくとも旅客輸送においては国鉄がその性格をなしておるということは否定をできないと思うのです。そしてまた、設備投資の問題を考えてみますと、だんだんだんだん老朽化しているようなそういう設備もあるわけでございまして、そういったやはり基盤整備を含んでやはりこれは国として、国鉄に信金をさせて、そして経営をさせるのじゃなくて、国のいわゆる社会資本投資という形で考えていかなければならない問題ではないか、こういうふうに私は思うわけなんです。そういう問題について総理の御所見がありましたら伺いたいと思います。
  197. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 御説のとおり、国鉄に対する投資、また、国鉄がそれによって投資を行う、これは国家全体としてみて社会資本投資でございます。これはもう全く御説のとおりであります。そういうような立場に立って国鉄問題を考えたい、こういうふうに考えておりますが、具体的にどうするかということにつきましてはよく検討いたします。
  198. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 最後に総合交通政策の問題についてお伺いいたします。  総理が経企庁長官であられたときも、物価の委員会で私も申し上げたわけでございますけれども、実際問題としてこの総合交通体系というものはなかなか進んでいかないわけです。先ほども議論をしたわけでございますけれども、その議論の中で、運輸大臣としてもこの総合交通体系というものは必要である、そういうふうに思う、こういうふうにおっしゃっておりました。あるいは予算委員会等においでも、大蔵大臣もその必要性を認めておられるわけですが、遅々として進まない。これは非常にいろいろなネックがあると思います。経済成長率であるとかあるいはエネルギーの問題であるとかあるいはいろいろなその他の制約の問題があります。そういうような問題がありましても、やはりこの総合交通政策というものが進んでいかなければならない。特に今度の修正案を進めるに当たっては、総合交通運賃制度ですか、そういうところまで踏み込もうとしているわけでございますから、どうしてもこれをつくらなければならないと私は思います。  そのつくり方の基準についてまであえてまた再論しようとはいたしませんけれども、先ほどの運輸大臣答弁の中に、総理府の中に各省の連絡機関みたいなものをつくるように、できれば総理にも申し上げてみたい、こういうふうに言われておったわけでございますが、この総合交通体系をぜひひとつ、もう安定成長の時代に入ったし、高度経済成長の時代とは違うわけですから、そういう情勢の変化を踏まえてやはり明示をしていく必要があろうと思います。もちろん細かいところまでできるわけはありませんけれども、少なくとも骨格ぐらいは早急につくる努力をすべきではないかと思いますが、総理のお答えをいただきまして、私の質問は終わります。
  199. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 総合交通体系につきましては、政府の方では昭和四十六年暮れに基本的な方針を決めておるわけであります。しかし、その後いまお話しのように、世の中が大変変わってきまして、いまや高度成長の時期じゃない。まあきわめて低い成長に甘んじなければならぬような、そういう時代に入ってきておるわけでありますから、あの四十六年当時の考え方、これは基本的には尊重すべき考え方はありまするけれども、さあ今日の状況に照らしまして妥当なものであるというふうには思いません。やはり再検討の必要がある。その再検討するに際しましては、この総合交通体系の中で非常に重要な国鉄を一体どうするのだということが非常に大きな問題になってくる。ぜひ今度のこの法律案に御協力願いまして、そして国鉄の前途を見きわめ、その上に立って何とか総合交通体系というものを決めていきたい、こういうふうに考えるわけでありまして、その総合交通体系を進めるための政府の内部の機構、そういうことにつきましては、最も適切な方法を考えてみたい、かように考えます。
  200. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 総理も御存じのとおり、これは三年来議論になっている話でございますので、どうかひとつ早急にお詰めいただきたいと御要望申し上げます。  終わります。
  201. 大野明

    大野委員長 次に、河村勝者。
  202. 河村勝

    河村委員 総理に質問する前に、鉄監局長の先ほどの発言について一言聞いておきます。  さっき聞いておりますと、あたかもやる気なら四〇%の値上げができるのだというような返事に、回答にとれたと思います。物価上昇率に見合うコストの上昇分、それを前提とし、そして運賃値上げによる利用減を経営努力によって吸収する、そういう前提に立って、仮に計算上という言葉があったにせよ、それから二年閥運賃値上げをやらなかった場合という前提にせよ、四〇%をやればできるというような、そういう考え方をとるならば、私どもは、修正案をつくり上げたけれども、もう一遍修正案の再修正を考えなければならない。返事を聞きたい。
  203. 住田正二

    住田政府委員 先ほどの数字は、仮定の数字でお話があったわけでございまして、二年間上げない場合の経費上昇額というものを計算すれば二六%程度になる、そのときにも申し上げたと思いますが、私どもといたしましては、実収額と名目値上げ額との間の乖離を減らすという方向国鉄経営努力をすべきである、先ほど石田委員のお話でお答えいたしましたのは、従来の計算でいけば、実収率と名目率の乖離はどうかということで、三六ですかという数字をここでお答えいたしたわけでございますけれども、その前に申し上げましたように、今後は実収率と名目値上げ率を大体同じようなところに持っていくように努力をしたい、いわゆる利用減というものをできるだけ経営努力の中で吸収していきたい、さように考えておるわけでございます。
  204. 河村勝

    河村委員 いまこの法案を通すに当たって一番国民が懸念しているのは、一体法定の枠を外したらどんな運賃値上げがされるかということが一番懸念されている。それを、いろいろな仮定を入れたにせよ、一体やろうと思えば四〇%値上げができるなんて言うのは何ということなんだ。なるはずがないじゃないか、どうしてそうなるのだ。
  205. 住田正二

    住田政府委員 先ほどの石田委員の御質問は、一年間休んだ場合に経費上昇額が二年分になるわけですから、その額から計算して何%になるかという御質問であったわけでございますので、それに対して二六%程度になるのではないかというお答えをし、私どもといたしましては、それは実収額の限度でございますので、従来言われております利用減というものは国鉄経営努力の中で吸収するということで二六%にとどめたいということを申し上げたのに対しまして、従来のような計算で、実収率と名目率の乖離についての御質問があって、従来の計算によればということで申し上げたわけでございまして、今後の、この法律が成立いたしました後の運用といたしましては、実収率というものを基礎に考えていきたい、利用減というものはできるだけ国鉄経営努力の中で吸収していくという方向で運用をいたしていきたいと考えておるわけでございます。
  206. 河村勝

    河村委員 そういう懸念があればこそ、だからこそ利用減は経営努力の中で吸収するという、そういう閣議了解の中に盛り込んだ文句を入れたわけだ。すると、あなた方がいま言っているのは、ことしも来年も物価変動率が一〇%以上上がるという前提に立っている、そういうこともわかりゃしない。それにもかかわらず、そういう四〇%も上げられるような一般に疑惑を持たれるだけでも不謹慎じゃないか。運輸大臣答弁をしていただきたい。
  207. 田村元

    田村国務大臣 そのような誤解を生むような印象を与えましたことは大変残念でございますが、そういうわけではございません。今度の修正によって環境、条件等が全面的に変わったのであります。変わったのでありますから、戦前を論じるのと戦後を論じるのと同じ算定方式で論じるようなものでありまして、これはもう全然違います。要するに、今度の修正案国鉄というものが置かれておる社会環境が全面的に変わったのでございますから、先ほど鉄監局長が申しましたことは、これは過去の運賃値上げのみに頼っておった時代の算定方式で言えばこうでございますということを、よけいなことを言ったわけで、私も聞いておって、これは誤解を招くなと思ったのです。しかも、こういうことを言えば、あるいはおしかりを受けるかもしれませんが、与党だけでつくった修正案ではございません。野党も加わっての修正案でございます。それだけの歯どめがしてあることは当然でございます。私は、ここにおわびを兼ねて鉄監局長が申しましたことについて明確にいたしておきたいと存じます。
  208. 河村勝

