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国務大臣(
福田赳夫君)
工藤さんにお答え申し上げます。
まず、私は、議員の皆さんに、五十二年度
予算案が
参議院に回付になりましたその
壁頭において私が訪米するという仕儀になったことであります。これは私が
国会の
審議の
日程について見誤りをいたしたところでありまして、まことに申しわけない、心からおわびを申し上げます。
ただ、との
会談は、
カーター新
政権が発足いたしましてまだ間もないわけであります。そこで、
カーター政権の新
政策が四月ごろから続々と決められていく、その前に
わが国として
アメリカの
大統領と話し合う、また、特に
わが国の
立場を
アメリカの
大統領に申し上げておくということは、非常に重要なことである。そうしますと、この機会を除きますと、ちょっと時期がないんです。そういうことで、きょう出発さしていただきたいと思いますので、これはまげてひとつ御了承、御理解を願いたいと、か
ように存ずる次第でございます。
アメリカに参りましてどういうことを話すのかと、こう言いますと、これはもちろん二国間の問題です。
アメリカ大統領との間に
協力関係を誓い合うと、こういうことがあります。その他、二国間の関係といたしますると、
核燃料の再
処理の問題があるのです。これは後から申し上げまするけれども、
わが国としては強い
主張をしておかなければならぬ。その問題がありますが、その他、二国間では格別に大きな問題はございません。
問題は、私は、この
世界の
経済、
世界の
政治に対しまして
わが国がどういう
立場をとり、
アメリカがどういう
立場をとるか、との点につきまして話し合っておく必要があると、こういうふうに考えるのであります。
いま
世界は挙げて
不況の
状態である。ことに南の
国々がこれは
困窮——とにかく想像に絶するものがあるという
ような感じがするのであります。そうしますと、この
北側の
先進工業国がこれに
協力をする必要がある。ところが、その
北側の
国々もまた不安定な
状態だと、そういう中で、わずかに日、米、欧、この
三極があの
石油ショックからの立ち上がりの過程にあると、こういう
ような
状態であります。そうしますと、この日、米、欧の
三極の
責任というものは非常に大きいと思うのです。その中でも
工業力——アメリカ、次いで
日本というこの
両国が話し合うわけでありまするから、これは私は、
世界の
経済に対しまして非常に大きな意味合いを持つであろうと、こういうふうに思います。
それからもう
一つは、私がしばしば申し上げているんですが、世は
資源、
エネルギー有限時代に入っておる。まあこの五年、十年ぐらいの
展望を見てみますると、まあまあもつかもしれませんけれども、その先を考えてみると、非常にこれは窮屈な
状態になってきます。そういう
展望の中で
両国がどういう
協力をできるかということを話し合うことは、とれまた非常に重要な意味を持つと、こういうふうに思います。
それからまた、
政治の面におきましては、何としても
わが国は核については特殊な
立場にある。
核廃絶に向かっての
主張をし
ようと思うのです。
アメリカにおきましてもそういう
ような気持ちを持っておる。それをこれからどういうふうに具体化していくかということについて話し合ってみたい。まあ核ばかりじゃありません。
通常兵器について
もさように考えております。
それから、この
アジアの平和、これもまあ
アメリカから見ましても、また
日本から見ましても、重要な問題であります。ASEANの
国々をどう見るか、また、
ベトナム半島をどういうふうに見るか、また、
朝鮮半島をどういうふうに見るか、それらの問題について話し合ってみたいと、か
ように考えております。
そういう中で、
アメリカがわが
日本に非常に
期待しておりますのは、
日本の
経済。いま
日本は六・七%
成長という
目標を掲げておるわけでありまするが、それを
日本が本当にやってくれるんだろうかという
ような
期待と、あるいは不安を持っているかもしらぬ。この
目標、それから
国際収支の
目標、これは
ひとりわが国の問題じゃありません、だけの問題じゃない。
わが国は
わが国といたしまして、いま
不況のどん底だ、何としても、てこ入れをしなきゃならぬという
立場にありまするけれども、これは
世界が注視している問題なんです。特に
アメリカにおいても非常な
期待を持っておるだろうと、こういうふうに思いますので、これは何としても
達成しなければならない
目標であるというふうに考えており、また
