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国務大臣(福田赳夫君) 第八十一回
国会が開かれるに当たりまして、所信の一端を申し述べたいと存じます。
私は、今回の
参議院議員通常選挙で示されました
国民の期待と願望を正しく、また、謙虚に受けとめ、国政の進路に誤りなきを期し、ここに心を新たにして、さらに真剣な
努力を続ける所存でございます。
内外の諸
情勢はなお厳しいものがあります。政府はこれに柔軟に対処し、機敏に
行動し、
国民の皆さんの期待と信頼にこたえるよう全力を傾けてまいります。
当面する最大の課題は、
経済運営の問題であります。
最近のわが国の
経済情勢を見ますると、政府投資が増加し、輸出も、その伸び率がやや鈍化しているとはいえ、引き続き高い水準で推移しており、景気は緩やかな回復基調にあります。しかしながら、設備投資などの民間需要の盛り上がりが乏しく、また、
地域、業種による格差の問題も生じております。
政府は、公共事業執行の促進、金利の大幅な引き下げなど、一連の景気対策のほか、中小企業対策、構造対策に全力を傾倒いたしておるところでございます。
これら諸対策の効果は逐次あらわれてくるとは存じますが、引き続き事態の推移に即応して機動的な
政策運営を行い、景気の回復を一層確実なものとし、もって
内外の
情勢に対処する所存でございます。
物価の安定は、
国民生活安定の基盤であり、
社会的公正を確保するための不可欠の要件であります。
最近の物価の動向を見ますると、卸売物価は、為替相場が円高となったこともありまして、主要先進国の中では西独と並んで最も落ちついた推移を示しております。また消費者物価も、なお水準は高いものの、安定化の基調は次第に確かなものとなりつつあります。
政府は、引き続き生活必需物資等の価格安定対策を強化し、消費者物価の年度中の上昇率は七%台に抑制するという方針でございます。
政府は、さらに各般の雇用安定対策を
推進し、また、恵まれない
人々に対する
福祉対策を充実して、
国民生活の安定を図るため万全を期する所存でございます。
経済社会情勢の変動と行政需要の変化に対応しまして、行政の簡素化、合理化等の改革を行うことは、政府が当面する重要な課題であります。政府は、行政改革を積極的に
推進する方針のもとに、目下その
基本方針を検討中であります。
財政の健全化もまた緊急課題の一つであります。歳入面における見直し、歳出面における効率化の徹底等、財政の健全化を強く
推進しなければならないと考えております。
次に、資源・エネルギー問題は、わが国
経済及び
国民生活の基盤にかかわるきわめて深刻な
基本問題であります。
政府は、周到な環境並びに安全対策を徹底しつつ、電源開発の促進、原子力を初め、石油代替エネルギーの開発の積極的
推進等に努めるとともに、省エネルギー対策の拡充を図り、今後なおエネルギーの大半を石油に依存せざるを得ない実情にかんがみ、産油国等との協調、大陸だな石油開発、備蓄等の諸対策を積極的に進めてまいります。
また、最近、米の生産過剰、需要の高い農作物の生産停滞、二百海里
時代の到来による漁業への影響等、食糧をめぐる
内外の
情勢はまことに厳しいものがあります。
政府は、総合的な食糧自給力向上のため、生産基盤の整備、需要に即応した生産の増大、生産の担い手と後継者の確保等、農林漁業の体質強化に努めるとともに、米の需給均衡化のための
施策を強力に進めてまいります。
また、二百海里
時代の急速な到来に当面し、その影響を受ける北洋漁業
関係者及び離職者等に対しましては、所要の救済措置を講ずるとともに、
水産資源の開発、増養殖の
推進に努める等、適切に対応してまいる所存でございます。
来る八月初旬、マレーシアの首都クアラルンープールにおいて、東南アジア諸国連合、すなわちASEAN首脳
会議が開催されるのであります。その
機会に、私は招かれまして同地に赴き、参加各国首脳と親しく話し合いを行い、さらに引き続きASEAN五カ国及びビルマを訪問する予定でございます。今回の訪問は、わが国がこれら諸国との物心両面にわたる真の友人としての協力
関係を確立する上で重要な意義を有するものであります。
政府といたしましては、さらにインドシナ諸国との相互理解の増進にも努め、広く東南アジア全域に平和と繁栄を分かち合う
関係を樹立することに寄与してまいる所存でございます。
同じアジアの一部であるインド亜大陸の国々との
関係も重要であります。最近の外務大臣によるバングラデシュ、インド及びネパールの三カ国訪問は、わが国とこれら国々との相互理解と友好協力の促進にとって大きな意義を有したものだと考えております。
私は、本年三月、米国を訪問し、カーター大統領との間で、わが国外交の基軸である日米友好協力
関係の維持増進を確認し合いました。今後とも「世界の中の日米協力」という立場から、国際社、会の期待に積極的にこたえるよう、ともに協力してまいる決意でございます。
日中両国の
関係は、日中共同声明を
基礎として順調な
発展を見せております。政府は、両国が共同声明を誠実に遵守することこそ相互の
関係を律する
基本であるとの立場を堅持しつつ、両国の善隣友好
関係を長い将来にわたって揺るぎないものとしたいと存じておるのであります。日中平和友好条約に関しましては、双方にとって満足のいくような形で、できるだけ速やかにこれを締結するため、一層の
努力を払ってまいりたいと存じます。
日ソ両国の友好
関係もまた重要でありますが、北方領土問題を解決して平和条約を結締することこそが、両国
関係を真に安定した
基礎の上に
発展させる不可欠の前提であります。政府は、この
基本的立場を
実現するため、対ソ折衝を強力に
推進するとともに、
経済、文化、貿易、人的交流等広範な
分野においても、その着実な前進を通じて、日ソ
関係の
発展に努める所存であります。
皆さん、すでに新しい世紀が指呼の間に迫ろうといたしておるのであります。そしていま、人類はまさに有史以来の資源有限
時代を迎えようとしておるのであります。人口細密で、国土は狭く、天然資源に乏しいわが国の歩む道は、細く、かつ、険しいと言わなければなりません。
しかしながら、資質に富み、
活動的で勤勉なわが民族が力を合わせて事に当たるとすれば、歴史が幾たびか実証しているように、いかなる困難も乗り越えられないはずはないと思うのであります。
私は、
国民の英知を集め、その連帯と参加のもとに、二十一世紀に向けて真に安定した力強い文明
社会を築き上げるために全力をささげてまいりたいと思うのであります。
皆さんの御理解と御協力を要望してやみません。(
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