    河村委員 私は、これからの運賃値上げの歯どめというものは、本当は実質的には余り心配していないのです。この五〇%値上げ以後国鉄運賃値上げというのは、他の競争機関とのバランスからいってもう上限に達してしまっている。だから、これから先大幅運賃値上げをすれば収入が減るだけのこと、だから、上げようったって上げられない環境になっているから、私はそう実質的な心配はしない。むしろいままで国鉄がそうであったように、財政当局が財政の帳じり合わせのために、一昨年の五〇%値上げのように無理やりに運賃値上げを強制する、そのために逆に収入は上がらない、お客は減る、国民は値上げによって迷惑をする、そういう事態を防ぐためにむしろ大事だと私は思っている。それを、何か理論的にはとかなんとか変な文句をつけたにせよ、そういう言い方をするような精神では、これから国鉄再建というのは私は非常に前途が怪しいと思う。そういう意味で特に念を押しておきたいと思います。  そこで、私ども民社党は、この春から三つの条件を提案して、それで法案の修正と国鉄再建基本方針を政府に示して、実現を期してやってきました。  その三つの中身というのは、一つは、昭和五十二年度以降政府助成の規模を年八千五百億にしなさい、これが今回の閣議了解を求めている「基本方向」に書いている国鉄の構造的赤字に該当するものです。それから二番目が、物価変動率限度とする運賃値上げを法定の枠から外す、これによって国鉄の自主性を高めてやろうということですね。しかし、本年度値上げは行わない。三つ目が、国鉄の労使は、そういう条件が整備されたならば、責任を持って労使協力して国鉄の収支均衡を達成しなければならない。こういう三つの条件を提示して、法案の修正と国鉄再建対策をつくりたい、そう思ってやってまいりました。  今度の法案の修正も、その他国鉄再建についての合意事項も、一〇〇%とはいかないけれども、まあまあ九〇%ぐらいわが党の主張が入れられたという考え方で、そうして修正案にも共同提案者になりました。だから、一日も早くこれが成立することを期待しています。  しかし、問題はこれだけで済まないわけですね。政府助成の規模にいたしましても、今後の労使の協力にいたしましても、どうしてもこういうところの決定でありますから、抽象的に書かざるを得なかった。だから、これから政府国鉄に、きょうわずかな時間でありますけれども、明確な態度の表明をしてもらわないと問題が完結をしないのです。  まず、総理にお尋ねをいたします。  総理も、昨年度の五〇%の値上げ以降の国鉄の状態というのはおわかりだと思います。いま申しましたように、国鉄の場合、運賃値上げによって過去の累積赤字を解消するという可能性はもうないのです。ですから、せいぜい物価上昇に見合うコスト増を賄う以外に運賃値上げは可能性はないのです。これは法律のあるなしにかかわらずありません。でありますから、そうなれば国鉄の実態をはっきり認識して、どこまで国が助成すべきか、どの部分国鉄経営努力によって賄わせるか、その限界をはっきり見きわめて、それで打つべき手を打たなければならないのです。  私は、五十二年度現在において、詳しく述べる時間がございませんけれども、八千五百億というものは構造的な赤字、あと三千億ないし三千五百億くらいが、国鉄労使が必死になってがんばれば、一年では解消できないけれども、数年で解消できる赤字である、これは半ば私の勘が入っておりますから、これは政府で十分に検討していただいて結構であります。だから、八軒五百億という額、それが絶対に正しいという自身はございませんけれども、大見当、そのくらいになるのです。  ですから、いま大事なことは、ここで運賃値上げを限定的であるけれども法定の枠から外して、国鉄が自分の判断でどうしても運賃値上げをしなければならぬときには、その限りにおいてできるところまできましたが、ここで政府がやるべきことは、構造的赤字国鉄がいかに経営努力をしても賄いようのない、将来に向かっても何ともしようのない、いろいろな公共的負担のために生ずる赤字国鉄は構造不況業種でありますけれども、設備廃棄のできない産業ですから、それに伴う赤字政府がしょわざるを得ない、そこまで政府がしょって、ここまでめんどうを見たのだから、国鉄責任を持ってあとは引き受けろ、国鉄にげたを預ける、そういうふうにしなければ国鉄再建はできないのです。  だから、この「基本方向」の中にも書いてありますように、五十三、四年でその基礎固めをする、ここには「公的な助成を含む所要の対策」と書いてございますが、その他の所要の対策というのは余りたくさんはないのです。ですから、そこに言っているのは、主として公的助成であります。一部は公共団体になるかもしれませんが、大部分政府です。ですから、私が八千五百億と言っておる性格の赤字補てん、これを五十三、四年でもって政府にやってほしい、それを閣議了解の中に盛ってほしいということをそこに言っているわけです。これをひとつ総理、責任を持ってやるのだというお答えをいただきたい。
  209. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 国鉄再建の三つの柱、その中で政府の財政援助、これをどういうふうにするかという問題についてのお尋ねと御所見でございますが、いま年間の赤字が幾らになるかというその数字について私は申し上げる時期になっておりません。ですから、それはお許し願いまして、考え方基本を申し上げますと、各党間で御相談をいただいた「国鉄再建基本方向」において明確に考え方が示されておるわけでありますから、その考え方に沿って、構造的欠損と認められる部分につきましては、国民経済的観点を考慮して公的助成を含む所要の対策を講じてまいる、このように御理解を願います。
  210. 河村勝

    河村委員 いま金額まで含めて総理にお答えをいただくことは無理であると思います。しかし、いまの総理のお答えは、必ず守っていただきたい、よろしゅうございますね。——それから、そうなりますと、どうしても必要なことは、国鉄の労使の協力という問題です。いま総理のお答えを、一応信用と言っては失礼ですけれども、これを信頼して、とにかく構造的赤字は一応埋まる、運賃値上げについても一定の制約のもとに自主的にやれる。そこまでくれば、残るところは国鉄自身の努力です。だから、いままでは幾らがんばってもどうしようもないから、適当にとはお考えにならないかもしれないけれども、当てどがないものだから、多少やるだけやって、後のしりぬぐいは政府にしてもらおうという安易なお気持ちがどうしても起こりがちである。しかし、今度は非常に条件は変わるわけです。それに対応する総裁の決意をひとつこの際聞いておきたい。
  211. 高木文雄

    ○高木説明員 いま御指摘がございましたように、長い問外部的条件といいますか、そういう点が率直に申し上げて整っていなかったということのために、苦労してまいったわけでございますが、いまお示しのような条件が整いました環境の中におきましては、あくまでこれは労使間において何とか生き抜いていかなければならないということになろうかと思います。現在の状況においてなかなか険しい道であるとは存じますけれども、そして非常に大勢の職員集団でございますので、いろいろな考え方の人もおりますけれども、しかし、それは乗り越えていかなければならない道であるというふうに考えております。
  212. 河村勝

    河村委員 もう少し具体的に言いますと、やはりこの国鉄再建を可能にするかどうかというのは労使間の協力なんですね。いま私は外野席から見ておりますけれども、最近ずいぶん努力をされていると思いますが、しかし、国鉄の現場の実態というのは、まだまだ本当に十分働いているとは言いかねる。職場規律、これは全国的にずいぶんばらつきがありまして、いいところもありますから、全部を非難するつもりはありません。しかし、肝心なところがまだまだ職制麻痺、現場の管理者の業務上の指揮命令系統が全く権威を失ってしまって、そのために実際人の数に見合うだけの働きをしていないところがきわめて多い。だから、実態的にそういう勤務の中でまだまだ働く余地のある者を働かしていないという面があり、これは非常に大事なことでありますけれども、それをやるのにはどうしても職制麻痺状態をまず立て直さなければならぬ。そしてそれについてこの段階で重大な決意をもって臨まなければならない。そうでなければ、せっかくここまでいろいろな条件が整備されても、永久に国鉄再建はできないと私は思う。その点についての総裁考え方を伺いたい。
  213. 高木文雄

