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政府委員(伊藤圭一君) 調査の結果を御報告申し上げます。
まず、金大中事件と自衛隊の
関係について申し上げます。
陸幕二部及び元宮術官が金大中事件に加担し、共犯
関係にあったのではないかというお疑いでざいましたが、本件は捜査をいたしております警察当局が今日までたびたび明確に否定いたしております。たとえば、事件発生直後の
昭和四十八年九月二十五日の参議院本
会議におきまして、安永英雄議員の
質問に対し江崎
国家公安委員長は、「自衛隊が
関係しておるとか、自衛隊員が共犯者であるなんていうようなことはとんでもないことでありまして、」と
答弁いたしております。また、本年三月二十九日の本院
予算委員会におきまして、
上田議員の
質問に対し、警察庁三井警備
局長から、「私立探偵社を営んでおる元自衛官から協力を得て、本件捜査は大変進展をいたした」との
答弁がございました。なお、「この二人が事件に犯罪者側に加担しておらないかと、こういうことでありましたならば、さようなことはございません」と明確に
答弁いたしております。すなわち、私立探偵社を営んでおります元自衛官二名は、依頼を受けました調査の対象が金大中氏であることを知らずに本事件に巻き込まれ、金大中事件発生後驚いて警察当局に届け出ました。そして、その捜査に協力したものでありまして、当初から金大中拉致事件と知ってこれに加担し、共犯
関係にあったという事実はございません。まして、本事件に陸幕二部が、これら元自衛官を使って金大中事件に加担したということは全くございません。なお、防衛庁におきましても、事件発生後の
昭和四十八年十二月初め、元自衛官二名について事情を聴取いたしましたが、警察当局の
国会における
答弁どおりであったことを確認いたしております。
次に、塚本勝一陸将が金大中事件に加担していたのではないかとの疑いにつきましては、去る三月三十日、陸上自衛隊方面総監会同に出席しておりました塚本陸将に対し、三原
長官が直接事情を聴取いたしました。
上田議員が御指摘したようなことは全くなかったことを確認いたしております。
まず、在韓防衛駐在官当時のことについて申し上げますと、塚本氏は、
昭和四十二年九月二十日から四十六年八月十八日まで、初代の在韓防衛駐在官として勤務いたしました。防衛駐在官は大使の指揮下にありまして、軍事事情を把握することを任務といたしております。接触する相手はもっぱら軍
関係の国連軍司令部とか、韓国国防部等でございまして、KCIAとの接触は所管事項でございませんので全くありませんでした。この間塚本氏は、朴大統領には公式のレセプションであいさつをしたことが一度あるようでございます。また、李厚洛氏とはパーティーで同席した程度でございます。金鍾泌氏、金炯旭両氏とは面識はありませんでした。なお、
上田議員御指摘の李厚洛氏は、
日本の陸士出身者ではございません。
次に、陸幕第二
部長当時の韓国出張について申し上げます。塚本氏は、陸幕第二
部長当時、陸幕長の命令によりまして韓国陸軍軍事施設、部隊等の視察を目的として、
昭和四十八年二月十八日から同年二月二十四日までの七日間、随員二人を連れまして訪韓いたしました。その訪問先及び面談相手は、国立墓地、
日本大使館及び板門店を除きましては、韓国の軍
関係のみで、朴大統領や李KCIA
部長などとは一切会っておりません。訪問先は、国防部、合同参謀本部、陸軍本部、首都警備司令部、第一軍司令部、第二軍司令部、陸軍行政学校、保安司令部、第三二師団司令部、第七師団司令部でございます。
塚本氏の昇任異動の件について申し上げます。塚本氏は
昭和四十六年八月十八日に陸上幕僚監部第二
部長に就任いたしました。そして、二年後の陸上自衛隊の定期異動でございます
昭和四十八年七月一日付で、他の多くの幹部とともに異動いたしておりまして、通信学校長として転出したものでございます。金大中事件との関連は全くないものでございます。
次に、元自衛官二名に対する肩たたきの件について申し上げます。
上田議員御指摘の肩たたきとは退職を勧告する
意味だと思いますが、御指摘の元三等陸佐につきましては、塚本氏は陸幕第二
部長当時の部下でございますので面識はございました。しかしながら、当時東部方面隊に所属しておりました元二等陸曹については名前すら聞いたことがないと申しております。通常、第二
部長が停年前の部下に対しまして退職を勧告する場合は一佐に限られております。三佐あるいは二曹という者に対して行うことはございません。まして、金大中事件に加担してもいない両名に対して、加担させることを目的に塚本氏が退職を勧告したなどということは事実に反しております。また両名も、塚本氏から退職を勧告されたことなどは全然ないと述べております。
次に、自衛隊ヘリコプターの関与について申し上げます。
調査の結果、そのような事実は全くございません。自衛隊が使用する航空機につきましては、法令により自衛隊の隊務に沿って使用及び搭乗の要領、運航する場合の手順が明確に定められております。たとえ一機の航空機を飛行させる場合にも、その目的のために多くの
関係者が関与をいたしております。したがって、自衛隊の航空機が隊務と無
関係な飛行を行うというようなことは全くありません。それに、だれにも知られずにそのような飛行を行うというようなことは全く不可能でございます。また、去る三月二十九日の参議院
予算委員会におきまして、
上田議員の
質問に対して
警察庁警備局長も、当時捜査したところによると、自衛隊機という事実は出てきておりませんと
答弁いたしております。
次に、自衛隊には秘密情報部隊JCIAが存在するのではないかということについて申し上げます。
防衛庁の情報活動を組織の面から見ますと、内局の防衛局におきまして情報業務の総合調整、政策立案及び防衛の基本等に関する国内、国外情報の収集、整理を行っております。統幕二室におきまして統合防衛のための情報の収集、整理を行い、陸海空自衛隊におきましては、それぞれ幕僚長のもとに陸幕では第二部、海幕では調査部、空幕では防衛部が各自衛隊の防衛及び警備に必要な情報の収集、整理を行って、
長官を補佐いたしております。このほか、部隊といたしましては、公刊
資料を中心に各自衛隊が必要とする情報を収集、整理する陸海空の
資料隊がございます。また、自衛隊に対します外部からの働きかけから自衛隊を防護するため、陸海空の調査隊がございます。さらに、軍事に関する通信情報を取り扱う陸幕二部別室等がございます。しかし、陸幕に二部別班という組織は存在しておりません。
防衛庁の情報活動――