○
秦豊君 私は、
日本社会党、
公明党、
日本共産党を代表して、ただいま
議題となりました
沖繩県の
区域内の
駐留軍用地等に関する
特別措置法案に対する
修正案について、その
提案の
理由を
説明いたしたいと存じます。
まず、その
理由について若干述べておきたいと思います。
沖繩県の
区域内の
駐留軍用地等に関する
特別措置法案の全部を、「
沖繩県の
区域内における
位置境界不明地域内の
土地の
位置境界及び
地籍の
明確化に関する
特別措置法」として
修正をする
理由は、まず、附則第六項の
期間延長は、われわれ三党としては絶対に容認し得るものではないので、これは削除をし、その他の部分についても、
提案者みずからが認めているように、不完全かつ不徹底なものであり、したがってこれらを全面的に
修正して、
位置境界不明土地の
地籍等を
明確化する
措置を実施することにより、
沖繩県民の生活と権利の向上を
目的として、新たに制定しようとするものであります。
以上が、
日本社会党、
公明党、
日本共産党の野党三党が新たに
修正案を
提案いたした
理由であります。
私
たち日本社会党、
公明党、
日本共産党の三党は、何よりも次の三点を強調したいと思います。
第一には、
沖繩県の
区域内の
駐留軍用地等に関する
特別措置法案は、まず、
衆議院におきまして、御高承のとおり、
内閣委員会、さらには本
会議等、いずれの場合におきましても、
政府が、
与党・
自民党を初め、
民社党、
新自由クラブ等と結託をして進めた、あの許されざる
強行採決という暴挙の所産であることを、まずもってあなた方は銘記すべきでありましょう。(
拍手)
また、本
院内閣委員会におきましても、去る十二日以来、延々として七日、開かれた
理事会あるいは
理事懇談会だけでも前後実に三十四回、十四時間にも及んだわけでありますけれども、
与党・
自民党は、われわれ三党の一貫した要求である円満な
審議、
慎重審議を強引に退け、
与党を含めた全
党合意のルールをさえ次々と理不尽に
無視じゅうりんをして、ついには昨十七日午後二時三十八分
質疑の打ち切りをさえ強行いたしました。しかも、この間、
増原恵吉内閣委員長は、ひたすらに困惑、ろうばいして、常になすところを知らず、ただおろおろと、論旨不明、意味あいまい、しばしばその
発言を二転三転訂正するなど、
常任委員長としての権威と見識と備えるべき水準は果たしていずくにありやを疑わしめたことは、すでにして公知の、また周知の事実ではありませんか。(
拍手)
しかも加えて、本来ならば、あの
増原委員長の傍らにあって終始冷静かつ的確、厳正に補佐の任に当たるべき二名の
与党理事の方々が、この
委員長にまさるとも劣らず、まさに「類は友」のたぐいであり、まことにもって、兄たりがたく、また弟たりがたし、そのうろうろとうろたえた情けないありようが、
事態全般の混迷と停滞に拍車をかけたことは、お二人の御本人たちといえども、よも否定はなさりますまい。
本年まさに七十四歳、
増原恵吉内閣委員長、
与党の国会
対策にその老いの鼻面を引き回されたあのおぼつかなさは、ある意味では、なるほど悲壮でもあり、痛々しいまでの情景と言わねばなりませんけれども、しかしながら、この七日間を通じたあなた方
与党内部のあの見るにたえない幾多の混乱ぶりは、わが議会史上、けだし珍重と憫笑に値するものと言わざるを得ません。
次に、法的な
内容に入っていきたいと存じます。
沖繩県の
区域内の
駐留軍用地等に関する
特別措置法のいわゆる附則第六項の問題であります。この附則第六項は、
沖繩における
公用地等の
暫定使用に関する
法律、いわゆる公用地法第二条の第一項が定めております米軍、自衛隊等の
土地の
暫定使用期間たる五カ年を十カ年と改正すべく
規定をしております。問題はまさにここに存します。すなわち、いまから五年前に成立をしました公用地法は、五カ年の
期限を限りまして米軍と自衛隊等に
土地の暫定的な
使用権原を付与したものであります。そして、その付与された
使用権原は、まさに本年の五月十四日をもって終了したことも、
