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1977-09-07 第81回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年八月二日(火曜日)委員長の指名で、 次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  多国籍企業等国際経済に関する小委員       有馬 元治君    稲垣 実男君       大坪健一郎君    川田 正則君       鯨岡 兵輔君    佐野 嘉吉君       山田 久就君    井上 一成君       河上 民雄君    土井たか子君       渡部 一郎君    渡辺  朗君       寺前  巖君    伊藤 公介君  多国籍企業等国際経済に関する小委員長                 有馬 元治君 ————————————————————— 昭和五十二年九月七日(水曜日)     午後三時三十一分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 有馬 元治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君       伊東 正義君    大坪健一郎君       川崎 秀二君    北川 石松君       中山 正暉君    宮澤 喜一君       森   清君    井上 一成君       松本 七郎君    寺前  巖君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 鳩山威一郎君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     城内 康光君         外務大臣官房儀         典官      松村慶次郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省経済協力         局長      菊地 清明君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ————————————— 委員の異動 八月三日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     松本 善明君 同月二十四日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     伊藤 公介君 同月三十日  辞任         補欠選任   正木 良明君     長谷雄幸久君   松本 善明君     寺前  巖君 九月六日  辞任         補欠選任   長谷雄幸久君     正木 良明君 同月七日  辞任         補欠選任   稲垣 実男君     伊東 正義君   川田 正則君     北川 石松君   佐野 嘉吉君     森   清君 同日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     稲垣 実男君   北川 石松君     川田 正則君   森   清君     佐野 嘉吉君     ————————————— 八月三日  一、核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び   4の規定の実施に関する日本国政府国際原   子力機関との間の協定締結について承認を   求めるの件(第八十回国会条約第一〇号)  二、所得に対する租税に関する二重課税回避   のための日本国ルーマニア社会主義共和国   との間の条約締結について承認を求めるの   件(第八十回国会条約第一一号)  三、所得に対する租税に関する二重課税回避   のための日本国ブラジル合衆国との間の条   約を修正補足する議定書締結について承認   を求めるの件一第八十回国会条約第一二号)  四、投資の奨励及び相互保護に関する日本国と   エジプト・アラブ共和国との間の協定締結   について承認を求めるの件(第八十回国会条   約第一三号)  五、国際海事衛星機構(インマルサット)に関   する条約締結について承認を求めるの件(   第八十回国会条約第一四号)  六、アジア太平洋電気通信共同体憲章締結   について承認を求めるの件(第八十回国会条   約第一五号)  七、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 外務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  昨日、日韓閣僚会議の終幕に伴って共同声明が出されました。また、時を同じゅうしてピョンヤンでは、朝鮮民主主義人民共和国とわが国の日朝議員連盟訪朝団との間に、いま問題になっております漁業問題を踏まえて交渉が行われ、その共同声明が出されました。政府間の会議ではございませんけれども、九月の一日から四日までいわゆる下田会議と称せられます日米関係民間会議が行われまして、そこで事実上日米両国議員あるいは日米両国政府責任者が加わって、学者、実業家など、あるいはジャーナリストと、今日のアジア情勢ベトナム戦以後のアジア情勢を討論いたしました。その中でも朝鮮半島の問題が焦点になったわけでございます。私もその会議に出ておりましたので、時代流れといいますか、流れがここに来ているということをひしひしと感じて帰ってきたわけでありますけれども、このような二つ共同声明が同時に出される、こういうところにも朝鮮半島をめぐる新しい動きというものがいま始まっているのではないかということを私は非常に強く感じているわけであります。  この下田会議の中で神奈川県知事長洲さんがスピーチをされたのでありますけれども、その中で長洲さんの表現によりますと、ダレス、スターリン型の世界構造、いわゆる冷戦構造というものはいまや決定的に変化をした、そしていまや新しい世界構造の前にわれわれは立っているのだということを強調されたのでありますけれども外務大臣はこのようなベトナム以後のアジア情勢というものが一つの新しい転換期に来ているということにつきまして、そのことを感じておられるか、外務大臣の御意見をまず初めにお伺いしたいと思います。
  4. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓閣僚会議が終わりまして、それとともにピョンヤンにおきます日朝議連皆様方の御努力等がありまして、同じ日に共同声明が出されたのが昨日のことでございます。また下田会議におきましても、いまお話に伺いましたような朝鮮半島の問題につきまして大変活発な意見の交換があったということも承っております。これらを通じまして、朝鮮半島につきましていま国際的に注目を浴びている事態になっておるということは確かであります。また、最近におきますいわゆるデタントと申しますか、こういったベトナム以後の情勢の中で、なお依然として朝鮮半島には、ある種の不安定要因がある、緊張状態が続いておるということは事実であって、そのこと自体世界的な注目を浴びていることであろうと思うのでございます。そして、この朝鮮半島事態をいかに好転する方向に向かって進めていくべきか、この具体的な手段方法等につきまして、まだなかなか議論が一致しないというのが現状ではあるまいか。したがいまして、朝鮮半島情勢が非常に進展をしておるというふうにも言われますが、また他方、世界のいろいろな動きに対して、朝鮮半島事態というものがいわば余りにも停滞しておるというふうにも見られると思うのでございます。  そういったことで、世界動きに対しまして朝鮮半島のこれからの最終目的は、よく言われますように、平和的な統一ということでありますけれども、これをいかに実現していくかというそういった具体的な手段方法等につきましても、これから種々論議が出ることと思います。これらにつきましては、また皆様方の御意見等も十分に拝聴しながら外交当局として努力をいたしたい、こう考えるところでございます。
  5. 河上民雄

    河上委員 いま朝鮮半島一つの新しい時代に差しかかっているんではないか、そういう見方があることはいま外務大臣も認められたと思うのでありますけれども外務大臣はまた、そうではないというような要素も付言されたのでありますが、しかし、その前段の変化要因というのはどこにあるというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  6. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 変化要因と申しますか、これは世界大勢というものがベトナム後非常な進展を示しておる、こういうふうに考えるのでございます。朝鮮半島自体の問題が、しかるがゆえにこの世界情勢に対していかに考えられ、いかに具体的な施策が行われていくかという点が問題になる、こういうふうに申し上げておりますし、私自身、率直にそのように考えております。御質問に、変化自体がどうか、こういうお話でありますが、これはやはり世界大勢というふうに私は考えたいと思います。
  7. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、外務大臣は、世界情勢が大きく変わってきたということは認めておられる。そうして、そのことが朝鮮半島にも微妙な影を投げておることは暗に認められておられるわけでありますけれども朝鮮半島自体としてはまだそれを受けてどうしたらいいかということについて見きわめがつかない、こういうような意味に受け取ってよいわけでございますか。
  8. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 そのような感じを持っておるのでございます。
  9. 河上民雄

    河上委員 いま議論になっておりますことは、やはり端的に、カーター政権の最初に発表いたしました政策である在韓米地上軍撤退、これの真意といいますか、その方向性というか、それを見きわめることができないでいるということじゃないかと思うのです。先般の、私どもが出席した下田会議でも、カーター政権の発表した政策はすでにニクソンドクトリンで表明されたもの、つまりアメリカが在韓米軍を六万から四万に減らしたあの政策延長線上のことであるというふうに見る人と、いやそうではなくて、これは兵力の数のいかんにかかわらず朝鮮半島をめぐる一つ国際環境フレームワーク変化の始まりである、こういうふうに見る人との意見対立があったわけです。外務大臣はこの問題について、カーター政権が発表された在韓米地上軍撤退ということの意味をどういうように考えておられますか。いま二つの受け取り方があるわけでありますけれども、どちらにむしろ加担をされるというようにお考えになりますか。
  10. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのお尋ね、これはアメリカ政策決定事項でございますから、これがニクソンドクトリンの延長上にあるあるいは全く新しい角度から行われた、この二つの説につきましては、私がここでどちらに考えるかということは差し控えさせていただきたいと思います。  恐らく、私は両方の要素があるというふうに思っております。実際、さきにニクソンドクトリンにおきまして一個師団撤退をしたわけでありますが、残りの一個師団の持つ意味は、同じ一個師団でも前の一個師団とは非常にウエートの違うことであるかもしれませんし、いま、現在の地上軍であります第二師団撤退するということの持つ意味は、私の推測といたしまして、恐らくこれは延長線であるけれども、やはりそこに非常に新しい考え方が出てきたということも否定できないというふうに思います。
  11. 河上民雄

    河上委員 それでは、外務大臣日韓閣僚会議共同声明を出されたわけでありますけれども、その共同声明を拝見いたしますと、その第四項に、在韓米地上軍撤退問題に言及をされておるわけでありますけれども、ちょっと大臣のお考えをこれに限定して伺いたいと思うのであります。  韓国側と話し合ったときに、朝鮮半島における緊張状態がまだ続いているあるいはその緊張状態がありゃなしやということは、この共同声明をつくるに当たって議論せられたのかどうか。つまり一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明以来、いわゆる韓国条項というものがあるわけでありますけれども、これがそのまま生きているという前提でこれが論じられたのか、それとも新しい情勢の中で考えなければならないという考え方に基づいて在韓米地上軍撤退というものは言及されたのか、その点を伺いたいと思います。
  12. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島におきます緊張が依然としてあるという認識を私ども持っておりますし、韓国側は当然そのように考えているところでありまして、その緊張の存否につきまして改めて議論を重ねたということではないわけであります。現実問題として南北の間の地域におきましていろいろな事件が起こっておるということがあるものでございますから、この点につきまして格別の議論を重ねたということではございません。  また、過去におきまして、日米間で、情勢認識といたしまして、日米首脳会談の際にいろいろな表現がなされております。しかし、現状におきまして、私ども現状認識自体が過去と比べまして大変改善をされておるという認識は、残念ながらまだ持つに至っておらないということを申し上げたいと思います。
  13. 河上民雄