    ○高木説明員 おっしゃるとおり、少しずつは改善の道を歩んでおりますけれども、以前よりよくなっておるという程度でございまして、決して満足すべきものとは考えておりません。御指摘の点は非常にむずかしい問題ではございますけれども、きちっとして取り組んでいくということをはっきりお約束いたしたいと思います。
  214. 河村勝

    河村委員 総理に一つ申し上げておきますけれども、労使関係をよくするためには政府の姿勢も大事なんです。いままで政府は、とかくいろいろな公の声明その他では、法律に違反したストライキが行われたような場合に、断じて許さないとかけしからぬとかいうような声明は出されるけれども、実際に違法スト、それも政治ストですね、こういうものに際会をいたしますと、政府はすぐそういうことを忘れてしまって、そういう圧力によって左右をされていろいろな妥協をします。これがいままで国鉄のみならず、労使関係全体に非常な悪影響を及ぼしているのです。一番よくないのは国鉄だけれども、それを助長しているのは政府でもあったわけです。  ですから私は、これは国鉄再建ばかりに限りませんが、政府にそうした労使関係に対する姿勢をこの際もう一遍考え直して、しっかりしてもらわなければならぬ、そう思っていますが、いかがですか。
  215. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 今回の法律案が、各党間で相談をされました基本的な方向ということで決定されるということになれば、私は、これは画期的なことだ、こういうふうに思うのです。とにかく上限は設けますけれども、ある程度運賃引き上げを運輸大臣に任せる、こういうこと、政府も思い切った財政援助をやろうというのですから、そういう際に労使が協力をうまくやらぬというようなことでは、この国鉄問題という困難な問題は私は解決しないと思うのです。私は河村さんがおっしゃるとおりだと思うのです。この法律案が通る、その上は思いを新たにして労使問題を国鉄当局には見直してもらいたい、政府もそのような心構えを持ってやっていきたい、このように考えます。
  216. 河村勝

    河村委員 総理、くどいようですけれども、不幸にして全党にはなりませんでしたけれども、閣議了解を求めている「国鉄再建基本方向」、これが完全に実施されることが前提条件になるわけですから、これと今度の運賃法定主義緩和、これが結びついて、それで初めて国鉄にいわばこれだけやったのだから、おまえたちやらなかったら承知しないぞというだけの条件ができるのですから、その最初の条件が崩れたら私は何にもならないと思う。  ですから、ここでもってぜひとも必ずそういう道が開けるように政府としてもがんばっていただきたい、それを最後にお願いして私の質問を終わります。
  217. 大野明

    大野委員長 次に、小林政子君。
  218. 小林政子

    小林(政)委員 まず、総理にお伺いいたしたいと思います。  運賃については、必定制を外して二〇%程度値上げが自由に大臣認可でできる、また、法律的にこれが可能性ということだけではなくて、現に昨年五〇%、そして本年一九%という形で連続値上げ予定されているわけでございます。しかし、昨年の大幅値上げで乗客の国鉄離れというものが大きく起こっていることも、現に補正予算利用減というものも含めて実際には二千七百五十二億円の収入減分を減額している、こういう事態も起こっているわけでございます。また、国鉄の五十一年度監査報告書にも、運賃改定後の状況から見ても、将来の運賃改定による収入増加にはおのずから限度がある、こういうこともはっきりと指摘をされているわけでございます。  総理は、このような国民の国鉄離れというものが新たに大きく起こっている中で、今回法定制を緩和して、しかも先ほど申し上げたように、大幅な値上げが行われるという状況については、具体的にどのように現在の事態を認識をされているのでしょうか。  そしてまた、その上政府は、これもただいま閣議了解の際にも取り上げるといってお認めになりましたけれども、「国鉄再建基本方向」に書かれております「総合運賃政策」につきましても、その中身は、私、調べてみますと、国鉄運賃にあわせて他の航空料金だとかあるいは私鉄など、これを運輸省が調整して、そして一斉に引き上げていくということになるのだというふうに考えざるを得ないわけでございます。  総理、あなたは施政方針演説の中でも「景気問題と並んで私が一番重税をしている問題は物価の問題でございます。」このようにお述べになっております。このような総合運賃政策だとかあるいは大幅値上げを、法定制を緩和して認めていくという方向に突破口を開く、こういう点をお認めになるということは、総理が施政方針演説で述べておられました物価を極力抑制していく、こういった問題と全く逆行するものではないだろうか。そしてまた、このことは、政府主導の公共料金値上げというもの、いまの国鉄のあり方というのは、そういうものではないかとすら私は考えているわけでございます。  国鉄だけではなくして、新聞などで報道されている内容を見ますと、特に来年度は酒やたばこ郵便料金など、一連の公共料金値上げというものも準備をされているというやに聞いておりますけれども、このような物価抑制に逆行するこのことに対して、総理自身がいま国民の前ではっきりとこの問題に対しての見解を明らかにしていただきたい、私は、このことをまずお伺いいたしたいと思います。
  219. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 小林さんは、物価というような見地から国鉄運賃間脳を大変御心配のようでありますが、政府は総合的に物を考えておるわけであります。総合的に物を考えるその中で、適度な運賃値上げということを考える。適度ということは、やはり国民から大体この辺は妥当である、こういうふうに理解される、そういう程度であろう、こういうふうに思いますが、非常識な値上げというようなことを考えてはおらぬということをはっきり申し上げます。  また、国鉄運賃を上げておいて、そして国鉄のお客さんが少なくなる、それを救うために他の交通機関料金を引き上げるのではないかというような御懸念を示されておりますが、運賃はもとより総合的に見る必要がありまするけれども、その総合というのは、やはり基本原価主義です。各交通機関の一つ一つについての原価主義、その原価主義の上に立ちまして、一つ一つの交通機関の特性をどういうふうに生かしていくかというような考え方、そういう中で各種運賃を決めなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、国鉄は上げました、他の料金は右へならえ、こういう考え方はいたしておりませんから、その辺はそのように御理解を願います。
  220. 小林政子

    小林(政)委員 不況とインフレのもとで、国民の大多数がいまこの国会に期待している問題は、御承知のとおり、公共料金値上げではないはずです。本当にこの不況を克服し、物価を抑えてほしい、このことを国民は強く願っているのだと私は考えます。総理の言われた物価公約が、施政方針で述べられた内容が、全く言葉だけのものであって、内容が何一つ具体的に国民の前に示されなかったという点を、いま改めてはっきりとさせられた思いでございます。  もう一つの総理にお伺いをいたしたい重要な問題は、「再建基本方向」にもこれが書かれておりますが、不採算部門の切り捨てと申しますか、その方向が露骨にこの中には示されております。しかも公的助成という言い方で、地方交通線を残す場合には、地方自治体に負担をさせる方向も出ているわけであります。地方交通線の赤字補てん、これを自治体に負担させるという方向は、総理もこれをお認めになられるわけでしょうか。  昨日、参議院の地方行政委員会で、わが党の参議院議員が、自治体に赤字線の負担をさせるということについて大臣に質問をいたしました折にも、自治大臣も事務当局も、そういうことは何の相談も受けていない、そんなことは反対だ、こういうことをはっきりと答弁されておりますけれども基本方向の重要な一つである公的助成についても、関係省庁と全く何一つ具体的な相談もされていないというこういう中で、運輸省の方はそれを、この基本方向が今後決まれば認めていこう、あるいはまた、自治省の方はこれに対して反対だ、すでに私のところにも、いろいろ地方自治体からも問い合わせが来ておりますけれども、私は、この際、総理の口から、政府基本姿勢について明確にひとつお答えをいただきたいというふうに思います。
  221. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま小林さんから御質問の点は、こういうふうに御理解願いたいのです。政府といたしましては、各党間で御相談をされた、そして「国鉄再建基本方向」というのをお決め願っておるわけでありまして、それを体して国鉄再建に取り組む、こういうことであります。  その中で、いま御指摘の地方赤字路線、そういうような問題につきましては、これは公的な助成を行う、こういうことになっておるわけでありまして、それを、どういうふうに具体化するかということにつきましては、十分政府といたしましても検討してまいるという考えでございます。
  222. 小林政子

