○小山一平君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま説明のありました
地方税法の一部を
改正する
法律案、
地方交付税法の一部を
改正する
法律案並びに
昭和五十二年
度地方財政計画について
質問をいたします。
今日ほど
地方財政が深刻な危機に立っているときはないと思いますが、
地方自治は、
経済の
高度成長の時期にあっても、
税収の伸びが比較的順調であった
時代においても、三割自治と言われてきたことで明らかなように、
地方行
財政の仕組みは国に大きな権限と
財源を集中し、
地方団体は自立的基盤が弱体化されていたのであります。その構造のもとに深刻な不況とインフレが続くところとなったのでありますから、
地方財政は破局的危機に陥り、
地方自治の機能もまた危殆に瀕するのは当然のことであり、
地方財政危機を構造的危機と呼ぶゆえんでもございます。
もとより、
国民生活にかかわる万般の行政事務を直接に遂行し、処理をしているのは
地方団体でございます。それゆえに、
地方団体はその任務遂行に必要な
財源配分を強く求めるとともに、行
財政制度の
抜本的改革についても具体的な
提案を行っているのであります。
また、
日本社会党はかねてより、
地方財政の危機を打開し、住民福祉の向上を図るために多くの
提案をしてきたのでありますが、
政府は、これを受け入れて
政策の転換及び制度の改革を行って
地方団体の期待にこたえようとしないばかりか、いたずらに中央集権的行
財政構造を
強化し、零細な補助金や増大する
地方債のすみずみにまで、指導及び許可、認可の権限を通して支配と干渉を強め、
地方自治確立に逆行する姿勢をとり続けているのであります。
憲法第九十二条に、
地方公共団体の組織、
運営は
地方自治の本旨に基づくことを規定しているのは、旧憲法
時代の行政が中央集権的官僚行政の弊害を遺憾なく暴露したことにかんがみ、
地方分権の確立を
国家構造の基本に位置づけ、民主主義の
基礎を
地方自治に置くことを意図しているものであり、
地方自治の原点がここにあるのでありますが、
政府はこの憲法の精神を踏みにじっていることをここに強く指摘をいたしたいのであります。
まず、
総理に対し、憲法認識とその政治姿勢についてお尋ねをいたします。
福田総理は、
地方自治の本旨をどのように認識をされ、
地方自治の位置づけをどう
考えておられますか。また、新聞報道によれば、
総理は外国人記者との会見において、
参議院選挙で保革逆転することがあっても
総理をやめることはないと発言したと伝えておりますが、それが事実であるとすれば、民主主義のルールに基づく厳粛な選挙で示された
国民の意思と選択に対し挑戦する政治姿勢であり、
参議院を軽視するものであると思いますが、
総理の真意を明らかにしていただきたいのであります。
長期にわたる自民党
政権のもとにあっては、しばしば閣僚が憲法軽視の言動を行い、問題となる事例が多いことは遺憾のきわみでございます。最近これに類する事例の一つがございました。憲法秩序を守る
立場から、この点をただしておきたいと思います。
福田法務大臣は、かつて自治大臣を経験されたのでありますが、去る衆議
院予算委員会において、両院
議長の裁定、
国会の調査権を否定し、
国民が徹底究明を求めている
ロッキード事件隠しを意図すると思われる発言が問題となり、三月五日同
委員会において
戒告決議となったのであります。福田法務大臣は、あなたに対する戒告をどういうふうに受けとめ、どう反省しておられるかを伺っておきたいと思います。
さて、
昭和五十二
年度地方財政対策に関しては、行
財政制度の改革、
財源の再配分、不公正
税制の
是正、超過
負担の解消など、
地方財政充実の施策はいささかの前進も見せず、いままでと同じく
地方債依存とその場しのぎのびほう策、ごまかしに終始をいたしております。
政府は、
地方財政の
現状は、
地方交付税法に規定する
地方財政及び
地方行政にかかわる制度について
改正するか、
地方交付
税率を引き上げなければならない時期にあることを認め、
昭和五十二
年度実施をめどといたしまして検討してきたはずであるにもかかわらず、制度の
改正も交付税の引き上げも実行しないのは、まさに
地方交付税法の違反であることは明白であります。
地方財政計画の規模は二十八兆八千億、その不足
財源を二兆七百億円としたことにも問題がございますが、不足
財源二兆七百億円にかかわる一連の
措置は、
税率五%の引き上げ、
地方団体金融公庫設立を主張する自治省と、これに反対する大蔵省との妥協の産物であることは明らかでありますが、何ゆえに
政府はみずからあえて
法律違反を犯し、詭弁を弄して政治算術の数字合わせによって糊塗しようとするのでありましょうか、その無定見さと非合理性には
理解ができません。
総理及び
大蔵大臣、自治大臣の
答弁を求めます。
また、
地方交付
税率の引き上げのほか、その
内容と
運営についても
抜本的改革が必要であると思います。
景気変動に最も敏感な国税三税を交付税の
対象としている限りにおいては、
地方財源の安定は困難でございます。この際、
地方交付税の
対象税目を国税全体に
拡大することを
考えるべきであると思います。こうした安定的な交付税総額の確保とあわせて、その配分についても抜本的
