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1977-05-24 第80回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年五月二十四日(火曜日)    午前十時八分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十九日     辞任         補欠選任      山崎  昇君     和田 静夫君      竹田 四郎君     工藤 良平君  五月二十日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     野坂 参三君  五月二十三日     辞任         補欠選任      工藤 良平君     竹田 四郎君      野坂 参三君     渡辺  武君  五月二十四日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     福井  勇君      桧垣徳太郎君     青井 政美君      柳田桃太郎君     佐々木 満君      村田 秀三君     栗原 俊夫君      矢追 秀彦君     太田 淳夫君      近藤 忠孝君     橋本  敦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安田 隆明君     理 事                 上條 勝久君                 戸塚 進也君                 野々山一三君                 三治 重信君     委 員                 青井 政美君                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 佐々木 満君                 坂野 重信君                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 福井  勇君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 栗原 俊夫君                 竹田 四郎君                 福間 知之君                 吉田忠三郎君                 和田 静夫君                 太田 淳夫君                 鈴木 一弘君                 橋本  敦君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  坊  秀男君    政府委員        大蔵政務次官   斎藤 十朗君        大蔵大臣官房審        議官       山内  宏君        大蔵大臣官房審        議官       徳田 博美君        大蔵省主計局次        長        加藤 隆司君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省関税局長  旦  弘昌君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省理財局次        長        戸塚 岩夫君        大蔵省証券局長  安井  誠君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        大蔵省主税局総        務課長      梅澤 節男君    参考人        日本銀行理事   中村  進君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十二年度の公債発行特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○航空運送貨物税関手続特例等に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     ―――――――――――――
  2. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  去る十九日、山崎昇君が委員辞任され、その補欠として和田静夫君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案の審査のため、本日参考人として日本銀行理事中村進君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案航空運送貨物税関手続特例等に関する法律案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 竹田四郎

    竹田四郎君 航空貨物コンピューター化の問題については私賛成でありますけれども、しかし、その輸出入貨物のいろいろな諸届けとか書類というのは、まあ大分簡便にはなりつつありますけれども、まだまだこの仕事というのは大変窓口は多いし、判この数はたくさんもらわなくちゃならないということで、港湾貨物についての処理というのはもう少しスピーディーにやらないと、これはせっかく船のスピードあるいは貨物の輸送についてはコンテナ化されるとか、あるいはラッシュボート化されるということで、荷物の動きは大変早くなっているのですが、どうも書類というのは手数ばかりかかりまして、窓口は多いしというのが業者関係の、もう少し簡素化してくれ、もう少し窓口幾つ幾つも渡り歩かなくても、とにかくたとえばコンピューターに入れるように、一回入れればそれぞれのところでオーケーが出て、最後にはすべてがオーケーというものが出てくるような、そういう組織というものが非常に望まれているし、私の友人なんかでもそうした港湾手続コンピューター化ということで研究している友だちもいるわけですけれども、羽田の航空貨物だけ――今度は成田になるでしょうけれども航空貨物だけそれであって、ほかの方が進まないということであっても、これはやっぱり問題があると思うんですね。ですから、航空貨物から手をかけ始めたという理解であれば、それも一つ理解できることなんですが、港湾貨物のそうした事務的な手続というものは現在どんな方向へ向けて、これは関税局だけじゃなくて、むしろ港湾局あたりが非常に大きな指導性を発揮してくれなくちゃ困ると思うんですけれども、その辺は一体どんなふうになっているんですか。
  7. 旦弘昌

    政府委員旦弘昌君) 御指摘のように、今回お願いをしております法案航空貨物だけということで一応お願いしております。これが法案が通りました暁には、法律上は輸出輸入、両方できるわけでございますけれども、そのうちとりあえず輸入の分について着手してまいりたい、かように考えております。それで一応めどのつきましたところで、輸出につきましても同様に考えてまいりたい、かように考えております。  で、御指摘海上貨物につきましては、これは私どもも将来とも電算化をする方向検討してまいりたいと思っております。御指摘のありましたように、横浜あるいは神戸などにおきましては、海上貨物電算化について、あるいは船の出入港についての電算化について御検討中であるやに聞いております。しかし、航空貨物海上貨物の非常に違っております点は、航空貨物につきましてはIATAという国際機関がございまして、たとえば積み荷目録でありますとか、あるいはエアウエイ・ビルというような書式について国際的に統一されておりまして、一方、海上貨物書類につきましては、たとえば船主保険などにつきましては、各船会社ごと書式が違っておるというのが現状でございます。したがいまして、電算化をいたしますときにはそういう海上貨物書類についてのまず書式統一、あるいはコードナンバー統一ということが先決ではないかというふうに考えておるわけでございます。  で、なぜこういうことになったかと申しますと、海上運送というものは非常に歴史が長いものでございますから、非常に古いしきたりとか、あるいは会社別の固有のそういう制度をなかなか変えないという体制でございます。航空貨物は、非常にその点は新しい分野でございますので、初めから合理化が進んでおるという決定的な違いがあるわけでございます。そういうことで、まずその辺からかかりませんと、なかなか電算化に乗りにくいというのが実情でございまして、国際的にもそういう海上貨物書式について統一する運動がございますし、わが国におきましても四十九年の末ごろにJASTPROという民間機関ができまして、その辺を国際協調のもとに検討しておる次第でございます。それらの成果を踏まえました上で、私どもといたしましても将来、海上貨物電算化について検討をしていきたいと、かように考えております。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 おっしゃるように、そういう書式統一というのは国内だけではなかなかできないわけで、国際的にやっぱりそうしたコンピューターに乗るような書式にしていかなくちゃならぬと思うんですけれども、そういう国際的な連携というようなものは民間ではとりつつあるわけでありますけれども、何かことしはそういう問題が一体、東京ラウンドなどでもあるわけでありますから、そういう面というものも協調して、国際的な規格化というものをやっぱり進めなくちゃならぬと思うんですが、何か国際的にそういうような会議は持たれているわけですか。
  9. 旦弘昌

    政府委員旦弘昌君) 国際的な機関といたしましては、現在、国連の欧州経済委員会の中に貿易拡大委員会というのがございまして、その中で国際貿易手続簡易化作業部会というものが昭和三十五年に編成されておりまして、三十八年に貿易関係書式原型を制定いたしまして、その後コードなどを検討いたしております。で、三十八年に示されました貿易関係書式原型に基づきまして、わが国におきましても関係業界でこの原型にどういう手を加えたら日本実情に適するかということを検討中でございます。先ほど申し上げましたJASTPROもその作業をするために設立されたものでございまして、私ども、先般もたとえばイギリスのSITPROという同じような団体がございますが、その幹部が数回にわたって日本を訪れておりまして、それらと緊密な連携をとりつつ、いま検討を進めておるところでございます。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 この問題は港湾局、運輸省が主導権を取るのか、あるいは通産省が主導権を取っていくのか、おたくの方が主導権取っていくのか、これ、わかりませんけれども、そうした点でやっぱり早くひとつ国内体制も必ずしも私はまだそれに対して踏み切っているという体制ではないように聞いておりますけれども、そういう体制に踏み切っていただいて、いまお話によると三十五年というわけで、えらい昔から進んでいないということを示していると思うんですけれども、船にしてもその他にしても、やっぱりハイスピードになってきているわけですから、その辺はひとつ日本としてもやはり大きな主導権を発揮して早くひとつやっていただきたいということを強く要望しておきます。  それからもう一つは、ぼくが心配するのは、との電算化というものが進めば、大体そこでは人事問題というのが労組との間で必ず起きてくると思うんですけれども、この間の他の委員質問では、税関労働組合の方とは話はついているということでありますが、これは全税関の人も関連するんじゃないかと思いますけれども片方だけではいけないわけでありまして、やはり両方が十分納得をした上で導入されなくちゃならぬと思うんですけれども片方の全税関組合の方は、この話は現状段階ではどこまでいっているんですか。
  11. 旦弘昌

    政府委員旦弘昌君) 先般御答弁申し上げましたように、税関二つ組合がございますが、その一つ税関労組につきましては、先般も組合交渉いたしまして、その際この内容につきましていろいろ質疑がございました。それからまた全税関の方からも同じような、近く組合交渉いたしますが、その際にもあるいは質問があるかもしれません。しかし、現在までのところ、官側からもこのシステム動き出しますとどういう勤務条件に赤化があるか、あるいは仕事やり方がどうなるのか、どう変わるのかということにつきましては、数次にわたりまして説明をしております。現在までのところ、両組合からも反対はないというふうにわれわれ理解しております。  ただ、何分新しい仕事でありますので、このシステムがとられると首切りにつながりはしないかとか、あるいは労働過重になるのではないかとかいうような御心配があります。それももっともなことだと思います。で、私どもとしましてはそういう首切りにはつながらない、それから労働強化にはならない、むしろいままでの機械的な作業から解放されて、人間でなければできないような作業に重点を置いて仕事を運んでいくという方向に行くわけでございますので、その辺は今後とも十分説明をしまして、いたずらな不安のないように処理してまいりたい、かように考えます。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 よく、税関というのは組合が二つありまして、私どももときどき呼び出されてああだ、こうだと、こう言われることが多いんですけれども、ひとつこの点はやっぱり両組合十分納得してもらった上でスタートさせていただくように、無用な摩擦や混乱をぜひ引き起こさせないように、ひとつ十分にその点は御留意をいただきたいと思います。  それからIDAの問題について二、三お聞きをしておきたいと思うんですが、第四次の増資、これの各国の出資というんですか、出損というんですか、これの状況というのはもう全部終わっているんですか、どうなんですか。まだ終わっていないところがあるんじゃないかと思うんですが、どうなんですか。
  13. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 第四次増資は総額四十五億ドルが予定されておったわけでございますけれども、今日までに三十五億ドルが払い込み済みとなっております。したがいまして、十億ドル程度はまだ払い込みになっておりません。その内訳は、アメリカが七億五千万ドル、イタリアが一億八千百万ドル、それからスイス、これは貸し付けでございますが、六千六百万ドル、フィンランドが六百万ドル、そういうことになっております。ただし、これは先般総務会決議におきまして、原則は三年間で分割払いをいたしまして、現在までに全部完了しておるのが望ましいわけでございますが、加盟国の希望がございますと一年をずらし、かつ、四年分割でも払い込みができるというふうな規定がございまして、米国とフィンランドはそれによりまして、二年分までがいままで払い込みが済んでおるわけでございます。アメリカにつきましては、三年分が近く払い込みされるということでございますので、総務会決議のとおりには進んでいるわけでございます。スイスにつきましては、これは加盟国ではありませんので、貸し付けを予定しておりましたがスイス国民投票で否決されましたので払い込めない、貸し付けられないということでございます。イタリア引き受け手続をまだしておりませんので、その意味でおくれている。別に約束したものは不履行ということではなくて、引き受けをまだしていないという状況でございます。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 アメリカの分というのが七億五千万ドルですから大変大きいわけですが、アメリカというのはよく言い出すときには言い出しますが、金の支払いというのはもう非常に悪いんですが、大国といいますか、そういうものが率先してやらなければ私ならないと思うんですけれども、いまの御説明でも、アメリカがなぜ三年間もおくれているかということは、これはやはりこれからの第五次の場合についても、せっかく先にわれわれ協力して国会を通しても、ほかの国がそれができないということになりますと、やはり大国の義務を怠っていることに私はなると思うんですが、アメリカがおくれているという理由は、金がないという形のみでは何か言えないように私思うんですけれども、これはどういうことなんですか。
  15. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 確かにアメリカにつきましては、御指摘のような印象を私は受けないわけではございません。ただ、アメリカにはアメリカ国内事情がございますので、余り立ち入ったことは申し上げたくはございませんが、国際機関に対する出資につきまして、政府は熱心にやっておったわけでございますけれども、なかなか議会との関係で予算が組めないということで、私どもがこうあってほしいと思うようなスピードでは払い込みが行われてなかったわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、別に国際的な取り決めに反しておくれているというわけではございません。ことに、このたびのカーター政権になりましてから、過去におけるこういった支払いのおくれを反省いたしまして、大いにこれからやろうということで、おくれを取り戻す努力をしておるようでございます。  なお、第五次増資につきましては、第四次のそういった経験にもかんがみまして、今度はアメリカとしても三回で支払うということを言っておりますので、これから少しずつ好転してくるんではないかというように思っております。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 国金局長にしてもそれから大蔵大臣にしても、新聞によると、ゆうべアメリカから来た財務長官ですか、これに会っているんですね。それで、きのうあたりのIMCの話等々の端端に出てくる問題は、アメリカ民間銀行債務についてはもっと国際機関がバックアップしてくれとか、言うならば、かなり勝手なことを言っているわけですし、アメリカ民間銀行にしても、途上国への債務焦げつきなんかは、言うならば、ある程度自分のところでうんともうけようというもうけ主義から、金をうんと貸したと。実際アメリカの利益の半分ぐらいというのは、恐らく対外債権からの利息が入ってきたのがアメリカ銀行の収益の半分ぐらいに及んでいるというふうにわれわれ聞いているんですよね。しかし、そういう方面では勝手にあれやこれやと言って、日本とかECの諸国に頼んでいながら、自分のところが出す分は、いつまでもおくらしておくというのは、どうも私ども国際信義の上から見ても、あるいは大国の立場から見ましても余り適当でないと思うんですよね。この辺は、財務長官がいまちょうど日本に来ているんですから、大蔵大臣なり国金局長あたりから早くこういうようなものはとにかく納めてくれと、納めないことには第五次だって進まないぞと、そういう強い要請を私はむしろすべきだと思うんですけれども、そういうのはゆうべあたり会ったときにお話はしたんですか、どうなんですか。
  17. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 実は、昨晩大臣とともにブルメンソール長官にお会いしたんでございますが、この問題は、その前に先般モンデール副大統領に随行しましたバーグステン財務次官補が参りましたときも取り上げまして、彼の方から、今後はおくれを取り戻すようにやりますということでございますので、その後の動きを見ましても、その方向アメリカも動いておるようでございますので、私はこれからそのおくれを取り戻して支払いが進んでいくんじゃないかというふうに思っております。  先ほど申し上げましたように、四次の増資では一年おくれで四分割、これは大変に遅うございましたけれども、五次では、アメリカには選択の余地は四回という余地がございますが、それを三回で支払おうと言っておりますので、これからの事態は好転するんじゃないかと思っておるわけでございます。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、LLDCの諸国に対しては、それは確かに早く手当てをしてやらなくちゃいかぬと思いますよ。しかし、大国がこういうことをやっているということは、これはやっぱり問題だろうと思うんですね。ですから、とにかく日本の場合にも、これは三回に分けて納めるだろうと思うんですが、アメリカやり方というものに対して、もう少し強く反省を求める意味では、やっぱりアメリカが納めると同時でいいんじゃないかと、私は、そのくらいアメリカ反省を求めたいと思うんですけれども大蔵大臣どうですか、少し強く言うべきだと思うんですが。それはアメリカが勝手に金もうけをしているということも、私は今日の金融に対する心配、こういうものを生んでいる一つの原因はあるわけですから、その辺はやっぱり当然日本あたりは強く言うべきだと思うんですね。貿易のことじゃぎゅうぎゅうぎゅうぎゅういじめられていて、向こうが出す分については、日本がおとなしいというのは、どうも私ども新聞紙上にあらわれることしかわかりませんから、いま藤岡さんがおっしゃったようなことは、余り新聞紙上に出てきませんから、政府は黙っているようにしか私ども受け取れないわけなんですけれども、そのくらいのことやってもいいんじゃないですか。どうですか、大臣
  19. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 実はゆうべ財務長官にお会いしました。会った趣旨は、実は私はロンドン会議のときに出席いたしまして、財政長官ともあいさつ程度の話はしておりましたけれども、元来私は口が余りきけないものでございますから、いろんなことについての懇談ができなかったというようなことで、きのう特別に招待して会ったわけなんです。  きのうの話では、いまおっしゃったような、私はそれは当然のことだと思います。おっしゃるとおりだと思っております。そういったようなことについては話し合いがなかったですが、そのことにつきましては、この前にウィッチフェーンが来たときに、あのときにウィッチフェーンは、お金を集めてそれでもって非産油の赤字国を助けていこうというような話のときに、それは結構だと、趣旨としては結構だけれどもアメリカの言っておる融資――アメリカ民間がやっておる融資が焦げついて、それで困っておるというような、それを何か肩がわりするようなことになるというようなことだと、これは余り意味がないじゃないかというような話もこれはいたしておりますし、竹田さんのおっしゃる趣旨は、十分私は心得ておるつもりでございます。  そこで、そういった話はなかったですけれども、きのうお目にかかったときには、日本貿易収支の黒字がどんどんたまっていくのを一体どうするんだ、アメリカは非常に赤字なんだというような話を、私直接会いましたから、そこで私は、それはそういうことがあるから、日本がいろんな政策において内需を刺激しまして、そして事業や雇用や、そういったようなもの、国内におけるこれを充実していくということによりまして資材を使うとか、あるいは雇用拡大による個人の消費というものを刺激するということによって、でき得る限り日本貿易輸入の方に力を入れていくというようないま政策をとっておると。これは一遍に効果を生むということは私は考えませんけれども、漸次これが効果を生んでいくと、日本経済が六・七%の成長を期待しておるということも、これはことしだけの、五十二年度だけのことではないわけです。五十三年度にもそれに応じて、もちろん高度経済成長といったような夢を見るわけにはまいりませんけれども、だんだんと内需というものにウエートをかけていくことによって輸出入のバランスというものは、とっていくつもりであるというような、そういうような方針のもとに鋭意いろんなことをやっておるんだと、こういう話をいたしました。  長官の方では、きょうは余りかたい話はしないにしても、ひとつリラックスでよくいろんなことについて話をし合おうじゃないかと、それがいろんなことを、かたい話をするに際してひとつ意思を疎通する上においては、これは大変いい効果を生ずることだからというような意見もありまして、私はこれに対しましては全面的に賛成しますと、いろんなあることを話をし合う上においても、やはりよくそれまでにお会いしておくということが大事だというようなことで、きのうの話はそういうことでやったわけでございます。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 そこで大蔵大臣も、国金局長もロンドンの首脳会談に行かれたわけですが、最近の貿易、特に輸出状況というのはどうなんですか。通関統計で見ましても、三月は比較的低目だったわけですが、四月はまた伸びてますね。それから通産省の輸出の認証統計を見ましてもそんなに傾向的には減ってないわけですね。そうなると相変らず七億ドルの貿易赤字をことしは出すと、そして輸入をふやすと、いま大臣がおっしゃったように六・七の成長率はこれは完遂するんだと言っても、どうも輸出がふえて、輸入はむしろ四月なんかは大分減ってますね、通関統計で見ますと。こういう状態、特にこの中で見ますと、EC向けというのは逆に四月はふえてますな、大きく。それから対米向けの自動車なんかにいたしましても大変ふえているんですが、ゆうべも恐らくそんな話がブルメンソールから出たんだろうと思いますけれども、いまのような状態というのはどうなんですか。これは今後も継続されていくんですか。それとも五月以降はぐんと落ちるんですか、輸入の方は伸びなくちゃいけないわけですが、その辺はどうなんですか。
  21. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 確かに四月の国際収支、ことに貿易収支は相当大きな黒字になったわけでございます。貿易収支の黒字が四月は十七億八千万でございますから、これはかなり大きいと言わざるを得ないと思います。  で、その要因を分析して見ますと、輸出の面と輸入の面、両方非常に大きな不規則な要因がまじっておるように思われます。つまり輸出におきましては四月は六十七億五千万ドルということで、一年前の時期に比べまして二九%もふえておりますが、その中で船舶が非常にふえたと、十億七、八千万ドルになっておりますので、最近の月に比べまして三、四億ドル多いと、これは必ずしもはっきりわからないわけでございますが、船の引き渡し時期が集中したとか、たまたま三月の決算期を終えましてから、中古船の売却が進んだというふうなことだろうと思います。その分を引きますと、さっき二九%一年前よりふえておると申し上げましたのは二〇%ぐらいの増になるわけでございます。  それから輸入におきましては総額四十九億七千万ドルということで、わりあいに低い数字になりましたが、これは御案内のように四月から重油の関税の引き上げがございますので、主月中にうんと入って、四月はその反動で減ったと、その差が六億ドルぐらいたしかございますので、輸出輸入両方不規則な要因がございますので、十七億八千万というふうな大きな貿易の黒が出たんじゃないかと思います。  そこで、これからの見通しでございますが、最近の動きを見てますと、輸出につきましては、数量ベースでは伸びがかなり鈍化しております。価格が比較的まだ高いもんでございますから、金額としてはふえておりますが、輸出量というものはかなり落ち込んできておりまして、伸びが鈍化しているということは言えるのじゃないかと思います。それから輸入の方は、石油の不規則な動きが終わりますと、これから国内景気の上昇につれまして次第にふえていくと思いますので、ことしの一月から四月までに見られましたような大きな黒字が今後も続くということではなくて、黒字幅は減っていくというふうな感じが私どもはしておるわけでございます。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 対米の問題では、テレビの問題は大体話がついたようでありますけれども、自動車とか鉄鋼についてはまだ必ずしも話がついておると私は思いませんけれども、ゆうべもそれについて具体的に話が出たかどうかわかりませんけれども新聞の報ずるところでは、このままでいけばアメリカでは保護貿易主義の傾向が一層強まるだろうというようなことは新聞に書いてありましたけれども、ゆうべのところはそういう細かい話は全然なかったわけですか。あるいは長官との話はなかったにしても、自動車とか鉄鋼についての今後のあり方、こういうものについては具体的に国内で何らかの措置をとるのかどうなのか。きのうあたり総理大臣としても、何か業界の首脳に会って、特定の地域への集中豪雨的な輸出は自粛するようにということを公開の席上でおっしゃったようでありますけれども、しかし、ただ単にそういうことで、この不況の中で何といってももうかるものは輸出するしかないという現状でありますから、私はそう簡単に輸出が減るとは思いませんけれども、何か措置を講ずるわけですか、行政的な措置を。
  23. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 昨日の坊大臣ブルメンソール長官との間の会談では個別商品についての話は出ませんでした。しかし、長官の方からアメリカの国際収支、なかんずく貿易収支はことしは相当大きな赤字になるんじゃないか、まあ相当大きいというのは、これ本当に大きな、まあ二百億ドルを超えるような大きな数字でございましたけれども。そこで、それを放置しますと、その見合いとして黒字国もあるわけでございますんで、アメリカの議会にも保護主義的な動きが出るのが心配だというふうな問題提起はされました。それに対しまして大臣の方から、さっき御答弁申し上げましたように、国内経済を拡大することによってこの貿易問題に対処していくという基本的な線を説明されたわけでございます。その際、長官としては六・七%は結構なんだが、輸出によって達成するのは困るんだと。これは当然でございますが、そういう懸念を表明されたのは事実でございます。それからなおアメリカも大きな赤字といいましても、それは必ずしも日本からの輸出だけで赤字がふえているわけではございませんので、その点を私は念を押しまして、どの程度石油の輸入赤字に貢献しているのかということを聞きましたら、アメリカ赤字の半分ぐらいは、石油の輸入がふえたための赤字であるというお話でもございましたので、すぐに日本の対米輸出問題に響くということではないということでございます。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは私いまから議論しようとは思いませんけれども大蔵大臣、あなたもきのうは六・七%の成長率は必ず達成するんだと、こうおっしゃっているし、経済企画庁の方では、景気は回復基調にあると、まあ二月ごろから言ってますわな。しかし、現実に財界の人とかそれから研究者の話から見ますと、これはどうも景気そんなによくならないというのが出ているわけなんですね。どうもその辺政府は希望的観測に私は過ぎるんではないんだろうかと、こういうふうに思うんですけれども、余り希望的な観測を参議院選挙を前に一生懸命やっておいて後がたっとくる。これはまた政治不信というのは私は大きくなるだろうと、こう思うんですが。この辺は余りいまここで時間もありませんから議論しませんけれども、この辺はしかし本当のところをやっぱり国民に私は言うべきではないだろうかというふうに思うんですが、まあこれについては御答弁要りません。  それで、あとちょっと国債のことをお伺いしたいんですが、主税局長、この間も主計局の次長から昭和六十一年には大変な国債の償還のお金が十一兆くらいになると、こういう話なんですけれども、これは六十一年を引くまでもなく、この前あたりからのいろいろな会議でのお話でも、租税収入というものが特に高まっていくという、そういう目安はないわけでありますけれども、いずれにしても税制調査会に諮問をするということですが、諮問事項の重点ですね、去年もおやりになりまして、第一部会、第二部会の報告書を私どももいただきまして、大蔵省の方からメモを出して、それに対する調査会の委員の人たちのいろいろな意見が書いてあるのが羅列的に全般的に並べられていたわけですけれども、まあ参議院の選挙が終わったらもう早速その税制調査会に対する諮問というのは始めなければならないと思うんですけれども、諮問の重点というのはどういうところになりますか、どんなことを考えていらっしゃるんですか。これは大蔵省が当然メモを出して、それに対して調査会の委員が答申をするという形になるのがこれは通例ですから、原案は恐らく大蔵省の方が出すわけでありますから、その辺の重点はどんなふうに考えていらっしゃいますか。
  25. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 昨年六月以来の経緯ただいま御質問の中でもお触れになったとおりでございますが、いわば昨年六月に当時の大蔵、自治両大臣出席していただいて、こもごもお願いしたことがその諮問と言えば諮問になるわけでございまして、それはいまある税制を、今後負担の増加を求めるとすれば、どの税を最も適当と考えるかということをひとつ洗いざらい考えていただきたいということでございまして、いわばそれがずっと続いて生きているわけでございます。で、時間の関係で各部会ごとに審議がいま中断の形になっておりますが、私どもとしましては、自治省とも相談しながら、国会終了後できるだけ早く審議を再開していただきまして、この秋の任期切れまでには何らかの方向づけをしていただきたい。ただいまの御質問の中のより具体的な諮問を何かするのかということになりますと、実はそういうふうには考えておりません。いますでにお出ししてあるデータをさらに掘り下げて御議論を願いたい。このメモの中にはお出ししただけでほとんどまだ、何と申しますか突っ込んだ議論をしていただいてない部分も残されておりますので、いわば私どもとしては議論の種はすべてお出ししてあるつもりでございまして、これを掘り下げていただいて、さてどういう組み合わせで負担の増加を考えるのが一番よろしいかというのをこれから時間をかけてやっていただきたい。そういうことであります。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、こういうあんまり財政的な危機が少ないときは、ああいう諮問の仕方もいいと思うんですが、もうどっかで増税をやらざるを得ないという時期に来ているわけですよね。まああれ読ませていただいて、とにかく私はちょっと大蔵省主税局ね。これこういう議論もあるがどうですか、こういう議論もあるがどうですかという、まさに平板的な諮問の仕方というのはちょっと私は無責任だと思うんですよね。だから政府としては、こういう方向なんだけれども、これについていいか悪いかと、こういう私は諮問をしていくのがあたりまえだと思うんですがね。もう少し諮問の仕方を変えたらどうですか。大蔵省のあなたの方だって、どの辺をどうしようかということはある程度頭にあると思うんですね。それが全然空白だということになれば、あなた職務怠慢ということになりますよ。だから重点方向――それは重点方向を出しても税制調査会から、いや、それはやめてこっちの方がいいよという意見があるかもしれませんよ、それは、諮問するんですから。しかし、重点方向というのはある程度決まらなければ諮問のしようがないんじゃないですか。だから、まあたくさんありました、何項目ありましたか、私も読み切れないほどあったわけですけれども、やっぱり重点方向というのは示すべきじゃないですか、諮問の際に。
  27. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 御趣旨はよくわかりますんですが、まあ私どもの考え方としましては、具体的なものをお見せをして、その是非を問うという行き方ももちろんございましょうけれども、やはり事柄が非常に重大でございますし、範囲の広い問題でございますので、個々の税目につきまして、いままで出されておる議論はとにかく、何と申しますか、できるだけフェアに全部御披露しました上で、税制調査会としてその対立する意見もずいぶん書かれておりますから、どちらをおとりになる委員の方が多いのか、意見の大勢はどちらであるのかということを問いかけていくというやり方をとらせていただくわけでございます。事実従来の部会の審議におきましても必ずしも意見の統一を見ていない、むしろまだ意見の統一を見ない部分の方が多いという状況でございますから、これからの審議の中で、しかし限られた時間でございますから、どちらかの方向に意見を集約していただかなくてはならない。議論の材料というものは、やはりできるだけフェアに幅広く集めて、御審議の参考としてお出しする方がよかろうというつもりで従来のようにやってきております。  具体的な作業としましては、従来の各答申におきましても、いよいよ答申をいただきます前、ある程度の時間を置きまして、その答申の素案を作成するために、もう少し限られた人数での委員会なり部会なりということをつくっていただくことはございますし、今回も恐らくそうなると思いますけれども、そこまでにはもう少し総会なり部会なり専門委員の皆さんの意見を全部お聞きする時間をいただいておかないと、何と申しますか、一方的に事務当局なりごく一部の委員なりの主張が先に出てしまうということになるのは、必ずしも調査会の運営として望ましくないのではないかという考え方で、従来からこういう扱いをしていただいておるわけでございます。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、そういう、一応ほとんど全般的にわたってこれがいいかあれがいいかという意見を出してあるわけですね、大蔵省としては。それが深く来ているか浅く来ているか、これはいろいろあるでしょう。しかし、そういうものをすでに出してあるんですから、もう恐らく第一次の各委員の意見、第一部会、第二部会の意見というものはあそこに書かれているわけですね、大体のところは。これからはそれをどう深く突っ込んでいくかということになろうと思いますけれども、そういう面では私はもう少し大蔵省自体が行政責任を持って、中心としたものを幾つか、それ全部やるかどうかはわかりませんけれども、中心としたものを幾つか出して、やはり意見を聞くというあり方をしなければ、行政責任というものは私はないんじゃないかと思うんですね、大蔵大臣。まるで調査会の委員が決めたようで、主税局は何のためにあるのか、ただ資料づくりの役所にすぎないという、こういうことになっちゃうんじゃないですか。ですから、私は、その点では主税局は主税局で今日段階で何をどの税金をひとつ重点に検討してもらうんだというものを出すべきだと思うんですよ。いろいろ出したって、初めからできないようなものを出しているわけですから。もう少し諮問の仕方というものを重点的にやるのが、私はコンセンサスを得る上でもいいんじゃないかと思う。全部を一列に並べて、それで意見はいかがですか、まさにこれでは大蔵省の責任逃れをやっているとしか思えないんですよ。ですから、この調査会、審議会に対する不信というものは、私はあると思うんです。  これは大臣に伺いたいんですが、税制調査会のあり方自体、いままでのような平板的なやり方でなしに、もっと効率的な、もっと重点的な諮問の仕方というものが私はあると思うんですが。これは総理大臣が諮問するんだけれども、中心は大蔵大臣だと思う。どうですか、大蔵大臣その点。私は、もう少しああいう方向見ても、これは一体どっちを向いているのかわけがわからぬというようなあり方ですね。もうここまで来ているんですから、どういう点を重点にしてやっていくんだということは、私は当然主税局の分析の中にも出てきていると思うんですよ。だから、もう少し平板的でなくて重点的に諮問をしていくというあり方であるべきだと思うんですが、どうですか、大蔵大臣
  29. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 税制調査会は、ただいまおっしゃられたとおり、これは総理大臣の諮問機関でございまして、総理大臣から去年の半ばに中期税制はどうあるべきかと、こういったような――とにかくそういった基本的な抽象的な諮問をしておるわけでございますが、これに対しまして鋭意勉強をしていただいておるというようなところでございまして、初めからどうもわれわれの方で、財政当局の方で何かたたき台というか、あるいは青写真というか、といったようなものをつくって、これをひとつどうか御審議願いたいということは、やはりそういった役所がつくるというようようなことでなしに、きわめて自由な立場から、その段階における税制についての、最も委員会がこれが妥当なりと信ずるものを、これを答申をしていただくというようなことから申し上げますと、やはりこちらの方から何か案を出して、それをいかがでございますかと、そういう行き方もあるでございましょうけれども、いまはそういう行き方をとっていない。そういったようなものを審議をしていただくときには、大蔵省の係の主税局長その他がこれ出席いたしまして、そしていろいろな御議論をお聞きしておる。それでお聞きしておって最後、委員会が自分たちのフリーに自由にお考えいただいたものを、大蔵省と関係なしにぴたっと決めてしまう、そういうことはないんですよ。そういうことでなしに、いろいろとその間に事務当局も事務当局としての調査の結果等についてはこれを申し上げておるというような方式をとっていくということでございまして、いま税制調査会に対しまして一つの役所としての何か案をお出しするということは、これ差し控えておりますけれども、今後この点につきましては大いにどういう方式でいくかというようなことについても考えていくべき余地が十分あろうと思います。
  30. 竹田四郎

