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政府委員(小熊鐵雄君) ただいまから、
公害等調整委員会が
昭和五十一年中に行いました
公害紛争の処理に関する事務につきまして御
説明申し上げます。
まず初めに、
公害等調整委員会が所掌いたしております
公害紛争の処理に関する事務について概略御
説明いたします。
公害等調整委員会は、
公害紛争処理法の定めるところにより、
公害に係る被害に関する民事上の紛争についてあっせん、調停、仲裁及び裁定を行うとともに、
地方公共団体が行う
公害に関する苦情の処理について指導等を行うこととなっており、これらの事務の概略は次のとおりでございます。
第一に、
公害等調整委員会が行います
公害紛争についてのあっせん、調停及び仲裁は、ともに紛争解決の基礎を当事者の合意に求めるものでございますが、当
委員会が管轄する
公害紛争は、人の生命、健康に重大な被害を生ずる
公害に関する紛争、農作物や魚介類など人の
生活に密接な
関係を有する動植物またはその生育
環境に五億円以上の被害を生ずる
公害に関する紛争、
新幹線鉄道及び航空機の運行により生ずる騒音に関する紛争並びに被害地、加害地が二つ以上の都道府県の区域にまたがる
公害に関する紛争でありまして、いずれも社会的に重大な影響を有し、かつ、広域的な見地から処理することが適当と考えられるものであります。なお、当
委員会の管轄に属しない
公害紛争につきましては、
公害紛争処理法に基づいて全国の都道府県が設けております都道府県
公害審査会等が行うあっせん、調停及び仲裁の手続によって処理されております。
第二は、
公害紛争についての裁定でございますが、これには責任裁定と原因裁定の二種類があり、ともに訴訟手続に準じた手続によって紛争を処理することとなっております。このうち、責任裁定は、
公害による被害について損害賠償に関する紛争が生じた場合に、被害者からの申請に基づいて、その相手方の損害賠償責任の有無及びその範囲について判断するものであり、原因裁定は、
公害紛争における被害と加害行為との間の因果
関係について、当事者からの申請に基づいて、その有無を明らかにするものであります。
第三の事務は、
地方公共団体が行う
公害に関する苦情の処理について指導等を行うことであります。住民から申し立てられる
公害に関する苦情の数と内容は、その地域の
環境問題の指標的な意味を持つものでありますと同時に、また、
公害苦情は
公害紛争の前段階的な性格を有しているものでありますので、その適切な処理を図ることは、
公害紛争の
発生の事前
防止という前におきまして、きわめて重要な機能を果たすものであります。このような
公害苦情の適正な処理の重要性にかんがみ、
公害紛争処理法においては、これに当たるべき
地方公共団体の責務を明らかにし、
公害苦情相談員の制度を定めておりますが、
公害等調整委員会は、この
地方公共団体が行う
公害苦情の処理について指導、助言、
協力等をすることとなっております。
次に、当
委員会の具体的な事務処理の
概要を御
説明申し上げます。
公害紛争の処理に関し
昭和五十一年に当
委員会に係属しました事件は、調停事件百十九件、仲裁事件一件、責任裁定事件六件及び原因裁定事件一件の計百二十七件でございます。
その内訳は、不知火海沿岸における
水質汚濁による水俣病調停事件九十一件、渡良瀬川沿岸における鉱毒による農業被害調停事件二件、大阪国際空港周辺の騒音による
生活環境被害調停事件二十三件、徳山湾西海域における漁業被害調停事件一件、福岡市における
水質汚濁による
健康被害仲裁事件一件、富山市におけるビル工事に伴う
地盤沈下による建築物損傷責任裁定事件二件、東京都新宿区における地下鉄工事に伴う騒音、振動等による営業損害等の責任裁定事件一件、長野県中野市におけるカドミウム汚染による農作物被害等責任裁定事件一件、東京都葛飾区における鍛造工場の操業に伴う騒音、振動による建築物損傷等責任裁定事件一件、島根県における廃油汚染に係る漁業被害責任裁定事件一件、埼玉県北葛飾郡における
大気汚染による
健康被害等原因裁定事件一件等でございます。このうち、
昭和五十一年中に新たに係属した事件は、調停事件六十一件及び責任裁定事件一件の計六十二件でございます。
昭和五十一年中に紛争処理が終結しましたものは四十二件で、その内訳は次のとおりでございます。調停事件で終結しましたものは三十七件で、不知火海沿岸における
水質汚濁による水俣病事件三十四件、徳山湾西海域における
