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前川参考人 金利の弾力化という問題をなぜこの時点において取り上げたかということ、並びにそれに対する
日本銀行の
考え方について
お尋ねがございました。
特にいまの時期をねらってやったということではございませんで、基本的に
高度成長時代から低成長時代に変わってまいります過程におきまして、資金の流れが変わってまいりました。
高度成長時代におきましては、その間いろいろの段階がございましたけれ
ども、大きく申しますると
企業の資金不足が非常に大きい、
国民の貯蓄がそちらの方に回るわけでございますけれ
ども、それをもってしてもなかなか不十分であるという時代で、金の流れとしては大きな流れであったと思います。低成長時代になりまして、そういう金の流れが変わってまいりまして、
企業の
資金需要というのはそれほど大きくない。いま
お話がございましたとおりでございます。一方それに変わりまして、公共部門の資金不足が非常に大きくなってきておる。国あるいは地方公共団体、そういう公共部門の資金不足が大きくなってまいりまして、それが公共債の発行ということになるわけでございまするが、その金が市中に支払われている。そういうことから
経済全体の流動性と申しまするか、有効に使用し得る資金量というものがふえてきたわけでございます。一方、公共債というもの、公共部門を通ずる資金の流れが非常に大きくなってきております。またあわせて最近の
状況から、これからの
日本の
経済面において十分
考えてまいらなければなりませんことは、国際化の傾向でございます。内外の
金融市場を通じて資金が移動するという状態になってまいりました。そういうことが国内の全体の流動性というものを高めてまいったと思います。
そういう環境の変化がございまする中で、これからの
金融政策の大きな流れをどういうふうにしていくかということでございますが、
金融政策につきましては
金利政策それから
金融の量的な調節、この二つの大きな政策手段があるわけでございます。
高度成長時代にはもちろん
金利政策ということも使われて、十分活用してまいったわけでございまするけれ
ども、一方そういうふうな
企業の大きな資金不足、
資金需要があるということから、量的な調節ということも重要な役割りを果たしてきたわけでございます。
ところが、いま申し上げましたように、大きな資金の流れが変わってまいりました
現状におきましては、これからの
金融政策につきましては、量的な調節ということはもちろんでございまするけれ
ども、より以上
金利政策というものの重要性が増してまいるわけでございまして、
金利機能を通じまする資金の調節ということを
考えてまいらなければならないというのが背景としてあるわけでございます。市場における
金利機能というものを発揮させてまいります上におきまして、いままでわが国におきましては、いま申し上げましたような資金の流れの関連から、
金利につきましてもある程度の規制をしてまいったわけでございます。
金利の自由化というのは、いま申し上げましたような大きな流れから言いますれば
一つの理想でございましょう。欧米
先進国におきましては、すでに
金利の自由化ということを基礎に政策を図っております。わが国におきましては、
金利の自由化ということは理想でございまするけれ
ども、一挙にこれを外しますことは、
金融秩序の上においていろいろ問題があると思いまするので、その規制の範囲内で
金利を極力弾力化してまいるということが今後の
金融政策の大きな眼目になると
考えております。