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最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 非常にむずかしいお尋ねでございまして的確にお答えできますかどうか、非常に危惧の念を持つわけでございますが、
裁判所として現在のところ簡易
裁判所を積極的に整理統合していきたいという
考えは持っておりません。御
指摘のように、やはり簡易
裁判所というのは、何も、少々暇だから人間の効率的使用という観点からやめた方がいいんだと、そういうような
考えは全然持っておりません。むしろ学識経験のある
裁判官が、長らくいろんなお仕事をなさった方が、相当の余裕を持って常時おってくだすって、いま御
指摘の口頭申し立て等あれば、その暇に飽かしてと言うてはいけませんけれ
ども、暇を十分使って懇切丁寧に審理してあげる、場合によっては口頭申し立て等も十分聞いてあげる、そういう方向に持っていくべきものだということは、私
どもよく
考えておりますし、その点については橋本
委員と全く同じ
考えでございます。ただ、実際の問題といたしまして、昔はこの職員の定着ということがあったわけでございます。その村あるいはその町の
裁判所にお勤めになると、一生そこに勤めていようというようなことがあったし、またそれで満足して職員は働いてくれたわけでございます。しかし、こう時世が進歩してくると申しますか、変わってまいりますと、仮にそういうつもりで独立簡裁にお勤めになっても、役所の中の
事情がわかってきますと、もう二、三年たったから、おれを乙号支部にやってくれないか、おれを本庁に入れてくれないかというような希望が出てまいるわけでございまして、その希望も決して無理からぬもの、それはそれでかなえてあげなければいけないということが一方ではございます。と、それをかなえてあげることは、希望どおりにしてあげることでございますから、たやすいんでございますが、そうしますと、そのかわりの穴埋めを本庁なり甲号支部なり乙号支部から持っていかなきゃいけない。今度はそれは行くのはいやだと、この気持ちも近時のいろいろな状況から見ると無理からぬところがあるわけでございます。こういった人事
異動の困難さといったようなものが、これは単なる俸給の問題でございますとか、そういったことと
関係のない問題として出てくるわけでございます。ことに子弟の教育といったようなことでも、独立簡裁のあるところよりは、せめて甲号支部のあるところ、せめて県庁所在地、みんなそこに行きたいというふうに
考えてまいります。庶務
課長すら非常にいにくいという状況が一方で出てくるわけでございます。この辺の矛盾をどう解決するかということが今後の課題でございます。
それからもう一つ、先ほど二人庁が三十と申しましたけれ
ども、その事務量を見てみますと、その三十のうちの二十庁までは民事訴訟
事件を取り扱っていない庁でございます。したがいまして、当然民事訴訟はゼロでございますが、仮にその区域の訴訟というものを想定いたしましても、その中の八庁までは年間の民事訴訟の新受件数が一けたでございます。一けたということは十件未満だということでございます。また
刑事事件について見ましても、三十庁のうちの二十八庁までが年間の新受
事件が一けたでございます。で、ひどい庁になりますと、五十年度では年間新受がゼロという庁が十一庁もございます。そういう状況を見てみますと、幾ら二人では少ないと申しましても、そこに三人四人という職員を配置するということは、現地の
所長方としてはできにくいと、
事件があれば、それは君行ってくれということは言えるんですが、
事件もこんな状況で、なぜ行かなきゃいかぬのですかと言われると、行ってくれということが非常に言いにくいと、そういう状況がございます。さらに、御承知と思いますが、宿日直の廃止ということを断行してまいりまして、こういった庁の宿日直ということは一切やめるという方向できておりますので、そういう観点からの職員配置の必要性というものも実はなくなってきておる、そのことがその地域の住民の方にあるいは御迷惑をかけておるという面もあろうかと思います。何とか
考えなければいけないと思いますが、現状はいま申し上げたような状況であるということもひとつ御認識をいただきたい。