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1977-03-03 第80回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年三月三日(木曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  三月二日     辞任         補欠選任      岩本 政一君     高田 浩運君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         戸田 菊雄君     理 事                 丸茂 重貞君                 浜本 万三君                 小平 芳平君     委 員                 上原 正吉君                 片山 甚市君                 田中寿美子君                目黒今朝次郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 柄谷 道一君    政府委員        厚生省医務局長  石丸 隆治君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    参考人        交通評論家    冨永 誠美君        仙台市第一助役  小岩忠一郎君        全日本自治団体        労働組合組織局        長        片桐  洵君        日本救急医学会        幹事       恩地  裕君        全国自治体病院        協議会会長    諸橋 芳夫君        全国保険医団体        連合会幹事    佐羽 達也君        全国消防長会救        急委員会委員長  井上 文男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (救急医療に関する件)     —————————————
  2. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二日、岩本政一君が委員を辞任され、その補欠として高田浩運君が選任されました。     —————————————
  3. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 社会保障制度等に関する調査のうち、救急医療に関する件を議題といたします。  本日は、本件調査のためお手元に配付いたしております名簿の方々参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本件調査参考にしたいと存じております。  これより、参考人方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、お一人十五分程度でお述べを願い、参考人方々の御意見の陳述が全部終わりました後、委員の質疑を行うことといたしますので、御了承願います。それでは、まず冨永参考人にお願いをいたします。
  4. 冨永誠美

    参考人冨永誠美君) 冨永でございます。  私は、立場を少ししぼりまして、実は交通行政を長くやっておりまして、約十九年間交通行政をやりました後、交通問題を引き続いてやっておるわけでございますので、主として交通問題から救急医療体制ということにしぼってお話し申し上げてみたいと思うわけでございます。  交通事故といいますのは、幸いに死亡者は最近減少いたしておりますけれども、負傷者におきましては六十万ないし四十万毎年出ておるような状況でございます。交通事故に対しましては、はっきり申し上げまして事故が起こるまでの予防対策というのはかなり進んできたと思っております。それが死亡事故の減少につながっておると思うわけでございますが、しかし、それに比べますと、事故のときの対策、あるいは事故後の対策ということにつきましては、予防対策に比べましてかなりまだそれほど、はっきり申し上げましてなかなか予防対策に見るほど進んではおらないというふうに感じてならないわけでございます。  私ども、いろいろ有志が集まりまして日本交通政策研究会というものをつくりまして、長年にわたりましてわが国救急医療体制をいかに確立するかということをやってまいりまして、それの提言をいまお配りしております資料で出しております。これを一々申し上げても大変でございますが、ただ、絵にかいたモチではだめであると、要するに実現可能なという見地に立って提言をいたしておるわけでございます。  この提言が少し古いわけでございますので、その後の状態なり、あるいはこれに基づくもう少し具体的な問題について申し上げてみたいと思うわけでございます。  もう一つは、こういった交通事故後の対策につきまして、世界各国がどういう状態になっておるかということも研究してまいっております。そこで、世界の大勢なりあるいはわが国情勢なりというものを両方あわせながら申し上げてみることにいたします。  まず、非常に進んでおりますと思いますのは、各国それぞれの事情はございますが、ひとつドイツの例を申し上げてみたいと思います。いま遠くからごらんになれますかどうか、わかりませんが、(地図を示す)いまお示ししましたのは、これは西ドイツ交通救急病院という地図でございます。これは一般に市販されております。この地図が大体交通に関する救急病院地図——西ドイツ全体がこれが六枚になっておりますが、この一枚を持って参りましたけれども、救急病院地図の上に載っておるわけでございます。その地図を見ますると、まず、丸の大きさが大分違っておりまして、一等大きい丸は救急ベッドが二百ベッド以上の病院が大きくなっております。それから逐次百五十から百九十九とか、あるいは百から百五十というふうに、丸が違っておるわけでございますが、さらに、ドイツらしいのは、これを色分けしておるわけでございます。丸の中を四つに分けまして赤く塗っておるわけでございますが、左の肩の上を赤く塗っておるのが、日曜日というふうな休日に最低二名の外科のお医者さんがおる病院を赤く塗っております。それから右の上を赤く塗っておりますのは深夜、夜間ですね、最低二名以上の外科のお医者さんのおる病院を赤く塗っております。それから左下を赤く塗っておりますのは脳の手術ができるという病院でございます。それから右下は、輸血ができる病院というものを赤く塗っておりまして、ごらんになりますとほとんど全赤でございます。いま申し上げました四つの条件を大体兼ねております。備わっておるわけでございます。少し地方に行きますとそうじゃないところもございますが。  それからさらに、その地図の裏には救急病院の名前がずらっと並んでおりまして、所在地、電話番号外科のお医者さんの数、ベッドの数、救急ベッドの数、なお、休日、深夜に外科のお医者さんがその病院に住んでおるかどうか、それから手術が可能であるかというのが一覧表になっております。それから交通事故が起こった場合のいろんな注意というものができておるわけでございます。  それからなお、道路を走られるとおわかりと思いますが、大体救急病院はどちらにあると方向を示しておる案内標識が立っておるわけでございますが、わが国状態はどうでしょうかといいますと、たとえば救急病院がこっちだという標識を立てたらどうだという、東名高速道路をつくる場合でも考えがございましたけれども、むしろこの道路の沿線には救急病院がないんだという標識を立てた方がわかるというふうな、冗談といいますか、そういった話が出るぐらいでございますし、いわんや、こういった地図に果たして救急病院を入れました場合に赤く塗れますかどうか、これは私ははなはだ疑問だと思っておるわけです。塗ろうと思ってやってみたこともございますけれども、とても赤く塗る自信がございません。そういった状態でございまして、私が申し上げたいのは救急医療体制、つまり事故が起こってからそれからどうなる、それから負傷者が運ばれる病院と、この一貫したシステムということについて申し上げたいわけでございます。  それから、もう一つ手元にお配りしましたのは、最近の世界救急体制状況でございます。非常に注目されることは、いまやお医者さんが病院で待っておる時代ではない、お医者さんが病院に待っておっては間に合わないということでございます。つまり、事故現場にお医者さんが行っておるという体制になりつつあるということでございまして、その最もいま一生懸命やっておりますのは、やはり私は西ドイツだというふうに見ております。どういうことかといいますと、市の中心になる病院にそれぞれ救急専用ヘリコプターが待機いたしております。準備しておりまして、何か電話が入りまして、これは出動しなければならないといったときは二分以内に飛び立っております。それが現在ヘリコプターの基地が二十五カ所、この図がそうでございますが、ございまして活躍いたしておるわけでございますが、その考え方は、この救急専用ヘリコプター患者を運ぶというよりは、むしろ先ほど申し上げましたように医者現地に行くということでございます。医者現地に運んでおるわけです。要するに、事故が起こりまして勝負は二十五分で決まるということですから、お医者さんが病院で待っておるという体制では間に合わないということで行っておるわけでございます。しかし、これができましたのも実はまだ歴史がそう古くございません。いまから七年前の一九七〇年のミュンヘンで初めてできまして、非常にこれが効果があるということでいま西ドイツ全体に及んでいるわけでございます。その、ミュンヘンでできました場合におきましても、お医者さんが飛び出したら市長さんから抗議めいた手紙が来まして、医者病院におるべきものじゃなかろうかという市長から文句が来たそうでございますが、その壁を破って今日まで来ておるわけでございます。  同じようなものはフランスのパリにありますし、これはヨーロッパばかりじゃなしに東南アジアまで救急専用のしかもジェット機が飛んでおります。アメリカヘリコプターでやっておる州がかなりあります。こういった、つまり医者現場に臨んでおるという状態でございますというのが、世界のいまや特徴でございます。  そこで、提言に移らしていただきますが、こういった、わが国の場合は医療技術はなるほど世界的にすぐれているものがあるかもわかりませんが、救急医療体制救急医療システムとなりますと、これはどうもそうも言えないんじゃないかということを感じます。そこで第一は、どうしても行政責任をはっきりしてもらいたいということでございます。私の考え方は、第一の責任都道府県知事救急医療体制責任を持っていただくということを明確にすべきじゃなかろうかということが第一でございます。  実は私交通行政をやりまして、交通安全という問題が起きましたときに、実は私は警察におりましたんですが、もう警察だけの手の問題じゃないということで、地方自治法第二条に府県の任務として交通安全というのをぜひ入れてもらいたいということで、地方自治法第二条に交通安全の項目を入れてもらった経験がございます。  それから二番目には、法律をつくっていただきたい。すでにアメリカドイツ救急医療に関する法律ができております。それからフランスもできました。しかもなおかつ、アメリカ救急週間というので全国的な運動をやっておりまして、それには大統領が声明を発しております、救急週間の初めに当たりまして。そのような状態でございます。  そこで、この提言につきましては、これは私は地方中心になるようなところの一角に二十四時間動けるものをつくっていただきたい。その運営はその病院でやってもらっても結構でしょうし、あるいは場合によっては医師会連合でやられても運営は結構である。そこにまず運んで、そこで選別をしてというふうな仕組みをつくっていただきたいし、いろんな意味の——これをやりますと財政的にはどうしても赤字になるという宿命を持っておりますので、その一角に対して財政援助をしていただけないかというふうなことを述べておるわけでございますが、しかし、わが国におきましても、これの思想といいますか、こういったことでやっておる例がございます。それは秋田県の交通災害センターでございます。知事さん非常に熱心でございまして、御存じのとおりに脳検センターというものをつくられました。これは循環器系統ですね、あすこは非常に多いというわけで、脳検センターをつくられた後に県立交通災害センターをつくられております。施設、機械は県が負担し、それから運営日赤病院運営するということで、昭和四十九年に完成しまして、費用は約五億円でございますが、これが動いております。しかも、実際見て非常に感じましたのは、問題になっておりまする休日、深夜の患者は、今度は日赤の方がこの交通災害センター施設一角を借りてこれをやっておられる。つまり、交通災害センター一角を借りて、そのほかの内科とか小児科とか、こういった問題を日赤がやっておられる。こういうことをやっておられるので、わが国でも熱心になれば私はできるんじゃないかということを、秋田県の県立交通災害センターがそれをいま実施をされておるというふうに私は見ております。  最後に、一般的に私はさらに救急法の普及というものをやっていただきたい。簡単に申し上げます。  これもドイツの例でございますが、救急法講習証明書がないと運転免許を渡しておりません、ドイツは。つまり、救急法講習のこれが証明書でございますが、この証明書がないと運転免許がもらえないんでございます。自動車学校でも救急法講習をやっておる。それから、これはオーストラリアの冊子でございますが、これはドライバー向け救急法でございます。これがスウェーデンのドライバー向け救急法。つまり、ドライバーが運転する以上は救急法を知っておると、また知らなきゃならないということをやっておるわけです。わが国でもバス運転手は当然やるべきだろうと思いますし、また第二種免許という免許試験がございます。これはバスとかタクシーとか人を運ぶ営業免許になっておりますが、これにはやはり救急法を入れるべきじゃなかろうか。なお、ドイツでは最近救急箱内容が非常に進んでおるという、実例だけを申し上げます。ドイツの場合も、これも法律であらゆる車すべて救急箱を備えつけなければならないというふうになっております。昔はバスだけでしたが、それが全部の車に及んでおります。それで、救急箱内容も、一つの例をとりますと、救急箱にこういうものが入っておるわけです。いろんな救急箱がございますけれども、これはアルミの箔ですが、人の体を包めます。非常に軽いものです。これは毛布がわりです、何にするかと言いますと。事故なんかの場合に体温がぐんぐん低下しますから、体温を低下しないように包んで毛布がわりにしておりまして、ドイツでも雪の場合に遭難してこれで包んでおったためにヘリコプターが遠くから行って、黄色く光っておりますから人を救ったというふうな実例が出ております。  こういったところまで実はきておるわけでございまして、救急法と言いますと一等大事なことは、まず救急車が来るまで、お医者が来るまでに最小限、たとえば窒息する場合が多いんです、衝突しますとそのショックで。あるいは舌が引っ込むとか。そういった場合に窒息しますと、もう人間三分あるいは五分以上もちませんので、まず頭を後へ下げてのどを開いて空気を通わすというか、これだけはどうしてもやらなきゃならない。あるいは口の中の物を出すとか。それからお医者さんを回す、救急車を回すという、これはどうしても最小限知識としてやらなきゃならないということを感ずるわけでございます。  以上、事故中心としまして、事故が起こったときの救急車が来るまでの問題なり、あるいはその患者をどう運ぶか、あるいはどこへ持っていくか、これの全体を関連してのシステムというものを一貫してわが国は考える必要があるんじゃなかろうかということを痛感いたしておりますので、以上非常に駆け足でございましたけれども御説明にかえさせていただきます。
  5. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。  次に、小岩参考人にお願いいたします。
  6. 小岩忠一郎

    参考人小岩忠一郎君) 私は仙台市の第一助役をいたしております小岩でございます。  本日は、市立病院を開設いたしている地方自治体立場から見た救急医療問題につきまして、現場実情を率直に申し上げ、諸先生方の御理解をいただき、国民の強い要望である救急医療体制の確立について国の強力な施策をお願い申し上げる次第であります。  仙台市は、人口六十三万人でありまして、東北地方における中核都市でもあります。宮城県におきましては行政、経済、文化を初めとし、医療関係におきましても東北大学医学部、同付属病院国立仙台病院を初めとして各種医療に関する教育、研究診療等の諸施設が集中する医療中心都市でもあります。  仙台市におきましては、十数年前、救急外科専門にやっておりました病院赤字で経営不能になったのでございます。このため、救急医療体制整備を求める声が市民各層から持ち上がりまして、従来からありました市立病院がどうしても救急医療をやらなきゃならぬ、こういうことで救急医療に踏み切りまして、今日では仙台圏と申しますか、宮城県全体のセンター的な救急医療病院として活動している次第でございます。  この救急医療につきましては、市民の関心もきわめて高く、市議会のたびに、またテレビ、新聞等におきましても常に論議の対象となっている現状であります。私たち市政を預かる者といたしましては、市民の生命と健康を守る立場から、市民が必要とする場合においては、いつでも必要な医療が受けられる医療体制整備されるべきであると考えておるものでございます。しかしながら、仙台市のように比較的医療機関が数多くある都市におきましても、救急医療体制整備という点に関しましてはまだまだいろんな問題が山積いたしておる現状であります。以下、本市市立病院における救急医療業務実情を通して見た救急医療問題点、並びにこれに対する国の施策をお願い申し上げるのでございます。  市立病院の問題を申し上げる前に、簡単に本市における救急医療の実態について申し上げます。本市におきましては、さきに申し上げましたように、各種医療機関が集中しております関係上、平日日中における医療体制につきましては余り問題となるようなことはないのですが、救急医療で問題となりますのは主として日曜、祭日等のいわゆる休日と夜間が問題となるのであります。仙台市におきましては、休日の日中は医師会により設定されました在宅当番医、それから市内二カ所に仙台市が設置しました休日診療所がございますが、これは地域の医師団によって運営されておるほか、救急告示病院七カ所、同協力病院等四十九ヵ所が指定されておるのでございます。夜間については、医療従事者身体的疲労の問題、入院ベッド確保の問題、二次診療体制の問題、専門外急患処置困難性の問題、救急医療の不採算性の問題、夜間における医療従事者確保困難の問題、医療事故に対する責任制度の問題等々の事情から、救急医療はとかく敬遠されているのが実情であります。こういった情勢の中におきましても、当市立病院では以下述べるごとく救急医療については従来積極的な姿勢でこれに対処してまいっておるのでございます。  当市立病院は、内科外科脳外科を初めとする十三の診療科と三百十床のベッド、並びに医師看護婦等職員三百六十三名を有する中規模程度総合病院でございます。  その経営内容は、他の多くの自治体病院同様、毎年相当額一般会計からの繰り入れを行いましてもなお相当欠損金を生じておるのでございます。これは患者数が少ないというんじゃなくて、非常に多いにもかかわらずそういう状況でございます。昭和五十一年度におきましては、すでに一般会計から一億円の繰り入れを行い、現時点におきましては約十一億円の累積欠損金を抱え、本市財政上きわめて大きな負担となっているのであります。このように経営内容の悪くなっている理由の一つには、現行診療報酬点数制度、特に入院料が低きに過ぎるという問題があるのでございますが、特にその中でも救急医療が非常に赤字の大きな原因になっておると申し上げてよいのでございます。  以下、若干市立病院におきます救急医療業務病院経営に与えている影響について申し上げます。  本市市立病院におきましては、救急業務に対応するため、毎晩内科系外科系医師各一名、看護婦七名、検査員一名、薬剤師一名、事務員一名、運転手一名が当直に当たるほか、レントゲン技師一名が自宅待機する体制をとっておるのであります。このため、医師については月平均二・三回の当直看護婦については三交代による八回程度の夜勤となっております。特に医師については、当直の翌日も引き続き勤務につかざるを得ないというような状況になっております。  このような救急体制のもとにおける昭和五十年の救急患者状況は、年間総数六千四百五十七人、一日平均一七・七人、一日最多急患数が四十数名、年間を通じてそのまま入院した救急患者数は八百八十七名、一日平均救急入院患者数は二・四人であります。これを診療科別に見ますと、内科が三五%、小児科一五%、外科が一九%、脳外科一四%、整形外科一四%、その他三%となっており、内科小児科合わせて五〇%、外科系が合わせて五〇%弱となっております。このことを病院経営的立場から考えてみますというと、まずこのような救急体制を組むためには、一般診療要員以外に少なくとも医師八名、看護婦三十五名、その他職員若干名が常置されなければならないのであります。これらの一次、二次、三次の救急医療に要する人件費は、概算年額五億六千三百万円余となるのであります。これを救急患者一人当たりの収支で見ますというと、一人一日当たり平均が一万二千五百八十一円の収入に対しまして、経費は一万八千五百三十七円となっておるのでございまして、差し引き一人当たり一日平均五千九百五十六円の赤字となっておると、こういうことでございます。  つまり、救急患者は扱えば扱うだけ病院赤字がふえるという結果になっておるのでございます。本市市立病院救急業務に関しての赤字は、昭和五十年度においては年額二億二千七百万円でありました。これに対しては、交付税において四百七十万円、国及び県からの救急医療補助金として合計九百万円、合わせて千三百七十万円が参りますが、残りの不足分二億円余は市の財政負担となっているのであります。したがって病院経営財政的見地からのみ申し上げれば、なるべく救急患者は扱いたくないというのがどこでも本音と申し上げても差し支えないのでございます。本市市立病院の使命を考えますと、たとえ経営的には大きな負担となっても、救急業務をやめるわけにはまいらないのでございまして、事実、毎年相当の予算をつぎ込んでおるのでございます。  このような現状におきまして、病院において救急業務を取り扱うために大きな赤字職員の過労を覚悟しなければならないという状況でございまして、その結果、各病院医師であっても救急業務をなるべく敬遠するという形になり、また救急体制として当面考えられている救急センターの設置、病院群による輪番制、休日夜間当直医制在宅当番医制、いろんな方策がいま考えられておるのでございますけれども、これらの制度現場になかなか受け入れられないか、あるいはまた、実施されても実施主体だけが非常に大きな負担になるというようなことで、これを実現するためには相当のやはり問題点がなお残ると、こういうことでございます。したがいまして、地方自治体中心となってやりましてもなかなか容易でないということが申し上げられるのでございまして、やはり現状に即しました国の強力な財政的援助が必要であると考えるのでございます。幸い昭和五十二年度の国の予算におきましては、救急対策費用として今日までにないような予算の配分がなされるようでございますが、私たちのように救急業務現場で扱っておる者から見ますというと、十分ではないようにも考えられるのでございまして、今後さらに大きな予算配分を切望するものでございます。  私たち、地方自治体行政を預かる者としましては、財政上の赤字を理由に救急医療を放置しておくわけにはまいらないのでございますが、当仙台市におきましては、当面する救急医療問題について当面の責任者である自治体と各医療機関とでこの問題に取り組んでやろうということに話がなりまして、仙台市及び仙台市に隣接します一市二町の自治体及び仙台医師会仙台歯科医師会、薬剤師会、官公立病院協議会、東北大学医学部等の責任者をもって、仙台圏地域医療対策協議会を結成いたしました。圏内の地域住民の健康と生命を守るため予防、治療からリハビリテーションまでのいわゆる包括医療につきましての総合計画を樹立しようというものでございます。この協議会は、本年一月に設置されたばかりでございまして、まだその成果を見るには至っておりませんけれども、関係機関が協力し合ってやるならば、相当の効果は期待できるであろう、また同時に、そのために各自治体も相当の費用を負担しなければならないと、かように思うのでございますが、これらに対しましても国の方から手厚いひとつ援助と指導ということで、私は地域医療の問題、特に救急医療の問題が一歩でも二歩でも前進することを期待いたしておるのでございます。  これらの関係機関が縦にも横にも有機的に組織化されまして、数少ない医者看護婦、そういう医療資源の有効な活用ということを図ってまいるということが必要であろうというふうに考えておるのでございます。本市といたしましても大いに力を入れておるところでございますが、先ほど申しましたように、地域における医療問題を根本的に解決させる方法として、国においてもこのような医療活動の実施に対しまして積極的な御指導と財政的な援助をお願いしたいと思うのでございます。  救急医療を取り扱えば病院診療所の経営にプラスになるというような、そういう状況が現出されてまいりますれば、救急体制整備相当に進むと考えられるのでございますが、当面それが困難とすれば、少なくとも救急医療を行っておる医療機関に対する大幅な国の援助と、地域における職域病院等も含めた国公立病院の地域救急医療体制への積極的参加を強く指導されるようにお願いするものでございます。  最後に、国に対する要望をまとめますと、第一は、現行診療報酬を適正な額に改善するとともに休日、夜間については特段の配慮をこの点でお願いしたい。  第二は、救急中核病院——センター的な役割りをしております病院等におきまして、救急診療体制を常時確保するための必要経費は、いわゆる出来高払い的な現在の診療報酬による収入だけでは不十分であるのでございまして、これらのいわゆる待機的な、準備的な体制に対しましても相当の財政的な援助がなければ維持できないという現状でございます。それを特に国に対してもお願いしたいのでございます。  第三は、国公立、公的病院が休日夜間救急医療に積極的に取り組むように特段の指導をお願い申し上げたい。  第四は、先ほども申し上げましたが、救急医療体制を確立するための基礎である地域医療システムづくりに対しまして、さらに強力な御指導と財政援助並びに医療制度の改善をお願いしたい。この四点でございます。  以上、住民と常に直接接触し、日夜救急医療に頭を悩ませておりまする現場責任者といたしまして苦衷を申し上げたのでございますが、諸先生方の御理解と御援助のもとに、国の強力な施策が一日も早く実施されますことを心から期待いたすものでございます。  御静聴まことにありがとうございました。
  7. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。  次に、片桐参考人にお願いいたします。
  8. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 私は、全日本自治団体労働組合——略称自治労と言いますが、そこの役員をやっております片桐です。  自治体に働いている労働者を中心にして組織をしている労働組合でありますから、当然きょう問題になっております救急問題とも日常的に深いかかわりを持っております。そして、そういう立場からいま全国各地で救急医療体制の確立についての運動を進めているわけでありますが、その立場からいま各地において取り組みを進めてきた中から、何が一番大きな問題になっているのかという点をまとめて申し上げたいと思います。  まず第一に問題として指摘をしなければいけないことは、救急医療に対する国や自治体の行政責任というのがどうなっているのかという点であります。私たちは救急医療に対する国や自治体の行政責任というものを明確にしてほしいということを第一番目に求めているわけであります。  現在のこの法律を見てまいりますと、少なくとも法律的に国やあるいは自治体が責任を持っている部分というのは、消防法でいうところの搬送義務、これだけだというふうに考えております。特にいま大きな問題になっている患者の受け入れ体制、いわゆる医療の供給側の問題でありますが、この点になりますと、現在各自治体の知事が持っている権能としては、告示制度というのがあるわけでありますが、この告示制度医療機関から申請があった場合に告示をする、こういうことになっています。したがって、自治体が主体的に告示病院をつくっていく、そういう権能は一切持っていない、こういうふうな関係になっているだろうと思います。このことが、結果として国がいろいろ予算等で救急体制の確立について努力をされておるようでありますが、現地にまいりますとほとんど効果を上げていない、こういう状況があると思います。  そういう意味で、まず第一番目には、何としても国やあるいは自治体の行政責任というものについて明確にすることが必要ではないだろうか。行政責任を明確にすることによって、国あるいは自治体が救急医療体制の確立、あるいは制度の確立等について一定の責任を明確にすべきではないだろうか、こういうふうに考えております。これが第一の点であります。  それから第二の点でありますが、すでにこれまで小岩参考人からも話があったわけでありますが、現在の診療報酬制度の中で、救急医療制度というものが採算が合わない、このことはすでに明らかにされました。私たちも自治体の病院だけを申し上げましても、約千近い病院を持っておるわけでありますが、そのすべての病院が独立採算制がたてまえになっています。したがって、独立採算制をたてまえにしておるわけでありますから、この不採算である救急医療についてはできればやりたくないというそういう気持ちになることは、自治体の経営者としては当然だろうというふうに考えています。したがって、私たちは救急医療体制の確立を図っていくためには、どうしてもこの救急医療にかかわる経費についてはこれは不採算とするという、そういう原則を明確にすることが必要ではないだろうか、こういうふうに考えております。  それから第三点目でありますが、第三点目としては救急医療体制の確立を図っていく上では、どうしても医師あるいはまた医療機関の協力義務ということについて、一定程度明確に法律上もする必要があるのではないだろうか、こういうふうに実は考えております。私がいまさらここで申し上げるまでもないと思いますが、いま日本における公的医療機関というのは、たしか千五百くらいあるというふうに理解をしています。この千五百の公的医療機関の細かい内訳については省略をいたしますが、少なくともこの公的医療機関の中には特殊病院もあれば、あるいはまた現在の告示制度を前提にして考えた場合に、条件を持たないいわゆる小規模の病院等も相当数含まれておると思います。そういうことを考えてまいりますと、公的医療機関が、よしんばすべてが救急告示病院になったとしても、私は一億一千万の国民の医療需要にこたえる体制は確立ができないだろうというふうに考えています。そうしますとどうしても公的医療機関以外の医療機関と言いますかの協力義務化の問題が、一つはやはり問題にされなければいけないだろうというふうに考えますし、たとえばまた医師の問題等を考えた場合でも、公的医療機関が全体の医療の約二割弱というふうに言われておるわけでありますし、民間の医療機関が八割強というふうに言われている状況があるわけでありますから、この八割強のいわゆる民間の医師の協力についても、一定程度の義務化の明確化ということがなければ、救急医療体制の確立については成り立たないというふうに判断をしています。特に厚生省が明らかにしておりますように、いわゆる第一次診療、第二次診療、第三次診療という、いわゆる診療ネットワークの整備を前提にしながら考えた場合でも、第一次診療体制、俗に言う休日夜間診療体制でありますが、この第一次診療に対する医師の、民間開業医師の協力というものは不可欠の条件ではないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。二割弱の公的医療機関に働いているすべての医師が、第一次あるいは第二次あるいは第三次のすべての休日夜間から救急医療を含めた医療体制を確立をするということは、およそ不可能なわけでありますから、そういう意味から言っても当然八割強を占めている民間開業医の協力というのがどうしても必要ではないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。これが第三点目の私たちが運動を通して痛感をしている点であります。  それから第四点目としては、これはもう言うまでもないことでありますが、各地における診療ネットワークの整備に当たって、単に医療を供給をする側の医師やあるいはまた行政当局ということだけではなくて、当然医療を受ける住民の参加ということを前提に考えなければいけない、こういうふうに考えております。この点については特別の説明をする必要はないと思いますが、ともかくこの住民参加のルールの確立といいますか、このことを前提にして救急体制の確立については当たっていかなければいけない、こういうふうに考えております。  それから、第五番目に考えなければいけない点としては、医師はもちろんでありますが、医療労働者の賃金あるいは労働条件、権利等の保障の問題であります。現在非常に不足をしておるわけでありますが、それでも幾つかの救急告示病院があります。その中で働いている労働者の労働条件、一体どうなっているんだろうかという一つの例を申し上げますと、たとえば看護婦を例にとって考えてみた場合に、朝八時半から一日、普通日勤と言いますが勤務をする。そして五時から救急のための当直態勢に入る。そして翌朝の八時半に退庁をする。いわゆる二十四時間勤務体制、こういう状況一つはあります。さらにひどい所になりますと、朝帰るのではなくて、さらにその翌日の一日のいわゆる日勤を勤め上げて三十二時間労働をやって帰る、こういう状況があるわけであります。これはそういう状況といいますか、いまの救急告示病院の実態というのは、そこに働いている医師はもちろんでありますが、看護婦あるいはまた検査、レントゲン等々の労働者の犠牲によって成り立っているというのが、残念ながら実態だというふうに判断をいたします。したがって、本当に救急体制の確立というものを図っていこうということになりますと、いつまでもこういう労働者の犠牲によって救急体制を維持をすることは不可能だというふうに考えます。したがって、救急体制の確立に当たっては、医療労働者の賃金あるいは労働条件、あるいは権利保障、そういう点についても十分に保障がされなければいけないのではないだろうか、こういうふうに考えております。私たちはいま申し上げたように、大ざっぱに申し上げたわけでありますが、五つくらいの問題点を指摘をしながら、いま全国各地で自治体に対して、あるいはまた中央段階では国に対して救急医療体制の確立について要請を行っているわけであります。  そして、そういういま申し上げたことを基本に置きながら、いろいろ運動を進めておるわけでありまして、その中でたとえば千葉県においてたらい回し事件が発生をした。そして患者が不幸にして死亡をしてしまった。私たちの組合員の実は子供さんであったということもあります。そういうこともありまして、その千葉においてたらい回し死亡事件をとらえて、御承知のようにいまたらい回し訴訟というものを千葉地裁に対して行っている。こういうふうなことなんかも運動の一環としてやっていることを申し上げて、私の意見にかえておきたいと思います。
  9. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の陳述を終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 田中寿美子

