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1977-03-10 第80回国会 参議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月十日(木曜日)    午後一時十五分開会     —————————————    委員異動  二月二十三日     辞任         補欠選任      福岡日出麿君     青木 一男君  三月二日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     栗林 卓司君  三月十日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安田 隆明君     理 事                 上條 勝久君                 戸塚 進也君                 野々山一三君                 矢追 秀彦君     委 員                 青木 一男君                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 坂野 重信君                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤川 一秋君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 村田 秀三君                 和田 静夫君                 渡辺  武君                 田渕 哲也君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       倉成  正君    政府委員        経済企画庁長官        官房参事官    岡島 和男君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        外務省アジア局        次長       大森 誠一君        大蔵政務次官   斎藤 十朗君        大蔵大臣官房審        議官       佐上 武弘君        大蔵大臣官房審        議官       徳田 博美君        大蔵省主計局次        長        加藤 隆司君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  岩瀬 義郎君        大蔵省証券局長  安井  誠君        大蔵省銀行局長  後藤 達太君        大蔵省国際金融        局長       藤岡眞佐夫君        国税庁直税部長  谷口  昇君        中小企業庁計画        部長       児玉 清隆君        郵政政務次官   綿貫 民輔君        自治省財政局長  首藤  堯君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        公正取引委員会        取引部取引課長  利部 脩二君        郵政省貯金局次        長        小山 森也君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本政策に関する件)     —————————————
  2. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る二月二十三日、福岡日出麿君が委員辞任され、その補欠として青木一男君が選任されました。     —————————————
  3. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日参考人として日本銀行総裁森永貞一郎君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  去る二月二十二日の委員会において、坊大蔵大臣から聴取いたしました財政及び金融等基本施策に対しこれより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣が御出席がわずかな時間でありますから、私も夜はちょっとぐあいが悪いものですから、短い時間ですがその間お聞きしておきたいと思います。  まず第一に、私は、予算委員も務めているわけでありますけれども、五十二年度予算の実際上の責任者といいますか、審議の実際上の責任者は、私、大蔵大臣だろうと、こういうふうに思うわけでありますけれども、しかし、参議院予算委員会総括質問に移るときに、実は新聞報道ですと、私ども総理アメリカへ行く、こういう話を、実はこの間の補正予算のときも、大蔵大臣のいる前で、総理は十九日かに出発をして二十五日に帰ると、こういうことを明言をされたわけでありますから、その後変更がなければそのとおりであろうと思うんですけれども、その後それについては政府として変更はしておりませんかどうですか。
  7. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 総理アメリカ渡航は、今日のところは変更いたしておりません。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 参議院予算委員会総括があるにもかかわらず変更する意思は全然ないというわけですか。
  9. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいまのところは、総理は、アメリカと約束をいたしておりまするので、それを変更せずに参ろうというふうに考えております。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、参議院予算委員会には総理は欠席をすると、こういうことになろうかと思いますけれども、ことしの五十二年度予算というのは、私どもやはり経済問題が中心予算であるというふうに認識をしているわけでありまして、また福田総理自体は、経済に明るいと、こういうことも一般に言われております。それは本当かどうか私はわかりませんけれども一般にはそう言われております。そのときに、最高責任者であり、しかも予算提出権者最高責任者でもある総理出席をしないということについては、私どもこれはきわめて参議院軽視していると。三十日間という憲法の規定によってとにかく三十日間過ぎさえすればいいんだと、参議院審議なんかどうでもいいんだと、こういうふうに私ども思えてならないわけでありますが、予算審議中心になります大蔵大臣は、そういう形で参議院軽視してもいいと、こういうふうにお考えになっているのかどうなのか、その点をはっきり聞いておきたいと思います。
  11. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私は、日本議会政治二院制度でございまして、参議院軽視していいなどということはつゆ思っておりません。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 関連。  どっちみち私後ほど時間を持っておりますから、そこで論議をいたしますが、あなたも出席をされた参議院の本会議総理大臣は、国会都合これを許せば、国会了解が得られればこれをお受けしたいという返事をカーターにいたしています。都合がついたら御協力お願いをいたします。こういう状態というのは、あなたは、大蔵大臣として都合がついた状態認識をされているわけですか。昨日、参議院議院運営委員会は各党の意見を聴しまして、与党を含んで訪米に対して、この時期の訪米に対して、十九日からの訪米に対しては反対、こういう態度であります。明日、議運委員会はもう一遍それを明らかにしながら、河野議長に対して議運委員長から意見を述べますけれども、すでにきょう河野議長に対してはそういう意見を述べてある。こういう情勢を考えられれば、大蔵大臣としては参議院予算総括質問が行われる時期に、あなたは訪米をするのはやっぱり取りやめるべきだという、そういう意見を当然述べられるべきだと思う。参議院軽視をされないというあなたの意見、御返事が本当のものであったならば。そういう用意がありますか。
  13. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 参議院軽視などということは思いもよらぬことでございます。  そこで、今度総理アメリカ渡航されるということも、これもまた大変日本の国としては大事なことであろうと私は思います。そういうようなことで、とにもかくにも二つ、これ私は非常にいずれも大事なことであろうと思いますが、願わくは、ひとつ総理渡航をするに当たりまして、その重大なる目的もひとつ御了解を願いまして、ぜひとも私からも参議院に対しましてお願いを申し上げたいと、かように考えております。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 あなたは口で参議院軽視しませんと、こう言っていながら、いままでの慣例、審議の仕方、これを見ましても、総括質問というときには質問がほとんど総理にいく、こういうのがいままでの実例だと思うんですよ。それにもかかわらず、行かしてくれということは、まさに私は参議院軽視している、それ以外の何ものでもない、こういうふうに思うわけでありまして、あなたのいま行かしてくれという言葉については私どもはこれ了解を絶対しない。何らかの方途をとらない限りは私どもはこれは了解をしないわけです。  そこで私どもが、いま議運出席をなさっております和田理事の方からもそのお話がいま出たわけでありますけれども、私どもとしては、与野党含めてこれは重大な決意をしなければならない。一方、本年度の予算は早く成立をさして、景気回復を図りたいという、そういう気持ちでは、これ与野党ある程度の私はコンセンサスが得られていることだと思います。そういう意味では、私ども予算成立にはなるべく協力をしていく、こういう気持ちでいままで臨んできているわけです。それにもかかわらず、非常に重大な時期に一週間近く国会審議を留守にする、これは私はどうしても承認できませんし、私どもはこの面についてはあらゆる反対をし、場合によれば抵抗もいたします。この点は、将来参議院における審議がどういうふうに進んでいくか、私はこの点にも非常に重大な影響が出てくるだろうと思います。特に予算関係審議にも私は影響が出てこざるを得ない、こういうふうに思いますが、そういう観点については大蔵大臣はどのように考えていますか。
  15. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ぜひひとつそういうことでないようにお願いをしたいと思います。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 私ども幾らお願いをされても、これだけの参議院軽視というのは、私はいままでにほとんど例はないと思うんです。政府が早く予算を通せ通せと言うならば、当然予算が通ることに対する協力というものを、しかも、責任者であるあなたは、総理大臣に、行くのを延ばしなさい——それは確かに重要だと思いますよ、重要でないとは私ども言っておりません。重要である限りは、私どもは、あなたが総理大臣にそういうことを言うのは当然だと思うんですけれども、そういう要請をする気はございませんか。
  17. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 当委員会の御意思というものにつきましては、私は総理大臣によくお伝えはいたします。私から総理に対しまして意見を申し述べるということは、これは私は差し控えたいと思いますが、いずれにしても当委員会の強い御意思総理にお伝えいたします。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 そのかわり私どもは、行ったならば後について責任を持つということは、これはできません。協調連帯ということをあれほど本会議以下で述べられて、衆議院だけには協調連帯をやって、参議院には協調連帯をしないなんて、こんなばかなことは私はないと思う。この点は、今後の事態がどうなるかについては十分ひとつ考えておいていただきたい。  そこで、いま総理アメリカへどうしても行かなくちゃならないという緊急の理由は、政府は何だと考えていますか。
  19. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) これは私だけからのお答えではとうてい竹田さんの御満足のいくようなお答えはできまいと思いますけれども、お説教するつもりではございませんけれども、いまの日本経済というものは、まあ福田総理経済については非常な、何とかしていきたいという強い決意と多年の経験を持っておる人でありますから、日本経済というものは、アメリカ経済と非常に密接なる結びつきを持っておると、そういうような関係上、経済的また外交的にもその密度を、これを加えていかなければならないというような喫緊の私は事態にあろうと思います。そういったようなときに、アメリカ当局と腹を割っての話し合いをするということも非常に大事なことでございまして、それを果たすために総理が行かれるということであると私は考えておりますが、総理なり外務大臣なり、その他の人たちには、これはまた私が考えておる以上のことをお考え願っておるのじゃなかろうかと、かように考えます。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣がおっしゃったことは、一般論としては私もわかります。しかし一週間、十日先になぜ延ばせない喫緊理由があるか。もちろん総括質問が終わって、総理予算委員会原則として出席をしないという、そういう時期になれば、そこまでもわれわれは総理が行ってはいけないということを言っているわけじゃないわけです。総括質問中に行く、このことについて私どもは非常に問題にしているわけです。いまお話になったようなことが、なぜ一週間、十日延ばせないんですか。延ばせない根拠を述べてください。
  21. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) やはりいまの事態ができるだけ早くそれをやりたいと、こういうことであろうと思います。決して参議院軽視するとか、そういうような意図は毛頭ないということを私は信じております。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 具体的にどういう案件があるから行かなくちゃならないのか、この点私はさっきから聞いているんですよ。そのように答弁をはぐらかしてもらっては困るんですよ。この問題があるからどうしても行ってすぐ話をつけてこなければ、余人をもってはかえがたい、こういう理由を述べてください。
  23. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 経済の問題、政治問題等につきましては、これは大変早く話し合いをしなければならない問題がたくさん私は山積しておると思います。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 具体的に言ってください。そんな一般論なんか聞きたくない。一般論じゃだめですよ。具体的にどの問題で解決しなくちゃならぬのかということをはっきり言ってください。
  25. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 輸出入の問題だとか、あるいは為替の問題だとか、そういったようなものもこれは大事なことだと思います。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 輸出入の問題や為替の問題、どうして一週間延ばせられないのですか。延ばせられない根拠を言ってください。
  27. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) これは前々から、前々から、いま始まったことでなくして、早くひとつ話をしたい、こういうふうに考えておったことだと思います。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 前々から、どうして、必要だというなら、なぜもっと前に行かなかったのですか。何も参議院総括のときに行かなくちゃならぬということにはならぬでしょう。参議院総括をねらって行くというのはどういう意味なんですか。前だって行けるじゃないですか。なぜ前に行かなくて、参議院総括のときに行かなくちゃいけないんですか。
  29. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 特に参議院総括をねらって行くというふうにお考えになるのは、まあたまたまそういうことになりましたけれども、それをねらってというようなことではないと私は信じます。
  30. 竹田四郎

    竹田四郎君 冗談言っちゃいけませんよ、あなた。私は予算委員会理事ですよ。予算委員会審議については、私ども前々からこの問題は心配していたんです。予算委員会理事会として、与党並びに政府関係については私どももう三回これは申し入れているんですよ、三回。それはあなたは知らないかもしれない。三回申し入れているにもかかわらず、相変わらず十九日から二十五日、この線は変えない。これはまさに参議院総括をねらって行っているということ以外にないじゃないですか。私どもが何も言わないで、そこで十九日から行くというんなら、それは参議院の事情がよくわからなかったからということでしょうけれども、私どもはもう三回申し入れていますよ。それでも行くというのはどういうわけですか。
  31. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私は、一般的のお答えはそんなものは聞くわけにはいかない、こういうふうにおっしゃいますけれども、私といたしましては、私の立場からは、一般的なお答えを申し上げるよりほかに答えようはないんです。一般的のお答えを申し上げることによって御理解を願いたいと思います。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 それはまさに開き直りですわな、あなたの。あなたはこれから予算というのを抱えているんですよ。予算を通過させる最大の責任者は私はあなただと思うんです。あるいはその後の税法なり、あるいは財政特例法なり大蔵省提出、提案している法案というのは多いわけです。そのくらいあなたは責任のある、予算については私は最も責任のある立場の人だと思う。その人が、一般論以外にしか言えないというのは、私にはどうも理解できないです。これが行政管理庁長官だとか、あるいは郵政大臣だとかいうなら話はまた別ですよ、責任論において。しかし、あなたがいま一番大きい責任を持っているじゃないですか。予算案を通過するだけでなくて、日本経済景気回復をどうするかということについても、あなたは総理に続いて第二番目の私は責任者だと思っている。それが一般論としてしか物を言えない、これじゃ余りあなたは責任者としての態度じゃないじゃないですか。私はあなたの答弁承服できかねます。
  33. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) お言葉のとおりですね、私は本当にこの日本の国の今日の財政経済というものにつきましては、これはひしひしと重荷を感じております。だから、衆議院におきましても、参議院におきましても、ぜひとも皆様の御理解を願って、そしてこの速やかなる政策が実現していくということをぜひお願いを申し上げたい。それとともに、総理アメリカへ行かれまして、そうして速やかにアメリカとの間にいろんな話し合いをするということも、これも非常に大事なことだと、かように私は考えております。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 具体的にあなたの立場——あなたの立場と言えば、日本経済全体の立場だと私は思うんです。防衛問題は直接あなたの問題じゃないと思いますね。あるいは二百海里の問題は、これはどちらかと言えば、あなたの問題でもあるけれども、これはどちらかと言うと農林大臣所管の問題、外務大臣所管問題等になるだろうと思う。あなたの立場で、具体的にいまあすにでも何を解決しなくちゃならぬと考えてますか。
  35. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) やはりこれは考えておりまする政策というもの、政府予算あるいはその他のものを、これをひとつ審議をやっていただいて、できるだけ早くこれを成立をしていただくということが、これが私の念願なんです。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 いや、私は質問の仕方が悪かったと思うんですがね。あなたの立場としてですね、総理にとにかくすぐいまアメリカに行ってもらわにゃ困ると思っていらっしゃると思うんです、あなたはね。先ほどの答弁からいって、行かしてくれとおっしゃっていますから。大蔵大臣立場として、ほかのことを言えば私の所管じゃないとあなたが言うに決まっているんだから、あなたの立場として、総理がいま十九日から二十五日の間アメリカに行って、カーターと会って、すぐにでも解決してほしいという案件は何ですかと聞いているんです。
  37. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 今日日本はもちろんのこと、世界各国がなかなか景気回復の足取りが余り快調ではないこと、これは世界各国の実情でございますが、そういったようなことは、これはできるだけ速やかに解消、速やかにこれを改善していかなきゃならぬということでございますが、そのためには私は今日日本アメリカ、ドイツなどというものが世界の、何と申しますか、指導国といたしまして、密接にこれを相談し、連絡し、そして対策を立てていくということが何よりも私は大事なことだと、かように考えております。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 そのことが総理が行ったらすぐ解決するんですか。そういうことがすぐ解決するんですか。二十日、二十一日ですか、カーターと会ったらその問題すぐ解決するんですか。景気回復は直りますか。そのことをあんたは保障しますか。
  39. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私は、総理アメリカに行ってカーターさんと話し合うということは、これは頓服的に、そうやったらあしたあさってもう景気回復するというようなことは考えておりません。しかし、早くこれに手をつけるということが大変大事なことだと、かように考えます。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 それなら、そんなに喫緊でないということであれば、私は一週間、十日延ばして、一体、後に延ばして行った方が私はむしろ成果がある、事前に十分詰めて、そして短い期間に会って話をする、そういうことが当然だろうと思うんですけれども、まあまるでこんにゃく問答、いつまでも重ねていてもしようがありませんから。ただ、あなたに対して手痛い反撃が将来ある、このことだけはしっかりとひとつ胸にとめておいていただきたいというふうに思います。そこで、昨日ですか、一昨日ですか、カラーテレビに対してITC判断が六対ゼロで、日本カラーテレビ輸出については「クロ」だと、こういう判断が出たようであります。まあこれからこれに対してカーター政権がどういうふうに取り組んでくるかわかりませんけれども、このことについては、あなたとしてはどういうふうに国際収支立場でお考えになりますか。
  41. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御指摘テレビでございますが、そういったような商品集中豪雨のように、これが集中的に出ていくということにつきましては、今後ともこれは考慮をしていかなければなりませんけれども原則としては、この輸出入貿易というものはこれは自由貿易の原理に立っていきたいと、基本的にはそういうふうに考えています。
  42. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまOECDにいたしましても、あるいはその他の国にいたしましても、世界各国におけるところの景気回復するエンジンカントリーという言葉が最近使われておりますけれども景気回復する起動的な役割りといいますか、こういうものが日本に特に要求されていると思いますけれども、しかも日米間の貿易の不均衡というのは、アメリカ貿易赤字のそれにほぼ匹敵するものが日本の対米輸出の黒字という形にいまなっていると思うんですよ。で、これは一体どういうふうに解決するつもりなのか。エンジンカントリーとしての役割り日米貿易の不均衡を直す、これはどういうふうにして直していくつもりか。カーター政権の方は、私ども新聞紙上で言われているところを見ますと、日本貿易収支赤字にせよ、こういうことを強く言っているように聞いておりますけれども、まあ、いまカラーテレビITCが「クロ」の判断をし、しかも日本貿易収支赤字にせよと、こういうふうに迫っていると聞いておりますけれども、その点はどういうふうに理解をされていらっしゃいますか。
  43. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) いま御指摘になりましたカラーテレビの問題につきましては、大臣から御答弁申し上げましたように、特定地域に対しまする特定商品につきまして、集中豪雨的な輸出がなされて現地で摩擦を起こすということはできるだけ避けるように配慮すべきだと思いますが、基本的には自由貿易世界貿易の拡大を図っていきたいというのが私ども考え方でございます。したがいまして、その一国対一国の関係におきましてその貿易収支均衡させなければならぬということはないわけでございまして、その点につきましては私ども諸外国にも訴えてまいりまして、最近はかなり理解を得ておると思っているわけでございます。ことに日本の場合には、石油の輸入が非常に巨額になっておりまして、それはそれとして赤字を負担せよ、その他の国に対しましては貿易均衡せよというのでは、全体として日本国際収支均衡は保てませんので、その点につきましては、グローバルに貿易考えるべきであると。  さらに日本の事情といたしまして、貿易の収支のほかに貿易外の収支で構造的に大きな赤字を出しておりますので、その分は貿易の黒で埋めてしかるべきものだと思っておりますので、この点につきましても貿易収支だけの議論ではなくて、貿易外の収支を含めました経常収支で議論をした方がより適切ではないかというふうな主張をいたしておりまして、最近はその点につきましても、海外の理解は深まっておると存じております。
  44. 竹田四郎

    竹田四郎君 局長、この問題はおととし外務委員会であなたと私は議論しましたね、そして国際的な貿易の不均衝あるいは国際通貨の不均衝、こういう問題を、金融援助基金協定ですか、あれであなたに私の意見も申し上げたつもりであります。もうあれからずいぶんだっているわけですね。私もいまあなたがおっしゃられたように、アメリカ貿易収支赤字にせよというそういう要求というのは、感情的な要求ですらあるんではないか、私もそう思います。しかし、そう思いますけれども、いままで日本はそのようなことに対するグローバルな均衝を図っていくという立場のことをやってないんじゃないですか。あなたおととし、去年でしたが、盛んにそれをおっしゃっておられたわけですけれども、現実にはその後やはり同じように、大蔵大臣がおっしゃったように、集中豪雨的な輸出をやっぱりやっているんじゃないですか。そういうことを言っているということになると、私はどうもアメリカのその感情的な反対というものも、気持ちの上ではわかるような気がするわけです。何にもしていないで、グローバル的に不均衝を直していく。これはどうも言っているだけで実行をしないと、さっきの、参議院軽視しないけれども総理は出してくれという議論と同じじゃないですか。  そこで、いま国際的に非常に不均衝になっている実態というのはどのように認識されていらっしゃるか。これはもう国金局長はよく知っているから、私は大蔵大臣認識を、どのぐらいいま世界貿易というのは不均衡になっているか、大蔵大臣認識を聞きたいです、具体的に。
  45. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御承知のとおり、いま世界の中で経済先進国と発展途上国とこれありますが、その中で先進国の中でも非常に経済が安定して適当なる成長を続けておる国と、なかなかそうでない国と両方ございますが、しかしそれらの中におきまして、とにもかくにも石油というものがこれが一つの標準になりまして、石油の産油国というものが非常にこれは国際経済と申しますか、その中でますます強い力を国際金融におきまして発揮しております。それに対しまして日本を初め輸入国、これが非常に、何と申しますか、現在国際金融におきまして苦しい立場になっておりますが、この両方をどういうふうにこれを調和調整していくかということが、これが今日の世界的に一番大事な問題であろうと思います。
  46. 竹田四郎