    河上委員 それでは、すでにもう数年前になるわけですけれども木村外務大臣がその在任中に、朝鮮半島には緊張状態がないというか、少なくとも北の脅威というものは薄れてきたというか、ないという立場で、いわゆる韓国条項というものは、韓国の安全が日本の安全にとって緊要の課題であるという見方解釈、言葉を、朝鮮半島全体の安全が日本の安全にとって緊要の問題であるというふうにニュアンスを変えた解釈をされて前進を示されたのでありますけれども、その後再び前のような緊張状態に返ったという事実はないと私は思うのですが、木村外務大臣がこの点について言われたことに対し、鳩山外務大臣はどのようにお考えになられるつもりか、御意見を承りたいと思います。
  14. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 緊張状態とはいかなる状態を指すのかというのは、いろいろ人によってあるいは違うかもしれませんけれども、いまアジア全体を見ましたときに、やはり朝鮮半島におきまして依然として南北対立関係が続いておるということは、私は現実の姿であろうというふうに考えております。しかし、非常に差し迫った緊張感といいますか、そういう差し迫ったものというふうに私ども必ずしも考えているわけではございません。一時南北間に対話再開をされるというところまで行ったわけでありまして、そのころの時点といたしましては、これからいよいよ朝鮮半島にも本当に緊張緩和が実現されるのではないか、こういうような情勢が一時あったわけであります。しかし、その対話再開が非常にわずかの期間で、これがまた完全にとだえたということもその後の経過でありまして、今日、残念ながら、過去におきます時点と今日とは、非常によくなったというふうに言えない事態になっておるというふうに私ども認識しております。しかし、一時対話再開まで行ったわけでありますから、この対話再開時点にまたもう一度南北間が戻ることが、とにかく当面としては私どもの希望するところである、このように考えておるわけでありまして、その歴史的な経過のときどきに応じましていろいろな表現があったのは事実でございます。私どもはそのこと自体よりも、これからの本当に朝鮮半島におきます緊張緩和する、そういった事態が一日も早く到来することを心に念じておる、こういうことに御理解をいただきたいのでございます。
  15. 河上民雄

    河上委員 一九七七年の衆議院の予算委員会、二月だったと思いますが、福田総理大臣が、緊張状態朝鮮半島にある、南北朝鮮間にあるということにつきましては、韓国見方を尊重するのが日本政府態度だというような意味のことを言われておるのでありますけれども、いまも外務大臣は、韓国もそういう認識であるというふうにちょっと言われましたが、朝鮮半島の問題を考える場合に、韓国認識をそのような形で尊重されるのか、それとも、韓国韓国だけれども日本日本として、もう少し朝鮮半島全体を見ながら、あるいはアジア全体を見ながらこの問題を取り扱っていく、こういうふうにお考えなのか、その辺を伺いたいと思います。
  16. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島情勢がどうであるかということ、これは韓国見方を尊重するということではなくて、やはり現実情勢をよく理解をしてかかるべきであるというふうに思います。ただいま、そういう意味韓国見方を尊重するというふうに申したつもりはございません。ただ、韓国といたしましては特に陸地続きでありますから、そういう意味韓国自体情勢につきまして身近に感じておるということは当然のことでありますし、そういう意味で、認識基礎として韓国がいかに考えているかということも、これは重要な判断の一つになると思います。しかし、日本といたしましては、あくまでも日本立場といたしまして、アジア全体の平和の増進ということを考えるべきであることは当然でございます。朝鮮半島南北対話再開を念じておるのも、そういった意味で、アジア全体の平和、日本の安全並びに平和、繁栄を図る上からも大事なことでありますし、さらに広くはアジア全体のためにもそれは好ましいことであると考えるわけであります。
  17. 河上民雄

    河上委員 いま外務大臣は具体的事実に照らしてと、こういうふうに言われましたが、最近起こった事件で、米軍ヘリコプター撃墜事件というのがあったわけです。そのときには、多くのいわゆる朝鮮問題の専門家は、これで大変な緊張状態が発生するのではないかというふうにマスコミ等を通じて予測をしたわけですけれども現実には朝鮮民主主義人民共和国アメリカ合衆国政府との間で非常に慎重に、冷静に処理をされたのでございます。これはある意味では、かつてとは非常に違って緊張がなくなってきたということの一つの逆証明になったのではないかと私は思うのでありますけれども外交というのはそういう小さな事件の中にある一つのサインというか、時代流れの足音というものを敏感に見きわめることが一番大事だと私は思うのでありますけれども外務大臣はこの問題についてどのようにお感じでしたか。
  18. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 米軍ヘリコプターが撃墜されたという事態が、これが非常に冷静に対処をされたということは、わが日本といたしましても大変よかったというふうに考えます。その対処仕方自体につきましては、私はそれぞれの理由があってのことであろうとも思います。しかし、一つの事実でも、それをいかように見るかということは、見方によって非常な差異が出得ることでありますから、そういうことでなしに冷静に処理をされたということは、それはそれだけに非常によかったと思いますし、また、アメリカ政府としてこのこと自体を大きな事件に発展をさすまいという努力の姿勢を見ることができたわけで、それなりに私は評価すべきことであろうと思います。  私ども、先ほどから、全体が緊張状態が非常に差し迫って爆発しそうであるというふうには決して申し上げてないのでありまして、これらの緊張緩和したいという努力は、それぞれ私は南の側にも北の側にもあろうかと思います。また、朝鮮半島を取り巻く国々日本を初めそれぞれの国々の間でも、これまた朝鮮半島に大きな混乱が生ずることはだれも望んでいる者はないし、したがいまして、そういう意味で差し迫った緊張感があるというふうに申し上げているわけではございません。ただ、南北間の交渉といいますか。対話といいますか、朝鮮半島に真の意味の平和を打ち立てるというにはまだまだほど遠い状態にあるという意味で、また、南北ともにやはり軍の力を、何とか双方ともに相手に優位に立つような軍備力と申しますか、軍事力を持ちたい、このような努力が続けられているというのも事実である。そういう意味で、まだ朝鮮半島は真の意味緩和に立ち至っていないということを申し上げたいのであります。
  19. 河上民雄

    河上委員 先ほど申し上げましたように、韓国との政府間の共同声明が出されました。全く同じときに、北の方の朝鮮民主主義人民共和国日朝議連訪朝団との間の共同声明が出されたわけですけれども、私はこれは大変偶然ではないというような気がいたすわけですが、この二つを読み比べましたときに、私は、韓国との日韓閣僚会議共同声明では、日本政府としてはやはり韓国への傾斜というものが否めない事実としてはっきりと出ていると思うのであります。いわゆる第四次の五カ年計画に対する協力の約束にもそれははっきりと出ておるわけでありますが、一方、北朝鮮との間の共同声明を見ますときに、私はここに日本政府への不信感というものをどうしてもくみ取らざるを得ない。そういう意味で、私はこの二つ共同声明を読み比べるときに、日本政府がいま南北朝鮮関係の悪化というものを避けたい、両者の平和的な統一というものを究極的に願っていると言いながらも、どうもそれとは逆な方向に行こうとしているような気がしてならないわけですが、大臣に伺いたいのでありますけれども、今回の日朝議連との間の共同声明に対しまして、政府はどういう認識を持っておられるのか。これは単なる民間レベルの取り決めというように見ておるのか。政府としてこれに対してやはり責任を負わなければならない、日本の国民の生活、権利、義務、安全、そういうようなものが全部かかわっている一つの問題として、日本政府は直接の当事者でないとしても、やはり責任をそこで感じなければならないものというふうに受け取っておるのか。そういう政府認識をここで伺いたいと思います。
  20. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 もう申し上げるまでもないことでございますけれども日本朝鮮民主主義人民共和国との間には国交関係がないわけでございます。この国交関係がないということは、これは歴史的な事実でありまして、このこと自体につきましてとやかく申し上げるつもりは毛頭ないのでありますけれども日本韓国友好関係を保持しておる、これは日本政策として従来から行われていることであって、この日本韓国との友好関係というものを破壊してしまっては元も子もないわけでありますから、この日本韓国との友好関係を軸といたしまして、そして許される範囲内におきまして、国交がないけれども朝鮮民主主義人民共和国との間の民間レベル経済関係でありますとか漁業関係でありますとか、これらのことが重ねられていくということ自体につきまして、私どもはそれを歓迎をしておるという立場にあるわけであります。そして、究極のところ朝鮮半島の真の意味の平和、平和的な統一ということが実現される、問題は、いかなるプロセスによってこれらのことが実現をされていくかという点にあろうと思うのでございます。それにつきましては、それぞれ友好関係を持っております国といたしまして、やはりこの友好関係基礎として考えざるを得ないというのが日本政府立場であるということでございます。
  21. 河上民雄

    河上委員 外務大臣のいまの御答弁、御意見というのは、きょうの新聞などに出ている外務省筋態度、つまり日朝議連共同声明に対して政府は無関係といいますか、政府はかかわらない、こういうものとは少し違う、たてまえとしてはそうであるかもしらぬけれども、もう少し踏み込んだもので行かなければ将来の問題が解決しない、こういうふうな意味に受け取ってよろしいわけですか。
  22. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 具体的な日朝議員連盟北鮮側対外文化連絡協会との間に結ばれましたいろいろな協定あるいは共同コミュニケというものにつきまして、それに盛られております内容につきまして、これが政府と同じ考えであるとかいう点につきまして、政府と全く関係のないレベルで行われたことであると外務省といたしましては考えておりますし、そのように新聞等におきましても発表を申し上げております。しかし、日本政府といたしまして、ことさらに北鮮との間に事を構えたりするというようなことは毛頭考えておりませんし、日本北朝鮮との間に国交はないけれども民間レベル交渉、交流が徐々に積み重ねられているということにつきまして、そのこと自体日本政府としては反対であるとかいうことは全くないわけでありまして、そういう意味で、日本政府ば今回の共同コミュニケには全く関係をしておらない、意見も聞かれたこともありませんし、そのような連絡も全くない段階で行われたということを申し上げたいのと、それから、日朝議連皆様方がいろいろ苦労をなさったと思うのであります。その苦労をなされました先生方の御努力に対しまして、日本政府はそれに内容的には何ら関与しておりませんけれども、そのこと自体につきまして何らの評価もしていないということではないわけでございます。
  23. 河上民雄