    竹田四郎君 委員長、ちょっとお願いしたいのですが、和田さんの時間を若干いただきますので、御了承いただきたいと思います。  時間がありませんから次へ進みますけれども、長期金利の金利体系というのは、これはどういうふうにして決まっていくものですか。この五月、改定していますね。このランクづけというのはどういうふうにして決まっていくわけですか。特に応募者利回りですね、これちょっと私わからないのですけれども、その辺、ちょっと説明をしていただきたいのですが。
  31. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 金利の動きというのはいろいろな角度から出てまいります。金利の動向はもちろん長短金利、中期金利を含めましてそのときどきのいろいろな環境によって対応が変わってくるわけでございますが、今回の五月の状況を見ますと、これは公定歩合が引き下げられる、短期金利が動いてくる。それからそれに従いましてどうしても預貯金金利というか、そういう中期金利に移ってまいります。そういたしますと、やはりそういう金利の低下傾向というものは長期金利にもだんだんとその影響が出てまいるわけで、将来やっぱり長期金利が下がるであろうという気配が出てまいりますと、事業債等が、たとえばもっと下がってから発行主体としては発行したいという形で、事業債を発行する方から見れば発行を手控える。それから売却をしたいという者から見ますれば、先に売却を延ばす方が金利が下がるかわりに金額が、債券のいままで九十五円ぐらいだったものが九十八円ぐらいになるとか、そういうようなことがございまして、そういう気配が出てまいりますと、やはりそれに対応した一つの市場金利というものが一番端的には事業債あたりにあらわれてくるわけでございます。そういうことを踏まえまして、新しい金利の動きがそこに始まってくるというのがきっかけでございます。この場合にもやはりそれですから、そういうところへ加えまして、なお資金の需要が本来弱い状況にございますから、その金利の状況が弱い、需要が弱い段階では、やはりどうしても低い方向に引っ張られてくるということから、全体の債券金利というものが下がってくる、値が上がってくる、こういう形にだんだんとなってくる。そこはいままで長短金利の間の壁になっておりましたのが、どうしても中期あるいは預貯金金利と申しますか、そういうところに一つの壁がございます。従来から短期金利、長期金利がときどき動いてきましても、なかなか預貯金金利が動きませんと、大幅な金利の動きがないというのが通常の状況でございます。
  32. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  33. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記起こして。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 いま、そういう理財局長、一般的なことをぼくは言っているわけじゃないですよ。この五月に決まった国債、政保債それから公募地方債、事業債のAA格、それから利付金融債、こういうものの応募者利回りを見てみますと、この期間の短いのは大体金利は安いというふうに決まっていますわな。期間の長いものについては金利は高いというのはこれは決まっていますわな。そうすると、この国債の応募者利回りというのは、五月債では七分四厘八毛七糸ですか、これは間違いないですか。
  35. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 間違いございません。額面、クーポンレートは七・四でございます。発行価格が九十九円五十銭でございますので七・四八七になるわけです。これが発行者の発行時の発行条件でございます。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 それから利付金融債の五年ものというのは、五月債では幾らになっているんですか、応募者利回りは。
  37. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 七・五でございます。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、国債の応募者利回りが利付金融債の利回りよりも低いというのは、これはどうも理解ができないんですが、これはどうしてそういう形で下回っているわけなんですか。
  39. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) これは大体、利付金融債の動き方というのは、別に国債をマークしてではございませんで、どちらかといいますと、これはいわゆる長期プライムレートと従来から連動をいたしております。大体いま〇・九の幅があるかと思いますが、したがいまして、今度長期のプライムレートが〇・八動きましたので、それに連動いたしまして利付金融債が同じく〇・八下げたという形でございます。これは従来よりずうっとそういう姿をとっております。それは私は、この辺は民間の金利の決まり方でございますけれども、長期信用銀行の資金調達のコスト、その辺が恐らくかみ合ってきているんではないかと思われます。  いま先生御指摘のように、国債は十年であります。利付金融債は五年である。で、国債の方が信用が厚いわけだからということになりますと、信用が厚いものは、まあいわば安い金利でもって調達できるはずだという考え方もございますが、同時に長いものの方が金利が高いのは当然だという議論もあろうかと思います。私どもは、国債につきましては、従来から言われております発行主体としての政府、財政当局から見れば安い金利で調達するということがやはり望ましいということは、これは国債費等の財政負担を考えれば当然でございます。発行主体というのはいずれもそうでございますが、同時にまた、だんだんと市中のもろもろの債券との間のバランスというものをより考えていかないと、大量発行下において国債がなかなか売れていかないという、そういう辺を考慮しながら、従来に比べまするとその差を縮めてきたというのが現状でございまして、たとえばもうちょっと前にさかのぼって見てみますと、昭和四十八年当時の利付金融債が七・四でございます。国債は当時が七・〇でございます。いまは、先生御指摘のように、七・五と七・四がクーポンレートで〇・一の差に縮まっておるわけでございます。  私どもは、やはり、一昨年の長期金利の改定の際も今度の場合も、国債はかなり売れる商品として登場させないと市場がもたないという観点から、その金利の調整を行ってきたわけでございますが、利付金融債は、先ほど申し上げましたように長期プライムとの連動というものを一応民間の慣習のようにしておるようでございますので、私どもそれとのバランスという形は必ずしも重視しておりませんが、現実的にはいま御指摘の点がむしろ縮まってきているという、もとはもっと開いていたということでございます。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 縮まってきているというのは、これは私は当然だろうと思うんですよね。国債の低金利政策というものは、これはどうも大蔵省が操作してわざと低くしているんじゃないですか。だから、こういう状態にあるからこそ銀行が国債を持ちたがらない。いまは持っていますが、いまは金の使い道がないからこれにつぎ込んでいる以外にはないということですけれども、これが若干でも景気がよくなってくるということになると、まず国債を一番先に手離さざるを得ないわけですね、ほかのものより。そうなってくると、この国債の価格を低くしておくということは、日銀の買オペ対象にこれをしていくという、こういうことになるんじゃないですか。そうすれば、その次の問題というのが、私は大変過剰流動性の問題が起きやすい条件をそこへつくるんじゃないかと。  ですから、当然私は、この五年の利付金融債よりも、少なくとも応募者利回りが上に出るような、そういう利率なり――これは利率だけじゃありませんわな、発行価格を幾らにするかによってこれは決まってくるわけでありますから。発行価格をそれだけ、五十銭でも二十五銭でも下げるということになれば、応募者利回りというのは上がってくるわけですね。そういうふうにしていかなければ、これは将来大きな問題をむしろ銀行の中に含めるようなことになるんじゃないでしょうか。実際、市場の状況によって国債が売り買いされるという状態がないというところに、やっぱりこれからの大量国債発行の時代のあり方に皆さん疑問を持っておるわけですよ。私も疑問ありますよ。だから、国債発行に対する抵抗というものが出てくるわけですよね。だから、だれでもが国債を買うことができるというようなものがあれば、私はこれは民間消化というのはもっといくだろうと思うんですよね。  だから、個人消化に進んでいけばインフレの危険性というのは非常に少ないと思うんですけれども、いまの点は、この点と流通市場の問題がこれあるわけですね。ほとんど国債を買っても売るときには損しなくちゃいかぬと、だから、それなら買うのをやめよう。ほかの事業債なり、あるいは利付金融債を買おうと、こういうことになると思うんですね。いままでは国債の発行が少なかったから、まあ今度は少し銀行に無理をさしてもいいと思うんですけれども、最近は銀行も無理がきかないということで、銀行の手持ちを売り始めていることは事実ですわな。ですから、特に私は国債の応募者利回りを高くしろとは、特に高くしろとは言いませんけれども、他の長期債との関連で、やはり売っても損をしない、あるいは買っもこれが民間の間で換金ができる、こういう体制というのを早く組まないといけないんじゃないですか。これはどういうふうに考えているんですか。  これは証券局長の立場だろうと思うんですが、いかに発行するかということは、理財局長の方の立場だろうと思うんですが、この辺はもう少し直していかなければ問題を将来に残すんじゃないですか。それとも、ある程度こういうものを直していくいま計画の一つの段階、一遍にぽんとはこういきませんからね。そういう段階にあるというふうに理解していいんですか、どうですか。だから、たとえば六月債にいけばこの利付債とほぼとんとんくらいの利回りになる、その次のときには、それが若干今度は国債の方が応募者利回りが上回ると、そういうふうにしている段階だと、こういうふうに考えていいんですか。どうなんですか、その辺。
  41. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 竹田先生この前からも御指摘がありました問題でございますので、突き詰めていえば、結局発行条件というか、発行条件と流通条件というか、そういうものがかなり有機的に関連しておれば、発行されて買ったものが、売るときには損するというような状況にないようにするということが一番大事なことでございます。それにはもう発行条件ができるだけ実勢に合った条件という形にすべきだと思いますけれども、それは一方において財政当局としてのその国債を出す立場の財政負担ということも頭に入れ、また国債の信用というものがございますから、他の債券に対しましておのずからある程度の格差を持っていていいんではないかとか、あるいはまた税制上の問題の利点がいろいろあるとかいうようなことで、国債の持っている魅力というのは必ずしも金利だけではございませんので、そういうものをいろいろ勘案しながら発行条件を決めていくわけでございますが、従来はそれがかなりやはり実勢と離れていたという点においてその乖離が生じ、御指摘のような売却した場合に損が出るというような状況があったかと思います。それをやはり順次、機会があるごとにその国債のバランスをとらせながら、ある程度のバランスを考えながら国債の条件というものをやはり改善していかなきゃいかぬ。それが市場になじむ一番の方法であろうと同時に、国債だけでなくて公共債あるいは公社債全体の市場をもう少し厚くしなきゃいかぬということが、厚くする意味は、やはりそれぞれ魅力のあるものが出てくるということが大事でございます。  そういう債券のバランスの上に国債をこれからどうやって近づけていくかということは、いま御指摘のようにまだ完全にそういうところにきているとは必ずしも思いませんが、まあ日一日と私どもはそういう方向へ近づきつつあると。たとえば最近の例でございますけれども、国債の発行条件と流通条件との乖離というのは三月末では〇・二七でございましたが、それが五月の二十日には〇・一二になりました。二十三日におきましては〇・〇九まで縮まっております。したがって、いまここで申し上げますのは、国債の上場最長期物の値段でございますけれでも、そういうようにいまの実態からいけば、かなり実勢に近づいた国債の発行条件になっているというふうに解釈されるように考えております。ただ、これはかなり時間をかけて市場が育っていくその過程において、やはり国債をどういうふうに定着させていくかという、先生いつも御指摘になりますような問題をはらんでいることはもう当然でございます。
  42. 竹田四郎

    竹田四郎君 だから、いま比較的国債は消化されていい状況にあると思うんですよ。国債の立場から見ますと。だから、それは一般的に資金需要が弱いというところにそういう問題があると思うんですね。銀行の資金需要にしても、あるいは企業の資金需要にしても、非常に弱いというところに国債が売れているという理由があると思うんですね。これが資金需要が少し出てくれば、これはちょっとわからなくなると思うんですよ。だから、このいまの段階にそういうものを直していくことによって私は順応が早いと思うんですよ。だから、少しそういう面を考えてくれなければ、これからだっても、大量国債を発行せざるを得ないということは、いままでの試算表にしても、あるいはここの委員会の討論にしても、その点ははっきりしているわけですから、いまの段階において乖離をなくして、キャピタルロスを生じないような国債の流通市場ができていくと、こういう形にしていかなくちゃならないし、私はそういう意味ではいまが一番絶好の機会だと。なら早くそういう形をつくっていくことが必要な時期に来ていると、こういうふうに思うんですよ。  それから、ちょっと伺いますけれどもフィンランドの国債が百億ですか、これ出ることになりましたね。この応募者利回りは幾らになってるんですか。
  43. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 七・八%でございます。
  44. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは、フィンランド国債というのは大体格づけにするとどのくらいの格になるんですか。
  45. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 証券局長いまおりませんのでちょっと私あれでございますが、七・八ということになりますと、電力債が現在七……
  46. 竹田四郎

    竹田四郎君 それいいです。後で証券局長が来てからお聞きします。  フィンランド国債というのは、これはアメリカあたりでは三A格くらいに評価をされているというふうに言われております。それで日本で事業債のAA格の応募者利回りが八・〇九〇くらいになってますね。そうしますと、かなり三A格と言われているフィンランド債が低いということは、やっぱり将来近いうちにこれにならって、日本の先ほど申し上げました国債から公共債、事業債というものがそれにならってさらに〇・二くらい低くなっていくというふうに一般には言われているんですけれども、そういう傾向にあるわけですか。
  47. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) この間の長期金利改定を踏まえましての長期債の動きというのは、実は必ずしもまだ安定をしているとは言えません。どちらの方向にいくかというのはまだ若干時間がかかるかと思います。したがいまして、フィンランド国債は金額もある程度限られておりますし、それから日本の金利低下も大体この辺のところであろうと。もっと高いときは発行者としては出す方手控えておったわけでございますので、その辺なら引き合うなということで出てきたものでございますが、これは三カ月に一回とか二カ月に一回とかいうようなタームで出てくるのでございますので、およその大体その格づけはフィンランドのいま先生御指摘の海外における評価と、そういうものを判断して決められたもので、必ずしもこれにほかの長期債の金利が皆大体そっちの方にいく一つの先駆的な動きになるかどうかということは、必ずしもいま言えないかと思います。事業債はある意味じゃもう一度上がるんじゃないかとか、あるいは下げ過ぎではないかとかいろんな批判が出ておりますが、この辺は五-六月ぐらいの資金の動きを見ながら恐らく動いてくるものがあるかと思います。その辺は私どもはやはり定着するまでの間時間がかかるんじゃないかと考えております。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がなくなってすみませんけれども、恐らくこれがそういう方向に私行くんじゃないか。総理大臣も、公定歩合の次の引き下げですね、これについては否定もしていないし、肯定もしていないような答弁が最近の答弁ですよね。恐らく〇・五ぐらいさらに下げて、公定歩合四・〇ぐらいにするという考え方に基づいていると思うんですけれども、これが私は一つの先駆的なものになり得るんではなかろうかと、こういうふうに思うんですが、大蔵大臣、どうなんですか。私はこのフィンランド国債を通じて、近いうちにやっぱり公定歩合の引き下げというものが出てくるんではないだろうか。恐らく小幅だろうと思いますが。これは総理も否定しているわけじゃないんです。それで景気刺激をもっとやれという財界の要望もあるわけですから、これはやっぱり近いうちにそういう事態になるんじゃないですか。これは見通しをお聞きしたいんです、やる、やらぬというよりも見通しを。
  49. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) いまの全般の金利から考えまして、フィンランドの国債も含めまして、目下のところは、ただいまの公定歩合というものがまず妥当であるというふうに考えまして、ただいまのところはこれを検討するというつもりはございません。
  50. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ、もう一問だけ。  先ほどもちょっとお話し申し上げたわけですが、銀行の所有している国債を市場に出しているわけですね、最近。これはいままではちょっと考えられなかった点なんですけれども、こういうような新しい国債の市場というものを大蔵省としてはむしろ推進していこうとしているのか、あれはやってもらっちゃ困ると考えているのか、これどっちですか。
  51. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 前から売るなと言ってはおりませんので……
  52. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは聞いています。
  53. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 最近確かに、ここに、私手元にございます数字でも、大体五月十八日現在で、四月、五月を含めまして約百五十億ぐらいの売りがございます。これは金融機関が売り先等をある程度考慮して売っているんであろうと思いますが、その辺は正確な報告はもちろん受けておりませんけれども、私どもの感じは、やはり大量な売りというようなものが出れば恐らく値段は暴落いたしましょうと。暴落いたしますと金融機関が持っておりますものを全部評価損が出てまいるというようなことでございますから、恐らく節度ある売り方というのは心得ていると私は思われます。したがって、私どもはその売ることについて賛成とか反対とかというようなことではなくて、売る物は売られても、それは恐らく銀行は節度ある売り方をなさるでしょうから、その辺がいまの百五十億売られましても、市況にそれほどの影響を与えているわけでもないようでございますので、ここのところは当初から申し上げておりますようにごく自然体でながめておるわけでございます。
  54. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ、値崩れするようになれば中止させるという意味ですか。それとも自然の趨勢に任せると、それがむしろ現実的には国債発行の実質的な歯どめになっていいんじゃないかと私は思うんですけれども、値崩れするようだったら禁止すると、こういう意味ですか。
  55. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 禁止ということは私どもは考えておりません。
  56. 竹田四郎

    竹田四郎君 禁止といったって、それは行政指導で売らないようにしろということですから。
  57. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) やはり先ほどから御指摘のように、市場に定着させるためにはやっぱり余り乱高下というのは、特に国債については避けるべきだと思いますし、それに対しての日銀なり大蔵省の配慮というのは、私は、発行主体としても当然にあるべきだと思いますので、その辺は横におきましても、金融機関自身の私は良識というものが、それを恐らく余り――自分たちの残高に対しましても影響あることでございますから、恐らく節度ある売り方、買い方をいままでのようにしておるんだろう、いくんであろうというふうに期待はいたしております。しかし、実態がどうなりますかということにつきまして、もし何か変化がありましたならば、それは禁止という形ではなくて、大蔵省としてもそれに対応するところの考え方はやっぱり当然に持っていなければいけない。しかし、それが売ってはいかぬとか禁止とかというようなことではなくて、その面においては自然体であるけれども、価格の暴落に対しましての防ぎ方というのは、やはり当然にどこの国で示そうでございますが、国債の発行については気力配っていかなければならぬと考えております。
  58. 竹田四郎

    竹田四郎君 終わります。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 私、五分ほどしかなくなりましたので、答弁の方なるべく簡単にお願いしたいんですが、いまの竹田委員質問との関連で、すでに三行がこの市場売却をやっている、都銀でもその動きがある、こういうことになっておりますが、それはどことどことどこ、都銀ではどこですか。
  60. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 現在まだ都銀の売りというのは私ども報告を受けておりません。四月からの状況を見ますと、これは取引でございますから――ちょっとお待ち願います。  これはどうも私どもとしては報告を受けているということではございませんので、新聞に出ましたり、それから私どもの方で情報みたいなものを集めたところの数字でございまして百四十八億四千万円、これが四月の十九日ごろから五月の十六日ぐらいまでの間に相互銀行を含めまして七行でございます。具体的なものはちょっと私どもこれは金額等が正確でないといけませんので、差し控えます。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、六月から八月の資金不足期に都銀でも売却を検討しているということが盛んに報道されますね。こういう動きは現存いたしますか。
  62. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) いま御指摘の点は、実は国債はいま額面をオーバーして、百二円とか百一円とかというようなオーバーした値段がついておりますから、いまの状況におきますと、よほどの資金需要の強いものが出ない限りにおいては、金融機関としては持っていた方が得なわけでございます。したがいまして、私は恐らく余り大きな売りがこの時点で出てくるとは考えられませんが、何か売ってもいいということを言えば、それだけでいいというような感じの、そういう気分的なものが私はあるように見受けられますので、それは売ってはいかぬと言ってないのに売っていいと言うわけがないということを、私は衆議院でも申し上げて、ちょっと委員会でも委員の方々お笑いになったんですが、実はそのとおりでございまして、あくまで自然体でございます。  それから、そういう状況のときに都銀が売りたいという相手があってそれが処理されることは、私は、それが大蔵省から見てストップがかかるということはあり得ないと考えております。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 日銀に同じことを伺いますが、将来本格的な国債流動化というのは、いま自然体だと、こう言われるんですが、やはり起こらないと見られていますか。
  64. 中村進

    参考人中村進君) 国債につきましては、先生御承知のとおり、かつては市中の引き受け分のうち一年ぐらいたちますと、そのかなりの部分が日銀の買いオペレーションで吸い上げられたわけでございますけれども、今後の金融情勢を考えますと、やはり経済の低成長ということで銀行券の増発は鈍ってくると思います。しかもまた、財政資金の面では、長期的に見ますと、これは大体収支とんとんになるという性質のものでございます。したがいまして、日銀の買いオペの額は従来と比べますと相対的に少なくなる。逆に申しますと市中保有分が多くなってくるという筋合いになろうかと思います。したがいまして、市中銀行としては、その所有しております国債を何か流動化を図りたいという考え方は潜在的には持っておられると思いますけれども、ただ、実際に売りますかどうかは、ただいま理財局長からお話ございましたとおり、資金需要の出方であるとか、国債市況の状況とかいうようなこととの絡みがあるわけでございまして、私ども今後の経済が安定的な成長をたどる限りは、そう大幅にまとまった大量の国債の売却が出てくるというふうには考えておりません。  以上です。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 いま日銀が引き受けられている国債の実態はどのくらいですか。
  66. 中村進