法制局長官すら認めざるを得ない厳々乎たる事実であります。したがって、現在なお
沖繩の米軍、自衛隊は、任意の賃貸借契約を拒否しておりますいわゆる反戦地主会の皆さんの
土地を、言ってみれば不法に占有、
使用している
状態にあることもまた自明のことでありましょう。
ところで、いま申し上げましたこの公用地法第二条の第一項が定める
期限がすでに切れてしまっているいま、果たして公用地法の当該
規定を改正することなどは許されることでありましょうか。
政府・
自民党などのグループは、有効にこれは改正ができる、つまり、一たん死んだがまた生き返る、一たん切れたがつながっていく、こういうことを強弁しております。また、現にその主たる論拠を、公用地法がその形式上完全な意味での限時法、いわゆる時限立法として
規定されていないことにあなた方の論拠を求めております。しかし、私
たち日本社会党、また
公明党、
日本共産党の野党三党は、このようなあなた方の強引な
法解釈には断然承服を与えることができません。
そもそもこの公用地法は、その表題が示しておりますように、
暫定使用権原、これを定めることが
目的でありますし、したがって、法文もいわゆる簡潔な法三章、わずか五カ条で構成されているにすぎない、きわめて簡潔な表現となっております。そして、その法文を皆さんに検討をしていただければ明らかでありますが、その中核的な
規定はどこにあるか。ただ一点であります。明らかに同法の第二条が定めております、米軍と自衛隊等の五カ年間を限った
土地の
暫定使用権原を付与する、まさにポイントはその一点であります。そこで、同法の第四条を除きます他の部分は、他の
規定は、この第二条の
規定をいわば補うだけの、補完する形式的な条項にすぎません。さらに、同法第四条は、
使用権原消滅の後に、その
土地の正当な権利者に対しては原状に復する、いわゆるもとの
状態に回復をして返還すべきことを定めている当然の
規定でありますから、どこから見ましても、この公用地法は、第四条を除きましては、明らかに、どなたがどのように強弁をなさろうとも、本年の五月十四日をもって完全に失効、消滅したものと解するのがむしろ当然ではありませんか。
このように、公用地法が実質的な限時法としての性格を持つものである以上、申し上げましたように、五月十四日を経過した後からその
暫定使用権原を定める
規定それ自体を改めるということは、明らかに無理があります。歪曲であります。それはちょうど、形式的には問題のない、いわば完全な限時法の有効
期間経過の後にそれの改正が考えられないのと全く同じ法理に立脚をしております。同じ法理ではないかと思います。さすれば、本日はまさに一九七七年五月十八日、すなわち五年前から施行されました公用地法の
暫定使用権原を定める
期間が切れてから、やがてほどなく四日目を終わろうとしています。そうだといたしますれば、公用地法の第二条第一項を改正することを定めるあなた方
自民党グループの
沖繩駐留軍用地等特別措置法の附則第六項は、もはや
審議、採択される対象ともなり得ないものと、私ども三党はひとしく考えております。しかるに、これを本院がいまなお正当な
手続を踏んで送付されてきた
法案として扱うならば、それはまさに重大な違法、不当をあえて犯したと後世のそしりを受けたとしても、やむを得ないところであろうと考えます。私は、また私ども三党は、申し上げましたような
根拠に立ちまして、この附則第六項がここに
審議、
採決の対象となることに断固として
反対をし、強くその削除を要求するものであります。もしも
政府が、今後とも
使用権原を欲する、
有効性の存続を求めるというのであれば、それは改めて別の
法律、新法を新しく制定すべく直ちに
法案を準備するのが、どこから見ても公明な、フェアな、正しい立法
手続のありようであることも、同時に強く申し述べておきたいと存じます。
ところで、世上、公用地法の
期限切れ後の
事態につきまして、ニュース用語として「法的空白
期間」などという言葉が盛んに使われているわけでありますが、この法的空白