    田中寿美子君 お三方の問題提起、大変参考になりましてありがとうございました。大変時間が制限されておりますので、たくさんお尋ねしたいことあるんですけれども、二点だけにしぼりたいと思います。  最初に仙台小岩参考人に。お三方とも共通して指摘していらっしゃるのは行政責任、それから国の財政的措置を、それからお二人は法律をつくってほしいという御意見もございました。私は小岩参考人にお尋ねしたいと思うんですけれども、非常に問題はたくさんあります。私は赤字の問題だけをお尋ねしたいと思います。すでに累積赤字十一億というふうにおっしゃいました。それから昭和五十年度には二億の赤字を出して、五十一年度はすでに一般会計から一億入れたというふうにおっしゃっております。救急医療というものが大変不採算のものだということは、これは厚生省みずから認めていることなんですが、一体これをどういうふうにしたらいいかということなんですね。五十二年度予算では、厚生省はこれは救急医療政策について目玉であるというので、過去の七倍の予算を組んだというふうなことなんですが、先ほど小岩参考人は遠慮なすって、あれでも十分ではないというような言い方をなさいました。強力な財政援助というのはどういうふうにしたらいいか。すでに市立病院なんかでたくさん赤字を抱えていらっしゃる。かつて昭和四十九年に自治省が自治体病院の不良債務五百五十億をたな上げ負債を認めたことがございますね。救急病院である自治体の病院に同様のことを行うべきではないかというふうに私は思うんですが、その点をどうお考えになるか。現在救急病院になっている自治体病院は四百四十六、そのうち五十二年度予算の補助の対象二百七十一ですね。一カ所平均月額三十五万円しかないわけですが、そんなことでこの赤字が解消されるというふうにはもちろん思わないし、救急医療体制はそれでは進まないだろうというふうに思うんですが、その強力な財政援助をという内容をどういうふうにしたらいいとお思いになりますか。そのことが小岩参考人に対する御質問です。  それから、片桐参考人の方には、救急医療に対する医師の協力義務のことをおっしゃいました。それで救急医療の不採算性のこと、これは厚生省も予算委員会などで認めているし、そういう態度をとっているわけなんですが、そのためには何らかの方法を国の責任で考えなければならない。それでいろいろのことを言ってもなかなか実行できない。それで現在の野放しの自由開業医制では、とても救急医療機関制度のままではだめである。それじゃ協力させるのにどういう方法があるかということなんですね。たとえば私どもは指定制度というようなものをとって、そして施設、設備費、人件費などを公費で負担して、そういう救急医療の指定の制度をつくることができないかどうか。それから厚生大臣も予算委員会などでの答弁で、何分法律がないのでというふうにおっしゃっている。片桐参考人も消防法しかないというふうに言われましたけれども、医師の協力義務というのは医師法十九条で応招義務があると思うんですがね。ですから、そういうことも踏まえてその協力義務ということを確立するような法律の制定、救急医療法律の制定が必要ではないかということを私は思いますが、いかがでしょうか。それは冨永参考人もたしか法律の制定が必要だというふうにおっしゃったと思います。現在、地域住民の間からの要求は非常に高まっていて、そしてたとえば最近大阪府評傘下の数十団体が、その要求のために医師の協力義務の条例制定化の直接請求の運動を始めたように聞いております。そのようなこともしなければならないような状況になっているんじゃないかと思いますが、その辺のことについての御意見をお伺いしたいと思います。
  11. 小岩忠一郎

    参考人小岩忠一郎君) 田中先生から救急医療をやっているばかりじゃなく、自治体病院赤字たな上げを第一回やりまして、そのたな上げ分については国からも若干の利子補給あるいは市の一般会計からの繰り入れもやっておりますが、その後も私どものように救急医療をやっておるところは、赤字が非常に累積するという状況でございます。予算上は一億出しておるというんですが、実はこの運営のために特別貸付金というのを今年度五億円ぐらいやっているんですこれは。表には出ていませんけれども、そういう状況でございまして、今後そういう状況をいつまでも続けられるかというと、財政的にとてもできない、そういうことで、私どもがやはり国に累積赤字負担を軽くするための、やっぱり第二次のそういうたな上げ制度というものをぜひお願いしたいというふうに思います。  それから、実は私の方で新しい病院をつくっているわけですが、いまある病院昭和二年につくりまして、戦災を受けた非常におんぼろの病院でございますが、どうしても改築しなきゃならぬ。それが水道その他では相当国の起債の額及び償還年限、利率を低率にしてあります。ところが、病院債の方はどんな病院つくっても二十五億より政府資金は出さない、あとは縁故債だと、こういうふうなことで、いま厚生省にもいろいろお願いしているのですが、三百から四百ベッド病院こさえても百億はどうしてもかかります。それでそういうような面で、今後新築した場合、どうするだろうかというようなことも非常に頭痛いんですが、そういう面でも援助をいただきたい。  それからまた、一般的には先ほど申し上げましたように点数制度を改良してもらう。特に入院費というやつがべらぼうに安いんで、国民宿舎のようなものよりも安い、こういうことでございます。仮に、病院の入院室料というのは冷暖房つきの部屋でも一日八百円です。それから看護料二千六百六十円、それから基準寝具代が百円、それから給食が一千八十円、そのほかに入院医学管理料というのがありますね。これはお医者さんの診察だとか何かというようなこと、注射とかそういうのも入れて入院料が五千九百四十円。室料がたった八百円と、こういうような状況では、どういうお医者さんも病院はつくりたくない、病室は持ちたくないと、こういうことになるだろうと思うんです。こういう点はぜひこれは改善してもらわなきゃいかぬ。やっぱり病室がないということが、開業医が一般に第一次救急を受け入れても、二次救急に送り込む病院がないという結果になっておるのでございます。そういう面で救急医療というのは病院体制医療体制全般から改善する必要がある。  それから自治体に対しては、先ほど特別の国の援助というようなこと、場合によれば交付税の裏づけというようなこともぜひ考えていただきたい。ただ交付税だけでやりますと、仙台市のように不交付団体にときどきなる場合があるので、そういう場合は非常に困るので、私どもとしては救急病院のいろんな準備、待機、そういう経常経費、そういうものに対しては、   〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕 国から直接補助というような形で維持できるようにしていただきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  12. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 先ほど五つの問題を提起をしたわけでありますが、その中で特にいま御指摘のありました医師の協力義務の問題について、実は私たちが五つの問題を提起をしていることに対しても、いろいろなところでいろんな意見やら御批判を実はいただいているわけでありますが、大ざっぱに批判なり意見を集約をいたしますと、大体三つくらいに整理ができるんではないかというふうに考えています。  一つは協力の義務化ということが不当な強制につながる、したがって反対であるという、こういう意見一つは出されておるようであります。  それから第二点目としては、医療というのは医師患者の信頼関係を基本に置いて成り立っているものである。その医師と地域住民との信頼関係をそういう不当な強制を行うことによって複雑にする、あるいは破壊をする、こういうふうなことに集約をされておるようであります。  それから三点目としては、少し勘違いではないかと思うんでありますが、そういう発想は医療の国営につながるのではないか。こういうふうなことに大まかに集約をいたしますと整理ができるんではないか、こういうふうに考えられます。  そこで、私たちがこの協力の義務ということを申し上げているのは、これは改めて協力の義務化ということを言わなくても本来はいいのではないかという考え方が前提にあります。なぜかと申し上げますと、先ほど指摘されましたように、医師法の第十九条ではすでに応招義務というものが明確になっています。ですから、本来であるならばこんなことは言わなくてもいい、こういうふうに考えているのですが、実態は残念ながら医師の応招義務というものが完全に壊れているといいますか、守られていない、こういう状況が出ています。そのためにたらい回し事件というものが続発をしているわけでありますから、そういう意味で、やはりこの協力義務というものについて改めて強調する必要があるだろう、こういうふうに考えているのが一つでありますし、それからもう一つは、多くの医師が応招義務を果たせないということは、それなりにやはり理由があるのだろうというふうに考えます。そう考えますと、すべての医師医師法第十九条があるんだから全部協力をしなさいと、こう言ってみても、できないいろいろな事情があるのでありますから、そういう意味では非現実的であろうというふうなことから、先ほど若干申し上げましたように、第一次、第二次、第三次というそういう診療ネットワークを整備をし、そしてその第一次の部分について協力をお願いをするということを明確にするということになれば、すべての医師が三百六十五日応招義務があるから協力をせいということではなくて、それぞれ与えられた日時について協力をすることを明確にしたらいいのではないだろうか、こういう考え方から、不当な強制であるということに対して私たちはそういうふうに考えていることを申し上げておきたいと思うのです。  それから第二点目の、医師と地域住民との信頼関係を壊すという、こういう指摘なんでありますが、実は、総評がことしの春闘を取り組むに当たりまして医療実態調査というのを全国で六つの県にわたって行いました。その中で現在のこの医療制度の荒廃の原因は一体何なんだろうかということについての住民アンケートを行っているわけでありますが、その中でまとめた表がありますのでその表を見ますと、春闘共闘の統計によりますと、まず医療荒廃の原因として最も大きいのは日本医師会の姿勢だと、こういうふうに言っているのが実は四六・九%明らかにされています。それから二番目として四五・一%でありますが、国、厚生省の姿勢。それから三点目として多いのは五・二%、ぐっと少なくなるわけでありますが製薬資本のあり方。それから一・五%になりますが患者、住民の姿勢、その他と、こういうアンケート結果が出されています。こういうことからも明らかなように、残念なことでありますが現在の状態というのは、医師と地域住民との信頼関係というのはもうすでに崩れてしまっているという状況にあることを指摘をしなければいけないと思うのです。そういう意味で、医師と住民との信頼関係をどう回復をするかということが、逆に言えば救急体制をどう確立をするかということにもつながってくるというふうに私たちは考えています。  こういうふうなことから、協力の義務というものについて先ほど御指摘があった点については、私たちは当然のことを言っているまでだ、こういうふうにお答えしておきたいと思います。
  13. 小平芳平

    ○小平芳平君 最初に冨永参考人にお伺いしたいと思いますことは、立法化するという場合に、具体的に問題点は先ほど御指摘をされましたのですが、特に救急法を制定するという段階になった場合にどういうことをぜひ必要かという、そういう具体的な御提言がありましたら、もう項目的でも結構でございますので、挙げていただいたら大変参考になるではないかというふうに考えます。で、片桐参考人からも同じ趣旨でそういう御提言がありましたらおっしゃっていただいたら、将来さあ立法化しようと、あるいは立法化すべきであると、救急法を制定すべきであるということを提言する場合に、これだけのことはぜひ入れてほしい、あるいは先ほど五項目挙げられましたが、中でも特にこれを必要だという点がございましたら具体的に述べていただいたら幸いだと思います。  それから、やはり私たちが外国の例なども若干実際海外へ行ったときに伺ってきました、見てきましたが、冨永参考人が先ほど西ドイツの例をずっと相当細かに述べていただきましたが、特に私が感じますのは、まあ消防署から車が走っていく、そしてその救急車患者を乗せて病院へかけつけるという、この日本的な制度といいますか、日本のこうした現行の制度に対して何か御意見がございますか。この点についても冨永参考人と片桐参考人からもし御意見がありましたら、この体制はまあ日本的な制度で、将来立法化する場合でも消防署とそれから医療機関の協力、こういう体制でいくのがよろしいか、あるいは変えた方がよろしいか、変えるとすればどうしたらいいかというような点について御意見をお聞かせいただいたら幸いと思います。  以上、二点でございます。
  14. 冨永誠美