    参考人中村進君) いま引き受けというお話がございましたけれども、私どもは、現在は国債の引き受けはいたしておりません。私どもが債券の買いオペをやっておりますのは、あくまでも金融調節のためでございます。先生御承知のとおり金融市場では銀行券が増発いたしますとか、あるいは財政資金が揚げ超になりますという事態が生じますと資金不足を生じます。その資金不足の穴を埋めませんと、たとえば市中金融機関として預金の払い戻しにも応じられないというような異常な事態を生ずることがあるわけでございまして、この金融市場の資金不足に対しましては、日銀といたしまして、その時点では何らかの信用供与をせざるを得ない。その一環として、金融調節のために私ども国債の買いオペを必要な時期に必要な額だけいたしているわけでございます。つまり、国債の発行額が多くなったから、したがって、それに応じて日銀の買いオペも多くするというようなことではなくて、あくまでも金融市場調節という観点から見て国債のオペを行っているわけでございます。  以上でございます。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、成長通貨の供給と金融調節という観点から買いオペをやられると。その買いオペの規模を決められる。その決定についての方針というのはどういう方針ですか。
  68. 中村進

    参考人中村進君) まあ、私どもの買いオペをどのくらいするかということにつきましては、その毎月毎月の金融市場の資金需給の状況とか、景気全般の動きをながめてやっているわけでございまして、あらかじめ予定的に本年度は幾らというふうなことを決めているわけではございません。ただ、私ども仕上がりの姿といたしましては、年度を振り返って見ますと、成長通貨と大体国債の買いオペとが見合った姿ということになるのが望ましいんじゃないかというふうに考えているわけでございます。それで、五十一年度の実績で申し上げますと、五十一年度の金融市場の資金不足は約八千億円でございまして、私どもほぼそれに見合う国債の買いオペを五十一年度中に実施いたしたわけでございます。  以上でございます。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 これは何か日銀の内規によって行われるというものですかね、やっぱり。
  70. 中村進

    参考人中村進君) 私ども金融市場との間で国債の売買をいたしておりますのは、法制的には日銀法二十条の通常業務として債券の売買ということが認められておりますから、その条項に沿ってやっているわけでございますが、その債券の売買の具体的なやり方につきましては、これまた日銀法十三条の三で政策委員会の権限事項として、債券の売買の具体的なやり方政策委員会が決めることになっております。これは大蔵省の認可もいただいているのでございますが、その政策委員会で決めております債券売買要領でございますけれども、その中には、対象債券をたとえば国債、政保債に限るとか、対象機関をどうするとか、買い入れ額についての考え方をどうするとか、それから買い入れ価格をどうするかということが内規として具体的に決まっているわけでございます。  以上でございます。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 その内規は資料でいただけますか。
  72. 中村進

    参考人中村進君) これは実は、これも古いことで恐縮なんでございますが、四十二年の一月の二十日に決定いたしまして、同年に私どもが国会に報告いたしますものの中に実は掲げてあるのでございますけれども、何分古いものでございますから、これは改めて先生にお届け申し上げます。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、この内規と財政法第五条との関係というのはどういうふうになるんですか。
  74. 中村進

    参考人中村進君) 財政法のたてまえは、御承知のとおり建設国債原則、それから市中公募原則でございまして、私どもがこの債券を買い入れる場合には、その財政法によって市中公募でされて、市中でふるいをかけられて、市中で相場の立った国債をその値段で、さっき申し上げたとおり金融市場の調節上行うということでございます。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵省、私は、国債発行の歯どめというのは、どう考えてみても今日の状態の中では財政法第五条がほとんどただ一つの制度的なものである、そう考えざるを得ません。そうしますと、ただし書き以下は一体どういう場合と考えたらいいんですか、これは。
  76. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 財政法上の基本的な考え方から申し上げてみますと、四条で経常収支、まあ、税金の負担で賄うという健全財政の原則があるわけでございます。ただし書きで四条公債発行できる、さらに五条におきまして中央銀行引き受けてはいけないということで、いま御指摘のような健全財政の原則を二段に構えて保障しているという考え方になっておるわけでございます。  それでただし書きの問題を御質問でございますが、昭和二十三年の財政法を国会で審議していただきましたときの政府委員の答弁を見ますと、財政経済というのはどういうことが起こるかわからないので、そういう場合に備えて五条のただし書きを設けたということになっております。この条文は、御承知の借りかえ債以外はいまだ発動したことがないわけでございます。それから諸外国の立法例におきましても、法律できちっと中央銀行公債引き受けてはいけないという規定が設けられておりますのはアメリカとかフランスがございます。   〔委員長退席、理事戸塚進也君着席〕 ドイツとかイギリスは規定がございませんけれども、事実上慣習として中央銀行公債引き受けはやらないことになっております。三番目に、この趣旨は、御説明するまでもございませんが、財政面からのインフレを防止するという考え方に基づいているわけでございますが、財政法規的に見ますと、ただいま申しました健全財政を四条と五条で担保しておるというふうに解されております。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 それで実態的には、さっきからやりとりをしましたように、財政法第五条が日銀の内規によってその効力を規定をされている、こういう状態になっているような感じがするんですね。そこで内規が一年をさらに縮めるということになった場合に、これは大蔵大臣、それはそれで第五条には反しないというようなことの論理にいまの論理を延ばしていけばなると思うんですね。これは大変危険だというふうに考えざるを得ないんですよ。これは政府はどういうふうにお考えなんですか。どう解釈されるわけですか。
  78. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 五条は、ごらんいただきますように、最初に、公債を出す場合に引き受けてはいけないと。引き受ける場合には特別の事由がある場合と。特別な事由がある場合ということと、もう一つ、国会の議決をいただきました金額の範囲内という二つの要件を満たさなければいかぬ。それでただいまの日銀の方の金融調節として行っている分は、ただいま申し上げましたように発行引き受けではないわけでございます。それが第一点でございます。   〔理事戸塚進也君退席、委員長着席〕 ですから、事柄が本質的に違うと。さらに念のために申せば、国会の議決をいただいていなければ発動ができないわけでございます。そういう意味で、本質的にも違いますし、形式的にも国会の議決がない限りできないわけでございます。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 いや、それはいろいろ言われますけれども、結果的には発行引き受けではない、こういうふうに述べられてみたところで、金融調節という名に隠れて買いオペが行われる、そして一年後には実際問題として日銀が実態的には八千億なら八千億を五十一年度で引き受けている、こういう実態はあるわけですね。そうすると、その一年というものを、たとえば半年でもってそれを考えるんだということになってくれば、この第五条そのものが死文化をする、そういう行政的な運営というものは可能になるんじゃないだろうか、そういう疑問はどうしても残るんですが、これは大蔵大臣そんなことはありませんか。
  80. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 形式的な問題の前に実態的な問題があると思うんでございますが、公債をうんと出さざるを得ないような状況の場合には、先ほど日銀の方からも御説明があったように、成長通貨の伸びというのはそう大きくないわけでございますから、そういう意味で、先生の御指摘のような事態はなかなか現実的にはない。ただし書きのケースというのはどういう場合にあるかというような問題もありますが、先生の御指摘の方は、ただし書きの方の問題ではないわけでございますから、実態的な面から考えて、そういうようなことは万々あり得ないんではなかろうか。形式論の方で言いましても、発行引き受けではないわけでございますから、五条が禁止しているのは、あくまでも発行の際の引き受けであって、オペでやる分は債券の売買というかっこうで行われるわけなんです。そういう意味で、実態的に申しましてまああり得ないというふうに考えます。それから、形式的にはあくまでも国会の議決をいただいてなければ発行引き受けはできないわけでございますから、そういう意味で二重にまあ万万あり得ないケースではなかろうかと思います。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、いま万々あり得ないということについては確認をしておいてよろしいですか。
  82. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 公債発行いたしまして、とにもかくにも市中が引き受けまして、一年たってこれが日銀へ買いオペによって回っていくということは、この公債はとにもかくにも市中が引き受けたものであって、そういうことは、俗な言葉でございますけれども、一応日銀へ回っていくということは、これはまあ市中が引き受けたということで免疫になったものがこれが日銀へ回っていくと、まことに俗な言葉で失礼なんでありますけれども、そういうふうに考えていただいたらどんなものでございましょうか。
  83. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 国債、地方債の市中金融機関の保有残高について、昭和四十九年度末で見ると、国債が一兆九千億、地方債については四兆四千四百四十三億円、そういうことになっているんですが、五十一年度末、五十二年度末推計はどれほどになってきますか、市中金融機関の。
  84. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 五十一年度末におきますところの国債、政保債、公募地方債をまず申し上げますが、これは金融機関の保有残高は五十一年度末で全体が十二兆六千八百八十四億円でございますが、そのうちに国債が九兆四千四百五十九億、政保債が二兆一千七百七十三億、公募地方債が一兆六百五十二億ということになっております。五十二年度末ということになりますと、これは地方債を含めましてその消化の動向とか、あるいは金融機関の売買動向もわかりませんし、なお日銀のオペレーションがございますとまた変わってまいります不確定要因が多いので、それを保有者別にいまから申し上げるということはちょっと的確に予想することは困難だということが言えるんじゃないかと思います。
  85. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの答弁から見ても四十九年が、――四十九年のは私の先ほど申し上げたので合っていますか、国債が一兆九千億、地方債が四兆四千億という、大体の概数ですが。
  86. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) ちょっとお待ちいただけませんか。――何かいまそこで集計しておりますので、ちょっとお待ち願いたいと思います。――大変失礼しました。四十九年は、市中金融機関の国債の保有額は一兆九千五十二億でございます。それから政府保証債は一兆三千八十九億でございます。ちなみに、四十九年度のいまの国債でございますが、全保有額が九兆六千五百八十四億でございますので、全体の構成比で見ますと一九・七%が市中金融機関が保有している国債ということになります。それから公募地方債でございますが、これは四十九年度五千八百四十七億でございます。
  87. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうしますと、国債が約一兆九千億円、四十九年度末。それが五十一年度末が九兆円ですから、何倍になりますか、約四倍近く。それから地方債の残高も約倍ということになると思います。そうなりますと、五十二年度以降でもざらにこれから巨額の国債、地方債を引き受けていかなきゃならないということに市中金融機関がなるということになりますけれども引き受けられる限度は一体どのぐらいだろうとお考えでございますか。
  88. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 大変むずかしい御質問で恐縮でございますが、まあ私どもの感じから申し上げますと、やっぱり金融環境あるいは経済環境が変わってまいりまする、あるいはそういうことが急激に資金需要が高まってくるというような形で想定されます場合には、市中金融機関といたしましてもかなりポジションが悪くなるということは覚悟をしなきゃいけませんけれども、いまの時点におきまして、私ども経済成長と、それからそれに見合う発行の量、見合うというか、それに対して発行量を考えてみました場合に、いまの資金量で引き受けられないという状態にはならないのではなかろうかというふうに考えております。
  89. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 下手をすれば倍々ゲームということになりかねない引き受けということになるだろうという感じがしますけれども引き受けが一体どのぐらいになるだろうかということについての具体的な御答弁はちょっとむずかしいかもしれませんが、現在は大量の国債発行政策時代、そういうことになっていますね。公債の大量発行時代という中で、やはり先ほどからも国債管理政策検討が出ておりますけれども、国債管理政策検討を大蔵省現在行っていると、こういうふうに聞いております。具体的に言うと、この間の参考人の意見聴取の場合でも、戦前からの国債の発行条件、非常に免税の問題、いろいろ具体的なことがずっと挙げられてまいりました。そういうことで、さらにいろいろ発行条件について考えてもらいたいという意見が強かったんですけれども、その発行条件の問題、それから消化方法としてどうするかということが大量国債の発行となればなるわけでございますけれども、消化方法として政府のいわゆる資金運用部というものと、それから市中金融機関、個人消化、それから海外での引き受け、こういうふうにいろいろなってくるだろうと思います。その消化先の見込みはこれからどう考えていかれるんですか。これは金融機関の四十九、五十だけ見ても倍だの四倍だのという引き受けになってきますと、一年たてば買いオペになる対象のものもありますけれども、やはりかなりの負担が大きくなってくる。国の銀行と言えるような郵便貯金が三十兆円を超えるというようになってきておりますので、そういう点でそういう消化先の見込み、こういうものについてどう考えているか伺いたいです。
  90. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) あくまでも市中消化が原則でございますから、金融機関を含めましてシ団を編成いたして、そこで意見を聞きながら消化をいたしておるわけでございますから、ただいまの見通しにおきましては、そういう心配はないということでございますけれども、何せ資金ポジションの関係等を考えますと、将来やはり市中消化の問題につきましては国債管理政策の一環として、やっぱり一つ発行条件とか流通市場の整備とかという基本的な問題についてその都度対応をしていく以外にないんではないか。端的に申し上げますれば、公社債市場の整備育成ということとタイアップしていくべきものでございますので、その辺はいま私どもが勉強いたしておりますような方向も長期的な見通しと、ある意味においてはここ一、二年の間に急激に出てくる問題というものを合わせながら対応していくという考え方でございます。  それで、国債管理政策につきましては、どこまでからかということでございますけれども、四十二、三年ごろからかなりいろいろな国債に対する施策を講じてまいりまして、そういうものもやはりいまの国債管理政策という言葉で呼べる範囲のものであるかと思います。そういうものも現在の市中消化に非常に役立っておりますので、また先ほどから和田先生、竹田先生の御質問にもございましたように、私どもも金利改定の都度やはり実態になるべく合うような発行条件というものを考えてまいっておりますので、それがいまは大変、いま現在のことだけ申し上げて恐縮ですけれども、国債が売れているということにもなっております。したがいまして、これから先もやはり市中消化の原則を崩さないで、あくまでもシ団の意向を十分そんたくした上で、この消化についてはいろいろな工夫をこらしていくということが必要ではないかというように基本的に考えております。
  91. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 市中消化の中で個人とか海外とかいうのはどういうことになるわけですか、海外も入りますか。
  92. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 大体海外と申しますと、個人等という分類の中に私どもは入れておるわけでございますが、これは余りホットマネー的な形で日本の国債が買われるということは私どもとしては好みませんで、短期の金利差か何か国際金利差を使って買いに来るというものは市場撹乱を起こす可能性もございますから、ただし、健全な海外の投資家というのが買いに来るものについてまで妨げをしておりませんけれども、大体私どもは個人等という分類の中に入れておりまして、金額的にはそれほど大した金額にはなっておりません。
  93. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 もう一つは、いま資金運用部それからいま言われたような市中消化の問題がございました。それの消化見込みはどうですか、能力そのほかどう見ている。
  94. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 資金運用部資金は、主として三割以上の資金が郵便貯金でございますから、郵便貯金の伸びは他の預金の伸びに比べますればまだ伸び率は高うございますけれども、従来の高さに比べますと、かなりのベースダウンをしてまいっておりまして、したがって、将来の資金運用部の原資という形におきましては、余り多くを私は期待できないのではないかと思います。現在程度を一応基準にして私どもは考えております。
  95. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 既発の公共債についての扱い、これをどうするかということが一つの問題だろうと思いますけれども、それについてはどう考えておりますか。
  96. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) これは経済なり金融環境の変化によりまして、かなり目まぐるしく変わってくる要素があるということを、最近の状況を見ましても、国債もパーオーバーになって百二円ぐらいになっているということは、国債発行以来ないことでございます。したがいまして、流通市場の実態というのはかなり千変万化いたしますが、基本的にはやはり発行条件と流通条件というものが有機的に機能し合うといいますか、そういう形で発行され、流通されていくということが基本であろうと思います。ただ、そこは理想論でございまして、各国ともいろいろな苦労をいたしておるところでございますので、流通市場は特に資金の需給関係というものが非常に変化をつけてまいりますので、ただ、私の感じでは、やはり市場が厚くなれば衝撃が来ましてもかなりバッファーがききますので、どうしてもやはりいままでに比べますれば、公社債市場の厚みを増させるということ、あるいはそこに資金を投入してくる魅力ある市場になるということが大事なことかと思います。これは国債を含めまして、地方債につきましても社債に対してもそうでございますから、そういう形は絶えず私どもとしては証券局、銀行局、私の理財局を含めまして、今後大蔵省が気をつけていかなければならない重要なポイントだというふうに考えております。
  97. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いま証券局のお話一つ出たんですけれども、魅力ある流通市場という、こういうことが一つあるわけですけれども、その育成の問題と、この間も私は参考人には聞いたんですが、国債の値崩れの問題が自由市場への大量な売却、いわゆる金融機関とかそういったことから、値崩れなんということもいまは心配ないけれども、将来起きるかもわかりませんし、この二点についてどう考えているかちょっと伺いたいんです。
  98. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 将来のいわゆるクラウディングアウトとか、あるいは逆に大量の国債の売りが出てくるというような状況に対しましての対処の仕方は、これは具体的にどういうことを考えていくかということになりますと、むしろ大変抽象的でございますけれども、国債をめぐるところのいろいろな手段、たとえば国債整理基金もその中に入りますけれども、結果としての日本銀行金融政策も入ってまいりましょう。それから同時にまた恐らく値崩れが来るということになれば、売却する方から見れば、余り大量な値崩れを生じさせるような売り方というのは、恐らくそれは自分のところの手持ちの国債の評価減を生むわけでございますから、はなはだ危険な状態でございます。したがって、そこにある程度の節度が出てくるであろう。そういうことを考えますると、その時点における財政金融当局の判断というものは、かなり複雑なる配慮をしなければならないだろう。それはまたそれを可能にするようなものでなくちゃいかぬので、私どもとしてはその場合に備えるやり方についての勉強というのはいま具体的にもやっておるわけでございますが、じゃ、どういうことを考えているかということになりますと、やはりそれは、市場に対してそれが国債だけが暴落するというような問題というのは私はないのではないか。金融機関といえども国債以外の債券を持っておりますから、その債券が売られてくるというような状況であろうかと思います。そうしますと、国債以外の債券との間のバランスを見ながら考えていくことでもありましょうし、したがいまして、流通市場の動きというのは千変万化でございますので、あらかじめこれでやりますというようなことを申し上げることよりも、有事に備えていろんな発動できるものをどういうふうに見ていくかということになるんではないかと思います。  大変抽象的な答弁で恐縮でございますけれども、御指摘の点が十分わかりますので、いざというときの備えというのは私はやっぱりそれに見合った対策というものを、決してどろなわ的でなくてやっていくということには、一番望ましいことは、やっぱり市場は層が厚くなっていくという、市場の層が厚くなっておれば、そういったある程度の売りに対して耐えられるような市場となっておれば、そう値崩れというのはまず起きないであろう。そういうようなものに一体市場をどう育てていくかということ、基本的にはそこにまた戻ってくると思います。
  99. 安井誠

    政府委員(安井誠君) ただいまの岩瀬理財局長がお答えいたしたとおりでございまして、要するに公社債市場というのは発行市場、流通市場通じまして金利機能がいかに働くかということが基本だろうと思うわけであります。金利機能が働いてまいりますれば、それに応じて発行条件を変えていけば流通市場との間の格差というのはなくなるわけでありまして、岩瀬局長の言われました公社債市場の厚みを増す、つまり日本の場合の公社債市場というものは、まだ外国に比べ、特にアメリカあるいはヨーロッパの市場に比べまして必ずしも整備されていないということを言われております最大の理由というのは、いわゆる間接金融偏重と申しますか、直接金融市場からの資金調達が少ない。それは企業もそうでありますし、個人の家計資産も比較的にまだ社債、債券あるいは株式に対する投資が少ないというところからくるわけでありまして、今後この安定成長期におきますところの資本市場、公社債市場はどうあるべきかということは、いま私どもにとりましても初めての経験でございますので、証券取引審議会の基本問題委員会というのを設けまして、学者の委員の方々を中心に御検討いただいておるのが現状でございます。
  100. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 国債管理政策は先ほどの答弁だとずいぶん昔から検討していたみたいなふうな、何か拡大された解釈での検討の話だったんですけれども、まだほんのわずかの時間しかというより、まあわずかというより、そういうことを言われると相当長い期間ということになりますし、少なくとも五十年当時から現在までこれは言われ続けてきていますね。そういう点では二年間も続けてきておるけれども、答弁としては、具体的にその場その場においてできるだけ市場のニーズに合わしていくようにしていると言われるかもしれませんけれども、具体策を示せないというふうにしか私どもはとれないわけですけれども、何かこれは特に特別な理由がある、あるいは特別に何か作為的なことがあってこういうように明示ができないというふうになって、改善というものをおくらせていると、こういうことなのかどうかですね。非常に意地の悪い質問ですけれども
  101. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 私どもは別に具体的なことがいまないからとかいうことではなくて、過去におきましてやってまいりましたことをここでるる申し上げるのは失礼でございますけれども、かなり四十三年ごろから、まだこの大量発行を想定しない前からの、いわゆる額面を市中で消化しいいように小額面にいたしましたり、あるいは累積投資という形でもう五千円くらいから国債が買えるような、そういう制度を設けてみましたり、あるいは全銘柄を上揚さして、その市場での取引を円滑にするような方法を考えましたり、また中期国債を出しましてそういう新しい需要にこたえていくなり、それから国債を担保としての金融を受けられる方途についてもいろいろ手段を講じましたり、さらにまた先ほど証券局長が申しましたように、発行条件に当たりましても、特に大量発行下において五十年の十一月の長期金利改定のときには、他の債券に比べて大幅な国債の金利の、何といいますか国債が比較的有利な状況になるような金利の決め方をしていたわけでございます。  それでなおかつまた今度の長期金利の改定に当たりましても、再度そういうような配慮を行ったわけでございますが、そういうようにしまして、国債というもののなじみなり、あるいは信用なり、あるいは持って損をしないというような状況をつくっていくということは、逆に言えば今度は買う方から見れば安心して買えるという品物になるわけでございますから、そこにやっぱり資金の流れがついてくる。資金の流れがついてくるということでございますれば、これはまあ釈迦に説法で恐縮でございますけれども、まあ朝市にしても魚市場にしても同じ考え方です。要するに品物がよければお客が来る、お客が来ればまた品物が出てくる。こういう状況というものは、市場の層を厚くしていくということになるわけでございまして、そういうことが一番基本論であろうと。  それから、なおかつ激変的な問題が起きましたときに、出動するものとして、私どもはやはりそれは国債整理基金というのがございますので、それもまた活用をしていきたい。そうすると国債整理基金だけができたということではございません。その中に織りなすところの金融政策というものも日本銀行の方でおとりになるものもございましょうし、また景気が戻ってまいりますれば、税収なり国債の発行自身の新発の現象というのはいずれ出てくるわけでございまして、そういうことでいろいろの条件が変わってまいりますので、その都度対処していくことと、それからいままでやってまいりましたことと、それから今後も発行条件等についての考慮をやっていくというようなことをあわせて国債管理政策を、これからももう実現できるものからやっていこうというのが構えでございまして、それから同時に勉強会を理財局も証券局も別々でございますけれどもやっておるわけでございます。
  102. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 くどいようなんですけれども、先ほどからどういうように引き受けをさせるかということで聞いてきたんですけれども、先ほどからシンジケート団の話が出てまいりました。そのシ団の引き受け割合は発行総額のうちのどの程度にしていこうと考えているのか。それが一つです。時間がないのでもうこれで最後になると思いますから。  もう一つは、個人消化を拡大するということがずいぶん言われてまいりましたが、その個人消化の拡大が銀行等の預金とのバランスを崩すようなことが起きてこないのか。また影響がなしとはされないと思いますので、その点のバランスをどう考えていくのか。この二つを伺いたい。
  103. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) シ団の引き受けと申しますのはこれは金融、証券合わせまして、それから信託、保険等も入っておりますが、そういうところとのいわゆる民間の資金の量というものと、こちらの発行主体の発行計画というようなものを一応突き合わせて、そこで話し合いを進めていくわけでございますから、その点は、引き受けが決まるということになりますれば、その段階で消化が一応資金量に見合ったものとして承諾されたという形になるわけでございます。したがいまして、今後もやはりシ団引き受けによる市中消化原則というものはたてまえとしてこれからも続けていきたいと、これしか本来方法はないんではないかと考えております。  それから、個人消化につきましては、これはいろんな工夫もいたしてまいりましたし、ことしの一月から中期国債も出しまして新しいニーズにこたえることにいたしてまいりましたが、何せこの三カ年間の四月だけの発行額を見ましても、おととしが百五十億でございましたのが、去年の四月は五百億をオーバーしております。ことしの四月は千六百億台というふうに、やっぱりかなり国民に知ってもらうということによりまして国債が買われております。ただ、しかし、それはあくまでも個人消化というものに、私はそれほどウナギ登りに発行額を全部消化してしまう、一〇〇%までいくというようなことは私どもも考えておりませんで、やはり個人の金融資産というのは、恐らく何かに乗りかえて、預貯金がかわるなり、あるいは信託がかわるなり、あるいはほかの債券から国債にかわるなりというような、シフトが行われるというような形ではあろうかと思いますが、いまの国債個人消化というものは一〇%というのが従来の一応のめどでやってまいりましたが、それが、かなり十何%という段階には来ておりますけれども、その分だけやっぱり減れば金融機関の方の発行額の、引受額の方が逆に少なくなるという算術は出てまいります。しかし、これからどの程度にカーブをとって伸びていくかというのは、いままでのような伸び方になり得るかどうかということについては必ずしも自信があるわけではございません。
  104. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これで私は最後にしますけれども、結局、シンジケートの方で引き受ける、しかし、それは苦しくなれば大量の売却ということで換金せざるを得なくなる、こうなってきますね。個人の場合の消化を進めれば、ほかの方の事業債であるとか、あるいはその方に投資をされていたものや預金等に影響が出てくる。国民の持っておる総額というものはそんなにふえているわけではありませんからね。それをたらい回しをしていくうちには、どうにもならなくなれば、どうしてもどんどん換金せざるを得なくなるでしょうし、また日銀での引き受けがふえてくるのは当然のことになってきます。結局、ぼやぼやしていると財政インフレということになるということは間違いないというふうに思わざるを得ません。その財政インフレになるような大量国債を出した、国が助かって国民が泣かされるというような状態になっていくという、そんなインフレを誘発するとか、インフレを待望するというような考えでは、財政当局というものは、私はないことはわかりますよ。わかるんですけれども、これは、やはりいまの国債管理政策をよほどうまく考えて運用していかないと、また改善をぴしっと行っていかないと、私はこの財政インフレに対する歯どめがなくなっちゃうんじゃないかという感じがしてなりません。五十五年で終わるとか終わらないとかと言ったって、とてもできることじゃないだろうという感じもいたします。そうなると、建設国債の方はどんどんどんどん借りかえていくという、最後は財政インフレは間違いないことだろうと思います。一体いつまでにこの管理政策の改善はきちっと行えるようになるのか、それを聞きたいと思います。
  105. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の増発が必ずしもインフレにつながるということは私ども考えておりませんが、インフレ論争の中でやはり大事なことは、市中消化の原則を崩さないということでございますから、その市中消化の原則というものを堅持しながら、御指摘のようなインフレに対して、やはり財政当局としては、もちろん日本銀行も一緒でございますけれども、そういうことにならないようにいろいろな手だてをしていく必要が私はあると思います。ただ、五十五年までの間に、先生がおっしゃった財政インフレにならないような手だてはないかという御質問に対しましては、これは、そういうふうにならないように努めてまいりますということしかお答えがないんじゃないかと思います。
  106. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 午後三時まで休憩いたします。    午後零時十五分休憩     ―――――――――――――    午後三時三分開会
  107. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、矢追秀彦君、近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として、太田淳夫君、橋本敦君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  108. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 休憩前に引き続き、三法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  109. 渡辺武