期間などという言葉は、一体、ためにする不当な表現ではないでしょうか。だれの立場に立った言葉なのか。なぜならば、公用地法は、私が壇上から申し上げましたように、本年の五月十四日をもってその中核的な
規定が失効、消滅をして、後はただ
政府の側に本来の権利者たる反戦地主に対し遅滞なく
土地を返還する
義務のみが残っている、これが正当な解釈でなければならないと思います。この点について、
沖繩の反戦地主に対する遅滞なき返還の
措置を無視して、その行政上の任務に反した
政府、とりわけ三原長官率いる防衛庁
関係機関の五月十五日以降における
措置は厳しく糾弾されねばならないと思います。
政府・
自民党及び
民社党、新自由クラブは、こうした法理上の正論をあえて無視、歪曲をして、何が何でも、しゃにむに公用地法の延長を図ろうとしていますけれども、ここにこそ、是が非でも駐留軍特措法を成立させようとする
政府・
与党らの本音が、本当の意図が隠されていると言わざるを得ません。
地籍の
明確化は、あなた方
政府・
与党グループにとっては、その意味ではまさに「イチジクの葉」にすぎないとさえ私には思われます。
そもそもこの公用地法は、本来ならば憲法第十四条、さらに続いて憲法二十九条、さらには憲法三十一条に反するものであります。六年前の
法案審議の際には、きょうの立場とはまさに百八十度違いまして、公用地法に対する断固たる
反対を表明された
民社党小平議員による
衆議院本
会議での代表討論の何カ所かを若干引用するだけでも、その違憲性は明白になると思います。
民社党の小平議員の討論部分を引用さしていただきたいと思う。
まず、
沖繩返還協定自体に触れまして、
民社党の小平議員は、次のように述べておられます。——
沖繩返還協定は核抜きが不明確であるばかりでなく、基地の整理、縮小についてもそのスケジュール自体が明らかでないこと、また、本土法のワクを飛び越えて、ボイス・オブ・アメリカ、VOAが存続すること等、まことに重大な問題をはらんでおり、決して言われるごとき本土並みとは言えない
内容であることは、これまでの本院の
審議を通じて明らかであります、と、まず全体的な認識と立場を述べられた後、
沖繩の軍事基地群と
沖繩経済との
関連につきましては次のような表現をとっておられます。——
沖繩県にとって最大の問題点は、まさに軍事基地でありましょう。たとえば嘉手納村においては全面積の八〇%、コザ市では七〇%、浦添市では八〇%以上が米軍基地として接収されているごとく、
沖繩本島だけを取り上げてみても全体の実に二三%という膨大な面積の返還、この膨大な面積の返還なくして何の
沖繩開発ということができ得ましょう——このような表現で、まことに的確かつ正しい把握を展開されております。
民社党の小平氏は、その討論の締めくくりの部分におきまして、問題の公用地法を鋭く論難されております。いわく——この
法律案については、すでに本院の本
会議並びに
沖繩・北方問題特別
委員会の
審議の全体を通じて、その憲法違反、違憲性が明らかにされ、その意味ではまさに史上類例のない悪法としての
内容が究明されたところであります。そもそも、同
法案は、
沖繩返還協定と不可分一体の性格を持っており、特に、本土では地位協定の実施に伴う
土地等に関する特別法によって、強制収用が六カ月間に限定されているにもかかわらず、今回の
沖繩法案では、これが実におよそ十倍にも当たる五カ年間に延長されています。
〔
議長退席、副
議長着席〕
また、本土法では決して認められてはいない自衛隊の基地についてまで強制
使用の対象を拡大すること、さらに、道路、水道、電気事業などの純粋な公共用地についても、これとは全く異質の軍用地を抱き合わせると、こういう形で、本土
土地関係法の体系を混乱に陥れるものであり、断じて容認できないゆえんであります。このことは、やがては本土法の改悪、変質にまで及ぶおそれがきわめて大きいこと、しかも、この
法案に基づく
土地利用の
前提となるべき
沖繩県の
地籍調査が、アメリカ
政府との話し合いで行うことができたにもかかわらず、いままでそれを全く放置し、さらに今後の