    小林(政)委員 ということは、総理、地方自治体の負担は現状では考えていないというふうに受けとめてよろしいのでしょうか。
  223. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 公的負担を進めるという考えでございますが、この公的負担というのは、国の場合もあるし、地方公共団体の場合もあるのです。しかし、地方にそう持たせるのは負担が重過ぎるじゃないかというような意見も多々あります。でありますので、いろいろな方面の意見を聞かなければなりませんけれども、ともかく各党間でお話し合いをくださいましたせっかくの結論が公的負担、こういうことになっておりますので、その公的負担をどうするかということは、今後の検討問題にいたしたい、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  224. 小林政子

    小林(政)委員 時間が大分なくなってまいりましたが、いま私がお伺いをいたしました点だけを見ても、今後の国鉄再建の真のあり方、こういう問題については、やはり相当時間をかけて根本的に論議をしていくことが必要ではないかというふうに私は思うのです。  ところで、ただいま総理に示されたこの「基本方向」、これについて私どもは賛成をいたしておりません。二十一日の段階で、しかも理事会の中だけで話し合わされたというような、こういう内容は、今後の幾多の経営の問題、財政の問題、いまさまざまな問題を抱えている、これらの問題について、本当にこれを解決し、国鉄再建させていくということは、むしろ公の委員会やあるいはまた国民のわかる場所でその中身について十分審議を行うということこそが、そして国民の理解と協力を得て真の国鉄再建を図っていくという方向を打ち出していくことこそが、非常に重要な問題だというふうに私は考えております。  それが、政党の中でも反対をしている党がある、にもかかわらず、これを二十一日の理事会で、しかも公にしないという理事会の中で示された内容、これに賛成をされた政党もございますけれども、こういう短い時間で、限られた範囲で、国民の知らないところで、この問題についてのこの方向を閣議で決めていくというようなあり方というのは、私は問題だと思います。  総理、この点についてどのような見解をお持ちか、ひとつお伺いをいたします。  それから、時間の関係でもう一点だけ、総理にこの際お伺いをいたしておきたいと思います。  国鉄経営を圧迫している要因は、さまざまありますけれども、しかし、その中でも大きな原因の一つは、いまの国鉄の膨大な設備投資が借金によって賄われてきているということであろうというふうに思います。これは昨年の過去債務の一部をたな上げしたとき以降も借金は年々急増を続けて、五十二年度末には六兆七千五百億円、五十三年度末には約八兆円にもなっているわけでございます。たな上げ分を加えれば約十兆円を超すという借金になるわけであります。しかも、たな上げ後の五十一年から五十三年までの三年間に三兆五千億円も借金が見込まれています。このうち、結局は収入の不足の穴埋めをいたしました借金は約一兆円で、あとの二兆五千億円は設備投資のための借金、こういうことでございます。  私は、工事費の予定二兆七千億円の大部分が借金で賄われているというところにこそ根本的にメスを入れていかなければならないのじゃないか、真の再建を図っていくために、総理は、この問題についてどうこれを解決しようとされているのか、この点を伺うと同時に、先ほどからもお話が出ておりましたけれども、私は、道路財源国鉄への国の助成というものをちょっと調べてみますと、結局、道路への国の支出は、昭和三十五年度から五十年度までに八兆四千六百三十億円一般会計から支出がされておりますけれども国鉄への国の助成は九千八百三十八億円、そのうち出資額が四千七百十一億円、国鉄への国の助成と道路への国の支出を比べてみますと、道路の方が九倍も多いという計算になるわけでございます。  したがって、道路財源として国が支出しておりますこの資金の一部を、わが党が常に前回の政策の中でも明らかにいたしましたように、国鉄の基礎施設の建設のための資金の確保に、その一部を回すというようなことを総理にここで決断をしていただくことが大事ではないかと私は思いますけれども、この点も含めてお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  225. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 国鉄企業体でございまするから、借金をして悪いということはないのです。問題は、その借金をして投資する、それが採算性から見て妥当であるかどうか、こういうことではないか、こういうふうに思うのです。  そこで、今後の国鉄の設備投資につきましては、新線建設等について投資採算を考慮した基準を決めたい、このように考えております。したがって、今後はその基準に照らして投資採算を慎重に検討した上、具体的な投資の決定を行っていくことが基本となるが、国鉄経営負担となるような投資については、他の交通機関とのバランスを考慮しつつ所要の措置を検討する、そのような考えでございます。
  226. 大野明

    大野委員長 次に、中馬弘毅君。
  227. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 国鉄の状態をこのような末期的な症状にまで至らしめた原因、これは種々ありましょうけれども、最終的には法改正を含めて何ら抜本的な対策を打たなかった政府責任であるということの謙虚な反省が必要だと思います。と同時に、いろいろな場面において余りにも国鉄経営にまでタッチしてきた政治というものに対する一つの反省もなければならないかと思っております。  私たちが今回の法案に対しまして、値上げ法案という要素を除きまして、今年度じゅうは値上げをしないということを前提に法定制緩和に踏み切りましたのも、国鉄総裁当事者能力を持っていただきたいということの真なる願いが含まれておるつもりでございます。政治が余りに介入することによって本来の企業経営が十分な形でできなかった。これは政治だけではないかと思います。鉄監局なんという非常に膨大な世帯がありますから、官僚組織なんかも含めまして、これは行政改革とも絡みますけれども、これの合理化も含めまして、国鉄総裁に大幅な権限を持ってもらって、そして責任まで持ってもらって、国民の足である国鉄経営に取り組んでいただきたい、このような心からの願いがあります。  しかし、今回の法定制緩和だけでは完全な形で当事者能力を持ったという形にはまだまだなっていないかと思います。均一運賃制といったものの見直しも必要かもしれません。あるいはいろいろな官僚的な形での一つの人事制度、お役人と同じような形での人事制度といったことも問題かと思います。こういったまだまだあります制約というものを、総理は今後順次外していかれるおつもりかどうか、この点についての御見解を承りたいと思います。
  228. 田村元

    田村国務大臣 日本国有鉄道当事者能力を持たせることは確かに必要でございます。ただ、従来からの法令の拘束あるいは慣例、いろいろ問題がございます。でありますから、一気に民間企業のように独立させるわけにはまいらぬかもしれません。また、監督官庁としての運輸省立場もございます。しかしながら、当事者能力をでき縛る限り持たせていくという必要がありますが、今度のこの運賃緩和法案も、その一つのあらわれというふうにお受けとめいただいて結構かと思います。
  229. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 方向としては、そちらの方向に少なくとも志向しているということと理解していいわけでございますか。
  230. 田村元