    河上委員 それでは、先ほどの大臣の御答弁とあわせて考えます場合に、今回の共同声明そのものについての政府立場を述べたのであって、たとえば民間レベルにおける漁業協定に対して朝鮮民主主義人民共和国側が政府の保証を求めてきた場合、何らかの形の政府の保証というのですか、それは日本国民の生命、財産、安全、権利、権益にかかわる問題である以上、当然政府としてはほっておけない問題であろうと思うのでありますけれども、安全操業と漁民の安全のために何らかのそうしたことを考慮する、いろいろ制約はあるかもしれないけれども何とか考慮したいというお考えがあると承ってよろしいようにも思うのですけれども、いかがでございますか。
  24. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の漁業協定につきましてどのようなお話し合いになっておるか、先方が新聞紙上伝えられておりますような日本政府の保証というものを求めておるというようなことは、情報としては聞いておりますけれども、直接的な話し合いは何一つないわけでありますから、訪朝された議員団がお帰りになっていろいろお話を伺ってみないと、いまここでにわかにその問題につきましてお答えをすることができない、こう思っております。
  25. 河上民雄

    河上委員 それでは訪朝団の皆さんが帰られた後、非常に細かい点まで話し合って、情報を得たなら、そこでそういう問題を、できるならば民間レベルの漁業協定成立のために政府としてなし得ることはなす用意がある——もちろんそれは政府立場もありましょうけれども一つの姿勢としては訪朝団の帰国待ちであるというふうに理解してよろしゅうございますね。
  26. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 いまの段階としてはそのようなことしか申し上げられないのでございます。
  27. 河上民雄

    河上委員 今度の閣僚会議の後の合同記者会見の中で、韓国外務大臣が「東北アジアの平和を維持する上で、どの国よりも重要な役割りを果たすべき日本が、韓国に先立って北に接近することは、安全保障の上でも貢献するものでない」こういうふうに述べておるのでありますけれども、いま現実に二百海里問題その他で朝鮮民主主義人民共和国の存在というものは無視できない。さらに、究極的には平和統一というものを日本政府考えている以上、非常に多角的なアプローチを試みなければならぬと思うのでありますけれども政府としては、こういう朴外相の合同記者会見の発言に対しまして、どのように考えられますか。
  28. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朴外務部長官の記者会見におきます発言がそのようなものであったと私も記憶しております。その点につきまして、私どもといたしまして申し上げたことは、日韓の友好関係を破壊するようなことがあっては元も子もないと申しますか、日本自体の安全と繁栄のためにこれは決して好ましいことではない、こういったことの範囲内におきまして、日本といたしまして北朝鮮との交流の積み重ねというものを私どもといたしまして従来から行ってきたところでありますし、その方向で私は積み上げられていくべきものというふうに申し上げているのでございまして、その点につきまして私ども考えておりますことと朴外務部長官の言われたこととは、ややニュアンスの違ったことがあることは否めないと思います。私どもといたしまして申し上げられることはそこまでであろうというふうに思うのでございます。
  29. 河上民雄

    河上委員 それでは、いまの朴韓国外務大臣の発言についてでありますけれども、同じ合同記者会見で、鳩山外務大臣御自身の言葉の中でわれわれとしてはこれは見逃すことのできない御発言があるわけであります。韓国人の記者、朝鮮日報だったと思いますけれども、その韓国人の記者が、どうも日韓癒着という言葉がいまムード的に使われているけれども、この言葉は日韓両国の緊密な友好関係を引き離そうとしているのじゃないかというような意味の質問に対して、外務大臣が、日韓癒着という言葉で日韓両国の緊密な友好関係を引き離そうとしている勢力が日本国内にいることは事実であると言われまして、さらに、国会論議を通じて日韓癒着の実態については何一つ証明されていないというふうに、日韓癒着の疑惑を大変断定的に否定されたのでありますけれども、これは大変重要な問題だと私は思うのでありまして、特に金大中事件発生以来、この四年間、この日韓癒着の問題をめぐって非常に激しい国会論議が行われたのに対しまして、これはすべてそういう何かためにするためのものであるというふうにとられますことと、また国会の論議というものに対して非常に国会を軽視した発言というふうに受け取られてやむを得ないと私は思うのでありまして、この御発言は私は絶対に許されない、ひとつ取り消していただかなければならない御発言だと思いますけれども大臣、いかがでございますか。
  30. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日韓関係につきまして癒着という問題がある、その点につきまして記者会見で質問があったわけであります。そのよって起こりましたもとは、日韓会談におきまして私の発言、一番最初の部面の発言でありますが、日韓間におきましていろいろないわば癒着、いわゆる癒着と言われているような問題が提起をされておる、したがいまして、これから日韓間で今後の経済協力を進めてまいります場合に、今後はそのような批判、非難が一切起こらないように双方で姿勢を正して取り組んでまいりたいということを私が発言をいたしました。その発言に対しまして、韓国側からは、日韓間に癒着というような非難されるようなことはないというようなお話もあったわけであります。そのようなことがありまして、それに関しました質問が記者会見で出たわけであります。  私どもはそのような事実があるかどうか、これは実際問題といたしまして国会でいろいろ御議論をいただいた、私もこの耳でよく伺っているわけであります。その点につきまして、違法な行為があるかどうかということは、これはやはり事件として立証といいますか、刑事事件なら刑事事件としてそのような処理をされなければならない問題であろうと思うのでございます。そういう意味で、記者会見の質問に応じまして、そういう日韓間の友好関係を損なうことを希望しておる勢力があるではないかという点につきましては、私もそれはそうであると思います。しかし、国会の御論議がそういう観点から行われているということを私は申し上げたことは毛頭ないのでございまして、ただそういう一部の勢力があるという事実と、それから国会におきましていろいろ御議論をいただいたが、まだこれは違法な事件として証明をされたというようなものはないのだということをそこで申し上げておるわけであって、したがいまして、二つのことを私は記者会見で申し上げました。そのことは事実でございます。しかし、その二つの事実は、これを一緒になって読まれては大変困るのでありまして、私自身もそういうつもりで申したわけでは毛頭ございません。そういうことを、弁解がましいわけでありますけれども昨日もそのような趣旨を私も申し上げまして、本日も全く同じことを申し上げているわけで、その点は御理解を賜りたいのでございます。
  31. 河上民雄

    河上委員 日韓癒着については、これは本当に、そのような事態日本にとっても、ある意味においては韓国にとっても悲しむべき事態としてみんな論議をしているのであって、そういうような、いまのような御見解というのは事実として非常に間違った印象を与えると私は思うのです。その上、癒着の実態については国会の論議を通じても何一つ証明されていないという、これは癒着がなかったという証明が国会の答弁を通じてできなかったということであって、具体的にはむしろ疑惑がますます深まっているからこそまだわれわれこの国会論議が延々と続いているわけですね。そういう点から見まして、これは単に誤解ではなくて、この言葉は国会に対する一種の挑戦状であるというふうに受け取られても私はしようがないと思うのです。少なくとも韓国人の記者には、日本新聞にも報道せられているように印象づけられておるわけですし、大臣自身のお考え方が私は間違っていると思いますけれども、その上、もし大臣が自分の真意はそうでなかったとしても、いま言ったことはストレートに結びついて報道せられているわけです。これは日本外務大臣はこういうふうに言ったというふうに韓国新聞には報道せられるわけですから、そういう誤解の多い発言はこの際取り消すべきであろうと私は思うのです。大臣いかがですか。
  32. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 二つのことを申し上げたことは事実でありますけれども、先ほど来申し上げましたように、先方が日韓間、いわゆる反韓と申しますか、あるいは反朴勢力と申しますか、こういった勢力があるということと、それからいわば疑惑があるあるということかあって——ロッキード事件につきましては刑事事件として処理をされたわけであります。しかし、日韓間にいろいろな疑惑があるではないかということが大変議論になったわけでありますけれども、いかなる違法な行為があったかということにつきまして、まだそこまで事実関係につきまして証明がなされておらない。これは私もそれも事実だろうと思います。そういう二つのことを申し上げましたので、したがいまして、その二つを一緒には、私は私の頭の中でそういうことを全く考えないで二つのことを申しましたので、それがもし両方を関連させまして解釈されますと、それは私の申しました趣旨でございませんので、それが表現が適切でなかったということであれば、私はそういう点は幾らでも誤解を解きたいと思いますし、また訂正をしろ——訂正ということよりもその誤解を解くということの方がいいのではないかと思います。
  33. 河上民雄

    河上委員 まず大臣、日韓癒着を取り上げるということが日韓離間を策するものである、こういうふうに言われる根拠というのは一体どこにあるのか。日韓癒着を指摘する者はすでに悪であるというか、困った存在であるという判断がどこかにあるのじゃないですか。だから、そういう御判断はまずここでやめていただかなければならぬと思うのです。私、きょうは時間をいただいておったわけですけれども、すでにもう余り時間がないので、この問題は今後の日本韓国あるいは日本朝鮮半島全体のかかわり合いの中で非常に重要な問題ですので、大臣のお考えを改めていただかなければならないというふうに思うのです。したがって、これはさらに私はまた機会を改めて、いま言ったようなことを、もし単なる受け取り方の方の間違いであるというようなお考えであるといたしますと、これは今後重大な問題を提起するということだけを私はここで申し上げて、ややこれと同じような問題に移りたいと思うのです。  すでにもう外務大臣も御承知だと思いますが、ことしの夏に韓国人の、非常に端的に申し上げますけれども、朴政権のやり方が民主主義に反する、人権を抹殺するものであるという立場から、海外にいる韓国人の有力な人たちが東京台東区の池之端文化センターに集まって国際会議を行いました。そのときに、この会議を論理的にも否定し、政治的にも否定し、そしてこの会議を物理的に破壊しようという形で、民団系と思われる青年の人たちが殴り込みをかけたという事件がございます。きょうこれは警察の方の詳しい御意見を承りたいのですけれども、余り時間がない。一つ重要なことだけ私伺いたいのですけれども日本政府はこういう会議に対してどういう考え方で臨むのか。私、これを非常に心配をいたしておりますのは、駐日韓国大使の金大使が日本政府に抗議をいたしまして、その中で、椎名メモに基づいて日本における反韓活動に対して日本政府で取り締まるようしてほしいということを要求しているのです。一体、日本政府はこうした会議に対してどういう態度で臨んでおられるのか。恐らくこういう会議は幾ら抑えても抑えても、こうした運動は続くであろうと思いますだけに、私は日本政府のお考えをまず承りたい。
  34. 中江要介