    渡辺武君 大蔵大臣に伺いますが、税制調査会が、国会終了後早い時期に開かれると見られますけれども、この税制調査会に諮問する大蔵省の諮問案、もうぼちぼち固まっているころじゃないかと思いますが、その内容はどんな内容になるのか、お知らせいただきたいと思います。
  110. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 税制調査会に対しましては、これが新しく構成され、三年間でやっていただくことになっておりますけれども、その第一回の会合に際しましてすでに諮問案を出したところでございまして、進展する社会経済情勢下における税制はどうあるべきかと、こういったようなテーマでお出しをしておる。で、元来、現在構成しておられる税制調査会に対しましては、諮問を一回やっておる、こういうことでございまして、その諮問に応じまして、これは四十九年の十月からですが、現在その諮問に対する答申の一環としまして、税制調査会では新規税制のあり方といったようなものを鋭意検討していただいたということでございます、まだ完結いたしておりませんけれども。で、それにつきまして、昨年の十二月ですか、各小委員会と申しますか、部会と申しますか、そこで一応の検討の結果、まだ成案でも何でもありませんけれども、そういったようなものが税制調査会長に報告されておるということでございます。で、これにつきまして、この税制調査会の任期がことしの秋の十月ということになっておりますから、それまでに鋭意小委員会か部会かでつくられたもの、これを中心といたしまして、そこで検討をしていただいて、そうして答申を出してもらうと、こういうことに相なっておりまして、その間、大蔵省といたしましては、税制調査会の委員の方々にはできるだけ自由な立場で検討し、かつまた、その案もつくってもらう。で、大蔵省といたしましては、この調査会の御指示に従いまして、あるいは資料を出すとか、データを出すとか、そうしてかつまた、調査会から意見を問われますれば、意見をその席上で陳述するというような形をとってまいっておりますので、今度は大蔵省の方から何か案といいますか、あるいはたたき台といいますか、そういったようなものは、これは出すようなたしか方式にはなっていない、そういうことでございます。
  111. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、今度は改めて諮問をするということはないんですね。
  112. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) はい。
  113. 渡辺武

    渡辺武君 若干来年度税制については、今国会になってからの一定の経過がございます。御承知のように減税要求がありまして、その折衝の中で、不公平税制については全面的な洗い直しをやるという大蔵大臣の御答弁もありました。したがって、大蔵省としてもその公約を果たすためにも、今度の税制調査会にはその方向での諮問をなさるんじゃないかというふうに私どもは理解しているわけですけれども、全然そういう点はお考えないですか。
  114. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) そういったような経過につきましては、大蔵省の主税局から税制調査会に対しまして、たとえば今度の不公平税制ということについて国会ではこういう意見があったと、で、これはこういうふうにひとつ考えてもらいたいと、そういったようなことは逐一これは税制調査会に事務当局から報告もいたしまして、いろんなデータとともに、これを税制調査会に対して綿密にもたらしておると、こういうような方式でございます。
  115. 渡辺武

    渡辺武君 新聞記事を使って質問しますと、どうもそれは大蔵省の関知したことじゃないという御趣旨の答弁返ってくるのでまことにやりにくいんですが、ここに五月二日の日本経済新聞の切り抜きを私、持っているんですが、これに来年度税制改正の主な審議項目として、いま大蔵省が考えている内容は次のようなものだという趣旨で、一般消費税の創設、それから法人税率の二-三%引き上げ、有価証券取引税の税率引き上げ、揮発油税・地方道路税、自動車重量税の課税強化、それから酒・たばこの消費者の負担のあり方の見直し、企業の租税特別措置の整理・合理化、それから所得税減税のあり方、などだというふうな記事が載っているわけですね。で、こういうふうなお考えはいまおありなんでしょうか。
  116. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 税制調査会では、いまおっしゃられたようなこれ非常に税制にとっては大事な項目だと思います。そういったような項目で、何税をどうということはまだ考えておらないのでありますけれども、そういったような項目、八項目にわたりまして、もっと細かくありますけれども、そういったようなものが一つの研究題目ですか、勉強題目ですか、そういったようなものを税制調査会においてこれはやってもらっておりますが、それについて新聞社がどこでかぎつけたのか知りませんが、いかにも、かくのごとく決定しておるんだというふうに私はそれは報道されたものだと思いまして、まだ全然何税をどうしようかというようなことについてはまだ本当に決まっていないと。いろんなデータを、いろんな素材と申しますか、そういったようなものが爼上において勉強されておると、こういうことでございまして、それをどう決めるかというようなことはまだ決まっておりません。
  117. 渡辺武

    渡辺武君 いま八項目とおっしゃいましたけれど、いま私申し上げたものと重複しているのはいいんですが、重複してないものについてちょっとお知らせいただけませんか。
  118. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 先ほど大臣が八項目と申し上げましたのは、税制調査会の第二部会におきまして、消費課税、資産課税につきまして考えられる新税項目、これは大蔵省が考えているんじゃございませんで、過去に国会とかいろんな政党で御提案になっているものを洗いざらい一遍出しなさいという部会長の御提案がございまして、それで並べましたものが八項目でございます。先ほど委員が挙げられましたのは、そういう新税項目のほかに既存の税制についてのいろんな考え方を幾つか挙げられたと思いますが、そのうち一部分は昨年の十二月に中間報告がございました中に問題点として指摘されている項目もございます。いずれにいたしましても、先ほど大臣が御答弁にございましたように、税制調査会がこれをどういう方向で御結論をお出しになるかというのは、実はこれからの作業でございまして、そういう御結論をいただいた後、税制当局として五十三年度以降それをいかに制度化していくかと、こういう段取りになるわけでございます。
  119. 渡辺武

    渡辺武君 ぼくの伺いたいのは、その八項目というのはどういう内容かと。重複を避けるために、先ほど私申し上げたのは、重複している分はいいがということを言ったんです。それで、特にいまおっしゃった新税項目ですね、これを一応並べてみたとおっしゃいましたが、どういうものが並んでいるのか、それもついでにお知らせいただきたい。
  120. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 部会長の提案によりまして資料として提出いたしました八項目と申しますのは、土地増価税、それから富裕税、それから製造者消費税、それからEC型の付加価値税、それから大規模売上税、大規模取引税、それからギャンブル課税、それから広告費課税でございます。
  121. 渡辺武

    渡辺武君 大分間接税関係のやつが中心のように思いますが、大蔵省としては、大体いま出された新税項目の中でどういうものが望ましいというふうに考えておられますか。
  122. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) それらの問題につきましては、まだこれに対して優先順位とか、あるいは甲とか乙とか、そういったようなことはまだ考えておりません。
  123. 渡辺武

    渡辺武君 大臣はいままで、とにかく五十五年度までに赤字公債は解消したいと、そのためには来年度どうしても新税制が必要だということを強調してこられたわけですね。そうしますと、やはり新税制という点は、具体的に言えばいま税調でずっと出てきている幾つかの項目ですな。EC型の付加価値税だとか、大規模売上税だとか等々ですね。こういうものが含まれているというふうに理解してよろしゅうございますね。
  124. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) まだそこまで進んでおりませんことを言い切るわけにはまいりますまいと思いますけれども、まあ今日日本の国の税制を大観いたしてみますと、直間の比率が七、三といったように私も記憶いたしておりますが、何も七、三が悪いとか、あるいは五、五がいいんだとかいうようなことまでまだいっておりませんけれども、ともかく税制を改正するに当たりましては、そういったようなものが一応参考としてこれは頭の中へ入れてくるというもので、しからばそのうちの何を優先するとか、どれをどうとか、あるいはそういったようなことはこれは今回はやらないんだとか、そこまでまだ実は到達いたしていないというのが正直ないまの段階でございます。
  125. 渡辺武

    渡辺武君 参考までに伺いたいんですが、いまお話の出た大規模売上税ですね、これはどういう税制ですか。
  126. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) ポイントは実は二つございます。大規模といいますのは、文字どおり、全部の企業の売り上げにかけるんではなくて、その大規模をどのラインに置くかというのが一つ問題でございますけれども、比較的大きな企業の売り上げに対して課税するというところが大事なポイントでございます。売り上げと申しますのは、実は間接税にいろいろなタイプがあるわけでございますが、たとえばEC型の付加価値税でございますと、製造段階から小売段階まで各段階で課税いたしまして、前段階の税額控除という方法をとっておるわけでございますが、前段階の税額控除という方式をとった、しかも大規模な売り上げに対する課税である、一般消費税であるというふうに御理解願いたいと思います。
  127. 渡辺武

    渡辺武君 前段階控除方式というのは、大規模売上税でも含まれているということですか。ちょっといまよくわからなかったもんだから。
  128. 梅澤節男

    説明員(梅澤節男君) 前段階の税額控除に税制の技術としてはいろんな手法がございますけれども、考え方としては、どういう手法をとるにかかわらず控除を考える控除型であるというふうに御理解いただいてよろしいかと思います。
  129. 渡辺武

    渡辺武君 大臣、先ほども申しましたように、来年度の税制というのは、これは国民にとっても、恐らく政府にとっても非常に重要なものになってくるんじゃないかというふうに思われるわけですね。ところがそれが税制調査会に改めて大蔵省として諮問をすることなくして、従来の経緯でずっと答申を待つというような御趣旨の御答弁だったと思いますが、私それでいいだろうかという気持ちが非常に強くするんです。これは間接税が中心の新税制になりそうだと。しかも、いまお話の出たようなEC型の付加価値税だとか大規模売上税だとか、とにかくこれは物価に織り込まれて大衆負担非常に重くなるだろうと思われるようなものが並んでいるわけですね。ですから、こういう問題については、これはただ単に従来の経過だけで答申を待つというだけでは済まないんじゃないかというように思いますね。  各党とともに不公平税制の是正ということを非常にあの減税交渉の経過の中で主張してきたわけですから、だから私はやはり、大蔵省が来年度税制正式に決める前に、各党のやはり税制についての意見を十分に聞いて、特別に、そうして方針を決めたらどうかというふうに思いますけれども、その点はどんなふうに考えていらっしゃいますか。
  130. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 各党の御意見はこの国会の間しょっちゅうお聞きをいたしまして、それに対していろいろと論議を重ねていただいたと。その間におきまして私どもは、たとえば不公正税制については、これは税制の改正をするためには、不公正税制というものはできるだけ是正をしていかなければならない、その精神は私どもも尊重してまいりますということをここでお答え申し上げたことを私は記憶いたしております。決して忘れておりません。そういったような国会におけるいろいろな議論の、論議の経過や、あるいは各党における強い御主張などというものは、主税当局が税制調査会にこれを十分伝達をいたしましてそしてやっておるということでございまして、そこで私どもの考えといたしましては、そういったような材料は提供する、国会における重要な御意見は申し上げる、税制調査会へ。そういうことはやっておりますが、こちらで何か絵をかいて、今度の税制改正はこういうような姿、体系でいくんだというようなことを税制調査会へ何か持ってまいることは――材料は提供いたします、あるいは国会の意見は率直に伝達する。しかしこういうものをやるんだということは、これは今日までやっていない。こういうことでございますが、御意見のほどは十分伝達をいたしておる、こういうことでございます。
  131. 渡辺武

    渡辺武君 五十二年度予算の政府案決定のときに、総理大臣も各党の党首からいろいろ意見が聞かれた。私は、大蔵大臣には、共産党の予算編成方針とも言うべきものを、特に税制なども詳しく意見として申し上げたことがあるんですが、来年度税制というのは、そういう意味で非常に政治的にも重要なものになってくるんじゃないかと思うんです。ですから、いままで各党の意見を聞いたからもうそれで、あるいは税調に伝えたからそれでいいというんではなくて、十分に聞くという機会を改めてつくる必要があるんじゃないかというふうに思いますが、重ねてどうでしょう、伺います。
  132. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 今日までずいぶんお聞きをいたしましたけれども、なおそれで足りないというようなことがございますれば、これは私が予算編成前に各党の政審関係の方々に御意見を承りましたので、そういったように私があるいは必要の場合に御意見を承るということも、これは決してやぶさかには考えておりません。
  133. 渡辺武

    渡辺武君 税制調査会も、どうも私ども税制調査会のいままでの答申等の経過を見てみますと、従来の不公平税制がずっとこう温存されて続いてきた、その責任の一端を担わなきゃならぬじゃないかという気が非常にするわけですよ。ですから、改組も近いわけですけれども、なるべく国民の意見を税調に反映できるような委員にかえる必要があるんじゃないか。あるいはそれがもしできなければ、納税者、特に大企業からの意見でなくて、一般納税者の意見ですね、これを公聴会などで十分に聞く機会を持たなきゃならぬじゃないかという気がしますが、来年度税制についてそういうことをおやりになる意図がおありかどうか、どうでしょうか。
  134. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 基本的には御趣旨のとおりだと思いますが、ただ、事実関係を申し上げますと、現在税制調査会の委員は三十名いらっしゃいますが、その中でいわゆる産業界に籍を置いておられる方は二名でございます。銀行とか証券会社とか、いわゆる財界と大ざっぱに申せばよろしいと思いますが、そういった方面に籍を置いておられる方がそのほかに二名、その程度でございますので、全体のバランスといたしまして非常に財界なり産業界なりに偏っておるというふうには私どもは考えておりません。ただ、そういった御意見が出るような運営の仕方にあるいはいささかなっておるというふうなことでもございますならば、これはまた運営のやり方としてわれわれとしてもさらに改善を考えていかなきゃならぬと思いますが、基本的にはいま申し上げましたようなことだと思っております。
  135. 渡辺武

    渡辺武君 ところで、間接税が増徴されるというのは、恐らく不可避だと思いますけれども、従来、間接税が国民にどういう負担になるのか、所得階層別の調査をして発表してきた経緯があるわけですね。それで、今回も現状はどうなっているのかということと、それからもし仮に新しい間接税の税制を確立する場合、その現状に基づいてこの税制を採用した場合にはどういう負担割合になるのか、階層別の。そういう資料はこれは十分に検討して出すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  136. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 御指摘の点については、仰せのとおり一般消費税を考えます際には避けて通れない問題であろうかと思います。私どもといたしましても、かねがねその点については問題意識を持って検討してまいったわけでございますが、ただ、いま御指摘のかつて提示をいたしましたものは、その作成手法なりいろいろな技術上かなり十分こなれておりません点がございますので、その辺のところはさらにいろいろな研究をして改善をいたしまして、できるだけ先ほどの御議論にたえるような資料として今後引き続き勉強してまいりたいと考えております。
  137. 渡辺武

    渡辺武君 いや、引き続き勉強したいということじゃちょっと何のことやらわからぬですがね。とにかく私どもが手に入れることのできた資料だけでも、昭和三十九年の税調の長期答申、この中に三十七年の一月から十二月を調査対象期間とした間接税の所得階層別の負担割合の資料があるんですね。それから同じく税制調査会の昭和四十一年度答申の中にも、これは三十八年の一月から十二月を対象期間とした調査が発表されているんです。それからこれは税調の答申の中には私ども探したが見ませんでしたけれども、泉美之松氏の「税についての基礎知識」という本の中に、これは昭和四十年分の試算によるということでやはり同じような所得階層別の負担割合の統計が出ているんです。泉さんは主税局長もされた方だと思いますが、個人でこれだけの調査はちょっとできないと思うんです。大蔵省が調査されたものだと思うんですが、これはどういうわけか公式には発表されていない。私これをずっと見ますと、低所得層とそれから高額所得層の負担割合が、間接税については低所得層の方が非常に重くて高額所得者の方が低いという傾向は、ずうっと一貫して各調査ごとにはっきりあらわれている。しかも、年が経るに従って低所得層の負担割合と高額所得層の負担割合との格差がますます大きくなっているという傾向が出ているんです。すでにこれだけの調査ができているわけですから、だから不十分な点があれば、これはこれこれこういう理由で不十分だということを注釈で書いてくれればそれだけの注意を持って見ますのでね。これだけ間接税制が大きな問題になってきているときに、当然これは税調にも出さなければならぬでしょう。また国会にも提出していただきたいと思う。そうして国民的な論議を経て、採用すべきかすべきでないかという議論をやっていくべきじゃないかというふうに思います。ぜひ出していただきたいと思うんです。その点どうですか。
  138. 山内宏

    政府委員(山内宏君) かつて御指摘のような資料を提出したことは事実でございます。ただ、それ以後それをやめましたのは、先ほども申しましたように、統計としての調理の方法につきまして技術的にいろいろまだ検討を要すべき点がございまして必ずしも十分なものではないという感じを持ったからでございます。手元にちょっと持っておりませんけれども、私の記憶では、全体的には御指摘のようなことでございますが、酒とたばこという特殊の消費税を除きますと、それ以外の消費税の負担は大体所得にパラレルになっておるかと思います。ただ、それが唯一の結論ではございません。再三申し上げますように、いろいろなお手法において研究しなければならぬ点がございますし、データの点についても必ずしも統計的に十分ではございませんので、そういうふうな点をさらに勉強いたしたいということでございます。なお、繰り返しになりますけれども、一般消費税の問題を御議論願いますについては、いまの御指摘の点がやはり非常に重大な問題であるという点については、十分な問題意識を持っておりますという点でひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  139. 渡辺武

    渡辺武君 大臣、税制については国民的なコンセンサスが必要だということは政府側もいままで言ってこられたですね。やはり国民が税制について発言して、十分なコンセンサスを得たその土台の上で新税制を私はやるならやる、やらないならやらないと決めるべきだと思うんですね。ですから、いろいろ統計技術上検討すべき問題はそれはあるかもしれません。あるかもしれないけれども、かつてはこうやってできたものが、これがいまだにできないというはずはないと私は思う。ぜひこれは出すべきだと思います。大臣の御見解伺いたいです。
  140. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 一般的な消費税といったようなものを実行するに当たりましては、御指摘の各階層別の家計における負担というものを、これできるだけ精細なものを出したいと、かように考えておりますが、いま審議官が申し上げましたとおりかつては出しておったと。しかしながら、この辺には絶対の自信を持つことのできないような部面もありまして、そこでこれいま中止をしておるような次第でございますけれども、何とか鋭意努力をいたしまして、できるだけ自信を持ってお目にかけることのできるようなものをつくりたいと、鋭意努力をいたしておる次第でございます。
  141. 渡辺武

    渡辺武君 もう時間がなくなってきましたが、公債の問題について一、二点伺いたいと思うんです。  金利の引き下げに伴って、今年度発行する公債の利率も引き下げられたわけですね。ところで、これから景気が多少でも回復して金融も引き締まりぎみになって、そして金利が上がった場合は、今年度発行の、つまり利回りの低い公債、これの価格が低落するという可能性があると思うんですけれども、その場合の対策を考えていらっしゃるかどうか。
  142. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 債券でございますから、国債の金利はやはりもろもろの債券の金利とのバランスをとりながら決めてきておりますし、今後また金融が詰まってくるとかいうようなことで、金利が上がるというような傾向が出てまいりまするならば、それは国債だけじゃなくて、ほかの債券についても同じような現象が出てくると思います。  したがいまして、その場合にはやはりそういう金利が上具する過程において、諸金利との関係において国債の金利がどの辺が適当であるかどうかという検討が行われるのは当然でございます。国債だけが値下がりをして、ほかの債券は値上がりすると、そういうような動き方にはならないというふうに考えております。
  143. 渡辺武

    渡辺武君 いや、時間がなくて、あなたの答弁はいつもピントを外してよけいなことをしゃべって、時間ばかりかかって困るですよ、率直に言いますが。ぼくは、金利が今後上がった場合、ことし発行した低利回りの国債は価格が下がるじゃないかと、どうなんだと、その場合の対策はどうなんだということを聞いているんです。端的に答えてください、もう時間ないから。
  144. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 金利が上がれば価格は下がるというのは当然でございます。したがいまして、それはしかし、ほかの流通債券との、流通の利回りの段階で、流通市場において判断されるものでございますから、それはそれとして、私どもはそれに対して必要があれば適当な措置を講ずることもございますけれども、私どもは流通市場の状況を見て判断したいと考えております。
  145. 渡辺武

    渡辺武君 たとえばことし引き受けシンジケート団が大量の国債引き受けると。それからまた個人も多少買うでしょう。それが先行き金利が上がったら国債の価格下がるだろうという可能性がある場合に、安心して引き受けられるかというと、私は引き受けられないと思うんだね、安心しては。だから、それについて国債の価格が下がったときにはどうしますということを、いまのうちにちゃんと検討しておかなきゃならぬと思いますね。  たとえば国債整理基金で価格が下がったときに買い支えるということもよく議論はされていますね。それから資金運用部資金で買い支えるとか、あるいは日本銀行が買いオペで買い支えるとか等等いろいろ道は考えられると思う。あるいは下がったものを借りかえしていっそ高利回りの国債に借りかえるという道だってなきにしもあらずだと思うんですがね。そういう点全然考えていないんですか。
  146. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 先生の御前提の中に、答弁が長くて恐縮ですが、国債だけが価格が暴落して金利が上がるというようなことは私はあり得ないと思います。そういう金融が引き締まってくるときには、当然にほかの債券も売られるでしょう。あるいはそういう状況があれば値段は下がるわけでございます。金利が上がるわけでございます。その状況の中では、国債だけに何か買い支えをするとかいうような必要は私はないと思います。国債だけが何か特別の理由でもって下がったりというようなことになりましたならば、それは国債に対する信用を失うことになります。しかし、金利というものは、全般的なバランスさえとれておれば、それは国債にかかわらず金融機関が持っております社債、地方債、いろんなものが先に売られるかもしれません、国債が後になるかもしれませんし、そういうことは私どもとしては、それこそ市場の中における自由な価格というものが形成されていく方が、むしろ望ましいと考えておるわけでございます。
  147. 渡辺武

    渡辺武君 最後に一問だけ。時間きて残念です。  それからもう一点伺いたいのは、国債の借りかえです。従来の発行された国債ですね、これの借りかえはだれの保有国債が一番大きいかということで私調べてみましたら、日本銀行の保有国債ですね。たとえば昭和五十年の場合ですと、日本銀行が買いオペをして保有していた国債のうち四千三百二十六億円がその年に満期が到来したものですが、そのうち現金償還されたものが四百三十四億円で、残りの三千八百九十一億円の国債は、これは借りかえになっている。ところが市中金融機関は非常に少ない、三千九百八十六億円の国債をその年引受けて、そうして借りかえになったのはわずかに二十四億円その年に。それから個人の保有分は全然借りかえゼロと。政府保有分も、政府というのはこれは資金運用部ですね主として。その年二百五十億円の公債を買って、そして二百四十億円が借りかえになったと、こういうことになっておる。この数字を基礎にして考えてみますと、今後大量の国債が発行されると、個人所有のものも金融機関所有のものも借りかえが行われる可能性が十分出てくると思いますね。そういう場合が予想されるかどうか、これ一点伺いたい。  それからもう一点は、従来、いま申しまた数字で見ると、個人の保有分、金融機関の保有分、これは借りかえはされたくないと、これは低金利だったと、国債の利回りが低かったということと、それから金融が長期に固定化することを恐れたという点もあるだろうと思うんですが、日本銀行あるいは政府保有分ですね、これが借りかえ債をほとんどしょっちゃっているという形になっている。今後もその傾向は依然として残るんじゃなかろうかという感じがしますが、その点はどうなんだろうか、いずれにしても大量の公債が、今後次から次に借りかえられていくわけだから、金融機関や個人が借りかえをいやがるという場合には、これは日本銀行がそれをかなりの程度引き受けるというか、しょわざるを得なくなるんじゃないかというふうに思います、どうですか。
  148. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 借りかえ全般のお話は、第一の点は、日本銀行に、従来の国債でございますと、一年たったら買いオペされておりますので、どうしましても長期のものを、資金運用部なり市中から買い上げたものを、日本銀行を通じて資金運用部なり、あるいは日本銀行なりに保有されているものが多うございますから、現在の市中銀行が持っております分の中からの、その保有量と借りかえの分とを比較いたしますと、それは確かに先生の御指摘のように、市中銀行のそこの割合が低いという形になると思います。一度市中から出まして、市中消化を原則として消化されたものでございますから、これは借りかえにつきましては日本銀行にそれがございましても、それはそのまま借りかえをいたすというのが原則になっておりますから、その点は借りかえ全般のお答えとしていま私の申し上げたとおりでございます。  それから、個人の借りかえ、あるいは市中銀行の借りかえの問題でございますが、いま現在は個人は借りかえをいたしておりません。いままでの実績がございません。将来、いま私ども頭の中にございますのは、いわゆる積み立て方式の形で五千円とか一万円とかという少額のものから国債を買わしている個人がございます。累積投資と申しておりますが、そういう人たちの国債というのは、場合によっては償還期限の到来するというときに、なおかつそれがまだ累積して積み立てをやっていきたいという希望が出てまいりますと思いますので、そういうことを主体としながら個人の借りかえということについても今後は前向きに考えてみたいというふうに考えて「おります。  金融機関の借りかえにつきましては、これは原則としてはやはり金融機関手持ちのところで、もちろん毎年現金償還を一部いたしておりますけれども、その残りについての手元の借りかえは金融機関にお願いせざるを得ないというふうに考えております。
  149. 三治重信

    ○三治重信君 最初に、国債の個人の所有に係る担保の問題をお伺いしたいと思うんですが、この国債は十年の長期――最近五年ということですが、五年でも一般の個人から見るとその間に貯金を引き出したい、あるいは必要な資金を確保したいという問題が起きてくると思うんですが、いま国債の担保はどれぐらいの掛け目で借りられるんですか。   〔委員長退席、理事戸塚進也君着席〕 それはどういうところで――銀行でもどこでも自由に持っていくと、それのどれぐらいの掛け目で借りられるんですか。
  150. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債の担保金融というのは、いろんな、たとえば国民金融公庫あたりでも国債担保の貸し付けをやっておりますのでございますが、いま代表的なものは日本証券金融という会社がございますが、これは国債の担保金融というのをかなり手広くやっているわけでございます。これは大体掛け目九五%でございます。
  151. 三治重信

    ○三治重信君 そういうふうに非常に特定な金融機関は有利にやってくれるんですが、一般の信用金庫とか相互銀行とか市中銀行はどうなんですか。
  152. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 一般の金融機関が国債を担保にして貸し出す場合の掛け目でございますが、これは掛け目というものにつきましては、御承知のとおり各金融機関の裁量に任しておりますので、一律な決めというのはございませんけれども一つ銀行の例で申しますと、ある金融機関では国債の掛け目を八五としております。これに対しまして金融債あるいは一部上場社債が八〇、このようになっておりまして、一般の債券よりは国債を優遇しておるわけです。
  153. 三治重信

