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国務大臣(
福田赳夫君) 本
会議のときからそのようなお話を承るんですが、私は、私の立場を別に申し上げる意図はございませんけれ
ども、客観的に、国際的には
日本の
経済政策というものは非常にうまくいっている、第二の奇跡が
日本に実現したとこれまで言われているんですよ。つまり、あの石油ショック、あの直後の
日本の
経済というのはもう崩壊寸前というくらいな大きな打撃です。それがもうそれから三年でしょう。三年で大体国際収支の問題も他の国から黒字責任論だなんという言葉が出るくらいの改善をしておる。
物価はどうだ、こう言いますれば、とにかく四月の時点で言えば、卸売物価ですね、年間上昇率三・六%、それから消費者物価が八・四%というところまで来ておるんです。今後これから成長はどうだと言えば、五%台、これは先進工業国の中で一番高い成長を示したわけです。それにもかかわらず不況感というものがあります。つまり、三年越しのとにかく低成長でございます。そういう中で設備に遊びが出ておる、あるいは人手に遊びが出ておるという企業が多いんです。そういう結果賃金の負担、またその金利の負担、これが重く企業にのしかかる、そういうようなことで、不況感というものが相当強く漂ってはおるのでございまするけれ
ども、私は、五十二年度というこの年にはこれが大体解決できる、こういうふうに考えておるのであります。
何か、公共事業を使ったら、これは土建屋しか潤わぬじゃないかというようなお話がありますが、これはそうじゃないんです。公共事業というものは、これは景気の側面以外のことを申し上げれば、
国民の財産としてそれだけ残っていくんですよ。しかもわが
日本は、下水道なんかとってみますればこれは後進国だ。その後進国がだんだん公共事業を通じて
先進国になっていくんですから。住宅だってずいぶんおくれております。これもだんだんと整備されていくんです。それから地方の道路、こういう状態を見ましても、これも大変おくれておる。
それで、公共事業を何とか進めなきゃならぬというやさきにこの不況、ですから不況対策といたしましては、公共事業を用いるというと、そういう
わが国の社会、生活環境を整備するという意味もあるんですが、同時に、この事業をやるということが物の需要を喚起するという効果は一番これは強いです。そして直接的である。この五十二年度
予算では実に十兆円の公共事業を行うわけであります。しかも、その半分の五兆円を四、五、六の三カ月でこれはひとつ契約をしちゃおうと、こういうんですから、私は、この一両月の間にかなり景気の動きに顕著な改善の動向が出てくるということを、確信をいたしております。
他方、物価の問題につきまして、これは気をつけなきゃいかぬ、これはもちろんであります。昨年あたりの物価が思わしい状態じゃなかった。これは季節的な問題もありまするけれ
ども、物価を上げておる要素は二つあるわけです。需給の問題とコストの問題。
需給関係は、不景気ですから物価にはよい
影響はありますものの悪い
影響はない、これは無視してよろしい。ところが、コストの問題から見ますと、昨年はコストの大きな要因は、
一つは賃金です。やっぱり賃金が八・八%ですか、上がったんです。これは物価を押し上げる要素になるわけです。それからもう
一つは公共料金です。国鉄で、とにかく国鉄再建ということで五〇%の値上げをしなきゃならぬ、これも響く。それから電電料金をおととし上げましたが、その余波というものが去年は相当強く響いてきたわけでありますが、公共料金的要素。
それから、昨年の上半期は海外の市況が非常に活発でございました。そういう関係から、海外からの輸入の品物の値上がりというものも見られた、そういうような状態がありましたが、さて、ことしを展望してみますると、もう国鉄料金、皆さんがずいぶん御論議になっておられまするけれ
ども、これは引き上げを
政府案どおりに実行いたすにしても、五〇%じゃないんです。これは一九%なんです。電電問題はもうありません。そういうようなことで、公共料金というものが一山越しておるんです。そういうことがある。
それから、もう
一つは円の価値、これが国際収支が改善されたというのに伴いまして高くなってきておる、これは輸入価格はそれだけ安くなる、こういうことでございます。したがいまして、これもいい
影響がある。異常天候、これがあるかどうか、これは予断はできませんけれ
ども、これが普通の年であるということになれば、物価安定の
傾向への要素の方が私は強いんじゃないか、こういうふうに見ておりまして、何とかしてことしは消費者物価上昇率七%台にこれをとどめたい、こういうふうに考えており、また、それを実現できるのじゃないか、こういうふうに見ておるわけであります。
それから、
経済の成長につきましては、ことしはとにかく公共事業中心の
予算を編成した、そしてこれが動き出す、これが一波万波を呼びまして民間の
経済活動も逐次活発化していく、こういうふうに見ておりますので、私は六・七%成長ということを言っておりまするけれ
ども、その程度のことは必ず実現可能であり、また、これは実現できる、こういうふうに考えております。
その後の
経済につきましては、つまり安定成長、あんまり突拍子もなく成長の高さが高くなるということもなく、あんまり低くなるということもなく、なだらかに伸びていくというようにしたいし、同時に、安定成長と私は申し上げておりますのは、そういう成長の高さ、低さの問題、それもありまするけれ
ども、この成長の内容を
充実していきたい、こういうことなんです。いままでは産業中心の
経済、こういうことでございましたけれ
ども、産業をもとより軽視するわけじゃございませんけれ
ども、産業中心から生活中心、そういう方向へ
国民経済の中心を移していきたい、こういうふうに考えておるので、ぜひその方向を定着さしたいというのが私の念願でございます。
そういう中で、景気
政策の
一つとして公定歩合の引き下げがあった、それに伴いまして預貯金金利の引き下げをやる、そうすると目減り問題というのが起きてくるじゃないかという御批判でございますが、確かに私は、目減り問題という問題が起きてきており、さらに預貯金金利の引き下げによってそれが顕著になる、こういうことになると思うんです。しかし、いま世の中全体を考えてみるときに、
経済活動をここで活発にしておくということをいたさないと、社会全体に相当大きな混乱が来るだろう、こういうふうに憂慮しておるんです。そのためには景気
政策をとらなきゃならぬ。景気
政策は公共事業一本じゃまあ足らないところがある、そこで金融
政策もこれと並行しなきゃならぬ。金融
政策としてどういうことをしなきゃならぬかと言うと、もう金融の量をふやすというのは、これはそう必要はないんです。というのは、金融の量的な問題につきましては、十分に金融界はその
機能を尽くしておるわけであります。
問題は、その金利なんです。先ほ
ども申し上げましたが、企業
一つ一つは重い金利で苦しんでおる、その金利負担を軽減をするということ、これが必要になってくる。そして、とにかく景気を回復しなければ
財政の方もうまくいかぬし、また、国家の諸
政策も進まない。そういうようなことを考えますときに、私は、その預貯金金利の引き下げによって目減り問題という深刻な問題がある、それはよく承知しておるところでございますが、ひとつ国全体をよくするためだ、御
協力願いたいという気持ちであの預貯金金利の引き下げということに踏ん切りをつけたわけです。ただし、零細ないわゆる社会保障対象の人々の預金がそういう
政策の犠牲になるというようなことは、これはよくない、こういうふうに考えまして、ここにおる坊さんなんかは大分抵抗したんですが、ひとつ踏ん切ってもらいたいというので、この方の預貯金の金利はこれを据え置きとする、こういうことにいたした次第でございます。