    田村国務大臣 現実に即して可能な限り国鉄当事者能力を持たせることはよいことだと思います。
  231. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 いままでは、国鉄再建と言いながら、いずれも現状の改善に手をつけずに、ただ結果のしりぬぐい、いわゆる運賃値上げあるいは政府助成といったことだけに終始してきたきらいがあるわけです。国鉄に一つの経営者能力、事者能力を持ってもらったとしましても、国鉄の内部努力だけではいかんともしがたい側面があることは事実でございます。  その点について総理にお尋ねしたいわけでございますが、その第一は、国鉄の国家的あるいは公共的な役割りについてでございます。国鉄がもはや独占企業でないことは、もうおわかりのとおりでございます。他の交通機関とのもろもろな競争にさらされております。そして現実に競争に敗退した部門におきましては、貨物駅の集約とかあるいは列車の本数の削減といったことが行われております。  総理は、この事態を、自由経済のもとで競争原理のおもむくままにやむを得ない事態ということに判断しておられますのか、それとも何らかの対策が必要とお考えなのか、御見解をお承りしておきたいと思います。
  232. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 いま、国鉄離れでありますとか国鉄をめぐる環境というものに非常に変化があるわけです。それは、一つはモータリゼーションといいますか、そういう問題が出てきておる、また航空機の利用、これが非常に高まってきておる、こういうような状態もある。だからと言って、航空機の利用を制限し、あるいはモータリゼーションを抑えて、そして国鉄がよくなるかというと、直接的には結びつかぬ、私は、こういうふうに思うのです。ですから、公権力だけでこの問題をさばくということは妥当ではない、私は、こういうふうには思います。しかし、さらばと言って、交通機関がおのがじしその行くところに任しておく、こういう状態もよくない、私は、こういうふうに考えておるわけです。  そういうことを考えながら、総合交通体系ということを言っておるわけでありますが、とにかく時代が非常に変化した、その変化に応じまして昭和四十六年、あのときつくったあの総合交通体系、あれを根本的に見直しまして、そして新しい時代に応じた総合交通体系をつくろうと思っておりますが、それは、ただいま申し上げたような意図に基づくものである、このように御理解願います。
  233. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 総合交通体系の話に移ってきましたが、鉄道とか自動車とかあるいは船、飛行機、それぞれの役割りはあろうと思います。先ほど来おっしゃっておりますように、総合交通体系の新たな成案を得るのだというお話ですけれども、じゃ、その総合交通体系の一つのあるべき姿をつくっても、それにどういう形で透導していくか、公権力は適当でないということは、もちろんでございましょうけれども、どういう形でいくのか。ただ自由経済に任すというのじゃなくてということでありますと、どのような方法で総理お考えでございましょうか。
  234. 田村元

    田村国務大臣 総合交通体系は、きわめて重要な問題でありますから、もちろん四十六年答申、閣議了解等のいわゆる総合交通体系というものの基本的な問題について、方向づけはそう間違っておると思いません。しかし、ずいぶん時代が変わりましたから、社会経済事情が大きく変化したのでありますから、手直しをしなければならぬ。それも相当手直しをしなければならぬ、これは当然でございます。  そこで、総合交通体系というものを、新たにまた策定してやっていく必要があるのでございますけれども、私がいつも申しますように、これを憲法にしてはいけない、金科玉条としてしまってはいけない、それはあくまでもガイドラインでなければならぬ、このように私は考えるのであります。自由経済に逆行する、いまの中馬さんのお話の国家公権力によるコントロールがあってはならない、また、官僚統制があってはならないのでありますから、その点では非常に微妙な面がございます。  そこで、先ほども私がどなたでございましたかに申し上げたとおり、行政の現実の運営において総合交通体系を可能な限り生かしていく。それは時間もかかりましょう、かかりましょうけれども、それをやっていかなきゃならぬ。そのためには、いまの縦割り行政の運輸省の姿であってはいかぬのであって、総合交通体系に沿うような行政機構の改革を必要とする。  それで私は、いろいろなことを考えて、私なりの私案を描くに至った。ただ、総合交通体系は運輸省だけで決まるものではありません。先ほど申し上げましたように、内閣に建設省や国土庁や運輸省や各関係省庁からなる一つのチームでもつくっていただいて、そして、そこで十分に想を練っていくという必要もございましょう。そのようにして自然に定着をさせていく。そのためのガイドライン、このようにお考えをいただいていいのではないか、少なくとも私はそのように考えております。
  235. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 恐らく総合交通体系というものができたといたしましても、ミクロの立場で言いますと、利用者あるいは企業が、それぞれその論理で動くわけでございますから、放置しておけば、伸長、衰退は、考えた総合交通体系とは違ったものになってくるかもしれないと思うのです。  そういう点を考えますと、今後必要な総合交通体系の一番大きな柱は、省エネルギーの問題になってきはしないかという気がいたします。総理は、かねてから省資源国日本がどうあらねばならないかということをいつもおっしゃっておりますが、長期エネルギーの暫定見通しも、この六月に中間報告が出ております。これにおきましても、かなり、一〇%を超えるような節約といいますか、これが織り込まれております。このエネルギーの暫定見通し、これは単なる見通しなのか、あるいは希望的数字なのか、それともこれに基づいて一つの国家的な計画をお進めになっていく所存なのか、総理の御見解をお願いいたします。
  236. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 総合エネルギー調査会が先般出しました暫定報告ですね、これはなお精査いたしまして、本格的な報告になるわけでありますが、暫定報告であり、暫定数字が出ておりますが、恐らく本報告になりましても、これと非常に違った数字が出てくるだろうとは私は思いません。でありますので、あの暫定報告、これをにらみながらエネルギー政策を進めておる、これが現況でございます。
  237. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 そのエネルギー節約対策と申しましょうか、これの中では、総合交通体系もその点から考えられるということに理解してよろしゅうございますか。
  238. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 この省資源、これにつきましては、カットダウンといいますか、細かいところまで施策を決めていない面が多々あるのです。いま景気問題がある、そういう状態の中で省資源という考え方をごり押ししますと、また、景気問題と相矛盾する面も出てまいりますので、景気政策とそう矛盾しないような形で、ただいまのこの時点では、静かに省エネルギー政策を進めておる、こういう段階でございまして、いま総合交通政策とその関係はどうかというところまでまだ施策は進んでおらぬ、こういうふうに御了承願います。
  239. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 私が申しておりますのは、短期的な景気の問題で言っているのではございません、今後交通体系を考えていくときに、省エネルギーの観点が必要ではないかと申しておるわけでございます。  そういったことからいたしますと、たとえば輸送体系にしましても、個別で運ぶよりも、あるいは大量にまとめて運んだ方がエネルギーの節約になるでございましょうし、輸送手段といたしましても、トラックや乗用車よりも貨車、列車あるいは都市交通におきますバス、地下鉄の方が省エネルギーになることは予想されるわけでございます。もちろん船とかパイプラインとかいったことも考えられるわけでございますが、輸送の距離にいたしましても、製品あるいは倉庫、市場、そういったものがふくそうせずに単純に一つのルートとして結ばれている方が、これも省資源になります。こういった観点での今後の政策、政府のお考えになっている点をお伺いしたいと思います。
  240. 福田赳夫

    ○福田内閣総理大臣 総合交通体系の中で省資源を生かしたそういう考え方をとらなければならぬ、これはもう当然であります。省エネルギーという考え方は、あらゆる角度から検討し、推し進めなければなりませんけれども、その中において交通政策を考える、特に総合交通政策を考える、その場合に、省資源ということを頭から放すわけにいかぬ。これは十分それを配慮してやらなければならぬという考えです。
  241. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 それであるならば、国鉄貨物を縮小していくという現在の対策でございますね、これは省エネルギーに逆行しているものと言えるのじゃないかという気がするわけです。エネルギー問題は、ただ節約になればいいというわけではございませんので、あすにでも中東戦争が起こって油がストップするかもしれませんし、あるいはOPECの資源戦略で三年後に油が十倍になるかもしれない。期間の問題はともかくとしまして、その方向に向かっていることは事実でございます。それであれば、大量輸送でエネルギーの節約になります貨物というものを縮小する政策は再考を要するのではないか。一度廃止してしまったものはなかなかもとには戻せません。そういう現在の価格体系で物事を考えるのではなくて、将来の価格体系を予見した上での政策が必要だという気がするわけでございます。その点について……。
  242. 田村元

    田村国務大臣 一般論として言えば、エネルギー効率では非常に鉄道とか海運はすぐれております。これはもう理屈なしで認めるわけであります。ただ問題は、エネルギー効率を論ずる場合には、乗車効率あるいは積載効率というものを踏まえて論じていかなければなりません。そういうことを踏まえて論じるということが、総合交通体系を組んでいく上においての一つの大きな柱になる、このように考えるものでございます。そういういろいろなバラエティーに富んだ要素というものを踏まえながらの判断でございますから、その点どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  243. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 時間もございませんようなので、私が申しておりますのは、いま言いましたそういった長期的な観点に立っての国鉄問題も含め、あるいは総合交通体系も含めての施策を特にお願いしたいということの要望でございますが、以上のことを申し上げまして質問を終わりたいと思います。
  244. 大野明