    竹田四郎君 貿易関係の不均衝も非常にひどいわけでありますけれども、その他いろいろな民間銀行等を通じての関係も私は非常に不均衝の状態になっていると思うんですね。国金局長に伺いますけれども、そうした借金を返せない、もうしばらく猶予をしてくれというような国はいま世界でどのくらい出ておりますか。
  47. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 石油を産出いたしません開発途上国の債務は大変大きくなっておりまして、世銀のレポートによりますと七四年末で千五百億ドルぐらいあるわけでございますが、ただ、この各国状態は大変国から国によりまして違うわけでございまして、いま現に払えないからどうしてくれという国が具体的にあるというよりも、いまの南北問題を通じまして南の方の国がこういうふうな大きな債務を抱えておりますので、それを何か一律的にあるいは自動的に処理できるような対策を考えてほしいというふうな要求を出しておるということでございます。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 いずれにしても私は、この前の補正予算のときも申し上げましたけれども、このままにしておけばこの格差というのは狭まるより広がるばかりだというような気がしますね。しかも国際的な世界景気が悪いということになればなるほど、資金は経済の比較的安定した国に集まる。非産油国やあるいは経済が余り発展していない国はますますお金は借りにくくなる。景気が悪いから持っている資源もなかなか買ってくれない。こういうことになればなるほど私は国際的な貿易というものはますます縮小していく、そういう心配があるわけでありますけれども日本のように資源の大半を外国から買う、こういう国は、そういうことになればなるほど私は大変な困難に陥れられてしまう可能性が非常に強い。だからいまのうちに私は日本が何とかこれに対して手を打っていかなければ、二年、三年後果たして石油だってどうなるかわからない、食糧だってどうなるかわからない、こういうふうになると思うんですけれども、確かに先進国の問の金融援助協定というのは、私も審議に参加しましたんですが、これはある程度できる。先進国の中でもいまは二極分解をしているわけでありますけれども、特にひどいのは私は非産油の国々、これに対して手を打っていかなければ、やがて日本経済自体が困難に突入していくんではないだろうか、こういうふうに思うわけです。これは大蔵大臣日本としてこれからアメリカに行くわけですわ、いつ行くか知りませんが、結果的には。私はこういうことの方が本当に大事じゃないかと思うんですけれども、それに対して日本はどういう方針で行くんですか。
  49. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) いまの御指摘になりました非産油開発途上国の国際収支の問題、これは大変重大な問題でございます。そこで、日本を含めまして先進国がどういうふうなことができるかといいますと、私は二つあると思いますが、一つは、何といいましてもこの大きな国際収支の不均衡は石油の黒字から生じているということでございますので、その資金のリサイクリングを円滑にする。そのために確かにおっしゃいますように、弱い経済にはほうっておきますと順調に金が流れないというきらいがございますので、そこはIMFとか世界銀行等が資金の管理を促進するという役も必要かと思いますし、また、各国としましても、たとえば日本の場合で申し上げますと、そういう国の東京市場で発行できる場合には東京市場でたとえば円建て債を発行して資金の循環に協力するという方法もあろうかと思います。  それから第二の対策といたしましては、やはりいわゆる言われております強い国がインフレを招かない範囲で適度に経済を拡大いたしまして、そして開発途上国からの輸入を順調にしてやるということが、開発途上国の経済の再建にとりましても非常に有益な方途ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。
  50. 竹田四郎

    竹田四郎君 ただ、大蔵大臣、言っているだけじゃだめですわな。現在これだけ格差が広がらないうちなら私は言っていてもいいと思うんですけれども、IMFにしたって、融資能力というのは限度があります。あるいはオイルダラーの還流にいたしましても、いまのところはそう素直に還流をして資金の少ないところに金が行っているという状態ではないわけです。これは何か一つの私は金融的なもっとグローバルな融資協定なり援助協定なりというようなものをつくっていかない限りは私はどうにもならない事態にもう突入してきている、こう思うんですが、いま局長の言ったことは、これは精神論としては非常によくわかりますよ。わかるけれども、それを一つのシステムに、グローバルなシステムに変えていかなければこれはどうにもならないことだと私は思うんですよ。それについて大蔵大臣、せっかく総理アメリカにやるというんですから、私は最もこういう問題がいまの日米あるいは西独の間で話をしなければ、エンジンカントリーとしての役割りには私はならぬと思う。これについては具体的にどうするんですか。精神論では私はこれは困ると思うんです。これは局長じゃなくて大臣に聞かなければ……。
  51. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御意見は、非常に大事なことであろうと私も思います。それにつきまして私も慎重に検討してまいりたいと思っております。  細かい具体的なことは局長からお答えさせます。
  52. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣ね、もう少し具体的に言ってくれなければだれもついていかないですよ。具体的にことしは五月には先進国の首脳会議もあるわけでしょう。この前のサンファンの会議では、三木さんはむしろ日本について苦情を先進国の首脳から言われたんでしょう。今度は具体的にわれわれはこういう案を持ってこういうふうにしますからと言わなければ、私はカーターだって恐らくオーケーは言わないだろう。先進国の首脳会議だって、何だ、日本は自分だけもうけやがって、人の国に集中豪雨的に輸出をして、買う物は買ってくれない、こういうことだと思うんですがね。そういうものを今度持っていくんですか、持っていかないんですか、カーターのところへ事前に。これは大蔵大臣どうですか、局長じゃそれは政治判断できないでしょう。
  53. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいまのところおっしゃられるような具体案はいままだできてはおりません。
  54. 竹田四郎

    竹田四郎君 それがないといったなら、何も総理カーターに会いに行く何のゆえんもないんじゃないですか。先進国会議でひとつ日米独、これが中心となって国際通貨の偏在を直していく具体的なシステムをこうつくろうじゃないか、こういうものを持っていって初めて世界的な国際経済のあり方、こういうものについて発言ができるわけでしょう。私はそういうものがないということは非常に残念でありますけれども局長としては一体こういうものについて具体的にどういうシステムをこれからつくっていけばいいとお考えですか。
  55. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 何かこの大きな問題を一挙に処理できますような国際機関ができるかといいますと、私ども考えてみましたけれども、なかなかそういう思い切ったものは実現できないのではなかろうか。それよりもいまございますIMFの中に、たとえばこれは拡大融資制度とか、それから開発途上国の一次産品の値段が下がった場合にめんどうを見ます補償融資制度というふうなものがございます。そういったものをもう少し改善、工夫いたしまして、開発途上国の要望にこたえる、それからもう一つは、いま進めておりますが、第二世銀の増資をいたしまして、非常に困っている国に対しまして、いわゆるソフトローンを供与すると、それからアジア開銀の増資もいま検討されておるわけでございますが、そういった方法をいろいろと積み重ねまして、この開発途上国の問題にこたえていくというのがむしろ早くできますし、結果的にはより効果があるんではなかろうと思っておるわけでございます。
  56. 竹田四郎

    竹田四郎君 衆議院の時間の問題がありますから、余り大蔵大臣を長くとめ置くわけにはまいりませんけれども、いままで日本の海外援助とか、あるいは融資というのは、どちらかというと、二国間的なやり方をしていたと思うんです。こういう二国間的なやり方をしているところに今日言われている日韓問題だとか、あるいは日本とインドネシアの汚職の問題とか、私はこういうものがあると思うです。こういうものを二国間でやっていくというようなことの今後のあり方というものは、これは考え直さなくちゃ私はいかぬじゃないか。世界、グローバルなものとしてそういうものをつくり上げていかなくちゃいかぬし、せっかく行かれるし、先進国の首脳会議があるということでありますから、私は、当然これは日本としても一歩進んだものを提案する義務があると思うんですね。義務があると思うんです。  さらにこういう問題について、私は詳しくお伺いをしたいわけですが、時間がありませんから、またの機会にひとつ譲らせていただきたいと思いますが、きょうから日韓の民間の経済の合同委員会というのが三日間開かれるそうであります。そして、この主な内容は、韓国重化学工業開発株式会社、こういうものをつくるということだそうです。で、そのKIDCですか、これに対して外国から約百億ドル、国内から幾らですか知りませんが、伝えられるところによると約三百億ドル、こういうものの資金を得て第四次五カ年計画がことしから始まるということだそうであります。これについて一体政府投資の五億ドル、これはどんなふうなお考えでございますか。積極的にこれをやっていくという考え方でございますか、どうなんですか。
  57. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) いまの御指摘になりました日韓の会議の内容については、私はまだよく承知しておりませんが、韓国に対しましては、先般の双方の合意いたしましたコミュニケで第四次計画が始まるときまでには政府間ベース、重点を政府間の援助から民間の方に移していこうということが合意されておるわけでございます。そこで、いま私どもといたしましては、その趣旨に沿いまして、バランスをとりつつ、今後とも実りのあるような協力を進めていきたいと、そういうふうに考えておるわけでございます。
  58. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう二問ぐらいお願いします。  新聞の伝えるところによると、政府資金が五億ドル、民間の商業借款が十三億五千万ドル、こういうことに恐らくなるだろうと、こういうふうに思っておりますが、これをやっていくということになりますと、私は、日本の国の産業も相当大きな影響を受けざるを得ないと思うんです。ただいたずらに金の使いどころがないから、ここへ民間資金を投入するというあり方には私は反対でありますけれども大蔵大臣としてはこのKIDC、これは局長の方の考えはわかりましたけれども、あなたはこれをどういうふうにしようとお考えですか。
  59. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) いまのお話でございますが、私もまだ詳しくお聞きをいたしておりませんので、ここでお答えを申し上げるには余りに、私はほとんど聞いておりませんので。
  60. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、あなた、何聞いても大体知らぬということを得意にしているようですが、もうことしから始まっているんですよ。ことしの金を幾ら出すかということがもうきょうあたりから話されているわけでしょう。それに対してまことに私はこれ研究不足だと思うんですけれども、もう一つは、日本の兵器産業が韓国に投資をして、韓国から武器輸出をするということに関しては日本の憲法が及ばないわけですわな。日本の武器輸出をKIDCを通じて、あるいは韓国の工業を通じて武器輸出をするという意図がきわめて濃厚だというふうに新聞は伝えておりますが、こういうことを日本憲法のたてまえでやっていいんですか、やって悪いんですか。これは大蔵大臣に聞きたい。
  61. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御意見のとおり、それはやってはいけないということのように私も理解いたしております。
  62. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ、やってはいけないということをここではっきり承りまして、あとまだ質問がありますけれども大臣の時間の都合がありますので、きわめて大ざっぱで、もう少しきめ細かくやる準備はしてまいりましたけれども、ここで終わりたいと思います。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 日銀の総裁に伺いますが、八日の日に、予定から四日ほどおくれて、企業短期経済観測調査が発表されました。で、五十一年の十月から十二月の実績、それからことしの上期の予測ですね。これいずれも予想を上回るほどに悪い結果が出ているんです。で、公定歩合の判断材料にするとあなたはずうっと言ってこられたわけですがね。そうすると、この短経の調査結果というものをあなたはいまはどう判断されているわけですか。
  64. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) この調査は、主要企業約五、六百社にお願いをいたしまして、いろいろな項目につきまして回答をいただいているわけですが、かねて十一月時点の調査よりも二月時点の調査が少い悪い結果が出るのではないかと心配いたしておりましたが、結果は、やはり思っておりましたように余りよくないわけでございます。たとえば企業収益でございますが、昨年の九月期では約七割ぐらい回復し、十一月時点の調査ではこの三月期にさらに一〇%ぐらい向上するという結果が出ておりましたのが、今度の二月時点の調査では三・八%にとどまるというようなことがございますし、生産、出荷等の実績並びに見込みにつきましては、やや上向きではございますが、必ずしも勢いがない。いわゆる在庫調整が少し先にずれ込んでおるような感じの結果が出ております。さらに企業家の心理でございますが、たとえば業績をどう判断するか、あるいは生産設備等について過剰と思うかどうかといったような、そういう意向調査の結果に徴しましても、少しいままでの調査に見られましたような傾向が後戻りいたしまして、少し悪くなっておる。これを要するに企業家の心理状態に明るさが少し乏しくなりつつあるのではないかというふうに見ておる次第でございまして、十一月時点に比べれば二月時点での企業家の判断がやや影が差してきておるということが明らかに看取できるところでございます。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、日銀は明日政策委員会を開いて公定歩合の〇・五%の引き下げについて恐らく決定されるだろうということがたくさん報道されております。そういうことにいまなりますか。
  66. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 新聞にはいろいろ書いてあるわけでございますけれども、公定歩合の性格から申しまして予告して決定するというようなものでございませんので、私といたしましては、新聞に書いてありますことを肯定もしませんが否定もしないというようなことでひとつ御了承いただきたいと思うのでございます。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 肯定も否定もされないが、大体否定されないなら肯定されたことなんでしょうが。これはあれですか、総理やあるいは大蔵大臣もいなくなっているんですが、大蔵当局とはもう相談の上ですか。
  68. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) この問題に限りませんが、経済情勢の判断につきましては、大蔵省あるいは経済企画庁あたりと始終意見の交換をいたしてまいっております。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 訪米問題についての私たちの態度はさっきお聞きのとおりでありますから、いまの時期は反対でありますが、福田さんが行かれるときに、事前に経済事情その他金融情勢などについてあなたはいろいろの意見具申をするということを前々から言われていましたが、それはもう終わりましたか。
  70. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) どういう項目に重点を置いて話し合われるのか私どもうかがい知りませんけれども、もし渡米される前に時間をちょうだいすることができますれば、私どもから見た日本経済情勢ないしは金融情勢等について御報告申し上げるのがいいのではないかと。三木総理が首脳会談にお出かけになりましたときにもそのようなことをお願いしたことがございます。できますればそうしたいと思っておりますが、まだ日程を決めておるわけではございません。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣から聞くべきでしょうが、委員会の運営に協力する意味で聞きますが、先ほど竹田委員から質問がありましたが、昨晩、訪米に備えて大蔵省と福田さんは勉強会やった。一応の結論を出した。具体的な答弁さっきから大臣何ももごもご言ってしなかったわけですが、具体的にはどんな結論を出したんですか。
  72. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 昨晩、総理訪米を前にいたしまして、関係各省が集まりまして経済状態一般について、主として各省の意見の交換をしたということでございまして、特定の結論を出したというものではないわけでございます。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 いま日銀の総裁が言われました、総裁としてお考えになっている意見をやはり具申すべきだということについて、最も具体的にはどういうふうに今日を分析されているわけですか。どういうふうに福田さんに伝えられようとしているわけですか。
  74. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先週、先ほども御引用になりました経済短期観測が出たわけでございまして、それをいろいろと分析をいたしておるわけでございますが、その状況を中心として経済の現状並びに将来の見通し等について私ども考えておりますことを申し上げますのが主になろうかと思っておる次第でございます。
  75. 和田静夫

    和田静夫君 私はずっと報道を読んでいまして、あなたの記事が出るたびに、こうずっと公定歩合の引き下げについては非常に慎重でいらっしゃった。ところがある時点から何かこう動意を示されるようになった。これは政府の圧力があったというふうに感ぜざるを得なかった。言うまでもなく公定歩合の引き下げというのは日銀の権限でありますから、日銀は金融政策について中立的な立場にあるというのは当然なことであります。そうすると、総裁の言動がそういうわれわれアマチュアに、何かこう政治的な圧力でもって変わっていったんではないだろうか、政治的な思惑を感じさせるような発言になっていく、これはどうもがえんずることができない。したがって、引き下げに至るまでの真相はどうなんです、一体。
  76. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 過去における公定歩合の操作——私が参りましたのはこの二年二、三カ月のことでございますが、その問における公定歩合の操作、これは引き下げのみでございましたが、それに関する限りは、常に日本銀行の方からイニシアチブをとりまして、もちろん大蔵大臣にも事前に御相談はいたしますけれども、大体私ども申しますとおりお任せを願いまして決定をいたしておるのが実情でございまして、その間において、いわゆる政治的な、いま圧力という言葉をお使いになったかどうかわかりませんが、そういうものを私自身感じたことはございません。もちろん、金利政策は国の重要な経済政策の一環でございますので、その背景になる経済情勢の判断につきましては、先ほども申し上げましたとおり、常時関係方面と討論をいたしまして、意思の統一を図るように常々努力しておることは事実でございますが、公定歩合そのものにつきましてはいま申し上げたとおりでございます。
  77. 和田静夫

    和田静夫君 ところで、公定歩合の引き下げの理由についてちょっと伺っておきたいのですが、民間資金の需要が弱くて、そして景気刺激効果についてはいわゆるアナウンスメント効果があるかどうかというところではないかと思うんですが、過去の経験からも、引き下げの場合は追随率あるいは浸透期間ともに効果は低くて、特に今日のような情勢で〇・五%の引き下げでは、私は何のための引き下げなのか大義名分を見出せないと考えるんですが、いかがですか。
  78. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 具体的に公定歩合の引き下げをすでに決定しておるわけではございませんので、その効果がどうであるかということにつきましての具体的なお答えがなかなかむずかしいのでございますが、仰せのごとく、公定歩合の操作にはまず何といいましてもシグナル的な効果、アナウンスメントエフェクトがあることは当然といたしまして、日銀の資金の貸し出しの際の利率は上がったり下がったりするわけでございますから、これは短期市場の金利にはそれなりの影響を持つわけでございますし、さらにはまた一般金融機関といたしましても、できるだけ金利をそのシグナルに従って操作してもらうようにという期待が伴っておるわけでございますので、その程度はその時々の事情によって違いますけれども、かなりの実効的な効果が上がってくるべきものであろうかと思っておる次第でございます。
  79. 和田静夫

    和田静夫君 何か時間が非常にないようですからあれですが、五十年の十月の切り下げのときは、わざわざ一カ月も貯金金利の追随を待ったと言われていますが、ところが今回は、内密の約束があれば別でありますが、どうも本当に公定歩合の先行引き下げになるらしい。まあ私の感じが間違っているのかどうか知りませんが。そうすると、預金金利、特に貯金の金利について、総裁は金利政策の一本化の見地からいろいろ発言を各所でやられていますね。公定歩合と預貯金金利の関係についてどうお考えなのか。  私は、総裁の発言にきょう細かく触れている時間がありませんからまた後刻にいたしますが、いろいろ非常に疑問を感じているんですよ。
  80. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 一昨年公定歩合を下げました場合には、初めの三回につきましては預貯金金利につきましては据え置きのままでございました。第四回の一%の公定歩合の引き下げに際しましては、当時の経済情勢の判断その他からいたしましてやはり一%と、かなりそれまでの引き下げ幅より高める必要があるということがございました一方、預貯金金利据え置きのままでそれが可能かどうか、実効が上がるかどうか、貸出金利の低下が実効が上がるかどうかという問題があったわけでございまして、その場合には貸出金利につきましても一%引き下げることと同時並行的に公定歩合の引き下げを実行したわけでございます。公定歩合と預貯金金利との関係はいろんな場合がある、いま申し上げましたことからも御理解いただけますように、いろんな場合があるわけでございまして、あるいは公定歩合が先行し、後に預貯金金利が追随したということもございますし、先ほども申しましたように同時決着ということもございましたし、そのときどきの情勢によっていろいろと適応が変わってもいいのではないか、必ずしも同時決着ということにこだわる必要もないのではないか、これはもちろん一般論として申し上げておるわけでございます。ただし、金融機関の貸出金利は一昨年からこの方かなり公定歩合の引き下げに追随して下がってきておりますので、利幅はかなり縮小いたしております。その現状から考えますと、貸出金利の低下を一層実効的に促進するためには、預貯金金利がどうなるかという問題を無視するわけにはいかないような問題もあるわけでございますが、その辺はそのときどきの事情で判断してしかるべき問題であるというふうに考えておるわけでございまして、具体的にどうという問題につきましては、ただいまのところ申し上げない方がいいんじゃないかと思っておる次第でございます。
  81. 和田静夫

    和田静夫君 総裁に最後の質問ですが、「人件費や運用資金がどうなっているか。多々ますます弁ずということには、資金コスト的にもならないと思う。世界一の銀行にふさわしい経営が必要であり、このへんでみんなが郵貯の問題を取り上げなければならない」と、郵便貯金特別会計についてこういうふうに発言されましたね。
  82. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) まあ銀行預金と郵便貯金との関係につきましては、世上いろいろ話されて論争されておるわけでございますが、私はそういう問題よりも、この世界一の銀行になった郵貯としても、たとえばいま郵貯会計毎年巨額の損失が出ておるわけでございますので、その辺を一体どう考えるのか、やはり世界一の銀行にふさわしい経営内容というような問題も無視はできないのではないか、そういう意味で、この間新聞記者会見の際に質問が出ますままに答えたのでございますが、いま申し上げましたような趣旨で申し上げたわけでございます。
  83. 和田静夫

