○片山甚市君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
雇用保険法等の一部を
改正する
法律案に対し、
福田総理及び石田労働大臣に御
質問をいたします。
まず、
福田総理にお尋ねいたしますが、あなたは
昭和四十九年、「保守革命に賭ける」という著書の序文で、「情なくして政立たず」として、「
インフレはどうなっていくのか、
経済の先行きはどうか、
国民の間には、不安感がみなぎっている。
インフレで得をした人と損をした人との格差の拡大、それに伴って広い階層の間には不満感が高まっている。こうした中で、政治はいったい何をしているのだ、という不信感も増大しつつある」と言われていますが、これは、
福田内閣が誕生して四カ月たったいま、政治不信は続き、世論調査に見られる
福田内閣の
支持率の低さは、
昭和四十九年当時の田中
内閣と変わらない状態ではありませんか。それでは、「
経済の
福田」とみずからを宣伝するのはやめるべきだと思いますが、いかがでございましょう。
戦後三十年にわたる保守党
政府が、金権腐敗の政治権力構造のもとに、高度
経済成長
政策をとり続けた結果が、
石油ショックを引き金に、
インフレ、
不況の同時進行ということであり、それは
福田総理の政治の歴史そのものではないでしょうか。
また、首相は、「今日の社会は、一口で言えば、金と物とエゴがまかり通るという風潮である。この風潮は、
高度成長下において、つくれ、使え、もうけろ、というあの流れの中から、かもし出されたものである」とも言っておられますが、
福田総理のよく言われる資源有限
時代とは、すなわち石油エネルギーの有限のことであって、原子力発電によるエネルギーを、
日本が核燃料再処理を行うことで確保するための世論操作に使われていないかと恐れるものであります。
福田総理は、資源有限
時代にあるとして、
昭和五十二
年度は六・七%の
経済成長率を達成することによって雇用確保など
国民の期待にこたえ得るとしておられますが、間違いなく実現すると言い切れますか。
こうした中で、五十二
年度予算は、
国民的要求を背景に、全
野党が一致してその修正を迫った結果、三千億円の
所得税減税と、
一般会計六百三十四億円の年金等の繰り上げ支給などによる原案修正の実現を見ましたが、
政府は、自民党だけで勝手に政治を進められなくなった今日の政治
情勢を謙虚に受けとめ、
予算編成の民主化、議会審議のあり方について、協調と連帯がにせものでない具体的な改善を図るべきであると思いますが、いかがですか。
さて、
昭和四十八年秋の
石油ショック以降、長期化した
不況、
インフレに対し、
政府は今日までの
景気対策では対処し切れない構造上の問題を抱えているにもかかわらず、輸出主導型、大
企業中心の公共投資という。パターンと、公共料金値上げや各種社会保険の
負担増などによって、勤労
国民は
生活水準は切り下げられ、このこともあって、消費意欲は冷え込み、中小零細
企業、農林水産業に従事する人々は、不
景気によって
生活が成り立たなくなっており、円高による為替差益を物価引き下げのために
政府は活用することなく、大
企業、大商社の含み資産、積立金となり、また、好調と言われる輸出関連業界では、円高
対策に決め手がなく、業界は倒産の
危機を訴えていますが、これが特徴的な
日本経済の
情勢ではありませんか。
政府は、速やかに具体的な克服策、すなわち、独占禁止法の
改正、公共料金の値上げを抑制し、産業用優先の不公平な料金体系を改め、内需中心の
景気対策を強め、住宅、下水道、公園、道路など、
生活基盤に関連する事業及び福祉中心の産業、
企業の育成を図り、地方
公共事業に対しては
財政資金を投入し、同時に、これら事業への雇用促進を図ること、大
企業に脅かされる
中小企業の長期安定的な発展を図る立法
措置や、さらに食糧の自給度向上により、農林水産事業
経営の安定を図るなど、総合的な
政策を示すべきであると考えますが、いかがですか。
以下、幾つかの問題についてお伺いいたします。
第一に、
政府は、
景気回復を促すためとして、公定歩合を一%引き下げ、これと連動して預貯金
金利をも引き下げることとしておりますが、これら一連の
金利引き下げ策は、
企業家心理を刺激できたとしても、
総理府統計による消費者物価指数は、
東京都区部における三月の対前年同月比九・三%であり、物価高はそのままで、勤労
国民にとってかけがえのない
生活資金である少額預貯金の
金利を引き下げることは、何としても納得できません。
お答え願いたいと存じます。
また、この
政府決定は、諮問を受けるべき
金利調整審議会などの答申内容を事前に拘束するという、きわめて無
責任で
国民不在の御都合主義な
対策と言えますが、いかがですか。
同時に、
公共事業の上期契約七三%の執行を閣議決定されたことについても、すでに関連業界では下期の息切れを警戒する
意見が出ており、構造的
インフレ、
不況を改善、克服しない限り、雇用保険法の一部
改正は、むしろ慢性化した失業を当然のこととして、安定
資金を
企業合理化の安全弁として使うことになりはしませんか。
第二には、今日までとり続けた高度成長
政策が、工業生産力及び年間資本輸出量においても、国際的には上位のいわゆる
日本企業株式会社にのし上がったのでありますが、一方では、構造
不況のもとで、負債一千万円以上の
企業の倒産は、三月においてついに史上最高の千七百件を超え、中小零細
企業ではさらに深刻な
状況にあると言われています。
本法
改正の