    ○中江説明員 御質問の件につきまして日本政府の基本的な考え方といいますのは、これは再三申し上げておりますように、日本国には日本国の憲法がございますので、憲法のもとにおいて保障されております権利は守られねばならないということが一つと、他方、日本国は法治国家でございますので、法に違反したものは法に照らして処分する、こういう二つの原則に基づいて同種の事件対処していく、こういうことでございます。
  35. 河上民雄

    河上委員 金大使は日本政府に抗議するときに、椎名メモというものに基づいて今後反韓活動——これはいま外務大臣は日韓離間を策するものだという表現をされましたけれども、反韓活動に対して日本政府の手で取り締まりをしてほしいということを要求しているのです。外務大臣は、椎名メモというのは生きているというようにお考えですか。
  36. 中江要介

    ○中江説明員 先生の引用されました椎名メモというのは、恐らく文世光事件が起きました後で椎名当時副総裁が韓国に行かれましたときに話題になったものだろうと思いますが、その椎名メモといいますのは、日本におきますいろいろの個人の活動あるいは団体の活動につきましては、日本は、先ほど私が申し上げました第二の原則でございますが、法治国家でありますので、法に反しているものは厳正に処分するけれども、法に触れないもので、他方憲法によって保障されております権利につきましては、これを守っていくという日本政府の厳正なる態度を明らかにしたものが椎名メモということでございますので、その内容、実体は生きる死ぬという問題ではなくて、日本政府の基本的な考え方である、こういうふうに認識しております。
  37. 河上民雄

    河上委員 それでは政府は、いわゆる反韓活動と韓国政府が認定するようなものに対して取り締まりをするという方針ではない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  38. 中江要介

    ○中江説明員 これは取り締まりの問題でございますので外務省が直接の主管官庁ではございませんが、ある外国の政府に対して批判的な言動をするという場合でも、私が先ほど申し上げました原則に照らして、法に触れないものはこれを規制するということは現実の問題としてできない、こういうふうに認識しております。
  39. 河上民雄

    河上委員 すでにもう時間が来ましたが、池之端文化センターにおけるこの事件、実を申しますと私もこの事件が起きました全くの直後にこの会場に参りまして、その騒然たる状況を見ておったのであります。ネクタイからワイシャツから全く血染めの服装のままで会議がさらに続行せられるというような状況の中で私は見てまいりました。そのときに海外から来ている多くの人たちが、いわゆる先進国においてこのような暴力ざたが放任せられるということはあり得ない、それぞれカナダやアメリカその他に住んでいる人たちでありますけれども、カナダやアメリカではこういうことはあり得ないということを口々に言って、非常に憤りを吐露しておられたのでございまして、私も日本人の一人として大変恥ずかしい思いをいたしたのであります。日本に滞在しております外国籍の人たちに対しまして、それが短期にせよ長期にせよ、永住にせよ、その人たちの生命、財産また人権、発言の自由というものを保障できない日本というものは、私は民主主義国の名に値しないと思うのでありまして、そういうことを私は非常に強く感じたのでございます。  最後にもう一度伺いますが、外務大臣、先ほどの合同記者会見における大臣の御発言は、いわゆる日韓離間を策する者はけしからぬやつだというような単純な発想で対処をしているかのごとくに理解をせられるおそれが非常に強いわけでありますので、そういうことのないように、こういうような問題につきましては、日本はやはり民主主義国として対処していくんだという御決意を明らかにしていただきたいと私は思うのです。
  40. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、先ほどの記者会見におきます私の発言におきまして、そういう事実を指摘されたことにつきまして、そういう事実があると思うということを申し上げました。しかし、政治に関します問題というものは、やはり個人のそれぞれの自由なる意思の表現であります。したがいまして、それをけしからぬというような表現は、そういう考え方は一切持っておらないということをもう一度申し上げたいと思います。
  41. 河上民雄

    河上委員 それでは時間が参りましたのでここでやめます。  なお、日韓共同声明の中で第四次五カ年計画に対する協力がうたわれております。そこで、資料要求をしたいと思うのでありますけれども韓国の第四次五ヵ年計画の全体の内容、資金量の総額、またその中で日本が果たす役割り、そしてその中で民間ベースと政府ベース、そういうような数字を外務委員会に提出していただきたいと思います。  それから、同時に第三次五ヵ年計画は一応終わったわけでありますので、この中で総量がどうであったか、また日本の果たした役割りがどの程度であり、民間ベースと政府ベースではどうであったかということにつきましても資料を要求いたしたいと思います。
  42. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 資料の点につきましては、可能なものは極力お出しいたします。ただ、いまおっしゃいました、民間ベースでどれくらいとか、政府ベースでどれくらいとかいうようなことは、恐らくまだ決まってもおらないことでありますので、いま申された十分な資料が出せるかどうか自信がないわけでございますけれども、可能な限りお出ししますということを申し上げたいと思います。
  43. 河上民雄

    河上委員 それじゃ、私の質問を終わります。よろしくお願いします。
  44. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、寺前巖君。
  45. 寺前巖

    寺前委員 きょう、私は、第九回の定期閣僚会議共同声明と金大中事件のその後について、時間の許せる範囲でお聞きをしたい、このように思います。  最初に外務大臣に、今回の閣僚会議日本の援助問題というのが非常に大きな位置を占めているというふうにこの共同声明を見て思うわけです。韓国が経済的にも軍事的にも強大になることが朝鮮半島の平和維持に大きな役割りをするんだ、そういう認識でもってこの会議に臨んでおられたのかどうかということを聞きたいと思います。
  46. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島の平和というものは、やはり今後とも両国関係対話再開されまして、そして緊張緩和する方向に向かうことが好ましい、このように考えております。
  47. 寺前巖

    寺前委員 緊張緩和させるために米軍撤退という問題が起こってくるという状況の中で、今度の閣僚会議で援助という問題が求められた。そこで、それじゃということで積極的に援助の計画が出された。  そこで、私はこの共同声明を通じて感ずるのは、韓国に対して経済的にも軍事的にもアメリカ撤退していく、自主的にやらなければいかぬぞ、そのためにはもっと応援してやらなければいかぬ、それでこそ緊張緩和させることになるんだという角度からこの援助問題というのを見られたのかどうかということを率直に聞いているんですよ。重ねてもう一度聞きます。
  48. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 米地上軍撤退問題につきまして、この撤退問題が朝鮮半島の平和を害しないようにということが私どもの望んでいるところでございます。したがいまして、緊張南北を通じまして緩和されることが望ましい、地上軍撤退が北と南とのバランスを欠いて北側の誤算を生じさせたりというようなことにならないようにということを念じておるということはたびたび申し上げているところでございまして、他意はないのでございます。
  49. 寺前巖

    寺前委員 大臣が質問に率直にお答えにならぬということが時間を延ばす原因になっておる。これは委員長から注意を与えてもらわないといけないと私は思うのです。私が言っておるのは、経済援助ということのねらいというのがどこにあるのかということをはっきりしなさい、米軍撤退していく、朝鮮半島の平和ということを論じてきた、韓国自身において北との関係において経済力も増し、軍事力ももっと増さなんだらこの緊張緩和させるということにならないのじゃないかという立場をとっているのかとっていないのかということを聞いているのです。その立場をとりますというのだったら、その立場をとりますと、こう言ったらいいし、いや、そういうふうには見ないのです、こうです、こう言ったらいいし、もっと率直に御答弁をいただきたい。これはあわせてもう一度御答弁いただきます。  そして同時に、今度の第四次五カ年計画に対する援助がこの中にいろいろ強調されています。この第四次五カ年計画は、昌原に電子機器、造船鉄鋼、石油化学・肥料の三部門を重点に一大機械工業団地を建設するということが強調されています。韓国軍需産業の飛躍的強化ということがこれをもとにしてなされていくというふうに見なければならないと思うのです。朴大統領が、朝鮮戦争が再発した場合には米軍の参戦なしに撃退する能力を持つための計画だというふうにこの問題を位置づけていると、こうするならば、私は、この第四次五カ年計画に対する援助というのは、これはちょっと事は重大な話になるな、こういうふうに思うわけです。さあ、これについてどういうふうに見解を持たれるのか、お聞きしたいと思うのです。
  50. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 わが国が従来から韓国に対しまして経済協力を行っておりますが、それはひとえに韓国の住民の福祉の向上並びに産業の発展という見地に立って行ってきたものであり、したがいまして、これと軍事力とはいささかの関係もないということを申し上げたいと思います。
  51. 寺前巖

    寺前委員 七月二十一日に米ブラウン国防長官が記者会見でこう言っています。「日本韓国にたいして直接的な軍事援助ができない以上、自主防衛力強化の負担に韓国経済が十分耐えるよう、対韓援助を強化すべきだ」ということを言っています。この立場を受けて日本は経済援助をになっているのか、こういう考え方はそもそも反対だとおっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  52. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもブラウン国防長官とも会談をいたしまして、紙上そのようなことが言われておるけれどもどうか、こういうことをお尋ねいたしました。しかし、ブラウン長官といたしまして、日本韓国との従来からの経済協力関係、これが韓国の福祉を増進してきた、こういう観点であって、日本から米軍撤退に伴ってさらに援助を強化する、そういったことの意味ではない、通常の日本との貿易関係、通商関係もそうでありますし、従来からの経済協力関係、これが円満に行われているということがアメリカ政府としても歓迎すべきことだ、こういうことであって、直接的に日本の経済協力についてこれをどうしろというようなそのような意思ではない、こういうふうに言われております。
  53. 寺前巖