    参考人冨永誠美君) 法律内容といいますと、まあそれぞれ国情の違いもございましょうが、やはり具体的な任務あたりは明確にした方がよいんじゃないかと思います。たとえば私は、第一の行政責任知事にお願いしたいというのは、今度は知事になりますと、県内の救急医療体制システムがどうなっとるかということを一等よく知っておられるんじゃないかということで知事と思うんでございますが、法律がないと私は国立の病院である、あるいは国立の大学病院であると、私は国立だから知事の言うことは聞かんでよろしいというふうではこれは困るんで、やはりその県内にあります機関は県内の救急医療は皆やるんだという機関の明確な任務がほしいと思います。  それから、救急専門医という者は、恐らくこれは午後の参考人からもお話が出ると思いますが、それのアフターケアと言ったら失礼でございますが、その訓練あたりはやはり国立の大学がむしろ地方中心になってお医者さんの教育ということもやっていただくとか、そういったことがあると思います。  さらに、まあ国民の先ほど言った救急医療に関する知識ですね、これの普及とか、いろいろ問題があるわけでございまして、私どもはアメリカ救急法は全部資料で持っております。御必要でしたらお送りしますが、もちろん国によって内容が違いますから、一律にそれがどうだということは考えなきゃならぬと思いますが。それからドイツは、いまほとんど翻訳が終わっておりますが、そんな状況でございますので、まあ日本は日本の国情に合った意味での法律内容をやっぱりやっていただかぬことには、どうも救急というのはどうしても責任がはっきりしていないという点があると思います。  それから、主に搬送と医療の問題でございますが、これも国情が非常に違うと思います。どこの機関でやるかというのは、やはりその国の実情だと思いますね。それはイギリスやらイギリス系の国は、警察でもない消防でもない独立のアンビュランスがやっておりますけれども、これをいきなり日本にやれと言ったって、それは恐らく不経済だと思いますから、どこの機関がやろうともそれは国情にふさわしいものがやってよろしいんですが、ただ、訓練をしなきゃならない、救急隊員は医療の訓練もやっておるわけです。具体的に申しますと、私が参りましたオーストラリアは、救急隊員になるためにはまず三年医療の知識を勉強しております。それから三カ月車両訓練、それから六カ月は実地の訓練と、要するに三年九カ月かかって救急隊員というものはおるわけでございます。それから救急車にお医者さんをと言っても、それは日本は国情では大分違うと思います。私が見たところでは、これはソ連が乗っております。これは共産国家、圏ですから、これはちょっと体制が違うと思います。その他はイタリーが若干乗っておると思いますが、あとは必ずしも医者が乗っていないが、ただし、昔で言う軍の衛生下士官的な、医療知識はある程度ある、ただ国家試験に通らないというふうな人を大分救急隊員のそれこそ幹部に持っていって、そういう人たちが救急車に乗っている場合がかなりアメリカあたりも見られますですね。ですから、やはり何と申しますか、単なる搬送という意味じゃなしに、救急隊員をもっと充実し、教育訓練をやるべきじゃなかろうかというふうに思います。
  15. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 救急法というそういう法律ができるとした場合、ぜひこういうことはお願いをしたいというふうにいま考えておることを申し上げたいと思います。  まず一つは、先ほど申し上げた第一番目の問題点ですね、責任の明確化ということをひとつやはり法律上明確にしていただきたいというのが第一であります。具体的に申し上げますと、先ほども若干申し上げましたように、厚生省が第一次とか二次とかあるいは三次という診療ネットワークについての基本的な考え方は明らかにしているわけでありますが、それをだれがどういう形で実施をしていくのか、実現をしていくのかということになりますと、現在何も明確になっていないわけでありますから、そういうふうなことなんかも、そういう法律の中で、たとえば知事なら知事が各自治体ごとにそういうことをやらなければいけないという責任なんかを明確にしていくというふうなことなんかも、当然考えていただければありがたいというふうに考えております。  それから第二番目は、これはさっき申し上げた不採算の問題になります。このことはやはり明確にしておかなければ、すべての医療機関がいま採算制を第一義に考えておるわけでありますから、やはり実現をしないと思います。したがって、そういう意味で不採算の原則というものを明確にすることがやはり必要であろう。  それから、一番大きな問題は、やはり医師のあるいは医療機関の協力義務の問題、これは法律的にはどういうふうな形で表現されるのかは、私たちは素人でありますからわかりませんけれども、少なくともこの点が抜かれると、いかに厚生省が言っている診療ネットワークと言っても、一切もぬけのからになってしまうだろうという感じがありますので、この点をやはり明確にすることがどうしても必要ではないだろうかというふうに考えております。  それから、もう一点申し上げれば、たとえばいまの搬送は消防法、受ける方は医療法に基づく病院と、こうなるわけでありますが、できればこの辺は一体化をしたといいますか、一本化をしたものとして考えることができないだろうか。特に、私たち同じ職場に働いている者として、片方に消防職員がおります、片方に自治体の私たちの組合員がおる、その間でも実はいろんなトラブルが発生をしています。送る側と受け入れる側、そういうようなことを考えてみますと、できればそういう救急法等ができる場合には一体化をした形での整理がつかないもんだろうかというふうなことなんかも、希望意見としては持っておることを申し上げておきたいと思います。
  16. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、最初に小岩参考人にお伺いをいたしたいと思うのですが、地方自治体で直接住民の救急医療問題を含めて、地域住民の医療を保障するために大変御苦労いただいておりますことを、御報告を伺って一層つぶさに感じておるわけでございます。非常に詳細な経過、経営状態、あるいは収支状況改善についての御要望等につきましてお伺いをいたしましたので、その中の一つ二つについてさらにお伺いを申し上げたいと思うわけでございます。  その一つは、国公立病院の積極的参加が望まれるということの御意見でございました。これは国会におきましてもこれを実現させるためにということで、最大の隘路になっておる独算制の問題、あるいは総定員法の枠の問題、それらが隘路になっておって、そこを解決をしなければ、やると言ってもやれないんだというふうな問題が、かなり深く論議をされてきたところでございます。そういう点で、地方自治体におきましても市民病院あるいは自治体病院は当然独算制に縛られていると思うわけでございますが、そういう点でこれは一挙に全部はずせないにいたしましても、たとえば救急部門等は、私はまあ公的病院というのは独算制で縛るというのは基本的に問題があろうという見解の持ち主なんですが、まあそれを一挙にということはなかなか困難でありましても、救急部門等についての独算制をはずすというふうな点については、これは具体的な課題として国公立病院並みに、これは同様に重要な問題点ではなかろうかというふうに思うのですが、その点についての御見解をお伺いしたいというのが一点です。  もう一点は、具体的な御提起の中で中核病院等についてのいわゆる常時待機ですね、必要な要員の常時待機体制を確立をしていくために、現状の診療報酬に基づく出来高払い制だけではとても間に合わない。これはおっしゃるとおりだと私ども思うわけでございますが、こういう経費の補償が必要であるという点でございますね。これはどういう形での補償が一番望ましいかという点についての御見解がありましたらひとつお伺いをしたい。その二点についてお尋ねをしたいと思います。  それから、片桐参考人にお伺いを申し上げたいと思いますのは、これはいま全国的に住民の中で救急医療問題というのが大変な問題の焦点になりまして、どうしたら本当に国民がいつでも安心して受けられる医療体制の確立ができるかという点で、いろいろな角度で探られていると思うわけでございます。先ほどのお話の中にこういう御意見がありましたね。特に医師医療機関の協力義務ですね、協力義務を明確化させなければならないという御見解なんですが、そういう御説明の中で、田中委員のお尋ねの中でもおっしゃっておられましたけれども、すでにまあ医師患者、いわゆる住民と医師との信頼関係が崩れているということがアンケートであらわれているというふうな御見解が出ておったわけでございますが、実は私はそういうふうにおっしゃっておられるんだけれども、一方では、たとえばこれは近畿医師会連合調査救急医療の実態調査の資料がございますのですが、これは休日急患診療の実態調査の中で数字を見てみますと、大阪、京都、和歌山、奈良、滋賀、兵庫という近畿医師会連合調査でございますが、救急告示病院が扱っている患者数というのが二四・四%で、いわゆる救急告示でない非告示病院診療所が扱っているのが六九・七%、約七割が非告示の医療機関で扱われているというふうな実態があるわけですね。こういう実態をも踏まえていただきながらお伺いをしたいと思うのですが、私はいわゆる医師の協力義務化の問題というのをめぐりまして、いろいろな論議がなされているということを十分承知をいたしておりますが、それにつきまして、大阪でも条例制定の直接請求等の連動も起こっておりますが、これに対して、医療団体であります大阪府医師会が過日見解を出しておられるのですね。これは御承知かと思いますが、この中のいわゆる医師及び医療機関に対する救急医療への協力の義務づけという点についての御見解を医師会はこういうふうに述べておるんですね。「医師及び医療機関に対する救急医療への協力の義務づけは、住民参加の美名のもとに他罰的論理を展開し、不当な強制によって医師及び医療機関を一方的に拘束しようとするものである。このような条例さえ作れば救急医療は確保されるという考え方は、実状にまったく即さないばかりでなく、医師と地域住民との断絶を招き、結果的には単に救急医療のみでなく医療自体を混乱、荒廃させるものである。またこのような医療国営につながる考え方には基本的にも賛成できない。」というふうな御見解がこの項に関しての見解として述べられているわけでございます。これについて、先ほどのお話でも若干触れておられると思うんですけれども、これに対する御意見をお伺いをいたしたいと思うわけでございます。   〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕
  17. 小岩忠一郎

    参考人小岩忠一郎君) 公的病院、自治体病院のあり方と申しますか、特にその中で救急医療の独算制についての考え方をお尋ねになったわけでございますが、私どもも全く御説のような点に賛成でございます。と申しますのは、いま病院会計は企業会計であるということになっておりまして、病院建設あるいは医療制度についてつまり補助というものがないんですね。せいぜい起債を認めてくれるという程度のことなんです。まあやはり現在の自治体病院は企業としては考えるべきじゃないんじゃなかろうか。必要な医療行政というふうに考えるべきである。したがって地方交付税の単位としても必要な行政需要というふうに考えてもらうべきだというふうに思うのです。そうしますと、私の方のように赤字を出しているところは交付税を少しよけいもらえますから何ほかで本助かるということになりますが、現在救急については実際のところは市で赤字を全部出してやっているんです。ただ、その企業制度だという国の認定のために、国の方は勝手に出しているんじゃないか、赤字じゃないようにやれと、こう言うだけの話ですね。これはぜひやっぱり御説のように、病院全体を地方自治体のやってるところは必要な行政の枠内だというふうに認定していただくか、まあ最悪の場合でも救急は、私の方でもう本当にこれは市長部局で税金を出すよりほかないのですから、これはやっぱり国で必要な事業だということで認めてもらって、その分を交付税なり補助金でカバーしてもらうというような処置がなければ、これはとてもやっていけないだろう、こういうふうに思います。道路整備だとかあるいは消防隊、こういうのは当然義務だということで対象にされているわけですが、病院は好き好んでやってるんじゃないかというふうな考え方でははなはだまずいんで、仙台市などでは実は非常に残念に思うことは、県立総合病院がないので全部市の負担になっているんですね。県の方から先ほど申し上げましたように国と合わせて九百万円だけ補助もらっている。二億何千万円の赤字が出ているのに九百万円ぐらいじゃどうにもならぬということを毎回知事さんの方にもお願いしているんですが、やはり国の体制として必要な行政であるということをきちっと決めていただくということが大事だと思います。これは救急ばかりじゃなく病院全体そうだと思います。以上でございますね。
  18. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと細かかったのであれですが、常時待機の体制……
  19. 小岩忠一郎

    参考人小岩忠一郎君) 常時待機の場合の援助というやつは、先ほど申し上げましたように計算できます。計算できますが、年間どれぐらいかかるということはわかりますね。それから、それで入ってくる収入というのもはっきりしております。ですから、私はその差額は援助してもらわなきゃならぬ、援助する方法として国、県だけでというわけにもいかないだろうから、市でも分担するつもりではおりますけれども、そういうふうに国、県あるいは自治体というものが若干でも協力し合ってやるということであれば、わけないことだというふうに思うので、それは先生方のお力によってぜひ実現できるようにお願いしたいと思います。
  20. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  21. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 速記を起こしてください。
  22. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 先ほど私は総評が行いましたアンケートの結果を申し上げたわけでありますが、その中で大阪の部分を、特に全国で一番高い数字なものですから特に注目をしておったのでありますが、荒廃の原因として一番大きい日本医師会の姿勢という、こういう指摘に対して大阪の場合には四九・一%という数字が出ているんです。全国で一番高い数字が出ております。このことを最初一つ申し上げておきたいと思います。  それから、いまの大阪を中心にして府に対する条例制定運動というのがいま起きておるわけでありますが、その中で先ほど指摘をされましたように、先ほど申し上げた五つの指摘、原則に対して、特に第三点目の医師の協力義務の問題について、大阪府医師会が一定の声明を出されておる、そのことは私も見さしていただきました。そこで、私たちが直接請求運動を組織をするに当たって、特に三点目の医師協力義務の問題を強調している点は、一般的にはすでに先ほど申し上げましたように、現行の医師法第十九条によって応招義務というのは明確になっている。しかし、実態はなかなかそれが果たされていないという状況を前提にしながら、私たちがここで条例制定で医師の協力義務を求めているのは、医師の応招義務の制度的な確立というふうに理解をしているんです。ですから、一方的な強制だというふうに私たちは理解をしていません。一般的には法律ですでに規定をされておる。しかし、実態はそうなっていないという状況の中で、応招義務というものを制度的にどういうふうに確立をしていくのかということを考えると、条例上、一応医師の協力義務というものについて打ち出すことは現行法上からも誤りではないし、しかもそのことが一方的に強制しようなんという発想ではないのだというふうにお答えをしておきたいと思います。
  23. 柄谷道一

    柄谷道一君 非常に参考になる意見ありがとうございました。  より深く参考人の御趣旨を把握するために二、三点質問いたします。  まず、片桐参考人に御質問をいたしますが、私は救急医療体制を確立するために医師及び医療機関の協力が必要であるということが前提で、それは当然のことであろうと思います。しかし、現実にはいま各委員から指摘されましたように、医師会の中に異論があることもまた現実でございます。そこで、こういったいかにして協力義務を現実に拡大していくかという視点に立ちますならば、初期救急センター救急医療の基本とも言うべき休日夜間センターの拡充とか、在宅当番医制度の拡充とか、そういう具体的な積み上げを通じて具体的な協力を実現せしめていくというのが一つの現実的な方策でもあるとこう思うわけであります。  たびたびお答えされておりますように、医師法十九条の応招義務、これを制度的に確立したいという御趣旨でございますけれども、私は一片の条例とか法律でこの現実を解決していくということは非常に多くの問題点がある、こういうふうに感じておる者の一人でございますけれども、現状の中で一定程度の法的義務、こう言われるわけでございますが、その内容をさらに御説明を願いたい、これが一つでございます。  それから、冨永参考人に御質問いたしたいのは、私は救急医療センターと他の医療機関及び救急車の有機的な関連を確立することが非常に重要だと、こう思う者の一人でございますが、日本の現状は搬送はいわゆる直近主義搬送の原則をとっていると、こう思うわけであります。したがって、救急車の中での適切な処理とか、病状に見合った医療機関患者を搬送する、そういうことについて、御指摘のようにその要員の訓練もまだ不十分でございますし、救急車の中における設備も不十分でございますし、また、情報管理システムと連携をとりながら適切な処置を行っていくという制度もまだ未確立だと、こう思います。特に、情報管理システムについて御意見があればお伺いをいたしたいと思うのが一つでございます。  それから最後に、これは小岩参考人に御質問いたしたいのでございますが、市財政に占める救急医療費は相当大きい、不採算医療である、これはそのとおりであろうと思います。そこで、第二次累積赤字のたな上げ、病院債の条件改善、入院費の改善等の御指摘があった、地方交付税に対する配慮等の御指摘があったわけでございますが、この提言を読みますと、診療報酬体系を救急医療の場合別建てにしてはどうかという提言がございます。こういたしますと、患者負担増ということにつながっていくわけでございます。特に、入院料の改善ということを強調されましたけれども、これと診療報酬体系との関連を一体どう扱っていこうとしておられるかということと、同じく、提言の中に親病院に全部これを併設をいたしますと、全科に各科一名の医師を待機せしめなければならないとか、親病院患者抱え込みになるのではないかという指摘で、親病院とは独立して救急センターを設置することがより経済効率を見てもいいと、こういう御指摘があるわけでございます。自治体病院を実際に運営されております小岩さんとして、どういうお考えをお持ちなのか、この三点をお伺いします。
  24. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 協力義務のところで私は一定程度の法的な協力義務があってもいいではないか、こういう発言をしております。  その一定程度とはどういうことかといういま指摘だったと思いますが、そういうことですね。
  25. 柄谷道一

    柄谷道一君 現状を踏まえて……
  26. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 先ほども申し上げましたように、やっぱり圧倒的多数が民間開業医、これは実態として多いわけです。したがって、その先生方を抜きにして救急医療体制の確立というのは成り立たないというふうに、大前提としてその方は考えておるわけです。ですから、その先生方をじゃあどうやって協力をしていただいたらいいのかということを考える場合に、医師法第十九条のあの原則を踏みはずす気はないんですけれども、あの医師法の十九条に規定をされている応招義務だけを取り出して、原則的な理解の解釈の仕方をすれば、全部断わるわけにいかないよということになるわけですね。しかし、現実はそうはなっていないという状況の中で、先ほどから何回も申し上げているように一次、二次、三次、というそういう診療ネットワークを整備をして、その一次のところについて、それこそ順番制といいますか、当番でもってお願いをするという、そういう考え方に立たざるを得ないのではないだろうか、こういうことから三百六十五日協力をしてくださいよということじゃなしに、第一次の休日夜間診療所に対する協力の義務ということについて、それを一定の協力をやはり明確にしてもらうことができるのではないだろうか、こういうことを一定程度の協力義務という表現で言っているわけでございます。
  27. 冨永誠美

    参考人冨永誠美君) お説のとおりでございまして、搬送とそれから受け入れる病院との連絡、ここあたりが非常な問題があるわけでございます。いまお話しのとおりに、いろいろお聞きしますと、できるだけ近いというのが原則のようでございますが、やはり患者を見まして、患者を判断してこれは重症だというなら、しかるべき重症の病院に持っていけるシステムが必要であることは申すまでもございません。現状を見ておりますと、どこの病院ベッドがあいてどうだと、一々交渉をやっておるようでございますが、それをもう少しやはり強化する必要があるのじゃなかろうか。ただし、私どもがいろいろ考えましたのは、病院なら大きい病院一角に独立さしましてセンターにして、そこで選別していく、これはこの程度でいいんじゃないかというふうなことで、どうしてもいかぬときにはそっちへ送るというふうなことじゃないと、恐らく実際の病院でも交通整理ができていないのじゃないかなという感じがします。あるいは軽い患者が入ってきたりといったら語弊があるかもわかりませんが、そこあたりの整理をどうやっていくかということも、やっぱり救急という面から見まして選別の機関が必要じゃないかなということを感ずるわけでございます。  それから、私は交通事故にしぼりましたと申し上げましたのですが、それは衝突だったりしますと、体全身を打ちますから、どうしても外科なら外科だけではぐあいが悪いのじゃないかという意味で、救急病院というものは本来総合病院であってほしいという希望を持っております。私はよけいなことかもわかりませんが、先ほど時間がありませんでしたので、ドイツ救急専用ヘリコプターも、これはそこに情報が入ってくるわけです。ヘリコプターの操縦士も待機しておりまして、そこでお医者さんはもう普通の勤務をやっておって、この一日はこれは自分が何かあったら飛んで行くんだという任務が与えられておるわけでございますが、その場合でもやはりお医者さんが判断しまして、これはヘリは出す必要ないというときは出しておりませんし、それからなおかつヘリでお医者さんが行って、すぐに応急措置をやりまして、これも普通の救急車でよろしければ救急車に回していく、これはどうしてもいかぬとなればヘリコプターにお医者さんも乗って、これは救急専用ヘリコプターでございます。資料に差し上げておりますように、メッサーシュミットが救急専用のためにヘリコプターをわざわざつくったわけです。特徴を言いますと、エンジンが二つ、一つが故障でも大丈夫だ、あるいはローターというのがこう回ります。これは後ろから担架を入れますから、余り低いとこれも危ないというので、そういう意味で救急専用のためにわざわざヘリコプターをつくっておる。それでお医者さんがヘリコプターの中に乗ってずっと付き添って病院まで行くというふうなやはり判断があるわけでございます。したがって申し上げたいのは、たとえばそういった二十四時間待機の一角にセンターを設けますならば、あるいは患者の中ではこれは交通事故じゃない場合におきましても、お医者さんの顔を見れば治るという人もあるはずだと思います。一回あなたもうお帰りください、むしろ家にお帰りくださいぐらいのことはあってしかるべきじゃないか、そういう意味のやはり選択が必要じゃないか。そうすれば、普通のお医者さんが東京に告示病院がたしか五百何ぼございますが、常に二十四時間待機しておるというのは、これは夜中も、それが私はお互いにお医者さんの人権から見たってこれは不経済じゃないかなという感じがしますので、お医者さんのそういった何といいますか、エネルギーといいますか、これもむだも省くという意味で、できるだけ私は要所要所にそういったセンターを設けていただきたい。これを大きくしていって、先生のお答えに対しては実はそこに情報センターを入れていただいて、この患者ならこうだというふうに、そこへも情報センターを備えられれば、両方の連携がうまくいくのじゃないかと思う次第でございます。
  28. 小岩忠一郎

    参考人小岩忠一郎君) 私に対して診療報酬アップということを——救急対策一つとして言ったのだが、それはつまり患者に対する大きな負担増になるのじゃないかというようなお話で、この点どう考えるかと、こういうことだと思いますが、私は前にも申しましたように、救急医療というものを、なぜ一般医師あるいは普通の病院がやりたがらないかというのは、これはもちろん金だけの問題じゃございませんけれども、いまの点数制度はやはり低きに失するのじゃないか、こういうふうに思うのです。そうしてやっぱり一般開業医あるいは普通病院も協力するために、それぐらいのアップは認めるべきじゃないか。適正なアップは認めるべきじゃないだろうか、こういうふうな考え方です。いま普通の場合七割は国保なり何なりで持って、あと三割が自己負担ということで、そのはね返りはございますが、一つは私は国民あるいは住民に対して医療知識をやはり広めていかなければならぬ。日曜日とか夜中に行かなくてもいいような人まで、医療が無料なためにすぐ医者に行くという風潮が出過ぎているのではないだろうか、こういうふうにも考えられる点があるので、乱診乱療というような言葉もありますけれども、これはまあ救急に関して言っていることではありませんけれども、そういう面でも多少夜中にどうしても行かなければならぬというのを、若干、まあ負担してもらってもやむを得ないのじゃないだろうか、こういうふうに思います。  ただ、その救急病院がペイするだけ点数を上げろと、こう申し上げているのじゃないので、先ほど来救急のセンターになるような病院は三百六十五日、二十四時間体制に入っているわけですから、そういうのはやはり別途、国その他で必要な経費は出していく。しかし、そういうところに夜中に来た患者は点数はもらいませんよという必要はないので、いただくものはいただくけれども、なお足りない分を国あるいは県等でひとつカバーしてもらうような方途を考えていただきたい、こういうふうに申し上げておるのでございます。  それからもう一つ冨永さんからもお話がありましたが、病院体制としてあらゆる救急病院が、あらゆる部面で医師、要員を全部そろえるということは、これは現状としては無理なことと思います。それで私どもとしてはそういうのに、たとえば公的病院あるいは民間病院、そういったようなものに救急体制に参加してもらうということは、たとえば市立病院ならいままで三百六十五日やっていたけれども一週間に三日やってくれと、それから労災病院ならば週に一遍やってくれとか、あるいは国家公務員の共済病院なら月に三遍やってくれとかいうようなことでやっていくということ。それと同時に、もう一つは各病院ともそれぞれ特色のあるお医者さんがおります。脳外科をやれるところ、あるいは心臓血管、心筋梗塞だとかそういったようなもの、あるいは脳血管の得意なところ、いろいろ専門化されておりますから、それらの配置を全体的に考えて、Aの病院ではその心臓血管の関係のお医者さんが当直だというときには、こっちの方は別の関係のお医者さんがいるというようなこと。脳外科なんというのは、お医者さん非常に少ないんですけれども、そういったような者も適当に配置して、さっき話がありました情報センターのようなところでこういう患者はこっちに、この病院に行きなさいというような計画的な配置と指導ができるような体制をだんだんにとっていくべきではないだろうか。そういうことで、仙台市では先ほど申し上げました二市二町と官公立病院ばかりじゃない、私的病院も含めたあるいは職域病院も含めた医療機関と、それから開業医の協議会をつくって、これからそういうことをひとつ具体化しよう、こういうことなんです。それには相当金が要りますんで、これは市でも出しますけれども、国の方でも特に御配意願いたいと、こういうことでございます。
  29. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 先ほど私の質問の途中で、御答弁の途中で田中委員に対する質問の補足をなさって、私のお尋ねしたことについて片桐参考人にお答えをいただかずに終わってしまったんですが、その点ちょっとお答えを再度お願いをしたいと思うんですがね。
  30. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 済みません。質問の趣旨ちょっと忘れたんですが。
  31. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう一遍申し上げますと、先ほど申し上げましたように、片桐参考人の最初の口述とそれから田中委員への御答弁の中に言われましたように、医師と住民との信頼関係が壊れてしまっておるということで言われておったと思うんですけれども、現実にはたとえば近畿医師会連合調査でも救急告示病院診療所が扱っている患者さんが、これは休日、夜間ですよ。休日救急診療の調査なんですけれども、それによりますと、救急告示のところでは二四・四%だと。で、告示を受けていない病院診療所が現実に休日夜間に救急診療に携わっておる実態というのは、患者総一数の中で六九・七%だという実態があると、こういう実態を踏まえてということで申し上げたんですけれども、お伺いをしたいということを申し上げたんですけれども、そういう点で、大阪で起こっておる運動の五つの原則と言われた、先ほど片桐参考人おっしゃいましたが、それに対する医療団体として大阪府医師会が見解をお出しになっておりますが、特に三項のところの協力義務化の問題についての見解を御存じですかと、これについての御見解を、そういう実態を踏まえた上での御見解をお伺いしたい、こういうふうにお尋ねをしたんです。
  32. 片桐洵