地籍調査
計画自体も明らかにされてはいません。要するに、この
法律案は、どの見地、どの角度から見ましても、悪法の典型と言うほかはなく、先ほども私が指摘したごとく、きわめて違憲性の高いものであり、
民社党として決して容認できないところであります一このように、お聞きのように、実に明快に
民社党はこの法の本質を喝破されております。
自来、五年有半、ひとしく政治家たる者、公党のありようについて思いをひそめないわけにはまいりません。
さて、さらに論旨を進めたいと存じます。
沖繩駐留軍用地等に関する
特別措置法、これでありますが、これは、
沖繩県民の強い要求であります
地籍問題の解決、この観点から申しましても、抽象的かつ不十分なものにすぎません。そう言わざるを得ないからです。当初の
政府原案が、できもせず、またやる気もない、まあ言ってみれば及び腰で
地籍の問題を取り上げたものである以上、その本質を隠しおおせるものではありますまい。そのことは、
法律上及び事業を実施する上での国の
責任を不明確にしております。明らかではありません。表現が、
規定があいまいになっています。つまり、軍用地は防衛施設庁、軍用地以外は
沖繩開発庁にと、所管を全く異にしています。こればかりではありません。境界確定の方法が、とても
現実的でない、実効性を持ち得ないものでありまして、
土地境界の
明確化に関して、協議それから確認が得られない場合の
措置が全く講じられてはおりません。これは重大な欠落と言うべきかと思います。
さらに問題点を、不十分な点を追及してみますと、
地籍の
明確化を促進するための補償、それから権利の調整を定める
規定、こういう肝心なところもなぜか欠落をしております。また、
沖繩開発庁設置法の附則第三条によりますと、この種の事務は
沖繩総合事務局に委任ができるように定めているのに対しまして、この
自民党グループの
駐留軍用地等特別措置法案では、
沖繩県知事に対して事務委任を定めているなど、言ってみれば、立法上の
措置としては一貫した立場をとっておりません。
以上申し上げました欠陥はほんの一例であります。これを詳しく、逐条
審議的に詳細な欠陥や不備をあげつらえば、それこそ枚挙にいとまがありません。このような欠陥と不備につきましては、
政府原案に対する
修正案を
衆議院で提出をし、本院でも先ほどまで
内閣委員会で答弁に当たられていました自由民主党の木野晴夫議員でさえ、本
院内閣委員会の席上で、わが党矢田部委員の
質問に対して、みずから認めているわけですから、まさに何をか言わんやであります。
沖繩の
地籍がこのように混乱をしている、不明確であるということの最大の原因は、申すまでもなく、あの忌まわしい第二次世界大戦、太平洋戦争におきまして、
沖繩が最後の決戦場、戦場と化して徹底的に荒廃し、公簿、公図がほとんど全く消滅したことに源を発しております。さらには、その敗戦を契機として上陸をしました占領米軍による強引非道な基地群の建設によりまして、戦禍に加えて徹底的に地形が改変されたことが今日の
沖繩問題の
地籍混乱を生み出していることは、何人も否定はできますまい。戦後、
沖繩の人々は、このアメリカ占領軍による強奪とも言える
土地の取り上げによって、本土のわれわれでは実感ができないような、本土ではとうてい想像もできないような深刻な苦悩を味わってこられました。こうした
沖繩県民の苦しみに対して、
政府・
自民党グループの原案は、正面から誠意をもってこれを受けとめた本格的で真摯な対応とはとても思われません。
以上の諸点からいたしまして、この無
責任かつ不徹底な、
沖繩県の
区域内の
駐留軍用地等に関する
特別措置法の全文を削除することが、むしろ
沖繩県民並びに広範な
国民の要求に合致をするゆえんであると、私ども三党は深く確信をいたしております。
これに対して、私たち、
日本社会党、
公明党、
日本共産党の三党が先ほど
提案をしております、
沖繩県の
区域内における
位置境界不明地域内の
土地の
位置境界及び
地籍の
明確化に関する
特別措置法案は、まさに
沖繩の