    ○三治重信君 この点を、今後個人に国債を所有さしてもらうためには、必要な場合には売却という手もございますけれども、やはりできる限り一たん買った債券は財産として持っておって、必要な場合には必要な額、臨時に借りられると、そしてできるだけ早くその借りた資金を償還できると、こういうようなことが国債の値段を維持していく一つの手段だと思いますとともに、私はここで金融政策一般を論ずる時間はございませんけれども、見ておりますと、やはり銀行とかその他みんな庶民の貯蓄を集めるだけの金融機関になっておって、庶民に対して。もっとそういう財産を自分が必要なときに担保にしていつでもいい掛け目で借りられることをぜひ大蔵省は銀行金融機関に対して、非常にめんどうくさいかもしれんけれども金融債みたいに一定の期限が来れば必ずその元本が、貸した金を確保できるような資産については、非常に高めの掛け目で、そして利子はできるだけ安く貸せる施策をぜひつくっていただきたいと思います。   〔理事戸塚進也君退席、委員長着席〕 それからさらに、これはわが党また私も非常に主張しているところなんですが、どうもこの消費者物価が、定期預金金利や国債のそういう金利よりか高く物価がいった場合には、やはり低所得者に対する、また低資産者に対して、個人に一定の限度額、私は三百万円ぐらいがまずめどだと思うのですが、その高いそういう消費者物価に――目減りをしない程度の利子を補給すべき対策をぜひ今後講じてもらいたい。もちろんこれは消費者物価がそんなに上がらぬで、三%か四%になってがまんできる程度のときには問題ないのですが、そういうインフレとこういう資産の目減り対策について金融政策、利子対策として、ぜひこういう問題を、社会保障は厚生省だ、労働省だというだけでなくして、やはり金融政策の部面からもこういう特別な配慮が今後なさるべきだと思うのですが、こういうものについての考え方はどうですか。
  154. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先生御指摘のまず第一の、国債を担保にする金融の、貸し付けの円滑化についてでございますが、先生御指摘のとおり、国債の個人消化の円滑化を図りますためには、いろいろな施策とあわせまして、それを一般の民間金融機関に持って行った場合に、容易にそれを担保に金が借りられるということが必要であります。この点につきましては、一般的には債券担保は御承知のとおり流動性もあり、かつ安全性も高いものでございますが、貸し出しに際しましては不動産担保あるいはそれ以外の担保に対して優遇されているのが現状でございます。しかし、個人の場合には何か、何らかの形で制度的なものがあるいは提携的なものが設けられた方がより円滑化に資することになるわけでございます。この点につきましてはすでに一部の銀行においてそのような提携化が進んでおります。これにつきまして、一、二の銀行についての例を申し上げますと、たとえばある銀行では証券担保ローンという制度をつくりまして、一般の無担保ローンの枠が五十万円であるのに対して、五百万円の枠を設定しております。それから期間も一般の無担保ローンが三年であるのに対して五年までで、金利も一般のローンに比しまして〇・三%低い線で貸す、このような制度が現在できておるわけでございます。もちろんこれは保証人は必要としておりません。今後はこのような方向につきましてさらに一般民間金融機関を指導してまいりたい、このように考えております。  それから第二に、御指摘の目減り対策の問題でございますが、これはかねがね申し上げておるところでございますけれども、本来物価の上昇に見合うような金利をつけるということはインフレを追認したような形になりますので、金融資産のあり方としては必ずしも適当ではない、このように考えております。やはり物価の安定に対して全力を注ぐのが必要ではないか、このように考えておる次第でございます。
  155. 三治重信

    ○三治重信君 従来のそういう目減りに対しての考え方は、そういうことが一般に言われておりますが、やはりそういう経済政策の中にも庶民や一般市民の生活の最低の保障のためには、こういう利子でもあらゆる経済の対策に、ミニマムのものについてはやはり変動を補償していくような対策をぜひ考えていく金融政策を今後考えてもらいたいと思います。  それから、ひとつ大蔵大臣、先日の国際金融関係の問題をさらに続いてお伺いしますが、前回は、非産油途上国の千八百億ドルに対する赤字問題をお尋ねしたのですが、さらにそれと同時に共産圏、いわゆるソ連を中心とする共産圏の方も外貨の負債が四百億、ドルから今年末にはなるだろう。そのために、共産圏の外貨貿易関係には相当影響が出てくるんじゃないかど、こういうふうなことが言われております。現に、日本も北朝鮮――朝鮮人民共和国に対して金融がつかないために非常に貿易が障害を受ける、こういうかっこうになっておりますが、こういう問題に対して、日本が共産圏との貿易に対して、非常に共産圏の外貨不足が貿易上、非常な重要な施策に支障を来すんじゃないかと思うんですが、これに対する対策はどういうふうに考えておられますか。
  156. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) ソ連等の共産圏の対外債務につきましては、正確なデータはないんでございますが、各種の機関で調査しているところによりますと、まあ四百億ドルとか、そういうふうな大きな数字が言われております。で、これらの国につきましては、その経済が計画的に運営されておるということもございますし、それからソ連等につきましては資源もあるという事情もございまして、いままでのところ、大きな支払い遅延はしておらないわけでございます。で、私どもといたしましては、これらの国に信用を供与する場合には、それぞれの国の信用能力あるいは返済能力、それから経済情勢を見ながら、ケース・バイ・ケースに慎重に考えて信用を供与するというふうな姿勢をとっておるわけでございます。
  157. 三治重信

    ○三治重信君 それからいま一つ、きょうの新聞なんかにも出ておりますが、日本の為替銀行が何か三百億ドルからのいわゆる為替資金を借り入れをしている。これに対して日本銀行がこういう無制限に膨張する為替銀行のドルの借り入れに対して、準備預金率を適用してその借り入れを規制する。借り入れが少なくなるような方策として預金準備率を適用するようにしたと、こういうふうになっておりますが、まあ私は、この三百億ドルからの借り入れを日本の為替銀行がしているということは、非常に驚異であって、最近までは日本は黒字国で、外貨が蓄積して困っていると。困っているというよりか、そのために日本の円レートが貿易に支障を来すほど上がると言われる中で、こういうふうな蓄積、この借り入れがどんどん行われているということは、片方は外貨の準備がえらいたくさん出ているように外国には見られ、この裏の方はほとんど余り議論されておらぬ、これはどういう現象なんですか。
  158. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) まあおっしゃいますように、日本の為替銀行は短期の外貨債務が二百九十億ドル程度ございます。もちろ資産もあるわけでございまして、資産百五十億を引きますと、ネットで百四十億ドルぐらいの負債超過になっております。日本の外貨準備が百七十億ドルぐらいございますけれども、両方合わせて金融勘定として見ますと、差っ引きまして三十億ドルぐらいしか出ていないということは事実でございます。  なぜこれほどに為銀の対外債務がふえたかと申しますと、何といいましても、三年前からの石油危機後の輸入資金を賄うために、為銀が短期のユーザンス等を得たということは大きいわけでございます。たとえば七二年末におきましては、外貨準備は百八十三億ございまして、当時は為銀の対外ポジションは負債超過ではなくて、五億ドルの資産超過であったわけでございます。したがいまして、両方合わせますと百八十八億ドルの金融勘定としての対外資産超過であったわけでございますが、三年後の七五年末におきましては、両方合わせましてマイナス六億ドルということになっております。で、この間の百九十億ドル程度の差というものは、まさに石油の価格引き上げ等に伴います借金の増加と、こういう形で国際収支の赤字を埋めてきたということであろうかと思います。  それでは、なぜこういうふうにドルをたくさん、外貨を借りてくるかと申しますと、やはり基本的には、いつもと言えませんが、おおむねドルの方が金利が安かったと。それから円の場合には、日本銀行金融政策の対象になりますが、ドルの場合には比較的自由に使えると、使えたということがあろうかと思います。  そこで、今日日本銀行で対外債務等に対しまして〇・二五%の準備預金を課するということに決めましたのは、内外金融を同じイコールフッティングにもっていこうという試みの一つでございます。いま日本の対外取引は、輸出におきまして円が使われておりますのはわずか二、三割でございますし、輸入におきましてはわずか一%ということでして、アメリカ、ドイツ等に比べて非常に自国通貨の使用が少ないわけでございますが、その原因には、いま申し上げましたような円と外貨との使いやすさ、あるいはその金利の違いというものがあったわけでございまして、まあ今日の日本銀行の講じました措置だけですぐに円シフトが起きるとは思いませんが、長い展望をいたしますと、やはりそういう方向に少しずつ改善していくんではないかと思っておるわけでございます。
  159. 三治重信

    ○三治重信君 いま一つ最後に、まず先日も新聞には、日本のことしの民間企業の海外でのドル貨債の発行が、今年だけで二十一億ドルも発行されていると、こういうふうになっている。そうすると、まあ貿易の突き上げが、その強さで日本に円対ドル相場が高くなるのもやむを得ないのですけれども、どうも貿易以外の国際対策がさらに加重されて円が高くなっているんじゃないかと、こういう現象を見ると。そうすると、日本ももっと海外投資をするか、外国からの日本の起債を認めるか、――日本の円を三百六十円に近づけるよりも、このような外貨に対する諸外国からの非難を避けるためにも、やはり海外投資なり外国の日本における起債を認めていって、こういうような日本が外貨のドル起債をするのと相殺するような政策というものはもっととれないんでしょうか。
  160. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 最近では、日本の企業が外債あるいはインパクトローンという形で外貨を取り入れておりますのは年に二十億ドル見当ございますが、その分は確かに御指摘のように、そのまま放置すれば円を強くする要因になるわけでございます。他面最近では、国際機関とか外国の政府が東京市場におきまして円建て債を発行するのもふえておりますので、それはそのまま放置いたしますと、円を安くするという方向に動くわけでございます。で、御指摘のように、こういう際に、まあ資本輸出をいたしまして、もう少し日本の黒字を出してはどうかということにつきましては、先般のロンドンの首脳会議でもそういうふうな合意がございましたし、その前の週のIMFの暫定委員会でも、黒字国は調整過程に加えまして、長期資本の流出を図れという話になっております。円建て債が最近大分日本の金利の低下もございましてふえてきておりますが、私どもといたしましても、そういう方向でこれから進めていきたいと思っております。
  161. 福間知之

    ○福間知之君 総理に対しまして幾つかの質問をさしていただきます。  まず顔を見まして感じたことなんですが、一つは、先般来の日ソ漁業交渉、いろいろ難航がありましたが、一定の結論が得られました。鈴木農林大臣以下関係者の御苦労を多とするわけでありますが、いずれまたソ日漁業協定をめぐる交渉も始まるわけでありますが、総理はあの一連の経過の中で、そしてまたあの結果についてどのようにお感じになったかということ。  それから二つ目は、それと関連しまして、すでに国内における魚価のつり上げが国民の生活を圧迫しかけつつあります。去る十一日、私は物価特別委員会におきましても、すでにこの問題を指摘して、関係省庁の適切な措置を要望したわけでありますが、けさほど総理が、場合によっちゃあ売り惜しみ買い占め法なども適用するというほどの御決意だと伺いましたが、やはり大手水産会社の目に余るようなそういう悪徳行為が幾つか露呈してきている、こういうふうに私は感じるのですが、その点今後の対策はどうかということ。  それからもう一点、これまたテレビの交渉問題で一段落を見たわけでありますが、かねて総理にも私はお聞きいたしましたし、また増田審議官にもお会いもして、いろいろ意見交換をしましたけれども、今後自動車とか鉄鋼とかその種の業種にも、この対米輸出をめぐりましてアメリカ側の規制措置というものが懸念されるわけですが、カーター大統領との会見その他を通じて、総理のこれに対する御決意を伺いたいと思います。
  162. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日ソ交渉につきましては、まず一つの大山を越したわけです。例年日ソ漁業交渉というのがあるわけですが、これは北洋のサケ・マス漁業のことでございます。ことしはそれに加えまして、ソビエト側が二百海里漁業水域ということを言い出した。その中でわが国がどういう操業をするか、こういう問題が起こってきたわけです。それについて、いわゆる北方四島、わが国の固有の領土と主張するところの四島をめぐる問題をどういうふうに措置するかということで難航をいたしたわけであります。しかし、領土問題に事が波及しますと、これはなかなか問題が解決しない。そこで、領土は領土、魚は魚というふうに切り離して解決したい、こういうふうに思いまして、そのため粘り強く交渉したんですが、わが国の主張のとおりになりまして、その点はまあ一つの大山を越したと、こういうふうに見ております。なお漁獲量の交渉がありますが、これはいま鋭意先方と詰めておる、こういう段階でございます。  それから、魚の価格の問題でありますが、これはイカでありますとか、それから青い魚ですね、これの一部で漁獲量が激減をしたという事実があるのであります。そういうようなことで魚価がじり高になってきた。そこへこの日ソ漁業交渉ということになれば、これは私はほうっておくと心配だなと、こういうふうに思いまして、そこで漁業交渉がこれは長引きそうだなという予感を感じたその瞬間ですね、四月のことでありますが、農林省、企画庁に対しまして、必要があれば買い占め売り惜しみ防止法、これを適用する、その準備を命じたわけでございます。まだ発動には至っておりませんけれども、もし売り惜しみ買い占めだと、こういう事実を発見いたしますれば、いつでもこれを発動すると、こういうことになっております。  それからテレビ交渉、これはまあ双方の大体満足し得るところで妥結をしたわけでありますが、他に波及するかと、こういうお尋ねでございますが、これは私は、国際会議におきましても、あるいはカーター大統領との会談でも、何かわが国貿易業者の行状について不満とするところがあれば、何でも言ってください、もう包み隠さず遠慮しないで言ってくれ、私どもの方はその話し合いに応じますと、こういうふうに言っておりますので、まあ問題がありましても、話し合いで解決するし、またそうさせたい、またさせ得ると、そういうふうに考えております。
  163. 福間知之

    ○福間知之君 総理、先般ダウニングの首脳会議に御出席をされました経過につきましては、国内の報道におきましても大体明らかにされているわけであります。私はまあ今日、世界的なグローバルな経済という視点で、一つは、何と言っても石油問題にも象徴されますようないわゆるエネルギー資源、これはまあ総理もしばしば口にされているわけです。この絶対的な一つの数量の上での制約というものがある、また数量だけじゃなくて、価格がきわめて暴騰しましたから、その結果としての国際的な規模での収支のアンバランスというものが大きな問題じゃないのか。それが地域的に部分的に、あるいはデフレ効果をもたらしたり、あるいはオイルマネーが問題視されたりということになりかねない、こういうふうに思います。まあ総じまして各国相互間における適切な協力というものがなければ、これからの相互の繁栄というものはなかなか期待できない、そういうふうに感じますが、ロンドンの会議は、大所高所に立ってまさに大局的な視野で話し合いがなされたと思うんです。幾つかの私、この中身にお聞きしたいことがあるんですけれども、時間の関係ございますので。景気対策について、あるいはまた国際収支のアンバランスをどうするかという問題について、さらに貿易とかエネルギー、南北問題などなど、まさに私どもが重大な関心を持ち、これからわが国としても積極的にいままで以上に改善策を持って対処しなけりゃならぬ、こういう課題が多いように思うわけですけれども、総理のまず概括的な所見、あるいは具体的に、先ほど貿易問題でもちょっと触れましたが、その種の問題について、国内における産業構造に対する政策とかその他いろいろ私は問題が具体的にあると思うんですけれども、どのように準備を心得ておられますか。
  164. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まさに福間さん御指摘のように、世界はいま非常に困難ないろんな問題を抱えておるんです。インフレと不況が混在しているという問題ありますね、それから深刻な南北問題、さらに黒字国、赤字国の問題、それからさらには資源有限というか、エネルギーをめぐる諸問題、こういうものがありまして、その根本的な原因はどこにあるかというと、やっぱり三年前の石油ショックからスタートしておる、こういうふうに見るわけであります。そういう中で、やはりこれはお話のように、各国が角を突き合わしておったんではこの問題は解決しない。各国とも言いたいことはずいぶんあると思う。それで、言った方がいいと思うんです。しかし結局は、そういう論議の中で、協調と連帯と申しますか、小異を捨てて大同につくと、こういう形に世界各国の姿勢がおさまりませんと、私はこの難局は打開できない、こういうふうに存じまして、この会議におきましては、私は、私の冒頭発言におきまして、一九三〇年代の世界経済の処理の仕方、世界の指導者たちがとった措置、そういうものは誤りであった、その誤りを繰り返して犯してはならぬということを強調したわけであります。まあ結果におきましては、私は世界の主要先進工業国は、やはり小異を捨てて大同につかなきゃならぬという考え方に統一された、こういうふうに思います。  私は、会議に臨むに当たりまして、二つの心配事というか、関心事ですね、関心事があったんですが、一つは、アメリカがあの会議が始まる直前に減税法案を取り下げてしまった。そこで、わが国の中にも、世界の中にも、さあアメリカは、いわゆる機関車、アメリカを中心として、日本、ドイツなどとともに世界の経済打開、つまり景気上昇を引っ張っていくんだと、こういう立場に立っておったわけですが、その姿勢を変えたんじゃないか、こう世間でずいぶん言う人がある。福田さん、あなた日本だけが景気政策で突っ走ると、孤児になっちゃいますよなんという注意をしてくれる人もあったくらいであります。私は、カーター大統領と三月に会談した際、やっぱりアメリカ日本、ドイツ、これが中心になって、その他の力のある国々と相携えて世界経済の景気を回復しなければならぬ、それをひとつやりましょうやということを話し合ったんですが、私は、そのアメリカの考え方、これに変わりはない、こういうふうには考えておったものの、世界の中には疑いを持つ者がありまするから、ちょうどこのロンドン会議はいい機会だ、この機会にアメリカにその姿勢をはっきりさせるべきである、これは非常にいい機会だ、これが私の一つの関心事です。  それからもう一つは、とにかく景気がどうも思わしくない。特に開発途上国の景気状況が悪い、深刻です。そういう中でどうしても起こりやすい現象は保護貿易主義なんですよ。この勢いというものがこの会議等で是認をされる、肯定をされるというようなことになったらこれは大変なことになる。ぜひともいい機会であるから、この保護貿易主義はこれを排除すると、これを排斥するという姿勢を先進工業国一体として打ち合わせなきゃならぬ、こういうふうに思っておったわけであります。  しかし私は、第一の心配であるところのアメリカ政策、これは減税政策はやめましたけれども、当時減税政策を打ち出しておったときの五%成長という目標、これよりさらに上回る傾向である。減税政策をやめましても、五・八ないし六%の成長をする見込みであるということを明確にカーター大統領はロンドン会議の会談の席上で公に出しておるわけであります。そういうことで、アメリカの姿勢に変化はないということは確認をされたわけであります。  それから、保護貿易主義の問題、この問題につきましては、これは多くの国からいろいろ問題あるけれども、保護貿易主義をまた一九三〇年代のようなああいう愚かさを繰り返してはならぬという見解が述べられまして、結論的には保護貿易主義を排除するということに相なりましたわけです。大変私はよかったと、こういうふうに考えております。
  165. 福間知之

    ○福間知之君 いまいみじくも総理、後段でお述べになられましたように、いわば景気の問題について言うならば、スリー・エンジン・カントリーズ論があったわけですけれども、どうも総理が向こうへ行っておられる間の報道によりますと、西ドイツのシュミット首相は、むしろインフレ抑制の方に傾斜をしておるような報道があったわけです。また、いまのアメリカのカーター大統領の公の席上での成長率目標達成への決意、これ伺ったんですけれども、それが本当にそうなのかどうか、総理は直接お聞きになったんですが、私どもは、これアメリカは減税を一応停止したと、中止したということは、むしろインフレ懸念をしたからではないのか。また一方、景気も予想外に着実に回復テンポに入っていると、こういうふうに判断をしておったわけですけれども、総理のお話のように五・八ないし六%ですか、成長目標ということで、これはわが国としては大変好ましいことだと思います。  ところで問題は、私たち日本の場合に、総理がかねがね目標として出されてきました六・七%程度成長目標を達成するために、どうしてもインフレーションの危惧を持たざるを得ないわけであります。今年度予算の中での公共投資も七三%程度、前倒しで十兆円になんなんとする金額がすでに使われ出したわけでございますが、この後、先ほどの魚価の問題じゃありませんが、また米価の問題もこれあり。さらにまた、公共料金も一部値上がりが予想されるというような中で、どうしても一般庶民にとって心配なのは物価上昇であります。ロンドン会議でもこの点が、インフレを抑制しつつ景気の回復なり拡大を目指すんだということが宣言に盛られていますね。で、私は、総理がいままで約束を国内的にもしてこられた、あるいは国際的にも今回は公にされたということで、それに到達することがむずかしいとなると少し約束をたがえるということで、インフレーションへの危険を犠牲にするというふうなことはよもやあってはならないと思うんですけれども、果たしてまさに七%程度の物価上昇で今年度は、しかも成長率目標達成ということは、いまの経済情勢の推移の中からいかように御判断をされますか。
  166. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのインフレですね、これはもう言わずもがなのことです。これはインフレは本当に社会の敵です。これを再び犯すというようなことがあったら大変なことになる。経済も、景気だ、景気だと私よく言いまするけれども、これはインフレにならない、インフレのない成長ということなんでございまして、インフレの問題につきましては、十分配慮してまいるつもりでございます。  昨年――五十一年度の消費者物価は、これは異常気象ですね、こういう関係もあり、それから先ほど申し上げました魚の値段の問題、それからやっぱりあの異常気象の関係で果物の値段、こういうものが思ったよりもはるかに高い、高騰しましたというようなことで、九・三%というような高い数字を示したんですが、しかし、ことしを展望してみますと、私は、ことしの物価は明るいと、こう見ておるんです。もう四月すでに、何しろ前年四月比でいいますと八・四%というところへきております。それからその後を検討してみますると、これは公共料金ですね。おととしは電電料金とにかく五割アップしたわけです。その半分の影響が五十一年度にあらわれてきておる。それから国鉄運賃、これ五割の値上げをしたわけですから、これも大きな影響を持ってきておる。  しかし、ことしは公共料金圧力、これは非常に軽減されるんです。もう電電公社の問題はない。それから国鉄にいたしましても、政府案がそのまま御承認いただくということになりましても、これは一九%ですからね。その他の公共料金につきましてもよく気をつけてまいりますが、公共料金圧力がこの二、三年に比べて非常に低くなる、そういう段階に入ったということ、それからまた円の価値、これが貿易黒字とうらはらに強くなってきておる。これは輸入物資の価格をそれだけ引き下げる、こういうことになるわけであります。それがじわじわと物価全体に影響してくる。しかもいま卸売物価、これが非常に安定をしておるわけでありまして、今日時点で前年度対比してみますと三・六ぐらいの程度におさまっておるわけであります。  そういう状態でありますので、これから景気政策をとる、そうするとセメントだとか木材だとか、こういうものの需給がかたくなってくる、そういうものに対して特別の配慮をしております。それから魚の値段、これにつきましても、いまいろいろと工夫をいたしております。各個別の物資につきまして、その需給、価格の動向の十分な監視をいたしておりますので、何とかして七%台に消費者物価上昇目標というものに到達したい、また私はこれはできそうだと、こういうふうに見ております。
  167. 福間知之

    ○福間知之君 じゃもう一点それに関連しまして、貿易の問題でございます。  まあフランス・ジスカールデスタン大統領などが特に発言されたようですが、いわば組織された貿易とか、管理された貿易という表現が使われたと聞きます。もともと自由貿易ということをテーゼとしてきましたはずでございますが、今回はそういう表現の発言、あるいは宣言文の中ですか付属文書の中ですかでも、やはり自由貿易という言葉にかわりまして開放的な貿易という言葉が入っている。過去の二回のランブイエ、サンファンの会議等に比べるとやはり文言の上でも違うわけであります。もちろん今日古典的な意味での全くフリートレードということはこれは考えようとして考えがたいことでありますが、しかし、まあガットの無差別自由貿易という原則、また東京ラウンド等に見られる自由貿易を拡大発展させていくという精神、そういう基調に立って考える場合に、やや今回の会議での話し合いのトーンは少し厳しいものがあったんじゃないか。もちろん今後わが国におきましても、まあ総理もおっしゃったように集中豪雨的なある業種がある地域に対してある時期に大量に輸出をするということについては、これはまあ一考を要するということはもちろんでございますが、問題は、わが国国内における各産業、各業種のやはり体質に根差しているところが大きいわけでありまして、今後の国内における産業の政策上での配慮が何よりも肝要ではないのか、こういうことを感じていますが、ロンドン会議の精神に基づいて政府は今後そういう点についていままでと違って具体的な配慮をされてまいりますか。
  168. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ロンドン宣言の第二項におきましては、各国はおのおのその掲げた政策目標を達成する、それから同時に経済安定のための施策、このことはまあ経済成長がそう高くなくまた国際収支も悪い、またインフレ率も高い、そういう国々に当てはまるんだと思いますが、安定のための施策、それを実行するようにおのおので努力すると、こういうことになっておるわけであります。わが国の場合について見ると、これはそんな国際的な申し合わせを待つまでもなく、これはまあ昨年の夏ごろから景気は停滞期に入っておる、しかも、需給は非常に緩い状態である、そういう状況ですから、景気政策をとっても物価にそう大きな影響はない、そういう背景の中で景気政策をとること、てこ入れ政策をとること、これが肝要である、こういうふうに考えて、まあ予算でもお願いいたしましたように、経済全体といたしまして六・七%成長を実現するということを国民にお約束をしているような形になってきておる。それを実行してくださいと、こういうような、また国際間の要請ともなってきておるわけでありまするから、これはどうしても六・七%成長を実現する、こういうことは、私は国民に対する義務であり、また国際社会に対する責任である、こういうふうに考えております。  さてそれをそれじゃ実現するにはどうするかというと、やっぱり私は日本の場合は公共投資をやるほかないと思うんです。民間設備投資といったってまだ需給ギャップがかなりある、そういう中で設備投資が起こるはずがないんです。やっぱり政府が需要を造出するというのが一番近道だというので、公共事業中心の予算を編成し、しかも十兆円、政府の統制力の効く公共事業は十兆円あるんです。その十兆円の七割三分は上半期中にこれを契約を了する、またこの四、五、六の間に十兆円の半分、これを契約をこなしてしまうという政策を進めておりますので、私はこの一、二カ月の間にかなり景気上ははっきりした上昇傾向が見られるということを確信をいたしております。ただ、それは国民経済全体の話でありまして、やはり各企業一つ一つをとって見るときには、業種において非常にばらつきがあるわけであります。また全体としても、仕事はふえたけれども利益はふえない、こういうような状態もある。そういう中で金利の負担、これが非常に重圧をなしておる、こういうふうに見るわけであります。そういうようなことで金利負担の軽減を図るという政策を一方において打ち出しております。同時に、ばらつきがあると申しましたが、いわゆる特殊な不況産業、これに対しましては一つ一つその対策を個別に打ち出して、その処置を個別にやってみたいというふうに考えて、いまその準備作業を進めておるという段階でございます。
  169. 福間知之