    参考人(片桐洵君) 先ほど、私は大阪府医師会のあれは声明と言ったらいいんでしょうか、は一応読みましたと、その中で、三番目の医師の協力義務化の問題について、府医師会の見解——先ほど先生が指摘されたようなことが明らかになっています。それに対して私は先ほど医師協力義務の制度的確立であるというふうな立場から、そのことが一方的な強制ではないんだということを大前提として申し上げておったつもりだったんです。したがって、確かにいま実態として告示病院四・四%ですか、それから非告示病院に六九・七%の地域の人たちが行っていると、この事実はこれはちょっと数字——いまちょっと資料持っていかれたもんですから持ってないんですが、大阪におけるいわゆる公的医療機関の告示病院数というものと、非公的医療機関といいますか、の告示病院といいますか、この実態が、実は資料が手元にないんですが、一つは大きく違っているという点がありますね。そういうことから、地域の住民の立場からすれば、とにかくあるところに行かなければ仕方がないという点で、実態として非告示病院のところにも相当たくさんの人たちが行っているという事実はこれはやっぱりあると思うのです。そのことがイコール先生が指摘をされている信頼関係の問題とは私は別の問題であろうというふうに考えています。なければ、あるところに行くしかないというのが住民の立場だろうと思うのですね。そういうことです。
  33. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ほかに御発言もなければ、午前の調査はこの程度にとどめます。  この際、参考人方々に一言御礼を申し上げます。参考人方々には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  午後一時三十分から再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時六分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  34. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 午前中に引き続き、社会保障制度等に関する調査のうち、救急医療に関する件を議題といたします。  本日は、本件調査のため、お手元に配付いたしております名簿の方々参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本件調査参考にしたいと存じております。  これより、参考人方々に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、お一人十五分程度でお述べを願い、参考人方々の御意見の陳述が全部終わりました後、委員の質疑を行うことといたしますので御了承願います。  それでは、まず恩地参考人にお願いいたします。
  35. 恩地裕

    参考人(恩地裕君) ちょっとスライドを使って暗くなりますが、説明をさせていただくのでよろしくお願いいたします。   〔スライド映写〕  救急の患者として、日曜とか夜間医者を訪れる患者の数はどのくらいかということを調査してみましたんですが、四十七年七月二十八日という日曜日に大阪府下の医者を訪れた者が六千百七十一人あります。そのうちの半分は、医者の判断では急を要する者ではありませんが、患者の側からはやはりこれは急患ですから、六千人という多数の患者に対する受け入れ体制が必要ということになります。  次、お願いします。——これらの患者の病気の種類について見ますと、七五%は内科的な病気で、外傷は一二%で、特にここで注意していただきたいと思いますのは自動車事故ですが、これが一・八%にすぎぬことです。わが国救急医療体制はこの一・八%の自動車事故に対して消防隊による救急搬送と、これに対応する救急告示病院ができたのですが、残りの九八%の患者のことを考えていなかったということが今日の救急医療の問題を生じてきたゆえんであると思います。それで、これらの救急の患者の受け入れているところはどういうところかということを考えてみる必要があります。  次、お願いします。——どのような重症度の患者がどの程度いるかということをまず知ることが非常に重要でありまして、この種の調査はいままで全くなされておりませんでしたので、大阪府医師会で昨年夏行ってみたのですが、これによりますと、この六千人のうち四百人が入院して、そのうち重症患者が五十人で、直ちに命にかかわるような重症者が十人ぐらいということであります。したがって、救急医療体制整備するときには、このように重症度に応じた段階的な体系を整備しなければなりません。このうちのどの部分が欠如しておっても全体のシステムが動かないということになります。  次、お願いします。——次は、これらの救急患者の傷病の種類ですが、最初の六千人については子供の患者が非常に多いのですが、入院を要するいわゆる二次救急の患者について見ますと内科が多く、次はお産のための入院、外科小児科の順になります。救急医療体制整備には、上記の重症度別のほかに、このような診療科別の受け入れ体制整備が必要になります。現在の救急病院は、重症度も専門も言わずに、ただ告示ということをやっておりますが、もし告示ということをするのであれば、重症度別、専門別の告示に変えねばならないと思います。  次、お願いします——ここで忘れてならない  ことは、非常に特別な場合です。わかりやすいように例をもって申し上げますと、ここに示しましたのは、一歳十カ月の子供がピーナツを食べていて嘔吐して、その後呼吸が苦しそうなので近くのA医者を訪れたのですが、そのA医者は、大した所見が認められなかったので、すぐ帰りなさいということになったんですが、その後再び、家へ帰ってから呼吸の状態が苦しそうだというのでBの医者に行ったわけですが、そのときにはすでに病状が相当進んでおりまして、Bの医者は酸素吸入をしながらわれわれのところへ連れてまいりました。  次、頼みます。——それで、われわれのところでは、気管内に嘔吐したピーナツの破片が吸引されておるのであろうということで、全身麻酔で気管支鏡検査をやってピーナツの破片を取り除いて、その後も人工呼吸をしながら肺を洗ったわけです。このような処置は、気管食道科とか麻酔科というようなどちらもごく少数しかいない専門医が、両分野が共同して働かねばならないので、緊急の場合にこのような専門家を得るということは非常に困難で、現在、眼科とか耳鼻科について同様な困難な問題があるわけです。  次、頼みます。——生命に直接関係のある救急の対象としてはどういうものがあるのかということを検討してみますと、昭和四十七年の人口動態統計によりますと、脳血管障害すなわち脳卒中ですが、これが十七・六万人で、事故などが六・三万人、虚血性心疾患すなわち心筋梗塞ですが、これが三・八万人でありまして、この三者を合計しますと、悪性新生物すなわちがんによる死亡の十二・七万人の二倍に達しております。現在、がんに対しては研究、診療ともに各種施策がなされておりますが、これに比して救急疾患についてはいままで全く放置されていたと言って過言ではないのじゃないかと思います。  次のスライド頼みます。——脳卒中は日本人の死因の最大を占めるものですが、医学の進歩によりまして発病時に手術によって救助し得るものが多くなってまいりました。それで、まず手術の可否について専門機関で診断することが必要です。しかし、脳卒中患者の搬送は慎重でなければなりませんので、特別の救急車と十分に訓練された救助者の同乗が必要で、わが国の消防隊による救急搬送についてこのような点の改善が必要ではないかと思います。  次、お願いします。——次に心筋梗塞ですが、年間約四万人が死亡しておりますが、この数はだんだん増加しております。本症の治療には専門の集中治療部、CCUと言いますが、それと訓練された看護婦医師が必要でありまして、各府県に何カ所かはどうしてもこういう施設が必要ではないかと思います。  次のスライド頼みます。——次は事故ですが、毎年事故による死亡は六万人ですが、そのほとんどが若年者で、事故は三十四歳以下の若年者の最大の死亡原因となっておるということが非常に重要な問題であります。自動車事故については、死者の四十倍の負傷者がいるということがまた問題になります。そのほか、最近は高層のアパートとかマンションからの子供の墜落事故がふえております。  日本の自動車事故の特色は、次のスライドを頼みます。——私どもの調査では、歩行者とか自転車に乗っておる者が自動車にはねられて頭を打って死亡するものが七〇%を占めております。救急医療と言えば頭部外傷というふうによく言われてきたわけですが、これはこういう理由によるものであります。  事故のうちで次に問題になりますのは、熱傷すなわちやけどですが、次のスライドを頼みます。——毎年二千人の人がこれで死亡しておりますが、最近はガスぶろに子供が落ちて事故がふえております。熱傷すなわちやけどの治療は非常に繁雑で専門的で、かつ人手を要しますので、ぜひ全国的に何カ所かの熱傷センターというものの設立が必要ではないかと思います。  いままで申し上げましたことは、結局、救急医療の質あるいは内容的な向上が非常に重要だということを私は申し述べたかったからであります。  次のスライドをお願いします。——次は医療機関について言及したいと思うんですが、わが国では、救急患者の受け入れについては私的医療機関が大きな役割りを果たしております。大阪府下の調査によっても、一次救急の患者だけでなく、入院を要するより重症の患者の受け入れについても、私的の医療機関が大きな役割りを果たしております。公的医療機関、特に地方自治体立の医療機関が重症患者の受け入れにより大きな役割りが果たせるように改善する必要があるのではないかと思います。  次のスライドを頼みます。——救急搬送についてはわが国世界的にもすぐれた体制にあると思いますが、さらにもし注文をつけるとすれば、ただ近いところの病院に運ぶというのだけでなく、その病気に最も適したところに運ぶということが強調されねばならないと思います。交通事故死を例にとってみますと、これは大阪府下の交通事故死を調べたのでありますが、四〇%は受傷後三十分以内に死亡しておりますので、これを助けるためには、一次、二次、三次と転々と転送しておるのでは時間的な余裕がないわけです。これは前述しました心筋梗塞とか脳卒中についても全く同じことでありまして、こういう点の配慮が必要であると思います。非常に重症な傷病者を搬送するためには特別な設備を有する救急車が必要で、これも府県に一台ぐらいはどうしても必要ではないかと思います。  次お願いします。——次は救急医療情報網について最近云々されておりますので、ちょっとつけ加えたいと思うんですが、現在の消防隊による一一九番の制度は長い実績を有しております。ただ、これの欠点は、各市の消防単位に独立しておりますので、これを現在大阪府がやっておりますように府県単位に統合する必要があるのではないかと思います。  もうスライド結構です。  最後に、最も重要だと思われますることは、一般市民とか医療技術者、救急隊員、医師などの救急医学に対しての教育ではないかと思います。そのためには、医科大学に救急医学の診療、教育、研究を行う部門を設立することが大切であろうと思います。これがなければ、救急医療の質的あるいは内容的な向上が望めないのではないかと思います。  終わりです。
  36. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。  次に諸橋参考人にお願いいたします。
  37. 諸橋芳夫