地籍不明と混乱に堂々と対処をし、これを解決するための最良かつ最も有効な
法案であると確信を抱いております。
社会党、
公明党、
日本共産党三党の
修正案は、事業の
責任者を、あなた方の案とは違っていまして、
沖繩開発庁長官一人にしぼって、
地籍明確化作業における国の
責任というものを明らかにしております。それから、国の事業
計画の策定にかかわる責務、
責任、権限をも同時に明らかにしていること。さらに、開発庁長官に対しまして
位置境界の決定権——これが肝心かと思われますけれども、紛争の伴いがちなこういうケースに対しまして、開発庁長官に何の権限もないということは、それ自体が重大な欠陥であります。そこで、われわれ三党としましては、開発庁長官に
位置境界の決定権を付与するとともに、さらに民主的な配慮をいたしまして、聴聞、
異議の申し立て、訴訟などのさまざまな民主的な当然の
手続をも定めたことなどを基本にいたしております。
つまり、以上羅列をいたしましたポイントを集約いたしてみますと、先ほど指摘をし、論難をした
自民党グループ案の欠陥、不備は、われわれ三党案によって完全に補い得られております。また、何よりもわれわれの三党案は、国の怠慢と無策に抵抗をして、戦後一貫して
地籍問題に取り組んで苦闘を続けてこられた
沖繩県側の要望や意見を、ほぼ完全に反映している
内容となっております。まあこれほどまでに民主的で行き届いて、また運営としての実効性と、さらには説得性を持った
法案がまたとあり得ましょうか。(
拍手)
以上が私たち三党
修正案のほんの要点でありますけれども、最後に、返還
土地の原状回復や、地主が利用し得る時点までの補償、この補償などにつきましては別途に
政府として
措置をする必要があること、補償問題であります。それから、本
法案成立の際には、憲法第九十五条にいう
住民投票に付すべきものであるという考えをもあわせて三党の意見として、あえてこの議場において表明をしておきたいと存じます。
以上で、
日本社会党、
公明党、
日本共産党、三党
提案に係ります
修正案の
提案理由説明の部分を一応終えたいと思いますけれども、この際改めて、
政府・
与党グループが、なぜにまたかくも公用地
法案の強行に執着をしている最大の
理由と
目的、あるいは背景等について一言しないわけにはまいりません。
政府・
与党グループの最大の
理由とねらいは、公用地法の強行によって、
沖繩県の基地を、あなた方の感覚では安定的に
使用し、いわゆる対米
責任を全うして、アメリカのアジア戦略に一〇〇%貢献をし追随することがあなた方の何よりの眼目であることはすでに明白ではありませんか。私ども三党は、その共通の立場を踏まえ直して、この際改めて、
沖繩基地群の機能と実態、作戦戦略、あるいは役割り等についてあとう限り見直し、再検討を詰めておきたいと思います。
まず、現在の
沖繩基地でありますが、これは高度に完成をされた総合機能を持った、ほとんど完璧に近い第一級の複合基地群であると思います。たとえば、全面核戦争から通常型戦闘、限定戦、局地戦闘、ゲリラ戦など、一切の戦闘機能を完備しております。つまり、核攻撃と核攻撃に対する報復、出撃待機、あるいは進攻基地、前線兵たん基地、心理出撃待機、あるいは謀略通信情報基地、あるいは対空、対潜哨戒、さらに訓練など、つまり
沖繩の米軍基地群にとってはあらゆることが可能であります。そうした意味で、私ども三党は、現在展開されている
沖繩県の米軍基地、あるいは米軍基地群を指して、高度の総合機能を持った第一級の軍事基地であると
断定をいたしております。
去る五月一日現在の資料でございますが、現在の
沖繩県における軍用地面積は、米軍と自衛隊で八十二の施設、総面積二億六千六百三十万平方メートル、うち米軍
関係が五十三施設、二億六千二百九十三万平方メートル、このただいま挙げました数字は、全国の米軍基地との比率では実に五五%、さらに