    寺前委員 大臣アメリカが言っておるとかいう話を言っておるけれども日本はどうするのだ、こういう見解をとるのかとらぬのか聞いておる。やはり主体的に御答弁をいただかないと、アメリカがどう考えていようと、私のところはこうなんだというふうに態度を表明すべきだというふうに思います。  その次に聞きます。今度の会談の中で、たとえばアメリカのフレーザー委員会では金大中の事件日本の主権が侵害されているという、その証拠もいっぱいあるということを過般言っておりました。そういうふうに国際的にも言われている。日本の国内においても、金大中問題をめぐってすっきりしないままに今日まで来ている。しかも、刑事事件について追及はする、政治決着についてもその場合には見直さなければならぬことになるだろうということまで当国会においても言われた話です。さて、この日韓閣僚会議において、刑事事件をめぐって韓国に要求することはなかったのか、何か要求されたことがあるのか、お聞きしたいと思います。
  54. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 金大中事件につきましては、もうたびたび申しておりますとおり、これは刑事事件としていま処理をいたしておるわけでありまして、私どもの方からその刑事事件にとやかく申す段階ではない、こう判断をいたしておりますので、この点につきまして私どもの方から韓国側に申し入れ等のことはいたしておりません。
  55. 寺前巖

    寺前委員 後ほどまた聞きますが、金東雲の問題にしてもその他の問題にしても、積極的に刑事事件の解決のために努力をするという以上は、私は当然こういうところに具体的に要求すべきだと思います。  ところで、さっきも少し出ておりました朴外務大臣、日朝友好議員連盟が朝鮮民主主義人民共和国共同声明を発表したとの報道について、あなたも共同の記者会見で立ち会っておられたわけですが、「この報道が事実とすれば、韓日の友好協力関係を増進していく上で決してためにならない、北東アジアの平和維持に重要な役割が期待されている日本韓国に先立って、北朝鮮と接触することは同地域の安全保障の面でも貢献することばないと言明、日本朝鮮民主主義人民共和国との交流が、政府レベルのものはもとより、民間レベルのものであってもやるべきではない」という、日本の主権に対する重大な干渉的な発言が出されているわけですけれども外務大臣はこの発言に対してどう考えますか。
  56. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朴外務部長官がそのような趣旨の発言をされました。ただし、これは通訳づきなものでございますので、その点は正確なところは——私は通訳を通じて知っているわけであります。しかし、日本政府といたしましては、日本政府が行い得ることと行い得ないことがある、また、日本政府として行うべきことと行ってはならないこととある、こういうことを私ども考えておるわけでありまして、したがいまして、日本といたしまして、朝鮮半島に真の平和と安定、これがもたらされることが究極的な目標でありますから、それに対するいかなるやり方をとるかということにつきまして、これは日本政府として独自の立場対処していくということがあって差し支えないものと私は考えております。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  また、これから具体的に漁業等の問題が出てまいると思います。それにつきまして、私どもといたしまして、これは韓国との間の友好関係を害する、破壊する、このようなことが起こりますと、いろいろやはり各国民生活にも影響を来してくるところでありますので、この辺を見きわめて、日本政府といたしまして対処をしてまいる、こういう考えでおるわけであります。
  57. 寺前巖

    寺前委員 日朝議員連盟共同声明を発したことをめぐって、それについてとやかくの干渉的な発言をやっているということに対して、同席しておって黙っておくわけにいかぬ話じゃないのかということを私は指摘をするのです。もちろん政府の問題についても同様でありますけれども、私は漁業関係者の中で、あの漁業協定をめぐって一番ちゅうちょしておるのは、本当に朝鮮との間にやったら韓国の方がどう出るだろうかということで心配をするんだという、そういうところに日本政府ががたついているから漁業関係者の間でも困るということが言われているじゃありませんか。そういうことを考えたら、こういう内政干渉的な発言を直ちに取り消しを要求するということが、これが私は日本外務大臣の姿勢であってほしいというふうに思います。  次に行きます。  過般、私どもの党の日韓問題訪米調査団が帰ってまいりました。報告を聞きますと、金大中事件アメリカではKCIAの犯行、しかもそれは殺人計画であったということは疑問の余地のないところの常識となって、政府機関の間でも、関係政界の間でも取り上げられているというところまで行っているというわけです。その一つの問題点として、すでに当委員会でもかつて問題になりましたところの韓国横浜総領事館の劉永福副領事の所有する車の問題についても、向こうではもう公然と言われているというわけです。私がお聞きしたいのは、この韓国横浜総領事館の劉永福副領事の所有していた車、これが外交官特権を持つところの青ナンバーであったのか白ナンバーであったのか、お答えをいただきたいと思います。
  58. 城内康光

    ○城内説明員 お答えいたします。  当時、劉永福横浜副領事の所有しておりました車は民間ナンバーでございまして、品川五五も二〇七七という番号を持っておりました。
  59. 寺前巖

    寺前委員 在日大使館員で外交特権を放棄してこういうふうに民間ナンバーでやっているという例はほかにあるのですか。
  60. 松村慶次郎

    ○松村説明員 お答え申します。  外交官ナンバーの車あるいは領事官ナンバーの車は、いわゆる外交特権あるいは領事特権に基づいて与えられているわけでございまして、こういった車を外交官あるいは領事官が所有しております場合には、外務省に申請がございまして、これに対して私ども外交官ナンバーあるいは領事官ナンバーのプレートを出しております。したがいまして、場合によってはそういう申請のない場合もあり得るかと思います。外交特権を必ずしも要求しない、そういうことで外務省に申請をしない、そういうことはあることである、そういうぐあいに考えます。
  61. 寺前巖

    寺前委員 海外に派遣されているところのそういう外交官がその特権を要求しないということは、どういうときに起こり得る話なんでしょうか。普通は当然、それぞれの国を代表してそれぞれのところで仕事をするときには、それは要求するのが普通じゃないでしょうか。それを放棄するというのは、何か特殊なときでしょう。むしろそのことの方が常識的だと思うのです。だから、どういうときに起こりますか。
  62. 松村慶次郎

    ○松村説明員 どういう場合にそういうことがあり得るかということは仮定の問題でございますけれども、たとえば相互主義に基づきまして外交官一名につき一台しか認めないというような場合は、セカンドカー、第二車につきましては白ナンバーになるわけでございます。それから相互主義ということがございまして、そもそもお互いに認めないということも仮定の問題としてはあり得るわけでございます。したがいまして、今度の、いま御質問のございました件につきまして、どうして領事官プレートを申請しなかったか、これは私ども承知しないわけであります。
  63. 寺前巖

    寺前委員 仮定の問題としてお話をなさいましたが、韓国のこの領事館に対して、ちゃんと制限をするという立場日本政府韓国に対して示していたんですか。ですから、申請したってもらえそうもないというので向こうが拒否している、そういう経過があるのですか。
  64. 松村慶次郎

    ○松村説明員 韓国大使館につきましては、あるいは韓国領事館につきましては、そういう制限はございません。ことしの七月までございましたのは、大使館職員あるいは領事館職員、これは外交官あるいは領事官ではございません。これにつきましては、外交プレートあるいは領事プレートを与えない、これは相互主義で与えない、そういう制限がございました。
  65. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、そういう拒否に遭っていないところが白ナンバーを使うということになるならば、そこで当然予想されるのは、そこには何か知られては困るという活動があったとしか見られないのではないか。このことは、今度の調査団が向こうへ行ったときに、在米韓国大使館公報館長であった李在鉉氏がこの問題について発言をしておられます。どういう内容か。それは情報活動をやるとか、あるいは人に知られてはならない活動をするときしかそういうことはせぬものなんです、こういうふうにはっきり関係者の間でも言われているのです。  ですから、当然のことながら、その車が使われたということを捜査当局において最初に知った瞬間に、この車について押さえるという措置は当然とられるべきではなかったのだろうか。日本政府の方が金大中事件について妥協しているぞということについて、広く言われる原因の一つにこの問題が取り上げられている。捜査当局はこの問題についてどういう見解を持ちますか。
  66. 城内康光

    ○城内説明員 お答えいたします。  劉永福副領事の当時所有しておりました車が、金大中氏をホテルから連行するのに使われた疑いは濃いというふうに、私どもはこれまでの捜査からそのように考えております。ただし、この車に対してそのように疑いを持つに至ったいきさつというものを、この際御説明しておきたいと思います。  車の捜査につきましては、犯行時間に近接してホテルから出入りをした車の下四けたのナンバーが駐車場で記録がございます。三十台出入りしておりまして、そのナンバーを手がかりにして膨大な数の車について調べをしたわけでございます。そしていろいろな目撃者等の証言その他から、二〇七七という末尾四けたの車で金大中氏がホテルから連行されたということを私どもは確定いたしたわけでございます。  御承知のように、全国で二〇七七という末尾四けたの車というのは膨大な数になるわけでございます。たとえば東京だけ見ましても百六十一台あるわけでございます。こういうものを一つ一つシロくするといいますか、いわば消去法的な捜査をして、最後に一つ残ったのがこの劉永福副領事の車であるということでございます。  そういたしますと、結局、その車が犯行に使われたということを積極的に裏づける資料がないということでございます。いろいろな事情を聴取するなり何なりしてみないと、そういう差し押さえというようなことには直ちにまいらないということでございます。  なお、そういう膨大な数の車を捜査いたしたものですから、そういうわれわれが確信を持つに至ったのも四十八年の十月の下旬、こういうことでございます。
  67. 寺前巖

    寺前委員 この劉永福の所有の車というのは、事件が四十八年の八月の八日ですか、そうしてこの車が廃棄処分になって、それからまたそれが外交特権の車になっているというふうに聞くのだけれども、この車をめぐってどういうふうに廃棄になって、所有がどう変わって現在どうなっているのか、ちょっと経過を説明してください。
  68. 松村慶次郎

    ○松村説明員 お答えいたします。  品川五五も二〇七七号、この陸運局番号を持った車は七三年九月十二日に登録番号の抹消が行われまして、その抹消の証明書を持って外務省に対して韓国大使館のアタッシェでございます李斗栄が外交プレートの申請をしたわけでございます。この申請に対しまして七三年の九月十三日に外交ナンバー四八一三を発給いたしました。それで、この李斗栄は自分の車を日産プリンスの東京販売会社より購入した、そういうことを申請に付記いたしまして外交ナンバーを申請したわけであります。  以上であります。
  69. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、劉永福の使っていた車がその李斗栄が申請をした車とつながるのか、つながらぬのか。これは捜査当局、わかりますか。
  70. 城内康光