    和田静夫君 私は、これは日本銀行総裁の発言としてはきわめて不適当だと考えています。  そこで郵政政務次官、この日銀総裁の記者会見における発言をあなたはどう受けとめられているわけですか。
  84. 綿貫民輔

    政府委員(綿貫民輔君) 私も新聞で拝見したのですが、ただいまも日銀総裁から、まあどういう意味で申されたのか、政府がやっぱり責任を持ってやっております事業について、内容の批判とかそういうことでおっしゃったのでは私はないと思いますけれども、そういうことであれば私もいささか首をかしげざるを得ないと思っておりますが、しかし、公定歩合の問題とやっぱり預金金利の問題というものが連動して非常に悩み多いものだということでいろんな御発言になったものだと私は理解をいたしております。
  85. 和田静夫

    和田静夫君 総裁がいらっしゃる前でもう一つだけ郵政から聞いておきますが、あとの郵政はちょっと総裁の他の質問が終わってからもう少し続けますけれども。  この仮に郵便貯金特別会計について検討をもし加えるとすれば「創業以来一貫して個人の少額貯蓄を預かる機関として家計経済の安定と向上に寄与してきました」これは郵政省の貯金局が先月発行して私たちに届けた「郵便貯金について」という説明書きの中にあるんですが、この精神に従って私は検討すべきだと思う。預金金利と貯金金利は必ずしも連動する必要はないという点についてどう考えているんですか。
  86. 綿貫民輔

    政府委員(綿貫民輔君) これは和田さんよく御存じのように、郵便貯金法の十二条で、預金者の利益の増進に十分な考慮を払うとともに、あわせて一般の金融機関の預金の利率についても配意する、非常に政治的といえば政治的ですが、非常に微妙な規定になっております。これはやはり金利というものは私は郵政省としては預金者保護ということも大事でございますし、逆には財投の原資を提供しておるという非常に大きな使命感も持っておると思います。そういう中で、しかし経済政策というものはやはりいろいろありますから、物価の問題を取り上げれば預金者の金利をやはりどんどん上げるという方がむしろいいと思いますが、一般の金融機関ともあわせて、たとえば民間の設備投資を振興して景気の振興策にしようという場合には、いろんなそういう総合的な預貸の利率の問題が出てくると思いますし、その辺も考えてやらなければならぬ問題でございまして、これは一郵政としての考えもさることながら、経済全般あるいは国の政府としての総合的な判断に立っていろいろ考えなければならない問題であるというふうに私は解釈いたしております。
  87. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本銀行総裁に伺いたいと思いますが、先日大蔵省の発表しました統計によりますと、五十一年末の国債の発行残高が二十兆八千七百四十七億円、約二十一兆円に及んでおるんですね。この大量の国債の約二九・八%、三割近いものが日本銀行の保有になっております。六兆二千億円ですかな。で、市中金融機関のこの保有率、これが約四三%で約九兆円、こういう数字になっているわけです。昨年も七兆円を超える公債が発行されたわけですけれども、表面はどうやら難なく消化できたという形をとっておりますけれども、しかし実際市中金融機関、特に都市銀行の数字を調べてみますと、昨年の七月ごろから銀行の資金ポジションが非常に悪くなってきておる。そうして公債引き受けの資金をつくるという意味もあろうかと思いますが、公債以外の債券を大量に売り出しているというのが実情だろうと思っております。  ところで、今後も公債の大量発行が続くわけでして、この間大蔵省の発表した改定財政収支試算によりますと、五十五年度末で約五十五兆円という莫大な公債残高になるわけであります。もしいまの公債の発行のやり方、引き受けのやり方、これが今後も続くというふうに前提をして考えてみますと、市中金融機関の資金ポジションの悪化というのは一層激しくなるんじゃないか、避けられないのではないかというふうに考えざるを得ないわけですね。もし、これを何とか解決しようと思えば、日本銀行がやはり大量の買いオペをやって、日銀保有をふやすという以外に道はなさそうだというふうに思うんですが、総裁としてはどちらを選択なさるのか、まず伺いたい。
  88. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 現状につきましてお述べになりました計数は仰せのとおりでございます。私どもの保有国債がかなりの額に上っておりますが、これは毎年のオペレーションの結果が累積してきておる、その点も御承知のとおりでございますが、この国債その他の債券オペレーションの本来の趣旨は、そのときどきの金融市場における短期資金の過不足の調整の限度にとどめておるわけでございまして、しかも長年の経験で総括的に申しますと、いわゆる成長通貨の限度にほぼ見合ったものにとどまっておるわけでございます。今後の方針といたしましても、経済の成長に見合ってどうしてもそれだけ通貨が増発されるというその限度においてしか買いオペは行うべきではないと、もしその限度を超えましてどんどん日本銀行券が市中にはんらんするということになりますと、これはもうとりもなおさずインフレーションでございますので、やはりその辺の限度は守らなければならないと思っておるわけでございます。したがいまして、今後国債の発行額が増額し、現在の消化方法のもとにおきましては市中金融機関の手持ちがふえるわけでございますけれども、その割合においてオペレーションの額をふやすということは全然考えておりませんことをまずお答えいたしたいと思います。  しからば、この金融機関の国債保有がその限度に達する場合にどうするかということでございますが、これはやはり消化力というのは国債発行の限度でもあるわけでございますし、そのほかの経済情勢その他諸般の情勢にもよることでございますが、国債発行額そのものにつきましてもやはり消化力が一つのチェックになってしかるべきものだと思いますし、さらにはまた金融機関以外の消化、いわゆる個人消化等につきまして昨今非常に個人消化が増加いたしておるのでございますが、今後さらにいろいろ工夫をこらしまして個人消化を努力すると、そういったことも今後必要になってくるのではないか。そのためには、この公社債の流通市場をいまよりももっと正常化、健全なものに育てていく必要があるわけでございまして、そういうようなことによりまして、巨額の国債発行に全体として対処していくと、そういうことじゃないかと思います。日本銀行がオペレーションによってそれを救済するということは考えておりません。
  89. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま、この公社債市場の育成というふうにおっしゃいましたけれども、そういう方向で検討するという国会答弁総理大臣などからありますけれども、これは後から大蔵大臣に伺おうと思っているんですが、私の知る限りではなかなかこれ具体化しそうもなさそうだという感じなんですね。しかもあと二、三年の間で五十一年度に比べれば二倍半くらい五十五年度の公債発行残高になってくると、べらぼうなもんですよ。しかも、財政上の必要から大量に公債発行されるわけでしょう。いまの引き受け発行の条件を前提として考える限り日本銀行は成長通貨を賄う範囲内で買いオペをやるんだと言ったら、これは大量の国債が市中金融機関保有と、こういうことにならざるを得ないです、これは。一体それをそのままで放置なさるのか、どういうふうに対処されるのか、そこを伺いたいんです。  それからもう一点、成長通貨の範囲内で買いオペをやるとおっしゃってもずっといま累積しているわけですね。先ほど申しましたように、発行残高の約三割が日銀保有ということになっていますが、五十五年度では発行残高の大体やはり三割くらいが日銀保有になるというふうにお考えかどうか、この二点を伺いたい。
  90. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 実は私どももおととしから巨額の国債が出るようになりましたときにどういうことになるのか、まあマネーサプライの上にも影響があるわけでございますし、あるいは金融機関の資金操りからいってもいろいろ問題があるわけでございますから、どういうことになるだろうか心配もいたしましたわけでございますが、今日までのところさしたる問題もなく推移いたしておるわけでございます。それは一つには、いまのような経済情勢のもとにおいて資金需要、企業の資金需要が余り起こっていない。そのことが今日までの国債消化を比較的円滑に推移させてきておるわけでございますが、将来景気回復いたしまして産業資金需要が起こってきた場合にどうかという問題は確かにあるわけでございます。産業資金の需要を満たさないで、いわゆるクラウディングアウトの問題を起こしましても今度はまた景気の方がうまくいかないということになるわけでございますので、その辺を一体どう調節していくか、これが今後の金融政策上の非常に大きな問題だと思っておるわけでございます。目下のところは急激にそういう事態が起こるとも思っておりません。しかし、先に行って景気回復が一段と顕著になりました場合にどうするかという問題はあるわけでございまして、その場合には経済が過熱するおそれも他方においてあるわけでございますが、したがって、金融政策のコントロールということも当然出てくるとは思いますけれども、そのほかにやはり財政面におきましても、そういう景気のいいときには租税収入もだんだんにふえてくるわけでございましょうから、それに応じて国債発行枠を減らしていただくとか、あるいは財政全体の運営をその当時の経済情勢に合わせてモデレートなものにしていただくとか、そういう問題が起こってくるような感じで、いずれにいたしましても、財政、金融両面からいま御指摘の問題をいかにして破綻なく調整していくか、これは私どもの最大の関心事でなければならぬと思っておる次第でございまして、いますぐには心配はないと思っております。
  91. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、私、端的に先ほどの質問の結論だけ伺いますが、つまり市中金融機関が大量の国債保有をせざるを得ないような状態にあるわけですからね、もういままでもそうだし、これからもそうだろうと思うんですが。これそのままでいいかということですね。  それからもう一点は、五十五年度末の日本銀行の国債保有率と言っていいですか、発行残高に対する約三割がもうすでに昨年末では日銀保有になっていますが、五十五年度の末では一体どのぐらいを考えていらっしゃるかと、この二点。
  92. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 今後の経済成長の程度、速度、その他いろいろなことを考えなければにわかに推測ができませんが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、健全な経済成長の達成に必要な成長通貨の限度にとどめなければならぬと思っておる次第でございます。それが何割になるかということは経済成長の状況その他との兼ね合いでございますので、いまここで何割というお答えは御容赦いただきたい……。
  93. 渡辺武

    ○渡辺武君 低下しますか。ふえますか。
  94. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) そんなに上昇しないと思います。と申しますのは、国債発行額の方がどんどんふえるわけでございますが、たとえばことしの例をとりましても、国債発行額の去年、ことしの例に徴しましても、国債発行額の増加の方が経済成長通貨の増額よりもはるかに大きいわけでございますので、先ほど来申し上げておりますような原則を堅持する限りその割合はふえることはないんじゃないか。むしろ低下していくのではないか。そうあってしかるべきものだと思っております。
  95. 渡辺武

    ○渡辺武君 なお伺いたいところがありますが、時間の都合がありますので次に移ります。  こうして市中金融機関が大量の公債を抱え込んだと、これが一つの原因、全部の原因じゃないでしょうが、一つの原因になっていま債券の現先市場というのが急成長しているわけですね。規模はコール市場とほとんど同じぐらいになっているという話でありますが、日本銀行はこの新しい金融市場をどう評価しておられるか。好ましいものと考えているのか、あるいは好ましくないものと考えておられるのか、これをまず伺いたい。あるいはまた、一時的なものと考えているのか、今後も成長するものと考えていらっしゃるか。
  96. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 仰せのごとく、現先市場は逐次その規模が大きくなってきております。その背景には、当面、企業金融が緩和しておるということ、並びに企業の投資活動が停滞しておるという事情もございますが、やや長い目で見ますと、減速経済下におきましては、企業の手元流動性がやはり全体として高まっていく傾向があるわけでございます。マーシャルのkなどの数字にもその辺の事情がうかがわれるわけでございますが、そういう背景に加うるに、企業が余資の運用を少しでも有利なものにしたいという効率運用に努力してきておるというふうなこと、そういう長期的な要因もあって、現先市場の規模が増大をしておるというふうに考えるわけでございます。そういう長期的な要因があるとするならば、今後もやはり少しずつ大きくなっていくということになるわけでございまして、的確にそれがどのぐらいの規模になるかはなかなか予断もできませんが、私どもといたしましては、現先市場の規模が将来どうなっていくかということには十分注意を払っていかなければならぬのではないかと思っておる次第でございます。  これが好ましいものか好ましくないものかというお尋ねでございますが、まあ自然発生的にできましてもうすでに存在するわけでございますので、これを好ましくないからといって抑圧するわけのものでもございますまい。やはり現先市場が健全に、一層健全に発達していっていろいろな摩擦などを起こさないようにこれを育成していくという、その立場の方がむしろ大切ではないかと思っておるわけでございまして、昨年から大蔵省におきましてもその辺の調整に着手されましたのは結構なことであったと思っておる次第でございます。
  97. 渡辺武

    ○渡辺武君 育成する方向で考えておられるようですが、これは、なんでしょうかね、もういろんな債券が出ていますが、公債もやっぱり対象の中にぼちぼち入りつつあるということ、将来これが公社債市場として成長するというような展望をお持ちで考えておられるのか。  それからもう一点、これは従来の日本銀行の金融調整の範囲外で生まれてきているんですね。ですから、今後の金融通貨調整上どういうように対応なさるおつもりなのか。この二点を伺っておきたい。
  98. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 公社債市場にこれが発展していくということはたいへんじゃないかと思います。と申しますのは、もう御承知のとおり、公社債の売り戻し、あるいは買い戻し条件つきの売買に名をかりた金触取引でございますので、これそのものが公社債市場に転化していくという可能性は乏しいのではないかと思っております。  第二点は、おっしゃるように、日本銀行といたしましては、何らの介入もいたすべき筋合いのものではございません。ひたすら余り不健全なことにならないようにその成り行きを見守っておる、いわば中立的な態度をとっております。しかし、関係官庁におかれましていろいろな弊害が起こらないようにという意味での調整措置をとられたことにつきましては、まことに適当なことであったと思っておる次第でございます。
  99. 渡辺武

    ○渡辺武君 最後に一問だけ伺いたいのですが、この現先市場ですが、鉄鋼、自動車その他の大企業が手元資金を使って債券を買う。売り手の方は、直接にか間接にかこれは別です、しかし市中金融機関が手持ちの債券を売っている、こういうことなんですね。そうすると、売った銀行のところに現金が入ってくるわけですね。ところで、マネーサプライ、M2の計算上から言いますと、銀行の手持ち現金というのはいわば差っ引いて計算されるわけですね。そうしますと、日本銀行が仮にマネーサプライを見ながらインフレーションが激化しないようにというのでいろいろ通貨金融の政策を出される場合でも、むしろ現先市場が拡大すればするほどM2は増勢鈍化という形になってきますから、そうしますと二兆円にも及ぶいわば一種の流動的な市場が片っ方にこう生まれてきているわけですね。これを放置しておいていいのかどうか。インフレーション防止という見地からこれについてどう対応なさるのか、これを伺いたい。
  100. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) いま、M2は現金通貨と預金通貨並びに準通貨というようなことで、これは統計の速報性ということも考えまして、いわゆるM2でマネーサプライを考えておるわけでございますが、さらにこれに郵便貯金を加えるとか、あるいは農協の預金も加えるとか、さらには、いまの現先市場に関係があるわけでございますが、金融債その他の債券の企業の保有高も加えて考えるとか、いろいろ統計はできるわけでございまして、私ども、少しおくれますけれども事後的にはそういう統計もつくって見ておる次第でございます。  もっと端的に企業の手元流動性を見ますのには、企業の現金、預金プラス短期保有の有価証券、それの売上高に対する比率を見るのがもっと端的にわかるわけでございますが、その数字も始終フォローいたしておる次第でございまして、いままでのところ、そういう指標で見ましても、御心配になりますような過剰流動性が起こっておる状態ではないように見受けられます。しかし、今後とも、そういういろいろな資料をつくりましてこの問題を分析し検討していかなければならぬことは当然だと思っております。
  101. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、私のお伺いしたいのは、通貨金融政策上現先市場にどう対応されるのかということです。
  102. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 現先市場そのものにつきましては、これは企業間の取引でございますので、私どもが直接介入すべき限りではないと思っております。ただ、その現状がどうなっておるか、どう推移しておるかという全体としての成り行きはもちろん私どもの関心事で、ございますけれども、現在のところ現先市場そのものに介入することは考えておりません。
  103. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうも。
  104. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  105. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 速記を起こして。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 そこで郵政省ですがね、次官、郵便貯金法十二条の二項を今度の場合どういうふうに判断しているんですか。
  107. 綿貫民輔

    政府委員(綿貫民輔君) 今度の場合と言われますと、公定歩合引き下げになった場合ということでございますね——。それは先ほども申し上げましたように、非常に客観的な情勢がいろいろあると思いますが、これは政治的にやはり最終的にはいろいろ考慮されるべき問題だと思いますが、郵政省としては預金者の利益ということを十分考えていきたいという気持ちでございます。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 そうですね。前段、いわゆる少額貯蓄の利益擁護にこの条文はウエートがかかってますね。そうすると、情勢から判断して、郵政省が考えているとおりになると判断されてますか。
  109. 綿貫民輔

    政府委員(綿貫民輔君) 私のところの大臣も就任早々こういういろいろ情勢があることも察知いたしておりまして、総理に直接、利下げということに対しては慎重にやってもらわなければ困るということで非常に大きな抵抗を示しております。これは事実でございます。そういうことで役所もそういう気持ちでいっぱいだと、こういうことを申し上げておきます。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 最後ですがね。そこで、郵便貯金特別会計が赤字ですね。この解消について計画なり、めどなりがあるのかどうかいかがですか。
  111. 小山森也

    説明員(小山森也君) ただいまのところ明後年五十三年度以降黒字に転換するものと思っております。
  112. 和田静夫

    和田静夫君 この郵貯の特別会計自身について問題があるという意見がたくさんありますね。で、制度改革なりというようなものはお考えにはなっているんですか。
  113. 小山森也

    説明員(小山森也君) 先生おっしゃるとおり、赤字とかいろいろ考え方が準拠いたしまする法律が郵便貯金法であったり、あるいは資金運用部資金法であったりということから、いろいろ御意見があるようでございますけれども、ただ、これの本質はやはり流動的なといいますか、非常に変化のあります金利というものと密接に関係しておる会計でございまして、したがいまして、単年度においてその赤であるとか黒であるとかいうことではなしに、ある期間においてバランスがとれているというのが、いままでの郵貯会計の現状でございますし、現在の仕組みを直ちに変えるというようなことの検討はまだいたしておりません。
  114. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 午後五時まで休憩いたします。    午後二時五十二分休憩      —————・—————    午後五時三十八分開会
  115. 安田隆明

    委員長安田隆明君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、昨日三千億円の追加減税が決定をしたわけですが、予算修正権をめぐってなおこの国会は論議が残っていくわけですけれども大蔵省予算編成について反省があることだと思いますが、どういういま感想をお持ちですか。
  117. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 大蔵省では予算編成に際しましては、財政当局として、この事態に際しましては最も適切なる予算をつくったと、かように考えております。だがしかし、きのうの各党の話し合いによって合意されたものは、大蔵省でわれわれが考えたものとは若干結果において食い違うものが、これが合意されたということにつきましては、これは私どもといたしましては、その限りにおいては、私ども非常に遺憾でございますけれども、しかしながら、政治というものは、これはことに議会制民主主義はしかりで、国会政治が行われておる以上は、各党の合意によって、そうして決められたというものにつきましては、これは財政当局は、その決められたものを尊重いたしまして、ぜひともその趣旨を生かしてまいりたいと、かように考えております。
  118. 和田静夫

    和田静夫君 昨日の記者会見でも、財政当局としては非常に遺憾である、こういうふうに述べられているんですが、私は、何が遺憾なのかというのがよくわからない。大変、内政的に遺憾である——いわゆる野党がすべて予算に対して一定の要求を持っておった、それを財政当局としては先取りすることができなくて、そういう見通しがなかった不見識さが遺憾である、これは当然われわれはそういうふうに理解をしますが、あなたの、非常に遺憾であるというのは、私の述べたのと逆の意味ですか。
  119. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私は、今度の事態に処して、私ども考えたものが、これが一番いいんだというふうに考えておったわけなんです。しかしながら、それは議会政治におきましては、それは自分がこれが一番いいんだからと、ぜひともこれを実現していこうと、そういう意欲はありますけれども、しかしながらそこは、国会において、議会において、あるいは政党間において、こういうふうにやっていこうというふうな合意があった以上は、私もいまのでこれが一番いいと、いまも私は思っておりますけれども、しかしそれは私の考えでありまして、——私も人間でございますから。ところが今度の合意によってそれが違ってきたということであるならば、これは私はその合意に基づくものを、これを実現していくということに、私もそういう気持ちになるのが、これが議会の常道であろうと考えます。
  120. 和田静夫

    和田静夫君 もう一つだけそこで伺いますが、昨日の記者会見の報道によれば、政治責任を十分感ずる、こういうふうに述べられています。これは、内閣に対して政治責任を感ぜられたんですか、国民に対して政治責任を感ぜられたんですか。
  121. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私は、内閣と国民と、これを分離して考えてはおりません。私は、自分が国家のために、国民のために一番いいと思った行き方が、これが各党の合意によりまして変わってきたということにつきまして、そういうふうな変わってきたものを、これをまあ実現すべく努力をいたすんでございますけれども、それにつきまして、自分の考えておったということが、実行の運びにならなかったということについて責任を感ずるということでございます。
  122. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、いまのことを総まとめに言えば、合意がなされたことをこれから忠実に実行するということであなたは責任をとられると、こういうことですね。
  123. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) そうやっていくのが私に課せられた今日の仕事であろうと思っております。
  124. 和田静夫

