○
政府委員(
宮崎勇君) インフレと
景気回復という問題は大変重要な問題でございますので、あるいは
大臣からお答えを申し上げた方がよろしいかと思いますが、
ロンドン会議に関連いたしまして、いま出されました
お話との関連でお答えしたいと思います。
まずこの宣言の中に「インフレは、失業を減少せしめるものではなく、かえって失業の主要な原因の
一つである。」こういう文句がございます。ここが先ほどちょっと申し上げたわけでございますけれ
ども、従来の考え方と多少強いて言えば違うところでありまして、
景気を刺激すればインフレになる、インフレを抑えれば失業者が出るというような感じがいままでややもすればあったわけでございますが、今回の
景気後退、
各国について見ますと、
物価が非常に
上昇したために、たとえば
企業家が先行きの投資計画をつくり得ない、こういう気迷いがあって設備投資が後退する、あるいは消費者にいたしましても、
物価が
上昇しているにもかかわらず、いや
物価が
上昇しているので、かえってその将来の不安に備えるために貯蓄をする、消費性向が下がる、こういう
現象で
景気の後退が起こっているわけであります。したがって、その
物価上昇というものが
景気後退の原因であるという
認識がございます。したがって、
物価を抑えればそれが
景気回復の
一つの大きな基礎をなすという考え方が今回の宣言の基礎であろうと思います。
それから、それと関連いたしまして、
成長率の見方でございますが、
会議のほとん
どもう冒頭に近いところでございますが、たしか三番目であったと思いますが、福田総理が御発言になりまして、この
ロンドン会議でこれから各首脳が取り上げようとしている問題、つまり南北問題、
貿易問題、エネルギー問題、
景気問題、それは実は
一つの問題であると、あるいは全体的な
立場からとらえなければいけない問題であるということを
指摘されまして、そして、その
背景には先ほ
ども申し上げました構造変化があるということを言われたわけでありますけれ
ども、そういう大きな問題を解決していく第一の条件は
景気の回復であって、その意味で
日本は六・七%という
一つの目標を掲げて、それで
経済運営をやっているということを御説明になったわけであります。そして、
日本の説明をいたしました後で
カーター大統領の方を直接向きまして、
カーターさん、
アメリカでは戻し税を取りやめたということであるけれ
ども、これは
景気回復ということを断念してインフレーションを抑える方に重点を切りかえたということであるのかというようなことを確認いたしましたところ、
カーター大統領は、いや、
アメリカとしても
日本あるいは
西ドイツと並んでこれが
世界景気の回復の起動力にならなければいけないという
認識を変えているわけではない。ただ、ことしの第一・四半期の一−三月の
アメリカのGNPを見ますと、年率で五・二%ということで、当初の見通しよりは
かなり寒波の
影響があったにもかかわらず大きく出て、そして、着実に
アメリカの
景気は回復しつつあるという
認識が得られたので、戻し税を取りやめた。で、戻し税を取りやめましても、ことしの第四・四半期における
アメリカの
成長率は五・八ないし六%になるだろうと、こういうことを
アメリカの
大統領は言ったというふうに聞いております。それから
西ドイツは、ただいま
先生は四・五%ということを首相が言われたというふうにお述べになりましたけれ
ども、私
どもも必ずしもそれを確認しているわけではございませんが、
西ドイツも私
どもと同じように随行員がついてきているわけでございますが、その連中に確認いたしましたところ、政府としては四・五ないし五%ぐらいの
成長目標を掲げているということで、必ずしも五%を四・五に引き下げたということではございません。
アメリカの五・八ないし六という表現と同じように、いずれも自由
経済でございますので、あんまりコンマ的な
数字には意味がなくて、ある
程度幅を持たせて
成長目標を掲げたというふうに考えております。で、そういう
成長目標を率直に申しますと、その宣言案の起草の段階でははっきり書くべきじゃないかという意見もあったわけでございます。しかし、そういう
成長目標をはっきり掲げられる国というのが限られているということもございますし、いま申しましたように、コンマ以下の
数字を
首脳会談の宣言文に入れるのはいかがかというような意見もありまして、それぞれの国が目標として立てた
成長率目標というような表現に最終的にはなっているわけであります。で、
日本といたしましても六・七%の
一つの目標というものは、この宣言にその
数字が上がってないからといって放棄したわけではなくて、あくまでもこの
成長率ということを目標にして
経済運営をやらなければいけないというふうに考えているわけでございます。で、それとインフレーションの関係でございますけれ
ども、六・七%台に回復するという過程におきましては必ずしも
物価がそれによって刺激されるというふうには私
ども考えておりません。と申しますのは、先ほ
ども御
指摘になりましたように、現在
かなりの完全失業者を抱えているという、いわば過剰
雇用の
状況でございますし、また設備につきましても、稼働率がまだ四十五年を一〇〇にいたしまして八五、六という
程度でございますので、設備がある。したがって、生産が回復する過程で必ずしもそのことが
物価の
上昇にすぐにはつながらない。つまり、生産性の向上ということが期待できるわけでございますから、
物価は必ずしも
上昇するとは限らないわけでございます。もちろんいろいろの問題がございますので、手放しで
物価の目標が達成されるというわけではございませんで、努力をしなければいけないというのは事実でございますが、現在のところ六・七%の
成長率と七%台に
消費者物価を抑えるという目標は十分に両立し得るというふうに考えております。