    参考人(諸橋芳夫君) 皆様方のお手元に配付申し上げました資料によりまして御説明申し上げたいと思います。  救急医療につきましての意見を申し上げます。資料1をごらんいただきたいと存じます。  自治体病院救急医療の問題でございますけれども、自治体病院は余り救急をやらないじゃないかというおしかりがあるわけでございますが、決してそのようなことではないということが資料の2をごらんになっていただきますとおわかりになるわけでございます。全国の自治体病院一般病院は八百七十二ございますが、そのうちの五一・二%の病院が告示病院を受けております。病床数で申し上げますと、百床以上では六四%告示を受けておりますが、百床未満では二七・三%になっております。なお、四百床以上では八五%が告示を受けております。さらに、その告示を受けている病院につきまして、第三次機能を持つに必要な脳神経外科専門医を配置している病院は、三百床以上につきましてはその数が百五十七のうちの百病院、全体の数では一一・四%が告示を受けております。なおまた、告示を受けていない病院につきましても九五%は夜間も休日診療も行っておる現状でございます。  次に、告示を受けている病院につきまして、あるいは受けていない病院につきましての一日当たり患者の取り扱い数でございますが、病床数の多いものほど多少は取り扱い患者が多くございますけれども、そう大きな差はございません。この中で、疾患別に見ますと、内科系が五七%、外科系が二九%、産科その他が一四%となっております。  なおまた、告示を受けていない理由といたしましては、一つには、医師が充足難であるということでございます。夜間、休日も診療した医師が翌日休むこともできないところの現状もございます。  いま一つは、資料3に詳細私ども申し上げてございますけれども、現在の告示制度でございますが、これは現在の告示病院事故によること、外傷を中心としたふうに限られておるものでございますので、勢い内科的疾患を扱う病院につきましては比較的後回しになりまして告示を受けないという理由でございます。  第三番目は、地方自治体並びに自治体病院の財政上の問題でございます。後ほど申し上げますけれども、救急は非常な赤字となってございますので、地方財政の苦しいところにおきましてはこれをちゅうちょするところもあるわけでございま  第四番目は、地域住民の過度の期待でございます。告示を受けているからには、いつ行っても、いつでもすぐ診てもらえるんだという、そういうふうな考えを持って参られますと、非常に病院側としてはこれにこたえるために、人数も少のうございますし過労になることもありまして、このようなことから拒否しているところもあるわけでございます。  第四番目におきまして、昭和五十年度におきましての救急を受けておる病院につきまして調べますと、これは資料2に申し上げてございますが、運営費の補助を受けている告示病院のAクラスと申し上げる最も整備された告示病院でございますが、このうち国の補助を受けているのは一四・四%しかすぎないわけでございます。告示を受けてないけれども、休日、夜間の診療を行っている病院の六〇%は、この厚生省のせっかくの特殊診療部門補助金交付要綱による交付条件には適合しておっても、補助金を受けていないのでございます。  次に、救急医療機関の整備の方針でございますけれども、資料3に昭和四十八年八月十一日付で、救急医療対策の確立についての要望というものを全国自治体病院協議会から提出してございますが、この中で、第二次機能を有する病院は広域市町村——広域市町村は大体人口十数万から二十万以内のものが多うございます。まず、そこに一つは必要であろう。それから、第三次の機能を有する病院につきましては、第二次の機能病院から一時間程度で行けるところが必要じゃないか。これも二時間も三時間もかかるようなところでは搬送ができないということでございます。なおまた、第二次の機能を有する病院につきましては、第三次機能の一部も保有している病院が必要であろう。人口数百万を擁するような県におきまして、一県に一つのような第三次救命救急センターのようなことでは非常な無理があるだろうということを申し上げるわけでございます。  次に、救急医療というものにつきましては、これは単独では成り立たないものでございまして、平常の診療から積み重なって、これが救急医療というものが円滑に運営されるというふうに思うわけでございます。したがいまして、神奈川県でやられているように、その地域におきます主管病院県立の補助のもとに救急病床は五十床程度のものを自治体あるいは済生会、日赤にこれを運営を任す。足らないところは補助する。そういうような形は大変望ましい姿だと思うわけでございます。  次に、第二次、第三次のともに普通必要な、通常診療に必要な人的、物的の装備のほかに、先ほど申し上げましたその上に救急医療体制をとるための職員と設備を必要とすることを申し上げるわけでございます。  このようなことからまいりますと、厚生省が考えられております医師会病院あるいはその地域の病院輪番制によりまして第二次病院運営するということには、幾つかの問題があると思うわけでございます。残念ながら現在の共同利用型の病院につきましては、脳外科CCU、ICUあるいは人工腎センターあるいは未熟児センター、そのような機能が整った上に第三次の救急医療が設置されることが望ましいわけでございますが、このようなことでは現在まだ不十分なところが多いと思うわけでございます。輪番制になりましても、輪番に当たらなかったところにも常にそれだけの人あるいは設備を用意しておくわけでございますので、設備の二重的の投資になって、これはむだがあるんじゃないかというふうに思うわけでございます。なおまた、大都市におきましては別でありましょうが、普通の中小都市におきましては、輪番制実施できるようになりましても、非常に整った病院と比較的整わない病院があった場合に、勢い患者は整った病院の方に期待するわけでございますが、本日は輪番制でないから扱わないと言われても、その施設と人がむだになるだけじゃなくて、患者側の要望にしましても非常な不満が生ずるのじゃないかというふうに思うわけでございます。私どもの——私の病院は千葉県旭中央病院でございますけれども、資料6と5に詳細申し上げてございますが、年中無休で救急医療をやっているわけでございますけれども、年末年始の一般医療機関患者さんを扱わない本年におきましては、資料6をごらんになっていただきますと、百九十三人の患者を扱い、入院患者二十四人、手術を十三件、死亡二名、剖検二名、そのようなことでいろいるやられているわけでございます。けれども、私どもは、後ほど申し上げますが、救急医療というものの責任は一体どこにあるのか。少なくとも民間よりは公的のものに私どもあると存じておるわけでございます。したがいまして、このようなことからいきますと、地域の中核病院である自治体病院あるいはほかの公的病院中心といたしまして、またこれに準ずるような整備の整いました民間病院を含めまして、補完的に必要なものは輪番制度に入れるべきじゃないかと思うわけでございます。  次に、この厚生省のおっしゃる休日、夜間の診療のことでございますけれども、これにつきましては資料4に詳細申し上げてありますが、千葉県におきまして長生郡市保健センターに休日、夜間の診療ができるようなセンターができるわけでございます。大変これは結構なことだと思うわけでございますけれども、ここに申し上げてありますような午後九時から午後十二時までしか扱わないというような現状は、患者さんにとっては非常に不幸じゃないかと思うわけでございます。私ども自分の病院で見ますと、大体深夜に来るのが四人から五人ございます。一体このような患者さんをどのようにして扱うのか。なおまた、ここに盛られております医師看護婦事務員に対するいろいろの手当でございますけれども、たとえば当番医に対しましては、午後九時から午後十二時まで勤務した方に二万円、看護婦は六千円、あるいは事務員は六千円、そのほかに土曜、日曜、年末、年始はさらに数千円あるいは一万円の加算があるわけでございます。このようなことになりますと、現に自治体病院あるいは公立病院でやっております当直の者との非常な不公平が出てまいりまして、病院長の立場としては病院を管理する意味において非常な不都合が生ずると存ずるわけでございます。  次に、救急医療体制の確立でございますけれども、先ほど申し上げましたように、救急医療責任というのは私は民間よりは公的のものにあると、特に自治体にあると思うわけでございます。この責任をはっきりする必要があると存じます。この確立をするためには現在の救急病院省令、このものを廃して、救急医療に対する総合的な基本的な施策を立法化する。たとえば救急医療立法上か、そういうものが必要じゃないかと思うわけでございます。さらにまた、国の責任において自治体病院、特に不採算地区病院とか地域中核病院等の医師の充足を図るような処置が必要だと思います。  また、その休日、夜間におきましての医療技術者の確保あるいはまたこれに対する施設の経費、こういうものに対しましてはやはり国が責任を持って補てんする必要があると存ずるわけでございます。  私どもの実感を申し上げますと、私どものところは五百床程度病院ではございますけれども、医師六十名をもって、全職員五百名をもって運営しておるわけでございますが、これにつきましては年末、年始全部含めまして、休日においては二十名から三十名、それからふだんの日は十名程度の急病人がいらっしゃいます。特に夜間、深夜が多いわけでございますが、このような患者さんを扱っております経理について申し上げますと、昭和五十年の五月分は、収入は月八十一万でございますが、支出は二百三十二万円、これは医師内科一名、外科一名、脳外科一名、産婦人科医師当直の費用も全部ひっくるめてございます。月に百五十一万円の赤字となってございます。このようなことを一体どのような形で補てんしていただけるのでありましょうか。  なおまた、次に自賠責の問題でありますけれども、このものにつきましては、自動車災害保険のことでございますが、現在では一点単価は全国平均は十八円でございますが、これにつきましては国の決めはございません。したがって、単価は十円でやってもあるいは四十円でやってもよろしいわけでございますが、これは非常に不公平だと思います。したがいまして、自賠責保険も健康保険と同じような形でもって補てんしていく。その余った財源におきましては、救急医療機関の運営費に直接補助するような形が望ましいことじゃないかと思います。  次に、社会保険の診療報酬は、休日、夜間につきましては診察料とか手術料の加算はありますけれども、入院した日の看護料とか、あるいはエックス線診断料、検査料、こういうものについては加算がございません。このことにつきましてもぜひとも新設を考えていただきたいわけでございます。  次に、厚生省の自治体病院救急医療に対する五十二年度の予算についての問題でございます。これは五十二年度の予算につきましては、自治体病院約九百病院に対しまして、補助となっている病院は二百七十一病院でございまして、告示を受けているか受けていないかにかかわらず、休日、夜間の診療をやっているところに対しては全病院を、開業医さんがやられる休日夜間救急センターとして補助いただいている程度のものはいただきたいと存ずるわけでございます。  なおまた、自治体病院に対する運営費の補助、Aクラスにおきましては千三百八十万円、Bクラスは六百万円ということでございますが、これは過少でございます。ぜひとも実際のかかった額についての補助をいただきたいわけでございます。  次に、国の補助は三分の一でございますけれども、これはやはり三分の二というふうに国の責任を明らかにしていただきたい。  また輪番制につきましては、自治体病院が現に単独でやっているものにつきましては、これは輪番制とは離れて、やはりこれは救急医療体制の中で考えていただきたい。  最後に申し上げたいわけでございますが、日航機がソビエトのモスクワ空港で墜落いたしましたときに、午後七時五十分に起きまして、午後九時には全員が病院に収容されておったという救急医療の事実がございます。わが国におきましても、一日も早くそのような体制が確立されることを望むわけでございます。  以上でございます。
  38. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。  次に、佐羽参考人にお願いいたします。
  39. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) 全国保険医団体連合会の幹事をしております佐羽と申します。川崎で内科を開業しております。したがって私は、開業保険医の立場からのこの問題に対する意見を申し上げたいと思うわけでございます。  それで委員先生方参考資料をお回しいたしましたけれども、時間の関係上、これについて一一御説明は省きまして、私の発言の中にそれを要約いたしますので御了承をお願いいたしたいと思います。  まず最初に申し上げたいことでございますけれども、この救急医療の問題は、現在確かに大変な問題になっております。しかし、一体救急医療だけが果たして問題なのであろうかと。一般の、いわゆる普通の医療は問題ないのかということを考えてみますと、まあこれは後で少し詳しく申し上げますけれども、いろいろ地域的な格差は確かにございます。しかし、多くの医師医療従業員が、地域の患者さんの要求に対して本当にまともな医療ができずに苦しんでいる状態というのがたくさんございます。こういうような一般医療の問題も実は一方で大変なのでございますから、この救急医療の問題だけでない、この基礎になる一般医療の問題を根本的に解決することが、救急医療の問題に必要であって、救急医療の問題の部分的な手直しというふうなことでおさまる問題ではないんだということをまず申し上げたいわけでございます。つまり、救急医療というのは、医療のいろいろな矛盾がたくさんございますけれども、そういう諸矛盾の噴火口のようなものじゃないかというふうに私は考えるわけでございます。  さて、救急医療が一体いつごろからこんなふうに問題になったのであろうか。私も開業しまして相当年数たちますけれども、少なくとも十数年前では余り問題にならなかった。なぜだろう。患者さんもいまよりも確かに少なかったです。そして医療機関もやっぱり相対的に患者数に比して余裕ございました、これは統計ごらんになればわかりますけれども。したがって、われわれも夜起こされても、翌日多少ちょっと昼寝をしてもそういう疲労を補うことができたし、そういう余裕もあった。また休日、往診に呼ばれても、大してこたえるというふうなこともなかったというふうに、以前はなぜ問題にならなかったか、現在なぜこんなふうに大きな問題になったかと、その理由や原因を正確にとらえることが、まずこの問題の正しい解決にとって必要ではないかということを申し上げるわけでございます。  そこで、この問題がなぜこんなに大問題になったかということについての理由を、私は大きく分けて二つあると思うわけでございます。  その第一が人口のはなはだしい偏在の激化、つまり御承知のとおり、たらい回しというふうな救急の大きな問題は、特に大都市周辺の人口急増地帯で起きていることは御承知のとおりだと思います。そういうことで、これはやはりいわゆる高度経済成長政策と申しますか、が始まったころじゃないかと思いますけれども、大体昭和三十五年以降ぐらいにこういう、特にいわゆる太平洋ベルト地帯と申しますか、そんなふうな言葉もございますけれども、そういう方向に人口が集中してきた。そしてそれに対する相対的なやはり医師とのアンバランスということが、やはり第一の問題になるんじゃないかと思います。  それから第二には、やはり患者さんの、国民の側の傷病がやはり何といっても一般的に言っても増加している。最近、厚生省の国民健康調査が出ましたけれども、五十年度の人口千人当たりの有病率が一〇九・九人ですね。四十九年度より八・七人多くなった。三十年には三十八人であった。三十五年には四十七人であったというふうな、非常に多くなったという結果が出ております。特に今度の発表でも、十大都市が一二〇・八人と、一般の一〇九・九人よりも非常に多いわけでございますね。こういう点がやはり大都市なり大都市周辺の大きな問題であろう。また昨年東京都でもって患者調査をなさいましたときにも、二人に一人は健康に不安を感じているとか、訴えているとか、四人に一人は保健薬を飲んでおるというふうな報告もあるわけでございます。このように十年間に二倍になるとか、あるいは国民が総半病人というふうな言葉もございますけれども、そういうふうな状態ではどうしても医療需要は必然的に増加するのはあたりまえであろうというふうに思います。そういうふえた傷病の内容はどういうことかと、まあ労働災害とか職業病とか、それから精神、神経糸の障害とか、脳卒中やがんや心臓病等の成人病などの慢性疾患、あるいは先ほどもお話しの交通事故とか公害病とか、特にやはりこういういわゆる死因の原因としての疾病名として挙げられない、いわゆる心のゆがみと申しますか、ひずみと申しますか、最近では例の青酸入りのチョコレートとかコーラとかいうふうな問題もございましたけれども、そういうふうな子供から大人まで心のゆがみというふうな問題が非常に多いのじゃないかというふうに思われるわけでございます。  そうして患者側の問題の第三点は、やはり労働者、国民皆さんが医療が受けにくくなっているという実情があるかと思います。まあこう言っては何ですけれども、私の身近な問題として知っておる限りでも、やはり大企業では労働時間中になかなか医者に行かせてくれない。行かしてくれても、せいぜい企業内の診療所に行かせてくれるぐらい。簡単に休むことはなかなかできない。また、やむを得ず休んでも、二、三日たつと会社から電話がかかってきたり、係の方が呼びに来られたりして、お迎えが来たりすると、どうしてもなかなか休めないというふうな話をよく聞かされるわけでございますけれども、まあ中小企業だって、最近倒産が非常に多うございますから、その実情は大企業と同じように、なかなか医者どころではないというふうなことだろうと思います。  私の友人が、私、川崎の北の方ですけれども、南部の工業地帯の方で開業しておる友人が、昨年のことですけれども、昨年の中ごろでしたかな、だんだん患者さんがとにかく減ってきたわけですね。調べてみると、特に夕方の患者さんが減ってきているということで、よく調べてみると、大工場が結局残業が多くなってきて、週休二日制が一方でありながら、それを埋めるためというのですか、残業が多くなっているというふうなことで、その人は五時半までたしかやっておったのが、七時まで延ばして何とか患者さんの要求にこたえ、こちらも何とか収入を減らさずにしたというふうな具体的な事実もあるわけでございますけれども、まあ実際に夜起こされたり、あるいは往診したりしまして、実はけさから会社でぐあいが悪かったのだというふうな例もままございますし、それからひどいのは、一週間前ぐらいからもうぐあいが悪かったというのが珍しくないような実情でございますね。こちらの参考資料にも出ておりますけれども、休日診療所の統計でも、急病をたてまえとしておるというところが多いのでございますけれども、そうとは認められないようなものが結局かなりあるわけでございます。これは先ほどの恩地先生のスライドにもそういうふうなことが出ておりました。  それから、もう一つ基本的な問題で、いまの国保やそれから健康保険の家族が三割自己負担ございますね、前は五割だったからもっとひどかったのですけれども、三割の自己負担さえ低所得層にはやはり家計の重荷になるというふうなことが現実にやっぱりあるのでございます。現に私の患者さんでも心臓の動脈硬化、いわゆる冠硬化症でございますね、の人が長くかかっているのですけれども、月に一度しか来ないんですよ。もっと来いと言っても来ないんです。一度だけで一週間分の薬、それも二週間分は要らないと、一週間分だけくれと、で、薬を結局飲み延ばしといいますか、やっていたんでしょうけれども、昨年心筋梗塞を起こして死んだわけでございますけれども、あと半年長生きすればちょうど七十になって、例の老人の医療費の無料になって死なずに済んだかもしれないというふうなわけでございますね。まあ、そのほかいろいろかかりにくい事情というのもございましょうけれども、たとえば非常に過密化して、安い庶民住宅を遠くにしか求められないというふうなことから、結局住宅の事情による通勤の距離が長いとかいうふうなことが、当然医者にかかりにくいことの一つの原因でもありましょうし、それからまた、夜間や休日の急病は、先ほどもございましたけれども子供が非常に多いんでございますけれども、いわゆる夫婦共働きですか、ということが非常に私たちの周囲でも多いんでございますけれども、昼間はどっかに預けておく、で、なかなかわからなかった、平日には気づかなかったというふうなことでもって、夜とか休日に担ぎ込まれるというふうな例も結構ございます。  それからもう一つ、やはりこういう人口の偏在というふうな問題の中でもって、核家族化と言われる問題ございますね。そういう中でもって若夫婦が、特にお嫁さんがふだんだったらしゅうとからいろいろ教わるであろうような適切な育児指導ですか、そういうものはやっぱり受けていない、まあ、日本民族は大体代々そういうものを受け継いできたらしいんですけれども、そういうことがない。逆に老人がまた置き去りにされて、夜発作を起こして呼ばれるというふうなことが間々あるわけでございまして、まあこういうふうにすでにもう患者さんが医者にかかりにくくなって制限されているということがございますので、まあ今度は健康保険法の一部改正案が国会にも出されるわけでございますけれども、その中でもって初診時一部負担が二百円から七百円になると、引き上げて受診抑制ですね、というふうな案がございますけれども、そういうことをしないでもすでにもうとっくに制限されているんだというふうな状態ではないかと、こう私思うわけでございます。  それから次に、やはりこの原因の大きな二つ目としまして、医師医療機関、まあわれわれの側の問題点でございますけれども、第一に、やはり先ほど申し上げましたようなそういう人口急増地帯における住民の数と医師数の相対的な不足ですね。医師数の方がそんなに伸びませんから、人口みたいに。相対的不足。これは統計でもって、たとえば東京の付近で言っても埼玉とか千葉とか神奈川、そういうふうなところでは急に非常に人口がふえている。それに対して医師数がアンバランスであるとか、これも統計でもはっきりしておりますし、なおこういうことは大きな東京とかいうふうな規模の問題だけでなしに、小ちゃな規模でもって団地とかニュータウン等に非常にやはりわれわれの周囲でも多いんですね。やはり政府や自治体が、まあ自治体は余り人口集中方針をとっておるんじゃなくて、政府がやっぱりそういうふうなことでもって結局人口集中しちゃって自治体かえって困っているのかもしれませんけれども、医療を初め教育だとか交通機関だとか、はなはだしきは下水道に至るまでそういう配慮を行っているということですね。これはやはり小ちゃな規模でも大きな規模でも同じじゃないかというふうに思うわけでございますけれども。  医師側の第二の問題は、やはり医療体制の質的な弱体化と申しますか、そういうことじゃないかと思うんですけれども、これはやはり地域によって大分違いがございます。地方と都会では大分違いますけれども、特に先ほど申し上げたような人口急増地帯では非常にこれは顕著でございます。  それで、資料の中にもちょっと出してございますけれども、昨年神奈川県医師会でもって調査しました。まず第一に、病院の空きベッド状態でございますけれども、いわゆる許可ベッドの数が四万七千ベッドあるんですけれども、そのうち九千二百ベッドが空床なんです。この九千二百のうち国公立の病院が四千五百十六空床なんです。ですから、特にこういうところのベッド救急医療の第二次応需と申しますか、そういうあれにかかわりが深いわけでございますけれども、そういうものが空床になって実際にはベッドがないと同じであると、つまりベッドがないと断られるというのは、実はベッド不足ではなくて、ベッドを活動させる医師看護婦等の不足ですと、これは医師会の資料にその言葉どおりに私申しているんですけれども、そういうことですから、まあよく公的病院の病床規制の問題が出ますけれども、どうも必ずしもこういう規制が原因じゃなくて、原因はその働かせる人間の方にあるんじゃないかというふうな感じさえいたします。  それから、その同じく神奈川県の調査でも有床診療所の無床化が三〇%に及んでいる。もうすでに患者さん入院できなくなっちゃったのが三〇%。それからまた長年習熟した専門科ですね。これはみんな医者にとってはなかなか捨てがたいものでございますけれども、これを捨てて転科、つまり内科から外科外科から内科にかわるというふうな転科でございますね。転科をしたり、やっぱり最近のうちに転科をしようと考えている人が四〇%もあるというふうなことが書いてございます。大阪府の調査でも、産婦人科のお医者さんが千人以上おられたのが現在では三百余名になった、大体は内科等にかわっておられるわけですけれども、そういうふうな事実で、これはやはり手術すれば赤字になるとか、あるいは入院させれば赤字になるとかいろいろお話ございましたけれども、そのとおりのやっぱり健康保険の現実なんでございます。  最後に、やはり無床診療所の、特に外来だけの診療所が非常にふえているわけでございますけれども、こういうところの実情をやはり申し上げたいと思うんですけれども、実際いろいろ私たちも統計とっておりますけれども、なかなかいまの健康保険のあれでは看護婦が雇えないわけですね。外来の看護料というのは全然ないんですから看護婦が雇えない。結局夫婦二人だけ。われわれよく農村のあれみたいにリャンチャン医療なんという言葉も使っておりますけれども、まあ夫婦二人だけ、あるいはお手伝いさん一人。お手伝いさんと二人でもって働いて、妻がときどき手伝うというふうな形もだんだんふえてきている、そういうところでは必然的に結局診療以外の仕事を医者自身もたくさんやらなきゃならない。そういうことも統計とってみましたけれども、月末、月初めには例の健康保険の請求事務、これなかなか大変なものでございます。われわれは女性のメンスに対して、これは医者のオンスだというふうなことを言う人もいるわけでございまして、これも健康保険からは一銭の手数料ももらえない現状でございますね。それだけでもって相当なれない事務もこたえるわけでございますけれども、そのほかにも税務計算から、はなはだしきに至っては消毒の準備から掃除までやっているという人が結構調べてみるとあるんでございます。ですから、結局多忙でもって過労になると、一番大切な勉強もなかなかとる時間もないと、これも統計でこっちに出ておりますけれども。夜の往診なんか重なりますと、もう実際に冬なんか特にそうですけれども、うちじゅうが、家族じゅう睡眠不足になっちゃうんですね。それでもう私の娘なんかも開業医はいやだというふうなことで、ほかの職業の人に嫁ぎましたけれども、そういうふうなことで、本当になかなか零細開業医にとっては大変なことだということなんでございます。  それで結局、いまの中で申し上げましたように、こういう弱体化の主な原因は、やはり健康保険制度のまだ悪さということを考えざるを得ない。いまも申し上げましたように、手術をしても入院させても赤字になる、外来の看護料も請求事務の事務手数料も認められないというふうな、そういうふうなことでもって、まあ全体の医療費のあれを抑えるというふうな方法、つまり社会保障の後退といいますか、そういうふうなことを何とかしてやっぱり改めていただかなけりゃならぬじゃないか。  特に健康保険の点数の中で、一点だけ大事なことを申し上げますけれども、この休日診療について健康保険のあれが非常に少なかったんでございます。それがこういう問題が大分大きくなってから、たしか昭和四十九年だと思いましたけれども、結構、相当この部分だけは上がったんでございます。しかし、その上がったというのが、日曜日にやっている人がだれにも上がったんじゃなくて、公に認められているいわゆる休日急患診療所とか、公に認められている当番医のところだけしか認められない、そういうことで神奈川の中でも、それまでは地域の人々のためと思って日曜、実は午前中結構やっていらした方もあるんですけれども、本当にこれは結局常態として日曜に診療しているというんじゃ認めないというんですね。余りばかにしているということで日曜診療をやめてしまったという人さえあるわけでございます。そういうふうな矛盾がたくさんあるわけでございます。  あと一言医者の方の問題として、先ほど恩地先生が専門医のお話をなさいましたけれども、確かにおっしゃるような特別な専門医も必要なんでございます。だけれども一方において、やはり医学、医術の進歩について、それは確かにいろいろ分野が分かれているから専門化せざるを得ないんだけれども、まあよく病院でもって夜の専門医がいないからというふうに断わられたというふうな話ございますね。そういうことを考えますと、余りに全部が専門医化しちゃっても困る。アメリカでは最近プライマリーケア、初療というふうな日本語になりますか、が大分叫ばれまして、つまり内容専門化した一般医というふうな問題でしょうけれども、その養成が大分盛んになって、そういう人が大分出てきたと。これは先ほどの恩地先生の方の救急医療のあれもその分野の一つに入るのかもしれませんけれども、日医の武見会長もその必要を唱えておられますけれども、確かにこの問題を医学教育あるいは再教育の過程でぜひ取り入れることがやっぱり必要な問題ではないかというふうに思うわけでございます。  その次に、大体先生方のお話でもってある程度出ておりますけれども、開業医が救急あるいは休日診療に実際にどのように参加しているかということですね。こういう苦しい状態にもかかわらず、実際には相当参加しているんだということで、少し資料古くて五十年四月一日現在のあれでもって全国の休日急患診療所を百六十七カ所ですね、現在もっとふえておりますけれども、この百六十七カ所というのはもう全部一〇〇%開業医が実際に診療を行っているわけでございますし、それから救急告示施設、それから休日夜間急患センター、これは五十年の十月の統計ですけれども、全国に四千七百四十一、そのうちに病院が二千九百二十、診療所が千八百二十一あるそうでございます。そのうちの病院の二千九百二十のうち私的病院が二千百十八、約七二・五%でございますね。それから診療所の千八百二十一のうち千八百十七、九九・八%、ほとんど一〇〇%が開業医が実際にはやっているんだと。そういう特別な施設以外にも、前よりもちろん少なくはなりましたけれども、実際われわれは結構うちにおりますときには、日曜でも夜間でもいろいろ患者さんの急患のあるときには診察しているんだと、それだからこそいまこの程度でもって済んでいるんだという、少し言葉が変かもしれませんけれども、そういう気さえいたします。  最後に、私時間も大分たちましたので結論的なことを申し上げますけれども、保団連としては救急医療問題についてはさしあたり三つの問題を主張しているのでございます。第一は国や自治体の責任による救急休日医療体制の実現ですね。第二には協力するやっぱりわれわれのような民間医療機関に対する適切な補助がどうしても必要であると。第三には、特にいま問題になっている第二次、第三次の応需医療機関をぜひやっぱり国や自治体の責任でもって整備していただきたいと。この第二次、第三次応需の問題がいま非常に各地でも困っておりまして、うまくいっているところももちろんあるんでございますけれども、こういう病院診療所とのとかく日常的に競合する関係がややもすれば多いんでございます。そういうことなしにやはり患者を取りっこするといいますか、部分的にはそういうところもあるんでございますけれども、そういうふうなことでなしに本当に密接な連携のもとに、やはり救急の問題でもそのような二次応需、三次応需の医療機関病院をどうしても建てていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、あと私は冒頭にも申し上げましたような、やはり根本的に解決するためにはやはりどういう問題が必要かということを改めて申し上げると、ダブるようでございますけれども、最初に申し上げた人口の偏在化とか都市の過密化というふうなことがどうしても問題があるんじゃないか。それからいま労働環境、生活環境、そういうあらゆる場において健康を障害する原因が、これはもう具体的に言えば切りがありませんけれどもいっぱいある。それからさらに先ほど申し上げたように、いろいろ病気になってもなかなかかかれない、かかりにくくする、治りにくくするいろんな要因、こういうものをやっぱりこれは企業ともども考えていただかなければいけないんじゃないか。やはり医療体制全体に病気になってからじゃなしに、ややもすると病気にかかってそれを悪くするというふうなことがいまの現在でございますけれども、そうじゃなくて、もっと予防に力を入れるということがやはり基本でございますし、それからやはり悪くなったら治療手段を保障するところのいまの健康保険制度ですね、これはもちろん国民健康保険も共済組合のあれも含めてですけれども、やはりまともに医療ができるような、あるいはわれわれ医師看護婦医療従業員が本当にその仕事を喜んでできるような条件の整備、具体的に言えばやはり診療報酬の引き上げ、これを国庫負担でもってぜひ早くやっていただきたい。これについてまた詳しく申し上げると長過ぎますから、まあそういうふうなことをやっていただきたい。それで、やはりそういうことをやるには基本に国の社会保障重視というふうな、福祉や社会保障を重視するような政策をどうしてもこういう不況のときこそとっていただきたいということでございます。  結論として、言うまでもなく命ほどとうといものはないのでございますから、それでまた医療というものは、そういうことを申し上げちゃ何ですけれども、本来金がかかるものだというふうに私は思います。
  40. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) 佐羽参考人、申しわけありませんが結論に近づけてください。
  41. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) はい、もう終わりでございます。  それを経済だけで割り切ることということは非常に間違いであるのじゃないか。冒頭に申し上げましたとおりに、救急医療の問題は医療の諸矛盾の噴火口である。これを適切な解決の方向をとることができれば、一般医療の諸矛盾を解決する方向に向かうことができるので、ぜひそういうことでもって先生方の御努力をいただきたい。逆にもしこの救急医療問題を適切でない解決の方法をとることによって、いまの医療の荒廃と言われる現状がもっともっとひどくなる危険性があるだろうということを私は考えるわけでございます。  以上でございます。
  42. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。  次に井上参考人にお願いいたします。
  43. 井上文男

    参考人(井上文男君) 私、全国消防長会の救急委員長を仰せつかっております川崎市消防局長の井上でございます。  それでは初めに消防におきます救急業務の概況から御説明をいたしたいと思います。  昭和五十一年の十月に自治省消防庁で発行いたしましたところの「救急救助業務の現況」によりますと、昭和九年にわずか二市のみで発足いたしましたのが、今日では逐年増加の道をたどりまして、特に被救急者の搬送が消防の業務として法制化されました昭和三十八年以降の整備強化は、まことに顕著なものがございまして、当時の昭和三十八年を一〇〇といたしますと昭和五十一年の指数は実に一二三六というふうに大幅な伸びを示しておりまして、現在全国二千六百四十六市町村、八百六十六消防本部におきまして二万九千百三十一人の消防隊員が三千百二十三台の救急車をもってこの業務を遂行しておりまして、今日ではわが国人口の九五・六%をカバーするまでに至っております。  救急車の出動件数を見てみますと、昭和五十年中では約百五十四万件に及びまして、これは全国で一日当たり四千二百十三件、約二十一秒に一件の割合で出動しておりまして、今日ではすでに国民生活の中に深く定着している業務であるというふうに思う次第でございます。以下、こういうような問題を踏まえまして、御要望を含めながら二、三御意見を申し上げたいと思います。  まず第一点でございますけれども、救急医療体制整備についてでございます。救急業務における医療という問題と搬送というものは一体でなければならないわけでございまして、この相互の緊密な連携の中にこそ、その効果が期待されるものでございます。救急に関する目下の最大の問題点は、ただいまもるるお話がございましたが、救急医療機関の確保が著しく困難な現況でございます。そういう意味で消防機関の搬送体制整備に比較いたしまして、そのバランスを欠いていることであります。このため、救急隊が患者を早期に救急車に収容いたしましたにもかかわらず、受け入れ先医療機関を探すのに時間がかかることがありまして、いわゆるたらい回しなる表現をもって大きな社会問題となっているところでございます。その解決策といたしまして、三つほど御配慮をちょうだいいたしたいと思うわけでございますが、その一つは、救急医療機関の適正配置についてであります。今日、救急医療を行う医療機関は、必ずしも救急告示病院のみではございませんが、仮に救急告示病院等の配置を見てみますと、都道府県によりまして著しく偏在化を示しております。救急病院一カ所当たりの人口は平均で二万人でございますけれども、密度の高いところでは三千五百人に一カ所があり、逆に低いところでは人口六万人について一カ所というところが見られるのでございます。一方、小都市の中におきましては、十分な救急医療を行い得る医療機関がないために、重症の者を救急車が数十キロも搬送しなければならないというような、これはたらい回しとはまた別な問題を抱えて苦慮している実情でございます。したがいまして、救急医療を円滑に行うためには、救急医療機関の適正な配置がぜひとも必要でございます。このため、二次及び三次救急医療機関については、地域医療の基幹となる総合病院中心にいたしまして、義務的に地域の救急医療に当たるべきことを制度的に明確化さしていただきたいと思うものでございます。  次に、一次医療機関につきましては、これは各地域の実情に応じまして救急業務関係者による協議会等を通じてその適正配置を推進することで可能であろうと思うわけでございます。  二つ目は、公的医療機関救急医療への参加についてでございます。これまた、すでに各参考人からもお話がございましたが、今日、国立及び公的医療機関救急病院への参加というのは、割合が非常に低率でございます。民間を含めました全救急病院のうち、これらのものは約二八%を占めているにすぎないのでございます。しかし、実質的にはこれらの公的医療機関というのは、大規模かつ高度な治療能力等を持っておりまして、地域医療の中核的な存在として大きな役割りを果たしているわけでございますので、特に救急医療機関の体系化を進めますにあたりましては、二次及び三次救急医療の機能は主としてこの公的病院に依存するところが非常に大きいところでございますので、これらの公的医療機関にありましては、ぜひともはっきりと、これは救急医療の役割りを果たすように義務化をさしていただきたいと思うものでございます。  それから三つ目は、救急病院等の育成強化についてでございます。昭和五十年中に搬送いたしました救急患者のうち、約七〇%は救急病院等に搬送しておりまして、またたらい回しに遭ったという患者につきましても、その七二%はやはり救急病院等に搬送しております。このように、救急病院等が救急医療に果たす役割りはまことに大きいものがございますので、一層積極的に協力ができますような環境を形成をしていただきたい。救急医療の不採算性につきましては、すでにいままで各方面で論じられております。いつ発生するかわからない患者のために専門医、パラメディカルスタッフを待機させたり、あるいは医療設備、空ベッドを用意しておくというような経費、これが患者に転嫁させるということは、これは容易にできることではございませんので、いわばこうしたようなスタンバイコストは、挙げて国において十分な財政措置を講ずる必要があると考えるものでございます。  幸い、厚生省並びに自治省、消防庁におかれましても、私どもの要望を御理解いただきまして、本年あたりは大変な予算面で御努力をいただいている次第でございますけれども、一面、非常に地方財政の逼迫しておる自治体におきましても、補助金だとかあるいは協力謝礼金、報償金、貸付金等の財政援助を行って懸命な努力をしている次第でございます。そういうことを踏まえまして、今後ともさらにこういう救急病院等が充実強化されますように一層の御努力をお願いするものでございます。  大きな第二点といたしましては、救急医療情報収集体制整備についてであります。今日、この方式には厚生省方式と消防庁方式の二つがございます。私どもの申しますのは、従来からすでに消防機関におきましては自分の管内の病院状況というものは全部把握してまいっているわけでございます。消防庁でやっておりますのも大体そうしたものを広域化していくという考えでございますが、いわゆる厚生省でお考えの非常に広域的なものにつきましては、いわゆるコンピューター導入のシステムでございますけれども、必ずしもうまく運用されていない向きも実は私ども拝聴しておるわけでございます。と申しますのは、端末の医療関係から正確な情報が入ってこない、あるいは最初は総論でございますから総論には賛成いたしましても、その後、月日がたつに従って各論的な問題になってくるとまあ不在にしておこうとか、そういうようなことで、なかなか有効適切な運営がなされていないという経過がございます。そんな意味で、実は私ども消防機関と医療機関とは古くからいろんな関係で対話もございました。そういう意味で人間的ないろんなつながりが必要ではないだろうかという気がするわけでございます。そういう意味で、私は消防庁の方式による情報収集体制整備を推進をさしていただくようにお願いをいたしたいというものでございます。  第三点は、救急大事故対策についてでございます。七ページに過去の事例をちょっと掲げてございますけれども、今日、新幹線や高速自動車道路等が全国的に非常に伸びてまいりまして、高速大量輸送時代を迎えましたわけでございますが、この通過市町村における大事故が発生いたしましたときのことを考えますと、まことに寒心にたえないのが実情でございます。このようないままでの過去の事例からいたしましても、大事故発生時には、まず医療機関における受け入れ体制の確立、医師看護婦の動員計画の整備を初め、救急資機材等の確保等々いずれも重要な課題でありますので、国におかれましてもこれらを踏まえまして大事故対策を早急に積極的に推進をしていただきたい、かようにお願いをいたす次第でございます。  それから第四点目は、救急車の正しい利用のあり方についてでございますが、たとえば昭和五十年中に搬送しました約百四十八万人の患者のうち四七・八%が軽症者でございます。これはこの数字が必ずしも救急車を必要としなかったと言うわけではございませんが、一面、今日では救急車のタクシーがわりや、あるいは救急車によって搬送されますと、他の外来患者に優先して診察が受けられるというような誤った利用も認められるところでございます。こういうことにつきましては、国におかれましてもいろんな広報媒体を利用いたしまして、救急医療知識の住民への普及、救急車の正しい利用の徹底を呼びかけていただきたいと思うのでございます。  以上、るる申し上げましたが、私ども消防機関といたしましても、たとえば救急隊員が必ずしも十分な教育を受けてない面があるとか、あるいは無差別な搬送をするというような御指摘もございますので、十二分にこれらの御叱正を素直に受けとめまして、今後ともますます救急業務が円滑に運用するよう努力をいたしたい所存でございますので、何とぞ御理解と御協力を賜りますようお願いを申し上げまして、陳述を終わらせていただきます。
  44. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の陳述を終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑に入ります。
  45. 片山甚市