    和田静夫君 もう一つ、五十三年度以降の予算編成に当たっては政府案のつくり方、出し方を変えます、こう記者会見をされました。大蔵省予算編成については、これまでは与党である自民党の言い分をずっと聞いてこられたという形だったが、福田総理が対話シリーズと名づけて国民総参加予算と銘打った、しかし形ばかりであった、形ばかりであった結果が昨日の結果を招来をしたと、こういう反省に立って五十二年度の予算編成に当たっては、あなたのお言葉は、もっと早い時期に与党といろいろ意見調整をする過程、野党とも折衝をして十分意見を聞き、それを組み入れていく、こういうふうに昨日の談話はといいますか、記者会見は理解をしておいてよいのですか。
  125. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ことしの予算編成に際しましても、私は各党の政審会長、政策担当者においでを願いましていろいろお話を聞きましたが、これは今後も私はそういうようなことをことし以上にやってまいりたい。ただ、私が考えておりますところは、国会なり、政党なりというところは、私は、皆さんの御意見を、国会が一番の私は御意見をお聞きしたり、あるいは議論を闘わせたり——闘わすと言うと大変厳しい言葉でございますが、そうでなくて、話し合いをしたりするためのフォルムですね、それが私は国会が一番いまの時代においてはもうそのためのフォルムだと、こう思って私はおりますけれども、さらに国会でそれはこうやってお願いをしてやっておりますけれども、さらに私が、まあいま私は大蔵省財政当局にあるんでございますが、その財政当局として、与党はもちろんのこと、野党の皆さん方とこれはやっぱり何らかの形においていろんな話し合いをしていくということが大変大事なことだと、かように考えております。ただ、国会そのものは、これはもうそれをやっていく最も進んだ私は姿であり形であると、かように考えております。
  126. 和田静夫

    和田静夫君 予算案の修正作業に取りかかられていると思いますから、きょうは細かいことを聞きませんが、ただ、歳入歳出予算が見合うというのは大蔵大臣どういうことですか。
  127. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 歳入歳出予算が見合うというのは、やっぱり予算によくありますが、歳入歳出ともに何億円といったようなこと、これがやっぱり私は見合うという言葉であろうと思います。
  128. 和田静夫

    和田静夫君 そこで大臣、この河野一之さんの「予算制度」によりますと、「歳入が多いのはよいが、しかし歳出の方が歳入を超過しては見合ったことにならない」、こう書かれていますね。この解釈どおりでよろしいですか。
  129. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いいと思います。
  130. 和田静夫

    和田静夫君 野党の予算案が出てきてからの論議にします。  そこで、大蔵大臣、減税によりまして地方交付税にはどういう影響が出てきますか。
  131. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) いまのところ三千億減税というものを、これを、税収というものは歳入になるものでありますが、いまのところ三千億減税というものは、その歳入を変えるということにはなっておりません。つまり歳入というものは見積もりでありまして、そこで、普通にいっても、あるいは自然増収があったり、あるいは足りないというような場合もこれございますから、そういったようないろんなファクターがあるものでございまするから、今度の三千億減税というものにつきましては、これは予算影響を及ぼすということではない。そういうことでございまするから、御承知のとおり、地方交付税というものは三税の三二%というふうに決まっておりますから、これに影響するということはないと思います。
  132. 和田静夫

    和田静夫君 これは自治省どうですか。
  133. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) ただいま大蔵大臣からお答え申し上げましたとおりでございまして、今回の措置では国税三税の歳入見積もりを削っておりませんので、交付税の所要額は当初予算に計上されました額のとおり確保をされる、こういうことでございます。
  134. 和田静夫

    和田静夫君 実質的には減るということは将来起こり得ますね、これ。
  135. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) 御承知のように、交付税制度には三税の収入の増減に伴いまして後年度における精算制度、これはあるわけでございます。その場合にはその措置によりまして精算制度にかかわります交付税の精算額に、二年後でございますが、若干の影響は出てこようかと思います。  それからなお、本年度、現在の歳入予算の見積もりが変えられておりませんので、交付税は確保をされるわけでございますが、もし税収入が減少してくる、それに伴う補正措置が必要だと、こういうような事態になりましたら、それに対応をいたしまして交付税の確保措置等は改めてその場合、そのときに措置を講ずべきである、このように考えております。
  136. 和田静夫

    和田静夫君 その場合に、大蔵大臣、後段の場合ですがね、いまの自治省答弁の、これまでの方法が踏襲をされる、いわゆる国庫で負担をして地方には負担をかけない、これは確認をしておいてよろしいですね。
  137. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 歳入歳出部面のいろんな要素がございます。それからそのときの財政事情がございます。ただいま財政局長答弁ございましたように、もしそういうことが起こりました段階に、そのときの条件で検討することになると思います。
  138. 和田静夫

    和田静夫君 言ってみれば、その地方交付税の影響が出た場合には国庫で負担をするということはいままで踏襲をされてきているんだが、それはそういうことでしょう。これは自治省そうなりますね。
  139. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 過去にはいろいろなケースがございます。先生のいまおっしゃったような例が多いかと思いますが、そうでない例もあったかと思います。
  140. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) 補正の事態が参りました場合に積算をいたしまして、地方財政の運営が困難にならないように、私どもとしては財源の確保をいたすつもりでございます。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 余り時間がないから何遍もやりとりできませんが、大蔵大臣、いま若干見解が違いますが、しかし、私が述べてきたことが大筋です。自治省の側は、言ってみれば地方に負担をかけることがないような措置をする、こう述べております。大蔵大臣、このことに理解を示されますか。
  142. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私は、いまのところそういう事態が起こるとか起こらぬというようなことでございませんので、そのときに検討いたしまして、そして支障のないようにしたいと、かように考えます。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 支障のないようにしたいということは、政府責任において起こったことであるから、その意味において地方に負担をさせるというような形で支障が起こることのないようにする、こう理解しておいてよろしいですね。
  144. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) そういうときが起こりましたら、要するにその支障が起こらないように考えていきたいと、かように考えております。いま具体的にどうすると申し上げることは……、そのときに検討すると、こういうことでございます。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっとくどいようですが、自治省、いまの大蔵大臣答弁で、支障がないようにということは、私が先ほど来述べている趣旨が盛り込まれた答弁と自治省の側は受けとめますか。
  146. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) そのように受けとめております。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、よろしいですな。——いやいや、これは大臣答弁です。それはもう一言で終わる。
  148. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 先ほど申し上げましたとおり、支障のないようにしたいと思っております。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 政府内の見解はばらばらでは困りますからね。いま両方から答弁をいただきました。そして、支障のないように処理をするということは、私が質問の趣旨で述べたこれまでの方法を踏襲して国庫で負担をするという意味合いのものを含んでいると、こういう政府側の答弁がありましたから、大臣、そのことを十分に理解をして、あなたの支障のないようにということは、そのことを十分に理解をしておいてもらいたい。
  150. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 先ほど来申し上げておるとおり、具体的にどうすると、こういうことを申し上げておるんじゃございません。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 いや、そうだから私の言っていることを理解をしておいてもらいたい。それはよろしいですね。
  152. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) おっしゃることはようく承っておきます。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 経済企画庁長官、五十一年度の政府経済見通しなんですが、これは予測項目についてどの程度達成される見込みなのか。実はたくさん聞きたかったんですが、非常に時間が制約されていますから……。報道や多くの論文などで伝えられるところによりますと、この経済成長率というのは〇・一上方修正される、そして五.七%を下回りそうだ、で、物価上昇率は八・〇から八・六、そして、それもどうもだめで八・九、こういうような形でこれまた上方に修正をされていく、しかも、なおそれが上回りそうだ、で、景気は悪くて物価は高い、こういう傾向のようですが、いまの流れというのはそういうことでしょう。
  154. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 実質経済成長でございますが、五十一年度の実質経済成長は大体まあ五・七%程度は達成できると、こう私ども考えております。物価の点については、ただいま御指摘のように異常寒波という問題が野菜の値上がりに響いたと、それから魚の入荷が若干、非常に昨年に比べて少ないと、まあそういうこともございまして、お魚あるいは野菜の値上がりというのが現在の物価に響いておることは事実でございます。しかし基調としては落ちついておるということでございますので、まあわれわれとしては最善を尽くして目標達成に努力をしたいと思っておる次第でございます。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 長官そう言われますけれども政府経済見通しで重視をしなければならないのは、この経済成長率がいわゆるげたを履かされていますね。おたくの資料によっても三・三%。そうすると、この統計上のずれ込みを除きますと、五十二年度の実際の成長率というのは三%ないし二%台じゃないですか。どうなんですか。
  156. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 経済成長率というのを、和田委員も専門家で御承知と思いますが、年度と年度の平均ということをお考えいただけば、その角度が前半に大きく伸びる、あるいは後半に大きく伸びるということはあり得ると思いますけれども、前半にことしの場合は、五十一年度の場合は伸びたわけでございますが、その高い水準で後半もずっといっているわけですから、その伸びが少し緩やかであったということは御指摘のとおりでございますが、経済成長としては五十年度に比較して五十一年度は五・七%と、正真正銘の五・七%と御理解をいただきたいのです。
  157. 和田静夫

    和田静夫君 そうするといまのところは補正をされた五・七%でいけると……。
  158. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) そう思います。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 ところが経済企画庁が景気回復宣言をずっとされてから、毎月出されます月例経済報告、恐らくきょうかあした、三月分出るんだろうと思うんですが、これは景気が悪いときにも実は景気回復基調にあると、軒並み毎月同じことを書かれているのですね。いわば万年強気論でしょう。昨年の七月から九月、第二・四半期は景気が完全に中だるみに陥った。ある人は中だるみじゃなくて本だるみだということを言っていますが、そのときにさえ十一月に至るまで赤信号出さなかったでしょう。出されなかった。そんなに客観性を欠く見通しというのでは、これは信用しろと言う方が無理じゃないですか。これはどういうふうにお考えです。
  160. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 和田委員の御指摘は、月例報告のトーンについての御指摘だと思います。官庁の文書でありますので、なかなか持って回ったような表現がある。ずばりこういうことであるということをなかなか、少しオブラートに包んでいるというような面があるかもしれません。それは御指摘のとおりだと思います。この点は私ももう少しすっきりしたものにいたすべきじゃないかということを考えておるわけでございます。しかし、その点を除きますと、私は月例報告に書いておりますことは決して間違ったことは申していない。  これは御案内のとおり、四半期別の国民所得統計がずっと出されておるわけでございますけれども、これをとって見ますと、ただいま御指摘の、近く十−十二月が明日あたり出ると思います。その数字をとって見ましても、やはりそのテンポは緩やかでありますけれども、なだらかに個人消費でもその他の部門でも上昇している。ただ十−十二月をとりますと、民間の住宅投資が七−九月の落ち込みがございましたので、これが落ち込んでいる。あるいは政府の固定資本形成、公共支出の出がちょっと出おくれた。それから地方財政のこともあります。国鉄、電電もある。そういうことで十−十二月は若干伸びが鈍化しておるわけですけれども、それでもやはり七一九よりも伸びておるということでございますから、この文章の点は確かに歯切れが悪い点はありますけれども、私はこの書いておることは決して間違ったことは書いていないと思っております。しかし、もう少し実感に合うように、もっと少し文章を工夫したらどうかという点は、私も和田委員の同じような気持ちを持っておるわけでございまして、各役所にこう相談をするというところで、なかなかそういうので文章が少し持って回ったようになっているという点はあろうかと思います。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 五十二年度の政府経済見通しは、民間の研究機関やらそのほかの各種の統計と比較してやっぱり相当に高いんですよね。で、たとえば設備投資の項目を見てみますと、政府の見通しは今年度よりも一二・二%アップと計算しているんです。ところが、日銀のさっき短経を日銀総裁と若干やりとりしましたが、それを見ますと、企業は設備投資計画を減額修正をして、そういう答弁もされました。製造業マイナス一三・八%です。それから非製造業でプラス九と見ているんですね。また、きのう日本経済新聞が調査結果を発表しましたがね、日経の発表でも全産業で〇・七%アップでしょう。そうすると、こうした調査結果の一例を考えただけでも、政府経済見適しというのは私はとうてい達成できないんじゃないだろうか、そういうふうに考えています。で、ここのところは私の考え方間違いでしょうか。
  162. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) まあいろいろな機関がいろいろな見通しをいたしておるわけでございますが、この各調査が全部の産業全部を網羅しているわけではないわけでございまして、カバー率は三分の一から半分程度のカバー率でございます。したがって、私どもクロの計算でいろいろいたしておるわけでありますが、達観して申しますと、製造業は非常に弱気であると、これは鉄綱が非常な操業率も低いし、過剰設備を抱えているという点がありますから、製造業は、横綱である鉄鋼がそういう状況でありますから、全体として来年度落ち込むであろう。しかし非製造業の部門は電力を中心にこれは伸びていくであろう。それから卸とか流通関係、それからまたこの日銀の短観や、あるいはその他の調査には出てまいりません中小企業の設備投資というのは、その一つ一つをとりますと大したことはございませんけれども、寄せ集めますとかなりのものになってくるということではなかろうかと思うわけでありまして、日銀の短観、私もここに持ってきておりますけれども、確かにある時期から比べると、現時点でくると下方修正をしたという数字が出ておるわけでありますが、企業間の心理が、現在やはり少し、何と申しますか、多少気迷いがあるということでありますので、また少し予算でも通していただいて、そうして政府が積極的にこの予算の執行を図っていくということになれば、またその気迷いが去って設備投資の見通しについても若干上方修正が出てくるのじゃなかろうかと考えるわけでありまして、あながち政府の設備投資の見通しは決して楽観的なものを見たものではない、こう、政策のよろしきを得れば十分ここにいけるし、またそうしなければならないと、そう思っておるわけでございます。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 何かお急ぎのようですから、これでやめますけれども、そのお急ぎの原因になる、いまから総理景気の見通し等について話し合わなきゃならぬと言われているんですが、何か具体的にこれから相談されるんですか、福田総理と。
  164. 倉成正

    国務大臣(倉成正君) 私は経済企画庁長官としてもう常時総理とは毎日のように電話で、あるいはいろいろな閣議の前後とかお話をしておりますから、まあ何をという特定のことでなくして、絶えず経済の動きについては、海外情勢を含めて総理のお耳に入れ、また総理のお考えも聞こうということでございますので、取り立てたことを考えているわけではございません。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 どうぞ。  大蔵大臣、本来の所信表明に戻りますが、「景気回復を急ぐ余り、インフレの再燃を招くようなことは厳に避けねばなりません。物価の安定こそは、健全な経済活動を維持し、社会的公正を確保していくための不可欠の前提であり、私は、物価の安定に今後とも最大の努力を傾注する覚悟であります。」こう述べられたわけです。昨年からの趨勢を見ますと、景気は停滞をしておる、物価だけが上がる状態であります。そこで、物価対策としては何を柱とされておるか、具体的にはどういう手を打つおつもりですか。
  166. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 物価の安定は健全な経済活動と真に豊かな落ちついた国民生活というものを基本に考えていかなければならない、かように考えますが、最近の物価が安定化しつつあるとはいえ、その騰勢はなお根強く、引き続いて一層の安定化を図っていく必要があるというふうに考えられます。  そこで、今度予算の編成というようなことにつきましても、これはともかくいまの予算の編成というものは景気を浮揚していくということが大事である。大事であるが、その景気浮揚に急なる余り、物価が上がるような施策といったようなものは、これはできるだけさようなことには流れないようにというようなつもりで予算を編成しておる、そういうようなことを基本的に考えてまいったということです。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 東京都が最近の家計動向と物価の分析という調査をまとめたんですが、大臣これ概略御存じですか。
  168. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいまは承知いたしておりません。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 これによりますと、七分位くらいの階層のうち、最下位層では生計指数に占める公共料金の負担率が二四・六%、およそ四分の一に及んでいるんです。この数字についてどう感じられますかね。この数字からいくと、公共料金値上げがことしもメジロ押しに用意をされそうですが、当分やっぱり値上げを凍結するなどの措置をとるべきではないだろうか。先日来のNHKの物価の調査を見ても、やはり国民の最大関心事になっていますよね。その面においては福田内閣に期待ができないとまで言っていますね。どうなんですか。
  170. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 公共料金が上がっていくということが、物価に影響をするということは、否認できない事実だと思います。しかしながら、公共料金というものをそのままにしておくということは、結局、ほかのものと比較しちゃ悪いんですけれども、国鉄なんかが非常にその面において苦況にあるというようなことは、やはりその都度公共料金というものを考慮していかなければならない、こういうふうに考えております。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 これはいまの調査からいけば、明確にやはり公共料金を抑えるべきだと、このことは意見として述べておきます。  倒産が減少するどころか、ずっとふえ続けていますよ。件数では二月で十八カ月連続千件以上、負債は二十四カ月連続一千億円を超える。しかも、状態は悪化する一方だと。景気回復を叫ぶ一方で、しわ寄せを受けた中小企業が犠牲になっている、これは大蔵大臣、このまま放置されますか。
  172. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 中小零細企業が倒産をしていっておるということは私も承知いたしております。そういうようなことに対して、何とかしてそれを阻止してさようなことのないようにしていくというためにも、私は、この問の政府の行き方として、措置としてとりました補正予算、さらにはまた今度の五十二年度の予算、これをできるだけ速やかに上げていただきたい。そういうことによって私は相当の効果を期待できるものだと、かように考えております。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 通産省、主要産業及び中小企業の、おたくが出している動向ですね。これを見ますと、倒産についてわずかに数行書いているだけなんです。不況型倒産が増加していることが注目される、何か倒産増加は当然だという態度ですよね、この書き方というのは。さっき経企庁長官のお話がありましたが、官庁の文章だからというようなことじゃちょっと済まされないと思うんですがね。何か具体的な対策というものをお考えになっていないんですか。
  174. 児玉清隆

    政府委員(児玉清隆君) お答えいたします。  ただいま御指摘いただきました主要産業及び中小企業の動向という二月に出しました全国の調査概要でございますが、この中で確かに倒産の部分につきましては重大な関心を持ってその推移を見守っておるというような内容のことを書いてございますが、実際はこの中にも十分触れてございますけれども、特に中小企業性業種においての景気回復というものが非常にテンポがおくれておりますし、それから倒産の実態もほとんど九九%以上が中小企業でございます。そういった観点から特に金融、それから保険、保証、一番問題になりますのは下請関係でございます。下請関係の仕事のあっせん等を通じまして対処しておるということでございます。特に金融面につきましては、政府の三機関を指導いたしまして、十分その実態に即するように運用を図っていくということを指導いたしております。特に最近は、新しく借りる問題よりも、一番問題になっておりますのは、返還できない、従来の融資条件をそのまま履行できないというものがございますので、これも実情に即しまして支払い猶予等を認めていくというようなことを指導いたしております。それから、保険等につきましても、特に信用保証協会等に対する資金手当て、こういうものにつきましても万全の配慮をしていくように大蔵省と十分連携をとりまして指導いたしているところであります。  で、いずれにいたしましても、中小企業の落ち込み対策というものは、本筋はやはり景気振興対策でございまして、これは一日も早く予算成立いたしまして、そして予算の執行が一日も早く着手されるということに尽きると思います。そういった観点からきめの細かい配慮は十分やっておるつもりでございますが、御指摘のように倒産の実際の件数というものは落ちておりませんで、二月につきましても千三百六十四件ということで、二月としてはやはり史上最高と、残念ながらそういう実績がございます。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、この東京商工リサーチの調査によりますとね、企業倒産件数は三月が千七百から千八百件になると見ている。いまあんな答弁がありましたけれども、こっちの側の文書やら方針を読んでみますと、いろいろの指導をしているけれども集中的には五十二年度貸し付けというのは四月から六月に集中しようとしている。実際問題としては、三月に二千八百件ぐらいの倒産が出ようとしている。そうすれば、当然これは焦点を三月に合わせてでもやらなきゃならぬ措置だろうと思うのです。で、私は、もう時間がありませんから、大蔵省も中小企業対策を考えて金融機関を指導すべきだと思う、この機会に。いかがですか。
  176. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 先生御指摘のように、中小金融の問題につきましては、常時配慮しなければならないということは私ども痛感をいたしております。特に最近の時点におきましては、いま具体的に中小企業庁からお話がありましたような諸点、これは御相談しながら、鋭意、一生懸命やるつもるでおりますが、要はいま金融が比較的緩和をいたしておりますので、金の流れとしては一応十分行っているのではないか。つまりその運用の仕方がきめ細かく行き届いているかどうかという点が一番問題であろうかと存じます。したがいまして、さらに中小企業庁の御説明につけ加えさせていただきますれば、最近各地方で、私ども財務局も参加をいたしますが、通産局あるいは各政府関係金融機関の支所、支店、あるいは日本銀行等々が随時会合をいたしまして、具体的な問題についてどういうふうに対処するかということをきめ細かく相談をして対処していただくと、こういう体制を整えていただいておるところでございます。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、ここのところはもっと十分手厚い金融機関に対する指導というものがあってしかるべきだと思います。そうお思いになりましょう。
  178. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) さように思います。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 最後のところですが、昭和五十二年度の自治大臣大蔵大臣の問で交わされた覚書で二、三……。  覚書の第二項の意味なんですが、これはこういうふうに解釈しておいてよろしいでしょうか。第一に、円滑な運営に資するため、第二に、源泉分離課税による地方の減収分補てんのため、第三に、その他の事情、こう読んでおいてよろしいでしょうか。
  180. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいまの二番目に言われた点なんでございますが、補てんということではなくて、源泉分離、御承知の三〇%が三五%になったと、それによって国税の方から交付税は地方に回るわけですが、住民税で取れないわけでございますね。そういう点をどうするかという議論があったわけです。現在の考え方でそこのところをどうするか、そういう事情があったので、五十二年度の地方財政が非常に困窮しておると、神方の、地方税の方としては国税の方で取ることには協力するという姿勢があったので、そういう精神的な支持について国の方でも地方の窮状を考えて五十二年度地方財政対策の中でそういうことを配慮してくれないかと、地方の方が協力したと、それに対して国の方も協力しようという、そういう趣旨でございまして、九百五十億の特例交付金を算定する際に、そういうことを考慮して特別の措置をとってくれないかという、そういう趣旨でございます。取れなかったから補てんするとか、そういうような意味ではないわけでございます。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 これはそうなんですか、自治省。
  182. 首藤堯