趣旨によれば、労働保険特別会計、雇用勘定からの繰り入れと四事業の剰余金及び事業主
負担による保険料率千分の〇・五%引き上げによって、積立
資金総額は約二千億円の
財源が確保されるとのことでありますが、一体、この額は、今日の
経済情勢からいって、どの程度の
景気変動を想定し、また、それに十分対応し得るものであるかどうか、お尋ねいたします。
なおかつ、この
措置によって失業あるいは雇用の不安が一掃されると
理解してよろしいのかどうか。いずれにせよ、
政府は、今後低成長
経済に移行しながら物価
対策と雇用
対策を両立させることがむずかしいというのであるならば、失業に対する予防策というような、こそくな手段を雇用
政策の柱とするのではなく、いかに積極的に雇用の機会を拡大し、安定した雇用を保障するかを考えるべきではありませんか。その具体策を承りたいと存じます。
第三には、労働者が失業した場合、
生活の安定を図るため必要な給付の延長を行うことは重要であります。しかし、その場合においても、再就職の促進はさらに重要であります。職業安定所の紹介強化が叫ばれていながら、求人の
条件は失業給付以下がほとんどであり、失業者の
生活困窮に乗じて低賃金構造を再編しようとするかの疑いを持たざるを得ないのであります。
一九六六年の国連、国際人権規約、一九六一年のヨーロッパ社会憲章とともに、ILOにおける
生活水準の向上と失業及び不完全就業の克服、完全工雇用を促進する積極的な
政策を目的とする宣言を先進諸国は批准しています。
ILOでは「すべての労働者に仕事を確保し、また、その能力に応じた仕事につくことができるようにする
措置を労使と十分協議し、とらなければならない」との雇用
政策に関する百二十二号条約を六四年に採択していますが、
経済大国と言われる
わが国は、直ちにこれらの条約を批准し、国が
責任を持って雇用の機会を保障すべきであると匂えますが、いかがでございますか。第四には、本年二月の
雇用保険法等の一部
改正に対する社会保障制度審議会の答申では、雇用改善等三事業を保険制度の中で行うことは問題をはらむところであり、雇用
政策全体の中での位置づけを明確にするよう要望されており、労働四団体も、制度が国際的にも貧困であると指摘し、大量解雇規制を初め、充実した制度の確立を要求しています。このことは、雇用保障制度の抜本的改善と
財政措置を含む国の
責任を明確にすることであります。また、雇用保険法成立に際し、本院社会労働委員会では、可及的速やかな完全、全面適用の実現し適用拡大部門における新規被保険者が受給資格を得ずに失業した場合にも、しかるべき救済
措置をとること、また、三事業については、労使の参加する管理
運営等、制度のあり方についても速やかに検討し、その具体化を図ること等の附帯決議が採択され、
政府もその
趣旨に沿って努力するとの確約をされたはずでありますが、これらについて、どのような
措置をおとりなさっておるか、お尋ねいたします。
雇用保険法の一部
改正が議論される前に、まず
政府の、これらについての誠意が示されるべきであります。
第五には、
政府は、
景気停滞の長期化と失業増大の傾向にもかかわらず、基調に変化はないと言い、第三次雇用
対策基本
計画による、
インフレなき完全雇用の達成は実現可能とされていますが、その前提となる
昭和五十年代前期
経済計画の
昭和五十一
年度報告では、すでに雇用面など
経済バランスの
回復がおくれていること、労働力の
需要面では、大
企業のホワイトカラー層を中心に
企業の過剰雇用があり、今後も
回復がおくれ、特に中高年齢層の雇用は著しく厳しくなり、労働力の高齢化は、再就職等、高年齢層の雇用問題が一層深刻化するであろうと指摘しています。
雇用安定事業等が、失業の予防のためとされている以上、これらが
企業の恣意による一方的な雇用調整に一切手をかすものでない保証をお示しください。
さらに、不測の
事態が生じた場合においても、たとえば再雇用の優先権付与など、ILOの使用者の発意による雇用の終了勧告等に見られる大量解雇規制
措置をとることに問題がありましょうか。解雇規制が
わが国の
企業の実情になじまないなどの御
答弁では、
政府は、単に
経営者の主張にくみし、勤労
国民を雇用不安に陥れるとのそしりを免れ得ないものと考えますが、いかがですか。
第六には、雇用安定事業を初め、四事業は、事業主への助成を中心としているだけに、運用については、監視とその公正を期するために、十分の上にも十分過ぎる配慮がなされるべきだと考えますが、いかがですか。
私は、民主的な管理運用のために、労使が参画する新たな機関の設置が必要であると考えますが、それもいかがでありましょうか。
最後に、雇用保険制度の
趣旨からいっても、大前提は、雇用の拡大と安定を図ることに連動しなければならないことは明らかであります。このことは、同時に、今日定着しつつある労働時間の短縮を制度的に実施することであります。
わが国が、今日までの低賃金、長時間労働による製品コストの切り下げで国際輸出競争をしのいできたことは、欧米諸国の非難の的になったことでも明らかであります。また、日進月歩の技術革新が労働
条件向上に向けられるどころか、労働密度は強まり、新たな職業病が生まれ、労働災害が多発するなど、国の労働
政策並びに行政指導上、このような
状況を放置し、見過ごすわけにはいかないと思います。
さらに、低賃金構造により、四百六十万人もの労働者が月七万円にも満たない低賃金で
生活をしています丁欧米諸国の最低賃金は、フランスでは平均賃金の七三・六%、アメリカでも四六%であるのに対し、
わが国の地域最低賃金では二三・四%でしかありません。