水質汚濁による漁業被害事件一件及び後で申し上げます裁定手続から職権で調停に付した事件二件であり、いずれも調停が成立して終結したものでございます。これらのうち水俣病事件は、水俣病と認定された患者に対するチッソ株式会社の損害賠償義務について、患者個々人ごとに会社との間の調停を成立させたものであります。また、徳山湾西海域における
水質汚濁による漁業被害事件は、徳山湾西海域に流入した工場排水より水質が
汚濁し、漁業被害をこうむったとする山口県新南陽市の漁業者と同海域沿岸に立地する徳山曹達株式会社外九社との間における補償等をめぐる事件でございましたが、鋭意調停手続を進めた結果、調停が成立し、円満に解決したものであります。仲裁事件で終結しましたものは、福岡市における
水質汚濁による
健康被害事件でございまして、本件の処理に当たった仲裁
委員会は、申請人の請求に理由がないと判断し、申請を棄却いたしたものであります。裁定事件で終結しましたものは四件で、長野県中野市におけるカドミウム汚染による農作物被害等責任裁定事件及び埼玉県北葛飾郡における
大気汚染による
健康被害等原因裁定事件は、いずれも、鋭意審理を進め因果
関係についてもある程度の見通しがついた段階で、紛争全体を互譲により円満に解決しようという気運が当事者双方に生じましたので、紛争の
早期解決という
公害紛争処理法の精神にのっとり、同法第四十二条の二十四の規定により職権で事件を調停に付し、調停案を提示しましたところ、当事者はこれを受諾し、円満に解決したものであります。また、東京都新宿区における地下鉄工事に伴う騒音、振動による営業損害等の責任裁定事件につきましては、地下鉄工事と被害との間の因果
関係及び損害額等につき審理を進めた結果、
昭和五十一年十一月、損害賠償の支払いを命ずる責任裁定を下したものであります。
なお、東京都葛飾区における鍛造工場の操業に伴う騒音、振動による建築物損傷等責任裁定事件は、
公害紛争処理法第四十二条の十二第二項の規定により、不受理としたものであります。
その他、終結を見ていない事件につきましても、目下鋭意手続を進めているところであります。
次に、
昭和五十年度の全国の
公害苦情の実態について申し上げます。当
委員会の
調査によれば、その総件数は、約七万六千件となっております。この苦情件数は、
昭和四十二年度から
昭和四十七年度までは引き続き
増加を続けてまいりましたが、
昭和四十八年度からは毎年減少し、
昭和五十年度においては前年度より三%の減となっております。これを市町村別に見ますと、人口十万以上の市で二・九%、その他の市で〇・七%及び町村で八・六%それぞれ減少しております。
昭和五十年度の
公害苦情件数を
公害の種類別に見ますと、騒音、振動に関する苦情が最も多く三一%を占め、次いで、悪臭二三%、
水質汚濁一八%、
大気汚染一五%の順であり、これらで全体の八八%を占めております。
以上の結果を踏まえ、当
委員会といたしましては、
公害苦情相談指導者研修会等の研修を実施し、また、
公害苦情処理の参考資料を作成、これを第一線において苦情処理に当たる
公害苦情相談員等に提供し、あるいは個別の事案について指導、助言を行う等、
地方公共団体が行う
公害に関する苦情の処理について、鋭意指導等を行っている次第であります。
引き続き、
昭和五十二年度の
公害等調整委員会の
予算案につきまして、その
概要を御
説明いたします。
昭和五十二年度の総理府所管
一般会計
歳出予算のうち、
公害等調整委員会の
予算の
総額は三億二十七万九千円でありまして、これを前年度の当初
歳出予算額二億九千二百万六千円と比較いたしますと、八百二十七万三千円の増額となっております。その内容は、当
委員会に係属する事案の審理及び
一般事務処理のための
経費四千三百四十九万五千円、
公害紛争の処理について都道府県等と連絡協議するための
経費五百四十九万一千円、
公害の因果
関係の解明に要する
調査のうち、特に専門的、技術的要素の強いものを外部の研究機関に委託するための
経費一千九百二万七千円、
公害苦情の実態を
調査し、その処理について
地方公共団体の職員に対する研修指導等を実施するための
経費一千九百六十四万七千円のほか、人件費であります。
以上が
昭和五十一年中に
公害等調整委員会が行ってまいりました
公害紛争の処理に関する事務の
概要及び
昭和五十二年度の
予算案の
概要でございます。
なお、
公害等調整委員会設置法第十七条に定められております
昭和五十一年の所掌事務処理状況の報告書は、会計年度で取りまとめまして、追って所定の手続を経てお手元にお届けいたしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。