○福間知之君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十二年度の
公債の
発行の
特例に関する
法律案に対しまして反対の討論を行います。
今日、不況とインフレの共存する中で国民生活は圧迫され続けております。
昭和五十一年度の勤労者家計は実質所得でマイナス〇・九%を示しており、失業者は百万人を超え、さらに企業倒産は過去一年間で一万五千件にも及び、その中で、特に中小零細企業を中心とした
経済的弱者にそのしわ寄せが集中されているのであります。しかし、
政府の情勢認識と対策は依然として旧来の高度
成長政策の幻想にとらわれていると言わねばなりません。そしてまた、今日の財政危機を打開するためには、高度
成長型、資本蓄積型税制の根本的改革なくしてその実現は困難だと考えるのでありますが、
政府の姿勢にはその真剣さが欠けているのではないでしょうか。そもそも、三年間連続して歳入の三割に近い国債を
発行し、それに依存するという異常な財政状態につきましては、
政府の責任を厳しく批判しなければなりません。以下、本
法案審議を通じまして明確になった問題点を
指摘しつつ、反対の理由を述べます。
まず第一に、国債の累積と国債費の問題であります。本年度予算の国債費は二兆三千億円にも上り、財政収支試算によれば、
昭和五十五年度末には国債残高は五十五兆円、国債費は歳出の一〇%を超え、国債収入の七〇%に相当するというきわめて深刻な事態を招くのであります。このことはまさに財政硬直化の最大要因になることは必至でありましょう。したがって、償還財源の適切な確保あるいは償還計画の確立こそ緊要でありますが、
政府にその具体策がないのであります。
次に、このような国債に抱かれた財政を前提にいかなる財政運営を行うかについて、その
政策的展望を持っていないことであります。それは
金融政策とも関連することですが、国債、地方債などを含めた公共債十六兆円の
発行は公的資金として吸収することとなり、資金の流れを変える好機でもあります。現在の
経済状況では、
民間の資金需要は低迷し、勢い公共資金の比重は高まっているのでありますが、資金の流れ全体を転換して活用しようという意思が
政府には乏しく、一たび
民間の資金需要が高まりますと、信用創造による通貨の増発によってインフレの危険を助長することになるのであります。
第三に、国債の消化についてであります。
わが国の市中消化とは名ばかりで、
政府、日銀の国債保有割合がその半数以上を占めている事実にその姿が象徴されております。最近、個人による国債消化が一〇%を超えたとはいえ、本来の姿とはほど遠い
状況であります。国民の協力を得る国債
発行ということを考えれば、金
融資産として魅力のある国債、そしてまた価値が保証されるということが肝要でありましょう。そのためにはまず何よりもインフレーションによる目減りをなくす必要があります。しかし
政府は、依然として国債引受シ団への割り当てによる御用金調達思想の域を出ておらないと考えられます。インフレ抑制への決意を疑うのであります。
最後に、増税時代の到来かという今日の事態における
政府の姿勢についてであります。巨額の累積国債解消については二つの方法があろうかと考えます。
一つは、増税による財源の確保であり、いま
一つは、インフレによる
債務者利得、すなわち借金の目減り
政策と、あわせて福祉切り捨ての方途であります。われわれが慎重かつ勇気を持って
検討を加え選ぶべき
政策は、やはり第一の増税策でありましょう。福祉の充実は
経済成長のいかんにかかわらず実現すべきものであり、インフレは最も不公平な間接増税であり、容認すべきではありません。問題は、増税
政策実行に当たって、だれにどのように負担をさせるかであります。そしてその原則は、あくまでも税の負担能力に応じて負担を要求する応能負担の原則を貫かねばなりません。すなわち、高額所得者、資産所得者と大法人、大企業を対象とするのは当然のことであり、個人所得税の負担増加を大衆課税の強化に求めたり、さらにはいわゆる付加価値税導入に安易に求めることなどは論外であります。
以上種々申しましたが、私の反対討論の内容といたします。