達成できる、そういう確信を持っております。
それから、
わが国の
経済成長、それから特に
貿易の問題、これについて触れられましたが、ちょっと五十一年度は
黒字幅が多過ぎた
ように思うのでありまするが、
わが国の
景気がよくなる、そういうことになりますれば、これは自然、
輸出が鈍化し、
輸入がふえるということになってこの問題は解決される、さ
ように考えております。
それから、円、
マルクの問題でありまするが、円はこれは強い方がいいと私は思っているんですよ。つまり、
円相場というものは、
わが国の
経済に対する諸外国の見方の表現でもある。強い円になる
ように
経済を誘導するという必要があると、こういうふうに思いますが、これはいま為替は
浮動制をとっておるわけでありまするから、これに介入しない、乱高下がある場合にはこれに介入しますが、それ以外は介入しない、こういう
基本方針をとりたいと思います。
マルクは、これはドイツのことでありまするから、私が言及するのは妥当でない、か
ように考えております。
また、在
韓米軍の
撤退、これはしばしば申し上げておりまするとおり、これは基本的には
米韓の問題だ。しかし、
わが国としては、
朝鮮半島の平和、これには重大なる
関心を持っておるということを強く申し上げたいと思います。
人権問題。これは理論的には理解できる。私も
人権については強い
関心を持っております。しかし、これの具体的な適用につきましては慎重に対処しなければならないと、か
ように考えております。
使用済み燃料の問題。これは
わが国としては非常に重大な問題です。
わが国は
石油に依存している最もその
依存度の高い
先進工業国の
一つであります。そういう
立場の
わが国でありまするから、どうしても新しい
代替資源の
開発をしなければならぬ。それは核以外には当面はないんです。そういう
立場のわが
日本といたしますると、
アメリカの核拡散に対する懸念につきましてのこの理解、これは私はだれよりも高い懸念を持っておるわけであります。深刻にこの核拡散については考えております。しかし、
わが国の
立場、そういうことを考えますと、再
処理の問題だけは譲ることはできない問題である、か
ように考えます。
それから、OPPの問題に触れられましたが、これは
厚生大臣の諮問機関であるところの食品衛生調査会に諮問中であります。結論を待って対処いたしまするけれども、これは日米
会談の
議題ではございません。
それから、
ロッキード事件や日韓汚職なんかの問題につきまして、資料の提供をさらに求めよというお話でございまするけれども、これは順調にその資料の入手ができる
ような手はずになっておるわけであります。改めて申し上げるまでもないところでありまするけれども、なお、念のため注意を喚起するということにいたしたいと思います。
二百海里の
漁業専管水域問題につきましては、これは国連の動きを見まして対処したいという基本的な考え方で今日までやってまいりましたけれども、あるいは
アメリカにおきまして、あるいはソビエトにおきまして、あるいはEC諸国におきまして二百海里を打ち出しておる。そういうことになりますると、
わが国とすると、これはじんぜんと海洋法
会議の結果を待つという
ようなことで済まされない
ような
状態になってきておるのであります。私は、
わが国といたしましては、二百海里を
わが国も海洋法
会議の結果を待たず打ち出さなけりゃならぬかなという基本的な
認識を持っておるわけでありまするけれども、
わが国は海洋国家である、そして
世界の各水域におきまして漁業を行わなきゃならぬ、そういう
立場にあるわけであります。同時に、
わが国は、いまこの種の問題につきましては、中国とも、あるいは韓国とも安定した形で相互の漁業
操業が行われておるという
ような
状態にあるわけであります。そういう諸般の事情をよく考えてみなければなりませんから、
わが国が
わが国として二百海里水域の問題を打ち出す、これは、そのタイミング、内容につきましては慎重に配慮しますが、方向といたしましては、ただいま申し上げた
ようなことでまいりたいと、こういうふうに考えております。
十二海里の問題につきましては、これも海洋法
会議の成り行きを待っておったわけでございまするけれども、沿岸漁民の要望等がありまして、この要望にもこたえなけりゃならぬというふうに存じまして、十二海里を採用する、そのための国内立法につきましては、近く法案として皆さんの御
審議を煩わしたいと、か
ように考えておる次第でございます。
以上でございます。(
拍手)
〔
国務大臣坊秀男君
登壇、
拍手〕