○多田省吾君 私は、公明党を代表して、ただいま
議題となりました
昭和五十一
年度補正予算三案に対しまして
反対の
討論を行います。
まず最初に指摘したいことは、
福田内閣の基本姿勢についてであります。
福田総理は、前
内閣以来の緊急
課題である
社会的不公平是正の考え方に賛意を示しておりますが、具体的施策を見ると、税制調査会などで指摘されている現行税体系における各種の優遇
措置の改廃にはきわめて消極的であり、わが党の主張する交際費の課税強化、各種租税特別
措置などの整理を進めず、高額資産所得に対する課税の適正化も遅々として進展しておりません。また、公正取引
委員会の指摘にも見られるように、寡占
企業の今回の
不況期における
企業行動が価格値上げに力点を置いたものになっているということに対してもこれを放置しております。
他方、
国民生活は、来
年度の
経済見通しで予想されているとおり、
失業者の百万人の大台が
改善されることなく持続するほか、
物価も依然として高水準が見込まれており、
インフレのもとで勤労者は生活を切り詰めることを余儀なくされております。
福田総理は、これら
国民生活の
改善には目をつぶり、大
企業や高額所得者などの不公平是正には改革の手を加えず、そして一般
国民や中小
企業など弱者に対してのみ、いわゆる
協調と
連帯を押しつけ、過酷な仕打ちを加えていることは断じて許されるものではありません。
第二に、
景気は五十年末の一時
回復以来、五十一
年度に入り
景気中だるみ現象が長期にわたって持続しております。そうした中で、
稼働率は最近のピーク時を一五%も
低下した状態が続き、需給ギャップは
拡大したままとなっております。中小
企業の倒産は、昨年七月には千二百件を超し、月を追って
増加し、昨年十二月には千六百八十五件を数えるに至っております。
完全失業者は百万人の高水準を持続しており、
雇用情勢には一向に明るさが見られないのであります。また、
物価は依然として九%以上の上昇が続き、
所得税減税の見送り、
社会保険料の引き上げ及び一連の公共料金の値上げなどによって勤労者の
実質所得は減少し、消費の
停滞が長期にわたって
推移しているのであります。
このような深刻な
経済的、
社会的現象はすでに本
年度当初から懸念されていたところであり、われわれも早くから、
所得税減税を中心とした生活防衛を通じ、生活優先の
景気対策の
実施を要求してきたのであります。ところが、
政府・自民党は、ロッキード事件の真相隠しと、ロッキード事件を契機として起こった政権抗争に明け暮れ、昨年十一月十二日に
景気てこ入れ策を決定するまで、
景気回復に有効な
対策を全く講じなかったのであります。私は、今日の
景気回復のおくれは、ひとえに
政府・自民党がもたらした
政策不況、
政治不況であると断言せざるを得ないのであります。
第三には、五十一
年度当初から
国民が一致して要求している
所得税減税に対し、
政府は何らの誠意ある
態度を示さなかったことであります。
五十一
年度の
税負担について見ますと、前
年度の年収二百万円の標準世帯では、本
年度一〇%年収がふえ二百二十万円になったとしても、
所得税、住民税、厚生年金、健康保険の負担増が四万円近くにもなり、
物価上昇分を加えると二十万円の年収アップを上回る負担増を強いられているのが実情であります。これでは
個人消費が伸びるはずはなく、
景気を上向きに乗せることができないのはいうまでもありません。
政府は、五十二
年度税制
改正において
物価調整的な小幅
減税を
実施しようとはしておりますけれども、これは実質的な負担軽減とはならず、当面する
国民生活に
影響を及ぼすものではありません。
そこで、われわれは、苦境に追い込まれている
国民生活を守り、
景気を着実に
回復させ、さらに安定
成長時代への移行を可能にするために、五十一
年度についても
年度内
減税を
実施することを主張し、その
財源をも明示してきたところであります。しかも、今回
国会へ提出された
補正予算案も、とうてい
景気の着実な
回復を
実現するにはほど遠い内容であります。
以下、
補正予算案に
反対する主な
理由を申し上げます。
反対の第一点は、
追加補正とはいえ、ほとんど中身のない
予算となっていることであります。
すなわち、
歳出では、
補正追加として緊急な
公共事業関係費二千六百三十八億円、冷害・
災害対策に伴う
農業保険費五百三十一億円などの
追加はきわめて限定されている上、義務的な
経費である
国債整理基金特別会計への繰り入れが計上され、これが
補正予算の三分の一を占めていることであります。また、
歳入においては、その
財源が建設
国債一千億円の
追加発行と、前
年度剰余金受け入れのみとなっており、本年の
歳入財源となるべき税収入が全くないやりくり
予算の姿となっている点であります。まさに
景気ムードを盛り上げる形だけの
措置と言うべきもので、
社会保障
政策の拡充にも何ら手をつけず、中小
企業対策にも配慮を欠いていることであります。
反対の第二点は、
地方財政対策が不十分きわまりないことであります。
不況の
影響により、
地方税収が伸び悩み、また
地方交付税が減少しているにもかかわらず、
地方自治体に対する行政
需要は年々高まり、さらに国の
公共事業の裏負担の
増大によって
地方財政はますます窮迫の度を加えております。このような
状況は、赤字団体が続出していることや、一昨
年度来の
地方団体の借入金の激増が明らかに示しているところであります。こうした
状況にあるにもかかわらず、今回の
補正予算案による
公共事業の
拡大も、
地方団体の裏負担を
地方債という借金によって全額
措置させようとしているのであります。これでは全くの借金押しつけ
政策と言わねばなりません。最近の
地方単独事業の
落ち込みを見ても、
地方財政対策に配慮しなければ
公共事業の
効果すら減殺されてしまうことは必至であります。
公共事業を
拡大するのであれば、その
地方負担は本
補正臨時特例交付金をもって
措置すべきであったのであります。
反対の第三点は、
政府は、今回の
補正予算は特に緊急やむを得ないものに限ることにしたとしておりますが、
景気対策や冷害・
災害対策に係る
経費についても、もっと早急に
実施すべきであり、遅きに失すると言わざるを得ないのであります。
他方、
国債整理基金特別会計への繰り入れの
経費は、通常であれば五十二
年度予算に計上されるべきものであり、しかも
国債償還
財源の性質から、特に今回の
補正に計上する緊急性は全くなく、はなはだ理解に苦しむのであります。
なお、冷害・
災害対策も十分とは言えず、
政府・自民党の農業切り捨ての
経済政策が農業の構造と体質をゆがめ、被害を一層深刻にしていることも周知の事実であります。
今回の
補正予算に対し、われわれは、
日本社会党、民社党と共同して、昨年十二月二十日、
政府に、当面の緊急
対策を講じ、あわせて
国民生活優先の
経済への転換を展望できる
補正予算の
編成を要求しました。しかし、
政府はこの要求を全く無視したのも納得のいかないことでありました。
また、今回の
補正の
財源措置、すなわち
予備費の
削減、
既定経費の
節減などを見ても、五十二
年度予算の修正が
財源的に可能であることを示していることを申し添えておきたいと思います。
以上をもちまして、
昭和五十一
年度補正予算三案に対し、
反対する
討論を終わります。(
拍手)
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