改正を行うべきでございます。
これまで人口十万の市を標準団体とし、単位費用を定め、後は補正係数を乱用して三千余の自治体にばらまくのでございますが、
高度成長によって地域格差を
拡大し、一方では人口三百万の過密都市を生み、一方では一千に満たない過疎の村が存在している現在、どだい無理な方式であり、補正係数の非合理性はここから生じているのであります。市町村に対し、その規模に見合った
段階的標準団体を設け、合理的でわかりやすい配分方式を検討すべきでありましょう。いまや私は、
地方交付税全般にわたって抜本的
改正が急務だと思います。御
見解と方針をあわせて承りたいのであります。
次は、
地方事務官制度の廃止と、行政制度の改革について
伺います。
昭和五十一年三月三十一日を目途に
地方事務官制度を廃止し
地方公務員とするという
国会決議があり、前三木
総理は第七十七
国会に関係法案を
提出するよう努力することを約束し、自治大臣もまた熱意ある発言をしてきたはずでありますが、関係省庁の反対によって、今日に至るも実行されないばかりか、その
見通しすら立たない
状況でありまして、これは
国会軽視もはなはだしいと言わなければなりません。自民党
政府にあっては、
総理や
関係大臣の方針も、
国会に対する約束も、行政官僚の反対があれば履行できないことを示すもので、政党政治の権威を疑わざるを得ません。
総理はかつて行政管理庁長官を務められ、
地方事務官制度の廃止に賛意を表し、これができないようではとても行政改革などできないと強調されたことがあったと思いますが、これは的確な認識であり、私も全く同感でございます。行政事務の簡素化、国と
地方との事務分担の見直しなどを含む行政改革、
財源再配分のための
税制、
財政改革、公社、公団、特殊
法人の
整理統合等々はいまや急務となっておりまして、天の声、地の声となっているばかりでなく、
総理も八月をめどにその構想を明らかにすると言明されておりますが、私は、失礼ながら、自民党
内閣ではとうていできそうもない大事業だと思うのであります。なぜならば、いまや自民党政治は官僚主導の政治になり下がっているからであります。行政事務の簡素化、再配分はもとより、
税制、
財政改革による
財源の再配分も、いずれも国に集中している権限及び
財源を
地方に分割または移譲するもので、
地方分権の推進でございまして、きわめて望ましいことでございますが、
わが国官僚は旧憲法
時代の意識を脱却しておらず、
地方団体に対する不信と、中央集権に固執するがんこな思想と体質を持っているために、
地方分権につながる制度改革にも、持てる権限をいささかでも手放すことにもがんこに抵抗するのでありまして、
地方事務官制度もこのような認識に立つ必要がございます。私は、
福田総理大臣がこの事務官問題にどのように対処するのか、今後の行政改革に対するその所信と決意と自信のほどを明らかにしていただきたいと思います。自治大臣にも御
答弁を願います。
次は、
地方債の許可制度についてでございますが、
地方債は、
地方自治法にも
地方公営企業法にも、その基本規定では国の許可制を認めておりません。しかるに、当分の間暫定
措置をとることができる条項によって許可制度を採用したのでありますが、無法にも「当分の間」が三十年にも及んで、それによって
地方団体を不当にコントロールしているのであります。ここにも中央官僚の
地方不信の姿勢を見るのでありますが、この際、
地方債については
地方団体を信頼し、常識的な大枠などを
考えながら、自主的判断に任せることとし、国の許可制度を廃止すべきであると思います。
総理、大蔵、自治のそれぞれの大臣からお答えを願いたいと思います。
次は、公営ギャンブルの収益についてでございますが、きょうは公営ギャンブルそのものの論議はいたしません。
昭和五十
年度公営ギャンブルの総売上高は約三兆円、収益金は三千三百億円に上り、特別交付税の総額を上回っているのでありますが、この収益金は基準
財政収入額にも算入されず、
地方財政計画の枠外に置かれて、全くのプラスアルファの
財源であります。戦後三十年以上も過ぎ、すでに許可の条件など、あってなきがごとく野方図になっている上に、中には収益金が、自治省が目の色を変えて見ている人件費総額よりも多い団体もあるのであります。この不公正を
是正するために、基準
財政収入額に算入する等適切な
措置を講ずべきだと思います。自治大臣の
見解と、とるべき方針を明らかにしていただきたいと思います。
最後に、
所得税法改正案の
修正に伴う
所得税の減収と交付税の穴埋め
措置について伺っておきたいと思います。
昭和五十二
年度の
所得税収入が結果的にどの
程度になるかは明確でない
段階ではございますが、
政府の収入見込みがそのとおりであるとすれば、
修正額三千億円に対し当然
地方交付税もそれに対応ずる分の落ち込みを生じます。そのような場合には国の責任による補てんは当然であり、臨時
地方財政特例交付金の増額によって
措置されるべきものと思います。
地方団体もこのことに深い関心を払っておりますので、
政府の方針をはっきり示しておいていただきたいと思います。
総理及び
関係大臣の
答弁を求めて
質問を終わるのでありますが、
質問全般にわたって誠意ある率直な
内容であるよう希望をいたしておきます。(
拍手)
〔
国務大臣福田赳夫君
登壇、
拍手〕