    ○片山甚市君 初めに、井上参考人にお伺いするんですが、いまお話しをいただきましたように、救急白書、報告書でも、一番の問題はせっかく患者を運んでも診療していただけない、転送を余儀なくされるということは多くの場合指摘されていますが、その場合、処置困難とか医師不在と言われることについては、それはそうだなと、もっともだと思われておるか、これは先ほどのお話のように、解決する方法を具体的に求めるか、これについてまずお伺いしたい。  二つ目には、搬送の立場から見て、医師の確保が困難な現状であると考えた場合、そのための現実的な解決策が求められますが、当然圧倒的に多い開業医、先ほど佐羽参考人からもお話がありましたが、開業医を含めた医師の積極的な協力を求めなきゃならぬと思いますが、その求め方について消防機関としての御感想をいただきたい。そういうような上に立って、当面考える具体的な解決策として、御提言でもございますが、搬送先における応急措置が可能な手段あるいはドクターズカーというようなことで、医師が同乗する救急車の配備を急ぐ必要があるんじゃないか、そういう体制を整えるための、いわゆる政府の体制をとらなきゃならぬと思いますので、それをまず一くくりにして井上さんにお伺いします。  次に、佐羽参考人にお伺いいたしますが、ただいま井上さんの方の御発言にもありましたように、いわゆる医師の積極的な御協力を求められておると思いますし、まず医師立場から言うと、人道的立場に立っていわゆる御協力をする、こういうようにも言っておられるようでありますから、救急車への医師の同乗が、いわゆる乗っていただけるということが一つの早道——先ほどのお話によると、事故を起こしてから三十分の間に四〇%ぐらいの人が命を失う、こういうことになっておれば、なおさらそういうことが必要だと思うんですがどうでしょう。そして、あなたがもしそういうことで医師の同乗を求められる、乗っていただきたいと言ったら、あなたは乗られるでしょうか。これが一つです。  二つ目には、二月十四日の医療審議会の答申で、公私を含め総合的な国民医療体制づくりが焦眉の急だと言われている。公の問題は先ほどから行政責任体制を明らかにする緊急医療の問題が明らかにされましたし、特に医師会、日本医師会や保団連からも要求や提言があることは御承知のとおりです。それで、公私の私の方です。私のお医者さんの方、医師の方自身はどういうことを求められて、医師はどのようにしたいと思っておるのか、医者立場からのお答えを願いたい。国民にもおっしゃっていただいておりますから、この際その点について明確にお願いする。  先ほど、午前中のお話でございましたが、三つ目で、昨年、国民春闘共闘会議で調査団が編成をされて、六県にわたって広範な医療問題調査が行われました。本年の三月、その報告書が発表されましたが、その中で、現行医療制度による医療荒廃の原因は何かという設問に対して、四六・九%、大阪では四九・一%、日本医師会の姿勢をいわゆる医療荒廃の原因に挙げています。その一方で、医療に対して期待するものとの設問に対して、開業医の増設ということについては、わずか〇・九%です。これが示す地域において、果たして医師患者との間に信頼関係が存在するとおっしゃるのでしょうか。それはどういうことか。佐羽先生は先ほどから相当地域でめんどうを見ておられるようで、人間関係もあるようでありますが、大体この数字は間違いだろうか、こういうことについてお伺いします。  その次に、これも午前中でお伺いしたことですが、いま市民運動として大きな盛り上がりを見せておるところの大阪の救急医療条例化直接請求についてでございますが、救急医療の実態が非常にむずかしい状態である。こういうことから、医師会の方も御承知のように、いつでもどこでもたれでも費用の心配なくよい医療を受けるために、医療制度確立を図ろうと、こういうふうにおっしゃっておると思います。しかし、その現状は、救急医療の場合は一般診療以上に、救急医療であるだけに人間の生存権を擁護する立場から、先ほどお話がございましたけれども、一般医療が十分でないから救急医療だけを切り離すことはできない、こうおっしゃっておるんですが、そのこともわかりますけれども、しかし、救急医療は緊急性のことでありますから、そういうことでいわゆる社会連帯というようなことから、いわゆるこの大阪における救急医療条例化の直接請求について、いわゆる御賛成をしていただきたいと思いますが、御賛成されるだろうか。  二月二十三日、大阪府医師会はこの運動に反対する趣旨の声明書を発せられた。それは、先ほども申されましたように、いわゆる医師の応招義務のことについて触れておられます。このことについてですが、保団連に関係する保険医協会からも、二月の二十日前後に大阪府医師会に対してこの運動に反対してほしいとの申し入れがなされたと聞いておるのですが、そのようなことがございましたか。もし、その理由はあれば何でしょうか。  その次に、五つ目に大阪府医師会の声明文に、法に強制される義務としてでなく、人道主義の立場から救急医療に積極的に協力すると書かれております。もっともです。言葉はりっぱです。具体的にはそれではそのことはどうされるんですか。先ほどからのお話を聞いておりますが、保団連としてそのことを医者立場から、医師会として要求でなく、おれたちは私たちはこうする、こういうことについてひとつお聞かせ願いたい。  六つ目に、法による強制は、法治国家として国民の合意の上に立って成立しているものと理解する。さらにこの問題で言えば、災害救助法二十四条あるいは医師法十九条に言うところの医師の応招義務がありますが、前の方は災害救助法の発動地域だけに限定されます。あと、先ほど一定の条件をといって自治労の参考人が言っておられましたけれども、いわゆる救急医療に対する第一次に対する応招義務、こういうものについて医師会の方から、また保団連の皆さんから、第一次を何としても門前払いだけはやめておく、それでどこへ行ったらいいかと言えるような医師をつくる、医師会として保団連としてはどこへ行ったらいいんだ、すぐに言えるぐらいのことは、医師会の名誉にかけても、どこへ行ったらいいかわからぬ、わしはわからぬ、こういうことを言うことは専門医者としては今後はしない、こういうふうな立場をとられるのか。それとも、やはりシステムができるまでは余りそんなことは言えない、わからぬ、こういうふうにされるのか。先生は、専門医だけでなくて全体のことがわかるような受け取り方をしたい、こうおっしゃっておるんですが、このあたりについての先生の御意見、また保団連というよりも、その点についてはそうお聞きしたい。私は、当番医制度をとってみても、いわゆる十分にできると思いませんから、そういうことを申し上げました。  そういうことで、人道主義の立場に立つというお医者様の立場ならば、国、地方自治体に対する要求は当然でありますけれども、先生がおっしゃるように、医療を受ける人、患者といいますか、医療の被害者というような人たちと市民と一緒になって運動してよくしていくのが、保険医団体などというものの果たす役割りとしては非常に大きい社会的に意義があると思いますが、私がいま質問しておるのは、大阪における直接請求の問題について、医師の応招義務について当然法律でなくても人道的にやると言われるんならば、それはどういうような形で実際やられるのか、こういうことについてお伺いし、お話をいただきたいと思います。  以上です。
  46. 井上文男

    参考人(井上文男君) 私、三点の御質問でございますが、まず医師が不在の場合や手術中の場合の救急隊はどう動くんだということでございますが、これはその前にやはり情報処理体制の問題があろうかと思うわけでございます。そういう場合には消防機関に必ず通知をしていただく。そうしますと、先生の動き方というものがよくわかりますので、あらかじめそれは排除して他の機関に搬送するということができますので、そういう意味で、あんまりコンピューターシステムということよりも、私どもでやっておりますところのワンタッチ電話による通話でございますけれども、そういう人間関係がやはり間に必要ではなかろうかということを申し上げたのでございます。この辺がいわゆるコンピューターになりますと、いかにも機械に操られているというような感じをお持ちなのかどうか、なかなかその辺がうまくいかないということを私はネックとして先ほど申し上げたわけでございますので、私はいま川崎の消防等でやっております方式を推進をしていけば、これはある程度防げるというふうに考えております。  それから第二点目は、医療機関の協力体制の問題でございますが、これはいろいろとその地域の実情もあろうかと思いますが、川崎市におきましては昨年の七月に救急告示医療機関協会というものを発足さしていただきました。これはもう絶えずそういう協会と私ども消防機関が、常に対話をしながら運用をしていくという姿勢のものでございまして、大変うまくいっております。本年もこの協会に対しまして四千四百万ほどの補助金を出すことに相なっております。この協会のほかに、先ほども申し上げましたように、必ずしも救急告示病院のみでなくお世話になる場合がございますので、これには川崎市医師会も参画をしていただいて、この辺の十二分なエアポケットがないような手はずを整えているわけでございますが、これはあくまでもその地域、地域のそういう各担当者間の熱情なりそういうもので処理するほかないんではないかというふうに考えております。  第三点目は、ドクターカーのお考えでございますけれども、これは実はもう私ども将来の救急車というものは必ずドクターが同乗して行くような形に持っていくべきではないかというふうに考えているわけでございます。これはたまたま先ほどお話しの中に、ソ連のいわゆる航空機事故のときの処理の問題が出ましたが、ソ連では全部医師が同乗しております。そんな形に当然に持っていかなければいけないというふうに考えておりますが、御案内のような今日医師不足の折からでございますので、私どもではこの補助的なあるいは補完的な意味でオンコール方式で先生をお願いをいたしまして同乗していただくという方向づけで、ただいまのところそのネックをカバーしているというのが実情でございます。  以上でございます。
  47. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) 第一の問題は、ただいまの消防の方への御質問と同じような救急車への医師の同乗についての意見でございますね。それは私も実際、実は私、川崎の北の方でもって最近できました聖マリアンナ医科大学付属病院ですか、大きなものがございますが、そこに私の同窓のあれがたくさんいるというふうなこともございますし、非常に電話をかけておくと快く受け入れてくれるというふうなこともございまして、もちろんケース・バイ・ケースですけれども、救急車の中でも危険性のあると認めた場合には、去年も数回、患者さん全部ほったらかして、外来の患者さんは非常に迷惑ですけれども、同乗して行っております。その帰りにまたついでにもう一人頼むなんて言われたこともございます。ということで、現在私も含めて大方のお医者さんは、やはり御自分の判断でもってどうしてもこれは必要だという場合にはやっておられる方が多いと思います。しかし、先ほどから申し上げましたような、第一線の開業医の実情からいたしますと、すべての救急車に同乗するということは、これはもちろん医師だって人間でございますから、最初の判断があるいは間違っておって、軽いと思ったのが途中でもって重くなるということもそれはあり得ることと思います。ですから、やはりこの同乗ということは、私も必要だと思います、いかなる場合でも。だけれども、いまの第一線の医師実情からしますと、すべてのあれに乗るということはちょっと無理だという意味から、やはり救急車に同乗するということについては、国や自治体から何分の御配慮がどうしても必要じゃないか。あわせて私、私見でございますけれども、大変署長さんには申しわけないんですけれども、やはり救急医療というものが消防法の方だけで規定されてしまって、消防署が実際には一生懸命にやっていらっしゃるということは、私も同乗しながら消防隊員のいろいろな誠意に打たれるんでございますけれども、それはありがたいんでございますけれども、やはり国の責任としましては、これはぜひしかるべき部門を別に設けて、救急としての部門を別に設けて、そういうところの所管において、救急車もそっちの方の所管にし、したがってまた、救急車に同乗する医師なり看護婦等の手配もそっちの方でするというふうなことですね、そういうことがやっぱり必要じゃないかというふうに思うわけでございます。  二番目は、公私を含めた総合的な国民医療というのが、制度審議会ですか、何かの審議会でもってそういうふうな案が出ておるということに対して、そういう総合的なということについて、開業医師として何を求めるかというふうなお話でございましたか、そうでございますか。
  48. 片山甚市

    ○片山甚市君 お医者様としてどういうような総合的な国民医療体制をつくるときに協力するおつもりでございますか。
  49. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) はい。私は、あくまで第一線開業医の立場から申し上げるんでございますけれども、やはりいまの医療が、先ほども申しましたように非常に進歩しておりまして、広く深くなっているということから、一部の人間だけでもって絶対に賄い切れるものじゃないということはもうはっきりしております。そういう意味で、やはり公私、あるいは病院診療所等の密接な連携がどうしても必要であって、また、それぞれが分に応じたあれがございますから、小さなところでもって——日本は非常に欧米から比べて、いわゆる欧州のGPというふうな内容から、ゼネラルプラクティショナーですか、ああいう内容から比べると重装備でございます、われわれの第一線のあれは。それでも最近は非常に医学の進歩につれて医療機械などの進歩した複雑なものもできておりますから、そういうものを何もかも第一線のあれでもってやる必要は毛頭ないと思いますし、それぞれ分に応じてそういうものをやって、それをやっぱり緊密に提携し合って国民医療を充実していくという方向があくまで必要であろう。ただ、現在はややもすればそれが競合体制にあるということは部分的にはあり得るので、それは非常に遺憾であるというふうに思いますので、それを何とかしてやっぱり直していかなければいかぬというふうに思うわけでございます。二番目、それでよろしゅうございますか。  三番目は、何ですか、総評の調査団の方で各地でお調べになったところでは、医療荒廃の原因が日医の姿勢にあるという意見が非常に多かったと。それからまた逆に、開業医をふやすということの意見は非常に賛成が少なかったと、こういうことでございますね。それに対しての私の意見をということでございますね。  それで、私もちろん、最近は医師会の役職はもう退いておりますけれども、日医の会員でございまして、日医のいろいろなことについては古いことから大分いろいろ知ってはおりますけれども、日医についてのいろいろな問題をここでもって詳しく述べるという場でもないでしょうし、時間もございませんので、ただ救急医療の問題に限って私申し上げますけれども、去年の六月ごろでございましたか、この救急医療の問題が問題になったときに、武見先生が、何でしたかな、あれ、言葉としてはよく覚えておりませんけれども、いまの第一線の医者はそういう救急医療についてよく知らぬのだと、たしかそんなふうな内容じゃなかったかと思うんですがね。だから、そういうあれに任せるのは、というふうな国の方針は国民を欺瞞するものであると、たしか、丸茂先生いらっしゃるから、間違ていたら正していただきたいと思いますけれども、どうも武見先生は武見先生で、われわれ第一線の開業医は先ほどからも申しましたとおりに、実際に苦しいながら、幾ら不採算でありながら、できるだけのことはやっぱりやっているつもりなんでございます。そういう意味でもって、何かわれわれ確かに先ほどもまた申しましたとおりに、もちろん救急医療についてだれもが最初のベッドサイドといいますか、いわゆる初療の段階でもって武見さんの言われるようなあるいは判断、こういう症状が出たらこんなふうにひどくなる危険性が何%あるとか、そういう見分ですね。鑑別といいますか、見分け、それがだれもが非常に有能だとは思いません。その点については先ほども申しましたとおりに、やはり医学教育やそれから再教育の段階で、先ほど恩地先生もいろいろ言っていらしゃいますけれども、われわれのたとえば医師会でも保険医協会でも、そういう講習会とか勉強なども足りないながらも一生懸命いたしております。そういうことでやっておるのだから、そういうふうに武見先生に言われると、何かわれわれのせっかくの意欲がそがれるような気がいたします。これは私自身の個人の偽らざる心境でございますから、医師会のほかの先生はどう思っていらっしゃるか、それはわかりません。  それから、開業医のふやすことについて意見が少なかったと、それについてどう思うかという御質問でございますけれども、これは私どういう調査の仕方でもってどのくらいの数をお調べになったか、全然存じませんけれども、たとえば東京都のこの間の都民の調査において、やはり主治医を持っているという方が、いまちょっ数字忘れましたけれども、相当な数にとにかく持ってらして、やっぱり地域の開業医を信頼していらっしゃるということが数字的に出ております。ですから、先生のおっしゃったいまのあれだけで私何とも判断いたしかねますけれども、私自身のやはり個人的な体験、あるいは私の身近な医師会あるいは保険医協会の仲間の皆さん方のあれでは、やっぱり第一線の開業医というのは、そう言ったちゃ失礼ですけれども、私もすでに川崎へ来て二十四年ですが、たちまして、本当に地域の人たちと冠婚葬祭にあれするくらい、あるいはちょっとしたことでもすぐ耳に入ってくる、看護婦を通じて入ってくることもありますし、そういうことで、本当に地域に密着しておって、やっぱり第一線開業医というのは非常に必要なんだと、特にこれは診療の場だけでなく、たとえば学校医とか地域の予防注射とか、いろいろな機会ございますけれども、そういういろいろな機会を通じましても、やはり地域の住民の方々と非常に密着している制度であるというふうに思います。実際私たちの周囲の方々は、それはいろいろなやり方ございます。けれども、何も患者さんにばか丁寧な言葉を使うとか、いらっしゃいませ、いらっしゃいませなんと言うんじゃなくて、本当にやっぱり医療内容として、患者さんのことを考えていろいろやっているんだということが、少したてば皆さんわかってくださるんですね。やはり、そう言っちゃなんですけれども、病院の勤務医の方は、やはりいろいろ私たちの知り合いにもございますけれども、その点ではやっぱり開業医とちょっと違う、また変わる方もございますし、病院によってそれも違いますでしょうけれども、そういう点で、私たちの経験では少なくとも第一線の開業医というものは、歴史的にもいままで日本の国民医療に果たしてきた役割りは非常に大きいし、今後もこれは非常に重大な日本の医療の柱である。ですから、こういう第一線の開業医が少なくとも先ほども私申し上げたような医療の荒廃というふうな、いわゆるリャンチャン医療、本当に私の家内なんかも、実は看護婦出身で十年働かしてとうとうぶっ倒れちゃいまして、半病人でいまおりまして、けれども、そういうふうな実情をなくすような、健康保険制度を初め、やはり国の御配慮をお願いしたいというふうに思うわけでございます。何といってもやはり医者患者の人間関係というものは信頼関係ですね、これは本当に大事だというふうに思いますので、そう特に申し上げます。  それから四番目と五番目の問題は、大阪の直接請求あるいは大阪府医師会のそれに対する回答というものについて、私、細かいことまでは存じませんけれども、救急は一般医療ともちろん切り離せないけれども、非常に緊急性があるんだと、そういうことで社会連帯性を持ってやらなければいけないから、応招義務について賛成かどうかと、ちょっとその点の御質問が、恐れ入ります。
  50. 片山甚市

    ○片山甚市君 いま申し上げたのは、大阪府医師会救急医療の条例の直接請求について反対だと言っておる。そのうちの条例化の五つの項目の中の三番目に、医師の応招の義務がある、それがあるので、それは国営化につながるから反対だなどと言ってますが、もともと人道主義に立ちたいとか、そんなことを言うなら、法律をつくらぬでも、実績つくってくれたらいいわけです。人道主義でやったらできると言っているが、法律を制定してもらわなければならぬ、こう思う。法律というものは痛めつけるんじゃないんですよ。それだけに、あなたがおっしゃるように、ちゃんと補償せよ、応招の義務があるかわりにちゃんと補償せよということですが、それについてはどういうように考えますか。
  51. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) 応招義務についての考えでございますね。法律化することについての考えでございますね。
  52. 片山甚市

