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政府委員(天谷直弘君) 言うまでもないことでございますけれ
ども、現在
日本及び世界は自由貿易体制をとっております。したがいまして、
日本以外のところで、シンガポールであろうと麗水であろうと、あるいは中東であろうと、あるいはアメリカ、ヨーロッパ、あらゆるところで増設計画があれば、それは将来の需給に影響を及ぼすことは明白でございます。なかんずく現在一番大きな増設計画を立てておりますのはアメリカ及びヨーロッパでございます。正確なことはわかりませんが、アメリカでは八〇年までに約五百万トンのエチレン
能力の増設をすると言われており、西ヨーロッパにつきましてもおおむね同様の増設計画があるというふうに一応考えております。したがいまして、これらの計画とそれから
需要とが合わない場合には世界市場は非常に供給超過になるということになるかと思いますが、われわれといたしましては、先ほ
ども申し上げましたように、神様でない限り正確な
見通しということは立てるわけにはまいりませんけれ
ども、現段階におきましていろいろ知恵をしぼって考えてみます限りにおきましては、操業率は八〇年には現段階よりはむしろ数%上昇するであろうというふうな暫定的な一応の
見通しを持っておるわけでございます。そういう中におきまして、韓国、シンガポール、中近東等の石油化学計画がいかなる影響を持つであろうかという御質問であろうかと存じます。
まず、韓国でございますが、これは韓国が非常に高度成長を遂げておりまして、麗水等で
生産される石油化学製品の大部分は韓国の内需によって吸収されるであろうというふうに一応考えております。
それから次が
イランでございますが、
イランはおおむね純内需型である。汎用樹脂につきましてはほとんど
イランの内需で消化されるであろうというふうに考えます。他方、BTX及びEDCに関しましては、
生産の一割ないし二割程度は場合によっては
輸出市場に依存せざるを得ないかもしれないと。この
輸出市場はそれではどこかと言いますと、そこまで精密なことはわかりませんが、おおむね国際市場で消化することは可能であろうというふうに考えております。
次がシンガポールでございますが、申すまでもないことながら、シンガポールは人口が非常に小さくて
国内市場は狭小でございますから、したがいまして、このプラントにおける製品はどうしても
輸出依存ということにならざるを得ないわけでございます。そこで、この
輸出市場がどこに見つかるかということでございますが、われわれといたしましては東南アジア市場における一九八〇年代の需給
状況を一応想定をいたしておりますが、その想定によりますと、八一年ないし二年程度であれば、シンガポールの
プロジェクトから出てくるところの石油化学製品は東南アジア市場においておおむね吸収可能であろうというふうに考えております。
次が
サウジアラビアでございますが、
サウジアラビアの計画はまだ具体化いたしておりません。
日本の
サウジアラビアプロジェクトは現在のところまだ具体化いたしておりません。海の物とも山の物とも言いがたいような
状況でございます。ただし、
日本を除くところのアメリカ、主としてアメリカの大化学
企業あるいは大石油
企業、すなわちエクソン、モービル、それからダウケミカル、それからシェル、こういう国際大
企業が
サウジアラビアにおきましておおむね二百万トンの石油化学の投資をするという計画は現在着々進行中でございまして、これはいつごろできるか必ずしもはっきりはいたしませんが、この動向によりましては国際市場にかなりの影響を及ぼす可能性もあると考えております。