    政府委員(首藤堯君) 結論的にはそういうことでございますが、先生御案内のように、源泉分離課税の利子分につきましては住民税が取れておりませんので、何とかして住民税を徴収をする方法がないものかと、こういうことで税調そのほかにも諮りまして種々検討いたしましたが、ただいまの現行制度ではなかなかむずかしゅうございます。しからばこのようにして徴収をされた国の税分を何とか地方に譲与をしてもらう、こういう方法もないものだろうかと、こういうこともいろいろ検討いたしたのでございますが、金額的な面あるいは方法、こういう点について折り合いがつかないまま終わったわけであります。したがいまして、そういった事柄も含めまして五十二年度の財政の状況が困窮をしておる、その他の状況を総合的に勘案をする、そういうものも含めて九百五十億、こういう臨時特例交付金に相なった次第でございます。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 これはもう、ちょっとこんな短時間でできませんから、後の機会に譲ります、ここは。  そこでちょっと加藤さんの方に、九百五十億を算定をされた、それぞれの事情によって算出した数字を、後で資料で出していいただけますか。
  184. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 資料でお出しすることもいいですが、説明を申し上げてはいかがでございますか。
  185. 和田静夫

    和田静夫君 結構です。いや、いま時間がないんだ。そうだから後で。
  186. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いま御説明してもいいですが。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 いや、こっちが困るんだ。数字で出してくださいよ。それは説明は受けますから。そして論議は後に残します、ここは。  あと一つだけです。いや、二つ。第三項の「異例の措置である。」というやつがありますね、「異例の措置」。これ、何で異例の措置なんですか。四千二百二十五億が異例というんですか。
  188. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 一般的に交付税でやるのがたてまえでございますね。特例交付金というのはおよそ異例の措置というふうに考えているんで、名前も特例というふうに従来からつけておるわけでございますが、そういう意味でございます。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 これは法定することが異例の措置ではないのですか。
  190. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 一般的にはただいま申し上げたとおりで、四千二百二十五を法定するということで、それもまあ異例でございますが、異例の意味が、一般的に特例交付金はおよそ異例でございますね。そういう意味でいま申し上げましたが、後の方で先生の御指摘意味も、もちろん重要な異例の措置でございます。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、正常な措置というのは。
  192. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 通常こういうものなしに、三税の三二%で賄えるというのが常態であろうと思います。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣ね、いまのやりとりで、結局これは地方交付税法六条三の2は満たした、法律的要件は満たした、大蔵大臣はそういうふうにお考えになっているんですか。
  194. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 私はこの異常な状態において、今度のこの措置によりまして、交付税法六条の三の2でございますね、それに、制度または交付税率を上げるということを書かれておりますが、この制度をこれによって充足したと、こういうふうに考えております。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 いま言ったように、異例な措置というものが、結果的に法六条三の2というものを満たしたということにならないじゃないですか。
  196. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ちょっと私の説明が、異例の意味を申し上げまして、その異例に二つあると申しましたが、後の方の異例は、制度改正という意味になるわけでございます。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 もうここのところは、大臣もう少し討論を深めます、この次の委員会で。もう持ち時間あと一秒ぐらいしかないから。  そこでもう一つだけ伺っておきますが、覚書の五。この「方策を検討し、できる限り速やかに結論を得る」、こうなっていますね。これは大蔵大臣、どういう合意なんですか。大蔵、自治省間で何か機関をつくって結論を得ると、そういうことですか。大蔵の側が考えていって結論を得ると、そういうことですか。
  198. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) この問題は、両省すでに地方債問題研究会というようなものを設けて両省で話し合ってきた問題でございます。今度の五十二年度の予算の際に、まだ議論を尽くしておりませんので、それを引き続き中心にして検討をしていきたいというふうに考えております。
  199. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵大臣、これはめどはいつですか。それで私は、地方債研究会ではもうだめだ、ここまではっきりされて、「方策を検討し、できる限り速やかに結論を得る」と、こういうふうに覚え書きされたんですから、やっぱり新たにこの問題だけ突っ込んでもっと早いめどを立てて検討される、それぐらいの約束はきょうできるんじゃないですか。
  200. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 委員長
  201. 和田静夫

    和田静夫君 いや、もうこれは大臣
  202. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) ちょっと私からいままでのいきさつを申し上げますが、公営企業金融公庫の改組問題というのは、大蔵省として基本的にいま頭の中にございますのは、実は国も地方も大変ないま財政のときだ。そういうときにそもそも制度論というものに首を突っ込むべきであろうかどうかという疑問は依然としてわれわれは持っておるわけでございますが、それは自治省の側からいけば、確かにまだまだ大蔵省考え方はおかしいというお立場になられると思いますので、これはいつまでに時間をかけてということよりも、もっともっと議論を尽くさなければならないというので、めどをいまはいつに置くかということについては私ども、いつになったらはっきり結論が出るぞというふうには必ずしもいまの段階で申し上げることはできないと存じます。
  203. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば自治省がと、こういうようなことを言われた。何も私は自治省の代弁をしているわけじゃないんだけれども、地方六団体全体が今度の場合、真剣にこれを求めたわけですね。それを受けて自治省の側も求めた。そうして、大蔵大臣、自治大臣のいわゆるああいう形になって、与党が中に割って入って調整をした。結果がこれだ。で、若干、住宅なり、あるいは処理施設なりに金を回せるということにしたという違いを見せただけですね。で、私は、地方交付税法六条三の二項というものの要件も、当然、今度の措置は満たしていない。その論議は後に残しましたが、同時に、地方債の許可制度も問題を含んで、いろいろの不満がある。そのものと別個に、この金融公庫制度というものについてはやっぱり一つの機関を起こして、速やかに一つの結論を得るというふうな覚書なんですから、大臣これは、そういう措置というのはやっぱりやってもらいたいと思うんです。よろしいですか。
  204. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 実は、この公庫の改組を大蔵省に対して折衝に来られた方たくさんあるわけです。無論、自治省が中心となって来られたわけです。そのときにも、いまおっしゃられた地方六団体幹部の皆さんに私もお目にかかりました。そうして、この公庫の改組ということを要求せられたときに、実はこれは去年からそれをどうしていくかというようなことについて研究をしている、何かそういったような組織——公式のものか非公式のものかこれは私は知りませんけれども、研究機関といったようなものを設けて、そうしてこれは研究してきておるんだと、ところが、そのときには、実はまだそれの結論が出ていない、こういうことでございました。それは、そういうふうな勉強をしていただくということは大変結構なことだが、その結論がまだ出てないということであるならば。これはぜひとも急いで、大蔵省、自治省、それからまた六団体という方々の協力を願って、そうしてその研究の結論を得ようじゃありませんかと、その結論を得た結果、この公庫の改組というものをひとつやろうというようなことを、私は申し上げたことを記憶いたしております。そのときには、まだその結論が出ていない、こういうお話でございましたので、それで、それじゃ本年度は間に合わぬけれども、できるだけ速やかにその勉強を進めていって、そうして結論を得ようじゃありませんかと、こういう話をしたことを覚えております。
  205. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、最後に希望だけ述べておきますが、ここの部分については、大蔵大臣いま述べられましたように、できるだけ速やかにという言葉でもってずっと、速やかにが何年もかかっちゃ困るので、五十三年度の国家予算の編成に向かっては、ここの部分というのは結論を得ると、一定のめどとして努力をされる、こういうふうに理解をしておきます。
  206. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 私の持ち時間は二十分ですが、ただいま理事から。パーティーの都合上五分間早めるようにといま言われましたので、協力してあげたいんですが、大臣あるいは各局長答弁が遅ければパーティーに問に合いませんから、どうぞしっかり簡単に、簡潔に明瞭にお答えをいただきたいと思います。  実は、国民が注目していた一兆円減税等をめぐる問題も、いま和田委員から確かにお話もありましたけれども、きのう減税での予算修正は、戦後初めてという政府・自民党の完全敗北で決着がつきましたが、私は、大蔵当局の最高責任者である大臣が、予算案国会審議に関して見通しを甘く持ち過ぎていたのではないかということを痛感します。野党側のスクラムが強いのは、初めからわかっていたと思います。これがベストだとして編成された予算案のはずですが、これまでには大臣政府首脳との連絡などのときに、どんな決意で臨まれてきたのですか。総理訪米前までに決着をつけるため、政治的に妥協する腹だったのですか。修正に応ずるぐらいならば潔く腹を切る、それぐらいの信念を持って当たっていただきたかった。大蔵省の皆さん、局長さん、課長さんいますけれども、ここでもって修正をされるということは本当に情けないことだと思わないんですか。ひとつ御答弁願います。
  207. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) もちろん自分が考えて立案したものが、これが修正されるということは私も遺憾千万でございます。遺憾千万ですけれども国会を通してやるとか、成立を期するというときには、これはどんなことがあっても自分の考えをあくまでもそれを固執していくということでは、これはやっぱり国会というものは、そういったようなものを、これを何とか議論、コンセンサスを得て、そして成立さしていくという国会の使命がある。私個人といたしましては、非常に自分の考えが実行せられなかったことは遺憾でございます。ただしかし、責任をとってどうのこうのということになりますと、このいま合意されたものを、これをりっぱに実らしていくということが、これが今日の私に与えられた非常に大きな使命だと思っております。
  208. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 大臣辞任する気持ちもないでしょうし、私の責任ですから一生懸命やりますと言っていますが、余り納得できませんが、時間の関係で次に入ります。  私は、自民党議員でありながら、最初は一兆円減税に対して同感でありました。しかし、景気を高めるために、公共事業に最重点を置くという政府の方針に従ってきました。理由は、同じ一兆円を使っても減税で一・一倍、公共事業で一・五倍という景気刺激効果を理解したからです。しかし、減税については、基本的に景気のよいときにむしろ減税額を少なくして、景気の悪いときほど額をふやす政策をとるべきではないかという意見です。所得税減税は、昭和三十六年以来昭和五十年まで十五年間にわたって続けてきましたが、この間四十一年から四十八年のオイルショックまでは高度成長時代だったわけです。減税は、景気の動向にも基づいて適切に行われなければならないはずなんですが、毎年毎年続いて行う考え方は私はこれは一切やめるべきだと思います。私は、大臣初め大蔵当局の判断の甘さと信念のなさに失望すら感じています。  財政特例法案もその一つです。この問題に触れると長くなりますし、時間もありませんが、ましてもや野党側の主張を代弁するつもりはありません。しかし、償還計画もはっきりしてないじゃありませんか。私も大蔵委員会でここでずっと聞いていましたけれども、全く情けない。また、大平前大臣が強調されたのに、赤字国債発行をめぐる財政再建計画もたちまち変わったではありませんか。このように、ビジョンも信念もくるくると変わるようなことでは、今後大蔵省の方針には私はついていけません。  間もなく参議院でも予算委員会がスタートしますが、私はいまのような大蔵省ならば、ちょうど私も予算委員のメンバーですから、考えざるを得ないと、はっきりここでもって大臣に声明しておきます。ひとつ信念を持って、魂を込めて、ど根性を持った大臣になっていただきたいということを私はここでお願いしたい。
  209. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 激励を受けまして、大変ありがとうございます。  私は、いまおっしゃったように、日本の国の財政の健全化と、それから景気の浮揚ということに専心努力をしてまいると、こういうつもりでございます。
  210. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 余りおどかしてもびっくりしちゃうでしまうからこの辺で少しやわらげますが、大蔵大臣が所信表明でも強調された対外経済協力の問題です。五十二年度の政府ベース予算は、五十一年度に比べて約二二%増の総計約五千四百八十五億円が計上されています。確かに公共事業費並みの高い伸び率ですが、対GNP比はようやく〇・二八%です。先進国の援助実績の平均は〇.三六%、OECDのDACのメンバーの中の十七カ国の中でもって、五十年度はわが国は第十三位と聞いています。五十二年度の予算は、わが国の地位に応じた国際的分担を求める海外からの要請にこたえた内容と言えるのか、性格と言えるのかどうか。わが国の政府ベース援助に対する非難は、受け入れ国である開発途上国だけでなく、金持ちクラブといわれるOECDにも強まっていることも私は知っています。大蔵大臣はこの点をどうお考えですか。
  211. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 経済協力の実施は、相手国である発展途上国の受け入れ体制に左右される面が非常に多いと思います。発展途上国での。プロジェクトの進行がおくれがちになることや、途上国における手続面での渋滞等により、予算を計画どおり執行しがたい場合があると聞いております。この点につきましては、私よりも外務省あたりが、私が指名するわけでは全然ございませんけれども、これがよく知っているわけでございます。
  212. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 次いきましょう、時間がないですから。  経済協力予算といえば、海外経済協力基金の中の民間借款資金や国際協力事業団の民間インフラ関係施設などへの触資資金がかなり余っているということではありませんか。基金も事業団も本年度の予算づくりのとき、その対策に頭を痛めていたということを聞いております。予算の未消化という問題は、最近出ましたイギリスのエコノミストという雑誌にも、七六年度の援助割り当て額のうち約二五%は未使用のまま残るであろうと伝えていられます。これは世界的なニュースになっております。  具体的に伺います。基金の場合、四十九年度は予算一千九百八十億円のうち幾らあったのですか。五十年度は予算二千百六十五億円のうち幾らあったのですか。また事業団の場合、五十一年度の累積規模百五十二億円のうち、未消化は幾らあったのですか、はっきりとお答えを願いたいと思います。
  213. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 正確な数字は主計局の方から答えいたすと思いますが、確かに御指摘のように、予算の消化が遅かったというのは事実でございまして、私どもはこれを促進しようということで、昨年末以来、関係各省と打ち合わせしてまいったわけでございます。しかし、根本的にはさっき大臣が申し上げましたように、相手国のプロジェクトの受け入れ体制その他、手続の面等に大きな欠陥がございますので、この辺は相手があることでございますが、今後どもその改善を図っていきたいと思っております。
  214. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 だめだよ。答弁になっていないよ、いまの。幾らあるのかと聞いているんですよ、未消化分が。きのうのうちに言ってある、ちゃんと。
  215. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 円借の場合でございますと、基金が、御指摘の四十九年度は千七百三十億の予算でございますが、支出実績が千二百三十億でございます。それから五十年は千八百九十億に対して千百六十二億でございます。それから事業団の場合でございますが、事業団は、四十九年度が七十億三千万に対し五億四千万、それから五十年が百二億に対し三十億五千万でございます。
  216. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 おかしいですね。大蔵省のいま言われた答えと、私が持っているデータとでは、ちょっとこれは数字が合いません。四十九年度は未消化分が、これは海外協力基金ですが、五百億円あることになっています。昭和五十年度に関しては未消化金が七百六十六億円、それから累積規模、国際協力事業団に関しては八十億四千五百万、ちょっと数字が違いますので、これまた、あなたといまやっている最中じゃないですよ、時間がないから、パーティー間に合わないから。ぼくはきのう言ってあるんですよ、この問題について聞きたいということを。これじゃだめだ、こんなことをやってるんじゃ。時間ない、時間ないと言って、もう二十分しかないんだ。
  217. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいま直借というお話だったんで、直借の数字を申し上げたんですが、全体で申しますと、四十九年が当初千九百八十億に対して千四百八十億でございますから五百億でその数字でございます。五十年は二千百六十五億に対して千五百六十五億でございますから、ただいま御指摘のような数字になるわけでございます。六百億でございます。  それから、事業団の場合でございますが、五十年の全部の数字を言いますと、二百三十六億に対して二百十九億でございます。三十億のキャリーオーバーで不用が十五億というふうになっております。
  218. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 だめだ、だめだ、こんなことじゃもう全然だめだ。大臣答弁は、相手国がどうのこうのなんて言っていますけれども、こんなようなことじゃだめですよ。いまや日本の見識と信頼の問題です。金がどうしてこれだけ未消化金があるか、私はこれを読み上げますけれども、いまの問題に関して私は三つの重要な問題点を指摘します。  第一は、大蔵省のチェックが厳し過ぎて、予算を使うまでの時間がかかり過ぎるんですよ。予算がついているのに実施の段階で、いわゆる実行協議によって大変なチェックがあるんじゃないですか。実行協議なんてないんですか、この中に。もう少し弾力的な運用はできないものなんでしょうか。この点について、私は大蔵省の中にもずいぶん欠陥があると思うんですよ。相手国がどうのこうのなんて聞いているじゃないんだ、ぼくは。  第二は、機構の仕組みにメスを入れる必要があるということです。技術協力の一環として相手国の経済社会開発の進展を調べていく国際協力事業団の調査協力などが、資金を貸す海外経済協力基金や輸銀の活動とリンクされていないということを指摘したいのです。ずばり言えば、技術と金がばらばらに動いているということなんです。特に事業団は、創設されてから三年目を迎えております。聞くところによると、内部組織の不統合、不統一に悩んでいるということではありませんか。この辺でひとつ事業団法を改革して出直しを図るような気持ち大臣にないのか。  三つ目、予算のスピーディーな実施がうまく進まない最大の問題は、現在の体制がばらばらで、核となる中心省庁、つまりセクションがないんです。そうした現在の体制であるのに、一手続が複雑過ぎる上に、ばらばらの各省庁のたらい回しに遭うので時間がますますかかってしまう。作業をもっとスピーディーに運ぶために、たとえば一定の様式、フォームをつくって、たらい回しを避け、手続を簡素化してはいかがでしょうか。  また、いまより多いコミットメントを行い、実施率を広げるような考え方はないんでしょうか。コミットの拡大は協力プロジェクトの選択幅を広げることになり、国益にもプラスになるのではないでしょうか。  私は、そういう点をずいぶんいろいろな方から聞いている。大蔵省も外務省もみんな聞いているんですよ。だけれど、相手国がどうのとか、あるいはちっとも外務省、大蔵省の方に反省がないんだったら、この問題、留保しよう。そんなことをぼく、大臣答弁で聞きたいんじゃないですよ。もしこれでもって反省するような余地がなければ、私はこの問題、委員長、留保します、やめます。ばからしい、こんなもの。真剣に考えろ、真剣に。
  219. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいま糸山先生の御指摘は……
  220. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 先生なんて言わなくてもいい。
  221. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 糸山委員の御指摘は、いろいろ現実の問題、われわれも悩んでおる問題でございます。わが大臣が言われましたのは、よその国の場合は旧宗主国、植民地があるわけでございます。それで、かねていろいろチャンネルがあって、情報等もしっかりしたものがあるわけで、これは経済協力関係者の問で絶えず言われていることでございまして、相手国側の事情というものは決して進捗の場合に問題がないわけでございません。  それから、各省の責任が分散しておるというのも、私どもも絶えず悩んでおるわけでございますが、基本的には外務省が対外的関係で窓口になっておるわけです。  それから、大蔵省のチェックが云々という御指摘でございますが、われわれといたしましては絶えずそれは反省しておりまして、五十一年度の実行の場合でも、極力早く持ってきてくれというような言い方で審査の時間もできるだけ短縮するようにしております。  それからもう一つ、四番目に、御指摘がございませんでしたが、予算の計上上円滑にいく方法はないものであろうかというようなことで幾つか改善をやっております、五十二年度予算で。一つは、事前調査予算をふやしまして相手国との間で早くプロジェクトができるようにしたというようなこと。それから食糧援助やなんかの場合に、船代が足りないというような問題がありましたので、こういうようなものは話がつけばすぐ船出ができるように、援助を受ける国の方が船賃を持つことになっておりましたが、それをわれわれの方で持つと。幾つかの予算計上上も改善をいたしておりまして、大臣の言われましたのは、その中の相手国側の問題もわれわれにとってヨーロッパやなんかに比べまして不利な条件にあるというようなことを強調して申し上げたんだろうと思います。
  222. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 いまの答弁も満足しません。外務省がどうのこうのなんて聞いているんじゃなくて、外務省に持っていけば大蔵省がだらしがないと言っているし、やっぱしそこでお互いにこう外務省がいいとか大蔵省が悪いなんていうことじゃなくて、大臣、これを前向きに取り組んで坊大蔵大臣のときにはそれを積極的にやっていくからと、これは約束してください、この場でもって。そうじゃないと私これがまんできないし、これ以上質問できない。大臣答弁をいただきたい。
  223. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 御意見は非常に重大な御意見と拝承いたしております。今後大いに検討いたしまして、それで御意見に沿えるようなことを考えていきたいと、かように考えます。
  224. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 まあ時間がないから余りしつこく突っ込みませんが、いま開発途上国の債務累積が世界の大きな問題となっています。政府はこの債務累積国に対するわが国の経済協力問題に関して、基本的にどのような考え方を持っているのでしょうか。また、わが国の外部資産の現状はどういうポジションになっているのでしょうか。逆に言えば、わが国に対して外部負債を抱えている国国への経済協力問題をどう考えているのかということです。たとえば金利をたな上げにするのか、負債を帳消しにするのか、それとも全く別個の問題として考えているのか、明快にお答えください。これは日本だけでなく、世界の大きな問題だと私は考えておりますが、答弁お願いします。
  225. 藤岡眞佐夫