    ○片山甚市君 応招義務について、大阪の医師会が義務化は反対だと。あなたもお医者さんでしょうから、それは困るんですかと、こう聞いている。
  53. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) 義務化を法制化することについて反対だと、こういうことじゃないんでございますか、大阪府医師会のは。私、よくその点の文言を存じませんですが。
  54. 片山甚市

    ○片山甚市君 そうすると、人道主義的な立場で、応招の義務がなくてもこれからどんどんやると、こういうことですか。
  55. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) はい。もちろんそういうつもりでおります。ただ、いまの何か私、文言はよく存じません、読んでませんから、大阪府医師会の。それを法制化するということにつきましては、やはりいまこれだけ私たちがやっているんだということで、これ以上何か一方的に義務化と、義務ということを法制化するということでは、せっかくの私たちの第一線の開業医の努力が、やっぱりやっている人の中にはちょっと何か金縛りになって、たとえばさっきの救急車の同乗じゃありませんけれども、全くほかの患者さんをほっぽらかして行かなければならないというふうなことも、全部義務づけられちゃうというようなことでは、やはりちょっといま問題があるんじゃないか。ですから、これにはたくさん問題があるということを先ほども申し上げましたので、法制化ということが第一義的ないまの問題ではないであろうということを私は申し上げたいというふうに思います。  それから五番目は何か同じような……
  56. 片山甚市

    ○片山甚市君 よろしいです。
  57. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) じゃあ六番目でございますね。第一次応招義務、どこへ行ったらよいかということについて、これについては、これはもちろんいま現在も、ほかでもそうでございましょうけれども、神奈川県でも医師会、保険医協会はじめ地域によってまだ充実度が違いますけれども、市民あるいは県民に向かって、どの地区ではどういうところでもってどういうことをやってもらえるというふうなことをだんだんはっきりさせるように努力しております。まだ万全ではございませんけれども、もちろんそういう体制がなかったら、これはせっかくつくったのが役にたちませんし、住民の方もお困りになるだろうというふうに思いますので、これをどんどんやはり国や自治体の御援助で、そういう応需体制整備して、それを明らかにするということは、当然必要だろうと思います。——よろしゅうございますか。
  58. 小平芳平

    ○小平芳平君 諸橋参考人にお伺いいたしたいと思いますが、自治体病院の不採算性といいますか、自治体病院が独立採算制でやっていくということにはきわめて現行制度では不備があるというような点、私もこの自治体病院の協議会の会合などにときどき出席をさせていただいておりますが、まず第一に、この独立採算ではきわめて無理があるという点、まして、この救急医療、この救急医療体制をとっているということ自体、これまた大変な赤字の原因になるという点、これらの点については午前中も再三指摘されましたし、また各方面で指摘されておりますので、繰り返すわけではございません。問題は、先ほどお述べいただいた「救急医療機関の整備方針について」、それから「救急医療体制確立対策について」という、この御提言が非常に重要であるというふうに私も考えるわけでございます。ということは、確かに国が財政援助すべきであるということは、それはもうきわめて必要なことでございますが、じゃ、予算さえふえればいいかということになると、やはりこの整備方針なり体制確立についての基本的考え方、どういうふうな整備をしていくか、そこがまた非常に大事であるというふうに考えます。したがいまして、この最後の方でお述べになっておられます「救急医療体制確立対策について」という項目の「一、現行の救急病院省令を廃し、救急医療に関する総合的基本的施策を立法化すること。」、この点についてお伺いをしたいのですが、午前中の参考人の方にも同じことを伺ったわけですが、この立法化するについて、項目的でも結構ですので、これだけのことはぜひ入れるべきだと、あるいはこれだけのことは考慮に入れて検討した上で立法化してほしいというような点をお挙げいただいたら幸いだと思いますので、お願いいたします。  それから、井上参考人にお伺いしたいのですが、搬送業務ということが大変まあ陰の力と言いますか、そういう表現がいいかどうかわかりません、当たっているかどうかわかりませんが、大変御苦労なさっていらっしゃることと思います。医師が同乗すれば一番いいのだがという先ほど御発言もございましたが、現状においてすぐ医師同乗ということが実現できないとすれば、やはり救急隊員がある程度の知識を持っているということが要請されていると思います。そういうようなところから百三十五時間の教育訓練を受けるということになっていると思いますが、それを受けた救急隊員は全国で約四〇%というふうに報告をされておられます。こういう点は、どうして四〇%でありますというふうになっておりますかですね、お忙しいとか人員不足とかいろいろな条件があってのことではないかと思いますが、その点少し御説明していただけばと思います。  それから、タクシーがわりの利用とか、それから救急車によって搬送されれば他の外来患者に優先して診療が受けられるといった誤った利用というふうに指摘しておられますが、こういう点については、国の役割りも国の責任も第一果たさなければならないのは当然でございまして、そういう点については私たちも努力したいと思いますが、実際第一線でおやりになっていらっしゃる井上参考人としまして、具体的にどういうようなことが考えられるか、そういう点、もう少し具体的な考え方を述べていただけたら幸いだと思います。以上です。
  59. 諸橋芳夫

    参考人(諸橋芳夫君) お答えいたします。  自治体病院の独立採算制の不備の問題でございますが、現在のところ公営企業法の十七条の二によりまして、一般会計が持つべきものと病院自体が持つべきものと二つに分けられておるわけでございますが、しかしながらその、高度不採算特殊医療については、その収入をもって足らないところは一般会計が持つように決められておるわけでございます。  しかし、それはその前に前提条件として診療報酬が適正であるということが前提だと思うわけでございますが、残念ながら診療報酬は、私どもから見ましたらきわめて不適正だと思うわけでございます。  ごくわかりやすく申し上げますと、たとえば入院料につきましても、国民宿舎の部屋代はたしか千八百円くらいだと思うんですが、病院につきましては部屋代は八百円でございます。また、給食にいたしましても、国民宿舎は二食でこれが千六百円、病院につきましては、特別食を加算いたしましても三食で千百円でございます。  このようなことから見てまいりますと、ごく簡単に考えても、病院が診療報酬だけでもって病院の経営を維持せよということは、大変またむずかしいのじゃないかと思うわけでございます。  なおまた、自治体病院にとりましては、確かに非常に赤字が大きくございますけれども、その手術につきましても、高度医療をやっております病院につきましては、たとえばこれは大阪府の府立病院が統計をとったわけでございますが、人工血管の移植術のようなものをやりますと、ドクターが七人に看護婦が三人つきまして、これは十二時間程度所要時間がかかります。そして、収益といたしましては、手術料、麻酔料一切合財ひっくるめてのことでございますけれども、これは三十三万六百七十円入りますが、しかしながらこの支出する方が八十万七千六百五十六円で、差し引きしますと四十七万七千円近くの赤字になります。このような高度医療をやるところは赤字でございます。  地方公営企業法には、このような赤字一般会計負担するように決められておるわけですけれども、しかしながら、明らかにこれは診療報酬で持つべきものはやはり診療報酬で持つべきものだと思うわけでございます。  同じような病院でも虫垂炎、一般に盲腸炎と言われている手術でございますが、このようなものにつきましては、ドクターが二人、看護婦が三人、手術が二十五分間で終わりますが、これは収支差っ引きましても約千三百九十六円の黒字になってございます。したがって、このような高度不採算特殊医療をやるようなものにつきましては、現在の診療報酬は赤字にならざるを得ないような組み方をされておるわけでございます。このような前提に立って、独立採算制を十七条の二により、しかもこの区分がきわめて不明確でありますので、不明確のところは地方財政がよろしいときには一般会計がまあまあ持ってやろうということでございますが、地方財政が不如意になってまいりますと、それは診療報酬で持ったらいいだろうということで公立のものが赤字になっていることでございます。  なおまた、この診療報酬を決める場におきましては、残念ながら国民の医療費の三〇%を占めております国公立の医療機関の代表一人も入ってございません。こういうことも非常に問題があるんじゃないかと思うわけでございます。  次に、救急医療赤字の原因でございますけれども、これにつきましては、先ほど診療報酬でもお話し申し上げましたように、診察料には、あるいは手術料には加算されておりますけれども、レントゲンを撮るとか検査をするとか、そういうものについては少しも加算されてございませんものですから、そのような方々の超過勤務あるいは当直料、こういうことから考えますと相当赤字になってございます。大阪府立病院につきましての統計でございますが、五十一年の十一月、つい最近のことでございますけれども、千円の収入を上げるのに二千四百二十四円かかっておるということでございます。もちろん、救急医療で収支を償っていこうということも、これもまた考え方としては、ちょうど消防車が火事を消してその金でもって救急隊を編成してやっているということば大変これはおかしいことでございますので、それはわかっていただけるんじゃないかと思います。  次に、私どもは先ほど申されました救急医療整備方針あるいは確立対策につきまして、立法化したらよろしいじゃないかということを言っているわけでございます。現在のところ一体救急医療責任というものはどこにあるのか一向にはっきりしないわけです。残念ながら、自治体病院につきましてもある程度その病院の善意に、好意に甘えておるようなことでございます。私は全国自治体病院協議会の会長でございますが、救急医療というのは民間よりは公的に責任があるんだと、特に地方自治体の住民の要望によって建てられた病院にはより責任があるんだから、毎日やれる病院は毎日やれ、やれない病院につきましては二つ、三つが一緒になって週の二回でも三回でも、あるいは休日の一日でも当番制でもってやるべきものであるということを指導しているわけでございますが、残念ながら先ほど申し上げましたように医師が足らないとか、あるいは告示を受ければ、民間の者はどんどんどんどん来ておまえ告示を受けているのに何で診てくれないかって、こういうふうな権利ということが国民が主張するような現状もあるものでございますので、残念ながらなっていないわけです。私は立法化するにつきまして、まず救急医療責任はどこにあるかということをはっきりしていただきたい。  それから、救急医療を完全にやるためには人と物と金でございます。この人を一体どのようにやってくれるのか、残念ながら設備は整いましても医師は集まらない、看護婦が集まらなきゃ動きません。それは確かでございます。大学病院には国立を引っくるめてたくさんの医師がおります。一体この人たちをどのような教育をするのか。国費でもって養成された人間が勝手なことをやってよろしいという理由はないと思うんです。国立を初め民間の私立の医科大学におきましても相当の国費は導入されてございます。この人たちの一体教育をどういうふうにするのか。新しくできます、文部省の指示によります、一府県一医大の構想によります新設の医科大学は六百床で押さえて、二百床を関連教育病院でもって救急医療を初め教育する、大変これは結構なことだと思うんです。そういったところの方々をこの第一線の立法化された病院によって救急医療を教育するようにすれば私は相当の成果が上がると思います。また、国立大学の国費を投じて教育されたドクターにつきましては、やはり立法化された病院について救急医療を何年か勤めるという義務を立法化してやるべきものだと思います。人は直ちに集まるはずだと思います。  次に整備でございますけれども、これを病院自体の収入の中から、あるいはまた地方自治体だけからこれを収入をもって充てろということは、これは大変無理じゃないかと思うわけでございます。救急医療につきましては、先ほど申し上げましたように、自動車災害保険の点数の単価は一般には平均十八円でございますけれども、民間によっては三十円、四十円、公立でも二十円あるいは十円のところもございます。こういった単価を勝手にやらしておくということは、非常にこれは不合理じゃないかと思うんです。自動車保険のようなものはこれは救急でございます。そこの財源があるならば、ことにその救急をやってないような大学病院に対しましてはイミスキャンのような何十億というような金が助成されてございます。そういうものを立法化された救急医療機関に助成するようなことも一つのやり方じゃないかと思うわけでございます。  次に金銭的なことでございますが、初めのうちは多少の赤字でもやれますけれども、長い間のやはり赤字になりますとどこもまいってまいります。このようなものはやはり地方自治体、国あるいは国民の寄付とか、そのような形でもって補うようにしていかなければ、長いあれは続かないんじゃないだろうか。あるいはドクターにつきましても、救急に携わるドクターにつきましては年金制度を確立してやるとか、あるいは給与の加算があるとか何らかの方法でやれば、私は国がやろうと思えば必ずこれはやれることだと思いますし、また現在の情勢におきましてはぜひともこれはやっていただく必要があるんじゃないかと思うわけでございます。  以上でございます。
  60. 井上文男

    参考人(井上文男君) 私に対する御質問二点ございましたが、最初は、救急隊員のいわゆる消防庁が期待しているような教育が四〇%しか受けてないという点についてでございます。この点につきましては、いろいろと原因があるわけでございますが、もう率直に申し上げられますことは、こういうところは大体小都市消防でございます。人員的に余裕がないために学校に派遣ができない、旅費もないというようなところが一番大きなネックになっていると思います。それから、元来法制的には三十八年からできたわけでございますが、都市はほぼ中都市以上のところが政令指定を受けまして救急の義務化になったわけでございますが、その後追加指定を受けましたところが未教育の者がいる。ただ、未教育のままで、しかも義務化されたから救急隊を運用をしなければいけない。はななだしいのは、救急隊そのものが専従でなくて、いわゆる消防隊員等を兼ねまして、火事のないときには救急車に乗っておるというようなところすら実は全国の中にあるのが実情でございます。  そんな実情を踏まえまして、ここに書いておりますように、私どもでは、これは内部的にもわれわれの自主的な努力でもってレベルアップを図る必要があろうかということで、今日実はここにお見えの恩地先生にも救急教本というものの、これは救急隊員必携書とでも言うべきものでございますけれども、現在編集に取りかかっている段階でございます。これは少なくとも救急隊員である以上は必読して実務に生かしてもらいたい、そういうような願望を持って計画をしている最中でございます。  それから第二点でございますけれども、救急車の正しい利用についてのPRの具体的な方法はどうだという御質問でございますが、これはもう私どもは絶えず新聞のキャンペーンを張りましたり、あるいは、私どもにとりましては市政便り等をもちまして、紙面に懸命なPR活動を続けてまいっておるわけでございますが、必ずしも全国的にはそうでないところもあるわけでございます。そんな意味で、たまたま先般も新聞に出ましたように、大蔵省においては今度民放を借り切って国家のいろんな仕組みやら何やら放送するというようなことも言われております。そうした中で、ぜひひとつ国家事務のあり方として、こういうようなものを国としてそうしたPR活動をしていただきたいというのが具体的な願望でございます。
  61. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは最初に恩地参考人にお伺いをしたいんですが、先ほどのお話で、現行制度というのが交通事故の救急対策ということが中心になって、現在のいわゆる救急医療の中で、一・八%になっておる交通事故対策中心施策になっておるというふうにお話しをいただきました。   〔委員長退席、理事浜本万三君着席〕  で、私は現状救急患者、つまり急病ですね、そういったものを含めまして対策が急がれなければならないというのが大変な問題になっておるわけですが、特に一つお伺いをしておきたいと思いますのは、厚生省でも救命救急センター、第一二次ですね、それを今度八十七カ所ですか、全国に張りめぐらすというふうな計画をお持ちなんですけれども、特殊高度医療が要求されると思うんですが、そういった点での人的資源の保証の点はどうだろうかというのが一つの心配の点です。  それから同時に、救急医療の問題というのが医師医療機関その他でさまざまな議論が出てきておりますけれども、一つは医学教育の中で救急医療に対する教育システムですか、制度とか体制というのがないというのが一つの欠陥になっていはしないか。そういう点で、大阪大学で御苦労をいただいておる恩地参考人にお伺いをしたいんですが、私は大学に少なくとも救急講座、救急医療講座などの制度化をどうしても必要とするのではなかろうかというふうに思うのですが、それが直ちにいかないまでも、少なくとも救急医療部門というふうなことで、大学を卒業する医学部の学生たちがそういった点での基本的な教育を受けられる制度というものをどうしても確立する必要があるように思うのですが、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。  それからその次には、自治体病院の諸橋参考人にお伺いをしたいと思いますが、これは公述の内容、その後の質疑に対する御見解で私ども非常によく理解をさせていただいておるわけでございますが、一つだけお伺いをしたいのは、特に自治体病院というのは各地域の基幹病院的な役割りという点では住民の期待が非常に高いわけです。そういう点で、現状では告示病院の指定というのが約半数程度しか受けておられない。特にそのためには専門医等が整っていないというふうな問題もあるということの御意見をお述べになっておられますが、そういった点の整備をするために医師を確保するということが困難なのかどうか、困難がありとすればどうすれば解決ができるのか、これは基幹病院として整備をしていく上で体制だとかあるいは法律整備あるいは財政的な裏づけあるいは独算制等の、少なくともその部門の撤廃等がこれは前提条件になりましょうが、診療体制を確保していく上で医師の確保が困難なのかどうか、その点困難であれば隘路は何かと、その辺をひとつ伺いたいと思います。   〔理事浜本万三君退席、委員長着席〕  それから、佐羽参考人にお伺いをしたいと思うのですけれども、これは特に民間医療機関、開業医の先生方に対していろいろと御意見が出ておるわけでございますが、私午前中にもちょっと御紹介を申し上げたんですけれども、近畿医師会連合調査をいたしました休日救急患者の実態というのは、これは約二四%余りが告示病院診療所で扱われ、そして約七〇%が告示を受けていない医療機関病院診療所等で扱われているという実態が報告をされているわけです。告示病院診療所の中でも、これは民間医療機関が七、八割を占めておるというのはすでに実態のとおりでございますから、かなり多くの仕事がなされていると思いますけれども、しかし現状医療の荒廃という中では、国民の要求には満たされないいろいろな諸問題というのが出てきているのは御承知のとおりでございます。  そこで、民間の開業医というのが、一体仕事の実態、生活の実態というのがどういう状態になっているのかという点を、これはお聞かせをいただきたいというのが一つです。  それからもう一つは、先ほども御意見が出ておりましたけれども、アンケートの中に医療の荒廃の原因が日本医師会の姿勢にあるというふうなのが、アンケートで非常に高い率に出てきているという御発言が午前中にもありましたし、先ほども御指摘があったんですが、それがどういうことを指しているのかちょっと私理解ができないわけなんですが、現状医療の荒廃、私ども知っておりますのは、たとえば外科医がメスを捨てて、手術場も入院病室もこれを放棄してしまっておるというふうな実態だとか、産婦人科医が大阪では千人もいたのが三百人に減ってしまっておるとかいうふうなことが、大変な事態になっておる一つ医療荒廃のあらわれだと思いますが、こういう事態を招いてきた原因というのは果たしてどっから来ているのか、その辺のところを少し端的にお伺いをしたいと思います。  最後に、非常に救急、特に休日、夜間診療を担当していく第一線の開業医の先生あるいは民間医療機関で一番困りますのは、診たときの患者さんがすぐに入院あるいは手術をしなければならないというときのいわゆる二次引き受け、後送体制が非常にいまのところでは整備されていない、受け取ってもらえないというふうな点が、第一線医師の非常に意欲がありながら積極的にやっていけないというふうな矛盾を持っておるという点になっておるやに私ども承知をいたしております。そういう点についての問題点等についてお伺いをしたいと思います。
  62. 恩地裕

    参考人(恩地裕君) ただいまお話しのありました三次救急、あるいは厚生省の言っております救命救急センターの人的資源の、これは非常に得にくいんじゃないかという問題ですが、確かに得にくいかもわかりませんが、しかし私どもが救急医学会等で知る限りにおいて、非常に熱心な医師が非常にたくさんおります。そういう人たちがそれではなぜ救急医療に参加を直ちにしてこないのかといいますと、たとえば大学の医師が私のところが救命救急センターになりましたと、こういうふうに言いますと、一次とか二次とかの軽い患者がわっと押し寄せて来て、もう一遍に救命救急センターが踏みつぶされてしまうんじゃないかと。だから、自分のところで救命救急センターをするというのであれば、一次、二次がきっちりと整備されて自分のところに適した患者が送られて来て、そこで重症な患者を一生懸命入れるような体制ができたら喜んでしょうというような人が非常に多いと思います。私の話の中でも申し述べましたように、救急医療整備には、三次の救命救急センター整備しようと思えば、一次、二次がなければいかぬと言うし、先ほどの先生のお話のように一次の人はまた二次、三次がなければとても一次はやれないというふうに言うわけで、これはやっぱり段階的、体系的な整備がなされなければならないんで、救命救急センターの人的資源は、そういうふうなものが条件としてあれば喜んでする人はたくさん若い先生方の中にあるものと思います。  それから次は、救急医学の教育の問題ですが、大学医学部の教育というものは最近非常に専門化してきてしまったわけです。最近の医学は非常に専門化して、それが高度になりましたので、知的、技術的に非常におもしろい。そういうところへすぐ入ってしまいまして、いわゆる初療といいますか、プライマリーケアの部分がややもすればなおざりになっておったということは非常に私たちも反省しておるところで、それを推し進めるのにはやはりそういうふうなどこかそういうものが必要であると、救急講座あるいは救急部門というようなものが大学にあって、そこで医学生たちにあるいは卒後の若い先生方にそういうものを教える。それからプライマリーケア医学というものの学問的な進歩もそこで進めていくということがなければならないと思います。これについてはすでに日本学術会議でもそういうことを勧告しておりまして、各医科大学にはそういう部門、救急医学の講座を設けた方がいいんじゃないかということを勧告しております。
  63. 佐羽達也