    ○城内説明員 同じ車が使われた、つながるということでございます。
  71. 寺前巖

    寺前委員 そういう経過、そうするとますます疑惑は明確になるのですね。白ナンバーで活動しておった、それが、本人が事件が発生して九月四日に帰国してしまう、そしてその車が今度は外交特権のナンバーの車に変わってしまう。そうすると、外交特権を持つ車だから捜査を受けないで済むようになってしまう。悪いことをするときは白ナンバーでやっておるので、押さえることができない。そうすると、アメリカで広く言われているし、また李在鉉氏が直接も言っておられる、こうやって日本において活動をやったというのは、筋の通る話になっていっているじゃないか。  そこで私は聞きたい。捜査当局は、十一月六日付の新聞を読むと、韓国に対してこの車についての疑惑を持っての捜査の依頼をやっています。その結果はその後どういうことになっているのですか。
  72. 城内康光

    ○城内説明員 お答えいたします。  この車にまつわるいろいろな疑惑につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、いろいろと本人から聞いてみなければならない事情もあるわけでございます。いろいろな推測は可能でございますけれども、いろいろと聞いてみなければならない。そこで、外交チャンネルを通じまして、韓国に対して劉永福氏の当時の車の使用状況などにつきましては再三連絡方をお願いしているわけでございますが、返答は得ていないということでございます。
  73. 寺前巖

    寺前委員 そうすると、広くアメリカ関係者の間でそういうふうに言われて、そして隠滅の筋書きがきわめておもしろく描かれていっている。刑事事件については疑わしきものは捜査をする、こう総理自身も言っていたのに、日韓閣僚会議あたりで、返事が一向にないけれども日本のこの疑惑は消えぬじゃないかという問題を外務大臣なぜやらないのだろうか。金大中のこういう主権の侵害にかかわると疑われる具体的事実もあり、そして具体的に捜査当局が提起した問題について詰めをやらないというのは一体どういうわけなんだろうか。外務大臣の見解を聞きたいと思います。
  74. 中江要介

    ○中江説明員 先ほど外務大臣が御説明しましたように、この事件は刑事事件として、日本国内においては捜査当局がもっぱら各般の捜査を継続しておるわけでございまして、外務省といいますか、外交チャンネルでこれを外交上の問題として取り上げるということはいたさない。それを将来いたすといたしますれば、再三申し上げておりますように、新たに主権侵害の事実を立証するに足る証拠をもってわが方で明らかにした場合にはいわゆる外交的決着を再検討することあるべしということを留保している、その点だけでございますので、外務省といたしましては、捜査当局と協力しながら、この日本におきます刑事事件の捜査の行方を見守っているということでございまして、いまの段階で本件を取り上げるということにはなっていなかった、こういうことでございます。
  75. 寺前巖

    寺前委員 それじゃ捜査当局どうします。あなたたちは四十八年十一月のときに、そうやって韓国政府に対してきわめて疑惑は明確になっているということで問い合わせをやった。ところが一向に返事が来ない。筋書きから言うたら、悪いことをするときには民間ナンバーで、そしてその車自身も証拠隠滅のために外交特権で調べられないようにしてしまう。こんなやり方を黙っていて、さて後どうする気なんだ。それで刑事事件として引き続きやっていますと言われたって、一体何をやっているんだと言わざるを得ぬじゃないですか。どうするつもりなのか、はっきりお聞かせをいただきたい。  時間が来たようですから、また次の機会に金大中問題はやらせてもらうことにして、もう一つこの際聞いておきたいのは、当時も問題になった話でありますが、重要な目撃者が、大津インターチェンジを通過したときにあっちへ行けば京都かと尋ねられたという道路公団の職員がおります。この人の件に関して新聞でもいろいろ書かれております。いや、そちらは大津市内、こっちへ真っすぐ行けば大阪に出ると答えた、この車は結局どちらかに向かったのではないか、そこでおりるんじゃなくして恐らく京都、大阪方面へ行ったのではないかというて、目撃者があるという問題があります。ところが、その目撃者に聞いてみると、どういうものか警察から調査を受けたことがないというんですね。新聞記者の皆さんは調べにお見えになりましたけれども、こういう話なんです。新聞記者の皆さん方がわざわざお行きになって調べられているようなものが何で捜査当局の手では調べられないのだろうか。何か後から後から出てきて、四十八年当時のことですからひどく前の話になってきているわけですけれども、そういうことを通じても、アメリカ関係者の中では、捜査当局もぐるになってるのと違うか、捜査当局は資料をみんな持っていますでということを、向こう側から聞かされる羽目になってしまう。日本人が向こうへ行って、日本の捜査当局とちゃんとしてこないのですかと、逆に恥をかかされるという問題などがちょいちょい出てくるというわけですね。さて、この問題について警察当局、捜査当局はどうしたのか、お答えをいただきたいと思います。
  76. 城内康光

    ○城内説明員 まず第一の、劉永福の所有車両についての捜査をどうするのだということでございます。これにつきましては、先ほども申し上げましたように、韓国側に再三にわたりまして照会をいたしましたけれども回答がないということで、私どものできますことは、国内におきましていろいろな目撃者とかあるいはいろいろ基礎的な捜査を通じまして得た資料を積み重ねていくということを鋭意やっていかざるを得ない、こういうことでございます。  それから第二の、大津インターチェンジにおける目撃者ということでございますが、御質問と私ども認識しているのはちょっと違うわけでございます。  四十八年の九月四日に滋賀県警に対しまして、県内に住む公団職員の方が、前の晩の金大中事件関係のテレビ報道を見た、そして気がついたということで通報をしてくれたわけでございます。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕  それによりますと、八月八日の午後七時五十分ごろ、自分がそこで道を聞かれた。それは白い色の車で左ハンドルの外車であったということでございます。そのように警察はちゃんと本人からいろいろ事情を聞いておるという点をまず申し上げたいと思います。  それから金大中氏の供述、これは韓国側からこちらへ送付してきたものでございますが、それによりますと、金大中氏が高速道路を五、六時間走ったところ、地名は不詳だけれども、検問を受けたか何かして道を聞いた。そうしたらその答えとして、そちらは大津で、そちらは京都である、こういうことがあるわけでございます。先ほどの公団職員の方のお話でも、道を聞かれて、左へ行けば大津、真っすぐ行けば大阪、こういうことがあるわけでございます。京都があるのとそれから大阪があるのと若干違いますけれども、やや似ているという点は私ども非常に注目しているわけでございますが、劉永福副領事の車というのは国産車でございまして右ハンドルでございます。そして色はシルバーグレーのニッサンスカイラインGT二〇〇〇というはっきりとした国産車でございます。ですから、似た点もあるし、違うと言えば違う。しかしながら、これは大変注目をすべき事柄であるということで、私どもとしては重要な捜査資料として取り扱っておるわけでございます。
  77. 寺前巖

    寺前委員 私、この際にちょっと聞いておきたいのですが、これだけの事件をやるのに一台の車ではなかっただろうと思うのです。捜査当局は何台の自動車が走ったというふうに見ているんですか。
  78. 城内康光

    ○城内説明員 私どもはやはり捜査をやって確定した事実でないとちょっと申し上げることができませんので、いろいろな可能性があったということを前提にして捜査をしているということで御理解願いたいと思います。
  79. 寺前巖

    寺前委員 時間が参りましたので、また次の機会にやらしてもらいますが、さきの自動車の問題においても、外交特権を与えてしまったら後は返事がなかったらそれっきり、野となれ山となれとなってしまっている。鋭意やりますと言っても、これでは進まぬ話ではないだろうか。この間うちから金炯旭氏の問題が出た。金在権氏の問題についても問題になった。こういう問題にしたってこれまた中途半端に終わらしてしまうんではないだろうか。適当にやはり全部政治決着させてしまっているんではないか。そこには少しも積極性が見られないのですが、外務大臣としてはこの問題についてどういうふうに引き続いてやるつもりなのかお聞かせをいただきたいと思うのです。
  80. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 金大中事件につきましては、刑事事件としてこれは捜査当局が努力中でございます。  一方、外交問題といたしましては一応の決着がついておるものでございますから、新たな事実と申しますか、日本の主権を侵害したということをやはり新しい証拠をもちまして先方に提起するということでないとこれが再開しがたい、こういう事態にあるわけでございまして、そういう面につきまして、金在権氏に対する接触等につきましても鋭意努力をしておるところでございます。まだ残念ながら、先般の当委員会で御説明申し上げましたように、金在権氏の接触の可能性につきましてなお念を押しておるところでありますが、まだ海外に出る見込みがあるのかどうか等につきまして照会中の段階でございまして、鋭意努力をいたします。
  81. 寺前巖