    政府委員藤岡眞佐夫君) 開発途上国の債務は、七四年末に約千五百億ドルに達しておりますが、これを救済する方法といたしましては、そのよって来ます原因がいろいろとございまして、いま南側が南北の委員会で言っておりますような一律的、自動的な救済は非常にむずかしいと思います。その国の事情に応じまして、従来もやっておりましたが、債務の返済が困難になりました場合に、主要な債権国と協議をいたしまして、実情に応じた救済措置をとる。たとえば、債務の期限の参りましたのを新たにリスケジュールするとか、安い金利を適用すると、そういうようなことで現に幾つかの国との問でも日本はやってまいったわけでございますが、今後もそういう方法を続けていきたいと思っております。
  226. 糸山英太郎

    ○糸山英太郎君 時間がないからこの問題は留保します。パーティーに皆さんおくれるとかわいそうですから、このまま留保させていただきます。
  227. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 初めに大臣に、予算修正が行われることになりましたが、今後のプログラムについてまずお伺いをしたいんです。  一つは、減税の実施の時期です。それからこれからの作業としてはどうなるのか。たとえば歳入の数字が変わってきます。この場合、税法の、現在も衆議院に付託されたものをどういうふうにされていくのか。あるいは政府として再提出をされるのか。あるいは国会での修正という形になるのか。あるいはまた、歳出面についてもかなりこれは法律案を変えていかなくちゃならぬわけです。その場合政府が修正をされて出されるのか。やはり予算自身が政府修正という形ですから、政府の提案になるのかと思いますけれども、その辺のことを含めましてこれからの作業の見通し、これをお伺いしたいと思います。
  228. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 作業の問題でございますので事務から答えさしていただきますが、減税の方は、大蔵委員会に詳細がゆだねられております。それから歳出面の方は福祉年金とか恩給でございますが、国会法の五十九条によりまして衆議院の院の承諾を得まして一部修正の予算案をできるだけ早く提出いたしたいと、現在、きのう来作業を進めております。で、約六百億を数十億上回ると思いますが、予備費を削って入れかえるというような作業になろうかと思います。
  229. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 法律案の点についてはいかがですか。それから減税実施の時期ですね。
  230. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 減税の方は主税局の問題でございますので、私ちょっと承知いたしておりません——局長来られましたので。  それから歳出の法律の方は、いま政府内で検討をしております。で、政府修正になろうかと思います。
  231. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) お尋ねのいわゆる追加減税に関しましては、昨日の与野党合意の中では、方式は税額控除方式を採用する、それから一年限りの議員提案とする、詳細は大蔵委員会にゆだねる、そのように御決定になったと承知いたしております。したがいまして、御質問の実施時期というものも、いわばこれからお決めいただく問題でございますが、先ほど衆議院予算委員会で、その実施時期という直にその問題ではございませんが、税額控除でやるとしてどういうやり方になるのかという御質問が幾つかございまして、これに対してお答えいたしましたことをまとめていまお答えいたしたいと思いますが、二つやり方がございますと思います。一つは、五十二年分の所得税を納めていただく方に税額控除方式で政府案に加えて減税をする。そうしますと、技術的でございますけれども、結局申告なさる方は来年の三月までお待ちいただく。源泉徴収の方は毎月少しずつ納めていただく税金が減るという行き方と、年末の十二月に上積み分だけはまとめて年末調整から減るというやり方とございます。いずれにしても十二月か三月ということになる。  それに対して昨日の与野党幹事長・書記長の問のお話のときにも、もし技術的に可能なら、何とかできるだけ早い時期に上積み分だけまとめて納税者の手元に返っていくという方式はないかというお話は話は出ておったようでございまして、その場合には、技術的にはことし税金を納めていただく方でなくて、去年すでに税を納めていただいた方に、ことしの税法改正で税額の軽減を行うということは、法律措置としてはできるように思われる。ただ問題は、三千万人を超える納税者の方が全部税務署の方に還付申請をされるということは、これはちょっと税務署の手間とか費用とかいう以上に、サラリーマンの方も大変ではないか。したがって、勤務先の方で早目にまとめて、月給と一緒にたとえばお返しするとかいうことができないか。これは源泉徴収義務者がそれなりの手数もかかります。またある意味で経費もかかります。それを協力していただければ可能ではあると思います。その辺の問題を今後大蔵委員会で、立法の過程で十分お詰めいただいて、どちらかに決まっていくだろう。いまのところまだ必ずどっちがいいとかなんとかいうことは、私どもとして意見を申し述べる段階でもございませんし、与野党の御相談に私どもが事務的にどういう問題があるかということを逐次申し上げながらこれから詰めていくということになるんではないかと考えております。
  232. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、三月三日に出された財政収支試算についてお伺いをしたいと思いますが、この収支試算によりますと五十二年度の税収は前年比の一六・四%増、五十三年度の前年比はケースAで二七・四%増、これを見込んでおるわけですが、これが今度修正をされますと特に五十三年度の前年比が相当ふえるわけですが、ちょっと計算をしますと二九・五%に、まあ単純計算ですが、私ちょっとやってみたらなるわけです。そうしますと、非常にこの五十三年度の増加が大きくなると思います。そこへもってきて、この修正での話し合いの中で不公平税制の是正については五十三年度で考えると、こういうふうなことが合意されているわけです。そういたしますと、五十三年度のこの約三〇%に近い増というものをどうお考えになっておるのか、その点はいかがですか。
  233. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいまの二九%ぐらいになるかもしれないというお話は、改定いたしました財政収支試算のAケースの方でございます。ケースBの方でございますと土台が二三・七でございますので、それに若干プラスアルファが必要になるかもしれないということでございますが、矢追先生よく御承知のように、財政収支試算はそもそものつくり方が五十五年度の姿をまずかきまして、それをいわば機械的に輪切りにして冬年度の額を出しておりますので、来年度の経済情勢がどうなるか、財政規模がどこまで必要かということとあわせて、来年度は来年度として判断をするということにならざるを得ないわけでございます。ただ、おっしゃいましたように、ケースAでもケースBでも五十五年度の目標を達成いたしますことは決して容易でございません。その状態の上にさらに重荷が加わったということは、それは否定できない事実だろうと考えております。
  234. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうしますとやっぱり、後で不公平税制ちょっと触れますけれども、結局は付加価値税の導入ということにやはり五十二年度から踏み切らざるを得ないんじゃないか、そういう考えがあり、政府はしばしばこの問題については反対が非常に強いわけですから検討する程度でお茶を濁してこられたんですが、これは本格的にやはり五十三年度から導入されてくるという可能性を感じるわけですけれども、その点は大臣これはいかがですか。
  235. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいま主税局長お答え申し上げましたとおりでして、日本のこの財政の将来というものは非常に厳しいものであるということは私も痛感いたしております。  そこで、これに対処しまして五十五年度までにどう持っていくかということには本当に腐心をしておるところでございますが、そのためにはどうしてもやっぱりこの国の歳入の中で租税収入というものが何しろ大本でございますから、それを強化していくということがこれはどうしても不可避のことだと私は思います。で、それにつきまして一体どういうような施策を実施していこうかということについては、今日非常に慎重に考慮しておるのでございますが、具体的に申し上げますと、税制調査会におきまして去年の六月から中期税制をどうしていくかということについて勉強していただいた。それで、ただ単に付加価値税といったようなものだけではなくて、一体所得税、法人税を中心とした直接税をどうしていくのか、あるいはいまおっしゃられましたような一般消費税というようなもの、付加価値税も無論その中にございますが、そういったようなものをどうするか、あるいは資産課税をどうするか、租税全般にわたりましてこれは税制調査会で鋭意検討をしていただいておりますけれども、その中でしからばどういったようなものを採用していこうか、どの税をどういうふうにふやしていこうかなどというような具体的な考え方は目下のところまだそこまで到達いたしていないというような状態でございます。
  236. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それから、不公平税制の是正ですが、これはまあいろいろいままでからも議論され、またかなり、全然これが是正されていないとは私は申し上げません。徐々にはされてきておるわけでございますけれども、まだかなり問題としては残っておると思いますが、今回の合意事項の中にもあるこの五十三年度に考え——問題点としてはどの点をお考えになっておりますか、項目としてですね。
  237. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 税制の中で考えなければならないことは、不公正であってはならないということはこれはもう私は税制改正するに際しての眼目だと思っております。さような意味におきまして五十三年度にももちろん税制の不公正を除去していく、これを公正化していくということは、これは考えなければならない。今度の各党の合意の中にも野党の提唱せられました不公正な税制をこれを改めていくということについては真剣にこれを考えていくということになっておりますが、私はそれを尊重してまいりたいと、かように考えております。
  238. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、いつも問題になるのですが、貸倒引当金に対する貸し倒れ発生率は都市銀行、地方銀行、相互銀行あるいは生保、損保、信用金庫、これでそれぞれ幾らであるのか。また、これをやっぱり千分の二か千分の一ぐらいに下げなきゃならぬと思うのですが、その点についていかがですか。
  239. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 最初の発生率でございますが、貸倒引当金に対する貸し倒れ発生率というところで申し上げますと、都市銀行につきましては、これは昨年上期、本年度上期でございます。都市銀行につきましては〇・五六%、以下地方銀行〇・三六、相互銀行〇・九七、保険会社〇・二三、信用金庫二・六一、いずれもパーセンテージでございます。
  240. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 御質問の後段の税法上の繰り入れ率でございますが、これは四十七年当時に比べますと、今回私どもが税制改正の一環として引き下げる予定でございます千分の五というのは大体三分の一の水準まで圧縮されるわけでございます。まあ千分の八から千分の五に下げるわけでございますので、一挙に経過措置なしに実施いたしますとかなりのショックを与えかねない。それは銀行の経営というだけでなくて、やはり銀行の貸し出しを受けている企業に対するショックを与えかねないということで所要の経過措置を講ずるつもりにいたしております。したがいまして、経過措置期間がほぼ終わります段階で改めてほかの業種の実際の貸し倒れ率とかいうものも今度は全部見直ししてみたらどうかと、従来は金融・保険業が一番急激にここ何年かの間に下がってきておりますので、千分の五の水準に経過措置を経て到達しました段階でほかの業種とあわせましてもう一度検討をいたしてみたいというふうにただいまのところ考えております。
  241. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 また財政収支試算に戻りますが、これは先ほど言われた五十五年度というものを頭につくられておるわけですが、赤字公債の脱却五十五年度というこの姿勢は、もちろんこれはここで崩すというわけにはいかないと思いますけれども、現実論として、現在の景気回復の状況から見まして非常にむつかしい状況にあるのではないか。そうした場合、この財政収支試算というものも、今回もすでに予算の修正が行われてきておりますので、もちろん三月末にならないと景気回復、そういったGNPの伸び等がまだわかりませんからすぐというわけにはいかぬと思いますけれども、ある程度これはまた修正されてくるんじゃないかと思うんですが、この点の見通しはいかがですか。
  242. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 昨年出しました表に比べまして、本年三月三日にお配りしました表の方が、より五十五年度赤字公債脱却は困難であることは事実でございます。われわれは歳入歳出両面苦労しながら合理化を図りまして、五十五年には何とか赤字公債から脱却したいという願望を込めてつくったものでございます。昨日のああいうような修正がございましたので、さらに困難の度合いは深まっておるということは事実でございますが、基本的な考え方は、何としてでもそういうふうにもつていかなきゃいけないんではないだろうかというふうに考えております。
  243. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大臣認識はどうなんですか。この赤字公債脱却五十五年、これは本当に大変なことなんですね、いま次長言われたように。これを目指して、今後どう日本財政のかじをとっていくかというのは大変な問題だと思うんですけれども、ひとつ大臣考え方をお願いします。
  244. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) ただいま加藤次長が申し上げましたとおり、私もひしひしとそのむつかしさを感じております。しかしながら、日本財政を健全化し日本経済を安定なものにしていくというためには、どんなことがあってもこの財政収支試算を手がかりといたしまして五十五年度までには特例公債のない健全なる財政をつくり上げていかなければならない、これがわれわれに与えられましたもう絶対の至上命令だと心得て、鋭意努力を続けてまいるつもりでございます。
  245. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま精神論として言われましたけれども、実際、これから日本経済いまこんな状況の中でどうしていくのか、所信表明でも、まあ言葉ではいろいろ出てきているわけですけれども、相当いろんな問題を思い切った転換もこれはやらなきゃならぬ。産業構造にしても、そのほかいろんな問題が見直しをされて、そうして国民の合意を得た上でやっていかなきゃならぬと思うんです。しかしながら、今年度の予算を見ましても、まだまだそこまで手がついていない。要するに、何かずるずるずるずる来て、過去のいろんなツケをそのままわれわれは負っているような感じがしてならぬわけです。これから、新しい内閣もできたことですし、いろんな意味で抜本的な検討がなされなきゃならぬのですけれども、案外残念ながら出てきていない。この辺を非常に憂えておるわけですけれどもその点についてはいかがですか。
  246. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 全く御意見どおりであると思います。だから、私がこの難局を打開していくためには、おっしゃるとおり、抜本的ないろんな歳入歳出両面に通じまして思い切ったことをやっていかなければならないと、かように考えております。
  247. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まだ具体的な面は予算委員会等でまたやりたいと思います。  次に、経企庁お見えいただいておりますので一言だけお伺いしておきたいんですが、減税の効果ですが、経企庁の試算によります乗数効果、初年度の場合公共投資が一・八五、減税が〇・七八、こういうことになっております。しかしながら、五十一年度の平均消費性向は七七・四%と、こういうふうな数字が出ておりまして、この程度の消費配分というものは期待をできると思うわけです。そういった点で非常に経企庁の計量モデルというものは減税が非常に不利に計算をされておるとまあ考えられるわけです。その辺はどのように考えておられるのか。  それから、国民経済研究協会の鶴田研究部長は、「乗数効果には減税による消費の増加が投資を誘発し、投資部門の所得の効果がさらに消費の増加をもたらすという一連の連鎖拡大のメカニズムは考慮されていない。」と、乗数効果には減税特有の誘発効果が換算されていない点を指摘されておるわけですが、この意見も含めまして経企庁の考え方をお伺いします。あわせて大蔵省もどう考えておられるか。
  248. 岡島和男

    政府委員(岡島和男君) 減税の乗数効果の問題でございますが、モデルによりましてかなり差異がございまして、一概に乗数効果の数字は言えないわけでございますが、私どもが見ておりますところによりますと、個人税の減税の乗数効果は、いま先生言われましたが、初年度〇・八ぐらいというふうに言われております。そういうところに大体数字が集まっておるようでございます。いま国民経済研究協会の数字のことも御引用になりましたけれども、いまちょっと私手元にその数字を持っておりませんけれども、私ども見ております限りは、減税の乗数効果というのは、先生言われておりますように、公共事業の乗数効果と比べまして大体一ぐらい少ないということでございます。それから次年度以降含めましても、やっぱり減税の乗数効果の方が少ないという方がモデル上多いようでございます。  それからなお、設備投資の誘発効果というような点をちょっとお触れになったかと思いますけれども、これもやはり公共投資と減税では、それは定性的に考えてみましてもやっぱり消費の場合には一遍ワンクッション入るものでございますから、どうしても投資に及ぼす影響というものも多少弱いかというように見ておる次第でございます。  以上でございます。
  249. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間ありませんので、この問題はまた機会を変えます。  次に、拘束預金の改善についてですが、拘束預金についてはいままでも予算委員会大蔵委員会等で取り上げてこられたのですが、まず初めに、大臣のこの通達等も出されておりますが、この歩積み両建て預金に対する考え方、改善策を具体的にお伺いしたいと思います。
  250. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 大臣答弁の前に御説明さしていただきたいと思います。  歩積み両建て預金の問題につきまして、かねがね再三御指摘をいただきましたことを大変私残念に思っております。ただ、私どもとしましては、行政指導並びに検査を通じまして具体的な指導、改善に努力をしてまいったところでございます。  ところで、最近一番当面するこの問題の焦点は、従来、公取の調査等にもあらわれておりましたし、また、私どもが昨年中小企業に対しまして特別にアンケート調査を初めて実施をいたしました。その結果等からもうかがわれるのでございますが、いわゆる俗に申しますにらみ預金というものがございます。これが金融機関側と債務者側とでなかなか見解の相違がございまして、非常にトラブルの種になっておるということでございます。したがいまして、このにらみ預金をいかにして解消するかというところに当面焦点を当てまして、昨年十一月に具体策をややまとめまして、私、通達を出しました次第でございますが、その中身は、このにらみ預金に焦点を合わせてこれを解消するように、いわば具体的な事務の運び方あるいは通牒の取り扱いの仕方、あるいは債務者側からのこの解消のための——逆相殺権と申しておりますが、そういうところを明らかにしていただく。やや非常に技術的な点まで立ち入りまして方向を考えたわけでございます。今後それがこの四月一日から完全に実施されるようにただいま整理をいたさしておりますが、その実施状況を監視しながら、やはり行政検査、特に検査を通じまして具体的な指導を強化してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  251. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 公取お見えになっておりますか。——公取の調査を簡単に御報告をいただいて、で、いま大蔵省からもお話ありましたが、実際調査を担当しておられる立場から見て、どの程度の改善をされたと、こう思われておるのか、その点まずお願いします。
  252. 利部脩二

    説明員(利部脩二君) 公正取引委員会では、昭和三十九年三月から毎年二回ずつ中小企業者を対象にいたしましてアンケート調査の方法で拘束預金の実態を調査しております。その結果によりますと、最近時点の調査は五十一年三月時点をまとめたものでございますが、それから三年前の昭和四十八年五月時点と比べてみますと、従来の算出方法による総拘束預金比率、いわばグロスで算出した拘束預金の比率でございますが、これは総拘束預金比率のうちの狭義の拘束預金の比率、明確な手続で拘束しているものでございますが、これの比率は昭和四十八年五月時点では五・四%でございましたが、その後若干低下いたしまして、五十一年三月時点では二・七%というふうに低下しております。  それから、事実上の拘束預金、にらみ預金でございますが、これは五十一年三月時点ではなお一四・一%残っておるということでございます。  それからまた、両者を合わせました広義の拘束預金比率で見ますと、四十八年五月では一九・一%でありましたものが五十一年三月時点の調査では一六・八%と若干低下しております。  まあ、こういう傾向でございまして、全体的には改善されつつあるというふうに私ども考えておりますが、なお個別のケースで見ますと中小企業者の方でなお拘束預金についての不満を持っているという例は相当あるんではないかと思います。このたびの公取の調査でグロスの比率でなくて、個別の拘束預金比率、つまり一中小企業が一つの金融機関について持っている拘束預金の合計額と借入額の合計額の比率、それを出しまして、それを算術平均してみた、そういう試みをしてみたわけでございますが、それによりますと、狭義の拘束預金比率は、グロスの場合が二・七%であったのに対しまして、この方式ですと六・〇%、広義の拘束預金比率になりますと一六・八と出ておりますのが、この方式ですと二四・二というふうになります。まあ、こういう数字を見ますとなお中小企業者の方に個別には拘束預金についての不満はあるんじゃないかと、この数字はそういうことを示しているんではないかというふうに考えております。
  253. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大蔵省調査を見ますと数字が常に公取より低いわけなんです。この点について公取はどう思われますか。要するに分けて調べておられるところにあるのか、その点はどうですか。大蔵省、両方あれしてください。
  254. 利部脩二