沖繩本島の面積では二〇%を占有しております。特に強調いたしたいことば、いわゆるマリーン、海兵隊を頂点にした基地機能の急速な強化が目立っております。カーター政権が、言われている在韓米軍のうちで、陸軍第二歩兵師団、あるいは原子砲、オネストジョンを中心にした春川配備の第四、ミサイル部隊の撤退をすでに打ち出してからその
方針が目立っています。海兵隊は緊急出撃、打撃部隊、いわゆるストライクコマンドとして編成配備されていまして、最も訓練の行き届いた第三海兵師団であり、水陸両用部隊として絶えず戦闘配備についています。第一海兵航空団をも加えまして、水陸両用でもあり、空戦の能力をも兼ねた、いわば、これまた総合機能を持った最新鋭の師団であり、兵力総数は一万八千五百人にも達しております。特に、このうちの一個大隊はヘリ空母「オキナワ」らとともに第七艦隊に組み込まれていまして、常に洋上待機をしています。したがって、プエブロ号
事件、あるいはカンボジア
事件、あるいはベトナム戦争等々、一連の実戦においてはそのような洋上待機部隊、すなわちストライクコマンドが目覚ましい活躍を示したこともすでに事実であります。
そうして、たとえば昨年の八月に発生をしました板門店
事件での対応を見ると明らかであります。板門店
事件が発生をするや否や、まず、
沖繩県嘉手納基地のアメリカ第五空軍第三一三航空師団所属のF4ファントム戦闘爆撃機一個中隊、さらに兵員四百四十名が韓国の群山基地に展開をしております。この部隊は、御存じのように、伊江島で模擬核爆弾の訓練を日常的に展開をしている部隊であります。この戦闘爆撃機部隊に続いて、先ほど申し上げました洋上待機中のマリーン一個大隊、さらに山口県岩国基地からは第一海兵航空師団の垂直上昇機AV8ハリア、さらにグアム島基地からはB52戦略爆撃機が韓国の上空にデモンストレーションを展開したことなどを見ましても、前進基地であり、あるいは核攻撃基地としての
沖繩の機能の一端がうかがえようかと思います。
一般に、この
沖繩基地のことを指しましてキーストーン論が言われておりますけれども、アメリカの世界戦略、とりわけアジア戦略の観点から見ますれば、
沖繩だけではなくて、日本全体が、四つの島が、列島全体が、まさにキーストーンそのものであり、まことに寛大な日本
政府の存在に助けられて、実に伸びやかな自由出撃がいつでも可能な、文字どおりの聖域であることは言うまでもありますまい。その中で、
沖繩基地群こそが、その中でも最も完璧な、いわゆるストロングポイントであることば見逃せない点であると思います。日米安保条約は当然のこととしまして、
沖繩の基地群は、日米安保条約は当然としまして、アメリカと台湾、米台相互防衛条約、米韓相互防衛条約、アメリカとフィリピン、つまり米比相互防衛条約、さらにはオーストラリア、ニュージーランド及びアメリカ合衆国の間の三国安保条約、いわゆるANZUS条約のいずれもの
適用地域にすっぽりと入っています。このことは、きわめて
沖繩の戦略的な地位を考える上で重大かと思われます。あらゆる複合的な軍事同盟の
適用地域に入っている。深々と絡み合っている。こういう
現実を見れば、
沖繩がキーストーン、かなめ石であり、さらにはアメリカの世界戦略の展開において、本当の意味の巨大な結節点、節目、結び合わされた節目である、文字どおりのかなめ石だということが実感できると思います。
さらに私どもは指摘しなければなりませんのは、以上申し上げました条約によってアメリカが負っている国際的な
義務というものを迅速かつ
効果的に遂行をするためにこそ
沖繩基地群があると、こういう点であります。しかも、すでに一九六九年十一月二十一日、佐藤・ニクソン共同声明によりまして、当時のジョンソン国務次官の、いわゆる特派員グループに対する背景
説明によりますと、佐藤総理大臣は、韓国が武力攻撃を受けた場合、日本からの米軍出撃や日本への核持ち込みについては積極的かつ迅速にわれわれの要請にこたえることを裏づけた、こういう背景
説明をジョンソン国務次官はいたしております。当時、われわれはこのことをとらえまして、 このことは「日米安保の
沖繩化」とし、あるいは米軍による平時における包括的な
自由使用の権利、また、際の自由発進、核持ち込みの了承というふうに批判を加えたわけでありますが、それ以後の日本