    寺前委員 終わります。
  82. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、伊藤公介君。
  83. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 先ほどから外務大臣いろいろなお話があったかと思いますが、基本的な問題でございますので、まずお伺いをしておきたいと思います。  今度日本韓国日本北朝鮮の間に二つ共同声明が発表されました。これは恐らくいままでかつてなかった事態日本朝鮮半島の中に生まれてきた、あるいは日本北朝鮮を取り巻く国際状況がかなり大きく変わりつつあるという認識に立たざるを得ない、こう思いますけれども、まず外務大臣の、こうした二つ共同声明を結んだという環境をどのように認識をされているか、お伺いをしたいと思います。
  84. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 二つ協定と申しますか、二つ共同声明がちょうど同じ日に出たということ、これはこれをもって新しい事態になるのではないか、こういう話でありますが、私どもといたしまして、朝鮮半島におきます依然としての南と北の対立関係、これがまだ解消の方向に向かっておらないというふうに認識をいたしております。そういう意味で、今後、私どもたびたび申し上げておりますように、朝鮮半島におきます真の平和と安定、これが達成されますことのために、私どもといたしまして努力をいたしたい。そういう関連におきまして日本北朝鮮との関係がどうあるべきかという点につきまして、これは種々議論の存するところであり、また韓国側におきましても非常にこの点に関心を持っているところでございます。そういう点につきまして、私ども慎重に対処をいたしたい、このように考えております。
  85. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは、日朝議員連盟の方々が北朝鮮に参りまして結ばれた共同声明、この内容等について外務大臣はどのような御感想をお持ちでございますか。
  86. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 共同声明の内容につきまして報道によって承知をいたしておりますが、久野団長がまだお帰りになっておりません。私ども、お帰りになりましたときに、その背景等につきましていろいろお話を伺いたいと思っております。したがいまして、いまの段階で共同声明の内容につきましてここでいま申し上げるのは控えさせていただきたいと思うのでございます。  ただ、漁業関係がどうなるかということにつきまして、西日本の零細な漁業者、この立場考えますと、漁業面につきまして、非常に制約された区域でありますけれども、操業ができるようになるということにつきましては、それなりに評価をいたしておるところでございます。
  87. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 この軍事境界線というような問題については、われわれ自身も大変いろいろと疑義があると考えているわけでございます。しかし、現実にこの漁民の方々について、一体どういう形で政府自身がこの問題に取り組んでいくかということは、黙して通っていくことはできない問題であります。しかも共同声明はすでに発表、報道されているわけですから、政府がこの問題に関知をしないでいくということはできない問題であろうと思いますけれども共同声明を結んだことによって漁民が保護をされるという内容については、外務大臣としてはこれを認められるのかどうなのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  88. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 民間におきます漁業協定によりましてこれが操業できるという点につきまして、先ほど申し上げましたように、それなりに評価をいたすべきものと思います。
  89. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それならば、海洋法が変わりつつある、あるいは海の秩序は二百海里時代、こういう新しい状況の中で、政府が何らかのさらに進展をさせていくという考え方現状の中でお持ちになっているかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  90. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 政府進展をさせていくというのは、北朝鮮の二百海里内においてと、こういう趣旨でございますと、それは久野会長等がお帰りになっていろいろ情勢等につきまして理解を進めませんと、いまここでにわかに御返事を申し上げることはできないのでございます。
  91. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 少し重複をするのでありますけれども、今度日朝議員連盟が結ばれた共同声明というもの、いま報道されている内容について外務大臣はこれをお認めになるのかどうなのか、あるいはどういう認識を持っているのか、もう一言お聞きをしておきたいと思います。
  92. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私ども報道として承っている段階でございますので、この共同声明全体に対しますコメントというものは、先ほど来申し上げましたように、いろいろ背景等につきまして理解を進めた上で持ちたいと思っておるのでございます。したがいまして、もうしばらく御猶予を願いたい、こういうことでございます。
  93. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もう一方において日韓の共同声明が発表されたわけでありますけれども、この共同声明の第六項において「最近の海洋秩序が大きく変わりつつあることに留意し、」こうした「新しい海洋秩序をふまえつつ、両国間の円滑な漁業関係のため両国が密接に協力していくことが望ましいことに意見の一致をみた。」こう記されているわけでありますけれども韓国は二百海里の水域を設定するという意思を持っているのかどうなのか、あるいはどのような状況の中で設定をするとお考えになっているのか、これからの問題でありますけれども、どのような認識を持っておられるか、お聞きをしたいと思います。
  94. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 その点につきましていろいろ議論をしたのでございますけれども韓国側といたしまして、いま日本韓国との間に現在の漁業協定によりまして円滑にいっておるという認識でありまして、日本といたしましても、西日本といいますか韓国に対しまして二百海里を、いまこの漁業水域を適用していない、こういうことになっておるわけで、したがいまして、現状が好ましいというお互いの認識を持っておるのでございます。それに対しまして新たな問題が起こらないように希望しておるという考え方を伺いました。  しかし、二百海里時代を迎えまして、韓国自身が二百海里について今後ともこの二百海里の漁業水域を設けないということも申しておらないわけでありまして、したがいまして、早急に二百海里を施行するということはないと思いますが、将来あるいは、海洋秩序が確立をするとか、将来の推移に応じまして二百海里の漁業水域の設定ということもあるのではないか、そのようなことが実際のところでございます。
  95. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 朝鮮半島の問題にわが国としてどのような基本的な立場でこれから臨むかという、いまとても大事なところに私どもは立たされているのではないか、そういう認識の中で、今度の二つ共同声明というものはそれなりの意味を持ったものであるというふうに受けとめているわけでありますけれども外務大臣の御発言の中には、日韓の友好関係を崩さない、そういう立場に立ちながら他方北朝鮮との対話を進めていく、こういう御発言をされているわけであります。そうしますと、今度の日朝共同声明というものは日韓の友好関係を損なわない範囲にあるものなのかどうなのか、どういう認識を持っていらっしゃるか、お尋ねをします。
  96. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 抽象的には日韓間の友好関係を害しないということは申せますけれども、具体的にではどの程度であれば日韓間の友好関係を壊さない範囲で北朝鮮との交流と申しますかこれが可能であるかという点につきまして、これは一概には申せないと思います。また、私ども外交努力というものも介在をしてくるものと思うのでございます。したがいまして、日韓の友好関係を壊さないように私どもとして努力をいたしたい、このように申し上げるほかないのであります。
  97. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私は朝鮮半島をどうするかということを質問するたびに何回か繰り返して外務大臣にお尋ねをしてきたわけでありますけれども日本政府北朝鮮あるいは朝鮮半島全体にどう取り組むかという基本的な考え方、姿勢のようなものが少しも明らかにされてこない。お話のように北朝鮮とも対話の道を開く、しかし基本的には韓国との友好関係を崩さない。それでは、そういう現状の中で北との対話をすると言うけれども、具体的に一体どういう形で進めていくのか、どういう状況をつくっていくのかというこれからの考え方、基本的な考え方を私はお聞きしておきたいと思います。
  98. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 日本政府といたしまして北との対話を進めるということは、現状では外交関係がありませんのでなかなかむずかしいことであろうと思います。したがいまして、民間におきます交流が積み重ねられることが望ましい。しかし、このことにつきましては、やはり北朝鮮政府のこれからの態度と申しますか、もっと窓を開いていくという必要があるわけでありまして、これは双方お互いの関係でございますので、日本が一方的にこのような方針で進むということはなかなか言いがたいわけで、双方にとって可能な範囲におきまして交流を積み重ねるということしか申し上げようがないのでございます。
  99. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そうしますと、韓国が北との対話をする以前に日本が北との対話をするということも現実にはあり得ることなのかどうなのか、韓国が北との対話をする以前には日本はその道を開かないという前提に立っているのか。どうなんでしょう。
  100. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 北との対話という問題につきましては、日本政府といたしまして独自の立場から決めるべきことであると思います。しかし、この点につきまして、日韓友好関係を害さないということがやはりその前提に必要である。一衣帯水の間にあります日本韓国との関係でありますから、この関係が壊れては元も子もないという考え方であります。したがいまして、判断自体は独自の立場で決定すべきものであるけれども対話をすぐ開くということはなかなか困難を伴うことであろうと私は考えております。
  101. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日本韓国との友好関係を崩さないという前提に立てば、韓国が北との対話をする以前に単独でもわが国は北との対話を始める用意があるという認識もお持ちになっているのでしょうか。
  102. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 私どもが北との対話ができるということは、やはり南北間の対話が可能になるということが同時に必要なことであろうというふうに考えております。
  103. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 たとえば南北の話し合いがストレートではまだできない状況の中でも、むしろわが国は独自の立場で北との対話の道を開いていく、そのことが南北対話への道を開く、そういう状況をつくり出すということにも役立つのではないかという気がするわけですけれども、直接南北対話が行われない段階でも、状況によってはわが国は北との対話を始められるということも現実にはあり得るのかどうなのかということをお尋ねしているのです。
  104. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 現実にはきわめて困難であろうと思います。
  105. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もし困難であるとすれば、それは現実には何が一番大きな障害でしょう。
  106. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 朝鮮半島の平和的な統一なり平和の確保ということが最も望まれることであります。したがいまして、そういう観点からいきまして、南北間の緊張緩和なり対話再開ということが最も基本的に必要なことであると考えております。したがいまして、そのことを達成するためにプラスになるのかマイナスになるのか、こういうことでありまして、現状におきましては直接南北間の対話再開ということが最も望まれることであるという考え方でございます。
  107. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 仮定の話で大変恐縮でありますけれども南北対話現実に行われない段階で、アメリカ北朝鮮との窓口を開いて対話が始まるという可能性の認識——かつて中国の問題も同様の事態があったわけでありますけれどもアメリカと北との新しい関係が始まるという状況、そういう認識については外務大臣はどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょう。
  108. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 アメリカ態度につきまして私どもも非常に大きな関心を持っておるところでございます。しかし、そのアメリカ態度というものは、やはり韓国を抜きにしては対話は行わないということを堅持をいたしておるというのが現実でございまして、将来のことにつきましてここでとやかく予測をすることは、申し上げても参考にならないことであろうと思います。しかしわが国といたしましては、民間ベースにおきましてもう交流が積み重ねられつつある。その点につきまして私はアメリカよりもわが国の方が北との関係は密接に持っておる、このように思っております。したがいまして、かつて中国に起こりましたような事態は、私は現状では想像いたしておらないのでございます。
  109. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 将来の問題はやがて明らかにされるわけですから、ここで議論をしても実りがないと思いますけれども、しかし、これからの認識をどうするかという点で大変大事な問題だと思います。言葉では北との対話あるいは正常な交流を早くという言葉は聞きますけれども、いまの大臣の御答弁を聞いておりますと、少しも前進はしていない。きわめて残念でありますけれども、北への道を開くという姿勢は少しも積極的ではない。経済的な問題等々いろいろな問題では南北それぞれわが国の立場は違うわけでありますけれども、しかし、世界でただ一つ国交のない国という認識に立てば、正常な国交ができる道を開くということは、われわれは特に隣国でありますから、当然これからは進めていかなければならない、こう考えているわけでございます。いろいろな御発言の中では対話対話と言われてまいりましたけれども、きょうの御答弁の中では、むしろ非常に消極的な姿勢しか感じられないということは大変残念なことであります。ひとつ積極的に南北の朝鮮の問題について、あるいは北への対話の問題について道を開いていただきたいということを強くお願いを申し上げておきます。  日韓定期閣僚会議の問題について、一、二点御質問したいと思います。  韓国の第四次経済開発五カ年計画に日本の中長期借款を導入する約束をされたわけでありますけれども、その内容を私どもいろいろ読んでみますと、この第四次五カ年計画というものの全体の規模、サイズというものが少しもわからない。一体どれだけのもので、それに対してわが国は、その全体の中でどれだけの負担をわれわれがしてあげる、援助をするのかということが少しもわかっていない。そのいろいろな説明は韓国側からおありだったと思いますけれども、内容について、どのようなものであったかお尋ねをしたいと思います。
  110. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 今回の定期閣僚会議におきまして、わが国がどのような経済協力をいたすかという点につきまして、何ら具体的に取り決めというようなことは一切いたしておらないのでございます。したがいまして、私どももこれから検討をいたすということでございまして、なお、先方が第四次五カ年計画というものにつきまして説明もいたし、また、それに対しまして、日本に対して協力現実に要望いたしておりますので、それらの点につきまして担当局長から御説明をさせていただきます。
  111. 菊地清明