    説明員(利部脩二君) 必ずしも大蔵省の数字が私ども調査結果より低いとは言えないように思いますが、調査方法は一つ違います。私どもの方は中小企業対象約八千ぐらいのものを対象にいたしまして調査しております。調査対象の違いということもありましょうし、まあ中小企業の方に書き込んでいただくわけですけれども、それが銀行の方で処理している手続とアンケートに答える方の記憶違いというようなこともあると思っております。そういう点から考えますと、数字の上で大きな違いはない、同じ傾向を示しているんではないかというふうに考えております。
  255. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) ただいま公取が申されたところに一応尽きているかと思いますが、私ども調査公正取引委員会で発表しておられます方の狭義の拘束預金比率に当たるものでございます。そこで比較をしていただきますと、ただいま公正取引委員会で最近二・七%とおっしゃいましたのに対応しますものが私ども調査では五・七%に相なっております。それから私ども調査は金融機関側から徴しておりまして、これは金融機関に悉皆調査をさせておるものでございます。  なおちなみに先ほどちょっと申し上げました私どもが金融機関でなくて中小企業に対しましてアンケートをいたしました。これは抽出対象は公正取引委員会の場合と全く違ってはおりますけれども、その結果は公正取引委員会の狭義の二・七に当たるものが私どものアンケートの結果は三・六でございます。それから公正取引委員会の広義の二八・八に当たる方が私どものアンケートの方は一四・五でございます。まあ若干高い低いはございますが、ほぼ同じような傾向かと存じております。
  256. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これ別に必ずしも一緒にしなきゃいかぬとは私も思いませんけれども、もう少し公取の調査のやり方と大蔵省調査のやり方、まあ基本はその方向は同じにされてもいいんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。
  257. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) いまの私どものやりますのは、金融機関側からの調査が従来基本になっておりましたので、これは悉皆調査でございますからこれは続けてまいりたいと思っております。  それから、なお昨年から始めました企業に対します直接のアンケート調査の方は、これは今後いろいろ工夫を加えまして極力その実態の把握に資するように勉強してまいりたい、こう考えております。
  258. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう時間ですから、大臣、最後に、現実としてはまだまだこれだけありますし、現在こういう不景気の中で実際中小企業、零細企業は本当に生きるか死ぬか、それは銀行に握られておると言っても過言ではないぐらいです。そういうことで、こういった拘束預金というものによって非常に苦労しておる人がたくさんおりますし、やはりこれは相当本気になって、こういう事態であるだけに、景気がよくて余裕のある時代ならこれはまあそう文句も出てこないと思うんですけれども、こういう事態であるだけに、非常に私もいろんな具体的に声も聞いております。そういう立場でひとつこの改善、ただこの間から一片の通達を出されたわけでありますけれども、五十一年十一月十八日、これで終わりではなくて、先ほど四月一日から少し実施されるということも聞きましたけれども、本腰を入れて、これは古くて新しい問題です。ずっと前から言われて、いまなお問題になっている。これはひとつ大臣、腰を据えてぜひお願いをしたいと思うんですが、その点の決意をお伺いして終わりたいと思います。
  259. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 歩積み両建ての問題は、私どもも古くから金融業界における、まことに、何と申しますか、不愉快でありかつ何とかしてこれを解消していかなければならない問題だと、かように考えております。なかなかしかしいろんな努力をしてまいっておりまするけれども、これが完全に解消するということはむずかしいのでございますが、強制的にこれをどうするということも、これまた金融というものの性質上、何らかこれ強制的に制度的に何かしたらどうかという御意見もありますが、そこいらの点はこれはもっとやっぱり慎重に考えていかなければならない問題だと、かように考えておりますが、何とかしてこれはこういう不愉快なる事実がないようにしていきたい、かように考えております。
  260. 渡辺武

    ○渡辺武君 まず最初に伺いたいことは、私どもいままで、去年もおととしもそうだったんですが、国債の問題を伺うと、大概この国債管理政策検討中でございますという答弁が返ってきたんですね。ことしの国会でも内閣総理大臣も同じような答弁をされておるのを聞いたことがありますけれども、いま政府がこの国債管理政策についてどういう内容のことを考えておられるのか、また問題点はどういうことなのか、いつごろまでにこの国債管理政策なるものをこれを実行に移されるのか、まず伺いたいと思います。
  261. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 国債管理政策というものは、実体的に何かという点から始まりますと、大変学者の中でもいろいろ御議論がありますし、私どもも昭和四十年から国債を出してまいりまして、その都度やはりその国債の発行に関連いたしましていろいろな国債管理政策的なものを織り込んできたつもりでございます。したがいまして、それは歴史的に振り顧みますれば、それを一体、国債管理政策と言えるのかどうかということでございますけれども、それはそれなりに意味があったと思います。  ただ、最近のように大量な国債が発行されましてから急に国債管理政策ということが世間で非常にやかましくなってきた。そこで私どもは、従来とってまいりました基本的な考え方を最初に申し上げたいと思いますんでございますが、やはり政府側から見て国債が大量に発行された場合にそれが経済の安定成長というか、そういうものに果たして一体どういうふうになじんでいくものなのかどうかということと、それからもう一つはやはり出しました国債というものが市場性を持ち、かつそれが信用の厚いものであり、かつ国民からも喜んで持たれるというような性格のものであるべきであろうと。同時にまた財政当局といたしましては、国の借金でございますから、そういう点ではやはりなるべく費用の少ないという考え方というものは、当然基本的にあるんだろうと思う。したがいまして、そういうものを織り込みましたところで、やはりかなり長期的に国債管理政策というものを見直してまいりますということが、基本的にはやはり公社債市場というか、そういうものを育成していくということによって、いろんな問題が解決していくのじゃないか。その市場というものは簡単にきょうあすというふうにしてできていくんじゃございませんし、また私どもは高度成長と申しますか、そういう時期におきましてはやはり間接金融中心主義であった半面から、金利が低かったということもございまして、最近市場が育っておりません。  ところが、公共債が多分に出てまいりましてからこの方、やはりそこに資金が集まってきて市場がだんだんとふくらんできております。同時にその出しますところの債券につきましても、徐々にやはり市場性を持ち、かつあるいは商品性を持つというような形のものでないと売れていかないし、またそういうふうに発行当局も、発行者の方も心がけていくというような形で、やはり条件等は過去に比べますと相当配慮が加えられてきておるということでございまして、国債も御多分に漏れず、やはりいま申しておりますのは、国債の発行条件なり市場性なりというものを、これからその都度改善をしながら市場性を高めていく、そして公社債市場というものが発達する。それにあわせてやはり国債というものがむしろ中心となってでもいくべきではないかというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、いまの時点で公社債市場が十分育ってないではないか、あるいは国債管理政策というものが十分に育ってないではないかという御批判につきましては、これはやはりかなり歴史的なものでもございますし、時間をかけて解決していかなければならない問題だと。ただ五十一年、二年度について申し上げますならば、国債の条件等についてもかなり市場性を持ってまいりましたし、それからいまの金融環境あるいは市場環境から言いますと国債はかなり売れております。したがいまして、その点においては、私どもも現在急に急いで何とかとにかく特別なことをやらなければならないということではなくて、むしろ公社債市場の発達のための準備をこれからも着実に進めていくと、それにはやはり国債が魅力のある商品として育っていくということを心がけていくべきであると思います。そういうもの全体をいってやはり国債管理政策を徐々に徐々につくり上げていく、こういうことになるのではないかというふうに考えております。
  262. 渡辺武

    ○渡辺武君 非常に抽象的な御答弁で、いまごろそんな答弁聞くのも非常に意外ですね。だってこの財政収支試算によりますと、五十五年度には国債が五十五兆円だと、こういうことでしょう。五十一年度の二・五倍ですよ。大変なもんですわな、これは。それでいまいろいろ問題になっているわけですよね。それをそんな抽象的なことで済むだろうかと、私は非常に心配です。特に、聞くところによりますと、昨年の暮れに国債基本問題研究会というのが大蔵省日本銀行、金融界でできたという話を聞きましたけれども、ここでどんなことが一体討議されているのか、主なポイントだけでいいです、時間がないから端的に要点だけひとつ聞きたいと思うんです。特に、金融界などからは、とにかく、国債の利回りが余り低過ぎるじゃないかと、むしろ市場金利を十分しんしゃくして出したらどうだというような意見もあるようですね。あるいは金融機関が引受シ団で、引き受けた公債が実は売ることができないようなことになっているんだが、販売できるようにしたらどうだという意見もあるということも聞いております。あるいは特に建設公債ですね、六十年間完全償還と、こういうことで借りかえ、借りかえでいっているわけですけれどもね。償還期間が来たら全額返すというふうにした方がいいんじゃないかという意見もあるというような話も聞いておるんですけれども、そういう問題について具体的にお答えいただきたい。
  263. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 抽象的と申されたので大変戸惑っておるのでございますが、国債問題研究会で議論いたしておりますのもいま私が申し上げたようなことを議論しておるわけでございまして、具体的になりますと、たとえば都市銀行に例をとりますれば、かなりオペ対象から将来国債というようなものが残るであろう、それが金融機関の資金量から見てどのくらいのウエートになるかということから、それに対してどういうふうに考えていったらいいかというふうな問題も一つございます。それから国債だけではございません、地方債、公共債全体としての結局の消化の状況からいけば、その発行条件なり利率条件なりというものが一体どういうふうにあるべきかというような議論をいたしておるわけでございまして、研究会というのは、いつまでに何かを議論して出さなければならないというよりも、いま、現在ある問題を逐一お互いに議論して、とにかく実行できるものから実行に移していこうということで研究をいたしておるわけでございます。  そこで、過去にとりましたいろいろな、すでに消化、流通面におきまする配慮というものもかなりのものをやっておるわけでございますが、時間がございませんので省略いたしますけれども、具体的にはそういうものを御説明すれば、なるほど国債に関してもかなりのいろいろなことをやってきたなという御評価はいただけるだろうと私は思っております。
  264. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう程度のことでしたら、私、非常に大きな問題だと思いますね。  先ほど日本銀行総裁にも伺いましたけれども大蔵省の発表した五十一年十二月末の国債保有状況。日本銀行の保有高は、これは二十兆八千億の公債発行残高の中の約三割ですね、市中金融機関は四三%、こういうことになっていますな。先ほど日本銀行総裁は、今後大量の国債が出されても、日本銀行としては成長通貨を賄う程度の買いオペレーションしかできないんだ、だから日本銀行の保有率は、これは低下すると見なきゃならぬと、こういうことを言っておられる。逆に言いますと、いままでのような国債の発行引き受けの体制を、さっきの御答弁によれば、基本的に変えないような感じですからね。それを前提条件とすれば、市中金融機関の保有率というのがふえざるを得ないですよ。そうでしょう。日本銀行の保有率は低下する、大量の国債は出る。どこが持つかという問題、市中金融機関が持たざるを得ないと思う。そう思って差し支えないと思うがどうですか。  私は、こんな状態がもし続いた場合、もうすでに昨年の下半期から市中金融機関の資金ポジションが非常に悪化している、これからもっともっと国債を押し込んでいくというようなことになると、中小企業に対する金融、これは非常に窮屈になっていくだろう、そう思いますね。同時にまた、景気回復して資金需要が起こってくるということになれば、市中金触融関が保有した公債を日本銀行に大量に持ち込む、インフレの危険というのは非常に深刻だというふうに思わざるを得ないと思うんです。一体五十五年度に市中金融機関の国債の保有率、いまよりもふえるのか減るのか、その辺をちょっと聞かしていただきたい。
  265. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 御指摘の点は、先ほど日本銀行総裁がおっしゃったような見通しで私は正しいんだろうと思います。しかし、先ほどから私が申し上げておりますように、市場の開発というものは、そういう金融機関が持っておるものを処分できるようなそういう市場というものはつくっていかなければならないと思います。そういうことを先ほどから私は国債管理政策の一環として、研究課題として申し上げておるわけです。  五十二年度、五十一年度に例をとりますならば、資金量、預金の伸びに比べまして、国債の市中消化の伸びというものがそれを下回っておりますから、それはいまの金融環境におきましては、いま先生御指摘のような窮屈な状況というのは出てこないと想定いたしておりますが、五十五年度までのいろんな仮定をもとにした試算におきましては、確かにふえる。ふえるけれども、それじゃふえたままでほっておくのかということにつきましては、それはやはりそれに対する対応策は必要であろう。それは国債であれば国債のやはり市場性というものを持たしていく、そしてそれが大きなキャピタルロスを生じないで、市場に売れるような環境というものがつくっていけるならば、それは公社債市場がふくらむことによって可能ではないかというふうに考えておるわけでございまして、そういうものを一つ一つ築いていくということによって、何かもう国債が金融機関にたまっちゃって動きがとれぬじゃないかというふうに一つだけに考えてしまう必要はないのでございまして、そこにわれわれのいま考えております国債管理政策の進展が私どもはあると考えております。
  266. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと端的に聞きますと、いままでは市中金融機関が引き受けした国債、これは市中に売っちゃいかぬ、事実上そういうことになっていたわけですね。ところが今度それを市中に売ってもいいようにするということですか、それが一点。  もう一点は、もし市中に売ることができるようにするためには、これはいまの公債の低い金利では、これはならぬというのが金融機関の意見ですね。その辺はどうなさるのか。
  267. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 大蔵省から、金融機関が持っております国債を売ってはならぬということを一回も指導したことはございません。ただ金融機関にもいろいろ種類の金融機関がございます。御承知のように信用金庫とか相互銀行、その辺の金融機関は資金の融通が欲しいときには国債を売っております、市場に売っております。それからいま御指摘の点は、恐らく都銀のことであろうかと思います。都銀は従来の大量発行以前の状況によりますれば、大体一年以上経過いたしますと日本銀行のオペレーションの対象になっておりますので、むしろ市場で売るよりも、そういうオペレーションの対象として考えた方がいいという判断から事実上売ってないということでございます。したがって、その点は今後それじゃ成長通貨以上に日本銀行が買わないということになりますと、さきほどの御議論のような問題が出てくる。これに対しての対処の仕方は、いま私が申し上げたようなことでございます。  それから、金利の条件でございますが、これは一昨年の長期金利改定の際に、国債の金利を他の債券に比べて有利に調整をいたしまして、最近では国債は非常によく売れております。市場性を持っている、現時点においては市場性を持っております。したがってそういう形で売れてきますということを考えますならば、その国債というものを何か邪魔者に考えることは必要ないんで、むしろ公社債市場の中において国債は最も信用ある銘柄として考えていける方法はないものであろうかと、私どもはそれはあり得るというふうに判断しております。したがって、五十五年になって国債が非常にたまったからこれは大変だ大変だということよりも、むしろ私どもは積極的に国債を国民の金融資産の中の中心的な銘柄としても考えていきたい、そういうことに、まあ十分のお答えではないかもしれませんが考えております。
  268. 渡辺武

    ○渡辺武君 国債売れている、売れていると言ったって、あなた方の発表した数字でも個人消化分八・三%ですね。この間、中期国債一千億出してこれは、売れ行きうんといいんだと新聞にも書かれているんだけれども、一千億ですよね。これに伴って利付公債売れた売れたというけれども、一千億円台ぐらいのものでしょう。とてもそれは問に合うものじゃないですよ。いまここに、私富士銀行が出している富士タイムズという調査資料といいますか、レポートといいますか、ここにあるのですが、これ読んでみますと、今後国債大量発行になると、どうしても市中金融機関、特に都銀が国債を大量に持たざるを得ないと、そうなってくると資金ポジションも悪くなると、そして国債引き受けのために、国債以外の手持ちの証券を売っ払わなきゃならぬ。そしてこの、何も収益率もずっと下がってくる等々のことがずっと心配して書かれているのですね。  私はいまおっしゃった国債管理政策がいいか悪いかという問題は、きょうは論じないで、ただ大蔵省がどういう政策を持っておられるのかという点を聞きたいのですけれども、しかしいずれにしましても、こういう重大な問題が提起されている。先ほど日本銀行総裁は、こういうことを言われた。金融機関が引き受け能力がないほど公債を出したら、これはもう公債消化できないんだと、そうすれば、公債の発行そのものが困難になってくると、こういう趣旨のことを言われた。今後大量の公債を発行する、これは財政的な必要からやっていく。ところが、日本銀行の方は、買いオペは成長通貨の範囲内ということで、あなた自身も認められたように保有率がずっと下がる。どこへ押し込むんだ、結局のところ市中金融機関に押し込まざるを得ない。ところが、その市中金融機関ももうすでに大量の国債を押しつけられて、そうして資金ポジションは悪化している。公債の消化そのものが非常に困難な状況が今後十分に予想されるわけでしょう。どうなさいますか。
  269. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 先ほどの御指摘についてちょっとまず最初に申し上げたいのは、国債の個人消化というものは、一昨年あたりの一カ月の平均は百五十ないし二百億ぐらいでございます。最近の一カ月平均は一千億円を越えております。したがって、その間における個人消化は、これは中期国債が出る前で、中期は計算に入れておりませんけれども、それは非常に個人消化がはかどっておるということは、金利の面においても十分競争力があるということでございます。それから金融機関が現在持っておりますのを、金融機関自身がこれは債券を売るか国債を売るか、あるいはそのまま持っておるかということのポジションの問題がある。これは現時点においては金融機関はまだ売るだけの金融環境にないんだろうと思います、それは金融が非常に緩んでおりますから。したがって、将来の問題といたしましては、何遍も繰り返して申し上げておりますように、やっぱり売ってはならぬということを言っておりませんけれども、やっぱり売れるような環境というものができてこないと、御指摘のような金融機関に国債がたまるということを何としても避けなければならぬ。
  270. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので、もっと伺いたいんだが、やめざるを得ないんですがね。いま申しましたように、国債大量発行するというのは財政収支試算に出ている。ところがそれが消化できるのかどうかという問題が非常に危惧される、こういう状況がいま出されているわけですね。そこで、私、財政収支試算出されただけでは、これは国会審議の材料としても不十分だと思うんですよ。一体五十五年度末で国債の保有状況、日銀が何%持って、市中金融機関がどのくらい持って、個人がどのくらい持つ、ということを予想するのか、それを私、資料として出していただきたいと思います。そのくらいのことを計算する義務は私は大蔵省にはあると思う。もうすでに富士銀行でも計算してある程度のことは出している。そのくらいのことは出していただきたいと思う。どうですか。
  271. 岩瀬義郎

    政府委員(岩瀬義郎君) 経済の中における静止した状態、あらゆる静止した状態において何か統計をつくるというか、資料をつくるというような御下命のように感じるんでございます、私は実を言うと、それは実は、五十五年度末に国債がどのくらいになる、それがたとえばそれの前に一体大蔵省としては国債管理政策をどういうふうに進展させるのか、あるいはその間において景気の動向がどういうふうになるか、あるいは、一応の試算として出されたものではありますけれども経済の動向というものは一年の中におきましても、金融の繁閑もございます。資金量が余っているときとないときと、それによって国債の発行、これは毎月毎月はコンスタントには売っておりません。したがって、そういった金融の繁閑なり環境なりというものを見ながら処理していくべきものでございまして、したがってそれは、動いている経済に対して合わせて資金調達をやっていくということをいたしませんと、それは資金の非常に繁忙なときに国債を売り込むというようなことをいたしますと、それは金利の問題とか、いろいろなことに悪影響を及ぼしてまいります。したがって、きめの細かい発行の仕方が必要なんだと。したがって、その結果それがある時点においてだれがどのくらい持っておるかということを資料で出せとおっしゃっても、それは無理なんでございます。私どもとしては資料をお出しする方がむしろ非常に困難だというふうに考えております。
  272. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間ないからやめておきます。満足してません。
  273. 野末陳平