    ○福間知之君 いまのお話の後段に関連しまして、二日ほど前でしたか、日銀総裁もいわばいまの景気というものに対する一つの認識をある講演会で発表されましたけれども、それを報道で知る範囲では、やはり高度成長時代における感覚、そういうもので見ると、まだまだ不況感が払拭し切れてないというふうな一つ指摘がありました。あるいは総理もいまちょっと触れておられたんですけれども、ミクロで見た場合にいいところと悪いところ、跛行的な状態というものがかなりあるわけであります。これは当然のことで、そこがもう高度成長時代と違うわけでありますが、今後の日本経済はやはりそういう一つの困難性というものが想像されるわけでして、具体的な施策をひとついまおっしゃられたように今後国内的に整備を進めていくということが私は、ぜひ必要じゃないか、これは各階層、立場の違う者を超えて、やはり社会が全体として一つの新しい秩序をつくり出していくために必要じゃないか、こういうことで考えておりますが、積極的にひとつこれはわれわれにも提起を願いたい、審議の対象にしていただきたい、こういうことをお願いしておきます。  時間がございませんので、あとはしょりまして、三つばかり聞きます。  国債はすでにかなりの量になっておりますから、問題はその償還のめど、これは必ずしもいまわれわれの審議の中でも十分ついておりません。さらにまたその償還のための年度年度ごとの財政を補うためのいわば税収、こういう面につきましても税調での審議が行われているとはいうものの、当委員会等でもっと率直な議論というものがあっていいのじゃないか、増税を好むと好まぬにかかわらず爼上にのせた議論がなされなければならぬと思うんですけれども、大胆な勇気ある提言が余り政府の方からございません。そういう点で所見をひとつお伺いしたいことと、それからロンドン会議でもありましたが、今後の経済の景気回復の推移では、新しい政策の追加ということも考慮するということですが、わが国にとって置き直して考えた場合には、具体的には補正予算等どうするのかということが一つ念頭に浮かぶんですが、総理はそういう補正予算を組む必要がないというふうなお考えかどうか。  それから当面の国会、会期も残り少なくなりましたが、幾つかの重要案件が残っております。会期延長については各党それなりの思惑で報道がされておりますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  170. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、これからの日本経済運営の中で国債問題というのは最も私は大きな問題になってくる、こういうふうに思うんです。国債八兆何千億のものを一年のうちに出す、こういうようなことを長続きさしておいたらこれは大変なことになる。まあ私は、ことしはこの八兆数千億円の国債がこれは円滑に消化される、こういうふうに見ております。しかし、景気が活発になり、設備投資も盛んになるというような状態までいきますと、国の資金需要、それから民間の資金需要とは相競合する、こういうことになると思います。相当金融政策はむずかしい段階になっているわけでございます。そういうことを考えますと、どうしてもこの国債発行の今日の状態を続けていくわけにはいかない。それではどうするかというと、やっぱり一方においては国費の切り詰めをしなければならない。他方におきましては増収の手段というものを考えなければならぬ、こういうふうに考えておるわけですが、ただ、国費を切り詰めると申しましても、なかなか国の政策を施行するという際に、そう多くを切り詰める、金額的に多くを期待するということはむずかしかろうと思うんです。結局、増収の方策を求める、こういうほかはないんじゃあるまいか。そういうふうに考え、この一、二年の間はそういう増収の手段をどういうふうに選択していくかということが大きな問題になってくるであろう、こういうふうに思っております。これからさらに具体的な処理をどうするかを詰めなければならぬ、こういうふうに考えております。  そういう中で、国債の償還、特例債はとにかく十年間にこれを償還するんですから、その財源も保有しなければならぬようにいたします。  それから、景気状況によっては補正予算を組むかというお話でありますが、先ほど申し上げましたように、今度の予算を実行いたしますと、かなり景気は上昇過程に向かってくるだろうと、こういうふうに思うわけで、そういう中で国がまたさらに新たなる追加需要を造成する、こういうような必要はなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。ですから、ただいまのところ補正予算をさらに組むというようなことは予定いたしておりません。おりませんが、しかし、経済成長六・七%程度のことはぜひ実現するという考えですから、それがどうも怪しまれるというような事態がもし仮に出てくるというようなことになれば、そのときはそのときで何らかのまたその欠落を補うための施策は必要になる、こういうふうに思います。  それから、会期の問題をどうするか、こういうお話でございますが、お話しのように、幾つかのまだ重要案件が残され、しかも、今週いっぱいをもちまして会期は終了する、こういうことになるので、会期終了をせしめるのか、あるいは会期を延長して諸懸案を片づけるのか、その辺につきましては、この両三日の国会の動き、そういうものをよく見定める必要もありまするし、同時にこれは各党の御意見も承らなければなりませんし、両院議長の御意見もまた承らなければなりませんし、まだいまのところ会期をどうするかということにつきましてはまだ固まった考えは持っておらぬというのが現状でございます。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 最近の国際会議の中から二、三総理の見解を求めたいのですが、まず第一は、いま行われていますIMC、この主要テーマは、非産油開発途上国の累積債務問題であるというふうに伝えられております。私は、これは単に不良債務を片づければよい問題ではないと思うんです。今後なお債務が累増していくことも考えられるわけでありますから、単に金融問題だけではなくて、きわめて世界政治の問題であると認識をいたします。  そこで、福田さんに指導される日本政府としては基本的にどういうお考えをお持ちになって臨みますか。
  172. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いわゆるIMC――国際金融会議ですね、これには私は参加はいたしておりませんし、タッチしておりませんから、その会議の成り行きがどうなるかこれは承知いたしませんが、しかし、今日の世界情勢というものは、これは非常にむずかしいと思うのです。と申しますのは、いろいろなむずかしい要素が戦後出てきておる。一つは東西関係というこれは政治上の問題ですが、経済に大きな影響がある。それからもう一つは南北関係という、これも戦前になかった新しい現象が出てきている。さらに、これも戦前になかったのでありますが、資源エネルギーの有限という問題が出てきておるわけであります。  そういう中で一体世界はどうするのか、こういうことになりますと、やはり一つ一つの国が我を張っておったのではもう世界は安定しないと思うんです。やっぱり話し合い、譲り合い、助け合い、そういう中から私は世界の生きる道というものが発見されるんだろう、こういうふうに思うので、先ほども福間さんに申し上げたのですが、小異を捨てて大同につく、この精神こそがいまの大事なことではあるまいか。それによって初めて、いま当面しておる不況打開の問題、したがって、失業を退治するという問題ですね、それからインフレを抑えるという問題も、あるいは南北問題あるいは黒字国、赤字国というような問題、それらの問題も本当に協調と連帯といいますか、大同につくというそういう姿勢でないと解決されない。また、わが日本としても世界の平和なくして、また世界の繁栄なくして、わが国の繁栄もない。これはもう世界とともに生きていくという立場でないとやっていけないんじゃないか、そういうふうに考えております。なるべく多くの国に対しまして私どもの考えを申し述べる、そして協調と理解を求めるという姿勢を進めていきたいと、こういうふうに考えております。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 大同につくというお考え方を別に否定をしませんが、今度の場合にラール提案があってみたりあるいはダート提案があってみたり、総じて、これは民間銀行の協力による融資制度という形のものが出されておりますね。私は日本政府の考え方、これに対応するにはしっかりしたものをお持ちになるべきだと思うのです。私たちが考える限りにおいて、アメリカの多国籍銀行の不良債務を結果的には肩がわりすることになるような形のものは決して大同につく姿ではないだろう。その意味で、多国籍銀行の行動にも規制をやっぱり考えていくべきではないかということを私たちは考えますが、総理はそういうお考えをお持ちになりましょうか。
  174. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いまIMFを中心といたしまして、困窮した発展途上国、それに対する援助をどうするかということを考えておるわけであります。困窮しておる開発途上国というのに二種類ありまして、最も貧困な開発途上国、それからそこまではいかないけれども非常に苦しい立場にある開発途上国の、その二種類ありますが、その二種類で開発途上国を分けて金融問題というものを考える必要があるんじゃないかというのが大勢でございます。  それで、非常に苦しい状態にある開発途上国に対しましては、かなり条件の緩い融資、そういうことを考えるべきじゃないか。それからそこまで窮状ではないけれども、ここでつなぎの資金対策をすればこの国々の安定はできるんじゃないかという国に対して、これも緩和された形の融資を行おうということを考えたらどうだろうか、こういう二つの意見が並行して進められておるわけであります。いろいろ国際社会で議論をしたあげく、そこにその点の考え方が必要じゃないかということになってまいりましたので、わが国といたしましても、その考え方に対しましては応分の協力をいたしたい、こういう考え方でございます。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 時間がありませんから、意見は意見としてですが。  私が、特にこの問題を取り上げようとしたのは、ことし一月参議院の議院運営委員会の代表として南米その他アメリカ等回りました。日本銀行の多国籍化が急速に進んでいることがかなり話題になっています。それとともに、海外での日本銀行の行動が現地でかなりひんしゅくを買っています。  一例を挙げますと、カリフォルニア州は都市銀行全行のほかに長期銀行などが進出をしています。日本銀行同士の過当競争が大変激しいといわれるんです。今後の国際化を考えました場合に、一州に十数行もの日本銀行が進出している、こういうことは現地から見たら一体どういうことなんだろうということを、やっぱり問題として把握をしておかなきゃならぬというふうに考えるんです。日本銀行の多国籍化に対してどういう考えで、また総理としてはどうコントロールをされていこうとされますか。
  176. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かにカリフォルニア州なんかには、わが国銀行の支店もありますれば、またアメリカ籍の日本銀行というものもあるわけであります。  しかし、やはり太平洋岸のアメリカとの経済交流というのは、非常に濃密になってきておるわけでありまして、そして、それらの取引のためにわが国またはわが国系の金融機関が存在し、それなりの私は役割りを努めておる、こういうふうに思います。  それで、この銀行の支店を設置すると、これは銀行法によって政府の認可ということになっておりますので、そのアメリカ法人としての日本系の銀行、これにつきましても、いま大蔵省で許認可を管理している、こういうたてまえになっておりますので、和田さんのおっしゃるような弊害が出ないようにということを見ながら、そういう許認可をやってきておるわけであります。  しかし、その多数存在するわが国のあるいはわが国系の銀行の行状がどうだというような点になりますると、これは節度を持ってやってもらいたいということは常にこれを求めておる、こういうことでございます。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 先ほどの福間議員の質問に答えられまして、総理は、六・七%の経済成長の問題というのは、予算の審議を経ながら国民に約束したことに等しい、こういうふうに言われた。そこで、二十二日に総理は広島で、この六・七%の経済成長の達成が困難ならば公定歩合の再々引き下げはあり得る、こういう発言をなされたと報じられていますが、この真意はどこにありますか。
  178. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは報道の方が少し先走って書いておるように私は思います。私は、先ほど福間さんからお尋ねがありましたように、六・七%成長ができなかった場合にはどうするんだと言うから、六・七%成長はいまの予算が発効され、またああいう金融政策もとられたことを背景として実行される、実現されると、こういうふうに考えておると、こういうふうに申し上げておるんです。ただしこの六・七%成長は、国民に対する約束をしたようなことにもなっておるし、また国際社会に対する責任でもあるから、これは実現しなきゃならぬ。もしこれを、その実現を妨げるというようなことがあれば、その時点で臨機応変の措置を講ずるということを申し上げたわけでありまして、公定歩合ということが頭にあって申し上げたわけじゃないのであります。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、その臨機応変の中には、先ほど質問にあった補正予算も入っていなければ、公定歩合の再々引き下げも入っていないということになりますか。その二つとも入っているということになりますか。
  180. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いまの時点では、六・七%成長は、今日の財政金融を通ずる諸施策を強力に進めていきますれば、これはいずれの施策も必要はない、追加的な施策の必要はないと、こういうふうに思うわけでありますから、今日この段階としては、補正予算も公定歩合の再々引き下げも入っておらぬと、こういうことでございます。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 総理は、公定歩合のあれがありまして――日銀に来てもらっているんですが、総理が否定をされましたから日銀には伺いませんが、公定歩合の三月、四月と二度にわたった引き下げの効果ですね、これは一体あったんだろうか。公定歩合の再引き下げによって商社、鉄鋼などの株価が上昇しました。しかし、これらの企業は、それ以前から余裕金を市場や手形売買に向けてそういう意味金融利益を上げていたわけですね。一方で中小企業の倒産、これは一向に減少しないわけですね。減少しないばかりじゃない、ふえていると言ってよい状態であります。そうすると何のために公定歩合が引き下げられたんだろうか。私はこの委員会では何度もこの疑問点を投げかけてきたんです。繰り返してそのことを言ってきたんです。うわさによれば、自由民主党の参議院選挙に向かっての資金が、これから操作されるなどというようなうわさも飛んでいるほどでありますが、そのことを抜きにしても、総理はやっぱりどういうふうにこれを評価されましたか。
  182. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 普通の場合には公定歩合を下げますと、金融の量的緩和、これが一緒になって動くわけです。それから同時に金利の引き下げ、それが行われると、貸出金利の引き下げが連動してやってくると、こういう二つの機能が出てくるわけでございますけれども、今回は、この金融は量的にはこれを緩和する必要がないのだ。もう十分金融は量的には充足されておる、こういう時期でございますので、主として今度の公定歩合の引き下げは、これと並行してやりまする預貯金金利の引き下げ、これと見合いまして貸出金利の引き下げを行うというところに最も大きなウエートがある、こういうふうな見方をいたしておるわけであります。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 連動のお話がありましたが、公定歩合に連動して預金金利も下げられたわけです。十九日の本院の商工委員会で、公取の澤田委員長は、現在金融機関の預金金利は、日銀による一種の行政指導で決められているが、こうした仕組みが今後も継続するとなると、再検討の必要が出てくると言わざるを得ない、こういうふうに答弁されているわけですね。そうしますと、この指摘に基づいた検討というものは、総理、当然政府として行われなきゃならぬと思うんですが、いかがですか。
  184. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この金利問題と、独占禁止法との関係は、非常にこれはむずかしい問題であります。いわゆる金利の自由化の問題にも関連をしてくるんですが、いま金融機関が都市銀行と言われる巨大な銀行から、信用組合という零細な銀行金融機関、こういうものまであるわけでありまして、千差万別というか、大小本当にいろんな形の金融機関が存在するわけです。そういう中で金利の自由競争ということになると、かなりのこれは混乱を引き起こす、こういうふうに思いますので、今日的な問題とすると、金利は何らかの調整のもとに動かざるを得ない、こういうふうに考えますが、長い目の問題としますと、金利の自由化、これをどうするかということは常に検討しなければならぬ。またそういう間において独占禁止法を主管する公取委員会、これとの協調連絡、これにも努力していかなければならぬ問題である、そういうふうに考えております。
  185. 和田静夫

    和田静夫君 今国会は顧みますと予算修正、減税追加問題が一つの大きな山でありましたが、今後参議院選挙が行われて、さらに院内におけるところの勢力関係というものの変化も予想される向きが非常に高いのでありますけれども、今国会を振り返ってみて、予算編成について、単にリップサービスではなくて、予算編成大綱策定の段階から野党とも話し合われ、その意見を取り入れるようにされるべきだとこう思います。アイデア豊かな福田赳夫さんとこう言われているわけですが、豊富なアイデアの中からこの問題についての御所見を承っておきたいと思います。
  186. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、予算ですね、これはみんなして寄って、そうして統一的な結論を得るということはむずかしい問題だと、こういうふうに考えております。やっぱり政府・与党が中心になってまとめなければならぬ問題だ、こういうふうに考えておりますが、それにいたしましても、私はなるべくいま和田さんのおっしゃるように、各党の意見また各界の意見、これを聞いて、そしてこれは有効であるというようなものを包摂した予算ができるということが好ましい、こういうふうに考えております。  私は、とにかく昨年は暮れの二十四日に組閣をする、すぐに予算の編成だということでありますので、十分なことはできませんでしたが、曲がりなりにも各党首に会いまして、そして御意見も拝聴し、そしてその御意見の中では共通的に一兆円減税だという御説が多かったんですが、そこまでいきませんでした。三千億円減税にとどめたわけでありましたが、とにかくなるべく皆さんの御意見を承って、そうしてそれが取り入れられるだけ取り入れるという姿勢をとったわけであります。また御審議の過程におきましても、三千億円の上にさらにまた三千億円の上積み減税を行うということも踏ん切りをつけるということにいたしたわけでありますが、五十三年度の予算につきましては、若干余裕も五十二年度に比べてあるわけでありますから、前広に各党の御意見も拝聴いたしまして、そしてできるだけ皆さんの御意見を反映した予算ということにいたしたい、こういうふうに考えております。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 さきの福田・カーター会談に関連をして、一点だけ御質問をいたしますが、在韓米軍の撤退は戦争を招く、そういう発言をしたシングローブ在韓米軍参謀長が二十一日に解任をされた。これによって在韓米軍の撤退は予想以上のペースでもって行われるのではないかと見られているわけですが、総理のこの問題に対する基本姿勢はいかがですか。
  188. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 韓国はわが国の最も近い隣国である、こういう関係で大事な国であります。同時に、朝鮮半島、これは全体といたしましてもわが国の平和、わが国の繁栄の上から見まして非常に重要な国であります。ですから、私の願うところは、朝鮮半島におきまして平和が保たれる、そして繁栄が実現をする、こういうことでございます。それにはどうするかと、こういいますると、一つの民族が南北に分かれて相争っているという形はこれはよくない。やっぱり私は平和的な統一ということが実現されるということを期待をいたしておるわけです。しかし、現実の問題とするとそれには時間がかかる。時間がかかるが、二分された朝鮮半島の状態、その中におきましては、やはり南北間のあらゆる意味においての均衡というものが朝鮮半島の平和を保障する柱である、こういうふうに考えておるわけです。したがって、その中の南北関係の均衡の中の一つの要素である軍事面、これにつきましてもバランスが失われないという状態が当面としては私は好ましいのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 この在韓米軍の撤退問題では、三月二十二日の日米共同声明で、日本とも協議が行われるということになっていましたですね。報道によりますと、すでに向こう側の代表は韓国に向かって出て、それから日本に来る。そこで共同声明の撤退という言葉には、日本側が難色を示されたということがあったようでありますが、まず第一に伺いたいのは、数日中にこの協議が行われる、その場合の日本側の規模といいますか、代表といいますか、参加をする人はどなたになりましょう。
  190. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは韓国とアメリカとの間は、これは在韓米軍のことでありまするから、これは基本的な関係です。この間においては真剣な討議が行われる、こういうふうに思いますが、一番朝鮮半島と近いところに位するわが日本、しかも日本アメリカの同盟国だ、こういうような立場にありますから、日本の意見も聞いてみるという程度の接触はこれはあると、こういうふうに思います。しかし日本が、指導的な立場においてここの協議の当事者である、この問題の協議の当事者であるということではないわけでありますから、その場合は恐らく外務大臣あるいは防衛庁長官あるいはその二人一緒、こういうケースになるだろう、こういうふうに思います。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 総理はすでにカーター大統領に意見を述べられているわけでありますから、朝鮮半島の問題について。そして先ほど来御答弁がありましたからそこを深追いをしようと思いませんが、そうしますといまの御答弁との兼ね合いでは、アメリカの計画に反対の意思を表明をされるという場合はあり得ないということになりましょうか。
  192. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) アメリカの計画に反対したところが、アメリカと韓国との基本的な関係の問題ですから、その効力が一体どうだろうこういうふうに思いますが、所見を述べる、こういうことはあり得ることであり、それからまたその所見について米韓ともわが日本の所見についてそれを一つの参考とするというケースも出てくるであろう、こういうふうに考えます。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 もう最後にしますが、国会の会期延長問題ですでに福間委員から質問がございました。わが党の態度をはっきりさせておきますが、これには反対であります。特に日韓大陸だな協定の自然承認のために大幅な会期延長が図られるというようなことについては私たちはこれを了とするわけにはいきません。このことだけは明確にしておきたいと思うのであります。  そこで、この議会政治のあり方からいきまして、非常に残念なことでありますが、福田内閣の国民の支持率というのは三〇%を下回っていますね。三月二十日の読売新聞の調査では二七・三%、歴代内閣中最も低い支持率であるということになっているわけであります。これは私が言うのじゃなくて、世論調査の結果がそういうことになっているわけですが、福田内閣は昨年の総選挙後に、先ほど総理自身がお触れになったように、成立をいたしました。その意味ではまだ福田内閣そのものとして選挙の洗礼は受けていないわけであります。したがって、参議院選挙の結果というのは、その意味では大変重要であります。で、内閣の不支持と受けとれるような結果が生まれないという保証はありません。そういう場合ですね、与野党が逆転をするというような形になった場合、これは交代をすることも含めて一つの対処をされる姿勢というものをお出しにならなきゃならぬと思うのでありますが、この結果によっては福田内閣が出処進退を明らかにされると、こういうことがあるのかどうかということが第一点。  それから第二点は、この参議院選挙に向かって福田内閣としては何を成果ないし基本的な方針といいますか、福田内閣のこれが成果だ、こういうようなものをどういう形でもって国民にアピールされようとお考えになっているのか、率直な御意見を承っておきたいと思います。
  194. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ支持率というのは、とり方によっていろいろありまして、けさの新聞あたりを見ますと三八%、これは一番新しい資料ですからぐっと上がってきています。まあそういうことですから、そんな支持率なんかについてとやかくは申しませんけれども、参議院の選挙が終わった段階でどういう進退を考えるかというお話でありまするが、憲法の規定に従いまして堂堂と行動すると、はっきり申し上げます。  それから、参議院の選挙に向かって何をするかと、まあ特に参議院の選挙に向かって政策を考えるというような考え方しておりません。やっぱりさあ働こう福田内閣です、実績を見てくれと、こういうことである。それで、第一は何といったってインフレと物価ですよ、この点でひとつ見ていてくれ、この点。それから私は、国づくりの大きな問題は、これは文教政策、これにある、人づくりにあると思います。そういう点につきましても私の見解を披露し、そして理解を求める、こういうふうに考えております。その他いろいろまあ施策を考えておりますが、それらは選挙があるから言うんだというんじゃなくて、日本の国を思い、将来を考えるとき、にこういうことが必要だということは国民に強く訴えたい、こういうふうに考えております。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 最後にします。  御意見承りました。私の方、選挙で争えば結果が出ることでありますから、お互い正々堂々と争いましょう。そのためには、長期の会期延長などはおやめになって、もう大体七月三日に向かってずっと進んでいるんですから、ひとつそういう方向で自由民主党を指導される、政府の意見もまとめられる、そういうふうに期待をいたしておきます。
  196. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 初めにちょっと魚の問題で伺っておきたいんですが、日ソ漁業暫定交渉、まあ実に二月以来というえらい長い期間かかって、異例の長きにわたって難航した末ようやくまとまってきたと、こういうふうに伺っておりまして、これについては総理以下関係者大変に御苦労さまでしたと申し上げる以外にないと思います。  私が総理にお伺いしたのは、それに伴って発生してまいりました魚価の暴騰ですね、それに対する価格安定の方策についてですけれども、まあモスクワでの交渉が長引いている間に、わが国ではサケ、マスあるいはすり身の材料となっていたスケトウ、そういうアメリカやソ連の二百海里漁業専管水域の設定によって漁獲量の確保が懸念されている、そういう北洋物が一応上がってきましたけれども、その北洋物以上に、それ以上にその外国の二百海里に関係されない近海物のアジ、サバ、サンマ、イワシといったいわゆる多獲性魚類といいますか、それまでが交渉の日程にあわせて上がってきている、まあそうして異常な値上がりをしております。  総理府の統計局が発表している消費者物価指数や小売物価統計調査、こういうので見ると、ことし四月の東京都区部の生鮮魚介の対前年同月比の上昇率が二二・七%、そういうことで、総合指数の動きとは全く異なった異常な状況を示していると言わざるを得ません。これ調べてみると、一般的な食生活に縁の遠い高級魚類によるものじゃなくて、消費の主体となっているアジ、サバ、イワシ、サンマというようなものの値上がりで、この小売価格の上昇を見ても、アジが今年の四月で昨年に比べて六八・八%あるいはサバが三一.三%、サンマが七六・四%、こういうような上がり方をしている。それから卸売の方を見ても同じように言えるわけです。こういう水産物の週間市況を見てみても、四月二十二日から二十八日まで、このときにアジは、先ほども総理が答弁されたように、漁獲高が減ったのかもわかりませんけれども、昨年の同期に比べまして四九%しか入っていない。それで値段は一七九%というように上がっています。しかし、同じように四月三十日から五月四日を見ても、四〇%しか入荷しておりませんで一六六%の値上げ、前年に比べて五六%上がっているわけです。五月六日から十二日は入荷量が六四%で値段は前年同期の一六〇%という上がり方です。これは確かに入荷量が少ない。しかし、ちょっと見てわかるのは、イワシの場合を見ると、四月二十二日から二十八日の一週間は三四%昨年よりふえています。四月三十日から五月四日は二六%ふえている。五月六日から十二日までは二四%というふうに著しい増加を示してます、入荷量は。ところが、値段の方は四月二十二日から二十八日で昨年より三五%上がっている。四月三十日から五月四日も六三%というふうに上がっておりますし、サバの場合には、昨年とほとんど変わらないような入荷量で、大体この三週間見ますと、マイナス七%、マイナス一七%、プラス九%というふうに対前年同期比では大体余り変わりがないんですが、価格の方は四月二十二日から二十八日の間で卸売が昨年に比べて一〇八%上がっております。つまり前年同期比二〇八%ということですから、倍の値段になっております。で、四月三十日-五月四日が五六%の値上がり、五月六日から十二日が六〇%というふうに、そういう上がり方をしている。  こういう背景は、たとえば北洋物がだめになったから恐らくイワシに需要がくるんではないか、近海物にくるんじゃないかということで、まあそれがこういうようなつり上げを図ってきたんじゃないか、あるいは規制を見越してつり上げをしたんじゃないかという感じがあるわけでございますが、しかし、アジなんかはこんなに急に入荷が減るのもおかしいので、魚隠し、魚転がしというようなことが考えられざるを得ないわけです。  総理にここで、この魚の問題で三つばかり伺っておきたいんですけれども、どういうふうに実態をごらんになり、責任をどう政府として感じておられるか。  二番目は、先ほどの御答弁でも、買い占め、売り惜しみの事実が確認した場合、直ちに買い占め売り惜しみ防止法を適用し、厳正に運用するということを言われました。しかし、そういう事実が確認されるより前に、いまの段階で同法の適用を行って、その法律に決められている強制権限に基づいて立入調査を実施すべきじゃないか、いまのような任意調査で事足れりというのはまずいんじゃないかということが一つございます。これが二点です。  第三点として、現在輸入制限をしている魚について関税定率法の項目から見てみると、アジ、サバ、イワシというように、多獲性魚類の大半が現在輸入の非自由化品目になっておりますが、これをやはり自由化品目にして緊急輸入をするようにするべきじゃないか、こういうように考えられるんですけれども、この三点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  197. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 魚の値段問題の実態は、これはスルメ用のイカですね、あれとかいまお話のありましたサバだとかイワシだとか、そういうものにつきましては、これは五十一年中の漁獲が非常に悪かったんです。まあ三〇%減だとか、あるいはものによりましては五〇%減だとかそういうような状態。そういうような状態で、需給が逼迫する中でじり高が続いた。そこで日ソ漁業交渉ということになってまいりますと、これはまたそれが心理的影響を及ぼしまして、そして北洋サケ・マスのみならず、以外の魚につきましてもこの値段の影響がありはしないか、そういう心配を私は感じたわけです。そこで、まあこれは日ソ漁業交渉がこれは長引きそうだなあという予感を持ったその時点において、政府におきましては企画庁それから農林省におきまして、買い占め売り惜しみ法の発動を前提としてその準備をしてもらいたいということにいたしたわけで、自来ずっと魚価また魚自体の取引の動き、これを注目しておるわけであります。で、買い占め、売り惜しみというような事態がありますれば、いつでもそれを発動するというための調査はおさおさ怠りなくやっておる。いまの段階では、私はその調査でいいと、こういうふうに思っておりますが、具体的にどうも魚転がしだ、あるいは買い占め、売り惜しみだというようなことがはっきりいたしますれば、いつでもこれを法の発動をするという方針でございます。  それから、輸入問題についての御所見でございますが、需給が本当に逼迫して、そうしてどうも価格にそれが影響及ぼしてきておると、またこれからも需給問題があるというような際におきましては、これはもう輸入をするほかはないのでありまするけれども、まあそれは輸入に踏み切らざるを得なかろうというふうに思いまするが、もうしばらく推移を見たい。それでいろいろ調査もし、まあそういう法発動の警告もするし、それから業界側を広く集めまして、そうして協力を求めるというような努力をしておりますが、昨今に至りまして、まあとにかくもう魚価は上げどまり、そういう状態になっております。それからある種のものにつきましては反落の傾向、こういうものも出てきておるわけでございますから、それらの事情もよく見守りながら万全の対策をとっていきたい、こういう考えでございます。
  198. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それから次に、財特法に入りますけれども、四月二十二日の本会議におきまして私の質問いたしました、いわゆる特例公債発行限度を法定にしろということについて、総理の答弁は、いままでの財政法令、予算の扱いの慣行、そういうものも考えるときに、特にこの際改めてそういう方式を新たに採用するという必要はなかろう、まあこういう答弁なんですけれども、私はどうもいわゆる特例公債法律案を、今回の財政特例で決まるわけですけれども、そのときにやはり発行限度額を予算に決められたという、まあ額ということよりも、はっきりと金額を四兆五百億円なら四兆五百億円と明示するなり、そういうふうにするべきではないかと思います。そういういままでの慣行に従ってということを、上からという言い方をしておりますけれども、私は慣行が間違っているからそういう問題を提起したんですけれども、この財政特例法案、一度通りますと今度は、後、補正予算を組んだ場合にはもう一遍そのための財政特例法をやらなくても、公債の、国債の増発が幾らでもできるということになるわけであります。そういう新規発行ができるという点では、総理の言う節度ある国債の発行という運営とはほど遠いのじゃないかと思うんですが、その点いかがでございますか。
  199. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この前も本会議でお答えしたかと思うんですが、これは鈴木さんのお考えも一つのお考えと、こういうふうに思いはいたしまするが、私どもいまこの時点において補正予算を編成するなんという予定を持っておるわけじゃございません。それはしかしそれといたしまして、いまここで予算で十分御審議願って、そして発行さるべき特例公債の額は決まると、こういうことになっておるわけでございまするから、これはまあ歯どめとしては十分のものがかかっているんじゃないか、そういうふうに思うんです。建設公債にしてもそうですね。金額を別に法律をもって決めておるわけじゃないんで、建設公債、建設費がふえれば、国の投資がふえるというようなことになりますれば、それはそれだけ公債がふえることが可能になるわけでございますが、まあ予算でとにかく相当厳重なしぼりがかけておりまするので、従来慣行がそうなっておりますので、その慣行でいってしかるべきじゃないか。しかしながら、政府といたしましては、慣行、歯どめがあろうがなかろうが、公債はそう発行いたしたくありません。これは節度をもって公債政策には臨むという決意でございます。
  200. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この問題、本会議から、あるいはこの委員会でも大分やりました。大蔵大臣の答弁や財政制度審議会の報告等では、いわゆる四兆五百億円という規定を発行限度額としてやるということについては同一会期内における二重審議、二重議決であるというような言い方をしているんですけれども、先日のこの大蔵委員会で、それならばいま出されている財政特例法案の第二条の一部を、当初予算で定められた金額の範囲内と、そういうように改めれば二重議決にならないじゃないか、しかも、財特法の権限も明確に限定される、そういうことがわが党の矢追委員から出されたわけです。それに対して、当初予算と改めれば、これは補正予算を想定したというふうなことになるという答弁だったんですけれどもね。それでは、それじゃそういうことになると、これは単なる私は言いわけじゃないかと。補正予算と言った場合には、それじゃ補正一号、補正二号、補正三号ということが想定されるということになるという詭弁ですよ、これは単なる。そういうことで非常におかしいと思います。  私は総理に、政治家として、特にこの大蔵委員会は御承知のように保革伯仲です。いつも可否同数であって、委員長の決するところというのがいままでの慣例でございました。もうほとんどそういう状況が多いわけです。前回も可否同数でした。まあ今回はちょっと変わってまいりましたけれども、そういうような委員会審議の性格、そういうものから見るというと、前のときに出したと同じ法律案をまた出してくるというのはおかしいんじゃないか。やはりそういう問題が提起されて可否同数でもっていったという点も、それだけが原因じゃありませんけれども、ある。となれば、今度は少しでもそれを薄めていくというような前向きな対処というものをするのが、これは当然政府としても、財政当局としてもとるべき態度だろうと私は思いますし、その点は総理はいかがお考えでしょうか。
  201. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公債発行に歯どめがなければならぬ、こういうふうに思いますが、これはもう予算で厳重な歯どめが明確に打ち出されておるわけであります。そういうことから見ますと、ただいま御提案のような当初予算においてというところまで入れぬでも、私は十分な歯どめの機能というものが働くのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。いろいろ御議論のあるところでございましょうが、ぜひともひとつ烱眼で御賛成のほどをお願いしたいと思います。
  202. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それからもう一つは、景気回復の見通しについてちょっと伺いたいんですけれども、先ほどから大分議論が出ておりますけれども、いまの経済政策の最重点項目というのは、やはり長期低迷の状況にある景気の早期回復だろうと思います。  そういうことで、今回五十二年度の予算でも四兆五百億という赤字国債、それから先ほどの御質問にもありましたように、金融面では二度続いて公定歩合の引き下げがあった。しかし、赤字国債の発行というものは、健全財政という財政の健全化とは反対の方向に行くものですね。あとの世代に対する負担というものを増加するばかりです。それが先ほど私は大蔵大臣にも質問いたしましたけれども、財政インフレという要素をはらんでいるわけです。しかも、一方では大量な国債発行はクラウディングアウトの発生、こういう懸念もある。そういう好ましくないいろんな問題がこの国債の大量発行で起こってきている。  一方公定歩合の引き下げというのも、いわゆる大企業を中心にした金利の負担の軽減に貢献するということが中心になってきます。預貯金金利の引き下げが同時に実施されたということで、国民のいわゆる零細な預貯金の目減りという、そういうデメリットが出てきてしまう、こういうふうに考えますと、財政金融面からの今回の一連の政策というのは、国民に少なからぬ犠牲を強いたということに総理なるんじゃないですか。それによってあがなっていく景気回復ということになるわけでございますが、その景気回復への見通しについて率直な御見解をお聞きしたいと思います。
  203. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 五十二年度におきましては六・七%成長、こういうことを申し上げておるわけでありますが、私は、この目標が到達されるかどうかということにつきましては、国民の消費、これはやや沈滞でありまするが、しかし、依然として大体堅調な基調である、こういうふうに見ております。  それから輸出につきましては、予想したよりもまだ強い勢いで伸びておる、こういう状態であります。  それから住宅投資、これも予想したとおり非常に堅調に動いておる、そういう中で設備投資が年度当初に見た、そういう年初に見たよりはまだ低調でございます。しかし、そういう中で公共事業、つまり国の投資、これはとにかく十兆円という予算、その半分を四、五、六で契約を了する、こういうような体制をとっておりますので、経済を動かす諸要素の中でやっぱり公共投資が中心になって景気を押し上げていく、こういうふうに見ております。今月を入れて一、二カ月という意味とすると、あるいは今月を含めてという意味だとしますと、両三月といいますか、一、二、三カ月の間には、私は顕著な景気回復動向というものは出てくる、こういうふうに見ておるわけでございます。それで需要が出てくるということになれば、これが設備投資の方にもまた影響を及ぼしてくるであろう、全体としては見通しておりまするとおりの程度成長は実現し得るというのが私の見解でございます。     ―――――――――――――
  204. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 委員異動について御報告いたします。  本日、村田秀三君、岩動道行君、桧垣徳太郎君、柳田桃太郎君が委員辞任され、その補欠として栗原俊夫君、福井勇君、青井政美君、佐々木満君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  205. 渡辺武