    大野委員長 これにて本案並びに加藤六月君外二名提出修正案に対する質疑は終了いたしました。  この際、加藤六月君外二名提出修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。田村運輸大臣
  245. 田村元

    田村国務大臣 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案に対する今回の修正案につきましては、政府といたしましては、やむを得ないものと認めます。     —————————————
  246. 大野明

    大野委員長 これより国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  247. 宮崎茂一

    宮崎委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、自由民主党民社党及び新自由クラブ三党共同提案に係る修正案及び修正部分を除く政府原案に対し、賛成の討論を行うものであります。  国鉄は、過去において国内輸送の大動脈として国民生活の向上と国民経済の発展に寄与してきたのでありますが、今日では国鉄の金輸送分野に占める割合は逐年低下し、昭和五十一年度には旅客輸送において二九%七、貨物輸送において一二%二を占めるにすぎず、国鉄の国内輸送における独占性はすでに失われているのであります。しかしながら、国鉄は、今後ともわが国交通体系の中で、主として都市間旅客輸送、大都市圏旅客輸送及び中長距離大量貨物輸送の分野に重点を置きながら、分相応の役割りを果たしていくことが期待されているのであります。  また、国鉄財政は、昭和三十九年度赤字に転じて以来、急速に悪化の傾向をたどり、昭和四十四年度及び昭和四十八年度の二回にわたる財政再建対策も、その目標を達成することができず、さらに、昭和五十一年度における再建対策も変更せざるを得ない状況に立ち至ったのであります。その原因は、他の競争的立場にある輸送機関の目覚ましい進歩など種々ありますが、適時適切な運賃の改定ができなかったことが重要な原因の一つであったことは事実であります。  御承知のとおり、西欧の先進諸国におきましては、鉄道運賃国会の議決で決定している国はありません。イギリス、フランス両国においては、昭和四十年前後から、国鉄は自由にその運賃を決定することができることとなっております。ドイツにおいても、現行の運賃を基準として最高二〇%までの枠内で自主的に運賃を改定できるのであります。すなわち、鉄道は、自動車や航空機の発達による輸送分野の縮小に伴い、運賃決定の方式も自由化へ変化しているのが世界の大勢であります。  わが国においても、昭和二十四年参議院運輸委員会におきまして、「鉄道運賃国会の監督のもとに、経済情勢に応じて機動的に敏速に改変できるように考慮すること」という政府に対する要望事項があり、また、臨時公共企業体合理化審議会の昭和二十九年十一月の答申において「運賃決定に国会が直接関与することは適当でないので、政府部門に特別機関を設け、その議を経た上で政府がその責任において決定すること」と述べております。また、最近における各種の答申や提言においても、運賃水準の適時適切な改定と運賃の弾力的運用が提案されております。  今回の運賃法定制を弾力化する改正案は、独占性を失った鉄道における運賃決定の自由化という世界的趨勢に沿ったものであり、また、わが国の国鉄の現状に即応したものであります。さらに国鉄再建のためには、経済社会の動向、他の交通機関との関係等を考慮しながら、適時適切な運賃の改定を行えること、また、国鉄に自立経営能力を付与する第一歩であること等の諸点にかんがみ、今日においては適切な措置であると信じます。  過去における国鉄財政再建計画が運賃改定のおくれによって破綻したことを思うとき、かかる国鉄運賃法定制の弾力化は、まさに遅きに失したとさえ言えると存じます。  本改正案におきましては、当分の間、鉄道運賃賃率等は、運輸大臣認可を受けて国鉄が定める賃率等によることとし、その改定率について限度を定めております。  しかしながら、これでは利用者負担の大幅増大も懸念されますので、修正案においては、当分の間、一事業年度において、新たなる賃率等実施することによる平年度収入増加見込額の総額が、物価等変動率により算定した軽費の増加見込額を超えない範囲において運賃等を決定するものとしております。  これは運賃料金値上げを物価等の変動に伴う経費上昇分に抑えようとするものであり、今後における国鉄経営努力を期待しているものでもあり、適切な措置であると考えるものであります。  また、修正案において、運賃法改正の施行期日昭和五十三年三月三十一日といたしましたことは、昨年の五〇%という大幅な運賃改定による国鉄離れの現状からいって、また、物価上昇抑制の見地からやむを得ないと存ずる次第であります。  次に、本改正案におきまして、国鉄経営の改善の一環として国鉄の投資対象事業の範囲を拡大することといたしております。これにより、国鉄が新たな発想のもとに、関連事業の充実、資産の有効活用等を推進して経営健全化に資する道が開かれるものと思われます。  さて、今回の国鉄運賃法の改正案は、運賃法定制の弾力化という画期的なものでありますが、これをもってしても、適時適切な運輸収入の確保にとどまるものであります。いわゆる国鉄再建の三本柱のうちの一本でしかあり得ません。しかも国鉄の現状からすれば、今後大幅な収入増を望むことはむずかしい情勢であり、この法律の成立のみによって国鉄再建を期待することは不可能であります。  今後、国鉄再建のためには、国鉄のみずからの採算において企業経営を行うべき分野と国鉄経営上の負担の限界を超えると認められる分野とを明確にし、前者については国鉄自身企業努力を傾注し、後者については国及び地方公共団体が責任を持って助成を含む強力な施策を講ずる必要があると思うものであります。  しかしながら、国鉄再建は、このような施策のみによって実現できるものではなく、国鉄の労使が一体となって再建のために努力を傾注して、初めてその実現が期待できるのであります。国鉄の労使が、この点を深く認識し、心機一転相互の十分な理解のもとに相協力し、全力を挙げて国鉄再建に取り組むことを切に要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  248. 大野明

  249. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、日本社会党を代表して、国鉄再建に関する法案修正案を含む)に対して、反対の討論をいたします。  修正案につきましても、いままでの論議を通じて実質的に大差なきものと指摘せざるを得ません。そもそも再建対策は、今年一月の閣議了解が四回目であります。過去の経過を申し上げるまでもなく、五十年十二月閣議了解による五十二年度末の収支均衡を図る目的で五十一年、五十二年の連続大幅値上げを計画しましたが、五十一年度の五〇%値上げは当初予定収入を下回り、加えて旅客の国鉄離れに拍車を加え、五十二年度値上げ実施が実質的に不可能な状態になりました。それは五十年度九千四十七億、五十一年度九千百四十一億、五十二年度見込み八千百億から八千五百億と予想される現状から判断します場合に、第一に物価変動を考慮した経費上昇額に対応するとするならば、少なくとも先ほど来の論議を通じ明らかになりましたように、三〇%を超える運賃値上げを行う場合も十分に予想されます。  五十、五十一年度赤字、客観的な経済不況の現状から見ましても、フリーハンドを与えることによる国鉄財政に対する政府責任所在のあいまいさ、あるいは責任回避から利用者負担への安易な道をとりやすい不安があります。  運政審議会の答申によるいわゆるローカル線対策、A、B、C、D案の実現への展望、あるいは赤字対策の不十分な対策構造的欠陥対策である公共割引の見直しやその範囲等に対する措置。新線建設、在来線や新幹線等に対する不合理是正、すなわち財政援助や投資など。さらに、問題である貨物輸送に対するところのいわゆるこのような運用を通しての他の部門を含めたところの対応策等。  以上指摘しました諸点の改善につきまして、わが党が数回にわかり指摘し、かつ提議してまいりましたところの過去債務や累積赤字の抜本的な改革、負担区分明確化、あるいはエネルギー対策の展望を含めた総合的な交通政策の確立など、これらの諸政策の実行により、経営安定の展望を開く再建への経営基盤の確立こそが、今日の国民経済の現状を見る場合、いわゆる運賃値上げの法定制緩和よりも、この経営安定の基盤の確立こそが先決であることを私は強く指摘をしたいのであります。  もちろん、国鉄再建への道は、政府並びに国鉄労使が危機的状況にある国鉄の現状を十分に認識し、真剣にして、かついわゆる小まめな取り組みをすることが今後の再建の道に通ずることを付言して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  250. 大野明

