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政府委員(
佐々木輝夫君) 第一点の水産物の利用のあり方を含めた
日本の
漁業の
長期的な見直しの問題でございますが、その必要性は私どもも痛感をしておるところでございます。さっき御
指摘のとおり、
日本でいま消費しています一千万トンの水産物のうち、直接食用にしていますのは原魚ベースで七百五十万トンぐらいで、
残り二百五十万トンぐらいは養魚用のえさとか稚仔魚に回っております。しかし、これも畜産物あるいは高級魚介類に対します国民の嗜好というようなことを考えるとあながち否定はできないというふうに考えておりますけれども、まだ技術的にもここら辺の
関係を十分見直す余地もたくさんあるんではないかというふうに考えております。
将来、いずれにいたしましても、
日本の周辺の二百海里の水域の中を高度に利用するということが最大の課題になるわけでございますけれども、この中で沿岸漁場の
整備を一方で進めながら、そこで適地に応じまして、いまの高級魚介類を中心にした養殖業といった行き方だけでなくて、要するに耕されました漁場にクルマエビとかマダイ等の魚介類の資源を、稚魚を大量に培養をして自然の漁場の中で特定の資源を選択的に造成をする、こういった方向を、まあ栽培
漁業と言っておりますけれども、今後大いに進めたいということで、すでに五十一年度から漁場
整備に
計画的に着手しますとともに、県の
段階での種苗生産
施設等にも、現有稼働中のものを含めまして約二十カ所ぐらいを建設終わりあるいは建設途中でございますが、今後技術開発も含めまして大いに推進をしたいと考えております。
そういった中で、
日本の沿岸
漁業につきましても、従来からの自然の資源をとるということを中心にした
漁業のあり方からやはり人工的に特定の資源を管理し培養しながらとると、いわゆるつくる
漁業への転換ということを一層進めたいと思っております。その
段階の中で、さっき御
指摘のありました一方で水産物の高度利用ということも織り込んで進めたい。具体的にはイワシとかサバのようないわゆる多獲魚を直接人間の食用に消費することにつきましても、五十二年度から
計画的に消費宣伝をやりたいと思っておりますし、また料理方法その他の普及もやりたいと思っていますが、それだけでなくて、これをすり身とかあるいはそのほかのいわゆる加工食品の素材として利用して、いまの消費者、特に若い人にも好んで食べてもらえるような食品としてこれを提供したいということを考えておりますし、それに伴って今度生じます沿岸での養殖業の直接的なえさの不足等につきましては、水産物の廃棄物の利用とか、あるいは現在人間が利用していない未利用資源をこういったえさ資源として利用していくというような方向を総合的に見直しをしたいというふうに考えております。
それから二番目の魚価対策でございますが、まあことしの三月以降ぐらい、特に日ソ交渉が相当行き詰まっておりましたこの影響を受けまして、それに加えまして昨年まあアジとかサバなんかについて大変漁獲量が、その前の年の三〇%ないし四〇%減という非常な不漁がございまして、たまたま四月、五月ごろがその端境期に当たっていたといういろんな
事情が重なりまして、急激な魚価の上昇が起きたというのは御
指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、従来からこういった季節変化の非常に大きい、いわゆるアジ、サバのような多獲魚につきましては、調整保管事業をそれぞれの業種を通じて
実施をすることについて国が助成をいたしまして、それの円滑な運営を期すために五十一年の暮れには魚価安定基金を一応設定して、そういった仕事がやりやすいように助成措置を講じているわけでございますが、季節的に大量にとれて産地で非常に魚価安で
漁業者が困るというようなときに、これを一定の基準で保管をいたしまして、端境期なりあるいはいまのような消費地での供給不足といったような事態のときにそれを緊急放出をさせるといったことで、今後も魚価対策の推進を図っていきたいというふうに考えております。
ただ、若干過渡的に、どうしても国際
関係等から供給量が減少いたします魚種も当然予想されますので、こういったものにつきましては直接
日本の
国内の生産だけで供給量を一応ふやすということが、たとえばタラコであるとか、あるいはサケ・マスのようなものになりますと、あるいはニシンにつきましても見込みが非常に薄いわけでございますので、これにつきましては第三番目に御
指摘がございました水産物の輸入の、特に秩序ある輸入ということを念頭に置きながら、現在これらIQ品目になっていますものにつきましても消費の
実態に応じて輸入枠を緊急拡大する。その中で
日本の
国内の
漁業生産者との間でいろんな混乱が起きないように、必ずしも窓口を一本化することが唯一の方策かどうか、あるいはそれに伴う弊害がないかということについて現在検討中でございますけれども、いずれにいたしましても加工業者等を含め
漁業生産者、消費者、こういった角度から混乱を生じないように、秩序のある輸入体制を
整備したいというふうに考えておる
段階でございます。