    渡辺武君 総理のお許しをいただいて通告外の質問を一、二点やらしていただきたいと思います。  日ソ漁業交渉の問題ですが、領土問題が背後にあって非常に離航したということは明らかなことだと思いますが、今度の暫定協定もう締結近いと思いますが、わが国の領土要求ですね、これについて将来の国民に領土要求の手を縛るようなことに恐らくならなかったろうと思いますが、その点どうでしょうか。
  206. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府のとってきておる主張、これにはいささかの障害もなかったわけであります。ただ、渡辺さん恐らく全千島ということをお考えになっておられるのだろうと、こういうふうに思います。宮本委員長もそのようなことを言っておりました。しかし、私どもは全千島を要求するということは、平和条約のたてまえから無理だと。いわゆる南千島、つまり固有の領土たる北方四島、この問題に限るべきである、こういうふうに考えておるわけでありますが、そういう立場に立ちまして、わが国の主張はいささかも交渉で傷つけられておらぬということははっきり申し上げられると思います。
  207. 渡辺武

    渡辺武君 この暫定協定の成文、まだ見る機会がないんですけれども新聞などの伝えるところによりますと、従来わが国政府が反対していたソ連最高会議幹部会令、これに基づく線引きというのが文章の中に入っておる。それからまた、第八条ですね、あれで漁業問題、その他の諸問題について今後協議するという、その他の諸問題というわが国の主張が削られたということもありまして、どうも領土問題について譲歩する方向で妥結を急いだのではないかという感じもするのですが、その点大丈夫ですか。
  208. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それはもう大丈夫なんですがね。その条文、第八条というところで、これは電話で聞いたところで正確ではないかもしれませんけれども、概要は尽くしておるんです。「この協定のいかなる規定も、第三次国際連合海洋法会議において検討されている海洋法の諸問題についても、相互の関係における諸問題についても、いずれの政府の立場又は見解を害するものとみなしてはならない。」、こういうふうに考え、この「相互の関係における諸問題」、この中には、当然領土問題が入るわけであります。それから「いずれの政府の立場又は見解」、この中にはソビエト側の主張も入るし、またわが国の主張も入る、こういうことでありまして、領土は領土として漁業協定の問題とは截然と分離されておるということはきわめて明解であります。
  209. 渡辺武

    渡辺武君 これは一部の新聞の報道ですけれども、将来国際海洋法会議で、わが国の十二海里、領海内でのソ連の漁獲、これをソ連側が主張することを日本政府として、何といいますか、事実上容認したというような記事が出ておりましたが、その点の真相はどうですか。
  210. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ソビエトは、アジとかサバとか、ああいう多獲性魚類、つまり青い魚、これに非常に関心を持っておるんです。その魚は日本の近海でとれる。そこでいままでは領海が三海里だったわけです。それが十二海里に延びる。そこで三海里まではまあがまんするにしても、四海里目から十二海里目の間では、ひとつ魚を取らしてもらいたいんだという主張をずうっと続けてきておるわけであります。それに対してわが方といたしましては、今度は領海が延びたんだと、わが国の主権の及ぶ海域が拡大されたんだ、三海里のときと同様ソビエト側の要求を認めるわけにはいかぬと、こういう主張をしておるわけであります。私は、とにかく領海は十二海里に拡大されたということは、わが国の主権の及ぶ範囲が拡大されたんだと、こう理解いたしますので、ソビエト側のそういう要求にもかかわらず、希望にもかかわらず、わが国のその拡大された領海内におけるソビエト漁船の漁獲、これは認めないと、こういう考えです。
  211. 渡辺武

    渡辺武君 もうちょっと伺いますが、先ほども申しましたように、この交渉の難航の背後に領土問題がある、これは明らかなことですが、今後領土問題の交渉、先ほど総理先回りして言われました、私どもは全千島の返還を要求すべきだというふうに思っておりますけれども政府として本格的にこの領土返還交渉、これに取り組むおつもりがあるかどうか。
  212. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、ソビエトにいたしましても、中国にいたしましても隣国ですからね、これと平和条約を持たぬということは不自然だと、こういうふうに思うんです。ですから、双方と平和条約を結びたいと、こういうふうに考えておるんです。中国の場合には平和友好条約という名前になりましょうが、結びたいという考えでございます。ソビエトの問題につきましては、この条約の締結を妨げておるものは一体何だと、こう言いますると、多くの問題はないんです、これは。ただ一点と言っていいくらいだと思います、この領土の問題。この領土の問題さえすっきりすれば、いつでも平和条約は締結できる、こういうことなんですが、長い懸案になってまいりますので、もうぼつぼつこの領土を含めての平和条約交渉というものに移りたいなあと、こういうふうに考えておるわけでございます。私が外務大臣をしておった五年前にも、グロムイコ外務大臣がいらっしゃった。そのときも私はずいぶんこれは議論をした問題ですが、その後田中首相がモスクワに参りまして、そして御承知のような共同声明を発出するということになってきております。その後この具体的な平和条約交渉というものは行われておらない。ことしの下半期中に鳩山外務大臣をモスクワに派遣すると、そしてこの領土問題を含めての平和条約交渉、そういう話をしてみたい、こういうふうに考えております。
  213. 渡辺武

    渡辺武君 そこで問題が起こりますのは、さっき総理は、この四島ですね、歯舞、色丹、択捉、国後、これはわが国の固有の領土だと言われましたけれども、私どもは全千島列島全部これはわが国の固有の領土だ、これは当然の主張として日本政府が掲げるべきことだと思っております。なぜかと申しますと、これは決して武力によって、あるいは侵略によって獲得したものじゃないんですね。私申し上げるまでもなく、これはもう樺太との交換で日本の領土になったものなんで、双方合意の上で平和的にわが国の領土になったものですよ。これを第二次大戦の終結時に自分の領土に書き込んでしまった、スターリンが。これが社会主義の原則にももとり、国際的な正義にももとって、これを自分の領土にしていま主張しているということだと思うんですね。ですから、わが国の当然のこれは権利として全千島の返還ということを主張すべきだと思いますね。しかし、これには一定の段取りがあると思うんです。日ソ共同声明によりますと、平和条約の締結と同時に歯舞、色丹は返すということがもうすでに歴史的な経過としてもうたわれていて、はっきりしているわけです。だから、さしあたって平和条約によってこの二島の返還を求めると同時に、この安保条約の廃棄などを一つの重要な政治的足がかりとして全千島列島の返還に進むべきじゃないかというふうに思います。特に、さしあたっては、この千島列島の放棄を内外に宣言したサンフランシスコ条約の第二条、これを直ちに廃棄することを国の内外にやっぱり宣言して、そうして領土交渉に進むべきじゃないかと思いますけれども、その点どうでしょうか。
  214. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は他国と結んだ条約を尊重する、これを国是としておるとともに、またそのような態度をとってきたことにつきまして各国から信頼を得ておるという国です。それで、千島列島につきましては、これを放棄するということを平和条約において明確に表現をいたしておりまして、ただ千島列島というのは、関係した国々、特にアメリカの見解によりますれば、これは日本の固有の領土であるところの北方四島は含むものではない、こういうことになっておる。こういう条約上の争いのない規定がありますので、千島全域をわが国に返せという主張は、これはもうおっしゃるとおり平和条約を廃棄するということ以外にはないわけですが、私は、平和条約は一たん結んだ以上は、これを廃棄するということを一方的に宣言をするということは妥当でないし、また同時に平和条約、これにはソビエトロシアは入ってないのですよ。放棄したと言うけれども、これはこの条約を締結した国々に向かって放棄しているわけでありまして、ソビエトロシアに対してその領土権を移譲したと、こういうわけじゃないので、ソビエトロシアがそれにもかかわらず千島列島を事実上占有していると、こういう状態については私は問題はあると思いますけれども、あれはわが国の領土であるという主張は、これはなかなか私はむずかしい問題だと、こういうふうに考えております。
  215. 渡辺武

    渡辺武君 私はそれは、一たん締結した条約を守らなければならぬというその立場はそのとおりだと思いますよ。しかし、やっぱり国際的な正義にもとるような他国の措置について、誤ってサンフランシスコ条約の第二条で千島を放棄してしまっている、その誤りを正すということ、そして国際的な正義の立場に立ってこの返還交渉を進めるということは、これは後代の政府としては当然にやるべきことだと思いますね。領土問題というのはこれは国民的な重要な要求ですよ。そういう問題についてかつての誤りに依然として固執する、そして国際的な不正義を正そうとしないというような態度では、私は、総理大臣が国民的な信頼はとうてい得ることできないんじゃないかと思うんですね。その点重ねて伺います。やるべきだと思いますが、どうですか。
  216. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 渡辺さんの政党の御所見、これは前から承っておるところでございまするけれども、条約は守るという国際信義を貫き通しているわが国として、平和条約を破棄するという行動はとりたくない、かように考えております。
  217. 渡辺武

    渡辺武君 それでは本題に移りますが、平和条約を破棄するとおっしゃったけれども、第二条ですからね、二条の千島列島放棄のところを廃棄するということですから間違えないように。  それでは本題に。総理、この間のロンドン会議に向かわれる際、いまの世界経済の危機、これは一九三〇年代の危機になぞらえて、新しい世界経済の秩序、社会の秩序が必要だという趣旨のことを言われたと思いますが、その具体的な内容というのはどういう構想なのか総理の御経綸を伺いたい。  同時に、ロンドン会議の結果、その経綸に照らしてどういうふうに評価されておられるか、これも伺いたい。
  218. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、今日の世界情勢が一九三〇年代と似ておる。こういうことは、会議の冒頭発言でるる申し述べた。私は一番よくこの中で、このいきさつを知っている、いわば三〇年代の歴史の生き証人、こういう立場で申し上げる、こういうことでくどく申し上げたんですが、あれは一九二九年にアメリカで恐慌が起こって、そうしてヨーロッパにそれが波及して、そうして世界大混乱になった。これじゃもう大変だということで、同じロンドンにおいて国際経済会議が開かれる。その四年間に各国はめいめいの立場で保護貿易体制をとったわけです。ある国は関税障壁を一方的に持ち上げちゃうとか、ある国は為替管理を強化するとか、あるいは割り当て制を全面的に採用するとか、そういうことをやった。だもんだから世界は経済として総沈みになりまして、そのロンドン経済会議がこれじゃいかぬというので開かれるまでの四年間に実に世界貿易は四割減る、また総生産は三割減るということになり、しかも、この状態じゃいかぬというので開かれた合議が合意に到達しないで休会のまま散会するということになって、そしてますます保護体制は進められるということになり、さらに世界経済は悪化して、そうして諸国に社会不安というものが起こってくる。昭和初期のわが国におきましてはあのような事件が続発したわけでございます。  そういう中で社会不安があると、どうしてもやはりいろんな事件が日本ばかりでないほかの国でも起きてくる、そういう状態が背景となって、第二次世界大戦というものが起こってくる。あのときの私は、世界の指導者というものは間違っていた、この間違いを繰り返しちゃならぬ、こういうことを力説したわけですが、今日はさらにその上にむずかしい問題がありますのは、資源有限という問題が起こってきておる。南北問題が起こってきておる。東西という問題が起こってきておる。そういう中で、これはやはりめいめいの国が、自分の立場ばかりにこだわっておっちゃいかぬと、小異を捨てて大同につく、大同とは何だというと、相協力いたしましてそして助け合う、また同時に、この力のある国は、世界の経済を長期不況から救い出すための牽引車的な役割りをする、それから保護貿易体制というものを再びとってはいかぬ、こういうことを力説し、そういう中で、何でも話し合いで事を解決するという方式を立てようじゃないかということを力説したわけなんですが、私は、大体私の考え方については、各国の首脳に対して相当の理解と、それから支持を得たもの、そういうふうに考えます。
  219. 渡辺武

    渡辺武君 総理、経済問題としてはもう一歩突っ込んで考えていただく必要があるのじゃないかという感じがするのですね。と申しますのは、おっしゃるとおり、一九三〇年代のあの経済的な危機ですね。これは第二次世界大戦まで発展したわけですな。ところで、その反省が、これは終戦の前年でございましたか、ブレトンウッズ会議が行われて、そうしてそこでいわば合意されたブレトンヴッズ体制が戦後経済の構築の基礎になったわけですね。これは総理のおっしゃった一九三〇年代の経済危機の教訓から出発していると私は思いますね。ところが、現在われわれが直面しているこの世界経済体制の危機、これはまさにブレトンウッズ体制が崩壊しつつあるというところにこそ一番の特徴があるのじゃないでしょうか、ブレトンウッズ体制、これはいろいろ見方もあります。私は大筋から言えば、戦後アメリカを中心とする各国のこの発達した資本主義国の同盟、そうしてアメリカに従属的に同盟したもとでの各国の大企業、独占資本の復活強化、そしてこれを支えるものとしてIMF、ガット、世界銀行などの国際機構が構築されて、そして為替相場は金一オンス三十五ドルということを中心としたいわば固定レート制度をとった。ガットは自由無差別の貿易主義をとって、そうして貿易を進めた、世界市場を構築した。  まあ、まだいろいろ言いたいことはありますけれども、大筋で言えばそういうことがいままさに崩れつつある。為替レートは変動相場制に変わってしまった。そうしてまた今度のロンドン会議でも、アメリカの威令はまさに地に落ちたという感じがするじゃないですか。どうですか。たとえば核燃料の再処理問題。日本政府、西ドイツと組んでアメリカといろいろやり合ったというような状況でしょう。そうしてガットの貿易の問題にしましても、東京ラウンド今年度中に開くというのも、これは明確にはうたわれていません。恐らく延びることだろうというふうに思われますし、その他等々、やはり今度のロンドン会議がいまの世界危機によく対応した結論を出したとはちょっと考えられない。何かやはり新しい発想で対応しなきゃならぬじゃないかと思いますが、その点についての総理の経綸、重ねて伺いたいと思います。
  220. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、例の石油ショックですね、これは資源エネルギー時代を象徴する事件だと思うんです。あの石油ショックでブレトンウッズ体制といいますか、戦後ずっと続いてきた体制がかなり打撃を受けたということは申し上げることはできると思うんですが、あれが崩壊した、こういう受け取り方はいたしておりません。やっぱり戦前に比べまして、先ほど非常に私はむずかしい問題が幾つか出てきておるということを申し上げましたが、いいことがあるんです、一つは。それはやっぱり国際協調、そのかなめをなすものはブレトンウッズ体制、それである。やっぱりこれだけの不況が長続きしたそういう中で、とにかく保護貿易体制というあの戦前の愚かな選択をしないで今日まで世界が続いてきたというゆえんのものは、私は、世界の協調の仕組みというものが相当きめ細かに張りめぐらされておるというところにあると、こういうふうに思うんです。特に資源ですね、エネルギー、これをめぐりまして非常に世界情勢はむずかしい、険しい道を歩むということになりましたので、やっぱり協調と連帯というその精神の中で新しい行き方を求むべき時代に来ておると、こういうふうに考えています。
  221. 三治重信

    ○三治重信君 大変お疲れのところでございますが、公債の個人所有の問題一点にしぼってお伺いを申し上げます。  公債の大体五十五年度までの発行については、一応の前提をいたしたんだといっても、そういうものの数量は記されておりますが、こういう公債の落ちつき先ですね、こういうものについて何ぼ質問してもなかなか答弁がない。私は、その発行の長期計画があれば、それが落ちつき先はどういうふうに落ちつけさしたい、これが国債の価値を維持し、また公債政策というものは、発行政策だけでなくて、その発行したものが国民の間に、金融機関または個人の間にどういうふうに落ちついて保有さるべきだと、こういうことが政府としても一応の目算があってしかるべきだと思うわけなんですが、そういうことについて、特に総理として個人の所有がいま現在一二%程度なんですが、アメリカやイギリスでは大体三〇%前後、一番私は西ドイツがもっと多いかと思ったら、西ドイツがいまの資料だと二〇%前後になっているわけなんです。日本として、今後国債の大量発行に対して、個人所有なり金融機関との割合をどういうふうに落ちつけていきたいとお考えがありましたらお聞かせ願いたい。
  222. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、経済は流動的でありますので、これから発行される公債が、どういう割合で、あるいは日本銀行に、あるいは資金運用部に、あるいは個人に、あるいは金融機関に保有されるような状態になるかというお尋ねに対しましては、数字をもってはお答えでき得る筋のものではございませんけれども、しかし私は、これから景気が回復するということになりますると、金融機関に今日のように大部分を保有していただくという情勢を続けることには相当問題がある、こういうふうに考えるわけであります。やはりこれは、まあ個人の保有、これが伸びていくという姿、これはどうしても必要になってくる、こういうふうに考えておるわけであります。
  223. 三治重信

