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政府委員(大橋宗夫君) ただいま御
指摘の八十条と八十一条の
関係でございますけれども、私どもは八十一条の第一項と八十条というものが、
先生御
指摘のようにそう密接な
関係あるものかどうかという点については、いささか疑問に
感じておる次第でございます。八十一条の第三項は「裁判所は、第一項の
規定によるあたらしい証拠を取り調べる必要があると認めるときは、
公正取引委員会に対し、当該事件を差し戻し、当該証拠を取り調べた上適当な
措置をとるべきことを命じなければならない。」とございまして、証拠調べが必要だという場合であっても、その証拠調べは
公正取引委員会で行う。そしてその
公正取引委員会で調べ直したことにつきまして、やはり実質的な証拠があるという場合には裁判所を拘束するという形になっておるわけでございまして、八十一条の第三項というものが八十一条と密接に結びついているというふうには
理解いたしますが、八十一条の第一項そのものは、八十条とのつながりというものについてはそれほど密接なものではないのではないかというふうに
考えております。
そこで八十一条の第一項で新しい証拠の申し出を制限している趣旨でございますけれども、これは従来御
承知のとおり
排除措置命令だけについての
手続が、従来は審決で行われていたわけでございます。今回は
課徴金が加わる、あるいは
排除措置の中にも八条の四のように非常に強い
排除措置が加わるというようなことを
考えますと、
排除措置についても審判
手続において過失があって
提出できなかった証拠というものが仮にあったといたしましても、その証拠を
提出すれば審決の内容が変更になる、事実認識が変わるというような重要な証拠だといたしますと、これを調べないで、もう調べないことを決めてしまって、その証拠抜きで事実を認定する、それは結局事実に反する事実になるわけですけれども、それを裁判所を拘束するのだということになるわけでございますが、こういうことは若干今回の
独占禁止法を
強化する
意味での
改正が行われました場合には、疑問があるのではないだろうかというふうに
考えておるわけでございます。
ちなみに刑事事件の場合には、これは
公正取引委員会が、幾ら審判
手続で調べた証拠では
カルテルがあるというふうに認定したといたしましても、刑事事件におきましては全く別の証拠調べということが行われるわけでございます。ですから
課徴金あるいは
強化されました
規制内容というものは、現在の単なる
排除措置というものと刑事事件というものとの間に、どういうふうに位置づけるかということの問題ではなかろうかと思います。実質的証拠の原則をいささかでも乱したというものではございません。