    大野委員長 次に、宮井泰良君。
  251. 宮井泰良

    宮井委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、国鉄関係法案修正案並びに修正部分を除く原案に対し、反対の立場から討論を行います。  御承知のとおり、国鉄運賃は公共料金の柱であり、この大幅値上げが消費者物価に与える影響はきわめて大きいものがあります。昨年の五〇・三%に及ぶ運賃値上げは、政府の公約を大きく上回る消費者物価の上昇となって国民の生活を圧迫しました。仮に二〇%の値上げを二年連続して行えば、結果的には一年に五〇%以上の運賃値上げを行った以上の影響が出ることは明らかであります。  国民経済の安定を政治の主眼に置くわが党としては、国民生活を圧迫することが明らかな本法案の成立を絶対に認めることはできないのであります。  次に、現在の政府国鉄再建要綱は、三木前内閣当時につくられた国鉄再建計画を部分修正したものであることは、政府自身が認めているとおりであります。しかし、国鉄の五十一年度決算報告書によれば、五〇・三%の大幅値上げを行ったにもかかわらず、結果的には九千百四十一億円の赤字を出すに至っています。すなわち、これは政府国鉄再建計画がその初年度において破綻したことを示すと同時に、運賃値上げによる赤字解消には限度があることを示しているのであります。  したがって、破綻した再建計画を部分修正したにすぎない現行再建要綱では、国鉄再建は不可能であり、また、それをベースにした修正案をいま改めて成立させる意味は全く失われているのであります。  すでに限界がある運賃値上げ依存型の現行国鉄再建要綱を根本から改め、真に国鉄再建につながる案につくり直し、国民の前に明らかにするとともに、あわせて再建の役に立たない本法案を白紙撤回することであると考えるものであります。  さらに、この修正案に反対する最大の理由は、先ほどからも述べておりますように、この法案が成立すれば、全く歯どめがないまま、際限もなく、それも大幅に運賃値上げが連続して行われるおそれが濃厚であるという点であります。  本修正案によれば、法定緩和をやめる時期を国鉄の累積赤字が解消されるまでとしておりますが、政府国鉄再建要綱に基づいて作成される現行の国鉄予算によっては、政府が当初収支均衡の目途とした五十四年度はおろか、いわば半永久的に国鉄財政の収支均衡を図ることは絶望的であり、このままではむしろ赤字は今後ますます拡大する一方になることが明白であります。  わが党が試算したところ、五十三年度以降、二〇%近い運賃値上げを毎年実施したとしても、累積赤字の解消は五十八年度においても不可能であり、それ以降は大量に出る退職者の退職金や借金の利子支払いのため、運賃値上げを再び繰り返して行わなければならなくなるのであります。  要するに、当分の間というあいまいな表現によって行われる法定制緩和は、値上げの恒常化以外の何ものでもないのであります。  本法案を成立させ、国民生活と国鉄経営をさらに悪化させる政府の今回の処置に対し、厳重な反省を求め、反対討論を終わります。(拍手)
  252. 大野明

    大野委員長 次に、米沢隆君。
  253. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして、自民、民社、新自由クラブ三党共同修正案並びに修正部分を除く政府原案に賛成の立場から討論をいたします。  わが党は、本法律案に関連いたしまして、今春以来、国鉄再建についての考え方を明らかにし、法律案の修正を要求いたしますとともに、国の行財政上の助成強化等につきまして、政府対策を求めてまいりました。  その骨子は、次のとおりでありました。「一、物価等変動率限度とする運賃値上げを当分の間法定の枠から外し、一部国鉄当事者能力を付与する。ただし、五十二年度値上げは行わない。一、昭和五十二年度以降の政府助成規模を八千五百億円とする。一、国鉄労使は、右の条件のもとに責任を持って経営努力に当たり、国鉄財政の均衡を達成する。」というものでありました。  その趣旨は、すでに御案内のとおり、昭和五十一年度実施されました五〇%値上げによりまして、他の交通機関との競争関係から、国鉄運賃はすでに上限に達し、過去の累積赤字を解消するような実質値上げは、もはや不可能になったと判断いたします。したがって、今後の運賃値上げは、物価等変動に伴うコスト増を賄う以上に出ることはできないのでありまして、物価等変動率プラス一五%までを法定枠から外そうという政府案は、その意味において実態認識を欠く暴論でありました。  この際、その点を修正し、当分の間この物価等変動率限度内とする法定主義の緩和を図ることによりまして、国鉄当事者能力を付与することが、国鉄の今後の再建努力に関し、真の意味における経営責任を追及できることになると判断いたします。  また、私どもは、今後の国鉄再建の方策につきましては、次の二つの基本方針を堅持すべきものと主張してまいりました。  第一に、国鉄のいかなる経営努力によりましても解消できない構造的な赤字は、国が責任を持つことであります。構造的かつ恒常的な赤字経営を余儀なくされながらも、公共機関という上要請のために設備廃棄のできない国鉄の場合、構造的原因から生ずる欠損は、国または地方公共団体で負担するほかないのであります。  第二は、国鉄自身そのものの経営努力であります。現在の国鉄赤字のすべてが構造的原因に基づくものではありません。残念ながら国鉄労使の努力不足によるものがかなり大きな部分を占めていると存じます。物価等変動率に対応する運賃値上げを法定の枠から外し、構造的欠損を公共助成によって補うという条件を整えた上で要求されるものは、国鉄労使の懸命な再建のための努力であります。このことなくして、いかなる条件を整備いたしましても、国鉄再建は不可能でありますし、国民もまた血税をもって国鉄助成することを許しはしないでありましょう。  右のような見地から、わが党は、さきに述べました三つの条件を提示し、法案の修正と実効ある国鉄再建対策の策定に努力してまいりました。  今回作成されました三党共同修正案並びに政府に要請するための国鉄再建基本方向は、この趣旨に基づくものであり、必ずしも一〇〇%わが党の主張を充足するものではありませんが、これを基礎とし発展させていくことによりまして、国鉄再建の方途が開けていくことを信ずるものであります。  この際、政府に対しては、「国鉄再建基本方向」に示された施策の完全実施を要請し、他方、国鉄の労使に対しては、国鉄の国民に対し背負っております重大な使命と国鉄の厳しい現状を肝に銘じ、国鉄再建のためにあらん限りの努力を尽くされんことを強く要請いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  254. 大野明