政府側の歩みはますますもってこのことを裏づけております。
さらに、去る三月二十三日の
福田赳夫及びジミー・カーターの福田・カーター日米共同声明の第五項によりますと、アメリカ大統領は、アメリカが西太平洋において均衡がとれ、かつ、柔軟な軍事的存在を
維持する意向であり、日本国の
福田総理は、アメリカ大統領のかかる意向を歓迎し、日本がこの地域、つまり西太平洋の安定のために一層の貢献を行う旨表明した、とあります。この
福田総理の言う「一層の貢献」と申しますのは、
沖繩基地群をその重要な拠点としたシーレーン、いわゆる海域分担のうち南西航路帯の哨戒
警備は、近い将来防衛庁が恐らくはつなぎ導入するであろう悪名高いロッキードエアクラフト製作P3Cが
沖繩基地に配備され、岩国のアメリカ軍P3Bが主として日本海方面を担当し、
沖繩に配備されている現用のP2J九機と新たに購入されるP3Cとが南西列局、バシー海峡以北をという、いわゆる防衛分担にまで突き進むことはいまから確たる予見を持てようかと思います。
さらに申し上げたいことは、
沖繩の地理的な条件、これは、たとえば那覇−ソウル一千六百キロメートル、上海までわずかに八百キロメートル、東京−那覇一千六百キロ等の地理的な条件そのものが
沖繩の戦略的な価値を大きくしていることも一つの側面であろうと思います。
内閣委員会の
審議におきまして、しばしばわれわれ野党三党が追及をしました次の論点、つまり在韓米軍の撤退と
沖繩基地群との
関連にもまた触れないわけにはまいりません。在韓米軍の撤退は何よりも第一義的には
沖繩基地の
効果的な再編強化を招き寄せると思います。すでに海兵隊部隊を中心にした組織の強化はスタートを切っているわけでありますが、特に空軍と海軍を主体として、日本の自衛隊を組み込んだ形での、いわゆるわれわれの用語に言う米日韓軍事ネットワークは急速に強化されると見なければなりますまいし、それから、
沖繩がその日米韓三国軍事ネットワークのキーステーションとしての中枢を占め続けることも明らかであると思います。
元来、アメリカ国防総省の軍事地図では、日本と韓国は単に空域あるいは防空識別圏のみならず、日本と韓国は一つの軍事的な地域、エリア、つまり作戦地域として表現されております。ワシントンのペンタゴンの感覚から見れば、東京とソウルはワンセットの作戦地域にすぎません。最近、米日韓三国軍事体制の強化を象徴する具体的な演習が行われています。
福田総理が、あの特徴のある小さな肩を揺すり揺すりワシントンを訪問していましたあの日米首脳会談と
期間を同じゅうしまして、三月中旬から四月中旬にかけまして、アメリカ太平洋軍が、「チームスピリットII」、こう呼ぶ最大規模の演習を西太平洋の全域で展開をしました。恐らく防衛庁も御存じのとおりかと思います。このチームスピリットIIという演習は、横須賀を母港にしております空母「ミッドウェー」がまず日本海に入った、そうして、アメリカ本土からの長距離の兵員・
武器展開作戦に続いて、四月一日から四月十日は、韓国東海岸の例のコンビナート、浦項近郊でのアメリカ・韓国合同の敵前上陸演習が行われました。この敵前上陸演習には、
沖繩基地からは第一海兵航空師団の飛行機、さらに岩国基地からはA4Mあるいはハリアなど、同基地のほとんど全機、これが出動、さらに第七艦隊は、空母「ミッドウェー」など十隻、さらに航空自衛隊第七航空団百里基地の第三〇飛行隊の某幹部が空対空戦用法の検討、打ち合わせと称して、それを名目としてF4Jで岩国基地に入っています。こうした大規模な演習は、昨年の十一月、さらには今年の一月七日にも行われました「コープダイヤモンド作戦」、つまり朝鮮半島からの敵機侵攻を想定しましたアメリカ第七艦隊と在
沖繩アメリカ空軍、
沖繩配備及び百里、新田原所属の航空自衛隊、韓国の陸海空軍の合同訓練であったことは明らかであります。私がいま申し上げておりますような演習は、明らかに在緯アメリカ地上軍の漸滅