    ○菊地説明員 お答えいたします。  第四次五カ年計画がどういう規模で、また、日本に対して韓国側としてどういうことを期待しているかということについて若干御説明を申し上げますと、第四次五カ年計画というのは七七年から八一年まででございまして、この総投資額が十八兆ウォンでございます。それで、その中で外資導入期待額といいますか、外貨に、外国からのあらゆる種類の経済協力に依存する度合いというものは百億ドルということになっています。年間二十億ドルで毎年、五カ年間で百億ドル。これに対して日本にどのくらい期待しているかということは、特に会議場そのものではもちろん出ませんでしたけれども、実は去年の十二月に日本から経済ミッションを送っておりますが、そのときなどに先方か申したことは、従来——従来といいますのは、いままでの第三次五カ年計画その他で、日本からの民間ないし政府の経済協力が大体二割程度来ておるといった、そういった実績の話はございました。今回の第四次五カ年計画につきまして具体的にどういう期待をしているかということについては、公式には何らお話は出ておりません。
  112. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日韓の経済援助の問題は、いま金大中事件と並行して、大変いろいろな疑惑の中にあるわけでありますけれども、常に日本韓国に対する経済援助の背景には、その内容が明らかにされないまま、援助をするということだけが前面に出てきて、国民の前には、あるいはわれわれの前には少しもその内容が具体的な数字として明らかにされない、明らかにされないまま日本の援助だけはとにかく先行している、こういう現実に実は私は大変いろいろな心配をしているわけであります。  七二年のソウルの第六回日韓定期閣僚会議で、韓国の第三次経済計画が終了する時点、つまり一九七六年、それ以降は政府ベースから民間ベース主体に移行するんだ、こうして、これは第七回の会議でも共同声明でうたわれているわけでありますけれども、一体、今度の第四次五カ年計画は、民間ベースが主体となっていくのか、あるいは政府ベースが主体になるのか、あるいはその割合は七対三なのか、四対六なのか、あるいは五対五なのか、一体どういう基本的な考え方で援助をしていくのかということをまず一点お尋ねをしたいと思います。  現実韓国の経済状況というものはかなり上昇をしている。韓国自身もそう発言をしているわけでありますけれども、一人当たりのGNPは七百ドル、そして経済成長率は一〇%わが国の経済成長率が六・七等と言われているときでありますから、韓国の経済状況はかなり上昇をしている。しかも自立でやっていけるという道がかなり急速に整いつつある。その韓国に対して、なお民間ベースではなしに政府ベースでさらに大きな援助をしていかなければならないというその背景は、一体何がそうさせているのか。私ども考えれば、韓国よりももっとわが国が経済援助をしなければならない、開発がおくれた国々アジアの中にもあるわけですから、むしろ政府ベースの援助をするとするなら、まだ自立で経済を支えていけない国々を支えていくことが政府ベースとして進めらるべきではないかと考えますけれども外務大臣の御見解をお伺いをしたい、こう思います。  そして、韓国は、在韓米地上軍撤退に伴う補完的な性格を持っている、こうはっきり言っております。そしてこのことは、アメリカのブラウン氏自身も同様な発言をしているわけであります。米軍の肩がわりとしてわが国が経済援助をしていく、こういう認識を持っているわけでありますけれども、一体日本政府はどのような認識を持っているのか、二点についてお尋ねをします。
  113. 鳩山威一郎

    鳩山国務大臣 韓国との経済協力のあり方という点につきまして、ただいま御指摘のありましたように、第三次五カ年計画が終了いたしますと、韓国は相当に国際競争力と申しますか、あるいは自立力と申しますか、向上されるだろう。したがいまして、そういうような発展段階になりました際におきまして、民間ベースの経済協力というものが非常に重要になってくる、こういうことが前回も言われていることは確かであります。  今回、先方といろいろ議論をいたしてまいったわけでありますが、一つは、発展途上国もいろいろな段階がございます。バングラデシュのように、一人当たり国民所得が七十五ドルというような、これはおよそ私どもの生活実態から考えられないような低い一人当たり国民所得の数字が出ております。また、東南アジア諸国でも、一人当たりの国民所得、国民総生産で比較いたしますと大変なばらつきがあるわけであります。そして、それぞれの段階におきまして工業力の発展の差というものがそこにあるわけでございますが、私ども、こう各国を回りまして、一つは、そのような数字が果たして本当に比較し得る数字であるのかどうかという点についてはいささか疑問なしといたしません。物価の相対的な問題があるわけでございますので、その点を調整するということはなかなかむずかしいわけでございます。しかし、そういう問題とともに、アジア全体として平和的な安定的な発展に対して日本協力姿勢を持ってまいるということから今後の援助政策を決められるべきだろう。一概に日本の国内で行われておりますような、昔の平衡交付金制度みたいに、国民所得に応じて、低いものには非常に高い援助を行うという、そういったことはなかなか私は実現不可能であるし、必ずしも正しいことであるとは思いません。農業人口が多い少ないによりまして非常にこの差が出てくるわけでございます。したがいまして、これから韓国との間の経済協力関係、どういう考え方で臨むかということはこれから鋭意検討をしてまいりたい。まだ答えが出ておりません。しかし、この共同声明で申しましたことは、やはりそれぞれ農業の問題、これはアジア全体を通じまして農業の開発につきまして、農業の振興、農村の振興というようなものは皆各国とも取り上げております。このような点でありますとか、インフラ部門におきましてはやはり日本としても何らかの協力姿勢を持つべきだというふうに考えておるところでございます。  それから、比率はどうするかということでありますが、民間がいかなる投資を韓国に行うか、また、輸銀ベースでどのような投資が行われるかということにつきまして、これはまあいろいろな数字はつくれるかもしれませんけれども、なかなか投資というものは政府の計画のようにはまいりませんで、異常に伸びたり縮んだりするものでございまして、なかなか数字としていま申し上げるようなものはいま持っておらないのでございます。  詳細なおお答えの足りない点は、菊地経済協力局長からお答えいたします。
  114. 菊地清明

    ○菊地説明員 若干補足させていただきます。  おっしゃるとおり七二年第七回の会合におきまして、定期閣僚会議におきまして、民間ベースの協力を主体としていくということがコミュニケにうたわれまして、その後もその方針には基本的には変化はないわけでございますけれども、御案内のとおり一九七三年十月のいわゆる石油ショックがありまして、これが日本と同様資源のない韓国経済に対しまして非常に大きなインパクトを与えたわけでございまして、先ほど申しました民間経済協力を主体とする、あたかも政府援助がだんだん少なくなっていくという印象を与えた点があるわけでございますけれども、それが七三年の石油危機によって若干事情が変更してきたということで、その次の会議では依然として政府援助が必要であるということの認識が得られたわけでございます。これは必ずしも日本韓国だけの間ではございませんで、いわゆる世銀主催の対韓援助国会議におきましても、こういった認識の見直しというものがあったわけでございます。ただ、そうは言うものの、委員のおっしゃいますとおり韓国経済は非常に順調でございまして、一人当たりのGNPも七百ドル、それから本年は輸出百億ドルというようなことでございますので、こういったやや離陸に近い経済を持っておりますので、当然そういった国に対する経済協力の仕方としてはやはり民間ベースというものがかなり大きなウエートを占めていくということは間違いなかろうと思います。そういうことにおきまして具体的な比率、いわゆる政府援助と民間の経済協力、具体的には政府借款と輸銀信用ないし直接投資の比率ということになると思いますけれども、これはなかなかいまから申し上げにくいわけでございますけれども韓国側としては、これはあくまでも韓国側の数字でございますけれども、やはり半々に近いぐらいのことを期待しておるんではないか。これは何も日本に対してじゃございません。全体として、先ほど申し上げました百億ドルの外貨所要額全部をとってみますと、あるいは半々ぐらいの期待をしているんではないかというふうに想像されます。
  115. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 在韓米軍撤退の肩がわり……。
  116. 菊地清明

    ○菊地説明員 失礼しました。  それから、今後の対韓経済協力意味合いというものが、在韓米軍撤退に伴う経済的な補完措置といいますか、そういうものではないかという御質問だと思いますが、私の方は実はこの在韓米軍撤退問題以前から韓国に対して援助をしているわけでございまして、その場合の援助方針といたしましては、あくまでも韓国の民生の向上と経済の開発ということでございまして、いわゆる軍事協力的な意味ではございませんで、あくまでも韓国の民生の援助である。もっと具体的に申し上げますと、民生に直結しているのは何といっても農業開発とそれから電力開発その他のいわゆるインフラストラクチュアの開発に対する援助ということでございまして、この援助の対象といいますか、それは従来ともないしは今後の第四次五カ年計画を通じて変更はないというふうに感じております。
  117. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので、終わります。
  118. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、来る十六日金曜日午後零時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十六分散会