    参考人佐羽達也君) 第一に開業医の仕事の実態でございますね。これはまあ先ほどの非告示の救急医療機関というふうなものも含まれると思いますけれども、これは病院も恐らくあると思いますのであれですけれども、まあ一応いわゆる一般の地域の開業医の実態ということだろうと思うんでございますけど、まあ一口に言って本当にしんどい、何でこんなふうなものになったというふうに思うときもありますし、また患者さんが本当に治ってくれたらこんなうれしいことはないという、本当に矛盾したような心境でいつも思うわけなんですけれども、しかしやっぱり客観的に見ると、先ほど私の娘がもう医者のところにはいかないといったようなことが結論になってくるかと思いますんですけれども、実際にだけどいろいろなマスコミやなんかのあれでもって、医者が特に開業医がたたかれておりまして、本当の実態というのはなかなか私がこの短い時間でもって御説明してもおわかりにならないかと思うんで、また特別に時間をいただきたいとは思いますけれども、まあ一応申し上げれば、先生方の方にお回しいたしました資料の五ページに、これは大阪の保険医協会のあれですか、一日の平均診療時間というのが出ておりますね。それで、その中でもって八時間を超える保険医が三〇・二%というふうなあれが書いてございますけれども、本当の診療時間だけでございますね、まあ応診を含めた。それで、それ以外のさっき申し上げた保険の請求だとか税務のこととかいろいろのことをあれしますと、やっぱり診療に関係したあれは実際の診療時間よりもっと多い、実際の診療時間さえ十三時間以上が三・五%あるというふうなことで、これはいろんな各科あるいはその規模の大小等平均したあれでございますけれども、とにかくもう四六時中患者さんのことを考えていなければいかぬ、またあるいは健康保険制度がよけい複雑になってきてその事務が大変になってきた、これもたとえば今度は患者さんの保険証の記号番号が八けたになりまして、この数字を一つ間違えてもこれ全然お金いただけないというふうなこともございますけれども、まあそんなことを申し上げたら切りないんでございますけれども、とにかくそんなふうにもう長時間働いているんだと。まあもちろん若い先生方の方が労働時間長いんでございますけれども。そのほかにも、その次に六ページに健康状態と書いてございまして、国民と大阪の保険医協会の会員の健康に関するアンケートでございますね。不健康のあれが国民の倍以上もある。よく医者の不養生と申しますけれども、これはもう何も好きこのんで不養生しているわけじゃなくて、不養生にさせられているんだということはもう言うまでもないと思うんでございますけれども、まあ紺屋の白ばかまだって恐らくそうだろうと思うんでございますけれども、そういうふうなこと。したがって、いろんなつまらぬと言っちゃ語弊がありますけれども、四ページに診療以外の仕事なんかもたくさんやらざるを得ないんだと。まあしかしそういう中でも、たとえば四ページの上にあるようないわゆる公衆衛生活動と申しますか、学校医のこととか予防注射とか、いろんな地域の医師会等が関係しております公象衛生活動ございますけれども、産業医の問題もそうでございますけれども、そういうふうなものにもやっぱり一生懸命出たり、いまの救急のあれもやっている。  それからまた、この資料には入っておりませんけれども、最近、去年ですけれども、私たちの神奈川県保険医協会で調べた調査内容の一半を御紹介いたしますと、たとえば従業員の問題でございますけれども、無床診療所では半分以上、五六・三%も看護婦さんが全然いない。有床診療所、これはベッドがあるんですから、そこで看護婦がいなくてどうなるかと思うんですけれども、そういう有床診療所でさえ看護婦ゼロが二一・九%、一人でやっていらっしゃるところが二六%、これだけ合わせてもほとんど半分近くになっちゃうというふうな状態もございます。それから家族労働のあれでも、病院を含めまして、無床診療所を含めまして大体四五%ぐらいの方々が家族労働をやっていらっしゃる。もちろん二人医療なんというのは全然家族労働に支えられて一〇〇%でございますけれども。したがって、一番大事な勉強の時間、もう日に日に進歩する医学を何とか吸収しようという時間を医師会、協会それぞれにもう毎月のようにいろんな形でもって持っておりますけれども、実際にその出席数が余りよくない、まあ地域によっても違いますでしょうけれども。本当にそういう時間がないんだという統計が数字で申しませんけれども出ております。  そのくらい、いまの第一線開業医は疲れ切っている。そういう中でも、しかしさっき最初に申し上げましたとおりに、やっぱり医者としての喜びがあるからこそやっているわけなんでございますけれども、何とかして、やっぱりそういう実情がどんどんひどくなっているということの原因は、何といっても、この二番目の問題に関連いたしますけれども、いま国民皆保険でございますから、健康保険制度のいろいろな矛盾、先ほども病院の方がおっしゃっておられましたけれども、私も健康保険の問題についての矛盾は若干先ほどのあれでも、たとえば外来の看護婦さんの手当を全然認めてもらえないとか、それから外来看護料というやつですね、まあ入院の方のあれには認められておりますけれども全然ゼロですから、これ結局言ってみれば医者に対する報酬を分けるというふうな形になりましょうか、言いにくい話ですけれども。あるいはめんどうくさい、一字も間違えられない請求事務に、これはもう本当に月末から月初めにかけて大変な、徹夜する人さえあるぐらいの努力ですけれども、そういうものに対して全然支払われないとか、健康保険の中の矛盾というのはもう数え上げたら切りがございませんけれども、たとえば何か内科患者さんでもって血圧でもってずっとかかっていらっしゃる方が、たまたま指をちょっとけがなすって指の処置をする。指一本これ健康保険で十点でございますね。いまの出来高払い制というのは点数に単価を掛けたものでございまして、単価は一点十円、すなわち指一本これ処置すると百円でございますね。ところがその百円をしますと、今度は再診料というやつが減っちゃうんです。四十三点が三十点でございましたか、そうですね、先生。とにかく処置をしたために実際にはその処置料と再診料合わせて四十点になってしまって、何もしないときのあれが再診料が四十三点ですから四百三十円ですか、患者さん不思議に思うんですね。先生、きょう指あれしたのにいつもより安いの、と言うんですよ。いや、実はこういうことになっているのだというふうなことですね、たとえば。  それから、健康保険制度のあれにまだまだございますけれども、丸めとわれわれは称しているのでございます。つまり、出来高払い制というのが非常にやはりいまの社会制度の中でもって実際にやったものを正しく評価するという形を一応とっていますけれども、実際問題としては本当には正しくとってないんだということを、いまの外来看護料でも申し上げましたけれども、事務の手数料でも申し上げましたけれども、たとえばいまの指のあれでも、指一本でも三本でも同じなんですよ。指三本までは十点なんです。先生こんな大けがで百円でいいのと、まあいいのとは、患者さんは百円払うわけじゃないですからね。まあそういうふうなことでもって、たとえば丸めの中にもいろいろございます。たとえば、血圧なんかが最初から——いやもう全然最初は二点、二十円評価されていたんですね。それが初診料上がってその中に入れられちゃったとか、それからレントゲンなんか、特に消化管のレントゲンなんかたくさんフィルムを撮る必要があるんですね。ところが、五枚以上は絶対もうフィルム代しか認められないとか、そういうふうなやはり現在の健康保険制度の中における矛盾はたくさんございます。さらに、そういう内容だけじゃなくて、やはりいまの出来高払いというものが点数に掛ける単価ということで、いままでの改定が実際に点数だけのいろいろなやりくり、それも結局いままでは小児科のあれが多少低くなったから今度は少し小児科を上げるようにするとか、そういうふうな操作ばっかりでもって、私たちは単価というものはやっぱり物価や人件費にスライドするものだと思っていますけれども、その十円というやつがたしかあれ昭和三十二年ごろですよね、からもうずっと一定に決まっちゃっている、あと点数の操作だけだというふうなところですね。そういうふうなところでもって、やはり点数は医師会や本当の専門家が正しいそれぞれのアンバランスを評価して、これはもちろん医学の医療の進歩がございますから、そのときどきに応じて違うということはやむを得ませんけれども、やはり一方の物価やなんかに相応する単価というものをはっきりさせなきゃいけない。そういうふうなことでもって出来高払い制についてのいろいろな御批判もございますけれども、やはりあれがちゃんとしたものになれば少なくとも医療労働がちゃんと認め評価されて外来の看護婦さんの給料も払えて、いまの荒廃している第一線医療がもう少し充実して何とか国民のお役に立つようになるんじゃないかというふうに考えるわけでございます。  それから、最後に後送体制の問題でございましたか、第二次第三次の病院の問題、それから後送体制の問題は、もうこれも私も申し上げましたし、先ほどの参考人のいろいろな御意見もございましたけれども、確かに現状、たびたび申し上げるように、地域的にはそれが何とか間に合っているところもあるけれども、どうしても先生おっしゃるようにそういうところがないために、実は川崎でもことしからやっとある区でもって休日診療所が始まったんですけれども、それをやるために医師会の論議がずいぶん長いこと重ねて末端討議まで含めてやったんですけれども、その中でやはり一番大きな問題はその後送病院なんです。しっかりしたところがないじゃないかと。実際に川崎市の市立病院が、まあ東洋でも二位だか三位だかの大きな病院なんだそうですけれども、そこでもって現実に六百床近くも空床があるというふうなことで、またこれはどうも川崎の方がいらしてあれなんですけれども、たとえばむずかしいといいますか、乳がんですね、あれをレントゲンでもって調べる機械があるんでございますけれども、それを備えたけれども、それをやれる人がいないとか、まあいろいろな話ございますけれども、やっと小児科のあれだけは毎晩一人置くというふうなことにしてもらいましたけれども、それ以上の域に出ないということでもって、川崎一の、東洋でも二番目ぐらいのりっぱな病院でさえそういうふうなことなんで、二次、三次のあれがどうしても何とかやっぱり国の自治体の責任でもって整備していただきたい。先ほども申しましたけれども、実際問題として一部ではやはりそういうところと連携のあるところもございますけれども、とかくどうもやっぱり競合する形が強いんでございますね。特に、これは公的なところよりも、そう言っちゃなんですけれども、医師会内部の問題になって変ですけれども、私どもの仲間の私的病院の大きいところと私たちの一般の開業医との間の患者の取り合いといいますか、そういうふうな問題も確かに一部にはあるんでございますね。そういうことで、これはやはりもういまの私的病院も借り入れやなんかでもってそれを返すのになかなか大変な実情らしゅうございますね。一部には病院産業とかいう話が出まして、いまのはやりの丸紅なんかの、とにかく産業が病院経営まで乗り出すとか銀行が乗り出すとかいうふうなことまでもあって、とにかくもう外来から何から取りっこだというふうなことで、どうもうまく連携がとれてないというふうなことがありますから、先ほども申し上げましたとおりに、やっぱりそれなりの機能を発揮して十分お互いの連携を保って、何とか日常的な連携を、コネクションを保つということの中でもって、比較的話し合いでもってその後送のぐあい悪い点を断ち切る、開拓する、よくするという部門もありますけれども、何といったって、やっぱりいまの川崎病院の六百ベッドの空きベッドみたいなもので、何とかやっぱり国、自治体がこの後送病院整備していただかなければもうどうにもならぬのじゃないかというふうな感じが深くいたします。
  64. 諸橋芳夫

    参考人(諸橋芳夫君) 簡単にお答えいたします。  確かに自治体病院は、御指摘のごとく告示を受けている病院が五十数%で大変残念ではございますが、しかしながら、二次、三次の医療を担当している告示病院は非常にたくさんあるということを申し述べさしていただきます。なおまた、この告示病院を受けている数が少ないということにつきましては、私どもの公営企業法を適用しております九百五十六の病院のうちの二百十一は、その町その村にあるたった一つ病院であります。したがって、開業医さんもありませんもので、その病院がなければその町にはもう入院する医療施設がないという病院で、したがって、そういうところは立地条件は決してよくございません。ドクターにつきましても比較的そういうところには赴任したがりません。ドクターが少のうございます。したがいまして、この中の告示を受けてない一番の原因は、やはり医師が少ないということに関係があると思うわけでございます。残念ながらその九百五十六の病院をひっくるめまして、常勤医師の確保率は六七%でございます。パートタイマーを入れましても七〇%から八〇%でございます。ただ、これは都道府県立の中央病院になりますとこれは一〇〇%に補充されてございます。それにもかかわらず、私どもは常に告示をとるようにということは指導しているわけでございますが、二、三の問題につきまして申し述べますと、現在の告示病院というのは外科中心とした医療救急病院システムでございます。したがいまして、病院の中には内科は充実しておって、あるいは小児科は充実しておって、内科系のものが来るならばいつでも引き受けるけれども、外科は先生がたった一人しかいないものだから、それを受けると毎晩毎晩やられてとてもできない。そういうようなことで告示の病院の性格を変えてくれればもっともっとわれわれは立候補しようという病院が中にたくさんございます。  それから、大学の教育でございますけれども、使命感に燃えた医師というものがだんだん少なくなってまいっております。これは大学の先生のお話を承りますと、医学部に医者として不適性な性格を持った者、考え方を持った者が残念ながら国立大学には一〇%程度入ってきておる。これを入学試験において排除する方法はないかということを私どもの友達が申しているわけでございます。  それからいま一つは、専門外のことをやりますと、万が一間違った場合にはいま告訴されます。医療事故で告訴されます。そのようなことが救急に来た患者で、これは何だかわからないのに簡単な病気に考えておったところが、自分の専門外のとんでもない病気であったということで、後になってから告発されたんじゃ非常に不名誉になるから、わしはそういうことは御免だというのがございます。  なおまた、収入のことを申し上げますと、開業医さんの収入と勤務医の収入は皆様方御存じのように格段の差がございます。また税制におきましても、私どもは七二%の必要経費の控除はございません。開業医さんには七二%の控除があります。したがって、私の友達と話してみますと、私の倍の収入がある人が税金は私の半分です。このようなことから言いますと、やはり勤務医として挺身してくれる人はだんだん少なくなるんじゃないか。ことに、中堅どころになってまいりますと、子供の教育に関係します。国立大学へ入ればよろしいでしょうけれども、私立の大学へ入った場合には数千万から多いところは一億と聞いていますが、このような金はとても勤務医としては貯蓄できない。こういうことが関係しまして、残念ながら勤務医がある年数になりますと開業に走るのが大変多いという実情から考えまして、私どもは医師の不足を訴えているわけでございます。  以上でございます。
  65. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ありがとうございました。
  66. 柄谷道一

    柄谷道一君 参考意見ありがとうございました。ちょっと議運で中座しましたので、あるいは重複しておりましたら御容赦願いたいと思います。  まず、諸橋先生に二つお伺いしたいんでありますが、御意見の中に、救急病院省令を廃して救急医療立法が必要ではないか、こういう御指摘がございました。自治体病院協議会として、その新しい医療立法に対する何らかの御提言もしくは具体策をお持ちであるかどうか。これが一つでございます。  第二点は、ただいまも救急告示制度の問題に触れられました。確かに設備、医師看護婦等医療従事者の確保の問題、不採算医療に関するスタンバイコストの補てんの問題、いろいろ問題はありますでしょうが、これと並行して、恩地先生は交通事故一・八%、外傷一二・八%に比べ疾病が七五%あると、こういう数字も指摘されたわけでございます。こういった実態を踏まえますと、諸橋参考人の御意見は、現行、事故による傷病者の医療と限定しているものを、他の施策と相まちながらこれを改定する必要ありと、こういう御所見ととってよろしゅうございますか。この二つでございます。  恩地先生に二つお伺いいたします。  恩地参考人は、第一次一第三次の総合的な体制整備が必要だということを強調されたわけでございますが、この救急医療といいますのは時間を争う時との闘いでございます。そういたしますと、救急患者が発生した場合、それを初期救急医療機関に搬送すべきか、もしくは第二次ないしは第三次の救急医療施設に搬送すべきか、いずれかの機関がその識別といいますか、選別を行わなければならないわけでございます。もちろん搬送の業務に当たるべき職員の方の教育も必要でございましょうけれども、時間を勝負とするこの救急医療と、それぞれ総合的に整備されます体制との関連で、その識別の判断をどういうふうにしていくことが最も効果的であるというお考えなのか、これが一つ。  それから、恩地先生への第二点の質問は、昨年開かれました日本救急医学総会で、医療従事者の量の確保と研修の必要性が指摘されたと聞いております。当時の議論の新聞で読むところによりますと、救急センターが十分な機能を果たすためには専任の医師十五人を含む百人余りの編成が必要ではないかということも、学会で議論されたと聞き及んでいるところでございます。そういたしますと、総合体制整備ももちろん必要でございましょうけれども、医師看護婦等の量的不足というのはぬぐえないと思います。日本学術会議の勧告が行われているわけでございますが、その勧告の実施を阻んでいる要因は一体何なのか。これをお伺いいたします。  最後に、井上参考人に対しまして、一つは、百四十八万人の搬送者のうち軽症は四七・八%であったと、こういう御説明でございますが、消防庁の統計によりますと軽症とは通院、中等症とは三週間未満の入院、重症とは三週間以上の入院というその区分が、この数字になってあらわれているんではないかと思うんです。そういたしますと、簡単な骨折であっても三週間以上の入院を要しますから、これは重症として統計上載りますけれども、たとえばのどに異物がはさまった。処置をすれば通院で済む、しかしその症状そのものは寸刻を争う救急的な手当てを要する。これは軽症に統計上載ってくるのではないかと、こう私は思うわけでございます。これらのひとつ統計の基礎、これがはっきりしませんと手探り救急医療になってしまうわけでございまして、今日までの経験を踏まえてこれらに対するひとつ再検討をされるようないま準備があるのかどうか。これが一つでございます。  それから次に、国民の九五・六%をカバーしているということでございますが、言葉を返せば、なお四・四%未カバーの地域があることをこれは示しております。全国の委員長でございますので、特に沖繩等の子離島、孫離島、救急車をもってカバーし得ない僻地の搬送対策について、何らかの御検討があればその内容をお示し願いたいと思います。  時間の関係で以上にしぼります。
  67. 諸橋芳夫

    参考人(諸橋芳夫君) お答えいたします。  救急立法についてのごく概略の素案でございますけれども、私どもは、広域市町村圏に少なくとも一カ所は二十四時間応需の体制をとります一次から二次、できれば三次まで、そういうような医療機関が必要だと思います。なおまた、人口百万に一カ所は、第三次も引き受けてくれる救急医療センター、まあ厚生省の救命救急センターになりますが、名前はどちらにしましても、このようなものを法律をもって設置する必要があると思うわけでございます。この設置の建物、設備の全額は国あるいは地方公共団体の負担運営につきましても収入をもって足らないところは全額公費の負担とする。この二次あるいは三次の病院につきましては、脳外科を初め——いまやわが国の最高の死亡率を占めるものは脳血管損傷であります。先ほど恩地先生からもお話がありましたように、きわめて診断を的確にして適当な時期に脳卒中を手術すれば相当の多数の者は死亡を免れます。私どもでもそういう助かった例がたくさんございます。脳外科あるいはCCU——CCUというのは濃厚治療室でございます。一般の病室へ送るんじゃなくて、医師看護婦が二十四時間その病室の中についておって観察し、直ちに診察あるいは手術に持っていけるところの濃厚な治療室でございます。あるいはCCU、心筋梗塞を中心としましたこれもまた大変死亡率が多いわけでございます。これも適切に治療することによって、——勝負は二十四時間で決まります。そのような設備を持ったもの。あるいはまた人工腎センターといいますか、腎の障害のある人に対しましては、透析あるいは人工腎臓を使うことによって、あるいはまた腎を移植することによって治すことができます、あるいは生命を長らえることができます、このようなもの。あるいはまた未熟児を収容する未熟児センター、こういったものもひっくるめたような診療ができるような体制を持ったものを二次あるいは三次に併設したいと思うわけでございます。このようなことを、いまはやってもやらなくてもよろしい、やったところには多少の補助金をやろうということじゃなくて、もう法律で、こういうものは少なくとも公的の責任があるんだからこれはやれというふうなことを義務づける、そういうことでございます。  なお、告示制度につきましては、先ほども申し上げましたように、現在におきましては、外科医がおるとかあるいは手術室があるとか、いつでもその処置できるとか、そういったようなことが中心になっておりますが、確かにこれは昭和三十八年か九年ごろに告示病院制度ができたんでございましょうが、そのころは交通事故、外傷が多かったんでございますが、現在はどこの告示病院につきましても内科的疾患の方がはるかに多くなっているわけでございますので、この点は速やかに改善する必要があると思うわけでございます。  以上でございます。
  68. 恩地裕

    参考人(恩地裕君) 救急医療機関は段階的に整備されたときにそれにどういうふうに振り分けていくかという問題ですが、急がないときには一次医療機関は振り分けることができると思いますが、非常に急ぐ場合はやはり救急隊員がやるべきであると思います。そのことについてですが、救急隊員というのは医師でありませんので診断は確かにできないわけですが、これが重症であるか軽症であるか、どういう医療機関に送れば最も適応しておるのであるかという程度の、診断でなくして選別は可能であります。それは私どもが実は大阪市消防局とタイアップして千五百人ほどの救急搬送を隊員がしたときに、重症度別に彼らに分けてもらって、それを一週間後に全部追跡調査して、その患者がどうなっておるかということを調べてみましたら、救急隊員の判断した軽症、中等症、重症、最重症というものと、一週間後の状態というのは非常によく一致しておりました。現在救急隊員の一般的教育レベルが高いですから、これに特別な医学的な教育を施すことによって、こういうことは可能になるものだと思います。それは私どもが実験的に証明しておるわけです。  その次には、人的資源の問題ですが、こういうふうな救急医療機関がたくさんできても、それに医師とか看護婦さんとかを十分供給することができるのかどうかという問題ですが、これは一概に考えますと非常にむずかしいように思います。しかし、先ほどお話しのときにお見せしましたように、大阪は人口八百万、大阪市では日曜日一日に六千人の救急患者が出ております。これはしかし七五%は医師会先生方がプライマリーケアをやっている。ほぼ受けとめてくれておるわけです。それから、入院しなければならないのは四百人です。その中の三分の一はお産です。だから、これも考えようによっては何とか対処できるわけです。そして、最重症はわずかに十人しかないわけです。ですから、これは私たちのところも大阪にはありますし、府立病院もありますし、そういうふうに何とか受け入れることができるようになると思います。だから、救急医療というものを非常に漠然と考えますとむずかしいのですが、実態調査を十分にして病気の重症度、病気の種類をよく検討すれば、それにできるだけいまの医療資源を有効に使える手段はできてくるのではないかと思います。
  69. 井上文男

    参考人(井上文男君) 最初に、消防で救急患者の区別を行いますのに、軽症、中等症、重症等の区分についてのお話がございました。これが果たして通院あるいは入院三週間あるいは三週間以上という区分で適当かどうかという御質問でございます。  これは非常にむずかしい問題でございまして、実は当初に初期の診療が適切であったがために通院というのがあったというふうな例もあるわけでございます。さらには、各医療機関へ持ってまいりまして、これが果たして救急の患者に該当するのかどうかという判断もございますが、これも医師によりまして、その判然とした区分けができないというようなことから、今日こういうふうな便法をもって一つの統計的な手法をここに求めざるを得ないということで、こういうようなことを消防庁ではやっているわけでございます。問題がございまして、なかなかその辺の細分化ということが非常にむずかしいというのが実情でございます。  それから、第二点目の僻地における搬送体制でございます。先ほど大体国民の九五・六%ほどが救急搬送サービスの影響でカバーされるということで、あとの四・四%というのは残るわけでございます。これはいずれも御指摘がございましたような僻地だとか離島だとか、本当にはなはだしい過疎地というふうなところの人口がこういう形であらわれてまいっておりますので、これらにつきましても当該村役場等あたりではいろいろと気は使っておりますし、かつまた、離島あたりでは自衛隊のヘリの応援を得てこういう対策を講じているというような実情でございますけれども、今日の消防における救急業務というのは、常設消防機関でなければ救急業務実施しないわけでございますので、この辺の落ちこぼれの救済については、なお今後とも大きな観点からの問題になっていくのではないかと、かように私は感じております。
  70. 戸田菊雄

    委員長戸田菊雄君) ほかに御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。  この際、参考人方々に一言御礼を申し上げます。  参考人方々には長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会