○青木一男君 私は、
法律案についての質問に入る前に、最近の新聞紙上に伝えられた
企業秘密漏洩事件について、
公正取引委員会の
委員長に緊急質問をいたします。
従来、独禁法の施行に当たって
業界の人々の憂慮したのは、
公正取引委員会の
調査権に基づいて提出した
企業の秘密が、外部に漏洩しないかという点であった。従来はカルテルの嫌疑の場合の
調査等が主なものであったけれ
ども、今回の
改正案によると、営業の一部譲渡に関連し、あるいは価格の同調的引き上げに関する報告の徴収に関連し、
公正取引委員会の強制
調査権は著しく強化され、原価その他の
企業秘密が果たして保持されるかどうかについて一段と憂慮の念を深くしていたようであります。
このときに当たり、一昨日来の新聞紙は、
公正取引委員会の秘密漏洩事件を大きく報道するに至った。私は、
公正取引委員会の権限の強大さにかんがみ、もしこれが事実とすれば大変なことであると感じました。
昨年九月、
公正取引委員会がエポキシ樹脂業者八社をやみカルテルの疑いで
調査したとき、各社は生産能力、生産数量、出荷量、販売条件、原料購入費、原料購入価格、販売先等
企業の秘密に属するものを含め多数の資料を提出した。ところが本年三月、日本包装出版株式会社から「エポキシ樹脂需給の徹底分析と流通実態
調査」と題する本が出版、発売された。その
内容を見ると、重要項目の計数は各社が
公正取引委員会へ提出した秘密計数とすべて一致することが各社の
調査で明らかになったというのであります。原価その他の
企業秘密は
企業の生命線であるから、内部から漏れるということはまずあり得ない。万一あっても、何かきわめて特別の事故に基づく一社だけの問題であって、八社が全部そろって同じ時期に秘密を盗まれるということは考えられないことであると思うが、
委員長の御見解を伺いたいと思います。八社の資料をそろえて持っているのは
公正取引委員会だけであります。
委員会に漏洩があれば、八社の資料一括してということもあり得るわけであります。八社から
公正取引委員会だけに提出した資料の計数と本の計数とが一致しており、新聞の報ずるように数カ所の誤った報告計数までそのまま本に採用されているとなると、世間が
公正取引委員会から漏洩したのではないかとの疑いを持つのは当然であると思いますが、
委員長の御見解を伺いたいと思います。
ただ私の疑問としたのは、この本は二カ月前に発売されており、各社はそのときに自社の大事な秘密の漏洩したことを知って憤慨したことと思うのに、どうして今日まで表面化しなかったかという点でありました。
委員長も各社から抗議が来ていない旨を語られておるようであります。この点について、昨日の新聞によれば、各社は後のたたりが恐しいから
公正取引委員会に抗議しなかったということである。
企業大事の一心から自重したことと思うから、私は
企業当局の勇気のない態度を責める気持ちはありません。かように国家機関の行動に不正があると思っても沈黙させられるということは、法治国家としてあるべき姿ではない。私は、これは
公正取引委員会の権限の行使において、著しく国民を恐怖させておることを示すものではないかと思いますが、それが好ましい現象かどうか、
委員長の感想を伺いたいと思います。
いまや、
公正取引委員会に対する不信の声は非常に高まっております。
公正取引委員会の権限を強化する
法案を
審議しているわれわれとしては、速やかに責任の所在を明らかにしていただきたいと思います。
公正取引委員会の
委員長も
調査されておると思うから、その結果について御報告を願い、特に私がいまお尋ねした数点についてお
答えをいただきたいと思います。