方針を見据えた軍事的なデモンストレーションであると、こう思うわけです。こうした演習を朴正煕大統領が視察をし、さらに東京ではそれより少しおくれて、四月十八日に有事作戦大綱を決めるための日米防衛
協力小
委員会が開催され、いよいよ具体的なアメリカ・日本・韓国三国軍事体制の実態的な検討が、指揮命令系統、情報、後方支援などの各部門ですでにスタートを切っております。
さらに、私どもは
沖繩基地を考える場合には、
沖繩における核配備について申し上げないわけにはまいりません。一九七一年六月、アメリカの国防総省と国務省がホワイトハウスに対しまして、
沖繩に配備している数百発の戦術用核弾頭を韓国、台湾、グアム、フィリピン、さらにはアメリカ本土等に移送することを
提案したことは、これは事実であります。
さらに、五年前の施政権返還に当たりまして、いわゆる佐藤政権によって振りまかれたキャンペーンは、「核抜き本土並み」の一大言論攻勢であったことは御存じのとおりであります。しかし、私どもによれば、
沖繩に核が配備されているということは軍事常識であるということも申し上げておかなければなりません。
以上、
沖繩のいわゆる戦略背景、なぜ
政府・
与党がかくも
沖繩基地の安定
使用に狂奔するかという、いわば軍事的な観点からの議論を述べたわけでありますが、最後に、この閣僚席にはすでにいないけれども
福田総理、並びに三原防衛庁長官には格別に申し上げておきたいことがあります。
そもそも、
沖繩の基地問題の根源には、余りにも明白な国際法的な違法性が指摘されています。つまり、一九七二年五月十五日のいわゆる施政権返還の法的な側面について、いま一度思いをいたしてほしいと思います。本来、施政権の返還とは軍事占領の終結を意味しており、軍事占領終結に当たっての最大の基準が原状回復の原則であることは国際法上すでに確定を見ております。また、軍事占領終結の後で、他国の領域に継続的な基地を建設し
使用することは、ハーグ陸戦法規においても認められてはありません。仮にこれを百歩譲るとしましても、
沖繩返還に際してアメリカがなすべき最低の
義務は、
沖繩県全域の一切の軍事基地と施設を撤去返還して原状を回復し、違法不当な
使用によって生じたすべての損害を補償することではなかったのか。特に米軍による継続
使用を認めなかった地主に対しては、何をおいてもまず返還すべきではなかったのか。また、日本
政府は
沖繩百万県民にかわってこのことをこそ堂々と要求をするのが、主権者たる
国民から負託され、憲法に基づいて国政を行ってきたものの当然の
義務ではなかったのか。
ところが、日本
政府はこの当然の
義務を怠ったのみか、
沖繩返還協定の第四条によって、正当な請求権を無原則に放置した上、さらに憲法違反の疑い濃い、
沖繩における
公用地等の
暫定使用に関する
法律によって、米軍はおろか、新たに配備された自衛隊が強制的に用地を取得できる道をさえ開いたではありませんか。日ごろ法の遵守を説いてやまない日本
政府が、何ゆえに
沖繩に対してのみ
土地収用法に定められた収用
手続をさえ無視した乱暴な
措置を強行したのか。用地の
暫定使用が五年という異例の長さとともに、断じて許さるべきではありますまい。しかもまた、今回
自民党などいわゆる三党案の
採決によって、新たな不法と不当に、改めて道を開こうとしているではないか。ここにはいないが
福田総理、そしてその席にいる憂わしげな三原防衛庁長官、あなた方は、きょうというこの日をこそ、あなた方の強行しようとする政治的な選択の重大さをかみしめ、そうして鋭い自省を加えるべきだと私は言いたい。
改めて私は申し上げたい。
沖繩問題とは基地問題である。真の
沖繩問題解決のためには、軍事基地を正面から見据えた抜本的な対応以外にはあり得ないことを、防衛庁長官を初め、全閣僚は厳しく銘記すべきだと思う。
沖繩現地の人々が一体どのような複雑な思いでこの本院におけるあの
審議を見詰めていたことか、行政の衝に当たる
福田総理を初め、全閣僚の深甚な反省と決意を促し、私の
発言を終わりたいと思います。(
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