    ○三治重信君 いま、個人の所有の恩典として、いわゆる利子の非課税のマル優制度が公債に、また一般の貯蓄にプラスして行われておるわけなんですが、これはそういう相当、何といいますか、貯蓄の能力、余分がある人についてはそういう奨励策で非常に公債所有が奨励されるわけですが、いわゆる勤労者や、庶民の貯蓄奨励のためには、こういう大量国債の発行と関連して、もっとそういう低所得階層までにも公債を持って財産を貯蓄をしようという積極的な奨励策がとられたらどうかと、まあこう思うわけなんです。まあその一つに、何と申しますか、日本の財産形成政策も、いま申し上げました個人の貯蓄能力といいますか、そういうものに対する非課税の制度になっておりますが、西ドイツでは長期貯蓄の奨励のためには、そういう低所得者に対しては割り増し金、いわゆるこの長期の貯蓄に対してはプレミアムをつける対策をとっておるわけなんです。こういう問題についてさらに積極的に対策を講じていくお考えはないでしょうか。
  224. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ根本は、これは私は、国債の利回りが他の証券に比べてそう割り安ではないんだと、こういうことだろうと思うんですね。まあそういう点から見ますと、かなり事業債なんかとの利幅が少なくなってきておる。こういう傾向で、まあ好ましい傾向になってきておるんですが、しかし同時に、これは政府が売り出す一つの商品みたいな面もあるんですから、ですから、その銘柄というものをよくするということも考えなきゃならぬし、いまおっしゃるとおり、お話でありまするけれども、零細な貯蓄能力しかない人にも持っていただくということについても考えなきゃならぬし、それはまあいろいろのことを考えてきて実行もしておるわけでありまするが、とにかく零細な、貯蓄力を持っておる人を含めまして、なるべくこの国債を個人で多く消化させるということにつきましては、あらゆる知恵をしぼってみたいと、かように考えます。
  225. 三治重信

    ○三治重信君 そういう積極的な考え方を示されたわけなんですが、ぜひひとつこの公債の大量発行の中で、この一般的な貯蓄の中で消化するということだけでは、私は大量の公債がいずれまた金融機関なり、政府が買い戻さなけりゃならぬような事態になろうかと思う。一般の庶民に長期の貯蓄で消化する積極的な対策をぜひ考えていただきたいと、またこういう問題は、長期対策を考えていったことによって初めて公債の価値が維持できる、債券の価値が維持できると、こういうふうに思っております。そのためには、それだけでのいわゆる政策だと、いままでの答弁だとみんな一般的な金融政策、一般的な公債政策、こういうことだけで割り切ってしまっておられるわけですが、それに対してやはり社会政策的な配慮を加味する、社会政策も兼ねていくと、その一番重要なところは、私は、やはり底上げだと思うんです。いわゆる本当に貧乏な人をなくしていく、その底上げだと思うんです。そのためには自分から積極的にそういう財産をつくっていく、あるいは所得を蓄積していくと、こういう積極的な誘導政策というものがとられてしかるべきだと思うんです。  それに対して、西ドイツはそういうプレミアムに対して、連邦政府が全額負担をして、それで着着そういうレベル以下の所得階層の資産形成に役立たせていこう、こういうふうに資料は報告されておるわけなんですが、何も西ドイツのまねをするということではございませんが、また日本も、所得階層としては、中産意識が――総理府の調査で中の下まで入れれば九〇%と、こういうふうになっておりますが、やはり財産の分布からいくというと、私はまだ相当な、非常な貧富の差があると思うんです。今後増加するストックの分配政策、所有政策というもののそういう関係というものを改善する対策として、公債政策をぜひ積極的に擁護して、また加味していただくことが、公債の価値を維持するとともに、日本の安定、一つの庶民の生活の安定化政策にもつながると思うのですが、そういう長期の一つの積極政策というものを、ぜひ金融当局、財政当局でもそういう社会政策の部面を配慮した政策を新しく取り入れた方向で考えていただきたいと思います。これを最後の質問として質問を終わります。
  226. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お気持ちはよくわかるのですよ。わかりますが、国債というものはやはりこれは転々流通すると、こういうものでなければならないわけでありまするから、どうもその所得階層別に違った銘柄の公債が出るのだということはなかなかこれは取り入れにくいことじゃないか。ドイツのお話がありましたが、わが国におきましてはすでにマル優制度というものがあるわけでございます。それからまあ、公債の額面につきましてもずいぶん小さい額面まで落としておる、そういうような状況でございまして、まあお話の筋のことは大方実行しておるような感じがしますが、なおしかし、個人消化これを一体どうするか、特に零細な貯蓄能力しかない人の消化をどうするかということにつきましてはあらゆる工夫をしてみたい、かように考えます。
  227. 野末陳平

    ○野末陳平君 三治委員質問に関連して聞きますけれども、いま国債は割国がほんのちょっとあるだけで、十年ものが一本になっていますけれども、特にいまのお話にあるような個人消化、個人保有ということを考えた場合に、総理、もうニーズに応じ切れないと思うのですね、十年ものというのは。もちろんそれもあっていいわけですけれども、しかし、やはり多様化しなきゃいけないので、ここで利付、割引、どちらでもそれはいいんですけれども、何種類かの国債を当然もう来年度には出すような構想があっていいと思うんですが、どうですか、十年もの一本でいきますか、それとも五年もの、三年ものというような多種類のものを出す構想がおありですか、その点をまずお聞きしたいです。
  228. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私が先ほど申し上げましたように、これは政府の商品でありますから、これはいろんな態様のものがあってしかるべきであると、こういうふうに思っております。大蔵省でも当然それを検討しておる、こういうふうに考えます。
  229. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) せっかくこの一月から中期割引国債を出したばかりでございます。これはまさに個人消化向けでございます。これはやっぱりある程度新銘柄を出します場合にやはりそれぞれ金融市場におけるいろんな競合銘柄もございますので、いま新しい新国債を出しましたところで、それの定着ぐあいというものを見きわめてみたいというふうに考えております。現在の一般の十年ものの国債も、先ほど総理が申しましたように、税制面とかいろんな特典がございますのでかなり最近売れてきております。したがって、その両者の二種類の国債でしばらく個人消化を努力してみたい、こういうふうに考えております。
  230. 野末陳平

    ○野末陳平君 次に、預貯金金利の引き下げがあるたびに起こる現象なんですけれども民間金融機関と郵便局の場合、実施がずれるんですね。今回も半月の差がありましたか、この間に駆け込みの郵便貯金がふえるという現象が起きたようですが、これもちょっとぼくは銀行の味方をするわけじゃありませんけれども、民営と国営で競争条件に半月間差が出るというのはどう考えても説明がつかないようなんで、もちろんここに金利の一本化という問題もくるんでしょうけれども、どうなんでしょうか総理、いつまでもこういうことがあるのは。いわゆる一般の消費者の方にとってもある意味の不公平も出てくるように思いまして、金融機関だけの問題ではないんで、これ今後やはり利下げとか利上げとかいうような、一致する方向でいかなきゃうそだなと思うんですが、これについてはどうでしょう、毎回同じことがあるようですが。
  231. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その問題は長くて新しい問題でございます。金利政策の面から言いますれば、郵便貯金の金利問題、これを度外視して有効なる効果というものはなかなかむずかしいのでございますけれども、しかし、いまわが国の制度、たてまえ上御承知のような仕組みになっておる。これを変えることが事実上なかなかむずかしいのですよ。しかし、一体として機能するというためには、郵便貯金が一般の金利とともに連動して動くということが望ましいわけでありますので、今後の検討課題ということにさしていただきたいと思います。
  232. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあそれだけでないでしょうけれども、郵便貯金とそれから一般金融機関の預金との間でいろいろ差が出てきているように、かなり最近では銀行などの金融機関が神経質になっているような話を聞きますが、そこで、最近何か大蔵省の方で金融機関に、一部の金融機関からかなり要求が出ているようですが、複利の定期ですね、郵便局の定額に匹敵するような、内容は詳しいことわかりませんけれども、複利の定期のような構想があって、これを何か認めるという動きがあるやに聞いているんですけれども、その点について総理、特にこれを悪いとも思わないのですが、ただいろいろ問題があるようですが、これどうなんでしょうか、この構想、実施の方向でいま検討されているんですか。
  233. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先生御指摘の複利定期預金でございますが、この種の預金につきましては、かねてから金融界の一部からいろいろ要望が出ているわけでございますけれども、このような預金につきましては法制上の問題あるいは金融機関との競合関係そのほかいろいろ問題があるわけでございます。しかしながら、一方金融機関の公共性という見地から見まして、国民のニーズに合わせました貯蓄手段の開発を図るということは、これまた考慮されてしかるべきことでございますので、大蔵省は今般現行制度のもとで考えられる一つの案を示しまして、各業界の感触を打診したものでございます。今後は各業界の意見を聞いた上でこの取り扱いを検討してまいりたいと、このように考えております。
  234. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうすると、認めるというのじゃなくてかなり前向きにいま検討しつつあるというようなことになるんでしょうか。
  235. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 御指摘のとおりでございまして、これを認めるとか認めないということをいまの段階で決めているわけじゃございません。各業界の意向を十分に勘案いたしまして、また国民のニーズということも考えましてこれを検討してまいりたいと、このように考えております。
  236. 野末陳平

    ○野末陳平君 総理にもう一つお伺いしますが、五十五年度には赤字国債脱却しようという話はもう前からあるんですけれども、この間もここで参考人の御意見いろいろ聞きましたけれども、やはりどう考えても景気回復を期待するよりは、何か増税の方が可能性が強いような、もちろん増税してこの赤字国債脱却できるという意見もなかったんですね。非常にむずかしいであろうということだったんですが、それにしても増税ということはもうどうも避けられないような情勢になってきている。その割りにはまともな具体的な議論がどうしてもここではできないわけです。ということは、たとえば増税する場合でも、一般消費税みたいなのが一番有力だと、この間この委員会で参考人も意見を開陳されたんですけども、じゃ具体的にこの委員会でお聞きすると、何となく逃げて議論の場に、この増税という問題が具体的になかなか出てこないんですね。  さっき福間委員質問にもありましたけど、そこで総理、最後になりましたけども、総理の頭の中では増税の青写真はどうなっているのか。早くそれを言っていただかないと、議論したくてもできないわけですね。いつも増税はしようがないと言うだけでもって、具体的にと言うとどうもその辺でいつも逃げられる。これじゃ時間かせぎでずるずるなって、まともな大蔵委員会の税制改正の議論を避けて通るようなことはよくないと思いますね。ですから、総理の頭の中のひとつ増税構想とまでは言いませんけども、やっぱり一般消費税を主力にいかざるを得ないと、その辺のところまで具体的にここでお答え願いたいと思います、最後に。
  237. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 税の問題は、景気の問題並びに物価の問題と非常に関係があるわけなんです。そこで、さあ五十五年度には特例公債をなくすということを考えますと、これはその時点までかなりの増税ということは必要になってくる。これはまあ御承知のとおりなんですが、さあいかなるタイミングをとって増税を打ち出すかということになりますと、また景気が落ちつかないという段階でそれを打ち出すわけにもいかぬ。また消費課税というようなことになれば、これは物価にそれは多大な影響があるだろうと思うんです。この物価の動きも見なきゃならぬというので、まあ具体的にどういうふうにするかということを申し上げかねておる次第でございます。それらの点、物価、景気、これがどういうふうにどういう段階で落ちつきを見せるか、その辺を見きわめながらまあ増税の論議はしていかなきゃならぬというので、まことに何というか、もどかしいお答えをしておるような状態ですが、いまこの段階では増税構想を政府はこんなような気持ちであるということすらも申し上げかねておる次第でございます。
  238. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 他に御発言もなければ、三法案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案に対する討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  240. 福間知之

    ○福間知之君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案に対しまして反対の討論を行います。  今日、不況とインフレの共存する中で国民生活は圧迫され続けております。昭和五十一年度の勤労者家計は実質所得でマイナス〇・九%を示しており、失業者は百万人を超え、さらに企業倒産は過去一年間で一万五千件にも及び、その中で、特に中小零細企業を中心とした経済的弱者にそのしわ寄せが集中されているのであります。しかし、政府の情勢認識と対策は依然として旧来の高度成長政策の幻想にとらわれていると言わねばなりません。そしてまた、今日の財政危機を打開するためには、高度成長型、資本蓄積型税制の根本的改革なくしてその実現は困難だと考えるのでありますが、政府の姿勢にはその真剣さが欠けているのではないでしょうか。そもそも、三年間連続して歳入の三割に近い国債を発行し、それに依存するという異常な財政状態につきましては、政府の責任を厳しく批判しなければなりません。以下、本法案審議を通じまして明確になった問題点を指摘しつつ、反対の理由を述べます。  まず第一に、国債の累積と国債費の問題であります。本年度予算の国債費は二兆三千億円にも上り、財政収支試算によれば、昭和五十五年度末には国債残高は五十五兆円、国債費は歳出の一〇%を超え、国債収入の七〇%に相当するというきわめて深刻な事態を招くのであります。このことはまさに財政硬直化の最大要因になることは必至でありましょう。したがって、償還財源の適切な確保あるいは償還計画の確立こそ緊要でありますが、政府にその具体策がないのであります。  次に、このような国債に抱かれた財政を前提にいかなる財政運営を行うかについて、その政策的展望を持っていないことであります。それは金融政策とも関連することですが、国債、地方債などを含めた公共債十六兆円の発行は公的資金として吸収することとなり、資金の流れを変える好機でもあります。現在の経済状況では、民間の資金需要は低迷し、勢い公共資金の比重は高まっているのでありますが、資金の流れ全体を転換して活用しようという意思が政府には乏しく、一たび民間の資金需要が高まりますと、信用創造による通貨の増発によってインフレの危険を助長することになるのであります。  第三に、国債の消化についてであります。わが国の市中消化とは名ばかりで、政府、日銀の国債保有割合がその半数以上を占めている事実にその姿が象徴されております。最近、個人による国債消化が一〇%を超えたとはいえ、本来の姿とはほど遠い状況であります。国民の協力を得る国債発行ということを考えれば、金融資産として魅力のある国債、そしてまた価値が保証されるということが肝要でありましょう。そのためにはまず何よりもインフレーションによる目減りをなくす必要があります。しかし政府は、依然として国債引受シ団への割り当てによる御用金調達思想の域を出ておらないと考えられます。インフレ抑制への決意を疑うのであります。  最後に、増税時代の到来かという今日の事態における政府の姿勢についてであります。巨額の累積国債解消については二つの方法があろうかと考えます。一つは、増税による財源の確保であり、いま一つは、インフレによる債務者利得、すなわち借金の目減り政策と、あわせて福祉切り捨ての方途であります。われわれが慎重かつ勇気を持って検討を加え選ぶべき政策は、やはり第一の増税策でありましょう。福祉の充実は経済成長のいかんにかかわらず実現すべきものであり、インフレは最も不公平な間接増税であり、容認すべきではありません。問題は、増税政策実行に当たって、だれにどのように負担をさせるかであります。そしてその原則は、あくまでも税の負担能力に応じて負担を要求する応能負担の原則を貫かねばなりません。すなわち、高額所得者、資産所得者と大法人、大企業を対象とするのは当然のことであり、個人所得税の負担増加を大衆課税の強化に求めたり、さらにはいわゆる付加価値税導入に安易に求めることなどは論外であります。  以上種々申しましたが、私の反対討論の内容といたします。
  241. 上條勝久

    ○上條勝久君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案に対し、賛成の意を表明するものであります。  わが国経済の現況は、基調としては回復過程にあるものの、昨年後半以降の回復のテンポは緩慢化し、最近においても、なおこの情勢からの脱却の明確な兆しをつかむことができない状況にあります。  このような実態を背景とする昭和五十二年度の経済運営に当たっては、物価の安定に配意しつつ、景気の着実な回復を図って、雇用の安定を実現することが、現下の最大の政策課題であると考えます。  財政面におきましては、昭和五十二年度予算は、需要創出効果の大きい公共事業に重点を置いて編成されておりますが、その執行についても、公共事業の上記契約率の目標を七三%として、その効果を最大限に活用する政策運営が実施に移されていることについて私はこれを高く評価するものであります。  また、金融面においても、三月の第五次公定歩合引き下げに引き続き、四月にも第六次引き下げが行われたばかりでなく、長期金利引き下げも相次いで行われており、これらの財政、金融両面からの諸措置は、政府の景気回復への政策態度を鮮明に打ち出したものであり、これが今後の日本経済を安定成長の軌道に乗せる重要な足がかりとなるものであると確信するものであります。  しかしながら、昭和五十二年度の財政運営は、歳入面において、長期にわたる不況の後遺症というべき巨額の税収不足がなお続くという厳しい現実を負っております。中小所得者の負担軽減を中心とする所得税減税に加えて、与野党合意による追加減税を行う一方、所要の増収措置を講じてもなお、十分な税収を期待できない状況にあります。  ここにおいて、昭和五十二年度の特例措置として、建設国債のほか、特例公債発行によって適正な行財政水準の維持を図り、国民生活と経済の安定及び国民福祉の充実に配意しようとした政府政策的判断に対し、私はこれに基本的に賛成するものであります。  本案は、言うまでもなく財政法の特例措置を講じようとするものであり、特例公債発行が恒常化するようなことは断じて避けなければなりません。一日も早く、特例公債依存の財政からの脱却を図るため、立法府も行政府も一体となって努力を重ねるべきであることを改めて痛感する次第であります。  政府は、昭和五十年代前期経済計画に基づいて、財政収支試算を公表し、昭和五十年代前半において健全財政への復帰を実現すべく全力を傾けることを表明いたしておりますが、景気の回復、物価の安定、国民負担の公正かつ適正化への方向と整合性を保ちつつ、これが実現されるよう、政府の一層の努力を要請いたしまして、本案に対する賛成の討論といたします。
  242. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております、昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案に対し反対の討論を行います。  まず、反対理由の第一は、政府の財政再建に対する熱意のなさについてであります。わが国の財政事情は、政府の失政により非常に厳しくなっていることは、いまさら申すまでもありません。政府も口を開けば財政再建を唱えてはおりますが、全くの絵にかいたもちと言わざるを得ないのであります。財政再建の一つの目安として提出された財政収支試算一つをとって見ても、税収の確保、歳出における具体的な構想など全くなく、きわめて具体性を欠くものであり、今後政府の財政計画ないし財政収支のガイドラインとするには全くお粗末なものであります。政府の熱意のなさを如実に示したものであります。財政再建に本気で取り組むものであるなら、このようないいかげんな試算ではなく、中期にわたる歳出、歳入の整合性ある見通しに基づいて再建の道を明らかにするべきであります。それなくして国民に犠牲と負担を強いる赤字国債の発行を安易に行う財政運営は承服できません。  反対理由の第二は、かねてより強く主張しておりました不公平税制の是正などがなされていないことであります。少なくとも赤字国債の発行条件として税制改正や歳出の洗い直しをすることは至上課題であります。不公平税制の是正やクロヨンなどで表現される徴税上の不公平の是正に真剣に取り組むべきであります。  また、補助金や既定経費を徹底的に洗い直し、行政機構を簡素化、合理化をするべきであります。このような国民の強い要望を無視した国債の発行は認めることができません。  反対の理由の第三は、財政法の精神を踏みにじって、巨額の赤字国債を発行し、国民への負担の増加と不公平をもたらすことであります。赤字国債の発行は、政府にとっては最も安易な財源獲得の道であるだけに、国債依存財政は拡大に次ぐ拡大を招き、国民に負担を強いる非常に危険な道であります。ゆえに財政法ではその発行を厳しく禁じております。しかるに政府は、この財政法の精神を無視するかのごとく、多量の赤字国債を発行し、かつ、今後数年間発行し続ける計画を立てております。このような政府の財政運営の失敗を当然のごとく国民に押しつける財政法無視の態度は許せません。  以上が、私の本法律案に反対する主な理由であります。
  243. 三治重信

    ○三治重信君 私は、民社党を代表して、ただいま議題とされました昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案に賛成の意見を述べるものであります。  石油ショック以降三カ年余を経過するも、わが国経済は不況とインフレ、すなわちスタグフレーションの経済から脱出できない現状であります。  すなわち消費者物価は九%を超え、二けた上昇の危険状態にあります。しかるに、需給ギャップは大きく、生産は沈滞し、完全失業者は百万人を超え、中小企業の倒産は高水準で不況脱出の見通しがつかないのであります。政府は、本年もまた税収の増加を期待することができず、公債依存の財政による景気浮揚を図ることといたしました。民社党は、財政政策による減税、失業の緩和、中小企業倒産防止を図り、一日も早くこの長期不況の脱出、景気回復を本年度予算に期待しているところであります。このような意味において本年度予算の歳入補充のため赤字公債発行はやむを得ないものとして賛成するものであります。  しかしながら、次の諸点について特に要望をいたします。  第一に、政府昭和五十五年度をもって赤字公債をゼロにする財政試算表を実行する決意のもとに速やかに財政経済政策を再検討すべきときだと思います。財政支出の三〇%もの公債依存は危険であります。ますます財政は硬直化に突進をいたします。本年度中に昭和五十五年度予算には赤字公債ゼロの中期財政政策を確立し公表をせられたい。この中期財政再建対策は、歳出の徹底的な洗い直しと税制改革について国民の自覚と納得を得られるものを期待するものであります。  第二に、昭和五十五年度末には公債残高五十五兆円余の巨額が予想されております。公債残高の削減に努力することはもちろんでありますが、この膨大な公債はできる限り個人所有の消化に努めるべきであります。現在のところ個人消化が予想以上に順調であるようでありますが、財政インフレを回避するためには、日銀、市中銀行等への依存が半分以上を占めることのないよう極力努力すべきであります。そして景気が回復過程に入り、民間資金需要が起きますと、公債価格の低下が予想され、公債消化に協力した者が損をすることのないよう細心の注意を払うべきであります。これがため、公債が庶民の財産形成に役立つよう積極的施策を考案し、実施すべきであります。  第三に、経済計画の中にマネーサプライ、すなわち通貨供給の問題を検討すべきであります。現在、日銀の管理通貨政策は国民一般によく知らされておりません。最近、インフレは貨幣数量の管理よろしきを得れば防御できるという金融政策が提起されております。スタグフレーション現象は物やサービスの流通に対し、通貨供給が過剰となりバランスを失うことにも原因があります。したがって、経済計画の中にマネーサプライによって経済成長を規制するということではなく、目的とする経済成長に対し適正な貨幣供給量の計画が入るべきであります。物やサービスの動きに自動的に貨幣は動くということはなく、政府・日銀は景気対策として公定歩合の操作に加え、インフレを伴わない貨幣数量、マネーサプライの適正な管理に国民の協力を得るよう配慮すべきであります。  なお、償還財源の確保、償還計画の問題、資本・金融市場の育成、不公正税制の是正等幾多の問題が山積をしております。経済の安定と雇用の確保は政府の重大な責務であります。このため財政の役割りはますます重要性を持ってまいりました。財政の健全化はいまや至上命令であります。赤字公債に係るこのような法案が提出されることのない日が一日も早く実現をすることを期待して討論を終わります。
  244. 渡辺武

    渡辺武君 日本共産党を代表して、昭和五十二年度の公債特例法案に反対の討論を行います。反対の理由の第一は、本法案が低成長下でのインフレをますます高進させることであります。政府の財政収支試算によっても、赤字公債を含む大量の公債発行は今後も続き、国債発行残高は今年度末の三十一兆円から五十五年度末の五十五兆円に急増することになっています。政府は、市中消化に徹するからインフレは起らないなどと述べています。しかし、すでに日銀の国債保有高は昨年十二月末で六兆二千億円、既発行高の約三〇%を占めており、景気の回復とともに買いオペ等を通じてこの保有はますます増加し、通貨の増発と物価高を一層激しく推し進めるものであることは明白であります。しかも政府は、わが党の提起した日銀買いオペや通貨増発の制限など、適切なインフレ対策に耳をかそうともしていません。  反対の第二の理由は、本法案が国民に対し将来一層激しい重税と福祉切り下げの苦しみをもたらすところにあります。  政府は、今年度すでに二兆三千億円、五十五年度には実に四兆七千五百億円にも達する国債費に見られるように、公債の利子と元金の支払いをすべて国民に負担させ、その税源の有力候補として一般消費税や付加価値税の導入の検討を公言しております。これらの税制が物価に織り込まれ、低所得の人にほど重い負担をかけ、中小企業に大打撃を与える最悪の大衆課税であることは言うまでもありません。しかも政府は、この大増税ができなければ福祉切り詰めもやむを得ないと公言するありさまであります。  反対の理由の第三は、本法案が財政危機をさらに一層激化させることであります。  政府は、戦後確立された健全財政主義の最大の法的保障である財政法四条の趣旨を公然と踏みにじり、今年度で三年連続の特例法で大量の公債発行を強行しております。しかも財政の三割を公債に依存するという他国に例のない浪費財政で、これまた他国に例のない六・七%という大企業本位の高度成長政策を、国際的責務などとまで述べて、今後も続けようとしております。このような政策が財政の危機を一層激化させるものであることは明らかであります。  このような国民生活と健全財政を踏みにじる道ではなく、大企業、大資産家優遇の不公平税制を徹底的に改廃し、また防衛関係費など不要不急の浪費を削減するなど、税、財政、金融の民主的転換を行うことこそ今日の急務であることを強調して討論を終わります。
  245. 安田隆明

    委員長安田隆明君) これにて討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  246. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  野々山君から発言を求められておりますので、これを許します。野々山君。
  247. 野々山一三

    野々山一三君 私は、ただいま可決されました昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    昭和五十二年度の公債発行特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。  一、健全財政を確立するため、財政収支の改善に全力をつくすとともに、極力国債発行額を圧縮し、昭和五十年代前半には特例公債依存の財政から脱却し得るよう努めること。  二、国債は、後世代の国民の負担となることに留意し、償還財源の確保に努め、償還に支障のないようにすること。  三、財政支出のうち、不要不急の経費の削減に努めるとともに、補助金行政の洗い直しを行うなど、引き続き行財政改革を進めること。  四、財源対策としての税制改革に当たつては、負担の公平化に重点を置いて、直接税・間接税のあり方など、中・長期にわたる税制の基本的見直しを行うこと。  五、国債及び地方債の発行が、民間の資金需要を圧迫することのないよう配意すること。  六、国債の個人消化を促進するとともに、公社債市場の整備・育成に努めること。   右決議する。  以上でございます。
  248. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ただいま野々山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  249. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 全会一致と認めます。よって、野々山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、坊大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坊大蔵大臣
  250. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って十分配慮をいたしたいと存じます。
  251. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 次に、航空運送貨物税関手続特例等に関する法律案に対する討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  航空運送貨物税関手続特例等に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  253. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います――別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  255. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  野々山君から発言を求められておりますので、これを許します。野々山君。
  256. 野々山一三

    野々山一三君 私は、ただいま可決されました国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。  一、発展途上国債務が累増しつつある現状にかんがみ、国際的に応分の負担をすることによつて、発展途上国経済開発を推進し、もってその生活水準の向上に資するよう努力すること。  二、国際通貨基金の任務の重大性にかんがみ、その増資などに当たっては、最近における各国の経済の実態が適切に反映されるよう努めること。   右決議する。  以上であります。
  257. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ただいま野々山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。  〔賛成者挙手〕
  258. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 全会一致と認めます。よって、野々山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただ今の決議に対し、坊大蔵大臣から発言を求められておりますのでこれを許します。坊大蔵大臣
  259. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては、御趣旨に沿って十分努力いたしたいと存じます。
  260. 安田隆明

    委員長安田隆明君) なお、ただいま可決されました三法案についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回は、二十六日午前十時とし、本日はこれにて散会いたします。   午後六時三十六分散会      ―――――・―――――