    ○野末陳平君 先ほど矢追委員から拘束預金に関する質問が出ておりましたので、それに関連しまして銀行局にお尋ねしますが、どうやら公定歩合の引き下げが先行して預金金利の方はそのままで据え置きというような情勢らしいですけれども、金融機関などはもうそれを前提としてといいますか、覚悟した上でのことと思いますが、最近金融機関の一部に拘束預金の扱い方で、中小企業に対しまして、ぼくから見れば非常に虫がいい動きといいますか、こういう事実があるんですけれども、銀行局長にこの金融機関のねらいはどこにあるのか、その辺からまずお尋ねしたいと思うんですけれども、この場合の拘束預金はにらみ預金も含めた広い意味の拘束預金というふうに取っていただいていいんですけれども、定期でやっておりますね、そうすると、満期が近づいている、いま満期が近づいているものについて切りかえる場合ですね、この期間をいままで一年のものは短縮というか、期間を短縮してくれということを金融機関の方が債務者に要求する。もちろん債務者の意に反してそれを要求するところが問題だと思うのですね。  そこで一年定期をこれまで拘束していたとしますね。そうすると、これが満期で切りかえになるというので、これを六カ月あるいは三月ものにしてくれと、こういうふうに言われると、一応金を借りているからしょうがないからそれに応じるというような、こういうケースが出てきているようです。そこでこれのねらいですけれども、一つには、たとえば一年定期だったらば、それに対して金融機関が年六・七五ですか、それだけ金利を払わなきゃなりませんね。それを六カ月ものにすれば、半年ものにすれば五・七五だから一%ですね。そうですね。それから三月ものにすれば、三月ものは四・五ですか、そうですね。ですからさらに浮きますね。だから何かそうやって金利を浮かせるのがこれはねらいなのか。つまり預金金利の方は全然下がってない、連動して下がらない。しかし、それじゃ金融機関としては負担があるので、この際そういうふうにして定期を期間を短縮させて金利を浮かせようと、そういうねらいでこの要求を出しているのか、それとも、まあそれもあるんじゃないかと思うし、それとも三月の定期に切りかえてくれというのがどうも多いですね、三カ月ものに。三カ月ものにするとこれは拘束預金という立場から言えばこれどうなるのか、その辺のこともあるでしょうし、こういう最近金融機関で見られる、一部にですね、金融機関に見られるこの動き、これはどういうところにねらいがあるとお考えでしょうか。また、その事実があることは少しは御存じですか。
  274. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 野末先生の非常に新しい観点からの御指摘でございますので、私どもそれがかなり行われておるというふうには現在承知をいたしておりません。ただ、そういう御指摘をいただきますと、従来金融機関の方はなるべくその長期の資金を、安定した預金を取りたいという意欲が非常に強うございまして、ただ最近、御承知のように、非常に貸し出しの金利と預金金利の差が狭まってまいりましたから、あるいは収益的な観点からおっしゃるようなことがあり得ないことではないと私も存じます。で、ただ、それがどういうところにあるだろうかと、どういうところに原因があると考えるかという点でございますけれども、一つは、いま御指摘のような収益関係の点が一つあるわけです。つまりコスト意識の問題が一つあろうかと思いますが、もう一つは、実は債務者が長期の定期預金をするということは、先ほど御議論の出ました歩積み両建てを私ども取り締まるに当たりまして、実は形がそういう形になっておりますものはまず疑ってかかるというようなことをいたしております。そういうようなことが現実にあるもんでございますから、それはなるべく避けたいという意識があるいはあるのかという感じもいたします。しかし、いずれにいたしましても、先生がただいま御指摘のように、この債務者の意に反して長く置きたいものを短くさせるとか、あるいは短く要求払い預金で置きたいものを無理に定期にさせるとかいうことが適当でないということは御指摘のとおりだと存じます。ただ、具体的にそれをどういうふうにこれから考えていくかと、なかなかデリケートなむずかしいところがございますので、今後よく実情のさらに勉強をいたしまして、どう対応するかも研究をさしていただきたい、こういうふうに考えます。
  275. 野末陳平

    ○野末陳平君 研究していただきたいと思って質問しているわけですけれどもね。  そうすると、これいままず最初の局長の解釈の収益面をねらって期間を短縮させてという、まあ金利を浮かそうということでしょうね。そうなると、今度反対立場で債務者の方は、結局これでまた結果的には金利が上がっていることになりますね。そういう場合に、いやだと、こういう要求を受けたけれども突っぱねたいので、いままでどおり長期でもって一年のままにしといてくれと、三カ月あるいは半年ものにするのはいやだと、これ突っぱねて、これ力関係、にらみ預金の場合はこれがだからできにくいわけですね。こういう場合に、やはりここでひとつたとえば大蔵省の方はこれに対してはこういう考えだというのが打ち出してあれば、まあ債務者の方も銀行に対してかなり強く、強くというか、対等に出れるのじゃないか、そういうふうに思うわけで、これどんなもんでしょう。やはり困ると当然言っていいとぼくは思うのですが、力関係で泣く泣く負けるのもいやですからね。大蔵省として、どちらに味方をするわけでもありませんけれども、債務者の意に反する以上はやっぱりこれは好ましくないというふうに判断なさいますか。そうなるとわりと債務者も、じゃうちは困るというようなことを言いやすいと思うのですがね、いかがですか。
  276. 後藤達太

    政府委員(後藤達太君) 基本的には先生の御指摘のように、債務者に対するいわば相対的な強い立場から債務者の意に反することを預金のいまの期間の問題、種類の問題についてもさせるということは、私は不適当のことだと存じます。ただ、先ほどなお勉強を要するようなことを申し上げましたのは、実はこれはなかなか一律に短くしてはいかぬと、短く書きかえてはいかぬとか、あるいは長く書きかえてはいかぬとかいうあたりはなかなかむずかしいところだと存じます。したがいまして、実情をさらに把握するように勉強いたしますと同時に、実は先ほど御議論のございましたにらみ預金問題というのがこれと並行してやはりある問題だと思います。で、すでに、そのにらみ預金というのも債務者の意に反して、これはむしろ長期化する方でございますがそういうことをやっておるということでございます。そういうにらみでそういうことをやっておるのをやめさせるための努力をスタートしたところでございますから、なお——それよりもいまの御指摘の点は逆に短くさせる方でございますから、もう少し勉強さしていただきたいと存じますが、なおその御指摘の点を頭に置いてよく勉強していきたいと存じます。
  277. 野末陳平

    ○野末陳平君 これはまだ、いま弊害が出ているとか、あるいは苦情が多いとかいうことではありませんので、研究としてぼくももう少し実態をいろいろ聞いてみようと思っていますから、ひとつ、また後日何かの機会にお話を聞きたいと思うんです。ただ、それについて大臣にお伺いしたいんですけれども、やはり初めは長期化させようというふうに、こう債務者に対してにらみ預金で拘束していると。今度自分の方の都合がまた変わると、今度はまた短期にしてまあやってみるとか、非常にその金融機関というのは強い立場にあぐらかいて、何かいつも自分が損をしないようにうまい立場に回ろうという動きが露骨じゃないかと、そう思えるわけですよ。特に中小企業などの債務側に立てば当然そういう苦情が、あるいは不満が出るのはあたりまえだと思ったりするんですが、どうもその辺が、局長などはその拘束預金に対しても、にらみ預金などは特にこれをなくすように対策を講じておられるような……、全体に何か金融機関に対しては甘いような気がするんですがね、大蔵大臣。それは主観の問題かもしれませんが、いかがでしょうか、いまの大蔵省の金融機関に対する姿勢というのはやや過保護じゃないか、甘過ぎるんじゃないかと、こうぼくらは思うんですが、大臣はどうお考えですか。
  278. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 金融機関に対して取り締まり官庁たる大蔵省は甘過ぎるんじゃないかという御質問でございますが、これはある面におきましては、おっしゃるような面は私はないとは思いません、ある面においては。しかしながら、ある面においては検査をやりまして、非常に強いこの銀行に対する警戒と申しますか、銀行に対する指導と申しますか、やっておりまして、これ一概に甘いとか一概にきついとかいうことは言えないと思いますけれど、確かに甘い面のあるということは私は否定できないと思います。そういったようなことは、これからさらに銀行行政として大いに検討していって、そうして正常なる、本当に正常なる姿にだんだんと近づけていくべきものだと思いますので、お言葉もございますし、十分これ検討してまいりたいと、かように考えております。
  279. 野末陳平

    ○野末陳平君 きつくて当然じゃないかと、まあ、こう思うわけです。ですから、甘過ぎる面はこれからまた気がついたとき質問したいと思いますから、まあ、ひとつ、別に銀行いじめしょうとか大蔵省いじめるとかという気ではありませんので……。やはり銀行行政というのは、銀行も大事ですけれども、預金者あるいは債務者その他も大事なわけですから、その辺をひとつ頭に入れて銀行に甘くならないようにお願いしたいと思います。  じゃ終わります。
  280. 田渕哲也

    田渕哲也君 時間も大分遅くなっておりますので具体的な問題一つだけ、一点だけ大臣質問をし、また要望をあわせてしたいと思います。  それは、租税特別措置法の第三十五条に居住用財産の譲渡所得の特別控除の制度があります。ところが、これはきわめていい制度だと思いますけれども、しかし、現在の制度あるいはその運用の方法、仕方に若干問題があると思います。  具体的な例を申し上げますと、私が最近聞いた例によりましても、一つは、転勤をする場合に転勤先では家を借りるわけです。それで自分のもとの家は人に貸す。そして転勤が三年なり四年なりでまたもとへ戻るときに、今度は三年たてば子供も大きくなっておるから、もとの家へ戻るよりもちょっと大きな家に戻りたいということで、前の家を売って新しい家を買いかえて、そして新しい家に入る。この場合はこの三十五条の適用がされないわけですね、その家に現に住んでいないわけですから。それで、これで税金が何百万とかかってきておる例があります。そんなお金はその人はないわけですね、前の家を売って、若干足し前をして新しい家を買ってそこに入ったわけですから。  それからもう一つの例は、海外に転勤をして、それで自分の日本にある家をあけておくのはもったいないから人に貸したと、それでいざ何年かたって、海外への転勤が終わって内地に帰るときにその家を明け渡してもらおうと思うと、今度はなかなかその人は出てくれない。出てくれないから、仕方がないからその人にその家を売って、その代金で自分の家を買って入った。この場合も税金がかかってくるわけですよ。この三十五条は適用されない。私は、これはやっぱり非常に不合理な面が多いのではないかと思うのです。  それで、まず第一は、これはやっぱり運用の仕方が厳し過ぎるのではなかろうか。法律には「居住の用に供している」という文句があるわけですけれども、これについては現に入っておれば問題ないわけですけれども、あとまあ若干のこの例外がありまして、単身赴任で奥さんが残っておる場合、これは認められる。あるいは前に居住しておって、現在その扶養親族ですね、つまり子供とか親が住んでおる場合も認められる。それから、あるいは全くあけてしまって、もう空き家にして人に貸さなければ一年以内ならいいと、これだけの例外が認められておるわけですけれども、これはきわめて厳しい解釈であって、先ほど申し上げましたような例が救えるような方向で運用の改善がされないものか、この点についてまずお伺いをしたいと思うのです。
  281. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいまの先生の御質問お答えをいたします。  実は、先生も先ほど御質問ありましたように、現行の居住用財産の特別控除制度でございますが、これは昭和四十三年七月に税制調査会の答申に基づきまして、従前ございました買いかえ制度にかえまして設けられたものでありますが、居住の用に供している土地、家屋を譲渡した場合、まさに先生の御指摘のように、そういう場合には現在三千万円の特別控除額を控除されておる、こういうふうになっております。そこで、この制度は、先ほど申しましたように、あくまでも本人が居住の用に供しているということが法律上の要件でございますので、御質問のような事例につきましては、取り扱いでその要件を緩和し、救済をするということは、私ども気持ちとしてはちょっと困難ではないかと、こんなふうに考えております。しかしながら、たとえば本人が居住の用に供している家屋の判定に当たりまして、たとえば本人が単身赴任等のために家屋に居住していない場合であっても、その扶養親族が居住しているとか、そういうような場合など、その家屋が本人の生活の拠点と認められる事情があるときには、この特例を適用するということに取り扱っておるというのが現状でございます。
  282. 田渕哲也

    田渕哲也君 法律の字句の解釈からいえばそういうふうに取り扱われるべきものかもわかりません。しかし実際はこれは非常に不合理な例があるわけですね。たとえば転勤先から帰る場合に、この法律をよく知っておれば、一遍もとのうちに帰ってしばらく住んでおって、新しい家を買いかえて入ればこれは税金かからないんです。ところが実際は、それなら二回宿がえをせぬといかぬ。それから一遍入ったものを売って新しい家を買ってちょうどうまく入れかえるというのは、これはなかなか実際上むずかしい。やっぱりたまたま自分のうちをあけておるうちに売って、それで新しい家にかえて入るというのは、これはきわめて常識的というか、合理的なやり方なんです。この合理的なやり方をやった場合には控除の対象にならないで、それでわざわざそういうめんどうくさい手続を踏まないと控除の対象にならない。これはもうちょっと弾力的に運用すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  283. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいま御答弁を申し上げましたように、私どもはあくまでもやはり法律で現に居住しているという制約がございますし、それを前提にして、しかもその拠点としておる家屋がどういう状況かということをいろいろ詰めてはおりますにしても、その法律をちょっと逸脱してといいますか、越えてといいますか、現行の取り扱いの上ではなかなかむずかしいんじゃないかと、こんなふうに考えておる次第でございます。
  284. 田渕哲也

    田渕哲也君 まあその法律の解釈の上からそうなる。それを弾力的にするにはむずかしいという答弁答弁としまして、現に国税庁が税金を取られる、譲渡所得に税金を取られる。その仕事をしておられるわけですけれども、非常にこの関係のトラブルが多いわけです。それで東京国税局の管内で一年間の例を見ましても、譲渡所得に対する課税関係で、申告後修正とか何かの手直しが必要なものが約十三万件ある。そのうち五万件がこの三十五条にかかわる問題なんです。しかも、その中で二万七千件がいまだに未解決のまま残っておる。これはこういう例が非常に多いんです。それで法律を知らないがゆえにそういう場合にたくさんの税金がかかってきて、本当は自分の前の家を売って新しい家にかえただけで、何にももうけてない、所得がない。ところが、何百万という税金を払わなければならない。それも知らないから、このうちを買ってしまった後でその税金払えと言ってこられても金がない。こういうことで困っておる人が非常に多いわけです。だから、その法律の解釈論は別としましても、やはりちょっと徴税上問題があるということは認められますね。
  285. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいま先生がお挙げになりました数字については、ちょっと私の方はその計数はまあ把握をいたしておらぬわけですが、私どもが承知をいたしております範囲では、居住用財産の特例を適用いたしまして、申告をしてきた者のうち、どの程度この特例の適用を否認したかは統計をとっていないので現在不明でございます。また、この特例に関する異議申し立て件数につきましても、その件数を把握しておりませんので明らかではありませんが、たとえば昭和五十年度の申告所得税全体の異議申し立て件数は約一万三千五百件であります。その中にはいわゆるサラリーマン減税分というのがございますので、これを除きますと、三千八百件というのが申告所得税におきます異議申し立て件数でございます。まあその中で、それでは譲渡所得についてどれくらいかと、こういうことになるわけですが、私どもの掌握している範囲では、譲渡所得についての異議申し立ては、先ほど申しました三千八百件のうちのほんの一部で、さらにこの特例に関する——特例というのはいま御質問の特例でございますが、特例に関する異議申し立てが仮にあるといたしましても、私どもとしては全体の異議申し立て件数というものから見ますと、そんなに大きな数字ではない、こんなふうにいまのところは考えております。
  286. 田渕哲也

    田渕哲也君 異議申し立てまでいく件数は少ないかもわかりません。その前でいろいろトラブルがあって、それで結局幾ら粘ってみても税務署の方が勘弁してくれないから、泣く泣く払っている人がいっぱいいるんですよ。何百万という税金を払っている人がいるわけです。それもらまくやれば払わないで済むケースなんです、本当は。ほとんどそうなんです。それから不動産屋もその税金のことをよく知らないから、これなら税金はかかりませんと言うて、その言葉を信じて家を買う。それどころか、税務署に相談に行ったら、税金がからぬからと言われて買いかえた人もいるわけですよ。で、いざ申告のときになって相談したら、これはかかるというようなことになる例もあるわけです。こういうことは私は非常に大きな問題だと思うんです。  そこで、時間もありませんから、大臣に、どうかその坊大臣の任期中に善政を一つやっていただくという意味で、この法律の修正が必要ならそれも考えなくてはならないと思うんです。それから運用面の改善でできるなら運用面の改善でこういうことのないようにしていただきたい。この点について要望し、大臣の見解をお伺いしたいと思うんです。
  287. 坊秀男

    国務大臣坊秀男君) 実情に即された非常にまあ何と申しますか、実際お話によりますと、これは何とか考えにゃなるまいというふうに私は拝承いたしました。で、この問題を実際法律化するということになりますと、またこれ恐らくもう十分御案内のことと思いますけれども、接点の問題が非常にむずかしいことと思います。だから運用によって何とかこれしていこうということも考えられますが、いずれにいたしましても、これは非常な重要な問題でございますから、本当に真剣にひとつ考えさしていただきたいと思います。
  288. 田渕哲也

    田渕哲也君 最後にもう一言だけ。  大臣考えていただくついでに、この問題と同時に、もう少し制度自体の幅を広げられないものだろうか。たとえば、将来家を建てようと思って土地を買っておったけれども、そのうち転勤になってしまった。前の土地の上に家を建てても仕方がない、それで、その土地を売って新たなところに土地を買って家を建てる、この場合には非居住用財産ですから、全くこれには関係がない問題ですけれども、こういう場合も実際は非常に問題がある。それから郷里にある自分の山、畑を売って都会に家を建てる場合も適用されない。それでやはり住宅というものが一番日本では困窮しておりますし、それから住宅をどんどん買いかえるということは、私は非常に必要なことだと思うんです。一生同じ家に固定して住んでおるということは、決して合理的な住宅の使用の仕方ではないわけで、やっぱり子供が大きくなり、家族がふえるにつれて住宅をどんどん買いかえて住むというのが私は資産の有効利用、資源の有効利用の面からも好ましいことだと思うんですけれども、そういうことをうまくできるようにするためにも、制度全体についても検討をお願いしたい。  それから、現にこういうことで泣いておる人がたくさんといるわけですから、これは早急に何らかの手を打っていただきたい、以上をお願いして私の質問を終わりたいと思います。
  289. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先ほど大臣お答えいたしましたように、居住用財産——現に居住している家をお売りになったときに従来の買いかえ制度、それにいろんな弊害があるので、特別控除に切りかえていまの制度になりました。したがいまして、現に住んでいる家ということと同じに考えていいではないかといういろいろ御指摘のケース、それを国税庁の方では会計検査院で後々指摘されたりいろんなこともあるものですから、それはどう考えても居住根拠地だという認定をするのは無理ではないかというところで、いま非常に悩んでおるわけでございまして、問題は解決するとすれば、むしろ法律上の要件をもう少し緩和できるかできないか、そういう問題として取り上げるべきではないかなという感じがしながら承っておりましたが、法律上の要件緩和ということになりますと、一体客観的にどこまで書き切れるのか、グレーゾーンがまた出てきやしないかということがございますので、決していつまでもというつもりではございませんけれども、少し時間をかけて法律上の緩和が可能かどうかを考えてみたいと思っております。  ただ、後段の御質問になりますと、これは居住用財産という問題を離れますので、土地を売ってその代金で家を買ったのだから、そこに所得があったわけではないではないかという考え方にはなかなかなじまない。それはやはりキャピタルゲインというのはどこかで一度負担していただかないといけないので、そういう問題がございますし、もう一つは、やはり現在の税制の流れの中では、やはり土地を売って得たキャピタルゲインというのは、むしろ課税を強化するという流れの中にいまの居住用財産のシステムが別の角度で取り込まれておりますので、居住用財産でない土地であっても、それによって得たキャピタルゲインは、新しい家を買うためならむしろ軽課するということになりますと、全体の土地税制の中でもう一遍ながめ直さないと、なかなかむずかしいんではないかという感じがいたします。  前段の問題は、時間をかけまして、むしろ運用では国税庁がいま悩んでおりますように、なかなか踏み切れない面もあろかと思います。法律上の要件緩和が可能かどうかということを含めまして検討したいと思います。
  290. 田渕哲也

    田渕哲也君 最後にもう一言だけ。  余り時間をかけられたら困るわけでして、法律を改正するとなればそう簡単にはいかないかもわかりません。しかし、いまは法律があって、施行令があって、それから通達があるわけです。その通達でも、通達の段階でももう少し幅を広げられないか。会計検査院にしても、そういうものをずっと通達まで含めて解釈すれば適用を厳しくするのは当然なんで、ぜひ早急に検討していただきたいと思います。
  291. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいまの御質問でございますが、主税局長から答弁がありましたように、通達の段階ではなかなかむずかしい問題が実はありまして、私どもは現在の通達の中で、法律の中で許される範囲で相当努力をしているつもりでありますが、一定の限度を超えてということになりますと、どうしてもやはり主税局に御登場願わなければならぬという問題でもございますので、私どもは先生のお話については十分勉強を引き続きいたしますが、どうもいまの感じでは精いっぱいというところでございますので、御了承いただきたいと思います。
  292. 安田隆明

    委員長安田隆明君) 本日の調査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後八時十五分散会      —————・—————