    大野委員長 次に、小林政子君。
  255. 小林政子

    小林(政)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、内閣提出国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案並びに自民党、民社党及び新自由クラブによる共同修正案に反対する立場から討論するものであります。  私は、まず自民党など三党から提出された共同修正案が、国民生活に重大な影響をもたらす大変な内容であるにもかかわらず、十分な審議が保障されなかったことについて、厳重に抗議するものであります。  反対理由に移ります。  物価高と長期の不況のもとで国民生活と営業に大きな困難が続いているとき、いまこそ物価、公共料金値上げに歯どめをかけて、国民生活を守ることが切実に求められています。  国鉄運賃の相次ぐ値上げを繰り返す大もとを取り除くことこそ、国鉄再建の重要な柱であります。連続運賃価上げのための法定制緩和など何ら必要ないばかりか、国鉄再建に逆行する措置にほかなりません。  第二に、政府は法定制の弾力化措置であるなどと言っておりますが、その内容は、事実上の法定制撤廃にほかならないことであります。値上げ率の上限国会審議抜きで値上げができる期間について厳重な歯どめがかけられていると称していますが、実態は政府への白紙委任にほかなりません。値上げ上限を引き下げたと言われている修正案にしても、すでに明らかになっているとおり、国鉄の五十一年度決算を基礎にすると、物価上昇率の二倍を超える二〇%程度もの値上げが可能になっており、さらに値上げを一年見送った場合には、二年分の経費上昇分を合わせて四〇%以上もの大幅値上げができるというもので、まさに政府原案と変わらないどころか、むしろ一層の改悪案であると言わなければなりません。また、政府は今後の収支見込みさえ明らかにできず、いつ収支均衡が回復され、いつまでに累積赤字が解消されるのか全く見通しが立っておりません。したがって、法定制骨抜きは事実上永久に続くことになるのであります。  第三に、修正案の前提になっているところの「国鉄再建基本方向」は、政府国鉄再建対策要綱にも増して一層採算本位の企業主義的方向を強め、国民の足を奪おうとしていることであります。地方交通線の切り捨て、自治体負担の強要などは、国鉄公共性を無視したもので、まさに国の責任を放棄するものにほかなりません。また、国鉄の高い運賃水準に合わせて私鉄、航空など他の交通機関運賃を一斉に引き上げできるという総合運賃政策なるものの導入まで打ち出しておりますが、これこそ政府主導の公共料金値上げ政策そのものと言うべきものであります。  最後に、国民生活に重大な影響を与える法定制骨抜き法案を、しかも修正案提出されたにもかかわらず、きわめて短期間の形だけの審議で押し通そうとすることは、断じて容認できないということであります。現に政府は、今年度運賃値上げを中止すると言っておきながら、運賃値上げのための法定制の骨抜き法案だけは急いで今国会で成立させようとしていますが、これはだれが見ても納得できるものではありません。乗客減など新たな事態が生じているときであり、次の通常国会の中で国鉄経営、財政の抜本的見直しを行い、十分に時間をとって国民の納得の得られる再建審議を行うことこそが当面の重要課題であります。  私は、臨時国会運賃法定制の骨抜き法案を急いで通過させることに断固反対して、討論を終わります。
  256. 大野明

    大野委員長 次に、中馬弘毅君。
  257. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 私は、新自由クラブを代表して、国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部改正案に対する自民党、民社党並びに新自由クラブ三党提案の修正案及び修正部分を除く政府原案に賛成の討論を行うものであります。  昭和三十九年に国鉄経営赤字に転落して以来、数次にわたる運賃値上げ政府助成にかかわらず、その赤字幅は拡大の一途をたどってまいりました。その根本原因につきましては、たとえば運賃法定主義を初めとする国鉄当局当事者能力の欠如、相互不信の労使関係、官僚的な人事諸制度、サービス精神の欠如など改めて並べ立てるまでもなく、少なくとも企業経営の何たるかを知る人や学識経験者から指摘されているとおりであります。また、その解決策についても、国会審議を通じ、あるいは各種の審議会や国民各界各層の提案を通じ、すべて出そろっていると言えましょう。しかるに、いままで何ら事態が改善されていないのは、それらの解決策のどれ一つとして実行に移されていないからであります。  さきの八十回国会政府より提出されました国鉄法並びに国鉄運賃法の一部改正案は、初めて運賃法定制度の緩和を打ち出した点について、私どもも評価したのでありましたが、毎年の物価変動率に一五%を加えた範囲という規定があるため、かえって安易に規定どおりの運賃大幅価上げに依存することになることを危惧したのであります。加えて、昨年秋の五〇%大幅値上げの後一年も経ずして、不況脱出のめどもない本年九月からの値上げが前提となっていた点は、当局の経営常識を疑わざるを得ません。果たして、値上げ後のいわゆる国鉄離れは深刻であり、いまや運賃値上げだけで経営改善ができないことがようやく認識され始めました。本年度中の運賃値上げを留保し、速やかに具体的な経営合理化にこそ取り組むべきであります。  国鉄総裁政府が任命し、国会承認を与えています。企業経営者としての国鉄総裁に大幅な権限を付与し、同時に、世論に対する責任までも負っていただくことによって、安易な運賃値上げよりも、内部合理化に一層の努力がなされるのではないでしょうか。  国鉄幹部が国会対策に多くの時間をとられ、一方で労働組合が政治ストで利用者に迷惑を及ぼす従来の姿を改め、本法案の成立を機に、当事者能力を付与された国鉄当局が、労使の相互信頼のもと、国民の期待にこたえて国鉄再建にともに力を尽くされんことを切に要望いたしまして、修正案及び修正部分を除く原案に賛成の討論といたします。(拍手)
  258. 大野明

    大野委員長 これにて討論は終了いたしました。     —————————————
  259. 大野明

    大野委員長 これより採決に入ります。  国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案及びこれに対する加藤六月君外二名提出修正案について採決いたします。  まず、加藤六月君外二名提出修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  260. 大野明

    大野委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  261. 大野明

    大野委員長 起立多数。よって本案は、加藤六月君外二名提出修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま修正議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 大野明

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  263. 大野明

    大野委員長 この際、加藤六月君から発言を求められておりますので、これを許します。加藤六月君。
  264. 加藤六月

    加藤(六)委員 ただいま議決されました本法律案につきましては、第八十回国会に本委員会に付託されまして以来、きわめて熱心かつ慎重な審査を行ってまいったところでありますが、その審査の過程におきまして、委員各位から、国鉄再建のための諸施策につきまして、数多くの貴重な御提言がありました。これらの諸事項を集約して今後の国鉄再建方向づけを行うため、先般来の理事会におきまして、鋭意協議を重ねてまいりました結果、「国鉄再建基本方向」として文書に取りまとめました。  この「国鉄再建基本方向」につきましては、本日の本法律案審査の中で、委員各位の御質疑によりさまざまな角度から取り上げられ、内閣総理大臣を初め政府当局及び国鉄当局答弁を求められましたことは、お聞き及びのとおりであります。  したがいまして、本日の理事会の協議に基づき、その全文を本委員会の記録にとどめておきたいと存じます。  以下全文を読み上げます。    国鉄再建基本方向 一 国鉄経営のあり方  (一) 国鉄は、主として、都市間旅客輸送、大都市圏旅客輸送及び大量定型貨物輸送の分野を中心に、自らの採算において企業経営を行う。  (二) その他の特に効率性の低い分野については、他の輸送機関との関連において効率的な輸送体系を形成するための施策を強力に講ずるとともに、国鉄経営上の負担の限界を超えると認められる構造的欠損について、国民経済的観点を考慮して、公的助成を含む所要の対策を講ずる。  (三) 運賃上の割引制度を全般的に見直すとともに、新線建設等について投資採算を考慮した基準を策定するなど将来の国鉄経営上の負担軽減に努める。  (四) 以上の事項について、政府及び国鉄は、五十三、五十四年度中に所要の対策を確立し、五十五年度以降健全経営を目指すための基盤とする。  (五) 今回の運賃法の改正は、運賃値上げ上限を定めたものであつて、今後の運賃改定にあたつては、経費節減増収努力を徹底し、利用減についてもその中で吸収する等値上げ幅を極力圧縮するよう努める。 二 国鉄労使の努力   国鉄労使は、国鉄経営の現状にかんがみ、相互の十分な理解のもとに相協力し、全力を挙げて国鉄再建に取り組む。 三 政府の援助   政府は、以上のほか、国鉄が健全経営を回復し、維持していくために必要な行財政上の援助を行うものとし、特に次の措置を講ずる。  (一) 総合運賃政策の導入、トラック対策強化など総合交通政策上の具体的な施策を講ずる。  (二) 収支均衡時点までに累積される赤字については、国鉄経営努力、債務の棚上げ等により解消を図る。 以上であります。  政府におかれましては、本法律案が成立いたしましたならば、国鉄再建対策に関する閣議了解を行う際に、これをその内容とされるよう強く要請するものであります。  終わります。
  265. 大野明

    大野委員長 この際、田村運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田村運輸大臣
  266. 田村元

    田村国務大臣 国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道法の一部を改正する法律案につきましては、慎重御審議の結果御採決をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  また、ただいまの「国鉄再建基本方向」につきましては、五十三年度予算編成の際に行う予定の、新たな国鉄再建対策に関する閣議了解に十分反映させてまいるよう努めたいと存じます。  まことにどうもありがとうございました。(拍手)
  267. 大野明

    大野委員長 次回は、来たる十一月一日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十四分散会      ————◇—————